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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-28
(54)【発明の名称】食肉製品の特徴
(51)【国際特許分類】
   A23L 13/00 20160101AFI20230320BHJP
   C12N 5/077 20100101ALN20230320BHJP
【FI】
A23L13/00 Z
C12N5/077
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547096
(86)(22)【出願日】2021-02-04
(85)【翻訳文提出日】2022-09-20
(86)【国際出願番号】 US2021016681
(87)【国際公開番号】W WO2021158831
(87)【国際公開日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】62/970,109
(32)【優先日】2020-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/033,635
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516127282
【氏名又は名称】アップサイド フーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カイザー,ケビン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】リース,モルガン ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】ユハス,マーク イー.
(72)【発明者】
【氏名】ジョスリン,ジェシカ エム.
(72)【発明者】
【氏名】バレティ,ウマ エス.
(72)【発明者】
【氏名】シュルツェ,エリック エヌ.
【テーマコード(参考)】
4B042
4B065
【Fターム(参考)】
4B042AC06
4B042AC08
4B042AC10
4B042AG02
4B042AG06
4B042AG07
4B042AP30
4B065AA90X
4B065AC20
4B065CA41
(57)【要約】
本開示は、無屠殺食肉製品の生産に有用な方法および組成、並びにそのキャラクタリゼーションを提供する。死んだ動物の組織を回収することにより調達した従来肉と比較した場合、無屠殺食肉製品はいくつかの差違点を含む。そのような差違点としては、ステロイドホルモン、抗生物質、または微生物汚染が著しく減少していること、または実質的に存在しないこと;脂肪含有量が少ないこと;脈管構造がないこと;並びに、室温および冷蔵した場合の両方で賞味期限が延長されていること、が挙げられるが、これらに限定はされない。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
延長された賞味期限を示す食用の無屠殺食肉製品であって、屠殺によって得られた従来肉と比較して賞味期限が延長され、回収後の賞味期限が少なくとも3日間延長された、無屠殺食肉製品。
【請求項2】
延長された賞味期限が約0℃~約30℃において、回収後の少なくとも3日間維持される、請求項1に記載の無屠殺食肉製品。
【請求項3】
賞味期限が回収後の配合前に求められる、請求項1~2のいずれか一項に記載の無屠殺食肉製品。
【請求項4】
賞味期限が配合後に決定される、請求項1~3のいずれか一項に記載の無屠殺食肉製品。
【請求項5】
非無菌条件下で肉を回収した場合に賞味期限が延長される、請求項3に記載の無屠殺食肉製品。
【請求項6】
総微生物数(TC)、大腸菌/大腸菌群数(EC)、大腸菌数、または大腸菌群数を測定することにより賞味期限が求められる、請求項1~5のいずれか一項に記載の無屠殺食肉製品。
【請求項7】
屠殺によって得られた従来肉のTC測定値が、無屠殺食肉製品のTC測定値よりも少なくとも1.5倍高い、請求項6に記載の無屠殺食肉製品。
【請求項8】
湿潤質量1g当たり1cfu以下の微生物汚染しか含まない、請求項1~7のいずれか一項に記載の無屠殺食肉製品。
【請求項9】
約1μg以下のステロイドホルモンしか含まない、請求項1~8のいずれか一項に記載の無屠殺食肉製品。
【請求項10】
乾燥質量100g当たり約50重量g~約90重量gのアミノ酸を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の無屠殺食肉製品。
【請求項11】
以下のアミノ酸のうちの1または複数を表示された含量(100gの総アミノ酸に対するアミノ酸のg数として表現)で含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の無屠殺食肉製品:約1g~約2.2gのトリプトファン、約4.6gおよび6.5gのスレオニン、約3.8g~約5gのイソロイシン、約6.1g~約8.9gのロイシン、約5.7g~約8.8gのリジン、約0.14g~約3.0gのメチオニン、約1.5g~約1.8gのシステイン、約3.7g~約4.8gのフェニルアラニン、約3.0g~約5.2gのチロシン、約4.8g~約6.1gのバリン、約7.0g~約8.0gのアルギニン、約2.5g~約4gのヒスチジン、約5.0g~約6.3gのアラニン、約8.6g~約10.4gのアスパラギン酸、約12.5g~約14.6gのグルタミン酸、約4.6g~約9.8gのグリシン、約4.6g~約6.8gのプロリン、約4.4g~約5.3gのセリン、および/または約0.0g~4.0gのヒドロキシプロリン。
【請求項12】
回収後の配合前に測定される水分含有量が約65%~約95%である、請求項1~11のいずれか一項に記載の無屠殺食肉製品。
【請求項13】
湿潤質量100gの無屠殺食肉製品に対して少なくとも約0.5mgのビタミンEを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の無屠殺食肉製品。
【請求項14】
以下の脂肪酸クラスのうちの1または複数を表示された含量(総脂肪酸に対する当該クラスの%として表現)で含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の無屠殺食肉製品:
a.約10%~約60%の含量の飽和脂肪酸;
b.約10%~約60%の含量の一不飽和脂肪酸;および
c.約1%~約50%の含量の多価不飽和脂肪酸。
【請求項15】
ω6脂肪酸クラス:ω3脂肪酸クラスを約2:1~18:1比で含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の無屠殺食肉製品。
【請求項16】
無屠殺食肉製品は無屠殺の鶏肉、鴨肉、または牛肉を含むものであり、従来肉は屠殺によって得られる鶏肉、鴨肉、または牛肉を含むものである、請求項1~15のいずれか一項に記載の無屠殺食肉製品。
【請求項17】
脈管構造を実質的に含まない、請求項1~16のいずれか一項に記載の無屠殺食肉製品。
【請求項18】
従来肉が加工されていない、請求項1~17のいずれか一項に記載の無屠殺食肉製品。
【請求項19】
屠殺によって得られた従来肉と比較して少ない微生物汚染数を示し、前記より少ない微生物汚染数が回収後少なくとも3日間は示される、食用の無屠殺食肉製品。
【請求項20】
前記より少ない微生物汚染数が約0℃~約30℃において回収後少なくとも3日間は維持される、請求項19に記載の無屠殺食肉製品。
【請求項21】
微生物汚染数が回収後の配合前に求められる、請求項19~20のいずれか一項に記載の無屠殺食肉製品。
【請求項22】
非無菌条件下で維持される、請求項19~21のいずれか一項に記載の無屠殺食肉製品。
【請求項23】
総微生物数(TC)、大腸菌/大腸菌群数(EC)、大腸菌数、または大腸菌群数を測定することにより微生物汚染数が求められる、請求項19~22のいずれか一項に記載の無屠殺食肉製品。
【請求項24】
湿潤質量1g当たり1cfu以下の微生物汚染しか含まない、請求項19~23のいずれか一項に記載の無屠殺食肉製品。
【請求項25】
屠殺によって得られた従来肉のTC測定値が、無屠殺食肉製品のTC測定値よりも少なくとも1.5倍高い、請求項19~24のいずれか一項に記載の無屠殺食肉製品。
【請求項26】
約1μg以下のステロイドホルモンしか含まない、請求項19~25のいずれか一項に記載の無屠殺食肉製品。
【請求項27】
以下のアミノ酸のうちの1または複数を表示された含量(100gの総アミノ酸に対するアミノ酸のg数として表現)で含む、請求項19~26のいずれか一項に記載の無屠殺食肉製品:約1g~約2.2gのトリプトファン、約4.6gおよび6.5gのスレオニン、約3.8g~約5gのイソロイシン、約6.1g~約8.9gのロイシン、約5.7g~約8.8gのリジン、約0.14g~約3.0gのメチオニン、約1.5g~約1.8gのシステイン、約3.7g~約4.8gのフェニルアラニン、約3.0g~約5.2gのチロシン、約4.8g~約6.1gのバリン、約7.0g~約8.0gのアルギニン、約2.5g~約4gのヒスチジン、約5.0g~約6.3gのアラニン、約8.6g~約10.4gのアスパラギン酸、約12.5g~約14.6gのグルタミン酸、約4.6g~約9.8gのグリシン、約4.6g~約6.8gのプロリン、約4.4g~約5.3gのセリン、および/または約0.0g~4.0gのヒドロキシプロリン。
【請求項28】
以下の脂肪酸クラスのうちの1または複数を表示された含量(総脂肪酸に対する当該クラスの%として表現)で含む、請求項19~27のいずれか一項に記載の無屠殺食肉製品:
a.約29%~約42%の含量の飽和脂肪酸;
b.約19%~約54%の含量の一不飽和脂肪酸;および
c.約5%~約36%の含量の多価不飽和脂肪酸。
【請求項29】
ω6脂肪酸クラス:ω3脂肪酸クラスを約2:1~18:1比で含む、請求項19~28のいずれか一項に記載の無屠殺食肉製品。
【請求項30】
無屠殺食肉製品は無屠殺の鶏肉、鴨肉、または牛肉を含むものであり、従来肉は屠殺によって得られる鶏肉、鴨肉、または牛肉を含むものである、請求項19~29のいずれか一項に記載の無屠殺食肉製品。
【請求項31】
屠殺によって得られた未加工の従来肉と比較した場合に賞味期限の延長を示す無屠殺食肉製品を生産する方法であって、
a.ヒト以外の生物由来の細胞を準備すること;
b.前記細胞を浮遊培養条件下または接着培養条件下で、血清などの動物由来成分を実質的に含んでいない培地中で培養すること;および
c.前記細胞を単離し、無屠殺食肉製品を作製すること、
を含む、方法。
【請求項32】
前記細胞が筋芽細胞、線維芽細胞、脂肪細胞、内皮細胞、中胚葉系細胞、およびこれらの組み合わせを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記細胞が線維芽細胞と筋芽細胞とを少なくとも含み、前記線維芽細胞および筋芽細胞が約95F(線維芽細胞):5M(筋芽細胞)~約5F:95Mの比で与えられる、請求項31~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
培地の脂肪酸含量を調整することを含み、得られる無屠殺食肉製品が約2:1~約18:1比のω6脂肪酸クラス:ω3脂肪酸クラスを含む、請求項31~33のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年9月25日に出願された米国非仮特許出願第17/033,635号、および2020年2月4日に出願された米国仮特許出願第62/970,109号に基づく優先権を主張するものであり、これらの内容のその全体が参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
動物肉は世界中の多くの人々にとってタンパク質供給源としての第一の選択肢である。米国における2018年の肉(鶏肉、七面鳥肉、仔牛肉、仔羊肉、牛肉、豚肉)の推定総消費量は一人当たり219ポンドであった。通常は屠殺を含む、家畜、家禽、および魚などの屠殺した動物から肉を回収する伝統的な(従来の)方法は、肉のさらなる需要に応えるには十分ではないかもしれないと予想されている。さらに、これらの供給源からの肉生産は、法的に許容されるものではあるが、微生物汚染レベルの増加や、従来の食肉製品には昔から存在したホルモンおよび抗生物質への暴露などの、いくつかの欠陥と関連している。また、従来の食肉生産は、熱量インプットの変換不良、温室効果ガスの放出、土地の使用、水の使用、および局地汚染などの、環境上の欠陥とも関連している。屠殺を含む従来の食肉生産に代わるものとして、研究室で後生動物細胞を培養することによる肉の生産がある(本明細書では、同義的に、細胞肉、細胞肉、細胞培養肉、細胞肉、細胞肉、または培養肉とも称する)。
【0003】
フードサプライチェーンに細胞肉製品が採用されるかは、食肉それ自体の定量化可能な特性といった種々の要因に依存することとなり、それらの要因としては、主要栄養素プロファイル、微量栄養素プロファイル、ホルモンレベル、抗生物質レベル、および賞味期限が挙げられるが、これらに限定はされない。従来の製品に対する比較を行って、栄養素プロファイルが同等であることを確認しつつ、ホルモン含量や抗生物質含量が少ない/ゼロである、微生物数が少ない/ゼロであるなどの、区別可能な要素を見つけ出すことが必要となる。細胞肉製品はまだ市販されていないが、最終的に、各規制機関からは、市販を目的とした食肉製品の定量化およびアカウンタビリティ、販売に先立つ食品安全性の確保、並びに、市販を目的とした食肉製品の市販後のコンプライアンスも要求されることとなる。
【0004】
細胞肉の生産や、風味および食感のカスタム性は、いくつかの要因によってまだ限定されており、ばらつきがなく系統立った生産は少ない。本明細書では、この要求と他の関連した要求に対応する組成および方法が提供される。
【発明の概要】
【0005】
本明細書において、培養増殖された細胞から作製された無屠殺食肉製品の生産に関する方法および組成が提供され、これらの食肉製品は、本明細書では同義的に細胞肉製品と称される。
【0006】
1つの態様において、屠殺によって得られた従来肉と比較した場合に、賞味期限が回収後の種々の期間延長されている、延長された賞味期限を示す食用の無屠殺食肉製品が、本明細書において提供される。屠殺によって得られた従来肉と比較して少ない微生物汚染数を示し、上記より少ない微生物汚染数が回収後種々の期間示される、食用の無屠殺食肉製品が、本明細書において提供される。無屠殺食肉製品は、本明細書において開示されるいずれの種のものであってもよい。
【0007】
また、線維芽細胞、筋芽細胞、脂肪細胞、内皮細胞、中胚葉系細胞、およびこれらの組み合わせなどの細胞を、浮遊培養、または接着形式で培養することを含む、本開示の無屠殺食肉製品を作製する方法も、本明細書において提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、従来肉と比較した、例示的な無屠殺の細胞肉試料で見られるアミノ酸プロファイルを示している。USDAデータベースには、クロマグロ、テラピア、キハダ、七面鳥肉、仔羊肉、鶏肉、牛肉、コーニッシュゲームヘン肉、ホロホロチョウ肉、キジ肉、ウズラ肉、雛鳩、ガチョウ肉、鴨肉、ダチョウ肉、牛トップサーロイン、牛バラ肉、牛スネ肉、鶏むね肉、鶏もも肉、豚肩肉、グラスフェッドバイソン肉、鶏手羽肉、せせり、七面鳥むね肉、七面鳥手羽肉、七面鳥もも肉、および仔羊スネ肉から得られたアミノ酸データが含まれている。
【0009】
図2図2は、例示的な細胞肉試料中のヒドロキシプロリンの平均濃度範囲を示している(細胞肉の湿潤質量100g当たりのヒドロキシプロリンのグラム数として表されている)。
【0010】
図3図3は、微生物汚染を示す細菌コロニーを有する代表的なプレートを示しており、例示的な、無屠殺細胞培養鴨肉試料、市販(従来)の牛肉試料、および市販の鶏肉試料の各結果を示している。
【0011】
図4図4は、例示的な無屠殺細胞肉試料における、飽和脂肪酸、一不飽和脂肪酸、および多価不飽和脂肪酸についての、総脂肪酸組成を示している。
【0012】
図5図5は、従来の食肉製品についての、USDAデータベースから収集した脂肪酸データの主成分分析(PCA)を示している。
【0013】
図6図6は、例示的な無屠殺細胞培養鶏肉試料における、Ω3脂肪酸に対するΩ6脂肪酸の割合を示している。
【0014】
図7図7は、培養液中の細胞から細胞肉(CBM)を作製するのに用いられる培地中に血清が存在する場合に、脂肪酸プロファイルに影響を与える可能性があることを示しており、図は、無血清培地および血清含有培地中で産生された、例示的な無屠殺細胞肉試料中の脂肪酸の割合の比較を示している。W3=ω3脂肪酸;W=6=ω6脂肪酸;W=9=ω9脂肪酸。
【0015】
図8図8は、異なる供給源由来の血清を使用した場合、無屠殺細胞肉試料において、異なる脂肪酸プロファイルが得られることを示している。データは表1の方法10から得られたものである。略語解-BS:ウシ血清;CS:鶏血清;FBS:ウシ胎児血清;Hy:大豆ベースの植物加水分解物。各培地には特定の血清を8~10%含有させた。DMEM-F12を基本培地として用いた。
【0016】
図9図9は、ポリクローナルな筋芽細胞集団から単離された筋芽細胞クローンが、無屠殺細胞肉試料の脂肪酸プロファイルに影響を与える可能性があることを示している。
【0017】
図10図10は、無屠殺細胞肉の脂肪酸プロファイルが、培地組成と、肝臓X受容体β(LXRβ)を標的とする作動薬の添加によって影響を受けることを示している。
【0018】
図11図11は、無屠殺細胞肉の脂肪酸プロファイルが、培地組成と、リボフラビンの添加によって影響を受けることを示している。
【0019】
図12図12は、細胞肉の培養に使用された培地中に各脂肪酸を段階的に増やした場合、無屠殺細胞肉の脂肪酸プロファイルを変化させる可能性があることを示している。
【0020】
図13図13は、従来の鶏肉および牛肉とした場合の、各線維芽細胞/筋芽細胞共培養物から作製された無屠殺細胞肉、および単一培養物から作製された無屠殺細胞肉の、調理後硬さを示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
食肉製品の無屠殺生産に関する方法および組成が本明細書において提供され、これらは、細胞を増殖し、回収し、食肉製品へと配合するための細胞培養をベースとした方法の使用に基づいている。屠殺によって得られた従来肉と比較した場合、本開示の無屠殺食肉製品にはいくつかの差異があり、これらの差異について全体を通して説明する。
【0022】
特定の実施形態を詳細に記述するのに先立って、本明細書に記載の特定の実施形態に限定されず、変更可能であることを理解されたい。また、本明細書で使用される用語が、別途定義がない限り、特定の例示的な実施形態を説明することのみを目的としており、限定を意図したものではないことを理解されたい。本明細書で用いられる用語は、通常、本開示の文脈内、およびそれぞれの用語が用いられている特定の文脈において、当該技術分野におけるその通常の意味を有する。特定の用語については、本発明の組成および方法、並びにそれらの生産方法および使用方法の説明において、実施者への追加の手引きとなるように、下記、あるいは明細書中の別の場所で論じられる。いかなる用語使用の範囲および意味も、その用語が用いられている特定の文脈から明らかとなる。そのため、本明細書に記載の定義は、特定の組成あるいは生物系に限定することなく、本発明の特定の実施形態を把握する際の例示的な手引きとなることが意図されている。
【0023】
本開示および添付の特許請求の範囲で使用される場合、「a」、「an」、および「the」といった単数形は、内容によって特に明示されていない限り、複数形を包含する。
【0024】
本開示および添付の特許請求の範囲の全体を通じて、文脈上別の意味と解する必要がない限り、「含む(comprise)」という語、あるいは、「含む(comprises)」や「含むこと(comprising)」といった変形は、記載された要素または要素群が包含されるが、他の要素または要素群が排除されないこと、を意味すると理解される。
【0025】
「食用」という語は、細胞肉と絡めて本明細書で使用される場合、部分的または完全に調理された肉だけではなく、生すなわち未調理の肉も包含する。
【0026】
特に定義がなされていない限り、本明細書に記載の分子生物学、細胞生物学、分析化学、および有機合成化学に関連して使用された命名法、並びにそれらの実験手順および実験技術は、当該技術分野において周知であり、一般的に使用されているものである。標準的な技術を、組換え技術、分子生物学による合成、微生物による合成、化学合成、および化学分析に用いることができる。
【0027】
「屠殺」という語は、従来肉を得る方法に適用されている場合、直接的にその肉を食用に回収する目的で、動物を殺すために伝統的に使用されてきた全ての方法を網羅している。
【0028】
「無屠殺」という語は、本開示の細胞肉製品に適用されている場合、食肉が生産される工程が培養液中の細胞から開始され、当該方法が、食用に動物から肉を直接的に得ることを目的とした動物の屠殺を含まないことをいう。いくつかの実施形態では、細胞培養法で使用するための開始細胞が、動物の屠殺後に得られたもの、すなわち生検、である可能性があるが、培養で使用するための開始細胞がこの方法で得られたものであっても、回収後場合により配合することによる細胞の培養の結果生じた肉は、無屠殺的に得られた肉と見なされることを理解されたい。なお、一般的な事項として、本明細書で使用される場合、無屠殺細胞肉製品の回収は、肉を増殖させた場所(例えば、バイオリアクターの表面、または浮遊培養された細胞を含む容器内)から取り除くために水(または他の水溶液)という緩衝液を使用することを含む場合があり、その後、その肉は収集装置(例えば、ネット、篩、こし器)に捕獲させる場合がある。いくつかの実施形態では、肉は、物理的な方法(スクレイピングなど)、酵素的な方法、および/または化学的な方法で回収されてもよい。いくつかの実施形態では、肉は、上記のいずれかの方法の後、緩衝液(または他の水溶液)ですすぐことで回収されてもよい。
【0029】
「細胞肉」、「無屠殺細胞肉」、「インビトロ生産肉」、「インビトロ細胞肉」、「培養肉」、「無屠殺培養肉」、「インビトロ生産培養肉」、「インビトロ肉」、「インビトロ培養肉」といった表現、および他の類似のそのような表現は、本明細書では同義的に使用されており、肉が、培養液中の細胞から開始されて、インビトロで作製されており、当該方法が食用に動物から肉を直接的に得ることを目的とした動物の屠殺を含まないことをいう。
I.無屠殺細胞肉の作製
【0030】
無屠殺的に細胞肉製品を生産する方法が、本明細書において提供される。
A.細胞
【0031】
本開示の無屠殺の細胞肉製品は、天然起源細胞、遺伝子導入細胞、または改変細胞を培養液中で培養することによって生産される組成物である。
【0032】
本開示の方法で用いられる細胞は、初代細胞であっても、細胞株であってもよい。本明細書で提供される方法は、培養液中のいかなる後生動物細胞にも適用可能である。通常、上記の細胞は、その組織が食用に好適であるいかなる後生動物種からも得ることができる。いくつかの実施形態では、細胞は、骨格筋組織指定の能力を示すもの(例えば、筋芽細胞)である。他の実施形態では、細胞は、骨格筋組織指定の能力を示さないものである。
【0033】
いくつかの実施形態では、細胞は、ヒトやヒト以外での食用を意図して、ヒト以外の任意の動物種由来のものである。いくつかの実施形態では、細胞は、トリ起源、ヒツジ起源、ヤギ起源、ブタ起源、ウシ起源、または魚類起源のものであり得る。いくつかの実施形態では、細胞は、家畜種、家禽種、鳥類種、狩猟鳥獣種、または水生種のものであり得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、細胞は、飼っているウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラクダ、水牛、ウサギなどの家畜から得られたものである。いくつかの実施形態では、細胞は、飼っているニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、ハトなどの家禽から得られたものである。いくつかの実施形態では、細胞は、野生のシカ、キジ類の鳥(gallinaceous fowl)、水鳥、ノウサギなどの狩猟鳥獣種から得られたものである。いくつかの実施形態では、細胞は、捕獲漁業や水産養殖業から商業用に、またはスポーツとして収穫される、水生種や半水生種から得られたものであり、例えば、ある特定の魚類、甲殻類、軟体類、頭足類、鯨類、鰐類、亀類、蛙類などが挙げられる。
【0035】
いくつかの実施形態では、細胞は、外来動物種、保存された動物種、または絶滅した動物種から得られたものである。いくつかの実施形態では、細胞は、ニワトリ(Gallus gallus)、ニワトリ(Gallus domesticus)、ウシ(Bos taurus)、イノシシ(Sous scrofa)、シチメンチョウ(Meleagris gallopavo)、マガモ(Anas platyrynchos)、タイセイヨウサケ(Salmo salar)、タイセイヨウクロマグロ(Thunnus thynnus)、ヒツジ(Ovis aries)、ウズラ属(Coturnix)、ヤギ(Capra aegagrus hircus)、またはアメリカウミザリガニ(Homarus americanus)から得られたものである。よって、例示的な本開示の無屠殺細胞肉製品としては、鳥類肉製品、鶏肉製品、鴨肉製品、および牛肉製品が挙げられる。
【0036】
いくつかの実施形態では、細胞は、初代幹細胞、自己複製幹細胞、胚性幹細胞、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、または分化転換多能性幹細胞である。
【0037】
いくつかの実施形態では、細胞は、培養肉生産用の骨格筋への当該細胞の急速且つ効率的な変換を誘導するために、遺伝的スイッチによって改変可能である。
【0038】
いくつかの実施形態では、細胞は、筋肉、または筋肉様細胞になるよう運命付けられた筋原細胞である。いくつかの実施形態では、筋原細胞は、天然に筋原性の細胞であり、例えば筋芽細胞である。天然に筋原性の細胞としては、筋芽細胞、筋細胞、衛星細胞、サイドポピュレーション細胞、筋肉由来幹細胞、間葉系幹細胞、筋原性周皮細胞、またはメソアンジオブラストが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0039】
いくつかの実施形態では、細胞は骨格筋系の細胞である。骨格筋系細胞としては、筋芽細胞、筋細胞、および骨格筋前駆細胞が挙げられ、骨格筋前駆細胞は筋原性前駆細胞とも称され、衛星細胞、サイドポピュレーション細胞、筋肉由来幹細胞、間葉系幹細胞、筋原性周皮細胞、およびメソアンジオブラストが挙げられる。
【0040】
いくつかの実施形態では、細胞は非筋原性細胞であり、そのような非筋原性細胞は筋原性となるようにプログラムすることができ、例えば、細胞は、1または複数の筋原性転写因子を発現するように改変された線維芽細胞を含んでいてもよい。例示的な実施形態において、筋原性転写因子としては、MYOD1、MYOG、MYF5、MYF6、PAX3、PAX7、これらのパラログ、オルソログ、および遺伝子バリアントが挙げられる。いくつかの実施形態では、細胞は、国際公開第2015/066377号(その全体が参照により本明細書に援用される)に記載されているように、1または複数の筋原性転写因子を発現するように改変されている。
【0041】
いくつかの実施形態では、細胞は、本明細書に記載の細胞集団の混合物を含み、例えば、共培養下の線維形成性細胞と筋原細胞の混合物を含み、例えば、共培養下の線維芽細胞と筋芽細胞の混合物を含む。いくつかの実施形態では、細胞肉の生産に使用される細胞は、浮遊共培養下の線維芽細胞と筋芽細胞の混合物である。いくつかの実施形態では、細胞肉の生産に使用される細胞は、接着共培養下の線維芽細胞と筋芽細胞の混合物である。いくつかの実施形態では、共培養下の細胞は追加の細胞種を含み、例えば、脂肪細胞、内皮細胞を含み、通常は中胚葉系由来の細胞を含む。
【0042】
いくつかの共培養実施形態では、細胞は浮遊共培養下にあり、いくつかの実施形態では、細胞は接着共培養下にあり、いくつかの実施形態では、培養処理は両方の方法を利用している。本明細書において提供される共培養物は、少なくとも線維芽細胞と筋芽細胞との混合物を含む。いくつかの実施形態では、線維芽細胞と筋芽細胞(FおよびMと表す)の比は、約5F:95M~約95F:5Mの範囲をとる。例示的な実施形態では、線維芽細胞と筋芽細胞の比は、約5F:95M、約10F:90M、約15F:85M、約20F:80M、約25F:75M、約30F:70M、約35F:65M、約40F:60M、約45F:55M、約50F:50M、約55F:45M、約60F:40M、約65F:35M、約70F:30M、約75F:25M、約80F:20M、約85F:15M、約90F:10M、または約95F:5Mである。
【0043】
いくつかの実施形態では、細胞は経路を阻害するように遺伝子改変されており、例えば、HIPPOシグナル経路を阻害するように遺伝子改変されている。その全体が参照によって本明細書に援用される、PCT出願番号PCT/US2018/031276に記載されているような、例示的なHIPPOシグナル経路を阻害する方法。
【0044】
いくつかの実施形態では、細胞は、テロメラーゼ逆転写酵素(TERT)を発現し、且つ/または、サイクリン依存性キナーゼ阻害因子(CKI)を阻害するように改変されている。いくつかの実施形態では、細胞は、国際公開第2017/124100号(その全体が参照により本明細書に援用される)に記載されているように、TERTを発現し、且つ/または、サイクリン依存性キナーゼ阻害因子を阻害するように改変されている。
【0045】
いくつかの実施形態では、細胞は、グルタミンシンテターゼ(GS)、インスリン様増殖因子(IGF)、および/またはアルブミンを発現するように改変されている。例示的なGS、IGF、および/またはアルブミンを発現するように改変する方法は、その全体が参照によって本明細書に援用される、PCT出願番号PCT/US2018/042187に記載されている。
【0046】
いくつかの実施形態では、細胞は、本明細書に記載の改変の任意の組み合わせを含んでいてもよい。
B.培養基盤
【0047】
本明細書に記載されているように、培養基盤とは、二次元または三次元食肉製品を提供するために細胞が培養(culture)または培養(cultivate)される環境を指す。
【0048】
培養基盤としては、ローラーボトル、チューブ、シリンダー、フラスコ、ペトリ皿、マルチプルウェルプレート、ディッシュ、バット、インキュベーター、バイオリアクター、および工業用発酵槽が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0049】
培養基盤それ自体が三次元的な構造または形状を有していてもよいが、培養基盤で培養される細胞は単層の細胞を形成してもよい。本開示の組成および方法は、培養基盤における後生動物細胞の三次元的増殖を促進することで、足場のいらない自己集合型の三次元細胞バイオマスを提供できる。
【0050】
三次元的培養基盤を、所望に応じて種々のサイズ、立体形状(shape)、および平面形状(form)に形成することで、筋細胞にその立体形状および平面形状をとらせて、ステーキ、テンダーロイン、スネ肉、鶏むね肉、ドラムスティック、ラムチョップ、魚の切り身、ロブスターの尾などの様々な種類の筋組織に成長・類似させてもよい。三次元的培養基盤は、経口摂取された場合でも有害になり得ないように無毒性の、天然バイオマテリアル製としてもよいし、あるいは合成バイオマテリアル製としてもよい。天然バイオマテリアルとしては、例えば、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニンなどの細胞外マトリックスを挙げることができる。合成バイオマテリアルとしては、例えば、ヒドロキシアパタイト、アルギン酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸などのコポリマーを挙げることができる。三次元的培養基盤は固相として形成されてもよいし、あるいは半固相として形成されてもよい。
【0051】
培養基盤は、いかなる規模のものにすることもでき、いかなる体積の細胞バイオマスおよび培養試薬をも支持することができる。いくつかの実施形態では、培養基盤は約10μL~約100,000Lの範囲である。例示的な実施形態では、培養基盤は、約10μL、約100μL、約1mL、約10mL、約100mL、約1L、約10L、約100L、約1000L、約10,000L、または約100,000Lである。
【0052】
いくつかの実施形態では、培養基盤は基材を含む。培養基盤は、透過性基材(例えば、生理的溶液に対して透過性)を含んでもよいし、あるいは、非透過性基材(例えば、生理的溶液に対して非透過性)を含んでもよい。基材は平ら、凹面、または凸面とすることができる。基材は、細胞成長および細胞シート付着を促進するようにざらつきのあるものとしてもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、培養基盤で細胞を培養することにより、自己の足場として働き得る細胞外マトリックス(ECM)の産生を誘導して、三次元的な細胞増殖、例えば、基材に垂直な平面上の細胞の付着、増殖、および肥厚へと方向付けることができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、培養基盤は、三次元細胞バイオマスの自己集合を促進するための外因的に追加された足場を含まない。いくつかの実施形態では、培養基盤は、ヒドロゲルや軟寒天などの外因的な足場を含まない。
C.培養条件
【0055】
細胞肉を作製するための培養条件は、通常、菌を発生させず(aseptic)、且つ菌が存在しない(sterile)条件である。
【0056】
細胞は、接着培養形式で増殖させて細胞シートを形成させることもできるし、あるいは、浮遊培養形式で増殖させて細胞ペレットを形成させることもできる。表1は、生産可能な各種食肉製品の例示的な培養法を示している。
【0057】
いくつかの実施形態では、培地は、血清などの動物由来成分を実質的に含んでいない。
【0058】
よって、いくつかの実施形態では、無屠殺細胞肉を生産する方法であって、(a)ヒト以外の生物から細胞を準備すること;(b)細胞が浮遊培養下または接着培養下で増殖される条件下で、動物由来の血清などの成分を実質的に含まない培地中で、細胞を培養すること;および、所望により、(c)当該細胞を単離し、無屠殺食肉製品を作製すること、を含む方法が、本明細書において提供される。いくつかの実施形態では、細胞は、培養下の細胞は、線維芽細胞、筋芽細胞、または線維芽細胞と筋芽細胞の共培養物を含み;いくつかの実施形態では、共培養下の細胞は、脂肪細胞、内皮細胞、通常は中胚葉系細胞などの、追加の細胞種を含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、屠殺によって得られた従来肉と比較して、延長された賞味期限および/またはより少ない微生物数を示す無屠殺食肉製品を生産する方法であって、(a)ヒト以外の生物から細胞を準備すること;(b)浮遊培養条件または接着培養条件下で、動物由来の血清などの成分を実質的に含まない培地中で、細胞を培養すること;および、所望により、(c)当該細胞を単離し、無屠殺食肉製品を作製すること、を含む方法が、本明細書において提供される。いくつかの実施形態では、細胞は、培養下の細胞は、線維芽細胞、筋芽細胞、または線維芽細胞と筋芽細胞の共培養物を含み;いくつかの実施形態では、共培養下の細胞は、脂肪細胞、内皮細胞、通常は中胚葉系細胞などの、追加の細胞種を含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、細胞は、浮遊培養下で、例えば振盪フラスコ内で、増殖され、培養産物は細胞ペレットをもたらす。いくつかの実施形態では、産物は、物理的手法(例えば、遠心分離、重力支援沈殿)、化学的手法、酵素的手法、沈降、濃縮、綿状沈殿などによって得てもよい。他の実施形態では、細胞は、接着培養下で増殖され、培養産物は細胞シートである。
D.回収および配合
【0061】
いくつかの実施形態では、本開示の無屠殺細胞肉は、バイオリアクター(または他の細胞増殖器)から回収され、配合前にその特性を評価される。いくつかの実施形態では、回収は無菌条件下で実行される(例えば、層流フード内で、無菌の手袋および作業条件を使用)。
【0062】
本開示の無屠殺細胞肉は、特定の食用の食品種、あらゆる種類の製品へと回収後配合(例えば、マニピュレーション、加工)されてもよく、例えば、ミートボール、パティ、すり身、薄い切り身、ソーセージ、ローフ、テンダー、ヒレに似た製品、ホットドック、ナゲットなどが挙げられるが、これらに限定はされない。本開示の無屠殺細胞肉配合製品としては、賞味期限をさらに延長するなどを目的とした、干し肉やスナックスティック型製品などの、味付けや乾燥を行った肉も含まれる場合がある。本開示の無屠殺細胞肉配合製品は、結着剤、香辛料、安定剤、保存剤などの追加成分(添加剤)を含んでいてもよい。例示的な実施形態では、配合は、回収された細胞肉に以下の成分のうちの1または複数を添加することを含む:必須小麦グルテン、塩化カルシウム、イオタカラギーナン、風味前駆体ミックス、トランスグルタミナーゼ酵素粉末(マルトデキストリン、酵素)、タンパク質濃縮物、タンパク質単離物、多糖類、カラギーナン、香味剤、酵母抽出物、酵素、繊維、組織化タンパク質、ペクチン、デンプン。
II.細胞肉の特徴
【0063】
従来肉(生きた動物の屠殺またはその他の死を伴う)との区別を可能にするいくつかのユニークな特徴を含む、無屠殺細胞肉製品が、本明細書において提供される。上記方法を、健康上の利点や知覚上の利点などの所望の特徴を達成するように適合させることもできる。区別のポイントとしては、延長された賞味期限、細胞肉のホルモンレベル、抗生物質レベル、および微生物汚染レベルが少なくとも含まれるが、脂肪含有量、アミノ酸プロファイル、口当たりなどのレベルの変化といった、さらなるカスタマイズが含まれる場合もある。以下、これらについて順に考察する。
A.ホルモン
【0064】
従来肉に比べて、本開示の無屠殺細胞肉は、著しく少ない量のステロイドホルモンしか含んでいない。例えば、上記の培養法を用いると、外因性ホルモンを培養液に添加する必要が無いため、得られた肉のホルモン値が低くなったり、ホルモンが存在しない。よって、いくつかの実施形態では、無屠殺細胞肉製品は、ステロイドホルモンを実質的に含んでいない(すなわち、ステロイドホルモンをほとんど含有していない)。これは、しばしば外因性ホルモンの混餌投与などが行われる、従来肉生産用に飼育された動物とは対照的である。外因性ホルモンの混餌投与などがなされていない、従来の食肉生産用に飼育された動物(例えば、鶏、家畜)であっても、単に動物の腺組織系による基底産生レベルにより、テストステロン、エストラジオール、プロゲステロンなどの様々なホルモンを有していることが指摘されている。エストラジオール、プロゲステロン、およびテストステロンは、動物の性別に依存して、かなり低いレベルで従来肉に存在する天然ホルモンである。対して、本開示の細胞肉は、より低レベルのステロイドホルモン類しか含まず、あるいは、ステロイドホルモンを実質的に含まない場合さえある。例えば、17β-エストラジオールのELISA結果からは、無屠殺鶏肉試料が従来の鶏肉よりも低い濃度を示したことが分かった。17β-エストラジオールレベルは、ELISAキットを用いて、無屠殺鶏肉の湿潤質量1kg当たり平均35ngのエストラジオールであったが、一方、地域の食料品店から得た従来の鶏肉は、湿潤質量1kg当たり90ng/kgのエストラジオールであった。
【0065】
よって、いくつかの実施形態では、本開示の細胞肉は、細胞肉の乾燥質量1kg当たり、約1μg以下、約0.5μg以下、約0.1μg以下、約0.05μg以下、約0.01μg以下、約0.005μg以下、または約0.001μg以下のステロイドホルモンしか含んでいない。いくつかの実施形態では、細胞肉は、細胞肉の乾燥質量1kg当たり、約1μg以下、約0.5μg以下、約0.1μg以下、約0.05μg以下、約0.01μg以下、約0.005μg以下、または約0.001μg以下のプロゲステロンしか含んでいない。いくつかの実施形態では、細胞肉は、細胞肉の乾燥質量1kg当たり、約1μg以下、約0.5μg以下、約0.1μg以下、約0.05μg以下、約0.01μg以下、約0.005μg以下、または約0.001μg以下のテストステロンしか含んでいない。いくつかの実施形態では、細胞肉は、細胞肉の乾燥質量1kg当たり、約0.05μg以下、約0.01μg以下、約0.005μg以下、または約0.001μg以下のエストラジオールしか含んでいない。例示的な実施形態では、細胞肉は、細胞肉の乾燥質量1kg当たり、約35ng以下のエストラジオールしか含んでいない。
B.微生物汚染
【0066】
上記培養法を用いると、無屠殺細胞肉製品は、微生物汚染を実質的に含まない。「実質的に含まない」とは、微生物や寄生虫の濃度が臨床的に有意な汚染レベル以下であること、例えば、経口摂取した場合に病気や有害な健康状態に繋がるであろうレベル以下であることを意味する。このような低汚染レベルは賞味期限の延長に繋がる。これは、屠殺が行われる予定の従来の食肉生産用に飼育された動物とは対照的である。本明細書で使用される場合、微生物汚染としては、細菌、真菌、ウイルス、原生動物、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定はされない。有害な微生物としては、大腸菌群(糞便性大腸菌)、大腸菌(E. coli)、酵母、カビ、カンピロバクター、サルモネラ、リステリア、腸内細菌科、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)複合菌株、A型インフルエンザ、B型インフルエンザ、およびブドウ球菌を挙げることができる。当業者であれば、いかなる汚染も測定可能であると理解される。
【0067】
全ての温度で、例えば、約0℃~約30℃、例えば、標準的な家庭用冷蔵庫温度(例えば、約2℃~約6℃)および室温(例えば、約22℃~約25℃)の両方で、屠殺によって得られた従来肉と比較してより少ない、本開示の無屠殺細胞肉製品に伴う微生物汚染が示されることに注目されたい。また、屠殺によって得られた従来肉と比較してより少ない本開示の無屠殺細胞肉製品に伴う微生物汚染が、回収後の少なくとも3日間、少なくとも7日間、少なくとも14日間、少なくとも30日間、または少なくとも148日間示され、回収後の少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約5週間、少なくとも約6週間、少なくとも約7週間、少なくとも約8週間、少なくとも約9週間、少なくとも約10週間、少なくとも約11週間、少なくとも約12週間、少なくとも約13週間、少なくとも約14週間、少なくとも約15週間、少なくとも約16週間、少なくとも約17週間、少なくとも約18週間、少なくとも約19週間、少なくとも約20週間、、それ以上の週の期間示されることにも注目されたい。無菌条件下および非無菌条件下の両方でより少ない汚染が認められ、また、回収後の未配合時に肉が測定された場合、および、回収後の配合後に肉が測定された場合に、より少ない汚染が認められることにも注目されたい。
【0068】
さらに、培養増殖された細胞は、動物全身の細胞に感染し、調理不十分の肉の消費を通じてヒトに運ばれる、サナダムシなどの寄生虫を実質的に含まない場合がある。
【0069】
食肉製品が生物学的生産ラインを離れる際、食肉製品のパッケージングに無菌法が採用されてもよい。このような品質保証は、当該技術分野において既知の、微生物や化学物質の標準的な測定法によって監視されてもよい。
【0070】
従来肉に比べて、本開示の無屠殺細胞肉は、著しく少ない微生物汚染量しか含んでいない。実施例3、実施例9、表12、および表13では、無屠殺細胞肉における汚染と、屠殺によって得られた従来の食料品店の食肉における汚染とが比較されている。従来の鴨肉と、とりわけ従来の牛肉は、微生物汚染量が著しく多い。図3は、細菌コロニーを示す代表的なプレートを示しており、具体的には、細胞培養鴨肉、従来の牛肉、および従来の鶏肉における結果を示している。
【0071】
よって、いくつかの実施形態では、屠殺によって得られた従来肉と比較して少ない微生物汚染数を示し、上記より少ない微生物汚染数が回収後少なくとも3日間は示される、食用の無屠殺食肉製品が、本明細書において提供される。
【0072】
いくつかの実施形態では、より少ない微生物汚染数が、回収後に少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも10日間、少なくとも14日間、少なくとも15日間、少なくとも20日間、少なくとも21日間、少なくとも25日間、少なくとも30日間、少なくとも40日間、少なくとも50日間、少なくとも60日間、少なくとも70日間、少なくとも80日間、少なくとも90日間、少なくとも100日間、少なくとも110日間、少なくとも120日間、少なくとも130日間、少なくとも140日間、少なくとも148日間、少なくとも150日間、少なくとも160日間、少なくとも170日間、少なくとも180日間、少なくとも190日間、少なくとも200日間、少なくとも210日間、少なくとも220日間、少なくとも230日間、少なくとも240日間、または少なくとも250日間は示される。
【0073】
いくつかの実施形態では、微生物汚染数は回収後の配合前に求められる。他の実施形態では、微生物汚染数は配合後に求められる。
【0074】
いくつかの実施形態では、無屠殺食肉製品は、非無菌条件下で維持された場合でも、より少ない微生物汚染数を示す。
【0075】
いくつかの実施形態では、微生物汚染数は、総微生物数(TC)、大腸菌/大腸菌群数(EC)、大腸菌菌数、大腸菌群数、または大腸菌/大腸菌群数を測定することによって求められる。いくつかの実施形態では、微生物汚染数は、カビ、酵母、サルモネラ、リステリア、およびブドウ球菌を含むがこれらに限定はされない他の微生物の数を測定することによって求められる。
【0076】
いくつかの実施形態では、無屠殺食肉製品は以下を含む:
(a)FDAのBAM法(bacteriological analytical manual)に従って求められた、湿潤質量1g当たり100cfus以下の微生物汚染;
(b)FDAのBAM法に従って求められた、湿潤質量1g当たり10cfus以下の大腸菌群汚染;
(c)FDAのBAM法に従って求められた、湿潤質量1g当たり10cfus以下の大腸菌汚染;
(d)FDAのBAM法に従って求められた、湿潤質量1g当たり10cfus以下の酵母汚染;
(e)FDAのBAM法に従って求められた、湿潤質量1g当たり10cfus以下のカビ汚染;
(f)FDAのBAM法に従って求められた、検出可能なレベルでない、湿潤質量25g当たりのサルモネラ汚染;
(g)AOAC2004.06法に従って求められた、検出可能なレベルでない、湿潤質量25g当たりのリステリア汚染;
(h)AOAC2003.07法に従って求められた、湿潤質量1g当たり10cfus以下のブドウ球菌汚染;および/または
(i) CompactDryプロトコルに従って求められた、湿潤質量1g当たり55cfus以下の総好気性微生物数汚染。
【0077】
いくつかの実施形態では、無屠殺食肉製品は無屠殺の鶏肉、鴨肉、または牛肉を含み、従来肉は屠殺によって得られた鶏肉、鴨肉、または牛肉を含む。
【0078】
実施例3および実施例9は、賞味期限および微生物汚染を観察した種々の例示的なプロトコルを示している。当業者であれば、微生物汚染を測定するための方法がいくつか存在することを理解しているだろう。これらは少なくとも以下のテキストによって提供される:(1)FDA BAM法(Bacteriological Analytical Manual)(第8版、A改定/1998年)および(2)USDA食品安全検査局微生物学検査ガイドブック。また、AOACによっても、微生物汚染を求めるための少なくとも以下の検査が提供されている:
a.腸内細菌科、AOAC2003.01
b.大腸菌および大腸菌群、AOAC998.08
c.酵母およびカビ、FDA BAM Ch.18
d.リステリア、AOAC 2004.06
e.サルモネラ(25g)、AOAC2011.03
f.カンピロバクター、AOAC RI 051201
g.AOAC 2003.07-ブドウ球菌
h.好気性菌平板菌数、AOAC990.12
i.サルモネラ、AOAC2013.02、RI PTM 081201
j.リステリア属種、AOAC-RI PTM#081401
k.好気性菌数、AOAC990.12
l.大腸菌群および大腸菌、AOAC991.14
m.Y&M数、AOAC2014.05

C.抗生物質
【0079】
従来肉に比べて、本開示の無屠殺細胞肉は、著しく少ない量の抗生物質しか含んでおらず、あるいは抗生物質を実質的に含んでおらず、あるいは抗生物質を全く含んでいない。例えば、上記の培養法を用いると、培養液中の抗生物質の使用を、制御または排除することができるため、得られる細胞肉中の抗生物質レベルが、より低くなるか存在しなくなる。よって、いくつかの実施形態では、無屠殺細胞肉製品は、抗生物質を実質的に含んでいない(すなわち、抗生物質をほとんど含有していない)。これは、しばしば外因性の抗生物質の混餌投与などが行われている、従来の食肉生産用に飼育された動物とは対照的である。
【0080】
よって、いくつかの実施形態では、本開示の細胞肉は、細胞肉の乾燥質量1kg当たり約100μg以下の抗生物質、細胞肉の乾燥質量1kg当たり約90μg以下の抗生物質、細胞肉の乾燥質量1kg当たり約80μg以下の抗生物質、細胞肉の乾燥質量1kg当たり約70μg以下の抗生物質、細胞肉の乾燥質量1kg当たり約60μg以下の抗生物質、細胞肉の乾燥質量1kg当たり約50μg以下の抗生物質、細胞肉の乾燥質量1kg当たり約40μg以下の抗生物質、細胞肉の乾燥質量1kg当たり約30μg以下の抗生物質、細胞肉の乾燥質量1kg当たり約20μg以下の抗生物質、細胞肉の乾燥質量1kg当たり約10μg以下の抗生物質、細胞肉の乾燥質量1kg当たり約5μg以下の抗生物質、細胞肉の乾燥質量1kg当たり約1μg以下の抗生物質、細胞肉の乾燥質量1kg当たり約0.5μg以下の抗生物質、細胞肉の乾燥質量1kg当たり約0.1μg以下の抗生物質、細胞肉の乾燥質量1kg当たり約0.05μg以下の抗生物質、または細胞肉の乾燥質量1kg当たり約0.01μg/kg以下の抗生物質を含む。
D.脂質
【0081】
従来肉に比べて、本開示の無屠殺細胞肉は、より少ない平均総脂質(脂肪)含有量を含む。細胞肉は通常、約0.5%~約5.0%の平均総脂肪含有量を有し、一方、従来肉中の脂肪酸含有量はばらつきが大きく、肉の部位に応じて約3%~約18%の範囲を取り得る。
【0082】
表14は、いくつかの例示的な無屠殺細胞肉試料についての総脂肪酸分析を示している。図4は、例示的な無屠殺細胞肉試料における、飽和脂肪酸、一不飽和脂肪酸、および多価不飽和脂肪酸についての、総脂肪酸組成を示している。
【0083】
よって、いくつかの実施形態では、本開示の細胞肉は、細胞肉の総湿潤質量のうちの%として測定した場合、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1.0%、約1.1%、約1.2%、約1.3%、約1.4%、約1.5%、約1.6%、約1.7%、約1.8%、約1.9%、約2.0%、約2.1%、約2.2%、約2.3%、約2.4%、約2.5%、約2.6%、約2.7%、約2.8%、約2.9%、約3.0%、約3.1%、約3.2%、約3.3%、約3.4%、約3.5%、約3.6%、約3.7%、約3.8%、約3.9%、約4.0%、約4.1%、約4.2%、約4.3%、約4.4%、約4.5%、約4.6%、約4.7%、約4.8%、約4.9%、または約5.0%の平均総脂肪含有量を含む。
【0084】
いくつかの例示的な実施形態では、細胞肉は、以下の脂肪酸クラスのうちの1または複数を表示された含量(総脂肪酸に対する当該クラスの%として表現)で含む:
a.約10%~約60%、例えば、約20%~約50%、約30%~約40%、約10%~約50%、約10%~約40%、約10%~約30%、および/または約10%~約20%の飽和脂肪酸含有量、
b.約10%~約60%、例えば、約20%~約50%、約30%~約40%、約10%~約50%、約10%~約40%、約10%~約30%、および/または約10%~約20%の一不飽和脂肪酸含有量、
c.約1%~約50%、例えば、約10%~約40%、約20%~約30%、約30%~約20%、および/または約40%~約10%の多価不飽和脂肪酸含有量。
【0085】
いくつかの実施形態では、本開示の細胞肉は、ω6脂肪酸クラス:ω3脂肪酸クラスを約2:1~約18:1の比で含む。(α-リノレン酸(ALA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、およびドコサヘキサエン酸(DHA)が主要なω3脂肪酸である)。よって、いくつかの実施形態では、本開示の細胞肉は、ω6脂肪酸クラス:ω3脂肪酸クラスを約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、約11:1、約12:1、約13:1、約14:1、約15:1、約16:1、約17:1、または約18:1の比で含む。一方、従来肉、例えば従来の鶏肉は、ω6脂肪酸クラス:ω3脂肪酸クラスを18超:1の比で含む。
【0086】
細胞肉の脂肪含有量が少ないほど、従来肉と比較して、カロリー量が少なくなり、ω6:ω3比が小さくなり、さらに、他の関連の健康上の利点が得られる。
【0087】
無屠殺細胞肉生産は、所望のプロファイルを達成するようにさらにカスタマイズすることができる。回収後の乾燥によって、脂肪含有量および/または他の固体成分をさらに増加することができる。増殖培地中の脂質含有量を増加することでも、脂肪含有量を増加することができる。
【0088】
本開示の細胞肉の風味および芳香は生産時に変えることができる。一般に、食肉中の不飽和脂肪酸の割合が高いほど、不飽和揮発性アルデヒドが多くなるが、そのような化合物が、これらの種の特有の芳香を決定する上で重要である可能性がある。
【0089】
よって、本明細書で提供される方法は、少なくとも以下の機構を通じて、所望の風味特徴やΩ3:Ω6比などの脂肪酸プロファイルを達成するように、特定の脂肪酸プロファイルを変えることができる:
a.いくつかの実施形態では、培地中の血清の存在が、脂肪酸プロファイルに影響を与える可能性がある。図7は、無血清培地中と血清含有培地中の脂肪酸の割合の比較を示している。
b.いくつかの実施形態では、様々な供給源の血清を培養液中に用いることで、無屠殺細胞肉製品で様々な脂肪酸プロファイルを達成することができる(図8)。
c.いくつかの実施形態では、ポリクローナルな集団から単離されたクローンの使用を利用することでも、脂肪酸プロファイルを変化させることができる(図9)。
d.いくつかの実施形態では、脂肪酸プロファイルは、培地の脂肪酸組成を変化させることによって、または、脂肪酸組成を変化させるために添加される化合物を含む、培地成分の追加によって変更され、上記化合物としては、作動薬(例えば、LXRβの作動薬)、またはリボフラビンなどであるが、これらに限定はさらない。このような培地への調整は脂肪プロファイルに影響を与える可能性がある(図10図11)。
e.いくつかの実施形態では、脂肪酸プロファイルは、培養下の細胞の組成によって変更される。よって、いくつかの実施形態では、培養下の線維芽細胞、培養下の筋芽細胞、または共培養下の線維芽細胞/筋芽細胞は、脂肪細胞を含むようにさらに変更され得る。
【0090】
図9では、共培養法(表1の方法15に記載)を用い、特定の生化学的経路を調節するための各種化合物のレベルを増強させた培地を用いて、組織(細胞シート)を形成させた。ビタミンであり共通の補助因子である、リボフラビンを、細胞培地中に段階的に添加した。脂肪酸濃度に対する全体的な効果が示される。
【0091】
また、本開示の細胞肉中の脂肪酸レベルが低いことは、例えば当該食肉中の脂肪酸酸化産物のレベルを低下させるなどにより、当該食肉の賞味期限の延長を促す。
E.アミノ酸
【0092】
本開示の無屠殺細胞肉製品は、従来の食肉製品と類似性を有することも望ましい。本開示の無屠殺細胞肉製品は、通常、乾燥質量100g当たり約50重量g~約95重量gのアミノ酸を含んでいる。例えば、本開示の細胞肉は、以下のアミノ酸のうちの1または複数を表示された含量(100gの総アミノ酸に対するアミノ酸のg数として表現される含量)で含む:約1g~約2.2gのトリプトファン、約4.6gおよび6.5gのスレオニン、約3.8g~約5gのイソロイシン、約6.1g~約8.9gのロイシン、約5.7g~約8.8gのリジン、約0.14g~約3.0gのメチオニン、約1.5g~約1.8gのシステイン、約3.7g~約4.8gのフェニルアラニン、約3.0g~約5.2gのチロシン、約4.8g~約6.1gのバリン、約7.0g~約8.0gのアルギニン、約2.5g~約4gのヒスチジン、約5.0g~約6.3gのアラニン、約8.6g~約10.4gのアスパラギン酸、約12.5g~約14.6gのグルタミン酸、約4.6g~約9.8gのグリシン、約4.6g~約6.8gのプロリン、4.4g~5.3gのセリン、および/または約0.0g~4.0gのヒドロキシプロリン。
【0093】
いくつかの実施形態では、従来の均等物と比較して、線維芽細胞単一培養物から作製された細胞肉中のヒドロキシプロリンレベルは上昇している。いかなる理論または機構にも捕らわれるものではないが、このようなヒドロキシプロリンレベルの増加は、線維芽細胞によって細胞外マトリックス成分が分泌された結果、コラーゲン形成レベルが高くなっていることに起因している可能性がある。いくつかの実施形態では、筋芽細胞(MB)がポリクローナルな細胞混合物(筋芽細胞の混合集団)またはモノクローナル筋芽細胞混合物(混合集団から単離され増殖された単一細胞)として培養系に添加された場合、ヒドロキシプロリン濃度が従来肉のヒドロキシプロリン濃度に近づくように減少していることがある。なお、本明細書において提供される実施形態では、食肉製品の食感を変えるために、ヒドロキシプロリン濃度を変更している場合もある。
F.ビタミンE含有量
【0094】
従来肉に比べて、本開示の無屠殺細胞肉は、より高いビタミンE(α-トコフェロール)含有量を含む。いくつかの実施形態では、本開示の無屠殺細胞肉製品は、細胞肉の湿潤質量100g当たり、少なくとも約0.5mg、少なくとも約0.6mg、少なくとも約0.7mg、少なくとも約0.8mg、少なくとも約0.9mg、または少なくとも約1.0mgのビタミンEを含む。
G.水分含有量
【0095】
本開示の無屠殺細胞肉製品は、通常、約65%~約95%の水分含有量を有する。いくつかの実施形態では、水分含有量は回収後の配合前に測定される。他の実施形態では、水分含有量は配合後に測定される。
H.細胞肉の構造
【0096】
無屠殺細胞肉と従来肉の間にはさらなる区別のポイントがある。純粋に肉目的で増殖された細胞(本明細書に記載されているような)は、移植と機能を可能にする機能的な特徴を有する必要はないが、場合によっては、機能性を付与する成分を含むようにさらなる操作を加えてもよい。
【0097】
細胞肉は、含めるようにマニピュレーションされていない限り、静脈および動脈などの血管組織を含まないが、一方、従来肉は、係る脈管構造を含んでおり、脈管構造中に存在する血液を含有する。すなわち、いくつかの実施形態では、細胞肉は、いかなる脈管構造も実質的に含んでいない。本明細書において通常企図されていることであるが、脈管構造は血液および/またはリンパ液を含む。
【0098】
同様に、細胞肉は、筋肉組織または筋肉様組織から構成されるが、含めるようにマニピュレーションされていない限りは、機能する筋組織を含まない。すなわち、いくつかの実施形態では、細胞肉は、機能する筋組織を含まない。
【0099】
なお、そうすることが望ましい場合、脈管構造(血液、リンパ液などを含み得る)および機能的な筋組織などの特徴を、細胞肉にさらに組み込んでもよい。例えば、血管の新生をもたらすプロトコルを利用することで、本開示の無屠殺食肉製品に脈管構造を導入し、当該食肉製品への灌流を増大させてもよい。
I.風味
【0100】
食肉の脂肪酸組成は、一般に、全体的な食肉の品質に作用し、食肉の風味、肉汁の多さ、および柔らかさに影響を及ぼす(Woodら、Manipulating meat quality and composition、Proceedings of the Nutrition Society、1999年;58巻:pp363~370、DOI:org/10.1017/S009665199000488)。MUFAオレイン酸(18:1、ω9)およびMUFAパルミトレイン酸(16:1、ω9)などの特定の脂肪酸は、しばしば良好な風味と第一に関連付けられる脂肪酸である。
【0101】
一般に脂肪の多い食肉ほど味が良くなるが、脂肪含有量が多いほど、食肉の脂肪プロファイルが有害となるリスクが高まる。食肉の脂肪プロファイルは、消費者の好みを左右するだけでなく、特有の種の識別も確立する重要な感覚刺激特性を駆動する。しかし、ある特定の種類の脂肪は、心疾患などの有害な健康事象のリスク増大と関連している。したがって、全体的な細胞培地組成、培養液への脂肪酸補充、および/または筋芽細胞/線維芽細胞/脂肪細胞/内皮細胞/他の中胚葉系細胞の比率を、培養液中で制御することにより、最適な風味および健康効果を有する無屠殺細胞肉製品を得ることができる。例示的な実施形態では、脂肪細胞の比率が共培養物中で変更される。特定の筋原細胞クローンを選別すること、最初に培養液中に播種される細胞の比率を調節すること、並びに/または、所望により増殖因子などの細胞に作用する培地成分の濃度および比率を変化させることによって、制御は達成すればよい。MUFAオレイン酸(18:1、ω9)のような特定の脂肪酸は、培地組成および栄養設計において濃縮することができる。
J.補充
【0102】
他の実施形態では、食肉の栄養価を増加させるために、ビタミンなどの他の栄養分を追加してもよい。例えば、この栄養分の追加は、増殖培地への栄養分の外からの添加により、または遺伝子操作法により、達成すればよい。
K.調理後の噛み応えおよび硬さ
【0103】
本開示の無屠殺細胞肉製品は、所望の調理後噛み応え(cooked bite force)や調理後硬さなどの、ある特定の食感特性を達成するように変更することができる。表17は、例示的な細胞肉試料の調理後の食感を示している。図13は、筋芽細胞:線維芽細胞の共培養または線維芽細胞単一培養下の細胞から作製された例示的な食肉の調理後硬さを示している。
【0104】
本開示の細胞肉の調理後噛み応えは、約100g~5000gの範囲をとる可能性がある。いくつかの例示的な実施形態では、培養下の接着細胞から回収された場合、本開示の細胞肉の調理後噛み応えは、約450g~約3000gの範囲をとる。いくつかの実施形態では、培養下の接着細胞から回収された場合の、本開示の細胞肉の調理後硬さは、約2500g~約2000gの範囲をとる。いくつかの実施形態では、本開示の細胞肉の調理後噛み応えおよび/または調理後硬さは、例えば浮遊培養液中で増殖された細胞から食肉が回収されるいくつかの実施形態では、検出限界以下である。
L.賞味期限
【0105】
食肉および食肉製品のかなりの部分を毎年腐らせてしまっている。消費者レベル、小売業者レベル、および飲食物提供サービスレベルで、およそ35億kgの家禽肉および食肉が廃棄されていると推定され、経済的および環境的にかなりの影響がある(Kantorら(1997年))。このロスのかなりの部分が微生物腐敗によるものである。
【0106】
従来肉は腐敗しやすく、比較的短い貯蔵安定性(shelf life stability)(本明細書では同義的に単に「賞味期限」と呼ぶ)を有する。従来肉の組成、並びに食肉の屠殺および回収に用いられる条件は、一般に、糞便性細菌(例えば、大腸菌群細菌)を含む様々な微生物にとっての都合のよい増殖条件をつくり出す。また、従来肉は化学的活性、酸化的活性、および酵素活性によっても非常に傷みやすい。よって、本明細書で使用される場合、いくつかの実施形態では、賞味期限とは、食物がおいしくありながら食用に適した期間であり、例えば、摂取後に嘔吐、下痢、悪心などのいかなる疾患も有害な健康影響も引き起こさず、且つ、腐敗の過程(例えば、微生物誘導性の、分子的な腐敗、物理的な崩壊)が始まっていることを示唆する芳香を発さない期間である。
【0107】
理論や機構に制限されるものではないが、一般に、微生物の増殖、酸化、および酵素的な自己分解が、食肉の痛みの原因となり賞味期限を低減させる3つの機構と見なされる。食肉の脂肪、タンパク質、および炭水化物が分解されると、異味異臭が生じることとなり、これらの異味異臭は、食肉を、ヒトが消費する上で不快なものにする。種および回収方法によっては、従来の食肉製品は、比較的短い保存期間後でも、消費するのに安全ではない。例えば、鶏肉は購入後数日以内に調理されるべきである。調理後の家禽肉を安全に保存できるのは、冷蔵庫内ではたったの3~5日間程度であり、冷凍庫で3~5か月間程度である。したがって、食肉の賞味期限を延長し、食肉の栄養価、食感、および風味を維持するために、食肉の痛みを制御することが必要である。
【0108】
従来肉の賞味期限は、保存剤の添加、酸洗、加塩、脱水、缶詰化、発酵、または暗所での保管を含む様々な処理により増加させている場合が多い。本開示の細胞肉は、これらの方法のいずれも用いずに延長された賞味期限を示すが、これらの方法を加えれば、賞味期限をさらにもっと延長できることを述べておく。よって、いくつかの実施形態では、本開示の細胞肉は、屠殺によって得られた従来肉と比較して賞味期限の延長を表す測定結果を示し、この場合の従来肉は未加工のものである(例えば、上記で挙げられたもののような、処理のさらなる適用は行っていない)。
【0109】
無屠殺細胞肉は、その生産方法および組成によって、従来の食肉製品と比較して延長された賞味期限を有し、貯蔵安定性を得るための保存剤の添加を必要としない、食肉製品をもたらす。細胞肉の組成は、異味異臭がほとんど検出されないようなものである。加えて、細胞肉を生産するのに用いられた生産方法は、清浄且つ無菌の条件を必要とする。これらの条件によって、回収後の産物および後の食品加工の両方で、微生物細胞数を少なくすることができる。これらの複数の要因が細胞肉の貯蔵安定性の延長に寄与している。
【0110】
本開示の細胞肉の、損傷に起因する賞味期限は、従来肉と比較して延長されている。このことは、全ての温度で、例えば、室温(約22℃~約26℃)、および家庭用冷蔵庫温度(例えば、約2℃~約4℃)に近いさらなる低温の両方で事実である。延長された賞味期限は、汚染の低減、細胞肉の組成、細胞肉の分解の低減、並びに、細胞肉の色、損傷、匂い、および風味の変化の低速化と関連しており、食肉が食用に維持されることを可能にする。
【0111】
理論や機構に束縛されるものではないが、従来肉と比較して細胞肉中の総脂肪酸含有量が減少することで、脂肪酸酸化生成物のレベルが低下し、食肉の色、匂い、または風味の変化が低速化する。酸化的酸敗は空気中の酸素による分解と関連している。不飽和脂肪酸の二重結合は、酸素分子を伴うフリーラジカル反応によって切断される可能性がある。この反応は、悪臭があり且つ高揮発性のアルデヒド類およびケトン類が放出される原因となる。酸化は主に不飽和脂肪によって生じる。例えば、食肉が冷蔵下や冷凍状態で維持されている場合であっても、多価不飽和脂肪は酸化し続けてゆっくりと酸敗していく可能性がある。脂肪の酸化プロセスは、動物が屠殺され、筋肉、筋肉内脂肪、筋間脂肪、および表面脂肪が空気の酸素に暴露されるようになった直後から始まる。
【0112】
理論や機構に束縛されるものではないが、従来肉と比較して細胞肉中の脂肪分解酵素数が減少することで、脂肪酸分解のレベルが低下し、食肉の色、匂い、または風味の変化が低速化する。
【0113】
理論や機構に束縛されるものではないが、従来肉と比較して細胞肉中の脈管構造が存在しないことで、酸素がほとんど存在せず、その結果、脂肪酸酸化レベルと好気性菌増殖レベルが低下し、微生物汚染レベルが低下し、食肉の色、匂い、香り、または風味の変化が低速化する。
【0114】
理論や機構に束縛されるものではないが、従来肉と比較して細胞肉中に機能的な筋組織(例えば、ミオグロビン)が存在しないことで、酸素がほとんど存在せず、その結果、脂肪酸酸化レベルと好気性菌増殖レベルが低下し、微生物汚染レベルが低下し、食肉の色、匂い、または風味の変化が低速化する。
【0115】
理論や機構に束縛されるものではないが、従来肉と比較して細胞肉中のビタミンEの含有量が高いことから、抗酸化活性のレベルが高くなり、その結果、脂肪酸酸化から保護され、食肉の色、匂い、または風味の変化が低速化する。食肉中の脂質の酸化は、脂肪酸組成、抗酸化ビタミンE(α-トコフェロール)のレベル、および筋中に存在する遊離鉄などのプロオキシダントを含む、いくつかの要素に依存している。
【0116】
よって、いくつかの実施形態では、従来肉と比較して、無屠殺細胞肉製品の賞味期限は、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約4.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約5.5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約6.5倍、少なくとも約7倍、少なくとも約7.5倍、少なくとも約8倍、少なくとも約8.5倍、少なくとも約9倍、少なくとも約9.5倍、または少なくとも約10倍延長されている。賞味期限の延長は、約2℃と約26℃の両方、および当該端点を含むそれらの間の全ての温度において確認される。
【0117】
いくつかの実施形態では、延長された賞味期限を示し、屠殺によって得られた従来肉と比較して賞味期限が延長され、賞味期限が全ての温度で延長された、食用の無屠殺細胞肉製品が、本明細書において提供される。いくつかの実施形態では、延長された賞味期限は、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも10日間、少なくとも14日間、少なくとも15日間、少なくとも20日間、少なくとも21日間、少なくとも25日間、少なくとも30日間、少なくとも40日間、少なくとも50日間、少なくとも60日間、少なくとも70日間、少なくとも80日間、少なくとも90日間、少なくとも100日間、少なくとも110日間、少なくとも120日間、少なくとも130日間、少なくとも140日間、少なくとも148日間、少なくとも150日間、少なくとも160日間、少なくとも170日間、少なくとも180日間、少なくとも190日間、少なくとも200日間、少なくとも210日間、少なくとも220日間、少なくとも230日間、少なくとも240日間、または少なくとも250日間は維持される。いくつかの実施形態では、延長された賞味期限は、約22℃~26℃において、回収後に少なくとも3日間、少なくとも7日間、少なくとも14日間、少なくとも30日間、または少なくとも148日間は維持される。いくつかの実施形態では、賞味期限は回収後の配合前に求められる。いくつかの実施形態では、賞味期限は配合後に求められる。いくつかの実施形態では、賞味期限は、約2℃~約6℃および約22℃~26℃の両方において、非無菌条件下で延長される。いくつかの実施形態では、賞味期限は、総微生物数(TC)、大腸菌/大腸菌群(EC)、大腸菌数、または大腸菌群数を測定することによって求められる。
【0118】
いくつかの実施形態では、屠殺によって得られた従来肉のTC測定値は、無屠殺食肉製品のTC測定値よりも少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、または少なくとも25倍高く、従来肉の賞味期限を縮めている。
【0119】
いくつかの例示的な実施形態では、無屠殺細胞肉製品は、賞味期限の延長が示されることに部分的に寄与している、以下の特徴のうちの1または複数を含む:
(a)FDAのBAM法に従って求められた、検出可能なレベルでない、または湿潤質量1g当たり1cfu以下、10cfu以下、50cfu以下、もしくは100cfu以下の微生物汚染;
(b)FDAのBAM法に従って求められた、検出可能なレベルでない、または湿潤質量1g当たり1cfu以下、10cfu以下、50cfu以下、もしくは100cfu以下の大腸菌群汚染;
(c)FDAのBAM法に従って求められた、検出可能なレベルでない、または湿潤質量1g当たり1cfu以下、10cfu以下、50cfu以下、もしくは100cfu以下の大腸菌汚染;
(d)FDAのBAM法に従って求められた、検出可能なレベルでない、または湿潤質量1g当たり1cfu以下、10cfu以下、50cfu以下、もしくは100cfu以下の酵母汚染;
(e)FDAのBAM法に従って求められた、検出可能なレベルでない、または湿潤質量1g当たり1cfu以下、10cfu以下、50cfu以下、もしくは100cfu以下のカビ汚染;
(f)FDAのBAM法に従って求められた、検出可能なレベルでない、または湿潤質量1g当たり1cfu以下、10cfu以下、50cfu以下、もしくは100cfu以下のサルモネラ汚染;
(g)AOAC2004.06法に従って求められた、検出可能なレベルでない、または湿潤質量1g当たり1cfu以下、10cfu以下、50cfu以下、もしくは100cfu以下のリステリア汚染;
(h)AOAC2003.07法に従って求められた、検出可能なレベルでない、または湿潤質量1g当たり1cfu以下、10cfu以下、50cfu以下、もしくは100cfu以下のブドウ球菌汚染;および/または
(i)CompactDryプロトコルに従って求められた、検出可能なレベルでない、または湿潤質量1g当たり1cfu以下、10cfu以下、50cfu以下、もしくは100cfu以下 55cfu以下の総好気性微生物数汚染。
【0120】
いくつかの実施形態では、延長された賞味期限を示す無屠殺食肉製品は無屠殺の鶏肉、鴨肉、または牛肉を含み、従来肉は屠殺によって得られた鶏肉、鴨肉、または牛肉を含む。
【0121】
実施例9は、賞味期限および微生物汚染を観察した種々の例示的なプロトコルを考察している。当業者であれば、賞味期限、および微生物汚染などの賞味期限と関連したパラメーターを測定するための方法がいくつか存在することを理解しているだろう。これらは少なくとも以下のテキストによって提供される:(1)FDA BAM法(Bacteriological Analytical Manual)(第8版、A改定/1998年)および(2)USDA食品安全検査局微生物学検査ガイドブック。また、AOACによっても、微生物汚染を求めるための少なくとも以下の検査が提供されている:
a)腸内細菌科、AOAC2003.01
b)大腸菌および大腸菌群、AOAC998.08
c)酵母およびカビ、FDA BAM Ch.18
d)リステリア、AOAC2004.06
e)サルモネラ(25g)、AOAC2011.03
f)カンピロバクター、AOAC RI 051201
g)AOAC 2003.07-ブドウ球菌
h)好気性菌平板菌数、AOAC990.12
i)サルモネラ、AOAC2013.02、RI PTM 081201
j)リステリア属種、AOAC-RI PTM#081401
k)好気性菌数、AOAC990.12
l)大腸菌群および大腸菌、AOAC991.14
m)Y&M数、AOAC2014.05
【0122】
賞味期限の指標となる、追加のエンドポイントの検査を行ってもよい。これらのものとしては、酸敗検査;加速賞味期限試験;水分、pH、および水分活性の変動性;様々な保管条件下での製品安定性;微生物的、化学的、および物理的な検査;知覚評価;並びに、プロバイオティクス的な安定性が挙げられるが、これらに限定はされない。
III.実施形態の列挙
【0123】
本発明は、以下に列挙された、一連の例示的な実施形態群を参照して規定されてもよい:
群1
【0124】
実施形態1
以下の特徴のうちの少なくとも2つを含む、細胞肉製品:
a.細胞肉製品の乾燥質量1kg当たり約1μg以下のステロイドホルモン;
b.細胞肉製品の乾燥質量1kg当たり約100μg以下の抗生物質;
c.細胞肉製品の湿潤質量1g当たり約100cfu以下の微生物汚染;
d.細胞肉製品の湿潤質量の%として算出した場合に約0.5%~約5.0%の平均総脂肪含有量;
e.脈管構造を実質的に含まない;および
f.従来肉と比較して賞味期限において少なくとも2倍の延長を示す。
【0125】
実施形態2
上記特徴(a)~(f)のうちの3つ、4つ、5つ、または6つを少なくとも含む、実施形態1の細胞肉製品。
【0126】
実施形態3
細胞肉の乾燥質量1kg当たり約1μg以下のプロゲステロンしか含まない、実施形態1~2に記載の細胞肉製品。
【0127】
実施形態4
細胞肉の乾燥質量1kg当たり約1μg以下のテストステロンしか含まない、実施形態1~3に記載の細胞肉製品。
【0128】
実施形態5
細胞肉の乾燥質量1kg当たり約35ng以下のエストラジオールしか含まない、実施形態1~4のいずれか1つに記載の細胞肉製品。
【0129】
実施形態6
乾燥質量100g当たり約50重量g~約90重量gのアミノ酸を含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の細胞肉製品。
【0130】
実施形態7
以下のアミノ酸のうちの1または複数を表示された含量(100gの総アミノ酸に対するアミノ酸のg数として表現)で含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の細胞肉製品:約1g~約2.2gのトリプトファン、約4.6gおよび6.5gのスレオニン、約3.8g~約5gのイソロイシン、約6.1g~約8.9gのロイシン、約5.7g~約8.8gのリジン、約0.14g~約3.0gのメチオニン、約1.5g~約1.8gのシステイン、約3.7g~約4.8gのフェニルアラニン、約3.0g~約5.2gのチロシン、約4.8g~約6.1gのバリン、約7.0g~約8.0gのアルギニン、約2.5g~約4gのヒスチジン、約5.0g~約6.3gのアラニン、約8.6g~約10.4gのアスパラギン酸、約12.5g~約14.6gのグルタミン酸、約4.6g~約9.8gのグリシン、約4.6g~約6.8gのプロリン、約4.4g~約5.3gのセリン、および/または約0.0g~4.0gのヒドロキシプロリン。
【0131】
実施形態8
約65%~約95%の水分含有量を有する、実施形態1~7のいずれか1つに記載の細胞肉製品。
【0132】
実施形態9
水分含有量が回収後の配合前に測定される、実施形態8に記載の細胞肉製品。
【0133】
実施形態10
水分含有量が配合および脱水処理後の、各成分の添加前に測定される、実施形態8の細胞肉製品。
【0134】
実施形態11
細胞培養鳥類肉製品である、実施形態1~10のいずれか1つに記載の細胞肉製品。
【0135】
実施形態12
細胞培養鳥類肉製品が鶏細胞肉製品である、実施形態11の細胞肉製品。
【0136】
実施形態13
細胞培養鳥類肉製品が鴨細胞肉製品である、実施形態11の細胞肉製品。
【0137】
実施形態14
細胞培養牛肉製品である、実施形態1~10のいずれか1つに記載の細胞肉製品。
【0138】
実施形態15
細胞ペレットである、実施形態1~14のいずれか1つに記載の細胞肉製品。
【0139】
実施形態16
細胞シートである、実施形態1~14のいずれか1つに記載の細胞肉製品。
【0140】
実施形態17
培養下の線維芽細胞から作製された、実施形態1~16のいずれか1つに記載の細胞肉製品。
【0141】
実施形態18
培養下の筋芽細胞から作製された、実施形態1~16のいずれか1つに記載の細胞肉製品。
【0142】
実施形態19
培養下の線維芽細胞および筋芽細胞を含む共培養物から作製された、実施形態1~16のいずれか1つに記載の細胞肉製品。
【0143】
実施形態20
培養物が脂肪細胞、内皮細胞、および/または中胚葉系細胞をさらに含む、実施形態16~19のいずれか1つに記載の細胞肉製品。
【0144】
実施形態21
共培養下の線維芽細胞および筋芽細胞の比が約95F:5M比~約5F:95M比である、実施形態19の細胞肉製品。
【0145】
実施形態22
細胞肉の湿潤質量100g当たり少なくとも約0.5mgのビタミンEを含む、実施形態1~21のいずれか1つに記載の細胞肉製品。
【0146】
実施形態23
以下の脂肪酸クラスのうちの1または複数を表示された含量(総脂肪酸に対する当該クラスの%として表現)で含む、実施形態1~22のいずれか1つに記載の細胞肉製品:
a.約29%~約42%の含量の飽和脂肪酸;
b.約19%~約54%の含量の一不飽和脂肪酸;および
c.約5%~約36%の含量の多価不飽和脂肪酸。
【0147】
実施形態24
ω6脂肪酸クラス:ω3脂肪酸クラスを約2:1~18:1比で含む、実施形態1~23のいずれか1つに記載の細胞肉製品。
【0148】
実施形態25
ニワトリ細胞、アヒル細胞、またはウシ細胞から生産された、実施形態23または実施形態24に記載の細胞肉製品。
【0149】
実施形態26
細胞肉が脂肪酸含有量を操作した培地中で作製されたものである、実施形態23または実施形態24に記載の細胞肉製品。
【0150】
実施形態27
以下の食感特徴のうちの少なくとも1つを含む、実施形態1~25のいずれか1つに記載の細胞肉製品:
a.450g~約2970gの調理後噛み応え;および
b.約280g~約1900gの調理後硬さ。
【0151】
実施形態28
従来肉と比較して安定性および賞味期限が少なくとも10倍に増加している、実施形態1~27のうちのいずれか1つに記載の細胞肉製品。
【0152】
実施形態29
賞味期限の延長が約4℃で測定される、実施形態28に記載の細胞肉製品。
【0153】
実施形態30
賞味期限の延長が約25℃で測定される、実施形態28に記載の細胞肉製品。
【0154】
実施形態31
細胞肉を生産する方法であって、
a.ヒト以外の生物から線維芽細胞および/または筋芽細胞を準備すること;
b.上記線維芽細胞および/または筋芽細胞を浮遊培養条件下または接着培養条件下で、血清などの動物由来成分を実質的に含んでいない培地中で培養すること;並びに
c.上記細胞を単離し、細胞肉を作製すること、
を含む、方法。
【0155】
実施形態32
線維芽細胞および/または筋芽細胞が約95F:5M~約5F:95Mの比で準備される、実施形態31の方法。
【0156】
実施形態33
細胞肉製品が従来肉と比較して賞味期限において少なくとも2倍の延長を示す、実施形態31~32のいずれか1つに記載の方法。
【0157】
実施形態34
培地の脂肪酸含量を調整することを含み、得られる細胞肉製品が約2:1~約18:1比のω6脂肪酸クラス:ω3脂肪酸クラスを含む、実施形態31~33のいずれか1つに記載の方法。
群2
【0158】
実施形態1
延長された賞味期限を示す食用の無屠殺食肉製品であって、屠殺によって得られた従来肉と比較して賞味期限が延長され、回収後の賞味期限が少なくとも3日間延長された、無屠殺食肉製品。
【0159】
実施形態2
延長された賞味期限が約0℃~約30℃において、回収後の少なくとも3日間維持される、実施形態1に記載の無屠殺食肉製品。
【0160】
実施形態3
賞味期限が回収後の配合前に求められる、実施形態1~2のいずれか1つに記載の無屠殺食肉製品。
【0161】
実施形態4
賞味期限が配合後に決定される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の無屠殺食肉製品。
【0162】
実施形態5
非無菌条件下で肉を回収した場合に賞味期限が延長される、実施形態3に記載の無屠殺食肉製品。
【0163】
実施形態6
総微生物数(TC)、大腸菌/大腸菌群数(EC)、大腸菌数、または大腸菌群数を測定することにより賞味期限が求められる、実施形態1~5のいずれか一項に記載の無屠殺食肉製品。
【0164】
実施形態7
屠殺によって得られた従来肉のTC測定値が、無屠殺食肉製品のTC測定値よりも少なくとも1.5倍高い、実施形態6に記載の無屠殺食肉製品。
【0165】
実施形態8
湿潤質量1g当たり1cfu以下の微生物汚染しか含まない、実施形態1~7のいずれか1つに記載の無屠殺食肉製品。
【0166】
実施形態9
約1μg以下のステロイドホルモンしか含まない、実施形態1~8のいずれか1つに記載の無屠殺食肉製品。
【0167】
実施形態10
乾燥質量100g当たり約50重量g~約90重量gのアミノ酸を含む、実施形態1~9のいずれか1つに記載の無屠殺食肉製品。
【0168】
実施形態11
以下のアミノ酸のうちの1または複数を表示された含量(100gの総アミノ酸に対するアミノ酸のg数として表現)で含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載の無屠殺食肉製品:約1g~約2.2gのトリプトファン、約4.6gおよび6.5gのスレオニン、約3.8g~約5gのイソロイシン、約6.1g~約8.9gのロイシン、約5.7g~約8.8gのリジン、約0.14g~約3.0gのメチオニン、約1.5g~約1.8gのシステイン、約3.7g~約4.8gのフェニルアラニン、約3.0g~約5.2gのチロシン、約4.8g~約6.1gのバリン、約7.0g~約8.0gのアルギニン、約2.5g~約4gのヒスチジン、約5.0g~約6.3gのアラニン、約8.6g~約10.4gのアスパラギン酸、約12.5g~約14.6gのグルタミン酸、約4.6g~約9.8gのグリシン、約4.6g~約6.8gのプロリン、約4.4g~約5.3gのセリン、および/または約0.0g~4.0gのヒドロキシプロリン。
【0169】
実施形態12
回収後の配合前に測定される水分含有量が約65%~約95%である、実施形態1~11のいずれか1つに記載の無屠殺食肉製品。
【0170】
実施形態13
湿潤質量100gの無屠殺食肉製品に対して少なくとも約0.5mgのビタミンEを含む、実施形態1~12のいずれか1つに記載の無屠殺食肉製品。
【0171】
実施形態14
以下の脂肪酸クラスのうちの1または複数を表示された含量(総脂肪酸に対する当該クラスの%として表現)で含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載の無屠殺食肉製品:
a.約10%~約60%の含量の飽和脂肪酸;
b.約10%~約60%の含量の一不飽和脂肪酸;および
c.約1%~約50%の含量の多価不飽和脂肪酸。
【0172】
実施形態15
ω6脂肪酸クラス:ω3脂肪酸クラスを約2:1~18:1比で含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載の無屠殺食肉製品。
【0173】
実施形態16
無屠殺食肉製品は無屠殺の鶏肉、鴨肉、または牛肉を含むものであり、従来肉は屠殺によって得られる鶏肉、鴨肉、または牛肉を含むものである、実施形態1~15のいずれか1つに記載の無屠殺食肉製品。
【0174】
実施形態17
脈管構造を実質的に含まない、実施形態1~16のいずれか1つに記載の無屠殺食肉製品。
【0175】
実施形態18
従来肉が加工されていない、実施形態1~17のいずれか1つに記載の無屠殺食肉製品。
【0176】
実施形態19
屠殺によって得られた従来肉と比較して少ない微生物汚染数を示し、前記より少ない微生物汚染数が回収後少なくとも3日間は示される、食用の無屠殺食肉製品。
【0177】
実施形態20
前記より少ない微生物汚染数が約0℃~約30℃において回収後少なくとも3日間は維持される、実施形態19に記載の無屠殺食肉製品。
【0178】
実施形態21
微生物汚染数が回収後の配合前に求められる、実施形態19~20のいずれか1つに記載の無屠殺食肉製品。
【0179】
実施形態22
非無菌条件下で維持される、実施形態19~21のいずれか1つに記載の無屠殺食肉製品。
【0180】
実施形態23
総微生物数(TC)、大腸菌/大腸菌群数(EC)、大腸菌数、または大腸菌群数を測定することにより微生物汚染数が求められる、実施形態19~22のいずれか1つに記載の無屠殺食肉製品。
【0181】
実施形態24
湿潤質量1g当たり1cfu以下の微生物汚染しか含まない、実施形態19~23のいずれか1つに記載の無屠殺食肉製品。
【0182】
実施形態25
屠殺によって得られた従来肉のTC測定値が、無屠殺食肉製品のTC測定値よりも少なくとも1.5倍高い、実施形態19~24のいずれか1つに記載の無屠殺食肉製品。
【0183】
実施形態26
約1μg以下のステロイドホルモンしか含まない、実施形態19~25のいずれか1つに記載の無屠殺食肉製品。
【0184】
実施形態27
以下のアミノ酸のうちの1または複数を表示された含量(100gの総アミノ酸に対するアミノ酸のg数として表現)で含む、実施形態19~26のいずれか1つに記載の無屠殺食肉製品:約1g~約2.2gのトリプトファン、約4.6gおよび6.5gのスレオニン、約3.8g~約5gのイソロイシン、約6.1g~約8.9gのロイシン、約5.7g~約8.8gのリジン、約0.14g~約3.0gのメチオニン、約1.5g~約1.8gのシステイン、約3.7g~約4.8gのフェニルアラニン、約3.0g~約5.2gのチロシン、約4.8g~約6.1gのバリン、約7.0g~約8.0gのアルギニン、約2.5g~約4gのヒスチジン、約5.0g~約6.3gのアラニン、約8.6g~約10.4gのアスパラギン酸、約12.5g~約14.6gのグルタミン酸、約4.6g~約9.8gのグリシン、約4.6g~約6.8gのプロリン、約4.4g~約5.3gのセリン、および/または約0.0g~4.0gのヒドロキシプロリン。
【0185】
実施形態28
以下の脂肪酸クラスのうちの1または複数を表示された含量(総脂肪酸に対する当該クラスの%として表現)で含む、実施形態19~27のいずれか1つに記載の無屠殺食肉製品:
a.約10%~約50%の含量の飽和脂肪酸;
b.約10%~約54%の含量の一不飽和脂肪酸;および
c.約1%~約50%の含量の多価不飽和脂肪酸。
【0186】
実施形態29
ω6脂肪酸クラス:ω3脂肪酸クラスを約2:1~18:1比で含む、実施形態19~28に記載の無屠殺食肉製品。
【0187】
実施形態30
無屠殺食肉製品は無屠殺の鶏肉、鴨肉、または牛肉を含むものであり、従来肉は屠殺によって得られる鶏肉、鴨肉、または牛肉を含むものである、実施形態19~29に記載の無屠殺食肉製品。
【0188】
実施形態31
屠殺によって得られた未加工の従来肉と比較した場合に賞味期限の延長を示す無屠殺食肉製品を生産する方法であって、
a.ヒト以外の生物由来の細胞を準備すること;
b.前記細胞を浮遊培養条件下または接着培養条件下で、血清などの動物由来成分を実質的に含んでいない培地中で培養すること;および
c.前記細胞を単離し、無屠殺食肉製品を作製すること、
を含む、方法。
【0189】
実施形態32
前記細胞が筋芽細胞、線維芽細胞、脂肪細胞、内皮細胞、中胚葉系細胞、およびこれらの組み合わせを含む、実施形態31に記載の方法。
【0190】
実施形態33
前記細胞が線維芽細胞と筋芽細胞とを少なくとも含み、前記線維芽細胞および筋芽細胞が約95F(線維芽細胞):5M(筋芽細胞)~約5F:95Mの比で与えられる、実施形態31~32のいずれか1つに記載の方法。
【0191】
実施形態34
培地の脂肪酸含量を調整することを含み、得られる無屠殺食肉製品が約2:1~約18:1比のω6脂肪酸クラス:ω3脂肪酸クラスを含む、実施形態31~33のいずれか1つに記載の方法。
群3
【0192】
実施形態1
延長された賞味期限を示す食用の無屠殺食肉製品であって、屠殺によって得られた従来肉と比較して賞味期限が延長され、回収後の賞味期限が少なくとも3日間延長された、無屠殺食肉製品。
【0193】
実施形態2
延長された賞味期限が約0℃~約30℃において、回収後の少なくとも3日間維持される、実施形態1に記載の無屠殺食肉製品。
【0194】
実施形態3
賞味期限が回収後の配合前に求められる、実施形態1に記載の無屠殺食肉製品。
【0195】
実施形態4
賞味期限が配合後に求められる、実施形態1に記載の無屠殺食肉製品。
【0196】
実施形態5
非無菌条件下で肉を回収した場合に賞味期限が延長される、実施形態3に記載の無屠殺食肉製品。
【0197】
実施形態6
総微生物数(TC)、大腸菌/大腸菌群数(EC)、大腸菌数、または大腸菌群数を測定することにより賞味期限が求められる、実施形態1に記載の無屠殺食肉製品。
【0198】
実施形態7
屠殺によって得られた従来肉のTC測定値が、無屠殺食肉製品のTC測定値よりも少なくとも1.5倍高い、実施形態6に記載の無屠殺食肉製品。
【0199】
実施形態8
湿潤質量1g当たり1cfu以下の微生物汚染しか含まない、実施形態1に記載の無屠殺食肉製品。
【0200】
実施形態9
約1μg以下のステロイドホルモンしか含まない、実施形態1に記載の無屠殺食肉製品。
【0201】
実施形態10
乾燥質量100g当たり約50重量g~約90重量gのアミノ酸を含む、実施形態1に記載の無屠殺食肉製品。
【0202】
実施形態11
以下のアミノ酸のうちの1または複数を表示された含量(100gの総アミノ酸に対するアミノ酸のg数として表現)で含む、実施形態1に記載の無屠殺食肉製品:約1g~約2.2gのトリプトファン、約4.6gおよび6.5gのスレオニン、約3.8g~約5gのイソロイシン、約6.1g~約8.9gのロイシン、約5.7g~約8.8gのリジン、約0.14g~約3.0gのメチオニン、約1.5g~約1.8gのシステイン、約3.7g~約4.8gのフェニルアラニン、約3.0g~約5.2gのチロシン、約4.8g~約6.1gのバリン、約7.0g~約8.0gのアルギニン、約2.5g~約4gのヒスチジン、約5.0g~約6.3gのアラニン、約8.6g~約10.4gのアスパラギン酸、約12.5g~約14.6gのグルタミン酸、約4.6g~約9.8gのグリシン、約4.6g~約6.8gのプロリン、約4.4g~約5.3gのセリン、および/または約0.0g~4.0gのヒドロキシプロリン。
【0203】
実施形態12
回収後の配合前に測定される水分含有量が約65%~約95%である、実施形態1に記載の無屠殺食肉製品。
【0204】
実施形態13
湿潤質量100gの無屠殺食肉製品に対して少なくとも約0.5mgのビタミンEを含む、実施形態1に記載の無屠殺食肉製品。
【0205】
実施形態14
以下の脂肪酸クラスのうちの1または複数を表示された含量(総脂肪酸に対する当該クラスの%として表現)で含む、実施形態1に記載の無屠殺食肉製品:
a.約10%~約60%の含量の飽和脂肪酸;
b.約10%~約60%の含量の一不飽和脂肪酸;および
c.約1%~約50%の含量の多価不飽和脂肪酸。
【0206】
実施形態15
ω6脂肪酸クラス:ω3脂肪酸クラスを約2:1~18:1比で含む、実施形態1に記載の無屠殺食肉製品。
【0207】
実施形態16
無屠殺食肉製品は無屠殺の鶏肉、鴨肉、または牛肉を含むものであり、従来肉は屠殺によって得られる鶏肉、鴨肉、または牛肉を含むものである、実施形態1に記載の無屠殺食肉製品。
【0208】
実施形態17
脈管構造を実質的に含まない、実施形態1に記載の無屠殺食肉製品。
【0209】
実施形態18
従来肉が加工されていない、実施形態1に記載の無屠殺食肉製品。
【0210】
実施形態19
屠殺によって得られた従来肉と比較して少ない微生物汚染数を示し、前記より少ない微生物汚染数が回収後少なくとも3日間は示される、食用の無屠殺食肉製品。
【0211】
実施形態20
前記より少ない微生物汚染数が約0℃~約30℃において回収後少なくとも3日間は維持される、実施形態19に記載の無屠殺食肉製品。
【0212】
実施形態21
微生物汚染数が回収後の配合前に求められる、実施形態19に記載の無屠殺食肉製品。
【0213】
実施形態22
非無菌条件下で維持される、実施形態19に記載の無屠殺食肉製品。
【0214】
実施形態23
総微生物数(TC)、大腸菌/大腸菌群数(EC)、大腸菌数、または大腸菌群数を測定することにより微生物汚染数が求められる、実施形態19に記載の無屠殺食肉製品。
【0215】
実施形態24
湿潤質量1g当たり1cfu以下の微生物汚染しか含まない、実施形態19に記載の無屠殺食肉製品。
【0216】
実施形態25
屠殺によって得られた従来肉のTC測定値が、無屠殺食肉製品のTC測定値よりも少なくとも1.5倍高い、実施形態19に記載の無屠殺食肉製品。
【0217】
実施形態26
約1μg以下のステロイドホルモンしか含まない、実施形態19に記載の無屠殺食肉製品。
【0218】
実施形態27
以下のアミノ酸のうちの1または複数を表示された含量(100gの総アミノ酸に対するアミノ酸のg数として表現)で含む、実施形態19に記載の無屠殺食肉製品:約1g~約2.2gのトリプトファン、約4.6gおよび6.5gのスレオニン、約3.8g~約5gのイソロイシン、約6.1g~約8.9gのロイシン、約5.7g~約8.8gのリジン、約0.14g~約3.0gのメチオニン、約1.5g~約1.8gのシステイン、約3.7g~約4.8gのフェニルアラニン、約3.0g~約5.2gのチロシン、約4.8g~約6.1gのバリン、約7.0g~約8.0gのアルギニン、約2.5g~約4gのヒスチジン、約5.0g~約6.3gのアラニン、約8.6g~約10.4gのアスパラギン酸、約12.5g~約14.6gのグルタミン酸、約4.6g~約9.8gのグリシン、約4.6g~約6.8gのプロリン、約4.4g~約5.3gのセリン、および/または約0.0g~4.0gのヒドロキシプロリン。
【0219】
実施形態28
以下の脂肪酸クラスのうちの1または複数を表示された含量(総脂肪酸に対する当該クラスの%として表現)で含む、実施形態19に記載の無屠殺食肉製品:
a.約29%~約42%の含量の飽和脂肪酸;
b.約19%~約54%の含量の一不飽和脂肪酸;および
c.約5%~約36%の含量の多価不飽和脂肪酸。
【0220】
実施形態29
ω6脂肪酸クラス:ω3脂肪酸クラスを約2:1~18:1比で含む、実施形態19に記載の無屠殺食肉製品。
【0221】
実施形態30
無屠殺食肉製品は無屠殺の鶏肉、鴨肉、または牛肉を含むものであり、従来肉は屠殺によって得られる鶏肉、鴨肉、または牛肉を含むものである、実施形態19に記載の無屠殺食肉製品。
【0222】
実施形態31
屠殺によって得られた未加工の従来肉と比較した場合に賞味期限の延長を示す無屠殺食肉製品を生産する方法であって、
a.ヒト以外の生物由来の細胞を準備すること;
b.前記細胞を浮遊培養条件下または接着培養条件下で、血清などの動物由来成分を実質的に含んでいない培地中で培養すること;および
c.前記細胞を単離し、無屠殺食肉製品を作製すること、
を含む、方法。
【0223】
実施形態32
前記細胞が筋芽細胞、線維芽細胞、脂肪細胞、内皮細胞、中胚葉系細胞、およびこれらの組み合わせを含む、実施形態31に記載の方法。
【0224】
実施形態33
前記細胞が線維芽細胞と筋芽細胞とを少なくとも含み、前記線維芽細胞および筋芽細胞が約95F(線維芽細胞):5M(筋芽細胞)~約5F:95Mの比で与えられる、実施形態31に記載の方法。
【0225】
実施形態34
培地の脂肪酸含量を調整することを含み、得られる無屠殺食肉製品が約2:1~約18:1比のω6脂肪酸クラス:ω3脂肪酸クラスを含む、実施形態31に記載の方法。
【0226】
以下の追加の実施例により、本明細書で開示された発明のさらなる説明を行うが、これらの実施例は限定するものと解釈されるべきではない。当業者は、本開示に照らし合わせて、開示された特定の実施形態に対して、本発明の要旨を逸脱しない範囲で多くの変更を加えることができ、変更後も同様または類似の結果を得ることができることを、理解するはずである。
【0227】
本開示で引用された全ての特許文献および非特許文献は、それらの全体が参照によって本明細書に援用される。
【実施例
【0228】
実施例1:細胞培養ベース食肉製品の作製
【0229】
例として、ニワトリ(Gallus)からの食肉(鶏肉)、マガモ(Anas platyrhynchos)からの食肉(鴨肉)、およびウシ(Bos taurus)からの食肉(ウシ、牛肉)を、以下および表1に記載されるような培養液中で作製した。
【0230】
培養条件:解析した細胞シート(組織)および細胞は、単一培養、または線維芽細胞(F)および筋芽細胞(M)の共培養によって作製された。全ての集団は、モノクローナルと明記されていない限りはポリクローナルである(例えば、方法14)。
【0231】
接着培養形式:細胞を解凍して容器に移し、接着培養でコンフルエント近く(70~90%)まで増殖させた。細胞は、組織形成用の播種に適した数を達成するまでに、接着培養で6~10倍に増殖させた。組織は、接着形式で、目標密度(目標範囲:10,000~20,000細胞/cm2)で、且つ、組織が2種以上の細胞種を含むならば特定の比率で、細胞を播種することにより作製した。細胞は、ある時間(10~20日間)、特定量の動物血清を含有する培地中で培養した。食肉組織は、培養終了後に物理的手段で回収し、培地成分を除去するために緩衝液で洗浄した。
【0232】
浮遊培養形式:細胞を解凍し、特定量の動物血清を含有する培地中に移し、浮遊培養で増殖させた。50,000~1,000,000細胞/mLの密度を維持するように新鮮培地を加えて、細胞集団を増殖させた。
【0233】
表1は、本明細書において生産された各種食肉製品の例示的な培養法を示している。全ての集団は、モノクローナルと明記されていない限りはポリクローナルである(例えば、方法14、方法15、モノクローナル筋芽細胞集団)。
【0234】
表の略語解-線維芽細胞:F;筋芽細胞:M;ウシ血清:BS;ニワトリ血清:CS;ウシ胎児血清:FBS;ウマ血清:HS;(高濃度):培地は8~10%の特定血清を含有;(低濃度):培地は1~2.5%の特定血清を含有。シードトレインセクションや組織形成セクションでは、別のものを用いたと記載されていない限り、10%FBS含有DMEM-F12を用いた。
【0235】
【表1】

実施例2:細胞培養ベースの食肉製品のアミノ酸プロファイル
【0236】
食肉組織を、実施例1に記載されているように、記載された方法および表1を用いて、培養液中で作製した。
【0237】
細胞培養ベースの食肉製品のアミノ酸プロファイルを、以下の通りに評価した。総アミノ酸プロファイルは遊離アミノ酸と結合型アミノ酸の合計を含み、一方、遊離アミノ酸プロファイルはタンパク質結合していないアミノ酸を含む。
【0238】
試料調製:約100mgの湿潤試料を1.7mLマイクロチューブ内に得た。試料を、完全に乾燥するまで、チューブ内で48時間凍結乾燥させた。
【0239】
全加水分解:約4mgの凍結乾燥組織を加水分解用チューブ(試料の実際の質量を表記)に入れた。試料を500μLのギ酸に一晩浸し、その後乾燥させた。試料に対して液相加水分解を行い(200μLの6N塩酸/1%フェノール、110℃で24時間)、その後試料を乾燥させた。その後、試料をボルテックス、スピンダウンし、50μLを分析に用いた。このようにして、塩酸消化による総加水分解を達成した。
【0240】
遊離加水分解:約18mgの凍結乾燥組織を加水分解用チューブ(試料の実際の質量を表記)に入れた。試料を1mLの0.1N塩酸中に溶解させた後、ガラスビーズと共に15分間超音波処理した(BioEruptor)。次いで、試料全体を250uLの10%5-スルホサリチル酸で沈殿させた後、15分間室温で静置し、その後、その試料を-20Cで一晩凍結した。次いで、試料を遠心分離し、上清を採取し、表示されているような最終希釈となるようにAE-cys(またはNorLeu)希釈物を調製した。その後、試料をボルテックス、スピンダウンし、50μLを分析に用いた。その後、試料をボルテックス、スピンダウンし、50μLを分析に用いた。この方法は、MET、CYS、およびTRPを除く全てのアミノ酸に採用した。MET、CYS、およびTRPは、塩酸によって破壊されることから、異なる加水分解条件を必要とする。METおよびCYSの場合、過ギ酸を用いる別の加水分解が採用され、TRPは水酸化ナトリウムを使用する塩基性加水分解が必要であるため、これを用いた。
【0241】
分析:酸に対して安定なアミノ酸の定量は、生理学的試料用に最適化された、リチウムクエン酸緩衝液系を利用する日立製L-8900分析装置およびL-8800a分析装置を介して行った。これらの分析装置は、アミノ酸を分離するためのイオン交換クロマトグラフィーと、それに続いて「ポストカラム」ニンヒドリン反応検出系を用いていた。各アミノ酸は、ピーク滞留時間(RT)によって同定し、ピーク領域によって定量化した。目的のアミノ酸について、代表的な室温値を以下の表2に挙げる。
【0242】
【表2】
【0243】
下記の表3~5は、表1に挙げた試料のうちのいくつかについて、アミノ酸(AA)プロファイルデータをまとめている。いくつかの場合で、測定値はデュプリケートまたはトリプリケートでとった。値は、100gの総アミノ酸に対するg数として表されている。「合計」と標識されたカラムは、TRP、CYS、MET、HYP、HYLを除くアミノ酸の合計グラムを表しており、示されたアミノ酸値の正規化に用いられた。TRP、CYS、MET、HYP、およびHYLについては、全試料間で測定値に一貫性がなかったために除外した。NT=未検。
【0244】
【表3】
【0245】
【表4】
【0246】
【表5】
【0247】
表6~8は、鶏肉、鴨肉、および牛肉について別個に、複合の平均アミノ酸値(%総アミノ酸として表される)を示している。%総アミノ酸は、各アミノ酸のg/100g値を、パラメーターが全試料間で一貫して測定されていなかったためにトリプトファン(TRP)、システイン(CYS)、メチオニン(MET)、ヒドロキシプロリン(HYP)、およびヒドロキシリジン(HYL)を除外した全ての測定分析物間の和で正規化したもの、として表される。したがって、%合計値は、TRP、CYS、MET、HYP、およびHYLが具体的に測定されたかどうかにかかわらず、全ての試料の直接比較を可能にする。
【0248】
表9は、表6~8のデータを組み合わせた、全細胞肉試料(表1中の方法の複合)のアミノ酸組成データを示している。
【0249】
【表6】
【0250】
【表7】
【0251】
【表8】
【0252】
【表9】
【0253】
まとめると、食肉のアミノ酸プロファイルは従来肉と同等ではあるが(図1)、重大な違いがある。例えば、細胞肉中のヒドロキシプロリン濃度は、従来肉(USDAデータベースであるフードセントラルデータベース[https://fdc.nal.usda.gov/])中のものよりも高い。細胞肉との比較を表10に示す(単位は総タンパク質量100g当たりのヒドロキシプロリンのグラム数で示されている)。従来肉および細胞肉の、牛肉、鴨肉、および鶏肉について、濃度が示されている。細胞肉は、表1から方法2、方法3、および方法7を用いて作製した。ヒドロキシプロリン濃度は、比較対象として用いられた3つの種の細胞肉において上昇された。
【0254】
【表10】
【0255】
図2および表11は、さらなる処理を加えた、方法7、方法13、および方法14から作製された細胞肉について、鶏細胞肉のヒドロキシプロリン濃度を示している。図2は、細胞肉の湿潤質量100g当たりのグラム数としてのヒドロキシプロリン濃度を示している。細胞肉全体のヒドロキシプロリン平均濃度は、細胞肉の湿潤質量100g当たり0.15~0.17gの範囲である(図2)。表11は、総タンパク質100g当たりのグラム数としてヒドロキシプロリン濃度を示している。対照条件(対照)は、FB、FB/MB(ポリ)、およびFB/MB(モノ)について、それぞれ、表1の方法7、方法13、方法14を用いて作製した。従来の均等物と比較して、線維芽細胞培養物単独から作製された細胞肉中のヒドロキシプロリンレベルは上昇している。筋芽細胞(MB)がポリクローナルな細胞混合物(筋芽細胞の混合集団)(例えば、表1の方法13)またはモノクローナル筋芽細胞混合物(混合集団から単離され増殖された単一細胞)(表1の方法14)として培養系に添加された場合、ヒドロキシプロリン濃度は従来肉のヒドロキシプロリン濃度に近づくように減少している。ヒドロキシプロリン濃度は、改変された培養条件(処理1ウルソール酸(Ursoloic acid)、20mM;または処理2ロイシン、20mM)を用いるとさらに減少する。これらの処理を表1の方法13および方法14に適用した。
【0256】
【表11】

実施例3:細胞肉製品の微生物汚染の定量
【0257】
細胞肉組織を、微生物汚染、例えば大腸菌群細菌、酵母、カビ、サルモネラ、およびリステリアについて、評価した。
【0258】
これらの研究は、第三者ラボであるアンレスコ・ラボラトリーズ社(Anresco Laboratories)によって実施された。標準平板菌数(SPC)、大腸菌/大腸菌群、および酵母/カビは、標準的なFDA BAM法プロトコルによって求めた。サルモネラ(AOAC2011.03)、リステリア(AOAC2004.06)、およびブドウ球菌属(AOAC2003.07)には、AOAC法を用いた。
【0259】
簡潔には、SPCは、細胞肉ホモジネートの10倍希釈系列(decimal dilutions)を準備し、希釈物当たり1mLのアリコートをピペット操作によって、別々の、デュプリケートの、およその標識を付けた(approximately marked)ペトリ皿に移し、これらに12~15mLのプレートカウント寒天を加えることで行った。試料希釈物と寒天培地を完全に混ぜ、寒天を凝固させた。凝固後のペトリ皿を上下反転させ、35℃で48±2時間インキュベートし、その後、平板菌数を読み取った。(https://www.fda.gov/food/laboratory-methods-food/bam-aerobic-plate-count#conventional)
【0260】
大腸菌/大腸菌群の測定値は以下により求めた。50gの細胞肉ホモジナイズド試料を準備し、450mLのバターフィールドリン酸緩衝液に加えて混合し;10倍希釈系列を作製し、1mL体積を、3チューブ最確数(MPN)用の3つのラウリルトリプトース(LST)ブロスのそれぞれに分注した。LSTチューブを35℃でインキュベートし、24±2時間後に検査を行って、ガス排気量や泡立ちについて観察し;ガス陰性のチューブがあれば、それをさらに24時間インキュベートし、陰性であることを確認した。ガスを産生する(gassing)LSTチューブのそれぞれから、大腸菌群の確認を行うために、試料の1白金耳量をブリリアントグリーン乳糖胆汁(BGLB)ブロスのチューブに移し、35℃で48±3時間インキュベートした。3つの連続希釈系列について、確認されたガス産生LSTチューブの集団に基づいて、MPNを算出した。ガス産生LSTチューブのそれぞれから、大腸菌の確認を行うために、試料の1白金耳量をECブロスのチューブに移し、44.5℃で24±2時間インキュベートした。陰性の結果があった場合、再インキュベートして48時間の時点で検査した。さらに、各ガス産生ECチューブを以下のようにサンプリングした。ブロスの1白金耳量を取り出し、L-EMB寒天板上で35℃で18~24時間画線分離を行った。大腸菌コロニーが生じたら、それをPCA斜面培養基に移し、さらに35℃で18~24時間インキュベートした。大腸菌を含有する、3つの連続希釈系列のうちのECチューブの割合に基づいて、MPNを算出した。(https://www.fda.gov/food/laboratory-methods-food/bam-4-enumeration-escherichia-coli-and-coliform-bacteria#conventional)
【0261】
酵母/カビ数は、25~50gの細胞肉試料を0.1%ペプトン水中で消化して10-1倍希釈を達成し、ストマッカー内で2分間ホモジナイズしたもの、または30~60秒間混合したもの、を分析することで得られた。塗抹平板法または混釈平板法による播種を行い、暗所の25℃でインキュベートした。5日後にプレートをカウントした。陰性のプレートはさらに48時間インキュベートした。(https://www.fda.gov/food/laboratory-methods-food/bam-yeasts-molds-and-mycotoxins)
【0262】
表12では、細胞肉における汚染と、従来の食料品店の食肉における汚染とが比較されている。従来の鴨肉と、とりわけ従来の牛肉は、微生物汚染量が著しく多い。
【0263】
従来の鴨肉は地域の食料品店(バークリー、カリフォルニア州)で購入した。肉を皮と脂肪から分離し、殺菌した包丁とまな板を用いてみじん切りにした。肉を50mLファルコンチューブ内に詰め込み、密封した。密封されたチューブに70%エタノールを散布し、-80℃で凍結した。試料を-80℃で凍結した後、試験まで4℃で維持した。
【0264】
細胞培養鴨肉は、表1に記載された、方法1を用いた組織と方法2を用いた組織を組み合わせたものであった。組織は凍結貯蔵から取り出し、混合し、滅菌したまな板と包丁を用いてみじん切りにした。肉を50mLファルコンチューブ内に詰め込み、密封した。密封されたチューブに70%エタノールを散布し、-80℃で凍結した。試料を-80℃で凍結した後、試験まで4℃で維持した。
【0265】
脂質分の特に少ない(97%赤身)牛ひき肉は、地域の食料品店(バークリー、カリフォルニア州)から購入した。牛肉を50mLファルコンチューブ内にそのまま詰め込んだ。チューブを密封し、70%エタノールを噴霧した。チューブを-80℃で凍結した。試料を-80℃で凍結した後、試験まで4℃で維持した。
【0266】
細胞培養牛肉は、表1の方法3を用いた組織の組み合わせであった。組織は凍結貯蔵から取り出し、混合し、滅菌したまな板と包丁を用いてみじん切りにした。肉を50mLファルコンチューブ内に詰め込み、密封した。密封されたチューブに70%エタノールを散布し、-80℃で凍結した。試料を-80℃で凍結した後、試験まで4℃で維持した。
【0267】
【表12】
【0268】
さらなる実験で、CompactDryプレートを用いて、細胞肉試料および従来肉試料の総好気性菌数および大腸菌/大腸菌群数を評価した。評価された試料は全て未調理で生のものであった。
【0269】
CompactDryプロトコルが採用され、これは、エタノール滅菌用品で1gのサンプルサイズを収集し、滅菌チューブに移すことを含んでいた。滅菌バターフィールドリン酸緩衝液を加えることで、25gの試料:225mLの緩衝液の比を維持した。チューブをボルテックスし、室温で10分間放置して全ての細菌を溶解させ、その後、300×gで5分間遠心して固体を底へと引っ張った。上清を滅菌チューブに集め、10倍希釈系列を調製した。希釈当たり1mLのアリコートを、総好気性微生物数(TC)および大腸菌/大腸菌群(EC)について、それぞれTotal Count CompactDry(商標)TCおよびCompactDry(商標)ECプレート上に播種した。製造業者の仕様書に従ってプレートをインキュベートし、コロニーをcfu/mLとしてカウントし、225mL当たり25gの試料消化率に基づいてcfu/gに変換した。
【0270】
概して、細胞肉回収物は低く、通常はアッセイの検出限界(約10cfu/g)未満であり、そのため不検出で(ND)あった(表13)。より具体的には、異なるバッチの細胞培養鴨肉から、TCについてはND(<9cfu/g)~54cfu/g、総ECについてはND(<9cfu/g)が得られた。TCについては、細胞培養牛肉試料からはND(<9cfu/g)が得られ、細胞培養鶏肉試料からはND(<9cfu/g)~18cfu/gが得られた。細胞培養鴨肉試料および細胞培養牛肉試料(総好気性微生物数が少ない)に、意図的に従来の生の鶏肉を混入させた場合(表13では、「鶏肉が混入した」細胞培養試料と表示)、TCはスパイクして>900cfu/gとなり、これは試料マトリックスを用いた定量の有用性を示しており、マトリックス効果によるシグナル抑制は起こっていないことが確認された。従来の生の牛肉試料および鶏肉試料は、共に>900cfu/gのTCを示し、それぞれ315cfu/gおよび>900cfu/gのECを示した。従来の生の食肉試料と比較して、細胞肉試料は全て、TC数およびEC数が検出不可~少なく(<100cfu/g)、顕著に少ないバイオバーデンを示した。図3は、細菌コロニーを示す代表的なCompactDryプレートを示しており、具体的には、細胞培養鴨肉、従来の牛肉、および従来の鶏肉におけるECおよびTCの結果を示している。これは表13で定量されている。
【0271】
【表13】

実施例4:細胞肉製品の脂肪酸含有量の定量
【0272】
本セクション中のデータの大部分は、GC-FAME法(方法FA1)を介した脂肪酸プロファイルの定量を含み、この方法では、試料を直接加水分解(加熱下で塩酸を用い、試料をクロロホルムおよびエタノールに溶解させる)にかけ、試料マトリックスを分解させ、トリグリセリド(TG)を遊離させ、TGを脂肪酸に変換させた。脂肪酸をエーテル抽出で回収し、無極性層としてまとめた。脂肪酸をメタノール性硫酸により脂肪酸メチルエステル(FAME)対応物に誘導体化し、最終FAME化合物をエーテル抽出で回収した。GC-FIDによる分析のために、無極性のFAME含有層を注入した。滞留時間に基づいて個々のFAME化合物を同定し、検量線と比較したピーク面積により定量した。回収率をトリグリセリド内部標準に基づいて評価した。図8に示されたデータは、技術的に異なる(しかし類似した)方法(方法FA2)により、AOCS CE 1F-96に従って定量されたものであり、この方法では、ガスクロマトグラフィーを用いて、脂肪酸誘導体(FAME)をそれらの鎖長、飽和/不飽和度、および不飽和の位置によって分離した。
【0273】
両方の方法で、分析から回収された生の値は、総脂肪酸のうちの各脂肪酸の割合として報告されている。方法FA1では、定量法から報告された値は、湿潤質量1g当たりの脂肪酸のμgであった。総脂肪酸%は、個々の脂肪酸のg/100g値を、全ての測定された脂肪酸分析物の和で正規化したものとして示されている。方法FA2では、脂肪酸を総脂肪のうちの割合として報告した。
【0274】
表14は細胞肉の総脂肪酸分析を示している。総脂肪酸は、表示されているように、表1の方法を用いて、準備された細胞肉中のものを求めた。表中のデータは湿潤質量のうちの%として測定されている。USDAで典型的に測定・記録されているように、従来肉の水分含有量を模倣するように細胞肉を調整する場合(細胞肉を強制的な空気脱水処理に供して、水分含有量を65%~85%に調整する)、脂肪酸率は最大約5%まで達した。
【0275】
【表14】
【0276】
図4は、表1の各方法を用いた代表的な試料を含む全試料(N=24)中の飽和脂肪酸、一不飽和脂肪酸、および多価不飽和脂肪酸の全脂肪酸組成を示している。これらのデータは、総脂肪酸に対する肪酸クラスの割合として示されている。既知組成(CD)細胞培地中に含まれていた浮遊単一培養物M(方法16、表1)を除く全ての試料(表1、1~15)が血清含有培地中に含まれていた。図は、4つの主要な脂肪酸クラスの名称(飽和脂肪酸、一不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、および高度不飽和脂肪酸(HUFA))における、全ての種の細胞肉プロトタイプから得られた脂肪酸の分布を示している。箱の両端は上位四分位点と下位四分位点であり、そのため箱は四分位範囲に跨っており、中央値は箱内部の垂直線で示されており、箱を囲んでいるひげまたは線は、最高観測値と最低観測値まで伸びている箱外部の2本の線である。
【0277】
図5は、USDAの各種の脂肪酸のPCAを示している。脂肪酸は種間では異なるが、似た種(例えば家禽)同士では類似していることを示している。脂肪酸データの主成分分析(PCA)が、USDAデータベースの食肉製品から集められた(図5)。左側のグラフは解析の主成分を示している。三角は家禽肉製品を表し、丸は魚製品を表し、四角は牛肉であり、ひし形は豚肉である。この分析は、脂肪酸データで見つかったバリエーションのうち66.3%を占めるものである。右側のグラフは、成分の分析に対して各脂肪酸が及ぼす影響を方向および大きさで示したものである。この分析から、異なる種類の食肉(鶏肉、豚肉、牛肉、および魚)が、それぞれの食肉の脂肪酸プロファイルに基づいて、互いに異なる群に集まっていることが明らかである。従来肉では、食餌が脂肪酸プロファイルに大きく影響する。同様に、脂肪酸プロファイルは種が異なると別のものになる。
【0278】
図6は、細胞培養鶏肉におけるΩ3脂肪酸に対するΩ6脂肪酸の割合を示している(N=23)。外れ値のデータ点はすべて、表1の方法16の、既知組成(CD)細胞培地に由来するものであった。従来の鶏肉(地域の食料品店から入手)のΩ6脂肪酸:Ω3脂肪酸比は、n=3の試料サイズで>18:1であった。
【0279】
本明細書で提供される方法は、いくつかの機構を通じて、所望の風味特徴やΩ3:Ω6比などの脂肪酸プロファイルを達成するように、特定の脂質プロファイルを変えることができる:
a. 培地中の血清の存在が、脂肪酸プロファイルに影響を与える可能性がある。図7は、無血清培地中と血清含有培地中の脂肪酸の割合の比較を示している。
b. 異なる供給源の血清は培養組織に異なる脂肪酸プロファイルを与える(図8)。
c. ポリクローナルな集団から単離されたクローンも脂肪酸プロファイルに影響を与える。筋芽細胞クローン7と筋芽細胞クローン8の比較(図9)。
d. 脂肪酸プロファイルは、培地組成によって、また、脂肪酸組成を変化させるために添加される化合物(例えば、作動薬やリボフラビンなど)を含む、培地成分の添加によって、影響を受ける。培地に対する調整は脂肪プロファイルに影響を与える可能性がある。(図10図11)。
【0280】
図10。共培養法(表1の方法15に記載)を用い、特定の生化学的経路を調節するための各種化合物のレベルを増強させた培地を用いて、組織を形成させた。図10では、作動薬であるT0901317を細胞培養培地中に段階的に添加した。脂肪酸濃度に対する全体的な効果が示されている。作動薬であるT0901317は、肝臓X受容体β(LXRβ)を標的とする。LXRβの阻害は、ステアロイルCoA不飽和酵素(SCD)合成をアップレギュレートし、飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸にさらに変換させる(例えば、ステアリン酸(18:0)のオレイン酸(18:1)およびリノール酸(18:2)への変換)。
【0281】
図11では、共培養法(表1の方法15に記載)を用い、特定の生化学的経路を調節するための各種化合物のレベルを増強させた培地を用いて、組織を形成させた。図では、ビタミンであり共通の補助因子である、リボフラビンを、細胞培地中に段階的に添加した。脂肪酸濃度に対する全体的な効果が示されている。
【0282】
図12は、特定の脂肪酸のプロファイルを変化させるための、培地への脂肪酸の段階的な添加を示している。従来の鶏肉での普及率に基づいて、パルミトレイン酸(C16:1)、パルミチン酸(C16:0)、リノール酸(C18:2)、およびオレイン酸(C18:1)という4種の特定の脂肪酸を選び、細胞培地中への補充を通じて狙って増加させた。共培養法(表1の方法14に記載)を用い、図12に示される各脂肪酸のレベルを増強させた培地を用いて、組織を形成させた(10mg/Lの総脂肪酸:2.8mg/LのC16:0、0.5mg/LのC16:1、4.2mg/LのC18:1、および2.5mg/LのC18:2;20mg/Lの総脂肪酸:5.6mg/LのC16:0、1.0mg/LのC16:1、8.4mg/LのC18:1、および5.0mg/LのC18:2)。
実施例5:細胞肉製品中の主要栄養素の分析
【0283】
食肉組織を、水分、タンパク質、および脂肪を含む主要栄養素含量について評価した。
【0284】
全水分は、2つの方法のうちの1つ、水分1または水分2のいずれかによって定量した。水分1では、AOAC法950.46を採用した。要約すると、この方法では、アルミニウム皿に計量し、機械式コンベクションオーブンで100~102℃で16~18時間乾燥させた、2gの試料を使用している。この乾燥試料をデシケーター内で冷却してから再計量し;水分は試料重量中の損失で報告する。水分2では、100mgを超える試料を予め計量したアルミニウム皿に加え、70℃で少なくとも一晩乾燥させて一定質量にする。50℃などの他の温度も使用してよい。水分1および水分2の両方で、乾燥後の試料の質量損失は、試料中の全水分の割合に起因している。
【0285】
総タンパク質は、2つの方法のうちの1つ、タンパク質1またはタンパク質2のいずれかによって定量した。タンパク質1では、AOAC法977.14を採用した。この方法はケルダール法であり、酸、加熱、および触媒下で試料中の窒素が還元されてアンモニアとなる。このアンモニアを次に水蒸気蒸留し、酸を段階的に加える。窒素係数6.25を用いて窒素含有量を粗タンパク質に変換する。タンパク質2では、ピアス社製BCAアッセイを改変したものを使用した。100mgの試料を、0.1g/mLの比の1M水酸化ナトリウム中、超音波処理下で3時間消化して、試料マトリックスを溶解した。この試料消化物を次に希釈し、比色法によるピアス社製BCAアッセイで定量した。最終的なμg/mL値は、消化率0.1g/mLを用いて、湿潤質量1g当たりのタンパク質のgに変換している。
【0286】
総脂肪は、2つの方法のうちの1つ、脂肪1または脂肪2のいずれかによって定量した。脂肪1では、AOAC法991.36によって、石油エーテルを溶媒として用いて試料マトリックスから可溶性脂肪を抽出した。この方法では、試料を円筒濾紙中で計量し、抽出ユニットに挿入し、溶媒を加えて溶媒回収系で抽出を行う。抽出カップを乾燥させ計量した。同様に、脂肪2では改変フォルチ抽出が使われており、予め計量した16mLバイアル内で250mgを超える試料を計量し、70℃で一晩乾燥させた。乾燥後の質量損失は水分に起因するものであった。乾燥試料がバイアル内に残り、ハイドラナール-リポソルバーCM溶媒(10mL)を用いた抽出を行った。バイアルにPTFE内張りキャップで蓋をして、室温で24時間、200rpmで振盪した。抽出後、試料を予め計量したPTFEフィルター(0.2μm孔径)を通して濾過し、ドラフトチャンバーに通気しながら50℃で48時間乾燥させた。脂肪1および脂肪2の両方で、抽出後の試料の質量損失は、試料中の総脂肪の割合に起因するものであった。
実施例6:細胞肉製品中のホルモンの分析
【0287】
食肉試料のホルモンレベルを、サードパーティの分析実験機関(ユーロフィン・セントラル・アナリティカル・ラボラトリーズ社(Eurofins Central Analytical Laboratories))によって、LC-MS/MS法と内部基準を用いて定量した。ホルモンELISAアッセイの結果から、従来の鶏肉試料は細胞培養鶏肉試料(接着培養または浮遊培養として増殖)と比較してホルモン濃度が高いことが示された。目的の試料マトリックスに対するこのアッセイの妥当性を確かめるための追加のデータを収集する予定である。簡潔には、R-バイオファーム社(R-biopharm)製のRIDASCREEN(登録商標)17β-エストラジオールキットを用いて、17β-エストラジオールアッセイを行った。PTFE内張キャップ付きのガラスバイアル内で、1~1.5gの湿潤食肉試料を計り分け、67mMリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中、1gの湿潤試料質量に対して1mLの緩衝液という比で、ノコギリ刃の付属物を有する手持ち式ホモジナイザーを用いて、ホモジナイズした。ホモジナイズ後、5mLのメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)を加え、その後30分間振盪した。サンプルチューブを遠心し、MTBE上清層を集め、その試料に追加で5mLのMTBE抽出を行った。両方のMTBE層を合わせてその後は使用した。MTBE溶媒を40℃で一晩蒸発させた後、1mLの80%メタノールを「乾燥」バイアルに加え、ボルテックスにより混合し、その後2mLの20mM PBSを加えてボルテックスした。得られた溶液を、メタノールで洗浄後に20mM PBSで慣らしたRIDA(登録商標)C18カラムに通した。試料画分をカラムに通した後、カラムを40%メタノール液で洗浄し(層は廃棄)、窒素気流下で乾燥させ、80%メタノールをカラムに通し、層を回収することにより、最終試料を収集した。試料は真空濃縮器を用いて乾燥させ、分析の直前に50μLの緩衝液中に再懸濁した。キットは、製造業者の仕様書に従って使用し、0~12.8μg/Lの較正範囲を用いた。最後に、プレートの吸光度をプレートリーダーを用いて測定し、得られた検量線に基づいてサンプル値を求めた。アッセイアウトプットはμg/Lを単位としており、これを、最初の試料調製比(1mLの抽出緩衝液に対して1gの試料)を用いてng/kgに変換した。
【0288】
質量分析法には、細胞肉中のレベルが非常に低い、または存在しない試料を定量的に回収するための、目的のホルモン分析物に適した検出限界(LOD)がなかった。例えば、テストステロン、プロゲステロン、および17β-エストラジオールの各ホルモンは、それぞれ1μg/kg、1μg/kg、20μg/kgのLOD値を有している。MSクロマトグラフには、細胞肉試料中のこれらのホルモンに対応するバンドは示されていなかった。表15はLC-MS/MSの結果の要約を示している。全てのホルモンが不検出(ND)または検出限界未満であるとの返信であった。
【0289】
17β-エストラジオールELISAの結果から、細胞培養鶏肉試料が、従来の鶏肉試料および従来の牛肉試料よりも低い濃度を示したことが分かった。17β-エストラジオールレベルは、ELISAキットを用いて、細胞肉の湿潤質量1kg当たり平均35ngのエストラジオールであったが、一方、地域の食料品店から得た従来の鶏肉は、湿潤質量1kg当たり90ng/kgのエストラジオールであった。その後の研究の陰性対照は、湿潤質量1kg当たり30ng/kgのエストラジオールの範囲内であり、細胞肉試料も両アッセイの検出限界付近またはそれ以下のレベルであったことが示された。表16は、従来の鶏肉および細胞培養鶏肉を定量するためのELISAベースの方法を用いた17β-エストラジオールレベルを示している。
【0290】
【表15】
【0291】
【表16】

実施例7:細胞肉製品における調理後食感の分析
【0292】
「調理後噛み応え」および「調理後硬さ」を含む、ヒトの食感にとって重要な物理的性質について、細胞肉試料を評価した。
【0293】
接着培養で増殖した細胞から作製し、強制空気脱水に曝して水分含有量を65%~85%に調整した食肉製品に対して分析を行った。「調理」、あるいは食肉製品内の成分を変性しないように、脱水は華氏100度以下の温度で行う。
【0294】
全ての試料の分析は、5kgロードセルを備えたTA.XTplus Texture Analyzerを用いて、会社によって実施された。分析用の試料は、400mg±40mgの質量を有し、直径10.4mm、高さ17mmの円柱状容器内に詰め込んだ。調理後試料は、個々の密閉容器内の水浴中、華氏150度に90分間保持し、分析前に冷却した。
【0295】
「調理後噛み応え」は、以下の試験設定の下、ステンレス鋼TA-45切歯プローブを用いて測定した:
(a) 試験モード 圧縮
(b) 試験前速度 3.00mm/秒
(c) 試験速度 3.00mm/秒
(d) 試験後速度 10.00mm/秒
(e) 標的モード 歪み
(f) 力 100.0g
(g) 距離 5.000mm
(h) 歪み 98.0%
(i) トリガータイプ オート(力)
(j) トリガー力 1.0g
(k) トリガー距離 2.000mm
(l) 破断モード オフ
(m) 破断感度 10.0g
(n) 破断検出 停止
(o) 以下でプロット停止 スタート位置
(p) 自重モード オート
(q) 温度設定値 40.0℃
(r) 高度なオプション オフ
【0296】
「調理後硬さ」は、以下の試験設定の下、ステンレス鋼TA-24円柱状プローブを用いて測定した:
(a) 試験前速度 2.00mm/秒
(b) 試験速度 1.00mm/秒
(c) 試験後速度 5.00mm/秒
(d) 標的モード 歪み
(e) 力の閾値 0
(f) 距離 10.000mm
(g) 歪み 40.0%
(h) 時間 5.00秒
(i) トリガータイプ オート(力)
(j) トリガー力 1.0g
(k) トリガー距離 2.000mm
(l) 破断モード オフ
(m) 破断感度 10.0g
(n) 自重モード オート
(o) 温度 4.0℃
(p) 高度なオプション オン
(q) オーブン制御 使用不可
(r) 温度待機 する
(s) 温度帯± 0.0℃
(t) フレーム撓み補正 オフ(XT2互換性)
【0297】
表17は、細胞肉試料の調理後食感を示している。図13は、共培養組織および線維芽細胞単一培養組織の調理後硬さを示している。
【0298】
【表17】

実施例8:細胞肉中のビタミンEレベル
【0299】
細胞肉は高濃縮のα-トコフェロール(ビタミンE)を含んでいる。表18は、従来肉と比較した、例示的な細胞肉試料中のビタミンEの含有量を示しており、細胞肉の湿潤質量100g当たり約0.90mgのビタミンEを含んでいる(表18)。ビタミンEは、外部研究機関であるサーティファイド・ラボラトリーズ社(Certified Labs)を利用して、UPLC法AOAC2001.13に従って求めた。
【0300】
【表18】

実施例9:賞味期限の決定
【0301】
方法I:0.5~1.5gの従来肉または細胞肉を、新品できれいな15mLファルコンチューブにとった。試料を全て、チューブ内で-80℃で凍結した。凍結試料チューブを次に-80℃から取り出し、室温で0日間、1日間、2日間、7日間、14日間、および28日間静置した。
【0302】
指定日数の経過後、試料チューブを開けて、バターフィールド配合を用いて連続希釈を行った。連続希釈物を、寒天板(40g/Lのミラー社(Miller)製LB寒天粉末)に播種し(100uLの溶液)、エタノール/炎で滅菌したスプレッダーで広げた。希釈物は10-1とし、例えば、1gを9mlに入れた。試料希釈物毎に2枚のプレートを準備した。全てのプレートを37℃で48時間インキュベートし、0時間、24時間、および48時間の時点で撮影した。表19は結果を示している。
【0303】
【表19】
【0304】
方法II:1.0gの従来肉またはインビトロ細胞肉を、新品できれいな15mLファルコンチューブにとった。試料を4℃または25℃(室温)で3日間貯蔵した。
【0305】
3日間経過後、試料チューブを開けて、バターフィールド配合を用いて連続希釈を行った。総微生物数(TC)または大腸菌/大腸菌群数(EC)用に、連続希釈物を寒天板上に播種した。上記のように、1mlの溶液をCompactDryプレートに加えた。希釈物は10-1とし、例えば、1gを9mlに入れて調製した。試料希釈物毎に3枚のプレートを準備した。全てのプレートを37℃で48時間インキュベートし、0時間、24時間、および48時間の時点で撮影した。表20は結果を示している。
【0306】
【表20】
【0307】
上述の方法を用いて、より長い期間で賞味期限を評価するための追加のアッセイを実施した。4℃で指定日数の経過後、試料チューブを開けて、バターフィールド配合を用いて連続希釈を行った。連続希釈物を寒天板上に播種し、総好気性菌数を評価した。表21は結果を示している。
【0308】
【表21】
【0309】
賞味期限を決定するための、特に、4℃および23℃における148目までの大腸菌数および大腸菌群数を求めるための、追加のアッセイを行った。表22~24は結果を示している。表22は、4℃、148日目の大腸菌数および大腸菌群数をcfu/gとして示している。表23および表24は、23℃、0日目、1日目、2日目、3日目、7日目、30日目、および148日目の大腸菌数(表23)および大腸菌群数(表24)を示している。TMTCはコロニーが多すぎてカウントできないことを示している。
【0310】
【表22】
【0311】
【表23】
【0312】
【表24】

実施例10:細胞培養家禽肉中の水分の測定
【0313】
AOAC950.46に従って水分の定量を行った。表25に示される結果は、血清を用いて生産された非連続的ロットの細胞培養家禽肉を3種類と、無血清の非連続的ロットの細胞培養家禽肉を3種類含んでいる。細胞培養家禽肉の結果をUSDAの農業研究事業団フードデータセントラルデータベースと比較する際、以下の2つのカテゴリーを従来の鶏肉に選んだ:(1)皮付きむね肉(light meat)、皮なしむね肉、皮付きもも肉(dark meat)、皮なしもも肉、生ひき肉、およびロースト用または煮込み用の他の鶏肉サンプルにまたがる、27種の異なる公表サンプルから得られたデータを含み、ただし、皮のみや鶏内臓のデータは含まない、全てのUSDA鶏肉(内臓なし);並びに、(2)むね肉、肉のみと指定された4種の公表サンプルから得られたデータを含む、USDA鶏ささみ肉(white meat)(皮なし)。
【0314】
表25は、トリプリケートの血清含有生産ロット、トリプリケートの無血清生産ロット、並びにUSDA農業研究事業団フードデータセントラルデータベースからの鶏肉データ(「全USDA鶏肉(内臓なし)」および「USDA鶏ささみ肉(皮なし)」の両方)の、平均および標準偏差として報告された、水分データを示している。
【0315】
【表25】
図1
図2
図3
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図5
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図8
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図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】