(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】テクスチャ表面を有する金属薄板包装製品およびそのような金属薄板包装製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B21B 1/22 20060101AFI20230323BHJP
B21B 27/02 20060101ALI20230323BHJP
C23C 28/00 20060101ALI20230323BHJP
C25D 5/26 20060101ALI20230323BHJP
C25D 5/48 20060101ALI20230323BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20230323BHJP
C22C 38/54 20060101ALI20230323BHJP
C21D 9/46 20060101ALI20230323BHJP
B21B 27/00 20060101ALI20230323BHJP
C25D 11/38 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
B21B1/22 C
B21B1/22 H
B21B27/02 A
C23C28/00 C
C25D5/26 B
C25D5/48
C22C38/00 301T
C22C38/54
C21D9/46 K
B21B1/22 K
B21B27/00 B
C25D11/38 304
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022546364
(86)(22)【出願日】2021-01-12
(85)【翻訳文提出日】2022-09-13
(86)【国際出願番号】 EP2021050447
(87)【国際公開番号】W WO2021151652
(87)【国際公開日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】102020102381.2
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513213841
【氏名又は名称】ティッセンクルップ ラッセルシュタイン ゲー エム ベー ハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ-クラッシュ,フォルカート
(72)【発明者】
【氏名】コプリン,カール-ハインツ
(72)【発明者】
【氏名】ウィシュマン,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】コッホ,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ゴアシリューター,イェルク
(72)【発明者】
【氏名】コール,マニュエル
(72)【発明者】
【氏名】ティエル,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ホーニグ,ウォルター
(72)【発明者】
【氏名】シュマン,フランク
(72)【発明者】
【氏名】オッパー,マーカス
【テーマコード(参考)】
4E002
4E016
4K024
4K037
4K044
【Fターム(参考)】
4E002AD06
4E002AD10
4E002BB09
4E002CA08
4E016AA03
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4K024AA07
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4K037EA01
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4K037EA23
4K037EA25
4K037EA27
4K037EA31
4K037EB08
4K037FG01
4K037FG03
4K037FM01
4K037FM02
4K037GA01
4K037GA05
4K044AA02
4K044AB02
4K044BA10
4K044BA15
4K044BB03
4K044BC02
4K044CA16
4K044CA18
4K044CA53
(57)【要約】
本発明は、0.1mm~0.6mmの範囲の厚さを有する鋼板基材(S)と、特にスズおよび/またはクロムあるいはクロムおよび酸化クロムからできており、鋼板基材の少なくとも片面に電解析出されるコーティング(B)とからなる、薄板金属包装製品、特にブリキまたは電解クロムめっき鋼板(ECCS)に関する。加えて、コーティング(B)を備える薄板金属包装製品の少なくとも1つの表面は、少なくとも1つの方向に周期的に繰り返す構造要素を有する表面プロファイルを有し、表面プロファイルから生じる自己相関関数は、主突出部の高さの少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%の高さを有する複数の側部突出部を有する。これらの薄板金属包装製品は、改善された新規な表面特性を有する。
【選択図】
図5b
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.1mm~0.6mmの範囲の厚さを有する鋼板基材(S)と、前記鋼板基材の少なくとも片面に電解析出されたスズのコーディング(B)ならびに/またはクロムもしくはクロムおよび酸化クロムのコーティング(B)と、から成り、前記コーティング(B)が、1~15g/m
2の範囲のコーティング重量を有するスズ層ならびに/または前記クロム/酸化クロム層中の5~200mg/m
2の範囲のクロムの総コーティング重量を有するクロムおよび/もしくは酸化クロムの層を含む、薄板金属包装製品、特にブリキまたは電解クロムコーティング鋼板(ECCS)であって、前記コーティング(B)が設けられた前記薄板包装製品の少なくとも1つの表面が、少なくとも一方向に、周期的に繰り返される構造要素を有する表面プロファイルを有し、且つ、絶対最大値および絶対最大値の高さの少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%の高さである複数の二次最大値を有する前記表面プロファイルから生じる自己相関関数を有する、ことを特徴とする薄板包装製品。
【請求項2】
前記鋼板基材(S)上の好ましい方向に沿った前記自己相関関数の複数の二次最大値の高さが、前記絶対最大値の高さの少なくとも40%、好ましくは少なくとも60%である、ことを特徴とする請求項1に記載の薄板包装製品。
【請求項3】
前記コーティング(B)が熱溶融されていないスズコーティングであり、スズコーティングされた鋼基材の好ましい方向に沿った自己相関関数の複数の二次最大値の高さが、絶対最大値の高さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%である、ことを特徴とする請求項1に記載の薄板包装製品。
【請求項4】
前記薄板包装製品が、0.01~2.0μmの範囲、好ましくは0.1~1.0μmの範囲の表面粗さ(Ra)、特に0.10~0.30μmの範囲の算術平均粗さを有する、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の薄板包装製品。
【請求項5】
前記周期的に繰り返される構造要素のトポグラフィ形状が凸状または台地状であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の薄板包装製品。
【請求項6】
前記周期的に繰り返される構造要素が、少なくとも10μm、好ましくは60~250μmの半値全幅(FWHM)を有する、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の薄板包装製品。
【請求項7】
前記コーティング(B)が、所定のコーティング重量(Sn)を有するスズコーティングであり、前記スズコーティングが、j
IET=I/A(単位面積当たりの電流)(mA/cm
2)で表される鉄曝露試験(IET)における電流密度を有し、電流密度j
IETは、最大で、前記コーティングされた基材の算術平均粗さRa(μm)の1.4倍+定数0.5を、前記コーティング重量(Sn)(g/m
2)の2乗で割った値である、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の薄板包装製品。
【請求項8】
前記コーティング(B)が、スズの所定のコーティング重量(Sn)(m/A,単位面積当たりの質量,g/m
2)を有するスズコーティングであり、前記鉄曝露試験(IET)で測定された電流密度が、j
IET=I/A(単位面積当たりの電流,mA/cm
2)に前記スズの前記コーティング重量(Sn)の2乗を掛けたものであり、Ra≦1.0μmの算術平均粗さ(Ra)については、1.9(mA/cm
2)・(g/m
2)
2未満であり、1.0μm<Ra≦2.0μmの算術平均粗さ(Ra)については、3.3(mA/cm
2)・(g/m
2)
2未満である、ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の薄板包装製品。
【請求項9】
前記表面構造は、隆起部(E)および/または凹部(V)を有する規則的に配置されたパターンを有し、前記隆起部は、好ましくは、前記薄板包装製品の表面全体にわたる平均レベルよりも、0.5~3.0μm、特に1、0~2.0μm、特に好ましくは2.0μm未満の平均高さ(h)だけ突出し、前記凹部(V)は、好ましくは、前記平均レベルに対して、0.5~3.0μm、特に1.0~2.0μmの平均深さを有する、ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の薄板包装製品。
【請求項10】
前記表面が、周期的に繰り返される構成の凸状および/または凹状の構造要素を有する、ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の薄板包装製品。
【請求項11】
前記繰り返される構造要素の50%超が、前記表面粗さRaの最大±100%だけ高さにおいて変動する均一な高さレベルを形成する、ことを特徴とする請求項4から10のいずれか1項に記載の薄板包装製品。
【請求項12】
前記繰り返される構造要素が、少なくとも略ウェブ状であり、特に断面が台形である、ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の薄板包装製品。
【請求項13】
前記繰り返される構造要素がそれぞれ、少なくとも略平坦な台地表面を有する台地状であり、個々の凸状構造要素の前記台地表面が、好ましい、少なくとも略同じサイズである、ことを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の薄板包装製品。
【請求項14】
前記繰り返される構造要素がそれぞれ、少なくとも略平坦な溝底部を有する溝状凹部として形成され、前記個々の構造要素の前記溝底部の面積が、少なくとも略等しいサイズである、ことを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の薄板包装製品。
【請求項15】
前記繰り返される構造要素がそれぞれ、溝状凹部および前記溝状凹部に隣接する台地状隆起部として形成され、前記台地状隆起部の台地領域が、好ましくは前記凹部の底部の領域とサイズが少なくとも略等しい、ことを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の薄板包装製品。
【請求項16】
前記繰り返される構造要素が、0.1~8.0μm、好ましくは0.2~4.0μmの平均高さ(h)だけ前記鋼板基材(S)の表面よりも突出する凸状突起を含む、請求項1から15のいずれか1項に記載の薄板包装製品。
【請求項17】
前記繰り返される構造要素が、0.1~8.0μm、好ましくは0.2~4.0μmの平均深さ(t)を有する凹部を含む、請求項1から16のいずれか1項に記載の薄板包装製品。
【請求項18】
前記周期的に繰り返される構造要素が、平面視で、長方形もしくは正方形、ストリップ形状、棒状、円筒状、葉状、三日月形状の環状または半球状である、請求項1から17のいずれか1項に記載の薄板包装製品。
【請求項19】
前記薄板包装製品は、長手方向(L)に延びるストリップの形態であり、前記周期的に繰り返される構造要素が、ウェブ状隆起部(E)および/または溝状凹部(V)である、ことを特徴とする請求項1から18のいずれか1項に記載の薄板包装製品。
【請求項20】
前記畝状突起(E)および/または前記溝状凹部(V)の平均幅が、10μm~200μmであり、好ましくは15μm~100μmの範囲である、請求項20に記載の薄板包装製品。
【請求項21】
前記畝状突起(E)の平均幅(b)が30μm~200μmの範囲内であり、前記溝状凹部(V)の平均幅(b)が10μm~100μmの範囲内である、請求項20に記載の薄板包装製品。
【請求項22】
前記表面構造が、規則的なパターンで、特にマトリックス形態で、複数の溝、特に二重溝の形態で構成された凹部を有する、ことを特徴とする請求項1から21のいずれか1項に記載の薄板包装製品。
【請求項23】
隣接する複数の溝、特に隣接する二重溝がそれぞれ、互いに対して90°回転して配置されている、請求項23に記載の薄板包装製品。
【請求項24】
前記薄板包装製品の前記表面が、0.5μm未満および0.1μmを超える表面粗さ(Ra)で、50光沢単位(GU)を超える、好ましくは100光沢単位(GU)を超える、特に100~800光沢単位(GU)の間の光沢値を有する、ことを特徴とする請求項1から23のいずれか1項に記載の薄板包装製品。
【請求項25】
前記薄板包装製品の表面が、少なくともほぼ方向に依存しない光沢値を有し、圧延方向と前記圧延方向に垂直な横断方向との光沢値の差(Δ光沢)が、特に0.01~2.0μmの表面粗さ(Ra)で、好ましくは100光沢単位(GU)未満であり、特に、好ましくは70光沢単位(GU)以下である、ことを特徴とする請求項1から24のいずれか1項に記載の薄板包装製品。
【請求項26】
前記複数の構造要素が、摩耗によって前記コーティング(B)から剥離した粒子を受け入れるための周期的に繰り返されるリザーバを形成する、請求項1から25のいずれか1項に記載の薄板包装製品。
【請求項27】
粒子を受け入れるための前記リザーバが、摩耗によって前記コーティング(B)から剥離する摩耗粒子を受け入れる周期的に繰り返される凹部によって形成される、請求項26に記載の薄板包装製品。
【請求項28】
前記周期的に繰り返される構造要素が隆起部(E)および/または凹部(V)を含み、前記薄板包装製品の総面積に対する前記隆起部(E)の面積比が、20%~50%、好ましくは24%~45%であり、および/または前記薄板包装製品の総面積に対する前記凹部(V)の面積比が、50%~80%、好ましくは55%~76%である、請求項1から27のいずれか1項に記載の薄板包装製品。
【請求項29】
前記周期的に繰り返される構造要素が、畝状の隆起部(E)および/または溝状の凹部(V)を含み、前記畝状の隆起部(E)および/または溝状の凹部(V)の平均幅が、10μm~120μm、好ましくは15μm~95μmの範囲である、ことを特徴とする請求項1から28のいずれか1項に記載の薄板包装製品。
【請求項30】
前記畝状突起(E)の平均幅(b)が45μm~120μmの範囲であり、前記溝状凹部(V)の平均幅(Δb)が10μm~85μmの範囲である、請求項29に記載の薄板包装製品。
【請求項31】
前記鋼板基材(S)が、重量分率で以下の組成:
C:0.01~0.1%、
Si:<0.03%、
Mn:0.1~0.6%
P:<0.03%、
S:0.001~0.03%、
Al:0.002~0.1%、
N:0.001~0.12%、好ましくは0.07%未満、
任意選択でCr:<0.1%、好ましくは0.01~0.05%、
任意選択でNi:<0.1%、好ましくは0.01~0.05%、
任意選択でCu:<0.1%、好ましくは0.002~0.05%、
任意選択でTi:<0.09%、
任意選択でB:<0.005%、
任意選択でNb:<0.02%、
任意選択でMo:<0.02%、
任意選択でSn:<0.03%、
残部鉄および不可避不純物、
を有する、請求項1から30のいずれか1項に記載の薄板包装製品。
【請求項32】
テクスチャ表面を有する薄板包装製品の製造方法であって、
厚さが0.1mm~0.6mmの範囲の一次冷間圧延鋼板基材(S)を準備するステップと、
前記一次冷間圧延鋼板基材(S)を再結晶焼きなましするステップと、
再結晶焼きなまし鋼板基材(S)を2スタンド再圧延機で再圧延またはスキンパスするステップであって、前記再圧延機の第1のスタンドが、構造化されていないロール表面、特にブラスト処理されたまたは研磨されたロール表面、を有する少なくとも1つの作業ロールを有し、前記再圧延機の第2のスタンドが、表面構造化ロール表面を有する少なくとも1つの作業ロールを有するステップと、
再圧延されたまたはスキンパスされた鋼板基材(S)の少なくとも片面を、スズのコーティング(B)ならびに/またはクロムもしくはクロムおよび酸化クロムのコーティング(B)で電解コーティングするステップであって、前記コーティング(B)が、1~15g/m
2の範囲のスズの重量を有するスズ層および/または前記クロムもしくは酸化クロム層中の5~200mg/m
2の範囲のクロムの総コーティング重量を有するクロムもしくは酸化クロムの層を含む、ステップと、
を含み、
少なくとも一方向に周期的に繰り返される構造要素を有する表面プロファイルが、コーティング(B)で電解コーティングされた鋼板の表面に生成され、前記表面構造は、絶対最大値と、複数の二次最大値であって、その高さが絶対最大値の高さの少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%である複数の二次最大値と、を有する自己相関関数を有する、
製造方法。
【請求項33】
前記第2のスタンドの前記少なくとも1つの作業ロールの表面が、パルスレーザ、特に短パルスレーザまたは超短パルスレーザによって構造化されていることを特徴とする、請求項32に記載の製造方法。
【請求項34】
前記コーティング(B)がスズコーティングであり、前記コーティング(B)の表面が、電着の後に、熱溶融されているか、または、不動態化層、特にクロム/酸化クロム不動態化層またはクロムフリー不動態化層を備える、ことを特徴とする請求項32または33に記載の製造方法。
【請求項35】
前記冷間圧延および電解コーティングされた鋼板基材(S)の、0.1mm~0.5mmの範囲内の最終厚さへの厚さ減少が、再圧延またはスキンパス中にもたらされ、再圧延中の相対厚さ減少は、5%を超えて50%までの範囲内であり、スキンパス中の相対厚さ減少は、0%~5%の範囲内、好ましくは1%~4%の範囲内である、ことを特徴とする請求項32から34のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項36】
0.05mm~0.6mmの範囲の厚さを有する鋼板であって、前記鋼板の表面が、周期的に繰り返される構造要素を有する表面プロファイルを少なくとも一方向に有し、前記表面プロファイルから生じる自己相関関数が、複数の二次最大値であって、その高さが絶対最大値の高さの少なくとも40%である複数の二次最大値を有する、ことを特徴とする鋼板。
【請求項37】
前記鋼板の表面上の好ましい方向に沿った自己相関関数の前記二次最大値の高さが、前記絶対最大値の高さの少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%である、ことを特徴とする請求項36に記載の鋼板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプレアンブルに記載の薄板包装製品、および薄板包装製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電解スズめっき鋼およびクロムコーティング鋼の形態の冷間圧延薄板包装製品は、DIN EN10202(欧州規格EN10 202:2001)で規格化されている。この規格による包装薄板製品は、電解スズめっき(ブリキ)または電解クロムコーティング鋼(ECCS)のいずれかである一回冷間圧延または二回圧延軟鋼であると理解されたい。一回冷間圧延薄板包装製品は、0.1mm~約0.6mm、特に0.17mm~0.49mmの公称厚さで市販されており、二回圧延薄板包装製品は、0.13mm~0.29mmの公称厚さで供給される。薄板包装製品は、ストリップの形態(コイルに巻かれる)または薄板の形態であり得る。ストリップは、少なくとも600mmの公称幅を有するが、スリットストリップは、より小さいスリット幅を有することもできる。
【0003】
この規格によれば、電解スズめっきブリキは、連続電解プロセスで設けられたスズで両面がコーティングされた、低炭素含有量の非合金鋼の冷間圧延薄板またはストリップであると理解されたい。加えて、一方の面(例えば、上面)が他方の面(例えば、底面)よりも大きいスズコーティングを有する電解的に差のあるブリキも市販されている。
【0004】
高い耐食性および光沢のある表面を達成するために、ブリキについて鋼板基材をスズめっきした後に、電解析出スズ層をスズの融点より高い温度まで加熱し、次いで冷却することが一般的である。この温度処理は、鋼板基材上にコーティングを生成し、コーティングは、鋼板基材の表面上の鉄-スズ合金と、表面付近の遊離スズの層とから構成される。この遊離スズの最上層は、熱溶融したブリキに高い光沢値を与える。ブリキ表面の光沢を高めるために、ブリキのブリキ表面を二次圧延(スキンパス)で再圧延またはスキンパスする規格に従って、研削および研磨されたスキンパスロールを使用することができ、スキンパス中の二次圧延操作の減少率は、好ましくは5%以下(グロススキンパス)である。
【0005】
さらに、いわゆる「石仕上げ/目の細かい石仕上げ」表面が規格から知られており、これは、光沢表面に使用されるスキンパスロールよりも顕著な研削構造およびより高い粗さを有する研削スキンパスロールの使用から生じる方向性表面構造を特徴とする。さらに、ブラスト処理されたスキンパスロールを使用する場合、「ブラスト処理された面」を達成することができる。ブラスト処理されたスキンパスロールを使用する場合、スズ層が熱溶融されている場合は銀つや消し表面をブリキ上に製造することができ、またはスズ層が熱溶融されていない場合はつや消し表面を製造することができる。加えて、EDT(「放電テクスチャ加工」)によってテクスチャ加工されたスキンパスロールも使用される。
【0006】
電解クロムコーティング鋼(ECCS)は、鋼板基材上に直接金属クロムの層を有し、金属クロム層上にクロム水和酸化物または水酸化クロムの最上層を有する、低炭素含有量の冷間圧延電解処理された軟鋼板またはストリップとして規格によって定義されている。
【0007】
薄板包装製品の表面仕上げについて、規格は、定義された算術中心粗さ(Ra)によって鋼板基材の公称表面粗さを特定し、それは、例えば、光沢表面を有するブリキではRa≦0.35μm、銀つや消しブリキ表面ではRa≧0.90μmである。電解的に特別にクロムコーティングされた鋼板(ECCS)の場合、規格によって要求される表面粗さは、「細石」表面では0.25μm~0.45μm、「石」表面では0.35μm~0.60μmの範囲である。
【0008】
近年、包装産業は、薄板包装製品の表面の光学特性、例えば光沢、反射および輝度、ならびに耐食性および機械的特性、例えば耐摩耗性にますます高い要求を課しており、これは、市販されており、最新技術から既知の標準的な薄板包装製品では満たすことができない。既知の包装薄板製品の表面特性は、通常、表面トポグラフィ(表面の凹凸形状)の影響を受け、表面トポグラフィは、例えば再圧延(スキンパス)中にブリキ製造で設定される。この目的のために一般的に使用される製造工程では、例えば再圧延(二次冷間圧延またはスキンパス)中に、研削、ブラストまたは浸食されたスキンパスロールが使用されるが、再圧延中に使用される作業ロール(スキンパスロール)の構造が時には不均一になりすぎることがあり、方向性が時には高すぎることがあるため、必要な表面特性を達成しないか、または限られた範囲でしか達成しない。作業ロールの不均一な表面構造のために、例えば、方向性光沢効果を有する均一な表面を達成することは不可能である。
【0009】
スズ缶および飲料缶などの包装容器の製造における薄板包装製品の耐腐食性および加工性に関して、材料に対する要求もますます高まっている。薄板包装製品の耐食性を改善するために、より高重量のスズ層またはクロム/酸化クロム層を製造することができる。しかしながら、これは、より多量のコーティング材料(スズおよびクロムなど)がこれに必要とされるため、資源効率の観点から除外される。この点で、電着コーティングの重量を増加させることなく、薄板包装製品の耐食性を改善する必要がある。
【0010】
包装容器またはその一部は、薄板包装製品から、深絞り加工およびDI(絞りしごき)加工プロセスなどによって形成され、それらの深絞り加工およびDI加工プロセスなどの、成形工程における薄板包装製品の加工性についても、ますます厳しくなってきている。コイル状ブリキストリップの形態のブリキ包装製品の加工における主な問題は、電解析出スズコーティングからの粒子の摩耗に基づく。コイルコーティングラインで定期的に行われる鋼板基材の電解コーティングの後、ストリップ状のブリキ包装製品は、コイルに巻き付けられ、包装を製造するためのさらなる加工のための成形ラインに輸送され、それらはそこでコイルから巻き出され、薄板に切断される。この処理ステップでは、コーティングされたストリップの表面と接触するローラが、ストリップをガイドし、偏向させるために使用される。このプロセスにおいて、また成形ツールを使用して包装薄板を形成する場合のさらなる加工工程においても、コーティング材料(スズなど)の粒子がコーティングから剥離する可能性がある。これは、特にコイルを形成するためのストリップの巻き取りおよび巻き出しの間、ロールの薄板への切断の間、ならびに絞りおよび成形ツールにおける成形の間に起こり得る有害な摩耗をもたらす。少なくとも本質的に金属コーティングの材料(すなわち、例えばブリキの場合はスズである)からなる研磨剤は、ストリップならびにガイドおよび偏向ローラおよび/または成形ツールを再汚染させる可能性がある。さらに、コーティング材料の粒子の摩耗は、成形プロセスにおいて薄板包装製品から製造された包装容器の表面に付着し、包装容器が製品で充填される場合に内部に入れられる内容物を汚染する可能性がある。これを防止するために、ストリップの巻き取りおよび巻き出しに使用されるガイドおよび偏向ローラ、ならびに成形プロセスに使用される絞りおよび成形ツールは、定期的に清掃される。これは時間と費用がかかり、薄板包装製品およびそれらから製造される包装容器の製造プロセスの効率を低下させる。
【発明の概要】
【0011】
この出発点で、本発明は以下の課題に基づく。一方では、最適化され、具体的に調整可能な光沢、反射および輝度特性など、薄板包装製品の表面特性に対するより高い要求が満たされるべきである。他方では、薄板包装製品の耐食性もまた、電解析出コーティングの重量を維持しながら改善されるべきであり、輸送中および成形プロセスによる包装の製造中の薄板包装製品の加工性も同様である。
【0012】
これらの課題は、請求項1の特徴を有する薄板包装製品によって本発明に従って解決される。本発明による薄板包装製品の好ましい実施形態および態様ならびに有利な特性および特徴は、従属請求項に定義されている。請求項11に記載の特徴を有する薄板包装製品の製造方法は、課題の解決に更に寄与する。
【0013】
本発明による薄板包装製品は、特に、電解スズめっき鋼板(ブリキ)の形態または電解クロムコーティング鋼板(ECCS)の形態であり、0.1mm~0.6mmの範囲の厚さを有する鋼板基材と、鋼板基材の少なくとも一方の表面、好ましくは両方の表面に電解析出されたスズ(ブリキの場合)またはクロム/酸化クロム(ECCSの場合)のコーティングと、からなり、本発明によれば、鋼板基材の表面上に、複数の均一なすなわち均質な酸化クロム層を有し、すなわち均質に、薄板包装製品の表面上に分布し、周期的に繰り返される構造要素を有する表面構造を有する。
【0014】
鋼板基材の少なくとも片面に電解析出される薄板包装製品のコーティングは、スズならびに/またはクロムもしくはクロムおよび酸化クロムからなり、コーティングは、1~15g/m2の範囲のコーティング重量を有するスズ層ならびに/またはクロム/酸化クロム層中の5~200mg/m2の範囲のクロムの総コーティング重量を有するクロムおよび/もしくは酸化クロムの層を含む。本発明による薄板包装製品は、コーティングを備える薄板包装製品の少なくとも1つの表面が、少なくとも一方向に、周期的に繰り返される構造要素を有する表面プロファイルを有し、絶対最大値、および絶対最大値の高さの少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%の高さである複数の二次最大値を有する表面プロファイルから生じる自己相関関数を有することを特徴とする。
【0015】
任意選択的に、さらなるコーティングまたはオーバーレイを電解コーティングに適用できる。ブリキの場合、例えば、クロムおよび/もしくは酸化クロムの不動態化層またはクロムフリー(クロムを含まない)材料を設けることができ、熱可塑性物質のポリマー層をECCSのクロム/酸化クロムコーティングに設けることができる。スズめっき鋼板基材をスズの融点より高い温度に加熱することによって、スズコーティングを熱溶融させることができる。
【0016】
本発明による薄板包装製品の表面上の周期的に繰り返される構造要素は、異なる形状を有することができ、特に、凹状または台地状の平坦な隆起部として形成することができる。隆起部によって囲まれた周期的に繰り返される凹部も提供され得る。
【0017】
周期的に繰り返される構造は、まず、製造プロセスにおいて、既に一次冷間圧延された鋼板基材の二次冷間圧延、特に5%~50%の範囲の再圧延率を有する再圧延ステップ、または、5%未満、特に1%~4%の範囲の再圧延率を有するスキンパスにより、少なくとも1つの表面構造化ロールによって鋼板基材の表面に形成され、次いで、このようにして表面構造化された鋼板基材は、コーティングの電解析出によって改良される。
【0018】
構造化表面を有する薄板包装製品を製造する本発明による製造方法であって、
厚さが0.1mm~0.6mmの範囲の一次冷間圧延鋼板基材(S)を準備するステップと、
1次冷間圧延鋼板基材(S)を再結晶焼きなましするステップと、
再結晶焼きなましされた鋼板基材(S)を2スタンド再圧延機で再圧延またはスキンパスするステップであって、再圧延機の第1のスタンドが、構造化されていないロール表面、特にブラスト処理されたまたは研磨されたロール表面を有する少なくとも1つの作業ロールを有し、再圧延機の第2のスタンドが、表面が構造化されたロール表面を有する少なくとも1つの作業ロールを有するステップと、
再圧延されたまたはスキンパスされた鋼板基材(S)の少なくとも片面を、スズのコーティング(B)ならびに/またはクロムもしくはクロムおよび酸化クロムのコーティング(B)で電解コーティングするステップであって、コーティング(B)が、1~15g/m2の範囲のスズのコーティング重量を有するスズ層、および/またはクロムもしくは酸化クロム層中の5~200mg/m2の範囲のクロムの総コーティング重量を有するクロムもしくは酸化クロムの層を含む、ステップと、
を含み、
少なくとも一方向に周期的に繰り返される構造要素を有する表面プロファイルが、コーティング(B)で電解コーティングされた鋼板の表面に生成され、表面構造が、絶対最大値と、複数の二次最大値であって、その高さが絶対最大値の高さの少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%である複数の二次最大値と、を有する自己相関関数を有する、
製造方法。
【0019】
本発明による方法では、再結晶焼きなまし鋼板基材の再圧延またはスキンパスは、構造化されていないロール表面、特にブラスト処理されたまたは研磨されたロール表面を有する少なくとも1つの作業ロールを有する第1のスタンドと、(決定論的に(確定的に))表面が構造化されたロール表面を有する少なくとも1つの作業ロールを有する第2のスタンドと、を含む2スタンド再圧延機で行われる。したがって、第1のスタンドの作業ロールまたは各作業ロールのロール表面は、ロール表面が周期的に繰り返されるパターンを有さない統計的に無相関の構造を有するという意味で構造化されない。これは、例えば、作業ロールの、滑らかな、研磨された、もしくはブラスト処理された表面、またはショットブラストテクスチャリングプロセス(SBT)もしくは放電テクスチャリングプロセス(「EDT」)もしくは電子ビームテクスチャリングプロセス(「EDT」)で処理されたロール表面に適用される。対照的に、第2のスタンドの作業ロールまたは各作業ロールのロール表面は、ロール表面が周期的に繰り返される構造要素を有する相関性のある決定論的構造を有するという意味でテクスチャ加工されている。これは、例えば、周期的に繰り返される構造要素を有する決定論的表面構造を生成するために、パルスレーザ、特に超短パルスレーザで特に構造化された作業ロールの表面に適用される。(決定論的な)表面構造化ロール表面を有するそのような作業ロールの表面プロファイルの自己相関関数は、少なくとも1つの方向、特に円周方向および/または円周方向に垂直に、絶対最大値と、複数の二次最大値であって、その高さが絶対最大値の高さの少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%である複数の二次最大値と、を示す。
【0020】
再結晶焼きなまし鋼板基材の再圧延は、通常、冷却剤および潤滑剤を使用して湿式で行われるが、スキンパス成形は通常、乾式または特殊な湿式スキンパス成形剤を使用して行われる。
【0021】
好ましくは、鋼板基材のストリップ移動方向に前後に配置された2台のクワトロ(4つの)スタンドが調質圧延またはスキンパス圧延に使用され、各スタンドは、好ましくは再結晶焼きなまし鋼板基材がその間を通過する上部作業ロールおよび下部作業ロールを有する。2つの作業ロールは、2つのより大きなバックアップロール(上部バックアップロールおよび下部バックアップロール)の間に、ストリップ走行方向に対して垂直に配置され、1つのバックアップロールの表面は、作業ロールを安定させるために、それぞれの場合に関連する作業ロールのロール表面と接触している。しかしながら、例えば6つのロールを有する他のロールスタンドも使用することができる。
【0022】
第1および第2のスタンドの2つの作業ロールのロール表面は同一に設計されている。しかしながら、特に第2のスタンドにおいて、異なる構造のロール表面を有する2つの作業ロールを使用することも可能である。これにより、鋼板基材の下面に上面とは異なる表面構造がインプリント(刻印)されることが可能になる。
【0023】
第2のスタンドの表面構造化ロールまたは各表面構造化ロールは、特に、テクスチャリングプロセスにおいて、パルスレーザ、特に短パルスレーザまたは超短パルスレーザによってテクスチャ加工された作業ロール(スキンパスロール)であってもよく、これにより鋼板基材は、二次冷間圧延ステップで再圧延されるか、またはスキンパスステップでスキンパスされる。再圧延またはスキンパス中に、作業ロールの表面構造が鋼板基材の表面に刻印される。
【0024】
鋼板基材のストリップ移動方向における2つのロールスタンド(すなわち、第1および第2のスタンド)の順序は任意であり、すなわち、構造化されていないロール表面を有する第1のスタンドによって最初に再圧延またはスキンパスさせ、次いで構造化されたロール表面を有する第2のスタンドによって再圧延またはスキンパスさせることができ、またはその逆も可能である。構造化されていないロール表面を有する第1のスタンドによって最初に再圧延またはスキンパス圧延され、次いで構造化されたロール表面を有する第2のスタンドによって再圧延またはスキンパス圧延される場合、より均一でより明確な表面構造が達成され、これがこの変形形態が好ましい理由である。この場合、第1のスタンドは、対向する作業ロールを通過する鋼板基材の厚さを減少させるために使用される(厚さの減少は、スキンパス中に最大5%、再圧延中に5~50%である)。
【0025】
スキンパス圧延中(再圧延パス率が5%未満、特に1~4%)、第1の冷間圧延ステップ(一次冷間圧延)で既に冷間圧延され、それによって厚さが大幅に(通常は85%超)減少した鋼板基材は、非構造化作業ロールを備える第1のスタンドで事前に構造化される。一次冷間圧延中に強く不均一な影響を受けるこの表面の事前構造化は、周期的に配置された構造要素を有する構造化された均一な表面を有する作業ロールが配置された後続の第2のスタンドでの、より良好な構造化された決定論的表面構造の導入を可能にする。
【0026】
一方では、再圧延中に(再圧延率が5%超、特に10~50%)、関連する加工硬化と共に、好ましくは0.5mm未満の所望の最終厚さを達成するためにさらなる厚さ減少が行われる。加えて、第1の冷間圧延ステップ(一次冷間圧延)で既に冷間圧延され、それによって厚さが大幅に(通常は80%超)減少した鋼板基材は、非構造化作業ロールを備える第1のスタンドで事前に構造化される。第1のスタンドでの一次冷間圧延鋼板の表面のこの事前構造化は、構造化された決定論的表面構造を導入することを可能にするために、再圧延プロセス中に必要である。この目的のために、第1のスタンドで再圧延した後、所望の最終厚さに再圧延された鋼板は、周期的に配置された構造要素を有する構造化された均一な表面テクスチャを備えた作業ロールが配置された後続の第2のスタンドに提供される。
【0027】
説明した再圧延またはスキンパスプロセスによって、選択された方向に沿って(特に圧延方向または圧延方向に垂直な方向に沿って)周期的に繰り返される構造を備える表面プロファイルを有する鋼板基材を製造することができ、表面構造の周期性および均一性は、自己相関関数によって定量化することができ、少なくとも1つの好ましい方向に沿った表面プロファイルの自己相関関数の複数の二次最大値の高さは、主最大値(または絶対最大値)の高さの少なくとも40%、好ましくは少なくとも60%である。
【0028】
表面構造の規則性の逸脱は、自己相関関数によって特定され得る。
【0029】
【0030】
定量化可能である。自己相関関数は、ここでは、表面プロファイルz(x)の周期性、具体的には、表面の平面内の所与の方向(x)に沿った表面粗さを評価するために使用される。
【0031】
二次最大値が絶対最大値の高さの少なくとも30%を有する自己相関関数によって特徴付けることができるコーティングされた包装薄板製品のテクスチャ表面の所望の特性は、少なくとも二回冷間圧延(DR)鋼板基材について、スキンパスまたは再圧延中の2スタンド動作モードでのみ達成され得ることが示されている。自己相関関数の小さい方の最大値が絶対最大値の高さの少なくとも30%である自己相関関数を有するコーティングされた包装薄板(すなわち、ブリキまたはECCS)を製造できるようにするために、自己相関関数の小さい方の最大値が絶対最大値の高さの少なくとも40%である自己相関関数を有する鋼板基材の表面構造を生成することが必要である、なぜなら、周期的に繰り返される構造要素は、鋼板基材の構造化表面の電解コーティング中にある程度平坦にされるからである。
【0032】
したがって、本発明の目的はまた、本発明によるプロセスの中間生成物として、0.05mm~0.6mmの範囲の厚さを有する冷間圧延鋼板であって、その鋼板の表面が、周期的に繰り返される構造要素を有する表面プロファイルを少なくとも一方向に有し、その表面プロファイルから生じる自己相関関数が、複数の二次最大値であって、その高さが絶対最大値の高さの少なくとも40%である複数の二次最大値を有する、冷間圧延鋼板を提供することである。好ましくは、好ましい方向に沿った自己相関関数の二次最大値は、主最大値の高さの少なくとも50%の高さ、特に好ましくは主最大値の高さの少なくとも60%の高さを有する。
【0033】
表面構造化鋼板上へのコーティングの電解析出中、コーティング鋼板は少なくとも本質的に以前に導入された表面構造化を保持する、なぜなら、コーティングの電解析出中、コーティング材料(ブリキの場合はスズ、ECCSの場合はクロム/酸化クロム)は、輪郭に近い鋼板基材の構造化表面上に、均一に、すなわち少なくとも大部分が均質なオーバーレイで析出されるからである。鋼板基材の表面構造に対応して、このようにして製造された薄板包装製品は、基材と同様に、表面にわたって均一に分布し、少なくとも1つの方向に周期的に繰り返される複数の構造を有する表面プロファイルを有する。これにより、本発明による薄板包装製品に、規定された再現性のあるトポグラフィを有する表面を備える決定論的表面構造が与えられ、このトポグラフィは、特に、隆起部、凹部および鋭い先端部などの表面構造の統計的分布を有するトポグラフィとは異なる。
【0034】
したがって、本発明による薄板包装製品は、少なくとも1つの(選択された)方向に、周期的に繰り返される構造を有する表面プロファイルをその表面に有し、複数の二次最大値を有する自己相関関数は、表面プロファイルから生じ、二次最大値の高さは、本発明によれば、主最大値の高さの少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%である。
【0035】
再圧延されたまたはスキンパスされた鋼板基材に電解的に設けられたスズコーティングは、必要に応じてさらに溶融することができ、それによってコーティングの溶融中に表面構造がさらに平坦化され、結果として自己相関関数の二次最大値の高さが減少する。好ましくは、溶融されたスズコーティングを有するブリキは、二次最大値が絶対最大値の高さの少なくとも20%である自己相関関数を依然として有する。
【0036】
鋼基材が金属コーティング、特にスズコーティングまたはクロムおよび酸化クロムのコーティングで電解コーティングされている場合、鋼板基材の表面構造は、少なくとも大部分が保持され得ることが見出された。電解コーティングが鋼板基材の規則的な表面プロファイルをわずかに平滑化することは事実である。それにもかかわらず、電解コーティング後でさえ、周期的に繰り返される構造を有するコーティングされた薄板包装製品の表面プロファイルは、20%を超える(溶融されたスズコーティングの場合)、好ましくは30%を超える自己相関関数における複数の二次最大値の最小高さで、驚くべきことに、明確に認識可能に依然として存在したままである。
【0037】
表面トポロジーを選択的に選択および調整することにより、本発明による包装薄板製品は、耐食性、光沢および摩耗などの表面感受性特性を選択的に調整することができ、それらを異なる用途に適合させることができる。例えば、光沢、反射および輝度などの薄板包装製品の光学表面特性は、表面構造を選択および調整することによって、所望の特性および用途に影響を与え、適合させることができる。さらに、適切な表面構造を選択および調整することにより、薄板包装製品の耐食性を改善することができ、薄板包装製品の輸送および更なる加工中の摩耗を最小限に抑えることができる。
【0038】
例えば、本発明は、表面に周期的に繰り返される凸状または台地状の隆起部を有する薄板包装製品の表面を決定論的に構造化することにより、コーティングの重量を増加させる必要なく、薄板包装製品の耐食性を改善することを可能にする。この表面構造の形成により、本発明のこの実施形態における包装薄板製品の表面は、統計的に分布した表面構造を有する従来の包装薄板製品とは対照的に、包装薄板が機械的応力を受けたときに破断する可能性があるまたはコーティングへの損傷が発生する可能性がある鋭い先端部をまったく有さない。したがって、本発明による包装薄板製品は、機械的応力に対してより耐性があるため、耐食性を損なうことなくより良好に加工することができる。
【0039】
用途および最適化の場合に応じて、表面粗さ(特に算術平均粗さRa)は、0.01~2.0μmの範囲、好ましくは0.1~1.0μmの範囲、特に0.1~0.3μmの範囲である。低い表面粗さは、超薄鋼板の範囲では0.1mm~0.6mmである鋼板基材の薄い厚さに適合する。低い表面粗さは、均一な表面特性を達成することを可能にし、それは輸送中および成形ツールでの成形中の(機械的)応力下であっても包装薄板製品の耐食性を改善する。さらに、低い表面粗さは、輸送および成形中に、コーティングされた薄板包装製品の表面から剥離するコーティングの材料の粒子および/または粉末がより少ないことを意味し、これは、損傷した、または完全に剥離したコーティング層を有する腐食しやすい領域がより少なくなることを意味する。
【0040】
本発明の好ましい実施形態では、(決定論的)表面構造は、例えば、周期的に繰り返される隆起部を有する規則的に配置されたパターンによって特徴付けられる。この文脈において隆起部が言及される場合、隆起部は、表面全体にわたって平均化された表面レベルよりも平均高さ(h)だけ突出する、薄板包装製品の表面上の位置を指す。隆起部は、凸状またはそれらの上面で台地状に平坦にすることができ、好ましくは平坦または凹状である凹部によって囲まれている。凹部内で測定したRa値は、0.1μm以下であることが好ましい。
【0041】
隆起部は、好都合には、0.1~8.0μm、特に0.2~4.0μm、好ましくは3.0μm未満の(平均)高さ(h)を有する。これに対応して、凹部の(平均)深さ(t)は、0.1~8.0μm、特に0.2~4.0μmの範囲、好ましくは3.0μm未満である。好ましくは、周期的に繰り返される構造要素、特に隆起部または凹部は、少なくとも10μm、特に60μm~250μmの範囲の半値全幅(「半値全幅」,FWHM)を有する。
【0042】
隆起部は、様々な幾何学的形状を想定することができ、特に長方形、ストリップ状または棒状、正方形、円筒形、葉状、鎌状、リング状などであり得る。隆起部は、同じ形状または異なる形状を有することができる。隆起部はそれぞれ、同じ形状または異なる形状を有することができる。
【0043】
凸状または台地状の突起を有するこのような表面構造は、薄板包装製品の耐食性に関して有利であることが判明している、なぜなら、このような表面構造は、突起の凸状または台地状の平坦化した上面に鋭い先端(曲率半径<0.2mm)を有する確率的表面構造と比較して、機械的負荷下でコーティングに損傷を与えるリスクが少ないからである。従来技術から知られている鋭い先端部を有する薄板包装製品の表面構造の場合、機械的負荷の下で、鋭い先端部が破断するか、または鋭い先端部上のコーティングが剥離するリスクがあり、その結果、コーティングされていない領域が生じ、その領域では、下にある鋼板基材の鋼が、環境の影響を受けるか、または、時折、包装の活性の高い内容物に曝露され、したがって酸化または腐食する傾向がある。
【0044】
ブリキの腐食特性を定量的に説明するための1つのパラメータは、いわゆるIET値であり、標準化された「鉄曝露試験」で測定され、スズコーティングのスズ多孔度を説明する。前処理(洗浄)、全スズコーティングおよび一定のプロセスパラメータなどの製造プロセスの一定の条件下では、スズ多孔度(IET値)は、本質的に、表面粗さ(算術平均粗さRa)およびスズコーティングSn(g/m2)の(2乗)に依存する。スズの所与のコーティング重量Sn(m/A,単位面積当たりの質量で、単位g/m2)および所与の平均粗さRaを有するブリキについて、本発明は、鉄曝露試験(IET)で使用して、以下の電流密度を得ることができる。jIET=I/A(単位面積当たりの電流で、単位mA/cm2)にコーティング重量Sn(g/m2)の2乗を掛けることで、得ることができる:
Ra≦1.0μmの平均粗さ:jIET・Sn2<1.9(mA/cm2)・(g/m2)2
1.0μm<Ra≦2.0μmの範囲の平均粗さ(Ra):jIET・Sn2<3.3(mA/cm2)・(g/m2)2
【0045】
包装用途の最大許容スズ多孔度は、好ましくは0.5mA/cm2未満のIET値である。
【0046】
台地状または凸状隆起部を有する決定論的表面構造は、より低い摩耗傾向の点で有利であることがさらに証明されている。機械的応力下で破断する可能性がある鋭い先端部を有する確率的表面構造と比較して、コーティングへの損傷、したがって隆起部の台地状の平面加工での摩耗のリスクは少ない。
【0047】
摩耗を低減するために、表面構造が互いに平行に延びる複数のウェブ状もしくはストリップ状の隆起部および/または凹部を有することがさらに有利である。鋼板基材がストリップの長手方向に延びるストリップの形態である場合、ウェブ状もしくはストリップ状の隆起部または凹部がストリップの長手方向に延びていると有用である。結果として生じる凹部は、摩耗によってコーティングから剥離するコーティングの粒子を受け入れるための、薄板包装製品の表面にわたって均一に分布したリザーバを形成する。コーティングから剥離した粒子は、凹部のリザーバに集められ得、それによって薄板包装製品の表面に結合され、したがってガイドまたは偏向ローラまたは成形ツールに付着してそれらを汚染する可能性がない。凹部は、薄板包装製品の表面にわたって均一に分布しており、好都合には、摩耗によってコーティングから剥離した粒子を受け入れることができる開放チャンバまたは閉鎖チャンバを形成する。凹部によって形成されたチャンバは、チャンバを完全に包囲する隆起部によって囲まれている。しかしながら、隣接するチャンバは、接続チャネルを介して互いに連通することも可能である。これにより、例えばガイドローラまたは偏向ローラ上でストリップを輸送する場合に、コーティング材料の粒子を1つのチャンバから隣接するチャンバに押し出すことができる。これにより、薄板包装製品の表面に均一に摩耗を分散させることができ、凹部によって形成されたリザーバに、摩耗を完全に吸収することを保証することができる。隆起部の高さまたは凹部の深さが、すべての隆起部/凹部に対して少なくとも略均一であると好都合である。このようにして、薄板包装製品の表面にわたって均一に分布した、摩耗を吸収するためのリザーバが形成される。薄板包装製品の総面積に対する隆起部の面積比が、20%~50%、好ましくは24%~45%である場合、リザーバの十分な吸収容積を達成することができる。これに対応して、薄板包装製品の総面積に対する凹部の面積比は、50%~80%、好ましくは55%~76%である。
【0048】
表面構造が凸状または台地状の隆起部および溝状の凹部を有する場合、規定された光沢特性の設定、特に、大きく方向に依存しない高い光沢値の達成を達成することができる。隆起部が、凸状であるか、または隆起部の上面に大分部が平坦な台地を有することが好都合である。溝状凹部は、少なくとも大部分が平坦な溝底部を有する。凹部の溝底部と隆起部の上面との間の側面壁は、垂直または垂直に対して傾斜していてもよい(例えば、円錐または円錐台の形態であってもよい)。断面において、隆起部は、例えば、長方形または台形の形状を有する。製造上の理由から、断面形状は、通常、表面に向かって先細りになる等脚台形の断面形状である。
【0049】
隆起部および/または凹部を有する規則的に配置されたパターンは、光学的に均質な表面をもたらし、したがって光沢特性の改善をもたらす。隆起部および凹部のサイズが少なくとも略等しい場合、光学的に均一な表面を達成することができる。特に、構造要素が少なくとも略平坦な凹部底部を有する凹部を含む場合、個々の構造要素の凹部底部の面積が少なくとも略等しいサイズであれば、高い光沢値を達成するのに有利である。
【0050】
本発明による包装薄板製品では、50光沢単位(GU)を超える、好ましくは100光沢単位(GU)を超える、特に100~800光沢単位(GU)の間の光沢値は、このようにして、0.5μm未満および0.1μmを超える表面粗さ(Ra)で達成することができる。光沢特性は、表面の面内の高い等方性を特徴とする。包装薄板製品の表面は、少なくともほぼ方向に依存しない光沢値を有することができ、圧延方向と圧延方向に垂直な横断方向との光沢値の差(Δ光沢)が、特に0.01~2.0μmの表面粗さ(Ra)で、好ましくは100光沢単位(GU)未満であり、特に好ましくは70光沢単位(GU)以下である。
【0051】
必要に応じて、本発明による薄板包装製品は、さらなるコーティングまたはオーバーレイを備えることができる。例えば、本発明によるブリキ製品は、スズ表面の避けられない酸化を防止するために、クロム/酸化クロムコーティングで不動態化することができ、またはクロムフリー不動態化層の湿式化学的適用によっても不動態化することができる。さらに、耐食性、酸および硫黄含有材料に対する耐性、ならびに材料の成形性を高めるために、例えば有機ラッカーまたはPET、PPもしくはPEまたはそれらの混合物などの熱可塑性ポリマーのポリマーコーティングといった有機コーティングを、本発明による薄板包装製品の表面に適用できる。
【0052】
本発明のこれらおよび他の利点および特徴は、添付の図面を参照して以下により詳細に説明される実施形態から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】本発明による薄板包装製品の概略断面図であり、
図1aは、鋼板基材およびコーティングからなる薄板包装製品を示す図であり、
図1bは、コーティングおよびコーディングに設けられた支持体を有する鋼板基材からなる薄板包装製品を示す図である。
【
図2】本発明による薄板包装製品のコーティングの表面の領域における拡大概略断面図である。
【
図3】薄板包装製品の表面の領域における概略断面図であり、
図3aは、鋼板基材にコーティングを設ける前(左側)および設けた後(右側)の先行技術による薄板包装製品の表面の領域における概略断面図であり、
図3bは、鋼板基材にコーティングを設ける前(左側)および設けた後(右側)の本発明による薄板包装製品の表面の領域における概略断面図である。
【
図4a】関連する表面プロファイル(高さプロファイル)を有する従来技術の薄板包装製品の表面の微視的表示図であり、鋼板基材の表面は、コーティングを設ける前にブラスト加工または研削処理ロールによってスキンパス圧延されている。
【
図4b-4g】表面構造化されたスキンパスロールの表面の高さプロファイル(それぞれの場合において左側)およびこのスキンパスロールでスキンパスされた本発明による包装薄板製品の表面の高さプロファイル(それぞれの場合において右側)であり、
図4b,4cおよび4dでは、コーティングを電解的に設ける前のスキンパスされた本発明による包装薄板製品の表面の高さプロファイルであり、
図4e,4fおよび4gでは、コーティングを電解的に設けた後のスキンパスされた本発明による包装薄板製品の表面の高さプロファイルである。
【
図5a-5g】
図4aおよび4bから4gによる、鋼板の表面プロファイルの3次元微視的表示(それぞれの場合において図の上部)、表面の粗さプロファイル(それぞれの場合において図の下部)、粗さプロファイルから得られる自己相関関数(それぞれの場合において図の中央)を示し、スズコーティングの電解析出前の、表面の微視的表示、粗さプロファイルおよび関連する自己相関関数は、
図5b,5cおよび5dにおいて左側に示されており、スズコーティングの電解析出後のそれらは、
図5aにおいては左側、
図5b,5cおよび5dにおいては中央に示されており、スズコーティングの溶融後のそれらは、それぞれの場合において、右側に示されている。
【
図6】本発明および従来技術によるブリキの「鉄曝露試験」(IET)で測定されたIET値に、ブリキ試料の表面粗さ(算術平均粗さRa(μm))の関数としてのスズコーティングの2乗を掛けたものを表す図である。
【
図7】表面粗さ(算術平均粗さRa(μm))に対する、本発明によるブリキおよび従来技術(光沢単位GU)で測定された光沢値の依存性を示す図である。
【
図8】表面粗さ(μmの算術平均粗さRa)に対する、本発明および従来技術によるブリキで測定された光沢値の等方性の依存性(光沢単位GUのΔ光沢値として)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1aは、包装薄板製品の概略断面図である。包装薄板製品は、極薄板の厚さ範囲(0.1mm~0.6mm)を有する鋼板基材Sと、鋼板基材S上に電解析出されたコーティングBとからなる。鋼板基材は、低炭素含有量の鋼製の冷間圧延鋼板である。鋼板基材Sの鋼の適切な組成は、欧州規格DIN EN10 202に規定されている。鋼板基材Sは、鋼の合金成分の重量分率に関して以下の組成を有することが好ましい:
C:0.01~0.1%、
Si:<0.03%、
Mn:0.1~0.6%
P:<0.03%,
S:0.001~0.03%、
Al:0.002~0.1%、
N:0.001~0.12%、好ましくは0.07%未満、
任意選択でCr:<0.1%、好ましくは0.01~0.05%、
任意選択でNi:<0.1%、好ましくは0.01~0.05%、
任意選択でCu:<0.1%、好ましくは0.002~0.05%、
任意のTi:<0.09%、
任意のB:<0.005%、
任意のNb:<0.02%、
任意のMo:<0.02%、
任意のSn:<0.03%、
残部鉄および不可避不純物。
【0055】
コーティングBは、スズコーティング、またはクロムおよび酸化クロム(および場合によっては水酸化クロム)のコーティングであり得る。スズコーティングの場合、ブリキと呼ばれる。鋼板基材上に電解析出されたクロム/酸化クロムコーティングの場合、電解クロムめっき鋼(ECCS)と呼ばれる。ブリキの場合、コーティングBのコーティング重量は、典型的には1~15g/m2の範囲、特に2~6g/m2のスズである。ECCSの場合、クロム-酸化クロム層中のクロムのコーティング重量は、典型的には50~200mg/m2の範囲、特に70~150mg/m2の間である。
【0056】
例えば、ラッカーもしくはポリマーコーティングなどの不動態化層または有機オーバーレイの形態であるさらなるコーティングまたはオーバーレイを、このプロセスでコーティングBに設けることができる。これは
図1bに概略的に示されており、コーティングB上にオーバーレイPが示されている。オーバーレイPは、例えば、ホワイトラッカーコーティングとすることができる。例えばブリキの場合、オーバーレイPは不動態化層とすることができる。不動態化層は、ブリキに一般的である、金属クロムおよび/または酸化クロムで構成され得る。しかしながら、不動態化層は、スズ表面上に湿式化学的に設けられたクロムフリー不動態化層とすることができる。ブリキの場合、不動態化層は、スズ表面上の不可避的な酸化物成長を防止し、したがってスズ表面を酸化することなくブリキの長期間にわたる貯蔵安定性を保証することを意図している。さらに、ブリキの場合、鋼板基材上にスズを電解析出させた後に、ブリキをスズの溶融温度より高い温度に加熱することによって、コーティングの表面またはスズコーティング全体を溶融することができる。
【0057】
オーバーレイPは、有機ラッカーなどの有機オーバーレイによって、または熱可塑性ポリマー、特にPETまたはPP製のポリマーコーティングによって形成することもできる。特にECCSについては、材料の耐腐食性および耐酸性ならびに材料の成形性を改善するために、ECCSの酸化クロム表面を、例えばPETまたはPPフィルムを積層することによって、熱可塑性ポリマーからなるポリマーコーティングで被覆することが一般的である。
【0058】
図2は、コーティングBの表面の領域における本発明による薄板包装製品の概略図を示す。
図2から分かるように、薄板包装製品の表面は、互いに隣接して配置された複数の隆起部E(図示の断面図において)と、その間に位置する凹部Vとを有する。隆起部Eは、平均表面レベル0より上の(平均)高さhを有する。凹部Vは、平均表面レベル0に対して深さtを有する。凹部Vは、少なくとも大部分が平坦な溝底部c1,c2,c3を有する溝状である。隆起部Eは、略平坦な台地面b1,b2,b3,b4を有する台地状である。凹部Vおよび隆起部Eの側面a1,a2,a3,a4は、
図2に示すように、垂直面に対してわずかに傾斜している。
図2に示される断面図において、これは、隆起部Eの形状に関し、等脚台形または切頭円錐をもたらし、それらは表面に向かって円錐状に先細りになっている(ガウスプロファイルまたはトップハット(シルクハット)プロファイル)。
【0059】
均一な表面特性を達成するために、隆起部Eおよび凹部Vの形状および配置が可能な限り均一または規則的であることが有用である。
【0060】
特に、溝状凹部Vの溝底部c1,c2,c3の面積は、可能な限り等しい。偏差は、好ましくは10%以下である。これに対応して、台地状隆起部の台地領域(b1~b4)も、好ましくはほぼ同じサイズであり、凹部Vとそれに隣接する隆起部Eとの間に延在する側面a1~a4も、好ましくは傾斜の差を示さない。隆起部の高さhは、最大25%だけ変化することができ、凹部の深さtもまた、好ましくは、わずかに約10%以下だけしか変化しない。
【0061】
本発明による薄板包装製品の表面構造の均一性および規則性は、自己相関の助けを借りて数学的に説明され得る。自己相関(相互自己相関もまた)は、一般に、ある信号またはプロファイルz(x)と、それよりも前の時間または別の位置xにおける信号またはプロファイルz(x)との相関を表す。
【0062】
シフトなしの場合、Ψzz(0)は、0~lまでの間隔におけるxでのプロファイルの高さ値z(x)の分散を表す。
【0063】
【0064】
粗さパラメータを計算するために、DIN EN ISO4288:1998-04に従って、粗さ範囲Ra=0.1μm~1μmにおいて、4.8mmのltの走査距離が使用されるべきである。カットオフ波長Lc=0.8mmでガウシアンハイパスフィルタリングし、マージン領域を分離した後、特性値計算のためにl=4mmの評価長が残る。
【0065】
図5aおよび
図5b~
図5gは、従来の薄板包装製品(
図5a)および本発明による薄板包装製品(
図5b~
図5g)の表面プロファイル(粗さプロファイル)(いずれの場合も図の下部における)、ならびに表面プロファイルの関連する自己相関関数(いずれの場合も図の中央における)を示す。ここで、
図5aは、統計的に無相関の表面構造を有する従来の鋼基材を有するブリキの表面構造を示す。
図5b~
図5dは、スズでコーティングする前(左側)および2.8g/m
2のスズコーティングで両面を電解コーティングした後(図の中央および右側)の本発明による鋼板の表面構造を示し、中央の画像は溶融状態のスズ表面を示し、右側の画像はそれぞれ溶融前のスズ表面を示す。
図5e~
図5gは、本発明によるブリキの表面構造のさらなる例を示す(スズコーティングの再溶融の前および後)。
【0066】
自己相関の振幅は、主最大値H(x=0)に対して正規化される(正規化自己相関関数Ψzz(x)/σ2)。正規化された自己相関関数の二次最大値Nの高さは、正規化に起因して最大値1または100%とすることができ、表面平面内の選択された方向(x)に沿った周期的な自己相関の規則性および均一性の尺度を表す。それらの対称性(Ψzz(-x)=Ψzz(x))のために、自己相関関数は、正のx値についてのみ図に示されており、負の値の場合、それは縦座標の鏡像として挙動する。表面プロファイルの自己相関の最も高い(二次)最大値を決定するために、測定セクションは、可能であれば、試験片の好ましい方向の1つ、特にストリップの長手方向(または冷間圧延包装薄板の圧延方向)またはストリップに垂直に配置されるべきである。
【0067】
図5aによる本発明ではない比較サンプルと本発明による薄板包装製品との比較(
図5b~
図5g)は、本発明による薄板包装製品が、x=0における主最大値に加えて、主最大値の少なくとも20%の振幅に達する複数の二次最大値を有する自己相関関数を有するが、本発明ではない比較サンプルの二次最大値の高さは(有意に)20%未満であることを示す。したがって、本発明による決定論的表面構造を有する薄板包装製品は、周期的に繰り返される構造要素を有する非常に均一な表面プロファイルを有する。
【0068】
周期的に繰り返される構造要素、特に隆起部Eおよび凹部Vの形状は、それぞれの場合に、本発明による薄板包装製品の用途または薄板包装製品から包装を製造するための仕様に適合させることができる。隆起部Eおよび凹部Vの適切な断面形状は、本質的に台形およびドーム形状であり得る。
【0069】
隆起部Eおよび凹部Vは、円形または環状の形状であってもよい。特に反射および光沢などの均一な光学特性を達成するための特別な用途では、ストリップまたは畝(長く伸びた突出部)の形態の隆起部Eまたは凹部Vが有利であることが証明されている。突起Eは凸状であってもよく、または好ましい態様では、可能な限り平坦な台地状の平坦な上面を有することができる。凹部Vは、概ね平坦な凹部面を有する。
【0070】
周期的に繰り返される構造要素を有する表面構造の例が
図4b~
図4gに示されており、それぞれの場合において、作業ロールの表面を左側に示し(平面視で関連する高さプロファイルと共に)、コーティングBの電解析出前にその作業ロールを用いて鋼板基材が冷間圧延(スキンパス)され、右側には、それぞれの場合において、鋼板基材のスキンパスされた表面の得られた表面構造を示す。鋼板基材の二次冷間圧延(スキンパス)に使用したロール(ペア)のデータは、表1から得ることができる。
【0071】
図の例では、
図4b~
図4dに示すように、鋼板基材の再圧延(二次冷間圧延)には再圧延機が使用され、それにはブラスト処理されたロール表面を有する第1の作業ロールを備えた第1のスタンドおよび構造化されたロール表面を有する第2の作業ロールを備えた第2のスタンドが装備された。第2の作業ロールの構造化されたロール表面の表面構造は、
図4b~
図4dの図の左側に示されている。
【0072】
図の例では、
図4e~
図4gに示すように、鋼板基材の二次冷間圧延には再圧延機が使用され、それには、構造化されたロール表面を有する第1の作業ロールを備えた第1のスタンドおよび研磨されたロール表面を有する第2の作業ロールを備えた第2のスタンドが装備された。第1の作業ロールの構造化されたロール表面の表面構造は、
図4e~
図4gの図の左側に示されている。
【0073】
図3b~
図3jに示す本発明による薄板包装製品の表面形状は、表面にわたって均一に分布する算術平均粗さRaを有する表面粗さを設定することを可能にし、算術平均粗さRaは、好ましくは0.01~2.0μmの範囲、特に好ましくは0.1~1.0μmの範囲、特に0.1~0.3μmの範囲である。本発明による薄板包装製品の表面粗さ、特に算術平均粗さRaの値は、特定の用途に適合させることができ、周期的に繰り返される表面構造(隆起部Eおよび凹部V)の幾何学的形状およびサイズを選択することによって具体的に設定され得る。
【0074】
本発明による薄板包装製品の製造のために、鋼板基材Sは、(一次)冷間圧延後またはその間に、表面構造化ロールで再圧延されるか(二次冷間圧延は5%~45%の範囲の再圧延率を有する)、または5%未満の再圧延の程度で処理される。この目的のために使用される表面構造化作業ロールは、例えば、短パルスレーザ(KPL)または超短パルスレーザ(UKPL)で構造化されたロールであり得る。なお、表1では、超短パルスレーザで構成されるロールを略記「UKPL」で示す。この指定にもかかわらず、本発明は、超短パルスレーザ(UKPL)によって構成されたロールによる決定論的表面構造の生成に限定されないことに留意されたい。本発明による薄板包装製品の表面構造は、他の方法で構成されたローラによってインプリントすることもできる。しかしながら、いずれの場合でも、この目的のために使用されるロールは、圧延中に鋼板基材Sの表面に押し付けられる決定論的に構造化されたロール表面を有する。5%超で最大50%までの減少率(再圧延率)での二次冷間圧延ステップ、または一次冷間圧延後に最大5%の低い減少率で冷間圧延鋼板がスキンパスされるスキンパスステップにおいて、ロールの表面構造をインプリントすることが好都合である。
【0075】
作業ロール(スキンパスロール)の決定論的表面構造が鋼板基材Sの表面に導入された後、コーティングBは、鋼板基材Sの構造化された表面上へのコーティング材料(例えば、ブリキの場合はスズ、ECCSの場合はクロム/酸化クロム)の電解析出によって、本発明にしたがい設けられる。次いで、コーティングBは、電解析出によって鋼板基材Sに設けられる。鋼板基材S上へのコーティングBの電解析出中、鋼板基材の決定論的表面構造は本質的に保持され、その結果、コーティングされた薄板包装製品はまた、
図2に概略的に示されるように、均一なトポグラフィを有する決定論的表面構造を有する。
図1bに示すように、追加のオーバーレイPがコーティングBに設けられる場合、特に、オーバーレイPが液体の形態、例えば水性不動態化溶液または液体塗料または溶融ポリマー材料の形態でコーティングBに適用される場合にも、決定論的表面構造は維持される。コーティングBを設けると、コーティングされていない鋼板基材と比較して、自己相関関数の二次最大値の高さ(相対的な)を平均10~20%減少させることは事実である。しかしながら、本発明による方法は、その自己相関関数が主最大値の少なくとも20%の(相対的な)高さを有する複数の二次最大値を有するコーティングされた薄板包装製品の表面構造を達成することを可能にする。
【0076】
本発明に従って適切に製造された薄板包装製品の決定論的表面構造は、薄板包装製品(特にブリキおよびECCS)の従来の製造において生じ得る多くの問題を取り除く。以下に、従来の薄板包装製品の製造において生じる典型的な問題点について、
図3を参照して説明する。
図3aは、基材SにコーティングBを設ける前および設けた後の、従来の製造された薄板包装製品の表面を示し、
図3bは、本発明による薄板包装製品の表面を概略的に示しており、これは従来技術の問題を取り除くことができる。
【0077】
図3は、コーティングBを設ける前(左側)および設けた後(右側)の鋼板基材Sの断面図を概略的に示し、
図3aは、確率的不規則な表面構造を有する従来の製造された基材または薄板包装製品を示し、
図3bは、本発明に従って処理された基材または決定論的表面構造を有する、本発明に従って処理された薄板包装製品を示す。
図3aから分かるように、鋼板基材Sの表面およびコーティングBでコーティングされた包装薄板製品の表面は、先端部Spおよび谷部Taを有する統計的(すなわち、非決定論的に予め決定されている)表面トポロジーを有する。先端部Spの高さならびに谷部Taの深さおよび/または幾何学的形状は不均一であり、すなわち、鋼板基材S(
図3a、左)またはコーティングされた薄板包装製品(
図3a、右)の表面全体にわたって不均一に分布している。従来の薄板包装製品のこの表面構造は、様々な問題をもたらす。
【0078】
薄板包装製品が、例えば輸送中または包装類への成形中に機械的応力を受けると、鋭い先端部Spは、容易に破断または平坦化され得る。点Spが破断または平坦化されると、コーティングBが損傷し、または完全に所々除去される。これにより、コーティングされていない領域が生じ、その領域では、腐食しやすい鋼板基材Sが環境の影響にさらされ、薄板包装製品から作製された包装類の内容物にさらされ、したがって腐食する可能性がある。さらに、これはコーティング材料の摩耗を引き起こし、これは薄板包装製品のさらなる加工中に有害である。
【0079】
さらに、従来の薄板包装製品の表面構造のポケット状の谷部Taには、ほこりの粒子や油やグリースの残留物が堆積する可能性があり、アンダーカットを有する不均一な形状の谷部に起因して、薄板包装製品のコーティング表面が洗浄される場合でも、もはや完全に除去することができなくなる。特に、グリース、洗浄剤、圧延油または包装薄板製品の製造プロセスからの他の残留物は、深いおよび/または幾何学的に不定の谷部に蓄積する可能性があり、これにより包装薄板製品の表面の洗浄をより困難にし、ブリキ中のスズコーティングの多孔度などの、コーティング品質に悪影響を及ぼす可能性がある。表面の汚染および深い谷部に堆積した凝縮物の形成も、耐食性に悪影響を及ぼす。
【0080】
図4aは、NanoFocus AG製の共焦点トポグラフィ測定装置μSurfモバイルを用いて生成された、2.8g/m
2のスズコーティングを有する最新技術による従来のブリキの表面構造の画像の例を示す。約1.56μmの分解能を有する20倍対物レンズを測定に使用した。
【0081】
スズコーティングを電解によって設ける前に、このブリキの鋼板基材の表面を、ブラスト処理された面を有する作業ロールを使用して再圧延機の第1のスタンドでまず処理し、次に研削されたロール表面を有する作業ロールを使用して第2のスタンドで処理した。
図4aの関連する高さプロファイル、ならびに
図5aの表面構造、関連する粗さプロファイル、および自己相関関数の3D表現から分かるように、その処理は、統計的に無相関の構造、したがって不均一な表面トポグラフィを、従来のブリキの表面に与えた。従来のブリキの表面構造は、特に、圧延方向(ストリップ状ブリキの長手方向)に延びる、顕著な溝の構造を示す。ほこり粒子および圧延油の残留物が溝に溜まる可能性があり、これは通常の洗浄ステップによって除去することができない。さらに、特に
図4aおよび
図5aの2D高さプロファイルおよび
図5aの関連する粗さプロファイルから分かるように、表面構造は、機械的応力下でコーティングへの損傷が起こり得る顕著な先端部を有する。
【0082】
従来技術のこれらの問題は、本発明による包装薄板製品で排除することができる。本発明による薄板包装製品の決定論的で均質な表面構造に起因して、それらは、0.2mmを超える曲率半径を有する鋭い先端部Spがない、そのような先端部では、コーティングへの損傷およびコーティング材料の摩耗の増加が起こる可能性があり、その結果、薄板包装製品が腐食しやすくなる。したがって、腐食しやすくなることおよび摩耗の悪影響の両方を回避することができる。さらに、本発明による薄板包装製品の表面はまた、ほこり粒子ならびに残留グリースおよび圧延油などの残留物が蓄積する可能性がある深いおよび/または幾何学的に不定の谷部もない。本発明による薄板包装製品の場合、これにより、表面の洗浄が容易になり、したがって耐食性が向上する、なぜなら、基材Sのコーティングの前および後の両方で、コーティングされていないまたはコーティングされた鋼板の表面を、油残留物、汚れおよび堆積物がほぼ完全にない状態にすることができるからである。
【0083】
図4b~
図4gおよび
図5b~
図5gは、本発明による特定の表面構造を有する包装薄板製品の例を示す。
図5a~
図5gでは、粗さプロファイルのパラメータは、粗さプロファイルの下に列挙されており、
図5a~
図5gの表で使用される略語は、以下のパラメータを表す:
Ra:平均粗さ値または算術平均粗さ(粗さプロファイルの全てのプロファイル値の量の算術平均値)
Rq:粗さプロファイルの全プロファイル値の2乗平均平方根
Rsk:振幅密度曲線の非対称性の尺度
【0084】
図4dは、六角形構造に配置された円筒状隆起部を有する六角形表面構造の例示的な上面図を示し、各隆起部Eは、少なくとも略平坦または凸状の上面を有する円筒状である(
図5dの表面プロファイルに示すように)。円筒状隆起部は、平均高さhおよび半分の高さの平均直径(FWHMφ)を有し、(平均して)距離dだけ離隔して配置される。
【0085】
隆起部の平均高さhは、一般に(幾何学的形状に関係なく)好ましくは0.1~8μmの範囲、特に0.5~4.0μmの間である。直径φは、好ましくは、少なくとも10μm、好ましくは60~250μm、特に30~80μmの範囲の平均値を有する。隣接する隆起部間の距離dは、例えば、30~300μmの間、特に60~250μmの範囲とすることができる。
【0086】
図4dに示す複数の隆起部Eを有する六角形の基本構造は、本発明による薄板包装製品の表面全体にわたって均一に配置されることができ、隆起部Eの六角形の構造を有する均一で決定論的な表面構造をもたらす。
【0087】
薄板包装製品の表面の総面積に対する隆起部の台地面積の割合(「耐荷重比率」と呼ぶことができる)Mr1は、5%~50%であることが好ましい。0.2mmを超える曲率半径を有する隆起部Eの数は、好ましくは50個/cm2未満であり、特に20個/cm2未満である。
【0088】
隆起部Eの六角形構造を有するそのような表面構造のさらなる例が
図5eおよび
図5gに示されており、それぞれが、関連する粗さプロファイル(高さプロファイル)およびその結果得られる自己相関を有する平面視での本発明による薄板包装製品の実施形態の表面を示している。
【0089】
図5d、
図5fおよび
図5gに示される本発明による薄板包装製品の実施形態は、突起Eの六角形構成を有する選択された表面構造に起因して、薄板包装製品の耐食性を高めるのに特に適している。これは、特に、これらの例の決定論的表面構造が鋭い先端部および深いまたは幾何学的に不定の谷部を有さず、代わりに、隆起部の上面に少なくとも略平坦な台地部を有し、隆起部Eの間に略平坦な谷部を有する隆起部の均一な配列を有するという事実から生じる。隆起部Eはまた、上面の台地状の設計に起因して、強力な機械的応力にも耐え、その結果、コーティングBの摩耗および損傷を回避することができる。さらに、隣接する隆起部の間に形成された谷部に、ほこりまたは残留物が堆積することはない。耐食性を高めるために、隣接する構造要素間の平均距離(「先端部から先端部の距離」)が60~250μmの間であることが有利である。
【0090】
ブリキの腐食特性を定量的に説明するための1つのパラメータは、いわゆるIET値であり、標準化された「鉄曝露試験」で測定され、スズコーティングのスズ多孔度を説明する。前処理(洗浄)、全スズコーティングおよび一定のプロセスパラメータなどの製造プロセスの一定の条件下では、スズ多孔度(IET値)は、本質的に表面粗さ(算術平均粗さRa)およびスズコーティング(g/m2)に依存する。
【0091】
ブリキ中のスズコーティングSn(g/m
2単位であるスズ重量)のスズ多孔度(IET値)の(二次)依存性を考慮するために、ブリキ試料で測定したIET値(mA/cm
2)にスズコーティングSn(g/m
2)の2乗を掛けることが有用である。
図6は、従来のブリキおよび本発明によるブリキを含む、様々なブリキサンプルについて測定されたIET値とスズコーティングの2乗(Sn
2)との積を、サンプルの平均粗さRaに対してプロットしたものである。
図6のグラフから、鉄曝露試験(IET)で測定された電流密度が、本発明によるサンプルについて、j
IET=I/A(単位面積当たりの電流であり、単位はmA/cm
2)であり、最大でも、算術平均粗さRa(μm単位)の1.4倍+定数0.5を、スズコーティングSn(スズの重量コーティング,m/A,単位面積当たりの質量であり単位はg/m
2)の2乗で割った値である。
【0092】
【0093】
図6において、直線(y=1.4x+0.5)より下にある実施例1、2および3は、この条件を満たす。
図6の実施例1、2および3は、
図5d、5fおよび5gによる表面構造を有する試験片である。
【0094】
IET値により、本発明によるブリキ試料の決定論的表面構造がブリキの耐食性に及ぼす正の影響を定量的に実証することができる。
【0095】
本発明による包装薄板製品は、光沢特性を最適化するためにも使用され得る。
図7および
図8は、本発明による包装薄板(2.8g/m
2の重量コーティングを有するブリキ)で測定された光沢値の依存性、および表面粗さ(算術表面粗さRa)に対する光沢値の等方性(デルタ光沢値(Δ光沢)として測定され、圧延方向と圧延方向に垂直な方向との光沢値の差を表す)を示すグラフである。
図7に示すように、光沢値(光沢単位GE)は、粗さ(Ra)の増加と共に減少する(反比例する)。0.4μm未満の範囲の粗さRaで、200を超える光沢値、およびRa<0.1μmで、最大約1400の光沢単位(GE)を、本発明による包装薄板で達成することができる。
【0096】
例えば、Ra=0.1μmの表面粗さであれば、670を超える光沢値を達成することができ、Ra<0.05μmの表面粗さであれば、1000を超える光沢値を達成することができる。
【0097】
図8は、Δ光沢<100のデルタ光沢値を有する均一な光沢特性が、本発明による包装薄板を用いて達成することができるが、一方、本発明による包装薄板ではない、同一のコーティングパラメータ(特に、同じ層重量を有する同じコーティング材料、電解コーティングプロセスにおける同じプロセスパラメータ、および同じ前処理)を有する従来の包装薄板(
図8では「標準材料」と表記されている)は、Δ光沢>100を有する実質的により不均一な光沢値を示す。好ましくは、本発明による包装薄板製品のΔ光沢値は、70光沢単位(GU)以下である。
【0098】
同じ表面粗さについて、決定論的表面構造を有する本発明による包装薄板のΔ光沢値は、統計的に無相関の表面構造を有する従来の包装薄板のΔ光沢値よりも少なくとも4倍小さい。この光沢の均一性の改善は、圧延方向(ストリップの長手方向)および圧延方向に対して横断方向の両方で同じ高さまたは深さの表面構造(隆起部または凹部)を有する本発明による包装薄板の均一な表面構造によって説明され得る。
【0099】
さらに、
図8のグラフから、
図4bおよび
図4eによる表面構造を有する「二重I構造」が、等方性および均一な光沢効果それぞれに対するΔ光沢値に関して最良の結果を示すことが理解され得る。
【0100】
【国際調査報告】