(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-29
(54)【発明の名称】軟骨細胞、細胞外マトリックス、関節軟骨及び関節炎の表現型の恒常性を調節するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20230322BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230322BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230322BHJP
A61K 36/9062 20060101ALI20230322BHJP
A61K 36/575 20060101ALI20230322BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20230322BHJP
C07C 39/19 20060101ALN20230322BHJP
C07C 69/16 20060101ALN20230322BHJP
【FI】
A23L33/105
A61P19/02 ZNA
A61P43/00 121
A61K36/9062
A61K36/575
A61K36/185
C07C39/19
C07C69/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547919
(86)(22)【出願日】2021-02-07
(85)【翻訳文提出日】2022-10-04
(86)【国際出願番号】 US2021016981
(87)【国際公開番号】W WO2021159042
(87)【国際公開日】2021-08-12
(32)【優先日】2020-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521158428
【氏名又は名称】ユニゲン・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イマム,メスフィン
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ,ピン
(72)【発明者】
【氏名】ホーム,テレサ
(72)【発明者】
【氏名】ホン,メイ
(72)【発明者】
【氏名】オニール,アレクサンドリア
(72)【発明者】
【氏名】ジア,チイ
【テーマコード(参考)】
4B018
4C088
4H006
【Fターム(参考)】
4B018MD15
4B018ME14
4C088AB12
4C088AB65
4C088AB81
4C088AC01
4C088BA09
4C088BA10
4C088BA11
4C088BA13
4C088BA19
4C088CA05
4C088CA06
4C088CA08
4C088CA10
4C088MA07
4C088MA52
4C088MA55
4C088NA05
4C088ZA96
4C088ZC75
4H006AA03
4H006AB20
4H006KC12
4H006KD10
(57)【要約】
本願に開示するのは、アルピニア、マグノリア、コキア及びピペル/ペッパーに由来する薬用植物抽出物とその生理活性成分であり、軟骨細胞、細胞外マトリックス、関節軟骨及び関節炎の表現型の恒常性を調節するのに併用又は単独で使用され、軟骨細胞の同化機能の増強、細胞外マトリックスと関節軟骨の再生/再建/再分化の増強、及び変形性関節症と関節リウマチの表現型の改善をもたらす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上のフェニルプロパノイドを高濃度化したアルピニア(Alpinia)抽出物と、1種以上のビスフェノール性リグナンを高濃度化したマグノリア(Magnolia)抽出物と、1種以上のトリテルペノイドサポニンを高濃度化したコキア(Kochia)抽出物との組み合わせを含む、関節健康用組成物。
【請求項2】
前記組成物における前記アルピニア抽出物、又はマグノリア抽出物、又はコキア抽出物が、各抽出物につき1重量%~98重量%の範囲であり、アルピニア:マグノリア:コキア(AMK)の最適重量比が、2:4:3(22.2%:44.4%:33.3%)又は4:3:3(40%:30%:30%)又は5:4:4(38.4%:30.8%:30.8%)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アルピニア抽出物が、アルピニア・ガランガ(Alpinia galanga)に由来し、前記マグノリア抽出物が、マグノリア・オフィシナリス(Magnolia officinalis)に由来し、前記コキア抽出物が、コキア・スコパリア(Kochia scoparia)に由来する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記アルピニア抽出物が、0.01%~99.9%のフェニルプロパノイドを含有している、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記マグノリアマグノリア抽出物が、0.01%~99.9%のビスフェノール性リグナンを含有している、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記コキア抽出物が、0.01%~99.9%のトリテルペノイドサポニンを含有している、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記アルピニア抽出物に由来する前記1種以上のフェニルプロパノイドが、1’-アセトキシチャビコールアセテート、若しくはガランガルアセテート、若しくはp-ヒドロキシシンナムアルデヒド、又は3,5-ジヒドロキシスチルベン、又は任意のそれらの組み合わせである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記マグノリア抽出物に由来する前記1種以上のビスフェノール性リグナンが、マグノロール若しくはホノキオール又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記コキア抽出物に由来する前記1種以上のトリテルペノイドサポニンが、バッシアサポニンA、若しくはバッシアサポニンB、若しくはコキオシドA、若しくはコキオシドB、若しくはコキオシドC、若しくはコキアノシドI、若しくはスコパリアノシドA、若しくはスコパリアノシドB、若しくはスコパリアノシドC、若しくはモモルジンIc、若しくはコキアノシドI、若しくはコキアノシドII、若しくはコキアノシドIII、若しくはコキアノシドIV、若しくは2’-O-グルコピラノシルモモルジンIc、若しくは2’-O-グルコピラノシルモモルジンIIc、又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記フェニルプロパノイドが、アルピニア・ガランガ(Alpinia galanga)、アルピニア・オフィシナルム(Alpinia officinarum)、ボエセンベルギア・ロツンダ(Boesenbergia rotunda)、ケンフェリア・ガランガ(Kaempferia galanga)、アルピニア・オキシフィラ(Alpinia oxyphylla)、アルピニア・アブンディフローラ(Alpinia abundiflora)、アルピニア・アクロスタキヤ(Alpinia acrostachya)、アルピニア・カエルレア(Alpinia caerulea)、アルピニア・カルカラータ(Alpinia calcarata)、アルピニア・コンキゲラ(Alpinia conchigera)、アルピニア・グロボサ(Alpinia globosa)、アルピニア・ジャバニカ(Alpinia javanica)、アルピニア・メラノカルパ(Alpinia melanocarpa)、アルピニア・ムチカ(Alpinia mutica)、アルピニア・ニグラ(Alpinia nigra)、アルピニア・ヌタンス(Alpinia nutans)、アルピニア・ペティオラレ(Alpinia petiolate)、アルピニア・プルプラタ(Alpinia purpurata)、アルピニア・ピラミダタ(Alpinia pyramidata)、アルピニア・ラフレシアナ(Alpinia rafflesiana)、アルピニア・スペシオサ(Alpinia speciosa)、アルピニア・ヴィッタータ(Alpinia vittata)、アルピニア・ゼルムベト(Alpinia zerumbet)、アルピニア・ジンジベリナ(Alpinia zingiberina)、又はそれらの組み合わせから構成される群から選択される植物種に由来し、高濃度化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記ビスフェノール性リグナンが、マグノリア・オフィシナリス(Magnolia officinalis)、マグノリア・アクミナータ(Magnolia acuminate)、マグノリア・ビオンディ(Magnolia biondii)、マグノリア・ココ(Magnolia coco)、マグノリア・デヌダータ(Magnolia denudate)、マグノリア・ファルゲシ(Magnolia fargesii)、マグノリア・ガレッティ(Magnolia garrettii)、マグノリア・グランディフローラ(Magnolia grandiflora)、マグノリア・ヘンリイ(Magnolia henryi)、マグノリア・リリフローラ(Magnolia liliflora)、マグノリア・カチラチライ(Magnolia kachirachirai)、マグノリア・コブス(Magnolia Kobus)、マグノリア・オボバータ(Magnolia obovata)、マグノリア・プラエコシッシマ(Magnolia praecocissima)、マグノリア・プテロカルパ(Magnolia pterocarpa)、マグノリア・ピラミダタ(Magnolia pyramidata)、マグノリア・ロストラータ(Magnolia rostrate)、マグノリア・サリシフォリア(Magnolia salicifolia)、マグノリア・シーボルディ(Magnolia sieboldii)、マグノリア・スーランジアナ(Magnolia soulangeana)、マグノリア・ステラータ(Magnolia stellate)、マグノリア・ヴィルジニアーナ(Magnolia virginiana)、カバノキリグニンの分解物、アカンサス・エブラクテアタス(Acanthus ebracteatus)、アプトシマム・スピネッセンス(Aptosimum spinescens)、アラリア・ビピナータ(Aralia bipinnata)、アラウカリア・アングスティフォリア(Araucaria angustifolia)、アラウカリア・アラウカーナ(Araucaria araucana)、アルテメシア・アブシンシューム(Artemisia absinthium)、ハプロフィラム・アクチフォリウム(Haplophyllum acutifolium)、ハプロフィラム・パーフォラタム(Haplophyllum perforatum)、リリオデンドロン・チューリピフェラ(Liriodendron tulipifera)、クラメリア・シスチソイデス(Krameria cystisoides)、ペリラ・フルテッセンス(Perilla frutescens)、ローソニア・イネルミス(Lawsonia inermis)、ミリスチカ・フラグランス(Myristica fragrans)(ナツメグ)、パラクメリア・ユンナネンシス(Parakmeria yunnanensiss)(好ましい属名はマグノリア(Magnolia))、パーシー・ジャポニカ(Persea japonica)、ピペル・フウトウカズラ(Piper futokadsura)、ピペル・ワイティ(Piper wightii)、ロリニア・ムコサ(Rollinia mucosa)、サッサフラス・ランダイエンセ(Sassafras randaiense)、スクロフラリア・アルビダ-コルシカ(Scrophularia albida-colchica)、ステレラ・カマエヤスメ(Stellera chamaejasme)、シリンガ・ヴェルチナ(Syringa velutina)、シジギウム・クミニ(Syzygium cumini)、タラウマ・グロリエンシス(Talauma gloriensis)、ヴィローラ・エロンガータ(Virola elongate)、ウルバノデンドロン・ベルコーサム(Urbanodendron verrucosum)、ウィクストロエミア・シコキアーナ(Wikstroemia sikokiana)又はそれらの組み合わせから構成される群から選択される植物種に由来し、高濃度化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記トリテルペノイドサポニンが、コキア・スコパリア(Kochia scoparia)、バッシア・スコパリア(Bassia scoparia)、バッシア・アングスティフォリア(Bassia angustifolia)、モモルディカ・コキンキネンシス(Momordica cochinchinensis)、バッシア・ディンテリ(Bassia dinteri)、バッシア・エリオフォラ(Bassia eriophora)、バッシア・ヒッソピフォリア(Bassia hyssopifolia)、バッシア・インディカ(Bassia indica)、バッシア・ラニフローラ(Bassia laniflora)、バッシア・ラシアンサ(Bassia lasiantha)、バッシア・リットレア(Bassia littorea)、バッシア・ムリカタ(Bassia muricata)、バッシア・オドントプテラ(Bassia odontoptera)、バッシア・ピロサ(Bassia pilosa)、バッシア・プロスタラタ(Bassia prostrata)、バッシア・サルソロイデス(Bassia salsoloides)、バッシア・ステラリス(Bassia stellaris)、バッシア・ティアンスカニカ(Bassia tianschanica)、バッシア・トメントサ(Bassia tomentosa)、バッシア・ヴィロシッシマ(Bassia villosissima)又はそれらの組み合わせから構成される群から選択される植物種に由来し、高濃度化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記フェニルプロパノイド、ビスフェノール性リグナン、及びトリテルペノイドサポニンが、葉、樹皮、幹、幹樹皮、茎、茎樹皮、小枝、塊茎、根、根茎、根樹皮、樹皮表層、新梢、種子、果実、雄蕊群、雌蘂群、萼、雄蕊、花弁、萼片、心皮(雌蘂)、花、又は任意のそれらの組み合わせから構成される群から選択される植物部分に由来し、高濃度化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物における前記アルピニア抽出物、前記マグノリア抽出物及び前記コキア抽出物が、CO
2の超臨界流体、水、メタノール、エタノール、アルコール、水混合溶媒又はそれらの組み合わせを含む任意の好適な溶媒で抽出されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
1種以上のフェニルプロパノイド、1種以上のビスフェノール性リグナン、及び1種以上のトリテルペノイドサポニンが、溶媒分配、沈殿、蒸留、蒸発、又はシリカゲル、XAD、HP20、LH20、C-18、アルミナオキサイド、ポリアミド及びCG161樹脂を用いたカラムクロマトグラフィーにより個々に又は一緒に高濃度化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が、薬学的若しくは栄養薬学的に許容される活性成分、補助剤、担体、希釈剤又は賦形剤を更に含み、前記薬学的製剤又は栄養薬学的製剤が、約0.1重量パーセント(重量%)~約99.9重量%の、前記3種類の抽出物の組成物に由来する活性化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記活性成分、補助剤、賦形剤又は担体が、アサ(Cannabis sativa)種子油又はCBD/THC、ターメリック抽出物又はクルクミン、ターミナリア抽出物、ヤナギ樹皮抽出物、デビルズクロー根抽出物、カイエンペッパー抽出物又はカプサイシン、アメリカザンショウ樹皮抽出物、フィロデンドロン樹皮抽出物、ホップ抽出物、ボスウェリア(Boswellia)抽出物、マグワ(Morus alba)抽出物、アセンヤクノキ(Acacia catechu)抽出物、コガネバナ(Scutellaria baicalensis)抽出物、ローズヒップ抽出物、ローズマリー抽出物、緑茶抽出物、ソフォラ(Sophora)抽出物、ハッカ又はペパーミント抽出物、ジンジャー又はブラックジンジャー抽出物、緑茶又はブドウ種子ポリフェノール、バクチオール又はオランダビユ(Psoralea)種子抽出物、魚油、グルコサミン硫酸塩、グルコサミン塩酸塩、N-アセチルグルコサミン、コンドロイチン塩化物、コンドロイチン硫酸塩、メチルスルホニルメタン(MSM)、ヒアルロン酸、非変性又は変性コラーゲン、オメガ3又はオメガ6脂肪酸、クリルオイル、卵殻膜(ESM)、γ-リノレン酸、モエギイガイ(Perna Canaliculus)(ミドリイガイ)、SAMe、アボカド/大豆不鹸化物(ASU)抽出物、柑橘系バイオフラボノイド、アセロラ(Acerola)濃縮物、アスタキサンチン、ピクノジェノール、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB、ビタミンA、L-リジン、カルシウム、マンガン、亜鉛、アミノ酸キレートミネラル、アミノ酸、ボロン及びボロングリシネート、シリカ、プロバイオティクス、樟脳、メントール、カルシウムベースの塩、シリカ、ヒスチジン、グルコン酸銅、CMC、β-シクロデキストリン、セルロース、デキストロース、食塩水、水、油、サメ及びウシ軟骨の1種以上から選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、錠剤、ハードカプセル剤、ソフトジェルカプセル剤、散剤、粒剤、圧縮錠剤、丸剤、チューインガム剤、サシェ剤、ウエハース剤、バー剤、液剤、チンキ剤、エアゾール剤、半固形剤、半液状剤、溶液剤、乳剤、クリーム剤、ローション剤、軟膏剤、ジェル基剤等の剤形で製剤化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記投与経路が、経口、局所、坐剤、静脈内、皮内、胃内、筋肉内、腹腔内、及び静脈内から構成される群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
哺乳動物における関節健康を治療、管理、促進する方法を含み、前記方法が、前記哺乳動物の体重1kg当たり0.01mg~500mgである有効量の組成物を投与することを含む、請求項1に記載の関節健康用組成物。
【請求項21】
異化バイオマーカーであるTNF-α、IL-1β、IL-6、アグリカナーゼ、並びにマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)であるMMP13、MMP9、MMP3、MMP1、uCTX-II及びADAMTS4を低減又は制御し、哺乳動物の同化バイオマーカーであるSOX9、TGF-β1、ACAN、COL2A1及びPIIANPを増加、増強又は促進することにより、異化/同化バイオマーカー恒常性を維持する方法を含む、請求項1に記載の関節健康用組成物。
【請求項22】
軟骨恒常性を維持する方法、軟骨合成(従って、同化作用)を誘導し、かつ、分解及び破壊の異化プロセスを阻害する方法、細胞外マトリックス完全性及び関節軟骨を保護する方法、軟骨の分解を最小限にする方法、軟骨の破壊を軽減する方法、軟骨合成、軟骨再生及び軟骨再建を開始又は促進又は増強する方法、損傷した軟骨を修復する方法、関節組織の細胞外マトリックスを維持、再建及び修復する方法、関節構造を再活性化する方法、関節への安定した血流を維持する方法、軟骨完全性を保護することにより関節健康を促進する方法、同化プロセスと異化プロセスとの平衡を保つ方法、哺乳動物における関節潤滑のために滑液を維持する方法、哺乳動物の関節健康に影響を与える酵素及び炎症性サイトカインの作用を減少させる方法を含む、請求項1に記載の関節健康用組成物。
【請求項23】
関節運動若しくは身体機能を改善する方法、高齢期における関節健康及び可動性を維持する方法、関節快適性を支援、保護若しくは促進する方法、関節痛を軽減する方法、関節摩擦を低減する方法、関節こわばりを軽減する方法、関節可動域若しくは柔軟性を改善する方法、可動性を促進する方法、炎症を低減する方法、酸化ストレスを低減する方法、関節摩損を低減及び保護する方法、変形性関節症若しくは関節リウマチを管理若しくは治療する方法、変形性関節症若しくは関節リウマチを予防する方法、又は変形性関節症若しくは関節リウマチの進行を逆転する方法;哺乳動物の若年性関節リウマチ、スティル病、乾癬性関節炎、反応性関節炎、敗血症性関節炎、ライター症候群、ベーチェット症候群、又はフェルティ症候群等を予防及び治療する方法を含む、請求項1に記載の関節健康用組成物。
【請求項24】
1種以上のフェニルプロパノイドを高濃度化したアルピニア(Alpinia)抽出物と、1種以上のアルカロイドを高濃度化したピペル(Piper)抽出物との組み合わせを含む、関節健康用組成物。
【請求項25】
前記組成物における前記アルピニア抽出物及び前記ピペル抽出物が、99:1~1:99の重量比である、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記アルピニア抽出物が、アルピニア・ガランガ(Alpinia galanga)に由来し、前記ピペル抽出物が、ピペル・ニグルム(Piper nigrum)に由来する、請求項24に記載の組成物。
【請求項27】
前記アルピニア抽出物が、0.01%~99.9%のフェニルプロパノイドを含有している、請求項24に記載の組成物。
【請求項28】
前記ピペル抽出物が、0.01%~99.9%のアルカロイドを含有している、請求項24に記載の組成物。
【請求項29】
前記アルピニア抽出物に由来する前記1種以上のフェニルプロパノイドが、1’-アセトキシチャビコールアセテート、若しくはガランガルアセテート、若しくはp-ヒドロキシシンナムアルデヒド、若しくは3,5-ジヒドロキシスチルベン、又は任意のそれらの組み合わせである、請求項24に記載の組成物。
【請求項30】
前記ピペル抽出物に由来する前記1種以上のピペリジンアルカロイドが、ピペリン、若しくはシャビシン、若しくはイソシャビシン、若しくはイソピペリン、若しくはクマペリン、若しくはフェルペリン、若しくはピペラニン、若しくはピペレッチン、若しくはピペルシンテナミド、若しくはピペルダルジン、若しくはピペルノナリン、若しくはピペルチピン、又はそれらの組み合わせである、請求項24に記載の組成物。
【請求項31】
前記フェニルプロパノイドが、アルピニア・ガランガ(Alpinia galanga)、アルピニア・オフィシナルム(Alpinia officinarum)、ボエセンベルギア・ロツンダ(Boesenbergia rotunda)、ケンフェリア・ガランガ(Kaempferia galanga)、アルピニア・オキシフィラ(Alpinia oxyphylla)、アルピニア・アブンディフローラ(Alpinia abundiflora)、アルピニア・アクロスタキヤ(Alpinia acrostachya)、アルピニア・カエルレア(Alpinia caerulea)、アルピニア・カルカラータ(Alpinia calcarata)、アルピニア・コンキゲラ(Alpinia conchigera)、アルピニア・グロボサ(Alpinia globosa)、アルピニア・ジャバニカ(Alpinia javanica)、アルピニア・メラノカルパ(Alpinia melanocarpa)、アルピニア・ムチカ(Alpinia mutica)、アルピニア・ニグラ(Alpinia nigra)、アルピニア・ヌタンス(Alpinia nutans)、アルピニア・ペティオラレ(Alpinia petiolate)、アルピニア・プルプラタ(Alpinia purpurata)、アルピニア・ピラミダタ(Alpinia pyramidata)、アルピニア・ラフレシアナ(Alpinia rafflesiana)、アルピニア・スペシオサ(Alpinia speciosa)、アルピニア・ヴィッタータ(Alpinia vittata)、アルピニア・ゼルムベト(Alpinia zerumbet)、アルピニア・ジンジベリナ(Alpinia zingiberina)、又はそれらの組み合わせから構成される群から選択される植物種に由来し、高濃度化されている、請求項24に記載の組成物。
【請求項32】
前記1種以上のピペリジンアルカロイドが、ピペル・ニグルム(Piper nigrum)、ピペル・ロングム(Piper longum)、ピペル・アマルゴ(Piper amalgo)、ピペル・オーランティアカム(Piper aurantiacum)、ピペル・チャバ(Piper chaba)、ピペル・カペンセ(Piper capense)、ピペル・クラッシネルビウム(Piper crassinervium)、ピペル・ギネエンセ(Piper guineense)、ピペル・メチスチカム(Piper methysticum)、ピペル・ノバエホランディアエ(Piper novae-hollandiae)、ピペル・ピープロイデス(Piper peepuloides)、ピペル・ポナペンセ(Piper ponapense)、ピペル・プベルラム(Piper puberulum)、ピペル・レトロフラクタム(Piper retrofractum)、ピペル・シンテネンセ(Piper sintenense)、ピペル・ツベルクラタム(Piper tuberculatum)、ピペル・ハンセイ(Piper hancei)、グリシン・マックス(Glycine max)、ペトロシモニア・モナンドラ(Petrosimonia monandra)、メンタ・ピペリタ(Mentha piperata)、プシロカウロン・アブシミレ(silocaulon absimile)、及びウロクラディウム属種(Ulocladium sp)又はそれらの組み合わせに由来し、高濃度化されている、請求項24に記載の組成物。
【請求項33】
前記フェニルプロパノイド及びアルカロイドが、葉、樹皮、幹、幹樹皮、茎、茎樹皮、小枝、塊茎、根、根茎、根樹皮、樹皮表層、新梢、種子、果実、雄蕊群、雌蘂群、萼、雄蕊、花弁、萼片、心皮(雌蘂)、花、又は任意のそれらの組み合わせから構成される群から選択される植物部分に由来し、高濃度化されている、請求項24に記載の組成物。
【請求項34】
前記組成物における前記アルピニア抽出物、及び前記ピペル抽出物が、CO
2の超臨界流体、水、メタノール、エタノール、アルコール、水混合溶媒又はそれらの組み合わせを含む任意の好適な溶媒で個々に又は一緒に抽出されている、請求項24に記載の組成物。
【請求項35】
1種以上のフェニルプロパノイド及び1種以上のアルカロイドが、溶媒分配、沈殿、蒸留、蒸発、又はシリカゲル、XAD、HP20、LH20、C-18、アルミナオキサイド、ポリアミド、CG161及びイオン交換樹脂を用いたカラムクロマトグラフィーにより個々に又は一緒に高濃度化されている、請求項24に記載の組成物。
【請求項36】
前記組成物が、薬学的若しくは栄養薬学的に許容される活性成分、補助剤、担体、希釈剤又は賦形剤を更に含み、前記薬学的製剤又は栄養薬学的製剤が、約0.1重量パーセント(重量%)~約99.9重量%の、アルピニア及びピペル抽出物の組成物に由来する活性化合物を含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項37】
前記活性成分又は補助剤又は賦形剤担体が、アサ(Cannabis sativa)種子油又はCBD/THC、ターメリック抽出物又はクルクミン、ターミナリア抽出物、ヤナギ樹皮抽出物、デビルズクロー根抽出物、カイエンペッパー抽出物又はカプサイシン、アメリカザンショウ樹皮抽出物、フィロデンドロン樹皮抽出物、ホップ抽出物、ボスウェリア(Boswellia)抽出物、マグワ(Morus alba)抽出物、アセンヤクノキ(Acacia catechu)抽出物、コガネバナ(Scutellaria baicalensis)抽出物、ローズヒップ抽出物、ローズマリー抽出物、緑茶抽出物、ソフォラ(Sophora)抽出物、ハッカ又はペパーミント抽出物、ジンジャー又はブラックジンジャー抽出物、緑茶又はブドウ種子ポリフェノール、バクチオール又はオランダビユ(Psoralea)種子抽出物、魚油、グルコサミン硫酸塩、グルコサミン塩酸塩、N-アセチルグルコサミン、コンドロイチン塩化物、コンドロイチン硫酸塩、メチルスルホニルメタン(MSM)、ヒアルロン酸、非変性又は変性コラーゲン、オメガ3又はオメガ6脂肪酸、クリルオイル、卵殻膜(ESM)、γ-リノレン酸、モエギイガイ(Perna Canaliculus)(ミドリイガイ)、SAMe、アボカド/大豆不鹸化物(ASU)抽出物、柑橘系バイオフラボノイド、アセロラ(Acerola)濃縮物、アスタキサンチン、ピクノジェノール、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB、ビタミンA、L-リジン、カルシウム、マンガン、亜鉛、アミノ酸キレートミネラル、アミノ酸、ボロン及びボロングリシネート、シリカ、プロバイオティクス、樟脳、メントール、カルシウムベースの塩、シリカ、ヒスチジン、グルコン酸銅、CMC、β-シクロデキストリン、セルロース、デキストロース、食塩水、水、油、サメ及びウシ軟骨の1種以上から選択される、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
前記組成物が、錠剤、ハードカプセル剤、ソフトジェルカプセル剤、散剤、粒剤、圧縮錠剤、丸剤、チューインガム剤、サシェ剤、ウエハース剤、バー剤、液剤、チンキ剤、エアゾール剤、半固形剤、半液状剤、溶液剤、乳剤、クリーム剤、ローション剤、軟膏剤、ジェル担体等の剤形で製剤化されている、請求項24に記載の組成物。
【請求項39】
前記投与経路が、経口、局所、坐剤、静脈内、皮内、胃内、筋肉内、腹腔内、及び静脈内から構成される群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項40】
哺乳動物における関節健康を治療、管理、促進する方法を含み、前記哺乳動物の体重1kg当たり0.01mg~500mgである有効量の組成物を投与することを含む、請求項24に記載の関節健康用組成物。
【請求項41】
異化バイオマーカーであるTNF-α、IL-1β、IL-6、アグリカナーゼ、並びにマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)であるMMP13、MMP9、MMP3、MMP1、uCTX-II及びADAMTS4を低減又は制御し、哺乳動物の同化バイオマーカーであるSOX9、TGF-β1、ACAN、COL2A1及びPIIANPを増強及び促進することにより、異化/同化バイオマーカー恒常性を維持する方法を含む、請求項24に記載の関節健康用組成物。
【請求項42】
軟骨恒常性を維持する方法、軟骨合成(従って、同化作用)を誘導し、かつ、分解及び破壊の異化プロセスを阻害する方法、細胞外マトリックス完全性及び関節軟骨を保護する方法、軟骨の破壊を最小限にする方法、軟骨破壊を軽減する方法、軟骨合成、軟骨再生及び軟骨再建を開始又は促進又は増強する方法、損傷した軟骨を修復する方法、関節組織の細胞外マトリックスを維持、再建及び修復する方法、関節構造を再活性化する方法、関節への安定した血流を維持する方法、軟骨完全性を保護することにより関節健康を促進する方法、同化プロセスと異化プロセスとの平衡を保つ方法、哺乳動物における関節潤滑のために滑液を維持する方法、哺乳動物の関節健康に影響を与える酵素及び炎症性サイトカインの作用を減少させる方法を含む、請求項24に記載の関節健康用組成物。
【請求項43】
関節運動若しくは身体機能を改善する方法、高齢期における関節健康及び可動性を維持する方法、関節快適性を支援、保護若しくは促進する方法、関節痛を軽減する方法、関節摩擦を低減する方法、関節こわばりを軽減する方法、関節可動域若しくは柔軟性を改善する方法、可動性を促進する方法、炎症を低減する方法、酸化ストレスを低減する方法、関節摩損を低減及び保護する方法、変形性関節症若しくは関節リウマチを管理若しくは治療する方法、変形性関節症若しくは関節リウマチを予防する方法、又は変形性関節症若しくは関節リウマチの進行を逆転する方法;哺乳動物の若年性関節リウマチ、スティル病、乾癬性関節炎、反応性関節炎、敗血症性関節炎、ライター症候群、ベーチェット症候群又はフェルティ症候群等を予防及び治療する方法を含む、請求項24に記載の関節健康用組成物。
【請求項44】
1種以上のフェニルプロパノイドを高濃度化したアルピニア(Alpinia)抽出物を含む、関節健康用組成物。
【請求項45】
前記アルピニア抽出物が、0.01%~99.9%のフェニルプロパノイドを含んでいる、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
前記アルピニア抽出物に由来する前記1種以上のフェニルプロパノイドが、1’-アセトキシチャビコールアセテート、若しくはガランガルアセテート、若しくはp-ヒドロキシシンナムアルデヒド、若しくは3,5-ジヒドロキシスチルベン、又は任意のそれらの組み合わせである、請求項44に記載の組成物。
【請求項47】
前記フェニルプロパノイドが、アルピニア・ガランガ(Alpinia galanga)、アルピニア・オフィシナルム(Alpinia officinarum)、ボエセンベルギア・ロツンダ(Boesenbergia rotunda)、ケンフェリア・ガランガ(Kaempferia galanga)、アルピニア・オキシフィラ(Alpinia oxyphylla)、アルピニア・アブンディフローラ(Alpinia abundiflora)、アルピニア・アクロスタキヤ(Alpinia acrostachya)、アルピニア・カエルレア(Alpinia caerulea)、アルピニア・カルカラータ(Alpinia calcarata)、アルピニア・コンキゲラ(Alpinia conchigera)、アルピニア・グロボサ(Alpinia globosa)、アルピニア・ジャバニカ(Alpinia javanica)、アルピニア・メラノカルパ(Alpinia melanocarpa)、アルピニア・ムチカ(Alpinia mutica)、アルピニア・ニグラ(Alpinia nigra)、アルピニア・ヌタンス(Alpinia nutans)、アルピニア・ペティオラレ(Alpinia petiolate)、アルピニア・プルプラタ(Alpinia purpurata)、アルピニア・ピラミダタ(Alpinia pyramidata)、アルピニア・ラフレシアナ(Alpinia rafflesiana)、アルピニア・スペシオサ(Alpinia speciosa)、アルピニア・ヴィッタータ(Alpinia vittata)、アルピニア・ゼルムベト(Alpinia zerumbet)、アルピニア・ジンジベリナ(Alpinia zingiberina)、又はそれらの組み合わせから構成される群から選択される植物種に由来し、高濃度化されている、請求項44に記載の組成物。
【請求項48】
前記フェニルプロパノイドが、葉、樹皮、幹、幹樹皮、茎、茎樹皮、小枝、塊茎、根、根茎、根樹皮、樹皮表層、新梢、種子、果実、雄蕊群、雌蘂群、萼、雄蕊、花弁、萼片、心皮(雌蘂)、花、又は任意のそれらの組み合わせから構成される群から選択される植物部分に由来し、高濃度化されている、請求項44に記載の組成物。
【請求項49】
前記組成物における前記アルピニア抽出物が、CO
2の超臨界流体、水、メタノール、エタノール、アルコール、水混合溶媒又はそれらの組み合わせを含む任意の好適な溶媒で抽出されている、請求項44に記載の組成物。
【請求項50】
1種以上のフェニルプロパノイドが、溶媒分配、沈殿、蒸留、蒸発、又はシリカゲル、XAD、HP20、LH20、C-18、アルミナオキサイド、ポリアミド、CG161及びイオン交換樹脂を用いたカラムクロマトグラフィーにより高濃度化されている、請求項44に記載の組成物。
【請求項51】
前記組成物が、薬学的若しくは栄養薬学的に許容される活性成分、補助剤、担体、希釈剤又は賦形剤を更に含み、前記薬学的製剤又は栄養薬学的製剤が、約0.1重量パーセント(重量%)~約99.9重量%の、前記アルピニア抽出物の組成物に由来する活性化合物を含む、請求項44に記載の組成物。
【請求項52】
前記活性成分、補助剤、賦形剤又は担体が、アサ(Cannabis sativa)種子油又はCBD/THC、ターメリック抽出物又はクルクミン、ターミナリア抽出物、ヤナギ樹皮抽出物、デビルズクロー根抽出物、カイエンペッパー抽出物又はカプサイシン、アメリカザンショウ樹皮抽出物、フィロデンドロン樹皮抽出物、ホップ抽出物、ボスウェリア(Boswellia)抽出物、マグワ(Morus alba)抽出物、アセンヤクノキ(Acacia catechu)抽出物、コガネバナ(Scutellaria baicalensis)抽出物、ローズヒップ抽出物、ローズマリー抽出物、緑茶抽出物、ソフォラ(Sophora)抽出物、ハッカ又はペパーミント抽出物、ジンジャー又はブラックジンジャー抽出物、緑茶又はブドウ種子ポリフェノール、バクチオール又はオランダビユ(Psoralea)種子抽出物、魚油、グルコサミン硫酸塩、グルコサミン塩酸塩、N-アセチルグルコサミン、コンドロイチン塩化物、コンドロイチン硫酸塩、メチルスルホニルメタン(MSM)、ヒアルロン酸、非変性又は変性コラーゲン、オメガ3又はオメガ6脂肪酸、クリルオイル、卵殻膜(ESM)、γ-リノレン酸、モエギイガイ(Perna Canaliculus)(ミドリイガイ)、SAMe、アボカド/大豆不鹸化物(ASU)抽出物、柑橘系バイオフラボノイド、アセロラ(Acerola)濃縮物、アスタキサンチン、ピクノジェノール、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB、ビタミンA、L-リジン、カルシウム、マンガン、亜鉛、アミノ酸キレートミネラル、アミノ酸、ボロン及びボロングリシネート、シリカ、プロバイオティクス、樟脳、メントール、カルシウムベースの塩、シリカ、ヒスチジン、グルコン酸銅、CMC、β-シクロデキストリン、セルロース、デキストロース、食塩水、水、油、サメ及びウシ軟骨の1種以上から選択される、請求項51に記載の組成物。
【請求項53】
前記組成物が、錠剤、ハードカプセル剤、ソフトジェルカプセル剤、散剤、粒剤、圧縮錠剤、丸剤、チューインガム剤、サシェ剤、ウエハース剤、バー剤、液剤、チンキ剤、エアゾール剤、半固形剤、半液状剤、溶液剤、乳剤、クリーム剤、ローション剤、軟膏剤、ジェル担体等の剤形で製剤化されている、請求項44に記載の組成物。
【請求項54】
前記投与経路が、経口、局所、坐剤、静脈内、皮内、胃内、筋肉内、腹腔内、及び静脈内から構成される群から選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項55】
哺乳動物における関節健康を治療、管理、促進する方法を含み、前記哺乳動物の体重1kg当たり0.01mg~500mgである有効量の組成物を投与することを含む、請求項44に記載の関節健康用組成物。
【請求項56】
異化バイオマーカーであるTNF-α、IL-1β、IL-6、アグリカナーゼ、並びにマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)であるMMP13、MMP9、MMP3、MMP1、uCTX-II及びADAMTS4を低減又は制御し、哺乳動物の同化バイオマーカーであるSOX9、TGF-β1、ACAN、COL2A1及びPIIANPを増強及び促進することにより、異化/同化バイオマーカー恒常性を維持する方法を含む、請求項44に記載の関節健康用組成物。
【請求項57】
軟骨恒常性を維持する方法、軟骨合成(従って、同化作用)を誘導し、かつ、分解及び破壊の異化プロセスを阻害する方法、細胞外マトリックス完全性及び関節軟骨を保護する方法、軟骨の破壊を最小限にする方法、軟骨破壊を軽減する方法、軟骨合成、軟骨再生及び軟骨再建を開始又は促進又は増強する方法、損傷した軟骨を修復する方法、関節組織の細胞外マトリックスを維持、再建及び修復する方法、関節構造を再活性化する方法、関節への安定した血流を維持する方法、軟骨完全性を保護することにより関節健康を促進する方法、同化プロセスと異化プロセスとの平衡を保つ方法、哺乳動物における関節潤滑のために滑液を維持する方法、哺乳動物の関節健康に影響を与える酵素及び炎症性サイトカインの作用を減少させる方法を含む、請求項44に記載の関節健康用組成物。
【請求項58】
関節運動若しくは身体機能を改善する方法、高齢期における関節健康及び可動性を維持する方法、関節快適性を支援、保護若しくは促進する方法、関節痛を軽減する方法、関節摩擦を低減する方法、関節こわばりを軽減する方法、関節可動域若しくは柔軟性を改善する方法、可動性を促進する方法、炎症を低減する方法、酸化ストレスを低減する方法、関節摩損を低減及び保護する方法、変形性関節症若しくは関節リウマチを管理若しくは治療する方法、変形性関節症若しくは関節リウマチを予防する方法、又は変形性関節症若しくは関節リウマチの進行を逆転する方法;哺乳動物の若年性関節リウマチ、スティル病、乾癬性関節炎、反応性関節炎、敗血症性関節炎、ライター症候群、ベーチェット症候群又はフェルティ症候群等を予防及び治療する方法を含む、請求項44に記載の関節健康用組成物。
【請求項59】
手関節、肘関節、手首関節、腋窩関節、胸鎖関節、脊椎関節、顎関節、仙腸関節、股関節、膝関節及び足関節の健康の改善方法を含む、請求項1に記載の関節健康用組成物。
【請求項60】
手関節、肘関節、手首関節、腋窩関節、胸鎖関節、脊椎関節、顎関節、仙腸関節、股関節、膝関節及び足関節の健康の改善方法を含む、請求項24に記載の関節健康用組成物。
【請求項61】
手関節、肘関節、手首関節、腋窩関節、胸鎖関節、脊椎関節、顎関節、仙腸関節、股関節、膝関節及び足関節の健康の改善方法を含む、請求項44に記載の関節健康用組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願は、2021年2月7日に出願された米国実用新案出願番号:17/169490号、及び2020年2月6日に出願された米国仮特許出願番号:62970792号に基づき、優先権を主張するPCT出願であり、両者は「Compositions and Methods for Regulating Homeostasis of Chondrocytes, Extracellular Matrix, Articular Cartilage, and Phenotype of Arthritis」という名称であって、これら全ては共有され、参照によりその全体を組み込む。
【0002】
変形性関節症(OA)は、関節構造全体に変化を来し、軟骨破壊及び減少、軟組織の変性、軟骨下骨肥厚と骨棘形成を含む局在骨肥大、各種程度の滑膜炎、並びに関節包の肥厚を特徴とする多因子疾患である(Loeser,2013)。
【0003】
近年、OAの発生と進行をもたらす主要な有害因子ではないが、症状、特に痛みの経路について研究が進んでいる(Wenham and Conaghan,2013)。増大する情報原からのエビデンスをまとめると、変形性関節症は最早加齢の結果として生じると予想される「摩損」の変性疾患とはみなされず、あるいは、「非炎症性」の関節炎とはみなされないようである。例えば、MRI等の最新画像技術を使用すると、OAの重症度と進行には滑膜炎症が高い有病率で相関することが示されており、痛みの主因であると考えられている(Pickering et al.,2005;Roemer et al.,2011)。B細胞の滑膜浸潤やT細胞の活性化等の免疫学的変化も、関節リウマチ(RA)の発症だけでなく、OAの発症にも関係があると報告されている(Qin et al.,2007;Sakkas and Platsoucas,2007)。
【0004】
OAの病因を具体的に選び出すことの掴み所のなさは多くの報告が示しており、この疾患の発生と進行には力学的イベントと分子イベントを含む複数の因子が絡みあっていると考えられる。患者は顕著な構造的損傷が既に生じた後に救済を求めることが多いので、疾患が何時何処で発生したかを正確に突き止めるのは厄介であるが、悪循環を断ち切れないOAの一部として滑膜炎、軟骨及び半月板劣化の間の強い相関が記載されていることは確かである(Roemer et al.,2013)。
【0005】
変形性関節症を定義する上で主要なイベントは軟骨破壊であるが、炎症を伴う変形性関節症の不可逆的進行であると考えられている基本的な事象は、II型コラーゲンの分解である。OAの特徴は、関節軟骨の漸進的劣化である。関節軟骨は、密集した細胞外マトリックス(ECM)から構成される非神経支配無血管組織であり、軟骨細胞と呼ばれる高度に特殊化した細胞がまばらに散らばっている。軟骨細胞は間葉系幹細胞に由来し、関節軟骨の総体積の約2%を構成する(Alford and Cole,2005)。軟骨細胞は、主にII型コラーゲンとアグリカンから構成されるECMの発生、維持及び修復に重要な役割を果たす代謝活性細胞である。コラーゲンは、ECMに最も多量に存在する高分子であり、組織におけるコラーゲンの90%~95%はII型コラーゲンであり、プロテオグリカン凝集物と絡み合った繊維を形成する。プロテオグリカンは、ECMにおける2番目に大きい高分子群を構成する高度にグリコシル化されたタンパク質単量体であり、10%~15%までを占める。プロテオグリカンは、1本以上の直鎖状グリコサミノグリカン(GAG)鎖がコアタンパク質に共有結合したものである。これらの構造により、粘弾性と、関節軟骨にかかる圧縮力に対する耐性が得られる。
【0006】
細胞外マトリックス(ECM)の恒常性と完全性は、健康な関節を維持するための関節軟骨の適正な機能に不可欠である。数種の力学的、生化学的及び微小環境因子は、関節軟骨のECMの内側で軟骨細胞の代謝活性を調節することができる。こうして、軟骨細胞により知覚された種々の同化シグナルは、軟骨ECMの生産、組織化及び完全性維持をもたらすであろう。関節の患部構造では軟骨細胞によるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)とプロテオグリカナーゼの産生が増加して異常及び異化シグナルが発生するため、ECMの恒常性が異化側にシフトし、ECMの分解に繋がり得る。これが、変形性関節症と関節リウマチの両方の主要な特徴である。TNF-α、IL-1β及びIL-6等の炎症性サイトカインは、アグリカナーゼ及びマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)分泌の刺激に繋がる異化イベントのカスケードにより、関節軟骨における軟骨マトリックス分解に重要な役割を果たすことが知られている(Kapoor et al.,2011)。軟骨マトリックス恒常性及び完全性の崩壊に加え、これらの異化性メディエーターが集合して周囲の同化シグナルに対する軟骨細胞の応答と感受性を低下させ、ECMと軟骨の同化再建及び再生よりも異化軟骨の分解に向けて平衡を更にシフトさせる。このため、異化プロセスから同化プロセスへと方向を逆転させる機能をもつ天然組成物があるならば、疾患修飾剤として作用し、関節炎の進行を修飾、遅延又は逆転させる等の有益な効果があると思われる。
【0007】
疾患の原因と進行を止めるのに有効であると証明されている一次療法がないため、OAの現行の管理は不十分である。現行の薬学的アプローチは、疾患の症状、主に付随する疼痛を軽減することに主に重点が置かれており、実際の病因を隠蔽するだけで、異化-同化恒常性の平衡が得られないため、軟骨完全性と関節構造の不可逆的損傷に繋がっている。OA患者における疼痛とこわばりを緩和するためには、コルチコステロイド、ヒアルロン酸の関節内注射と、経口又は局所非ステロイド性抗炎症薬(NTHE)が最も多用されているが、グルコサミンとコンドロイチンも疼痛に対して遅効性ではあるものの測定可能な成果を示しており、より重症度の高いOAで機能改善を示している。実際に、以前は、国際変形性関節症学会(Osteoarthritis Research Society International:OARSI)により股関節及び膝OAにおける可能な構造修飾剤としてグルコサミン硫酸塩とコンドロイチン硫酸塩が推奨されていた(Jordan et al.,2003;Zhang et al.,2007)。しかし、最近発表されたOARSIガイドラインは、これらの薬剤の評価を下げ、全OA患者に使用した場合に症状緩和剤として「不確実」であり、又は疾患修飾剤として「不適切」であるとしている。同様に、経口及び経皮オピオイド鎮痛剤も、OAの管理には「不確実」であると格付けされている(Zhang et al.,2008,2010)。他方、局所NTHEは、膝のみのOAをもつ全患者に適切であると推奨されており、経口NTHEに比較して安全で忍容性が良好であることが認められている(McAlindon et al.,2014)。専門家協議会による使用勧告がこのように繰り返し変更されるのは、OA管理の現行の非薬理的及び薬理的治療法が不確実であることを如実に物語っている。複雑な状況が激化するにつれ、多くの疲弊した患者は、規制外の非標準製品原料に傾くことによりその安全性に目を瞑り、疾患の壊滅的転帰を減らして生活の質を改善することを望んでいる。このため、エビデンスに基づく安全で有効な天然資源由来の代替薬には依然としてアンメットニーズがある。
【0008】
関節リウマチ(RA)は、主に関節に変化を来す慢性炎症性自己免疫疾患である(Smolen et al.,2018)。RAは全身疾患であり、関節以外にも粘膜表面や一次リンパ組織で種々の免疫学的事象が生じるが、病変の主座は滑膜にある。この疾患は、T細胞、B細胞及び単球等の細胞性及び液性免疫細胞が関節の滑膜に浸潤することを特徴とする。このプロセスに先立ち、RA滑膜炎の特徴とみなされる血管新生(新しい血管の増殖をもたらす内皮細胞の活性化)が生じる。滑膜線維芽細胞様細胞とマクロファージ様細胞が滑膜で増殖し、滑膜内層過形成に至る。この増殖した滑膜は「パンヌス」と呼ばれることが多く、骨軟骨接合部の関節周囲の骨に侵入し、骨糜爛と軟骨の分解をもたらす。
【0009】
RAの発症において、サイトカインネットワークは、炎症性で組織損傷性の細胞活性を滑膜炎に組み入れる。炎症性サイトカイン、主にTNF-αとIL-6は、核内因子κBリガンドの受容体活性化因子(RANKL)、プロスタグランジン(PGE2)、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP-13、MMP-3、MMP-9、MMP-1)及びアグリカナーゼ等の分子をRAで誘導することが知られている。これらの因子はRAの徴候と症状に介在する。TNF-αとIL-6は、更に滑膜内の破骨細胞の形成を刺激し、骨損傷を促進する。これらの分子・細胞イベントの結果、疼痛、腫脹(一般的には朝のこわばりと圧痛を伴う)、変形、及び軟骨と骨の劣化として現れる臨床疾患発現に至る。RAの基本的な徴候の一つは、隣接する関節構造への滑膜侵入による軟骨と骨の損傷である(Smolen et al.,2018)。
【0010】
OAと同様に、RAの治療目標は、関節炎症と疼痛を抑え、関節機能を最大にし、関節破壊及び変形を防ぐことである。近年、(主要な細胞とサイトカインの認識により)RAの発症の解明が進むにつれて劇的な改善が見られ、標的疾患修飾型抗リウマチ薬が開発された。特に、リウマチ医は、免疫抑制剤であるメトトレキサートの最適な使用方法を習得し、この薬剤がRAを管理する治療のアンカードラッグとなっている(Visser and van der Heijde,2009)。この解明と足並みを揃え、関節構造維持と軟骨下骨の保護の改善における組織学的所見に加え、本開示に開示する組成物は、コラーゲン誘発関節炎(CIA)で試験した場合に、症状緩和と主要な炎症性サイトカイン(TNF-α及びIL6)及びマトリックス分解酵素(MMP-13及びMMP-3)の減少に関してメトトレキサートと同等の成果を生じた。このモデルは、RA及び/又はRAの発症における医薬品とニュートラシューティカルズの有効性を試験するための疾患モデルとして最も多用されている(Cho et al.,2007)。これらの結果から、本願に開示する天然組成物は、OAに加えてRAの管理にも適していると思われる。
【0011】
本願では、複数の天然抽出物とその併用組成物について記載し、これらの組成物を投与した動物では、(TNF-α、IL-1β及びIL-6等の)異化性サイトカインと細胞外マトリックス分解酵素(MMP3、9、及び13)をダウンレギュレートすることにより、uCTX-II(軟骨の分解の一次マーカー)等の軟骨ターンオーバーの異化バイオマーカーが統計的に有意に低下した。これらの所見は、軟骨細胞の恒常性を調節することによっても裏付けられ、経口投与後にMMP13、MMP3及びADAMTS4等のマトリックス分解酵素(メタロプロテアーゼ及びアグリカナーゼ)では、異化経路の遺伝子発現が有意にダウンレギュレートされた。これらの現象は、関節炎の表現型の異化プロセスを最小限にすることに関して本発明の組成物の活性の重要な指標である。
【0012】
今日までに、規制当局により認可されたOAの疾患修飾薬として、軟骨の再分化に適用可能となり得るものは皆無である。総体的に見て、複数の公知作用機序を有する栄養補助食品は軟骨修復プロセスを補助すると思われる。本開示では、限定されないが、個々のアルピニア(Alpinia)、ペッパー(Pepper)、マグノリア(Magnolia)及びコキア(Kochia)抽出物、並びに/又は非限定的な例として、アルピニア:ペッパー(AP)とアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)を含むこれらの抽出物の2~3種の種々の組み合わせから構成される本願の組成物により、予想外に迅速で改善された軟骨修復活性が得られ、疾患動物モデルにおける動物体重負荷データと軟骨修復パラメーターの病理組織学的所見で反映されるように相乗効果があった。アルピニア、ペッパー、マグノリア及びコキアの個々の抽出物、並びにAMKとAPの組成物を投与したラットでは、溶媒を投与した疾患モデルと比較した場合に、IIA型プロコラーゲンアミノ末端プロペブチド(PIIANP)や増殖因TGF-β1等の軟骨合成マーカー濃度が有意に高いことが分かった。これらの組成物は、コラーゲン誘発ラット関節炎モデルにおいて有意な軟骨保護活性を示すと共に、カラゲニン誘発ラット足蹠浮腫モデルにおいて鎮痛・抗炎症活性を示すことも分かった。これらの抽出物を併用し、限定されないが、AP又はAMK組成物とする利点もコルビーの式(Colby,1967)を使用して評価した処、併用組成物には予想外の相乗効果が認められた。個々のアルピニア、ペッパー、マグノリア及びコキア抽出物、並びに/又は非限定的な例として、APとAMKを含むこれらの抽出物の2~3種の種々の組み合わせにより実証されるこれらの広範な活性は、これらの組成物に存在する活性成分の多様な性質に起因すると考えられる。データをまとめると、個々のアルピニア、ペッパー、マグノリア及びコキア抽出物、並びに/又は非限定的な例として、AP組成物とAMK組成物を含むこれらの抽出物の2~3種の種々の組み合わせは、症状緩和、抗異化性関節軟骨保護及び同化性関節軟骨修復という三重の機能を提供し、変形性関節症の疾患修飾剤としてホリスティックなアプローチとなり得る。
【0013】
本開示において、本特許に示すデータは、軟骨細胞、細胞外マトリックス、関節軟骨、及び関節炎の表現型の恒常性を調節するというアンメットニーズに対応するものとして、個々のアルピニア、ペッパー、マグノリア及びコキア抽出物、並びに/又は非限定的な例として、アルピニア:ペッパー(AP)組成物とアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)組成物を含むこれらの抽出物の2~3種の種々の組み合わせの新規性を詳細に裏付けている。個々のアルピニア、ペッパー、マグノリア及びコキア抽出物、並びに/又は非限定的な例として、APとAMKを含むこれらの抽出物の2~3種の種々の組み合わせを例示の併用比で投与した処、軟骨合成を誘導し、ECM分解を抑制することにより、OAの進行が正常又は同化性の恒常性平衡の方向に逆転された。個々のアルピニア、ペッパー、マグノリア及びコキア抽出物、並びに/又は非限定的な例として、AP組成物とAMK組成物を含むこれらの抽出物の2~3種の種々の組み合わせ等の天然組成物は、同化系遺伝子発現を刺激し、異化活性を抑制するというユニークな機能があり、これらの組成物は、天然資源に由来するOA/RA疾患修飾剤の好ましい選択肢になると本発明者らは確信している。
【0014】
筋骨格痛患者に一般に使用されている薬物送達方法としては、経腸及び腸管外薬物投与経路が挙げられる。しかし、選択的及び非選択的非ステロイド性抗炎症薬等の一般処方薬又は市販薬である鎮痛薬は、胃腸、心臓血管及び腎臓副作用を生じることが知られている(Harirforoosh et al.,2013)。実際に慢性痛を抱えていることが多い高齢患者は、これらの介在経路による副作用の危険が大きい(Stanos and Galluzzi)。これらの有害事象は、NTHEを局所塗布経路で利用することにより防ぐことができる。筋緊張、捻挫、変形性関節症、関節リウマチ及び他の分類の筋骨格病態の症例等で鎮痛剤を患部に直接塗布すると、所期の標的領域に高濃度の活性化合物を送達することができ、全身曝露を最小限にしながら迅速で確実な疼痛緩和が得られる(Rodriguez-Merchan,2018;Argoff,2013)。しかし、筋骨格障害に対する有効性を改善した局所塗布可能な薬剤又は代替薬には依然としてアンメットニーズがある。本発明者らは、多様な化学成分と作用機序をもつ天然物が局所代替薬の欠陥を補うのに役立つと確信する。所期実施形態の検討に当たり、本発明者らは自己の局所鎮痛薬の植物ライブラリーをスクリーニング・評価し、標準製剤化の結果として鎮痛活性が潜在的に高まり、皮膚浸透性が改善されるであろうと仮定した。本願に開示する所期実施形態の概念化において、局所経路で有効な新規鎮痛製剤の発見プロセスの一部を文書で実証した。
【0015】
初期刺激に応じて、痛みは侵害受容性、炎症性、又は神経因性に分けられる。これらの薬用植物は、末梢一次求心性感覚ニューロンに受容体レベルで直接干渉することにより、又は疼痛伝達、伝播、調節及び知覚の多数の経路を介して間接的に作用することにより、疼痛感受性を抑制できるであろうと仮定された。炎症において疼痛感受性を生じることが知られている古典的な炎症性メディエーターとしては、ブラジキニンとプロスタグランジンが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国実用新案出願番号第17/169490号明細書
【特許文献2】米国仮特許出願番号第62970792号明細書
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Loeser,2013
【非特許文献2】Wenham and Conaghan,2013
【非特許文献3】Pickering et al.,2005
【非特許文献4】Roemer et al.,2011
【非特許文献5】Qin et al.,2007
【非特許文献6】Sakkas and Platsoucas,2007
【非特許文献7】Roemer et al.,2013
【非特許文献8】Alford and Cole,2005
【非特許文献9】Kapoor et al.,2011
【非特許文献10】Jordan et al.,2003
【非特許文献11】Zhang et al.,2007
【非特許文献12】Zhang et al.,2008,2010
【非特許文献13】McAlindon et al.,2014
【非特許文献14】Smolen et al.,2018
【非特許文献15】Visser and van der Heijde,2009
【非特許文献16】Cho et al.,2007
【非特許文献17】Colby,1967
【非特許文献18】Harirforoosh et al.,2013
【非特許文献19】Stanos and Galluzzi
【非特許文献20】Rodriguez-Merchan,2018
【非特許文献21】Argoff,2013
【発明の概要】
【0018】
保護対象の概要
本願に開示するのは、アルピニア、マグノリア、コキア及びピペル(Piper)/ペッパーに由来する薬用植物抽出物とその生理活性成分であり、軟骨細胞、細胞外マトリックス、関節軟骨及び関節炎の表現型の恒常性を調節するのに併用又は単独で使用され、軟骨細胞の同化機能の増強、細胞外マトリックスと関節軟骨の再生/再建/再分化の増強、及び変形性関節症と関節リウマチの表現型の改善をもたらす。細胞及び組織レベルで平衡をシフトさせることにより、細胞外マトリックスと関節軟骨の構造完全性が保存/保護/改善/再生されるだけでなく、関節/骨構造と関節機能が保護/改善/増強され、これらは、関節炎症、関節痛、関節こわばりの抑制、軟骨の分解の抑制、可動性、可動域、柔軟性、関節身体機能の改善又は任意のそれらの組み合わせとして認められる。
【0019】
アルピニア、ペッパー、マグノリア及びコキアの個々の抽出物、並びに/又は非限定的な例として、アルピニア:ピペル/ペッパー(AP)とアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)を含むこれらの抽出物の2~3種の種々の組み合わせの抗異化活性と同化促進活性は、遺伝子発現、タンパク質発現及びタンパク質機能の低下等により分子レベルと細胞レベルで実証され、バイオマーカーにより反映される組織保護により組織レベルで実証され、症状緩和のみならず、同化・異化バイオマーカー変化と病理組織画像及びスコアの改善により疾患動物モデルで実証された。
【0020】
本願に開示するアルピニア、ペッパー、マグノリア及びコキアの個々の抽出物、並びに/又は非限定的な例として、アルピニア:ピペル/ペッパー(AP)とアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)を含むこれらの抽出物の2~3種の種々の組み合わせの使用方法としては、限定されないが、軟骨恒常性、細胞外マトリックス完全性及び関節軟骨を維持する方法、軟骨の分解を最小限にする方法、関節空間の狭隘化を防ぐ方法、軟骨完全性を保護することにより健康な関節を促進する方法、同化プロセスと異化プロセスの平衡を保つ方法、関節健康に影響を与える酵素及び炎症性サイトカインの作用を抑制する方法、関節運動及び/又は機能を改善する方法、関節痛を軽減する方法、関節こわばりを軽減する方法、関節可動域及び/又は柔軟性を改善する方法、可動性を促進する方法、変形性関節症及び/又は関節リウマチを管理及び/又は治療する方法、変形性関節症及び/又は関節リウマチを予防する方法、あるいは変形性関節症及び/又は関節リウマチの進行を逆転する方法等が挙げられる。
【0021】
具体的には、1種以上のフェニルプロパノイドを高濃度化したアルピニア抽出物と、1種以上のビスフェノール性リグナンを高濃度化したマグノリア抽出物と、1種以上のトリテルペノイドサポニンを高濃度化したコキア抽出物の組み合わせを含む関節健康用組成物を開示する。
【0022】
他の実施形態では、1種以上のフェニルプロパノイドを高濃度化したアルピニア抽出物と、1種以上のアルカロイドを高濃度化したピペル抽出物の組み合わせを含む関節健康用組成物を開示する。
【0023】
更に他の実施形態では、1種以上のフェニルプロパノイドを高濃度化したアルピニア抽出物を含む関節健康用組成物を開示する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】アルピニア、ピペル/ペッパー、マグノリア及びコキアの個々の抽出物、並びに/又は非限定的な例として、アルピニア:ピペル/ペッパー(AP)とアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)を含むこれらの抽出物の2~3種の種々の組み合わせが、軟骨恒常性を誘導することにより、OA進行を逆転することを示す。
【
図2】アルピニアエタノール抽出物の254nmのHPLCクロマトグラムを示す。
【
図3】6週間投与後のOCDラットの穿孔部位の画像を示し、各種経口投与群で治癒進行に有意差があることを示す。
【
図4】OCDラットの穿孔部位における軟骨下骨のサフラニンO染色を示す。黒丸は、代表的な動物病理組織スライドの穿孔部位を示す。
【
図5】AMKとMTXを投与したCIA誘発ラットの足首関節からの病理組織画像(HE:a~d及びサフラニンO:e~f)を示す。a及びe:正常対照、b及びf:CIA+溶媒、c及びg:CIA+MTX、d及びh:CIA+AMK。
【
図6】APを投与したCIAラットのHE及びサフラニンO染色組織画像を示す(HE染色(40倍):a=正常対照+溶媒、b=CIA+溶媒、c=CIA+メトトレキサート、d=CIA+AP、サフラニンO染色(40倍):e=正常対照+溶媒、f=CIA+溶媒、g=CIA+メトトレキサート、h=CIA+AP、C=軟骨、SB=軟骨下骨、I=炎症)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
詳細な説明
変形性関節症(OA)は、有意有病率、関節痛、こわばり及び可動性制限を生じる軟骨の分解を主な特徴とする多因子疾患である。疾患進行を止めるのに有効であると証明されている一次療法がないため、OAの現行の管理は不十分であり、非ステロイド性抗炎症薬の使用等の対症療法に重点を置いたアプローチで実際の病因を隠蔽しており、不可逆的な軟骨減少と関節構造損傷に繋がっている。本発明者らは、限定されないが、アルピニア、ピペル/ペッパー、マグノリア及びコキア抽出物と種々の組み合わせを例に挙げる新規天然抽出物及び組成物が、予想外に迅速で改善された軟骨再生及び修復活性を相乗的に生じることを発見し、本願はこの発見について記載する。個々のアルピニア、ピペル/ペッパー、マグノリア及びコキア抽出物、並びに/又は非限定的な例として、アルピニア:ピペル/ペッパー(AP)とアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)を含むこれらの抽出物の2~3種の種々の組み合わせから得られるこれらの活性は、本願の保護対象の実施例2、9、13、17及び18で実証され、異化性サイトカインであるインターロイキン-1により刺激したウサギ軟骨外植片からのグリコサミノグリカン(GAG)の放出の抑制により反映され、軟骨細胞、細胞外マトリックス、関節軟骨及び関節炎の表現型の恒常性の調節については、骨軟骨モデル(OCD)からの動物体重負荷データ(実施例25~31)、コラーゲン誘発関節炎(CIA)における軟骨保護、修復及び再生パラメーターの病理組織学的所見(実施例40~58)、モノヨード酢酸誘発関節炎(MIA)(実施例59~63)並びにOCD(実施例25~31)疾患動物モデルで実証される。
【0026】
具体的には、1種以上のフェニルプロパノイドを高濃度化したアルピニア抽出物と、1種以上のビスフェノール性リグナンを高濃度化したマグノリア抽出物と、1種以上のトリテルペノイドサポニンを高濃度化したコキア抽出物の組み合わせを含む関節健康用組成物を開示する。所期組成物は、前記組成物における前記アルピニア抽出物、又はマグノリア抽出物、又はコキア抽出物が各抽出物につき1~98重量%の範囲となり、アルピニア:マグノリア:コキア(AMK)の最適化重量比が2:4:3(22.2%:44.4%:33.3%)又は4:3:3(40%:30%:30%)又は5:4:4(38.4%:30.8%:30.8%)となるように開発される。
【0027】
他の実施形態では、1種以上のフェニルプロパノイドを高濃度化したアルピニア抽出物と、1種以上のアルカロイドを高濃度化したピペル抽出物の組み合わせを含む関節健康用組成物を開示する。
【0028】
更に他の実施形態では、1種以上のフェニルプロパノイドを高濃度化したアルピニア抽出物を含む関節健康用組成物を開示する。
【0029】
軟骨細胞は、増殖因子を含む種々の刺激に応答するが、損傷に応答する軟骨の固有の治癒能力が限られているため、複製能が限られている。軟骨細胞は、同化(再分化)活性と異化(変性)活性の間の精巧な平衡を維持することにより、軟骨恒常性を調節する。これらの細胞は、総マトリックス体積の1~2%に過ぎない。これらの細胞は無血管であり、分裂成長できないため、軟骨の自己修復能は非常に限られており、ターンオーバー率は低い。また、通常では、主に滑液と軟骨下骨からの拡散により自己の栄養と酸素を獲得する。軟骨細胞は、種々の関節成分の合成と分解の平衡を調節することにより、関節軟骨マトリックスの恒常性を維持する。このプロセスは、軟骨及び/又は滑液及び/又は滑膜等の周囲組織におけるサイトカインと増殖因子の相対濃度により制御される。軟骨細胞は、II型コラーゲンやアグリカン等の高分子の合成により細胞外マトリックス(ECM)の完全性を維持することができ、MMPやアグリカナーゼ等のECMの分解に関与するタンパク質を産生することもできる。軟骨細胞は、その微小環境の変化に非常に応答し易く、感受性であるため、マトリックス形成成分を産生するように直接又は間接的に軟骨細胞を刺激し、炎症性サイトカインとマトリックス分解酵素の分泌を抑制する天然抽出物及び組成物があるならば、ECMと関節炎の表現型の恒常性を変化させることができると思われる。本願の保護対象では、個々のアルピニア、ペッパー、マグノリア及びコキア抽出物、並びに/又は非限定的な例として、アルピニア:ピペル/ペッパー(AP)組成物と、アルピニア:マグノリア:コキア(AMK)組成物を含むこれらの抽出物の2~3種の種々の組み合わせが、CIA、MIA及びカラゲニンモデルで恒常性を維持するために分解プロセスを上回る軟骨保護及び症状緩和活性を示すことに加え、OCDモデルで軟骨再建及び再生能を示すことを裏付けるデータを実施例に文書で提示した。
【0030】
軟骨形成過程において、軟骨形成の初期段階は、間葉系幹細胞(MSC)凝集とそれに続く軟骨細胞分化である。これらのプロセスは、軟骨発生の種々の段階で数種の増殖因子と転写因子により駆動される。これらの因子のうち、軟骨形成の主要な転写因子であるSOX9は、MSCの凝集期に関与しており、軟骨特異的マーカーの発現を刺激し、軟骨細胞の終末分化を抑制する。同様に、TGF-βファミリーの遺伝子は軟骨細胞で広く発現され、軟骨形成プロセスに関与する構成分類の増殖因子である。軟骨形成の初期段階中に発現される全因子のうちで、TGF-β1は、MSCの軟骨細胞分化を誘導する最も重要な因子の一つである。この因子は更に軟骨細胞の増殖を刺激し、ECMの産生を増加し、軟骨内骨化を抑制する。(SOX9とTGF-β1により刺激される)軟骨発生のこの同化期において、成熟軟骨細胞は、夫々ACAN遺伝子とCOL2A1遺伝子によりコードされるプロテオグリカンとII型コラーゲン繊維を多く含む軟骨マトリックスを産生するであろう。その結果、転写又は増殖因子の発現をアップレギュレートする外部因子が、軟骨発生の同化プロセスを誘導するのを助長し、ECMの過剰を維持する。実際に、個々のアルピニア、ペッパー、マグノリア及びコキア抽出物、並びに/又は非限定的な例として、アルピニア:ピペル/ペッパー(AP)とアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)を含むこれらの抽出物の2~3種の種々の組み合わせに由来する天然組成物を発見するプロセスにおいて、本願の保護対象の実施例21、22、23及び24で実証されるように、IL-1βで刺激したヒト軟骨細胞ではエクスビボ及びインビトロモデルでSOX9、TGF-β1、ACAN及びCOL2A1遺伝子のアップレギュレーションが認められた。軟骨細胞、細胞外マトリックス、関節軟骨及び関節炎の表現型の恒常性の調節に関するこれらの所見は、その後、本願の保護対象で実証されたCIA、MIA及びOCDモデルからのインビボ結果により裏付けられた。アルピニア、ペッパー、マグノリア及びコキアの個々の抽出物、並びに/又は非限定的な例として、アルピニア:ピペル/ペッパー(AP)とアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)を含むこれらの抽出物の2~3種の種々の組み合わせを投与したラットでは、溶媒を投与した疾患動物と比較した場合に、IIA型プロコラーゲンアミノ末端プロペブチド(PIIANP)(実施例40、48、56及び58)や増殖因子TGF-β1(実施例31)等の軟骨コラーゲン合成マーカーの濃度が有意に高いことが分かった。軟骨合成及び再生に直接関与する同化系遺伝子マーカーのアップレギュレーション等のこれらの現象は、本願に開示する組成物の活性に多少なりとも関連する。
【0031】
我々の知る限りでは、骨軟骨欠損(OCD)モデルで軟骨を維持・再建する能力について本願に開示する薬用植物を所定の比で評価し、有利な成果を得たのは今回が最初である。このモデルは、介入をその軟骨再生・再建機能について評価するのに直接関係する。実施例25、26、27、28、29、30及び31に例証するように、ラットの骨軟骨欠損(OCD)モデルを使用し、アルピニア、ペッパー、マグノリア及びコキアの個々の抽出物、並びに/又は非限定的な例として、アルピニア:ピペル/ペッパー(AP)とアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)を含むこれらの抽出物の2~3種の種々の組み合わせの軟骨合成、従って、疾患修飾活性を実証した。このモデルは、生体自身の治癒能力を利用することにより、修復プロセスで骨髄の刺激を利用する。この方法は、新しい組織形成に適した環境を提供することにより、軟骨リサーフェイシングを促進する。モデル誘発時に、膝に開けた小さな穴から脂肪滴と血液が出てくるまで、大腿骨軟骨下骨板の露出した体重負荷表面に精密ドリルビットで穴を開けた。こうして、骨髄に由来する生体自身の間葉系幹細胞が好適な関節軟骨様細胞へと分化し、細胞外マトリックスを産生し、最終的に修復された安定した組織へと成熟するのに最適な環境を提供した。このモデルを使用し、アルピニア、ペッパー、マグノリア及びコキアの個々の抽出物、並びに/又は非限定的な例として、アルピニア:ピペル/ペッパー(AP)とアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)を含むこれらの抽出物の2~3種の種々の組み合わせを200mg/kg/日で8週間等の種々の投与量と期間で経口投与し、その軟骨修復活性を評価した。修復進行の評価手段として、インキャパシタンステスターを使用してラットの左右足間の体重負荷分布を測定した。剖検時に、バイオマーカー用の血清と、病理組織学的解析用の左膝を採取した。ホルマリンで固定する前に、全動物で穿孔部位に焦点を合わせて左膝の画像を撮影した。固定した組織を外部の公認病理医により処理・解析した。
【0032】
OCD動物は悪い方の足に跛行を示したが、試験の過程を通して全群で漸進的改善を示した。悪い方の足の使用のオープンフィールド観察におけるこれらの変化は、インキャパシタンス測定でも反映された。体重負荷測定値は徐々に改善され、アルピニア:ピペル/ペッパー(AP)組成物を投与したラットとアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)組成物を投与したラットでは有意に改善された。6週間毎日経口投与後に、AMK組成物を投与したラットとAP組成物を投与したラットは、その体重を支えるために悪い方の足の使用に関して夫々59.9%と51.5%の改善を示した。これは、外科的に穴を開けた膝の疼痛緩和の徴候であった。これらの値は、溶媒を投与したOCD動物と比較してAMK群とAP群から剖検時に撮影した写真で観察された結果と一致した。これらの所見は、本特許の本文に記載する軟骨修復のセラーズ(Sellers)解析法を使用して解析した病理組織学的データでも裏付けられ、AMKとAPを投与した動物では、溶媒を投与した疾患モデルに比較して40.4%と40.5%の治癒加速を示した。これらの改善は、AMKとAPを投与したOCDラットでは溶媒投与群に比較して統計的に有意であった。これらの所見は、AMKとAPの軟骨合成(同化)及び刺激活性をインビボで反映するものであり、同化系遺伝子マーカーのインビトロでのアップレギュレーションを補完し、その軟骨再建・再生活性の根拠となる。
【0033】
アルピニア、ペッパー、マグノリア及びコキアの個々の抽出物、並びに/又は非限定的な例として、アルピニア:ピペル/ペッパー(AP)とアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)を含むこれらの抽出物の2~3種の種々の組み合わせの軟骨保護活性は、他の動物モデルでも実証された。実施例40、48、56及び58で実証したCIAとMIAで誘発させた関節炎モデルにおいて、アルピニア、ペッパー、マグノリア及びコキアの個々の抽出物、並びに/又は非限定的な例としてAPとAMKを含むこれらの抽出物の2~3種の種々の組み合わせは、軟骨の分解の主要なバイオマーカーである尿中CTX-IIの統計的に有意な低下と、軟骨合成バイオマーカーであるPIIANPの統計的に有意な上昇を示した。アルピニア、ペッパー、マグノリア及びコキアのこれらの個々の抽出物、並びに/又は非限定的な例として、APとAMKを含むこれらの抽出物の2~3種の種々の組み合わせは、IL-1β、TNF-α及びIL-6等の異化バイオマーカーの血清中濃度と、炎症性サイトカイン及びマトリックス分解酵素に関連する主要な異化経路とみなされる種々のMMP酵素の統計的に有意な低下を示した。これらのモデルからのデータは、これらの個々の抽出物と併用組成物の抗異化活性を示唆している。
【0034】
アルピニア、ペッパー、マグノリア及びコキアの個々の抽出、並びに/又は非限定的な例として、アルピニア:ピペル/ペッパー(AP)とアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)を含むこれらの抽出物の2~3種の種々の組み合わせは、COL2A1(II型コラーゲンをコードする遺伝子)やACAN(軟骨特異的プロテオグリカンコアタンパク質をコードする遺伝子)等の関節軟骨細胞外マトリックス同化バイオマーカーの発現をアップレギュレートし、ヒト軟骨細胞を異化性サイトカインIL-1と共にインキュベートしたときにMMP13、MMP3及びADAMTS4等のマトリックス異化恒常性バイオマーカーの発現をダウンレギュレートし、インビボ結果を裏付けた。アルピニア、ペッパー、マグノリア及びコキアのこれらの個々の抽出物、並びに非限定的な例としてAP組成物とAMK組成物を投与したIL-1刺激ヒト軟骨細胞では、関節軟骨マトリックス合成転写因子SOX9と、増殖因子TGF-β1(実施例23及び24)もアップレギュレートされることが分かった。これらの所見は、アルピニア、ペッパー、マグノリア及びコキアの個々の抽出物と、非限定的な例としてAMKとAPを含むこれらの植物抽出物の組成物が、軟骨合成の主要なレギュレーターであるTGF-β1とSOX9の濃度を上昇させて軟骨成分ACAN、COL2A1及びPIIANPを増加させることにより、軟骨再分化を促進することを示している。逆に、これらの抽出物は、直接軟骨の破壊の大部分を担う酵素であるMMP13、MMP3、ADAMTS4、及びMMP9の発現と活性を抑制した。これらの活性の最終結果は、残存している軟骨の維持と軟骨合成の開始であり、関節の構造に完全性を取り戻す。
【0035】
OA/RAの初期病因については論争中であるが、軟骨合成・分解の非平衡の結果としての恒常性攪乱が、変形性関節症及び関節リウマチの発症と進行に重要な役割を果たしている。本開示に提示するデータは、アルピニア、ペッパー、マグノリア及びコキアのこれらの個々の抽出物、並びに/又は非限定的な例として、アルピニア:ピペル/ペッパー(AP)とアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)を含むこれらの抽出物の2~3種の種々の組み合わせが、軟骨合成(従って、同化作用)を誘導し、分解及び崩壊の異化プロセスを抑制することにより、関節炎進行の方向を正常及び/又は同化恒常性に向けて逆転させる効果があることを示した。
図1は、アルピニア、ピペル/ペッパー、マグノリア及びコキアの個々の抽出物、並びに/又は非限定的な例として、アルピニア:ピペル/ペッパー(AP)とアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)を含むこれらの抽出物の2~3種の種々の組み合わせが、軟骨恒常性を誘導することによりOA進行を逆転させることを示す。
【0036】
本発明者らは、疼痛の多因子性の複雑さから、2種以上の活性抽出物を併用して疼痛緩和の増強、軟骨の破壊の緩和、及び軟骨合成の開始という複数のアプローチを引き出す介入ストラテジーが必要であると確信している。アルピニア、ペッパー、マグノリア及びコキアと、限定されないが、アルピニア:ピペル/ペッパー(AP)とアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)の組成物を使用して実施したインビボ試験は、疼痛緩和の増強と、軟骨の破壊の組織学的緩和を実証した。前記植物抽出物を個々に及び併用して使用し、本願の保護対象で実証したインビトロ及びエクスビボ試験は、数種の個々の抽出物と併用で軟骨の分解の緩和と軟骨合成の増加を示した。特筆すべき点として、個々の抽出物の全てがこれらの活性の各々を示した訳ではないが、前記抽出物の組成物は個々の活性を増強し、これらの介入活性の予想外の相乗効果を達成した。
【0037】
局所治療パラダイムでは、吸収度を上げ、角質層バリアを乗り越えて経皮浸透を助長するために、浸透促進剤を使用すると非常に有利である。この点について、本発明者らは、その製剤にアロエを使用することを検討し、実施例に示すように抽出物の一部では調製中に2%のアロエを加えた(Fox et al.,2015)。
【0038】
公知局所活性NTHE薬として5%イブプロフェン又は1%ジクロフェナクが製剤化されており、本願の評価においてNTHE対照として使用した。2種類の市販(OTC)活性薬も入手し、OTC陽性対照として0.5%カプサイシン又は5%メントールを調製した。BENGAY(R)等の市販OTC鎮痛剤も対照として利用した。
【0039】
選択された天然リードの局所鎮痛機能を公知陽性NTHE及びOTC対照と比較評価するために、インビボホットプレート試験を試験モデルとして利用した。少量のDMSOを利用し、植物抽出物又は化合物を5%濃度に溶解した。DMSO試料溶液を同一量のアロエベラジェル(2~4%アロエ葉ジェル粉末のDI水溶液)と混合し、ホットプレート実験の前にラットの足に局所塗布した(実施例64)。
【0040】
疼痛は複数の機序により誘発される多因子現象である。これらの被験材料を塗布すると、限定されないが、末梢神経線維の初期活性化とそれに続く脱感作、TRPV1及び/又はTRPA1等の一過性受容器電位の競合的阻害又は活性化、カンナビノイド受容体(CB1及びCB2受容体)の調節、TRPV1及びTRPA1の阻害及び/又は阻止、サブスタンスPの放出の初期増加とその後の減少、ブラジキニン活性の抑制、並びにプロスタグランジン、ブラジキニン及びサイトカイン等の炎症性メディエーターの末梢合成の抑制に繋がると思われる。従って、試験した薬用植物材料に存在する生理活性成分の多様な性質に鑑み、本願の保護対象で示す上記局所鎮痛データを、カラゲニン、MIA、CIA及びOCDモデルデータと勘案すると、鎮痛活性を増強するためにこれらの植物材料を特定の比で併用することにより、アルピニア、ピペル/ペッパー、マグノリア及びコキアの個々の抽出物と、限定されないが、これらの植物抽出物の組成物であるアルピニア:ピペル/ペッパー(AP)及びアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)の使用を拡大することができよう。
【0041】
以上及び以下の記載では、本開示の種々の実施形態を十分に理解できるようにするために、所定の特定の事項について記載する。しかし、当業者に自明の通り、これらの事項を用いなくても本開示を実施することができる。
【0042】
本願の記載において、全濃度範囲、百分率範囲、比の範囲又は整数範囲は、特に指定しない限り、明記する範囲内の全整数値と、好適な場合にはその分数(例えばある整数の10分の1や100分の1)を含むものと理解すべきである。また、ポリマーサブユニット、サイズ又は厚さ等の全物理的特徴に関して本願中に明記する全数値範囲は、特に指定しない限り、明記する範囲内の全整数を含むものと理解すべきである。本願で使用する「約」及び「から本質的に構成される」なる用語は、特に指定しない限り、指定範囲、数値又は構造の平均±20%を意味する。当然のことながら、本願で使用する不定冠詞は、列挙する要素の「1以上」を意味する。選択肢(例えば、「及び/又は」)の使用は、その選択肢の一方、両方、又は任意のそれらの組み合わせを意味すると理解すべきである。文脈が矛盾しない限り、本明細書と特許請求の範囲の随所において、「含む」及びその変形である「(単数形の)含む」や「含んでいる」と、「包含する」や「有する」及びその変形等の同義語は、広義の包括的な意味で解釈すべきであり、即ち、「含むが、これらに限定されない」と言う意味である。
【0043】
本明細書の随所において「1つの実施形態」又は「一実施形態」と言う場合には、この実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造又は特性が本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書の随所の各所で「1つの実施形態において」又は「一実施形態において」なる表現を用いる場合には、必ずしも全てが同一の実施形態を意味するものではない。
【0044】
また、「プロドラッグ」なる用語は、本開示の活性化合物を任意の担体に共有結合させ、このようなプロドラッグを哺乳動物対象に投与したときにインビボで放出するものを意味する。本開示の化合物のプロドラッグは、日常的操作又はインビボで開裂して本開示の親化合物に戻るように、本開示の化合物に存在する官能基を修飾することにより製造することができる。プロドラッグとしては、本開示の化合物のいずれかの基にヒドロキシ基、アミノ基又はメルカプト基を結合し、本開示の化合物のプロドラッグを哺乳動物対象に投与したときに、開裂して夫々遊離ヒドロキシ基、遊離アミノ基又は遊離メルカプト基を形成するものが挙げられる。プロドラッグの例としては、本開示の化合物におけるアルコール部分の酢酸、ギ酸及び安息香酸誘導体又はアミン官能基のアミド誘導体等が挙げられる。
【0045】
「関節」健康なる用語は、1箇所以上の手「関節」、肘関節、手首関節、腋窩関節、胸鎖関節、脊椎関節、顎関節、仙腸関節、股関節、膝関節及び足関節の健康を改善することを意味する。
【0046】
「安定な化合物」及び「安定な構造」とは、反応混合物から有用な純度まで単離して有効な治療剤に製剤化するために十分に堅牢な化合物を意味する。
【0047】
「バイオマーカー」又は「マーカー」成分又は化合物とは、本願に開示する植物、植物抽出物又は2~3種の植物抽出物の併用組成物に固有の1種以上の化学成分又は化合物であって、本発明の組成物の品質、コンシステンシー、完全性、安全性及び/又は生物学的機能を制御するために利用されるものを意味する。
【0048】
「哺乳動物」は、ヒトに加え、同伴動物、実験動物又は家族ペット(例えば、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウサギ)等の家庭動物と、野生動物等の非家庭動物を含む。
【0049】
「任意の」又は「任意に」とは、この語により修飾される要素、成分、事象又は環境が存在してもしなくてもよく、これらの要素、成分、事象又は環境が存在する場合と存在しない場合があることを意味する。例えば、「任意に置換されたアリール」とは、このアリール基が置換されていてもいなくてもよく、置換アリール基と置換されていないアリール基の両方を含むことを意味する。
【0050】
「薬学的又は栄養薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤」は、米国食品医薬品局(United States Food and Drug Administration)によりヒト又は家庭動物で使用するのに許容されるとして承認されているあらゆる補助剤、担体、賦形剤、滑剤、甘味剤、希釈剤、保存剤、色素/着色剤、フレーバーエンハンサー、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、安定剤、等張剤、溶媒、又は乳化剤を含む。
【0051】
「薬学的又は栄養薬学的に許容される塩」は、酸付加塩と塩基付加塩の両方を含む。「薬学的又は栄養薬学的に許容される酸付加塩」とは、遊離塩基の生物学的有効性及び性質を維持し、生物学的又は他の点で不適切ではなく、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、及び酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、樟脳酸、カンファー-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、炭酸、桂皮酸、クエン酸、サイクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、2-オキソグルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、イソ酪酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロト酸、蓚酸、パルミチン酸、パモ酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸、ピルビン酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ウンデシレン酸等の有機酸と共に形成される塩を意味する。
【0052】
「薬学的又は栄養薬学的に許容される塩基付加塩」とは、遊離酸の生物学的有効性及び性質を維持し、生物学的又は他の点で不適切ではない塩を意味する。これらの塩は、無機塩基又は有機塩基を遊離酸に付加することにより製造される。無機塩基から誘導される塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、マンガン塩、アルミニウム塩等が挙げられる。所定の実施形態において、前記無機塩はアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、又はマグネシウム塩である。有機塩基から誘導される塩としては、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、天然置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、及び塩基性イオン交換樹脂の塩が挙げられ、例えば、アンモニア、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、デアノール、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、ベネタミン、ベンザチン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、プリン類、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂等の塩が挙げられる。特に有用な有機塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリン及びカフェインである。
【0053】
結晶化により本開示の化合物の溶媒和物を形成することが多い。本願で使用する「溶媒和物」なる用語は、本開示の化合物1分子以上と、溶媒1分子以上を含む凝集物を意味する。溶媒は水とすることができ、その場合には、溶媒和物は水和物とすることができる。あるいは、溶媒は有機溶媒でもよい。従って、本開示の化合物は水和物として存在することができ、一水和物、二水和物、ヘミ水和物、セスキ水和物、三水和物、四水和物等と、対応する溶媒和物が挙げられる。本開示の化合物は真の溶媒和物とすることができるが、本開示の化合物は単に偶発的な水を保持しているだけもよいし、水と多少の偶発的な溶媒の混合物でもよい。
【0054】
「薬学的組成物」又は「栄養薬学的組成物」とは、本開示の化合物と、この生理活性化合物を哺乳動物(例えば、ヒト)に送達するために当技術分野で一般に許容されている媒体から成る製剤を意味する。例えば、本開示の薬学的組成物は、単独組成物として製剤化又は使用してもよいし、政府機関により審査・承認された処方薬、市販(OTC)薬、植物性薬品、生薬、天然薬、ホメオパシー剤、又は他の任意形態のヘルスケア製品における成分として製剤化又は使用してもよい。典型的な本開示の栄養薬学的組成物は、単独組成物として製剤化又は使用してもよいし、食品、機能食品、飲料、バー、食品フレーバー、医療食、栄養補助食品又は生薬製品における栄養成分又は生理活性成分として製剤化又は使用してもよい。当技術分野で一般に許容されている媒体は、この目的で薬学的又は栄養薬学的に許容される全ての担体、希釈剤又は賦形剤を含む。
【0055】
本願で使用する「高濃度化」とは、抽出又は他の調製工程の前に植物材料又は他の原料の重量中に存在する1種以上の活性化合物の量に比較して、1種以上の活性化合物を少なくとも2倍から約1000倍まで増加させた植物抽出物又は他の製剤を意味する。所定の実施形態において、抽出又は他の調製工程の前の植物材料又は他の原料の重量は、乾燥重量、湿潤重量又はそれらの組み合わせとすることができる。
【0056】
本願で使用する「主活性原料成分」又は「主活性成分」とは、植物抽出物若しくは他の製剤中に存在するか又は植物抽出物若しくは他の製剤中で高濃度化させた1種以上の活性化合物であり、少なくとも1種の生理活性を発揮できるものを意味する。所定の実施形態において、高濃度化抽出物の主活性原料成分は、前記抽出物中で高濃度化させた1種以上の活性化合物となるであろう。一般に、1種以上の主活性成分は、他の抽出物成分に比較して、1種以上の測定可能な生理活性又は作用の大半(即ち、50%、又は20%又は10%超)を直接又は間接的に提供するであろう。所定の実施形態において、主活性原料成分は、抽出物の過半数に満たない重量百分率の成分(例えば、抽出物に含まれる成分の50%、25%、又は10%又は5%又は1%未満)でもよいが、所望の生理活性の大半を提供することができる。主活性原料成分を含む本開示の全組成物は更に、副次活性原料成分を含んでいてもよく、前記副次活性成分は、高濃度化した組成物の薬学的又は栄養薬学活性に寄与してもしなくてもよいが、主活性成分の濃度には寄与せず、副次活性成分は、主活性原料成分の不在下で単独では有効でなくてもよい。
【0057】
「有効量」又は「治療有効量」とは、ヒト等の哺乳動物に投与したときに、(1)軟骨恒常性を維持する;(2)軟骨細胞異化・同化プロセスの平衡を保つ;(3)哺乳動物における軟骨減少を治療又は予防する;(4)関節健康を促進する;(5)哺乳動物における軟骨減少を抑制する;(6)哺乳動物における関節柔軟性を増進する;(7)哺乳動物における関節痛を治療又は予防する;(8)哺乳動物における関節の炎症を修飾する;(9)関節可動域を増大する;(10)哺乳動物における変形性関節症及び/又は関節リウマチを管理及び/又は治療する、変形性関節症及び/又は関節リウマチを予防する、あるいは変形性関節症及び/又は関節リウマチの進行を逆転する、のうちのいずれか1種以上を含む処置を行うために十分な本開示の化合物又は組成物の量を意味する。「治療有効量」を構成する本開示の化合物、抽出物又は組成物の量は、生理活性化合物、治療する病態とその重症度のバイオマーカー、投与方式、投与期間、又は治療する対象の年齢により異なるが、当技術分野における通常の知識を有する者が自身の知識と本開示に照らして日常的に決定することができる。所定の実施形態において、「有効量」又は「治療有効量」は、哺乳動物の体重に対する量(即ち、0.005mg/kg、0.01mg/kg、又は0.1mg/kg、又は1mg/kg、又は10mg/kg、又は50mg/kg、又は100mg/kg、又は200mg/kg、又は500mg/kg)として表すことができる。動物とヒトの総体表面積及び体重の差を考慮してFDAガイドラインを利用することにより、動物試験における「有効量」又は「治療有効量」からヒト等価1日用量を推定することができる。
【0058】
本願で使用する「栄養補助食品」は、自然状態若しくは生物学的プロセス、構造的及び機能的完全性、又は生物学的機能若しくは表現型状態の恒常性に関連する特定の病態を改善、促進、増進、管理、制御、維持、最適化、修飾、低減、阻害又は予防する製品である(即ち、疾患を診断、治療、緩和、治癒又は予防するためには使用されない)。例えば、関節健康関連病態に関しては、関節軟骨を維持するため、軟骨の分解を最小限にするため、軟骨完全性を保護することにより健康関節を促進するため、関節健康に影響を与える酵素の作用を弱めるため、関節運動及び/又は機能を改善するため、関節痛を軽減するため、関節こわばりを軽減するため、関節可動域及び/又は柔軟性を改善するため、可動性を促進するため、同化・異化恒常性の平衡を保つため、及び/又は同様の目的に栄養補助食品を使用することができる。所定の実施形態において、栄養補助食品は特殊分類の食品、機能食品、医療食であり、医薬品ではない。
【0059】
本願で使用する「治療する」又は「治療」とは、該当疾患又は病態をもつヒト等の哺乳動物における該当疾患又は病態の治療を意味し、(i)特に、哺乳動物に前記疾患又は病態の素因があるが、まだその疾患等をもつと診断されていない場合に、前記疾患又は病態が前記哺乳動物に発生するのを予防すること;(ii)前記疾患又は病態を抑制すること、即ち、その発生を止めること;(iii)前記疾患又は病態を緩和又は修飾すること、即ち、前記疾患又は病態の退縮を生じること;(iv)根底にある疾患又は病態に対処せずに、前記疾患又は病態に起因する症状を緩和すること(例えば、疼痛を緩和、炎症を抑制、軟骨減少を抑制すること);(v)同化・異化恒常性の平衡を保つこと、あるいは前記疾患又は病態の表現型を変化させることを含む。本願で使用する「疾患」及び「病態」なる用語は同義に使用する場合もあるし、特定の病的状態又は病態の原因物質が不明である(従って、病因がまだ突き止められていない)ため、まだ疾患として認められず、多少の特定の症状群が臨床医により確認されている望ましくない病態又は症候群としてしか認められていないという意味で同義でない場合もある。
【0060】
本願で使用する「統計的有意性」なる用語は、スチューデントのt検定を使用して計算した場合にp値が0.050以下であることを意味し、特定の事象又は測定結果が偶然に生じたとは考えにくいことを示す。
【0061】
投与の目的では、本開示の化合物は粗化合物として投与してもよいし、薬学的又は栄養薬学的組成物として製剤化してもよい。本開示の薬学的又は栄養薬学的組成物は、本開示に記載する構造の化合物と、薬学的又は栄養薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含んでいる。本願に記載する構造の化合物は、特定の該当疾患又は病態を治療するために有効な量、即ち、軟骨細胞、又は細胞外マトリックス、又は軟骨恒常性又は本願に記載する他の関連する効能を促進するために十分であり、一般に患者への毒性が許容されるような量で前記組成物中に存在する。
【0062】
純形態又は好適な薬学的若しくは栄養薬学的組成物としての本開示の化合物若しくは組成物、又はその薬学的若しくは栄養薬学的に許容される塩の投与は、同様の用途の薬剤に許容される投与方式のいずれかにより実施することができる。本開示の薬学的又は栄養薬学的組成物は、本開示の化合物に好適な薬学的又は栄養薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を加えることにより製造することができ、固形、半固形、液状又は気体状の製剤に製剤化することができ、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、粒剤、軟膏剤、溶液剤、坐剤、注射剤、吸入剤、ジェル剤、クリーム剤、ローション剤、チンキ剤、サシェ剤、即席飲料、マスク剤、マイクロスフェア剤、及びエアゾール剤が挙げられる。このような薬学的又は栄養薬学的組成物の典型的な投与経路としては、経口、局所、経皮、吸入、非経口、舌下、頬側、経直腸、経膣、又は鼻腔内が挙げられる。本願で使用する非経口なる用語は、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射又は輸液技術を含む。本開示の薬学的又は栄養薬学的組成物は、前記組成物を患者に投与すると、前記組成物に含まれる活性成分が生体利用性になるように製剤化される。対象又は患者又は哺乳動物に投与される組成物は、1用量単位以上の形態をとり、例えば、錠剤1錠は1用量単位とすることができ、本開示の化合物又は抽出物又は2~3種の植物抽出物の組成物をエアゾール剤として充填した容器は複数の用量単位を保持することができる。このような剤形の実際の製造方法は当業者に公知であり、又は容易に理解されよう。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition(Philadelphia College of Pharmacy and Science,2000)参照。投与する組成物はいずれにせよ、本開示の教示に従って該当疾患又は病態を治療するために、治療有効量の本開示の化合物又はその薬学的若しくは栄養薬学的に許容される塩を含むであろう。
【0063】
本開示の薬学的又は栄養薬学的組成物は固形でも液状でもよい。1態様において、前記担体は粒状であり、従って、前記組成物は例えば錠剤又は散剤形態である。前記担体は液状でもよく、前記組成物は例えば、経口シロップ剤、注射液剤、又は例えば吸入投与に有用なエアゾール剤である。
【0064】
経口投与用の場合、前記薬学的又は栄養薬学的組成物は固形クリーム剤、懸濁剤であり、ジェル形態は本願で固形又は液状とみなす剤形に含まれる。
【0065】
経口投与用固形組成物として、前記薬学的又は栄養薬学的組成物は散剤、粒剤、圧縮錠剤、丸剤、カプセル剤、チューインガム剤、サシェ剤、ウエハース剤、バー剤等の剤形に製剤化することができる。このような固形組成物は、一般的に1種以上の不活性希釈剤又は可食性担体を含む。更に、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、シクロデキストリン、微結晶セルロース、トラガカントガム又はゼラチン等の結合剤;澱粉、ラクトース又はデキストリン等の賦形剤;アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、Primogel、コーンスターチ等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムやSterotex等の滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素等の滑剤;ショ糖やサッカリン等の甘味剤;ペパーミント、サリチル酸メチル又はオレンジフレーバー等のフレーバー剤;及び着色剤の1種以上を添加してもよい。
【0066】
前記薬学的又は栄養薬学的組成物がカプセル剤(例えば、ゼラチンカプセル剤)の剤形である場合には、上記種類の材料に加え、ポリエチレングリコールや油類等の液状担体を含むことができる。
【0067】
前記薬学的又は栄養薬学的組成物は液剤でもよく、例えば、エリキシル剤、チンキ剤、シロップ剤、溶液剤、乳剤又は懸濁剤とすることができる。前記液剤は、2例を挙げると、経口投与用又は注射による送達用とすることができる。経口投与用の場合には、有用な組成物は本願の化合物に加え、甘味剤、保存剤、色素/着色剤及びフレーバーエンハンサーの1種以上を含む。注射投与用組成物では、界面活性剤、保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、緩衝液、安定剤及び等張剤の1種以上を添加することができる。
【0068】
本開示の液状の薬学的又は栄養薬学的組成物は、溶液剤、懸濁剤又は他の同等の形態のいずれかであるかに関係なく、以下の補助剤、即ち、注射用水、生理食塩水等の食塩水、リンゲル液、等張塩化ナトリウム、溶媒又は懸濁媒として利用できる合成モノ又はジグリセリド等の不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の溶媒等の滅菌希釈剤;ベンジルアルコールやメチルパラベン等の抗菌剤;アスコルビン酸や重硫酸ナトリウム等の酸化防止剤;エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩等の緩衝液;及び塩化ナトリウムやデキストロース等の張度調節剤の1種以上を含むことができる。非経口製剤は、ガラス又はプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ又はマルチドーズバイアルに封入することができる。生理食塩水が一般に有用な補助剤である。注射用の薬学的又は栄養薬学的組成物は無菌とする。
【0069】
本開示の非経口又は経口投与用の液状の薬学的又は栄養薬学的組成物は、好適な投与量が得られるような量の本開示の化合物を含むべきである。
【0070】
本開示の薬学的又は栄養薬学的組成物は局所投与用としてもよく、その場合には、前記担体は溶液剤、乳剤、クリーム剤、ローション剤、軟膏剤、又はジェル担体を含むと適切である。前記担体は、例えば、ペトロラタム、ラノリン、ポリエチレングリコール、蜜蝋、鉱油、水やアルコール等の希釈剤、乳化剤及び安定剤の1種以上を含むことができる。局所投与用の薬学的又は栄養薬学的組成物には、増粘剤を添加してもよい。経皮投与用の場合には、前記組成物は、経皮パッチやイオントフォレシス装置を含むことができる。
【0071】
本開示の薬学的又は栄養薬学的組成物は経直腸投与用とすることもでき、例えば、直腸内で溶けて薬物を放出する坐剤の形態とすることができる。直腸投与用の前記組成物は、好適な非刺激性賦形剤として油性担体を含むことができる。このような担体としては、ラノリン、カカオ脂及びポリエチレングリコールが挙げられる。
【0072】
本開示の薬学的又は栄養薬学的組成物は、固形又は液状用量単位の物理的形状を変える種々の材料を含むことができる。例えば、前記組成物は、活性成分の周囲にコーティングシェルを形成する材料を含むことができる。コーティングシェルを形成する材料は、一般的に不活性であり、例えば、糖、シェラック及び他の腸溶性コーティング剤から選択することができる。あるいは、活性成分をゼラチンカプセルに封入してもよい。
【0073】
固形又は液状の本開示の薬学的又は栄養薬学的組成物は、本開示の化合物と結合して化合物の送達を補助する物質を含むことができる。この機能を行うことができる好適な物質としては、モノクローナル抗体若しくはポリクローナル抗体、タンパク質又はリポソームが挙げられる。
【0074】
固形又は液状の本開示の薬学的又は栄養薬学的組成物は、例えば、生体利用性を改善するために粒子のサイズを小さくすることができる。賦形剤の有無を問わずに組成物中における粉末、顆粒、粒子、マイクロスフェア等のサイズは、サイズと嵩密度を改善するように、マクロ(例えば、目視可能又は少なくとも100μmのサイズ)、マイクロ(例えば、約100μm~約100nmの範囲のサイズとすることができる)、ナノ(例えば、100nm以下のサイズ)、及びその中間の任意のサイズ又は任意のそれらの組み合わせとすることができる。
【0075】
本開示の薬学的又は栄養薬学的組成物は、エアゾール剤として投与することができる用量単位から構成することができる。エアゾールなる用語は、コロイド状のシステムをはじめ、加圧パッケージから構成されるシステムに至る種々のシステムを表すために使用される。液化若しくは圧縮ガス又は活性成分を分配する好適なポンプシステムにより送達を行うことができる。本開示の化合物のエアゾール剤は、活性成分を送達するために、単相、二相又は三相系で送達することができる。エアゾール剤の送達は必要な容器、アクチベーター、バルブ、内側容器等を含み、全体でキットを形成することができる。当業者は、過度の実験を経ずに最適なエアゾール剤を決定することができる。
【0076】
本開示の薬学的又は栄養薬学的組成物は、薬学又は栄養薬学分野で周知の手法により製造することができる。例えば、本開示の化合物に滅菌蒸留脱イオン水を加えて溶液を形成することにより、注射投与用の薬学的若しくは栄養薬学的組成物を製造することができる。均一な溶液又は懸濁液の形成を助長するために界面活性剤を加えることができる。界面活性剤は、本開示の化合物と非共有結合的に相互作用し、水性送達系における前記化合物の溶解又は均一な懸濁を助長する化合物である。
【0077】
本開示の化合物又はその薬学的若しくは栄養薬学的に許容される塩は治療有効量を投与されるが、このような有効量は、利用される特定の化合物の活性、化合物の代謝安定性と作用時間、患者の年齢、体重、一般健康状態、性別及び食生活、投与方式及び時期、排泄速度、薬物併用、特定の障害又は病態の重症度、並びに治療を受ける対象等の種々の因子により異なるであろう。
【0078】
本開示の化合物又は薬学的若しくは栄養薬学的に許容されるその誘導体は、食品、水及び1種以上の他の治療剤と同時に投与してもよいし、その前に投与してもよいし、その後に投与してもよい。このような併用療法は、本開示の化合物又は抽出物又は2~3種の植物抽出物から成る組成物と1種以上の他の活性剤を含む単一の薬学的又は栄養薬学的製剤を投与する方法と、本開示の化合物又は抽出物又は2~3種の植物抽出物から成る組成物と各活性剤を夫々別々の薬学的又は栄養薬学的製剤として投与する方法を含む。例えば、本開示の化合物又は抽出物又は2~3種の植物抽出物から成る組成物と別の活性剤を錠剤又はカプセル剤等の単一の経口投与組成物で一緒に患者に投与することもできるし、各剤を別々の経口投与製剤で投与することもできる。別々の投与製剤を使用する場合には、本開示の化合物と1種以上の他の活性剤を本質的に同一時点で、即ち、同時に投与することもできるし、時間をずらせて別々に、即ち、逐次投与することもでき、併用療法はこれらの全てのレジメンを含むものと理解されたい。
【0079】
当然のことながら、本願の記載では、表記する式の置換基又は変数を組み合わせて安定な化合物が得られる場合に限り、このような組み合わせが許容される。
【0080】
また、当業者に自明の通り、本願に記載する方法では、中間化合物の官能基を好適な保護基により保護することが必要な場合がある。このような官能基としては、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基及びカルボン酸基が挙げられる。ヒドロキシ基の好適な保護基としては、トリアルキルシリル基又はジアリールアルキルシリル基(例えば、t-ブチルジメチルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基又はトリメチルシリル基)、テトラヒドロピラニル基、ベンジル基等が挙げられる。アミノ基、アミジノ基及びグアニジノ基の好適な保護基としては、t-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基等が挙げられる。メルカプト基の好適な保護基としては、C(O)-R”(式中、R”はアルキル、アリール又はアリールアルキルである。)、p-メトキシベンジル基、トリチル基等が挙げられる。カルボン酸基の好適な保護基としては、アルキル基、アリール基又はアリールアルキルエステル基が挙げられる。保護基は標準技術に従って付加又は除去することができ、このような技術は当業者に公知であり、本願に記載する通りである。保護基の使用については、Green,T.W.and P.G.M.Wutz,Protective Groups in Organic Synthesis(1999),3rd Ed.,Wileyに詳細に記載されている。当業者に自明の通り、保護基はWang樹脂、Rink樹脂又は2-クロロトリチルクロリド樹脂等のポリマー樹脂でもよい。
【0081】
同様に当業者に自明の通り、本開示の化合物のこのような保護誘導体はその状態では薬理活性を有していなくてもよいが、哺乳動物に投与した後、生体内で代謝されて薬理的に活性な本開示の化合物を形成することができる。従って、このような誘導体は、「プロドラッグ」と言うことができる。本開示の化合物の全てのプロドラッグが本開示の範囲に含まれる。
【0082】
更に、遊離塩基又は遊離酸形態で存在する本開示の全化合物又は抽出物は、当業者に公知の方法により好適な無機塩基、有機塩基、無機酸又は有機酸で処理することにより、その薬学的又は栄養薬学的に許容される塩に変換することができる。本開示の化合物の塩は、標準技術によりその遊離塩基又は遊離酸形態に変換することができる。
【0083】
ある種の実施形態において、本開示の化合物又は抽出物は、植物資源、例えば、実施例及び本願の随所の他の箇所で言及する植物資源から単離することができる。化合物の単離に適した植物部分としては、葉、樹皮、幹、幹樹皮、茎、茎樹皮、小枝、塊茎、根、根茎、根樹皮、樹皮表層、新梢、種子、果実、雄蕊群、雌蘂群、萼、雄蕊、花弁、萼片、心皮(雌蘂)、花、又は任意のそれらの組み合わせが挙げられる。ある種の関連する実施形態において、前記化合物又は抽出物は植物資源から単離され、指定する置換基のいずれかを含むように合成的に修飾される。この点に関して、植物から単離された化合物の合成的修飾は、当技術分野で公知の多数の技術を使用して実施することができ、このような技術は、当技術分野における通常の知識を有する者の知識の範囲内に十分に含まれる。
【0084】
コキア・スコパリア(Kochia scoparia)は、バッシア・スコパリア(Bassia scoparia)、バッシア・シエベルシアナ(Bassia sieversiana)、コキア・アラタ(Kochia alata)、コキア・トリコフィラ(Kochia trichophila)、コキア・トリコフィッラ(Kochia trichophylla)とも呼ばれ、種子から生長する大型の一年生草本であり、バーニングブッシュ(burning bush)、ブタクサ、サマーサイプレス(summer cypress)、コキア及びメキシカンファイアウィード(Mexican fireweed)の通称名で知られる。この植物はアジア原産であるが、北米の多くの地域でも帰化している。コキア・スコパリア植物は高濃度のタンパク質を含んでおり、家畜の飼草に広く使用されている。種子は鳥類の食料になり、家禽飼料としても有用である。コキア種子は日本ではとんぶり又は畑のキャビアと呼ばれ、料理の付け合わせとしても使用されている。
【0085】
コキア果実又は種子は、皮膚病、糖尿病、関節リウマチ、肝障害及び黄疸等の種々の疾患を治療するためにアジア諸国で民間療法として使用されている。最近の研究によると、コキア種子は抗酸化作用、抗炎症作用、抗寄生虫作用、抗がん作用、抗糖尿病作用、血糖降下作用、減量作用、抗アレルギー作用、鎮痛作用を有することも報告されている。コキア果実の有効性の大半を担う活性成分としてオレアノール酸型トリテルペノイドサポニンが同定された。モモルジンIcはモモルディカ・コキンキネンシス(Momordica cochinchinensis)から最初に単離されたが、コキア果実の主成分であり、マウスの後足舐め試験及びホルマリン試験において抗侵害受容活性と抗炎症活性を有する種々の天然生薬でも報告されている。70%コキア果実エタノール抽出物とモモルジンIcは、いずれもマウスのカラゲニン誘発足蹠浮腫モデルで抑制作用を示した。
【0086】
コキア抽出物は、実施例1~4で実証するように、目的化合物又は組成物の一部として利用することができる所期成分又は構成要素である。コキア抽出物は、任意の好適な資源から得られ、コキア・スコパリア(Kochia scoparia)、バッシア・スコパリア(Bassia scoparia)、バッシア・アングスティフォリア(Bassia angustifolia)、モモルディカ・コキンキネンシス(Momordica cochinchinensis)、バッシア・ディンテリ(Bassia dinteri)、バッシア・エリオフォラ(Bassia eriophora)、バッシア・ヒッソピフォリア(Bassia hyssopifolia)、バッシア・インディカ(Bassia indica)、バッシア・ラニフローラ(Bassia laniflora)、バッシア・ラシアンサ(Bassia lasiantha)、バッシア・リットレア(Bassia littorea)、バッシア・ムリカタ(Bassia muricata)、バッシア・オドントプテラ(Bassia odontoptera)、バッシア・ピロサ(Bassia pilosa)、バッシア・プロスタラタ(Bassia prostrata)、バッシア・サルソロイデス(Bassia salsoloides)、バッシア・ステラリス(Bassia stellaris)、バッシア・ティアンスカニカ(Bassia tianschanica)、バッシア・トメントサ(Bassia tomentosa)、バッシア・ヴィロシッシマ(Bassia villosissima)又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0087】
【0088】
実施例1、2、3及び4で例証するように、コキア抽出物に本願の1種以上の所期成分を高濃度化することができる。コキア・スコパリアから単離した所期サポニンを、CO2の超臨界流体、水、メタノール、エタノール、アルコール、水混合溶媒若しくはそれらの組み合わせを含む任意の好適な溶媒又は超臨界流体で抽出する。所期実施形態において、前記コキア抽出物は、約0.01%~約99.9%のサポニンを含んでいる。コキア抽出物から単離される所期サポニンは、バッシアサポニンA、バッシアサポニンB、コキオシドA、コキオシドB、コキオシドC、コキアノシドI、スコパリアノシドA、スコパリアノシドB、スコパリアノシドC、モモルジンIc、コキアノシドI、コキアノシドII、コキアノシドIII、コキアノシドIV、2’-O-グルコピラノシルモモルジンIc、2’-O-グルコピラノシルモモルジンIIc等である。
【0089】
アルピニア・ガランガ(Alpinia galanga)はショウガ科に属しており、東南アジア料理でスパイスハーブとして使用されており、レンクワス、大ガランガル及びブルージンジャーの通称名で知られる。この植物は、東南アジア原産の多年生草本であり、スンダ列島、フィリピン及びタイに広く生育する。この植物の根茎は食用に使用されており、持続作用はないが、ブラックペッパーに似たユニークな刺激性がある。アルピニア・ガランガは、従来から湿疹、気管支炎、内耳炎、胃炎、潰瘍及びコレラ等の各種疾患の治療、食欲増進、強壮作用等に使用されている。アルピニア・ガランガには多数の薬理活性が報告されており、特に抗細菌作用、抗真菌作用、抗ウイルス作用、免疫調節作用、抗酸化作用、抗糖尿病作用、鎮痛作用及び他の多数の薬理作用が挙げられる。
【0090】
アルピニア・ガランガの主な化学成分は、ケンフェロール、ケンフェリド等のフラボノイドと、トランス-p-クマリルジアセテート、ジ-(p-ヒドロキシ-シス-スチリル)メタン、酢酸オイゲノール、1’-ヒドロキシチャビコールアセテート、p-ヒドロキシシンナムアルデヒド等の揮発性成分であることが報告されている。本試験では、フェニルプロパノイドである1’-アセトキシチャビコールアセテート(ガランガルアセテート)とトランスp-クマリルジアセテートをこの植物の2種類の主要な活性化合物として単離・同定した。1’-アセトキシチャビコールアセテートは、アルピニア・ガランガの刺激成分であると報告されており、抗菌性と抗がん性も有することも報告されている。
【0091】
【0092】
アルピニア・ガランガのメタノール抽出物の局所塗布の抗炎症活性と鎮痛活性は実施例8、9、10及び11で例証された。アルピニアメタノール抽出物の抗炎症活性と鎮痛活性は、ラットのカラゲニン誘発足蹠浮腫モデルとホルマリン試験の両者でも確認された。主要なフェニルプロパノイドの1種である1’-アセトキシチャビコールアセテートとアルピニア・ガランガのアセトン抽出物は、ラットの不完全フロイント補助剤(IFA)誘発関節炎モデルにおいて有効であることが報告されている。
【0093】
アルピニア抽出物は、目的化合物又は組成物の一部として利用することができる所期成分又は構成要素である。アルピニア抽出物は、任意の好適なガランガル資源から得られ、アルピニア・ガランガ、アルピニア・オフィシナルム(Alpinia officinarum)、ボエセンベルギア・ロツンダ(Boesenbergia rotunda)、ケンフェリア・ガランガ(Kaempferia galanga)、アルピニア・オキシフィラ(Alpinia oxyphylla)、アルピニア・アブンディフローラ(Alpinia abundiflora)、アルピニア・アクロスタキヤ(Alpinia acrostachya)、アルピニア・カエルレア(Alpinia caerulea)、アルピニア・カルカラータ(Alpinia calcarata)、アルピニア・コンキゲラ(Alpinia conchigera)、アルピニア・グロボサ(Alpinia globosa)、アルピニア・ジャバニカ(Alpinia javanica)、アルピニア・メラノカルパ(Alpinia melanocarpa)、アルピニア・ムチカ(Alpinia mutica)、アルピニア・ニグラ(Alpinia nigra:チクリンカ)、アルピニア・ヌタンス(Alpinia nutans)、アルピニア・ペティオラレ(Alpinia petiolate)、アルピニア・プルプラタ(Alpinia purpurata:レッドジンジャー)、アルピニア・ピラミダタ(Alpinia pyramidata)、アルピニア・ラフレシアナ(Alpinia rafflesiana)、アルピニア・スペシオサ(Alpinia speciosa:ゲットウ)、アルピニア・ヴィッタータ(Alpinia vittata:フイリゲットウ)、アルピニア・ゼルムベト(Alpinia zerumbet:ゲットウ)、アルピニア・ジンジベリナ(Alpinia zingiberina)、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0094】
実施例8、9、10及び11で実証するように、アルピニア抽出物に本願の1種以上の所期成分を高濃度化することができる。アルピニア抽出物から単離した所期芳香族を、CO2の超臨界流体、水、メタノール、エタノール、アルコール、水混合溶媒、ヘキサン、酢酸エチル、アセトン、ブタノール等の有機溶媒若しくはそれらの組み合わせを含む任意の好適な溶媒、又は超臨界流体で抽出し、あるいは根茎中の油分の水蒸留により抽出する。所期実施形態において、前記アルピニア抽出物は、約0.01%~約99.9%のフェニルプロパノイド低分子芳香族を含んでいる。アルピニア抽出物から単離される所期芳香族は、1’-アセトキシオイゲノールアセテート;コニフェリルジアセテート;3-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロペナール;3-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロペン-1-オール;メチルシンナメート,FEMA2698;3-(4-メトキシフェニル)-2-プロペン-1-オール;1’-ヒドロキシチャビコールアセテート;4-アセトキシシンナミルアルコール;4-アセトキシシンナミルエチルエーテル;1’-エトキシチャビコールアセテート;1-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2-プロペン-1-オール;S体,3’-メチルエーテル,4’-Ac;1’-アセトキシチャビコールアセテート;1-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロペン-1-オール;体,ジアセテート;3-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロペン-1-オール;E体,ジアセテート;4-(2-プロペニル)-1,2-ベンゼンジオール;1-O-D-グルコピラノシド;4-(2-プロペニル)-1,2-ベンゼンジオール;2-O-D-グルコピラノシド;ビス(4-アセトキシシンナミル)エーテル;エチル4-フェルロイル-D-グルコピラノシド;ルシタニコシド(Lusitanicoside);4-(2-プロペニル)-1,2-ベンゼンジオール;1-O-[-L-ラムノピラノシル-D-グルコピラノシド];4-(2-プロペニル)-1,2-ベンゼンジオール;ジ-O-D-グルコピラノシド;4’-O-トランス-フェルロイルタキオシド又はそれらの組み合わせである。
【0095】
ピペル・ニグルム(Piper nigrum)はブラックペッパーの通称名で知られ、コショウ科(Piperaceae)のつる性植物である。本開示において、「ピペル」、「ペッパー」及び「ピペル/ペッパー」なる用語は同義に使用され、この抽出物又は成分を含む実施形態を意味する。ブラックペッパーは、南西インドのケーララ州の原産であり、ベトナム、インド及びインドネシア等の熱帯地域で大規模に栽培されている。粉砕して乾燥した果実はペッパーコーンと呼ばれ、その芳香のために使用されており、また、伝統薬として使用されている。ブラックペッパーは、世界中で最も広く使用されている香辛料の一つである。ピペリンは、辛く刺激的な芳香に寄与するブラックペッパーの主成分である。
【0096】
【0097】
ブラックペッパーコーンは、南アジアでアーユルヴェーダ、シッダ及びユナニ医学における治療薬として重要な役割を果たしている。ブラックペッパーコーンはアペタイザーとして使用され、消化器系関連障害を治療するためにも使用されている。ブラックペッパーは、咽喉炎症を抑えるために咽喉痛の治療薬として使用することができる。外用では、脱毛を抑制し、所定の皮膚トラブルを治療するために適用することができる。ブラックペッパーには、抗真菌作用、抗酸化作用、消化促進作用、抗鬱・認知作用、鎮痛・抗炎症作用、抗がん作用、免疫調節作用、脂質低下作用等の多くの薬理作用が報告されている。
【0098】
ピペル抽出物は、目的化合物又は組成物の一部として利用することができる所期成分又は構成要素である。ピペル抽出物は、実施例5、6及び7に例証するような任意の好適な資源から得られ、ピペル・ニグルムと多くの他のピペル種(Piper spp.)、ペリコニア種(Periconia sp.)、ピペル・ニグルム、ピペル・ロングム(Piper longum:ヒハツ)、ピペル・アマルゴ(Piper amalgo:メカショチトル)、ピペル・オーランティアカム(Piper aurantiacum)、ピペル・チャバ(Piper chaba)、ピペル・カペンセ(Piper capense)、ピペル・クラッシネルビウム(Piper crassinervium)、ピペル・ギネエンセ(Piper guineense)、ピペル・メチスチカム(Piper methysticum:カバ)、ピペル・ノバエホランディアエ(Piper novae-hollandiae)、ピペル・ピープロイデス(Piper peepuloides)、ピペル・ポナペンセ(Piper ponapense)、ピペル・プベルラム(Piper puberulum)、ピペル・レトロフラクタム(Piper retrofractum)、ピペル・シンテネンセ(Piper sintenense)、ピペル・ツベルクラタム(Piper tuberculatum)、ピペル・ハンセイ(Piper hancei)、グリシン・マックス(Glycine max:ダイズ)、ペトロシモニア・モナンドラ(Petrosimonia monandra)、メンタ・ピペリタ(Mentha piperata:ペパーミント)、プシロカウロン・アブシミレ(silocaulon absimile)、及びウロクラディウム種(Ulocladium sp)又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0099】
主活性アルカロイド化合物であるピペリンは広く研究されており、中枢神経系抗うつ剤及び神経刺激剤として作用することと、抗酸化作用、解熱作用、肝保護作用、鎮痛作用、抗炎症作用、殺虫作用及び多くの他の作用を有することが報告されている。ピペリンは生体利用性促進剤としても報告されている。
【0100】
実施例5、6及び7で例証するように、ピペル抽出物に本願の1種以上の所期成分を高濃度化することができる。ピペル抽出物から単離した所期アルカロイドを、CO2の超臨界流体、水、メタノール、エタノール、アルコール、水混合溶媒、酢酸エチル、アセトン、ブタノール等の有機溶媒若しくはそれらの組み合わせを含む任意の好適な溶媒、又は超臨界流体で抽出する。所期実施形態において、前記ピペル抽出物は、約0.01%~約99.9%のピペリジンアルカロイドを含んでいる。ピペル抽出物から単離される所期アルカロイドは、ピペリン;ピペルカバミドA;カオウシン(Kaousine);5-アセトキシ-5,6-ジヒドロ-1-(3-フェニルプロパノイル)-2(1H)-ピリジノン;5,6-ジヒドロ-N-(3,4-ジメトキシシンナモイル)-2(1H)-ピリジノン;N-[3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロパノイル]-5,6-ジヒドロ-2(1H)-ピリジノン;セノクラダミド;3,4-エポキシピペルメチスチン;4’-O-デメチルピプラルチン;ピプラルオキシド;シス-ピプラルチン;ピプラルチン;8,9-ジヒドロピプラルチン;3,4-エポキシ-8,9-ジヒドロピプラルチン;シクロギネエンセB;ニグラミドK;ニグラミドH;ニグラミドJ;ニグラミドM;ニグラミドN;ニグラミドI;ニグラミドL;カバミドH;カバミドI;ニグラミドQ;ニグラミドA;ニグラミドC;ニグラミドP;ジピペラミドC;ニグラミドG;ジピペラミドA;ジピペラミドE;ピペルシクロブタンアミドA;ニグラミドR;ニグラミドB;ジピペラミドB;ジピペラミドF;ジピペラミドG;ニグラミドF;ピペルカバミドG;ピペラルボレニンA;ピプラルチンダイマーA;7,8’-ジエピマー,3,3’-ビス(デメトキシ);1,1’-[[2,4-ビス(6-メトキシ-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-1,3-シクロブタンジイル]ジカルボニル]ビスピペリジン;ピペラルボレニンE;ピペルシクロブタンアミドB;ジピペラミドD;ニグラミドS;ニグラミドD;ニグラミドE;ピペラルボレニンD;ピペラルボレニンB;2,4-ビス(2-メトキシ-4,5-メチレンジオキシフェニル)-1,3-シクロブタンカルボン酸ジピペリジド;3’-メトキシ;ピペラルボレニンC;ピペラルボレシン;ピペルカバミドH;1,1’-[[2,4-ビス(3,4,5-トリメトキシフェニル)-1,3-シクロブタンジイル]ジカルボニル]ビス[5,6-ジヒドロ-2(1H)-ピリドン];3-フェニルプロパン酸2,3-ジデヒドロ-4-ヒドロキシピペリジド;1-(1,6-ジオキソ-2,4-デカジエニル)ピペリジン;1-[5-(4-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2,4-ペンタジエニル]ピペリジン;イレプシミド;3,4-メチレンジオキシシンナモイルピペリジド;Z体;3,4-ジヒドロキシ-1-(3-フェニルプロパノイル)-2-ピペリジノン;4,5-ジヒドロキシ-2-デセン酸ピペリジド;4,5-ジヒドロキシ-2-デセン酸;(2E,4S,5R)体,ピペリジド;カビシン;イソカビシン;イソピペリン;ピペルペンセ;フェルペリン;1-[5-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-1-オキソ-2-ペンテニル]ピペリジン;N-(3-メトキシ-4,5-メチレンジオキシシンナモイル)ピペリジド;2-メトキシ-4,5-メチレンジオキシシンナモイルピペリジド;2-ヒドロキシ-4,5-メチレンジオキシ桂皮酸;Z体,メチルエーテル,ピペリジド;ジヒドロフェルペリン;テトラヒドロピペリン;ピペルロングムアミドC;プベルルミン;1-[7-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-1-オキソ-2,4,6-ヘプタトリエニル]ピペリジン;1-[7-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-1-オキソ-2,4-ヘプタジエニル]ピペリジン;ピペルシンテンアミド;ウィサニン;(E,E)体;ピペルエックス(Piperx);ピペロレインA;E体;ピペリンS;ピペロジオン;4,5-ジヒドロ-2’-メトキシピペリン;2,4-ヘキサデカジエン酸ピペリジド;ピペルロングミン(Piperlongimine)B;11-フェニル-2,4-ウンデカジエン酸ピペリジド;ピペルロングムアミドB;1-[8-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-1-オキソ-7-オクタデセニル]ピペリジン;デヒドロピペルノナリン;ピプチグリン(Piptigrine);1-[9-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-1-オキソ-2,8-ノナジエニル]ピペリジン;ピペロレインB;ピペルオクタデカリジン;2,4,12-オクタデカトリエン酸ピペリジド;2,4-オクタデカジエン酸ピペリジド;1-[11-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-1-オキソ-2,4,10-ウンデカトリエニル]ピペリジン;ピペルカバミドB;ピペルエイコサリジン;1-[8,9-ジヒドロキシ-9-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-2-ノネノイル]ピペリジン;ピペルノナリン;8,9-ジヒドロ,8R*,9S*-ジヒドロキシ;N-(2,14-エイコサジエノイル)ピペリジン;2,4-エイコサジエン酸ピペリジド;1-[13-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-1-オキソ-2,4,12-トリデカトリエニル]ピペリジン;ピペルトリデカジエンアミド;ピプセエジン;ピプビニネオル(Pipbinineor);又はそれらの組み合わせである。
【0101】
マグノリア・オフィシナリス(Magnolia officinalis)は中国語では一般に「ホウプ(houpu)」として知られており、最も一般的な漢方薬植物の1つであり、非常に広範な用途がある。これは中国原産のマグノリア(Magnolia)種であり、主に四川省と湖北省で生育している。ホウプとは、その厚い樹皮のことであり、茎、枝及び根から剥がすことができる。伝統的な適応症は、中風(wind stroke)、傷寒(cold damage)、頭痛、気の障害(fight qi)及び血流障害の治療である。マグノリア樹皮は、月経痙攣、腹痛、腹部膨満・鼓腸、悪心及び消化不良の治療にも使用されている。この樹皮は咳と喘息を治療するために使用されている処方における成分でもある。マグノリア樹皮を含む製剤の多くは、咳と喘息を含む肺疾患又は腸管感染症・痙攣の治療や、種々の原因の腹部腫脹・浮腫の緩和に使用されている。
【0102】
有効性を担う主活性成分としてビスフェノール性リグナンが同定されている。マグノリア樹皮に含まれる2種の主要なポリフェノール化合物であるマグノロールとホノキオールは、抗酸化作用、抗炎症作用及び抗腫瘍作用等の種々の薬理活性・機能をもつと報告されている(Park 2004)。ホノキオールの抗がん試験は、乳がん、前立腺がん、胃がん及び卵巣がん等の数種の異なる固形腫瘍種まで拡大しており、現行の抗がんレジメンを改良できる可能性がある(Fried 2009)。ホノキオールは更に炎症と酸化ストレスを抑制し、神経保護と血糖量調節に有益な効果があり、炎症性疾患の治療剤として非常に有望である。特に、マグノロールとホノキオールは、グラム陽性菌及びグラム陰性菌と真菌、例えばプロピオニバクテリウム菌(Propionibacterium sp.)や黄色ブドウ球菌(S.aureus)に対して強力な抗菌活性を示すことが知られており、感染性の高い抗生物質耐性微生物に対して有効な抗菌剤として有望であることを示している(Bopaiah 2001;Bang 2000;Syu 2004)。市販のマグノリア樹皮抽出物中のホノキオールとマグノロールの含有量は1~99%であり得る。
【0103】
【0104】
実施例13で実証するように、マグノリア抽出物は、目的化合物又は組成物の一部として利用することができる所期成分又は構成要素である。マグノリア抽出物は、任意の好適な資源から得ることができ、マグノリア・オフィシナリス(Magnolia officinalis)、マグノリア・アクミナータ(Magnolia acuminate)、マグノリア・ビオンディ(Magnolia biondii)、マグノリア・ココ(Magnolia coco)、マグノリア・デヌダータ(Magnolia denudate)、マグノリア・ファルゲシ(Magnolia fargesii)、マグノリア・ガレッティ(Magnolia garrettii)、マグノリア・グランディフローラ(Magnolia grandiflora)、マグノリア・ヘンリイ(Magnolia henryi)、マグノリア・リリフローラ(Magnolia liliflora)、マグノリア・カチラチライ(Magnolia kachirachirai)、マグノリア・コブス(Magn)、マグノリア・オボバータ(Magnolia obovata)、マグノリア・プラエコシッシマ(Magnolia praecocissima)、マグノリア・プテロカルパ(Magnolia pterocarpa)、マグノリア・ピラミダタ(Magnolia pyramidata)、マグノリア・ロストラータ(Magnolia rostrate)、マグノリア・サリシフォリア(Magnolia salicifolia)、マグノリア・シーボルディ(Magnolia sieboldii)、マグノリア・スーランジアナ(Magnolia soulangeana)、マグノリア・ステラータ(Magnolia stellate)、マグノリア・ヴィルジニアーナ(Magnolia virginiana)、カバ材リグニンの分解物、アカンサス・エブラクテアタス(Acanthus ebracteatus)、アプトシマム・スピネッセンス(Aptosimum spinescens)、アラリア・ビピナータ(Aralia bipinnata)、アラウカリア・アングスティフォリア(Araucaria angustifolia)、アラウカリア・アラウカーナ(Araucaria araucana)、アルテメシア・アブシンシューム(Artemisia absinthium)、ハプロフィラム・アクチフォリウム(Haplophyllum acutifolium)、ハプロフィラム・パーフォラタム(Haplophyllum perforatum)、リリオデンドロン・チューリピフェラ(Liriodendron tulipifera)、クラメリア・シスチソイデス(Krameria cystisoides)、ペリラ・フルテッセンス(Perilla frutescens)、ローソニア・イネルミス(Lawsonia inermis)、ミリスチカ・フラグランス(Myristica fragrans)(ナツメグ)、パラクメリア・ユンナネンシス(Parakmeria yunnanensiss)(好ましい属名はマグノリア(Magnolia))、パーシー・ジャポニカ(Persea japonica)、ピペル・フウトウカズラ(Piper futokadsura)、ピペル・ワイティ(Piper wightii)、ロリニア・ムコサ(Rollinia mucosa)、サッサフラス・ランダイエンセ(Sassafras randaiense)、スクロフラリア・アルビダ-コルシカ(Scrophularia albida-colchica)、ステレラ・カマエヤスメ(Stellera chamaejasme)、シリンガ・ヴェルチナ(Syringa velutina)、シジギウム・クミニ(Syzygium cumini)、タラウマ・グロリエンシス(Talauma gloriensis)、ヴィローラ・エロンガータ(Virola elongate)、ウルバノデンドロン・ベルコーサム(Urbanodendron verrucosum)、ウィクストロエミア・シコキアーナ(Wikstroemia sikokiana)又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0105】
マグノリア抽出物に本願の1種以上の所期成分を高濃度化することができる。マグノリア抽出物から単離した所期リグナンを、CO2の超臨界流体、水、メタノール、エタノール、アルコール、酢酸エチル、アセトン、ブタノール等の有機溶媒、水混合溶媒若しくはそれらの組み合わせを含む任意の好適な溶媒、又は超臨界流体で抽出する。所期実施形態において、前記マグノリア抽出物は、約0.01%~約99.9%のビフェノール性リグナンを含んでいる。マグノリア抽出物から単離される所期リグナンは、マグノロール;ホノキオール;マグナルデヒドD;マグナルデヒドD;4’-デオキシ,6’-ヒドロキシ;6,8-エポキシ-3,3’-リグナ-7,8’-ジエン-4’-オール;3,3’-リグナ-8,8’-ジエン-4,6’-ジオール;3,3’-リグナ-8,8’-ジエン-4,4’-ジオール;3,3’-リグナ-8,8’-ジエン-4,6’-ジオール;7’-異性体(E体);マグナルデヒドD;6’-メトキシ,4’-デオキシ;マグナルデヒドA;マグナルデヒドA;6’-ヒドロキシ,4’-デオキシ;6,8-エポキシ-3,3’-リグナ-7,8’-ジエン-4’-オール;9-ヒドロキシ;3,3’-リグナ-8,8’-ジエン-4,6’-ジオール;6’-メチルエーテル;3-ホルミル-2,2’-ジヒドロキシ-5,5’-ジ-2-プロペニルビフェニル;マグナルデヒドA;6’-メトキシ,4’-デオキシ;マグナルデヒドA;6-メトキシ,4-デオキシ;3,3’-リグナ-8,8’-ジエン-4,4’-ジオール;4-エチルエーテル;3,3’-リグナ-8,8’-ジエン-4,4’,5-トリオール;5-メチルエーテル;マグノリグナンE;マグノリグナンC;マグノリグナンA;8’,9’-ジヒドロキシホノキオール;3,3’-リグナ-8,8’-ジエン-4,4’-ジオール;4-O-(2-プロペニル)エーテル;4-ヒドロキシ-6’-メトキシ-3,3’-リグナ-7,7’-ジエン-9,9’-ジアル;マグナルデヒドC;スレオ-ホノキトリオール;エリスロ-ホノキトリオール;スレオ-マグノリグナンB;エリスロ-マグノリグナンB;クマノリグナン;マグノリグナンD;エリスロ-マグノリグナンD;5,5’-ジアリル-2’-(3-メチル-2-ブテニルオキシ)ビフェニル-2-オール;7-O-エチルホノキトリオール;6’-アミノ-3,3’-リグナ-8,8’-ジエン-6-オール;N-[2-(4-ヒドロキシフェニル)エチル];ホウプリン(Houpulin)C;ピペリチルマグノロール;ピペリチルホノキオール;ボルニルマグノロール;ホウプリンI;ホウプリンF;ホウプリンG;ホウプリンH;マグノリグナンA4’-グルコシド;マグノリグナンC6’-グルコシド;クロバンマグノロール;オイデスホノキオールA;オイデスホノキオールB;オイデスマグノロール又はそれらの組み合わせである。
【0106】
所期化合物、薬用組成物及び組成物は、少なくとも1種の活性成分を含むこと、又は更に含むこと、又はそれらから構成することができる。ある種の実施形態において、少なくとも1種の生理活性成分は、植物粉末又は植物抽出物等を含むこと、又はそれらから構成することができる。
【0107】
上記実施形態のいずれにおいても、抽出物又は化合物の混合物を含む組成物を特定の重量比で混合することができる。実施例15で実証するように、アルピニア抽出物とペッパー抽出物を夫々1:2の重量比でブレンドすることができる。所定の実施形態において、本開示の2種類の抽出物又は化合物の(重量)比は、約0.5:5~約5:0.5の範囲とすることができる。3種以上(例えば、3種、4種、5種)の抽出物又は化合物を使用する場合にも同様の範囲が適用される。典型的な比としては、0.5:1、0.5:2、0.5:3、0.5:4、0.5:5、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、2:1、2:2、2:3、2:4、2:5、3:1、3:2、3:3、3:4、3:5、4:1、4:2、4:3、4:4、4:5、5:1、5:2、5:3、5:4、5:5、1:0.5、2:0.5、3:0.5、4:0.5、又は5:0.5が挙げられる。実施例14で例証する所定の実施形態では、本願に開示するアルピニア、及び/又はペッパー、及び/又はマグノリア、及び/又はコキアの個々の抽出物をブレンドし、3種の個々の抽出物が夫々1:1:1、2:1:1、3:1:1、4:1:1、5:1:1、1:2:1、1:3:1、1:4:1、1:5:1、1:1:2、1:1:3、1:1:4、1:1:5、1:2:3、1:2:4、1:2:5、1:2:6、1:2:6、1:2:8、1:2:9又は1:2:10等の重量比の組成物とする。他の実施形態では、本願に開示するアルピニア、ペッパー、マグノリア及びコキアの個々の抽出物を併用し、限定するものではないが、1例として、実施例14で実証するように、アルピニア:マグノリア:コキアのブレンド比を2:4:3及び5:4:4とし、AMKと呼ぶ組成物とした。他の実施形態では、アルピニア、ペッパー、マグノリア及びコキアの個々の抽出物を組み合わせ、非限定的な例として、アルピニア:ペッパー(AP)とアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)を含むこれらの抽出物の2~3種の種々の組み合わせとし、認識される生物学的機能の利点/欠点及び予想外の相乗作用/拮抗作用と、軟骨細胞、細胞外マトリックス、関節軟骨及び関節炎の表現型の同化・異化恒常性の有効な調節について、インビトロ、及び/又はエクスビボ及び/又はインビボモデルでこのような組み合わせを評価した。各抽出物中の化学成分の多様性と、各抽出物中の異なる種類の生理活性化合物からの異なる作用機序と、生物学的出力を最大にするように組成物中の天然化合物のADMEを向上する可能性により、インビトロ、及び/又はエクスビボ及び/又はインビボモデルで測定された予想外の相乗作用に基づいて、特定のブレンド比でアルピニア又はペッパー又はマグノリア又はコキアの個々の抽出物を含む最良の組成物を選択した。
【0108】
上記実施形態のいずれにおいても、抽出物又は化合物の混合物を含む組成物は、所定の百分率レベル又は比で存在することができる。所定の実施形態において、アルピニア抽出物及び/又はコキア抽出物を含む組成物は、0.1%~49.9%又は約2%~約40%又は約0.5%~約8%のアセトキシチャビコールアセテートと、0.1%~49.9%又は約1%~約10%又は約0.5%~約3%のモモルジンIc、又はそれらの組み合わせを含むことができる。所定の実施形態において、アルピニア抽出物を含む組成物は、約0.01%~約99.9%のアセトキシチャビコールアセテートを含むことができ、又は少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%又は80%のアセトキシチャビコールアセテート(例えば、1’-アセトキシチャビコールアセテート、又はp-クマリルジアセテート、又はその両方)を含むことができる。
【0109】
所定の例において、本開示の組成物は、薬学的又は栄養薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を更に含むように製剤化することができ、前記薬学的製剤又は栄養薬学的製剤は、抽出物混合物の活性成分又は主活性成分を約0.05重量パーセント(重量%)、又は0.5重量パーセント(重量%)、又は5%、又は25%~約95重量%の範囲で含む。他の実施形態において、前記薬学的製剤又は栄養薬学的製剤は、抽出物混合物中の主活性成分を約0.05重量パーセント(重量%)~約90重量%、約0.5重量%~約80重量%、約0.5重量%~約75重量%、約0.5重量%~約70重量%、約0.5重量%~約50重量%、約1.0重量%~約40重量%、約1.0重量%~約20重量%、約1.0重量%~約10重量%、約3.0重量%~約9.0重量%、約5.0重量%~約10重量%、約3.0重量%~約6重量%等の量で含む。上記製剤のいずれかにおいて、本開示の組成物は、錠剤、ハードカプセル剤、ソフトジェルカプセル剤、散剤又は粒剤として製剤化される。
【0110】
本願に開示する化合物の変換物も本願の対象とする。このような生成物は、例えば、主に酵素プロセスによる、投与した化合物の酸化、還元、加水分解、アミド化、エステル化等により得られる。従って、所期化合物は、所期化合物又は組成物の代謝産物を生じるために十分な時間にわたって前記化合物又は組成物を哺乳動物に投与することを含む方法により生成される化合物である。このような生成物は、一般的に、本開示の化合物を放射性標識して又は放射性標識せずにラット、マウス、モルモット、ブタ、イヌ、ネコ、ブタ、ヒツジ、ウマ、サル、又はヒト等の動物に検出可能な用量で投与し、代謝が生じるために十分な時間を経た後に、尿、血液又は他の生体試料からその変換物を単離することにより同定される。
【0111】
所期化合物、薬用組成物及び組成物は、少なくとも1種の薬学的又は栄養薬学的又は美容的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含むこと、又は更に含むこと、又はそれらから構成することができる。本願で使用する「薬学的又は栄養薬学的又は美容的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤」なる文言は、米国食品医薬品局(United States Food and Drug Administration)によりヒト又は家庭動物で使用するのに許容されるとして承認されているあらゆる補助剤、担体、賦形剤、滑剤、甘味剤、希釈剤、保存剤、色素/着色剤、フレーバーエンハンサー、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、安定剤、等張剤、溶媒、又は乳化剤を含む。所期化合物、薬用組成物及び組成物は、少なくとも1種の薬学的又は栄養薬学的又は美容的に許容される塩を含むこと、又は更に含むこと、又はそれらから構成することができる。本願で使用する「薬学的又は栄養薬学的又は美容的に許容される塩」なる文言は、酸付加塩と塩基付加塩を含む。
【0112】
ある種の実施形態では、本願に開示するアルピニア、ピペル/ペッパー、マグノリア及びコキアの個々の抽出物、並びに/又は非限定的な例として、アルピニア:ピペル/ペッパー(AP)とアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)を含むこれらの抽出物の2~3種の種々の組み合わせに由来する生理活性成分を任意に他のRA及びOA管理剤と併用することができ、このような管理剤としては、非ステロイド性抗炎症薬/鎮痛薬、COX-2阻害剤(限定されないが、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、アスピリン、ジクロフェナク、インドメタシン、ピロキシカム、ケトプロフェン、サリチル酸トロラミン);神経因性疼痛緩和剤(例えば、リドカイン);生物学的製剤であるメトトレキサート、Il-1及びTNF-α抗体;関節健康を促進する薬草及び/又は植物抽出物として、限定されないが、アサ(Cannabis sativa)種子油(ヘンプオイル)又はCBD/THC、全種のアサ抽出物、ターメリック抽出物又はクルクミン、ターミナリア抽出物、ヤナギ樹皮抽出物、デビルズクロー根抽出物、カイエンペッパー抽出物又はカプサイシン、アメリカザンショウ樹皮抽出物、ネクスルチン(Nexrutine)又はフィロデンドロン樹皮抽出物、パルキサン(Perluxan)又はホップ抽出物、5-ロキシン(Loxin)/アプレスフレックス(Apresflex)又はボスウェリア(Boswellia)及び/又はボスウェリア・セラータ(Boswellia serrata)抽出物、マグワ(Morus alba)根樹皮抽出物、アセンヤクノキ(Acacia catechu)抽出物、コガネバナ(Scutellaria baicalensis)根抽出物、ローズヒップ抽出物、ローズマリー抽出物、緑茶抽出物、ソフォラ属(Sophora)抽出物、ハッカ(Mentha)又はペパーミント抽出物、ジンジャー又はブラックジンジャー抽出物、緑茶又はブドウ種子ポリフェノール、バクチオール又はオランダビユ(Psoralea)種子抽出物、魚油、ピアスクレジン又はASU、あるいは関節健康を促進する栄養補助食品として、限定されないが、グルコサミン硫酸塩、グルコサミン塩酸塩、N-アセチルグルコサミン等のグルコサミン化合物、コンドロイチン塩化物、コンドロイチン硫酸塩及びメチルスルホニルメタン(MSM)、ヒアルロン酸、UC-II若しくは非変性コラーゲン及び/又は変性コラーゲン、オメガ3及び/又はオメガ6脂肪酸、クリルオイル、卵殻膜(ESM)、γ-リノレン酸、モエギイガイ(Perna Canaliculus)(ミドリイガイGLM)、SAMe、アボカド/大豆不鹸化物(ASU)抽出物、柑橘系バイオフラボノイド、アセロラ(Acerola)濃縮物、アスタキサンチン、ピクノジェノール、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB、ビタミンA、L-リジン、カルシウム、マンガン、亜鉛、アミノ酸キレートミネラル、ボロン及びボロングリシネート、シリカ、プロバイオティクス、樟脳、及びメントールが挙げられる。
【0113】
本開示の他の実施形態は、本願に開示するアルピニア、ピペル/ペッパー、マグノリア及びコキアの個々の抽出物、並びに/又は非限定的な例として、アルピニア:ピペル/ペッパー(AP)とアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)を含むこれらの抽出物の2~3種の種々の組み合わせの使用方法に関し、本開示においては、限定されないが、異化/同化バイオマーカー恒常性を維持する方法を含む。前記異化バイオマーカーは、限定されないが、TNF-α、IL-1β、IL-6、アグリカナーゼ、MMP13、MMP9、MMP3、MMP1等のマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、uCTX-II及びADAMTS4であり、前記同化バイオマーカーは、限定されないが、SOX 9、TGF-β1、ACAN、COL2A1及びPIIANPである。
【0114】
本開示の他の実施形態は、本願に開示するアルピニア、ピペル/ペッパー、マグノリア及びコキアの個々の抽出物、並びに/又は非限定的な例として、アルピニア:ピペル/ペッパー(AP)とアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)を含むこれらの抽出物の2~3種の種々の組み合わせの使用方法に関し、本開示においては、限定されないが、軟骨恒常性を維持する方法、軟骨合成(従って、同化作用)を誘導し、分解及び破壊の異化プロセスを抑制する方法、細胞外マトリックス完全性及び関節軟骨を保護する方法、軟骨の分解を最小限にする方法、軟骨の破壊を軽減する方法、軟骨合成、軟骨再生及び軟骨再建を開始又は促進又は増強する方法、損傷した軟骨を修復する方法、関節組織の細胞外マトリックスを維持、再建及び修復する方法、関節構造を再活性化する方法、関節への安定した血流を維持する方法、軟骨完全性を保護することにより関節健康を促進する方法、同化プロセスと異化プロセスの平衡を保つ方法、哺乳動物における関節潤滑のために滑液を維持する方法、哺乳動物の関節健康に影響を与える酵素及び炎症性サイトカインの作用を抑制する方法を含む。
【0115】
本開示の他の実施形態は、本願に開示するアルピニア、ピペル/ペッパー、マグノリア及びコキアの個々の抽出物、並びに/又は非限定的な例として、アルピニア:ピペル/ペッパー(AP)とアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)を含むこれらの抽出物の2~3種の種々の組み合わせの使用方法に関し、本開示においては、限定されないが、関節運動及び/又は身体機能を改善する方法、高齢期における関節健康及び可動性を維持する方法、関節快適性を支援、保護又は促進する方法、関節痛を軽減する方法、関節摩擦を抑制する方法、関節こわばりを軽減する方法、関節可動域及び/又は柔軟性を改善する方法、可動性を促進する方法、炎症を抑制する方法、酸化ストレスを抑制する方法、関節摩損を抑制及び保護する方法、変形性関節症及び/又は関節リウマチを管理及び/又は治療する方法、変形性関節症及び/又は関節リウマチを予防する方法、変形性関節症及び/又は関節リウマチの進行を逆転する方法、哺乳動物の若年性関節リウマチ、スティル病、乾癬性関節炎、反応性関節炎,敗血症性関節炎、ライター症候群、ベーチェット症候群、又はフェルティ症候群等を予防及び治療する方法を含む。
【実施例】
【0116】
[実施例1]コキア・スコパリア(Kochia scoparia)果実に由来する抽出物の調製とHPLC定量
コキア・スコパリア乾燥果実を粉砕して粉末とした。100mL抽出セルを満たすのに十分な珪藻土とコキア・スコパリア果実粉末20グラムを混合し、ASE350抽出装置(抽出条件:加熱時間=5分、静置時間=5分、フラッシュ容量=80、パージ時間=900秒、サイクル数=3回、圧力=1500psi、温度=60℃)を使用することにより、100%エタノール(EE)、70%エタノール/水(70E)又は50%エタノール/水(50E)で抽出した。抽出後、溶液を50℃にて高真空下にロータリーエバポレーターで濃縮し、固体抽出物を得た。
【0117】
日立HPLCシステムでLunaC18逆相カラム(Phenomenex,10μm,250mm×4.6mm)を使用し、コキア抽出物中のモモルジンIc等の目的成分を検出波長205nmで定量した。0.1%トリフルオロ酢酸水溶液(移動相A)とアセトニトリル(移動相B)の2液グラジエントを使用し、流速1ml/分及びカラム温度35℃にてカラムから溶出させた。
【0118】
実施例xxに従って調製した参照標準を定量標準として利用した。HPLC分析では全試料をMeOHで調製し、標準は3mg/ml付近の濃度とし、抽出物試料は10mg/ml付近の濃度とした。
【0119】
【0120】
【0121】
[実施例2]コキア・スコパリアからのモモルジンIcの単離・精製
コキア・スコパリアの果実からのエタノール抽出物(EE,10g)をヘキサン、EtOAC及びBuOHの順に有機溶媒(各100ml)と水(150ml)の間で分配し、ヘキサン画分(HE)、EtOAC画分(EA)、BuOH画分(Bu)及び水画分(WA)を得た。化合物モモルジンIcはBuOH画分(1.7g)中で高濃度化しており、このマーカー化合物は、抽出物では9.7%であったが、BuOH画分では46.2%まで増加していた。
【0122】
【0123】
BuOH画分(300mg)を分取C18カラム(21.1×250mm)に注入し、流速10mL/分で通液し、30%メタノール/0.1%ギ酸水溶液でグラジエントを開始した後、45分間かけてMeOHを100%まで上げ、100%MeOHに更に15分間維持した。溶媒溶出により56画分を得た後、検出波長205nmのHPLCプロファイルに基づいてこれらの画分を合一し、20個の最良プールを得た。最良プールRP17(124mg)で化合物モモルジンIcを単離した処、実施例17に例証するGAG放出抑制アッセイで活性を示した。
【0124】
[実施例3]コキア抽出物に由来するモモルジンIcを高濃度化する方法の開発
コキア・スコパリア果実粉末(100g)を0.25M NaOH水溶液500mlに加えて1時間還流した後、4000rpmで遠心し、第1の塩基性水抽出物を採取し、同一条件下でもう一度抽出を繰り返した。次に塩基性水抽出物溶液を合一し、0.29M HClでpH4まで中和すると、溶液中に沈殿が認められた。4000rpmで遠心して沈殿を上清から分離した後、水500mLで洗浄して塩性物質を除去し、再び遠心し、上清を除去した。水洗を更に2回繰り返した。次にエタノール500mLを固形物に加え、EtOH可溶性部分を濃縮し、高真空下で乾燥し、14%のモモルジンIcを含む固体11.8gを得た。
【0125】
実施例1に従って得られたコキア抽出物R00577-EE(171mg)、R00577-70E(262mg)及びR00577-50E(234mg)をBuOHと水の間で分配し、BuOH画分を採取し、溶媒を減圧除去し、実施例1に記載するような定量法を使用して全3個のBuOH画分を定量した。50%EtOH抽出物から得られたBuOH画分が最高のモモルジンIc含量(30%)を示した。
【0126】
別の試料R00782(520g)に由来するコキア・スコパリア果実粉末をフラスコ2本に等分し、50%エタノール/水(50E)600mlを各フラスコに加え、1時間還流し、抽出物を濾取し、更に2回還流を繰り返した。全抽出物(約3リットル)を合一し、有機溶媒をロータリーエバポレーターで約600mLの最終体積まで濃縮した後、更に水を加えることにより体積を2リットルとした。抽出物をBuOHで約750mLずつ3回分配した。BuOH画分をロータリーエバポレーターで高真空下に乾燥し、高濃度化BuOH画分34gを得た。化合物モモルジンIcは50%エタノール抽出物(50E)では4.2%であったが、BuOH画分では24.3%まで高濃度化していた。
【0127】
【0128】
[実施例4]生産パイロット規模でのコキア・スコパリアに由来する抽出物の調製
乾燥したコキア・スコパリア果実(18kg)を破砕し、5~10倍量のエタノールで80℃にて1時間抽出し、抽出工程を3回繰り返した。各抽出後に、抽出液を濾過し、濃縮し、減圧乾燥し、抽出物1.8kgを得た。抽出収率は約10%(w/w)であり、抽出物は11.8%のモモルジンIcを含んでいた。
【0129】
乾燥したコキア・スコパリア果実粉末(35kg)を5~10倍量の95%エタノールで90℃にて1時間抽出した後、抽出液を濾過し、溶液中に第1の抽出物を得た。新鮮な溶媒をバイオマスに加え、抽出プロセスを更に2回繰り返した。3回繰り返して抽出した溶液中の抽出物を合一し、濃縮し、70~85℃の温度で減圧乾燥した。植物粉末35kgから抽出物粉末までの生産工程を3回繰り返し(3×35kg)、抽出収率13~15%で3個の抽出物バッチを得た。乾燥した抽出物を粉砕し、25%マルトデキストリンとブレンドした後、80メッシュで篩別し、最終生産収率18%で微粉末抽出物を得た。これらの3個の抽出物バッチは、夫々8.4%、9.1%及び8.6%のモモルジンIcを含んでいた。
【0130】
[実施例5]ピペル・ニグルム(Piper nigrum)果実に由来する抽出物の調製とHPLC定量
ピペル・ニグルム果実粉末(314g)をフラスコ2本に等分し、有機溶媒として50%メタノールジクロロメタン溶液600mLを各フラスコに加え、1時間還流し、抽出物を濾取し、同一条件下で更に2回還流を繰り返した。全抽出物溶液を合一し、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去し、抽出物を高真空下で乾燥し、有機抽出物(OE)31gを得た。HPLCによると、このOE抽出物は、33.7%のピペリンを含んでいた。
【0131】
有機溶媒をメタノール又はエタノールに変え、夫々メタノール抽出物(ME)又はエタノール抽出物(EE)、エタノール:H2O(7:3)抽出物、エタノール:H2O(1:1)抽出物、エタノール:H2O(3:7)抽出物及び水抽出物を得た以外は同一手順を使用し、同様の結果を得た。
【0132】
日立HPLCシステムでLunaC18逆相カラム(Phenomenex,10μm,250mm×4.6mm)を使用し、ピペル有機抽出物中の目的成分であるピペリンを254nmで定量した。水(移動相A)とメタノール(移動相B)の2液グラジエントを使用し、流速1ml/分及びカラム温度35℃にてカラムから溶出させた。参照標準ピペリン(Sigma製品)を定量標準として利用した。
【0133】
【0134】
[実施例6]生産パイロット規模でのピペル・ニグルムに由来する抽出物の調製
乾燥したピペル・ニグルム果実(10kg)を破砕し、5~10倍量の70%エタノール/水で80℃にて3時間抽出し、抽出物を濾取し、同一条件下で更に2時間抽出した。両方の抽出からの抽出物を合一し、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去し、試料を減圧乾燥し、70%エタノール抽出物(70E)100gを得た。HPLC分析によると、抽出物は41.9%のピペリンを含んでいた。
【0135】
乾燥したピペル・ニグルム果実を破砕し、90%エタノール水溶液で80℃にて抽出した。体積が20%未満になるまで溶液を減圧下に濃縮し、室温にて放置し、沈殿させた。固形物を採取し、エタノール水溶液で再結晶させた。標準化15:1ピペル・ニグルム抽出物は、30%以上のピペリンを含んでいた。
【0136】
[実施例7]ピペル・ニグルムからのピペリン抽出物の分画・精製
実施例5に記載したように得られたピペル・ニグルム乾燥果実の有機抽出物(10.9g)をシリカゲルカラムで分画し、GAG放出抑制活性を調べた。OE抽出物を分割し、プレパックBiotageフラッシュカラム(シリカ120g、粒子径32~60μm、4cm×19cm)2本に別々にロードした後、(移動相として)ヘキサン、EtOAc及びメタノールで流速20mL/分にて溶出させた。グラジエントは、先ず100%ヘキサンで5分間とした後、EtOAcを25分間かけて0%から100%まで上げ、更に5分間100%EtOAcに維持した後、次の15分間でMeOHを0%→50%MeOH/EtOAcに上げ、最後に溶離液を100%MeOHに変え、カラムから更に16分間溶出させた。合計ランタイムは66分間とし、カラム分画毎に88画分を得た。画分をシリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)により分析し、まとめてプールし、8個の最良プールNP1~NP8を得た。GAG放出抑制アッセイ(実施例17)の結果、最高の活性は最良プール4で得られることが確認され、HPLC分析によると、77%のピペリンを含んでいた。
【0137】
【0138】
[実施例8]アルピニア根茎に由来する抽出物の調製とHPLC定量
アルピニア乾燥根茎を粉砕して粉末とした。100mL抽出セルを満たすのに十分な珪藻土とアルピニア根茎粉末20グラムを混合し、ASE350抽出装置(抽出条件:加熱時間=5分、静置時間=5分、フラッシュ容量=80、パージ時間=900秒、サイクル数=3回、圧力=1500psi、温度=60℃)を使用することにより、100%エタノール(EE)で抽出した。抽出後、溶液を50℃にてエバポレーターで濃縮し、固体抽出物を得た。
【0139】
有機溶媒をメタノール又はエタノールに変え、夫々メタノール抽出物(ME)又はエタノール:H2O(7:3)抽出物、エタノール:H2O(1:1)抽出物、エタノール:H2O(3:7)抽出物及び水抽出物を得た以外は同一手順を使用し、同様の結果を得た。
【0140】
日立HPLCシステムでLunaC18逆相カラム(Phenomenex,10μm,250mm×4.6mm)を使用し、抽出物中の目的成分である1’-アセトキシチャビコールアセテートを254nmで定量した。
【0141】
【0142】
水(移動相A)とアセトニトリル(移動相B)の2液グラジエントを使用し、流速1ml/分及びカラム温度35℃にてカラムから溶出させた。夫々62%と24%のクロマトグラム純度でアセトキシチャビコールアセテートピークとp-クマリルジアセテートピークの両方を含む参照標準1’-アセトキシチャビコールアセテートをLKT labから購入し、定量標準として利用した。
図2は、アルピニアエタノール抽出物の254nmにおけるHPLCクロマトグラムを示す。
【0143】
インド、中国及びタイの種々の地理的位置から種々の植物種のアルピニア植物を採取した。上記のように粗原料粉末をEtOHで抽出した。1’-アセトキシチャビコールアセテート(マーカー1)とp-クマリルジアセテート(マーカー2)のEtOH抽出収率とHPLC定量結果を下表にまとめる。
【0144】
【0145】
[実施例9]アルピニア根茎の抽出物から活性成分の単離・精製
アルピニア・ガランガ(Alpinia galanga)根茎乾燥粉末(170g)をフラスコに入れ、エタノール600mlを加えて1時間還流し、抽出物を濾取し、更に2回還流を繰り返した。全抽出物溶液を合一し、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去し、抽出物を高真空下で乾燥し、エタノール抽出物(P05797-EE)27gを得た。HPLC分析によると、このエタノール抽出物は17%の1’-アセトキシチャビコールアセテートを含んでいた。
【0146】
アルピニア抽出物P05797-EE(12g)をヘキサン、EtOAc及びBuOHの順に有機溶媒(100ml)と水(150ml)の間で分配し、ヘキサン画分(4.2g)、EtOAc画分(1.2g)、BuOH画分(0.6g)及び水画分(5.1g)を得た。ヘキサン画分とEtOAc画分でGAG放出抑制活性が認められた。両方の活性画分(5.4g)を合一し、プレパックBiotageフラッシュカラム(シリカ120g、粒子径32~60μm、4cm×19cm)にロードした後、(移動相として)ヘキサン、EtOAc及びメタノールで流速20mL/分にて溶出させた。グラジエントは、先ず95%ヘキサン/EtOAcで5分間とした後、EtOACを35分間かけて5%から100%まで漸増させた後、更に5分間100%EtOAcに維持した後、次の15分間でMeOHを0→100%に上げ、最後に更に16分間100%MeOHに維持した。合計ランタイムは66分間とし、88画分を得た。画分をシリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)により分析し、まとめてプールし、11個の最良プールを得た。最良プールNP3と最良プールNP4は、強力なGAG放出抑制活性を有する分子量の大半を含んでいた。
【0147】
45分間かけて流速10mL/分で40%メタノール/水→100%メタノールの直線グラジエントを使用し、シリカゲルカラム最良プールNP3(200mg)を分取C18カラム(21.1mm×250mm)で分画し、45画分を得た後、254nmのHPLCプロファイルに基づいて合一し、12個の最良プールを得た。最良プールRP3は、第1の目的化合物である1’-アセトキシチャビコールアセテート(131.4mg)を含んでおり、GAG放出抑制活性(実施例17)が確認された。
【0148】
【0149】
42分間かけて流速10mL/分で30%アセトニトリル/水→80%アセトニトリルの直線グラジエントを使用し、シリカゲルカラム最良プールNP4(210mg)を分取C18カラム(21.1mm×250mm)で分画し、19画分を得た後、254nmのHPLCプロファイルに基づいて合一し、6個の最良プールを得た。最良プールRP3は、第2の目的化合物であるp-クマリルジアセテート(4.3mg)を含んでおり、GAG活性が確認された。
【0150】
[実施例10]生産規模でのアルピニア根茎に由来するEtOH抽出物の調製
乾燥したアルピニア・ガランガ根茎(40kg)を破砕し、5~10倍量のエタノールで80℃にて3時間抽出し、抽出物を濾取し、同一条件下で更に2時間抽出した。両方の抽出からの抽出物溶液を合一し、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去し、試料を減圧乾燥し、エタノール抽出物(EE)2kgを得た。HPLCにより定量した処、抽出物は約20%の1’-アセトキシチャビコールアセテートを含んでいた。
【0151】
乾燥したアルピニア・ガランガ根茎を粉砕し、95%エタノールで抽出した。減圧下に濃縮・乾燥後、マルトデキストリンを加えながら固体抽出物を破砕し、6:1の根茎:抽出物比で抽出物を得た。この標準化アルピニア抽出物は、4%~8%の化合物1’-アセトキシチャビコールアセテートを含んでいる。
【0152】
[実施例11]アルピニア根茎に由来する超臨界CO2液抽出物の調製
アルピニア・ガランガ粉末(45g)を100mlステンレス鋼製容器に入れ、液体CO2で加圧し、50℃の抽出温度まで加熱した後、640barの抽出圧力まで加圧した後、超臨界CO2の動的流入を開始した。超臨界CO2を含む抽出物を減圧し、捕集バイアルで捕集した。75分後に、可溶性成分抽出を完了し、56.7%のガランガルアセテートを含む抽出物1.23gを収率2.96%(W/W)で得た。CO2抽出の完了後、5%/W/Wエタノールを超臨界CO2に加え、同一の温度及び圧力条件下で同一試料の抽出を続け、4.7%のガランガルアセテートを含む抽出物0.15gを得た。
【0153】
抽出の開始から実験の完了まで(300分間)5%W/W超臨界CO2/EtOHを使用して実施した以外は上記抽出プロトコールに従ってもう一度抽出を行い、47.3%のガランガルアセテートを含む抽出物1.18gを収率2.58%で得た。
【0154】
[実施例12]種々の資源に由来するアルピニア抽出物のHPLC定量
中国とインドの種々の地理的位置の販売業者からアルピニア抽出物を入手した後、実施例8に記載したHPLC法により1’-アセトキシチャビコールアセテートを定量した。HPLC定量結果を下表に示す。
【0155】
【0156】
[実施例13]マグノリア・オフィシナリス(Magnolia officinalis)に由来する50%抽出物の調製
乾燥したマグノリア・オフィシナリス樹皮を破砕し、超臨界CO2で抽出後、濃縮し、減圧乾燥した。乾燥した抽出物を30%マルトデキストリンとブレンドし、10:1抽出物の粉末を得た。標準化抽出物は、50%以上の合計量のマグノロールとホノキオールを含んでいる。
【0157】
50%マグノリア抽出物、30%抽出物、純マグノロール及びホノキオールでGAG活性が確認され、結果を下表にまとめる。
【0158】
【0159】
[実施例14]アルピニア:マグノリア:コキア(AMK)組成物の調製
コキア種子のエタノール抽出物(R00835-EE,360g)をフードブレンダーで微粉末に粉砕した後、マグノリア樹皮抽出物粉末(L0555,480g)を同一ブレンダーに加え、粉末が均一になるようにブレンドした。その後、アルピニア抽出物と混合するように準備したステンレス鋼製深型バットにコキア抽出物粉末とマグノリア抽出物粉末のブレンドを移した。油性アルピニア抽出物(R00829-EE,240g)をビーカーに秤量し、MeOH400ml中で1時間音波処理した後、コキアとアルピニアのブレンドと混合するように攪拌しながら、最上層の液体をステンレス鋼製バットに移した。ビーカーに残っている若干の固形物をMeOH各100ml中で更に3回音波処理し、その都度、最上層の液体をバットに移して混合し、こうして全アルピニア抽出物をMeOHに懸濁してステンレス鋼製バットに移し、2:4:3の重量比のアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)のブレンドを得た。混合したスラリーを45℃のオーブンで1週間減圧下に乾燥した後、ベンチトップハーブグラインダーで粉砕し、微粉末1042gを得た。各成分の定量結果とブレンド比から推定すると、このAMK組成物は、約4%の1’-アセトキシチャビコールアセテートと、22%のマグノロール/ホノキオールと、4%のモモルジンIcを含んでいた。
【0160】
粉末状の全成分を以下のようにブレンドすることにより、重量比5:4:4の別のAMK組成物を調製した。アルピニア抽出物(L0795,30g)、マグノリア樹皮抽出物(L0789,24g)及びコキア種子抽出物(L0798A,24g)を別々に秤量し、フードブレンダーに投入して混合し、均一な粉末を得た。各成分の定量結果とブレンド比から推定すると、このAMK5:4:4組成物は、約3%の1’-アセトキシチャビコールアセテートと、18%のマグノロール/ホノキオールと、3%のモモルジンIcを含んでいた。
【0161】
アルピニア、及び/又はペッパー、及び/又はマグノリア、及び/又はコキアの個々の抽出物を組み合わせて、3種の個々の抽出物を夫々重量比で1:1:1、2:1:1、3:1:1、4:1:1、5:1:1、1:2:1、1:3:1、1:4:1、1:5:1、1:1:2、1:1:3、1:1:4、1:1:5、1:2:3、1:2:4、1:2:5、1:2:6、1:2:6、1:2:8、1:2:9又は1:2:10等の種々の比で含む組成物とすることができる。
【0162】
[実施例15]アルピニア:ピペル/ペッパー(AP)組成物の調製
アルピニア根茎とペッパー果実に由来する生理活性成分の抽出法と定量については、夫々実施例10、11、12と、6、7、8に開示した。アルピニア抽出物とペッパー抽出物を1:2の重量比でバイアルに秤量することにより、アルピニア:ペッパー(AP)組成物を調製し、各アッセイ前に好適な溶液に加え、均質になるように音波処理・ボルテックスした。組成物は、約7%の1’-アセトキシチャビコールアセテートと20%のピペリンを含んでいた。
【0163】
アルピニアとペッパーの個々の抽出物を組み合わせて約0.5:5~約5:0.5の範囲の種々の比の組成物とすることができ、夫々重量比で0.5:1、0.5:2、0.5:3、0.5:4、0.5:5、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、2:1、2:2、2:3、2:4、2:5、3:1、3:2、3:3、3:4、3:5、4:1、4:2、4:3、4:4、4:5、5:1、5:2、5:3、5:4、5:5、1:0.5、2:0.5、3:0.5、4:0.5、又は5:0.5が挙げられる。
【0164】
[実施例16]アルピニア、ピペル/ペッパー及びマグノリアに由来する抽出物の局所塗布用調製
多数の薬草が代替医療として経口又は局所投与により抗炎症及び鎮痛薬として使用されている。それらの鎮痛・抗炎症性は、種々の機序及び経路により標的に作用する能力をもつ広範な種類の生理活性化合物に関連している。本発明者らは、調製及び局所塗布後に皮膚に浸透し、必要な場所で機能することができる鎮痛薬として、ピペル・ニグルム(Piper nigrum)に由来するアルカロイドと、マグノリア・オフィシナリス(Magnolia officinalis)に由来するビスフェノール性リグナンと、アルピニア・ガランガ(Alpinia galanga)に由来するフェニルプロパノイドガランガアセテートを含むものを探求している。これらの活性成分は、異なる種類の化学成分であり、異なる機序により薬理作用を生じることができるであろう。
【0165】
各材料の性質と溶解度に応じて、DMSOとプロピレングリコールとアロエベラジェル(1:2:1)の混液又はDMSOとプロピレングリコールとMCT油(1:1:2)の混液にアルピニア抽出物、ペッパー抽出物及びマグノリア抽出物を加え、50mg/mLの濃度となるように調製した。アロエベラジェルは、局所投与中に皮膚浸透を改善するための浸透促進剤として利用した。
【0166】
[実施例17]アルピニア、ピペル/ペッパー、マグノリア及びコキア植物の個々の抽出物、画分及び化合物によるグリコサミノグリカン(GAG)放出抑制の試験手順
軟骨組織は主に、軟骨細胞により分泌される細胞外マトリックスから構成される。組織の個々の成分としては、II型コラーゲン繊維、ヒアルロン酸及びプロテオグリカンが挙げられ、プロテオグリカンは、コンドロイチン硫酸やケラチン硫酸等のグリコサミノグリカン(GAG)がコアタンパク質に結合したものである。軟骨組織が酵素分解されると、細胞外マトリックス内のこれらの成分が遊離分子となり、生体により再吸収される。
【0167】
軟骨外植体培養
ウサギ(体重2.5kg)を各々屠殺した直後に飛節関節から関節軟骨を摘出した。Sandy et al,1986に記載の方法に従うことにより、関節軟骨外植体を取得した。要約すると、滅菌条件下で関節表面を外科的に露出させ、関節1箇所当たり約200~220mgの関節表層を切り出し、完全培地(熱非働化5%FBS、ペニシリン100U/ml、ストレプトマイシン100μg/mlを添加したDMEM)に浸漬させた。次に、完全培地で数回リンスし、安定化させるために、加湿5%CO2/95%エアインキュベーターで37℃にて2日間インキュベートした。完全培地を基本培地(熱非働化1%FBS、10mM HEPES、ペニシリン100U/ml、ストレプトマイシン100μg/mlを添加したDMEM)に交換した。軟骨片(2×3×0.35mm/片)約30mgを48ウェルプレートに入れ、指定濃度の被験剤で処理した。1時間の前処理後、5ng/mlのrhIL-1αを培養培地に加え、5%CO2/95%エアインキュベーターで37℃にて更にインキュベートした。24時間後に培養培地を採取し、アッセイまで-80℃で保存した。
【0168】
グリコサミノグリカン測定
反応の終了時の培地中の硫酸化GAGの量は、関節軟骨の分解量を反映するので、市販キット(Blyscanプロテオグリカン及びグリコサミノグリカンアッセイ)を製造業者の指示に従って使用し、1,9-ジメチルメチレンブルー法によりこの量を測定した。ジクロフェナクを陽性対照として300μg/mlで利用した。
【0169】
[実施例18]アルピニア、ピペル/ペッパー、マグノリア及びコキア植物の個々の抽出物によるグリコサミノグリカン(GAG)放出の抑制
上記実施例で例証したようなエクスビボグリコサミノグリカン(GAG)放出アッセイでアルピニア、ペッパー、マグノリア及びコキア植物抽出物の用量曲線を試験し、それらの軟骨保護作用を評価した。軟骨外植体を各抽出物で前処理した後、IL-1αに曝露し、GAGを分解させて軟骨マトリックスから放出させた。各抽出物がGAG放出を抑制する能力は、下表に示すようなIC50値で用量反応性であることが分かった。マグノリア抽出物が最大の保護効果を生じ、IC50は17.9μg/mLであった。ペッパー抽出物とコキア抽出物は軟骨の分解からの保護量がほぼ同一であり、IC50値は夫々40.8μg/mLと42.1μg/mLであった。試験した4種類の抽出物のうちで、アルピニアは保護効果が最低であり、IC50値は71.6μg/mLであった。このアッセイにより実証されるように、試験した全4種の抽出物は軟骨を分解から保護した。
【0170】
【0171】
試験した4種の抽出物がGAG放出の抑制を示したことから、これらの抽出物は軟骨の分解を抑制すると判断され、軟骨異化を抑制すると考えられる。前記抽出物によるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の直接阻害を試験し、異化エフェクターの転写に及ぼすそれらの効果を試験することにより、この機能を更に精査した。
【0172】
[実施例19]アルピニア、ピペル/ペッパー、マグノリア及びコキア植物の個々の抽出物によるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)阻害の試験手順
50mM MOPS、pH7.2、10mM CaCl2、10μM ZnCl2、1%DMSO、0.05%Brij35に4.0μM Mca-Pro-Leu-Gly-Leu-Dpa-Ala-Arg-NH2(以下、「基質」と言う)を加えた培地で、アルピニア、ペッパー、マグノリア及びコキア植物の個々の抽出物100μg/mLをマトリックスメタロプロテアーゼ-9(MMP-9)又はマトリックスメタロプロテアーゼ-13(MMP-13)と共にインキュベートした。基質は蛍光を示すが、どちらのMMP酵素によっても切断され、蛍光出力が低下する。基質、各MMP酵素及び各抽出物を37℃で2時間インキュベートし、基質の量を分光蛍光法により定量した。個々の抽出物毎に溶媒対照と比較して各MMP酵素の阻害率を計算した。TIMP-2をMMPの阻害の陽性対照として使用した。
【0173】
[実施例20]アルピニア、ピペル/ペッパー、マグノリア及びコキア植物の個々の抽出物によるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の阻害
MMP酵素は、OA疾患進行の異化バイオマーカーであるので、軟骨組織で軟骨細胞により発現され、軟骨の破壊に重要な役割を果たす。サイトカイン放出と炎症性シグナル伝達の亢進後に、軟骨細胞によりMMP-13が分泌され、酵素のコラゲナーゼ活性により軟骨が分解する。MMP-9は、部分的に消化されたコラーゲンを更に分解するゼラチナーゼ酵素である(Gepstein et al,2002)。どちらかの酵素、特にMMP-13の直接阻害はその活性を低下させ、軟骨の破壊を担う異化経路の減退に繋がると思われる。
【0174】
試験抽出物と共にインキュベーション後に蛍光基質の残留量を測定することにより、アルピニア、ペッパー、マグノリア及びコキア植物の各抽出物100μg/mLをMMP-9とMMP-13の阻害について試験した。各抽出物による各MMPの阻害率を下表に示す。ピペル/ペッパー抽出物とマグノリア抽出物は、MMP-13を夫々70%及び68%阻害し、MMP-9を夫々44%及び36%阻害した。アルピニア抽出物はMMP-13を38%阻害したが、MMP-9については有意に阻害せず、阻害率は僅か3%であった。コキア抽出物はどちらの酵素も若干阻害し、MMP-13の阻害率は10%であり、MMP-9の阻害率は3%であった。ペッパー、マグノリア、及びアルピニア抽出物は、MMP酵素と直接結合して阻害することにより、MMPの活性を低下させる。このことは、これらの個々の抽出物が軟骨の分解に関連する異化経路に及ぼす作用に重要な関係がある。
【0175】
【0176】
[実施例21]IL-1によるヒト軟骨細胞処理の分子生物学的手順及び同化・異化系遺伝子発現の定量
細胞の調製
ヒト軟骨細胞(ScienCell,カタログ番号4650)を解凍し、軟骨細胞増殖培地(Sigma,カタログ番号411-500)を使用してT75 Falcon(R)組織培養フラスコ(VWR,カタログ番号BD353136)に播種した。細胞を37℃及び5%CO2下で24時間インキュベートし、この時点で培地を新鮮な37℃軟骨細胞培養培地に交換した。37℃/5%CO2下のインキュベーションを更に48時間又は軟骨細胞が約90%コンフルエントになるまで続けた。培地を吸引し、細胞をPBS(VWR,カタログ番号VWRL0119-0500)2~4mLで1回リンスした。トリプシン-EDTA(Sigma,カタログ番号T3924-100ML)2mLをフラスコに加え、約3~5分間又は細胞の大半が剥がれるまで静置した。トリプシンインヒビター(Sigma,カタログ番号T6414-100ML)8mLをフラスコに加え、総体積を10mLとした。細胞溶液を15mLコニカルチューブに移し、1000rpmで5分間遠心した。上清を吸引し、軟骨細胞を軟骨細胞増殖培地1mLに再懸濁した。細胞を計数するために、再懸濁した細胞の10μLアリコートをトリパンブルー(VWR,カタログ番号12002-038)90μLに加えた。この溶液10μLを血球計数器に加えた。次に、Sigma社製軟骨細胞増殖培地を使用して細胞を24ウェルプレートと96ウェルプレート(VWR,カタログ番号62406-159,62406-08)に約13,200個/cm2(24ウェルプレートでは25,000個/ウェル及び96ウェルプレートでは4,200個/ウェル)の密度で播種した。軟骨細胞を37℃/5%CO2下で24時間インキュベートした。培地を吸引し、軟骨細胞基本培地(ScienCell,カタログ番号4651-b)を使用して軟骨細胞を血清飢餓培養した。細胞を37℃/5%CO2下で24時間インキュベートした。
【0177】
IL-1βによる前処理
IL-1β(Sigma,カタログ番号SRP3083)とScienCell社製基本軟骨細胞培地を使用して10ng/mLのIL-1β前処理液を調製した。古い培地を吸引し、24ウェルプレートでは500μL、96ウェルプレートでは100μLの前処理溶液に交換した。少数の複製を対照として使用し、10ng/mLのIL-1βで前処理しなかった。その代わりに、新鮮な基本軟骨細胞培地を細胞に加えた。細胞を37℃/5%CO2下で更に24時間インキュベートした。
【0178】
細胞の処理
DMSOとScienCell社製基本軟骨細胞培地に1M又は50mg/mLの濃度で保存しておいた植物抽出物を使用して処理液を調製した。50μg/mLのピアスクレジンと、300ng/mL及び100ng/mLのBMP-2タンパク質(Sigma,カタログ番号SRP6155-10UG)を陽性対照として使用した。VWR社製真空濾過装置(VWR,カタログ番号10040-460)を使用して全処理液を濾過し、(未処理対照を除いて)IL-1β濃度を10ng/mLとした。溶媒処理液は、基本軟骨細胞培地と10ng/mLのIL-1βのみから構成した。古い培地を各ウェルから吸引し、24ウェルプレートでは500μL、96ウェルプレートでは100μLの処理液に交換した。全処理液を3ウェルずつ分注した。細胞を37℃/5%CO2下で72時間インキュベートした。
【0179】
RNA抽出及びRT-PCR
72時間処理液曝露後に、24ウェルプレートから培地を吸引し、Qiagen社製RNeasyキット(Qiagen,カタログ番号74104)とQIAshredderキット(Qiagen,カタログ番号79656)を使用して細胞を溶解させた。1%のβ-メルカプトエタノールを添加したRLTバッファー350μLを先ず各ウェルに加えた後、溶解工程を完了するために、ライセート混合物をQIAshredderカラムに移した。製造業者の指示に従って残りのRNA抽出手順を完了した。SuperScript IVファーストストランド合成システム(Life Technologies,カタログ番号18091200)を製造業者の指示に従って使用し、RT-PCRを実施した。
【0180】
cDNA定量及び希釈
Qubit ssDNAアッセイキット(Life Technologies,カタログ番号Q10212)を製造業者の指示に従って使用し、cDNAを定量した。各cDNA試料をdH20で2.5ng/mLまで希釈した。
【0181】
qPCR
以下のプライマー(Life Technologies,カタログ番号A15612)をdH2Oで8μMまで希釈した。
【0182】
【0183】
各qPCR反応液は、400nMフォワードプライマー、400nMリバースプライマー、1ng/μL cDNAから構成し、PowerUp(TM)SYBR(TM)Green Master Mix(Applied Biosystems,カタログ番号A25742)を使用して総体積を24μLとした。各反応液10μLを96ウェル反応プレート(Applied Biosystems,カタログ番号4366932)に2ウェルずつ分注し、Applied Biosystems StepOnePlusリアルタイムPCRシステムで以下のサイクル条件:50℃/2分;95℃/2分;40×[95℃/15秒-60℃/1分]に従って反応を行った。
【0184】
細胞生存率
72時間処理液曝露後に、CellTiter 96(R)AQueous One Solution細胞増殖アッセイ(Promega,カタログ番号G3580)20μLを96ウェルプレートの各ウェルに加えた。基本軟骨細胞培地100μLをブランクとして使用した。プレートを静かにタッピングして溶液を混合し、軟骨細胞を37℃/5%CO2下で30分間インキュベートした。インキュベーション後に、各ウェルの吸光度を492nmで測定した。
【0185】
[実施例22]アルピニア、マグノリア、コキア、ピペル/ペッパーの抽出物、及びアルピニアとペッパーの併用を投与したヒト軟骨細胞における同化系・異化系遺伝子発現
25μg/mLのマグノリア抽出物は、異化系MMP-3及びMMP-13の発現を有意に低下させ、同化系遺伝子発現の変化は限定的であり、有意ではなかった。これらのデータによると、マグノリア抽出物は、細胞外IL-1βの存在下で異化系遺伝子発現増加を妨害することにより、細胞分解に対抗するように作用する。マグノリア抽出物と同様に、アルピニア抽出物は10μg/mLでMMP-13遺伝子発現を有意に低下させる一方で、SOX-9、ACAN及びCOL2A1を有意にアップレギュレートした。高濃度化させたコキア抽出物は、同化系ACAN、Sox-9及びTGFβ1遺伝子発現をアップレギュレートしたが、異化マーカーのダウンレギュレーションに及ぼす効果は少なかった。ペッパー抽出物も同様の効果があり、COL2A1、ACAN、SOX-9及びTGFβ1のアップレギュレーションを生じたが、異化マーカーに有意な影響はなかった。アルピニア:ペッパーの併用は、MMP-13阻害の顕著な相乗作用を示し、更にADAMTS4の減少を示すと共に、TGFβ1の増加を維持した。
【0186】
【0187】
要約すると、マグノリア抽出物は、異化恒常性のダウンレギュレーションに寄与することができ、コキアとペッパーの抽出物はいずれも軟骨細胞の同化経路の遺伝子発現をアップレギュレートすることができ、アルピニアは、単独でもペッパー抽出物と併用しても両方の活性を示すことができる。
【0188】
[実施例23]IL-1によるラット軟骨細胞処理の分子生物学的手順及びTGF-β1遺伝子発現の定量
細胞の調製
以下のように若齢ラットの膝軟骨から単層培養用軟骨細胞を単離し、培養した。3週齢のSprague Dawleyラットを麻酔し、その後足を採取した。滅菌した解剖用メスを使用して膝軟骨を軟骨下骨から切り取った。無血清ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で軟骨削屑をコラゲナーゼで消化させた。消化後、細胞懸濁液を遠心し、細胞ペレットを得た。10%FBSを添加したDMEMにこのペレットを再懸濁し、細胞を計数した。次に、細胞を組織培養プラスチックプレートに10,000個/cm2の密度で播種した。次に、単離した軟骨細胞を培養培地(HEPES(25mM)を添加したDMEM/FCS-10%)で1継代まで単層増幅し、-80℃で凍結した。記載する実験では、解凍した軟骨細胞を使用した。
【0189】
軟骨細胞を-1日に播種し、12ウェルプレートで24時間単層培養した。(IL-1βを含む)処理を0日に開始し、3日間実施した。
【0190】
以下の17種類の処理条件又は対照条件を実施した。
-未処理細胞(増殖培地で培養)
-IL-1βで処理した細胞
-IL-1βで処理した細胞+溶媒
-IL-1βで処理した細胞+BMP-2(100ng/mL)
-IL-1βで処理した細胞+アルピニア(25μg/mL)
-IL-1βで処理した細胞+ペッパー(25μg/mL)
-IL-1βで処理した細胞+マグノリア(25μg/mL)
-IL-1βで処理した細胞+コキア(100μg/mL)
【0191】
全処理及び対照は3ウェルずつ実施した。コキア抽出物は100μg/mLで非毒性であることが分かったため、この濃度で試験した。アルピニア、ペッパー及びマグノリアの抽出物は、細胞毒性があるため、25μg/mLで試験した。軟骨細胞を溶解させ、NucleoSpinR RNA IIキット(Macherey Nagel)を使用して全長RNAを精製した。
【0192】
細胞の処理
DMSOに100mg/mLの濃度で保存しておいた植物抽出物を使用して処理液を調製し、培養培地で希釈した。100ng/mLのBMP-2タンパク質(RandD Systems,カタログ番号355-BM-010)を陽性対照として使用した。(未処理対照を除いて)全処理液のIL-1β濃度を10ng/mLとした。溶媒処理液は、軟骨細胞培地と0.1%のDMSOと10ng/mLのIL-1βのみから構成した。全処理液を3ウェルずつ分注した。細胞を37℃/5%CO2下で72時間インキュベートした。
【0193】
RNA抽出及びRT-PCR
軟骨細胞を溶解させ、NucleoSpinR RNA IIキット(Macherey Nagel)を使用して全長RNAを精製した。M-MLV RT(Life Technologies)を使用して全長RNA1μgを逆転写した。SuperScript IVファーストストランド合成システム(Life Technologies,カタログ番号18091200)を製造業者の指示に従って使用し、RT-PCRを実施した。
【0194】
qPCR
以下のプライマーを使用した。
【0195】
【0196】
各qPCR反応液は、iQ(TM)SYBR Green Supermix(Biorad,ref 1708882)5μL、フォワードプライマー(5μM)0.6μL、リバースプライマー(5μM)0.6μL、H2O 1.8μL、及びcDNA(5μg/μL)2μLから構成した。
【0197】
[実施例24]独立した試験でアルピニア、ペッパー、マグノリア及びコキアの抽出物を投与したラットの軟骨細胞におけるTGF-β1遺伝子発現
25μg/mLのマグノリア抽出物と100μg/mLのコキア抽出物は、同化系TGF-β1の発現を有意に増加したが、アルピニア抽出物とペッパー抽出物は有意な効果がなかった。本試験では、一次ラット軟骨細胞を使用し、IL-1βを処理液と同時に加え、前処理はしなかった。これらの条件下で、マグノリア抽出物とコキア抽出物は、軟骨形成遺伝子発現のレギュレーターであるTGF-β1のアップレギュレーションにより軟骨形成に寄与することが明白である。
【0198】
【0199】
要約すると、マグノリア抽出物は、ヒト軟骨細胞における異化系遺伝子のダウンレギュレーションと、ラット軟骨細胞におけるTGF-β1のアップレギュレーションに寄与することができ、アルピニア抽出物とコキア抽出物はいずれも異化系遺伝子をダウンレギュレートしながらヒト軟骨細胞の同化系遺伝子発現をアップレギュレートすることができる。コキア抽出物もラット軟骨細胞におけるTGF-β1遺伝子発現のアップレギュレーションを示し、軟骨細胞恒常性における同化エフェクターとしてのその役割を裏付けている。
【0200】
[実施例25]動物及び飼育
USDAで認可されている販売業者からラットを購入した。8週齢のSprague Dawleyラットを購入し、到着後、1週間馴化させた後、夫々の群にランダムに割り当てた。ラット(3匹/ケージ)をポリプロピレンケージに収容し、個々にその尾に番号を付けた。各ケージにワイヤーバー蓋・フィルタートップ(Allentown,NJ,米国)を被せた。個々のケージに各々ケージカードを付け、プロジェクト番号、被験品名、用量レベル、群、及び動物識別番号を記入した。Harlan T7087ソフトトウモロコシ穂軸床材を使用し、少なくとも週2回交換した。動物に新鮮な水と齧歯類用飼料#T2018(Harlan Teklad,370W,Kent,WA,米国)を自由に摂取させ、温度制御室(22.2℃)に入れて12時間明暗サイクルで飼育した。全動物実験は、実験動物の管理と使用に関する指針に適合する治験ガイドラインに従って実施した。
【0201】
[実施例26]骨軟骨欠損(OCD)モデルの基本概念
近年、軟骨欠損の治療用に種々のインビボモデルが導入されている。そのうち、マイクロフラクチャー法は、生体自身の治癒能力を利用することにより、修復プロセスで骨髄を刺激するために利用されている数少ない方法の1つである。この方法は、新しい組織形成に適した環境を提供することにより、軟骨リサーフェイシングを促進する。モデル誘発時に、膝に開けた小さな穴から脂肪滴と血液が出てくるまで、大腿骨軟骨下骨板の露出した体重負荷表面に精密ドリルビットで穴を開ける。この骨髄「スーパークロット(super clot)」は、骨髄に由来する生体自身の骨髄細胞(間葉系幹細胞)が好適な関節軟骨様細胞系統へと分化し、細胞外マトリックスを産生し、最終的に修復された安定した組織へと成熟するのに最適な環境を提供する。
【0202】
治癒プロセスは長期間をかけて生じ、より迅速で良好な回復には術後管理が重要な役割を果たす。同化活性を有する関節ケア用天然栄養補助食品は、実際に生体の軟骨再分化プロセスを促進することにより、より迅速な回復を助けるであろう。
【0203】
本発明者らは、自身の実験室において、改変型マイクロフラクチャー法により誘発した傷害インビボモデルを開発し、200mg/kgの用量のアルピニア:ピペル/ペッパー(AP)組成物とアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)組成物をモデル誘発後6週間毎日経口投与後に、それらの同化(軟骨合成、再生、再建)活性について評価した。200mg/kgの経口用量のピアスクレジン(アボカド/大豆不鹸化物)を陽性対照として使用した。ピアスクレジン(アボカド/大豆不鹸化物)は、前臨床インビトロ及びインビボモデルで実証された異化・同化作用をもつOA疾患モジュレーターとして製造業者により宣伝されている栄養補助食品である。ピアスクレジンは、マトリックスメタロプロテアーゼの放出と活性を抑制すると共にこれらの異化酵素の組織阻害剤を増加することにより、軟骨の分解を予防することが知られている性質を有すると報告されている。炎症性サイトカインの阻害の結果として軟骨修復活性があることも示唆されている(Christiansen et al.,2015;Goudarzi et al.,2018)。
【0204】
[実施例27]OCDモデル誘発及び投薬
本試験では、合計55匹のラットを5群(N=11/群)に分けた。他のラット5匹をドリルビットサイズ決定とモデル最適化に利用した。0.35mm、0.6mm、0.9mm、1.35mm及び2mmのドリルビットサイズを試験し、1.35mmのドリルビットを選択した。モデル誘発前2週間、ラットに夫々の用量を経口経路で毎日投与した。群は、G1=正常対照、G2=OCDモデル溶媒対照、G3=ピアスクレジン(200mg/kg)、G4=AP(200mg/kg)及びG5=AMK(200mg/kg)とした。
【0205】
誘発前処理開始日に、各群の平均体重は357.3±16.4gであった。自然回復の妨害を最小限にするように、本試験では高齢ラットを選択した。誘発前2週間にわたり、新たに調製した夫々の材料の懸濁液を1匹当たり10ml/kgの用量でラットに毎日経管投与した。各動物に投与する毎に試料溶液をボルテックスし、被験材料の均一性を維持した。体重(368.7±4.4g)のベースライン測定後、誘発日に、イソフルラン麻酔下のラットの左足膝を小さく切開し、大腿骨の体重負荷表面の軟骨下骨を露出させた。次に、ドリルビット(1.35mm)を使用し、正常対照群のラットを除く全群で骨髄の十分な侵入の指標として血液が見えるようになるまで、露出した表面にフィンガースピンを使用して注意深く改変型マイクロフラクチャードリル穴を開け、正常対照群は、穴を開けない以外は同一の外科処置を行った。4-0コーテッドバイクリル吸収性縫合糸を使用して関節包と皮膚を縫合し、動物を夫々のケージに戻し、麻酔から回復させた。
【0206】
【0207】
誘発後、経口投与を6週間続けた。6週目に体重負荷測定用インキャパシタンスメーターを使用してラットを疼痛感受性についてモニターした。試験の終了時に、バイオマーカー分析用に血清を採取した。剖検時に、大腿脛骨関節を切り出し、二重盲検法でコードを割付け、ホルマリンで保存し、患部構造の病理組織学的解析のためにNationwide Histologyに送った。全群の各ラットについて関節組織の写真を撮影した。本試験のエンドポイント測定として第三者の公認病理医により、盲検化組織で病理組織学的解析を実施した。
【0208】
[実施例28]OCDモデルにおける疼痛感受性の尺度としての体重負荷
インキャパシタンステスターを使用し、実施例14及び15で調製したアルピニア:ピペル/ペッパー(AP)組成物とアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)組成物を投与したOCDラットの体重負荷を溶媒対照と陽性対照に比較して測定した。この方法において、ラットは、外科処置した足にかかる体重により誘発される疼痛を軽減するために、正常な(傷害のない)足に体重を移す。本試験において、ラットは右足により多くの体重をかけると予想された。治癒が進行するにつれて、体重分布は各足の治癒速度と疼痛耐性に関して「関節炎」の恒常性を反映するように変化していると考えられる。全群の各ラットの左足に外科処置を行った。正常対照(NC)群を除く全ラットの左足に穴を開け、正常対照群は、穴を開けない以外は同一の外科処置を行った。
【0209】
【0210】
表17から明らかなように、ラットは疼痛を軽減するために、その体重を対側の足(外科処置していない正常な右足)に移した。時間が経過するにつれて、ラットは次第に左足により体重をかけ始め、右足にかける体重を減らした。6週目に、溶媒群ではまだ右足に大きく依存していたが、それに比較してアルピニア:ピペル/ペッパー(AP)組成物を投与したラットとアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)組成物を投与したラットの右足と左足の間には、統計的に有意な体重分布が認められた。溶媒投与群と比較した場合に、AMK組成物を投与したラットとAP組成物を投与したラットは、夫々59.9%と51.5%の体重負荷改善を示した。正常対照ラットに比較すると、溶媒を投与したOCDラットは、右足に6倍の体重をかけた。陽性対照であるピアスクレジンは、45.6%の改善を示した。
【0211】
[実施例29]OCDモデルにおける軟骨再分化マーカーの病理組織学的解析
Nationwide Histologyのプロトコールに従い、ヘマトキシリン・エオジン(HE)とサフラニンOグリーンの染色を実施した。膝のドリル穴の目視観察によりモデルの誘発を確認した(
図3)。これは、後から組織評価で得られた正常な外観とスコアを示す病理組織学的所見によっても確認された。ドリル穴を通るように各ブロックで同一の向きで各検体を薄切し、HE染色用切片3枚と、更に3枚のサフラニンO染色用切片を作成した。(セラーズ法等の)より包括的な定量的組織学的採点システムは異なる軟骨修復度を区別する能力が高いため、関節軟骨修復の病態生理学的条件下で感受性と特異性が高いと言われている。そこで、セラーズ評価法を本試験に応用するように病理医に提案し、表18及び19に示すようにデータをまとめた。
【0212】
表19と
図3及び4から明らかなように、AP組成物を投与したラットは、溶媒投与群に比較して、1.正常な隣接する軟骨の表面に対する欠損の充填、2.修復された組織と周囲の関節軟骨の融合、3.マトリックス染色、及び4.細胞形態において、統計的に有意な改善を示した。溶媒を投与した疾患モデルラットと比較した場合に、これらの改善率は、夫々48.9%、73.5%、28.7%及び50.5%であることが分かった。表面の構造とタイドマークの形成についても強い有意傾向が認められ、溶媒群と比較した場合に、夫々37.7%(p=0.07)と32.3%(p=0.07)であった。同様に、AMK組成物を投与したラットも、溶媒投与群に比較して、1.修復組織と周囲の関節軟骨の融合、2.サフラニンOファストグリーンによるマトリックス染色、3.細胞形態、4.表面の構造とタイドマークの形成において、統計的に有意な改善を示した。溶媒を投与した疾患モデルラットと比較した場合に、これらの改善率は、夫々62.5%、33.0%、47.9%、44.3%及び43.2%であることが分かった。他方、陽性対照であるピアスクレジンは、溶媒を投与した疾患モデルと比較した場合に、修復組織と周囲の関節軟骨の融合(溶媒を投与したOCDモデルに対して62.5%改善)と、表面の構造(溶媒を投与したOCDモデルに対して35.7%改善)において、統計的に有意な改善を示した。
図3は、6週間投与後のOCDラットの穿孔部位の画像を示し、各種経口投与群で治癒進行に有意差があることを示す。
【0213】
病理組織学的結果は、アルピニア:ペッパー(AP)組成物とアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)組成物をOCDラットに経口投与後に、損傷した関節軟骨の同化性変化と、関節の構造完全性の改善を明白に実証した。限定されないが、AP組成物とAMK組成物に代表される天然栄養補助食品は、軟骨細胞、細胞外マトリックス、関節軟骨、及び関節の表現型の恒常性を調節することにより、同化活性を増加した。これらのサプリメントは、実際に、生体の軟骨再分化プロセスを促進することにより、損傷した軟骨のより迅速な回復と、関節構造完全性の改善を補助することができる。特定の再分化、再生、再建及び再成長機能は、限定されないが、正常な隣接する軟骨の表面に対する欠損の充填、修復組織と周囲の関節軟骨の融合、細胞外マトリックスの再分化、細胞形態の改善、完全な欠損の内側の構造の再生、表面の構造の再生、新しい軟骨下骨の百分率の増加、及びタイドマークの形成の促進に関連付けられる。
図4は、穿孔部位におけるOCDラットの軟骨下骨のサフラニンO染色を示す。黒丸は、代表的な動物病理組織スライドの穿孔部位を示す。
【0214】
【0215】
【0216】
[実施例30]OCDモデルに由来する組織についてセラーズの軟骨再分化病理組織学的解析法により測定した治癒加速
更に、A~Hの治癒プロセスで認められた全体的なパラメーター変化を総合することにより、病理組織学的データを解析した。ラットにアルピニア:ペッパー(AP)組成物とアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)組成物(実施例14及び15)を200mg/kgの用量で6週間毎日投与した処、溶媒投与群のOCDラットよりも治癒が夫々40.5%及び40.4%増加することが分かった(表20)。このデータサマリーから明らかなように、OCDモデルが誘発され、AMKとAPの経口投与の結果として、治癒の有意な改善(従って、軟骨修復、再分化、再生、再建)が認められたことは至極明白である。比較すると、ピアスクレジン群は、溶媒を投与したOCDラットに比較して10.9%だけ早い治癒ブロセスを示した。
【0217】
【0218】
[実施例31]OCDラットにおける軟骨合成の同化レギュレーターとしてのTGF-β1
実施例27~29で例証したOCD試験のバイオマーカー分析用に、剖検時に各動物の心臓血液を採取した。血液を3000rpmで15分間遠心した。血清約700~800μlを各ラットから採取した。使用時まで試料を-80℃に維持した。RandD Systems社製ラットTGF-β1 Quantikine ELISAキット(製品番号MB100B)を使用して、ラット血清中のTGF-β1の存在量を以下のように測定した。血清中の潜在型TGF-β1を1N HClで活性化させた後、1.2N NaOH/0.5M HEPESで中和した。活性化した血清を60倍に希釈し、TGF-β1抗体をコーティングしたマイクロプレートに加えた(血清の最終希釈倍率は90倍である)。室温で2時間後に、血清中のTGF-β1をプレートに結合させ、プレートを十分に洗浄した。酵素標識したTGF-β1抗体をプレートに加え、室温で2時間結合させた。洗浄を繰り返し、酵素基質をプレートに加えた。室温で30分間展開させた後に、停止溶液を加え、450nmの吸光度を読み取った。TGF-β1標準曲線の吸光度読み取り値に基づいてTGF-β1の濃度を計算した。
【0219】
下表21から明らかなように、溶媒を投与したOCDモデル又は正常対照ラットに比較してAP投与群ではTGF-β1の血清中濃度の統計的に有意な上昇が認められた。これらの上昇は、夫々正常対照及び溶媒を投与したOCD群に比較してAP組成物では19.5%と17.1%であり、AMK組成物では9.5%と7.3%であることが分かった。AMK投与群におけるTGF-β1上昇は、溶媒投与群に比較して有意ではなかった。
【0220】
【0221】
同化バイオマーカーのうちで、軟骨合成の最も好適な指標の1つであるTGF-β1は、AP組成物を投与したラットとAMK組成物を投与したラットで上昇することが判明し、AP群では溶媒を投与したOCDラットに比較して統計的に有意となる点まで上昇した。この同化因子が軟骨恒常性の維持に関与し、軟骨細胞による軟骨修復プロセスを刺激することが知られているという事実は、多くの公表データにより裏付けられている。健康な軟骨ではTGF-β1の濃度が高いが、OA患者ではその発現が低い。関節炎に罹患した実験動物では、TGF-β1を膝に注射すると、軟骨減少を抑えながら、プロテオグリカン濃度が上昇し、関節軟骨の細胞外マトリックス成分の再建と恒常性におけるその重要性を示唆している(van Beuningen et al.,1994;Verdier et al.,2003;Glansbeek et al.,1998)。従って、本発明者らの試験で認められたこれらの顕著な変化は、軟骨細胞、細胞外マトリックス、関節軟骨及び損傷した関節の表現型の恒常性の調節に関係していると思われるアルピニア:ピペル/ペッパー(AP)組成物とアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)組成物のいずれかにより平衡が同化方向へと逆転することを実証するものであり、投与効果は、溶媒を投与したOCD群に認められる自然回復よりも著しく迅速であった。
【0222】
[実施例32]カラゲニン誘発足蹠浮腫モデルにおける個々のアルピニア、ペッパー、マグノリア及びコキア抽出物の症状緩和機能
ラットのカラゲニン誘発足蹠浮腫を使用し、個々のアルピニア、ペッパー、マグノリア及びコキア抽出物の抗炎症・鎮痛活性を評価した。Sprague Dawley(SD)ラット(各群N=5)にカラゲニン100μlの足蹠注射から1時間後にアルピニア抽出物、ペッパー抽出物、マグノリア抽出物及びコキア抽出物300mg/kgを経口投与した。T0(カラゲニン注射前)と、カラゲニン注射の2時間後、4時間後及び6時間後に疼痛感受性と足蹠浮腫をモニターした。イブプロフェンを陽性対照として150mg/kgで使用した。下表22から明らかなように、夫々アルピニア、マグノリア、コキア及びペッパーからの抽出物を投与したラットでは、足蹠浮腫の26.1~37.3%、7.5~33.2%、1~14.7%及び17.9~32.3%、疼痛感受性の21.2~33.8%、15.3~27.1%、18~26.3%及び23.2~33.2%等の種々の抑制率が認められた。コキア投与から5時間後の足蹠浮腫測定を除き、全投与群は疼痛と炎症の統計的に有意な抑制を示した。
【0223】
【0224】
[実施例33]カラゲニン誘発足蹠浮腫モデルにおけるリード組成物発見試験
カラゲニン誘発足蹠浮腫モデルを使用し、アルピニアとマグノリアに由来する個々の植物抽出物を1:1(150:150mg/kg)、1:2(100:200mg/kg)、2:1(200:100mg/kg)、1:4(60:240mg/kg)及び4:1(240:60mg/kg)のブレンド比で併用した天然組成物の抗炎症・鎮痛活性を評価した。ラットに上記組成物を300mg/kgの同一投与量で経口投与した。下表23から明らかなように、これらの薬用植物併用について試験した全ての比で疼痛と炎症の有意な抑制が認められた。ラットに1:2の比のアルピニア:マグノリアを投与した場合に、他の比に比較して若干高い抑制が確認された。1:2比のアルピニアとマグノリアの併用は、溶媒を投与した疾患モデルと比較した場合に、投与の1時間後、3時間後及び5時間後に夫々36.7%、33.3%及び29.3%の疼痛抑制と、37.2%、34.5%及び29.3%の炎症抑制を示した。本試験では、これらの2種類の薬用植物抽出物をこの特定の比で併用すると、個々の植物を同一投与量で投与した場合に比較して(上記実施例32からのデータと比較して)(最初の1時間と投与の5時間後に)疼痛と炎症のより高い抑制を生じることを確認した。そこで、これ以降の試験では、非限定的な例として、アルピニアとマグノリアの1:2比の組成物を選択した。
【0225】
【0226】
[実施例34]カラゲニン誘発足蹠浮腫モデルにおけるアルピニア・ガランガとコキア・スコパリアの併用の鎮痛・抗炎症活性
カラゲニン誘発足蹠浮腫モデルを使用し、1:1(150:150mg/kg)、1:2(100:200mg/kg)、2:1(200:100mg/kg)、1:4(60:240mg/kg)及び4:1(240:60mg/kg)の比で併用したアルピニア抽出物とコキア抽出物の抗炎症・鎮痛活性を評価した。ラットに合計300mg/kgの上記組成物を経口投与した。下表24から明らかなように、これらの薬用植物を試験した全ての比で疼痛と炎症の有意な抑制が認められた。ラットを1:1のアルピニア対コキア比で試験した場合に、他の比に比較して若干高い抑制が認められ、4:1のアルピニア対コキア比が次点であった。アルピニア抽出物とコキア抽出物を1:1の比で併用すると、溶媒を投与した疾患モデルと比較した場合に、投与の1時間後、3時間後及び5時間後に夫々25.0%、27.6%及び25.7%の疼痛抑制と、26.4%、30.9%及び30.6%の炎症抑制を示した。同様に、4:1比のアルピニア抽出物とコキア抽出物の併用は、溶媒を投与した疾患モデルと比較した場合に、投与の1時間後、3時間後及び5時間後に夫々20.4%、26.9%及び26.3%の疼痛抑制と、24.1%、30.7%及び29.1%の炎症抑制を示した。
【0227】
【0228】
[実施例35]AMK(アルピニア、マグノリア及びコキア)組成物の症状緩和効果
本実施例では、限定されないが、アルピニア:マグノリア組成物に第3の成分を加えると、組成物の効力が更に増加したことを実証する。実施例22及び24で実証されたように軟骨細胞に対する同化調節作用と異化調節作用を併有するコキア・スコパリア抽出物を第3の成分として選択し、次の実施例に示すようなカラゲニン誘発ラット足蹠浮腫モデルで評価した。本実施例でも、4:1、2:1及び1:1の比でコキアとブレンドして最終投与量を300mg/kgとしたAM(1:2)の評価にカラゲニン誘発足蹠浮腫を使用した。コキアを加えると、全ての比でAMの効力が押し上げられるようであったが、AMに対してコキアを2:1の比(即ち、2A:4M:3K)で加えた場合に、鎮痛・抗炎症活性の統計的に有意な増加が認められた。溶媒を投与した疾患モデルと比較した場合に、投与の1時間後、3時間後及び5時間後に夫々40.8%、45.2%及び33.1%の疼痛抑制と、42.1%、37.8%及び36.0%の炎症抑制が認められた。これらの抑制は個々の抽出物よりも、また、アルピニアとマグノリアの併用よりも高かった。この投与量で、最も有効な組成物の最終比を2A:4M:3Kに決定した。
【0229】
【0230】
[実施例36]カラゲニン誘発ラット足蹠浮腫モデルで疼痛と炎症の抑制におけるアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)組成物の相乗活性
本実施例では、アルピニア、マグノリア及びコキアを併用してAMK(夫々2:4:3比)とする利点をカラゲニン誘発ラット足蹠浮腫モデルで更に実証した。これらの植物抽出物が相乗的に作用するか否かを調べるために、AMK300mg/kgに個々に配合される通りに各成分をラットに経管投与した。2:4:3比のAMKでは、アルピニア抽出物67mg/kgと、マグノリア抽出物133mg/kgと、コキア抽出物100mg/kgをラットに投与した。300mg/kgの併用組成物の疼痛と炎症の抑制率を同じ投与量の個々の抽出物と比較し、コルビーの式を使用して併用の潜在的な相加作用、拮抗作用又は相乗作用を突き止めた。
【0231】
【0232】
これらの植物抽出物をブレンドして予想外の相乗作用を生じるためには、実測抑制値が計算予想値を上回ることが必要であった。表26から明らかなように、実測された効力は、モニターした各時点で実際に予想値よりも大きく、これらの薬用植物抽出物の間には疼痛と炎症を緩和する相乗効果があることを示唆している。従来報告されている試験によると、これらの薬草には潜在的な抗炎症活性があることが分かっていたが、本特許に提示する標準化ブレンドで併用され、記載の効力を生じるものは皆無であった。
【0233】
[実施例37]カラゲニン誘発足蹠浮腫モデルを使用したAP組成物発見試験
カラゲニン誘発足蹠浮腫モデルを使用し、1:1(150:150mg/kg)、1:2(100:200mg/kg)、2:1(200:100mg/kg)、1:4(60:240mg/kg)及び4:1(240:60mg/kg)の比で併用したアルピニア抽出物とピペル/ペッパー抽出物の抗炎症・鎮痛活性を評価した。ラットに合計300mg/kgの上記組成物を経口投与した。下表27から明らかなように、これらの薬用植物を試験した全ての比で疼痛と炎症の有意な抑制が認められた。ラットを1:2のアルピニア対ピペル/ペッパー比で試験した場合に、他の比に比較して若干高い抑制が認められた。アルピニア抽出物とピペル/ペッパー抽出物を1:2の比で併用すると、溶媒を投与した疾患モデルと比較した場合に、投与の1時間後、3時間後及び5時間後に夫々42.4%、44.3%及び34.7%の疼痛抑制と、39.2%、43.4%及び33.7%の炎症抑制を示した。この組成物を用量反応試験と相乗作用試験に選択した。
【0234】
【0235】
[実施例38]選択したAP組成物の用量反応試験
AP組成物は、1:2の比でラットに300mg/kgを経口投与したときに炎症と疼痛を抑制するので、これまでのインビボ実験からのリード組成物として選択した。本実施例では、カラゲニン誘発ラット足蹠浮腫モデルに100mg/kg、200mg/kg及び300mg/kgを投与し、この併用の用量反応効果を評価した。下表28から明らかなように、この組成物では、用量に相関した炎症と疼痛の抑制が認められた。組成物を300mg/kgで投与したときに最高の抗炎症活性が認められ、それに続いて200mg/kg、100mg/kgの順であった。投与の1時間後、3時間後及び5時間後に、夫々42.8%、43.5%及び32.0%の炎症抑制と、44.8%、44.4%及び34.7%の疼痛抑制が確認された。
【0236】
【0237】
[実施例39]AP組成物におけるリード抽出物の相乗作用測定
アルピニアをペッパーと併用してAP(1:2比)とする利点をカラゲニン誘発ラット足蹠浮腫モデルで評価した。AP300mg/kgに配合される通りに各成分をラットに経管投与した。1:2比のAPでは、100mg/kgのアルピニア抽出物と200mg/kgのペッパー抽出物をラットに投与した。300mg/kgの前記組成物の疼痛と炎症の抑制率を同じ投与量の個々の抽出物と比較し、コルビーの式(Colby 1967)を使用して併用の潜在的な相加作用、拮抗作用又は相乗作用を突き止めた。これらの植物抽出物をブレンドして予想外の相乗作用を生じるためには、実測抑制値が計算予想値を上回ることが必要であった。
【0238】
【0239】
表29から明らかなように、実測された効力は、モニターした各時点で実際に予想値よりも大きく、これらの植物抽出物には疼痛と炎症を緩和する予想外の相乗活性があることを示唆している。
【0240】
[実施例40]コラーゲン誘発関節炎(CIA)ラットモデルにおけるアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)組成物による軟骨合成の刺激と軟骨の分解の抑制
骨、軟骨及び滑膜の数種のバイオマーカーが記載されており、OA患者で介入の有効性、疾患予後、診断及び進行についてその変化が研究されている(Garnero et al.,2000)。軟骨減少は、OA患者で修復プロセスの低下と分解活性の亢進が相俟って軟骨恒常性が異化方向に傾くことに起因すると考えられている。軟骨修復能は限られており、II型コラーゲンは軟骨マトリックスの最も多量に存在するタンパク質であるため、II型コラーゲン合成及び分解の評価は、OA介入の有効性を評価するために実現可能なアプローチであると思われた。例えば、OA患者と健康な対照に由来する軟骨組織は、II型コラーゲンの合成の変化と分解亢進の両方を示している(Nelson et al.,1998;Billinghurst et al.,1997)。
【0241】
従って、OA進行又はOA治療の有効性をより良好に予測するためのツールとして、各々関節軟骨の合成又は分解を指示する2種類のバイオマーカー(特にII型コラーゲン)を使用することが考えられる。この方法は、関節軟骨恒常性の同化プロセスと異化プロセスの両方を勘案している。軟骨発生中に、II型コラーゲンはN及びC末端プロペブチドを含むプロコラーゲンとして合成され、II型プロコラーゲンは、選択的RNAスプライシングの結果として2種類(A型及びB型)で産生される。II型コラーゲンの分泌時でECMに組み込まれる前にこれらのプロペブチドのいずれかが滑液から血液循環に放出されることを使用し、軟骨合成又は再分化又は再建速度を測定することができる。他方、尿中のII型コラーゲンC末端テロペプチド(uCTX-II)は、軟骨の分解の顕著なマーカーである。尿中II型コラーゲンC末端テロペプチド(uCTX-II)は、従来最も研究されており、軟骨の分解の検証済みバイオマーカーと称されることが多く、診断、疾患重症度又は疾患進行程度の決定、予後、及び治療効果をモニターする目的で使用できると思われる(Oesterggaard et al.,2006)。臨床試験において、高濃度のuCTX-IIは、関節破壊の危険増加の良好な予測因子である(Garnero et al.,2001)。
【0242】
コラーゲン誘発ラット関節炎モデルに経口投与した新規なアルピニア:ペッパー(AP)組成物とアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)組成物が、分解(従って、異化活性)と軟骨再建(従って、同化活性)の軟骨恒常性に及ぼす影響を調べるために、uCTX-II及びPIIANPの2種類の一次バイオマーカーを使用した。これまでに、Garneroらは、これらのマーカー[II型コラーゲン合成・分解:夫々IIA型プロコラーゲンN-プロペブチド(PIIANP)と尿中CTX-II]を測定し、OA患者のX線写真及び関節鏡検査の所見と相関させている。その結果、血清中PIIANP濃度が低く、尿中CTX-II濃度が高い患者は、OAの進行の相対リスクがX線写真によると2.9倍であり、関節鏡検査によると9.3倍であった(Garnero et al,2002)。同著者らは、これらの患者にコラーゲンの合成と分解の乖離作用があり、OAの進行に傾き易いと自身の所見を説明している。
【0243】
【0244】
上記著者らの方法を応用し、夫々PIIANPとuCTX-IIからのデータを使用して軟骨合成・分解のZ因子を計算した。OA異化側進行を同化又は再分化活性に向けるように介入するためには、Zスコア値がゼロに近付く必要がある。下表30から明らかなように、AMKの再分化Zスコア(CIAの-1.39±0.23に対してAMKでは-0.59±0.20であり、AMKのほうが再建機能の低下が少ないことを示す)と分解Zスコア値(CIAの1.59±0.31に対してAMKでは-0.07±0.45であり、AMKのほうが分解が少ないことを示す)(表30)は、溶媒を投与した疾患群(CIA群)に対して有意な差があった。軟骨合成とその分解の保護を誘導することによりOA進行を正常に向かわせるこれらの改善は、溶媒を投与したCIAラットと比較した場合に、AMKを投与した動物とメトトレキサートを投与した動物では夫々82.6%と56.4%であることが分かった。
【0245】
[実施例41]コラーゲン誘発関節炎モデル誘発とAMK投与
雄性Sprague Dawleyラット(7~8週齢,n=40)をCharles River Laboratories Inc.(Wilmington,MA,米国)から購入し、到着後、2週間馴化させた後、夫々の投与群、即ち、G1=正常対照(-)(n=10/群)、G2=コラーゲン誘発関節炎(CIA)+溶媒(0.5%カルボキシメチルセルロース)(n=10/群)、G3=CIA+メトトレキサート(+)(75μg/kg)(n=10/群)、及びG4=CIA+AMK(+)(200mg/kg)(n=10/群)にランダムに割り当てた。モデル誘発の2週間前に投与を開始し、その後、更に3週間投与を続けた。ウシ鼻中隔由来II型コラーゲン(ロット番号845)と、不完全フロイント補助剤(IFA)(ロット番号SLBR0642v)は、夫々Elastin Products Company(Owensville,MI,米国)とSigma(St.Louise,MO,米国)から購入した。全材料は製造業者に推奨されるような好適な温度に維持した。調製時に、コラーゲン60mgを秤量し、磁気攪拌機付き60mL容フラスコで予め冷却しておいた0.1M酢酸15mLに加え、4mg/mLの濃度とした(Brand,et al.,2003;Rosloniec et al.,2001)。
【0246】
4℃で終夜静かに攪拌することにより混合物を溶解させた。翌朝、溶解したコラーゲンを同量のIFA(15mL)で乳化させ、コラーゲンの最終濃度を2mg/mLとした。次に、26G針を装着した1mLシリンジを使用し、イソフルラン麻酔下のラットの尾基部の2箇所に、乳化コラーゲン400μLを皮内プライミング投与した。溶解した混合物をアイスバケットに維持し、各群の注射時毎に攪拌し、均一なコンシステンシーを維持した。7日目に、同量の不完全補助剤で乳化した2mg/mLのブースター用量のII型コラーゲンを1匹1箇所当たり100μLの量でラットに接種した。
【0247】
試験期間中、関節炎重症度指数、足蹠厚、足首直径(川崎市、株式会社ミツトヨ製Digital Absolute,Model#PK-0505CPXを使用)、及び疼痛感受性(Randall Salitto,IITC Life Science Inc.,Woodland Hills,CA,米国を使用)等の臨床所見をモニターした。モデル誘発後3週間投与後に代謝ケージを使用して、終夜絶食させたラットから採尿した。剖検時に、バイオマーカー用に心臓からの血清及び滑膜洗浄液(生理食塩水100μLを関節腔に注入し、シリンジに吸引した)と、病理組織学的解析用に足首関節を各動物から採取した。
【0248】
線形台形法を使用し、9~21日の曲線下面積(AUC)を計算した。抑制率%={(投与群の平均値-CIA+の平均値)/(対照の平均値-CIAの平均値)}*100
【0249】
[実施例42]CIAモデルにおけるAMK組成物によるラットの関節炎重症度指数の低下
ラットは試験期間中に疾患の遅い進行を示し続けた。データから明らかなように、メトトレキサートを投与したラットとAMKを投与したラットは、12日目から関節炎重症度の統計的に有意な抑制を示し、試験期間中、この有意性を持続した(表31)。
【0250】
試験の終了時に、溶媒、メトトレキサート及びAMKを投与したラットで夫々3.75±0.32、1.78±0.79、及び1.95±1.17の平均重症度スコアが認められた。このことは、AMK投与群とメトトレキサート投与群の効果及び効力が際立っていることを実証した。関節炎重症度の曲線下面積を計算した処、陽性対照メトトレキサート投与群とAMK投与群から夫々62.55%(p=0.04)と51.35%(p=0.04)の抑制率が認められ、統計的に有意であった(表31)。
【0251】
[実施例43]AMK組成物によりCIAラットの足首直径が減少し、その抗関節炎活性を示す。
重症度スコアに一致し、メトトレキサートを投与したラットとAMKを投与したラットは、12日目から足首直径の統計的に有意な減少を示し、試験期間中、この有意性を維持した(表32)。これらの群は、9~21日目の曲線下面積を考慮した場合に、足首幅の統計的に有意な減少を示した。メトトレキサートを投与したラットとAMKを投与したラットで夫々65.94%と55.84%の足首直径減少率が認められ、統計的有意差があった(表32)。
【0252】
[実施例44]AMK組成物によりCIAラットの足蹠厚が減少し、その抗関節炎活性を示す。
重症度スコアと足首直径に一致し、メトトレキサートを投与したラットとAMKを投与したラットは、12日目から足蹠腫脹の統計的に有意な抑制を示し、試験期間中、この有意性を維持した(表33)。腫脹の曲線下総面積(12日~21日)を考慮した場合に、メトトレキサート群とAMK群は、夫々溶媒を投与したCIA群に比較して足蹠浮腫の統計的に有意な抑制(71.7%及び64.3%)を示した(表34)。
【0253】
[実施例45]アルピニア:マグノリア:コキア(AMK)組成物を投与したCIAラットの関節炎指数、足首直径及び足蹠厚の応答曲線下面積(AUC)
上記表34に示したように、APを投与したラットは、溶媒を投与したCIAラットと比較した場合に、試験期間を通して夫々足蹠厚、足首直径及び関節炎重症度指数の64.23%、55.8%及び51.4%の抑制を示した。これらの抑制率は各パラメーターで50%を上回り、各パラメーターで統計的に有意であり、AMK組成物が関節炎関連症状を抑制するのに有効であることを示した。比較すると、メトトレキサートを投与したラットは、夫々足蹠厚、足首直径及び関節炎重症度指数の71.7%、65.9%及び62.6%の減少を示した。
【0254】
[実施例46]アルピニア:マグノリア:コキア(AMK)組成物によりCIAラットの圧縮誘発疼痛が抑制され、その症状緩和活性を示す。
電子モニターに接続したRandall-Salittoプローブを使用し、プライミング日、ブースト日、並びに12日目、14日目、16日目、19日目及び21日目に疼痛感受性の尺度としての圧力応答を評価した。これらの日に左右両方の後足をモニターし、その平均をデータ解析に使用した。溶媒を投与したCIAラットの変化をこれらの日に疼痛耐性として報告した。疾患モデルで最高の疼痛耐性はメトトレキサート群のラットで認められ、AMK群が次点であった(表35)。夫々12日目、14日目、16日目、19日目及び21日目にメトトレキサートで認められた6.8%、13.5%、28.2%、40.8%及び43.9%と、AMKで認められた6.9%、17.5%、23.2%、32.4%及び39.0%のこれらの抑制率は、12日目の時点で統計的に有意であり、14日目のメトトレキサート群の抑制が統計的に有意でなかったことを除き、試験期間中、有意に維持された。
【0255】
【0256】
【0257】
【0258】
【0259】
【0260】
[実施例47]CIAラットにおけるアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)組成物による炎症性サイトカインとマトリックス分解酵素の抑制
R and D Systems社製ラットIL-1β、TNF-α及びIL-6 Quantikine ELISAキット(製品番号IL-1β:RLB00、TNF-α:RTA00、及びIL-6:R6000B)を使用して、異化性サイトカインIL-1β、TNF-α又はIL-6の存在量を以下のように測定した。ポリクローナルIL-1β、TNF-α、又はIL-6抗体をコーティングしたマイクロプレートに希釈した血清を加え、室温で2時間結合させた。マイクロプレートを十分に洗浄し、未結合の血清を除去した後、酵素標識したポリクローナルIL-1β、TNF-α又はIL-6抗体を加え、室温で2時間結合させた。洗浄を繰り返し、酵素基質を加え、プレートを室温で30分間展開させた。停止溶液の添加後に、450nmの吸光度を読み取り、希釈倍率を乗じ、IL-1β/TNF-α/IL-6標準曲線の吸光度読み取り値に基づいてIL-1β/TNF-α/IL-6の濃度を計算した。
【0261】
Mybiosource社製ラットマトリックスメタロプロテアーゼ13(MMP-13)ELISAキット(MMP-13の製品番号MBS702112)を使用して、軟骨の破壊酵素MMP-13の存在量を以下のように測定した。MMP-13抗体をコーティングしたマイクロプレートに血清を加え、37℃で2時間結合させた。試料を取り出した後、ビオチン標識したMMP-13抗体を加え、37℃で1時間結合させた。マイクロプレートを十分に洗浄し、アビジン標識した西洋ワサビペルオキシダーゼを加え、37℃で1時間結合させた。次に酵素基質を加え、プレートを37℃で30分間展開させた。停止溶液の添加後に、450nmの吸光度を読み取り、希釈倍率を乗じ、MMP-13標準曲線の吸光度読み取り値に基づいてMMP-13の濃度を計算した。
【0262】
異化性サイトカインの産生増加は、コラーゲン誘発関節炎病理の必須部分である。AMK組成物を投与したラットは、溶媒を投与したCIA群と比較した場合に、血清中IL-1β濃度の統計的に有意な低下を示した(表36)。同様に、AMK又はメトトレキサートを投与したCIAラットでは、血清中TNF-α及びIL-6濃度の顕著な低下が認められた。表36に示すように、溶媒を投与したCIA群では、正常対照に比較して血清中異化性サイトカインIL-1β及びIL-6濃度の有意な上昇が認められた。AMKを投与したラットは、溶媒を投与した疾患ラットと比較した場合に、血清中IL-1β濃度(疾患対照に比較して67.4%抑制)、IL-6濃度(疾患対照に比較して60.2%抑制)及びTNF-α濃度(疾患対照に比較して75.5%抑制)の統計的に有意な低下を示した(表36)。メトトレキサートを投与したラットは、溶媒を投与した疾患ラットと比較した場合に、血清中IL-1β濃度(疾患対照に比較して71.5%抑制)、IL-6濃度(疾患対照に比較して78.6%抑制)及びTNF-α濃度(疾患対照に比較して86.2%抑制)の低下を示した(表36)。本実施例は、天然AMK組成物が関節炎動物の異化プロセスを抑制できることを明白に実証した。
【0263】
同様に、溶媒を投与した関節炎疾患ラットでは、正常対照ラットと比較した場合に、血清中MMP-13濃度の顕著な上昇が認められた。表36から明らかなように、AMKを投与したCIAラットは、溶媒を投与したCIAラットに比較して異化性軟骨の破壊酵素MMP-13濃度の統計的に有意な低下を示した。AMKを投与したCIAラットからのこの81.4%のMMP-13抑制率は、CIAを投与したラットに対して統計的に有意であると計算された。統計的に有意ではなかったが、対照薬メトトレキサートを投与したラットでは、血清中MMP-13濃度の顕著な低下(溶媒を投与したCIAラットに比較して78.6%)が認められた。
【0264】
【0265】
[実施例48]CIAラットにおけるアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)の軟骨の分解抑制及び軟骨再分化/再建活性亢進
Mybiosource社製ラットCTX-II ELISAキット(製品番号MBS2880519)を使用して、軟骨の分解バイオマーカーuCTX-IIの存在量を以下のように測定した。CTX-II抗体をコーティングしたマイクロプレートに希釈した尿を加え、37℃で2時間結合させた。次に、CTX-IIに対するビオチン標識抗体を加え、ラット尿に由来するCTX-IIと37℃で1時間結合させた。マイクロプレートを十分に洗浄し、未結合の尿と抗体を除去した後、特異的検出のために酵素標識アビジン抗体をビオチン標識抗体と結合させた。アビジン抗体を37℃で1時間結合させた。洗浄を繰り返し、酵素基質を加え、プレートを37℃で30分間展開させた。停止溶液の添加後に、450nmの吸光度を読み取り、希釈倍数を乗じ、CTX-II標準曲線の吸光度読み取り値に基づいてCTX-IIの濃度を計算した。R and D Systems社製クレアチニンパラメーターアッセイキット(製品番号KGE005)を使用して、以下のようにCTX-II量を尿中クレアチニン量に正規化させた。尿を20倍に希釈し、マイクロプレートでアルカリピクリン酸塩(0.13%ピクリン酸5部:1N NaOH1部)と混合し、室温で30分間インキュベートした。492nmの吸光度を読み取り、クレアチニン標準曲線の吸光度読み取り値に基づいて尿中のクレアチニン量を計算した。
【0266】
Mybiosource社製IIA型ラットプロコラーゲンN-Prop(PIIANP)ELISAキット(製品番号MBS9399069)を使用して、軟骨再分化/再建バイオマーカーPIIANPの存在量を以下のように測定した。PIIANP抗体とHRP標識PIIANP抗体をコーティングしたマイクロプレートに滑液を加え、37℃で1時間結合させた。マイクロプレートを十分に洗浄し、Chromagen溶液を加え、37℃で15分間結合させた。停止溶液の添加後に、450nmの吸光度を読み取り、PIIANP標準曲線の吸光度読み取り値に基づいてPIIANP濃度を計算した。
【0267】
関節炎疾患モデルと投与群の両方で有意な尿中CTX-II濃度変化が認められた。表37に示すように、溶媒を投与したCIA群では、正常対照動物に比較して尿中CTX-II濃度の統計的に有意な上昇が認められ、疾患動物の異化プロセスの亢進が確認された。尿中CTX-II濃度が高いのは軟骨の分解の徴候であるが、AMK組成物により有意に抑制された。AMKを投与すると、溶媒を投与した疾患CIAラットに比較して軟骨の破壊が有意に抑制された(36.7%まで抑制された)。陽性対照メトトレキサートは、CIAに比較して軟骨の分解バイオマーカーの26.4%抑制を示し、p=0.06であった。
【0268】
同様に、軟骨合成/再分化/再建バイオマーカーである滑液中PIIANPを測定することにより、AMK組成物からの同化作用を確認した。下表37から明らかなように、AMKを投与したラットでは、溶媒を投与したCIAラットと比較した場合に、滑液中PIIANPの統計的に有意な上昇が認められた。このAMK投与群のラットは、溶媒を投与したCIAラットと比較した場合に、軟骨合成/再分化/再建バイオマーカーである滑液中PIIANPの79.4%の上昇を示した。メトトレキサートを投与したラットは、溶媒を投与したCIAラットに比較して軟骨修復の69.8%の増加を示した。これに対して、溶媒を投与したCIAラットでは、PIIANP濃度が19分の1未満に低下し、関節炎動物が修復よりも軟骨の分解側にシフトしていることが分かる。
【0269】
【0270】
[実施例49]アルピニア:マグノリア:コキア(AMK)を投与したCIAラットの病理組織学的所見
病理組織学的試験のために、足首関節を10%ホルマリンに72時間保持した。固定した検体を次に1日半かけてCalci-Clear Rapidで脱灰し、パラフイン包埋した。関節の矢状面の内側及び外側断面で標準化5μm連続切片を取得し、プロテオグリカン含有量の評価を可能にするように、ヘマトキシリン・エオジン(HE)とサフラニンOファストグリーンで染色した。改変型マンキン(Mankin)システム(Mankin et al.,1971)を使用して疾患進行及び/又は治療効果に起因する関節組織の構造・細胞変化を採点した。組織学的解析はNationwide Histologyで実施し、公認病理医によりスライドを試験した。
【0271】
病理組織学的データは関節炎の重症度スコアと一致した。正常対照ラットと比較した場合に、溶媒を投与したラットは、重度滑膜炎、顕著な軟骨の分解、滑膜過形成、パンヌス形成、及び骨糜爛を示した(
図5、表38)。正常対照に比較して溶媒を投与したCIAラットのこれらの変化は、軟骨の分解、GAG減少、骨糜爛及び炎症の夫々3.3倍、3.8倍、4.7倍及び24.2倍の増加として反映された。これに対して、AMKを投与したラットは、ほぼ正常の形態であり、マトリックス完全性、より滑らかな関節軟骨表面、低レベルの単核細胞浸潤及び滑膜過形成の変化が最小限であると共に、関節骨損傷が抑制された。AMK組成物の軟骨保護、従って、抗異化活性は、溶媒を投与したCIAラットに比較して65.1%であり、マトリックス完全性の維持は61.9%であることが判明した。バイオマーカーデータ(異化性サイトカインIL-1β、TNF-α及びIL-6の抑制)に一致し、AMK組成物を投与したラットでは、溶媒を投与したCIAラットと比較した場合に、炎症の88.2%の抑制が認められた。AMK組成物を投与したCIAラットでは、骨糜爛の73.1%の抑制も認められた。これらの変化は、モニターした各パラメーターに関して、溶媒を投与したCIAラットに比較して統計的に有意であった。
【0272】
【0273】
図5は、AMKとMTXを投与したCIA誘発ラットの足首関節からの病理組織画像(HE:a~d及びサフラニンO:e~f)を示す。a及びe:正常対照、b及びf:CIA+溶媒、c及びg:CIA+MTX、d及びh:CIA+AMK。
【0274】
本願の保護対象で実施例40~49に記載したようにCIAモデルからの上記アルピニア:マグノリア:コキア(AMK)の有効性結果を文書で立証した後、CIAモデルにおけるAMKの用量反応試験を実施し、FDAにより提唱されているように最適ヒト等価用量換算値を推定した(http://www.fda.gov/cder/guidance/index.htm)。この産業用FDAガイダンスでは、mg/kgで表したラット用量をヒトに換算するのに0.16の換算係数が提唱されている(即ち、mg/kgで表したラット用量×0.16=mg/kgで表したヒト等価用量)。因みに、このCIA試験では、ラットに40mg/kg/日、60mg/kg/日、80mg/kg/日及び120mg/kg/日のAMKを5週間経口投与している。これらの投与量は、平均的な70kgの成人では、448mg/日、672mg/日、896mg/日及び1344mg/日のヒト等価用量となる。本発明者らは、この用量反応試験が、将来のヒト臨床試験用量決定の基礎となると確信している。
【0275】
[実施例50]第2のコラーゲン誘発関節炎モデル誘発とAP投与
雄性Sprague Dawleyラット(7~8週齢,n=40)をCharles River Laboratories Inc.(Wilmington,MA,米国)から購入し、到着後、2週間馴化させた後、夫々の投与群、即ち、G1=正常対照(-)(n=10/群)、G2=コラーゲン誘発関節炎(CIA)+溶媒(0.5%カルボキシメチルセルロース)(n=10/群)、G3=CIA+メトトレキサート(+)(0.5mg/kg)(n=10/群)、及びG4=CIA+AP(+)(200mg/kg)(n=10/群)にランダムに割り当てた。モデル誘発の2週間前に投与を開始し、その後、更に3週間投与を続けた。ウシ鼻中隔由来II型コラーゲン(ロット番号845)と、不完全フロイント補助剤(IFA)(ロット番号SLBR0642v)は、夫々Elastin Products Company(Owensville,MI,米国)とSigma(St.Louise,MO,米国)から購入した。全材料は製造業者に推奨されるような好適な温度に維持した。調製時に、コラーゲン60mgを秤量し、磁気攪拌機付き60mL容フラスコで予め冷却しておいた0.1M酢酸15mLに加え、4mg/mLの濃度とした(Brand,et al.,2003;Rosloniec et al.,2001)。4℃で終夜静かに攪拌することにより混合物を溶解させた。翌朝、溶解したコラーゲンを同量のIFA(15mL)で乳化させ、コラーゲンの最終濃度を2mg/mLとした。次に、26G針を装着した1mLシリンジを使用し、イソフルラン麻酔下のラットの尾基部の2箇所に、乳化コラーゲン400μLを皮内プライミング投与した。溶解した混合物をアイスバケットに維持し、各群の注射時毎に攪拌し、均一なコンシステンシーを維持した。7日目に、同量の不完全補助剤で乳化した2mg/mLのブースター用量のII型コラーゲンを1匹1箇所当たり100μLの量でラットに接種した。
【0276】
試験期間中、関節炎重症度指数、足蹠厚、足首直径(川崎市、株式会社ミツトヨ製Digital Absolute,Model#PK-0505CPXを使用)、及び疼痛感受性(Randall Salitto,IITC Life Science Inc.,Woodland Hills,CA,米国を使用)等の臨床所見をモニターした。モデル誘発後3週間投与後に代謝ケージを使用して、終夜絶食させたラットから採尿した。剖検時に、バイオマーカー用に心臓からの血清及び滑膜洗浄液(生理食塩水100μLを関節腔に注入し、シリンジに吸引した)と、病理組織学的解析用に足首関節を各動物から採取した。
【0277】
線形台形法を使用し、9~21日の曲線下面積(AUC)を計算した。抑制率%={(投与群の平均値-CIA+の平均値)/(対照の平均値-CIAの平均値)}*100
【0278】
[実施例51]CIAラットにおけるAP組成物による関節炎重症度指数の低下
ラットは試験期間中に疾患の遅い進行を示し続けた。下記データから明らかなように、メトトレキサートとAP等の投与群のどちらのラットも、12日目から関節炎重症度の統計的に有意な抑制を示し、試験期間中、この有意差を持続した(表39)。
【0279】
試験の終了時に、溶媒、メトトレキサート及びAPを投与したラットで夫々3.5±0.42、1.1±0.17、及び2.0±0.89の平均重症度スコアが認められた。これらの数値は、溶媒を投与した疾患モデルに比較してAP投与群と薬物投与群には明白な効果と効力があることを実証した。関節炎重症度曲線下面積を計算した処、陽性薬物対照メトトレキサート投与群と、AP投与群から夫々78.8%(p=0.002)と54.9%(p=0.02)の抑制率が認められ、統計的に有意であった(表39)。
【0280】
[実施例52]CIAラットにおけるAP組成物による足首直径の減少
メトトレキサートを投与したラットとAPを投与したラットでは、誘発後16日目まで足首直径の統計的に有意な減少が確認された(表40)。その後、メトトレキサート群のみが足首直径の統計的に有意な減少を示した。9日目と20日目の曲線下面積を考慮すると、メトトレキサート群のみが、足首幅の統計的に有意な減少(即ち、93.6%)を示した。AUCを考慮すると、APを投与したCIAラットでは足首直径の統計的に有意ではない60.6%の減少が認められた(表40)。
【0281】
【0282】
【0283】
[実施例53]CIAラットにおけるAP組成物による足蹠厚の減少
重症度スコアと足首直径に一致し、メトトレキサートを投与したラットとAPを投与したラットは、12日目から足蹠腫脹の統計的に有意な抑制を示し、試験期間中、この有意性を維持した(表41)。しかし、この抑制の腫脹曲線下総面積(7日~20日)を考慮すると、メトトレキサート群のみのラットが溶媒を投与したCIA群に比較して足蹠浮腫の統計的に有意な93.8%抑制を示した(表41)。AP組成物を投与したラットでは、溶媒を投与したCIAラットに比較して足蹠浮腫の69.3%の抑制率が認められ、P値は0.058であった(表41)。
【0284】
【0285】
[実施例54]AP組成物を投与したCIAラットの関節炎指数、足首直径及び足蹠厚の応答曲線下面積(AUC)
下表42から明らかなように、APを投与したラットは、溶媒を投与したCIAラットと比較した場合に、試験期間中に足蹠厚、足首直径及び関節炎重症度指数の夫々69.3%、60.7%及び54.9%の抑制を示した。これらの抑制率は、各パラメーターで50%を上回り、AP組成物が関節炎関連症状を抑制するのに有効であることを示している。比較すると、メトトレキサートを投与したラットは夫々足蹠厚、足首直径及び関節炎重症度指数の93.8%、93.6%及び78.8%の抑制を示した。
【0286】
[実施例55]AP組成物によりCIAラットの圧縮誘発疼痛が抑制され、その症状緩和活性を示す。
【0287】
電子モニターに接続したRandall-Salittoプローブを使用し、プライミング日、ブースト日、並びに12日目、14日目、16日目、18日目及び20日目に疼痛感受性の尺度としての圧力応答を測定した。これらの日に左右両方の後足をモニターし、その平均をデータ解析に使用した。溶媒を投与したCIAラットの変化をこれらの日に疼痛耐性として報告した。最高の疼痛耐性はメトトレキサート群のラットで認められ(20日目に69.4%改善)、APが次点であった(18日目に31.5%改善)(表43)。疼痛感受性のこの抑制は、溶媒を投与したCIAラットと比較した場合に、どちらの群でも12日目までの全時点で統計的に有意であった(表43)。AP組成物を投与したラットは、溶媒を投与したCIAラットに比較して疼痛感受性の8.25~31.5%の範囲の抑制を示した。メトトレキサート群は、同一期間で疼痛感受性の8.39~69.4%の抑制を示した。
【0288】
[実施例56]CIAラットにおけるアルピニア:ペッパー(AP)組成物による異化性サイトカイン、マトリックス分解酵素及び軟骨合成バイオマーカーの変化
試験の完了時に、心臓穿刺により各動物から採血した。血液を3000rpmで15分間遠心した。各ラットから血清約700~800μlを採取した。使用時まで試料を-80℃に維持した。
【0289】
RandD Systems社製ラットIL-6/TNF-α Quantikine ELISAキットを使用して、異化性サイトカインIL-6/TNF-αの存在量を以下のように測定した。ポリクローナルIL-6/TNF-α抗体をコーティングしたマイクロプレートに未希釈血清を加え、室温で2時間結合させた。マイクロプレートを十分に洗浄し、未結合の血清を除去した後、酵素標識したポリクローナルIL-6/TNF-α抗体を加え、室温で2時間結合させた。洗浄を繰り返し、酵素基質を加え、プレートを室温で30分間展開させた。停止溶液の添加後に、450nmの吸光度を読み取り、IL-6/TNF-α標準曲線の吸光度読み取り値に基づいてIL-6/TNF-αの濃度を計算した。
【0290】
【0291】
【0292】
Mybiosource社製ラットマトリックスメタロプロテアーゼ13(MMP-13)ELISAキット(製品番号MBS702112)を使用して、軟骨の破壊酵素MMP-13の存在量を以下のように測定した。MMP-13抗体をコーティングしたマイクロプレートに未希釈血清を加え、37℃で2時間結合させた。試料を取り出した後、ビオチン標識MMP-13抗体を加え、37℃で1時間結合させた。マイクロプレートを十分に洗浄し、アビジン標識西洋ワサビペルオキシダーゼを加え、37℃で1時間結合させた。次に酵素基質を加え、プレートを37℃で30分間展開させた。停止溶液の添加後に、450nmの吸光度を読み取り、MMP-13標準曲線の吸光度読み取り値に基づいてMMP-13の濃度を計算した。
【0293】
Mybiosource社製IIA型ラットプロコラーゲンN-Prop(PIIANP)ELISAキット(製品番号:MBS9399069)を使用して、軟骨再分化バイオマーカーPIIANPの濃度を以下のように測定した。PIIANP抗体とHRP標識PIIANP抗体をコーティングしたマイクロプレートに未希釈血清を加え、37℃で1時間結合させた。マイクロプレートを十分に洗浄し、Chromagen溶液を加え、37℃で15分間結合させた。停止溶液の添加後に、450nmの吸光度を読み取り、PIIANP標準曲線の吸光度読み取り値に基づいてPIIANPの濃度を計算した。
【0294】
AP組成物200mg/kgを3週間経口投与すると、血清中異化バイオマーカーIL-6、TNF-α及びMMP-13の濃度は、溶媒を投与したCIAラットに比較して有意に低下した。AP組成物投与の結果としての炎症性・異化性サイトカインの最も有意な阻害はIL-6で認められ、溶媒を投与したCIAラット群に比較して58.7%低下した。この低下に加え、APを投与したラットでは、マトリックス分解酵素MMP-13が43.5%低下した。IL-6とMMP-13のデータは、APを投与したラットの臨床測定値と病理組織学的所見に関する限り、生存時試験で認められた結果を真に反映していると思われる。陽性薬剤対照であるメトトレキサートを投与したラットは、血清中のIL-6とTNF-αの量が有意に低下した。
【0295】
溶媒を投与したCIAラットでは、対照群に比較して血清中軟骨再分化バイオマーカーPIIANPの統計的に有意な低下が認められた(p=0.0017)(表44)。陽性対照であるメトトレキサートは、血清中PIIANPを有意に上昇させた(47%、CIA+溶媒に比較してp=0.0017)。AP200mg/kgを3週間経口投与すると、血清中軟骨再分化バイオマーカーPIIANPが上昇した(即ち、18%)が、この上昇は有意ではなかった。これらの結果から、AP投与は関節炎ラットの進行を軟骨再分化/再建側に転換するが、その程度は薬剤対照よりも低いと判断された。これは、APと薬物の投与がこの関節炎動物モデルの特徴であるコラーゲン分解表現型の逆転に寄与することを示している。
【0296】
【0297】
[実施例57]CIAラットにおけるアルピニア:ペッパー(AP)組成物による病理組織学的所見の変化
剖検時に、足首関節を注意深く切り出し、10%緩衝ホルマリンで固定し、更に病理組織学的解析するためにNationwide Histology(Veradale,WA,米国)に送った。固定した検体を次に1日半かけてCalci-Clear Rapidで脱灰し、パラフイン包埋した。各ラットから標準化5μm連続切片を取得し、プロテオグリカン含有量の評価を可能にするように、ヘマトキシリン・エオジン(HE)とサフラニンOファストグリーンで染色した。改変型マンキンシステム(Mankin et al.,1981)を使用して疾患進行及び/又は治療効果の指標としての関節成分の構造・細胞変化を採点した。組織学的解析はNationwide Histologyで公認病理医により実施した。
【0298】
病理組織学的データは関節炎の重症度スコアと一致した。正常対照ラットと比較した場合に、溶媒を投与したCIAラットは、重度滑膜炎、顕著な軟骨の分解、滑膜過形成、パンヌス形成、及び骨糜爛を示した(
図5及び表45)。正常対照に比較して溶媒を投与したCIAラットのこれらの変化は、軟骨の分解、GAG減少、骨糜爛及び炎症の夫々17.9倍、7.9倍、181倍及び52.7倍の増加として反映された。これに対して、メトトレキサートを投与したラットは、ほぼ正常の形態であり、マトリックス完全性、より滑らかな関節軟骨表面、低レベルの単核細胞浸潤及び滑膜過形成の変化が最小限であると共に、関節骨損傷が抑制された(表45)。同様に、AP組成物を投与したラットも、溶媒を投与したCIAラットに比較して軟骨破壊、炎症重症度、骨糜爛及びGAG減少の統計的に有意な抑制を示した。AP組成物の軟骨保護、従って、抗異化活性は、溶媒を投与したCIAラットに比較して57.7%であり、マトリックス完全性の維持は47.5%であることが判明した。バイオマーカーデータ(例えば異化性TNF-α及びIL-6の抑制)に一致し、溶媒を投与したCIAラットと比較した場合に、炎症の67.0%の抑制が認められた。AP組成物を投与したCIAラットでは、骨糜爛の61.0%の抑制も認められた。AP投与によるこれらの変化は、モニターした各パラメーターに関して、溶媒を投与したCIAラットに比較して統計的に有意であった。
【0299】
【0300】
図6は、APを投与したCIAラットのHE及びサフラニンO染色組織画像を示す(HE染色(40倍):a=正常対照+溶媒、b=CIA+溶媒、c=CIA+メトトレキサート、d=CIA+AP、サフラニンO染色(40倍):e=正常対照+溶媒、f=CIA+溶媒、g=CIA+メトトレキサート、h=CIA+AP、C=軟骨、SB=軟骨下骨、I=炎症)。
【0301】
[実施例58]コラーゲン誘発関節炎(CIA)におけるアルピニア:ペッパー(AP)とアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)の軟骨保護・症状緩和活性の関与
ラットのCIAモデルは、最も広く研究されているRAの自己免疫モデルであり、ヒトにおける免疫介在性多発性関節炎と似たいくつかの病理学的特徴がある(Miyoshi et al.,2018)。このモデルは免疫から疾患発現までの期間が短いため、治療効力評価に利用し易い。異種II型コラーゲン(CII)の接種後、ラットは抗原に対して体液性と細胞性の両方の応答を生じる(Brand et al.,2003)。この感作後、宿主動物は主に関節軟骨に存在する自己のII型コラーゲンを攻撃し、その結果、糜爛性又は非糜爛性の関節破壊を生じる。この疾患の病態生理学は高度に絡み合い、複雑である。誘発後、ラットは、炎症性疼痛及び腫脹、軟骨の分解、滑膜過形成、パンヌス形成、単核細胞浸潤、変形、並びに不動化を来す。
【0302】
本実施例に記載するCIA試験において、ラットはプライミング後9日目に関節炎の疾病特徴的徴候を示し始めた後、重症度が漸進的に増し、19日目から21日目でほぼプラトーに近付いた。これらの症状は、免疫抑制剤であるメトトレキサートと、新規天然組成物であるアルピニア:ペッパー(AP)及びアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)の経口投与により軽減された。全投与群(メトトレキサート、AP及びAMK)は、溶媒を投与した疾患ラットと比較した場合に、関節炎重症度、腫脹、足首幅及び疼痛感受性の測定可能な軽減を示した。(関節炎の目に見える徴候が認められた)10日目から21日目の試験期間中の関節炎重症度、足蹠厚、及び足首直径のデータをまとめると、メトトレキサート、AMK及びAPを投与したCIAラットは、関節炎の主要な全徴候の統計的に有意な抑制を示し、関節炎の症状緩和に利用できることを示唆している。
【0303】
異化性TNF-α及びIL-1βは、主に、(a)軟骨細胞の同化活性を抑制し、細胞外マトリックス成分生合成のダウンレギュレーションを生じる(Saklatvala et al.,1986;Goldring et al.,1994);(b)(IL-6等の)他の異化性サイトカイン、ケモカイン、及び細胞外マトリックス分解酵素(MMP及びアグリカナーゼ)を誘導する(Lefebvre et al.,1990;Guerne et al.,1990);(c)宿主の抗酸化活性を抑制する(Mathy-Hartert,et al.,2008);並びに(d)反応性酸素種を誘導する(Lepetsos et al.,2016)ことにより、関節炎の発症と進行に関与する2種類の主要なサイトカインである(Kapoor et al.,2011)。
【0304】
これらのプロセスは、関節炎患者における慢性炎症と永続的関節破壊により示される関節炎の異化プロセスの維持を助長する。例えば、IL-1βをラットの膝関節に注射すると、関節炎症と顕著なプロテオグリカン減少を生じた(Chandrasekhar et al.,1992;Bolon et al.,2004)が、これを遮断すると、異化プロセスは逆転した(Joosten et al.,1999;Kobayashi et al.,2005;van de Loo et al.,1992)。異化性炎症プロセス及び軟骨の分解への直接関与に加え、IL-6濃度の調節異常は、発熱、倦怠感及び体重減少等の関節リウマチ病理に関連する一般的な臨床徴候にも関係している(Wei et al.,2015)。従って、疾患進行の種々の段階でこれらの異化性炎症性サイトカインを調節するならば、関節炎に関連する症状を緩和及び/又は疾患を修飾するのを補助しながら、関節炎の平衡を異化プロセスと逆方向にシフトさせることができるであろう。このCIA試験と他の上記実施例で認められたアルピニア:ペッパー(AP)及びアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)による軟骨細胞、細胞外マトリックス、関節軟骨及び関節炎の表現型の恒常性の調節は、これらの主要な異化性炎症性サイトカインの阻害が一因であると考えられる。
【0305】
AMKを3週間投与すると、MMP-13等の基本的なマトリックスタンパク分解酵素の濃度が有意に低下した。アグリカン分解と並び、コラーゲンの分解は関節炎の中心的特徴又は表現型である。TNF-α、IL-1β及びIL-6等の炎症性サイトカインは、異化イベントのカスケードにより関節軟骨における軟骨マトリックス分解に重要な役割を果たし、アグリカナーゼとマトリックスメタロプロテアーゼの産生を刺激することが知られている(Kapoor et al.,2011)。疾患病理の過程で、主要組織適合性複合体はこれらの断片をT細胞に提示し、IL-1βやIL-6等の炎症性サイトカインの多量の活性化と放出を促進し、その結果、軟骨細胞と滑膜線維芽細胞における他のMMPの発現レベルが上昇する。従って、これらの異化プロセスの結果、コラゲナーゼ活性の高い関節炎の表現型となり、関節炎症が増悪する。MMP-13は、関節リウマチと変形性関節症の症例で軟骨糜爛部位に高濃度で検出されている(Rose et al.,2016)。従来の研究によると、OA患者の血液と滑液中のこれらのMMP濃度は健康人よりも高く、軟骨損傷の程度と一致することが示されている(Yamanaka et al.,2000;Galil et al.,2016)。実際に、滑液中に分泌されたMMPは、軟骨及び骨組成を直接分解し、周囲の関節構造の損傷を促進する(Ma et al.,2015)。本発明者らの試験では、AMKとAPによるMMP-13濃度の有意な抑制が認められ、軟骨を分解から保護し、疼痛緩和を改善し、関節炎の表現型を抑制した。本試験で認められたMMPの抑制は、(a)治療材料が異化性炎症性サイトカインを抑制する作用、及び/又は(b)治療材料がこれらのマトリックス分解酵素の発現を直接抑制する作用により多少なりとも説明することができる。
【0306】
尿中II型コラーゲンC末端テロペプチド(uCTX-II)は、従来最も研究されており、軟骨の分解のバイオマーカーと称されることが多く、診断、疾患重症度又は疾患進行程度の決定、予後、及び治療効果をモニターする目的で使用できると思われる(Oestergaard et al.,2006)。臨床試験において、高濃度のuCTX-IIは、関節破壊の危険増加の良好な予測因子である(Garnero et al.,2001)。関節軟骨の分解と減少は、関節炎の基本的な表現型であり、CTX-II濃度の上昇は、関節空間の狭隘化と軟骨総体積の減少により示される足蹠腫脹と関節炎重症度の時間経過に直接相関した。本願の結果は従来の報告に一致した(Oestergaard et al.,2006;Siebuhr et al.,2012)。本試験において、APを投与したラットとAMKを投与したラットは、uCTX-II濃度の有意低下を示し、アルピニア:ペッパー(AP)とアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)が、足蹠腫脹、足蹠厚、関節炎重症度の抑制と、炎症性サイトカイン及びマトリックス分解酵素の低下に有益な効果があることを裏付けた。これらの所見は、軟骨保護活性がAPとAMKの主要な機能の一つであることを示すものであり、軟骨細胞、細胞外マトリックス、関節軟骨及び関節炎の表現型の恒常性を調節するのに利用できることを示唆している。
【0307】
関節炎疾患進行と治療介入の成果を評価するために、症状及びバイオマーカーと共に、関節軟骨、滑膜及び軟骨下骨の病理組織学的解析も使用されている(Chen et al.,2017)。これらのCIA試験では、AMK、AP及びメトトレキサートを投与したラットの関節構造完全性の維持に有意な改善が認められた。これらの効果は、軟骨細胞の減少、変性、又は壊死の抑制、より滑らかな関節軟骨表面、細胞内マトリックスの均質で濃い染色、及び軟骨下骨の正常に近い輪郭により示されるような病理組織学的データで実証された。1.軟骨の分解、2.骨損傷、3.炎症、及び4.マトリックス完全性の病理組織学的重症度スコアの点数の変化を計算した処、AMKとAPを投与した場合には、溶媒を投与したCIAラットに比較して夫々65.1%と57.7%、73.1%と61.0%、8.2%と67.0%、及び61.9%と47.5%の抑制が得られた。
【0308】
総合すると、これらのCIA試験では、AMKとAPを経口投与すると、(a)関節炎指数、足蹠厚、足蹠浮腫の抑制と、異化性サイトカイン(IL-1β、IL-6及びTNF-α)の低下により反映されるような異化性炎症の抑制;(b)疼痛感受性の低下;(c)uCTX-IIと軟骨の破壊酵素(MMP-13)の低下により示されるような軟骨保存活性と関節構造維持の増加、並びに(d)(PIIANP濃度の上昇で示されるような)軟骨合成及び修復の改善を生じた。AMKとAPのこれらの性質は、軟骨の正常な恒常性を維持し、関節炎の同化表現型を促進することにより、関節炎管理用代替自然療法として潜在的に応用できる可能性を示唆している。
【0309】
[実施例59]モノヨード酢酸(MIA)誘発変形性関節症実験モデル誘発とAMK投与
ラットのMIA誘発OA疾患モデルは、ヒトOAを模倣するために最も多用されている標準化モデルである(Lee et al.,2014)。このモデルは、MIAを大腿脛骨関節ポケットに接種し、同側足に疼痛応答を誘導し、漸進的軟骨の分解を併発するものである。MIAの関節内注射は、グリセルアルデヒド-3-ホスファターゼデヒドロゲナーゼを阻害することにより軟骨細胞解糖系を破壊し、軟骨細胞死、血管新生、軟骨下骨壊死及び崩壊と炎症を生じる(Guzman et al.,2003)。このモデルは、ヒトOAと疾患病理が似ているので、これらの表現型特徴を鑑みると、化合物をその抗炎症活性、鎮痛活性及び/又は潜在的疾患修飾活性について評価するために非常に魅力的である。そこで、本発明者らは、AMKが6週間経口投与後に疼痛感受性を軽減し、関節組織の表現型を調節し、関節構造完全性を維持する作用について検討するために、この検証済みのインビボモデルを選択した。
【0310】
MIA注射の1週間前に投与を開始した。動物を各群10匹ずつG1=正常、G2=溶媒(0.5%CMC-Na溶液)、G3=ジクロフェナク(10mg/kg,ロット番号W08B043,Ward Hill,MA)、G4=AMK(100mg/kg)及びG5=AMK(300mg/kg)の5群にランダムに割り当て、夫々の投与薬を経口経管投与した。誘発日に、MIA(ロット番号A0352046,Acros Organics,New Jersey,米国)0.8mgを生理食塩水50μLに溶解し、投与の1時間後にイソフルラン(ロット番号B66H15A,Piramal Enterprise Ltd.Andhra Pradesh,インド)麻酔下のラットの左大腿脛骨(膝)関節の関節内ポケットに26G針を使用して注射した。正常対照ラットには同量の生理食塩水を注射した。患部関節に一定圧力を加えた結果としての足引っ込み閾値を疼痛感受性の尺度としてRandall-Salitto触覚計(IITC,米国)により週に一度測定し、投与を6週間続けた。週に一度体重を測定し、各群の夫々の週1回投与量を計算した。試験終了時に代謝ケージを使用して採尿した。血液試料を採取し、バイオマーカー分析用に血清を分離した。剖検時に、動物をCO2で窒息させ、大腿脛骨関節を注意深く切り出し、10%緩衝ホルマリンで固定し、更に病理組織学的解析するためにNationwide Histology(Veradale,WA,米国)に送った。固定した検体を次に1日半かけてCalci-Clear Rapidで脱灰し、パラフイン包埋した。矢状面の内側及び外側顆中間位で標準化5μm連続切片を取得し、プロテオグリカン含有量の評価を可能にするように、ヘマトキシリン・エオジン(HE)とサフラニンOファストグリーンで染色した。改変型マンキンシステム(Mankin et al.,1981)を使用して疾患進行及び/又は治療効果の指標としての関節成分の構造・細胞変化を採点した。組織学的解析はNationwide Histologyで公認病理医により実施した。
【0311】
[実施例60]MIA誘発OAモデルにおけるAMK組成物の抗疼痛感受性活性
モデル誘発の1週間後にOAの主要症状の一つである疼痛が確認された。表46から明らかなように、MIAを関節内注射して無治療のラットは、平均疼痛感受性値により表されるような疼痛感受性の漸進的増加を示した。溶媒を投与した正常対照動物に比較すると、関節1箇所当たり0.8mgのMIAを関節内投与したラットは、第1週から第5週までに疼痛感受性の夫々34.6%、37.3%、41.4%、41.9%及び42.7%の増加を示した。これに対して、全投与群は、全週で疼痛感受性の統計的に有意な抑制を示した(表46)。疼痛感受性の最高の抑制は、AMK組成物300mg/kgを投与したラットで認められた。これらの抑制を溶媒投与群と比較した処、AMK組成物300mg/kg/日を経口投与したラットでは、第1週から第5週までに夫々21.8%、28.3%、35.0%、39.4%及び43.9%であることが分かった。AMK100mg/kgを投与したラットは、溶媒を投与したMIAラットと比較した場合に、第1週から第5週までに疼痛感受性が夫々14.1%、15.9%、22.1%、24.0%及び23.5%低下した。確認された疼痛緩和は、どちらの投与量でも試験した各データ点で統計的に有意であった。陽性対照であるジクロフェナクは、溶媒を投与したMIAラットと比較した場合に、第1週から第5週までに疼痛感受性が夫々19.7%、24.1%、28.3%、30.8%及び31.1%低下した。
【0312】
【0313】
[実施例61]MIA誘発ラット関節炎モデルにおけるAMK組成物による軟骨保護と炎症性サイトカイン活性の低下
上記実施例では、尿中CTX-II及びIL-6の検出用ELISAアッセイについて記載した。このMIA誘発ラット関節炎モデルにおいて、AMK300mg/kgを経口投与したラットは、軟骨の分解バイオマーカーである尿中CTX-IIと異化性サイトカインIL-6が統計的に有意に低下した。AMK300mg/kgを投与したラットでのこれらの低下は、溶媒を投与したMIAラットと比較した場合に、夫々31.9%と22.5%であることが分かった。低用量(即ち、100mg/kg)のAMKでは、血清中IL-6が統計的に有意に低下した。ジクロフェナク投与群(このモデルに使用した陽性対照)は、低用量AMKと同様のパターンに従った(即ち、IL-6が有意に低下し、尿中CTX-IIは全く変わらなかった)。
【0314】
【0315】
[実施例62]MIA誘発OAモデルにおけるアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)組成物の結果としての組織学的所見の改善
疼痛感受性低下データに加え、改変型総合マンキンスコアにより反映されるように、どちらの投与量でAMK組成物を投与した動物でも関節軟骨マトリックス完全性の統計的に有意な改善が認められた。構造異常と線維血管性増殖もAMK群では有意に抑制された。総合構造異常(軟骨肥厚又は菲薄化、表面不整、亀裂欠損、変性、潰瘍性壊死、重度崩壊及び無秩序な外観)を評価した処、ジクロフェナク(10mg/kg)、AMK(100mg/kg)及びAMK(300mg/kg)を投与したラットで夫々41.1%、33.1%及び87.0%の抑制が認められた(表48)。異化性炎症と炎症性細胞の浸潤の最高の抑制(72.5%)は、AMK300mg/kgを投与したラットで認められ、これに対してジクロフェナク群は42.8%であった。
【0316】
破骨細胞活性と軟骨下骨損傷の程度は、AMKと陽性対照薬を投与したMIAラットで最低であった。これに対して、MIAを注射して溶媒を投与したラットでは、関節軟骨細胞の細胞変性と崩壊、細胞内マトリックスの減少と崩壊、関節表面不整、骨棘リモデリング、及び軟骨下骨の毛羽立ちを含む種々の程度の病理組織学的変化が認められた。MIAラットにおけるこれらの変化は、ヒトOA生物学で最も一般的な所見に似ていた(Loeser et al.,2013)。サフラニンO染色によると、AMK投与群の関節軟骨は染色強度の低下が最小限であることが分かり、軟骨の分解を回避する能力があることを示している。例えば、ジクロフェナク(10mg/kg)、AMK(100mg/kg)、及びAMK(300mg/kg)ではマトリックスGAG減少の夫々34.6%、31.0%、及び70.7%の抑制が認められた。MIAを注射せずに溶媒を投与した正常対照群のラットは、試験した全パラメーターに軽微な変化しか示さなかった。この群のラットでは、関節軟骨の正常な構造に近く、脛骨高平部及び大腿骨の両方の軟骨下骨と、周囲の関節構造は無傷のようであった。
【0317】
【0318】
[実施例63]アルピニア:マグノリア:コキア(AMK)組成物のMIAモデルからの成果の有意性とOAにおけるその関与
OAの各種段階では、関節の全3種の主要構造(軟骨、軟骨下骨及び滑膜)がこの疾患の病態生理に関与しているため、疾患の初期段階に即時治療介入が必要であることを指示する単一のバイオマーカーを同定するのは難しいと考えられている。但し、確認されている全ての主要な関節バイオマーカーのうちで、II型コラーゲンC末端テロペプチド(CTX-II)は従来最も研究されており、軟骨の分解のバイオマーカーと称されることが多く、診断、疾患重症度又は疾患進行程度の決定、予後、及び治療効果をモニターする目的で使用できると思われる。OAでは軟骨の分解中に主にマトリックスメタロプロテアーゼ活性によりCTX-IIが産生される。CTX-IIは、OA患者における異化/同化恒常性及び関節軟骨の分解の進行と密接な関係を示すことが知られている。血清、尿又は滑液中のCTX-II濃度の上昇と関節軟骨の分解の直接相関は、前臨床試験と臨床試験の双方で報告されており(Oestergaard et al.,2006;Garnero et al.,2001)、uCTX-II濃度を低下させるという固有の特徴をもつ植物抽出物が、軟骨細胞、細胞外マトリックス及び関節軟骨の恒常性を調節することにより、関節炎の表現型を異化性分解抑制と同化性再分化・再建の側に変化させたことを示唆している。
【0319】
OA疾患進行を評価するため、又は治療介入の成果を測定するために、症状及びバイオマーカーと共に、関節軟骨、滑膜及び軟骨下骨の病理組織学的解析も使用されている(Goldring et al.,2000)。本開示では、非限定的な例としてAMK組成物を投与したラットの関節構造完全性の維持に有意な改善が認められた。これらの効果は、軟骨細胞の減少、変性又は壊死の抑制、より滑らかな関節軟骨表面、細胞内マトリックスの均質で濃い染色、及び軟骨下骨の正常に近い輪郭により示されるような病理組織学的データで実証された。明白な理由で、この最小限の軟骨の分解は、疼痛感受性の有意な抑制によっても裏付けられ、AMK組成物は最大限の疼痛緩和を達成した。更に、尿中CTX-IIバイオマーカーデータにより実証されるように、AMK組成物を投与したラットでは、uCTX-II濃度の統計的に有意な低下も認められた。この点はヒト臨床試験でも裏付けられ、尿中CTX-II濃度はOA患者における軟骨の分解及び付随する疼痛とよく整合した。例えば、前十字靭帯再建術を受けた対象では尿中CTX-II濃度が高く、膝痛及び機能に関連していることが分かった。これらの患者では、uCTX-II濃度の低下が膝痛軽減及び機能改善と相関しており、有意義な予後が得られた(Chmielewski et al.,2012)。同様に、膝変形性関節症患者における骨、軟骨、及び滑膜組織代謝の生化学的マーカーの横断的評価において、uCTX-IIは疾患重症度との対応が有意に増加していることが判明し、関節空間狭隘化の変化に相関していた(Garnero et al.,2001)。
【0320】
OAの多因子性に鑑み、いずれかの単一成分単独よりも併用療法のほうが関節軟骨変性の進行を遅らせることができると従来から言われている(Lippiello et al.,2000)。特殊なブレンド比のアルピニア・ガランガ、マグノリア・オフィシナリス、ピペル・ニグルム、及びコキア・スコパリアに由来する生理活性標準化抽出物の組成物は、この用途に非常に好適であると思われる。実際に、これらの2種又は3種の植物抽出物を製剤化する利点をカラゲニン誘発ラット足蹠浮腫モデルで試験した処、これらの2種又は3種の植物抽出物を併用することにより、疼痛感受性の軽減に予想外の相乗作用が認められ、その成分の各々で認められる効果を単純に合算することにより予想される結果を上回っていた。臨床及び前臨床文献を検索したが、本特許に記載する組成物としてブレンドされたこれらの植物抽出物に関する本開示を予測することはできなかった。このことは、ここでもこのMIA誘発関節炎モデルでuCTX-II濃度の低下と最低限の疼痛感受性により反映されるように、関節構造完全性の維持における本組成物の新規性を物語っている。本発明者らは、これらの薬用植物が軟骨細胞、細胞外マトリックス、関節軟骨及び関節炎の表現型の恒常性を調節するのに補完効果があり、関節軟骨の分解の予防と、付随症状の軽減に繋がり、延いては関節完全性、可動性及び機能の改善をもたらすと確信する。
【0321】
[実施例64]ホットプレート試験における局所塗布した植物抽出物の鎮痛活性
抗炎症性化合物又は抽出物を熱接触(有害刺激)部位に繰り返し局所塗布すると、末梢求心性疼痛受容器は脱感作を起こし、応答時間に遅れを生じると思われる。反応時間の変化が長時間になるのは、塗布した化合物の抗侵害受容作用と解釈することができよう。調製した植物抽出物及び組成物が抗侵害受容活性を提供するか否かを評価するために、2%アロエベラジェルで5%濃度に調剤した経口活性抗炎症性抽出物をラットの後足に局所投与した。各足に塗布した調製物を、塗布した内容物が目視で吸収されたように見えるようになるまで、少なくとも60回円を描くように皮膚に擦り込んだ。この手順を30分間隔で3回繰り返した後、53℃に設定して予熱しておいたホットプレートに動物を載せた。ラットをホットプレートに最初に載せた時点から熱刺激に応答して後足を引っ込める(又は舐める又は震える)までに経過した時間として足引込み潜伏時間を計算した。この応答が認められたらすぐに動物を引き上げた。30秒以内に応答を示さなかった動物は、加熱したプレートから引き上げ、組織損傷を防いだ。
【0322】
53℃に設定したホットプレートで薬用植物抽出物の鎮痛活性を試験した。5%濃度の被験材料をSprague Dawleyラット(n=10/群)の左右両足の後足に片足20μlずつ局所塗布した。これらの抽出物の塗布を30分間隔で合計90分間実施した。これらの90分間以内に、1匹片足当たり合計60μlの被験品をラットに投与した。5%濃度で片足当たり3mgの被験品を各ラットに投与した。化合物の溶解度特性により、V1=ジメチルスルホキシド(DMSO)+プロピレングリコール(PG)+アロエ(2%)と、V2=DMSO+OIL+PGの2種類の溶媒を使用した。各被験材料に夫々の溶媒を使用して変化率と統計的有意性のP値を求めた。各材料に使用した溶媒を被験材料の後の括弧内に示した。下表49に示すように、純ピペリンを局所投与したラットは、溶媒群に比較して足引っ込み潜伏時間の32.6%の増加を示した。鎮痛活性のこの増加は、5%イブプロフェンで認められた結果と同様であった(即ち、P値0.018で22.4%の足引っ込み潜伏時間の増加)。鎮痛活性のこれらの増加は統計的に有意であった。アルピニア・ガランガのエタノール抽出物と超臨界流体抽出物を投与した動物は、足引っ込み潜伏時間の17.1%と32.8%の増加を示し、P値は夫々0.063と0.02であった。カプサイシンを投与したラットは足引っ込み潜伏時間が36.7%減少した。この変化率は、夫々の溶媒に比較して統計的に有意であった。マグノリア・オフィシナリス調製物を局所投与したラットは、夫々の溶媒対照に比較して13.6%の感受性増加を示した。
【0323】
これらの結果から、イブプロフェン(陽性対照)とアルピニア・ガランガ抽出物は、ホットプレート試験で足引っ込み潜伏時間の増加により証明されるように、有意な抗侵害受容活性を示すと判断される。カプサイシン(陰性対照)は予想通り、足引っ込み潜伏時間が有意に減少した。アルピニア・ガランガ抽出物は、種々の適応症の局所疼痛緩和に利用できると思われる。
【0324】
【0325】
[実施例65]APの7日間反復経口急性最大耐用量(MTD)試験
8週齢の実験用雌雄CD-1マウスをCharles Riverから購入し、最大耐用量試験に使用した。馴化後、マウスをその体重に基づいて以下の夫々の群、即ちG1=溶媒対照(0.5%CMC)、G2=アルピニア+ペッパー500mg/kg、及びG3=750mg/kgにランダムに割り当てた。本試験では、各群に10匹ずつ割り当てた。被験化合物を0.5%CMCに懸濁し、1匹当たり350μlの量をマウスに投与した。溶媒群には0.5%CMCを投与した。ベースラインにおいて、雌雄マウスの平均体重は夫々36.1±2.5グラムと28.2±2.1グラムであった。経管投与後合計4回(即ち、ベースライン、チャレンジの2日後、3日後、及び7日後)の測定で体重をモニターした。両方の試験群で毎日経管投与後に各群のマウスをその身体活動と挙動についてモニターした。
【0326】
【0327】
これらの用量をマウスに連続7日間投与した。どちらのAP投与群でも雌の死亡は確認されなかった。一方、チャレンジの2日後、3日後、及び7日後に750mg/kg AP群の雄性マウスで3匹が死亡した。死亡した動物には剖検で胃の炎症と出血が認められた。試験の終了時に、750mg/kgと500mg/kgのAP群の生存している雄に有意な体重変化はなかった(即ち、溶媒ではBL=36.5±2.5に対して7dpc=37.6±2.6;500mg/kgのAPではBL=35.5±2.8に対して7dpc=36.8±3.8;750mg/kgのAPではBL=36.3±2.2に対して35.7±3.7)。これに対して、7日間毎日経口AP投与後の雌では、500mg/kgと750mg/kgのAPでベースラインからの体重変化率が夫々5.18%と6.07%減少していることが分かった(即ち、溶媒ではBL=28.1±2.1に対して7dpc=28.8±1.6;500mg/kgのAPではBL=28.2±2.3に対して7dpc=26.9±2.4;750mg/kgのAPではBL=28.2±1.7に対して7dpc=26.7±2.2)。これらの体重変化は、溶媒群に比較して統計的に有意であった。
【0328】
【0329】
生存しているマウスは雌雄とも各経管投与後に身体的に正常であると思われた。マウスは検査下の正常な活動と挙動を続けた。これらの正常な挙動は雌雄とも残りの投与期間中続いた。これらのマウスは全投与期間中、挙動又は活動の変化を示さなかった。剖検時に腹腔を切開し、生存動物の臓器を肉眼検査した。肉眼的な(肉眼で見える)正常との差は認められなかった。外観及び剖検所見は溶媒群と同等であった。
【0330】
MTDの世界的医薬品イニシアティブ(Chapman et al.,2013)によると、7日間毎日経口投与の終了時にベースラインからの10%の体重減少が毒性の警告徴候であるとみなされている。本試験の終了時に、500mg/kgと750mg/kgのAPを経口投与した雌雄CD-1マウスはベースラインからの体重変化が10%未満であったが、750mg/kg群では3匹が死亡した。従って、本発明者らは、AP組成物のMTDが500~750mg/kgであると確信する。
【0331】
[実施例66]AMKの7日間反復経口急性最大耐用量(MTD)試験
8週齢の実験用雌雄CD-1マウスをCharles Riverから購入し、最大耐用量試験に使用した。馴化後、マウスをその体重に基づいて2種類の実験にランダムに割り当てた。第1の実験は、G1=溶媒対照(5%DMSO+0.5%CMC)と、G2=アルピニア:マグノリア:コキア(AMK)2000mg/kg投与群とした。本試験では、各群に8匹ずつ割り当てた。被験化合物を5%DMSO+0.5%CMCに懸濁し、1匹当たり350μlの量をマウスに投与した。ベースラインにおいて、雌雄マウスの平均体重は夫々36.7±3.5グラムと30.4±2.5グラムであった。経管投与後合計3回(即ち、ベースライン、チャレンジの3日後及びチャレンジの7日後)の測定で体重をモニターした。両方の試験群で毎日経管投与後に各群のマウスをその身体活動と挙動についてモニターした。
【0332】
両方の試験群で雌雄マウスをその身体的外観と挙動について7日間毎日観察した。マウスをその身体的状態と良好な健康状態について毎日検査した処、試験期間を通して毒性又は異常を示唆する徴候は認められなかった。マウスは雌雄とも各経管投与後に身体的に正常であると思われた。マウスは検査下の正常な活動と挙動を続けた。これらの正常な挙動は雌雄とも残りの投与期間中続いた。これらのマウスは全投与期間中、挙動又は活動の変化を示さなかった。
【0333】
【0334】
上記のように、雌雄投与群で同様の体重増加パターンが認められた。体重増加率は両方の投与群の雌雄で同様であった。どちらの群でも体重増加の統計的に有意な差はなかった。各群の全マウスは、試験期間中、体重を維持し続けた。7日目の終わりまでに、ベースラインと7日目の体重測定の差は有意ではなかった(即ち、雄ではBL:36.58±4.2に対して7日後:36.96±4.5;雌ではBL:30.37±2.0に対して7日後:30.66±1.3)。
【0335】
【0336】
AMKを投与したマウスでは、罹病率又は死亡率は認められなかった。剖検時に腹腔を切開し、臓器を肉眼検査した。肉眼的な(肉眼で見える)正常との差は認められなかった。この群の外観及び剖検所見は溶媒群と同等であった。
【0337】
MTDの世界的医薬品イニシアティブ(Chapman et al.,2013)によると、7日間毎日経口投与の終了時にベースラインからの10%の体重減少が毒性の警告徴候であるとみなされている。本試験の終了時に、AMK群の雌雄CD-1マウスは、溶媒群と同等の軽微な体重変化を示した。従って、7日目の終了時における体重維持と共に正常な身体活動、挙動及び剖検所見に鑑み、CD-1マウスでは7日間の投与期間を通して2000mg/kgのAMK経口投与が忍容されたと結論することができる。従って、AMKのMTDは、2000mg/kg超であると考えられる。
【0338】
[実施例67]アルピニア、ペッパー、マグノリア及びコキアの個々の抽出物、並びに/又は非限定的な例として、アルピニア:ペッパー(AP)組成物とアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)組成物を含むこれらの抽出物の2~3種の種々の組み合わせに由来する組成物のヒト臨床試験
「二重盲検無作為化プラセボ陽性対照比較試験」等の臨床試験では、変形性関節症患者に1回10~2000mgずつ1日2~3回投与し、独自開発した組成物の有効性と安全性を評価する。本試験は、疼痛重症度の症状緩和を0~10の数値による視覚的評価スケール(VAS)で評価し、疼痛重症度、こわばり及び関節機能の変化を主観的質問票によるWOMACスケールで評価する。ベースラインと試験の終了時に、BIODEXによる可動域と6分間歩行距離について症状改善の客観的測定値を評価し、安全性評価も加える。投与前後の血清、滑液及び関節組織からバイオマーカー測定も実施する。投与期間は、臨床アウトプットの目的に応じて1~12週間又は6~24か月間とする。
【0339】
スクリーニング前に、被験者はIRBに承認されたインフォームドコンセントフォームを一読し、署名しなければならない。試験集団は、一般に既往歴により良好な健康状態であると判断される18歳から75歳までの男女被験者から構成される。妊娠している可能性のある女性被験者は、ベースライン時に尿妊娠検査で陰性でなければならない。本試験の目標は、有意義な統計的検出力のためにアーム当たり少なくとも40人の被験者を登録させることである。
【0340】
試験は、以下のように適格基準を定めている。18~75歳の健康な男女成人;疼痛エントリー基準を満たす;6ヶ月超の膝関節痛既往歴;内側又は外側脛骨大腿関節線圧痛;片側膝痛が視覚的評価スケール(VAS)で平均6/10以上であり、週の大半の日で機能に支障を生じる;変形性関節症のX線画像変化がケルグレン(Kellgren)グレードII又はIII;具体的に試験目的で被験治療薬及び救済薬として提供されるものを除き、全ての鎮痛薬(市販[OTC]鎮痛薬を含む)の使用を中止したいと望んでいる。
【0341】
主目的及び安全性評価:
・0~10cmVASで疼痛重症度の変化。
・WOMACサブスケール(0~100)で疼痛重症度、関節こわばり、及び関節機能の変化、全サブスケールのWOMACトータルスコアの変化。
・血清と滑液に由来する軟骨の分解/保護のバイオマーカーuCTX-II;同化バイオマーカーACAN、Sox-9、PIIANP及びTGFβ;IL-1、IL-6、TNF-a及びMMP-13等の異化性サイトカインを測定する。滑液、滑膜及び軟骨に由来し、異化・同化マーカーの変化に関する細胞/組織の全体的遺伝子発現及びタンパク質発現プロファイルを測定する。
・疾患修飾効果の最終証明用の関節空間狭隘化及び総関節空間面積も測定する。
・治療に対する反応の患者による全般評価、治療改善に対する反応の医師による全般評価。
・能動的及び受動的可動域、6分間歩行試験の歩行距離により測定される関節機能の変化。QOL:一般健康状態測定、SF-36及び特定健康状態測定、WOMAC。
・全血球計算、肝機能試験、PT/INR、HCG及びAE評価を含む化学パネル。
【0342】
データ解析
本試験では、各群10~200人の被験者を等しく無作為化し、アルピニア、ペッパー、マグノリア及びコキアの個々の抽出物、並びに/又は非限定的な例として、アルピニア:ペッパー(AP)とアルピニア:マグノリア:コキア(AMK)を含むこれらの抽出物の2~3種の種々の組み合わせを単回又は複数回投与し、陽性対照(NTHE又は栄養補助食品有効成分)、及び/又はプラセボも含む。12週間試験の過程でプロトコールによる集団からの試験中止率が30%の場合には、各群の分析可能な被験者概数を増やすべきである。検出力分析を実施し、各群の分析可能な合計被験者でp≦0.05の有意結果を得る確率が80%となる効果量(有効性エンドポイントの平均12週間変化の製品間の差)を求めた。
【0343】
本試験の統計デザインパラメーターは以下の通りである。
・アルファ・レベル:0.05(p≦0.05を統計的に有意とみなす)。
・検出力:0.8(有意なp値を得る80%確率)。
・一次帰無仮説:どのサプリメントの平均投与期間変化も陽性対照及び/又はプラセボの同一期間に等しいであろう。
・対立仮説:製品間で変化は等しくない。
・統計試験:共分散分析(対応のないスチューデントのt検定に基づく検出力計算)。
・サンプルサイズ:登録被験者120人、各製品剤群当たり40人。
【0344】
【0345】
【手続補正書】
【提出日】2022-10-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上のフェニルプロパノイドを高濃度化したアルピニア(Alpinia)抽出物と、1種以上のビスフェノール性リグナンを高濃度化したマグノリア(Magnolia)抽出物と、1種以上のトリテルペノイドサポニンを高濃度化したコキア(Kochia)抽出物との組み合わせを含む、関節健康用組成物。
【請求項2】
前記組成物における前記アルピニア抽出物、又はマグノリア抽出物、又はコキア抽出物が、各抽出物につき1重量%~98重量%の範囲であり、アルピニア:マグノリア:コキア(AMK)の最適重量比が、2:4:3(22.2%:44.4%:33.3%)又は4:3:3(40%:30%:30%)又は5:4:4(38.4%:30.8%:30.8%)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アルピニア抽出物が、アルピニア・ガランガ(Alpinia galanga)に由来し、前記マグノリア抽出物が、マグノリア・オフィシナリス(Magnolia officinalis)に由来し、前記コキア抽出物が、コキア・スコパリア(Kochia scoparia)に由来する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記アルピニア抽出物が、0.01%~99.9%のフェニルプロパノイドを含有している、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記マグノリアマグノリア抽出物が、0.01%~99.9%のビスフェノール性リグナンを含有している、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記コキア抽出物が、0.01%~99.9%のトリテルペノイドサポニンを含有している、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記アルピニア抽出物に由来する前記1種以上のフェニルプロパノイドが、1’-アセトキシチャビコールアセテート、若しくはガランガルアセテート、若しくはp-ヒドロキシシンナムアルデヒド、又は3,5-ジヒドロキシスチルベン、又は任意のそれらの組み合わせである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記マグノリア抽出物に由来する前記1種以上のビスフェノール性リグナンが、マグノロール若しくはホノキオール又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記コキア抽出物に由来する前記1種以上のトリテルペノイドサポニンが、バッシアサポニンA、若しくはバッシアサポニンB、若しくはコキオシドA、若しくはコキオシドB、若しくはコキオシドC、若しくはコキアノシドI、若しくはスコパリアノシドA、若しくはスコパリアノシドB、若しくはスコパリアノシドC、若しくはモモルジンIc、若しくはコキアノシドI、若しくはコキアノシドII、若しくはコキアノシドIII、若しくはコキアノシドIV、若しくは2’-O-グルコピラノシルモモルジンIc、若しくは2’-O-グルコピラノシルモモルジンIIc、又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
1種以上のフェニルプロパノイドを高濃度化したアルピニア(Alpinia)抽出物と、1種以上のアルカロイドを高濃度化したピペル(Piper)抽出物との組み合わせを含む、関節健康用組成物。
【請求項11】
前記組成物における前記アルピニア抽出物及び前記ピペル抽出物が、99:1~1:99の重量比である、請求項
10に記載の組成物。
【請求項12】
前記アルピニア抽出物が、アルピニア・ガランガ(Alpinia galanga)に由来し、前記ピペル抽出物が、ピペル・ニグルム(Piper nigrum)に由来する、請求項
10に記載の組成物。
【請求項13】
1種以上のフェニルプロパノイドを高濃度化したアルピニア(Alpinia)抽出物を含む、関節健康用組成物。
【請求項14】
前記アルピニア抽出物が、0.01%~99.9%のフェニルプロパノイドを含んでいる、請求項
13に記載の組成物。
【請求項15】
前記アルピニア抽出物に由来する前記1種以上のフェニルプロパノイドが、1’-アセトキシチャビコールアセテート、若しくはガランガルアセテート、若しくはp-ヒドロキシシンナムアルデヒド、若しくは3,5-ジヒドロキシスチルベン、又は任意のそれらの組み合わせである、請求項
13に記載の組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】