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特表2023-512644人工心臓弁送達システム:パドル取付特徴部
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-28
(54)【発明の名称】人工心臓弁送達システム:パドル取付特徴部
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20230320BHJP
【FI】
A61F2/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022545082
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(85)【翻訳文提出日】2022-09-22
(86)【国際出願番号】 US2021015623
(87)【国際公開番号】W WO2021155095
(87)【国際公開日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】62/968,220
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/160,703
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517290947
【氏名又は名称】4シー メディカル テクノロジーズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベンソン,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ディダリング,ジェイソン エス.
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA27
4C097BB01
4C097BB04
4C097BB09
4C097CC01
4C097CC16
4C097MM09
4C097SB03
(57)【要約】
拡張可能ステントを送達カテーテル又はシース内に装填及び/又は折り畳むことと、折り畳まれたステントを送達カテーテル又はシースに沿って並進させることと、拡張可能ステントを対象心腔内に送達することと、拡張可能ステントを必要に応じて対象心腔内に再位置決めすることと、必要に応じて拡張可能ステントを送達カテーテル又はシース内に再捕捉又は再被覆することと、拡張可能ステントを対象心腔及びその中に展開することと、を行うためにオペレータ操作可能テザー(複数可)をステントに取り付けるためのシステム、デバイス、及び方法。
【選択図】図12A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己拡張型ステントフレームを備える拡張可能な人工心臓弁を送達するためのシステムであって、前記送達システムは、
少なくとも1つのプッシュ/プル及び解放機構を備える操作ハンドルと、
少なくとも1つのテザーアセンブリと、を備え、前記少なくとも1つのテザーアセンブリの各々は、その遠位端において、前記操作ハンドルの前記少なくとも1つのプッシュ/プル及び解放機構のうちの対応する1つに動作可能に接続され、前記少なくとも1つのテザーアセンブリの各々は、
その中を通る管腔を画定する外管と、
ノッチ付きワイヤであって、前記外管の前記管腔内に摺動可能に受容され、前記ノッチ付きワイヤの遠位端にT字型ノッチを画定するように構成され、前記T字型ノッチは、前記外管の前記管腔から遠位に延在するように構成されている、ノッチ付きワイヤと、を備え、
前記T字型ノッチは、前記自己拡張型ステントフレームの下流端から延在する対応する取付特徴部に解放可能に係合するように構成されている、
送達システム。
【請求項2】
前記自己拡張型ステントフレームを更に備え、前記ステントフレームは、前記自己拡張型ステントフレームの前記下流端から延在する3つの取付特徴部を備え、前記少なくとも1つのテザーアセンブリは、3つのテザーアセンブリを備える、請求項1に記載の送達システム。
【請求項3】
前記自己拡張型ステントフレームを更に備え、前記自己拡張型ステントフレームは、
外側部と、
前記外側部内で上方に延在する内側弁支持部と、
前記自己拡張型ステントフレームの前記下流端における移行セル領域であって、前記移行セル領域は、前記外側部と前記内側弁支持部との間に延在する、移行セル領域と、を備え、
前記自己拡張型ステントフレームは、前記自己拡張型ステントフレームの前記移行セル領域から離れて延在する3つの取付特徴部を備える、
請求項1に記載の送達システム。
【請求項4】
前記自己拡張型ステントフレームを更に備え、ステントフレームは、複数の支柱を画定し、前記少なくとも1つの取付特徴部は、前記ステントフレームの対応する少なくとも1つの最下部下流支柱上に画定される、請求項1に記載の送達システム。
【請求項5】
前記自己拡張型ステントフレームを更に備え、前記自己拡張型ステントフレームの前記下流端から延在する各取付特徴部は、
ワイヤ部分と、
前記取付特徴部の近位端にある拡大端部と、を備え、
前記拡大端部は、前記少なくとも1つのテザーアセンブリのうちの対応する1つの前記T字型ノッチに係合するように適合された形状を有する、
請求項1に記載の送達システム。
【請求項6】
前記少なくとも1つのテザーアセンブリの各々は、送達カテーテルによって画定される管腔内に受容されるように構成され、前記少なくとも1つのテザーアセンブリの各々について、前記少なくとも1つのプッシュ/プル及び解放機構のうちの対応する1つは、前記少なくとも1つのテザーアセンブリが前記送達カテーテルの前記管腔内に受容されると、前記テザーアセンブリを前記送達カテーテルの遠位端に対して近位及び/又は遠位に並進させるように適合される、請求項1に記載の送達システム。
【請求項7】
前記少なくとも1つのプッシュ/プル及び解放機構の各々は、前記対応する外管及び前記ノッチ付きワイヤを、互いに対して、前記送達カテーテルの前記遠位端に対して、及び前記少なくとも1つのテザーアセンブリの任意の他の1つに対して、選択的に並進させるように適合される、請求項6に記載の送達システム。
【請求項8】
前記少なくとも1つのプッシュ/プル及び解放機構の各々は、係止位置と係止解除位置との間で移動するように構成されたレバーを備える、請求項6に記載の送達システム。
【請求項9】
前記拡張可能な人工心臓弁を患者の心腔に送達して、前記患者の生来の僧帽弁、前記患者の生来の三尖弁、及び前記患者の生来の大動脈弁からなる群のうちの1又は複数を治療する際に使用するように適合される、請求項1に記載の送達システム。
【請求項10】
経心尖、経大腿、経心房、及び経中隔からなる群における経カテーテルアクセス経路のうちの1又は複数に沿って、前記拡張可能な人工心臓弁を前記患者の心腔に送達する際に使用するように適合される、請求項9に記載の送達システム。
【請求項11】
人工心臓弁を患者の心腔に送達及び展開するための方法であって、
請求項1に記載の送達システムを提供することと、
送達カテーテル又はシースによって画定される管腔の中に拡張可能な人工心臓弁を装填及び/又は折り畳むことと、
前記折り畳まれた人工心臓弁を前記送達カテーテル又はシースの前記管腔を通して並進させることと、
前記拡張可能な人工心臓弁を前記患者の心腔の中に送達することと、
前記拡張可能な人工心臓弁を前記患者の心腔内で必要に応じて再位置決めすることと、
前記拡張可能な人工心臓弁を前記患者の心腔及びその中に展開することと、
前記送達システムを前記患者から引き出すことと、
を含む、方法。
【請求項12】
前記拡張可能な人工心臓弁を送達した後、且つ前記送達システムを前記患者から引き出す前に、前記拡張可能な人工心臓弁を前記送達カテーテル又はシース内に再捕捉又は再被覆することを更に含み、前記拡張可能な人工心臓弁を前記送達カテーテル又はシース内に再捕捉又は再被覆することは、前記少なくとも1つのプッシュ/プル及び解放機構を近位に移動させることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つのプッシュ/プル及び解放機構の各々は、前記対応する外管及び前記ノッチ付きワイヤを、互いに対して、前記送達カテーテルの前記遠位端に対して、及び前記少なくとも1つのテザーアセンブリの任意の他の1つに対して、選択的に並進させるように適合される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つのプッシュ/プル及び解放機構の各々は、係止位置と係止解除位置との間で移動するように構成されたレバーを備え、前記拡張可能な人工心臓弁を展開することは、前記対応するレバーを前記係止解除位置に移動させ、前記少なくとも1つのプッシュ/プル及び解放機構を近位に移動させることによって、前記少なくとも1つのノッチ付きワイヤの前記対応するT字型ノッチから前記取付特徴部の各々を解放することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記送達システムは、自己拡張型ステントフレームを更に備え、前記自己拡張型ステントフレームの下流端から延在する各取付特徴部は、
ワイヤ部分と、
前記取付特徴部の近位端にある拡大端部と、
を備え、
前記拡大端部は、前記少なくとも1つのテザーアセンブリのうちの対応する1つの前記T字型ノッチに係合するように適合された形状を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記送達システムは、前記自己拡張型ステントフレームを更に備え、ステントフレームは、複数の支柱を画定し、前記少なくとも1つの取付特徴部は、前記ステントフレームの対応する少なくとも1つの最下部下流支柱上に画定される、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記拡張可能な人工心臓弁を前記患者の心腔内に送達することは、前記拡張可能な人工心臓弁を送達して、前記患者の生来の僧帽弁、前記患者の生来の三尖弁、及び前記患者の生来の大動脈弁からなる群のうちの1又は複数を治療することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記拡張可能な人工心臓弁を前記患者の心腔内に送達することは、経心尖、経大腿、経心房、及び経中隔からなる群における経カテーテルアクセス経路のうちの1又は複数に沿って、前記拡張可能な人工心臓弁を前記患者の心腔に送達することを含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明者]
Thomas Benson、ミネソタ州ミネアポリス、米国市民
Jason S.Diedering、ミネソタ州ミネアポリス、米国市民
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年1月28日に出願され、「PROSTHETIC HEART VALVE DELIVERY SYSTEM:PADDLE ATTACHMENT FEATURE」と題する米国特許出願第17/160703号、及び2021年1月31日に出願され、「PROSTHETIC HEART VALVE DELIVERY SYSTEM:PADDLE ATTACHMENT FEATURE」と題する仮出願第62/968220号の利益を主張する。
[連邦政府による資金提供を受けた研究開発に関する記載]
該当なし
【0002】
[発明の分野]
本発明は、心腔内にデバイスを埋め込むためのデバイス及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[関連技術の説明]
ヒトの心臓は、心臓を通る血液の順方向(順行性)の流れを補助する4つの心腔及び4つの心臓弁を含む。心腔は、左心房、左心室、右心房、及び右心室を含む。4つの心臓弁は、僧帽弁、三尖弁、大動脈弁、及び肺動脈弁を含む。概して図1を参照されたい。
【0004】
僧帽弁は、左心房と左心室との間に位置し、左心房への逆流を防止する一方向弁として作用することによって、左心房から左心室への血液の流れを制御するのを助ける。同様に、三尖弁は、右心房と右心室との間に位置し、大動脈弁及び肺動脈弁は、心臓から血液を流す動脈に位置する半月弁である。弁は、全て一方向弁であり、順方向(順行性)血流を可能にするように開く弁尖を有し、心血管系を通る血液の適切な供給の順方向のみの流れを保証する際に重要である。正常に機能する弁尖は、血液が流出したばかりの腔内への血液の逆流(逆行性)を防止するために、逆方向の血液によって加えられる圧力下で閉じる。例えば、僧帽弁は、適切に動作している場合、左心房と左心室との間に一方向弁を提供し、左心房から左心室への順行性流を可能にするように開き、左心室から左心房への逆行性流を防止するように閉じる。この逆行性流は、存在する場合、僧帽での逆流又は僧帽弁逆流として知られている。
【0005】
生来の心臓弁は、外傷、先天性奇形、炎症状態、感染状態、他の疾患及び状態、並びに老化を含むがこれらに限定されない種々の理由及び/又は状態のために機能不全であり得るか、又は機能不全になり得る。これらの種類の状態は、弁構造を適切に閉じることができず、僧帽弁不全の場合に左心室から左心房への血液の逆流の逆行性流をもたらす可能性がある。
【0006】
僧帽弁逆流症は、少なくとも幾分の逆行性血流が右心房から左心房に戻ることを可能にする機能不全の僧房弁から生じる特定の問題である。一部の場合では、機能不全は、逆行性流を遮断するために接続又は接合する代わりに、左心房の中へ、すなわち、弁輪の上面の上方に脱出する僧帽弁尖(複数可)から生じる。この血液の逆流は、輸液負荷によって左心室に負担をかけ、心室腔のサイズ及び形状のリモデリングを含む一連の左心室補償適応及び調整につながる可能性があり、僧帽弁逆流の長期にわたる臨床経過の間に大幅に変動する。
【0007】
逆流は、概して、三尖弁、大動脈弁、及び肺動脈弁、並びに僧帽弁を含む、生来の心臓弁に伴う問題であり得る。
【0008】
したがって、生来の心臓弁、例えば僧帽弁は概して、部分的又は完全な置換を含む機能的修復及び/又は補助を必要とする場合がある。かかる介入は、心臓切開手術及び置換心臓弁の心臓切開移植を含む複数の形態をとり得る。非常に侵襲的であり、患者のリスクを伴い、長期の入院だけでなく非常に苦痛な回復期間も必要とする手順については、例えば、米国特許第4,106,129号(Carpentier)を参照されたい。
【0009】
機能不全の心臓弁を置換するための低侵襲性の方法及びデバイスも知られており、これには、経皮的アクセス及びカテーテルによって促進される置換弁の送達が含まれる。一般的なステント、特に人工心臓弁及び左心耳閉塞デバイスは、当該技術分野において周知である。これらの解決策のほとんどは、当該技術分野で概して知られているステントなどの構造支持体に取り付けられた置換心臓弁、又は送達カテーテルからの解放時に拡張するように設計された他の形態のワイヤネットワークを含む。例えば、米国特許第3,657,744号(Ersek)、米国特許第5,411,552号(Andersen)を参照されたい。支持ステントの自己拡張型の変形形態は、対象の心腔又は血管内で弁を位置決めし、拡張されたデバイスを定位置に保持するのを支援する。この自己拡張型の形態はまた、多くの場合そうであるように、デバイスが第1の位置決め試行において適切に位置決めされず、したがって、再捕捉し、位置的に調整する必要がある場合に問題を呈する。この再捕捉プロセスは、完全に又は部分的に拡張されたデバイスの場合、操作者が折り畳まれたデバイスを送達シース又はカテーテル内に後退させ、デバイスの進入位置を調整し、次いで、位置調整されたデバイスを送達シース又はカテーテルから遠位に再展開することで適切な位置への再拡張を可能にする点までデバイスを再折り畳みすることを必要とする。拡張されたステント又はワイヤネットワークは、概して、収縮力又は折り畳み力にも抵抗する拡張状態を達成するように設計されるため、すでに拡張されたデバイスを折り畳むことは困難である。
【0010】
上述した心臓切開外科的アプローチに加えて、対象の弁へのアクセスを得ることは、少なくとも以下の既知のアクセス経路のうちの1つ、すなわち経心尖、経大腿、経心房、及び経中隔、集合的に経カテーテルアクセス経路のうちの1つを介して経皮的に達成される。
【0011】
概して、当技術分野は、上述の既知のアクセス経路のうちの1つを使用して、折り畳まれた弁デバイスの部分的な送達を可能にするシステム及び方法に焦点を当てており、デバイスの一端は、最初の位置決めのために送達シース又はカテーテルから解放されて拡張され、その後、適切な位置決めが達成されたときに完全に解放されて拡張される。例えば、米国特許第8,852,271号(Murray,III)、同第8,747,459号(Nguyen)、同第8,814,931号(Wang)、同第9,402,720号(Richter)、同第8,986,372号(Murray,M)、及び同第9,277,991号(Salahieh)、並びに米国特許出願公開第2015/0272731号(Racchini)、及び同第2016/0235531号(Ciobanu)を参照されたい。かかる経カテーテル技術において、人工弁は、概して、折り畳まれた状態及び拡張された状態を達成することができるステント付きフレーム内に取り付けられる。デバイスは、折り畳まれ、埋め込み部位に到達するまで、患者の血管内に配置されたシース又は送達カテーテルを通して前進させられる。ステント付きフレームは、概して、カテーテル又はシースから解放され、種々の手段によって、心臓内で拡張された機能的サイズ及び配向に弁とともに拡張される。重要な問題の1つは、それに限定されないが、経心尖送達を含む全てのアクセス経路におけるステントフレーム及び弁を含む、人工弁の送達の容易さである。より具体的には、拡張可能ステントを対象の心腔及びその中に取り付け、装填し、並進させ、送達し、再位置決めし、再被覆し、展開するための改善された送達システムを有することが有利であろう。本発明は、とりわけ、これらの問題に対処する。
【0012】
加えて、既知の「置換」人工心臓弁は、生来の心臓弁の完全置換を目的としている。したがって、これらの置換心臓弁は、弁輪スロート内、すなわち、弁輪平面及び弁輪上面の下の組織、並びに/又は弁尖に物理的に係合し、それによって、生来の弁の全ての残りの機能性を排除し、患者を置換弁に完全に依存させる。概して言えば、心臓弁の生来の機能を維持及び/又は保持することが好ましい解決策であり、したがって、弁の完全な置換よりもむしろ補充が好ましい。明らかに、生来の弁が介入移植処置の前に実質的に完全な機能性を失った場合、又は生来の弁が移植処置後に機能性を失い続ける場合が存在する。好ましい解決策は、補助的及び/又は補足的な機能弁として機能するとともに、その機能性のほとんど又は全てを失った、又は失うであろう弁の生来の機能を完全に置き換え得る弁デバイスの送達及び移植である。しかしながら、以下に説明する本発明の解決策は、特に明記しない限り、概して全てのタイプ及び形態の心臓弁デバイスに適用される。本開示はまた、当業者が認識するように、ステント全般に適用される。
【0013】
更に、例えば、僧帽弁置換システム、デバイス、及び方法のための既知の解決策は、2腔型の解決策、すなわち、左心房及び左心室内に埋め込まれた置換用弁デバイスの関与及び係合が存在することを必要とするものである。概して、これらの解決策は、左心房内の半径方向に拡張するステントを含み、固定部又は係留部(生来の弁輪又は弁輪スロートを通して下方に配置される)は、ステントデバイスから弁輪スロートを通して下方に接続され、弁輪下表面は、左心室内、左心室腱索、及び更には左心室壁表面(複数可)内にある。例えば、Abbott Groupが販売し、現在、米国で承認されている唯一の修復デバイスであるMitraClip(登録商標)を参照されたい。MitraClip(登録商標)を用いて、MitraClip(登録商標)を含むカテーテルが大腿静脈に挿入される。デバイスは、下大静脈を通って心臓に入り、右心房に至り、経中隔的に送達される。MitraClip(登録商標)は、弁輪を通過して左心室に入り、弁尖の下に位置し、弁尖をクリッピングして逆流を減少させる。
【0014】
かかる2腔及び生来の弁輪の解決策は、不必要にかさばり、したがって、厳密な構造的観点から、送達及び位置決め/再捕捉/再位置決めすることがより困難である。更に、2腔型の解決策は、位置を保持するために必要とされる心室の固定接続及び/又は係留接続を行うことに関して困難を呈する。更に、これらの解決策は、左心室内に配置されるデバイス部分が、生来の弁輪及び/又は弁輪スロート並びに生来の僧帽弁を通して送る必要があり、それによって、生来の弁尖の任意の残りの接合能力を乱すため、上述のような生来の弁機能性を破損する。加えて、2腔型の解決策は、概して、生来の組織の一部の侵襲的固定を必要とし、不必要な外傷及び潜在的な合併症をもたらす。
【0015】
デバイスの心房部分が心房腔及び/又は弁輪の上部にそれ自体を適切に固定することができないため、2腔僧帽弁の解決策は、固定部、係留部などとの弁輪下係合及び/又は心室係合を正確に必要とすることが更に認識されるであろう。この場合も、本明細書に記載される実施形態の一部又はその一部分は、別段の指示がない限り、単一腔型又は2腔型の解決策に容易に適用可能である。
【0016】
最後に、既知の人工心臓弁は、一方向弁として作用するように配置された2つ又は3つの弁尖からなり、逆行性流を防止しながら、流体がそこを通って順行方向に流れることを可能にする。生来の僧帽弁は、前尖及び後尖、腱索、乳頭筋、心室壁、並びに心房に接続された弁輪からなる第4肋軟骨の後方に位置する。各生来の弁尖は、乳頭筋に付着した腱索によって支持され、乳頭筋は緊張状態になり、各心室収縮が弁の能力を維持する。生来の弁の前尖及び後尖の両方は、一次、二次、及び三次腱索を介して、前外側及び後内側乳頭筋の両方に付着している。心筋損傷の状況におけるいずれかの乳頭筋の破損は、僧帽弁の前尖又は後尖のいずれかの機能不全をもたらし得る。他の機構は、生来の僧帽弁尖の一方又は両方の不全をもたらし得る。単一の僧帽弁尖不全の場合、逆流は、左心房内に戻る血液の非中心偏心噴流の形態をとり得る。他の弁尖障害は、より集中した逆流噴流を含み得る。既知の人工弁置換は、概して、生来の弁構造を模倣するように配置された弁尖を備え、弁尖は、経時的に、類似の逆流結果の影響を受けやすくなり得る。
【0017】
折り畳み可能且つ拡張可能ステントの用途は、人工心臓弁の移植に限定されない。血管ステントが概して使用されており、概して折り畳み可能であり、送達カテーテルの管腔を通して作業部位への送達を容易にし、作業部位でステントはカテーテルの管腔から並進して外され、自己拡張手段によって、又はとりわけ拡張可能なバルーンなどの拡張機構によって拡張される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第4,106,129号明細書
【特許文献2】米国特許第3,657,744号明細書
【特許文献3】米国特許第5,411,552号明細書
【特許文献4】米国特許第8,852,271号明細書
【特許文献5】米国特許第8,747,459号明細書
【特許文献6】米国特許第8,814,931号明細書
【特許文献7】米国特許第9,402,720号明細書
【特許文献8】米国特許第8,986,372号明細書
【特許文献9】米国特許第9,277,991号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2015/0272731号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2016/0235531号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上述したように、既知の送達方法及びデバイスは、送達カテーテルを介した送達中に折り畳まれる拡張可能な人工弁ステント及び血管ステントを含む。既知のシステム、デバイス及び方法に伴う一部の問題は、拡張可能ステントを送達カテーテル又はシース内に装填及び/又は折り畳むことと、折り畳まれたステントを送達カテーテル又はシースに沿って並進させることと、拡張可能ステントを対象心腔内に送達することと、拡張可能ステントを必要に応じて対象心腔内に再位置決めすることと、必要に応じて拡張可能ステントを送達カテーテル又はシース内に再捕捉又は再被覆することと、拡張可能ステントを対象心腔及びその中に展開することと、を行うための、拡張可能ステントへの取付け及び拡張可能ステントからの解放の容易さを含む。本発明はまた、とりわけ、これらの問題に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、拡張可能ステントを送達カテーテル又はシース内に装填及び/又は折り畳むことと、折り畳まれたステントを送達カテーテル又はシースに沿って並進させることと、拡張可能ステントを対象心腔内に送達することと、拡張可能ステントを必要に応じて対象心腔内に再位置決めすることと、必要に応じて拡張可能ステントを送達カテーテル又はシース内に再捕捉又は再被覆することと、拡張可能ステントを対象心腔及びその中に展開することと、を行うために、拡張可能ステントに接続され、拡張可能ステントから延在する少なくとも1つのテザーに取り付け、そこから解放するためのシステム、デバイス、及び方法を提供する。本明細書に説明される送達システムの実施形態は、単一腔人工心臓弁を備えるステント、並びに単一腔の外側での固定を必要とする人工心臓弁を備えるステントに適用される。
【0021】
一実施形態では、自己拡張型ステントフレームを備える拡張可能な人工心臓弁を送達するための送達システムは、少なくとも1つのプッシュ/プル及び解放機構を備える操作ハンドルと、少なくとも1つのテザーアセンブリと、を備え、少なくとも1つのテザーアセンブリの各々は、その遠位端において、操作ハンドルの少なくとも1つのプッシュ/プル及び解放機構のうちの対応する1つに動作可能に接続され、少なくとも1つのテザーアセンブリの各々は、その中を通る管腔を画定する外管と、外管の管腔内に摺動可能に受容され、ノッチ付きワイヤの遠位端にT字型ノッチを画定するように構成されたノッチ付きワイヤであって、T字型ノッチは、外管の管腔から遠位に延在するように構成されている、ノッチ付きワイヤと、を備え、T字型ノッチは、自己拡張型ステントフレームの下流端から延在する対応する取付特徴部に解放可能に係合するように構成されている。
【0022】
別の実施形態では、人工心臓弁を患者の心腔に送達及び展開するための方法は、自己拡張型ステントフレームを備える拡張可能な人工心臓弁を送達するための前述の送達システムを提供することと、送達カテーテル又はシースによって画定される管腔の中に拡張可能な人工心臓弁を装填及び/又は折り畳むことと、折り畳まれた人工心臓弁を送達カテーテル又はシースの管腔を通して並進させることと、拡張可能な人工心臓弁を患者の心腔の中に送達することと、拡張可能な人工心臓弁を患者の心腔内で必要に応じて再位置決めすることと、拡張可能な人工心臓弁を患者の心腔及びその中に展開することと、送達システムを患者から引き出すことと、を含む。
【0023】
本明細書に記載される特定の本発明の実施形態は、別段の指示がない限り、単一腔型又は2腔型の解決策に容易に適用可能である。更に、本明細書で論じられる特定の実施形態は、概して、生来の弁の機能性の保存及び/又は置換に適用されてもよく、したがって、人工僧帽弁デバイスに限定されず、人工三尖弁デバイス、人工大動脈デバイス、人工肺動脈弁、並びに任意のかかる弁の装填、送達、展開、及び位置決めのための方法を含むように拡張することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】心臓の特定の特徴部を断面図で示す。
図2】例示的なステントの斜視図を示す。
図3A図2の例示的なステントの一実施形態の底面図を示す。
図3B図2の例示的なステントの移行部の一実施形態の底面図を示す。
図3C図2の例示的なステントの移行部の一実施形態の底面図を示す。
図4】例示的なステントに画定された取付特徴部の一実施形態を示す。
図5図2の例示的なステントの下部から延在し、弁傍漏出軽減ファブリックカフを通って延在する取付特徴部の一実施形態を示す。
図6図2の例示的なステントの下部から延在する3つの取付特徴部を備える一実施形態を示す。
図7】テザーの取付け及び解放アセンブリのノッチ付きワイヤの一実施形態を示す。
図8】テザーアセンブリの外管の一実施形態を示す。
図9A】取付特徴部との取付係合状態にあるテザーアセンブリの一実施形態を示す。
図9B】テザーアセンブリの外管が近位に引き込まれて取付特徴部を露出させる、図9Aの実施形態を示す。
図9C】取付特徴部がテザーアセンブリから取り外され解放される、図9A及び図9Bの実施形態を示す。
図10】送達カテーテル又はシースから遠位に延在する3つのテザーアセンブリを備える、一実施形態を示す。
図11】取付特徴部のうちの1つに取り付けられた図10の3つのテザーアセンブリの各々を示す。
図12A】ステントを送達カテーテルの長手方向軸から変位させることなく、例示的なステントの3つの取付特徴部に取り付けられた3つの例示的なテザーアセンブリを示す。
図12B】送達カテーテルの長手方向軸に対して第1の方向に変位した状態で、例示的なステントの3つの取付特徴部に取り付けられた3つの例示的なテザーアセンブリを示す。
図12C】送達カテーテルの長手方向軸に対して第2の方向に変位した状態で、例示的なステントの3つの取付特徴部に取り付けられた3つの例示的なテザーアセンブリを示す。
図13A】送達カテーテル又はシースの遠位端から遠位に各テザーアセンブリの伸長を調節する(減少させる)ための例示的ハンドル及び機構を示す。
図13B】送達カテーテル又はシースの遠位端から遠位に各テザーアセンブリの伸長を調節する(増加させる)ための例示的ハンドル及び機構を示す。
図13C】テザーアセンブリのうちの1つをステントの例示的な取付特徴部への取付けから解放するための例示的なハンドル及び機構を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
概して、本発明の種々の実施形態は、拡張可能ステントを送達カテーテル又はシース内に装填及び/又は折り畳むことと、折り畳まれたステントを送達カテーテル又はシースに沿って並進させることと、拡張可能ステントを対象心腔内に送達することと、拡張可能ステントを必要に応じて対象心腔内に再位置決めすることと、必要に応じて拡張可能ステントを送達カテーテル又はシース内に再捕捉又は再被覆することと、拡張可能ステントを対象心腔及びその中に展開することと、を行うためにオペレータ操作可能テザー(複数可)をステントに取り付けるためのデバイス及び方法を対象とする。
【0026】
支持構造体又はステントは、心臓弁逆流(僧帽弁又は三尖弁)の治療を補助する複数の機能を有する。これらの機能は、機能する人工弁のための足場としてのその機能、心房解剖学的構造への並置、心房拡張との適合のための最適化された半径方向力、最小侵襲性送達システムから装填及び展開する能力、並びに弁傍漏出(PVL)に対する緩和を支持するための幾何形状を含む。ステントの設計上の特徴は、上記で特定された機能のうちの1又は複数を満たすように適合される。例示的なステントについての特定の設計上の特徴及び属性は、トンネル装填デバイス及び関連する方法の有用性の理解を助けるために、以下で詳細に論じられる。当業者が認識するように、本発明は、ステント支持構造を備える人工心臓弁に限定されず、血管内処置に概して使用されるような折り畳み可能及び拡張可能ステントにも適用することができる。加えて、当業者は、少なくとも僧帽弁、三尖弁、及び大動脈弁における弁逆流又は他の機能不全の治療のための低侵襲性処置を支持するように意図される、ある例示的実施形態のステント設計概念を埋め込む際に使用するための開示される発明の有用性を認識するであろう。
【0027】
本発明の拡張可能ステントは、自己拡張可能(例えば、ニチノール又は類似の材料)又はバルーン拡張可能(例えば、コバルトクロム又は類似の材料)であってもよい。ステントは、典型的には、作業セル要素を有する、開放セル型ダイヤモンド様構造又は連続構造であり得るセルから作製される。ステントはまた、管、ワイヤ、編組又は同様の構造を用いて構成されてもよい。例示的なステント移行部を以下に説明する。
【0028】
ここで図2図3Cを参照すると、本発明とともに使用するための例示的な拡張可能ステント100の一実施形態は、外側部102及び内側弁支持部104を画定するフレームを備える。図2は、ステント100の斜視図を示している。外側部102は、概して、円形であってもよいが、完全に及び/又は部分的に拡張されるときに完全に丸い円形構造である必要はない。内側弁支持部104は、円筒形であってもよいが、一定の直径の円筒形である必要はなく、内側弁支持部104内に人工弁尖(図2には図示せず)を支持及び保持するように適合される。最も好ましくは、人工弁尖は、生来の弁輪、例えば、僧帽弁輪の上方に位置する点で内側弁支持部104内に支持及び保定されるが、人工弁尖のための他の取付け点も、本発明の範囲内である。
更に、上述したように、ステント100は、三尖弁の機能を補完及び/又は置換するように構成されてもよい。好ましい構造は、生来の弁尖の上に配置された人工弁尖を備え、人工弁尖は、生来の弁尖と物理的に干渉又は相互作用しないように、生来の弁尖から十分に離れて(すなわち、上方に)取り付けられ、離間している。しかしながら、特定の実施形態は、生来の弁尖との何らかの相互作用を企図する。
【0029】
ステント100の外側部102を形成する個々のセルCは、図2において、例示的な拡張可能ステント100を形成するために使用される材料によって画定される開放セル領域として視認可能である。
【0030】
内側弁支持部104を形成する個々のセルCはまた、外側部102によって画定される内側領域R内に形成される開放セル領域として図示され、内側弁支持部は、内側領域R内に半径方向上向きに延在している。図示されるように、個々のセルCは、個々のセルCとは異なるサイズであり、異なる形状を備えてもよい。
【0031】
ステント100の外側部102から内側弁支持部104へのステント100の半径方向内側への移行を容易にするステント100のフレームの領域は、移行部又は移行セル領域106である。移行セル領域106は、外側部セルC及び/又は内側部セルCのいずれかと異なるサイズ及び/又は形状を備え得るセルCを備えてもよい。ステント100の外側部102、内側弁支持部104、及び/又は移行セル領域106は、1つの連続構造から構築されてもよく、又は2つ以上の構造を組み合わせて、意図される設計目標を達成してもよい。移行セル領域106は、図2に示されるように、内側弁支持部104が内側領域R内に存在することを可能にするように、概して半径方向内向き及び上向きに湾曲している。一部の実施形態では、内側弁支持部104の下側部分、すなわち、移行セル領域106のセルCと接続している内側弁支持部104の部分はまた、内側領域102への上方への転回を容易にし、且つ/又は完了するための湾曲形状を含み得る。
【0032】
図3A図3Cは、図2の例示的なステントの3つの異なる実施形態の底面図を示している。ステント100の底部から見た移行セル領域106の例示的な断面形状が、図3A図3Cに概略的に示されている。ステント100のこの移行セル領域106は、支柱、完全なセル部分又は部分的なセル部分であってもよい。移行セル領域106は、設計上の必要性を満たすために概して必要とされる任意の数の支柱(最小3つ)又はセル部を有することができる。
【0033】
移行セルCの幾何形状及び/又は形状は、図3Aに示されるように、拡張されたときに実質的に直線状のセグメントであってもよい。例えば、移行セルC又は支柱は、均等に離間され、支柱108の両側に等しい角度αで、外側支持部102とのその交差又は統合に対して支柱108の両側に等しい角度βで、内側弁支持部104から離れて延在する、実質的に直線状で均等に離間された支柱108によって形成されてもよい。
【0034】
図3Bの実施形態では、移行セルCの幾何形状及び/又は形状は、ステントセルパターンにオフセット又はねじれを組み込むことができる。図3Bに示すように、移行セル領域106は、移行セル支柱108’を含み得、該移行セル支柱108’は、オフセットを有する、すなわち直線状ではない、ねじれた及び/又は曲線状の支柱108’によって形成される移行セルCTを含む。支柱108’のオフセット及び/又はねじれ及び/又は湾曲の程度、したがって、結果として生じる拡張セルCのサイズ及び/又は形状は、移行セル領域106内のセル/支柱の数、ステントが折り畳まれた場合の充填密度、及び移行セル領域106の張力/歪み分布限界に応じて変動し得る。このようにして、図3Bの実施形態における移行セルCの幾何形状及び/又は形状のオフセット又はねじれは、ステントの制御された圧縮を可能にし得る。
【0035】
図3Cの実施形態では、移行セルCの幾何形状及び/又は形状は、図3Aのように実質的に直線セグメントであってもよいが、内側弁支持部104及び外側支持部102に対して不等な角度を有してもよい。図3Cに示すように、この実施形態の直線支柱108は、内側弁支持部104に対してより小さい角度α及びより大きい角度α’が提供されるように傾斜している。同様に、より小さい角度β’及びより大きい角度βが、外側支持部102に対して提供される。これにより、移行セル領域106の傾斜支柱108の圧縮された入れ子構造が可能になる。
【0036】
取付特徴部402は、図2及び図3Aに示されており、以下で更に説明される。
【0037】
図4は、図2のステント100などの例示的なステントに画定された取付特徴部402の一実施形態を示している。図4に示すように、取付特徴部402は、ステント100のフレームのステントパターン内に、好ましくはステント100の移行セル領域106内に画定される。しかしながら、当業者であれば、取付特徴部402は、移行セル領域106内にない支柱(複数可)に沿って画定されてもよいことを認識するであろう。加えて、取付特徴部402は、埋め込まれたときにステント100の(人工心臓弁内の正常な血流の)下流側にあるステント100のフレーム上の点に画定されてもよい。あるいは、取付特徴部402は、ステント100のフレームの最下部の下流支柱上に画定されてもよい。更に、取付特徴部402は、図4に最もよく示されるように、ワイヤ部分401と、ワイヤ部分401の直径よりも大きい直径を備える拡大端部403とを備える。拡大端部403は、図示のように円形であってもよく、又は以下で更に説明されるように、任意の数の形状を備えてもよい。
【0038】
図5は、取付特徴部402が図2のステント100のフレームの下部から延在する一実施形態を示している。取付特徴部402は、図5に示すように、外側部102及び移行セル領域106から離れるように外向きに延在するように適合される。一部の場合において、弁傍漏出軽減ファブリックスカート又はカフは、ステント100の外側フレームに取り付けられ、外側部102及び/又は移行セル領域106を少なくとも部分的に覆う。かかる場合、取付特徴部402は、弁傍漏出軽減スカート又はカフを通過してステント100のフレームの外側に達してもよい。
【0039】
一部の実施形態において、例示的なステントは、取付特徴部402のうちの1又は複数を含み得る。図6は、取付特徴部402のうちの3つについて、ステント100の下部の周りの位置を示している。図示のように、移行セル領域106に沿って及び/又はその周りで隣接する取付特徴部402間に実質的に等しい間隔又は分離が存在する。当業者であれば、取付特徴部402の位置間の不等な間隔又は分離も採用され得ることを認識するであろう。加えて、少なくとも1つの取付特徴部402が使用されてもよい。本明細書に記載されるように画定された少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つの取付特徴部402を有することが好ましい。更に、取付特徴部402は、図4及び図9A図9Bに最もよく示されるように、ワイヤ部分401と、ワイヤ部分401の直径よりも大きい直径を備える拡大端部403とを備える。
【0040】
ここで図7図9Cを参照すると、更に説明されるように、近位端において操作ハンドルに動作可能に接続されるテザーアセンブリ410の一実施形態が示されている。テザーアセンブリ410は、外管404と、ノッチ付きワイヤ408とを更に備える。ノッチ付きワイヤ408は、遠位T字型係合チャネル409を画定し、これは、取付特徴部402の拡大遠位端部403及び取付特徴部402のワイヤ部分401の一部に相補的嵌合を提供するように適合される。外管404の管腔の内径D1は、ノッチ付きワイヤ408の外径D2よりも大きい。D1とD2との間のこの関係は、取付特徴部402がT字型係合チャネル409に係合されるときに維持される。これは、図9Aに示されるように、取付特徴部402が係合チャネル409に係合されるとき、外管404が前進して係合チャネル409を覆い、取付特徴部402を係合チャネル409内に保持するためである。外管404は、外管404の管腔内にノッチ付きワイヤ408を摺動可能に受容することを可能にするようなサイズの、その中を通る管腔を画定する。
【0041】
図9Bに示すように、取付特徴部402が係合チャネル409に係合されている間に、外管404を近位方向に引き出して取付特徴部402を露出させて、ノッチ付きワイヤ408からの取付特徴部402の取外し又は解放を可能にし得る。ノッチ付きワイヤ408からの取付特徴部402の取外し又は解放は、図9Cに示されている。
【0042】
図10及び図11は、3つのテザーアセンブリ(410)を備える好ましい実施形態についての更なる詳細を提供する。テザーアセンブリ(複数可)410の各々は、テザーアセンブリ410と操作ハンドル(図13A図13Cに関して以下で更に説明する)との近位接続を可能にする長さを画定し、送達カテーテル又はシースの遠位端からの十分な伸長長さを提供して、本明細書で更に説明するように、とりわけ、人工心臓弁を含む本ステントの並進及び展開を容易にする。各取付特徴部402は、図7図9Cに関して上述した方法で、対応するテザーアセンブリ410の遠位端に取り付けられる。
【0043】
したがって、上述したようにステント100(例えば、外側部102)に取り付けられたテザーアセンブリ410は、拡張可能ステント100を送達カテーテル又はシースの管腔の近位端内に折り畳み、折り畳まれたステント100を送達カテーテル又はシースを通して、対象(患者)の心腔に予め位置決めされたシースの送達カテーテルの遠位端まで遠位方向に並進させるのを支援するために使用され得る。この時点で、折り畳まれたステント100は、送達カテーテル又はシースから少なくとも部分的に解放され、自己拡張し始める。取り付けられたテザーアセンブリ(複数可)410は、少なくとも部分的に拡張したステント100を対象の心腔内の適切な位置に移動させるようにテザーアセンブリ(複数可)410を操作することによって、このプロセスを支援するために使用され得る。特定の場合には、少なくとも部分的に拡張されたステント100(人工心臓弁を備える)を、テザーアセンブリ410のうちの1又は複数を近位に引き込み、ステント100を心臓弁内で解剖学的ランドマークに対して所望の方向及び所望の姿勢に移動させることによって、再位置決めすることが有利であり得る。
【0044】
図12A図12Cは、3つのテザーアセンブリ410を備える一実施形態を示しており、図12Aはデフォルト位置であり、ステント100は送達シースの長手方向軸と実質的に対称に整列されている。図12B及び図12Cは、1又は複数のテザーアセンブリ410を引き込んで(又は押し込んで)、接続されたステント100を送達シースの長手方向軸の対称整列から離れるように移動させて、非対称姿勢をとって、ステント100の位置決め及び展開を支援した結果を示している。
【0045】
図13A図13Cは、当業者が理解するように、各テザーアセンブリ410の近位端が接続される、操作ハンドルHの実施形態を提供する。図示のように、送達シースの遠位端から離れるテザーアセンブリ410の伸長の長さは、ハンドルHにおいて、取り付けられたプッシュ/プル及び解放機構430を近位又は遠位に移動させることによって操作することができる。これは、テザーアセンブリの組み合わされたセットとして行われてもよく、又は個々のテザーアセンブリ410は、他のテザーアセンブリ410に対して選択的に伸長(遠位に押し込む)又は短縮(近位に引き込む)するように選択されてもよく、且つ/又は外管404、ノッチ付きワイヤ408、並びにワイヤ部分401及び拡大端部403を有する取付特徴部402を備える各テザーアセンブリ410の構成要素は、それぞれ独立して、近位に押し込まれ、且つ/又は遠位に引き込まれてもよい。各テザーアセンブリ410は、それ自体の長さと、ハンドルHに取り付けられた解放機構430とを画定する。
【0046】
各プッシュ/プル及び解放機構430は、係止及び係止解除され得、テザーアセンブリ410の個々の構成要素の操作を可能にするレバーLを更に備える。係止されると、テザーアセンブリ410は、上述のように取付特徴部402に取り付けられる。図13Cに示すように、テザーアセンブリ410を取付特徴部402から解放することは、レバーLを係止位置から係止解除位置に作動させることによってレバーLを係止解除し、次いでテザーアセンブリ410の係止解除部分を近位に引き込む(すなわち、ノッチ付きワイヤ408及び/又は外管404を近位に、遠位に、取付特徴部402との取付係合から引き離す)ことによって達成される。ここで、この同じ機構430が、テザーアセンブリ410の構成要素、すなわち、外管404を前進及び/又は後退させ、取付特徴部402との取付け及び/又はそこからの解放を達成するために使用され得ることが、当業者に明白となるであろう。
【0047】
一部の場合では、少なくとも部分的に拡張したステント100を、送達カテーテル又はシースの管腔内に近位に引き込み、次いで、解放工程及び展開工程を再開することによって、少なくとも部分的に復元、再被覆、及び/又は再捕捉することが有利であり得る。
【0048】
ステント100(人工心臓弁を含む)が適切に位置決めされると、外管404が近位方向に引き込まれて、ノッチ付きワイヤ408内に係合された取付特徴部402が露出されて、そこから係合解除又は解放され、それによってテザーアセンブリ410が取付特徴部402及びステント100から切り離される。提供された各テザーアセンブリ410がステント100から同様に切り離されると、テザーアセンブリ(複数可)410を心腔から引き出すことができる。
【0049】
説明したように、開示された送達システムのための好ましいアクセス経路は、経心尖アプローチを含むが、全ての他の送達アクセス経路は、開示される発明(複数可)を使用して首尾よくナビゲートすることができる。
【0050】
本明細書に記載の本発明及びその適用の説明は例示的なものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。種々の実施形態の特徴は、本発明の意図の範囲内で他の実施形態と組み合わせることができる。本明細書に開示される実施形態の変形及び修正が可能であり、実施形態の種々の要素の実用的な代替物及び均等物は、本特許文書を検討すれば当業者に理解されるであろう。本明細書に開示される実施形態のこれら及び他の変形及び修正は、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく行われてもよい。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
【国際調査報告】