(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-29
(54)【発明の名称】被加工物を電解処理するための電極ならびに装置、装置のセルを形成するためのアセンブリ、方法、およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
C25D 17/12 20060101AFI20230322BHJP
C25D 17/10 20060101ALI20230322BHJP
C25D 21/12 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
C25D17/12 Z
C25D17/10 A
C25D17/10 Z
C25D21/12 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547977
(86)(22)【出願日】2021-02-05
(85)【翻訳文提出日】2022-10-05
(86)【国際出願番号】 EP2021052760
(87)【国際公開番号】W WO2021156415
(87)【国際公開日】2021-08-12
(32)【優先日】2020-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】300081877
【氏名又は名称】アトテック ドイチュラント ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Atotech Deutschland GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Erasmusstrasse 20, D-10553 Berlin, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリー クンツェ
(72)【発明者】
【氏名】フェアディナント ヴィーナー
(72)【発明者】
【氏名】ブリッタ シェラー
(57)【要約】
被加工物(3)を電解処理するための装置(1)のための電極であって、装置(1)は、被加工物(3)を、処理されるべき表面が電極の表面を通り過ぎるように、かつ電極の表面に向けられるように搬送するように配置された形式のものであり、電極は、少なくとも電極の当該表面において複数のセグメント(23a~e)に分割されている。複数のセグメント(23a~e)同士は、第1の方向(x)において互いに隣り合うように配置されている。隣り合うセグメント(23a~e)同士は、隣り合うセグメント(23a~e)がそれぞれ異なるそれぞれの電圧で維持されることを可能にするように、それぞれのセグメント縁部(24a~f)に沿って互いに分離されている。セグメント縁部(24a~f)は、第2の方向(y)における座標の共通値(y0)から、少なくとも電極の表面の導電性部分の縁部(25,26)まで、少なくとも部分的に第2の方向(y)に延在し、第2の方向(y)は、第1の方向(x)を横断する方向であって、かつ使用時における被加工物の移動方向に相当する。少なくとも一対の隣り合うセグメント(23a~e)の間にあるセグメント縁部(24a~f)は、それぞれの経路に沿って延在し、電極表面縁部(25,26)に対する経路の角度は、座標の共通値(y0)から電極表面縁部(25,26)に向かって減少する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物(3)を電解処理するための装置(1)のための電極であって、
前記装置(1)は、前記被加工物(3)を、処理されるべき表面が電極の表面を通り過ぎるように、かつ前記電極の表面に向けられるように搬送するように配置された形式のものであり、
前記電極は、少なくとも前記電極の当該表面において複数のセグメント(23a~e)に分割されており、
前記複数のセグメント(23a~e)同士は、第1の方向(x)において互いに隣り合うように配置されており、
隣り合うセグメント(23a~e)同士は、隣り合うセグメント(23a~e)がそれぞれ異なるそれぞれの電圧で維持されることを可能にするように、それぞれのセグメント縁部(24a~f)に沿って互いに分離されており、
前記セグメント縁部(24a~f)は、第2の方向(y)における座標の共通値(y
0)から、少なくとも前記電極の前記表面の導電性部分の縁部(25,26)まで、少なくとも部分的に第2の方向(y)に延在し、
前記第2の方向(y)は、前記第1の方向(x)を横断する方向であって、かつ使用時における前記被加工物の移動方向に相当し、
少なくとも一対の隣り合うセグメント(23a~e)の間にある前記セグメント縁部(24a~f)は、それぞれの経路に沿って延在し、前記電極表面縁部(25,26)に対する前記経路の角度は、前記座標の前記共通値(y
0)から前記電極表面縁部(25,26)に向かって減少する
ことを特徴とする、電極。
【請求項2】
少なくとも前記第1の方向(x)で見たときの前記電極のそれぞれの半部の内部では、前記経路は、前記座標の前記共通値(y
0)から前記電極表面縁部(25,26)まで、前記第1の方向(x)に、両方の相対する向きのうちの一方の同じ向きで延在し、
少なくとも前記第1の方向(x)で見たときの前記電極のそれぞれの半部の内部では、全ての経路が同じ方向に傾斜させられている、
請求項1記載の電極。
【請求項3】
前記座標の前記共通値(y
0)から前記電極表面縁部(25,26)までの前記経路は、曲線である、請求項1または2記載の電極。
【請求項4】
前記電極表面の少なくとも前記導電性部分は、前記第2の方向(y)で見たときに2つの半部(28,29)を含み、
一方の半部(28,29)内にある前記セグメント縁部(24a~f)のそれぞれの区分は、前記座標の前記共通値(y
0)に配置された対称線(27)に関して、他方の半部(28,29)内にある前記セグメント縁部(24a~f)のそれぞれの区分の鏡像となっている、
請求項1から3までのいずれか1項記載の電極。
【請求項5】
それぞれのセグメント(23a~e)の前記セグメント縁部(24a~f)のうちの第1のセグメント縁部の経路上の、前記電極表面縁部(25,26)における点は、
当該セグメント(23a~e)の他方のセグメント縁部(24a~f)の経路上の、前記座標の前記共通値(y
0)における点と前記第1の方向(x)に同じ座標値にあるか、またはこの点から前記第1の方向(x)に離れている、
請求項1から4までのいずれか1項記載の電極。
【請求項6】
前記座標の前記共通値(y
0)における前記セグメント(23a~e)の前記縁部(24a~h)同士の間の距離に相当する前記セグメント(23a~e)の幅は、セグメント(23a~e)ごとに増加して、前記セグメント(23a~e)は、前記第1の方向(x)における電極縁部(22)からの距離に伴って次第に幅広になるか、または、
当該条件は、前記第1の方向(x)で見たときの前記電極のそれぞれの半部の内部において当てはまる、
請求項1から5までのいずれか1項記載の電極。
【請求項7】
前記表面縁部における一対の隣り合うセグメント(23a~e)の間にある一対のセグメント縁部(24a~f)の前記経路の、前記電極表面縁部(25,26)に対する角度は、前記第1の方向(x)における電極縁部(22)からの距離に伴って対ごとに増加するか、または
当該条件は、前記第1の方向(x)で見たときの前記電極のそれぞれの半部の内部において当てはまる、
請求項1から6までのいずれか1項記載の電極。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載の少なくとも1つの電極(16)を含む、電解処理装置(1)のセル(2a~e)を形成するためのアセンブリ。
【請求項9】
前記少なくとも1つの電極(16)のうちの1つの電極の電極表面の正面において、前記第1の方向(x)および第2の方向(y)に延在する少なくとも1つの遮蔽装置をさらに含む、請求項8記載のアセンブリ。
【請求項10】
前記遮蔽装置は、プレート(19)を含み、前記プレート(19)には、液体に対して透過性であって、かつ前記第1の方向(x)および第2の方向(y)に分布された複数の貫通流路が設けられている、請求項9記載のアセンブリ。
【請求項11】
少なくとも1つの処理セル(2a~e)を含む電解処理装置であって、
前記処理セル(2a~e)は、請求項8から10までのいずれか1項記載の少なくとも1つのアセンブリを含む、
電解処理装置。
【請求項12】
請求項1から7までのいずれか1項記載の電極(16)を設計する少なくとも1つのコンピュータ実装ステップ(34~42)を含む方法であって、
前記設計するステップ(34~42)は、経路の形状を決定するステップを含む、
方法。
【請求項13】
前記経路の形状を決定するステップは、第1の方向(x)における座標の多項式、例えば2次多項式のそれぞれの係数を決定するステップ(35)を含み、前記多項式は、第2の方向(y)における座標を表し、
電極表面の平面図で見たときに、前記第2の方向における前記座標の共通値(y
0)からのそれぞれの経路は、オプションとして偏差が重ね合わされた、それぞれの係数の集合を有する多項式に対応する、
請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記係数は、電圧降下関数を計算することによって得られ、
前記電圧降下関数は、前記第1の方向(x)における前記座標の関数であり、被加工物(3)の表面に沿った前記第1の方向(x)における電圧変化を表す、
請求項13記載の方法。
【請求項15】
コンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムは、前記プログラムがコンピュータによって実行されると、請求項12から14までのいずれか1項記載の方法の設計するステップ(34~42)を前記コンピュータに実行させるための命令を含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を電解処理するための装置のための電極であって、装置は、処理されるべき表面を有する被加工物を、電極の表面を通り過ぎるように、かつ電極の表面に向かって搬送するように配置された形式のものであり、電極は、少なくとも電極のこの表面において複数のセグメントに分割されており、複数のセグメント同士は、第1の方向において互いに隣り合うように配置されており、隣り合うセグメント同士は、隣り合うセグメントがそれぞれ異なる電圧で維持されることを可能にするように、それぞれのセグメント縁部に沿って互いに分離されており、セグメント縁部は、第2の方向における座標の共通値から、少なくとも電極の表面の導電性部分の縁部まで、少なくとも部分的に第2の方向に延在し、第2の方向は、第1の方向を横断する方向であって、かつ使用時における被加工物の移動方向に相当する、電極に関する。
【0002】
本発明は、電解処理装置のセルを形成するためのアセンブリにも関する。
【0003】
本発明は、少なくとも1つの処理セルを含む電解処理装置にも関する。
【0004】
本発明は、上述した種類の電極を設計する少なくとも1つのコンピュータ実装ステップを含む方法にも関する。
【0005】
本発明は、コンピュータプログラムにも関する。
【0006】
背景技術
Yang, L.ら著の‘Copper plating uniformity on resistive substrate with segmented anode’, ECS Meeting Abstracts, 224th Meeting, Abstract # 2089, 1 November 2013, Retrieved from the Internet: <URL: https://iopscience.iop.org/article/10.1149/MA2013-02/29/2089/pdf>は、セグメント化されたアノードを使用して、抵抗性の基板上でのウェハスケールの銅めっきの均一性を改善するための方法に関する。このようなめっきセルのセットアップでは、1つの円形のアノードの代わりに複数のリング形状のセグメントが使用され、これらのセグメントに対する入力電流を制御することができる。具体的には、3つの同心円状のセグメントを有するアノード構成が開示されている。
【0007】
米国特許第6919010号明細書は、方位角的に非対称な一次アノードと、複数の二次アノードセグメントとを含むアノードアセンブリを開示している。被加工物は、アノードアセンブリの上方に位置し、アノードアセンブリの中心軸線と実質的に整列された軸線を中心にして回転する。典型的な実施形態では、被加工物のフットプリントは、アノードアセンブリの周囲に(少なくとも大まかに)相当する。初期時には、被加工物の中心領域(回転軸線の近傍)にイオン電流の大部分を供給するために、非対称のアノードだけが通電されて、電流を提供する。セグメントが占めているアセンブリの領域は、縁部効果が最も深刻であるめっきプロセスのこの初期段階の間、如何なる有意な電流も提供しない。したがって、任意の所与の時点では、被加工物の周縁部の比較的大きな区分は、アノードの頂面の上面の上方には配置されていない(またはそうでなければ、アノードの如何なる部分とも整列されていない)。めっきセルは、電解質を保持するための容器を有する。ウェハ保持体は、シード層が載置されたウェハを保持する。回路は、非対称の一次アノードおよび非対称の二次アノードの2つのアノードの各々にめっき電流を可変的に分配する。
【0008】
欧州特許第1419290号明細書は、回路基板の搬送方向において互いに縦一列に配置された上側および下側のアノードを含む回路基板のための水平型の電気めっきシステムを開示している。被加工物、この場合には回路基板は、少なくとも1つのクランプによって保持されていて、電気的にコンタクトされ、一方のアノードから次のアノードへと搬送される。電流は、コンタクトおよびクランプを介して回路基板に供給される。アノードは、個々の電気的に絶縁されたアノードセグメントに分割されており、これらのアノードセグメントは、搬送方向を横断するように分割されている。アノードセグメントは、回路基板上のベース層と一緒に、電解質の部分セルを形成する。それぞれの部分セルには、別個の電流源、例えば各自のセグメント整流器から電流が供給される。処理されるべき回路基板は、金属被覆されるべき上側層を有する部分セルのカソードを構成している。1つの実施形態では、アノードセグメントを画定する分離線は、被加工物の搬送方向に対してα>0の角度で延在する。分離線の傾斜度が十分に大きい場合、ひいては、アノードおよび絶縁体のセグメント化の傾斜度が十分に大きい場合には、製造されるべき回路基板のほぼ全ての領域が、短時間、それぞれのアノードの絶縁領域の上方または下方に延在することとなる。このようにして、層厚さに対する絶縁体の影響が平衡されている。好ましい実施形態では、回路基板の側方縁部の領域における、特にクランプに近接した領域における搬送方向に対する角度αを、遠く離れた(接点遠方)領域における搬送方向に対する角度よりも小さくなるように選択することが求められている。なぜなら、クランプに近接した領域において生じる大電流に起因するベース層での電圧降下は、クランプから離れた領域における電圧降下よりも、単位長さ当たりで格段により大きいからである。
【0009】
被加工物にわたる電流密度を、セグメントの個数を増やすことによってより均一にすることはできるが、セグメント同士の間の絶縁体がいくらかの表面積もまた占めるという事実により、このことに対する限界が存在する。さらに、複数のセグメントを個々のそれぞれの電圧レベルで維持するために必要とされる整流器の個数が、これに関連して増加することにより、電気めっきシステムの複雑性およびコストが増加する。実際には、被加工物上のコーティングの厚さの達成可能な変動は、13%以下に過ぎない。
【0010】
電解質の流れに影響を与えることによって、さらなる改善が達成される。アノードと被加工物との間に、開口部が設けられたプレートの形態の遮蔽装置が設けられているような、セグメント化されたアノードを有する電流システムでは、所定の開口部にプラグが挿入される。しかしながら、どの開口部にプラグを挿入すべきかを決定することは複雑であり、実際の挿入には時間がかかる。プラグパターンは、アノードと被加工物の表面との間の距離に依存する。したがって、このパターンを、被加工物が通り過ぎて搬送されるアノードの各々に対して別個に決定しなければならず、異なる初期厚さを有する被加工物が処理されるべき場合には、新しいパターンを決定および設定しなければならない。その場合でも、厚さ変動は、依然として7%以下に過ぎない。
【0011】
発明の概要
本発明の目的は、第1の方向における被加工物の範囲の少なくとも大部分にわたって、電流密度の改善された均一性が得られることを可能にするような電極、アセンブリ、電解処理装置、方法、およびコンピュータプログラムを提供することである。
【0012】
上記の目的は、第1の態様によれば、少なくとも一対の隣り合うセグメントの間にあるセグメント縁部が、それぞれの経路に沿って延在し、電極表面縁部に対する経路の角度が、座標の共通値から電極表面縁部に向かって減少することを特徴とする、本発明による電極によって達成される。
【0013】
電極は、ガルバニックめっき装置のセルにおけるアノードとして、例えば、パネルまたは箔の形態の平面状の被加工物をめっきするために使用可能である。電極は、エッチング装置におけるカソードとしても使用可能である。本明細書では、電極の作用を説明するためにガルバニックめっき装置の例が使用される。
【0014】
このような装置では、被加工物は、電解質を垂直方向または水平方向に通過して搬送される。被加工物は、処理されるべき表面が電極の表面を通り過ぎるように、かつ電極の表面に向けられるように搬送され、これら2つの表面は、実質的に平行である。処理されるべき表面と電極表面との間には、非導電性の構造、例えば遮蔽構造を設けることができる。
【0015】
めっきプロセスの開始時には、被加工物の表面上には、例えば蒸着または無電解めっきによって堆積された非常に薄い導電層のみが存在する。被加工物は、(移動方向を横断する方向である第1の方向に見たときに)一方または両方の縁部でのみ、クランプによって電気的にコンタクトされる。薄い導電層の抵抗は、電解質と比較して相対的に大きい。したがって、この層の表面における電圧は、第1の方向に向かって比較的急峻に降下する。(めっきの例ではアノードとして機能する)電極が、セグメント化されていなければ、クランプの近傍に大きな電流密度が存在することとなろう。被加工物の表面からアノードまでの電解質浴にわたる電流密度は、層厚さが増加する速度を決定するので、電流密度の不均一性は、めっき材料が堆積される層の厚さの不均一性につながる。
【0016】
提案される電極は、少なくとも電極のうちの、めっきされるべき表面に対向する表面において複数のセグメントに分割されている。これらのセグメント同士は、相互に電気的に絶縁されているか、または結合が弱いので、これらのセグメントを、個々のそれぞれの整流器によってそれぞれ異なる電圧に保持することができる。それぞれのセグメントから被加工物表面に流れる電流を個々に制御することができる。これらのセグメントは、第1の方向において、すなわち被加工物表面における電圧が降下する方向において互いに隣り合って配置されているので、電解質浴にわたるより均一な電圧差を維持することができる。
【0017】
隣り合うセグメント同士は、それぞれのセグメント縁部に沿って互いに分離されている。これらのセグメント縁部は、部分的に第2の方向に延在し、第2の方向は、第1の方向を横断する方向であって、かつ使用時における被加工物の移動方向に相当する。
【0018】
セグメント縁部は、第2の方向における座標の共通値から、電極表面の少なくとも導電性部分の縁部まで延在する。座標の共通値は、第2の方向における反対側の縁部に相当することができる。代替的に、セグメント縁部の経路が、互いに鏡像である2つの区分から成っている場合には、座標の共通値は、電極の中央に相当することができる。セグメント縁部は、一般的に、電極の導電性部分の縁部におけるそれぞれの端点まで延在する。それぞれの端点での第2の方向における座標の値は、一般的に、これらの端点におけるその座標の平均値から10%未満、例えば5%未満だけ偏差する。殆どの実施形態では、それぞれの端点での第2の方向における座標の値は同じになる。したがって、縁部は、実質的に直線である。このことは、一般的に、被加工物を電解処理するための装置のための電極について当てはまり、この装置は、被加工物を、電極の表面を通り過ぎるように搬送するように配置された形式のものである。そうでなければ、被加工物は、被加工物の幅(第1の方向に相当)にわたって等しく処理されないだろう。さらに、その場合、この形式の複数の電極を、連続する電極同士の間に大きな不均一な間隙が設けられることなく、使用時における被加工物の移動方向に相当する第2の方向において一列に配置することができる。
【0019】
セグメント縁部が第2の方向にのみ延在するとしたら-このことは、セグメント縁部が直線であることを意味する-、その結果は、被加工物の表面上の線になり、この場合、隣り合うセグメントの縁部同士を分離する間隙が、電解質浴を通過する電流の流れを阻止するであろう。さらに、セグメント縁部の座標間に、すなわち、電極セグメントに相当する区分の内部に、第1の方向における電流密度の不均一性が依然として存在するであろう。
【0020】
後者の影響は、少なくとも一対の隣り合うセグメントの間にあるセグメント縁部が、それぞれの経路に沿って延在し、電極表面縁部に対する経路の角度が、座標の共通値から電極表面縁部に向かって減少するという事実によって打ち消される。角度が減少するので、経路は、直線ではなく曲線または区分線形曲線となる。第1の方向におけるそれぞれの座標において、被加工物は、2つのセグメントをそれぞれ異なる持続時間にわたって通過し、これらの持続時間の間の比は、被加工物の表面上の導電層における非線形の電圧降下を補償するために、非線形に変化する。その結果、平均電流密度は、第1の方向において比較的均一になる。このことは、少なくとも縁部から離れた中央の領域について当てはまる。なぜなら、電解質の流れおよび被加工物のコンタクトに起因する縁部効果は、不均一性のさらなる原因となる可能性があるからである。
【0021】
全ての対の隣り合うセグメント同士の間にあるセグメント縁部同士は、一般的に同じ形状を有する。それぞれのセグメントの両方の相対するセグメント縁部同士は、それぞれ異なる形状を有するそれぞれの経路に沿って延在することができる。
【0022】
1つの実施形態では、少なくとも第1の方向で見たときの電極のそれぞれの半部の内部では、経路は、座標の共通値から電極表面縁部まで、第1の方向に同じ向きで延在する。
【0023】
すなわち、少なくとも第1の方向で見たときの電極のそれぞれの半部の内部では、全ての経路が同じ方向に傾斜させられている。第2の座標が共通値にある点から電極表面縁部までの経路に沿って進行する仮想の観察者のそれぞれの経路に沿った、第1の方向における移動方向は、同じ符号を有する。符号は、それぞれの経路の範囲に沿って同じであるだけでなく、すなわち、経路に沿って変化しないだけでなく、関連する全ての経路(それらの経路の全て、またはそれぞれの半部の内部にある経路の全て)に対して同じでもある。被加工物が両方の相対する縁部においてコンタクトされる用途では、経路は、電極のそれぞれの半部の内部でのみ、座標の共通値から電極表面縁部まで、第1の方向に同じ向きで延在する。被加工物が1つの縁部のみにおいてコンタクトされる用途では、全ての経路が、座標の共通値から電極表面縁部まで、第1の方向に同じ向きで延在する。
【0024】
1つの実施形態では、座標の共通値から電極表面縁部までの経路は、曲線である。
【0025】
この実施形態によれば、区分線形曲線と比較してより均一な電流密度平均が達成される。
【0026】
1つの実施形態では、電極表面の少なくとも導電性部分は、第2の方向で見たときに2つの半部を含み、一方の半部内にあるセグメント縁部のそれぞれの区分は、座標の共通値に配置された対称線に関して、他方の半部内にあるセグメント縁部のそれぞれの区分の鏡像となっている。
【0027】
このことによって、経路は、より大きい傾斜を有することが可能となる。このこと自体は、被加工物表面の区分が、セグメント同士の間の非導電性の分離部のみを通過すること、またはほぼこの非導電性の分離部のみを通り過ぎることに起因する、ストライプ作用を回避するために役立つ。
【0028】
1つの実施形態では、それぞれのセグメントのセグメント縁部のうちの第1のセグメント縁部の経路上の、電極表面縁部における点は、当該セグメントの他方のセグメント縁部の経路上の、座標の共通値における点と第1の方向に同じ座標値にあるか、またはこの点から第1の方向に離れている。
【0029】
第1の方向における座標をx座標とラベル付けし、第2の方向における座標をy座標とラベル付けすると、1つのセグメントの第1の縁部は、y座標の共通値(y0)における点(x1,y0)から電極表面縁部における点(x2,y1)まで延在する。このセグメントの第2の縁部は、y座標の共通値(y0)における点(x3,y0)から電極表面縁部における点(x4,y1)まで延在する。この実施形態では、x3≧x2である。その結果として、被加工物表面が、隣り合うセグメント同士の間の絶縁性のバリアの下方または上方を2回以上通過するような、第1の方向における座標xの値は存在しなくなる。さらに、被加工物表面上のそれぞれの点は、最大でも2つのセグメント電圧にしか対向しなくなり、これによって、電極を含む装置セルの構成が単純化される。
【0030】
1つの実施形態では、少なくとも第1の方向で見たときの電極のそれぞれの半部の内部では、座標の共通値におけるセグメントの縁部同士の間の距離に相当するセグメントの幅は、第1の方向にセグメントごとに増加する。
【0031】
このことはさらに、被加工物表面における電圧が、被加工物がコンタクトされる縁部において最も急峻に降下するという事実を考慮している。電極の電圧を決定するクランプによって被加工物が両方の縁部で保持されるような用途のために、電極が意図されている場合には、上述した条件は、第1の方向で見たときの電極のそれぞれの半部の内部において当てはまり、なお、この幅は、2つの半部が合わさるところで最小となる。
【0032】
このような効果は、少なくとも第1の方向で見たときの電極のそれぞれの半部の内部で、表面縁部における一対の隣り合うセグメントの間にある一対のセグメント縁部の経路の、電極表面縁部に対する角度が、第1の方向に対ごとに増加する実施形態においても達成される。
【0033】
被加工物が電気的にコンタクトされる電極縁部に第1の方向で最も近いセグメント縁部は、比較的小さい傾斜を有するが、その一方で、この電極縁部からさらに離れているセグメント縁部は、比較的大きい傾斜を有する。ここでも、電極の電圧を決定するクランプによって被加工物が両方の縁部で保持されるような用途のために、電極が意図されている場合には、上述した条件は、第1の方向で見たときの電極のそれぞれの半部の内部において当てはまり、なお、この角度は、2つの半部が合わさるところに最も近い対について最小となる。
【0034】
1つの実施形態では、電極は、メッシュ電極を含む。
【0035】
特に、電極表面、ひいてはセグメント表面を、メッシュによって形成することができる。1つの効果は、電解質が電極を通って流れることができるということである。したがって、電極と被加工物表面との間の電解質を比較的均一に補充することができる。この均一な補充は、電極と被加工物との間に導管などを設けることなく達成可能である。このこと自体によって、比較的均一な電流密度平均を達成することが可能となる。
【0036】
1つの実施形態では、電極は、本発明による方法を実行することによって得られない場合には、少なくとも、本発明による方法を実行することによって得られる設計に従っている。
【0037】
別の態様によれば、電解処理装置のセルを形成するための本発明によるアセンブリは、本発明による少なくとも1つの電極を含む。
【0038】
もちろん、例えば、平面状の被加工物の両側を同時に処理するために、セルにこのような電極を2つ設けてもよい。セルは、被加工物表面と電極との間の空間を電解質によって充填するための少なくとも1つの装置をさらに含む。この少なくとも1つの装置は、電解質を循環させるように構成可能であり、これにより、電解質は、被加工物表面と電極との間の空間から、第1の方向における電極の縁部に設けられた窓を通って出る。
【0039】
セルの1つの実施形態は、少なくとも1つの電極のうちの1つの電極の電極表面の正面において、第1の方向および第2の方向に延在する少なくとも1つの遮蔽装置(shielding device)をさらに含む。
【0040】
この実施形態は、特に、被加工物が、被加工物の縁部のうちの1つまたは複数のみにおいて支持される比較的薄い被加工物である場合に、電極と被加工物との間のコンタクトを防止するために役立つ。遮蔽装置は、処理されるべき被加工物の表面と電極表面との間の電界に影響を与えるためにも使用可能である。遮蔽装置は、特に、例えば縁部効果を補償することによって、電流密度平均の均一性を改善するために使用可能である。
【0041】
そのような実施形態の1つの実施例では、遮蔽装置は、プレートを含み、プレートには、液体に対して透過性であって、かつ第1の方向および第2の方向に分布された複数の貫通流路が設けられている。
【0042】
1つの効果は、電解質が遮蔽装置を通って流れることができるということである。したがって、電極と被加工物との間に導管などを設けることなく、電極と被加工物表面との間の電解質を比較的均一に補充することができる。流路の分布および/またはサイズは、その他の不均質性を補償するために局所的に不均一であってよい。局所的により多くの電解質の通過を可能にすることにより、浴の抵抗が減少して、電流密度が増加し、これにより、他の構造または縁部効果に起因する電界の歪みが補償される。流路が格子に従って一定のピッチで均一かつ規則的に分布されている場合には、規則的な流れを達成することができる。隣り合う流路同士を局所的に相互接続することによって、透過性の局所的な増加を達成することができる。格子上の特定の位置において流路を局所的に省略することによって、透過性の局所的な低減を達成することができる。
【0043】
この実施例の特定の形式では、全ての経路は、座標の共通値から電極表面縁部まで、第1の方向に同じ向きで延在し、経路が座標の共通値から電極表面縁部まで進むにつれて経路が接近する電極表面の縁部の正面において、プレートの縁部に沿って第2の方向に延在するプレートのストリップにおける貫通流路の液体透過面積の積分は、同じ幅のプレートの隣り合う平行なストリップにおける液体透過面積の積分よりも小さい。
【0044】
経路が座標の共通値から電極表面縁部まで進むにつれて経路が接近する電極表面の縁部の正面において、プレートの縁部に沿って第2の方向に延在するプレートのストリップにおける貫通流路の液体透過面積の積分は、同じ幅のプレートの全ての平行なストリップに関する平均値より小さくてよい。全ての経路が、共通の座標から電極表面縁部まで、第1の方向に同じ向きで延在する場合には、電極は、一方の縁部のみにおいて電気的にコンタクトされる被加工物と共に使用するために構成されている。遮蔽装置プレートのうちの、被加工物の反対側の縁部に対向する縁部におけるストリップは、液体に対して比較的不透過性である。この縁部には窓が設けられており、この窓を通って遮蔽装置と被加工物表面との間の空間から電解質が出る。この比較的閉鎖されたストリップがなければ、この縁部において比較的高い電流密度平均が達成されるであろう。このことは、アセンブリを含むめっき装置において形成される層の厚さの局所的な増加を引き起こすであろう。換言すれば、遮蔽装置プレートのうちの、電極がクランプされるところに配置された縁部から最も遠く離れた縁部における仮想のストリップは、液体に対して比較的不透過性である。
【0045】
セルが、少なくとも1つの電極のうちの1つの電極の電極表面の正面において、第1の方向および第2の方向に延在する少なくとも1つの遮蔽装置をさらに含んでいて、かつ遮蔽装置が、プレートを含み、プレートには、液体に対して透過性であって、かつ第1の方向および第2の方向に分布された複数の貫通流路が設けられているようなアセンブリの実施形態の1つの実施例では、それぞれのセグメントごとに少なくとも1つの電気コンタクトが、第1の方向における座標を有するそれぞれの位置に設けられており、第1の方向における座標において、第2の方向に延在するプレートのストリップにおける貫通流路の液体透過面積の積分は、同じ幅の隣り合う平行なストリップにおける液体透過面積の積分よりも小さい。
【0046】
より少ない電解質しか通過させないストリップは、そうでなければ電気コンタクトの第1の方向の座標において構築されていたであろう電流密度平均の増加を補償する。
【0047】
セルが、少なくとも1つの電極のうちの1つの電極の電極表面の正面において、第1の方向および第2の方向に延在する少なくとも1つの遮蔽装置をさらに含んでいて、かつ遮蔽装置が、プレートを含み、プレートには、液体に対して透過性であって、かつ第1の方向および第2の方向に分布された複数の貫通流路が設けられているようなアセンブリの実施形態の1つの実施例では、プレートは、少なくとも1つの締結具によって固定されており、これらの締結具は、プレートを横断する方向に延在していて、かつ第1の方向における座標を有する関連する位置に配置されており、締結具は、プレートのうちの、電極に対して遠位の表面において所定の幅の断面を有し、第1の方向における座標において、第2の方向に延在する所定の幅を有するプレートのストリップの区分における貫通流路の液体透過面積の積分は、同じ幅の隣り合う平行なストリップの隣り合う区分における液体透過面積の積分よりも大きい。
【0048】
締結具は、電流の流れを阻止する。なぜなら、締結具は、導電性材料から形成されている場合であっても電気絶縁要素として機能するからである。この作用は、ストリップのうちの、締結具が位置している残りの部分が、電解質に対してより高い透過性を有するという事実によって補償される。
【0049】
セルが、少なくとも1つの電極のうちの1つの電極の電極表面の正面において、第1の方向および第2の方向に延在する少なくとも1つの遮蔽装置をさらに含んでいて、かつ遮蔽装置が、プレートを含み、プレートには、液体に対して透過性であって、かつ第1の方向および第2の方向に分布された複数の貫通流路が設けられているようなアセンブリの実施形態の1つの実施例では、経路が座標の共通値から電極表面縁部まで進むにつれて経路が発散する際の始端である電極の縁部の正面において、プレートの縁部に沿って第2の方向に延在するプレートのストリップにおける液体透過面積の積分は、同じ幅のプレートの隣り合う平行なストリップにおける液体透過面積の積分よりも大きい。
【0050】
経路が座標の共通値から電極表面縁部まで進むにつれて経路が接近する電極表面の縁部の正面において、プレートの縁部に沿って第2の方向に延在するプレートのストリップにおける貫通流路の液体透過面積の積分は、同じ幅のプレートの全ての平行なストリップに関する平均値より小さくてよい。
【0051】
経路が座標の共通値から電極表面縁部まで進むにつれて経路が発散する際の始端である電極の縁部の正面において、プレートの縁部に沿って第2の方向に延在するプレートのストリップにおける液体透過面積の積分は、特に、同じ幅のプレートの全ての平行なストリップに関する平均値より大きくてよい。被加工物が電気的にコンタクトされる電極の縁部の正面におけるプレートの縁部で、より多くの電解質が、遮蔽装置のプレートを通過するように導かれる。これにより、電極からクランプへと、または被加工物に電気的にコンタクトする類似の装置へと直接的に電流が流れるのとは対照的に、被加工物の表面を通って電流が流れることが促進される。
【0052】
セルが、少なくとも1つの電極のうちの1つの電極の電極表面の正面において、第1の方向および第2の方向に延在する少なくとも1つの遮蔽装置をさらに含んでいて、かつ遮蔽装置が、プレートを含み、プレートには、液体に対して透過性であって、かつ第1の方向および第2の方向に分布された複数の貫通流路が設けられているようなアセンブリの1つの実施形態の実施例では、プレートは、電気絶縁性材料から形成されている。
【0053】
これにより、とりわけプレートの取り付けが簡単になる。プレートを取り付けるための締結具は、一般的に、縁部から離れた位置において、少なくともプレートと電極との間に延在していなければならない。締結具は、導電性材料から形成可能である。
【0054】
アセンブリの1つの実施形態は、少なくとも1つの電極のうちの1つの電極の縁部に沿って第2の方向に、かつ第1の方向および第2の方向を横断する第3の方向に延在する少なくとも1つのさらなる電極をさらに含む。
【0055】
このさらなる電極は、第2の方向に、かつ第1の方向および第2の方向の両方を横断する方向に延在する。このさらなる電極は、特に、例えば1つまたは複数のクランプによって被加工物が電気的にコンタクトされる被加工物縁部に対向する、セグメント化された電極の縁部に設けられていてよい。セグメント化された電極がアノードとして機能する場合には、このさらなる電極も、アノードとして機能するように配置されており、本明細書ではクランプアノードとも称される。クランプアノードは、第3の方向および第2の方向における寸法が、第1の方向における寸法よりも、例えば数桁(10倍または100倍でさえある)大きい構造である。使用中のクランプアノードには、クランプによって被加工物がコンタクトされる縁部の近傍で、被加工物上での金属堆積に影響を与えるなどの目的で、制御された電流が供給される。クランプは完全には遮蔽されていなくてよいので、セグメント化されたアノードからの電流の一部は、そうでなければ被加工物ではなくクランプに流れることとなろう。クランプアノードは、一方では、セグメント化されたアノードからクランプと、被加工物の縁部ストリップとに電流が流れることを阻止する。クランプアノードは、他方では、セグメント化されたアノードから被加工物ではなくクランプへと電流が流れることに起因する金属堆積の如何なる減少をも補償する。同様の効果は、セグメント化された電極とさらなる電極とがカソードとして機能し、被加工物が、アノードとして機能するために縁部でコンタクトされるような実施形態において得られる。
【0056】
この実施形態の特定の実施例では、さらなる電極とセグメント化された電極との間に、電気絶縁性の遮蔽体が設けられている。この電気絶縁性の遮蔽体は、セグメント化された電極に対向するさらなる電極の表面上の表面層の形態をとることができる。
【0057】
別の態様によれば、本発明による電解処理装置は、少なくとも1つの処理セルを含み、処理セルは、本発明による少なくとも1つのアセンブリを含む。
【0058】
上述したように、電解処理装置は、電気めっきまたはエッチングのため、すなわち、被加工物の表面上の導電層材料を形成または破壊するためのものであってよい。
【0059】
電解処理装置の1つの実施形態は、複数の処理セルと、セルの間を通過するように被加工物を搬送するための搬送システムとを含む。
【0060】
搬送システムは、被加工物の表面が実質的に垂直に延在する垂直型の搬送システムであってもよいし、または被加工物がセルの間を通過して移動するように被加工物の表面が実質的に水平に延在する水平型の搬送システムであってもよい。
【0061】
この実施形態の1つの実施例では、搬送システムは、平面状の被加工物がセルの間を通過するように搬送されている間に、平面状の被加工物の縁部において平面状の被加工物を取り外し可能に保持するための少なくとも1つのクランプを含む。
【0062】
被加工物が少なくとも1つのクランプによって保持される縁部から離れた領域では、被加工物は、支持されないままであってよい。このことは、被加工物の表面の摩耗を防止するために役立つ。被加工物が少なくとも1つのクランプによって保持される被加工物縁部の他に、被加工物と電極との間に支持構造が設けられていないという点で、処理の均一性も改善される。したがって、搬送システムが水平型の搬送システムである場合であっても、1つのセルにおいて被加工物を両側で処理することができる。搬送システムは、1つの被加工物につき2つ以上のクランプを使用することができる。少なくとも1つのクランプを、エンドレスチェーンまたはエンドレスベルトに取り付けることができる。それぞれのクランプは、最初のセルにおいて自動的に閉じることができ、被加工物を搬送する際に通過する一連のセルのうちの最後のセルにおいて被加工物から自動的に係合解除することができる。搬送システムは、第1の方向(すなわち、移動方向を横断する方向)における両方の相対する縁部において被加工物を保持するためのクランプを含むことができる。その場合、印加される電流の供給点は、被加工物の対称線に関して鏡像であってよい。
【0063】
この実施例の特定の形式では、少なくとも1つのクランプのうちの少なくとも1つは、被加工物の主面に押し付けられたときに被加工物に電気的にコンタクトするための導電性部分を含むアームを含み、これにより、被加工物は、電極として機能することができる。
【0064】
したがって、被加工物は、特定の電位に保持されると共に、装置を通過するように搬送される。クランプが使用されるので、被加工物は、処理されるべき表面において電気的にコンタクトされる。
【0065】
1つの特定の実施例では、被加工物に係合するためのアームの少なくとも1つの端部区分は、被加工物の主面に係合するための表面区分を除いて電気絶縁性の遮蔽部によって被覆された導電性のコア部分を含む。
【0066】
このことは、アームの被覆または剥離を回避するために役立ち、被加工物表面上の導電層に強制的に電流を流すことにより、被加工物の表面がクランプによって保持されている場合に、被加工物の表面の処理を促進する。
【0067】
別の態様によれば、本発明による方法は、本発明による電極を設計する少なくとも1つのステップを含み、設計するステップは、経路の形状を決定することを含む。
【0068】
したがって、電極を、その電極が使用されるべき処理セルの構成に適合させることができる。マルチセル型の装置では、経路形状は、例えば、複数の異なるセルのための電極の間でそれぞれ異なってよい。経路形状は、特に、セグメントの個数、第1の方向における電極表面の範囲、電解質の抵抗率、被加工物と電極表面との間の距離、被加工物の表面における導電層の抵抗率ならびに厚さ、および第2の方向における電極表面の範囲のうちの少なくとも1つに依存して決定可能である。
【0069】
本方法の1つの実施形態では、経路の形状を決定することは、第1の方向における座標の多項式、例えば第2次多項式の係数を決定することを含み、なお、多項式は、第2の方向における座標を表す。
【0070】
したがって、電極表面の平面図において、第2の方向における座標の共通値から電極表面縁部までの経路は、少なくとも多項式に基づいており、例えば、放物線の1つの区分である。設計ステップのさらなるステップは、放物線または高次多項式に偏差を重ね合わせることを含むことができる。係数を決定するプロセスは、反復的なプロセスであってよい。
【0071】
1つの実施形態では、係数は、電圧降下関数を計算することによって得られ、電圧降下関数は、第1の方向における座標の関数であり、被加工物の表面に沿った第1の方向における電圧変化を表す。
【0072】
電圧降下関数は、2次多項式関数であってよい。係数は、電圧降下関数の係数に相当することができ、この係数は、第1の方向における電極表面の寸法によってスケーリングされ、形状が決定されるべき経路に沿って延在する縁部を有する隣り合うセグメント同士の間の電圧差によって除算される。
【0073】
本方法の1つの実施形態は、設計通りに電極を製造することをさらに含む。
【0074】
別の態様によれば、本発明によるコンピュータプログラムは、プログラムがコンピュータによって実行されると、本発明による方法の設計するステップをコンピュータに実行させるための命令を含む。
【0075】
コンピュータプログラムは、1つまたは複数のコンピュータ可読非一時的記憶媒体において実現可能である。
【0076】
添付の図面を参照しながら、本発明をさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【
図1】電解処理装置の非常に概略的な平面図である。
【
図2】電解処理装置を通過するように搬送される被加工物にコンタクトするためのクランプアームの詳細な断面図である。
【
図3】電解処理装置のセルのためのアノードの表面の概略的な平面図である。
【
図4】
図3の平面図に対応しているが、アノードの反対側における平面図である。
【
図5】アノードと被加工物との間に配置するための遮蔽装置の平面図である。
【
図7】アノードを取得するために使用される方法のステップを示す図である。
【
図8】
図7のステップのうちの1つの実装を示す図である。
【
図9】アノードのセグメントと被加工物との間の電圧差、被加工物とアノードとの間の電解質浴における電圧降下、およびアノードに対向する被加工物の表面上の導電層における電圧降下を示す図である。
【
図10】セグメント縁部形状がどのようにして決定されるかを示すための、アノードの一方の半部の概略平面図である。
【
図11】セグメントについての目標電流密度平均の決定における第1の段階を示す図である。
【
図12】目標電流密度平均を求めた結果を示す図である。
【
図13】
図3、
図4、および
図10に示されている種類のアノードと、
図5および
図6に示されているような遮蔽装置とを含むセルをシミュレートすることによって計算された平均電流密度からの、被加工物の長さに沿った位置における電流密度の百分率偏差を示す図である。
【0078】
実施形態の説明
電気めっき装置1は、平面状の被加工物3a~fをめっきするための多数の処理セル2b~dを含む。平面状の被加工物3a~fは、例えば主として誘電体材料から形成された箔またはパネルであってよい。被加工物の平面に対して平行な表面は、本明細書では主面と称される。これらの主面のうちの少なくとも1つを、装置1によってめっきすることが企図されている。このことは、被加工物3a~fを貫通する任意のビアの側壁に、または被加工物3a~f内のトレンチの側壁にめっきすることを含む。
【0079】
本明細書では、電解めっき装置1のみが説明および図示されている。一般的には、この装置1に先行して、被加工物3a~f上に導電性の前駆体層を形成するための、アブレーション、デスミア処理、イオン活性化、および無電解堆積が含まれる前処理ステップを行うための装置が設けられる。
【0080】
第1の方向x、すなわち本明細書では幅とも称される被加工物3a~fの寸法を定義することが便利である。第1の方向xを横断する方向である第2の方向yは、装置1を通過する被加工物3a~3fの移動方向に相当する。
【0081】
装置1は、循環される電解質の浴を画定する筐体4を有する。ローラ5a~cは、筐体4内への進入点まで被加工物3a~fを支持し、そこで、搬送システム6によって係合させられ、搬送システム6は、近位の縁部8a~fにおいて被加工物3a~fの主面に係合するための一連のクランプ7を含むものとして概略的に図示されている。遠位の縁部9a~dは、本明細書においてそれぞれのセル2a~dの窓と称されるところに配置されており、ここで、セル2a~dから電解質が流出する。図示の実施形態では、被加工物3a~fは、遠位の縁部9a~dでは保持されていない。被加工物3a~fは、縁部8と縁部9との間では如何なる立体構造によっても支持されていない。それでもなお、被加工物3a~fは、電解質に浸漬される。代替的な実施形態では、支持要素を設けることができる。被加工物3a~fを、第1の方向xで見たときに両側でクランプすることもできる。
【0082】
クランプ7は、被加工物3a~fが筐体4に進入すると被加工物3bに自動的に係合し、被加工物3a~fが筐体4から退出すると自動的に係合解除する。クランプ7は、歯付きプロファイルを有するベルトであってよいエンドレスベルト10またはチェーン上で支持されており、このエンドレスベルト10またはチェーンは、例えば、1つまたは複数のドラム11a,11bによって駆動され、このドラム11a,11bの周りにエンドレスベルトが配置されており、このドラム11a,11bによってエンドレスベルト10が支持されている。
【0083】
図1が概略的であることに留意されたい。実際の実装では、クランプ7は、セル2a~d内へと延在し、したがって、被加工物3a~fは、近位の縁部8a~fにおいて殆どまたは全く突出していない。
【0084】
クランプ7は、被加工物3a~fのそれぞれの側にアーム12(
図2)を含む。アーム12は、被加工物3の主面に係合するための表面区分15を除いて電気絶縁性の遮蔽部14によって被覆された導電性のコア部分13を含む。被加工物3に係合するそれぞれのクランプ7は、カソードとして機能する被加工物3とアノード16とが含まれる電気回路の一部を形成する。
【0085】
被加工物3の両方の主面にめっきするためのセル2の場合には、配置が鏡対称になっている。本議論は、被加工物3の1つの主面、すなわち図示の実施形態では上向きの主面をめっきするためのコンポーネントのみに焦点を当てることとする。
【0086】
本実施例のアノード16は、2つの層17,18(
図2)を含む。代替的な実施形態では、1つの層または3つ以上の層が存在していてよい。少なくとも被加工物3に対して近位にある下側層18は、メッシュ区分を含む。メッシュは、電解質に対して透過性である。上側層17は、メッシュ層であってもよいし、または図示の実施例のように、開口部が設けられたプレート区分から形成された層であってもよい。これにより、電解質は、アノード16を通って被加工物3に向かって流れることができる。
【0087】
アノード16と被加工物3との間には、遮蔽装置が配置されており、この遮蔽装置は、電気絶縁性材料から形成されていて、かつ貫通流路が設けられている遮蔽プレート19を含む。遮蔽プレート19は、被加工物3とアノード16とのコンタクトに起因する短絡を防止するために機能する。いくつかの実施形態では、遮蔽プレート19を省略することができる。遮蔽プレート19は、被加工物3に対向するアノード表面の正面において、第1の方向xおよび第2の方向yに延在する。遮蔽プレート19は、アノード16と実質的に同一の広がりを有することができる。図示の実施形態では、後述するようにわずかな偏差が存在する。
【0088】
図示の実施形態では、クランプアノード20(
図2)は、クランプ7に対して近位にある縁部22(
図3および
図4)に沿った第2の方向yと、第1の方向xおよび第2の方向yを横断する第3の方向zとに延在する。クランプアノード20には、別個に制御される電流供給部(詳細には図示せず)が設けられている。クランプアノード20は、アノード16からクランプ7に、または被加工物3のうちの、クランプ7によってコンタクトされる被加工物3の縁部の領域に電流が流れることを、ある程度阻止するために配置されている。これに加えて、クランプアノード20は、被加工物3に追加的な電流を供給することにより、被加工物3ではなくクランプ7に金属が堆積することを補償する。このことは、被加工物3上に形成される層の均一性にさらに寄与する。被加工物3がプリント回路基板である場合には、クランプアノード20は、後続の処理段階でのコンタクトのために必要とされる、一般的には最大25mm幅のめっき縁部領域を提供する。
【0089】
1つの実施形態では、アノード16に対向するクランプアノード20の表面21は、電気絶縁性材料によって被覆されている。これは、有用である。なぜなら、クランプアノード20からの電流は、アノード16からの電流とは独立して制御されるので、これら2つの電流の間には電位差が存在する可能性があるからである。
【0090】
少なくとも被加工物3に対向する表面を有するアノード16の層18は、複数のセグメント23a~eに分割されている。隣り合うセグメント23a~e同士は、それぞれのセグメント縁部24a~hに沿って互いに分離されている(
図3)。隣り合うセグメント23の間のセグメント縁部24a~e同士は、1つの対を形成している。この対を、間隙または電気絶縁性材料によって分離することができる。間隙の幅、または電気絶縁性材料の分離ストリップの幅は、提供することができるセグメント23a~eの個数に対して制限を課すが、セグメント23a~eの最大数を決定する必要はない。
【0091】
いずれの場合にも、分離とは、セグメント23a~e同士が互いに電気的に絶縁されていることを意味する。被加工物3とアノード16との間の電解質と、被加工物3の表面上の導電性の開始層とが導電性であるという事実に起因して、小さな結合が存在する。セグメント23a~e同士を分離する手法は、隣り合うセグメント23a~eがそれぞれ異なる電圧で維持されることを可能にするというものである。結合は、それぞれの個々のセグメント23a~eに調整可能な電流を印加するために制御しなければならない範囲よりも小さい。クランプ7に対するそれぞれのセグメントの電圧差は、関連するそれぞれの整流器(図示せず)によって独立して制御可能である。この電圧差は、アノード-クランプ間電圧Uciと称され、ここで、iは、クランプ7に対して近位にあるセグメント23aから第1の方向xに数えたときのセグメント23の番号である。
【0092】
セグメント縁部24a~eは、y座標の共通値y0から、第1の方向xに延在する第1の電極縁部25まで、部分的に第2の方向yに延在する。図示の実施形態では、セグメント縁部24a~eは、y座標の共通値y0から、第1の方向xに延在する第2の電極縁部26まで、部分的に第2の方向yに反対の向きでも延在する。したがって、第1の電極縁部25と第2の電極縁部26とは、互いに相対する縁部である。対称線27は、y座標の共通値y0に位置する。アノード16は、第2の方向yで見たときに2つの半部28,29を含んでいるとみなすことができる。
【0093】
セグメント縁部24a~eは、それぞれの経路に沿って延在し、これらの経路の、第1の電極縁部25に対する角度は、y座標の共通値y0から第1の電極縁部25へと減少する。第2の電極縁部26に対する角度も、y座標の共通値y0から第2の電極縁部26へと減少する。
【0094】
第1の半部28および第2の半部29のうちの第1の半部28内にある複数のセグメント縁部24a~eの区分は、y座標の共通値y0における点から第1の電極縁部25まで、第1の方向xに同じ向きで延在し、すなわち、x座標の値が、第1の電極縁部25に向かう経路に沿って増加している。第2の半部29内にある複数のセグメント縁部24a~eの区分は、y座標の共通値y0における点から第2の電極縁部26まで、第1の方向xに同じ向きで延在し、すなわち、x座標の値が、第2の電極縁部26に向かう経路に沿って増加している。
【0095】
図示の実施形態では、セグメント縁部24a~eの経路は、曲線である。他の実施形態では、セグメント縁部24a~eの経路は、区分線形曲線であってよい。
【0096】
図示の実施形態では、それぞれのセグメント23a~eのセグメント縁部24a~hのうちの第1のセグメント縁部24a~hの経路上の、第1の電極縁部25における点は、当該セグメント23a~eの他方のセグメント縁部24a~hの経路上の、共通値y
0における点と同じx座標またはより小さいx座標の値を有する。第3のセグメント23cを例として挙げると(
図3)、第1のセグメント縁部24dは、点(x
1,y
0)から点(x
2,y
1)まで延在する。第2のセグメント縁部24eは、点(x
3,y
0)から点(x
4,y
1)まで延在し、ここで、x
4≧x
3である。その結果として、被加工物3の表面上のそれぞれの点は、最大でも2つの電極セグメント23a~eに対向することになる。
【0097】
セグメント23a~eを近位の電極縁部22から数えると、y座標の共通値y0におけるセグメント縁部24a~h同士の間の距離に相当するセグメント23a~eの幅は、x方向にセグメントごとに増加する。セグメント23a~eは、次第に幅広になり、このことは、被加工物3が近位の電極縁部22のみにおいてコンタクトされている場合に、被加工物3の表面における電圧が、この近位の電極縁部22においてx方向に最も急峻に変化するという事実を反映している。
【0098】
セグメント縁部24a~eは、次第にx方向により湾曲するようにもなる。換言すれば、第1の電極縁部25における一対の隣り合うセグメント23a~eの間にある一対のセグメント縁部24a~hの経路の、第1の電極縁部25に対する角度は、x方向に対ごとに増加する(このような1つの対を形成しているセグメント縁部24a~hの経路同士は、実質的に同一の形状である)。このことは、第2の電極縁部26に対する角度に関しても、必要な変更を加えて当てはまる。
【0099】
遮蔽プレート19には、実質的に規則的に分布された複数の貫通流路が設けられており、いくつかの隣り合う流路は、より大きな断面積を有する単一の流路を形成するために相互接続されており、また所定の位置では、流路が省略されている(
図6参照)。
【0100】
図4の上面図からは、セグメント23a~eにコンタクトするための下側層18まで延在する電気コンタクト30a~fが、アノード16に設けられていることが理解されるであろう。電気コンタクト30a~fは、それぞれx座標を有するそれぞれの位置に設けられている。対応するx座標において第2の方向yに延在する、遮蔽プレート19のストリップにおける流路面積の積分は、同じ幅の隣り合う平行なストリップにおける流路面積の積分よりも小さい。この幅は、一般的に、電気コンタクト30a~fの幅に近似する。これにより、電気コンタクト30a~fの位置に直接的に電流が流れる傾向が相殺される。
【0101】
同様にして、遮蔽プレート19は、少なくとも1つの締結具31a~g(見やすくするために、
図5にはいくつかのみが図示されている)によって固定されており、これらの締結具31a~gは、遮蔽プレート19を横断する方向に延在していて、かつそれぞれのx座標を有する関連する位置に配置されている。締結具31は、遮蔽プレート19のうちの、アノード16に対して遠位の表面において所定の幅の断面を有する。x座標において第2の方向yに延在する、所定の幅を有する遮蔽プレート19のストリップの区分における流路の断面積の積分は、同じ幅の隣り合う平行なストリップの隣り合う区分における流路の断面積の積分よりも大きい。換言すれば、締結具31が、導電性材料から形成されているにもかかわらず非導電性の要素として挙動するという事実を補償するために、締結具31が遮蔽プレート19に取り付けられているところの両側のストリップ区分において、透過性が増加されている。
【0102】
遮蔽プレート19は、縁部効果を補償するようにも構成されている。
【0103】
使用時における第1の方向xにおいてクランプ7に対して近位にある近位の遮蔽プレート縁部32(
図5)は、不規則な形状を有する。これは、近位の遮蔽プレート縁部32に沿って第2の方向yに延在するプレートのストリップにおける液体透過面積の積分を、同じ幅の隣り合う平行なストリップにおける対応する積分に対して相対的に増加させるためである。そうでなければ、被加工物3の縁部に沿って電流密度が減少するであろう。この減少は、原則的に問題ではないが、局所的な減少は、被加工物3の隣り合うストリップにおける増加を引き起こす。このことは、近位の遮蔽プレート縁部32における透過性を増加させることによって回避される。それぞれの流路は、同じサイズであり、規則的に(同じピッチで)分布されているので、その結果、不規則な近位の遮蔽プレート縁部32が生じる。
【0104】
遠位の遮蔽プレート縁部33は、特に、被加工物3がアノード16および遮蔽プレート19よりも第1の方向xにおいてより小さい範囲を有する場合に、電流密度の急激な減少に対抗するように構成されている。遠位の遮蔽プレート縁部33に沿って第2の方向yに延在する遮蔽プレート19のストリップにおける流路の液体透過面積の積分は、同じ幅の隣り合う平行なストリップにおける流路の液体透過面積の積分よりも小さい。このことは、被加工物3の対応する遠位の縁部9に沿ってめっき材料のリブが形成されることを回避するために役立つ。
【0105】
アノード16を獲得する方法では、
図9および
図10に示されているように、隣り合うセグメント23a~e同士の間の分離部が無視されている。それぞれのセグメント縁部24a~hは、2次多項式である。第1の方向xで見たときに、それぞれのセグメント縁部24a~hの第1の電極縁部25における点であって、ただし最後の点は、次のセグメント縁部24a~hの共通値y
0における点と同じ座標値xにある。セグメント23a~eの個数と、アノード16の寸法も、固定されている。これらの制約内で、セグメント縁部24a~hを画定する2次多項式の係数と、クランプに関する電位差Uc
iとを求めることが残されており、ここで、iは、近位のセグメント23aから第1の方向xに数えたときのセグメント23a~eの番号を示す。
【0106】
第1の方向xで見たときの第iのセグメントの中心での浴にわたる電位差は、Umb
iである。被加工物3上の表面層における対応する位置とクランプ位置との間の電圧差は、Um
iであり、クランプは、原点、すなわちx=0にあると仮定される。
図9を参照すると、以下の方程式:
【数1】
が得られる。
【0107】
破線のグラフ(
図9)は、電圧目標分布を示す。Umは、単に、セグメント23a~eのうちの特定の1つのセグメントの反対側にある、被加工物3上の表面層のセグメントにおける平均電圧であることに留意されたい。表面層における電圧降下は、2次多項式である。
【0108】
設計プロセスの第1のステップ34(
図7)において、設計パラメータが取得される。これらの設計パラメータは、被加工物3上の導電性材料の層の厚さ、第1の方向xおよび第2の方向yにおける被加工物3の寸法、電解質の抵抗率、被加工物3の表面とアノード16の表面との間の距離、および被加工物3上の導電性材料の抵抗率を含む。さらなる要件は、アノード16の面積にわたる公称電流密度平均である。この結果から、それぞれのセグメント23a~eごとの目標電流密度平均が、以下の式:
CDA[i]=m・i
p+n (3)
に従って得られ、ここで、iは、セグメント番号であり、pは、経験的に求められた固定値であり、mおよびnの値は、最後のセグメント(例えば、図示の実施形態ではi=5)についての公称電流密度平均値と、試行錯誤により求められた第1のセグメント(i=1)についての特定の値とを取ることによって得られる。このプロセスは、
図11および
図12に示されている。
図11は、第1のセグメントCDA[1]における電流密度平均に関して過度に大きな値を取った結果を示す。
図12は、この値を適切な値に調整した結果を示す。他の全てのセグメント23a~eについての電流密度平均の値は、式(3)を使用して得られる。
【0109】
次のステップ35において、セグメント縁部の経路の形状が決定される。
【0110】
図8に示されているように、このステップ35は、方程式(3)に従ったそれぞれのセグメント23a~eごとの目標電流密度平均の初期化(ステップ36)および計算(ステップ37)を含む。
【0111】
その後、ステップの一連の反復が続く。
【0112】
まず始めに(ステップ38)、それぞれのセグメント23a~eごとに電流密度平均が計算される。これは、第1の半部28を、第1の方向xにおける近位の電極縁部22から反対側の縁部まで延在する狭幅のストリップに分割することを含み、それぞれのストリップは、第2の方向yにおいて比較的小さな寸法を有する。電圧降下関数と、セグメント電圧Uciの値とを用いて、それぞれのセグメント23a~eごとの電流寄与分を、これらの狭幅のストリップについて計算することができる。その後、全ての狭幅ストリップの寄与分が合計されて、それぞれのセグメント23a~eごとの電流が求められ、この電流が、当該セグメントの面積によって除算される。その結果として得られた値が目標値と比較され、偏差が減少するように値Uciが調整される(ステップ39)。セグメント23a~eについての電流密度平均を目標値に近づけるために、または別の停止基準(例えば、所定の反復回数)が満たされるまで、この計算(ステップ39,38)が繰り返される。
【0113】
次に(ステップ40)、セグメント縁部24a~hが調整される。
【0114】
図10は、アノード16の第1の半部28を示す。破線は、被加工物3が第2の方向yに移動する際に、被加工物3上の点が対向することとなる経路に相当する。電気めっきプロセスでは、堆積される金属の量は、電荷Qに比例する。電荷Qは、電流Iに時間tを乗算すること:
Q=I・t (3)
によって定義される。
【0115】
被加工物3の速度vは、一定である:
v=L/t (4)
と仮定され、ここで、Lは、第2の方向yにおけるアノード16の第1の半部28の寸法である。第1の方向xにおけるそれぞれの位置では、時間tは、同じであり、したがって、電荷は、ただ1つのセグメント23a~eのみを通り過ぎるように移動する被加工物3上のそれぞれの点についての電流Iと長さLとの積である。
【0116】
第1の方向xにおけるそれぞれの位置x[i]に対して等しい金属堆積を達成するために、収集される電荷Qは、同じでなければならない。これにより、以下の制約:
LS5,x[i]・IS5,x[i]+LS4,x[i]・IS4,x[i]=Q[i]・v,
LS5,x[i+1]・IS5,x[i+1]+LS4,x[i+1]・IS4,x[i+1]=Q[i+1]・v,
LS5,x[i+2]・IS5,x[i+2]+LS4,x[i+2]・IS4,x[i+2]=Q[i+2]・v
がもたらされ、ここで、vおよびQは、定数である。
【0117】
アノードセグメント23a~eは、y方向に延在する等しいサイズの幅狭のストリップに分割されている。それぞれのストリップは、2つの隣り合うセグメント23a~eにわたって延在する。それぞれのセグメント23a~eはそれぞれ異なる電圧にあるので、被加工物3に入力される局所的な電流もそれぞれ異なる。それぞれのストリップに沿った電流が合計され、このことは、被加工物3がアノード16全体の正面を通過したことを反映している。
【0118】
被加工物3上の導電層は、1つのストリップから次のストリップまでの距離に相当するx方向における長さをそれぞれ有する、抵抗の一次元鎖としてモデル化される。これにより、抵抗の鎖のノードに入力される電流をモデル化することが可能となる。この結果から、新しい電圧降下関数の計算を可能にする電圧降下が得られる。この関数は、上述したように2次多項式である。多項式の係数は、対応する2次多項式であるセグメント縁部24a~hの形状を決定する。本方法は、第2のステップ40で得られたセグメント縁部24a~hの新しい形状と共に、セグメント電圧Uciの計算に戻る。
【0119】
中止基準(例えば、固定の反復回数、目標値からの電流密度平均の特定の最大偏差など)が満たされるまで、反復が繰り返される。1つの特定の実施形態における中止基準は、セグメント縁部24a~hを調整するステップ40において画定されたストリップのそれぞれの電流寄与分が等しい(または所定の最大許容偏差未満だけ異なる)ことである。
【0120】
オプションのさらなるステップ41(
図7)では、被加工物3の表面にわたるシミュレーションによって電流密度が計算される。次いで(オプションのステップ42)、平均値からの電流密度の偏差が減少するように、遮蔽プレート19の透過性が局所的に調整される。このことは、セグメント縁部24a~hの形状の計算においては無視される、隣り合うセグメント23a~e同士の間の分離部を考慮する。2つのステップ41,42は、遮蔽プレート19のための最適な開口分布に到達するために反復的に実行される。
【0121】
最後に(ステップ43)、アノード16が設計通りに製造される。
【0122】
このようなプロセスで設計されたアノード16のシミュレーションは、平均電流密度からの偏差が、縁部8,9にある小さなストリップを除いて、第1の方向xにおける被加工物3の範囲にわたって5%以内に留まることを示す(
図13)。
【0123】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲内で変更可能である。電流密度の均一性の改善は、例えば、上述した遮蔽プレート19がなくても達成される。
【符号の説明】
【0124】
1 装置
2a~d セル
3a~f 被加工物
4 筐体
5a~c ローラ
6 搬送システム
7 クランプ
8a~f 近位の被加工物縁部
9a~d 遠位の被加工物縁部
10 ベルト
11a,b ドラム
12 アーム
13 コア部分
14 コア部分の遮蔽部
15 コア部分の表面区分
16 アノード
17 上側層
18 下側層
19 遮蔽プレート
20 クランプアノード
21 クランプアノード表面
22 近位の電極縁部
23a~e セグメント
24a~h セグメント縁部
25 第1の電極縁部
26 第2の電極縁部
27 対称線
28 第1の半部
29 第2の半部
30a~f 電気コンタクト
31a~g 締結具
32 近位の遮蔽プレート縁部
33 遠位の遮蔽プレート縁部
34 ステップ(設計パラメータを取得する)
35 ステップ(経路形状を決定する)
36 ステップ(初期化する)
37 ステップ(それぞれのセグメントごとの目標電流密度平均を計算する)
38 ステップ(それぞれのセグメントごとの実際の電流密度平均値を決定する)
39 ステップ(セグメント電圧を調整する)
40 ステップ(新しいセグメント縁部形状を決定する)
41 ステップ(シミュレーションを実行する)
42 ステップ(遮蔽プレートを最適化する)
43 ステップ(アノードを設計通りに製造する)
【国際調査報告】