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特表2023-512684SARS-COV-2に対する抗体およびそれを使用する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-28
(54)【発明の名称】SARS-COV-2に対する抗体およびそれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230320BHJP
   C07K 16/10 20060101ALI20230320BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20230320BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230320BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230320BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230320BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230320BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230320BHJP
   C12N 5/0781 20100101ALI20230320BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230320BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230320BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20230320BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230320BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20230320BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230320BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230320BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230320BHJP
   G01N 33/569 20060101ALI20230320BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20230320BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/10 ZNA
C07K16/46
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N5/0781
A61K35/76
A61K35/17
A61K35/12
A61K39/395 N
A61K31/7088
A61K48/00
A61P31/12
G01N33/53 N
G01N33/569 L
C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547086
(86)(22)【出願日】2021-02-02
(85)【翻訳文提出日】2022-09-29
(86)【国際出願番号】 US2021016172
(87)【国際公開番号】W WO2021158521
(87)【国際公開日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】62/969,592
(32)【優先日】2020-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/970,062
(32)【優先日】2020-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/971,552
(32)【優先日】2020-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/977,941
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/016,228
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/023,858
(32)【優先日】2020-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521268130
【氏名又は名称】ヴィア・バイオテクノロジー・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Vir Biotechnology, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】コルティ, ダビデ
(72)【発明者】
【氏名】フィンク, カーチャ
(72)【発明者】
【氏名】ベルトラメッロ, マルティナ
(72)【発明者】
【氏名】カメロニ, エリザベッタ
(72)【発明者】
【氏名】ピント, ドーラ
(72)【発明者】
【氏名】ビアンキ, シーロ
(72)【発明者】
【氏名】スネル, ジョルジュ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA13
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA92Y
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BA05
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZB33
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB33
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB43
4C087BB65
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZB33
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA29
4H045EA53
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、SARS-CoV-2抗原に結合することができ、ある特定の実施形態では、対象におけるSARS-CoV-2感染を中和できる、抗体およびその抗原結合断片を提供する。抗体または抗原結合断片をコードするポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドを含むベクターおよび宿主細胞、医薬組成物、ならびにここに開示される抗体、抗原結合断片、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、および組成物を使用して、サルベコウイルスおよび/またはSARS-CoV-2感染を処置または診断する方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CDRH1、CDRH2、およびCDRH3を含む重鎖可変ドメイン(VH)と、CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを含む抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体または抗原結合断片が、宿主細胞の細胞表面上および/またはビリオン上に発現されるSARS-CoV-2の表面糖タンパク質に結合できる、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
前記抗体または抗原結合断片が、宿主細胞の細胞表面上に発現されるSARS-CoV-2および/もしくはSARS-CoVの表面糖タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)、ならびに/またはビリオン上に発現されるSARS-CoV-2および/もしくはSARS-CoVの表面糖タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)に結合できる、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
感染のin vitroモデルにおいて、および/または感染のin vivo動物モデルにおいて、および/またはヒトにおいて、SARS-CoV-2感染を中和できる、請求項1または請求項2に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項4】
CDRH1、CDRH2、およびCDRH3を含む重鎖可変ドメイン(VH)と、CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを含む抗体またはその抗原結合断片であって、
(i)前記CDRH1が、配列番号6、22、38、54、70、86、102、118、134、150、166、182、198、214、230、246、262、278、294、310、326、342、もしくは358のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、または1、2、もしくは3つの酸置換を含むその配列バリアントを含むか、またはこれからなり、この置換の1つまたは複数が、必要に応じて保存的置換であり、かつ/または生殖系列をコードするアミノ酸に対する置換であり;
(ii)前記CDRH2が、配列番号7、23、39、55、71、87、103、119、135、151、167、183、199、215、231、247、263、279、295、311、327、343、359、もしくは416のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、または1、2、もしくは3つのアミノ酸置換を含むその配列バリアントを含むか、またはこれからなり、この置換の1つまたは複数が、必要に応じて保存的置換であり、かつ/または生殖系列をコードするアミノ酸に対する置換であり;
(iii)前記CDRH3が、配列番号8、24、40、56、72、88、104、120、136、152、168、184、200、216、232、248、264、280、296、312、328、344、360、375、378、もしく397のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、または1、2、もしくは3つのアミノ酸置換を含むその配列バリアントを含むか、またはこれからなり、この置換の1つまたは複数が、必要に応じて保存的置換であり、かつ/または生殖系列をコードするアミノ酸に対する置換であり;
(iv)前記CDRL1が、配列番号14、30、46、62、78、94、110、126、142、158、174、190、206、222、238、254、270、286、302、318、334、350、366、398、399、401、403、もしくは405のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、または1、2、もしくは3つのアミノ酸置換を含むその配列バリアントを含むか、またはこれからなり、この置換の1つまたは複数が、必要に応じて保存的置換であり、かつ/または生殖系列をコードするアミノ酸に対する置換であり;
(v)前記CDRL2が、配列番号15、31、47、63、79、95、111、127、143、159、175、191、207、223、239、255、271、287、303、319、335、351、もしくは367のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、または1、2、もしくは3つのアミノ酸置換を含むその配列バリアントを含むか、またはこれからなり、この置換の1つまたは複数が、必要に応じて保存的置換であり、かつ/または生殖系列をコードするアミノ酸に対する置換であり;かつ/または
(vi)前記CDRL3が、配列番号16、32、48、64、80、96、112、128、144、160、176、192、208、224、240、256、272、288、304、320、336、352、358、386、もしくは394のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、または1、2、もしくは3つのアミノ酸置換を含む有するその配列バリアントを含むか、またはこれからなり、この置換の1つまたは複数が、必要に応じて保存的置換であり、かつ/または生殖系列をコードするアミノ酸に対する置換であり、
前記抗体または抗原結合断片が、宿主細胞の細胞表面上および/またはビリオン上に発現されるSARS-CoV-2の表面糖タンパク質に結合できる、
抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
感染のin vitroモデルにおいて、および/または感染のin vivo動物モデルにおいて、および/またはヒトにおいて、SARS-CoV-2感染を中和できる、請求項4に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項6】
(i)それぞれ、配列番号6~8および14~16;
(ii)それぞれ、配列番号22~24および30~32;
(iii)それぞれ、配列番号22~24、398、31、および32;
(iv)それぞれ、配列番号22~24、399、31、および32;
(v)それぞれ、配列番号22~24、401、31、および32;
(vi)それぞれ、配列番号22~24、403、31、および32;
(v)それぞれ、配列番号22~24、405、31、および32;
(vi)それぞれ、配列番号38~40および46~48;
(vii)それぞれ、配列番号38~40、398、47、および48;
(viii)それぞれ、配列番号38~40、399、47、および48;
(viv)それぞれ、配列番号38~40、401、47、および48;
(x)それぞれ、配列番号38~40、403、47、および48;
(xi)それぞれ、配列番号38~40、405、47、および48;
(xii)それぞれ、配列番号54~56および62~64;
(xiii)それぞれ、配列番号70~72および78~80;
(xiv)それぞれ、配列番号86~88および94~96;
(xv)それぞれ、配列番号102~104および110~112;
(xvi)それぞれ、配列番号118~120および126~128;
(xvii)それぞれ、配列番号134~136および142~144;
(xviii)それぞれ、配列番号150~152および158~160;
(xix)それぞれ、配列番号166~168および174~176;
(xx)それぞれ、配列番号182~184および190~192;
(xxi)それぞれ、配列番号198~200および206~208;
(xxii)それぞれ、配列番号214~216および222~224;
(xxiii)それぞれ、配列番号230~232および238~240;
(xxiv)それぞれ、配列番号246~248および254~256;
(xxv)それぞれ、配列番号262~264および270~272;
(xxxvi)それぞれ、配列番号278~280および286~288;
(xxvii)それぞれ、配列番号294~296および302~304;
(xxviii)それぞれ、配列番号310~312および318~320;
(xxix)それぞれ、配列番号326~328および334~336;
(xxx)それぞれ、配列番号342~344および350~352;
(xxxi)それぞれ、配列番号358~360および366~368;
(xxxii)それぞれ、配列番号22、23、375、および30~32;
(xxxiii)それぞれ、配列番号22、23、375、398、31、および32;
(xxxiv)それぞれ、配列番号22、23、375、399、31、および32;
(xxxv)それぞれ、配列番号22、23、375、401、31、および32;
(xxxvi)それぞれ、配列番号22、23、375、403、31、および32;
(xxxvii)それぞれ、配列番号22、23、375、405、31、および32;
(xxxviii)それぞれ、配列番号22、23、378、および30~32;
(xxxix)それぞれ、配列番号22、23、378、398、31、および32;
(xl)それぞれ、配列番号22、23、378、399、31、および32;
(xli)それぞれ、配列番号22、23、378、401、31、および32;
(xlii)それぞれ、配列番号22、23、378、403、31、および32;
(xliii)それぞれ、配列番号22、23、378、405、31、および32;
(xliv)それぞれ、配列番号22~24、30、31、および386;
(xlv)それぞれ、配列番号22~24、398、31、および386;
(xlvi)それぞれ、配列番号22~24、399、31、および386;
(xlvii)それぞれ、配列番号22~24、401、31、および386;
(xlviii)それぞれ、配列番号22~24、403、31、および386;
(xlix)それぞれ、配列番号22~24、405、31、および386;
(l)それぞれ、配列番号38~40、46、47、および386;
(li)それぞれ、配列番号38~40、398、47、および386;
(lii)それぞれ、配列番号38~40、399、47、および386;
(liii)それぞれ、配列番号38~40、401、47、および386;
(liv)それぞれ、配列番号38~40、403、47、および386;
(lv)それぞれ、配列番号38~40、405、47、および386;
(lvi)それぞれ、配列番号22~24、30、31、および394;
(lvii)それぞれ、配列番号22~24、398、31、および394;
(lviii)それぞれ、配列番号22~24、399、31、および394;
(lix)それぞれ、配列番号22~24、401、31、および394;
(lx)それぞれ、配列番号22~24、403、31、および394;
(lxi)それぞれ、配列番号22~24、405、31、および394;
(lxii)それぞれ、配列番号22、23、375、30、31、および394;
(lxiii)それぞれ、配列番号22、23、375、30、31、および386;
(lxiv)それぞれ、配列番号22、23、375、398、31、および386;
(lxv)それぞれ、配列番号22、23、375、399、31、および386;
(lxvi)それぞれ、配列番号22、23、375、401、31、および386;
(lxvii)それぞれ、配列番号22、23、375、403、31、および386;
(lxviii)それぞれ、配列番号22、23、375、405、31、および386;
(lxix)それぞれ、配列番号22、23、378、30、31、および394;
(lxx)それぞれ、配列番号22、23、378、398、31、および394;
(lxxi)それぞれ、配列番号22、23、378、399、31、および394;
(lxxii)それぞれ、配列番号22、23、378、401、31、および394;
(lxxiii)それぞれ、配列番号22、23、378、403、31、および394;
(lxxiv)それぞれ、配列番号22、23、378、405、31、および394;
(lxxv)それぞれ、配列番号22、23、378、30、31、および386;
(lxxvi)それぞれ、配列番号22、23、378、398、31、および386;
(lxxvii)それぞれ、配列番号22、23、378、399、31、および386;
(lxxviii)それぞれ、配列番号22、23、378、401、31、および386;
(lxxix)それぞれ、配列番号22、23、378、403、31、および386;
(lxxx)それぞれ、配列番号22、23、378、405、31、および386;
(lxxxi)それぞれ、配列番号22、23、397、および30~32;
(lxxxii)それぞれ、配列番号22、23、397、398、31、および32;
(lxxxiii)それぞれ、配列番号22、23、397、399、31、および32;
(lxxxiv)それぞれ、配列番号22、23、397、401、31、および32;
(lxxxv)それぞれ、配列番号22、23、397、403、31、および32;
(lxxxvi)それぞれ、配列番号22、23、397、405、31、および32;
(lxxxvii)それぞれ、配列番号22、23、397、30、31、および386;
(lxxxviii)それぞれ、配列番号22、23、397、398、31、および386;
(lxxxix)それぞれ、配列番号22、23、397、399、31、および386;
(xc)それぞれ、配列番号22、23、397、401、31、および386;
(xci)それぞれ、配列番号22、23、397、403、31、および386;
(xcii)それぞれ、配列番号22、23、397、405、31、および386;
(xciii)それぞれ、配列番号22、23、397、30、31、および394;
(xciv)それぞれ、配列番号22、23、397、398、31、および394;
(xcv)それぞれ、配列番号22、23、397、399、31、および394;
(xcvi)それぞれ、配列番号22、23、397、401、31、および394;
(xcvii)それぞれ、配列番号22、23、397、403、31、および394;
(xcviii)それぞれ、配列番号22、23、397、405、31、および394;
(xcix)それぞれ、配列番号22、416、24、30、31、および32;
(c)それぞれ、配列番号22、416、24、30、31、および386;
(ci)それぞれ、配列番号22、416、24、30、31、および394;
(cii)それぞれ、配列番号22、416、24、398、31、および32;
(ciii)それぞれ、配列番号22、416、24、398、31、および386;
(civ)それぞれ、配列番号22、416、24、398、31、および394;
(cv)それぞれ、配列番号22、416、24、399、31、および32;
(cvi)それぞれ、配列番号22、416、24、399、31、および386;
(cvii)それぞれ、配列番号22、416、24、399、31、および394;
(cviii)それぞれ、配列番号22、416、24、401、31、および32;
(cix)それぞれ、配列番号22、416、24、401、31、および386;
(cx)それぞれ、配列番号22、416、24、401、31、および394;
(cxi)それぞれ、配列番号22、416、24、403、31、および32;
(cxii)それぞれ、配列番号22、416、24、403、31、および386;
(cxiii)それぞれ、配列番号22、416、24、403、31、および394;
(cxiv)それぞれ、配列番号22、416、24、405、31、および32;
(cxv)それぞれ、配列番号22、416、24、405、31、および386;
(cxvi)それぞれ、配列番号22、416、24、405、31、および394;
(cxvii)それぞれ、配列番号22、416、375、30、31、および32;
(cxviii)それぞれ、配列番号22、416、375、398、31、および386;
(cxix)それぞれ、配列番号22、416、375、398、31、および394;
(cxx)それぞれ、配列番号22、416、375、399、31、および386;
(cxxi)それぞれ、配列番号22、416、375、399、31、および394;
(cxxii)それぞれ、配列番号22、416、375、401、31、および386;
(cxxiii)それぞれ、配列番号22、416、375、401、31、および394;
(cxxiv)それぞれ、配列番号22、416、375、403、31、および386;
(cxxv)それぞれ、配列番号22、416、375、403、31、および394;
(cxxvi)それぞれ、配列番号22、416、375、405、31、および386;
(cxxvii)それぞれ、配列番号22、416、375、405、31、および394;
(cxxviii)それぞれ、配列番号22、416、378、30、31、および32;
(cxxix)それぞれ、配列番号22、416、378、398、31、および386;
(cxxx)それぞれ、配列番号22、416、378、398、31、および394;
(cxxxi)それぞれ、配列番号22、416、378、399、31、および386;
(cxxxii)それぞれ、配列番号22、416、378、399、31、および394;
(cxxxiii)それぞれ、配列番号22、416、378、401、31、および386;
(cxxxiv)それぞれ、配列番号22、416、378、401、31、および394;
(cxxxv)それぞれ、配列番号22、416、375、403、31、および386;
(cxxxvi)それぞれ、配列番号22、416、378、403、31、および394;
(cxxxvii)それぞれ、配列番号22、416、378、405、31、および386;
(cxxxviii)それぞれ、配列番号22、416、378、405、31、および394;
(cxxxix)それぞれ、配列番号22、416、397、30、31、および32;
(cxl)それぞれ、配列番号22、416、397、398、31、および386;
(cxli)それぞれ、配列番号22、416、397、398、31、および394;
(cxlii)それぞれ、配列番号22、416、397、399、31、および386;
(ccxliii)それぞれ、配列番号22、416、397、399、31、および394;
(cxliv)それぞれ、配列番号22、416、397、401、31、および386;
(cxlv)それぞれ、配列番号22、416、397、401、31、および394;
(cxlvi)それぞれ、配列番号22、416、375、403、31、および386;
(cxlvii)それぞれ、配列番号22、416、397、403、31、および394;
(cxlviii)それぞれ、配列番号22、416、397、405、31、および386;または
(cxlix)それぞれ、配列番号22、416、397、405、31、および394
に記載のCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、およびCDRL3アミノ酸配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項7】
(i)前記VHが、配列番号5、21、37、53、69、85、101、117、133、149、165、181、197、213、229、245、261、277、293、309、325、341、357、374、377、396、および415のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはこれからなり、変種が、存在する場合、必要に応じて1つまたは複数のフレームワーク領域に限定され、かつ/または前記変種が、存在する場合、生殖系列をコードするアミノ酸に対する1つまたは複数の置換を含み;かつ/または
(ii)前記VLが、配列番号13、29、45、61、77、93、109、125、141、157、173、189、205、221、237、253、269、285、301、317、333、349、365、380、383、385、388、392、393、400、402、404、および406~414のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはこれからなり、変種が、存在する場合、必要に応じて1つまたは複数のフレームワーク領域に限定され、かつ/または前記変種が、存在する場合、生殖系列をコードするアミノ酸に対する1つまたは複数の置換を含む、
請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項8】
前記VHが、表1に記載される任意のVHアミノ酸配列を含むか、またはこれからなり、前記VLが、表1に記載される任意のVLアミノ酸配列を含むか、またはこれからなり、必要に応じて、前記VHおよび前記VLが、
(i)それぞれ、配列番号5および13;
(ii)それぞれ、配列番号21、ならびに29、45、380、383、385、388、392、393、400、402、404、406、407、408、409、410、411、412、413、および414のいずれか1つ;
(iii)それぞれ、配列番号415、ならびに29、45、380、383、385、388、392、400、402、404、406、407、408、409、410、411、412、413、および414のいずれか1つ;
(iv)それぞれ、配列番号37、ならびに29、45、380、383、385、388、392、400、402、404、406、407、408、409、410、411、412、413、および414のいずれか1つ;
(v)それぞれ、配列番号53および61;
(vi)それぞれ、配列番号69および77;
(vii)それぞれ、配列番号85および93;
(viii)それぞれ、配列番号101および109;
(ix)それぞれ、配列番号117、ならびに125、141、および157のいずれか1つ;
(x)それぞれ、配列番号133、ならびに125、141、および157のいずれか1つ;
(xi)それぞれ、配列番号149、ならびに125、141、および157のいずれか1つ;
(xii)それぞれ、配列番号165および173;
(xiii)それぞれ、配列番号181および189;
(xiv)それぞれ、配列番号197および205;
(xv)それぞれ、配列番号213および221;
(xvi)それぞれ、配列番号229および237;
(xvii)それぞれ、配列番号245および253;
(xviii)それぞれ、配列番号261および269;
(xix)それぞれ、配列番号277および285;
(xx)それぞれ、配列番号293および301;
(xxi)それぞれ、配列番号309および317;
(xxii)それぞれ、配列番号325および333;
(xxiii)それぞれ、配列番号341および349;
(xxiv)それぞれ、配列番号357および365;
(xxv)それぞれ、配列番号374、ならびに29、45、380、383、385、392、393、400、402、404、406、407、408、409、410、411、412、413、および414のいずれか1つ;
(xxvi)それぞれ、配列番号377、ならびに29、45、380、383、385、392、393、400、402、404、406、407、408、409、410、411、412、413、および414のいずれか1つ;
(xxvii)それぞれ、配列番号415、ならびに29、45、380、383、385、392、393、400、402、404、406、407、408、409、410、411、412、413、および414のいずれか1つ;または
(xxviii)それぞれ、配列番号396、ならびに29、37、45、380、383、385、388、392、393、400、402、404、406、407、408、409、410、411、412、413、および414のいずれか1つ
に記載のアミノ酸配列を含むか、またはこれからなる、
請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項9】
(i)SARS-CoV-2のACE2受容体結合モチーフ(RBM、配列番号390)中のエピトープを認識するか;
(ii)SARS-CoV-2(例えば、SARS-CoV-2のRBM)およびACE2の間の相互作用を遮断できるか;
(ii)SARSコロナウイルスのSタンパク質に対するよりも高いアビディティーでSARS-CoV-2のSタンパク質に結合できるか;
(iv)前記抗体または抗原結合断片が10μg/mlで存在する場合に、およそ100μL中の約50,000個の標的細胞を含む試料中で、SARS-CoV-2の表面糖タンパク質を発現する前記標的細胞の約30%、約35%、約40%、約50%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、またはそれより多くを染色することができるか;
(v)SARS-CoV-2のACE2のRBM中、およびSARSコロナウイルスのACE2のRBM中で保存されているエピトープを認識するか;
(vi)SARS-CoV-2およびSARSコロナウイルスに対して交差反応性であるか;
(vii)前記ACE2のRBM中にはない、SARS-CoV-2の表面糖タンパク質中のエピトープを認識するか;または
(viii)(i)~(vii)の任意の組合せ
である、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項10】
IgG、IgA、IgM、IgE、またはIgDアイソタイプである、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項11】
IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4から選択されるIgGアイソタイプである、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項12】
ヒト、ヒト化、またはキメラである、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項13】
前記抗体または前記抗原結合断片が、ヒト抗体、モノクローナル抗体、精製された抗体、一本鎖抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、またはscFvを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項14】
前記抗体または抗原結合断片が、多特異性抗体または抗原結合断片である、請求項1~13のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項15】
前記抗体または抗原結合断片が、二特異性抗体または抗原結合断片である、請求項14に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項16】
(i)第1のVHおよび第1のVL;ならびに
(ii)第2のVHおよび第2のVL
を含み、
前記第1のVHおよび前記第2のVHが、異なっており、それぞれ独立して、配列番号5、21、37、53、69、85、101、117、133、149、165、181、197、213、229、245、261、277、293、309、325、341、357、374、377、396、および415のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、
前記第1のVLおよび前記第2のVLが、異なっており、それぞれ独立して、配列番号13、29、45、61、77、93、109、125、141、157、173、189、205、221、237、253、269、285、301、317、333、349、365、380、383、385、388、392、393、400、402、404、および406~414のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、
前記第1のVHおよび前記第1のVLが、第1の抗原結合部位を一緒に形成し、前記第2のVHおよび前記第2のVLが、第2の抗原結合部位を一緒に形成する、
請求項14または15に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項17】
(i)前記第1のVHが、配列番号21、37、374、377、396、および415のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなり、前記第1のVLが、配列番号29、45、380、383、385、388、392、393、400、402、404、および406~414のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなり;
(ii)前記第2のVHが、配列番号69に記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなり、前記第2のVLが、配列番号77に記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなる、
請求項16に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項18】
前記抗体または抗原結合断片が、Fcポリペプチドまたはその断片をさらに含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項19】
前記Fcポリペプチドまたはその断片が:
(i)変異であって、前記変異を含まない参照Fcポリペプチドと比較して、FcRnへの結合を増強する変異;および/または
(ii)変異であって、前記変異を含まない参照Fcポリペプチドと比較して、FcγRへの結合を増強する変異
を含む、請求項18に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項20】
FcRnへの結合を増強する前記変異が:M428L;N434S;N434H;N434A;N434S;M252Y;S254T;T256E;T250Q;P257I;Q311I;D376V;T307A;E380A;またはこれらの任意の組合せを含む、請求項19に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項21】
FcRnへの結合を増強する前記変異が:
(i)M428L/N434S;
(ii)M252Y/S254T/T256E;
(iii)T250Q/M428L;
(iv)P257I/Q311I;
(v)P257I/N434H;
(vi)D376V/N434H;
(vii)T307A/E380A/N434A;または
(viii)(i)~(vii)の任意の組合せ
を含む、請求項19または20に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項22】
FcRnへの結合を増強する前記変異が、M428L/N434Sを含む、請求項19~21のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項23】
FcγRへの結合を増強する前記変異が:S239D;I332E;A330L;G236A;またはこれらの任意の組合せを含む、請求項19~22のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項24】
FcγRへの結合を増強する前記変異が:
(i)S239D/I332E;
(ii)S239D/A330L/I332E;
(iii)G236A/S239D/I332E;または
(iv)G236A/A330L/I332E
を含む、請求項19~23に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項25】
グリコシル化を変化させる変異を含み、グリコシル化を変化させる前記変異が、N297A、N297Q、またはN297Gを含み、かつ/またはアグリコシル化および/またはアフコシル化されている、請求項1~24のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項26】
請求項1~25のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片をコードするか、または前記抗体または前記抗原結合断片のVH、重鎖、VL、および/または軽鎖をコードする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項27】
前記ポリヌクレオチドが、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)を含み、前記RNAが、必要に応じて、メッセンジャーRNA(mRNA)を含む、請求項28に記載のポリヌクレオチド。
【請求項28】
宿主細胞での発現のためにコドン最適化されている、請求項26または27に記載のポリヌクレオチド。
【請求項29】
配列番号1~4、9~12、17~20、25~28、33~36、41~44、49~52、57~60、65~68、73~76、81~84、89~92、97~100、105~108、113~116、121~124、129~132、137~140、145~148、153~156、161~164、169~172、177~180、185~188、193~196、201~204、209~212、217~220、225~228、233~236、241~244、249~252、257~260、265~268、273~276、281~284、289~292、297~300、305~308、313~316、321~324、329~332、337~340、345~348、353~356、361~364、372、373、376、379、381、384、387、389および417のいずれか1つまたは複数に記載のポリヌクレオチド配列に対して少なくとも50%の同一性を有するポリヌクレオチドを含む、請求項26~28のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項30】
請求項26~29のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む、組換えベクター。
【請求項31】
請求項26~29のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、および/または請求項30に記載のベクターを含む宿主細胞であって、前記ポリヌクレオチドが前記宿主細胞に対して異種である、宿主細胞。
【請求項32】
請求項26~29のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含むヒトB細胞であって、前記ポリヌクレオチドが前記ヒトB細胞に対して異種であり、かつ/または、前記ヒトB細胞が不死化されている、ヒトB細胞。
【請求項33】
組成物であって:
(i)請求項1~25のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片;
(ii)請求項26~29のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド;
(iii)請求項30に記載の組換えベクター;
(iv)請求項31に記載の宿主細胞;および/または
(v)請求項32に記載のヒトB細胞と、
薬学的に許容される賦形剤、担体、または希釈剤とを含む、組成物。
【請求項34】
請求項1~25のいずれか一項に記載の2つまたはそれより多くの抗体または抗原結合断片を含む、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
第1の抗体または抗原結合断片および第2の抗体または抗原結合断片を含み、
(i)前記第1の抗体または抗原結合断片が、配列番号21、37、374、377、396および415のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなるVHと、配列番号29、45、380、383、385、388、392、393、400、402、404、および406~414のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなるVLとを含み;
(ii)前記第2の抗体または抗原結合断片が、配列番号69に記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなるVHと、配列番号77に記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなるVLとを含む、
請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
担体分子に被包された請求項26~29のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む組成物であって、前記担体分子が、必要に応じて、脂質、脂質由来の送達ビヒクル、例えば、リポソーム、固体脂質ナノ粒子、油性懸濁液、サブミクロン脂質エマルジョン、脂質マイクロバブル、逆脂質ミセル、渦巻型リポソーム、脂質微小管、脂質マイクロシリンダー、脂質ナノ粒子(LNP)、またはナノスケールプラットフォームを含む、組成物。
【請求項37】
対象におけるSARS-CoV-2感染を処置する方法であって、有効量の、
(i)請求項1~25のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片;
(ii)請求項26~29のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド;
(iii)請求項30に記載の組換えベクター;
(iv)請求項31に記載の宿主細胞;
(v)請求項32に記載のヒトB細胞;および/または
(vi)請求項33~36のいずれか一項に記載の組成物
を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項38】
前記対象に、
(a)前記対象が請求項1~25のいずれか一項に記載の第2の抗体もしくは抗原結合断片を受けたことがある場合に、請求項1~25のいずれか一項に記載の第1の抗体もしくは抗原結合断片を投与すること;
(b)前記対象が請求項1~25のいずれか一項に記載の第1の抗体もしくは抗原結合断片を受けたことがある場合に、請求項1~25のいずれか一項に記載の第2の抗体もしくは抗原結合断片を投与すること;または
(c)請求項1~25のいずれか一項に記載の第1の抗体もしくは抗原結合断片および請求項1~25のいずれか一項に記載の第2の抗体もしくは抗原結合断片を投与することを含み、
(i)前記第1の抗体または抗原結合断片が、配列番号21、37、374、377、396および415のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなるVHと、配列番号29、45、380、383、385、388、392、393、400、402、404、および406~414のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなるVLとを含み;
(ii)前記第2の抗体または抗原結合断片が、配列番号69に記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなるVHと、配列番号77に記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなるVLとを含む、
請求項37に記載の方法。
【請求項39】
対象におけるSARS-CoV-2感染を処置する方法において使用するための、請求項1~25のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片、請求項26~29のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、請求項30に記載の組換えベクター、請求項31に記載の宿主細胞、請求項32に記載のヒトB細胞、および/または請求項33~36のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項40】
対象におけるSARS-CoV-2感染の処置のための医薬の調製において使用するための、請求項1~25のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片、請求項26~29のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、請求項30に記載の組換えベクター、請求項31に記載の宿主細胞、請求項32に記載のヒトB細胞、および/または請求項33~36のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項41】
サルベコウイルス感染のin vitro診断のための方法であって、
(i)対象由来の試料を請求項1~25のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片と接触させること;および
(ii)抗原および前記抗体を含むか、または抗原および前記抗原結合断片を含む複合体を検出すること
を含む、方法。
【請求項42】
前記サルベコウイルスが、SARS-CoVまたはSARS-CoV-2である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記試料が、前記対象から単離された血液を含む、請求項41または42に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表に関する陳述
本出願に関連する配列表は、紙の写しの代わりにテキストフォーマットで提供され、これにより参照により本明細書に組み込まれる。配列表を含むテキストファイルの名称は、930585_401WO_SEQUENCE_LISTING.txtである。テキストファイルは、269KBであり、2021年1月31日に作製され、EFS-Webを介して電子的に提出されている。
【背景技術】
【0002】
背景
新規なベータコロナウイルスが、2019年後半に中国の武漢において明らかになった。2021年1月23日現在、このウイルスによる感染のおよそ98,573,000の症例(とりわけ、SARS-CoV-2と称される)が世界中で確認され、およそ2,116,000人の死亡がもたらされた。SARS-CoV-2感染を予防または処置するための治療、ならびにSARS-CoV-2感染を検出および診断するための診断ツールが必要とされている。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1-1】図1A~1Dは、ELISAによって測定される、組換えSARS-CoVのS1タンパク質への例示的な本開示の抗体の結合を示す。抗体nCoV-1は、配列番号325のVH配列と配列番号333のVL配列とを含む。抗体nCoV-2は、配列番号293のVH配列と配列番号301のVL配列とを含む。抗体nCoV-20は、配列番号101のVH配列と配列番号109のVL配列とを含む。抗体nCoV-18は、配列番号245のVH配列と配列番号253のVL配列とを含む。抗体nCoV-19は、配列番号309のVH配列と配列番号317のVL配列とを含む。(図1A)。抗体nCoV-16は、配列番号85のVH配列と配列番号93のVL配列とを含む。抗体nCoV-10は、配列番号21のVH配列と配列番号29のVL配列とを含む。抗体nCoV-6は、配列番号69のVH配列と配列番号77のVL配列とを含む。抗体nCoV-3は、配列番号5のVH配列と配列番号13のVL配列とを含む。抗体nCoV-14は、配列番号213のVH配列と配列番号221のVL配列とを含む。(図1B)。抗体nCoV-4は、配列番号117のVH配列と配列番号125のVL配列とを含む。抗体nCoV-5は、配列番号197のVH配列と配列番号205のVL配列とを含む。抗体nCoV-12は、配列番号181のVH配列と配列番号189のVL配列とを含む。抗体nCoV-9は、配列番号229のVH配列と配列番号237のVL配列とを含む。(図1C)。抗体nCoV-8は、配列番号261のVH配列と配列番号269のVL配列とを含む。抗体nCoV-7は、配列番号277のVH配列と配列番号285のVL配列とを含む。抗体nCoV-11は、配列番号341のVH配列と配列番号349のVL配列とを含む。(図1D)。
図1-2】同上。
図1-3】同上。
図1-4】同上。
【0004】
図2-1】図2Aおよび2Bは、組換えIgG1として発現される例示的なヒトモノクローナル抗体(mAb)のパネルを使用した、SARS-CoV-2-S、SARS-CoV-S、MERS-CoV-Sおよびモックトランスフェクト細胞の染色を示す。すべてのmAbは、以下を除いて、10μg/mlで試験した:nCoV-5(1μg/ml);nCoV-7(2μg/ml);nCoV-8(1.5μg/ml);nCoV-9(8.5μg/ml);nCoV-12(0.8μg/ml);nCoV-13(7μg/ml);およびnCoV-15(0.8μg/ml)。抗体nCoV-13は、配列番号357のVH配列と配列番号365のVL配列とを含む。抗体nCoV-15は、配列番号165のVH配列と配列番号173のVL配列とを含む。(A)染色陽性細胞のパーセンテージ。(B)モードに対して正規化された染色陽性細胞のパーセンテージ。
図2-2】同上。
【0005】
図3-1】図3Aおよび3Bは、ウイルスSARS-CoV-2、SARS-CoV、およびMERS-CoVからの表面で発現されたSタンパク質への異なる濃度での例示的な抗体nCoV-10による結合を示す。(A)ヒストグラムは、Sトランスフェクト細胞への抗体結合の蛍光強度に対する細胞の数を表す。(B)モックトランスフェクタントに対するCoV-Sトランスフェクタントの分染によって定義される、nCov-10抗体の12濃度(10μg/mlから0.004μg/mlまで低下させる)での陽性結合のパーセンテージ。
図3-2】同上。
【0006】
図4-1】図4Aおよび4Bは、ウイルスSARS-CoV-2、SARS-CoV、およびMERS-CoVからの表面で発現されたSタンパク質への異なる濃度での例示的な抗体nCoV-6による結合を示す。(A)ヒストグラムは、Sトランスフェクト細胞への抗体結合の蛍光強度に対する細胞の数を表す。(B)グラフは、モックトランスフェクタントに対するCoV-Sトランスフェクタントの分染によって定義される、nCov-6抗体の12濃度(10μg/mlから0.004μg/mlまで低下させる)での陽性結合のパーセンテージを表す。
図4-2】同上。
【0007】
図4-3】図4Cは、トランスフェクション24時間後の細胞上で発現されたSARS-CoVのSタンパク質またはSARS-CoV-2のSタンパク質へのnCoV-10、nCoV-6、およびnCoV-1による結合を示す。
【0008】
図5-1】図5A~5Fは、SARS-CoV-2交差反応性抗体nCoV-6およびnCoV-10、ならびにSARS-CoV特異的抗体nCoV-4およびnCoV-1によって認識されるエピトープを調査するためのOctet(BLI)を使用する交差競合アッセイの結果を示す。SARS-CoVの受容体結合ドメイン(RBD)を、最初に抗Hisセンサー上に固定し(ステップ1)、次いで、センサーを、抗体1を含有するウェルに移し(ステップ2)、最後に抗体2を含有するウェルに移した(ステップ3)。結合事象がステップ3で検出される場合、抗体2は、抗体1によって認識されるエピトープよりも非重複エピトープを有し、結合がステップ3で検出されない場合、抗体1および2は、重複エピトープを共有する。ステップ2および3で使用される抗体の順序は、(A)~(F)のそれぞれのグラフの上部に示される通りである。図5A~5Dは、nCoV-6およびnCoV-10を使用する交差競合アッセイを示す。図5Eにおいて、nCoV-4 Fabを抗体1として使用し、nCoV-6またはnCoV-10を抗体2として使用した。図5Fは、nCoV-10、nCoV-6、およびnCoV-1の間の交差競合アッセイからのデータを示す。抗体1として使用された抗体を図5Fの各パネルに示す。
図5-2】同上。
図5-3】同上。
図5-4】同上。
図5-5】同上。
図5-6】同上。
【0009】
図6-1】図6Aは、複数のSARS-CoV分離株(Urbani、CHUK-1、GZ02、HC_SZ_61_03、A031G)、SARS様コウモリCoV WIV1、およびSARS-CoV-2からのSタンパク質のRBDのアラインメントを示す。残基L443(SARS-CoV-2におけるF455)、F460(SARS-CoV-2におけるY473)およびP462(SARS-CoV-2におけるA475)が暗灰色で示される。受容体結合モチーフ(RBM)が淡灰色で示される。図の各列に示される残基の番号付けは、全Sタンパク質ではなく、RBDに関する。
【0010】
図6-2】図6Bは、RBDがヒトACE2(pdb、2AJF)との複合体中にある場合、SARS-CoV(RBD)の残基P462、F460、およびL443の位置を示す。
【0011】
図7図7は、示される残基P462(SARS-CoV-2における残基475に対応する)およびV354(SARS-CoV-2における残基376に対応する)を有するヒトACE2(pdb、2AJF)に結合したSARS-CoVのRBDの図を提供する。
【0012】
図8図8は、以下を有するSARS-CoVのRBDを示す:(左上)同定されたnCoV-10 SARS CoV逃避変異残基を有する、示されるRBD上のACE2のフットプリント;(中央上)示されるRBD上のnCoV-1のフットプリント;ならびに(右上)SARS-CoV-2のRBDおよびSARS-CoVのRBDの間のアミノ酸残基の相違。下は、SARS CoVおよびSARS-CoV-2のRBMアミノ酸配列を示すアラインメントである。
【0013】
図9図9は、本開示の例示的抗体nCoV-10が、ヒトACE2へのコロナウイルスのRBDの結合を阻害できることを示す。
【0014】
図10図10は、SARS CoVのRBD(中心の3-d空間充填モデル)およびヒトACE2(リボン図、中心に対して外側)の構造の図を示す。
【0015】
図11-1】図11Aおよび11Bは、Octet(BLI)によってアッセイされる、SARS-S1タンパク質のヒトACE2との会合を阻害するモノクローナル抗体nCoV-1およびnCoV-10の能力を示す。図11Aは、y軸に阻害%を示す。図11Bは、y軸に応答を示す。
図11-2】同上。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
SARS-CoV-2(例えば、SARS-CoV-2ビリオン中の、および/またはSARS-CoV-2に感染した細胞の表面上に発現される、本明細書に記載されるSARS-CoV-2の表面糖タンパク質および/またはRBD)に結合する抗体および抗原結合断片が本明細書に提供される。ある特定の実施形態では、感染のin vitroモデルにおいて、および/またはヒト対象において、SARS-CoV-2感染を中和することができる抗体および抗原結合断片がここに開示される。抗体および抗原結合断片をコードするポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、および関連する組成物を提供する、ならびに抗体、核酸、ベクター、宿主細胞、および関連する組成物を、対象におけるSARS-CoV-2感染を処置する(例えば、低減する、遅延させる、排除する、または予防する)ために、かつ/または対象におけるSARS-CoV-2感染を処置するもしくは予防するための医薬の製造において、使用する方法も提供する。
【0017】
本開示をより詳細に記載する前に、本明細書で使用されるある特定の用語の定義を提供することはその理解を助け得る。追加の定義は、本開示全体を通して記載される。
【0018】
本明細書で使用される場合、本明細書で、「武漢海鮮市場肺炎ウイルス」、または「武漢コロナウイルス」、または「武漢CoV」、または「新型CoV」、または「nCoV」、または「2019 nCoV」、または「武漢nCoV」とも称される「SARS-CoV-2」は、B系統と考えられるベータコロナウイルス(サルベコウイルス)である。SARS-CoV-2は、2019年後半に中国、湖北省武漢において最初に同定され、2020年初めに中国内および世界の他の場所に広がった。SARS-CoV-2感染の症状としては、発熱、乾性咳、呼吸困難、疲労、体の痛み、頭痛、新たな味覚または嗅覚の喪失、咽喉痛、鼻閉または鼻汁、悪心または嘔吐、下痢、持続的な胸部の圧迫感または痛み、新たな錯乱、起きられないまたは起きていられない、および青みを帯びた唇または顔が挙げられる。
【0019】
SARS-CoV-2分離株Wuhan-Hu-1のゲノム配列は、配列番号369に提供され(GenBank MN908947.3、2020年1月23日も参照されたい)、ゲノムのアミノ酸翻訳は、配列番号370に提供される(GenBank QHD43416.1、2020年1月23日も参照されたい)。他のコロナウイルス(例えば、SARS CoV)と同様に、SARS-CoV-2は、受容体結合ドメイン(RBD)を含有する「スパイク」または表面(「S」)I型膜貫通糖タンパク質を含む。RBDは、細胞表面受容体であるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)に結合することによって、系統BのSARSコロナウイルスの呼吸上皮細胞への侵入を媒介すると考えられる。特に、ウイルスのRBD中の受容体結合モチーフ(RBM)は、ACE2と相互作用すると考えられる。
【0020】
SARS-CoV-2 Wuhan-Hu-1の表面糖タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号371に提供される。SARS-CoV-2のRBDのアミノ酸配列は、配列番号382に提供される。SARS-CoV-2のSタンパク質は、SARS-CoVとおよそ73%のアミノ酸配列同一性を有する。SARS-CoV-2のRBMのアミノ酸配列は、配列番号390に提供される。SARS-CoV-2のRBDは、SARSコロナウイルスのRBDに対しておよそ75%~77%のアミノ酸配列類似性を有し、SARS-CoV-2のRBMは、SARSコロナウイルスのRBMに対しておよそ50%のアミノ酸配列類似性を有する。
【0021】
本明細書で他に指示されない限り、SARS-CoV-2は、必要に応じて配列番号369に記載されるゲノム配列を有する、配列番号370、371、および382のいずれか1つまたは複数に記載されるアミノ酸配列を含むウイルスを指す。
【0022】
いくつかの出現しているSARS-CoV-2バリアントがある。一部のSARS-CoV-2バリアントは、N439K変異を含有し、これは、ヒトACE2受容体への結合親和性を増強する(Thomson, E.C., et al., The circulating SARS-CoV-2 spike variant N439K maintains fitness while evading antibody-mediated immunity. bioRxiv, 2020)。一部のSARS-CoV-2バリアントは、N501Y変異を含有し、これは、感染性の増加に関連し、系統B.1.1.7(20I/501Y.V1およびVOC 202012/01としても公知)および系統B.1.351(20H/501Y.V2としても公知)を含み、これらは、それぞれ、英国および南アフリカで発見された(Tegally, H., et al., Emergence and rapid spread of a new severe acute respiratory syndrome-related coronavirus 2 (SARS-CoV-2) lineage with multiple spike mutations in South Africa. medRxiv, 2020: p. 2020.12.21.20248640;Leung, K., et al., Early empirical assessment of the N501Y mutant strains of SARS-CoV-2 in the United Kingdom, October to November 2020. medRxiv, 2020: p. 2020.12.20.20248581)。B.1.351はまた、SARS-CoV2スパイクタンパク質のRBDドメインに2つの他の変異、K417NおよびE484Kを含む(Tegally, H., et al., Emergence and rapid spread of a new severe acute respiratory syndrome-related coronavirus 2 (SARS-CoV-2) lineage with multiple spike mutations in South Africa. medRxiv, 2020: p. 2020.12.21.20248640)。他のSARS-CoV-2バリアントとしては、最初にブラジルで報告された系統B.1.1.28;最初に日本で報告されたバリアントP.1、系統B.1.1.28(20J/501Y.V3としても公知);最初に米国のカリフォルニア州で報告されたバリアントL452R(Pan American Health Organization, Epidemiological update: Occurrence of variants of SARS-CoV-2 in the Americas, January 20, 2021, https://reliefweb.int/sites/reliefweb.int/files/resources/2021-jan-20-phe-epi-update-SARS-CoV-2.pdfで利用可能)が挙げられる。他のSARS-CoV-2バリアントとしては、系統群19AのSARS CoV-2;系統群19BのSARS CoV-2;系統群20AのSARS CoV-2;系統群20BのSARS CoV-2;系統群20CのSARS CoV-2;系統群20DのSARS CoV-2;系統群20EのSARS CoV-2(EU1);系統群20FのSARS CoV-2;系統群20GのSARS CoV-2;およびSARS CoV-2 B1.1.207;ならびにRambaut, A., et al., A dynamic nomenclature proposal for SARS-CoV-2 lineages to assist genomic epidemiology. Nat Microbiol 5, 1403-1407 (2020)に記載される他のSARS CoV-2系統が挙げられる。
【0023】
他のコロナウイルスは、他の受容体(例えば、9-O-Ac-Sia受容体アナログ;DPP4;APN)への結合によって細胞に侵入すると考えられる。
【0024】
本明細書では、任意の濃度範囲、パーセンテージの範囲、比の範囲、または整数の範囲は、他に指示されない限り、列挙された範囲内の任意の整数の値、および適切な場合には、その分数(整数の10分の1、および100分の1など)を含むことが理解されるべきである。また、ポリマーサブユニット、サイズ、または厚さなどの任意の物理的特性に関して本明細書に列挙される任意の数の範囲は、他に指示されない限り、列挙された範囲内の任意の整数を含むことが理解されるべきである。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、他に指示されない限り、示された範囲、値、または構造の±20%を意味する。「a」および「an」という用語は、本明細書で使用される場合、数え上げられている構成成分の「1つまたは複数」を指すことが理解されるべきである。代替物(例えば、「または」)の使用は、代替物のいずれか1つ、その両方、またはこれらの任意の組合せを意味することが理解されるべきである。本明細書で使用される場合、「含む(include)」、「有する(have)」、および「含む(comprise)」という用語は、同意語として使用され、これらの用語およびその変形は、非限定的と解釈されることが意図される。
【0025】
「必要に応じた」または「必要に応じて」は、それに続いて記載される要素、構成成分、事象、または状況が存在してもよく、または存在しなくてもよいこと、ならびにその記載が、その要素、構成成分、事象、または状況が存在する例、およびそれらが存在しない例を含むことを意味する。
【0026】
加えて、本明細書に記載される構造およびサブユニットのさまざまな組合せに由来する個々の構築物または構築物の群が、各構築物または構築物の群が個々に記載されたのと同じ程度に、本出願により開示されることが理解されるべきである。そのため、特定の構造または特定のサブユニットの選択は、本開示の範囲内である。
【0027】
「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、「含むこと(comprising)」と等価ではなく、特許請求の範囲の指定される材料もしくはステップ、または特許請求の範囲に記載された主題の基本的な特徴に実質的に影響を及ぼさないものを指す。例えば、タンパク質ドメイン、領域、またはモジュール(例えば、結合ドメイン)、またはタンパク質は、ドメイン、領域、モジュール、またはタンパク質のアミノ酸配列が、組み合わせて、ドメイン、領域、モジュール、またはタンパク質の長さの多くて20%(例えば、多くて15%、10%、8%、6%、5%、4%、3%、2%または1%)に寄与し、ドメイン(複数可)、領域(複数可)、モジュール(複数可)、またはタンパク質の活性(例えば、結合タンパク質の標的結合親和性)に実質的に影響を及ぼさない(すなわち、活性を、40%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、または1%以下など、50%よりも大きくは低減しない)、伸長、欠失、変異、またはこれらの組合せ(例えば、アミノもしくはカルボキシ末端の、またはドメイン間のアミノ酸)を含む場合、特定のアミノ酸配列「から本質的になる(consist essentially of)」。
【0028】
本明細書で使用される場合、「アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸および合成アミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸と類似の様式で機能するアミノ酸アナログおよびアミノ酸ミメティックを指す。天然に存在するアミノ酸は、遺伝コードによってコードされるもの、ならびに後に修飾されるアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、およびO-ホスホセリンである。アミノ酸アナログは、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムに結合しているα-炭素を有する化合物を指す。そのようなアナログは、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造を保持する。アミノ酸ミメティックは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と類似の様式で機能する化合物を指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、「変異」は、それぞれ、参照または野生型核酸分子またはポリペプチド分子と比較して、核酸分子またはポリペプチド分子の配列における変化を指す。変異は、ヌクレオチド(複数可)またはアミノ酸(複数可)の置換、挿入または欠失を含む、いくつかの異なる種類の配列の変化をもたらし得る。
【0030】
「保存的置換」は、特定のタンパク質の結合特徴に有意に影響を及ぼさないか、またはそれを有意に変更しない、アミノ酸置換を指す。一般に、保存的置換は、置換されたアミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられるものである。保存的置換は、以下の群の1つにおいて見出される置換を含む:群1:アラニン(AlaまたはA)、グリシン(GlyまたはG)、セリン(SerまたはS)、トレオニン(ThrまたはT);群2:アスパラギン酸(AspまたはD)、グルタミン酸(GluまたはZ);群3:アスパラギン(AsnまたはN)、グルタミン(GlnまたはQ);群4:アルギニン(ArgまたはR)、リシン(LysまたはK)、ヒスチジン(HisまたはH);群5:イソロイシン(IleまたはI)、ロイシン(LeuまたはL)、メチオニン(MetまたはM)、バリン(ValまたはV);および群6:フェニルアラニン(PheまたはF)、チロシン(TyrまたはY)、トリプトファン(TrpまたはW)。加えて、または代わりに、アミノ酸は、類似の機能、化学構造、または組成(例えば、酸性、塩基性、脂肪族、芳香族、または硫黄含有)によって保存的置換の群に分類することができる。例えば、脂肪族の分類は、置換の目的について、Gly、Ala、Val、Leu、およびIleを含み得る。他の保存的置換群としては、硫黄含有:Metおよびシステイン(CysまたはC);酸性:Asp、Glu、Asn、およびGln;小さな脂肪族の、非極性の、またはわずかに極性の残基:Ala、Ser、Thr、Pro、およびGly;極性の、負に荷電した残基、およびそれらのアミド:Asp、Asn、Glu、およびGln;極性の、正に荷電した残基:His、Arg、およびLys;大きな脂肪族の、非極性の残基:Met、Leu、Ile、Val、およびCys;ならびに大きな芳香族の残基:Phe、Tyr、およびTrpが挙げられる。追加の情報は、Creighton (1984) Proteins, W.H. Freeman and Companyに見出すことができる。
【0031】
本明細書で使用される場合、「タンパク質」または「ポリペプチド」は、アミノ酸残基のポリマーを指す。タンパク質は、天然に存在するアミノ酸ポリマー、ならびに1つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸および天然に存在しないアミノ酸のポリマーの人工的な化学ミメティックであるアミノ酸ポリマーに適用される。本開示のタンパク質、ペプチド、およびポリペプチドのバリアントも企図される。ある特定の実施形態では、バリアントのタンパク質、ペプチド、およびポリペプチドは、本明細書に記載される定義されたアミノ酸配列または参照アミノ酸配列のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.9%同一であるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなる。
【0032】
「核酸分子」または「ポリヌクレオチド」または「ポリ核酸」は、共有結合的に連結したヌクレオチドを含むポリマー化合物を指し、これは、天然のサブユニット(例えば、プリンまたはピリミジン塩基)または非天然サブユニット(例えば、モルホリン環)で構成され得る。プリン塩基としては、アデニン、グアニン、ヒポキサンチン、およびキサンチンが挙げられ、ピリミジン塩基としては、ウラシル、チミン、およびシトシンが挙げられる。核酸分子は、mRNA、マイクロRNA、siRNA、ウイルスゲノムRNA、および合成RNAを含むポリリボ核酸(RNA)、ならびにcDNA、ゲノムDNA、および合成DNAを含むポリデオキシリボ核酸(DNA)を含み、これらはいずれも一本鎖または二本鎖であり得る。一本鎖の場合、核酸分子は、コード鎖または非コード(アンチセンス)鎖であり得る。アミノ酸配列をコードする核酸分子は、同じアミノ酸配列をコードするすべてのヌクレオチド配列を含む。ヌクレオチド配列の一部のバージョンは、イントロン(複数可)が共転写の機構または転写後の機構により除去されるであろう程度にイントロン(複数可)も含み得る。言い換えれば、異なるヌクレオチド配列は、遺伝コードの重複性もしくは縮重の結果として、またはスプライシングにより、同じアミノ酸配列をコードし得る。
【0033】
本開示の核酸分子のバリアントも企図される。バリアント核酸分子は、本明細書に記載される定義されたまたは参照ポリヌクレオチドの核酸分子と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%同一であり、好ましくは、95%、96%、97%、98%、99%、または99.9%同一であり、またはこれは、約65~68℃での、0.015Mの塩化ナトリウム、0.0015Mのクエン酸ナトリウム、または、約42℃での、0.015Mの塩化ナトリウム、0.0015Mのクエン酸ナトリウム、および50%ホルムアミドのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でポリヌクレオチドにハイブリダイズする。核酸分子バリアントは、標的分子の結合などの本明細書に記載される機能性を有するその結合ドメインをコードする能力を保持する。
【0034】
「配列同一性パーセント」は、配列を比較することによって決定される、2つまたはそれより多くの配列間の関係を指す。配列同一性を決定するための好ましい方法は、比較される配列間の最良の一致を与えるように設計される。例えば、最適な比較の目的で、配列を整列させる(例えば、最適なアラインメントのために、第1および第2のアミノ酸配列または核酸配列の一方または両方にギャップを導入することができる)。さらに、非相同配列は、比較の目的で、無視してもよい。本明細書において言及される配列同一性パーセントは、他に指示されない限り、参照配列の長さにわたって算出される。配列同一性および類似性を決定する方法は、公に利用可能なコンピュータープログラムに見出すことができる。配列のアラインメントおよび同一性パーセントの算出は、BLASTプログラム(例えば、BLAST 2.0、BLASTP、BLASTN、またはBLASTX)を使用して行ってもよい。BLASTプログラムにおいて使用される数学アルゴリズムは、Altschul et al., Nucleic Acids Res. 25:3389-3402, 1997に見出すことができる。本開示の文脈内では、配列解析ソフトウェアを解析のために使用する場合、解析の結果は、言及されるプログラムの「デフォルト値」に基づくことが理解される。「デフォルト値」は、最初に初期化された場合に、ソフトウェアに元々ロードされた任意の値またはパラメーターのセットを意味する。
【0035】
「単離された」という用語は、材料が、その元々の環境(例えば、それが天然に存在する場合、天然の環境)から取り出されていることを意味する。例えば、生きている動物中に存在する天然に存在する核酸またはポリペプチドが単離されていないが、同じ核酸またはポリペプチドが、天然の系中で共存している材料の一部または全部から分離されている場合、単離されている。そのような核酸は、ベクターの部分であり得、かつ/または、そのような核酸またはポリペプチドは、組成物(例えば、細胞溶解物)の部分であり得、それでもなお、そのようなベクターまたは組成物が核酸またはポリペプチドの天然の環境の一部ではないという点で、単離されている。ここに開示される組成物のいずれか(例えば、抗体、抗原結合断片、医薬組成物、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞)は、単離された形態で提供され得る。
【0036】
「遺伝子」という用語は、ポリペプチド鎖の生成に関与するDNAまたはRNAのセグメントを意味し、ある特定の文脈では、これは、コード領域の前後の領域(例えば、5’非翻訳領域(UTR)および3’UTR)、ならびに個々のコードセグメント(エクソン)の間の介在配列(イントロン)を含む。
【0037】
「機能的バリアント」は、本開示の親化合物または参照化合物と構造的に類似しているか、または実質的に構造的に類似しているが、組成がわずかに異なる(例えば、1つの塩基、原子または官能基が異なる、付加されている、または除去されている)ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを指し、その結果、ポリペプチドまたはコードされるポリペプチドは、親ポリペプチドの少なくとも1つの機能を、少なくとも50%の効率で、好ましくは、親ポリペプチドの活性の少なくとも55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または100%のレベルで行うことができる。言い換えれば、本開示のポリペプチドまたはコードされるポリペプチドの機能的バリアントは、結合親和性を測定するためのアッセイ(例えば、Biacore(登録商標)または会合定数(Ka)または解離定数(KD)を測定する四量体染色)などの選択されたアッセイにおいて、親ポリペプチドまたは参照ポリペプチドと比較して、機能的バリアントが性能の50%以下の低減を示す場合、「類似の結合性」、「類似の親和性」、または「類似の活性」を有する。
【0038】
本明細書で使用される場合、「機能的部分」または「機能的断片」は、親化合物または参照化合物のドメイン、部分または断片のみを含むポリペプチドまたはポリヌクレオチドを指し、ポリペプチドまたはコードされるポリペプチドは、親化合物または参照化合物のドメイン、部分または断片に関連する少なくとも50%の活性、好ましくは、親ポリペプチドの活性の少なくとも55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または100%のレベルを保持するか、または生物学的利益(例えば、エフェクター機能)を提供する。本開示のポリペプチドまたはコードされるポリペプチドの「機能的部分」または「機能的断片」は、選択されたアッセイにおいて、親ポリペプチドまたは参照ポリペプチドと比較して、機能的部分または断片が、50%以下(好ましくは、20%以下または10%以下、または親和性に関して、親または参照と比較して対数差以下)の性能の低減を示す場合、「類似の結合性」または「類似の活性」を有する。
【0039】
本明細書で使用される場合、「操作された」、「組換え」、または「非天然」という用語は、少なくとも1つの遺伝的変更を含むか、または外因性または異種核酸分子の導入によって改変された、生物体、微生物、細胞、核酸分子、またはベクターを指し、そのような変更または改変は、遺伝子操作(すなわち、人為的な介入)によって導入される。遺伝的変更としては、例えば、機能的RNA、タンパク質、融合タンパク質または酵素をコードする発現可能な核酸分子を導入する改変、または他の核酸分子の付加、欠失、置換、または細胞の遺伝子材料の他の機能的破壊が挙げられる。追加の改変には、例えば、改変がポリヌクレオチド、遺伝子、またはオペロンの発現を変更する、非コード調節領域を含む。
【0040】
本明細書で使用される場合、「異種」、または「非内因性」、または「外因性」は、宿主細胞または対象に対してネイティブではない任意の遺伝子、タンパク質、化合物、核酸分子、または活性、または宿主細胞または対象に対してネイティブであるが変更されている任意の遺伝子、タンパク質、化合物、核酸分子、または活性を指す。異種、非内因性、または外因性としては、ネイティブなおよび変更された遺伝子、タンパク質、化合物、または核酸分子の間で構造、活性、またはその両方が異なるように変異しているか、またはそうでなければ変更されている、遺伝子、タンパク質、化合物、または核酸分子が挙げられる。ある特定の実施形態では、異種、非内因性、または外因性の遺伝子、タンパク質、または核酸分子(例えば、受容体、リガンドなど)は、宿主細胞または対象に対して内因性でなくてもよいが、代わりに、そのような遺伝子、タンパク質、または核酸分子をコードする核酸が、コンジュゲーション、形質転換、トランスフェクション、電気穿孔などによって宿主細胞に付加されていてもよく、ここで、付加された核酸分子は、宿主細胞のゲノムに組み込まれていてもよく、または染色体外遺伝子材料として(例えば、プラスミド、または他の自己複製ベクターとして)存在することができる。「相同な」または「ホモログ」という用語は、宿主細胞、種、または株において見出されるか、またはそれに由来する、遺伝子、タンパク質、化合物、核酸分子、または活性を指す。例えば、ポリペプチドをコードする異種または外因性のポリヌクレオチドまたは遺伝子は、ネイティブなポリヌクレオチドまたは遺伝子と相同であってもよく、相同なポリペプチドまたは活性をコードするが、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが、変更された構造、配列、発現レベル、またはこれらの任意の組合せを有していてもよい。非内因性のポリヌクレオチドまたは遺伝子、ならびにコードされるポリペプチドまたは活性は、同じ種、異なる種、またはこれらの組合せ由来であってもよい。
【0041】
ある特定の実施形態では、変更されているか、または変異している場合、宿主細胞に対してネイティブな核酸分子またはその部分は、宿主細胞に対して異種とみなされるか、または異種発現制御配列を用いて変更されているか、または宿主細胞に対してネイティブな核酸分子に通常は関連しない内因性発現制御配列を用いて変更されている場合、宿主細胞に対してネイティブな核酸分子は、異種とみなされてもよい。加えて、「異種」という用語は、宿主細胞に対して異なる、変更された、または内因性ではない、生物活性を指し得る。本明細書に記載されるように、1つより多くの異種核酸分子は、別々の核酸分子として、複数の個々に制御される遺伝子として、ポリシストロニックな核酸分子として、抗体もしくは抗原結合断片または他のポリペプチドをコードする単一の核酸分子として、またはこれらの任意の組合せで、宿主細胞に導入することができる。
【0042】
本明細書で使用される場合、「内因性」または「ネイティブ」という用語は、宿主細胞または対象に通常存在する、ポリヌクレオチド、遺伝子、タンパク質、化合物、分子、または活性を指す。
【0043】
「発現」という用語は、本明細書で使用される場合、遺伝子などの核酸分子のコード配列に基づいてポリペプチドが産生されるプロセスを指す。プロセスは、転写、転写後制御、転写後修飾、翻訳、翻訳後制御、翻訳後修飾、またはこれらの任意の組合せを含み得る。発現される核酸分子は、典型的には、発現制御配列(例えば、プロモーター)に作動可能に連結されている。
【0044】
「作動可能に連結される」という用語は、一方の機能が他方によって影響を受けるような、単一の核酸断片上の2つまたはそれより多くの核酸分子の関連を指す。例えば、プロモーターは、コード配列の発現に影響を及ぼすことができる場合、コード配列と作動可能に連結されている(すなわち、コード配列は、プロモーターの転写制御下にある)。「連結されていない」とは、関連する遺伝エレメントが互いに密接に関連せず、一方の機能が他方に影響を及ぼさないことを意味する。
【0045】
本明細書に記載されるように、1つより多くの異種核酸分子は、別々の核酸分子として、複数の個々に制御される遺伝子として、ポリシストロニックな核酸分子として、タンパク質(例えば、抗体の重鎖)をコードする単一の核酸分子として、またはこれらの任意の組合せで、宿主細胞に導入することができる。2つまたはそれより多くの異種核酸分子が宿主細胞に導入される場合、2つまたはそれより多くの異種核酸分子を、単一の核酸分子として(例えば、単一のベクターにおいて)、別々のベクターにおいて、宿主染色体に単一の部位または複数の部位で組み込んで、またはこれらの任意の組合せで導入することができることが理解される。言及される異種核酸分子、またはタンパク質活性の数は、宿主細胞に導入される別々の核酸分子の数ではなく、コードする核酸分子の数またはタンパク質活性の数を指す。
【0046】
「構築物」という用語は、組換え核酸分子(または、文脈が明確に指示する場合、本開示の融合タンパク質)を含有する任意のポリヌクレオチドを指す。(ポリヌクレオチド)構築物は、ベクター(例えば、細菌ベクター、ウイルスベクター)中に存在していてもよく、またはゲノムに組み込まれていてもよい。「ベクター」は、別の核酸分子を輸送できる核酸分子である。ベクターは、例えば、染色体、非染色体、半合成または合成核酸分子を含み得る、プラスミド、コスミド、ウイルス、RNAベクター、または直鎖状もしくは環状のDNAもしくはRNA分子であり得る。本開示のベクターは、トランスポゾン系も含む(例えば、スリーピング・ビューティー(Sleeping Beauty)、例えば、Geurts et al., Mol. Ther. 8:108, 2003: Mates et al., Nat. Genet. 41:753, 2009を参照されたい)。例示的なベクターは、自律複製できるベクター(エピソームベクター)、ポリヌクレオチドを細胞ゲノムに送達できるベクター(例えば、ウイルスベクター)、または連結された核酸分子を発現させることができるベクター(発現ベクター)である。
【0047】
本明細書で使用される場合、「発現ベクター」または「ベクター」は、好適な宿主における核酸分子の発現をもたらすことができる適切な制御配列に作動可能に連結されている核酸分子を含有するDNA構築物を指す。そのような制御配列は、転写をもたらすためのプロモーター、そのような転写を制御するための必要に応じたオペレーター配列、好適なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、ならびに転写および翻訳の終結を制御する配列を含む。ベクターは、プラスミド、ファージ粒子、ウイルス、または単なる潜在的なゲノム挿入であってもよい。好適な宿主に形質転換されたら、ベクターは、宿主ゲノムとは独立して複製および機能してもよく、または一部の例では、ゲノムにそれ自体が組み込まれてもよく、またはベクターに含有されるポリヌクレオチドをベクター配列なしのゲノムに送達してもよい。本明細書では、「プラスミド」、「発現プラスミド」、「ウイルス」、および「ベクター」は、多くの場合、互換的に使用される。
【0048】
核酸分子を細胞に挿入する文脈における「導入される」という用語は、「トランスフェクション」、「形質転換」、または「形質導入」を意味し、核酸分子の真核細胞または原核細胞への組込みへの言及を含み、ここで、核酸分子は、細胞のゲノム(例えば、染色体、プラスミド、色素体、またはミトコンドリアDNA)に組み込まれ得るか、自律レプリコンに変換され得るか、または一過性に発現され得る(例えば、トランスフェクトされたmRNA)。
【0049】
ある特定の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、ベクターのある特定のエレメントに機能的に連結されていてもよい。例えば、ライゲーションされるコード配列の発現およびプロセシングをもたらすのに必要なポリヌクレオチド配列が、機能的に連結されていてもよい。発現制御配列は、適切な転写開始配列、終結配列、プロモーター配列、およびエンハンサー配列;スプライシングおよびポリアデニル化シグナルなどの効率的なRNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を増強する配列(すなわち、Kozakコンセンサス配列);タンパク質安定性を増強する配列;ならびに場合により、タンパク質分泌を増強する配列を含んでいてもよい。発現制御配列は、それらが、目的の遺伝子と隣接する場合、またはそれらが、目的の遺伝子とトランスにもしくは目的の遺伝子が制御される距離で作用する場合、目的の遺伝子に機能的に連結され得る。
【0050】
ある特定の実施形態では、ベクターは、プラスミドベクター、またはウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター、またはγ-レトロウイルスベクター)を含む。ウイルスベクターとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス(例えば、アデノ随伴ウイルス)、コロナウイルス、オルトミクソウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)などのマイナス鎖RNAウイルス、ラブドウイルス(例えば、狂犬病および水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、麻疹およびセンダイ)、ピコルナウイルスおよびアルファウイルスなどのプラス鎖RNAウイルス、ならびにアデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス1型および2型、エプスタインバーウイルス、サイトメガロウイルス)、およびポックスウイルス(例えば、ワクシニア、鶏痘、およびカナリアポックス)を含む二本鎖DNAウイルスが挙げられる。他のウイルスとしては、例えば、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポーバウイルス、ヘパドナウイルス、および肝炎ウイルスが挙げられる。レトロウイルスの例としては、トリ白血症肉腫、哺乳動物C型、B型ウイルス、D型ウイルス、HTLV-BLV群、レンチウイルス、スプーマウイルスが挙げられる(Coffin, J. M., Retroviridae: The viruses and their replication, In Fundamental Virology, Third Edition, B. N. Fields et al., Eds., Lippincott-Raven Publishers, Philadelphia, 1996)。
【0051】
「レトロウイルス」は、RNAゲノムを有するウイルスであり、これは、逆転写酵素を使用してDNAに逆転写され、次いで、逆転写されたDNAは、宿主細胞のゲノムに組み込まれる。「ガンマレトロウイルス」は、レトロウイルス科の属を指す。ガンマレトロウイルスの例としては、マウス幹細胞ウイルス、マウス白血病ウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコ肉腫ウイルス、およびトリ細網内皮症ウイルスが挙げられる。
【0052】
「レンチウイルスベクター」は、遺伝子送達のためのHIVに基づくレンチウイルスベクターを含み、これは、組込みまたは非組込みであり得、比較的大きなパッケージング容量を有し、異なる細胞型の範囲に形質導入することができる。レンチウイルスベクターは、通常、3つ(パッケージング、エンベロープ、および移入)またはそれより多くのプラスミドの産生細胞への一過性トランスフェクション後に生成される。HIVと同様に、レンチウイルスベクターは、標的細胞に、ウイルス表面糖タンパク質と細胞表面上の受容体との相互作用により侵入する。侵入したら、ウイルスRNAは、ウイルス逆転写酵素複合体によって媒介される逆転写を受ける。逆転写の産物は、二本鎖直鎖状ウイルスDNAであり、これは、感染細胞のDNAへのウイルス組込みの基質である。
【0053】
ある特定の実施形態では、ウイルスベクターは、ガンマレトロウイルス、例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MLV)由来ベクターであり得る。他の実施形態では、ウイルスベクターは、より複雑なレトロウイルス由来ベクター、例えば、レンチウイルス由来ベクターであり得る。HIV-1由来ベクターは、このカテゴリーに属する。他の例としては、HIV-2、FIV、ウマ伝染性貧血ウイルス、SIV、およびマエディビスナウイルス(ヒツジレンチウイルス)に由来するレンチウイルスベクターが挙げられる。導入遺伝子を含有するウイルス粒子を用いて哺乳動物宿主細胞を形質導入するために、レトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクター、ならびにパッケージング細胞を使用する方法は当技術分野において公知であり、以前に、例えば、米国特許第8,119,772号;Walchli et al., PLoS One 6:327930, 2011;Zhao et al., J. Immunol. 174:4415, 2005;Engels et al., Hum. Gene Ther. 14:1155, 2003;Frecha et al., Mol. Ther. 18:1748, 2010;およびVerhoeyen et al., Methods Mol. Biol. 506:97, 2009に記載されている。レトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクターの構築物および発現系も市販されている。他のウイルスベクターはまた、ポリヌクレオチド送達のために使用することができ、例えば、アデノウイルスに基づくベクターおよびアデノ随伴ウイルス(AAV)に基づくベクターを含むDNAウイルスベクター;アンプリコンベクター、複製欠損HSVおよび弱毒化HSVを含む単純ヘルペスウイルス(HSV)に由来するベクターを含む(Krisky et al., Gene Ther. 5:1517, 1998)。
【0054】
本開示の組成物および方法とともに使用することができる他のベクターとしては、バキュロウイルスおよびα-ウイルスに由来するベクター(Jolly, D J. 1999. Emerging Viral Vectors. pp 209-40 in Friedmann T. ed. The Development of Human Gene Therapy. New York: Cold Spring Harbor Lab)、またはプラスミドベクター(スリーピング・ビューティー、または他のトランスポゾンベクターなど)が挙げられる。
【0055】
ウイルスベクターゲノムが、宿主細胞において発現される複数のポリヌクレオチドを別々の転写物として含む場合、ウイルスベクターはまた、バイシストロン性またはマルチシストロン性発現を可能にする2つ(またはそれより多くの)転写物の間に追加の配列を含んでいてもよい。ウイルスベクターにおいて使用されるそのような配列の例としては、配列内リボソーム侵入部位(IRES)、フューリン切断部位、ウイルス2Aペプチド、またはこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0056】
対象への直接投与のためのDNAに基づく抗体または抗原結合断片をコードするプラスミドベクターを含むプラスミドベクターは、本明細書でさらに記載される。
【0057】
本明細書で使用される場合、「宿主」という用語は、目的のポリペプチド(例えば、本開示の抗体)を産生する異種核酸分子による遺伝子改変のために標的にされる細胞または微生物を指す。
【0058】
宿主細胞は、ベクター、または核酸の組込みを受け入れ得るか、またはタンパク質を発現し得る、任意の個々の細胞または細胞培養物を含み得る。この用語は、遺伝学的にまたは表現型的に同じまたは異なるかにかかわらず、宿主細胞の子孫も包含する。好適な宿主細胞は、ベクターに依存してもよく、哺乳動物細胞、動物細胞、ヒト細胞、サル細胞、昆虫細胞、酵母細胞、および細菌細胞が挙げられ得る。これらの細胞は、ウイルスベクター、リン酸カルシウム沈殿による形質転換、DEAE-デキストラン、電気穿孔、マイクロインジェクション、または他の方法の使用によって、ベクターまたは他の材料を組み込むように誘導されてもよい。例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2d ed. (Cold Spring Harbor Laboratory, 1989)を参照されたい。
【0059】
SARS-CoV-2感染の文脈では、「宿主」は、SARS-CoV-2に感染した細胞または対象を指す。
【0060】
「抗原」または「Ag」は、本明細書で使用される場合、免疫応答を起こさせる免疫原性分子を指す。この免疫応答は、抗体産生、特定の免疫学的適格細胞の活性化、補体の活性化、抗体依存性細胞傷害、またはこれらの任意の組合せを含み得る。抗原(免疫原性分子)は、例えば、ペプチド、糖ペプチド、ポリペプチド、糖ポリペプチド、ポリヌクレオチド、多糖、脂質などであり得る。抗原が、合成され得るか、組換えで産生され得るか、または生体試料に由来し得ることは、容易に明らかである。1つまたは複数の抗原を含有し得る例示的な生体試料としては、組織試料、糞便試料、細胞、生体液、またはこれらの組合せが挙げられる。抗原は、抗原を発現するように改変または遺伝子操作されている細胞によって産生され得る。抗原はまた、SARS-CoV-2(例えば、表面糖タンパク質、またはその部分)に存在することができ、例えば、ビリオン中に存在することができ、またはSARS-CoV-2に感染した細胞の表面上で発現または提示され得る。
【0061】
「エピトープ」または「抗原エピトープ」という用語は、免疫グロブリン、または他の結合分子、ドメイン、またはタンパク質などの同族の結合分子によって認識され、および特異的に結合する、任意の分子、構造、アミノ酸配列、またはタンパク質決定基を含む。エピトープ決定基は、一般に、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面の基を含有し、特定の三次元構造の特徴だけでなく、特定の電荷特徴を有することができる。抗原が、ペプチドまたはタンパク質であるか、またはこれを含む場合、エピトープは、連続したアミノ酸で構成され得るか(例えば、直鎖状エピトープ)、またはタンパク質フォールディングによって近接するタンパク質の異なる部分または領域由来のアミノ酸で構成され得るか(例えば、不連続もしくは立体構造エピトープ)、またはタンパク質フォールディングとは無関係に極めて近接する非連続アミノ酸で構成され得る。
抗体および抗原結合断片
【0062】
一態様では、本開示は、CDRH1、CDRH2、およびCDRH3を含む重鎖可変ドメイン(VH)と、CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを含み、SARS-CoV-2の表面糖タンパク質に結合できる、単離された抗体またはその抗原結合断片を提供する。ある特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、宿主細胞の細胞表面上および/またはSARS-CoV-2のビリオン上に発現されるSARS-CoV-2の表面糖タンパク質に結合できる。
【0063】
ある特定の実施形態では、本開示の抗体または抗原結合断片は、SARS-CoV-2の表面糖タンパク質のエピトープ、またはエピトープを含む抗原に会合するか、またはそれと合体する一方で、試料中の任意の他の分子または構成成分と有意に会合または合体しない。
【0064】
ある特定の実施形態では、本開示の抗体または抗原結合断片は、SARS-CoV-2の表面糖タンパク質のエピトープに会合または合体し(例えば、結合し)、試料中の任意の他の分子または構成成分に有意に会合または合体しないが、試料中に存在する別のコロナウイルス(例えば、SARS CoV)由来のエピトープにも会合または合体することができる。言い換えれば、ある特定の実施形態では、本開示の抗体または抗原結合断片は、SARS-CoV-2、および1つまたは複数の追加のコロナウイルスに対して交差反応性であり、SARS-CoV-2、および1つまたは複数の追加のコロナウイルスに特異的である。
【0065】
ある特定の実施形態では、本開示の抗体または抗原結合断片は、SARS-CoV-2の表面糖タンパク質に特異的に結合する。本明細書で使用される場合、「特異的に結合する」は、試料中の任意の他の分子または構成成分と有意に会合または合体しないが、10-1(この会合反応のオンレート[Kon]のオフレート[Koff]に対する比と等しい)と等しいまたはそれより大きい親和性またはK(すなわち、単位1/Mの特定の結合相互作用の平衡会合定数)での抗体または抗原結合断片の抗原への会合または合体を指す。あるいは、親和性は、単位Mの特定の結合相互作用の平衡解離定数(K)として定義され得る(例えば、10-5M~10-13M)。抗体は、「高親和性」抗体または「低親和性」抗体に分類され得る。「高親和性」抗体は、少なくとも10-1、少なくとも10-1、少なくとも10-1、少なくとも1010-1、少なくとも1011-1、少なくとも1012-1、または少なくとも1013-1のKを有する抗体を指す。「低親和性」抗体は、10-1まで、10-1まで、10-1までのKを有する抗体を指す。あるいは、親和性は、単位Mの特定の結合相互作用の平衡解離定数(K)として定義され得る(例えば、10-5M~10-13M)。
【0066】
特定の標的に結合する本開示の抗体を同定するため、および結合ドメインまたは結合タンパク質の親和性を決定するための種々のアッセイ、例えば、ウェスタンブロット、ELISA、分析超遠心分離、分光法、および表面プラズモン共鳴(Biacore(登録商標))分析が公知である(例えば、Scatchard et al., Ann. N.Y. Acad. Sci. 51:660, 1949;Wilson, Science 295:2103, 2002;Wolff et al., Cancer Res. 53:2560, 1993;および米国特許第5,283,173号、同第5,468,614号、または等価物を参照されたい)。親和性、または見かけの親和性、または相対的な親和性を評価するためのアッセイも公知である。
【0067】
ある特定の例では、結合は、宿主細胞においてSARS-CoV-2抗原を組換えで発現させること(例えば、トランスフェクションにより)、および抗体で宿主細胞を免疫染色すること(例えば、固定する、または固定および透過処理する)、およびフローサイトメトリー(例えば、ZE5 Cell Analyzer(BioRad(登録商標))およびFlowJoソフトウェア(TreeStar)を使用する)により結合を分析することによって、決定することができる。一部の実施形態では、正の結合は、対照(例えば、モック)細胞に対するSARS-CoV-2発現細胞の抗体による分染によって定義することができる。
【0068】
ある特定の実施形態では、本開示の抗体は、SARS-CoV-2による感染を中和できる。本明細書で使用される場合、「中和抗体」は、宿主における感染を開始および/または持続させる病原体の能力を、中和することができる抗体、すなわち、防止することができる抗体、阻害することができる抗体、低減することができる抗体、妨げることができる抗体、または妨害することができる抗体である。「中和抗体」および「中和する抗体(antibody that neutralizes)」または「中和する抗体(antibodies that neutralize)」という用語は、本明細書では、互換的に使用される。ここに開示される実施形態のいずれかでは、抗体または抗原結合断片は、感染のin vitroモデルにおいて、および/または感染のin vivo動物モデルにおいて、および/またはヒトにおいて、SARS-CoV-2感染を予防できる、かつ/または中和できる。
【0069】
ある特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、(i)SARS-CoV-2のACE2受容体結合モチーフ(RBM、配列番号390)中のエピトープを認識するか;(ii)SARS-CoV-2およびACE2の間の相互作用を遮断できるか;(ii)SARSコロナウイルスのSタンパク質に対するよりも高いアビディティーでSARS-CoV-2のSタンパク質に結合できるか;(iv)抗体または抗原結合断片が10μg/mlで存在する場合に、およそ100μL中の約50,000個の標的細胞(例えば、ExpiCHO細胞)を含む試料中で、SARS-CoV-2の表面糖タンパク質を発現する標的細胞の約30%、約35%、約40%、約50%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、またはそれより多くを染色する(例えば、フローサイトメトリーELISAによって決定されるように染色する)ことができるか;(v)SARS-CoV-2のACE2のRBM中、およびSARSコロナウイルスのACE2のRBM中で保存されているエピトープを認識するか;(vi)SARS-CoV-2およびSARSコロナウイルスに対して交差反応性であるか;(vii)ACE2のRBM中にはない、SARS-CoV-2の表面糖タンパク質中のエピトープを認識するか;または(viii)(i)~(vii)の任意の組合せである。
【0070】
抗体技術の当業者によって理解される用語は、本明細書で明らかに異なって定義されない限り、当技術分野において得られる意味をそれぞれ示す。例えば、「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む無傷抗体、ならびに無傷抗体によって認識される抗原標的分子に結合する能力を有するか、またはこれを保持する、無傷抗体の任意の抗原結合部分または断片、例えば、scFv、Fab、またはFab’2断片を指す。そのため、本明細書の「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を含み、無傷抗体、ならびに断片抗原結合(Fab)断片、F(ab’)2断片、Fab’断片、Fv断片、組換えIgG(rIgG)断片、一本鎖可変断片(scFv)を含む一本鎖抗体断片、およびシングルドメイン抗体(例えば、sdAb、sdFv、ナノボディ)断片を含むその機能的(抗原結合)抗体断片を含む。この用語は、免疫グロブリンの遺伝子操作された形態および/または他の方法で改変された形態、例えば、イントラボディ、ペプチボディ、キメラ抗体、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、およびヘテロコンジュゲート抗体、多特異性、例えば、二特異性抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、タンデムジ-scFv、ならびにタンデムトリ-scFvを包含する。他に言及されない限り、「抗体」という用語は、その機能的抗体断片を包含することが理解されるべきである。この用語は、無傷抗体または全長抗体も包含し、IgGおよびそのサブクラス(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgM、IgE、IgA、ならびにIgDを含む、任意のクラスまたはサブクラスの抗体を含む。
【0071】
「V」または「VL」、および「V」または「VH」という用語は、それぞれ、抗体軽鎖および抗体重鎖由来の可変結合領域を指す。ある特定の実施形態では、VLは、カッパ(κ)クラス(また、本明細書では「VK」)である。ある特定の実施形態では、VLは、ラムダ(λ)クラスである。可変結合領域は、「相補性決定領域」(CDR)および「フレームワーク領域」(FR)として公知の明確に異なる十分に定義されたサブ領域を含む。「相補性決定領域」および「CDR」という用語は、「超可変領域」または「HVR」と同義であり、一般に、抗体の抗原特異性および/または結合親和性を一緒に付与する抗体可変領域内のアミノ酸の配列を指し、ここで、連続CDR(すなわち、CDR1およびCDR2、CDR2およびCDR3)は、フレームワーク領域によって、一次構造が互いに分離されている。各可変領域中に3つのCDRが存在する(HCDR1、HCDR2、HCDR3;LCDR1、LCDR2、LCDR3;それぞれ、CDRHおよびCDRLとも称される)。ある特定の実施形態では、抗体VHは、以下の通り4つのFRおよび3つのCDRを含み:FR1-HCDR1-FR2-HCDR2-FR3-HCDR3-FR4;抗体VLは、以下の通り4つのFRおよび3つのCDRを含む:FR1-LCDR1-FR2-LCDR2-FR3-LCDR3-FR4。一般に、VHおよびVLは、それらのそれぞれのCDRを通して抗原結合部位を一緒に形成する。
【0072】
本明細書で使用される場合、CDRの「バリアント」は、1~3つまでのアミノ酸置換(例えば、保存的置換または非保存的置換)、欠失、またはこれらの組合せを有するCDR配列の機能的バリアントを指す。
【0073】
CDRおよびフレームワーク領域の番号付けは、任意の公知の方法またはスキーム、例えば、Kabat、Chothia、EU、IMGT、およびAHoの番号付けスキーム(例えば、Kabat et al., ”Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services, Public Health Service National Institutes of Health, 1991, 5th ed.;Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987));Lefranc et al., Dev. Comp. Immunol. 27:55, 2003;Honegger and Plueckthun, J. Mol. Bio. 309:657-670 (2001)を参照されたい)に従い得る。等価の残基位置を、抗原受容体の番号付けと受容体の分類(Antigen receptor Numbering And Receptor Classification)(ANARCI)ソフトウェアツール(2016, Bioinformatics 15:298-300)を使用して、比較される異なる分子についてアノテートすることができる。したがって、ある番号付けスキームに従う本明細書に提供される例示的な可変ドメイン(VHまたはVL)配列のCDRの同定は、異なる番号付けスキームを使用して決定される同じ可変ドメインのCDRを含む抗体を除外しない。ある特定の実施形態では、Kabat、Chothia、EU、IMGT、Martin(強化したChothia)、Contact、およびAHoの番号付け方法を含む任意の公知のCDR番号付け方法を使用して決定されるように、配列番号5、21、37、53、69、85、101、117、133、149、165、181、197、213、229、245、261、277、293、309、325、341、357、374、377、395、もしくは415のいずれか1つに記載のVH配列の3つのCDR、ならびに/または配列番号13、29、45、61、77、93、109、125、141、157、173、189、205、221、237、253、269、285、301、317、333、349、365、380、383、385、388、392、393、400、402、404、および406~414のいずれか1つに記載のVL配列の3つのCDRとを含む抗体または抗原結合断片が提供される。ある特定の実施形態では、CDRは、IMGT番号付け方法に従う。ある特定の実施形態では、CDRは、例えば、分子操作環境(Molecular Operating Environment)(MOE)ソフトウェア(www.chemcomp.com)を使用して、ケミカルコンピューティンググループ(Chemical Computing Group)(CCG)によって開発された抗体の番号付け方法に従う。
【0074】
ある特定の実施形態では、CDRH1、CDRH2、およびCDRH3を含む重鎖可変ドメイン(VH)と、CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを含む抗体またはその抗原結合断片であって、(i)CDRH1が、配列番号6、22、38、54、70、86、102、118、134、150、166、182、198、214、230、246、262、278、294、310、326、342、もしくは358のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、または1、2、もしくは3つの酸置換(acid substitution)を含むその配列バリアントを含むか、またはこれからなり、この置換の1つまたは複数が、必要に応じて保存的置換であり、かつ/または生殖系列をコードするアミノ酸に対する置換であり;(ii)CDRH2が、配列番号7、23、39、55、71、87、103、119、135、151、167、183、199、215、231、247、263、279、295、311、327、343、359、もしくは416のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、または1、2、もしくは3つのアミノ酸置換を含むその配列バリアントを含むか、またはこれからなり、この置換の1つまたは複数が、必要に応じて保存的置換であり、かつ/または生殖系列をコードするアミノ酸に対する置換であり;(iii)CDRH3が、配列番号8、24、40、56、72、88、104、120、136、152、168、184、200、216、232、248、264、280、296、312、328、344、360、375、378、もしく397のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、または1、2、もしくは3つのアミノ酸置換を含むその配列バリアントを含むか、またはこれからなり、この置換の1つまたは複数が、必要に応じて保存的置換であり、かつ/または生殖系列をコードするアミノ酸に対する置換であり;(iv)CDRL1が、配列番号14、30、46、62、78、94、110、126、142、158、174、190、206、222、238、254、270、286、302、318、334、350、366、398、399、401、403、もしくは405のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、または1、2、もしくは3つのアミノ酸置換を含むその配列バリアントを含むか、またはこれからなり、この置換の1つまたは複数が、必要に応じて保存的置換であり、かつ/または生殖系列をコードするアミノ酸に対する置換であり;(v)CDRL2が、配列番号15、31、47、63、79、95、111、127、143、159、175、191、207、223、239、255、271、287、303、319、335、351、もしくは367のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、または1、2、もしくは3つのアミノ酸置換を含むその配列バリアントを含むか、またはこれからなり、この置換の1つまたは複数が、必要に応じて保存的置換であり、かつ/または生殖系列をコードするアミノ酸に対する置換であり;かつ/または(vi)CDRL3が、配列番号16、32、48、64、80、96、112、128、144、160、176、192、208、224、240、256、272、288、304、320、336、352、358、386、もしくは394のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、または1、2、もしくは3つのアミノ酸置換を含む有する(comprising having)その配列バリアントを含むか、またはこれからなり、この置換の1つまたは複数が、必要に応じて保存的置換であり、かつ/または生殖系列をコードするアミノ酸に対する置換であり、抗体または抗原結合断片が、宿主細胞の細胞表面上に発現されるSARS-CoV-2の表面糖タンパク質に結合できる、抗体またはその抗原結合断片が提供される。
【0075】
ここに開示される実施形態のいずれかでは、抗体または抗原結合断片は、感染のin vitroモデルにおいて、および/または感染のin vivo動物モデルにおいて、および/またはヒトにおいて、SARS-CoV-2感染を予防できる、かつ/または中和できる。
【0076】
ここに開示される実施形態のいずれかでは、抗体または抗原結合断片は、(i)それぞれ、配列番号6~8および14~16;(ii)それぞれ、配列番号22~24および30~32;(iii)それぞれ、配列番号22~24、398、31、および32;(iv)それぞれ、配列番号22~24、399、31、および32;(v)それぞれ、配列番号22~24、401、31、および32;(vi)それぞれ、配列番号22~24、403、31、および32;(v)それぞれ、配列番号22~24、405、31、および32;(vi)それぞれ、配列番号38~40および46~48;(vii)それぞれ、配列番号38~40、398、47、および48;(viii)それぞれ、配列番号38~40、399、47、および48;(viv)それぞれ、配列番号38~40、401、47、および48;(x)それぞれ、配列番号38~40、403、47、および48;(xi)それぞれ、配列番号38~40、405、47、および48;(xii)それぞれ、配列番号54~56および62~64;(xiii)それぞれ、配列番号70~72および78~80;(xiv)それぞれ、配列番号86~88および94~96;(xv)それぞれ、配列番号102~104および110~112;(xvi)それぞれ、配列番号118~120および126~128;(xvii)それぞれ、配列番号134~136および142~144;(xviii)それぞれ、配列番号150~152および158~160;(xix)それぞれ、配列番号166~168および174~176;(xx)それぞれ、配列番号182~184および190~192;(xxi)それぞれ、配列番号198~200および206~208;(xxii)それぞれ、配列番号214~216および222~224;(xxiii)それぞれ、配列番号230~232および238~240;(xxiv)それぞれ、配列番号246~248および254~256;(xxv)それぞれ、配列番号262~264および270~272;(xxxvi)それぞれ、配列番号278~280および286~288;(xxvii)それぞれ、配列番号294~296および302~304;(xxviii)それぞれ、配列番号310~312および318~320;(xxix)それぞれ、配列番号326~328および334~336;(xxx)それぞれ、配列番号342~344および350~352;(xxxi)それぞれ、配列番号358~360および366~368;(xxxii)それぞれ、配列番号22、23、375、および30~32;(xxxiii)それぞれ、配列番号22、23、375、398、31、および32;(xxxiv)それぞれ、配列番号22、23、375、399、31、および32;(xxxv)それぞれ、配列番号22、23、375、401、31、および32;(xxxvi)それぞれ、配列番号22、23、375、403、31、および32;(xxxvii)それぞれ、配列番号22、23、375、405、31、および32;(xxxviii)それぞれ、配列番号22、23、378、および30~32;(xxxix)それぞれ、配列番号22、23、378、398、31、および32;(xl)それぞれ、配列番号22、23、378、399、31、および32;(xli)それぞれ、配列番号22、23、378、401、31、および32;(xlii)それぞれ、配列番号22、23、378、403、31、および32;(xliii)それぞれ、配列番号22、23、378、405、31、および32;(xliv)それぞれ、配列番号22~24、30、31、および386;(xlv)それぞれ、配列番号22~24、398、31、および386;(xlvi)それぞれ、配列番号22~24、399、31、および386;(xlvii)それぞれ、配列番号22~24、401、31、および386;(xlviii)それぞれ、配列番号22~24、403、31、および386;(xlix)それぞれ、配列番号22~24、405、31、および386;(l)それぞれ、配列番号38~40、46、47、および386;(li)それぞれ、配列番号38~40、398、47、および386;(lii)それぞれ、配列番号38~40、399、47、および386;(liii)それぞれ、配列番号38~40、401、47、および386;(liv)それぞれ、配列番号38~40、403、47、および386;(lv)それぞれ、配列番号38~40、405、47、および386;(lvi)それぞれ、配列番号22~24、30、31、および394;(lvii)それぞれ、配列番号22~24、398、31、および394;(lviii)それぞれ、配列番号22~24、399、31、および394;(lix)それぞれ、配列番号22~24、401、31、および394;(lx)それぞれ、配列番号22~24、403、31、および394;(lxi)それぞれ、配列番号22~24、405、31、および394;(lxii)それぞれ、配列番号22、23、375、30、31、および394;(lxiii)それぞれ、配列番号22、23、375、30、31、および386;(lxiv)それぞれ、配列番号22、23、375、398、31、および386;(lxv)それぞれ、配列番号22、23、375、399、31、および386;(lxvi)それぞれ、配列番号22、23、375、401、31、および386;(lxvii)それぞれ、配列番号22、23、375、403、31、および386;(lxviii)それぞれ、配列番号22、23、375、405、31、および386;(lxix)それぞれ、配列番号22、23、378、30、31、および394;(lxx)それぞれ、配列番号22、23、378、398、31、および394;(lxxi)それぞれ、配列番号22、23、378、399、31、および394;(lxxii)それぞれ、配列番号22、23、378、401、31、および394;(lxxiii)それぞれ、配列番号22、23、378、403、31、および394;(lxxiv)それぞれ、配列番号22、23、378、405、31、および394;(lxxv)それぞれ、配列番号22、23、378、30、31、および386;(lxxvi)それぞれ、配列番号22、23、378、398、31、および386;(lxxvii)それぞれ、配列番号22、23、378、399、31、および386;(lxxviii)それぞれ、配列番号22、23、378、401、31、および386;(lxxix)それぞれ、配列番号22、23、378、403、31、および386;(lxxx)それぞれ、配列番号22、23、378、405、31、および386;(lxxxi)それぞれ、配列番号22、23、397、および30~32;(lxxxii)それぞれ、配列番号22、23、397、398、31、および32;(lxxxiii)それぞれ、配列番号22、23、397、399、31、および32;(lxxxiv)それぞれ、配列番号22、23、397、401、31、および32;(lxxxv)それぞれ、配列番号22、23、397、403、31、および32;(lxxxvi)それぞれ、配列番号22、23、397、405、31、および32;(lxxxvii)それぞれ、配列番号22、23、397、30、31、および386;(lxxxviii)それぞれ、配列番号22、23、397、398、31、および386;(lxxxix)それぞれ、配列番号22、23、397、399、31、および386;(xc)それぞれ、配列番号22、23、397、401、31、および386;(xci)それぞれ、配列番号22、23、397、403、31、および386;(xcii)それぞれ、配列番号22、23、397、405、31、および386;(xciii)それぞれ、配列番号22、23、397、30、31、および394;(xciv)それぞれ、配列番号22、23、397、398、31、および394;(xcv)それぞれ、配列番号22、23、397、399、31、および394;(xcvi)それぞれ、配列番号22、23、397、401、31、および394;(xcvii)それぞれ、配列番号22、23、397、403、31、および394;(xcviii)それぞれ、配列番号22、23、397、405、31、および394;(xcix)それぞれ、配列番号22、416、24、30、31、および32;(c)それぞれ、配列番号22、416、24、30、31、および386;(ci)それぞれ、配列番号22、416、24、30、31、および394;(cii)それぞれ、配列番号22、416、24、398、31、および32;(ciii)それぞれ、配列番号22、416、24、398、31、および386;(civ)それぞれ、配列番号22、416、24、398、31、および394;(cv)それぞれ、配列番号22、416、24、399、31、および32;(cvi)それぞれ、配列番号22、416、24、399、31、および386;(cvii)それぞれ、配列番号22、416、24、399、31、および394;(cviii)それぞれ、配列番号22、416、24、401、31、および32;(cix)それぞれ、配列番号22、416、24、401、31、および386;(cx)それぞれ、配列番号22、416、24、401、31、および394;(cxi)それぞれ、配列番号22、416、24、403、31、および32;(cxii)それぞれ、配列番号22、416、24、403、31、および386;(cxiii)それぞれ、配列番号22、416、24、403、31、および394;(cxiv)それぞれ、配列番号22、416、24、405、31、および32;(cxv)それぞれ、配列番号22、416、24、405、31、および386;(cxvi)それぞれ、配列番号22、416、24、405、31、および394;(cxvii)それぞれ、配列番号22、416、375、30、31、および32;(cxviii)それぞれ、配列番号22、416、375、398、31、および386;(cxix)それぞれ、配列番号22、416、375、398、31、および394;(cxx)それぞれ、配列番号22、416、375、399、31、および386;(cxxi)それぞれ、配列番号22、416、375、399、31、および394;(cxxii)それぞれ、配列番号22、416、375、401、31、および386;(cxxiii)それぞれ、配列番号22、416、375、401、31、および394;(cxxiv)それぞれ、配列番号22、416、375、403、31、および386;(cxxv)それぞれ、配列番号22、416、375、403、31、および394;(cxxvi)それぞれ、配列番号22、416、375、405、31、および386;(cxxvii)それぞれ、配列番号22、416、375、405、31、および394;(cxxviii)それぞれ、配列番号22、416、378、30、31、および32;(cxxix)それぞれ、配列番号22、416、378、398、31、および386;(cxxx)それぞれ、配列番号22、416、378、398、31、および394;(cxxxi)それぞれ、配列番号22、416、378、399、31、および386;(cxxxii)それぞれ、配列番号22、416、378、399、31、および394;(cxxxiii)それぞれ、配列番号22、416、378、401、31、および386;(cxxxiv)それぞれ、配列番号22、416、378、401、31、および394;(cxxxv)それぞれ、配列番号22、416、375、403、31、および386;(cxxxvi)それぞれ、配列番号22、416、378、403、31、および394;(cxxxvii)それ

ぞれ、配列番号22、416、378、405、31、および386;(cxxxviii)それぞれ、配列番号22、416、378、405、31、および394;(cxxxix)それぞれ、配列番号22、416、397、30、31、および32;(cxl)それぞれ、配列番号22、416、397、398、31、および386;(cxli)それぞれ、配列番号22、416、397、398、31、および394;(cxlii)それぞれ、配列番号22、416、397、399、31、および386;(ccxliii)それぞれ、配列番号22、416、397、399、31、および394;(cxliv)それぞれ、配列番号22、416、397、401、31、および386;(cxlv)それぞれ、配列番号22、416、397、401、31、および394;(cxlvi)それぞれ、配列番号22、416、375、403、31、および386;(cxlvii)それぞれ、配列番号22、416、397、403、31、および394;(cxlviii)それぞれ、配列番号22、416、397、405、31、および386;または(cxlix)それぞれ、配列番号22、416、397、405、31、および394に記載のCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、およびCDRL3アミノ酸配列を含む。
【0077】
ある特定の実施形態では、本開示の抗体または抗原結合断片は、CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含み、各CDRは、表1に提供される、nCoV-3 mAb、nCoV-17 mAb、nCoV-6 mAb、nCoV-16 mAb、nCoV-20 mAb、nCoV-4 mAb、nCoV-4-v2 mAb、nCoV-4-v3 mAb、nCoV-15 mAb、nCoV-12 mAb、nCoV-5 mAb、nCoV-14 mAb、nCoV-9 mAb、nCoV-18 mAb、nCoV-8 mAb、nCoV-7 mAb、nCoV-2 mAb、nCoV-19 mAb、nCoV-1 mAb、nCoV-11 mAb、nCoV-13 mAb、nCoV-10 mAb、nCoV-10-v2 mAb、nCoV-10 mAb VL-v3、nCoV-10 mAb VL-v4、nCoV-10 mAb VL-v5、nCoV-10 mAb VL-v6、nCoV-10 mAb VL-v7、nCoV-10 mAb VL-v8、nCoV-10 mAb VL-v9、nCoV-10 mAb VL-v10、nCoV-10 mAb VL-v11、nCoV-10 mAb VL-v12、nCoV-10 mAb VL-v13、nCoV-10 mAb VL-v14、nCoV-10 mAb VL-v15、nCoV-10 mAb VL-v16、nCoV-10 mAb VL-v17、nCoV-10 mAb VL-v18、nCoV-10 mAb VL-v19、nCoV-10 mAb VL-v20、nCoV-10 mAb VH-v3、nCoV-10 mAb VH-v4、nCoV-10 mAb VH-v5、またはnCoV-10 mAb VH-v21の対応するCDRから独立して選択される。すなわち、表1に提供されるSARS-CoV-2 mAbおよびそのバリアント配列由来のCDRのすべての組合せが企図される。抗体についてのいくつかの異なる命名規則が本明細書で使用され得る。例えば、抗体nCoV-x mAbは、nCoV-x、nCoVx、またはnCoVx mAbとも称され得る。抗体nCoV-x-v2 mAbは、nCoV-x-v2、nCoVx-v2、nCoVx-v2 mAb、nCoV-x mAb v2、またはnCoVx mAb v2とも称され得る。抗体nCoV-x mAb VH-v2は、nCoV-x VH-v2またはnCoV-x VH-v2 mAbとも称され得る。
【0078】
「CL」という用語は、「免疫グロブリン軽鎖定常領域」または「軽鎖定常領域」、すなわち、抗体軽鎖由来の定常領域を指す。「CH」という用語は、「免疫グロブリン重鎖定常領域」または「重鎖定常領域」を指し、これは、抗体のアイソタイプに応じて、CH1、CH2、およびCH3ドメイン(IgA、IgD、IgG)、またはCH1、CH2、CH3、およびCH4ドメイン(IgE、IgM)にさらに分けられる。抗体重鎖のFc領域は、本明細書にさらに記載される。ここに開示される実施形態のいずれかでは、本開示の抗体または抗原結合断片は、CL、CH1、CH2、およびCH3のいずれか1つまたは複数を含む。ある特定の実施形態では、CLは、配列番号391のアミノ酸配列に対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、CH1-CH2-CH3は、配列番号395のアミノ酸配列に対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0079】
「Fab」(抗原に結合する断片)は、抗原に結合する抗体の部分であり、鎖間ジスルフィド結合を介して軽鎖に連結された重鎖の可変領域およびCH1を含む。各Fab断片は、抗原結合に関して一価である、すなわち、単一の抗原結合部位を有する。全長抗体のペプシン処理は、二価の抗原結合活性を有し、さらに抗原と架橋できる、2つのジスルフィド連結されたFab断片におおよそ対応する単一の大きなF(ab’)2断片を生じる。FabおよびF(ab’)2は両方とも、「抗原結合断片」の例である。Fab’断片は、CH1ドメインのカルボキシ末端において、抗体ヒンジ領域由来の1つまたは複数のシステインを含む追加のいくつかの残基を有することによって、Fab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離のチオール基を持つFab’についての本明細書での表示である。F(ab’)2抗体断片は、それらの間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として生成され得る。抗体断片の他の化学的カップリングも公知である。
【0080】
「Fv」は、完全な抗原認識および抗原結合部位を含有する小さな抗体断片である。この断片は、密接に非共有結合的に会合した1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。しかしながら、単一の可変ドメイン(または、抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)でさえ、抗原を認識し、それに結合する能力を有するが、典型的には、結合部位全体よりも親和性が低い。「Fd」は、VH+CH1を指す。
【0081】
「一本鎖Fv」は、「sFv」または「scFv」とも略され、単一のポリペプチド鎖に好ましくは接続されたVおよびV抗体ドメインを含む抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドは、sFvが抗原結合のために所望の構造を形成することを可能にする、VおよびVドメインの間のポリペプチドリンカーをさらに含む。加えて、または代わりに、Fvは、VHおよびVLの間で形成されるジスルフィド結合を有し得る。sFvの概説について、Plueckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994);以下のBorrebaeck 1995を参照されたい。
【0082】
抗体発生の間、生殖系列可変(V)、接合(J)、および多様性(D)遺伝子の遺伝子座におけるDNAが再構成され得、コード配列においてヌクレオチドの挿入および/または欠失が起こり得る。体細胞変異は、得られる配列によってコードされてもよく、対応する公知の生殖系列配列を参照することによって同定することができる。一部の文脈では、抗体の所望の性質(例えば、SARS-CoV-2抗原への結合)に重要ではないか、または抗体に望ましくない性質(例えば、抗体が投与される対象における免疫原性のリスクの増加)を付与するか、またはその両方である体細胞変異を、対応する生殖系列をコードするアミノ酸によって、または異なるアミノ酸によって置き換えることができ、その結果、抗体の望ましい性質が、改善または維持され、抗体の望ましくない性質が減少または抑止される。そのため、一部の実施形態では、本開示の抗体または抗原結合断片は、親抗体または抗原結合断片が1つまたは複数の体細胞変異を含むならば、親抗体または抗原結合断片と比較して、可変領域中に、少なくとももう1つ多くの生殖系列をコードするアミノ酸を含む。本開示の例示的な抗SARS-CoV-2抗体の可変領域およびCDRアミノ酸配列は、本明細書の表1に提供される。
【0083】
ある特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、酸化、脱アミド化、および/または異性化の望ましくないリスクを除去するアミノ酸改変(例えば、置換変異)を含む。
【0084】
ここに開示される(「親」または「参照」)抗体と比較して、可変領域(例えば、VH、VL、フレームワーク、またはCDR)中に1つまたは複数のアミノ酸の変更(例えば、置換)を含むバリアント抗体であって、バリアント抗体が、SARS-CoV-2抗原に結合できる、バリアント抗体も本明細書に提供される。
【0085】
ある特定の実施形態では、VHは、配列番号5、21、37、53、69、85、101、117、133、149、165、181、197、213、229、245、261、277、293、309、325、341、357、374、377、396、または415のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%(すなわち、85%、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%)の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはこれからなり、参照VH配列番号と比較して変種(variation)は、存在する場合、必要に応じて1つまたは複数のフレームワーク領域に限定され、かつ/または変種は、存在する場合、生殖系列をコードするアミノ酸に対する1つまたは複数の置換を含み;かつ/または(ii)VLは、配列番号13、29、45、61、77、93、109、125、141、157、173、189、205、221、237、253、269、285、301、317、333、349、365、380、383、385、388、392、393、400、402、404、および406~414のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%(すなわち、85%、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%)の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはこれからなり、参照VL配列番号と比較して変種は、存在する場合、必要に応じて1つまたは複数のフレームワーク領域に限定され、かつ/または変種は、存在する場合、生殖系列をコードするアミノ酸に対する1つまたは複数の置換を含む。
【0086】
一部の実施形態では、VHおよびVLは、(i)それぞれ、配列番号5および13;(ii)それぞれ、配列番号21、ならびに29、45、380、383、385、388、392、393、400、402、404、406、407、408、409、410、411、412、413、および414のいずれか1つ;(iii)それぞれ、配列番号415、ならびに29、45、380、383、385、388、392、400、402、404、406、407、408、409、410、411、412、413、および414のいずれか1つ;(iv)それぞれ、配列番号37、ならびに29、45、380、383、385、388、392、400、402、404、406、407、408、409、410、411、412、413、および414のいずれか1つ;(v)それぞれ、配列番号53および61;(vi)それぞれ、配列番号69および77;(vii)それぞれ、配列番号85および93;(viii)それぞれ、配列番号101および109;(ix)それぞれ、配列番号117、ならびに125、141、および157のいずれか1つ;(x)それぞれ、配列番号133、ならびに125、141、および157のいずれか1つ;(xi)それぞれ、配列番号149、ならびに125、141、および157のいずれか1つ;(xii)それぞれ、配列番号165および173;(xiii)それぞれ、配列番号181および189;(xiv)それぞれ、配列番号197および205;(xv)それぞれ、配列番号213および221;(xvi)それぞれ、配列番号229および237;(xvii)それぞれ、配列番号245および253;(xviii)それぞれ、配列番号261および269;(xix)それぞれ、配列番号277および285;(xx)それぞれ、配列番号293および301;(xxi)それぞれ、配列番号309および317;(xxii)それぞれ、配列番号325および333;(xxiii)それぞれ、配列番号341および349;(xxiv)それぞれ、配列番号357および365;(xxv)それぞれ、配列番号374、ならびに29、45、380、383、385、392、393、400、402、404、406、407、408、409、410、411、412、413、および414のいずれか1つ;(xxvi)それぞれ、配列番号377、ならびに29、45、380、383、385、392、393、400、402、404、406、407、408、409、410、411、412、413、および414のいずれか1つ;(xxvii)それぞれ、配列番号415、ならびに29、45、380、383、385、392、393、400、402、404、406、407、408、409、410、411、412、413、および414のいずれか1つ;または(xxviii)それぞれ、配列番号396、ならびに29、37、45、380、383、385、388、392、393、400、402、404、406、407、408、409、410、411、412、413、および414のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%を有するアミノ酸配列を含むか、またはこれからなる。
【0087】
ある特定の実施形態では、VHは、表1に記載される任意のVHアミノ酸配列を含むか、またはこれからなり、VLは、表1に記載される任意のVLアミノ酸配列を含むか、またはこれからなる。特定の実施形態では、VHおよびVLは、(i)それぞれ、配列番号5および13;(ii)それぞれ、配列番号21、ならびに29、45、380、383、385、388、392、393、400、402、404、406、407、408、409、410、411、412、413、および414のいずれか1つ;(iii)それぞれ、配列番号415、ならびに29、45、380、383、385、388、392、400、402、404、406、407、408、409、410、411、412、413、および414のいずれか1つ;(iv)それぞれ、配列番号37、ならびに29、45、380、383、385、388、392、400、402、404、406、407、408、409、410、411、412、413、および414のいずれか1つ;(v)それぞれ、配列番号53および61;(vi)それぞれ、配列番号69および77;(vii)それぞれ、配列番号85および93;(viii)それぞれ、配列番号101および109;(ix)それぞれ、配列番号117、ならびに125、141、および157のいずれか1つ;(x)それぞれ、配列番号133、ならびに125、141、および157のいずれか1つ;(xi)それぞれ、配列番号149、ならびに125、141、および157のいずれか1つ;(xii)それぞれ、配列番号165および173;(xiii)それぞれ、配列番号181および189;(xiv)それぞれ、配列番号197および205;(xv)それぞれ、配列番号213および221;(xvi)それぞれ、配列番号229および237;(xvii)それぞれ、配列番号245および253;(xviii)それぞれ、配列番号261および269;(xix)それぞれ、配列番号277および285;(xx)それぞれ、配列番号293および301;(xxi)それぞれ、配列番号309および317;(xxii)それぞれ、配列番号325および333;(xxiii)それぞれ、配列番号341および349;(xxiv)それぞれ、配列番号357および365;(xxv)それぞれ、配列番号374、ならびに29、45、380、383、385、392、393、400、402、404、406、407、408、409、410、411、412、413、および414のいずれか1つ;(xxvi)それぞれ、配列番号377、ならびに29、45、380、383、385、392、393、400、402、404、406、407、408、409、410、411、412、413、および414のいずれか1つ;(xxvii)それぞれ、配列番号415、ならびに29、45、380、383、385、392、393、400、402、404、406、407、408、409、410、411、412、413、および414のいずれか1つ;または(xxviii)それぞれ、配列番号396、ならびに29、37、45、380、383、385、388、392、393、400、402、404、406、407、408、409、410、411、412、413、および414のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含むか、またはこれからなる。
【0088】
ある特定の実施形態では、本開示の抗体または抗原結合断片は、二特異性抗体または三特異性抗体などの多特異性抗体である。二特異性抗体についてのフォーマットは、例えば、Spiess et al., Mol. Immunol. 67(2):95 (2015)およびBrinkmann and Kontermann, mAbs 9(2):182-212 (2017)に開示され、この二特異性フォーマットおよびそれを作製する方法は、参照により本明細書に組み込まれ、例えば、二特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)、DART、ノブイントゥホール(KIH)アセンブリー、scFv-CH3-KIHアセンブリー、KIH共通軽鎖抗体、TandAb、トリプルボディ、TriBiミニボディ、Fab-scFv、scFv-CH-CL-scFv、F(ab’)2-scFv2、四価HCab、イントラボディ、クロスマブ、二重作用Fab(DAF)(ツーインワンまたはフォーインワン)、DutaMab、DT-IgG、チャージペア(Charge Pair)、Fabアーム交換、SEEDボディ、トリオマブ、LUZ-Yアセンブリー、Fcab、κλボディ、オルソゴナルFab、DVD-Ig(例えば、米国特許第8,258,268号、このフォーマットは、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)、IgG(H)-scFv、scFv-(H)IgG、IgG(L)-scFv、scFv-(L)IgG、IgG(L,H)-Fv、IgG(H)-V、V(H)-IgG、IgG(L)-V、V(L)-IgG、KIH IgG-scFab、2scFv-IgG、IgG-2scFv、scFv4-Ig、Zybody、およびDVI-IgG(フォーインワン)、ならびに、いわゆるFIT-Ig(例えば、PCT公開番号WO2015/103072号、このフォーマットは、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)、いわゆるWuxiBodyフォーマット(例えば、PCT公開番号WO2019/057122号、このフォーマットは、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)、およびいわゆるIn-Elbow-Insert Igフォーマット(IEI-Ig;例えば、PCT公開番号WO2019/024979号およびWO2019/025391号、このフォーマットは、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を含む。
【0089】
二特異性抗体または多特異性抗体は、本開示の1つ、2つ、またはそれより多くのSARS-CoV-2抗原結合ドメインまたは配列(例えば、CDRS、ならびに/またはVHおよびVL)を、必要に応じて、本開示の別のSARS-CoV-2結合ドメインと組み合わせて、またはSARS-CoV-2に特異的に結合する異なる結合ドメイン(例えば、同じまたは異なるエピトープ)と組み合わせて、または異なる抗原に結合する結合ドメインとともに、含み得る。
【0090】
ここに開示される実施形態のいずれかでは、抗体または抗原結合断片は、多特異性、例えば、二特異性、三特異性などであり得る。
【0091】
ある特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、(i)第1のVHおよび第1のVL;ならびに(ii)第2のVHおよび第2のVLを含み、第1のVHおよび第2のVHが、異なっており、それぞれ独立して、配列番号5、21、37、53、69、85、101、117、133、149、165、181、197、213、229、245、261、277、293、309、325、341、357、374、377、396、または415のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%(すなわち、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の同一性を有するアミノ酸配列を含み、第1のVLおよび第2のVLが、異なっており、それぞれ独立して、配列番号13、29、45、61、77、93、109、125、141、157、173、189、205、221、237、253、269、285、301、317、333、349、365、380、383、385、388、392、393、400、402、404、および406~414のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%(すなわち、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の同一性を有するアミノ酸配列を含み、ここで、第1のVHおよび第1のVLが、第1の抗原結合部位を一緒に形成し、第2のVHおよび第2のVLが、第2の抗原結合部位を一緒に形成する。
【0092】
特定の実施形態では、(i)第1のVHは、配列番号21、37、374、377、396、および415のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなり、第1のVLは、配列番号29、45、380、383、385、388、392、393、400、402、404、および406~414のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなり;(ii)第2のVHは、配列番号69に記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなり、第2のVLは、配列番号77に記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなる。
【0093】
ある特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、Fcポリペプチドまたはその断片を含む。「Fc」断片またはFcポリペプチドは、ジスルフィドによって一緒に保持された両方の抗体のH鎖のカルボキシ末端部分(すなわち、IgGのCH2およびCH3ドメイン)を含む。抗体の「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(ネイティブ配列のFc領域またはアミノ酸配列バリアントのFc領域)に起因するそれらの生物活性を指し、抗体アイソタイプにより変わる。抗体のエフェクター機能の例としては、C1q結合および補体依存性細胞傷害;Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性傷害(ADCC);ファゴサイトーシス;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方調節;ならびにB細胞活性化が挙げられる。本明細書で議論されるように、Fc含有ポリペプチド(例えば、本開示の抗体)の1つまたは複数の機能性を改変する(例えば、改善する、低減する、または取り除く)ために、改変(例えば、アミノ酸置換)がFcドメインに行われてもよい。そのような機能としては、例えば、Fc受容体(FcR)結合、抗体の半減期のモジュレーション(例えば、FcRnへの結合による)、ADCC機能、プロテインA結合、プロテインG結合、および補体結合が挙げられる。Fc機能性を改変する(例えば、改善する、低減する、または取り除く)アミノ酸改変としては、例えば、T250Q/M428L、M252Y/S254T/T256E、H433K/N434F、M428L/N434S、E233P/L234V/L235A/G236+A327G/A330S/P331S、E333A、S239D/A330L/I332E、P257I/Q311、K326W/E333S、S239D/I332E/G236A、N297Q、K322A、S228P、L235E+E318A/K320A/K322A、L234A/L235A(本明細書で「LALA」とも称される)、およびL234A/L235A/P329G変異が挙げられ、この変異は、InvivoGen (2011)によって公開され、invivogen.com/PDF/review/review-Engineered-Fc-Regions-invivogen.pdf?utm_source=review&utm_medium=pdf&utm_campaign=review&utm_content=Engineered-Fc-Regionsにおいてオンラインで利用可能な”Engineered Fc Regions”に概説および注釈付けされており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0094】
例えば、補体カスケードを活性化するために、C1qタンパク質複合体は、免疫グロブリン分子(複数可)が抗原標的に結合する場合、少なくとも2分子のIgG1または1分子のIgMに結合することができる(Ward, E. S., and Ghetie, V., Ther. Immunol. 2 (1995) 77-94)。Burton,D.R.は、アミノ酸残基318~337を含む重鎖領域が補体固定に関与することを記載した(Mol. Immunol. 22 (1985) 161-206)。Duncan, A. R., and Winter, G. (Nature 332 (1988) 738-740)は、部位特異的変異誘発を使用して、Glu318、Lys320、およびLys322がC1qに対する結合部位を形成することを報告した。C1qの結合におけるGlu318、Lys320、およびLys322残基の役割は、これら残基を含有する短い合成ペプチドの補体媒介性溶解を阻害する能力によって確認された。
【0095】
例えば、FcR結合は、(抗体の)Fc部分と、造血細胞を含む細胞上の特殊な細胞表面受容体であるFc受容体(FcR)との相互作用によって媒介され得る。Fc受容体は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、免疫複合体のファゴサイトーシスによる抗体被覆病原体の除去、および抗体依存性細胞媒介性傷害(ADCC;Van de Winkel, J. G., and Anderson, C. L., J. Leukoc. Biol. 49 (1991) 511-524)を介した、対応する抗体で被覆された赤血球およびさまざまな他の細胞標的(例えば、腫瘍細胞)の溶解の両方を媒介することを示した。FcRは、免疫グロブリンクラスに対するそれらの特異性によって定義され、IgG抗体に対するFc受容体はFcγRと称され、IgEに対するFc受容体はFcεRと称され、IgAに対するFc受容体はFcαRなどと称され、新生児のFc受容体はFcRnと称される。Fc受容体結合は、例えば、Ravetch, J. V., and Kinet, J. P., Annu. Rev. Immunol. 9 (1991) 457-492;Capel, P. J., et al., Immunomethods 4 (1994) 25-34;de Haas, M., et al., J Lab. Clin. Med. 126 (1995) 330-341;およびGessner, J. E., et al., Ann. Hematol. 76 (1998) 231-248に記載されている。
【0096】
ネイティブIgG抗体のFcドメイン(FcγR)による受容体の架橋は、ファゴサイトーシス、抗体依存性細胞傷害、および炎症性メディエーターの放出、ならびに免疫複合体のクリアランス、および抗体産生の調節を含む多種多様なエフェクター機能を引き起こす。受容体の架橋を提供するFc部分(例えば、FcγR)が本明細書で企図される。ヒトでは、これまでに、FcγRの3つのクラスが特徴付けられており、以下である:(i)FcγRI(CD64)、これは、単量体IgGに高い親和性で結合し、マクロファージ、単球、好中球、および好酸球上で発現される;(ii)FcγRII(CD32)、これは、中から低い親和性で複合体化IgGに結合し、特に、白血球上で広く発現され、抗体媒介性免疫の中心的なプレーヤーであると考えられ、これは、FcγRIIA、FcγRIIB、およびFcγRIICに分けることができ、これらは、免疫系において異なる機能を行うが、IgG-Fcに対する類似の低い親和性で結合し、これらの受容体の細胞外ドメインは高度に相同である;ならびに(iii)FcγRIII(CD16)、これは、中から低い親和性でIgGに結合し、2つの形態で見出されている:FcγRIIIA、これは、NK細胞、マクロファージ、好酸球、ならびに一部の単球およびT細胞において見出されており、ADCCを媒介すると考えられる;ならびにFcγRIIIB、これは、好中球において高度に発現される。
【0097】
FcγRIIAは、殺傷に関与する多くの細胞(例えば、マクロファージ、単球、好中球)において見出され、殺傷プロセスを活性化することができるようである。FcγRIIBは、阻害プロセスにおいて役割を果たすようであり、B細胞、マクロファージ、ならびに、肥満細胞および好酸球において見出される。重要なことには、全FcγRIIBの75%が肝臓中で見出されることが示されている(Ganesan, L. P. et al., 2012: ”FcγRIIb on liver sinusoidal endothelium clears small immune complexes,” Journal of Immunology 189: 4981-4988)。FcγRIIBは、LSECと呼ばれる肝臓の類洞内皮、および肝臓におけるクッパー細胞において多量に発現され、LSECは、小さな免疫複合体のクリアランスの主要部位である(Ganesan, L. P. et al., 2012: FcγRIIb on liver sinusoidal endothelium clears small immune complexes. Journal of Immunology 189: 4981-4988)。
【0098】
一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体およびその抗原結合断片は、FcγRIIbへの結合のためのFcポリペプチドまたはその断片、特に、例えばIgG型抗体などのFc領域を含む。また、Chu, S. Y. et al., 2008: Inhibition of B cell receptor-mediated activation of primary human B cells by coengagement of CD19 and FcgammaRIIb with Fc-engineered antibodies. Molecular Immunology 45, 3926-3933に記載されるように、変異S267EおよびL328Fを導入することによって、FcγRIIB結合を増強するためにFc部分を操作することが可能である。それによって、免疫複合体のクリアランスを増強することができる(Chu, S., et al., 2014: Accelerated Clearance of IgE In Chimpanzees Is Mediated By Xmab7195, An Fc-Engineered Antibody With Enhanced Affinity For Inhibitory Receptor FcγRIIb. Am J Respir Crit, American Thoracic Society International Conference Abstracts)。一部の実施形態では、本開示の抗体またはその抗原結合断片は、特に、Chu, S. Y. et al., 2008: Inhibition of B cell receptor-mediated activation of primary human B cells by coengagement of CD19 and FcgammaRIIb with Fc-engineered antibodies. Molecular Immunology 45, 3926-3933によって記載されるように、変異S267EおよびL328Fを有する操作されたFc部分を含む。
【0099】
B細胞において、FcγRIIBは、さらなる免疫グロブリン産生、および例えば、IgEクラスへのアイソタイプスイッチングを抑制するように機能し得る。マクロファージにおいて、FcγRIIBは、FcγRIIAを通して媒介されるファゴサイトーシスを阻害すると考えられる。好酸球および肥満細胞において、B形態は、IgEのその別々の受容体への結合を通して、これら細胞の活性化を抑制するのに役立ち得る。
【0100】
FcγRI結合に関して、ネイティブIgGのE233~G236、P238、D265、N297、A327、およびP329の少なくとも1つの改変は、FcγRIへの結合を低減する。233~236位のIgG2残基は、対応するIgG1およびIgG4の位置に置換され、IgG1およびIgG4のFcγRIへの結合を10倍低減し、抗体感作赤血球に対するヒト単球の応答を排除した(Armour, K. L., et al. Eur. J. Immunol. 29 (1999) 2613-2624)。
【0101】
FcγRII結合に関して、例えば、E233~G236、P238、D265、N297、A327、P329、D270、Q295、A327、R292、およびK414の少なくとも1つのIgG変異について、FcγRIIAに対する結合の低減が見出される。
【0102】
ヒトFcγRIIAの2つの対立形質は、高親和性でIgG1 Fcに結合する「H131」バリアント、および低親和性でIgG1 Fcに結合する「R131」バリアントである。例えば、Bruhns et al., Blood 113:3716-3725 (2009)を参照されたい。
【0103】
FcγRIII結合に関して、例えば、E233~G236、P238、D265、N297、A327、P329、D270、Q295、A327、S239、E269、E293、Y296、V303、A327、K338、およびD376の少なくとも1つの変異について、FcγRIIIAに対する結合の低減が見出される。Fc受容体についてのヒトIgG1上の結合部位のマッピング、上記で言及された変異部位、ならびにFcγRIおよびFcγRIIAへの結合を測定するための方法は、Shields, R. L., et al., J. Biol. Chem. 276 (2001) 6591-6604に記載されている。
【0104】
ヒトFcγRIIIAの2つの対立形質は、低親和性でIgG1 Fcに結合する「F158」バリアント、および高親和性でIgG1 Fcに結合する「V158」バリアントである。例えば、Bruhns et al., Blood 113:3716-3725 (2009)を参照されたい。
【0105】
FcγRIIへの結合に関して、ネイティブIgG Fcの2つ領域、すなわち、(i)IgG Fcの下部ヒンジ部位、特に、アミノ酸残基L、L、G、G(234~237、EU番号付け)、ならびに(ii)IgG FcのCH2ドメインの隣接領域、特に、例えば、P331の領域における、下部ヒンジ領域に隣接する上部CH2ドメインにおけるループおよび鎖が、FcγRIIおよびIgGの間の相互作用に関与すると思われる(Wines, B.D., et al., J. Immunol. 2000; 164: 5313 - 5318)。また、FcγRIは、IgG Fc上の同じ部位に結合すると思われるが、FcRnおよびプロテインAは、CH2-CH3境界面であるように見えるIgG Fc上の異なる位置に結合する(Wines, B.D., et al., J. Immunol. 2000; 164: 5313 - 5318)。
【0106】
本開示のFcポリペプチドまたはその断片の(すなわち、1つまたは複数の)Fcγ受容体への結合親和性を増加させる(例えば、参照Fcポリペプチドまたはその断片、または変異(複数可)を含まないそれを含有するものと比較して)変異も企図される。例えば、Delillo and Ravetch, Cell 161(5):1035-1045 (2015)およびAhmed et al., J. Struc. Biol. 194(1):78 (2016)を参照されたく、このFc変異および技法は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0107】
本明細書に開示される実施形態のいずれかでは、抗体または抗原結合断片は、G236A;S239D;A330L;およびI332E;またはそのいずれか2つもしくはそれより多くを含む組合せ;例えば、S239D/I332E;S239D/A330L/I332E;G236A/S239D/I332E;G236A/A330L/I332E(本明細書では「GAALIE」とも称される);もしくはG236A/S239D/A330L/I332Eから選択される変異を含むFcポリペプチドまたはその断片を含むことができる。一部の実施形態では、Fcポリペプチドまたはその断片は、S239Dを含まない。一部の実施形態では、Fcポリペプチドまたは断片は、239位にSerを含む(EU番号付け)。
【0108】
ある特定の実施形態では、Fcポリペプチドまたはその断片は、FcRn結合への結合に関与するFcポリペプチドまたはその断片の少なくとも一部を含み得るか、またはこれからなり得る。ある特定の実施形態では、Fcポリペプチドまたはその断片は、FcRn(例えば、約6.0のpHで)に対する結合親和性を改善する(例えば、結合を増強する)1つまたは複数のアミノ酸改変を含み、一部の実施形態では、それによって、Fcポリペプチドまたはその断片を含む分子のin vivo半減期が延長される(例えば、参照Fcポリペプチドまたはその断片、または別段同じであるが改変(複数可)を含まない抗体と比較して)。ある特定の実施形態では、Fcポリペプチドまたはその断片は、IgG Fcを含むか、またはこれに由来し、半減期を延長する変異は、M428L;N434S;N434H;N434A;N434S;M252Y;S254T;T256E;T250Q;P257I;Q311I;D376V;T307A;E380A(EU番号付け)のいずれか1つまたは複数を含む。ある特定の実施形態では、半減期を延長する変異は、M428L/N434S(本明細書では「MLNS」とも称される)を含む。ある特定の実施形態では、半減期を延長する変異は、M252Y/S254T/T256Eを含む。ある特定の実施形態では、半減期を延長する変異は、T250Q/M428Lを含む。ある特定の実施形態では、半減期を延長する変異は、P257I/Q311Iを含む。ある特定の実施形態では、半減期を延長する変異は、P257I/N434Hを含む。ある特定の実施形態では、半減期を延長する変異は、D376V/N434Hを含む。ある特定の実施形態では、半減期を延長する変異は、T307A/E380A/N434Aを含む。
【0109】
一部の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、置換変異M428L/N434Sを含むFc部分を含む。一部の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、置換変異G236A/A330L/I332Eを含むFcポリペプチドまたはその断片を含む。ある特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、G236A変異、A330L変異、およびI332E変異(GAALIE)を含み、S239D変異を含まない(例えば、239位にネイティブSを含む)、(例えば、IgG)Fc部分を含む。特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、置換変異:M428L/N434SおよびG236A/A330L/I332Eを含み、必要に応じてS239Dを含まない(例えば、239位にSerを含む)、Fcポリペプチドまたはその断片を含む。ある特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、置換変異:M428L/N434SおよびG236A/S239D/A330L/I332Eを含み、必要に応じて任意のさらなる他の置換変異を含む、Fcポリペプチドまたはその断片を含む。
【0110】
ある特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、グリコシル化を変更する変異を含み、ここで、グリコシル化を変更する変異は、N297A、N297Q、またはN297Gを含み、かつ/または抗体または抗原結合断片は、部分的にもしくは完全にアグリコシル化されており、かつ/または部分的にもしくは完全にアフコシル化されている。宿主細胞系、および部分的にもしくは完全にアグリコシル化されたか、または部分的にもしくは完全にアフコシル化された抗体および抗原結合断片を作製する方法は公知である(例えば、PCT公開番号WO2016/181357号;Suzuki et al. Clin. Cancer Res. 13(6):1875-82 (2007);Huang et al. MAbs 6:1-12 (2018)を参照されたい)。
【0111】
ある特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、検出可能なレベルの抗体または抗原結合断片が対象において見出すことができない場合であっても(すなわち、抗体または抗原結合断片が、投与後に対象から除去されている場合)、対象において、in vivoでの継続的な保護を誘発できる。そのような保護は、本明細書ではワクチン効果と称される。理論に縛られることを望まないが、樹状細胞が、抗体および抗原の複合体を内部移行することができ、その後、抗原に対する内因性の免疫応答を誘導またはこれに寄与することができると考えられる。ある特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、例えば、G236A、A330L、およびI332Eを含むFc中の変異などの1つまたは複数の改変を含み、これは、抗原に対して、例えばT細胞免疫を誘導し得る樹状細胞を活性化できる。
【0112】
ここに開示される実施形態のいずれかでは、抗体または抗原結合断片は、CH2(またはその断片)、CH3(またはその断片)、またはCH2およびCH3を含むFcポリペプチドまたはその断片を含み、ここで、CH2、CH3、またはその両方は、任意のアイソタイプのものであり得、それぞれ、対応する野生型CH2またはCH3と比較して、アミノ酸置換または他の改変を含有していてもよい。ある特定の実施形態では、本開示のFcポリペプチドは、会合して二量体を形成する2つのCH2-CH3ポリペプチドを含む。
【0113】
ここに開示される実施形態のいずれかでは、抗体または抗原結合断片は、モノクローナルであり得る。「モノクローナル抗体」(mAb)という用語は、本明細書で使用される場合、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、一部の場合では、微量で存在し得る可能な天然に存在する変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、非常に特異的であり、単一の抗原部位に向けられている。さらにまた、異なるエピトープに向けられた異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原の単一のエピトープに向けられる。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、それらが、他の抗体によって汚染されずに合成され得るという点で有利である。「モノクローナル」という用語は、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするとして解釈されるべきではない。例えば、本発明において有用なモノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature 256:495 (1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ方法論によって調製されてもよく、または細菌細胞、真核細胞、動物細胞、または植物細胞において組換えDNA法を使用して作製されてもよい(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)。モノクローナル抗体はまた、例えば、Clackson et al., Nature, 352:624-628 (1991)およびMarks et al., J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)に記載されている技法を使用して、ファージ抗体ライブラリーから単離されてもよい。モノクローナル抗体はまた、PCT公開番号WO2004/076677A2号に開示される方法を使用して得てもよい。
【0114】
本開示の抗体および抗原結合断片は、「キメラ抗体」を含み、ここで、重鎖および/または軽鎖の一部は、特定の種に由来する抗体、または特定の抗体のクラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する1つまたは複数の配列と同一または相同であるが、鎖(複数可)の残部は、それらが所望の生物活性を示す限り、別の種に由来する抗体、または別の抗体のクラスもしくはサブクラスに属する抗体、ならびにそのような抗体の断片中の対応する配列と同一または相同である(米国特許第4,816,567号;同第5,530,101号および同第7,498,415号;ならびにMorrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984)を参照されたい)。例えば、キメラ抗体は、ヒトおよび非ヒト残基を含んでいてもよい。さらにまた、キメラ抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体において見出されない残基を含んでいてもよい。これらの改変は、抗体の性能をさらに改良するために行われる。さらなる詳細について、Jones et al., Nature 321:522-525 (1986);Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988);およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照されたい。キメラ抗体は、霊長類化抗体およびヒト化抗体も含む。
【0115】
「ヒト化抗体」は、一般に、非ヒトである起源からヒト抗体に導入された1つまたは複数のアミノ酸残基を有するヒト抗体であると考えられる。これらの非ヒトアミノ酸残基は、典型的には、可変ドメインから取得される。ヒト化は、例えば、Winterおよび共同研究者(Jones et al., Nature, 321:522-525 (1986);Reichmann et al., Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyen et al., Science, 239:1534-1536 (1988))の方法に従って、非ヒト可変配列でヒト抗体の対応する配列を置換することによって行われてもよい。したがって、そのような「ヒト化」抗体は、キメラ抗体であり(例えば、米国特許第4,816,567号;同第5,530,101号および同第7,498,415号)、ここで、無傷ヒト可変ドメインよりも実質的に少ない配列が、非ヒト種由来の対応する配列によって置換されている。一部の例では、「ヒト化」抗体は、非ヒト細胞または動物によって産生され、ヒト配列、例えば、Hcドメインを含むものである。
【0116】
「ヒト抗体」は、ヒトによって産生される抗体中に存在する配列のみを含有する抗体である。しかしながら、本明細書で使用される場合、ヒト抗体は、本明細書に記載される改変およびバリアント配列を含む天然に存在するヒト抗体(例えば、ヒトから単離されている抗体)中で見出されない残基または改変を含んでいてもよい。これらは、抗体の性能をさらに改良または増強するために行われ得る。一部の例では、ヒト抗体は、トランスジェニック動物によって産生される。例えば、米国特許第5,770,429号;同第6,596,541号および同第7,049,426号を参照されたい。
【0117】
ある特定の実施形態では、本開示の抗体または抗原結合断片は、キメラ、ヒト化、またはヒトである。
ポリヌクレオチド、ベクター、および宿主細胞
【0118】
別の態様では、本開示は、ここに開示される抗体もしくはその抗原結合断片、またはその一部(例えば、CDR、VH、VL、重鎖または軽鎖)のいずれかをコードする、単離されたポリヌクレオチドを提供する。ある特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、宿主細胞における発現のためにコドン最適化される。コード配列が公知であるか、または同定されると、公知の技法およびツールを使用して、例えば、GenScript(登録商標)OptimiumGene(商標)ツールを使用して、コドン最適化を行うことができる;Scholten et al., Clin. Immunol. 119:135, 2006も参照されたい。コドン最適化配列は、部分的にコドン最適化されている(すなわち、1つまたは複数のコドンが宿主細胞における発現のために最適化されている)配列、および完全にコドン最適化されている配列を含む。
【0119】
本開示の抗体および抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドは、異なるヌクレオチド配列を有し得るが、同じ抗体または抗原結合断片を、例えば、遺伝コードの縮重、スプライシングなどに起因して、さらにコードし得ることも認識される。
【0120】
ある特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号1~4、9~12、17~20、25~28、33~36、41~44、49~52、57~60、65~68、73~76、81~84、89~92、97~100、105~108、113~116、121~124、129~132、137~140、145~148、153~156、161~164、169~172、177~180、185~188、193~196、201~204、209~212、217~220、225~228、233~236、241~244、249~252、257~260、265~268、273~276、281~284、289~292、297~300、305~308、313~316、321~324、329~332、337~340、345~348、353~356、361~364、372、373、376、379、381、384、387、389、および417のいずれか1つまたは複数に記載のポリヌクレオチド配列に対して少なくとも50%(すなわち、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の同一性を有するポリヌクレオチドを含む。
【0121】
ここに開示される実施形態のいずれかでは、ポリヌクレオチドは、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)を含み得る。一部の実施形態では、RNAは、メッセンジャーRNA(mRNA)を含む。
【0122】
本明細書に開示されるポリヌクレオチド(例えば、SARS-CoV-2に結合する抗体または抗原結合断片をコードするポリヌクレオチド)を含むか、またはそれを含有するベクターも、提供される。ベクターは、本明細書に開示されるベクターのいずれか1つまたは複数を含み得る。特定の実施形態では、抗体もしくは抗原結合断片またはその一部をコードするDNAプラスミド構築物(例えば、いわゆる「DMAb」;例えば、Muthumani et al., J Infect Dis. 214(3):369-378 (2016);Muthumani et al., Hum Vaccin Immunother 9:2253-2262 (2013));Flingai et al., Sci Rep. 5:12616 (2015);およびElliott et al., NPJ Vaccines 18 (2017)を参照されたく、これらの抗体コードDNA構築物および関連使用方法は、その投与を含めて、参照により本明細書に組み込まれる)を含むベクターが、提供される。ある特定の実施形態では、DNAプラスミド構築物は、抗体または抗原結合断片の重鎖および軽鎖(またはVHおよびVL)をコードする単一のオープンリーディングフレームであって、重鎖をコードする配列と軽鎖をコードする配列が、必要に応じて、プロテアーゼ切断部位をコードするポリヌクレオチドによって、および/または自己切断性ペプチドをコードするポリヌクレオチドによって、分離されている、オープンリーディングフレームを含む。一部の実施形態では、抗体または抗原結合断片の置換基構成成分は、単一のプラスミドに含まれているポリヌクレオチドによってコードされる。他の実施形態では、抗体または抗原結合断片の置換基構成成分は、2つまたはそれより多くのプラスミドに含まれているポリヌクレオチドによってコードされる(例えば、第1のプラスミドは、重鎖、VH、またはVH+CHをコードするポリヌクレオチドを含み、第2のプラスミドは、同族の軽鎖、VL、またはVL+CLをコードするポリヌクレオチドを含む)。ある特定の実施形態では、単一のプラスミドは、本開示の2つまたはそれより多くの抗体または抗原結合断片からの重鎖および/または軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含む。例示的な発現ベクターは、Invitrogen(登録商標)から入手可能なpVax1である。本開示のDNAプラスミドを、対象に、例えば、電気穿孔(例えば、筋肉内電気穿孔)によって、または適切な製剤(例えば、ヒアルロニダーゼ)を用いて、送達することができる。
【0123】
さらなる態様では、本開示は、本開示による抗体もしくは抗原結合断片を発現する宿主細胞、または本開示によるベクターもしくはポリヌクレオチドを含むか、もしくは含有する宿主細胞も提供する。
【0124】
そのような細胞の例としては、限定されるものではないが、真核細胞、例えば、酵母細胞、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞;およびE.coliを含む原核細胞が挙げられる。一部の実施形態では、細胞は、哺乳動物細胞である。ある特定のそのような実施形態では、細胞は、哺乳動物細胞系、例えば、CHO細胞(例えば、DHFR-CHO細胞(Urlaub et al., PNAS 77:4216 (1980))、ヒト胎児腎細胞(例えば、HEK293T細胞)、PER.C6細胞、Y0細胞、Sp2/0細胞、NS0細胞、ヒト肝細胞、例えばHepa RG細胞、骨髄腫細胞、またはハイブリドーマ細胞である。哺乳動物宿主細胞系の他の例としては、マウスセルトリ細胞(例えば、TM4細胞);SV40により形質転換されたサル腎CV1系(COS-7);ベビーハムスター腎細胞(BHK);アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76);サル腎細胞(CV1);ヒト子宮頸癌細胞(HELA);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝細胞(Hep G2);イヌ腎細胞(MDCK);バッファローラット肝細胞(BRL 3A);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562);TRI細胞;MRC 5細胞;およびFS4細胞が挙げられる。抗体産生に好適な哺乳動物宿主細胞系は、例えば、Yazaki and Wu, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B. K. C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, N.J.), pp. 255-268 (2003)に記載されているものも含む。
【0125】
ある特定の実施形態では、宿主細胞は、E.coliなどの原核細胞である。E.coliなどの原核細胞におけるペプチドの発現は、十分に確証されている(例えば、Plueckthun, A. Bio/Technology 9:545-551 (1991)を参照されたい)。例えば、特に、グリコシル化およびFcエフェクター機能が必要とされない場合、抗体を細菌において産生させることができる。細菌における抗体断片およびポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5,648,237号;同第5,789,199号;および同第5,840,523号を参照されたい。
【0126】
特定の実施形態では、発現ベクターに関する本説明に従って、細胞にベクターをトランスフェクトすることができる。「トランスフェクション」という用語は、核酸分子、例えば、DNAまたはRNA(例えば、mRNA)分子の、細胞への、例えば、真核細胞への導入を指す。本説明の文脈では、「トランスフェクション」という用語は、核酸分子の細胞への導入、例えば、哺乳動物細胞への導入を含む真核細胞への導入のための、当業者に公知の任意の方法を包含する。そのような方法は、例えば、電気穿孔、リポフェクション、例えばカチオン性脂質および/もしくはリポソームに基づくリポフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ナノ粒子に基づくトランスフェクション、ウイルスに基づくトランスフェクション、またはカチオン性ポリマー、例えばDEAE-デキストランもしくはポリエチレンイミンに基づくトランスフェクションなどを包含する。ある特定の実施形態では、導入は、非ウイルス性である。
【0127】
また、本開示の宿主細胞に、本開示によるベクターを、例えば、本開示による抗体またはその抗原結合断片の発現のために、安定にまたは一過性にトランスフェクトすることができる。そのような実施形態では、細胞に、本明細書に記載されるベクターを安定にトランスフェクトすることができる。あるいは、細胞に、本明細書に開示される抗体または抗原結合断片をコードする本開示によるベクターを一過性にトランスフェクトすることができる。ここに開示される実施形態のいずれかでは、ポリヌクレオチドは、宿主細胞に対して異種であり得る。
【0128】
したがって、本開示は、本開示の抗体または抗原結合断片を異種発現する組換え宿主細胞も提供する。例えば、細胞は、抗体を完全にまたは部分的に得た種とは異なる種の細胞(例えば、ヒト抗体または操作されたヒト抗体を発現するCHO細胞)であり得る。一部の実施形態では、宿主細胞の細胞型は、抗体または抗原結合断片を天然で発現しない。また、宿主細胞は、ネイティブ状態の抗体または抗原結合断片に(または抗体もしくは抗原結合断片が親抗体から操作されたもしくはそれに由来する該親抗体のネイティブ状態に)存在しない翻訳後修飾(PTM;例えば、グリコシル化もしくはフコシル化、またはグリコシル化もしくはフコシル化の低減)を抗体または抗原結合断片に付与し得る。そのようなPTMは、機能差(例えば、免疫原性の低下)を生じさせ得る。したがって、本明細書に開示される宿主細胞により産生される本開示の抗体または抗原結合断片は、そのネイティブ状態の抗体(または親抗体)とは明確に異なる1つまたは複数の翻訳後修飾を含み得る(例えば、CHO細胞によって産生されるヒト抗体は、ヒトから単離されたか、および/またはネイティブヒトB細胞もしくは形質細胞によって産生された場合の抗体とは明確に異なる、1つまたは複数の翻訳後修飾を含むことができる)。
【0129】
本開示の抗体または抗原結合断片の発現に有用な昆虫細胞は、当技術分野において公知であり、例えば、Spodoptera frugipera Sf9細胞、Trichoplusia ni BTI-TN5B1-4細胞、およびSpodoptera frugipera SfSWT01「Mimic(商標)」細胞が挙げられる。例えば、Palmberger et al., J. Biotechnol. 153(3-4):160-166 (2011)を参照されたい。非常に多くのバキュロウイルス株が同定されており、それらは、特に、Spodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために、昆虫細胞と併用され得る。
【0130】
糸状菌または酵母などの真核微生物も、タンパク質コードベクターのクローニングまたは発現に好適な宿主であり、部分的にまたは完全にヒトのグリコシル化パターンを有する抗体の産生をもたらす「ヒト化」グリコシル化経路を有する真菌株および酵母株が挙げられる。Gerngross, Nat. Biotech.22:1409-1414 (2004);Li et al., Nat. Biotech. 24:210-215 (2006)を参照されたい。
【0131】
植物細胞も、本開示の抗体または抗原結合断片の発現のための宿主として利用することができる。例えば、PLANTIBODIES(商標)技術(例えば、米国特許第5,959,177号;同第6,040,498号;同第6,420,548号;同第7,125,978号;および同第6,417,429号に記載されている)は、トランスジェニック植物を利用して抗体を産生する。
【0132】
ある特定の実施形態では、宿主細胞は、哺乳動物細胞を含む。特定の実施形態では、宿主細胞は、CHO細胞、HEK293細胞、PER.C6細胞、Y0細胞、Sp2/0細胞、NS0細胞、ヒト肝細胞、骨髄腫細胞、またはハイブリドーマ細胞である。
【0133】
関連態様では、本開示は、抗体または抗原結合断片を産生するための方法であって、本開示の宿主細胞を、抗体または抗原結合断片が産生されるのに十分な条件下で、十分な時間にわたって培養することを含む、方法を提供する。組換えで産生された抗体を単離および精製するために有用な方法は、例として、組換え抗体を培養培地に分泌する好適な宿主細胞/ベクター系から上清を得ること、および次いで、市販のフィルターを使用して培地を濃縮することを含み得る。濃縮後、濃縮物を、単一の好適な精製マトリックスに、または一連の好適なマトリックス、例えば、親和性マトリックスもしくはイオン交換樹脂に適用することができる。1つまたは複数の逆相HPLCステップを利用して、組換えポリペプチドをさらに精製することができる。これらの精製方法を、免疫原をその天然環境から単離する場合に利用することもできる。本明細書に記載される単離された/組換え抗体または抗原結合断片の1つまたは複数についての大規模産生のための方法は、適切な培養条件を維持するためにモニターおよび制御される、バッチ細胞培養を含む。可溶性抗体の精製は、本明細書に記載される方法および当技術分野において公知の方法であって、自国および外国の規制機関の法律およびガイドラインに適合する方法に従って、行うことができる。
組成物
【0134】
ここに開示される抗体、抗原結合断片、ポリヌクレオチド、ベクターまたは宿主細胞のいずれか1つまたは複数を単独でまたは任意の組合せで含む組成物であって、薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤をさらに含み得る組成物も、本明細書に提供される。担体、賦形剤および希釈剤は、本明細書でさらに詳細に議論される。
【0135】
ある特定の実施形態では、組成物は、本開示による2つまたはそれより多くの異なる抗体または抗原結合断片を含む。一部の実施形態では、第1の抗体または抗原結合断片および第2の抗体または抗原結合断片を含み、(i)第1の抗体または抗原結合断片は、配列番号21、37、374、377、396、および415のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなるVHと、配列番号29、45、380、383、385、388、392、393、400、402、404、および406~414のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなるVLとを含み;(ii)第2の抗体または抗原結合断片は、配列番号69に記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなるVHと、配列番号77に記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなるVLとを含む。
【0136】
ある特定の実施形態では、組成物は、第1のプラスミドを含む第1のベクター、および第2のプラスミドを含む第2のベクターを含み、第1のプラスミドは、重鎖、VH、またはVH+CHをコードするポリヌクレオチドを含み、第2のプラスミドは、抗体またはその抗原結合断片の同族の軽鎖、VL、またはVL+CLをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0137】
ある特定の実施形態では、組成物は、好適な送達ビヒクルまたは担体に結合させたポリヌクレオチド(例えば、mRNA)を含む。ヒト対象への投与のための例示的なビヒクルまたは担体としては、脂質または脂質由来の送達ビヒクル、例えば、リポソーム、固体脂質ナノ粒子、油性懸濁液、サブミクロン脂質エマルジョン、脂質マイクロバブル、逆脂質ミセル、渦巻型リポソーム(cochlear liposome)、脂質微小管、脂質マイクロシリンダー、または脂質ナノ粒子(LNP)もしくはナノスケールプラットフォーム(例えば、Li et al. Wilery Interdiscip Rev. Nanomed Nanobiotechnol. 11(2):e1530 (2019)を参照されたい)が挙げられる。適切なmRNAを設計するための、およびmRNA-LNPを製剤化するための、およびそれを送達するための、原理、試薬および技法は、例えば、Pardi et al. (J Control Release 217345-351 (2015));Thess et al. (Mol Ther 23: 1456-1464 (2015));Thran et al. (EMBO Mol Med 9(10):1434-1448 (2017);Kose et al. (Sci. Immunol. 4 eaaw6647 (2019);およびSabnis et al. (Mol. Ther. 26:1509-1519 (2018))に記載されており、mRNAのキャッピング、コドン最適化、ヌクレオシド改変、精製、mRNAの安定した脂質ナノ粒子(例えば、イオン化可能なカチオン性脂質/ホスファチジルコリン/コレステロール/PEG-脂質;イオン化可能な脂質:ジステアロイルPC:コレステロール:ポリエチレングリコール脂質)への組込み、ならびにそれらの皮下、筋肉内、皮内、静脈内、腹腔内および気管内投与を含む、これらの技法は、参照により本明細書に組み込まれる。
方法および使用
【0138】
サルベコウイルスおよび/またはSARS-CoV-2感染(例えば、ヒト対象における、またはヒト対象から得られた試料における)の診断に本開示の抗体もしくは抗原結合断片、核酸、ベクター、細胞、または組成物を使用するための方法も、本明細書に提供される。
【0139】
診断(例えば、in vitro、ex vivo)の方法は、抗体、抗体断片(例えば、抗原結合断片)と試料を接触させることを含み得る。そのような試料は、対象から単離することができ、例えば、そのような試料は、例えば、鼻腔、副鼻腔、唾液腺、肺、肝臓、膵臓、腎臓、耳、眼、胎盤、消化管、心臓、卵巣、下垂体、副腎、甲状腺、脳、皮膚または血液から採取された、単離された組織試料であり得る。診断の方法は、特に、抗体または抗体断片と試料の接触後の、抗原/抗体複合体の検出も含み得る。そのような検出ステップは、ベンチで、すなわち、人体または動物体と一切接触することなく、行うことができる。検出方法の例は、当業者に周知であり、例えば、直接的、間接的およびサンドイッチELISAを含むELISA(酵素結合免疫吸着検定法)が挙げられる。
【0140】
本開示の抗体もしくは抗原結合断片、またはそれを含む組成物を使用して対象を処置する方法であって、対象がSARS-CoV-2に感染しているか、感染していると考えられるか、または感染するリスクがある、方法も本明細書に提供される。「処置する」、「処置」、または「回復させる」は、対象(例えば、ヒトまたは非ヒト哺乳動物、例えば、霊長類、ウマ、ネコ、イヌ、ヤギ、マウス、もしくはラット)の疾患、障害または状態の医学的管理を指す。一般に、本開示の抗体または組成物を含む適切な用量または処置レジメンは、治療的また予防的な利益を引き出すのに十分な量で投与される。治療的または予防的/予防上の利益は、臨床転帰の改善;疾患に関連する症状の軽減もしくは緩和;症状の発生の減少;生活の質の向上;より長い無病状態;疾患の範囲の縮小、病態の安定化;疾患進行の遅延もしくは防止;寛解;生存;生存期間の延長;またはこれらの任意の組合せを含む。ある特定の実施形態では、治療的または予防的/予防上の利益は、SARS-CoV-2感染の処置のための入院の低減または防止を含む(すなわち、統計的に有意な形で)。ある特定の実施形態では、治療的または予防的/予防上の利益は、SARS-CoV-2感染の処置のための入院期間の短縮を含む(すなわち、統計的に有意な形で)。ある特定の実施形態では、治療的または予防的/予防上の利益は、挿管、および/または人工呼吸器デバイスの使用などの、呼吸介入の必要性の低減または解消を含む。ある特定の実施形態では、治療的または予防的/予防上の利益は、後期疾患病状を好転させること、および/または死亡率を低下させることを含む。
【0141】
本開示の抗体、抗原結合断片、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞または組成物の「治療有効量」または「有効量」は、統計的に有意な形での、臨床転帰の改善;疾患に関連する症状の軽減もしくは緩和;症状の発生の減少;生活の質の向上;より長い無病状態;疾患の範囲の縮小、病態の安定化;疾患進行の遅延;寛解;生存;または生存期間の延長を含む、治療効果をもたらすのに十分な、組成物または分子の量を指す。単独で投与される個々の活性成分に言及する場合、治療有効量は、その成分の効果、または単独でその成分を発現する細胞の効果を指す。組合せに言及する場合、治療有効量は、連続的に、逐次的に、または同時に投与されるかどうかにかかわらず、治療効果をもたらす、活性成分の合わせた量、または活性成分を発現する細胞と合わせた補助活性成分の合わせた量を指す。組合せは、例えば、SARS-CoV-2抗原に特異的に結合する2つの異なる抗体を含み得、これは、ある特定の実施形態では、同じもしくは異なるSARS-CoV-2抗原であり得るか、および/または同じもしくは異なるエピトープを含み得る。
【0142】
したがって、ある特定の実施形態では、対象におけるSARS-CoV-2感染を処置するための方法であって、有効量の、本明細書に開示される抗体、抗原結合断片、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、もしくは組成物、またはその任意の組合せを対象に投与することを含む方法が、提供される。
【0143】
本開示により処置され得る対象は、一般に、ヒトおよび他の霊長類対象、例えば、獣医学目的のためのサルおよび類人猿である。マウスおよびラットなどの他のモデル生物体も、本開示に従って処置することができる。上述の実施形態のいずれかでは、対象は、ヒト対象であり得る。対象は、男性または女性であり得、任意の好適な年齢であり得、乳児、若年、青年、成人および老年の対象を含む。
【0144】
いくつかの基準が、SARS CoV-2感染に関連する重症症状または死亡の高いリスクの一因となると考えられる。これらとしては、限定されるものではないが、年齢、職業、一般的健康、既存の健康状態、および生活習慣が挙げられる。一部の実施形態では、本開示に従って処置される対象は、1つまたは複数のリスク因子を含む。
【0145】
ある特定の実施形態では、本開示に従って処置されるヒト対象は、乳児、小児、若年成人、中年成人、または高齢者である。ある特定の実施形態では、本開示に従って処置されるヒト対象は、1歳未満であるか、または1~5歳であるか、または5~125歳の間(例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、または125歳、それらのうちのまたはそれらの間のありとあらゆる年齢を含む)である。ある特定の実施形態では、本開示に従って処置されるヒト対象は、0~19歳、20~44歳、45~54歳、55~64歳、65~74歳、75~84歳、もしくは85歳、またはそれより高齢である。中年の、特に高齢の人は、特にリスクがあると考えられる。特定の実施形態では、ヒト対象は、45~54歳、55~64歳、65~74歳、75~84歳、もしくは85歳、またはそれより高齢である。一部の実施形態では、ヒト対象は、男性である。一部の実施形態では、ヒト対象は、女性である。
【0146】
ある特定の実施形態では、本開示に従って処置されるヒト対象は、ナーシングホームもしくは長期療養施設の入居者である;ホスピス介護福祉士である;医療提供者もしくは医療従事者である;ファーストレスポンダーである;SARS-CoV-2に感染していると診断されたもしくは感染している疑いがある対象の家族の一員もしくは他の濃厚接触者である;過体重もしくは医学的に肥満である;喫煙者である、または喫煙者であった;慢性閉塞性肺疾患(COPD)に罹患している、もしくは罹患したことがある;喘息である(例えば、中等度から重度の喘息に罹患している);自己免疫疾患もしくは状態(例えば、糖尿病)に罹患している;および/または免疫系に欠陥がある、もしくは免疫系が枯渇している(例えば、AIDS/HIV感染、がん、例えば血液がん、リンパ球除去療法、例えば化学療法、骨髄もしくは臓器移植、または遺伝性免疫状態に起因して);慢性肝疾患に罹患している;心血管疾患に罹患している;肺もしくは心臓に欠陥がある;例えば、工場、配送センター、病院などで、他人と極めて近接して仕事をする、もしくは別様に時間を過ごす。
【0147】
ある特定の実施形態では、本開示に従って処置される対象は、SARS-CoV-2のワクチンを受けたことがあるが、このワクチンは、例えば、対象におけるワクチン後の感染または症状によって、臨床診断、または科学的なもしくは規制基準により、効果がないと判定されたものである。
【0148】
ある特定の実施形態では、処置は、曝露前後の予防として投与される。ある特定の実施形態では、処置は、軽度から中等度の疾患に罹患している対象に投与され、これは外来の状況においてであり得る。例えば、軽度のCOVID-19に罹患しているヒト対象は、さまざまな徴候および症状、例えば、息切れ、呼吸困難または異常なイメージングなしの、発熱、咳、咽喉痛、不快感、頭痛、筋肉痛のいずれかを有する個体を含み得る。中等度のCOVID-19に罹患しているヒト対象は、臨床的評価またはイメージング、および海水位での室内の空気において93パーセント(%)より高い(>)酸素飽和度(SaO2)による下気道疾患の証拠を有する個体を含み得る。一部の実施形態では、対象は、COVID-19に罹るリスクがある。一部の実施形態では、対象は、COVID-19を有する、例えば、陽性のSARS-CoV-2ウイルス検査の結果を有する対象である。一部の実施形態では、ヒト対象は、重度のCOVID-19および/または入院に進行する高いリスクがある、例えば、ヒト対象は、(i)65歳またはそれよりも高齢(≧65歳)である;(ii)35またはそれよりも大きい(≧35)肥満度指数(BMI)を有する;(iii)慢性腎疾患を有する;(iv)糖尿病を有する;(v)免疫抑制疾患を有する;(vi)免疫抑制処置を受けている;(vii)55歳またはそれよりも高齢(≧55歳)であり、心臓血管疾患、高血圧、慢性閉塞性肺疾患、もしくは他の慢性呼吸器疾患を有する;または(viii)12~17歳であり、その年齢および性別に対して≧85%のBMIを有するか、または鎌状赤血球症、先天性もしくは後天性心疾患、神経発達障害(例えば、脳性麻痺)、医療関連技術の依存(例えば、気管開口術、胃瘻造設術、またはCOVID-19に関係しない陽圧換気法)、または制御のための毎日の薬物治療を必要とする喘息、反応性気道疾患もしくは他の慢性呼吸器疾患を有する。
【0149】
ある特定の実施形態では、処置は、中等度から重度の疾患に罹患している対象、例えば、入院を必要とする対象に投与される。
【0150】
したがって、ここに開示される組成物を投与する典型的な経路としては、限定されないが、経口、局所、経皮、吸入、非経口、舌下、頬側、直腸、膣および鼻腔内が挙げられる。「非経口」という用語は、本明細書で使用される場合、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射または注入技法を含む。ある特定の実施形態では、投与は、経口、静脈内、非経口、胃内、胸膜内、肺内、直腸内、皮内、腹腔内、腫瘍内、皮下、局所、経皮、大槽内、髄腔内、鼻腔内、および筋肉内から選択される経路による投与を含む。特定の実施形態では、方法は、抗体、抗原結合断片、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、または組成物を対象に経口投与することを含む。
【0151】
本発明のある特定の実施形態による医薬組成物は、患者への組成物の投与の際にその中に含有される活性成分が生物学的に利用可能となるようにするために製剤化される。対象または患者に投与される組成物は、1つまたは複数の投薬単位の形態をとることができ、例えば、錠剤が単一投薬単位であってもよく、エアロゾル形態の本明細書に記載の抗体または抗原結合(antigen-binding)の容器は、複数の投薬単位を保持することができる。そのような剤形の実際の調製方法は、当業者には公知であるか、明らかである;例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition (Philadelphia College of Pharmacy and Science, 2000)を参照されたい。いずれにせよ、投与される組成物は、有効量の、本明細書の教示に従って目的の疾患または状態を処置するための有効量の本開示の抗体もしくは抗原結合断片、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞または組成物を含有する。
【0152】
組成物は、固体または液体の形態であってもよい。一部の実施形態では、組成物が例えば錠剤または粉末形態であるために、担体(複数可)は微粒子状である。組成物が、例えば、経口油、注射可能な液体、または例えば吸入投与に有用であるエアロゾルである場合、担体(複数可)は液体であり得る。経口投与が意図される場合、医薬組成物は、好ましくは、固体形態または液体形態のいずれかであり、半固体、半液体、懸濁液およびゲル形態は、本明細書で固体または液体のいずれかとみなされる形態の中に含まれる。
【0153】
経口投与のための固体組成物として、医薬組成物を、散剤、顆粒剤、圧縮錠剤、丸剤、カプセル剤、チューインガム剤、カシェ剤などに製剤化することができる。そのような固体組成物は、典型的には、1つまたは複数の不活性希釈剤または可食性担体を含有する。加えて、以下のうちの1つまたは複数が存在していてもよい:結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、微結晶性セルロース、トラガカントガムまたはゼラチン;賦形剤、例えば、デンプン、ラクトースまたはデキストリン;崩壊剤、例えば、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、Primogel、トウモロコシデンプンなど;滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはSterotex;流動促進剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、例えば、スクロースまたはサッカリン;着香剤、例えばペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジ香味料;ならびに着色剤。組成物が、カプセル剤、例えばゼラチンカプセル剤の形態である場合、その組成物は、上記の種類の材料に加えて、液体担体、例えば、ポリエチレングリコールまたは油を含有していてもよい。
【0154】
組成物は、液体の形態、例えば、エリキシル剤、シロップ剤、液剤、乳剤または懸濁剤の形態であってもよい。液体は、2つの例として、経口投与のためのもの、または注射による送達のためのものであり得る。経口投与が意図される場合、好ましい組成物は、本化合物に加えて、甘味剤、保存剤、色素/着色剤および風味増強剤のうちの1つまたは複数を含有する。注射により投与することが意図される組成物には、界面活性剤、保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、バッファー、安定剤および等張剤のうちの1つまたは複数が含まれていてもよい。
【0155】
液体医薬組成物は、それらが溶液、懸濁液などの形態であるかどうかにかかわらず、以下のアジュバントのうちの1つまたは複数を含み得る:滅菌希釈剤、例えば、注射用水、食塩溶液、好ましくは生理食塩水、リンゲル液、等張塩化ナトリウム、固定油、例えば、溶媒もしくは懸濁媒体として役立ち得る合成モノもしくはジグリセリド、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸;バッファー、例えば、アセテート、シトレートまたはホスフェート;および等張性の調整用の剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース。非経口調製物を、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器または複数回投与用バイアルに封入することができる。生理食塩水は、好ましいアジュバントである。注射用医薬組成物は、好ましくは無菌である。
【0156】
非経口投与または経口投与のいずれかが意図される液体組成物は、本明細書に開示される抗体または抗原結合断片の量を、好適な投与量が得られるように、含有するべきである。典型的には、この量は、組成物中、少なくとも0.01%の抗体または抗原結合断片である。経口投与が意図される場合、この量を、組成物の重量の0.1%~約70%の間になるように変動させることができる。ある特定の経口医薬組成物は、約4%~約75%の間の抗体または抗原結合断片を含有する。ある特定の実施形態では、本発明による医薬組成物および調製物は、非経口投薬単位が希釈前に0.01~10重量%の間の抗体または抗原結合断片を含有するように調製される。
【0157】
組成物は、局所投与が意図されたものであってもよく、その場合、担体は、溶液、乳液、軟膏またはゲル基剤を好適に含み得る。基剤は、例えば、以下のうちの1つまたは複数を含み得る:ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、蜜蝋、鉱物油、希釈剤、例えば、水およびアルコール、ならびに乳化剤および安定剤。増粘剤が局所投与のための組成物中に存在していてもよい。経皮投与が意図される場合、組成物は、経皮パッチまたはイオン導入デバイスを含み得る。医薬組成物は、直腸内で融解して薬物を放出する形態、例えば坐剤の形態の、直腸投与が意図されたものであってもよい。直腸投与のための組成物は、脂肪性基剤を好適な無刺激賦形剤として含有し得る。そのような基剤としては、限定されないが、ラノリン、カカオ脂、およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0158】
組成物は、固体または液体投薬単位の物理的形態を改変するさまざまな材料を含み得る。例えば、組成物は、活性成分の周囲にコーティングシェルを形成する材料を含んでいてもよい。コーティングシェルを形成する材料は、典型的には、不活性であり、例えば、糖、セラック、および他の腸溶コーティング剤から選択され得る。あるいは、活性成分は、ゼラチンカプセルに封入されていてもよい。固体または液体形態の組成物は、本開示の抗体または抗原結合断片に結合し、それによって、化合物の送達を補助する、剤を含んでいてもよい。この能力で作用し得る好適な剤としては、モノクローナルもしくはポリクローナル抗体、1つもしくは複数のタンパク質、またはリポソームが挙げられる。組成物は、エアロゾルとして投与することができる投薬単位から本質的になっていてもよい。エアロゾルという用語は、コロイド状の性質のものから、加圧パッケージからなる系までの範囲の各種の系を示すために使用される。送達は、液化ガスもしくは圧縮ガスによってであってもよく、または活性成分を分注する好適なポンプシステムによってであってもよい。エアロゾルは、活性成分(複数可)を送達するために、単相、二相または三相系で送達されてもよい。エアロゾルの送達は、必要な容器、アクチベーター、弁、補助容器などを含み、これらが一緒にキットを形成してもよい。当業者は、過度の実験をしなくても、好ましいエアロゾルを決定することができる。
【0159】
本開示の組成物が、本明細書に記載されるようなポリヌクレオチドのための担体分子(例えば、脂質ナノ粒子、ナノスケール送達プラットフォームなど)も包含することが理解される。
【0160】
医薬組成物は、製薬技術分野において周知の方法論によって調製することができる。例えば、注射により投与されることが意図される組成物は、本明細書に記載される抗体、その抗原結合断片、または抗体コンジュゲートと、必要に応じて塩、緩衝液および/または安定剤のうちの1つまたは複数とを含む組成物を、溶液を形成するための滅菌蒸留水と合わせることによって、調製することができる。界面活性剤を添加して、均一な溶液または懸濁液の形成を容易にし得る。界面活性剤は、ペプチド組成物と非共有結合的に相互作用して水性送達系への抗体またはその抗原結合断片の溶解または均一な懸濁を容易にする化合物である。
【0161】
一般に、適切な用量および処置レジメンは、治療的および/または予防的利益(例えば、臨床転帰の改善(例えば、下痢もしくは関連する脱水症または炎症の頻度の低下、継続期間の短縮、または重症度の低下、またはより長い無病および/もしくは全生存期間、または症状重症度の軽減)を含む、本明細書に記載されるもの)をもたらすのに十分な量の組成物(複数可)を提供する。予防的使用のために、用量は、疾患もしくは障害に関連する疾患を予防するのに、その開始を遅延するのに、またはその重症度を低下させるのに十分な用量であるべきである。本明細書に記載される方法に従って投与される組成物の予防的利益を、前臨床研究(in vitroおよびin vivo動物研究を含む)および臨床研究を行うこと、およびそこから得られたデータを、適切な統計学的、生物学的および臨床的方法および技法によって分析することによって、決定することができ、これらのすべてを当業者は容易に実行することができる。
【0162】
組成物は、有効量(例えば、SARS-CoV-2感染を処置するための)で投与され、これは、利用される具体的な化合物の活性;化合物の代謝安定性および作用の長さ;対象の年齢、体重、一般的健康、性別および食事;投与の方法および時間;排泄率;薬物の組合せ;特定の障害または状態の重症度;ならびに治療を受けている対象を含む、各種の因子に依存して変わる。ある特定の実施形態では、本開示の製剤および方法による治療の投与後、試験対象は、プラセボで処置される対象または他の好適な対照対象と比較して、処置される疾患または障害に関連する1つまたは複数の症状の約10%から約99%までの低減を示す。
【0163】
一般に、抗体または抗原結合断片の治療有効1日量は、(70kgの哺乳動物について)約0.001mg/kg(すなわち、0.07mg)~約100mg/kg(すなわち、7.0g)であり;好ましくは、治療有効用量は、(70kgの哺乳動物について)約0.01mg/kg(すなわち、0.7mg)~約50mg/kg(すなわち、3.5g)であり;より好ましくは、治療有効用量は、(70kgの哺乳動物について)約1mg/kg(すなわち、70mg)~約25mg/kg(すなわち、1.75g)である。本開示のポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、および関連組成物について、治療有効用量は、抗体または抗原結合断片についての治療有効用量とは異なり得る。
【0164】
ある特定の実施形態では、方法は、抗体、抗原結合断片、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、または組成物を対象に2、3、4、5、6、7、8、9、10回またはそれより多くの回数投与することを含む。
【0165】
ある特定の実施形態では、方法は、抗体、抗原結合断片、または組成物を対象に複数回投与することを含み、第2のまたは次に続く投与は、それぞれ、第1のまたは前の投与の約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約24、約48、約74、約96時間後またはそれより後に行われる。
【0166】
ある特定の実施形態では、方法は、対象がSARS-CoV-2に感染する前に少なくとも1回、抗体、抗原結合断片、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、または組成物を投与することを含む。
【0167】
本開示の抗体、抗原結合断片、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞または組成物を含む組成物を、1つもしくは複数の他の治療剤の投与と同時に、その前に、またはその後に投与することもできる。そのような併用療法は、本発明の化合物と1つまたは複数の追加の活性薬剤とを含有する単一の医薬投与製剤の投与だけでなく、本開示の抗体または抗原結合断片および各活性薬剤を含む組成物のその独自の別々の投与製剤での投与も含み得る。例えば、本明細書に記載される抗体もしくはその抗原結合断片と他の活性薬剤とを、患者に、錠剤もしくはカプセル剤などの単一経口投与組成物で一緒に投与することができ、または各薬剤を別々の経口投与製剤で投与することができる。同様に、本明細書に記載される抗体もしくは抗原結合断片と他の活性薬剤とを、対象に、単一非経口投与組成物で、例えば、食塩溶液もしくは他の生理的に許容される溶液で、一緒に投与することができ、または各薬剤を別々の非経口投与製剤で投与することができる。別々の投与製剤が使用される場合、抗体または抗原結合断片を含む組成物と、1つまたは複数の追加の活性薬剤を含む組成物とを、本質的に同時に、すなわち併せて、投与することができ、または別々にずらした時間で、すなわち、逐次的におよび任意の順序で投与することができ、併用療法は、これらのレジメンすべてを含むと理解される。
【0168】
ある特定の実施形態では、本開示の1つもしくは複数の抗SARS-CoV-2抗体または抗原結合断片(または1つもしくは複数の核酸、宿主細胞、ベクターもしくは組成物)と、1つもしくは複数の抗炎症剤および/または1つもしくは複数の抗ウイルス剤とを含む、併用療法が提供される。特定の実施形態では、1つまたは複数の抗炎症剤は、例えば、デキサメタゾン、プレドニゾンなどのようなコルチコステロイドを含む。一部の実施形態では、1つまたは複数の抗炎症剤は、例えば、IL6に結合する抗体または抗原結合断片(例えば、シルツキシマブ)、またはIL-6Rに結合する抗体(例えば、トシリズマブ)、またはIL-1β、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、FGF、G-CSF、GM-CSF、IFN-γ、IP-10、MCP-1、MIP-1A、MIP1-B、PDGR、TNF-αもしくはVEGFに結合する抗体などのサイトカインアンタゴニストを含む。一部の実施形態では、抗炎症剤、例えば、ルキソリチニブおよび/またはアナキンラが使用される。一部の実施形態では、1つまたは複数の抗ウイルス剤は、例えば、レムデシビル、ソホスブビル、アシクロビルおよびジドブジンなどの、ヌクレオチドアナログまたはヌクレオチドアナログプロドラッグを含む。特定の実施形態では、抗ウイルス剤は、ロピナビル、リトナビル、ファビピラビル、レロンリマブ、またはこれらの任意の組合せを含む。本開示の併用療法で使用するための他の抗炎症剤は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を含む。そのような併用療法において、1つまたは複数の抗体または抗原結合断片(または1つもしくは複数の核酸、宿主細胞、ベクター、もしくは組成物)と、1つもしくは複数の抗炎症剤および/または1つもしくは複数の抗ウイルス剤とを、任意の順序および任意の順番で、または一緒に投与することができることは、理解される。
【0169】
一部の実施形態では、抗体または抗原結合断片(または1つもしくは複数の核酸、宿主細胞、ベクター、もしくは組成物)は、1つもしくは複数の抗炎症剤および/または1つもしくは複数の抗ウイルス剤を以前に受けたことがある対象に投与される。一部の実施形態では、1つもしくは複数の抗炎症剤および/または1つもしくは複数の抗ウイルス剤は、抗体(または1つもしくは複数の核酸、宿主細胞、ベクター、もしくは組成物)を以前に受けたことがある対象に投与される。
【0170】
ある特定の実施形態では、本開示の1つもしくは複数の抗SARS-CoV-2抗体またはその抗原結合断片(または1つもしくは複数の核酸、宿主細胞、ベクターもしくは組成物)と、レロンリマブなどの抗CCR5抗体または抗原結合断片とを含む、併用療法が提供される。
【0171】
ある特定の実施形態では、本開示の2つまたはそれより多くの抗SARS-CoV-2抗体を含む併用療法が提供される。方法は、第1の抗体を、第2の抗体を受けたことがある対象に投与することを含むことができ、または2つもしくはそれより多くの抗体を一緒に投与することを含むことができる。例えば、特定の実施形態では、対象に、(a)対象が第2の抗体もしくは抗原結合断片を受けたことがある場合に第1の抗体もしくは抗原結合断片を投与すること;(b)対象が第1の抗体もしくは抗原結合断片を受けたことがある場合に第2の抗体もしくは抗原結合断片を投与すること;または(c)第1の抗体もしくは抗原結合断片および第2の抗体もしくは抗原結合断片を投与することを含む方法が、提供される。ある特定のさらなる実施形態では、(i)第1の抗体または抗原結合断片は、配列番号21、37、374、377、396および415のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなるVHと、配列番号29、45、380、383、385、388、392、393、400、402、404、および406~414のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなるVLとを含み;(ii)第2の抗体または抗原結合断片は、配列番号69に記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなるVHと、配列番号77に記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなるVLとを含む。ある特定の実施形態では、第1の抗体または抗原結合断片は、本明細書に開示される第1の抗体の3つの重鎖CDRと3つの軽鎖CDRとを含み、第2の抗体または抗原結合断片は、独立して、本明細書に開示される第2の異なる抗体の3つの重鎖CDRと3つの軽鎖CDRとを含む。
【0172】
関連態様では、ここに開示される抗体、抗原結合断片、ベクター、宿主細胞、および組成物の使用が、提供される。
【0173】
ある特定の実施形態では、抗体、抗原結合断片、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、または組成物は、対象におけるSARS-CoV-2感染を処置する方法において使用するために提供される。
【0174】
ある特定の実施形態では、抗体、抗原結合断片、または組成物は、対象におけるSARS-CoV-2感染を処置するための医薬を製造または調製する方法において使用するために提供される。
表1. 配列
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【表1-12】
【表1-13】
【表1-14】
【表1-15】
【表1-16】
【表1-17】
【表1-18】
【表1-19】
【表1-20】
【表1-21】
【表1-22】
【表1-23】
【表1-24】
【表1-25】
【表1-26】
【表1-27】
【表1-28】
【表1-29】
【表1-30】
【表1-31】
【表1-32】
【表1-33】
【表1-34】
【表1-35】
【表1-36】
【表1-37】
【表1-38】
【表1-39】
【表1-40】
【表1-41】
【表1-42】
【表1-43】
【表1-44】
【表1-45】
【表1-46】
【表1-47】
【表1-48】
【表1-49】
【表1-50】
【表1-51】
【表1-52】
【表1-53】
【表1-54】
【表1-55】
【表1-56】
【表1-57】
【表1-58】
【表1-59】
【表1-60】
【実施例
【0175】
(実施例1)
SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に対するヒトモノクローナル抗体の交差反応性
【0176】
SARS-CoVのRBDを認識する20のヒトSARS-CoV中和モノクローナル抗体のパネルを、最初に、ELISAによってSARS-CoVスパイクタンパク質への結合について試験した(図1A~1D)。すべての抗体は、SARS-CoVスパイクタンパク質に結合することが確認された。抗体は、表2に示されるVHおよびVL配列を含む。
【0177】
SARS-CoV-2のスパイク(S)タンパク質と交差反応する20の抗SARS-CoV抗体の能力を試験するために、フローサイトメトリーに基づくアッセイを利用した。 ExpiCHO細胞に、SARS-CoV-2、SARS-CoVおよびMERS-CoVのSタンパク質を、または陰性対照として空のプラスミドを、トランスフェクトした。次いで、20のモノクローナル抗体を、10μg/mlで、フローサイトメトリーによって、SARS-CoV-2、SARS-CoV、MERS-CoVまたはモック細胞トランスフェクタントのSタンパク質を発現するExpiCHO細胞を染色するそれらの能力について試験した。予想通り、20の抗体はすべて、細胞上のSARS-CoVスパイクタンパク質を認識し、MERS-CoVもモックトランスフェクタントも認識しなかった(図2Aおよび2B)。2つの抗体nCoV-6およびnCoV-10は、このアッセイを使用して、細胞の30%を十分に上回って(nCoV-6、およそ40%;nCoV-10、およそ60%)SARS-CoV-2のスパイクタンパク質を認識した。
【0178】
nCoV-6およびnCoV-10の細胞上のSARS-CoV-2、SARS-CoV、およびMERS-CoVのSタンパク質への結合を、複数の濃度の各抗体を試験することによってさらに調査した。図3Aおよび3Bに示されるように、抗体nCoV-10は、SARS-CoVへのその結合よりも高いアビディティーおよび類似性で、トランスフェクション24時間後に提示されたSARS-CoV-2のSタンパク質を認識する。図4Aおよび4Bに示されるように、抗体nCoV-6は、それがSARS-CoVのSに結合するよりも低いアビディティーでSARS-CoV-2のSに結合する。
【0179】
同じ実験を、トランスフェクション24時間後の細胞に対して繰り返し、類似の結果を得た(図4C)。
【0180】
抗体nCoV-10および抗体nCoV-2のバリアントを構築した。バリアント抗体は、表3に示されるVHおよびVL配列を含む。ある特定のnCoV-10バリアントは、nCoV-10野生型VLまたは任意のnCoV-10バリアントVLと組み合わされ得るバリアントVHを含み、他のものは、nCoV-10野生型VHまたは任意のnCoV-10バリアントVHと組み合わされ得るバリアントVLを含む。
表2.
【表2】
表3.
【表3-1】
【表3-2】
(実施例2)
nCoV-1モノクローナル抗体のエピトープ研究
【0181】
SARS-CoVのRBDについてのモノクローナル抗体nCoV-1のエピトープ分析を、低解像度クライオ-EMおよびSARS CoVのS糖タンパク質(結晶構造6NB7)を使用して行った。これらの研究に基づいて、nCoV1のSARS CoVのS糖タンパク質エピトープ残基は、Thr402、Gly403、Val404、Asp407、Tyr408、Tyr442、Arg444、His445、Gly446、Lys447、Ser461、Pro462、Asp463、Gly464、Cys467、Leu472、Asn473、Cys474、Tyr475、Leu478、およびAsn479を含む。
(実施例3)
抗体nCoV-6およびnCoV-10のSARS-CoVのRBDへの結合の交差競合分析
【0182】
2つの抗体nCoV-6およびnCoV-10が明確に異なるエピトープに結合するかどうかを試験するために、SARS-CoVの受容体結合ドメイン(RBD)を使用して、競合実験を実施した。Octet結合プロファイルは、nCoV-10がnCoV-6と競合しないことを実証し、このことは、2つの抗体がRBD上の異なる部位に結合することを示す。対照として、抗体の相同競合を実施した。nCoV-4ではなくnCoV-10が2019-nCoVに結合した観察に基づいて、nCoV-4のFab断片のnCoV-10またはnCoV-6との競合も実施した。nCoV-10は、nCoV-4と競合するが、nCoV-6と競合しない。この実験を、エピトープが低解像度クライオ-EMおよびSARS CoVのS糖タンパク質を使用して定義されたモノクローナル抗体nCoV-1を使用して繰り返し、受容体結合モチーフ(SARS-CoVのSタンパク質上のヒトACE2受容体のフットプリントに対応する)にマッピングされることを見出した。この実験では、SARS-CoVのS1ドメイン(RBDを含む)を使用した。結果は、nCoV-10がnCoV-6と競合しないことを確認し、nCoV-10がnCoV-1と競合することも示した(図5A~5F)。この知見は、nCoV-10が、受容体結合モチーフに位置するSARS-CoVおよびSARS-CoV-2のS糖タンパク質上のエピトープを認識することをさらに示唆する。
【0183】
注目すべきは、SARS-CoVのRBDおよびSARS-CoV-2のRBDは、ある特定のアミノ酸配列位置に相違を有する。同じSARS-CoV逃避変異体(すなわち、P462H)の誘導と一致して、nCoV-10およびnCoV4は、SARS-CoVのRBDにおける重複エピトープを認識する。注目すべきは、nCoV-10中和のために重要であることが見出されたSARS-CoVのRBDのL443、F460およびP462残基(SARS-CoV逃避変異体L443R、F460CおよびP462Hの中和の欠如に基づく)は、SARS-CoV-2において保存されていない。SARS-CoV逃避変異体L443Rは、nCoV-1を使用して選択された。特に、残基443(SARS-CoV-2番号付けによれば455)は、ロイシンの代わりにフェニルアラニンであり、残基460(SARS-CoV-2番号付けによれば473)は、フェニルアラニンの代わりにチロシンであり、残基462(SARS-CoV-2番号付けによれば475)は、プロリンの代わりにアラニンである(図6Aおよび6B)。これら3つの重要な残基(443、460および462)はすべて、ACE2との境界面にあり、したがって、受容体結合モチーフの一部である(図6A、6B、および7)。これらのデータは、nCoV-10およびnCoV-1の間の競合データと組み合わせて(その抗体について、エピトープは構造レベルで定義される)、nCoV-10がSARS-CoV-2の受容体結合モチーフ中のエピトープを認識するさらなる証拠を提供する(図8)。
【0184】
SARS-CoV-2のSおよびSARS-CoVのSの間の全体的な配列類似性は、RBDについておよそ75%~77%、RBMについておよそ50%だけである(図6A)。総合すれば、これらの知見は、nCoV-10が、SARS-CoVおよびSARS-CoV-2の両方の受容体結合モチーフ中のエピトープと(すなわち、RBDおよびACE2の間の境界面で)ユニークに交差反応することができることを示す。SARS-CoV中和抗体nCoV-6は、RBDの外側の明確に異なるエピトープを認識する可能性があり、nCoV-10との競合の欠如に起因して、それと組み合わせて(ミックスとして、または複数特異的フォーマットで)、耐性に対する障壁を増加させ、SARS-CoV-2中和に対する潜在的な相加的なまたは相乗的な効果を提供することができるであろう。
(実施例4)
RBDのヒトACE2受容体への結合の遮断
【0185】
nCoV-10およびnCoV-6がRBDのヒトACE2受容体への結合を阻害することができるかどうかを試験するために、Octet実験を実施し、ここで、SARS-CoVのRBDを、nCoV-6またはnCoV-10抗体とともにインキュベートし、次いで、形成された複合体を固相hACE2への結合について評価した(すなわち、Octetピンにおいて)。この分析によって、nCoV-6ではなくnCoV-10は、SARS-CoVのRBDのhACE2への結合を明確に遮断することができた(図9)。このnCoV-10の阻害活性は、SARS-CoVに対する抗体の中和活性と相関すると予想され(hACE2は、ウイルス侵入のための主要な受容体である)、SARS-CoV-2に対しても可能性があると予想される(hACE2は、ウイルス侵入のための主要な受容体であるとも現在説明されている)。
(実施例5)
SARS-CoV-2配列におけるRBDの保存
【0186】
2020年2月7日現在のSARS-CoV-2の公に利用可能な全ゲノム配列すべての解析(n=71)は、SARS-CoV-2のRBDが高度に保存されていることを明らかにした。唯一の例外は、フランスからの2つの分離株(BetaCoV/France/IDF0372/2020およびBetaCoV/France/IDF0373/2020)における変異V367F(SARS-CoV RBDにおける番号付けでV354)、および他の最近公開された分離株におけるD364Y(SARS-CoV RBDにおける番号付けでV351)(図7)の出現である。残基V367(SARS-CoVにおけるV354)を、SARS-CoVのRBD(pdb、2AJF)の構造に対して分析した。残基D364およびV367は両方とも、受容体結合モチーフの外側、ならびにRBDにおいて残基L443、F460およびP462(SARS-CoV-2における475)と逆側に位置することがわかった(図10)。
(実施例6)
SARS-CoV-2中和アッセイ
【0187】
SARS-CoV-2のS遺伝子でシュードタイプ化された複製能力のないウイルス(分離株BetaCoV/Wuhan-Hu-1/2019;受託番号MN908947)を、以前に記載されたような方法(Temperton NJ, et al. (2005) Longitudinally profiling neutralizing antibody response to SARS coronavirus with pseudotypes. Emerg Infect Dis 11(3):411-416)を使用して生成した。手短に述べると、SARS-CoV-2のSを発現するプラスミド(phCMV1、Genlantis)と、補完ウイルス-ゲノムレポーター遺伝子ベクター、pNL4-3.Luc+.E-R+とを、HEK293T/17にコトランスフェクトした。シングルサイクル感染力アッセイを使用して、SARS-CoV-2のSタンパク質でシュードタイプ化されたルシフェラーゼをコードするビリオンの中和を、以前に記載されたように(Temperton NJ, et al. (2007). A sensitive retroviral pseudotype assay for influenza H5N1-neutralizing antibodies. Influenza Other Respi Viruses 1(3):105-112.)測定した。手短に述べると、ビリオンを含有する培養上清の適切な希釈物を、37℃で1時間、さまざまな濃度の抗体とともにプレインキュベートし、次いで、ウイルス-mAb混合物を、感染の前日に播種したVero E6細胞に添加した。次いで、細胞をSteady-Glo試薬(Promega、E2520)で溶解し、細胞溶解物の相対発光量(RLU)をルミノメーターマイクロプレートリーダー(Synergy H1 Hybrid Multi-Mode Reader;Biotek)で決定した。感染力の低下を、抗体の存在下でのRLUと非存在下でのRLUとを比較することにより決定し、中和のパーセンテージとして表した。
(実施例7)
ACE2とのSARS-S1会合の阻害
【0188】
SARS-S1タンパク質のACE2への会合を阻害するモノクローナル抗体nCoV-1およびnCoV-10の能力を、Octet(BLI)によってアッセイした。SARS-CoVのS1をnCoV-1またはnCoV-10抗体とともにインキュベートし、次いで、形成された複合体を固相hACE2への結合について評価した(すなわち、Octetピンにおいて)。結果を図11Aおよび11B、ならびに表4に示す。図11Aは、y軸に阻害%を示す。図11Bは、y軸に応答を示す。これらの実験では、nCoV-1に対するIC50は1129ng/mlであると算出された。nCoV-10に対するIC50は2688ng/mlであると算出された。
表4.
【表4】
(実施例8)
材料および方法
組換えSARS-CoV-2タンパク質の一過性発現
【0189】
SARS-CoV-2株(SARS-CoV-2-S)分離株BetaCoV/Wuhan-Hu-1/2019(受託番号MN908947)の全長S遺伝子を、ヒト細胞発現のためにコドン最適化し、phCMV1発現ベクター(Genlantis)にクローニングした。Expifectamine CHOエンハンサーを使用して、phCMV1-2019-nCoV-S、phCMV1-MERS-CoV-S(London1/2012)、pl.18-SARS-CoV-S(Urbani株)または空のphCMV1(モック)をExpi-CHO細胞に一過性にトランスフェクトした。トランスフェクションの1日および2日後、細胞を収集し、固定したか、または固定して、SARS-CoVの受容体結合ドメイン(RBD)に反応する21のモノクローナル抗体のパネルでの免疫染色のためにサポニンで透過処理した。Alexa647標識二次抗体抗ヒトIgG Fcを検出に使用した。トランスフェクト細胞への抗体の結合を、ZE5 Cell Analyzer(Biorad)およびFlowJoソフトウェア(TreeStar)を使用してフローサイトメトリーにより分析した。陽性結合を、CoV-Sトランスフェクタントのモックトランスフェクタントに対する分染により定義した。
Octet(BLI、バイオレイヤー干渉法)を使用する競合実験
【0190】
抗Hisセンサー(BIOSENSOR ANTI-PENTA-HIS(HIS1K))を使用して、SARS-CoVのS1サブユニットタンパク質(Sino Biological Europe GmbH)を固定した。センサーを、10分間、キネティクス緩衝液(Kinetics Buffer)(KB;PBS中、0.01%のエンドトキシン不含のBSA、0.002^ Tween(登録商標)-20、0.005%NaN3)で水和した。次いで、SARS-CoVのS1サブユニットタンパク質を、8分間、KB中10μg/mlの濃度で負荷した。抗体を、全長mAb nCoV-10およびnCov-6 mAbについては15μg/mlで、またはFab nCoV-4については5μg/mlで、ならびにnCoV-1を含む後続の実験ではすべて10μg/mlで、6分間、会合させた。次いで、競合抗体を同じ濃度でさらに6分間、会合させた。
Octet(BLI、バイオレイヤー干渉法)を使用する競合実験
【0191】
抗Hisセンサー(BIOSENSOR ANTI-PENTA-HIS(HIS1K))を使用して、ヒトACE2(5μg/mlで;R&D)を固定した。センサーを、10分間、キネティクス緩衝液(KB;PBS中、0.01%のエンドトキシン不含のBSA、0.002^ Tween(登録商標)-20、0.005%NaN3)で水和した。次いで、ヒトACE2を、KB中5μg/mlの濃度で30分間負荷した。抗体(2μg/ml)をSARS-CoVのRBD-Fc(Sino Biological Europe GmbH、2μg/ml)と混合し、15分の会合時間の間ヒトACE2を負荷したセンサーに曝露し、続いて6分の解離ステップを行った。
ELISA結合
【0192】
mAbとSARS-CoVのスパイクS1サブユニットタンパク質(WH20株)タンパク質の反応性を、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)により決定した。手短に述べると、96ウェルプレートを3μg/mlの組換えSARS-CoVのスパイクS1サブユニットタンパク質(Sino.Biological)で被覆した。ウェルを洗浄し、PBS+1%BSAで1時間、室温でブロッキングし、次いで、段階希釈したmAbとともに1時間、室温でインキュベートした。結合したmAbを、アルカリホスファターゼコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG(Southern Biotechnology:2040-04)を1時間、室温でインキュベートすることにより検出し、0.1Mグリシン緩衝液(pH10.4)中の1mg/mlのp-ニトロフェニルリン酸基質により30分間、室温で展開した。光学密度(OD)値をELISAリーダー(Powerwave 340/96分光光度計、BioTek)において405nmの波長で測定した。
(実施例9)
追加実験
【0193】
SARS-CoV-2のRBD(2バリアント)を、精製および標識化のためのC-末端ペプチドタグ(Strep-Tag II;His-Tag)を用いて合成する。SARS-CoV-2由来の全長スパイクタンパク質を合成して、SARS-CoV-2シュードウイルスを生成し、シュードウイルスを中和アッセイおよび膜発現研究において使用する。
【0194】
上記に記載されるさまざまな実施形態を組み合わせて、さらなる実施形態を提供することができる。2020年2月3日に出願された米国特許出願第62/969,592号、2020年2月4日に出願された米国特許出願第62/970,062号、2020年2月7日に出願された米国特許出願第62/971,552号、2020年2月18日に出願された米国特許出願第62/977,941号、2020年4月27日に出願された米国特許出願第63/016,228号、および2020年5月12日に出願された米国特許出願第63/023,858号を含む、本明細書で言及するおよび/または本出願データシートに列挙する米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許公表文献のすべては、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。さまざまな特許、出願および公表文献の概念を利用するために必要に応じて実施形態の態様を改変して、またさらなる実施形態を提供することができる。
【0195】
上記の詳細な説明に照らして、これらおよび他の変更を実施形態に行うことができる。一般に、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、特許請求の範囲を、明細書および特許請求の範囲に開示される特定の実施形態に限定するように解釈すべきでなく、当該特許請求の範囲に権利がある均等物の全範囲とともにすべての可能な実施形態を含むように解釈すべきである。したがって、特許請求の範囲は、本開示によって限定されない。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図5-4】
図5-5】
図5-6】
図6-1】
図6-2】
図7
図8
図9
図10
図11-1】
図11-2】
【配列表】
2023512684000001.app
【国際調査報告】