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特表2023-512941積層膜を備える超音波トランスデューサ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】積層膜を備える超音波トランスデューサ
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/00 20060101AFI20230323BHJP
   H04R 19/00 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
H04R17/00 332A
H04R19/00 330
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543792
(86)(22)【出願日】2021-02-02
(85)【翻訳文提出日】2022-09-08
(86)【国際出願番号】 NL2021050063
(87)【国際公開番号】W WO2021158101
(87)【国際公開日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】20155216.3
(32)【優先日】2020-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519066452
【氏名又は名称】ネーデルラントセ オルハニサティエ フォール トゥーヘパスト-ナトゥールヴェッテンシャッペリーク オンデルズック テーエヌオー
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ネール, パウル ルイス マリア ヨセフ
(72)【発明者】
【氏名】フォルケル, アルノ ヴィレム フレーデリック
(72)【発明者】
【氏名】ゲリンク, ヘルヴィン ヘルマニュス
(72)【発明者】
【氏名】アッカーマン, ヘエラケ ブラル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン モル, アントーニウス マリア ベルナルデュス
【テーマコード(参考)】
5D019
【Fターム(参考)】
5D019AA21
5D019BB18
5D019DD01
(57)【要約】
超音波トランスデューサ(100)は、基板(50)に接合された少なくとも2つの膜(10,20)の積層体を備える。電極に接続されてコントローラを有する電気回路(30)は、第1の膜(10)における第1の電極(11)に第1の電気信号(S11)を印加し、第2の膜(20)における第2の電極(21)に前記第1の電気信号とは異なる第2の電気信号(S21)印加するように構成されている。第1の電気信号および第2の電気信号(S11,S21)は、膜(10,20)それぞれの振動周期(T1,T2)の間に、第1の電極(11)と第2の電極(12)との間に変化する電圧(ΔV1,ΔV2)を印加するよう構成される。第1の膜(10)における第1の電極(11)は、変化する電圧(ΔV1,ΔV2)に応じて、それぞれの振動周期(T1,T2)の間に変化する静電力(Fe)によって前記第2の膜20における前記第2の電極(21)と相互作用するように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(50)に接合された少なくとも2つの膜(10,20)の積層体を備える超音波トランスデューサ(100)であって、
前記膜(10,20)は、例えばポケットである間隔(5)によって隔てられており、 前記基板(50)は、前記膜の平面(X,Y)において前記積応対を囲み、前記積層体における前記膜のうちの第1の膜(10)は、前記積層体における前記膜のうちの第2の膜(20)に平行且つ面するように設けられており、前記膜(10,20)は、超音波(W)を伝達するべく超音波周波数(U)で振動するように構成されており、前記膜(10,20)はそれぞれ、電極(11~13;21~23)のセットを含み、
前記超音波トランスデューサ(100)は更に、前記電極に接続されてコントローラを有する電気回路(30)を備え、
前記電気回路(30)は、前記第1の膜(10)における第1の電極(11)に第1の電気信号(S11)を印加し、前記第2の膜(20)における第2の電極(21)に前記第1の電気信号とは異なる第2の電気信号(S21)を印加するように構成されており、 前記第1の電気信号および第2の電気信号(S11,S21)は、前記超音波周波数(U)における前記膜(10,20)それぞれの振動周期(T1,T2)の間に、前記第1の電極(11)と前記第2の電極(12)との間に変化する電圧(ΔV1,ΔV2)を印加するよう構成され、前記第1の膜(10)における前記第1の電極(11)は、前記変化する電圧(ΔV1,ΔV2)に応じて、前記それぞれの振動周期(T1,T2)の間に変化する静電力(Fe)によって前記第2の膜20における前記第2の電極(21)と相互作用するように構成されている、超音波トランスデューサ(100)。
【請求項2】
前記コントローラは、前記振動周期の前半(T1)に、前記第1の電極(11)と前記第2の電極(12)との間に第1の電圧(ΔV1)を印加し、前記振動周期の後半(T2)に前記第1の電極(11)と前記第2の電極(12)との間に第2の電圧(ΔV2)を印加するように構成され、前記第2の電圧(ΔV2)は、前記第1の電圧(ΔV1)よりも高い、請求項1に記載の超音波トランスデューサ(100)。
【請求項3】
前記コントローラは、前記変化する電圧(ΔV1,ΔV2)によって、前記振動周期の前記後半(T2)の間のみ、前記第1の電極(11)と前記第2の電極(12)との間に互いに引き合う方向の静電力(Fe)を印加するように構成されている、請求項2に記載の超音波トランスデューサ(100)。
【請求項4】
前記引き合う方向の静電力(Fe)は、前記第1の膜(10)が一方向(-Z)に移動する前記振動周期の前記後半(T2)においてのみ印加され、前記第1の膜(10)が反対方向(+Z)に移動する前記振動周期の前記前半(T1)には印加されない、請求項3に記載の超音波トランスデューサ(100)。
【請求項5】
前記少なくとも2つの膜(10,20)のうちの少なくとも一方は、前記振動周期に従って圧電信号(S12,S13;S22,S23)を伝達するべく、前記電極(12,13;22,23)それぞれのセットによって挟まれた圧電体層(14,24)を有し、前記圧電信号(S12,S13;S22,S23)は、対応する前記膜(10,20)の少なくとも一方において対応する圧電力(F1,F2)を発生させるように構成される、請求項1から4の何れか一項に記載の超音波トランスデューサ(100)。
【請求項6】
前記電気回路(30)は、前記膜(10,20)を同時に同じ方向(+Z,-Z)に移動させて一体に振動させる電気信号(S12,S13;S22,S23)のセットを、対応する電極(12,13;22,23)のセットに印加するように構成される、請求項1から5の何れか一項に記載の超音波トランスデューサ(100)。
【請求項7】
第1組の圧電信号(S12,S13)が、前記第1の膜(10)における第1組の電極(12,13)に印加されて、前記第1の膜(10)における第1の圧電体層(14)に変化する電圧(ΔV3,ΔV4)を生じさせ、
第2組の圧電信号(S22,S23)が、前記第2の膜(20)における第2組の電極(22,23)に印加されて、前記第2の膜(20)における第2の圧電体層(24)に変化する電圧(DV5,DV6)を生じさせ、
前記第1の圧電体層(14)の前記変化する電圧(ΔV3,ΔV4)は、前記第2の圧電体層(24)の前記変化する電圧(ΔV5,ΔV6)と同相または逆相である、請求項1から6の何れか一項に記載の超音波トランスデューサ(100)。
【請求項8】
前記第1の膜(10)における前記第1の圧電体層(14)に供給される第1組の圧電信号(S12,S13)は、前記振動周期の後半(T2)に前記静電力(Fe)と同じ方向(-Z,-Z)に第1圧電力(F1)を発生させるように構成される、請求項1から7の何れか一項に記載の超音波トランスデューサ(100)。
【請求項9】
前記第1圧電力(F1)と静電力(Fe)とを組み合わせることにより、前記第2の膜(20)の第2振幅(A2)と比較して前記第1の膜10の第1振幅(A1)が増加する、請求項8に記載の超音波トランスデューサ(100)。
【請求項10】
変化する前記静電力(Fe)によって前記第2の膜(20)の前記第2の電極(21)と相互作用するように構成されている前記第1の膜(10)の前記第1の電極(11)は、前記第1の膜(10)の前記第1の圧電体層(14)を挟む第1組の圧電電極(12,13)のうちの1つである、請求項1から9の何れか一項に記載の超音波トランスデューサ(100)。
【請求項11】
前記膜(10,20)はそれぞれ、対応する前記第1の電極(11)および前記第2の電極(12)を含む積層体を有する可撓性フォイル(15,25)を有し、
前記膜(10,20)は、前記可撓性フォイル(15,25)の間に配置されてその間の間隔を形成する中間基板層(52)を有する前記基板(50)の対応する基板層(51~53)に接着されており、
前記超音波トランスデューサ(100)は、前記基板層(51~53)の開口に形成されている、請求項1から10の何れか一項に記載の超音波トランスデューサ(100)。
【請求項12】
前記膜(10,20)は、前記膜の縁部と比較して前記膜の中央に相対的に厚い部分および/または硬い部分を有する、請求項1から11の何れか一項に記載の超音波トランスデューサ(100)。
【請求項13】
前記第1の膜(10)は、前記第2の膜(20)における前記第2の電極と静電相互作用する前記第1の電極(11)を形成する導電材料の第1の領域と、前記第1の膜(10)の第1の圧電体層(14)を挟む圧電電極(12,13)のセットのうちの一方の圧電電極(12)を形成する導電材料の第2の領域とを含み、前記第2の領域は前記第1の領域に隣接する、請求項1から12の何れか一項に記載の超音波トランスデューサ(100)。
【請求項14】
前記第1の電極(11)は、前記第1の膜(10)の0とr1との間の中央領域(r/R=0~r1)を覆い、
前記圧電電極(12)は、前記中央領域を囲む前記第1の膜(10)の周辺領域(r/R=r1~r2)を覆っており、
前記第1の電極(11)によって覆われる前記中央領域は、前記第1の膜(10)の中央から第1半径方向距離(r1)までの間に配置され、
前記圧電電極(12)によって覆われる前記周辺領域は、前記第1半径方向距離(r1)の外側に配置されており、
前記第1半径方向距離(r1)は前記第1の膜(10)の半径の半分未満(<0.5R)である、請求項13に記載の超音波トランスデューサ(100)。
【請求項15】
少なくとも2つの膜(10,20)の積層体を備える請求項1から14の何れか一項に記載の超音波トランスデューサ(100)を制御する方法であって、
前記方法は、前記第1の膜(10)における前記第1の電極(11)に第1の電気信号(S11)を印加し、前記第2の膜(20)における前記第2の電極(21)に異なる第2の電気信号(S21)を印加する工程を備え、
前記第1の電気信号および第2の電気信号(S11,S21)は、前記超音波周波数(U)における前記膜(10,20)それぞれの振動周期(T1,T2)の間に、前記第1の電極(11)と前記第2の電極(12)との間に変化する電圧(ΔV1,ΔV2)を印加するよう構成され、
前記第1の膜(10)における前記第1の電極(11)は、前記変化する電圧(ΔV1,ΔV2)に応じて、前記それぞれの振動周期(T1,T2)の間に変化する静電力(Fe)によって前記第2の膜20における前記第2の電極(21)と相互作用するように構成されている、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波トランスデューサおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波トランスデューサは、医療用画像処理、流量計等、様々な用途に使用されている。膜は、様々なメカニズムにより動作させることができる。例えば、圧電変換器(piezoelectric transducer)を膜に結合させることにより膜を動作させることができる。電気信号に応じて圧電材料が膨張または収縮することにより、膜を振動させる。振動の振幅を大きくするには、作動信号を膜の共振周波数に合わせればよい。これに代えてまたは加えて、電気信号の振幅を大きくさせてもよい。しかし、作動メカニズムの損傷を防ぐべく、例えば、最大電圧が存在する等、制限がある。また、振動を発生させるための力の伝達が最適でない可能性もある。
【0003】
膜を使用したトランスデューサのパワーおよび効率を改善する必要性がある。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、超音波トランスデューサおよびその制御方法に関する。トランスデューサは、(共通の)基板に接合された少なくとも2つの膜の積層体を備える。電気回路は、電極に接続されて、第1の膜における第1の電極に第1の電気信号を印加し、第2の膜における第2の電極に前記第1の電気信号とは異なる第2の電気信号を印加する。第1の電気信号および第2の電気信号は、膜それぞれの振動周期の間に、第1の電極と第2の電極との間に変化する電圧を印加するよう構成される。第1の膜における第1の電極は、変化する電圧に応じて、それぞれの振動周期の間に変化する静電力によって第2の膜20における第2の電極と相互作用するように構成されている。本明細書で説明するように、それぞれの振動周期中の膜間の電圧/静電力の動的変化を利用して、複数の膜のうちの少なくとも1つの振動を強化し、より高い振幅またはパワーを得ることができる。例えば、圧電膜の積層体ではパワーが強化され得る。いくつかの実施形態では、変位の非対称性により帯域幅を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本開示の装置、システムおよび方法の特徴、態様および利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲および添付の図面からよく理解されるであろう。
【0006】
図1A】超音波トランスデューサを例示している。
図1B】超音波トランスデューサを例示している。
図2】対応する電気信号および振動の一例を示す図である。
図3A】電極の一部が組み合わされた超音波トランスデューサを示す図である。
図3B】電極の一部が組み合わされた超音波トランスデューサを示す図である。
図4】対応する電気信号および振動の一例を示す図である。
図5A】膜がそれぞれ逆位相で振動する超音波トランスデューサを示す図である。
図5B】膜がそれぞれ逆位相で振動する超音波トランスデューサを示す図である。
図6】対応する電気信号および振動の一例を示す図である。
図7A】は、静電電極および圧電電極(エレクトロパッド)がそれぞれの膜上に隣接して配置されている超音波トランスデューサを切断した斜視図である。
図7B図7AにおいてVIIBと示された第1の膜の底面図である。
図7C】圧電体層の共振における相対的な体積変位を相対的な電極半径の関数として示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
特定の実施形態を説明するために使用される用語は、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書において、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数形も含むことを意図している。「および/または」という用語は、関連する列挙された要素の一つまたは複数の様々な組み合わせを含む。「備える」および/または「有する」という用語は、述べられた特徴が存在することを意味するが、他の一つまたは複数の特徴が存在することまたは追加されることを排除していない。方法の一の工程が別の工程の後に実施されると説明された場合、そうでないと明記されない限り、それは別の工程の後に一の工程が直接続くまたは一の工程を実行する前に一つまたは複数の中間工程を実行してもよいことを意味する。同様に、構造または構成要素間の接続が説明されている場合、特にそうでないと明記されない限り、この接続は直接行われるまたは中間の構造もしくは構成要素を介して確立可能であることを意味する。
【0008】
本発明は、本発明の実施形態が示されている添付の図面を参照して、以下に説明される。説明を明確にするために、図面における、システム、構成要素、層および領域の絶対的および相対的サイズは誇張されている場合がある。実施形態が、本発明の理想化された実施形態および中間構造の概略図および/または断面図を参照して説明されるであろう。以下の説明および図面において、同様の番号は同様の要素を指す。相対的な関係を示す用語およびその派生語は、その時説明されているまたは説明中の図面に示されている方向を指すと解釈されるべきである。これら相対的な関係を示す用語は説明の便宜上のものであり、特にそうでないと明記されない限り、システムを特定の向きで構築または操作する必要はない。
【0009】
図1Aおよび図1Bには、超音波トランスデューサ100が示されている。いくつかの実施形態では、超音波トランスデューサ100は、基板50に接合された少なくとも2つの膜10,20の積層体を備える。好ましい実施形態では、膜10,20はその間に間隔5を有し、例えば、ポケットを設けることにより互いに分離されている。例えば、基板50は、膜の面X、Yにおいて積層体を取り囲んでいる。一実施形態では、積層体の第1の膜10は、積層体の第2の膜20と平行に延在し、かつ、積層体内の第2の膜20と向かい合っている。好ましくは、膜10,20は、超音波Wを伝達するべく超音波周波数Uで振動するように構成されている。
【0010】
いくつかの実施形態では、膜10,20はそれぞれ、電極11~13および電極21~23のセットによって構成される。電気回路30は、電気信号を印加するように構成されたこれら電極接続され得る。例えば、電気回路30は、電気信号を印加するように構成されたコントローラまたは制御回路を含む。一実施形態では、第1の電気信号S11が第1の膜10における第1の電極11に印加され、異なる第2の電気信号S21が第2の膜20における第2の電極21に印加される。好ましくは、第1の電気信号S11および第2の電気信号S21は、膜10,20それぞれの振動周期T1,T2の間に、例えば、超音波周波数Uまたは好ましくは振動周期に対して何らかの位相関係を有する別の周波数で、第1の電極11と第2の電極12との間に変化する電圧ΔV1,ΔV2を印加する(生じさせる)ように構成されている。好ましい実施形態では、第1の膜10における第1の電極11は、変化する電圧ΔV1,ΔV2に応じて、それぞれの振動周期T1,T2の間に変化する静電力Feによって第2の膜20における第2の電極21と相互作用するように構成されている。
【0011】
例えば、電極間の電圧値は、周期T1,T2のそれぞれの小周期間にΔV1またはΔV2の間で変化する。変化する電圧、すなわち電極間の電位差は、振動周期の異なる部分の間、電気信号S1,S2のそれぞれの電圧の変化する(例えば、接地電位と比較した)差分値に対応し得る。図に示されるように、変化する電圧は、少なくとも一方の電極に対する他方の電極上の電荷の対応する+または-の変化を引き起こす。本図では、第1の電極11上の電荷の変化のみを図示しているが、第2電極12上または両電極上(例えば、変化が同じでない場合)に電荷の変化が生じる場合も考えられる。
【0012】
典型的には、(対向する)電極11、21に-または+の互いに反対の電荷が生じている場合には、示されるように(例えば、振動周期の後半T2の間に)互いに引き合う静電力Feを引き起こす。原理的には、それぞれの電極上に同極性の電荷(+/+;-/-)が生じている場合には、例えば、振動周期の最初の反周期T1(例えば、振動周期の半分の間隔)の間、互いに反発し得る。しかしながら、実際には、反発力はあまり大きくないまたは無視できる程度である。いくつかの実施形態では、振動周期の最初の反周期T1の間、それぞれの電極上の電荷は、両方ともゼロである場合もある。例えば、静電力は、電極間の電荷差または電位差により影響を受ける。
【0013】
理論に縛られることなく、一対の平行板上の電荷間の(引力)静電力Feは、Fe=ε0・A・ΔV2/2d2で表される。ここで、「ε0」は真空の誘電率(~8.85・10-12F・mー1;ファラッド/メートル)、「A」は平行板の表面積、「ΔV」は平行板間の電圧または電位差、「d」は平行板間の距離である。例えば、第1の電極11および第2の電極12のそれぞれの表面積は、少なくとも100平方マイクロメートル、少なくとも200平方マイクロメートル、少なくとも500平方マイクロメートル、少なくとも1平方ミリメートル、少なくとも2平方ミリメートル、少なくとも5平方ミリメートル、少なくとも10平方ミリメートル、少なくとも20平方ミリメートル、少なくとも50平方ミリメートル、少なくとも1平方センチメートル、である。第1の電極11および第2の電極12の表面積が大きいほど、(同じ電圧を使用した場合)静電力が大きくなる。例えば、膜10、20の間および/または第1の電極11、第2の電極12間の距離は、1センチメートル未満、0.5センチメートル未満、2ミリメートル未満、1ミリメートル未満、0.5ミリメートル未満、200マイクロメートル未満、100マイクロメートル未満、50マイクロメートル未満である。距離が短いほど、静電力は大きくなる。
【0014】
本明細書に記載された電極は、例えば、形状的に、理想的な一対の平行板からは多少のずれがあってもよく、一般的な傾向としては、同様な形状に形成されている。例えば、電圧ΔVが高い場合、静電力Feも一般に高く、電圧が低いかまたは電圧がない場合(ΔV=0)は、静電力は低いまたはゼロある。例えば、電極(電極パッド)の(有効)面積が大きいほどおよび/または電極間の有効距離が小さいほど、静電力Feは一般的に大きくなる。好ましくは、第1の電極11および第2の電極12のそれぞれは、互いに対向する膜の内面の少なくとも一部をそれぞれ覆う電極パッドを含む。好ましくは、(例えば静止状態の)膜または電極パッド間の距離「d」は比較的小さく、膜の直径より少なくとも1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍またはそれ以上小さい。図7を参照して後述するいくつかの実施形態は、例えば、膜の中心からの様々な距離に対して電極間の距離を一定に保つべく、電極のレイアウトおよび/または膜のエンボス部分といった形状の改善を行っている。
【0015】
いくつかの実施形態では、電気回路30は、振動周期の前半T1に第1の電極11と第2の電極12との間に第1の電圧ΔV1を印加し、振動周期の後半T2に第1の電極11と第2の電極12との間に第2の電圧ΔV2を印加するように構成される。第2の電圧ΔV2は、第1の電圧ΔV1よりも高くなっている。例えば、第2の電圧ΔV2は、第1の電圧ΔV1よりも少なくとも1ボルト高く、好ましくは、少なくとも2ボルト、少なくとも5ボルト、少なくとも10ボルト、少なくとも20ボルト、少なくとも50ボルト、少なくとも100ボルト以上高い。振動周期の異なる部分の間に電圧ΔV1,ΔV2の変化が大きくなればなるほど、静電力はそれに応じて変化が大きくなる。例えば、第1の電圧ΔV1は、相対的に低いまたは好ましくはゼロ、すなわち、電極11,12間に電圧がないものとすることができる。例えば、第2の電圧ΔV2は、1~1000ボルトの間、好ましくは10~500ボルトの間、最も好ましくは50~200ボルトの間の範囲であってもよい。
【0016】
いくつかの実施形態において、電気回路30は、電圧の変化ΔV1,ΔV2によって、振動周期の後半T2の間だけ、第1の電極11および第2の電極12間に互いに引き合う方向の静電力Feを印加するように構成されている。その他のまたは更なる実施形態では、引き合う方向の静電力Feは、振動周期のうち第1の膜10(例えばその中心)が-Z方向一方向に移動する1つのサブ期間(例えば後半T2)においてのみ(または優位に)印加され、振動周期のうち第1の膜10が反対方向+Zに移動する別のサブ期間(例えば前半T1)においては印加されない。
【0017】
説明のために、膜は、振動周期の半分T1,T2それぞれの終わりの時、すなわち、膜のたるみがそれぞれの振幅A1,A2で最大である状態が図示されていることに留意されたい。実際には、膜の動き(Z位置)は、実際に加えられた力より位相が遅れている場合がある、または、反対に、力が加えられるよりも前に位相が進んでいる場合がある(例えば、図2参照)。これはまた、膜の共振周波数に対する印加された力の周波数に依存し得る。例えば、膜10,20は、膜の一方または両方と共振的に相互作用する超音波Wを送信および/または受信するべく、膜の共振周波数またはその付近の周波数で振動をする。
【0018】
典型的には、膜が力と同じ方向に移動する期間、例えば、第1の膜10が下方位置から上方位置に移動する間の半周期の間に、第1振幅A1を増強する力が印加されると最も効率的である。逆に、第2振幅A2は、同じ半周期の間、反対方向へ動かす力によって減少させることができる。実際には、例えば、この第2の膜を引っ張ることによる第2振幅A2の犠牲の上に、第1振幅A1を大きくすることができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、ここに示すように、電気回路30は、膜10,20を同時に同じ方向+Zまたは-Zに移動させて一体に振動させる電気信号のセットを、それぞれの電極のセットに印加するように構成される。すなわち、第1の膜および第2の膜の振動は、実質的に同位相であり、例えば、45度未満、好ましくは20度未満、10度未満、最も好ましくは0度の位相差で振動する。例えば、振動の位相は、電気(駆動)信号のうちの1つまたは複数のそれぞれの位相によって制御される。2つの膜が一体となって動くことにより、第2の膜20は、例えば、第1の膜10が既に第2の膜20に向かって動いている間に第1の膜を引っ張ることによって、第1の膜10の振幅をさらに大きくすることができる。本実施形態では、1つの膜につき3つの電極を示したが、例えば、図3図7に示すように、電極は2つであってもよい。膜を同位相で振動させる代わりに、膜を逆位相で振動させることも想定され得る。これは、例えば、図5図6を参照して以下に説明される。
【0020】
膜10,20の同相(または逆相)運動は、膜の少なくとも一方に更なる力を加えることによって実現されてもよい。更なる力は原理的に、例えば、別の電極(図示せず)に印加される静電力であってもよい、または、例えば、膜の隣にあるアクチュエータ(図示せず)によって引き起こされてもよい、または、任意のその他の相互作用であってもよい。好ましい実施形態では、本明細書に記載されるように、圧電相互作用により、更なる力が印加されてもよい。最も好ましくは、膜10,20の一方または両方に圧電体層14,24が設けられる。
【0021】
いくつかの実施形態において、膜10および膜20の少なくとも一方は、振動周期に従って圧電信号S12,S13および圧電信号S22,S23を伝達するべく、電極12,13および電極22,23それぞれのセットによって挟まれた圧電体層14,24を含む。その他のまたは更なる実施形態において、圧電信号S12,S13および圧電信号S22,S23は、対応する膜10,20の少なくとも1つにおいて圧電力F1,F2を発生するように構成される。例えば、同期された運動を引き起こす同一または類似の信号を印加することにより、第1の膜10および/または第2の膜20、好ましくは両方に圧電力が印加されてもよい。
【0022】
一実施形態において、第1組の圧電信号S12,S13が、第1の膜10における第1組の電極12,13に印加されて、第1の膜10における第1の圧電体層14に変化する電圧ΔV3,ΔV4を生じさせる。第2組の圧電信号S22,S23は、第2の膜20における第2組の電極22,23に印加されて、第2の膜20における第2の圧電体層24に変化する電圧DV5,DV6を生じさせる。第1の圧電体層14の変化する電圧ΔV3,ΔV4は、第2の圧電体層24の変化する電圧ΔV5,ΔV6と同相、または、逆相(180度位相ずれ)である。
【0023】
それぞれの膜の圧電信号に同じまたは同様な位相を適用することにより、それぞれの圧電力によって2つの膜が一体となって動くように作動させることができる。また、逆位相の信号を印加することにより(あるいは圧電体層の極性を反転させることにより)、図5図6に示されるように、2つの膜が中央で互いに出会う逆位相で動作させることができる。例えば、第2変化する電圧は、振動周期の前半T1における信号S12,S13間の第1圧電電圧ΔV3と、振動周期の後半T2における信号S12,S13間の第2圧電電圧ΔV5とから構成される。例えば、第3変化する電圧は、振動周期の前半T1における信号S22,S23間の第3圧電電圧ΔV4と、振動周期の後半T2における信号S22,S23間の第2圧電電圧ΔV6とから構成される。いくつかの実施形態では、膜間の圧電信号が一致している、例えば、S12=S22および/またはS13=S23とすると有益であり得るが、これら電圧信号をオフセットすることもできる(例えば、同じ差S12-S13=S22-S23とする)。また、相対的な振幅を異ならせてもよい(例えば、ΔV3=c・ΔV5、ここで「c」は、圧電体層13,24それぞれの極性に応じて負であってもよい)。
【0024】
いくつかの実施形態において、第1の膜10における第1の圧電体層14に供給される第1組の圧電信号S12,S13は、振動周期の後半T2に静電力Feと同じ方向-Z,-Zに第1圧電力F1を発生させるように構成される。その他のまたは更なる実施形態では、例えば図1図4に示すように、第1圧電力F1と静電力Feとを組み合わせることにより、第2の膜20の第2振幅A2と比較して第1の膜10の第1振幅A1を増加させることができる。例えば、図に示すように、振動周期の異なる部分、例えば、膜が共に下降している周期内の時間T2において、第1の膜10の圧電力F1および静電力Feそれぞれの方向を示す矢印が、同じ方向を向いている。
【0025】
その他のまたは更なる実施形態では、第2の膜20における第2の圧電体層24への第2組の圧電信号S22,S23は、振動周期の後半T2に、静電力Feと反対の方向-Z,+Zに第2圧電力F2を生成するように構成され、圧電力Fpと静電力Feを合わせたものは第2の膜20の第2振幅A2を減少させる。例えば、図に示すように、振動周期の異なる部分T1,T2が、例えば、膜が両方とも上がっている周期内の時間T1および下がっている周期内の時間T2の間、第2の膜20の圧電力Fpおよび静電力Feのそれぞれの方向を示す矢印は反対方向を指している。一方の振幅A2を犠牲にして他方の振幅A1を高めることに代えて、図5図6を参照して後で説明するように、両方の振幅を高めることも想定され得る。
【0026】
本開示の態様は、本明細書に記載されるように、少なくとも2つの膜10,20の積層体を備える超音波トランスデューサ100を制御する方法として具現化され得る。例えば、本方法は、第1の膜10における第1電極11に第1電気信号S11を印加し、第2の膜20における第2電極21に異なる第2電気信号S21を印加して、膜10,20それぞれの振動周期T1,T2中に第1電極11と第2電極12との間に変化する電圧ΔV1,ΔV2を生じさせるステップのうちの一つ以上を備える。この場合、第1の膜10における第1の電極11は、変化する電圧ΔV1,ΔV2に応じて、それぞれの振動周期T1,T2の間に変化する静電力Feによって第2の膜20における第2の電極21と相互作用し得る。
【0027】
いくつかの実施形態において、電子回路30は、第1の膜10および/または第2の膜20の共振周波数またはその付近の周波数の1つまたは複数を含む電気信号を生成するように構成された信号発生器(図示せず)を備える。その他のまたは更なる実施形態において、電子回路30は、第1の膜10の共振周波数またはその付近の周波数の1つまたは複数を含む電気信号を検出するように構成された信号検出器(図示せず)を備える。
【0028】
原理的には、膜は異なる複数の共振振動で振動可能であるが、好ましくは、効率的に音響波を生成または受信するために、最も低い共振周波数を有する基本モード(例えば、u01または1sと指定される)が使用される。例えば、共振周波数は、例えば、膜材料特性および音響膜の直径のうちの1つまたは両方によって決定される。その他のまたは更なるパラメータ、例えば、密度、ポアソン比、ヤング率等を使用することもできる。いくつかの実施形態では、基本周波数(Hz)は、膜の張力(N/m)、密度(kg/m2)、直径(m)等のパラメータを用いて表すことができる。また、膜の厚さ、弾性率等、その他のまたは更なるパラメータを使用することができる。これに代えてまたは加えて、膜の基本周波数は、任意の他の分析的または数値的モデリングによって決定されてもよい。一実施形態では、膜の張力および密度に関係する特定の直径を設定することにより、特定の共振周波数が決まる。例えば、直径は、定在波を生成するために、膜内を伝播する波の共振周波数の半分の波長に一致させてもよい。
【0029】
好ましい実施形態では、膜を作動させるために圧電変換器が使用される。最も好ましくは、圧電材料は、可撓性膜上の層として設けられる。また、例えば、圧電体層にそれぞれの電気信号を印加するのに使用される電極層といったその他の層を設けることも可能である。本明細書で説明するように、静電気を印加するための容量層および/または導電層も考えられる。これらの層はその他のまたは更なる電気信号によって帯電されてもよく、例えば、静電荷の印加またはそれぞれの振動の周期の一部部の間に電荷の動的に印加することによって帯電させることができる。
【0030】
トランスデューサを共振周波数付近の搬送周波数で駆動することにより、性能を向上させることができる。例えば、膜の第1共振またはグランド共振が使用される。トランスデューサの共振周波数は、例えば、1キロヘルツ以上、10キロヘルツ以上、100キロヘルツ以上または1メガヘルツ以上と、比較的高い周波数であってもよい。このような高い周波数は、全ての用途に適しているとは限らない。例えば、800ヘルツを超える周波数は、触覚用途の場合、感じにくいかもしれない。例えば、触覚フィードバックに最適な周波数は、50~500ヘルツ、好ましくは100~300ヘルツの間であってもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、電気信号は、トランスデューサの共振周波数に可能な限り近い搬送周波数、および、用途に応じた包絡線または変調周波数を含む複数の周波数から構成される例えば、触覚フィードバック装置は、200Hzの変調周波数によって振幅変調された40kHzの搬送波周波数を使用し得る。また、2つ以上の周波数、特に、例えば、複数のトランスデューサの共振周波数を含む複数の周波数が含まれる帯域を使用することも想定される。
【0032】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるような複数の音響トランスデューサのアレイを備える音響デバイスが形成される。例えば、トランスデューサは、可撓性基板上のパターニングされた積層体によって形成することができる。一実施形態では、積層体は、底部電極層および上部電極層の間に挟まれた圧電体層を備える。いくつかの実施形態において、音響トランスデューサの作動表面は、接触領域において可撓性基板の一部を含む。その他のまたは更なる実施形態において、複数の膜が、周囲を囲む基板に別々に接合されてもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、膜10,20はそれぞれ、可撓性フォイル15,25またはその他の可撓性基板を備える。例えば、可撓性フォイル15,25は、その他の層、例えば、電極および/または圧電体層の支持体として機能してもよい。いくつかの実施形態では、例えば図示のように、可撓性フォイル11は比較的剛性の高い支持基板50上に固定されてもよく、例えば、積層またはその他の方法で配置される。例えば、可撓性フォイル11は、支持基板50にラミネートされるおよび/またはその他の方法で固着されでもよい。可撓性基板と支持基板またはその他の剛性構造との間の固定は、例えば、製造中および/または製造後に行われてもよい。支持基板は、比較的平坦な可撓性フォイル11と同様な厚みを持つまたはより大きい厚みを持つものとすることができる。好ましくは、支持基板50は、可撓性フォイル11と比較して相対的に高い曲げ剛性、例えば、少なくとも係数2、3、5、10またはそれ以上の高い曲げ剛性を有する。この場合、支持基板50は、構造的に更なる完全性を提供することができる。好ましくは、支持基板50は、超音波トランスデューサの1つ以上に対応する位置に開口部を備える。剛性のある支持体を提供しながらも、開口部によりトランスデューサ表面の比較的自由な動きを可能にする。
【0034】
いくつかの実施形態(図示せず)では、第1の膜または第2の膜のうちの1つは、周囲基板50と同一平面上に配置される。これは、例えば、対象物に接触するのに有利であり得る。他のまたは更なる実施形態では、対象物に接触する膜のそれぞれを相対的に厚くすることができ、例えば、相対的に薄く形成される他方の膜を保護する。
【0035】
図2は、例えば、前図に示した超音波トランスデューサ100の電極11~13、21~23にそれぞれ適用される電気信号S11~S13,S21~S23、および、膜10,20に対応する振動Z10,Z20の一例を示している。
【0036】
図の上部には、第1の圧電体層14を間に挟んだ電極13,12に印加される圧電信号S13,S12が示されている。いくつかの実施形態では、例えば図示のように、圧電体14を挟む電極12,13に印加される信号S12,S13間の電圧ΔV3,ΔV5が時間の関数として変化している。圧電材料14を通る矢印は、電極に印加される信号間の変化する電圧ΔV3,ΔV5および第1の圧電体層14の極性P1に依存し得る第1圧電力F1の方向を示している。
【0037】
図の上段中央には、例えば第1の電極11および第2の電極12に印加される第1組の静電信号S11,S21が示されている。信号S11,S21の間の矢印は、電極間の静電力Feを示している。信号S11,S21の間に、ある程度の電圧ΔV2が存在する時に、例えば、電極11,12の電荷(-/+)が逆である時または一方の電極が他方の電極よりも多く帯電している時は、静電力Feは引力となる。反対に、電極間の電圧ΔV1が低い場合、例えば、電荷が同様である場合(両者が同様に帯電しているまたは両者が帯電していない)場合には、静電力Feも比較的小さいまたはゼロ(あるいは反発する)であり得る。
【0038】
図の下部中央には、例えば、間に第2の圧電体層24を挟んだ電極22,23に印加される第2組の圧電信号S22,S23が示されている。圧電材料14を通る矢印は、電極に印加される信号間の変化する電圧ΔV4,ΔV6および第2の圧電体層24の極性P2に依存し得る第2圧電力F2の方向を示している。いくつかの実施形態では、例えば図示されるように、第2の圧電体層24に印加される第2の組の圧電信号S22,S23は、第1の圧電体層14に印加される第1の組の圧電信号S12,S13と同一である。これにより、例えば、それぞれの電極への同じ信号を供給する等、信号の制御を比較的容易にすることができる。
【0039】
図の一番下には、膜10,20の振動が示されている。ここでは、例えば、それぞれの膜上の一点について、変動する位置Z10,Z20によって振動が表されている。膜の動きは、印加された圧電力および/または静電力に(遅れて)追従し得る。典型的には、振動の位相は、例えば、膜の一方または両方の圧電材料14,24に印加される電気信号(電圧)、例えば、圧電信号S12,S13;S22,S23の位相に依存し得る。また、振動の位相は、圧電材料14,24の極性P1,P2等のその他の要因に依存し得る。圧電体の複素電気インピーダンスに対する電圧源または電流源の伝達関数によって引き起こされる電気的位相の他に、音響的位相も存在する。軽く減衰する調和振動子の場合、この位相差は、例えば、周波数が共振周波数で掃引されると、-90度から+90度となる。位相が変化する領域の周波数幅は、デバイスの帯域幅の指標とすることができる。また、これは極性の方向にも関係する。例えば、材料を反対方向の極性にすると、(例えば、図6に示すように)振動が反対方向に作動し得る。圧電作動に加えてまたは代えて、それぞれの膜を作動させるその他の形態も想定され得る。また、その他のまたは更なる要因が、膜の間の相互接続された共通の基板またはポケットのように、振動を実質的に同位相に保つ役割を果たす場合もある。
【0040】
いくつかの実施形態では、例えば、図1に示すように、圧電電気信号S12,S13;S22,S23を圧電体層14,24に印加するための電極12,13;22,23のそれぞれの組は、電気(静電)信号S11,S21を印加するための第1の電極11および第2の電極12とは分離および独立したものである。この実施形態は、静電相互作用および圧電相互作用に対する独立した制御を提供するという利点を有し得る。また、以下でさらに説明するように、1つまたは複数の電極を組み合わせることもできる。
【0041】
以上では、静電電極の一方に一定の電圧を印加する実施形態を例示したが、両方の静電電極の電圧を変化させることも考えられる。例えば、印加信号は、膜の振動を最適化するために(例えば、振動をより直線的にするまたはより振幅を大きくする)、両方の膜にパルス成形(時間依存パルスを印加する)を含んでもよい。
【0042】
図3Aおよび図3Bは、電極11,12;21,22の一部が組み合わされた超音波トランスデューサ100を示す図である。図1Aおよび図1Bと比較すると、本例では圧電体層14,24は内側に配置され、いくつかの電極が組み合わされている。それぞれの電極のうちの1つが外側に配置されるような別のまたは更なる配置も考えられる。例えば、キャリア層は、膜の間の静電容量を追加するための更なるコンデンサとして機能し得る。
【0043】
いくつかの実施形態において、変化する静電力Feによって第2の膜20の第2の電極21と相互作用するように構成されている第1の膜10の第1の電極11は、第1の膜10の第1の圧電体層14を挟む第1組の圧電電極12,13のうちの1つでもある。その他のまたは更なる実施形態では、変化する静電力Feによって第1の膜10の第1の電極11(=12)と相互作用するように構成された第2の膜20の第2の電極21(=22)は、第2の膜20の第2の圧電体層24を挟む第2組の圧電電極22,23のうちの1つでもある。静電相互作用および圧電相互作用のために、少なくとも一方の膜において同じ電極を用いることで、電極の数を減らすことができる。
【0044】
図4は、例えば、前図のトランスデューサに印加される信号と振動をそれぞれ示す図である。ここでは、第1の電極と第2の電極が圧電体電極の一方としても機能するため、信号S11=S12、信号S21=S22となる。図2と比較すると、信号S22(=S21)および信号S23は、電圧+V22でオフセットされている。これは、第1の電極と第2の電極との間の変化する静電相互作用と、両圧電体層14,24において変化する圧電相互作用を同時に提供する1つの方法である。無論、同じまたは類似の同時相互作用を提供するその他の信号も想定される。例えば、極性P1,P2の一方または両方の方向を反転させ、対応する信号も反転させることができる。例えば、相対的な電圧差を維持する信号に固定されたオフセットまたは可変のオフセットを追加することができる。例えば、静電信号の任意のセットに応じて、それぞれの圧電体層において同様の電圧差を維持するように、圧電信号を適合させることができる。本図では正弦波信号を示しているが、その他の信号、例えば、ブロック波、または、静電気相互作用および/もしくは圧電相互作用を改善するその他の形状も考え得る。また、相互作用を向上させるべく、位相をオフセットさせることも可能である。
【0045】
図5Aおよび図5Bは、膜がそれぞれ逆位相で振動する超音波トランスデューサを示している。これらの図には、図3Aおよび図3Bと同様に、内側に圧電体層が示されているが、本明細書に記載される他の実施形態においてもこのように実装され得る。例えば、信号を反転させたり、圧電体層のうちの1つの極性を反転させたりすることができる。いくつかの実施形態では、2つの膜が互いに向かって移動する時に膜が互いに接触するのを防ぐべく、膜の間の距離「d」を大きくしてもよい。その他のまたは更なる実施形態では、距離「d」を調整することにより、これら膜の物理的な接触することによる所望の相互作用を提供可能になる。また、膜間のポケット内の圧力により接触を防いでもよい。膜が互いに逆相で動作する利点の1つは、膜の移動の非対称性が帯域幅を増加させる可能性があることである。膜が一体となって動くことの利点は、(膜が互いに向かって動く場合)膜の静電力がポケット内の任意の圧力によって打ち消されないため、超音波をより強くできる場合があることである。
【0046】
図6は、例えば、前図のトランスデューサに印加される信号と振動をそれぞれ示す図である。例えば図4と比較して、圧電体層のうちの1つの極性が反転され反対方向の圧電力(ここでは第2の圧電体層24におけるF2)をもたらす間、信号は原則として類似または同じとすることができる。あるいは、例えば、圧電信号を一方の圧電体層に対して反転させつつ、他方の信号で補償して相対的な電圧差を維持するようにしてもよい。膜それぞれの振動Z10、Z20は、本例では逆位相で示されている。いくつかの実施形態では、例えば、振動中の一方の側への動きと比較して他方側への第1の膜10の動き変位を非対称にしてもよい。例えば、第1の膜10は、第1の膜10の平衡位置と第1の膜10の一方への最大伸長位置との間で測定される第1振幅と、第1の膜10の平衡位置と他方への最大伸長位置との間で測定される第2振幅とを有する。第2の膜20は、これら振幅間の差、例えば、少なくとも5%差または少なくとも10%差を誘発するような静電相互作用によって第1の膜10の運動に影響を与えるように構成される。このような変位の非対称性を誘発するこれらおよびその他の実施形態は、膜を使用したトランスデューサの有効帯域幅を高めることに貢献する場合がある。
【0047】
図7Aは、静電電極および圧電電極(エレクトロパッド)がそれぞれの膜10,20上に隣接して配置されている超音波トランスデューサ100を切断した斜視図である。
【0048】
いくつかの実施形態では、膜10,20は、それぞれの電極11,12を含む積層体を有する可撓性フォイル15,25を備える。膜10,20は、可撓性フォイル15,25の間に配置されてその間の間隔を形成する中間基板層52を有する基板50の対応する基板層51~53に接着されている。超音波トランスデューサ100は、基板層51~53の開口に形成される。例えば、膜10,20の間の間隔または距離は、中間基板層52の厚さによって決定される。
【0049】
いくつかの実施形態では、膜10,20の少なくとも一方好ましくは両方が、膜の(径方向の)縁部と比較して、膜の中央において相対的に厚いおよび/または硬い部分を有し、例えば、膜は中心を突出させた形状である。例えば、これは、膜の面外ピーク変位と比較して、総変位体積を増加させる効果を有する。例えば、相対的に厚くまたは硬く形成された中央の部分は、膜が撓んでいる間に曲率が少ない(例えば、ガウス型よりもブロック型)ので、内側への収縮の効果は、中央でのピークよりも大きな領域にわたって広がり得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、膜の中心部は縁部よりも厚く形成されており、例えば、少なくとも1.1倍、1.2倍、1.5倍、2倍またはそれ以上である。その他のまたは更なる実施形態において、膜の中央部の材料は縁部よりも硬く、例えば、少なくとも1.1倍、1.2倍、1.5倍、2倍またはそれ以上である。好ましくは、厚くなった領域および/または硬くなった領域は、総面積のうちの一部分に延在し、例えば、面積の20~90%の間、好ましくは40~80%の間または50~70%を占める。いくつかの実施形態では、膜は、少なくとも1つの側面、好ましくは内側を向く第1の側面10aに更なる層または凸状部を備える。理解されるように、膜の中心面において中心から外れた片側に更なる材料を有することは、変位非対称性に寄与する。
【0051】
図7Bは、図7AにおいてVIIBと示された第1の膜10の底面図である。いくつかの実施形態において、第1の膜10は、第2の膜20における第2の電極との静電相互作用する第1の電極11を形成する導電材料の第1の領域と、第1の膜10の第1の圧電体層14を挟む圧電電極12,13のセットの圧電電極12を形成する導電材料の第2の領域とを含み、当該第2の領域は第1の領域に隣接する。その他のまたは更なる実施形態では、第1の電極11は第1の膜10の0とr1との間の中央領域r/Rを覆い、圧電電極12は中央領域を囲む第1の膜10のr1とr2との間の周辺領域r/Rを覆っている。なお、第1の圧電体層(図示せず)を周辺領域に限定して設けてもよいし、あるいは連続的に設けられる層であってもよく、例えば、両圧電体電極12,13が第1の圧電体層14の周辺領域を挟むように当該周辺領域にのみ配置されてもよい。
【0052】
図7Cは、圧電体層の共振における相対的な体積変位v/Vを相対的な電極半径r/Rの関数として示した図である。図示されるように、中心の周りに、例えば、半径Rの0.4倍から0.9倍間に帯状に配置された圧電体層および/または圧電電極の部分によって、より大きな変位が誘起される。有利には、圧電機能の多くを失うことなく、静電相互作用のために中心を第1の電極11で覆ってもよい。好ましい実施形態において、第1の電極11によって覆われる中央領域は、第1の膜10の中心から第1の半径方向距離r1までの間に配置される。圧電電極12によって覆われる周辺領域は、第1の半径方向距離r1よりも外側、例えば、第2の半径方向距離r2までに配置される。第1の半径方向距離r1は、膜の半径Rの0.2~0.7倍、好ましくは、0.3~0.6倍、最も好ましくは半径の半分未満<0.5R、例えば、図示のように0.4Rである。別のまたはさらなる実施形態では、第2の半径方向距離r2は、膜の半径Rの0.7倍から1倍の間、例えば、最大で0.9Rである。いくつかの実施形態では、第1の電極11によって覆われる中央の領域は、周囲の領域と比較して、相対的に硬いおよび/または厚い。例えば、振動中に中央領域が比較的平坦な状態を維持する場合、静電相互作用は改善される(全領域に及ぶ)可能性がある。
【0053】
添付の特許請求の範囲を解釈する際に、「備える」という言葉は、特許請求の範囲に記載されているもの以外の他の要素または行為の存在を除外していないことを理解されたい。「a(一の)」または「an(1つの)」という単語は、そのような要素が複数存在することを排除するものではない。また、特許請求の範囲に記載されている参照番号によって、その範囲を制限されない。いくつかの「手段」は、同じもしくは異なる項目、実装構造または機能によって表される場合がある。特にそうでないと明記しない限り、開示された装置またはその部分のいずれも一緒に組み合わせるまたは更なる別の部分へと分離することができる。しかしながら、特定の手段が相互に異なる請求項で引用されているとしても、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを意味するものではない。したがって、本実施形態は、請求項の全ての実用的な組み合わせを包含し、各請求項は文脈から明らかに層でないと判断されない限り、原則として先行する任意の請求項を参照することができる。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
【手続補正書】
【提出日】2022-09-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(50)に接合された少なくとも2つの膜(10,20)の積層体を備える超音波トランスデューサ(100)であって、
前記膜(10,20)は間隔(5)によって隔てられており、
前記基板(50)は、前記膜の平面(X,Y)において前記積応対を囲み、前記積層体における前記膜のうちの第1の膜(10)は、前記積層体における前記膜のうちの第2の膜(20)に平行且つ面するように設けられており、前記膜(10,20)は、超音波(W)を伝達するべく超音波周波数(U)で振動するように構成されており、前記膜(10,20)はそれぞれ、電極(11~13;21~23)のセットを含み、
前記超音波トランスデューサ(100)は更に、前記電極に接続されてコントローラを有する電気回路(30)を備え、
前記電気回路(30)は、前記第1の膜(10)における第1の電極(11)に第1の電気信号(S11)を印加し、前記第2の膜(20)における第2の電極(21)に前記第1の電気信号とは異なる第2の電気信号(S21)を印加するように構成されており、 前記第1の電気信号および第2の電気信号(S11,S21)は、前記超音波周波数(U)における前記膜(10,20)それぞれの振動周期(T1,T2)の間に、前記第1の電極(11)と前記第2の電極(12)との間に変化する電圧(ΔV1,ΔV2)を印加するよう構成され、前記第1の膜(10)における前記第1の電極(11)は、前記変化する電圧(ΔV1,ΔV2)に応じて、前記それぞれの振動周期(T1,T2)の間に変化する静電力(Fe)によって前記第2の膜20における前記第2の電極(21)と相互作用するように構成されている、超音波トランスデューサ(100)。
【請求項2】
前記コントローラは、前記振動周期の前半(T1)に、前記第1の電極(11)と前記第2の電極(12)との間に第1の電圧(ΔV1)を印加し、前記振動周期の後半(T2)に前記第1の電極(11)と前記第2の電極(12)との間に第2の電圧(ΔV2)を印加するように構成され、前記第2の電圧(ΔV2)は、前記第1の電圧(ΔV1)よりも高い、請求項1に記載の超音波トランスデューサ(100)。
【請求項3】
前記コントローラは、前記変化する電圧(ΔV1,ΔV2)によって、前記振動周期の前記後半(T2)の間のみ、前記第1の電極(11)と前記第2の電極(12)との間に互いに引き合う方向の静電力(Fe)を印加するように構成されている、請求項2に記載の超音波トランスデューサ(100)。
【請求項4】
前記引き合う方向の静電力(Fe)は、前記第1の膜(10)が一方向(-Z)に移動する前記振動周期の前記後半(T2)においてのみ印加され、前記第1の膜(10)が反対方向(+Z)に移動する前記振動周期の前記前半(T1)には印加されない、請求項3に記載の超音波トランスデューサ(100)。
【請求項5】
前記少なくとも2つの膜(10,20)のうちの少なくとも一方は、前記振動周期に従って圧電信号(S12,S13;S22,S23)を伝達するべく、前記電極(12,13;22,23)それぞれのセットによって挟まれた圧電体層(14,24)を有し、前記圧電信号(S12,S13;S22,S23)は、対応する前記膜(10,20)の少なくとも一方において対応する圧電力(F1,F2)を発生させるように構成される、請求項1から4の何れか一項に記載の超音波トランスデューサ(100)。
【請求項6】
前記電気回路(30)は、前記膜(10,20)を同時に同じ方向(+Z,-Z)に移動させて一体に振動させる電気信号(S12,S13;S22,S23)のセットを、対応する電極(12,13;22,23)のセットに印加するように構成される、請求項1から5の何れか一項に記載の超音波トランスデューサ(100)。
【請求項7】
第1組の圧電信号(S12,S13)が、前記第1の膜(10)における第1組の電極(12,13)に印加されて、前記第1の膜(10)における第1の圧電体層(14)に変化する電圧(ΔV3,ΔV4)を生じさせ、
第2組の圧電信号(S22,S23)が、前記第2の膜(20)における第2組の電極(22,23)に印加されて、前記第2の膜(20)における第2の圧電体層(24)に変化する電圧(DV5,DV6)を生じさせ、
前記第1の圧電体層(14)の前記変化する電圧(ΔV3,ΔV4)は、前記第2の圧電体層(24)の前記変化する電圧(ΔV5,ΔV6)と同相または逆相である、請求項1から6の何れか一項に記載の超音波トランスデューサ(100)。
【請求項8】
前記第1の膜(10)における前記第1の圧電体層(14)に供給される第1組の圧電信号(S12,S13)は、前記振動周期の後半(T2)に前記静電力(Fe)と同じ方向(-Z,-Z)に第1圧電力(F1)を発生させるように構成される、請求項1から7の何れか一項に記載の超音波トランスデューサ(100)。
【請求項9】
前記第1圧電力(F1)と静電力(Fe)とを組み合わせることにより、前記第2の膜(20)の第2振幅(A2)と比較して前記第1の膜10の第1振幅(A1)が増加する、請求項8に記載の超音波トランスデューサ(100)。
【請求項10】
変化する前記静電力(Fe)によって前記第2の膜(20)の前記第2の電極(21)と相互作用するように構成されている前記第1の膜(10)の前記第1の電極(11)は、前記第1の膜(10)の前記第1の圧電体層(14)を挟む第1組の圧電電極(12,13)のうちの1つである、請求項1から9の何れか一項に記載の超音波トランスデューサ(100)。
【請求項11】
前記膜(10,20)はそれぞれ、対応する前記第1の電極(11)および前記第2の電極(12)を含む積層体を有する可撓性フォイル(15,25)を有し、
前記膜(10,20)は、前記可撓性フォイル(15,25)の間に配置されてその間の間隔を形成する中間基板層(52)を有する前記基板(50)の対応する基板層(51~53)に接着されており、
前記超音波トランスデューサ(100)は、前記基板層(51~53)の開口に形成されている、請求項1から10の何れか一項に記載の超音波トランスデューサ(100)。
【請求項12】
前記膜(10,20)は、前記膜の縁部と比較して前記膜の中央に相対的に厚い部分および/または硬い部分を有する、請求項1から11の何れか一項に記載の超音波トランスデューサ(100)。
【請求項13】
前記第1の膜(10)は、前記第2の膜(20)における前記第2の電極と静電相互作用する前記第1の電極(11)を形成する導電材料の第1の領域と、前記第1の膜(10)の第1の圧電体層(14)を挟む圧電電極(12,13)のセットのうちの一方の圧電電極(12)を形成する導電材料の第2の領域とを含み、前記第2の領域は前記第1の領域に隣接する、請求項1から12の何れか一項に記載の超音波トランスデューサ(100)。
【請求項14】
前記第1の電極(11)は、前記第1の膜(10)の0とr1との間の中央領域覆い、
前記圧電電極(12)は、前記中央領域を囲む前記第1の膜(10)の周辺領域覆っており、
前記第1の電極(11)によって覆われる前記中央領域は、前記第1の膜(10)の中央から第1半径方向距離(r1)までの間に配置され、
前記圧電電極(12)によって覆われる前記周辺領域は、前記第1半径方向距離(r1)の外側に配置されており、
前記第1半径方向距離(r1)は前記第1の膜(10)の半径の半分未満ある、請求項13に記載の超音波トランスデューサ(100)。
【請求項15】
基板(50)に接合された少なくとも2つの膜(10,20)の積層体を備え超音波トランスデューサ(100)を制御する方法であって、
前記膜(10,20)は間隔(5)によって隔てられており、前記基板(50)は前記膜の平面(X,Y)において前記積層体を囲み、前記積層体における前記膜のうちの第1の膜(10)は前記積層体における前記膜のうちの第2の膜(20)に平行且つ面するように設けられており、前記膜(10,20)は超音波(W)を伝達するべく超音波周波数(U)で振動するように構成されており、前記膜(10,20)はそれぞれ電極(11~13;21~23)のセットを含み、
前記方法は、前記第1の膜(10)における前記第1の電極(11)に第1の電気信号(S11)を印加し、前記第2の膜(20)における前記第2の電極(21)に異なる第2の電気信号(S21)を印加する工程を備え、
前記第1の電気信号および第2の電気信号(S11,S21)は、前記超音波周波数(U)における前記膜(10,20)それぞれの振動周期(T1,T2)の間に、前記第1の電極(11)と前記第2の電極(12)との間に変化する電圧(ΔV1,ΔV2)を印加するよう構成され、
前記第1の膜(10)における前記第1の電極(11)は、前記変化する電圧(ΔV1,ΔV2)に応じて、前記それぞれの振動周期(T1,T2)の間に変化する静電力(Fe)によって前記第2の膜20における前記第2の電極(21)と相互作用するように構成されている、方法。
【国際調査報告】