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特表2023-512838UPLC/HRMSに基づくメタボロミクス相対定量分析法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-29
(54)【発明の名称】UPLC/HRMSに基づくメタボロミクス相対定量分析法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20230322BHJP
   G01N 30/72 20060101ALI20230322BHJP
   G01N 30/86 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
G01N27/62 D
G01N30/72 C
G01N30/86 J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022548174
(86)(22)【出願日】2021-03-29
(85)【翻訳文提出日】2022-08-05
(86)【国際出願番号】 CN2021083495
(87)【国際公開番号】W WO2021232943
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】202010429597.7
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522314533
【氏名又は名称】▲蘇▼州▲パ▼▲諾▼米克生物医▲薬▼科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】徐 英
(72)【発明者】
【氏名】任 建洪
(72)【発明者】
【氏名】▲謝▼ 桂▲綱▼
(72)【発明者】
【氏名】戴 ▲貞▼▲麗▼
(72)【発明者】
【氏名】▲願▼ 梦南
(72)【発明者】
【氏名】谷 ▲従▼▲順▼
【テーマコード(参考)】
2G041
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041EA04
2G041EA06
2G041FA10
2G041FA12
2G041FA22
2G041FA23
2G041FA24
2G041FA25
2G041GA03
2G041GA06
(57)【要約】
本発明は、メタボロミクスの技術分野に属し、UPLC/HRMSに基づくメタボロミクス相対定量分析法に関する。具体的には、本方法は、主に、同位体内部標準混合溶液、標準曲線補正溶液、及びメタボロミクスサンプル溶液を配合する工程と、標準曲線補正溶液及びメタボロミクスサンプル溶液の生の質量スペクトルデータを取得する工程と、原データを転換及びデコンボリュートする工程と、最適同位体内部標準を同定及び選択する工程と、線形式を当てはめてメタボロミクスサンプル溶液中の代謝物の相対定量結果を計算する工程と、メタボロミクスサンプル溶液中の代謝物及び差次的代謝物の構造同定を完遂する工程と、を含む。本方法は、高分解能質量分析プラットフォームのみを用いて定性及び定量要件の両方を満たすことが可能であり、定量結果は正確であり且つ定性結果の確度はより高く、低コスト、単純操作、及び広い適用性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程:
1)複数の同位体内部標準に基づいて同位体内部標準混合溶液を配合する工程と、
2)メタボロミクスサンプルに基づいて、前記メタボロミクスサンプルにマッチする相対定量補正サンプルを決定し、前記相対定量補正サンプルと工程1)の前記同位体内部標準混合溶液とを用いることにより一連の濃度勾配で相対定量標準曲線補正溶液を配合する工程と、
3)工程2)の前記メタボロミクスサンプルと工程1)の前記同位体内部標準混合溶液とを用いることにより、メタボロミクスサンプル溶液を配合する工程と、
4)UPLC/HRMSを用いることにより、工程3)の前記メタボロミクスサンプル溶液及び工程2)の一連の濃度勾配の前記相対定量標準曲線補正溶液の生の質量分析データを収集する工程と、
5)工程4)の前記生の質量分析データに基づいて一次質量スペクトル転換データ及び二次質量スペクトル転換データを取得し、前記一次質量スペクトル転換データに基づいてさまざまな一次変数情報を含むデコンボリューション結果を取得する工程と、
6)工程5)の前記一次質量スペクトル転換データのデコンボリューション結果と前記二次質量スペクトル転換データとを組み合わせ、単一同位体内部標準の一次変数情報及び二次変数情報を参照して前記同位体内部標準を同定し、線形当てはめ用の最適同位体内部標準を選択する工程と、
7)工程2)の一連の濃度勾配の前記相対定量標準曲線補正溶液の濃度と工程5)で取得された前記一次変数情報とを用いることにより線形当てはめを実施して、線形式を取得する工程と、
8)工程7)の前記線形式に基づいて工程3)の前記メタボロミクスサンプル溶液の相対定量結果を取得し、前記一次変数情報の主成分分析及び差次的代謝物分析を完遂する工程と、
9)工程5)の前記一次質量スペクトル転換データのデコンボリューション結果と前記二次質量スペクトル転換データとを組み合わせることにより代謝物の同定及び差次的代謝物の同定を完遂する工程と、
を含む、UPLC/HRMSに基づくメタボロミクス相対定量分析法。
【請求項2】
工程1)の前記同位体内部標準混合溶液が、下記方法:
最初に適切量の複数の同位体内部標準を採取し、それぞれ、それに溶媒を添加して所与の濃度の単一同位体内部標準の母溶液を配合することと、次いで、それぞれ、適切量の単一同位体内部標準の前記母溶液の各々を採取し、それらを混合し、溶媒を添加して、同位体内部標準混合溶液を取得することと、
により配合される、請求項1に記載のメタボロミクス相対定量分析法。
【請求項3】
工程2)の前記メタボロミクスサンプルが血清又は血漿サンプルであり、前記相対定量補正サンプルがNIST血清である、請求項1に記載のメタボロミクス相対定量分析法。
【請求項4】
工程2)の一連の濃度勾配の前記相対定量標準曲線補正溶液が、下記方法:
一連の体積の前記相対定量補正サンプルを採取し、それぞれ、それに同位体内部標準及びタンパク質沈殿試薬を添加し、混合し、混合物を遠心分離することと、上清を採取し、それを濃縮することと、残渣に再構成溶媒を添加し、それを混合することと、一連の濃度勾配の前記相対定量標準曲線補正溶液を取得するために上清を採取することと、
により配合される、請求項1に記載のメタボロミクス相対定量分析法。
【請求項5】
工程3)の前記メタボロミクスサンプル溶液が、下記方法:
メタボロミクスサンプルを採取し、それぞれ、それに同位体内部標準及びタンパク質沈殿試薬を添加し、混合し、混合物を遠心分離することと、上清を採取し、それを濃縮することと、残渣に再構成溶媒を添加し、それを混合することと、前記メタボロミクスサンプル溶液を取得するために上清を採取することと、
により配合される、請求項1に記載のメタボロミクス相対定量分析法。
【請求項6】
工程5)の前記一次質量スペクトル転換データ及び前記二次質量スペクトル転換データが、データ転換を利用して取得され、前記データ転換が、ソフトウェア又はアルゴリズムプラットフォームにより完遂される、請求項1に記載のメタボロミクス相対定量分析法。
【請求項7】
工程5)の前記デコンボリューション結果が、デコンボリューションを利用して取得され、前記デコンボリューションが、ソフトウェア又はアルゴリズムプラットフォームにより完遂される、請求項1に記載のメタボロミクス相対定量分析法。
【請求項8】
工程6)の前記同位体内部標準の同定及び前記最適同位体内部標準の選択が、自己開発アルゴリズムにより完遂される、請求項1に記載のメタボロミクス相対定量分析法。
【請求項9】
工程8)の前記主成分分析が自己適応変換により完遂され、
工程8)の前記差次的代謝物分析が多変量統計分析により完遂される、
請求項1に記載のメタボロミクス相対定量分析法。
【請求項10】
工程9)の前記代謝物の同定及び前記差次的代謝物の同定が、ソフトウェア又はアルゴリズムプラットフォームにより完遂される、請求項1に記載のメタボロミクス相対定量分析法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタボロミクスの技術分野に属し、同位体内部標準を用いた低分子代謝物の相対定量検出のためのUPLC/HRMSベース法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタボロミクスでは、外因性物質による刺激後、又は環境変化若しくは遺伝子修飾などの因子の影響を受けた後の、生物学的系のすべての代謝反応が調べられ、代謝反応の全体像及び動的変化が検出される。研究対象は、一般的には、1000未満の相対分子質量を有する低分子代謝物である。メタボロミクスは、パターン認識、エキスパートシステム、及び他のコンピューティングシステムと組み合わされた高スループット大規模実験法により特徴付けられ、生物内のすべての代謝物の定性及び定量分析を達成可能である。メタボロミクスは、システム生物学の重要な部分である。
異なる研究目的に応じて、メタボロミクスは、4つのレベル:代謝物標的分析、代謝プロファイリング分析、代謝フィンガープリント分析、及びメタボノミクスに分類可能であり、代謝物標的分析及び代謝プロファイリング分析は、ある特定の特性代謝物又はある特定のタイプの特性代謝物を定量検出するために使用され、代謝フィンガープリント分析は、すべての代謝物を定性又は半定量分析するために使用され、メタボノミクスは、すべての代謝物を定量分析するために使用されるが、最終的なレベルはまだ達成されていない。
【0003】
メタボロミクスの研究方法が主に代謝物の定性及び定量分析であるという事実を考慮して、その検出方法は、主に、核磁気共鳴(NMR)、質量分析(MS)、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、超高性能液体クロマトグラフィー(UPLC)などをはじめとする化学分析分野における現在の主流技術である。質量分析検出技術と比較して、核磁気検出技術の利点は、サンプルの複雑な前処理を必要としないこと並びにサンプルの非侵襲的検出及び代謝物タイプの偏りのない検出を達成可能であることであり、一方、欠点は、感度が相対的に低いこと、ダイナミックレンジが限定されること、及び低含有率又は大きな濃度差を有する物質を核磁気検出技術により同時に決定することが困難であることである。そのほか、核磁気検出技術は、現時点では、定性研究に有利であり、未知代謝物の同定に好適である。質量分析検出技術は、相対的に高い検出感度を有し、クロマトグラフィー技術と組み合わせて使用したとき、複合サンプル中の代謝物をクロマトグラフィーにより分離してから質量分析により検出することが可能であるので、マトリックス干渉を低減し、痕跡量の代謝物を検出するのに有益である。
【0004】
質量分析検出技術は、イオン源で代謝物をイオン化させて異なる質量対電荷比を有する荷電イオンを発生させ、これを分離して質量分析計に集束させることにより質量スペクトルを取得することに依拠する。組み合わせて使用される異なるクロマトグラフィー機器に応じて、クロマトグラフィー-質量分析技術は、ガスクロマトグラフィー-質量分析(GC-MS)、液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)、キャピラリー電気泳動-質量分析(CE-MS)などに分類可能である。ガスクロマトグラフィー-質量分析技術は、低極性、高揮発性、及び相対的に良好な熱安定性の代謝物の分析に好適であり、相対的に低揮発性の代謝物には、誘導体化の前処理が必要とされ、且つ誘導体化プロセスは、湿分因子の影響を大きく受けて、生物学的サンプル中の代謝物の現実の状況を反映することが困難である。液体クロマトグラフィー-質量分析技術は、中又は高極性、中~低揮発性又は無揮発性、及び不十分な熱安定性の代謝物の分析に好適である。異なる質量分析検出器に応じて、ガスクロマトグラフィー-質量分析技術は、四重極検出器(シングル四重極及びトリプル四重極)並びに高分解能検出器(飛行時間/TOF、軌道イオントラップ/Orbitrap、及びフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴/FTICR)に分類可能であり、四重極質量分析は、代謝物の定量検出に好適であり、高分解能質量分析は、代謝物の定性分析に好適である。質量分析検出技術は、代謝物の化学的性質に対して明らかな偏りを有するので、単一の検出方法を用いて定性及び定量分析を同時に完遂することは困難であり、代謝物の変化を網羅的に調べるにはマルチプラットフォーム相補的分析が必要とされる。
【0005】
以上に挙げた技術的欠陥に起因して、現時点では、定性又は定量メタボロミクス検出法は、シングルプラットフォームに基づいて実施可能であるにすぎない。たとえば、GC-MSプラットフォームは、生物学的サンプル中の脂肪酸などを検出するために使用され、LC-MS/MSプラットフォームは、標的代謝物(胆汁酸、アミノ酸、ニューロトランスミッターなどを含む)の検出方法を開発するために使用され、高分解能質量分析プラットフォームは、代謝物の構造を同定するために使用される。したがって、生物学的サンプル中の代謝物の網羅的な高スループット且つ高感度の同時定性及び定量分析は、依然としてメタボロミクス研究の緊急課題である。
【0006】
中国特許出願公開第104297355A号明細書には、液体クロマトグラフィー/質量分析に基づく偽標的メタボロミクス分析法が開示されているが、この方法は、依然として相対定量分析のために2つの質量分析プラットフォーム(Q-TOF及びQQQ)を必要とし、濃度分析結果は、現バッチの品質管理血清(QC)を用いてあらかじめ補正を行うことにより計算される。Chenらは、データ非依存標的定量メタボロミクス検出法(DITQM)を開示しているが、この方法もまた、定性デバイス及び定量デバイスの両方に基づく。最初に、高分解能質量分析により代謝物のイオン対情報を取得し、次いで、このイオン対をトリプル四重極質量分析に入力し、キャリブレーション材料として現バッチの品質管理血清(QC)を用いて代謝物の相対定量濃度を計算する(Chen Y.,Zhou Z.,Yang W.,et al.,Development of a data-independent targeted metabolomics method for relative quantification using liquid chromatography coupled with tandem mass spectrometry[J],Anal.Chem.,2017,89(13):6954-6962を参照されたい)。以上に挙げた2つの検出方法は、定性及び定量問題をある程度解決するが、依然として2つの質量分析プラットフォームを同時に使用することが必要であり、濃度計算のための定量補正サンプルとしてそれぞれの検査室の品質管理血清(QC)サンプルが使用されるので、各検査室により測定された濃度結果は、非依存的で互いに適合不能である。以上に記載のように使用される方法では代謝物又は差次的代謝物の構造同定(又はアノテーション)が行われないことがとりわけ重大であり、どの代謝物が濃度変化したかが明らかでないので、これらの方法は、メタボロミクス研究にはほとんど有意でなく、同時定性及び定量分析のためのメタボロミクスの技術的問題を基本的に解決しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】中国特許出願公開第104297355A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上に挙げた技術的問題を考慮して、本発明の目的は、1つのプラットフォームに基づいてメタボロミクスサンプルの同時定性及び相対定量分析を実現可能な方法を確立することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記工程:
1)複数の同位体内部標準に基づいて同位体内部標準混合溶液を配合する工程と、
2)メタボロミクスサンプルに基づいて、メタボロミクスサンプルにマッチする相対定量補正サンプルを決定し、相対定量補正サンプルと工程1)の同位体内部標準混合溶液とを用いることにより一連の濃度勾配で相対定量標準曲線補正溶液を配合する工程と、
3)工程2)のメタボロミクスサンプルと工程1)の同位体内部標準混合溶液とを用いることによりメタボロミクスサンプル溶液を配合する工程と、
4)UPLC/HRMSプラットフォームを用いることにより工程3)のメタボロミクスサンプル溶液及び工程2)の一連の濃度勾配の相対定量標準曲線補正溶液の生の質量分析データを収集する工程と、
5)工程4)の生の質量分析データに基づいて一次質量スペクトル転換データ及び二次質量スペクトル転換データを取得し、一次質量スペクトル転換データに基づいてさまざまな一次変数情報を含むデコンボリューション結果を取得する工程と、
6)工程5)の一次質量スペクトル転換データのデコンボリューション結果と二次質量スペクトル転換データとを組み合わせ、単一同位体内部標準の一次変数情報及び二次変数情報を参照して同位体内部標準を同定し、線形当てはめ用の最適同位体内部標準を選択する工程と、
7)工程2)の一連の濃度勾配の相対定量標準曲線補正溶液の濃度と工程5)で取得された一次変数情報とを用いることにより線形当てはめを実施して線形式を取得する工程と、
8)工程7)の線形式に基づいて工程3)のメタボロミクスサンプル溶液の相対定量結果を取得し、一次変数情報の主成分分析及び差次的代謝物分析を完遂する工程と、
9)工程5)の一次質量スペクトル転換データのデコンボリューション結果と二次質量スペクトル転換データとを組み合わせることにより代謝物の同定及び差次的代謝物の同定を完遂する工程と、
を含む、UPLC/HRMSに基づくメタボロミクス相対定量分析法を提供する。
【0010】
好ましくは、以上に挙げた方法では、工程1)の同位体内部標準混合溶液は、下記方法:最初に適切量の複数の同位体内部標準を採取し、それぞれ、それに溶媒を添加してある特定の濃度の単一同位体内部標準の母溶液を配合することと、次いで、それぞれ、適切量の単一同位体内部標準の母溶液の各々を採取し、それらを混合し、それに溶媒を添加して同位体内部標準混合溶液を取得することと、により配合される。
【0011】
好ましくは、以上に挙げた方法では、工程2)のメタボロミクスサンプルは、血清又は血漿サンプルであり、相対定量補正サンプルは、NIST血清である。
【0012】
好ましくは、以上に挙げた方法では、工程2)の一連の濃度勾配の相対定量標準曲線補正溶液は、下記方法:一連の体積の相対定量補正サンプルを採取し、それぞれ、それに同位体内部標準及びタンパク質沈殿試薬を添加し、混合し、混合物を遠心分離することと、上清を採取し、それを濃縮することと、残渣に再構成溶媒を添加し、それを混合することと、上清を採取して一連の濃度勾配の相対定量標準曲線補正溶液を取得することと、により配合される。
【0013】
好ましくは、以上に挙げた方法では、工程3)のメタボロミクスサンプル溶液は、下記方法:メタボロミクスサンプルを採取し、それぞれ、それに同位体内部標準及びタンパク質沈殿試薬を添加し、混合し、混合物を遠心分離することと、上清を採取し、それを濃縮することと、残渣に再構成溶媒を添加し、それを混合することと、上清を採取してメタボロミクスサンプル溶液を取得することと、により配合される。
【0014】
好ましくは、以上に挙げた方法では、工程5)の一次質量スペクトル転換データ及び二次質量スペクトル転換データは、データ転換を利用して取得され、データ転換は、ソフトウェア又はアルゴリズムプラットフォームにより完遂される。
【0015】
好ましくは、以上に挙げた方法では、工程5)のデコンボリューション結果は、デコンボリューションを利用して取得され、デコンボリューションは、ソフトウェア又はアルゴリズムプラットフォームにより完遂される。
【0016】
好ましくは、以上に挙げた方法では、工程6)の同位体内部標準の同定は、自己開発アルゴリズムにより完遂される。
【0017】
好ましくは、以上に挙げた方法では、工程6)の最適同位体内部標準は、自己開発アルゴリズムにより選択される。
【0018】
好ましくは、以上に挙げた方法では、工程8)の主成分分析は、自己適応変換により完遂される。
【0019】
好ましくは、以上に挙げた方法では、工程8)の差次的代謝物分析は、多変量統計分析により完遂される。
【0020】
好ましくは、以上に挙げた方法では、工程9)の代謝物の同定及び差次的代謝物の同定は、ソフトウェア又はアルゴリズムプラットフォームにより完遂される。
【発明の効果】
【0021】
先行技術と比較して、本発明のメタボロミクス相対定量分析法は、下記の有益な効果を有する:
1)本発明の研究概念は、これまでの研究モードとは異なる。最初に高分解能質量分析データから多重反応モニタリングモード(MRM)イオン対を抽出してからそれをトリプル四重極質量分析に移してこのイオン対を定量スキャンする必要はない。本発明の研究概念は、最初に高分解能質量分析データから質量分析の一次変数情報を直接抽出ことと、補正材料として同位体内部標準及びNIST血清サンプルの両方を用いることによりメタボロミクスサンプル中の代謝物の相対濃度値を計算することと、一次分析により一次変数の差次的代謝物を取得することと、二次分析により、代謝物、とりわけ決定された物質組成又は構造を有する差次的代謝物の完全同定表を取得することと、を含む。
2)本発明の分析方法は、2つの質量分析プラットフォーム(四重極質量分析及び高分解能質量分析)の同時使用を必要とせず、1つのプラットフォームのみ(高分解能質量分析)を用いて定性及び定量要件の両方を満たすことが可能であり、低コスト、単純操作、及び広い適用性を有する。
3)本発明の分析方法は、定量結果がより正確になるように且つ各種検査室間の結果が適合可能になるように、補正材料として複数の同位体内部標準及びNIST血清サンプルを同時に使用することにより(キャリブレーション材料はNIST血清サンプルである)、既存のメタボロミクスデータのアイランド化効果の問題を解決する。
4)メタボロミクスサンプルの前処理は、標的代謝物タイプの識別効果を用いずに単純且つ容易に実現されるので、各種タイプの代謝物の定性及び定量研究に好適である。また、
5)伝統的メタボロミクス研究と比較して、本発明の分析方法は、コンピューターアルゴリズムスクリプトに依拠するので、代謝物構造を迅速に同定可能であり、より高い確度を有し、且つ人為的スクリーニングの主観性を回避する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】UPLC/HRMSに基づくメタボロミクス相対定量分析法の確立のフローチャートを示す。
図2】ヒト血清の正イオンモード基準ピークイオン(BPI)クロマトグラムを示す。
図3】ヒト血清の負イオンモード基準ピークイオン(BPI)クロマトグラムを示す。
図4】正イオンモードでのヒト血清サンプルの主成分分析(PCA)スコアプロットを示す。
図5】負イオンモードでのヒト血清サンプルの主成分分析(PCA)スコアプロットを示す。
図6】メタボロミクス相対定量分析法及び標的絶対定量分析法を用いたヒト血清サンプル中の4種の代謝物(コリン、ベタイン、L-カルニチン、及びクレアチニン)の濃度の相関散布プロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[用語の定義]
特に明記されていない限り、本明細書で用いられる「内部標準」という用語は、試験される成分の含有率を計算するために定量分析時に試験サンプルに添加される適切な純品を意味する。
【0024】
特に明記されていない限り、本明細書で用いられる「同位体」という用語は、同一元素に属し同数の陽子と異数の中性子とを有する異なる核種間の相互指定を意味する。たとえば、水素元素は、3種の同位体:プロチウム(H又はH)、ジュウテリウム(D又はH)、及びトリチウム(T又はH)を含み、炭素元素は、3種の同位体:炭素12(12C)、炭素13(13C)、及び炭素14(14C)を含み、窒素元素は、2種の同位体:窒素14(14N)及び窒素15(15N)を含み、且つ酸素元素は、3種の同位体:酸素16(16O)、酸素17(17O)、及び酸素18(18O)を含む。
【0025】
特に明記されていない限り、本明細書で用いられる「同位体内部標準」という用語は、少なくとも構造に含有されるより高い存在量の同位体をより低い存在量の同位体に置き換えた後に形成される安定内部標準物質を意味する。たとえば、内部標準としてのコリンクロライドの分子構造では、3個のメチル基に含有される9個の水素原子(又はプロチウム原子)のすべてをジュウテリウム原子に置き換えた場合、対応する同位体内部標準-コリンクロライド-トリメチル-d9を取得可能である。他の一例として、内部標準としてのL-バリンの分子構造では、カルボキシル基に含有される炭素12原子を炭素13原子に置き換えた場合、対応する同位体内部標準-L-バリン-1-13Cを取得可能である。異なる代謝機能に応じて、本発明の同位体内部標準は、炭水化物(たとえば、D-フルクトース-1-13C)、エネルギー(たとえば、5’-アデノシン三リン酸-15N5)、ヌクレオチド(たとえば、ウリジン-2-13C)、アミノ酸(たとえば、L-バリン-1-13C)、補因子及びビタミン(たとえば、ビタミンB3-d4)、並びに多くの他のカテゴリーに分類可能である。
【0026】
特に明記されていない限り、本明細書で用いられる「NIST血清」という用語は、国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology)(NISTと略記される)により提供又は販売されているフリーズヒト血清(FHSと略記される)を意味する。
【0027】
特に明記されていない限り、本明細書で用いられる「タンパク質沈殿試薬」という用語は、変性を介してサンプル中のタンパク質を沈殿させるために生物学的サンプルに添加される試薬を意味する。通常のタンパク質沈殿試薬としては、限定されるものではないが、塩(たとえば、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、及び塩化ナトリウム)、有機溶媒(たとえば、メタノール、アセトニトリル、及びアセトン)などが挙げられる。
【0028】
特に明記されていない限り、本明細書で用いられる「メタボロミクスサンプル」という用語は、メタボロミクス研究に使用される生物学的サンプルを意味する。通常のメタボロミクスサンプルとしては、限定されるものではないが、動物サンプル(たとえば、ヒト又は動物の血液、尿、糞便、唾液、毛髪、及び細胞)、植物サンプル(たとえば、植物の根、茎、葉、花、果実、及び種子)、微生物サンプル(たとえば、微生物の細胞、胞子、発酵ブロス、及び培養溶液)、細胞下構造サンプル(たとえば、オルガネラのミトコンドリア、エキソソーム、及びベシクル)などが挙げられる。
【0029】
特に明記されていない限り、本明細書で用いられる「品質管理サンプル」(又は「QCサンプル」)という用語は、実験時に機器により収集されるデータの安定性をモニターし、実験サンプルのクロマトグラフィーピークプロファイルを実質的にチェックし、相対定量検出で非血清又は血漿サンプルをキャリブレートする目的で、ある特定量の実験サンプルを混合することにより取得される混合サンプルを意味する。
【0030】
特に明記されていない限り、本明細書で用いられる「一次質量分析フルスキャニングモード及びデータ依存二次質量分析スキャニングモード」(又は「フルMS-ddMS2」)という用語は、二次質量スペクトルフラグメントを発生させるために一次質量スペクトルデータを収集しながら機器によりイオンをフラグメント化するモードを意味する。一次及び二次質量スペクトルデータは、同時に取得可能である。好ましくは、特定時間内のシグナル強度中のトップ3イオンは、二次フラグメント化に付され、その次の時間帯にサイクルするときにシグナル強度中の選択されたトップ3イオンは最初に排除され、シグナル強度中の追加のトップ3イオンが再び二次フラグメント化でスクリーニングされ、最後の時間帯まで繰り返される。
【0031】
特に明記されていない限り、本明細書で用いられる「転換データ」という用語は、異なる質量分析計により発生された生の質量分析データから規格化テキスト処理可能質量スペクトルデータへの変換を意味し、「一次質量スペクトル転換データ」という用語は、検出標的の一次分子情報を含む質量スペクトル転換データを意味し、「二次質量スペクトル転換データ」という用語は、検出標的の二次分子情報を含む質量スペクトル転換データを意味し、それに対応して、「数値転換」という用語は、生の質量分析データを規格化テキスト処理可能データに変換するプロセスを意味する。
【0032】
特に明記されていない限り、本明細書で用いられる「デコンボリューション」という用語は、質量対電荷比、保持時間、対応するクロマトグラフィーピーク情報などをはじめとする各代謝物親イオンの情報を、一次質量スペクトル転換データから分離及び構築することを意味する。
【0033】
特に明記されていない限り、本明細書で用いられる「一次変数」という用語は、機器により収集されたすべての一次質量スペクトルデータ(親イオン)の質量対電荷比及び対応するクロマトグラフィーピーク情報を意味する。メタボロミクスの分野では、通常の一次変数としては、限定されるものではないが、一次変数番号、親イオン質量対電荷比、保持時間、ピーク面積値などが挙げられる。
【0034】
特に明記されていない限り、本明細書で用いられる「構造同定」(又は「代謝物同定」)という用語は、クロマトグラフィーピークの二次質量スペクトルフラグメント(親イオンフラグメント)と公開データベース(たとえばKEGG)中の二次質量スペクトルフラグメントとを比較して一次質量スペクトルデータに対応する物質構造(親イオン)を得る誘導プロセスを意味する。構造同定後の物質は、対応する公開データベース中の数にマッチするであろう。
【0035】
特に明記されていない限り、本明細書で用いられる「相対定量濃度」(又は「相対定量結果」)という用語は、下記工程:代謝物のピーク面積と同位体内部標準のピーク面積との比によりNIST血清サンプル中の代謝物の濃度の線形当てはめを行って線形式を取得してから、メタボロミクスサンプル中の代謝物と同位体内部標準とのピーク面積比(又は一次変数)を線形式に代入して、NIST血清サンプル物質濃度に基づく相対濃度を計算する工程により取得されるNIST血清サンプル物質濃度に基づく相対濃度を意味する。
【0036】
特に明記されていない限り、本明細書で用いられる「一次分析」という用語は、一次変数のデータに基づく統計分析のプロセスを意味し、「主成分分析」という用語は、下記プロセス:ある特定の重量に係る代謝物変数の線形結合により新しい特性変数を発生して主要な新しい変数(主成分)を介して各データ群を分類するプロセスを意味し、「自己適応変換」という用語は、一次変数データに基づいて重量転換を実施するデータ規格化プロセスを意味し、「差次的代謝物分析」(又は「代謝物一次変数の差次的分析」)という用語は、統計的差分析法を用いることによる代謝物の一次変数の情報に関する群間差の分析を意味し、「多変量統計分析」という用語は、互いに関連するときの複数の対象及び複数の指標の統計的パターンの分析を意味する。
【0037】
特に明記されていない限り、本明細書で用いられる「二次分析」という用語は、一次分析に基づく二次質量スペクトルデータと組み合わせて統計分析を実施するプロセスを意味し、「差次的代謝物同定」という用語は、一次分析の差次的代謝物に基づく構造同定を意味する。
【0038】
具体的には、本発明は、UPLC/HRMSに基づくメタボロミクス相対定量分析法を開示する。本方法は、下記工程:
1)複数の同位体内部標準に基づいて同位体内部標準混合溶液を配合する工程と、
2)メタボロミクスサンプルに基づいて、メタボロミクスサンプルにマッチする相対定量補正サンプルを決定し、相対定量補正サンプルと工程1)の同位体内部標準混合溶液とを用いることにより一連の濃度勾配で相対定量標準曲線補正溶液を配合する工程と、
3)工程2)のメタボロミクスサンプルと工程1)の同位体内部標準混合溶液とを用いることによりメタボロミクスサンプル溶液を配合する工程と、
4)UPLC/HRMSプラットフォームを用いることにより工程3)のメタボロミクスサンプル溶液及び工程2)の一連の濃度勾配の相対定量標準曲線補正溶液の生の質量分析データを収集する工程と、
5)工程4)の生の質量分析データに基づいて一次質量スペクトル転換データ及び二次質量スペクトル転換データを取得し、一次質量スペクトル転換データに基づいてさまざまな一次変数情報を含むデコンボリューション結果を取得する工程と、
6)工程5)の一次質量スペクトル転換データのデコンボリューション結果と二次質量スペクトル転換データとを組み合わせ、単一同位体内部標準の一次変数情報及び二次変数情報を参照して同位体内部標準を同定し、線形当てはめ用の最適同位体内部標準を選択する工程と、
7)工程2)の一連の濃度勾配の相対定量標準曲線補正溶液の濃度と工程5)で取得された一次変数情報とを用いることにより線形当てはめを実施して線形式を取得する工程と、
8)工程7)の線形式に基づいて工程3)のメタボロミクスサンプル溶液の相対定量結果を取得し、一次変数情報の主成分分析及び差次的代謝物分析を完遂する工程と、
9)工程5)の一次質量スペクトル転換データのデコンボリューション結果と二次質量スペクトル転換データとを組み合わせることにより代謝物の同定及び差次的代謝物の同定を完遂する工程と、
を含む。
【0039】
いくつかの好ましい実施形態では、工程1)の同位体内部標準混合溶液は、下記方法:最初に適切量のいくつか(たとえば9種)の同位体内部標準を採取し、それぞれ、それに溶媒(たとえば水又はメタノール)を添加してある特定の濃度(たとえば1~15mg/mL)の単一同位体内部標準の母溶液を配合することと、次いで、それぞれ、適切量の単一同位体内部標準の母溶液の各々を採取し、それらを混合し、それに溶媒(たとえば水又はメタノール)を添加して同位体内部標準混合溶液を取得することと(同位体内部標準の量及びタイプ並びに単一同位体内部標準の母溶液の濃度は、メタボロミクスサンプル中の代謝物の具体的タイプ及び実際の濃度反応に応じて適切に調整可能である)、により配合される。
【0040】
いくつかの好ましい実施形態では、工程2)のメタボロミクスサンプルは、血清又は血漿サンプルであり、この場合、相対定量補正サンプルとしてNIST血清が使用される。他の実施形態では、工程2)のメタボロミクスサンプルは、他のサンプル(たとえば、動物又は植物の細胞、組織、器官、又は代謝物)であり、この場合、相対定量補正サンプルとして品質管理サンプル(これは適切量の複数のメタボロミクスサンプルを混合することにより配合される)が使用される。
【0041】
いくつかの好ましい実施形態では、工程2)の一連の濃度勾配の相対定量標準曲線補正溶液は、下記方法:一連(たとえば7)の体積の相対定量補正サンプル(これはメタボロミクスサンプルの具体的タイプに基づいて決定され、その体積は、実際の必要に応じて適切に調整される)を採取し、それぞれ、それに同位体内部標準及びタンパク質沈殿試薬(たとえばメタノール)を添加し、混合し、混合物を遠心分離することと、上清を採取し、それを濃縮することと、残渣に再構成溶媒(たとえば、水中80%メタノール(v/v))を添加し、それを混合することと、上清を採取して一連の濃度勾配の相対定量標準曲線補正溶液を取得することと、により配合される。
【0042】
いくつかの好ましい実施形態では、工程3)のメタボロミクスサンプル溶液は、下記方法:にメタボロミクスサンプルを採取し(サンプルの数及びタイプ並びに単一サンプルのサンプリング量は、実際の必要に応じて適切に調整可能であり、そのほか、サンプルの性質又はタイプの差に応じて、サンプルは、ピペットで測定可能であるか又は天秤で秤量可能である)、それぞれ、それに同位体内部標準及びタンパク質沈殿試薬(たとえばメタノール)を添加し、混合し、混合物を遠心分離することと、上清を採取し、それを濃縮することと、残渣に再構成溶媒(たとえば、水中80%メタノール(v/v))を添加し、それを混合することと、上清を採取してメタボロミクスサンプル溶液を取得することと、より配合される。
【0043】
いくつかの好ましい実施形態では、工程4)の生の質量分析データは、高分解能質量分析計(「UPLC/HRMSプラットフォーム」と略記される)に結合された超高性能液体クロマトグラフを利用して、ある特定のクロマトグラフィー条件下及び質量分析条件下で、収集する必要がある。たとえば、クロマトグラフィー条件では、使用されるクロマトグラフィーカラムは、オクタデシルシラン結合シリカゲルカラム(たとえば、Waters ACQUITY UPLC BEH C18クロマトグラフィーカラム)でありうるし、使用される移動相は、2成分移動相系(たとえば、正イオンモードで水中ギ酸溶液/アセトニトリル中ギ酸溶液、又は負イオンモードで水/アセトニトリル中アンモニウムホルメート溶液)でありうるし、使用される溶出モードは、グラジエント溶出でありうるし、流量、注入体積、カラム温度などの条件は、試験される物質の実際のクロマトグラフィー挙動に応じて適切に調整可能であり、質量分析条件では、フルMS-ddMS2は、データ収集に使用されうるし、ソフトイオン化用イオン源(たとえば、エレクトロスプレーイオン源/ESI)は、イオン源として使用されうるし、スプレー電圧、シースガス/補助ガス圧力、キャピラリー温度、衝突電圧、スキャニング分解能及び範囲など条件は、試験される物質の実際のクロマトグラフィー挙動に応じて適切に調整可能である。
【0044】
いくつかの好ましい実施形態では、工程5)の一次質量スペクトル転換データ及び二次質量スペクトル転換データは、データ転換を利用して取得される。データ転換プロセスは、通常、オープンソースProteoWizardソフトウェアなどのソフトウェア又はアルゴリズムプラットフォームにより完遂する必要がある。
【0045】
いくつかの好ましい実施形態では、工程5)のデコンボリューション結果は、デコンボリューションを利用して取得される。デコンボリューションプロセスは、通常、BioDeepメタボロミクスクラウド分析プラットフォーム(BioDeepクラウドプラットフォームと略記される)や又はオープンソースRソフトウェア(http://www.bioconductor.org/)などのソフトウェア又はアルゴリズムプラットフォームにより完遂する必要がある。
【0046】
いくつかの好ましい実施形態では、工程6)の同位体内部標準の同定は、自己開発アルゴリズムにより完遂される。自己開発アルゴリズムでは、一次質量スペクトル転換データのデコンボリューション結果は、同位体内部標準の同定を完遂するために、二次質量スペクトル転換データと比較される(たとえば、対応するmzの誤差範囲が10ppm以内であり、対応するrtの差値が最小であり、且つms2が正確にマッチ可能であることを保証するために、最初に単一同位体内部標準のrt(保持時間)、mz(親イオンの質量対電荷比)、及びms2(二次フラグメント)を取得し、次いで、メタボロミクスサンプル溶液、品質管理サンプル溶液、及び相対定量標準曲線補正溶液中の単一同位体内部標準のrt、mz、及びms2を参照する)。
【0047】
いくつかの好ましい実施形態では、工程6)の最適同位体内部標準は、下記方法:NIST血清サンプル(又は相対定量補正サンプル)中の一次変数のピーク面積と、同位体内部標準混合溶液中の各内部標準の一次変数のピーク面積と、を比較して比を形成し、次いで、NIST血清サンプル(又は相対定量補正サンプル)の濃度により線形当てはめを行って相関係数rを取得する方法により選択され、最大r値と、0.05P~5Pの範囲内のNIST血清サンプル(又は相対定量補正サンプル)中の一次変数の濃度と、を有する同位体内部標準が好ましい。
【0048】
いくつかの好ましい実施形態では、工程8)の主成分分析は、自己適応変換により完遂される。自己適応変換では、値は、元の観測値から各データ群の平均を減算して標準偏差により除算することにより取得される。
【0049】
いくつかの好ましい実施形態では、工程8)の差次的代謝物分析は、多変量統計分析により完遂される。多変量統計分析では、差次的代謝物をスクリーニングするために、主成分分析、t検定、VIP(空間投影重要度又は差重量寄与値)計算などの多変量統計分析法が使用され、p値≦0.05のt検定結果を有する且つVIP≧1の要件を満たす差次的代謝物が好ましい。
【0050】
いくつかの好ましい実施形態では、工程9)の代謝物の同定及び差次的代謝物の同定は、BioDeepメタボロミクスクラウド分析プラットフォーム(BioDeepクラウドプラットフォームと略記される)などのソフトウェア又はアルゴリズムプラットフォームにより完遂される。
【0051】
本発明の相対定量メタボロミクス分析法を具体例により以下にさらに例示する。特に明記されていない限り、実施例で使用される材料、試薬、機器、ソフトウェアなどは、従来の商業手段により取得可能である。
【実施例
【0052】
実施例:UPLC/HRMSに基づく健常者及び脳梗塞患者の血清のメタボロミクス相対定量分析法の確立。
【0053】
UPLC/HRMSに基づいて健常者及び脳梗塞患者の血清のメタボロミクス半定量分析法を確立するプロセスは、図1に示される。具体的実現形態の工程は、以下の通りである:
【0054】
1.内部標準の調製
1.1 同位体内部標準混合溶液の調製:
適切量の9種の同位体内部標準、たとえば、D-フルクトース-1-13C(F-13C)、L-バリン-1-13C(Val-13C)、コリンクロライド-トリメチル-d9(コリン-d9)、5’-アデノシン三リン酸-15N5(ATP-15N5)、L-フェニルアラニン-1-13C(Phe-13C)、ウリジン-2-13C(U-2-13C)、ビタミンB3-d4(VB3-d4)L-カルニチン塩酸塩-メチル-d3(L-カルニチンd3)、及びベタイン塩酸塩-トリメチル-d9(ベタイン-d9)を採取し、それぞれ、それに水又はメタノールを添加して1~15mg/mLの濃度の単一同位体内部標準の母溶液を調製し、次いで、それぞれ、適切量の9種の単一同位体内部標準の母溶液の各々を採取し、混合し、それに適切量の水又はメタノールを添加して1~50μg/mLの範囲内の濃度を有する9種の同位体内部標準の同位体内部標準混合溶液を調製した。
【0055】
1.2 NIST血清標準曲線補正溶液の調製:
合計で7グラジエント(5、10、50、100、200、300、及び500μL)のNIST血清(ロット番号:SRM909c)(すなわち、図1のNIST血清サンプル)をピペットで採取し、それぞれ、タンパク質沈殿のために100μLのセクション1.1で調製された同位体内部標準混合溶液及び3倍体積の-20℃であらかじめフリーズされたメタノールを添加し、混合物を十分に混合した。得られた混合物を12,000rpm及び4℃で10min遠心分離し、次いで、すべての上清を採取し、真空濃縮乾燥機で濃縮し、150μLの-20℃であらかじめフリーズされた80%メタノール/水混合物(v/v)(再構成溶媒として使用される)を残渣に添加し、十分に混合し、次いで、NIST血清標準曲線補正溶液として上清を採取した。
【0056】
2.サンプルの調製:
健常者及び脳梗塞患者からの血清メタボロミクスサンプル溶液さらには品質管理サンプル溶液の調製:
【0057】
健常者からの10血清サンプル及び脳梗塞患者からの10血清サンプルをメタボロミクスサンプル(合計20)として選択し、20μLの各メタボロミクスサンプルを採取し(合計400μL)、十分に混合し、次いで、品質管理サンプルとして使用した(すなわち、本方法の最終規格化のための図1のQCサンプル)。それぞれ、100μLの20メタボロミクスサンプルの各々及び4QCサンプルをピペットで採取し、400μLの-20℃であらかじめフリーズされたメタノール(タンパク質沈殿試薬)及び100μLのセクション1.1で調製された同位体内部標準混合溶液を添加し、十分に混合し、次いで、12000rpm及び4℃で10min遠心分離し、すべての上清を採取し、真空濃縮乾燥機で濃縮し、150μLの-20℃であらかじめフリーズされた80%メタノール/水混合物(v/v)(再構成溶媒として使用される)を残渣に添加し、十分に混合し、次いで、健常者及び脳梗塞患者からのメタボロミクスサンプル溶液及び品質管理サンプル溶液として上清を採取した。
【0058】
3.機器の選択及びその条件パラメーター:
3.1 選択機器:
Thermo Scientific Q-Exactive質量分析計に結合されたThermo Scientific Ultimate3000液体クロマトグラフ。
【0059】
3.2 選択液体クロマトグラフィー条件:
クロマトグラフィーカラム:Waters ACQUITY UPLC BEH C18クロマトグラフィーカラム(100mm×2.1mm、1.7μm)。
移動相:正イオンモードでは、水中0.1%ギ酸溶液(1mLのギ酸/1Lの溶液)を移動相Aとして使用し、アセトニトリル中0.1%ギ酸溶液(1mLのギ酸/1Lの溶液)を移動相Bとして使用し、負イオンモードでは、水中5mMアンモニウムホルメート溶液(5mMアンモニウムホルメート/1Lの溶液)を移動相Aとして使用し、アセトニトリルを移動相Bとして使用した。
溶出モード:グラジエント溶出を使用し、具体的手順は以下の通りであった:0~1min、2%の移動相A、1~9min、2%~50%の移動相A、9~12min、50%~98%の移動相A、12~13.5min、98%の移動相A、13.5~14min、98%20%の移動相A、14~20min、2%の移動相A。
流量:0.25mL/min。
注入体積:2μL。
カラム温度:40℃。
【0060】
3.3 選択質量分析条件:
データ収集法:一次及び二次質量スペクトルデータを同時に取得するために、一次質量分析フルスキャニング及びデータ依存二次質量分析スキャニング(フルMS-ddMS2)モードを決定に使用した。
イオン源:エレクトロスプレーイオン源(ESI)。
スプレー電圧:正イオンモードでは3.5kV及び負イオンモードでは2.5kV。
シースガス圧力:30arb。
補助ガス圧力:10arb。
キャピラリー温度:325℃。
フルスキャニング分解能は70000FWHMであり、質量スペクトルスキャニング範囲はm/z81~1000である。
二次フラグメント化は、30eVの衝突電圧で高エネルギー衝突誘起解離(HCD)を用いて実施され、不必要な二次質量スペクトル情報は、動的に排除された。
【0061】
4.データ処理:
4.1 生の質量分析デーの転換:
正及び負イオンモードで、それぞれ、健常者及び脳梗塞患者からの20血清メタボロミクスサンプル溶液、セクション2で調製された4QCサンプル溶液、並びにセクション1.2で調製された7NIST血清標準曲線補正溶液(合計31サンプル溶液)の生の質量分析データを含む*.rawファイルを取得した。正及び負イオンモードで、それぞれ、元のデータファイルをProteoWizardソフトウェア(http://proteowizard.sourceforge.net/を介して入手可能なオープンソースソフトウェア)によるデータ転換に付して、一次質量スペクトル転換データ及び二次質量スペクトル転換データを含む*.mzXMLファイルを形成した。
【0062】
4.2 転換後のデータデコンボリューション:
セクション4.1で形成された正及び負イオンモードの一次質量スペクトル転換データを含む*.mzXMLファイルをbiodeepクラウドプラットフォーム(対応するオープンソースソフトウェア及びスクリプトは、http://www.bioconductor.org/を介してダウンロードすることも可能である)によりデコンボリュートして、正イオンモードの13128一次変数及び負イオンモードの17272一次変数を取得した。そして、一次デコンボリューションの結果として、対応するファイルpeaktable_pos.xlsx及びpeaktable_neg.xlsxを出力した。これらのファイルは両方とも、xc_ms id(一次変数番号)、mz(親イオン質量対電荷比)、rt(保持時間)、強度(ピーク面積)などの一次変数情報を含む。
【0063】
4.3 同位体内部標準の同定及び好ましい選択:
セクション4.2で出力されたファイルpeaktable_pos.xlsx又はpeaktable_neg.xlsxを、それぞれ、セクション4.1で形成された二次質量スペクトル転換データと組み合わせた。自己開発アルゴリズムを用いて、単一同位体内部標準のrt(保持時間)、mz(親イオン質量対電荷比)、及びms2(二次フラグメント化)を参照し、ヒト血清メタボロミクスサンプル、QCサンプル、及びNIST血清サンプルのmzの誤差範囲が10ppm以内であり、これらのサンプルの保持時間と参照同位体内部標準の保持時間との差値が最小であり、且つ二次フラグメントが正確にマッチ可能であることが保証される。内部標準物質Val-13C、コリン-d9、Phe-13C、L-カルニチンd3、及びベタイン-d9を含む5種の同位体内部標準を正イオンモードで同定し、F-13C、Val-13C、Phe-13C、U-2-13C、及びVB3-d4を含む5種の同位体内部標準を負イオンモードで同定した。それに対応して、IS xc_ms id(同位体内部標準一次変数番号)、IS_name(同位体内部標準名)、IS mz(同位体内部標準親イオン質量対電荷比)、rt(同位体内部標準保持時間)、強度(NIST血清サンプルに含有される同位体内部標準ピーク面積)などの一次変数情報を含むIS.xlsxファイルを出力した。
【0064】
好適な同位体内部標準は、好ましくは、自己開発アルゴリズムを用いて選択される。具体的手順は以下の通りである:セクション4.2で出力されたファイルpeaktable_pos.xlsx又はpeaktable_neg.xlsx中のNIST血清サンプルの一次変数強度(ピーク面積)と、正イオンモードで同定されたVal-13C、コリン-d9、Phe-13C、L-カルニチン-d3、及びベタイン-d9を含む5種の同位体内部標準(負イオンモードで同定されたF-13C、Val-13C、Phe-13C、U-2-13C、及びVB3-d4を含む5種の同位体内部標準)のピーク面積と、の比の線形当てはめを、それぞれ、7NIST血清標準曲線補正濃度により行った。各一次変数は5つの線形式及び相関係数rを取得するであろう。最大相関係数r値を有する且つ第2に0.05P~5Pの範囲内に一次変数濃度を有する同位体内部標準が好ましい。
【0065】
4.4 NIST血清サンプル中の一次変数の線形当てはめ:
セクション4.2で取得されたNIST血清標準曲線補正溶液中の代謝物のピーク面積を昇順にランク付けし、100μLのNIST血清の濃度はPであり、5、10、50、100、200、300、及び500μLのNIST血清の対応する濃度は、それぞれ、0.05P、0.1P、0.5P、P、2P、3P、及び、5Pであり、濃度順を線形当てはめ用の濃度点として使用した。次いで、NIST血清標準曲線補正溶液中の代謝物のピーク面積と、各好ましい同位体内部標準のピーク面積と、の比の線形当てはめを、以上に挙げた7濃度点により行い、線形式及び相関係数rを計算し、最大相関係数rを有する且つ第2に0.05P~5Pの範囲内に一次変数濃度を有する同位体内部標準物質が好ましいものであった。正イオンモードでは、0.80超の相関係数rを有する8558一次変数が存在し、負イオンモードでは、0.80超の相関係数rを有する5151一次変数が存在する。
【0066】
4.5 メタボロミクスサンプル中の一次変数の定量濃度の計算:
セクション4.2で取得されたメタボロミクスサンプル溶液中の代謝物のピーク面積と、NIST血清標準曲線補正溶液中の好ましい同位体内部標準のピーク面積と、の比をセクション4.4で取得された線形式に代入して、メタボロミクスサンプル中の代謝物の相対定量濃度(Pを濃度単位として)を含むファイルbiodeepProfiler_pos.xlsx又はbiodeepProfiler_neg.xlsxを取得した。
【0067】
4.6 一次質量スペクトルデータの分析:
それぞれ、セクション4.5で取得されたファイルbiodeepProfiler_pos.xlsx又はbiodeepProfiler_neg.xlsxに対してデータ適応(UV)変換処理を選択して、正及び負イオンモードで基準ピークイオン(BPI)クロマトグラム(図2及び図3に示される通り)及び主成分分析スコアプロット(図4及び図5に示される通り)を取得し、多変量統計分析で、p値≦0.05及びVIP≧1のスクリーニング閾値を選択して、具体的メタボロミクスサンプルに対して代謝物一次変数の差分析を実施した。好ましくは、品質管理サンプルは、規格化のためにも使用可能である。
【0068】
4.7 二次質量スペクトルデータの分析-代謝物の同定:
セクション4.2で取得されたデコンボリュート一次変数と、セクション4.1で形成された二次質量スペクトル転換データと、を組み合わせて代謝物同定を実施し、それにより、代謝物同定結果を含むbiodeepMSMS_union.xlsxファイルを取得し、正イオンモード及び負イオンモードの代謝物をプールして合計304種の代謝物を得る。
【0069】
4.8 二次質量スペクトルデータの分析-差次的代謝物の同定:
セクション4.7でスクリーニングされた代謝物と、セクション4.6で取得された一次変数差次的代謝物の分析結果と、をインテグレートし、決定物質構造を有する合計33種の差次的代謝物を取得した。
【0070】
5.メタボロミクス相対定量分析と標的絶対定量分析との比較:
メタボロミクス相対定量分析結果と標的絶対定量分析結果とを比較するために、コリン、ベタイン、L-カルニチン、及びクレアチニンを含む4種のコリンアナログを代謝物として使用した。
【0071】
5.1 標的絶対定量分析:
5.1.1 標的絶対定量分析のためのサンプルの調製:
標的絶対定量分析のためのサンプルと、メタボロミクス相対定量分析のためのサンプルと、を一致させた。メタボロミクスサンプルの調製では、それぞれ、もう1つのサンプルをパラレルに調製した。サンプルは、10名の健常者及び10名の脳梗塞患者の血清サンプル、7NIST血清サンプル、及び4QCサンプルを含み、サンプル調製プロセスは、セクション1及びセクション2と同一であった。
【0072】
5.1.2 標的絶対定量分析法:
5.1.2.1 選択機器:
AB4000質量分析計に結合されたWaters ACQUITY UPLC液体クロマトグラフ。
【0073】
5.1.2.2 選択液体クロマトグラフィー条件:
クロマトグラフィーカラム:ACQUITY UPLC(登録商標)BEH HILICクロマトグラフィーカラム(100mm×2.1mm、1.7μm)。
移動相:アセトニトリルを移動相Aとして使用し、水中0.1%ギ酸溶液及び水中10mMアンモニウムホルメート溶液(それぞれ、1mLのギ酸/1L溶液及び10mMアンモニウムホルメート/1L溶液)を移動相Bとして使用した。
溶出モード:グラジエント溶出を使用し、具体的手順は以下の通りであった:0~1min、80%の移動相A、1~2min、80%~70%の移動相A、2~2.5min、70%の移動相A、2.5~3min、70%~50%の移動相A、3~3.5min、50%の移動相A、3.5~4min、50%~80%の移動相A、4~6min、80%の移動相A。
流量:0.40mL/min。
注入体積:5μL。
カラム温度:40℃。
【0074】
5.1.2.3 選択質量分析条件:
データ収集法:スキャニング及びデータ収集のために、多重反応モニタリング(MRM)を使用した。
イオン源:エレクトロスプレーイオン源(ESI)。
スプレー電圧:正イオンモードで5.0kV。
イオン源温度:500℃。
衝突ガス:6psi。
カーテンガス:30psi。
アトマイジングガス及び補助ガス:50psi。
定量分析に使用されたイオン対は、それぞれ、コリン(104.075>44.9)、ベタイン(118.080>41.9)、L-カルニチン(162.023>59.9)、及びクレアチニン(114.025>86.1)であり、同位体内部標準コレクション用のイオン対は、それぞれ、コリン-d9(113.030>69.0)、ベタイン-d9(127.064>68.0)、及びL-カルニチン-d3(165.105>103.1)であり、クレアチニンに対応する内部標準は、L-カルニチン-d3であった。
【0075】
5.1.3 標的絶対定量データ処理:
自己開発アルゴリズムを用いることにより、10名の健常者及び10名の脳梗塞患者の血清サンプル、7NIST血清サンプル、及び4QCサンプル中のコリン、ベタイン、L-カルニチン、クレアチニン、コリンd9、ベタイン-d9、及びL-カルニチン-d3のピーク面積値を導出した。NIST血清サンプル濃度0.05P、0.1P、0.5P、P、2P、3P、及び5Pを独立変数グラジエント濃度点として使用し、NIST血清サンプル中のコリン、ベタイン、L-カルニチン、クレアチニンのピーク面積と、対応する同位体内部標準のピーク面積と、の比を従属変数として使用し、独立変数及び従属変数の線形当てはめを行って線形式及び相関係数rを取得した。メタボロミクスサンプル中のコリン、ベタイン、L-カルニチン、及びクレアチニンのピーク面積と、対応する同位体内部標準のピーク面積と、の比を線形式に代入してメタボロミクスサンプル中の代謝物の絶対定量濃度を計算した。
【0076】
5.2 メタボロミクス相対定量分析及び標的絶対定量分析の結果の比較:
5.2.1 メタボロミクス相対定量分析では、研究目的としてすべての代謝物を取り上げた。4種の代謝物コリン、ベタイン、L-カルニチン、及びクレアチニンの相対定量分析結果を取得するために、セクション4.5及びセクション4.7で取得された結果をインテグレーション分析に付してこれらの4種の代謝物の相対定量濃度を取得した。
【0077】
5.2.2 セクション5.1.3で取得された10名の健常者及び10名の脳梗塞患者の血清サンプル中の4種の代謝物の絶対定量濃度と、セクション5.2.1で取得された相対定量濃度と、の相関分析を実施して、図6に示される散布プロットを取得した。A~Dは、それぞれ、2つの検出方法により取得されたにコリン、ベタイン、L-カルニチン、及びクレアチニンの濃度(P単位の濃度)の相関散布プロットであった。2つの検出方法により取得された濃度結果の相関係数rは、すべて0.99超であり、検出結果は高相関し、2つの方法間に差は見られなかった。
【0078】
5.2.3 さらに、セクション5.1.3で取得された10名の健常者及び10名の脳梗塞患者の血清サンプル中の4種の代謝物の絶対定量濃度及びセクション5.2.1で取得された相対定量濃度の相対標準偏差(RSD、%)並びに対応のある両側検定は、表1に示される。表1に示されるように、健常者群及び脳梗塞患者群に対する2つの検出結果の濃度のRSD値間には、有意差が見られないことから(0.05超のp値)、2つ検出結果は類似しており、本発明のメタボロミクス相対定量分析法はより高い確度を有することが示唆される。そのうえ、本発明のメタボロミクス相対定量分析法は、同一の分析及び試験プラットフォームに基づいて代謝物の定性分析を同時に実現することが可能である。
【0079】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】