(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】脆弱X症候群AGG中断の遺伝子型決定
(51)【国際特許分類】
G16B 20/20 20190101AFI20230323BHJP
C12Q 1/686 20180101ALN20230323BHJP
【FI】
G16B20/20
C12Q1/686 Z ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022546022
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(85)【翻訳文提出日】2022-09-26
(86)【国際出願番号】 US2021015663
(87)【国際公開番号】W WO2021155114
(87)【国際公開日】2021-08-05
(32)【優先日】2020-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511172461
【氏名又は名称】ラボラトリー コーポレイション オブ アメリカ ホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, ジェンシー
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン, マット
(72)【発明者】
【氏名】オカモト, パトリシア
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA12
4B063QA17
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
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4B063QR77
4B063QS25
(57)【要約】
本開示は、脆弱X症候群(FXS)臨床試験に関し、特に、臨床試験への実施のためのFXS AGG中断ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アッセイおよびAGG中断遺伝子型決定アルゴリズムに関する。特に、態様は、試料に対して行われたFXSアッセイから生データを取得し、生データを反復的に探索し、予想AGGピークサイズに基づいて決定された探索空間の第1のセットを使用して第1の対立遺伝子上の1またはそれを超えるAGGピークを同定し、1またはそれを超えるAGGピークに基づいて、最後のAGG中断の下流のCGGリピートの数および第1の対立遺伝子上の最初のAGG中断に先行するCGGリピートの数を決定し、最後のAGG中断の下流のCGGリピートの数および最初のAGG中断に先行するCGGリピートの数に基づいて、第1の対立遺伝子のAGG遺伝子型を生成することに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子分析装置を使用して試料に対して行われた脆弱X症候群(FXS)アッセイから生データを得ることであって、前記生データが、キャピラリー電気泳動によって分離された遺伝子特異的(GS)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)データおよびAGG中断PCRデータを含むことと、
前記生データにおいて同定された第1の対立遺伝子についての予想AGGピークサイズを決定することと、
前記生データを反復的に探索し、前記予想AGGピークサイズに基づいて決定された探索空間の第1のセットを使用して、前記第1の対立遺伝子上の1またはそれを超えるAGGピークを同定することと、
前記GS PCRデータおよび前記第1の対立遺伝子上で同定された前記1またはそれを超えるAGGピークに基づいて、前記第1の対立遺伝子上の最後のAGG中断の下流のCGGリピートの数を決定することと、
前記GS PCRデータおよび前記第1の対立遺伝子上で同定された前記1またはそれを超えるAGGピークに基づいて、前記第1の対立遺伝子上の最初のAGG中断に先行するCGGリピートの数を決定することと、
前記最後のAGG中断の下流のCGGリピートの数および前記最初のAGG中断に先行するCGGリピートの数に基づいて、前記第1の対立遺伝子についてのAGG遺伝子型を生成することと、
前記第1の対立遺伝子について前記AGG遺伝子型を提供することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記GS PCRデータおよび前記第1の対立遺伝子上で同定された前記1またはそれを超えるAGGピークに基づいて、前記第1の対立遺伝子上の任意の2つの隣接するAGG中断によって分離されたCGGリピートの数を決定することをさらに含み、前記第1の対立遺伝子の前記AGG遺伝子型が、前記最後のAGG中断の下流のCGGリピートの数、任意の2つの隣接するAGG中断によって分離されたCGGリピートの数、および前記最初のAGG中断に先行するCGGリピートの数に基づいて生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生データを反復的に探索し、前記予想AGGピークサイズに基づいて決定された探索空間の第2のセットを使用して、第2の対立遺伝子上の1またはそれを超えるAGGピークを同定することと、
前記GS PCRデータおよび前記第2の対立遺伝子上で同定された前記1またはそれを超えるAGGピークに基づいて、前記第2の対立遺伝子上の最後のAGG中断の下流のCGGリピートの数を決定することと、
前記GS PCRデータおよび前記第2の対立遺伝子上で同定された前記1またはそれを超えるAGGピークに基づいて、前記第2の対立遺伝子上の最初のAGG中断に先行するCGGリピートの数を決定することと、
前記最後のAGG中断の下流のCGGリピートの数および前記最初のAGG中断に先行するCGGリピートの数に基づいて、前記第2の対立遺伝子についてのAGG遺伝子型を生成することと、
前記第2の対立遺伝子についての前記AGG遺伝子型を提供することと、をさらに含み、
(i)前記第1の対立遺伝子が正常な対立遺伝子であり、前記第2の対立遺伝子が前変異対立遺伝子である、(ii)前記第1の対立遺伝子が正常な対立遺伝子であり、前記第2の対立遺伝子が異なる正常な対立遺伝子である、または(iii)前記第1の対立遺伝子が前変異対立遺伝子であり、前記第2の対立遺伝子が異なる前変異対立遺伝子である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記試料に関連する対象についてのリスクスコアを、前記第1の対立遺伝子、前記第2の対立遺伝子、または前記第1の対立遺伝子と前記第2の対立遺伝子の両方について生成された前記AGG遺伝子型に基づいて決定することをさらに含み、前記リスクスコアが、前記対象が遅発性神経変性疾患、脆弱X関連振戦/運動失調症候群(FXTAS)もしくは脆弱X関連原発性卵巣機能不全(FXPOI)を発症するリスク、または完全変異対立遺伝子を対象の子孫に伝達するリスクもしくはそれらの任意の組み合わせを同定する、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記生データを反復的に探索し、前記第1の対立遺伝子上の1またはそれを超えるAGGピークを同定することが、
前記予想AGGピークサイズに基づいて、前記第1の対立遺伝子についての前記探索空間の第1のセットの第1の探索空間を決定することと、
前記生データを探索し、第1の探索空間を使用して前記第1の対立遺伝子上の初期AGGピークを同定することと、
前記第1の対立遺伝子上の前記初期AGGピークのピークサイズに基づいて、前記第1の対立遺伝子についての第2の探索空間を決定することと、
前記生データを反復的に探索し、前記第2の探索空間を用いて前記第1の対立遺伝子上の1またはそれを超える追加のAGGピークを同定することと、を含み、
前記最後のAGG中断の下流のCGGリピートの数および前記最初のAGG中断に先行するCGGリピートの数が、前記GS PCRデータ、前記第1の対立遺伝子で同定された前記初期ピーク、および前記第1の対立遺伝子で同定された前記1またはそれを超える追加のピークに基づいて、前記第1の対立遺伝子について決定される、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項6】
前記生データを反復的に探索し、前記第2の対立遺伝子上の1またはそれを超えるAGGピークを同定することが、
前記予想AGGピークサイズに基づいて、前記第2の対立遺伝子についての前記探索空間の第2のセットの第1の探索空間を決定することと、
前記生データを探索し、第2の探索空間を使用して前記第2の対立遺伝子上の初期AGGピークを同定することと、
前記第2の対立遺伝子上の前記初期AGGピークのピークサイズに基づいて、前記第2の対立遺伝子についての第2の探索空間を決定することと、
前記生データを反復的に探索し、前記第2の探索空間を使用して前記第2の対立遺伝子上の1またはそれを超える追加のAGGピークを同定することと、を含み、
前記最後のAGG中断の下流のCGGリピートの数および前記最初のAGG中断に先行するCGGリピートの数が、前記GS PCRデータ、前記第2の対立遺伝子で同定された前記初期ピーク、および前記第2の対立遺伝子で同定された前記1またはそれを超える追加のピークに基づいて、前記第2の対立遺伝子について決定される、請求項3または5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の対立遺伝子上の前記1またはそれを超えるAGGピークが同定されると、前記生データを反復的に探索し、前記第2の対立遺伝子上の前記1またはそれを超えるAGGピークを同定する前に、前記第1の対立遺伝子上の前記1またはそれを超えるAGGピークが前記生データから除去される、請求項3または5に記載の方法。
【請求項8】
1またはそれを超えるデータプロセッサと、
前記1またはそれを超えるデータプロセッサ上で実行されると、前記1またはそれを超えるデータプロセッサに、
遺伝子分析装置を使用して試料に対して行われた脆弱X症候群(FXS)アッセイから生データを得ることであって、前記生データが、キャピラリー電気泳動によって分離された遺伝子特異的(GS)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)データおよびAGG中断PCRデータを含むことと、
前記生データにおいて同定された第1の対立遺伝子についての予想AGGピークサイズを決定することと、
前記生データを反復的に探索し、前記予想AGGピークサイズに基づいて決定された探索空間の第1のセットを使用して、前記第1の対立遺伝子上の1またはそれを超えるAGGピークを同定することと、
前記GS PCRデータおよび前記第1の対立遺伝子上で同定された前記1またはそれを超えるAGGピークに基づいて、前記第1の対立遺伝子上の最後のAGG中断の下流のCGGリピートの数を決定することと、
前記GS PCRデータおよび前記第1の対立遺伝子上で同定された前記1またはそれを超えるAGGピークに基づいて、前記第1の対立遺伝子上の最初のAGG中断に先行するCGGリピートの数を決定することと、
前記最後のAGG中断の下流のCGGリピートの数および前記最初のAGG中断に先行するCGGリピートの数に基づいて、前記第1の対立遺伝子についてのAGG遺伝子型を生成することと、
前記第1の対立遺伝子について前記AGG遺伝子型を提供することと、
を含むアクションを実行させる命令を含む非一時的コンピュータ可読記憶媒体と、を含むシステム。
【請求項9】
前記アクションが、前記GS PCRデータおよび前記第1の対立遺伝子上で同定された前記1またはそれを超えるAGGピークに基づいて、前記第1の対立遺伝子上の任意の2つの隣接するAGG中断によって分離されたCGGリピートの数を決定することをさらに含み、前記第1の対立遺伝子の前記AGG遺伝子型が、前記最後のAGG中断の下流のCGGリピートの数、任意の2つの隣接するAGG中断によって分離されたCGGリピートの数、および前記最初のAGG中断に先行するCGGリピートの数に基づいて生成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記アクションは、前記生データを反復的に探索し、前記予想AGGピークサイズに基づいて決定された探索空間の第2のセットを使用して、第2の対立遺伝子上の1またはそれを超えるAGGピークを同定することと、
前記GS PCRデータおよび前記第2の対立遺伝子上で同定された前記1またはそれを超えるAGGピークに基づいて、前記第2の対立遺伝子上の最後のAGG中断の下流のCGGリピートの数を決定することと、
前記GS PCRデータおよび前記第2の対立遺伝子上で同定された前記1またはそれを超えるAGGピークに基づいて、前記第2の対立遺伝子上の最初のAGG中断に先行するCGGリピートの数を決定することと、
前記最後のAGG中断の下流のCGGリピートの数および前記最初のAGG中断に先行するCGGリピートの数に基づいて、前記第2の対立遺伝子についてのAGG遺伝子型を生成することと、
前記第2の対立遺伝子についての前記AGG遺伝子型を提供することと、をさらに含み、
(i)前記第1の対立遺伝子が正常な対立遺伝子であり、前記第2の対立遺伝子が前変異対立遺伝子である、(ii)前記第1の対立遺伝子が正常な対立遺伝子であり、前記第2の対立遺伝子が異なる正常な対立遺伝子である、または(iii)前記第1の対立遺伝子が前変異対立遺伝子であり、前記第2の対立遺伝子が異なる前変異対立遺伝子である、請求項8または9に記載のシステム。
【請求項11】
前記アクションが、前記試料に関連する対象についてのリスクスコアを、前記第1の対立遺伝子、前記第2の対立遺伝子、または前記第1の対立遺伝子と前記第2の対立遺伝子の両方について生成された前記AGG遺伝子型に基づいて決定することをさらに含み、前記リスクスコアが、前記対象が遅発性神経変性疾患、脆弱X関連振戦/運動失調症候群(FXTAS)もしくは脆弱X関連原発性卵巣機能不全(FXPOI)を発症するリスク、または完全変異対立遺伝子を対象の子孫に伝達するリスクもしくはそれらの任意の組み合わせを同定する、請求項8、9または10に記載のシステム。
【請求項12】
前記生データを反復的に探索し、前記第1の対立遺伝子上の1またはそれを超えるAGGピークを同定することが、
前記予想AGGピークサイズに基づいて、前記第1の対立遺伝子についての前記探索空間の第1のセットの第1の探索空間を決定することと、
前記生データを探索し、第1の探索空間を使用して前記第1の対立遺伝子上の初期AGGピークを同定することと、
前記第1の対立遺伝子上の前記初期AGGピークのピークサイズに基づいて、前記第1の対立遺伝子についての第2の探索空間を決定することと、
前記生データを反復的に探索し、前記第2の探索空間を用いて前記第1の対立遺伝子上の1またはそれを超える追加のAGGピークを同定することと、を含み、
前記最後のAGG中断の下流のCGGリピートの数および前記最初のAGG中断に先行するCGGリピートの数が、前記GS PCRデータ、前記第1の対立遺伝子で同定された前記初期ピーク、および前記第1の対立遺伝子で同定された前記1またはそれを超える追加のピークに基づいて、前記第1の対立遺伝子について決定される、請求項8、9または10に記載のシステム。
【請求項13】
前記生データを反復的に探索し、前記第2の対立遺伝子上の1またはそれを超えるAGGピークを同定することが、
前記予想AGGピークサイズに基づいて、前記第2の対立遺伝子についての前記探索空間の第2のセットの第1の探索空間を決定することと、
前記生データを探索し、第2の探索空間を使用して前記第2の対立遺伝子上の初期AGGピークを同定することと、
前記第2の対立遺伝子上の前記初期AGGピークのピークサイズに基づいて、前記第2の対立遺伝子についての第2の探索空間を決定することと、
前記生データを反復的に探索し、前記第2の探索空間を使用して前記第2の対立遺伝子上の1またはそれを超える追加のAGGピークを同定することと、を含み、
前記最後のAGG中断の下流のCGGリピートの数および前記最初のAGG中断に先行するCGGリピートの数が、前記GS PCRデータ、前記第2の対立遺伝子で同定された前記初期ピーク、および前記第2の対立遺伝子で同定された前記1またはそれを超える追加のピークに基づいて、前記第2の対立遺伝子について決定される、請求項10または12に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1の対立遺伝子上の前記1またはそれを超えるAGGピークが同定されると、前記生データを反復的に探索し、前記第2の対立遺伝子上の前記1またはそれを超えるAGGピークを同定する前に、前記第1の対立遺伝子上の前記1またはそれを超えるAGGピークが前記生データから除去される、請求項10または12に記載のシステム。
【請求項15】
非一時的機械可読記憶媒体に有形に具現化されたコンピュータプログラム製品であって、1またはそれを超えるデータプロセッサに、
遺伝子分析装置を使用して試料に対して行われた脆弱X症候群(FXS)アッセイから生データを得ることであって、前記生データが、キャピラリー電気泳動によって分離された遺伝子特異的(GS)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)データおよびAGG中断PCRデータを含むことと、
前記生データにおいて同定された第1の対立遺伝子についての予想AGGピークサイズを決定することと、
前記生データを反復的に探索し、前記予想AGGピークサイズに基づいて決定された探索空間の第1のセットを使用して、前記第1の対立遺伝子上の1またはそれを超えるAGGピークを同定することと、
前記GS PCRデータおよび前記第1の対立遺伝子上で同定された前記1またはそれを超えるAGGピークに基づいて、前記第1の対立遺伝子上の最後のAGG中断の下流のCGGリピートの数を決定することと、
前記GS PCRデータおよび前記第1の対立遺伝子上で同定された前記1またはそれを超えるAGGピークに基づいて、前記第1の対立遺伝子上の最初のAGG中断に先行するCGGリピートの数を決定することと、
前記最後のAGG中断の下流のCGGリピートの数および前記最初のAGG中断に先行するCGGリピートの数に基づいて、前記第1の対立遺伝子についてのAGG遺伝子型を生成することと、
前記第1の対立遺伝子について前記AGG遺伝子型を提供することと、
を含むアクションを実行させるように構成された命令を含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項16】
前記アクションが、前記GS PCRデータおよび前記第1の対立遺伝子上で同定された前記1またはそれを超えるAGGピークに基づいて、前記第1の対立遺伝子上の任意の2つの隣接するAGG中断によって分離されたCGGリピートの数を決定することをさらに含み、前記第1の対立遺伝子の前記AGG遺伝子型が、前記最後のAGG中断の下流のCGGリピートの数、任意の2つの隣接するAGG中断によって分離されたCGGリピートの数、および前記最初のAGG中断に先行するCGGリピートの数に基づいて生成される、請求項15に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項17】
前記アクションは、前記生データを反復的に探索し、前記予想AGGピークサイズに基づいて決定された探索空間の第2のセットを使用して、第2の対立遺伝子上の1またはそれを超えるAGGピークを同定することと、
前記GS PCRデータおよび前記第2の対立遺伝子上で同定された前記1またはそれを超えるAGGピークに基づいて、前記第2の対立遺伝子上の最後のAGG中断の下流のCGGリピートの数を決定することと、
前記GS PCRデータおよび前記第2の対立遺伝子上で同定された前記1またはそれを超えるAGGピークに基づいて、前記第2の対立遺伝子上の最初のAGG中断に先行するCGGリピートの数を決定することと、
前記最後のAGG中断の下流のCGGリピートの数および前記最初のAGG中断に先行するCGGリピートの数に基づいて、前記第2の対立遺伝子についてのAGG遺伝子型を生成することと、
前記第2の対立遺伝子についての前記AGG遺伝子型を提供することと、をさらに含み、
(i)前記第1の対立遺伝子が正常な対立遺伝子であり、前記第2の対立遺伝子が前変異対立遺伝子である、(ii)前記第1の対立遺伝子が正常な対立遺伝子であり、前記第2の対立遺伝子が異なる正常な対立遺伝子である、または(iii)前記第1の対立遺伝子が前変異対立遺伝子であり、前記第2の対立遺伝子が異なる前変異対立遺伝子である、請求項15または16に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項18】
前記アクションが、前記試料に関連する対象についてのリスクスコアを、前記第1の対立遺伝子、前記第2の対立遺伝子、または前記第1の対立遺伝子と前記第2の対立遺伝子の両方について生成された前記AGG遺伝子型に基づいて決定することをさらに含み、前記リスクスコアが、前記対象が遅発性神経変性疾患、脆弱X関連振戦/運動失調症候群(FXTAS)もしくは脆弱X関連原発性卵巣機能不全(FXPOI)を発症するリスク、または完全変異対立遺伝子を対象の子孫に伝達するリスクもしくはそれらの任意の組み合わせを同定する、請求項15、16、または17に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項19】
前記生データを反復的に探索し、前記第1の対立遺伝子上の1またはそれを超えるAGGピークを同定することが、
前記予想AGGピークサイズに基づいて、前記第1の対立遺伝子についての前記探索空間の第1のセットの第1の探索空間を決定することと、
前記生データを探索し、第1の探索空間を使用して前記第1の対立遺伝子上の初期AGGピークを同定することと、
前記第1の対立遺伝子上の前記初期AGGピークのピークサイズに基づいて、前記第1の対立遺伝子についての第2の探索空間を決定することと、
前記生データを反復的に探索し、前記第2の探索空間を用いて前記第1の対立遺伝子上の1またはそれを超える追加のAGGピークを同定することと、を含み、
前記最後のAGG中断の下流のCGGリピートの数および前記最初のAGG中断に先行するCGGリピートの数が、前記GS PCRデータ、前記第1の対立遺伝子で同定された前記初期ピーク、および前記第1の対立遺伝子で同定された前記1またはそれを超える追加のピークに基づいて、前記第1の対立遺伝子について決定される、請求項15、16または17に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項20】
前記生データを反復的に探索し、前記第2の対立遺伝子上の1またはそれを超えるAGGピークを同定することが、
前記予想AGGピークサイズに基づいて、前記第2の対立遺伝子についての前記探索空間の第2のセットの第1の探索空間を決定することと、
前記生データを探索し、第2の探索空間を使用して前記第2の対立遺伝子上の初期AGGピークを同定することと、
前記第2の対立遺伝子上の前記初期AGGピークのピークサイズに基づいて、前記第2の対立遺伝子についての第2の探索空間を決定することと、
前記生データを反復的に探索し、前記第2の探索空間を使用して前記第2の対立遺伝子上の1またはそれを超える追加のAGGピークを同定することと、を含み、
前記最後のAGG中断の下流のCGGリピートの数および前記最初のAGG中断に先行するCGGリピートの数が、前記GS PCRデータ、前記第2の対立遺伝子で同定された前記初期ピーク、および前記第2の対立遺伝子で同定された前記1またはそれを超える追加のピークに基づいて、前記第2の対立遺伝子について決定される、請求項17または19に記載のコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、2020年1月30日に出願された米国仮出願第62/967,792号に基づく利益および優先権を主張し、その全体があらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
本開示は、脆弱X症候群(FXSまたはFRAX)臨床試験、特に臨床試験への実装のためのFRAX AGG中断ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アッセイおよびAGG中断の遺伝子型決定アルゴリズムに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
PCRおよび関連する増幅技術を分析用途に使用することができる。PCRの典型的な分析用途は、多型を有する遺伝子座を含む遺伝子型の状態または決定の診断を含む。医学的に関連する多型を示す遺伝子座の例は、X染色体上のヒトFMR1遺伝子の5’非翻訳領域(UTR)である。正常個体は、典型的には、この遺伝子座に5~44のCGGリピートを有する。対照的に、大きなCGGリピート伸長(200超リピート、完全変異対立遺伝子)を含有するこの遺伝子座の対立遺伝子は、FMR1遺伝子発現を破壊し、FXSを引き起こす。さらに、前変異(PM)対立遺伝子(50~200リピート)を有する個体は、遅発性神経変性疾患、脆弱X関連振戦/運動失調症候群(FXTAS)または脆弱X関連原発性卵巣機能不全(FXPOI)を発症するリスクがある。女性PM対立遺伝子キャリア(201分の1のpan-ethic頻度)は、完全変異対立遺伝子を子孫に伝達するリスクがある。このリスクは、脆弱X PCRアッセイによって測定されるCGGリピートのサイズ、およびCGGリピート間のAGG中断の数に依存する(通常、9~11のCGGリピートごとに起こる)。
【0004】
55~90リピートのPM対立遺伝子が、キャリアの女性によって伝達された場合、子孫における完全変異にまで拡大するリスクは、CGGリピート配列におけるAGG中断の数の増加と共に減少する。90超のリピートを有するPM対立遺伝子の場合、伸長リスクは、AGG中断の数にかかわらず50%超である。したがって、AGG中断PCRアッセイは、55~90のCGGリピートを有するPM対立遺伝子についてのAGG中断の特徴付けにおいて最も大きな臨床的有用性を有し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
要旨
様々な実施形態では、試料に対して行われた脆弱X症候群(FXS)アッセイから生データを得ることであって、生データが、キャピラリー電気泳動によって分離された遺伝子特異的(GS)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)データおよびAGG中断PCRデータを含むことと、生データにおいて同定された第1の対立遺伝子についての予想AGGピークサイズを決定することと、生データを反復的に探索し、予想AGGピークサイズに基づいて決定された探索空間の第1のセットを使用して、第1の対立遺伝子上の1またはそれを超えるAGGピークを同定することと、GS PCRデータおよび第1の対立遺伝子上で同定された1またはそれを超えるAGGピークに基づいて、第1の対立遺伝子上の最後のAGG中断の下流のCGGリピートの数を決定することと、GS PCRデータおよび第1の対立遺伝子上で同定された1またはそれを超えるAGGピークに基づいて、第1の対立遺伝子上の最初のAGG中断に先行するCGGリピートの数を決定することと、最後のAGG中断の下流のCGGリピートの数および最初のAGG中断に先行するCGGリピートの数に基づいて、第1の対立遺伝子についてのAGG遺伝子型を生成することと、第1の対立遺伝子についてAGG遺伝子型を提供することと、を含む、コンピュータ実装方法が提供される。
【0006】
いくつかの実施形態では、本方法は、GS PCRデータおよび第1の対立遺伝子上で同定された1またはそれを超えるAGGピークに基づいて、第1の対立遺伝子上の任意の2つの隣接するAGG中断によって分離されたCGGリピートの数を決定することをさらに含み、第1の対立遺伝子のAGG遺伝子型が、最後のAGG中断の下流のCGGリピートの数、任意の2つの隣接するAGG中断によって分離されたCGGリピートの数、および最初のAGG中断に先行するCGGリピートの数に基づいて生成される。
【0007】
いくつかの実施形態では、本方法は、生データを反復的に探索し、予想AGGピークサイズに基づいて決定された探索空間の第2のセットを使用して、第2の対立遺伝子上の1またはそれを超えるAGGピークを同定することと、GS PCRデータおよび第2の対立遺伝子上で同定された1またはそれを超えるAGGピークに基づいて、第2の対立遺伝子上の最後のAGG中断の下流のCGGリピートの数を決定することと、GS PCRデータおよび第2の対立遺伝子上で同定された1またはそれを超えるAGGピークに基づいて、第2の対立遺伝子上の最初のAGG中断に先行するCGGリピートの数を決定することと、最後のAGG中断の下流のCGGリピートの数および最初のAGG中断に先行するCGGリピートの数に基づいて、第2の対立遺伝子についてのAGG遺伝子型を生成することと、第2の対立遺伝子についてのAGG遺伝子型を提供することと、をさらに含み、(i)第1の対立遺伝子が正常な対立遺伝子であり、第2の対立遺伝子が前変異対立遺伝子である、(ii)第1の対立遺伝子が正常な対立遺伝子であり、第2の対立遺伝子が異なる正常な対立遺伝子である、または(iii)第1の対立遺伝子が前変異対立遺伝子であり、第2の対立遺伝子が異なる前変異対立遺伝子である。
【0008】
いくつかの実施形態では、本方法は、試料に関連する対象についてのリスクスコアを、第1の対立遺伝子、第2の対立遺伝子、または第1の対立遺伝子と第2の対立遺伝子の両方について生成されたAGG遺伝子型に基づいて決定することをさらに含み、リスクスコアが、対象が遅発性神経変性疾患、脆弱X関連振戦/運動失調症候群(FXTAS)もしくは脆弱X関連原発性卵巣機能不全(FXPOI)を発症するリスク、または完全変異対立遺伝子を対象の子孫に伝達するリスクもしくはそれらの任意の組み合わせを同定する。
【0009】
いくつかの実施形態では、生データを反復的に探索し、第1の対立遺伝子上の1またはそれを超えるAGGピークを同定することが、予想AGGピークサイズに基づいて、第1の対立遺伝子についての探索空間の第1のセットの第1の探索空間を決定することと、生データを探索し、第1の探索空間を使用して第1の対立遺伝子上の初期AGGピークを同定することと、第1の対立遺伝子上の初期AGGピークのピークサイズに基づいて、第1の対立遺伝子についての第2の探索空間を決定することと、生データを反復的に探索し、第2の探索空間を用いて第1の対立遺伝子上の1またはそれを超える追加のAGGピークを同定することと、を含み、最後のAGG中断の下流のCGGリピートの数および最初のAGG中断に先行するCGGリピートの数が、GS PCRデータ、第1の対立遺伝子で同定された初期ピーク、および第1の対立遺伝子で同定された1またはそれを超える追加のピークに基づいて、第1の対立遺伝子について決定される。
【0010】
いくつかの実施形態では、生データを反復的に探索し、第2の対立遺伝子上の1またはそれを超えるAGGピークを同定することが、予想AGGピークサイズに基づいて、第2の対立遺伝子についての探索空間の第2のセットの第1の探索空間を決定することと、生データを探索し、第2の探索空間を使用して第2の対立遺伝子上の初期AGGピークを同定することと、第2の対立遺伝子上の初期AGGピークのピークサイズに基づいて、第2の対立遺伝子についての第2の探索空間を決定することと、生データを反復的に探索し、第2の探索空間を使用して第2の対立遺伝子上の1またはそれを超える追加のAGGピークを同定することと、を含み、最後のAGG中断の下流のCGGリピートの数および最初のAGG中断に先行するCGGリピートの数が、GS PCRデータ、第2の対立遺伝子で同定された初期ピーク、および第2の対立遺伝子で同定された1またはそれを超える追加のピークに基づいて、第2の対立遺伝子について決定される。
【0011】
いくつかの実施形態では、第1の対立遺伝子上の1またはそれを超えるAGGピークが同定されると、生データを反復的に探索し、第2の対立遺伝子上の1またはそれを超えるAGGピークを同定する前に、第1の対立遺伝子上の1またはそれを超えるAGGピークが生データから除去される。
【0012】
いくつかの実施形態では、1またはそれを超えるデータプロセッサと、1またはそれを超えるデータプロセッサ上で実行されると、1またはそれを超えるデータプロセッサに、本明細書に開示される1またはそれを超える方法またはプロセスの一部または全部を実行させる命令を含む非一時的コンピュータ可読記憶媒体と、を含むシステムが提供される。
【0013】
いくつかの実施形態では、非一時的機械可読記憶媒体に有形に具現化され、1またはそれを超えるデータプロセッサに、本明細書に開示された1またはそれを超える方法の一部または全部を実行させるように構成された命令を含むコンピュータプログラム製品が提供される。
【0014】
本開示のいくつかの実施形態は、1またはそれを超えるデータプロセッサを含むシステムを含む。いくつかの実施形態では、システムは、1またはそれを超えるデータプロセッサ上で実行されると、1またはそれを超えるデータプロセッサに、1またはそれを超える方法の一部または全部および/または本明細書に開示される1またはそれを超えるプロセスの一部または全部を実行させる命令を含む非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含む。本開示のいくつかの実施形態は、1またはそれを超えるデータプロセッサに、本明細書に開示された1またはそれを超える方法の一部または全部および/または1またはそれを超えるプロセスの一部または全部を実行させるように構成された命令を含む、非一時的機械可読記憶媒体で有形に具現化されたコンピュータプログラム製品を含む。
【0015】
使用された用語および表現は、限定ではなく説明の用語として使用され、そのような用語および表現の使用において、示され説明された特徴またはその一部の均等物を除外する意図はないが、特許請求される発明の範囲内で様々な修正が可能であることが認識される。したがって、本発明は実施形態および任意選択の特徴によって具体的に開示されているが、本明細書に開示された概念の変形および変形は当業者によって使用されてもよく、そのような修正および変形は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にあると見なされることを理解されたい。
【0016】
本発明は、以下の非限定的な図を考慮してよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】
図1Aは、様々な実施形態によるFRAX AGGおよび遺伝子特異的(GS)PCRアッセイと、GSおよびAGG PCRプライマーの位置との概略図を示す。
【0018】
【
図1B】
図1Bは、FRAX AGG PCRアッセイからの代表的な電気泳動図を示し、各ピークは、様々な実施形態による試料中のAGG中断に対応する。
【0019】
【
図2】
図2は、様々な実施形態によるPM対立遺伝子キャリアの中断試験のためのFXS AGG PCRアッセイプラットフォームのブロック図を示す。
【0020】
【
図3】
図3は、様々な実施形態による、FXS AGG PCRアッセイプラットフォームおよび遺伝子型決定技術を使用したAGG遺伝子型決定のための例示的なフローを示す。
【0021】
【
図4A】
図4A~
図4Hは、様々な実施形態によるFXS AGG PCRアッセイプラットフォームおよび遺伝子型決定技術を使用したAGG遺伝子型決定のための例示的なフローを示す。
【
図4B】
図4A~
図4Hは、様々な実施形態によるFXS AGG PCRアッセイプラットフォームおよび遺伝子型決定技術を使用したAGG遺伝子型決定のための例示的なフローを示す。
【
図4C】
図4A~
図4Hは、様々な実施形態によるFXS AGG PCRアッセイプラットフォームおよび遺伝子型決定技術を使用したAGG遺伝子型決定のための例示的なフローを示す。
【
図4D】
図4A~
図4Hは、様々な実施形態によるFXS AGG PCRアッセイプラットフォームおよび遺伝子型決定技術を使用したAGG遺伝子型決定のための例示的なフローを示す。
【
図4E】
図4A~
図4Hは、様々な実施形態によるFXS AGG PCRアッセイプラットフォームおよび遺伝子型決定技術を使用したAGG遺伝子型決定のための例示的なフローを示す。
【
図4F】
図4A~
図4Hは、様々な実施形態によるFXS AGG PCRアッセイプラットフォームおよび遺伝子型決定技術を使用したAGG遺伝子型決定のための例示的なフローを示す。
【
図4G】
図4A~
図4Hは、様々な実施形態によるFXS AGG PCRアッセイプラットフォームおよび遺伝子型決定技術を使用したAGG遺伝子型決定のための例示的なフローを示す。
【
図4H】
図4A~
図4Hは、様々な実施形態によるFXS AGG PCRアッセイプラットフォームおよび遺伝子型決定技術を使用したAGG遺伝子型決定のための例示的なフローを示す。
【0022】
【
図5】
図5は、様々な実施形態による例示的なコンピューティングデバイスを示す。
【0023】
【
図6A】
図6Aおよび
図6Bは、試料S1~S5のFRAX AGG PCR CE長注入電気泳動図を示す。各試料名に続く数字は、各対立遺伝子の全リピート数を示す。緑色および赤色のピークサイズ注釈は、様々な実施形態に従って、それぞれ正常対立遺伝子およびPM対立遺伝子に割り当てられたAGGピークを表す。
【
図6B】
図6Aおよび
図6Bは、試料S1~S5のFRAX AGG PCR CE長注入電気泳動図を示す。各試料名に続く数字は、各対立遺伝子の全リピート数を示す。緑色および赤色のピークサイズ注釈は、様々な実施形態に従って、それぞれ正常対立遺伝子およびPM対立遺伝子に割り当てられたAGGピークを表す。
【0024】
【
図7A-1】
図7Aは、試料S2~S4のFRAX TRP-PCRアッセイCE電気泳動図を示し、様々な実施形態による各試料の正常な対立遺伝子における2つのAGG中断を示す。
【
図7A-2】
図7Aは、試料S2~S4のFRAX TRP-PCRアッセイCE電気泳動図を示し、様々な実施形態による各試料の正常な対立遺伝子における2つのAGG中断を示す。
【0025】
【
図7B】
図7Bは、様々な実施形態による、試料S2の各対立遺伝子由来のゲル精製GS-PCR産物を使用したAGG PCRアッセイのCE電気泳動図を示す。
【0026】
【
図8A】
図8Aは、様々な実施形態による、正常対立遺伝子およびPM対立遺伝子において2つおよび5つのAGG中断が同定されたFRAX AGG PCRアッセイを示す。
【0027】
【
図8B】
図8Bは、様々な実施形態に従って、159bpのAGGピークが両方の対立遺伝子に存在することが示唆されたTRP-PCR CE電気泳動図を示す。
【0028】
【
図8C】
図8Cは、様々な実施形態による、試料S17の分離された正常対立遺伝子およびPM対立遺伝子を分析し、それぞれ正常対立遺伝子およびPM対立遺伝子における2つおよび6つのAGG中断を同定するFRAX AGG PCRのCE電気泳動図を示す。
【0029】
【
図9A】
図9Aは、様々な実施形態による、正常対立遺伝子およびPM対立遺伝子において3つおよび4つのAGG中断が同定されたFRAX AGG PCRアッセイを示す。
【0030】
【
図9B】
図9Bは、様々な実施形態による、159bpのAGGピークが正常対立遺伝子またはPM対立遺伝子のいずれかに存在することを示したTRP-PCR CE電気泳動図を示す。
【0031】
【
図9C】
図9Cは、試料S23の各対立遺伝子由来のゲル精製GS-PCR産物を使用したFRAX AGG PCRのCE電気泳動図を示し、様々な実施形態による、正常対立遺伝子およびPM対立遺伝子における2つおよび5つのAGG中断をそれぞれ同定する。
【0032】
【
図10】
図10は、様々な実施形態による、AGGを含まない男性PMキャリア試料のFRAX TRP-PCR CE電気泳動図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
添付の図面において、類似の構成要素および/または特徴は、同じ参照標識を有することができる。さらに、同じ種類の様々な構成要素は、参照標識の後にダッシュおよび類似の構成要素を区別する第2の標識を続けることによって区別することができる。本明細書で第1の参照標識のみが使用される場合、説明は、第2の参照標識に関係なく、同じ第1の参照標識を有する同様の構成要素のいずれにも適用可能である。
【0034】
詳細な説明
以下の説明は、好ましい例示的な実施形態のみを提供し、本開示の範囲、適用性または構成を限定することを意図しない。むしろ、好ましい例示的な実施形態の以下の説明は、様々な実施形態を実施するための可能な説明を当業者に提供する。添付の特許請求の範囲に記載の趣旨および範囲から逸脱することなく、要素の機能および配置に様々な変更を加えることができることが理解される。
【0035】
以下の説明では、実施形態の完全な理解を提供するために具体的な詳細が示されている。しかしながら、これらの具体的な詳細なしで実施形態を実施することができることが理解されよう。例えば、回路、システム、ネットワーク、プロセス、および他の構成要素は、実施形態を不必要に詳細に不明瞭にしないために、ブロック図形式の構成要素として示されてもよい。他の例では、実施形態を不明瞭にすることを避けるために、周知の回路、プロセス、アルゴリズム、構造、および技術を不必要な詳細なしで示すことができる。
【0036】
また、個々の実施形態は、フローチャート、フロー図、データフロー図、構造図、またはブロック図として示されるプロセスとして説明され得ることに留意されたい。フローチャートまたは図は、動作を順次プロセスとして説明することができるが、動作の多くは並列にまたは同時に実行されてもよい。さらに、動作の順序は並べ替えられてもよい。プロセスは、その動作が完了したときに終了するが、図に含まれていない追加の工程を有することができる。プロセスは、方法、機能、手順、サブルーチン、サブプログラムなどに対応することができる。プロセスが関数に対応する場合、その終了は、呼び出し関数またはメイン関数への関数の返しに対応することができる。
I.序論
【0037】
従来のシステムは、大きなCGGリピート伸長を含有する遺伝子座の対立遺伝子を同定するために、CEによって分離されたCGGリピートプライム(TRP)-PCRを使用する。AGG中断の存在下では、CGGリピートプライマーの標的配列に対する親和性が低下し、それによってPCR効率が低下し、CE電気泳動図に「ディップ」が生じる。TRP-PCR CEデータに基づいて、各AGGの数および位置を間接的に計算することが可能であり得る。しかしながら、CGGリピート領域の開始から同様の距離に位置するAGG中断を段階的かつ正確に検出することは非常に困難である。これらの欠点を克服するために、いくつかの従来のシステムは、直接的なAGG検出のためにGGAプライムPCRを利用し、続いて手動遺伝子型決定分析を利用する。しかしながら、GGAプライムPCRは、非常に高いバックグラウンドを生成する可能性があり、典型的には、より厳格な品質基準を満たさない。さらに、従来の手動遺伝子型決定分析は、パフォーマンスが悪く、誤りが非常に起こりやすい。
【0038】
これらの制限および問題に対処するために、本明細書に記載のFXS AGG PCRアッセイは、FMR1遺伝子の5’UTRのCGGリピート領域を標的とし、すべての対立遺伝子上のCGGリピート内のすべてのAGG中断を検出する。FXS AGG PCRアッセイは、CGGリピートと、CGGリピートのAGG中断に特異的に結合する3’末端に「A」ヌクレオチドの両方を含むプライマー、ならびに検出のためのリバースプライマーを利用する(例えば、
図1Aを参照されたい)。キャピラリー電気泳動(CE)を使用して、電気泳動図上でAGG中断の位置に対応する個々のピークとしてこれらのアンプリコンを分離することができる(例えば、
図1Bを参照されたい)。いくつかの例では、1またはそれを超えるエンドプライマー(例えば、フォワードおよび/またはリバースプライマー)を蛍光タグ(例えば、フルオレセインアミダイト(FAM))で標識して、CEによる分離を助けることができる。他の例では、蛍光標識は、PCR伸長中に組み込まれる標識塩基を添加することによって提供され得る。他の例では、蛍光標識は使用されず、PCR産物は、高分離能CEによって分離され得る非タグ化プライマーによって生成される。AGGは、典型的には、同じ対立遺伝子上に位置するとき、リピート領域内で約30bpの周期性で生じるので、AGGのフェージングは、FXS AGG PCRおよび遺伝子特異的(GS)PCRアッセイの両方の結果を利用して可能である。ピーク同定技術を使用して、FXS GSおよびAGG PCR CEの生データのピークを同定することができる。生データは、分析された各PCRアンプリコンのサイズおよび存在量を、それぞれピークサイズ(塩基対)および高さ(例えば、相対蛍光単位(RFU))として含み得る。データ分析を容易にするために、本明細書に記載のFXS AGG遺伝子型決定技術は、FXS GSおよびAGG PCR CEの生データを処理し、各対立遺伝子のAGG遺伝子型を決定する。
【0039】
FXS AGG遺伝子型決定技術は、最初にサイジング標準およびピーク高さをチェックして、FXS GSおよびAGG PCR CEの生データ品質が、分析において許容され得ることを確実にする。次いで、FXS AGG遺伝子型決定技術は、FXS GSおよびAGG PCR CE生データを使用して、各対立遺伝子(例えば、正常対立遺伝子およびPM対立遺伝子)のCGGリピート数を計算する。各対立遺伝子に対するAGG中断の数および位置を決定するために、本技術は、通常は正常な対立遺伝子に対応する、より少ないリピートの数を有する対立遺伝子上のAGGピークを反復的に探索および同定することをさらに含む。ピーク出力表からこの対立遺伝子に割り当てられたすべてのAGGピークを除去した後、本技術は、PM対立遺伝子についてのプロセスをリピートすることをさらに含む。このようにして、同じピークが両方の対立遺伝子に割り当てられることが防止され、そうでなければPM対立遺伝子の伸長リスクを過小評価する可能性がある。ピークが同定され、対立遺伝子に割り当てられると、技術は、各対立遺伝子上のAGG遺伝子型を評価することをさらに含む。いくつかの実施形態では、各対立遺伝子上の最後のAGG中断の下流のCGGリピートの数は、以下の式を使用して計算される。(P-132)÷3-1(P:各対立遺伝子上の最小AGG中断のピークサイズ)。いくつかの実施形態では、任意の2つの隣接するAGG中断(存在する場合)によって分離されたCGGリピートの数は、以下の式を使用して計算される。(Pn-Pn-1)÷3-1(Pn-Pn-1:隣接するAGG中断のピークサイズ)。いくつかの実施形態では、最初のAGG中断に先行するCGGリピートの数は、GS-PCRアッセイによって決定される対立遺伝子の総CGGリピート数から、最終AGGの下流のCGGリピートの数、隣接するAGG中断を分離するCGGリピートの総数、およびAGG中断の総数を減算することによって決定される。
【0040】
本明細書で使用される場合、「実質的に(substantially)」、「およそ(approximately)」、および「約(about)」という用語は、当業者によって理解されるように、大部分が特定されるものであるが、必ずしも完全には特定されないもの(および完全に特定されるものを含む)として定義される。任意の開示された実施形態では、「実質的に」、「およそ」、または「約」という用語は、指定されたものの「[パーセンテージ]以内」で置き換えることができ、パーセンテージは、0.1、1、5、および10%を含む。本明細書で使用される場合、アクションが何かに「基づく」場合、これは、アクションが何かの少なくとも一部に少なくとも部分的に基づくことを意味する。
【0041】
本明細書に開示されるFXS AGG遺伝子型決定技術は、本明細書に具体的に記載されるFXS GSおよびAGG PCR CE生データと比較して、他のタイプのFXS PCR CE生データを評価するために適用できることが理解されよう。CGGリピートおよびAGG中断を同定するために、他のタイプのFXS PCRが企図されることも理解されよう。例えば、代替的または追加的に、CGGリピートおよび/またはAGG中断を同定するために、非アンカープライムPCRを使用してもよい。
II.FXS AGG PCRアッセイ技術
【0042】
本明細書に記載の1またはそれを超える実施形態は、プログラムモジュール、エンジン、または構成要素を使用して実施することができる。プログラムモジュール、エンジン、またはコンポーネントは、プログラム、サブルーチン、プログラムの一部、または1もしくはそれを超える記載されたタスクもしくは機能を実行することができるソフトウェアコンポーネントもしくはハードウェアコンポーネントを含むことができる。本明細書で使用される場合、モジュールまたはコンポーネントは、他のモジュールまたはコンポーネントとは独立してハードウェアコンポーネント上に存在することができる。あるいは、モジュールまたはコンポーネントは、他のモジュール、プログラムまたは機械の共有要素またはプロセスであり得る。
図2は、PM対立遺伝子キャリア(例えば、55~90のCGGリピート伸長を有する試料)の中断試験のためのFXS AGG PCRアッセイプラットフォーム200のブロック図を示し、様々な実施形態による分析装置システム205の様々なサブシステムを実装するために使用され得る1またはそれを超えるプロセッサによって実行可能なモジュール、エンジン、またはコンポーネント(例えば、プログラム、コード、または命令)を示す。分析装置システム205は、遺伝子分析装置(DNAシーケンサとしても知られる)であり、DNAをシーケンシングし、様々な用途のために断片を分析することができる自動化されたシステムである。いくつかの例では、遺伝子分析装置は、プローブに結合したDNA断片がポリマーを通って移動し、蛍光発光が測定されるキャピラリー電気泳動に基づくシステムである。複数のキャピラリーのアレイは、マルチウェルマイクロプレート形式での試料ローディングを可能にする。他の例では、遺伝子分析装置は、迅速な配列決定および分析のためのパイロシーケンシング技術ベースのシステムである。パイロシーケンシングは、「合成によるシーケンシング」原理に基づくDNAシーケンシングの方法であり、シーケンシングは、DNAポリメラーゼによって組み込まれたヌクレオチドを検出することによって行われる。パイロシーケンシングは、ピロリン酸塩が放出されたときの連鎖反応に基づく光検出に依存する。モジュール、エンジン、またはコンポーネントは、非一時的コンピュータ媒体に記憶されてもよい。必要に応じて、モジュール、エンジン、または構成要素のうちの1またはそれを超えるものをシステムメモリ(例えば、RAM)にロードし、分析装置システム205の1またはそれを超えるプロセッサによって実行することができる。
図2に示す例では、遺伝子地図製作者サブシステム210およびAGG遺伝子型決定サブシステム215を実装するためのモジュール、エンジン、またはコンポーネントが示されている。
【0043】
図2はまた、化学物質、薬物、または他の材料もしくは生物学的物質が試験され、水、直接換気、および専用の配管ユーティリティを必要として分析される実験室を含む湿式実験室サブシステム220を示す。FXS AGG PCRアッセイプラットフォーム200は、ブロック227において、湿式実験室サブシステム220内で1つまたはそれを超える試料225を得ることを含む。いくつかの例では、試料225のバッチは同時に処理され、例えば、20超、50超、または100超の試料は、FXS AGG PCRアッセイプラットフォーム200を使用して同時に処理することができる。例えば、96ウェルプレートまたは384ウェルプレートなどの複数のウェルアッセイプレートは、FXS AGG PCRアッセイプラットフォーム200を使用して、20超、50超、または100超の試料を同時に分析することができる。特定の例では、複数のアッセイプレートを構築し、次いで、キャピラリー電気泳動装置のプレートスタッカーに並べて、アッセイプレートを連続的に注入することができる。いくつかの例では、試料225は、核酸を含む。いくつかの例では、試料225は、女性患者から得られた核酸を含む。いくつかの例では、試料225は、女性患者から得られた核酸を含む全血または羊水である。特定の例では、FRAX AGG PCRアッセイは、脆弱X PCR診断アッセイからの反射アッセイであり、反射アッセイは、脆弱X PCR診断アッセイが、FMR1遺伝子のPM対立遺伝子において少なくとも45~100のCGGリピート(例えば、55~90のCGGリピート)を有する1つまたは複数の試料225を同定したときに始動される。特定の例では、反射アッセイは、脆弱X PCR診断アッセイが、FMR1遺伝子のPM対立遺伝子において55~90リピートを有する1つまたは複数の試料225を同定したときに始動される。
【0044】
湿式実験室サブシステム220内のブロック230において、GS PCR 235およびAGG中断PCR 240(AGG PCR)を含むFXS AGG PCRアッセイが行われる。アッセイの実行は、試料225を希釈すること(例えば、Tris-HClを使用すること)、希釈された試料225を、アッセイシステムにおけるGS PCR 235およびAGG PCR 240のための試薬/プライマーと混合すること(例えば、PCR試験管またはウェルプレート)、GS PCR 235およびAGG PCR 240の両方のためのPCR増幅(例えば、反応サイクル)、PCR後のクリーンアップ(例えば、PCR産物の精製)、およびPCR産物の分離(例えば、キャピラリー電気泳動またはLonza MetaPhor Agaroseなどの高分離ゲル)を含み得る。いくつかの例では、FXS AGG PCRアッセイをPCRプレート(例えば、96ウェルPCRアッセイプレート)で行う。GS PCR 235およびAGG PCR 240は、同じPCRプレート上で並行して実施されてもよく、コントロールは、品質管理のためにPCRプレート上にロードされてもよい。GS PCR 235は、FMR1遺伝子のCGGリピートを含む領域を増幅し、FMR1遺伝子内のリピートされたCGGトリヌクレオチド配列の長さを決定するために使用される。この領域のGC含有量が高いため、GCリッチPCRシステムを調製し、信頼性が高くロバストなGS PCR増幅に使用することができる。いくつかの例では、GCリッチPCRシステムは、GCリッチPCR反応緩衝液およびGCリッチ分離能溶液を含む。GCリッチPCRシステムはまた、プルーフリーディング(3’-5’エキソヌクレアーゼ)活性を有する熱安定性酵素である熱安定性Taq DNAポリメラーゼおよびTgo DNAポリメラーゼの酵素ブレンドを含み得る。GCリッチPCR反応緩衝液、GCリッチ分離能溶液および添加剤としてのジメチルスルホキシド(DMSO)は、この困難なCGGリピート領域のロバストな増幅を可能にする。AGG PCR 240は、CGGリピート領域を標的とし、すべての対立遺伝子上のその中のすべてのAGG中断を検出する。AGG PCRシステムは、Taq DNAポリメラーゼおよびTgo DNAポリメラーゼが、最小バックグラウンドでのAGG特異的配列のロバストな増幅のためにKAPA2G Robust HotStart DNAポリメラーゼなどの他のDNAポリメラーゼによって置き換えられ得ることを除いて、GCリッチPCRシステムに基づいている。
【0045】
Taq DNAポリメラーゼ、Tgo DNAポリメラーゼ、およびKAPA2G Robust HotStart DNAポリメラーゼなどのDNAポリメラーゼは、DNA合成の出発点を提供する短いヌクレオチド配列であるプライマーが与えられた場合にのみDNAを作製することができる。いくつかの例では、GS PCR 235は、フォワードプライマーFRAX-F1およびリバースプライマーFRAX-R-6を使用して標的領域(コピーされるべきCGGリピート領域)に隣接する。いくつかの例では、GS PCR 235は、FRAX-R-6FAMなどの蛍光標識リバースプライマーを使用する。いくつかの例では、AGG PCR 240は、フォワードプライマーFXS-AGG-Forwを使用し、これは3つのCGGリピートと3’末端に「A」ヌクレオチドとを含有するキメラプライマーである。フォワードプライマーFXS-AGG-Forwは、CGGリピート内のAGG中断に特異的に結合し、それによって様々なサイズのアンプリコンを産生する。いくつかの例では、AGG PCR 240は、GC PCR 235と同じFRAX-R-6FAMなどの蛍光標識リバースプライマーを使用する。他の例では、AGG PCR 240は、GC PCR 235のものとは異なる蛍光標識リバースプライマー、例えばFRAX-R-*FAMを使用する。
【0046】
いくつかの例では、PCR後のクリーンアップは、GS PCR 235およびAGG PCR 240産物を磁気ビーズと混合すること、70%エタノールなどの洗浄液で洗浄すること、風乾すること、および精製PCR産物245を溶出してシグナル対ノイズ比を高めることを含む。増幅およびPCR後のクリーンアップの後、精製されたPCR産物245を分析装置システム205(例えば、蛍光ベースの分離機器システム)にロードすることができ、CGGリピートおよびAGG中断などの増幅産物は、ブロック250で決定され、GSおよびAGG PCR CE生データ255として出力される。いくつかの例では、GS PCR 235は、大きなCGGリピートを検出するように最適化され、例えば、最大300のCGGリピート(例えば、262リピート)がGS PCR 235によって一貫して増幅および検出され得る。特定の例では、精製されたPCR産物を、CEを使用して検出または分離し、アンプリコンを「スタッター」ピークとして可視化し、各ピークを1つのCGGリピートによって分離する。特定の実施形態では、長い注入時間または増加した電圧などの第1のパラメータは、より大きなサイズの対立遺伝子(例えば、69のCGGを超える)を検出するために使用され、一方、短い注入時間または減少した電圧などの第2のパラメータは、より小さなサイズの対立遺伝子(例えば、69のCGG以下の)の正確なサイジングのために使用される。伸長対立遺伝子は、スタッターが55のCGGリピートを超えて伸長する場合に検出される場合があり、PM対立遺伝子は、スタッターが45と200のCGGリピートの間に伸長する場合に検出され得る。
【0047】
分析装置システム205内のブロック260において、分離モジュール265(例えば、生のCEデータを取得し、GeneMapper(商標)などの断片サイズおよび量を決定することができる任意のソフトウェアおよび/またはハードウェア)を使用して、前に確立されたQCメトリックに基づいてGSおよびAGG PCR CE生データ255のピークを同定する。いくつかの例では、AGG PCRアッセイとGS PCRアッセイの両方が、遺伝子地図製作者モジュール265の同じパラメータ(例えば、同じ長い注入または増加した電圧)CE分析方法を使用して、GSおよびAGG PCR CE生データ255のピークを同定する。遺伝子地図製作者モジュール265は、分析された各PCRアンプリコンのサイズおよび存在量をピークサイズおよび高さとしてそれぞれ出力し、次いでブロック270で、AGG遺伝子型決定サブシステム215のAGG遺伝子型決定モジュール275によって処理される。AGG遺伝子型決定モジュール260は、まず、サイジング基準およびピーク高さをチェックして、GSおよびAGG PCR CE生データ255の品質が分析に許容され得ることを確実にする。次いで、AGG遺伝子型決定モジュール275は、GS-PCRピークデータを使用して、各対立遺伝子のCGGリピート数を計算する。各対立遺伝子についてのAGG中断の数および位置を決定するために、AGG遺伝子型決定モジュール275は、通常は正常な対立遺伝子に対応する、より少ないリピートの数を有する対立遺伝子上のAGGピークを反復的に探索および同定することによって開始する。遺伝子地図製作者モジュール265のピーク出力表からこの対立遺伝子に割り当てられているすべてのAGGピークを除去した後、AGG遺伝子型決定モジュール275は、1またはそれを超えるPM対立遺伝子についてプロセスをリピートする。このようにして、同じピークが正常な対立遺伝子およびPM対立遺伝子の両方に割り当てられることが防止され、そうでなければ1またはそれを超えるPM対立遺伝子の伸長リスクを過小評価する可能性がある。次いで、AGG遺伝子型決定モジュール275は、各対立遺伝子のCGGリピート数ならびに各対立遺伝子のAGG中断の数および位置を使用して、各対立遺伝子のAGG遺伝子型を決定する。各対立遺伝子のAGG遺伝子型および各試料の任意選択のリスク結果は、分析装置システム205によって最終結果280として出力される。いくつかの例では、AGG遺伝子型決定モジュール275によって使用されるすべての閾値およびQCパラメータは、別個の構成ファイルに維持され、任意の数のFXS AGG PCRアッセイにわたって使用することができる。
III.AGG遺伝子型決定技術
【0048】
図3は、FXS AGG PCRアッセイプラットフォームおよび遺伝子型決定技術(例えば、
図2に関して記載されるFXS AGG PCRアッセイプラットフォーム200)を使用したAGG遺伝子型決定のためのプロセス300を示す。プロセス300はブロック305で開始し、生データは試料に対して行われたFXSアッセイから得られる。いくつかの例では、生データは、CEによって分離されたGS PCRデータおよびAGG中断PCRデータを含む。ブロック310において、生データにおいて同定された第1の対立遺伝子について、予想AGGピークサイズが決定される。いくつかの例では、第1の対立遺伝子は、最も少ないリピートの数を有する対立遺伝子または正常な対立遺伝子である。特定の例では、予想AGGピークサイズは、式(1)を用いて計算される。
予想AGGピークサイズ(塩基対)=((N-L)*3)+A
式(1)
式中、Nは、対立遺伝子(例えば、最も少ないリピートの数を有する対立遺伝子)におけるCGGリピートの数であり、Lは、最初のAGG中断の(CGGリピートの数における)予想位置であり、8と10のCGGリピートとの間、例えば9のCGGリピートであってよく、3は、各CGGリピートに対する塩基対の数であり、Aは、リピートのないPCRアンプリコンのサイズであり、いくつかの例では、PCRアンプリコンは132塩基対を有し、したがってA=132である。
【0049】
ブロック315および320において、生データを反復的に探索して、予想AGGピークサイズに基づいて決定された探索空間の第1のセットを使用して、第1の対立遺伝子上の1またはそれを超えるAGGピークを同定する。探索空間の第1のセットは、予想AGGピークサイズに基づいて決定された1またはそれを超える探索空間を含み得る。いくつかの例では、探索および同定は、(i)ブロック315において、予想AGGピークサイズに基づいて、第1の対立遺伝子についての探索空間の第1のセットの第1の探索空間を決定することと、(ii)ブロック315において、生データを探索し、第1の探索空間を使用して第1の対立遺伝子上の初期AGGピークを同定することと、(iii)ブロック320において、第1の対立遺伝子上の初期AGGピークのピークサイズに基づいて、第1の対立遺伝子についての第2の探索空間を決定し、ブロック320において、生データを反復的探索し、第2の探索空間を使用して、第1の対立遺伝子上の1またはそれを超える追加のAGGピークを同定することと、を含む。探索が、ブロック315において、第1の探索空間を使用して第1の対立遺伝子上の初期AGGピークを同定することにならない場合、ブロック325において、第1の探索空間は修正されてよく(例えば、30bpsは、予想AGGピークサイズから減算され得る)、ブロック315および320は修正された第1の探索空間を用いて実行され得る。
【0050】
第1の探索空間は、第1のピークサイズ範囲に基づいて決定され得る。いくつかの例では、第1のピークサイズ範囲は、予想AGGピークサイズの周りの塩基対の所定量またはサイズ範囲調整閾値(+/-)である。特定の例では、所定の量またはサイズ範囲調整閾値は、予想される最初のAGGピークサイズの+/-12または15塩基対である。第2の探索空間は、新しいまたは第2のピークサイズ範囲に基づいて決定することができる。いくつかの例では、第2のピークサイズ範囲は、同定された初期ピークのピークサイズ付近の塩基対の所定量またはサイズ範囲調整閾値(+/-)である。特定の例では、所定の量またはサイズ範囲調整閾値は、同定された初期ピークのピークサイズの+/-12または15塩基対である。他の例では、第2のピークサイズ範囲は、修正されたピークサイズの周りの塩基対の所定の量またはサイズ範囲調整閾値(+/-)である(ピークサイズ調整閾値は、同定された初期ピークのピークサイズから減算される)。いくつかの実施形態では、ピークサイズ調整閾値は、15~50bps(例えば、30bps)である。特定の例では、所定の量またはサイズ範囲調整閾値は、改変されたピークサイズの+/-12または15塩基対である(24または30bpsが、同定された初期ピークのピークサイズから減算される)。
【0051】
ブロック315、320および325のプロセスは、生データ内のすべてのピークデータおよび対立遺伝子が評価されるまで、各追加の対立遺伝子(例えば、1またはそれを超えるPM対立遺伝子)についてリピートされ得る。例えば、生データを反復的に探索して、予想AGGピークサイズに基づいて決定された探索空間の第2のセットを使用して、第2の対立遺伝子上の1またはそれを超えるAGGピークを同定することができる。探索空間の第2のセットは、予想AGGピークサイズに基づいて決定された1またはそれを超える探索空間を含み得る。特定の例では、探索空間の第2のセットの1またはそれを超える探索空間の一部または全部は、探索空間の第1のセットの1またはそれを超える探索空間と同じである。いくつかの例では、探索および同定は、(i)予想AGGピークサイズに基づいて、第2の対立遺伝子についての探索空間の第2のセットの第1の探索空間を決定することと、(ii)生データを探索し、第2の探索空間を使用して第2の対立遺伝子上の初期AGGピークを同定することと、(iii)第2の対立遺伝子上の初期AGGピークのピークサイズに基づいて、第2の対立遺伝子についての第2の探索空間を決定することと、(iv)生データを反復的に探索し、第2の探索空間を使用して第2の対立遺伝子上の1またはそれを超える追加のAGGピークを同定することと、を含む。探索の結果、第1の探索空間を使用して第2の対立遺伝子上の初期AGGピークが同定されない場合、第1の探索空間は修正されてよく(例えば、24bpsは、予想AGGピークサイズから減算され得る)、処理は修正された第1の探索空間で継続し得る。
【0052】
第2の探索空間は、第2のピークサイズ範囲に基づいて決定され得る。いくつかの例では、第2のピークサイズ範囲は、予想AGGピークサイズの周りの塩基対の所定量またはサイズ範囲調整閾値(+/-)である。特定の例では、所定の量またはサイズ範囲調整閾値は、予想される最初のAGGピークサイズの+/-12または15塩基対である。第2の探索空間は、新しいまたは第2のピークサイズ範囲に基づいて決定することができる。いくつかの例では、第2のピークサイズ範囲は、同定された初期ピークのピークサイズ付近の塩基対の所定量またはサイズ範囲調整閾値(+/-)である。特定の例では、所定の量またはサイズ範囲調整閾値は、同定された初期ピークのピークサイズの+/-12または15塩基対である。他の例では、第2のピークサイズ範囲は、修正されたピークサイズの周りの塩基対の所定の量またはサイズ範囲調整閾値(+/-)である(ピークサイズ調整閾値は、同定された初期ピークのピークサイズから減算される)。いくつかの実施形態では、ピークサイズ調整閾値は、15~50bps(例えば、24bps)である。特定の例では、所定の量またはサイズ範囲調整閾値は、改変されたピークサイズの+/-12または15塩基対である(24または30bpsが、同定された初期ピークのピークサイズから減算される)。いくつかの例では、第1の対立遺伝子または任意の他の前の対立遺伝子上の1またはそれを超えるAGGピークが同定されると、生データを反復的に探索し、第2の対立遺伝子または別の後続の対立遺伝子上の1またはそれを超えるAGGピークを同定する前に、第1の対立遺伝子または任意の他の前の対立遺伝子上の1またはそれを超えるAGGピークが生データから除去され得る。
【0053】
ブロック330において、ブロック315、320および325で評価された各対立遺伝子の遺伝子型がAGG遺伝子型決定される。いくつかの例では、遺伝子型決定は、(i)GS PCRデータおよび対応する対立遺伝子で同定された1またはそれを超えるAGGピークに基づいて、第1の対立遺伝子、第2の対立遺伝子または任意の他の対立遺伝子上の最後のAGG中断の下流のCGGリピートの数を決定することと、(ii)GS PCRデータおよび対応する対立遺伝子で同定された1またはそれを超えるAGGピークに基づいて、第1の対立遺伝子、第2の対立遺伝子または任意の他の対立遺伝子上の任意の2つの隣接するAGG中断によって分離されたCGGリピートの数を決定すること(存在する場合)と、(iii)GS PCRデータおよび対応する対立遺伝子で同定された1またはそれを超えるAGGピークに基づいて、第1の対立遺伝子、第2の対立遺伝子または任意の他の対立遺伝子上の最初のAGG中断に先行するCGGリピートの数を決定することと、を含む。いくつかの例では、遺伝子型決定は、最後のAGG中断の下流のCGGリピートの数、任意の2つの隣接するAGG中断によって分離されたCGGリピートの数(存在する場合)、および最初のAGG中断に先行するCGGリピートの数に基づいて、第1の対立遺伝子、第2の対立遺伝子、または任意の他の対立遺伝子のAGG遺伝子型を生成することをさらに含む。
【0054】
必要に応じて、ブロック335において、ブロック330で決定された1またはそれを超える対立遺伝子の遺伝子型(例えば、第1の対立遺伝子、第2の対立遺伝子、または第1の対立遺伝子と第2の対立遺伝子の両方)を使用して、試料に関連する対象のリスクスコアを決定する。リスクスコアは、対象が遅発性神経変性疾患である脆弱X関連振戦/運動失調症候群(FXTAS)もしくは脆弱X関連原発性卵巣機能不全(FXPOI)を発症するリスク、または完全変異対立遺伝子を対象の子孫に伝達するリスクもしくはそれらの任意の組み合わせを同定する。ブロック340において、ブロック330で決定された1またはそれを超える対立遺伝子について決定されたAGG遺伝子型が出力され得る。ブロック330で決定された1またはそれを超える対立遺伝子について決定されたAGG遺伝子型および任意選択のリスクスコアの出力は、エンドユーザに出力を提供することおよび/またはストレージデバイスに出力を記録すること(例えば、ユーザインターフェース上に出力を表示すること、および/またはデータベースの結果ファイルに出力を記憶すること)を含み得る。
【0055】
図4A~
図4Hは、FXS AGG PCRアッセイプラットフォームおよび遺伝子型決定技術(例えば、FXS AGG PCRアッセイプラットフォーム200ならびに
図2および
図3に関して記載される技術)を使用したAGG遺伝子型決定のための処理の一例を示す簡略化されたフローチャート400を示す。プロセス400は、以下のセクションに分割される:(i)データ準備(
図4A)、(ii)最短のまたは正常な対立遺伝子のアルゴリズムフロー(
図4Bおよび
図4C)、(iii)PM対立遺伝子のアルゴリズムフロー(
図4C、
図4D、
図4E、
図4F、
図4G)、および(iv)各対立遺伝子のAGG遺伝子型フロー(
図4H)。
データの準備
【0056】
図4Aは、ブロック402において、各PCRアンプリコンのサイズおよび存在量(例えば、ピークサイズおよび高さ)を含むGSおよびAGG PCR CE生データが、1つまたはそれを超える試料について得られることを示す。いくつかの例では、初期CGGデータセット(GSおよびAGG PCR CEの生データの一部)が、第1のパラメータ(例えば、短い注入時間)分析および第2のパラメータ(例えば、長い注入時間)分析のそれぞれに対して作成される。第1のパラメータ分析は最大3つの対立遺伝子を返すことができ、第2のパラメータ分析は最大2つの対立遺伝子を返すことができる。第1のパラメータ分析および第2のパラメータ分析の各々のために作成された初期CGGデータセットの組み合わせを含む最終CGGデータセットを作成することができる。例えば、(i)短いCGG(0~59リピート)に関するピークのチェックを行って、重複が選択されないことを確認してもよく、(ii)長いCGG(60~90リピート)に関するチェックを行って、長い対立遺伝子が短い対立遺伝子と重複しないこと(例えば、58リピートのショートコールと60リピートのロングコール)を確認してもよく、(iii)長いCGGに関するピークのチェックを行って、重複が選択されないことを確認してもよい。特定の例では、+/-1~5CGGリピート、例えば2CGGリピートのピークバッファを、短いCGGおよび長いCGGの重複ピークのチェック中に使用することができる。重複および重複がチェックされ、除去されると、短いCGGおよび長いCGGを含む最終CGGデータセットが作成され得る。いくつかの例では、第1のパラメータ分析と第2のパラメータ分析との組み合わせを含む最終AGGデータセット(GSおよびAGG PCR CE生データの一部)が作成される。
【0057】
ブロック404において、最終CGGデータセットおよびAGGデータセット内のサイジング基準およびピーク高さをチェックして、GSおよびAGG PCR CEの生データ品質が分析に許容され得ることを確認する。いくつかの例では、チェックは、最終CGGデータセットおよびAGGデータセット内のサイジング基準およびピーク高さを、1もしくはそれを超える品質管理(QC)パラメータまたはメトリックと比較して、GSおよびAGG PCR CEの生データ品質が分析に許容され得るかどうかを決定することを含むことができる。特定の例では、QCパラメータまたは測定基準は、2より大きい(>2)125/1000の高さ比の赤色染料(サイズマーカー)のQCチェック閾値を含む。追加的または代替的に、AGG特異的ピーク高さQCパラメータまたはメトリックは、AGG特異的ピークをスクリーニングするための最小RFU閾値を含み得る。正常な対立遺伝子は、1000RFUより大きい(>1000)RFU閾値を有し得る。一方、必要に応じて、PM対立遺伝子は、正常な対立遺伝子における最低AGGピークの10%超(>10%)、正常な対立遺伝子においてピークが検出されない場合、200RFUより大きい(>200)のRFU閾値を有し得る。最終CGGデータセットおよびAGGデータセット内のサイジング基準およびピーク高さがQCパラメータまたはメトリックを満たす場合、最終CGGデータセットを使用して、ブロック406において各対立遺伝子(例えば、正常または短い対立遺伝子、およびPMまたは長い対立遺伝子)のCGGリピート数を計算する。最終CGGデータセットおよびAGGデータセット内のサイジング基準およびピーク高さがQCパラメータまたはメトリックを満たさない場合、ブロック408において、試料のアッセイ、GSおよびAGG PCR CE生データ、ならびに/またはGSおよびAGG PCR CE生データからの各PCRアンプリコンのサイズおよび存在量(例えば、ピークサイズおよび高さ)が拒否され、プロセスは終了する。
【0058】
ブロック406において、各対立遺伝子からのCGGリピートの計算された数が所定の範囲内にあるかどうかに関する決定が行われる。いくつかの例では、FXS AGG PCRアッセイは、脆弱X PCR診断アッセイからの反射アッセイであり、反射アッセイは、脆弱X PCR診断アッセイが、FMR1遺伝子のPM対立遺伝子において少なくとも45~100のCGGリピート(例えば、55~90のCGGリピート)を有する1つまたは複数の試料を同定したときに始動される。特定の例では、反射アッセイは、脆弱X PCR診断アッセイが、FMR1遺伝子のPM対立遺伝子において55~90リピートを有する1つまたは複数の試料225を同定したときに始動される。したがって、40~60リピートの最小CGG閾値(MinCGG)および75~110リピートの最大CGG閾値(MaxCGG)を設定して、FMR1遺伝子のPM対立遺伝子において少なくとも40~110のCGGリピート(例えば、55~90のCGGリピート)を有する1つまたは複数の試料に対してのみAGG遺伝子型決定が確実に行われるようにすることができる。特定の実施形態では、MinCGG閾値は55リピートに設定され、MaxCGG閾値は90リピートに設定され、CGGリピートの数の所定の範囲は55~90リピートの間である(90超のリピートを有するPM対立遺伝子の伸長リスクは、AGG中断の数にかかわらず50%超である)。最終CGGデータセットにおいて同定されたCGGリピートの数が所定の範囲内にある場合、AGG遺伝子型決定プロセスは、
図4Bに示される正常または短い対立遺伝子アルゴリズムフローに続く。最終CGGデータセットにおいて同定されたCGGリピート回数が所定の範囲外である場合、ブロック410においてCGGリピート回数が出力され、プロセスは終了する。ブロック410において、AGG遺伝子型決定が実行されなかったことを述べるメッセージと共にCGGリピートの数を出力することができる。CGGリピート回数および任意選択のメッセージの出力は、エンドユーザに出力を提供すること、および/またはストレージデバイス(例えば、ユーザインターフェース上に出力を表示すること、および/またはデータベースの結果ファイルに出力を記憶すること)に出力を記録することを含むことができる。
正常な対立遺伝子アルゴリズムフロー
【0059】
各対立遺伝子に対するAGG中断の数および位置を決定するために、プロセスは、通常は正常な対立遺伝子に対応する、より少ないリピートの数を有する対立遺伝子上のAGGピークを反復的に探索および同定することによって開始する。
図4Bに示されるように、ブロック412において、予想AGGピークサイズが対立遺伝子について計算される。予想AGGピークサイズは、最も少ないCGGリピートの数を有する対立遺伝子について計算され得る(例えば、正常な対立遺伝子)。いくつかの例では、予想AGGピークサイズは、式(1)を使用して計算される。
予想AGGピークサイズ(塩基対)=((N-L)*3)+A
式(1)
式中、Nは、対立遺伝子(例えば、最も少ないリピートの数を有する対立遺伝子)におけるCGGリピートの数であり、Lは、最初のAGG中断の(CGGリピートの数における)予想位置であり、8と10のCGGリピートとの間、例えば9のCGGリピートであってよく、3は、各CGGリピートに対する塩基対の数であり、Aは、リピートのないPCRアンプリコンのサイズであり、いくつかの例では、PCRアンプリコンはリピートのない132塩基対を有し、したがってA=132である。
【0060】
ブロック414において、対立遺伝子について初期ピークが同定される(例えば、最も少ないリピートの数を有する対立遺伝子)。初期ピークを同定することは、ブロック416において、対立遺伝子についての初期ピークサイズ探索空間(塩基対におけるピークサイズ探索空間)を決定することを含む。初期ピークサイズ探索空間は、初期ピークサイズ範囲に基づいて決定することができる。いくつかの例では、初期ピークサイズ範囲は、予想AGGピークサイズの周りの塩基対の所定の量またはサイズ範囲調整閾値(+/-)である(範囲=+/サイズ範囲調整閾値)。特定の例では、所定の量またはサイズ範囲調整閾値は、予想AGGピークサイズの周りの+/-15塩基対である。初期ピークサイズ探索空間が決定されると、ブロック418において、初期ピークサイズ探索空間を使用して最終AGGデータセットを探索し、最高ピークの基準に基づいて初期ピークサイズ探索空間内の最高ピークを同定することができる。いくつかの例では、初期ピークサイズ探索空間内の最高ピークを同定するための基準は、(i)ピークサイズが最小ピークサイズ閾値(いくつかの実施形態では、最小ピークサイズ閾値が132塩基対に設定される)よりも大きいこと、(ii)ピーク高さが最小ピーク高さ閾値(いくつかの実施形態では、最小ピーク高さ閾値が200RFUに設定される)よりも大きいこと、(iii)ピーク高さがバックグラウンドピーク高さ閾値(いくつかの実施形態では、バックグラウンドピーク高さ閾値が1000RFUに設定される)よりも大きいこと、または(iv)それらの任意の組み合わせを含む。初期ピークサイズ探索空間における最高ピークを同定するための基準は、(i)最小ピークサイズ閾値は、リピートのないPCRアンプリコンのサイズであり、偽ピークの呼び出しを防止するための基準として使用され得る、(ii)最小ピーク高さ閾値は、バックグラウンド低レベルピークの呼び出しを防止するために使用され得る、および(iii)バックグラウンドピーク高さ閾値は、正常な対立遺伝子におけるAGGピークに必要な最小ピーク高さとして使用され得る、およびバックグラウンドピークの呼び出しを防止するためにも使用され得る、を含む様々な技術的利点を提供する。
【0061】
最高ピークの基準を満たすピークが初期ピークサイズ探索空間内で見つかった場合、ブロック420において、見つかったピークは初期ピークとして同定される。さらに、ブロック420において、初期ピークの高さは、(i)前のピーク高さ閾値の高さ、(ii)最低正常な高さ閾値の高さ、および(iii)第1の正常なピーク閾値の高さとして設定される。この設定は、バックグラウンドまたはスタッター(偽陽性)ピークを呼び出すことを防止すること含む様々な技術的利点を提供する。対立遺伝子(例えば、最も少ないリピートの数を有する対立遺伝子)について初期ピークが同定されると、初期ピークに関連するピークデータが最終AGGデータセットから除去され得る。最終AGGデータセットの出力表からこの対立遺伝子に割り当てられているAGGピークを除去した後、プロセスは、同じ対立遺伝子内の別の探索空間についてリピートするか、または別の対立遺伝子(例えば、PM対立遺伝子)についての新しいプロセスを開始する。最終AGGデータセットの出力表から対立遺伝子に割り当てられた(このブロックまたは本明細書に記載の任意の他のブロックにおける)発見されたAGGピークを除去することは、最終AGGデータセットの出力表内の同じピークが重複して発見されることおよび/または複数の対立遺伝子に割り当てられることが防止され、そうでなければPM対立遺伝子の伸長リスクを過小評価する可能性があるという技術的利点を達成する。出力表からのデータの除去はまた、下流処理の複雑さおよび時間を低減する。
【0062】
最高ピークの基準を満たすピークが初期ピークサイズ探索空間内に見つからない場合、ブロック422において、ピークサイズ調整閾値が、対立遺伝子についてブロック422で決定された予想AGGピークサイズ(または前に計算された新しい予想AGGピークサイズ)から減算されて、新しい予想AGGピークサイズが得られる。新しい予想AGGピークサイズは、ブロック414をリピートすることによって初期ピークを同定するために使用される。この調整は、初期ピークサイズ探索空間をシフト/拡大して、最終AGGデータセット内の初期ピークを見つけるのを助ける。いくつかの実施形態では、ピークサイズ調整閾値は、15~50bps(例えば、30bps)である。
【0063】
ブロック414において対立遺伝子について初期ピークが同定されると、対立遺伝子(例えば、最も少ないリピートの数を有する対立遺伝子)についてさらなるAGGピークが同定され得る。ブロック424において、対立遺伝子について追加のピークが同定される。追加のピークを同定することは、ブロック426において、次の予想AGGピークサイズを得るために、ブロック414で見つかった初期ピークのピークサイズからピークサイズ調整閾値を減算することを含む。ブロック428において、次に予想AGGピークサイズに基づいて、対立遺伝子について次のピークサイズ探索空間(塩基対のピークサイズ探索空間)が決定される。次のピークサイズ探索空間は、次の予想AGGピークサイズの周りの次のピークサイズ範囲に基づいて決定することができる。いくつかの例では、次のピークサイズ範囲は、次の予想AGGピークサイズの周りの塩基対の所定量またはサイズ範囲調整閾値(+/-)である。特定の例では、所定の量またはサイズ範囲調整閾値は、次の予想AGGピークサイズの+/-15塩基対である。
【0064】
次のピークサイズ探索空間が決定されると、ブロック430において、第2の探索空間を使用して最終AGGデータセットを探索し、最高ピークの基準に基づいて次のピークサイズ探索空間内の最高ピークを同定することができる。いくつかの例では、次のピークサイズ探索空間内の最高ピークを同定するための基準は、(i)ピークサイズが最小ピークサイズ閾値(いくつかの実施形態では、最小ピークサイズ閾値が132塩基対に設定される)よりも大きいこと、(ii)ピーク高さが最小ピーク高さ閾値(いくつかの実施形態では、最小ピーク高さ閾値が200RFUに設定される)よりも大きいこと、(iii)ピーク高さがバックグラウンドピーク高さ閾値(いくつかの実施形態では、バックグラウンドピーク高さ閾値が1000RFUに設定される)よりも大きいこと、(iv)初期ピークサイズ探索空間内に初期ピークが見つかった場合、追加の見つかったピークのピーク高さは、前のピーク高さ閾値(ブロック420で設定)*二次正常高さパーセント閾値(例えば、50%)、または(v)それらの任意の組み合わせを含む。次のピークサイズ探索空間における最高ピークを同定するための基準は、(i)最小ピークサイズ閾値は、リピートのないPCRアンプリコンのサイズであり、偽ピークの呼び出しを防止するための基準として使用され得る、(ii)最小ピーク高さ閾値がバックグラウンド低レベルピークの呼び出しを防止するために使用され得る、および(iii)バックグラウンドピーク高さ閾値が正常な対立遺伝子におけるAGGピークに必要な最小ピーク高さとして使用され得る、を含む様々な技術的利点を提供する。
【0065】
最高ピークの基準を満たす次のピークサイズ探索空間内にピークが見つかった場合、ブロック432において、見つかったピークは追加のピークとして同定される。さらに、追加のピークの高さは、(i)前のピーク高さ閾値の高さとして設定され、(ii)見つかったピークの高さが初期ピークの高さよりも小さい場合、見つかったピークの高さは、最低正常高さ閾値の高さとして設定される。この設定は、バックグラウンドまたはスタッター(偽陽性)ピークを呼び出すことを防止すること含む様々な技術的利点を提供する。対立遺伝子(例えば、最も少ないリピートの数を有する対立遺伝子)について追加のピークが同定されると、追加のピークに関連するピークデータが最終AGGデータセットから除去され得る。最終AGGデータセットの出力表からこの対立遺伝子に割り当てられているAGGピークを除去した後、プロセスは、同じ対立遺伝子内の別の探索空間についてリピートするか、または別の対立遺伝子(例えば、PM対立遺伝子)についての新しいプロセスを開始する。
【0066】
ブロック434において、最終AGGデータセットが追加のピークを求めて探索され続けるべきかどうか(最終AGGデータセットの出力表は短い対立遺伝子についてより多くのピークを有するか)に関する決定が行われる。いくつかの実施形態では、最終AGGデータセットの探索を継続するかどうかの決定は、短い/正常な対立遺伝子についてPCRアンプリコンのサイズ限界(例えば、132bp)に達したかどうかに基づいて行われる。対立遺伝子についての最終AGGデータセットにさらなるピークがあると決定された場合、ブロック424がリピートされる。ブロック426において、次の予測AGGピークサイズ(本質的に、第3、第4、第5などの予想AGGピークサイズ)を得るために、前に計算された次の予測AGGピークサイズからピークサイズ調整閾値が減算される。この調整は、最終AGGデータセット内の追加のピーク(単数または複数)を見つけるのを助けるために、追加のピークサイズ探索空間をシフト/拡大する。対立遺伝子(例えば、最も少ないリピートの数を有する対立遺伝子)のすべてのピークが最終AGGデータセット内で同定されるまで、ブロック424および434をリピートする。対立遺伝子(例えば、最も少ないリピートの数を有する対立遺伝子)のすべてのピークが最終AGGデータセット内で同定されると、AGG遺伝子型決定プロセスは、ブロック440において残りの対立遺伝子のそれぞれについて継続する。
PM対立遺伝子アルゴリズムフロー
【0067】
ブロック440において、最終AGGデータセット内の別の対立遺伝子(例えば、55~90の間のリピートの数を有するPM対立遺伝子)について初期ピークが同定される。初期ピークを同定することは、ブロック442において、別の対立遺伝子についての初期ピークサイズ探索空間(塩基対におけるピークサイズ探索空間)を決定することを含む。初期ピークサイズ探索空間は、初期ピークサイズ範囲に基づいて決定することができる。いくつかの例では、初期ピークサイズ範囲は、ブロック412で決定された予想AGGピークサイズの周りの塩基対の所定量またはサイズ範囲調整閾値(+/-)である。特定の例では、所定の量またはサイズ範囲調整閾値は、予想AGGピークサイズの+/-12塩基対である。特定の例では、65を超えるCGGリピートの数を有する別の対立遺伝子(例えば、PM対立遺伝子)について:初期ピークサイズ範囲の下端がブロック420で設定された第1の正常ピーク閾値未満(未満)である場合、初期ピークサイズ範囲の下端を第1の正常ピーク閾値に設定する。
【0068】
初期ピークサイズ探索空間が決定されると、ブロック444において、初期ピークサイズ探索空間を使用して最終AGGデータセットを探索し、最高ピークの基準に基づいて初期ピークサイズ探索空間内の最高ピークを同定することができる。いくつかの例では、初期ピークサイズ探索空間内の最高ピークを同定するための基準は、(i)ピークサイズが最小ピークサイズ閾値(いくつかの実施形態では、最小ピークサイズ閾値が132塩基対に設定される)よりも大きいこと、(ii)ピーク高さが最小ピーク高さ閾値(いくつかの実施形態では、最小ピーク高さ閾値が200RFUに設定される)よりも大きいこと、(iii)ピーク高さが最低正常高さ閾値(ブロック420または432で設定される)*最小パーセンテージPM閾値(いくつかの実施形態では、最小パーセンテージPM閾値が10%に設定される)よりも大きいこと、または(iv)それらの任意の組み合わせを含む。初期ピークサイズ探索空間における最高ピークを同定するための基準は、(i)最小ピークサイズ閾値が、リピートのないPCRアンプリコンのサイズであり、偽ピークの呼び出しを防止するための基準として使用され得る、(ii)最小ピーク高さ閾値が、バックグラウンド低レベルピークの呼び出しを防止するために使用され得る、および(iii)PM対立遺伝子におけるAGGピーク探索のための閾値として前に同定されたピークの高さを使用することによって、PM対立遺伝子におけるAGGピークの高さに対して組み込まれた動的DNA入力量制御が提供される、を含む、様々な技術的利点を提供する。より具体的には、PM対立遺伝子のAGGピークサイズは、55~90リピート範囲のために非常に可変的であり、対応するAGGピーク高さもまた劇的に変化し、これもまた可変量のDNA入力によって大きく影響される。より低いDNA入力は、正常な対立遺伝子においてより低いピーク高さをもたらし、逆もまた同様である。PM対立遺伝子におけるAGGピークの固定ピーク高さ閾値スクリーニングを使用する代わりに、この動的閾値は、プロセスがAGGピークをより正確に同定することを可能にする。
【0069】
最高ピークの基準を満たす初期ピークサイズ探索空間内にピークが見つかった場合、見つかったピークは初期ピークとして同定される。さらに、初期ピークの高さは、(i)前のピーク高さ閾値の高さ、および(ii)一時的な前のピーク高さとして設定される(これは、二次ピークをどのピークと比較するかを決定するために二次ピークが見つかった場合に使用される)。この設定は、バックグラウンドまたはスタッター(偽陽性)ピークを呼び出すことを防止すること含む様々な技術的利点を提供する。別の対立遺伝子について初期ピークが同定されると(例えば、55~90の間のリピートの数を有するPM対立遺伝子)、初期ピークに関連するピークデータが最終AGGデータセットから除去され得る。最終AGGデータセットの出力表からこの対立遺伝子に割り当てられているAGGピークを除去した後、プロセスは、同じ対立遺伝子内の別の探索空間についてリピートするか、または別の対立遺伝子(例えば、別のPM対立遺伝子)についての新しいプロセスを開始する。
【0070】
ブロック450において、初期ピークサイズ探索空間を使用して最終AGGデータセットが探索され、次の最高ピークの基準に基づいて初期ピークサイズ探索空間内の次の最高ピークまたは二次ピークが同定される。いくつかの例では、初期ピークサイズ探索空間内の次に最高ピークを同定するための基準は、(i)二次ピークのピークサイズが、ブロック440で同定された初期ピークのピークサイズから二次ピーク閾値(例えば、7)より大きいかまたは小さいこと、(ii)二次ピークのサイズを初期の発見されたピークと比較すること、および二次ピークのピークサイズが初期ピークのピークサイズ未満である場合、二次ピークの高さは、ブロック446で同じ探索空間で呼び出される設定された前のピーク高さ閾値*二次PMピーク高さ閾値(いくつかの実施形態では、二次PMピーク高さ閾値は80%に設定される)よりも大きくあるべきである、または、二次ピークのピークサイズが初期ピークのピークサイズよりも大きい場合、二次ピークの高さは、ブロック432での前の探索空間からの設定された前のピーク高さ閾値*二次PMピーク高さ閾値(いくつかの実施形態では、二次PMピーク高さ閾値は80%に設定される)よりも大きくあるべきである、または(iii)それらの任意の組み合わせを含む。プロセスが初期ピークサイズ探索空間にある場合、閾値はまだ確立されていないので、使用される閾値は0である。初期ピークサイズ探索空間の後、前のピーク高さ閾値が既に確立される。初期ピークサイズ探索空間内の次の最高ピークまたは二次ピークを同定するための基準は、第1のピークが同定された後の同じ探索ウィンドウ内の追加のAGGピークの欠落を回避することを含む様々な技術的利点を提供する。
【0071】
次の最高ピークの基準を満たすピークが初期ピークサイズ探索空間内で見つかった場合、ブロック454において、見つかったピークは二次ピークとして同定される。いくつかの例では、次の最高ピークを二次ピークとして同定するための基準を満たすピークが、初期ピークサイズ探索空間内に見出され、二次ピークのピークサイズが初期ピークのピークサイズよりも小さい場合、二次ピークの高さは前のピーク高さ閾値として設定される。この設定は、バックグラウンドまたはスタッター(偽陽性)ピークを呼び出すことを防止すること含む様々な技術的利点を提供する。別の対立遺伝子について二次ピークが同定されると(例えば、55~90の間のリピートの数を有するPM対立遺伝子)、二次ピークに関連するピークデータが最終AGGデータセットから除去され得る。ブロック456で、別の対立遺伝子についての初期ピークおよび/または二次ピークが以下のように報告される(例えば、プロセッサは、ユーザがユーザインターフェース、記録目的のためのストレージデバイス、将来の処理のためのコンピューティングデバイスの別の他の構成要素、またはレポートのハードコピーのためのプリンタなどの出力デバイスを介して見るためにディスプレイに初期ピークおよび/または二次ピークを提供する):(i)ピークが見つからない場合(初期ピークおよび二次ピークがない)、ピークが見つからないことを報告する、(ii)一方のピークが見つかった場合(初期ピークまたは二次ピーク)、見つかったピークを報告する、または(iii)両方のピークが見つかった場合(初期ピークおよび二次ピーク)、アルゴリズムがCGGの末端で始まるので降順でピークを報告する。例えば、初期ピークサイズ1<二次ピークサイズ2の場合:ピーク2、ピーク1を返す;一方、二次ピークサイズ2>初期ピークサイズ2の場合:ピーク1、ピーク2を返す。AGG遺伝子型決定プロセスは、ブロック460において、別の対立遺伝子の残りのピークのそれぞれについて継続する。
【0072】
次の最高ピークの基準を満たすピークが初期ピークサイズ探索空間内に見つからない場合、ブロック458において、ピークサイズ調整閾値が、ブロック412で決定された予想AGGピークサイズ(または前に計算された新しい予想AGGピークサイズ)から減算されて、新しい予想AGGピークサイズが得られる。新しい予想AGGピークサイズは、ブロック440をリピートすることによって初期ピークを同定するために使用される。この調整は、初期ピークサイズ探索空間をシフト/拡大して、最終AGGデータセット内の初期ピークを見つけるのを助ける。いくつかの実施形態では、ピークサイズ調整閾値は、15~50bps(例えば、24bps)である。
【0073】
ブロック440/450において対立遺伝子について初期ピークが同定されると、対立遺伝子(例えば、より多くのリピートの数を有する対立遺伝子)についてさらなるAGGピークが同定され得る。ブロック460において、対立遺伝子について追加のピークが同定される。追加のピークを同定することは、ブロック462において、次の予想AGGピークサイズを得るために、ブロック440/450で見つかった初期ピークのピークサイズからピークサイズ調整閾値を減算することを含む。ブロック464において、次に予想AGGピークサイズに基づいて、対立遺伝子について次のピークサイズ探索空間(塩基対のピークサイズ探索空間)が決定される。次のピークサイズ探索空間は、次のピークサイズ範囲に基づいて決定されてもよい。いくつかの例では、次のピークサイズ範囲は、ブロック440/450で見出される初期ピークのピークサイズ付近の塩基対の所定量またはサイズ範囲調整閾値(+/-)である。特定の例では、所定の量またはサイズ範囲調整閾値は、初期ピークのピークサイズの+/-12塩基対である。特定の例では、次のピークサイズ範囲の下端が第1の正常ピーク閾値未満である場合、次のピークサイズ範囲の下端を第1の正常ピーク閾値に設定する。
【0074】
第2の探索空間が決定されると、ブロック464において、次のピークサイズ探索空間を使用して最終AGGデータセットを探索して、最高ピークの基準に基づいて次のピークサイズ探索空間内の最高ピークを同定することができる。いくつかの例では、次のピークサイズ探索空間内の最高ピークを同定するための基準は、(i)ピークサイズが最小ピークサイズ閾値(いくつかの実施形態では、最小ピークサイズ閾値が132塩基対に設定される)よりも大きいこと、(ii)ピーク高さが最小ピーク高さ閾値(いくつかの実施形態では、最小ピーク高さ閾値が200RFUに設定される)よりも大きいこと、(iii)ピーク高さが最低正常高さ閾値(ブロック420または432で設定される)*最小パーセンテージPM閾値(いくつかの実施形態では、最小パーセンテージPM閾値が10%に設定される)よりも大きいこと、(iv)ピーク高さが前のピーク高さ閾値(ブロック446または454で設定される)*二次PMピーク高さパーセント閾値(例えば、80%)よりも大きいこと、または(v)それらの任意の組み合わせを含む。次のピークサイズ探索空間における最高ピークを同定するための基準は、(i)最小ピークサイズ閾値が、リピートのないPCRアンプリコンのサイズであり、偽ピークの呼び出しを防止するための基準として使用され得る、(ii)最小ピーク高さ閾値が、バックグラウンド低レベルピークの呼び出しを防止するために使用され得る、および(iii)PM対立遺伝子におけるAGGピーク探索のための閾値として前に同定されたピークの高さを使用することによって、PM対立遺伝子におけるAGGピークの高さに対して組み込まれた動的DNA入力量制御が提供される、を含む、様々な技術的利点を提供する。
【0075】
最高ピークの基準を満たす次のピークサイズ探索空間内にピークが見つかった場合、ブロック468において、見つかったピークは追加のピークとして同定される。さらに、追加のピークのサイズは、一時的な前のピーク高さとして設定される(これは、二次ピークをどのピークと比較するかを決定するために二次ピークが見つかった場合に使用される)。別の対立遺伝子について追加のピークが同定されると、追加のピークに関連するピークデータが最終AGGデータセットから除去され得る。
【0076】
ブロック470において、次のピークサイズ探索空間を使用して最終AGGデータセットを探索して、次のピークサイズ探索空間内の二次ピークまたは次の最高ピークを同定する。いくつかの例では、次のピークサイズ探索空間内の二次ピークを同定するための基準は、(i)二次ピークのピークサイズが、ブロック460で同定された追加のピークサイズのピークサイズから二次ピーク閾値(例えば、7)より大きいかまたは小さいこと、(ii)二次ピークのサイズを追加の発見されたピークと比較すること、および二次ピークのピークサイズが追加のピークのピークサイズ未満である場合、二次ピークの高さは、ブロック468で設定された一時的な前のピーク高さ*二次PMピーク高さ閾値(いくつかの実施形態では、二次PMピーク高さ閾値は80%に設定される)よりも大きくあるべきである、または二次ピークのピークサイズが追加のピークのピークサイズよりも大きい場合、二次ピークの高さは、ブロック454または468*二次PMピーク高さ閾値(いくつかの実施形態では80%に設定された閾値に設定される)よりも大きくあるべきである、または(iii)それらの任意の組み合わせを含む。次のピークサイズ探索空間内の二次ピークまたは次の最高ピークを同定するための基準は、(i)呼び出しバックグラウンドまたはスタッター(偽陽性)ピークを防止すること、および(ii)最初のピークが同定された後に同じ探索ウィンドウ内で追加のAGGピークの欠落を回避することを含む様々な技術的利点を提供する。
【0077】
二次ピークの基準を満たすピークが第2の探索空間内で見つかった場合、見つかったピークは二次ピークとして同定される。いくつかの例では、次の最高ピークを二次ピークとして同定するための基準を満たすピークが、次のピークサイズ探索空間内で見出され、二次ピークのピークサイズが追加のピークのピークサイズよりも小さい場合、二次ピークの高さは前のピーク高さ閾値として設定される。この設定は、バックグラウンドまたはスタッター(偽陽性)ピークを呼び出すことを防止すること含む様々な技術的利点を提供する。別の対立遺伝子について二次ピークが同定されると(例えば、55~90の間のリピートの数を有するPM対立遺伝子)、二次ピークに関連するピークデータが最終AGGデータセットから除去され得る。ブロック456で、別の対立遺伝子についての初期ピークおよび/または二次ピークが以下のように報告される(例えば、プロセッサは、ユーザがユーザインターフェース、記録目的のためのストレージデバイス、将来の処理のためのコンピューティングデバイスの別の他の構成要素、またはレポートのハードコピーのためのプリンタなどの出力デバイスを介して見るためにディスプレイに初期ピークおよび/または二次ピークを提供する):(i)ピークが見つからない場合(初期ピークおよび二次ピークがない)、ピークが見つからないことを報告する、(ii)一方のピークが見つかった場合(初期ピークまたは二次ピーク)、見つかったピークを報告する、または(iii)両方のピークが見つかった場合(初期ピークおよび二次ピーク)、アルゴリズムがCGGの末端で始まるので降順でピークを報告する。例えば、初期ピークサイズ1<二次ピークサイズ2の場合:ピーク2、ピーク1を返す;一方、二次ピークサイズ2>初期ピークサイズ2の場合:ピーク1、ピーク2を返す。
【0078】
ブロック478において、最終AGGデータセットが追加のピーク(すなわち、最終AGGデータセットの出力表は、長い対立遺伝子についてより多くのピークを有するか)を求めて探索され続けるべきかどうかに関する決定が行われる。いくつかの実施形態では、65未満のリピートサイズを有するPM対立遺伝子について、最終AGGデータセットの探索を継続するかどうかの決定が、長い/PM対立遺伝子についてリピートなしのPCRアンプリコンのサイズ限界(例えば、132bp)に達したかどうかに基づいて行われる。他の実施形態では、65超のリピートサイズを有するPM対立遺伝子について、最終AGGデータセットの探索を継続するかどうかの決定は、長い/PM対立遺伝子について、正常な/短い対立遺伝子に見られる最大サイズAGGピークに達したかどうかに基づいて行われる。対立遺伝子についての最終AGGデータセットにおいてより多くのピークが存在すると決定された場合、ブロック460および470がリピートされる。ブロック460において、次の予想AGGピークサイズ(本質的に、第3、第4、第5などの予想AGGピークサイズ)を得るために、前に計算された次の予測AGGピークサイズからピークサイズ調整閾値が減算される。この調整は、最終AGGデータセット内の追加のピーク(単数または複数)を見つけるのを助けるために、追加のピークサイズ探索空間をシフト/拡大する。対立遺伝子(例えば、より多くのリピートの数を有する対立遺伝子)のすべてのピークが最終AGGデータセット内で同定されるまで、ブロック460および470をリピートする。対立遺伝子(例えば、最も少ないリピートの数を有する対立遺伝子)のすべてのピークが最終AGGデータセット内で同定されると、ブロック480において、最終AGGデータセットがさらなる対立遺伝子について探索され続けるべきかどうか(最終AGGデータセットの出力表は他の対立遺伝子のピークを有するか)に関する決定が行われる。より多くの対立遺伝子が存在すると決定された場合、AGG遺伝子型決定プロセスは、残りの対立遺伝子のそれぞれについてブロック440に続く。対立遺伝子がそれ以上存在しないと決定された場合、プロセスはブロック490に続き、ブロック412~476で得られたAGG中断データに基づいて対立遺伝子を遺伝子型決定する。
AGG遺伝子型フロー
【0079】
ブロック490において、対立遺伝子(例えば、正常な対立遺伝子またはPM対立遺伝子)上の最後のAGG中断の下流のCGGリピートの数が、ブロック402~410において同定されたCGGリピートおよびブロック412~480において同定されたAGGピークを使用して計算される。いくつかの実施形態では、対立遺伝子上の最後のAGG中断の下流のCGGリピートの数を、式(2)を使用して計算する。
最後のAGG中断の下流のCGGリピートの数(CCG#を使用)=((Pn-A)/3)-1
式(2)
ここで、Pnは、対立遺伝子上の最後のAGG中断(例えば、各対立遺伝子上の最小AGG中断)に対応するピークサイズであり、AはリピートのないPCRアンプリコンのサイズであり、いくつかの例では、PCRアンプリコンは132塩基対を有し、したがってA=132であり、3は各CGGリピートに対する塩基対の数であり、1は単一のAGG中断を示す。最後のAGG中断の位置は、対立遺伝子の結果文字列を開始するために使用され得る(後方に構築)。AGG(CGG)n-式中「n」は、式(1)の結果である(すなわち、予想される第1のAGGピークサイズ)。
【0080】
その後、ブロック412~480で同定された残りのAGGピークは、すべてが対立遺伝子について処理されるまで循環される。いくつかの実施形態では、(存在する場合)任意の2つの隣接するAGG中断によって分離されたCGGリピートの数は、式(3)を使用して計算される。
任意の2つの隣接するAGG中断によって分離されたCGGリピートの数(CCG#を使用)=((Pn-Pn-1)/3)-1
式(3)
ここで、PnおよびPn-1は、対立遺伝子上の隣接するAGG中断に対応するピークサイズであり、3は各CGGリピートに対する塩基対の数であり、1は単一のAGG中断を示す。任意の2つの隣接するAGG中断によって分離されたCGGリピートの数を処理した後、結果文字列は、同じフォーマットの文字列の先頭に追加することによって更新されてもよい(逆方向に構築)。AGG(CGG)n-式中「n」は、式(1)の結果である(すなわち、予想される第1のAGGピークサイズ)。
【0081】
最初のAGG中断に先行するCGGリピートの数は、(i)式(2)で計算された最後のAGG中断の下流のCGGリピートの数、(ii)式(3)で計算された隣接するAGG中断を分離するCGGリピートの総数、および(iii)ブロック412~480で特定されたAGGピークによって決定されたAGG中断の総数を、GS-PCRアッセイによって同定され、ブロック402~410で同定された対立遺伝子のCGGリピートの総数から減算することによって計算することができる。最初のAGG中断に先行するCGGリピートの数を処理した後、結果文字列は、同じフォーマットの文字列の先頭に追加することによって更新されてもよい(逆方向に構築)。AGG(CGG)n-式中「n」は、式(1)の結果である(すなわち、予想される第1のAGGピークサイズ)。最初のAGG中断に先行するCGGリピートの数を処理した後の最終結果文字列は、対立遺伝子のAGG遺伝子型である。ブロック490のプロセスは、試料について同定された各対立遺伝子についてリピートされ得る。
【0082】
任意選択のブロック492において、試料の各対立遺伝子について決定されたAGG遺伝子型に基づいて、伸長リスクスコアを計算することができる。リスクスコアは、表1に示すように、CGGリピートの数およびその中のAGG中断を使用して計算することができる。いくつかの例では、リスクスコアは、患者が遅発性神経変性疾患である脆弱X関連振戦/運動失調症候群(FXTAS)もしくは脆弱X関連原発性卵巣機能不全(FXPOI)を発症するリスク、または完全変異対立遺伝子を対象の子孫に伝達するリスクもしくはそれらの任意の組み合わせを同定する。特定の例では、5つを超えるAGG中断がある場合、5つの中断および5つを超える中断は一般に同じ臨床結果を有するので、リスクスコア(単数または複数)の計算のためにAGG中断の数を5に設定することができる。
【表1】
【0083】
ブロック494において、各対立遺伝子について決定されたAGG遺伝子型が出力され得る。各対立遺伝子および任意選択のリスクスコアについて決定されたAGG遺伝子型の出力は、エンドユーザに出力を提供すること、および/またはストレージデバイスに出力を記録すること(例えば、ユーザインターフェース上に出力を表示すること、および/またはデータベースの結果ファイルに出力を記憶すること)を含み得る。理解されるように、
図4A~
図4Hに関して説明したFXS AGG PCRアッセイプラットフォームおよび遺伝子型決定技術を使用したAGG遺伝子型決定のプロセスフローは、ユーザがヒューマンエラーなしにバッチですべての試料を並行して処理し、その結果をシームレスに、ターンアラウンド時間を大幅に短縮する報告概要に組み込むことを可能にする。報告概要に関して、AGG遺伝子型および任意選択のリスクスコアは、母親がPM伸長のリスクが高いと決定された場合、現在または将来の妊娠、例えば将来の妊娠のための家族計画のオプション(例えば、インビトロ診断(IVD))を通して対象(例えば、患者)をどのように誘導するか、または現在の妊娠のためにオプションを提供する/準備するかについて臨床医/遺伝学専門家に知らせる。したがって、最後の工程として、臨床医/遺伝学専門家は、AGG遺伝子型および任意選択のリスクスコアに基づいて対象または患者に助言を提供する。助言は、示されるように、その後の医療診断試験(例えば、IVD)、FXDの遺伝パターンの詳細な議論、3つすべての症状の臨床所見(FXS、FXPOI、FXTAS)、適切な場合の生殖オプション、子供および長期のリスクのある家族との会話に関するガイダンス、無症候性の子供を試験するための考慮事項、研究機会、家族の支援、ならびに医療、発達および示されるように心理学的提供者の紹介などの家族計画オプションを含み得る。
【0084】
図5は、本開示によるFXS AGG PCRアッセイプラットフォームおよび遺伝子型決定技術を使用したAGG遺伝子型決定のためのシステムおよび方法での使用に適した例示的なコンピューティングデバイス500を示す。例示的なコンピューティングデバイス500は、1またはそれを超える通信バス515を使用してメモリ510およびコンピューティングデバイス500の他の構成要素と通信するプロセッサ505を含む。プロセッサ505は、
図3および
図4A~
図4Hに関して上述した例示的プロセス300または400の一部または全部などの異なる例に従って、生データ内に存在するAGGピークを探索および同定し、対立遺伝子のAGG遺伝子型を決定し、および/または患者のリスクスコアを決定するための1またはそれを超える方法を実行するために、メモリ510に記憶されたプロセッサ実行可能命令を実行するように構成される。この例では、メモリ510は、
図2、
図3、および
図4A~
図4Hに関して上述したように、AGGピーク分析520およびAGG遺伝子型決定525を提供するプロセッサ実行可能命令を記憶する。
【0085】
コンピューティングデバイス500は、この例では、ユーザ入力を受け入れるために、キーボード、マウス、タッチスクリーン、マイクロフォンなどの1またはそれを超えるユーザ入力デバイス530も含む。コンピューティングデバイス500はまた、ユーザインターフェースなどのユーザに視覚的出力を提供するためのディスプレイ535を含む。コンピューティングデバイス500はまた、通信インターフェース540を含む。いくつかの例では、通信インターフェース540は、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)、インターネットなどの広域ネットワーク(「WAN」)、メトロポリタン・エリア・ネットワーク(「MAN」)、ポイントツーポイントまたはピアツーピア接続などを含む1またはそれを超えるネットワークを使用した通信を可能にすることができる。他のデバイスとの通信は、任意の適切なネットワークプロトコルを使用して達成され得る。例えば、1つの適切なネットワークプロトコルは、インターネットプロトコル(「IP」)、伝送制御プロトコル(「TCP」)、ユーザデータグラムプロトコル(「UDP」)、またはTCP/IPもしくはUDP/IPなどのそれらの組み合わせを含むことができる。
【実施例】
【0086】
IV.実施例
様々な実施形態で実施されるシステムおよび方法は、以下の例を参照することによってよりよく理解され得る。
実施例1:FRAX AGG中断PCRアッセイおよびAGG遺伝子型決定アルゴリズム
使用した検体および再現性
【0087】
AGG中断のために外部試験を行った5つの試料を含む第1の外部試験実験室で10個の血液試料(S1~S10)を抽出した。第1の臨床実験室で血液から抽出し、前に脆弱X PCRアッセイを行った5つの試料(S11~S15)。これらの5つの試料は、臨床試験のために受け取ることができる試料を表すと予想される。23個の試料を抽出し、第2の外部試験実験室でAGG中断について試験した(S16~S38)。これらの23個の試料のAGG遺伝子型を、この実施例での使用前にオペレータに盲検化した。上記の試料に加えて、自動FRAX AGG PCR遺伝子型決定アルゴリズム呼び出しを手動遺伝子型決定からのものと比較するために、アッセイ開発で使用した25個の試料も試験した。アッセイ内再現性のために、既知のAGG遺伝子型結果を有する3つを含む5つの試料を3つ組で分析した。これらの試料はまた、アッセイ間再現性のために単回で2回のさらなる実行で試験され、そのうちの1回の実行は、異なるロットのKAPA2G Robust Hotstart EnzymeミックスおよびAGG PCRプライマーミックスを使用して別のオペレータによって行われた。ロットおよび有効期限情報を表2に列挙する。機器間の再現性を評価するために、サーマルサイクラーの2つのモデルおよび2つのABI 3730xl機器も含めた。
【表2】
【0088】
FRAX AGG遺伝子型決定アルゴリズムによる遺伝子型決定の呼び出しは、5つすべての試料で再現可能であった(表3)。特にCEによって分離された高度に反復性のGCリッチ領域については、実験的変動に起因して、反復間のわずかな遺伝子型の違いが予想されることに留意されたい。さらに、GS-PCRによって決定されたCGGリピート数の分離能は、リピートの長さに応じて1~4リピートだけ変動することが前に確認された。したがって、固有の実行間変動を考えると、反復間の1~2回のリピート(すなわち、3~6塩基)の差は、正常もしくはPM対立遺伝子について、またはAGGによって中断されたCGGの数について予想される変動の範囲内である。
【表3-1】
【表3-2】
分析感度および特異性
【0089】
分析感度および特異性を、検証されたプラットフォームを使用して外部試験実験室からAGG遺伝子型が前に報告された5つの血液DNA試料(試料S1~S5)を使用して最初に評価した。AGG PCR産物のCE電気泳動図を
図6Aおよび
図6Bに示す。外部実験室から得られたAGG遺伝子型およびFRAX AGG PCRアッセイを表4に列挙する。すべての対照が合格し、偽陽性も偽陰性も呼び出されなかった。FRAX AGG PCRアッセイは、予想された結果と同じ数のAGG中断をすべての試料において同定し、それらのうちの4つは一致した遺伝子型を示した(表4)。前述のように、この実施例からの結果と外部試験からの結果との間の1~2リピートによるAGG中断の位置および/または総リピート数の差は、予想通りであり、一致していると考えられた。
【表4】
【0090】
試料S2について、FRAX AGG PCRアッセイによって同定されたAGG中断の総数は、予想された結果と一致した。しかしながら、AGG中断の対立遺伝子フェージングは、外部実験室の結果と一致しなかった(表3)。外部実験室による試験では、正常な対立遺伝子(対立遺伝子1)に対して1つだけ中断が割り当てられたが、FRAX AGG PCRアッセイでは、2つのAGG特異的ピークが同定された(159および189bp、
図6A)。注目すべきことに、その両方がそれらの正常な対立遺伝子において29の総リピートを有し、試料S2と同じサイズのAGGピークを有する他の2つの試料は、予想される結果と比較した場合、2つのAGG中断について一致していた(
図6Aおよび
図6B、試料S2~S4)。上述のように、FRAX AGG PCR遺伝子型決定アルゴリズムは、最初にAGGピークを正常な対立遺伝子に割り当てるために最初に開発されたので、試料S2について観察された遺伝子型決定の違いは、どの対立遺伝子にAGGピークが最初に割り当てられるかに起因する可能性がある。
【0091】
遺伝子型決定の不一致の問題を解決するために、2つのアプローチが使用される。FRAX PCRアッセイの一部として、TRP-PCRアッセイは、CGGリピート領域を増幅するためにGSプライマーと対になったCGGリピートプライマーを使用することによって、拡大されたFRAX対立遺伝子についてスクリーニングする。AGG中断の存在下では、CGGリピートプライマーの標的配列に対する親和性が低下し、それによってPCR効率が低下し、CE電気泳動図における「ディップ」が生じる(
図7A)。一方の対立遺伝子が他方よりも多くのリピートを有する場合(例えば、PM対正常な対立遺伝子)、またはAGG中断が両方の対立遺伝子において同じ位置で一致する場合、これらのディップのシグナル強度はベースラインに近いであろう。したがって、試料S2について、正常な対立遺伝子に2つのAGG中断があった場合、TRP-PCR電気泳動図は、正常な対立遺伝子のリピート範囲の中断に対応する2つのAGGディップを示す。
【0092】
図7Aに示すように、TRP-PCRの結果は、試料S2のFRAX AGG PCRアッセイのAGGフェージング結果を支持する。試料S3およびS4についても同様のプロファイルが観察された。興味深いことに、さらに詳しく調べると、S2についての正常な対立遺伝子におけるAGGディップのうちの1つについてのシグナル強度が、ベースラインレベル付近に低下したことが認められ、AGG中断が、おそらく両方の対立遺伝子において同じ位置に存在したことが示された(S2パネルにおける189bpのAGGディップ、
図7A)。これを確認するために、正常およびPM対立遺伝子を増幅し、ゲル精製し、FRAX AGG PCRアッセイによって分析して、各対立遺伝子上のAGG中断の数を別々に決定した。予想通り、FRAX AGG PCR CE電気泳動図は、正常な対立遺伝子では2つのAGGを、PM対立遺伝子では4つのAGGを明確に同定した。重要なことに、FRAX AGG PCRアッセイも外部の実験室試験からの結果も、両方の対立遺伝子における重複したAGG中断を同定しなかったが、この差は伸長のリスクスコアを変化させなかったことは注目に値する(<1%、表1を参照されたい)。
【0093】
FRAX AGG PCRアッセイおよびFRAX AGG PCR遺伝子型決定アルゴリズムの分析感度、特異性および精度をさらに評価するために、外部実験室からの既知のAGG遺伝子型のさらなる23個の試料を反復において試験した(表5)。試験前に試料をオペレータに匿名化し、すべての呼び出しを手動でFRAX AGG PCR遺伝子型決定アルゴリズムを用いて分析した。
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
【0094】
表5に示すように、少なくとも1つのAGG中断がすべての試料で検出され、FRAX AGG PCRアッセイからのAGG遺伝子型呼び出しは、23個の試料のうち21個で一致した。対照は失敗せず、偽陰性または偽陽性の呼び出しは行われなかった。PM対立遺伝子におけるリピートの数が、FRAX AGG PCR遺伝子型決定アルゴリズムについて指定された90リピート限界を超えたので、試料S25およびS37は、FRAX AGG PCRアッセイによって遺伝子型決定されなかったが、正常な対立遺伝子あたりのAGG中断の数は、予想された結果と一致した。
【0095】
FRAX AGG PCRアッセイは、両方の対立遺伝子における同じ位置でのAGG中断、または対立遺伝子が中断のために割り当てられた順序のいずれかによって引き起こされた可能性が高い試料S17およびS23についての予想される結果と一致しなかった。試料S17では、PM対立遺伝子におけるAGG中断についての予想結果は、6つであったが、FRAX AGG PCRアッセイは、5つのAGGを同定した(表5および
図8A)。上記の試料S2と同様に、TRP-PCR CEデータのレビューは、正常な対立遺伝子サイズ範囲のAGGディップの1つが、正常な対立遺伝子と前変異対立遺伝子の両方の同じ位置に潜在的に位置し得ることを示した(159bp AGGディップ、
図8B)。ゲル精製された正常およびPM対立遺伝子PCR産物を使用するFRAX AGG PCRは、159bpピークによって表されるAGG中断が両方の対立遺伝子で発生したことをさらに確認した(
図8C)。
【0096】
試料S23の場合、159bpのAGG PCRピークによって表されるAGG中断は、159bpのAGG中断からの約30bpまたは約10リピートの両方である186bpおよび192bpの2つの近接したAGGピークに基づいて、正常またはPM対立遺伝子のいずれかに割り当てることができた(
図9A)。外部実験室では、正常およびPM対立遺伝子にそれぞれ2および5のAGG中断が割り当てられたが、FRAX AGG PCR遺伝子型決定アルゴリズムは、AGG中断ピークをより短い対立遺伝子に最初に割り当てるように開発されたので、3つのAGGを正常な対立遺伝子に割り当て、4つのAGGを前変異対立遺伝子に割り当てた(表5および
図9A)。TRP-PCR分析は、159bpピークに対応するAGG中断が1つのみであること、およびそれが正常またはPM対立遺伝子のいずれかに位置し得ることを示した(
図9B)。FRAX AGG PCRによる各対立遺伝子の分析は、外部試験実験室からの遺伝子型と一致して、正常な対立遺伝子およびPM対立遺伝子における2および5つのAGG中断をそれぞれ明確に示した(
図9C)。
【0097】
まとめると、FRAX AGG PCRアッセイは、28個の試料のうち27個のAGG中断の総数について一致した。予想される結果とAGGの数に差があった1つの試料(S17)は、外部試験からのものと比較して、FRAX AGG PCR遺伝子型決定アルゴリズムによって割り当てられるAGGピークデータの順序に起因する可能性が最も高かった。さらに、AGG中断が正常およびPM対立遺伝子の両方において同じ位置で起こる場合、FRAX AGG PCRアッセイと外部実験室試験の両方で限界があることも同定された。CEおよびGeneMapperが1つのAGG PCRピークのみを検出および出力することを考えると、これは驚くべきことではなかった。しかし、表1に示すように、中断の数が2またはそれを超える、かつリピートサイズが65未満である場合、この差は伸長リスクスコアに影響しない。65超リピートおよび少なくとも1つのAGG中断の場合、遺伝子型は一致していた。これらのより長いリピートにおける中断に対応するAGG PCR断片は、FRAX AGG PCR遺伝子型決定アルゴリズムによる明確な対立遺伝子フェージングを可能にする正常な対立遺伝子におけるものよりもはるかに大きい。
FRAX AGG PCR遺伝子型決定アルゴリズム試験
【0098】
FRAX AGG遺伝子型決定アルゴリズムからの結果は、この例で実行された38個の試料に基づく手動遺伝子型決定分析からの結果と100%一致した。一致をさらに試験するために、アッセイ開発中に使用された25個の試料も手動およびFRAX AGG遺伝子型決定アルゴリズムによって遺伝子型決定し、結果は、2つの方法の間で100%一致した。アルゴリズムは、遺伝子型決定のための手動分析と同等に機能しただけでなく、入力されたCEデータの質が変動したか、または遺伝子型出力が正常範囲外である任意の試料を同定し、それらを「手動レビュー」のためのフラグで示すのにも良好に機能した。
【0099】
理解されるように、試験基準(例えば、55~90の総リピートの範囲におけるPM対立遺伝子を有する女性の試料)を満たすが、AGG中断を含まない試料に遭遇することが可能である。例えば、試料の正常な対立遺伝子は、21の総リピートを有し、AGG中断を含まない場合がある。そのPM対立遺伝子もまた、試料S1またはS4と同様に、AGGを有しない場合がある(表4)。AGG PCR産物の欠如は、低いアッセイパフォーマンスと区別することが困難であり得る。正確な呼び出しを確実にするために、アッセイをリピートし、「AGGなし」の結果を確認することに加えて、試料のFRAX TRP-PCRアッセイCE電気泳動図もレビューされ得る。
図7A、
図8Bおよび
図9Bで観察されるものとは対照的に、信号の急激な低下なしにCGGスタッターピーク高さの滑らかで段階的な減少は、「AGGなし」呼び出しをサポートする(
図10)。典型的には女性のPM対立遺伝子キャリアのみが試験されるであろうことを考えると、AGG中断のない試料に遭遇しなかったアッセイ開発および検証中に試験された合計約95個の試料に基づいて、AGG中断を含まない試料の可能性はまれであろう。
結論
【0100】
FRAX AGG中断PCRアッセイの技術的パフォーマンスは、AGG特異的PCR産物の生成、およびFRAX AGG遺伝子型決定アルゴリズムによるAGG遺伝子型の自動化された結果について、再現性があり、ロバストであると決定された。
【0101】
既知のAGG遺伝子型を有する28個の試料のうち、27個が予想される結果と一致した。1つの試料について、AGG中断の総数は予想される数と一致したが、AGG遺伝子型は、AGGがFRAX AGG遺伝子型決定アルゴリズムによって割り当てられた対立遺伝子の順序のために異なっていた。しかし、この差は、この試料の最終リスクスコアに臨床的影響を及ぼさなかったであろう。アッセイ間およびアッセイ内再現性はまた、既知のAGG遺伝子型を有する3つの試料を含む5つすべての試料のAGG遺伝子型決定について100%であった。FRAX AGG中断PCRアッセイは、血液検体から抽出された10~160ngの入力DNAに耐えることができ、アッセイパフォーマンスは、血液検体から抽出されたgDNAに対してロバストなままであった。さらに、FRAX AGG遺伝子型決定アルゴリズムは、AGG特異的ピークを同定し、試験したすべての試料についてAGG遺伝子型を決定する際の手動遺伝子型決定分析と100%一致した。
V.さらなる考察
【0102】
上記の説明では、実施形態の完全な理解を提供するために具体的な詳細が示されている。しかしながら、これらの具体的な詳細なしで実施形態を実施することができることが理解される。例えば、実施形態を不必要に詳細に不明瞭にしないために、回路をブロック図に示すことができる。他の例では、実施形態を不明瞭にすることを避けるために、周知の回路、プロセス、アルゴリズム、構造、および技術を不必要な詳細なしで示すことができる。
【0103】
上述した技術、ブロック、工程、および手段の実装は、様々な方法で行うことができる。例えば、これらの技法、ブロック、工程、および手段は、ハードウェア、ソフトウェア、またはそれらの組み合わせで実施することができる。ハードウェア実装の場合、処理ユニットは、1またはそれを超える特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit:ASIC)、デジタル信号プロセッサ(digital signal processor:DSP)、デジタル信号処理デバイス(digital signal processing device:DSPD)、プログラマブルロジックデバイス(programmable logic device:PLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array:FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、上述した機能を実行するように設計された他の電子ユニット、および/またはそれらの組み合わせ内で実装され得る。
【0104】
また、実施形態は、フローチャート、フロー図、データフロー図、構造図、またはブロック図として示されるプロセスとして説明することができることに留意されたい。フローチャートは、動作を順次プロセスとして説明することができるが、動作の多くは並行してまたは同時に実行することができる。さらに、動作の順序を並べ替えることができる。プロセスは、その動作が完了したときに終了するが、図に含まれていない追加の工程を有することができる。プロセスは、方法、機能、手順、サブルーチン、サブプログラムなどに対応することができる。プロセスが関数に対応する場合、その終了は、呼び出し関数またはメイン関数への関数の返しに対応する。
【0105】
さらに、実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア、スクリプト言語、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語、および/またはそれらの任意の組み合わせによって実施することができる。ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、スクリプト言語、および/またはマイクロコードで実装される場合、必要なタスクを実行するためのプログラムコードまたはコードセグメントは、記憶媒体などの機械可読媒体に記憶することができる。コードセグメントまたは機械実行可能命令は、手順、関数、サブプログラム、プログラム、ルーチン、サブルーチン、モジュール、ソフトウェアパッケージ、スクリプト、クラス、または命令、データ構造、および/もしくはプログラム文の任意の組み合わせを表すことができる。コードセグメントは、情報、データ、引数、パラメータ、ならびに/またはメモリ内容を渡すおよび/もしくは受け取ることによって、別のコードセグメントまたはハードウェア回路に結合することができる。情報、引数、パラメータ、データなどは、メモリ共有、メッセージパッシング、チケットパッシング、ネットワーク送信などを含む任意の適切な手段を介して渡す、転送する、または送信することができる。
【0106】
ファームウェアおよび/またはソフトウェア実装の場合、方法論は、本明細書に記載の機能を実行するモジュール(例えば、手順、機能など)で実装することができる。本明細書に記載の方法論を実施する際に、命令を実体的に具現化する任意の機械可読媒体を使用することができる。例えば、ソフトウェアコードをメモリに記憶することができる。メモリは、プロセッサ内またはプロセッサの外部に実装することができる。本明細書で使用される場合、「メモリ」という用語は、任意のタイプの長期、短期、揮発性、不揮発性、または他の記憶媒体を指し、任意の特定のタイプのメモリまたはメモリの数、またはメモリが記憶される媒体のタイプに限定されるものではない。
【0107】
さらに、本明細書で開示されるように、「記憶媒体」、「記憶」または「メモリ」という用語は、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気RAM、コアメモリ、磁気ディスク記憶媒体、光記憶媒体、フラッシュメモリデバイス、および/または情報を記憶するための他の機械可読媒体を含む、データを記憶するための1またはそれを超えるメモリを表すことができる。「機械可読媒体」という用語は、携帯型もしくは固定型ストレージデバイス、光ストレージデバイス、無線チャネル、ならびに/または命令および/もしくはデータを含むもしくは搬送する記憶することができる様々な他の記憶媒体を含むが、これらに限定されない。
【0108】
本開示の原理は、特定の装置および方法に関連して上述されているが、この説明は、例としてのみ行われ、本開示の範囲に対する限定としてではないことを明確に理解されたい。
【国際調査報告】