(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】X線散乱装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/20008 20180101AFI20230323BHJP
G01N 23/201 20180101ALI20230323BHJP
【FI】
G01N23/20008
G01N23/201
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022539650
(86)(22)【出願日】2020-12-29
(85)【翻訳文提出日】2022-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2020087969
(87)【国際公開番号】W WO2021136774
(87)【国際公開日】2021-07-08
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522255111
【氏名又は名称】ゼノックス ソシエテ パー アクシオン サンプリフィエ
(74)【代理人】
【識別番号】100129012
【氏名又は名称】元山 雅史
(72)【発明者】
【氏名】ウグホイ, ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ランツ, ブロンディン
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001AA10
2G001BA14
2G001CA01
2G001DA06
2G001JA01
2G001JA06
2G001PA11
2G001SA02
(57)【要約】
本発明は、X線散乱によって分析されるサンプル(17)を整列および/または配向するサンプルホルダ(16)と、第1X線源(18)と第1モノクロメータ(20)を含みサンプルホルダ(16)に向かう伝播方向(Y)のビーム経路に沿って第1X線ビーム(22)を生成および方向付けるためにサンプルホルダ(16)の上流に配置された第1X線ビーム送達システム(12)と、サンプルホルダ(16)の下流に配置され、第1X線ビーム(22)とサンプル(17)から異なる散乱角で散乱されたX線とを検出するように、伝播方向(Y)に沿って、特に、電動方式で移動可能な遠位X線検出器(14)と、を備え、第1X線ビーム送達システム(12)は、第1X線ビーム(22)が遠位X線検出器(14)からの最大距離に配置された際に遠位X線検出器(14)上またはその近くの焦点に集束させる、または平行ビームを生成するとともに、X線散乱装置(10)は、第2X線源(551)を含みX線イメージングのために発散する第2X線ビーム(58)を生成してサンプルホルダ(16)に向ける第2X線ビーム送達システム(55)をさらに備えている。本発明はさらに、そのようなX線散乱装置を使用するX線散乱法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線散乱によって分析されるサンプル(17)を整列および/または配向するサンプルホルダ(16)と、
第1X線源(18)と第1モノクロメータ(20)を含み前記サンプルホルダ(16)に向かう伝播方向(Y)のビーム経路に沿って第1X線ビーム(22)を生成および方向付けるために、前記サンプルホルダ(16)の上流に配置された第1X線ビーム送達システム(12)と、
前記サンプルホルダ(16)の下流に配置され、第1X線ビーム(22)と前記サンプル(17)から異なる散乱角で散乱されたX線とを検出するように、伝播方向(Y)に沿って、特に、電動方式で移動可能な遠位X線検出器(14)と、
を備え、
前記第1X線ビーム送達システム(12)は、前記第1X線ビーム(22)が前記遠位X線検出器(14)からの最大距離に配置された際に前記遠位X線検出器(14)上またはその近くの焦点に集束させる、または平行ビームを生成するとともに、
第2X線源(551)を含み、X線イメージングのために発散する第2X線ビーム(58)を生成して前記サンプルホルダ(16)に向ける第2X線ビーム送達システム(55)をさらに備えた、
X線散乱装置(10)。
【請求項2】
前記第2X線ビーム(58)は、前記第1X線ビーム(22)の伝播方向(Y)に対して10°以下の角度を有する伝播方向を有する、
請求項1に記載のX線散乱装置(10)。
【請求項3】
前記第2X線ビーム(58)は、前記第1X線ビーム(22)と平行である、
請求項1または2に記載のX線散乱装置(10)。
【請求項4】
前記第2X線ビーム送達システム(55)は、前記第1X線ビーム(22)を通過させるように、前記サンプルホルダ(16)の上流側の位置に固定配置されている、
請求項2または3に記載のX線散乱装置(10)。
【請求項5】
前記サンプルホルダ(16)は、前記第1X線ビーム(22)の伝播方向(Y)に垂直な平面において、特に、電動方式で移動可能である、
請求項1から4のいずれか1項に記載のX線散乱装置(10)。
【請求項6】
前記第2X線ビーム送達システム(55)を前記サンプルホルダ(16)の上流の位置において、前記第1X線ビーム(22)に移動させる挿入モジュール(36)を、さらに備えた、
請求項2または3に記載のX線散乱装置(10)。
【請求項7】
前記第1X線ビーム送達システム(12)の下流の位置から前記サンプルホルダ(16)の上流の位置まで前記ビーム経路に沿って延びるメインコリメーションチューブ(38)を、さらに備え、
前記挿入モジュール(36)は、前記第2X線ビーム送達システム(55)またはコリメーションチューブ延長部(34)を、前記メインコリメーションチューブ(38)および前記サンプルホルダ(16)との間の位置において、前記ビーム経路に交互に配置する電動プラットフォーム(36)を、有している、
請求項6に記載のX線散乱装置(10)。
【請求項8】
前記メインコリメーションチューブ(38)の下流端および前記コリメーションチューブ延長部(34)の上流端には、真空気密接続のためのそれぞれの接続要素が設けられている、
請求項7に記載のX線散乱装置(10)。
【請求項9】
前記第2X線ビーム(58)は、前記第1X線ビーム(22)の前記伝播方向(Y)に対して10°を超える角度を有する伝播方向を有する、
請求項1に記載のX線散乱装置(10)。
【請求項10】
前記第2X線ビーム送達システム(55)は、前記第1X線ビーム(22)を通過させるように、前記サンプルホルダ(16)の上流の位置に配置され、
前記第1X線ビーム(22)を通過させ、前記第2X線ビーム送達システム(55)からの前記サンプル(17)を介して送信されるX線を検出するように、前記サンプルホルダ(16)の下流に配置された近位X線検出器(44)をさらに備えた、
請求項1から9のいずれか1項に記載のX線散乱装置(10)。
【請求項11】
前記サンプルホルダ(16)および/または前記近位X線検出器(44)は、前記サンプルホルダ(16)を通過する少なくとも1つの回転軸の周りで、特に、電動方式で回転可能であって、前記第2X線ビーム(58)の伝播方向に垂直である、
請求項10に記載のX線散乱装置(10)。
【請求項12】
X線位相差および/またはX線暗視野画像が前記遠位X線検出器(14)で生成されるように、ランダム構造の物体を前記サンプルホルダ(16)の上流または下流の前記第2X線ビームに挿入するように適合された物体挿入ユニット(57)を、さらに備えた、
請求項1から11のいずれか1項に記載のX線散乱装置(10)。
【請求項13】
構造化された物体によって生成された画像を、ビームに配置されたときにサンプルの相互作用がある場合とない場合で比較することにより、前記サンプルの位相マップを取得するために、前記第2X線ビームの波面変調を生成するように適合された繰り返し構造を有する前記構造化された物体を前記第2X線ビームに挿入するように適合された物体挿入ユニットを、さらに備えた、
請求項1から12のいずれか1項に記載のX線散乱装置(10)。
【請求項14】
前記サンプルホルダ(16)の上流または下流の前記第2X線ビームに回折マスクを挿入するように適合されたマスク挿入ユニットを、さらに備え、
前記回折マスクは、サンプル相互作用がある場合とない場合の回折マスクによって生成されたパターンを比較することによって、サンプルの2D暗視野画像を生成するために、前記ビームに配置された場合に、前記第2X線ビームの変調パターンを生成するように適合されている、
請求項1から13のいずれか1項に記載のX線散乱装置(10)。
【請求項15】
前記第1X線ビーム送達システム(12)および前記第2X線ビーム送達システム(55)を使用して、次々にまたは同時に測定を実行するように、前記X線散乱装置(10)を制御するコンピュータ制御システムを、さらに備えた、
請求項1から14のいずれか1項に記載のX線散乱装置(10)。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項に記載のX線散乱装置(10)を使用し、
前記第2X線ビーム(58)を使用して、前記サンプルホルダ(16)に取り付けられたサンプルのX線画像分析を実行し、
前記X線画像分析の結果に基づいて、サンプル内またはサンプル上に関心領域を定義し、
前記第1X線ビーム(22)を使用して、前記関心領域のX線散乱分析を実行する、
ステップを含むX線散乱方法。
【請求項17】
前記X線画像分析は、吸収、位相差および暗視野画像測定の組み合わせを含み、前記X線散乱分析は、USAXS測定および/またはSAXS測定および/またはWAXS測定を含む、
請求項16に記載のX線散乱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線散乱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、X線散乱およびX線回折装置には、以下のものが含まれる。
1)線源
2)波長セレクタ(モノクロメータ)
3)コリメーションセクション(ビーム方向を定義し、残留バックグラウンド散乱または発散を除去)
4)サンプルエリア
5)検出器領域。
X線分析が採用されて以来、より高速な測定とより優れたデータ品質の必要性に駆り立てられた個々のコンポーネントの驚異的な開発が行われ、構造化および準構造化サンプルのますます多くのグループに特性評価の回答が提供されている。
【0003】
さらに、例えば、より特定の情報を抽出するために、様々な高度に専門化された回折および散乱ジオメトリが開発されている。
1)粉末X線回折
a、ブラッグ-ブレンターノ反射
b、ギニエトランスミッション
2)単結晶回折(透過)
3)後方反射ラウエ
4)かすめ入射X線回折
5)X線反射率
6)テクスチャ
7)小角X線散乱(透過)
8)広角X線散乱(透過)
9)Bonse-Hartウルトラスマート角度散乱
【0004】
機器への投資を最大限に活用するために、いくつかのX線散乱装置により、様々な構成を簡単に切り替えることができる、一例として、ソースアノード材料を変更することによって波長を切り替える。XenocsデュアルソースSAXS、またはコリメーションコンポーネントを変更することによるスイッチング技術が挙げられる。したがって、わずかな追加コストで、まったく新しい散乱または回折アプリケーション用に機器を再最適化することができる。
【0005】
材料科学と開発では、材料機能に対する階層構造の影響を研究するために、大規模な構造の特性評価が必要である。複雑な材料は、長さのスケールに応じて、多かれ少なかれ構造化されたエンティティを示す。さらに、新しい材料の開発には、外部パラメータに応じた現場での特性評価、または動作中の構造特性評価が必要になる。通常1~150nmの長さスケールの構造を持つナノ構造材料は、十分な電子密度コントラストを持つ2つの相がサンプルによって弾性的に散乱されたX線ビームの強度を分析することによって存在する。この手法は、溶液中のポリマ、コロイドまたはタンパク質の分野において、ソフトマターの特性評価に広く使用されている。
【0006】
新しい材料の特性評価では、結晶構造を特性評価するために広角X線散乱(WAXS)と組み合わせる必要があり、ほとんどのSAXS特性評価機器は、SAXS/WAXSとUSAXS(超小角X線散乱)とを組み合わせて、1方向のみの散乱プロファイルを測定する、例えば、USAXS Bonse-Hart構成を使用して、通常、1Aから数ミクロンの構造をプローブする。
言い換えると、広角X線散乱(WAXS)は、通常、分析対象のサンプルの結晶化度と結晶相に関する情報にアクセスできるが、小角X線散乱(SAXS)は、通常、ナノスケールレベルのサンプル構造(ナノ構造)に関する情報へのアクセスを提供する。結晶相とナノ構造の両方が材料特性に影響を与えるため、同じサンプルと同じ機器でSAXSとWAXSの両方を実行することに関心がある。
【0007】
しかしながら、上記の関心のあるX線技術のほとんどは、卓上アプリケーションに適したかなりコンパクトな機器、または2m×2m未満のフットプリントのせいぜい小さな実験室機器で最適に構成できるが、長い機器(3mから10mm)は、一貫して解像度と強度のより良い組み合わせを提供するSAXS機器には当てはまらない。より短い機器は、SAXSで望まれる最高の解像度でより少ない強度を提供し、その結果、機器は長くとどまる。
それにもかかわらず、最近の開発では、従来のSAXSを、Bonse-Hart超小角X線散乱、かすめ入射回折、広角X線散乱、粉末およびテクスチャ分析などの他の構成と組み合わせ始めている。
【0008】
同じサンプルおよび機器でSAXSおよびWAXS測定を実行するために、X線散乱装置は、以下を含む。
-X線散乱によって分析されるサンプルを整列および/または配向するためのサンプルホルダ;
-第1X線源と第1モノクロメータを含み、第1X線ビームを生成してビーム経路に沿ってサンプルホルダに向かって伝播方向に向けるためにサンプルホルダの上流に配置された第1X線ビーム送達システム;
-サンプルホルダの下流に配置され、特に電動方式で、第1X線ビームおよびサンプルから異なる散乱角で散乱されたX線を検出するなどの伝播方向に沿って移動可能な遠位X線検出器;
ここで、第1X線ビーム送達システムは、サンプルホルダから最大の距離に配置されたときに遠位X線検出器上またはその近くの焦点に第1X線ビームを集束させるように、または平行ビームを生成するように構成され、「Xeuss3.0」という名前で出願人から市販されている。
【0009】
この従来のX線散乱装置の第1X線ビーム送達システムは、第1X線源、例えば、X線を生成するためのCuまたはMoアノードを備えた線源、および、生成された第1X線ビームを、本質的に水平な伝播方向に沿ってサンプルホルダに向けて方向付けおよび調整する第1モノクロメータ、および、X線散乱の分野で知られ真空チャンバ内に配置されてもよい他の通常のサンプルステージ装置、を含む光学およびコリメーションシステムを備えている。
【0010】
この従来のX線散乱装置は、サンプルホルダの下流、すなわち、第1X線ビーム送達システムの側面と反対のサンプルホルダの側面に配置された少なくとも1つのX線検出器を含む:遠位X線光線検出器は通常、検出器ステージに取り付けられ、サンプルホルダから5000mmまでの大きな水平距離(通常は50mmから1000mm以上の範囲)で直接ビームの伝播方向に沿って移動できるようにする。遠位X線検出器の位置の詳細とそのセンサのサイズに応じて、通常、サンプルから散乱されたX線を、約2θ=0.05°および60°から70°までの大きさという小さな直接X線ビームに対して散乱角で検出することができる。したがって、遠位X線検出器は、ナノスケールレベルでサンプル構造に関する情報を提供する小角X線散乱(SAXS)およびサンプルの結晶化度に関する情報を提供する広角X線散乱(WAXS)に適している。
【0011】
プラスチック、エラストマ、複合材料、フォーム、テキスタイル、バイオポリマ等の新しいタイプの材料を開発している科学者は、X線散乱測定とX線イメージング、特に、吸収、または軽元素材料(または低Zの材料)には特に有利な位相コントラストに基づくX線ラジオグラフィを組み合わせるために使用される。これらの技術を組み合わせたアプリケーションのいくつかの例は、半結晶性ポリマ、ポリマ繊維、またはナノコンポジットの特性評価であって、原子スケールおよびナノスケールでの構造情報とその配向をX線イメージング情報と組み合わせて、機械的性能またはその他の材料特性を最適化できる。高分子材料の場合、関連するパラメータの例は、WAXSで決定された結晶化度と結晶子配向、SAXSで決定されたナノメートルスケールのドメインサイズとそれらの配向であるが、材料のボイドとクラックはX線ラジオグラフィで測定される。これらのパラメータがどのように相関するかを研究することは、新しい材料の開発に非常に関連している可能性がある。その結果、2つの異なる機器、または全ての手法を組み合わせた場合は、それ以上を使用する必要があり、組み合わせた分析方法への体系的なアクセスが制限される。
【0012】
さらに、測定値の相互比較はトリッキーであり、一方のイメージングと他方のSAXS/WAXS特性評価では視野が異なるため(これには、サンプルの切断またはさらなるX線散乱実験のための分析領域の事前位置特定が必要になる場合がある)、全ての実験をセットアップするのに時間がかかる可能性がある。本発明の1つの利点は、同じセットアップでX線散乱(SAXSおよびWAXS)およびX線イメージング(吸収および/または位相コントラストラジオグラフィ)の両方の測定技術を組み合わせて、両方の技術で同じサンプルを体系的に分析できることである。セットアップは、例えば、動的実験中にX線散乱およびX線イメージング測定チャネルを順次使用して、より広い長さのスケールで情報を提供することにより、サンプルが温度、応力、せん断、湿度、またはその他のタイプの外部要請にさらされる場合、その場での動的実験に有利に使用することができる。
【0013】
さらに別の利点は、SAXS/WAXS機器の一般的なX線フットプリントが、通常、mm2未満の範囲であることである。このタスクは、一般に、サンプルのX線透過マップ(または吸収マップ)を実行して、サンプルを通過する直接X線ビームの透過強度を測定し、さらにSAXSまたはWAXSの特性評価のために関心領域を定義することによって実現される。X線ビーム送達システムは、SAXSに必要なサンプルで発散とビームサイズが制御された単色ビームを提供するため、このような吸収マッピングのコントラストには、X線散乱分析のセットアップで非常に長い測定時間が必要である。本発明のさらなる利点の1つは、大きな不均一なサンプル(数百ミクロンからミリメートルスケールでの不均一性)でのSAXS/WAXS実験に最適な条件を備えた改良されたX線散乱装置を提案することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、SAXSおよびX線画像測定にそれぞれ最適な条件を提供することを可能にする、上記のタイプの改良されたX線散乱装置を提案することである。
本発明によれば、この目的は、上記の従来型のX線散乱装置によって達成され、これは、X線散乱装置はさらに、第2X線源を含み、発散する第2X線ビームを生成し、X線イメージング用のサンプルホルダに向けるように構成される第2X線ビーム送達システムを備えている。
【0015】
イメージング用の第2X線ビーム送達システムは同じX線散乱装置の一部として提供されているため、異なる機器間でサンプルを移動する必要はない。さらに、第2X線源は、発散する第2X線ビームを生成し、X線イメージング用に最適化されたビーム特性を有するサンプルホルダに向ける。したがって、通常は、SAXSまたはWAXS測定用に最適化された第1X線ビームをイメージング目的でも使用する必要がないため、貴重な測定時間を節約することができる。特に、本発明に係るX線散乱装置は、第2X線ビームを使用してサンプルホルダに取り付けられたサンプルのX線イメージング分析を実行し、次いで、サンプルに基づいて、またはサンプルに基づいて関心領域を定義することを可能にする。前記X線画像分析の結果に基づいて、そして連続して、例えば、SAXSおよび/またはWAXS測定によって、前記第1X線ビームを使用して、前記関心領域のX線散乱分析を実行する。
【0016】
本発明に係るX線散乱装置の一実施形態では、第2X線ビームは、第1X線ビームの伝播方向に対して10°以下の角度を有する伝播方向を有する。特に、第2X線ビームは、第1X線ビームと平行であってもよい。両方のX線ビームが平行またはほぼ平行に伝播するため、通常の方法でのSAXS/WAXS測定だけでなく、X線イメージング測定にも遠位X線検出器を使用することができる。この目的のために、遠位X線検出器は、第1X線ビームの伝播方向に沿ってだけでなく、それに垂直な平面内でも移動可能であってもよい。
【0017】
本発明の実施形態の1つでは、第2X線ビーム送達システムは、第1X線ビームを通過させるように、サンプルホルダの上流の位置に固定して配置することができる。これにより、両方のX線ビームがサンプル環境(サンプルホルダが配置されている真空チャンバ等)に到達できるようになる。サンプルが十分に大きく、ソースが非常にコンパクトである場合には、原則として、移動することなく両方のビームで到達できる。
【0018】
しかしながら、平行またはほぼ平行なX線ビームを有する本発明に係るX線散乱装置のこれらの実施形態では、サンプルホルダは、第1X線ビームの伝播方向に垂直な平面内において、特に、電動方式で移動可能であることが好ましい。これにより、サンプルを、SAXSおよび/またはWAXS測定用の第1X線ビームを遮る第1測定位置から、イメージング測定用の第2X線ビームを遮る第2測定位置に移動することができる。
【0019】
第1X線ビームを通過させるように、サンプルホルダの上流の位置に第2X線ビーム送達システムを固定して配置する代わりに、本発明に係るX線散乱装置は、第2X線ビーム送達システムをサンプルホルダの上流の位置で第1X線ビームに移動させるように構成された挿入モジュールをさらに備えていてもよい。挿入モジュールは、ユーザによる手動の相互作用を回避する、第2X線ビーム送達システムのコンピュータ制御された動きを可能にしてもよい。
【0020】
この場合、X線散乱装置は、好ましくは、ビーム経路に沿って、第1X線ビーム送達システムの下流の位置からサンプルホルダの上流の位置まで延びるメインコリメーションチューブをさらに含む。ここで、挿入モジュールは、第2X線ビーム送達システムまたはコリメーションチューブ延長部を、メインコリメーションチューブとサンプルホルダとの間の位置でビーム経路に交互に配置するように構成された電動プラットフォームを含む。SAXS測定の場合、コリメーションチューブ延長部がビーム経路に配置され、第1X線ビームがサンプルホルダに取り付けられたサンプルに衝突する直接ビームとして機能できるようになる。しかしながら、イメージング測定の場合、第2X線ビーム送達システムは、電動プラットフォームによってビームパスに配置される。次に、X線散乱装置のコンピュータ制御システムは、X線ビームがサンプルホルダに取り付けられたサンプルを照射するように、第1X線ビーム送達システムのシャッタを作動させて第1X線ビームを遮断し、第2X線ビーム送達システムのシャッタを作動させて、第2X線ビーム送達システムを作動させることができる。
【0021】
好ましくは、メインコリメーションチューブの下流端およびコリメーションチューブ延長部の上流端は、真空気密接続のためのそれぞれの接続要素を備えている。これにより、SAXS測定中にコリメーションチューブ延長部がビームパスに配置されたときに、第1X線ビーム送達システムからサンプルホルダまでのビームパスを基本的に真空に保つことができる。
【0022】
SAXS/WAXSおよび画像測定のために遠位X線検出器を使用するために、平行またはほぼ平行な第1および第2X線ビームを使用する代わりに、本発明によるX線散乱装置の他の実施形態は、第2X線ビームは、第1X線ビームの伝播方向に対して10°を超える角度を有する伝播方向を有する。これらの実施形態では、第2X線ビーム送達システムは、好ましくは、第1X線ビームを通過させるようにサンプルホルダの上流の位置に配置され、さらに、第1X線ビームがサンプルを透過した第2X線ビーム送達システムからのX線を通過して検出するように、サンプルホルダの下流に配置された近位X線検出器を含む。この近位X線検出器は、本発明に係る画像測定だけでなく、出願人の欧州特許出願19290126.2に詳細に記載されているように、WAXS測定にも使用することができ、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0023】
この実施形態の好ましいさらなる開発において、サンプルホルダおよび/または近位X線検出器は、特に電動方式で、サンプルホルダを通過し、第2X線ビームの伝播方向に垂直である少なくとも1つの回転軸の周りで回転可能であってもよい。これにより、SAXSおよび/またはWAXS測定用の第1X線ビームを遮る第1測定位置から、サンプルを、両方の測定位置でそれぞれのX線ビームに本質的に垂直なサンプル表面を用いて、イメージング測定用の第2X線ビームを遮る第2測定位置に回転させることができる。
【0024】
好ましくは、本発明によるX線散乱装置は、ランダム構造の物体をサンプルホルダの上流または下流の第2X線ビームに挿入するように適合された物体挿入ユニットをさらに備えている。これにより、屈折角の測定に基づいた特殊な種類のX線位相差イメージング分析を実行することができ、位相差マップは、ビームに置かれた際に、サンプルの相互作用がある場合とない場合とでランダム構造の物体によって生成されたパターンを比較することによって取得される。スペックルベースの位相差イメージングは、本発明に係る方法に関連して以下に詳細に説明されるこれらの方法の1つである。
【0025】
あるいは、本発明によるX線散乱装置は、構造化された物体によって生成された画像をビームに配置されたときにサンプルの相互作用がある場合とない場合で比較することによりサンプルの位相マップを取得するため、第2X線ビームの波面変調を生成するように適合された繰り返し構造を有する構造化物体を、第2X線ビームに挿入するように適合された物体挿入ユニットを含む。
【0026】
好ましくは、本発明に係るX線散乱装置は、サンプルホルダの上流または下流の第2X線ビームに回折マスクを挿入するように適合されたマスク挿入ユニットをさらに含み。前記回折マスクは、サンプルがビームに配置されたときにサンプルの相互作用がある場合とない場合で、回折マスクによって生成されたパターンを比較することによってサンプルの2D暗視野画像を生成するために、X線ビームの変調パターンを生成するように適合されている。
【0027】
全ての実施形態およびさらなる開発において、本発明に係るX線散乱装置は、好ましくは、第1X線ビーム送達システムおよび第2X線ビーム送達システムを使用して、次々にまたは同時に測定を実行する等、X線散乱装置を制御するように構成されたコンピュータ制御システムをさらに備える。
本発明はさらに、上記のようなX線散乱装置を使用し、好ましくは以下のステップを含むX線散乱法に言及している。
-前記第2X線ビームを使用して、サンプルホルダに取り付けられたサンプルのX線画像分析を実行するステップ
-前記X線画像分析の結果に基づいて、サンプル内またはサンプル上に関心領域を定義するステップ
-前記第1X線ビームを使用して、前記関心領域のX線散乱分析を実行するステップ。
【0028】
サンプルのX線画像化分析は、以下に記載される複数の画像化方法を含んでいてもよい。
(位相差イメージング)
記載された本発明によるX線散乱装置は、数ミクロンから数十ミクロンの分解能を有するサンプル吸収コントラストに基づいてX線画像を取得する本発明による方法を実行することを可能にする。本発明の好ましい実施形態では、装置のX線画像化部分はまた、低吸収コントラストを有するサンプルに対してX線画像化を実行するために、位相差画像化に適合されている。X線イメージングは、媒体を通過するときに減衰するX線からのコントラストに基づいている。減衰と位相差は、基本的に、材料の複素屈折率nの虚数部と実数部であるβとδとによってそれぞれ決定される(n=1-δ+iβ)。硬X線レジーム(高エネルギーの場合)では、低Z材料のδはβよりもはるかに大きくなる。位相差イメージングは、特に、高エネルギー(>10keV)を使用する場合、軽い材料の吸収コントラストイメージングよりもはるかに感度が高くなる。
本発明の装置は、X線散乱およびX線画像化システムを組み合わせたものであるため、使用される材料は、一般に、高エネルギーでの画像化のためにX線源を必要としない低Z材料である。それでも、位相差イメージングチャネルは、マトリックスに近い吸収コントラストを備えたエッジ強調またはイメージング機能に非常に有利である可能性がある。
様々なX線位相差イメージング法を使用できる。位相差によって引き起こされる屈折角の測定に基づくものもあれば、干渉法に基づくものもある。
【0029】
(伝播ベースの位相差イメージング)
本発明の一実施形態では、位相差イメージングは、X線波面の自由伝播を分析し、そのような波面に対するサンプルの影響を調べることにより、追加のコンポーネントなしで第2ビーム送達システムを使用して実現される。増加した伝播距離(すなわち、物体と検出器の間の増加した距離)を使用することにより、イメージングは、吸収コントラスト画像から、位相変化が検出可能な強度変化に発展する近接場イメージングレジームに移行する。伝播法(PBI)を使用した位相差イメージングには、高い空間コヒーレンスを備えたX線源が必要である。PBI法は、伝播距離がニアフィールドにとどまるように、スポットサイズが50ミクロン未満、好ましくは10ミクロン未満のX線イメージングソースと、メインエネルギー(8~30keVで構成されるアノードの蛍光線)を生成するX線イメージング線源を用いて使用される。
【0030】
有効伝播距離が長くなると位相差がより顕著になるため、本発明によるPBI位相差イメージングチャネルの使用は、この画像に基づいて、小さなS1’物体から検出器までの距離を使用してサンプルの広い視野で吸収コントラストを使用してサンプルのX線画像を測定し、関心のある潜在的なゾーンを決定することを含んでいてもよい(つまり、特定の特徴が推測または予想されるゾーン)してもよく、位相差イメージングを使用して機能を強化するために、より長い距離S1’で第2画像を測定する。例えば、位相差イメージングを使用して、接合材料が同等の吸収コントラストを持ち、小角X線散乱測定位置の適切な位置を定義する場合に溶接ゾーンを定義できる。
【0031】
本発明による方法の別の実施形態では、サンプルのX線散乱分析を最初に実施することができる。結果およびサンプルの潜在的な不確実性に基づいて、X線位相差イメージングを実行して、X線吸収画像のコントラストが不足している可能性があるために検出されなかった不確実性(SAXS測定位置または様々なエンティティ内の凝集状態の存在)を検証することができる。
位相差イメージングデータ処理には、吸収情報から位相情報を抽出するための位相回復プロセスが含まれる。好ましい実施形態では、使用されるデータアルゴリズムは、単一の伝播距離(単一の検出器測定位置)に基づいてこの情報を分離および抽出するように適合される。本発明の別の実施形態では、いくつかの取得距離を使用するアルゴリズムが使用される。
【0032】
(位相変調構造による位相コントラストイメージング)
本発明の別の実施形態では、位相差イメージングは、構造化された物体によって生成された画像を、ビームに配置されたときにサンプルの相互作用がある場合とない場合で比較することで、第2X線ビームの波面変調とサンプルの位相マップを生成するように適合された繰り返し構造を持つ構造化された物体によって作成された位相画像を生成することによって行うことができる。構造化された物体は、吸収構造の周期的な配列で作られたハルトマンマスクなどの吸収構造、または位相格子である可能性がある。
【0033】
ハルトマンマスクの場合、入射ビームは吸収構造によって平行ビームに変調され、サンプルによって生成されたたわみを分析することによってサンプル位相マップが再構築される。この方法の利点の1つは、吸収構造の周期を波長と比較して十分に大きくして、検出器上で直接位相パターンを再構築できるため、サンプルと検出器の間に挿入物体の数を制限できることである。
【0034】
構造化された物体が位相格子である場合、入射X線ビームは位相変調され、特定の距離(タルボット距離)で干渉縞パターンが作成される。この干渉法は、一般に、単色の高コヒーレンス光源とグレーティングの正確な位置決めを必要とする。実際には、他のグレーティング(吸収)を線源側で使用して線源のコヒーレンスを高めるか、検出器の近くで検出器の分解能を上げる必要がある。
【0035】
本発明の好ましい実施形態では、X線位相差イメージング法は、タルボット干渉法の場合のように、遠位検出器の変位経路に限られた数のコンポーネントを実装する必要がある場合に求められる。SAXS測定モードでの操作の場合、このシステムでは、遠位検出器をビーム伝播方向に沿って移動できるため、実装の複雑さが制限された方法が考えられる。
本発明の別の実施形態では、位相差イメージングが、これがビームに配置されたときにサンプル相互作用がある場合とない場合の参照物体によって生成された画像を比較することに基づいて使用され、参照物体は、ランダム構造の物体である。この方法は、一般にスペックルベースの位相差イメージングと呼ばれる。
スペックルベースの位相差イメージングは、光源の非常に高い空間コヒーレンスを必要としないという意味で特に有利であり(10ミクロンを超える光源を使用できる)、ランダム構造の物体は、タルボットX線干渉法で使用される位相格子と比較して製造コストが中程度である。
【0036】
(スペックルベースの位相差イメージング)
本発明のこの実施形態では、第2X線ビーム送達システムの使用は、物体挿入ユニットに関連して上で説明したように、スペックルベースの位相差イメージングのために、優先的にサンプルホルダの前に、ランダム構造の物体と組み合わされる。
【0037】
イメージングの特性評価手順には、通常、伝播された第2X線ビームと相互作用するためのサンプルが配置されていない状態で長距離に配置された遠位検出器上のランダム構造の物体によって作成されたスペックルパターンを測定するステップと、同じ距離に維持された遠位検出器上のスペックルパターンのサンプル誘発歪み画像を記録するために、サンプルとランダム構造の物体を配置して追加の露光を実行するステップと、が含まれる。サンプルがある場合とない場合のスペックルパターンの相関分析により、サンプルの2次元位相マップをスペックルのサイズに応じた解像度で取得することができる。つまり、ランダム構造の物体の特徴の解像度だけでなく、遠位検出器ピクセルサイズとサンプルまでの距離も取得することができる。ランダム構造の物体は、小さな特徴と高いX線強度のコントラストを備えたランダム構造で作られたサンプルであり、例えば、サンドペーパやボール紙にすることができる。このスペックルX線イメージングの代替の特性評価シーケンスには、空間分解能を高めるために、スペックルサイズよりも小さい移動ステップでランダム構造の物体の異なる横方向位置でスペックルパターンをスキャンすることが含まれる。
【0038】
X線スペックルイメージングは、複雑な格子構造を必要とせず、使用する光源の空間コヒーレンスの要件を軽減するため、特に有利な位相差イメージング法である。
ディフューザ、つまりランダム構造の物体に衝突するスペックルベースのイメージングX線では、検出器面に投影されるスペックルパターンを作成する。吸収、散乱、または位相シフト特性を持つサンプルがビームに配置されると、スペックル参照パターンのグローバル強度が変化する(吸収コントラストA、A=(1-T)、Tは透過率)、位置(サンプル位相にリンクされた屈折角による変位δ)で、振幅(小角X線散乱による:サンプルによって散乱された強度がスペックルパターンをぼやけさせ、サンプル透過補正後のコントラストDの低下を引き起こす)。検出器面でX線強度のラインプロファイルを測定することにより、検出器でのスペックル修正パターンの2D画像からパラメータT、δ、Dを抽出することができる。したがって、再構成アルゴリズムにより、スペックルベースのイメージングを使用して、吸収コントラスト、位相コントラスト、および暗視野コントラスト(サンプル内の散乱領域による)にそれぞれ対応するいくつかの2DX線画像を取得することができる。スペックルベースのイメージングでは、位相差画像は、スペックルパターンの水平方向と垂直方向に沿った変位δを分析することによって取得される。これは、通常、複数のピクセルの分析ウィンドウを使用して変位を分析する単一の露出で行うことができる。この分析ウィンドウは、スペックルベースの位相差イメージングの解像度を対応するサイズに制限する。前述のように、代替の分析方法では、ランダム構造の物体の位置が異なる複数の露出を使用して、単一の露出方法と比較して解像度を上げる。
【0039】
(暗視野イメージング)
本発明の好ましい実施形態では、X線画像化チャネルはまた、暗視野画像化を実行することを可能にする。有利なことに、この画像は、スペックルベースの画像化と同様に、吸収および位相差画像化と一緒に取得することができた。干渉法は、吸収、位相差、暗視野イメージングを提供するため、使用することもできる。この場合、電動挿入装置が本発明による装置に提供されて、位相格子および潜在的に検出器格子を挿入する。1Dグレーティングの場合、グレーティング挿入デバイスは、2つの連続した実験を実行し、2D暗視野画像を得るために、検出器に向かってグレーティングを90°回転させることを含むことができる。これらの挿入デバイスは、SAXS/WAXS測定の分解能を変更するために検出器の移動が自由になるように、SAXS測定チャネルとの同期を必要とする。
1Dグレーティングを使用したX線干渉法による暗視野イメージングの代わりに、2D回折構造を使用して2Dイメージを直接実行することもできる。この実施形態では、本発明によるX線散乱装置は、サンプルホルダの下流の第2X線ビームに回折マスクを挿入するように適合されたマスク挿入ユニットを含み、前記回折マスクは、サンプルの相互作用がある場合とない場合の回折マスクによって生成されたパターンを比較することによってサンプルの2D暗視野画像を生成するために、X線ビームの変調パターンを生成するように適合されている。例えば、2D回折マスクは、所定の第1周期で配置された同心吸収リングを含むことができ、吸収構造で作られた吸収リングのそれぞれは、入射してくるビームの変調パターンを生成するように適合された前記第1周期よりも小さい所定の第2周期で配置された追加の同心リングを含む。サンプルを挿入するときに回折マスクによって作成されたX線パターンの局所的な可視性の低下を分析することにより、2D暗視野画像が作成される。X線パターンの可視性の局所的な低下は、サンプル内部の構造からの小角X線散乱によって引き起こされる。
【0040】
暗視野イメージングを使用する本発明の実施形態は、暗視野での広視野イメージング測定を組み合わせて、散乱領域(等方性または異方性)または散乱が増加した領域を識別し、SAXS測定チャネルを用いてこれらの領域を定量的に分析できるという点で特に有利である。実際、暗視野イメージングは散乱ゾーンを識別するが、そのような散乱信号の角度依存性にはアクセスできないか、異なる実空間相関から散乱信号を識別するために(異なる距離で)追加の測定が必要になる。
【0041】
X線散乱測定チャネルでは、2DX線散乱強度画像が検出器で収集され、角度依存性(つまり、波動ベクトル)が方位角平均化によって取得され、散乱信号に寄与する実空間のすべての特徴的な寸法に関する追加の定量的情報が提供される。さらに、暗視野イメージング強度は、大きなサンプルから検出器までの距離でUSAXS測定チャネルまたはSAXS測定チャネルを使用して測定できる最大の特徴的な寸法(サイズがミクロン)からの散乱強度の影響を強く受ける。
【0042】
その結果、本発明による方法の好ましい実施形態では、前記X線画像分析は、吸収、位相差および暗視野画像測定の組み合わせを含み、前記X線散乱分析は、USAXS測定および/またはSAXS測定および/またはWAXS測定を含む。
好ましくは、位相差イメージングステップは、吸収およびより良い位相コントラストと特徴の定義のためのより広い視野での位相イメージング測定に基づいて、事前に定義されたサンプル位置を中心とした、より短い視野(すなわち、より大きなサンプルから検出器までの距離)を持つ少なくとも1つの測定ステップを含む、異なるサンプルから検出器までの距離でのサンプルの画像の取得を備えている。
【0043】
本発明による方法は、暗視野信号に寄与する特徴的な次元に関する定量的情報を取得するため、および/またはより小さな次元で追加の特徴的な次元を識別するために、USAXS測定チャネルまたはSAXS測定チャネルのいずれかを使用して、他の領域と比較して異なる散乱強度で関心領域を定義し、サンプルのさらなるX線散乱分析のために関心領域を定義するための同時または追加の暗視野画像取得をさらに含んでいてもよい。
【0044】
この場合、本発明によるX線散乱法は、異なる測定設定で追加の暗視野信号画像を取得して、プローブされる特性寸法が以前のUSAXSおよびSAXS測定から決定された他の特性寸法からの追加の散乱信号寄与をプローブすることを含んでいてもよい。
本発明によるX線散乱装置の好ましい実施形態は、添付の図面を参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】(a)は、第1および第2X線ビーム送達システムは、SAXS測定のための構成で互いに隣接して配置されている、本発明によるX線散乱装置の第1の実施形態を示す図。(b)は、X線画像測定のための構成における(a)の実施形態を示す図。
【
図2】第2X線ビーム送達システムを第1X線ビームに移動させるための挿入モジュールを含む、本発明によるX線散乱装置の第2の実施形態を示す図。
【
図3】第2X線ビームは、サンプル位置で第1X線ビームの伝播方向と交差する伝播方向を有する本発明によるX線散乱装置の第3の実施形態を示す図。
【
図4】サンプルを収容する真空チャンバ内に追加の物体挿入ユニットが提供される、
図2に係る第2の実施形態の修正を示す図。
【
図5】WAXS測定のためのさらなるX線ビーム送達システムを備えた、
図4による第2の実施形態の修正を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1(a)は、“SAXSチャネル”とも呼ばれるSAXS測定のための構成における本発明によるX線散乱装置10の第1の実施形態の概略上面図を示す。X線散乱装置10は、第1X線ビーム送達システム12の上流端から遠位X線検出器14の下流端まで示されている。装置10は、サンプルホルダ16に取り付けられたサンプルを分析するのに役立つ。
図に示されているすべての上面図において、X線散乱装置10の上流端は左側にあり、下流端は右側にある。したがって、第1X線ビームおよび第2X線ビームの伝播方向Yは、左から右である。
【0047】
さらに、伝播方向Yは、実験室システムでは水平であると想定されている。全ての図において、Yに垂直な水平方向をX方向と呼び、XとYに垂直な垂直方向をZ方向と呼ぶ。
第1X線ビーム送達システム12は、第1X線源18および第1モノクロメータ20を含む。
図1(a)の破線で示されるように、第1モノクロメータ20は、遠位X線検出器14がサンプルホルダ16からY方向に最大の距離で配置されている場合に、第1X線源18によって生成されたX線を収集し、それらを第1X線ビーム22として遠位X線検出器14上またはその近くの焦点に集束するように選択および設定される。この文脈において、「近い」とは、第1X線ビーム22の焦点と遠位X線検出器14との間の距離が、焦点および第1モノクロメータ20間の距離P2(
図1(a)の二重矢印によって示される)の約20%であることを意味する。焦点は、遠位X線検出器14の前(すなわち、上流)または後(すなわち、下流)であってもよい。あるいは、第1モノクロメータ20が本質的に平行なビームを生成してもよい。
【0048】
第1X線源18は、好ましくは、点焦点源であって、第1モノクロメータ20は、好ましくは、点焦点モノクロメータである。
ビーム形状は、好ましくは、「散乱のない」または「散乱のない」タイプであるスリットモジュール24によってさらに定義することができる。
図1(a)には、2つのそのようなスリットモジュール24が示されており、第1モジュールは、第1モノクロメータ20のすぐ下流にあり、第2モジュールは、真空チャンバ26のすぐ上流にある。この真空チャンバ26は、電動並進および/または回転ステージ、およびX線散乱の分野で知られている他の典型的なサンプルステージデバイスを含み得るサンプルホルダ16を収容する。
【0049】
WAXS実験には、遠位X線検出器14は、特に、電動方式で、伝播方向Yに沿って真空チャンバ26に向かって移動することができる。しかしながら、
図1(a)に示される実施形態では、近位X線検出器44は、真空チャンバ26の内部に配置され、サンプルから散乱または回折されたWAXS信号を検出することを可能にする。
X線散乱装置10はさらに、第2X線源551を含み、X線イメージングのために発散する第2X線ビームを生成してサンプルホルダ16に向けるように構成される第2X線ビーム送達システム55を備えている。この第2X線ビーム送達システム55は、
図1(a)に示されるSAXS構成では非アクティブであるが、
図1(b)に示される「イメージングチャネル」とも呼ばれ、以下に説明されるイメージング構成ではアクティブである。
【0050】
第2X線ビーム送達システム55は、遠位X線検出器14に向かって伝播する円錐形のビーム58を生成するように構成される。この円錐形のビーム58は、
図1(b)の破線で示されている。第2X線源551は、優先的に、固体陽極、例えば、クロム、銅、モリブデン、銀、またはタングステンを備えた線源であり、広いエネルギー分布を有する、すなわち、アノード(Ka、Kb、La)の特徴的な蛍光線と制動放射とを含むX線ビームを放出する。本発明の好ましい実施形態では、第2X線ビーム送達システム55は、このビームがSAXSに使用される第1X線ビーム22と比較してはるかに低い単色性を有するという意味で多色ビームを生成する。それでも、X線ビーム58のかなりの部分は、アノードの特徴的な蛍光線でできている。第2X線ビーム送達システム55はさらに、一次スリットモジュール56に結合されたシャッタを含み、数mmの範囲のサンプル領域を照明するためのコーンビームを規定する。第2X線ビーム送達システム55はまた、フィルタを含んでいてもよい。そして、スリットモジュール56は、円錐形のビーム58の寸法を制御するためのスリットの組み合わせであってもよい。ここで、典型的には、数度の範囲の円錐が使用される。第2X線源551は、典型的には、分析される材料に応じて最大50kV、あるいは最大70kVで励起され、焦点サイズが小さい、すなわち50ミクロン焦点以下、できれば10ミクロン以下のタングステンまたはモリブデン陽極を備えた線源であってもよい。
【0051】
図1(a)および
図1(b)に示す実施形態では、第2X線ビーム送達システム55は、第1X線ビーム22を通過させるようにサンプルホルダ16の上流の位置に固定的に配置され、第1X線ビーム22と本質的に平行に第2X線ビーム58を放出する。サンプルホルダ16は、
図1(a)および
図1(b)のサンプルホルダ16の隣の二重矢印によって示されるように、第1X線ビーム22の伝播方向Yに垂直な平面内で、特に電動方式で移動可能である。これにより、サンプルを、
図1(a)に示されるSAXS構成の第1X線ビーム22から、
図1(b)に示される画像化構成の第2X線ビーム58に移動させることができる。遠位X線検出器14は、両方の構成で、すなわち、SAXSおよび画像測定のために使用することができる。X線検出器14のサイズに応じて、それは、Y方向に沿った移動可能性に加えて、XZ平面に固定されたままであるか、またはX方向および/またはZ方向に移動してビーム58を遮断することができる。
図1(a)および
図1(b)に示す実施形態では、検出器はXZ平面でかなり大きな寸法を持っている。したがって、XZ平面内で移動する必要なしに、SAXS測定中の第1X線ビーム22と画像測定中の第2X線ビーム58の両方を受信することができる。
【0052】
本発明のこの実施形態では、第2X線ビーム送達システム55は、第1X線ビーム送達システム12のメインコリメーション経路と同じ垂直または水平位置にある線源551のベリリウム出口窓に加えて、真空フランジに直接取り付けられた(または第2X線源551を隔離するための窓なしで)壁に固定された(または基準板に取り付けられた)真空チャンバ26の入口に配置される。コンパクトなX線源551と一次スリットモジュール56を用いて、第1および第2X線ビーム伝播軸の間で50mmから100mmの範囲の距離を達成することができる。あるいは、X線源551が十分にコンパクトである場合、第2X線ビーム送達システム55を真空チャンバ26の内部に配置することができる。
【0053】
図1(a)および
図1(b)に示す実施形態では、第2X線ビーム送達システム55は、(-10°<0<+10°)内に含まれる傾斜を有する第1X線ビーム送達システム12のメイン伝播面に平行な伝播面を有する。通常、遠位X線検出器14がSAXSおよびX線イメージング用の検出器までの距離が同等に長いイメージングで使用されるように、SAXS測定に使用されるのと同じ位置(SAXSビーム伝播方向Yに沿って)のサンプルで測定するように構成される。そうすることにより、X線イメージングの解像度は検出器のピクセル解像度によって制限されないか、少なくとも制限されなくなり、特性評価チャネルの変更がより簡単かつ迅速になる。あるいは、線源とピクセル検出器の解像度の間の妥協点が検索された場合、X線イメージングはX線ビーム伝播軸Yに沿った異なる位置に配置されたサンプルで実行される。
【0054】
第1X線ビーム22と第2X線ビーム58との間の伝播面の小さな傾斜はまた、大きなサンプルから検出器までの距離を維持しながら、広い視野(すなわち、サンプル領域の測定)を達成できることを保証する。SAXSに使用される遠位検出器14は、典型的には、55pmから172pmの範囲のピクセルサイズを有する2Dハイブリッドピクセル検出器であって、主に、SAXSに適合される、つまり、ノイズが少なく、絶対強度で測定するためのカウント率が高く、効率が高くなる、ように設計されている。通常、サイズは30mm×75mm(Eiger2R 500Kのように)または75×75mm2(Eiger2R 1M)の範囲、または150mm×150mm(Eiger2R 4M)の大きさにすることができる。最先端のSAXS装置における遠位X線検出器14のサイズとは無関係に、検出器14は、検出器平面内で、すなわち、Xおよび/またはZ方向に沿って電動化されて、所与のサンプルから検出器までの距離で検出面を増加させるか、または検出器アセンブリに使用される各検出器モジュール内の不感帯を除去することができる。検出器のサイズ(FOVdetector=FOVsample*S2/S1)に一致するサンプルの広い視野(FOV)を維持するには、X線イメージングビームを少し傾ける必要がある。あるいは、遠位X線検出器14がXZ平面内で動かされて、検出面および検出器視野(FOV検出器)を増加させるために、X線画像化の特徴付けとして、いくつかの露光が実行される。
【0055】
本発明のこの実施形態では、遠位X線検出器14がXZ平面内で電動化される場合、X線画像取得は、サブピクセル寸法からなる範囲による検出器の位置の変化を伴ういくつかのデータ露光を取得することからなることができる。ピクセル応答関数と入射空間X線強度分布の畳み込みによって、サブピクセル寸法の合成画像を取得することができる。例えば、検出器を垂直方向と水平方向の両方でピクセル寸法の半分だけ動かすことによって
物理的なピクセル寸法の半分の合成画像を生成することができる可能性がある。
【0056】
第1X線ビーム送達システム12は、通常、サンプルで通常mm2未満のビームサイズを生成するが、第2X線ビーム送達システム55は、数十分の一ミリメートルの大きさのビームサイズを生成することができる。本発明者らは、最先端のSAXSシステムを使用すると、最先端のX線イメージングシステムよりも大きいピクセルサイズのX線検出器14を使用しているにもかかわらず、数ミクロンの解像度でX線イメージングデータを取得できることを経験した。
【0057】
図1(a)および
図1(b)の第1の実施形態に示されるように、真空チャンバ26の入口に第2ビーム送達システム55を配置することにより、サンプル上で高強度を達成することが可能になる。ただし、線源55が大きすぎる場合は、別の構成を選択することができる。これは、
図2に示される第2の実施形態に関連して説明される。
図2に示される第2の実施形態では、本発明によるX線散乱装置10はさらに、第2X線ビーム送達システム55をサンプルホルダ16の上流の位置で第1X線ビーム22内に移動させるように構成された挿入モジュール36を備えている。さらに、第1X線ビーム送達システム12の下流の位置からサンプルホルダ16の上流の位置までビーム経路に沿って延びるメインコリメーションチューブ38が提供される。ここで、挿入モジュール36は、第2X線ビーム送達システム55またはコリメーションチューブ延長部34を、メインコリメーションチューブ38とサンプルホルダ16との間の位置で、ビーム経路に交互に配置するように構成された電動プラットフォーム36を備えている。
【0058】
そして、SAXS測定の場合、コリメーションチューブ延長部34がビーム経路に配置され、第1X線ビーム22が、サンプルホルダ16に取り付けられたサンプルに衝突する直接ビームとして機能することを可能にする。しかしながら、イメージング測定の場合には、第2X線ビーム送達システム55は、電動プラットフォーム36によってビーム経路内に配置される。そして、X線散乱装置10のコンピュータ制御システムは、第1X線ビーム送達システム12のシャッタを作動させて、第2X線ビーム送達システム55のシャッタを作動させながら、第2X線ビーム58がサンプルを照射するように、第1X線ビーム22を遮断することができる。
【0059】
メインコリメーションチューブ38の下流端およびコリメーションチューブ延長部34の上流端には、真空気密接続のためのそれぞれの接続要素が設けられている。これらの接続要素は、真空気密Oリングを備えたスライドプレートで構成されている。同じことがコリメーションチューブ延長部34の下流端にも当てはまり、サンプルホルダ16が配置されている真空チャンバ26との真空気密接続を可能にする。接続部品362および364を備えたこのセットアップは、第1X線ビーム送達システム12または第2X線ビーム送達システム55がアクティブであるとき、または構成の変更中のいずれかの場合に、コリメーションチューブ延長部34の内部が、メインコリメーションチューブ38の内部と同じ真空環境にあることを確実にし、したがって、測定の構成の迅速な変更を確実にする。
【0060】
本発明の一実施形態では、接続部品362および364は、例えば、コリメーションチューブ延長部34または第2X線ビーム送達システム55に取り付けられたスライドプレートで構成され、構成の変更が行われたときを含め、いつでも、スライドシールによって囲まれ、真空がコリメーションチューブ延長部34の内部および第2ビーム送達システム55の内部に保たれることを保証する。スライドシールは、平らで滑らかなスライドプレートのカウンターパーツの表面に沿って移動するときに、真空気密接続と低摩擦を確保するように設計されている。コリメーションチューブ延長部34は、剛性チューブ、あるいはベローズとより剛性の高い部品を組み合わせて、スライディングプレートが動かされたときの測定構成の変更を容易にするより柔軟なシステムであってもよい。
【0061】
あるいは、コリメーションチューブ延長部34は、収縮/拡張機構を備えている。そして、コリメーションチューブ延長部34は、例えば、望遠鏡機構によって格納および拡張することができる。引っ込められた状態において、コリメーションチューブ延長部34は、コリメーションチューブ延長部34を保持する電動プラットフォーム36の移動中に接触する機械的要素との摩擦および接触を低減することにより、メインコリメーションチューブ38とサンプルホルダ16との間に容易に挿入することができる。コリメーションチューブ延長部34がビーム経路の最終位置に達するとすぐに、そして、それは、メインコリメーションチューブ38および/またはサンプルホルダ16が配置されている真空チャンバ26、または真空チャンバ26の上流に配置された任意の他の光学部品と接触するまで拡張することができる。
【0062】
上記の第1および第2の実施形態では、第1X線ビーム22および第2X線ビーム58の伝播方向は、本質的に平行(10°未満)である一方、SAXSおよびイメージング測定の両方に遠位X線検出器14を使用することができる。
図3は、第2X線ビーム58の伝播方向が、10°より大きい第1X線ビーム22の伝播方向Yに対して角度を有する、本発明によるX線散乱装置10の第3の実施形態を示している。2つのX線ビーム22,58の伝播方向は、サンプル位置で交差する。
【0063】
この第3の実施形態では、第2X線ビーム送達システム55は、第1X線ビーム22を通過させるようにサンプルホルダ16の上流の位置に配置され、さらに、第1X線ビーム22を通過させ、サンプルを透過した第2X線ビーム送達システム55からのX線を検出するように、サンプルホルダ16の下流に配置された近位X線検出器44を含む。
図3に示すように、近位X線検出器44は、真空チャンバ26の内部に配置されている。
【0064】
図3の破線の矢印で示されているように、サンプルホルダ16および/または近位X線検出器44は、特に、電動方式で、サンプルホルダ16を通過し、第2X線ビーム58の伝播方向に垂直である少なくとも1つの回転軸の周りで回転可能である。特に、近位X線検出器44は、好ましくは、エワルド球の一部に配置してX線散乱実験の水平方向または垂直方向に散乱信号を収集するために、サンプルを中心とする2つの回転円に沿って電動方式で移動可能である。
【0065】
図4は、サンプルを収容する真空チャンバ26内に追加の物体挿入ユニット57が設けられている、
図2に係る第2の実施形態の変形例を示している。物体挿入ユニット57は、ランダム構造の物体を取り付け、それを第2X線ビーム58に挿入するように適合されている。
図4に示す第3の実施形態では、物体挿入ユニット57は、サンプルホルダ16の上流に配置されていてもよい。あるいは、サンプルホルダ16の下流に配置されていてもよい。
【0066】
第2X線ビーム58内にランダム構造の物体を配置することにより、上記で詳細に説明したように遠位検出器14を用いて、吸収、位相差、および暗視野イメージング、例えば、スペックルベースの位相差イメージングも測定することができる。
もちろん、物体挿入ユニット57はまた、上記の第1および第3の実施形態において提供されてもよい。
【0067】
説明されているすべてのモダリティに関するこのX線イメージングチャネルには、X線照射中にサンプルを回転させることによって断層撮影実験を実行する機能も含まれる可能性がある。そうするために、サンプルホルダ16は、例えば、第2X線ビーム58によるX線露光中にサンプルを回転させるためのZ軸の周りの垂直回転ステージを含んでいてもよい。スペックルベースの位相差イメージングの場合には、トモグラフィー実験は、ランダム構造の物体が第2X線ビーム58に露光され、サンプルが露光されていない単一の露光、およびサンプルとサンプルの回転中にランダム構造の物体の両方が露光されたトモグラフィシーケンスを含む。
【0068】
図5は、WAXS測定用のサンプルホルダ16上またはその近くの焦点にさらなるX線ビームを集束させるように構成されたさらなるX線源30を含むさらなるX線ビーム送達システムを備えた
図4に係る第2の実施形態の変形を示す。このさらなるX線ビーム送達システムはまた、コリメーションチューブ延長部34および第2X線ビーム送達システム55を保持する電動プラットフォーム36に取り付けられている。
図5は、もちろん省略され得るランダム構造の物体を通してサンプル17を照射する円錐形の第2X線ビーム58による画像測定のためのその構成における本発明に係るX線散乱装置10のこの修正を示す。
図5に示される構成から開始して、X方向に沿った電動プラットフォーム36の動きは、最初に、X線散乱装置10を、第1X線ビームがメインコリメーションチューブ38を通って伝播し、コリメーションチューブ延長34がサンプルに当たるSAXS測定のための構成に置く。次に、電動プラットフォーム36をX方向に沿ってさらに動かすと、X線散乱装置10は、さらなるX線源30によって生成されたX線ビームを使用するWAXS測定のための構成に置かれる。
【0069】
この設定により、第1X線ビーム送達システム12によって生成された第1X線ビーム22をSAXS測定に使用することができる一方、さらなるX線源30によって得られたさらなるX線ビームは、高分解能WAXS測定を含むWAXS測定、または小さなサンプルの露出領域散乱用途に使用される。WAXS測定のためのX線散乱装置10のこのさらなる最適化の詳細は、出願人の欧州特許出願19290126.2に記載されており、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0070】
本発明のさらなる発展において、第2ビーム送達システム55は、小さな単色二次光源焦点を作成するために、サンプル位置の近くに配置されたピンホールに結合された大きな収束角単色光学系(すなわち、多層の場合は1°、または二重に湾曲した結晶の場合は数度)を含むことができる。これは、異なるピンホールサイズで磁束/分解能比を変更するという利点を提供する。
【0071】
第1X線源で使用されるX線発生器18、第2X線源55およびさらなるX線源30は、密封チューブX線源、好ましくはマイクロフォーカス密封チューブ線源、または、好ましくは点焦点を備えた回転陽極、または液体ジェット陽極を含んでいてもよい。
説明およびクレーム全体で使用される「焦点」は、必ずしも点状である必要はない。また、それぞれのサンプルと目的のX線散乱分析に応じて、線状にすることも、一般に、2Dまたは3D形状にすることもできる。
【国際調査報告】