(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-28
(54)【発明の名称】改良型タッチ検知装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/042 20060101AFI20230320BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
G06F3/042 480
G06F3/041 400
G06F3/041 662
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022546622
(86)(22)【出願日】2021-01-25
(85)【翻訳文提出日】2022-09-21
(86)【国際出願番号】 SE2021050040
(87)【国際公開番号】W WO2021162602
(87)【国際公開日】2021-08-19
(32)【優先日】2020-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(32)【優先日】2020-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518194752
【氏名又は名称】フラットフロッグ ラボラトリーズ アーベー
【氏名又は名称原語表記】FlatFrog Laboratories AB
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ベルグストレーム,ホーカン
(72)【発明者】
【氏名】スヴェンソン,トーマス
(57)【要約】
タッチ検知装置が開示されており、このタッチ検知装置は、タッチ面を有するパネルと、外周に沿って配置されたエミッタおよび検出器と、外周に隣接して配置され、光誘導面を含む光誘導部とを備え、エミッタおよび/または検出器が、パネルの裏面に対向して配置されて、フレーム要素のチャネルを介して光を放出および/または受光し、チャネルが、裏面に対向して配置され、タッチ面の法線軸の方向に延び、光誘導面およびチャネルが、パネルを間に挟んで互いに反対側に配置され、平面の方向で重なり合い、光誘導面が、法線軸の方向に、パネルおよびチャネルを介して、エミッタからの光を受光し、または検出器に光を導くものとなっている。タッチ検知装置用のフレーム要素の製造方法も開示されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチ検知装置(100)であって、
法線軸(104)を有する平面(103)内に延びるタッチ面(102)を規定するパネル(101)と、
前記パネルの外周(107)に沿って配置された複数のエミッタ(105)および検出器(106)と、
前記外周に隣接して配置され、光誘導面(109)を含む光誘導部(108)とを備え、
前記エミッタが、光(110)を放出するように配置され、前記光誘導面が、その光を受けて、前記タッチ面を横切って導くように配置され、
前記パネルが、前記タッチ面の反対側にある裏面(111)を備え、
前記エミッタおよび/または前記検出器が、フレーム要素(113)内のチャネル(112)を介して光を放出および/または受光するように前記裏面に対向して配置され、前記チャネルが、前記裏面と対向して配置されて前記法線軸の方向(104’)に延び、
前記光誘導面および前記チャネルが、前記パネルを間に挟んで互いに反対側に配置され、かつ前記平面の方向に重なり合っており、
前記光誘導面が、前記法線軸の方向に、前記パネルおよび前記チャネルを介して、前記エミッタからの光を受け、または前記検出器に光を誘導することを特徴とするタッチ検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載のタッチ検知装置において、
前記光誘導面と前記タッチ面の平面との間の角度(v)が、45度未満であるか、または45度を超えることを特徴とするタッチ検知装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のタッチ検知装置において、
前記パネルが、前記タッチ面と前記裏面との間に延びるエッジ(114)を有し、
前記チャネルが、前記パネルのそれぞれのエッジ(114)に最も近い位置に配置された第1のチャネル壁(115a)と、反対側の第2のチャネル壁(115b)との間に幅(d
1)で、前記平面と平行な方向に延び、
前記第1のチャネル壁が、前記法線軸の方向(104’)に対して角度(116)で延びることを特徴とするタッチ検知装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載のタッチ検知装置において、
前記光誘導面(109)が、前記タッチ面に最も近く配置されている前記光誘導部のエッジ部分(121)から前記光誘導部の突起(117)まで延び、前記突起が、周囲光または迷光が前記チャネルに向かって反射されるのを遮断するために前記平面と平行な方向に延びることを特徴とするタッチ検知装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載のタッチ検知装置において、
前記エミッタおよび/または検出器が基板(119)に取り付けられ、前記基板が、前記フレーム要素の対応する係合面(120b)に対向して配置される面取りされたエッジ(120a)を含み、前記係合面が、前記法線軸に対して角度(122)が付けられていることを特徴とするタッチ検知装置。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載のタッチ検知装置において、
前記チャネルの壁(115a、115b)が、拡散性光散乱面を含むことを特徴とするタッチ検知装置。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載のタッチ検知装置において、
前記エミッタおよび/または検出器が基板(119)に取り付けられ、
前記基板には支持体(123)が取り付けられ、前記支持体が、前記基板と前記フレーム要素(113)のフレーム壁(124a、124b)との間で前記平面と平行な方向に延びることを特徴とするタッチ検知装置。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載のタッチ検知装置において、
前記パネルが、前記タッチ面と前記裏面との間に延びるエッジ(114)を有し、
前記フレーム要素が、キャビティ(125)を形成し、
前記エミッタおよび/または検出器が基板(119)に取り付けられ、前記エミッタおよび/または検出器が前記基板よりも前記パネルのそれぞれのエッジに近く配置されるように、前記基板が前記キャビティ内に配置されていることを特徴とするタッチ検知装置。
【請求項9】
請求項8に記載のタッチ検知装置において、
前記キャビティ(125)が、前記パネルのそれぞれのエッジ(114)に最も近く配置された第1のフレーム壁(124a)と、反対側の第2のフレーム壁(124b)との間に幅(d
2)で、前記平面と平行に延び、
前記エミッタおよび/または検出器が前記基板よりも前記第1のフレーム壁の近くに配置されるように、前記基板が前記キャビティ内に配置されていることを特徴とするタッチ検知装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載のタッチ検知装置において、
前記基板が、前記法線軸の方向(104’)に細長い形状で延びていることを特徴とするタッチ検知装置。
【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載のタッチ検知装置において、
前記光誘導面が、陽極酸化金属であることを特徴とするタッチ検知装置。
【請求項12】
請求項1~11の何れか一項に記載のタッチ検知装置において、
前記光誘導面が、表面粗さを増大させて、前記タッチ面上で光を拡散反射させるために、エッチングされた金属、サンドブラストされた金属、ビーズブラストされた金属、または艶消し金属であることを特徴とするタッチ検知装置。
【請求項13】
請求項11または12に記載のタッチ検知装置において、
前記フレーム要素が前記光誘導部を含み、前記フレーム要素が前記金属から形成され、
前記光誘導面が、前記フレーム要素の陽極酸化された金属表面、および/または、前記フレーム要素のエッチングされた金属表面、サンドブラストされた金属表面、ビーズブラストされた金属表面、または艶消し金属表面であることを特徴とするタッチ検知装置。
【請求項14】
請求項13に記載のタッチ検知装置において、
前記金属表面が、前記タッチ面に向かって凹んでいることを特徴とするタッチ検知装置。
【請求項15】
請求項11~14の何れか一項に記載のタッチ検知装置において、
前記フレーム要素が、前記エミッタおよび/または検出器が配置されるキャビティ(125)を形成することを特徴とするタッチ検知装置。
【請求項16】
請求項1~15の何れか一項に記載のタッチ検知装置において、
前記光誘導面(109)が、0.1~0.25の傾斜RMS(Δq)によって定義される表面粗さを有することを特徴とするタッチ検知装置。
【請求項17】
請求項16に記載のタッチ検知装置において、
前記光誘導面(109)が、0.13~0.20の傾斜RMS(Δq)によって定義される表面粗さを有することを特徴とするタッチ検知装置。
【請求項18】
請求項1~15の何れか一項に記載のタッチ検知装置において、
前記光誘導面(109)が、0~0.1の傾斜RMS(Δq)によって定義される表面粗さを有することを特徴とするタッチ検知装置。
【請求項19】
請求項1~18の何れか一項に記載のタッチ検知装置において、
前記光誘導部が、前記光誘導面と反対側にある外面(126)を含み、前記光誘導面が、前記外面よりも高い反射率を有することを特徴とするタッチ検知装置。
【請求項20】
請求項1~19の何れか一項に記載のタッチ検知装置において、
前記チャネルの壁(115a、115b)が、前記光誘導面よりも高い正反射率を有することを特徴とするタッチ検知装置。
【請求項21】
タッチ検知装置(100)であって、
法線軸(104)を有する平面(103)内に延びるタッチ面(102)を規定するパネル(101)と、
前記パネルの外周(107)に沿って配置された複数のエミッタ(105)および検出器(106)と、
前記外周に隣接して配置され、光誘導面(109)を含む光誘導部(108)とを備え、
前記エミッタが、光(110)を放出するように配置され、前記光誘導面が、その光を受けて、前記タッチ面を横切って誘導するように配置され、
前記パネルが、前記タッチ面の反対側にある裏面(111)を備え、
前記エミッタおよび/または前記検出器が、フレーム要素(113)内のチャネル(112)を介して光を放出および/または受光するように前記裏面と対向して配置され、
前記光誘導面が、前記パネルおよび前記チャネルを介して、前記エミッタからの光を受け、または前記検出器に光を誘導し、
前記フレーム要素が、金属から形成され、かつ前記光誘導部を含み、前記光誘導面が、前記フレーム要素の陽極酸化された金属表面であることを特徴とするタッチ検知装置。
【請求項22】
タッチ検知装置(100)のためのフレーム要素(113)を製造する方法(200)であって、
前記フレーム要素を押出加工して、光誘導部(108)と、エミッタ(105)および/または検出器(106)を備えた基板(119)を受け入れるように適合されたキャビティ(125)とを形成するステップ(201)と、
使用時に、前記光誘導部の光誘導面(109)がチャネル(112)を介して前記エミッタからの光を受け、または前記検出器に光を導くように、前記キャビティの壁部(127)をフライス加工して前記チャネルを形成するステップ(202)とを備えることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法において、
前記光誘導面をエッチング、またはビーズブラスト若しくはサンドブラストするステップ(2011)を含むことを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項22または23に記載の方法において、
前記フレーム要素に配置されたときに、パネル(101)のタッチ面(102)の上方の前記光誘導部の高さ(h)が減少するように、押出加工された光誘導部の頂部(128)をフライス加工するステップ(203)を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネルの上に光を伝播させることで動作するタッチ検知装置に関する。より具体的には、完全にまたは部分的にランダム化された屈折、反射または散乱を介してパネルの上の光路を制御および調整するための光学的および機械的ソリューションに関する。
【背景技術】
【0002】
「表面上光学タッチシステム」として知られるタッチ検知パネルの1つのカテゴリでは、光を放射する光エミッタのセットがタッチ面の外周の周りに配置され、その光が、反射してタッチ面の上を移動および伝播する。また、タッチ面の外周の周りには、エミッタのセットからの光をタッチ面の上から受光する光検出器のセットも配置されている。すなわち、タッチ面の上には、スキャンラインとも呼ばれる交差する光路のグリッドが形成される。タッチ面に触れた物体は、光の1または複数のスキャンライン上の光を減衰させ、1または複数の検出器によって受光される光に変化を生じさせる。検出器で受光した光を分析することで、物体の位置(座標)、形状または面積を求めることができる。
【0003】
タッチ検知装置の光学的および機械的特性は、エミッタ/検出器とタッチ面との間の光の散乱に影響を与え、それに応じて、検出されるタッチ信号に影響を与える。例えば、スキャンラインの幅は、検出能力、精度、分解能、再構成アーチファクトの存在など、タッチ性能の要因に影響を与える。先行技術のタッチ検出システムに関する問題は、上述した要因に関して最適ではない性能に関連している。さらに、光学機械コンポーネントのアライメントのバラツキが検出プロセスに影響を与え、それが、最適ではないタッチ検出性能に繋がる可能性がある。タッチ検出プロセスにおける信号対雑音比、検出精度、分解能、アーチファクトの存在などの要因が影響を受ける可能性がある。先行技術のシステムはそれらの要因、例えば検出精度を改善することを目的としているが、より複雑で高価な光学機械的変更をタッチシステムに組み込む必要があるという点で、多くの場合、妥協を伴う。このため、通常、タッチシステムがコンパクトでなくなり、製造プロセスがより複雑になり、より費用がかかる。
【発明の概要】
【0004】
目的は、先行技術の上述した制限のうちの1または複数を少なくとも部分的に克服することである。
【0005】
一つの目的は、コンパクトで、複雑でなく、頑丈で、組み立てが容易なタッチ検知装置を提供することである。
【0006】
もう一つの目的は、光を効率的に使用する「表面上」ベースのタッチ検知装置を提供することである。
【0007】
これらの目的の1または複数、および以下の説明から明らかになる可能性のある他の目的は、独立請求項に係るタッチ検知装置によって少なくとも部分的に達成され、その実施形態は従属請求項によって規定される。
【0008】
第1の態様によれば、タッチ検知装置が提供され、このタッチ検知装置が、法線軸を有する平面内に延びるタッチ面を規定するパネルと、パネルの外周に沿って配置された複数のエミッタおよび検出器と、外周に隣接して配置され、光誘導面を含む光誘導部とを備え、エミッタが光を放出するように配置され、光誘導面が、光を受けるとともに、タッチ面を横切るよう光を誘導するように配置され、パネルが、タッチ面の反対側にある裏面を備え、エミッタおよび/または検出器が、フレーム要素内のチャネルを介して光を放出および/または受光するように裏面に対向して配置され、チャネルが、裏面と対向して配置されて法線軸の方向に延び、光誘導面およびチャネルが、パネルを間に挟んで互いに反対側に配置され、かつ平面の方向に重なり合っており、それによって、光誘導面が、法線軸の方向に、パネルおよびチャネルを介して、エミッタからの光を受け、または検出器に光を誘導するようになっている。
【0009】
第2の態様によれば、タッチ検知装置のためのフレーム要素を製造する方法が提供され、この方法が、フレーム要素を押出加工して、光誘導部と、エミッタおよび/または検出器を備えた基板を受け入れるように適合されたキャビティとを形成するステップと、使用時に、光誘導部の光誘導面がチャネルを介してエミッタからの光を受け、または検出器に光を導くように、キャビティの壁部をフライス加工してチャネルを形成するステップとを備える。
【0010】
本開示のいくつかの実施例は、よりコンパクトなタッチ検知装置を提供する。
【0011】
本開示のいくつかの実施例は、製造コストの低いタッチ検知装置を提供する。
【0012】
本開示のいくつかの実施例は、電気光学コンポーネントの数を減らしたタッチ検知装置を提供する。
【0013】
本開示のいくつかの実施例は、より堅牢なタッチ検知装置を提供する。
【0014】
本開示のいくつかの実施例は、より信頼性の高い使用が可能なタッチ検知装置を提供する。
【0015】
本開示のいくつかの実施例は、迷光の影響を低減する。
【0016】
本開示のいくつかの実施例は、周囲光の感度を低減する。
【0017】
本開示のいくつかの実施例は、検出される光の信号対雑音比がより良好なタッチ検知装置を提供する。
【0018】
本開示のいくつかの実施例は、小さな物体の分解能および検出精度が改善されたタッチ検知装置を提供する。
【0019】
本開示のいくつかの実施例は、検出アーチファクトがより少ないタッチ検知装置を提供する。
【0020】
本開示のいくつかの実施例は、タッチ面全体にわたってスキャンラインのより均一なカバレッジを有するタッチ検知装置を提供する。
【0021】
本開示のさらに他の目的、特徴、態様および利点は、以下の詳細な説明、添付の特許請求の範囲および図面から明らかになるであろう。
【0022】
本明細書において、「備える」という用語は、記載した特徴、整数、ステップまたはコンポーネントの存在を特定するために用いられるが、1または複数の他の特徴、整数、ステップ、コンポーネントまたはそれらのグループの存在または追加を排除しないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明の実施例が可能であるこれらのおよび他の態様、特徴および利点は、添付図面を参照することにより、本発明の実施例の以下の説明から明らかになり、明確になるであろう。
【
図1】
図1aは、本開示の一実施例に係るタッチ検知装置の概略的な側断面図である。
図1bは、本開示の一実施例に係るタッチ検知装置の概略的な側断面図である。
図1cは、本開示の一実施例に係るタッチ検知装置の概略的な上面図である。
図1dおよび
図1eは、先行技術のタッチ検知装置の一例の概略的な上面図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施例に係るタッチ検知装置の概略的な側断面図である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施例に係るタッチ検知装置の概略的な側断面図である。
【
図4】
図4は、本開示の一実施例に係るタッチ検知装置の概略的な側断面図である。
【
図5】
図5は、本開示の一実施例に係るタッチ検知装置の概略的な側断面図である。
【
図6】
図6は、本開示の一実施例に係るタッチ検知装置の概略的な側断面図である。
【
図7】
図7a~
図7cは、本開示の実施例に係るタッチ検知装置のためのフレーム要素の概略的な側断面図である。
【
図8】
図8aおよび
図8bは、本開示の実施例に係るタッチ検知装置のためのフレーム要素の細部の概略的な側断面図である。
図8cは、本開示の一実施例に係るタッチ検知装置のためのフレーム要素の細部の概略的な側断面図である。
図8dは、本開示の実施例に係るタッチ検知装置のための光誘導面を含むフレーム要素の細部の、タッチ面の平面の方向に沿って見た概略図(I)、(I)の光誘導面の細部セクションの概略図(II)、(II)のセクションの側面図(III)である。
【
図9】
図9aは、本開示の一実施例に係るタッチ検知装置の概略的な側断面図である。
図9bは、本開示の一実施例に係るタッチ検知装置の概略的な側断面図である。
【
図10】
図10aは、本開示の一実施例に係るタッチ検知装置のフレーム要素を製造する方法のフローチャートである。
図10bは、本開示の一実施例に係るタッチ検知装置のためのフレーム要素を製造する方法の別のフローチャートである。
図10cは、本開示の一実施例に係るタッチ検知装置のためのフレーム要素を製造する方法の別のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、タッチ検知装置の具体例について、本発明の実施形態を提示する。説明を通じて、対応する要素を特定するために、同じ符号を使用することとする。
【0025】
図1aは、法線軸104を有する平面103に延びるタッチ面102を規定するパネル101を含むタッチ検知装置100の概略図である。パネル101は、光透過性パネルである。タッチ検知装置100は、パネル101の外周107に沿って配置された複数のエミッタ105および検出器106を含む。
図1aは、提示を明確にするためにエミッタ105のみを示し、
図1bは、光がエミッタ105からタッチ面102を横切って検出器106に伝達される様子を示している。タッチ検知装置100は、外周107に隣接して、当該外周に沿って配置された光誘導部108を備える。光誘導部108は、光誘導面109を含む。エミッタ105は、光110を放出するように配置され、光誘導面109は、光110を受けて、その光を、パネル101のタッチ面102を横切るように導くように配置されている。光は、
図1bに示すように、タッチ面102を横切って伝播した後、対応する光誘導面109を介して、検出器106に反射される。
図1cは、タッチ検知装置100の概略的な上面図である。
図2は、エミッタ105から検出器106への反射も概略的に示している。パネル101は、タッチ面102と反対側に裏面111を含み、エミッタ105および/または検出器106が、タッチ検知装置100のフレーム要素113内のチャネル112を介して光110を放出および/または受信するように裏面に対向して配置されている。チャネル112は、裏面111に対向して配置され、法線軸104の方向104’に、すなわち法線軸104と実質的に平行に延びている。光誘導面109およびチャネル112は、パネル101を間に挟んで互いに反対側に配置され、平面103の方向に沿って重なり合っている。すなわち、
図1aの光誘導面109およびチャネル112の水平方向の位置に重なり合う部分があり、その結果、光路が光誘導面109からチャネル112へ垂直に延びている。光誘導面109は、法線軸104の方向104’に、パネル101を介して、さらにチャネル112を介して、エミッタ105からの光110を受光し、または検出器106に光を導くように配置されている。光放射の主光軸110’は、方向104’に沿って本質的に延びることができるが、
図1aに示すように、光は光軸110’の周りに角度の広がりも有することを理解されたい。
図1aおよび
図4に例示するように、チャネル112の上方に配置された光誘導面109を有することにより、周囲光またはシステム迷光の効果的な遮蔽を提供することができる。このため、検出器106に向かって反射される周囲光または迷光の量を最小限に抑えることができ、信号対雑音比を向上させることができる。法線104の方向104’に光110を放出するエミッタ105を有することにより、すなわち、
図1aおよび
図4にさらに例示するように、法線軸104と実質的に平行な光110の光軸110’を有することにより、外周に沿ったタッチ検知装置100の寸法を容易に減少させることができる。エミッタ105および検出器106のアセンブリの断面フットプリントは、例えば
図1aおよび
図4の平面103の方向に、最小化することができる。また、上記の配置により、パネル101に対する角度反射を最小化することができるが、これは、いくつかの用途において有利となり得る。パネル101を通って光110が伝播するようにしたことで、パネル101がエミッタ105および検出器106を周囲から密封する要素として機能することができ、それにより、コンパクトなタッチ検知装置100を提供するとともに、光学コンポーネントの数を最小化するという点で更なる相乗的な効果を与えることができる。このため、パネル101は、例えば液体や埃から電子機器を保護するための密封部分として機能することができる。このため、更なる光学密封要素を省くことができる。これは、光がパネル101を横切って散乱する角度をさらに大きくして、反射損失を少なくし、パネル101を横切るスキャンラインのカバレッジを改善することができるという点でさらに有利である。例えば、
図1dに関してさらに説明するように、フレネル反射損失を最小限に抑えることができる。
図1dは、先行技術のタッチ検知装置の一例を示し、ここでは、エミッタ401および検出器402がタッチ面403の側部に沿って配置され、光学密封コンポーネント404が側部に沿って配置されている。光学密封コンポーネント404は、タッチ面403の上方であって、タッチ面403を横切る光を反射する両側部の反射面の間(すなわち、光誘導面109の位置に対応する位置)に配置されている。このような追加の光学密封コンポーネント404を有する場合、特に、
図1dの反射406によって示すように、光がタッチ面403の側部に沿って高角度で反射されるときに、タッチ面403の上方を伝播する光によって望ましくない反射を導入する可能性がある。
図1eは、
図1dの例のさらに詳細な図であり、そのような追加の光学密封コンポーネント404、404’の各境界面における更なる反射405、405’を示している。このような反射405、405’は、特にタッチ面403の各側部に沿って追加の光学密封コンポーネント404、404’を有する場合に、光の著しい損失に繋がる可能性がある。
【0026】
コンポーネントの数を減らすことは、更なるコンパクト化が望まれるいくつかの用途において特に有利となり得る。これにより、タッチ検知装置100のコストも低減することができる。以下により詳細に説明するように、光誘導面109がフレーム要素113の材料に形成されるように、光誘導部108をフレーム要素113の一部として形成することができる。これにより、タッチ面102からエミッタ105および検出器106に至る光の経路に沿った光学機械コンポーネントの数をさらに減らすことができる。このため、位置合わせを必要とするコンポーネントの数も減少し、組み立てが簡素化される。その結果、検出光をより効率的に使用する、特にコンパクトで堅牢なタッチ検知装置100が提供される。よって、複雑さとコストを低減しながらも、タッチ検出性能を向上させることができる。
【0027】
図2および
図4に例示するように、光誘導面109とタッチ面102の平面103との間の角度(v)は、45度未満であってよい。これにより、
図1dの反射406によって同様に例示される、(タッチ信号の減衰を検出するときにアーチファクトまたは他の妨害を引き起こす可能性がある)タッチ面102を横切る光の望ましくない反射の量を減らすことができる。その代わりに、角度(v)が45度未満である場合には、望ましくない光の反射が、平面103の外に反射され得る。角度(v)は、望ましくない光の反射を特に有利に低減するために、いくつかの例では、41~44度の範囲内であってもよい。角度(v)は、45度を超えるものであってもよい。例えば、角度(v)を範囲46~49度にすることによっても、
図1dのスキャンライン406によって例示されるタイプの望ましくない反射を低減することができる。なお、タッチ検知装置100について上述したような有利な利点、すなわち、より複雑でなく、よりコンパクトで、コスト効率の良い製造プロセスは、角度(v)が45度を超える場合と45度未満の場合の両方の例に適用されることを理解されたい。
【0028】
パネル101は、タッチ面102と裏面111との間に延在するエッジ114を有する。チャネル112は、例えば
図2および
図5に概略的に示すように、パネル101のそれぞれのエッジ114に最も近く配置された第1のチャネル壁115aと、対向する第2のチャネル壁115bとの間に幅(d
1)で、平面102と平行な方向に延びる。第1のチャネル壁115aは、法線軸104の方向104’に対して角度116を有するように延びることができる。角度のあるチャネル壁115aを有することにより、検出器106に向かって反射される周囲光の量を減らすことができる。チャネル壁115aに対して反射される周囲光の大部分は、検出器106を通り過ぎる方向に反射され、一方で、迷光の問題を引き起こす可能性のある光誘導面109を直接通り過ぎるエミッタ105からの光も減少させることになる。
【0029】
なお、光誘導部108は、
図3および
図5に例示するように、光誘導部108がタッチ面102に最も近く配置されている部分に対応するエッジ部分121を有する。光誘導面109は、
図3および
図5に概略的に示すように、光誘導部108のエッジ部分121から光誘導部108の突起117まで延びることができる。突起117は、周囲光がチャネル112に向かって反射されるのを遮蔽するために、平面103と平行な方向に延ばすことができる。
【0030】
チャネル112の幅(d
1)は、周囲光または迷光からの十分な遮蔽を提供しながら、光誘導面109に向かって放出される光110の量を最適化するためにさらに変化させることができる。エミッタ105および/または検出器106に対する平面103の方向に沿った第1および第2のチャネル壁115a、115bの位置は、具体的な態様に応じて最適化することができる。一例では、
図3に概略的に示すように、第2のチャネル壁115bの位置が、平面103の方向に沿って、突起117の位置と整列される。これは、周囲光または迷光の遮蔽に特に有利であると考えられる。同時に、チャネル112の中心に対するエミッタ105の位置を最適化する場合に、放出光110の遮断を回避することができる。以下にさらに説明するように、検出光の損失を回避するために、または周囲光または迷光の影響を低減するために、チャネル壁115a、115bの表面特性も調整することができる。
【0031】
エミッタ105および/または検出器106は、基板119に取り付けることができる。基板119は、フレーム要素113の対応する係合面120bと対向して配置された、面取りされたエッジ120aを含むことができる。フレーム要素113の係合面120bは、
図3および
図6に概略的に示すように、法線軸104に対して角度122を付けることができる。これにより、基板119をフレーム要素113に対して正しい位置に効果的に固定することが可能になる。このため、光誘導面109に対してエミッタ105および/または検出器106を容易に確実に位置合わせすることができ、それにより信号を容易に最適化することができる。同時に、
図3に例示するように、フレーム要素113の角度付き表面120bを提供することにより、基板119に最も近い第2のチャネル壁115の少なくとも一部分を除去することが可能になり、エミッタ105からの光、または検出器106への光を遮断するリスクを低減することができる(例えば、
図2対
図3を参照)。
【0032】
チャネル112の壁115a、115bは、拡散性光散乱面を備えることができる。このため、壁115a、115bは反射要素として利用することもでき、それにより、より良好な光の管理、例えば、光のリサイクルおよび光誘導面109に向かって失われた方向からの光の反射が可能になる。このため、放出された光110の大部分を利用することができる。同時に、反射光の正反射成分を提供するように壁115a、115bの表面を調整することができる。これにより、反射光の方向付けを改善することができ、例えば、パネル101の上の光誘導面109に向けて光を導くことができる。反射光の正反射成分の比率は、チャネル壁115、115bに様々な表面処理を実行して、例えばその表面粗さに影響を与えることによって、変化させることができる。また、光誘導面109の反射特性も、そのような表面処理によって変化させることができ、そのような表面処理には、以下でより詳細に説明するように、エッチング、ビーズブラスト、サンドブラスト、ブラッシングおよび/または陽極酸化が含まれる。
【0033】
図3および
図4に例示するように、支持体123を基板119に取り付けることができる。支持体123は、基板119とフレーム要素113のフレーム壁124a、124bとの間で、平面103と平行な方向に延びることができる。支持体123は、フレーム要素113に対する基板119の位置合わせを容易にすることができる。これにより、製造が容易となり、フレーム要素113に対するエミッタ105および/または検出器106の正確な位置決めが可能となる。
【0034】
フレーム要素113は、キャビティ125を形成するように成形することができる。エミッタ105および/または検出器106は、基板119に取り付けられ、基板119は、
図3に概略的に示すように、エミッタ105および/または検出器106が基板119よりもパネル101のそれぞれのエッジ114に近く配置されるように、キャビティ125内に配置することができる。これにより、上述したようなパネル101の有利な密封効果を維持しつつ、エミッタ105および/または検出器106がパネル101のエッジ114により近い位置に配置されるため、ベゼルの幅、すなわち平面103の方向に沿った光誘導部108の幅を最小化することができる。これにより、よりコンパクトなタッチ検知装置100が提供される。
【0035】
特に、キャビティ125は、パネル101のそれぞれのエッジ114に最も近く配置された第1のフレーム壁124aと、対向する第2のフレーム壁124bとの間に幅(d
2)で、平面103と平行な方向に延びることができる。基板119は、
図3に例示するように、エミッタ105および/または検出器106が基板119よりも第1のフレーム壁124aに近い位置に配置されるように、キャビティ125内に配置することができる。これにより、平面103の方向に沿ったベゼルの幅を最小化することができる。
【0036】
また、基板119は、
図2に例示するように、法線軸104の方向104’に細長い形状で延びることができる。これにより、法線軸104に垂直な方向におけるタッチ検知装置100の寸法を縮小することができ、これは、この方向の空間の大きさが制限されているいくつかの用途において、かつ/または周囲のフレームコンポーネントに対する利用可能なタッチ面102の比率を最適化する必要がある場合に、望ましい可能性がある。基板119を法線軸104の方向104’に沿って延ばすことと、エミッタ105および/または検出器106を基板119よりも第1のフレーム壁124aの近くに配置させることの組合せにより、平面103の方向に沿って空間を特に効率的に利用することができる。
【0037】
図9aは、基板119が平面103の方向に沿って延びる一例を示しており、これにより、法線軸104の方向に沿ったコンパクトな寸法を達成することができる。これは、特にフラットな表示パネル301とともに利用される場合に有利であり得るが、その場合、表示される領域の周囲の平面103の方向の寸法が増加する可能性がある。
図9bは、基板119が平面103の方向に沿って延びているが、エミッタ105および/または検出器106が、反射面135を介して平面103の方向に光を放出/受信するように配置されている別の例である。これにより、法線軸104の方向に沿ってコンパクトな寸法を実現することができる。反射面135は、鏡面反射面であってもよい。
【0038】
光誘導面109は、陽極酸化された金属であってもよい。また、光誘導面109は、光110をタッチ面102に向けて拡散反射させるように表面処理されたものであってもよい。陽極酸化プロセスにより、表面109の微細なテクスチャが変化し、表面109上の自然酸化物層の厚さが増加する。陽極酸化された酸化物表面の厚みや気孔率は変化させることができる。陽極酸化された表面は、所望の外観を実現するために、様々な色に染色することができる。一部の色は、例えばアルミニウムが黒、グレイまたはシルバーに陽極酸化される場合など、80%を超えるような赤外線範囲における有利な反射率を提供することができる。他の金属も、銀のように有利な反射率特性を提供することができる。多くの陽極酸化材料が著しく反射し始める940nmを超える波長を使用することが特に有利となる場合がある。また、アルミニウムなどの様々な合金を使用することで、様々な色を提供することができる。陽極酸化された金属または合金に様々な表面処理を行うことにより、反射光の拡散および正反射成分を変化させることができる。こうして表面粗さを変化させることにより、上記反射成分の比率を最適化することができる。反射光の指向性は、正反射成分を増加させることによって増加し、一方、ランダム散乱の量は、拡散成分とともに増加する。例えば、光誘導面109からの反射光の正反射成分を増加させると、スキャンラインの強度を増加させることができる。そのような場合、エミッタ105の数および/または位置は、拡散的な光散乱の減少に起因するスキャンラインの狭小化を補償するために変化させることができる。このため、いくつかの例では、陽極酸化表面の所望の美的外観を可能にしながら、光誘導面109の反射特性を最適化することができる。
【0039】
様々な表面粗さ特性は、エッチング、サンドブラスト、ビーズブラスト、機械加工、ブラッシング、研磨、および上述した陽極酸化などのプロセスなど、様々なプロセスによって実現することができる。一例では、光誘導面109が、0.1~0.35の傾斜RMS(Δq)により定義される表面粗さを有することができる。有利な拡散性のために、傾斜RMS(Δq)を0.1~0.25とすることができる。値が高いと信号の強度が低下する可能性があり、信号が低過ぎると、光がタッチ面102を横切る平面103において広がる角度(φ)(
図1cの例ではφで示される角度)が減少し、エミッタおよび検出器の視野角によって制限される、より公差の大きい検知システムに繋がる可能性がある。また、スキャンラインの幅が狭くなり過ぎる可能性もある。別の例では、タッチ検知装置100のコンポーネントの有利な電力消費を維持しながら、最適化された信号強度およびタッチ検出プロセスを提供する特に有利な拡散性のために、傾斜RMS(Δq)を0.13~0.20とすることができる。
【0040】
適切な傾斜の変化がある場合、ブラストまたはエッチングされた表面の高さ変化は、典型的には1~20umの範囲である。しかしながら、上述したような傾斜RMS(Δq)の最適化は、反射特性の最も効果的な調整を提供する。いくつかの例では、光誘導面109の粗さが低い。一例では、光誘導面109が、表面粗さを増加させるためのいかなる処理も受けていない陽極酸化金属表面であってよい。そのような場合、光誘導面109は、押出加工プロセスの後に直接陽極酸化され得る。光誘導面109は、そのような場合、鏡のようなものであってもよく、すなわち、表面109は、光の拡散を達成するためのいかなる処理も受けていない。そのような場合、傾斜RMS(Δq)は、鏡のような表面を提供するために、0~0.1であってよい。そのような表面は、特定のタッチ検出プロセスに対して狭いスキャンラインが望まれる用途において有利である場合がある。例えば、タッチ面102を横切る所望の方向において利用可能な検出光の量を増加させることが有利である場合などである。
【0041】
フレーム要素113は、光誘導部108を含むことができる。すなわち、光誘導部108は、フレーム要素113から直接、例えば押出成形によって一体部品として形成される。フレーム要素113および光誘導部108は、アルミニウムなどの様々な金属から形成することができる。このため、光誘導面109は、フレーム要素113の陽極酸化された金属表面であってもよい。このように、フレーム要素113は、拡散的な光散乱のための別個の光学コンポーネントを設けることなく、拡散性光散乱要素として利用することができる。このため、そのように一体化された光誘導面109により、コンポーネントの数をさらに削減することができる。これにより、そのような別個の光学コンポーネントを保護するために追加の光学密封要素を有する必要性がさらになくなる。こうして、組み立てがより容易な、より堅牢なタッチ検知装置100が提供される。さらに、チャネル112の壁115a、115bの表面は、フレーム要素113の金属表面であってもよい。壁115a、115bの反射特性は、光誘導面109に関して上述したように調整することができる。フレーム要素113には、エミッタ105および/または検出器106が配置されるキャビティ125を形成することができる。このため、フレーム要素113は、
図1aに概略的に示すように、光誘導面109、115a、115bと、基板119のためのキャビティ125と、ディスプレイ301用のバックフレーム302への任意の取付インターフェース129とを有する単一の一体部品として形成することができる。これにより、タッチ検知装置100の光学機械コンポーネントの数を最小化することができ、さらに、複雑ではなく、大量生産に適した特に堅牢なタッチ検知装置100を提供することができる。
【0042】
光誘導部108は、例えば
図2に示すように、光誘導面109の反対側に外面126を含むことができる。光誘導面109は、外面126よりも高い反射率を有することができる。フレーム要素113の光誘導部108に様々な表面処理を施すことにより、光誘導面109を介して、タッチ面102を横切る光の効果的かつ最適化された散乱を有することを可能にする一方で、ユーザを向く外面126が低い反射率を有することにより、ユーザに向かう光の反射を最小限に抑えることができる。さらに、これにより、光学的機能に影響を与えずに、所望の外観を与えることができる(例えば、傾斜が大き過ぎることによって光誘導面109が反射しなくなり過ぎるのを回避することができる)。フレーム要素113の単一の一体部品のセクションを、光反射性の所望の機能を達成するために独自に処理することができるため、製造材料の特に有効な利用を実現することができる。例えば、別個の光学コンポーネントの位置合わせは不要となる。
【0043】
一例では、チャネル112の壁115a、115bが、光誘導面109よりも高い正反射率を有することができる。これにより、光誘導面109に向かう放出光のより制御された反射を提供することができる。光誘導面109は、タッチ面102を横切るスキャンラインの幅を広げるために、より大きな拡散成分を提供することができる。
【0044】
一態様では、法線軸104を有する平面103に延びるタッチ面102を規定するパネル101を備えたタッチ検知装置100が提供される。複数のエミッタ105および検出器106が、パネル101の外周107に沿って配置されている。光誘導部108は、外周107に隣接して配置され、光誘導面109を含む。エミッタ105は、光110を放射するように配置され、光誘導面109は、光110を受光し、タッチ面102を横切るよう光110を導くように配置されている。パネル101は、タッチ面102の反対側にある裏面111を備える。エミッタ105および/または検出器106は、フレーム要素113のチャネル112を介して、光を放出および/または受光するために、裏面111に対向して配置されている。光誘導面109は、パネル101を介して、さらにチャネル112を介して、エミッタ105からの光を受け、または検出器106に光を導く。フレーム要素113は、金属から形成され、かつ光誘導部108を含み、光誘導面109が、フレーム要素113の陽極酸化された金属表面となっている。また、フレーム要素113は、キャビティ125も形成することができ、このキャビティ内には、放出光110の光軸110’が法線軸104と本質的に平行になるように、エミッタ105および/または検出器106が配置されている。こうして、信号対雑音比が改善され、かつタッチ検出性能が増加したコンパクトなタッチ検知装置100を提供することによって、タッチ検知装置100は、上述したような有利な利点を提供することができる。
【0045】
図10aは、タッチ検知装置100のためのフレーム要素113を製造する方法200のフローチャートである。本方法200は、フレーム要素113を押出加工して、光誘導部108と、エミッタ105および/または検出器106を含む基板119を受け入れるように適合されたキャビティ125とを形成するステップ201を含む。
図7aは、そのような押出加工されたフレーム要素113の一例を示している。本方法200は、キャビティ125の壁部127をフライス加工してチャネル112を形成するステップ202をさらに含む。
図7aは、
図7bに例示するように開放チャネル112がキャビティ125に提供されるように、削り取られる壁部127を破線で示している。チャネル112は、チャネル壁または表面115a、115bによって規定される。光誘導部108の光誘導面109は、基板119がキャビティ125内に配置されたときに、チャネル112を介して、エミッタ105から光を受け取り、または検出器106に光を導くことができる。このため、基板119だけでなく光誘導面109、115a、115bの位置合わせと支持の機能を組み込んだ、押出加工201およびフライス加工202によって、フレーム要素113の単一の一体部品を提供することができる。フレーム要素113の構造的完全性および所望の公差がプロセス中に維持され得る一方で、容易な製造が提供される。さらに、フライス加工202は、押出加工プロセス中に困難なチャネル112の寸法のカスタマイズを提供することができる。
【0046】
図7cは、押出加工されたフレーム要素113の別の例を示している。フレーム要素113は、光誘導面109の後続の表面処理を容易にするために、光誘導面109が遮るものの無い見通し線137、137’を有するように成形することができる。見通し線137、137’は、光誘導面109の法線(n)と平行に延びるものであってもよい。
図7cは、光誘導面109の見通し線が、表面109の法線(n)に対応する下側の破線137と、上側の破線137’とで示されている一例を示している。フレーム要素113によって遮るものの無い見通し線137、137’を有すること、すなわち上記の見通し線137、137’の障害物または交差がないことにより、サンドブラストなど、光誘導面109のその後の表面処理プロセスを最適化することが可能になる。このため、光誘導面109の所望の特性を容易に得ることができる。フレーム要素113は、
図7cに概略的に示すように、傾斜部分138を含むことができ、この傾斜部分により、フレーム要素113のコンパクトな外形を維持しながら、上述したように光誘導面109の遮るものの無い見通し線137、137’を得ることが可能になる。
図7cの例に示すように、表面109の下端139における(壁部127に最も近い)表面109との法線(n)の交点に対応する下側見通し線137が、フレーム要素113または傾斜部分138と交差せずにフレーム要素113を超えて延びるように、傾斜部分138を配置することができる。これにより、特にコンパクトなフレーム要素113を維持しながらも、光誘導面109全体の表面処理のためのアクセスが容易になる。壁部127は、傾斜部分138の一部であってもよい。
【0047】
図10b~
図10cは、方法200の更なるフローチャートである。本方法200は、光誘導面109をエッチング、またはビーズブラスト若しくはサンドブラストを実行するステップ2011、2031を含むことができる。このため、光誘導面109は、様々な反射率特性を備えることができる。一例では、
図10bに示すように、光誘導面109のエッチング、またはビーズブラスト若しくはサンドブラスト2011が、フライス加工202の前に実行される。このため、例えばサンドブラストプロセス中に壁部127によって遮蔽されるチャネル112の表面115a、115bに影響を与えずに、光誘導面109に様々な反射率特性を提供することができる。上述したように、押出加工プロセスの後に提供されるような壁115a、115bのより大きな正反射成分を維持することが有利である場合があり、一方、光誘導面109はその後、より拡散的な反射を提供するように処理され得る。いくつかの例では、
図10cに示すように、光誘導面109のエッチング、またはビーズブラスト若しくはサンドブラスト2031を、フライス加工202の後に実行することができる。いくつかの例では、
図10cにさらに示すように、光誘導面109のエッチング、またはビーズブラスト若しくはサンドブラスト2031を、後述する追加のフライス加工ステップ203の後に実行することができる。本方法200は、上述したように、フレーム要素113の金属の陽極酸化204を含むことができる。
【0048】
本方法200は、フレーム要素113に配置されたときのパネル101のタッチ面102の上の光誘導部109の高さ(h)が減少するように、押出加工された光誘導部108の頂部128をフライス加工するステップ203を含むことができる。
図8aは、押出加工後の光誘導部108の一例の詳細図を示している。頂部128の先端130の半径は、押出加工プロセスによって制限されている。
図8bは、
図8aの破線に沿って頂部128が削り取られた後の光誘導部108を示している。フライス加工された光誘導部108は、高さ(h)を有し、
図8bに示すように、対応する先端130’は、押出加工後に設けられた先端130と比較してより鋭く、すなわち半径が小さくなっている。このように、頂部128をフライス加工で取り除くことによって、よりコンパクトな光誘導部108が提供されるが、タッチ面102を横切って光を反射するのに有用な光誘導部108の部分は、本質的に影響を受けない。
図8aの丸みを帯びた先端130は、タッチ面102を横切って光を導くのに役立たない。このため、
図8bに示すように、丸みを帯びた先端130は除去されている。このように頂部128をフライス加工することにより、光誘導部108の高さをより効果的に利用することができる。このため、ベゼルの高さを最小にしながら、様々な先端サイズを有する様々なタッチ物体を確実に識別することを可能にするために、タッチ面102の上にスキャンラインの十分な高さまたは高さ分布を提供することができる。いくつかの例では、高さが1.5~2mmの範囲にある。1.8mmの高さは、いくつかの例では、平らなベゼルの外観を提供し、特に有利であり得る。
【0049】
図8cに概略的に示すように、光誘導面109は、凹面であってもよい。タッチ面102に向かって凹状である光誘導面109を有することにより、必要に応じて反射光の方向を制御し、スキャンラインの信号強度を増大させることが可能になる。光誘導面109は、放物線状の凹面であってもよい。光誘導面109は、上述したように、フレーム要素113に直接形成することができるため、フレーム要素113に直接凹面形状を形成することができる。このように、追加の光学コンポーネントを導入することなく、フレーム要素113を直接成形することで、光の反射を制御することができる。
【0050】
図8dは、異なる
図I~IIIで、光誘導面109の細部を示す概略図である。第1の図(I)は、平面103の方向103、例えば、
図8cの矢印103に沿ったものである。このため、光誘導面109は、細長い部分として図示され、パネル101の上に配置され、パネル101の下にエミッタ105および検出器106が配置されている。
図8dは、第2図(II)において、光誘導面109の細部セクションを示している。光誘導面109は、表面109にパターンを形成するために、フライス加工または他の機械加工が施され得る。
図8dの第3図(III)は、図(II)のA-Aに沿った断面であって、ここではそのようなパターンの一例が示されており、周期的な隆起136が波形パターンまたは格子を形成している。タッチ面102を横切る光の方向を制御するために所望の反射特性を有する光誘導面109を提供するために、フライス加工または他の機械加工プロセスによってフレーム要素113に様々なパターンを直接形成することができる。
【0051】
拡散性光散乱面の更なる例について以下に説明する。説明した拡散性光散乱面は何れも、光誘導面109に設けることができる。拡散性光散乱面は、少なくとも50%の拡散反射、好ましくは少なくとも70~85%の拡散反射を示すように構成することができる。70%を超える940nmでの反射率は、上述した陽極酸化(例えば、金属塩を用いた電解着色)により、例えば黒色の外観を有する材料について、達成することができる。拡散性光散乱面は、例えば陽極酸化、塗装、噴霧、積層、接着などによって適用される、コーティング、層またはフィルムとして実現することができる。上述したようなエッチングおよびブラストは、所望の拡散性反射率に到達するための有効な手順である。一例では、拡散性光散乱面が、艶消し白色塗料またはインクとして実現される。高い拡散反射率を達成するために、塗料/インクが、高い屈折率を有する顔料を含むことが好ましい場合がある。そのような顔料の1つはTiO2であり、屈折率n=2.8を有する。拡散性光散乱面は、屈折率が変化する材料を含むことができる。また、塗料フィラーおよび/または塗料ビヒクルの屈折率が、それが適用される表面上の材料の屈折率に一致することが、例えばフレネル損失を低減するために望ましい場合もある。塗料の特性は、Dow Chemical社によって提供されるEVOQUE(商標)Pre-Composite Polymer Technologyを使用することによってさらに改善される場合がある。市販されているディフューザとして使用するための他の多くのコーティング材料として、例えば、フルオロポリマーSpectralon、ポリウレタンエナメル、硫酸バリウムベースの塗料または溶液、粒状PTFE、微孔性ポリエステル、GORE(登録商標)Diffuse Reflector Product、Bayer AG社から提供されるMakrofol(登録商標)ポリカーボネートフィルムなどがある。代替的には、拡散性光散乱面は、平坦なまたはシート状のデバイス、例えば、上述した人工ディフューザ、ディフューザフィルム、または、例えば接着剤によって貼り付けられたホワイトペーパーとして実現することができる。他の代替案によれば、拡散性光散乱面は、場合によっては反射材料上のコーティングと組み合わせた、外面上のセミランダム化された(非周期的な)微細構造として実現することができる。
【0052】
微細構造は、エッチング、エンボス加工、成形、研磨ブラスト、スクラッチ、ブラッシング等によって、そのような外面および/または内面に提供され得る。拡散性光散乱面は、成形手順の間に形成され得る、そのような内面に沿った空気のポケットを含むことができる。別の代替案では、拡散性光散乱面は、光透過性(例えば、光透過性拡散材料または光透過性人工ディフューザ)であって、外面が反射材料のコーティングで覆われたものであってもよい。拡散性光散乱面の他の例は、粗い表面上に設けられた反射コーティングである。
【0053】
拡散性光散乱面は、レンチキュラーレンズまたは回折格子構造を含むことができる。レンチキュラーレンズ構造は、フィルムに組み込むことができる。拡散性光散乱面は、内面および/または外面に設けられた正弦波波形などの様々な周期構造を含むことができる。周期の長さは、0.1mm~1mmの範囲内であってもよい。周期構造は、所望の方向への散乱を達成するために整列させることができる。
【0054】
このため、上述したように、拡散性光散乱面は、白色または着色された塗料、白色または着色された紙、Spectralon、反射材料で覆われた光透過性拡散材料、拡散ポリマーまたは金属、人工ディフューザ、反射セミランダム微細構造、インモールド空気ポケットまたは拡散材料のフィルム、例えばレンチキュラーレンズ、または他のマイクロレンズ構造または格子構造などの様々な人工フィルムを含むことができる。拡散性光散乱面は、好ましくは、低いNIR吸収を有する。
【0055】
拡散性光散乱要素が反射面を提供する上記実施形態のいずれかの態様では、拡散性光散乱要素が、正反射成分を有さないか、または僅かしか有していない。これは、空気中の艶消し拡散フィルム、内部反射バルクディフューザ、またはバルク透過ディフューザのいずれかを使用することによって達成することができる。これにより、通常、正反射成分を有するディフューザ界面から生じる狭く重なり合った鏡面反射スキャンラインを回避し、広く拡散したスキャンラインプロファイルのみを提供することにより、効果的にスキャンラインを広げることができる。タッチ信号から重なり合う鏡面反射スキャンラインを取り除くことで、システムはより容易に広く拡散したスキャンラインプロファイルを使用することができる。好ましくは、拡散性光散乱面は、1%未満の正反射成分を有し、さらに好ましくは、0.1%未満である。代替的には、正反射成分が0.1%を超える場合、拡散性光散乱要素は、光沢を抑えるために表面粗さを有する構成、例えば微細構造化された構成であることが好ましい。
【0056】
パネル101は、ガラス、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)またはポリカーボネート(PC)から形成することができる。パネル101は、ディスプレイまたはモニタ(図示せず)に重ねるように、または一体化するように設計されるものであってもよい。タッチの出力がパネル101を介して、上述したディスプレイデバイスを介して提示される必要がなく、代わりに別の外部ディスプレイに表示されるか、または任意の他のデバイス、プロセッサ、メモリなどに伝達される場合、パネル101は光透過性である必要はない。パネル101は、不要な周囲光を遮断するために、印刷、すなわちインクによるカバーなどの遮蔽層を備えることができる。これにより、検出器106に到達する迷光および周囲光の量を低減することができる。
【0057】
本明細書では、エミッタ105は、例えばダイオードレーザ、VCSEL(垂直共振器面発光レーザ)、LED(発光ダイオード)、白熱ランプ、ハロゲンランプなど、所望の波長範囲で放射線を放出することができる任意のタイプのデバイスであってもよい。また、エミッタ105は、光ファイバの端部によっても形成され得る。また、エミッタ105は、任意の波長範囲の光を生成することができる。以下の例では、赤外線(IR)、すなわち約750nmを超える波長の光が生成されることを前提としている。同様に、検出器106は、光検出器、CCDデバイス、CMOSデバイスなど、(同じ波長範囲の)光を電気信号に変換することができる任意のデバイスであってもよい。
【0058】
上記説明に関して、「拡散反射」は、入射光線が「鏡面反射」のように1つの角度だけでなく、多くの角度で反射されるような表面からの光の反射を指している。このため、拡散反射要素は、照明されると、要素上の各位置で大きな立体角にわたる反射によって光を放出することになる。この拡散反射は、「散乱」とも呼ばれる。上述した例は、提示を明確にするために、主にエミッタ105に関連して前述した要素に言及しているが、対応する配置が検出器106にも適用され得ることを理解されたい。
【0059】
本発明を、主に、いくつかの実施形態を参照して説明してきた。しかしながら、当業者によって容易に理解されるように、添付の特許請求の範囲によってのみ規定および限定される本発明の範囲および趣旨の範囲内で、上述したもの以外の実施形態も同様に可能である。
【0060】
例えば、上述したエミッタおよび検出器の具体的な配置は、単なる例として与えられたものである。本発明の結合構造は、多数のエミッタによって生成された光をパネルを横切るように伝送し、タッチ点での伝送光との相互作用によって引き起こされる受信光の変化を多数の検出器で検出することによって動作する任意のタッチ検知システムにおいて有用である。
【国際調査報告】