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特表2023-512640吸入一酸化窒素(iNO)治療を用いた肺動脈コンプライアンスの改善
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  • 特表-吸入一酸化窒素(iNO)治療を用いた肺動脈コンプライアンスの改善 図1
  • 特表-吸入一酸化窒素(iNO)治療を用いた肺動脈コンプライアンスの改善 図2A-B
  • 特表-吸入一酸化窒素(iNO)治療を用いた肺動脈コンプライアンスの改善 図2C
  • 特表-吸入一酸化窒素(iNO)治療を用いた肺動脈コンプライアンスの改善 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-28
(54)【発明の名称】吸入一酸化窒素(iNO)治療を用いた肺動脈コンプライアンスの改善
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/00 20060101AFI20230320BHJP
   A61M 16/00 20060101ALI20230320BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230320BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230320BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
A61K33/00
A61M16/00 305C
A61P11/00
A61P9/00
A61K9/72
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544737
(86)(22)【出願日】2021-01-27
(85)【翻訳文提出日】2022-09-14
(86)【国際出願番号】 US2021015257
(87)【国際公開番号】W WO2021154833
(87)【国際公開日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】62/968,424
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520448289
【氏名又は名称】ベレロフォン・セラピューティクス
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100187540
【弁理士】
【氏名又は名称】國枝 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】シャー,パラグ
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス,ピーター
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA93
4C076BB22
4C076CC11
4C076CC15
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA07
4C086HA21
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA12
4C086MA57
4C086NA13
4C086ZA36
4C086ZA59
(57)【要約】
吸入一酸化窒素を供給することによって、肺血管抵抗を低下させ、肺動脈圧を低下させ、および肺動脈コンプライアンスを向上させる方法が記載される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある時間にわたって1回または複数回の用量の吸入一酸化窒素を患者に送達するステップを含む、肺動脈圧を低下させる方法。
【請求項2】
ある時間にわたって1回または複数回の用量の吸入一酸化窒素を患者に送達するステップを含む、肺血管抵抗を低下させる方法。
【請求項3】
ある時間にわたって1回または複数回の用量の吸入一酸化窒素を患者に送達するステップを含む、動脈コンプライアンスを向上させる方法。
【請求項4】
前記時間が、5、10、15、20、25、30、60、または90分間である、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
吸入一酸化窒素の前記用量が、用量漸増パルス用量である、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
吸入一酸化窒素の前記用量が、iNO30、iNO45、およびiNO75用量のうちの1つまたは複数である、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[001]本出願は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれている、2020年1月31日に出願された米国特許仮出願第62/968,424号、名称「Improvement in Pulmonary Arterial Compliance with Inhaled Nitric Oxide(iNO)Treatment」の利益を主張するものである。
【0002】
[002]本出願は、肺動脈圧(mPAP)および肺血管抵抗(PVR)を低下させることによって肺動脈コンプライアンスを改善するための吸入一酸化窒素(iNO)の使用に概ね関する。
【背景技術】
【0003】
[003]一酸化窒素(NO)は、吸入すると、肺の血管を拡張させる作用を示すガスであり、血液の酸素化を改善し、肺高血圧症を軽減する。このため、一酸化窒素は、病態、例えば、肺動脈性高血圧症(PAH)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気腫合併肺線維症(CPFE)、嚢胞性線維症(CF)、特発性肺線維症(IPF)、肺気腫、間質性肺疾患(ILD)、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)、慢性高山病、または他の肺疾患による息切れ(呼吸困難)を起こしている患者の吸息呼吸相における治療用ガスとして提供される。
【0004】
[004]適切な条件下で投与される場合、NOは治療上有効である可能性があるが、正しく投与されなかった場合には有毒にもなり得る。NOは、酸素と反応して二酸化窒素(NO)を形成するが、NO送出管内に酸素または空気が存在する場合、NOが形成される可能性がある。NOは、多くの副作用を招く可能性のある有毒ガスであり、Occupational Safety & Health Administration(OSHA)は、一般産業におけるその許容曝露限界をわずか5ppmと規定している。したがって、NO療法の間、NOへの曝露を制限することは望ましい。
【0005】
[005]NOの有効な投与は、薬物の量および送達のタイミングを含む、多くの異なる可変要因に基づく。米国特許第7,523,752号、第8,757,148号、第8,770,199号、および第8,803,717号、ならびにNO送達デバイスの設計に対する意匠特許第D701,963号を含む、NO送達に関連する複数の特許が付与されており、その全ては参照により本明細書に組み込まれている。さらに、US2013/0239963およびUS2016/0106949を含む、NO送達に関連する係属中の出願があり、その両方とも参照により本明細書に組み込まれている。これらの特許および係属中の公報を踏まえても、治療用量による利益を最大限に高め、潜在的に有害な副作用を最小限に抑えるため、精密に制御された方式で、NOを送達する方法および装置はいまだに必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
[006]本発明のある実施形態において、ある時間にわたって1回または複数回の用量の吸入一酸化窒素を患者に送達するステップを含む、肺動脈圧を低下させる方法が説明されている。
【0007】
[007]本発明の別の実施形態において、ある時間にわたって1回または複数回の用量の吸入一酸化窒素を患者に送達するステップを含む、肺血管抵抗を低下させる方法が説明されている。
【0008】
[008]さらに別の実施形態において、ある時間にわたって1回または複数回の用量の吸入一酸化窒素を患者に送達するステップを含む、動脈コンプライアンスを向上させる方法が説明されている。
【0009】
[009]別の実施形態において、1回または複数回の用量の吸入一酸化窒素を送達するための時間は、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、または90分間である。別の実施形態において、吸入一酸化窒素の用量は、用量漸増パルス用量である。別の実施形態において、吸入一酸化窒素の用量は、iNO30、iNO45、iNO75、およびiNO125のうちの1つまたは複数である。
【0010】
[0010]前述の発明の概要に加えて、以下の発明を実施するための形態は、添付の図面と共に読まれることで、より良く理解されるであろう。
[0011]上記で列挙された本発明の特徴が詳細に理解され得るように、上記で簡潔に要約された本発明のより詳細な説明は、そのいくつかが添付の図面に例示されている実施形態を参照することによって得られることがある。しかし、添付の図面は、本発明の典型的な実施形態のみを例示するものであり、このため、本発明が他の等しく有効な実施形態を含み得ることから、本発明の範囲を限定すると判断されるものではないことは留意するべきである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】[0012]図1は、急速iNO用量漸増のための試験デザインを示す図である。9名のPH-PF対象者は、連続酸素投与と共に漸増用量のパルスiNO(iNO30~iNO75μg/kg IBW/時間)を投与された。
図2A-B】[0013]図2は、図2A~2Cを含み、30μg/kg IBW/時間(iNO30)、45μg/kg IBW/時間(iNO45)、および75μg/kg IBW/時間(iNO75)における吸入一酸化窒素に対する、肺動脈コンプライアンス、すなわちPAC(図2A)、肺血管抵抗、すなわちPVR(図2B)、および平均肺動脈圧、すなわちmPAP(図2C)を示すグラフである。このデータは、9名の肺高血圧症-間質性肺疾患(ILD)患者に基づいている。棒グラフは、全ての利用可能な対象者に対する各評価におけるベースラインからの中央値の変化を表す。図2Aは、全ての用量がPACの改善を明示しており、iNO30およびiNO45における変化が統計的に有意であることを示す。同様に、図2Bは、全てのiNO用量において、PVRの統計的に有意な改善を明示し、iNO30とiNO45用量の間におけるさらに統計的に有意な改善を明示している。図2Cは、ベースラインに比べて、全てのiNO用量におけるmPAPの統計的に有意な改善を明示している。統計分析は、Wilcoxon順位検定に基づいている。
図2C図2は、図2A~2Cを含み、30μg/kg IBW/時間(iNO30)、45μg/kg IBW/時間(iNO45)、および75μg/kg IBW/時間(iNO75)における吸入一酸化窒素に対する、肺動脈コンプライアンス、すなわちPAC(図2A)、肺血管抵抗、すなわちPVR(図2B)、および平均肺動脈圧、すなわちmPAP(図2C)を示すグラフである。このデータは、9名の肺高血圧症-間質性肺疾患(ILD)患者に基づいている。棒グラフは、全ての利用可能な対象者に対する各評価におけるベースラインからの中央値の変化を表す。図2Aは、全ての用量がPACの改善を明示しており、iNO30およびiNO45における変化が統計的に有意であることを示す。同様に、図2Bは、全てのiNO用量において、PVRの統計的に有意な改善を明示し、iNO30とiNO45用量の間におけるさらに統計的に有意な改善を明示している。図2Cは、ベースラインに比べて、全てのiNO用量におけるmPAPの統計的に有意な改善を明示している。統計分析は、Wilcoxon順位検定に基づいている。
図3】[0014]図3は、経時的な抵抗コンプライアンスを明示する線グラフである。具体的には、PACとPVRは、一定の抵抗コンプライアンス時間で予想される逆双曲線関係を示す。iNO投与中の対象者は、2mL/mmHgを上回るPACの平均的な改善を明示した。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0015]別段の定めがない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で言及される全ての特許および公報は、その全体が参照によって組み込まれる。
【0013】
[0016]本発明のいくつかの例示的な実施形態を説明する前に、本発明が、以下の説明に明記された構成またはプロセスの工程の詳細に限定されるものではないことは理解されるべきである。本発明は、他の実施形態が可能であるとともに、様々な方法で実践するか、または実行することができる。
【0014】
[0017]本明細書全体を通した「一実施形態」、「特定の実施形態」、「1つまたは複数の実施形態」、または「ある実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明された特定の特徴、構造、材料、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な箇所における「1つまたは複数の実施形態において」、「特定の実施形態において」、「一実施形態において」、または「ある実施形態において」のような語句の出現は、必ずしも本発明の同じ実施形態を指していない。さらに、特定の特徴、構造、材料、または特性は、1つまたは複数の実施形態において、任意の適当な方法で組み合わされる場合がある。
【0015】
[0018]本発明は、特定の実施形態を参照して本明細書に記載されているが、これらの実施形態は、本発明の原理および適用を単に例示するものであることは理解されるべきである。本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明の方法および装置に対する様々な修正および変形を行うことが可能であることは、当業者にとって明白であろう。したがって、本発明が、添付された特許請求の範囲およびその等価物の範囲内である修正ならびに変形を含むことは意図されている。
定義
[0019]「有効量」または「治療上有効な量」という用語は、本明細書に記載される化合物または化合物の組合せの量であって、疾患の治療を含むがそれに限定されない、意図された用途をもたらすのに十分な量を指す。治療上有効な量は、意図された用途(in vitroまたはin vivo)、治療される対象者および病状(例えば、対象者の体重、年齢、および性別)、病状の重症度、投与の方法などによって変更されることがあり、当業者によって容易に決定され得る。この用語は、標的細胞における特定の反応(例えば、血小板粘着の低下および/または細胞遊走の減少)を引き起こすであろう用量にも適用される。具体的な用量は、選ばれた特定の化合物、遵守すべき投与レジメン、前記化合物が他の化合物と組み合わせて投与されるかどうか、投与タイミング、投与される組織、および前記化合物が運ばれる物理的送達システムに応じて変更されるであろう。
【0016】
[0020]本明細書で使用する場合、「治療効果」という用語は、治療的利益および/または予防的利益を包含する。予防効果には、疾患もしくは状態の出現を遅延させることもしくは排除すること、疾患もしくは状態の症状の発症を遅延させることもしくは排除すること、疾患もしくは状態の進行を緩やかにすること、止めること、もしくは後退させること、またはその任意の組合せが含まれる。
【0017】
[0021]「間質性肺疾患」または「ILD」の病態には、特発性間質性肺炎(IIP)、慢性過敏性肺炎、職業性または環境性肺疾患、特発性肺線維症(IPF)、非IPFのIIP、肉芽腫(例えば、サルコイドーシス)、ILDに関連する結合組織疾患、およびILDの他の形態を含むが、これらには限定されない、ILDの全てのサブタイプが含まれる。
【0018】
[0022]例えば、投与範囲、製剤の構成成分の量など、本発明の態様を説明するために範囲が本明細書で使用される場合、範囲の全ての組合せおよび部分的組合せならびにその中の特定の実施形態を含むことが意図されている。数または数値範囲に言及する場合における「約」という用語の使用は、言及された数または数値範囲が、実験のばらつき内(すなわち、統計的実験誤差内)の概数であり、このため、前記数または数値範囲は変動することがあることを意味する。この変動は、前述の数または数値範囲の通常0%~15%、好ましくは0%~10%、より好ましくは0%~5%である。「含んでいる(comprising)」という用語(および「含む(comprise)」または「含む(comprises)」または「有している」または「含んでいる(including)」などの関連用語)は、例えば、記載される特徴「からなる」もしくは「から本質的になる」物質の任意の組成、任意の方法、または任意のプロセスの実施形態のような実施形態を含む。
【0019】
[0023]疑念を避けるために、本発明の特定の態様、実施形態、または実施例に関連して説明される特定の特徴(例えば、整数、特性、値、使用、疾病、式、化合物、または群)は、それと矛盾しない限り、本明細書に記載される他のいかなる態様、実施形態、または実施例にも適用できると理解されるべきであることは、本明細書で意図されている。したがって、このような特徴は、本明細書で定義される定義、請求項、または実施形態のいずれかに関連して適用する場合は、使用されることがある。本明細書(任意の添付されている請求項、要約、および図を含む)で開示される特徴の全て、および/または同様に開示される任意の方法またはプロセスの段階の全ては、特徴および/または段階の少なくともいくつかが互いに相容れない組合せを除く、任意の組合せで組み合わされてもよい。本発明は、開示されるいかなる実施形態のいかなる詳細にも限定されるものではない。本発明は、本明細書(任意の添付されている請求項、要約、および図を含む)で開示される特徴のうちの任意の新規のものもしくは任意の新規の組合せ、または同様に開示される任意の方法またはプロセスの段階のうちの任意の新規のものもしくは任意の新規の組合せに及ぶ。
【0020】
[0024]本発明に関して、特定の実施形態において、用量のガス(例えば、NO)は、患者による吸息の間にパルスで患者に投与される。驚くべきことに、一酸化窒素の送達は、合計呼吸吸息時間の最初の3分の2以内に、精密で正確に行われることが可能であり、患者は、このような送達による利益を得ることが見出されている。薬物製品の損失および有害な副作用のリスクを最小限に抑えるこのような送達は、パルス用量の有効性を高め、ひいては、有効であるために、患者に投与される必要のあるNOの全体的な量をより少なくする結果となる。このような送達は、限定されないが、特発性肺線維症(IPF)、I~V群の肺高血圧症(PH)を含む肺動脈性高血圧症(PAH)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気腫合併肺線維症(CPFE)、嚢胞性線維症(CF)、肺気腫、間質性肺疾患(ILD)、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)、慢性高山病、または他の肺疾患のような種々の疾患の治療のために有用であり、例えば、肺炎の治療における抗菌薬としても有用である。
【0021】
[0025]このような精度は、換気が不十分な肺領域の部分のみをNOに曝露するという点で、さらに有利である。低酸素症およびヘモグロビンの問題も、このようなパルス送達を用いることで軽減する可能性があり、NOへの曝露もより制限される。
呼吸パターン、検出、およびトリガー
[0026]呼吸パターンは、個人、時間帯、活動のレベル、および他の可変要因に基づいて変動する;このため、個人の呼吸パターンを予め決定することは困難である。そのため、呼吸パターンに基づいて患者に治療法を届ける送達システムは、有効であるためには、可能性のある呼吸パターンの範囲に対処可能であるべきである。
【0022】
[0027]特定の実施形態において、患者または個人は任意の年齢であり得るが、より特定の実施形態において、患者は16歳以上である。
[0028]本発明のある実施形態において、呼吸パターンには、本明細書で使用される通り、単回の呼吸に対して決定される全吸息時間の測定値が含まれる。しかし、文脈によって、「全吸息時間」は、療法の間に検出された全ての呼吸における全ての吸息時間の総和を指すこともある。全吸息時間は、観察されるか、または算出される場合がある。別の実施形態において、全吸息時間は、シミュレートされた呼吸パターンに基づいて検証された時間である。
【0023】
[0029]本発明のある実施形態において、呼吸検出には、少なくとも1つのトリガーが含まれ、いくつかの実施形態では、一緒に機能する少なくとも2つの個別のトリガー、すなわち、呼吸レベルトリガー(breath level trigger)および/または呼吸傾斜トリガー(breath slope trigger)が含まれる。
【0024】
[0030]本発明のある実施形態において、呼吸レベルトリガーアルゴリズムは、呼吸検出のために使用される。呼吸レベルトリガーは、圧力の閾値(例えば、閾値陰圧)が吸息に達した際に呼吸を検出する。
【0025】
[0031]本発明のある実施形態において、呼吸傾斜トリガーは、圧力波形の傾斜が吸息を示す際に呼吸を検出する。呼吸傾斜トリガーは、場合によっては、特に、短くて浅い呼吸の検出に使用する場合に、閾値トリガーよりも正確である。
【0026】
[0032]本発明のある実施形態において、これら2つのトリガーの組合せは、特に、複数の治療用ガスが患者に同時に投与されている場合に、概してより正確な呼吸検出システムを提供する。
【0027】
[0033]本発明のある実施形態において、呼吸レベルおよび/または呼吸傾斜を検出するための呼吸感度制御は固定されている。本発明のある実施形態において、呼吸レベルまたは呼吸傾斜のいずれかを検出するための呼吸感度制御は、調整可能であるか、またはプログラム可能である。本発明のある実施形態において、呼吸レベルおよび/または呼吸傾斜のための呼吸感度制御は、最低感度から最高感度までの範囲で調整可能であり、ここで、最高感度設定は、最低感度設定よりも呼吸を検出する感度が高い。
【0028】
[0034]少なくとも2つのトリガーが使用される特定の実施形態において、各トリガーの感度は、異なる相対的レベルで設定される。少なくとも2つのトリガーが使用される一実施形態において、1つのトリガーは、最大感度に設定され、もう1つのトリガーは、最大感度より低く設定される。少なくとも2つのトリガーが使用され、また1つのトリガーが呼吸レベルトリガーである一実施形態において、この呼吸レベルトリガーは、最大感度に設定される。
【0029】
[0035]しばしば、患者の吸入/吸息の全てが検出され、ガス(例えば、NO)のパルス投与に対する吸入/吸息イベントとして分類されるわけではない。検出の過誤は、特に、複数のガスが患者に同時に投与されている場合、例えば、NOと酸素の組合せ療法で生じる可能性がある。
【0030】
[0036]本発明の実施形態、および特に、呼吸傾斜トリガーを単独で、または別のトリガーと組み合させて組み入れている実施形態は、吸息イベントの正しい検出を最大限に高めることが可能であり、それによって、タイミングにおける誤認または過誤による無駄を最小限に抑えつつ、療法の有効性および効率を最大限に高める。
【0031】
[0037]特定の実施形態において、患者へのガス送達のための時間枠にわたる患者の合計吸息回数の50%を上回る吸息が検出される。特定の実施形態において、患者の合計吸息回数の75%を上回る吸息が検出される。特定の実施形態において、患者の合計吸息回数の90%を上回る吸息が検出される。特定の実施形態において、患者の合計吸息回数の95%を上回る吸息が検出される。特定の実施形態において、患者の合計吸息回数の98%を上回る吸息が検出される。特定の実施形態において、患者の合計吸息回数の99%を上回る吸息が検出される。特定の実施形態において、患者の合計吸息回数の75%~100%が検出される。
【0032】
投与量および投与レジメン
[0038]本発明のある実施形態において、患者に送達される一酸化窒素は、1リットル当たりNO約3~約18mg、1リットル当たりNO約6~約10mg、1リットル当たりNO約3mg、1リットル当たりNO約6mg、または1リットル当たりNO約18mgの濃度で製剤化される。NOは、単独でか、または代替のガス療法と組み合わせて投与されることがある。特定の実施形態において、酸素(例えば、高濃度酸素)は、NOと組み合わせて患者に投与され得る。
【0033】
[0039]本発明のある実施形態において、ある体積の一酸化窒素は、呼吸当たり約0.350mL~約7.5mLの量で投与される(例えば、単回のパルスで)。いくつかの実施形態において、単回のセッション過程の間、各パルス用量における一酸化窒素の体積は同じであってよい。いくつかの実施形態において、ガスを患者に送達するための単回の時間枠の間、数回のパルス用量における一酸化窒素の体積は異なってもよい。いくつかの実施形態において、呼吸パターンをモニターしつつガスを患者に送達するための単回の時間枠の過程の間、各パルス用量における一酸化窒素の体積は調整されてもよい。本発明のある実施形態において、肺疾患の症状を治療するか、または軽減する目的のために、パルス単位(「パルス用量」)で患者に送達される一酸化窒素の量(ng単位で)は、以下の通りに算出され、ナノグラムの値に四捨五入される:
用量μg/kg-IBW/時間×理想体重kg(kg-IBW)×((1時間/60分)/(呼吸数(bpm))×(1,000ng/μg)。
【0034】
[0040]例として、100μg/kg IBW/時間の用量における患者Aは、理想体重が75kgであり、呼吸数が1分間当たり20呼吸(または、1時間当たり1200呼吸)である:
100μg/kg-IBW/時間×75kg×(1時間/1200呼吸)×(1,000ng/μg)=1パルス当たり6250ng
【0035】
[0041]特定の実施形態において、60/呼吸数(ms)の変数は、投与イベント時間といわれることもある。本発明の別の実施形態において、投与イベント時間は、1秒、2秒、3秒、4秒、5秒、6秒、7秒、8秒、9秒、または10秒である。
【0036】
[0042]本発明のある実施形態において、単回のパルス用量は、患者に治療効果(例えば、治療上有効な量のNO)をもたらす。本発明の別の実施形態において、2回以上のパルス用量の総量は、患者に治療効果(例えば、治療上有効な量のNO)をもたらす。
【0037】
[0043]本発明のある実施形態において、一酸化窒素の少なくとも約300、約310、約320、約330、約340、約350、約360、約370、約380、約390、約400、約410、約420、約430、約440、約450、約460、約470、約480、約490、約500、約510、約520、約530、約540、約550、約560、約570、約580、約590、約600、約625、約650、約675、約700、約750、約800、約850、約900、約950、または約1000パルスが、1時間ごとに患者に投与される。
【0038】
[0044]本発明のある実施形態において、一酸化窒素療法セッションは、ある時間枠にわたって行われる。一実施形態において、時間枠は、1日当たり少なくとも約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、または約24時間である。
【0039】
[0045]本発明のある実施形態において、一酸化窒素治療は、最短の治療過程の時間枠の間に実施される。本発明のある実施形態において、最短の治療過程は、約10分間、約15分間、約20分間、約30分間、約40分間、約50分間、約60分間、約70分間、約80分間、または約90分間である。本発明のある実施形態において、最短の治療過程は、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、または約24時間である。本発明のある実施形態において、最短の治療過程は、約1、約2、約3、約4、約5、約6、もしくは約7日間、または約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、もしくは約8週間、または約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約18、もしくは約24ヵ月である。
【0040】
[0046]本発明のある実施形態において、一酸化窒素治療セッションは、1日当たり1回または複数回実施される。本発明のある実施形態において、一酸化窒素治療セッションは、1日当たり1回、2回、3回、4回、5回、6回、または6回を超えてもよい。本発明のある実施形態において、前記治療セッションは、月1回、2週間に1回、1週間に1回、隔日に1回、1日1回、または1日に複数回実施されてもよい。
【0041】
NOパルスのタイミング
[0047]本発明のある実施形態において、呼吸パターンは、ある用量の一酸化窒素を投与するタイミングを算出するためのアルゴリズムと相関している。
【0042】
[0048]吸入/吸息イベントを検出する精度は、単回の検出された呼吸の全吸息時間における特定の時間枠にガスを投与することによって、ガス(例えば、NO)パルスのタイミングが、その有効性を最大限に高めることを可能にもする。
【0043】
[0049]本発明のある実施形態において、ガスのパルス用量の少なくとも50パーセント(50%)は、各呼吸の全吸息時間の最初の3分の1にわたって送達される。本発明のある実施形態において、ガスのパルス用量の少なくとも60パーセント(60%)は、全吸息時間の最初の3分の1にわたって送達される。本発明のある実施形態において、ガスのパルス用量の少なくとも75パーセント(75%)は、各呼吸の全吸息時間の最初の3分の1にわたって送達される。本発明のある実施形態において、ガスのパルス用量の少なくとも85パーセント(85%)は、各呼吸の全吸息時間の最初の3分の1にわたって送達される。本発明のある実施形態において、ガスのパルス用量の少なくとも90パーセント(90%)は、全吸息時間の最初の3分の1にわたって送達される。本発明のある実施形態において、ガスのパルス用量の少なくとも92パーセント(92%)は、全吸息時間の最初の3分の1にわたって送達される。本発明のある実施形態において、ガスのパルス用量の少なくとも95パーセント(95%)は、全吸息時間の最初の3分の1にわたって送達される。本発明のある実施形態において、ガスのパルス用量の少なくとも99パーセント(99%)は、全吸息時間の最初の3分の1にわたって送達される。本発明のある実施形態において、ガスのパルス用量の90%~100%は、全吸息時間の最初の3分の1にわたって送達される。
【0044】
[0050]本発明のある実施形態において、パルス用量の少なくとも70パーセント(70%)は、全吸息時間の最初の2分の1にわたって患者に送達される。本発明のさらに別の実施形態において、パルス用量の少なくとも75パーセント(75%)は、全吸息時間の最初の2分の1にわたって患者に送達される。本発明のある実施形態において、パルス用量の少なくとも80パーセント(80%)は、全吸息時間の最初の2分の1にわたって患者に送達される。本発明のある実施形態において、パルス用量の少なくとも90パーセント(90%)は、全吸息時間の最初の2分の1にわたって患者に送達される。本発明のある実施形態において、パルス用量の少なくとも95パーセント(95%)は、全吸息時間の最初の2分の1にわたって患者に送達される。本発明のある実施形態において、ガスのパルス用量の95%~100%は、全吸息時間の最初の2分の1にわたって送達される。
【0045】
[0051]本発明のある実施形態において、パルス用量の少なくとも90パーセント(90%)は、全吸息時間の最初の3分の2にわたって送達される。本発明のある実施形態において、パルス用量の少なくとも95パーセント(95%)は、全吸息時間の最初の3分の2にわたって送達される。本発明のある実施形態において、パルス用量の95%~100%は、全吸息時間の最初の3分の2にわたって送達される。
【0046】
[0052]集計した場合、療法セッション/時間枠にわたる複数回のパルス用量の投与も、上記の範囲に該当し得る。例えば、集計した場合、療法セッションの間に投与された全パルス用量のうちの95%を超える用量は、検出された全呼吸のうちの全吸息時間の最初の3分の2にわたって投与されていた。より高い精度の実施形態において、集計した場合、療法セッションの間に投与された全パルス用量のうちの95%を超える用量は、検出された全呼吸のうちの全吸息時間の最初の3分の1にわたって投与されていた。
【0047】
[0053]本発明の検出方法の精度の高さを踏まえると、パルス用量は、吸息のうちの任意の特定の時間窓の間に投与され得る。例えば、パルス用量は、患者の吸息の最初の3分の1、中間の3分の1、または最後の3分の1に定めて投与され得る。代替として、吸息の最初の2分の1または二番目の2分の1は、パルス用量を投与するための標的に定められ得る。さらに、投与するための標的は変更されてもよい。一実施形態において、吸息時間の最初の3分の1は、1回または一連の吸息における標的に定められ得、ここで、同じか、または異なる療法セッションの間の二番目の3分の1または二番目の2分の1は、続く1回または一連の吸息における標的に定められてもよい。代替として、吸息時間の最初の4分の1が経過した後に、パルス投与を開始し、中間の2分の1(次の2つの4分の1)の間継続して、パルス投与が、吸息時間の最後の4分の1の開始時に終了するように定めることが可能である。いくつかの実施形態において、パルスは、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、もしくは750ミリ秒(ms)遅延する場合があるか、または約50~約750ミリ秒、約50~約75ミリ秒、約100~約750ミリ秒、もしくは約200~約500ミリ秒の範囲で遅延する場合がある。
【0048】
[0054]吸入の間にパルス投与を利用することは、パルス投与されたガス、例えば、NOへの曝露から、換気が不十分な肺領域および肺胞領域の曝露を低減する。一実施形態において、換気が不十分な(a)肺領域または(b)肺胞領域の5%未満がNOに曝露される。一実施形態において、換気が不十分な(a)肺領域または(b)肺胞領域の10%未満がNOに曝露される。一実施形態において、換気が不十分な(a)肺領域または(b)肺胞領域の15%未満がNOに曝露される。一実施形態において、換気が不十分な(a)肺領域または(b)肺胞領域の20%未満がNOに曝露される。一実施形態において、換気が不十分な(a)肺領域または(b)肺胞領域の25%未満がNOに曝露される。一実施形態において、換気が不十分な(a)肺領域または(b)肺胞領域の30%未満がNOに曝露される。一実施形態において、換気が不十分な(a)肺領域または(b)肺胞領域の50%未満がNOに曝露される。一実施形態において、換気が不十分な(a)肺領域または(b)肺胞領域の60%未満がNOに曝露される。一実施形態において、換気が不十分な(a)肺領域または(b)肺胞領域の70%未満がNOに曝露される。一実施形態において、換気が不十分な(a)肺領域または(b)肺胞領域の80%未満がNOに曝露される。一実施形態において、換気が不十分な(a)肺領域または(b)肺胞領域の90%未満がNOに曝露される。
【0049】
治療法
[0055]本発明のある実施形態において、肺関連の状態を有する患者における活動レベルを上昇させるための方法が記載されている。この方法は、任意選択でiNO投与に酸素を補う、iNOの投与を含む。本発明のある実施形態において、iNOは、本明細書で論じられるパルス方式に従って投与される。本発明のある実施形態において、iNOは、INOpulse(登録商標)デバイス(Bellerophon Therapeutics)を使用して患者に送達される。一実施形態において、患者は、少なくとも約1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間、または20週間の期間の間、1日当たり少なくとも約10分間、20分間、30分間、40分間、50分間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、または24時間の時間の間iNOを投与される。一実施形態において、患者は、8週間の間iNOを投与される。別の実施形態において、患者は、16週間の間iNOを投与される。本発明のある実施形態において、一酸化窒素療法セッションは、時間枠にわたって生じる。一実施形態において、時間枠は、1日当たり少なくとも約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、または約24時間である。
【0050】
[0056]本発明のある実施形態において、一酸化窒素治療は、最短の治療過程の時間枠の間に実施される。本発明のある実施形態において、最短の治療過程は、約10分間、約15分間、約20分間、約30分間、約40分間、約50分間、約60分間、約70分間、約80分間、または約90分間である。本発明のある実施形態において、最短の治療過程は、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、または約24時間である。本発明のある実施形態において、最短の治療過程は、約1、約2、約3、約4、約5、約6、もしくは約7日間、または約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、もしくは約8週間、または約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約18、もしくは約24ヵ月である。
【0051】
[0057]本発明のある実施形態において、iNOは、10μg/kg理想体重(IBW)/時間~200μg/kg IBW/時間またはそれを超える範囲で投与される。一実施形態において、iNOは、約20μg/kg IBW/時間~約150μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、約25μg/kg IBW/時間~約100μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、約30μg/kg IBW/時間~約75μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、約25μg/kg IBW/時間~約50μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、約30μg/kg IBW/時間~約45μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、25μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、30μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、35μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、40μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、45μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、50μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、55μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、60μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、65μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、70μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、75μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、80μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、85μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、90μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、95μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、100μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、105μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、110μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、115μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、120μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、125μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、130μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、135μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、140μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、145μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、150μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、155μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、160μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、165μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、170μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、175μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、180μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、185μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、190μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、195μg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、200μg/kg IBW/時間で投与される。
【0052】
[0058]本発明のある実施形態において、患者は、iNOと共に酸素も投与される。本発明のある実施形態において、酸素は、最大20L/分までで投与される。本発明のある実施形態において、酸素は、最大1L/分、2L/分、3L/分、4L/分、5L/分、6L/分、7L/分、8L/分、9L/分、10L/分、11L/分、12L/分、13L/分、14L/分、15L/分、16L/分、17L/分、18L/分、19L/分、または20L/分までで投与される。本発明のある実施形態において、酸素は、医師に処方された通りに投与される。
【0053】
[0059]本発明のある実施形態において、本発明において有用な肺関連の状態は、特発性肺線維症(IPF)、肺線維症(PF)、間質性肺疾患(ILD)、肺動脈性高血圧症(PAH)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症(CF)、および肺気腫から選択される。本発明のある実施形態において、肺疾患は、I~V群の肺高血圧症(PH)のような他の肺疾患と関連する肺高血圧症である。別の実施形態において、肺疾患および/または肺関連の状態は、間質性肺疾患と関連する肺高血圧症である。本発明のある実施形態において、肺疾患および/または肺関連の状態は、肺線維症と関連する肺高血圧症である。本発明のある実施形態において、肺疾患および/または肺関連の状態は、特発性肺線維症と関連する肺高血圧症である。本発明のある実施形態において、ILDに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが高い。本発明の別の実施形態において、ILDに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが低い。本発明のある実施形態において、ILDに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが中程度である。本発明のある実施形態において、IPFに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが高い。本発明のある実施形態において、IPFに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが中程度である。本発明の別の実施形態において、IPFに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが低い。本発明のある実施形態において、ILDに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが高い。本発明のある実施形態において、PFに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが高い。本発明のある実施形態において、PFに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが中程度である。本発明のある実施形態において、PFに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが低い。
【0054】
[0060]肺動脈コンプライアンス(PAC)、肺血管抵抗(PVR)、および肺動脈圧(mPAP)の改善
[0061]肺線維症(PF)は、多種多様な線維性間質性肺疾患(ILD)からなる。肺高血圧症(PH)は、肺線維症を高頻度で合併し(PH-PF)、著しい臨床転帰の悪化に関連する。現時点で、PH-PFを治療するための既承認の療法は存在しない。PACは、全右心室(RV)後負荷の約25%を占める拍動性後負荷を描出し、PACの低下は、遠位肺血管障害および右心室-肺動脈(RV-PA)脱共役を生じさせ、かつ/または悪化させる可能性がある。PACは、PAHにおける転帰の強力な予測因子であることが示されており、1単位(mL/mmHg)低下ごとに死亡リスクが17倍増加する結果となる。PACにおける一貫して有意義な改善をもたらす、現時点で利用可能なPAH肺血管拡張療法はない。PH-PF患者のPACにおける変化に関するデータは限られている。吸入NOは、長期酸素療法中であり、心エコー検査によって判定される通りPHの中程度の可能性または高い可能性を有するPH-PF患者のPACを改善する。
【0055】
[0062]肺動脈圧を低下させ、肺血管抵抗を低下させ、また肺動脈コンプライアンスを向上させる方法が本明細書に記載される。前記方法は、ある時間にわたって1回または複数回の用量のiNOを患者に送達するステップを含む。本発明のある実施形態において、iNOは、1回または複数回のパルス用量で送達される。本発明のある実施形態において、iNOは、1回または複数回の用量漸増パルス用量で送達される。本発明のある実施形態において、iNOの1回または複数回のパルス用量は、180分間、170分間、160分間、150分間、140分間、130分間、120分間、110分間、100分間、90分間、80分間、70分間、60分間、50分間、40分間、30分間、20分間、10分間の時間にわたって送達される。本発明のある実施形態において、iNOの単回用量は、10分間、30分間、60分間、または90分間にわたって送達される。別の実施形態において、iNOの単回用量は、約10分間の時間送達される。別の実施形態において、iNOの複数回用量は、10分間~約90分間の時間にわたって送達される。本発明のある実施形態において、iNOの複数回用量は、図1に記載される通りに送達される。
【0056】
[0063]別の実施形態において、iNOの各用量の後にウォッシュアウト期間が続く。一実施形態において、ウォッシュアウト期間は、約1分間~約30分間である。別の実施形態において、ウォッシュアウト期間は、約5分間~約25分間である。別の実施形態において、ウォッシュアウト期間は、約10分間~約20分間である。別の実施形態において、ウォッシュアウト期間は、約15分間である。別の実施形態において、ウォッシュアウト期間は、約10分間である。別の実施形態において、ウォッシュアウト期間は、約5、10、15、20、25、または30分間である。
【0057】
[0064]本発明のある実施形態において、iNOは、30μg/kg IBW/時間の用量で送達される。別の実施形態において、iNOは、45μg/kg IBW/時間の用量で送達される。別の実施形態において、iNOは、75μg/kg IBW/時間の用量で送達される。実施例1は、この発見をより詳細に考察している。
【0058】
[0065]以下の係属中の特許出願は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれている:2019年5月17日に出願されたPCT/US2019/032887、2019年8月8日に出願されたPCT/US2019/045806、2020年1月14日に出願されたPCT/US2020/013446、および2020年1月3日に出願されたPCT/US2020/012138。
【0059】
[0066]本発明の好ましい実施形態は、本明細書で示され、説明されているが、このような実施形態は、例としてのみ提供されており、その他に本発明の範囲を限定することを意図するものではない。記載される本発明の実施形態に対する種々の代替は、本発明を実施する際に採用されることがある。
【実施例
【0060】
[0067]本明細書に包含される実施形態は、以下の実施例を参照しつつ、ここで説明される。これらの実施例は、例示のみの目的で提供され、本明細書に包含される開示は、決してこれらの実施例に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、本明細書で提示される教示の結果として明らかとなるありとあらゆる変形を包含すると解釈されるべきである。
【0061】
[0068]
実施例1
PFと関連するPH(PH-PF)患者における右心カテーテル法(RHC)で測定しながらのPACに対するパルスiNOの用量漸増
[0069]本試験は、パルスiNOの用量を増加することによって、長期酸素療法中であり、心エコー検査によって判定される通り肺高血圧症(PH)の中程度の可能性または高い可能性を有するPH-PF患者のPACを改善することができるかどうかを判定するために実施された。9名の患者に対し、90分間にわたって急速にiNOの用量漸増を試みた(iNO30、iNO45、およびiNO75)。各用量を10分間投与し、用量間の「ウォッシュアウト」期間を10分間とした。0~30分の時点でベースライン測定を行った。30~40分の時点でiNO30を30μg/kg IBW/時間で投与し、50~60分の時点でiNO45を45μg/kg IBW/時間で投与し、70~80分の時点でiNO75を75μg/kg IBW/時間で投与した(図1参照)。患者集団の背景因子は表1に記載されており、ベースライン血行動態は以下の表2に記載されている。
【0062】
[0070]
【0063】
【表1】
【0064】
[0071]
【0065】
【表2】
【0066】
[0072]PACは、右心カテーテル法(RHC)の間に収集された(SPAP-DPAP)で除された1回拍出量によって得られた。患者は、安静時のSpO2が少なくとも92%を維持するように、ベースラインで十分な酸素補給を受けていた。RHCが完了した際に、対象者は、延長試験で長期iNO療法を継続する機会を提示された。延長試験におけるRHC処置の前に6分間歩行距離(6MWD)が測定された。
【0067】
[0073]図2A~2Cは、本試験の結果を明示している。パルスiNO投与中の全対象者は、表2に示される該対象者の平均ベースライン値に対して、PVRおよびmPAPの低下と共に、対応するPACにおける向上を明示した。図2Aは、iNO30およびiNO45用量における平均ベースラインPACからの変化が有意に改善されたことを示す。図2Bは、3つの用量全てにおける平均ベースラインPVRからの変化が有意に改善され、iNO30とiNO45用量の間ではさらに有意に改善されたことを示す。図2Cは、3つの用量全てにおける平均ベースラインmPAPからの変化が有意に改善されたことを示す。図3の抵抗コンプライアンス時間曲線は、2mL/mmHgを超えるPACが、患者を前記曲線のより望ましい部分に移行することを示す。この実施例において、患者は、PACの平均的な改善が2mL/mmHgを上回ることを明示した。PACの改善は、PVRおよびmPAPの統計的および臨床的に有意な改善によって明白に示された。
【0068】
[0074]PVRが正常な患者におけるPACを評価することは、PHの早期予測を可能にする場合がある。PACの低下は、いくらかの患者において、PVRが正常であっても死亡リスクの上昇が予測されることが示された。これまでに、一貫して有意にPACを改善することが認められた肺血管拡張剤はない。本試験は、iNO投与中の対象者が、2mL/mmHgを上回るPACの平均的な改善を示したことを明示している。集団内で、V/Q不均衡を悪化させるリスクを伴わずにPACを改善する3つのPH患者の療法は、RV機能を改善することにおいて有益である場合がある。
図1
図2A-B】
図2C
図3
【国際調査報告】