(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】炭化ケイ素単結晶ウェハ、結晶及び製造方法、半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
C30B 29/36 20060101AFI20230323BHJP
【FI】
C30B29/36 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544075
(86)(22)【出願日】2020-12-03
(85)【翻訳文提出日】2022-07-19
(86)【国際出願番号】 CN2020133523
(87)【国際公開番号】W WO2022110265
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】202011341347.4
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519174285
【氏名又は名称】北京天科合達半導体股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】TANKEBLUE SEMICONDUCTOR CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 301, Building 2,9 Tianrong Street,Daxing Biomedical Industrial Base Zhongguancun Science Park, Daxing District Beijing 102600, China
(71)【出願人】
【識別番号】519174274
【氏名又は名称】新疆天科合達藍光半導体有限公司
【氏名又は名称原語表記】XINJIANG TANKEBLUE SEMICONDUCTOR CO. LTD
【住所又は居所原語表記】8-9 Shuangyong Road, Shihezi Development Zone Shihezi, Xinjiang 832099 China
(71)【出願人】
【識別番号】522287123
【氏名又は名称】江蘇天科合達半導体有限公司
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU TANKEBLUE SEMICONDUCTOR CO., LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉 春俊
(72)【発明者】
【氏名】婁 艷芳
(72)【発明者】
【氏名】彭 同華
(72)【発明者】
【氏名】王 波
(72)【発明者】
【氏名】趙 寧
(72)【発明者】
【氏名】郭 ▲ユー▼
(72)【発明者】
【氏名】楊 建
(72)【発明者】
【氏名】張 平
(72)【発明者】
【氏名】鄒 宇
(72)【発明者】
【氏名】楊 帆
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077AB01
4G077BE08
4G077DA02
4G077HA06
(57)【要約】
本発明は、炭化ケイ素単結晶ウェハおよびその製造方法、炭化ケイ素結晶およびその製造方法、半導体デバイスを提供し、前記炭化ケイ素単結晶ウェハの表面は、その法線方向とc方向との角度が0度~8度の間である表面であり、この炭化ケイ素単結晶ウェハ上の凝集転位は、300個/cm
2未満であり、前記凝集転位とは、溶融KOHエッチング後に得られたエッチピットうち、任意の2つのエッチピットの幾何学的中心間の距離が80ミクロン未満である転位凝集体を指す。比較的高い転位密度の場合でも、凝集転位密度は小さく、炭化ケイ素ベースのデバイスの歩留まりが向上する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化ケイ素単結晶ウェハの表面は、その法線方向とc方向との角度範囲が端点値を含めて0度~8度である表面であり;
前記炭化ケイ素単結晶ウェハ上の凝集転位密度は、300個/cm
2未満であり;
ここで、凝集転位は、溶融KOHエッチング後の前記炭化ケイ素ウェハの表面にエッチピットが現れ、任意の2つの前記エッチピットの幾何学的中心間の距離が80ミクロン未満である転位凝集である、ことを特徴とする炭化ケイ素単結晶ウェハ。
【請求項2】
前記凝集転位は、凝集らせん転位であり;
前記炭化ケイ素単結晶ウェハの表面は、その法線方向とc方向との角度範囲が端点値を含めて0度~8度であり;
前記炭化ケイ素単結晶ウェハ上の凝集らせん転位密度は、20個/cm
2未満であり;
ここで、前記凝集らせん転位は、溶融KOHエッチング後の前記炭化ケイ素ウェハの表面にらせん転位に対応するエッチピットが現れ、任意の2つの前記のらせん転位に対応するエッチピットの幾何学的中心間の距離が80ミクロン未満である転位凝集である、ことを特徴とする請求項1に記載の炭化ケイ素単結晶ウェハ。
【請求項3】
前記凝集転位は、凝集らせん転位であり;
前記炭化ケイ素単結晶ウェハの表面は、その法線方向とc方向との角度範囲が端点値を含めて0度~8度であり;
前記炭化ケイ素単結晶ウェハ上の凝集らせん転位密度は、5個/cm
2未満であり;
ここで、前記凝集らせん転位は、溶融KOHエッチング後の前記炭化ケイ素ウェハの表面にらせん転位に対応するエッチピットが現れ、任意の2つの前記のらせん転位に対応するエッチピットの幾何学的中心間の距離が60ミクロン未満である転位凝集である、ことを特徴とする請求項2に記載の炭化ケイ素単結晶ウェハ。
【請求項4】
前記凝集転位は、凝集基底面転位であり;
前記炭化ケイ素単結晶ウェハの表面は、その法線方向とc方向との角度範囲が端点値を含めて2度~8度であり;
前記炭化ケイ素単結晶ウェハ上の凝集基底面転位密度は、50個/cm
2未満であり;
ここで、前記凝集基底面転位は、溶融KOHエッチング後の前記炭化ケイ素ウェハの表面に基底面転位に対応するエッチピットが現れ、任意の2つの前記の基底面転位に対応するエッチピットの幾何学的中心間の距離が40ミクロン未満である転位凝集である、ことを特徴とする請求項1に記載の炭化ケイ素単結晶ウェハ。
【請求項5】
前記凝集転位は、凝集刃状転位であり;
前記炭化ケイ素単結晶ウェハの表面は、その法線方向とc方向との角度範囲が端点値を含めて0度~8度;
前記炭化ケイ素単結晶ウェハ上の凝集刃状転位密度は、200個/cm
2未満であり;
ここで、前記凝集刃状転位は、溶融KOHエッチング後の前記炭化ケイ素ウェハの表面にエッチピットが現れ、任意の2つの前記エッチピットの幾何学的中心間の距離が60ミクロン未満である転位凝集である、ことを特徴とする請求項1に記載の炭化ケイ素単結晶ウェハ。
【請求項6】
前記凝集転位は、凝集複合転位であり;
前記炭化ケイ素単結晶ウェハの表面は、その法線方向とc方向との角度範囲が端点値を含めて2度~8度であり;
前記炭化ケイ素単結晶ウェハ上の凝集複合転位密度は、50個/cm
2未満であり;
ここで、前記凝集複合転位は、溶融KOHエッチング後の前記炭化ケイ素ウェハの表面にエッチピットが現れ、異なるタイプの任意の2つの転位エッチピットの幾何学的中心間の距離が60ミクロン未満である転位凝集である、ことを特徴とする請求項1に記載の炭化ケイ素単結晶ウェハ。
【請求項7】
炭化ケイ素原料を充填したるつぼを種結晶のないグラファイト蓋でキャッピングして前処理を行うこと、
凝集転位密度範囲が200個/cm
2未満である種結晶を提供すること、
前処理されたグラファイト蓋を前記種結晶を含むグラファイト蓋と交換し、前処理されたるつぼに取り付けること、
炭化ケイ素結晶を成長させること、
その場で焼鈍すること、
を含む、ことを特徴とする炭化ケイ素結晶の製造方法。
【請求項8】
前記種結晶の凝集らせん転位密度範囲は、10個/cm
2未満である、ことを特徴とする請求項7に記載の炭化ケイ素結晶の製造方法。
【請求項9】
前記炭化ケイ素原料を充填したるつぼを種結晶のないグラファイト蓋でキャッピングして前処理を行うことは、具体的に、
るつぼの温度範囲を2000℃~2200℃、圧力を10Pa未満に設定し、真空ポンプで持続的に抽気すること、及び
前処理時間は、1時間~10時間であることを含む、ことを特徴とする請求項7に記載の炭化ケイ素結晶の製造方法。
【請求項10】
前記炭化ケイ素結晶を成長させることは、具体的に、
凝集転位密度範囲が200個/cm
2未満である種結晶を含むグラファイト蓋を用いて、成長温度範囲を2200℃~2300℃、圧力範囲を50Pa~4000Pa、温度変動を2℃未満、圧力変動を0.2Pa未満に制御する成長条件で炭化ケイ素結晶を成長させることを含む、ことを特徴とする請求項7に記載の炭化ケイ素結晶の製造方法。
【請求項11】
前記その場で焼鈍することは、具体的に、
温度を前記成長より50℃~200℃高い温度に上げ、圧力を20000Paより高くし、焼鈍を10時間~100時間行うことを含む、ことを特徴とする請求項7に記載の炭化ケイ素結晶の製造方法。
【請求項12】
請求項7~11のいずれか1項に記載の製造方法により製造して形成されることを特徴とする、炭化ケイ素結晶。
【請求項13】
請求項12に記載の炭化ケイ素結晶を提供すること;
前記炭化ケイ素結晶を切断し、研磨してポリッシングし、炭化ケイ素単結晶ウェハを得ることを特徴とする、炭化ケイ素単結晶ウェハ製造方法。
【請求項14】
請求項1~6のいずれか1項に記載の炭化ケイ素単結晶ウェハを用いて製造して形成されることを特徴とする、半導体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[相互参照]
本願は、2020年11月25日に中国特許庁へ出願された、出願番号2020113413474、発明の名称「炭化ケイ素単結晶ウェハ、結晶及び製造方法、半導体デバイス」の中国特許出願に基づく優先権を主張し、その全内容を援用により本願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、半導体材料の技術分野に関し、特に、炭化ケイ素単結晶ウェハおよびその製造方法、炭化ケイ素結晶およびその製造方法、ならびに半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
先行技術では、転位は、炭化ケイ素単結晶ウェハの主要な欠陥の1つであり;炭化ケイ素デバイスの性能に大きな影響を及ぼし、現在、市販されている製品の転位密度は依然として高く、近年、技術の進歩に伴い、転位密度は徐々に低下しているが、依然として要件を満たすことができない。
【0004】
さらに、発明者は、ウェハの転位密度が低下したとしても、デバイスの歩留まりを改善できない場合があり、転位とデバイスの故障との相関関係は依然としてほとんど不明であることを見出した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記事情に鑑みて、本発明は、先行技術において転位密度が低下したが、デバイス歩留まりが改善されていない問題を解決するために、炭化ケイ素単結晶ウェハおよびその製造方法、炭化ケイ素結晶およびその製造方法、ならびに半導体デバイスを提供する。
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は以下のような技術案を提供する:
【0007】
炭化ケイ素単結晶ウェハであって、前記炭化ケイ素単結晶ウェハの表面は、その法線方向とc方向との角度範囲が端点値を含めて0度~8度である表面であり;
【0008】
前記炭化ケイ素単結晶ウェハ上の凝集転位密度は、300個/cm2未満であり;
【0009】
ここで、前記凝集転位は、溶融KOHエッチング後の前記炭化ケイ素ウェハの表面にエッチピットが現れ、任意の2つの前記エッチピットの幾何学的中心間の距離が80ミクロン未満である転位凝集である。
【0010】
好ましくは、前記凝集転位は、凝集らせん転位であり;
【0011】
前記炭化ケイ素単結晶ウェハの表面は、その法線方向とc方向との角度範囲が端点値を含めて0度~8度であり;
【0012】
前記炭化ケイ素単結晶ウェハ上の凝集らせん転位密度は、20個/cm2未満であり;
【0013】
ここで、前記凝集らせん転位は、溶融KOHエッチング後の前記炭化ケイ素ウェハの表面にらせん転位に対応するエッチピットが現れ、任意の2つの前記のらせん転位に対応するエッチピットの幾何学的中心間の距離が80ミクロン未満である転位凝集である。
【0014】
好ましくは、前記凝集転位は、凝集らせん転位であり;
【0015】
前記炭化ケイ素単結晶ウェハの表面は、その法線方向とc方向との角度範囲が端点値を含めて0度~8度であり;
【0016】
前記炭化ケイ素単結晶ウェハ上の凝集らせん転位密度は、5個/cm2未満であり;
【0017】
ここで、前記凝集らせん転位は、溶融KOHエッチング後の前記炭化ケイ素ウェハの表面にらせん転位に対応するエッチピットが現れ、任意の2つの前記のらせん転位に対応するエッチピットの幾何学的中心間の距離が60ミクロン未満である転位凝集である。
【0018】
好ましくは、前記凝集転位は、凝集基底面転位であり;
【0019】
前記炭化ケイ素単結晶ウェハの表面は、その法線方向とc方向との角度範囲が端点値を含めて2度~8度であり;
【0020】
前記炭化ケイ素単結晶ウェハ上の凝集基底面転位密度は、50個/cm2未満であり;
【0021】
ここで、前記凝集基底面転位は、溶融KOHエッチング後の前記炭化ケイ素ウェハの表面に基底面転位に対応するエッチピットが現れ、任意の2つの前記の基底面転位に対応するエッチピットの幾何学的中心間の距離が40ミクロン未満である転位凝集である。
【0022】
好ましくは、前記凝集転位は、凝集刃状転位であり;
【0023】
前記炭化ケイ素単結晶ウェハの表面は、その法線方向とc方向との角度範囲が端点値を含めて0度~8度であり;
【0024】
前記炭化ケイ素単結晶ウェハ上の凝集刃状転位密度は、200個/cm2未満であり;
【0025】
ここで、前記凝集刃状転位は、溶融KOHエッチング後の前記炭化ケイ素ウェハの表面にエッチピットが現れ、任意の2つの前記エッチピットの幾何学的中心間の距離が60ミクロン未満である転位凝集である。
【0026】
好ましくは、前記凝集転位は、凝集複合転位であり;
【0027】
前記炭化ケイ素単結晶ウェハの表面は、その法線方向とc方向との角度範囲が端点値を含めて2度~8度であり;
【0028】
前記炭化ケイ素単結晶ウェハ上の凝集複合転位密度は、50個/cm2未満であり;
【0029】
ここで、前記凝集複合転位は、溶融KOHエッチング後の前記炭化ケイ素ウェハの表面にエッチピットが現れ、異なるタイプの任意の2つの転位エッチピットの幾何学的中心間の距離が60ミクロン未満である転位凝集である。
【0030】
本発明は、さらに、
【0031】
炭化ケイ素原料を充填したるつぼを種結晶のないグラファイト蓋でキャッピングして前処理を行うこと;
【0032】
凝集転位密度範囲が200個/cm2未満である種結晶を提供すること;
【0033】
前処理されたグラファイト蓋を前記種結晶を含むグラファイト蓋と交換し、前処理されたるつぼに取り付けること;
【0034】
炭化ケイ素結晶を成長させること;
【0035】
その場で焼鈍することを含む炭化ケイ素結晶の製造方法を提供する。
【0036】
好ましくは、前記種結晶の凝集らせん転位密度の範囲は、10個/cm2未満である。
【0037】
好ましくは、前記炭化ケイ素原料を充填したるつぼを種結晶のないグラファイト蓋でキャッピングして前処理を行うことは、具体的に、
【0038】
るつぼの温度範囲を2000℃~2200℃、圧力を10Pa未満に設定し、真空ポンプで持続的に抽気すること、及び
【0039】
前処理時間は、1時間~10時間であることを含む。
【0040】
好ましくは、前記炭化ケイ素結晶を成長させることは、具体的に、
【0041】
凝集転位密度範囲が200個/cm2未満である種結晶を含むグラファイト蓋を用いて、成長温度範囲を2200℃~2300℃、圧力範囲を50Pa~4000Pa、温度変動を2℃未満、圧力変動を0.2Pa未満に制御する成長条件で炭化ケイ素結晶を成長させること;
【0042】
さらに、凝集転位密度範囲が200個/cm2未満である種結晶を含むグラファイト蓋を用いて、成長温度範囲を2200℃~2300℃、圧力範囲を50Pa~4000Pa、温度変動を1℃未満、圧力変動を0.1Pa未満に制御する成長条件で炭化ケイ素結晶を成長させること;
【0043】
さらに、凝集転位密度範囲が200個/cm2未満である種結晶を含むグラファイト蓋を用いて、成長温度範囲を2200℃~2300℃、圧力範囲を50Pa~4000Pa、温度変動を0.5℃未満、圧力変動を0.05Pa未満に制御する成長条件で炭化ケイ素結晶を成長させることを含む。
【0044】
好ましくは、前記その場で焼鈍することは、具体的に、
【0045】
温度を前記成長より50℃~200℃高い温度に上げ、圧力を20000Paより高くし、焼鈍を10時間~100時間行うことを含む。
【0046】
本発明において、さらに、上記のいずれか1項に記載の製造方法により製造して形成される炭化ケイ素結晶を提供する。
【0047】
また、本発明は、さらに、炭化ケイ素単結晶ウェハの作製方法を提供するものであり、以下を有する。
【0048】
上記の炭化ケイ素結晶を提供すること;
【0049】
前記炭化ケイ素結晶を切断し、研磨してポリッシングし、炭化ケイ素単結晶ウェハを得ること。
【0050】
また、本発明は、さらに、上記のいずれか1項に記載の炭化ケイ素単結晶ウェハにより製造して形成される半導体デバイスを提供する。
【0051】
上記の技術案から分かるように、本発明で提供される炭化ケイ素単結晶ウェハの表面は、その法線方向とc方向との角度が0度~8度の間である表面であり、この炭化ケイ素単結晶ウェハ上の凝集転位密度は300個/cm2未満である。前記凝集転位とは、溶融KOHエッチング後に得られたエッチピットのうち、任意の2つのエッチピットの幾何学的中心間の距離が80ミクロン未満である転位凝集を指す。さらに前記凝集転位とは、溶融KOHエッチング後に得られたエッチピットのうち、任意の2つのエッチピットの幾何学的中心間の距離が50ミクロン未満である転位凝集を指すと定義することができる。凝集転位密度が低い場合、転位密度は必ずしも低いとは限らないが、SiCベースのデバイスの歩留まりを効果的に向上させることができる。さらに、本発明で提供される炭化ケイ素単結晶ウェハの表面は、その法線方向とc方向との角度が0度~8度の間である表面であり、この炭化ケイ素単結晶ウェハ上の凝集転位密度が特定値未満である場合、ウェハの転位密度は、同時に必ずしも非常に低くなく、1000個/cm2より大きく、さらに2000個/cm2より大きく,さらに4000個/cm2より大きい。しかし、ウェハの転位密度は依然として高すぎることができず、高すぎると転位凝集もある程度発生し、本発明ウェハの転位密度は10000個/cm2未満である。
【0052】
本発明は、さらに、転位密度を一方的に低減するための厳格なプロセス条件を採用することなく、プロセス条件の制限により、より低い凝集転位密度を有する炭化ケイ素ウェハを製造する炭化ケイ素単結晶ウェハの製造方法を提供し、相対的に、炭化ケイ素ウェハの製造方法が簡単化され、炭化ケイ素単結晶ウェハ及び半導体デバイスの製造の技術的困難が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
本発明の実施形態又は先行技術の技術案をより明確に説明するために、以下では、実施形態又は先行技術の説明に必要とされる図面を簡単に説明し、明らかに、以下に説明する図面は、本発明の実施形態にすぎず、当業者にとって、創造的な努力なしに、提供された図面に基づいて他の図面を得ることもできる。
【0054】
【
図1】光学顕微鏡下での本発明の実施形態で提供される様々なタイプの転位を含む炭化ケイ素ウェハが溶融KOHエッチングされた写真である。
【
図2】光学顕微鏡下での本発明の実施形態で提供される凝集転位を含む炭化ケイ素ウェハが溶融KOHエッチングされた写真である。
【
図3】光学顕微鏡下での本発明の実施形態で提供される凝集転位を含む炭化ケイ素ウェハが溶融KOHエッチングされた写真である。
【
図4】光学顕微鏡下での本発明の実施形態で提供される凝集転位を含む炭化ケイ素ウェハが溶融KOHエッチングされた写真である。
【
図5】光学顕微鏡下での本発明の実施形態で提供される凝集転位を含む炭化ケイ素ウェハが溶融KOHエッチングされた写真である。
【
図6】光学顕微鏡下での本発明の実施形態で提供される凝集転位を含む炭化ケイ素ウェハが溶融KOHエッチングされた写真である。
【
図7】光学顕微鏡下での本発明の実施形態で提供される凝集転位を含む炭化ケイ素ウェハが溶融KOHエッチングされた写真である。
【
図8】光学顕微鏡下での本発明の実施形態で提供される凝集転位を含む炭化ケイ素ウェハが溶融KOHエッチングされた写真である。
【
図9】光学顕微鏡下での本発明の実施形態で提供される凝集転位を含む炭化ケイ素ウェハが溶融KOHエッチングされた写真である。
【
図10】光学顕微鏡下での本発明の実施形態で提供される凝集転位を含む炭化ケイ素ウェハが溶融KOHエッチングされた写真である。
【
図11】光学顕微鏡下での本発明の実施形態で提供される凝集転位を含む炭化ケイ素ウェハが溶融KOHエッチングされた写真である。
【
図12】本発明の実施形態で提供される炭化ケイ素結晶の製造方法のフローチャートである。
【
図13】物理的蒸気輸送法によりSiC結晶を成長させるための成長チャンバーの構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
背景技術に述べたように、先行技術では転位密度が大幅に低下したとしても、デバイスの歩留まりは依然として改善されていない。
【0056】
本発明者は、炭化ケイ素転位について多くの研究を行った結果、転位凝集が炭化ケイ素結晶の品質に影響を与える重要な要因であり、転位密度の一方的な低減が非常に困難であり、炭化ケイ素の品質、特に炭化ケイ素ベースのデバイスの歩留まりを効果的に向上させられないことを見出した。
【0057】
これに基づいて、本発明は、炭化ケイ素単結晶ウェハを提供し、前記炭化ケイ素単結晶ウェハの表面は、その法線方向とc方向との角度範囲が端点値を含めて0度~8度である表面である。
【0058】
前記炭化ケイ素単結晶ウェハ上の凝集転位密度は、300個/cm2未満、好ましくは150個/cm2未満、より好ましくは70個/cm2未満、より好ましくは35個/cm2未満、より好ましくは10個/cm2未満、より好ましくは5個/cm2未満、より好ましくは1個/cm2未満、より好ましくは0.5個/cm2未満、より好ましくは0.1個/cm2未満である。
【0059】
ここで、前記凝集転位は、溶融KOHエッチング後の前記炭化ケイ素ウェハの表面にエッチピットが現れ、任意の2つの前記エッチピットの幾何学的中心間の距離が80ミクロン未満である転位凝集である。さらに、前記凝集転位とは、溶融KOHエッチング後に得られたエッチピットのうち、任意の2つのエッチピットの幾何学的中心間の距離が60ミクロン未満である転位凝集を指すと定義することができる。
【0060】
本発明で提供される低転位凝集を有する炭化ケイ素単結晶ウェハは、炭化ケイ素結晶の品質を制限する重要な要因を解決し、炭化ケイ素ウェハの歩留まりを向上させるとともに、炭化ケイ素ベースのデバイスの歩留まりを向上させることもできる。
【0061】
以下、本発明の実施例における技術案について、本発明の実施形態における図面を参照して明確かつ完全に説明し、明らかに、説明された実施例は、本発明の実施例の一部にすぎず、すべての実施例ではない。本発明における実施例によれば、創造的な努力なしに当業者によって得られる他のすべての実施例は、本発明の保護範囲に含まれるものとする。
【0062】
本発明の実施例で提供される炭化ケイ素単結晶ウェハは、その表面法線方向とc方向との角度範囲が端点値を含めて0度~8度であり、ここで、c方向とは、種結晶の(0008)面に垂直な方向(c軸方向)を指す。本実施例における中炭化ケイ素単結晶ウェハの表面は、その法線方向とc方向との角度範囲が0度~8度である表面であり、通常、ウェハの上記の角度は、4度又は0度程度である。
【0063】
本実施例で提供される炭化ケイ素単結晶ウェハ上の凝集転位密度は、300個/cm2未満である;なお、本発明の実施形態では、凝集転位は、溶融KOHエッチング後の前記炭化ケイ素ウェハの表面にエッチピット露出し、任意の2つの前記エッチピットの幾何学的中心間の距離が80ミクロン未満である転位凝集であると定義される。つまり、2つのエッチピットの幾何学的中心間の距離が80ミクロン未満である転位が凝集することは、凝集転位と定義される。しかし、本発明の実施形態で提供される炭化ケイ素単結晶ウェハ上の凝集転位密度は低い。
【0064】
なお、凝集転位とは、転位凝集の程度を指し、凝集転位密度とは、単位面積あたりの凝集転位の数を指し、凝集転位密度と転位密度は、2つの異なる概念である。単位面積では、転位密度は大きいが凝集転位密度は大きくない可能性がある。例えば、単位面積では、転位密度は大きいが、分布は比較的均一であり、上記した定義における凝集転位はほとんどないため、凝集転位の密度は小さい。同様に、単位面積では、転位密度は小さいが凝集転位密度は大きい可能性がある。例えば、単位面積では、転位密度は小さいが、複数の転位は複数のグループに分けられ、凝集して上記定義のような凝集転位を形成し、凝集転位の密度は、凝集転位がほとんどない場合に比べて大きくなる。
【0065】
本実施例では、説明の便宜上、上記の定義を満たす2つの転位が凝集することは、1つの転位密集領域として定義されることもできる;3つの転位が凝集する場合、1.5個の転位密集領域として定義される。さらに、転位密集領域の数は、上記に定義される転位凝集条件を満たす転位の数を2で割ったものである。凝集転位密度は、ウェハ上のすべての凝集転位の数をウェハの面積で割って凝集転位密度を得ることとして定義される。
【0066】
なお、本実施例では、前記転位のタイプが限定されず、単一の炭化ケイ素ウェハにおける転位のタイプも限定されず、炭化ケイ素ウェハには、通常、不可避にらせん転位(TSD)、刃状転位(TED)、基底面転位(BPD)など様々なタイプが含まれる。
図1を参照すると、炭化ケイ素ウェハには、複数のらせん転位(TSD)、刃状転位(TED)、基底面転位(BPD)が同時に含まれる。各転位の密度は異なる。
【0067】
一方、本実施例では、様々なタイプの転位の個々の転位密度は、比較的低く、半導体デバイスの基本的な要件を満たすことができる限り、限定されない。これに基づいて、本実施例で提供される炭化ケイ素単結晶ウェハ上の凝集転位密度は、300個/cm2未満;好ましくは150個/cm2未満、より好ましくは70個/cm2未満、より好ましくは35個/cm2未満、より好ましくは10個/cm2未満である。具体的には、本実施例において、図面を参照して様々なタイプの転位に対応する凝集転位密度の具体的な実施例を以下に説明する。
【0068】
本実施例では、凝集転位は、凝集らせん転位であってもよい;具体的には、
図2に示すように、前記凝集らせん転位20は、溶融KOHエッチング後の前記炭化ケイ素ウェハの表面にエッチピットが現れ、任意の2つの前記エッチピットの幾何学的中心間の距離が80ミクロン未満である転位凝集である。
【0069】
種結晶の成長中に転位は種結晶から継承されるため、らせん転位及び刃状転位の大部分は、c方向に沿っており、転位線とウェハの表面の交点はエッチング後に拡大し、エッチピットになり、種結晶を小さなオフアングル(炭化ケイ素単結晶ウェハの表面の法線とc方向との角度)で成長させる場合、基本的な移動距離が小さく、0度のエッチピットがより明確になる;一方、基底面転位は、c面内を移動し、転位線は、0度ウェハの表面と交差しないため、オフアングル表面でエッチングされる。従って、らせん転位及び刃状転位自体並びにそれらの間の転位凝集は、基本的に継承されるが、基底面転位に関連する転位凝集は通常、成長中に継承されない。本発明の以下の実施例では、らせん転位及び刃状転位は、c方向との角度範囲が0度~8度(端点値を含む)である表面からエッチングされる;統計の便宜のために、基底面転位は、c方向との角度の範囲が1度~8度(端点値を含む)に限定される表面からエッチングされる。
【0070】
前記炭化ケイ素単結晶ウェハの表面は、その法線とc方向との角度範囲が端点値を含めて0度~8度であり;前記炭化ケイ素単結晶ウェハ上の凝集らせん転位密度は、20個/cm2未満である。本発明の他の実施例では、炭化ケイ素ウェハの性能を向上させるために、任意の2つの前記エッチピットの幾何学的中心間の距離が60ミクロン未満である転位凝集を凝集らせん転位として定義することもできる。又は、より好ましくは、任意の2つの前記エッチピットの幾何学的中心間の距離が40ミクロン未満である転位凝集を凝集らせん転位として定義する。一方、凝集らせん転位密度は、10個/cm2未満に制限することもでき、他の実施例では、より好ましくは、5個/cm2未満、又は2個/cm2未満、1個/cm2未満、又は0.5個/cm2未満、0.1個/cm2未満であってもよい。凝集らせん転位密度が小さいほど、転位密集性が悪くなるため、転位密度が高い場合でも、炭化ケイ素ベースのデバイスの製品歩留まりをさらに向上させることができる。
【0071】
本発明の別の実施例では、凝集転位は、凝集らせん転位であってもよい;具体的には、
図3に示すように、前記凝集らせん転位30は、溶融KOHエッチング後の前記炭化ケイ素ウェハの表面にエッチピットが現れ、任意の2つの前記エッチピットの幾何学的中心間の距離が60ミクロン未満である転位凝集である。前記炭化ケイ素単結晶ウェハの表面は、c方向のオフアングル範囲が端点値を含めて0度~8度であり;前記炭化ケイ素単結晶ウェハ上の凝集らせん転位密度は、10個/cm
2未満である。
【0072】
本発明の別の実施例では、凝集転位は、凝集基底面転位であってもよい;具体的には、
図4に示すように、前記凝集基底面転位40は、溶融KOHエッチング後の前記炭化ケイ素ウェハの表面にエッチピットが現れ、任意の2つの前記エッチピットの幾何学的中心間の距離が40ミクロン未満である転位凝集である。
図4から分かるように、基底面転位は、らせん転位よりも直径又はサイズが小さい。従って、本実施例では、任意の2つの前記エッチピットの幾何学的中心間の距離が40ミクロン未満である転位凝集は凝集基底面転位であると定義される。
【0073】
前記炭化ケイ素単結晶ウェハの表面は、c方向のオフアングル範囲が端点値を含めて2度~8度であり;前記炭化ケイ素単結晶ウェハ上の凝集基底面転位密度は、50個/cm2未満である。基底面転位は、らせん転位よりも数が多いため、本実施例では、凝集基底面転位密度は、50個/cm2未満に限定される。凝集らせん転位密度よりわずかに大きいが、いずれも発明者による多くの実験により検証されており、炭化ケイ素歩留まりの制限条件を向上させることができる。
【0074】
本発明の他の実施形態では、炭化ケイ素ウェハの性能を向上させるために、任意の2つの前記エッチピットの幾何学的中心間の距離が30ミクロン未満である転位凝集を凝集基底面転位として定義することもできる。又は、より好ましくは、任意の2つの前記エッチピットの幾何学的中心間の距離が20ミクロン未満である転位凝集を凝集基底面転位として定義する。一方、凝集基底面転位密度は、20個/cm2未満に制限されることもでき、他の実施形態では、より好ましくは、10個/cm2未満、又は5個/cm2未満、2個/cm2未満、又は1個/cm2未満、0.5個/cm2未満であってもよい。凝集基底面転位密度が小さいほど、転位密集性が悪くなるため、転位密度が高い場合でも、炭化ケイ素ウェハの歩留まりをさらに向上させることができる。
【0075】
本発明の別の実施形態では、凝集転位は、凝集刃状転位であってもよい;具体的には、
図5に示すように、前記凝集刃状転位50は、溶融KOHエッチング後の前記炭化ケイ素ウェハの表面にエッチピットが現れ、任意の2つの前記エッチピットの幾何学的中心間の距離が60ミクロン未満である転位凝集である。
図5から分かるように、刃状転位は、らせん転位よりも直径又はサイズが小さい。従って、本実施例では、任意の2つの前記エッチピットの幾何学的中心間の距離が60ミクロン未満である転位凝集は凝集刃状転位であると定義される。
【0076】
前記炭化ケイ素単結晶ウェハの表面は、c方向のオフアングル範囲が端点値を含めて0度~8度であり;前記炭化ケイ素単結晶ウェハ上の凝集刃状転位密度は、200個/cm2未満である。刃状転位は、らせん転位よりも数が多いため、本実施例では、凝集刃状転位密度は、200個/cm2未満に限定される。凝集らせん転位密度よりわずかに大きいが、いずれも発明者による多くの実験により検証されており、炭化ケイ素歩留まりの制限条件を向上させることができる。
【0077】
本発明の他の実施形態では、炭化ケイ素ウェハの性能を向上させるために、任意の2つの前記エッチピットの幾何学的中心間の距離が50ミクロン未満である転位凝集を凝集刃状転位として定義することもできる。又は、より好ましくは、任意の2つの前記エッチピットの幾何学的中心間の距離が40ミクロン未満である転位凝集を凝集刃状転位として定義する。一方、凝集刃状転位密度は、100個/cm2未満に制限されることもでき、他の実施形態では、より好ましくは、50個/cm2未満、又は20個/cm2未満、10個/cm2未満、又は5個/cm2未満、1個/cm2未満であってもよい。凝集刃状転位密度が小さいほど、転位密集性が悪くなり、転位密度が高い場合でも、炭化ケイ素ウェハの歩留まりをさらに向上させることができる。
【0078】
また、炭化ケイ素単結晶ウェハでは、様々なタイプの転位は、凝集複合転位を形成する可能性もあり、本実施例では、凝集転位は、凝集複合転位であってもよい;具体的には、
図6~
図11に示すように、前記凝集複合転位Aは、溶融KOHエッチング後の前記炭化ケイ素ウェハの表面にエッチピットが現れ、らせん転位に対応するエッチピットと任意の1つの刃状転位に対応するエッチピットとの幾何学的中心間の距離が60ミクロン未満である転位凝集である。もちろん、他の実施形態では、らせん転位に対応するエッチピットと任意の1つの基底面転位に対応するエッチピットとの幾何学的中心間の距離があるミクロン未満である場合の転位凝集、及び基底面転位に対応するエッチピットと任意の1つの刃状転位に対応するエッチピットとの幾何学的中心間の距離があるミクロン未満である場合の転位凝集、又はらせん転位に対応するエッチピットと任意の1つの基底面転位に対応するエッチピットとの幾何学的中心又は任意の1つの刃状転位に対応するエッチピットとの幾何学的中心間の距離があるミクロン未満である場合の転位凝集などの他の複合転位が含まれることもでき、即ち、任意の2つ以上の転位が凝集することは、凝集複合転位と呼ばれることもできる。本実施例では、これが限定されない。本実施例では、
図6~
図11において、らせん転位と基底面転位との凝集を凝集複合転位Bと呼び、基底面転位と刃状転位との凝集を凝集複合転位C、らせん転位、刃状転位及び基底面転位の3つの凝集をDと表記する。
【0079】
前記炭化ケイ素単結晶ウェハの表面は、その法線方向とc方向との角度範囲が端点値を含めて2度~8度であり;前記炭化ケイ素単結晶ウェハ上の凝集複合転位密度は、50個/cm2未満である。本発明の他の実施形態では、炭化ケイ素ウェハの性能を向上させるために、らせん転位に対応するエッチピットと任意の1つの刃状転位に対応するエッチピットとの幾何学的中心間の距離が50ミクロン未満である転位凝集を凝集複合転位として定義することができる。又は、より好ましくは、らせん転位に対応するエッチピットと任意の1つの刃状転位に対応するエッチピットとの幾何学的中心間の距離が40ミクロン未満である転位凝集を凝集複合転位として定義する。一方、凝集複合転位密度は、50個/cm2未満に制限されることができ、他の実施形態では、より好ましくは、20個/cm2未満、又は10個/cm2未満、5個/cm2未満、2個/cm2未満であってもよい。凝集複合転位密度が小さいほど、転位密集性が悪くなるため、転位密度が低い場合は、炭化ケイ素ウェハの歩留まりをさらに向上させることができる。
【0080】
本発明で提供される炭化ケイ素単結晶ウェハの表面は、その法線方向とc方向との角度が0度~8度の間である表面であり、この炭化ケイ素単結晶ウェハ上の凝集転位は、300個/cm2未満であり、前記凝集転位とは、溶融KOHエッチング後に得られたエッチピットのうち、任意の2つのエッチピットの幾何学的中心間の距離が80ミクロン未満である転位凝集を指す。転位密度が低い場合は、凝集転位密度も小さくなることにより、デバイスの歩留まりが向上した。
【0081】
上記の実施例で提供される炭化ケイ素ウェハ又は単結晶基板に基づいて、本発明は、さらに、上記実施例で提供される炭化ケイ素ウェハ又は単結晶基板を用いて製造して形成される半導体デバイスを提供し、炭化ケイ素ウェハの歩留まりが向上することにより、対応する半導体デバイスの性能及び歩留まりも向上することができる。
【0082】
また、本発明の実施形態は、さらに、炭化ケイ素結晶の製造方法を提供し、
図12を参照して、
図12は、本発明の実施形態で提供される炭化ケイ素結晶の製造方法のフローチャートであり;前記炭化ケイ素結晶の製造方法は、以下を含む:
【0083】
S101:炭化ケイ素原料を充填したるつぼを種結晶のないグラファイト蓋でキャッピングして前処理を行うこと;
【0084】
なお、炭化ケイ素成長の初期段階では、伸長界面に炭素被覆物、ポリタイポイドなどの様々な欠陥が発生し、発明者は、多くのメカニズムの研究と分析により、被覆物欠陥位置に凝集らせん転位などが形成されやすく、ポリタイポイド欠陥が凝集基底面転位、凝集刃状転位などを招くことを見出した。
【0085】
一方、発明者は、多くの試験研究により、原料を充填したるつぼを一緒に前処理する方法を提案し、2000℃~2200℃の高温であり、圧力は10Paより低く、同時に真空は常にオンであり、処理時間は1時間~10時間である。一方、原料の表面、るつぼ内の不純物及び揮発性成分を処理し、不純物を放置して初期伸長時に結晶中に被覆して介在物を形成する。もう一方、SiC原料を炭化し、低圧条件下で、昇華したシリコンリッチ成分が優先的に揮発し、真空ポンプにより速やかに引き抜き、SiC原料表面に均一なグラフェン又は炭素層を形成する。このようにして、新鮮な炭化ケイ素原料を用いて直接成長する場合、初期段階でのシリコンリッチ成分の濃度が高すぎると、ケイ素の被覆介在が発生し、凝集転位、特に凝集らせん転位が発生することを回避する。
【0086】
S102:凝集転位密度範囲が200個/cm2未満である種結晶を提供すること;
【0087】
転位は種結晶から継承されるため、らせん転位及び刃状転位の大部分は、c方向に沿っており、種結晶を小さなオフアングルで成長させるときに基本移動距離が小さく、基底面転位は、C面内を移動するため、らせん転位及び刃状転位自体並びにそれらの間の転位凝集は、基本的に継承されるが、基底面転位に関連する転位凝集は成長中に変動する。
【0088】
従って、本実施例では、転位の発生を低減するために、転位凝集密度の低い種結晶を選択し、種結晶の凝集転位密度範囲は200個/cm2未満、さらに種結晶の凝集転位密度範囲は100個/cm2未満、さらに種結晶の凝集転位密度範囲は50個/cm2未満、さらに種結晶の凝集転位密度範囲は10個/cm2未満、さらに種結晶の凝集転位密度範囲は5個/cm2未満、さらに種結晶の凝集転位密度範囲は1個/cm2未満、さらに種結晶の凝集転位密度範囲は0.5個/cm2未満である。
【0089】
より任意選択的に、種結晶の凝集らせん転位密度範囲は10個/cm2未満、種結晶の凝集らせん転位密度範囲は5個/cm2未満、種結晶の凝集らせん転位密度範囲は1個/cm2未満、種結晶の凝集らせん転位密度範囲は0.5個/cm2未満である。
【0090】
S103:前処理されたグラファイト蓋を前記種結晶を含むグラファイト蓋と交換し、前処理されたるつぼに取り付けること;
【0091】
前処理されて炉から出た後、種結晶のない前処理されたるつぼ蓋を、SiC種結晶を装着した蓋と交換し、再び組み立て後に炉を取り付けて成長させる。
【0092】
S104:炭化ケイ素結晶を成長させること;
【0093】
成長過程では、圧力と温度が安定するように、温度変動は2℃未満、圧力変動は0.2Pa未満であるように制御する必要があり、温度場の変動により成長界面が不安定になり、凝集転位、特に凝集基底面転位が発生することを回避し、基底面転位は温度変動の影響を大きく受ける。
【0094】
具体的には、炭化ケイ素結晶を成長させるには、凝集転位密度範囲が200個/cm2未満である種結晶を含むグラファイト蓋を用いて、成長温度範囲を2200℃~2300℃、圧力範囲を50Pa~4000Pa、温度変動を2℃未満、圧力変動を0.2Pa未満に制御する成長条件で炭化ケイ素結晶を成長させることができる。
【0095】
任意選択的に、成長温度を2300℃、圧力を2000Pa、温度変動を2℃未満、圧力変動を0.2Pa未満に制御する成長条件で炭化ケイ素結晶を成長させる。
【0096】
S105:その場で焼鈍すること。
【0097】
本実施例では、温度を結晶成長温度より50℃~200℃、好ましくは100℃~150℃に上げ、圧力を2万Paより高くし、焼鈍を10時間~100時間、好ましくは20時間~30時間行った後、徐々に温度を下げて冷却する。
【0098】
多数の研究により、凝集転位、特に転位移動を促進する凝集刃状転位を効果的に修復するには、結晶焼鈍温度を結晶成長温度よりも高くする必要があり、凝集転位は、相互間の距離が近いため、移動後、融合して消失したり、結晶境界に移動したりして、転位凝集を低減する可能性がある。一方、結晶成長温度に近い温度で焼鈍すると、転位はこの温度で安定化し、転位凝集を効果的に低減することは困難である。逆に、温度が高すぎると、より高い圧力でも、炭化ケイ素は昇華して分解しやすくなる。
【0099】
本実施例では、任意選択的に、温度を前記成長より50℃~200℃高い温度に上げ、圧力を20000Paより高くし、焼鈍を10時間~100時間行う。
【0100】
同じ発明の概念に基づいて、本発明の実施形態は、さらに、上記の方法で製造して形成される炭化ケイ素結晶を提供し、上記の方法で炭化ケイ素結晶を形成した後、さらに、前記炭化ケイ素結晶を切断し、研磨してポリッシングし、炭化ケイ素単結晶ウェハを形成することを含み、前記炭化ケイ素単結晶ウェハは、低転位凝集を有する炭化ケイ素単結晶ウェハである。
【0101】
本発明の実施例では、低凝集転位の製造方法を創造的に提案し、原料の前処理を制御し、焼鈍温度を上昇させるなどの方法により、転位凝集問題を効果的に解決し、製品の品質を向上させ、凝集転位の低い炭化ケイ素単結晶基板製品を創造的に開発する。
【0102】
本発明で提供される凝集転位の低い炭化ケイ素ウェハの効果を説明するために、本発明では以下の比較試験が実施される。
【0103】
本実施例では、物理的蒸気輸送法によりSiC結晶を成長させ、
図13に示すように、物理的蒸気輸送法によりSiC結晶を成長させる成長チャンバーの構造概略図であり、この成長チャンバーは、グラファイト蓋1、グラファイト坩堝2、SiC原料3、バインダー4、種結晶5及び成長結晶6を含む。
【0104】
実施例1-炭化ケイ素原料を充填したるつぼを種結晶のないグラファイト蓋でキャッピングして、炭化ケイ素単結晶炉に入れ、2200度の高温で、圧力は0.1Paより低く、同時に真空ポンプは常時オンで、処理時間は5時間で、炉を停止して冷却した後に取り出し、炭化ケイ素原料を充填したのるつぼを秤量したところ、重量が3%減少し、原料とるつぼの表面の不純物など、シリコンリッチ成分が効果的に処理されていることが分かった。
【0105】
凝集転位密度の少いSiCシート4度6インチの種結晶を選び、種結晶を蓋に固定した。種結晶のないグラファイト蓋を交換し、種結晶のある蓋を取り付け、組み立て後に再び炉を取り付けて成長させ、温度は2300度、変動は1度未満、圧力は2000Pa、変動は0.1Pa未満であった。成長終了後、温度を結晶成長温度より180度高く上げ、圧力を6万Paにし、焼鈍を50時間行った後、徐々温度を下げて冷却した。得られた結晶を厚み6インチ350ミクロンのSiCウェハに切断して加工し、KOHエッチングを行い、様々な凝集転位の数を検出し、その密度を算出したところ、凝集転位密度が157個/cm2、凝集らせん転位密度が1.3個/cm2、凝集基底面転位密度が3.5個/cm2、凝集刃状転位密度が48個/cm2、凝集複合転位A密度が3.2個/cm2であることを示した。
【0106】
比較例1-従来の方法により成長させ、炭化ケイ素原料を充填したるつぼを、4度6インチの種結晶を有する蓋と直接に組み立てた;そして、炉を取り付けて成長させ、温度は2300度、長時間の成長過程で温度変動は最大12度に達し、圧力は2000Pa、長時間の成長過程で圧力変動は最大8Paに達した。成長終了後、そのまま2300度の一定温度で5時間焼鈍し、圧力は6万Paで、そして同様に徐々に温度を下げて冷却した。最終的に6インチ結晶を得、厚み6インチ350ミクロンのウェハに切断して加工し、KOHエッチングを行い、様々な凝集転位の数を検出し、その密度を算出したところ、凝集転位密度が832個/cm2、凝集らせん転位密度が23個/cm2、凝集基底面転位密度が68個/cm2、凝集刃状転位密度が366個/cm2、凝集複合転位A密度が82個/cm2であることを示した。
【0107】
次に、実施例1及び比較例1の6インチ製品をそれぞれ10枚ずつ、同バッチのテープアウト、エピタキシャル、デバイスとした結果、実施例1バッチのデバイスの平均歩留まりが比較例1の歩留まりより19%高いことを示した。
【0108】
本発明で提供される製品が、炭化ケイ素単結晶製品の品質を大幅に向上させ、先行技術と比較して極めて大きな技術的利点を有することを示した。また、デバイス使用により、デバイスの歩留まりが大幅に向上し、出力が増加し、大きな経済的価値があることを示した。
【0109】
なお、本明細書における各実施例は、漸進的に記載されており、各実施例は重点説明の都是与他の実施例との違いに焦点を合わせており、各実施例の間の同じ及び類似な部分について互いに参照すればよい。
【0110】
なお、本明細書において、第1及び第2などの関係用語は、あるエンティティ又は操作を別のエンティティ又は操作と区別するためにのみ使用され、これらのエンティティ又は操作の間に任意のこのような実際の関係又は順序があることを必ずしも要求又は暗示するものではない。さらに、「含む」、「包含」という用語又はそれらの他の任意の変形は、一連の要素を含む物品又は装置がそれらの要素だけでなく、明確に挙げられていない他の要素、又はこのような物品又は装置に固有の要素も含むように、非排他的な包含を意味する。それ以上の制限がない場合、「……を1つ含む」という文によって限定される要素は、上記の要素を含む物品又は装置に他の同じ要素も存在することを排除するものではない。
【0111】
開示された実施例の上記の説明は、当業者が本発明を達成又は使用することが可能にする。これらの実施例に対する様々な修正は、当業者にとって容易であり、本明細書で定義される一般的な原理は、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、他の実施例で達成することができる。従って、本発明は、本明細書に示される実施例に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示される原理および新規な特徴と一致する最も広い範囲に適合するものとする。
【国際調査報告】