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特表2023-512976エレクトロクロミックデバイス、およびその変色方法
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  • 特表-エレクトロクロミックデバイス、およびその変色方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】エレクトロクロミックデバイス、およびその変色方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1514 20190101AFI20230323BHJP
   G02F 1/15 20190101ALI20230323BHJP
   G02F 1/1516 20190101ALI20230323BHJP
   G02F 1/1524 20190101ALI20230323BHJP
   G02F 1/1685 20190101ALI20230323BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
G02F1/1514
G02F1/15 502
G02F1/15 503
G02F1/15 506
G02F1/15 507
G02F1/15 508
G02F1/1516
G02F1/1524
G02F1/1685
G09F9/30 380
G09F9/30 338
G09F9/30 349A
G09F9/30 308Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544672
(86)(22)【出願日】2021-03-29
(85)【翻訳文提出日】2022-07-22
(86)【国際出願番号】 CN2021083600
(87)【国際公開番号】W WO2021197268
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】202010249974.9
(32)【優先日】2020-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522208944
【氏名又は名称】深▲セン▼市光▲ゲイ▼科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100107216
【弁理士】
【氏名又は名称】伊與田 幸穂
(72)【発明者】
【氏名】程 ▲キョウ▼
(72)【発明者】
【氏名】何 嘉智
(72)【発明者】
【氏名】曹 超月
【テーマコード(参考)】
2K101
5C094
【Fターム(参考)】
2K101AA22
2K101DA01
2K101DB03
2K101DB04
2K101DB06
2K101DB33
2K101DC04
2K101DC13
2K101DC44
2K101DC45
2K101DC53
2K101DC54
2K101DC55
2K101EB04
2K101ED52
2K101EE02
2K101EG27
2K101EG52
2K101EG54
2K101EG62
5C094AA08
5C094BA21
5C094DA06
5C094EA04
5C094EA05
5C094JA02
5C094JA08
(57)【要約】
本発明は、エレクトロクロミックデバイス、およびその変色方法を開示する。エレクトロクロミックデバイスは、順に積層された第1のベース(1)、第1の透明導電層(2)、第1のエレクトロクロミック層(3)、電解質層(4)、第2のエレクトロクロミック層(5)、第2の透明導電層(6)および第2のベース(7)を含む。そのうち、第1のエレクトロクロミック層(3)および第2のエレクトロクロミック層(5)の材料は、いずれも陰極エレクトロクロミック材料または陽極エレクトロクロミック材料である。エレクトロクロミックデバイスの変色方法には、前処理されたエレクトロクロミックデバイスに第1の電圧方向と反対の、またはそれと同様の電圧をサイクル印加することにより、エレクトロクロミックデバイスを異なる色間で変換させることが含まれる。2層のエレクトロクロミック層がいずれも陽極エレクトロクロミック材料または陰極エレクトロクロミック材料である構造を使用し、特定の変色方法を結び付けることにより、異なる色間での変換を実現し、エレクトロクロミック材料の選択範囲を拡張することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
順に積層された第1のベース、第1の透明導電層、第1のエレクトロクロミック層、電解質層、第2のエレクトロクロミック層、第2の透明導電層および第2のベースを含むエレクトロクロミックデバイスであって、
前記第1のエレクトロクロミック層および前記第2のエレクトロクロミック層の材料は、いずれも陰極エレクトロクロミック材料または陽極エレクトロクロミック材料である、
エレクトロクロミックデバイス。
【請求項2】
前記第1の透明導電層および前記第2の透明導電層は、それぞれ独立して酸化インジウムスズ、酸化亜鉛アルミニウム、フッ素ドープ酸化スズ、銀ナノワイヤ、グラフェン、カーボンナノチューブ、金属グリッドおよび銀ナノ粒子のうちの少なくとも一方からなる、
請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項3】
前記第1の透明導電層および前記第2の透明導電層の厚さは、それぞれ独立して1~1000nmである、
請求項1または2に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項4】
前記第1のエレクトロクロミック層および前記第2のエレクトロクロミック層の材料は、同時に陰極エレクトロクロミック多色材料ではなく、且つ同時に陽極エレクトロクロミック多色材料ではない、
請求項1~3のいずれか一項に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項5】
前記第1のエレクトロクロミック層および前記第2のエレクトロクロミック層の材料は、いずれも陰極エレクトロクロミック多色材料ではなく、且ついずれも陽極エレクトロクロミック多色材料ではない、
請求項1~4のいずれか一項に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項6】
前記第1のエレクトロクロミック層および前記第2のエレクトロクロミック層の材料は、いずれも、陰極エレクトロクロミック還元状態着色材料、陰極エレクトロクロミック酸化状態着色材料、陽極エレクトロクロミック還元状態着色材料または陽極エレクトロクロミック酸化状態着色材料である、
請求項1~5のいずれか一項に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項7】
前記第1のエレクトロクロミック層の単位面積あたりの最大電荷移動数は、0~35C/cmであり、且つ0を含まず、
前記第2のエレクトロクロミック層の単位面積あたりの最大電荷移動数は、0~35C/cmであり、且つ0を含まない、
請求項1~6のいずれか一項に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項8】
前記第1のエレクトロクロミック層と前記第2のエレクトロクロミック層とは、単位面積あたりの最大電荷移動数の比率が1:50~50:1であり、好ましくは1:10~10:1である、
請求項1~7のいずれか一項に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項9】
前記電解質層は、ゲル状電解質層、液体電解質層または固体電解質層であり、より好ましくは固体電解質層であり、さらに好ましくは固体ポリマー電解質層であり、
好ましくは、前記電解質層の厚さが0.1~200μmである、
請求項1~8のいずれか一項に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項10】
前記第1のベースおよび前記第2のベースの材料は、それぞれ独立してガラスまたはフレキシブル材料であり、
好ましくは、前記フレキシブル材料は、PET、シクロオレフィンコポリマーまたはトリ酢酸セルロースである、
請求項1~9のいずれか一項に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のエレクトロクロミックデバイスの変色方法であって、
(1)前処理されたエレクトロクロミックデバイスに第1の方向と反対する第2の方向の第2の電圧を印加することにより、前記第1のエレクトロクロミック層を第3の色から第1の色にし、前記第2のエレクトロクロミック層を第2の色から第4の色にするステップであって、前記前処理は、前記エレクトロクロミックデバイスに第1の方向の第1の電圧を印加することにより、前記第1のエレクトロクロミック層を第1の色から第3の色にし、前記第2のエレクトロクロミック層を第2の色にそのまま維持することである、ステップと、
(2)前処理されたエレクトロクロミックデバイスに第1の方向の第3の電圧を印加することにより、前記第1のエレクトロクロミック層を第1の色から第3の色にし、前記第2のエレクトロクロミック層を第4の色から第2の色にする、ステップと、を含む、
変色方法。
【請求項12】
前記第1の電圧の絶対値は、前記第2のエレクトロクロミック層に不可逆な電気化学反応を発生させる臨界電圧であるV以上である、
好ましくは、前記第3の電圧の絶対値は、前記第1の電圧の絶対値よりも小さい、
請求項11に記載の変色方法。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか一項に記載のエレクトロクロミックデバイスを含む、
電子端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、変色デバイスの技術分野に属し、具体的にエレクトロクロミックデバイスおよびその変色方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロクロミックとは、材料の光学特性が印加電界の作用下で安定した、可逆的な色の変換を発生する現象を指し、外観上で色および透明度の可逆な変換と表現されている。エレクトロクロミック性能を有する材料は、エレクトロクロミック材料と呼ばれ、エレクトロクロミック材料で製造されたデバイスは、エレクトロクロミックデバイスと呼ばれている。エレクトロクロミックデバイスは、変色メガネ、電子表示、軍事隠蔽、建物省エネルギーなどの分野において非常に重要な適用見込みを持っている。
【0003】
従来のエレクトロクロミックデバイスとしては、一般的に、導電層-エレクトロクロミック層-電解質層-イオン貯蔵層(エレクトロクロミック層)-導電層の積層構造が用いられている。そのうち、エレクトロクロミック層は、エレクトロクロミックデバイスの核心の1つである。エレクトロクロミック層を構成するエレクトロクロミック材料は、無機エレクトロクロミック材料と有機エレクトロクロミック材料に分けられる。無機エレクトロクロミック材料、たとえば、三酸化タングステン(WO)、五酸化バナジウム(V)、酸化ニッケル(NiO)、二酸化チタン(TiO)は、安定し、応答が速いという利点を有する。有機エレクトロクロミック材料、たとえばビオロゲン(Viologen)、ポリチオフェン系は、種類が多く、色が豊富であり、設計しやすい。エレクトロクロミック材料は、色の変換に従って陰極エレクトロクロミック材料と陽極エレクトロクロミック材料に分けられてもよい。陰極エレクトロクロミック材料は、電子を取得して還元反応を発生し、着色と退色との間で色を変換することができ、陽極エレクトロクロミック材料は、電子を損失して酸化反応を発生し、着色と退色との間で色を変換することができる。
【0004】
現在、ほとんどのエレクトロクロミックデバイスの製造プロセスは複雑で、色の変換が単一であるので、多色表示およびパーソナライズのニーズを満たすことが困難である。エレクトロクロミックデバイスの色変換を実現するために、従来技術では、色の変換上で互いに合致可能な陰極エレクトロクロミック材料および陽極エレクトロクロミック材料を使用することにより、エレクトロクロミックデバイスが組み立てられている。たとえば、変色範囲が赤色と無色との間にある陰極エレクトロクロミック材料、および変色範囲が無色とブルーとの間にある陽極エレクトロクロミック材料を用いてデバイスを組み立てることにより、エレクトロクロミックデバイスが赤色とブルーとの間で変換することを実現することができる。
【0005】
CN105278198Aでは、相補型無機全固体エレクトロクロミックデバイスおよびその製造方法が開示されている。該デバイスには、下から上まで順に配置された基板、透明導電層、陽極エレクトロクロミック層、イオン貯蔵層、高速イオン輸送層、陰極エレクトロクロミック層および透明導電層が含まれている。CN105607375Aでは、高スループット選別固体無機エレクトロクロミック材料のエレクトロクロミックデバイス、およびその製造方法が開示されている。そのうちの各々のエレクトロクロミックデバイスユニットは、下透明導電層から、内から外まで順に陰極エレクトロクロミック層、固体電解質層、陽極エレクトロクロミック層および上透明層がメッキされている。CN110109311Aでは、全固体エレクトロクロミックデバイス、およびその製造方法が開示されている。該デバイスは、順に配置された基板A、透明導電層A、陽極エレクトロクロミック層、固体電解質層、陰極エレクトロクロミック層、透明導電層Bおよび基板Bから組み合わせて構成されている。陰極エレクトロクロミック層は、金属原子がドーピングされた酸化タングステン薄膜であり、陽極エレクトロクロミック層は、金属原子がドーピングされた酸化ニッケル薄膜である。これらのエレクトロクロミックデバイスは、いずれも陰極エレクトロクロミック層および陽極エレクトロクロミック層が組み合わせた構造を使用している。
【0006】
しかしながら、現在のエレクトロクロミック材料の種類は少なく、陽極エレクトロクロミック材料(または陰極エレクトロクロミック材料)に対して、その色と合わせる陰極エレクトロクロミック材料(または陽極エレクトロクロミック材料)を探し出しにくいので、自主設計して開発する必要があるが、色が合うものは、陽極エレクトロクロミック材料または陰極エレクトロクロミック材料に属する可能性がある。上記構造のエレクトロクロミックデバイスは、実際の適用において、色、材料またはプロセスにより制限されやすく、より多くの色の相互変換に広く使われにくい。
【発明の概要】
【0007】
本願は、エレクトロクロミックデバイス、およびその変色方法を提供する。該エレクトロクロミックデバイスは、両層のエレクトロクロミック層がいずれも陽極エレクトロクロミック材料または陰極エレクトロクロミック材料である構造を使用し、特定の変色方法を結び付けることにより、異なる色間の変換を実現し、エレクトロクロミック材料の選択範囲を拡張し、より多くの色の相互変換に広く使われやすく、多色表示およびパーソナライズのニーズを満たすことができる。
【0008】
第1の態様としては、本願は、順に積層された第1のベース、第1の透明導電層、第1のエレクトロクロミック層、電解質層、第2のエレクトロクロミック層、第2の透明導電層および第2のベースを含むエレクトロクロミックデバイスであって、
前記第1のエレクトロクロミック層および前記第2のエレクトロクロミック層の材料は、いずれも陰極エレクトロクロミック材料または陽極エレクトロクロミック材料である、エレクトロクロミックデバイスを提供する。
【0009】
本願に係るエレクトロクロミックデバイスは、両層のエレクトロクロミック層がいずれも陰極エレクトロクロミック材料または陽極エレクトロクロミック材料を使用し、特定の変色方法を結び付けることにより、異なる色間で変換することができることで、両層のエレクトロクロミック層の材料が陰極エレクトロクロミック材料と陽極エレクトロクロミック材料の組合せに限定される必要がなく、エレクトロクロミック材料の選択範囲を拡張することができる。
【0010】
本願の一実施形態において、前記第1の透明導電層および前記第2の透明導電層は、それぞれ独立して酸化インジウムスズ(indium-tin oxide:ITO)、酸化亜鉛アルミニウム(aluminum zinc oxide:AZO)、フッ素ドープ酸化スズ(fluorine doped tin oxide:FTO)、銀ナノワイヤ、グラフェン、カーボンナノチューブ、金属グリッドおよび銀ナノ粒子のうちの少なくとも一方から形成される。
【0011】
本願の一実施形態において、前記第1の透明導電層および前記第2の透明導電層の厚さは、それぞれ独立して1~1000nmであり、たとえば、1nm、2nm、5nm、8nm、10nm、15nm、20nm、25nm、50nm、70nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm、500nm、550nm、600nm、650nm、700nm、750nm、800nm、850nm、900nm、950nmまたは1000nmなどであってもよい。
【0012】
この分野において、陰極エレクトロクロミック材料は、陰極エレクトロクロミック還元状態着色材料、陰極エレクトロクロミック酸化状態着色材料および陰極エレクトロクロミック多色材料を含む。
【0013】
陽極エレクトロクロミック材料は、陽極エレクトロクロミック還元状態着色材料、陽極エレクトロクロミック酸化状態着色材料および陽極エレクトロクロミック多色材料を含む。
【0014】
本明細書に用いられるように、陰極エレクトロクロミック還元状態着色材料は、初期状態が無色であり、電子取得還元状態が有色となる。このような材料は、TiO、WO、Nb、MoO、Ta、ビオロゲンおよびその誘導体などを含む。
【0015】
陰極エレクトロクロミック酸化状態着色材料は、初期状態が有色であり、電子取得還元状態が無色となる。このような材料は、プルシアンブルー(Prussian blue)系およびその誘導体、ルテニウムバイオレット(Ruthenium purple)系およびその誘導体などを含む。
【0016】
陰極エレクトロクロミック多色材料の色の変換は、たとえば初期状態が色a、電子取得中間状態が色b、電子取得還元状態が色cであるという多色の変換であってもよいし、たとえば初期状態が色a’、電子取得還元状態が色c’であるという2色の変換であってもよい。このような材料は、CoO、Rh、フェロセンおよびその誘導体などを含む。
【0017】
陽極エレクトロクロミック還元状態着色材料は、初期状態が着色であり、電子損失酸化状態が無色となる。このような材料は、ポリチオフェンおよびその誘導体などを含む。
【0018】
陽極エレクトロクロミック酸化状態着色材料は、初期状態が無色であり、電子損失酸化状態が有色である。このような材料は、NiO、IrO、ポリトリフェニルアミン系およびその誘導体などを含む。
【0019】
陽極エレクトロクロミック多色材料の色の変換は、たとえば初期状態が色d、電子損失中間状態が色e、電子損失酸化状態が色fであるという多色の変換であってもよいし、たとえば初期状態が色d’、電子損失酸化状態が色f’であるという2色の変換であってもよい。このような材料は、V、MnO、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリピロールおよびその誘導体などを含む。
【0020】
本願に係るエレクトロクロミックデバイスの第1のエレクトロクロミック層および第2のエレクトロクロミック層の材料は、それぞれ、陰極エレクトロクロミック還元状態着色材料、陰極エレクトロクロミック酸化状態着色材料および陰極エレクトロクロミック多色材料から選ばれるいずれか一方であってもよいし、第1のエレクトロクロミック層および第2のエレクトロクロミック層の材料は、それぞれ陽極エレクトロクロミック還元状態着色材料、陽極エレクトロクロミック酸化状態着色材料および陽極エレクトロクロミック多色材料から選ばれるいずれか一方であってもよい。特定の変色方法を結び付けることにより、異なる色間で変換することができる。端末製品の色に対するニーズに応じて、異なるタイプの材料間のマッチングを行うことができる。
【0021】
本願の一実施形態において、前記第1のエレクトロクロミック層および前記第2のエレクトロクロミック層の材料は、同時に陰極エレクトロクロミック多色材料ではなく、且つ同時に陽極エレクトロクロミック多色材料ではない。
【0022】
本願の一実施形態において、前記第1のエレクトロクロミック層および前記第2のエレクトロクロミック層の材料は、いずれも陰極エレクトロクロミック多色材料ではなく、且ついずれも陽極エレクトロクロミック多色材料ではない。
【0023】
陰極エレクトロクロミック多色材料および陽極エレクトロクロミック多色材料の材料の選択、および色の合わせが複雑であるため、端末製品のエレクトロクロミックデバイスの製品に対するニーズが2種の色状態間で変換するものである場合、陰極エレクトロクロミック還元状態着色材料、陰極エレクトロクロミック酸化状態着色材料、陽極エレクトロクロミック還元状態着色材料および陽極エレクトロクロミック酸化状態着色材料が好適選択される。この場合、陰極エレクトロクロミック多色材料および陽極エレクトロクロミック多色材料の使用を排除することを意味するものではないことを理解すべきである。
【0024】
本願の一実施形態において、前記第1のエレクトロクロミック層および前記第2のエレクトロクロミック層の材料は、いずれも、陰極エレクトロクロミック還元状態着色材料、陰極エレクトロクロミック酸化状態着色材料、陽極エレクトロクロミック還元状態着色材料または陽極エレクトロクロミック酸化状態着色材料である。このようにして得られたエレクトロクロミックデバイスは、前処理された後、順方向電圧を印加することにより、2層のエレクトロクロミック層のうちの一層(A層)が着色、他の一層(B層)が無色となり、逆方向電圧を印加することにより、一層(A層)が無色、他の一層(B層)が着色となる。色は、2種の色間で変換することができる。
【0025】
本願において、2層のエレクトロクロミック層の材料は、一方が陰極エレクトロクロミック還元状態着色材料、他方が陰極エレクトロクロミック酸化状態着色材料であってもよいし、一方が陽極エレクトロクロミック還元状態着色材料、他方が陽極エレクトロクロミック酸化状態着色材料であってもよい。このようにして得られたエレクトロクロミックデバイスの色は、無色と、2層のエレクトロクロミック層の重畳した色との間で変換することができる。
【0026】
本願の一実施形態において、前記第1のエレクトロクロミック層および前記第2のエレクトロクロミック層の材料は、同一の材料ではない。具体的に言えば、2層のエレクトロクロミック層の材料がいずれも陰極エレクトロクロミック還元状態着色材料であることを例とすると、第1のエレクトロクロミック層および第2のエレクトロクロミック層の材料は、陰極エレクトロクロミック還元状態着色材料から選ばれる2種の材料であることが好ましい。第1のエレクトロクロミック層および第2のエレクトロクロミック層は、同一の材料であると、順・逆方向電圧を印加した後、エレクトロクロミックデバイスは、色変換がないため、本願における前記第1のエレクトロクロミック層および前記第2のエレクトロクロミック層の材料は、異なる材料であることが好ましい。
【0027】
本願の一実施形態において、前記第1のエレクトロクロミック層の単位面積あたりの最大電荷移動数は、0~35C/cmであり、且つ0を含まず、たとえば、0.05C/cm、0.1C/cm、0.5C/cm、1C/cm、2C/cm、5C/cm、8C/cm、10C/cm、12C/cm、15C/cm、18C/cm、20C/cm、22C/cm、25C/cm、28C/cm、30C/cm、32C/cmまたは35C/cmなどであってもよい。前記第2のエレクトロクロミック層の単位面積あたりの最大電荷移動数は、0~35C/cmであり、且つ0を含まず、たとえば、0.05C/cm、0.1C/cm、0.5C/cm、1C/cm、2C/cm、5C/cm、8C/cm、10C/cm、12C/cm、15C/cm、18C/cm、20C/cm、22C/cm、25C/cm、28C/cm、30C/cm、32C/cmまたは35C/cmなどであってもよい。
【0028】
本願の一実施形態において、前記第1のエレクトロクロミック層と前記第2のエレクトロクロミック層は、単位面積あたりの最大電荷移動数の比率が、1:50~50:1であり、たとえば、1:50、1:45、1:40、1:35、1:30、1:25、1:20、1:15、1:10、1:8、1:6、1:5、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、5:1、6:1、8:1、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1または50:1であってもよく、より好ましくは1:10~10:1である。
【0029】
エレクトロクロミック層の単位面積あたりの最大電荷移動数は材料の種類及びエレクトロクロミック層の厚さに関係する。材質が確定されたエレクトロクロミック層は、単位面積あたりの最大電荷移動数が厚さの増大に従って増大する。第1のエレクトロクロミック層および第2のエレクトロクロミック層の厚さが大き過ぎると、単位面積あたりの最大電荷移動数が大き過ぎ、変色時に変色の時間が長くなり、変色が完全ではなく、色変換の効果が良くない。第1のエレクトロクロミック層および第2のエレクトロクロミック層の厚さが小さすぎると、単位面積あたりの最大電荷移動数が小さすぎ、色が浅くなり、変色効果が悪くなり、デバイスの耐用年数が短くなる。第1のエレクトロクロミック層と第2のエレクトロクロミック層とは単位面積あたりの最大電荷移動数の差分が大き過ぎると、両者の色深度の差分が大き過ぎ、同様に色変換の効果が良くないことを引き起こしやすい。
【0030】
本願の一実施形態において、前記電解質層は、ゲル状電解質層、液体電解質層または固体電解質層であり、より好ましくは固体電解質層であり、さらに好ましくは固体ポリマー電解質層である。
【0031】
本願の一実施形態において、前記電解質層の厚さは、0.1~200μmであり、たとえば0.1μm、0.2μm、0.5μm、0.8μm、1μm、2μm、5μm、8μm、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、110μm、120μm、130μm、150μm、160μm、180μmまたは200μmなどであってもよい。
【0032】
本願において、前記電解質層の種類は、特に限定されず、例示的には、以下の材質の固体電解質層を選択することができる。
【0033】
本願の一実施形態において、前記固体電解質層は、中性有機小分子を含有する。前記中性有機小分子の重量パーセント含有量は、30wt%以下、たとえば、25wt%、20wt%、15wt%、10wt%、5wt%などである。前記中性有機小分子の分子量は、3000以下、たとえば、2500、2000、1500、1000、500などである。
【0034】
本願の一実施形態において、前記固体電解質層は、共有結合で連結した可塑化基を有する固体電解質ポリマーを含有する。
【0035】
本願の一実施形態において、前記固体電解質ポリマーは、モノマーやオリゴマーとイオン導電性ポリマーのコポリマーであり、前記モノマーやオリゴマーの側鎖に可塑化基を有する。更に、前記固体電解質層の構成成分は、側鎖に架橋基を有するモノマーやオリゴマーセグメントを含む。
【0036】
本願に記載される「さらに」とは、上記の限定において、前記固体電解質層の構成成分に、モノマーやオリゴマーとイオン導電性ポリマーのコポリマーが含まれることに加えて、前記コポリマーに、側鎖に架橋基を有するモノマーやオリゴマーセグメントがさらに含まれることが好ましいことを指す。以下の「さらに」についても、同様に解釈する。
【0037】
前記塑化基および可塑化基とは、高分子間の相互作用を弱め、高分子結晶性を低下することができる基を指す。
【0038】
本願の一実施形態において、前記固体電解質ポリマーは、化学結合で連結した可塑化リニアポリマーおよびイオン導電性ポリマーである。前記可塑化リニアポリマーのガラス転移温度は-20℃を下回る。さらに、前記固体電解質層の構成成分は、側鎖に架橋基を有するモノマーやポリマーをさらに含む。前記側鎖に架橋基を有するモノマーやポリマー、前記可塑化リニアポリマーおよびイオン導電性ポリマーの三者は、化学結合で連結する。
【0039】
本願の一実施形態において、前記固体電解質ポリマーは、化学結合で連結した、側鎖に架橋基を有し且つガラス転移温度が-20℃を下回るポリマーおよびイオン導電性ポリマーである。さらに、前記固体電解質層の構成成分は、側鎖に架橋基を有するモノマーやポリマーも含む。前記側鎖に架橋基を有するモノマーやポリマー、前記可塑化リニアポリマーおよびイオン導電性ポリマーの三者は、化学結合で連結する。
【0040】
本願の一実施形態において、前記固体電解質ポリマーは、可撓性ポリマーの主鎖、イオン伝導型側鎖、及び非混合相側鎖を有するブラシ状ポリマーである。さらに、前記固体電解質層の構成成分は、側鎖に架橋基を有するモノマーやオリゴマーを含み、前記側鎖に架橋基を有するモノマーやオリゴマーは、ブロック共重合で前記ブラシ状ポリマーと化学結合する。
【0041】
本願に係る非混合相側鎖とは、他の側鎖または高分子の性質との相違が大きく、効果的にブレンドすることができない側鎖を指すが、本願に係るブラシ状ポリマーとは、高分子の主鎖がフレキシブルポリマーで、側鎖は2種類あり、1種の側鎖はイオンを伝導するために用いられ、他の1種の側鎖はイオン伝導側鎖の性能との相違が大きく、効果的にブレンドすることができない他のタイプの側鎖であるものを指す。本願では、このようなブレンド不可能な側鎖を導入することにより、高分子の結晶度を低下させ、高分子が不規則な状態となり、さらに高分子全体のイオン伝導能力および透明度を向上させる。
【0042】
本願の一実施形態において、前記イオン遷移層は、フレキシブル固体電解質層である。前記フレキシブル固体電解質層のポリマーは、以下の4種類のポリマーから選ばれてもよい。
【0043】
以下の4種類のポリマーの構造式において、x、y、およびzは、それぞれ独立して0以上の整数から選ばれる。式に示す矩形は、イオン伝導作用を有するポリマーブロック(イオン導電性ポリマーブロック)を表し、楕円形は、PR(可塑化基)、またはCL(架橋基)、またはNM(非混合相基)、またはIC(イオン導電基)という側鎖を有するモノマーやポリマーを表する。
【0044】
【化1】
【0045】
イオン伝導作用を有するポリマーブロックy(たとえば、ポリエチレングリコール、または他の文献で報道された材料)、側鎖に可塑化基(PR)を有するモノマーやポリマーブロックx、および側鎖に架橋基(CL)を有するモノマーやポリマーブロックzが共重合により生成したブロックコポリマー(PEGPRCLで表される)。或いは、イオン伝導作用を有するポリマーブロックy(たとえば、ポリエチレングリコール、または他の文献で報道された材料)および側鎖に可塑化基(PR)を有するモノマーやポリマーブロックxが共重合により生成したブロックコポリマー(PEGPRで表される)。
【0046】
【化2】
【0047】
イオン伝導作用を有するポリマーブロックy(たとえば、ポリエチレングリコール、または他の文献で報道された材料)、ガラス転移温度が-20℃を下回るリニア可塑化ポリマー(SP)ブロックx(たとえば、ポリエチレン、ポリブテン、ポリイソブテン、シロキサン、または他の文献で報道された材料など)、および側鎖に架橋基(CL)を有するモノマーやポリマーブロックzが共重合により生成したブロックコポリマー(PEGSPCLで表される)。或いは、イオン伝導作用を有するポリマーブロックy(たとえば、ポリエチレングリコール、または他の文献で報道された材料)およびガラス転移温度が-20℃を下回るリニア可塑化ポリマー(SP)ブロックx(たとえば、ポリエチレン、ポリブテン、ポリイソブテン、シロキサン、または他の文献で報道された材料など)が化学反応により連結したブロックコポリマー(PEGSPで表される)。
【0048】
【化3】
【0049】
イオン伝導性を有する高分子ブロックy(たとえば、ポリエチレングリコール、または他の文献で報道された材料)および可塑化側鎖を有する可塑化高分子(SP-PR)ブロックxが化学反応により連結してから、側鎖に架橋基を有するモノマーやオリゴマー(CL)ブロックzと共重合したブロックコポリマー(PEGSP-PRCLで表される)。或いは、イオン伝導性を有する高分子ブロックy(たとえば、ポリエチレングリコール、または他の文献で報道された材料)および可塑化側鎖を有する可塑化高分子(SP-PR)ブロックxが化学反応により連結したブロックコポリマー(PEGSP-PRで表される)。
【0050】
【化4】
【0051】
イオン伝導作用を有するオリゴマーや高分子(たとえば、ポリエチレングリコール、または他の文献で報道された材料)を側鎖とするフレキシブル高分子ブロックx、およびイオン伝導高分子とブレンドしない側鎖(たとえば、アルキル系、芳香族系またはアルキルおよび芳香族の混合系側鎖)を有するフレキシブル高分子ブロックyが化学反応により連結してから、側鎖に架橋基を有するモノマーやオリゴマー(CL)ブロックzと共重合して形成された櫛形ブロックコポリマー(ICNMCL)。或いは、イオン伝導作用を有するオリゴマーや高分子(たとえば、ポリエチレングリコールまたは他の文献で報道された材料)を側鎖とするフレキシブル高分子ブロックx、およびイオン伝導高分子とブレンドしない側鎖(たとえば、アルキル系、芳香族系またはアルキルおよび芳香族の混合系側鎖)を有するフレキシブル高分子ブロックyが化学反応により連結した櫛形ブロックコポリマー(ICNM)。
【0052】
上記のイオン遷移層に用いられる高分子材料は、さらに一定量の有機塩および/または無機塩とブレンドして電解質前駆体を形成する必要がある。前記無機塩は、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩を含むがこれに限定されず、前記有機塩は、イオン液体、たとえばEMITFSI、EMIOTFを含むがこれに限定されない。開始剤を導入することにより、ブレンドして電解質前駆体を形成することもある。電解質前駆体は、加熱、光開始などの方法により架橋して最終的な全固体電解質を形成する。
【0053】
本願において、可塑化基(PR)は、以下の構造を含むがこれに限定されない。
【0054】
【化5】
【0055】
架橋基(CL)は、以下の構造を含むがこれに限定されない。
【0056】
【化6】
【0057】
櫛形ブロックコポリマーの主鎖は、以下の構造を含むがこれに限定されない。
【0058】
【化7】
【0059】
イオン導電基(IC)は、以下の構造を含むがこれに限定されない。
【0060】
【化8】
【0061】
本願の一実施形態において、前記第1のベースおよび前記第2のベースの材料は、それぞれ独立してガラスまたはフレキシブル材料であり、透明材料であることが好ましい。前記フレキシブル材料は、PET(ポリエチレンテレフタレート)、シクロオレフィンコポリマー、トリ酢酸セルロースなどを含むがこれに限定されない。
【0062】
第2の態様、本願は、第1の態様に記載されるエレクトロクロミックデバイスの変色方法であって、
(1)前処理されたエレクトロクロミックデバイスに第1の方向と反対する第2の方向の第2の電圧を印加することにより、前記第1のエレクトロクロミック層が第3の色から第1の色となり、前記第2のエレクトロクロミック層が第2の色から第4の色となるステップであって、前記前処理は、前記エレクトロクロミックデバイスに第1の方向の第1の電圧を印加することにより、前記第1のエレクトロクロミック層を第1の色から第3の色にし、前記第2のエレクトロクロミック層を第2の色にそのまま維持することであるステップと、
(2)前処理されたエレクトロクロミックデバイスに第1の方向の第3の電圧を印加することにより、前記第1のエレクトロクロミック層を第1の色から第3の色にし、前記第2のエレクトロクロミック層を第4の色から第2の色にする、ステップと、を含む
変色方法を提供する。
【0063】
本願において、前記前処理の作用は、以下の通りである。電子を取得または損失することにより、第1のエレクトロクロミック層が可逆な酸化/還元反応を発生して、その色を変換する。それと同時に、第2のエレクトロクロミック層が非ファラデー反応および一部の不可逆な電気化学反応を発生し、生成した電荷がエレクトロクロミックデバイスの電荷をバランスさせ、その際に第2のエレクトロクロミック層が変色に関連したファラデー反応を発生しないため、第2のエレクトロクロミック層の色がそのまま維持される。前処理された後、方向が反対の電圧をサイクル印加することにより、エレクトロクロミックデバイスを異なる色間で変換させることができる。且つ、前記前処理ステップは、エレクトロクロミックデバイスを初めて使用する時にのみ行われ、後続使用時に行われる必要がない。従来技術におけるエレクトロクロミックデバイスは、変色時に、前処理ステップを行わない。本願では、2層のエレクトロクロミック層がいずれも陽極エレクトロクロミック材料または陰極エレクトロクロミック材料である構造を配置し、上記特定の変色方法を結び付けることにより、本願に係るエレクトロクロミックデバイスが異なる色間での変換を実現し、エレクトロクロミック材料の選択範囲を拡張することができる。
【0064】
実際適用において、前記前処理は、エレクトロクロミックデバイスの製造者により実行されてもよいし、ユーザが初めて使用する時に実行されてもよく、当業者により実施の必要に応じて選択されてもよい。
【0065】
なお、本願に係る前処理ステップにおける第1のエレクトロクロミック層を第1の色から第3の色に変換させる臨界電圧Vは、ステップ(2)における第1のエレクトロクロミック層を第1の色から第3の色に変換させる臨界電圧V’よりも高いので、従来のエレクトロクロミックデバイスの使用方法に応じて、本願におけるエレクトロクロミックデバイスに電圧V’を印加すると、エレクトロクロミックデバイスに対して前処理を実行することができず、さらにその色変換を実現することができない。そのうち、Vは、徐々に電圧を向上させて第1のエレクトロクロミック層の色の変換の可逆性を観察することにより測定されてもよいし、エレクトロクロミックデバイスのサイクリックボルタンメトリーグラフから測定されてもよい。
【0066】
本願の一実施形態において、前記第1の電圧の絶対値は、V以上である。そのうち、Vは、前記第2のエレクトロクロミック層に不可逆な電気化学反応を発生させる臨界電圧である。
【0067】
本願に係る前処理ステップにおいて、第2のエレクトロクロミック層に不可逆的な電気化学反応を発生させるように高い電圧(V以上、V未満)を使用する。そのうち、Vは、エレクトロクロミックデバイスが破壊された電圧である。第1の電圧がVよりも大きいと、一部のエレクトロクロミック層の材料が不可逆的な変換を発生し、構造が損壊されることで、エレクトロクロミックデバイスの品質が降下し、ひいては損壊される。
【0068】
本願の一実施形態において、前記第3の電圧の絶対値は、前記第1の電圧の絶対値よりも小さい。色変換過程において、第3の電圧は、エレクトロクロミック層の材料に可逆的な電気化学反応を十分に発生させればよく、不可逆的な電気化学反応を行う必要がない。そのため、該電圧は、前処理ステップに必要な電圧よりも小さい。
【0069】
第3の態様としては、本願は、第1の態様に記載されるエレクトロクロミックデバイスを含む電子端末を提供する。
【0070】
前記電子端末は、消費電子製品、戸や窓、キャビネット、電子ラベル、ウェアラブル装置、知能メガネ、光治療装置などであってもよい。たとえば、前記エレクトロクロミックデバイスは、上記電子端末に適用される場合に、端末の表面または内部などの任意の必要な箇所に配置されており、具体的な適用シーンに応じて、外観の多様化、プライバシーの遮蔽、状態の表示、情報の区別、環境輝度の調節、異なる所定波長の光線の濾過/透過などの効果を達成することができる。
【発明の効果】
【0071】
従来技術と比べ、本願は、以下の有益な効果を有する。
【0072】
本願に係るエレクトロクロミックデバイスは、2層のエレクトロクロミック層がいずれも陰極エレクトロクロミック材料または陽極エレクトロクロミック材料を使用し、特定の変色方法を結び付けることにより、異なる色間で変換することができることで、2層のエレクトロクロミック層の材料が陰極エレクトロクロミック材料と陽極エレクトロクロミック材料の組合せに限定される必要がなく、エレクトロクロミック材料の選択範囲を拡張することができる。このエレクトロクロミックデバイスは、より多くの色の相互変換に広く使われされやすく、多色表示およびパーソナライズのニーズを満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1】本願の実施例に係るエレクトロクロミックデバイスの構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0074】
以下、図面および具体的な実施形態を結び付けて、本願の技術案についてさらに説明する。当業者は、前記具体的な実施形態が本願を理解するためのものに過ぎず、本願を具体的に限定するものと見なすべきではないことを理解すべきである。
【0075】
本願の実施例において、電解質層の電解質ポリマー成分の調製方法は以下の通りである。
【0076】
高分子A(PEGPRCLに所属する1種の固体電解質ポリマー)の調製方法は、以下の通りである。
【0077】
【化9】
【0078】
適当な有機溶剤に、ブロモイソ酪酸封止のPEG(ポリエチレングリコール)、可塑化基を有するアクリレート、2つのアクリル酸を有する架橋基、1価の銅触媒、PMDETA(N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン)配位子を添加した。該混合溶液(溶剤が添加されていない該混合物は、電解質前駆体としてそのままディバイスの製造に用いられてもよい)を100℃の条件下で12時間反応させ、珪藻土で濾過し、減圧により溶剤を除去して高分子Aを得た。
【0079】
高分子B(PEGPRに所属する1種の固体電解質ポリマー)の調製方法は以下の通りである。
【0080】
【化10】
【0081】
適当な有機溶剤に、PEGジアミン(ポリエチレングリコールジアミン)、およびフタロイルクロリドを添加した。アルカリ性の条件下で、直接重合して高分子電解質を得た(溶剤が添加されていない該混合物は、電解質前駆体としてそのままディバイスの製造に用いられてもよい)。水洗、分離および乾燥した後、溶剤を除去して高分子Bを得た。
【0082】
高分子C(PEGSPCLに所属する1種の固体電解質ポリマー)の調製方法は以下の通りである。
【0083】
【化11】
【0084】
適当な有機溶剤に、PEG(ポリエチレングリコール)、ポリシロキサンジアミン、架橋剤であるテトラミン、凝縮剤であるCDI(カルボニルジイミダゾール)を添加した(溶剤が添加されていない該混合物は、電解質前駆体としてそのままディバイスの製造に用いられてもよい)。90℃で反応させてポリマーを得た。水洗、分離および乾燥した後、溶剤を除去して高分子Cを得た。
【0085】
高分子D(PEGSPに所属する1種の固体電解質ポリマー)の調製方法は以下の通りである。
【0086】
【化12】
【0087】
適当な有機溶剤に、PEG(ポリエチレングリコール)、ポリシロキサンジアミン、凝縮剤であるCDI(カルボニルジイミダゾール)を添加した(溶剤が添加されていない該混合物は、電解質前駆体としてそのままディバイスの製造に用いられてもよい)。120℃で反応させてポリマーを得た。水洗、分離および乾燥した後、溶剤を除去して高分子Dを得た。
【0088】
高分子E(PEGSP-PRCLに所属する1種の固体電解質ポリマー)の調製方法は以下の通りである。
【0089】
【化13】
【0090】
適当な有機溶剤に、PEG(ポリエチレングリコール)、ポリシロキサンジオール、架橋剤であるテトラオール、凝縮剤であるCDI(カルボニルジイミダゾール)を添加した(溶剤が添加されていない該混合物は、電解質前駆体としてそのままディバイスの製造に用いられてもよい)。100℃で反応させてポリマーを得た。水洗、分離および乾燥した後、溶剤を除去して高分子Eを得た。
【0091】
高分子F(PEGSP-PRに所属する1種の固体電解質ポリマー)の調製方法は以下の通りである。
【0092】
【化14】
【0093】
適当な有機溶剤に、PEG(ポリエチレングリコール)、ポリシロキサンジオール、凝縮剤であるCDI(カルボニルジイミダゾール)を添加した(溶剤が添加されていない該混合物は、電解質前駆体としてそのままディバイスの製造に用いられてもよい)。100℃で反応させてポリマーを得た。水洗、分離および乾燥した後、溶剤を除去して高分子Fを得た。
【0094】
高分子G(ICNMCLに所属する1種の固体電解質ポリマー)の調製方法は以下の通りである。
【0095】
【化15】
【0096】
適当な有機溶剤に、アクリル酸アルキルエステル、ポリエチレングリコールアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、AIBN(アゾビスイソブチルシアニド)を添加した(溶剤が添加されていない該混合物は、電解質前駆体としてそのままディバイスの製造に用いられてもよい)。照射により反応させてポリマーを得た。水洗、分離および乾燥した後、溶剤を除去して高分子Gを得た。
【0097】
高分子H(ICNMに所属する1種の固体電解質ポリマー)の調製方法は以下の通りである。
【0098】
【化16】
【0099】
適当な有機溶剤に、アクリル酸アルキルエステル、ポリエチレングリコールアクリレート、AIBN(アゾビスイソブチルシアニド)を添加した(溶剤が添加されていない該混合物は、電解質前駆体としてそのままディバイスの製造に用いられてもよい)。照射により反応させてポリマーを得た。水洗、分離および乾燥した後、溶剤を除去して高分子Hを得た。
【0100】
なお、本願の実施例において、第1のエレクトロクロミック層3の電位が第2のエレクトロクロミック層5の電位よりも高い場合には、電圧方向が順方向と呼ばれ、第1のエレクトロクロミック層3の電位が第2のエレクトロクロミック層5の電位よりも低い場合には、電圧方向が逆方向と呼ばれる。
【0101】
本願の実施例において、エレクトロクロミック層の単位面積あたりの最大電荷移動数の測定方法は、以下の通りである。
【0102】
1.測定待ちのエレクトロクロミック層を作用電極、Ag/AgClを参照電極、Pt電極を対電極として、3電極体系に連結した。電解質溶液は、50%過塩素酸リチウム含有のプロピレンカーボネート溶液である。
【0103】
2.電気化学ワークステーションで上記3電極体系に対してサイクリックボルタンメトリーテストを行った。始動電圧および終止電圧を0V、走査速度を0.05V/s、走査周数を6周、感度をe^(-2)とした。走査時に、テストするエレクトロクロミック層において完全に対称的なレドックスピークが現れるように、走査の最高電圧および最低電圧は、エレクトロクロミック層の材料に応じて適切に調整することができる。
【0104】
3.サイクリックボルタンメトリーグラフの面積を積分し、面積積分結果をSと表記した。
【0105】
4.単位面積あたりの最大電荷移動数Q=S/(2×V×A)を計算した。
【0106】
そのうち、Vは、サイクリックボルタンメトリーグラフを走査するときの走査速度であり、Aは、電解質溶液に浸漬されたエレクトロクロミック層の面積である。
【0107】
実施例1
【0108】
本実施例は、エレクトロクロミックデバイスを提供し、その構造模式図を図1に示し、順に積層された第1のベース1、第1の透明導電層2、第1のエレクトロクロミック層3、電解質層4、第2のエレクトロクロミック層5、第2の透明導電層6および第2のベース7を含む。そのうち、第1のエレクトロクロミック層3および第2のエレクトロクロミック層5の材料は、いずれも陽極エレクトロクロミック還元状態着色材料である。
【0109】
該エレクトロクロミックデバイスの製造方法は、以下の通りである。
【0110】
1)第1のエレクトロクロミック層3の製造
【0111】
300mgのポリ-2-[(2-エチルヘキシルオキシ)メチル]3,4-チエノ-1,4ジオキサンを10mLのo-キシレンに溶解させ、マグネチックスターラーで10h撹拌した後、得た溶液をガラス基板(第1のベース1)にメッキされたITO層(第1の透明導電層2)に滴下した。スピンコーティングし、乾燥した後、第1のエレクトロクロミック層3(厚さ200nm)を形成した。第1のエレクトロクロミック層3の単位面積あたりの最大電荷移動数をテストした(3.3C/cm)。
【0112】
2)第2のエレクトロクロミック層5の製造
【0113】
400mgのポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)を10mLのクロロホルムに溶解させ、マグネチックスターラーで10h撹拌した後、得た溶液をガラス基板(第2のベース7)にメッキされたITO層(第2の透明導電層6)に滴下した。スピンコーティングし、乾燥した後、第2のエレクトロクロミック層5(厚さ300nm)を形成した。第2のエレクトロクロミック層5の単位面積あたりの最大電荷移動数をテストした(4.2C/cm)。第1のエレクトロクロミック層3と第2のエレクトロクロミック層5とは、単位面積あたりの最大電荷移動数の比率が0.79:1である。
【0114】
3)エレクトロクロミックデバイスの組立
【0115】
10wt%の過塩素酸リチウム、89.9wt%の高分子Hの前駆体、および0.1wt%のアゾビスイソブチロニトリルを混合し、上記第1のエレクトロクロミック層3に塗布して、電解質コーティングを形成した。その後、上記第2のエレクトロクロミック層5を(ITO層およびガラス基板とともに)電解質コーティング上にずらしてカバーした。紫外線硬化で電解質コーティングを電解質層4(厚さ50μm)として形成して、エレクトロクロミックデバイスを得た。
【0116】
4)電極の配置
【0117】
ずらして露出した第1のエレクトロクロミック層3および第2のエレクトロクロミック層5の材料をアセトンで洗浄して、第1の透明導電層2および第2の透明導電層6を露出させた。銅接着剤を正負電極として導電層に貼着した。
【0118】
本実施例は、上記エレクトロクロミックデバイスの変色方法をさらに提供する。以下のステップを含む。
【0119】
(1)順方向電圧を印加する前処理の実行
【0120】
第1のエレクトロクロミック層3を電源正極に接続し、第2のエレクトロクロミック層5を電源負極に接続し、デバイスに順方向電圧(1.8V)を印加することにより、第1のエレクトロクロミック層3はブルーパープルから無色に酸化され、第2のエレクトロクロミック層5は依然として赤色に維持した。本願において、前処理のタイミングは、該エレクトロクロミックデバイスが初めて異なる色間での変換を行う前、および前記製造方法における電極の配置ステップの後のうちのいずれのタイミングで実行されてもよく、特に限定されない。
【0121】
(2)異なる色間での変換
【0122】
エレクトロクロミックデバイスに逆方向電圧(-1.0V)を印加することにより、第1のエレクトロクロミック層3が無色からブルーパープルに還元され、第2のエレクトロクロミック層5が赤色から無色に酸化された。エレクトロクロミックデバイスに順方向電圧(0V)を印加することにより、第1のエレクトロクロミック層3がブルーパープルから無色に酸化され、第2のエレクトロクロミック層5が無色から赤色に還元された。デバイスに逆方向電圧(-1.0V)および順方向電圧(0V)をサイクル印加することにより、デバイスの色がブルーパープルと赤色との間で変換した。
【0123】
本実施例に係るエレクトロクロミックデバイスは、消費電子製品、電子ラベル、戸や窓、キャビネット、ウェアラブル装置、知能メガネ、光治療装置などの端末製品に用いられてもよい。たとえば、光治療装置に用いられてもよい。該光治療装置は、メガネ、ヘルメット、ディスプレイなどであってもよい。レンズまたはディスプレイスクリーンとして製造されると、異なる所定波長の光線を濾過/透過して特定波長の光線がユーザの目に入射するために用いられることで、時間差の調節、睡眠品質の向上、疲労の解除、気分の緩和などの効果を達成することができる。
【0124】
実施例2
【0125】
本実施例は、エレクトロクロミックデバイスを提供し、その構造模式図を図1に示し、順に積層された第1のベース1、第1の透明導電層2、第1のエレクトロクロミック層3、電解質層4、第2のエレクトロクロミック層5、第2の透明導電層6および第2のベース7を含む。そのうち、第1のエレクトロクロミック層3および第2のエレクトロクロミック層5の材料は、いずれも陰極エレクトロクロミック酸化状態着色材料である。
【0126】
該エレクトロクロミックデバイスの製造方法は、以下の通りである。
【0127】
1)第1のエレクトロクロミック層3の製造
【0128】
80mgのフェリシアン化カリウムを量って25mLの脱イオン水に溶解させ、60mgの酢酸ニッケルを量って25mLの脱イオン水に溶解させ、均一に撹拌した。フェリシアン化カリウム溶液を酢酸ニッケル溶液に添加して沈澱物を形成し、それぞれ水およびエタノールで沈殿物を3回洗浄した。沈殿物を乾燥させて50mg量り、改めて10mLの脱イオン水に溶解させて溶液を形成した。その後、得た溶液をガラス基板(第1のベース1)にメッキされたITO層(第1の透明導電層2)に滴下した。スピンコーティングし、乾燥した後、第1のエレクトロクロミック層3(プルシアンブルー系、厚さ200nm)を形成した。第1のエレクトロクロミック層3の単位面積あたりの最大電荷移動数をテストした(8.9C/cm)。
【0129】
2)第2のエレクトロクロミック層5の製造
【0130】
まず、濃度35mmol/mLの塩化カリウム溶液を50mL調製し、窒素ガスを導入して酸素を除去した。その後、25mL量って、ヘキサシアノルテニウム酸テトラカリウム塩水和物をこの溶液に溶解させた。残りの25mLの塩化カリウムの酸素除去溶液を1mmol/mLの塩化鉄溶液として調製した。得た2種の溶液を高速マグネチックスターラーで混合して明るい紫色のルテニウムバイオレットのコロイド懸濁溶液を得た。その後、塩酸で得たコロイド溶液をPH=2に調節した。最後、窒素ガスを導入した条件下で、1mL、1mmol/mLの塩化ルテニウム溶液を添加した。その後、得た溶液を電気化学プールに転移した。ガラスベース(第2のベース7)のITO(第2の透明導電層6)を電極として、サイクリックボルタンメトリーで、-0.2Vと0.6Vとの間でサイクルした。ルテニウムバイオレット薄膜を電極に電気化学的堆積して第2のエレクトロクロミック層5(厚さ250nm)を形成した。第2のエレクトロクロミック層5の単位面積あたりの最大電荷移動数をテストした(10.2C/cm)。第1のエレクトロクロミック層3と第2のエレクトロクロミック層5とは、単位面積あたりの最大電荷移動数の比率が0.87:1である。
【0131】
3)エレクトロクロミックデバイスの組立
【0132】
10wt%の過塩素酸リチウム、89.9wt%の高分子Gの前駆体、40%、40mmol/mLのKCl溶液および0.1wt%のアゾビスイソブチロニトリルを混合し、上記第1のエレクトロクロミック層3に塗布して電解質コーティングを形成した。その後、上記第2のエレクトロクロミック層5を(ITO層およびガラス基板とともに)電解質コーティング上にずらしてカバーした。紫外線硬化で電解質コーティングを電解質層4(厚さ10μm)として形成して、エレクトロクロミックデバイスを得た。
【0133】
4)電極の配置
【0134】
ずらして露出した第1のエレクトロクロミック層3および第2のエレクトロクロミック層5の材料をアセトンで洗浄して、第1の透明導電層2および第2の透明導電層6を露出させた。銅接着剤を正負電極として導電層に貼着した。
【0135】
本実施例は、上記エレクトロクロミックデバイスの変色方法をさらに提供する。以下のステップを含む。
【0136】
(1)逆方向電圧を印加する前処理の実行
【0137】
デバイスに逆方向電圧(-1.2V)を印加することにより、第1のエレクトロクロミック層3がダークブルーから無色に還元され、第2のエレクトロクロミック層5は依然として紫色を維持した。本願において、前処理のタイミングは、該エレクトロクロミックデバイスが初めて異なる色間での変換を行う時に実行されてもよいし、該エレクトロクロミックデバイスの前記製造方法における電極の配置ステップの直後に実行されてもよく、特に限定されない。
【0138】
(2)異なる色間での変換
【0139】
エレクトロクロミックデバイスに順方向電圧(0.5V)を印加することにより、第1のエレクトロクロミック層3が無色からダークブルーに酸化され、第2のエレクトロクロミック層5が紫色から無色に還元された。エレクトロクロミックデバイスに逆方向電圧(-0.5V)を印加することにより、第1のエレクトロクロミック層3がダークブルーから無色に還元され、第2のエレクトロクロミック層5が無色から紫色に酸化された。デバイスに順方向電圧(0.5V)および逆方向電圧(-0.5V)をサイクル印加することにより、デバイスの色がダークブルーと紫色との間で変換した。
【0140】
本実施例に係るエレクトロクロミックデバイスは、消費電子製品、電子ラベル、戸や窓、キャビネット、ウェアラブル装置、知能メガネ、光治療装置などの端末製品に用いられてもよい。たとえば、消費電子製品に用いられてもよい。該消費電子製品は、携帯電話、タブレット、パソコン、時計などであってもよい。製品ハウジングまたはディスプレイまたは他の任意の箇所に適用されることで、消費電子製品が豊かな外観効果を有し、さらに、異なる色状態に従って異なる状態情報を表示するなどの効果を実現するために用いられてもよい。
【0141】
実施例3
【0142】
本実施例は、エレクトロクロミックデバイスを提供し、その構造模式図を図1に示し、順に積層された第1のベース1、第1の透明導電層2、第1のエレクトロクロミック層3、電解質層4、第2のエレクトロクロミック層5、第2の透明導電層6および第2のベース7を含む。そのうち、第1のエレクトロクロミック層3および第2のエレクトロクロミック層5の材料は、いずれも陰極エレクトロクロミック還元状態着色材料である。
【0143】
該エレクトロクロミックデバイスの製造方法は、以下の通りである。
【0144】
1)第1のエレクトロクロミック層3の製造
【0145】
100mg、純度99.9%のタングステン粉末を、10mL、30wt%の過酸化水素溶液に溶解させ、室温で4h撹拌した。撹拌した後、下層の沈殿物を濾過し、無水エタノールおよび氷酢酸を添加し、継続して4h撹拌した。その後、得た溶液をガラス基板(第1のベース1)にメッキされたITO層(第1の透明導電層2)に滴下した。スピンコーティングし、450℃の高温下で乾燥した後、第1のエレクトロクロミック層3(WO、厚さ10nm)を形成した。第1のエレクトロクロミック層3の単位面積あたりの最大電荷移動数をテストした(7C/cm)。
【0146】
2)第2のエレクトロクロミック層5の製造
【0147】
130mgのNb粉末を2.5mLの氷酢酸および12.5mLのブタノールの混合溶液に溶解させ、マグネチックスターラーで10h撹拌した後、得た溶液をガラス基板(第2のベース7)にメッキされたITO層(第2の透明導電層6)に滴下した。スピンコーティングし、700℃の高温下で乾燥した後、第2のエレクトロクロミック層5(厚さ50nm)を形成した。第2のエレクトロクロミック層5の単位面積あたりの最大電荷移動数をテストした(13C/cm)。第1のエレクトロクロミック層3と第2のエレクトロクロミック層5とは、単位面積あたりの最大電荷移動数の比率が0.54:1である。
【0148】
3)エレクトロクロミックデバイスの組立
【0149】
10wt%の過塩素酸リチウム、89.9wt%の高分子Cの前駆体、および0.1wt%のカルボニルジイミダゾールを混合し、上記第1のエレクトロクロミック層3に塗布して電解質コーティングを形成した。その後、上記第2のエレクトロクロミック層5を(ITO層およびガラス基板とともに)電解質コーティング上にずらしてカバーした。90℃で熱硬化させて電解質コーティングを電解質層4(厚さ80μm)として形成して、エレクトロクロミックデバイスを得た。
【0150】
4)電極の配置
【0151】
ずらして露出した第1のエレクトロクロミック層3および第2のエレクトロクロミック層5の材料をアセトンで洗浄して、第1の透明導電層2および第2の透明導電層6を露出させた。銅接着剤を正負電極として導電層に貼着した。
【0152】
本実施例は、上記エレクトロクロミックデバイスの変色方法をさらに提供する。以下のステップを含む。
【0153】
(1)逆方向電圧を印加する前処理の実行
【0154】
デバイスに逆方向電圧(-3.0V)を印加することにより、第1のエレクトロクロミック層3が無色からブルーに還元され、第2のエレクトロクロミック層5が依然として無色に維持した。本願において、前処理のタイミングは、該エレクトロクロミックデバイスが初めて異なる色間での変換を行う時に実行されてもよいし、該エレクトロクロミックデバイスの前記製造方法における電極の配置ステップの直後に実行されてもよく、特に限定されない。
【0155】
(2)異なる色間での変換
【0156】
エレクトロクロミックデバイスに順方向電圧(1.5V)を印加することにより、第1のエレクトロクロミック層3がブルーから無色に酸化され、第2のエレクトロクロミック層5が無色からライトグレーに還元された。エレクトロクロミックデバイスに逆方向電圧(-1.5V)を印加することにより、第1のエレクトロクロミック層3が無色からブルーに還元され、第2のエレクトロクロミック層5がライトグレーから無色に酸化された。デバイスに順方向電圧(1.5V)および逆方向電圧(-1.5V)をサイクル印加することにより、デバイスの色がライトグレーとブルーとの間で変換した。
【0157】
本実施例に係るエレクトロクロミックデバイスは、消費電子製品、電子ラベル、戸や窓、キャビネット、ウェアラブル装置、知能メガネ、光治療装置などの端末製品に用いられてもよい。たとえば、戸や窓に適用されてもよいし、戸や窓のガラスに適用されてもよい。ユーザのニーズに応じてガラスの色、透過率などを調節することで、プライバシーの遮蔽、環境輝度の調節、温度の調節などの効果を達成することができる。
【0158】
実施例4
【0159】
本実施例は、エレクトロクロミックデバイスを提供し、実施例1との相違点は以下の通りである。第1のエレクトロクロミック層3および第2のエレクトロクロミック層5の材料がいずれも陽極エレクトロクロミック酸化状態着色材料であり、電解質層4の構成原料が高分子Fに置き換えられる。
【0160】
そのうち、第1のエレクトロクロミック層3の材料は、NiOであり、Niを金属ターゲット材料としてスパッタリング反応によってフィルムを形成し、厚さが90nm、単位面積あたりの最大電荷移動数が18C/cmである。第2のエレクトロクロミック層5の材料は、IrOであり、Irを金属ターゲット材料としてスパッタリング反応によってフィルムを形成し、厚さが125nm、単位面積あたりの最大電荷移動数が25C/cmである。第1のエレクトロクロミック層3と第2のエレクトロクロミック層5とは、単位面積あたりの最大電荷移動数の比率が0.66:1である。電解質層4は、10wt%の過塩素酸リチウム、89.9wt%の高分子Fの前駆体、および0.1wt%のカルボニルジイミダゾールを混合し、100℃で熱硬化させることにより形成され、厚さが50μmである。
【0161】
本実施例は、上記エレクトロクロミックデバイスの変色方法をさらに提供する。以下のステップを含む。
【0162】
(1)順方向電圧を印加する前処理の実行
【0163】
デバイスに順方向電圧(3V)を印加することにより、第1のエレクトロクロミック層3が無色からダークブラウンに酸化され、第2のエレクトロクロミック層5が依然として無色に維持した。本願において、前処理のタイミングは、該エレクトロクロミックデバイスが初めて異なる色間での変換を行う時に実行されてもよいし、該エレクトロクロミックデバイスの前記製造方法における電極の配置ステップの直後に実行されてもよく、特に限定されない。
【0164】
(2)異なる色間での変換
【0165】
エレクトロクロミックデバイスに逆方向電圧(-1.8V)を印加することにより、第1のエレクトロクロミック層3がダークブラウンから無色に還元され、第2のエレクトロクロミック層5が無色からブルーブラックに酸化された。エレクトロクロミックデバイスに順方向電圧(1.8V)を印加することにより、第1のエレクトロクロミック層3が無色からダークブラウンに酸化され、第2のエレクトロクロミック層5がブルーブラックから無色に還元された。デバイスに逆方向電圧(-1.8V)および順方向電圧(1.8V)をサイクル印加することにより、デバイスの色がブルーブラックとダークブラウンとの間で変換した。
【0166】
本実施例に係るエレクトロクロミックデバイスは、消費電子製品、電子ラベル、戸や窓、キャビネット、ウェアラブル装置、知能メガネ、光治療装置などの端末製品に用いられてもよい。たとえば、キャビネットに適用されてもよいし、キャビネットの表面またはガラスに適用されてもよい。外観の多様化によれば、プライバシーの遮蔽、キャビネットの内部温度の調節などの効果を達成することができる。
【0167】
実施例5
【0168】
本実施例は、エレクトロクロミックデバイスを提供し、実施例1との相違点は以下の通りである。第1のエレクトロクロミック層3を製造する時に量ったポリ-2-[(2-エチルヘキシルオキシ)メチル]3,4-チエノ-1,4ジオキサンが600mgであり、スピンコーティングした厚さが800nmであり、単位面積あたりの最大電荷移動数が12.2C/cmである。第2のエレクトロクロミック層5を製造する時に量ったポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)が50mgであり、スピンコーティングした厚さが12nmであり、単位面積あたりの最大電荷移動数が0.25C/cmである。第1のエレクトロクロミック層3と第2のエレクトロクロミック層5とは、単位面積あたりの最大電荷移動数の比率が48.8:1である。電解質層4は、構成原料が高分子Bに置き換えられ、10wt%の過塩素酸リチウム、89.9wt%の高分子Bの前駆体および0.1wt%、85%の水酸化カリウムを12h混合することにより形成され、厚さが50μmである。
【0169】
本実施例に係るエレクトロクロミックデバイスに順方向電圧(1.8V)を印加して前処理を行った後、逆方向電圧(-1.0V)および順方向電圧(0.4V)をサイクル印加することにより、デバイスの色がブルーパープルと赤色との間で変換することができる。
【0170】
本実施例に係るエレクトロクロミックデバイスは、消費電子製品、電子ラベル、戸や窓、キャビネット、ウェアラブル装置、知能メガネ、光治療装置などの端末製品に用いられてもよい。たとえば、ウェアラブル装置に適用されてもよいし、ウェアラブル装置のハウジングまたは表示領域に適用されてもよく、外観を多様化し、光線を濾過するなどの効果を達成することができる。
【0171】
実施例6
【0172】
本実施例は、エレクトロクロミックデバイスを提供し、実施例1との相違点は以下の通りである。第1のエレクトロクロミック層3の材料が陰極エレクトロクロミック還元状態着色材料であり、第2のエレクトロクロミック層5の材料が陰極エレクトロクロミック酸化状態着色材料であり、電解質層4の構成原料が高分子Aに置き換えられる。
【0173】
第1のエレクトロクロミック層3の材料は、WOであり、調製方法が実施例3を参照し、厚さが50nmであり、単位面積あたりの最大電荷移動数が20C/cmである。第2のエレクトロクロミック層5の材料は、ルテニウムバイオレットであり、調製方法が実施例2を参照し、厚さが250nmであり、単位面積あたりの最大電荷移動数が10.2C/cmである。第1のエレクトロクロミック層3と第2のエレクトロクロミック層5とは、単位面積あたりの最大電荷移動数の比率が1.96:1である。電解質層4は、10wt%の過塩素酸リチウム、89.9wt%の高分子Aの前駆体、0.05wt%の塩化第一銅および0.1wt%のN,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミンを混合し、100℃で熱硬化させることにより形成され、厚さが150μmである。
【0174】
本実施例に係るエレクトロクロミックデバイスに逆方向電圧(-3V)を印加して前処理を行った後、順方向電圧(1.2V)および逆方向電圧(-1.5V)をサイクル印加することにより、デバイスの色が無色と重畳した色(ブルーと紫色)との間で変換することができる。
【0175】
本実施例に係るエレクトロクロミックデバイスは、消費電子製品、電子ラベル、戸や窓、キャビネット、ウェアラブル装置、知能メガネ、光治療装置などの端末製品に用いられてもよい。たとえば、電子ラベルに適用されると、状態の表示および情報の区別の効果を達成することができる。
【0176】
実施例7
【0177】
本実施例は、エレクトロクロミックデバイスを提供し、実施例1との相違点は以下の通りである。第1のエレクトロクロミック層3の材料が陽極エレクトロクロミック還元状態着色材料、第2のエレクトロクロミック層5の材料が陽極エレクトロクロミック酸化状態着色材料であり、電解質層の構成原料が高分子Eに置き換えられる。
【0178】
第1のエレクトロクロミック層3の材料は、ポリ-2-[(2-エチルヘキシルオキシ)メチル]3,4-チオフェンであり、調製方法が実施例1を参照し、厚さが200nmであり、単位面積あたりの最大電荷移動数が3.3C/cmである。第2のエレクトロクロミック層5の材料は、NiOであり、調製方法が実施例4を参照し、厚さが180nmであり、単位面積あたりの最大電荷移動数が32C/cmである。第1のエレクトロクロミック層3と第2のエレクトロクロミック層5とは単位面積あたりの最大電荷移動数の比率が1:10である。電解質層4は、10wt%の過塩素酸リチウム、89.9wt%の高分子Eの前駆体、および0.1wt%のカルボニルジアゼンを混合し、100℃で熱硬化することにより形成され、厚さが30μmである。
【0179】
本実施例に係るエレクトロクロミックデバイスに順方向電圧(1.8V)を印加して前処理を行った後、逆方向電圧(-1.0V)および順方向電圧(1V)をサイクル印加することにより、デバイスの色が無色と重畳した色(オフブラックとブルーパープル)との間で変換することができる。
【0180】
本実施例に係るエレクトロクロミックデバイスは、消費電子製品、電子ラベル、戸や窓、キャビネット、ウェアラブル装置、知能メガネ、光治療装置などの端末製品に用いられてもよい。
【0181】
実施例8
【0182】
本実施例は、エレクトロクロミックデバイスを提供し、実施例2との相違点は以下の通りである。第1のエレクトロクロミック層3を製造する時に量ったフェリシアン化カリウムが160mgであり、スピンコーティングした厚さが400nmであり、単位面積あたりの最大電荷移動数が16C/cmであり、第2のエレクトロクロミック層5の厚さが250nmであり、単位面積あたりの最大電荷移動数が10.2C/cmである。第1のエレクトロクロミック層3と第2のエレクトロクロミック層5とは、単位面積あたりの最大電荷移動数の比率が1.57:1である。
【0183】
本実施例に係るエレクトロクロミックデバイスに逆方向電圧(-1.2V)を印加して前処理を行った後、順方向電圧(0.5V)および逆方向電圧(-0.5V)をサイクル印加することにより、デバイスの色がダークブルーと紫色との間で変換することができる。本実施例に係るエレクトロクロミックデバイスは、消費電子製品、電子ラベル、戸や窓、キャビネット、ウェアラブル装置、知能メガネ、光治療装置などの端末製品に用いられてもよい。
【0184】
実施例9
【0185】
本実施例は、エレクトロクロミックデバイスを提供し、実施例3との相違点は以下の通りである。第1のエレクトロクロミック層3の厚さが75nmであり、単位面積あたりの最大電荷移動数が30C/cmであり、第2のエレクトロクロミック層5の厚さが20nmであり、単位面積あたりの最大電荷移動数が3C/cmである。第1のエレクトロクロミック層3と第2のエレクトロクロミック層5とは、単位面積あたりの最大電荷移動数の比率が10:1である。
【0186】
本実施例に係るエレクトロクロミックデバイスに逆方向電圧(-3V)を印加して前処理を行った後、順方向電圧(1.5V)および逆方向電圧(-1.5V)をサイクル印加することにより、デバイスの色がライトグレーとブルーとの間で変換することができる。本実施例に係るエレクトロクロミックデバイスは、消費電子製品、電子ラベル、戸や窓、キャビネット、ウェアラブル装置、知能メガネ、光治療装置などの端末製品に用いられてもよい。
【0187】
実施例10
【0188】
本実施例は、エレクトロクロミックデバイスを提供し、その構造模式図を図1に示し、順に積層された第1のベース1、第1の透明導電層2、第1のエレクトロクロミック層3、電解質層4、第2のエレクトロクロミック層5、第2の透明導電層6および第2のベース7を含む。そのうち、第1のエレクトロクロミック層3および第2のエレクトロクロミック層5の材料は、いずれも陽極エレクトロクロミック多色材料である。
【0189】
該エレクトロクロミックデバイスの製造方法は、以下の通りである。
【0190】
1)第1のエレクトロクロミック層3の製造
【0191】
定電流法により、1mol/Lの硫酸溶液に、10μA/cmの電流密度で、濃度0.1mol/Lのアニリンを30min堆積して、ガラス基板にメッキされたITO層において第1のエレクトロクロミック層3(ポリアニリン薄膜、厚さ280nm)を形成した。第1のエレクトロクロミック層3の単位面積あたりの最大電荷移動数をテストした(20C/cm)。
【0192】
2)第2のエレクトロクロミック層5の製造
【0193】
300mgのVシート状結晶体をつぶした後に坩堝に投入し、マッフル炉で800℃で加熱して、流動性があるコロイド状に完全に溶解させた。5min保温した後、コロイドバケツに投入し、20mLの脱イオン水を添加し、均一に撹拌してVコロイド溶液を得た。得た溶液をガラス基板にメッキされたITO層に滴下した。スピンコーティングし、第2のエレクトロクロミック層5(厚さ350nm)を形成した。第2のエレクトロクロミック層5の単位面積あたりの最大電荷移動数をテストした(35C/cm)。第1のエレクトロクロミック層3と第2のエレクトロクロミック層5とは、単位面積あたりの最大電荷移動数の比率が0.57:1である。
【0194】
3)エレクトロクロミックデバイスの組立
【0195】
10wt%の過塩素酸リチウム、89.9wt%の高分子Dの前駆体、および0.1wt%のカルボニルジイミダゾールを混合し、上記第1のエレクトロクロミック層3に塗布して電解質コーティングを形成した。その後、上記第2のエレクトロクロミック層5を(ITO層およびガラス基板とともに)電解質コーティング上にずらしてカバーした。120℃で熱硬化させて電解質コーティングを電解質層4(厚さ60μm)として形成して、エレクトロクロミックデバイスを得た。
【0196】
4)電極の配置
【0197】
ずらして露出した第1のエレクトロクロミック層3および第2のエレクトロクロミック層5の材料をアセトンで洗浄して、第1の透明導電層2および第2の透明導電層6を露出させた。銅接着剤を正負電極として導電層に貼着した。
【0198】
本実施例は、上記エレクトロクロミックデバイスの変色方法をさらに提供する。以下のステップを含む。
【0199】
(1)順方向電圧を印加する前処理の実行
【0200】
デバイスに順方向電圧(2.5V)を印加することにより、第1のエレクトロクロミック層3がグリーンからダークブルーに酸化され、第2のエレクトロクロミック層5は依然としてイエローを維持した。本願において、前処理のタイミングは、該エレクトロクロミックデバイスが初めて異なる色間で変換を行う時に実行されてもよいし、該エレクトロクロミックデバイスの前記製造方法における電極の配置ステップの直後に実行されてもよく、特に限定されない。
【0201】
(2)異なる色間での変換
【0202】
エレクトロクロミックデバイスに逆方向電圧(-1.0V)を印加することにより、第1のエレクトロクロミック層3がダークブルーからグリーンに還元され、第2のエレクトロクロミック層5がイエローからグレーブラックに酸化された。エレクトロクロミックデバイスに順方向電圧(1.2V)を印加することにより、第1のエレクトロクロミック層3がグリーンからダークブルーに酸化され、第2のエレクトロクロミック層5がグレーブラックからイエローに還元された。デバイスに順方向電圧(1.2V)および逆方向電圧(-1.0V)をサイクル印加することにより、デバイスの色が色変換を実現することができる。
【0203】
本実施例に係るエレクトロクロミックデバイスは、消費電子製品、電子ラベル、戸や窓、キャビネット、ウェアラブル装置、知能メガネ、光治療装置などの端末製品に用いられてもよい。
【0204】
実施例11
【0205】
本実施例は、エレクトロクロミックデバイスを提供し、実施例7との相違点は以下の通りである。第1のエレクトロクロミック層3を製造する時に量ったポリ-2-[(2-エチルヘキシルオキシ)メチル]3,4-チエノ-1,4ジオキサンが20mgであり、スピンコーティングした厚さが6nmであり、単位面積あたりの最大電荷移動数が0.1C/cmであり、第2のエレクトロクロミック層5の厚さが25nmであり、単位面積あたりの最大電荷移動数が5C/cmである。第1のエレクトロクロミック層3と第2のエレクトロクロミック層5とは、単位面積あたりの最大電荷移動数の比率が0.02:1である。
【0206】
本実施例に係るエレクトロクロミックデバイスに順方向電圧(1.8V)を印加して前処理を行った後、逆方向電圧(-1.0V)および順方向電圧(1V)をサイクル印加することにより、デバイスの色を無色と重畳した色(オフブラックとブルーパープル)との間で変換することができる。
【0207】
本実施例に係るエレクトロクロミックデバイスは、消費電子製品、電子ラベル、戸や窓、キャビネット、ウェアラブル装置、知能メガネ、光治療装置などの端末製品に用いられてもよい。
【0208】
比較例1
【0209】
実施例1に係るエレクトロクロミックデバイスを用いて色変換を行った。その方法における、実施例1との相違点は以下の通りである。デバイスに直接順方向電圧(1.2V)および逆方向電圧(-1.2V)をサイクル印加して色変換を行った。
【0210】
(1)デバイスに順方向電圧(1.2V)を印加すると、第1のエレクトロクロミック層3は電子を損失して酸化反応を発生することができず、第2のエレクトロクロミック層5は電子を取得して還元反応を発生することができず、第1のエレクトロクロミック層3および第2のエレクトロクロミック層5は、いずれも変色しなかった。
【0211】
(2)デバイスに逆方向電圧(-1.2V)を印加すると、第1のエレクトロクロミック層3は電子を取得して還元反応を発生することができず、第2のエレクトロクロミック層5は電子を損失して酸化反応を発生することができず、第1のエレクトロクロミック層3および和第2のエレクトロクロミック層5は、いずれも変色しなかった。
【0212】
(3)順方向電圧(1.2V)および逆方向電圧(-1.2V)をサイクル印加すると、デバイスの色は変換することができない。
【0213】
第1のエレクトロクロミック層3および第2のエレクトロクロミック層5はいずれも陽極エレクトロクロミック還元状態着色材料であり、初期状態でいずれも還元状態となり、加圧電位が低いので、材料を酸化して退色させるための十分な電荷を提供することができない。そのため、デバイスは、色変換を行うことができない。
【0214】
以上は、本願の具体的な実施形態にすぎないが、本願の保護範囲は、これに限定されるものではないことを出願人より声明する。当業者にとっては、本願に開示している技術範囲内において容易に想到できるあらゆる変更または置換は、いずれも本願の保護範囲および開示範囲内に含まれることを理解すべきである。
【符号の説明】
【0215】
1 第1のベース、2 第1の透明導電層、3 第1のエレクトロクロミック層、4 電解質層、5 第2のエレクトロクロミック層、6 第2の透明導電層、7 第2のベース。
図1
【国際調査報告】