(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-27
(54)【発明の名称】差動デュアル検出器による温度検出
(51)【国際特許分類】
G01J 5/24 20060101AFI20230317BHJP
G01J 5/20 20060101ALI20230317BHJP
G01J 5/0802 20220101ALI20230317BHJP
G01J 1/42 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
G01J5/24
G01J5/20
G01J5/0802
G01J1/42 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022548154
(86)(22)【出願日】2021-02-05
(85)【翻訳文提出日】2022-10-07
(86)【国際出願番号】 EP2021052783
(87)【国際公開番号】W WO2021156428
(87)【国際公開日】2021-08-12
(32)【優先日】2020-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517267802
【氏名又は名称】トリナミクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】グエン,セラル モハン
(72)【発明者】
【氏名】グスト,ロベルト
【テーマコード(参考)】
2G065
2G066
【Fターム(参考)】
2G065AA04
2G065AB02
2G065AB03
2G065AB04
2G065AB05
2G065AB09
2G065AB26
2G065BA12
2G065BC01
2G065BC05
2G065BC28
2G065BC35
2G066BA09
2G066BC11
(57)【要約】
4つの相互接続された抵抗器(102,103,104,105)からなるセンサシステム(100)であって、前記抵抗器の2つ(104、105)は、光導電検出器であり、前記光導電検出器は、少なくとも2つの異なる波長で光によって照射され、2つの抵抗器(102、103)は、照射によってそれらの抵抗を変えず、外部電圧が前記センサシステム(110)に適用可能であり、差動電圧が測定され、前記差動電圧は照射された光導電抵抗器の抵抗の変化に依存し、前記差動電圧は、前記4つのそれぞれの抵抗(102,103,104,105)の数学的比率を与える、センサシステム(100)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4つの相互接続された抵抗器(102,103,104,105)からなるセンサシステムであって、前記抵抗器の少なくとも2つ(104、105)は、それぞれの感光領域の照射に依存して電気抵抗をそれぞれ示すように構成された光導電検出器であり、前記光導電検出器の少なくとも2つは、それぞれ異なる波長の電磁エネルギーに応答し、他の2つの抵抗器(102、103)は、それぞれ照射下で実質的に一定の電気抵抗を示すように構成され、外部電圧が、前記センサシステム(110)に適用可能であり、前記センサシステム(110)は、差動電圧を測定するように構成され、前記差動電圧は、前記光導電検出器の電気抵抗の変化に依存し、前記差動電圧は、前記4つのそれぞれの抵抗(102,103,104,105)の数学的比率を示す、センサシステム。
【請求項2】
前記照射下で実質的に一定の電気抵抗を示す抵抗器は、カバーによって暗くされた光導電検出器である、請求項1に記載のセンサシステム(110)。
【請求項3】
前記照射下で実質的に一定の抵抗器はサーミスタであり、温度の関数としてのそれらの抵抗の変化は、前記光導電検出器の特性と同じ特性を有している、請求項1又は2に記載のセンサシステム(110)。
【請求項4】
前記光導電検出器は、異なる波長での光の用意のために、フィルタ要素によって覆われている、請求項1~3のいずれか1項に記載のセンサシステム(110)。
【請求項5】
前記抵抗器は、ブリッジ回路構成によって相互接続されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のセンサシステム(110)。
【請求項6】
前記センサシステム(110)は、測定物体の直接の見通し線内にあり、フィルタは、見通し線内にある電磁放射の波長範囲内にあるように構成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載のセンサシステム(110)。
【請求項7】
前記センサシステム(110)と前記測定物体は、分離物体によって分離されており、前記分離物体は、前記少なくとも2つの波長において、少なくとも部分的に透明であり、前記フィルタは、前記分離物体を透過する前記電磁放射の波長範囲内にあるように構成されている、請求項6に記載のセンサシステム(110)。
【請求項8】
前記4つの光導電抵抗器(102、103、104、105)は、互いに隣接するアレイに配置されている、請求項1~7のいずれか1項に記載のセンサシステム(110)。
【請求項9】
温度測定のためのセンサとしての、請求項1~8のいずれか1項に記載のセンサシステム(110)の使用。
【請求項10】
気体及び/又は液体分析のためのセンサとしての、センサシステム(110)を参照する請求項1~8のいずれか1項に記載のセンサシステム(110)の使用。
【請求項11】
気体及び/又は液体、又は、複数の気体及び/もしくは液体の濃度のためのセンサとしての、センサシステム(110)を参照する請求項1~8のいずれか1項に記載のセンサシステム(110)の使用。
【請求項12】
事前に定義された材料クラス間の材料分類のためのセンサとしての、センサシステム(110)を参照する請求項1~8のいずれか1項に記載のセンサシステム(110)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の光導電体(光抵抗検出器としても知られる)の変化する抵抗の差動測定をするための電子読み出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光導電体は、測定された物理量に応じて電気出力を生成するために、外部の励起信号を必要とするセンサである。光導電体の場合、この物理量は照射である。最も一般的には、励起信号として電圧VBiasが光導電体に印加される。
【0003】
特定のフィルタを用いることにより、光導電体は、測定される物体によって放出される熱放射の一部から温度を推定することによって赤外線温度計として使用されることができる。
【0004】
測定対象の放射率を知ることなく温度を決定できる二波長赤外線測定(Dual-wave IR measurement)は、既知のアプローチであり、様々な産業での適用が文献に記載されている。
【0005】
論文Sensing Systems for Glass Ceramic Cooktops;Joseph Paradiso,Lance Borque,Philip Bramson,Mat Laibowitz,Hong Ma,Mat Malinowski著、Responsive Environments Group MIT Media Lab編(2003年7月18日)は、Schotts社のセラミックガラスクックトップで使用される計測システムの概要を示している。多くの感光材料、電気回路、及び測定方法がすでに実行されている。(https://resenv.media.mit.edu/pubs/papers/Sensing%20Systems%20forCooktop1.pdf)。
【0006】
米国消費者製品安全委員会は、2002年にガラスセラミッククックトップの温度測定について議論しなければならなかった。その覚書はhttps://www.cpsc.gov/s3fs-public/pdfs/ceramic.PDFに掲載されている。
【0007】
MEMS技術に基づく強化された多波長センサも市販されている。
【0008】
光検出器の出力は、適切な信号処理回路で記録され、その後、アナログデジタルコンバータによって処理される。デジタル値は、測定物体の温度に依存する商を計算するために使用されることができる。適切なルックアップテーブルを使用して、商を温度に変換することができる。
【0009】
このアプローチのために、2つの読み出し電子機器が必要とされ、商の計算はマイクロコントローラ又は同様のデジタル信号処理ユニットによって実行される。高精度の測定を行うには、読み出し電子機器に必要な部品は高価であり、すべてのチャンネル(最も単純なアプローチでは2つの波長のための2つのチャンネル)がより高価となる。
【0010】
さらに、検出器の温度依存は、検出器の温度を測定し、再度マイクロコントローラでデジタル計算を行うことによって補償されるべきである。あるいは、暗くされた検出器が、互いに熱平衡にある他の検出器と同じ基板上に配置され、暗くされた検出器の熱ドリフトを監視することができる。暗くされた検出器は測定物体からの放射が見えないため、それが生じる唯一の信号変化は熱ドリフトによるものだけである。それにもかかわらず、暗くされた検出器のために、別の高価な読み出し電子機器が必要とされる。
【0011】
遠隔温度計測は、測定物体の放射率に関する事前の知識を必要とする。異なる種類の物体は、それぞれの放射率が異なるため、測定設定の繰り返しの調整なしには、正しく測定されることができない。
【0012】
放射率に依存しない温度測定は、異なる波長で複数のセンサを使用し、それらの値を組み合わせることで実現できる。このアプローチは、測定構成の材料コストを増加させる。このアプローチでは、検出器の熱ドリフトは、さらなる検出器と読み出し電子機器を追加することによって、同様に考慮される必要がある。
【0013】
商の計算と温度ドリフトの補償は、単一の読み出しの電子機器によるアナログベースで行う必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明によって対処される問題は、この種の既知の回路の欠点を少なくとも実質的に回避する、装置及び方法を特定することである。特に、その放射率に関する知識なしに、1つの読み出し電子回路のみによる、物体の温度を測定するための単純化された解決策が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この問題は、独立特許請求項の特徴を備えた本発明によって解決される。個別に又は組み合わせて実現されることができる本発明の有利な展開は、従属請求項及び/又は以下の明細書及び詳細な実施形態に示されている。
【0016】
本明細書で使用される場合、「有する」、「備える」、及び「含む」という用語、ならびにそれらの文法上の変形は、非排他的な方法で使用される。したがって、「AはBを有する」という表現、ならびに「AはBを備える」、又は「AはBを含む」という表現は、B以外に、Aは1つ以上のさらなる成分及び/又は構成要素を含むという事実、及びB以外に、他の成分及び/又は構成要素がAに存在しない場合の両方を指し得る。
【0017】
本発明の第1の態様では、センサシステムが開示される。本センサシステムは、4つの相互接続された抵抗器を備える。抵抗器の少なくとも2つは、それぞれの感光領域の照射に依存する電気抵抗をそれぞれ示すように構成された光導電検出器である。光導電検出器は、少なくとも2つの異なる波長の光で照射され、光導電検出器の少なくとも2つは、それぞれ異なる波長の電磁エネルギーに応答する。他の2つの抵抗器は、それぞれ照射下で実質的に一定の電気抵抗を示すように構成されている。外部電圧が、少なくとも1つの電圧源を使用することによってなど、センサシステムに適用可能である。センサシステムは、差動電圧を測定するように構成されている。差動電圧は、光導電検出器の電気抵抗の変化に依存する。差動電圧は、4つのそれぞれの抵抗の数学的比率を与える。
【0018】
本発明によるセンサシステムは、少なくとも2つの光導電検出器に基づいており、一方、それらは少なくとも2つの異なる波長で照射される。温度ドリフト補償のために、サーミスタなどの2つのさらなる温度感応抵抗器(temperature sensitive resistor)が必要であり、それらは光導電検出器と同じ温度抵抗挙動を示す。実用的な理由から、サーミスタの代わりに、2つのさらなる光導電検出器を採用することもできるが、光導電検出器は暗くされる、すなわち照射されないことを意味する。照射された検出器の抵抗変化に応じた差動電圧が発生するが、差動電圧は4つの検出器信号の数学的比率を与える。
【0019】
本明細書で使用される「システム」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、全体を形成する相互作用する又は相互依存する構成要素の任意のセットを指し得る。具体的には、構成要素は、少なくとも1つの共通機能を満たすために、互いに相互作用してよい。少なくとも2つの構成要素は、独立して取り扱われてもよく、又は結合されもしくは接続可能であってもよい。本明細書で使用される「センサシステム」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、少なくともセンサ、特に少なくとも2つの光導電検出器を含むシステムを指し得る。
【0020】
本明細書で使用される「光導電検出器」という用語は、光導電体とも表され、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、光導電体の感光領域の照射に依存する特定の電気抵抗Rphotoを示すことができる感光要素を指し得る。具体的には、電気抵抗は、光導電検出器の材料の照射に依存する。光導電検出器は、それぞれ、「光導電材料」を含む感光領域を含んでよい。光導電検出器は、例えば、感光検出器回路に適用されることができる。光導電検出器の各々は、その感光領域の照射に依存する電気抵抗を示すように構成され得る。
【0021】
光導電検出器は、少なくとも1つの光導電体のアレイに、特に互いに隣接して配置されてよい。光導電検出器は、アレイの隣接する検出器であってよい。しかしながら、追加の光導電検出器が光導電検出器の間に存在する実施形態も可能である。本明細書で使用される光導電検出器の「アレイ」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、複数のピクセルを有するマトリックスに配置された複数の光導電体を指し得る。本明細書でさらに使用される、「マトリックス」という用語は、一般に、複数要素の所定の幾何学的順序での配置を指す。マトリックスは、具体的には、1つ以上の行及び1つ以上の列を有する長方形のマトリックスであってもよく、又はそれを含んでいてもよい。行と列は、具体的には長方形方式に配置されてよい。しかしながら、非長方形の配置など、他の配置も可能であることが説明される。一例として、円形の配置も可能であり、そこでは要素は中心点のまわりに同心円又は楕円に配置される。例えば、マトリックスは、ピクセルの単一の行であってよい。他の配置も可能である。マトリックスの光導電検出器は、具体的には、サイズ、感度、ならびに他の光学的、電気的及び機械的特性のうちの1つ以上で等しくてよい。マトリックスのすべての光導電検出器の感光領域は、具体的には、アレイを照射する光ビームが共通平面上に光スポットを生成し得るように、共通の平面内に配置されてよい。アレイは、同じ基板上にモノリシックに作製されてよい。アレイの光導電検出器は、特に、それらの感光領域のサイズ及び/又は形状、及び/又は光導電材料に関して、同一に設計されてよい。
【0022】
本明細書で使用される「照射」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、可視スペクトル範囲、紫外スペクトル範囲、及び赤外スペクトル範囲のうちの1つ以上の電磁放射を指し得る。そこでは、部分的に規格ISO-21348に従って、可視スペクトル範囲という用語は、一般に、380nm~760nmのスペクトル範囲を指す。赤外(IR)スペクトル範囲という用語は、一般に、760nm~1000μmの範囲の電磁放射を指し、そのうち、760nm~1.4μmの範囲は、一般に、近赤外(NIR)スペクトル範囲と呼ばれ、15μm~1000μmの範囲は遠赤外(FIR)スペクトル範囲と呼ばれる。「紫外スペクトル範囲」という用語は、一般に、1nm~380nm、好ましくは100nm~380nmの範囲の電磁放射を指す。以下では、「照射」という用語は、「光」とも表される。好ましくは、本発明内で使用される照射は、可視光、すなわち可視スペクトル範囲の光、及び/又は赤外光、すなわち赤外スペクトル範囲の光である。
【0023】
本明細書で使用される「感光領域」という用語は、一般に、例えば入射光ビームによる照射に感応する光導電体のエリアを指す。例えば、感光領域は、好ましくは(必ずしもそうである必要はないが)連続的であり、連続領域を形成することができる二次元又は三次元の領域であってよい。光導電検出器は、このような感光領域を1つ有するか、さもなければ複数有することができる。本明細書で使用される「照射に依存して電気抵抗を示す」という用語は、一般に、光導電検出器の電気抵抗が、感光領域の照射、特に照射の強度に依存して、調整及び/又は変化及び/又は変動されることを指す。特に、照射に応答して、電気抵抗が調整及び/又は変化及び/又は変動される。光導電検出器が照射されると、光導電検出器は電気抵抗の低下を示し得る。光導電検出器は、照射されると、その電気抵抗が低下し得る。具体的には、光導電体の電気抵抗は、入射光強度の増加に伴って減少し得る。暗抵抗と明抵抗との間の変化は、測定される量又は読み出される量であり、光導電検出器の出力電流と表され得る。本明細書で使用される「暗抵抗」という用語は、一般に、非点灯状態、すなわち照射なしの状態における光導電検出器の電気抵抗を指す。本明細書でさらに使用される「明抵抗」という用語は、照射下での光導電検出器の電気抵抗を指す。
【0024】
光導電検出器は、少なくとも1つの光導電材料を備え得る。電気抵抗は電気伝導率の逆数で定義されるため、代わりに、「光抵抗材料」という用語が同種の材料を呼ぶのにも使用されることがある。感光領域は、硫化鉛(PbS);セレン化鉛(PbSe);テルル化水銀カドミウム(HgCdTe);硫化カドミウム(CdS);セレン化カドミウム(CdSe);アンチモン化インジウム(InSb);ヒ化インジウム(InAs);ヒ化インジウムガリウム(InGaAs);外因性半導体、例えば、ドープされたGe、Si、GaAs、有機半導体、からなる群から選択される少なくとも1つの光導電材料を含むことができる。しかし、他の材料も可能である。さらなる可能な光導電材料は、例えば、WO2016/120392A1に記載されている。例えば、光導電検出器は、trinamiX GmbH,D-67056 Ludwigshafen am Rhein,GermanyからHertzstueckという商標名で市販されている光導電体であってよい。
【0025】
例えば、感光領域は、少なくとも1つの照射源によって照射されてよい。センサシステムは、少なくとも1つの照射源を含んでいてよい。照射源は、例えば、周囲光源であってよく、又はそれを含むことができ、及び/又は、人工照射源であってよく、又はそれを含むことができる。例として、照射源は、少なくとも1つの赤外線エミッタ及び/又は可視光線用の少なくとも1つのエミッタ及び/又は紫外線用の少なくとも1つのエミッタを含んでよい。例として、照射源は、少なくとも1つの発光ダイオード及び/又は少なくとも1つのレーザーダイオードを含んでよい。照射源は、特に以下の照射源:レーザー、(原則として、代替的又は追加的に、他のタイプのレーザーも使用することができるが、)特にレーザーダイオード;発光ダイオード;白熱灯;ネオン光;火炎源;有機光源、特に有機発光ダイオード;構造化光源、のうちの1つ以上を含むことができる。代替的又は追加的に、他の照射源も使用することができる。照射源は、一般に、紫外スペクトル範囲、赤外スペクトル範囲の少なくとも1つの光を放出するように適合されることができる。最も好ましくは、少なくとも1つの照射源は、NIR及びIR範囲、好ましくは800nm及び5000nmの範囲、最も好ましくは1000nm及び4000nmの範囲の光を放出するように適合される。
【0026】
照射源は、少なくとも1つの非連続光源を含むことができる。あるいは、照射源は、少なくとも1つの連続光源を含むことができる。光源は、光導電体の感光波長と重複する少なくとも1つの放射波長を有する任意の光源であってよい。例えば、光源は、プランク放射を生成するように構成されてよい。例えば、光源は、少なくとも1つの発光ダイオード(LED)及び/又は少なくとも1つのレーザー光源を含み得る。例えば、光源は、液体又は固体材料又は気体の酸化のような発熱反応による照射を生成するように構成されてよい。例えば、光源は、蛍光効果からの照射を生成するように構成されてよい。照射源は、少なくとも1つの変調された光ビームを生成するように構成されてよい。あるいは、照射源によって生成される光ビームは、非変調であってもよく、及び/又は、さらなる光学的手段によって変調されていてもよい。照射源は、連続光源からの光ビームを変調するように構成された少なくとも1つの光チョッパ装置を含んでよい。光チョッパ装置は、連続光源からの光ビームを周期的に遮断するように構成されてよい。例えば、光チョッパ装置は、少なくとも1つの可変周波数回転ディスクチョッパ及び/又は少なくとも1つの固定周波数音叉チョッパ及び/又は少なくとも1つの光シャッタであってよく、又はそれらを含んでよい。非連続的な照射のため、出力電流は、変化する電流信号であってよく、変調電流とも呼ばれる。変調電流は、光導電検出器の暗電流に比べて小さい場合がある。
【0027】
光導電検出器は、それぞれ異なる波長の電磁エネルギーに応答する。本発明は、少なくとも2つの異なる波長で感応するように構成された光導電検出器による、二波長、特に赤外線測定を提案する。特に、光導電検出器はそれぞれ、電磁スペクトルにおける異なる波長での電磁吸収を検出することができる。アレイの光導電検出器は、アレイの各ピクセルが異なる波長の電磁エネルギーに応答するように設計されてよい。光導電検出器は、異なる波長での照射の用意のために、フィルタとも呼ばれるフィルタ要素によって覆われていてよい。例えば、少なくとも1つのフィルタ構成が使用されてよい。しかしながら、他の構成も可能である。これにより、アレイを分光器用途に使用することができる。
【0028】
センサシステム、特に光導電検出器、より具体的にはその感光領域は、測定物体の直接の見通し線内に配置されてよい。フィルタ要素は、見通し線内にある電磁放射の波長範囲内にあるように配置されてよい。センサシステムと測定物体は、センサシステムに含まれる分離物などの分離物体によって分離されてよい。分離物体は、2つの光導電検出器が応答する少なくとも2つの波長において、少なくとも部分的に透明であってよい。フィルタは、分離物体を透過する電磁放射の波長範囲内にあるように構成されてもよい。
【0029】
センサシステムは、光導電検出器に少なくとも1つのバイアス電圧を印加するように構成された少なくとも1つのバイアス電圧源を含んでいてよい。光導電検出器は、バイアス電圧源と電気的に接続されてよい。本明細書で使用される場合、「バイアス電圧源」という用語は、バイアス電圧を生成するように構成された少なくとも1つの電圧源を指す。バイアス電圧は、光導電体材料に印加される電圧であってよい。光導電検出器はそれぞれ、バイアス電圧源が光導電検出器にバイアス電圧を印加することができるように、バイアス電圧源に接続されてよい。
【0030】
本明細書で使用される「照射下で実質的に一定」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、抵抗が一定である実施形態を指し得、そこでは5%未満、好ましくは1%未満、より好ましくは0.1%未満の偏差が可能である。照射下で実質的に一定の電気抵抗を示す抵抗器は、照射に応答しない。例えば、照射下で実質的に一定の電気抵抗を示す抵抗器は、カバーによって暗くされた光導電検出器であり得る。このように、抵抗器は、照射を受けないようにカバーされていてよい。抵抗器の出力信号の変化は、抵抗器の温度ドリフトに依存し得る。
【0031】
照射下で実質的に一定の抵抗器は、温度感応抵抗器であり得る。例えば、照射下で実質的に一定の抵抗器は、サーミスタであり得る。温度の関数としてのそれらの抵抗の変化は、光導電検出器のものと同じ特性を有し得る。温度感応抵抗器は、光導電検出器と同じ温度抵抗挙動を示すことができる。したがって、温度感応抵抗器は、温度ドリフト補償に使用されることができる。
【0032】
センサシステムは、差動電圧を測定するように構成されている。差動電圧は、光導電検出器の電気抵抗の変化に依存する。本明細書で使用される「差動電圧を測定する」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、差、特に電圧間の変化、特に異なる時点及び/又は照射状態などにおける光導電検出器にかかる電圧間の変化を決定することを指し得る。差動電圧は、4つのそれぞれの抵抗の数学的比率を与える。
【0033】
本明細書で使用される「相互接続された抵抗器」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、抵抗器のそれぞれがシステムの少なくとも2つの他の抵抗器に接続される構成を指し得る。例えば、抵抗器は、ブリッジ回路構成によって相互接続されてよい。例えば、ブリッジ回路構成は、少なくとも1つのホイートストンブリッジを含むことができる。本明細書で使用される「ホイートストンブリッジ」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、ブリッジ回路の2つの脚のバランスをとることによって未知の電気抵抗を決定するように構成された電気回路を指し得、そこでは、通常、脚の1つは未知の電気抵抗を含んでいる。例えば、ホイートストンブリッジは、4つの相互接続された抵抗器、すなわち、それぞれの感光領域の照射に依存する電気抵抗をそれぞれ示すように構成された光導電検出器Rphoto1及びRphoto2、ならびに2つの他の抵抗器R3及びR4を含むことができる。
【0034】
センサシステムは、直流(DC)電圧又は交流(AC)電圧などの供給電圧Vsを、ホイートストンブリッジに印加するように構成された供給電圧源を含むことができる。したがって、ホイートストンブリッジは、供給電圧源に接続されていてよい。
【0035】
差動電圧VDiffは、次式で与えられるようにホイートストンブリッジにより、直接計算されることができる:
【0036】
【0037】
供給電圧VSによって供給されて、回路は、2つの非感光性抵抗器R1及びR3ならびに1つの感光性抵抗器RPhoto1又はRPhoto2からなるブリッジの2つの対称的な脚を有する。したがって、VDiffの測定を使用して、アナログベースで異なる波長で測定された値の商を計算することができる。
【0038】
抵抗器R1及びR3は、カバーによって暗くされた光導電検出器であってよい。特に、カバーによって暗くされた光導電検出器は、電気的、光学的、光電気的及び機械的特性などの同一物理的特性などにおいて、カバーされていない光導電検出器と同様のものであってよい。特に、カバーによって暗くされた光導電検出器は、同一製造業者からのものなど、同一の製品番号などで入手可能なカバーされていない光導電検出器と同様であってよい。それらの出力信号の変化は、それらの温度ドリフトに依存し得る。カバーされていない光導電検出器の温度ドリフトは、類似又は同一であってよい。提案された回路により、光導電検出器の温度ドリフトは、暗くされた又は照射された光導電検出器が同じ温度挙動を示す限り、ホイートストンブリッジによって自動的に修正される。
【0039】
センサシステムは、光導電検出器の少なくとも1つの出力の出力信号を決定するように構成された少なくとも1つの評価装置を備えてよい。評価装置は、出力信号を評価することによって照射強度を決定するように構成されてよい。本明細書で使用される「評価装置」という用語は、一般に、電圧出力における少なくとも1つの電圧出力信号を決定及び/又は生成するように設計された任意の装置を指す。一例として、評価装置は、1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)などの1つ以上の集積回路、及び/又は1つ以上のデータ処理装置、例えば、1つ以上のコンピュータ、好ましくは1つ以上のマイクロコンピュータ及び/又はマイクロコントローラであってよく、又はこれらを備えてよい。追加の構成要素、1つ以上の電圧信号の受信及び/又は前処理のための装置などの1つ以上の前処理装置及び/又はデータ収集装置、例えば、1つ以上のAD変換器及び/又は1つ以上のフィルタが含まれてよい。さらに、評価装置は、1つ以上のデータ記憶装置を含むことができる。評価装置は、1つ以上のインターフェース、例えば1つ以上の無線インターフェース及び/又は1つ以上の有線インターフェースを含むことができる。評価装置は、特に、少なくとも1つの出力電圧信号を決定するように設計され得る少なくとも1つのデータ処理装置、特に電子データ処理装置を含むことができる。評価装置はまた、少なくとも1つの照射源を完全に又は部分的に制御するように、及び/又は少なくとも1つの電圧源を制御するように、及び/又は少なくとも1つの負荷抵抗器を調整するように設計されることができる。評価装置は、1つ以上の電子ハードウェア構成要素などの1つ以上の追加の構成要素、及び/又は1つ以上の測定ユニット及び/又は1つ以上の評価ユニット及び/又は1つ以上の制御ユニットなどの1つ以上のソフトウェア構成要素をさらに含むことができる。例えば、評価装置は、少なくとも1つの出力電圧信号を測定するように適合された少なくとも1つの測定装置、例えば少なくとも1つの電圧計を備えることができる。評価装置は、少なくとも1つのフーリエ変換;周波数のカウント、エッジ検出、周期長測定など、からなる群の1つ以上の操作を実行するように構成されてよい。
【0040】
構成によっては、赤外線放射の直接測定が困難な場合がある。例えば、セラミックガラス製のクックトップは、衛生上の理由から、電気又は燃料駆動の熱源を鍋及びフライパンから分離する。クックトップガラスは、1~2.7μmの波長の電磁波に対して少なくとも部分的に透明である。低温(~80℃-100℃、例えば概略水の沸騰温度程度)では、赤外線放射は近赤外線範囲(1.4umまでのIR-A)で非常に弱い。これにより、拡張InGaSのような光起電力検出器の使用は、そのスペクトル感度範囲のために非常に限定的なものとなる。拡張InGaS検出器はコストが高いため、多波長又は二波長センサとしての使用は実現しがたい。
【0041】
測定物体から放出される放射線は変調されないため、焦電効果に基づく温度センサは、その物理的特性のためにこの測定に使用することができない。このため、機械式又は光学式チョッパが必要となり、測定構成の複雑さと価格が増し、一方で寿命が短くなる。
【0042】
熱電対列は広帯域のスペクトル感度と変調されていない放射を検出する能力によって安価な代替手段を提供するが、それらの検出性は光起電力検出器及び光導電検出器などの量子検出器に比べて非常に低い。そのため、達成可能な分解能は比較的低い。
【0043】
光導電検出器は良好な検出性を提供し、変調されていない熱放射体にも使用することができる。しかし、光導電体は、測定された物理量に応じた電気出力を発生させるために、外部からの励起信号を必要とする。光導電体の場合、この物理量は発光強度である。最も一般的には、励起信号として電圧VBiasが光導電体に印加される。
【0044】
光導電体は照射に応じてその抵抗を変化させる。変化自体は、光導電体の全抵抗値に比べて比較的小さい。例えば、約1MΩの抵抗を特徴とする2mm×2mmの寸法のPbS検出器は、16μW/cm2の放射照度の1550nmの赤外線放射によって、約10kΩの抵抗を変化させ、これは1%の変化に相当する。このように、励起信号は、照射による電気出力の変化よりも桁違いに大きい。フィルタリングを行わずに、読み出し電子機器は、信号全体を測定することができ、そうでありながら、比較的良好な分解能で1%の変化を分解できることを要する。このような読み出し電子機器は市販されているが、非常に高価である。
【0045】
光導電体は、一般的に、一定のDCバイアス電圧を光導電体に印加する分圧器によって測定される。DC電圧の不安定さ又は偏差は出力信号に直接影響を与え、測定誤差につながる。さらに、1/fノイズは検出器に流れる電流のDC部分であるIDCに依存する。このため、バイアスとして一定のDC電圧を使用することは不利である。
【0046】
また、供給電圧のいかなる変化又は変動も、測定誤差につながる。したがって、高精度な測定には、電池などの非常に低ノイズの電源しか使用され得ない。
【0047】
要約すると、本発明の文脈では、以下の実施形態が特に好ましいと考えられる:
実施形態1:4つの相互接続された抵抗器を有するセンサシステムであって、前記抵抗器の2つは光導電検出器であり、前記光導電検出器は、少なくとも2つの異なる波長の光で照射され、前記抵抗器のうちの2つは前記照射のためにその抵抗を変化させず、前記センサシステムに外部電圧が適用され、差動電圧が計測可能であり、前記差動電圧は、前記照射された光導電検出器の抵抗の変化に依存し、前記差動電圧は前記4つのそれぞれの抵抗の数学的比率を与える、センサシステム。
【0048】
実施形態2:前記照射に応答せず、カバーによって暗くされた光導電検出器である前記抵抗器を備える、先行する実施形態によるセンサシステム。
【0049】
実施形態3:異なる波長の光の用意のために、フィルタ要素によって覆われている光導電抵抗器を備える、先行する実施形態のいずれか1つによるセンサシステム。
【0050】
実施形態4:ブリッジ回路構成によって相互接続されている光導電抵抗器を備える、先行する実施形態のいずれか1つによるセンサシステム。
【0051】
実施形態5:前記センサシステムは、測定物体の直接の見通し線内にあり、フィルタが、前記見通し線内にある電磁放射の波長範囲内にあるように配置されている、先行する実施形態のいずれか1つによるセンサシステム。
【0052】
実施形態6:前記センサシステム及び前記測定物体が他の物体によって分離され、前記分離する物体は少なくとも2つの波長において少なくとも部分的に透明であり、フィルタが前記分離する物体を透過する電磁放射の波長範囲内にあるように配置されている、先行する実施形態のいずれか1つによるセンサシステム。
【0053】
実施形態7:前記4つの光導電抵抗器は、互いに隣接するアレイに配置されている、先行する実施形態のいずれか1つによるセンサシステム。
【0054】
実施形態8:温度測定のためのセンサとしての、先行する実施形態のいずれか1つによるセンサシステムの使用。
【0055】
実施形態9:気体及び/又は液体分析のためのセンサとしての、先行する実施形態のいずれか1つによるセンサシステムの使用。
【0056】
実施形態10:気体及び/又は液体の濃度のためのセンサとしての、先行する実施形態のいずれか1つによるセンサシステムの使用。
【0057】
実施形態11:事前に定義された材料クラス間の材料分類のためのセンサとしての、先行する実施形態のいずれか1つによるセンサシステムの使用。
【図面の簡単な説明】
【0058】
本発明のさらなる任意の詳細及び特徴は、従属請求項と関連する後続の好ましい例示的な実施形態の説明から明らかである。この文脈では、特定の特徴は、単独で、又は他の特徴と組み合わせて実施されてよい。本発明は、例示的な実施形態に限定されない。例示的な実施形態は、図に模式的に示されている。個々の図における同一の符号は、同一の要素又は同一の機能を有する要素、又はその機能に関して互いに対応する要素を指している。
【0059】
具体的には、以下の図においては:
【
図1】ホイートストンブリッジによって電気抵抗を測定するための第1電気回路を示す図である。
【
図2】ホイートストンブリッジによって電気抵抗を測定するための第2電気回路を示す図である。
【
図3】ホイートストンブリッジによって電気抵抗を測定するための第3電気回路を示す図である。
【
図4】2つの異なる回路のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
例示的な実施形態
本発明は、1つの読み出し電子機器のみを用いて、物体の放射率に関する知識なしに、物体の温度を測定するための単純化された解決策を提供する。二波長IR測定は、異なる波長で、光導電検出器によって行われる。測定対象の温度に応じて、適切な光導電体と波長を選択する必要がある。
【0061】
例えば、100℃~250℃の温度範囲は、2mm×2mmのPbS検出器で測定されることができ、1つの検出器によって2.2~2.4umの波長範囲をサンプリングし、他の検出器によって2.6~2.8umの波長範囲をサンプリングすることができる。適切な光フィルタを光検出器の上に配置することができ、これによって選択された波長範囲をサンプリングすることができる。
【0062】
図1は、本発明によるセンサシステム100の一実施形態を示している。センサシステム100は、4つの相互接続された抵抗器102、103、104、105を備えている。抵抗器の少なくとも2つ(
図1では抵抗器104及び105)は、それぞれの感光領域の照射に依存して電気抵抗をそれぞれ示すように構成された光導電検出器R
Photo1及びR
Photo2である。光導電検出器の少なくとも2つは、それぞれ異なる波長の電磁エネルギーに応答する。光導電検出器は、少なくとも1つの光導電体のアレイに、特に互いに隣接して配置されてよい。光導電検出器は、アレイの隣接する検出器であってよい。光導電検出器は、それぞれ異なる波長の電磁エネルギーに応答する。本発明は、少なくとも2つの異なる波長で感応するように構成された光導電検出器による、二波長測定、特に赤外線測定を提案する。特に、光導電検出器はそれぞれ、電磁スペクトルにおける異なる波長での電磁吸収を検出することができる。アレイの光導電検出器は、アレイの各ピクセルが異なる波長の電磁エネルギーに応答するように設計されてよい。光導電検出器は、異なる波長での照射の用意のために、フィルタとも呼ばれるフィルタ要素によって覆われていてよい。例えば、少なくとも1つのフィルタ構成が使用されてよい。しかしながら、他の構成も可能である。これにより、アレイを分光器用途に使用することができる。
【0063】
センサシステム100、特に光導電検出器、より具体的にはその感光領域は、測定物体の直接の見通し線内に配置されてよい。フィルタ要素は、見通し線内にある電磁放射の波長範囲内にあるように配置されてよい。センサシステム100と測定物体は、センサシステムに含まれる分離物などの分離物体によって分離されてよい。分離物体は、2つの光導電検出器が応答する少なくとも2つの波長において、少なくとも部分的に透明であってよい。フィルタは、分離物体を透過する電磁放射の波長範囲内にあるように配置されてよい。
【0064】
センサシステム100は、光導電検出器に少なくとも1つのバイアス電圧106及び107を印加するように構成された少なくとも1つのバイアス電圧源を含んでいてよい。光導電検出器は、バイアス電圧源と電気的に接続されてよい。バイアス電圧は、光導電体材料に印加される電圧であってよい。光導電検出器はそれぞれ、バイアス電圧源が光導電検出器にバイアス電圧106及び107を印加することができるように、バイアス電圧源に接続されてよい。
【0065】
2つの他の抵抗器R
1とR
3(
図1の抵抗器102と103)は、それぞれ照射下で実質的に一定の電気抵抗を示すように構成されている。照射下で実質的に一定の電気抵抗を示す抵抗器は、照射に応答しない。例えば、照射下で実質的に一定の電気抵抗を示す抵抗器は、カバーによって暗くされた光導電検出器であってよい。このように、抵抗器は、いかなる放射も受けないようにカバーされていてよい。抵抗器の出力信号の変化は、抵抗器の温度ドリフトに依存し得る。
【0066】
外部電圧、特に供給電圧が、センサシステム100に適用可能である。センサシステム100は、直流(DC)電圧又は交流(AC)電圧などの供給電圧Vsを抵抗器に印加するように構成された供給電圧源を備えることができる。したがって、抵抗器は、供給電圧源に接続されてよい。
【0067】
センサシステム100は、差動電圧を測定するように構成されている。差動電圧は、光導電検出器の電気抵抗の変化に依存する。差動電圧は、4つのそれぞれの抵抗の数学的比率を与える。
【0068】
例えば、抵抗器は、ブリッジ回路構成によって相互接続されてよい。例えば、ブリッジ回路構成は、少なくとも1つのホイートストンブリッジを含むことができる。ホイートストンブリッジは、ブリッジ回路の2つの脚のバランスをとることによって未知の電気抵抗を決定するように構成された電気回路であってもよく、又はそれを含んでいてもよく、脚の1つは未知の電気抵抗を含んでいる。例えば、ホイートストンブリッジは、4つの相互接続された抵抗器、すなわち、それぞれの感光領域の照射に依存する電気抵抗をそれぞれ示すように構成された光導電検出器Rphoto1及びRphoto2と、2つの他の抵抗器R3及びR4とを含むことができる。
【0069】
商、特に差動電圧V
Diffは、
図1に示される回路について、次式で与えられるように、ホイートストンブリッジによって直接計算され、差動電圧V
Diff(108)が得られる:
【0070】
【0071】
供給電圧VS(101)によって供給されて、回路は、2つの非感光性抵抗器R1及びR3(102,103)ならびに1つの感光性抵抗器RPhoto1又はRPhoto2(104,105)からなるブリッジの2つの対称的な脚を有する。したがって、VDiff(108)の測定が、アナログベースで、異なる波長で測定された値の商を計算するために使用される。
【0072】
抵抗器R1及びR3は、暗くされた光導電体(すなわち、それらはいかなる放射も受けないようにカバーされていることを意味する)であり得る。出力信号の変化は温度ドリフトに依存する。提案された回路により、検出器の温度ドリフトは、暗くされた又は照射された検出器が同じ温度挙動を示す限り、ホイートストンブリッジによって自動的に修正される。
【0073】
ホイートストンブリッジは、AC電圧でも駆動可能であり、すなわち、光導電体に印加されるバイアス電圧が変調されることを意味する。変調は単極又は双極であり得る。変調の周波数は自由に選択できるが、1/fノイズを低くするには、より高い周波数が推奨される。
【0074】
図2は、面積が1mm×1mm、放射率が1の等方性放射体の例の計算を示しており、上記の波長範囲のバンドパスフィルタを有する検出器R
Photo1及びR
Photo2は、それらの抵抗値を異なって変化させる。すべての検出器(照明された2つと、暗くされた2つ)に対して暗抵抗を1MΩとし、等方性放射体から10cmの距離で、差分電圧が温度の関数として測定され得る。この計算のV
Sは1Vに設定されている。計算値は、距離、放射体の放射率、検出器のスペクトル検出性及び応答性、使用されるフィルタの透過特性、ならびにその他多くのパラメータによって変化する可能性がある。
図1の回路は唯一の可能な解決策ではないが、例として役立つはずである。
【0075】
下の曲線は、
図1に示す電気回路を表している。
図3の回路を参照する2つ目のシミュレーションは、上の曲線で表されている。
【0076】
光導電体の抵抗が温度によって同じ係数で変化する限り、差動電圧曲線は同じままである。あるいは、温度感応抵抗器が、その温度抵抗の挙動が光導電体の挙動と同じである限り、R1及びR3として採用されることができる。光導電体の抵抗だけでなく応答性も温度に依存することが知られている。この場合、(差動電圧の変化が許容できないほど大きい場合)安価なPT100又はPT1000などの接触温度センサが、差動電圧を温度に変換するためにルックアップテーブルを補正するために使用されることができる。
【0077】
図3はこの回路の代替構成であり、放射照度に対する回路の感度は、暗くされた光導電検出器と照射された光導電検出器の両方を斜めに配置することによって改善されることができる。あるいは、温度感応抵抗器が、R
1及びR
3として採用されることができる。得られた差動電圧の比較を
図2の上段に示す。
【0078】
【0079】
第3の代替案を
図4に示す。抵抗変化に対する回路の堅牢性は、暗くされた光導電検出器と照射された光導電検出器の両方をそれぞれ同じ脚に配置することによって改善されることができる。照射された検出器は同じ係数で抵抗値を変化させることができ、暗くされた検出器、又は代替的に温度感応抵抗器は同じ変化係数を有する。得られた差動電圧は同じままである。
【0080】
【0081】
供給電圧の変動は、ホイートストンブリッジの両アームは同じ電位に接続され、同じように変動するため、バランスされ、したがって、差動電圧は一定に保たれる。
【0082】
差動電圧VDiffのみを測定することにより、検出器温度非依存の、放射率非依存の二波長温度測定が、高分解能でかつ読み出し電子機器の最小限の部品数で達成され得る。次いで、差動電圧は増幅され、ADCによってデジタル値に変換され得る。DC及びAC供給電圧VSの両方の差動電圧の測定のために、既製の増幅器、アナログフロントエンド及びアナログ-デジタルコンバータが利用可能である。
【0083】
センサシステム100は、放射率に依存しない温度測定のために採用されることができる。センサシステム100は、測定物体の直接の見通し線内にあってもよく、又はセンサが、サンプリングされた波長で透明である他の物体を通して、物体の温度を測定してもよい。これは、いくつかの特定の赤外線周波数に対して透明であるセラミッククックトップの例で可能である。
【0084】
代替的に、センサシステム100は、ガス分析のために採用され得る。ガスの濃度は、Lambert-Beerの法則に従って、光源からガスが満たされた光路を通る光の強度の減少を測定することによって決定され得るが、サンプリングされる波長は測定されるガスに応じて選択される必要がある。一般的に、2つの波長は、測定されたガスが一方の波長では吸収し、他方の波長では吸収損失なしに透過し、したがって後者が基準となるように、選択される。両方の信号の商は、測定されたガス濃度に依存する。同様の方法で、液体も監視されることができる。
【0085】
センサシステム100は、光源で照射された固体からの拡散反射を測定するために採用されることができる。2つの波長で拡散反射をサンプリングすることにより、既知の材料の濃度が決定されることができ、又は、2つの予め定義されたクラス間の材料分類、例えば人間の皮膚か否か、プラスチックかガラスかなど、が実行され得る。このような測定は、プラスチック、ガラスなどのリサイクルのための光学選別作業では一般的である。
【符号の説明】
【0086】
100 センサシステム
101 電圧供給VS
102 抵抗器R1
103 抵抗器R3
104 光抵抗器RPhoto1
105 光抵抗器RPhoto2
106 VBias1
107 VBias2
108 VDiff
【国際調査報告】