(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-28
(54)【発明の名称】バッテリーの温度を制御するための熱伝達組成物の使用
(51)【国際特許分類】
C09K 5/10 20060101AFI20230320BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20230320BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20230320BHJP
H01M 10/653 20140101ALI20230320BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20230320BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20230320BHJP
【FI】
C09K5/10 E
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/653
H01M10/6568
H01M10/6556
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543741
(86)(22)【出願日】2021-01-19
(85)【翻訳文提出日】2022-09-12
(86)【国際出願番号】 FR2021050095
(87)【国際公開番号】W WO2021148753
(87)【国際公開日】2021-07-29
(32)【優先日】2020-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー, ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】ガレ, ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】モンギヨン, ベルナール
(72)【発明者】
【氏名】アッバース, ローラン
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031EE04
5H031HH03
5H031HH06
5H031KK08
(57)【要約】
本発明は、アルキルベンゼン、アルキルジフェニルエタン、アルキルナフタレン、メチルポリアリールメタン、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの芳香族合成誘電性流体を含む、バッテリーの温度を調節するための、好ましくは単相の熱伝達組成物の使用に関する。
本発明はまた、そのような熱伝達組成物を含むバッテリーに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキルベンゼン、アルキルジフェニルエタン、アルキルナフタレン、メチルポリアリールメタン、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの芳香族合成誘電性流体を含む、バッテリーの温度を調節するための単相熱伝達組成物の使用。
【請求項2】
熱伝達組成物が、ベンジルトルエン、ジベンジルトルエン、及びそれらの任意の比率の混合物から選択される少なくとも1つの芳香族合成誘電性流体を含む、請求項1記載の使用。
【請求項3】
熱伝達組成物が、ベンジルトルエン/ジベンジルトルエンの全量に対して、限界値を含む60重量%と85重量%との間のベンジルトルエン、より好ましくは限界値を含む15重量%と40重量%との間のジベンジルトルエンを含む、請求項2記載の使用。
【請求項4】
熱伝達組成物が、鉱油、植物油及び合成油から選択される1つ又は複数の他の誘電性流体と混合された少なくとも1つの芳香族合成誘電性流体を含む、請求項1~3のいずれか一項記載の使用。
【請求項5】
芳香族合成誘電性流体が、熱伝達組成物中に存在する全ての誘電性流体の合計に対して、限界値を含む50重量%と100重量%との間、好ましくは限界値を含む70重量%と100重量%との間の比率を表す、請求項4記載の使用。
【請求項6】
組成物が、好ましくは、非限定的に、抗酸化剤、不動態化剤、流動点降下剤、分解防止剤、芳香剤及び風味剤、着色剤、保存剤など、及びそれらの混合物から選択される1つ又は複数の添加剤及び/又は充填剤をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項記載の使用。
【請求項7】
1つ又は複数の添加剤の重量含有量が、組成物の全重量に対して、限界値を含む0.0001重量%~5重量%、好ましくは0.001重量%~3重量%、より優先的には0.01%~2%重量の範囲である、請求項6記載の使用。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の熱伝達組成物を含むバッテリー。
【請求項9】
電気又はハイブリッド輸送手段、産業車両、オートマトン又は充電ステーションに取り付けられる、請求項8記載のバッテリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気又はハイブリッド車両のバッテリーを冷却するための、少なくとも1つの油を含む熱伝達組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
電気又はハイブリッド車両のバッテリーは、特定の使用条件下で、特に極めて具体的な温度範囲において最大効率をもたらす。このように、高い加熱要件が貯蔵電気エネルギーの大部分を消費するので、寒冷地では、いっそう、電気又はハイブリッド車両の自律性が問題となる。加えて、低温では、バッテリーから利用可能な電力が低く、駆動問題をもたらす。さらに、バッテリーのコストは、電気又はハイブリッド車両のコストの大きな一因である。
【0003】
逆に、バッテリーの冷却は安全上の大きな争点である。様々な誘電性油を使用して、電気又はハイブリッド車両のバッテリーを冷却することができることが現在知られている。しかしながら、迅速なバッテリー充電が必要とされる場合、従来の誘電性油の使用は、特にそれらは粘度が低く、場合によってそれらは熱伝導率が極端に低いので、一般にはバッテリーを効果的に冷却するのに十分ではない。
【0004】
さらに、バッテリーの周辺では、難燃性若しくは不燃性であるか、又は少なくとも比較的高い引火点を有する組成物を使用して、これらの組成物の使用に関連するあらゆる安全上のリスクを排除することが重要である。
【0005】
米国特許第8852772号明細書は、車両で使用するためのリチウムイオンバッテリー冷却システムの一例を記載しており、前記システムは、バッテリーを加熱及び冷却するチャネル内に絶縁液体を受け入れることができる複数の冷却モジュールを備える。
【0006】
国際公開第2019/197783号明細書は、第1の熱伝達組成物が流れる蒸気圧縮回路と、第2の熱伝達組成物が流れる二次回路とを備えるシステムによって、自動車中の物体又は流体を冷却及び/又は加熱する方法に関する。
【発明の概要】
【0007】
安全かつ効率的なバッテリーを、前記バッテリーに関連するコストを増加させることなく提供するために、誘電性流体、特に、バッテリー、特に電気又はハイブリッド車両のバッテリーの最適な動作を確保することを可能にする単相誘電性流体が現在必要とされている。「単相」という用語は、冷媒液体の気化/凝縮によって温度調節が行われる相変化システムとは対照的に、完全に液体であり、使用中、すなわち温度調節中に液体のままである相を意味すると理解される。
【0008】
したがって、第1の態様によれば、本発明は、アルキルベンゼン、アルキルジフェニルエタン、アルキルナフタレン、メチルポリアリールメタン、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの芳香族合成誘電性流体を含む、バッテリーの温度を調節するための、好ましくは単相の熱伝達組成物の使用に関する。
【0009】
本発明は、上記の需要を満たすことを可能にする。具体的には、バッテリーに関連するコストを増加させることなく安全かつ効率的なバッテリーを提供するために、特に電気又はハイブリッド車両におけるバッテリーの最適な動作を確保することを可能にする。
【0010】
具体的には、アルキルベンゼン、アルキルジフェニルエタン、アルキルナフタレン、メチルポリアリールメタン、及びそれらの混合物から選択される芳香族合成誘電性流体の使用は、特に先行技術の組成物と比較して、粘性の低い組成物及び高い熱伝導率を提供することを可能にし、それにより、バッテリーの効率を、特に高速充電中に、そのコストを増やすことなく向上させることができる。
【0011】
さらに、本発明による使用のための組成物は、非常に良好な熱特性を有し、前記使用に完全に適合する破壊電圧、特に一般に20kV以上である破壊電圧も有する。アルキルベンゼン、アルキルジフェニルエタン、アルキルナフタレン、メチルポリアリールメタン、及びそれらの混合物から選択される芳香族合成誘電性流体に関連するこれらの品質は、組成物の誘電特性がバッテリー付近での、又はバッテリーと接触する使用に適合することを保証する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明による使用は、非常に詳細にはバッテリー、特に電気又はハイブリッド車両のバッテリー、より一般的には電気又はハイブリッド輸送手段、例えば自動車、トラック、電車、船舶、二輪車(自転車、モーターバイク、スクーター)、産業車両(トラクター、掘削機、フォークリフト、農業機械、その他)に取り付けられたバッテリー、さらにオートマトン(例えばATM、通貨ディスペンサー、チケットディスペンサー、その他)、及びバッテリー充電ステーション自体にも適している。
【0013】
電気又はハイブリッドモータを有するシステム、特に自動車は、少なくとも1つの電気モータと、適切な場合には燃焼エンジンとを備える。したがって、それらは、電子回路と、以下の本文ではより簡素にバッテリーとして表示されるトラクションバッテリーとを備える。
【0014】
バッテリーは、少なくとも1つの電気化学セル、好ましくは複数の電気化学セルを含むことができる。各電気化学セルは、負極と、正極と、負極と正極との間に介在する電解質とを備えることができる。各電気化学セルはまた、電解質が含浸されたセパレータを含むことができる。
【0015】
電気化学セルは、バッテリー内で直列及び/又は並列に組み立てることができる。
【0016】
用語「負極」は、バッテリーが電流を供給する場合(すなわち、放電プロセス中である場合)にアノードとして作用し、バッテリーが充電プロセス中である場合にカソードとして作用する電極を意味すると理解される。負極は、典型的には、電気化学的活物質と、場合により電子伝導性材料と、場合によりバインダーとを含む。
【0017】
用語「正極」は、バッテリーが電流を供給する場合(すなわち、放電プロセス中である場合)にカソードとして作用し、バッテリーが充電プロセス中である場合にアノードとして作用する電極を意味すると理解される。正極は、典型的には、電気化学的活物質と、場合により電子伝導性材料と、場合によりバインダーとを含む。
【0018】
用語「電気化学的活物質」は、イオンを可逆的に挿入することができる材料を意味すると理解される。
【0019】
用語「電子伝導性材料」は、電子を伝導することができる材料を意味すると理解される。
【0020】
電気化学セルの負極は、特に、電気化学的活物質として、グラファイト、リチウム、リチウム合金、Li4Ti5O12型のチタン酸リチウム又は酸化チタンTiO2、ケイ素又はリチウム/ケイ素合金、酸化スズ、リチウム金属間化合物又はそれらの混合物を含むことができる。
【0021】
負極がリチウムを含む場合、後者は、金属リチウム又はリチウムを含む合金の膜の形態であり得る。例えば、リチウム-アルミニウム合金、リチウム-シリカ合金、リチウム-スズ合金、Li3Bi、Li3Cd及びLi3SBのうち、使用可能なリチウム系合金を挙げることができる。負極の例は、ローラー間でリチウムのストリップを圧延することによって調製された活性リチウム膜を含むことができる。
【0022】
正極は、酸化物型の電気化学的活物質を含む。それは、高いニッケル含有量を有するリチウム/ニッケル/マンガン/コバルト複合酸化物(NMCと略されるLiNixMnyCozO2、x+y+z=1、x>yかつx>z)、又は高いニッケル含有量を有するリチウム/ニッケル/コバルト/アルミニウム複合酸化物(NCAと略されるLiNix’Coy’Alz’、x’+y’+z’=1、x’>y’かつx’>z’)である。
【0023】
これらの酸化物の具体例は、NMC532(LiNi0.5Mn0.3Co0.2O2)、NMC622(LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2)及びNMC811(LiNi0.8Mn0.1Co0.1O2)である。
【0024】
これらの酸化物の混合物を使用することができる。上記の酸化物材料は、適切であれば、他の酸化物、例えば二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウム/マンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4又はLixMnO2)、リチウム/ニッケル組成酸化物(例えばLixNiO2)、リチウム/コバルト組成酸化物(例えばLixCoO2)、リチウム/ニッケル/コバルト複合酸化物(例えばLiNi1-yCoyO2)、リチウム及び遷移金属複合酸化物、スピネル構造のリチウム/マンガン/ニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiyO4)、バナジウム酸化物、高いニッケル含有量を有さないNMC及びNCA酸化物、及びそれらの混合物と組み合わせることができる。
【0025】
好ましくは、高いニッケル含有量を有するNMC又はNCA酸化物は、電気化学的活物質として正極中に存在する酸化物材料の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは本質的に全てに相当する。
【0026】
各電極の材料はまた、電気化学的活物質の他に、炭素源、例えば、カーボンブラック、Ketjen(登録商標)炭素、Shawinigan炭素、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、炭素繊維(例えば、気相成長炭素繊維又はVGCF)、有機前駆体の炭化によって得られた非粉末状炭素、又はこれらの2つ以上の組み合わせなどの電子伝導性材料を含むことができる。リチウム塩、又はセラミック若しくはガラスタイプの無機粒子などの他の添加剤、又は他の相溶性活物質(例えば、硫黄)も正極の材料中に存在することができる。
【0027】
各電極の材料はまた、バインダーを含むことができる。バインダーの非限定的な例は、直鎖、分岐及び/又は架橋ポリエーテルポリマーバインダー(例えば、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)若しくはポリ(プロピレンオキシド)(PPO)又はその2つの混合物(又はEO/PO共重合体)をベースとし、場合により架橋性単位を含むポリマー)、水可溶型バインダー(例えば、SBR(スチレン/ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル/ブタジエンゴム)、HNBR(水素化NBR)、CHR(エピクロロヒドリンゴム)、ACM(アクリレートゴム))、又はフルオロポリマー型のバインダー(PVDF(ポリビニリデンフルオリド)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)など)、及びそれらの組み合わせを含む。水に可溶型のものなどのいくつかのバインダーは、CMC(カルボキシメチルセルロース)などの添加剤も含むことができる。
【0028】
セパレータは、多孔質ポリマー膜であり得る。非限定的な例として、セパレータは、ポリオレフィン、例えばエチレンホモポリマー、プロピレンホモポリマー、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体、エチレン/メタクリレート共重合体又は上記ポリマーの多層構造体の多孔質膜からなることができる。
【0029】
電解質は、溶媒、又は1つ以上の添加剤を含む溶媒の混合物に溶解した1つ以上のリチウム塩からなることができる。
【0030】
非限定的な例として、1つ又は複数のリチウム塩は、LiPF6(リチウムヘキサフルオロホスファート)、LiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)、LiTDI(リチウム2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノイミダゾレート)、LiPOF2、LiB(C2O4)2、LiF2B(C2O4)2、LiBF4、LiNO3又はLiClO4から選択することができる。
【0031】
溶媒は、以下の非網羅的なリスト:エーテル、エステル、ケトン、硫黄誘導体、アルコール、ニトリル及び炭酸塩から選択することができる。
【0032】
エーテルの中でも、直鎖又は環状エーテル、例えば、ジメトキシエタン(DME)、2~5個のオキシエチレン単位を有する(havigg)オリゴエチレングリコールのメチルエーテル、ジオキソラン、ジオキサン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン及びそれらの混合物が挙げられ得る。
【0033】
エステルの中でも、リン酸エステル又は亜硫酸エステルが挙げられる。例えば、ギ酸メチル、酢酸メチル、メチルプロピオナート、酢酸エチル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトン及びそれらの混合物が挙げられ得る。
【0034】
硫黄誘導体の中では、言及され得る非限定的な例には、ジメチルスルホキシド(DMSO)などのスルホキシド、又はスルホラン若しくはジメチルジスルホン(DMSO2)などのスルホンが含まれる。
【0035】
ケトンの中では、特にシクロヘキサノンが挙げられ得る。アルコールの中では、例えば、エチルアルコール又はイソプロピルアルコールが挙げられ得る。
【0036】
ニトリルの中でも、例えば、アセトニトリル、ピルボニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、ジメチルアミノプロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、ピバロニトリル、イソバレロニトリル、グルタロニトリル、メトキシグルタロニトリル、2-メチルグルタロニトリル、3-メチルグルタロニトリル、アジポニトリル、マロノニトリル及びそれらの混合物が挙げられ得る。
【0037】
炭酸塩の中でも、例えば環状カルボネート、例えばエチレンカーボネート(EC)(CAS:96-49-1)、プロピレンカーボネート(PC)(CAS:108-32-7)、ブチレンカーボネート(BC)(CAS:4437-85-8)、ジメチルカーボネート(DMC)(CAS:616-38-6)、ジエチルカーボネート(DEC)(CAS:105-58-8)、エチルメチルカーボネート(EMC)(CAS:623-53-0)、ジフェニルカーボネート(CAS:102-09-0)、メチルフェニルカーボネート(CAS:13509-27-8)、ジプロピルカーボネート(DPC)(CAS:623-96-1)、メチルプロピルカーボネート(MPC)(CAS:1333-41-1)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ビニリデンカーボネート(VC)(CAS:872-36-6)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)(CAS:114435-02-8)、トリフルオロプロピレンカーボネート(CAS:167951-80-6)又はこれらの混合物が挙げられ得る。
【0038】
添加剤は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニレンカーボネート、4-ビニル-1,3-ジオキソラン-2-オン、ピリダジン、ビニルピリダジン、キノリン、ビニルキノリン、ブタジエン、セバコニトリル、アルキルジスルフィド、フルオロトルエン、1,4-ジメトキシテトラフルオロトルエン、t-ブチルフェノール、ジ(t-ブチル)フェノール、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、オキシム、脂肪族エポキシド、ハロゲン化ビフェニル、メタクリル酸、アリルエチルカーボネート、酢酸ビニル、アジピン酸ジビニル、プロパンスルトン、アクリロニトリル、2-ビニルビリジン、無水マレイン酸、ケイ皮酸メチル、ホスホネート、ビニルを含むシラン化合物、及び2-シアノフランからなる群から選択することができる。
【0039】
本発明の文脈で使用することができる熱伝達組成物は、アルキルベンゼン、アルキルジフェニルエタン、アルキルナフタレン、メチルポリアリールメタン、及びそれらの混合物から選択される芳香族合成誘電性流体を含む。本発明の目的のために、「誘電性流体」という用語は、電気を伝導しない(又はわずかにのみ伝導する)が、静電気力を発揮させる流体を意味する。
【0040】
芳香族合成誘電性流体の中でも、アルキルベンゼン、アルキルジフェニルエタン(例えば、フェニルキシリルエタン(PXE)、フェニルエチルフェニルエタン(PEPE)、モノイソプロピルビフェニル(MIPB)、1,1-ジフェニルエタン(1,1-DPE))、アルキルナフタレン(例えば、ジイソプロピルナフタレン(DIPN))、メチルポリアリールメタン(例えば、ベンジルトルエン(BT)及びジベンジルトルレンDBT)、及びそれらの混合物を非限定的に挙げることができる。前記芳香族合成誘電性流体において、少なくとも1つの環は芳香族であること、及び任意選択で存在する1つ以上の他の環は部分的又は全体として不飽和であり得ることを理解されたい。最も特に好ましい例は、Soltex Incによって、Arkema社によってJarylec(登録商標)の名称で販売されている誘電性流体、及びJX Nippon Chemical Texas Inc社によるSAS 60Eである。
【0041】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、誘電性流体は、ベンジルトルエン(BT)、ジベンジルトルエン(DBT)及びこれらの任意の比率の混合物から選択される。好ましいBT/DBT混合物は、ベンジルトルエン/ジベンジルトルエンの総量に対して、60重量%と85重量%との間(限界値を含む)のベンジルトルエン、及び15重量%と40重量%との間(限界値を含む)のジベンジルトルエンを含むものである。
【0042】
非常に詳細に好ましい実施形態では、誘電性流体は、Jarylec(登録商標)シリーズの商品名でArkemaから販売されている誘電性流体から選択される。
【0043】
本発明の要件に適した他の誘電性流体は、例えば、Yantai Jinzhengによって、特にSRS-401Tの商品名で販売されているもの、Jinzhou Yongiaによって販売されているもの、特にM/DBT、及びJX Nipponによって、特にSAS-60Eの商品名で販売されているものである。
【0044】
本発明の文脈において既知かつ使用可能である主な誘電性流体のみ言及するために、本発明の要件に適した誘電性流体のさらに他の例として以下を挙げることができる:
-ジフェニルエタン(DPE)及びその異性体、特に1,1-DPE(CAS:612-00-0)、1,2-DPE(CAS:103-29-7)及びそれらの混合物(特にCAS:38888-98-1)。このような流体は市販されているか、又は文献、例えば欧州特許第0098677号明細書に記載されている。
-ジトリルエーテル(DT)及びその異性体、特にCAS:4731-34-4、CAS:28299-41-4の番号に対応するもの及びそれらの混合物。これらは、特にLanxessから商品名DiphylDTで市販されている。
-フェニルキシリルエタン(PXE)及びその異性体、特にCAS:6196-95-8、CAS:76090-67-0の番号に対応するもの及びそれらの混合物、特にPXE oilの商品名でChangzhou Winschemから市販されているもの。
-1,2,3,4-テトラヒドロ-(1-フェニルエチル)ナフタレン(CAS:63674-30-6)。この製品は、特にDowから参照Dowtherm(商標)RPの下に市販されている。
-ジイソプロピルナフタレン(CAS:38640-62-9)、特にIndus Chemie LtdからKMC113の商品名で入手可能である。
-モノイソプロピルビフェニル及びその異性体(CAS:25640-78-2)、特に商品名Wemcolで入手可能である。
-フェニルエチルフェニルエタン(PEPE)及びその異性体(CAS:6196-94-7)、特にChangzhou Winschem又はYantai Jinzhengから入手可能である。
【0045】
上記の全ての芳香族合成誘電性流体は、単独で、又は任意の比率でのそれらの2つ以上の混合物として使用することができる。一実施形態では、本発明による使用は、少なくとも1つの芳香族合成誘電性流体を単独で、又は当該技術分野で公知の1つ以上の他の誘電性流体、例えば、限定ではないが、鉱油、植物油及び天然又は合成エステルから選択される誘電性流体との混合物として含む熱伝達組成物を使用する。
【0046】
本発明の目的のために使用することができる全ての誘電性流体の合計に対する芳香族合成誘電性流体の量は、大きな比率の範囲内で変動してもよい。しかしながら、芳香族合成誘電性流体は、本発明の目的のために使用することができる熱伝達組成物中に存在する全ての誘電性流体の合計に対して、限界値を含む50重量%と100重量%との間、好ましくは限界値を含む70重量%と100重量%との間の比率で使用することが好ましい。
【0047】
別の実施形態によれば、本発明の文脈で使用することができる熱伝達組成物は、少なくとも1つの芳香族合成誘電性流体を、当該技術分野で周知の誘電性流体から選択される少なくとも1つの他の誘電性流体との混合物として含む。これらの誘電性流体は、主に、最も一般的には、鉱物、合成及び植物誘電性油、並びにそれらの任意の比率の混合物から選択される。
【0048】
鉱物誘電性油の中でも、パラフィン油及びナフテン油、例えばNynasによって販売されているNytroファミリー(特に、Nytro Taurus、Nytro Libra、Nytro 4000X及びNytro 10XN)及びShellによって販売されているDialaファミリーの誘電性油を非限定的に挙げることができる。
【0049】
合成誘電性油の中でも、脂肪族炭化水素、シリコーン油、及びエステル、及びそれらの2つ以上の任意の比率の混合物を非限定的に挙げることができる。脂肪族炭化水素の中でも、ポリ-α-オレフィン(PAO)、例えばポリイソブテン(PIB)、又は例えばSoltex Incによって販売されているものなどのビニリデン型のオレフィンを非限定的に挙げることができる。
【0050】
シリコーン油の中でも、ポリジメチルシロキサンタイプの直鎖シリコーン油、例えば、Wacker(登録商標)AKの名称でWackerによって販売されているものを非限定的に挙げることができる。
【0051】
合成エステルの中でも、フタル酸タイプのエステル、例えばジオクチルフタレート(DOP)又はジイソノニルフタレート(DINP)(例えば、BASFにより販売されている)を非限定的に挙げることができる。
【0052】
非限定的に、多価アルコールと有機酸、特に飽和又は不飽和C4~C22有機酸から選択される酸との間の反応から生じるエステルを挙げることができる。そのような有機酸の非限定的な例として、ウンデカン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、パルミチン酸及びそれらの混合物を挙げることができる。上記のエステルの合成に使用することができるポリオールの中でも、言及することができる非限定的な例には、ペンタエリトリトールが含まれる。
【0053】
したがって、多価アルコールと有機酸との間の反応から生じる合成エステルは、例えば、M&I MaterialsのMidel(登録商標)シリーズの製品、例えばMidel(登録商標)7131、又はMivolt(登録商標)シリーズの製品、例えばMivolt(登録商標)DFK及びMivolt(登録商標)DF7、又は他にNycoのNycodielシリーズのエステルである。
【0054】
天然エステル及び植物油の中で、言及され得る非限定的な例には、油性種子又は天然起源の他の供給源からの製品が含まれる。言及され得る非限定的な例としては、Cargillによって販売されているFR3(商標)又はEnvirotemp(商標)、又は他にM&I Materialsによって販売されているMidel EN1215が挙げられる。
【0055】
上記のように、本発明の熱伝達組成物は、1つの誘電性流体又はそれ以上、例えば2つ、又は3つ、又は4つ又は5つの誘電性流体を含んでもよい。
【0056】
一実施形態によれば、好ましい芳香族合成誘電性流体は、メチルポリアリールメタン、より詳細にはベンジルトルエンとジベンジルトルエンとの混合物である。より好ましくは、本発明による芳香族合成誘電性流体は、単一の流体又は2つの流体を含む。この場合、この流体は、メチルポリアリールメタン、より具体的にはベンジルトルエンとジベンジルトルエンとの混合物であることが好ましい。
【0057】
本発明の文脈で使用することができる熱伝達組成物は、特に3cStと50cStとの間(又はmm2/s)の粘度、より具体的には5cStと30cStとの間の粘度を有することができる。粘度は、ISO3104規格(1994)に従って測定される。
【0058】
本発明の文脈で使用することができる熱伝達組成物は、有利には、大気圧下で120℃と550℃との間、好ましくは150℃と450℃との間の沸点を有する。本発明の好ましい実施形態では、熱伝達組成物の沸点は、180℃と350℃との間、さらにより好ましくは200℃と300℃との間である。沸点は、1995年7月27日に採用されたOECDの文書番号103に記載された方法に従って測定される。
【0059】
本発明の文脈で使用することができる熱伝達組成物は、当該技術分野で当業者に周知である、例えば、非限定的に、抗酸化剤、不動態化剤、流動点降下剤、分解防止剤、芳香剤及び香味料、着色剤、保存剤他、及びそれらの混合物から選択される1つ以上の添加剤及び/又は充填剤をさらに含んでもよい。非常に特に好ましい誘電性流体は、分解防止剤を含む。
【0060】
熱伝達組成物に有利に使用され得る抗酸化剤の中で、挙げられ得る非限定的な例には、フェノール抗酸化剤、例えばジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、トコフェロール、及びこれらのフェノール抗酸化剤のアセテート;さらにアミンタイプの抗酸化剤、例えばフェニル-α-ナフチルアミン、ジアミンタイプの抗酸化剤、例えばN,N’-ビス(2-ナフチル)-パラ-フェニレンジアミン、さらにアスコルビン酸及びその塩、アスコルビン酸エステルが単独で、又はそれらの2つ以上の混合物として、又は他の成分、例えば緑茶抽出物若しくはコーヒー抽出物との混合物として含まれる。非常に特に適した抗酸化剤は、商品名Ionol(登録商標)でBrenntagから市販されているものである。
【0061】
本発明の文脈で使用することができる熱伝達組成物中の添加剤として使用することができる不動態化剤は、当該技術分野で当業者に公知の任意のタイプのものであり、有利にはトリアゾール誘導体、ベンズイミダゾール、イミダゾール、チアゾール又はベンゾチアゾールから選択される。挙げられ得る非限定的な例には、ジオクチルアミノメチル-2、3-ベンゾトリアゾール及び2-ドデシルジチオイミダゾールが含まれる。
【0062】
本発明の文脈で使用され得る熱伝達組成物中に存在し得る流動点降下剤の中で、挙げられ得る非限定的な例には、スクロースの脂肪酸エステル、及びポリ(アルキルメタクリレート)又は他にポリ(アルキルアクリレート)などのアクリルポリマーが含まれる。
【0063】
好ましいアクリルポリマーは、分子量が50000g.mol-1と500000g.mol-1との間であるものである。これらのアクリルポリマーの例としては、1~20個の炭素原子を含む直鎖アルキル基を含み得るポリマーが挙げられる。
【0064】
これらの中でも、非限定的な例として、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ヘプチルアクリレート)、ポリ(ヘプチルメタクリレート)、ポリ(ノニルアクリレート)、ポリ(ノニルメタクリレート)、ポリ(ウンデシルアクリレート)、ポリ(ウンデシルメタクリレート)、ポリ(トリデシルアクリレート)、ポリ(トリデシルメタクリレート)、ポリ(ペンタデシルアクリレート)、ポリ(ペンタデシルメタクリレート)、ポリ(ヘプタデシルアクリレート)及びポリ(ヘプタデシルメタクリレート)を挙げることができる。このような流動点降下剤の例は、三洋化成工業株式会社から商品名Aclubeとして市販されている。
【0065】
非常に特に好ましい態様によれば、本発明の文脈で使用することができる熱伝達組成物は、添加剤として少なくとも1つの分解防止剤を含む。分解防止剤は、当該技術分野で当業者に周知の任意のタイプのものであってよく、特にカルボジイミド誘導体、例えばジフェニルカルボジイミド、ジトリルカルボジイミド、ビス(イソプロピルフェニル)カルボジイミド又はビス(ブチルフェニル)カルボジイミドから、さらにフェニルグリシジルエーテル又はエステル、アルキルグリシジルエーテル又はエステル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、アントラキノンファミリーの化合物、例えば「BMAQ」の名称で販売されているβ-メチルアントラキノン、エポキシド誘導体、例えばビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル3,4-エポキシ-6-メチルヘキサンカルボキシレート、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAジグリシジルエーテルエポキシ、例えばBADGE、又は特にWhyte Chemicalsから入手可能なCEL2021Pから選択することができる。
【0066】
本発明の特定の実施形態によれば、本発明の文脈で使用することができる熱伝達組成物は、少なくとも1つの分解防止剤を含む。
【0067】
本発明の文脈で使用することができる組成物中に任意に存在する1つ又は複数の添加剤の重量含有量は、組成物の総重量に対して、限界値を含めて0.0001重量%~5重量%、好ましくは0.001重量%~3重量%、より優先的には0.01%~2%重量の範囲であり得る。
【0068】
本発明の文脈で使用することができる熱伝達組成物は、好ましい実施形態によれば、107Ω.cm以上、好ましくは108Ω.cm以上の体積抵抗率を有する。材料の抵抗率は、電流の流れに対抗するその能力を表す。言い換えれば、体積抵抗率は、前記誘電性流体の誘電特性の指標である。体積抵抗率は、規格IEC60247,2004年版に従って測定される。
【0069】
例えば、この体積抵抗率は、10Ω.cm~5×107Ω.cm;又は5×107Ω.cm~108Ω.cm;又は108Ω.cm~5×108Ω.cm;又は5×108Ω.cm~109Ω.cm;又は109Ω.cm~5×109Ω.cm;又は5×109Ω.cm~1010Ω.cmであってもよい。
【0070】
さらに、本発明による熱伝達組成物は、一般に、通常、20kV以上、好ましくは30kV以上、好ましくは50kV以上、より好ましくは90kV以上の破壊電圧を有する。「破壊電圧」という用語は、誘電体の一部を導電性にする最小電圧を意味する。したがって、このパラメータは、本発明の文脈で使用することができる熱伝達組成物の誘電特性の指標でもある。破壊電圧は、規格IEC60156,2018年版に従って測定される。
【0071】
例えば、本発明による熱伝達組成物の破壊電圧は、25kV~30kV、又は30kV~40kV、又は40kV~50kV、又は50kV~60kV、又は60kV~70kV、又は70kV~80kV、又は80kV~90kVの範囲内であり得る。
【0072】
熱伝達組成物は、組成物のバッテリーとの、好ましくはさらに二次供給源との熱交換を可能にするのに適したデバイスに収容される。二次供給源は、環境、又は追加の熱伝達組成物であり得る。
【0073】
特定の好ましい実施形態では、デバイスは、熱伝達組成物と車両のバッテリーとの直接接触を可能にする。好ましくは、車両のバッテリーは、熱伝達組成物に浸漬される。この場合、デバイスは、バッテリーの全部又は一部を収容する密閉チャンバを備えてもよく、熱伝達組成物は、チャンバ内に収容され、バッテリーの外壁と接触する。これにより、熱伝達組成物の誘電特性及び熱特性を最も有利に使用することができる。
【0074】
特定の実施形態では、熱伝達組成物は全体的に液体状態である。他の実施形態では、熱伝達組成物は、部分的に液体状態であり、部分的に気体状態である。チャンバ内の圧力は、0と5絶対バールとの間である。好ましくは、圧力は3絶対バール未満、好ましくは1.5絶対バール未満である。
【0075】
バッテリーの熱伝達組成物との直接接触による冷却は、バッテリーの充電が、バッテリーの急速加熱を伴う高速充電である場合に特に好ましい。これは、バッテリーと熱伝達組成物との間のより速い熱交換を可能し、したがって冷却の要求が増加しても冷却効率を維持するからである。
【0076】
あるいは、熱伝達組成物は、熱交換器を介してバッテリーと熱交換してもよい。デバイスは、その場合、組成物が流れる回路を備えてもよい。熱交換器は、特に、流体/固体タイプ、例えばプレート交換器であってもよい。
【0077】
好ましくは、回路はコンプレッサーを含まない。言い換えれば、回路は蒸気圧縮回路ではない。
【0078】
組成物を循環させるための手段、例えばポンプが提供され得る。
【0079】
追加の熱伝達組成物が提供される場合、これは、特に蒸気圧縮回路であり得る追加の回路に存在し得る。組成物間の熱交換は、例えば並流であっても、又は好ましくは向流であってもよい追加の熱交換器で行われる。
【0080】
追加の熱伝達組成物は、追加の熱交換器によって、それ自体環境と熱交換することができる。それを任意選択的に使用して、車室内の空気を加熱又は冷却することもできる。
【0081】
この目的のために、追加の回路は、別個の熱交換器を有する様々な分岐を含むことができ、追加の熱伝達組成物は、動作モードに応じて、これらの分岐を任意選択的に流れる。任意選択的に、代替的に、又は追加的に、追加の回路は、追加の熱伝達組成物の流れの方向を変更するための手段を含むことができ、例えば、1つ又は複数の三方又は四方弁を含む。
【0082】
「向流熱交換器」という用語は、第1の流体と第2の流体との間で熱が交換される熱交換器を意味し、交換器の入口の第1の流体が、交換器の出口の第2の流体と熱を交換し、交換器の出口の第1の流体が、交換器の入口の第2の流体と熱を交換する。
【0083】
例えば、向流熱交換器は、第1の流体の流れ及び第2の流体の流れが反対方向又は実質的に反対方向であるデバイスを備える。向流傾向を伴う交差電流モードで動作する交換器も、向流熱交換器の中に含まれる。熱交換器は、特に、U字形管、水平又は垂直管束、螺旋、プレート又はフィンを有する交換器であってもよい。
【0084】
本発明は、バッテリーの温度を調節するための本発明による熱伝達組成物の使用に関する。好ましくは、組成物は、バッテリーを冷却するために使用される。バッテリーを加熱するために使用されてもよい。必要に応じて(外部温度、バッテリー温度、バッテリーの動作モード)、加熱と冷却を交互にしてもよい。加熱はまた、少なくとも部分的に電気抵抗によって行われてもよい。
【0085】
したがって、本発明による熱伝達組成物は、バッテリーの冷却のみに専念することが可能であるが、実際は他の手段、例えば電気抵抗を使用してそれを加熱する。
【0086】
「バッテリーの温度」という用語は、一般に、その1つ又は複数の電気化学セルの外壁の温度を意味する。
【0087】
バッテリーの温度は、温度センサーによって測定することができる。バッテリーにいくつかの温度センサーが存在する場合、バッテリーの温度は、測定された様々な温度の平均と見なすことができる。
【0088】
温度制御は、車両のバッテリーが充電されているときに実行することができる。あるいは、バッテリーが放電している場合、特に車両のエンジンスイッチがオンになっている場合に実行することができる。これは、作動中にバッテリー温度が、外部温度及び/又は前記バッテリーの固有の加熱によって過大になることを特に防止する。
【0089】
特に、バッテリーの充電は高速充電であり得る。したがって、(バッテリーが完全に放電された瞬間からの)30分以下、好ましくは15分以下の時間にわたるバッテリーの完全充電中、本発明による組成物の使用によって、バッテリーの温度を最適温度範囲内に維持することができる。これは、急速充電中に、バッテリーは急速に加熱され、その動作及びその性能に影響を及ぼし得る高温に達しやすいことを考慮すると有利である。
【0090】
特定の実施形態では、本発明によるバッテリーの冷却は、バッテリーの温度を少なくとも5℃、又は少なくとも10℃、又は少なくとも15℃、又は少なくとも20℃、又は少なくとも25℃、又は少なくとも30℃下げることを可能にする。
【0091】
特定の実施形態では、バッテリーの冷却は、一定の期間にわたって継続される。
【0092】
特定の実施形態では、冷却及び場合により加熱によって、特に車両が動作している(エンジンが作動している)場合、特に車両が走行している場合に、バッテリー温度を最適温度範囲内に維持することができる。具体的には、バッテリー温度が低すぎると、その性能が著しく低下しやすい。
【0093】
したがって、特定の実施形態では、車両のバッテリーの温度は、最低温度t1と最高温度t2との間に維持することができる。
【0094】
特定の実施形態では、最低温度t1は10℃以上であり、最高温度t2は40℃以下である。好ましくは、最低温度t1は15℃以上であり、最高温度t2は30℃以下であり、より好ましくは、最低温度t1は16℃以上であり、最高温度t2は28℃以下である。
【0095】
所望の温度を確実に維持するために、測定されるバッテリーの温度の関数としてユニットの動作パラメータを修正するために、フィードバックループが有利に存在する。
【0096】
車両のバッテリー温度が最低温度t1と最高温度t2との間に維持されている間の外部温度は、特に-60℃~-50℃;又は50℃~40℃;又は40℃~-30℃;又は30℃~-20℃;又は20℃~-10℃;又は10℃~0℃;又は0℃~10℃;又は10℃~20℃;又は20℃~30℃;又は30℃~40℃;又は40℃~50℃;又は50℃~60℃;又はその他60℃~70℃であり得る。
【0097】
用語「外部気温」は、車両のバッテリーの温度が最低温度t1と最高温度t2との間に維持される前、及び維持されている間の車両外の常温を意味する。
【0098】
別の態様によれば、本発明は、本明細書の上記で定義されたような熱伝達組成物を含むバッテリーに関する。バッテリーは、電気又はハイブリッド輸送手段、例えば自動車、トラック、電車、船舶、二輪車(自転車、モーターバイク、スクーター)、産業車両(トラクター、掘削機、フォークリフト、農業機械、その他)に取り付けられたバッテリー、さらにオートマトン(例えばATM、通貨ディスペンサー、チケットディスペンサー、その他)、及びバッテリー充電ステーション自体に取り付けられたバッテリーであり得る。
【国際調査報告】