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特表2023-512877空間変動偏光子を使用した視野ベースの光学補正
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】空間変動偏光子を使用した視野ベースの光学補正
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20230323BHJP
   G02B 27/28 20060101ALI20230323BHJP
   G02F 1/1347 20060101ALI20230323BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20230323BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B27/28 Z
G02F1/1347
G02B5/18
G02B5/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022534737
(86)(22)【出願日】2021-02-03
(85)【翻訳文提出日】2022-08-08
(86)【国際出願番号】 US2021016436
(87)【国際公開番号】W WO2021158677
(87)【国際公開日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】62/971,183
(32)【優先日】2020-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517160525
【氏名又は名称】バルブ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハッドマン、ジョシュア マーク
【テーマコード(参考)】
2H149
2H189
2H199
2H249
【Fターム(参考)】
2H149AA17
2H149AA23
2H149AB05
2H149BA03
2H149BB28
2H189AA21
2H189AA29
2H189AA32
2H189JA05
2H189MA15
2H199AB12
2H199AB45
2H199AB58
2H199CA24
2H199CA26
2H199CA43
2H199CA65
2H199CA67
2H199CA74
2H199CA83
2H199CA92
2H199CA94
2H199CA96
2H249AA04
2H249AA08
2H249AA17
2H249AA50
2H249AA60
2H249AA64
(57)【要約】
光学システムを提供する。
光学システムは、ユーザの注視を追跡し、注視を表すデータを出力するように動作可能な注視トラッカと、複数の空間変動偏光子を有する矯正補正部分とを備える。空間変動偏光子のうちの第1の偏光子は、第1の偏光子がアクティブであるべきか、または、非アクティブであるべきかどうかを示す第1の制御信号を受け取るように構成された第1の制御入力端入力部を含む。第1の偏光子は、アクティブである際には、虚像の第1の領域に対応する位置において、通過している光に第1の光学矯正補正を提供する。光学システムは、注視を表すデータを受け取り、第1の光学矯正補正を光に実施するかどうかを、注視に基づいて判定し、第1の光学矯正補正を光に実施するべきと判定実施することを決定することに応答して、第1の偏光子がアクティブであるべきことを示す第1の制御信号を出力するように構成されたコントローラを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの注視を追跡し、前記注視を表すデータを出力するように動作可能な注視トラッカと、
複数の空間変動偏光子を有する補正部分であって、前記複数の空間変動偏光子のうちの第1の空間変動偏光子が、複数の制御信号のうちの、前記第1の空間変動偏光子がアクティブであるべきか、または、非アクティブであるべきかを示す第1の制御信号を受け取るように構成された第1の制御入力部を含み、前記第1の空間変動偏光子が、アクティブである際には、虚像の複数の領域のうちの第1の領域に対応する位置において、前記補正部分を通過している光に第1の光学補正を提供するように動作可能である、補正部分と、
前記ユーザの前記注視を表す前記データを受け取り、
前記補正部分内で、前記第1の領域に対応する前記位置を通過している前記光に前記第1の光学補正を実施するべきかどうかを、前記注視に基づいて判定し、
前記補正部分内で、前記第1の領域に対応する前記位置を通過している前記光に前記第1の光学補正を実施することを決定することに応答して、前記第1の空間変動偏光子がアクティブであるべきことを示す前記第1の制御信号を出力する
ように構成されたコントローラと
を備える光学システム。
【請求項2】
前記虚像の前記複数の領域のうちの前記第1の領域が、前記ユーザの前記注視の視野内にある、
請求項1に記載の光学システム。
【請求項3】
前記コントローラが、
前記ユーザの前記注視を表す前記データに基づいて、前記注視が変化したと判定し、
前記補正部分内で、前記虚像の前記複数の領域のうちの第2の領域に対応する位置を通過している光に、前記複数の空間変動偏光子のうちの第2の空間変動偏光子による第2の光学補正を実施することを決定する
ように構成されている、
請求項1または2に記載の光学システム。
【請求項4】
前記複数の空間変動偏光子のうちの前記第2の空間変動偏光子が、前記複数の制御信号のうちの、前記第2の空間変動偏光子がアクティブであるべきか、または、非アクティブであるべきかを示す第2の制御信号を受け取るように構成された第2の制御入力部を有し、
前記コントローラが、前記補正部分内で、前記第2の領域に対応する前記位置を通過している前記光に前記第2の光学補正を実施することを決定することに応答して、前記第2の空間変動偏光子がアクティブであるべきことを示す前記第2の制御信号を出力するように構成されている、
請求項3に記載の光学システム。
【請求項5】
前記コントローラが、前記補正部分内で、前記第2の領域に対応する前記位置を通過している前記光に前記第2の光学補正を実施することを決定することに応答して、前記第1の空間変動偏光子が非アクティブであるべきことを示す前記第1の制御信号を出力するように構成されている、
請求項4に記載の光学システム。
【請求項6】
前記補正部分を通過している前記光が、前記第1の空間変動偏光子を通過した後に、前記第2の空間変動偏光子に入射するように、前記第1の空間変動偏光子および前記第2の空間変動偏光子が、積み重ね構成内に存在する、
請求項3から5のいずれか一項に記載の光学システム。
【請求項7】
前記第1の光学補正を提供することが、回折パターンに応じた回折、光コリメーション、集光、画像鮮明化、角分解能改変、焦点距離改変、または、収差補正を実行することを含む、
請求項1から6のいずれか一項に記載の光学システム。
【請求項8】
前記複数の空間変動偏光子のうちのいずれかの空間変動偏光子が、マルチツイストリターダ(MTR)を含む、
請求項1から7のいずれか一項に記載の光学システム。
【請求項9】
支持構造と、
ディスプレイと、
ユーザの注視を追跡し、前記注視を表すデータを出力するように動作可能な注視トラッカと、
第1の光学サブシステムおよび第2の光学サブシステムを有する光学システムであって、前記第1の光学サブシステムおよび前記第2の光学サブシステムのそれぞれが、複数の空間変動偏光子を含む補正部分を含み、前記複数の空間変動偏光子のうちの第1の空間変動偏光子が、複数の制御信号のうちの、前記第1の空間変動偏光子がアクティブであるべきか、または、非アクティブであるべきかを示す第1の制御信号を受け取るように構成された第1の制御入力部を含み、前記第1の空間変動偏光子が、アクティブである際には、前記補正部分内で、虚像の複数の領域のうちの第1の領域に対応する位置を通過している光に第1の光学補正を提供するように動作可能である、光学システムと、
前記第1の光学サブシステムおよび前記第2の光学サブシステムのそれぞれについて、
前記ユーザの前記注視を表す前記データを受け取り、
前記補正部分内で、前記第1の領域に対応する前記位置を通過している前記光に前記第1の光学補正を実施するべきかどうかを、前記注視に基づいて判定し、
前記第1の領域に対応する前記位置において、前記補正部分を通過している前記光に前記第1の光学補正を実施することを決定することに応答して、前記第1の空間変動偏光子がアクティブであるべきことを示す前記第1の制御信号を出力する
ように構成されたコントローラと
を備えるヘッドマウントディスプレイシステム。
【請求項10】
前記第1の光学サブシステムおよび前記第2の光学サブシステムのそれぞれについて、前記虚像の前記複数の領域のうちの前記第1の領域が、前記ユーザの前記注視の視野内にある、
請求項9に記載のヘッドマウントディスプレイシステム。
【請求項11】
前記第1の光学サブシステムおよび前記第2の光学サブシステムのそれぞれについて、前記コントローラが、
前記注視を表す前記データに基づいて、前記注視が変化したと判定し、
前記補正部分内で、前記虚像の前記複数の領域のうちの第2の領域に対応する位置を通過している光に、前記複数の空間変動偏光子のうちの第2の空間変動偏光子による第2の光学補正を実施することを決定する
ように構成されている、
請求項9または10に記載のヘッドマウントディスプレイシステム。
【請求項12】
前記第1の光学サブシステムおよび前記第2の光学サブシステムのそれぞれについて、前記複数の空間変動偏光子のうちの前記第2の空間変動偏光子が、前記複数の制御信号のうちの、前記第2の空間変動偏光子がアクティブであるべきか、または、非アクティブであるべきかを示す第2の制御信号を受け取るように構成された第2の制御入力部を有し、
前記第1の光学サブシステムおよび前記第2の光学サブシステムのそれぞれについて、前記コントローラが、前記補正部分内で、前記第2の領域に対応する前記位置を通過している前記光に前記第2の光学補正を実施することを決定することに応答して、前記第2の空間変動偏光子がアクティブであるべきことを示す前記第2の制御信号を出力するように構成されている、
請求項11に記載のヘッドマウントディスプレイシステム。
【請求項13】
前記第1の光学サブシステムおよび前記第2の光学サブシステムのそれぞれについて、前記コントローラが、前記補正部分内で、前記第2の領域に対応する前記位置を通過している前記光に前記第2の光学補正を実施することを決定することに応答して、前記第1の空間変動偏光子が非アクティブであるべきことを示す前記第1の制御信号を出力するように構成されている、
請求項12に記載のヘッドマウントディスプレイシステム。
【請求項14】
前記第1の光学サブシステムおよび前記第2の光学サブシステムのそれぞれについて、前記補正部分を通過している前記光が、前記第1の空間変動偏光子を通過した後に、前記第2の空間変動偏光子に入射するように、前記第1の空間変動偏光子および前記第2の空間変動偏光子が、積み重ね構成内に存在する、
請求項11から13のいずれか一項に記載のヘッドマウントディスプレイシステム。
【請求項15】
前記第1の光学サブシステムおよび前記第2の光学サブシステムのそれぞれについて、前記第1の光学補正を提供することが、回折パターンに応じた回折、光コリメーション、集光、画像鮮明化、角分解能改変、焦点距離改変、または、収差補正を実行することを含む、
請求項9から14のいずれか一項に記載のヘッドマウントディスプレイシステム。
【請求項16】
前記第1の光学サブシステムおよび前記第2の光学サブシステムのそれぞれについて、前記複数の空間変動偏光子のうちのいずれかの空間変動偏光子が、マルチツイストリターダ(MTR)を含む、
請求項9から15のいずれか一項に記載のヘッドマウントディスプレイシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空間変動偏光子を使用して、視野ベースの光学補正を実行する光学補正システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドマウントディスプレイデバイス(HMD)は、ユーザの頭部に着用され、ユーザにビジュアルコンテンツを提示するための1つまたは複数の表示ユニットを有する表示デバイスである。HMDは、仮想現実(VR)体験もしくは拡張現実(AR)体験を提供するために、または、オーディオビジュアル媒体のゲーミングもしくは提示を容易にするためにますます一般的になっている。表示ユニットは、一般に小型化されており、例えば、CRT技術、LCD技術、リキッドクリスタルオンシリコン(エルコス)技術、または、OLED技術を含み得る。いくつかのHMDは、双眼式であり、それぞれの眼に異なる画像を表示することが可能である。この機能を使用して、より没入感のあるユーザ体験を提示するための立体画像が表示される。
【0003】
従来型のHMDは、ユーザの視野角または視野が考慮されない。従来型のHMDは、ユーザの視野角または視野に虚像光を適応させずにユーザにビジュアルコンテンツを表示する。
【発明の概要】
【0004】
ヘッドマウントディスプレイは、虚像表示ユニットと、虚像光を改変するための光学システムとを含むものとして要約することができる。光学システムは、虚像光を改変して、ユーザの体験もしくは視認を向上させること、または、虚像光の角分解能を改善することができる。光学システムは、光学補正を実行して、虚像光の焦点距離を改変すること、または、虚像光を鮮明化することができる。具体的には、光学システムは、虚像光のうち、ユーザが視認している、または、見つめている特定の部分の光を対象にすること、改変すること、または、それに作用することができる。虚像光のうちのその部分は、ユーザの現在の視野に含まれ得る。したがって、虚像光のうちのその部分に光学補正を局所化させることができる。
【0005】
光学システムにより実行される光学補正は、ユーザの注視の角度もしくは方向、または、ユーザの視野に基づき得る。ユーザの注視の角度もしくは方向または視野は、例えば、ヘッドマウントディスプレイの注視トラッカにより検出され得る。光学システムは、虚像表示から受け取られる虚像光を改変して、左眼視認および右眼視認をそれぞれ補正するように動作可能な左光学サブシステムおよび右光学サブシステムを含むことができる。
【0006】
光学システムは、コントローラ入力に基づいて、アクティブ(オン)状態または非アクティブ(オフ)状態になるように、それぞれが動作可能な1つまたは複数の空間変動偏光子を含む。空間変動偏光子は、マルチツイストリターダ(MTR)で形成し、単一の薄膜内で正確な遅延レベルを提供するようにカスタマイズすることができる。空間変動偏光子は、補正光学部品として動作し、自体を通過している光に屈折(屈折率に応じる)または回折(回折パターンに応じる)を受けさせるように構成することができる。空間変動偏光子は、偏光が方向付けられるレンズとして形成し、通過光を集光するために電気的に制御可能な焦点距離を有することができ、通過光にコリメーションを実行することができる。自体の空間変動特性に起因して、マルチツイストリターダは、切り替え可能な局所化された光学補正を提供する。この局所化された光学補正は、虚像光のうち、ユーザの現在の視野に含まれる部分に作用することができる。局所化された光学補正は、虚像光のうち、ユーザの現在の視野に含まれる部分に対して、虚像光のうち、ユーザの現在の視野の外にある他の部分とは異なって作用することができるので、現在の視野内での光学補正の最適化が可能になる。
【0007】
各空間変動偏光子は、その空間変動偏光子を通過している光に作用する回折パターン特性、光コリメーション特性、集光特性、または、収差補正特性をとりわけ有するように形成することができる。2つまたはそれより多くの空間変動偏光子のサブセットは、組み合わせることで、そのサブセットを通過している光に作用する特定の回折特性、光コリメーション特性、集光特性、または、収差補正特性をとりわけ有することができる。
【0008】
空間変動偏光子は、オン状態とオフ状態とで切り替え可能である。コントローラは、個別の空間変動偏光子、空間変動偏光子のサブセット、または、利用可能な全ての空間変動偏光子をオンまたはオフに切り替えて、対応する光学補正を実現および実装することができる。コントローラは、様々な空間変動偏光子をオン状態とオン状態とで切り替えて、虚像のそれぞれ異なる部分について、利用可能なそれぞれ異なる光学補正を切り替えることができる。視認中に、コントローラは、注視トラッカから、または、他のソースからユーザの注視の指示を受け取る。ユーザの注視が変化し、ユーザの注視が1つの領域から他の領域に変化すると、コントローラは、空間変動偏光子を切り替えて、虚像光のうち、ユーザの現在の視野に含まれる部分への局所化された光学補正を実現する。
【0009】
光学システムは、ユーザの注視を追跡し、前記注視を表すデータを出力するように動作可能な注視トラッカと、複数の空間変動偏光子を有する補正部分であって、前記複数の空間変動偏光子のうちの第1の空間変動偏光子が、複数の制御信号のうちの、前記第1の空間変動偏光子がアクティブであるべきか、または、非アクティブであるべきかを示す第1の制御信号を受け取るように構成された第1の制御入力部を含み、前記第1の空間変動偏光子が、アクティブである際には、虚像の複数の領域のうちの第1の領域に対応する位置において、前記補正部分を通過している光に第1の光学補正を提供するように動作可能である、補正部分と、前記ユーザの前記注視を表す前記データを受け取り、前記補正部分内で、前記第1の領域に対応する前記位置を通過している前記光に前記第1の光学補正を実施するべきかどうかを、前記注視に基づいて判定し、前記補正部分内で、前記第1の領域に対応する前記位置を通過している前記光に前記第1の光学補正を実施することを決定することに応答して、前記第1の空間変動偏光子がアクティブであるべきことを示す前記第1の制御信号を出力するように構成されたコントローラとを備えるものとして要約することができる。前記虚像の前記複数の領域のうちの前記第1の領域は、前記ユーザの前記注視の視野内にあり得る。前記コントローラは、前記ユーザの前記注視を表す前記データに基づいて、前記注視が変化したと判定し、前記補正部分内で、前記虚像の前記複数の領域のうちの第2の領域に対応する位置を通過している光に、前記複数の空間変動偏光子のうちの第2の空間変動偏光子による第2の光学補正を実施することを決定するように構成することができる。前記複数の空間変動偏光子のうちの前記第2の空間変動偏光子は、前記複数の制御信号のうちの、前記第2の空間変動偏光子がアクティブであるべきか、または、非アクティブであるべきかを示す第2の制御信号を受け取るように構成された第2の制御入力部を有することができ、前記コントローラは、前記補正部分内で、前記第2の領域に対応する前記位置を通過している前記光に前記第2の光学補正を実施することを決定することに応答して、前記第2の空間変動偏光子がアクティブであるべきことを示す前記第2の制御信号を出力するように構成されている。前記コントローラは、前記補正部分内で、前記第2の領域に対応する前記位置を通過している前記光に前記第2の光学補正を実施することを決定することに応答して、前記第1の空間変動偏光子が非アクティブであるべきことを示す前記第1の制御信号を出力するように構成することができる。前記補正部分を通過している前記光が、前記第1の空間変動偏光子を通過した後に、前記第2の空間変動偏光子に入射するように、前記第1および前記第2の空間変動偏光子は、積み重ね構成内に存在し得る。前記第1の光学補正を提供することは、回折パターンに応じた回折、光コリメーション、集光、画像鮮明化、角分解能改変、焦点距離改変、または、収差補正を実行することを含み得る。前記複数の空間変動偏光子のうちのいずれかの空間変動偏光子が、マルチツイストリターダ(MTR)を含み得る。
【0010】
ヘッドマウントディスプレイシステムは、支持構造と、ディスプレイと、ユーザの注視を追跡し、前記注視を表すデータを出力するように動作可能な注視トラッカと、第1および第2の光学サブシステムを有する光学システムであって、前記第1および前記第2の光学サブシステムのそれぞれが、複数の空間変動偏光子を含む補正部分を含み、前記複数の空間変動偏光子のうちの第1の空間変動偏光子が、複数の制御信号のうちの、前記第1の空間変動偏光子がアクティブであるべきか、または、非アクティブであるべきかを示す第1の制御信号を受け取るように構成された第1の制御入力部を含み、前記第1の空間変動偏光子が、アクティブである際には、虚像の複数の領域のうちの第1の領域に対応する位置において、前記補正部分を通過している光に第1の光学補正を提供するように動作可能である、光学システムと、前記第1および前記第2の光学サブシステムのそれぞれについて、前記ユーザの前記注視を表す前記データを受け取り、前記補正部分内で、前記第1の領域に対応する前記位置を通過している前記光に前記第1の光学補正を実施するべきかどうかを、前記注視に基づいて判定し、前記補正部分内で、前記第1の領域に対応する前記位置を通過している前記光に前記第1の光学補正を実施することを決定することに応答して、前記第1の空間変動偏光子がアクティブであるべきことを示す前記第1の制御信号を出力するように構成されたコントローラとを備えるものとして要約することができる。前記第1および前記第2の光学サブシステムのそれぞれについて、前記虚像の前記複数の領域のうちの前記第1の領域は、前記ユーザの前記注視の視野内にあり得る。前記第1および前記第2の光学サブシステムのそれぞれについて、前記コントローラは、前記注視を表す前記データに基づいて、前記注視が変化したと判定し、前記補正部分内で、前記虚像の前記複数の領域のうちの第2の領域に対応する位置を通過している光に、前記複数の空間変動偏光子のうちの第2の空間変動偏光子による第2の光学補正を実施することを決定するように構成することができる。前記第1および前記第2の光学サブシステムのそれぞれについて、前記複数の空間変動偏光子のうちの前記第2の空間変動偏光子は、前記複数の制御信号のうちの、前記第2の空間変動偏光子がアクティブであるべきか、または、非アクティブであるべきかを示す第2の制御信号を受け取るように構成された第2の制御入力部を有することができ、前記第1および前記第2の光学サブシステムのそれぞれについて、前記コントローラは、前記補正部分内で、前記第2の領域に対応する前記位置を通過している前記光に前記第2の光学補正を実施することを決定することに応答して、前記第2の空間変動偏光子がアクティブであるべきことを示す前記第2の制御信号を出力するように構成されている。前記第1および前記第2の光学サブシステムのそれぞれについて、前記コントローラは、前記補正部分内で、前記第2の領域に対応する前記位置を通過している前記光に前記第2の光学補正を実施することを決定することに応答して、前記第1の空間変動偏光子が非アクティブであるべきことを示す前記第1の制御信号を出力するように構成することができる。前記第1および前記第2の光学サブシステムのそれぞれについて、前記補正部分を通過している前記光が、前記第1の空間変動偏光子を通過した後に、前記第2の空間変動偏光子に入射するように、前記第1および前記第2の空間変動偏光子は、積み重ね構成内に存在し得る。前記第1および前記第2の光学サブシステムのそれぞれについて、前記第1の光学補正を提供することは、回折パターンに応じた回折、光コリメーション、集光、画像鮮明化、角分解能改変、焦点距離改変、または、収差補正を実行することを含み得る。前記第1および前記第2の光学サブシステムのそれぞれについて、前記複数の空間変動偏光子のうちのいずれかの空間変動偏光子が、マルチツイストリターダ(MTR)を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】1つまたは複数の実装形態による光学システムを有するヘッドマウントディスプレイの俯瞰平面図である。
【0012】
図2図1のヘッドマウントディスプレイの光学システムの光学サブシステムの図である。
【0013】
図3図1のヘッドマウントディスプレイの外装の俯瞰斜視図である。
図4】ヘッドマウントディスプレイの模式ブロック図である。
【0014】
図5図4を参照して説明されるコントローラに結合された補正部分の図である。
【0015】
図6】複数の空間変動偏光子により実行される視野ベースの光学補正の例を示す図である。
【0016】
図7】説明される1つの非限定的実装形態による空間変動偏光子についての例示的表面位相マップの図である。
【0017】
図8】説明される1つの非限定的実装形態による空間変動偏光子についての他の例示的表面位相マップの図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の説明では、開示される様々な実装形態の完全な理解をもたらすために、特定の具体的詳細が記載される。しかし、当業者は、これらの具体的詳細のうちの1つまたは複数がなくても、または、他の方法、コンポーネント、材料などを用いて、実装形態が実践され得ることを認識するであろう。他の例では、実装形態の不要に曖昧な説明を避けるために、コンピュータシステム、サーバコンピュータ、および/または、通信ネットワークに関連する周知の構造の図示または詳細な説明を行っていない。
【0019】
文脈上他の意味に解するべき場合を除き、以下の明細書および特許請求の範囲を通して、「comprising」という単語は、「including」と同義であり、包括的またはオープンエンドである(すなわち、記載されていない追加の要素または方法行為を排除しない)。本明細書では、特に断りのない限り、または、文脈と矛盾しない限り、「セット」という用語(例えば、「アイテムのセット」)と言った場合、1つまたは複数の部材または例を含む非空の集合と解釈される。
【0020】
本明細書を通して、「1つの実装形態」または「一実装形態」と言った場合、その実装形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または、性質が、少なくとも1つの実装形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書中の様々な箇所で「1つの実装形態では」または「一実装形態では」という言い回しが現れた場合、必ずしも全てが同一の実装形態を指しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、または、性質を、任意の適当な手法で、1つまたは複数の実装形態内で組み合わせることができる。
【0021】
文脈が明確に規定しない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲では、単数形の「a」、「an」、および、「the」は、複数の指示対象を含む。文脈が明確に規定しない限り、「または(or)」という用語は、「および/または(and/or)」を含む意味合いで一般に用いられることにも留意されたい。
【0022】
本明細書で提供される開示の見出しおよび要約は、便宜のみのためのものであり、実装形態の範囲または意味を解釈しない。
【0023】
図1は、1つまたは複数の実施形態によるヘッドマウントディスプレイデバイス(HMD)100の俯瞰平面図を示す。HMD100は、毎秒30フレーム(もしくは画像)または毎秒90フレームなどの表示レートで提示される対応する映像を介するなどして、ユーザ104に仮想現実(VR)を提示するように構成され、同様のシステムの他の実施形態は、ユーザ104に拡張現実表示を提示することができる。HMD100は、ユーザ104の左眼105lおよび右眼105rに補正された虚像光102を提供する。HMD100は、フレーム108に装着された、または、フレーム108内に装着された1つまたは複数の虚像表示ユニット106を含む。虚像表示ユニット106は、ユーザにビジュアルコンテンツを知覚させるための虚像光102を生成する。HMD100は、虚像表示ユニット106の出射側に提供される左右のレンズ107lのセットおよびレンズ107rのセットを更に含み得る。虚像表示ユニット106から虚像光102が出射された後に、左右のレンズ107lのセットおよび107rのセットは、虚像光102を集光またはコリメーションし、そうでなければ、改変することができる。左右のレンズ107lのセットおよび107rのセットは、例えば、虚像光102を屈折させる、またはコリメーションするフレネルレンズを含み得る。
【0024】
また、HMD100は、ユーザの1つまたは複数の視覚条件についての補正のために選択的に可変な光学的性質を有する光学システム112を含む。例えば、光学システム112は、光を局所的に補正するように、選択的に調整可能である。虚像表示ユニット106から出射される虚像光102は、光学システム112内の光路126に沿って進み、これにより、光学システム112の光学的性質に応じて虚像光102が改変され、ユーザの左右の眼105lおよび105rそれぞれに、補正された虚像光114が出射される。
【0025】
フレーム108は、ユーザ104の頭部でHMD100を支持するための装着構造である。フレーム108は、生成されるビジュアルコンテンツを視認するユーザの眼105lおよび105rの前方での位置決めを行うために、前部分118と、前部分118とは反対にある視認部分120とを有する本体116を含む。HMD100は、ユーザの頭部にHMD100を選択的に装着するための1つまたは複数の支持構造を含む。例えば、図1のHMD100は、ユーザ104の左右の耳124lおよび124rをそれぞれ覆うように載る左右のつる122lおよび122rを含む。いくつかの実施形態では、HMD100は、本体116に接続され、ユーザ104の頭部の裏に巻き付くストラップなどの他の支持構造を含んでもよい。HMD100の鼻アセンブリ(図示せず)は、ユーザ104の鼻の上で本体116を支持することができる。フレーム108は、ユーザの眼105lおよび105rのうちの一方の前方で光学システム112を位置決めするように形作ることおよびサイズを定めることができる。フレーム108は、説明目的で簡略化して眼鏡と同様に示されているが、実際には、より精巧な構造(例えば、ゴーグル、一体型ヘッドバンド、ヘルメット、ストラップなど)を使用して、ユーザ104の頭部でHMD100を支持および位置決めすることができることを理解されたい。
【0026】
虚像表示ユニット106は、光学システム112中で伝送され、光学システム112により選択的に改変される虚像光102を生成する。虚像表示ユニット106は、左眼105lへの提示用の画像光を生成するための左表示ユニット106lと、右眼105rへの提示用の画像光を生成するための右表示ユニット106rとを含む。虚像表示ユニット106は、液晶ディスプレイ(LCD)、発光ダイオオード(LED)、陰極線管(CRT)、リキッドクリスタルオンシリコン(エルコス)、または、虚像光102を生成する他の発光技術を含むことができる。図1に示す実施形態の虚像表示ユニット106は、HMD100の前部分に位置し、ユーザ104の眼に向かって後ろ方向に光を出射する。いくつかの実施形態では、虚像表示ユニット106は、眼105lまたは105rに、虚像光102を向ける(例えば、反射、屈折させる)波長を含むことができ、これにより、ユーザ104によるビジュアルコンテンツの知覚のために、虚像表示ユニット106の発光素子は、眼105lおよび105rの直接前方ではなくなる。いくつかの実施形態では、本体116の前部分118を少なくとも部分的に透明にすることができ、これにより、ユーザ104は、拡張現実体験を提供するための外部コンテンツを知覚することができる。
【0027】
HMD100は、ユーザ104またはユーザの眼105l、105rの注視(またはその方向)を追跡するように構成される注視トラッカ127を含む。注視トラッカ127は、HMD100の内部要素として図示されているが、代替実施形態では、注視トラッカ127は、外部センサであってもよい。さらに、注視トラッカ127は、眼105lおよび105rのそれぞれについて別々に注視もしくは瞳孔の追跡を実行すること、または、ユーザ104の頭部の位置または向きを追跡すること(例えば、頭部追跡の一部分として)ができる。さらに、注視トラッカ127は、ユーザの体の他の様々な種類の動きおよび位置を追跡することができる。
【0028】
注視トラッカ127は、ユーザ104の注視を表すデータを出力することができる。このデータは、視認部分120のうち、ユーザ104が自身の注視を向けている部分(位置または領域)を示すことができる。この部分(位置または領域)は、視認部分120の中心、視認部分120の四半分の1つ、または、視認部分120の任意の他の領域であり得る。ユーザ104の注視を表すデータは、ユーザの注視が向けられる角度または座標(デカルト座標もしくは極座標)であり得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、図1に示すものと同様の表示システムを用いて、説明された技術を使用することができるが、他の実施形態では、単一の光学レンズおよび表示デバイスを用いたもの、または、複数のこうした光学レンズおよび表示デバイスを用いたものを含めた、他の種類の表示システムが使用され得る。他のこうしたデバイスの非排他的な例には、カメラ、望遠鏡、顕微鏡、双眼鏡、スポッティングスコープ、測量スコープなどが含まれる。さらに、説明された技術は、光を出射して画像を形成する多種多様な表示パネルまたは他の表示デバイスを用いて使用することができ、1人のユーザまたは複数のユーザが、1つまたは複数の光学レンズを通して、これら画像を視認する。他の実施形態では、ユーザは、表示パネルを介すること以外のやり方で作られる1つまたは複数の画像(他の光源からの光を部分的にまたは全体的に反射する面の上などで作られる画像など)を1つまたは複数の光学レンズを通して視認することができる。
【0030】
虚像光102は、虚像表示ユニット106のそれぞれから、光学システム112中の光路126に沿って進み、視認部分120に向かう複数の光線を含み得る。光学システム112は、複数の光線のうちのいくつかまたは全てを改変して、補正された虚像光114を提供する。光学システム112は、虚像光102を改変するための1つまたは複数の光学サブシステム130を含む。複数の光学サブシステム130が、左眼105lについて虚像光102を改変するための左光学サブシステム130lと、右眼105rについて虚像光102を改変するための右光学サブシステム130rとを含むが、1つの光学サブシステム130を使用して、両方の眼105l、105rについて虚像光102をまとめて改変することもできる。ユーザ104の視認体験を向上させるように、または、左眼105lおよび右眼105rそれぞれにおける視覚上の不備もしくは欠損を補正するように、左右の光学サブシステム130lおよび130rのそれぞれを独立して調整可能にすることができる。
【0031】
図2は、1つまたは複数の実施形態による図1の光学サブシステム130(例えば、光学サブシステム130lまたは130r)の図200を示す。光学サブシステム130は、単一の眼について、虚像光102に対応する当初虚像光204を受け取るための受取部分202と、補正された虚像光208を出射するための出射部分206とを含む。当初虚像光204は、ユーザ104にビジュアルコンテンツを知覚させるための特定の属性(例えば、色、方向、輝度)セットをそれぞれが有する複数の光線205を含み得る。複数の光線205のうちのいずれかの光線205は、当初虚像(当初虚像光204により表される)上の位置に対応する。当初虚像上のその位置とマッチする、一致する、または、対応する位置において、いずれかの光線205(または光)が受取部分202に入射し得る。
【0032】
光学サブシステム130は、本明細書で説明される1つまたは複数の空間変動偏光子211を有する補正部分210を更に備える。補正部分210は、当初虚像光204を補正し、補正された虚像光208を出射する。任意の一時点で、補正部分210は、当初虚像光204の一部分を補正することができる。補正部分210は、当初虚像光204の異なる部分を異なるやり方で補正することができる。補正部分210は、当初虚像光204の1つまたは複数の部分を補正してもよく、当初虚像光204の1つまたは複数の他の部分には光学補正を適用しなくてもよい。
【0033】
3つの空間変動偏光子211(第1、第2、および第3の空間変動偏光子211a、211b、211c)が図2に示されているが、光学サブシステム130は、任意数の空間変動偏光子211を含むことができることを留意されたい。
【0034】
各空間変動偏光子211a、211b、211cは、空間変動偏光子211a、211b、211cがオンであるべきか、オフであるべきかを示すそれぞれの制御信号を受け取るように動作可能なそれぞれの入力部212a、212b、212cを有する。制御信号は、空間変動偏光子211がオンであるべきことを示す第1の状態と、空間変動偏光子211がオフであるべきことを示す第2の状態とを有することができる。入力部212は、本明細書で説明されるコントローラ(図2には示されていない)に結合することができ、制御信号は、このコントローラから受け取ることができる。
【0035】
空間変動偏光子211は、マルチツイストリターダ(MTR)で形成することができ、マルチツイストリターダ(MTR)は、カスタマイズされた正確な広帯域遅延レベル、狭帯域遅延レベル、または、複数帯域遅延レベルを単一の薄膜内にもたらす波長板に類似した位相差膜である。より具体的には、MTRは、単一基板上にあり、単一の位置合わせ層を伴う2つまたはそれより多くのツイスト液晶(LC)層を備える。次のLC層が前の層により直接的に位置合わせされるので、簡単な作製が可能になり、自動的な層間位置合わせが実現され、継続的に変動する光軸を有するモノシリックな膜がもたらされる。
【0036】
自体の空間変動特性に起因して、マルチツイストリターダは、局所化された光学補正を提供する。この局所化された光学補正は、虚像光(例えば、当初虚像光)のうち、ユーザの現在の視野に含まれる部分に作用することができる。局所化された光学補正は、虚像光のうち、ユーザの現在の視野に含まれる部分に対して、虚像光のうち、ユーザの現在の視野の外にある他の部分とは異なって作用することができる。
【0037】
空間変動偏光子211は、複屈折材料で形成される波リターダを備えることができる。複屈折は、光の偏光および伝搬方向に依存する屈折率を有する材料の特性である。波リターダは、波リターダ中を進んでいる光の偏光状態または位相を変える。波リターダは、遅軸(または非普通軸)および高速軸(普通軸)を有することができる。偏光が波リターダ中を進む際に、高速軸に沿った光は、遅軸に沿った光よりも速く進む。
【0038】
空間変動偏光子211は、補正光学部品として動作するように構成することができる。空間変動偏光子211の複屈折材料は、自体を通過している光に屈折(例えば、屈折率に応じる)を受けさせるように構成することができる。各空間変動偏光子211は、回折パターンを有し得る。空間変動偏光子211は、偏光が方向付けられるレンズとして形成することができ、電気的に制御可能な焦点距離を有し得る。さらに、空間変動偏光子211は、通過している光にコリメーションを実行することができる。
【0039】
本明細書では光学補正は、補正部分210を通過している、または、それを横切っている光に光学的な変化または改変をもたらすことを含む。本明細書では、光学的改変に関する補正は、補正前の光もしくは画像の不備、または、光もしくは画像の不備に対する補正を意味することを意図しない。光学補正を使用して、特定の状況セットについて、画像の可視化を向上もしくは改善すること、または、特定のユーザ体験基準もしくはユーザ体験メトリクスを満たすことができる。
【0040】
補正部分210の1つまたは複数の空間変動偏光子211は、電気的に制御される補正光学部品として個別に動作すること、まとめて動作すること、または、サブセットに分かれて動作することができる。各空間変動偏光子211は、その空間変動偏光子211を通過している光に作用する回折パターン特性、光コリメーション特性、集光特性、または、収差補正特性をとりわけ有するように形成することができる。さらに、利用可能な空間変動偏光子211のうちの2つまたはそれより多くの空間変動偏光子211のサブセットは、組み合わせることで、そのサブセットを通過している光に作用する特定の回折特性、光コリメーション特性、集光特性、または、収差補正特性をとりわけ有することができる。サブセットがアクティブ化され(またはオンに切り替えられ)、利用可能な他の空間変動偏光子211が非アクティブ化される(またはオフに切り替えられる)と、サブセットは、そのサブセットの特定の特性に応じて、自体を通過している光に作用することができる。
【0041】
各空間変動偏光子211a、211b、211cは、光学部品として特定の光学補正を実行するように形成することができる。さらに、または、こうする代わりに、2つまたはそれより多くの空間変動偏光子211を、組み合わせることで光学部品として特定の光学補正を実行するように形成することもできる。空間変動偏光子211a、211b、211cを層状にすること、または、積み重ねることができ、複数の光線205が、第1の空間変動偏光子211aから第2の空間変動偏光子211bを通過し、次いで、第3の空間変動偏光子211cに達する。第1の空間変動偏光子211aおよび第2の空間変動偏光子211bはそれぞれ、所望の光学補正を共同で実行するように形成される。第1の空間変動偏光子211aは、第1の空間変動偏光子211aに入射する光205に第1の光学補正を実行するように形成することができる。第2の空間変動偏光子211bは、第2の空間変動偏光子211bに入射する(第1の光学補正で補正された後)光に第2の光学補正を実行するように形成することができる。第1および第2の光学補正の組み合わせにより、所望の光学補正が共同で実現される。
【0042】
引き続きこの例では、第3の空間変動偏光子211cをオフにすることができ、これにより、第3の空間変動偏光子211cが、第1の空間変動偏光子211aおよび第2の空間変動偏光子211bにより実行される所望の光学補正への妨害または干渉を行わなくなる。オフにされると、第3の空間変動偏光子211cは、自体で光学補正を実行しなくてよい。あるいは、オフにされる際、第3の空間変動偏光子211cは、第3の光学補正を実行してもよい。このケースでは、第3の光学補正を打ち消す(かつ、第3の光学補正の効果を逆にする)ように、第1および第2の光学補正を調整して、求められる光学補正を実現することができる。
【0043】
光学補正は、当初虚像光204に対して、空間的に不均一に実行することができる。空間的不均一性は、当初虚像光204の異なる部分に、異なるやり方で、または、不均等に光学補正を適用することを含む。また、空間的不均一性は、当初虚像光204の異なる部分に異なる種類の光学補正を実行すること、または、当初虚像光204の異なる位置で異なる種類の光学補正を実行することを含む。例えば、第1の空間変動偏光子211aの第1の光学補正は、当初虚像光204の第1の部分(例えば、中心)をフォーカスし、当初虚像光204の第2の部分(例えば、外周または端部)を非フォーカスにし得る。「非フォーカス」または「フォーカス外」という言い回しは、相対的な言い回しであり得、こうした部分へのフォーカスは、「フォーカスされた」部分に対して最適化しない場合があることを意味することを理解されたい。引き続きこの例では、第2の空間変動偏光子211aの第2の光学補正が、ユーザの処方に従って、当初虚像光204の中心を光学的に補正することができ、当初虚像光204の外周または端部には、ユーザの処方に従って光学補正を実行することはできない。ある光学補正は、当初虚像光204の一部分の鮮明化を実行し、当初虚像光204の他の部分には鮮明化を実行しないようにすることができる。
【0044】
図3は、1つまたは複数の実施形態によるHMD100の外装300を示す。HMD100は、本体116に取り付けられるストラップ302のセットを含む。ストラップ302のセットは、ビジュアルコンテンツを視認するためにユーザ104の頭部にHMD100を選択的に固定して装着するように使用可能である。本体116は、HMD100の様々な側面を制御するための制御パネル304を含むことができる。制御パネル304は、光学システム112の光学的性質を制御して、ビジュアルコンテンツを補正するための1つまたは複数の入力デバイスを含むことができる。ビジュアルコンテンツは、ユーザ104の体験を改善するように補正すること、および/または、ユーザ104の視覚条件(例えば、近視、遠視、乱視)について補正することができる。
【0045】
入力デバイスは、コントローラに電気的に結合されており、補正部分210と、補正部分210の1つまたは複数の空間変動偏光子211とにより実行される光学補正を構成するようにコントローラに命令するように構成されている電気デバイスであってもよい。一例として、ユーザ104による対話に応答して、入力デバイスは、電気信号をコントローラへと送らせることができ、これに応答して、コントローラは、1つまたは複数の制御信号をそれぞれの空間変動偏光子211a、211b、211cに送って、補正部分210により実行される光学補正を調整する。制御パネル304の電気的入力デバイスの非限定的な例には、英数字入力を提供するための、もしくは、メニューをナビゲートするためのキーのセットを有するキーパッド、または、コントローラに電気的に結合されるダイヤルもしくはノブが含まれる。外装300は、光学システム112の現在の光学設定など、HMD100についての情報を表示するためのディスプレイ306を含むことができる。いくつかの実施形態では、ディスプレイ306は、光学システム112を制御するためにユーザ104が対話することができるタッチスクリーン入力デバイスであり得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、ユーザは、虚像表示ユニット106により提示されるビジュアルコンテンツに関連して、光学システム112の光学設定を調整することができる。例えば、HMD100を身に着けているユーザが、虚像表示ユニット106により表示されるメニューまたは他のビジュアルコンテンツに従って、制御パネル304または他の入力デバイス(例えば、ハンドヘルドコントローラ、マウス、キーボード)と対話をして、光学設定を調整することができる。一例として、ユーザは、制御パネル304または他の入力デバイスを介してメニューをナビゲートし、ユーザ入力を提供することができ、このユーザ入力に応答して、光学システム112の光学設定が変更される。他の例として、HMD100は、ユーザ104により知覚されるビジュアルコンテンツについてのユーザ入力に応答して、光学システム112の光学設定をリアルタイムで調整することができる。ユーザは、HMD100に対する視覚テストを開始することができ、これにより、虚像表示ユニット106にテストパターンなどのビジュアルコンテンツを表示させ、ユーザは、ビジュアルコンテンツの鮮明度についての入力を提供するように促される。この入力を受け取る結果、HMD100は、ビジュアルコンテンツの鮮明度を改善するために、光学システム112の光学設定を自動的に調整して、ユーザ104の体験を改善することができる。
【0047】
図4は、1つまたは複数の実施形態によるHMD100の様々なパーツの相互接続を示すブロック図400である。HMD100は、コントローラ402を含む。コントローラ402は、1つまたは複数のプロセッサ404と、1つまたは複数のプロセッサ404による実行の結果、本明細書で説明される1つまたは複数の動作をHMD100に実行させる命令のセットを記憶するメモリ406とを備える。非限定的な説明例として、メモリ406は、リードオンリメモリ(ROM)およびランダムアクセスメモリ(RAM)を含むことができ、ソリッドステートメモリまたはハードディスクドライブの形態にすることができる。また、HMD100は、外部デバイスと通信をやり取りするためにコントローラ402に電気的に結合される通信インタフェース408を含む。通信インタフェース408は、ネットワークルータまたはコンピューティングデバイス(例えば、ラップトップ、デスクトップ、タブレット、モバイルデバイス)などの外部デバイスとワイヤレスで通信をやり取りするWi-Fi(登録商標)トランシーバ、セルラトランシーバ、Bluetooth(登録商標)トランシーバなどの1つまたは複数のワイヤレストランシーバを含むことができる。通信インタフェース408は、ユニバーサルシリアルバスポートまたはネットワークインタフェースポートなど、外部デバイスとの有線通信のための有線通信ポートを含むこともできる。
【0048】
HMD100は、HMD100にユーザ入力を提供するための、コントローラ402に電気的に結合される入力デバイス410のセットを含むことができる。入力デバイス410のセットのうちの1つまたは複数の入力デバイス410が、HMD100の外装300上に提供され得る(例えば、制御パネル304の一部分として)。コントローラ402は、虚像表示ユニット106および/またはディスプレイ306(これが含まれている場合)に電気的に結合し、それらを制御するように構成することもできる。いくつかの実施形態では、コントローラ402は、虚像表示ユニット106を介して虚像光102を生成するための1つまたは複数のグラフィック処理ユニットを含むことができる。
【0049】
コントローラ402は、光学システム112に電気的に結合され、本明細書で説明されるように、光学システム112を制御して、その光学的性質を調整するように構成される。具体的には、コントローラ402は、左光学サブシステム130lの補正部分412および右光学サブシステム130rの補正部分416に電気的に結合され、それらを制御するように構成される。
【0050】
各補正部分412、416は、図2を参照して本明細書で説明されるように構成することができる。コントローラ402を、補正部分412、416に電気的に結合して、これらの補正部分のそれぞれの空間変動偏光子211を制御する。具体的には、コントローラ402は、補正部分412、416に信号(例えば、制御信号)を送って、それぞれの補正部分412、416に、それらの空間変動偏光子211を切り替えてオン、オフすることで光学補正を実行させる。先で説明したように、補正部分412、416を制御して、それらの光学的性質を改変することができる。コントローラ402は、入力を受け取ることに応答して信号を送ることができる。例えば、コントローラ402は、入力デバイス410から入力を受け取ることに応答して、光学的性質を調整させてもよい。他の例として、コントローラ402は、通信インタフェース408を介して入力を受け取ることに応答して、光学的性質を調整することもできる。
【0051】
コントローラ402が受け取る入力は、特定のフォーマットを有し得る。入力は、右眼についての処方および/または左眼についての処方を示し得る。それぞれの眼について、入力は、屈折力もしくは球面度(SPHもしくはSと表すこともある)、シリンダ度(CYLもしくはCと表すこともある)、および/または、軸(通常0から180)を示し得る。入力は、左光学サブシステム130lおよび右光学サブシステム130rについての入力を含んでもよい。
【0052】
少なくともいくつかの実装形態では、HMD100は、ユーザ104またはユーザの眼105l、105rの注視(またはその方向)を追跡するように構成される注視トラッカ127を含む。注視トラッカ127は、眼105lおよび105rのそれぞれについて別々に注視もしくは瞳孔の追跡を実行すること、または、ユーザ104の頭部の位置または向きを追跡すること(例えば、頭部追跡の一部分として)ができる。さらに、注視トラッカ127は、ユーザの体の他の様々な種類の動きおよび位置を追跡することもできる。注視トラッカ127は、ユーザ104の注視を表すデータを出力することができる。このデータは、ディスプレイ306または視認部分120のうち、ユーザ104が自身の注視を向けている部分(位置または領域)を示すことができる。この部分(位置または領域)は、中心、四半分の1つ、または、他の任意の領域であり得る。ユーザ104の注視を表すデータは、ユーザの注視が向けられる角度または座標(デカルト座標もしくは極座標)であり得る。
【0053】
光学サブシステム112の光学設定の調整は、ユーザ104の注視を表すデータに基づいて、かつ/または、ユーザ104により提供されるフィードバックを通してリアルタイムで調整することができる。コントローラ402は、光学システム112の光学設定に行うべき調整を決定するためのテストを開始することができる。このテストは、テストパターンまたは詳細な視覚像などの特定のビジュアルコンテンツを虚像表示ユニット106に表示させることと、入力デバイス410または制御パネル304を介してフィードバックを提供することをユーザに促すこととを含み得る。ユーザ104は、ビジュアルコンテンツのいくつかの側面(例えば、テキスト、画像)が不鮮明に見えることを示すフィードバックを提供してもよい。コントローラ402は、光学システム112の光学設定を調整し、ビジュアルコンテンツのそれらの側面の鮮明度が調整により改善されたかどうかをユーザ104に尋ねることができる。このプロセスは、反復式にすることができ、ユーザ104がビジュアルコンテンツの鮮明度に満足するまで繰り返すことができる。入力デバイス410または制御パネル304を介してユーザ104からユーザ入力を受け取ることに応答してテストが実行されてもよい。コントローラ402は、ユーザ104に自身の注視を変化させるように指示し、局所化された光学補正を適用し、入力デバイス410または制御パネル304を介してフィードバックを提供することをユーザに促してもよい。
【0054】
通信インタフェース408を介した入力は、デバイス(例えば、ラップトップ、デスクトップ、モバイルデバイス、コントローラ)により、ユーザとの対話の結果として提供され得る。こうしたコンピューティングデバイスは、命令(例えば、アプリケーション、プログラム)のセットであって、それとユーザが対話をして、コンピューティングデバイスに、光学的性質を示すまたは表す情報を含む通信を送らせることで、虚像光102を改変する(例えば、ユーザ104の視覚条件を補正する)ことが可能な命令のセットを含み得る。ユーザは、医療専門家により提供される処方として、入力デバイス410またはコンピューティングデバイスに入力を行うことができ、先で説明したように、予め決められたフォーマットを有し得る。
【0055】
コントローラ402は、入力デバイス410または通信インタフェース408から入力を受け取ることに応答して、補正部分412、416に送られるべき信号を決定することができる。プロセッサ404のうちの1つまたは複数は、例えば、メモリ406に記憶され、対応する補正部分412、416に送られるべき制御信号を示すデータ構造にアクセスすることができる。このデータ構造は、入力データが、送られるべき対応する出力(すなわち、制御信号)に関連付けられているアレイ、ルックアップテーブル、または、他の参照構造であり得る。いくつかの実装形態では、コントローラ402は、光学システム112の現在の状態を示す情報をメモリ406に記憶することができ、その情報から、コントローラ402は、受け取られる入力を満足する調整を決定することができる。
【0056】
一実施形態では、空間変動偏光子211は、ユーザ104の処方もしくは医学的条件、または、HMD100の潜在的ユーザの組についての高度な知識を用いて形成することができ、空間変動偏光子211を、ユーザ104または潜在的ユーザの組に適合させることができる。このケースでは、HMD100は、ユーザ104または潜在的ユーザの組についてカスタマイズすることができ、潜在的ユーザは、ユーザの友人またはユーザの家族であり得る。例えば、各空間変動偏光子211は、潜在的なユーザの組のうちの特定のユーザについて光学的に補正を行うように形成することができる。使用中に、コントローラ402は、HMD100のユーザが誰であるかに応じて、特定の空間変動偏光子211に切り替えることができる。
【0057】
空間変動偏光子211は、ユーザの現在の処方の範囲内で光学補正を提供するように形成することができる。ユーザの視力が経時的に変化または低下した場合、ユーザ104に対してカスタマイズされたHMD100のコントローラ402は、その範囲内で光学補正を調整することで、光学補正を微調整し、ユーザの変更された処方により適した光学補正を提供することができる。本明細書で説明される補正部分412、416により提供される光学補正を変更することが可能であるので、予見される、または予測可能な新たな光学補正ニーズに光学補正を適応させることが可能になる。例えば、ユーザの現在の処方、および、予見される、または予測可能な処方の変更に基づいて、局所化された光学的フォーカス、または、領域ベースの光学的フォーカスを実行することができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、HMD100は、ユーザの眼105lおよび105rの視覚条件を検出し、検出の結果として、光学システム112を自動的に調整するように構成され得る。こうした実施形態では、HMD100は、ユーザの眼105lおよび105rについての情報を検出する1つまたは複数のセンサ424を含み、測定値をコントローラ402に提供することができ、それに応じて、コントローラ402は、光学システム112を調整する。また、HMD100は、コントローラ402に結合され、情報を得るためにセンサ424に関連して使用される1つまたは複数の点灯素子426を含むことができる。発光素子426は、何らかの角度の光であって、その光がセンサ424により反射され、かつ、受け取られるような特定の性質(例えば、周波数、強度)を有する光を出射することができる。センサ424は、ユーザの眼から検出される光に基づいて、ユーザの眼についての情報を決定することができる。ユーザ104の眼について決定される情報の結果、コントローラ402は、光学システム112の光学的性質を適切に調整できる。
【0059】
図5は、図4を参照して説明されるコントローラ402に結合された補正部分210を示す。コントローラ402は、複数の空間変動偏光子211a、211b、211cそれぞれの複数の入力部212a、212b、212cにそれぞれ結合される複数の出力部214a、214b、214cを有する。図示の例では、説明目的で3層の空間変動偏光子が示されているが、適用の際には、これよりも少ない層(例えば、1層、2層)、または、これよりも多い層(例えば、5層、10層、20層など)を適宜使用することができる。コントローラ402は、各出力部214を介して、空間変動偏光子211をアクティブまたは非アクティブにさせるように動作可能な制御信号を送る。
【0060】
コントローラ402は、注視トラッカ127の出力部に結合される入力部を有する。コントローラ402は、注視トラッカ127から、ユーザの注視を表すデータを受け取り、そのデータに基づいて、複数の空間変動偏光子211をオン状態とオフ状態とで切り替える。コントローラ402は、ユーザ104が自身の注視を向ける領域、および/または、ユーザの注視の外の領域に対して光学補正を実行するように、複数の空間変動偏光子211を動作させることができる。視認期間中にユーザの注視が経時的に変化すると、コントローラ402は、複数の空間変動偏光子211を時分割多重で動作させて、光学補正がユーザの注視に追従するように、光学補正が実行される位置を変化させることできる。
【0061】
虚像のうち、元はユーザの注視の外であったが、現在はユーザ104により注視されている領域に対しては、それに対して実行される光学補正において変化を加えること、または、光学補正を取り除くこと、もしくは、適用することができる。同様に、虚像のうち、元はユーザ注視により注視されていたが、現在はユーザの注視の外である領域に対しても、それに対して実行される光学補正において変化を加えること、または、光学補正を取り除くこと、もしくは、適用することができる。
【0062】
非アクティブの際には、空間変動偏光子211は、光学的に透明であり得、または、空間変動偏光子211の材料組成に関連する固有の光学補正のみを実行してもよい。様々な種類の材料が、光学特性を有し、光を変化させるように動作可能である。本明細書で説明されるように、空間変動偏光子211は、2つまたはそれより多くのツイスト液晶層で形成することができる。空間変動偏光子211の液晶層は、オフにされても、固有の光学補正を実行することできる。オンにされると、空間変動偏光子211は、それが実行するように設計された光学補正を実行する。
【0063】
第1、第2、および第3の空間変動偏光子211a、211b、211cは、第1、第2、および第3の光学補正を実行するように形成される。動作においては、コントローラ402は、空間変動偏光子211a、211b、211cに制御信号を送って、空間変動偏光子211a、211b、211cをアクティブ状態と非アクティブ状態とで動作する。例えば、第1の光学補正をアクティブ化し、第2および第3の光学補正を非アクティブ化するために、コントローラ402は、第1の空間変動偏光子211aをアクティブ化する制御信号を第1の空間変動偏光子211aに送り、第2および第3の空間変動偏光子211b、211cをそれぞれ非アクティブ化するそれぞれの制御信号を、第2および第3の空間変動偏光子211b、211cに送る。第1の光学補正は、求められる光学補正と、光学的補償との組み合わせであってもよい。光学的補償は、非アクティブ化された第2および第3の空間変動偏光子211b、211cにより実行される固有の光学補正を打ち消すことができる。したがって、第1の空間変動偏光子211aを出て、非アクティブ化された第2および第3の空間変動偏光子211b、211cを横切る光は、非アクティブ化された第2および第3の空間変動偏光子211b、211cにより実行される固有の光学補正について予め打ち消されている。
【0064】
他の例では、コントローラ402は、第1の空間変動偏光子211aを非アクティブ化する制御信号を第1の空間変動偏光子211aに送り得、第2および第3の空間変動偏光子211b、211cをそれぞれアクティブ化するそれぞれの制御信号を、第2および第3の空間変動偏光子211b、211cに送り得る。第2および第3の空間変動偏光子211b、211cにより提供される第1の光学補正は、第2の光学補正と、第3の光学補正との組み合わせである。コントローラ402は、空間変動偏光子211をアクティブ状態と、非アクティブ状態との間で選択的に切り替えて、補正部分210に光学補正を提供させることができる。
【0065】
図6は、複数の空間変動偏光子211aから211lにより実行される視野ベースの光学補正の例を示す図である。図6の例では、第1の空間変動偏光子211aは、画像(またはディスプレイ)の中心領域(または中心部分)をフォーカスすることと同時に、画像の左上、右上、左下、および右下の周囲領域(または周囲部分)をフォーカスの外にすることにより光学補正を実行する。これらの5つの領域に対して第1の空間変動偏光子211aが実行する光学補正が、第2の空間変動偏光子211b、第3の空間変動偏光子211c、第4の空間変動偏光子211d、第5の空間変動偏光子211eおよび第6の空間変動偏光子211fによりそれぞれ個別に実行されてもよい。第2の空間変動偏光子211bは、画像(またはディスプレイ)の中心領域をフォーカスし、一方で、左上、右上、左下および右下の領域に光学補正を適用しない。第3の空間変動偏光子211cは、左上の領域をフォーカスの外にし、一方で、中心領域をフォーカスすること、または、残りの周囲部分をフォーカスの外にすることを行わない。第4の空間変動偏光子211dは、右上部分をフォーカスの外にし、一方で、中心部分をフォーカスすること、または、残りの周囲部分をフォーカスの外にすることを行わない。第5の空間変動偏光子211eは、左下部分をフォーカスの外にし、一方で、中心部分をフォーカスすること、または、残りの周囲部分をフォーカスの外にすることを行わない。第6の空間変動偏光子211fは、右下部分をフォーカスの外にし、一方で、中心部分をフォーカスすること、または、残りの周囲部分をフォーカスの外にすることを行わない。
【0066】
フォーカスを行う代わりに、第7、第8、第9、第10、および第11の空間変動偏光子211g、211h、211i、211j、211kは、第2、第3、第4、第5、および第6の空間変動偏光子211b、211c、211d、211e、211fにより光学的に補正される領域を鮮明化することにより光学補正を実行する。第12の空間変動偏光子211lは、画像の中心部分の角分解能を変えることにより中心部分を光学的に補正する。図6の例の第12の空間変動偏光子211lは、画像の他の領域を光学補正しない。
【0067】
空間変動偏光子211は、画像の異なる領域に対して、1つもしくは複数の異なる種類の光学補正または同じ光学補正を実行することができる。コントローラ402は、空間変動偏光子211を切り替えて、様々な光学効果を実現する。例えば、ユーザの注視が変化すると、コントローラ402は、それに応じて、空間変動偏光子211をオンに切り替え(また、他の空間変動偏光子211をオフに切り替え)て、ユーザの注視内の領域にフォーカスを維持し、注視の外である他の領域をフォーカスの外にすることができる。コントローラ402は、空間変動偏光子211を動作させて、ユーザの注視内の領域が鮮明化されるように維持すること、または、それらの領域の角分解能もしくは焦点距離を変化させることができる。
【0068】
本開示の空間変動偏光子は、表面位相マップにより、または、2つまたはそれより多くの表面位相マップを多重化したものの組み合わせより規定される空間変動偏光を提供することができる。より一般的に言うと、本開示の空間変動偏光子のうちの1つまたは複数の空間変動偏光子の表面を規定するために任意の線形関数または非線形関数を使用して、所望の機能を提供することができる。図7および図8は、空間変動偏光子についての表面位相マップの2つの非限定的な例を示す。図7の例示的表面マップ700では、-0.433波長から+0.433波長を、光学部品の中心から外周に向かって同心状に位相が変動する。図8の例示的表面マップ800では、光学部品の底(図参照)での-1.25E+004から、光学部品の頂点(図参照)での+1.25E+004までを位相が線形的に変動し、単位はそれぞれ、2πラジアンの周期である。適用の際には、2つまたはそれより多くの空間変動偏光子を積み重ねてもよい。例えば、同心状の表面位相マップ700は、線形状の位相マップ800などと多重化されてもよい。表面マップ700および800の位相変動は、簡単にするために不連続の刻みとして示されているが、実際には、位相は、光学部品の表面に渡り途切れることなく変動可能であり得ることを留意されたい。さらに、表面位相マップ700および800における特定の位相値は、例として提供されており、限定を行うものとみなされるべきではない。
【0069】
少なくともいくつかの実装形態では、空間変動偏光子の表面位相マップは、表示元、レンズなど、表示システムの少なくとも1つの他のコンポーネントによる望ましくない偏光を相殺するように、または、打ち消すように設計することができる。こうした実装形態では、まず、光学システム(例えば、レンズ、または、レンズおよび表示元)の位相プロファイルまたは位相マップを決定してもよい。次いで、決定された位相マップを反転させ、空間変動偏光子に適用することができ、これより、空間変動偏光子が、光学システムの他のコンポーネントによる望ましくない効果を相殺するか、または、それを打ち消す。
【0070】
先に説明した様々な実施形態を組み合わせて、更なる実施形態を提供することが可能である。上記の詳細な説明に照らして、こうした変更および他の変更を実施形態に行うことが可能である。以下の特許請求の範囲では、一般には、使用される用語は、本明細書および特許請求の範囲で開示される特定の実施形態に請求項を限定するとみなされるべきでなく、考えられる全ての実施形態とともに、こうした請求項に与えられる均等物の全範囲を含むものとみなされるべきである。したがって、特許請求の範囲は、開示により限定されない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】