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特表2023-513009薄膜のロールツーロール連続製造のための急速誘導焼結鍛造
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】薄膜のロールツーロール連続製造のための急速誘導焼結鍛造
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/645 20060101AFI20230323BHJP
   C04B 35/547 20060101ALI20230323BHJP
   C04B 35/50 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
C04B35/645
C04B35/547
C04B35/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022545983
(86)(22)【出願日】2021-02-01
(85)【翻訳文提出日】2022-09-15
(86)【国際出願番号】 US2021016012
(87)【国際公開番号】W WO2021155346
(87)【国際公開日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】62/968,739
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507238218
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】サカモト ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ワン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】テイラー ネイザン
(57)【要約】
前駆体粉末を焼結鍛造して膜を形成するための方法及び装置は、膜における応力を低減又は排除することができ、電池に用いるためのセラミック膜などの連続した長さの膜の加工を容易にすることができる。前駆体粉末を基板上に供給し、加熱と、膜厚と平行な加圧方向への加圧とを同時に行うことにより、前駆体粉末を焼結及び緻密化させて、焼結鍛造領域で膜を形成することができる。特に、加圧方向と垂直な平面では、焼結鍛造領域又はその中に受け入れられる材料に横方向の拘束がない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前駆体粉末を焼結鍛造して膜を形成する方法であって、
前記前駆体粉末を基板上に支持するステップと、
前記前駆体粉末を焼結及び緻密化して焼結鍛造領域内に前記膜を形成するように、前記前駆体粉末に対して加熱と前記膜の厚さと平行な加圧方向への加圧とを同時に行うステップであって、前記加圧方向と垂直な平面内では、前記焼結鍛造領域に関して横方向の拘束がない、ステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記加熱と加圧とを同時に行うことで、前記前駆体粉末に変形と圧力支援焼結が生じ、緻密なセラミック体が製造される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記膜と前記基板との間の摩擦応力により、焼結中に前記膜内に静水圧応力状態が生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
印加された圧力と摩擦圧力の応力の組み合わせにより、焼結中に前記膜内に静水圧応力状態が生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記前駆体粉末に対して加熱及び加圧が同時に行われていないとき、前記基板は、前記加圧方向と垂直な平面にほぼ沿った方向に移動可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
(a)前記前駆体粉末に対して加熱及び加圧を同時に行って前記膜を形成するステップと、
(b)前記膜に対する圧力を除去するステップと、
(c)まだ未焼結の前駆体粉末を前記焼結鍛造領域に導入するために前記前駆体粉末と前記基板を前進させるステップとを繰り返し実行することを更に含み、
これにより、前記焼結鍛造領域の最大寸法を超える長さを有する連続した長さの前記基板は、繰り返し焼結鍛造によって形成された1つ又は複数の膜を有する、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記前駆体粉末に対して加熱及び加圧を同時に行うステップは、ピストンによって行われ、
前記ピストンは、当該ピストンを前記焼結鍛造領域の内外に関節運動させる装置の一部である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ピストンを取り囲む誘導コイルを用いた誘導加熱により前記ピストンを加熱するステップを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ピストンは、グラファイトを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記基板を取り囲む誘導コイルを用いた誘導加熱により前記基板を加熱するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記前駆体粉末に対して加熱及び加圧を同時に行うステップの前に、前記ピストンと前記膜の接着を防止するために剥離層を貼り付けるステップを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記焼結鍛造領域の周囲に環境ガスを供給するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記前駆体粉末は、粉末スラリーの一部である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記前駆体粉末は、結合剤を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記結合剤は、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピリジン、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンジエン三元共重合体、セルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記前駆体粉末は、金属又はセラミック材料である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記焼結膜は、ガーネット、ペロブスカイト、NaSICON、又はLiSICON相の、酸化物又はリン酸塩材料の任意の組み合わせであり得る固体電解質材料を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記焼結膜は、LiRe3-yの化学式を有するセラミック材料から成る固体電解質材料を含み、式中、
wは5~7.5であり、
AはB、Al、Ga、In、Zn、Cd、Y、Sc、Mg、Ca、Sr、Ba、及びこれらの任意の組み合わせから選択され、
xは0~2であり、
MはZr、Hf、Nb、Ta、Mo、W、Sn、Ge、Si、Sb、Se、Te、及びこれらの任意の組み合わせから選択され、
Reはランタニド元素、アクチニド元素、及びこれらの任意の組み合わせから選択され、
yは0~0.75であり、
zは10.875~13.125であり、
前記セラミック材料はガーネット型又はガーネット状結晶構造を有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記焼結膜は、少なくともリチウム、硫黄及びリンを含む硫化物系固体電解質材料を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記硫化物系固体電解質材料は、Li11、LiPS、Li、LiPS、LiPS、Li、Li10GeP12(LGPS)、並びにLi7-xPS6-xCl、Li7-xPS6-xBr及びLi7-xPS6-x(ただし、0≦x≦2)から選択されるアルジロダイト型固体電解質材料から成る群から選択される、
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記焼結膜は、リチウムホスト材料を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記焼結膜は、(i)金属が、アルミニウム、コバルト、鉄、マンガン、ニッケル及びバナジウムのうちの1つ又は複数であるリチウム金属酸化物、並びに(ii)LiMPO(式中、Mはコバルト、鉄、マンガン及びニッケルのうちの1つ又は複数である)の一般化学式を有するリチウム含有リン酸塩から成る群から選択されるリチウムホスト材料を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記前駆体粉末に対し加熱及び加圧を同時に行うステップは、30℃~2000℃の温度で加熱することと、1MPa~500MPaで加圧することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記前駆体粉末に対し加熱及び加圧を同時に行うステップは、500℃~1300℃の温度で加熱することと、1MPa~50MPaで加圧することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記焼結膜は、90分未満の焼結鍛造時間で90%を超える相対密度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記焼結膜は、5分未満の焼結鍛造時間で98%を超える相対密度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記焼結膜は、1nm~500μmの厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記焼結膜は、1nm~100μmの厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記基板は、1nm~100μmの厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記基板は、ニッケル、モリブデン、チタン、ジルコニウム、タンタル、合金鋼、炭素鋼、ステンレス鋼、ニッケル基超合金、コバルト基超合金、銅、アルミニウム、鉄、又はこれらの混合物から成る群から選択される金属材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記基板は、第1の金属材料を含む第1の層と、第2の金属材料を含む第2の層とを有するバイメタルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記第1の金属材料は、ニッケル、モリブデン、チタン、ジルコニウム、タンタル、ニッケル基超合金、コバルト基超合金、銅、又はこれらの混合物から成る群から選択され、
前記第2の材料は、アルミニウム、ニッケル、合金鋼、炭素鋼、ステンレス鋼、ニッケル基超合金、又はこれらの混合物から成る群から選択される、
請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記第1の金属材料はニッケルを含み、
前記第2の材料はステンレス鋼を含む、
請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記第1の層は1nm~100μmの厚さを有し、前記第2の層は1nm~100μmの厚さを有する、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
グラファイト粒子層が、前記基板と前記前駆体粉末との間に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記グラファイト粒子層は、1μm~10μmの厚さを有する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
基板上に前駆体粉末を焼結鍛造して膜を形成する装置であって、
前記前駆体粉末を受け入れるための焼結鍛造領域が内部に画定されたロードフレームと、
誘導加熱に耐えることができ、前記ロードフレームによって加圧方向に作動可能であり、前記焼結鍛造領域に受け入れられた前駆体粉末に対し加熱及び加圧を同時に行うピストンと、
高周波誘導で前記ピストンを加熱できるように前記ピストンと同心の一組の誘導コイルと
を備え、
前記焼結鍛造領域は、前記加圧方向と垂直な平面に沿って位置し、
前記焼結鍛造領域に横方向の拘束がない、
装置。
【請求項38】
前記加熱及び加圧を同時に行うことで、前記前駆体粉末に変形と圧力支援焼結が生じ、緻密なセラミック体が製造される、請求項37に記載の装置。
【請求項39】
前記膜と前記基板との間の摩擦応力により、焼結中に前記膜内に静水圧応力状態が生じる、請求項37に記載の装置。
【請求項40】
印加された圧力と摩擦圧力の応力の組み合わせにより、焼結中に前記膜内に静水圧応力状態が生じる、請求項37に記載の装置。
【請求項41】
前記ピストンを取り囲む非導電性シュラウドを更に備え、
前記非導電性シュラウドは、前記ピストンと前記非導電性シュラウドとの間に中空キャビティを画定し、
前記中空キャビティは前記焼結鍛造領域に開口する、請求項37に記載の装置。
【請求項42】
前記中空キャビティと流体連通するガスインレットを更に備え、
前記ガスインレットは、前記ガスインレットから流れるガスを、前記中空キャビティに供給し、前記ピストンを越えて前記中空キャビティを通って前記焼結鍛造領域の周囲環境に供給するように構成される、請求項41に記載の装置。
【請求項43】
前記焼結鍛造領域を通って前記前駆体粉末と前記基板を前進させるための輸送機構を更に備える、請求項37に記載の装置。
【請求項44】
熱電対、温度コントローラ、及び冷却剤循環装置のうちの1つ又は複数を備える、前記基板の温度を制御するためのシステムを更に備える、請求項37に記載の装置。
【請求項45】
前記ピストンは、グラファイトを含む、請求項37に記載の装置。
【請求項46】
前記ピストンは、前記一組の誘導コイルによって30℃~2000℃の温度に加熱することができ、前記焼結鍛造領域内で前記ロードフレームによって1MPa~500MPaの圧力を加えることができる、請求項37に記載の装置。
【請求項47】
前記ピストンは、前記一組の誘導コイルによって500℃~1300℃の温度に加熱することができ、前記焼結鍛造領域内で前記ロードフレームによって1MPa~50MPaの圧力を加えることができる、請求項37に記載の装置。
【請求項48】
離隔した焼結膜のアレイを備える電気化学デバイスを形成するための方法であって、
基板上に前駆体粉末の離隔した部分を支持するステップと、
前記基板上に離隔した焼結膜を形成するために、前記前駆体粉末の前記離隔した部分に対し、加熱と、前記前駆体粉末の前記離隔した部分の厚さと平行な加圧方向への加圧とを同時に行うステップと、
前記基板上の前記離隔した焼結膜の間に可撓性材料を堆積させるステップと
を含む、方法。
【請求項49】
各前記離隔した焼結膜は、別個の焼結鍛造領域内に形成され、
前記加圧方向と垂直な平面において、各前記焼結鍛造領域に横方向の拘束がない、
請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記加熱及び加圧を同時に行うことで、前記前駆体粉末に変形と圧力支援焼結が生じ、緻密なセラミック体が製造される、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記膜と前記基板との間の摩擦応力により、焼結中に前記膜に静水圧応力状態が生じる、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
印加された圧力と摩擦圧力の応力の組み合わせにより、焼結中に前記膜に静水圧応力状態が生じる、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
前記前駆体粉末の前記離隔した部分に対し加熱及び加圧が同時に行なわれていないとき、前記基板は、前記加圧方向と垂直な前記平面にほぼ沿った方向に移動可能である、請求項48に記載の方法。
【請求項54】
(a)前記前駆体粉末の前記離隔した部分に対し加熱及び加圧を同時に行って、前記離隔した焼結膜を形成するステップと、
(b)前記離隔した焼結膜に対する圧力を除去するステップと、
(c)前記前駆体粉末のまだ未焼結の離隔した部分を前記焼結鍛造領域に導入するために前記基板を前進させるステップと、
(d)前記基板上の前記離隔した焼結膜間に可撓性材料を堆積させるステップとを繰り返し実行することを更に含み、
これにより、前記可撓性材料によって取り囲まれた連続した長さの離隔した焼結膜のアレイが、繰り返し焼結鍛造によって形成される、
請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記離隔した焼結膜は、ガーネット、ペロブスカイト、NaSICON、又はLiSICON相の、酸化物又はリン酸塩材料の任意の組み合わせであり得る固体電解質材料を含む、
請求項48に記載の方法。
【請求項56】
前記離隔した焼結膜は、LiRe3-yの化学式を有するセラミック材料から成る固体電解質材料を含み、式中、
wは5~7.5であり、
AはB、Al、Ga、In、Zn、Cd、Y、Sc、Mg、Ca、Sr、Ba、及びこれらの任意の組み合わせから選択され、
xは0~2であり、
MはZr、Hf、Nb、Ta、Mo、W、Sn、Ge、Si、Sb、Se、Te、及びこれらの任意の組み合わせから選択され、
Reはランタニド元素、アクチニド元素、及びこれらの任意の組み合わせから選択され、
yは0~0.75であり、
zは10.875~13.125であり、
前記セラミック材料はガーネット型又はガーネット状結晶構造を有する、
請求項48に記載の方法。
【請求項57】
前記離隔した焼結膜は、少なくともリチウム、硫黄及びリンを含む硫化物系固体電解質材料を含む、
請求項48に記載の方法。
【請求項58】
前記硫化物系固体電解質材料は、Li11、LiPS、Li、LiPS、LiPS、Li、Li10GeP12(LGPS)、並びにLi7-xPS6-xCl、Li7-xPS6-xBr及びLi7-xPS6-x(ただし、0≦x≦2)から選択されるアルジロダイト型固体電解質材料から成る群から選択される、
請求項48に記載の方法。
【請求項59】
前記離隔した焼結膜は、リチウムホスト材料を含む、
請求項48に記載の方法。
【請求項60】
前記離隔した焼結膜は、(i)金属が、アルミニウム、コバルト、鉄、マンガン、ニッケル及びバナジウムのうちの1つ又は複数であるリチウム金属酸化物、並びに(ii)LiMPO(式中、Mはコバルト、鉄、マンガン及びニッケルのうちの1つ又は複数である)の一般化学式を有するリチウム含有リン酸塩から成る群から選択されるリチウムホスト材料を含む、
請求項48に記載の方法。
【請求項61】
前記可撓性材料は、ポリマー材料を含む、
請求項48に記載の方法。
【請求項62】
前記可撓性材料は、ポリオレフィン、ポリスチレン、ジビニルベンゼン、エチレン酢酸ビニルポリマー及びコポリマー、シリコーンポリマー、スチレン・ジビニルベンゼンコポリマー、並びにこれらのブレンド及び混合物から成る群から選択されるポリマー材料を含む、
請求項48に記載の方法。
【請求項63】
前記前駆体粉末は、結合剤を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項64】
前記結合剤は、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピリジン、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンジエン三元共重合体、セルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項65】
前記離隔した焼結膜は、1nm~500μmの厚さを有する、請求項48に記載の方法。
【請求項66】
前記離隔した焼結膜は、1nm~100μmの厚さを有する、請求項48に記載の方法。
【請求項67】
前記基板は、1nm~100μmの厚さを有する、請求項48に記載の方法。
【請求項68】
前記基板は、ニッケル、モリブデン、チタン、ジルコニウム、タンタル、合金鋼、炭素鋼、ステンレス鋼、ニッケル基超合金、コバルト基超合金、銅、アルミニウム、鉄、又はこれらの混合物から成る群から選択される金属材料を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項69】
前記基板は、第1の金属材料を含む第1の層と、第2の金属材料を含む第2の層とを有するバイメタルを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項70】
前記第1の金属材料は、ニッケル、モリブデン、チタン、ジルコニウム、タンタル、ニッケル基超合金、コバルト基超合金、銅、又はこれらの混合物から成る群から選択され、
前記第2の材料は、アルミニウム、ニッケル、合金鋼、炭素鋼、ステンレス鋼、ニッケル基超合金、又はこれらの混合物から成る群から選択される、
請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記第1の金属材料はニッケルを含み、
前記第2の材料はステンレス鋼を含む、
請求項69に記載の方法。
【請求項72】
前記第1の層は1nm~100μmの厚さを有し、前記第2の層は1nm~100μmの厚さを有する、請求項69に記載の方法。
【請求項73】
グラファイト粒子層が、前記基板と前記前駆体粉末との間に配置される、請求項48に記載の方法。
【請求項74】
前記グラファイト粒子層は、1μm~10μmの厚さを有する、請求項73に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、2020年1月31日に出願された米国仮特許出願第62/968,739号に基づくものであり、その優先権を主張するものであり、その全内容は参照によりあらゆる目的のために本願明細書に盛り込まれる。
【0002】
<連邦政府の支援による研究に関する言明>
本発明は、米国エネルギー省により裁定されたDE-AR0000653の政府支援によりなされたものである。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
本願開示は、急速誘導焼結鍛造による薄膜の形成のための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0004】
緩く結合した粉末を高温で緻密な成形体にすることは、材料や部品を製造する一般的かつ広く普及している方法である。従来、粉末粒子が最初は緩く結合した集合体であるいわゆるグリーン体又は成形体は、一緒に焼結される粒子の溶融温度に近いがそれを超えない高温で一緒に焼結されることにより、粒子が互いに拡散してネックを形成し、それによって一体化した焼結体が形成される。一般的には、焼結は固体拡散のみを用い、これは焼結される粉末材料が焼結中に全く溶融しないことを意味するが、限られた状況や特定の粉末化学や形態では、焼結プロセス中に少量の液相が生成される場合がある。焼結中、様々な粒子が互いに拡散的に接合されるため、粒子同士がネックを形成するにつれて気孔が粒子間に最初に形成される。焼結が進むと気孔の量が減少し、それに伴って体積がある程度減少することになる。その結果、出発点となる未焼結のグリーン体又は成形体よりも密度が高くなる。
【0005】
焼結材料の欠陥は、特性や性能において重要な役割を果たすため、加工欠陥を排除する方法は、焼結品を含む製造の最適化([参考文献1、2])にとって非常に重要である。自由焼結では、粉末成形体を緻密化するために高温のみを用いるが、熱間プレス(HP)や熱間等方圧プレス(HIP)など、高温と高圧を組み合わせて緻密化輸送メカニズムを強化し、粉末充填の不均一によって引き起こされる欠陥を排除する他の支援技術も存在する([参考文献1~4])。HPもHIPも、グリーン体をHPでは金型に、HIPでは加圧流体に封入する必要がある。別の技術である焼結鍛造はまた、高温と一軸方向に高圧を加えることを含む([参考文献5、6])。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
必要とされるのは、焼結品の欠陥を更に排除する方法である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
焼結品(特に薄膜)の欠陥を更に排除するために、適切な構成では、横方向の拘束がない焼結鍛造を採用できることが本願明細書に開示される。このような横方向の拘束がない焼結鍛造は、薄膜の製造の連続製造工程に非常に適している可能性がある。本願明細書では、加工条件(例えば、温度、圧力、ガス環境)を精密に制御して、緻密な薄膜材料をスケーラブルに焼結鍛造するシステムの設計を提案する。
【0008】
上記の通り、粉末を焼結成形体に圧縮する際に形成される微細構造欠陥は、粉末充填の不均一性によって引き起こされることが多く、焼結が不均一になる。熱間プレスや熱間等方圧プレスのような技術は、これらの欠陥を排除する助けとなり得るが、粉末を封入する必要があるため、焼結材料にせん断応力が残留する可能性があり、また、スケーラブルで生産性の高い製造を実現することが困難である。本願開示による材料の緻密化方法は、熱間プレスや熱間等方圧プレスとは異なり、横方向の拘束をせずに温度と圧力の組み合わせを用いている。金型や格納容器による横方向の拘束がないため、焼結中にせん断変形することができ、それによって残留せん断応力が排除される。本願明細書で開示される焼結鍛造を用いると、ロールツーロール加工と同様の方法で、連続製造が可能になる。本願開示は、急速誘導加熱を用いて動作し、かつ材料の緻密な薄膜の連続製造を可能にすることができる、焼結鍛造装置及び焼結鍛造方法のための設計を提示する。
【0009】
一側面によれば、前駆体粉末を焼結鍛造して膜を形成する方法が提供される。前駆体粉末は、基板上に設けられる。前駆体粉末を焼結緻密化して焼結鍛造領域に膜を形成するように、膜厚と平行な方向に加圧する際に、前駆体粉末に対し加熱及び加圧が同時に行われる。加圧方向と垂直な平面では、焼結鍛造領域に横方向の拘束がない。
【0010】
いくつかの実施形態では、焼結鍛造領域に横方向の拘束がないことにより、膜の形成中に前駆体粉末の変形と圧力支援焼結が可能となり、膜における残留せん断応力の形成が抑制される。いくつかの実施形態では、加熱及び加圧が同時に行われることで、前駆体粉末に変形と圧力支援焼結が生じ、緻密なセラミック体が製造される。
【0011】
いくつかの実施形態では、膜と基板との間の摩擦応力により、焼結中に膜内に静水圧応力状態が生じる。いくつかの実施形態では、印加された圧力と摩擦圧力による応力の組み合わせにより、焼結中に膜内に静水圧応力状態が生じる。接着は、膜を機械的に支持するのには十分良好であるが、基板(例えば、集電体)と膜(例えば、セラミック電解質)との間に金属アノードをインシチュ(その場で)形成することが望ましい場合には、剥離するのに十分なほど弱い。
【0012】
いくつかの実施形態では、前駆体粉末に対し加熱及び加圧を同時に行っていない(及びピストンなど任意のプレス要素が持ち上げられている)場合、基板は、加圧方向と垂直な平面にほぼ沿った方向に移動可能であってもよい。基板と粉末が移動可能である場合、本方法は、(a)前駆体粉末に対し加熱及び加圧を同時に行って膜を形成するステップと、(b)膜に対する圧力を除去するステップと、(c)まだ未焼結の前駆体粉末を焼結鍛造領域に導入するために前駆体粉末と基板を前進させるステップとを繰り返し実行することを更に含んでもよい。このようにして、焼結鍛造領域の最大寸法を超える長さを有する連続した長さの基板は、繰り返し焼結鍛造によって形成された1つ又は複数の膜を有してもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、前駆体粉末に対し加熱及び加圧を同時に行うステップは、装置の一部であるピストンによって実行され、この装置は、ピストンを焼結鍛造領域の内外に関節運動させることができる。この場合、本方法は、ピストンを取り囲む誘導コイルによる誘導加熱を用いてピストンを加熱するステップを更に含んでもよい。このような形態では、ピストンは、構造的に加圧力を与えることができかつ誘導加熱によって加熱可能な(すなわち、誘導加熱に耐えられる)グラファイトや別の材料から構成されてもよいと考えられる。いくつかの実施形態では、前駆体粉末に対し加熱及び加圧を同時に行うステップの前に、ピストンと膜の接着を防止するために剥離層を貼り付けてもよい。このような剥離層は、例えば、ニッケル箔とすることができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、本方法は、基板を取り囲む誘導コイルによる誘導加熱を用いて基板を加熱するステップを更に含んでもよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、本方法は、焼結鍛造領域の周りに環境ガスを供給するステップを更に含んでもよい。
【0016】
いくつかの実施形態では、前駆体粉末は粉末スラリーの一部であってもよいし、又は前駆体粉末は乾燥粉末であってもよい。前駆体粉末は、金属又はセラミックとすることができると考えられる。以下の実施例で用いられる前駆体粉末は、電池製造のためのセラミック薄膜を形成するために用いることができるセラミック粉末である。前駆体粉末は、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピリジン、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンジエン三元共重合体、セルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、及びこれらの混合物から成る群から選択される結合剤を含んでもよい。
【0017】
本方法のいくつかの実施形態では、焼結膜は、ガーネット、ペロブスカイト、NaSICON、又はLiSICON相の、酸化物又はリン酸塩材料の任意の組み合わせであり得る固体電解質材料を含む。
【0018】
本方法のいくつかの実施形態では、焼結膜は、LiRe3-yの化学式を有するセラミック材料から成る固体電解質材料を含み、式中、
wは5~7.5であり、
Aは、B、Al、Ga、In、Zn、Cd、Y、Sc、Mg、Ca、Sr、Ba、及びこれらの任意の組み合わせから選択され、
xは0~2であり、
Mは、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W、Sn、Ge、Si、Sb、Se、Te、及びこれらの任意の組み合わせから選択され、
Reは、ランタニド元素、アクチニド元素、及びこれらの任意の組み合わせから選択され、
yは0~0.75であり、
zは10.875~13.125であり、
セラミック材料はガーネット型又はガーネット状結晶構造を有する。
【0019】
本方法のいくつかの実施形態では、焼結膜は、少なくともリチウム、硫黄及びリンを含む硫化物系固体電解質材料を含む。硫化物系固体電解質材料は、Li11、LiPS、Li、LiPS、LiPS、Li、Li10GeP12(LGPS)、及びLi7-xPS6-xCl、Li7-xPS6-xBr、Li7-xPS6-x、(ただし、0≦x≦2)から選択されるアルジロダイト型固体電解質材料から成る群から選択することができる。
【0020】
本方法のいくつかの実施形態では、焼結膜はリチウムホスト材料を含む。リチウムホスト材料は、(i)金属が、アルミニウム、コバルト、鉄、マンガン、ニッケル及びバナジウムのうちの1つ又は複数であるリチウム金属酸化物、並びに(ii)LiMPOの一般化学式を有するリチウム含有リン酸塩から成る群から選択することができ、式中、Mはコバルト、鉄、マンガン及びニッケルのうちの1つ又は複数である。
【0021】
本方法のいくつかの実施形態では、前駆体粉末に対し加熱及び加圧を同時に行うステップは、30℃~2000℃の温度で加熱することと、1MPa~500MPaで加圧することとを含む。いくつかの実施形態では、前駆体粉末に対し加熱及び加圧を同時に行うステップは、500℃~1300℃の温度で加熱することと、1MPa~50MPaで加圧することとを含む。もちろん、このような温度は例示であり、達成すべき温度及び圧力の範囲は、膜へと形成される前駆体粉末の関数であり得、温度、圧力、及び時間は、所望の密度及び微細構造の焼結膜を作成するために変更される変数であってもよい。
【0022】
本方法のいくつかの実施形態では、焼結膜は、90分未満の焼結鍛造時間で90%を超える相対密度を有する。いくつかの実施形態では、焼結膜は、5分未満の焼結鍛造時間で98%を超える相対密度を有する。
【0023】
本方法のいくつかの実施形態では、焼結膜は、1nm~500μmの厚さを有する。いくつかの実施形態では、焼結膜は、1nm~100μmの厚さを有する。本方法のいくつかの実施形態では、基板は、1nm~100μmの厚さを有する。
【0024】
本方法のいくつかの実施形態では、基板は、ニッケル、モリブデン、チタン、ジルコニウム、タンタル、合金鋼、炭素鋼、ステンレス鋼、ニッケル基超合金、コバルト基超合金、銅、アルミニウム、鉄、又はこれらの混合物から成る群から選択される金属材料を含む。本方法のいくつかの実施形態では、基板は、第1の金属材料を含む第1の層と、第2の金属材料を含む第2の層とを有するバイメタルを含む。第1の金属材料は、ニッケル、モリブデン、チタン、ジルコニウム、タンタル、ニッケル系超合金、コバルト系超合金、銅、又はこれらの混合物から成る群から選択することができ、第2の材料は、アルミニウム、ニッケル、合金鋼、炭素鋼、ステンレス鋼、ニッケル系超合金、又はこれらの混合物から成る群から選択することができる。本方法のいくつかの実施形態では、第1の金属材料はニッケルを含み、第2の材料は、ステンレス鋼を含む。いくつかの実施形態では、第1の層は、1nm~100μmの厚さを有し、第2の層は、1nm~100μmの厚さを有する。
【0025】
本方法のいくつかの実施形態では、グラファイト粒子層が基板と前駆体粉末との間に配置される。いくつかの実施形態では、グラファイト粒子層は、1μm~10μmの厚さを有する。
【0026】
別の側面によれば、基板上に前駆体粉末を焼結鍛造して膜を形成するための装置が提供される。装置は、ロードフレーム、ピストン、及び一組の誘導コイルを含む。ロードフレームは、内部に画定された、前駆体粉末を受け入れるための焼結鍛造領域を有する。ピストンは誘導加熱に耐え、ロードフレームによって加圧方向に作動することができ、焼結鍛造領域に受け入れられた前駆体粉末に対し加熱及び加圧を同時に行う。一組の誘導コイルは、高周波誘導でピストンを加熱できるようにピストンと同心である。焼結鍛造領域は、加圧方向と垂直な平面に沿って位置し、焼結鍛造領域には横方向の拘束がない。
【0027】
いくつかの実施形態では、焼結鍛造領域に横方向の拘束がないことにより、膜の形成中に前駆体粉末の変形と圧力支援焼結が可能になり、膜内での残留せん断応力の形成が抑制される。いくつかの実施形態では、加熱及び加圧を同時に行うことで、前駆体粉末に変形と圧力支援焼結が生じ、緻密なセラミック体が製造される。いくつかの実施形態では、膜と基板との間の摩擦応力により、焼結中に膜内に静水圧応力状態が生じる。いくつかの実施形態では、印加圧力と摩擦圧力による応力の組み合わせにより、焼結中に膜内に静水圧応力状態が生じる。
【0028】
いくつかの実施形態では、装置は、ピストンを取り囲む非導電性シュラウドを更に含んでもよく、ピストンと非導電性シュラウドとの間に中空キャビティを画定し、中空キャビティは焼結鍛造領域内に開口してもよい。中空キャビティと流体連通するガスインレットは、ガスインレットから流れるガスを、中空キャビティに供給し、ピストンを越えて中空キャビティを通って焼結鍛造領域の周囲環境に供給するように構成されてもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、装置は、前駆体粉末と基板を焼結鍛造領域を通って前進させるための輸送機構を更に含んでもよい。これは、所望の長さに切断するのに適した連続した長さの膜を容易に製造するために用いることができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、装置は、熱電対、温度コントローラ、及び冷却剤循環装置のうちの1つ又は複数を備える基板の温度を制御するためのシステムを更に含んでもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、ピストンはグラファイトを含んでもよい。しかしながら、材料にかかわらず、ピストンは、一組の誘導コイルによって500℃~1300℃の温度に加熱され、焼結鍛造領域内のロードフレームによって1MPa~50MPaの圧力を加えることができると考えられる。いくつかの実施形態では、ピストンは、一組の誘導コイルによって30℃~2000℃の温度に加熱され、焼結鍛造領域内のロードフレームによって1MPa~500MPaの圧力を加えることができる。
【0032】
別の側面によれば、離隔した焼結膜のアレイを含む電気化学デバイスを形成するための方法が提供される。本方法は、基板上に前駆体粉末の離隔した部分を支持するステップと、基板上に離隔した焼結膜を形成するために、前駆体粉末の離隔した部分に対し、加熱と、前駆体粉末の離隔した部分の厚さと平行な加圧方向への加圧とを同時に行うステップと、基板上の離隔した焼結膜の間に可撓性材料を堆積させるステップとを含むことができる。
【0033】
本方法の一実施形態では、各離隔した焼結膜は、別個の焼結鍛造領域で作成され、加圧方向と垂直な平面においては、各焼結鍛造領域に横方向の拘束がない。各焼結鍛造領域に横方向の拘束がないことにより、焼結膜の形成中に前駆体粉末の変形と圧力支援焼結が可能になり、各焼結膜内での残留せん断応力の形成が抑制される。いくつかの実施形態では、加熱及び加圧を同時に行うことで、前駆体粉末に変形と圧力支援焼結が生じ、緻密なセラミック体が製造される。いくつかの実施形態では、膜と基板との間の摩擦応力により、焼結中に膜内に静水圧応力状態が生じる。いくつかの実施形態では、印加圧力と摩擦圧力の応力の組み合わせにより、焼結中に膜内に静水圧応力状態が生じる。接着は、膜を機械的に支持するのには十分良好であるが、基板(例えば、集電体)と膜(例えば、セラミック電解質)との間に金属アノードをインシチュ(その場で)形成することが望ましい場合には、剥離するのに十分なほど弱い。
【0034】
本方法の一実施形態では、前駆体粉末の離隔した部分に対し加熱及び加圧を同時に行っていないとき、基板は、加圧方向と垂直な平面にほぼ沿った方向に移動可能である。
【0035】
本方法の一実施形態は、(a)前駆体粉末の離隔した部分に対し加熱及び加圧を同時に行って、離隔した焼結膜を形成するステップと、(b)離隔した焼結膜に対する圧力を除去するステップと、(c)前駆体粉末のまだ未焼結の離隔した部分を焼結鍛造領域に導入するために基板を前進させるステップと、(d)基板上の離隔した焼結膜間に可撓性材料を堆積させるステップとを繰り返し実行することを更に含み、これにより、可撓性材料によって取り囲まれた連続した長さの離隔した焼結膜のアレイが、繰り返し焼結鍛造によって形成される。
【0036】
この方法では、離隔した焼結膜は、ガーネット、ペロブスカイト、NaSICON、又はLiSICON相の、酸化物又はリン酸塩材料の任意の組み合わせであり得る固体電解質材料を含むことができる。離隔した焼結膜は、LiRe3-yの化学式を有するセラミック材料から成る固体電解質材料を含むことができ、式中、
wは5~7.5であり、
AはB、Al、Ga、In、Zn、Cd、Y、Sc、Mg、Ca、Sr、Ba、及びこれらの任意の組み合わせから選択され、
xは0~2であり、
MはZr、Hf、Nb、Ta、Mo、W、Sn、Ge、Si、Sb、Se、Te、及びこれらの任意の組み合わせから選択され、
Reはランタニド元素、アクチニド元素、及びこれらの任意の組み合わせから選択され、
yは0~0.75であり、
zは10.875~13.125であり、
セラミック材料はガーネット型又はガーネット状結晶構造を有する。
【0037】
本方法では、離隔した焼結膜は、少なくともリチウム、硫黄、及びリンを含む硫化物系固体電解質材料を含むことができる。硫化物系固体電解質材料は、Li11、LiPS、Li、LiPS、LiPS、Li、Li10GeP12(LGPS)、並びにLi7-xPS6-xCl、Li7-xPS6-xBr及びLi7-xPS6-x(ただし、0≦x≦2)から選択されるアルジロダイト型固体電解質材料から成る群から選択することができる。
【0038】
本方法では、離隔した焼結膜は、リチウムホスト材料を含むことができる。離隔した焼結膜は、(i)金属が、アルミニウム、コバルト、鉄、マンガン、ニッケル及びバナジウムのうちの1つ又は複数であるリチウム金属酸化物、並びに(ii)LiMPOの一般化学式を有するリチウム含有リン酸塩から成る群から選択されるリチウムホスト材料を含むことができ、式中、Mはコバルト、鉄、マンガン及びニッケルのうちの1つ又は複数である。
【0039】
本方法において、可撓性材料は、ポリオレフィン、ポリスチレン、ジビニルベンゼン、エチレン酢酸ビニルポリマー、及びコポリマー、シリコーンポリマー、スチレン・ジビニルベンゼンコポリマー、並びにこれらのブレンド及び混合物から成る群から選択されるポリマー材料を含むことができる。
【0040】
本方法のいくつかの実施形態では、前駆体粉末は結合剤を含む。結合剤は、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピリジン、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンジエン三元共重合体、セルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、及びこれらの混合物から成る群から選択することができる。
【0041】
本方法のいくつかの実施形態では、離隔した焼結膜は、1nm~500μmの厚さを有する。本方法のいくつかの実施形態では、離隔した焼結膜は、1nm~100μmの厚さを有する。本方法のいくつかの実施形態では、基板は、1nm~100μmの厚さを有する。
【0042】
本方法のいくつかの実施形態では、基板は、ニッケル、モリブデン、チタン、ジルコニウム、タンタル、合金鋼、炭素鋼、ステンレス鋼、ニッケル基超合金、コバルト基超合金、銅、アルミニウム、鉄、又はこれらの混合物から成る群から選択される金属材料を含む。
【0043】
本方法のいくつかの実施形態では、基板は、第1の金属材料を含む第1の層と、第2の金属材料を含む第2の層とを有するバイメタルを含む。第1の金属材料は、ニッケル、モリブデン、チタン、ジルコニウム、タンタル、ニッケル系超合金、コバルト系超合金、銅、又はこれらの混合物から成る群から選択することができ、第2の材料は、アルミニウム、ニッケル、合金鋼、炭素鋼、ステンレス鋼、ニッケル系超合金、又はこれらの混合物から成る群から選択される。本方法のいくつかの実施形態では、第1の金属材料はニッケルを含み、第2の材料はステンレス鋼を含む。本方法のいくつかの実施形態では、第1の層は1nm~100μmの厚さを有し、第2の層は1nm~100μmの厚さを有する。
【0044】
本方法のいくつかの実施形態では、グラファイト粒子層が基板と前駆体粉末との間に配置される。グラファイト粒子層は、1μm~10μmの厚さを有することができる。
【0045】
本願開示の上記及び他の特徴、側面及び利点は、以下の詳細な説明、図面及び添付の特許請求の範囲を考慮することでより良く理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1a】本開示の一実施形態による焼結鍛造装置の概略正面図である。
図1b】本開示の一実施形態による焼結鍛造装置の概略断面側面図である。
図2】本願開示の様々な実施形態による、LLZO膜の走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した断面画像であり、画像(a)は1150℃で20分間、画像(b)は1250℃で5分間、及び画像(c)は1250℃で2分間焼結鍛造した画像である。
図3】本願開示の別の実施形態による焼結鍛造装置の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明を詳細に説明する前に、本発明はここで説明する特定の実施形態に限定されないとは理解されるべきである。また、ここで用いられている用語用法は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本発明を限定することを意図したものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定される。ここで用いられている単数形「1つ(a、an)」及び「前記1つ(the)」は、文脈から特段の事情が明らかでない限り、複数の実施形態も含む。
【0048】
当業者であれば、既に記載された側面の他、本発明の多くの他の改良形態も、本発明の思想から逸脱することなく可能であることが明らかである。本願開示の解釈にあたっては、全ての用語は、文脈に即した最も広い可能な意味に解釈すべきである。「備える」、「含む」又は「有する」との用語の変形は、要素、部品又はステップについて非排他的に言及していると解釈すべきであるから、言及対象の要素、部品又はステップは、明示的に言及されていない他の要素、部品又はステップと組み合わせてもよい。特定の要素を「備える」、「含む」又は「有する」と記載されている実施形態は、文脈から特段の事情が明らかでない限り、当該要素から「実質的に成る」という意味と、当該要素から「成る」という意味とを更に含む。文脈から特段の事情が明らかでない限り、システムに関して記載されている本願開示の側面は方法にも適用することができ、またその逆も成り立つと解すべきである。
【0049】
本明細書で開示されている数値範囲は、その両端を含む。例えば、1~10の数値範囲は、値1及び10を含む。特定の値について複数の連続した数値範囲が開示されている場合、本願開示は、これら複数の各数値範囲の上限及び下限の全ての組み合わせを含む範囲を明示的に想定している。例えば、1~10の数値範囲又は2~9の数値範囲は、1~9の数値範囲と2~10の数値範囲とを含むことを意図している。
【0050】
本願明細書で用いられる場合、「グリーン体」又は「成形体」は、金属、セラミック、又はその両方であってもよい粉末粒子の緩く結合した集合体を指す。「焼結」は、材料、一般的にはグリーン体や成形体中の気孔を低減させ、緻密な成形体を製造するための高温プロセスを指す。
【0051】
本願明細書で用いられる場合、「ロールツーロール」は、材料、構造、又はデバイスを、ロール状の可撓性基板上に印刷、コーティング、又はパターニングしたり、基板内に埋め込んだりする、あるタイプの連続製造プロセスを指す。このようなロールツーロールプロセスは、例えば、Sakamotoらによる2017年8月3日に公開された米国特許出願公開第2017/0222254号明細書に記載されており、その全内容は参照によりあらゆる目的のために本願明細書に組み込まれる。
【0052】
本願明細書で用いられる場合、「急速誘導加熱」は、電磁誘導を用いてエネルギーを伝達し、高い加熱率でレシーバ材料を加熱する方法を指す。
【0053】
開示された装置及び関連する方法は、ロードフレームと急速誘導加熱との組み合わせを利用することにより、ロールツーロール製造と互換性があり、生産性の高い薄膜焼結鍛造を可能にすることができる。一般的に言えば、開示された装置及び方法は、ロール状の金属箔上に成形された粉末の領域の焼結を対象とすることができる。粉末が金属基板上に成形された後、粉末は、ピストンが電磁誘導で急速加熱される加圧ピストンの下に運ばれる。ロードフレームに接続されたピストンを成形粉末/グリーン膜に接触させ、ロードフレームを用いて一軸圧縮をかける。一方、環境ガスは、インレットから流れ、ピストン及び粉末を包み込むことができる。所与の時間加圧した後、粉末を緻密な焼結膜に圧縮し、ピストンが持ち上げられる。この時点で、焼結膜を運び去ることができ、新しい未焼結膜(又は未焼結膜の新しい部分)を焼結鍛造のために持ち込むことができる。このシステムとこれらの方法を用いて、焼結鍛造時間5分未満で相対密度98%を超える70μmのセラミック薄膜が実証された。しかしながら、これらの方法を用いて最大1mmまでの厚さの薄膜を製造することができると考えられている。本方法の一実施形態では、焼結薄膜の厚さは1nm~100μmである。分かりやすくするために、厚さは、パンチの加圧方向と平行で、薄膜の上面に接触する面と垂直な膜の寸法として理解されたい。
【0054】
<システム設計>
提案された焼結鍛造システム及び装置を図1a及び図1bに示す。本提案の装置10は、ロードフレーム12と、誘導コイル14を含む誘導加熱器と、試料34を支持する試料基板16との3つの主要な構成要素から構成される。焼結鍛造の前、試料34は、例えば、成形粉末スラリー又は乾燥粉末のいずれかの形態のグリーン粉末であってもよく、焼結鍛造の後、試料34は焼結薄膜の形態となる。
【0055】
本システムは、印加された圧力を測定及び制御するために商用ロードフレームを利用することができる。図1a及び図1bに示すように、ロードフレーム12は、クロスヘッド18と、ピストン22に接続されてクロスヘッド18からの力をピストン22に伝達する中間マウント20とを含む。ロードフレーム12は、図には完全には示されていないが、任意のロードフレームであり得、このようなロードフレームは当該技術分野で知られている。例えば、ロードフレームは、米国マサチューセッツ州ノーウッドのInstron(登録商標)社や米国デラウェア州ニューキャッスルのTA(登録商標)Instruments社が一般に製造しているようなロードフレームであってもよい。しかしながら、採用される特定のロードフレームは、連続生産をより容易にし、所望の生産規模に合わせるために、小型の電気機械式ロードフレームではなく、油圧式又は電気油圧式のプレスとする可能性がある。ピストン22は、グラファイト材料などの誘導加熱に耐え、かつ鍛造圧力を加えるのに十分な機械的強度を有する材料で形成されてもよい。
【0056】
中間マウント20は、クロスヘッド18とピストン22との間の機械的接続を行うこと以外に、シュラウド24を支持するために用いることができる。シュラウド24は、石英などの非導電性材料であってもよく、ピストン22を誘導コイル14から遮蔽する一方で、環境ガスを封入することもできる。ピストン22、中間マウント20、及びシュラウド24の間の体積と流体連通するガスインレット28を有するガス供給装置26(主に図1a及び図1bに供給ガス導管として示す)によって、前記環境ガスを供給してもよい。図示のように、ガスインレット28は中間マウントに設けられており、インレット28から流れるガスは、シュラウド24とピストン22との間の体積を通って流れ、材料が加熱及び加圧される焼結鍛造領域32の近傍のガスアウトレット30から流出する。
【0057】
温度制御には、市販の誘導加熱器及び温度コントローラを用いてもよい。ピストン22が誘導コイル14内の領域に入ると、電磁誘導によってピストン22を加熱することができる。試料温度は、基板16内の熱電対によって測定され、温度コントローラによって制御され、コイル14の電力出力が調節される。代替的に、基板を取り囲む誘導コイルによる誘導加熱を用いて基板を加熱することもできる。
【0058】
最後に、試料基板16は、焼結鍛造中に試料34の支持体として機能し、ロールツーロールプロセスに組み込むことができ、連続したロール状の金属基板は焼結鍛造ピストン22の下を移動する。
【0059】
<材料加工>
装置10を用いる例示的なプロセスでは、緻密化のための例示的なセラミック前駆体粉末として、組成がLi6.5LaZr1.5Ta0.512のガーネット構造リチウムランタンジルコニウム酸化物(LLZO)を用いた。LLZO粉末を、Rangasamyによる文献([参考文献7])の記載に従って固相合成法により合成し、次いで、溶媒、溶解したポリマー結合剤、及び可塑剤を含むスラリーに混合した。次いで、ドクターブレードを用いて、スラリーを厚さ35μmのNi箔(Targray)上に成形した。乾燥後、得られたグリーン膜をグラファイト基板上に置き、剥離層として機能する200nmのスパッタリングC層を有する別のNi箔で覆い、試料と焼結鍛造ピストンとの間の接着を防止した。次いで、グリーン膜を、Ar中、圧力6MPa、温度をランプ率約3℃s-1で変化させて焼結鍛造した。ピーク温度(本願開示の他の箇所では、試料に応じて1150℃又は1250℃であるとされている)については、ピストンを取り外して冷却する前に、2分~30分の間の様々な時間、その状態が維持された。緻密化後、膜をダイヤモンドソーで切断し、1μmの表面仕上げまで研磨した。その後、日立S3500N走査電子顕微鏡を用いて断面解析を行った。
【0060】
例示的な温度、時間、及び圧力が上に記載されているが、材料によっては、前駆体粉末を500℃~1300℃の温度で加熱し、1MPa~50MPaの間で加圧することができると考えられる。
【0061】
<断面解析>
図2は、温度と焼結鍛造時間を変えてNi箔上に緻密化した3つのLLZO膜の断面を画像a)、b)、c)に示す。3つ全ての試料とも、LLZO/Niが密着して、比較的均一な厚さ約80μmのLLZO膜が製造されたことが分かる。図2の画像a)の1150℃で20分間緻密化した試料は、図2の画像b)の1250℃で5分間緻密化した試料、図2の画像c)の1250℃で2分間緻密化した試料と比較して、断面が最も均一であるが、3条件全てで製造された試料は気孔率が低い(2%未満)。最短の焼結鍛造時間(2分)の場合でも、少量の気孔が観察されており、圧力の印加と横方向の拘束がないこととから、気孔が非常に迅速に閉鎖できていることを示唆している。膜の密度は比較的類似しているが、図2の画像a)の20分間の焼結鍛造の場合、微細構造は非常に均一であるが、5分間未満(すなわち、図2の画像b)及び画像c))の焼結鍛造の場合、微細構造に粒間破壊の領域が見られる。これらの領域は、断面化中に個々の結晶粒が破壊、及び除去されたことに起因する可能性が高い。これは、密度が時間とともに大きく変化しないにもかかわらず、焼結鍛造時間が長いほど、粒間接着がより強くなることを示唆している。したがって、これらのパラメータは、微細構造と製造時間との最良の組み合わせのために最適化されてもよい。
【0062】
<連続加工>
上で記載した例以外に、装置10は、前述の文献、米国特許出願公開第2017/0222254号に記載されているように、材料、構造、又はデバイスがロール状の可撓性基板上に印刷、コーティング、又はパターニングされるか、又は基板内に埋め込まれる連続製造プロセスであるロールツーロールプロセスで用いることができる。上記文献は、セラミック薄膜セグメントがポリマー材料などの可撓性マトリックス内に配置されている、セグメント化されたセル状構造を記載していることに留意されたい。このような場合、各構造は、集合的にシートを形成する別個の薄膜と見なすことができる。全てのセグメント化部分は、セグメントの厚さ寸法が幅や長さなどセグメントの他の寸法よりも小さい、比較的平坦なコイン状又はチップ状のセグメントであることにも留意されたい(例えば、図1aを参照)。この構造は、セグメントのこのようなアスペクト比において、焼結中の粉末層の熱伝達が比較的安定し薄膜の厚さ方向の勾配は最小であることを保証すると同時に、得られるシートの可撓性を高めることができる。
【0063】
したがって、装置10は、加圧及び加熱動作が進行していないときに、焼結鍛造領域に対して前駆体粉末と基板を前進させるための搬送機構又は前進装置を備えてもよいとも考えられる。この前進は、基板を加圧方向と垂直な平面にほぼ沿った方向に移動させることを含むことができるが、基板、前駆体粉末、及び/又は焼結薄膜は、この領域の外側にある程度たわむ場合があるので、この移動は正確に平面に沿っている必要はない。
【0064】
前駆体粉末から連続した長さの薄膜を形成するために、本方法は、前駆体粉末に対し加熱及び加圧を同時に行って薄膜を形成するステップと、薄膜に対する圧力を取り除くステップと、前駆体粉末と基板を前進させてまだ未焼結の前駆体粉末を焼結鍛造領域へ導入するステップとを繰り返し行うことを含んでもよい。このような前進は、焼結鍛造領域の全長よりも短くてもよく、すなわち、基板及び粉末/膜を焼結鍛造領域の一全長にわたって前進させるのではなく、第1のサイクルで既に加圧及び加熱された、ある長さのセグメントを、第2のサイクルで再び加圧及び加熱してもよいことを意味すると考えられる。とりわけ、これは、結果として得られる膜の長さにわたる焼結のばらつきの量を減らし、長さにわたって焼結不足領域の可能性を回避することを助けることができる。このようにして、焼結鍛造領域の最大寸法を超える長さを有し、その上に1つ又は複数の膜が形成された連続した長さの基板を、繰り返し焼結鍛造動作によって作り出すことができる。
【0065】
一実施形態では、複数の離隔した焼結膜が上に形成された連続した長さの基板は、繰り返し焼結鍛造動作によって作り出すことができる。次いで、基板上の複数の離隔した焼結膜の各々の間の空間は、離隔した焼結膜間に可撓性材料を堆積させることによって埋めることができる。可撓性材料は、ポリオレフィン、ポリスチレン、ジビニルベンゼン、エチレン酢酸ビニルポリマー及びコポリマー、シリコーンポリマー、スチレン・ジビニルベンゼンコポリマー、並びにこれらのブレンド及び混合物から成る群から選択されるポリマー材料を含むことができる。可撓性材料は、ポリプロピレン又はポリエチレンを含んでもよい。
【0066】
離隔した焼結膜は、各々、ガーネット、ペロブスカイト、NaSICON、又はLiSICON相の、酸化物又はリン酸塩材料の任意の組み合わせであり得る固体電解質材料を含んでもよい。離隔した焼結膜はそれぞれ、LiRe3-yの化学式を有するセラミック材料から成る固体電解質材料を含んでもよく、式中、
wは5~7.5であり、
AはB、Al、Ga、In、Zn、Cd、Y、Sc、Mg、Ca、Sr、Ba、及びこれらの任意の組み合わせから選択され、
xは0~2であり、
MはZr、Hf、Nb、Ta、Mo、W、Sn、Ge、Si、Sb、Se、Te、及びこれらの任意の組み合わせから選択され、
Reはランタニド元素、アクチニド元素、及びこれらの任意の組み合わせから選択され、
yは0~0.75であり、
zは10.875~13.125であり、
セラミック材料はガーネット型又はガーネット状結晶構造を有する。
セラミック材料の一実施形態では、MはZrとTaとの組み合わせである。セラミック材料の一実施形態では、MはZrであり、AはAlであり、xは0ではない。セラミック材料の一実施形態では、MはZrであり、AはGaであり、xは0ではない。
【0067】
離隔した焼結膜は、各々、少なくともリチウム、硫黄及びリンを含む硫化物系固体電解質材料を含んでもよい。硫化物系固体電解質材料は、Li11、LiPS、Li、LiPS、LiPS、Li、Li10GeP12(LGPS)、並びにLi7-xPS6-xCl、Li7-xPS6-xBr及びLi7-xPS6-x(ただし、0≦x≦2)から選択されるアルジロダイト型固体電解質材料から成る群から選択することができる。
【0068】
離隔した焼結膜は、各々、(i)金属が、アルミニウム、コバルト、鉄、マンガン、ニッケル及びバナジウムのうちの1つ又は複数であるリチウム金属酸化物、並びに(ii)LiMPOの一般化学式を有するリチウム含有リン酸塩から成る群から選択されるリチウムホスト材料を含んでもよく、式中、Mはコバルト、鉄、マンガン及びニッケルのうちの1つ又は複数である。必要に応じて、次いで、堆積した可撓性材料に埋め込まれた複数の離隔した焼結膜から基板を除去することができる。
【0069】
本方法のいくつかの実施形態では、前駆体粉末は結合剤を含む。結合剤は、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピリジン、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンジエン三元共重合体、セルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、及びこれらの混合物から成る群から選択することができる。
【0070】
本方法のいくつかの実施形態では、離隔した焼結膜は、1nm~500μmの厚さを有する。本方法のいくつかの実施形態では、離隔した焼結膜は、1nm~100μmの厚さを有する。本方法のいくつかの実施形態では、基板は、1nm~100μmの厚さを有する。
【0071】
本方法のいくつかの実施形態では、基板は、ニッケル、モリブデン、チタン、ジルコニウム、タンタル、合金鋼、炭素鋼、ステンレス鋼、ニッケル基超合金、コバルト基超合金、銅、アルミニウム、鉄、又はこれらの混合物から成る群から選択される金属材料を含む。
【0072】
本方法のいくつかの実施形態では、基板は、第1の金属材料を含む第1の層と、第2の金属材料を含む第2の層とを有するバイメタルを含む。第1の金属材料は、ニッケル、モリブデン、チタン、ジルコニウム、タンタル、ニッケル系超合金、コバルト系超合金、銅、又はこれらの混合物から成る群から選択することができ、第2の材料は、アルミニウム、ニッケル、合金鋼、炭素鋼、ステンレス鋼、ニッケル系超合金、又はこれらの混合物から成る群から選択される。本方法のいくつかの実施形態では、第1の金属材料はニッケルを含み、第2の材料はステンレス鋼を含む。本方法のいくつかの実施形態では、第1の層は1nm~100μmの厚さを有し、第2の層は1nm~100μmの厚さを有する。
【0073】
本方法のいくつかの実施形態では、グラファイト粒子層が基板と前駆体粉末との間に配置される。グラファイト粒子層は、1μm~10μmの厚さを有することができる。
【0074】
図3を参照すると、可撓性材料38内に埋め込まれた複数の離隔した焼結膜のアレイ34g、34h、34iについては、ライン状に配置された上述の装置10(図3では10a、10b、及び10cと表示)を複数個設け、次いで、各装置10a、10b、及び10cの焼結鍛造領域に対して、前駆体粉末と基板16の離隔した試料34a、34b、34cを方向Aへ前進させ、繰り返し焼結鍛造動作によって基板16上に形成された離隔した焼結膜34d、34e、34fのラインを作ることによって形成することができ、離隔した焼結膜34d、34e、34fのラインは、基板16の前進方向Aに対して直角である。基板16上に形成された複数の離隔した焼結膜34d、34e、34fの各々の間の空間は、材料ディスペンサ37を用いて離隔した焼結膜34d、34e、34fの間に可撓性材料38を堆積させることによって埋められ、可撓性材料38内に埋め込まれた複数の離隔した焼結膜のアレイ34g、34h、34iを形成することができる。図3の装置は、離隔した焼結膜34d、34e、34fを有する基板16が、N回、材料ディスペンサを通って前進すると、3行N列の離隔した焼結膜のアレイを形成することになる。上述した装置10の複数の数、及び離隔した焼結膜34d、34e、34fの別の列が材料ディスペンサ37を通って前進して可撓性材料38を堆積する回数を選択することによって、異なるサイズのアレイを作成できることが理解されよう。
【0075】
このようなロールツーロール又は連続的な長さの製造技術を利用して、電池製造に必要な長さに切断することができる離隔した焼結膜のアレイを製造することができると考えられる。
【0076】
したがって、要約すると、焼結薄膜を製造するための焼結鍛造用のシステム及び方法が提案されている。急速誘導加熱とロールツーロール加工を組み合わせたシステムにより、大規模な連続製造での焼結鍛造が可能になる。この設計は、Ni箔基板上にスラリー成形されたLLZOセラミックを用いて実証された。比較的短い時間で、セラミック/基板が密着した緻密な(98%超)薄膜(100μm未満)を製造できることが実証された。本システムは、構造用金属から機能性半導体まで、多種多様な材料のスケーラブルな製造に用いることができる。
【0077】
特定の実施形態を参照して本発明をかなり詳細に説明したが、当業者であれば、ここで記載されている実施形態に代わる代替的な実施形態でも本発明を実施できることが明らかであり、ここで記載されている実施形態は例示目的で提示されたものであり、本発明を限定するものではない。よって、添付の特許請求の範囲は、本願明細書に含まれる実施形態の説明に限定されるべきものではない。
【0078】
<参考文献>
[1] Z.Z. Fang, ed., Sintering of Advanced Materials, in: Sinter. Adv. Mater., Woodhead Publishing, 2010: p. iv. doi:10.1016/B978-1-84569-562-0.50019-4.
[2] R. Raj, M. Cologna, J.S.C. Francis, Influence of Externally Imposed and Internally Generated Electrical Fields on Grain Growth, Diffusional Creep, Sintering and Related Phenomena in Ceramics, J. Am. Ceram. Soc. 94 (2011) 1941-1965. doi:10.1111/j.1551-2916.2011.04652.x.
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[6] K.R. Venkatachari, R. Raj, Shear Deformation and Densification of Powder Compacts, J. Am. Ceram. Soc. 69 (1986) 499-506. doi:10.1111/j.1151-2916.1986.tb07452.x.
[7] E. Rangasamy, J. Wolfenstine, J. Sakamoto, The role of Al and Li concentration on the formation of cubic garnet solid electrolyte of nominal composition Li7La3Zr2O12, Solid State Ion. 206 (2012) 28-32. doi:10.1016/j.ssi.2011.10.022.
【0079】
いかなる文献の引用も、それが本発明に関する先行技術であることを認めるものと解釈してはならない。
図1a
図1b
図2a)】
図2b)】
図2c)】
図3
【国際調査報告】