(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-28
(54)【発明の名称】微生物を単離するための方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20230320BHJP
C12Q 1/6813 20180101ALI20230320BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
C12Q1/02
C12Q1/6813 Z
G01N33/53 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022572815
(86)(22)【出願日】2021-02-03
(85)【翻訳文提出日】2022-09-26
(86)【国際出願番号】 IL2021050128
(87)【国際公開番号】W WO2021156863
(87)【国際公開日】2021-08-12
(32)【優先日】2020-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504317868
【氏名又は名称】テクニオン リサーチ アンド ディヴェロップメント ファンデーション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ジヴァ-ザトルスキー,ナーマ
(72)【発明者】
【氏名】ゲフェン,タル
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA18
4B063QQ06
4B063QR75
4B063QX01
(57)【要約】
本発明は、その一部の実施形態において、サンプルから標的微生物を単離するための方法であって、サンプルを、標的微生物に対し特異的な親和性を有する抗体と接触させるステップを含み、前記抗体は、選択された標的微生物を使用して宿主生物を免疫処置することにより産生され、前記選択された標的微生物は、前記サンプルを、それぞれが1つの標的微生物に対し特異的な親和性を有する1つ以上のポリヌクレオチドと接触させ、サンプル中の標的微生物の存在を決定することにより選択される、方法を目的とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の微生物を含むサンプルから標的微生物を単離するための方法であって、
前記サンプルを、前記標的微生物に対し特異的な親和性を有する抗体と接触させるステップを含み、前記抗体が、選択された標的微生物を使用して宿主生物を免疫処置することにより産生され、前記選択された標的微生物が、前記サンプルのフラクションをそれぞれが1つの標的微生物に対し特異的な親和性を有する1つ以上のポリヌクレオチドと接触させ、前記サンプルのフラクションにおける前記標的微生物の存在を決定することにより選択され、
これにより複数の微生物を含むサンプルから標的微生物を単離する、方法。
【請求項2】
サンプルから標的微生物を単離するための方法であって、
a.複数の微生物を含む前記サンプルのフラクションを準備するステップと、
b.前記サンプルの前記フラクションをそれぞれが1つの標的微生物に対し特異的な親和性を有する1つ以上のポリヌクレオチドと接触させ、前記サンプルの前記フラクションにおける前記1つ以上の標的微生物の存在を決定するステップと、
c.前記サンプルの前記フラクションに存在すると決定された前記1つ以上の標的微生物を選択し、前記選択された標的微生物のうちの1つを使用して宿主生物を免疫処置することにより、前記1つの選択された標的微生物に対し特異的な親和性を有する抗体を産生させるステップと、
d.前記サンプルを、前記1つの選択された標的微生物に対し特異的な親和性を有する前記産生された抗体と接触させるステップと、
を含み、これにより、前記サンプルから標的微生物を単離する、方法。
【請求項3】
前記微生物が、細菌、真菌、古細菌、原生動物、および藻類からなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記選択された微生物が、特定の種または特定の菌株の微生物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記微生物が、病原微生物である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記微生物が、プロバイオティック微生物である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記接触が、前記サンプルを、それぞれが1つの標的微生物に対し特異的な親和性を有する複数のポリヌクレオチド分子と接触させることを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記サンプルが、対象由来のサンプル、土壌サンプル、および水サンプルからなる群から選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記対象由来のサンプルが、前記対象の糞便サンプルである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記サンプルを前記単離した微生物で増強するステップをさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記サンプルから前記単離した微生物を枯渇させるステップをさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記産生された抗体が、対照と比較して、前記1つの選択された標的微生物に対して高い特異的な親和性を有すると決定するステップをさらに含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の方法により得られるサンプル。
【請求項14】
請求項13に記載のサンプルと、薬学的に許容される担体とを含む組成物。
【請求項15】
疾患に罹患した対象の処置に使用するための、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記疾患が、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)下痢症、炎症性腸疾患、過敏性腸疾患、がん、および糖尿病からなる群から選択される、請求項15に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれている、2020年2月3日に出願の標題「METHOD FOR ISOLATING A MICROORGANISM」の米国特許仮出願番号第62/969,197号の優先権の利益を主張する。
【0002】
本発明は、その一部の実施形態において、微生物学、マイクロバイオーム、および関連する適用の分野にある。
【背景技術】
【0003】
細菌叢は、近年、ヒトの健康に著しい効果を有することが示されている。細菌叢の組成は、健康および疾患状態で変化する。細菌叢の組成が、患者に有用な作用を有し得ることを示す試験がある。これらは、健康状態および治療に対する応答の両方に及ぼす作用を含む。近年、細菌叢は総じて、糞便移植(FMT)の観点から臨床実務に関与している。最初の臨床適応およびこれまで最も成功したものは、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)下痢症を処置するためのFMTである。しかしながら、現在、様々な兆候のためのFMT処置の多くの臨床試験が存在する。一般的な糞便の供給源は健常なヒトのドナーであることに留意することが重要である。FMT処置における主な課題の1つは、移植された糞便の細菌叢の組成である。場合により、微量の望ましくない微生物が糞便移植を不適格にし得る。患者の(たとえばFMTによる)移植のための糞便を再度適格とするために、糞便組成物から望ましくない微生物を排除するための方法が、著しく必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
第1の態様では、複数の微生物を含むサンプルから標的微生物を単離するための方法であって、前記サンプルを、前記標的微生物に対し特異的な親和性を有する抗体と接触させるステップを含み、前記抗体が、選択された標的微生物を使用して宿主生物を免疫処置することにより産生され、前記選択された標的微生物が、前記サンプルのフラクションをそれぞれが1つの標的微生物に対し特異的な親和性を有する1つ以上のポリヌクレオチド分子と接触させ、前記サンプルのフラクションにおける前記標的微生物の存在を決定することにより選択され、これにより複数の微生物を含むサンプルから標的微生物を単離する、方法が提供される。
【0005】
別の態様では、サンプルから標的微生物を単離するための方法であって、
(a)前記複数の微生物を含むサンプルのフラクションを準備するステップと、(b)前記サンプルのフラクションをそれぞれが1つの標的微生物に対し特異的な親和性を有する1つ以上のポリヌクレオチド分子と接触させ、前記サンプルのフラクションにおける前記1つ以上の標的微生物の存在を決定するステップと、(c)前記サンプルのフラクションに存在すると決定された1つ以上の標的微生物を選択し、前記選択された標的微生物をのうちの1つを使用して宿主生物を免疫処置することにより、前記1つの選択された標的微生物に対し特異的な親和性を有する抗体を産生させるステップと、(d)前記サンプルを、前記1つの選択された標的微生物に対し特異的な親和性を有する産生された抗体と接触させることにより、前記サンプルから標的微生物を単離するステップとを含む、方法が提供される。
【0006】
別の態様では、本明細書中開示される方法により得られるサンプルが提供される。
【0007】
別の態様では、本明細書中開示されるサンプルと、薬学的に許容される担体とを含む組成物が提供される。
【0008】
一部の実施形態では、微生物は、細菌、真菌、古細菌、原生動物、および藻類からなる群から選択される。
【0009】
一部の実施形態では、選択された微生物は、特異的な種または特異的な菌株の微生物である。
【0010】
一部の実施形態では、微生物は、病原微生物である。
【0011】
一部の実施形態では、微生物は、プロバイオティック微生物である。
【0012】
一部の実施形態では、接触は、サンプルを、それぞれが1つの標的微生物に対し特異的な親和性を有する複数のポリヌクレオチド分子と接触させるステップを含む。
【0013】
一部の実施形態では、サンプルは、対象由来のサンプル、土壌サンプル、および水サンプルからなる群から選択される。
【0014】
一部の実施形態では、対象由来のサンプルは、対象の糞便サンプルである。
【0015】
一部の実施形態では、本方法は、サンプルを単離した微生物で増強するステップをさらに含む。
【0016】
一部の実施形態では、本方法は、サンプルから単離した微生物を枯渇させるステップをさらに含む。
【0017】
一部の実施形態では、本方法は、量、分布、存在量、またはそれらのいずれかの組み合わせが、それを必要とする対象への投与に適合できるよう修正されるように、サンプルを調節するステップをさらに含む。
【0018】
一部の実施形態では、調節は、増加、増大、またはそれらのいずれかの均等物を含む。
【0019】
一部の実施形態では、調節は、減少、低減、またはそれらのいずれかの均等物を含む。
【0020】
一部の実施形態では、調節は、対象の身体状態に合わせられている。
【0021】
一部の実施形態では、本方法は、投与前に対象の状態を決定するステップをさらに含む。
【0022】
一実施形態では、対象が病原微生物を含むと決定される場合、本方法は、対象への投与の前に、サンプルまたはそのフラクションから病原微生物を枯渇させるステップを含む。
【0023】
一実施形態では、対象がプロバイオティック微生物を欠いている場合、本方法は、対象への投与の前に、サンプルまたはそのフラクションをプロバイオティック微生物で増強するステップを含む。
【0024】
一部の実施形態では、サンプルまたはそのフラクションは、自家性サンプルである。
【0025】
一部の実施形態では、サンプルまたはそのフラクションは、同種異系間のサンプルである。
【0026】
一部の実施形態では、本方法は、産生された抗体が、対照と比較して高い、1つの選択された標的微生物に対する特異的な親和性を有することを決定するステップをさらに含む。
【0027】
一部の実施形態では、本組成物は、疾患に苦しむ患者の処置に使用するためのものである。
【0028】
一部の実施形態では、疾患は、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)下痢症、炎症性腸疾患、過敏性腸疾患、がん、および糖尿病からなる群から選択される。
【0029】
他の意味が定義されない限り、本明細書中使用される全ての技術用語および/または科学用語は、本発明が関連する分野の当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。本明細書中記載されるものと同様または均等な方法および物質が本発明の実施形態の実務または試験で使用できるが、例示的な方法および/または物質が後述されている。コンフリクトの場合、定義を含む本明細書が優先される。さらに、物質、方法、および実施例は、単なる例であり、必ずしも限定されるようには意図されていない。
【0030】
本発明の適用性のさらなる実施形態および完全な範囲は、本明細書中以下に提供される詳細な説明から明らかとなる。しかしながら、詳細な説明および具体的な実施例は、本発明の好ましい実施形態を表しながら、本発明の趣旨および範囲の中の様々な変化および修正がこの詳細な説明から当業者に明らかとなるため、単なる例で提供されることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)の非限定的なスキームの図を含む。プローブは、標的分子(たとえばDNA)に結合する。標的分子(たとえばDNA)は、ハイブリダイゼーションを可能にするように変性される。その後、プローブはハイブリダイズし、その後、プローブに結合した色素(たとえば蛍光部分など)に基づき解析を行う。
【
図2】
図2は、本発明の方法の非限定的なスキームの図を含む。本方法は、目的の細菌に特異的に結合する特異的なDNA蛍光プローブを設計するステップを含む。これら細菌を蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(「FISHing」)によりプローブでソーティングし、次に、宿主動物を免疫処置して抗体を産生させる。宿主動物は、限定するものではないが、ニワトリであり得、ニワトリの場合、抗体は、卵黄から大量に回収でき、ニワトリは、大量の抗体を伴うタマゴを産み続けながら、生存し続けることができる。さらに、ニワトリのイムノグロブリンY(IgY)抗体は、哺乳類の宿主および細菌に対し不活性であり、細菌は、他の抗体上のプロテインA/Gに結合し得る。にも関わらず、抗体は、哺乳類の宿主、たとえばマウスまたはウサギで産生され得る。本発明の方法は、複数の異なる細菌の組み合わせで、1度に行うことができる。
【
図3A-3E】
図3A~3Eは、目的の細菌:クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)(3A);バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)(3B);パラバクテロイデス・ジョンソニイ(Parabacteroides johnsonii)(3C);ブラウティア・コッコイデス(Blautia coccoides)(3D);およびエシェリヒア・ニッスル(Escherichia nissle)(3E)に対しハイブリダイズしたプローブのフローサイトメトリーを示すグラフを含む。FISH-DNAプローブは、目的の細菌に応じて設計された。プローブは、in vitroで細菌とハイブリダイズされ、その後蛍光活性化セルソーティング(FACS)を行った。
【
図4A-4G】
図4A~4Gは、本発明の方法およびグラフを描いた非限定的なスキームの図を含む。(4A)は、限定するものではないがたとえば糞便などの、天然の供給源由来の目的の標的細菌に対する特異的な抗体の産生のためのプロセスを表す。これら抗体は、たとえば、標的細菌を増強するかまたは標的細菌を天然の供給源から枯渇させるために、使用され得る。このプロセスは、宿主、たとえばニワトリ、ウサギ、マウスなどを免疫処置して目的の細菌に対する抗体を産生させるステップを含む。(4B~4C)は、抗体の特異性を示すフローサイトメトリー分析のグラフである。(4B)は、物理的なパラメータに関するフローサイトメトリーにより検出される細菌のイベントを示す。大きさ-FSC-Aおよび粒度SSC-Aの各ドットは、単一の細菌を表す。(4C)アッセイから特異的な一次抗体を除外することによる、シグナル強度のバックグラウンド対照(R-670/30-A)。(4D)バクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)を、特異的な一次抗体、次に二次抗体とインキュベートし、フローサイトメトリーにより試験した。特異的な検出強度は、バックグラウンドよりも4log高いことを見出した。さらにこの抗体は、特異的な種に対してのみ特異的に結合することを示し、抗体を作製した菌株に対し最も親和性が高く、別の種に対する親和性を有さなかった(4E、最も左側のバー)。(4F-4G)は、FACS(4F)または磁気ビーズ分離(4G)を使用する、たとえば抗体(識別および標的化もまたFISHプローブで行われ得る)による、目的の細菌を単離するための2つの方法の非限定的な例の図である。
【
図5A-5E】
図5A~5Eは、ビーズを使用した特異的な細菌の単離を示すグラフを含む。磁性ビーズ分離を用いた、細菌への抗体結合を使用するフローサイトメトリーの分析が示されている。バクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)または関連しない細菌を、ヘキストDNA標識で染色した。3つの洗浄ステップの後、細菌を特異的な抗体でコーティングしたビーズとインキュベートした。(5A)磁性ビーズ(ゲート化)物理的パラメータの検出。大きさ-FSC-A、粒度-SSC-A。単一の細菌イベントは、グラフの左下の角で検出され得る;(5B)および(5C)物理的なパラメータの検出が、磁性ビーズの検出と共に高い解像度の細菌イベントを可能にするlog尺度で提示されている;(5D)染色された無関係な対照の細菌とのインキュベーション後のゲート化ビーズ強度;および(5E)は、染色したバクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)とのインキュベーション後のゲート化ビーズである。特異的なビーズの強度は、陰性対照よりも少なくとも2倍超であることが見出された。同じ手法が、細菌の組み合わせで1度に行われ得る。
【
図6A-6C】
図6A~6Cは、フローサイトメトリーによる細菌の一般的な検出を示すグラフを含む。(6A)細菌(ゲート化)物理的パラメータの検出。大きさ-FSC-A、粒度-SSC-A。単一の細菌が、ゲート化されたイベントで検出される;(6B)および(6C)。
【
図7A-7D】
図7A~7Dは、特異的なIgY抗体を使用したバクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)の特異的な検出を示すグラフを含む。IgYの細菌への結合は、二次抗体-ウサギ抗ニワトリAlexa Fluor 647コンジュゲートにより検出される。(7A)右のゲート化バクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)の93.6%。左のゲート化されたイベントは、デブリとみなされる。(7B)ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)に対する結合なし。右のゲート。(7C)特異的なバクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)の検出(7A)と比較して低い蛍光強度を伴うビフィドバクテリウム・ロンガム(B.longum)の最小結合。(7D)バクテロイデス・シータイオタオミクロン(B.thetaiotaomicron)に対する結合なし。右のゲート。
【
図8A-8C】
図8A~8Cは、他の細菌とバクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)の混合物の染色を示すグラフを含む。(8A)ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(B.adolescentis)とバクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)。(8B)ビフィドバクテリウム・ロンガム(B.longum)とバクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)。(8C)バクテロイデス・シータイオタオミクロン(B.thetaiotaomicron)とバクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)。特異的なバクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)検出の蛍光強度の変化は、試験した混合物で観察されなかった。
【
図9A-9C】
図9A~9Cは、ソーティングしたバクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)およびオフターゲット細菌のグラフを含む。(9A)バクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)をビフィドバクテリウム・アドレセンティス(B.adolescentis)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(B.longum)、およびバクテロイデス・シータイオタオミクロン(B.thetaiotaomicron)と混合し、FACS AriaIII BDを使用してソーティングした。細菌の特異的な染色を、IgY バクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)特異的抗体およびウサギ抗ニワトリAlexa Fluor 647コンジュゲートにより行った。(9B)ソーティング後、抗体染色に対し陰性の細菌は、染色されたバクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)の2%未満を示している。細菌混合物からのバクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)の枯渇を表す。(9C)ソーティング後、陽性にソーティングされたバクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)は、89.6%の純度まで増強された。
【
図10A-10I】
図10A~10Iは、他の細菌とバクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)の混合物の染色を示すグラフを含む。(10A-10E)バクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)、バクテロイデス・ブルガタス(B.vulgatus)、ペプトストレプトコッカス・マグナス(Peptostreptococcus magnus)、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(B.adolescentis)、およびプロピオニバクテリウム・グラニュロサム(Propionibacterium granulosum)のそれぞれに関する単一の染色。(10F)バクテロイデス・ブルガタス(B.vulgatus);(10G)ペプトストレプトコッカス・マグナス(P. magnus);(10H)ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(B.adolescentis);および(10I)プロピオニバクテリウム・グラニュロサム(P. granulosum)と染色したバクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)の混合物。特異的なバクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)の蛍光強度の検出の変化は、混合物により観察されなかった。
【
図11A-11C】
図11A~11Cは、ソーティングされたバクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)およびオフターゲット細菌のグラフを含む。(11A)バクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)をバクテロイデス・ブルガタス(B.vulgatus)、ペプトストレプトコッカス・マグナス(P.magnus)、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(B.adolescentis)、およびプロピオニバクテリウム・グラニュロサム(P.granulosum)と混合し、FACS AriaIII BDを使用してソーティングした。細菌の特異的な染色を、IgY バクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)特異的抗体およびウサギ抗ニワトリAlexa Fluor 647コンジュゲートにより行った。(11B)ソーティング後、抗体染色に関して陰性の細菌は、染色されたバクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)の1%未満を示しており、細菌混合物からのバクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)の枯渇を表している。(11C)。ソーティング後の正にソーティングされたバクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)は、94.2%の純度まで増強された。
【
図12A-12C】
図12A~12Cは、バクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)(12A)、ヒト糞便細菌(12B)、および両方の混合物(12C)の物理的検出を示すグラフを含む。大きさ-FSC-A、粒度-SSC-A。
【
図13A-13C】
図13A~13Cは、糞便の細菌混合物からのバクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)のソーティングに関するグラフを含む。(13A)ヘキスト33342色素(細菌の中のDNAに結合)で標識したバクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)。標識の後、シグナルを、Y軸で検出した(Alexa Fluor 405)(13B)。ヘキスト標識したバクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)の特異的な抗体染色。87%の二重標識したバクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)。(13C)バクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)添加前のヒトの糞便における細菌の検出。
【
図14A-14C】
図14A~14Cは、糞便の細菌混合物からソーティングしたバクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)のグラフを含む。(14A)。ヘキスト標識したバクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)(Y軸)および特異的な抗体で標識したバクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)(X軸)のソーティング前の混合物。(14B)ソーティング後のバクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)の81。9%の純度。(14C)93.6%の純度までバクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)が枯渇したソーティング後の糞便。
【発明を実施するための形態】
【0032】
詳細な説明
一部の実施形態では、複数の微生物を含むサンプルから標的微生物を単離するための方法が提供される。
【0033】
一部の実施形態では、本方法は、サンプルを、標的微生物に対し特異的な親和性を有する抗体と接触させるステップを含み、前記抗体は、選択された標的微生物を使用して宿主生物を免疫処置または免疫化することにより産生され、前記選択された標的微生物は、前記サンプルのフラクションをそれぞれが1つの標的微生物に対し特異的な親和性を有する1つ以上のポリヌクレオチド分子と接触させ、前記サンプルのフラクションにおける前記標的微生物の存在を決定することにより選択され、それにより、前記サンプルから標的微生物を単離する。
【0034】
一部の実施形態では、接触は、抗原またはそのエピトープに対する抗体の結合を可能にするために十分な条件下にあり、たとえば抗体は、宿主生物を免疫処置することにより作製されたものである。
【0035】
一部の実施形態では、接触は、サンプルの1つ以上の微生物が含む1つ以上のポリヌクレオチドおよび相補的なポリヌクレオチドの塩基対形成を可能にするために十分な条件下にある。
【0036】
一部の実施形態では、本方法は、複数の微生物を含むサンプルを準備するステップを含む。本明細書中使用される場合、用語「サンプルを準備すること」は、サンプルを入手または生成することを含む。
【0037】
一部の実施形態では、本方法は、サンプルのフラクションを、それぞれが1つの標的微生物に対し特異的な親和性を有する1つ以上のポリヌクレオチド分子と接触させ、サンプルにおける1つ以上の標的微生物の存在を決定するステップを含む。
【0038】
一部の実施形態では、決定することは、1つの標的微生物に対し特異的な親和性を有する1つ以上のポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションを表すシグナルを検出するステップを含む。一部の実施形態では、ハイブリダイゼーションは、サンプルの1つ以上の微生物が含む1つ以上のポリヌクレオチドおよび相補的ポリヌクレオチドの塩基対形成を含む。一部の実施形態では、サンプルの1つ以上の微生物が含む相補的ポリヌクレオチドは、DNAおよび/またはRNAのポリヌクレオチドを含む。
【0039】
一部の実施形態では、ハイブリダイゼーションを表すシグナルは、蛍光シグナル、放射活性シグナル、および彩色シグナルのうちのいずれか1つを含む。
【0040】
一部の実施形態では、1つの標的微生物に対し特異的な親和性を有する1つ以上のポリヌクレオチドは、蛍光標識されているか、放射活性標識されているか、または彩色的に標識されている。一部の実施形態では、1つの標的微生物に対し特異的な親和性を有する1つ以上のポリヌクレオチドは、その中に埋め込まれているかまたは組み込まれている分子もしくは部分を含む。一部の実施形態では、この分子もしくは部分は、当該分子もしくは部分に対する結合親和性がさらに高い分子、たとえば特異的な抗体(たとえばジゴキシゲニン(DIG)と抗DIG抗体)もしくは結合する対応物(たとえばアビジンとビオチン)などにより、さらに認識および/または結合される。一部の実施形態では、抗体または結合する対応物は、さらに酵素に結合している。一部の実施形態では、結合した酵素は、比色反応を触媒できる。一部の実施形態では、比色反応は、生物発光反応または化学発光反応を含む。
【0041】
一部の実施形態では、本方法は、サンプルに存在すると決定された1つ以上の標的微生物を選択し、選択された標的微生物のうちの1つを使用して宿主生物を免疫処置することにより、1つの選択された標的微生物に対し特異的な親和性を有する抗体を産生させるステップを含む。
【0042】
宿主生物の免疫処置のための方法は、一般的であり、当業者に明らかである。免疫処置に適した宿主生物の非限定的な例として、ニワトリ、ウサギ、およびマウスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
一部の実施形態では、本方法は、サンプルを、1つの選択された標的微生物に対し特異的な親和性を有する産生された抗体と接触させることにより、サンプルから標的微生物を単離するステップを含む。
【0044】
一部の実施形態では、本方法は、サンプルを、それぞれが1つの標的微生物に対し特異的な親和性を有する複数のポリヌクレオチド分子と接触させるステップを含む。
【0045】
一部の実施形態では、宿主生物を免疫処置するための、1つ以上の標的微生物を選択するための方法であって、(1)複数の微生物を含むサンプルのフラクションを準備するステップと、(2)サンプルのフラクションを、それぞれが1つの標的微生物に対し特異的な親和性を有する1つ以上のポリヌクレオチド分子と接触させ、サンプルのフラクションにおける1つ以上の標的微生物の存在を決定するステップと、(3)宿主生物を免疫処置するため、サンプルのフラクションに存在すると決定された1つ以上の標的微生物を選択するステップとを含む、方法が提供される。
【0046】
一部の実施形態では、本方法は、サンプルまたはそのフラクションに存在すると決定された選択された標的微生物のうちの1つを使用して宿主生物を免疫処置するステップをさらに含む。一部の実施形態では、産生された抗体は、選択された標的微生物に対し特異的な親和性を有することを特徴とする。
【0047】
一部の実施形態では、本方法は、サンプルを、産生された抗体と接触させることを含むステップをさらに含む。一部の実施形態では、本方法は、サンプルを、選択された標的微生物に対し特異的な親和性を有する産生された抗体と接触させるステップを含む。一部の実施形態では、接触は、サンプルまたはそのフラクションから標的微生物を単離することを含むか、または単離することをもたらす。
【0048】
本明細書中使用される場合、用語「複数」は、1超であるいずれかの数または値を表す。一部の実施形態では、複数は、2~10、2~50、20~100、2~500、2~1,000、または2~10,000を含む。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。一部の実施形態では、複数は、少なくとも2、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも500、少なくとも1,000、少なくとも10,000、またはそれらの間のいずれかの値および範囲を含む。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0049】
一部の実施形態では、微生物は、細菌、真菌、古細菌、原生動物、および藻類から選択される。
【0050】
一部の実施形態では、細菌は、ビフィドバクテリウム属を含む。一部の実施形態では、ビフィドバクテリウム属は、バクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)を含む。
【0051】
一部の実施形態では、標的化された微生物は、病原微生物である。本明細書中使用される場合、用語「病原微生物」は、宿主生物をホメオスタシスからそらすいずれかの微生物を含む。一部の実施形態では、病原微生物は、疾患またはそれに関連する症状を誘導するか、惹起するか、促進するか、伝搬するか、またはそれらのいずれかの均等物を行う。
【0052】
一部の実施形態では、標的化された微生物は、プロバイオティック微生物である。本明細書中使用される場合、用語「プロバイオティック微生物」は、それを含む宿主生物に健康上有用な作用を有するかまたはこれを促進するいずれかの微生物を表す。
【0053】
一部の実施形態では、選択された微生物は、特異的な種または特異的な菌株の微生物である。
【0054】
一部の実施形態では、サンプルは、対象由来のサンプル、土壌サンプル、および水サンプルから選択される。
【0055】
一部の実施形態では、サンプルは、環境上のサンプルを含む。一部の実施形態では、本発明の方法は、培養されていない微生物の単離を目的とする。
【0056】
一部の実施形態では、対象由来のサンプルは、対象の組織または細胞を含む。一部の実施形態では、対象由来のサンプルは、対象の体液を含む。一部の実施形態では、対象由来のサンプルは、対象の糞便サンプルを含む。
【0057】
一部の実施形態では、本方法は、サンプルを単離された微生物で増強するステップをさらに含む。
【0058】
一部の実施形態では、本方法は、単離された微生物をサンプルから枯渇させるステップをさらに含む。一部の実施形態では、枯渇は、単離された微生物がサンプルに存在しない限り、除去、排除、除外、またはそれらのいずれかの均等物を含む。一部の実施形態では、サンプルは、本発明の方法を行った後に、単離された微生物を欠いている。
【0059】
一部の実施形態では、本方法は、産生された抗体が、対照と比較して高い、1つの選択された標的微生物に対する特異的な親和性を有することを決定するステップをさらに含む。
【0060】
一部の実施形態では、本発明の方法は、ヒト関連、海洋関連、農業、培養されていない細菌、健康に関連した細菌、糞便移植からの細菌の枯渇、およびプロバイオティクスのために指示された細菌から選択されるいずれかの適用に適した組成物を提供する。
【0061】
本明細書中使用される場合、対照は、本発明の方法を行う前のサンプル(「処置前のサンプル」)に存在しない微生物を含む。一部の実施形態では、対照は、産生された抗体と交差反応しないいずれかの化合物および/または微生物である。一部の実施形態では、対照は、標的微生物以外の、いずれかの異なる種、株、菌株、クレード、門、またはそれらのいずれかの均等物の微生物である。
【0062】
本明細書中使用される場合、増加は、対照と比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも250%、少なくとも500%、少なくとも750%、少なくとも1,000%、またはそれらの間のいずれかの値および範囲だけ、増加している。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。一部の実施形態では、増加は、対照と比較して5~150%、10~250%、5~400%、10~550%、50~600%、100~375%、250~750%、300~800%、または725~1,000%の増加である。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0063】
抗体の特異性を決定するための方法は、一般的であり、当業者に明らかである。このような方法の非限定的な例として、ウェスタンブロット、免疫沈降、酵素結合免疫吸着測定法(直接ELISAおよび間接ELISAを含むELISA)、競合結合アッセイ、およびその他が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
一部の実施形態では、本発明は、本発明の方法により得られるサンプルを提供する。
【0065】
一部の実施形態では、本発明は、本発明の方法により得られるサンプルを含む組成物を提供する。
【0066】
一部の実施形態では、本組成物は、許容される担体をさらに含む。一部の実施形態では、担体は、薬学的に許容される担体を含む。
【0067】
一部の実施形態では、本組成物は、疾患に苦しむ対象の処置に使用するためのものである。
【0068】
一部の実施形態では、疾患は、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)下痢症、炎症性腸疾患(IBD)、過敏性腸疾患、がん、および糖尿病から選択される。
【0069】
一部の実施形態では、本組成物は、癌の免疫療法での使用に適している。
【0070】
一部の実施形態では、本組成物は、機能的なプロバイオティック組成物である。一部の実施形態では、機能的なプロバイオティクスは、乳児の処置での使用に適している。一部の実施形態では、機能的なプロバイオティック組成物は、ビフィドバクテリウム属を含む。
【0071】
本明細書中使用される場合、用語「がん」は、細胞増殖の異常に関連するかまたはこれを特徴とする疾患を表す。一部の実施形態では、がんは、細胞増殖を含む疾患を表す。
【0072】
一部の実施形態では、IBDは、クローン病、潰瘍性大腸炎、またはその両方を含む。
【0073】
用語「サンプル」および「サンプルのフラクション」は、本明細書において互換可能に使用される。
【0074】
一部の実施形態では、本発明は、抗体を産生させるための方法であって、(a)サンプルを、それぞれが1つの標的微生物に対し特異的な親和性を有する1つ以上のポリヌクレオチド分子と接触させるステップと、(b)サンプルに存在すると決定された標的微生物を選択するステップと、(c)選択された標的微生物を使用して宿主生物を免疫処理することにより、抗体を産生させるステップとを含む、方法を目的とする。
【0075】
一部の実施形態では、産生された抗体を含む組成物が提供される。
【0076】
一部の実施形態では、産生された抗体、それを含む組成物、またはその両方は、複数の微生物を含むサンプルからの微生物の単離に使用するためのものである。
【0077】
一部の実施形態では、抗体は、脊椎動物由来の抗体である。一部の実施形態では、抗体は、非哺乳類の抗体である。一部の実施形態では、抗体は、鳥類由来の抗体である。一部の実施形態では、抗体は、サメ由来の抗体である。一部の実施形態では、抗体は、ニワトリ由来の抗体である。一部の実施形態では、抗体は、イムノグロブリンY(IgY)抗体である。一部の実施形態では、抗体は、微生物の細胞壁またはその成分と交差反応性を有さないかまたは交差反応性が低い。一部の実施形態では、抗体は、リポ多糖と交差反応性を有さないかまたは交差反応性が低い。
【0078】
実施例
全般的に、本明細書中使用される命名法および本発明で利用される研究手法は、化学的、分子学的、生化学的、および細胞生物学的技術を含む。このような技術は、文献に全て説明されている。たとえば、「Molecular Cloning: A laboratory Manual」 Sambrook et al., (1989); 「Current Protocols in Molecular Biology」 Volumes I-III Ausubel, R. M., ed. (1994);「Cell Biology: A Laboratory Handbook」, Volumes I-III Cellis, J. E., ed. (1994);The Organic Chemistry of Biological Pathways by John McMurry and Tadhg Begley (Roberts and Company, 2005);Organic Chemistry of Enzyme-Catalyzed Reactions by Richard Silverman (Academic Press, 2002);Organic Chemistry (6th Edition) by Leroy 「Skip」 G Wade;Organic Chemistry by T. W. Graham Solomons and, Craig Fryhleを参照されたい。
【0079】
材料および方法
蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)
FISHプローブは、細菌の特異的な固有の相補的16SリボソームRNA(rRNA)遺伝子配列に対して、DNAレベルで設計されていた。蛍光標識したプローブは、Biomers(ドイツ)から注文された。最大1×109個の培養した細菌または糞便を洗浄した細菌を、50%の氷冷したエタノールにおいて-20℃で20分間固定した。ハイブリダイゼーションバッファー(0.9MのNaCl、20mMのTris(pH7.5)、0.01%のSDS、20%のHiDiホルムアミド)での洗浄ステップの後、細菌を50μlのハイブリダイゼーションバッファーおよびプローブ(2pmole/μl)に再懸濁した。46℃での2時間のインキュベーションの後、細菌を、48℃の洗浄バッファー(215mMのNaCl、20mMのTris(pH7.5)、5mMのEDTA)で15分間3回洗浄した。
【0080】
抗体産生
細菌に特異的な抗体を作製するために、産卵しているニワトリを、不完全フロイントアジュバント(Sigma)に乳化した50μgの単離した細菌を用いて皮下に免疫処置した。2回目のブースト接種から2週間後に、IgY抗体を卵黄から回収し、硫酸ナトリウム生成ステップを行った。フローサイトメトリーにより、抗体の特異性を試験した。
【0081】
フローサイトメトリー
細菌を、FACSバッファー(PBS、2%のFCS、1mMのEDTA、および0.1%アジ化ナトリウム)で洗浄し、100イベント/秒と同等の濃度で再懸濁した(Fortessa low speed)。
【0082】
抗体染色
洗浄した細菌を、精製した抗体と4℃で30分間インキュベートし、次に、二次抗体のヤギ抗ニワトリIgY Alexa Fluor-647コンジュゲートとインキュベートした。
【0083】
磁性ビーズの捕捉
磁性ビーズ(Thermo-Scientific)を、マウス抗バクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)抗体でコーティングした。ビーズを、1:1,000ヘキスト染色した細菌と4℃で30分間インキュベートし、フローサイトメトリーにより分析した。
【0084】
ソーティング戦略
細菌を、1:2,000のバクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)特異的抗体(二次抗体Ab-1:2,000ウサギ(Fab2)抗ニワトリIgY APCコンジュゲート)で染色した。染色は、確立された染色バッファーにおいて、4℃および25℃で作用した。洗浄ステップ-1mlの染色バッファー、遠心 6,500gで5分間。最適な閾値および電圧の値を、AriaIII BD FACSで設定した。対照として、以下の群:(1)単一の染色した細菌;(2)バクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)を伴う各細菌;および(3)全ての混合物、を使用した。混合物の場合、細菌を混合し、その後、特異的なAbで染色した。
【0085】
染色および糞便からのバクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)の単離
バクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)を、代謝クリックラベリング-AF488蛍光色素により染色した。糞便の細菌を洗浄し、標識したバクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)と混合し、特異的抗体-APC蛍光色素により検出した。
【0086】
簡潔に述べると、細菌を、1:2,000のバクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)特異的抗体(二次抗体Ab-1:2,000ウサギ(Fab2)抗ニワトリIgY APCコンジュゲート)で染色した。染色は、染色バッファー(PBS、10%のFBS、0.5mMのEDTA、pH7.2)において25℃で行った。洗浄ステップ-1mlの染色バッファー、遠心 4℃、6,500gで5分間。最適な閾値および電圧の値は、LSR Fortessa、BDアナライザー用に設定した。
【0087】
糞便からのバクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)のソーティング
バクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)の核酸を、ヘキスト-AF405チャネルを使用して染色した。糞便の細菌を洗浄し、ヘキスト染色したバクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)と混合し、特異的抗体-APC蛍光色素により検出した。
【0088】
簡潔に述べると、細菌を、1:2,000のバクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)特異的抗体(二次抗体Ab-1:2,000ウサギ(Fab2)抗ニワトリIgY Alexa Fluor 647コンジュゲート)で染色した。染色は、染色バッファー(PBS、10%のFBS、0.5mMのEDTA、pH7.2)において25℃で行った。洗浄ステップ-1mlの染色バッファー、遠心 4℃、6,500gで5分間。最適な閾値および電圧の値を、AriaIII、BDソーター用に設定した。細菌を、4つのチューブにソートし、ソートした細菌で再実験を行うことにより、再度分析した。
【0089】
実施例1
FISHにより単離した細菌に対して作製された特異的抗体の産生
本発明者らは、細菌に特異的な検出が、相補的な蛍光標識プローブ(
図3)を使用し、最小の交差反応性にて(
図3A~3E)実現可能であることを示している。このプローブの設計は、細菌の16S-rRNA遺伝子に固有の特異的な配列に対するバイオインフォマティクス解析を使用して行った(
図1)。標識した細菌は、蛍光活性化セルソーター(FACS)を使用してさらに単離した。細菌の単離の後、産卵しているニワトリまたは他の動物を、単離した細菌で免疫処置し、特異的な抗体を、ニワトリの卵または動物の血清から回収する(
図2)。作製した抗体の特異性を試験するために、細菌をこの抗体とインキュベートし、フローサイトメトリーにより試験した(
図4B~4D)。単離した抗体は、ワクチンの細菌株に特異的であり、他の属由来の細菌間で最小の交差反応性および同じ細菌種由来の他の菌株に対する特定の交差反応性を伴うことが見出された(
図4E)。特異的な抗体と、または抗体でコーティングされた磁性ビーズと、細菌のインキュベーションは、FACS(
図4F)または磁石(
図4G)それぞれにより全細菌コミュニティでの細菌の分離を可能にした。
【0090】
細菌に特異的に結合する抗体でコーティングした磁性ビーズの特性を検証するために、ビーズを、ヘキスト染色したバクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)とインキュベートし、フローサイトメトリーにより試験した(
図5)。バクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)を捕捉するビーズのヘキスト強度(
図5E)を、関連しない細菌のバックグラウンド(
図5D)と比較した。
【0091】
実施例2
糞便におけるバクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)の検出およびソーティング
本発明者らは、培養した細菌が、高い特異性および効率性を伴い認識可能であることを示した(
図7、8、および11)。バクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)を特異的に標的とするIgY抗体は、他の培養した細菌と低い交差反応性を示し、今までのところ、試験した糞便における未知の細菌に対するいくらかの非特異的な結合が観察された(
図13C)。糞便からソーティングされた細菌の再実験は、染色したバクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)(ダブルポジティブ)で82%の効率およびネガティブ(ダブルネガティブ-非バクテロイデス・フラジリス(B.fragilis))で93%の効率を示した(
図14B~14C)。
【0092】
本明細書において、本発明の特定の特性が記載されているが、多くの修正、置換、変更、および均等物が、当業者により想起される。よって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨の範囲内にある限り、このような修正および変更の全てを包有するように意図されていることを理解されたい。
【国際調査報告】