(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】チューインガムの増量剤としての多孔質デンプン
(51)【国際特許分類】
A23G 4/10 20060101AFI20230323BHJP
A23L 29/212 20160101ALI20230323BHJP
【FI】
A23G4/10
A23L29/212
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022545012
(86)(22)【出願日】2021-02-12
(85)【翻訳文提出日】2022-07-25
(86)【国際出願番号】 EP2021053410
(87)【国際公開番号】W WO2021160779
(87)【国際公開日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】202010090241.5
(32)【優先日】2020-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】ハジム、ジョヴィン
(72)【発明者】
【氏名】シュイ、チーチン
(72)【発明者】
【氏名】ポーラ、バーナード
【テーマコード(参考)】
4B014
4B025
【Fターム(参考)】
4B014GB13
4B014GG08
4B014GG18
4B014GK03
4B014GK05
4B014GK07
4B014GL11
4B014GP01
4B014GQ01
4B025LB25
4B025LD03
4B025LD08
4B025LG07
4B025LP15
4B025LP18
4B025LP19
(57)【要約】
本発明は、チューインガムにおける増量剤としての多孔質デンプンの使用に関する。本発明はまた、チューインガムの製造方法、及び充填剤として多孔質デンプンを含むチューインガム組成物に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
増量剤として、チューインガム組成物中の糖の一部若しくは全部、及び/又はポリオール、例えば糖アルコールなどの一部と置き換えるための、多孔質デンプンの使用。
【請求項2】
前記デンプンが、タピオカデンプン、ワキシータピオカデンプン、トウモロコシデンプン、エンドウ豆デンプン、ジャガイモデンプン、ワキシージャガイモデンプン、小麦デンプン、ワキシー小麦デンプン、ワキシートウモロコシデンプン、緑豆デンプン、米デンプン、もち米デンプン、サツマイモデンプン、ワキシーサツマイモデンプン、キビデンプン、サゴデンプン、ソルガムデンプン、キヌアデンプン、クズウコンデンプン、アマランスデンプン、レンコンデンプン及びソバデンプンからなる群から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記デンプンが、前記チューインガム組成物中の増量剤として、糖及び/又はポリオール粉末、例えば糖アルコールなどを、30重量%まで、好ましくは60重量%まで、より好ましくは100重量%まで置き換える、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記デンプンが、前記チューインガム組成物の総重量に対して5重量%~65重量%、好ましくは20重量%~55重量%、より好ましくは40重量%~50重量%を占める、請求項1~3に記載の使用。
【請求項5】
前記チューインガム組成物が、
-前記チューインガム組成物の総重量に対して、5重量%~70重量%、好ましくは10重量%~55重量%、より好ましくは15重量%~40重量%のガムベース、
-前記チューインガム組成物の総重量に対して、5重量%~65重量%、好ましくは20重量%~55重量%、より好ましくは40重量%~50重量%の多孔質デンプン、
-前記チューインガム組成物の総重量に対して、任意選択的に0重量%~35重量%、好ましくは5重量%~30重量%、より好ましくは10重量%~25重量%の添加物、を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記チューインガムがマルチトールコーティングでコーティングされている、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
多孔質デンプンを含有する又は多孔質デンプンからなる増量剤を含む、チューインガム組成物。
【請求項8】
充填剤として多孔質デンプンを添加する工程を含む、チューインガム組成物を製造する方法。
【請求項9】
増量剤として糖及び/又はポリオール粉末、例えば糖アルコールなどを添加する工程を含まない、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューインガムの増量剤としての多孔質デンプンの使用に関する。本発明はまた、チューインガムの製造方法、及び、充填剤として多孔質デンプンを含むチューインガム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
チューインガム組成物は、一般に、ガムベース、香味剤、及び天然又は人工の甘味料を含有する。また、ガムは、粘稠度を改善し、一般に口当たりを高めるための、可塑剤、軟化剤、及び増量剤などの様々な添加物を含有する場合もある。典型的には、増量剤は糖及びポリオールであり、増量剤は、食味に影響を与えずにチューインガムのかさ及び体積を増加させることを目的とする。
【0003】
過去数十年の間、チューインガムに最も使用されている増量剤はスクロースであった。しかしながら、スクロースは、虫歯につながる可能性があり、胃腸障害を引き起こす可能性があり、糖尿病の消費者又は無糖チューインガムを求めている消費者には適さない。
【0004】
これらの理由から、食品製造業者はスクロースをソルビトール、マルチトール、イソマルト、マンニトール及びキシリトールなどのポリオールに置き換えてきた。しかしながら、ますます多くの消費者が天然の原材料を求めるようになっているため、これらは満足できるものではない。更に、このようなポリオールは、一般に消費者に胃腸障害を引き起こす。
【0005】
したがって、許容される風味及び口当たりを有していながら、歯に優しく、消費者の胃腸障害を引き起こさない、チューインガム中の無糖増量剤を提供する必要がある。
【0006】
本発明者らは、驚くべきことに、多孔質デンプンをチューインガムの増量剤として使用できることを見出した。特に、多孔質デンプンは、消費者によって天然かつ健康な原材料として認識され、歯に優しく、胃腸障害を引き起こさず、及び耐性の問題を有さず、かつ許容可能な風味及び口当たりをチューインガムにもたせる。
【発明の概要】
【0007】
本発明の第1の目的は、増量剤として、チューインガム組成物中の糖の一部若しくは全部、及び/又はポリオール、例えば糖アルコールなどの一部を置き換えるための多孔質デンプンの使用に関する。
【0008】
本発明の第2の目的は、多孔質デンプンを含有する又は多孔質デンプンからなる増量剤を含むチューインガム組成物に関する。
【0009】
本発明の第3の目的は、増量剤として多孔質デンプンを添加する工程を含む、本発明のチューインガム組成物を製造する方法に関する。
【0010】
本発明の第4の目的は、本発明のプロセスから得られるチューインガム組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1の目的は、増量剤として、チューインガム組成物中の糖の一部若しくは全部、及び/又はポリオール、例えば糖アルコールなどの一部を置き換えるための多孔質デンプンの使用に関する。
【0012】
本発明において、「チューインガム」とは、チューインガム及び風船ガム等をいう。チューインガムは、スティック、タブ、チャンク、テープ、コーティングされた若しくはコーティングされていないペレット若しくはボール、又は任意の他の所望の形状に形成することができる。
【0013】
本明細書で使用される場合、「多孔質デンプン」という表現は、多数の細孔が顕微鏡技術によってデンプン顆粒の表面上に認識できるまで、1つ又は多数のデンプン分解酵素によって加水分解された顆粒状デンプンを指す。
【0014】
本発明によれば、多孔質デンプンは、デンプンのゼラチン化温度よりも低い温度で、α-アミラーゼ及びアミログルコシダーゼなどの1つ又は多数のデンプン分解酵素による天然デンプン顆粒の酵素的加水分解を介して生成され得る。
【0015】
天然デンプン顆粒は、タピオカ、ワキシータピオカ、トウモロコシ、エンドウ、ジャガイモ、ワキシージャガイモ、小麦、ワキシー小麦、ワキシートウモロコシ、緑豆、米、もち米、サツマイモ、ワキシーサツマイモ、キビ、サゴ、モロコシ、キヌア、クズウコン、アマランス、レンコン、及びソバをベースとし得る。
【0016】
本明細書で使用される場合、「天然デンプン」という表現は、天然源から得られるデンプンを指す。当該デンプンは、酵素的又は化学的加工方法に起因するものではない。デンプンの典型的な天然源は、穀物、塊茎、根、豆果及び果物である。本発明において、天然デンプンは、抽出プロセスによって、タピオカ、ワキシータピオカ、トウモロコシ、エンドウ豆、ジャガイモ、ワキシージャガイモ、小麦、ワキシー小麦、ワキシートウモロコシ、緑豆、米、もち米、サツマイモ、ワキシーサツマイモ、キビ、サゴ、モロコシ、キヌア、クズウコン、アマランス、レンコン及びソバなどの天然源から回収され得る。天然デンプンは、通常は、湿式粉砕又は乾式粉砕の既知のプロセスのいずれかを使用して抽出される。
【0017】
特に、天然デンプン顆粒は、α-アミラーゼ又はアミログルコシダーゼなどによる酵素加水分解の前に、デンプンの糊化温度より低い温度で、塩酸又は硫酸などの酸で加水分解することができる。
【0018】
あるいは、α-アミラーゼ又はアミログルコシダーゼなどによる酵素加水分解によって得られた多孔質デンプン顆粒を、デンプンの糊化温度より低い温度で、塩酸又は硫酸などの酸で更に加水分解してもよい。
【0019】
得られた多孔質デンプン顆粒の粒径は、粉砕、均質化、又は微粉化によって更に低減され得る。
【0020】
得られたデンプン顆粒は、表面上及び顆粒の内部に多孔質構造を有し得る。好ましくは、それらは、内部チャネルを通して核に接続されていてもよく又は接続されていなくてもよい多数の大小の細孔を有する。
【0021】
本発明の好ましい実施形態では、本発明で使用される多孔質デンプンは、0.01μm~5μm、好ましくは0.05μm~2.5μm、より好ましくは0.1μm~1μmの直径を有する多数の細孔を表面上に有する。
【0022】
多孔性は、走査型電子顕微鏡法を使用して観察することができる。
【0023】
本発明の好ましい実施形態では、本発明で使用される多孔質デンプンは、0.5μm~200μm、好ましくは1μm~100μm、より好ましくは2μm~60μmの粒径を有する。
【0024】
粒径は、レーザー回折粒径分析計(Beckman Coulter LS 13 320)によって測定され得る。
【0025】
本発明の好ましい実施形態では、デンプンは、タピオカデンプン、ワキシータピオカデンプン、トウモロコシデンプン、エンドウ豆デンプン、ジャガイモデンプン、ワキシージャガイモデンプン、小麦デンプン、ワキシー小麦デンプン、ワキシートウモロコシデンプン、緑豆デンプン、米デンプン、もち米デンプン、サツマイモデンプン、ワキシーサツマイモデンプン、キビデンプン、サゴデンプン、ソルガムデンプン、キヌアデンプン、クズウコンデンプン、アマランスデンプン、レンコンデンプン及びソバデンプンからなる群から選択され得る。
【0026】
本発明の好ましい実施形態では、本発明で使用される多孔質デンプンは、ゼラチン化されていないが、顆粒状である。
【0027】
本明細書で使用する場合、「増量剤」という表現は、食品、特にチューインガムのかさ及び体積を、食味に影響を与えずに増加させる化合物を指す。
【0028】
糖の例は、単糖類、二糖類、オリゴ糖類及び多糖類を含む糖類、例えばキシロース、リボース、グルコース(デキストロース)、マンノース、ガラクトース、フルクトース(レブロース)、デキストリン、マルトデキストリン、転化糖、グルコースシロップ、スクロース、マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、イソマルトース、ラクトース、トレハロース、プシコース(アルロース)、タガトース、マルツロース、イソマルツロース、ラクツロース、フラクトオリゴ糖類、ガラクトオリゴ糖類、イソマルトオリゴ糖類及びそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0029】
食品中のポリオールは、糖アルコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールを含むが、これらに限定されない。
【0030】
糖アルコールの例としては、エチレングリコール、グリセロール、ガラクチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール、ポリグリシトール、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、マルチトール、キシリトール、イソマルト、ラクチトール、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
本発明の好ましい実施形態では、デンプンは、チューインガム組成物中の増量剤として、糖及び/又はポリオール粉末、例えば糖アルコールなどを30%まで、好ましくは60%まで、より好ましくは100%まで置き換える。
【0032】
本発明の好ましい実施形態では、多孔質デンプンは、チューインガム組成物の総重量に対して5重量%~65重量%、好ましくは20重量%~55重量%、より好ましくは40重量%~50重量%を占める。
【0033】
チューインガム組成物は、ガムベースを更に含む。
【0034】
チューインガムの種類に応じて、当技術分野で周知の任意の種類のガムベースをチューインガム組成物に使用することができる。チューインガムベースは一般に、エラストマーと樹脂との組合せを、場合により可塑剤及び無機充填剤と共に含む。ガムベースは、天然ガム及び/又は合成エラストマー及び樹脂を含有してもよい。
【0035】
天然ガムの例としては、チクル、ジェルトン、レチェ・カスピ(ソルバ)、マッサランドバ・ベラタ(massaranduba belata)、チグイブル(chiguibul)、天然ゴム(ラテックス固体)、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ガムベースに使用される天然ガムの量は、最終ガムベースに望まれる物理的特性に応じて変えることができる。
【0036】
合成エラストマーの例としては、ポリブチレン、ポリイソブチレン、イソブチレン-イソプレンコポリマー、ブタジエン-スチレンゴム、ポリエチレン、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ガムベースに使用されるエラストマーの量は、選択されたエラストマー及びガムベースの所望の物理的特性(例えば、粘度、軟化点及び弾性)に応じて変えることができる。
【0037】
ガムベースに使用することができる樹脂の例としては、エステルガム、グリセロールのエステル、ポリ酢酸ビニル(PVA)、ポリ酢酸ビニルポリエチレンコポリマー、酢酸ビニル-ラウリン酸ビニルコポリマー、ポリ酢酸ビニル-ポリラウリン酸ビニルコポリマー、天然又は合成樹脂、例えばテルペン樹脂及びポリテルペン、ロジン又は変性ロジンの(メチル、グリセロール又はペンタエリスリトール)エステル、例えばロジンのペンタエリスリトールエステルを含む、水素化、二量体化、又は重合ロジンなど、部分水素化ロジンのペンタエリスリトールエステル、部分二量化ロジンのグリセロールエステル、部分水素化ロジンのグリセロールエステル、ガムロジンのグリセロールエステル、重合ロジンのグリセロールエステル、トール油ロジンのグリセロールエステル、ロジン及び部分水素化ロジンのグリセロールエステル、及びロジンの部分水素化メチルエステル、並びにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ガムベース中で使用される樹脂の量は、選択された特定の樹脂及び最終ガムベースに所望される物理的特性(例えば、粘度、軟化点、及び弾性)に応じて変えることができる。
【0038】
ガムベースは更にワックスを含んでもよい。ワックスは、パラフィン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレン-ワックスホモポリマー、天然ワックス、例えば、蜜ろう、カルナウバワックス、カンデリラワックス及びそれらの混合物を含み得るが、これらに限定されない。
【0039】
ガムベースは、乳化剤及び軟化剤を更に含んでもよい。乳化剤及び軟化剤は、プロピレングリコール、脂肪酸のモノグリセリド及びジグリセリド、グリセリン(グリセロール)、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム、リン脂質、ゼラチン、トリアセチン、アセチル化モノリセリド及びジグリセリド(グリセロールの酢酸エステル及び脂肪酸エステル)、ステアリン酸(及びそのカルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩)、脂肪酸のスクロースエステル、硬化植物油、及びココア粉末、並びにそれらの混合物を含み得るが、これらに限定されない。
【0040】
ガムベースは、酸化防止剤及び防腐剤を更に含んでもよい。抗酸化剤及び保存剤は、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ビタミンE(dl-α-トコフェロール、d-α-トコフェロール、及び混合トコフェロール濃縮液)、タケの葉の抗酸化剤、及びそれらの混合物を含み得るが、これらに限定されない。
【0041】
ガムベースは、充填剤成分を更に含んでもよい。充填剤の例としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、リン酸二カルシウム、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
使用するガムベースの量は、使用するベースのタイプ、所望の粘稠度及びチューインガム組成物を作製するために使用される他の成分などの様々な要因に応じて様々に変わる。本発明の好ましい実施形態では、ガムベースは、チューインガム組成物の総重量に対して5重量%~70重量%、好ましくは10重量%~55重量%、より好ましくは15重量%~40重量%を占める。
【0043】
チューインガム組成物は、任意に添加物を含む。好ましくは、添加物は、湿潤剤、乳化剤、保存剤、軟化剤、甘味剤、香味剤、抗酸化剤、着色剤、酸性度調節剤、増粘剤、安定剤、コーティング剤、凝固剤、追加の充填剤、及びそれらの混合物から選択される。添加物は、チューインガム組成物の総重量に対して、0重量%~35重量%、好ましくは5重量%~30重量%、更により好ましくは10重量%~25重量%を占める。
【0044】
「保湿剤」は、チューインガム中の水の保持を助ける目的で添加される物質を指す。保湿剤の例としては、ソルビトール及びソルビトールシロップ、マルチトール及びマルチトールシロップ、ポリデキストロース、グリセリン(グリセロール)、乳酸カリウム、乳酸ナトリウム、リン酸、二リン酸二水素二ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸水素二カリウム、オルトリン酸二カルシウム(リン酸水素カルシウム)、オルトリン酸三カルシウム(リン酸カルシウム)、オルトリン酸三カリウム、オルトリン酸三ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム・二塩基性、ピロリン酸四カリウム、二リン酸一水素三ナトリウム、ポリメタリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウム、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
「乳化剤」とは、本明細書では、乳化媒体中の様々な構成相間の表面張力を改善して、均一な分散体又は乳化体を形成することができる物質と理解されたい。乳化剤の例は、プロピレングリコールアルギネート、ジアセチル酒石酸モノ(ジ)グリセリドエステル(DATEM)、脂肪酸のポリグリセロールエステル(ポリグリセロール脂肪酸エステル)、マルチトール及びマルチトールシロップ、キシリタンモノステアレート、乳酸カルシウム、ソルビトール及びソルビトールシロップ、オクチル及びデシルグリセレート、ステアリン酸マグネシウム、脂肪酸のスクロースエステル、脂肪酸のモノ及びジグリセリド、変性ダイズリン脂質、グリセリン(グリセロール)、カゼイン酸ナトリウム、リン脂質、酵素分解ダイズリン脂質、グリセロールのクエン酸及び脂肪酸エステル、ヒドロキシプロピルデンプン、グリセロールの乳酸及び脂肪酸エステル、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、アセチル化モノ及びジグリセリド(グリセロールの酢酸及び脂肪酸エステル)並びにそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0046】
防腐剤は、チューインガムの腐敗及び劣化を防ぎ、チューインガムの賞味期限を延ばす物質を指す。防腐剤の例としては、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
軟化剤は、ガムの咀嚼性及び口当たりを最適化するためにチューインガムに添加される。軟化剤の例としては、グリセリン、レシチン、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。更に、水性甘味料溶液、例えばソルビトール、水素化デンプン加水分解物、コーンシロップ及びそれらの組合せを含有するものを、チューインガム組成物に軟化剤として使用することができる。商品名Lycasin(登録商標)でRoquetteによって販売されているシロップは、本発明において有利に使用することができる軟化剤の例である。
【0048】
「甘味料」とは、単糖ではないがチューインガムに甘味を提供する物質であり、例えば、限定するものではないが、サッカリン、ネオテーム、アドバンテーム、スクラロース、アスパルテーム、ステビア抽出物(又はステビオールグリコシド)、アセスルファムK、糖アルコール(ソルビトール、キシリトール、マルチトール、及びエリスリトール)、ルオハンガオ抽出物、又はそれらの混合物などである。
【0049】
本発明のチューインガム組成物には、当該技術分野で周知の全てのタイプの香味剤を添加することができる。着香料としては、例えば、柑橘油、果物エッセンス、ペパーミント油、スペアミント油、丁字油、冬緑油、アニスなどの植物及び果実由来の油を含む精油、合成着香料、及びそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。人工着香料も企図することができる。当業者は、天然及び人工着香料が任意の感覚的に許容可能なブレンドで組み合わされ得ることを認めるであろう。
【0050】
「酸化防止剤」とは、本明細書では、オイル又はチューインガム原材料の酸化的分解又は劣化を防止又は先延ばしし、チューインガムの安定性を高めることができる物質を指す。抗酸化剤の例としては、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル(PG)、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、テアフラビン、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
着色剤は、食品に色を加え、及び/又はチューインガムの色を改善する物質を指す。酸化防止剤の例としては、二酸化チタン、デンプン、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
酸性度調節剤は、チューインガムのpH値を維持又は変更するために使用される物質を指す。酸化防止剤の例としては、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、アジピン酸、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
増粘剤は、チューインガムの粘度を増加させるか、又はチューインガムの質感を改変する物質を指す。増粘剤の例としては、これらに限定されないが、フノラン(フクロフノリ(gloiopeltis furcata))、アルギン酸プロピレングリコール、β-シクロデキストリン、モノ(ジ)グリセリドのジアセチル酒石酸エステル(DATEM)、カードラン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0054】
安定剤とは、チューインガムの品質、例えば風味及び質感を維持する物質を指す。安定剤の例としては、アルギン酸プロピレングリコール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、カードラン、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
コーティング剤は、製品の表面上に保護及び/又は装飾用の層/フィルムを作製するために使用される物質を指す。コーティング剤の例としては、シェラック、カルナウバワックス、蜜ろう、プルラン、ステアリン酸、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
凝固剤とは、液体又はゾルの凝固を引き起こす、刺激する、又は加速する物質を指す。保湿剤の例としては、乳酸カルシウム、グルコノデルタラクトン、カードラン、リン酸、リン酸二水素二ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素カルシウム(オルトリン酸二カルシウム)、オルトリン酸三カルシウム(リン酸カルシウム)、オルトリン酸三カリウム、オルトリン酸三ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二ナトリウム、ピロリン酸四カリウム、二リン酸一水素三ナトリウム、ポリメタリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウム、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
追加の充填剤を本発明のチューインガム組成物に添加してもよい。充填剤の例としては、水酸化アルミニウム、アルミナ、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、及びタルク、並びにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
チューインガム製品はまた、シェラックなどの他の添加物を含んでもよい。
【0059】
チューインガム組成物は、糖含有組成物又は無糖組成物であってよい。好ましくは、チューインガム組成物は、無糖組成物である。
【0060】
本発明の好ましい実施形態において、チューインガム組成物は
-チューインガム組成物の総重量に対して、5重量%~70重量%、好ましくは10重量%~55重量%、より好ましくは15重量%~40重量%のガムベース、
-チューインガム組成物の総重量に対して、5重量%~65重量%、好ましくは20重量%~55重量%、より好ましくは40重量%~50重量%の多孔質デンプン、
-チューインガム組成物の総重量に対して、任意選択的に0重量%~35重量%、好ましくは5重量%~30重量%、より好ましくは10重量%~25重量%の添加物、を含む。
【0061】
本発明はまた、先に定義された多孔質デンプンを含有するか又はそれからなる増量剤を含むチューインガム組成物に関する。
【0062】
好ましい実施形態では、組成物は、糖及び/又は糖アルコールなどのポリオール粉末を増量剤としては含まない。
【0063】
先に定義された特定のチューインガム組成物により、良好な口当たり及び風味と、良好な加工特性とを有したままで、発酵性が低く、非う食原性及び非浸食性であり、胃腸障害を引き起こさず、耐性の問題が全くない、歯に優しいチューインガムを得ることが可能である。特に、本発明のチューインガムは、増量剤として糖又はソルビトールなどのポリオールを用いて製造されたチューインガムのものと同等の、更にはそれより改善された口当たり及び風味送達特性を有しており、かつ胃腸障害を引き起こさない、歯に優しいチューインガムである。
【0064】
本発明において、「歯に優しいチューインガム」は、健康な人々において、発酵性が低く、非う蝕原性及び非浸食性である可能性を有するチューインガムを指す。
【0065】
チューインガムの「歯に優しい(toothfriendly)」特性は、Imfeld,Th.N.,Identification of Law Caries Risk Dietary Components,Monographs in Oral Science,Vol.11,198pp.,H.M.Myers(ed.),S.Karger AG,Basel,1983.に記載の標準化された方法(歯への優しさについての国際的な標準作業手順書(Toothfriendly International’s Standard Operation Procedures))により、口腔内のpHをテレメトリー計測することで評価できる。この標準化された方法では、試験するチューインガムの消費中及び消費後30分間に、電極をプラークで覆って、プラークのpHを測定する。例えば、消費中も、消費後30分の間も、歯間プラークのpHが細菌による発酵で5.7未満に低下することがない場合、チューインガムは、発酵性が低く、非う蝕原性及び非浸食性である可能性を有すると考えられる。
【0066】
特に、本発明者らは、天然デンプン及び多孔質デンプンが、口内の細菌によって容易に発酵されず、ひいては歯間プラークのpHは臨界レベル(pH5.7)まで低下しないことを見出した。本発明の好ましい実施形態では、チューインガムの消費後の歯間プラークのpHは5.7を下回らず、好ましくはチューインガムの消費後の歯間プラークのpHは5.7~7、より好ましくは6~7に含まれる。
【0067】
本発明の好ましい実施形態では、チューインガムはマルチトールコーティングでコーティングされる。実際、本発明者らは、驚くべきことに、マルチトールなどの無糖のハードコーティング成分でコーティングされた本発明によるチューインガムが、より良好な口当たりを有することを見出した。
【0068】
本発明の好ましい実施形態では、マルチトールコーティングは、コーティングの総乾燥重量に対して80重量%~100重量%、好ましくは85重量%~98重量%、より好ましくは90重量%~95重量%のマルチトールを含む。
【0069】
マルチトールコーティングは、任意選択で、ガム及び水を更に含む。ガムは、マルチトールコーティングの総乾燥重量に対して、0重量%~20重量%、好ましくは2重量%~15重量%、更により好ましくは3重量%~10重量%を占める。好ましくは、ガムは、アラビアガム、ゼラチン、及びそれらの混合物から選択される。
【0070】
水は、マルチトールコーティング溶液の総重量に対して、15重量%~40重量%、好ましくは20重量%~35重量%、更により好ましくは25重量%~30重量%を占める。
【0071】
マルチトールコーティングは、任意選択で、着色剤、甘味料、及びそれらの混合物などの添加物を更に含む。添加物は、マルチトールコーティングの総乾燥重量に対して、0重量%~5重量%、好ましくは0.3重量%~3重量%、更により好ましくは0.5重量%~2重量%を占める。
【0072】
マルチトールコーティングの例は、マルチトール結晶(Roquetteによって市販されているSweetPearl P200)であり得る。
【0073】
本発明の好ましい実施形態において、チューインガムに対するコーティングの重量比は、0~1、好ましくは0.25~0.65、より好ましくは0.3~0.5、更により好ましくは0.4である。
【0074】
本発明の好ましい実施形態では、マルチトールコーティングは、コーティングするチューインガムの総重量に対して0重量%~50重量%、好ましくは20重量%~40重量%、より好ましくは25重量%~35重量%を占める。
【0075】
コーティングは、回転ディスクコーターによって、流動床コーターによって、噴霧冷却によって、又はタンブラーによって加えることができる。
【0076】
本発明の別の態様は、増量剤としてソルビトールなどのポリオールを用いて製造されたチューインガムのものと同等の口当たり及び風味送達特性を維持しており、更にはそれらが改善されており、かつ胃腸障害を引き起こさない、歯に優しいチューインガムを、多孔質デンプンを増量剤として使用して作製することである。
【0077】
したがって、本発明の別の目的は、増量剤として多孔質デンプンを添加する工程を含む、先に定義したチューインガム組成物を製造する方法に関する。
【0078】
好ましい実施形態において、本発明の方法は、糖及び/又は糖アルコールなどのポリオール粉末を増量剤として添加するステップを含まない。
【0079】
本発明のチューインガムは、当技術分野で公知の市販のミキサーに様々なチューインガム原材料を順次添加することによって製造することができる。原材料を十分に混合した後、ガム塊をミキサーから排出し、シートに圧延し、スティック又はストリップに切断し、チャンク又は形状に押出し、又はペレット、ボール又は他の形状に成型することなどによって所望の形態に成形することができる。
【0080】
典型的には、最初にガムベースを溶融し、予熱したランニングミキサーにそれを添加することによって原材料を混合する。ガムベースはミキサー自体の中で溶融されてもよい。着色剤又は乳化剤をこの時点で添加してもよい。グリセリンなどの軟化剤も、任意のシロップ並びに増量剤及び甘味料の一部と共に、この時点で添加してもよい。いくらか撹拌した後、残りの増量剤及び甘味料をミキサーに少しずつ又は一度に添加してもよい。任意の更なる原材料は、典型的には、充填剤の最終的な部分と共に添加される。混合は、粘稠度の度合いが達するまで行うことができる。当業者であれば、上記の手順には変更を加えることができ、例えば、ミキサーは連続的であってよく、成分は異なる順序で添加されてもよいことを認識するであろう。
【0081】
本発明は、本発明の方法から得られるチューインガムにも関する。
【0082】
本発明を以下の図及び実施例によって例示するが、これらは本発明を説明することを意図しており、その範囲を限定するものではないことが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【
図1】多孔質のワキシートウモロコシデンプンの走査型電子顕微鏡写真である。
【
図2】日の浅い(young)、3日経過後のプラークを有するボランティアに対する、実施例1のチューインガムのpHテレメトリー計測の結果。
【
図3】日の経った(mature)、4日経過後のプラークを有するボランティアに対する、実施例1のチューインガムのpHテレメトリー計測の結果。
【実施例】
【0084】
以下の実施例では、以下の商品を使用する。
-Cafosaにより市販されているガムベース(オプチム)。
-Roquetteによって市販されているソルビトール。
-Roquetteにより市販されている液体マルチトール(Lycasin85/55)。
-Nantong Changhaiにより市販されているアスパルテーム。
-Wilmarによって市販されているグリセリン。
-IFFにより市販されている液体フレーバー(ミント/バニラRQT870565)。
【0085】
実施例1で使用した多孔質デンプンは、以下のプロトコルに従って製造した。
1.天然のワキシートウモロコシデンプンを脱炭酸水に固形分26%まで懸濁させる。
2.3.3%NaOH溶液を使用して、デンプンスラリーのpHを7.0に調整する。
3.耐熱性α-アミラーゼ(NovozymesからのLiquozyme Supra、2.67mgの酵素/g乾燥デンプン)を添加し、55℃で4時間反応させる。
4.5%塩酸溶液を使用してpHを3~3.5に調整し、1時間保持することによって、反応を停止させる。
5.3.3%水酸化ナトリウム溶液を使用してpHを4.5~5.5に戻す。
6.デンプンスラリーを約25℃まで冷却する。
7.スラリーをプレス濾過して多孔質デンプンケーキを得る。
8.脱炭酸水でケーキを洗浄する。
9.フラッシュ乾燥機を使用してケーキを乾燥させ、12%未満の水分含有量を有する粉末にする。
【0086】
【0087】
実施例1:増量剤としてソルビトールの代わりに多孔質デンプンを含むチューインガムの発酵性。
【0088】
試験するチューインガム試料のレシピを表1に示す。
【0089】
【0090】
チューインガム試料は、以下のプロトコルに従って調製した:
1.全ての粉末原材料を混合する(粉末混合物):多孔質デンプン及びアスパルテーム。
2.充填手順(分)-50℃、Z型ブレードの混練機。
・0分:溶融したガムベース(ストーブ上で50℃に加熱した)、及び粉末混合物の半分を導入する。
・2分:全ての液体マルチトールLycasin 85/55を添加する。
・4分:粉末混合物の半分を加える。
・7分:グリセリンを添加する。
・8分:液体フレーバーを添加する。
・9分:混練機から取り出す。
3.圧延及びストリップ状に切断
4.ストリップを約20℃、50%RHで24時間保管するコンディショニング。
【0091】
得られた練り歯磨きの「歯に優しい品質」を、pHテレメトリーの標準手順を使用して試験した。この製品を、日の浅い(3日経過)プラーク及び日の経った(4日経過)プラークを有する2人の別々のボランティアにおいて試験した。
【0092】
【0093】
図2及び
図3に示されているように、得られたプラークpH曲線から、試験したチューインガムは、噛んでいる間も、噛んでから30分後も、プラークのpHを5.7未満に低下させることとは関連がないことが実証された。増水(W)及びパラフィン咀嚼(PC)中のプラークpHの増加、並びにポジティブコントロール処理(10%スクロース溶液による)後におけるプラークpHの5未満への低下により、プラークで被覆した電極が適切に機能していることを実証した。プラークで被覆した電極により得られたpH曲線は、試験した製品には浸食の可能性がないことも実証した。
【0094】
これらの結果は、試験したチューインガムには、う食原性及び浸食の可能性がなく、したがって「歯に優しい」ものであることを示す。したがって、多孔質デンプンは、「歯に優しい」増量剤として使用されるソルビトールなどのポリオールと置き換えて、チューインガム中の増量剤として使用することができる。
【国際調査報告】