(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】コネクタハウジング、コネクタハウジングを製造するためのプロセス、及びプロセスで使用するための金型
(51)【国際特許分類】
H01R 43/18 20060101AFI20230323BHJP
B29C 45/27 20060101ALI20230323BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
H01R43/18
B29C45/27
B29C45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543020
(86)(22)【出願日】2021-02-04
(85)【翻訳文提出日】2022-07-13
(86)【国際出願番号】 EP2021052666
(87)【国際公開番号】W WO2021156367
(87)【国際公開日】2021-08-12
(32)【優先日】2020-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/074330
(32)【優先日】2020-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】オング, スィー-ウィー
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
5E063
【Fターム(参考)】
4F202AA29
4F202AA30
4F202AB05
4F202AB11
4F202AB25
4F202AG28
4F202AH34
4F202AR07
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK03
4F202CK06
4F202CK89
4F206AA29
4F206AA30
4F206AB05
4F206AB11
4F206AB25
4F206AG28
4F206AH34
4F206AR07
4F206JA07
4F206JL02
4F206JQ81
5E063XA01
(57)【要約】
本発明は、FPCコネクタハウジングに関し、より具体的にはDDR5コネクタハウジングに関する。本発明は、同様に、コネクタハウジングを製造するための方法、及びコネクタハウジングの製造に適したキャビティ金型に関する。キャビティ金型は、射出ゲートが中央に位置付けられたダブルゲーティングシステムを含む。コネクタハウジングは、さまざまな種類の電気及び/又は電子機器内で組み立てられるフレキシブルプリント回路(FPC)上に実装するためのコネクタで使用することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形プロセスで使用するためのキャビディ金型であって、前記キャビティ金型は、
- 射出成形によってコネクタハウジングを形成するための少なくとも1つのキャビティと、
- 前記少なくとも1つのキャビティのそれぞれに2つの射出ゲートを備えたダブルゲーティングシステムを備えた射出チャネルと、
を含み、
前記2つの射出ゲートは、前記キャビティの両側で、前記コネクタハウジングの端の一方よりも中央に近い位置である前記キャビティの長さ方向の中央付近の前記位置に、又は前記コネクタハウジングの両端から等距離の前記位置である前記キャビティの長さ方向の中央に配置されている、
キャビティ金型。
【請求項2】
前記キャビティ金型は、前記2つの射出ゲートに接続されたホットランナーを含む、請求項1に記載のキャビティ金型。
【請求項3】
前記キャビティ金型は、1つ又は複数のキャビティを含み、前記1つ又は複数のキャビティは、DDR5コネクタハウジングを形成するために設計されている、請求項1又は2に記載のキャビティ金型。
【請求項4】
前記キャビティ金型は、射出成形によってコネクタハウジングを形成するための少なくとも4個、好適には8個~32個のキャビティ、好ましくは8個又は16個のキャビティ、及び前記キャビティのそれぞれに2つの射出ゲートを有し、前記2つの射出ゲートは、前記キャビティのそれぞれの両側で、前記キャビティのそれぞれの長さ方向の中央付近又は中央の位置に配置されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のキャビティ金型。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のキャビティ金型への射出成形材料の射出成形を含む、射出成形コネクタハウジングを製造するためのプロセス。
【請求項6】
前記射出成形材料は、熱可塑性ポリアミド組成物、好ましくは半結晶性半芳香族ポリアミド(PPA)を含む熱可塑性ポリアミド組成物、又は繊維強化難燃性ポリアミド組成物、より好ましくはPPAを含む繊維強化難燃性組成物である、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記金型は、少なくとも4個のキャビティ、好ましくは8個~32個のキャビティ、より好ましくは8個又は16個のキャビティを有する、請求項5又は6に記載のプロセス。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか一項に記載のキャビティ金型を使用する射出成形プロセスによって取得可能な、電気コネクタ用の射出成形コネクタハウジングであって、前記射出成形コネクタハウジングは、前記ハウジングの両側で、前記コネクタハウジングの端の一方よりも中央に近い位置である前記キャビティの長さ方向の中央付近の前記位置に、又は前記コネクタハウジングの両端から等距離の前記位置である前記ハウジングの長さ方向の中央に配置されたゲートマークを有する、射出成形コネクタハウジング。
【請求項9】
前記ハウジングは、半結晶性半芳香族ポリアミドを含む射出成形材料で作られている、請求項8に記載の射出成形コネクタハウジング。
【請求項10】
電気コネクタにおける、又は電気及び/又は電子機器における請求項8又は9に記載の射出成形コネクタハウジングの使用。
【請求項11】
コネクタハウジング及び金属要素を含む電気コネクタであって、前記コネクタハウジングは、請求項8に記載の射出成形コネクタハウジングである、電気コネクタ。
【請求項12】
前記コネクタは、DDR4又はDDR5コネクタである、請求項11に記載の電気コネクタ。
【請求項13】
プリント回路基板(PCB)に実装されたコネクタハウジング及び金属要素を含む電気コネクタを含む電気及び/又は電子機器であって、前記コネクタハウジングは、請求項11又は12に記載の射出成形コネクタハウジングである、電気及び/又は電子機器。
【請求項14】
前記コネクタは、DDR5コネクタである、請求項13に記載の電気及び/又は電子機器。
【請求項15】
前記機器は、コンピュータサーバ、ラップトップ又はデスクトップである、請求項13又は14に記載の電気及び/又は電子機器。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、電気及び/又は電子機器で使用するためのコネクタハウジングに関し、より詳細には、2つの対向する壁と、対向する壁間の挿入孔の配列とを含み、それらの孔がコンタクトピンを有する挿入物を受け入れるための通路を画定する、DDRコネクタハウジングなどの微細ピッチコネクタハウジングに関する。本発明は、同様に、コネクタハウジングを製造するためのプロセス、及びコネクタハウジングの製造に適したキャビティ金型に関する。コネクタハウジングは、プリント回路基板(PCB)上に実装するための電気コネクタで使用することができ、さまざまな種類の電気及び/又は電子機器内で組み立てることができる。
【0002】
コンピュータサーバ、ラップトップ及び携帯電話のような最新の高密度電子応用は、プリント回路基板(PCB)に実装され、より大きなアセンブリに統合された小型電子部品を利用する。プリント回路基板(PCB)は、通常、剛性又は可撓性材料に実装された構成部品を組み込んだエッチング又はプリント回路を含む。可撓性材料で作られたPCBは、フレキシブルプリント回路(FPC)としても知られている。PCBへの構成部品の実装は、通常、リフローはんだ付けプロセスによってなされる。PCB上の構成部品と他の構成部品との接続は、PCBに実装された電気コネクタを介して実現され得る。これらの電気コネクタは、例えば、プリント回路基板に中央処理装置(「CPU」)を取り外し可能に実装するために使うことができる。コネクタはまた、例えば、異なるPCB上のコネクタ間、又はPCB上のコネクタと別の構成部品との間でコネクタケーブルを使用することによって、異なるPCBを統合するため、又はPCBを他の構成部品と統合するために使用することができる。そのようなコネクタケーブルのために、多くの場合、可撓性フラットケーブル(FFC)が使用される。FFCは、大抵、扁平で可撓性の、構成部品がないストレート接続であり、リボンケーブルの小型化された形である。これらのFFCは、多数の導体の配列を含み得る。
【0003】
上で言及した電気コネクタは、通常、2つの対向する壁と、対向する壁間の挿入孔の配列とを含み、各孔が導電要素を含むか、又は導電要素へのアクセスを与え、それらの孔が接触要素を有する挿入物を受け入れるための通路を画定する、射出成形された熱可塑性材料で作られたプラスチックハウジングを含む。挿入物は、例えば、CPU上のコンタクトピンの配列から、又はFFCの端部の導体の配列から来ることができる。
【0004】
コネクタハウジング内の挿入孔の間隔は、FFC内の導体又はCPU上のコンタクトピンの間隔と一致しなければならない。この間隔はピッチと呼ばれる。電気コネクタのピッチは、通常、コネクタハウジング内の1つの挿入孔の中心から隣接する挿入孔の中心までの距離を意味する。より新しい世代のコネクタは、通常、ピン挿入孔の数がより多く、ピッチ又はピン挿入孔間の距離がより小さい。
【0005】
ピッチの小さいさまざまなタイプの電気コネクタがある。その実施例は、DDR、SODIMM及びPCIコネクタである。これらすべてのコネクタは、長いフォームファクタを有する。そのようなコネクタの1つのタイプは、DDR2、DDR3及びDDR4、並びにごく最近はDDR5を含む、DDRコネクタである。DDR5コネクタを含む、DDRコネクタの長さは、通常、141mmである。DDRコネクタのピッチは、通常、0.85~1mmの間の範囲である。特に、DDR5及びDDR4コネクタにおけるピッチは、通常、0.85mmであり、DDR3コネクタのピッチは1mmである。DDRは、ダブル・データ・レート(Double Data Rate)の略語である。これらのコネクタは、多くの場合、メモリカードに使用され、同期型ダイナミック・ランダムアクセス・メモリ(Synchronous Dynamic Random-Access Memory)の略語である拡張SDRAMによって認識可能である。DDR SDRAMコネクタの各世代は、それ自体のインタフェース及び適切な技術を必要とし、高いデータ転送速度を目指している。さらにまた、新しい世代では、より高いデータ転送速度を目指し、より高い帯域幅(「ダブル・データ・レート」)のインタフェースを必要として、コネクタのサイズもまた、コネクタの長さの増加、導電要素の数の増加及び導電要素間のピッチの減少に関して変化する。
【0006】
上記の種類の最新の電気コネクタは、スマートフォン、デジタルカメラ、ゲーム機、サーバ及びデスクトップ並びに他の種類の電気及び/又は電子機器に広く採用され、利用されており、それらはますます小さくなり続けている。コネクタハウジングの幅及び高さ方向の寸法が小さいことに少なくとも部分的に起因して、これらの応用の寸法の低減が可能になった。
【0007】
DDR4と比較して、DDR5は、通常メモリモジュール電圧を1.1Vにさらに低減し、したがって電力消費量を低減する。DDR5モジュールは、より高い速度に到達するために、オンボードの電圧調整器を組み込むことができる。DDR5は、モジュール毎に51.2GB/sの速度と、モジュール毎に2つのメモリチャネルとをサポートすることができる。現在DDRを使用しているほとんどのユースケースが最終的にDDR5に移行することになるという一般的な予想がある。E&E産業は、より小さいコネクタにつながり性能レベルを向上させる、さらなる小型化への安定した傾向を特徴とするので、この開発は、まだこれから来るDDR6及びDDR7などの新世代で継続することになる。
【0008】
コネクタハウジングは、通常、電気的絶縁材料で作られており、より具体的には、プラスチック材料、例えば、熱可塑性ポリエステル又は熱可塑性ポリアミドに基づく熱可塑性組成物から作られている。これらの組成物は、さらなる成分、例えば強化用繊維、例えばガラス繊維、又は充填剤、例えばタルク及びマイカ、又は難燃剤、又は強化用繊維と充填剤の組み合わせを含み得る。強化用繊維及び充填剤は、当技術分野で周知である。ポリエステルの場合、液晶ポリエステルが好ましい選択肢であった。ポリアミドとして、脂肪族ポリアミドが広く使用されてきた。ごく最近は、熱可塑性半結晶性半芳香族ポリアミド(このポリアミドを本明細書ではPPAと呼ぶ)に基づく組成物は、少なからず高温性能及び価格においてより優れた構成物を構成するので、より重要になっている。
【0009】
コネクタハウジングは、通常、熱可塑性組成物をランナー及びゲーティングシステムを介してゲートを通して金型によって画定されたキャビティに射出成形することによって製作される。コネクタハウジング用の金型設計の標準的なレイアウトは、ダブルゲーティングシステムを含み、キャビティは、長さ方向を有するコネクタハウジングの形状を画定し、ダブルゲーティングシステムの2つのゲートは、コネクタハウジングの一方の端、すなわち長さ方向の一方の端に位置付けられる。
【0010】
しかしながら、比較的大きい長さは別にして小さい幅及び小さい高さに関するこれらの寸法要件は、材料要件及びリフローはんだ付け中の厳しいプロセス条件と組み合わせて、ハウジングの寸法の完全性に関しても問題を引き起こす。寸法の完全性とは、本明細書では、コネクタハウジングが、製造時に、コネクタハウジングの製造に使用される金型によって画定される通りの意図された形状を有するべきであること、及びコネクタハウジングがリフローはんだ付けの後にその形状を保持するべきであることを意味する。
【0011】
寸法が小さいコネクタに関連する問題は、これらが歪むか又は曲がる傾向があることである。この問題は、射出成形プロセス後にすでに発生する可能性があり、より典型的には、他の部品上にコネクタを表面実装するためのはんだ付け中に適用されるような温度サイクルをコネクタが通過するときに発生するか、又はより強調されるようになる。
【0012】
本明細書では、反りで、成形部品が変形しているか、又は形がくずれている、例えば曲がっているか、若しくはねじれていることが理解される。コネクタソケットの反り、又は歪み若しくはねじれは、表面実装アセンブリ内の応力につながることになる。さらにまた、反りは、リフローはんだ付けプロセスにおける欠陥、及びCPU上のコンタクトピンの挿入又はFFCの端部の挿入を含む、リフロー後のPCBの開回路に関する問題につながる可能性がある。これらの問題により、挿入自体が困難になるか、又はハウジングの機械的損傷若しくは不十分なピン保持力、若しくはそれらの組み合わせが生じる。例えば、多くの場合、難燃性要件に適合するために成形組成物中の十分に大量の難燃剤と組み合わせて使用しなければならない、繊維強化剤の含有量を増加させることによって、成形部品の機械的強度及び剛性を増加させることは、一般に反りを増加させ、多くの場合、成形問題を引き起こす。
【0013】
成形直後又ははんだ付け後のハウジングの反りの問題は、より新しい世代のコネクタハウジングでより率直であり、すなわち、射出成形によって作られたDDR5タイプの接続ハウジングは、例えば射出成形によって作られたDDR4タイプの接続ハウジングよりも多くの反りに関する問題を示す。同じことが、長さ/高さ比が大きい他のコネクタハウジングに当てはまる。これらの問題はまた、熱可塑性半結晶性半芳香族ポリアミド(この組成物を本明細書ではPPA組成物と呼ぶ)に基づく熱可塑性組成物でより率直であり、プロセス条件が完全に最適化されない場合、射出成形によって作られたDD4タイプの接続ハウジングですでに発生する。
【0014】
さらにまた、そのようなPPA組成物が射出成形によるDDR5接続ハウジングの製造に使用されるとき、成形部品は、繊維プリントスルー、ひけマーク、及び局所的多孔性などの表面品質に関する問題を示す。
【0015】
金型設計に関する別の問題は、キャビティに射出される射出成形材料のフローパターンから生じるウェルドラインの発生である。このようなフローパターンは、複雑である可能性があり、ウェルドラインは回避することが困難である。ウェルドラインにより、通常、機械的特性の局所的な低下が生じる。ウェルドラインが成形部品の重要な箇所で発生するとき、これは、実装又は組み立て中に成形部品の故障につながる可能性がある。
【0016】
さらなる問題は、DDR5タイプのコネクタを製造するとき、特にポリアミド組成物を使用するとき、特にPPA組成物を使用するときの製造能力の制限である。
【0017】
上記を考慮して、部品が製造されるときだけでなくリフローはんだ付け後も生じる反りが少なく、良好な機械的特性を有し、PPA組成物で作られているとき、表面品質の改善を示す、コネクタハウジングのソリューションが必要である。ポリアミド組成物からDDR5タイプのコネクタを製造するとき、製造能力を向上させる可能性も必要である。
【0018】
それゆえ、本発明の目的は、良好な寸法の完全性及び良好な機械的特性を有するコネクタハウジングを提供することである。別の目的は、良好な寸法の完全性及び良好な機械的特性を有するコネクタハウジングを作るためのプロセスを提供することである。さらなる目標は、PPA組成物に基づくコネクタハウジングを作るためのプロセスを提供すること、及びそのプロセスによって作られた、良好な寸法の完全性及び良好な機械的特性並びに良好な表面品質を有するコネクタハウジングを提供することである。さらなる目標は、より高い製造能力を可能にする、ポリアミド組成物からDDR5タイプのコネクタを製造するプロセスを提供することである。
【0019】
これらの目的は、本発明の以下の実施形態で達成されており、それらは、
- コネクタハウジングを製造するためのプロセスで使用するために設計された、請求項1に記載の金型、
- 熱可塑性ポリマー組成物の射出成形によってコネクタハウジングを製造するための請求項5に記載のプロセス、
- 熱可塑性ポリマー組成物で作られている、請求項8に記載のコネクタハウジング、
を含む。
【0020】
本発明は、同様に、前記コネクタハウジングを含む電気コネクタ、及び前記電気コネクタを含む電気及び/又は電子機器を含む。
【0021】
本発明による金型は、コネクタハウジングの形状を画定するキャビティと、2つの射出ゲートを含むダブルゲーティングシステムを備えた射出チャネルとを含む、射出成形プロセスで使用するためのキャビティ金型であり、2つの射出ゲートは、キャビティの両側に配置され、それぞれキャビティの長さ方向の中央付近又は中央に配置されている。
【0022】
キャビティ金型は、コネクタハウジングを形成するための少なくとも1つのキャビティと、少なくとも1つのキャビティのそれぞれに2つの射出ゲートを備えたダブルゲーティングシステムとを含み、特定のキャビティの2つの射出ゲートは、前記特定のキャビティの両側で、キャビティの長さ方向の中央付近又は中央の位置に配置されている。
【0023】
本明細書では、ゲートで、溶融プラスチック材料がキャビティに射出される金型の開口部が理解される。それは、キャビティと射出チャネルとの間の境界であり、キャビティ内に製造された成形部品と射出チャネル内に形成されたスクラップとの境界を同様に構成する。適切な射出チャネルは、いわゆるスプルー及びランナーなどの異なるセグメントを含む。
【0024】
好ましい一実施形態では、キャビティ金型は、2つの射出ゲートに接続されたホットランナーを含む。本明細書では、ホットランナーで、射出成形中に加熱され得る射出チャネルが理解される。射出成形中に射出チャネルのホットランナーを加熱することの利点は、コールドランナーがないため、より良い製品が製造され、使用される材料がより少なく、作り出される廃棄物がより少ないことである。
【0025】
別の好ましい実施形態では、少なくとも1つのキャビティは、DDRコネクタハウジングを形成するために、より好ましくはDDR4又はDDR5コネクタハウジング、より好ましくはDDR5コネクタハウジングを形成するために設計される。この後者により、金型は、最終的にDDR5コネクタハウジングの製造に適したものになる。一方、上述したような本発明の根底にある反り及び表面品質の問題は、軽減される。その目的で、そのキャビティ、又は金型内に2つ以上のキャビティがある場合、複数のキャビティは、DDR4又はDDR5コネクタハウジングに対応する輪郭を有する。
【0026】
さらなる好ましい実施形態では、金型は、射出成形によってコネクタハウジングを形成するために、少なくとも4個、好適には8個~32個のキャビティ、好ましくは8個又は16個のキャビティを含む。それに次いで、キャビティ金型は、キャビティのそれぞれの両側で、キャビティのそれぞれの長さ方向の中央付近又は中央の位置に配置された、キャビティのそれぞれに2つの射出ゲートを備えたダブルゲーティングシステムを備えた射出チャネルを含む。
【0027】
本発明によるキャビティ金型は、キャビティの数を増加させることを可能にし、製造能力を向上させるという利点を有する。PPA組成物で作られたDDR5ハウジングコネクタの場合でさえ、好適に8個のキャビティを含むのに対して、キャビティの端位置に配置された射出ゲートを備えた従来のキャビティ金型の場合、8個のキャビティにより、成形問題が多くなり、成形部品の品質の深刻な低下が生じる。
【0028】
本発明によるプロセスは、上で本明細書に記載のキャビティ金型への射出成形材料の射出成形を含む、コネクタハウジングを製造するための射出成形プロセスである。
【0029】
プロセスは、好適には、
- 上で本明細書に記載のキャビティ金型を提供するステップと、
- 金型のキャビティに射出成形材料を射出成形し、それによってキャビティ内に射出成形部品を形成するステップと、
- 金型から射出成形部品を取り出し、射出チャネルから残留物を分離し、それによって射出成形材料で作られた射出成形コネクタハウジングを取得するステップと、
を含む。
【0030】
前記プロセス中に、射出成形材料は、射出チャネルを通過し、射出ゲートを介してキャビティに入り、キャビティを充填する。
【0031】
射出成形材料は、好適には熱可塑性成形組成物、すなわち熱可塑性ポリマーを含む組成物である。そのような材料は、溶融加工され、溶融物としてキャビティに射出され、キャビティ内で固められて、キャビティの輪郭によって画定されるコネクタハウジングの形状に成形されたものを分離して形成することができる。好適には、熱可塑性ポリマーは、熱可塑性ポリエステル又は熱可塑性ポリアミド、好ましくは熱可塑性ポリアミドである。
【0032】
好ましい一実施形態では、熱可塑性成形組成物は、半結晶性半芳香族ポリアミド(PPA組成物)又は繊維強化難燃性ポリアミド組成物を含む熱可塑性ポリアミド組成物であり、より好ましくは、熱可塑性成形組成物は、繊維強化難燃性PPA組成物である。射出成形材料が繊維強化難燃性PPA組成物である、この実施形態の利点は、この材料が従来のキャビティ金型を使うプロセスでのコネクタハウジングの製造においてより多くの問題を引き起こしたにもかかわらず、本発明によるプロセスで、反り及び表面品質の問題が軽減されることである。
【0033】
PPA組成物で使用される半結晶性半芳香族ポリアミド(PPA)は、好適には、少なくとも280℃の融解温度Tm-Aを有する。ここに融解温度Tm-Aは、20℃の加熱及び冷却速度でISO11357-1/3による方法を用いたDSCによって測定される。ここに第1の加熱サイクル、冷却サイクル及び第2の加熱サイクルが適用され、第1の加熱サイクルで、温度はTm-Aよりも約35℃高い温度まで引き上げられ、3分間その温度に保たれ、冷却サイクルで、温度は0℃まで下げられ、その温度に5分間保たれ、次いで第2の加熱サイクルが開始される。融解温度Tmに対して、第2の加熱サイクルにおける融解ピークのピーク値が決定された。
【0034】
半結晶性半芳香族ポリアミド(PPA)は、さらに好適には、少なくとも30J/g、好ましくは少なくとも50J/gの結晶化エンタルピーΔHcを有する。ここに結晶化エンタルピーΔHcは、上述の方法を用いたDSCによって同様に測定される。結晶化エンタルピーΔHcに対して、Tm-Aよりも20℃高い温度から200℃までの冷却サイクルにおける結晶化吸熱ピーク下の表面が決定され、組成物の重量に対してJ/gで表現される。結果として得られた値は、それから、組成物中のポリアミドポリマーのパーセンテージに対して補正される。
【0035】
PPAは、ホモポリマー又はコポリマーであり得る。半結晶性半芳香族ポリアミドのホモポリマーの例は、PA8T、PA9T及びPA10Tである。これらのポリアミドは、PAXTとすることができ、Tはテレフタル酸を表し、Xはジアミンを表す。
【0036】
半結晶性半芳香族ポリアミドのコポリマーの例は、PA6T/6I、PA6T/66、PA6T/610、PA10T/106及びPA10T/10Iである。これらのポリアミドは、PAXT/XZとすることができ、Xはジアミンを表し、Tはテレフタル酸を表し、Zは第2のジカルボン酸を表す。Zは、例えば、アジピン酸(記号「6」)、イソフタル酸(記号「I」)又はセバシン酸(記号「10」)であり得る。
【0037】
半結晶性半芳香族ポリアミドのコポリマーの他の例は、PA4T/6T、PA6T/10T、PA6T/8T、PA6T/M5T、及びPA10T/6Tである。これらのポリアミドは、PAXT/YTとすることができる。ここにTはテレフタル酸を表し、X及びYは異なるジアミンを表す。
【0038】
半結晶性半芳香族ポリアミド(PPA)はまた、テレフタル酸を一部又は全部ナフタレンジカルボン酸又はジフェニルジカルボン酸に置き換えた、上のポリアミドのいずれかの変形であってもよい。
【0039】
半結晶性半芳香族ポリアミド(PPA)はまた、上記のPAXT、PAXT/XZ及び/又はPAXT/YTポリアミドから選択された2つ以上のポリアミドの任意の組み合わせの任意のコポリアミドであってもよい。
【0040】
PPA組成物は、好適には、ポリアミドポリマー、難燃剤系及び繊維性強化剤を含む繊維強化難燃性組成物であり、
- ポリアミドポリマーは、少なくとも280℃の融解温度Tm-Aを有する半結晶性半芳香族ポリアミドを少なくとも含み、
- 難燃剤系は、ジアルキルホスフィン酸塩及び/又はジホスフィン酸塩の金属塩を含み、
- 繊維性強化剤は、ガラス繊維を含み、
- 組成物は、ISO75-1/2に従って測定された、少なくとも265℃の熱変形温度を有する。
【0041】
これの利点は、それで作られたコネクタハウジングが、良好な寸法の完全性を保持すると同時に、リフローはんだ付け中のより高いピーク温度に耐えることができることである。
【0042】
別の好ましい実施形態では、プロセスで使用されるキャビティ金型は、DDR4又はDDR5コネクタハウジング、より好ましくはDDR5コネクタハウジングに対応する輪郭を有するキャビティを含む。この後者により、プロセスは、最終的にDDR5コネクタハウジングの製造に適したものになる。
【0043】
より好ましい一実施形態では、プロセスで使用される金型は、DDR5コネクタハウジングに対応する輪郭を有するキャビティを含み、射出成形材料は、熱可塑性半結晶性半芳香族ポリアミドを含む熱可塑性組成物である。より好ましくは、プロセスでは、8個又は16個のキャビティ、より好ましくはDDR5コネクタハウジングの製造に適した8個のキャビティを備えたキャビティ金型が使用される。これは、表面品質が良好で反りの少ない成形部品を製造すると同時に、製造能力が向上するという利点を有する。
【0044】
本発明によるコネクタハウジングは、本発明による、上で本明細書に記載のキャビティ金型を前記プロセスで使用することによって、本発明によるプロセスによって取得可能な、射出成形コネクタハウジングである。そのような射出成形プロセスは、成形部品上にゲートマークを残す。コネクタは、コネクタハウジングの両側に配置され、コネクタハウジングの長さ方向の中央付近又は中央にそれぞれ配置された2つのゲートマークを特徴とする。
【0045】
このコネクタハウジングの利点は、2つのエンドゲートを備えたダブルゲーティングシステムで製造された従来のコネクタと比較したとき、コネクタが良好な機械的特性を有すると同時に、寸法の完全性がより良好に保持されることである。
【0046】
コネクタハウジングは、好適には、厚さが1mm未満の2つの対向する壁、すなわちハウジングの長さ方向の壁を有する薄いピッチコネクタハウジングである。好適には、本発明によるハウジング中の対向する壁の厚さは、約800マイクロメートル(μm)以下、より具体的には約500μm以下である。薄いピッチコネクタハウジングは、好適には交差する壁、すなわち通路を分割し、コンタクトピンを分離する壁を同様に有する。交差する壁は、通常、500マイクロメートル(μm)未満の厚さを有する。好適には、本発明によるハウジング中の交差する壁の厚さは、約300μm以下、より具体的には約200マイクロメートル(μm)以下である。
【0047】
好ましい実施形態では、コネクタハウジングは、DDR4又はDDR5コネクタハウジング、より好ましくはDDR5コネクタハウジングである。
【0048】
ここに従来のコネクタと比較して改善された寸法の完全性の保持がさらに良く観察可能である。
【0049】
別の好ましい実施形態では、コネクタハウジングは、熱可塑性半結晶性半芳香族ポリアミドを含む熱可塑性組成物で作られている。
【0050】
このコネクタハウジングの利点は、コネクタが良好な機械的特性を有すると同時に寸法の完全性がより良好に保持されることだけでなく、成形部品の表面品質がより良好で、表面欠陥がより少ないことである。
【0051】
より好ましい一実施形態では、コネクタハウジングは、熱可塑性半結晶性半芳香族ポリアミドを含む熱可塑性組成物で作られたDDR5コネクタハウジングである。
【0052】
ここにコネクタハウジングは、良好な機械的特性及び表面欠陥の少ないより良好な表面品質を有するだけでなく、従来のコネクタと比較して寸法の完全性の保持の改善がさらに良く観察可能である。
【0053】
本発明は、同様に、電気コネクタにおけるコネクタハウジングの使用、及び電気コネクタに関する。
【0054】
本発明は、さらに、電気及び/電子機器における電気コネクタの使用、及び前記電気コネクタを含む電気及び/又は電子機器に関する。
【0055】
本発明による電気コネクタにおけるコネクタハウジングの使用は、本発明による射出成形プロセスによって取得可能であり本発明によるキャビティ金型の使用を伴う、本発明によるコネクタハウジングの使用を暗示する。前記コネクタハウジングは、ハウジングの両側で、ハウジングの長さ方向の中央付近又は中央の位置に配置されたゲートマークを有する射出成形コネクタハウジングである。
【0056】
本明細書では、中央にという表現で、コネクタハウジングの両端から等距離の位置が理解される。端から端まで測定された、コネクタハウジングの長さがLである場合、中央の位置から各端までの距離は、その半分、したがってL/2である。したがって、キャビティを充填するメルトフロー長は、この場合半分に低減されると考えられる。本明細書では、中央付近という表現で、端の一方よりも中央に近い位置が理解される。好適には、ゲートマークの位置は、中間点から(0~0.15)*Lの範囲、好ましくは(0~0.10)*Lの範囲、より好ましくは(0~0.05)*Lの範囲の距離内にある。最も好ましくは、ゲートマークの位置は、ハウジングの長さ方向の中央であり、すなわち中央からの距離は0*Lであり、換言すれば、中央からの距離はゼロに等しい。
【0057】
本発明による電気コネクタは、本明細書で上述したコネクタハウジング、又はその任意の特定の若しくは好ましい実施形態、及びその中の金属又は他の導電要素を含む。それは、本明細書に上記のコネクタハウジングの利点を有し、表面実装デバイスを作るために適用されるリフローはんだ付けプロセスにおける実装中の反り問題の軽減を示す。好適には、電気コネクタは、DDR5コネクタである。
【0058】
本発明による電気コネクタは、電気及び/又は電子機器で好適に使用される。より具体的には、電気コネクタは、表面実装プロセス表面実装デバイスで好適に使用され、プロセスは、リフローはんだ付けを含む。リフローはんだ付けプロセスでは、温度ピークは260℃又は270℃に達する可能性がある。
【0059】
本発明による電気及び/又は電子機器は、本明細書で上述した電気コネクタ、又はその任意の特定の若しくは好ましい実施形態を含む。好適には、電気コネクタは、DDR5コネクタである。
【0060】
以下の図を用いて本発明をさらに例示する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図2】従来の射出ゲートの位置を示すDDRコネクタの部品等角図である。
【
図3】従来の射出ゲートの位置を示すDDRコネクタの概略
図2である。
【
図4】従来の射出ゲートの位置を示すDDRコネクタの概略
図2である。
【
図5】本発明による射出ゲートの位置を示すDDRコネクタの部品等角図である。
【
図6】本発明による射出ゲートの位置を示すDDRコネクタの概略
図2である。
【
図7】本発明による射出ゲートの位置を示すDDRコネクタの概略
図2である。
【
図1】DDRコネクタハウジングの部品等角図を示す。
【
図2】従来の射出ゲートの位置を示すDDRコネクタハウジングの部品等角図を示す。
【
図3】従来の射出ゲートの位置を示すDDRコネクタハウジングの概略
図2である。
【
図4】従来の射出ゲートの位置を示すDDRコネクタハウジングの概略
図2である。
【
図5】本発明による射出ゲートの位置を示すDDRコネクタハウジングの部品等角図を示す。
【
図6】本発明による射出ゲートの位置を示すDDRコネクタハウジングの概略
図2である。
【
図7】本発明による射出ゲートの位置を示すDDRコネクタハウジングの概略
図2である。
【0062】
図1は、DDRコネクタハウジング(1)の部品等角図を示す。本明細書で、コネクタハウジング(1)は、2つの端部(2)及び(3)を備えた細長い本体を有し、2つの対向する側面は、前面(10)及び背面(20)、底面(30)及び上面(40)である。ハウジングの形状は、長さ(L)、幅(W)及び厚さ(T)である、3つの主要寸法によって画定され、Lは、T及びWよりもずっと大きい。
【0063】
図2は、コネクタハウジング(1)の一方の端部(2)における射出ゲート(4)及び(5)の従来の配置を示すDDRコネクタハウジング(1)の部品等角図を示す。
【0064】
図3は、コネクタハウジング(1)の一方の端部(2)における射出ゲート(4)及び(5)の従来の配置を示すDDRコネクタハウジング(1)の概略平面図である。
【0065】
図4は、コネクタハウジング(1)の一方の端部(2)における射出ゲート(4)及び(5)の従来の配置を示すDDRコネクタハウジング(1)の概略側面図である。
【0066】
図5は、コネクタハウジング(1)の中央又は中央付近の位置で、コネクタハウジング(1)の両側(10)及び(20)における射出ゲート(6)及び(7)の配置を示すDDRコネクタハウジング(1)の部品等角図を示す。
【0067】
図6は、コネクタハウジング(1)の中央又は中央付近の位置で、コネクタハウジング(1)の両側(10)及び(20)における射出ゲート(6)及び(7)の配置を示すDDRコネクタハウジング(1)の概略平面図である。
【0068】
図7は、コネクタハウジング(1)の中央又は中央付近の位置で、コネクタハウジング(1)の片側(10)における射出ゲートマーク(6a)の位置を示すDDRコネクタハウジング(1)の概略側面図を示す。もう一方の射出位置のゲートマークは、この視点では見えない反対側(20)に配置されているので、この視点では見えない。
【国際調査報告】