(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】ヘッドマウントディスプレイシステムのワイヤグリッド偏光子向け偏光補償
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20230323BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
H04N5/64 511A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022530687
(86)(22)【出願日】2021-02-02
(85)【翻訳文提出日】2022-08-05
(86)【国際出願番号】 US2021016219
(87)【国際公開番号】W WO2021158552
(87)【国際公開日】2021-08-12
(32)【優先日】2020-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517160525
【氏名又は名称】バルブ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハッドマン、ジョシュア マーク
【テーマコード(参考)】
2H199
【Fターム(参考)】
2H199CA04
2H199CA12
2H199CA23
2H199CA24
2H199CA25
2H199CA42
2H199CA47
2H199CA62
2H199CA63
2H199CA64
2H199CA65
2H199CA91
2H199CA92
2H199CA93
2H199CA94
2H199CA95
2H199CA96
(57)【要約】
本開示は概して、光学系、例えばヘッドマウントディスプレイシステムを用いる光学系の性能および効率を向上させるための手法に関する。本開示の光学系は、ワイヤグリッド偏光子を反射偏光子として利用する偏光反射屈折光学系、または「パンケーキ光学系」を含んでよい。ワイヤグリッド偏光子は、波長または変動する入射角について均等に機能しないことがある。性能を向上させるために、空間変動偏光子が、ワイヤグリッド偏光子に対して偏光補償をもたらすように作用する光学系に設けられており、これにより、ワイヤグリッド偏光子は波長および/または入射角(例えば、軸上および軸外)についてより均等に機能するようになる。空間変動偏光子は、マルチツイストリターダなどの、液晶材料で形成されてよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線偏光を含む画像を生成するように動作可能なディスプレイサブシステムと、
光学系と
を備えるヘッドマウントディスプレイシステムであって、
前記光学系が、
前記ディスプレイサブシステムからの光を受光するレンズ素子であって、部分反射面を含むレンズ素子と、
前記レンズ素子からの光を受光するワイヤグリッド偏光子と、
前記レンズ素子と前記ワイヤグリッド偏光子との間に配置された4分の1波長板と、
前記ディスプレイサブシステムと前記レンズ素子との間に配置された空間変動偏光子であって、前記ワイヤグリッド偏光子に入射する軸外の光を補償するために、前記空間変動偏光子の光学ウィンドウ全体にわたって変動する遅延特性を有する空間変動偏光子と
を有する、ヘッドマウントディスプレイシステム。
【請求項2】
前記空間変動偏光子がマルチツイストリターダを含む、請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイシステム。
【請求項3】
前記空間変動偏光子が、前記光学ウィンドウの中心で4分の1波長位相差をもたらし、また前記光学ウィンドウの周辺部に向かって前記4分の1波長位相差を徐々に減少させる、請求項1または2に記載のヘッドマウントディスプレイシステム。
【請求項4】
前記空間変動偏光子が前記光学ウィンドウの周辺部で8分の1波長位相差をもたらす、請求項3に記載のヘッドマウントディスプレイシステム。
【請求項5】
前記空間変動偏光子が、前記光学ウィンドウの中心で第1の位相差をもたらし、また前記光学ウィンドウの周辺部で第2の位相差をもたらし、前記第2の位相差は前記第1の位相差より小さい、請求項1から4のいずれか一項に記載のヘッドマウントディスプレイシステム。
【請求項6】
前記空間変動偏光子の位相差が、前記光学ウィンドウ全体にわたって直線的にまたは非直線的に変動する、請求項1から5のいずれか一項に記載のヘッドマウントディスプレイシステム。
【請求項7】
前記空間変動偏光子に動作可能に連結された制御回路をさらに備え、前記制御回路が前記空間変動偏光子によってもたらされる位相差を選択的に調整するように動作可能である、請求項1から6のいずれか一項に記載のヘッドマウントディスプレイシステム。
【請求項8】
直線偏光を含む画像を生成するように動作可能なディスプレイサブシステムと、
光学系と
を備えたヘッドマウントディスプレイシステムであって、
前記光学系が、
前記ディスプレイサブシステムからの光を受光する4分の1波長板と、
前記4分の1波長板からの光を受光するレンズ素子であって、部分反射面を含むレンズ素子と、
前記レンズ素子からの光を受光するワイヤグリッド偏光子と、
前記レンズ素子と前記ワイヤグリッド偏光子との間に配置された空間変動偏光子であって、前記ワイヤグリッド偏光子に入射する軸外の光を補償するために、前記空間変動偏光子の光学ウィンドウ全体にわたって変動する遅延特性を有する空間変動偏光子と
を有する、ヘッドマウントディスプレイシステム。
【請求項9】
前記空間変動偏光子がマルチツイストリターダを含む、請求項8に記載のヘッドマウントディスプレイシステム。
【請求項10】
前記空間変動偏光子が、前記光学ウィンドウの中心で4分の1波長位相差をもたらし、また前記光学ウィンドウの周辺部に向かって前記4分の1波長位相差を徐々に減少させる、請求項8または9に記載のヘッドマウントディスプレイシステム。
【請求項11】
前記空間変動偏光子が前記光学ウィンドウの周辺部で8分の1波長位相差をもたらす、請求項10に記載のヘッドマウントディスプレイシステム。
【請求項12】
前記空間変動偏光子が、前記光学ウィンドウの中心で第1の位相差をもたらし、また前記光学ウィンドウの周辺部で第2の位相差をもたらし、前記第2の位相差は前記第1の位相差より小さい、請求項8から11のいずれか一項に記載のヘッドマウントディスプレイシステム。
【請求項13】
前記空間変動偏光子の位相差が、前記光学ウィンドウ全体にわたって直線的にまたは非直線的に変動する、請求項8から12のいずれか一項に記載のヘッドマウントディスプレイシステム。
【請求項14】
前記空間変動偏光子に動作可能に連結された制御回路をさらに備え、前記制御回路が前記空間変動偏光子によってもたらされる位相差を選択的に調整するように動作可能である、請求項8から13のいずれか一項に記載のヘッドマウントディスプレイシステム。
【請求項15】
第1および第2のニアツーアイ・ディスプレイシステムを備えるヘッドマウントディスプレイシステムであって、
前記第1および第2のニアツーアイ・ディスプレイシステムのそれぞれが、
直線偏光を含む画像を生成するように動作可能なディスプレイサブシステムと、
光学サブシステムと
を有し、
前記光学サブシステムが、
前記ディスプレイサブシステムからの光を受光するレンズ素子であって、部分反射面を含むレンズ素子と、
前記レンズ素子からの光を受光するワイヤグリッド偏光子と、
前記レンズ素子と前記ワイヤグリッド偏光子との間に配置された4分の1波長板と、
前記ディスプレイサブシステムと前記レンズ素子との間に配置された空間変動偏光子であって、前記ワイヤグリッド偏光子に入射する軸外の光を補償するために、前記空間変動偏光子の光学ウィンドウ全体にわたって変動する遅延特性を有する空間変動偏光子と
を含む、ヘッドマウントディスプレイシステム。
【請求項16】
前記空間変動偏光子がマルチツイストリターダを含む、請求項15に記載のヘッドマウントディスプレイシステム。
【請求項17】
前記空間変動偏光子が、前記光学ウィンドウの中心で4分の1波長位相差をもたらし、また前記光学ウィンドウの周辺部に向かって前記4分の1波長位相差を徐々に減少させる、請求項15または16に記載のヘッドマウントディスプレイシステム。
【請求項18】
前記空間変動偏光子が前記光学ウィンドウの周辺部で8分の1波長位相差をもたらす、請求項17に記載のヘッドマウントディスプレイシステム。
【請求項19】
前記空間変動偏光子が、前記光学ウィンドウの中心で第1の位相差をもたらし、また前記光学ウィンドウの周辺部で第2の位相差をもたらす、請求項15から18のいずれか一項に記載のヘッドマウントディスプレイシステム。
【請求項20】
前記空間変動偏光子の位相差が、前記光学ウィンドウ全体にわたって直線的にまたは非直線的に変動する、請求項15から19のいずれか一項に記載のヘッドマウントディスプレイシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して光学系に関し、より具体的には、ヘッドマウントディスプレイシステム用の光学系の効率および性能の向上に関する。
[関連技術の記載]
【0002】
1つの現世代の仮想現実(「VR」)体験がヘッドマウントディスプレイ(「HMD」)を用いて生成され、HMDを据え置き型のコンピュータ(パーソナルコンピュータ(「PC」)、ラップトップ、またはゲーム機など)にテザー接続したり、スマートフォンおよび/もしくはその関連ディスプレイと組み合わせる且つ/または統合したり、または自己完結型にしたりすることができる。一般に、HMDは、ユーザの頭に装着されるディスプレイデバイスであり、一方の目(単眼HMD)またはそれぞれの目(双眼HMD)の前方に小型ディスプレイデバイスを有する。ディスプレイユニットは通常、小型化されており、例えば、CRT、LCD、液晶オンシリコン(LCoS)、OLED機器、またはレーザスキャンビームディスプレイを含み得る。双眼HMDには、それぞれの目に異なる画像を表示する可能性がある。この機能は、立体画像を表示するのに用いられる。
【0003】
性能を高めたディスプレイの需要が、スマートフォン、高解像度テレビ、および他の電子デバイスの発展と共に増加している。そのような需要は、仮想現実システムおよび拡張現実システム、特にHMDを用いるシステムの人気の高まりによって、さらに増加している。仮想現実システムは通常、装着者の両目を完全に覆い、装着者の前方にある実際の視界または物理的な視界(または実際の現実)の代わりに「仮想」の現実を代用するものであり、一方、拡張現実システムは通常、実際の視界が追加情報で拡張されるように、装着者の両目の前方に1つまたは複数のスクリーンの半透明または透明のオーバーレイを提供するものであり、また媒介現実システムでは同様に、現実世界の要素と仮想要素とを組み合わせた情報を視聴者に提示することができる。
【0004】
しかしながら、視聴者の目とディスプレイとの間の距離を縮めた、多くの場合十分に見えない視野を有するそのようなヘッドマウントディスプレイは、従来のディスプレイでは満たすことができないようなやり方で、ディスプレイの性能要件を高めた(費用効率が高いレベルでそうすることは言うまでもない)。OLEDマイクロディスプレイなどのマイクロディスプレイは、従来のディスプレイよりはるかに小さいが、さらなる課題がある。例えば、マイクロディスプレイでは、焦点距離が非常に短いレンズが必要となる。さらに、ユーザの目の瞳の大きさが固定されているため、マイクロディスプレイを用いるHMDのレンズのF値が減少し、これにより、特定のレンズ系の収差が増加する傾向にある。さらに、マイクロディスプレイの画素は小さい。これによるHMD光学系の空間分解能の増加によって、そのようなHMD用のレンズの設計および製造に対する課題がさらに増える。
【発明の概要】
【0005】
ヘッドマウントディスプレイシステムが、直線偏光を含む画像を生成するように動作可能なディスプレイサブシステムと、光学系とを含むものとして要約されてよく、光学系は、ディスプレイサブシステムからの光を受光するレンズ素子であって、部分反射面を含むレンズ素子と、レンズ素子からの光を受光するワイヤグリッド偏光子と、レンズ素子とワイヤグリッド偏光子との間に配置された4分の1波長板と、ディスプレイサブシステムとレンズ素子との間に配置された空間変動偏光子であって、ワイヤグリッド偏光子に入射する軸外の光を補償するために、空間変動偏光子の光学ウィンドウ全体にわたって変動する遅延特性を有する空間変動偏光子とを含む。
【0006】
空間変動偏光子は、マルチツイストリターダを含んでよい。空間変動偏光子は、光学ウィンドウの中心で4分の1波長位相差をもたらしてよく、また光学ウィンドウの周辺部に向かって位相差を徐々に減少させてよい。空間変動偏光子は、ウィンドウの周辺部で8分の1波長位相差をもたらしてよい。空間変動偏光子は、光学ウィンドウの中心で第1の位相差をもたらしてよく、また光学ウィンドウの周辺部で第2の位相差をもたらしてよく、第2の位相差は第1の位相差より小さい。空間変動偏光子の位相差は、光学ウィンドウ全体にわたって直線的に変動しても、非直線的に変動してもよい。
【0007】
ヘッドマウントディスプレイシステムはさらに、空間変動偏光子に動作可能に連結された制御回路を含んでよく、制御回路は、空間変動偏光子によってもたらされる位相差を選択的に調整するように動作可能である。
【0008】
ヘッドマウントディスプレイシステムが、直線偏光を含む画像を生成するように動作可能なディスプレイサブシステムと、光学系とを含むものとして要約されてよく、光学系は、ディスプレイサブシステムからの光を受光する4分の1波長板と、4分の1波長板からの光を受光するレンズ素子であって、部分反射面を含むレンズ素子と、レンズ素子からの光を受光するワイヤグリッド偏光子と、レンズ素子とワイヤグリッド偏光子との間に配置された空間変動偏光子であって、ワイヤグリッド偏光子に入射する軸外の光を補償するために、空間変動偏光子の光学ウィンドウ全体にわたって変動する遅延特性を有する空間変動偏光子とを含む。
【0009】
空間変動偏光子は、マルチツイストリターダを含んでよい。空間変動偏光子は、光学ウィンドウの中心で4分の1波長位相差をもたらしてよく、また光学ウィンドウの周辺部に向かって位相差を徐々に減少させてよい。空間変動偏光子は、ウィンドウの周辺部で8分の1波長位相差をもたらしてよい。空間変動偏光子は、光学ウィンドウの中心で第1の位相差をもたらしてよく、また光学ウィンドウの周辺部で第2の位相差をもたらしてよく、第2の位相差は第1の位相差より小さい。空間変動偏光子の位相差は、光学ウィンドウ全体にわたって直線的に変動しても、非直線的に変動してもよい。
【0010】
ヘッドマウントディスプレイシステムはさらに、空間変動偏光子に動作可能に連結された制御回路を含んでよく、制御回路は、空間変動偏光子によってもたらされる位相差を選択的に調整するように動作可能である。
【0011】
ヘッドマウントディスプレイシステムが、第1および第2のニアツーアイ(near-to-eye)ディスプレイシステムを含むものとして要約されてよく、第1および第2のニアツーアイ・ディスプレイシステムのそれぞれは、直線偏光を含む画像を生成するように動作可能なディスプレイサブシステムと、光学サブシステムとを含み、光学サブシステムは、ディスプレイサブシステムからの光を受光するレンズ素子であって、部分反射面を含むレンズ素子と、レンズ素子からの光を受光するワイヤグリッド偏光子と、レンズ素子とワイヤグリッド偏光子との間に配置された4分の1波長板と、ディスプレイサブシステムとレンズ素子との間に配置された空間変動偏光子であって、ワイヤグリッド偏光子に入射する軸外の光を補償するために、空間変動偏光子の光学ウィンドウ全体にわたって変動する遅延特性を有する空間変動偏光子とを含む。
【0012】
空間変動偏光子は、マルチツイストリターダを含んでよい。空間変動偏光子は、光学ウィンドウの中心で4分の1波長位相差をもたらしてよく、また光学ウィンドウの周辺部に向かって位相差を徐々に減少させてよい。
【0013】
空間変動偏光子は、ウィンドウの周辺部で8分の1波長位相差をもたらしてよい。空間変動偏光子は、光学ウィンドウの中心で第1の位相差をもたらしてよく、また光学ウィンドウの周辺部で第2の位相差をもたらしてよい。空間変動偏光子の位相差は、光学ウィンドウ全体にわたって直線的に変動しても、非直線的に変動してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
この図面では、同一の参照符号で同様の要素または動作が識別される。図面内の要素の大きさおよび相対位置は、必ずしも実寸に比例して描かれていない。例えば、様々な要素の形状および角度は、必ずしも実寸に比例して描かれておらず、これらの要素のいくつかが、図面の視認性を向上させるために任意に拡大されて配置されることがある。さらに、描かれた要素の特定の形状は、必ずしも特定の要素の実際の形状に関するあらゆる情報を伝えようとしているわけではなく、図面を認識しやすくするために選択されているだけであってよい。
【0015】
【
図1】本開示で説明される少なくともいくつかの手法を行うのに好適な1つまたは複数のシステムを含む、ネットワーク化された環境の概略図である。
【0016】
【
図2】ビデオレンダリングコンピューティングシステムにテザー接続されており且つ仮想現実表示をユーザに提供する例示的なヘッドマウントディスプレイデバイスと共に、説明される手法のうちの少なくともいくつかを用いる、例示的な環境を示す図である。
【0017】
【
図3】双眼ディスプレイサブシステムを有する例示的なHMDデバイスの前面絵図である。
【0018】
【
図4】本開示の例示的な実施形態による、双眼ディスプレイサブシステムおよび様々なセンサを有するHMDデバイスの平面図を例示した図である。
【0019】
【
図5】1つの非限定的な例示的実装例による、ディスプレイサブシステムとその光学系とを示すHMDデバイスの断面図である。
【0020】
【
図6】1つの非限定的な例示的実装例による、
図5に示す光学系の例示的な空間変動偏光子の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の説明には、開示される様々な実装例の十分な理解をもたらすために、特定の具体的な詳細が記載されている。しかしながら、当業者であれば、こうした具体的な詳細のうちの1つまたは複数を用いずに、または他の方法、構成要素、材料などを用いて、これらの実装例を実施できることを認識するであろう。他の例では、コンピュータシステム、サーバコンピュータ、および/または通信ネットワークに関連した、よく知られた構造が、実装例の説明を不必要に不明瞭にすることを回避するために、詳細に示されてもなく、説明されてもいない。
【0022】
文脈上他の解釈が必要な場合を除き、本明細書および続く特許請求の範囲全体を通じて、「comprising(含む)」という単語は、「including(含む)」と同義であり、包括的または非限定的である(すなわち、追加の、記載されていない要素または方法の動作を除外しない)。
【0023】
本明細書全体を通じて「1つの実装例」または「一実装例」への言及は、この実装例に関連して説明される特定の特徴、構造体、または特性が少なくとも1つの実装例に含まれることを意味している。したがって、本明細書全体を通じて様々な箇所に「1つの実装例では」または「一実装例では」という表現が現れても、必ずしも全てが同じ実装例に言及しているわけではない。さらに、1つまたは複数の実装例では、特定の特徴、構造体、または特性を任意の好適な方式で組み合わせてもよい。
【0024】
本明細書および添付した特許請求の範囲においては、「a」、「an」、および「the」が付いた単数形は、文脈上特に明記されていない限り、複数の指示対象を含む。用語「または」は一般に、文脈上特に明記されていない限り、その意味に「および/または」を含むものとして使われることにも留意されたい。
【0025】
本明細書において提供される各項目および要約書は便宜のみを目的としたものであり、実装例の範囲または意味を解釈するものではない。
【0026】
本開示は概して、光学系、例えばヘッドマウントディスプレイシステムを用いる光学系の性能および効率を向上させるための手法に関する。本開示の光学系は、ワイヤグリッド偏光子を反射偏光子として利用する偏光反射屈折光学系、または「パンケーキ光学系」を含んでよい。ワイヤグリッド偏光子は、波長または変動する入射角について均等に機能しないことがある。本開示の少なくともいくつかの実装例では、空間変動偏光子が、ワイヤグリッド偏光子に対して偏光補償をもたらすように作用する光学系に設けられており、これにより、ワイヤグリッド偏光子は波長および/または入射角(例えば、軸上および軸外)についてより均等に機能するようになる。空間変動偏光子は、以下でさらに説明されるように、マルチツイストリターダで形成されてよい。
【0027】
初めに、
図1~
図4を参照して、本明細書で説明する手法の例示的なヘッドマウントディスプレイデバイスの応用例について説明する。次に、
図5および
図6を参照して、本開示の特徴を含むディスプレイシステムの例示的な実装例について説明する。
[例示的なヘッドマウントディスプレイシステムおよび環境]
【0028】
図1は、ローカルメディアレンダリング(LMR)システム110(例えば、ゲーム機)を含むネットワーク化された環境100の概略図であり、本システムには、本明細書で説明する少なくともいくつかの手法を実行するのに好適なローカルコンピューティングシステム120およびディスプレイデバイス180(例えば、2つのディスプレイパネルを備えたHMDデバイス)が含まれる。図示した
図1の実施形態では、ローカルコンピューティングシステム120は、伝送リンク115を介してディスプレイデバイス180に通信可能に接続されている(ディスプレイデバイスは、
図2に例示されているような1つまたは複数のケーブル(ケーブル220)を介するなどして有線接続もしくはテザー接続されてもよく、またはその代わりに無線接続されてもよい)。他の実施形態では、ローカルコンピューティングシステム120は、エンコードされた表示用画像データを有線リンクまたは無線リンクを介して、HMDデバイス180に加えてであろうと、その代わりであろうと、パネルディスプレイデバイス(例えば、TV、コンソール、またはモニタ)に提供してよく、ディスプレイデバイスはそれぞれ、1つまたは複数のアドレス指定可能な画素アレイを含む。様々な実施形態において、ローカルコンピューティングシステム120は、汎用コンピューティングシステム、ゲーム機、ビデオストリーム処理デバイス、モバイルコンピューティングデバイス(例えば、携帯電話、PDA、または他のモバイルデバイス)、VR処理デバイスもしくはAR処理デバイス、または他のコンピューティングシステムを含んでよい。
【0029】
例示した実施形態では、ローカルコンピューティングシステム120は、1つまたは複数のハードウェアプロセッサ(例えば、中央演算処理装置すなわち「CPU」)125、メモリ130、様々なI/O(「入力/出力」)ハードウェア構成要素127(例えば、キーボード、マウス、1つまたは複数のゲームコントローラ、スピーカ、マイク、IR送信機および/または受信機など)、1つまたは複数の専用ハードウェアプロセッサ(例えば、グラフィックス処理装置すなわち「GPU」)144およびビデオメモリ(VRAM)148を含むビデオサブシステム140、コンピュータ可読ストレージ150、ならびにネットワーク接続160を含む構成要素を有している。また、例示した実施形態では、アイトラッキングサブシステム135の一実施形態が、説明した手法のうちの少なくともいくつかを行うために、説明したこれらの手法を実施する自動化処理を行うのにCPU125および/またはGPU144を用いるなどしてメモリ130で実行され、メモリ130は任意選択でさらに(例えば、表示されるビデオまたは他の画像を生成する、ゲームプログラムなどの)1つまたは複数の他のプログラム133を実行してよい。本明細書で説明される少なくともいくつかの手法を実施する自動化処理の一部として、メモリ130で実行されるアイトラッキングサブシステム135および/またはプログラム133は、ストレージ150の例示的なデータベースのデータ構造体内にあるものを含む様々な種類のデータを格納しても検索してもよく、この例では、用いられるデータは、データベース(「DB」)154内にある様々な種類の画像データ情報、DB152内にある様々な種類のアプリケーションデータ、DB157内にある様々な種類の構成データを含んでよく、またシステムデータもしくは他の情報などの追加情報を含んでよい。
【0030】
LMRシステム110も、図示した実施形態では、画像生成プログラム133に加えてであろうと、その代わりであろうと、1つまたは複数のコンピュータネットワーク101およびネットワークリンク102を介して、表示のためにLMRシステム110にコンテンツをさらに提供し得る例示的なネットワークアクセス可能なメディアコンテンツプロバイダ190に通信可能に接続される。メディアコンテンツプロバイダ190は、それぞれローカルコンピューティングシステム120のものと同様の、1つまたは複数のハードウェアプロセッサ、I/O構成要素、ローカルストレージデバイス、およびメモリを含む構成要素を有し得る1つまたは複数のコンピューティングシステム(不図示)を含み得るが、簡単にするために、ネットワークアクセス可能なメディアコンテンツプロバイダについては、いくつかの詳細を例示していない。
【0031】
ディスプレイデバイス180は、
図1の例示した実施形態におけるローカルコンピューティングシステム120と異なる且つそこから分離しているものとして図示されているが、特定の実施形態では、ローカルメディアレンダリングシステム110の一部または全部の構成要素が、1つのデバイス、例えば、携帯ゲーム機、携帯型VRエンターテイメントシステム、HMDデバイスなどの中に統合されても収容されてもよいことが理解されるであろう。そのような実施形態では、伝送リンク115は、例えば、1つまたは複数のシステムバスおよび/またはビデオバスアーキテクチャを含んでよい。
【0032】
ローカルメディアレンダリングシステム120によってローカルに行われる処理を伴う1つの例として、ローカルコンピューティングシステムは、アプリケーションデータ152がメモリ130を用いてCPU125によって実行される1つまたは複数のゲームアプリケーションを含み、また様々なビデオフレーム表示データが、ビデオサブシステム140のGPU144と連携するなどして、画像生成プログラム133によって生成される且つ/または処理されるような、ゲームコンピューティングシステムであると仮定する。高品質のゲーム体験を提供するために、(ビデオフレームごとの高い画像解像度、およびそのようなビデオフレームの毎秒約60~180という高い「フレームレート」に対応する)大量のビデオフレームデータが、ローカルコンピューティングシステム120によって生成され、有線または無線の伝送リンク115を介してディスプレイデバイス180に提供される。
【0033】
コンピューティングシステム120およびディスプレイデバイス180は、一例に過ぎず、本開示の範囲を限定しようとしているわけではないことも理解されるであろう。コンピューティングシステム120は、代わりに、互いに作用する複数のコンピューティングシステムまたはデバイスを含んでよく、また、インターネットなどの1つまたは複数のネットワークを通じて、ウェブを経由して、またはプライベートネットワーク(例えば、移動体通信ネットワークなど)を経由してなどにより、例示していない他のデバイスに接続されてよい。より一般的には、コンピューティングシステムまたは他のコンピューティングノードが、互いに作用して説明した種類の機能を実行できるハードウェアまたはソフトウェアのあらゆる組み合わせを含んでよく、その中には、限定しないが、デスクトップまたは他のコンピュータ、ゲーム機、データベースサーバ、ネットワークストレージデバイスおよび他のネットワークデバイス、PDA、携帯電話、無線電話、ページャ、電子手帳、インターネット機器、(例えば、セットトップボックスおよび/またはパーソナル/デジタルビデオレコーダを用いる)テレビベースのシステム、および適切な通信機能を含む様々な他の消費者製品が含まれる。ディスプレイデバイス180は、同様に、様々な種類および形態の1つまたは複数のディスプレイパネルを備えた1つまたは複数のデバイスを含んでよく、任意選択で、様々な他のハードウェア構成要素および/またはソフトウェア構成要素を含んでよい。
【0034】
様々なアイテムがメモリまたはストレージに格納されるとともに用いられるものとして例示されているが、これらのアイテムまたはその一部は、メモリ管理またはデータ整合性の目的で、メモリと他のストレージデバイスとの間で転送されてよいことも理解されるであろう。こうして、いくつかの実施形態では、説明した手法の一部または全部は、1つまたは複数のソフトウェアプログラムおよび/またはデータ構造体により構成される場合などに、1つまたは複数のプロセッサまたは他の構成されたハードウェア回路またはメモリまたはストレージを含むハードウェアにより(例えば、1つもしくは複数のソフトウェアプログラムのソフトウェア命令を実行することにより、且つ/またはそのようなソフトウェア命令および/もしくはデータ構造体を格納することにより)行われてよい。構成要素、システム、およびデータ構造体の一部または全部は、(例えば、ソフトウェア命令または構造化データとして)非一時的コンピュータ可読記憶媒体、例えば、ハードディスクもしくはフラッシュドライブまたは他の不揮発性ストレージデバイス、揮発性メモリまたは不揮発性メモリ(例えば、RAM)、ネットワークストレージデバイス、あるいは適切なドライブによってまたは適切な接続を介して読み出される携帯型メディア物品(例えば、DVDディスク、CDディスク、光ディスクなど)にも格納されてよい。システム、構成要素、およびデータ構造体はまた、いくつかの実施形態では、生成されたデータ信号として(例えば、搬送波または他のアナログもしくはデジタルの伝搬信号の一部として)、無線ベースの媒体および有線/ケーブルベースの媒体を含む様々なコンピュータ可読伝送媒体で伝送されてよく、(例えば、1つもしくは多重化したアナログ信号の一部として、または複数の個別のデジタルパケットもしくはフレームとして)様々な形態を取ってよい。そのようなコンピュータプログラム製品は、他の実施形態では他の形態も取ってよい。したがって、本発明は、他のコンピュータシステム構成を用いて実施されてよい。
【0035】
図2は、ビデオレンダリングコンピューティングシステム204にテザー接続220(または他の実施形態では無線接続)を介して連結された例示的なHMDデバイス202と共に、説明した手法のうちの少なくともいくつかを用いて、仮想現実表示を人間のユーザ206に提供する例示的な環境200を例示している。ユーザは、HMDデバイス202を装着し、コンピューティングシステム204からHMDデバイスを介して実際の物理環境と異なる模擬環境の表示情報を受信し、コンピューティングシステムは、模擬環境の画像(例えば、コンピューティングシステム上で実行されるゲームプログラムおよび/または他のソフトウェアプログラムにより生成された画像)をユーザへの表示のためにHMDデバイスに供給する画像レンダリングシステムとして働く。この例では、ユーザはさらに、実際の物理環境200の追跡対象体積201内を動き回ることができ、ユーザがさらに模擬環境とやり取りするのを可能にする1つまたは複数のI/O(「入力/出力」)デバイス(この例ではハンドヘルドコントローラ208および210を含む)をさらに有してよい。
【0036】
例示した例では、環境200には、HMDデバイス202またはコントローラ208および210の追跡を容易にし得る1つまたは複数の基地局214(基地局214aおよび214bとラベル付けされた2つが示されている)が含まれてよい。ユーザが場所を移動する、またはHMDデバイス202の向きを変えると、模擬環境の対応する部分がHMDデバイスを装着したユーザに表示されるのを可能にするなどのために、HMDデバイスの位置が追跡され、コントローラ208および210はさらに、コントローラの位置を追跡するのに用いるために(また任意選択で、HMDデバイスの位置を判定するまたは確認するのに役立つ情報を用いるために)同様の手法を使用してよい。HMDデバイス202の追跡位置が分かった後に、対応する情報がテザー(tether)220または無線を介してコンピューティングシステム204に伝送される。コンピューティングシステムは、追跡した位置情報を用いて模擬環境の1つまたは複数の次の画像を生成し、ユーザに表示する。
【0037】
本開示の様々な実装例で用いられ得る位置追跡には多数の異なる方法があり、その中には、限定しないが、音響追跡、慣性追跡、磁気追跡、光学追跡、これらの組み合わせなどが含まれる。
【0038】
少なくともいくつかの実装例では、HMDデバイス202は、本開示の追跡機能または他の態様を実装するのに用いられ得る1つまたは複数の受光器またはセンサを含んでよい。例えば、基地局214はそれぞれ、追跡対象体積201全体にわたって光信号を掃引してよい。それぞれの特定の実装例の要件に応じて、各基地局214は、1つより多くの光信号を生成してよい。例えば、6自由度トラッキングには、通常、1つの基地局214で十分であるが、HMDデバイスおよび周辺機器に対して安定なルームスケールの追跡をもたらすには、複数の基地局(例えば、基地局214a、214b)がいくつかの実施形態では必要または望ましいことがある。この例では、受光器がHMDデバイス202および/または他の追跡対象物(コントローラ208および210など)に組み込まれている。少なくともいくつかの実装例では、それぞれの追跡対象デバイス上で、受光器が加速度計およびジャイロスコープ慣性計測装置(「IMU」)と組み合わされて、低遅延センサフュージョンがサポートされてよい。
【0039】
少なくともいくつかの実装例では、各基地局214が、線状ビームを追跡対象体積201全体にわたり垂直軸に沿って掃引する2つのロータを含む。各掃引サイクルの開始時に、基地局214は、追跡対象物に付いている全てのセンサに可視である全方向性光パルス(「同期信号」と呼ばれている)を発してよい。こうして、各センサは、同期信号とビーム信号との間の持続時間を計ることにより、掃引対象体積における独自の角位置を計算する。センサの距離および向きが、1つの固定物体に取り付けた複数のセンサを用いて求められてよい。
【0040】
追跡対象物(例えば、HMDデバイス202、コントローラ208および210)に配置された1つまたは複数のセンサは、ロータからの変調光を検出できるオプトエレクトロニクスデバイスを含んでよい。可視光または近赤外(NIR)光の場合、シリコンフォトダイオードおよび好適な増幅器/検出器回路が用いられてよい。環境200は、基地局214信号の信号と同様の波長を有する静的信号および時変信号(光ノイズ)を含み得るため、少なくともいくつかの実装例では、基地局の光が、あらゆる干渉信号との区別を容易にする且つ/または基地局信号の波長以外のあらゆる放射波長からセンサを選別するのを容易にするような方法で変調されてよい。
【0041】
インサイドアウト追跡も、HMDデバイス202および/または他の対象物(例えば、コントローラ208および210、タブレットコンピュータ、スマートフォン)の位置を追跡するのに用いられ得る種類の位置追跡である。インサイドアウト追跡は、カメラまたは他のセンサの位置を用いてHMDの位置を判定するという点でアウトサイドイン追跡と異なる。インサイドアウト追跡では、カメラまたはセンサがHMDまたは追跡されている対象物に位置しているが、アウトサイドアウト方式の追跡では、カメラまたはセンサが環境内の固定位置に配置される。
【0042】
インサイドアウト追跡を利用するHMDは、その位置が環境に対してどのように変化しているかを判定するために、1つまたは複数の「外を見る」カメラを利用する。HMDが動くと、センサは部屋の中の自地点を再調整し、これに応じて仮想環境がリアルタイムに応答する。この種類の位置追跡は、環境内に配置されるマーカの有無にかかわらず実現され得る。HMDに配置されたカメラは、周囲環境の特徴を観察する。マーカを用いる場合、マーカは、追跡システムによって容易に検出されるように設計されており、特定の領域に配置される。「マーカを用いない」インサイドアウト追跡では、HMDシステムは、環境内に元々存在している顕著な特徴(例えば、地勢)を用いて、位置および向きを判定する。HMDシステムのアルゴリズムは、特定の画像または形状を識別し、これらを用いて、空間内のデバイスの位置を計算する。加速度計およびジャイロスコープからのデータも、位置追跡の精度を高めるのに用いられ得る。
【0043】
図3は、ユーザ342の頭に装着されたときの、例示的なHMDデバイス344の正面図を説明する情報300を示している。HMDデバイス344は、前面または前方カメラ346と1つまたは複数の種類の複数のセンサ348a~348d(集合的に348)とを支える前面構造体343を含む。1つの例として、センサ348の一部または全部、例えば、1つまたは複数の外部デバイス(示されていないが、例えば、
図2の基地局214)から発せられた光情報を検出してそれを用いる光センサが、空間内のデバイス344の位置および向きを判定するのに役立ち得る。示されているように、前方カメラ346およびセンサ348は、ユーザ342がHMDデバイス344を操作する実際のシーンまたは環境(不図示)に向かって前方に向けられている。実際の物理環境には、例えば、1つまたは複数の対象物(例えば、壁、天井、家具、階段、車、樹木、追跡マーカ、または任意の他の種類の対象物)が含まれ得る。特定の数のセンサ348は、図示されているセンサの数より少なくても多くてもよい。HMDデバイス344はさらに、前面構造体に取り付けられていない(例えば、HMDデバイスの内部にある)1つまたは複数の追加構成要素、例えば、HMDデバイス344の特定の力、角速度、および/またはHMDデバイスを取り囲む磁場を(例えば、加速度計とジャイロスコープと、任意選択で磁力計との組み合わせを用いて)測定して報告するIMU(慣性計測装置)電子デバイス347を含んでよい。HMDデバイスはさらに、示されていない追加構成要素を含んでよく、その中には、1つまたは複数のディスプレイパネルおよび光学レンズ系が含まれ、これらは、ユーザの両目(不図示)の方を向いており、また任意選択で、HMDデバイス内の光学レンズ系および/またはディスプレイパネルのうちの一方または両方の位置合わせまたは他の位置決めを変えるための1つまたは複数の付属内蔵モータを有する。これについては、
図4に関して以下でより詳細に説明する。
【0044】
例示したHMDデバイス344の例は、HMDデバイス344のハウジングに取り付けられ且つユーザの頭を囲むように全体的または部分的に延びる1つまたは複数のストラップ345に少なくとも部分的に基づいて、ユーザ342の頭に支えられている。ここに例示していないが、HMDデバイス344はさらに、ストラップ345のうちの1つまたは複数に取り付けられるなどした1つまたは複数の外部モータを有してよく、ユーザの頭にあるHMDデバイスの位置合わせまたは他の位置決めを修正するために、そのようなモータを用いてそのようなストラップを調整することが、自動補正動作に含まれてよい。HMDデバイスは、例示したストラップに加えてでも、その代わりであっても、ここに例示していない他の支持構造体(例えば、鼻当て、あごひも、など)を含んでよく、いくつかの実施形態は、モータが取り付けられた1つまたは複数のそのような他の支持構造体を含み、同様に、その形状および/または位置を調整して、ユーザの頭にあるHMDデバイスの位置合わせまたは他の位置決めを修正してよいことが理解されるであろう。ユーザの頭に取り付けられていない他のディスプレイデバイスが同様に、ディスプレイデバイスの位置決めに影響を与える1つもしくは複数の構造体に、またはその一部に取り付けられてよく、そのような他のデバイスは、少なくともいくつかの実施形態では、モータまたは他の機械式アクチュエータを含み、同様にその形状および/または位置を修正して、ディスプレイデバイスの1人または複数のユーザの1つまたは複数の瞳に対するディスプレイデバイスの位置合わせまたは他の位置決めを修正してよい。
【0045】
図4は、一対のニアツーアイ・ディスプレイシステム402および404を含むHMDデバイス405の簡略化した平面
図400を例示している。HMDデバイス405は、例えば、
図1~
図3に例示したHMDデバイスと同じもしくは同様であってもよく、または異なるHMDデバイスであってもよく、ここで説明するHMDデバイスはさらに、以下でさらに説明する例に用いられてよい。
図4のニアツーアイ・ディスプレイシステム402および404はそれぞれ、ディスプレイパネル406および408(例えば、OLEDマイクロディスプレイ、LCDディスプレイ)と、それぞれが1つまたは複数の光学レンズを有するそれぞれの光学レンズ系410および412とを含む。ディスプレイシステム402および404は、ハウジング(またはフレーム)414に設置されても、または別の方法でその中に配置されてもよく、ハウジングには、前面部分416(例えば、
図3の前面表面343と同じまたは同様)、左テンプル418、右テンプル420、およびユーザ424がHMDデバイスを装着したときに装着者であるユーザの顔に接触または近接する内面421が含まれる。装着者であるユーザ424の頭422に装着され得る2つのディスプレイシステム402および404は、眼鏡構成においてハウジング414に固定されてよく、左テンプル418および右テンプル420はそれぞれ、ユーザの耳426および428の上に置かれ、鼻当て部492はユーザの鼻430の上に置かれてよい。
図4の例では、HMDデバイス405は、鼻当て部および/または左右のオーバーイヤー型テンプルによって部分的にまたは全体的にユーザの頭に支えられてよいが、いくつかの実施形態では
図2および
図3に示す実施形態のように、ストラップ(不図示)または他の構造体を用いて、HMDデバイスをユーザの頭に固定してもよい。ハウジング414は、2つの光学レンズ系410および412のそれぞれをユーザの目432および434の一方の前方にそれぞれ配置するような形状および大きさに作られてよく、これにより、それぞれの瞳494の目標位置は、それぞれの光学レンズ系および/またはディスプレイパネルの前方で縦方向にも横方向にも中心に置かれることになる。ハウジング414は、説明を目的として、眼鏡と同様の簡略化した方式で示されているが、実際にはもっと精巧な構造体(例えば、ゴーグル、一体型ヘッドバンド、ヘルメット、ストラップなど)を用いて、ディスプレイシステム402および404を支えて且つユーザ424の頭422に配置することができることを理解されたい。
【0046】
図4のHMDデバイス405、およびここで説明したその他のHMDデバイスは、仮想現実表示をユーザに、毎秒30または60または90フレーム(または画像)などの表示速度で提示される対応するビデオを介するなどして提示することができ、同様のシステムの他の実施形態では、拡張現実表示がユーザに提示されてよい。
図4のディスプレイ406および408はそれぞれ、それぞれの光学レンズ系410および412を通って運ばれた後にこの光学レンズ系によってユーザ424の目432および434の上にそれぞれ焦点を結ぶ光を生成してよい。それぞれの目の瞳494の開口は、そこを通って光が目に入るが、通常、瞳の大きさの範囲は非常に明るい状態で直径2mm(ミリメートル)から暗い状態では8mmにもなり、中に瞳を含むより大きい虹彩の大きさは約12mmになり得る。瞳(および取り囲む虹彩)はさらに、通常、まぶたが開いた状態で目の可視部分内を横方向および/または縦方向に数ミリメートル動くことができ、これは、眼球がその中心を旋回する(その結果、瞳が動くことができる3次元体積がもたらされる)と、異なる横方向の位置および縦方向の位置に対して、瞳をディスプレイの光学レンズまたは他の物理的要素から異なる深さにも動かすことになる。ユーザの瞳に入る光を、画像および/または映像としてユーザ424が目にする。いくつかの実装例では、光学レンズ系410および412のそれぞれと、ユーザの目432および434との間の距離は比較的短くてよく(例えば、30mm未満、20mm未満)、これによって、光学レンズ系およびディスプレイシステムの重量がユーザの顔に比較的近いため、HMDデバイスがユーザにはより軽く感じられることになり、より大きな視野をユーザに提供することもできるのは有利である。ここに例示していないが、そのようなHMDデバイスのいくつかの実施形態には、様々な追加の内蔵センサおよび/または外部センサが含まれることがある。
【0047】
例示した実施形態では、
図4のHMDデバイス405はさらに、(例えば、1つまたは複数のIMUユニットの一部として)1つまたは複数の加速度計および/またはジャイロスコープ490を含むなどのために、ハードウェアセンサおよび追加構成要素を含む。本明細書のどこか他の箇所でより詳細に説明されるように、加速度計および/またはジャイロスコープからの値がHMDデバイスの向きをローカルに判定するのに用いられてよい。さらに、HMDデバイス405は、1つまたは複数の前面カメラ、例えば、前部416の外面上にカメラ485を含んでよく、その情報が、AR機能または測位機能を提供するためなどに、HMDデバイスの演算の一部として用いられてよい。さらに、HMDデバイス405は他の構成要素475(例えば、ディスプレイパネル406および408への画像の表示を制御する電子回路、内蔵ストレージ、1つまたは複数のバッテリ、外部基地局とやり取りする位置追跡デバイスなど)をさらに含んでよく、これについては本明細書のどこか他の箇所でより詳細に説明される。他の実施形態が、構成要素475、485、および/または490のうちの1つまたは複数を含まなくてもよい。ここに例示していないが、そのようなHMDデバイスのいくつかの実施形態には、ユーザの体、目、コントローラなどの様々な他の種類の動きおよび位置を追跡するなどのために、様々な追加の内蔵センサおよび/または外部センサが含まれてよい。
【0048】
例示した実施形態では、
図4のHMDデバイス405はさらに、ユーザの瞳または視線の方向を判定するために、説明した手法の一部として、開示した実施形態により用いられ得るハードウェアセンサおよび追加構成要素を含み、これは、HMDデバイスと関連した1つまたは複数の構成要素に当該構成要素が使用するために提供されてよい。これについては、本明細書のどこか他の箇所で説明される。この例でのハードウェアセンサには、ユーザの瞳494の実際の位置に関する情報を、例えば、この例では瞳ごとに別々に取得するのに用いるために、ディスプレイパネル406および408に、もしくはその近くに設置されている、且つ/または光学レンズ系410および412の近くの内面421に位置している、アイトラッキングサブシステムの1つまたは複数のアイトラッキングアセンブリ472が含まれている。
【0049】
アイトラッキングアセンブリ472のそれぞれには、1つまたは複数の光源(例えば、IR LED)と、1つまたは複数の光検出器(例えば、シリコンフォトダイオード)とが含まれてよい。さらに、明確にするために、
図4にはアイトラッキングアセンブリ472が合計で4つしか示されていないが、実際には、異なる数のアイトラッキングアセンブリが提供されてもよいことを理解されたい。いくつかの実施形態では、合計で8つのアイトラッキングアセンブリ472、つまりユーザ424のそれぞれの目に対して4つのアイトラッキングアセンブリが提供されている。さらに、少なくともいくつかの実装例では、それぞれのアイトラッキングアセンブリには、ユーザ424の目432および434の一方に向けられた光源と、ユーザのそれぞれの目によって反射された光を受光するように配置された光検出器と、鏡面反射によって反射された光が光検出器に伝わらないように配置され且つそのように構成された偏光子とが含まれる。
【0050】
本明細書のどこか他の箇所でより詳細に説明されるように、アイトラッキングアセンブリ472からの情報が、HMDデバイス405の使用時に、ユーザの視線方向を判定して追跡するのに用いられてよい。さらに、少なくともいくつかの実施形態では、HMDデバイス405は、HMDデバイス405のハウジング内にある光学レンズ系410および412ならびに/またはディスプレイパネル406および408のうちの一方または両方の位置合わせおよび/または他の位置決めを(例えば、縦方向、水平左右方向、および/または水平前後方向に)動かす(439)のに用いられ得る1つまたは複数の内蔵モータ438(または他の動き機構)を含んでよく、これは、瞳494の一方または両方の実際の位置に対応するニアツーアイ・ディスプレイシステム402および404の一方または両方の目標瞳位置をパーソナル化する、または別の方法で調整するなどのためである。そのようなモータ438は、例えば、ハウジング414上の1つもしくは複数の制御ボタン437をユーザが操作することによって、且つ/または1つもしくは複数の関連した別個のI/Oコントローラ(不図示)をユーザが操作することによって制御されてよい。他の実施形態では、HMDデバイス405は、そのようなモータ438を用いずに、例えば、ユーザが制御ボタン437を用いて手動で変えられる調整可能な位置決め機構(例えば、ネジ、スライダ、ラチェットなど)を用いて、光学レンズ系410および412ならびに/またはディスプレイパネル406および408の位置合わせおよび/または他の位置決めを制御することができる。さらに、
図4にはニアツーアイ・ディスプレイシステムの一方だけにモータ438が例示されているが、いくつかの実施形態では、それぞれのニアツーアイ・ディスプレイシステムが独自の1つまたは複数のモータを有してよく、いくつかの実施形態では、1つまたは複数のモータを用いて、複数のニアツーアイ・ディスプレイシステムのそれぞれを(例えば、独立して)制御してよい。
【0051】
説明した手法が、いくつかの実施形態では、例示したものと同様のディスプレイシステムと共に用いられてよいが、他の実施形態では、他の種類のディスプレイシステムが用いられてよく、例えば、1つの光学レンズおよびディスプレイデバイスを有するもの、または複数のそのような光学レンズおよびディスプレイデバイスを有するものが含まれる。他のそのようなデバイスの非排他的な例には、カメラ、望遠鏡、顕微鏡、双眼鏡、スポッティングスコープ、測量スコープなどが含まれる。さらに、説明した手法は、画像を形成するのに光を発する多種多様なディスプレイパネルまたは他のディスプレイデバイスと共に用いられてよく、本明細書のどこか他の箇所で説明されるように、その画像を、1人または複数のユーザが1つまたは複数の光学レンズを通して見る。他の実施形態では、ユーザは、ディスプレイパネル以外の方式で、別の光源からの光(例えば、レーザスキャンビーム)を部分的にまたは全体的に反射する表面上などに生成される1つまたは複数の画像を1つまたは複数の光学レンズを通して見ることができる。
[例示的なディスプレイシステム]
【0052】
図5は、支持構造体506(ハウジング、ヘルメット、ゴーグル、眼鏡、または他のヘッドウェアなど)によって支えられたディスプレイシステム502および光学系504を含むヘッドマウントディスプレイシステム500の側断面図である。支持構造体506は、ユーザが
図5に示す矢印512によって示されるZ軸方向に本システムを見るときに、ユーザの目(例えば、目510)の前方にあるディスプレイシステム502および光学系504を支える。制御回路514は、本明細書のどこか他の箇所で説明するように、任意選択で、光学系504またはディスプレイシステム502の1つまたは複数の構成要素に連結されてよい。一例として、ディスプレイシステム502および光学系504は、
図4を参照して上述したディスプレイシステムおよび光学系と同様であっても、同一であってもよい。ディスプレイシステム502および光学系504は、ユーザ510に画像を表示するように動作可能であってよい。以下でさらに説明するように、光学系504は、反射屈折光学系または「パンケーキ」光学系を利用して、ディスプレイシステム502からユーザの目510に画像を提供してよい。ヘッドマウントディスプレイシステム400の各構成要素の間隔および大きさは、例示したものと異なってもよい。一例として、互いに間隔を開けているものとして示されている各構成要素が、様々な順序などで互いに隣接して配置されてよい。
【0053】
ディスプレイシステム502は、画素アレイ516などの画像ソースを含む。画素アレイ516は、光を発する2次元配列の画素を含んでよい。非限定的な例として、画素アレイ516は、液晶ディスプレイ(LCD)、液晶オンシリコン(LCoS)ディスプレイ、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイなどを含んでよい。
【0054】
直線偏光子518が、画素アレイ516からの偏光を提供するために、画素アレイ516の前方に配置されてよい。少なくともいくつかの実装例では、画素アレイ516は、直線偏光子518が省かれてよいように設計することにより、直線偏光を生成してよい。一例として、直線偏光子518は、
図5に示すX軸と整列した透過軸または通過軸(pass axis)を有してよい。
【0055】
光学系504は、直線偏光子518の前方に配置された空間変動偏光子520を含んでよい。以下でさらに説明するように、空間変動偏光子520は、その光学ウィンドウ全体にわたって変動する遅延特性をもたらすことができ、これにより、空間変動偏光子は光学系502のワイヤグリッド偏光子522に対して偏光補償をもたらすことが可能になり、その結果、ワイヤグリッド偏光子の波長および入射角についての変動が最小限に抑えられる。空間変動偏光子520は、マルチツイストリターダなどの、複屈折材料で形成された波長リターダを含んでよい。複屈折とは、屈折率が光の偏光および伝搬方向に依存する材料の特性である。波長リターダは、波長リターダを通って進む光の偏光状態または位相を変える。波長リターダは、遅相軸(または異常軸)および進相軸(通常軸)を有してよい。偏光が波長リターダを通って進むと、進相軸に沿った光は遅相軸に沿った光より速く進む。
【0056】
空間変動偏光子520は、その進相軸が直線偏光子518の透過軸に対して45°で整列するように位置合わせされてよい。空間変動偏光子520は、直線偏光子518の前方に設置されてよく、また任意選択で直線偏光子に取り付けられてよい。
【0057】
光学系504はさらに、レンズ部524と部分反射ミラーまたは表面526とを含むレンズ素子を含む。レンズ部524と部分反射ミラー526とは、単一の構成要素として形成されても、複数の構成要素として形成されてもよい。光学系504はさらに、レンズ部524とワイヤグリッド偏光子522との間に配置された4分の1波長板528を含む。
【0058】
レンズ部524またはディスプレイシステム502もしくは光学系504の他の構成要素は、例示を目的として平面であるように示しているが、非平面(例えば、平凸、平凹など)であってもよい。さらに、光学系504はさらなるまたはより少ない光学構造体、例えば、屈折レンズもしくは回折レンズ、部分反射膜、波長板、反射偏光子、直線偏光子、反射防止膜、さらなる空間変動偏光子、またはディスプレイシステム502からの光線が望ましい光強度でユーザの目510で焦点を結ぶことを可能にする他の光学構造体を含んでよい。
【0059】
ヘッドマウントディスプレイシステム500のディスプレイシステム502および光学系504を光がどのように通過し得るかという非限定的な例を、ここで
図5に示す光線530~544(矢印)を参照して説明する。画像光線530は、画素アレイ516から出射して直線偏光子518を通過してよく、直線偏光子518の透過軸と整列した直線偏光になる。例示した例では、直線偏光子518の透過軸は
図5に示すX軸と整列してよい。
【0060】
光線530は、直線偏光子518を通過した後に、空間変動偏光子520を通過して円偏光になる。空間変動偏光子520の作用についてのさらなる説明が、本明細書のどこか他の箇所で提供される。
【0061】
空間変動偏光子520からの円偏光線530は部分反射ミラー526に当たり、光線の一部が光線532として部分反射ミラーを通過する。光線532は、レンズ素子のレンズ部524の形状または特性によって屈折または回折する(部分的に焦点を結ぶ)。
【0062】
光線532は円偏光である。4分の1波長板528は、光線532を変換して、直線偏光が
図5のY軸と整列した状態の直線偏光線534にする。
【0063】
ワイヤグリッド偏光子522は、4分の1波長板528に近接または隣接して配置されてよい。ワイヤグリッド偏光子522は、直交する反射軸および透過(または通過)軸を有してよい。ワイヤグリッド偏光子522の反射軸に対して平行な偏光がワイヤグリッド偏光子によって反射され、透過軸に対して平行な偏光がワイヤグリッド偏光子522を通過する。例示した例では、ワイヤグリッド偏光子522は、Y軸と整列した反射軸を有してよく、そのため光線534は反射光線536としてワイヤグリッド偏光子から反射する。
【0064】
反射光線536は、
図5に示すY軸と整列した直線偏光を有する。反射光線536は、4分の1波長板528を通過した後に、円偏光線538になる。円偏光線538はレンズ部524を通過し、光線538の一部が反射光線540として部分反射ミラー526によって反射される。透過光線542として部分反射ミラー526を透過した光線538の一部は、空間変動偏光子520によって円偏光から直線偏光に変換される。直線偏光は
図5に示すY軸と整列した偏光を有しているため、光線542は直線偏光子518によって吸収される。
【0065】
上述したように、反射光線540は円偏光である。光線540は、レンズ部524および4分の1波長板528を再び通過した後に、その偏光がX軸と整列した光線544として直線偏光になり、これはワイヤグリッド偏光子522の透過軸に対して平行である。したがって、光線544はワイヤグリッド偏光子522を通過して、ユーザの目510に視認可能な画像を提供する。
【0066】
上述したように、ワイヤグリッド偏光子522に対して偏光補償をもたらす空間変動偏光子520は、視野全体にわたって(例えば、軸上から軸外まで)位置(例えば、横方向の位置、縦方向の位置、径方向の位置)に応じて変動する位相遅延をもたらしてよく、これは波長および入射角に対して敏感である。空間変動偏光子520の位相差が変動する特定の方式は、ワイヤグリッド偏光子520または他の構成要素の特定の構成および材料、例えば、入射光の偏光状態、入射角、材料、様々な構成要素の形状などに依存し得る。
【0067】
図6は、空間変動偏光子520の非限定的で例示的な平面
図600を示しており、この空間変動偏光子の位相差パターンを示している。この例では、空間変動偏光子520は、光学ウィンドウの中心602で円または4分の1波長(λ/4)位相差をもたらすように構成されており、この位相差は、空間変動偏光子が楕円または8分の1波長(λ/8)位相差をもたらす周辺部604に向かって徐々に(例えば、直線的に、非直線的に)減少する。概して、空間変動偏光子520は、いかなる方法によっても位置に応じて変動する位相差をもたらしてよく、位相差の量は、ワイヤグリッド偏光子520に対して偏光補償をもたらすように動作可能な任意の値(例えば、λ/20、λ/10、λ/8、λ/4、λ、2λ)であってよい。さらに、位相差の量は、1つまたは複数の方向にだけ増加しても、1つまたは複数の方向にだけ減少しても、または増加および減少の両方が生じてもよい。位相差の量は、連続的にまたは徐々に変動してもよく、または複数の段階(例えば、2段階、10段階)で変動してもよい。位相差の量は、例えば、線形関数、多項式関数、指数関数、階段関数、他の種類の関数、またはこれらの組み合わせを含む任意の種類の関数に従って変動してよい。
【0068】
上述したように、少なくともいくつかの実装例では、空間変動偏光子520は、マルチツイストリターダ(MTR)で形成されてよく、これは、正確且つカスタマイズされたレベルの広帯域位相差、狭帯域位相差、または多重帯域位相差を1つの薄膜でもたらす波長板状の位相差フィルムである。より具体的には、MTRは、1つの基板上に1つの配向層と共に、2つまたはそれより多くのツイスト液晶(LC)層を有する。次のLC層が前の層によって直接的に位置合わせされるので、シンプルな製造が可能になり、自動層間位置合わせが実現し、連続的に変動する光軸を備えたモノリシックフィルムがもたらされる。
【0069】
少なくともいくつかの実装例では、コントローラ514は、任意の望ましい構成に対する、空間変動偏光子の空間依存性位相遅延を選択的に変えるために、空間変動偏光子520に動作可能に連結されてよい。言い換えれば、空間変動偏光子520は選択的に切り替え可能であってよい。そのような実装例では、空間変動偏光子520の空間依存性位相遅延がコントローラ514によって任意の望ましい方式で選択的に制御されるのを可能にする1つまたは複数の薄膜トランジスタ層が設けられてよい。コントローラ514は、位相遅延を任意の望ましい頻度で、例えば、一度だけ、定期的に、ディスプレイシステム502のフレームレートと等しい頻度またはその何分の1かの頻度などで制御することができる。
【0070】
少なくともいくつかの実装例では、4分の1波長板528および空間変動偏光子520の位置を交換してよい。少なくともいくつかの実装例では、4分の1波長板528は、光学系504が2つ(またはそれより多くの)空間変動偏光子を含むように、空間変動偏光子520と同様または同一の空間変動偏光子と置き換えられてよい。
【0071】
本明細書で説明した空間変動偏光子を利用することで、光学設計者にとっては、性能および効率が向上した光学系を作り出すための自由度が大幅に増しており、これにより、より優れた視聴体験を提供し、コストがかからず、大きさまたは重量がより小さく、電力をあまり消費せず、また当業者には明らかである他の利点を提供するディスプレイシステムが可能になる。
【0072】
上述した様々な実装例は、さらなる実装例を提供するために組み合わされてよい。上記の詳細な説明を踏まえて、これらの変更および他の変化を各実装例に対して行うことができる。一般に、以下の特許請求の範囲では、用いられる用語は、特許請求の範囲を本明細書および特許請求の範囲に開示された特定の実装例に限定するものと解釈されるべきではなく、そのような特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲と併せて全ての実現可能な実装例を含むものと解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は本開示によって限定されることはない。
【国際調査報告】