(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】安定した抗PD-1抗体薬剤学的製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20230323BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230323BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230323BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20230323BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230323BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20230323BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20230323BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230323BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230323BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
A61K39/395 M
A61P35/00
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K47/26
A61K47/18
A61K47/02
A61K47/22
A61K47/04
A61K47/12
A61K9/08
C07K16/28 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544201
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(85)【翻訳文提出日】2022-07-20
(86)【国際出願番号】 KR2021001210
(87)【国際公開番号】W WO2021154027
(87)【国際公開日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】10-2020-0011353
(32)【優先日】2020-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517453553
【氏名又は名称】サムスン バイオエピス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173473
【氏名又は名称】高井良 克己
(72)【発明者】
【氏名】鄭 榮碩
(72)【発明者】
【氏名】洪 慈慧
(72)【発明者】
【氏名】朱 景熙
(72)【発明者】
【氏名】河 榮▲ウク▼
(72)【発明者】
【氏名】呉 仁泳
(72)【発明者】
【氏名】金 仁愛
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076CC27
4C076DD22Q
4C076DD22Z
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4C085EE07
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
抗PD-1抗体またはその抗原結合断片と、安定化剤と、緩衝剤と、を含み、界面活性剤を含んでいない、安定した抗PD-1抗体薬剤学的製剤、及びそれを製造する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)抗PD-1抗体またはその抗原結合断片と、
(b)安定化剤と、
(c)緩衝剤と、を含み、
界面活性剤を含まない、約pH4.5~6.5を有する、安定した抗PD-1抗体薬剤学的製剤。
【請求項2】
前記抗PD-1抗体は、ペムブロリズマブ抗体である、請求項1に記載の薬剤学的製剤。
【請求項3】
前記抗PD-1抗体またはその抗原結合断片の濃度は、約5~300mg/mlである、請求項1に記載の薬剤学的製剤。
【請求項4】
前記ペムブロリズマブ抗体またはその抗原結合断片の濃度は、約10~165mg/mLである、請求項1に記載の薬剤学的製剤。
【請求項5】
前記抗PD-1抗体またはその抗原結合断片の濃度は、約25または約150mg/mLである、請求項1に記載の薬剤学的製剤。
【請求項6】
前記安定化剤は、ポリオール、アミノ酸、またはその薬剤学的に許容可能な塩、あるいはそれらの混合物である、請求項1に記載の薬剤学的製剤。
【請求項7】
前記ポリオールは、ソルビトール、スクロース、トレハロース、マンノース、マルトース、マンニトール、またはそれらの混合物である、請求項6に記載の薬剤学的製剤。
【請求項8】
前記ポリオールは、ソルビトール、スクロース、トレハロース、またはそれらの混合物である、請求項6に記載の薬剤学的製剤。
【請求項9】
前記アミノ酸は、グリシン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、リシン、アルギニン、その薬剤学的に許容可能な塩、またはその混合物である、請求項6に記載の薬剤学的製剤。
【請求項10】
前記安定化剤は、約1.0~15.0w/v%の糖、約1.0~20.0w/v%の糖アルコール、約0.1~300mMのアミノ酸、または約1.0~300.0mMの金属塩である、請求項1に記載の薬剤学的製剤。
【請求項11】
前記界面活性剤は、非イオン性界面活性剤である、請求項1に記載の薬剤学的製剤。
【請求項12】
前記界面活性剤は、ポリソルベート、ポロキサマー、他の脂肪酸のソルビタンエステル、またはそれらの混合物である、請求項11に記載の薬剤学的製剤。
【請求項13】
前記ポリソルベートは、ポリソルベート20、ポリソルベート80、またはそれらの混合物である、請求項12に記載の薬剤学的製剤。
【請求項14】
前記緩衝剤は、ヒスチジン、リン酸、マレイン酸、酒石酸、コハク酸、クエン酸、酢酸、炭酸、その薬剤学的に許容可能な塩、またはそれらの混合物である、請求項1に記載の薬剤学的製剤。
【請求項15】
前記緩衝剤の濃度は、約5mM~40mM未満である、請求項1に記載の薬剤学的製剤。
【請求項16】
前記抗PD-1抗体またはその抗原結合断片の濃度は、約5~300mg/mLであり、前記安定化剤は、約1.0~15.0w/v%のスクロース、トレハロース、その水和物、またはそれらの混合物、約1.0~20.0w/v%のソルビトール、マンニトール、その水和物またはその混合物、または約0.1~300.0mMのアルギニン、リシン、プロリン、グリシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、その薬剤学的に許容可能な塩、あるいはそれらの混合物であり、前記緩衝化剤は、約5mM~40mM未満のヒスチジン、リン酸、マレイン酸、酒石酸、コハク酸、クエン酸、酢酸、炭酸、それらの薬剤学的に許容可能な塩、またはそれらの混合物である、請求項1に記載の薬剤学的製剤。
【請求項17】
前記抗PD-1抗体またはその抗原結合断片の濃度は、約5~200mg/mLである、請求項16に記載の薬剤学的製剤。
【請求項18】
前記抗PD-1抗体またはその抗原結合断片の濃度は、約15~30mg/ml、または約140~160mg/mLである、請求項16に記載の薬剤学的製剤。
【請求項19】
前記非イオン性界面活性剤を含まない、請求項16に記載の薬剤学的製剤。
【請求項20】
前記非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート、ポロキサマー、他の脂肪酸のソルビタンエステル、またはその混合物である、請求項19に記載の薬剤学的製剤。
【請求項21】
癌治療に効果的な量の請求項1に記載の薬剤学的製剤を個体に投与する段階を含む、個体において癌を治療する方法。
【請求項22】
溶媒に安定化剤及び緩衝剤を添加して混合溶液を製造する段階と、
前記混合溶液にペムブロリズマブ抗体またはその抗原結合断片を添加する段階、または該溶媒にペムブロリズマブ抗体またはその抗原結合断片を添加し、ペムブロリズマブ抗体またはその抗原結合断片溶液を製造する段階と、
前記溶液に安定化剤及び緩衝剤を添加する段階と、を含む、安定した抗PD-1抗体薬剤学的製剤を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定した抗PD-1抗体薬剤学的製剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤安定性を増進させるための安定した抗PD-1抗体薬剤学的製剤の開発必要性が叫ばれている。抗PD-1抗体薬剤学的製剤は、薬剤安定性のために、緩衝剤、安定化剤及び界面活性剤を含んでいる。
【0003】
しかしながら、ポリソルベートのような界面活性剤は、酸化及び加水分解を介して分解されると知られており、それは、結果として、活性酸素種(ROS:reactive oxygen species)を生成し、抗体タンパク質の酸化的損傷を生じさせてしまう。
【0004】
それにより、抗PD-1抗体薬剤学的製剤の安定性に影響を及ぼしうる界面活性剤を含まず、抗体タンパク質を安定化させることができる製剤の開発が依然として要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、(a)抗PD-1抗体またはその抗原結合断片;(b)安定化剤;及び(c)緩衝剤を含み、界面活性剤を含まない、pH4.5ないし6.5を有する安定した抗PD-1抗体薬剤学的製剤を提供することである。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、また、前述の薬剤学的製剤を個体に投与する段階を含む、個体において癌を治療する方法を提供することである。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、また、前記薬剤学的製剤の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で使用される全ての技術用語は、異なって定義されない以上、本発明の関連分野において、当業者が一般的に理解するような意味に使用される。また、本明細書には、望ましい方法や試料が記載されるが、それと類似していたり、同等であったりするものも、本発明の範疇に含まれる。また、本明細書に記載された数値は、明示されなくとも、「約」の意味を含むと見なされる。本明細書に参考文献として記載される全ての刊行物の内容は、全体として本明細書に援用によって統合される。
【0009】
一態様は、(a)抗PD-1抗体またはその抗原結合断片;(b)安定化剤;及び(c)緩衝剤を含み、界面活性剤を含まず、pH4.5ないし6.5を有する安定した抗PD-1抗体薬剤学的製剤を提供する。
【0010】
一般的に知られた抗体を含む薬剤学的製剤と異なり、前記薬剤学的製剤は、界面活性剤を含まないが、抗PD-1抗体の保存に望ましい環境を提供し、その安定性を維持することができる。前記薬剤学的製剤のpHは、例えば、pH4.5ないし6.5、pH4.5ないし6.3、pH4.8ないし6.3、pH5ないし6.3、pH5.2ないし6.3、pH4.5ないし6.0、pH4.8ないし6.0、pH5.0ないし6.0、pH5.2ないし6.0、pH4.5ないし5.8、pH4.8ないし5.8、pH5.0ないし5.8、pH5.2ないし5.8、pH4.5ないし5.6、pH4.8ないし5.6、pH5.0ないし5.6、pH5.2ないし5.6、pH4.9ないし5.5、pH4.9、pH5.0、pH5.1、pH5.2、pH5.3、pH5.4、またはpH5.5でもある。
【0011】
用語「抗体(antibody)」は、PD-1に特異的に結合する活性を有する任意形態の抗体を示す。前記抗体は、単一クローン抗体、ポリクローン抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体及びキメラ抗体を含む。前記抗体は、ペムブロリズマブ(pembrolizumab)単一クローン抗体でもある。
【0012】
本明細書に提供された薬剤学的製剤が、「成分Aを含まない」というのは、前記薬剤学的製剤が、成分Aを含まないか、あるいは実質的に含まないことを意味しうる。「成分Aを実質的に含まない」というのは、成分Aを全く含まないか、あるいは成分Aが存在しても、成分Aが薬剤学的製剤の特性に実質的にいかなる影響を及ぼさない微量で存在する場合、または検出不可能な量で存在する場合を含むとも解釈される。
【0013】
用語「抗原結合断片」は、抗PD-1抗体において、PD-1抗原に結合することができる断片であり、例えば、Fab断片、F(ab’)2断片、Fc断片またはscFv断片を含むものでもある。
【0014】
「ペムブロリズマブ(pembrolizumab)抗体」は、癌免疫療法に使用されるヒト化された抗体であり、さまざまな商品名のうち一つであり、キイトルーダ(Keytrudar(R))という名称で販売される。該ペムブロリズマブは、黒色腫(melanoma)、非小細胞肺癌(NSCLC:non-small cell lung cancer)を含む肺癌、頭頸部扁平細胞癌(HNSCC:head and neck squamous cell cancer)を含む頭頸部癌、典型的ホジキンリンパ腫(cHL:classical Hodgkin lymphoma)を含むホジキンリンパ腫、尿路上皮癌、腎細胞癌、胃癌、高頻度マイクロサテライト不安定性癌(MSI-H(microsatellite instability-high) cancer)、ミスマッチ修復欠乏(dMMR:deficient mismatch repair)固形癌、子宮頸部癌、肝臓癌、メルケル細胞癌(MCC:Merkel cell carcinoma)などにも使用される。前記ペムブロリズマブ抗体は、また商業的に販売されているキイトルーダ(R)中に存在する活性ペムブロリズマブ抗体の「バイオシミラー(biosimilar)」または「バイオベター(biobetter)」を含むものでもある。該ペムブロリズマブ抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号2のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、及び配列番号3のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、並びに配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号6のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を含むものでもある。該ペムブロリズマブ抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び配列番号8のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含むものでもある。
【0015】
ペムブロリズマブは、リンパ球のプログラムされた細胞死タンパク質1(PD-1:programmed cell death protein 1)受容体を標的にする。該ペムブロリズマブは、癌細胞の保護メカニズムを遮断し、免疫システムが癌細胞を破壊させるIgG4イソタイプ抗体である。該ペムブロリズマブは、2014年、米国において、医薬用途に許可された。また、該ペムブロリズマブは、2017年、特定遺伝的異常(anomalies)、例えば、ミスマッチ修復欠乏(mismatch repair deficiency)またはマイクロサテライト不安定性を有する切断不可能(unresectable)であるか、あるいは転移性固形腫瘍について許可された。また、該ペムブロリズマブは、単独、または他の化学治療剤と組み合わされても使用される。該ペムブロリズマブは、静脈注射または皮下注射によっても投与される。
【0016】
該ペムブロリズマブは、当業界で知られた一般的方法によっても生産される。例えば、US9,834,605及びWO2008/156712A1は、当業界の当業者が、ペムブロリズマブ抗体を製造するのに使用することができる方法を記述している。それら方法は、援用によって本明細書に統合される。例えば、該ペムブロリズマブは、宿主細胞中の免疫グロブリン軽鎖遺伝子及び免疫グロブリン重鎖遺伝子の組み換え発現によっても製造される。
【0017】
前記抗PD-1抗体、例えば、ペムブロリズマブ抗体またはその抗原結合断片の濃度は、癌の治療に有効な量でもある。また、前記抗PD-1抗体、例えば、ペムブロリズマブ抗体またはその抗原結合断片の濃度は、前記薬剤学的製剤の安定性、粘度などを考慮しても選択される。前記抗PD-1抗体、例えば、ペムブロリズマブ抗体またはその抗原結合断片の濃度は、例えば、5ないし300mg/mL、5ないし250mg/mL、5ないし200mg/mL、10ないし200mg/mL、10ないし165mg/mL、15ないし160mg/mL、5ないし45mg/mL、10ないし40mg/mL、15ないし35mg/mL、20ないし30mg/mL、130ないし170mg/mL、135ないし165mg/mL、140ないし160mg/mL、145ないし155mg/mL、約25mg/ml、または約150mg/mlでもある。前記抗PD-1抗体、例えば、ペムブロリズマブ抗体またはその抗原結合断片は、前記濃度において、薬剤学的製剤の安定性、投与に適する薬剤学的製剤の粘度及びpH維持に寄与しうる。
【0018】
前記安定化剤は、ポリオール(polyol)、アミノ酸及び金属塩からなる群のうちから選択された1以上でもある。本明細書において、用語「ポリオール(polyol)」は、複数個のヒドロキシル基(multiple hydroxyl groups)を有する賦形剤を示す。前記ポリオールは、糖、糖アルコール及び糖酸(sugar acid)を含むものでもある。前記糖は、可溶性炭水化物を示す。前記糖は、単糖類、二糖類、オリゴ糖または多糖類でもある。前記糖アルコールは、糖から誘導された有機化合物であり、各炭素原子は、1つのヒドロキシル基を有する。前記糖酸は、鎖の一方または両方に、カルボン酸基を有する糖を示す。前記ポリオールは、ポリオールの無水物または水和物を含む。例えば、トレハロースは、トレハロースだけではなく、トレハロース二水和物を含むものでもある。
【0019】
前記ポリオールは、グルコース、フラクトース、マンノース、ガラクトース、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、マンニトール、ソルビトール及びポリエチレングリコールからなる群のうちから選択された1以上でもある。前記ポリオールは、ソルビトール、スクロース、トレハロース、マンノース、マルトース、マンニトール、またはそれらの混合物でもある。前記ポリオールの濃度は、前記薬剤学的製剤において、抗PD-1抗体、例えば、ペムブロリズマブ抗体またはその抗原結合断片の安定性及び薬剤学的製剤の粘度を維持するのに望ましい範囲内において、自由に調節され、それぞれの具体的なポリオール、糖アルコールまたは糖酸によっても個別的に異なる。
【0020】
前記糖は、1.0ないし15.0%(w/v)、3.0ないし15.0%(w/v)、5.0ないし15.0%(w/v)、7.0ないし15.0%(w/v)、1.0ないし10.0%(w/v)、3.0ないし10.0%(w/v)、4.0ないし10.0%(w/v)、5.0ないし10.0%(w/v)、7.0ないし10.0%(w/v)、1.0ないし7.0%(w/v)、2.0ないし7.0%(w/v)、3.0ないし7.0%(w/v)、4.0ないし7.0%(w/v)、1.0ないし5.0%(w/v)、2.0ないし5.0%(w/v)、3.0ないし5.0%(w/v)、または4.0ないし5.0%(w/v)、4.5ないし5.0%(w/v)(例:約4.7%(w/v))、6.5ないし8.5%(w/v)(例:約6.8%(w/v)、約7.0%(w/v)、約7.2%(w/v))、または7.8ないし8.2%(w/v)(例:約7.8%(w/v)、約7.9%(w/v)、約8.0%(w/v)、約8.1%(w/v)または約8.2%(w/v))でもある。前記糖は、例えば、スクロース、グルコース、ガラクトース、マルトース、プラクトース、トレハロース、またはその混合物でもある。
【0021】
前記糖アルコールの濃度は、1.0ないし20.0w/v%、例えば、1.0ないし15.0w/v%、1.0ないし10.0w/v%、2.5ないし10.0w/v%、3.0ないし10.0w/v%、3.5ないし10.0w/v%、4.0ないし10.0w/v%、1.0ないし8.0w/v%、2.5ないし8.0w/v%、3.0ないし8.0w/v%、3.5ないし8.0w/v%、4.0ないし8.0w/v%、1.0ないし6.0w/v%、2.5ないし6.0w/v%、3.0ないし6.0w/v%、3.5ないし6.0w/v%、4.0ないし6.0w/v%、4.0ないし5.5w/v%、または4.0ないし5.0w/v%でもある。前記糖アルコールは、例えば、ソルビトール、マンニトール、その水和物またはその混合物でもある。
【0022】
前記アミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、セリン、スレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、その薬剤学的に許容可能な塩、またはそれらの混合物でもある。前記アミノ酸は、例えば、グリシン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、リシン、アルギニン、その薬剤学的に許容可能な塩、またはそれらの混合物でもある。
【0023】
前記安定化剤として、アミノ酸の濃度は、0.1ないし300.0mM、0.5ないし300.0mM、1.0ないし300.0mM、5.0ないし300.0mM、10.0ないし300.0mM、25.0ないし300.0mM、30.0ないし300.0mM、50.0ないし300.0mM、80.0ないし300.0mM、100.0ないし300.0mM、120.0ないし300.0mM、0.1ないし250.0mM、0.5ないし250.0mM、1.0ないし250.0mM、5.0ないし250.0mM、10.0ないし250.0mM、25.0ないし250.0mM、30.0ないし250.0mM、50.0ないし250.0mM、80.0ないし250.0mM、100.0ないし250.0mM、120.0ないし250.0mM、0.1ないし200.0mM、0.5ないし200.0mM、1.0ないし200.0mM、5.0ないし200.0mM、10.0ないし200.0mM、25.0ないし200.0mM、30.0ないし200.0mM、50.0ないし200.0mM、80.0ないし200.0mM、100.0ないし200.0mM、120.0ないし200.0mM、0.1ないし160.0mM、0.5ないし160.0mM、1.0ないし160.0mM、5.0ないし160.0mM、10.0ないし160.0mM、25.0ないし160.0mM、30.0ないし160.0mM、50.0ないし160.0mM、80.0ないし160.0mM、100.0ないし160.0mM、120.0ないし160.0mM、130.0ないし150.0mM、0.1ないし100.0mM、0.5ないし100.0mM、1.0ないし100.0mM、5.0ないし100.0mM、10.0ないし100.0mM、25.0ないし100.0mM、30.0ないし100.0mM、50.0ないし100.0mM、80.0ないし100.0mM、0.1ないし50.0mM、0.5ないし50.0mM、1.0ないし50.0mM、5.0ないし50.0mM、10.0ないし50.0mM、25.0ないし50.0mM、または30.0ないし50.0mM、0.1ないし40.0mM、0.5ないし40.0mM、1.0ないし40.0mM、5.0ないし40.0mM、10.0ないし40.0mM、25.0ないし40.0mM、または30.0ないし40.0mM、0.1ないし30.0mM、0.5ないし30.0mM、1.0ないし30.0mM、5.0ないし30.0mM、10.0ないし30.0mM、25.0ないし30.0mM、0.1ないし20.0mM、0.5ないし20.0mM、1.0ないし20.0mM、5.0ないし20.0mM、10.0ないし20.0mM、0.1ないし10.0mM、0.5ないし10.0mM、1.0ないし10.0mM、または5.0ないし10.0mMでもある。一具体例において、前記アミノ酸は、17ないし29mMのアルギニン、その薬剤学的に許容可能な塩、またはその混合物でもある。他の一具体例において、前記アミノ酸は、24ないし29mMのグリシン、その薬剤学的に許容可能な塩、またはその混合物でもある。前記アミノ酸の濃度は、前記薬剤学的製剤が目的とするpHに影響を及ぼさず、抗PD-1抗体、例えば、ペムブロリズマブ抗体またはその抗原結合断片の安定性に影響を及ぼさない範囲内において自由に調節され、それぞれの具体的なアミノ酸によっても個別的に異なる。
【0024】
前記金属塩は、NaCl、KCl、NaF、KBr、NaBr、Na2SO4、NaSCN、CaCl2、MgCl2またはK2SO4でもある。前記金属塩は、例えば、NaClまたはNa2SO4でもある。前記金属塩の濃度は、1.0ないし300.0mM、5.0ないし150.0mM、10.0ないし150.0mM、30.0ないし150.0mM、50.0ないし150.0mM、80.0ないし150.0mM、100.0ないし150.0mM、120.0ないし150.0mM、5.0ないし125.0mM、10.0ないし125.0mM、30.0ないし125.0mM、50.0ないし125.0mM、80.0ないし125.0mM、100.0ないし125.0mM、120.0ないし125.0mM、5.0ないし100.0mM、10.0ないし100.0mM、30.0ないし100.0mM、50.0ないし100.0mM、80.0ないし100.0mM、5ないし80.0mM、10.0ないし80.0mM、30.0ないし80.0mM、または50.0ないし80.0mMでもある。一具体例において、前記金属塩は、5.0ないし150.0mM、20.0ないし140.0mM、または約100.0mMの塩化ナトリウムでもある。該金属塩の濃度は、本発明の薬剤学的製剤において、抗PD-1抗体、例えば、ペムブロリズマブ抗体またはその抗原結合断片の安定性を維持させ、それを沈澱させない範囲内において自由に調節され、それぞれの具体的な金属塩によっても個別的に異なる。
【0025】
本明細書において、用語「緩衝剤(buffer)」は、薬剤学的製剤が、pH変化に抵抗するように添加された組成物を示す。前記緩衝剤は、許容可能な範囲内において、製剤のpHを維持することができる。前記緩衝剤は、一般的にその酸・塩基対(conjugate)成分の作用により、前記製剤をして、pH変化に抵抗させる。本明細書において、バッファの濃度が言及される場合、言及された濃度は、前記バッファの遊離酸形態または遊離塩基形態のモル濃度を示す。
【0026】
一具体例において、前記緩衝剤は、緩衝能(Buffering capacity)を有する緩衝剤のうちから選択された1種以上でもある。前記緩衝剤は、例えば、リン酸、酢酸、クエン酸、コハク酸、炭酸、アミノ酸、それらのイオン化形態(ionic form)、及びその薬剤学的に許容可能な塩によって構成された群のうちから選択された1以上でもある。前記アミノ酸は、ヒスチジンでもある。該アミノ酸の濃度は、本発明の液体製剤のpHに影響を及ぼさず、抗体またはその抗原結合断片の安定性に影響を及ぼさない範囲内において自由に調節され、それぞれの具体的なアミノ酸によっても個別的に異なる。前記塩は、アルカリ金属塩または塩酸塩でもある。前記アルカリ金属は、ナトリウムまたはカリウムでもある。
【0027】
前記緩衝剤は、リン酸、酢酸、クエン酸、コハク酸、炭酸、ヒスチジン、そのイオン化された形態、及びその薬剤学的に許容可能な塩からなる群のうちから選択された1以上でもある。
【0028】
他の具体例において、前記緩衝剤は、酢酸、酢酸塩、コハク酸、コハク酸塩、ヒスチジン、リン酸、リン酸塩、クエン酸、クエン酸塩、炭酸、炭酸塩、及びその薬剤学的に許容可能な塩から選択された1以上でもある。
【0029】
該緩衝剤の濃度は、1ないし100mM、1ないし70mM、1ないし50mM、1ないし40mM、1ないし30mM、1ないし25mM、1ないし22mM、1ないし20mM、5ないし100mM、5ないし70mM、5ないし50mM、5ないし40mM、5ないし30mM、5ないし25mM、5ないし22mM、5ないし20mM、10ないし100mM、10ないし70mM、10ないし50mM、10ないし40mM、10ないし30mM、10ないし25mM、10ないし22mM、10ないし20mM、14ないし100mM、14ないし70mM、14ないし50mM、14ないし40mM、14ないし30mM、14ないし25mM、14ないし22mM、14ないし20mM、16ないし100mM、16ないし70mM、16ないし50mM、16ないし40mM、16ないし30mM、16ないし25mM、16ないし22mM、または16ないし20mM、例えば、16mM、17mM、18mM、19mMまたは20mMでもある。
【0030】
前記薬剤学的製剤は、界面活性剤を含まないものでもある。前記界面活性剤は、非イオン性界面活性剤でもある。前記非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート、ポロキサマー、他の脂肪酸のソルビタンエステル、またはそれらの混合物でもある。前記ポリソルベートは、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、またはその混合物でもある。該ポロキサマーは、ポロキサマー188でもある。
【0031】
前記薬剤学的製剤は、液体でもある。前記薬剤学的製剤は、皮下注射用または静脈注射用でもある。前記薬剤学的製剤は、注射に適するように適切な水性担体をさらに含むものでもある。前記水性担体は、ヒトに投与するとき、安全であり、無毒性である、製薬上許容されたものでり、例えば、水、塩水溶液、点滴溶液、デキストロース、またはその混合物でもある。
【0032】
前記薬剤学的製剤は、皮下注射時または静脈注射時、適切な範囲の浸透圧を有しうる。該浸透圧は、例えば、200ないし400mOsm/kg、200ないし350mOsm/kg、250ないし300mOsm/kg、250ないし290mOsm/kg、270ないし328mOsm/kg、250ないし269mOsm/kg、または328ないし350mOsm/kgでもある。がい浸透圧は、投与時に生じうる痛症を最小化させるために適切に調節されうる。
【0033】
前記薬剤学的製剤は、皮下注射時または静脈注射時、適切な範囲の粘度を有しうる。前記粘度は、25℃±3℃の常温で測定した場合、例えば、0.5ないし100cp、0.5ないし90cp、0.5ないし80cp、0.5ないし70cp、0.5ないし60cp、0.5ないし50cp、0.5ないし40cp、0.5ないし30cp、0.5ないし20cp、0.5ないし15cp、または0.5ないし10でもある。前記粘度は、投与時に生じうる痛症を最小化させるために適切に調節されうる。
【0034】
一具体例において、前記薬剤学的製剤は、前記抗PD-1抗体、例えば、ペムブロリズマブ抗体またはその抗原結合断片の濃度は、5ないし300mg/mL、5ないし200mg/mL、15ないし30mg/mL、または140ないし160mg/mLであり、前記安定化剤は、スクロース、グルコース、ガラクトース、マルトース、プラクトース、トレハロース、ソルビトール、マンニトール、アルギニン、リシン、プロリン、グリシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、その水和物、その薬剤学的に許容可能な塩、またはそれらの混合物であり、前記薬剤学的製剤のpHは、4.5ないし6.5でもある。
【0035】
前記安定化剤は、スクロース、グルコース、ガラクトース、マルトース、プラクトース、トレハロース、その水和物またはその混合物であり、前記安定化剤の濃度は、1.0ないし15.0%(w/v)、3.0ないし15.0%(w/v)、5.0ないし15.0%(w/v)、7.0ないし15.0%(w/v)、1.0ないし10.0%(w/v)、3.0ないし10.0%(w/v)、5.0ないし10.0%(w/v)、7.0ないし10.0%(w/v)、1.0ないし7.0%(w/v)、2.0ないし7.0%(w/v)、3.0ないし7.0%(w/v)、4.0ないし7.0%(w/v)、1.0ないし5.0%(w/v)、0.02ないし5.0%(w/v)、3.0ないし5.0%(w/v)、または4.0ないし5.0%(w/v)、4.5ないし5.0%(w/v)(例:約4.7%(w/v))、または7.8ないし8.2%(w/v)(例:約7.8%(w/v)、約7.9%(w/v)、約8%(w/v)、約8.1%(w/v)または約8.2%(w/v))でもある。前記安定化剤は、ソルビトール、マンニトール、その水和物またはその混合物であり、前記安定化剤の濃度は、1.0ないし20.0w/v%、例えば、1.0ないし15.0w/v%、1.0ないし10.0w/v%、2.5ないし10.0w/v%、3.0ないし10.0w/v%、3.5ないし10.0w/v%、4.0ないし10.0w/v%、1.0ないし8.0w/v%、2.5ないし8.0w/v%、3.0ないし8.0w/v%、3.5ないし8.0w/v%、4.0ないし8.0w/v%、1.0ないし6.0w/v%、2.5ないし6.0w/v%、3.0ないし6.0w/v%、3.5ないし6.0w/v%、4.0ないし6.0w/v%、4.0ないし5.5w/v%、または4.0ないし5.0w/v%でもある。前記安定化剤は、アルギニン、リシン、プロリン、グリシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、その水和物、その薬剤学的に許容可能な塩、またはそれらの混合物であり、前記安定化剤の濃度は、0.1ないし300.0mM、0.5ないし300.0mM、1.0ないし300.0mM、5.0ないし300.0mM、10.0ないし300.0mM、25.0ないし300.0mM、30.0ないし300.0mM、50.0ないし300.0mM、80.0ないし300.0mM、100.0ないし300.0mM、120.0ないし300.0mM、0.1ないし250.0mM、0.5ないし250.0mM、1.0ないし250.0mM、5.0ないし250.0mM、10.0ないし250.0mM、25.0ないし250.0mM、30.0ないし250.0mM、50.0ないし250.0mM、80.0ないし250.0mM、100.0ないし250.0mM、120.0ないし250.0mM、0.1ないし200.0mM、0.5ないし200.0mM、1.0ないし200.0mM、5.0ないし200.0mM、10.0ないし200.0mM、25.0ないし200.0mM、30.0ないし200.0mM、50.0ないし200.0mM、80.0ないし200.0mM、100.0ないし200.0mM、120.0ないし200.0mM、0.1ないし160.0mM、0.5ないし160.0mM、1.0ないし160.0mM、5.0ないし160.0mM、10.0ないし160.0mM、25.0ないし160.0mM、30.0ないし160.0mM、50.0ないし160.0mM、80.0ないし160.0mM、100.0ないし160.0mM、120.0ないし160.0mM、130.0ないし150.0mM、0.1ないし100.0mM、0.5ないし100.0mM、1.0ないし100.0mM、5.0ないし100.0mM、10.0ないし100.0mM、25.0ないし100.0mM、30.0ないし100.0mM、50.0ないし100.0mM、80.0ないし100.0mM、0.1ないし50.0mM、0.5ないし50.0mM、1.0ないし50.0mM、5.0ないし50.0mM、10.0ないし50.0mM、25.0ないし50.0mM、または30.0ないし50.0mM、0.1ないし40.0mM、0.5ないし40.0mM、1.0ないし40.0mM、5.0ないし40.0mM、10.0ないし40.0mM、25.0ないし40.0mM、または30.0ないし40.0mM、0.1ないし30.0mM、0.5ないし30.0mM、1.0ないし30.0mM、5.0ないし30.0mM、10.0ないし30.0mM、25.0ないし30.0mM、0.1ないし20.0mM、0.5ないし20.0mM、1.0ないし20.0mM、5.0ないし20.0mM、10.0ないし20.0mM、0.1ないし10.0mM、0.5ないし10.0mM、1.0ないし10.0mM、または5.0ないし10.0mMでもある。
【0036】
前記具体例において、緩衝剤は、リン酸、酢酸、クエン酸、コハク酸、炭酸、ヒスチジン、またはその薬剤学的に許容可能な塩を含むものでもある。前記塩は、アルカリ金属塩または塩酸塩でもある。前記アルカリ金属は、ナトリウムまたはカリウムでもある。
【0037】
前記具体例において、前記緩衝剤の濃度は、1ないし100mM、1ないし70mM、1ないし50mM、1ないし40mM、1ないし30mM、1ないし25mM、1ないし22mM、1ないし20mM、5ないし100mM、5ないし70mM、5ないし50mM、5ないし40mM、5ないし30mM、5ないし25mM、5ないし22mM、5ないし20mM、10ないし100mM、10ないし70mM、10ないし50mM、10ないし40mM、10ないし30mM、10ないし25mM、10ないし22mM、10ないし20mM、14ないし100mM、14ないし70mM、14ないし50mM、14ないし40mM、14ないし30mM、14ないし25mM、14ないし22mM、14ないし20mM、16ないし100mM、16ないし70mM、16ないし50mM、16ないし40mM、16ないし30mM、16ないし25mM、16ないし22mM、または16ないし20mM、例えば、16mM、17mM、18mM、19mMまたは20mMでもある。
【0038】
本発明の薬剤学的製剤において、前記抗PD-1抗体、例えば、ペムブロリズマブ抗体またはその抗原結合断片は、安定化されうる。用語「安定化(stabilization)」は、前記抗PD-1抗体、例えば、ペムブロリズマブ抗体またはその抗原結合断片が、投与前後、追加製造工程、保管時または保存時におけるその物理的安定性、化学的安定性、及び/または生物学的活性を実質的に保有することを意味する。当該の物理的安定性、化学的安定性及び/または生物学的活性は、一般的に知られた方法で評価することができる。
【0039】
本明細書において、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片の安定性は、下記事項のうち1以上を充足させるものでもある。
【0040】
安定性(stability)は、選択された温度でもって、選択された期間の間、測定されうる。例えば、一具体例において、安定した製剤は、2℃ないし8℃において、12ヵ月、またはそれ以上の間、有意な変化が観察されない製剤である。他の具体例において、安定した製剤は、2℃ないし8℃において、18ヵ月、またはそれ以上の間、有意な変化が観察されない製剤である。他の具体例において、安定した製剤は、23℃ないし27℃において、3ヵ月、またはそれ以上の間、有意な変化が観察されない製剤である。他の具体例において、安定した製剤は、23℃ないし27℃において、6ヵ月、またはそれ以上の間、有意な変化が観察されない製剤である。他の具体例において、安定した製剤は、23℃ないし27℃において、12ヵ月、またはそれ以上の間、有意な変化が観察されない製剤である。他の具体例において、安定した製剤は、23℃ないし27℃において、18ヵ月、またはそれ以上の間、有意な変化が観察されない製剤である。抗体製剤に係わる安定性基準は、次の通りである。サイズ排除クロマトグラフィ(SE-HPLC)で測定したとき、抗体単量体の10%以下、例えば、5%以下または2.5%以下が分解されるものである。抗体力価(potency)は、対照群または標準抗体の60ないし140%、または80ないし120%以内である。例えば、SE-HPLCで低分量種(LMW)を測定したとき、抗体の10%以下、5%以下または2.5%以下の変化を有するものでもある。例えば、SE-HPLCで高分量種(HMW)を測定したとき、抗体の10%以下、5%以下または2.5%以下の変化を有するものでもある。また、該製剤の濃度及びpHは、±10%以下、±5%以下または±2.5%以下の変化を有するものでもある。
【0041】
前記薬剤学的製剤は、安定性恒温器内に入れ、温度40±2℃及び相対湿度75±5%の条件で4週間置いたとき、10%以下、5%以下または2.5%以下の範囲内において、HMWまたはpHが変わるものでもある。
【0042】
前記薬剤学的製剤は、0.3ないし1mLをタイプIガラス材質の2ccバイアル(Schott社製)に入れ、前記バイアルを撹拌器(Heidolph社製)に装着させ、常温で400rpmで72時間撹拌したとき、10%以下、5%以下または2.5%以下の範囲内において、HMWまたはpHが変わることでもある。
【0043】
前記ペムブロリズマブまたはその抗原結合断片は、生物学的活性を依然として保有すると見られる所定時間において、化学的に安定した場合、前記薬学的製剤内において、化学的安定性を保有することができる。該化学的安定性は、化学的に変形された形態のペムブロリズマブルを検出して定量することによっても評価される。該化学的変形は、サイズ変形または電荷変化を含む。前記電荷変化は、例えば、脱アミド化の結果として生じる電荷変化でもある。前記サイズ変形は、サイズ排除クロマトグラフィ(SE-HPLC)分析、ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)分析、毛細管電気泳動・ドデシル硫酸ナトリウム(CE-SDS:capillary electrophoresis-sodium dodecyl sulfate、)分析、及び基質支援レーザ脱離/イオン化/飛行時間質量分析(MALDI/TOF MS:matrix-assisted laser desorption/ionization/time-of-flight mass spectrometry)を使用しても評価される。また、該電荷変化は、イオン交換クロマトグラフィ(ICE:ion exchange chromatography)及びイメージ毛細管等電フォーカシング(icIEF:imaged capillary isoelectric focusing)によっても評価される。活性は、PD-1リガンド結合分析を介して決定することができる。PD-1リガンド結合分析は、酵素連結免疫吸着分析(ELISA:enzyme-linked immunosorbent assay)によっても行われる。該ELISA分析は、ペムブロリズマブがPD-1リガンドに結合する比率(%)を測定するものである。ペムブロリズマブ試料と、ELISA基板上のPD-1リガンドとと反応させた後、結合程度は、450nm吸光度を測定し、相対的結合の比率(%)(relative binding rate)を得ることができる。
【0044】
前記抗PD-1抗体、例えば、ペムブロリズマブ抗体またはその抗原結合断片は、薬剤学的製剤内において、生物学的活性を保有する。前記生物学的活性は、例えば、薬学的製剤内において、前記抗PD-1抗体またはその抗原結合断片の生物学的活性が、薬学的製剤の製造時点に示す生物学的活性の約30%以内、約20%以内、約10%以内(または、分析誤差以内)にある場合、生物学的活性を保有する。前記生物学的活性は、例えば、抗原結合分析によっても決定される。
【0045】
該安定化いかんは、温度ストレス、例えば、40℃において、1週ないし4週、凍結・解凍ストレス、例えば、-70℃凍結、及び常温における解凍の周期の5回反復、または撹拌ストレス、例えば、撹拌器において、72時間400rpm回転力を加え、サイズ排除高速液体クロマトグラフィ(SE-HPLC:size-exclusion high performance liquid chromatography)を利用し、% HMW、%単量体及び/または% LMWを測定することによって評価することができる。一具体例において、本発明の薬剤学的製剤は、キイトルーダ(Keytruda(R))と比較し、同等であるか、あるいはさらに少ないΔ% HMW値、Δ% LMW値またはΔ%単量体値を有しうる。
【0046】
本明細書で提供される安定した薬剤学的製剤は、抗体含量が25mg/mlである場合(pH5.5)、製剤0.3ないし1mLを、タイプIガラス材質の2ccバイアル(Schott社製)に入れ、40℃において4週間保管し、一般的なSECで測定された% HMWの変化量、すなわち、4週後の% HMW・0週の% HMW値が、10.0%以下、5.0%以下または2.5%でもある。
【0047】
他の態様は、前述の薬剤学的製剤で癌を治療する方法を提供する。前記薬剤学的製剤については、前述の通りである。前記癌を治療する方法は、薬剤学的製剤が癌治療に効果的である量で個体に投与する段階を含むものでもある。前記個体は、ヒトでもある。
【0048】
前記方法において、「癌」という用語は、上向き調節された細胞成長を典型的に特徴とする、哺乳動物における病理学的病態を称したり記述したりするものである。前記癌は、癌腫、リンパ腫、白血病、芽細胞腫及び肉腫が含まれるが、それらに限定されるものではない。前記癌は、例えば、扁平上皮癌、骨髄種、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、胃腸癌または胃腸管癌、腎臓癌、卵巣癌、肝臓癌、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病、結腸直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、前立腺癌、甲状腺癌、黒色腫、軟骨肉腫、神経芽細胞腫、膵腸癌、多形成膠芽細胞腫、子宮頸部癌、脳癌、胃癌、膀胱癌、肝細胞癌、乳癌、結腸癌腫、メルケル細胞癌、高頻度サテライト不安定性癌、食道癌、尿路上皮癌、原発性縦隔巨大B細胞リンパ腫及び頭頸部癌を含むものでもある。
【0049】
他の一態様は、溶媒に安定化剤を添加して混合溶液を製造する段階;前記混合溶液に抗PD-1抗体またはその抗原結合断片を添加する段階、あるいは該溶媒に、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片を添加し、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片溶液を製造する段階;及び前記溶液に安定化剤を添加する段階;を含む安定した薬剤学的製剤を製造する方法であり、前記製造段階は、緩衝剤を添加せずに遂行される方法を提供する。
【0050】
前記方法において、前記溶媒は、水性溶媒、例えば、水または塩水(saline)でもある。前記方法は、前記抗PD-1抗体またはその抗原結合断片が添加された混合溶液に、界面活性剤を添加する段階をさらに含むものでもある。
【0051】
前記薬剤学的製剤で言及された用語または要素において、請求された薬剤学的製剤の製造方法に係わる説明で言及されたようなところは、前述のところで請求された薬剤学的製剤に係わる説明で言及されたようなところであると理解される。
【発明の効果】
【0052】
一態様による安定した抗PD-1抗体薬剤学的製剤によれば、界面活性剤を含まずとも、抗PD-1抗体は、安定するように維持されうる。
【0053】
一態様による個体において癌を治療する方法によれば、個体で癌を効率的に治療することができる。
【0054】
一態様による安定した抗PD-1抗体薬剤学的製剤を製造する方法によれば、安定した抗PD-1抗体薬剤学的製剤を効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】バッファフリーまたはヒスチジンバッファ、及び界面活性剤含量が、他の製剤に係わるT
agg値を示した図である。
【
図2】バッファ及びPS80の含量を異にする製剤につき4週間温度ストレスを加えた後、製剤のHMW含量を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、本発明について、下記実施例により、さらに詳細に説明する。ただし、下記実施例は、本発明を例示するためのものであるのみ、それらにより、本発明の範囲が限定されるものではない。
【0057】
材料及び方法
1.サイズ排除クロマトグラフィ(SEC:size exclusion chromatography)
試料の純度を、サイズ排除クロマトグラフィによって検査した。該サイズ排除クロマトグラフィにおいて、抗体単量体、高分子量種(HMW:high molecular weight species)及び低分子量種(LMW:low molecular weight species)の百分率が決定される。該サイズ排除クロマトグラフィにおいて、該LMWは、該HMWに比べ、遅く溶出される。該HMWの存在は、タンパク質凝集(aggregation)を示し、該LMWの存在は、タンパク質断片を示す。
【0058】
2.動的光散乱(DLS:dynamic light scattering)測定法
試料中の凝集体(aggregate)を動的光散乱測定法によって検査した。具体的には、各試料を、それぞれバッファを使用して希釈し、96ウェルプレートのウェルにローディングした。前記プレートを、DynoPro(R) Plate ReaderTMII(Wyatt Technology社製)機器に積載した。試料は、25℃ないし70℃の範囲で、0.15℃/分の速度で温度を上げながら、薬剤学的製剤中の凝集体につき、動的光散乱(DLS)を介し、その大きさを測定した。安定性の評価は、凝集体の大きさが変わる時点の温度を測定するものであり、Tagg値が大きいほど、さらに安定しているということを示す。
【0059】
3.薬剤学的製剤の製造
表1に記載された各薬剤学的製剤を、下記のように製造し、以下の実施例として使用した。
【0060】
まず、表1に記載された各薬剤学的製剤の組成において、ペムブロリズマブ及び界面活性剤を除いた緩衝剤、並びに安定化剤を滅菌蒸溜水に添加し、緩衝溶液を製造した。ペムブロリズマブを透析カセット(Slide-A-Lyzer cassette;Thermo Fisher Scientific)に入れた後、表1に記載された各組成の溶液が含まれたビーカーに入れ、透析をなさせしめ、既存ペムブロリズマブ溶液を、前記緩衝溶液で交換した。最後に、界面活性剤を含む製剤の場合、前記ペムブロリズマブ溶液に、前記製造された緩衝溶液において、界面活性剤PS80を1x濃度になるように添加した。その後、各溶液を利用し、ペムブロリズマブを最終25mg/mlで濃度を合わせた。
【0061】
【0062】
表1で、 グループ2ないし4において、界面活性剤は、 PS80、すなわち、ポリソルベート80を示す。
【0063】
実施例1:バッファ及び界面活性剤含量が、ペムブロリズマブ含有薬剤学的製剤の安定性に及ぼす影響
本実施例においては、バッファ及び界面活性剤含量が、ペムブロリズマブ含有薬剤学的製剤の安定性に及ぼす影響を確認した。具体的には、1A,1B,1C,2A,2B,2C,3A,3B,3C,4A,4B及び4C製剤につき、DLS測定法により、Tagg値を測定した。
【0064】
その結果は、表2及び
図1に表示されている。表2は、界面活性剤PS80及びヒスチジンバッファの含量、並びに他の製剤の組成、及びそれに係わるT
agg測定値を示した表である。
図1は、界面活性剤及びヒスチジンバッファの含量、及び他の製剤に係わるT
agg値を示した図面である。
【0065】
【0066】
表2及び
図1に示されているように、界面活性剤PS80を含まないか、あるいは0.02%を含む製剤のT
agg値は、界面活性剤PS80を、0.10%または0.20%含む製剤のT
agg値に比べて高かった。それは、0.10%未満の低い含量のPS80を含む製剤、すなわち、1A、1B、1C、2A、2B及び2Cは、0.10%以上の高い含量のPS80を含む製剤、すなわち、3A、3B、3C、4A、4B及び4Cに比べ、さらに高い温度で凝集が生じるということを示す。すなわち、0.10%未満の低い含量のPS80を含む製剤は、0.10%以上の高い含量のPS80を含む製剤に比べ、さらに安定しているということを示す。一方、1B、2B、1C、2C、すなわち、PS80濃度が0.10%未満であるとき、ヒスチジンの含量は、T
agg変化に大きい影響を及ぼしていない。
【0067】
また、20mMヒスチジンバッファを含む製剤において、PS80を含む製剤、すなわち、2B、3B及び4BのTagg値に比べ、PS80を含んでいない製剤、すなわち、1BのTagg値が最も高かった。一方、40mMヒスチジンバッファを含む製剤において、0.02% PS80を含む製剤、すなわち、2CのTagg値が、1C、3C及び4CのTagg値より高かった。
【0068】
実施例2:バッファ及び界面活性剤含量が、ペムブロリズマブ含有薬剤学的製剤の安定性に及ぼす影響
本実施例においては、バッファ及び界面活性剤含量が、ペムブロリズマブ含有薬剤学的製剤の安定性に及ぼす影響を確認した。具体的には、1A,1B,1C,2A,2B,2C,3A,3B,3C,4A,4B及び4C製剤につき、温度ストレスを加えた後、SECを介して試料の純度を測定した。
【0069】
前記温度ストレスは、前記製剤それぞれ0.3mLを、タイプIガラス材質の2ccバイアル(Schott社製)に入れ、前記バイアルを安定性恒温器(JEIO TECH社製)において、40℃の温度ストレス条件で4週間露出させた。具体的には、前記バイアルを前記安定性恒温器内に入れ、温度40±2℃及び相対湿度75±5%の条件で4週間置いた。4週間保管された製剤につき、前述のところにより、SEC分析を行った。
【0070】
その結果は、表3及び
図2に表示されている。表3は、バッファ及びPS80含量を異にする製剤の組成、及び4週間温度ストレスを受けた製剤の純度を、HMW含量で示した表である。
図2は、バッファ及びPS80含量を異にする製剤につき、4週間温度ストレスを加えた後、製剤のHMW含量を示した図面である。
【0071】
【0072】
表3及び
図2に示されているように、バッファフリー組成において、PS80を含む製剤、すなわち、2A、3A及び4Aの△% HMW値に比べ、PS80を含んでいない製剤、すなわち、1Aの△% HMW値が最も低かった。20mMヒスチジンバッファを含む製剤において、PS80を含む製剤、すなわち、2B、3B及び4Bの△% HMW値に比べ、PS80を含んでいない製剤、すなわち、1Bの△% HMW値が最も低かった。また、40mMヒスチジンバッファを含む製剤において、PS80を含む製剤、すなわち、2C、3C及び4Cの△% HMW値に比べ、PS80を含んでいない製剤、すなわち、1Cの△% HMW値が最も低かった。それは、界面活性剤PS80を含んでいない1群製剤(1A、1B及び1C)が、PS80を含む2,3及び4群製剤に比べ、さらに安定しているということを示す。
【0073】
また、ストレス条件で4週間保管された製剤につき、pHを測定した。表4は、40℃温度ストレス条件で4週間放置された試料につき、pHを測定した結果を示した表である。
【0074】
【0075】
表4に示されているように、ポリソルベート80を含んでいない製剤1A,1B及び1CのpHは、0.02%ないし0.20% PS80を含む製剤2A,2B,2C,3A,3B,3C,4A,4B及び4CのpHに比べ、有意な違いを示していない。界面活性剤が含まれていない剤形において、界面活性剤が含まれている剤形と同様に、pH安定性が維持されるということを確認した。
【配列表】
【国際調査報告】