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特表2023-512578Cアナビンオイド硫酸エステル、その塩及び用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-27
(54)【発明の名称】Cアナビンオイド硫酸エステル、その塩及び用途
(51)【国際特許分類】
   C07C 309/42 20060101AFI20230317BHJP
   C07D 311/80 20060101ALI20230317BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20230317BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20230317BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230317BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20230317BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20230317BHJP
   C12P 11/00 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
C07C309/42
C07D311/80 CSP
A61K31/352
A61K31/05
A61P25/00
A23L33/10
A23L2/00 F
A23L2/52
C12P11/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022548132
(86)(22)【出願日】2021-02-05
(85)【翻訳文提出日】2022-09-16
(86)【国際出願番号】 CA2021050132
(87)【国際公開番号】W WO2021155474
(87)【国際公開日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】62/970,764
(32)【優先日】2020-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522313798
【氏名又は名称】ロンドン ファーマシューティカルズ アンド リサーチ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】ムスタファ,マームード モハメド アブドラボ
【テーマコード(参考)】
4B018
4B064
4B117
4C086
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4B018MD07
4B018ME14
4B018MF10
4B018MF12
4B064AE46
4B064AE61
4B064CA21
4B064CD05
4B064CD30
4B064DA01
4B064DA10
4B117LC04
4B117LK06
4C086AA01
4C086AA03
4C086AA04
4C086BA08
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA02
4C086NA11
4C086NA14
4C086ZA02
4C206AA01
4C206AA03
4C206AA04
4C206JA02
4C206KA17
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA02
4C206NA11
4C206NA14
4C206ZA02
4H006AA01
4H006AB20
(57)【要約】
本開示は、カンナビノイド硫酸エステル、その可溶性の塩及びその安定な製剤並びにそれらの食品、飲料、及び医薬製剤に関する。カンナビノイド硫酸エステル塩は、疼痛及び炎症、がん、緑内障、神経変性疾患、多発性硬化症、腎線維症、線維性疾患、依存症、運動機能障害、消化器及び代謝性疾患を含むがこれらに限定されない、カンナビノイド受容体の調節又は偏った調節に関連する様々な病態を治療するための医薬製剤又はプロドラッグとして用いられうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの水酸基があるカンナビノイドの硫酸エステル又はヘミ硫酸エステル、又はその薬学的に許容される塩を含む、カンナビノイド化合物。
【請求項2】
カンナビノイドは、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)、デルタ-8-テトラヒドロカンナビノール(THC)、カンナビジオール(CBD)、カンナビノジオール(CBND)、カンナビノール(CBN)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビシクロール(CBL)、カンナビバロール(CBV)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビクロメバリン(CBCV)、カンナビゲロールモノエチルエーテル(CBGM)、カンナビエルソイン(CBE)とカンナビトリオール(CBT)、及びそれらの誘導体、類似体、並びにそれらと関連する化学構造からなる群から選択される、請求項1に記載のカンナビノイド化合物。
【請求項3】
塩は、NaOH、KOH、LiOH、Ca(OH)、Mg(OH)、エルブミン、環状アミン、非環状アミン、エタノールアミン誘導体、芳香族アミン、脂肪族アミン、アミノ糖、及びアミノ酸からなる群から選択される少なくとも1つの無機塩基又は有機塩基を備える、請求項2に記載のカンナビノイド化合物。
【請求項4】
以下の式I:
【化1】
(式中、Rは、H、第2のカンナビノイド、相乗的化合物、非相乗的活性化合物、及び不活性側基からなる群から選択される)
で表される、THCの硫酸エステル又はヘミ硫酸エステルである、請求項2に記載のカンナビノイド化合物。
【請求項5】
以下の式II:
【化2】
(式中、Rは、H、第2のカンナビノイド、第2の活性化合物、及び不活性側基からなる群から選択される)
で表される、CBDの硫酸エステル又はヘミ硫酸エステルである、請求項2に記載のカンナビノイド化合物。
【請求項6】
以下の式III:
【化3】
(式中、Rは、H、第2のカンナビノイド、第2の活性化合物、及び不活性側基からなる群から選択される)
で表される、CBDの硫酸エステル又はヘミ硫酸エステルである、請求項2に記載のカンナビノイド化合物。
【請求項7】
以下の式IV:
【化4】
(式中、Bは、NaOH、KOH、LiOH、Ca(OH)、Mg(OH)、エルブミン、環状アミン、非環状アミン、エタノールアミン誘導体、芳香族アミン、脂肪族アミン、アミノ糖、及びアミノ酸からなる群から選択される)
で表される、THCの硫酸エステル塩である、請求項3に記載のカンナビノイド化合物。
【請求項8】
Bは、NaOH、KOH、LiOH、トリエタノールアミン、エルブミン、アルギニン、アンモニア、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、アニリン、4-アミノピリミジン、アフチルアミン、スルファニル酸、4-アミノ安息香酸、ピペラジン、モルホリン、アジリジン、アゼチジン、ジアゼチジン、イミダゾリン、ピラゾリジン、3-ピロリン、トリアゾール、イミダゾール、ピロリジン、ピペリジン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、チオモルホリンジオキシド、チアジン、ピロリジジン、アザインドール、アザインダゾール、プリン、ピラゾロピリミジン、キノリン、デカヒドロキノリン、及びアゾカンからなる群より選択される、請求項7に記載のカンナビノイド化合物。
【請求項9】
以下の式V:
【化5】
(式中、Bは、NaOH、KOH、LiOH、Ca(OH)、Mg(OH)、エルブミン、環状アミン、非環状アミン、エタノールアミン誘導体、芳香族アミン、脂肪族アミン、アミノ糖、及びアミノ酸からなる群から選択される)
で表されるCBDの硫酸エステル塩である、請求項3に記載のカンナビノイド化合物。
【請求項10】
Bは、NaOH、KOH、LiOH、トリエタノールアミン、エルブミン、アルギニン、アンモニア、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、アニリン、4-アミノピリミジン、アフチルアミン、スルファニル酸、4-アミノ安息香酸、ピペラジン、モルホリン、アジリジン、アゼチジン、ジアゼチジン、イミダゾリン、ピラゾリジン、3-ピロリン、トリアゾール、イミダゾール、ピロリジン、ピペリジン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、チオモルホリンジオキシド、チアジン、ピロリジジン、アザインドール、アザインダゾール、プリン、ピラゾロピリミジン、キノリン、デカヒドロキノリン、及びアゾカンからなる群から選択される、請求項9に記載のカンナビノイド化合物。
【請求項11】
以下の式V
【化6】
で表される、請求項10に記載のカンナビノイド化合物。
【請求項12】
以下の式V
【化7】
で表される、請求項10に記載のカンナビノイド化合物。
【請求項13】
以下の式V
【化8】
で表される、請求項10に記載のカンナビノイド化合物。
【請求項14】
以下の式V
【化9】
で表される、請求項10に記載のカンナビノイド化合物。
【請求項15】
以下の式V
【化10】
で表される、請求項10に記載のカンナビノイド化合物。
【請求項16】
以下の式V
【化11】
で表される、請求項10に記載のカンナビノイド化合物。
【請求項17】
以下の式V
【化12】
で表される、請求項10に記載のカンナビノイド化合物。
【請求項18】
以下の式V
【化13】
で表される、請求項10に記載のカンナビノイド化合物。
【請求項19】
以下の式V
【化14】
で表される、請求項10に記載のカンナビノイド化合物。
【請求項20】
以下の式V10
【化15】
で表される、請求項10に記載のカンナビノイド化合物。
【請求項21】
以下の式V11
【化16】
で表される、請求項10に記載のカンナビノイド化合物。
【請求項22】
以下の式V12
【化17】
で表される、請求項10に記載のカンナビノイド化合物。
【請求項23】
以下の式VI:
【化18】
(式中、Bは、NaOH、KOH、LiOH、Ca(OH)、Mg(OH)、エルブミン、環状アミン、非環状アミン、エタノールアミン誘導体、芳香族アミン、脂肪族アミン、アミノ糖、及びアミノ酸からなる群から選択される)
で表される、CBDの硫酸エステル塩である、請求項3に記載のカンナビノイド化合物。
【請求項24】
Bが、NaOH、KOH、LiOH、トリエタノールアミン、エルブミン、アルギニン、アンモニア、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、アニリン、4-アミノピリミジン、アフチルアミン、スルファニル酸、4-アミノ安息香酸、ピペラジン、モルホリン、アジリジン、アゼチジン、ジアゼチジン、イミダゾリン、ピラゾリジン、3-ピロリン、トリアゾール、イミダゾール、ピロリジン、ピペリジン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、チオモルホリンジオキシド、チアジン、ピロリジジン、アザインドール、アザインダゾール、プリン、ピラゾロピリミジン、キノリン、デカヒドロキノリン、及びアゾカンからなる群から選択される、請求項23に記載のカンナビノイド化合物。
【請求項25】
食品又は飲料における、請求項1~24のいずれか一項に記載のカンナビノイド化合物の使用。
【請求項26】
医薬製剤中の薬物又はプロドラッグとしての、請求項1~24のいずれか一項に記載のカンナビノイド化合物の使用。
【請求項27】
第2のカンナビノイド受容体に対する第1のカンナビノイド受容体のバイアスアゴニストとしての、請求項1~24のいずれか一項に記載のカンナビノイド化合物の使用。
【請求項28】
カンナビノイド化合物の製造方法であって、以下の:
a.少なくとも1つの水酸基があるカンナビノイドを適当な非プロトン性有機溶媒に溶解してカンナビノイド溶液を生成し;
b.アルカリ又は有機塩基の存在下で前記カンナビノイド溶液と硫酸塩転移試薬を反応させ;
c.通常の加熱、マイクロ波加熱、又は超音波照射下で反応を加熱して生成物を生成し;かつ、
d.フラッシュクロマトグラフィー、抽出、蒸留、昇華、又は結晶化を用いて前記生成物を精製する;
工程を含む、方法。
【請求項29】
非プロトン性有機溶媒は、ピリジン、トルエン、テトラヒドロフラン、ハロゲン化炭化水素、キシレン、及びヘキサンからなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
硫酸塩転移試薬は、保護され、かつ、遊離したクロロスルホン酸、保護され、かつ、遊離したスルホン酸、保護され、かつ、遊離した硫酸、三酸化硫黄、三酸化硫黄錯体、三酸化硫黄ピリジン、アルカリ金属二硫酸塩、スルホニルイミダゾリウム塩、/V-ヒドロキシスクシンイミド-硫酸塩及びトリブチルスルホアンモニウムベタインからなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
カンナビノイドは、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)、デルタ-8-テトラヒドロカンナビノール(THC)、カンナビジオール(CBD)、カンナビノジオール(CBND)、カンナビノール(CBN)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビシクロール(CBL)、カンナビバロール(CBV)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビクロメバリン(CBCV)、カンナビゲロールモノエチルエーテル(CBGM)、カンナビエルソイン(CBE)とカンナビトリオール(CBT)、及びそれらの誘導体、類似体、並びにそれらと関連する化学構造からなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
アルカリ又は有機塩基は、NaOH、KOH、LiOH、Ca(OH)、Mg(OH)、エルブミン、環状アミン、非環状アミン、エタノールアミン誘導体、芳香族アミン、脂肪族アミン、アミノ糖、及びアミノ酸からなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
工程b及びcは、大気圧以上の圧力で行われる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
反応は、カンナビノイドはCBD、アルカリ又は有機塩基はピリジン、生成物はCBD硫酸エステルのピリジン塩であり、圧力が5~20バールで、温度は65°C~90°Cで加熱され、反応時間が2~4時間で行われる、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
さらに、以下の
a.水と、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ピリジン、アセトン、THF、クロロホルムからなる群から選択された1つ以上の有機溶媒の水溶液に前記生成物を溶解し、生成物溶液を作製する;
b.第2のアルカリ又は有機塩基の存在下で前記生成物溶液を反応させて第2の生成物を生成する;かつ、
c.フラッシュクロマトグラフィー、抽出、蒸留、昇華又は結晶化を用いて前記第2の生成物を精製する;
工程を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
さらに、以下の
a.エタノール、メタノール、イソプロパノール、ピリジン、アセトン、THF、クロロホルムからなる群から選択された1つ以上の有機溶媒の非水溶液に前記生成物を溶解し、生成物溶液を製造する;
b.第2のアルカリ又は有機塩基の存在下で前記生成物溶液を反応させて第2の生成物を生成する;かつ、
c.フラッシュクロマトグラフィー、抽出、蒸留、昇華又は結晶化を用いて前記第2の生成物を精製する;
工程を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
カンナビノイド化合物の製造方法であって、少なくとも一つのヒドロキシル基があるカンナビノイドを、N-ヒドロキシスクシンイミド硫酸塩とアリールスルホトランスフェラーゼの存在下、8.5~9のpHで、少なくとも12時間の反応時間で反応させることを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、製薬化学の分野、特に、カンナビノイド硫酸エステル、それらの塩、及びヒト又は動物の被験体における疾患の症状を治療、緩和又は軽減するための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]内因性カンナビノイド系は、免疫調節だけでなく、神経可塑性と学習、感情と意欲、食欲、消化管運動を含む多くの重要な生理学的機能を仲介する。哺乳類で単離され、完全に特徴付けされているGタンパク質共役カンナビノイド受容体には少なくとも以下の2つのタイプ:a)CB1:中枢及び末梢に位置し、主に神経伝達物質のホメオスタシスに関与する;b)CB2:末梢に位置し、免疫系と結合する;がある。これらの受容体は、慢性疼痛、炎症、神経変性疾患、てんかん、依存症、不眠症、がん、肥満、食欲不振を含む様々な病態に対する有望な治療標的となる。これらの状態を管理するための特定のカンナビノイド配位子の設計は、近年ますます関心を集めている。
【0003】
[0003]カンナビノイド受容体は、いわゆるカンナビノイドと呼ばれる異形の化合物群によって調節される。これらは主に以下の3つの群:a)内因性又は内因性カンナビノイド(例:アラキドノイルエタノールアミド);b)大麻の有効成分である天然又は植物性のカンナビノイド(例えば、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)及びカンナビジオール(CBD));及びc)合成(例えばナビロン)に分類でき、それを以下の表1に示す。
表1:カンナビノイドの代表例
カンナビノイドクラスの例
【0004】
【表1】
[0004]カンナビノイドの臨床的有用性は、多くの病態の治療において実証されている。GW Pharmaceuticals社のSativex(登録商標)は、THCとCBDを1:1の比率で混合したバッカル噴霧剤であり、成人の多発性硬化症に伴う神経障害性疼痛及び痙縮の補助療法として多くの国で承認されている。Bausch Health社のCesamet(商標)(ナビロン)は、CB1受容体を介した相互作用により制吐薬として経口投与する合成カンナビノイドである。
【0005】
[0005]その臨床的な可能性にもかかわらず、C.Sativaから抽出された天然カンナビノイド(フィトカンナビノイド)は、親油性が高く(logP値は6~7)、水にやや溶けにくく(水溶性=23°Cで2~10pg/mL)、化学的に不安定であり(特に光、温度、自動酸化による溶液中で)、天然グミのように不安定な吸収、遅発性、広範な初回通過代謝、血漿蛋白結合の高さ、分布量の多さ、経口投与後の全身バイオアベイラビリティの低さを伴い、予測できない作用時間経過と長い半減期(tvi)をもたらす。加えて、燻製ハーブの臨床的有用性は短く、粘膜障害、重篤な有害作用、及び発がん性物質である副産物をもたらす。さらに、THCは血液脳関門(BBB)を通過して中枢CB1を活性化し、望ましくない向精神作用を惹起する。これを克服する試みとして、共溶媒性、錯化、界面活性剤、キャリア支援法を含む様々な製剤やドラッグデリバリーアプローチが開発されてきたが、これまでのところ成功は限られている。
【0006】
[0006]一方、いくつかの合成誘導体及びプロドラッグが報告されており、CB1及びCB2の調節に広く用いられている。例えば、特許文献1は、カンナビノイドプロドラッグ、及びそれらの製造、製剤及び用途を開示する。この参考文献は、有機酸とアミノ酸のエステル、例えばコハク酸とバリンのみを開示する。
【0007】
[0007]特許文献2は高結晶性アリールスルホン酸THCエステルを開示する。それらは、精製のために再結晶することができ、空気中では室温で安定であるため、加水分解時に純粋なTHCを無期限に貯蔵し、回収することができる。本参考文献は、これらのエステルの薬理作用や臨床的有用性を開示していない。
【0008】
[0008]非特許文献1は、デルタ-8-THCグルクロニドと硫酸エステルの化学合成を報告し、ラットにおけるそれらの加水分解、急性毒性及び代謝性を研究した。しかしながら、これらのエステルのいずれについても薬理学的又は生物学的有用性は記載されていない。
【0009】
[0009]非特許文献2は、アナンダミドの水溶性リン酸エステルプロドラッグの合成を報告した。リン酸官能基により、親エンドカンナビノイドの水溶性は、pH7.4で>16500倍以上に高まり、かつ、正常血圧のウサギの眼圧は低下した。この研究では、臨床的に有用なフィトカンナビノイドは調査されておらず、このアナンダミドのリン酸エステル又はその塩の他の薬理作用や臨床適用は報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2017/216362号
【特許文献2】国際公開第2004/043946号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Watanabe et al(Chem Pharm Bull 27:3009-3014,1979)
【非特許文献2】Juntunen et al(Eur.J.Pharm.Sci.19,37-43,2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
[0010]先行技術の限界を最小化するために、特定の臨床応用のために最適化された物理化学的、薬物動態学的(PK)及び薬力学的(PD)特性がある新しいカンナビノイド誘導体が望まれてきた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
[0011] 本発明によるカンナビノイド化合物は、カンナビノイドとその塩の難分解性硫酸エステルである。当該エステルは動物やヒトの体内での酵素的又は化学的加水分解に敏感であり、親カンナビノイドを放出し、それによってエンドカンナビノイド系を調節する。
【0014】
[0012] 一実施形態では、カンナビノイド化合物は、カンナビノイドの硫酸エステル又はヘミ硫酸エステル、及び無機塩基又は有機塩基とのそれらの塩である。
【0015】
[0013] 他の実施形態では、無機塩基又は有機塩基は、NaOH、KOH、LiOH、Ca(OH)、Mg(OH)、エルブミン、環状アミン、非環状アミン、エタノールアミン誘導体、芳香族アミン、脂肪族アミン、アミノ糖、及びアミノ酸からなる群から選択される。
【0016】
[0014] 他の実施形態では、カンナビノイド化合物は、以下の式I:
【0017】
【化1】
(式中、Rは、H、第2のカンナビノイド、相乗的化合物、非相乗的活性化合物、及び不活性側基からなる群から選択される)
で表される、THCの硫酸エステル又はヘミ硫酸エステルである。
【0018】
[0015] 他の実施形態では、カンナビノイド化合物は、以下の一般式II:
【0019】
【化2】
(式中、Rは、H、第2のカンナビノイド、第2の活性化合物、及び不活性側基からなる群から選択される)
及び以下の式III:
【0020】
【化3】
(式中、Rは、H、第2のカンナビノイド、第2の活性化合物、及び不活性側基からなる群から選択される)
で表されるCBDの硫酸エステル又はヘミ硫酸エステルである。
【0021】
[0016] 他の実施形態では、2番目のカンナビノイドには、ヒドロキシル、アミノ、又はフェノールの官能基がある。2番目のカンナビノイドは、THC、CBD、カンナビノジオール(CBND)、カンナビノール(CBN)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビシクロール(CBL)、カンナビバロール(CBV)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビクロメバリン(CBCV)、カンナビゲロールモノエチルエーテル(CBGM)、カンナビエルソイン(CBE)とカンナビトリオール(CBT)、及びそれらの誘導体、類似体、並びにそれらと関連する化学構造からなる群から選択される。
【0022】
[0017] 他の実施形態では、2番目の活性化合物には、ヒドロキシル、アミノ、又はフェノールの官能基がある。第2の活性化合物は、アセトアミノフェン、イブプロフェン、モルヒネ、カフェ酸、L-DOPA、クマリン酸、ケルセチン、フラボノイド、サリチル酸、チモール、オイゲノール、エンタカポン、トルカポン、エストロゲン、アンドロゲン、及びコルチコステロイドからなる群から選択することができる。
[0018] 他の実施形態では、カンナビノイド化合物は、以下の式IV:
【0023】
【化4】
(式中、Bは、NaOH、KOH、LiOH、Ca(OH)、Mg(OH)、エルブミン、環状アミン、非環状アミン、エタノールアミン誘導体、芳香族アミン、脂肪族アミン、アミノ糖、及びアミノ酸からなる群から選択される)
で表される、THCの硫酸エステル塩である。
[0019] 他の実施形態では、カンナビノイド化合物は、以下の式V:
【0024】
【化5】
(式中、Bは、NaOH、KOH、LiOH、Ca(OH)、Mg(OH)、エルブミン、環状アミン、非環状アミン、エタノールアミン誘導体、芳香族アミン、脂肪族アミン、アミノ糖、及びアミノ酸からなる群から選択される)及び、以下の式VI:
【0025】
【化6】
(式中、Bは、NaOH、KOH、LiOH、Ca(OH)、Mg(OH)、エルブミン、環状アミン、非環状アミン、エタノールアミン誘導体、芳香族アミン、脂肪族アミン、アミノ糖、及びアミノ酸からなる群から選択される)
で表される、CBDの硫酸エステル塩である。
【0026】
[0020] 本発明によるカンナビノイド化合物の特定の実施形態は、改善された安定性、より高い溶解性、化学的安定性及び最適なPK及び/又はPD特性を含む1つ以上の望ましい特徴を示すことができる。
【0027】
[0021] 本発明による水溶性カンナビノイド硫酸エステルは、食品、飲料、及び医薬製剤で用いることができる。エステルは、ヘミエステル、フルエステル又は塩であってよい。
【0028】
[0022] 他の実施形態では、カンナビノイド硫酸エステルは水溶性塩の形である。塩はアルカリ金属又は有機塩基であってよい。
【0029】
[0023] 本発明の他の実施形態は、合成又は半合成法によるカンナビノイド化合物の製造方法である。当該方法には、以下の:
a.少なくとも1つの水酸基があるカンナビノイドを適当な非プロトン性有機溶媒に溶解させる;
b.アルカリ又は有機塩基の存在下で前記カンナビノイド溶液と硫酸塩転移試薬を反応させる;
c.通常の加熱、マイクロ波加熱、又は超音波照射下で反応を加熱して生成物を生成し;かつ、
d.フラッシュクロマトグラフィー、抽出、蒸留、昇華又は結晶化を用いて前記生成物を精製する;
工程を含む。
[0024] 他の実施形態では、非プロトン性有機溶媒は、ピリジン、トルエン、テトラヒドロフラン、ハロゲン化炭化水素、キシレン、及びヘキサンからなる群から選択される。
【0030】
[0025] 他の実施形態では、硫酸塩転移試薬は、保護され、かつ、遊離したクロロスルホン酸、保護され、かつ、遊離したスルホン酸、保護され、かつ、遊離した硫酸、三酸化硫黄、三酸化硫黄錯体、三酸化硫黄ピリジン、アルカリ金属二硫酸塩、スルホニルイミダゾリウム塩、/V-ヒドロキシスクシンイミド-硫酸塩及びトリブチルスルホアンモニウムベタインからなる群から選択される。
【0031】
[0026] 他の実施形態では、定量的収率(90-99%)及び分析純度(95-98%)で目的の硫酸塩を得るための、以下の式VII:
【0032】
【化7】
に示す方法に従ってCBD硫酸エステルのピリジン塩を製造することができる。温度は65~90°C、圧力は5~20バール、反応時間はピリジン中で2~4時間である。
【0033】
[0027] 他の実施形態では、以下の式VIII:
【0034】
【化8】
に示す方法に従って、様々な塩及び形態のCBD硫酸エステルを製造することができる。ピリジンカウンターイオンは、水溶液中では1.2当量の選択塩基で撹拌すると非晶質粉末として、非水溶液中では結晶性化合物として、定量的収率(95-99%)及び分析純度(95-98%)において他の選択塩基で置換することができる。
【0035】
[0028] 他の実施形態では、THC硫酸エステルのモルホリン塩は、以下の式IX:
【0036】
【化9】
に示す方法に従って製造することができる。
【0037】
[0029] 他の実施形態では、THC硫酸エステルのピペラジン塩は、以下の式X:
【0038】
【化10】
に示す方法に従って製造することができる。
【0039】
[0030] 他の実施形態は、以下の式XI:
【0040】
【化11】
に示される方法に従って、微生物、合成生物学及び大麻種の遺伝子操作を含む酵素的方法によってカンナビノイド硫酸エステルを製造する方法に関する。
【0041】
[0031] 特定の実施形態では、カンナビノイド硫酸エステルは、末梢組織及び中心組織のいずれか又は両方に作用する。
【0042】
[0032] 他の実施形態では、カンナビノイド硫酸エステルは末梢で制限されており、THCの中心的な精神活性特性がない。
【0043】
[0033] 他の実施形態では、カンナビノイド硫酸エステルは、疼痛及び炎症、がん、緑内障、神経変性疾患、多発性硬化症、腎線維症、線維症、依存症、及びカンナビノイド受容体調節に応答するか、又は1つ以上のカンナビノイドの投与によって治療可能であることが知られている、運動機能障害及び消化管及び代謝障害を含むその他の状態を管理するために用いられうる。
【0044】
[0034] 他の実施形態では、カンナビノイド硫酸エステルは、ヒトと動物への適用に用いることができる。
【0045】
[0035] ある実施形態では、カンナビノイド硫酸エステルは経口送達系に特に有用である。さらに、局所、鼻腔内、眼又は非経口投与系用に製剤化されてよい。
【0046】
[0036] 他の実施形態では、カンナビノイド硫酸エステルとしては、個々のヘミエステル、フルエステル、塩又はそれらの混合物のいずれかとして、可能なすべての(立体又は構造)異性体があげられる。
【0047】
[0037] 他の実施形態では、本発明によるカンナビノイド硫酸エステルの医薬製剤は、他のカンナビノイド、フィトケミカル、鎮痛剤及び抗炎症剤を含む他の相乗成分を含むことができる。
【発明の効果】
【0048】
[0038]他のカンナビノイドと比較した場合、本発明は、より優れた安定性、溶解性及び味、効率的な吸収及び分布、並びに効果的な疾患制御及び治療効果をもたらす可能性のある効能を備えるが、これらに限定されない、PK及びPDプロフェードが改良されたカンナビノイド化合物を開示する。
【発明を実施するための形態】
【0049】
[0039] 本開示は、カンナビノイド化合物、特に、カンナビノイド薬物又はプロドラッグとして作用しうるカンナビノイド硫酸エステル、カンナビノイド硫酸エステルの製造方法、これらの化合物の食品、飲料、及び医薬製剤、カンナビノイド硫酸エステルを患者に投与することによるCB1及びCB2活性の調節方法、ならびにカンナビノイド硫酸エステルを患者に投与することによる疼痛、炎症、神経変性疾患、がん、腎線維症、てんかん及び他の運動機能障害、肥満及び他の代謝性疾患、依存症、睡眠障害、不安、多発性硬化症、食欲不振及び他の状態を治療する方法に関する。
【0050】
[0040] 本発明によるカンナビノイド硫酸エステル、又はそれらの活性代謝物は、CB1又はCB2のいずれか又は両方のリガンドとして作用するか、又は非受容体介在機構を介してその作用を発揮することができる。本発明の特定の例示的な実施形態の固有の薬物動態力学により、いくつかの実施形態は、被験体におけるCB1、CB2、又は他のいずれかのエンドカンナビノイド受容体等の第2のカンナビノイド受容体よりも第1のカンナビノイド受容体に選択的に結合するためのバイアスモジュレーター(アゴニスト、アンタゴニスト、パーシャルアゴニスト、インバースアゴニスト等)として用いることができる。また、COX酵素、脂肪酸アミドヒドロラーゼ(FAAH)、一過性受容体電位カチオンチャンネルサブファミリーV(TrpV)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体、推定上の異常カンナビジオール受容体、イオンチャネル、リガンドゲートイオンチャネル、及び、これらに限定されない、いかなる他の標的や受容体を調節してよいその他のGタンパク質共役受容体等を含んでよい。
[0041] 用語「エステル」は、ありうるすべてのヘミエステル、完全なエステル、塩及び異性体を含み、これらには、立体異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー、互変異性体、及びそれらのいかなるの比率による混合物が含まれる。好ましくは、エステルはヘミエステル又は塩である好ましくは、純粋な化合物の塩である。
【0051】
[0042] 用語「カンナビノイド」は、少なくとも1つのヒドロキシル基を持つカンナビノイドに関連する。内因性、合成又は天然のカンナビノイド及び以下の:デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)、デルタ-8-テトラヒドロカンナビノール(THC)、カンナビジオール(CBD)、カンナビノジオール(CBND)、カンナビノール(CBN)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビシクロール(CBL)、カンナビバロール(CBV)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビクロメバリン(CBCV)、カンナビゲロールモノエチルエーテル(CBGM)、カンナビエルソイン(CBE)とカンナビトリオール(CBT)、及びそれらの化合物の誘導体及び類似体があげられる。
【0052】
[0043] 用語「ヒドロキシル」基は、アルコール性又はフェノール性のOH又はそれらの異性体(isostere)(例:SH又はNH)に関連する。
【0053】
[0044] 用語「塩」は、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、又はマグネシウム塩を含むアルカリ金属塩をいう。用語「塩」はまた、pKaが3を超える有機塩基の塩をいい、これには、環状又は非環状アミン(例えばトリメチルアミン、エルブミン)、エタノールアミン誘導体(トリエタノールアミン)、塩基性アミノ酸(例えばアルギニン、リジン)、アミノ糖(例えばグルコサミン)、芳香族又は脂肪族アミン(例:アニリン、4-アミノピリミジン)又はその他の環状窒素化合物(例:アジリジン、アゼチジン、ジアゼチジン、イミダゾリン、ピラゾリジン、3-ピロリン、トリアゾール、イミダゾール、ピロリジン、ピペリジン、ピリジン、ピペラジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、モルホリン、二酸化チオモルホリン、チアジン、ピロリジジン、アザインドール、アザインダゾール、プリン、ピラゾロピリミジン、キノリン、デカヒドロキノリン、アゾカン)があげられる。
[0045] 用語「プロドラッグ」は、ヒト体内で活性化が必要でありうる標的化合物のエステルを含むことを意図する。エステルは活性(等価又はより強力)化合物又は不活性化合物である。活性であることが望ましい。ヒト又は動物に投与すると、酵素的又は化学的に活性化されて遊離薬物が放出される。
[0046] 本開示における用語「医薬製剤」は、他の生理学的に許容される担体及び賦形剤と共に、本開示の化合物の1つ以上の混合物、又はその薬学的に許容される塩、又はその他の相乗効果を呈する化合物をいう。医薬製剤(例えば、固体又は液体の剤形)の目的は、対象となる動物又はヒトへの化合物の投与を容易にすることである。
【0054】
[0047] 本開示における用語「被験体」は、ヒトの患者をいうが、ヒトに限定されず、動物を含むことができる。
【0055】
[0048] 好ましい実施形態では、本発明のカンナビノイド硫酸エステルは、例えば、以下の式V:
【0056】
【化12】
で表され、好ましくは、カリウム塩又はナトリウム塩の形である。より好ましくは、ナトリウム塩の形である。あるいは、カンナビノイド硫酸エステルは、モルホリン又はピペラジン又はトリエタノールアミン又はエルブミンの塩の形であり、好ましくは、ピペラジン又はトリエタノールアミンの塩である。
【0057】
【表2】
[0049] 式I~IIIの側基Rは、H、他のカンナビノイド、他の有効成分、又は不活性基であってもよい。他のカンナビノイドはTHC又はCBDが望ましいが、ヒドロキシル基、アミノ基又はフェノール基を有する他のカンナビノイドであってもよい。適当なカンナビノイドの例としては、カンナビノジオール(CBND)、カンナビノール(CBN)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビシクロール(CBL)、カンナビバロール(CBV)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビクロメバリン(CBCV)、カンナビゲロールモノエチルエーテル(CBGM)、カンナビエルソイン(CBE)とカンナビトリオール(CBT)、及びそれらの誘導体、類似体があげられる。他の有効成分としては、好ましくは、アセトアミノフェンやイブプロフェンであるが、少なくとも1つのヒドロキシル基、アミノ基、又はフェノール基があるオピオイドやその他の薬物が含まれてよい。不活性基は好ましくはHであるが、メチル基、エチル基、又は他の非環状飽和炭化水素基(すなわちC2n+1)、アリール基又は他の環式飽和炭化水素基(すなわちC2n-1)、又はそれらの異性体や類似体であってよい。
【0058】
[0050] 式IV~VIのBで表される側基は、アルカリ金属、環状アミン、非環状アミン、芳香族アミン、脂肪族アミン、アミノ酸、又はアミノ糖であってよい。アルカリ金属はNaが好ましいが、K、Li、Ca、Mgであってよい。非環状アミンはトリエタノールアミン、エルブミン、アルギニン又はリジンが好ましいが、アンモニア、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、及び第一級、第二級、第三級を含む他の関連アミン及び誘導体であってもよい。芳香族アミンはアニリン又は4-アミノピリミジンが好ましいが、ナフチルアミン、スルファニル酸、4-アミノ安息香酸、及びその他の関連するアミン、類似体、及び誘導体であってもよい。側鎖は、ピペラジン又はモルホリンであることが望ましいが、アジリジン、アゼチジン、ジアゼチジン、イミダゾリン、ピラゾリジン、3-ピロリン、トリアゾール、イミダゾール、ピロリジン、ピペリジン、ピリジン、ピペラジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、モルホリン、二酸化チオモルホリン、チアジン、ピロリジジン、アザインドール、アザインダゾール、プリン、ピラゾロピリミジン、キノリン、デカヒドロキノリン、アゾカン、又はそれらの誘導体、類似体、異性体であってよい。
【0059】
[0051] カンナビノイド硫酸エステルは、合成、半合成、微生物、酵素及び合成生物学的方法、並びにカンナビス属の遺伝子操作によって調製することができる。好ましくは、それらは、少なくとも1つのヒドロキシル基があるいかなるカンナビノイドから、式VII及びXIに記載の反応に従って調製することができる。好ましくは、カンナビノイドはTHC又はCBDであり、ヒドロキシル基はフェノール性OHである。反応条件を変更することにより、他の誘導体及び類似体を製造することができる。
【0060】
[0052] カンナビノイド硫酸エステル又はその薬学的に許容される塩、及び1つ以上の薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む医薬製剤を調製することができる。経口及び口腔粘膜への適用には、製剤は固体又は液体の剤形が望ましい。
【0061】
[0053] カンナビノイド硫酸エステルの特定の例示的な実施形態の薬物動態プロファイルは、対応する親カンナビノイドよりも好ましい。例えば、特定の代表的なカンナビノイド硫酸塩のCmax(最大血漿濃度)は、親カンナビノイドよりも5倍高かった。その結果、製剤は親カンナビノイドと比較して、これらのカンナビノイド硫酸エステル塩の有効用量が低い可能性がある。さらに、代表的なカンナビノイド硫酸エステル塩は、親カンナビノイドよりも変動吸収が少ない。特定の代表的なカンナビノイド硫酸エステルの半減期(T1/2)、最大血漿濃度(Cmax)、Cmaxに達するまでの時間max)を含むPKプロファイルをCBDと比較して下表に示す。
【0062】
【表3】
[0054] シミュレートされた胃及び腸内培地下での硫酸エステル塩の特定の例示的な実施形態の酵素的及び化学的安定性は、対応する親カンナビノイドよりも好ましい。例えば、CBDは、シミュレートされた胃及び腸内培地下で、短時間で放出される(10~30分以内に5%~20%が放出される)。代表的なカンナビノイド硫酸エステル塩も、対応する親カンナビノイドと比較して好ましい毒性プロファイルを示す。さらに特定の代表的なカンナビノイド硫酸エステル塩は、親カンナビノイドよりも5000倍から3万倍高い水溶性を示す。
【0063】
[0055] 製剤はまた、有効成分に加えて相乗的成分を含むことがあり、有効成分としては以下:デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)、デルタ-8-テトラヒドロカンナビノール(THC)、カンナビジオール(CBD)、カンナビノジオール(CBND)、カンナビノール(CBN)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビシクロール(CBL)、カンナビバロール(CBV)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビクロメバリン(CBCV)、カンナビゲロールモノエチルエーテル(CBGM)、カンナビエルソイン(CBE)とカンナビトリオール(CBT)、ボスウェリア属(Boswellia sp.Boswellia carterii及びBoswellia serrataを含む)、ショウガ、カプサイシン、カンファー、ケルセチン、エラグ酸、クルクミン、及びレスベラトロールなどのポリフェノール、フィトステロール、マンノース-6-リン酸等の炭水化物、チモール、及びカルバクロール等の精油、スクアレン、リコピン、/>シメン、リナロール等のテルペノイド及びそれらの誘導体、類似体、又は混合物又はそれらの組み合わせがあげられる。医薬製剤は、好ましくは、選択されたカンナビノイド硫酸エステル化合物である1つの医薬成分のみを含む。
【0064】
[0056] 本発明に従って設計された化合物は、口腔粘膜経路、経鼻、経口、眼科的経路、経皮及び非経口経路によって送達することができる。好ましくは、経口送達である。
【0065】
[0057] 本発明によるカンナビノイド硫酸エステルは、食品、飲料、及び医薬製剤を含む様々な用途に用いることができる。好ましくは、炎症や疼痛、カンナビノイド受容体の調節に反応するその他の関連疾患の治療に用いることができる。いくつかの他の関連する類似体と比較して、これらの硫酸エステルの塩の好ましい実施形態は、安定性がより高く、水溶性であり、吸収性が改善され、薬物動態学的及び薬力学的プロフェードが最適化されている。これらは炎症、痛み、及び関連する状態の治療に有用であり、症状を迅速に緩和し、患者に長期的な緩和をもたらす。
【実施例1】
【0066】
CBD硫酸エステルのピリジン塩の調製
[0058] ゴムキャップ、テフロン(登録商標)セプタム及び撹拌棒を備えた反応管に、カンナビジオール(CBD)(1.58g、5mmol、1当量)、PyS03(97%)(0.96g、6mmol、1.2当量)と3mLの乾燥ピリジンを充填する。反応管にアルゴンガスを流し、アントンパール社製Monowave 50(登録商標)で5~20バールの圧力下、70°Cで4時間加熱する。室温まで冷却した後、ピリジンを減圧(100mバール)、50°Cで蒸発させ、目的の生成物を粘性油(2.36g、定量収量)として得た。場合によっては、この生成物を精製せずに、以下の実施例2の方法で直接用いることもできる。他の溶媒(ジクロロメタンやテトラヒドロフラン等)、室温、大気圧を利用した場合、収率は低かった(<50%)。より高温(>100°C)で用いると、分解が観察された。
ピリジン-1-イウム(1,R,2,R)-6-ヒドロキシ-5’-メチル-4-ペンチル-2,-(プロプ-1-エン-2-イル)-1’、2’、3’、4’-テトラヒドロ-[1,1’-ビフェニル]-2-イル硫酸塩:
【0067】
【化13】
【実施例2】
【0068】
対イオン交換の一般手順
[0059] 場合によっては、上記の実施例1の方法による生成物のピリジン対イオンを、以下の方法により、定量的収率(95~99%)及び分析純度(95~98%)の他の選択された塩基の1.2当量の水溶液中で攪拌すると、当該選択塩基の非晶質粉末として置換することができる。水溶液は、エタノール:水、メタノール:水、ピリジン:水、及び/又はイソプロパノール:水の1:1混合物であってよい。あるいは、アセトン、THF、クロロホルム等の他の有機溶媒と水を混合してよい。対イオン交換反応を非水溶液中(例えば、絶対エタノール又はメタノール、又は乾燥ピリジン)で行うと、目的の硫酸塩は、結晶形で得られた。塩基はNaOH、KOH、LiOH、Ca(OH)、Mg(OH)、環状又は非環状アミン(例えばトリメチルアミン、エルブミン)、エタノールアミン誘導体(例えば、トリエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン)、芳香族又は脂肪族アミン(例えば、アニリン、4-アミノピリミジン)、アミノ酸又はアミノ糖、又は他の環状窒素化合物(例:アジリジン、アゼチジン、ジアゼチジン、イミダゾリン、ピラゾリジン、3-ピロリン、トリアゾール、イミダゾール、ピロリジン、ピペリジン、ピリジン、ピペラジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、モルホリン、チオモルホリンジオキシド、チアジン、ピロリジジン、アザインドール、アザインダゾール、プリン、ピラゾロピリミジン、キノリン、デカヒドロキノリン、アゾカン)から選択することができる。特定の例示的な実施形態では、結晶形で生成された生成物は水に不溶であるが、非晶形の生成物は親カンナビノイドよりも水に溶けやすい。
[0060] ポリエチレン製プラグと撹拌棒を備えた反応管に、ピリジニウムCBD硫酸塩、好ましくは実施例1の方法で調製したピリジニウムCBD硫酸塩(0.47g、1mmol、1当量)、選択された塩基(1.2mmol、1.2当量)及び5mLのH20又はエタノール又はH20:エタノール溶液(1:1)を充填する。この反応を室温で2~4時間撹拌して乳白色のエマルジョンを生成し、これを-80°Cに冷却した後、溶媒を、好ましくはFreeZone(登録商標2.5リットルベンチトップフリーズを用いて凍結乾燥し、さらなる精製の必要なく、目的の生成物を非晶質粉末として定量的に得る。以下の例示的なCBD硫酸エステル塩は、溶液中のピリジニウムCBD硫酸塩と混合する適切な塩基を選択することによって、実施例2の方法に従って製造することができる。
モルホリン-4-イウム(1’R,2’R)-6-ヒドロキシオキシ-5’-メチル-4-ペンチル-2’-(プロプ-1-エン-2-イル)-1’、2’、3’、4’-テトラヒドロ-[1,1’-ビフェニル]-2-イル硫酸塩:
【0069】
【化14】
ピペラジン-1-イウム(1’R,2’R)-6-ヒドロキシオキシ-5’-メチル-4-ペンチル-2’-(プロプ-1-エン-2-イル)-1’、2’、3’、4’-テトラヒドロ-[1,1’-ビフェニル]-2-イル硫酸塩:
【0070】
【化15】
ピペリジン-1-イウム(1’R,2’R)-6-ヒドロキシオキシ-5’-メチル-4-ペンチル-2’-(プロプ-1-エン-2-イル)-1’、2’、3’、4’-テトラヒドロ-[1,1’-ビフェニル]-2-イル硫酸塩:
【0071】
【化16】
2-ヒドロキシエタン-1-アミニウム(1’R,2’R)-6-ヒドロキシオキシ-5’-メチル-4-ペンチル-2’-(プロプ-1-エン-2-イル)-1’、2’、3’、4’-テトラヒドロ-[1,1’-ビフェニル]-2-イル硫酸塩:
【0072】
【化17】
トリス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム(1’R,2’R)-6-ヒドロキシオキシ-5’-メチル-4-ペンチル-2’-(プロプ-1-エン-2-イル)-1’、2’、3’、4’-テトラヒドロ-[1,1’-ビフェニル]-2-イル硫酸塩:
【0073】
【化18】
N,N-ジエチル-2-ヒドロキシエタン-1-アミニウム(1’R,2’R)-6-ヒドロキシオキシ-5’-メチル-4-ペンチル-2’-(プロプ-1-エン-2-イル)-1’、2’、3’、4’-テトラヒドロ-[1,1’-ビフェニル]-2-イル硫酸塩:
【0074】
【化19】
トリエチルアンモニウム(1’R,2’R)-6-ヒドロキシオキシ-5’-メチル-4-ペンチル-2’-(プロプ-1-エン-2-イル)-1’、2’、3’、4’-テトラヒドロ-[1,1’-ビフェニル]-2-イル硫酸塩:
【0075】
【化20】
ナトリウム(1’R,2’R)-6-ヒドロキシオキシ-5’-メチル-4-ペンチル-2’-(プロプ-1-エン-2-イル)-1’、2’、3’、4’-テトラヒドロ-[1,1’-ビフェニル]-2-イル硫酸塩:
【0076】
【化21】
【実施例3】
【0077】
THC硫酸エステルのモルホリン塩の調製
[0061] 2mL乾燥トルエン中のクロロスルホン酸(582mg、5mmol)及びデルタ-9-THC(314.5mg、1mmol)の撹拌溶液(室温で20分間)に1mLドライモルホリンを加え、70°Cに加熱して反応が完了するまで撹拌する(1時間)。得られた沈殿物をMeOH水溶液(1:1)からろ過して再結晶すると、300mgのデルタ-9-THC硫酸モルホリン塩が得られる。
【実施例4】
【0078】
THC硫酸エステルのピペラジン塩の調製
[0062] 2mL乾燥トルエン中のクロロスルホン酸(582mg、5mmol)及びデルタ-9-THC(314.5mg、1mmol)の撹拌溶液(室温で20分間)に1mLドライピペラジンを加え、70°Cに加熱して反応が完了するまで撹拌する(1時間)。得られた沈殿物をMeOH水溶液(1:1)からろ過して再結晶すると、300mgのデルタ-9-THC硫酸ピペラジン塩が得られる。
【実施例5】
【0079】
酵素条件下でのTHCヘミ硫酸エステルの調製
[0063] THC(0.027g、0.088mmol)を600pLアセトンに溶かし、5mLトリスグリシン(100mM、pH9)を加える。乳液に12U/mlのアリールスルホトランスフェラーゼ(AST)を500pL添加する。得られた溶液(1unit/ml、AST 1.6pM、THC 15mM)を攪拌し、/V-ヒドロキシスクシンイミド硫酸ナトリウム塩(0.021g、0.1mmol)を添加する。添加は1時間おきに3回繰り返す。4時間後、酢酸を添加してpH6とし、反応液を蒸発乾固させる。残留物を15mLのメタノールに溶かし、5gのシリカゲルを加える。再び蒸発乾固し、シリカゲルをシリカカラムに流し込み、アセトニトリル(0.5%酢酸/5%~10%メタノール)で溶出させる。まずN-ヒドロキシスクシンイミドが最初に溶出し、その後THCヘミ硫酸塩が純塩として溶出する(0.03g、単離収率95%)。
[0064] 本発明は、例示的な実施形態を参照して説明され、例示される;しかしながら、以下の請求項に記載されているように、本発明の範囲を逸脱することなく、様々な変更を加えることができ、均等物をその要素に置換できることを、当業者は理解するであろう。したがって、本発明は、ここに開示された実施形態に限定されないことを意図する。
【国際調査報告】