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特表2023-512951PD-L1タンパク質が含まれた融合タンパク質およびその用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】PD-L1タンパク質が含まれた融合タンパク質およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230323BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230323BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230323BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230323BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230323BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230323BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230323BHJP
   A61P 27/12 20060101ALI20230323BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230323BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230323BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230323BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230323BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230323BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230323BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20230323BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230323BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230323BHJP
   A61P 5/14 20060101ALI20230323BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20230323BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230323BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230323BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230323BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20230323BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20230323BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230323BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230323BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20230323BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230323BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20230323BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20230323BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K19/00
A61P27/12
A61P27/02
A61P9/00
A61P9/10
A61P29/00 101
A61P21/00
A61P17/00
A61P7/06
A61P1/16
A61P37/06
A61P29/00
A61P5/14
A61P21/04
A61P1/04
A61P25/00
A61P19/02
A61P17/06
A61P17/14
A61P3/10
A61P37/02
A61K38/17
A61K39/395 Y
C07K16/00
C07K16/28
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544089
(86)(22)【出願日】2021-01-06
(85)【翻訳文提出日】2022-07-20
(86)【国際出願番号】 KR2021000123
(87)【国際公開番号】W WO2021149945
(87)【国際公開日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】10-2020-0008991
(32)【優先日】2020-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】516351304
【氏名又は名称】ジェネクシン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】GENEXINE, INC.
【住所又は居所原語表記】172 Magokjungang-ro, Gangseo-gu, Seoul 07789 REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】スン, ヨン チョル
(72)【発明者】
【氏名】シン, ウン チュ
(72)【発明者】
【氏名】ファン, ユリ
(72)【発明者】
【氏名】リ, スン ヒ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA88X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA02
4C084BA22
4C084BA41
4C084CA53
4C084DC50
4C084NA14
4C084ZA011
4C084ZA012
4C084ZA331
4C084ZA332
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZA401
4C084ZA402
4C084ZA451
4C084ZA452
4C084ZA551
4C084ZA552
4C084ZA681
4C084ZA682
4C084ZA751
4C084ZA752
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZA921
4C084ZA922
4C084ZA941
4C084ZA942
4C084ZA961
4C084ZA962
4C084ZB071
4C084ZB072
4C084ZB081
4C084ZB082
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB151
4C084ZB152
4C084ZC211
4C084ZC212
4C084ZC351
4C084ZC352
4C085AA33
4C085BB36
4C085BB42
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、PD-L1タンパク質および改変された免疫グロブリンFc領域を含む融合タンパク質およびその用途に関し、前記融合タンパク質は、既存の融合タンパク質に比べて純度および生産収率が顕著に高く、PD-1に対する結合能が高く、活性化したT細胞の増殖を減少させ、活性化したT細胞によって生成されるサイトカインの生成を抑制し、T細胞またはマクロファージの組織への浸潤を抑制する効果があるので、免疫疾患の治療に有用に使用できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PD-L1(programmed cell death-ligand 1)タンパク質および改変された免疫グロブリンFc領域を含む融合タンパク質。
【請求項2】
前記PD-L1タンパク質は、PD-L1タンパク質の細胞外ドメイン(extracellular domain)またはその断片である、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記PD-L1タンパク質は、配列番号1~配列番号6からなるグループから選ばれるアミノ酸配列からなるものであるか、配列番号1~配列番号6からなるグループから選ばれるアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するポリペプチドである、請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記PD-L1タンパク質は、改変された免疫グロブリンのFc領域のN末端またはC末端に融合した、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記PD-L1タンパク質は、改変された免疫グロブリンのFc領域とリンカーペプチドで連結された、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記リンカーペプチドは、GGGSGGS(配列番号10)、AAGSGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号17)、GGSGG(配列番号18)、GGSGGSGGS(配列番号19)、GGGSGG(配列番号20)、(G4S)n(nは、1~10の整数)、(GGS)n(nは、1~10の整数)、(GS)n(nは、1~10の整数)、(GSSGGS)n(nは、1~10の整数)、KESGSVSSEQLAQFRSLD(配列番号21)、EGKSSGSGSESKST(配列番号22)、GSAGSAAGSGEF(配列番号23)、(EAAAK)n(nは、1~10の整数)、CRRRRRREAEAC(配列番号24)、A(EAAAK)4ALEA(EAAAK)4A、GGGGGGGG(配列番号25)、GGGGGG(配列番号26)、AEAAAKEAAAAKA(配列番号27)、PAPAP(配列番号28)、(Ala-Pro)n(nは、1~10の整数)、VSQTSKLTRAETVFPDV(配列番号29)、PLGLWA(配列番号30)、TRHRQPRGWE(配列番号31)、AGNRVRRSVG(配列番号32)、RRRRRRRR(配列番号33)、GFLG(配列番号34)およびGSSGGSGSSGGSGGGDEADGSRGSQKAGVDE(配列番号35)からなるグループから選ばれるいずれか一つ以上のアミノ酸配列からなる、請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記リンカーペプチドは、GGGSGGS(配列番号10)のアミノ酸配列からなる、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記改変された免疫グロブリンのFc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgDおよびIgG4のFc領域のうちいずれか一つまたはこれらの組み合わせである、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
前記改変された免疫グロブリンのFc領域は、N末端からC末端方向にヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、
前記ヒンジ領域は、ヒトIgG1ヒンジ領域を含み、
前記CH2ドメインは、ヒトIgDとヒトIgG4のCH2ドメインのアミノ酸残基の部分を含み、
前記CH3ドメインは、ヒトIgG4のCH3ドメインのアミノ酸残基の部分を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
前記改変された免疫グロブリンのFc領域は、配列番号11のアミノ酸配列からなる、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
前記改変された免疫グロブリンのFc領域は、配列番号16のアミノ酸配列からなるIgG1ヒンジ領域を含む、請求項10に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
前記融合タンパク質は、二量体(dimerization)を形成する、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
前記融合タンパク質は、配列番号12または配列番号13のアミノ酸配列からなる、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする核酸分子。
【請求項15】
請求項14に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項16】
請求項15に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項17】
請求項1~13のいずれか一項に記載の融合タンパク質を有効成分として含む免疫疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項18】
前記組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含む、請求項17に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
前記免疫疾患は、自己免疫疾患および炎症性疾患からなる群から選ばれる、請求項17に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
前記自己免疫疾患は、1型糖尿病、円形脱毛症(alopecia areata)、抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid antibody syndrome)、関節リウマチ(rheumatoid arthritis)、乾癬(psoriasis)、乾癬性関節炎(psoriatic arthritis)、多発性硬化症(multiple sclerosis)、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus)、炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease)、アディソン病(Addison’s disease)、グレーブス病(Graves’ disease)、ショグレン症候群(Sjogren’s syndrome)、ギラン・バレー症候群(Guillain-Barre syndrome)、橋本甲状腺炎(Hashimoto’s thyroiditis)、重症筋無力症(Myasthenia gravis)、炎症性筋疾患(inflammatory myophathy)、自己免疫性血管炎(autoimmune vasculitis)、自己免疫性肝炎(autoimmune hepatitis)、溶血性貧血(hemolytic anemia)、特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura)、原発性胆汁性肝硬変(primary biliary cirrhosis)、皮膚硬化症(scleroderma)、白斑症(vitiligo)、悪性貧血(pernicious anemia)およびセリアック病(celiac disease)からなる群から選ばれる、請求項19に記載の薬学的組成物。
【請求項21】
前記炎症性疾患は、関節炎(arthritis)、強直性脊椎炎(ankylosing spondylitis)、反応性関節炎(reactive arthritis)、ライター症候群(Reiter’s syndrome)、結晶性関節症(crystal arthropathies)、ライム病(Lyme disease)、リウマチ性多発性筋痛(polymyalgia rheumatica)、全身性硬化症(systemic sclerosis)、多発性筋炎(polymyositis)、皮膚筋炎(dermatomyositis)、結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa)、ウェゲナー肉芽腫症(Wegener’s granulomatosis)、チャーグ・ストラウス症候群(Churg-Strauss syndrome)、サルコイドーシス(sarcoidosis)、アテローム硬化性血管疾患(atherosclerotic vascular disease)、アテローム性動脈硬化症(atherosclerosis)、虚血性心臓疾患(ischaemic heart disease)、心筋梗塞(myocardial infarction)、脳卒中(stroke)、末梢血管疾患(peripheral vascular disease)、ブドウ膜炎(uveitis)、角膜疾患(corneal disease)、虹彩炎(iritis)、虹彩毛様体炎(iridocyclitis)および白内障(cataracts)からなる群から選ばれる、請求項19に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PD-L1タンパク質および改変された免疫グロブリンFc領域を含む融合タンパク質およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトPD-L1(programmed cell death-ligand 1)は、PD-1(programmed death-1)に対するリガンドであり、Tリンパ球、Bリンパ球、樹状細胞(Dendritic cell)、またはマクロファージのような造血細胞だけでなく、ケラチン細胞、膵島細胞、肝細胞などのような非造血細胞でも発現する1回膜貫通タンパク質である。一方、T細胞が活性化するためには、T細胞受容体(receptor)と抗原の1次シグナル刺激以外に2次シグナル刺激(co-stimulation)が同時に必要である。ここで、二つのうち一つのシグナルでもなければ、T細胞は不活性化(anergy)状態となる。PD-1(programmed death-1)は、T細胞の2次シグナル活性を調節する2次シグナル刺激因子(immune check pointまたはimmune modulator)であり、活性化したT細胞(CD8および/またはCD4)や樹状細胞(dendritic cell)のように細胞表面で発現するPD-L1(programmed cell death ligand 1)またはB7.1(CD80)などと結合することによって、T細胞の増殖を抑制し、サイトカイン(cytokine)発現を減少させるなどT細胞の機能を抑制する作用ができる。
【0003】
PD-1:PD-L1間の結合は、制御性T細胞の活性を誘導することが知られているが(Immunol Rev.2010 Jul;236:219-42)、このようなPD-L1の免疫寛容誘導機能を用いてIgG1のFcが融合したPD-L1タンパク質(PD-L1-Ig)をCIA(collagen-induced arthritis)マウスモデルに注入したとき、関節炎症状が緩和されることが観察されたことがある(Rheumatol Int.2011 Apr;31(4):513-9)。PD-1は、活性化したT細胞で発現するので、PD-L1タンパク質は、自己免疫疾患だけでなく、臓器移植における免疫寛容誘導にあたって活性免疫細胞を特異的に標的な治療剤として有用に使用できることが予測される。
【0004】
現在までPD-1/PD-L1細胞シグナル体系に対する治療剤は、阻害剤(antagonist)として免疫寛容を阻害(tolerance breaking)してT細胞活性を増加させる方向に開発されてきた。しかしながら、活性剤(agonist)を利用したT細胞免疫寛容誘導基盤の免疫治療剤は、現在まで開発されていないのが現状である。これは、PD-1/PD-L1阻害剤(antagonist)の場合、抗体融合技術を用いて容易に開発できるが、可溶性(soluble)形態のタンパク質として開発されなければならないPD-1/PD-L1シグナル活性剤(agonist)は、技術的に開発が容易でないためである。
【0005】
免疫グロブリン(immunoglobulin,Ig)のFc融合技術は、タンパク質治療剤の体内半減期を増加させるための技術の一つである。しかしながら、既存のIg融合技術に用いられるIgG1の場合、体内で抗体依存性細胞毒性(antibody dependent cell-mediated cytotoxicity,ADCC)および補体依存性毒性(complement dependent cytotoxicity,CDC)を起こすので、自己免疫疾患治療剤または臓器移植における免疫寛容誘導剤としてのIg融合タンパク質は、炎症反応を抑制する役割を行わず、かえって炎症を悪化させる問題点がある。
これによって、PD-L1の半減期を既存のIg融合タンパク質治療剤と類似に維持しながらも、ADCCおよびCDCを誘発しないようにすることによって、免疫阻害剤としてのPD-L1の治療効能を高める技術開発が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Immunol Rev.2010 Jul;236:219-42
【非特許文献2】Rheumatol Int.2011 Apr;31(4):513-9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、PD-L1(programmed cell death-ligand 1)タンパク質および改変された免疫グロブリンFc領域を含む融合タンパク質を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、前記融合タンパク質をコードする核酸分子を提供することにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、前記核酸分子を含む発現ベクターを提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、前記発現ベクターを含む宿主細胞を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、PD-L1タンパク質および改変された免疫グロブリンFc領域が含まれた融合タンパク質を有効成分として含む免疫疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、免疫疾患の予防または治療効果を有する医薬製剤を生産するためのPD-L1タンパク質および改変された免疫グロブリンFc領域が含まれた融合タンパク質の使用を提供することにある。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、PD-L1タンパク質および改変された免疫グロブリンFc領域が含まれた融合タンパク質と薬学的に許容可能な担体を個体に投与する段階を含む免疫疾患の予防または治療方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明は、PD-L1タンパク質および改変された免疫グロブリンFc領域を含む融合タンパク質を提供する。
【0015】
また、本発明は、前記融合タンパク質をコードする核酸分子を提供する。
【0016】
また、本発明は、前記核酸分子を含む発現ベクターを提供する。
【0017】
また、本発明は、前記発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0018】
また、本発明は、PD-L1タンパク質および改変された免疫グロブリンFc領域が含まれた融合タンパク質を有効成分として含む免疫疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0019】
また、本発明は、免疫疾患の予防または治療効果を有する医薬製剤を生産するためのPD-L1タンパク質および改変された免疫グロブリンFc領域が含まれた融合タンパク質の使用を提供する。
【0020】
また、本発明は、PD-L1タンパク質および改変された免疫グロブリンFc領域が含まれた融合タンパク質と薬学的に許容可能な担体を個体に投与する段階を含む免疫疾患の予防または治療方法を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明による融合タンパク質は、PD-L1タンパク質および改変された免疫グロブリンFc領域がGS配列とIgG1ヒンジからなる配列で連結された融合タンパク質であって、GS配列とIgG1ヒンジからなる配列で連結されることによって、二量体を誘導しつつ柔軟性を維持できるように製造されたという特徴がある。また、本発明による融合タンパク質は、既存の融合タンパク質に比べて純度および生産収率が顕著に高く、PD-1に対する結合能が高く、活性化したT細胞の増殖を減少させ、活性化したT細胞によって生成されるサイトカインの生成を抑制し、T細胞またはマクロファージの組織への浸潤を抑制する効果があるので、免疫疾患の治療に有用に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、PD-L1タンパク質および改変された免疫グロブリンFc領域を含む融合タンパク質(PD-L1-hyFc21融合タンパク質)の構造を示す図である。
図2A図2aは、PD-L1-hyFc21融合タンパク質を発現する細胞の時間別細胞濃度を分析した結果であり、図2bは、PD-L1-hyFc21融合タンパク質を発現する細胞の細胞培養液でSE-HPLCを通じて目的タンパク質の純度を分析した結果である。
図2B】同上。
図3A図3aは、PD-L1-hyFc5融合タンパク質を発現する細胞の時間別細胞濃度を分析した結果であり、図3bは、PD-L1-hyFc5融合タンパク質を発現する細胞の細胞培養液でSE-HPLCを通じて目的タンパク質の純度を分析した結果である。
図3B】同上。
図4図4は、精製されたPD-L1-hyFc21またはPD-L1-hyFc5融合タンパク質のSDS-PAGE分析結果である。
図5A図5aは、精製されたPD-L1-hyFc21融合タンパク質のSE-HPLC分析結果であり、図5bは、精製されたPD-L1-hyFc5タンパク質のSE-HPLC分析結果である。
図5B】同上。
図6図6は、精製されたPD-L1-hyFc21またはPD-L1-hyFc5融合タンパク質のGel IEF分析結果である。
図7図7は、精製されたPD-L1-hyFc21またはPD-L1-hyFc5融合タンパク質の示差走査蛍光法(DSF)分析結果である。
図8図8は、PD-L1-hyFc21またはPD-L1-hyFc5融合タンパク質のPD-1に対する結合能(binding affinity)を比較した結果である。
図9図9は、PD-L1-hyFc21またはPD-L1-hyFc5融合タンパク質による混合リンパ球反応抑制能を比較した結果である。
図10A図10aは、PD-L1-hyFc21またはPD-L1-hyFc5融合タンパク質による活性化したヒトCD4 T細胞増殖抑制能を比較した結果であり、図10bは、活性化したヒトCD4 T細胞のサイトカイン発現抑制能を比較した結果である。
図10B】同上。
図11図11は、PD-L1-hyFc21またはPD-L1-hyFc5融合タンパク質による活性化したマウスCD4 T細胞のサイトカイン発現抑制能を比較した結果である。
図12A図12aは、IMQ誘導乾癬マウスモデルにPD-L1-hyFc21融合タンパク質を皮下投与した後、マウスの耳の厚さを測定した結果であり、図12bは、IMQ誘導乾癬マウスモデルでPD-L1-hyFc21融合タンパク質を静脈投与した後、マウスの耳の厚さを測定した結果である。
図12B】同上。
図13A図13aは、rtTA-Peli1乾癬マウスモデルにPD-L1-hyFc21融合タンパク質を皮下投与した後、皮膚上皮組織の変化をH&E染色を通じて確認した結果であり、図13bは、皮膚上皮層の厚さを測定した結果である。
図13B】同上。
図14図14は、乾癬が誘発されていない対照群(rtTA)または乾癬が誘発されたrtTA-Peli1乾癬マウスモデルでT細胞およびマクロファージの浸潤程度を免疫蛍光分析法を通じて示した結果である(左パネル:rtTA;および右パネル:rtTA-Peli1)。
図15図15は、rtTA-Peli1乾癬マウスモデルにPD-L1-hyFc21融合タンパク質を皮下投与した後、皮膚組織に浸潤しているT細胞およびマクロファージの数を測定した結果である。
図16図16は、rtTA-Peli1乾癬マウスモデルにPD-L1-hyFc21融合タンパク質を皮下投与した後、皮膚組織でK14ケラチン生成細胞の数を測定した結果である。
図17図17は、rtTA-Peli1乾癬マウスモデルにPD-L1-hyFc21融合タンパク質を静脈投与した後、皮膚上皮層の変化をスコア指数で分析した結果である。
図18図18は、rtTA-Peli1乾癬マウスモデルにPD-L1-hyFc21融合タンパク質を静脈投与した後、腹部の皮膚の厚さを測定した結果である。
図19A図19aは、rtTA-Peli1乾癬マウスモデルにPD-L1-hyFc21融合タンパク質を静脈投与した後、皮膚上皮組織の変化をH&E染色を通じて確認した結果であり、図19bは、皮膚上皮層の厚さを測定した結果である。
図19B】同上。
図20図20は、rtTA-Peli1乾癬マウスモデルにPD-L1-hyFc21融合タンパク質を静脈投与した後、qRT-PCRを通じてTh17細胞関連遺伝子(IL-17AおよびIL-22)および先天性免疫細胞関連遺伝子(IL-1βおよびIL-24)のmRNA発現変化を確認した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0024】
本発明は、PD-L1タンパク質および改変された免疫グロブリンFc領域を含む融合タンパク質を提供する。
【0025】
前記PD-L1タンパク質は、PD-L1タンパク質の細胞外ドメイン(extracellular domain)またはその断片であってもよい。PD-L1タンパク質の細胞外ドメインは、PD-L1のIg V様ドメイン(Immunoglobulin V like domain)およびPD-L1のIg C様ドメイン(Immunoglobulin C like domain)を含むポリペプチドであってもよい。
【0026】
具体的に、PD-L1タンパク質の細胞外ドメインは、細胞膜外に露出したタンパク質部位であり、配列番号1の19番~238番アミノ酸からなるポリペプチドまたは配列番号1の19番~239番アミノ酸からなるポリペプチドであってもよい。
【0027】
ここで、前記PD-L1タンパク質の細胞外ドメインは、免疫グロブリン(Ig,immunoglobulin)のアミノ酸配列と類似した保存配列(conserved sequence)であるIg V類似(Ig V、Ig V like)配列を含んでいて、保存性の高い(highly conserved)Ig V類似配列は、配列番号1の68番~114番のアミノ酸配列である。また、Ig C類似(Ig C、Ig C like)配列を含んでいて、保存性の高い(highly conserved)配列部位は、配列番号1の153番~210番のアミノ酸配列である。また、前記PD-L1タンパク質の細胞外ドメインの断片は、PD-L1のIg V類似配列を含むIg V様ドメイン全体または一部を含んでもよい。
【0028】
また、前記PD-L1タンパク質の細胞外ドメインにおいてIg V様ドメインは、PD-1と相互作用できる部位であり、配列番号1の19番~239番のアミノ酸配列からなるポリペプチド(配列番号3)であってもよく、配列番号1の21番~239番のアミノ酸配列からなるポリペプチドであってもよい。また、配列番号1の19番~133番のアミノ酸配列からなるポリペプチド(配列番号4)であってもよく、配列番号1の21番~133番のアミノ酸配列からなるポリペプチドであってもよい。また、配列番号1の21番~114番のアミノ酸配列からなるポリペプチドであってもよく、配列番号1の19番~114番のアミノ酸配列からなるポリペプチドであってもよい。また、配列番号1の21番~120番のアミノ酸配列からなるポリペプチドであってもよく、配列番号1の19番~120番のアミノ酸配列からなるポリペプチドであってもよい。また、配列番号1の19番~127番のアミノ酸配列からなるポリペプチド(配列番号5)であって、配列番号1の21番~127番のアミノ酸配列からなるポリペプチド(配列番号6)であってもよい。また、配列番号1の21番~130番のアミノ酸配列からなるポリペプチドであってもよく、配列番号1の19番~130番のアミノ酸配列からなるポリペプチドであってもよい。また、配列番号1の21番~131番のアミノ酸配列からなるポリペプチドであってもよく、配列番号1の19番~131番のアミノ酸配列からなるポリペプチドであってもよい。
【0029】
また、前記PD-L1タンパク質の細胞外ドメインの断片は、Ig V様ドメインまたはその断片を含む場合、PD-L1タンパク質の細胞外ドメインのIg C様ドメイン(Immunoglobulin C like domain)をさらに含んでもよい。前記Ig C様ドメインは、配列番号1の133番~225番のアミノ酸配列からなるポリペプチドであるか、または配列番号1の134番~225番のアミノ酸配列からなるポリペプチドであってもよい。
【0030】
また、前記PD-L1タンパク質の細胞外ドメインの断片がIg V様ドメインまたはその断片を含む場合、PD-L1タンパク質の細胞外ドメインのIg C様ドメインを含むポリペプチドまたはその断片をさらに含んでもよい。前記Ig C様ドメインを含むポリペプチドは、Ig Vドメインを除くPD-L1タンパク質の細胞外ドメインを意味するものであり、配列番号1の134番~239番のアミノ酸を有するポリペプチド(配列番号7)または配列番号1の134番~238番のアミノ酸を有するポリペプチド(配列番号8)であってもよい。
【0031】
また、前記PD-L1タンパク質の細胞外ドメインまたはその断片は、ヒトまたはマウスに由来したものであってもよい。
【0032】
前記ヒトPD-L1タンパク質の細胞外ドメインは、配列番号1の19~239番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド(配列番号3)であり、マウスPD-L1タンパク質の細胞外ドメインは、配列番号2の19~239番目のアミノ酸配列からなるポリペプチドである。また、前記PD-L1タンパク質の細胞外ドメインは、配列番号1の19~239番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド配列と約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%以上の相同性を有するものであってもよい。
【0033】
具体的に、ヒトPD-L1タンパク質は、290個のアミノ酸残基を有していて、配列番号1(Accession Number:Q9NZQ7)のアミノ酸配列を含む。配列番号1のアミノ酸配列においてN末端の1番~18番のアミノ酸残基は、シグナル配列であり、成熟したヒトPD-L1タンパク質は、配列番号1の19番~290番のアミノ酸配列を含む。ヒトPD-L1タンパク質の細胞外ドメイン(extracellular domain)は、配列番号1の19番~238番または配列番号1の19番~239番のアミノ酸配列を含む。
【0034】
ヒトPD-L1タンパク質は、配列番号1の19番~127番のアミノ酸であるIg V様ドメインと、配列番号1の134番~226番アミノ酸であるIg C様ドメインを含む。
【0035】
マウスPD-L1タンパク質は、290個のアミノ酸を含むことが報告され、これは、配列番号2(Accession Number:Q9EP73)のアミノ酸配列を含む。配列番号2の1番~18番のアミノ酸残基は、シグナル配列であり、成熟したマウスPD-L1タンパク質は、配列番号2の19番~290番のアミノ酸配列を含む。マウスPD-L1タンパク質の細胞外ドメインは、配列番号2の19番~239番のアミノ酸配列を含む。マウスPD-L1タンパク質は、配列番号2の19番~127番のアミノ酸であるIg V様タンパク質と配列番号2の133番~224番のアミノ酸であるIg C様ドメインを含む。
【0036】
前記PD-L1タンパク質の細胞外ドメインは、Ig V様ドメインの全体またはその断片を含んでもよい。また、前記PD-L1タンパク質の細胞外ドメインの断片は、追加的にIg C様ドメインまたはIg C様ドメインを含むポリペプチド(Ig V様ドメインを除くPD-L1の細胞外ドメイン)をさらに含んでもよい。
【0037】
PD-L1タンパク質の細胞外ドメインまたはその断片は、多様に改変されたタンパク質またはペプチドを含んでもよい。前記改変は、PD-L1の機能を改変させない以上、野生型PD-L1タンパク質に一つ以上のタンパク質を置換、欠失または追加する方法を通じて行われ得る。このような多様なタンパク質またはペプチドは、野生型タンパク質と70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の相同性を有していてもよい。
【0038】
本発明の用語、「PD-L1タンパク質の細胞外ドメイン」は、「PD-L1タンパク質の細胞外ドメインおよびその断片」を含む概念で使用できる。
【0039】
本発明の用語、「タンパク質」、「ポリペプチド」および「ペプチド」は、別途の説明がない限り、相互互換される概念で使用できる。
【0040】
本発明の用語、「PD-L1融合タンパク質」および「PD-L1-改変された免疫グロブリンのFc領域融合タンパク質」は、PD-L1タンパク質、PD-L1タンパク質の細胞外ドメインまたはその断片が、改変された免疫グロブリンFc領域と結合した融合タンパク質を意味する。
【0041】
本発明において、前記PD-L1タンパク質は、改変された免疫グロブリンのFc領域のN末端またはC末端に融合することができ、好ましくは、前記PD-L1タンパク質は、改変された免疫グロブリンのFc領域のN末端に融合することができる。前記PD-L1タンパク質は、免疫グロブリンFc領域とリンカーペプチドで連結されることができる。前記リンカーは、GGGSGGS(配列番号10)、AAGSGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号17)、GGSGG(配列番号18)、GGSGGSGGS(配列番号19)、GGGSGG(配列番号20)、(G4S)n(nは、1~10の整数)、(GGS)n(nは、1~10の整数)、(GS)n(nは、1~10の整数)、(GSSGGS)n(nは、1~10の整数)、KESGSVSSEQLAQFRSLD(配列番号21)、EGKSSGSGSESKST(配列番号22)、GSAGSAAGSGEF(配列番号23)、(EAAAK)n(nは、1~10の整数)、CRRRRRREAEAC(配列番号24)、A(EAAAK)4ALEA(EAAAK)4A、GGGGGGGG(配列番号25)、GGGGGG(配列番号26)、AEAAAKEAAAAKA(配列番号27)、PAPAP(配列番号28)、(Ala-Pro)n(nは、1~10の整数)、VSQTSKLTRAETVFPDV(配列番号29)、PLGLWA(配列番号30)、TRHRQPRGWE(配列番号31)、AGNRVRRSVG(配列番号32)、RRRRRRRR(配列番号33)、GFLG(配列番号34)、およびGSSGGSGSSGGSGGGDEADGSRGSQKAGVDE(配列番号35)などが含まれてもよい。好ましくは、PD-L1および免疫グロブリンFc領域がGGGSGGS(配列番号10)のアミノ酸配列からなるリンカーペプチドで連結されることができる。前記リンカーペプチドを用いてPD-L1タンパク質と免疫グロブリンFc領域を連結する場合、前記融合タンパク質の活性、安定性および生産性を最適化することができる。
【0042】
また、前記融合タンパク質は、二量体形態で存在することができる。二量体を構成する融合タンパク質間の結合は、リンカー内に存在するシステインによって二硫化結合によってなるものであってもよい。二量体を構成する融合タンパク質は同じものである。すなわち、前記二量体は、ホモ二量体(homodimer)であってもよい。ここで、前記融合タンパク質は、可溶性であってもよく、特に、精製水または生理食塩水に溶解することができる。
【0043】
前記改変された免疫グロブリンのFc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgDおよびIgG4のFc領域のうちいずれか一つまたはこれらの組み合わせであってもよい。前記Fc領域は、Fc受容体と結合および/または補体(complement)結合が起こらないように改変されたものである。特に、前記改変された免疫グロブリンのFc領域は、N末端からC末端方向にヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、前記ヒンジ領域は、ヒトIgG1ヒンジ領域(配列番号16)を含み、前記CH2ドメインは、ヒトIgDとヒトIgG4のCH2ドメインのアミノ酸残基の部分を含み、前記CH3ドメインは、ヒトIgG4のCH3ドメインのアミノ酸残基の部分を含むものであってもよい。
【0044】
本発明の用語、「Fc領域」、「Fc断片」または「Fc」とは、免疫グロブリンの重鎖不変領域2(CH2)および重鎖不変領域3(CH3)を含み、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の可変領域および軽鎖不変領域1(CL1)を含まないタンパク質をいう。それは、重鎖不変領域のヒンジ領域をさらに含んでもよい。ハイブリッドFcまたはハイブリッドFc断片は、本発明において「hFc」または「hyFc」とも称される。
【0045】
また、本発明のFc断片は、天然型糖鎖、天然型に比べて増加した糖鎖、天然型に比べて減少した糖鎖、または糖鎖が除去された形態であってもよい。化学的方法、酵素的方法および微生物を用いた遺伝工学的エンジニアリング方法などのように通常の方法で免疫グロブリンFc糖鎖を改変させることができる。Fc断片から糖鎖の除去は、1次補体構成要素C1のC1qへの結合親和力を急激に減少させ、ADCCまたはCDCの減少または欠失をもたらし、そのため、生体内の不要な免疫反応を誘導しない。このような点から、糖鎖が除去されたり(deglycosylated)非糖鎖化した(aglycosylated)形態での免疫グロブリンFc断片は、薬物の担体として本発明の目的にさらに適合している。ここで使用される用語「糖鎖の除去(deglycosylation)」は、Fc断片から酵素的に糖が除去されることを意味する。また、用語「非糖鎖化(aglycosylation)」は、Fc断片が原核生物、好ましくは、E.coliによって糖鎖化しない(unglycosylated)形態で生成されることを意味する。
【0046】
本発明の一実施例において、前記改変された免疫グロブリンのFc領域は、配列番号11のアミノ酸配列(以下、「hyFc」という)からなるものであってもよい。
【0047】
本発明の一実施例において、前記融合タンパク質は、下記構造式Iで表され得る。
【0048】
N’-X-L-Y-C’(構造式I)
【0049】
上記式中、
N’は、融合タンパク質のN末端であり、C’は、融合タンパク質のC末端であり;
前記Xは、PD-L1タンパク質、PD-L1タンパク質の細胞外ドメインまたはその断片であり;
Lは、リンカーであり;
Yは、免疫グロブリンFc領域である。
【0050】
好ましくは、前記融合タンパク質は、配列番号12または配列番号13のアミノ酸配列からなるものであってもよい。また、本発明の融合タンパク質は、配列番号12のアミノ酸配列と約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%以上の相同性を有するものであってもよい。
【0051】
また、本発明は、前記融合タンパク質をコードする核酸分子を提供する。
【0052】
好ましくは、前記核酸分子は、配列番号12または配列番号13のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする核酸分子であってもよい。また、前記核酸分子は、シグナル配列(またはシグナルペプチド)またはリーダー配列をさらに含んでもよい。
【0053】
本発明の用語、「シグナル配列(またはシグナルペプチド)」は、分泌経路に分類された新しく合成されたタンパク質のN末端に存在する短いペプチドをいう。本発明において有用なシグナル配列は、抗体軽鎖シグナル配列、例えば、抗体1418(Gillies et al.,J Immunol Meth 1989 125:191-202)、抗体重鎖シグナル配列、例えば、MOPC141抗体重鎖シグナル配列(Sakano et al,Nature 1980 286:676-683)、および当業界において知られた他のシグナル配列(例えば、Watson et al,Nucleic Acid Research 1984 12:5145-5164を参照)を含む。
【0054】
前記シグナルペプチドは、当業界においてその特徴がよく知られていて、通常16~30個のアミノ酸残基を含むことが知られていて、それよりさらに多いまたはさらに少ないアミノ酸残基を含んでもよい。通常のシグナルペプチドは、基本N末端領域、中心の疎水性領域、およびより極性の(polar)C末端領域の三つの領域で構成される。
【0055】
中心の疎水性領域は、未成熟ポリペプチドが移動する間、膜脂質二重層を介してシグナル配列を固定させる4~12個の疎水性残基を含む。開始以後に、シグナル配列は、一般的にシグナルペプチダーゼ(signal peptidases)と知られた細胞酵素によってERのルーメン(lumen)内で切断される。ここで、前記シグナル配列は、tPa(tissue Plasminogen Activation)、HSV gDs、または成長ホルモンの分泌シグナル配列であってもよい。好ましくは、哺乳動物などを含む高等真核細胞で使用される分泌シグナル配列を使用でき、より好ましくは、tPa配列または配列番号1の1~18番目のアミノ酸配列を使用できる。また、本発明のシグナル配列は、宿主細胞において発現頻度の高いコドンに置換して使用できる。
【0056】
また、本発明は、前記核酸分子を含む発現ベクターを提供する。
【0057】
本発明の用語、「ベクター」は、宿主細胞に導入されて宿主細胞ゲノム内に組換えおよび挿入されることができるか、またはエピソーム(episome)として自発的に複製できるヌクレオチド配列を含む核酸手段と理解される。前記ベクターは、線状(linear)核酸、プラスミド、ファージミド(phagemids)、コスミド(cosmids)、RNAベクター、ウイルスベクターおよびその類似体を含む。ウイルスベクターの例としては、レトロウイルス(retrovirus)、アデノウイルス(adenovirus)およびアデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus)を含むが、これらに限定されない。
【0058】
本発明において、有用な発現ベクターは、RcCMV(Invitrogen,Carlsbad)またはその変異体であってもよい。有用な発現ベクターは、哺乳類細胞において目的遺伝子の連続的な転写を促進するためのヒトCMV(cytomegalovirus)プロモーター、および転写後RNAの安定状態レベルを高めるための牛成長因子(bovine growth hormone)ポリアデニル化シグナル配列を含んでもよい。本発明の一具体例において、発現ベクターは、RcCMVの改変ベクターであるpAD15である。
【0059】
本発明の用語、「宿主細胞」は、組換え発現ベクターが導入されうる原核および真核細胞を示す。
【0060】
本発明において、適切な宿主細胞は、本発明のDNA配列で形質転換されたり形質感染させることができ、目的タンパク質の発現および/または分泌に用いられ得る。本発明に使用できる現在好ましい宿主細胞は、不死のハイブリドーマ細胞(immortal hybridoma cells)、NS/0骨髄腫細胞(NS/0 myeloma cells)、293細胞、中国ハムスター卵巣細胞(CHO cell)、HeLa細胞、CapT細胞(ヒト羊水由来細胞)およびCOS細胞を含む。
【0061】
本発明の用語、「形質転換」および「形質感染」は、当業界において公知となった様々な技術によって細胞内に核酸(例えば、ベクター)を導入することを意味する。
【0062】
また、本発明は、PD-L1タンパク質および改変された免疫グロブリンFc領域が含まれた融合タンパク質を有効成分として含む免疫疾患の予防または治療用組成物を提供する。
【0063】
前記免疫疾患は、自己免疫疾患、炎症性疾患、および細胞、組織、または器官の移植拒否(transplantation rejection)疾患からなる群から選択される疾患であってもよい。
【0064】
前記自己免疫疾患は、関節炎[急性関節炎、慢性関節リウマチ、通風性(gouty)関節炎、急性通風性関節炎、慢性炎症性関節炎、退行性関節炎、感染性関節炎、ライム(Lyme)関節炎、増殖性関節炎、乾癬性関節炎、脊椎関節炎、および若年性関節リウマチ(juvenile-onset rhematoid arthritis)、骨関節炎、進行性慢性関節炎(arthritis chronica progrediente)、変形性(deformans)関節炎、原発性慢性多発性関節炎(polyarthritis chronica primaria)、反応性関節炎(reactive arthritis)、および強直性脊髄炎(ankylosing spondylitis)のような関節リウマチ]、炎症性過剰増殖皮膚疾患、プラーク乾癬(plaque psoriasis)、滴状乾癬(gutatte psoriasis)、膿疱性乾癬(pustular psoriasis)、および爪の乾癬(psoriasis of the nails)のような乾癬、接触皮膚炎、慢性接触皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、疱疹状皮膚炎(herpetiformis dermatitis)、およびアトピー性皮膚炎(atopic dermatitis)を含む皮膚炎、X連鎖高IgM症候群、慢性アレルギー性蕁麻疹および、慢性自己免疫性蕁麻疹を含む、慢性特発性蕁麻疹(chronic idiopathic urticaria)のような蕁麻疹(urticaria)、多発性筋炎/皮膚筋炎(polymyositis/dermatomyositis)、若年性皮膚筋炎(juvenile dermatomyositis)、中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis)、強皮症(scleroderma)(全身性強皮症を含む)、全身性硬化症(systemic sclerosis)、脊髄-眼MS(spino-optical MS)、原発性進行性MS(primary progressive MS;PPMS)、および再発寛解型MS(relapsing remitting MS;RRMS)のような多発性硬化症(multiple sclerosis;MS)、進行性全身性硬化症(progressive systemic sclerosis)、アテローム性動脈硬化症(atherosclerosis)、動脈硬化症(arteriosclerosis)、播種性硬化症(sclerosis disseminata)、および失調性硬化症(ataxic sclerosis)を含む硬化症(sclerosis)、炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease;IBD)[例えば、クローン病、自己免疫介在性胃腸疾患、潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis)、潰瘍性大腸炎(colitis ulcerosa)、顕微鏡的大腸炎(microscopic colitis)、コラーゲン蓄積大腸炎(collagenous colitis)、ポリープ性大腸炎(colitis polyposa)、新生児壊死性大腸炎(necrotizing enterocolitis)、および貫壁性大腸炎(transmural colitis)のような大腸炎、および自己免疫性炎症性腸疾患(autoimmune inflammatory bowel disease)]、壊疽性膿皮症(pyoderma gangrenosum)、結節性紅斑(erythema nodosum)、原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis,episcleritis)を成人または急性呼吸窮迫症候群(adult or acute respiratory distress syndrome;ARDS)を含む呼吸窮迫症候群(respiratory distress syndrome)、髄膜炎(meningitis)、ブドウ膜(uvea)の全体または一部の炎症、虹彩炎(iritis)、脈絡膜炎(choroiditis)、自己免疫性血液異常(autoimmune hematological disorder)、リウマチ様脊椎炎(rheumatoid spondylitis)、突発性難聴、アナフィラキシー(anaphylaxis)およびアレルギー性およびアトピー性鼻炎のようなIgE介在性疾患、ラスムッセン脳炎(Rasmussen’s encephalitis)および辺縁系および/または脳幹脳炎(limbic and/or brainstem encephalitis)のような脳炎(encephalitis)、前部ブドウ膜炎(anterior uveitis)、急性前部ブドウ膜炎、肉芽腫性ブドウ膜炎(granulomatous uveitis)、非肉芽腫性ブドウ膜炎(nongranulomatous uveitis)、水晶体抗原性ブドウ膜炎(phacoantigenic uveitis)、後部ブドウ膜炎(posterior uveitis)、または自己免疫性ブドウ膜炎(autoimmune uveitis)のようなブドウ膜炎、原発性GN(primary GN)のような慢性または急性糸球体腎炎のようなネフローゼ症候群(nephrotic syndrome)併発するか併発しない糸球体腎炎(glomerulonephritis;GN)、免疫介在性GN、膜性腎症(membranous GN,membranous nephropathy)、特発性膜性腎症(idiopathic membranous nephropathy)または特発性膜性腎症(idiopathic membranous GN)、I型およびII型を含む膜性(membrano-)または膜性増殖性GN(membranous proliferative GN;MPGN)、および急速進行性GN、アレルギー疾患、アレルギー反応、アレルギー性またはアトピー性湿疹を含む湿疹(eczema)、 小気管支喘息(asthma bronchiale)、気管支喘息(bronchial asthma)および自己免疫性喘息のような喘息、T細胞浸潤および慢性炎症反応に関連した疾患、慢性炎症性肺疾患(pulmonary inflammatory disease)、自己免疫性心筋炎(myocarditis)、白血球接着不全症(leukocyte adhesion deficiency)、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus;SLE)または皮膚SLEのような全身性エリテマトーデス、亜急性皮膚エリテマトーデス(subacute cutaneous lupus erythematosus)、新生児ループス症候群(neonatal lupus syndrome;NLE)、播種性紅斑性狼瘡(lupus erythematosus disseminatus)、ループス[腎炎(nephritis)、脳炎(cerebritis)、小児(pediatric)、腎外性(non-renal)、腎外(extra-renal)、円盤状(discoid)、脱毛(alopecia)を含む]、小児インスリン依存性糖尿病(pediatric insulin-dependent diabetes mellitus;IDDM)を含む若年型(I型)糖尿病(juvenile onset(Type I)diabetes mellitus)、成人期発症糖尿病(II型)、自己免疫性糖尿病、特発性糖尿病尿崩症(idiopathic diabetes insipidus)、Tリンパ球およびサイトカインによって媒介される急性および遅延型過敏症に関連した免疫反応、結核、サルコイドーシス(sarcoidosis)、リンパ腫様肉芽腫症(lymphomatoid granulomatosis)を含む肉芽腫症(granulomatosis)、ウェゲナー肉芽腫症(Wegener’s granulomatosis)、無顆粒球症(agranulocytosis)、血管炎(vasculitis)[巨細胞性血管炎(リウマチ性多発筋痛(polymyalgia rheumatica)および巨細胞(Takayasu’s)動脈炎)を含む]、川崎病、結節性多発性動脈炎(polyarteritis nodosa)を含む中血管炎、顕微鏡的多発性動脈炎(microscopic polyarteritis)、CNS関節炎、壊死性、皮膚性、または過敏性血管炎、全身性壊死性血管炎(systemic necrotizing vasculitis)、チャーグ・ストラウス血管炎(Churg-Strauss vasculitis)または症候群(CSS)のようなANCA関連血管炎)を含む血管炎(vasculitides)、側頭動脈炎(temporal arteritis)、再生不良性貧血(aplastic anemia)、自己免疫性再生不良性貧血、クームス(coombs)良性貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血(Diamond Blackfan anemia)、溶血性貧血(hemolytic anemia)または自己免疫性溶血性貧血(autoimmune hemolytic anemia;AIHA)を含む免疫性溶血性貧血、悪性貧血(pernicious anemia)(anemia perniciosa)、アジソン病(Addison’s disease)、赤芽球癆貧血(pure red cell anemia aplasia;PRCA)、因子VHI欠乏症、血友病A、自己免疫性好中球減少症(autoimmune neutropenia)、汎血球減少症(pancytopenia)、白血球減少症(leukopenia)、白血球の血管外遊走(leukocyte diapedesis)と関連した疾患、CNS炎症性疾患、敗血症(septicemia)、外傷(trauma)、出血(hemorrhage)に続発するような多臓器損傷、抗原抗体複合体介在性疾患、抗糸球体基底膜疾患、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベーチェット病(Bechet’sまたはBehcet’s disease)、キャッスルマン症候群(Castleman’s syndrome)、グッドパスチュア症候群(Goodpasture’s syndrom)、レイノー症候群(Raynaud’s syndrome)、ショグレン症候群(Sjogren’s syndrome)、スティーヴンス・ジョンソン症候群(Stevens-Johnson syndrome)、水疱性類天疱瘡(pemphigoid bullous)および皮膚類天疱瘡(skin pemphigoid)のような類天疱瘡(pemphigoid)、天疱瘡(pemphigus)[尋常性天疱瘡(pemphigus vulgaris)、落葉状天疱瘡(pemphigus foliaceus)、粘膜天疱瘡・類天疱瘡(pemphigus mucous-membrane pemphigoid)、および紅斑性天疱瘡(pemphigus erythematosus)を含む]、
自己免疫性多腺性内分泌障害(autoimmune polyendocrinopathies)、ライター病(Reiter’s disease)または症候群、免疫複合体腎炎、抗体媒介腎炎、視神経脊髄炎(neuromyelitis optica)、多発性神経障害(polyneuropathies)、IgM多発性神経障害またはIgM介在性神経障害のような慢性神経障害(chronic neuropathy)、血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura;TTP)および慢性または急性ITPを含む特発性血小板減少症(ITP)のような自己免疫性または免疫介在性血小板減少症を含む血小板減少症(thrombocytopenia)(例えば、心筋梗塞患者に発症するような)、自己免疫性睾丸炎および卵巣炎を含む睾丸および卵巣の自己免疫疾患、原発性甲状腺機能低下症(primary hypothyroidism)、自己免疫性甲状腺炎のような甲状腺炎を含む甲状腺機能低下症、自己免疫性内分泌疾患、橋本病(Hashimoto’s disease)、慢性甲状腺炎(Hashimoto’s thyroiditis);または亜急性甲状腺炎、自己免疫性甲状腺疾患、特発性甲状腺機能低下症(idiopathic hypothyroidism)、グレーブス病(Grave’s disease)、自己免疫性多腺性症候群[多腺性内分泌症候群(polyglandular endocrinopathy syndromes)]のような多腺性症候群(polyglandular syndrome)、ランバート-イートン症候群(Lambert-Eaton myasthenic syndromeまたはEaton-Lambert syndrome)のような傍腫瘍性神経症候群を含む傍腫瘍性症候群(paraneoplastic syndromes)、スティッフマン症候群(stiff-man or stiff-person syndrome)、アレルギー性脳脊髄炎(allergic encephalomyelitisまたはencephalomyelitis allergica)および実験的アレルギー性脳脊髄炎(experimental allergic encephalomyelitis;EAE)のような脳脊髄炎(encephalomyelitis)、胸腺腫関連重症筋無力症(thymoma-associated myasthenia gravis)のような重症筋無力症(myasthenia gravis)、小脳変性症(cerebellar degeneration)、ニューロミオトニア(neuromyotonia)、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群(opsoclonus or opsoclonus myoclonus syndrome;OMS)、および感覚神経障害(sensory neuropathy)、多巣性運動神経障害(multifocal motor neuropathy)、シーハン症候群(Sheehan’s syndrome)、自己免疫性肝炎、慢性肝炎、ルポイド肝炎(lupoid hepatitis)、巨細胞肝炎(giant cell hepatitis)、慢性活性肝炎(chronic active hepatitis)または自己免疫性慢性活性肝炎、リンパ球性間質性肺炎(lymphoid interstitial pneumonitis)、閉塞性細気管支炎(bronchiolitis obliteran、非移植)対NSIP、ギラン・バレー症候群(Guillain-Barre syndrome)、ベルガー病(Berger’s disease、IgA腎症)、特発性IgA腎症、線状IgA皮膚病、原発性胆汁性肝硬変(primary biliary cirrhosis)、肺炎肝硬変(pneumonocirrhosis)、自己免疫性腸疾患症候群(autoimmune enteropathy syndrome)、セリアック病(Celiac disease)、 小児脂肪便症(Coeliac disease)、セリアック・スプルー(celiac sprue,gluten enteropathy)、難治性スプルー(refractory sprue)、特発性スプルー(idiopathic sprue)、クリオグロブリン血症 (cryoglobulinemia)、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis;ALS;Lou Gehrig’s disease)、冠動脈疾患(coronary artery disease)、自己免疫性内耳疾患(autoimmune inner ear disease;AGEDのような自己免疫性耳疾患(autoimmune ear disease)、自己免疫性難聴、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群(opsoclonus myoclonus syndrome;OMS)、難治性(refractory)または再発性多発性軟骨炎のような多発性軟骨炎(polychondritis)、肺胞タンパク症(pulmonary alveolar proteinosis)、アミロイドーシス(amyloidosis)、強膜炎(scleritis)、非がん性リンパ球増加症(non-cancerous lymphocytosis)、モノクローナルB細胞リンパ球増加症[例えば、良性単クローン性免疫グロブリン血症および意義不明の単クローン性高ガンマグロブリン血症(monoclonal gammopathy of undetermined significance;MGUS)]を含む原発性リンパ球増加症(primary lymphocytosis)、末梢神経障害(peripheral neuropathy)、傍腫瘍性症候群(paraneoplastic syndrome)、てんかん(epilepsy)、偏頭痛(migraine)、不整脈(arrhythmia)、筋疾患、難聴(deafness)、失明(blindness)、周期性四肢まひ(periodic paralysis)、およびCNSのチャネロパチーのようなチャネロパチー(channelopathies)、自閉症(autism)、炎症性筋疾患(inflammatory myopathy)、巣状分節状糸球体硬化症(focal segmental glomerulosclerosis;FSGS)、内分泌性眼症(endocrine ophthalmopathy)、ブドウ膜網膜炎(uveoretinitis)、脈絡網膜炎(chorioretinitis)、自己免疫性肝疾患(autoimmune hepatological disorder)、線維筋痛(fibromyalgia)、多発性内分泌疾患(multiple endocrine failure)、シュミット症候群(Schmidt’s syndrome)、副腎炎(adrenalitis)、胃萎縮症(gastric atrophy)、初老期認知症(presenile dementia)、自己免疫性脱髄疾患(autoimmune demyelinating diseases)のような脱髄疾患(demyelinating diseases)、糖尿病性腎症(diabetic nephropathy)、ドレスラー症候群(Dressler’s syndrome)、円形脱毛症(alopecia areata)、CREST症候群(石灰沈着症(calcinosis)、レイノー現象(Raynaud’s phenomenon)、食道運動障害(esophageal dysmotility)、手指硬化症(sclerodactyl)、および毛細血管拡張症(telangiectasia))、男性および女性の不妊、混合性結合組織病、シャーガス病(Chagas’ disease)、リウマチ熱(rheumatic fever)、反復流産(recurrent abortion)、農夫肺(farmer’s lung)、多形性紅斑(erythema multiforme)、心術後症候群(post-cardiotomy syndrome)、クッシング症候群(Cushing’s syndrome)、鳥飼育者肺(bird-fancier’s lung)、アレルギー性肉芽腫性血管炎(allergic granulomatous angiitis)、良性リンパ球性血管炎(benign lymphocytic angiitis)、アルポート症候群(Alport’s syndrome)、アレルギー性肺胞炎および線維化性肺胞炎のような肺胞炎(alveolitis)、間質性肺炎(interstitial lung disease)、輸血反応、ハンセン病(leprosy)、マラリア(malaria)、リーシュマニア症(leishmaniasis)、トリパノソーマ症(trypanosomiasis)、住血吸虫症(schistosomiasis)、回虫症(ascariasis)、アスペルギルス症(aspergillosis)、サムター症候群(Samter’s syndrome)、カプラン症候群(Caplan’s syndrome)、デング熱(dengue)、心内膜炎(endocarditis)、心内膜炎線維症(endomyocardial fibrosis)、びまん性間質性肺線維症(diffuse interstitial pulmonary fibrosis)、間質性肺線維症(interstitial lung fibrosis)、特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis)、嚢胞性線維症(cystic fibrosis)、眼内炎(endophthalmitis)、持久性隆起性紅斑(erythema elevatum et diutinum)、胎児赤芽球症(erythroblastosis fetalis)、好酸球性筋膜炎(eosinophilic fasciitis)、シュルマン症候群(Shulman’s syndrome)、フェルティ症候群(Felty’s syndrome)、フィラリア症(flariasis)、慢性毛様体炎、異時性毛様体炎、虹彩毛様体炎(iridocyclitis)またはフックス毛様体炎(Fuch’s cyclitis)のような毛様体炎(cyclitis)、ヘノッホ・シェンライン紫斑病(Henoch-Schonlein purpura)、ヒト免疫欠乏ウイルス(human immunodeficiency virus;HIV)感染、エコーウイルス感染、心筋症(cardiomyopathy)、アルツハイマー疾患(Alzheimer’s disease)、パルボウイルス感染(parvovirus infection)、風疹ウイルス感染(rubella virus infection)、ワクチン接種後症候群(post-vaccination syndromes)、先天性風疹感染、エプスタインバーウイルス感染(Epstein-Barr virus infection)、おたふく風邪(mumps)、エバン症候群(Evan’s syndrome)、自己免疫性腺機能不全(autoimmune gonadal failure)、シデナム舞踏病(Sydenham’s chorea)、連鎖球菌感染後腎炎(poststreptococcal nephritis)、閉塞性血栓血管炎(thromboangiitis obliterans)、甲状腺機能亢進症(thyrotoxicosis)、脊髄癆(tabes dorsalis)、脈絡膜炎(chorioiditis)、
巨細胞多発筋腫(giant cell polymyalgia)、内分泌性眼症(endocrine ophthalmopathy)、慢性過敏性肺炎(chronic hypersensitivity pneumonitis)、乾性角結膜炎(keratoconjunctivitis sicca)、流行性角結膜炎、特発性ネフローゼ症候群(idiopathic nephritic syndrome)、微少変化ネフローゼ(minimal change nephropathy)、良性家族性(benign familial)および虚血再潅流傷害(ischemia-reperfusion injury)、自己免疫網膜症(retinal autoimmunity)、関節炎症(joint inflammation)、気管支炎(bronchitis)、慢性閉塞性気道疾患(chronic obstructive airway disease)、珪肺症(silicosis)、アフタ(aphthae)、アフタ性口内炎(aphthous stomatitis)、動脈硬化症(arteriosclerotic disorders)、精子形成欠如(aspermatogenesis)、自己免疫性溶血(autoimmune hemolysis)、ベック病(Boeck’s disease)、クリオグロブリン血症(cryoglobulinemia)、デュピュイトラン拘縮(Dupuytren’s contracture)、水晶体過敏性眼内炎(endophthalmia phacoanaphylactica)、アレルギー性腸炎(enteritis allergica)、癩性結節性紅斑(erythema nodosum leprosum)、特発性顔面神経麻痺(idiopathic facial paralysis)、慢性疲労症候群(chronic fatigue syndrome)、リウマチ熱(febris rheumatica)、ハンマン・リッチ病(Hamman-Rich’s disease)、急性感音難聴(sensoneural hearing loss)、ヘモグロビン尿症発作(haemoglobinuria paroxysmatica)、性腺機能低下症(hypogonadism)、限局性回腸炎(ileitis regionalis)、白血球減少症(leucopenia)、感染性単核球症(mononucleosis infectiosa)、横断性脊髄炎(traverse myelitis)、原発性特発性粘液水腫(primary idiopathic myxedema)、ネフローゼ(nephrosis)、交感性眼炎(ophthalmia symphatica)、肉芽種性睾丸炎(orchitis granulomatosa)、膵炎(pancreatitis)、急性多発性神経根炎(polyradiculitis acuta)、壊疽性膿皮症(pyoderma gangrenosum)、ケルヴァン甲状腺炎(Quervain’s thyreoiditis)、後天性脾臓萎縮症(acquired spenic atrophy)、抗精子抗体による不妊(infertility due to antispermatozoan antobodies)、非悪性胸腺種(non-malignant thymoma)、白斑(vitiligo)、SCIDおよびエプスタインバーウイルス関連疾患(Epstein-Barr virus-associated diseases)、後天性免疫欠乏症(acquired immune deficiency syndrome;AIDS)、リーシュマニア症(Leishmania)のような寄生虫疾患、毒素性ショック症候群(toxic-shock syndrome)、食中毒(food poisoning)、T細胞の浸潤に関連した疾患、白血球接着不全症、サイトカインおよびT細胞によって媒介される急性および遅延型過敏症に関連した免疫反応、白血球漏出に関連した疾患、多臓器損傷症候群(multiple organ injury syndrome)、抗原抗体複合体介在性疾患、抗糸球体基底膜疾患(antiglomerular basement membrane disease)、アレルギー性神経炎(allergic neuritis)、自己免疫多腺性内分泌障害(autoimmune polyendocrinopathies)、卵巣炎、原発性粘液水腫(primary myxedema)、自己免疫性萎縮性胃炎(autoimmune atrophic gastritis)、交感性眼炎(sympathetic ophthalmia)、リウマチ性疾患(rheumatic diseases)、混合性結合組織病 、ネフローゼ症候群(nephrotic syndrome)、膵島炎(insulitis)、多腺性内分泌不全症(polyendocrine failure)、末梢神経障害(peripheral neuropathy)、自己免疫性多腺性症候群I型(aut oimmune polyglandular syndrome type I)、成人型特発性上皮小体機能低下症(adult-onset idiopathic hypoparathyroidism;AOIH)、完全脱毛症(alopecia totalis)、拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy)、後天性表皮水疱症(epidermolisis bullosa acquisita;EBA)、血色素症(hemochromatosis)、心筋炎(myocarditis)、ネフローゼ症候群、原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis)、化膿性または非化膿性副鼻腔炎(sinusitis)、急性または慢性副鼻腔炎、篩骨洞炎(ethmoid)、前頭洞炎(frontal)、上顎洞炎(maxillary)、またはちょう形骨洞炎(sphenoid)副鼻腔炎、好酸球増加症のような好酸球障害、肺好酸球増多症(pulmonary infiltration eosinophilia)、好酸球増加・筋痛症候群(eosinophilia-myalgia syndrome)、レフラー症候群(Loffler’s syndrome)、慢性好酸球性肺炎(chronic eosinophilic pneumonia)、局部性肺好酸球増加症(tropical pulmonary eosinophilia)、気管支肺アスペルギルス症(bronchopneumonic aspergillosis)、アスペルギルス腫(aspergilloma)、または好酸球を含む肉芽種(granulomas)、アナフィラキシー(anaphylaxis)、血清反応陰性脊椎関節症(seronegative spondyloarthritides)、多内分泌自己免疫疾患(polyendocrine autoimmune disease)、硬化性胆管炎(sclerosing cholangitis)、強膜(sclera)、上強膜(episclera)、慢性粘膜皮膚カンジダ症(chronic mucocutaneous candidiasis)、ブルトン症候群(Bruton’s syndrome)、乳児一過性低ガンマグロブリン血症(transient hypogammaglobulinemia of infancy)、ウィスコット・アルドリッチ症候群(Wiskott-Aldrich syndrome)、毛細血管拡張性運動失調症候群(ataxia telangiectasia)、コラーゲン疾患と関連がある自己免疫障害、リウマチ、神経疾患、虚血再潅流疾患、血圧反応の低下、血管機能不全、血管拡張症(angiectasis)、組織傷害、心血管虚血(cardiovascular ischemia)、痛覚過敏(hyperalgesia)、脳虚血(cerebral ischemia)、および血管新生(vascularization)を伴う疾患、アレルギー性過敏性疾患、糸球体腎炎(glomerulonephritides)、再潅流傷害(reperfusion injury)、心筋または他組織の再潅流傷害、急性炎症性構成要素を有する皮膚障害(dermatoses)、急性化膿性髄膜炎(acute purulent meningitis)または他の中枢神経系炎症性疾患、眼球(ocular and orbital)炎症性疾患、顆粒球輸血関連症候群(granulocyte transfusion-associated syndromes)、サイトカイン誘導毒性 、急性の重篤な炎症(acute serious inflammation)、慢性難治性炎症(chronic intractable inflammation)、腎盂炎(pyelitis)、肺炎肝硬変(pneumonocirrhosis)、糖尿病網膜症(diabetic retinopathy)、糖尿病性巨大動脈疾患(diabetic large-artery disorder)、動脈内過形成症(endarterial hyperplasia)、消化性潰瘍(peptic ulcer)、弁膜炎(valvulitis)および子宮内膜症(endometriosis)からなる群から選ばれるものであってもよい。
【0065】
好ましくは、前記自己免疫疾患は、1型糖尿病、円形脱毛症(alopecia areata)、抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid antibody syndrome)、関節リウマチ、乾癬または乾癬性関節炎、多発性硬化症(multiple sclerosis)、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus)、炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease)、アディソン病(Addison’s disease)、グレーブス病(Graves’ disease)、ショグレン症候群(Sjogren’s syndrome)、ギラン・バレー症候群(Guillain-Barre syndrome)、橋本甲状腺炎(Hashimoto’s thyroiditis)、重症筋無力症(Myasthenia gravis)、炎症性筋疾患(inflammatory myophathy)、自己免疫性血管炎(autoimmune vasculitis)、自己免疫性肝炎(autoimmune hepatitis)、出血性貧血(hemolytic anemia)、特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura)、原発性胆汁性肝硬変(primary biliary cirrhosis)、皮膚硬化症(scleroderma)、白斑症(vitiligo)、悪性貧血(pernicious anemia)およびセリアック病(celiac disease)からなる群から選ばれたものであってもよい。
【0066】
前記炎症性疾患は、関節炎(arthritis)、強直性脊椎炎(ankylosing spondylitis)、反応性関節炎(reactive arthritis)、ライター症候群(Reiter’s syndrome)、結晶性関節症(crystal arthropathies)、ライム病(Lyme disease)、リウマチ性多発性筋痛(polymyalgia rheumatica)、全身性硬化症(systemic sclerosis)、多発性筋炎(polymyositis)、皮膚筋炎(dermatomyositis)、結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa)、ウェゲナー肉芽腫症(Wegener’s granulomatosis)、チャーグ・ストラウス症候群(Churg-Strauss syndrome)、サルコイドーシス(sarcoidosis)、アテローム硬化性血管疾患(atherosclerotic vascular disease)、アテローム性動脈硬化症(atherosclerosis)、虚血性心臓疾患(ischaemic heart disease)、心筋梗塞(myocardial infarction)、脳卒中(stroke)、末梢血管疾患(peripheral vascular disease)、ブドウ膜炎(uveitis)、角膜疾患(corneal disease)、虹彩炎(iritis)、虹彩毛様体炎(iridocyclitis)および白内障(cataracts)からなる群から選ばれるものであってもよい。
【0067】
前記移植拒否疾患は、組織または臓器の移植拒否反応であってもよく、前記組織または臓器の移植拒否反応は、骨髓移植、心臓移植、角膜移植、腸移植、肝移植、肺移植、すい臓移植、腎臓移植および皮膚移植の拒否反応の中から選ばれるものであってもよい。
【0068】
本発明の用語、「炎症性皮膚疾患」は、炎症反応によって皮膚に発生する疾患を意味する。皮膚角質形成細胞は、表皮細胞の大部分を構成する成分であり、角質を形成し、様々なサイトカイン(cytokine)を生産して多様な炎症反応と免疫反応に関与する。皮膚角質形成細胞が環境的、生理的ストレスに露出すると、炎症反応が起こり、そのため、TNF-α(tumor necrosis factor-α)、IL-1β(interleukin-1β)、IL-6およびCCL(chemokine(C-C motif)ligand)のような様々な種類の炎症性サイトカインを分泌することになる。このようなサイトカインは、皮膚角質形成細胞の増殖速度を減少させ、真皮層の器質形成を妨害することによって、損傷した皮膚の治癒速度を低下させることになる。したがって、炎症性皮膚疾患において皮膚角質形成細胞の増殖は、重要な役割を行い、皮膚の老化、アトピー性皮膚炎、乾癬などのような炎症性皮膚疾患と密接な関連がある。したがって、前記炎症性皮膚疾患は、乾癬またはアトピー皮膚炎であってもよく、好ましくは、乾癬であってもよい。
【0069】
本発明の用語、「乾癬」は、皮膚に銀白色の鱗屑で覆われている、境界が明確で、サイズが多様な紅斑性丘疹およびプラークを形成する疾患を意味する。組織学的に上皮の過多増殖を特徴とし、多様な臨床様相を示し、悪化と好転が反復される慢性炎症性皮膚疾患の一つである。
【0070】
前記薬学組成物の好ましい投与量は、患者の状態および体重、疾患の程度、薬物形態、投与経路および期間によって異なるが、当業者によって適切に選択できる。本発明の乾癬治療用または予防用薬学組成物においてその有効成分は、乾癬治療活性を示すことができる限り、用途、剤形、配合目的などによって任意の量(有効量)で含まれ得るが、通常の有効量は、組成物の全体重量を基準として、0.001重量%~20.0重量%の範囲内で決定される。ここで、「有効量」とは、乾癬治療(treatment)効果を誘導できる有効成分の量をいう。このような有効量は、当業者の通常の能力範囲内で実験的に決定できる。
【0071】
本発明の用語、「治療」は、治療学的処理および予防的処理を全部含む意味で使用できる。ここで、予防は、個体の病理学的状態または疾患を緩和させたり減少させる意味で使用できる。一具体例において、用語「治療」は、ヒトを含む哺乳類において疾患を治療するための適用やいかなる形態の投薬を全部含む。また、前記用語は、疾患または疾患の進行を抑制したり遅延させることを含み;損傷したり、欠損した機能を回復させたり、修理して、疾患を部分的または完全に緩和させたり;または非効率的なプロセスを刺激したり;深刻な疾患を緩和する意味を含む。
【0072】
ここで、「治療学的に有効な量」または「薬学的に有効な量」とは、対象疾患を予防または治療するのに有効な化合物または組成物の量であり、医学的治療に適用可能な合理的なベネフィット/リスクの割合で疾患を治療するのに十分であり、副作用を起こさないほどの量を意味する。前記有効量のレベルは、患者の健康状態、疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与方法、投与時間、投与経路および排出比率、治療期間、配合または同時使用される薬物を含む要素およびその他医学分野によく知られた要素によって決定できる。一具体例において、治療学的に有効な量は、乾癬を治療するのに効果的な薬物の量を意味する。
【0073】
本発明の組成物は、薬学的に許容可能な担体を含んでもよく、前記担体の他に薬学的に許容可能な補助剤、賦形剤または希釈剤をさらに含んでもよい。
【0074】
本発明の用語、「薬学的に許容可能な」とは、生理学的に許容され、ヒトに投与されるとき、通常、胃腸障害、めまいのようなアレルギー反応またはこれと類似した反応を起こさない組成物をいう。前記担体、賦形剤および希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾアート、プロピルヒドロキシベンゾアート、タルク、マグネシウム ステアレートおよび鉱物油が挙げられる。また、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤および防腐剤などをさらに含んでもよい。
【0075】
本発明の薬学的組成物は、哺乳動物に投与時、活性成分の迅速な放出、または持続または遅延型放出が可能に当業界において公知となった方法を用いて剤形化することができる。剤形は、粉末、顆粒、錠剤、エマルジョン、シロップ、エアロゾル、軟質または硬質ゼラチンカプセル、滅菌注射溶液、滅菌粉末形態を含む。
【0076】
本発明の組成物は、薬学的に許容される担体とともに好適な形態で剤形化することができる。薬学的に許容される担体としては、例えば、水、好適なオイル、食塩水、水性グルコースおよびグリコールなどのような非経口投与用担体などがあり、安定化剤および保存剤をさらに含んでもよい。好適な安定化剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウムまたはアスコルビン酸のような抗酸化剤がある。好適な保存剤としては、塩化ベンザルコニウム、メチル-またはプロピル-パラベンおよびクロロブタノールがある。また、本発明による組成物は、その投与方法や剤形によって、必要な場合、懸濁剤、溶解補助剤、安定化剤、等張剤、保存剤、吸着防止剤、界面活性化剤、希釈剤、賦形剤、pH調整剤、無痛化剤、緩衝剤、酸化防止剤などを適切に含んでもよい。上記に例示されたものをはじめとして本発明に適合した薬学的に許容される担体および製剤は、文献[Remington’s Pharmaceutical Sciences、最新版]に詳細に記載されている。
【0077】
本発明の組成物は、通常、よく知られた滅菌技術によって滅菌されることができる。組成物は、pH調節のような生理的条件を調節するために要求される薬学的に許容可能な補助物質および補助剤、毒性調節製剤およびその類似体を含んでもよいが、例えば、酢酸ナトリウム(sodium acetate)、塩化ナトリウム(sodium chloride)、塩化カリウム(potassium chloride)、塩化カルシウム(calcium chloride)、乳酸ナトリウム(sodium lactate)などがある。このような剤形において融合タンパク質の濃度は非常に多様であり、例えば、重さによって約0.5%以下であってもよく、一般的にまたは少なくとも約1%~15%または20%まで可能であり、選択された特定の投与方法によって体液体積、粘度(viscosities)などに優先的に基づいて選択できる。
【0078】
本発明の組成物に対する好ましい投与量は、患者の状態、体重、性別、年齢、患者の重症度、投与経路によって1日に0.01μg/kg~10g/kgの範囲、または0.01mg/kg~1g/kgの範囲であってもよい。投与は、1日に1回または数回に分けて行われ得る。このような投与量は、いかなる側面においても、本願発明の範囲を制限すると解釈されるべきものではない。
【0079】
本発明の組成物が適用(処方)可能な対象は、哺乳動物およびヒトであり、特にヒトである場合が好ましい。前記融合タンパク質または融合タンパク質二量体の投与経路、投与量および投与回数は、患者の状態および副作用の有無によって多様な方法および量で対象に投与可能であり、最適な投与方法、投与量および投与回数は、通常の技術者が適切な範囲で選択することができる。
【0080】
本発明の組成物は、いかなる経路にも投与可能である。本発明の組成物は、直接的に(例えば、組織部位に注入、移植または局部的に投与することによって、局所的に)またはシステム的に(例えば、非経口または経口で)任意の適切な手段によって動物に提供されることができる。本発明の組成物が静脈内、皮下、眼(ophthalmic)、腹腔内、筋肉内、口腔、直腸、眼窩内(intraorbital)、脳内(intracerebral)、頭蓋内(intracranial)、脊椎内(intraspinal)、脳室内(intraventricular)、髄腔内(intrathecal)、槽内(intracisternal)、嚢内(intracapsular)、鼻腔内(intranasal)またはエアロゾル投与のように非経口的に提供される場合、組成物は、好ましくは、水性(aqueous)であるか、生理学的に適用可能な体液懸濁液または溶液の部分を含むことが好ましい。これによって、担体または運搬体(vehicle)が生理学的に許容可能なので、組成物に添加して患者に伝達されることができ、これは、患者の電解質および/または体積バランス(balance)に悪影響を及ぼさない。したがって、製剤のための体液培地として、一般的に生理食塩水(physiologic saline)を含んでもよい。
【0081】
本発明の融合タンパク質をコードする核酸を含むDNA構造物(または遺伝子構造物)は、前記融合タンパク質構造物をコードする核酸を運搬する遺伝子治療プロトコルの一部として使用できる。
【0082】
本発明は、所望の前記融合タンパク質の機能を再構成したり補充するために、特定細胞タイプで前記融合タンパク質を生体内感染および発現させる発現ベクターを任意の生物学的有効担体とともに投与可能であるが、例えば、生体内細胞に所望の融合タンパク質をコードする遺伝子またはその融合タンパク質を効率的に運搬できる任意の剤形または組成物などがそれである。
【0083】
前記融合タンパク質をコードする核酸を用いた遺伝子治療のために、組換えレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、および単純ヘルペスウイルス-1(herpes simplex virus-1)を含むウイルスベクター、または組換えバクテリアプラスミドまたは組換え真核プラスミド内に対象遺伝子を挿入することができる。
【0084】
本発明の融合タンパク質をコードする核酸の投与量は、ヒトにおいて0.1mg~100mgの範囲であり、好ましくは、1mg~10mgであり、より好ましくは、2mg~10mgである。最適量および投与形態は、当業界の技術レベルに属する一般的な実験によって決定することができる。
【0085】
本発明の融合タンパク質の単位投与量は、ヒトにおいて0.1mg/kg~1,500mg/kgであり、好ましくは、1mg/kg~100mg/kgであり、より好ましくは、5mg/kg~20mg/kgである。単位投与量は、治療対象疾患および副作用の有無によって変わることができる。しかし、最適な投与量は、通常の実験を用いて決定できる。融合タンパク質の投与は、周期的なボーラス注入(periodic bolus injections)によるか、外側供給源(external reservoir)(例えば、静脈注射バッグ(intravenous bag))または内側(例えば、生分解性インプラント(bioerodable implant))からの持続的な静脈内、皮下、または腹膜内投与によることができる。
【0086】
本発明の組成物は、予防または治療しようとする疾患の予防または治療効果を有する他の薬物または生理学的活性物質と併用して投与したり、このような他の薬物との組み合わせ製剤(combination formulation)形態で剤形化することができる。
【0087】
本発明の融合タンパク質または組成物を用いて疾患を予防または治療する方法は、本発明の融合タンパク質または組成物と併用して疾患の予防または治療効果を有する他の薬物または生理学的活性物質を投与することも含んでもよいが、併用投与の経路、投与時期、および投与容量は、疾患の種類、患者の疾患状態、治療または予防の目的、および併用される他の薬物または生理学的活性物質によって決定できる。
【0088】
また、本発明は、免疫疾患の予防または治療効果を有する医薬製剤を生産するためのPD-L1タンパク質および改変された免疫グロブリンFc領域が含まれた融合タンパク質の使用を提供する。
【0089】
また、本発明は、PD-L1タンパク質および改変された免疫グロブリンFc領域が含まれた融合タンパク質と薬学的に許容可能な担体を個体に投与する段階を含む免疫疾患の予防または治療方法を提供する。
【0090】
前記治療的有効量は、達成しようとする反応の種類と程度、場合によって他の製剤が使用されるか否かをはじめとする具体的組成物、個体の年齢、体重、一般健康状態、性別および食事、投与時間、投与経路および組成物の分泌率、治療期間、具体的組成物と共に使用されるか、同時使用される薬物をはじめとする多様な因子と医薬分野によく知られた類似因子によって異なるように適用することが好ましい。したがって、本発明の目的に適合した組成物の有効量は、前述した事項を考慮して決定することが好ましい。
【0091】
前記個体は、任意の哺乳動物に適用可能であり、前記哺乳動物は、ヒトおよび霊長類だけでなく、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、イヌおよびネコなどの家畜を含む。
【実施例
【0092】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明する。これらの実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0093】
実施例1.PD-L1タンパク質および改変された免疫グロブリンFc領域が含まれた融合タンパク質生産のための遺伝子コンストラクト製造
ヒトPD-L1(programmed cell death-ligand 1)タンパク質および改変された免疫グロブリンFc領域(modified immunoglobulin Fc domain)が融合した融合タンパク質を生産するための遺伝子コンストラクトを製造した。具体的に、ヒトPD-L1遺伝子は、公知のアミノ酸配列(Accession number:Q9NZQ7)を用い、PD-L1タンパク質の細胞外ドメイン(extracellular domain、19-239 aa)が含まれた遺伝子コンストラクトは、TOP Gene Technologies(Canada,Quebec)で製作した。ヒトPD-L1タンパク質は、改変された免疫グロブリンFc領域のN末端に融合するように製造した。改変された免疫グロブリンFcドメイン(配列番号11)は、ヒトIgDのFcとヒトIgG4のFcのハイブリッド型であり、8個のアミノ酸で構成されたIgG1ヒンジ領域(配列番号16)を含むことに特徴がある。
【0094】
本発明の融合タンパク質は、PD-L1タンパク質が改変された免疫グロブリンFc領域とペプチドリンカーで連結されるように製造した。本発明では、二量体(dimerization)を誘導しながらも、柔軟性(flexibility)を維持するために、7個のアミノ酸配列からなるGSリンカー(配列番号10)によって連結されたヒトPD-L1タンパク質および改変された免疫グロブリンFc領域が含まれた融合タンパク質(以下、「PD-L1-hyFc21」または「PD-L1-hyFc21融合タンパク質」、配列番号12または13)を製造した。対照群としては、配列番号14のIgDヒンジ領域を含む免疫グロブリンFc領域が含まれた融合タンパク質(以下、「PD-L1-hyFc5」または「PD-L1-hyFc5融合タンパク質」、配列番号15)を使用した。
【0095】
前記融合タンパク質をコードするヌクレオチドが含まれた遺伝子コンストラクトを用いて組換え発現ベクターを製作した。製作された組換え発現ベクターは、CHO DG44細胞株にDNA溶液を懸濁し、直流高電圧のパルスを通過させて細胞内にDNAが導入されることを用いた遺伝子導入法(NeonTM kit、10μL、Invitrogen Cat.MPK1096)を用いて形質転換させた。その後、HT selection(HT supplement,Invitrogen、11067-030)とMTX(Methotrexate,Sigma,M8407)増幅段階を行って、高い発現率を示す細胞だけが選別されるように細胞継代を行った。細胞は、3日ごとに0.4× 10cells/mLの量で継代を行い、cell counting装置(Vi-cell,Beckman coulter)を用いて細胞の数と生存率を測定した。HT selectionは、mediaにHTを除去して形質転換された細胞だけが生存するようにする選別方法であり、MTX増幅は、継代培地にMTXを選別した濃度で入れて、遺伝子を増幅させる方法である。選別された細胞poolは、限界希釈クローニング(Limiting Dilution cloning)方法を用いて単細胞クローニング(Single Cell Cloning)を行った。簡単に、96 well plateに1 cell/wellになるように細胞を分注した後、0,7および14日目にCSI装置(clone selection imager,Molecular Devices)を用いて細胞イメージを保存して、一つの細胞に由来したクローン(clone)を逆追跡した。選別された単細胞(single cell)由来細胞株は、Fc ELISA(Human IgG ELISA Quantitation Set,Bethyl,E80-104)を用いて生産性を確認した。最終選別された5~6個のクローンは、batch cultureと長期安定性評価を行い、安定性が確認されたクローンをRCB(Research Cell Bank)で製造した。
【0096】
実施例2.PD-L1-hyFc21またはPD-L1-hyFc5融合タンパク質の確保
PD-L1-hyFc21またはPD-L1-hyFc5融合タンパク質を大量生産するために、前記実施例1で確保したPD-L1-hyFc5またはPD-L1-hyFc21懸濁細胞株から生産された細胞培養液から目的タンパク質を分離および精製した。
【0097】
PD-L1-hyFc21またはPD-L1-hyFc5融合タンパク質を大量確保するために、PD-L1-hyFc21またはPD-L1-hyFc5融合タンパク質の発現細胞株を同じ流加培養(Fed-batch culture)方法でGlass bioreactor 15Lで20日間培養して、PD-L1-hyFc21またはPD-L1-hyFc5融合タンパク質を生産した。流加培養の際、融合タンパク質を発現する細胞株の細胞生存率を測定し、目的タンパク質の最終発現量および純度を確認するために、サイズ排除クロマトグラフィー(SE-HPLC)を行った。
【0098】
発現細胞株の時間別最大細胞濃度および融合タンパク質の最終発現量を確認した結果、PD-L1-hyFc21融合タンパク質の発現細胞株は、時間別最大細胞濃度が13.9×10cells/mLであることが確認され(図2a)、最終回収された融合タンパク質の発現量は、5.6g/Lであることが確認された(図2b)。これに対し、PD-L1-hyFc5融合タンパク質の発現細胞株は、時間別最大細胞濃度が16.7×10 cells/mLであることが確認され(図3a)、最終回収された融合タンパク質の発現量は、2.2g/Lであることが確認された(図3b)。
【0099】
また、融合タンパク質の純度を確認した結果、PD-L1-hyFc21融合タンパク質の純度は、79.5%であり、高分子不純物(HMW)が7.7%、低分子不純物(LMW)が9.8%含まれたことが確認された(表1)。これに対し、PD-L1-hyFc5融合タンパク質の純度は、47.8%であり、高分子不純物(HMW)が31.7%、低分子不純物(LMW)が20.5%含まれたことが確認された(表1)。
【0100】
【表1】
*HMW:高分子不純物(High Molecular Weight Impurity);Main:目的タンパク質(Target protein);およびLMW:低分子不純物(Low Molecular Weight Impurity)。
【0101】
その後、高純度のPD-L1-hyFc21またはPD-L1-hyFc5融合タンパク質を確保するために、下記の3段階の精製工程を行った:培養液⇒タンパク質A親和性クロマトグラフィー(Protein A affinity chromatography)⇒アニオン交換クロマトグラフィー1(Anion exchange chromatography 1)⇒アニオン交換クロマトグラフィー2(Anion exchange chromatography 2)⇒限外ろ過/透析ろ過。
【0102】
確保された目的タンパク質は、サイズ排除クロマトグラフィー(SE-HPLC)分析を通じて純度および収得率を確認した。その結果、PD-L1-hyFc21融合タンパク質の純度は、97.3%、収得率は、30.2%であることが確認された。これに対し、PD-L1-hyFc5融合タンパク質の純度は、93.2%、収得率は、5.1%であることが確認された(表2)。
【0103】
【表2】
【0104】
前記結果から、PD-L1-hyFc21融合タンパク質は、PD-L1-hyFc5融合タンパク質に比べて約2.5倍の高い生産量を示し、タンパク質の純度も高いことを確認した。
【0105】
実施例3.PD-L1-hyFc21またはPD-L1-hyFc5融合タンパク質の特性分析
3.1.ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(sodium dodecyl sulfate-polyacrylamide gel electrophoresis,SDS-PAGE)
精製されたPD-L1-hyFc21またはPD-L1-hyFc5融合タンパク質の分子量を確認するために、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(sodium dodecyl sulfate polyacrylamide gel electrophoresis,SDS-PAGE)を行った。簡単に、融合タンパク質は、脱イオン水を用いて希釈され、NuPAGETM LDS Sample Buffer(Thermo Fisher Scientific)と混ぜて3μg/wellになるように4-12%Bis-Tris gel(Invitrogen)にローディング(loading)して電気泳動を行った。電気泳動が終わったゲルは、クマシー染色法で染色した。
【0106】
その結果、精製されたPD-L1-hyFc21およびPD-L1-hyFc5融合タンパク質は、いずれも、非還元条件(non-reducing condition)でサイズマーカー(size marker)98kDa付近で確認された(図4)。ただし、精製されたPD-L1-hyFc5融合タンパク質では、切断された形態の低分子不純物が含まれていた。
【0107】
3.2.サイズ排除クロマトグラフィー試験法(size-exclusion chromatography,SE-HPLC)
精製されたPD-L1-hyFc21またはPD-L1-hyFc5融合タンパク質でメインピークおよび二量体、多量体または切断された形態の異常ペプチドなどの不純物ピークを分析するために、サイズ排除クロマトグラフィー試験法(Size-exclusion chromatography,SE-HPLC)を行った。簡単に、融合タンパク質は、剤形緩衝液で希釈して1.0mg/mLで調製した後、ゲルろ過クロマトグラフィーカラム(TOSOH TSK-GEL G3000SWxL column、7.8 mm x 300 mm)を用いて分離したピークのうち融合タンパク質のメインピークの面積比(%Area)を分析した。
【0108】
その結果、PD-L1-hyFc21融合タンパク質の純度は、97.3%であることが確認され(図5a)、これに対し、PD-L1-hyFc5融合タンパク質の純度は、93.2%であることが確認された(図5b)。
【0109】
3.3.等電点電気泳動法(isoelectric focusing,IEF)
精製されたPD-L1-hyFc5およびPD-L1-hyFc21タンパク質のcharge variantsおよび分布(distribution)を確認するために、等電点電気泳動法(Isoelectric focusing,IEF)を行った。等電点電気泳動法は、タンパク質が有しているpI値を用いて分離したタンパク質を分析する電気泳動法であり、pI値は、電荷を帯びたタンパク質が電気的中性を帯びることになるpH値を言い、これを等電点という。等電点電気泳動において等電点に到達したタンパク質は、これ以上動かずに、ゲル(gel)上に留まることになって分離される。簡単に、本発明では、pH 3-10等電点ゲル(Invitrogen)を用いてpI値によって融合タンパク質を分離し、電気泳動が終わったゲルは、12%TCA(trichloroacetic acid)溶液で固定させた後、クマシー染色法で染色した。
【0110】
その結果、PD-L1-hyFc21およびPD-L1-hyFc5融合タンパク質は、いずれも、pI値が5.2~6.0の範囲内であることが確認された(図6)。
【0111】
3.4.示差走査蛍光測定法(Differential Scanning Fluorimetry,DSF)
精製されたPD-L1-hyFc21またはPD-L1-hyFc5融合タンパク質の熱安定性を分析するために、PROTEOSTAT(登録商標)熱移動安定性分析キットを用いて実験を行った。分析キットには、タンパク質凝集を感知する蛍光染料が含まれていて、熱ストレス条件で大量のタンパク質が凝集する温度を確認することができる。凝集温度(Tagg)は、タンパク質安定性の指標であり、タンパク質構造の安定性を確認することができる。
【0112】
その結果、PD-L1-hyFc21融合タンパク質の凝集温度は、55.8℃であることが確認され、これに対し、PD-L1-hyFc5融合タンパク質の凝集温度は、50.7℃であることが確認された(図7)。これによって、PD-L1-hyFc21融合タンパク質がPD-L1-hyFc5に比べて構造的に熱に対する安定性がさらに優れていることを確認した。
【0113】
実施例4. PD-L1-hyFc21またはPD-L1-hyFc5融合タンパク質の試験管内(in vitro)活性分析
4.1.PD-1を発現するJurkat(SHP-1)細胞株を用いたPD-1に対する結合能分析
PD-1を発現するJurkat(SHP-1)細胞株を用いてPD-L1-hyFc21またはPD-L1-hyFc5融合タンパク質のPD-1に対する結合能を分析した。簡単に、96-well plateにJurkat細胞(PathHunter(登録商標)Jurkat PD-1(SHP-1)、DiscoverX)を分注し、2時間の間37℃5%COインキュベーターで安定化した。その後、PD-L1-hyFc21またはPD-L1-hyFc5融合タンパク質をそれぞれ75および600nMになるように添加した後、37℃5%COインキュベーターで1時間の間反応させた。反応終了後、PD-1:PD-L1 signaling responseによって発現するSHP-1を探知する試薬(PathHunter(登録商標)Bioassay Detection Kit,DiscoverX)を添加してSHP-1の発光程度(luminescence)を測定した。
【0114】
その結果、PD-L1-hyFc21融合タンパク質を処理したグループでは、PD-L1-hyFc5融合タンパク質を処理したグループに比べて75および600nMの濃度の両方でSHP-1の発光程度が高いことが示された(図8)。これによって、PD-L1-hyFc21融合タンパク質は、PD-L1-hyFc5融合タンパク質に比べてPD-1に対する結合能がさらに高いことを確認し、特に、濃度が増加するにつれてPD-1に対する結合能がさらに増加したことを確認した。
【0115】
4.2.混合リンパ球反応(Mixed lymphocyte reaction)の抑制能分析
PD-L1-hyFc21またはPD-L1-hyFc5融合タンパク質による混合リンパ球反応の抑制能を分析した。簡単に、供与者と授与者のPBMC(peripheral blood mononuclear cells)を準備し、細胞内タンパク質をそめるCTV(CellTraceTM Violet)およびCTR(CellTraceTM Far Red)染色を実施した。それぞれの供与者および授与者PBMCを反応細胞と刺激細胞にして1:1の割合で混ぜて96-well U-bottomプレートに入れ、PD-L1-hyFc21またはPD-L1-hyFc5融合タンパク質を0.5μM添加した後、37℃5%COインキュベーターで5日間反応させた。反応が終了した細胞において反応細胞に染色されたCTV(CellTraceTM Violet)の蛍光が減少した程度を分析して、PD-L1-hyFc21またはPD-L1-hyFc5融合タンパク質によって混合リンパ球反応が抑制された程度を比較した。
【0116】
その結果、PD-L1-hyFc21またはPD-L1-hyFc5融合タンパク質を処理したグループでは、対照群(Allo,hyFc処理群)に比べて混合リンパ球反応による活性化した反応細胞のCD4 T細胞とCD8 T細胞の増殖(proliferation)が減少したことを確認した(図9)。特に、PD-L1-hyFc21融合タンパク質を処理したグループでは、PD-L1-hyFc5融合タンパク質を処理したグループに比べて同じ濃度条件で活性化した反応細胞のCD4 T細胞とCD8 T細胞の増殖がさらに顕著に減少したことを確認した(図9)。
【0117】
4.3.活性化したヒトT細胞の増殖抑制能(proliferation inhibition)およびサイトカイン発現抑制能(cytokine production inhibition)分析
ヒトPBMCを用いてT細胞活性化条件でPD-L1-hyFc21またはPD-L1-hyFc5融合タンパク質によるヒトT細胞の増殖抑制能を比較した。簡単に、抗CD3抗体とともにPD-L1-hyFc21またはPD-L1-hyFc5融合タンパク質を96-well plateに処理して4℃で1日間コーティングした。マイクロビーズ(microbead,MACS)を用いて正常ヒトのPBMCからCD4 T細胞を分離した後、分離したCD4 T細胞を細胞内タンパク質を染色するCTV(CellTraceTM Violet、2.5μM)染色を実施した。コーティングが終わったプレートをPBSで洗浄した後、CTVで染色されたCD4 T細胞を試験プレートに入れて3日間37℃5%COインキュベーターで培養した。4日が過ぎた後、試験プレートの細胞を収得してフローサイトメトリー装置(flow-cytometry)を用いてCTVの蛍光減少程度を分析した。
【0118】
その結果、PD-L1-hyFc21またはPD-L1-hyFc5融合タンパク質を処理したグループでは、対照群(no treatmentまたはhyFc処理群)に比べて活性化したヒトT細胞の増殖(proliferation)が減少したことを確認した(図10a)。特に、PD-L1-hyFc21融合タンパク質を処理したグループでは、PD-L1-hyFc5融合タンパク質を処理したグループに比べて活性化したヒトT細胞の増殖が約2倍程度に顕著に抑制されたことを確認した(図10a)。
【0119】
また、ヒトPBMCを用いてT細胞活性化条件でPD-L1-hyFc21またはPD-L1-hyFc5融合タンパク質によるヒトT細胞のサイトカイン発現抑制能を比較した。簡単に、抗CD3抗体とともにPD-L1-hyFc21またはPD-L1-hyFc5融合タンパク質を0.5μMで処理されるように希釈して、48-well plateに4℃で1日間コーティングした。正常ヒトのPBMCからマイクロビーズ(microbead,Miltenyi Biotech)を用いてCD4 T細胞を分離した。マイクロビーズ(microbead,MACS)を用いて正常ヒトのPBMCでCD4 T細胞を分離した。コーティングが終わったプレートをPBSで洗浄した後、分離したCD4 T細胞を試験プレートに入れ、3日間37℃5%COインキュベーターで培養した。抗IFN-γ抗体(DuoSet Human IFN-gamma ELISA set,R&D system)を試験プレートに入れ、常温でコーティングした。コーティングが完了した試験プレートを0.05%Tween-20が添加されたPBS(PBST)で3回洗浄後、1%BSAが添加されたPBSを添加して2時間の間常温で試験プレートをブロッキングした。試験プレートにCD4細胞に培養液を移して収納し、常温で2時間の間反応させた。PBSTで5回洗浄を行い、探知抗体を添加して常温で2時間反応させた後、さらにPBSTで5回洗浄を行った。洗浄が終わった試験プレートにstreptavidin-HRPを添加した後、常温で20分間反応させた。その後、PBSTで5回洗浄し、TMB substrateを添加した後、2N濃度の硫酸(HSO)を添加して450nmで吸光度を測定した。測定された吸光度の値を用いてPD-L1-hyFc21またはPD-L1-hyFc5融合タンパク質の活性化したCD4 T細胞によって生成されるIFN-γ生成抑制能を分析した。
【0120】
その結果、PD-L1-hyFc21またはPD-L1-hyFc5融合タンパク質を処理したグループでは、対照群(no treatmentまたはhyFc処理群)に比べて活性化したヒトCD4 T細胞で生成されたIFN-γの量が顕著に減少したことを確認した(図10b)。特に、PD-L1-hyFc21融合タンパク質を処理したグループでは、PD-L1-hyFc5融合タンパク質を処理したグループに比べて活性化したヒトCD4 T細胞で生成されたIFN-γの量が約3倍程度に顕著に抑制されたことを確認した(図10b)。
【0121】
4.4.活性化したマウスT細胞のサイトカイン発現抑制能(cytokine production inhibition)分析
マウスT細胞活性化条件でPD-L1-hyFc21またはPD-L1-hyFc5融合タンパク質によるマウスT細胞のサイトカイン発現抑制能を比較した。簡単に、5μg/mLの抗CD3抗体とともにPD-L1-hyFc21またはPD-L1-hyFc5融合タンパク質(0.5μM)を試験プレートに入れ、4℃で1日間コーティングした。マイクロビーズ(microbead,Miltenyi Biotech)を用いてマウスのリンパ節から分離したリンパ球からCD4 T細胞を分離した。コーティングしたプレートをPBSで洗浄後、分離したCD4 T細胞を入れ、3日間37℃5%COインキュベーターで培養した。抗IL-2抗体(Mouse IL-2 ELISA MAXTM Deluxe,Biolegend)および抗IFN-γ抗体(Mouse IFNgamma ELISA MAXTM Deluxe,Biolegend)を新しい試験プレートに入れ、常温でコーティングした。前日コーティングした試験プレートを洗浄バッファーで4回洗浄後、assay diluent Aを添加して1時間の間常温でブロッキングした。試験プレートをさらに洗浄バッファーで4回洗浄した後、CD4 T細胞培養液を移して収納し、常温で2時間の間反応させた。洗浄バッファーで4回洗浄した後、探知抗体を添加して常温で1時間振とうしつつ反応させ、さらに洗浄バッファーで4回洗浄した。洗浄が終わった試験プレートにstreptavidin-HRPを添加した後、常温で30分間反応させた。洗浄バッファーで5回洗浄し、TMB substrateを添加した後、光を遮断した常温で30分間反応させた。反応終了溶液(stop solution)を添加して15分以内に450nmで吸光度を測定した。測定された吸光度の値を用いてIL-2およびIFN-γの濃度を計算し、PD-L1-hyFc21またはPD-L1-hyFc5融合タンパク質の活性化したCD4 T細胞によって生成されるIL-2およびIFN-γ生成抑制能を分析した。
【0122】
その結果、PD-L1-hyFc21またはPD-L1-hyFc5融合タンパク質を処理したグループでは、対照群(no treatmentまたはhyFc処理群)に比べて活性化したマウスCD4 T細胞で生成されたIL-2およびIFN-γの量が顕著に減少したことを確認した(図11)。特に、PD-L1-hyFc21融合タンパク質を処理したグループでは、PD-L1-hyFc5融合タンパク質を処理したグループに比べて活性化したヒトCD4 T細胞で生成されたIL-2の量が約1.8倍程度に顕著に抑制され、IFN-γの量が約4倍程度に顕著に抑制されたことを確認した(図11)。
【0123】
実施例5.PD-L1-hyFc21融合タンパク質の生体内(in vivo)活性分析
5.1.イミキモド(imiquimod,IMQ)誘導乾癬マウスモデルでPD-L1-hyFc21融合タンパク質の効能評価
乾癬が発病すると、TLR7/8(Toll-like receptor 7/8)によって樹状細胞(dendritic cells)が活性化するが、イミキモド(imiquimod,IMQ)は、TLR7とTLR8のリガンドであり、マウス皮膚に繰り返し処理すると、乾癬のような炎症反応を起こすことが知られている。イミキモド(IMQ)は、樹状細胞だけでなく、適応免疫細胞(adaptive immune cell)であるT細胞にも関与するが、このうち、IL-17(interleukin-17)を分泌するγδT細胞(gamma delta T cell,γδT17)が優先的に乾癬性炎症(psoriatic inflammation)に関与する。したがって、IMQ誘導乾癬マウスモデルは、乾癬患者と類似した表現型を有し、乾癬治療剤の開発に適合したモデルとして使用できる。
【0124】
簡単に、マウス動物モデルに乾癬を誘導するために、マウスの両耳にIMQクリームを6日間毎日20mg/mouse/dayで塗布した。IMQクリームを塗布した0日目から試験終了日である6日目まで毎日7日間キャリパーを用いて各グループのマウスの耳の厚さを測定し、IMQクリームを塗布しないマウス(no treatment)の耳の厚さを基準として各グループのマウスにおける変化した耳の厚さの変化を比較した。PD-L1-hyFc21融合タンパク質は、0、1、3、5日目に皮下投与または静脈投与した。またはanti-IL12p40 antibodyは、試験2日目に単回静脈投与(iv)した。対照群および実験群は、下記表3の通りである。
【0125】
【表3】
【0126】
その結果、IMQが処理されたグループ(IMG-vehicle)では、IMQが処理されない対照群(No treatment-vehicle)に比べて試験終了日である6日目に耳の厚さが約68%増加したことを確認した(図12a)。これに対し、3、10および30mg/kgのPD-L1-hyFc21融合タンパク質を皮下投与したグループでは、4日目からマウスの耳の厚さに差異が現れた(図12a)。特に、最低用量である3mg/kgのPD-L1-hyFc21融合タンパク質を皮下投与したグループでは、IMQが処理されたグループ(IMG-vehicle)に比べて試験終了日である6日目に耳の厚さが51%程度抑制され、中用量および高用量である10mg/kgおよび30mg/kgのPD-L1-hyFc21融合タンパク質を皮下投与したグループでは、IMQが処理されたグループ(IMG-vehicle)に比べてそれぞれ67%および66%の抑制率を示した(図12a)。また、10mg/kgまたは30mg/kgを投与したグループと3mg/kgの低用量を投与したグループの間には、用量による有意差を示したが、10mg/kgを投与したグループと30mg/kgを投与したグループ間には有意差を示さなかった。
【0127】
また、3、10および30mg/kgのPD-L1-hyFc21融合タンパク質を静脈投与したすべてのグループでは、IMQが処理されたグループ(IMG-vehicle)に比べて試験終了日である6日まで約87~92%にマウスの耳の厚さが顕著に抑制される効果があることを確認した(図12b)。
【0128】
5.2.ドキシサイクリン(Doxycycline)誘導Peli1遺伝子で形質転換された乾癬マウスモデルでPD-L1-hyFc21融合タンパク質の皮下投与による効能評価
本発明者は、慢性炎症(chronic inflammation)の乾癬マウスモデルにおけるPD-L1-hyFc21融合タンパク質の効能を評価するために、イミキモド(imiquimod,IMQ)誘導乾癬マウスモデルの他にドキシサイクリン(Doxycycline)の投与によってPeli1(Pellino homolog 1)遺伝子が過発現するように形質転換させて、長期間の慢性乾癬症状が誘発された乾癬マウスモデル(以下、「rtTA-Peli1乾癬マウスモデル」という)を用いた。rtTA-Peli1乾癬マウスモデルは、乾癬が誘発されるにつれて、上皮(epidermis)の乾癬病変の発生、炎症性サイトカイン(inflammatory cytokine)の増加のような炎症反応の増加、上皮細胞層の増加、および真皮に食細胞、樹状細胞およびTh17細胞の浸潤増加を誘発させる。
【0129】
簡単に、マウスに乾癬を誘導するために、4週齢のマウスに5%スクロース(sucrose)と2mg/mLのドキシサイクリンが含まれた飲用水を6ヶ月の間飲用するようにした。ドキシサイクリンが含まれた食塩水は、試験期間にも継続して供給された。Peli遺伝子で形質転換されないマウス(以下、「rtTA」という)を対照群として使用した。PD-L1-hyFc21融合タンパク質は、8週間週1回皮下投与した。
【0130】
まず、PD-L1-hyFc21融合タンパク質をrtTA-Peli1乾癬マウスモデルに皮下投与した後、H&E染色を通じて皮膚上皮組織の変化および皮膚上皮層の厚さを測定する実験を行った。H&E染色結果は、200X倍率で観察し、各写真の6部分を任意に指定して測定した。その結果、乾癬が誘発されていない対照群(rtTA)では、上皮層の平均厚さが8.74μmであり、乾癬が誘発されたrtTA-Peli1グループ(rtTA-Peli1 Vehicle)では、上皮層の平均厚さが48.56μmであり、乾癬が誘発されたrtTA-Peli1グループ(rtTA-Peli1 Vehicle)は、対照群に比べて上皮層の厚さが約5.6倍程度増加したことを確認した(図13aおよび図13b)。これに対し、3、10および30mg/kgのPD-L1-hyFc21融合タンパク質を皮下投与したグループでは、上皮層の平均厚さがそれぞれ38.29μm、40.18μmおよび31.74μmであり、乾癬が誘発されたrtTA-Peli1グループ(rtTA-Peli1 Vehicle)に比べて上皮層の厚さが減少する効果があることを確認した(図13aおよび図13b)。ただし、用量依存的な効果を示されなかった。
【0131】
また、PD-L1-hyFc21融合タンパク質をrtTA-Peli1乾癬マウスモデルに皮下投与した後、免疫蛍光染色法を通じて真皮層へのT細胞およびマクロファージ(macrophage)の浸潤程度を比較する実験を行った。T細胞の検出のためにanti-CD3抗体を使用し、マクロファージ検出のためにanti-F4/80抗体を使用した。結果は、免疫蛍光顕微鏡の400X倍率で観察し、同一面積内細胞の数を算出した。
【0132】
その結果、乾癬が誘発されていない対照群(rtTA)では、皮膚組織にT細胞とマクロファージがほとんど浸潤されなかったことを確認し、乾癬が誘発されたrtTA-Peli1グループ(rtTA-Peli1 Vehicle)では、皮膚組織に浸潤しているT細胞およびマクロファージの数が増加したことを確認した(図14)。特に、乾癬が誘発されたrtTA-Peli1グループ(rtTA-Peli1 Vehicle)では、皮膚組織に浸潤しているT細胞の数が約47個であることが確認された(図15)。これに対し、3、10および30mg/kgのPD-L1-hyFc21融合タンパク質を皮下投与したグループでは、皮膚組織に浸潤しているT細胞の数がそれぞれ約32個、14個および7個であり、用量依存的に浸潤しているT細胞の数が顕著に減少したことを確認した(図15)。
【0133】
また、PD-L1-hyFc21融合タンパク質をrtTA-Peli1乾癬マウスモデルに皮下投与した後、anti-K14抗体を用いた免疫蛍光染色法を通じて皮膚組織でケラチン生成細胞の変化を分析した。K14(Keratin 14)の発現は、増殖を担当する基底層(basal layer)に現れ、これらの発現増加は、ケラチン生成細胞のうち増殖を担当する細胞が増加したと解釈することができる。結果は、同一面積内細胞数を測定して比較した。その結果、乾癬が誘発されていない対照群(rtTA)では、K14ケラチン生成細胞の数が59個であり、乾癬が誘発されたrtTA-Peli1グループ(rtTA-Peli1 Vehicle)では、ケラチン生成細胞の数が197個であり、乾癬が誘発されたrtTA-Peli1グループでは、対照群に比べてケラチン生成細胞の数が約3.3倍程度増加した(図16)。これに対し、3、10および30mg/kgのPD-L1-hyFc21融合タンパク質を皮下投与したグループでは、ケラチン生成細胞の数がそれぞれ約179個、150個および98個であり、用量依存的にケラチン生成細胞の数が減少し、特に、30mg/kgの用量では、ケラチン生成細胞の数が顕著に減少したことを確認した(図16)。
【0134】
5.3.ドキシサイクリン(Doxycycline)誘導Peli1遺伝子で形質転換された乾癬マウスモデルでPD-L1-hyFc21融合タンパク質の静脈投与による効能評価
PD-L1-hyFc21融合タンパク質をrtTA-Peli1乾癬マウスモデルに5週間週1回静脈投与した後、皮膚上皮層の変化をスコア(score)指数で分析し、キャリパー(caliper)を用いて腹部の皮膚の厚さを測定する実験を行った。スコア指数は、次のように評価した:0=normal skin;1=keratoplasia appear;2=keratoplasia appear on half of back skin,or skin lesions slightly overtop the normal skin;3=thickness appear on whole back skin,or skin lesions significantly overtop the normal skin;4=skin lesions sclerosis(Biomedicine & Pharmacotherapy,Volume 110,February 2019,Pages 265-274)。
【0135】
その結果、乾癬が誘発されたrtTA-Peli1グループ(rtTA-Peli1 Vehicle)では、対照群(rtTA)に比べてスコア指数が3近く増加したのに対し、PD-L1-hyFc21融合タンパク質を静脈投与したグループでは、スコア指数がrtTA-Peli1グループに比べて減少したことを確認した(図17)。また、スコア指数と同様に、乾癬が誘発されたrtTA-Peli1グループ(rtTA-Peli1 Vehicle)では、対照群(rtTA)に比べて腹部の皮膚の厚さが約100μm程度増加したのに対し、PD-L1-hyFc21融合タンパク質を静脈投与したグループでは、対照群(rtTA)と類似したレベルに皮膚の厚さが減少したことを確認した(図18)。ただし、前記結果において、用量依存的な効果は確認されなかった。
【0136】
また、PD-L1-hyFc21融合タンパク質をrtTA-Peli1乾癬マウスモデルに静脈投与した後、H&E染色を通じて皮膚上皮組織の変化および皮膚上皮層の厚さを測定する実験を行った。H&E染色結果は、顕微鏡の400X倍率で観察し、上皮層の6部分を任意に指定し、Image Jプログラムを用いて皮膚上皮層の厚さを測定した。その結果、乾癬が誘発されていない対照群(rtTA)では、上皮層の平均厚さが23.8μmであり、乾癬が誘発されたrtTA-Peli1グループ(rtTA-Peli1 Vehicle)では、上皮層の平均厚さが104.5μmであり、乾癬が誘発されたrtTA-Peli1グループ(rtTA-Peli1 Vehicle)は、対照群に比べて上皮層の厚さが約4.4倍程度増加したことを確認した(図19aおよび図19b)。これに対し、1、3および10mg/kgのPD-L1-hyFc21融合タンパク質を静脈投与したグループでは、上皮層の平均厚さがそれぞれそれぞれ約97.9μm、86.3μmおよび73.3μmであり、乾癬が誘発されたrtTA-Peli1グループ(rtTA-Peli1 Vehicle)に比べて上皮層の厚さが用量依存的に減少する効果があることを確認した(図19aおよび図19b)。
【0137】
また、PD-L1-hyFc21融合タンパク質をrtTA-Peli1乾癬マウスモデルに静脈投与した後、IL-17AおよびIL-22のようなTh17細胞関連遺伝子(Th17 cell-associated genes)とIL-1βおよびIL-24のような先天性免疫細胞関連遺伝子(innate immune cell-associated genes)のmRNA発現変化を確認するために、qRT-PCRを行った。その結果、乾癬が誘発されたrtTA-Peli1グループ(rtTA-Peli1 Vehicle)では、対照群(rtTA)に比べてL-17AおよびIL-22のようなTh17細胞関連遺伝子のmRNA発現が増加する様相を示したのに対し、PD-L1-hyFc21融合タンパク質を静脈投与したグループでは、Th17細胞関連遺伝子のmRNA発現が減少したことを確認した(図20)。また、これと同様に、乾癬が誘発されたrtTA-Peli1グループ(rtTA-Peli1 Vehicle)では、対照群(rtTA)に比べてIL-1βおよびIL-24のような先天性免疫細胞関連遺伝子のmRNA発現が増加する様相を示したのに対し、PD-L1-hyFc21融合タンパク質を静脈投与したグループでは、Th17細胞関連遺伝子のmRNA発現が減少する傾向を示した(図20)。特に、10mg/kgのPD-L1-hyFc21融合タンパク質を静脈投与したグループでは、IL-24 mRNAの発現が有意に減少した(図20)。
【0138】
前記結果から、PD-L1-hyFc21融合タンパク質は、皮下投与または静脈投与を通じて乾癬のような自己免疫疾患の病因に重要な要因であるCD4 T細胞の増殖を抑制と、病変に伴う炎症性サイトカインの発現を抑制する効果があるので、乾癬のような免疫疾患の治療剤として使用できることを確認した。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17
図18
図19A
図19B
図20
【配列表】
2023512951000001.app
【国際調査報告】