(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-29
(54)【発明の名称】抗ヘプシン抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230322BHJP
C07K 16/40 20060101ALI20230322BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20230322BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230322BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230322BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230322BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230322BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230322BHJP
C12N 9/50 20060101ALI20230322BHJP
C12N 15/57 20060101ALI20230322BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230322BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230322BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230322BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20230322BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/40 ZNA
C07K16/30
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N9/50
C12N15/57
C12N15/12
A61K39/395 D
A61K39/395 P
A61P43/00
G01N33/574 A
A61P7/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547871
(86)(22)【出願日】2021-02-03
(85)【翻訳文提出日】2022-10-03
(86)【国際出願番号】 US2021016409
(87)【国際公開番号】W WO2021158660
(87)【国際公開日】2021-08-12
(32)【優先日】2020-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522311783
【氏名又は名称】ナボー, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン, ブレイク ピー.
(72)【発明者】
【氏名】オブライエン, ティモシー ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4B050
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B050CC03
4B050DD11
4B050LL03
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA92Y
4B065AA94Y
4B065AC14
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4B065CA44
4B065CA46
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB22
4C085DD63
4C085EE01
4C085KA03
4C085LL18
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA28
4H045EA51
4H045FA74
(57)【要約】
本出願は、抗ヘプシン抗体を作出する方法、抗ヘプシン抗体、抗ヘプシン抗体の活性をスクリーニングする方法、抗ヘプシン抗体の医薬組成物、抗ヘプシン抗体を含有するキット、および抗ヘプシン抗体を使用してがんを診断する方法を開示する。循環ヘプシンまたは循環ヘプシンのC末端に選択的に結合する、単離された抗体が本発明で提供される。ある場合では、抗体は、セリンプロテアーゼであるマトリプターゼ(Matripase)、KLK6、KLK7、およびKLK8には選択的に結合しない。ある場合では、配列番号42を含む、単離された組換えヘプシンポリヌクレオチド配列が本発明で提供される。別の場合では、配列番号43を含む、単離された組換えヘプシンアミノ酸配列が本発明で提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環ヘプシンまたは循環ヘプシンのC末端に選択的に結合する、単離された抗体。
【請求項2】
セリンプロテアーゼであるマトリプターゼ、KLK6、KLK7、およびKLK8には選択的に結合しない、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記ヘプシンが、ヒトヘプシンである、請求項1から2までのいずれか一項に記載の抗体。
【請求項4】
前記ヘプシンが、生物学的に活性な細胞外ヘプシンである、請求項1から3までのいずれか一項に記載の抗体。
【請求項5】
前記循環ヘプシンが、配列番号44のアミノ酸配列を含む、請求項1から4までのいずれか一項に記載の抗体。
【請求項6】
野生型ヒトヘプシンが、配列番号41のアミノ酸配列を含む、請求項1から4までのいずれか一項に記載の抗体。
【請求項7】
配列番号43のアミノ酸配列を含む組換えヘプシン配列に結合する、単離された抗体。
【請求項8】
可変重鎖相補性決定領域CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む抗体またはその抗原結合性断片であって、 CDR-H1が、配列番号16、18、および19のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含み、CDR-H2が、配列番号11、13、および14のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含み、CDR-H3が、配列番号6、8、および9のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含む、抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項9】
可変軽鎖相補性決定領域CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含む抗体またはその抗原結合性断片であって、 CDR-L1が、配列番号17および20のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含み、CDR-L2が、配列番号12および15のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含み、CDR-L3が、配列番号7および10のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含む、抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項10】
可変重鎖CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3、ならびに可変軽鎖CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含む抗体またはその抗原結合性断片であって、
CDR-H1が、配列番号16、18、および19のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含み、CDR-H2が、配列番号11、13、および14のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含み、CDR-H3が、配列番号6、8、および9のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含み、
CDR-L1が、配列番号17および20のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含み、CDR-L2が、配列番号12および15のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含み、CDR-L3が、配列番号7および10のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含む、
抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項11】
配列番号1~3のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含む可変重鎖を含む、抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項12】
配列番号4~5のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含む可変軽鎖を含む、抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項13】
配列番号1~3のうちのいずれか1つから選択される可変重鎖CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3(例えば、前記CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3が、Chothia番号付け、Martin番号付け、Kabat番号付け、AHo番号付け、またはIMGT番号付けによって定義される)を含む抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項14】
配列番号4~5のうちのいずれか1つから選択される可変軽鎖CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3(例えば、前記CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3が、Chothia番号付け、Martin番号付け、Kabat番号付け、AHo番号付け、またはIMGT番号付けによって定義される)を含む抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項15】
配列番号1~3のうちのいずれか1つから選択される可変重鎖CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3、ならびに配列番号4~5のうちのいずれか1つから選択される可変軽鎖CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含む抗体またはその抗原結合性断片であって、
前記CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3が、Chothia番号付け、Martin番号付け、Kabat番号付け、AHo番号付け、またはIMGT番号付けによって定義され、
前記CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3が、Chothia番号付け、Martin番号付け、Kabat番号付け、AHo番号付け、またはIMGT番号付けによって定義される、
抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項16】
配列番号1~3のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含む可変重鎖;および
配列番号4~5のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含む可変軽鎖
を含む、抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項17】
抗体の重鎖ポリペプチドをコードする再構築された核酸コンセンサス配列を含む、単離された核酸であって、前記核酸コンセンサス配列が、配列番号21~23のうちのいずれか1つから選択される、単離された核酸。
【請求項18】
抗体の軽鎖ポリペプチドをコードする再構築された核酸コンセンサス配列を含む、単離された核酸であって、前記核酸コンセンサス配列が、配列番号24~25のうちのいずれか1つから選択される、単離された核酸。
【請求項19】
請求項17または請求項18に記載の単離された核酸を含むベクター。
【請求項20】
前記単離された核酸が、調節性制御配列と作動可能に連結している、請求項19に記載のベクター。
【請求項21】
請求項19に記載のベクターまたは請求項17もしくは請求項18に記載の核酸を含む宿主細胞。
【請求項22】
前記請求項のいずれか一項に記載の抗体および薬学的に許容される賦形剤を含む組成物。
【請求項23】
生体試料中の循環ヘプシンの存在を同定する方法であって、
a)前記生体試料(例えば、がんを有する疑いがあるまたはがんのリスクがある個体などの個体から得たもの)を、循環ヘプシンに選択的に結合する抗体と接触させるステップと、
b)前記生体試料中に循環ヘプシンが存在するかどうかを決定する(例えば、循環ヘプシンの量が増加しているかどうかを決定する)ステップと
を含む、方法。
【請求項24】
循環ヘプシンに選択的に結合する前記抗体が、
配列番号1~3のうちのいずれか1つから選択される可変重鎖CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3、ならびに配列番号4~5のうちのいずれか1つから選択される可変軽鎖CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含み、
前記CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3が、Chothia番号付け、Martin番号付け、Kabat番号付け、AHo番号付け、またはIMGT番号付けによって定義され、
前記CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3が、Chothia番号付け、Martin番号付け、Kabat番号付け、AHo番号付け、またはIMGT番号付けによって定義される、
請求項23に記載の方法。
【請求項25】
循環ヘプシンに選択的に結合する前記抗体が、可変重鎖CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3、ならびに可変軽鎖CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含み、
CDR-H1が、配列番号16、18、および19のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含み、CDR-H2が、配列番号11、13、および14のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含み、CDR-H3が、配列番号6、8、および9のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含み、
CDR-L1が、配列番号17および20のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含み、CDR-L2が、配列番号12および15のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含み、CDR-L3が、配列番号7および10のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含む、
請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記生体試料が、非組織試料である、請求項23から25までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、酵素結合免疫吸収スポット(ELISPOT)、免疫組織化学(IHC)、または、マルチプレックスおよび/もしくはマイクロ流体プラットフォーム用のマイクロビーズへの抗体適応を含む、請求項23から26までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
循環ヘプシンに選択的に結合する前記抗体が、検出可能部分とカップリングしている、請求項23から25までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記検出可能部分が、蛍光標識、酵素、コロイド状金属、磁気粒子、およびラテックスビーズからなる群より選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記検出可能部分が、前記抗体と直接カップリングしている、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記検出可能部分が、前記抗体と間接的にカップリングしている、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
ラテラルフローアッセイを含む、請求項26から28までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記生体試料中に循環ヘプシンが存在するかどうかを決定するステップが、前記試料中の前記循環ヘプシンの存在を検出することを含む、請求項24から30までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
個体(例えば、がんの疑いがあるまたはがんのリスクがある個体)におけるがんの存在またはがんを発症するリスクを同定するステップをさらに含む、請求項23から33までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
個体(例えば、再発のリスクの疑いがある個体)におけるがんの再発のリスクを同定するステップをさらに含む、請求項23から34までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
個体(例えば、再発のリスクの疑いがある個体)におけるがんの転移のリスクを同定するステップをさらに含む、請求項23から35までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記がんが、上皮がんである、請求項26から36までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記がんが、卵巣がん、前立腺がん、癌腫、またはこれらの組合せである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記がんが、卵巣がんである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記がんが、前立腺がんである、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記がんが、癌腫である、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
前記癌腫が、腎細胞癌(RCC)または転移性腎細胞癌である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
循環ヘプシンのレベルの上昇に関連する障害の処置を必要とする対象において前記障害を処置する方法であって、前記対象に、循環ヘプシンに選択的に結合する抗体を投与するステップを含む、方法。
【請求項44】
高ヘプシン血症の処置を必要とする対象において高ヘプシン血症を処置する方法であって、前記対象に、循環ヘプシンに選択的に結合する抗体を投与するステップを含む、方法。
【請求項45】
循環ヘプシンに選択的に結合する抗体を産生する方法であって、動物をヘプシンに対して免疫化することによって生成されたハイブリドーマを、ヘプシンの単離されたC末端部分に対してスクリーニングするステップを含む、方法。
【請求項46】
配列番号42を含む、単離された組換えヘプシンポリヌクレオチド配列。
【請求項47】
配列番号43を含む、単離された組換えヘプシンアミノ酸配列。
【請求項48】
配列番号44を含む、単離された組換えヘプシンアミノ酸配列。
【請求項49】
配列番号48を含む、単離された触媒として活性な組換えヘプシンアミノ酸配列。
【請求項50】
高ヘプシン血症の処置を必要とする対象において高ヘプシン血症を処置する方法における、循環ヘプシンに選択的に結合する抗体の使用。
【請求項51】
前記方法が、循環ヘプシンに選択的に結合する前記抗体を前記対象に投与するステップを含む、請求項50に記載の使用。
【請求項52】
循環ヘプシンに選択的に結合する前記抗体が、
配列番号1~3のうちのいずれか1つから選択される可変重鎖CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3、ならびに配列番号4~5のうちのいずれか1つから選択される可変軽鎖CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含み、
前記CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3が、Chothia番号付け、Martin番号付け、Kabat番号付け、AHo番号付け、またはIMGT番号付けによって定義され、
前記CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3が、Chothia番号付け、Martin番号付け、Kabat番号付け、AHo番号付け、またはIMGT番号付けによって定義される、
請求項50から51までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項53】
循環ヘプシンに選択的に結合する前記抗体が、
可変重鎖CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3、ならびに可変軽鎖CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含み、
CDR-H1が、配列番号16、18、および19のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含み、CDR-H2が、配列番号11、13、および14のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含み、CDR-H3が、配列番号6、8、および9のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含み、
CDR-L1が、配列番号17および20のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含み、CDR-L2が、配列番号12および15のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含み、CDR-L3が、配列番号7および10のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含む、
請求項50から51までのいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2020年2月5日出願の米国仮出願第62/970,626号の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
がんは、先進国における死亡の主な原因の1つであり、世界中で毎年生じるがんの新規症例は1,400万件を超える。がんは遺伝因子および環境因子によって引き起こされる可能性があり、がんのリスクは年齢と共に著しく増大する。がんの発生率は人が長生きするほど上昇し、また、発展途上世界で生活様式の変化が生じると上昇する。がんに対する新しい診断方法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
発明の概要
II型膜貫通セリンプロテアーゼであるヘプシンは、一般に、種々の上皮がんで過剰発現され、その過剰発現および同時に生じるタンパク質分解活性が腫瘍増悪と相関する。最近の研究では、ヘプシンが自触反応による活性化およびその後の外部ドメイン排出を受けることが示されており、したがって、血清に基づくバイオマーカーとしてのその潜在性が強調される。ヘプシン過剰発現は、以前に、前立腺腺癌のトランスジェニックマウスモデルを使用することにより、疾患増悪、とりわけ、神経内分泌性の転移に関係づけられている。集合的に、転移性バリアントを含めた前立腺がん増悪におけるヘプシン発現の診断的有用性が必要とされている。
【0004】
循環ヘプシンまたは循環ヘプシンのC末端に選択的に結合する、単離された抗体が本発明で提供される。ある場合では、抗体は、セリンプロテアーゼであるマトリプターゼ(Matripase)、KLK6、KLK7、およびKLK8には選択的に結合しない。ある場合では、配列番号42を含む、単離された組換えヘプシンポリヌクレオチド配列が本発明で提供される。別の場合では、配列番号43を含む、単離された組換えヘプシンアミノ酸配列が本発明で提供される。別の場合では、配列番号44を含む、単離された組換えヘプシンアミノ酸配列が本発明で提供される。別の場合では、配列番号48を含む、単離された触媒として活性な組換えヘプシンアミノ酸配列が本発明で提供される。
【0005】
ある場合では、本明細書に記載の単離された抗体は、:(a)ハイブリドーマを調製し(例えば、膜貫通部分(例えば野生型ヘプシンのもの)を欠く組換えヘプシン配列を用いて免疫化した齧歯類から)、(b)(a)のハイブリドーマを個体(例えば、例えば上皮がんと診断された個体)から得た血清に対してスクリーニングし、(c)循環(または細胞外)ヘプシンに特異的に結合する(b)のハイブリドーマを単離する、方法によって調製可能であり得る。
【0006】
別の場合では、本明細書に記載の単離された抗体は、(a)ハイブリドーマを調製し(例えば、膜貫通部分(例えば野生型ヘプシンのもの)を欠く組換えヘプシン配列を用いて免疫化した齧歯類から)、(b)b)のハイブリドーマを、個体(例えば、例えば上皮がんと診断された個体)から得た血清に対してスクリーニングし、(c)細胞外ヘプシンに特異的に結合する(b)のハイブリドーマを単離し、(d)(c)のハイブリドーマを、生物学的に活性な組換え細胞外ヘプシンに対してスクリーニングし、(e)ヘプシンの細胞外循環C末端部分に特異的に結合する(d)のハイブリドーマを単離する、方法によって調製可能であり得る。
【0007】
当該記載の方法の一部の場合では、ヘプシンは、ヒトヘプシンを含む。生物学的に活性な組換え細胞外ヘプシンは、一部の場合では、トロンビン切断部位、および、必要に応じて、スペーサー(リンカー)をさらに含む。循環ヘプシンは、配列番号44のアミノ酸配列を含み得る。flagタグを有する触媒として活性なヘプシンは、配列番号48のアミノ酸配列を含み得る。野生型ヒトヘプシンは、配列番号41のアミノ酸配列を含み得る。
【0008】
一態様では、配列番号43のアミノ酸配列を含む組換えヘプシン配列に結合する、単離された抗体が本発明で提供される。一部の場合では、結合は選択的なものである。
【0009】
一態様では、可変重鎖相補性決定領域CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む抗体またはその抗原結合性断片であって、CDR-H1が、配列番号16、18、および19のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含み、CDR-H2が、配列番号11、13、および14のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含み、CDR-H3が、配列番号6、8、および9のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含む、抗体またはその抗原結合性断片が本発明で提供される。
【0010】
別の態様では、可変軽鎖相補性決定領域CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含む抗体またはその抗原結合性断片であって、CDR-L1が、配列番号17および20のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含み、CDR-L2が、配列番号12および15のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含み、CDR-L3が、配列番号7および10のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含む、抗体またはその抗原結合性断片が本発明で提供される。
【0011】
一態様では、可変重鎖CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む抗体またはその抗原結合性断片であって、CDR-H1が、配列番号16、18、および19のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含み、CDR-H2が、配列番号11、13、および14のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含み、CDR-H3が、配列番号6、8、および9のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含み、CDR-L1が、配列番号17および20のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含み、CDR-L2が、配列番号12および15のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含み、CDR-L3が、配列番号7および10のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含む、抗体またはその抗原結合性断片が本発明で提供される。
【0012】
一態様では、配列番号1~3のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含む可変重鎖を含む抗体またはその抗原結合性断片が本発明で提供される。
【0013】
一態様では、配列番号4および5のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含む可変軽鎖を含む抗体またはその抗原結合性断片が本発明で提供される。
【0014】
一態様では、配列番号1~3のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含む可変重鎖;ならびに配列番号4および5のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含む可変軽鎖、を含む抗体またはその抗原結合性断片が本発明で提供される。
【0015】
一態様では、上記の抗体またはその抗原結合性断片を産生するハイブリドーマが本発明で提供される。
【0016】
一部の実施形態では、抗体は、IgG、IgA、またはIgM抗体を含む。一部の実施形態では、IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgGA1、またはIgGA2を含む。一部の実施形態では、抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、モノクローナル抗体、脱免疫化抗体(deimmunized antibody)、二重特異性抗体、多重特異性抗体、またはこれらの組合せを含む。
【0017】
一部の実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体を含む。一部の実施形態では、抗体は、多重特異性抗体を含む。一部の実施形態では、抗体は、多価抗体を含む。一部の実施形態では、抗原結合性断片は、Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、scFv、F(ab’)2、ダイアボディ(diabody)、直鎖状抗体(linear antibody)、単一ドメイン抗体(sdAb)、ラクダ科動物(camelid)VHHドメイン、または抗体断片から形成される多重特異性抗体を含む。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、組換えまたは合成のものである。
【0018】
一態様では、抗体の重鎖ポリペプチドをコードする再構築された核酸コンセンサス配列を含む、単離された核酸であって、核酸コンセンサス配列が、配列番号21、22、および23のうちのいずれか1つから選択される、単離された核酸が本発明で提供される。
【0019】
一態様では、抗体の軽鎖ポリペプチドをコードする再構築された核酸コンセンサス配列を含む、単離された核酸であって、核酸コンセンサス配列が、配列番号24および25のうちのいずれか1つから選択される、単離された核酸が本発明で提供される。
【0020】
一態様では、上記の単離された核酸を含むベクターが本発明で提供される。一部の実施形態では、単離された核酸は、調節性制御配列と作動可能に連結している。
【0021】
一態様では、上記の態様のいずれか1つのベクターまたは核酸を含む宿主細胞が本発明で提供される。
【0022】
一態様では、前記請求項のいずれか一項に記載の抗体および薬学的に許容される賦形剤を含む組成物が本発明で提供される。
【0023】
一態様では、生体試料中の循環ヘプシンの存在を同定する方法であって、(a)生体試料(例えば、がんを有する疑いがあるまたはがんのリスクがある個体などの個体から得たもの)を、循環ヘプシンに選択的に結合する抗体と接触させるステップと、(b)生体試料中に循環ヘプシンが存在するかどうかを決定する(例えば、循環ヘプシンの量が増加しているかどうかを決定する)ステップとを含む、方法が本発明で提供される。生体試料は、例えば、血液(または非組織)試料(例えば、全血、血清、尿など)であり得る。
【0024】
ある場合では、方法は、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、酵素結合免疫吸収スポット(ELISPOT)、免疫組織化学(IHC)、マルチプレックスおよび/またはマイクロ流体プラットフォーム用のマイクロビーズへの抗体適応などを含む。
【0025】
別の場合では、方法は、個体(例えば、がんの疑いがあるまたはがんのリスクがある個体)におけるがんの存在またはがんを発症するリスクを同定するステップをさらに含む。
【0026】
別の場合では、方法は、個体(例えば、再発のリスクの疑いがある個体)におけるがんの再発のリスクを同定するステップをさらに含む。
【0027】
別の場合では、方法は、個体(例えば、再発のリスクの疑いがある個体)におけるがんの転移のリスクを同定するステップをさらに含む。
【0028】
がんは、例えば、例えば、卵巣がん、前立腺がん、癌腫、またはこれらの組合せなどの上皮がんであり得る。ある場合では、がんは、卵巣がんである。別の場合では、がんは、前立腺がんである。別の場合では、がんは、癌腫である。癌腫の非限定的な例としては、これだけに限定されないが、腎細胞癌(RCC)または転移性腎細胞癌が挙げられる。
【0029】
一態様では、循環ヘプシンのレベルの上昇に関連する障害の処置を必要とする対象において上記障害を処置する方法であって、対象に、循環ヘプシンに選択的に結合する抗体を投与するステップを含む、方法が本発明で提供される。
【0030】
一態様では、それを必要とする対象における高ヘプシン血症(hyperhepsinemia)を処置する方法であって、対象に、循環ヘプシンに選択的に結合する抗体を投与するステップを含む、方法が本発明で提供される。
【0031】
一態様では、循環ヘプシンに選択的に結合する抗体を産生する方法であって、動物をヘプシンに対して免疫化することによって生成されたハイブリドーマを、ヘプシンの単離されたC末端部分に対してスクリーニングするステップを含む、方法が本発明で提供される。
【0032】
参照による組込み
本明細書において言及されている全ての刊行物、特許および特許出願は、個々の刊行物、特許、または特許出願が、具体的にかつ個別に参照により組み込まれることが示されたものと同じく参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
本出願全体を通して記載される配列は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0034】
本発明の新規の特徴は、添付の特許請求の範囲において詳細に記載されている。本開示の原理が利用される例示的な実施形態が記載されている以下の詳細な説明、および以下の付属図を参照することにより、本開示の特色および利点のよりよい理解が得られよう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1A】
図1Aは、本明細書に記載の診断方法のための例示的なアッセイスキームを例示する。ステップ1において、試料抗原を、アフィニティー精製された抗原特異的抗体でコーティングされたウェルに添加し、次いで、ステップ2においてインキュベートして、抗原と抗体を結合させる。プレートを洗浄し、ストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートをプレートに添加し(ステップ3)、インキュベートする。3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)基質を添加し、インキュベーション後、最後に停止溶液を添加する。45nMで呈色を検出する。
【0036】
【発明を実施するための形態】
【0037】
発明の詳細な説明
本発明の実施には、別段の指定のない限り、当技術分野の技術の範囲内に入る分子生物学(組換え技法を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来の技法を使用する。そのような技法は、文献、例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, second edition (Sambrook et al., 1989) Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait, ed., 1984);Methods in Molecular Biology, Humana Press;Cell Biology: A Laboratory Notebook (J. E. Cellis, ed., 1998) Academic Press;Animal Cell Culture (R. I. Freshney, ed., 1987);Introduction to Cell and Tissue Culture (J. P. Mather and P. E. Roberts, 1998) Plenum Press;Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures (A. Doyle, J. B. Griffiths, and D. G. Newell, eds., 1993-1998) J. Wiley and Sons;Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.);Handbook of Experimental Immunology (D. M. Weir and C. C. Blackwell, eds.);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J. M. Miller and M. P. Cabs, eds., 1987);Current Protocols in Molecular Biology (F. M. Ausubel et al., eds., 1987);PCR: The Polymerase Chain Reaction (Mullis et al., eds., 1994);Current Protocols in Immunology (J. E. Coligan et al., eds., 1991);Short Protocols in Molecular Biology (Wiley and Sons, 1999);Immunobiology (C. A. Janeway and P. Travers, 1997);Antibodies (P. Finch, 1997);Antibodies: a practical approach (D. Catty., ed., IRL Press, 1988-1989);Monoclonal antibodies: a practical approach (P. Shepherd and C. Dean, eds., Oxford University Press, 2000);Using antibodies: a laboratory manual (E. Harlow and D. Lane (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999);およびThe Antibodies (M. Zanetti and J. D. Capra, eds., Harwood Academic Publishers, 1995)などにおいて十分に説明されている。
【0038】
「約」という用語は、所与の測定値と等しい値、および実験誤差を考慮に入れた範囲を含み、プラスまたはマイナス5%、4%、3%、2%または1%またはその間の任意の値を指し得る。
【0039】
本明細書で使用される場合、「実質的に純粋な」、「単離された」または「精製された」は、少なくとも50%純粋である(すなわち、夾雑物を含まない)、より好ましくは少なくとも90%純粋である、より好ましくは少なくとも95%純粋である、より好ましくは少なくとも98%純粋である、より好ましくは少なくとも99%純粋である、材料を指す。抗体は、上記の培養上清または腹水から、飽和硫酸アンモニウム沈殿、真性グロブリン沈殿法、カプロン酸法、カプリル酸法、イオン交換クロマトグラフィー(DEAEまたはDE52)、または、当技術分野で認められている従来の方法を使用する、抗IgカラムもしくはプロテインA、GもしくはLカラムを使用するアフィニティークロマトグラフィーによって単離し、精製することができる。
【0040】
「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、本明細書では互換的に使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指す。ポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよく、修飾されたアミノ酸を含んでもよく、また、非アミノ酸が間に入っていてもよい。これらの用語は、天然にまたは介入;例えば、ジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質付加、アセチル化、リン酸化、もしくは任意の他の操作もしくは修飾、例えば、標識成分とのコンジュゲーションによって修飾されたアミノ酸ポリマーも包含する。例えば、1つまたは複数のアミノ酸の類似体(例えば、非天然アミノ酸などを含む)ならびに当技術分野で公知の他の修飾を含有するポリペプチドもこの定義に包含される。本発明のポリペプチドは抗体に基づくものであるので、ポリペプチドは単鎖として存在する場合もあり、会合した鎖として存在する場合もあることが理解される。
【0041】
「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、本明細書では互換的に使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNAおよびRNAを包含する。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾されたヌクレオチドもしくは塩基、および/もしくはそれらの類似体、またはDNAもしくはRNAポリメラーゼによってポリマーに組み入れられる可能性がある任意の基質であり得る。ポリヌクレオチドは、メチル化されたヌクレオチドおよびそれらの類似体などの修飾されたヌクレオチドを含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリマーのアセンブリの前またはその後に付与することができる。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分が間に入っていてもよい。ポリヌクレオチドを、重合後に、例えば、標識成分とのコンジュゲーションによってさらに修飾することができる。他の型の修飾としては、例えば、「キャップ形成」、天然に存在するヌクレオチドの1つまたは複数の類似体での置換、ヌクレオチド間修飾、例えば、非荷電連結(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメートなど)を用いるものおよび荷電連結(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を用いるもの、例えばタンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リシンなど)などのペンダント部分を含有するもの、インターカレーター(例えば、アクリジン、ソラレンなど)を用いるもの、キレーター(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された連結を有するもの(例えば、アルファアノマー核酸など)、ならびに修飾されていない形態のポリヌクレオチドが挙げられる。さらに、糖に通常存在するヒドロキシル基のいずれかを、例えば、ホスホネート基、ホスフェート基によって置き換えること、標準の保護基によって保護すること、または活性化して追加的なヌクレオチドとの追加的な連結を調製することもでき、あるいは、固体支持体とコンジュゲートすることもできる。5’および3’末端OHをリン酸化することまたはアミンもしくは炭素原子1~20個の有機キャップ形成基で置換することができる。他のヒドロキシルを標準の保護基に誘導体化することもできる。ポリヌクレオチドはまた、一般に、当技術分野で公知であり、例えば、2’-O-メチル-、2’-O-アリル、2’-フルオロ-または2’-アジド-リボース、炭素環式糖類似体、α-アノマー糖、エピマー糖、例えば、アラビノース、キシロースまたはリキソース、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体および脱塩基ヌクレオシド類似体、例えば、メチルリボシドを含めた、リボースまたはデオキシリボース糖の類似形態も含有し得る。1つまたは複数のリン酸ジエステル連結を代替連結基によって置き換えることができる。これらの代替連結基としては、これだけに限定されないが、ホスフェートがP(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR2(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、COまたはCH2(「ホルムアセタール」)で置き換えられた実施形態が挙げられ、ここで、各RまたはR’は、独立に、Hまたは置換もしくは非置換アルキル(1~20C)であり、必要に応じてエーテル(--O--)連結、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニルまたはアラルジルを含有する。ポリヌクレオチド内の全ての連結が同一である必要はない。前出の記載がRNAおよびDNAを含めた本明細書で言及される全てのポリヌクレオチドに当てはまる。
【0042】
本明細書で使用される場合、「ヘプシン」、「HPN」、またはTMPRSS1」という用語は、上皮細胞の表面上に発現されるII型膜貫通セリンプロテアーゼ(TTSP)を指す。本明細書で使用される場合、ヘプシンは、全ての哺乳動物種、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシなどのネイティブ配列のヘプシンを包含する。ヘプシン(HPN)は、ヒト前立腺がんにおいて最もアップレギュレートされる遺伝子の1つであり、前立腺腫瘍の90%に至るまでで過剰発現され、多くの場合にレベルが10倍よりも大きく上昇する、II型膜貫通セリンプロテアーゼをコードする。ヘプシンは、前立腺がん開始の初期にアップレギュレートされ、増悪および転移全体を通して高レベルに維持される。さらに、ヘプシンは、卵巣癌、腎細胞癌(例えば、転移性腎細胞癌)、および子宮内膜がんにおいても過剰発現される。ヘプシン過剰発現は、前立腺がん増悪および転移の促進において重要な役割を有する。ヘプシンは、プロウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子(pro-uPA)およびプロ肝細胞増殖因子(pro-HGF)を活性化し得る。uPA細胞表面セリンプロテアーゼ系およびHGF-Met散乱経路の活性化は、ヘプシンによる転移の促進を担い得る。本開示は、ヘプシンの臨床的に関連のあるC末端部分に特異的に結合し、前立腺がん、卵巣癌、腎癌、子宮内膜がん、またはこれらの組合せの診断に使用することができる抗体を提供する。417アミノ酸のタンパク質は、短いN末端細胞質ドメイン、膜貫通ドメイン、および、C末端プロテアーゼドメインに対して密に詰まった単一のスカベンジャー受容体システインリッチドメインで構成される。ネイティブ野生型ヒトヘプシンは以下に配列番号41として提示されている。
【0043】
抗体
本明細書で使用される場合、「抗ヘプシン抗体」は、ヘプシンのC末端部分に選択的に結合することができる抗体を指す。ヘプシンに結合する、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、単離されたまたは精製された抗体またはその抗原結合性断片が本発明で提供される。本明細書に記載の抗体を下記の通りまたは当技術分野で公知の通り修飾することができることが理解されよう。
【0044】
本発明において有用な「抗体」は、これだけに限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、Fcなど)、キメラ抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、ヘテロコンジュゲート抗体、単鎖(ScFv)、これらの変異体、抗体部分を含む融合タンパク質(例えば、ドメイン抗体)、ヒト化抗体、ヒト抗体、および、抗体のグリコシル化バリアント、抗体のアミノ酸配列バリアント、および共有結合により修飾された抗体を含めた、必要な特異性を持つ抗原認識部位を含む任意の他の修飾された構成の免疫グロブリン分子を包含する。
【0045】
免疫グロブリンは、その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンには5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが存在し、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2にさらに分類される。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元構成は当技術分野で周知である。
【0046】
あらゆる脊椎動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパまたは(「κ」もしくは「K」)およびラムダまたは(「λ」)と称される、2つの明白に別個の型のうちの一方に割り当てることができる。
【0047】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体を指す、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、微量に存在し得る、可能性のある天然に存在する変異を除いて、同一である。一般には異なる決定因子(エピトープ)を対象とする異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原(エピトープ)上の単一の決定因子を対象とする。「モノクローナル」という修飾語は、その抗体が実質的に均一な抗体の集団から得られたものであるという性質を指し、任意の特定の方法による抗体の産生を求めるものとは解釈されない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohler and Milstein, 1975, Nature, 256: 495に最初に記載されたハイブリドーマ法によって作出することもでき、例えば米国特許第4,816,567号に記載されている組換えDNA法によって作出することもできる。モノクローナル抗体は、例えばMcCafferty et al., 1990, Nature, 348: 552-554に記載されている技法を使用して生成されたファージライブラリーから単離することもできる。他の方法も当技術分野で公知であり、本発明における使用が意図されている。
【0048】
本明細書で使用される場合、「ヒト化」抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する配列を最小限含有する特異的なキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはその断片(例えば、抗体のFv、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、または他の抗原結合性部分配列など)である形態の非ヒト(例えば、マウス)抗体を指す。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性、および生物活性を有するマウス、ラット、またはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基によって置き換えられた、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。一部の場合では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が対応する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体においても移入されるCDRまたはフレームワーク配列においても見いだされないが、抗体の性能をさらに洗練し、最適化するために含められる残基を含み得る。一般に、ヒト化抗体は、CDR領域の全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、FR領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のFR領域である、少なくとも1つ、一般には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域またはドメイン(Fc)の少なくとも一部分、一般にはヒト免疫グロブリンのものも含むことが最適である。抗体は、例えばWO99/58572に記載されている通り改変されたFc領域を有し得る。ヒト化抗体の他の形態は、元の抗体に対して変更された1つまたは複数のCDR(1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つ)を有し、これらは、元の抗体からの1つまたは複数のCDR「に由来する」1つまたは複数のCDRとも称される。
【0049】
本明細書で使用される場合、「ヒト抗体」は、ヒトによって産生された抗体および/または当技術分野で公知のもしくは本明細書に開示されるヒト抗体を作出するための技法のいずれかを使用して作出された抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体を意味する。このヒト抗体の定義は、少なくとも1つのヒト重鎖ポリペプチドまたは少なくとも1つのヒト軽鎖ポリペプチドを含む抗体を包含する。そのような例の1つは、マウス軽鎖およびヒト重鎖ポリペプチドを含む抗体である。ヒト抗体は、当技術分野で公知の種々の技法を使用して産生することができる。一実施形態では、ヒト抗体はファージライブラリーから選択され、その場合、そのファージライブラリーはヒト抗体を発現するものである(Vaughan et al., 1996, Nature Biotechnology, 14: 309-314;Sheets et al., 1998, PNAS USA, 95: 6157-6162;Hoogenboom and Winter, 1991, J. Mol. Biol., 227: 381;Marks et al., 1991, J. Mol. Biol., 222: 581)。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的にまたは完全に不活化されたトランスジェニック動物、例えば、マウスに導入することによって作出することもできる。この手法は、米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;および同第5,661,016号に記載されている。あるいは、ヒト抗体は、標的抗原を対象とする抗体を産生するヒトBリンパ球を不死化することによって調製することができる(そのようなBリンパ球は、個体から回収することもでき、またはin vitroで免疫化されたものであってもよい)。例えば、Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985);Boerner et al., 1991, J. Immunol., 147(1):86-95;および米国特許第5,750,373号を参照されたい。
【0050】
抗体の「可変領域」は、抗体軽鎖の可変領域または抗体重鎖の可変領域を単独でまたは組合せで指す。重鎖および軽鎖の可変領域はそれぞれ4つのフレームワーク領域(FR)と、それと接続した、3つの、超可変領域としても公知の相補性決定領域(CDR)からなる。各鎖のCDRはFRによって極めて近傍にまとめて保持され、他の鎖のCDRと共に、抗体の抗原結合性部位の形成に寄与する。CDRを決定するための技法が少なくとも2つ存在する:(1)異種間の配列変動性に基づく手法(すなわち、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, (5th ed., 1991, National Institutes of Health, Bethesda Md.));および(2)抗原抗体複合体の結晶学的試験に基づく手法(Al-Iazikani et al. (1997) J. Molec. Biol. 273:927-948))。本明細書で使用される場合、CDRは、いずれかの手法によって、または両方の手法の組合せによって定義されるCDRを指し得る。
【0051】
抗体の「定常領域」は、抗体軽鎖の定常領域または抗体重鎖の定常領域を単独でまたは組合せで指す。
【0052】
「エピトープ」は、抗体の可変領域結合ポケットとの結合性相互作用を形成することが可能な、抗原または他の高分子の一部を指す。そのような結合性相互作用は、1つまたは複数のCDRの1つまたは複数のアミノ酸残基との分子間接触として現れ得る。抗原結合には、例えば、CDR3もしくはCDR3対、または、一部の場合では、最大でVH鎖およびVL鎖の6つのCDR全ての相互作用が関与し得る。エピトープは、直鎖ペプチド配列であり得る(すなわち「連続的」)、または連続していないアミノ酸配列で構成され得る(すなわち、「コンフォメーション」または「不連続」)。抗体は、1つまたは複数のアミノ酸配列を認識し得る;したがって、エピトープにより、1つよりも多くの別個のアミノ酸配列が定義され得る。抗体によって認識されるエピトープは、当業者に周知のペプチドマッピングおよび配列解析技法によって決定することができる。結合性相互作用は、抗原上のエピトープおよびCDRの1つまたは複数のアミノ酸残基の間の分子間接触として現れる。
【0053】
抗体またはポリペプチドに「優先的に結合する」または「特異的に結合する」(本明細書では互換的に使用される)エピトープは、当技術分野においてよく理解されている用語であり、そのような特異的または優先的結合を決定するための方法も当技術分野で周知である。抗体は、他の物質に結合するよりも大きな親和性、結合力で、より容易に、かつ/またはより長い持続時間にわたって結合する場合、その標的に特異的に結合するまたは優先的に結合する。例えば、ヘプシンエピトープに特異的にまたは優先的に結合する抗体は、このエピトープに、他のヘプシンエピトープまたは非ヘプシンエピトープに結合するよりも大きな親和性、結合力で、より容易に、かつ/またはより長い持続時間にわたって結合する抗体である。この定義を読むことにより、例えば、第1の標的に特異的にまたは優先的に結合する抗体(または部分またはエピトープ)が、第2の標的に特異的にまたは優先的に結合する可能性もあり、そうでない可能性もあることも理解される。したがって、「特異的結合」または「優先的結合」は、必ずしも排他的結合を求めるものではない(しかしそれも包含され得る)。必ずしもではないが、一般に、結合への言及は、抗体またはその抗原結合性断片の親和性が、無関係のアミノ酸配列に対する抗体の親和性の少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍、少なくとも100倍、または少なくとも1000倍である、優先的結合を意味する。
【0054】
本明細書で使用される場合、「Fc受容体」および「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を記載する。
【0055】
「Fc領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。「Fc領域」は、ネイティブ配列Fc領域またはバリアントFc領域であり得る。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変動し得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、Cys226位のアミノ酸残基から、またはPro230から、そのカルボキシル末端までのひと続きと定義される。Fc領域内の残基の番号付けは、Kabat et al., (Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md., 1991)におけるものと同様にEU指標のものである。免疫グロブリンのFc領域は、一般に、2つの定常ドメイン、CH2およびCH3を含む。
【0056】
「機能性Fc領域」は、ネイティブ配列Fc領域の少なくとも1つのエフェクター機能を保有する。例示的な「エフェクター機能」としては、C1q結合;補体依存性細胞傷害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);ファゴサイトーシス;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体;BCR)のダウンレギュレーションなどが挙げられる。そのようなエフェクター機能には、一般に、Fc領域が結合性ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と組み合わさる必要があり、また、そのような抗体エフェクター機能を評価するための当技術分野で公知の様々なアッセイを使用して評価することができる。
【0057】
「ネイティブ配列Fc領域」は、天然に見いだされるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。「バリアントFc領域」は、ネイティブ配列Fc領域のアミノ酸配列とは少なくとも1つのアミノ酸の改変によって異なるアミノ酸配列を含むが、それでもなおネイティブ配列Fc領域のエフェクター機能を少なくとも1つ保持する。バリアントFc領域は、ネイティブ配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域と比較して、ネイティブ配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域内の少なくとも1つのアミノ酸の置換、例えば、約1個から約10個までのアミノ酸の置換、好ましくは約1個から約5個までのアミノ酸の置換を有することが好ましい。本明細書におけるバリアントFc領域は、ネイティブ配列Fc領域および/または親ポリペプチドのFc領域に対して少なくとも約80%の配列同一性、最も好ましくは、それに対して少なくとも約90%の配列同一性、より好ましくは、それに対して少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の配列同一性を有することが好ましい。
【0058】
「超可変領域」および「CDR」という用語は、本明細書で使用される場合、抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基を指す。CDRは、VH鎖およびVL鎖のそれぞれについて、CDR1、CDR2、およびCDR3として公知の、抗原に相補的に結合する3つの配列領域からのアミノ酸残基を含む。Kabat et al.(同文献)によれば、軽鎖可変ドメインにおけるCDRは、一般には、およそ残基24~34(CDRL1)、50~56(CDRL2)および89~97(CDRL3)に対応し、重鎖可変ドメインにおけるCDRは、一般には、およそ残基31~35(CDRH1)、50~65(CDRH2)および95~102(CDRH3)に対応する。異なる抗体のCDRは挿入を含有し得、したがって、アミノ酸番号付けは異なり得ることが理解される。Kabat番号付け系では、そのような挿入を、異なる抗体間の番号付けにおけるあらゆる挿入を反映するために特定の残基に付随する文字を利用する番号付けスキーム(例えば、軽鎖のCDRL1の27A、27B、27C、27D、27E、および27F)を用いて説明する。あるいは、Chothia and Lesk, J. Mol. Biol., 196: 901-917 (1987))によれば、軽鎖可変ドメインにおけるCDRは、一般には、およそ残基26~32(CDRL1)、50~52(CDRL2)および91~96(CDRL3)に対応し、重鎖可変ドメインにおけるCDRは、一般には、およそ残基26~32(CDRH1)、53~55(CDRH2)および96~101(CDRH3)に対応する。
【0059】
本明細書で使用される場合、「フレームワーク領域」または「FR」は、抗原結合性ポケットまたは溝の一部を形成するフレームワークアミノ酸残基を指す。一部の実施形態では、フレームワーク残基は、抗原結合性ポケットまたは溝の一部であるループを形成し、ループ内のアミノ酸残基は、抗原と接触する場合もあり、接触しない場合もある。フレームワーク領域は、一般に、CDR間の領域を含む。Kabat et al.(同文献)によれば、軽鎖可変ドメインにおけるFRは、一般には、およそ残基0~23(FRL1)、35~49(FRL2)、57~88(FRL3)、および98~109に対応し、重鎖可変ドメインにおけるFRは、一般には、およそ残基0~30(FRH1)、36~49(FRH2)、66~94(FRH3)、および103~133に対応する。上記の通り、軽鎖、重鎖のKabat番号付けでは加えて挿入が同様に説明される(例えば、重鎖のCDRH1の35A、35B)。あるいは、Chothia and Lesk(J. Mol. Biol., 196: 901-917 (1987))によれば、軽鎖可変ドメインにおけるFRは、一般には、およそ残基0~25(FRL1)、33~49(FRL2)53~90(FRL3)、および97~109(FRL4)に対応し、重鎖可変ドメインにおけるFRは、一般には、およそ残基0~25(FRH1)、33~52(FRH2)、56~95(FRH3)、および102~113(FRH4)に対応する。
【0060】
FRのループアミノ酸は、抗体重鎖および/または抗体軽鎖の三次元構造の検査によって評価および決定することができる。溶媒が接近可能なアミノ酸の位置はループを形成する、および/または抗体可変ドメインに抗原接触をもたらす可能性が高いので、そのような位置について三次元構造を解析することができる。溶媒が接近可能な位置の一部ではアミノ酸配列の多様性が許容され、その他(例えば、構造的位置)では一般に多様化が小さい。抗体可変ドメインの三次元構造は、結晶構造またはタンパク質のモデリングから引き出すことができる。
【0061】
本明細書で使用される場合、「親和性」という用語は、2つの作用物質の可逆的結合の平衡定数を指し、KDと表される。本明細書に記載の抗体の結合親和性(KD)は、約0.02pM~約500nM、またはその間の任意の整数であり得る。
【0062】
結合親和性は、表面プラズモン共鳴(SPR)、Kinexa Biocensor、シンチレーション近接アッセイ、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ORIGENイムノアッセイ(IGEN)、蛍光クエンチング、蛍光移入、酵母ディスプレイ、またはこれらの任意の組合せを使用して決定することができる。結合親和性はまた、適切なバイオアッセイを使用してスクリーニングすることもできる。
【0063】
本明細書で使用される場合、「結合力」という用語は、2つまたはそれよりも多くの作用物質の複合体の、希釈後の解離に対する抵抗性を指す。見かけの親和性は、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)などの方法または当業者によく知られている任意の他の技法によって決定することができる。結合力は、スキャッチャード解析などの方法または当業者によく知られている任意の他の技法によって決定することができる。
【0064】
抗体またはその抗原結合性断片は、保存的または非保存的置換を使用してアミノ酸配列内で1つまたは複数の置換を行うことによって改変することができる。
【0065】
「保存的アミノ酸置換」という句は、ある特定の共通特性に基づくアミノ酸の群分けを指す。個々のアミノ酸間の共通特性を定義するための機能的なやり方は、相同な生物体の対応するタンパク質間のアミノ酸の変化の正規化頻度を解析することである(Schulz, G. E. and R. H. Schirmer, Principles of Protein Structure, Springer-Verlag)。そのような解析に従って、アミノ酸の群を、群内のアミノ酸がどういう点で、互いに優先的に交換されるか、したがって、互いに全体的なタンパク質構造に対する影響が最も似ているかを定義することができる。このように定義されるアミノ酸群の例としては、以下が挙げられる:
(i)荷電した群、Glu、ならびにAsp、Lys、ArgおよびHisからなる;
(ii)正に荷電した群、Lys、ArgおよびHisからなる;
(iii)負に荷電した群、GluおよびAspからなる;
(iv)芳香族群、Phe、TyrおよびTrpからなる;
(v)窒素環群、HisおよびTrpからなる;
(vi)大きな脂肪族非極性群、Val、LeuおよびIleからなる;
(vii)わずかに極性を有する群、MetおよびCysからなる;
(viii)小残基群、Ser、Thr、Asp、Asn、Gly、Ala、Glu、GlnおよびProからなる;
(ix)脂肪族群、Val、Leu、Ile、MetおよびCysからなる;ならびに
(x)小ヒドロキシル群、SerおよびThrからなる。
【0066】
上記の群に加えて、各アミノ酸残基が独自の群を形成し得、個々のアミノ酸によって形成された群は、単に、上記の通り当技術分野で一般に使用されるそのアミノ酸に対する1文字および/または3文字の略語によって称することができる。
【0067】
「保存された残基」は、類似したタンパク質にわたって比較的不変のアミノ酸である。多くの場合、保存された残基は、「保存的アミノ酸置換」に関して上記の通り、類似のアミノ酸による置換えによってのみ変動する。
【0068】
「x」または「xaa」という文字は、本明細書におけるアミノ酸配列に使用される場合、他に特に記載がなければ、その位置に20種の標準アミノ酸のいずれかを位置付けることもできることを示すものとする。ペプチド模倣体を設計する目的に関しては、アミノ酸配列内の「x」または「xaa」を、標的配列内に存在するアミノ酸の模倣体で置き換えることができる、または、アミノ酸を、ペプチド模倣体の活性に干渉しない基本的に任意の形態のスペーサーで置き換えることができる。
【0069】
「相同性」または「同一性」または「類似性」は、2つのペプチド間または2つの核酸分子間の配列類似性を指す。相同性および同一性は、それぞれ、比較する目的でアラインメントすることができる各配列内の位置を比較することによって決定することができる。比較される配列内の等価の位置が同じ塩基またはアミノ酸によって占有されている場合、これらの分子は、その位置において同一である;等価の部位が同じまたは類似のアミノ酸残基(例えば、立体的および/または電子的性質が類似した)によって占有されている場合、これらの分子を、その位置において相同である(類似している)と称することができる。相同性/類似性または同一性のパーセンテージとしての表現は、比較される配列によって共有される位置における同一または類似のアミノ酸の数の関数を指す。「無関係の」または「非相同的」配列は、本発明の配列と40%未満の同一性、しかし好ましくは25%未満の同一性を共有する。2つの配列の比較に関して、残基(アミノ酸もしくは核酸)が存在しないこと、または余分の残基が存在することによっても、同一性および相同性/類似性が低下する。
【0070】
「相同性」という用語は、類似した機能またはモチーフを有する遺伝子またはタンパク質を同定するために使用される、配列類似性の数学に基づく比較を記載する。例えば、他のファミリーメンバー、関連する配列またはホモログを同定するために、本発明の核酸(ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド)およびアミノ酸(タンパク質)配列を「クエリ配列」として使用して公共のデータベースの検索を実施することができる。そのような検索は、Altschul, et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-10のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して実施することができる。BLASTヌクレオチド検索をNBLASTプログラム、スコア=100、ワード長(wordlength)=12を用いて実施して、本発明の核酸分子と相同なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTアミノ酸検索をXBLASTプログラム、スコア=50、ワード長(wordlength)=3を用いて実施して、本発明のタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較する目的でギャップが挿入されたアラインメントを得るために、Altschul et al., (1997)Nucleic Acids Res. 25 (17): 3389-3402に記載されている通り、Gapped BLASTを利用することができる。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラムのデフォルトパラメータ(例えば、XBLASTおよびBLAST)を使用することができる(www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい)。
【0071】
本明細書で使用される場合、「同一性」は、2つまたはそれよりも多くの配列を、それらの配列のマッチが最大になるように、すなわち、ギャップおよび挿入を考慮に入れて配列をアラインメントした場合の、それらの配列内の対応する位置における同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基のパーセンテージを意味する。同一性は、これだけに限定されないが、Computational Molecular Biology, Lesk, A. M., ed., Oxford University Press, New York, 1988;Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D. W., ed., Academic Press, New York, 1993;Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A. M., and Griffin, H. G., eds., Humana Press, New Jersey, 1994;Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987;およびSequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M Stockton Press, New York, 1991;およびCarillo, H., and Lipman, D., SIAM J. Applied Math., 48: 1073 (1988)に記載されているものを含めた公知の方法によって容易に算出することができる。同一性を決定するための方法は、試験される配列間に最も大きなマッチが付与されるように設計される。さらに、同一性を決定するための方法は、公的に入手可能なコンピュータプログラムに体系化されている。2つの配列間の同一性を決定するためのコンピュータプログラムによる方法としては、これだけに限定されないが、GCGプログラムパッケージ(Devereux, J., et al., Nucleic Acids Research 12 (1): 387 (1984))、BLASTP、BLASTN、およびFASTA(Altschul, S. F. et al., J. Molec. Biol. 215: 403-410 (1990)およびAltschul et al. Nuc. Acids Res. 25: 3389-3402 (1997))が挙げられる。BLAST Xプログラムは、NCBIおよび他の供給源から公的に入手可能である(BLAST Manual, Altschul, S., et al., NCBI NLM NIH Bethesda, Md. 20894;Altschul, S., et al., J. Mol. Biol. 215: 403-410 (1990)。周知のSmith Watermanアルゴリズムを使用して同一性を決定することもできる。
【0072】
必要であれば、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合性断片を免疫原性について評価することができ、必要に応じて、脱免疫化(deimmunize)することができる(すなわち、抗体の1つまたは複数のT細胞エピトープを変更することによって抗体の免疫反応性を低下させる)。本明細書に記載の抗体および抗原結合性断片に存在する免疫原性およびT細胞エピトープの解析を、ソフトウェアおよび特定のデータベースを使用することによって行うことができる。例示的なソフトウェアおよびデータベースとしては、Antitope of Cambridge、Englandによって開発されたiTope(商標)が挙げられる。iTope(商標)は、ヒトMHCクラスII対立遺伝子へのペプチド結合を解析するためのin-silico技術である。
【0073】
iTope(商標)ソフトウェアでは、ヒトMHCクラスII対立遺伝子へのペプチド結合が予測され、それにより、そのような「潜在的なT細胞エピトープ」の場所に関して最初のスクリーニングがもたらされる。iTope(商標)ソフトウェアでは、ペプチドのアミノ酸側鎖と34種のヒトMHCクラスII対立遺伝子の結合性溝内の特定の結合ポケットとの間の好都合な相互作用が予測される。試験抗体可変領域配列にわたって1つのアミノ酸が重複する9merペプチドのin-silicoにおける生成により、重要な結合性残基の場所が得られる。各9merペプチドを34種のMHCクラスIIアロタイプに対して試験し、それらの潜在的「適合」およびMHCクラスII結合性溝との相互作用に基づいてスコア化することができる。MHCクラスII対立遺伝子の>50%に対して高い平均結合スコア(iTope(商標)スコア関数で>0.55)を生じるペプチドが潜在的T細胞エピトープとみなされる。そのような領域内で、MHCクラスII溝内へのペプチド結合のためのコア9アミノ酸配列を解析して、MHCクラスIIポケット残基(P1、P4、P6、P7およびP9)ならびに可能性のあるT細胞受容体(TCR)接触残基(P-1、P2、P3、P5、P8)を決定する。
【0074】
任意のT細胞エピトープの同定後、アミノ酸残基の変化、置換、付加、および/または欠失を導入して、同定されたT細胞エピトープを除去することができる。そのような変化を、抗体の構造および機能が保存される一方で、それにもかかわらず同定されたエピトープが除去されるように行うことができる。例示的な変化としては、これだけに限定されないが、保存的アミノ酸の変化を挙げることができる。
【0075】
ヘプシンに結合し、ヘプシンの活性を阻害する中和抗体または抗原結合性断片が本発明で提供される。
【0076】
抗ヘプシン抗体またはその抗原結合性断片による阻害/中和のパーセンテージ(%)が陰性対照の少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、またはそれよりも大きいことにより、抗体またはその抗原結合性断片がヘプシンを阻害または中和することが示される。抗ヘプシン抗体またはその抗原結合性断片によるヘプシンの阻害のパーセンテージが陰性対照の2倍未満であることにより、抗体またはその抗原結合性断片がヘプシンを阻害しないことが示される。
【0077】
本明細書に記載の抗体またはその抗原結合性断片を免疫コンジュゲートとして使用することもできる。本明細書で使用される場合、本明細書および特許請求の範囲の目的に関して、免疫コンジュゲートは、本発明による抗ヘプシン抗体またはその断片と少なくとも1つの治療用標識とで構成されるコンジュゲートを指す。治療用標識としては、抗腫瘍剤および血管新生阻害剤が挙げられる。そのような抗腫瘍剤は、当技術分野で公知であり、それらとして、これだけに限定されないが、毒素、薬物、酵素、サイトカイン、放射性核種、および光線力学的作用物質が挙げられる。毒素としては、これだけに限定されないが、リシンA鎖、変異体シュードモナス外毒素、ジフテリアトキソイド、ストレプトニグリン、ボアマイシン(boamycin)、サポリン、ゲロニン、およびポークウィード抗ウイルスタンパク質が挙げられる。薬物としては、これだけに限定されないが、ダウノルビシン、メトトレキサート、およびカリケアマイシンが挙げられる。放射性核種としては、放射性金属(radiometal)が挙げられる。サイトカインとしては、これだけに限定されないが、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)、インターロイキン、インターフェロン、および腫瘍壊死因子が挙げられる;これらのサイトカインのそれぞれの例およびそれらの機能は当技術分野で周知である。光線力学的作用物質としては、これだけに限定されないが、ポルフィリンおよびそれらの誘導体が挙げられる。追加的な治療用標識が当技術分野で知られるようになるであろう。それらも本発明において意図されている。抗ヘプシンmAbまたはその抗原結合性断片と少なくとも1つの作用物質の複合体を形成する方法は当業者には周知である(すなわち、Ghetie et al., 1994, Pharmacol. Ther. 63: 209-34によって概説されている抗体コンジュゲート)。そのような方法では、分子をカップリングまたは連結するために使用されるいくつかの入手可能なヘテロ二官能性試薬のうちの1つを利用することができる。抗体を他の部分とコンジュゲートするためのリンカーが当技術分野で周知であり、本発明で意図されている。
【0078】
ポリペプチドをコンジュゲートまたは連結するための方法は当技術分野で周知である。抗体と標識との会合(結合)には、これだけに限定されないが、共有結合性のおよび非共有結合性の相互作用、化学的なコンジュゲーションならびに組換え技法を含めた、当技術分野で公知の任意の手段が含まれる。
【0079】
抗体またはその抗原結合性断片を、種々の目的のために、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)を添加することによってなど、当技術分野で公知の技法を使用して修飾することができる。PEG修飾(PEG化)により、循環時間の改善、溶解度の改善、タンパク質分解に対する抵抗性の改善、抗原性および免疫原性の低下、生物学的利用能の改善、毒性の低減、安定性の改善、ならびに容易な製剤化のうちの1つまたは複数を導くことができる(概説について、Francis et al., International Journal of Hematology 68: 1-18, 1998を参照されたい)。
【0080】
抗体に基づく融合タンパク質の循環中での半減期を改善する他の方法も公知であり、例えば、そのそれぞれがこれにより参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,091,321号および同第6,737,056号に記載されている。さらに、抗体およびその抗原結合性断片を、それらの複合型N-グリコシドと連結した糖鎖にフコースを含有しないように産生するまたは発現させることができる。複合型N-グリコシド連結糖鎖からのフコースの除去により、これだけに限定されないが、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)および補体依存性細胞傷害(CDC)を含めた、抗体および抗原結合性断片のエフェクター機能が増大することが分かっている。同様に、ヘプシンに結合することができる抗体またはその抗原結合性断片のC末端を任意の抗体アイソタイプ、例えば、IgG、IgA、IgE、IgDおよびIgM、ならびにアイソタイプサブクラス、特にIgG1、IgG2b、IgG2a、IgG3およびIgG4のいずれかに由来する免疫グロブリン重鎖の全部または一部に付着させることができる。
【0081】
ヘプシンに結合する抗体またはその抗原結合性断片を、ヘプシンを精製するため、および/または試料または対象におけるヘプシンレベルを検出するために使用することもできる。本明細書に記載の抗体および抗原結合性断片の組成物を非治療剤として(例えば、アフィニティー精製剤として)使用することができる。一般に、そのような実施形態の1つでは、目的のタンパク質を、セファデックス樹脂または濾紙などの固相上に、当技術分野で公知の従来の方法を使用して固定化する。固定化されたタンパク質を、精製される目的の標的(またはその断片)を含有する試料と接触させ、その後、支持体を、固定化された抗体に結合した標的タンパク質以外の試料中の物質を実質的に全て除去する適切な溶媒で洗浄する。最後に、支持体を、標的タンパク質を放出させるグリシン緩衝液pH5.0などの別の適切な溶媒で洗浄する。
【0082】
抗体またはその抗原結合性断片を、アフィニティータグ(例えば、精製タグ)とコンジュゲートすること、またはそれを用いて組換え操作することができる。例えば6×Hisタグ(His-His-His-His-His-His;配列番号47)などのアフィニティータグは当技術分野で慣習的なものである。
【0083】
抗体を作出する方法
本明細書に記載の抗体は、当技術分野で公知の任意の方法によって作出することができる。宿主動物の免疫化の経路およびスケジュールは、一般に、本明細書にさらに記載されている抗体刺激および産生のための確立された従来の技法に従う。ヒト抗体およびマウス抗体を産生させるための一般的な技法は当技術分野で公知であり、本明細書で以下の実施例に記載されている。
【0084】
ヒトを含めた任意の哺乳動物対象またはそれに由来する抗体産生細胞を、ヒトを含めた哺乳動物ハイブリドーマ細胞株を作製するための基礎として働くように操作することができることが意図されている。一般には、ある量の、本明細書に記載のものを含めた免疫原を、宿主動物に腹腔内、筋肉内、経口、皮下、足底内、および/または皮内接種する。
【0085】
ヒトタンパク質、または標的アミノ酸配列を含有する断片を、免疫化される種において免疫原性であるアジュバント、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、またはダイズトリプシン阻害物質と、二官能性作用物質または誘導体化剤、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を通じたコンジュゲーション)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リシン残基を通じたもの)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2、または当技術分野で公知の任意の他のアジュバントを使用してコンジュゲートしたものを用いて宿主動物を免疫化することにより、抗体の集団を得ることができる。
【0086】
ハイブリドーマは、免疫化された動物のリンパ球および不死化骨髄腫細胞から、Kohler, B. and Milstein, C. (1975) Nature 256: 495-497の一般的な、またはBuck, D. W., et al., In Vitro, 18: 377-381 (1982)によって改変された体細胞ハイブリダイゼーション技法を使用して調製することができる。これだけに限定されないが、X63-Ag8.653およびSalk Institute、Cell Distribution Center, San Diego、Calif.、USAからのものを含めた、入手可能な骨髄腫株をハイブリダイゼーションに使用することができる。一般に、当該技法は、ポリエチレングリコールなどの融合因子を使用してまたは当業者に周知の電気的手段によって、骨髄腫細胞とリンパ系細胞を融合することを伴う。融合後、細胞を融合培地から分離し、ヒポキサンチン-アミノプテリン-チミジン(HAT)培地などの選択的成長培地で成長させて、ハイブリダイズしなかった親細胞を除去する。血清を補充したまたは補充していない、本明細書に記載の任意の培地を、モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを培養するために使用することができる。細胞融合技法の別の代替として、EBVにより不死化したB細胞を使用して、モノクローナル抗体を産生させることができる。ハイブリドーマを増大させ、所望であればサブクローニングし、上清を抗免疫原活性について従来のイムノアッセイ手順(例えば、ラジオイムノアッセイ、酵素イムノアッセイ、蛍光イムノアッセイなど)によってアッセイする。
【0087】
抗体の供給源として使用することができるハイブリドーマには、モノクローナル抗体またはその一部を産生する、親ハイブリドーマの誘導体、後代細胞の全てが包含される。
【0088】
そのような抗体を産生するハイブリドーマを、公知の手順を使用してin vitroまたはin vivoにおいて成長させることができる。所望であれば、モノクローナル抗体を培養培地または体液から、硫酸アンモニウム沈殿、ゲル電気泳動、透析、クロマトグラフィー、および限外濾過などの従来の免疫グロブリン精製手順によって単離することができる。
【0089】
望ましくない活性が存在する場合、その活性を、例えば、固相に付着させた免疫原で作出された吸着剤の上に調製物を流し、免疫原から所望の抗体を溶出するまたは放出させることによって除去することができる。
【0090】
抗体は、当技術分野で公知の任意の方法を使用して組換えによって作出し、発現させることができる。
【0091】
抗体は、ファージディスプレイ技術により、組換えによって作出することができる。例えば、米国特許第5,565,332号;同第5,580,717号;同第5,733,743号;および同第6,265,150号;ならびにWinter et al., Annu. Rev. Immunol. 12: 433-455 (1994)を参照されたい。あるいは、ファージディスプレイ技術(McCafferty et al., Nature 348: 552-553 (1990))を使用して、ヒト抗体および抗体断片をin vitroにおいて免疫化されていないドナー由来の免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから産生することができる。この技法によれば、抗体Vドメイン遺伝子を、M13またはfdなどの線維状バクテリオファージのメジャーまたはマイナーコートタンパク質遺伝子のいずれかにインフレームでクローニングし、ファージ粒子の表面上に機能性抗体断片としてディスプレイさせる。線維状粒子はファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含有するので、抗体の機能特性に基づいた選択により、これらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択ももたらされる。したがって、ファージは、B細胞の特性のいくつかを模倣する。ファージディスプレイは、様々な形式で行うことができる;総説については、例えば、Johnson, Kevin S, and Chiswell, David J., Current Opinion in Structural Biology, 3: 564-571 (1993)を参照されたい。V遺伝子セグメントのいくつかの供給源をファージディスプレイに使用することができる。Clackson et al., Nature 352: 624-628 (1991)では、免疫化したマウスの脾臓に由来するV遺伝子の小規模のランダムなコンビナトリアルライブラリーから、抗オキサゾロン抗体の多様なアレイが単離されている。免疫化されていないヒトドナー由来のV遺伝子のレパートリーを構築することができ、抗原(自己抗原を含む)の多様なアレイに対する抗体を、Mark et al., J. Mol. Biol. 222: 581-597 (1991)、またはGriffith et al., EMBO J. 12: 725-734 (1993)によって記載されている技法に基本的に従って単離することができる。自然免疫応答では、抗体遺伝子に変異が高速度で蓄積する(体細胞超変異)。導入される変化のいくつかは、より高い親和性を付与するものであり、その後の抗原による攻撃の間に、高親和性の表面免疫グロブリンをディスプレイするB細胞が優先的に複製され、分化する。「鎖シャッフリング」として公知の技法を使用することにより、この自然プロセスを模倣することができる。Marks, et al., Bio/Technol. 10: 779-783 (1992))。この方法では、ファージディスプレイによって得られた「一次」ヒト抗体の親和性を、重鎖および軽鎖V領域遺伝子を免疫化されていないドナーから得たVドメイン遺伝子の天然に存在するバリアントのレパートリー(レパートリー)で逐次的に置き換えることにより、改善することができる。この技法により、pM~nM範囲の親和性を有する抗体および抗体断片の産生が可能になる。非常に大きなファージ抗体レパートリー(「最大の(mother-of-all)ライブラリー」としても公知)を作出するための戦略がWaterhouse et al., Nucl. Acids Res. 21: 2265-2266 (1993)によって記載されている。遺伝子シャッフリングを使用して、齧歯類抗体からヒト抗体を引き出すことができ、その場合、ヒト抗体は出発齧歯類抗体と同様の親和性および特異性を有する。「エピトープインプリンティング(epitope imprinting)」とも称されるこの方法によれば、ファージディスプレイ技法によって得た齧歯類抗体の重鎖または軽鎖Vドメイン遺伝子をヒトVドメイン遺伝子のレパートリーで置き換え、齧歯類-ヒトキメラを創出する。抗原による選択の結果、機能性抗原結合性部位を回復することができるヒト可変領域が単離される、すなわち、エピトープによりパートナーの選択が支配(インプリンティング)される。残りの齧歯類Vドメインを置き換えるためにプロセスを繰り返すと、ヒト抗体が得られる(1993年4月1日公開のPCT公開第WO93/06213号を参照されたい)。従来のCDR移植による齧歯類抗体のヒト化とは異なり、この技法では、齧歯類起源のフレームワーク残基もCDR残基も有さない完全なヒト抗体がもたらされる。
【0092】
モノクローナル抗体をヒト化するためには4つの一般的なステップがある。(1)出発抗体軽鎖および重鎖可変ドメインのヌクレオチド配列および予測されるアミノ酸配列を決定するステップ、(2)ヒト化抗体を設計する、すなわち、ヒト化プロセス中にいずれの抗体フレームワーク領域を使用するかを決定するステップ、(3)実際のヒト化方法体系/技法のステップ、ならびに(4)ヒト化抗体をトランスフェクトし、発現させるステップ。例えば、米国特許第4,816,567号;同第5,807,715号;同第5,866,692号;同第6,331,415号;同第5,530,101号;同第5,693,761号;同第5,693,762号;同第5,585,089号;および同第6,180,370号を参照されたい。
【0093】
齧歯類または改変された齧歯類V領域およびそれらの関連する相補性決定領域(CDR)とヒト定常ドメインを融合したキメラ抗体を含めた、非ヒト免疫グロブリンに由来する抗原結合性部位を含む「ヒト化」抗体分子が多数記載されている。例えば、Winter et al. Nature 349: 293-299 (1991), Lobuglio et al. Proc. Nat. Acad. Sci. USA 86: 4220-4224 (1989)、Shaw et al. J. Immunol. 138: 4534-4538 (1987)、およびBrown et al. Cancer Res. 47: 3577-3583 (1987)を参照されたい。
【0094】
他の参考文献には、ヒト支持フレームワーク領域(FR)に齧歯類CDRを移植した後、適当なヒト抗体定常ドメインと融合したものが記載されている。例えば、Riechmann et al. Nature 332: 323-327 (1988)、Verhoeyen et al., Science, 239: 1534-1536 (1988)、およびJones et al., Nature, 321: 522-525 (1986)を参照されたい。別の参考文献には、組換えによりベニアリングした齧歯類フレームワーク領域によって齧歯類CDRを支持したものが記載されている。例えば、欧州特許出願公開第0519596号を参照されたい。これらの「ヒト化」分子は、これらの部分のヒトレシピエントにおける治療的適用の持続時間および効果を限定する、齧歯類抗ヒト抗体分子に対する望ましくない免疫学的応答、が最小限になるように設計される。例えば、抗体定常領域を、免疫学的に不活性になるように(例えば、補体溶解を誘発しないように)操作することができる。例えば、PCT公開第WO99/058572号;およびUK特許出願第9809951.8号を参照されたい。
【0095】
同様に利用することができる、抗体をヒト化する他の方法が、Daugherty et al., Nucl. Acids Res., 19: 2471-2476 (1991)ならびに米国特許第6,180,377号;同第6,054,297号;同第5,997,867号;同第5,866,692号;同第6,210,671号;および同第6,350,861号;ならびにPCT公開第WO01/27160号によって開示されている。
【0096】
さらに別の代替では、特定のヒト免疫グロブリンタンパク質を発現するように操作された市販のマウスを使用することによって完全ヒト抗体を得ることができる。より望ましい(例えば、完全ヒト抗体)またはより頑強な免疫応答を生じるように設計されているトランスジェニック動物をヒト化またはヒト抗体の生成に使用することもできる。そのような技術の例は、Abgenix,Inc.(Fremont、Calif.)のXENOMOUSE(商標)ならびにMedarex,Inc.(Princeton、N.J.)のHUMAB-MOUSE(登録商標)およびTC MOUSE(商標)である。
【0097】
上記の考察はヒト化抗体に関するものであるが、考察された一般原則が、例えば、イヌ、ネコ、霊長類、ウマおよびウシにおける使用のための抗体のカスタマイズに適用可能であることが明らかになろう。本明細書に記載の抗体のヒト化の1つまたは複数の態様、例えば、CDR移植、フレームワーク変異およびCDR変異を組み合わせることができることがさらに明らかである。
【0098】
所望であれば、任意の公知の方法を使用して目的の抗体の配列決定を行うことができ、次いで、ポリヌクレオチド配列を発現または伝播のためにベクターにクローニングすることができる。目的の抗体をコードする配列を宿主細胞においてベクター内に維持することができ、次いで、宿主細胞を増大させ、後で使用するために凍結することができる。代替として、抗体を「ヒト化する」ため、または抗体の親和性もしくは他の特徴を改善するために、ポリヌクレオチド配列を遺伝子操作に使用することができる。例えば、抗体を臨床試験およびヒトの処置に使用する場合、免疫応答を回避するために、定常領域をヒト定常領域とより似たものになるように操作することができる。
【0099】
これらの抗体またはポリペプチドのいずれかを作出する方法も本発明で提供される。本発明の抗体は、当技術分野で公知の任意の従来の手順を使用して作出することができる。ポリペプチドを抗体のタンパク質分解または他の分解によって、上記の組換え方法によって(すなわち、単一のまたは融合ポリペプチド)、または化学合成によって、作製することができる。抗体のポリペプチド、特に、最大約50アミノ酸の短いポリペプチドは、化学合成によって都合よく作出することができる。化学合成の方法は当技術分野で公知であり、また、市販されている。例えば、固相方法を使用する自動化ポリペプチド合成機によって抗体を産生することができる。米国特許第5,807,715号;同第4,816,567号;および同第6,331,415号も参照されたい。
【0100】
抗体は、まず抗体および抗体産生細胞を宿主動物から単離し、遺伝子配列を得、その遺伝子配列を使用して宿主細胞(例えば、CHO細胞)において抗体を組換えによって発現させることにより、組換えによって作出することができる。使用することができる別の方法は、抗体配列を植物(例えば、タバコ)またはトランスジェニック乳汁において発現させることである。植物または乳汁において抗体を組換えによって発現させるための方法は開示されている。例えば、Peeters, et al. Vaccine 19: 2756 (2001);Lonberg, N. and D. Huszar Int. Rev. Immunol 13: 65 (1995);およびPollock, et al., J Immunol Methods 231: 147 (1999)を参照されたい。抗体の誘導体、例えば単鎖などを作出するための方法は当技術分野で公知である。
【0101】
本明細書で使用される場合、「宿主細胞」は、ポリヌクレオチド挿入物の組み入れのためのベクター(複数可)のレシピエントになり得るまたはレシピエントになっている個々の細胞または細胞培養物を包含する。宿主細胞は、単一の宿主細胞の後代を包含し、後代は、天然の、偶発的な、または意図的な変異に起因して、元の親細胞と必ずしも完全に同一ではない可能性がある(形態またはゲノムDNA相補物に関して)。宿主細胞は、本発明のポリヌクレオチド(複数可)をトランスフェクトされた細胞を包含する。
【0102】
抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することが可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離し、配列決定することができる。ハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの好ましい供給源としての機能を果たし得る。DNAを単離したら、発現ベクター(例えば、PCT公開第WO87/04462号に開示されている発現ベクターなど)内に入れ、次いで、その発現ベクターを、そうでなければ免疫グロブリンタンパク質を産生しないE.coli細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞などの宿主細胞にトランスフェクトして、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成を得る。例えば、PCT公開第WO87/04462号を参照されたい。DNAを、例えば、ヒト重鎖および軽鎖定常ドメインのコード配列で相同なマウス配列を置換することによって(Morrison et al., Proc. Nat. Acad. Sci. 81: 6851 (1984))、または免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全部または一部を共有結合により接合することによって、改変することもできる。その様式では、本明細書に記載の抗体の結合特異性を有する「キメラ」または「ハイブリッド」抗体が調製される。
【0103】
本明細書で使用される場合、「ベクター」は、目的の1つまたは複数の遺伝子(複数可)または配列(複数可)を宿主細胞に送達し、好ましくは宿主細胞において発現させることが可能な構築物を意味する。ベクターの例としては、これだけに限定されないが、ウイルスベクター、ネイキッドDNAまたはRNA発現ベクター、プラスミド、コスミドまたはファージベクター、カチオン性縮合剤を伴うDNAまたはRNA発現ベクター、リポソームに封入されたDNAまたはRNA発現ベクター、および、産生細胞などのある特定の真核細胞が挙げられる。
【0104】
本明細書で使用される場合、「発現制御配列」は、核酸の転写を方向づける核酸配列を意味する。発現制御配列は、構成的もしくは誘導性プロモーターなどのプロモーター、またはエンハンサーであり得る。発現制御配列は、転写される核酸配列に作動可能に連結している。
【0105】
一部の場合では、ヘプシンに対するより大きな親和性ならびにヘプシンの阻害および/または中和におけるより大きな有効性が得られるように抗体配列を遺伝子操作することが望ましい可能性がある。抗体の1つまたは複数のポリヌクレオチドを変化させることができ、それでもなおその抗体のヘプシンに対する結合能が維持されることが当業者には明らかになろう。
【0106】
抗体の発現を方向づけるために発現ベクターを使用することができる。当業者は、発現ベクターを投与して、外因性タンパク質のin vivoにおける発現を得ることに関して詳しい。例えば、米国特許第6,436,908号;同第6,413,942号;および同第6,376,471号を参照されたい。
【0107】
抗体の単鎖可変領域断片(「scFv」)が本明細書に記載されている。単鎖可変領域断片は、短い連結ペプチドを使用することにより軽鎖および/または重鎖可変領域を連結することによって作出することができる。Bird et al. (1988)Science 242: 423-426。連結ペプチドの例は、(GGGGS)3(配列番号22)であり、これにより、一方の可変領域のカルボキシ末端と他方の可変領域のアミノ末端の間におよそ3.5nmの橋が架けられる。他の配列のリンカーも設計され、使用されている。Bird et al.(同文献)。次に、リンカーを、例えば、薬物の付着または固体支持体への付着など、追加的な機能のために改変することができる。単鎖バリアントを組換えによってか、または合成によって作製することができる。scFvの合成による作製に関しては、自動合成機を使用することができる。scFvの組換えによる作製に関しては、scFvをコードするポリヌクレオチドを含有する適切なプラスミドを、酵母、植物、昆虫もしくは哺乳動物細胞などの真核生物、またはE.coliなどの原核生物のいずれかの適切な宿主細胞に導入することができる。目的のscFvをコードするポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドのライゲーションなどの常套的な操作によって作出することができる。得られたscFvを当技術分野で公知の標準のタンパク質精製技法を使用して単離することができる。
【0108】
ダイアボディなどの単鎖抗体の他の形態も包含される。ダイアボディは、VHドメインとVLドメインが単一のポリペプチド鎖上に発現されるが、同じ鎖上の2つのドメイン間での対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用し、それにより、ドメインが別の鎖の相補的なドメインと対合するように強制され、2つの抗原結合性部位が創出された、二価の二重特異性抗体である(例えば、Holliger, P., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 6444-6448 (1993);およびPoljak, R. J., et al., Structure, 2: 1121-1123 (1994)を参照されたい)。
【0109】
例えば、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である二重特異性抗体は、本明細書に開示される抗体を使用して調製することができる。二重特異性抗体を作出するための方法は、当技術分野で公知である(例えば、Suresh et al., 1986, Methods in Enzymology 121: 210を参照されたい)。伝統的に、二重特異性抗体の組換えによる産生は、異なる特異性を有する2つの重鎖を用い、2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対を同時発現させることに基づくものであった(Millstein and Cuello, 1983, Nature, 305, 537-539)。二重特異性抗体は、一方の腕に第1の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖、および他方の腕のハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第2の結合特異性をもたらす)で構成され得る。免疫グロブリン軽鎖が二重特異性分子の片方にしかないこの非対称構造により、所望の二重特異性化合物を望ましくない免疫グロブリン鎖の組合せから分離することが容易になる。この手法は、PCT公開第WO94/04690号に記載されている。
【0110】
二重特異性抗体を作出するための1つの手法によれば、所望の結合特異性(抗体-抗原組合せ部位)を有する抗体可変ドメインを免疫グロブリン定常ドメイン配列と融合する。融合物は、ヒンジ、CH2およびCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインを有することが好ましい。軽鎖結合に必要な部位を含有する第1の重鎖定常領域(CH1)が融合物の少なくとも1つに存在することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合物および所望であれば免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAを、別々の発現ベクターに挿入し、適切な宿主生物体に同時トランスフェクトする。これにより、構築に使用される等しくない比の3つのポリペプチド鎖によって最適な収量がもたらされる実施形態における、3つのポリペプチド断片の相互の割合の調整に関して大きな柔軟性がもたらされる。しかし、少なくとも2つのポリペプチド鎖を等しい比で発現させることにより高収量がもたらされる場合、または比に特定の有意性がない場合には、2つまたは3つ全てのポリペプチド鎖のコード配列を1つの発現ベクターに挿入することが可能である。
【0111】
2つの共有結合により接合した抗体を含むヘテロコンジュゲート抗体も本発明の範囲内に入る。そのような抗体は、望ましくない細胞に免疫系細胞をターゲティングするために使用されている(米国特許第4,676,980号)。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の都合のよい架橋結合法を使用して作出することができる。適切な架橋剤および技法は当技術分野で周知であり、例えば、米国特許第4,676,980号に記載されている。
【0112】
キメラまたはハイブリッド抗体は、架橋剤を伴うものを含め、合成タンパク質化学の公知の方法を使用して、in vitroにおいて調製することもできる。例えば、ジスルフィド交換反応を使用して、またはチオエーテル結合を形成することによって、免疫毒素を構築することができる。この目的のための適切な試薬の例としては、イミノチオレートおよびメチル-4-メルカプトブチリミデートが挙げられる。
【0113】
抗ヘプシン抗体およびその抗原結合性断片を、ヘプシン生物活性の低下、改良、または中和を検出および/または測定する当技術分野で公知の方法を使用して同定するまたは特徴付けることができる。
【0114】
抗体を、当技術分野で周知の方法を使用して特徴付けることができる。例えば、1つの方法は、抗体が結合するエピトープを同定すること、または「エピトープマッピング」である。例えば、Chapter 11 of Harlow and Lane, Using Antibodies, a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1999に記載されている通り、抗体-抗原複合体の結晶構造の解明、競合アッセイ、遺伝子断片発現アッセイ、および合成ペプチドに基づくアッセイを含めた、タンパク質上のエピトープの場所をマッピングするおよび特徴付けるための多くの方法が当技術分野で公知である。追加的な例では、エピトープマッピングを使用して、抗ヘプシン抗体が結合する配列を決定することができる。エピトープマッピングは種々の供給源、例えばPepscan Systems(Edelhertweg 15、8219 PH Lelystad、The Netherlands)から市販されている。エピトープは、直鎖状エピトープ、すなわち、アミノ酸の単一のひと続きに含有されるものであり得る、または、必ずしも単一のひと続きに含有されない可能性がある、アミノ酸の三次元相互作用によって形成されるコンフォメーショナルエピトープであり得る。様々な長さ(例えば、少なくとも4~6アミノ酸長)のペプチドを単離または合成し(例えば、組換えによって)、抗ヘプシン抗体を用いた結合アッセイに使用することができる。別の例では、抗ヘプシン抗体が結合するエピトープを、系統的スクリーニングにおいて、抗ヘプシン配列に由来する重複するペプチドを使用し、抗ヘプシン抗体による結合を決定することによって決定することができる。遺伝子断片発現アッセイによれば、ヘプシンをコードするオープンリーディングフレームをランダムにまたは特定の遺伝子構築によってのいずれかで断片化し、発現されたヘプシンの断片の試験される抗体との反応性を決定する。遺伝子断片を、例えば、PCRによって作製し、次いで、in vitroにおいて、放射性アミノ酸の存在下で、転写し、タンパク質に翻訳することができる。次いで、放射標識したヘプシン断片への抗体の結合を免疫沈降およびゲル電気泳動によって決定する。ある特定のエピトープを、ファージ粒子の表面にディスプレイされたランダムなペプチド配列の大きなライブラリーを使用して同定することもできる(ファージライブラリー)。あるいは、重複するペプチド断片の定義されたライブラリーを試験抗体との結合について単純な結合アッセイで試験することもできる。追加的な例では、抗原結合性ドメインの変異誘発、ドメインスワッピング実験およびアラニンスキャニング変異誘発を実施して、エピトープ結合に必要な、十分な、および/または必須の残基を同定することができる。例えば、ドメインスワッピング実験は、ヘプシンポリペプチドの種々の断片が、密接に関連するが抗原性が別個のタンパク質の配列と置き換えられた(取り換えられた)、変異体ヘプシンを使用して実施することができる。抗体の変異体ヘプシンへの結合を評価することにより、特定のヘプシン断片の抗体結合に対する重要性を評価することができる。
【0115】
抗ヘプシン抗体を特徴付けるために使用することができるさらに別の方法は、同じ抗原、すなわち、ヘプシン上の種々の断片に結合することが分かっている他の抗体を用いた競合アッセイを使用して、抗ヘプシン抗体が他の抗体と同じエピトープと結合するかどうかを決定することである。競合アッセイは当業者には周知である。
【0116】
親和性成熟させた抗体も本発明で提供される。例えば、親和性成熟させた抗体は、当技術分野で公知の手順によって産生することができる(Marks et al., 1992, Bio/Technology, 10: 779-783;Barbas et al., 1994, Proc Nat. Acad. Sci, USA 91: 3809-3813;Schier et al., 1995, Gene, 169: 147-155;Yelton et al., 1995, J. Immunol., 155: 1994-2004;Jackson et al., 1995, J. Immunol., 154 (7): 3310-9;Hawkins et al, 1992, J. Mol. Biol., 226: 889-896;およびWO2004/058184)。
【0117】
抗体の親和性を調整するため、およびCDRを特徴付けるために、以下の方法を使用することができる。抗体のCDRを特徴付けるおよび/または抗体などのポリペプチドの結合親和性を変更する(例えば、改善する)1つの方法は、「ライブラリースキャニング変異誘発」と称される。一般に、ライブラリースキャニング変異誘発は以下の通り働く。当技術分野において認められている方法を使用してCDR内の1つまたは複数のアミノ酸位置を2つまたはそれよりも多く(例えば、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、または20個)のアミノ酸で置き換える。これにより、クローン(一部の実施形態では、解析されるアミノ酸位置ごとに1つ)の小さなライブラリーが生じ、それぞれが2つまたはそれよりも多くのメンバーという複雑さを有する(全ての位置において2つまたはそれよりも多くのアミノ酸が置換される場合)。一般に、ライブラリーは、ネイティブ(置換されていない)アミノ酸を含むクローンも含む。各ライブラリーから少数のクローン、例えば約20~80クローン(ライブラリーの複雑さに応じて)を、標的ポリペプチド(または他の結合標的)に対する結合親和性についてスクリーニングし、結合が増大した、結合が同じである、結合が低下した、または結合を有さない、候補を同定する。結合親和性を決定するための方法は当技術分野で周知である。結合親和性は、約2倍またはそれよりも大きな結合親和性の差異を検出する、Biacore表面プラズモン共鳴分析を使用して決定することができる。Biacoreは、出発抗体がすでに比較的高い親和性、例えば約10nMまたはそれ未満のKDで結合するものである場合に特に有用である。
【0118】
一部の実施形態では、当技術分野において認められている変異誘発法(その一部は本明細書に記載されている)を使用して、CDR内の全てのアミノ酸位置を20種全ての天然アミノ酸で置き換える(一部の実施形態では、1度に1つ)。これにより、クローン(一部の実施形態では、解析されるアミノ酸位置ごとに1つ)の小さなライブラリーが生じ、それぞれが20メンバーという複雑さを有する(全ての位置において20種全てのアミノ酸の置換を行った場合)。
【0119】
一部の実施形態では、スクリーニングされるライブラリーは、2つまたはそれよりも多くの位置における置換を含み、これは、同じCDR内のものであってもよく、2つまたはそれよりも多くのCDR内のものであってもよい。したがって、ライブラリーは、1つのCDR内の2つまたはそれよりも多くの位置における置換を含み得る。ライブラリーは、2つまたはそれよりも多くのCDR内の2つまたはそれよりも多くの位置における置換を含み得る。ライブラリーは、3つ、4つ、5つ、またはそれよりも多くの位置における置換を含み得、前記位置は、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのCDR内に見いだされる。置換は、重複性が低いコドンを使用して調製することができる。例えば、Balint et al., Gene, 137 (1): 109-18 (1993)の表2を参照されたい。CDRは、CDRH3および/またはCDRL3であり得る。CDRは、CDRL1、CDRL2、CDRL3、CDRH1、CDRH2、および/またはCDRH3のうちの1つまたは複数であり得る。CDRは、Kabat CDR、Chothia CDR、または拡張CDRであり得る。
【0120】
結合が改善された候補の配列決定を行い、それにより、改善された親和性をもたらすCDR置換変異体を同定することができる(「改善された」置換とも称される)。結合する候補についても配列決定を行い、それにより、結合を保持するCDR置換を同定することができる。
【0121】
多数回ラウンドのスクリーニングを行うことができる。例えば、結合が改善された候補(それぞれが、1つまたは複数のCDRの1つまたは複数の位置にアミノ酸の置換を含む)は、少なくとも、各改善されたCDR位置(すなわち、置換変異体が改善された結合を示す、CDR内のアミノ酸位置)の元のアミノ酸および置換アミノ酸を含有する第2のライブラリーの設計にも有用である。このライブラリーの調製、およびスクリーニングまたは選択を以下にさらに考察する。
【0122】
結合が改善された、結合が同じである、結合が低下した、または結合を有さないクローンの頻度によっても抗体-抗原複合体の安定性に対する各アミノ酸位置の重要性に関する情報がもたらされる限りでは、ライブラリースキャニング変異誘発は、CDRを特徴付けるための手段も提供する。例えば、CDRの位置が、20種全てのアミノ酸に変化させた場合に結合を保持する場合、その位置は、抗原結合に必要である可能性が低い位置として同定される。逆に、CDRの位置が、ほんの小さなパーセンテージの置換でのみ結合を保持する場合、その位置は、CDR機能に重要な位置として同定される。したがって、ライブラリースキャニング変異誘発法により、多くの異なるアミノ酸(20種全てのアミノ酸を含む)に変化させることができるCDR内の位置、および変化させることができないまたは少数のアミノ酸にのみ変化させることができるCDR内の位置に関する情報が生じる。
【0123】
親和性が改善された候補を、改善されたアミノ酸、その位置の元のアミノ酸を含み、望まれるまたは許容されるライブラリーの複雑さに応じて、その位置における追加的な置換をさらに含み得る、第2のライブラリーにおいて、所望のスクリーニングまたは選択方法を使用して組み合わせることができる。さらに、所望であれば、隣接するアミノ酸位置を少なくとも2つまたはそれよりも多くのアミノ酸にランダム化することができる。隣接するアミノ酸のランダム化により、変異体CDRのさらなるコンフォメーションの柔軟性が可能になり得、それにより今度は、より多数の改善性変異を導入することが可能になるまたは容易になる。ライブラリーは、スクリーニングの第1ラウンドにおいて改善された親和性を示さなかった位置における置換も含み得る。
【0124】
第2のライブラリーを、結合親和性が改善および/または変更されたライブラリーメンバーについて、Biacore表面プラズモン共鳴分析を使用したスクリーニング、ならびに、ファージディスプレイ、酵母ディスプレイ、およびリボソームディスプレイを含めた当技術分野で公知の任意の選択方法を使用した選択を含めた、当技術分野で公知の任意の方法を使用してスクリーニングまたは選択する。
【0125】
例示的な抗ヘプシン抗体アミノ酸配列
一態様では、本開示は、循環ヘプシンまたは循環ヘプシンのC末端に選択的に結合する、単離された抗体を提供する。本明細書に記載の抗ヘプシン抗体は、一部の場合では、セリンプロテアーゼであるマトリプターゼ、KLK6、KLK7、およびKLK8には選択的に結合しない。以下に提示する例示的なVHおよびVL配列に関して、最終的な可変領域配列にシグナル配列は含まれないことが理解されよう。
【0126】
一態様では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号1、2、および3のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH配列を含む。一部の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列と比べて置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗体は、親と同じ抗原(例えば、がん関連抗原)に結合する能力を保持する。一部の実施形態では、配列番号1、2、および3のいずれか1つのアミノ酸配列において合計1~10アミノ酸が置換されている、挿入されている、および/または欠失している。一部の実施形態では、置換、挿入、または欠失はCDRの外側の領域(例えば、FR内)に存在する。必要に応じて、抗体は、配列番号1、2、および3のいずれか1つのアミノ酸配列のVH配列(その配列の1つまたは複数の翻訳後修飾を含む)を含む。特定の実施形態では、VHは、(a)配列番号16、18、および19のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号11、13、および14のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-H2、および(c)配列番号6、8、および9のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-H3から選択される1つ、2つまたは3つのCDRを含む。ある特定の実施形態では、CDR-H1、CDR-H2、および/またはCDR-H3のアミノ酸は、Chothia番号付けによって定義される。ある特定の実施形態では、CDR-H1、CDR-H2、および/またはCDR-H3のアミノ酸は、Martin番号付けによって定義される。ある特定の実施形態では、CDR-H1、CDR-H2、および/またはCDR-H3のアミノ酸は、Kabat番号付けによって定義される。ある特定の実施形態では、CDR-H1、CDR-H2、および/またはCDR-H3のアミノ酸は、AHo番号付けによって定義される。ある特定の実施形態では、CDR-H1、CDR-H2、および/またはCDR-H3のアミノ酸は、IMGT番号付けによって定義される。
【0127】
一態様では、配列番号4または5のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、抗体またはその抗原結合性断片が提供される。一部の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列と比べて置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗体またはその抗原結合性断片は、親と同じ抗原(例えば、がん関連抗原)に結合する能力を保持する。一部の実施形態では、配列番号4または5のアミノ酸配列において合計1~10アミノ酸が置換されている、挿入されている、および/または欠失している。一部の実施形態では、置換、挿入、または欠失はCDRの外側の領域(例えば、FR内)に存在する。必要に応じて、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号4または5のVL配列(その配列の翻訳後修飾を含む)を含む。特定の実施形態では、VLは、(a)配列番号17または20のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(b)配列番号12または15のアミノ酸配列を含むCDR-L2;および(c)配列番号7または10のアミノ酸配列を含むCDR-L3から選択される1つ、2つまたは3つのCDRを含む。ある特定の実施形態では、CDR-L1、CDR-L2、および/またはCDR-L3のアミノ酸は、Chothia番号付けによって定義される。ある特定の実施形態では、CDR-L1、CDR-L2、および/またはCDR-L3のアミノ酸は、Martin番号付けによって定義される。ある特定の実施形態では、CDR-L1、CDR-L2、および/またはCDR-L3のアミノ酸は、Kabat番号付けによって定義される。ある特定の実施形態では、CDR-L1、CDR-L2、および/またはCDR-L3のアミノ酸は、AHo番号付けによって定義される。ある特定の実施形態では、CDR-L1、CDR-L2、および/またはCDR-L3のアミノ酸は、IMGT番号付けによって定義される。
【0128】
一態様では、上に提示された実施形態のいずれかにおけるものと同様のVH、および上に提示された実施形態のいずれかにおけるものと同様のVLを含む、抗体またはその抗原結合性断片が提供される。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、VHおよびVLを含み、ここで、VHは、配列番号1、2、および3のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号4または5のアミノ酸配列を含み、必要に応じて、これらの配列の翻訳後修飾を含む。
【0129】
一態様では、表1の任意のVHから選択されたVHを含む、抗体またはその抗原結合性断片が提供される。一態様では、表1の任意のVLから選択されたVLを含む、抗体またはその抗原結合性断片が提供される。一態様では、表1の任意のVHから選択されたVHおよび表1の任意のVLから選択されたVLを含む、抗体またはその抗原結合性断片が提供される。一態様では、表1の任意のVHから選択されたVHおよび表1の任意のVLから選択されたVLを含み、選択されたVHおよびVLが、表5に従って対を形成する、抗体またはその抗原結合性断片が提供される。一態様では、表2の任意のCDR-H3から選択されたCDR-H3および表2の任意のCDRL3から選択されたCDR-L3を含み、選択されたCDR-H3およびCDRL3が、表5に従って対を形成する、抗体またはその抗原結合性断片が提供される。一態様では、表2の任意のCDR-H2から選択されたCDR-H2および表2の任意のCDR-L2から選択されたCDR-L2を含み、選択されたCDR-H2およびCDR-L2が、表5に従って対を形成する、抗体またはその抗原結合性断片が提供される。一態様では、表2の任意のCDR-H1から選択されたCDR-H1および表2の任意のCDR-L1から選択されたCDR-L1を含み、選択されたCDR-H1およびCDR-L1が、表5に従って対を形成する、抗体またはその抗原結合性断片が提供される。一態様では、表2の任意のCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3から選択されるCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3、ならびに表2の任意のCDR-L1、CDR-L2、またはCDR-L3から選択されるCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3を含み、選択されたCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3が、表5に従って対を形成する、抗体またはその抗原結合性断片が提供される。ある特定の実施形態では、CDR-H1、CDR-H2、および/またはCDR-H3のアミノ酸は、Chothia番号付けによって定義される。ある特定の実施形態では、CDR-H1、CDR-H2、および/またはCDR-H3のアミノ酸は、Martin番号付けによって定義される。ある特定の実施形態では、CDR-H1、CDR-H2、および/またはCDR-H3のアミノ酸は、Kabat番号付けによって定義される。ある特定の実施形態では、CDR-H1、CDR-H2、および/またはCDR-H3のアミノ酸は、AHo番号付けによって定義される。ある特定の実施形態では、CDR-H1、CDR-H2、および/またはCDR-H3のアミノ酸は、IMGT番号付けによって定義される。ある特定の実施形態では、CDR-L1、CDR-L2、および/またはCDR-L3のアミノ酸は、Chothia番号付けによって定義される。ある特定の実施形態では、CDR-L1、CDR-L2、および/またはCDR-L3のアミノ酸は、Martin番号付けによって定義される。ある特定の実施形態では、CDR-L1、CDR-L2、および/またはCDR-L3のアミノ酸は、Kabat番号付けによって定義される。ある特定の実施形態では、CDR-L1、CDR-L2、および/またはCDR-L3のアミノ酸は、AHo番号付けによって定義される。ある特定の実施形態では、CDR-L1、CDR-L2、および/またはCDR-L3のアミノ酸は、IMGT番号付けによって定義される。
【0130】
H2a
一態様では、本開示は、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むVH、(b)配列番号4のアミノ酸配列を含むVL、および(c)これらの組合せからなる群より選択される1つまたは複数の可変領域を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0131】
一態様では、本開示は、(a)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(b)配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR-H2;(c)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3;(d)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(e)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-L2;および(f)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L3から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのCDRを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0132】
一態様では、本開示は、(a)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(b)配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR-H2;および(c)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVH CDR配列;ならびに(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むVLを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0133】
一態様では、本開示は、(a)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-L2;および(c)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVL CDR配列;ならびに配列番号1のアミノ酸配列を含むVHを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0134】
一態様では、本開示は、CDR:配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3;および配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0135】
一態様では、本開示は、(a)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-L2;および(c)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVL CDR配列を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。一態様では、本開示は、(a)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(b)配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR-H2;および(c)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVH CDR配列を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0136】
一態様では、本開示は、CDR:(a)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(b)配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR-H2;(c)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3;(d)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(e)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-L2;および(f)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0137】
一態様では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH配列を含む。一部の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列と比べて置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗体またはその抗原結合性断片は、抗原に結合する能力を保持する。一部の実施形態では、配列番号1のアミノ酸配列において合計1~10アミノ酸が置換されている、挿入されている、および/または欠失している。一部の実施形態では、置換、挿入、または欠失はCDRの外側の領域(例えば、FR内)に存在する。必要に応じて、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号1のアミノ酸配列のVH配列(その配列の翻訳後修飾を含む)を含む。特定の実施形態では、VHは、(a)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR-H2、および(c)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3から選択される1つ、2つまたは3つのCDRを含む。
【0138】
一態様では、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、抗体またはその抗原結合性断片が提供される。一部の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列と比べて置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗体またはその抗原結合性断片は、抗原に結合する能力を保持する。一部の実施形態では、配列番号4のアミノ酸配列において合計1~10アミノ酸が置換されている、挿入されている、および/または欠失している。一部の実施形態では、置換、挿入、または欠失はCDRの外側の領域(例えば、FR内)に存在する。必要に応じて、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号4のVL配列(その配列の翻訳後修飾を含む)を含む。特定の実施形態では、VLは、(a)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-L2;および(c)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L3から選択される1つ、2つまたは3つのCDRを含む。
【0139】
一態様では、上に提示された実施形態のいずれかにおけるものと同様のVH、および上に提示された実施形態のいずれかにおけるものと同様のVLを含む、抗体またはその抗原結合性断片が提供される。一部の実施形態では、抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号4のVL配列(これらの配列の翻訳後修飾を含む)を含む。
【0140】
H2b
一態様では、本開示は、(a)配列番号2のアミノ酸配列を含むVH、(b)配列番号4のアミノ酸配列を含むVL、および(c)これらの組合せからなる群より選択される1つまたは複数の可変領域を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0141】
一態様では、本開示は、(a)配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(b)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H2;(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-H3;(d)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(e)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-L2;および(f)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L3から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのCDRを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0142】
一態様では、本開示は、(a)配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(b)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H2;および(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVH CDR配列;ならびに(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むVLを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0143】
一態様では、本開示は、(a)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-L2;および(c)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVL CDR配列;ならびに配列番号2のアミノ酸配列を含むVHを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0144】
一態様では、本開示は、CDR:配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-H3;および配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0145】
一態様では、本開示は、(a)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-L2;および(c)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVL CDR配列を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。一態様では、本開示は、(a)配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(b)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H2;および(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVH CDR配列を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0146】
一態様では、本開示は、CDR:(a)配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(b)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H2;(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-H3;(d)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(e)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-L2;および(f)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0147】
一態様では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH配列を含む。一部の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列と比べて置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗体またはその抗原結合性断片は、抗原に結合する能力を保持する。一部の実施形態では、配列番号2のアミノ酸配列において合計1~10アミノ酸が置換されている、挿入されている、および/または欠失している。一部の実施形態では、置換、挿入、または欠失はCDRの外側の領域(例えば、FR内)に存在する。必要に応じて、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号2のアミノ酸配列のVH配列(その配列の翻訳後修飾を含む)を含む。特定の実施形態では、VHは、(a)配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H2、および(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-H3から選択される1つ、2つまたは3つのCDRを含む。
【0148】
一態様では、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、抗体またはその抗原結合性断片が提供される。一部の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列と比べて置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗体またはその抗原結合性断片は、抗原に結合する能力を保持する。一部の実施形態では、配列番号4のアミノ酸配列において合計1~10アミノ酸が置換されている、挿入されている、および/または欠失している。一部の実施形態では、置換、挿入、または欠失はCDRの外側の領域(例えば、FR内)に存在する。必要に応じて、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号4のVL配列(その配列の翻訳後修飾を含む)を含む。特定の実施形態では、VLは、(a)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-L2;および(c)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L3から選択される1つ、2つまたは3つのCDRを含む。
【0149】
一態様では、上に提示された実施形態のいずれかにおけるものと同様のVH、および上に提示された実施形態のいずれかにおけるものと同様のVLを含む、抗体またはその抗原結合性断片が提供される。一部の実施形態では、抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号4のVL配列(これらの配列の翻訳後修飾を含む)を含む。
【0150】
H5
一態様では、本開示は、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むVH、および(b)配列番号5のアミノ酸配列を含むVLから選択される少なくとも1つまたは両方の可変領域を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0151】
一態様では、本開示は、(a)配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2;(c)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H3;(d)配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(e)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-L2;および(f)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L3から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのCDRを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0152】
一態様では、本開示は、(a)配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2;および(c)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVH CDR配列;ならびに(d)配列番号5のアミノ酸配列を含むVLを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0153】
一態様では、本開示は、(a)配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(b)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-L2;および(c)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVL CDR配列;ならびに配列番号3のアミノ酸配列を含むVHを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0154】
一態様では、本開示は、CDR:配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H3;および配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0155】
一態様では、本開示は、(a)配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(b)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-L2;および(c)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVL CDR配列を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。一態様では、本開示は、(a)配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2;および(c)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVH CDR配列を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0156】
一態様では、本開示は、CDR:(a)配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2;(c)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H3;(d)配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(e)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-L2;および(f)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0157】
一態様では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH配列を含む。一部の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列と比べて置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗体またはその抗原結合性断片は、抗原に結合する能力を保持する。一部の実施形態では、配列番号3のアミノ酸配列において合計1~10アミノ酸が置換されている、挿入されている、および/または欠失している。一部の実施形態では、置換、挿入、または欠失はCDRの外側の領域(例えば、FR内)に存在する。必要に応じて、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号3のアミノ酸配列のVH配列(その配列の翻訳後修飾を含む)を含む。特定の実施形態では、VHは、(a)配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、および(c)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H3から選択される1つ、2つまたは3つのCDRを含む。
【0158】
一態様では、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、抗体片が提供される。一部の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列と比べて置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗体またはその抗原結合性断片は、抗原に結合する能力を保持する。一部の実施形態では、配列番号5のアミノ酸配列において合計1~10アミノ酸が置換されている、挿入されている、および/または欠失している。一部の実施形態では、置換、挿入、または欠失はCDRの外側の領域(例えば、FR内)に存在する。必要に応じて、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号5のVL配列(その配列の翻訳後修飾を含む)を含む。特定の実施形態では、VLは、(a)配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(b)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-L2;および(c)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L3から選択される1つ、2つまたは3つのCDRを含む。
【0159】
一態様では、上に提示された実施形態のいずれかにおけるものと同様のVH、および上に提示された実施形態のいずれかにおけるものと同様のVLを含む、抗体またはその抗原結合性断片が提供される。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号3のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号5のVL配列(これらの配列の翻訳後修飾を含む)を含む。
【0160】
例示的な核酸配列
本開示は、抗体ポリペプチドまたはその抗原結合性断片をコードする配列を含む、単離された核酸を提供する。一部の実施形態では、単離された核酸は、抗体の重鎖ポリペプチドをコードする配列を含む。表3、4、および6を参照されたい。一部の実施形態では、重鎖ポリペプチドをコードする核酸配列は、配列番号21、22、および23のうちのいずれか1つから選択される。一部の実施形態では、単離された核酸は、抗体の軽鎖ポリペプチドをコードする配列を含む。一部の実施形態では、軽鎖ポリペプチドをコードする核酸配列は、配列番号24または25のうちのいずれか1つから選択される。一部の実施形態では、単離された核酸は、可変重鎖のCDR1ポリペプチドをコードする配列を含む。一部の実施形態では、単離された核酸は、可変重鎖のCDR2ポリペプチドをコードする配列を含む。一部の実施形態では、単離された核酸は、可変重鎖のCDR3ポリペプチドをコードする配列を含む。一部の実施形態では、可変重鎖のCDR1ポリペプチドをコードする核酸配列は、配列番号16、18、および19のうちのいずれか1つから選択される。一部の実施形態では、可変重鎖のCDR2ポリペプチドをコードする核酸配列は、配列番号11、13、および14のうちのいずれか1つから選択される。一部の実施形態では、可変重鎖のCDR3ポリペプチドをコードする核酸配列は、配列番号6、8、および9のうちのいずれか1つから選択される。一部の実施形態では、単離された核酸は、可変軽鎖のCDR1ポリペプチドをコードする配列を含む。一部の実施形態では、単離された核酸は、可変軽鎖のCDR2ポリペプチドをコードする配列を含む。一部の実施形態では、単離された核酸は、可変軽鎖のCDR3ポリペプチドをコードする配列を含む。一部の実施形態では、可変軽鎖ポリペプチドのCDR1領域をコードする核酸配列は、配列番号17および20のうちのいずれか1つから選択される。一部の実施形態では、可変軽鎖ポリペプチドのCDR2領域をコードする核酸配列は、配列番号12および15のうちのいずれか1つから選択される。一部の実施形態では、可変軽鎖ポリペプチドのCDR3領域をコードする核酸配列は、配列番号7および10のうちのいずれか1つから選択される。
【0161】
抗体を産生する例示的な方法
別の態様では、本開示は、循環ヘプシンに選択的に結合する抗体を産生する方法であって、動物をヘプシンに対して免疫化することによって生成されたハイブリドーマを、ヘプシンの単離されたC末端部分に対してスクリーニングするステップを含む、方法を提供する。
【0162】
一部の場合では、抗体は、(a)ハイブリドーマを調製し(例えば、膜貫通部分(例えば野生型ヘプシンのもの)を欠く組換えヘプシン配列を用いて免疫化した齧歯類から)、(b)a)のハイブリドーマを、個体(例えば、がん(例えば、上皮がん)と診断された個体)から得た血清に対してスクリーニングし、(c)循環(または細胞外)ヘプシンに特異的に結合するb)のハイブリドーマを単離する、方法によって調製可能である。
【0163】
一部の場合では、抗体は、(a)ハイブリドーマを調製し(例えば、膜貫通部分(例えば野生型ヘプシンのもの)を欠く組換えヘプシン配列を用いて免疫化した齧歯類から)、(b)b)のハイブリドーマを、個体(例えば、がん(例えば、上皮がん)と診断された個体)から得た血清に対してスクリーニングし、(c)細胞外ヘプシンに特異的に結合するb)のハイブリドーマを単離し、(d)c)のハイブリドーマを生物学的に活性な組換え細胞外ヘプシンに対してスクリーニングし、(e)ヘプシンの細胞外循環C末端部分に特異的に結合するd)のハイブリドーマを単離する、方法によって調製可能である。
【0164】
本明細書に記載の抗体を調製するために利用されるヘプシンは、一部の場合では、ヒトヘプシンを含む。そのような方法の一部の場合では、生物学的に活性な組換え細胞外ヘプシンは、トロンビン切断部位、および、必要に応じてスペーサーをさらに含む。そのような方法の循環ヘプシンは、一部の場合では、配列番号44のアミノ酸配列を含む。そのような方法において利用される野生型ヒトヘプシンは、一部の場合では、配列番号41のアミノ酸配列を含む。
【0165】
別の態様では、本開示は、配列番号43のアミノ酸配列を含む組換えヘプシン配列に結合する、単離された抗体を提供する。一部の場合では、結合が選択的な抗体。
【0166】
別の態様では、本開示は、前記請求項のいずれか一項に記載の抗体および薬学的に許容される賦形剤を含む組成物を提供する。
【0167】
組成物およびキット
本明細書に記載の抗体は、保管のために凍結乾燥形態または水溶液として調製することができる。凍結乾燥された抗体は、所望の程度の純度を有する抗体を1つまたは複数の許容される担体、賦形剤、または安定剤と混合することにより、使用のために再構成することができる。許容される担体、賦形剤、または安定剤は、一般に、非毒性であり、また、緩衝液、例えば、リン酸、クエン酸、および他の有機酸など;塩、例えば塩化ナトリウムなど;アスコルビン酸およびメチオニンを含めた抗酸化剤;保存剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール;メチルパラベンもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなど;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドンなど;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリシンなど;グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含めた単糖、二糖、および他の炭水化物;キレート化剤、例えば、EDTAなど;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトールなど;塩形成性対イオン、例えば、ナトリウムなど;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体);ならびに/または非イオン界面活性物質、例えば、TWEEN(登録商標)、PLURONIC(登録商標)もしくはポリエチレングリコール(PEG)など、を含み得る。そのような作用物質の1つもしくは複数は、保管中の抗体の半減期を延長するものであり得る。
【0168】
ヘプシンに結合する抗体およびその抗原結合性断片の組成物が本発明で提供され、本明細書の他の箇所に記載のものなどが包含される。本明細書に記載のヘプシンに結合する抗体およびその抗原結合性断片は、下記の種々の形態のがんを診断するために使用することができる。
【0169】
本方法において使用するためのキットも本発明で提供される。キットは、本明細書に記載の抗ヘプシン抗体および本明細書に記載の方法のいずれかに従った使用に関する指示を含む1つまたは複数の容器を含み得る。一般に、これらの指示には、本明細書に記載の方法のいずれかに従ってがんを診断するための抗ヘプシン抗体の投与の記載を含む。
【0170】
容器は、本明細書に記載の抗体を含有する単一単位または複数単位の容器であり得る。本発明のキット中に供給される指示は、一般には、標識または添付文書(例えば、キット中に含まれる紙シート)に書かれた指示であるが、機械可読指示(例えば、磁気または光学保存ディスクに保持された指示)も許容される。
【0171】
標識または添付文書は、抗体が、例えば、前立腺がん、卵巣がん、または癌腫などのがんを診断するために使用されることを示すものである。ある場合では、がんは、卵巣がんである。別の場合では、がんは、前立腺がんである。別の場合では、がんは、癌腫である。癌腫の非限定的な例としては、これだけに限定されないが、腎細胞癌(RCC)または転移性腎細胞癌が挙げられる。本明細書に記載の方法のいずれかの実施のために指示を提供することができる。
【0172】
キットは、適切なパッケージングで提供することができる。適切なパッケージングとしては、これだけに限定されないが、バイアル、ボトル、ジャー、可撓性パッケージング(例えば、密封されたMylarまたはプラスチックバッグ)などが挙げられる。キットにより、必要に応じて、凍結乾燥された抗体を再構成するための緩衝液および説明情報などの追加的な構成要素を提供することができる。通常、キットは、容器および容器上のまたは容器に付随する標識または添付文書(複数可)を含む。
【0173】
診断方法
本開示の一態様は、対象におけるヘプシンのレベルの上昇に関連する障害の診断に関する。本発明の方法によって診断される「個体」または「対象」は、哺乳動物、より好ましくはヒトであり得る。哺乳動物としては、これだけに限定されないが、これだけに限定されないが、霊長類、ウマ、ウシ、アルパカ、イヌ、ネコ、ウサギ、マウスおよびラットを含めた、家畜、競技動物、および愛玩動物も挙げられる。
【0174】
ある場合では、ヘプシンのレベルの上昇に関連する障害は、がんまたは腫瘍である。「がん」および「腫瘍」という用語は、本明細書では、がん性組織(同じ型の正常な組織による発現と比較して)を指すために使用される。腫瘍は、固形腫瘍(がん)および半固形腫瘍(がん)を含み得る。腫瘍(がん)はまた、一部の場合では、転移性でもあり得る。ある場合では、腫瘍またはがんは、上皮がんである。腫瘍(がん)の例としては、これだけに限定されないが、前立腺がん、卵巣がん、またはこれらの組合せが挙げられる。上皮腫瘍(がん)の他の例としては、これだけに限定されないが、癌腫、腺癌、またはこれらの組合せが挙げられる。ある場合では、がんは、卵巣がんである。別の場合では、がんは、前立腺がんである。別の場合では、がんは、癌腫である。癌腫の非限定的な例としては、これだけに限定されないが、腎細胞癌(RCC)または転移性腎細胞癌が挙げられる。
【0175】
評価は、例えば、対象から得た生体試料を試験することなど、客観的手段に基づいて実施することができる。評価の別の型は下に記載されている。評価はまた、対象の症状の特徴付けなどの主観的手段に基づいて実施することもできる。
【0176】
本開示の一態様は、生体試料中の循環ヘプシンの存在を同定する方法であって、(a)生体試料(例えば、がんを有する疑いがあるまたはがんのリスクがある個体などの個体から得たもの)を、循環ヘプシンに選択的に結合する抗体(例えば、本明細書に記載の抗体)と接触させるステップと;(b)生体試料中に循環ヘプシンが存在するかどうかを決定する(例えば、循環ヘプシンの量が増加しているかどうかを決定する)ステップとを含む、方法を提供する。一部の実施形態では、循環ヘプシンに選択的に結合する抗体は、(1)可変重鎖CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3;ならびに/または(2)可変軽鎖CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含み、ここで、CDR-H1は、配列番号16、18、および19のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含み、CDR-H2は、配列番号11、13、および14のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含み、およびCDR-H3は、配列番号6、8、および9のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含み、CDR-L1は、配列番号17および20のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含み、CDR-L2は、配列番号12および15のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含み、CDR-L3は、配列番号7および10のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含む。一部の実施形態では、循環ヘプシンに選択的に結合する抗体は、(1)配列番号1~3のうちのいずれか1つから選択される可変重鎖CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3;ならびに/または(2)配列番号4~5のうちのいずれか1つから選択される可変軽鎖CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含み、ここで、CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3は、Chothia番号付け、Martin番号付け、Kabat番号付け、AHo番号付け、またはIMGT番号付けによって定義され、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3は、Chothia番号付け、Martin番号付け、Kabat番号付け、AHo番号付け、またはIMGT番号付けによって定義される。
【0177】
「生体試料」は、本明細書で使用される場合、これだけに限定されないが、生きているものまたは以前は生きていたもの、例えば、ヒト、マウス、ラット、サル、イヌ、ウサギ、および他の動物由来の任意の数量の物質を包含する。そのような試料としては、これだけに限定されないが、血液(または非組織)試料(例えば、全血、血清、尿など)、細胞、器官、組織、およびこれらの組合せが挙げられる。一部の場合では、生体試料を、本明細書に記載の診断方法に使用する前に処理または改変する。例えば、採取された血液試料および血清にヘパリンを添加する。試料が組織試料である場合、本明細書に記載の診断方法に使用する前に、組織周囲の流体を使用のために採取することができる、または、組織試料を緩衝化溶液中でホモジナイズすることができる。
【0178】
これだけに限定されないが、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ELISPOT、免疫組織化学(IHC)、マルチプレックスおよび/またはマイクロ流体プラットフォーム用のマイクロビーズへの抗体適応を含めた任意の適切なアッセイを記載の診断方法に利用することができる。
【0179】
ある態様では、循環ヘプシンに結合する、検出可能に標識された抗体は、試料中の循環ヘプシンの検出に有用である。したがって、一部の実施形態では、循環ヘプシン検出可能部分に結合する抗体は、蛍光標識、酵素、コロイド状金属、磁気粒子、およびラテックスビーズからなる群より選択される。
【0180】
ある態様では、循環ヘプシンの検出はポイントオブケア分析をもたらすラテラルフローアッセイデバイスを使用して達成することができる。ある特定の場合では、ラテラルフローアッセイの使用により、試料中の循環ヘプシンの効果的な検出がもたらされる。ある特定の場合では、ラテラルフローアッセイデバイスは、試料などの流体を受け取る任意のデバイスを指し、これは、側方に配置された流体輸送路または流路を含み、それに沿って、種々の試薬(例えば、循環ヘプシンに結合する抗体)を支持するための様々な部位または帯域が提供され、そこを試料が毛管力または他の適用された力の影響下で横断する。当該デバイスにおいて、少なくとも1つの目的の分析物を検出するためのラテラルフローアッセイが行われる。例えば、一部の実施形態では、試料を、循環ヘプシンに結合する検出可能な抗体を含む第1の帯域と、循環ヘプシンに結合した検出可能な抗体を検出するための第2の帯域とを有する膜にローディングし、そこで、毛管力により試料が第1の帯域の検出可能な抗体および第2の帯域と接触する。試料が循環ヘプシンを含む場合、第1の帯域の検出可能な抗体が循環ヘプシンに結合し、第2の帯域において検出される。したがって、本明細書に記載の循環ヘプシンに結合する抗体を含むラテラルフローアッセイデバイスまたは組成物が本発明でさらに提供される。循環ヘプシンを検出する方法における使用のためのラテラルフローアッセイデバイスまたは組成物であって、循環ヘプシンに結合する抗体を含むラテラルフローアッセイデバイスまたは組成物も提供される。ある特定の実施形態では、方法は、循環ヘプシンに結合する抗体を試料と接触させるステップと、循環ヘプシンに結合した抗体の存在を検出するステップとを含む。ある特定の場合では、本明細書に記載の循環ヘプシンに結合する抗体の利点により、ラテラルフローアッセイデバイスまたは組成物による試料中の循環ヘプシンの効果的な検出が可能になる。一部の実施形態では、ラテラルフローアッセイデバイスまたは組成物は、50ng/mLよりも高い、100ng/mLよりも高い、200ng/mLよりも高い、300ng/mLよりも高い、500ng/mLまたはそれを超える検出限界がもたらされるように構成される。
【0181】
そのような診断方法の一部では、方法は、対象(例えば、がんの疑いがあるまたはがんのリスクがある対象)におけるがんの存在またはがんを発症するリスクを同定するステップをさらに含む。そのような診断方法の一部では、方法は、対象(例えば、再発のリスクの疑いがある対象)におけるがんの再発のリスクを同定するステップをさらに含む。そのような診断方法の一部では、方法は、個体(例えば、再発のリスクの疑いがある個体)におけるがんの転移のリスクを同定するステップをさらに含む。
【0182】
本明細書に記載の診断方法を使用して検出されるがんは、上皮がんを含む。本明細書に記載の方法を使用して診断される上皮がんとしては、これだけに限定されないが、卵巣がん、前立腺がん、癌腫、またはこれらの組合せが挙げられる。ある場合では、がんは、卵巣がんである。別の場合では、がんは、前立腺がんである。別の場合では、がんは、癌腫である。癌腫の非限定的な例としては、これだけに限定されないが、腎細胞癌(RCC)または転移性腎細胞癌が挙げられる。
【0183】
処置方法
本開示の一態様は、循環ヘプシンのレベルの上昇に関連する障害の処置に関する。本発明の方法で処置される「個体」または「対象」は、哺乳動物、より好ましくは、ヒトであり得る。哺乳動物には、これだけに限定されないが、霊長類、ウマ、ウシ、アルパカ、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、およびラットを含めた家畜、競技動物、および愛玩動物も含まれるが、これだけに限定されない。「それを必要とする対象」は、循環ヘプシンのレベルの上昇に関連する障害に罹患している可能性があることが理解されよう。
【0184】
本明細書で使用される場合、本明細書に記載の医薬組成物の「治療有効投薬量」または「治療有効量」は、対象において有益なまたは所望の結果をもたらすために十分な量である。有益なまたは所望の結果としては、例えば、障害の生化学的、組織学的および/または行動の症状、その合併症ならびに障害の発生の間に存在する中間の病理学的表現型を含め、障害の重症度を低下させるまたは障害の増悪を遅延させるという結果が挙げられる。
【0185】
臨床的状況において理解される通り、医薬組成物の有効投薬量は、別の薬物、化合物、または医薬組成物と併せて達成される場合もあり、そうでない場合もある。したがって、「有効投薬量」は、1種または複数種の治療剤を投与する状況で考慮される場合があり、単一の薬剤は、1つまたは複数の他の薬剤と併せて望ましい結果が達成され得るまたは達成される場合に、有効量でもたらされると考えられ得る。したがって、一部の場合では、1種または複数種の治療剤が対象に投与され得る。他の場合では、本明細書に記載の医薬組成物を用いた処置は、本明細書に記載の1つまたは複数の他の処置モダリティの前に、またはその後に行われる。
【0186】
抗ヘプシン抗体の種々の製剤を投与のために使用することができる。一部の実施形態では、抗ヘプシン抗体をそのままで投与することができる。一部の実施形態では、抗ヘプシン抗体と薬学的に許容される賦形剤を種々の製剤中にあり得る。薬学的に許容される賦形剤は、当技術分野で公知であり、それらとして、薬理学的に効果的な物質の投与を容易にする比較的不活性な物質が挙げられる。例えば、賦形剤は、形態もしくはコンシステンシーをもたらす、または希釈剤として作用するものであり得る。適切な賦形剤としては、これだけに限定されないが、安定化剤、湿潤剤および乳化剤、容量オスモル濃度を変動させるための塩、封入剤、緩衝液、および皮膚透過増強物質が挙げられる。非経口薬物送達および注射によらない薬物送達のための賦形剤ならびに製剤は、Remington, The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed. Mack Publishing (2000)に記載されている。
【0187】
抗体は、任意の適切な手段によって投与するために製剤化することができる。特定の投薬量レジメン、すなわち、用量、タイミングおよび反復は、特定の個体およびその個体の病歴に依存する。一部の場合では、これらの抗体を注射(例えば、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内など)による投与用に製剤化する。したがって、これらの抗体を、例えば、食塩水、リンゲル液、ブドウ糖溶液などの薬学的に許容されるビヒクルと組み合わせることができる。他の場合では、抗体を吸入によって投与することもできる。
【0188】
一般に、抗ヘプシン抗体の投与に関して、最初の投薬量は、約2mg/kgであり得る。本発明の目的に関しては、典型的な1日の投薬量は、上記の因子に応じて、最大3μg/kg、最大約30μg/kg、最大約300μg/kg、最大約3mg/kg、最大30mg/kg、最大100mg/kgまたはそれよりも多く、またはその間の任意の整数であり得る。例えば、約1mg/kg、約2.5mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、または約25mg/kgという投薬量を使用することができる。数日間またはそれよりも長くにわたる反復投与に関しては、状態に応じて、症状の所望の抑制が生じるまで、または例えば、疼痛を軽減するための十分な治療レベルが達成されるまで、処置を持続する。例示的な投薬レジメンは、約2mg/kgの初回用量を投与し、その後、約1mg/kgの抗ヘプシン抗体という維持用量を週に1回投与するか、または、その後、約1mg/kgの維持用量を隔週で投与することを含む。
【0189】
しかし、実施者が達成を望む薬物動態的減衰のパターンに応じて、他の投薬量レジメンも有用であり得る。例えば、一部の実施形態では、1週間に1~4回の投薬が意図されている。この治療の進行は、従来の技法およびアッセイによって容易にモニタリングされる。投薬レジメンは経時的に変動し得る。抗ヘプシン抗体の適当な投薬量は、使用される抗ヘプシン抗体、処置されるがんの型およびステージ、以前の外科手術および/または治療、対象の抗体に対する臨床歴および応答、ならびに主治医の自由裁量に依存する。一般には、臨床医は、抗ヘプシン抗体を、所望の結果が達成される投薬量が達するまで投与する。用量および/または頻度は、処置の経過にわたって変動し得る。
【0190】
半減期などの経験的検討事項が一般に投薬量の決定に寄与する。例えば、抗体の半減期を延長するため、および抗体が宿主の免疫系によって攻撃されることを防ぐために、ヒト化抗体または完全ヒト抗体などの、ヒト免疫系に適合する抗体を使用することができる。
【0191】
治療の経過にわたって投与の頻度を決定および調整することができる。あるいは、抗ヘプシン抗体の持続的な連続的放出製剤も適し得る。持続的放出を達成するための種々の製剤およびデバイスが当技術分野で公知である。抗ヘプシン抗体の有効性を評価するために、疾患の指標が追跡され得る。
【0192】
処置は、例えば、1つまたは複数の症状の約2分の1、約3分の1、約4分の1、約5分の1、約10分の1、約20分の1、約50分の1、またはこれらの間の任意の倍率の低減を含む。同様に、処置は、1つまたは複数の症状の約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約99%、100%、またはこれらの間の任意のパーセンテージの低減を含み得る。
【0193】
本開示の一態様は、循環ヘプシンのレベルの上昇に関連する障害の処置を必要とする対象において上記障害を処置する方法であって、対象に、本明細書に記載の循環ヘプシンに選択的に結合する抗体を投与するステップを含む、方法に関する。
【0194】
本開示の別の態様は、高ヘプシン血症の処置を必要とする対象において高ヘプシン血症を処置する方法であって、対象に、本明細書に記載の循環ヘプシンに選択的に結合する抗体を投与するステップを含む、方法に関する。一部の実施形態では、循環ヘプシンに選択的に結合する抗体は、(1)可変重鎖CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3;ならびに/または(2)可変軽鎖CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含み、ここで、CDR-H1は、配列番号16、18、および19のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含み、CDR-H2は、配列番号11、13、および14のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含み、およびCDR-H3は、配列番号6、8、および9のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含み、CDR-L1は、配列番号17および20のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含み、CDR-L2は、配列番号12および15のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含み、CDR-L3は、配列番号7および10のうちのいずれか1つから選択される再構築されたポリペプチドコンセンサス配列を含む。一部の実施形態では、循環ヘプシンに選択的に結合する抗体は、(1)配列番号1~3のうちのいずれか1つから選択される可変重鎖CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3;ならびに/または(2)配列番号4~5のうちのいずれか1つから選択される可変軽鎖CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含み、ここで、CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3は、Chothia番号付け、Martin番号付け、Kabat番号付け、AHo番号付け、またはIMGT番号付けによって定義され、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3は、Chothia番号付け、Martin番号付け、Kabat番号付け、AHo番号付け、またはIMGT番号付けによって定義される。
【0195】
処置は障害の1つまたは複数の症状が部分的にまたは完全に消散するまで継続される。
【0196】
例示的な配列
可変重鎖、可変軽鎖、およびそれらの対応するCDRの例示的なアミノ酸配列および核酸配列を以下に提示する。
表1に可変重鎖(VH)の例示的なアミノ酸配列および可変軽鎖(VL)の例示的なアミノ酸配列を列挙する。
【表1】
以下の表2に、可変重鎖からの相補性決定領域(CDR-H)の例示的なアミノ酸配列および可変軽鎖からの相補性決定領域(CDR-L)の例示的なアミノ酸配列を列挙する。
【表2】
以下の表3に、可変重鎖(VH)の例示的な核酸配列および可変軽鎖(VL)の例示的な核酸配列を列挙する。
【表3-1】
【表3-2】
以下の表4に可変重鎖からの相補性決定領域(CDR-H)の例示的な核酸配列および可変軽鎖からの相補性決定領域(CDR-L)の例示的な核酸配列を列挙する。対応する単離された核酸配列上の開始および終止位置が示されている。
【表4】
表5に、例示的な重鎖アミノ酸配列と軽鎖アミノ酸配列の対合を列挙する。
【表5】
表6に例示的な重鎖核酸配列と軽鎖核酸配列の対合を列挙する。
【表6】
配列番号41:ネイティブ野生型ヒトヘプシン
【化1】
配列番号42:元の組換えヘプシンポリヌクレオチド配列;C末端hisタグが精製のために含められている。
【化2】
配列番号43:元の組換えヘプシンアミノ酸配列;C末端hisタグが精製のために含められている。
【化3】
配列番号44:下線が引かれたトロンビン切断部位およびイタリック体で示されているC末端6×-hisタグを有する組換えヘプシンタンパク質。
【化4】
配列番号45:下線が引かれたFLAGタグおよびイタリック体で示されているリンカーを有するヘプシン。
【化5】
オレンジ色で示されている残基は、挿入されたリンカーを表し、赤色で示されている残基は、Flagタグを表す。
配列番号46:下線が引かれたトロンビン切断部位、イタリック体で示されているリンカー、および、下線が引かれ、イタリック体で示されているFLAGタグを有するヘプシン。
【化6】
緑色で示されている残基は、挿入されたトロンビン切断部位を表し、オレンジ色で示されている残基は、挿入されたリンカーを表し、赤色で示されている残基は、Flagタグを表す。
配列番号47:6×-ヒスチジン-タグ
【化7】
配列番号48:Flagタグ、リンカーおよびgLUCシグナル配列を有する細胞外ドメイン(ECD)。
【化8】
下線が引かれ、イタリック体で示されている残基はFlagタグを示し、イタリック体で示されている残基は挿入されたリンカーを示し、下線が引かれている残基はgLUCシグナル配列を示す。
【実施例】
【0197】
本出願は、本出願の例示的な実施形態として提示される以下の非限定的な実施例を参照することによってよりよく理解することができる。以下の実施例は、実施形態をより詳細に例示するために示されるものであり、本出願の広い範囲を限定するものとは決して解釈されるべきではない。
【0198】
(実施例1)
ハイブリドーマの樹立
配列番号43のアミノ酸配列を有する、Hisタグを付した組換えヘプシンタンパク質をE.coli系で発現させ、精製した。上記の発現させたタンパク質を使用してハイブリドーマを生成した。
【0199】
雌BALB/cマウスを、21日毎に、完全フロイントアジュバント中、マウス当たり25μgの組換えヘプシン(配列番号43)(一次免疫;125μLおよびその後の追加免疫)、不完全フロイントアジュバント中、免疫原25μg(最大5回までの注射、最大注射体積125μL)を腹腔内に用いて免疫化した後、標準の技法を使用して、モノクローナル抗体である2H2および5B8を産生するマウス起源のハイブリドーマを調製した。脾細胞を単離し、PEG-1500融合技法の技法を使用してハイブリドーマを調製した。
【0200】
次いで、得られた抗体を、卵巣がん患者由来の腹水に対して、ネイティブ循環(排出)ヘプシンタンパク質の認識についてスクリーニングした(データは示していない)。
【0201】
次いで、得られた抗体を、実現性のある標準曲線を生じさせるそれらの能力について、上述のE.coliにより産生された組換えタンパク質を標準タンパク質として使用し、2重決定因子(1)イムノアッセイ(「サンドイッチELISA」)によってさらにスクリーニングした。
【0202】
ヘプシンの細胞表面自己活性化を模倣するため、および保管半減期を増大させるために、トロンビン切断部位を付加することにより、細胞外領域(381アミノ酸)を有する追加的な組換えヘプシンタンパク質を作出した(配列番号44)。
【0203】
配列番号44をトロンビンで活性化した後、活性化された組換えヘプシンを使用して、mAb 2H2およびmAb 5B8をサンドイッチELISAによって再スクリーニングし、同様に実現性のある標準曲線が生じた(
図1Aおよび1Bを参照されたい)。
【表7】
【0204】
このスクリーニングにより、抗体mAb 2H2およびmAb 5B8が、活性化された可溶性C末端細胞外循環ヘプシンに特異的に結合することができ、全長チモーゲンには結合しないことが確認された。
【0205】
(実施例2)
特異性を決定するためのスクリーニング
ヘプシンの細胞外部分のC末端がトリプシン様セリンプロテアーゼファミリーの他のメンバーに対する相同性を示すことを考慮して、抗体を組換えセリンプロテアーゼのパネルに対してELISAアッセイを使用してスクリーニングした。
【0206】
複数のセリンプロテアーゼおよび1種のマトリックスメタロプロテイナーゼをヘプシンELISAアッセイでアッセイして、これらのうちのいずれかがヘプシンアッセイと交差反応するかどうかを決定した。アッセイしたタンパク質は組換えタンパク質であった。セリンプロテアーゼであるマトリプターゼ、KLK6、KLK7、およびKLK8は280ng/mlでアッセイし、一方、マトリックスメタロプロテイナーゼであるMMP-7は32ng/mlでアッセイした。各タンパク質を8ウェルでアッセイした。各タンパク質で記録された平均レベルはヘプシンアッセイの10ng/mlの感度を下回った。表8を参照されたい。
【表8-1】
【表8-2】
【0207】
データから、抗体がヘプシンの細胞外部分のC末端に対して特異的であり、トリプシン様セリンプロテアーゼファミリーの他のメンバーとは交差反応しないことが実証された。
【0208】
(実施例3)
結合親和性の評価
結合親和性をin vitroで決定するために、サンドイッチELISAを使用して、ヘプシンを過剰発現するかまたはヘプシンがノックダウンされるように操作したヒト前立腺がん細胞溶解物であるLNCaP中に存在する循環ヘプシンレベルを分析した(表9)。ヘプシンを過剰発現する細胞溶解物またはヘプシンが枯渇した(ノックダウン)細胞溶解物、およびベクター対照を使用した。最後に、細胞表面の活性化ヘプシンに対する抗体結合親和性は、野生型(wt)ヘプシンを過剰発現するHEK-293T細胞を使用したmAb 2H2およびmAb 5B8それぞれのフローサイトメトリーによって実施した。
【表9】
【0209】
(実施例4)
細胞外ヘプシンの検出
本実施例では、ヘプシンの細胞外領域に特異的に結合する本明細書に記載の抗体または抗原結合性断片を利用して細胞外ヘプシンを検出し、がんを有する対象の診断を行うためのin vitroアッセイを記載する。
【0210】
本実施例では、既存の公的に入手可能な遺伝子発現データセット(2つのデータセット、326の患者試料)を再解析し、それにより、腫瘍組織において良性組織と比べてヘプシン遺伝子発現が有意にアップレギュレーションされ、そしてアンドロゲン依存性転移性病変およびアンドロゲン非依存性転移性病変におけるヘプシンのアップレギュレーションがさらに顕著であることが明らかになった。ヘプシン過剰発現とアンドロゲン非依存性の潜在的相関をさらに調査するために、LNCaP親とアンドロゲン非依存性LNCaPサブクローンを比較したin vitroデータを再解析した。この解析により、アンドロゲン欠乏の経過にわたってヘプシン発現が段階的に増大し、同時にPSA発現の低減が伴うことが明らかになった。最後に、患者血清中に存在するので、循環ヘプシンタンパク質レベルを評価するために、前立腺がんの疑いがある合計424名の対象について、2015年から2018年まで、生検時に循環ヘプシンレベルを分析し、研究終了まで再発または生存について追跡調査した。酵素結合免疫吸着検定法によって決定される場合、血清ヘプシンレベルは89%の特異度をもたらした(グリーソン<6(3+3);ヘプシン陽性、>100ng/mL)。このコホート内で、38名の患者が生化学的再発を示し、そのうち44%がヘプシン陽性であり、ヘプシン陰性患者と比べて再発までの臨床病理が22カ月加速された。集合的に、これらの結果から、転移性前立腺がんを含めた前立腺がんの設定における循環ヘプシンレベルの縦断的な診断上の使用が強調される。
【0211】
例示的なアッセイプロトコール
前立腺がん、卵巣がん、癌腫(例えば、腎細胞癌)、それらの転移(例えば、転移性前立腺がん、転移性卵巣がん、転移性腎細胞癌などの転移性癌)、またはこれらの組合せを有する疑いがある対象から生体試料を得る。
【0212】
生体試料を必要に応じて処理した後にアッセイに使用する。次いで、試料を、例えば、ELISAアッセイ、ELISPOT、免疫組織化学、または、マルチプレックスおよび/もしくはマイクロ流体プラットフォーム用のマイクロビーズへの抗体適応を使用して試験する。一実施例では、mAb 2H2a、mAb 2H2b、またはmAb 5B8を用いた場合の結果を、対照抗体を含有する対照および/または試料を欠く対照と比較する。
【0213】
結果を得、抗体の結合が検出された場合にがんを検出する。
【0214】
本出願のある特定の実施形態が本明細書において示され、記載されているが、そのような実施形態が単に例として提供されていることは明白になろう。当業者は、実施形態から逸脱することなく、多数の変形、変化、および置換を思いつくことができる。本明細書に記載の実施形態の種々の代替を本明細書に記載の方法の実施に使用することができることが理解されるべきである。
【配列表】
【国際調査報告】