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特表2023-512868ディスプレイシステム用の補正偏光補償光学系
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】ディスプレイシステム用の補正偏光補償光学系
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20230323BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
H04N5/64 511A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022532745
(86)(22)【出願日】2021-02-05
(85)【翻訳文提出日】2022-08-05
(86)【国際出願番号】 US2021016891
(87)【国際公開番号】W WO2021158970
(87)【国際公開日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】62/971,177
(32)【優先日】2020-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517160525
【氏名又は名称】バルブ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハッドマン、ジョシュア マーク
【テーマコード(参考)】
2H199
【Fターム(参考)】
2H199CA03
2H199CA04
2H199CA12
2H199CA24
2H199CA25
2H199CA29
2H199CA32
2H199CA34
2H199CA42
2H199CA44
2H199CA47
2H199CA53
2H199CA62
2H199CA63
2H199CA64
2H199CA65
2H199CA67
2H199CA68
2H199CA91
2H199CA92
2H199CA94
2H199CA96
(57)【要約】
本開示は概して、ディスプレイシステム、例えば、レーザスキャンビームディスプレイシステムまたは他の種類のディスプレイシステム(例えば、マイクロディスプレイ)の性能および効率を向上させる手法に関連している。本開示のディスプレイシステムは、位置に応じて変動する位相遅延をもたらす、空間変動偏光子などの偏光補償光学系を含んでよく、これは、偏光補償をもたらし、ディスプレイシステムの偏光感受型光学系、例えば、導波管ベースの光学系、パンケーキ光学系、バードバス光学系、コーティングベースの光学系などによく適している光をもたらす。本開示のディスプレイシステムは、ヘッドマウントディスプレイシステムの構成要素であっても、または他の種類のディスプレイシステムであってもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイ光源と、
前記ディスプレイ光源からの第1の瞳を視聴者の目における第2の瞳にリレーするように配置された瞳リレー系と
備えるディスプレイシステムであって、
前記瞳リレー系が
偏光感受型光学系と、
前記偏光感受型光学系に対して偏光補償をもたらすために、位置に応じて空間的に変動する偏光を有する空間変動偏光子と
を有する、ディスプレイシステム。
【請求項2】
前記空間変動偏光子がマルチツイストリターダを含む、請求項1に記載のディスプレイシステム。
【請求項3】
前記空間変動偏光子が、第1の位置で位相差をもたらさず、第2の位置で4分の1波長位相差をもたらす、請求項1または2に記載のディスプレイシステム。
【請求項4】
前記空間変動偏光子の位相差が、横方向の寸法または縦方向の寸法に応じて変動する、請求項1から3のいずれか一項に記載のディスプレイシステム。
【請求項5】
前記空間変動偏光子の位相差が、前記ディスプレイシステムの視野全体にわたって変動する、請求項1から3のいずれか一項に記載のディスプレイシステム。
【請求項6】
前記偏光感受型光学系が、導波管ベースの光学系、パンケーキ光学系、バードバス光学系、またはコーティングベースの光学系を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のディスプレイシステム。
【請求項7】
前記ディスプレイ光源がレーザ光源を有し、前記ディスプレイシステムがさらに、前記レーザ光源からの光ビームを受光して、受光した前記光ビームを前記瞳リレー系に向けてリレーするように配置されたスキャンミラーを備える、請求項1から6のいずれか一項に記載のディスプレイシステム。
【請求項8】
前記レーザ光源と前記スキャンミラーとの間に配置されたビーム形成光学系をさらに備える、請求項7に記載のディスプレイシステム。
【請求項9】
前記空間変動偏光子の少なくとも一部が、前記偏光感受型光学系の上に、これに隣接して、またはこの中に配置される、請求項1から8のいずれか一項に記載のディスプレイシステム。
【請求項10】
前記偏光感受型光学系が導波管を含み、前記空間変動偏光子が前記導波管の上に、前記導波管の内側に、または前記導波管のポートに近接して配置される、請求項1から9のいずれか一項に記載のディスプレイシステム。
【請求項11】
前記ディスプレイシステムがヘッドマウントディスプレイシステムのディスプレイシステムである、請求項1から10のいずれか一項に記載のディスプレイシステム。
【請求項12】
前記空間変動偏光子に動作可能に連結された制御回路をさらに備え、前記制御回路が前記空間変動偏光子によってもたらされる位相差を選択的に調整するように動作可能である、請求項1から11のいずれか一項に記載のディスプレイシステム。
【請求項13】
前記ディスプレイ光源はマイクロディスプレイを有し、前記空間変動偏光子が前記マイクロディスプレイに隣接して配置される、請求項1から12のいずれか一項に記載のディスプレイシステム。
【請求項14】
前記空間変動偏光子が前記マイクロディスプレイに接着される、請求項13に記載のディスプレイシステム。
【請求項15】
前記空間変動偏光子が、前記マイクロディスプレイが発する光にテレセントリック性をもたらす、請求項13または14に記載のディスプレイシステム。
【請求項16】
前記空間変動偏光子が、前記ディスプレイ光源および前記偏光感受型光学系のうちの少なくとも一方に対して偏光補償をもたらす表面位相マップを含む、請求項13から15のいずれか一項に記載のディスプレイシステム。
【請求項17】
支持構造体と、
前記支持構造体に連結されたディスプレイシステムと
を備えるヘッドマウントディスプレイシステムであって、
前記ディスプレイシステムが
ディスプレイ光源と、
前記ディスプレイ光源からの第1の瞳を視聴者の目における第2の瞳にリレーするように配置された瞳リレー系と
を有し、
前記瞳リレー系が、
偏光感受型光学系と、
前記偏光感受型光学系に対して偏光補償をもたらすために、位置に応じて空間的に変動する偏光を有する空間変動偏光子と
を含む、ヘッドマウントディスプレイシステム。
【請求項18】
前記空間変動偏光子がマルチツイストリターダを含む、請求項17に記載のヘッドマウントディスプレイシステム。
【請求項19】
前記空間変動偏光子の位相差が、前記ディスプレイシステムの横方向の寸法、縦方向の寸法、または視野に応じて変動する、請求項17または18に記載のヘッドマウントディスプレイシステム。
【請求項20】
前記偏光感受型光学系が、導波管ベースの光学系、パンケーキ光学系、バードバス光学系、またはコーティングベースの光学系を含む、請求項17から19のいずれか一項に記載のヘッドマウントディスプレイシステム。
【請求項21】
支持構造体と、
前記支持構造体に連結されたディスプレイシステムと
を備えるヘッドマウントディスプレイシステムであって、
前記ディスプレイシステムが、
レーザ光源と、
前記レーザ光源からの光ビームを受光するように配置されたスキャンミラーと、
前記スキャンミラーから受光した第1の瞳を視聴者の目における第2の瞳にリレーするように配置された瞳リレー系と
を有し、
前記瞳リレー系が、
偏光感受型光学系と、
前記偏光感受型光学系に対して偏光補償をもたらすために、位置に応じて空間的に変動する偏光を有する空間変動偏光子と
を含む、ヘッドマウントディスプレイシステム。
【請求項22】
前記空間変動偏光子がマルチツイストリターダを含む、請求項21に記載のヘッドマウントディスプレイシステム。
【請求項23】
前記空間変動偏光子の位相差が、前記ディスプレイシステムの横方向の寸法、縦方向の寸法、または視野に応じて変動する、請求項21または22に記載のヘッドマウントディスプレイシステム。
【請求項24】
前記偏光感受型光学系が、導波管ベースの光学系、パンケーキ光学系、バードバス光学系、またはコーティングベースの光学系を含む、請求項21から23のいずれか一項に記載のヘッドマウントディスプレイシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概してディスプレイシステムに関し、より具体的には、ディスプレイシステムの効率および性能の向上に関する。
[関連技術の記載]
【0002】
1つの現世代の仮想現実(「VR」)体験がヘッドマウントディスプレイ(「HMD」)を用いて生成され、HMDを据え置き型のコンピュータ(パーソナルコンピュータ(「PC」)、ラップトップ、またはゲーム機など)にテザー接続したり、スマートフォンおよび/もしくはその関連ディスプレイと組み合わせる且つ/または統合したり、または自己完結型にしたりすることができる。一般に、HMDは、ユーザの頭に装着されるディスプレイデバイスであり、一方の目(単眼HMD)またはそれぞれの目(双眼HMD)の前方に小型ディスプレイデバイスを有する。ディスプレイユニットは通常、小型化されており、例えば、CRT、LCD、液晶オンシリコン(LCoS)、OLED機器、またはレーザスキャンビームディスプレイを含み得る。双眼HMDには、それぞれの目に異なる画像を表示する可能性がある。この機能は、立体画像を表示するのに用いられる。
【0003】
性能を高めたディスプレイの需要が、スマートフォン、高解像度テレビ、および他の電子デバイスの発展と共に増加している。そのような需要は、仮想現実システムおよび拡張現実システム、特にHMDを用いるシステムの人気の高まりによって、さらに増加している。仮想現実システムは通常、装着者の両目を完全に覆い、装着者の前方にある実際の視界または物理的な視界(または実際の現実)の代わりに「仮想」の現実を代用するものであり、一方、拡張現実システムは通常、実際の視界が追加情報で拡張されるように、装着者の両目の前方に1つまたは複数のスクリーンの半透明または透明のオーバーレイを提供するものであり、また媒介現実システムでは同様に、現実世界の要素と仮想要素とを組み合わせた情報を視聴者に提示することができる。
【発明の概要】
【0004】
ディスプレイシステムが、ディスプレイ光源と、ディスプレイ光源からの第1の瞳を視聴者の目における第2の瞳にリレーするように配置された瞳リレー系とを含むものとして要約されてよく、瞳リレー系は、偏光感受型光学系と、偏光感受型光学系に対して偏光補償をもたらすために、位置に応じて空間的に変動する偏光を有する空間変動偏光子とを含む。
【0005】
空間変動偏光子は、マルチツイストリターダを含んでよい。空間変動偏光子は、第1の位置で位相差をもたらさなくてもよく、第2の位置で4分の1波長位相差をもたらしてよい。空間変動偏光子の位相差は、横方向の寸法または縦方向の寸法に応じて変動してよい。空間変動偏光子の位相差は、ディスプレイシステムの視野全体にわたって変動してよい。偏光感受型光学系は、導波管ベースの光学系、パンケーキ光学系、バードバス光学系、またはコーティングベースの光学系を含んでよい。ディスプレイ光源はレーザ光源を含んでよく、ディスプレイシステムはさらに、レーザ光源からの光ビームを受光して、受光した光を瞳リレー系に向けてリレーするように配置されたスキャンミラーを含んでよい。
【0006】
ディスプレイはさらに、レーザ光源とスキャンミラーとの間に配置されたビーム形成光学系を含んでよい。
【0007】
空間変動偏光子の少なくとも一部が、偏光感受型光学系の上に、これに隣接して、またはこの中に配置されてもよい。偏光感受型光学系は導波管を含んでよく、空間変動偏光子は、導波管の上に、導波管の内側に、または導波管のポートに近接して配置されてもよい。ディスプレイシステムは、ヘッドマウントディスプレイシステムのディスプレイシステムであってよい。
【0008】
ディスプレイシステムはさらに、空間変動偏光子に動作可能に連結された制御回路を含んでよく、制御回路は、空間変動偏光子によってもたらされる位相差を選択的に調整するように動作可能である。
【0009】
ディスプレイソースはマイクロディスプレイを含んでよく、空間変動偏光子はマイクロディスプレイに隣接して配置されてよい。空間変動偏光子は、マイクロディスプレイに接着されてよい。空間変動偏光子は、マイクロディスプレイが発する光にテレセントリック性をもたらしてよい。空間変動偏光子は、ディスプレイソースおよび偏光感受型光学系のうちの少なくとも一方に対して偏光補償をもたらす表面位相マップを含んでよい。
【0010】
ヘッドマウントディスプレイシステムが、支持構造体と、支持構造体に連結されたディスプレイシステムとを含むものとして要約されてよく、ディスプレイシステムは、ディスプレイ光源と、ディスプレイ光源からの第1の瞳を視聴者の目における第2の瞳にリレーするように配置された瞳リレー系とを有し、瞳リレー系は、偏光感受型光学系と、偏光感受型光学系に対して偏光補償をもたらすために、位置に応じて空間的に変動する偏光を有する空間変動偏光子とを含む。
【0011】
空間変動偏光子は、マルチツイストリターダを含んでよい。空間変動偏光子の位相差は、ディスプレイシステムの横方向の寸法、縦方向の寸法、または視野に応じて変動してよい。偏光感受型光学系は、導波管ベースの光学系、パンケーキ光学系、バードバス光学系、またはコーティングベースの光学系を含んでよい。
【0012】
ヘッドマウントディスプレイシステムが、支持構造体と、支持構造体に連結されたディスプレイシステムとを含むものとして要約されてよく、ディスプレイシステムは、レーザ光源と、レーザ光源からの光ビームを受光するように配置されたスキャンミラーと、スキャンミラーから受光した第1の瞳を視聴者の目における第2の瞳にリレーするように配置された瞳リレー系とを有し、瞳リレー系は、偏光感受型光学系と、偏光感受型光学系に対して偏光補償をもたらすために、位置に応じて空間的に変動する偏光を有する空間変動偏光子とを含む。
【0013】
空間変動偏光子は、マルチツイストリターダを含んでよい。空間変動偏光子の位相差は、ディスプレイシステムの横方向の寸法、縦方向の寸法、または視野に応じて変動してよい。偏光感受型光学系は、導波管ベースの光学系、パンケーキ光学系、バードバス光学系、またはコーティングベースの光学系を含んでよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
この図面では、同一の参照符号で同様の要素または動作が識別される。図面内の要素の大きさおよび相対位置は、必ずしも実寸に比例して描かれていない。例えば、様々な要素の形状および角度は、必ずしも実寸に比例して描かれておらず、これらの要素のいくつかが、図面の視認性を向上させるために任意に拡大されて配置されることがある。さらに、描かれた要素の特定の形状は、必ずしも特定の要素の実際の形状に関するあらゆる情報を伝えようとしているわけではなく、図面を認識しやすくするために選択されているだけであってよい。
【0015】
図1】本開示で説明される少なくともいくつかの手法を行うのに好適な1つまたは複数のシステムを含む、ネットワーク化された環境の概略図である。
【0016】
図2】ビデオレンダリングコンピューティングシステムにテザー接続されており且つ仮想現実表示をユーザに提供する例示的なヘッドマウントディスプレイデバイスと共に、説明される手法のうちの少なくともいくつかを用いる、例示的な環境を示す図である。
【0017】
図3】双眼ディスプレイサブシステムを有する例示的なHMDデバイスの前面絵図である。
【0018】
図4】本開示の例示的な実施形態による、双眼ディスプレイサブシステムおよび様々なセンサを有するHMDデバイスの平面図を例示した図である。
【0019】
図5】1つの非限定的な例示的実装例による、空間変動偏光子を含むディスプレイシステムの概略ブロック図である。
【0020】
図6】1つの非限定的な例示的実装例による、スキャンビームディスプレイシステムの概略図である。
【0021】
図7】1つの非限定的な例示的実装例による、空間変動偏光子を含むスキャンビームディスプレイシステムの概略図である。
【0022】
図8】1つの非限定的な例示的実装例による、導波管ベースの光学系と空間変動偏光子とを含むディスプレイシステムの概略図である。
【0023】
図9】1つの非限定的な例示的実装例による、偏光補正およびテレセントリック性のうちの少なくとも一方を提供する、ディスプレイパネルに隣接して配置された補償光学系を含むHMDデバイスの概略図である。
【0024】
図10】1つの非限定的な例示的実装例による、図9の補償光学系用の例示的な表面位相マップである。
【0025】
図11】1つの非限定的な例示的実装例による、図9の補償光学系用の別の例示的な表面位相マップである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の説明には、開示される様々な実装例の十分な理解をもたらすために、特定の具体的な詳細が記載されている。しかしながら、当業者であれば、こうした具体的な詳細のうちの1つまたは複数を用いずに、または他の方法、構成要素、材料などを用いて、これらの実装例を実施できることを認識するであろう。他の例では、コンピュータシステム、サーバコンピュータ、および/または通信ネットワークに関連した、よく知られた構造が、実装例の説明を不必要に不明瞭にすることを回避するために、詳細に示されてもなく、説明されてもいない。
【0027】
文脈上他の解釈が必要な場合を除き、本明細書および続く特許請求の範囲全体を通じて、「comprising(含む)」という単語は、「including(含む)」と同義であり、包括的または非限定的である(すなわち、追加の、記載されていない要素または方法の動作を除外しない)。
【0028】
本明細書全体を通じて「1つの実装例」または「一実装例」への言及は、この実装例に関連して説明される特定の特徴、構造体、または特性が少なくとも1つの実装例に含まれることを意味している。したがって、本明細書全体を通じて様々な箇所に「1つの実装例では」または「一実装例では」という表現が現れても、必ずしも全てが同じ実装例に言及しているわけではない。さらに、1つまたは複数の実装例では、特定の特徴、構造体、または特性を任意の好適な方式で組み合わせてもよい。
【0029】
本明細書および添付した特許請求の範囲においては、「a」、「an」、および「the」が付いた単数形は、文脈上特に明記されていない限り、複数の指示対象を含む。用語「または」は一般に、文脈上特に明記されていない限り、その意味に「および/または」を含むものとして使われることにも留意されたい。
【0030】
本明細書において提供される各項目および要約書は便宜のみを目的としたものであり、実装例の範囲または意味を解釈するものではない。
【0031】
本開示は概して、ディスプレイシステム、例えばレーザスキャンビームディスプレイシステムまたは他の種類のディスプレイシステム(例えば、マイクロディスプレイ)などの性能および効率を向上させる手法に関連している。以下でさらに説明するように、本開示の少なくともいくつかの実施形態が、位置に応じて変動する位相遅延をもたらす空間変動偏光子を提供することにより、ディスプレイシステムの性能を向上させる。これは、偏光補償をもたらし、ディスプレイシステムの偏光感受型光学系、例えば、導波管ベースの光学系、パンケーキ光学系、バードバス光学系、コーティングベースの光学系などによく適している光を生じさせる。そのような手法は、偏光感受型光学系を通過する光の強度を大幅に向上させるとともに、望ましくない迷光も抑制する。
【0032】
初めに、図1図4を参照して、本明細書で説明する手法の例示的なヘッドマウントディスプレイデバイスの応用例について説明する。次に、図5図8を参照して、偏光補償光学系を含むディスプレイシステムの例示的な実装例について説明する。
[例示的なヘッドマウントディスプレイシステムおよび環境]
【0033】
図1は、ローカルメディアレンダリング(LMR)システム110(例えば、ゲーム機)を含むネットワーク化された環境100の概略図であり、本システムには、本明細書で説明する少なくともいくつかの手法を実行するのに好適なローカルコンピューティングシステム120およびディスプレイデバイス180(例えば、2つのディスプレイパネルを備えたHMDデバイス)が含まれる。図示した図1の実施形態では、ローカルコンピューティングシステム120は、伝送リンク115を介してディスプレイデバイス180に通信可能に接続されている(ディスプレイデバイスは、図2に例示されているような1つまたは複数のケーブル(ケーブル220)を介するなどして有線接続もしくはテザー接続されてもよく、またはその代わりに無線接続されてもよい)。他の実施形態では、ローカルコンピューティングシステム120は、エンコードされた表示用画像データを有線リンクまたは無線リンクを介して、HMDデバイス180に加えてであろうと、その代わりであろうと、パネルディスプレイデバイス(例えば、TV、コンソール、またはモニタ)に提供してよく、ディスプレイデバイスはそれぞれ、1つまたは複数のアドレス指定可能な画素アレイを含む。様々な実施形態において、ローカルコンピューティングシステム120は、汎用コンピューティングシステム、ゲーム機、ビデオストリーム処理デバイス、モバイルコンピューティングデバイス(例えば、携帯電話、PDA、または他のモバイルデバイス)、VR処理デバイスもしくはAR処理デバイス、または他のコンピューティングシステムを含んでよい。
【0034】
例示した実施形態では、ローカルコンピューティングシステム120は、1つまたは複数のハードウェアプロセッサ(例えば、中央演算処理装置すなわち「CPU」)125、メモリ130、様々なI/O(「入力/出力」)ハードウェア構成要素127(例えば、キーボード、マウス、1つまたは複数のゲームコントローラ、スピーカ、マイク、IR送信機および/または受信機など)、1つまたは複数の専用ハードウェアプロセッサ(例えば、グラフィックス処理装置すなわち「GPU」)144およびビデオメモリ(VRAM)148を含むビデオサブシステム140、コンピュータ可読ストレージ150、ならびにネットワーク接続160を含む構成要素を有している。また、例示した実施形態では、アイトラッキングサブシステム135の一実施形態が、説明した手法のうちの少なくともいくつかを行うために、説明したこれらの手法を実施する自動化処理を行うのにCPU125および/またはGPU144を用いるなどしてメモリ130で実行され、メモリ130は任意選択でさらに(例えば、表示されるビデオまたは他の画像を生成する、ゲームプログラムなどの)1つまたは複数の他のプログラム133を実行してよい。本明細書で説明される少なくともいくつかの手法を実施する自動化処理の一部として、メモリ130で実行されるアイトラッキングサブシステム135および/またはプログラム133は、ストレージ150の例示的なデータベースのデータ構造体内にあるものを含む様々な種類のデータを格納しても検索してもよく、この例では、用いられるデータは、データベース(「DB」)154内にある様々な種類の画像データ情報、DB152内にある様々な種類のアプリケーションデータ、DB157内にある様々な種類の構成データを含んでよく、またシステムデータもしくは他の情報などの追加情報を含んでよい。
【0035】
LMRシステム110も、図示した実施形態では、画像生成プログラム133に加えてであろうと、その代わりであろうと、1つまたは複数のコンピュータネットワーク101およびネットワークリンク102を介して、表示のためにLMRシステム110にコンテンツをさらに提供し得る例示的なネットワークアクセス可能なメディアコンテンツプロバイダ190に通信可能に接続される。メディアコンテンツプロバイダ190は、それぞれローカルコンピューティングシステム120のものと同様の、1つまたは複数のハードウェアプロセッサ、I/O構成要素、ローカルストレージデバイス、およびメモリを含む構成要素を有し得る1つまたは複数のコンピューティングシステム(不図示)を含み得るが、簡単にするために、ネットワークアクセス可能なメディアコンテンツプロバイダについては、いくつかの詳細を例示していない。
【0036】
ディスプレイデバイス180は、図1の例示した実施形態におけるローカルコンピューティングシステム120と異なる且つそこから分離しているものとして図示されているが、特定の実施形態では、ローカルメディアレンダリングシステム110の一部または全部の構成要素が、1つのデバイス、例えば、携帯ゲーム機、携帯型VRエンターテイメントシステム、HMDデバイスなどの中に統合されても収容されてもよいことが理解されるであろう。そのような実施形態では、伝送リンク115は、例えば、1つまたは複数のシステムバスおよび/またはビデオバスアーキテクチャを含んでよい。
【0037】
ローカルメディアレンダリングシステム120によってローカルに行われる処理を伴う1つの例として、ローカルコンピューティングシステムは、アプリケーションデータ152がメモリ130を用いてCPU125によって実行される1つまたは複数のゲームアプリケーションを含み、また様々なビデオフレーム表示データが、ビデオサブシステム140のGPU144と連携するなどして、画像生成プログラム133によって生成される且つ/または処理されるような、ゲームコンピューティングシステムであると仮定する。高品質のゲーム体験を提供するために、(ビデオフレームごとの高い画像解像度、およびそのようなビデオフレームの毎秒約60~180という高い「フレームレート」に対応する)大量のビデオフレームデータが、ローカルコンピューティングシステム120によって生成され、有線または無線の伝送リンク115を介してディスプレイデバイス180に提供される。
【0038】
コンピューティングシステム120およびディスプレイデバイス180は、一例に過ぎず、本開示の範囲を限定しようとしているわけではないことも理解されるであろう。コンピューティングシステム120は、代わりに、互いに作用する複数のコンピューティングシステムまたはデバイスを含んでよく、また、インターネットなどの1つまたは複数のネットワークを通じて、ウェブを経由して、またはプライベートネットワーク(例えば、移動体通信ネットワークなど)を経由してなどにより、例示していない他のデバイスに接続されてよい。より一般的には、コンピューティングシステムまたは他のコンピューティングノードが、互いに作用して説明した種類の機能を実行できるハードウェアまたはソフトウェアのあらゆる組み合わせを含んでよく、その中には、限定しないが、デスクトップまたは他のコンピュータ、ゲーム機、データベースサーバ、ネットワークストレージデバイスおよび他のネットワークデバイス、PDA、携帯電話、無線電話、ページャ、電子手帳、インターネット機器、(例えば、セットトップボックスおよび/またはパーソナル/デジタルビデオレコーダを用いる)テレビベースのシステム、および適切な通信機能を含む様々な他の消費者製品が含まれる。ディスプレイデバイス180は、同様に、様々な種類および形態の1つまたは複数のディスプレイパネルを備えた1つまたは複数のデバイスを含んでよく、任意選択で、様々な他のハードウェア構成要素および/またはソフトウェア構成要素を含んでよい。
【0039】
様々なアイテムがメモリまたはストレージに格納されるとともに用いられるものとして例示されているが、これらのアイテムまたはその一部は、メモリ管理またはデータ整合性の目的で、メモリと他のストレージデバイスとの間で転送されてよいことも理解されるであろう。こうして、いくつかの実施形態では、説明した手法の一部または全部は、1つまたは複数のソフトウェアプログラムおよび/またはデータ構造体により構成される場合などに、1つまたは複数のプロセッサまたは他の構成されたハードウェア回路またはメモリまたはストレージを含むハードウェアにより(例えば、1つもしくは複数のソフトウェアプログラムのソフトウェア命令を実行することにより、且つ/またはそのようなソフトウェア命令および/もしくはデータ構造体を格納することにより)行われてよい。構成要素、システム、およびデータ構造体の一部または全部は、(例えば、ソフトウェア命令または構造化データとして)非一時的コンピュータ可読記憶媒体、例えば、ハードディスクもしくはフラッシュドライブまたは他の不揮発性ストレージデバイス、揮発性メモリまたは不揮発性メモリ(例えば、RAM)、ネットワークストレージデバイス、あるいは適切なドライブによってまたは適切な接続を介して読み出される携帯型メディア物品(例えば、DVDディスク、CDディスク、光ディスクなど)にも格納されてよい。システム、構成要素、およびデータ構造体はまた、いくつかの実施形態では、生成されたデータ信号として(例えば、搬送波または他のアナログもしくはデジタルの伝搬信号の一部として)、無線ベースの媒体および有線/ケーブルベースの媒体を含む様々なコンピュータ可読伝送媒体で伝送されてよく、(例えば、1つもしくは多重化したアナログ信号の一部として、または複数の個別のデジタルパケットもしくはフレームとして)様々な形態を取ってよい。そのようなコンピュータプログラム製品は、他の実施形態では他の形態も取ってよい。したがって、本発明は、他のコンピュータシステム構成を用いて実施されてよい。
【0040】
図2は、ビデオレンダリングコンピューティングシステム204にテザー接続220(または他の実施形態では無線接続)を介して連結された例示的なHMDデバイス202と共に、説明した手法のうちの少なくともいくつかを用いて、仮想現実表示を人間のユーザ206に提供する例示的な環境200を例示している。ユーザは、HMDデバイス202を装着し、コンピューティングシステム204からHMDデバイスを介して実際の物理環境と異なる模擬環境の表示情報を受信し、コンピューティングシステムは、模擬環境の画像(例えば、コンピューティングシステム上で実行されるゲームプログラムおよび/または他のソフトウェアプログラムにより生成された画像)をユーザへの表示のためにHMDデバイスに供給する画像レンダリングシステムとして働く。この例では、ユーザはさらに、実際の物理環境200の追跡対象体積201内を動き回ることができ、ユーザがさらに模擬環境とやり取りするのを可能にする1つまたは複数のI/O(「入力/出力」)デバイス(この例ではハンドヘルドコントローラ208および210を含む)をさらに有してよい。
【0041】
例示した例では、環境200には、HMDデバイス202またはコントローラ208および210の追跡を容易にし得る1つまたは複数の基地局214(基地局214aおよび214bとラベル付けされた2つが示されている)が含まれてよい。ユーザが場所を移動する、またはHMDデバイス202の向きを変えると、模擬環境の対応する部分がHMDデバイスを装着したユーザに表示されるのを可能にするなどのために、HMDデバイスの位置が追跡され、コントローラ208および210はさらに、コントローラの位置を追跡するのに用いるために(また任意選択で、HMDデバイスの位置を判定するまたは確認するのに役立つ情報を用いるために)同様の手法を使用してよい。HMDデバイス202の追跡位置が分かった後に、対応する情報がテザー(tether)220または無線を介してコンピューティングシステム204に伝送される。コンピューティングシステムは、追跡した位置情報を用いて模擬環境の1つまたは複数の次の画像を生成し、ユーザに表示する。
【0042】
本開示の様々な実装例で用いられ得る位置追跡には多数の異なる方法があり、その中には、限定しないが、音響追跡、慣性追跡、磁気追跡、光学追跡、これらの組み合わせなどが含まれる。
【0043】
少なくともいくつかの実装例では、HMDデバイス202は、本開示の追跡機能または他の態様を実装するのに用いられ得る1つまたは複数の受光器またはセンサを含んでよい。例えば、基地局214はそれぞれ、追跡対象体積201全体にわたって光信号を掃引してよい。それぞれの特定の実装例の要件に応じて、各基地局214は、1つより多くの光信号を生成してよい。例えば、6自由度トラッキングには、通常、1つの基地局214で十分であるが、HMDデバイスおよび周辺機器に対して安定なルームスケールの追跡をもたらすには、複数の基地局(例えば、基地局214a、214b)がいくつかの実施形態では必要または望ましいことがある。この例では、受光器がHMDデバイス202および/または他の追跡対象物(コントローラ208および210など)に組み込まれている。少なくともいくつかの実装例では、それぞれの追跡対象デバイス上で、受光器が加速度計およびジャイロスコープ慣性計測装置(「IMU」)と組み合わされて、低遅延センサフュージョンがサポートされてよい。
【0044】
少なくともいくつかの実装例では、各基地局214が、線状ビームを追跡対象体積201全体にわたり垂直軸に沿って掃引する2つのロータを含む。各掃引サイクルの開始時に、基地局214は、追跡対象物に付いている全てのセンサに可視である全方向性光パルス(「同期信号」と呼ばれている)を発してよい。こうして、各センサは、同期信号とビーム信号との間の持続時間を計ることにより、掃引対象体積における独自の角位置を計算する。センサの距離および向きが、1つの固定物体に取り付けた複数のセンサを用いて求められてよい。
【0045】
追跡対象物(例えば、HMDデバイス202、コントローラ208および210)に配置された1つまたは複数のセンサは、ロータからの変調光を検出できるオプトエレクトロニクスデバイスを含んでよい。可視光または近赤外(NIR)光の場合、シリコンフォトダイオードおよび好適な増幅器/検出器回路が用いられてよい。環境200は、基地局214信号の信号と同様の波長を有する静的信号および時変信号(光ノイズ)を含み得るため、少なくともいくつかの実装例では、基地局の光が、あらゆる干渉信号との区別を容易にする且つ/または基地局信号の波長以外のあらゆる放射波長からセンサを選別するのを容易にするような方法で変調されてよい。
【0046】
インサイドアウト追跡も、HMDデバイス202および/または他の対象物(例えば、コントローラ208および210、タブレットコンピュータ、スマートフォン)の位置を追跡するのに用いられ得る種類の位置追跡である。インサイドアウト追跡は、カメラまたは他のセンサの位置を用いてHMDの位置を判定するという点でアウトサイドイン追跡と異なる。インサイドアウト追跡では、カメラまたはセンサがHMDまたは追跡されている対象物に位置しているが、アウトサイドアウト方式の追跡では、カメラまたはセンサが環境内の固定位置に配置される。
【0047】
インサイドアウト追跡を利用するHMDは、その位置が環境に対してどのように変化しているかを判定するために、1つまたは複数の「外を見る」カメラを利用する。HMDが動くと、センサは部屋の中の自地点を再調整し、これに応じて仮想環境がリアルタイムに応答する。この種類の位置追跡は、環境内に配置されるマーカの有無にかかわらず実現され得る。HMDに配置されたカメラは、周囲環境の特徴を観察する。マーカを用いる場合、マーカは、追跡システムによって容易に検出されるように設計されており、特定の領域に配置される。「マーカを用いない」インサイドアウト追跡では、HMDシステムは、環境内に元々存在している顕著な特徴(例えば、地勢)を用いて、位置および向きを判定する。HMDシステムのアルゴリズムは、特定の画像または形状を識別し、これらを用いて、空間内のデバイスの位置を計算する。加速度計およびジャイロスコープからのデータも、位置追跡の精度を高めるのに用いられ得る。
【0048】
図3は、ユーザ342の頭に装着されたときの、例示的なHMDデバイス344の正面図を例示する情報300を示している。HMDデバイス344は、前面または前方カメラ346と1つまたは複数の種類の複数のセンサ348a~348d(集合的に348)とを支える前面構造体343を含む。1つの例として、センサ348の一部または全部、例えば、1つまたは複数の外部デバイス(示されていないが、例えば、図2の基地局214)から発せられた光情報を検出してそれを用いる光センサが、空間内のデバイス344の位置および向きを判定するのに役立ち得る。示されているように、前方カメラ346およびセンサ348は、ユーザ342がHMDデバイス344を操作する実際のシーンまたは環境(不図示)に向かって前方に向けられている。実際の物理環境には、例えば、1つまたは複数の対象物(例えば、壁、天井、家具、階段、車、樹木、追跡マーカ、または任意の他の種類の対象物)が含まれ得る。特定の数のセンサ348は、図示されているセンサの数より少なくても多くてもよい。HMDデバイス344はさらに、前面構造体に取り付けられていない(例えば、HMDデバイスの内部にある)1つまたは複数の追加構成要素、例えば、HMDデバイス344の特定の力、角速度、および/またはHMDデバイスを取り囲む磁場を(例えば、加速度計とジャイロスコープと、任意選択で磁力計との組み合わせを用いて)測定して報告するIMU(慣性計測装置)電子デバイス347を含んでよい。HMDデバイスはさらに、示されていない追加構成要素を含んでよく、その中には、1つまたは複数のディスプレイパネルおよび光学レンズ系が含まれ、これらは、ユーザの両目(不図示)の方を向いており、また任意選択で、HMDデバイス内の光学レンズ系および/またはディスプレイパネルのうちの一方または両方の位置合わせまたは他の位置決めを変えるための1つまたは複数の付属内蔵モータを有する。これについては、図4に関して以下でより詳細に説明する。
【0049】
例示したHMDデバイス344の例は、HMDデバイス344のハウジングに取り付けられ且つユーザの頭を囲むように全体的または部分的に延びる1つまたは複数のストラップ345に少なくとも部分的に基づいて、ユーザ342の頭に支えられている。ここに例示していないが、HMDデバイス344はさらに、ストラップ345のうちの1つまたは複数に取り付けられるなどした1つまたは複数の外部モータを有してよく、ユーザの頭にあるHMDデバイスの位置合わせまたは他の位置決めを修正するために、そのようなモータを用いてそのようなストラップを調整することが、自動補正動作に含まれてよい。HMDデバイスは、例示したストラップに加えてでも、その代わりであっても、ここに例示していない他の支持構造体(例えば、鼻当て、あごひも、など)を含んでよく、いくつかの実施形態は、モータが取り付けられた1つまたは複数のそのような他の支持構造体を含み、同様に、その形状および/または位置を調整して、ユーザの頭にあるHMDデバイスの位置合わせまたは他の位置決めを修正してよいことが理解されるであろう。ユーザの頭に取り付けられていない他のディスプレイデバイスが同様に、ディスプレイデバイスの位置決めに影響を与える1つもしくは複数の構造体に、またはその一部に取り付けられてよく、そのような他のデバイスは、少なくともいくつかの実施形態では、モータまたは他の機械式アクチュエータを含み、同様にその形状および/または位置を修正して、ディスプレイデバイスの1人または複数のユーザの1つまたは複数の瞳に対するディスプレイデバイスの位置合わせまたは他の位置決めを修正してよい。
【0050】
図4は、一対のニアツーアイ(near-to-eye)ディスプレイシステム402および404を含むHMDデバイス405の簡略化した平面図400を例示している。HMDデバイス405は、例えば、図1図3に例示したHMDデバイスと同じもしくは同様であってもよく、または異なるHMDデバイスであってもよく、ここで説明するHMDデバイスはさらに、以下でさらに説明する例に用いられてよい。図4のニアツーアイ・ディスプレイシステム402および404はそれぞれ、ディスプレイパネル406および408(例えば、OLEDマイクロディスプレイ)と、それぞれが1つまたは複数の光学レンズを有するそれぞれの光学レンズ系410および412とを含む。ディスプレイシステム402および404は、ハウジング(またはフレーム)414に設置されても、または別の方法でその中に配置されてもよく、ハウジングには、前面部分416(例えば、図3の前面表面343と同じまたは同様)、左テンプル418、右テンプル420、およびユーザ424がHMDデバイスを装着したときに装着者であるユーザの顔に接触または近接する内面421が含まれる。装着者であるユーザ424の頭422に装着され得る2つのディスプレイシステム402および404は、眼鏡構成においてハウジング414に固定されてよく、左テンプル418および右テンプル420はそれぞれ、ユーザの耳426および428の上に置かれ、鼻当て部492はユーザの鼻430の上に置かれてよい。図4の例では、HMDデバイス405は、鼻当て部および/または左右のオーバーイヤー型テンプルによって部分的にまたは全体的にユーザの頭に支えられてよいが、いくつかの実施形態では図2および図3に示す実施形態のように、ストラップ(不図示)または他の構造体を用いて、HMDデバイスをユーザの頭に固定してもよい。ハウジング414は、2つの光学レンズ系410および412のそれぞれをユーザの目432および434の一方の前方にそれぞれ配置するような形状および大きさに作られてよく、これにより、それぞれの瞳494の目標位置は、それぞれの光学レンズ系および/またはディスプレイパネルの前方で縦方向にも横方向にも中心に置かれることになる。ハウジング414は、説明を目的として、眼鏡と同様の簡略化した方式で示されているが、実際にはもっと精巧な構造体(例えば、ゴーグル、一体型ヘッドバンド、ヘルメット、ストラップなど)を用いて、ディスプレイシステム402および404を支えて且つユーザ424の頭422に配置することができることを理解されたい。
【0051】
図4のHMDデバイス405、およびここで説明したその他のHMDデバイスは、仮想現実表示をユーザに、毎秒30または60または90フレーム(または画像)などの表示速度で提示される対応するビデオを介するなどして提示することができ、同様のシステムの他の実施形態では、拡張現実表示がユーザに提示されてよい。図4のディスプレイ406および408はそれぞれ、それぞれの光学レンズ系410および412を通って運ばれた後にこの光学レンズ系によってユーザ424の目432および434の上にそれぞれ焦点を結ぶ光を生成してよい。それぞれの目の瞳494の開口は、そこを通って光が目に入るが、通常、瞳の大きさの範囲は非常に明るい状態で直径2mm(ミリメートル)から暗い状態では8mmにもなり、中に瞳を含むより大きい虹彩の大きさは約12mmになり得る。瞳(および取り囲む虹彩)はさらに、通常、まぶたが開いた状態で目の可視部分内を横方向および/または縦方向に数ミリメートル動くことができ、これは、眼球がその中心を旋回する(その結果、瞳が動くことができる3次元体積がもたらされる)と、異なる横方向の位置および縦方向の位置に対して、瞳をディスプレイの光学レンズまたは他の物理的要素から異なる深さにも動かすことになる。ユーザの瞳に入る光を、画像および/または映像としてユーザ424が目にする。いくつかの実装例では、光学レンズ系410および412のそれぞれと、ユーザの目432および434との間の距離は比較的短くてよく(例えば、30mm未満、20mm未満)、これによって、光学レンズ系およびディスプレイシステムの重量がユーザの顔に比較的近いため、HMDデバイスがユーザにはより軽く感じられることになり、より大きな視野をユーザに提供することもできるのは有利である。ここに例示していないが、そのようなHMDデバイスのいくつかの実施形態には、様々な追加の内蔵センサおよび/または外部センサが含まれることがある。
【0052】
例示した実施形態では、図4のHMDデバイス405はさらに、(例えば、1つまたは複数のIMUユニットの一部として)1つまたは複数の加速度計および/またはジャイロスコープ490を含むなどのために、ハードウェアセンサおよび追加構成要素を含む。本明細書のどこか他の箇所でより詳細に説明されるように、加速度計および/またはジャイロスコープからの値がHMDデバイスの向きをローカルに判定するのに用いられてよい。さらに、HMDデバイス405は、1つまたは複数の前面カメラ、例えば、前部416の外面上にカメラ485を含んでよく、その情報が、AR機能または測位機能を提供するためなどに、HMDデバイスの演算の一部として用いられてよい。さらに、HMDデバイス405は他の構成要素475(例えば、ディスプレイパネル406および408への画像の表示を制御する電子回路、内蔵ストレージ、1つまたは複数のバッテリ、外部基地局とやり取りする位置追跡デバイスなど)をさらに含んでよく、これについては本明細書のどこか他の箇所でより詳細に説明される。他の実施形態が、構成要素475、485、および/または490のうちの1つまたは複数を含まなくてもよい。ここに例示していないが、そのようなHMDデバイスのいくつかの実施形態には、ユーザの体、目、コントローラなどの様々な他の種類の動きおよび位置を追跡するなどのために、様々な追加の内蔵センサおよび/または外部センサが含まれてよい。
【0053】
例示した実施形態では、図4のHMDデバイス405はさらに、ユーザの瞳または視線の方向を判定するために、説明した手法の一部として、開示した実施形態により用いられ得るハードウェアセンサおよび追加構成要素を含み、これは、HMDデバイスと関連した1つまたは複数の構成要素に当該構成要素が使用するために提供されてよい。これについては、本明細書のどこか他の箇所で説明される。この例でのハードウェアセンサには、ユーザの瞳494の実際の位置に関する情報を、例えば、この例では瞳ごとに別々に取得するのに用いるために、ディスプレイパネル406および408に、もしくはその近くに設置されている、且つ/または光学レンズ系410および412の近くの内面421に位置している、アイトラッキングサブシステムの1つまたは複数のアイトラッキングアセンブリ472が含まれている。
【0054】
アイトラッキングアセンブリ472のそれぞれには、1つまたは複数の光源(例えば、IR LED)と、1つまたは複数の光検出器(例えば、シリコンフォトダイオード)とが含まれてよい。さらに、明確にするために、図4にはアイトラッキングアセンブリ472が合計で4つしか示されていないが、実際には、異なる数のアイトラッキングアセンブリが提供されてもよいことを理解されたい。いくつかの実施形態では、合計で8つのアイトラッキングアセンブリ472、つまりユーザ424のそれぞれの目に対して4つのアイトラッキングアセンブリが提供されている。さらに、少なくともいくつかの実装例では、それぞれのアイトラッキングアセンブリには、ユーザ424の目432および434の一方に向けられた光源と、ユーザのそれぞれの目によって反射された光を受光するように配置された光検出器と、鏡面反射によって反射された光が光検出器に伝わらないように配置され且つそのように構成された偏光子とが含まれる。
【0055】
本明細書のどこか他の箇所でより詳細に説明されるように、アイトラッキングアセンブリ472からの情報が、HMDデバイス405の使用時に、ユーザの視線方向を判定して追跡するのに用いられてよい。さらに、少なくともいくつかの実施形態では、HMDデバイス405は、HMDデバイス405のハウジング内にある光学レンズ系410および412ならびに/またはディスプレイパネル406および408のうちの一方または両方の位置合わせおよび/または他の位置決めを(例えば、縦方向、水平左右方向、および/または水平前後方向に)動かす(439)のに用いられ得る1つまたは複数の内蔵モータ438(または他の動き機構)を含んでよく、これは、瞳494の一方または両方の実際の位置に対応するニアツーアイ・ディスプレイシステム402および404の一方または両方の目標瞳位置をパーソナル化する、または別の方法で調整するなどのためである。そのようなモータ438は、例えば、ハウジング414上の1つもしくは複数の制御ボタン437をユーザが操作することによって、且つ/または1つもしくは複数の関連した別個のI/Oコントローラ(不図示)をユーザが操作することによって制御されてよい。他の実施形態では、HMDデバイス405は、そのようなモータ438を用いずに、例えば、ユーザが制御ボタン437を用いて手動で変えられる調整可能な位置決め機構(例えば、ネジ、スライダ、ラチェットなど)を用いて、光学レンズ系410および412ならびに/またはディスプレイパネル406および408の位置合わせおよび/または他の位置決めを制御することができる。さらに、図4にはニアツーアイ・ディスプレイシステムの一方だけにモータ438が例示されているが、いくつかの実施形態では、それぞれのニアツーアイ・ディスプレイシステムが独自の1つまたは複数のモータを有してよく、いくつかの実施形態では、1つまたは複数のモータを用いて、複数のニアツーアイ・ディスプレイシステムのそれぞれを(例えば、独立して)制御してよい。
【0056】
説明した手法が、いくつかの実施形態では、例示したものと同様のディスプレイシステムと共に用いられてよいが、他の実施形態では、他の種類のディスプレイシステムが用いられてよく、例えば、1つの光学レンズおよびディスプレイデバイスを有するもの、または複数のそのような光学レンズおよびディスプレイデバイスを有するものが含まれる。他のそのようなデバイスの非排他的な例には、カメラ、望遠鏡、顕微鏡、双眼鏡、スポッティングスコープ、測量スコープなどが含まれる。さらに、説明した手法は、画像を形成するのに光を発する多種多様なディスプレイパネルまたは他のディスプレイデバイスと共に用いられてよく、本明細書のどこか他の箇所で説明されるように、その画像を、1人または複数のユーザが1つまたは複数の光学レンズを通して見る。他の実施形態では、ユーザは、ディスプレイパネル以外の方式で、別の光源からの光(例えば、レーザスキャンビーム)を部分的にまたは全体的に反射する表面上などに生成される1つまたは複数の画像を1つまたは複数の光学レンズを通して見ることができる。
[例示的なディスプレイシステム]
【0057】
図5は、1つの非限定的な例示的実装例によるディスプレイシステム500の概略ブロック図である。ディスプレイシステム500は、ヘッドマウントディスプレイシステム、例えば、上述したヘッドマウントディスプレイシステムのディスプレイシステムであっても、または任意の他の種類のディスプレイシステム(例えば、装着型または非装着型のディスプレイシステム)であってもよい。ディスプレイシステム500は、スキャンビームディスプレイシステム、または別の種類のディスプレイシステム(例えば、マイクロディスプレイ)を含んでよい。少なくともいくつかの実装例では、ディスプレイシステム500は、ヘッドマウントディスプレイデバイスなどのデバイスに設けられた2つの実質的に同一のディスプレイシステムの一方であってよい。
【0058】
ディスプレイシステム500は、瞳リレー系504に光学的に連結されたディスプレイ光源502を含む。ディスプレイ光源502は、レーザスキャンビーム光源、マイクロディスプレイ、または任意の他の好適なディスプレイ光源を含んでよい。瞳リレー系504は、ディスプレイ光源502からの第1の瞳を視聴者の目506(または他の像面、表面、または材料)における第2の瞳にリレーするように配置される。瞳リレー系504は偏光感受型光学系508(例えば、ポストスキャン光学系)を含み、この光学系には、導波管ベースの光学系、パンケーキ光学系、バードバス光学系、コーティングベースの光学系、または他の光学系のうちの1つまたは複数が含まれてよい。偏光感受型光学系508は、1つまたは複数の構成要素を含んでよい。偏光感受型光学系508の効率は、通過する光の偏光に対して非常に敏感であってよい。すなわち、異なる偏光では、強度と偏光感受型光学系508から出る迷光とが大幅に変化することになる。
【0059】
偏光感受型光学系508に提供される光の偏光を最適化するために、ディスプレイシステム500の瞳リレー系504はさらに、位置に応じて空間的に変動する偏光を有する空間変動偏光子510を含み、これは、偏光の変化を補償して、均一な偏光、またはより一般的には最適化された偏光を偏光感受型光学系508に提供するように機能する。例えば、偏光感受型光学系508は、1つまたは複数のミラーまたは他の光学系が合成角から生成する偏光のいずれも補償するまたは「取り消す」ように構成されてよい。
【0060】
空間変動偏光子510は、複屈折材料で形成された波長リターダを含んでよい。複屈折とは、屈折率が光の偏光および伝搬方向に依存する材料の特性である。波長リターダは、波長リターダを通って進む光の偏光状態または位相を変える。波長リターダは、遅相軸(または異常軸)および進相軸(通常軸)を有してよい。偏光が波長リターダを通って進むと、進相軸に沿った光は遅相軸に沿った光より速く進む。
【0061】
上述したように、空間変動偏光子510は、位置、例えば、横方向の位置、縦方向の位置、径方向の位置に応じて、視野全体にわたって(例えば、軸上から軸外まで)変動する位相遅延をもたらしてよく、これが、ディスプレイ光源502から偏光感受型光学系508への光のより均一で効率的な供給を可能にする。空間変動偏光子510の位相差が変動する特定の方式は、ディスプレイシステム500の光学系の特定の構成および材料、例えば、入射光の偏光状態、入射角、材料、様々な構成要素の形状などに依存し得る。
【0062】
一例として、空間変動偏光子510は、第1の位置で位相差をもたらさなくてよく、また空間変動偏光子の第2の位置で位相差を直線的に増やしてλ/4(または他の値)の位相差をもたらしてよい。概して、空間変動偏光子510は、いかなる方法によっても位置に応じて変動する位相差をもたらしてよく、位相差の量は任意の値(例えば、λ/20、λ/10、λ/4、λ、2λ)であってよい。さらに、位相差の量は、1つまたは複数の方向にだけ増加しても、1つまたは複数の方向にだけ減少しても、または増加および減少の両方が生じてもよい。位相差の量は、連続的に変動してもよく、または複数の段階で変動してもよい。位相差の量は、例えば、線形関数、多項式関数、指数関数、階段関数、他の種類の関数、またはこれらの組み合わせを含む任意の種類の関数に従って変動してよい。
【0063】
少なくともいくつかの実装例では、空間変動偏光子510は、マルチツイストリターダ(MTR)で形成されてよく、これは、正確且つカスタマイズされたレベルの広帯域位相差、狭帯域位相差、または多重帯域位相差を1つの薄膜でもたらす波長板状の位相差フィルムである。より具体的には、MTRは、1つの基板上に1つの配向層と共に、2つまたはそれより多くのツイスト液晶(LC)層を有する。次のLC層が前の層によって直接的に位置合わせされるので、シンプルな製造が可能になり、自動層間位置合わせが実現し、連続的に変動する光軸を備えたモノリシックフィルムがもたらされる。
【0064】
図6は、1つの非限定的な例示的実装例による、スキャンビームディスプレイシステムまたはプロジェクタ600の概略図である。スキャンビームディスプレイシステム600は光源602を含み、これはビーム604を発するレーザ光源であってよい。光源602は2つまたはそれより多くの光源、例えば、赤色光源、緑色光源、および青色光源を含んでよい。そのような例では、ビームコンバイナによって複数の光源を組み合わせて単一ビームにしてよい。少なくともいくつかの実装例では、光源602は、1つまたは複数のカラー光源(例えば、赤色、緑色、青色)および赤外線ビームまたは紫外線ビームなどの不可視ビームを発する光源を含んでよく、これらはアイトラッキングなどの様々な目的のために用いられ得る。
【0065】
ビーム604は、微小電気機械システム(MEMS)基盤のスキャナを含み得るスキャンプラットフォーム606に入射し、プラットフォームのスキャンミラー608に反射して、制御された出力ビーム610を生成する。スキャンプラットフォーム606は、光回折格子、可動式光回折格子、光弁、回転ミラー、可動式シリコンデバイス、デジタル光プロジェクタデバイス、フライングスポットプロジェクタ、液晶オンシリコン(LCoS)デバイス、または他のスキャンまたは変調用のデバイスを含んでよい。スキャンプラットフォーム606は、スキャンプラットフォームおよび光源602に連結されたコントローラ612によって選択的に制御される1つまたは複数の駆動回路に連結されてよく、このコントローラは1つまたは複数の構成要素を有する任意の好適な制御回路を含み得る。駆動回路は、スキャンミラー608が入射ビーム604を偏向させる方向を変調して、出力ビーム610にラスタースキャンなどのスキャンを発生させ、これにより、表示面または視聴者の目614などの像面上に表示画像が生成される。
【0066】
図7は、1つの非限定的な例示的実装例による、スキャンビームディスプレイシステムまたはプロジェクタ700の概略図である。スキャンビームディスプレイシステム700は、多くの面で図6のスキャンビームディスプレイシステム600と同様または同一であってよい。そのため、同様の構成要素が同じ数字で参照されており、簡単にするために、そのような構成要素の説明をここで繰り返すことはしない。
【0067】
スキャンビームディスプレイシステム700は、ポストスキャン補正光学系702(「ポストスキャン光学系」)とコリメーション光学系704とを含む。ポストスキャン光学系702は、スキャンプラットフォーム606の後の光路に配置された1つまたは複数の光学系を含んでよく、これは概して「ポストスキャン」と本明細書では呼ばれることがある。ポストスキャン補正光学系702は、投影される画像内の1つまたは複数の歪みアーチファクトを補正または調整するように設計されてよく、またそうするように構成されてよい。そのような歪みの例には、スマイル歪み、糸巻き型歪み、樽型歪み、軸外プロジェクションベースの歪みなどが含まれ得る。これらは、ポストスキャン補正光学系702が補正し得る非限定的な例示的種類の歪みでしかないことを理解されたい。
【0068】
ポストスキャン光学系702は、導波管ベースの光学系、パンケーキ光学系、バードバス光学系、コーティングベースの光学系などのうちの1つまたは複数を含んでよい。ポストスキャン光学系は、1つまたは複数の構成要素を含んでよい。ポストスキャン光学系702の効率は、通過する光の偏光に対して非常に敏感であってよい。すなわち、異なる偏光では、強度とポストスキャン光学系702から出る迷光とが大幅に変化することになる。少なくともいくつかの実装例では、ディスプレイシステム700は、ポストスキャン光学系702により生じた無限焦点の損失を少なくとも部分的に取り戻すのに利用され得るコリメート光学系またはビーム形成光学系704も含んでよい。
【0069】
ディスプレイシステム700はさらに、スキャンミラー608とポストスキャン光学系702との間に配置された空間変動偏光子706の形態で偏光補償光学系を含み、上述したように非常に偏光に敏感であってよいポストスキャン光学系702に対して偏光補償をもたらす。空間変動偏光子706は、例えば、ポストスキャン光学系702の上に、これに隣接して、またはこの内部に配置されてもよい。他の実装例では、空間変動偏光子706は、光源602と表示画像との間の光路におけるどこか他の箇所(例えば、プレスキャン、ポストスキャン、光源に隣接した箇所など)に配置される。
【0070】
少なくともいくつかの実装例では、コントローラ612は、任意の望ましい構成に対する、空間変動偏光子の空間依存性位相遅延を選択的に変えるために、空間変動偏光子706に動作可能に連結されてよい。そのような実装例では、空間変動偏光子706の空間依存性位相遅延がコントローラ612によって選択的に制御されるのを可能にする1つまたは複数の薄膜トランジスタ層が設けられてよい。コントローラ612は、位相遅延を任意の望ましい頻度で、例えば、一度だけ、定期的に、ディスプレイシステム700のフレームレートと等しい頻度またはその何分の1かの頻度などで制御することができる。一例として、空間変動偏光子706は、複数(例えば、2、4、10、15)の層のスタックを含んでよく、これらの層のそれぞれは、アクティブ状態または非アクティブ状態になるように独立して選択的に制御されてよい。こうして、コントローラ612は次に、これらの層のうちの1つ、または互いに組み合わせた複数の層を選択的に作動させて、望ましい空間依存性位相遅延をもたらしてよい。
【0071】
図8は、1つの非限定的な例示的実装例による、ヘッドマウントディスプレイシステムに用いるための、導波管ベースの光学系および偏光補償光学系を空間変動偏光子の形態で含むディスプレイシステム800の概略図である。ディスプレイシステム800は、レンズまたは支持構造体802(例えば、度付き眼鏡レンズまたは度なし眼鏡レンズ)を含んでよい。平面導波管構造体804が、構造体802に少なくとも部分的に組み込まれても、またはこの構造体に近接して(例えば、構造体の前方または後方に)配置されてもよい。導波管804は、導波管内で全反射をもたらすために、周囲の構造体(例えば、構造体802)の屈折率と十分に異なる屈折率を有する材料で形成された長方形(または他の形状)の角柱構造体であってよい。
【0072】
光が導波管804の中に入るのを可能にするために、ディスプレイシステム800は、導波管の第1の部分に物理的に連結されたインカプラ806を含む。同様に、光が導波管804から出て視聴者の目810に向かうのを可能にするために、ディスプレイシステム800は、導波管の第2の部分に物理的に連結されたアウトカプラ808を含む。インカプラ806を通って入り、アウトカプラ808を通ってイン結合する(in-couple)ディスプレイ光は、上述したように、ディスプレイ光源、例えば、プロジェクタ、スキャン、レーザプロジェクタ、マイクロディスプレイ、または他のディスプレイ光源からアウト結合(out-couple)してよい。非限定的な例として、カプラ806および808は、回折格子、ホログラム、ホログラフィック光学素子、体積型回折格子、表面レリーフ型回折格子などのうちの1つまたは複数を含んでよい。カプラ806および808はまた、反射型カプラであっても、透過型カプラであってもよい。一例として、構造体802は右目用眼鏡レンズを含んでよく、インカプラ806はディスプレイソース(例えば、プロジェクタ)に近接した眼鏡レンズの縁部近くに配置されてよく、またアウトカプラは、視聴者がストレート領域またはほぼ真っすぐ前を見ながら導波管804からの光を見ることができるように、眼鏡レンズの中心に向かって配置されてよい。
【0073】
ディスプレイシステム800はさらに、空間変動偏光子812の形態で偏光補償光学系を含み、その様々な例が、空間変動偏光子812a~812eとして図8に示されている。非限定的な例示した例では、空間変動偏光子812の事例812a~812eが、ディスプレイシステム800のいくつかの非限定的な例示的位置に配置されるものとして示されている。具体的には、812aは、導波管804に入る光に対して偏光補償をもたらすために、ディスプレイソースに向かう方の側にインカプラ806に隣接して配置された空間変動偏光子を示しており、これは、上述したように偏光に非常に敏感であってよい。空間変動偏光子812bは、例示的な空間変動偏光子812aと比較すると、その向かい側にインカプラ806に隣接して配置されるものとして図8に示されている。同様に、空間変動偏光子812cは、ユーザの目810に面する側にアウトカプラ808に隣接して配置されて示されており、空間変動偏光子812dは、その向かい側にアウトカプラ808に隣接して配置されて示されている。空間変動偏光子812eは、インカプラ806とアウトカプラ808との間の位置で、導波管804の内側に配置されて示されている。空間変動偏光子812は、例えば、導波管804の上に、これに隣接または近接して、またはこの内側に配置されてもよいことを理解されたい。他の実装例では、空間変動偏光子812は、偏光補償をもたらすために、ディスプレイ光源と視聴者の目との間の光路におけるどこか他の箇所に配置される。
【0074】
図9は、1つの非限定的な例示的実装例による、HMDシステム900の構成要素の側面図を図示している。HMDシステム900は、OLED、LCD、または他の種類のディスプレイパネルなどのディスプレイパネル902と、ディスプレイからの画像情報をアイボックス906に提供する光学レンズ904とを含み、アイボックスの中にユーザの目を配置してディスプレイからの画像を見ることができる。レンズ904は、単一のレンズを含んでも、または複数のレンズを含んでもよい。HMDシステム900は、2つのディスプレイパネルと2つのレンズとを、ユーザのそれぞれの目に対して1つずつ含んでよい。動作時には、ディスプレイパネル902から発した光910がレンズ904によって光学的に修正され(例えば、焦点を合わせて)、ユーザの目で見るためにアイボックス906に向けられた光912になってよい。
【0075】
偏光に基づく光学歪み現象の原因の一部は、レンズ904などの湾曲した光学レンズを通過するときの、様々な光線の様々な到来角である場合がある。したがって、ディスプレイパネルの中央領域に沿って位置する画素のセットでは、この画素から発する光は、様々な光線の曲がりがほとんどまたは全くない中心軸に沿って光学レンズを通過してよく、これは、光の偏光に対してある程度の効果を有し得る。反対に、ディスプレイパネル902の中央部分から遠くに位置する光線のうち光学レンズ904を通過する光線は、そのような位置での光学レンズの曲率の程度がより大きく、異なるように影響された偏光を有することがある。
【0076】
ディスプレイパネル902から発する光の偏光に対して変動する影響を補償するために、少なくともいくつかの実装例では、空間変動偏光補償光学系908が設けられてよい。例示した例では、偏光補償光学系908は、ディスプレイパネル902の前面に隣接して配置されてよく、任意選択で、好適な接着剤(例えば、光学透明接着剤(OCA))によってディスプレイパネルに接着されても、または積層されてもよい。偏光補償光学系908は、本明細書のどこか他の箇所で説明されるように、マルチツイストリターダなどの位相リターダ材料(例えば、波長板)から形成されてよい。
【0077】
偏光補償光学系908は、位相マップで定められる空間変動偏光をもたらしてよい。図10および図11は、偏光補償光学系908に対する表面位相マップの2つの非限定的な例を示している。図10の例示的な表面マップ1000では、位相は、光学系の中心から外周に向かって、-0.433波長から+0.433波長の間で同心円状に変動する。図11の例示的な表面マップ1100では、位相は、(図のように)光学系908の下限である-1.25E+004から光学系の上限である+1.25E+004まで直線的に変動し、単位はそれぞれ2πラジアンの期間である。表面マップ1000および1100の位相変動は、簡潔にするために離散ステップとして示されているが、実際には、位相は光学系の表面全体にわたって連続的に変動し得ることに留意されたい。
【0078】
少なくともいくつかの実装例では、補償光学系908の表面位相マップは、ディスプレイパネル902またはレンズ904のうちの少なくとも一方によって生じた望ましくない偏光を相殺するまたは補償するように設計されてよい。そのような実装例では、光学系(例えば、レンズ、またはレンズおよびディスプレイパネル)の位相プロファイルまたはマップが最初に決定されてよい。決定した位相マップは次に、反転されて補償光学系908に適用されてよく、その結果、補償光学系は光学系の他の構成要素によって生じた望ましくない影響を相殺する。
【0079】
少なくともいくつかの実装例では、偏光補償光学系908は、低入射角での光に対して、HMDシステム900の偏光性能を向上させ得る。
【0080】
偏光補償に加えて、またはその代替として、補償光学系908は、ディスプレイパネル902からの光をよりテレセントリックに形作るように構成されてよく、その結果、光はより均一且つテレセントリックに揃った角度でレンズ904に到来する。この特徴によって、アイボックス906全体にわたる性能の向上がもたらされるのは有利である。
【0081】
本明細書で説明した空間変動偏光子を利用することで、光学設計者にとっては、性能および効率が向上した光学系を作り出すための自由度が大幅に増しており、これにより、より優れた視聴体験を提供し、コストがかからず、大きさまたは重量がより小さく、電力をあまり消費せず、また当業者には明らかである他の利点を提供するディスプレイシステムが可能になる。
【0082】
上述した様々な実装例は、さらなる実装例を提供するために組み合わされてよい。上記の詳細な説明を踏まえて、これらの変更および他の変化を各実装例に対して行うことができる。一般に、以下の特許請求の範囲では、用いられる用語は、特許請求の範囲を本明細書および特許請求の範囲に開示された特定の実装例に限定するものと解釈されるべきではなく、そのような特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲と併せて全ての実現可能な実装例を含むものと解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は本開示によって限定されることはない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】