(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-29
(54)【発明の名称】ネコにおける心臓疾患の予防および/または治療のためのSGLT-2阻害剤の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20230322BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230322BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230322BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20230322BHJP
A61K 31/351 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P9/00
A61P43/00 111
A61P9/04
A61K31/351
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022548175
(86)(22)【出願日】2021-02-15
(85)【翻訳文提出日】2022-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2021053585
(87)【国際公開番号】W WO2021165177
(87)【国際公開日】2021-08-26
(32)【優先日】2020-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505258715
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム フェトメディカ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Boehringer Ingelheim Vetmedica GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】クロー カーラ
(72)【発明者】
【氏名】ラング インゴ ウルリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ローゼ ホルスト
(72)【発明者】
【氏名】ロエスナー フランツィスカ
(72)【発明者】
【氏名】クレイ サスキア
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084MA52
4C084NA14
4C084ZA361
4C084ZA371
4C084ZC412
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZA37
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、ネコ科動物における1種または複数の心臓疾患の予防法および/または治療のための1種もしくは複数のSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容される形態の使用を対象とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネコ科動物において、1種または複数の心臓疾患の予防および/または治療の方法に使用するための、1種もしくは複数のSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容される形態。
【請求項2】
1種または複数の心臓疾患が、心不全、1種または複数の心筋症に起因する心不全、肥大型心筋症(HCM)に起因する心不全、拘束性心筋症(RCM)に起因する心不全、拡張型心筋症(DCM)に起因する心不全、分類不能心筋症(UCM)に起因する心不全、不整脈原性右室心筋症(ARVC)に起因する心不全、肥大型心筋症(HCM)、拘束性心筋症(RCM)、拡張型心筋症(DCM)、分類不能心筋症(UCM)、および/または不整脈原性右室心筋症(ARVC)からなる群から選択され、好ましくは、1種または複数の心筋症に起因する心不全、肥大型心筋症(HCM)に起因する心不全、肥大型心筋症(HCM)からなる群から選択される、請求項1に記載の使用のための1種もしくは複数のSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容される形態。
【請求項3】
1種または複数の心臓疾患が、1種または複数の心筋症に起因する心不全、肥大型心筋症(HCM)に起因する心不全、拘束性心筋症(RCM)に起因する心不全、拡張型心筋症(DCM)に起因する心不全、分類不能心筋症(UCM)に起因する心不全、不整脈原性右室心筋症(ARVC)に起因する心不全、肥大型心筋症(HCM)、拘束性心筋症(RCM)、拡張型心筋症(DCM)、分類不能心筋症(UCM)、および/または不整脈原性右室心筋症(ARVC)からなる群から選択される、請求項2に記載の使用のための1種もしくは複数のSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容される形態。
【請求項4】
1種または複数の心臓疾患が、肥大型心筋症(HCM)に起因する心不全、肥大型心筋症(HCM)からなる群から選択される、請求項3に記載の使用のための1種もしくは複数のSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容される形態。
【請求項5】
1種または複数のSGLT-2阻害剤がグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体である、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用のための1種もしくは複数のSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容される形態。
【請求項6】
1種または複数のSGLT-2阻害剤が、
(1)式(1)のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体
【化1】
(式中、R
1はシアノ、Clまたはメチル(最も好ましくはシアノ)を表し;
R
2は、H、メチル、メトキシまたはヒドロキシ(最も好ましくはH)を表し、
R
3は、シクロプロピル、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル、3-メチル-ブタ-1-イル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-ヒドロキシ-シクロプロピル、1-ヒドロキシ-シクロブチル、1-ヒドロキシ-シクロペンチル、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル、エチニル、エトキシ、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2-ヒドロキシル-エチル、ヒドロキシメチル、3-ヒドロキシ-プロピル、2-ヒドロキシ-2-メチル-プロパ-1-イル、3-ヒドロキシ-3-メチル-ブタ-1-イル、1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル、2,2,2-トリフルオロ-1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル、2,2,2-トリフルオロ-1-ヒドロキシ-1-トリフルオロメチル-エチル、2-メトキシ-エチル、2-エトキシ-エチル、ヒドロキシ、ジフルオロメチルオキシ、トリフルオロメチルオキシ、2-メチルオキシ-エチルオキシ、メチルスルファニル、メチルスルフィニル、メチルスルホニル、エチルスルフィニル、エチルスルホニル、トリメチルシリル、(R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシまたは(S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシまたはシアノを表し、
R
3は、好ましくはシクロプロピル、エチル、エチニル、エトキシ、(R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシまたは(S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシから選択され、R
3は最も好ましくはシクロプロピルである)
またはその誘導体であり、β-D-グルコピラノシル基の1つまたは複数のヒドロキシル基は、(C
1-
18-アルキル)カルボニル、(C
1-
18-アルキル)オキシカルボニル、フェニルカルボニルおよびフェニル-(C
1-
3-アルキル)-カルボニルから選択される基でアシル化されているもの;
(2)式(2)で表されるベラグリフロジン:
【化2】
(3)式(3)で表されるダパグリフロジン:
【化3】
(4)式(4)で表されるカナグリフロジン:
【化4】
(5)式(5)で表されるエンパグリフロジン:
【化5】
(6)式(6)で表されるルセオグリフロジン:
【化6】
(7)式(7)で表されるトホグリフロジン:
【化7】
(8)式(8)で表されるイプラグリフロジン:
【化8】
(9)式(9)で表されるエルツグリフロジン:
【化9】
(10)式(10)で表されるアチグリフロジン:
【化10】
(11)式(11)で表されるレモグリフロジン:
【化11】
(11A)式(11A)で表されるレモグリフロジンエタボネート:
【化12】
(12)式(12)のチオフェン誘導体
【化13】
(式中、Rはメトキシまたはトリフルオロメトキシを表す)
(13)式(13)で表される1-(β-D-グルコピラノシル)-4-メチル-3-[5-(4-フルオロフェニル)-2-チエニルメチル]ベンゼン;
【化14】
(14)式(14)のスピロケタール誘導体:
【化15】
(式中、Rはメトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、エチル、イソプロピルまたはtert-ブチルを表す);
(15)式(15)のピラゾール-O-グルコシド誘導体
【化16】
(式中、
R
1はC
1-3-アルコキシを表し、
L
1、L
2は互いに独立して、HまたはFを表し、
R
6は、H、(C
1-3-アルキル)カルボニル、(C
1-6-アルキル)オキシカルボニル、フェニルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルまたはベンジルを表す);
(16)式(16)で表されるソタグリフロジン:
【化17】
(17)式(17)で表されるセルグリフロジン:
【化18】
(18)式(18)で表される化合物:
【化19】
(式中
R
3は、シクロプロピル、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル、3-メチル-ブタ-1-イル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-ヒドロキシ-シクロプロピル、1-ヒドロキシ-シクロブチル、1-ヒドロキシ-シクロペンチル、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル、エチニル、エトキシ、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2-ヒドロキシル-エチル、ヒドロキシメチル、3-ヒドロキシ-プロピル、2-ヒドロキシ-2-メチル-プロパ-1-イル、3-ヒドロキシ-3-メチル-ブタ-1-イル、1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル、2,2,2-トリフルオロ-1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル、2,2,2-トリフルオロ-1-ヒドロキシ-1-トリフルオロメチル-エチル、2-メトキシ-エチル、2-エトキシ-エチル、ヒドロキシ、ジフルオロメチルオキシ、トリフルオロメチルオキシ、2-メチルオキシ-エチルオキシ、メチルスルファニル、メチルスルフィニル、メチルスルホニル、エチルスルフィニル、エチルスルホニル、トリメチルシリル、(R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシまたは(S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシまたはシアノを表し、R
3は、好ましくはシクロプロピル、エチル、エチニル、エトキシ、(R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシまたは(S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシから選択され、R
3は最も好ましくはシクロプロピルである)、
またはその誘導体であり、β-D-グルコピラノシル基の1つまたは複数のヒドロキシル基は、(C
1-18-アルキル)カルボニル、(C
1-18-アルキル)オキシカルボニル、フェニルカルボニルおよびフェニル-(C
1-3-アルキル)-カルボニルから選択される基でアシル化されているもの;
(19)式(19)で表されるベキサグリフロジン:
【化20】
(20)式(20)で表されるジャナグリフロジン:
【化21】
(21)レモグリフロジン、
(22)ワンパグリフロジン
からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の使用のための1種もしくは複数のSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容される形態。
【請求項7】
その薬学的に許容される形態が、1種または複数のSGLT2阻害剤と、1種または複数のアミノ酸、好ましくはプロリン、より好ましくはL-プロリンとの結晶性複合体であり、最も好ましくは1種または複数のSGLT2阻害剤、L-プロリンおよび結晶水の共結晶である、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用のための1種もしくは複数のSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容される形態。
【請求項8】
ネコ科動物が、このような予防および/または治療を必要とするネコ科動物の患者であり、好ましくはこのような予防および/または治療を必要とするネコであり、より好ましくはこのような予防および/または治療を必要とする非糖尿病性のネコである、請求項1~7のいずれか1項に記載の使用のための1種もしくは複数のSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容される形態。
【請求項9】
1種または複数のSGLT-2阻害剤が、経口的、非経口的、静脈内、皮下、または筋肉内に、好ましくは経口的に投与される、請求項1~8のいずれか1項に記載の使用のための1種もしくは複数のSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容される形態。
【請求項10】
1種または複数のSGLT-2阻害剤が、0.01mg/kg体重~10mg/kg体重の用量で、好ましくは0.01mg/kg体重~5mg/kg体重の用量で、より好ましくは0.01mg/kg体重~4mg/kg体重の用量で、さらにより好ましくは0.01mg/kg体重~3mg/kg体重の用量で、さらにより好ましくは0.01mg/kg体重~2mg/kg体重の用量で、さらにより好ましくは0.01mg/kg体重~1mg/kg体重の用量で、さらにより好ましくは0.1mg/kg体重~1mg/kg体重の用量で、最も好ましくは0.5mg/kg体重~1mg/kg体重の用量で投与されることになる、請求項1~9のいずれか1項に記載の使用のための1種もしくは複数のSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容される形態。
【請求項11】
このような1種もしくは複数のSGLT2阻害剤またはその薬学的に許容される形態が1日当たり1回のみまたは1日当たり2回投与されることになる、請求項1~10のいずれか1項に記載の使用のための1種もしくは複数のSGLT2阻害剤またはその薬学的に許容される形態。
【請求項12】
1種または複数のSGLT-2阻害剤がベラグリフロジンであり、ベラグリフロジンが、単一のSGLT-2阻害剤として、好ましくは経口的に、より好ましくは1日当たり1回または2回、0.1mg/kg体重~1mg/kg体重の用量で、さらにより好ましくは0.5mg/kg体重~1mg/kg体重の用量で投与されることになる、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用のための1種もしくは複数のSGLT2阻害剤またはその薬学的に許容される形態。
【請求項13】
1種または複数のSGLT-2阻害剤が、1種または複数の他の活性医薬成分、好ましくは利尿剤、例えば、フロセミド、トラセミドまたはスピロノラクトン;ベータ遮断剤、例えば、アテノロールまたはプロプラノロール;カルシウム-チャネル遮断剤、例えば、アムロジピンおよびジルチアゼム;ACE阻害剤、例えば、ベナゼプリル、ラミプリルまたはエナラプリル;アンジオテンシン受容体遮断剤、例えば、テルミサルタン;抗不整脈剤、例えば、フレカイニド;血小板凝集阻害剤、例えば、クロピドグレル;非ステロイド抗炎症剤(NSAID)、例えば、アスピリン;抗凝血剤、例えば、クマリン(ビタミンKアンタゴニスト)、(低分子量)ヘパリン、第Xa因子の合成五糖阻害剤、ならびに直接第Xa因子阻害剤および/または直接トロンビン阻害剤;および/またはカルシウム-チャネル増感剤および/または陽性変力物質、例えば、ピモベンダンおよび/またはジギタリスアルカロイドの投与前、投与後または投与と同時に投与されることになる、請求項1~12のいずれか1項に記載の使用のための1種もしくは複数のSGLT2阻害剤またはその薬学的に許容される形態。
【請求項14】
予防的および/または治療効果が、以下の臨床的および/または生化学的パラメーターのうちの1種または複数:
- 改善された心血管代謝性効率、これは心拍出量/消費された代謝基質の比の増加を特徴とする、および/または心拍出量/消費された酸素の比の増加を特徴とする;
- 肝臓におけるケトン体産生の増加、これは3-ヒドロキシ酪酸の血漿レベルの増加、および/または対応するアシルカルニチンすなわちヒドロキシブチリルカルニチンおよび分枝鎖のアミノ酸(バリン、ロイシンおよび/またはイソロイシン)のうちの1種または複数の血漿レベルの増加を特徴とする;
- 前負荷および/または後負荷の減少を達成し、動脈壁構造機能を改善することによる心機能の改善;
- 心臓超音波パラメーターの改善、例えば、LAの低減(右傍胸骨短軸として測定される左心房の寸法)、LA/Ao(左心房の大動脈に対する比;Ao=大動脈根の直径)、IVSd(心室中隔末端の心臓拡張期の寸法、すなわち心室中隔の厚さ)、および/またはLAD(右傍胸骨長軸として測定される左心房)、および改善された心臓バイオマーカー、例えば、NT-proBNPの低減(N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド)および/またはcTnIの低減(心臓トロポニンI)、ならびに心雑音の改善;
- 好ましくは少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15カ月もしくはこれよりも長い、異なる表現型の心筋症の開始の遅延、またはさらには異なる表現型の心筋症の進行の停止;
- 好ましくは少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15カ月もしくはこれよりも長い生存時間の延長、および/または好ましくは少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15カ月もしくはこれよりも長い心不全の次の症状の発現の遅延、および/またはより低いレベルの心臓の死亡率および/または罹患率;
- より高い生活の質
を特徴とする、請求項1~13のいずれか1項に記載の使用のための1種もしくは複数のSGLT2阻害剤またはその薬学的に許容される形態。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の使用のための、請求項1~14のいずれか1項に記載の1種もしくは複数のSGLT2阻害剤またはその薬学的に許容される形態を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬の分野、特に獣医学的薬の分野に関する。本発明は、ネコ科動物における心臓疾患の予防および/または治療におけるSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容される形態の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
心疾患はペットのネコの最も一般的な病気の1種であり、すべてのネコの10~15%に影響を与える(Freeman et al., Cardiol Res. 2017, 8(4): 139-142; Payne JR et al., J Vet Cardiol. 2015, 17(Suppl1): S244-S257)。
ネコ科動物の心疾患は先天性心疾患と後天性心疾患に分類される。心疾患の大部分は慢性、不治であり、時間の経過と共に進行する。無症状の段階の後、心不全の臨床的徴候および最終的な心臓の死亡が生じ得る。心疾患に対する典型的な症状は以下の通りである:弱い全身症状、衰弱、嗜眠、うつ、摂食障害、頻拍、頻呼吸、呼吸困難、鼻閉、浮腫、低い末梢血圧および急性後方麻痺または運動麻痺。心筋症はネコにおいて最も一般的な心疾患である。心筋症は、原発性心筋症(肥大型心筋症(HC/HCM/HOCM)、限定的心筋症(RCM)、分類不能心筋症(UCM)、催不整脈性右室心筋症(ARVC)および拡張型心筋症(DCM)、これはネコには非常に稀である)および栄養障害(タウリン欠損症)、代謝障害(甲状腺機能亢進、先端肥大症)、浸潤過程(新生物、アミロイドーシス)および炎症過程(毒素、免疫反応、感染物質)による続発性心筋症に分類される。心筋症の分類は心臓超音波測定に基づく。ネコは肥大型心筋症(HCM)に最も一般的に罹患し、一般的なペットのネコ集団における罹患率は10~15%である。しかし、遺伝性の形態により、メインクーン(Maine Coon)ネコ、ペルシャ(Persian)、ラグドール(Ragdoll)、およびスフィンクス(Sphynx)などの種類はより高い危険性がある。
【0003】
ネコにおいて心疾患は一般的であるが、ヒトにおける心不全の発症に対する主要なリスクファクターであるアテローム動脈硬化症は、ネコにはとりわけ存在しない。これは、少なくとも部分的に、これらの種が高い高密度リポタンパク質濃度を有するという事実に関連している(Freeman et al., Cardiol Res. 2017, 8(4): 139-142)。ヒトとは対照的に、ネコの心筋症はネコ科動物の心不全に対する主要な理由であると考えられるが、異なる形態の疾患の原因についてはあまり多くのことが知られていないようである。
臨床研究は、研究された集団の主要な臨床的徴候に応じて(すなわち、無症候性対うっ血性心不全(CHF)対動脈血栓塞栓症(ATE))、HCMを有するネコにおいて92~2,153日の範囲の平均生存時間を示している(Atkins CE et al., J Am Vet Med Assoc. 1992, 201(4): 613-618; Rush JE et al., J Am Vet Med Assoc. 2002, 220(2): 202-207; Payne JR et al., J Vet Intern Med. 2013, 27(6): 1427-1436)。HCMおよび心不全を有するネコに対して報告された平均生存時間は、例えば、わずか92日から563日の範囲である。
【0004】
WO2011/153953は、結晶形態のベンジルベンゼンSGLT-2阻害剤を開示しており、中でもヒトにおける慢性心不全の治療について述べている。
今までSGLT2阻害剤は、治験において、心不全を患っているヒト患者の異なるサブセットに対して使用されてきた。しかし、ヒト患者におけるこのような形態の心筋症は治験参加に対する除外基準として定義されている(McMurray JJV et al., Eur. J. Heart Fail. 2019; 21: 665-675; see page 667, table 1, item 9.)。
さらなる従来の技術は以下の通りである:
US2019/076395は、2型または1型糖尿病を有さない動物において、または糖尿病予備軍を有する動物において、または2型もしくは1型糖尿病もしくは糖尿病予備軍を有する動物において、心不全、心筋梗塞、心血管疾患または心血管系死亡を治療する、その危険性を減少させるおよび/または予防するための、ある特定のSGLT-2阻害剤、例えば、エルツグリフロジンまたはその薬学的に許容される塩もしくは共結晶の使用を開示している。
【0005】
US2015/164856は、ネコ科動物において代謝障害の治療および/または予防に使用するための1種または複数のSGLT2阻害剤またはその薬学的に許容される形態を開示しており、好ましくは、代謝障害は、ケトアシドーシス、糖尿病予備軍、真性糖尿病1型または2型、インスリン抵抗性、肥満、高血糖、耐糖能障害、高インスリン血症、脂質異常症、脂質動態異常症、無症候性炎症、全身性炎症、低悪性度全身性炎症、肝リピドーシス、アテローム動脈硬化症、膵臓の炎症、ニューロパシーおよび/もしくは症候群X(メタボリックシンドローム)および/もしくは膵ベータ細胞機能の損失からなる群から選択される1種または複数であり、ならびに/または代謝障害の緩解、好ましくは糖尿病性緩解が達成され、および/もしくは維持されている。
Hoenig M et al.(J Vet Pharmacol Therapeutics 2018, 41(2): 266-273)は、ネコにおいて糖尿病を治療するための、治療的可能性を有するSGLT-2阻害剤ベラグリフロジンの作用を開示している。
US2016/000816は、例えば、1型または2型糖尿病を有する患者において酸化ストレスを治療するおよび/または予防するためのある特定のSGLT-2阻害剤、ならびに患者、例えば1型または2型糖尿病患者の患者において、心血管疾患の治療および/または予防にこのようなSGLT-2阻害剤を使用することを開示している。
【0006】
US2017/266152は、保存されたまたは減少した駆出率を有する患者において、エンパグリフロジンを患者に投与することにより、急性または慢性心不全を予防または治療するための、ならびに心不全および他の状態に対する心血管系死亡、入院の危険性を減少させるための方法を開示している。
US2011/098240は、1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能障害および高血糖から選択される1種または複数の状態の治療または予防に適切なDPP IV阻害剤と組み合わせて、SGLT2阻害剤を含む医薬組成物を開示している。
Santos-Gallego CG et al.(J American College Cardiol 2019, 73(15): 1931-1944)は、エンパグリフロジンが心筋エネルギーを促進することにより、非糖尿病性心不全における有害な左室リモデリングを改善させることを開示している。
Matsumura K et al.(Cardiovascular Ultrasound 2019, 17(1): 26)は、心機能および心血管結果に対するSGLT-2阻害剤の作用を開示している。
Silva Custodio Jr J et al.(Heart Failure Reviews 2018, 23(3): 409-418)は、SGLT-2阻害および心不全の現在の概念を開示している。
Little CJL et al.(J Small Anim Prac 2008, 49(1): 17-25)は、心不全は糖尿病性ネコにおいて一般的であること:一次診療における遡及的ケースコントロール実験からの知見を開示しいる。
【発明の概要】
【0007】
よって、従来の技術の問題を克服する、ネコ科動物における心臓疾患の予防および/または治療に対する医学的必要性が存在する。
【0008】
本発明は、ネコ科動物において、1種または複数の心臓疾患を予防および/または治療する方法に使用するための、1種もしくは複数のSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容される形態に関する。
ネコ科動物において、1種または複数の心臓疾患を予防および/または治療する対応する方法であって、1種または複数のSGLT-2阻害剤を、このようなネコ科動物に投与することを含む方法、ならびにネコ科動物における、1種または複数の心臓疾患を予防および/または治療するための医薬の調製のための、1種または複数のSGLT-2阻害剤の対応する使用もまた本発明に含まれることを意図する。
【0009】
一態様では、本発明はまた、本明細書で開示および/または特許請求された使用のための、1種もしくは複数のSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容される形態であって、1種または複数の心臓疾患が、心不全、1種または複数の心筋症に起因する心不全、肥大型心筋症(HCM)に起因する心不全、拘束性心筋症(RCM)に起因する心不全、拡張型心筋症(DCM)に起因する心不全、分類不能心筋症(UCM)に起因する心不全、不整脈原性右室心筋症(ARVC)に起因する心不全、肥大型心筋症(HCM)、拘束性心筋症(RCM)、拡張型心筋症(DCM)、分類不能心筋症(UCM)、および/または不整脈原性右室心筋症(ARVC)からなる群から選択され、好ましくは1種または複数の心筋症に起因する心不全、肥大型心筋症(HCM)に起因する心不全、肥大型心筋症(HCM)からなる群から選択される、1種または複数のSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容される形態に関する。
ネコ科動物において、1種または複数の心臓疾患を予防および/または治療する対応する方法であって、本明細書で開示および/または特許請求されたような1種または複数のSGLT-2阻害剤を、このようなネコ科動物に投与することを含む方法、ならびにネコ科動物における、本明細書で開示および/または特許請求されたような、1種または複数の心臓疾患を予防および/または治療するための医薬の調製のための、1種または複数のSGLT-2阻害剤の対応する使用もまた本発明に含まれることを意図する。
【0010】
一態様では、本発明はまた、本明細書で開示および/または特許請求された使用のための、1種もしくは複数のSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容される形態であって、1種または複数の心臓疾患が、1種または複数の心筋症に起因する心不全、肥大型心筋症(HCM)に起因する心不全、拘束性心筋症(RCM)に起因する心不全、拡張型心筋症(DCM)に起因する心不全、分類不能心筋症(UCM)に起因する心不全、不整脈原性右室心筋症(ARVC)に起因する心不全、肥大型心筋症(HCM)、拘束性心筋症(RCM)、拡張型心筋症(DCM)、分類不能心筋症(UCM)、および/または不整脈原性右室心筋症(ARVC)からなる群から選択される、1種もしくは複数のSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容される形態に関する。
ネコ科動物において、1種または複数の心臓疾患を予防および/または治療する対応する方法であって、本明細書で開示および/または特許請求されたような1種または複数のSGLT-2阻害剤を、このようなネコ科動物に投与することを含む方法、ならびにネコ科動物における、本明細書で開示および/または特許請求されたような、1種または複数の心臓疾患を予防および/または治療するための医薬の調製のための、1種または複数のSGLT-2阻害剤の対応する使用もまた本発明に含まれることを意図する。
【0011】
一態様では、本発明はまた、本明細書で開示および/または特許請求された使用のための、1種もしくは複数のSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容される形態に関し、1種または複数の心臓疾患は、肥大型心筋症(HCM)に起因する心不全、肥大型心筋症(HCM)からなる群から選択される。
ネコ科動物において、1種または複数の心臓疾患を予防および/または治療する対応する方法であって、本明細書で開示および/または特許請求されたような1種または複数のSGLT-2阻害剤を、このようなネコ科動物に投与することを含む方法、ならびにネコ科動物における、本明細書で開示および/または特許請求されたような、1種または複数の心臓疾患を予防および/または治療するための医薬の調製のための、1種または複数のSGLT-2阻害剤の対応する使用もまた本発明に含まれることを意図する。
【0012】
別の態様では、本発明はまた、本明細書で開示および/または特許請求された使用のための、1種もしくは複数のSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容される形態であって、1種または複数のSGLT-2阻害剤がグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体である、1種もしくは複数のSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容される形態に関する。
ネコ科動物において、1種または複数の心臓疾患を予防および/または治療する対応する方法であって、本明細書で開示および/または特許請求されたような1種または複数のSGLT-2阻害剤を、このようなネコ科動物に投与することを含む方法、ならびにネコ科動物における、本明細書で開示および/または特許請求されたような、1種または複数の心臓疾患を予防および/または治療するための医薬の調製のための、1種または複数のSGLT-2阻害剤の対応する使用もまた本発明に含まれることを意図する。
【0013】
さらに別の態様では、本発明はまた、本明細書で開示および/または特許請求された使用のための、1種もしくは複数のSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容される形態であって、1種または複数のSGLT-2阻害剤が、
(1)式(1)のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体
【化1】
(式中、R
1は、シアノ、Clまたはメチル(最も好ましくはシアノ)を表し、
R
2はH、メチル、メトキシまたはヒドロキシ(最も好ましくはH)を表し、
R
3は、シクロプロピル、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル、3-メチル-ブタ-1-イル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-ヒドロキシ-シクロプロピル、1-ヒドロキシ-シクロブチル、1-ヒドロキシ-シクロペンチル、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル、エチニル、エトキシ、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2-ヒドロキシル-エチル、ヒドロキシメチル、3-ヒドロキシ-プロピル、2-ヒドロキシ-2-メチル-プロパ-1-イル、3-ヒドロキシ-3-メチル-ブタ-1-イル、1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル、2,2,2-トリフルオロ-1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル、2,2,2-トリフルオロ-1-ヒドロキシ-1-トリフルオロメチル-エチル、2-メトキシ-エチル、2-エトキシ-エチル、ヒドロキシ、ジフルオロメチルオキシ、トリフルオロメチルオキシ、2-メチルオキシ-エチルオキシ、メチルスルファニル、メチルスルフィニル、メチルスルホニル(methlysulfonyl)、エチルスルフィニル、エチルスルホニル、トリメチルシリル、(R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシまたは(S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシまたはシアノを表し、
R
3は、シクロプロピル、エチル、エチニル、エトキシ、(R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシまたは(S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシから好ましくは選択され、最も好ましくは、R
3はシクロプロピルである)
またはその誘導体であり、β-D-グルコピラノシル基の1つまたは複数のヒドロキシル基が(C
1-18-アルキル)カルボニル、(C
1-18-アルキル)オキシカルボニル、フェニルカルボニルおよびフェニル-(C
1-3-アルキル)-カルボニルから選択される基でアシル化されているもの;
【0014】
(2)式(2)で表されるベラグリフロジン:
【化2】
(3)式(3)で表されるダパグリフロジン:
【化3】
【0015】
(4)式(4)で表されるカナグリフロジン:
【化4】
(5)式(5)で表されるエンパグリフロジン:
【化5】
【0016】
(6)式(6)で表されるルセオグリフロジン:
【化6】
(7)式(7)で表されるトホグリフロジン:
【化7】
【0017】
(8)式(8)で表されるイプラグリフロジン:
【化8】
(9)式(9)で表されるエルツグリフロジン:
【化9】
【0018】
(10)式(10)で表されるアチグリフロジン:
【化10】
(11)式(11)で表されるレモグリフロジン:
【化11】
【0019】
(11A)式(11A)で表されるレモグリフロジンエタボネート:
【化12】
【0020】
(12)式(12)のチオフェン誘導体
【化13】
(式中、Rはメトキシまたはトリフルオロメトキシを表す)
(13)式(13)で表される1-(β-D-グルコピラノシル)-4-メチル-3-[5-(4-フルオロフェニル)-2-チエニルメチル]ベンゼン:
【化14】
【0021】
(14)式(14)のスピロケタール誘導体:
【化15】
(式中、Rはメトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、エチル、イソプロピルまたはtert-ブチルを表す)
【0022】
(15)式(15)のピラゾール-O-グルコシド誘導体
【化16】
(式中、
R
1はC
1-3-アルコキシを表し、
L
1、L
2は、互いに独立して、HまたはFを表し、
R
6は、H、(C
1-3-アルキル)カルボニル、(C
1-6-アルキル)オキシカルボニル、フェニルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルまたはベンジルカルボニルを表す)
【0023】
(16)式(16)で表されるソタグリフロジン:
【化17】
【0024】
(17)式(17)で表されるセルグリフロジン:
【化18】
【0025】
(18)式(18)で表される化合物:
【化19】
(式中、
R
3は、シクロプロピル、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル、3-メチル-ブタ-1-イル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-ヒドロキシ-シクロプロピル、1-ヒドロキシ-シクロブチル、1-ヒドロキシ-シクロペンチル、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル、エチニル、エトキシ、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2-ヒドロキシル-エチル、ヒドロキシメチル、3-ヒドロキシ-プロピル、2-ヒドロキシ-2-メチル-プロパ-1-イル、3-ヒドロキシ-3-メチル-ブタ-1-イル、1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル、2,2,2-トリフルオロ-1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル、2,2,2-トリフルオロ-1-ヒドロキシ-1-トリフルオロメチル-エチル、2-メトキシ-エチル、2-エトキシ-エチル、ヒドロキシ、ジフルオロメチルオキシ、トリフルオロメチルオキシ、2-メチルオキシ-エチルオキシ、メチルスルファニル、メチルスルフィニル、メチルスルホニル、エチルスルフィニル、エチルスルホニル、トリメチルシリル、(R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシまたは(S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシまたはシアノを表し、R
3は、好ましくはシクロプロピル、エチル、エチニル、エトキシ、(R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシまたは(S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシから選択され、R
3は最も好ましくはシクロプロピルである)、
またはその誘導体であり、β-D-グルコピラノシル基の1つまたは複数のヒドロキシル基が(C
1-18-アルキル)カルボニル、(C
1-18-アルキル)オキシカルボニル、フェニルカルボニルおよびフェニル-(C
1-3-アルキル)-カルボニルから選択される基でアシル化されているもの、
【0026】
(19)式(19)で表されるベキサグリフロジン:
【化20】
【0027】
(20)式(20)で表されるジャナグリフロジン:
【化21】
(21)レモグリフロジン(Rongliflozin)、
(22)ワンパグリフロジン(Wanpagliflozin)
からなる群から選択される、1種もしくは複数のSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容される形態に関する。
【0028】
ネコ科動物において、1種または複数の心臓疾患を予防および/または治療する対応する方法であって、本明細書で開示および/または特許請求されたような1種または複数のSGLT-2阻害剤を、このようなネコ科動物に投与することを含む方法、ならびにネコ科動物における、本明細書で開示および/または特許請求されたような、1種または複数の心臓疾患を予防および/または治療するための医薬の調製のための、1種または複数のSGLT-2阻害剤の対応する使用もまた本発明に含まれることを意図する。
さらに別の態様では、本発明はまた本明細書で開示および/または特許請求された使用のための、1種もしくは複数のSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容される形態であって、その薬学的に許容される形態が、1種または複数のSGLT2阻害剤と、1種または複数のアミノ酸、好ましくはプロリン、より好ましくはL-プロリンとの結晶性複合体であり、最も好ましくは1種または複数のSGLT2阻害剤、L-プロリンおよび結晶水の共結晶である、1種もしくは複数のSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容される形態に関する。
【0029】
ネコ科動物において、1種または複数の心臓疾患を予防および/または治療する対応する方法であって、本明細書で開示および/または特許請求されたような1種または複数のSGLT-2阻害剤を、このようなネコ科動物に投与することを含む方法、ならびにネコ科動物における、本明細書で開示および/または特許請求されたような、1種または複数の心臓疾患を予防および/または治療するための医薬の調製のための、1種または複数のSGLT-2阻害剤の対応する使用もまた本発明に含まれることを意図する。
さらに別の態様では、本発明はまた、本明細書で開示および/または特許請求された使用のための、1種もしくは複数のSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容される形態であって、ネコ科動物が、このような予防および/または治療を必要とするネコの患者であり、好ましくはこのような予防および/または治療を必要とするネコ、より好ましくはこのような予防および/または治療を必要とする非糖尿病性のネコである、1種もしくは複数のSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容される形態に関する。
【0030】
ネコ科動物において、1種または複数の心臓疾患を予防および/または治療する対応する方法であって、本明細書で開示および/または特許請求されたような1種または複数のSGLT-2阻害剤を、このようなネコ科動物に投与することを含む方法、ならびにネコ科動物における、本明細書で開示および/または特許請求されたような、1種または複数の心臓疾患を予防および/または治療するための医薬の調製のための、1種または複数のSGLT-2阻害剤の対応する使用もまた本発明に含まれることを意図する。
さらに別の態様では、本発明はまた、本明細書で開示および/または特許請求された使用のための、1種もしくは複数のSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容される形態であって、1種または複数のSGLT-2阻害剤が経口的、非経口的、静脈内、皮下または筋肉内に、好ましくは経口的に投与される、1種もしくは複数のSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容される形態に関する。
ネコ科動物において、1種または複数の心臓疾患を予防および/または治療する対応する方法であって、本明細書で開示および/または特許請求されたような1種または複数のSGLT-2阻害剤を、このようなネコ科動物に投与することを含む方法、ならびにネコ科動物における、本明細書で開示および/または特許請求されたような、1種または複数の心臓疾患を予防および/または治療するための医薬の調製のための、1種または複数のSGLT-2阻害剤の対応する使用もまた本発明に含まれることを意図する。
【0031】
さらに別の態様では、本発明はまた、本明細書で開示および/または特許請求された使用のための、1種もしくは複数のSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容される形態であって、1種または複数のSGLT-2阻害剤が、0.01mg/kg体重~10mg/kg体重の用量で、好ましくは0.01mg/kg体重~5mg/kg体重の用量で、より好ましくは0.01mg/kg体重~4mg/kg体重の用量で、さらにより好ましくは0.01mg/kg体重~3mg/kg体重の用量で、さらにより好ましくは0.01mg/kg体重~2mg/kg体重の用量で、さらにより好ましくは0.01mg/kg体重~1mg/kg体重の用量で、さらにより好ましくは0.1mg/kg体重~1mg/kg体重の用量で、最も好ましくは0.5mg/kg体重~1mg/kg体重の用量で投与されることになる、1種もしくは複数のSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容される形態に関する。
ネコ科動物において、1種または複数の心臓疾患を予防および/または治療する対応する方法であって、本明細書で開示および/または特許請求されたような1種または複数のSGLT-2阻害剤を、このようなネコ科動物に投与することを含む方法、ならびにネコ科動物における、本明細書で開示および/または特許請求されたような、1種または複数の心臓疾患を予防および/または治療するための医薬の調製のための、1種または複数のSGLT-2阻害剤の対応する使用もまた本発明に含まれることを意図する。
【0032】
さらに別の態様では、本発明はまた、本明細書で開示および/または特許請求された使用のための、1種もしくは複数のSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容される形態であって、このような1種または複数のSGLT2阻害剤またはその薬学的に許容される形態が1日当たり1回のみまたは2回投与されることになる、1種もしくは複数のSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容される形態に関する。
ネコ科動物において、1種または複数の心臓疾患を予防および/または治療する対応する方法であって、本明細書で開示および/または特許請求されたような1種または複数のSGLT-2阻害剤を、このようなネコ科動物に投与することを含む方法、ならびにネコ科動物における、本明細書で開示および/または特許請求されたような、1種または複数の心臓疾患を予防および/または治療するための医薬の調製のための、1種または複数のSGLT-2阻害剤の対応する使用もまた本発明に含まれることを意図する。
【0033】
さらに別の態様では、本発明はまた、本明細書で開示および/または特許請求された使用のための、1種もしくは複数のSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容される形態であって、1種または複数のSGLT-2阻害剤がベラグリフロジンであり、ベラグリフロジンが、単一のSGLT-2阻害剤として、好ましくは経口的に、より好ましくは1日当たり1回または2回、0.1mg/kg体重~1mg/kg体重の用量で、さらにより好ましくは0.5mg/kg体重~1mg/kg体重の用量で投与されることになる、1種もしくは複数のSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容される形態に関する。
ネコ科動物において、1種または複数の心臓疾患を予防および/または治療する対応する方法であって、本明細書で開示および/または特許請求されたような1種または複数のSGLT-2阻害剤を、このようなネコ科動物に投与することを含む方法、ならびにネコ科動物における、本明細書で開示および/または特許請求されたような、1種または複数の心臓疾患を予防および/または治療するための医薬の調製のための、1種または複数のSGLT-2阻害剤の対応する使用もまた本発明に含まれることを意図する。
【0034】
さらに別の態様では、本発明はまた、本明細書で開示および/または特許請求された使用のための、1種もしくは複数のSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容される形態であって、1種または複数のSGLT-2阻害剤が、1種または複数の他の活性医薬成分、好ましくは利尿剤、例えば、フロセミド、トラセミドまたはスピロノラクトン;ベータ遮断剤、例えば、アテノロールまたはプロプラノロール;カルシウム-チャネル遮断剤、例えば、ジルチアゼム;ACE阻害剤、例えば、ベナゼプリル、ラミプリルまたはエナラプリル;アンジオテンシン受容体遮断剤、例えば、テルミサルタン;抗不整脈剤、例えば、フレカイニド;血小板凝集阻害剤、例えば、クロピドグレル;非ステロイド抗炎症剤(NSAID)、例えば、アスピリン;抗凝血剤、例えば、クマリン(ビタミンKアンタゴニスト)、(低分子量)ヘパリン、第Xa因子の合成五糖阻害剤、ならびに直接第Xa因子阻害剤および/または直接トロンビン阻害剤;および/またはカルシウム-チャネル増感剤および/または陽性変力物質、例えば、ピモベンダンおよび/またはジギタリスアルカロイドの投与前、投与後または投与と同時に投与されることになる、1種もしくは複数のSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容される形態に関する。
ネコ科動物において、1種または複数の心臓疾患を予防および/または治療する対応する方法であって、本明細書で開示および/または特許請求されたような1種または複数のSGLT-2阻害剤を、このようなネコ科動物に投与することを含む方法、ならびにネコ科動物における、本明細書で開示および/または特許請求されたような、1種または複数の心臓疾患を予防および/または治療するための医薬の調製のための、1種または複数のSGLT-2阻害剤の対応する使用もまた本発明に含まれることを意図する。
【0035】
さらに別の態様では、本発明はまた、本明細書で開示および/または特許請求された使用のための、1種もしくは複数のSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容される形態であって、予防的および/または治療効果が、以下の臨床的および/または生化学的パラメーターのうちの1種または複数を特徴とする、1種もしくは複数のSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容される形態に関する:
- 改善された心血管代謝性効率、これは[心拍出量/消費された代謝基質]の比の増加を特徴とする、および/または[心拍出量/消費された酸素]の比の増加を特徴とする;
- 肝臓におけるケトン体産生の増加、これは3-ヒドロキシ酪酸の血漿レベルの増加、および/または対応するアシルカルニチンすなわちヒドロキシブチリルカルニチンおよび分枝鎖のアミノ酸(バリン、ロイシンおよびイソロイシン)のうちの1種または複数の血漿レベルの増加を特徴とする;
- 前負荷および/または後負荷の減少を達成し、動脈壁構造機能を改善することによる心機能の改善;
- 心臓超音波パラメーターの改善、例えば、LAの低減(右傍胸骨短軸として測定される左心房の寸法)、LA/Ao(左心房の大動脈に対する比;Ao=大動脈根の直径)、IVSd(心室中隔末端の心臓拡張期の寸法、すなわち心室中隔の厚さ)、および/またはLAD(右傍胸骨長軸として測定される左心房)、および改善された心臓バイオマーカー、例えば、NT-proBNPの低減(N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド)および/またはcTnIの低減(心臓トロポニンI)、ならびに心雑音の改善;
- 好ましくは少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15カ月もしくはこれよりも長い、異なる表現型の心筋症の開始の遅延、またはさらには異なる表現型の心筋症の進行の停止;
- 好ましくは少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15カ月もしくはこれよりも長い生存時間の延長、および/または好ましくは少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15カ月もしくはこれよりも長い心不全の次の症状の発現の遅延、および/またはより低いレベルの心臓の死亡率および/または罹患率;
- より高い生活の質。
【0036】
ネコ科動物において、1種または複数の心臓疾患を予防および/または治療する対応する方法であって、本明細書で開示および/または特許請求されたような1種または複数のSGLT-2阻害剤を、このようなネコ科動物に投与することを含む方法、ならびにネコ科動物における、本明細書で開示および/または特許請求されたような、1種または複数の心臓疾患を予防および/または治療するための医薬の調製のための、1種または複数のSGLT-2阻害剤の対応する使用もまた本発明に含まれることを意図する。
本発明は、本明細書で開示および/または特許請求された使用のための、1種もしくは複数のSGLT2阻害剤またはその薬学的に許容される形態を含む、本明細書で開示および/または特許請求されたような医薬組成物にさらに関する。
【0037】
ネコ科動物において、1種または複数の心臓疾患を予防および/または治療する対応する方法であって、1種または複数のSGLT-2阻害剤を、このようなネコ科動物に投与することを含む方法、ならびにネコ科動物における、1種または複数の心臓疾患を予防および/または治療するための医薬の調製のための、1種または複数のSGLT-2阻害剤の対応する使用もまた本発明に含まれることを意図する。
本発明によると利点は、以下のうちの1つまたは複数である:
- ネコの肝臓でのケトン体産生の予期せぬ増加により引き起こされる心臓疾患を有するネコにおける、SGLT-2阻害の手段による心血管代謝性効率の改善(心臓細胞のエネルギー供給源として使用することができる)、同じ化合物を用いても他の種、例えば、ウマでは異なり、ネコ科動物の心不全の原因および心筋症の表現型に関係なく、不全のネコ科動物の心臓が心臓機能障害に立ち向かうのを助ける
- 心臓疾患を有するネコにおける、前負荷および/または後負荷の減少を達成し、動脈壁構造機能を改善することによる心機能の改善、これらによる異なる表現型の心筋症の進行(最終的に心不全および心臓の死亡につながる)の遅延またはさらには停止
- 心臓超音波パラメーターの改善、例えば、LAの低減(右傍胸骨短軸として測定される左心房の寸法)、LA/Ao(左心房の大動脈に対する比;Ao=大動脈根の直径)、IVSd(心室中隔末端の心臓拡張期の寸法、すなわち心室中隔の厚さ)、および/またはLAD(右傍胸骨長軸として測定される左心房)、および改善された心臓バイオマーカー、例えば、NT-proBNPの低減(N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド)および/またはcTnIの低減(心臓トロポニンI)、ならびに心雑音の改善;
- 心臓疾患の臨床的徴候があまりないまたはない、心臓疾患を有するネコの、好ましくは少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15カ月もしくはこれよりも長い生存時間の延長、および/または好ましくは少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15カ月もしくはこれよりも長い心不全の次の症状の発現の遅延、および/またはより低いレベルの心臓の死亡率および/または罹患率
- 心臓疾患を有するネコにおける、好ましくは少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15カ月またはこれよりも長い臨床症候の開始の遅延、および/または、好ましくは少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15カ月もしくはこれよりも長い異なる表現型の心筋症の開始の遅延、またはさらには異なる表現型の心筋症の進行の停止
- 心臓疾患を有するネコのより高い生活の質
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の実施形態がさらに詳細に記載される前に、本明細書で使用される場合および添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が他を明確に指示していない限り、複数の参照を含むことに注目されたい。
他に定義されていない限り、本明細書で使用されているすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。すべての付与された範囲および値は、当業者により他に示されていない限りまたは他が公知でない限り、1~5%変動してもよく、したがって、「約」という用語は通常、説明および特許請求の範囲から省略された。本明細書に記載されているものと類似または同等の任意の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法、デバイス、および材料はここに記載されている。本明細書に記述されているすべての刊行物は、本発明に関連して使用され得る刊行物に報告されているような、物質、賦形剤、担体、および方法論を記載および開示する目的のために、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書におけるいかなるものであっても、本発明が以前の発明によって、そのような開示に先行する権利がないと同意したと解釈されることはない。
【0039】
ネコにおいて、最も一般的に見られる心不全の徴候は、困難な呼吸(呼吸困難)および/またはより急速な呼吸(頻呼吸)の発症である。これは一般的に、肺周辺の胸の空洞における流体の蓄積(胸膜滲出と呼ばれる)、または肺自体の中での流体の蓄積(肺浮腫と呼ばれる)に起因して引き起こされる。呼吸の困難さと共に、ネコは冷たい四肢(例えば、耳および足)を有することもあり、循環の弱さを示唆する青白い粘膜(歯ぐきおよび眼)を有することもある。時には、口および眼の粘膜、さらには皮膚までもチアノーゼの徴候(青みがかった色)を示し得る。これらすべての心不全の臨床徴候は、SGLT2阻害剤での治療後、ネコにおいて改善され、または未治療の疾患発症の過程と比較して、発生が臨床的に関連して遅延される。
【0040】
心筋症としての心疾患に罹患したネコにおいて生じ得る、時には根底にある心疾患の第1の指標となり得る別の徴候は、「ネコ科動物の大動脈血栓塞栓症」(FATE)として公知の徴候の発症である。血栓(血液凝血塊)は心筋症を有するネコにおいて心臓心室(普通左心房)のうちの1つの中に発生し得る。これは主に、血液が通常心臓を介して流動しないので生じる。血栓、または凝血塊は最初に心臓の壁に付着するが、脱落し、血液に運ばれて心臓を出得る。血液循環へと移動する血栓は塞栓と呼ばれ、したがって「血栓塞栓症」という用語で呼ばれる。循環に入ると、これら塞栓は小さな動脈に留まり、身体の領域への血液の流れを塞ぐ可能性がある。これは、いくつかの異なる部位で生じ得るが、心臓(大動脈)を離れる主要な動脈が後脚に血液を供給するために分割するにつれて、末端の方向に向かってより共通して生じ得る。この合併症はHCMにおいて最も一般的に見られ、激痛およびかなりの苦痛と共に、後脚の1本または両方に運動麻痺の突然の開始を引き起こす。また、心不全の臨床徴候は、SGLT2阻害剤での治療後のネコにおいて改善され、または未治療過程の疾患の発症と比較して、発生が臨床に関連して、好ましくは少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15カ月またはこれよりも長く遅延される。全体的には、SGLT2阻害剤で治療後のネコの生存時間は、心筋症を有する、未治療のネコと比較して、臨床に関連して、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15またはこれよりも長く、好ましくは少なくとも6カ月増加する。
【0041】
本発明の過程で、「ネコ科動物」または「ネコ」という用語は、ネコ科(すなわちネコ科の動物)の任意のメンバーを指す。よって、これはサブファミリーであるネコ亜科またはサブファミリーであるヒョウ亜科のいずれかに属し得る。ネコ科動物という用語は、ネコという用語、例えば、飼い慣らしたネコを包含する。飼い慣らしたネコという用語は、イエネコ(Felis catus)およびイエネコ(Felis silvestris catus)という用語を包含する。最も好ましくは、ネコ科動物またはネコ科(feline animal、feline)は、ネコ、特に飼い慣らしたネコである。
本発明の過程で、「心疾患」という用語は、「心臓疾患」と同じ意味であり、心臓それ自体の任意の障害および変形を指し、心臓の構造および機能に影響を与える。異なる部分の器官に影響を与え、先天性心疾患(例えば中隔欠陥、閉塞欠陥)、不整脈(例えば頻拍、徐脈および細動)および心筋症を含めて、異なる方式で生じる多くの種類の心疾患が存在する。
【0042】
本発明の過程で、「心不全」という用語はまたうっ血性心不全およびうっ血性心不全としても公知であり、末梢組織および器官の代謝必要条件(酸素および基質)を満たすよう、身体を介して血流を維持するのに十分な血流を心臓がポンプで送り込むことができない病態生理学的プロセスを指す。また、心臓の異常な構造または機能に基づき、運動耐容能低下、呼吸困難、疲労、流体の滞留および寿命の減少のような症状を特徴とする複雑な臨床的症候群としても定義することができる。これは、収縮期における心臓からの血液の排出が影響を受ける心臓収縮期の不全と、心臓が心臓拡張期の間、心室の空洞内に低圧で十分な血液を受け取ることができない心臓拡張期の不全とに分割することができる。その大半は、心臓の慢性的作業過負荷に起因する、または流体過負荷、心臓弁膜機能障害もしくは心筋梗塞による急性の血流力学的ストレス後に発生する慢性疾患である。
本発明の過程で、「心筋症」という用語は、心筋に影響を与える疾患の群を指し、ネコにおいて見られる心疾患の最も一般的な形態であり、心不全の最も一般的な原因である。心筋症はこれらが心筋の構造および機能に対して有する作用に従い説明される。心筋症の種類として以下が挙げられる:肥大型心筋症(HCM)、拘束性心筋症(RCM)、分類不能心筋症(UCM)、催不整脈性右室心筋症(ARVC)および拡張型心筋症(DCM)。分類は心臓超音波測定に基づく。
【0043】
肥大型心筋症(HCM)は最も広まっているネコ科動物の心臓障害である。HCMは、最も一般的に中年のネコ(平均6.5年)に影響を与えるが、すべての年齢が影響を受ける。雄の素因が存在する(>75%)。ヒトでは、55%の症例においてHCMに対する重要な遺伝性素因が存在する。人々において、この障害は先天性であっても、または後天性であってもよく、おそらくある群の疾患を代表するものである。ネコ科動物のHCMの原因は未知であるが、ペルシャおよびメインクーンのネコは、一部の症例系列に罹りやすいようであり、遺伝的影響を示唆している。全身性高血圧、甲状腺機能亢進、および大動脈狭窄の場合のように、HCMは顕著な左心室肥大に関連しているが、この場合、根底にある原因を特定することができない。心臓の病変は、激しい左心室の求心性肥大および2次的左心房拡張に代表される。非対称的な中隔肥厚(ASH)は、HCMを有するイヌおよびヒトの大部分に存在するが、HCMを有するネコの30%にしかに存在しない。組織学的な心臓筋原線維の錯綜配列は、影響を受けたネコの27%および非対称的中隔肥厚を有するネコだけに報告された。ネコ科動物のHCMの他の組織学的特徴として、心筋および内心膜性線維症および狭窄された冠状動脈が挙げられる。動的な大動脈流出閉塞、2次的な僧帽弁不全症、心筋虚血、および全身性動脈塞栓症(SAE)はこの症候群を複雑にし得る。左心臓は主に影響を受け、臨床徴候は突然死として現れ、または、さらに一般的には心臓拡張期の機能障害に起因する急性左心不全として現れる。胸膜滲出は時にはHCMに関連している。心臓収縮期機能は普通十分であり、または促進される。ストレスの多い出来事、例えば、自動車に乗ること、ECGに対する制限、イヌとの対決、または塞栓事象は、左心不全および肺浮腫を促進させ得る。
【0044】
肥大性閉塞性心筋症(HOCM)は、大動脈への左室の流出閉塞と合わせて生じる左心室肥大を特徴とする。閉塞および臨床的症状の程度は肥厚の範囲に依存する。HOCMは心室中隔に最も一般的に影響を与えるが、左室のいかなる部分も影響を受け得る。
拘束性心筋症(RCM)は、繊維状組織または別の構成成分により心内膜、心内膜下、または心筋が浸潤されることにより心室の心臓拡張期の整合性が損なわれた(すなわち、剛性が増加)場合に生じる。特定の原因、例えば、アミロイドーシスおよび好酸球性浸潤がRCMの原因であるヒトの薬とは対照的に、RCMに対する特定の原因はネコにおいて明確に定義されていない。左心室の心臓拡張期の機能を直接測定する侵襲性診断手順、DTI、心臓拡張期の機能の他の間接的測定または剖検検査を使用することなく、この障害を、特発性である分類不能心筋症の形態(複数可)から区別することは多くの場合不可能である。ネコ科動物のRCMの正確な原因は未知である。しかし、これが炎症性の性質であり得るという一部の証拠は存在する。
【0045】
拡張型心筋症(DCM)は、心臓心室の拡張または拡大および収縮能力の減少を特徴とする。1987年以前、DCMはネコにおいて最も一般的な心疾患の1種であった。DCMはアミノ酸タウリンの食事性欠損症に関係していると推測される。現在ではネコのDCMは比較的に稀であり、キャットフード製造業者の大部分は、タウリンサプリメントをこれらの飼料に添加し始めて、さらにその関係を確定した。一部の種類、例えば、ビルマ(Burmese)、アビシニアン(Abyssinian)、およびシャム(Siamese)は、DCMによりさらに一般的に影響を受けているが、症例の大部分の根底にある原因は未知のままである。疾患は普通2~20才の間の年齢のネコに影響を与えるが、平均発症年齢は10才である。
分類不能心筋症(UCM):近年では、心臓超音波および病理学的基準を使用して、任意の認識された疾患分類にフィットしないことが特定されたネコの数が増加している。通常、これらのネコは、著しい両心房の拡大、正常な左室または軽度の肥厚および正常なまたはわずかに低減した心臓収縮期機能を有するが、これらのネコは拘束性心筋症に見られる典型的な死後知見である線維症を有さない。多くのネコは右心室の拡大を有する。これらのネコが進行性または退行性形態の他の公知の心筋症の状態を表しているのかどうかは公知ではない。
【0046】
催不整脈性右室心筋症(ARVC):この形態の心筋症はネコにおいて最近記載されている。原因は不明であるが、ヒトでは家族性の形態が報告されている。これは著しい右心房および右心室の拡大および三尖弁のゆがみによる顕著な三尖弁逆流を特徴とする。不整脈は一般的である。ARVCの症例は、以前に三尖弁異形成と誤診された可能性がある。
【0047】
本発明による使用のためのSGLT-2阻害剤として、これらに限定されないが、グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体、例えば、WO01/27128、WO03/099836、WO2005/092877、WO2006/034489、WO2006/064033、WO2006/117359、WO2006/117360、WO2007/025943、WO2007/028814、WO2007/031548、WO2007/093610、WO2007/128749、WO2008/049923、WO2008/055870、WO2008/055940、WO2009/022020またはWO2009/022008に記載されているグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体が挙げられる。
【0048】
さらに、本発明による使用のための1種または複数のSGLT-2阻害剤は、以下の化合物またはその薬学的に許容される形態からなる群から選択することができる:
(1)式(1)のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体
【化22】
(式中、R
1はシアノ、Clまたはメチル(最も好ましくはシアノ)を表し、
R
2は、H、メチル、メトキシまたはヒドロキシ(最も好ましくはH)を表し、
R
3は、シクロプロピル、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル、3-メチル-ブタ-1-イル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-ヒドロキシ-シクロプロピル、1-ヒドロキシ-シクロブチル、1-ヒドロキシ-シクロペンチル、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル、エチニル、エトキシ、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2-ヒドロキシル-エチル、ヒドロキシメチル、3-ヒドロキシ-プロピル、2-ヒドロキシ-2-メチル-プロパ-1-イル、3-ヒドロキシ-3-メチル-ブタ-1-イル、1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル、2,2,2-トリフルオロ-1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル、2,2,2-トリフルオロ-1-ヒドロキシ-1-トリフルオロメチル-エチル、2-メトキシ-エチル、2-エトキシ-エチル、ヒドロキシ、ジフルオロメチルオキシ、トリフルオロメチルオキシ、2-メチルオキシ-エチルオキシ、メチルスルファニル、メチルスルフィニル、メチルスルホニル、エチルスルフィニル、エチルスルホニル、トリメチルシリル、(R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシまたは(S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシまたはシアノを表し、
R
3は、好ましくはシクロプロピル、エチル、エチニル、エトキシ、(R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシまたは(S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシから選択され、最も好ましくは、R
3はシクロプロピルである)
またはその誘導体であり、β-D-グルコピラノシル基の1つまたは複数のヒドロキシル基は、(C
1-18-アルキル)カルボニル、(C
1-18-アルキル)オキシカルボニル、フェニルカルボニルおよびフェニル-(C
1-3-アルキル)-カルボニルから選択される基でアシル化されているもの;
【0049】
(2)式(2)で表されるベラグリフロジン:
【化23】
(3)式(3)で表されるダパグリフロジン:
【化24】
【0050】
(4)式(4)で表されるカナグリフロジン:
【化25】
(5)式(5)で表されるエンパグリフロジン:
【化26】
【0051】
(6)式(6)で表されるルセオグリフロジン:
【化27】
【0052】
(7)式(7)で表されるトホグリフロジン:
【化28】
【0053】
(8)式(8)で表されるイプラグリフロジン:
【化29】
(9)式(9)で表されるエルツグリフロジン:
【化30】
【0054】
(10)式(10)で表されるアチグリフロジン:
【化31】
【0055】
(11)式(11)で表されるレモグリフロジン:
【化32】
(11A)式(11A)で表されるレモグリフロジンエタボネート:
【化33】
【0056】
(12)式(12)のチオフェン誘導体
【化34】
(式中、Rはメトキシまたはトリフルオロメトキシを表す);
【0057】
(13)式(13)で表される1-(β-D-グルコピラノシル)-4-メチル-3-[5-(4-フルオロフェニル)-2-チエニルメチル]ベンゼン;
【化35】
【0058】
(14)式(14)のスピロケタール誘導体:
【化36】
(式中、Rはメトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、エチル、イソプロピルまたはtert-ブチルを表す)
【0059】
(15)式(15)のピラゾール-O-グルコシド誘導体
【化37】
(式中、
R
1はC
1-
3-アルコキシを表し、
L
1、L
2は、互いに独立して、HまたはFを表し、
R
6は、H、(C
1-3-アルキル)カルボニル、(C
1-6-アルキル)オキシカルボニル、フェニルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルまたはベンジルカルボニルを表す);
【0060】
(16)式(16)で表されるソタグリフロジン:
【化38】
(17)式(17)で表されるセルグリフロジン:
【化39】
【0061】
(18)式(18)で表される化合物:
【化40】
(式中、
R
3は、シクロプロピル、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル、3-メチル-ブタ-1-イル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-ヒドロキシ-シクロプロピル、1-ヒドロキシ-シクロブチル、1-ヒドロキシ-シクロペンチル、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル、エチニル、エトキシ、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2-ヒドロキシル-エチル、ヒドロキシメチル、3-ヒドロキシ-プロピル、2-ヒドロキシ-2-メチル-プロパ-1-イル、3-ヒドロキシ-3-メチル-ブタ-1-イル、1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル、2,2,2-トリフルオロ-1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル、2,2,2-トリフルオロ-1-ヒドロキシ-1-トリフルオロメチル-エチル、2-メトキシ-エチル、2-エトキシ-エチル、ヒドロキシ、ジフルオロメチルオキシ、トリフルオロメチルオキシ、2-メチルオキシ-エチルオキシ、メチルスルファニル、メチルスルフィニル、メチルスルホニル、エチルスルフィニル、エチルスルホニル、トリメチルシリル、(R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシまたは(S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシまたはシアノを表し、R
3は、好ましくはシクロプロピル、エチル、エチニル、エトキシ、(R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシまたは(S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシから選択され、R
3は最も好ましくはシクロプロピルである)、
またはその誘導体であり、β-D-グルコピラノシル基の1つまたは複数のヒドロキシル基は(C
1-18-アルキル)カルボニル、(C
1-18-アルキル)オキシカルボニル、フェニルカルボニルおよびフェニル-(C
1-3-アルキル)-カルボニルから選択される基でアシル化されているもの;
【0062】
(19)式(19)で表されるベキサグリフロジン:
【化41】
(20)式(20)で表されるジャナグリフロジン:
【化42】
(21)レモグリフロジン、
(22)ワンパグリフロジン。
【0063】
「ベラグリフロジン」という用語は、本明細書で利用する場合、上記構造のベラグリフロジンならびにその水和物および溶媒和物、およびその結晶形態を含む、その薬学的に許容される形態を指す。化合物、その合成方法およびその共結晶は、例えばWO2007/128749、WO2014/016381およびWO2019/121509に記載されている。
「ダパグリフロジン」という用語は、本明細書で利用する場合、上記構造のダパグリフロジンならびにその水和物および溶媒和物、およびその結晶形態を含む、その薬学的に許容される形態を指す。化合物およびその合成方法は、例えばWO03/099836に記載されている。好ましい水和物、溶媒和物および結晶形態は、例えば特許出願WO2008/116179およびWO2008/002824に記載されている。
「カナグリフロジン」という用語は、本明細書で利用する場合、上記構造のカナグリフロジン、ならびにその水和物および溶媒和物、およびその結晶形態を含む、その薬学的に許容される形態を指す。化合物およびその合成方法は、例えばWO2005/012326およびWO2009/035969に記載されている。好ましい水和物、溶媒和物および結晶形態は、例えば特許出願WO2008/069327に記載されている。
【0064】
「エンパグリフロジン」という用語は、本明細書で利用する場合、上記構造のエンパグリフロジン、ならびにその水和物および溶媒和物、およびその結晶形態を含む、その薬学的に許容される形態を指す。化合物およびその合成方法は、例えばWO2005/092877、WO2006/120208およびWO2011/039108に記載されている。好ましい結晶形態は、例えば特許出願WO2006/117359およびWO2011/039107に記載されている。
「アチグリフロジン」という用語は、本明細書で利用する場合、上記構造のアチグリフロジン、ならびにその水和物および溶媒和物、およびその結晶形態を含む、その薬学的に許容される形態を指す。化合物およびその合成方法は、例えばWO2004/007517に記載されている。
【0065】
「イプラグリフロジン」という用語は、本明細書で利用する場合、上記構造のイプラグリフロジン、ならびにその水和物および溶媒和物、およびその結晶形態を含む、その薬学的に許容される形態を指す。化合物およびその合成方法は、例えばWO2004/080990、WO2005/012326およびWO2007/114475に記載されている。
「トホグリフロジン」という用語は、本明細書で利用する場合、上記構造のトホグリフロジン、ならびにその水和物および溶媒和物、およびその結晶形態を含む、その薬学的に許容される形態を指す。化合物およびその合成方法は、例えばWO2007/140191およびWO2008/013280に記載されている。
「ルセオグリフロジン」という用語は、本明細書で利用する場合、上記構造のルセオグリフロジン、ならびにその水和物および溶媒和物、およびその結晶形態を含む、その薬学的に許容される形態を指す。
【0066】
「エルツグリフロジン」という用語は、本明細書で利用する場合、上記構造のエルツグリフロジン、ならびにその水和物および溶媒和物、およびその結晶形態を含む、その薬学的に許容される形態を指す。化合物は、例えばWO2010/023594に記載されている。
「レモグリフロジン」という用語は、本明細書で利用する場合、上記構造のレモグリフロジン、ならびにレモグリフロジンのプロドラッグ、特にレモグリフロジンエタボネートを含む、その水和物および溶媒和物、およびその結晶形態を含む、その薬学的に許容される形態を指す。その合成方法は、例えば特許出願EP1213296およびEP1354888に記載されている。
「セルグリフロジン」という用語は、本明細書で利用する場合、上記構造のセルグリフロジン、ならびにセルグリフロジンのプロドラッグ、特にセルグリフロジンエタボネートを含む、その水和物および溶媒和物、およびその結晶形態を含む、その薬学的に許容される形態を指す。その製造方法は、例えば特許出願EP1344780およびEP1489089に記載されている。
【0067】
上記式(16)の化合物、すなわちソタグリフロジン、およびその製造は、例えばWO2008/042688またはWO2009/014970に記載されている。
好ましいSGLT-2阻害剤はグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体である。任意に、グルコピラノシル基の1つまたは複数のヒドロキシル基は、このような1つまたは複数のSGLT-2阻害剤において、(C1-18-アルキル)カルボニル、(C1-18-アルキル)オキシカルボニル、フェニルカルボニルおよびフェニル-(C1-3-アルキル)-カルボニルから選択される基でアシル化されていてもよい。
【0068】
さらに好ましいのは本明細書で上記に開示されている式(1)のグルコピラノシル置換ベンゾニトリル誘導体である。しかしさらに好ましいのは、式(18)のグルコピラノシル置換ベンゾニトリル誘導体:
【化43】
(式中、
R
3は、シクロプロピル、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル、3-メチル-ブタ-1-イル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-ヒドロキシ-シクロプロピル、1-ヒドロキシ-シクロブチル、1-ヒドロキシ-シクロペンチル、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル、エチニル、エトキシ、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2-ヒドロキシル-エチル、ヒドロキシメチル、3-ヒドロキシ-プロピル、2-ヒドロキシ-2-メチル-プロパ-1-イル、3-ヒドロキシ-3-メチル-ブタ-1-イル、1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル、2,2,2-トリフルオロ-1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル、2,2,2-トリフルオロ-1-ヒドロキシ-1-トリフルオロメチル-エチル、2-メトキシ-エチル、2-エトキシ-エチル、ヒドロキシ、ジフルオロメチルオキシ、トリフルオロメチルオキシ、2-メチルオキシ-エチルオキシ、メチルスルファニル、メチルスルフィニル、メチルスルホニル、エチルスルフィニル、エチルスルホニル、トリメチルシリル、(R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシまたは(S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシまたはシアノを表し、R
3は好ましくはシクロプロピル、エチル、エチニル、エトキシ、(R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシまたは(S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシから選択され、R
3は最も好ましくはシクロプロピルである)、
またはその誘導体であり、β-D-グルコピラノシル基の1つまたは複数のヒドロキシル基が(C
1-18-アルキル)カルボニル、(C
1-18-アルキル)オキシカルボニル、フェニルカルボニルおよびフェニル-(C
1-3-アルキル)-カルボニルから選択される基でアシル化されている。
【0069】
好ましくは、このようなSGLT-2阻害剤は式(2)に示されているようなベラグリフロジン(velaglifozin)である。任意に、ベラグリフロジンのβ-D-グルコピラノシル基の1つまたは複数のヒドロキシル基は、(C1-18-アルキル)カルボニル、(C1-18-アルキル)オキシカルボニル、フェニルカルボニルおよびフェニル-(C1-3-アルキル)-カルボニルから選択される基でアシル化されていてもよい。
よって、好ましい実施形態では、本発明による少なくとも1種のSGLT-2阻害剤はグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体のSGLT-2阻害剤、好ましくは式(1)のSGLT-2阻害剤、より好ましくは式(18)のSGLT-2阻害剤であり、またはより好ましくは式(2)のSGLT-2阻害剤、すなわちベラグリフロジンであり、いずれの場合も本明細書の上記定義された通りである。
【0070】
本明細書で、本発明によるSGLT-2阻害剤および/またはこれらの使用についての言及は、特に述べられていない限り、薬学的に許容される形態のSGLT-2阻害剤を包含する。
本発明によると、任意の薬学的に許容される形態のSGLT-2阻害剤、例えば式(1)、好ましくは式(18)、より好ましくは式(2)を使用することができる。例えば、結晶形態を使用することができる。プロドラッグ形態もまた本発明に包含される。
プロドラッグ形態は、例えば、エステルおよび/または水和物を含むことができる。「プロドラッグ」という用語はまた、プロドラッグが哺乳動物の対象に投与された場合、本発明の活性化合物をin vivoで放出する任意の共有結合した担体を含むことも意図する。本発明の化合物中に存在する官能基を修飾して、この修飾が所定の操作によりまたはin vivoで開裂されて、本発明の親化合物となるように、本発明の化合物のプロドラッグを調製することができる。
【0071】
本発明による使用のための結晶形態は、SGLT-2阻害剤と1種または複数のアミノ酸との複合体(例えばWO2014/016381を参照されたい)-いわゆる共結晶を含む。このような使用のためのアミノ酸は天然アミノ酸であってよい。アミノ酸はタンパク新生アミノ酸(L-ヒドロキシプロリンを含む)または非タンパク新生アミノ酸であってもよい。アミノ酸はDアミノ酸またはLアミノ酸であってよい。一部の好ましい実施形態では、アミノ酸はプロリン(Lプロリンおよび/またはDプロリン、好ましくはLプロリン)である。例えば、ベラグリフロジンとプロリン(例えばLプロリン)および結晶水の結晶性複合体/共結晶が好ましい。
よって、1種または複数の天然アミノ酸と、SGLT-2阻害剤との結晶性複合体/共結晶、例えば、1種または複数の天然アミノ酸とグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体SGLT-2阻害剤、好ましくは式(1)のSGLT-2阻害剤、より好ましくは式(18)のSGLT-2阻害剤、またはより好ましくは式(2)のSGLT-2阻害剤(ベラグリフロジン)との結晶性複合体/共結晶が本明細書で開示される。
【0072】
ある特定の医薬活性は、それが市販の医薬として承認される以前に薬学的活性のある薬剤により満たされるべき基本的必要条件である。しかし、薬学的活性のある薬剤が従わなければならない様々な追加の必要条件が存在する。これら必要条件は様々なパラメーターに基づき、これらパラメーターは活性物質それ自体の性質に関連している。限定的ではないが、これらパラメーターの例は、様々な環境条件下での活性剤の安定性、医薬製剤の生産中のその安定性、および最終医薬組成物における活性剤の安定性である。医薬組成物を調製するために使用される医薬有効物質はできるだけ純粋であるべきであり、長期的貯蔵におけるその安定性は様々な環境条件下で保証されなければならない。これは、実際の活性物質に加えて、例えば、その分解生成物を含有する医薬組成物の使用を阻止するために必要不可欠である。このような場合、医薬における活性物質の含有量は特定されたものよりも少なくなり得る。
製剤における医薬の均一な分布は、特に医薬が低用量で付与されなければならない場合、重大な要素である。均一な分布を確実にするため、活性物質の粒径は、例えば粉砕により適切なレベルまで減少させることができる。プロセス中には硬質な状態が必要とされるにもかかわらず、粉砕(または微粉化)の副作用としての医薬有効物質の分解はできるだけ回避しなければならないので、活性物質が粉砕プロセス全体にわたり極めて安定していることが絶対必要とされる。活性物質が粉砕プロセス中に十分に安定している場合に限り、均質な医薬製剤を生成することが可能であり、均質な医薬製剤は常に特定された量の活性物質を再現可能な方式で含有する。
【0073】
所望の医薬製剤を調製するための粉砕プロセスに生じ得る別の問題は、このプロセスにより引き起こされるエネルギーの入力および結晶の表面上の応力である。これはある特定の状況において、多形の、非晶質化への変化または結晶格子における変化をもたらし得る。医薬製剤の薬学的品質は、活性物質が同じ結晶形態を常に有することを必要とするので、結晶性の活性物質の安定性および特性は、同様にこの観点からも厳格な必要条件の対象となる。
医薬有効物質の安定性もまた、特定の医薬の貯蔵寿命を判定するために医薬組成物において重要である;貯蔵寿命は医薬が任意の危険性なしに投与され得る間の時間の長さである。したがって、様々な貯蔵条件下での上記の医薬組成物における医薬の高い安定性は、患者と製造業者の両方にとって追加の利点である。
水分の吸収は、水の取り込みにより引き起こされる質量の増加により、医薬有効物質の含有量を減少させる。水分を吸収する傾向のある医薬組成物は、貯蔵中、例えば、適切な乾燥剤の添加により、またはそれが水分から保護される環境に薬物を保管することにより、水分から保護しなければならない。したがって、好ましくは、医薬有効物質はよくてもわずかな吸湿性を有する程度であるべきである。
【0074】
さらに、明確な結晶形態の入手の可能性は、再結晶化による原薬の精製を可能にする。
上で示された必要条件とは別に、一般的に心に留めておくべきことは、医薬組成物の固体状態に対する任意の変化は、その物理的および化学的安定性を改善することが可能であり、同じ医薬の安定性の低い形態よりも著しい利点をもたらすことである。
天然アミノ酸とSGLT-2阻害剤(例えばグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体、または式(1)もしくは式(18)のSGLT-2阻害剤、または、特に式(2)のSGLT-2阻害剤、すなわちベラグリフロジン(velaglilfozin))との結晶性複合体/共結晶は、本明細書でこれより以前に記述されている重要な必要条件を満たす。
本発明による使用のためのSGLT-2阻害剤は、医薬組成物として調製することができる。これらは固体製剤または液体製剤として調製することができる。どちらの場合にも、これらは経口投与、好ましくは経口投与のための液体形態で(例えばWO2017/032799)好ましくは調製される。しかし、SGLT-2阻害剤はまた、例えば、非経口投与に対しても調製することができる。固体製剤は、錠剤、顆粒状形態、および他の固体形態、例えば、坐剤を含む。固体製剤の中でも、錠剤および顆粒状形態が好ましい。
【0075】
本発明の意図内での医薬組成物は、本発明によるSGLT-2阻害剤および1種または複数の賦形剤を含んでもよい。意図した医学的作用を可能にするまたは支持する任意の賦形剤を使用することができる。このような賦形剤は当業者に対して利用可能である。有用な賦形剤は、例えば、粘着防止剤(粉末(粒剤)とパンチ面との間の接着を減少させ、よって錠剤パンチへの固着を阻止するために使用される)、結合剤(成分を一緒に保持する溶液結合剤または乾式結合剤)、コーティング(空気中の水分による劣化から錠剤成分を保護し、大きなまたは不快な味の錠剤を飲み込みやすくする)、崩壊剤(希釈による錠剤の粉砕を可能にする)、充填剤、希釈剤、香味料、色、流動促進剤(流れ調整剤-粒子間摩擦および接着を減少させることで粉末の流れを促進する)、滑沢剤(成分が一緒に群がり、錠剤パンチまたはカプセル充填機に固着するのを阻止する)、保存剤、吸着剤、甘味剤などである。
本発明による製剤、例えば固体製剤は、糖および糖アルコール、例えばマンニトール、ラクトース、デンプン、セルロース、微結晶性セルロースおよびセルロース誘導体、例えばメチルセルロースなどの群から選択される担体および/または崩壊剤を含み得る。
【0076】
ネコ科動物に適した製剤に対する製造手順は当業者には公知であり、固体製剤に対して、例えば、直圧縮、乾式造粒および湿式造粒法を含む。直圧縮プロセスでは、活性成分およびすべての他の賦形剤は圧縮装置内に一緒に配置し、これに圧縮装置を直接適用して、この材料をプレスして錠剤を得ることができる。生成した錠剤は、その後コーティングして、例えば、最新技術から公知の材料により、これらを物理的におよび/または化学的に保護してもよい。
例えば単回液体用量などの投与のための単位、または固体製剤の単位、例えば錠剤は、本発明による使用のために、0.1mg~10mg、または例えば、0.3mg~1mg、1mg~3mg、3mg~10mg;または5~2500mg、または例えば、5~2000mg、5mg~1500mg、10mg~1500mg、10mg~1000mg、または10~500mgのSGLT-2阻害剤を含んでもよい。当業者が理解しているように、ネコ科動物への投与のための、本明細書で開示されている固体製剤、または任意の製剤中のSGLT-2阻害剤の含有量は、必要に応じて、治療すべきネコ科動物の体重に比例して増加または低減させることができる。
一実施形態では、本発明による使用のための医薬組成物は、経口または非経口投与に対して、好ましくは経口投与に対して設計されている。特に経口投与は、賦形剤により改善され、賦形剤は、例えば、記載されているような意図した患者に対して、医薬組成物の臭いおよび/または触覚特性を改変する。
【0077】
本発明による使用のためのSGLT-2阻害剤が経口投与に対して製剤化される場合、賦形剤が、例えば、ネコ科動物への投与に適した製剤をもたらす嗜好性および/または噛み応えの特性を付与することが好ましい。
液体製剤もまた好ましい。液体製剤は、例えば、溶剤、シロップ剤または懸濁剤であってよい。これらはネコ科動物に直接投与してもよいし、またはネコ科動物の飼料および/または飲料(例えば飲料水など)と混合してもよい。液体製剤の1つの利点(顆粒状形態の製剤と類似する)は、このような剤形は正確な投薬を可能にすることである。例えば、SGLT-2阻害剤は、ネコ科動物の体質量に比例して正確に投薬することができる。液体製剤の典型的な組成物は当業者には公知である。
当技術分野の熟練した医師は、本発明の使用に適した用量を決定することができる。好ましい単位の投薬単位として、mg/kg体重、すなわちネコ科動物の体質量当たりのSGLT-2阻害剤(単位mg)が挙げられる。本発明のSGLT-2阻害剤は、例えば、1日当たり0.01~10mg/kg体重の用量、例えば1日当たり0.01~5mg/kg体重、例えば1日当たり0.01~4mg/kg体重、例えば1日当たり0.01~3mg/kg体重、例えば1日当たり0.01~2mg/kg体重、例えば1日当たり0.01~1.5mg/kg体重、例えば1日当たり0.01~1mg/kg体重、例えば1日当たり0.01~0.75mg/kg体重、例えば1日当たり0.01~0.5mg/kg体重、例えば1日当たり0.01~0.4mg/kg体重;または1日当たり0.1~3.0mg/kg体重、好ましくは1日当たり0.2~2.0mg/kg体重、より好ましくは1日当たり0.1~1mg/kg体重、または1日当たり0.5~1mg/kg体重の用量で投与されてもよい。別の好ましい実施形態では、用量は1日当たり0.01~0.5mg/kg体重、より好ましくは1日当たり0.02~0.4mg/kg体重、例えば、1日当たり0.03~0.3mg/kg体重である。
当技術分野で熟練した医師は、所望の用量による投与に対する本発明のSGLT-2阻害剤を調製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【
図1】血漿非エステル化脂肪酸(NEFA)、コレステロールおよびベータ-ヒドロキシブチレート(hydroxybutyrat)(BHB)-ベラグリフロジンまたは対照での治療開始前(処置前)、および4週間の治療期間の終わり(処置後)のネコにおける個々のデータを示している。有意な治療による効果、血中脂質(NEFA、コレステロール)の増加およびBHBの血漿中濃度が注目される。
【実施例】
【0079】
以下の実施例は、本発明をさらに例示する役目を果たすが、これは、本明細書で開示されている本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
(実施例1)
臨床フィールド実験
可能なすべての表現型の心筋症(HCM、RCM、UCM、DCMおよびARVC)を有し、臨床症候(例えば、うっ血性心不全)があるまたはない、顧客の所有するネコ患者(1才より上)を経口的におよび1日1回1mg/kg体重の用量のベラグリフロジンで処置する。
実験期間の間、体重、ボディコンディションスコア、血圧および循環器(心拍数、リズム、奔馬音または心雑音の存在および強度を含む)を、臨検中、研究者によりその場で定期的に試験する。さらに、胸部の放射線写真(右側面および背腹の視野)、心エコー検査(LV中隔および自由壁の厚さ、LVIDD、LVIDS(FS%)、LA/Ao、LAD、駆出率を含む)および心電図記録を実施する。できるだけ完全な概要を得るために、定期的な血液試験は、完全な血液学(白血球(WBC)、WBC百分率、赤血球、ヘモグロビン、ヘマトクリット値、ハインツ小体、血小板カウント数)、生化学パネル(全タンパク質、アルブミン、グロブリン、アルカリホスファターゼ(ALP)、アラニントランスアミナーゼ(ALT)、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)、総ビリルビン、クレアチニン、血液ウレア窒素またはウレア(BUN)、カルシウム、ナトリウム、カリウム、塩化物、リン、グルコース、コレステロール、トリグリセリド、フルクトサミン)、総T4の測定、ケトン体および心臓バイオマーカー(血漿NT-proBNP、心臓トロポニンI、ST2)を含む。
【0080】
目的とする変数は、心臓の死亡、心臓に関連した安楽死およびうっ血性心不全の(再)発生と定義される事象の数ならびに事象までの時間(ネコ患者の生存時間)である。
臨床フィールド治験の結果は、最高の標準的治療(SoC)を受けたプラセボと比較して、生存時間および事象までの時間の有意なおよび臨床的に関連する延長(事象とは心臓の死亡/安楽死およびうっ血性心不全の(再)発生と定義された)を示している。さらに、臨床的パラメーター(例えば食欲、活動レベルおよび呼吸)は、最高のSoCを受けたプラセボと比較して、有意に改善している。
【0081】
(実施例2)
探索的臨床フィールド実験
導入、材料および方法:
探索的臨床フィールド実験(予測的、ベースライン制御された、オープンラベルおよびマルチサイト)では、ネコにおいて心筋症および心不全を処置するためのベラグリフロジンの例外的使用に対する適格性について、実環境条件下で、4匹のネコをスクリーニングした。肥大型心筋症(HCM)および最近心不全を有する2匹のネコが、組み入れ基準を満たすことが判明し、SGLT-2-阻害剤ベラグリフロジンを1日当たり1回1mg/kg体重の用量で用いて経口的に処置した。1人のペットの飼い主が処置体制に対して非コンプライアンスを示したため、1匹のネコのみが、計画された全90日の期間にわたり実験に留まった。臨床症候(適性動物医薬品投与規範(Good Veterinary Practice)に従い健康診断で評価)、心臓超音波パラメーター(各臨検において常に同じ人間が、ネコの心筋症の分類、診断、および対応に対するACVIMコンセンサスステートメントガイドラインに従い行った)、血液パラメーター(IDEXX Bioresearch Laboratories、Germanyにより評価)、事象の数(心不全の再発生、心臓が関連した死亡または安楽死)および事象までの時間(日数)を各臨検において、それぞれの症例報告形態で記録した。
【0082】
結果:
ケース101は10才の、雌の避妊手術を受けたメインクーンネコであり、肥大型心筋症(HCM)および過去のうっ血性心不全と診断された。0日目(実験開始)において、ネコは飼い主のケアの下、臨床的に安定し、任意の追加薬物は与えなかった。処置期間中(1日目から90日目まで)ネコはいかなる有害事象もいかなる心不全もまたは肺浮腫再発生も経験しなかった。ネコは良好な全般的な健康状態で実験を終了した。
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
結論:
スクリーニング来診(処置前)では、ネコ101の病態生理学的特徴は、肥大型心筋症(HCM)を示した。HCM表現型は、類似の程度の心室肥厚ならびに心室中隔の肥厚(IVSd)を生成することが可能な異常な負荷条件の不在下で、左心室壁肥厚の増加(LVWT)を特徴とする。疾患のさらなる特徴はスクリーニングでネコ101においても示されたような左心房(LA)の増加である。
心臓バイオマーカーN末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)は、スクリーニングにおいて応力のかかった心筋を示した。
表2のすべての心臓超音波パラメーターおよび表3に示されている心臓バイオマーカーならびに異常な心雑音は、処置期間中連続的に改善され、よってベラグリフロジンでの処置はネコにおける、肥大型心筋症(HCM)および/または肥大型心筋症(HCM)に起因する心不全に対して有益な治療効果を有することを明確に実証している。
【0087】
【国際調査報告】