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特表2023-512672バチルス・チューリンゲンシスの殺虫製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-28
(54)【発明の名称】バチルス・チューリンゲンシスの殺虫製剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 63/23 20200101AFI20230320BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20230320BHJP
   A01N 25/10 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
A01N63/23
A01P7/04
A01N25/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022546339
(86)(22)【出願日】2021-01-28
(85)【翻訳文提出日】2022-08-29
(86)【国際出願番号】 US2021015479
(87)【国際公開番号】W WO2021158420
(87)【国際公開日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】62/970,431
(32)【優先日】2020-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【弁理士】
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】アルムガム、セルヴァナサン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルフレ-グプタ、キャロライン
(72)【発明者】
【氏名】ユイ、ワンリン
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AC01
4H011BA01
4H011BB21
4H011BC03
4H011BC08
4H011BC10
4H011BC19
4H011DA15
4H011DH03
4H011DH15
(57)【要約】
本発明の殺虫製剤は、バチルス・チューリンゲンシスと、ゲル浸透クロマトグラフィに従って測定されたとき、1,000g/mol~12,000g/molの重量平均分子量を有するポリエチレングリコールと、ポリフェノールと、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺虫製剤であって、
バチルス・チューリンゲンシスと、
ポリエチレングリコールであって、ゲル浸透クロマトグラフィに従って測定されたとき、1,000g/mol~12,000g/molの重量平均分子量を有する、ポリエチレングリコールと、
ポリフェノールと、を含む、殺虫製剤。
【請求項2】
前記ポリエチレングリコールが、ゲル浸透クロマトグラフィに従って測定されたとき、5,000g/mol~7,000g/molの重量平均分子量を有する、請求項1に記載の殺虫製剤。
【請求項3】
前記ポリエチレングリコールが、ゲル浸透クロマトグラフィに従って測定されたとき、6,000g/molの重量平均分子量を有する、請求項2に記載の殺虫製剤。
【請求項4】
前記殺虫製剤が、前記殺虫製剤の総重量に基づいて、0.2重量%~10重量%のポリエチレングリコールを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の殺虫製剤。
【請求項5】
前記殺虫製剤が、前記殺虫製剤の総重量に基づいて、0.2重量%~5重量%のポリエチレングリコールを含む、請求項4に記載の殺虫製剤。
【請求項6】
前記バチルス・チューリンゲンシスが、kurstaki亜種であるバチルス・チューリンゲンシスを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の殺虫製剤。
【請求項7】
前記ポリフェノールが、フルビン酸を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の殺虫製剤。
【請求項8】
前記ポリフェノールが、フミン酸を含み、前記フルビン酸とフミン酸との間の重量比が、2:100~20:100である、請求項7に記載の殺虫製剤。
【請求項8】
前記ポリフェノールが、フルビン酸及びフミン酸を含み、更に、フルビン酸とフミン酸との間の重量%比が、2:100~20:100である、請求項1~6のいずれか一項に記載の殺虫製剤。
【請求項9】
前記フルビン酸とフミン酸との間の重量%比が、8:100~14:100である、請求項8に記載の殺虫製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、殺虫製剤に、より具体的には、バチルス・チューリンゲンシスを含む殺虫製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
導入
作物防御の用途で使用される殺虫製剤は従来、作物防御製剤の一部として、作物の組織に噴霧されてきた。従来の殺虫製剤は、人間に対して毒性であると認識される殺虫剤を含み得、またそれは収穫後に作物上に残留し、かかる作物の最終消費者へと移り得る。更に、雨水及び灌漑水の形態の水は、従来の殺虫剤を作物の組織から洗浄してしまい得るため、その結果水が汚染される一方で、害虫からの作物の保護が損なわれてしまいがちである。
【0003】
従来の殺虫剤に対する従来の代用物としては、天然に存在する微生物及び細菌を使用して、害虫を抑制及び死滅させる、生物系殺虫剤が挙げられる。生物系殺虫剤で使用されている細菌の1つが、バチルス・チューリンゲンシスである。バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)は、殺虫製剤においては、胞子及び結晶化タンパク質の形態で、作物に施用される。バチルス・チューリンゲンシスの胞子形成プロセス中、バチルス・チューリンゲンシスは、特定の害虫に対して毒性を有する結晶化タンパク質を産生する。昆虫がバチルス・チューリンゲンシスの胞子及びタンパク質を作物組織とともに摂取したとき、そのタンパク質は、昆虫の消化管内に細孔を開ける。次いで、バチルス・チューリンゲンシス胞子は、細孔を通過し、昆虫の血流内で活性化し、増殖する。昆虫の血流内での急速な細菌の増殖は、昆虫の敗血症及び死をもたらす。
【0004】
バチルス・チューリンゲンシスは、その作用メカニズム上の理由から、作物防御の設定で使用される場合には、多くの欠点を抱えている。例えば、カナダ特許第2184019(A1)号は、バチルス・チューリンゲンシスが紫外線照射に曝露されると、結晶化タンパク質の不活性化及び胞子のDNAへの損傷が生じ得ることを詳述している。中国特許第103160449(A)号は、紫外線の照射からバチルス・チューリンゲンシスを保護するためのフミン酸の使用を開示している。更に、タンパク質及び胞子は、雨水及び灌漑用水の形態の水によって作物組織から除去されやすい。バチルス・チューリンゲンシスは、最大の有効性が得られるか否かが、タンパク質及び胞子の生存率に依存するため、作物の防御用途という環境は、バチルス・チューリンゲンシスには課題となる。
【0005】
殺虫製剤は、典型的には、湿潤剤(例えば、ポリエチレングリコール)、展着剤及び粘着剤、レオロジー調整剤、栄養素、並びに他の多くのアジュバントを含み、それにより複雑な製剤となる。殺虫製剤の1つ以上の特性の有効性を減少させ得る、殺虫製剤中に存在する異なるアジュバント間の相互作用及び副反応が、しばしば生じる。バチルス・チューリンゲンシスのような殺虫剤の使用は、典型的には、殺虫剤を使用する際の既知の課題に対処するために、潜在的な副反応を伴う更に多くのアジュバントの添加を必要とする。
【0006】
製剤中のフェノールと非イオン性ポリマーとの相互作用は、医薬科学において数十年間にわたり研究されている。例えば、Interaction of Nonionic Hydrophobic Polymers with Phenols I(B.N.Kabadi著)では、フェノールとポリエチレングリコールとの相互作用を検討している。Kabadiは、フェノールのOH基とポリエチレングリコールのエーテル架橋との間の水素結合の形成によって、フェノールがポリエチレングリコールの安定化及び可溶化特性を選好的に妨害することを説明している。水素結合は、フェノール及びポリエチレングリコールを一緒に凝固させて分離させる疎水性高分子構造の形成をもたらす傾向がある。結果として、製剤に添加されるポリエチレングリコール及びフェノールの各々の個々の特性は、減少又は排除される。
【0007】
したがって、ポリフェノール及びポリエチレングリコールの両方を含む一方で、バチルス・チューリンゲンシスの従来の欠点のうちの1つ以上にも対処する、殺虫製剤を発見することは驚くべきことであろう。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、ポリフェノール及びポリエチレングリコールの両方を含む殺虫製剤を提供する一方で、バチルス・チューリンゲンシスの従来の欠点のうちの1つ以上にも対処するための解決策を提供するものである。
【0009】
本発明は、先行技術において実証されたポリエチレングリコールとフェノールとの選好的な相互作用にもかかわらず、ポリエチレングリコール及びポリフェノールの両方を含む製剤が、作物の防御用途において、バチルス・チューリンゲンシスを使用する従来の困難に対処することができることを発見した結果である。ポリエチレングリコールとポリフェノールとの選好的な相互作用が、これらの構成成分の凝集を引き起こし、それにより、これらの成分の各々がバチルス・チューリンゲンシスに与える影響が減少するか又はなくなることが予想されるため、この発見は驚くべきことである。驚くべきことに、ポリエチレングリコール、ポリフェノール及びバチルス・チューリンゲンシスの組み合わせ製剤の、雨への曝露後のバチルス・チューリンゲンシスの生存率は、各独立した成分の場合をほぼ合計したものであることが発見された。ポリエチレングリコール及びポリフェノールが凝集して、個々の成分の合計よりも低いバチルス・チューリンゲンシスの生存率となることが予測されため、かかる結果は予想外である。
【0010】
更に、シミュレートされた日光を使用して紫外線に曝露した後、90%を超えるバチルス・チューリンゲンシスの生存率が、ポリエチレングリコール、ポリフェノール、及びバチルス・チューリンゲンシスの組み合わせ製剤を使用することにより達成できることが発見された。雨水への堅牢度と同様に、ポリフェノールの凝集に起因するバチルス・チューリンゲンシスの生存率の予想される減少は、予想外にそれ自体では明らかに見られなかった。
【0011】
本発明のポリエチレングリコール、ポリフェノール、及びバチルス・チューリンゲンシス製剤は、殺虫製剤として特に有用である。
【0012】
本開示の少なくとも1つの特徴によれば、殺虫製剤は、バチルス・チューリンゲンシスと、ゲル浸透クロマトグラフィに従って測定されたとき1,000g/mol~12,000g/molの重量平均分子量を有するポリエチレングリコールと、ポリフェノールと、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、2つ以上の項目の列挙で使用される場合、列挙された項目のうちのいずれか1つをそれ自体で用いることができるか、又は列挙された項目のうちの2つ以上の任意の組み合わせを用いることができることを意味する。例えば、組成物が成分A、B、及び/又はCを含有するものとして説明されている場合、組成物はAを単独で、Bを単独で、Cを単独で、A及びBを組み合わせて、A及びCを組み合わせて、B及びCを組み合わせて、又はA、B、及びCを組み合わせて、含有することができる。
【0014】
別途記載のない限り、すべての範囲は、終点を含む。ポリマー式の下付き文字値は、ポリマー中の指定された成分のモル平均値を指す。
【0015】
試験方法は、試験方法番号でハイフン付きの2桁の数字で日付が示されていない限り、この文書の優先日における最新の試験方法を指す。試験方法への言及は、試験の協会及び試験方法番号への参照の両方を含む。試験方法組織は、以下の略語のうちの1つによって参照され、ASTMは、ASTMインターナショナル(ASTM International)(旧称、米国材料試験協会、American Society for Testing and Materials)を指し、ENは、欧州規格(European Norm)を指し、DINは、ドイツ規格協会(Deutsches Institut fuer Normung)を指し、ISOは国際標準化機構(International Organization for Standards)を指す。
【0016】
本明細書で使用される場合、「平均分子量」という用語は、数平均分子量であり、ASTM標準D4274によって記載されるようなヒドロキシル数分析を使用して試験される。
【0017】
本明細書で使用される場合、成分の「重量%」又は「重量パーセント」又は「重量パーセント」は、特に反対の記載がない限り、成分が含まれる組成物又は物品の総重量に基づく。本明細書で使用される場合、すべての百分率は、特に明記されていない限り、重量による。
【0018】
殺虫製剤
本発明には、バチルス・チューリンゲンシスと、ポリエチレングリコールと、ポリフェノールと、を含む、殺虫製剤を含む。様々な実施形態によれば、殺虫製剤は、水と、バチルス・チューリンゲンシスと、ポリエチレングリコールと、ポリフェノールと、からなる。殺虫製剤は、殺虫製剤が作物防御製剤の50重量%以下である、作物防御製剤において利用され得る。
【0019】
ポリエチレングリコール
殺虫製剤は、ポリエチレングリコールを含む。ポリエチレングリコールは、式H-(O-CH-CH-OHによって表されるエチレンオキシドのオリゴマー又はポリマーを指し、式中、qは、ポリエチレングリコールポリマーの繰り返し単位の数を指す。ポリエチレングリコールのq値は、20~250の範囲であり得る。
【0020】
ポリエチレングリコールの平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィに従って測定されたとき、1,000g/mol以上、又は2,000g/mol以上、又は3,000g/mol以上、又は3,500g/mol以上、又は4,000g/mol以上、又は4,500g/mol以上、又は5,000g/mol以上、又は5,500g/mol以上、又は6,000g/mol以上、又は6,500g/mol以上、又は7,000g/mol以上、又は7,500g/mol以上、又は8,000g/mol以上、又は8,500g/mol以上、又は9,000g/mol以上、又は9,500g/mol以上、又は10,000g/mol以上、又は10,500g/mol以上、又は11,000g/mol以上であり、同時に、12,000g/mol以下、又は10,500g/mol以下、又は10,000g/mol以下、又は9,500g/mol以下、又は9,000g/mol以下、又は8,500g/mol以下、又は8,000g/mol以下、又は7,500g/mol以下、又は7,000g/mol以下、又は6,500g/mol以下、又は6,000g/mol以下、又は5,500g/mol以下、又は5,000g/mol以下、又は4,500g/mol以下、又は4,000g/mol以下、又は3,500g/mol以下、又は3,000g/mol以下、又は2,000g/mol以下であり得る。例えば、ポリエチレングリコールの平均分子量は、3,000g/mol~9,000g/mol、又は4,000g/mol~8,000g/mol、又は5,000g/mol~7,000g/mol、又は6,000g/molであり得る。同じ又は異なる重量パーセントの異なる平均分子量ポリエチレングリコールのブレンドは、殺虫製剤において利用され得る。
【0021】
ポリエチレングリコールは、殺虫製剤の0.2重量%~10重量%であり得る。殺虫製剤は、0.2重量%以上、又は0.5重量%以上、又は1.0重量%以上、又は1.5重量%以上、又は2.0重量%以上、又は2.5重量%以上、又は3.0重量%以上、又は3.5重量%以上、又は4.0重量%以上、又は4.5重量%以上、又は5.0重量%以上、又は5.5重量%以上、又は6.0重量%以上、又は6.5重量%以上、又は7.0重量%以上、又は7.5重量%以上、又は8.0重量%以上、又は8.5重量%以上、又は9.0重量%以上、又は9.5重量%以上、一方で同時に10重量%以下、又は9.5重量%以下、又は9.0重量%以下、又は8.5重量%以下、又は8.0重量%以下、又は7.5重量%以下、又は7.0重量%以下、又は6.5重量%以下、又は6.0重量%以下、又は5.5重量%以下、又は5.0重量%以下、又は4.5重量%以下、又は4.0重量%以下、又は3.5重量%以下、又は3.0重量%以下、又は2.5重量%以下、又は2.0重量%以下、又は1.5重量%以下、又は1.0重量%以下、又は0.5重量%以下のポリエチレングリコールを含み得る。
【0022】
バチルス・チューリンゲンシス
殺虫製剤は、バチルス・チューリンゲンシスを含む。本明細書で定義されるように、「バチルス・チューリンゲンシス」は、種バチルス・チューリンゲンシスの胞子及び/又は結晶化タンパク質として定義され、殺虫特性を示すすべてのバチルス・チューリンゲンシス亜種が含まれる。かかる亜種の例としては、kurstaki、israelensis及びaizawaが挙げられる。バチルス・チューリンゲンシスは、固体又は液体製剤の一部として殺虫製剤に添加され得る。バチルス・チューリンゲンシスの存在及び亜種は、ランダム増幅多形DNA分析によって判定される。バチルス・チューリンゲンシスの市販の液体製剤は、CERTIS USA(Columbia,Maryland)から市販されているTHURICIDE(商標)殺虫剤である。
【0023】
ポリフェノール
殺虫製剤は、1つ以上のポリフェノールを含む。本明細書で使用される場合、「ポリフェノール」という用語は、フミン酸、フルビン酸、及びタンニン酸のうちの1つ以上からなる液体を意味するものとして定義される。フミン酸、フルビン酸、及びタンニン酸は各々、複数のフェノール官能基を含み、それによって各ポリフェノールをレンダリングする。フミン酸は、土壌中に見出される腐植土、堆積物、又は水生環境から抽出することができる酸性有機ポリマーである。フミン酸は、Chemical Abstracts Service(CAS)番号1415-93-6によって識別され、C18718689の平均化学式を有する。フルビン酸は、CAS番号479-66-3及びC1412の化学式を有する有機酸である。タンニン酸は、CAS番号1401-55-4及びC765246の化学式を有する有機酸である。フミン酸及びフルビン酸のブレンドは、ORGANOCAT(Louisville,Kentucky)から土壌栄養素FLORIS(商標)として市販されている。タンニン酸は、Sigma Aldrichから市販されている。殺虫製剤内のポリフェノールの存在は、高速液体クロマトグラフィによって判定される。製剤は、ポリフェノールを、0.2重量%以上、又は0.5重量%以上、又は1.0重量%以上、又は1.5重量%以上、又は2.0重量%以上、又は2.5重量%以上、又は3.0重量%以上、又は3.5重量%以上、又は4.0重量%以上、又は4.5重量%以上、一方で同時に、5.0重量%以下、又は4.5重量%以下、又は4.0重量%以下、又は3.5重量%以下、又は3.0重量%以下、又は2.5重量%以下、又は2.0重量%以下、又は1.5重量%以下、又は1.0重量%以下、又は0.5重量%以下の濃度で含み得る。殺虫製剤中のポリフェノールの重量%は、殺虫製剤に添加されたポリフェノール含有材料の量及びポリフェノール濃度に基づいて判定される。ポリフェノールは、フミン酸、フルビン酸、又はタンニン酸を、単独で、又は任意の組み合わせで、殺虫製剤内で上記のポリフェノール濃度に達するように含み得る。
【0024】
ポリフェノールは、2:100以上、又は4:100以上、又は6:100以上、又は8:100以上、又は10:100以上、又は12:100以上、又は14:100以上、又は16:100以上、又は18:100、一方で同時に20:100以下、又は18:100以下、又は16:100以下、又は14:100以下、又は12:100以下、又は10:100以下、又は8:100以下、又は6:100以下、又は4:100以下、又は2:100以下の、フルビン酸対フミン酸の重量比を有し得る。
【0025】
アジュバント
殺虫製剤は、1つ又は添加剤又はアジュバントを含み得る。添加剤の例としては、とりわけ、本明細書に提供される教示から逸脱することなく、粘度調整剤、pH調整剤、除草剤、殺真菌剤、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0026】
作物防御製剤
殺虫製剤は、作物防御製剤内で利用され得る。作物防御製剤は、殺虫製剤を、1重量%以上、又は5重量%以上、又は10重量%以上、又は15重量%以上、又は20重量%以上、又は25重量%以上、又は30重量%以上、又は35重量%以上、又は40重量%以上、又は45重量%以上、一方で同時に、50重量%以下、又は45重量%以下、又は40重量%以下、又は35重量%以下、又は30重量%以下、又は25重量%以下、又は20重量%以下、又は15重量%以下、又は10重量%以下の濃度で含み得る。殺虫製剤の個々の成分は、本明細書で提供される教示から逸脱することなく、作物防御製剤に別個に添加され得る。
【実施例
【0027】
材料
以下の試料で使用するためのバチルス・チューリンゲンシス製剤は、CERTIS USA(Columbia,Maryland)から、THURICIDE(商標)HPC-O生物系殺虫剤として市販されている、98.35重量%のkurstaki亜種のバチルス・チューリンゲンシスを含有する溶液(「BT溶液」)である液体殺虫剤である。
【0028】
以下の試料で使用するためのポリフェノールは、5.2重量%のフミン酸と、0.5重量%のフルビン酸と、残部としての水と、のブレンドであり、その一例は、ORGANOCAT(Louisville,Kentucky)から、FLORIS(商標)土壌栄養素として市販されている。
【0029】
以下の試料で使用するためのPEGは、Sigma Aldrichから市販されている6000g/molの重量平均分子量を有するポリエチレングリコールである。
【0030】
試料調製
以下の手順に従って、比較例(「comparative example、CE」)CE1~CE3及び本発明の実施例(「inventive example、IE」)IE1~IE6を調製する。
【0031】
バチルス・チューリンゲンシス製剤を未希釈でサンプリングすることによって、CE1を調製する。
【0032】
2グラムのバチルス・チューリンゲンシス製剤と、CE2の重量に基づいて、5重量%のPEGと、を組み合わせ、磁気撹拌棒で混合することによって、CE2を調製する。
【0033】
2グラムのバチルス・チューリンゲンシス製剤と、CE3の重量に基づいて、5重量%のポリフェノールと、を組み合わせ、磁気撹拌棒で混合することによって、CE3を調製する。
【0034】
予備製剤の重量に基づいて、2.5重量%のPEG、2.5重量%のポリフェノール、及び残部としての水を含有する予備製剤を作製することによって、IE1を調製する。予備製剤(1mL)、バチルス・チューリンゲンシス製剤(2グラム)、及び水(17グラム)を組み合わせ、磁気撹拌棒で混合することによって、IE1を得る。
【0035】
予備製剤の重量に基づいて、5重量%のPEG、5重量%のポリフェノール、及び残部としての水を含有する予備製剤を作製することによって、IE2を調製する。予備製剤(1mL)、バチルス・チューリンゲンシス製剤(2グラム)、及び水(17グラム)を組み合わせ、磁気撹拌棒で混合することによって、IE2を提供する。
【0036】
予備製剤の重量に基づいて、1.5重量%のPEG、及び3.5重量%のポリフェノール、及び残部としての水を含有する予備製剤を作製することによって、IE3を調製する。予備製剤(1mL)、バチルス・チューリンゲンシス製剤(2グラム)、及び水(17グラム)を組み合わせ、磁気撹拌棒で混合することによって、IE3を得る。
【0037】
予備製剤の重量に基づいて、3.5重量%のPEG、及び1.5重量%のポリフェノール、及び残部としての水を含有する予備製剤を作製することによって、IE4を調製する。予備製剤(1mL)、バチルス・チューリンゲンシス製剤(2グラム)、及び水(17グラム)を組み合わせ、磁気撹拌棒で混合することによって、IE4を得る。
【0038】
予備製剤の重量に基づいて、7.0重量%のPEG、及び3.0重量%のポリフェノール、及び残部としての水を含有する予備製剤を作製することによって、IE5を調製する。予備製剤(1mL)、バチルス・チューリンゲンシス製剤(2グラム)、及び水(17グラム)を組み合わせ、磁気撹拌棒で混合することによって、IE5を得る。
【0039】
予備製剤の重量に基づいて、10.5重量%のPEG、及び4.5重量%のポリフェノール、及び残部としての水を含有する予備製剤を作製することによって、IE6を調製する。予備製剤(1mL)、バチルス・チューリンゲンシス製剤(2グラム)、及び水(17グラム)を組み合わせ、磁気撹拌棒で混合することによって、IE6を得る。
【0040】
表1は、使用された材料及び試料調製方法に基づく、比較例及び本発明の実施例の様々な成分の重量パーセントの要約を示す。
【0041】
【表1】
【0042】
試験方法
雨水堅牢性試験
PARAFILM M(商標)(BEMIS COMPANY製)実験室フィルムを5.08センチメートル(「cm」)×10.16cmの見本に切断し、黒色のLENETA(商標)チャート(LENETA COMPANY製)上に見本を配置することによって、雨水堅牢性試験を実施する。PARAFILM M(商標)実験室フィルムの見本を、KIMWIPE(商標)ワイパー(KIMBERLY CLARK製)を用いてワイプする。雨水堅牢性試験のための使用の前に、1リットルの水当たり、71gのCE1~CE3及びIE1~IE6各試料を希釈する。それぞれの見本上に、アレイ状のオートピペッタを使用して、希釈されたCE1~CE3及び希釈されたIE1~IE6 15滴(15~30マイクロリットル)を、各IE及びCE当たり1つの見本で、無作為に配置する。希釈されたIE及び希釈されたCEを、各セット5滴で、ボルテックス混合して、組成の均一性を維持する。希釈されたIE1~IE6及び希釈されたCE1~CE3の見本を、約28℃のインキュベータ内で約1時間乾燥させる。
【0043】
2 EXO TERRA(商標)標準ノズルを延長せずに装着したEXO TERRA MONSOON RS400 RAINFALL SYSTEM(商標)を使用して、乾燥させた見本の各々を、加速雨水に供する。見本をスプレーノズルから33cm離して置く。見本に対して、見本界面で5分間測定するときの、1.5リットル/時の水の流量で噴霧する。見本を空気乾燥させる。
【0044】
見本当たり1つのIE又はCEを表す15回の乾燥液滴の各々が約0.63cmの正方形を中心となるように、各見本を切断することによって、試料を抽出する。見本ごとに得られた15個の0.63cmの正方形をガラスバイアルに入れる。ドデシル硫酸ナトリウム溶液(1ミリリットル、2重量%ドデシル硫酸ナトリウム)を各バイアルに添加する。各バイアルを3回超音波処理し、8時間浸漬させる。
【0045】
以下のように、ビシンコニン酸アッセイ(bicinchoninic acid assay、BCA)を通じて、残留タンパク質濃度を判定する。PIERCE(商標)BCA Protein Assay Reagent A及びPIERCE(商標)BCA Protein Assay Reagent B(両方ともTHERMO SCIENTIFIC製)を、試薬A(2ミリリットル)及び試薬B(40マイクロリットル)で組み合わせて、試薬混合物を形成させた。各抽出試料の100マイクロリットルをそれぞれのキュベットに入れた。次いで、試薬混合物(2ミリリットル)を各キュベットに添加し、次いで、キュベットを30℃で約2時間インキュベートした。AGILENT製のCARY100(商標)UV可視分光光度計により測定された562nmでの吸収値を用いて、残留タンパク質濃度を判定した。
【0046】
TWEEN(商標)20ポリソルベート非イオン性界面活性剤の1重量%溶液を用いて、見本から試料を抽出することによって、胞子生存率を判定する。TWEEN(商標)20ポリソルベート非イオン性界面活性剤の0.1重量%溶液を使用して試料を希釈し、好適な濃度に連続希釈することにより、抽出されたCE1及びIE1をプレートする。抽出及び希釈されたCE1及びIE1試料を、寒天試料増殖プレート上で10μLに均一にプレートする。プレートを、30℃のインキュベータ内で12時間保持する。希釈倍率を考慮しながら、ログコロニー形成単位/mLとして表されるコロニー数を計数する。
【0047】
紫外線(「Ultraviolet Light、UV」)試験
CE1及びIE1の光への曝露前後のバチルス・チューリンゲンシス活性を、以下のように判定する。
【0048】
オートピペッタを使用して、30μLの滴のCE1及びIE1を別個のプラスチックペトリ皿上に置き、約1時間乾燥させる。CE1及びIE1を、自然日光をシミュレートするHAPRO製のSUMMER GLOW(商標)HB175ランプを使用して、35ミリワット/cmで2時間光に曝露する。TWEEN(商標)20ポリソルベート非イオン性界面活性剤の1重量%溶液を用いて、CE1及びIE1をペトリ皿から抽出する。TWEEN(商標)20ポリソルベート非イオン性界面活性剤の0.1重量%溶液を使用して試料を希釈し、好適な濃度に連続希釈することにより、抽出されたCE1及びIE1をプレートする。抽出及び希釈されたCE1及びIE1試料を、寒天試料増殖プレート中で10μLに均一にプレートする。プレートを、30℃のインキュベータ内で12時間保持する。希釈倍率を考慮しながら、ログコロニー形成単位/mLとして表されるコロニー数を計数する。
【0049】
結果
表2は、シミュレートされた雨水条件への所与の曝露時間に対するCE1~CE3及びIE1~IE6のタンパク質保持率を示す。
【0050】
【表2】
【0051】
結果によって示されるように、作物に対するバチルス・チューリンゲンシスのみの施用を表すCE1は、曝露時間に関係なく、保持されたタンパク質が0であることを示し、バチルス・チューリンゲンシスの結晶タンパク質がほとんど又は全くないことを示す。CE2及びCE3は、ポリエチレングリコール及びポリフェノール単独の、バチルス・チューリンゲンシスへの添加が、結晶タンパク質の雨水堅牢性を増加させることを示す。上で説明したように、フェノール及び非イオン性ポリマーシステムについての従来の理解は、フェノール及び非イオン性ポリマーが水素結合を通じて凝集し、系全体を通して両方の成分の分散性が損なわれることを示唆する。それに応じて、雨水堅牢性は、予想される凝集及び分離に起因して、2つの成分の累積加算よりも少ないことが予想されるであろう。驚くべきことに発見されたように、IE1~IE6の雨水堅牢性は、ポリフェノール及びポリエチレングリコールの両方の累積的な特性を示す。したがって、バチルス・チューリンゲンシス、ポリエチレングリコール、及びポリフェノールのIE1~IE6の製剤は、CE1~CE3のいずれよりも大きな割合で結晶タンパク質を保持することによって、効果的な雨水堅牢性を示すことができることを実証している。
【0052】
表3は、シミュレートされた雨水条件に曝露された所定時間後のバチルス・チューリンゲンシスの胞子の生存率を示す。
【0053】
【表3】
【0054】
結果によって示されるように、作物に対するバチルス・チューリンゲンシスのみの施用を表すCE1は、雨水堅牢性試験後、バチルス・チューリンゲンシス胞子の68%の生存率を示す。IE1は、ポリエチレングリコール及びポリフェノールの両方のバチルス・チューリンゲンシスへの添加が、驚くべきことに、水への曝露後のバチルス・チューリンゲンシス胞子の生存率を増加させることを実証している。この結果は、結晶性タンパク質の雨水堅牢性を増加させるのに有効なポリフェノール及びポリエチレングリコールの組み合わせ系であるのみならず、バチルス・チューリンゲンシスの胞子の生存率を維持するのにも有効であることを示す。
【0055】
表4は、シミュレートされた光条件に曝露された所定時間後のバチルス・チューリンゲンシスの胞子の生存率を示す。
【0056】
【表4】
【0057】
結果によって示されるように、CE1は、シミュレートされた太陽光に曝露させた後に、バチルス・チューリンゲンシスのみを作物に施用したとき、0%の胞子生存率を示す。上で説明したように、フェノール及び非イオン性ポリマーシステムについての従来の理解は、フェノール及び非イオン性ポリマーが水素結合を通じて凝集し、系全体を通して両方の成分の分散性が損なわれることを示唆する。ポリフェノールによって提供される紫外線保護は、ポリエチレングリコールによる凝集及び分離のために最小化又は排除されることが予想されるであろう。驚くべきことに発見されたように、IE1~IE6の生存率は、ポリフェノールが依然としてバチルス・チューリンゲンシスを積極的に保護することを実証している。したがって、IE1~IE6は、バチルス・チューリンゲンシス、ポリエチレングリコール及びの製剤が、効果的な紫外線保護を示すことができることを示す。

【手続補正書】
【提出日】2022-10-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺虫製剤であって、
バチルス・チューリンゲンシスと、
ポリエチレングリコールであって、ゲル浸透クロマトグラフィに従って測定されたとき、1,000g/mol~12,000g/molの重量平均分子量を有する、ポリエチレングリコールと、
ポリフェノールと、を含む、殺虫製剤。
【請求項2】
前記ポリエチレングリコールが、ゲル浸透クロマトグラフィに従って測定されたとき、5,000g/mol~7,000g/molの重量平均分子量を有する、請求項1に記載の殺虫製剤。
【請求項3】
前記ポリエチレングリコールが、ゲル浸透クロマトグラフィに従って測定されたとき、6,000g/molの重量平均分子量を有する、請求項2に記載の殺虫製剤。
【請求項4】
前記殺虫製剤が、前記殺虫製剤の総重量に基づいて、0.2重量%~10重量%のポリエチレングリコールを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の殺虫製剤。
【請求項5】
前記殺虫製剤が、前記殺虫製剤の総重量に基づいて、0.2重量%~5重量%のポリエチレングリコールを含む、請求項4に記載の殺虫製剤。
【請求項6】
前記バチルス・チューリンゲンシスが、kurstaki亜種であるバチルス・チューリンゲンシスを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の殺虫製剤。
【請求項7】
前記ポリフェノールが、フルビン酸を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の殺虫製剤。
【請求項8】
前記ポリフェノールが、フミン酸を含み、前記フルビン酸とフミン酸との間の重量比が、2:100~20:100である、請求項7に記載の殺虫製剤。
【請求項9】
前記ポリフェノールが、フルビン酸及びフミン酸を含み、更に、フルビン酸とフミン酸との間の重量%比が、2:100~20:100である、請求項1~6のいずれか一項に記載の殺虫製剤。
【請求項10】
前記フルビン酸とフミン酸との間の重量%比が、8:100~14:100である、請求項8に記載の殺虫製剤。

【国際調査報告】