(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】固定前方傾斜ロータを使用して剛体翼の空気力学をシミュレートする垂直離着陸航空機
(51)【国際特許分類】
B64C 27/26 20060101AFI20230323BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20230323BHJP
B64C 11/00 20060101ALI20230323BHJP
B64D 27/24 20060101ALI20230323BHJP
B64C 27/52 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
B64C27/26
B64C27/08
B64C11/00
B64D27/24
B64C27/52
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568773
(86)(22)【出願日】2020-05-21
(85)【翻訳文提出日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 US2020034055
(87)【国際公開番号】W WO2020237082
(87)【国際公開日】2020-11-26
(32)【優先日】2019-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520339482
【氏名又は名称】ジョビー エアロ インク
【氏名又は名称原語表記】JOBY AERO, INC.
【住所又は居所原語表記】340 Woodpecker Ridge Santa Cruz,CA,U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100207251
【氏名又は名称】矢島 弘文
(72)【発明者】
【氏名】ジョーベン ビバート
(72)【発明者】
【氏名】アレックス ストール
(72)【発明者】
【氏名】グレゴール ベブル ミキッチ
(57)【要約】
垂直離着陸(VTOL)動作および前進飛行動作の両方に対して、固定ロータを使用する、垂直離着陸航空機。ロータは、合成翼を形成し、かつ、高い翼幅効率を達成するように配置される。ロータは、合成翼の翼幅にわたって、揚力を均一にするように配置される。合成翼はまた、前進飛行中に揚力を提供するだけでなく構造的な支持体を提供し得る、狭い前方翼型部および狭い後方翼型部を有してもよく、または単一の中央翼を有してもよい。翼ロータは前方に傾斜しており、水平飛行中に前方への推進力を供給する。
【選択図】
図11A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物本体と、右側翼のアセンブリと、左側翼のアセンブリと、水平推力後方ロータアセンブリと、を備えた、従来の翼の空気力学をシミュレートするためにロータを使用して垂直離陸および水平飛行に適合した空中乗物であって、
前記右側翼のアセンブリは、
右側翼と、
複数の右側翼のロータアセンブリと、
を備え、
前記左側翼のアセンブリは、
左側翼と、
複数の左側翼のロータアセンブリと、
を備え、
前記水平推力後方ロータアセンブリは、
通常の飛行中に水平推力を提供するように適合されており、
前記複数の右側翼のロータアセンブリは、
前記右側翼のロータアセンブリのそれぞれのスピン軸が航空機構造に対して固定位置で前方に傾斜しており、かつ、
前進飛行中に電力の管理下にあるように適合されており、
前記右側翼の翼内側部に結合され、前記右側翼の前方にある、右側前方翼内側ロータアセンブリと、
前記右側翼の翼内側部に結合され、前記右側翼の後方にある、右側後方翼内側ロータアセンブリと、
前記右側翼の先端に結合された右側の翼外側ロータアセンブリと、を備え、
前記複数の左側翼のロータアセンブリは、
前記左側翼のロータアセンブリのそれぞれのスピン軸が航空機構造に対して固定位置で前方に傾斜しており、かつ、
前進飛行中に電力の管理下にあるように適合されており、
前記左側翼の翼内側部に結合され、前記左側翼の前方にある、左側前方翼内側ロータアセンブリと、
前記左側翼の翼内側部に結合され、前記左側翼の後方にある、左側後方翼内側ロータアセンブリと、
前記左側翼の先端に結合された左側の翼外側ロータアセンブリと、を備えている、
ことを特徴とする空中乗物。
【請求項2】
請求項1に記載の空中乗物であって、さらに、
前記右側翼のロータアセンブリのスピン軸が、通常の前進飛行において、空中乗物の水平飛行線の法線に対して8~12度の範囲内のある角度で前方に傾斜しており、かつ、
前記左側翼のロータアセンブリのスピン軸が、通常の前進飛行において、空中乗物の水平飛行線の法線に対して8~12度の範囲内のある角度で前方に傾斜している、
ことを特徴とする空中乗物。
【請求項3】
請求項1に記載の空中乗物であって、さらに、
前記右側翼のロータアセンブリのスピン軸が、通常の前進飛行において、空中乗物の水平飛行線の法線に対して5~15度の範囲内のある角度で前方に傾斜しており、かつ、
前記左側翼のロータアセンブリのスピン軸が、通常の前進飛行において、空中乗物の水平飛行線の法線に対して5~15度の範囲内のある角度で前方に傾斜している、
ことを特徴とする空中乗物。
【請求項4】
請求項1に記載の空中乗物であって、さらに、
前記右側翼のロータアセンブリのスピン軸が、通常の前進飛行において、空中乗物の水平飛行線の法線に対して5~20度の範囲内のある角度で前方に傾斜しており、かつ、
前記左側翼のロータアセンブリのスピン軸が、通常の前進飛行において、空中乗物の水平飛行線の法線に対して5~20度の範囲内のある角度で前方に傾斜している、
ことを特徴とする空中乗物。
【請求項5】
請求項2に記載の空中乗物であって、さらに、
前記空中乗物が制御可能な操縦翼面を有さない、
ことを特徴とする空中乗物。
【請求項6】
請求項2に記載の空中乗物であって、さらに、
前記右側翼のロータアセンブリおよび前記左側翼のロータアセンブリが、それぞれ、
電気モータと、
前記電気モータの回転部分に結合された上部の中心ハブと、
前記中心ハブに結合された複数の羽根と、
を備えることを特徴とする空中乗物。
【請求項7】
請求項6に記載の空中乗物であって、さらに、
前記上部の中心ハブが平坦化されたハブである、
ことを特徴とする空中乗物。
【請求項8】
請求項6に記載の空中乗物であって、さらに、
前記複数の羽根が描く円の直径に対する前記上部の中心ハブの直径の比が0.25より大きい、
ことを特徴とする空中乗物。
【請求項9】
請求項6に記載の空中乗物であって、さらに、
前記複数の羽根が描く円の直径に対する前記上部の中心ハブの直径の比が0.30より大きい、
ことを特徴とする空中乗物。
【請求項10】
請求項6に記載の空中乗物であって、さらに、
前記右側翼のロータアセンブリおよび前記左側翼のロータアセンブリが、それぞれ、前記上部の中心ハブの後方に延びる下部カウリングを備える、
ことを特徴とする空中乗物。
【請求項11】
請求項9に記載の空中乗物であって、さらに、
前記右側翼のロータアセンブリおよび前記左側翼のロータアセンブリが、それぞれ、前記上部の中心ハブの後方に延びる下部カウリングを備える、
ことを特徴とする空中乗物。
【請求項12】
請求項1に記載の空中乗物であって、さらに、
前記複数の右側翼のロータアセンブリのそれぞれが、前記空中乗物のほぼ重心を通る線上で前記航空機の中心線からほぼ等距離にある、対になる左側翼のロータアセンブリを有する、
ことを特徴とする空中乗物。
【請求項13】
請求項2に記載の空中乗物であって、さらに、
前記複数の右側翼のロータアセンブリのそれぞれが、前記空中乗物のほぼ重心を通る線上で前記航空機の中心線からほぼ等距離にある、対になる左側翼のロータアセンブリを有する、
ことを特徴とする空中乗物。
【請求項14】
請求項4に記載の空中乗物であって、さらに、
前記複数の右側翼のロータアセンブリのそれぞれが、前記空中乗物のほぼ重心を通る線上で前記航空機の中心線からほぼ等距離にある、対になる左側翼のロータアセンブリを有する、
ことを特徴とする空中乗物。
【請求項15】
乗物本体と、右側翼のアセンブリと、左側翼のアセンブリと、水平推力後方ロータアセンブリと、を備えた、従来の翼の空気力学をシミュレートするためにロータを使用して垂直離陸および水平飛行に適合した空中乗物であって、
前記右側翼のアセンブリは、
右側翼と、
複数の右側翼のロータアセンブリと、
を備え、
前記左側翼のアセンブリは、
左側翼と、
複数の左側翼のロータアセンブリと、
を備え、
前記水平推力後方ロータアセンブリは、
通常の飛行中に水平推力を提供するように適合されており、
前記複数の右側翼のロータアセンブリは、
前記右側翼のロータアセンブリのそれぞれのスピン軸が航空機構造に対して固定位置で前方に傾斜しており、かつ、
前進飛行中に電力の管理下にあるように適合されており、
前記右側翼の翼内側部に結合され、前記右側翼の前方にある、右側前方翼内側ロータアセンブリと、
前記右側翼の翼内側部に結合され、前記右側翼の前方にある、右側前方翼内側ロータアセンブリと、
前記右側翼の翼外側部に結合され、前記右側翼の後方にある、右側後方翼外側ロータアセンブリと、
前記右側翼の翼外側部に結合され、前記右側翼の前方にある、右側前方翼外側ロータアセンブリと、を備え、
前記複数の左側翼のロータアセンブリは、
前記左側翼のロータアセンブリのそれぞれのスピン軸が航空機構造に対して固定位置で前方に傾斜しており、かつ、
前進飛行中に電力の管理下にあるように適合されており、
前記左側翼の翼内側部に結合され、前記左側翼の前方にある、左側前方翼内側ロータアセンブリと、
前記左側翼の翼内側部に結合され、前記左側翼の後方にある、左側後方翼内側ロータアセンブリと、
前記左側翼の翼外側部に結合され、前記左側翼の前方にある、左側前方翼外側ロータアセンブリと、
前記左側翼の翼外側部に結合され、前記左側翼の後方にある、左側後方翼外側ロータアセンブリと、を備えている、
ことを特徴とする空中乗物。
【請求項16】
請求項15に記載の空中乗物であって、さらに、
前記右側翼のロータアセンブリのスピン軸が、通常の前進飛行において、空中乗物の水平飛行線の法線に対して8~12度の範囲内のある角度で前方に傾斜しており、かつ、
前記左側翼のロータアセンブリのスピン軸が、通常の前進飛行において、空中乗物の水平飛行線の法線に対して8~12度の範囲内のある角度で前方に傾斜している、
ことを特徴とする空中乗物。
【請求項17】
請求項15に記載の空中乗物であって、さらに、
前記右側翼のロータアセンブリのスピン軸が、通常の前進飛行において、空中乗物の水平飛行線の法線に対して5~15度の範囲内のある角度で前方に傾斜しており、かつ、
前記左側翼のロータアセンブリのスピン軸が、通常の前進飛行において、空中乗物の水平飛行線の法線に対して5~15度の範囲内のある角度で前方に傾斜している、
ことを特徴とする空中乗物。
【請求項18】
請求項15に記載の空中乗物であって、さらに、
前記右側翼のロータアセンブリのスピン軸が、通常の前進飛行において、空中乗物の水平飛行線の法線に対して5~20度の範囲内のある角度で前方に傾斜しており、かつ、
前記左側翼のロータアセンブリのスピン軸が、通常の前進飛行において、空中乗物の水平飛行線の法線に対して5~20度の範囲内のある角度で前方に傾斜している、
ことを特徴とする空中乗物。
【請求項19】
請求項16に記載の空中乗物であって、さらに、
前記空中乗物が制御可能な操縦翼面を有さない、
ことを特徴とする空中乗物。
【請求項20】
請求項16に記載の空中乗物であって、さらに、
前記右側翼のロータアセンブリおよび前記左側翼のロータアセンブリが、それぞれ、
電気モータと、
前記電気モータの回転部分に結合された上部の中心ハブと、
前記中心ハブに結合された複数の羽根と、
を備えることを特徴とする空中乗物。
【請求項21】
固定された前方傾斜ロータを備えた垂直離着陸航空機の飛行方法であって、
それぞれのスピン軸が、通常の前進飛行における空中乗物の水平飛行線の法線に対してある角度で前方に傾斜している、複数の右側翼のロータアセンブリと複数の左側翼のロータアセンブリの出力を上げるステップと、
空中乗物をリフトオフして垂直離着陸構成で機首を上げ、それにより、前記複数の右側翼ロータアセンブリおよび前記複数の左側翼ロータアセンブリから主に垂直推力を生成するステップと、
前記垂直推力を使用して高度を上げるステップと、
前記前方傾斜した複数の右側翼のロータアセンブリおよび複数の左側翼のロータアセンブリから前方推力成分を得るために、空中乗物を前方にピッチングするステップと、
水平に推進するロータへの動力を増加させ、それにより、空中乗物の前進速度を増加させ、前記空中乗物の翼によって供給される揚力の量を増加させるステップと、
前記前方傾斜した複数の右側翼のロータアセンブリおよび複数の左側翼のロータアセンブリによって提供される揚力の、翼の揚力に対する比が0.05から0.50の範囲であるように、前記複数の右側翼のロータアセンブリおよび前記複数の左側翼のロータアセンブリへの電力を減少させることにより、前方飛行モードで飛行するステップと、
からなることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、
前記前方傾斜した複数の右側翼のロータアセンブリおよび複数の左側翼のロータアセンブリによって提供される揚力の、翼の揚力に対する比が、0.10から0.35の範囲にある、
ことを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項21に記載の方法であって、さらに、
異なる翼ロータアセンブリによって提供される推力を区別することによって、空中乗物の操縦に従事するステップ、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項22に記載の方法であって、さらに、
異なる翼ロータアセンブリによって提供される推力とトルクを区別することによって、空中乗物の操縦に従事するステップ、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項21に記載の方法であって、さらに、
異なる翼ロータアセンブリによって提供される推力とトルクを区別することによってのみ、空中乗物の操縦に従事するステップ、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項22に記載の方法であって、さらに、
異なる翼ロータアセンブリによって提供される推力とトルクを区別することによってのみ、空中乗物の操縦に従事するステップ、
を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中乗物に関し、ロータを使用して剛体翼の空気力学をシミュレートする空中乗物に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、Mikicにより2019年5月21日に出願された出願米国仮特許出願第62/850,943号に対する優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本出願は、Mikic等により2016年11月2日に出願された米国仮特許出願第62/416,168号に対する優先権を主張している、Mikic等により2017年11月2日に出願された米国特許出願第15/802,386号の一部を継続したものであり、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0003】
垂直離着陸(VTOL)動作および前進飛行動作の両方に対して、固定ロータを使用する、垂直離着陸航空機。ロータは、合成翼を形成し、且つ、高い翼幅効率を達成するように配置される。ロータは、合成翼の翼幅にわたって、揚力を均一にするように配置される。翼ロータは前方に傾斜しており、水平飛行中に前方への推進力を供給する。翼ロータは、前進傾斜構成で固定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1A】本発明の幾つかの実施形態による、積み重ねられた逆回転するプロペラを使用する合成翼を備えた空中乗物の陰影付きレンダリングである。
【
図1B】本発明の幾つかの実施形態による、積み重ねられた逆回転するプロペラを使用する合成翼を備えた空中乗物の陰影付きレンダリングである。
【
図1C】本発明の幾つかの実施形態による、積み重ねられた逆回転するプロペラを使用する合成翼を備えた空中乗物の陰影付きレンダリングである。
【
図1D】本発明の幾つかの実施形態による、積み重ねられた逆回転するプロペラを使用する合成翼を備えた空中乗物の陰影付きレンダリングである。
【
図2A】本発明の幾つかの実施形態による、積み重ねられた逆回転するプロペラを使用する合成翼を備えた空中乗物の図面である。
【
図2B】本発明の幾つかの実施形態による、積み重ねられた逆回転するプロペラを使用する合成翼を備えた空中乗物の図面である。
【
図2C】本発明の幾つかの実施形態による、積み重ねられた逆回転するプロペラを使用する合成翼を備えた空中乗物の図面である。
【
図2D】本発明の幾つかの実施形態による、積み重ねられた逆回転するプロペラを使用する合成翼を備えた空中乗物の図面である。
【
図3】本発明の幾つかの実施形態による、前進飛行における空中乗物の解決策を示す図である。
【
図4A】本発明の幾つかの実施形態による、合成翼を備えた空中乗物の陰影付きレンダリングである。
【
図4B】本発明の幾つかの実施形態による、合成翼を備えた空中乗物の陰影付きレンダリングである。
【
図5A】本発明の幾つかの実施形態による、合成翼を備えた空中乗物の図面である。
【
図5B】本発明の幾つかの実施形態による、合成翼を備えた空中乗物の図面である。
【
図5C】本発明の幾つかの実施形態による、合成翼を備えた空中乗物の図面である。
【
図6A】様々なパラメータ値に対する揚力-抗力曲線である。
【
図6B】様々なパラメータ値に対する揚力-抗力曲線である。
【
図6C】様々なパラメータ値に対する揚力-抗力曲線である。
【
図6D】様々なパラメータ値に対する揚力-抗力曲線である。
【
図6E】様々なパラメータ値に対する揚力-抗力曲線である。
【
図6F】様々なパラメータ値に対する揚力-抗力曲線である。
【
図6G】様々なパラメータ値に対する揚力-抗力曲線である。
【
図7】本発明の幾つかの実施形態による、長手方向に互い違いに配置されたロータを使用する合成翼を備えた空中乗物の図である。
【
図8】本発明の幾つかの実施形態による、垂直方向に互い違いに配置されたロータを使用する合成翼を備えた空中乗物の図である。
【
図9A】異なる乗物構成に対する揚力の均一性を示す略図である。
【
図9B】異なる乗物構成に対する揚力の均一性を示す略図である。
【
図9C】異なる乗物構成に対する揚力の均一性を示す略図である。
【
図9D】異なる乗物構成に対する揚力の均一性を示す略図である。
【
図9E】異なる乗物構成に対する揚力の均一性を示す略図である。
【
図10A】本発明の幾つかの実施形態によるロータの図である。
【
図10B】本発明の幾つかの実施形態によるロータの図である。
【
図11A】本発明のいくつかの実施形態による、翼先端ロータを備えた空中乗物の図である。
【
図11B】本発明のいくつかの実施形態による、翼先端ロータを備えた空中乗物の図である。
【
図11C】本発明のいくつかの実施形態による、翼先端ロータを備えた空中乗物の図である。
【
図11D】本発明のいくつかの実施形態による、翼先端ロータを備えた空中乗物の図である。、
【
図12A】本発明のいくつかの実施形態による、翼先端ロータを備えた空中乗物の側面図である。
【
図12B】本発明のいくつかの実施形態による、翼先端ロータを備えた空中乗物の側面図である。
【
図13A】本発明のいくつかの実施形態によるロータのカウリングの図である。
【
図13B】本発明のいくつかの実施形態によるロータのカウリングの図である。
【
図13C】本発明のいくつかの実施形態によるロータのカウリングの図である。
【
図14A】本発明のいくつかの実施形態によるカウリングおよび羽根を備えたロータの図である。
【
図14B】本発明のいくつかの実施形態によるカウリングおよび羽根を備えたロータの図である。
【
図14C】本発明のいくつかの実施形態によるカウリングおよび羽根を備えたロータの図である。
【
図15A】本発明のいくつかの実施形態によるスパーおよびロータアセンブリの図である。
【
図15B】本発明のいくつかの実施形態によるスパーおよびロータアセンブリの図である。
【
図15C】本発明のいくつかの実施形態によるスパーおよびロータアセンブリの図である。
【
図15D】本発明のいくつかの実施形態によるスパーおよびロータアセンブリの図である。
【
図15E】本発明のいくつかの実施形態によるスパーおよびロータアセンブリの図である。
【
図16A】本発明のいくつかの実施形態による、積み重ねられたロータを備えた空中乗物の図である。
【
図16B】本発明のいくつかの実施形態による、積み重ねられたロータを備えた空中乗物の図である。
【
図16C】本発明のいくつかの実施形態による、積み重ねられたロータを備えた空中乗物の図である。
【
図16D】本発明のいくつかの実施形態による、積み重ねられたロータを備えた空中乗物の図である。
【
図17A】本発明のいくつかの実施形態による、前方の翼先端ロータおよび後方の翼先端ロータを備えた空中乗物の図である。
【
図17B】本発明のいくつかの実施形態による、前方の翼先端ロータおよび後方の翼先端ロータを備えた空中乗物の図である。
【
図17C】本発明のいくつかの実施形態による、前方の翼先端ロータおよび後方の翼先端ロータを備えた空中乗物の図である。
【
図17D】本発明のいくつかの実施形態による、前方の翼先端ロータおよび後方の翼先端ロータを備えた空中乗物の図である。
【0005】
【0006】
【0007】
【0008】
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の幾つかの実施形態において、空中乗物は、合成翼または疑似翼として機能するように構成されたロータの配列を有する。ロータは、ロータ配列の揚力が、疑似翼の翼幅に沿って比較的均一な揚力を有するように、空中乗物本体に対して、および互いに対して配置される。合成翼は、(比較的)均一な揚力、および比較的均一な後部垂直速度(洗流)を生み出す。発生する渦巻き運動は、従来の翼型の翼と同様、翼先端に集中する。
【0027】
いくつかの実施形態において、ロータは、空中乗物本体に結合された構造体に固定して取り付けられる。ロータは、空中乗物の縦軸に沿って互い違いに配置してもよく、それによって縦軸に沿う差動推力は、ロータからの前進推力成分を供給するための乗物の前方へのピッチングを可能にする。いくつかの態様では、ピッチング制御はまた、エレベーター制御のような、他の手段を使用して実現してもよい。いくつかの実施形態において、ロータは、いくつかの明瞭に表現できる態様を有してもよい。いくつかの態様では、航空機は、ロータの推力を違えることによって、他の操縦翼面なしで、ピッチ、ロール、およびヨーを制御する。いくつかの態様では、航空機は、姿勢制御のための他の操縦翼面を持たない。
【0028】
幾つかの実施形態において、合成翼を構成するロータ配列は、ロータの前方に、短翼弦の前方翼を有してもよい。空中乗物は、離陸の間、垂直推力のためのロータを使用するので、空中乗物は、離陸動作の間、従来の翼からの有意な揚力を必要としない。短翼弦長の前方翼は、より速い対気速度での動作の間、前進飛行中の揚力を可能にする。空中乗物はまた、ロータの後方に、短い後方翼を有してもよい。短翼弦長を備えた後方翼は、より速い速度での前進飛行動作の間、揚力を供給してもよい。後方翼はまた、疑似翼の洗流を更に均一にしてもよい。前方翼および後方翼は、ロータを支持する支柱を支持する構造要素として、使用してもよい。前方翼および後方翼は、外側の端部で合体してもよく、このことは、強度および安定性を増加可能とし得る。加えて、ロータの配列の外側付近の(水平面内の)適所に設置される前方翼および後方翼は、ロータの回転する羽根の周りのシールドとして、ユーザおよび地上要員のための安全要素を供給する。
【0029】
幾つかの実施形態において、後方翼(後縁翼)だけが存在してもよい。幾つかの実施形態において、前方翼(前縁翼)だけが存在してもよい。幾つかの実施形態において、前方翼および後方翼の両方が存在する。いくつかの実施形態において、翼の前方および後方にロータを有し得る中央翼が存在する。
【0030】
幾つかの実施形態において、前進推力を供給するために、1つ以上のロータが使用される。幾つかの態様では、単一の推進型ロータは、空中乗物の後部で使用されてもよい。幾つかの実施形態において、翼ロータの回転軸は、垂直に対して傾斜してもよい。幾つかの実施形態において、翼ロータは、前方に傾斜してもよい。前方傾斜の翼ロータは、前進飛行中に、空中乗物の前進推力に寄与する。幾つかの実施形態において、前進飛行中の前進推力の合計は、前方傾斜の翼ロータと、空中乗物のロール軸に平行なスピン軸を備えた1つ以上の従来のロータ、との組み合わせから導き出される。
【0031】
空中乗物は、揚力が、前進飛行において翼と翼ロータとの両方によって供給されるように構築されてもよく、前進推進力が、尾部プロペラと前方傾斜の翼ロータとによって供給されるように構築されてもよい。
【0032】
前進飛行中の航空機の効率(揚力/抗力比)は、他の航空機パラメータをバランスさせながら、実現可能な限り高くなるように探求されてもよい。例えば、前進飛行中の航空機の速度に対する、前進飛行中の回転する翼ロータの先端速度の比は、効率を求めて設計する際に考慮するべき重要な比である。また、(翼と翼ロータを加えた)トータル揚力に対する、翼ロータによって供給される揚力の百分率は、効率を求めて設計する際に考慮するべき重要な比である。また、翼ロータ間の動力分布と、翼ロータおよび伝統的な前進推力プロペラ(例えば、尾部ロータ)の両方に伝えられるトータル動力の比は、効率を求めて設計する際に考慮するべき重要な比である。これらの比の間の関係は、複雑であってもよく、かつ、明白な最適化には役立たなくてよい。基礎となる設計パラメータは、翼ロータが、航空機を安全に離着陸させるのに十分な、垂直離着陸の間の垂直推力を供給する、というものである。
【0033】
本発明の実施形態による空中乗物は、翼ロータを使用する垂直離着陸に適合している。離陸のためには、翼ロータは、自身のホバリング毎分回転数の範囲にある速度まで回転上昇される。翼ロータが空中乗物の水平軸に対して前方傾斜させたスピン軸を有する実施形態では、空中乗物は、離着陸の間、翼ロータの平面が水平となるように機首を上げるであろう。離陸後、翼ロータがまだ動力を受けている間に、空中乗物は、尾部ロータのような、前方に押し進める(または前方に引っ張る)プロペラを回転させてもよい。空中乗物は前進速度を得るので、前縁翼および後縁翼によって揚力が生成され、または、他の実施形態においては中央翼によって揚力が生成され、そして、翼ロータによって供給される揚力の割合が減少する。航空機がその巡航速度に近づくにつれて、翼ロータは、通常、その毎分回転数を減少させるが、しかし翼ロータは、動力を受けたままであり、且つ、空中乗物のトータル揚力の一部を供給する。幾つかの態様では、翼ロータは、僅かな揚力しか供給しないが、航空機の姿勢制御を供給するために回転していて急速に回転上昇され得るような電力に、電力を下げられてもよい。
【0034】
本発明の実施形態による空中乗物は、個々のロータの速度を操作することによって、且つ、任意の更なる操縦翼面の必要性も無しに、必要な全ての操縦および姿勢調整を含めて、ホバリング、離陸、着陸、および前進飛行に従事することが可能であろう。幾つかの実施形態において、空中乗物は、エルロン、エレベーター、または任意の他の制御可能な操縦翼面を有さないであろう。そのような状況では、固定チルトロータが姿勢制御に使用されている場合、設計およびシステムのトータルでの単純さは有意な利点となる。幾つかの実施形態において、各翼に対する翼ロータは、直線に沿ってまたは曲線に沿って配列され、各ロータは、航空機本体から更に外に出ている。翼ロータはまた、ロータが航空機のロール軸に沿った異なる位置に存在するように、前方または後方に後退した構成であってもよい。他の実施形態において、前後のロータは、翼および航空機の質量中心のそれぞれ前後にある。ロール軸に沿った異なる位置にあることによって、翼ロータは、その場合、ピッチ軸の周りの制御を供給することが可能である。航空機本体から更に外に出た距離に間隔をとることによって、翼ロータは、ロール軸の周りの制御を供給することが可能である。
【0035】
いくつかの態様では、航空機の両側のいくつかのロータのいくつかは第1の方向に回転し、他のものは反対方向に回転する。そのような状況では、ヨーは、反対方向の回転に対して第1の方向に回転するロータの速度および/またはトルクを変えることによって、制御されてもよい。いくつかの態様では、航空機本体の各側のロータは、わずかに異なる前方傾斜角に設定されてもよい。そのような状況では、ヨー制御は、異なるロータおよびわずかに異なる傾斜角の相対速度および/または推力を変えることによって、実現されてもよい。
【0036】
幾つかの実施形態において、
図1Aから
図1Dの陰影付きレンダリングおよび
図2Aから
図2Dの線図に見られるように、空中乗物100は、積み重ねられた逆回転するプロペラを使用する右合成翼102および左合成翼103に結合された本体101を有する。この例示的な実施形態において、短翼弦の前縁翼107および短翼弦の後縁翼108に、複数のロータアセンブリ104が翼幅長に沿って設置される。ロータアセンブリ104は、前縁翼107および後縁翼108に結合された翼幅支持体109上に取り付けられる。翼先端部110は、前縁翼107を後縁翼108に合体させる。
【0037】
ロータアセンブリ104は、第1のプロペラ105および第2のプロペラ106を有してもよい。幾つかの態様では、第1のプロペラ105および第2のプロペラ106は、反対方向に回転する。そのような構成において、一方のプロペラの前縁は、ロータのスピン軸の翼外側で前に進み、且つ、他方のプロペラの前縁は、プロペラのスピン軸の翼内側で前に進む。前進飛行モードでは、プロペラ羽根は、支配的な対気速度の風に対して後退する時よりも、支配的な対気速度の風の中に進入する時に、高い推力を有するであろう。逆回転する同軸プロペラによって、下向きの推力は、ロータ軸の翼内側で、およびロータ軸の翼外側で均一化される。
【0038】
例示的な実施形態において、空中乗物は、一人の乗客を収容すると共に、315kgの離陸質量を有し得る。翼の翼幅は6mであってもよく、且つ、乗物の長さは3.5m、高さは1.5mであってもよい。疑似翼は、各々が4つの同軸ロータアセンブリであってもよく、各々は、一対の逆回転するプロペラを備える。各プロペラは3つの羽根を有し、その場合の羽根翼弦は、75%半径で0.05mである。空中乗物は、0.5m平均の翼弦を備えた短翼弦の前部翼、および0.75m平均の翼弦を備えた短翼弦の後部翼を有する。理想化された巡航速度は100ノット(約51.4m/s)であり、その場合の最高巡航速度は150ノット(約77.2m/s)である。理想的な巡航での電力消費は20kWであり、且つ、ホバリングモードでの電力消費は80kWである。バッテリー質量は50kgであり、且つ、乗物の航続距離は50マイル(約80.5km)である。
【0039】
合成翼のある態様においては、ロータが、合成翼の翼幅に沿って比較的に均一な推力を供給するように構成される。1つのアプローチは、上述のように、ロータアセンブリの逆回転するプロペラが、疑似翼の翼幅に沿って、互いに対して隣接して配置される、というものである。同軸の逆回転するプロペラを使用しない別のアプローチは、重なり合う、後退する羽根領域および前進する羽根領域を持つプロペラを有する、というものである。例えば、ロータは、翼外側で前進する羽根、翼内側で後退する羽根を用いて配置してもよい。このロータからちょっと翼内側に、翼外側で前進する羽根を備えた別のロータが存在してもよい。ロータは、この重なりを許容するべく、垂直方向に一定の間隔で配置してもよい。幾つかの態様では、ロータは、この重なりを許容するべく、縦軸に沿って一定の間隔で配置してもよい。
【0040】
図3は、合成翼の機能的な態様を示し、ここでこの合成翼は、例示的な実施形態として、乗物本体の両側に3つの逆回転するロータアセンブリを備えた空中乗物を使用している。図の左側は、翼の背後の垂直速度を示し、そして図の右側は、渦巻き運動の大きさを表す。合成翼の設計の目標は、合成翼の翼幅にわたる揚力の変動を減少させることである。翼の翼幅に沿った揚力の変動の減少は、翼の背後の垂直速度をモデル化することによって、明らかになるかもしれない。図の左側は、翼幅に沿った垂直速度の比較的安定な量を示すが、このことは、3つの逆回転するロータアセンブリを使用した合成翼が、空力的な意味において、中空でない翼型形状を使用して構築された一般的な翼として、機能することを実証している。
【0041】
図の右側は、翼の翼幅に沿った、および翼先端における、渦巻き運動の大きさを示す。翼幅に沿った垂直速度の均一性は、上で議論したように、第一近似として、渦巻き運動の大きさの同一基準の均一性を示すはずである。合成翼の中に配列されたロータを使用する場合、翼幅に沿って高い渦巻き運動の個所を導入することは、本当に起こり得ることである。ロータの位置は、翼幅に沿って発生する渦巻き運動の大きさを最小化するのに、非常に重要である。
【0042】
図3に見られる結果は、モデル化された合成翼についての出力を表してはいるが、時間上での羽根位置の変動に関連する出力には、ある程度の時間に依存する変動があることが理解される。
【0043】
幾つかの実施形態において、
図4Aから
図4Bの陰影付きレンダリングおよび
図5Aから
図5Cの線図において見られるように、空中乗物200は、翼に取り付けられたロータを使用する、右合成翼202および左合成翼203に結合された本体201を有する。この例示的な実施形態では、短翼弦の前縁翼207および短翼弦の後縁翼208によって、複数の翼ロータアセンブリ204が、翼幅長に沿って設置される。翼ロータアセンブリ204は、前縁翼207および後縁翼208に結合された翼幅支持体209上に取り付けられる。翼先端部210は、前縁翼207を後縁翼208に合体させる。空中乗物200は、逆回転する、積み重ねられたロータアセンブリを使用しない。積み重ねられたアセンブリは、幾つかの実施形態(そこでは、水平飛行の間、ロータによって伝えられる揚力百分率がより低い)において、負荷分布に関して明確な利点を有し得るが、効率的な飛行は、空中乗物200のような単一ロータによって、実現され得る。更に、単一ロータは、コストおよび複雑さの低減を可能にする。
【0044】
幾つかの態様では、翼ロータアセンブリ204は、航空機の一定高度の巡航平面に対して垂直ではなく、ある角度212だけ前方に傾斜している。幾つかの態様では、ロータは、5~20度の範囲で前方に傾斜している。幾つかの態様では、ロータは、5~15度の範囲で前方に傾斜している。幾つかの態様では、ロータは、8~20度の範囲で前方に傾斜している。幾つかの態様では、ロータは、8~12度の範囲で前方に傾斜している。例示的な実施形態において、ロータは、10度で傾斜している。傾斜角度は、ロータ軸と、最大翼の空力平均翼弦線との間の角度として定義してもよく、ここで最大翼は、幾つかの実施形態において、後縁翼であってもよい。
【0045】
空中乗物200は、通常飛行の間、水平推力を供給するように適合された水平推力後部ロータアセンブリ211を有する。空中乗物200の例示的な実施形態のサイズおよび構成の詳細は、表1に見られる。
図10A、
図10Bは、その中心ハブ221(これは、電気モータを含んでもよい)および羽根220を備えたロータ204を示す。中心ハブ221は、その中に電気モータを有してもよく、前進飛行構成にあるとき、低抗力に適合された外面を有してもよい。
【0046】
幾つかの態様では、翼ロータアセンブリ204は、電気モータを備えた回転するプロペラを有する。幾つかの態様では、水平推力後部ロータアセンブリ211は、電気モータを有する。幾つかの態様では、モータは、1つのバッテリーまたは複数のバッテリーのような電源によって、電力供給される。
【表1】
【0047】
前方に傾斜している翼ロータアセンブリの使用によって、部分的には翼ロータアセンブリによって、および部分的には通常の水平推力プロペラによって供給されるべき前進推進力が可能になる。この前進推進力の共有において考慮するべき因子は、前進巡航飛行中の、翼ロータと通常のプロペラの両方に伝えられるトータル動力に対する、翼ロータに伝えられるトータル動力の割合である。
【0048】
考慮するべき別の因子は、前進飛行中の、翼と翼ロータの両方によって供給されるトータル揚力に対する、翼ロータによって伝えられる揚力の割合である。ロール制御を含む全ての姿勢制御が、翼ロータのモータ速度の操作によって誘導されるまたは維持される実施形態では、翼ロータによって供給される揚力の割合は、翼ロータの操作により航空機姿勢の制御が有効となり得るように、十分高くなければならない。幾つかの態様では、巡航速度で翼ロータによって供給される揚力の割合は、0.2よりも大きい。幾つかの態様では、翼ロータによって供給される揚力の割合は、0.25よりも大きい。幾つかの態様では、翼ロータによって供給される揚力の割合は、0.3よりも大きい。幾つかの態様では、翼ロータによって供給される揚力の割合は、0.1よりも大きい。供給される揚力の割合は、翼に対する公称前進飛行中のすべての翼ロータの合計を表すが、一部の態様では、航空機の空力制御をサポートするために、特定のロータが低速にスピンダウンされてもよい。幾つかの態様では、1以上のロータは、特定の制御操作をサポートするために一時的に負の揚力を生成してもよい。
【0049】
考慮するべき別の因子は、前進飛行中の、航空機の速度に対する翼ロータの先端速度の比である。この因子は、翼の1つに関する揚力を減少させて、ロールを生じさせるべく、1つ以上の翼ロータの速度を低下させる際に、作用し始めてもよい。そのような操縦では、他の翼上の翼ロータは、揚力を増加させるべく、回転上昇されてもよい。公称的には、航空機の速度の低い倍数で運転する場合、後退する回転翼羽根に関して、失速の危険が生じる。幾つかの態様では、公称巡航翼ロータ先端速度は、航空機の巡航速度の2.0倍大きい。幾つかの態様では、公称巡航翼ロータ先端速度は、航空機の巡航速度の2.5倍大きい。幾つかの態様では、公称巡航翼ロータ先端速度は、航空機巡航速度の1.5倍よりも大きい。幾つかの態様では、公称巡航翼ロータ先端速度は、航空機巡航速度の1.0倍よりも大きい。幾つかの態様では、公称巡航翼ロータ先端速度は、航空機の巡航速度の0.5倍を超えるほど低くてもよい。先端速度は、羽根の角速度に半径方向の長さを掛けたものであると理解されている。
【0050】
上述した因子は、航空機の迎え角に対する航空機の前進速度と対比させた翼の先端速度の関数として、空中乗物200についての抗力に対する揚力の比L/De(実効抗力)を決定するべくモデル化されており、且つ、このデータが、図式化して表されている。抗力に対する揚力の比は、抗力に対する揚力の比を表す色分けとして見ることができる。抗力に対する揚力の比(実効抗力)は、航空機の前進速度によって除算された、航空機の総合軸動力である。この色分けの上に置かれているのは、上で議論した他の因子を表す等高線である。ここで他の因子とは、翼ロータに伝えられるトータル動力の割合、翼ロータによって伝えられる揚力の割合、そして更に航空機の速度である。抗力に対する揚力の比は、翼ロータに対する異なる前方傾斜角においてモデル化されると共に、異なる翼ロータブレードピッチングによってもまたモデル化される。
図6Aに見られるように、航空機200の巡航速度範囲(50~75m/s)の間のグラフの部分を囲むことによって、および、2.0を超える航空機速度比に対する翼ロータ先端速度を有する領域を見直すことによって、明白でない範囲のパラメータが、抗力に対する揚力の比が最も高い動作モードを与える、ということが発見された。翼ロータの先端速度と航空機速度との比2.0は、ロータと翼の総揚力に対する翼ロータによってもたらされる揚力の揚力比0.1の配給(すなわち、翼ロータが十分な航空機の姿勢制御を可能にする量の揚力を供給する揚力配給)のためのラインと一致する。好ましい結果は、上述の制約値の範囲内で、8を超える、抗力に対する揚力の比を有することであり、その場合、9または10のより高い比がなお更に望ましいということである。
図6Aに見られるように、ロータの前方傾斜10度で解析された航空機は、2を超える先端速度比、0.1(またはそれ以上)を超える揚力比、航空機速度のある範囲を超えて、さまざまな航空機速度で8を超えるL/De比で、動作し得る
【0051】
図6Aから
図6Gは、異なるバージョンの空中乗物に対して、上述のパラメータを比較検討する計算流体力学(CFD)の結果である。
図6Aは、上述の空中乗物200対する結果を示す。輪郭601は、巡航速度50m/sおよび75m/sによって境界が定められた領域で、且つ、航空機速度と対比させたロータ先端速度の比が2.0を超える領域の周りの境界を形成する。見ての通り、L/Deが8を超える有意な領域が存在し、この領域は、9を超える有意な領域、および10を超える幾つかの有意な領域を含む。このことは、10度の前方傾斜した翼搭載ロータを備えたこの乗物が、様々な動作シナリオに関して、これらのL/De比を実現できる、ということを表している。
【0052】
図6Bは、前方傾斜が0度であるロータを備えた、同様な乗物を示す。見ての通り、2.0の速度比の線より上で、9と同程度に高いL/Deの領域は、ほとんど存在しない。
【0053】
図6Cは、傾斜が20度であるロータを備えた、同様な乗物を示す。見ての通り、範囲内での動作が利用可能である、8よりも高いL/Deの領域は存在しない。
図6Bと6Cに見られるように、それぞれ0度と20度の前方傾斜であるL/Deを対比することによって、例えば、10度の傾斜の利点を見ることができる。輪郭領域601内では、飛行使用の考慮事項に基づいて最適化された設計に到達するために、他の設計のトレードオフがなされる。
【0054】
図6Dは、0度の前方傾斜を備えるが、しかし
図6Bの場合よりも5度大きなピッチングを有する回転翼羽根を備えた、同様な乗物を示す。見ての通り、2.0の速度比の線より上で、8と同程度に高いL/Deの領域は、ほとんど存在しない。
【0055】
図6Eは、10度の前方傾斜を備えるが、しかし
図6Aの場合よりも5度大きなピッチングを有する回転翼羽根を備えた、同様な乗物を示す。回転翼羽根において、5度大きなピッチングを有する他の場合に比べて、これは最適であるように見えてはいるが、見ての通り、2.0の速度比の線より上で、8と同程度に高いL/Deの領域は、ほとんど存在しない。
【0056】
図6Fは、20度の前方傾斜を備えるが、しかし
図6Cの場合よりも5度大きなピッチングを有する回転翼羽根を備えた、同様な乗物を示す。見ての通り、特に水平飛行の領域において(迎え角が0度)、2.0の速度比の線より上で、9と同程度に高いL/Deの領域は、ほとんど存在しない。
【0057】
本発明の幾つかの実施形態において、
図7に見られるように、左側の合成翼202(右側の合成翼は示されていない)を備えた空中乗物200は、縦軸に沿って互い違いに配置されたロータを有する。翼内側のロータ207は、そのプロペラについて、前進方向側208および戻り側209を有する。翼内側のロータ207の戻り側209は、疑似翼202の翼幅方向に沿って、次のロータ204の前進方向側と有意に重なる。このことは、続くロータ205、206に関して繰り返される。前進方向側および戻り側にある隣接したロータのこの有意な重なりは、前進飛行中に提供される揚力を均一にするが、これは、前進飛行速度が、プロペラ回転の前進移動部分に関する揚力を高めるからである。
【0058】
本発明の幾つかの実施形態において、
図8に見られるように、左側合成翼301および右側合成翼302を備えた空中乗物300は、合成翼の翼幅に沿って垂直に互い違いに配置されたロータを有する。翼内側のロータ303は、そのプロペラについて、前進方向側307および戻り側308を有する。翼内側のロータ303の戻り側308は、合成翼301の翼幅方向に沿って、次のロータ304の前進方向側と有意に重なる。このことは、続くロータ、およびもう一方の翼のロータ305、306に関して繰り返される。前進方向側および戻り側にある隣接したロータのこの有意な重なりは、前進飛行中に提供される揚力を均一にするが、これは、前進飛行速度が、プロペラ回転の前進移動部分に関する揚力を高めるからである。
【0059】
図9Aから
図9Eは、従来の翼および合成翼に対する、翼幅方向の揚力分布を示す。
図9Aは、仮想的な、均一な翼幅方向の揚力分布を示すが、これは、従来の翼に関して見られるだろう。
図9Bから
図9Eは、様々なタイプの合成翼の揚力分布プロファイルを示しており、各揚力分布プロファイルは、楕円形の理想的な揚力分布(点線で見える)と対比される。より均一な翼幅方向の揚力分布を備えたロータ配列構成は、理想的に負荷がかけられた、中空でない翼型の翼と比較して、より低い誘導抗力の比を与えるであろう。より少なくてより大きなロータとは対照的に、より大きな数のより小さなロータを使用する態様では、与えられた翼幅の長さに対して、より少ないトータル羽根領域、およびより少ない抗力が存在する。一般的に、平均羽根翼弦は、与えられたトータル揚力および先端速度に対して、ロータの数に応じて変化せず、そのため、より小さなロータは、より好ましいアスペクト比(平均翼弦に対する半径の比)を有する。
【0060】
図9Bは、4つのロータシステム(合成翼当たり2つのロータ)を示す。負荷変動は、ロータ構成により20%である。理想的に負荷がかけられた翼の誘導抗力に対する、この構成の誘導抗力の比は1.22である。
図9Cは、8つのロータシステム(合成翼当たり4つのロータ)を示す。負荷変動は、ロータ構成により20%である。理想的に負荷がかけられた翼の抗力に対する、この構成の誘導抗力の比は1.43である。
【0061】
図9Dは、4つのロータシステム(合成翼当たり2つのロータ)を示す。負荷変動は、ロータ構成により40%である。理想的に負荷がかけられた翼の誘導抗力に対する、この構成の誘導抗力の比は1.88である。
図9Eは、8つのロータシステム(合成翼当たり4つのロータ)を示す。負荷変動は、ロータ構成により40%である。理想的に負荷がかけられた翼の誘導抗力に対する、この構成の誘導抗力の比は2.71である。
【0062】
図10A、
図10Bは、本発明の幾つかの実施形態によるロータ221を示す。見ての通り、(表1に寸法取りされるように)回転翼羽根220の翼内側の端部にはロータ221の有意な半径が存在する。そのような構成では、回転翼羽根220の翼内側の端部は、羽根がスピン軸に向かってもっと先の経路を進む構成と比較して、その後退する羽根を失速させにくい。ロータのこの中央領域は、ロータの外面内の個々のモータ(または逆回転する羽根構成における一対のモータ)の配置を可能にする。したがって、回転翼羽根は、モータ自体の(スピン軸に対して)翼端に近いほうで放射状に始まってもよい。ロータの直径は、いくつかの態様では、モータの外径よりも大きくてもよい。
【0063】
いくつかの実施形態では、
図11Aから
図11Dおよび
図12Aから
図12Bに見られるように、空中乗物400は、本発明の他の実施形態に従って、前方傾斜ロータを利用する。空中乗物400は、左翼447および右翼446を備えた乗物本体441を有する。
図11Cの上面図に見られるように、左翼447は、内側部447aおよび外側部447bを有する。右翼446は、内側部446aおよび外側部446bを有する。翼446、447は、前方に湾曲する内側部446aと447a、後方に湾曲する外側部446bと447bを有する、部分的な前進翼であってもよい。示されている翼446、447の構成は、翼の空力中心が空中乗物の重心の後方にあることを可能にし、これは、前進飛行中の空中乗物の制御および安定性を高め得る。また、パイロットの位置の後方で空中乗物の本体に翼を結合させることが望まれ得る。いくつかの態様では、翼を本体に、および互いに、結合する内部構造要素があり、これは、空中乗物の本体の内部を横断してもよい。また、翼が、航空機本体の上部またはその近くで航空機本体に構造的に結合され得るので、これらの内部構造要素は航空機本体の上部にあってもよい。このより高位の結合および関連する内部構造支持により、パイロットが航空機本体に着座するときに、翼は、パイロットの頭の後方で航空機本体に結合される必要性があり得る。前方湾曲の内側部446a、447aは、上記事項を考慮し、翼を後方に結合することを可能にする。次に、外側部446b、447bの後退翼の変化は、制御および安定性を考慮し、翼の全体的な縦方向の空力中心を後方にもたらすように働く。この翼の構成は、コンパクトな設計もサポートしており、これについては、後述する。
【0064】
航空機400は、右側翼446および左側翼447に結合された本体441を有し、複数の、翼に取り付けられたロータアセンブリを有する。右側前方翼内側ロータアセンブリ448および右側後方翼内側ロータアセンブリ452は、右側翼446に結合されたスパン支持体463に取り付けられている。右側の翼外側ロータアセンブリ456は、右側翼446の先端にある。右側の翼外側ロータアセンブリ456の羽根457は、固定翼446の外側の領域461において前進飛行での揚力を提供し、これは、翼の有効翼幅を広げる。左側前方翼内側ロータアセンブリ450および左側後方翼内側ロータアセンブリ454は、左側翼447に結合されたスパン支持体462に取り付けられている。左側の翼外側ロータアセンブリ458は、左側翼447の先端にある。左側の翼外側ロータアセンブリ458の羽根459は、固定翼447の外側の領域460において前進飛行での揚力を提供し、これは、翼の有効翼幅を広げる。
【0065】
図11Cの平面図に見られるように、ブレードディスク449、451、453、455、457、459は、六角形463を形成する。翼外側ロータ456、458およびそれらのブレードディスク457、459の中心は、翼446、447の後方後退の外側部446b、447bの前縁の少し前方に見られる。翼外側ロータ456、458およびそれらのブレードディスク457、459の中心は、飛行のために積み込まれたとき、空中乗物の縦方向の重心上またはその近くにあってもよい。図に見られるように、六角形463は航空機の外部構成限界を表し、この六角形463は非常にコンパクトな設計を表しており、ブレードディスク、翼、または航空機本体のいずれかでほぼ完全に占有されている。これにより、ディスクの負荷が増加し、航空機のホバリング効率が向上する。また、前述のように、翼の構成が設計のコンパクトさに貢献していることも明らかである。さらに、各ロータは、航空機の重心を実質的に横切る線上で、そして、重心から同じ距離またはその近くで、航空機本体の反対側に対照となるロータを有することが分かる。この構成では、垂直離着陸動作中においてあるロータが故障した場合、故障したモータの対照となるロータをほぼ瞬時にパワーダウンして航空機の姿勢を維持できるため、非常に迅速な制御補償が可能になる。いくつかの態様では、残りの4つのロータは、前記ロータの故障およびその対照となるロータのパワーダウンによって引き起こされる揚力の全体的な損失を補償するために、回転上昇され得る。
【0066】
いくつかの態様では、翼ロータアセンブリ448、450、452、454、456、458は、航空機の一定高度の巡航面に対して垂直ではなく、ある角度で前方に傾斜している。いくつかの態様では、ロータは5から20度の範囲で前方に傾斜している。いくつかの態様では、ロータは5~15度の範囲で前方に傾斜している。いくつかの態様では、ロータは、8~20度の範囲で前方に傾斜している。いくつかの態様では、ロータは、8から12度の範囲で前方に傾斜している。例示的な実施形態では、ロータは10度で傾斜している。傾斜角は、ロータ軸と翼の平均空力翼弦線との間の角度として画定されてもよい。いくつかの態様では、翼ロータアセンブリは、上記の傾斜角で固定されてもよく、関節運動可能な態様を有さなくてもよい。
【0067】
空中乗物400は、通常の飛行中に水平推力を供給するように適合された水平推力後部ロータアセンブリ443を有する。後部支持構造444、445は、翼外側ロータアセンブリおよびスパン支持体の後部から下に延びる。これらは、航空機のヨー軸の安定性を供給するための翼型部としても使用される。
【0068】
図12Aから
図12Bは、本発明のいくつかの実施形態による空中乗物400の態様を示している。翼内側ロータアセンブリは、スパン支持体462、463によって支持され、前方部分462a、463aおよび後方部分462b、463bを有すると見なし得るが、スパン支持体自体は連続支持体であってよい。スパン支持462、463は、翼446、447に結合されている。前方翼内側ロータアセンブリ448は、空力的抗力最小化に適合されたトップカバー448aおよび後部448bを有してもよい。同様に、翼外側ロータアセンブリ456は、トップカバー456aおよび後部456bを有してもよく、後方翼内側ロータアセンブリ452は、トップカバー452aおよび後部452bを有してもよい。後部448a、456b、452bの態様については後述する。
図12Bの側面図に見られるように、ブレ―ドディスク449、457、453は、航空機の水平面に対して前方に傾斜している。
【0069】
航空機440で考慮されてきた設計要素の中には、垂直離着陸で使用される構成、および構成がもたらす制御、制御安定性のための翼の空力的揚力中心の縦方向位置、制御に必要な羽根のより高い先端速度、対、抗力を減らすために先端速度を下げたいという願望、および翼幅に沿った比較的均一な揚力の維持、がある。これらの要因の相互作用は、明らかな最適化にはつながらない。
【0070】
前方翼内側ロータアセンブリおよび後方翼内側ロータアセンブリおよび各翼に単一の翼外側アセンブリのみを有するいくつかの態様では、前進飛行中に個々の翼内側ロータアセンブリによって供給される揚力は、それらのトータルの揚力が翼に沿ってより均一な揚力分配を供給するような翼外側ロータアセンブリの揚力よりも、低くてもよい。
【0071】
いくつかの態様では、翼ロータアセンブリは、電気モータを備えた回転プロペラを有する。いくつかの態様では、水平推力後方ロータアセンブリは、電気モータを有する。いくつかの態様では、モータは、単一バッテリーまたは複数バッテリーなどの電源によって電力を供給される。
【0072】
図13Aから
図13Cは、トップカバー470aおよび下部カウリングである延長された後部470bを備えたロータアセンブリ470を示している。ロータアセンブリは、例えば、10度の垂直からの前方傾斜、または上記で論じた別の値を維持するので、延長された後部470bは、圧力回復領域が流れの分離を回避するのを容易にする。いくつかの態様では、下部カウリングである延長された後部は、空気力学ブームの外側表面と結合する連続的な空力構造の一部であり得る。いくつかの態様では、
図13Bに見られるように、下部カウリングである延長された後部は、隣接構造とより異なったものであってもよい。典型的な実施形態では、電気モータであり得るモータは、ロータアセンブリ470内に存在する。
【0073】
図14Aから
図14Cは、羽根472を備えたロータアセンブリ470を示している。トップカバー470aは、羽根と共に回転し、ロータアセンブリの延長された後部470bは、航空機本体に固定されたままである。ロータアセンブリ470の異なった態様が、ブレードディスクの半径474に対するロータトップカバー470aの半径473の比率にある。上記のように、より大きな半径を有するロータキャップ470aは、羽根472の翼内側端部を押し広げ、前進飛行中に後退羽根に失速が生じ得る状況を低減する。いくつかの態様では、ブレードディスクの半径に対するロータキャップの半径の比は、0.25より大きい。いくつかの態様では、ブレードディスクの半径に対するロータキャップの半径の比は、0.30より大きい。いくつかの態様では、ブレードディスクの半径に対するロータキャップの半径の比は、0.20より大きい。
【0074】
図15Aから
図15Eは、空気力学ブーム483を備えた例示的なダブルロータアセンブリ480を示している。前方ロータアセンブリ482は、トップカバー482aおよび延長された後部482bを有する。後方ロータアセンブリ481は、トップカバー281aおよび延長された後部481bを有する。後部支持構造484は、空気力学ブーム483の後部域から下向きに延びていてもよい。空気力学ブーム483に沿って作られた断面485からの
図15Cの断面に見られるように、翼型断面は、前進飛行中はもちろん、垂直離着陸動作中の抗力を低減するために使用される。
【0075】
いくつかの実施形態では、
図16Aから
図16Dに見られるように、空中乗物500は、本発明の他の実施形態に従って、前方傾斜ロータを利用する。空中乗物500は、左翼502および右翼503を備えた乗物本体501を有する。
図16Cの平面図に見られるように、左翼502は、内側部および外側部を有する。右翼503は、内側部と外側部を有する。翼502、503は、内側部が前方に湾曲し、外側部が後方に湾曲する、部分的な前進翼であってもよい。示されているような翼の構成は、翼の空力中心が空中乗物の重心の後方にあることを可能にし、これは、前進飛行中の空中乗物の制御および安定性を高め得る。また、パイロットの位置の後方で空中乗物の本体に翼を結合させることが望まれ得る。いくつかの態様では、翼を本体に、および互いに、結合する内部構造要素があり、これは、空中乗物の本体の内部を横断してもよい。また、翼が、航空機本体の上部またはその近くで航空機本体に構造的に結合され得るので、これらの内部構造要素は航空機本体の上部にあってもよい。このより高位の結合および関連する内部構造支持により、パイロットが航空機本体に着座するときに、翼は、パイロットの頭の後方で航空機本体に結合される必要性があり得る。前方湾曲の内側部は、上記事項を考慮し、翼を後方に結合することを可能にする。次に、外側部の後退翼の変化は、制御と安定性を考慮し、翼の全体的な縦方向の空力中心を後方に持ってくるように働く。水平推力プロペラ516は、上記の、翼に取り付けられたロータアセンブリの前方推力構成要素と併せて、水平飛行において航空機を前方に推進するように適合されている。
【0076】
航空機500は、右側翼503および左側翼502に結合された本体501を有し、複数の、翼に取り付けられた積み重ねられたダブルロータアセンブリを有する。右側前方上部ロータアセンブリ506および右側前方下部ロータアセンブリ507、ならびに、右側後方上部ロータアセンブリ504および右側後方下部ロータアセンブリ505は、右側翼503に結合されたスパン支持体に取り付けられている。左側前方上部ロータアセンブリ508および左側前方下部ロータアセンブリ509、ならびに、左側後方上部ロータアセンブリ510および左側下部ロータアセンブリ511は、左側翼502に結合されたスパン支持体に取り付けられている。この構成では、各ロータは、航空機の重心を実質的に横切る線上で、そして、重心からと同じ距離またはその近くで、航空機本体の反対側に対照となるロータを有することが分かる。この構成では、垂直離着陸操作中においてあるロータが故障した場合、故障したモータの対照となるロータをほぼ瞬時にパワーダウンして航空機の姿勢を維持できるため、非常に迅速な制御補償が可能になる。いくつかの態様では、残りのロータは、前記ロータの故障および対照となるロータのパワーダウンによって引き起こされる揚力の全体的な損失を補償するために、回転上昇され得る。
【0077】
いくつかの態様では、翼ロータアセンブリ504、505、506、507、508、509、510、511は、航空機の一定高度の巡航面に対して垂直ではなく、ある角度で前方に傾斜している。いくつかの態様では、ロータは5から20度の範囲で前方に傾斜している。いくつかの態様では、ロータは5~15度の範囲で前方に傾斜している。いくつかの態様では、ロータは、8~20度の範囲で前方に傾斜している。いくつかの態様では、ロータは、8から12度の範囲で前方に傾斜している。例示的な実施形態では、ロータは10度で傾斜している。傾斜角は、ロータ軸と翼の平均空力翼弦線との間の角度として画定されてもよい。いくつかの態様では、翼ロータアセンブリは、上記の傾斜角で固定されてもよく、関節運動可能な態様を有さなくてもよい。
【0078】
図16Bの側面図に示されているように、ロータアセンブリ504、505、506、507は、圧力回復領域が流れの分離を回避するのを容易にする延長された後部512、513、514、516、を備えたロータによって支持される。
【0079】
いくつかの実施形態では、
図17Aから
図17Dに見られるように、空中乗物600は、本発明の他の実施形態に従って、前方傾斜ロータを利用する。空中乗物600は、左翼および右翼を備えた乗物本体を有する。
図17Cの平面図に見られるように、左翼は、内側部および外側部を有する。右翼は、内側部と外側部を有する。翼は、内側部が前方に湾曲し、外側部が後方に湾曲する、部分的な前進翼であってもよい。示されているような翼の構成は、翼の空力中心が空中乗物の重心の後方にあることを可能にし、これは、前進飛行中の空中乗物の制御および安定性を高め得る。また、パイロットの位置の後方で空中乗物の本体に翼を結合させることが望まれ得る。いくつかの態様では、翼を本体に、および互いに、結合する内部構造要素があり、これは、空中乗物の本体の内部を横断してもよい。また、翼が、航空機本体の上部またはその近くで航空機本体に構造的に結合され得るので、これらの内部構造要素は航空機本体の上部にあってもよい。このより高位の結合および関連する内部構造支持により、パイロットが航空機本体に着座するときに、翼は、パイロットの頭の後方で航空機本体に結合される必要性があり得る。前方湾曲の内側部は、上記事項を考慮し、翼を後方に結合することを可能にする。次に、外側部の後退翼の変化は、制御と安定性を考慮し、翼の全体的な縦方向の空力中心を後方に持ってくるように働く。水平推力プロペラは、上記の、翼に取り付けられたロータアセンブリの前方推力構成要素と併せて、水平飛行において航空機を前方に推進するように適合されている。
【0080】
航空機600は、右側翼および左側翼に結合された本体を有し、複数の、翼に取り付けられたロータアセンブリを有する。翼内側右側前方ロータアセンブリ605および翼内側右側後方ロータアセンブリ606は、右側翼に結合されたスパン支持体に取り付けられている。翼外側右側前方ロータアセンブリ607および翼外側右側後方ロータアセンブリ608は、右側翼に結合されたスパン支持体に取り付けられている。翼内側左側前方ロータアセンブリ603および翼内側左側後方ロータアセンブリ604は、左側翼503に結合されたスパン支持体に取り付けられている。翼外側左側前方ロータアセンブリ601および翼外側左側後方ロータアセンブリ602は、左側の翼に結合されたスパン支持体に取り付けられている。左側の翼外側ロータアセンブリ601、602の羽根は、固定翼の外側の領域610において前進飛行の揚力を提供し、これは、翼の有効翼幅を広げる。右側の翼外側ロータアセンブリ607、608の羽根は、固定翼の外側の領域611において前進飛行の揚力を提供し、これは、翼の有効翼幅を広げる。
【0081】
この構成では、垂直離着陸操作中においてあるロータが故障した場合、故障したモータの対照となるロータをほぼ瞬時にパワーダウンして航空機の姿勢を維持できるため、非常に迅速な制御補償が可能になる。いくつかの態様では、残りのロータは、前記ロータの故障および対照となるロータのパワーダウンによって引き起こされる揚力の全体的な損失を補償するために、回転上昇され得る。
【0082】
いくつかの態様では、翼ロータアセンブリ601、602、603、604、605、606、607、608は、航空機の一定高度の巡航面に対して垂直ではなく、ある角度で前方に傾斜している。いくつかの態様では、ロータは5から20度の範囲で前方に傾斜している。いくつかの態様では、ロータは5~15度の範囲で前方に傾斜している。いくつかの態様では、ロータは、8~20度の範囲で前方に傾斜している。いくつかの態様では、ロータは、8から12度の範囲で前方に傾斜している。例示的な実施形態では、ロータは10度で傾斜している。傾斜角は、ロータ軸と翼の平均空力翼弦線との間の角度として画定されてもよい。いくつかの態様では、翼ロータアセンブリは、上記の傾斜角で固定されてもよく、関節運動可能な態様を有さなくてもよい。
【0083】
図17Dの側面図に示されているように、ロータアセンブリ601、602、603、604、605、606、607、608は、圧力回復領域が流れの分離を回避するのを容易にする延長された後部、を備えたロータによって支持される。
【0084】
上の説明から明らかなように、本明細書に与えられた説明から、多種多様な実施形態が構成されてもよく、且つ、当業者にとっては、付加的な利点および変更が容易に生じるであろう。本発明は、それ故に、そのより広い態様において、図示されると共に説明された、特定の詳細および例証的な実施例に限定されない。したがって、出願人の一般的な発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、そのような詳細からの逸脱がなされてもよい。
【国際調査報告】