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特表2023-513045非晶質ニロチニブ微粒子及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】非晶質ニロチニブ微粒子及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/506 20060101AFI20230323BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20230323BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230323BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230323BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230323BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230323BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230323BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
A61K31/506
A61K9/16
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/10
A61P43/00 105
A61P35/00
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022546499
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(85)【翻訳文提出日】2022-09-27
(86)【国際出願番号】 US2021015864
(87)【国際公開番号】W WO2021155254
(87)【国際公開日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】62/968,749
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
2.PLURONIC
3.KOLLIPHOR
(71)【出願人】
【識別番号】522293799
【氏名又は名称】ナノコピーア リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルツ クリスチャン エフ
(72)【発明者】
【氏名】マクターズニー ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】チェン ツェハウ
(72)【発明者】
【氏名】スカンラン ジャスティン
(72)【発明者】
【氏名】ガイエン ダレン
(72)【発明者】
【氏名】サオ ドウア
(72)【発明者】
【氏名】ヤン イア
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076BB01
4C076CC26
4C076CC27
4C076DD37S
4C076EE11
4C076EE33
4C076FF34
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086GA07
4C086GA08
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA41
4C086MA52
4C086NA02
4C086NA05
4C086NA11
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC20
(57)【要約】
プロテインキナーゼ阻害剤ニロチニブの非晶質固体分散体及び医薬組成物。前記医薬組成物は、がんなどの増殖性障害を治療する方法に使用することができる。いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、食物消費に関係なく投与することができる。別の実施形態において、前記医薬組成物は、商業的に入手可能なニロチニブ即時放出性製剤と比較して、匹敵する治療効果を提供しながら、著しく低い用量で投与することができる。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質固体分散体を含む医薬組成物であって、非晶質固体分散体が、ニロチニブと1種以上のポリマーとを含み、
1種以上のポリマーが、pH依存的な溶解性を示すポリマーを含み、
ニロチニブ及び1種以上のポリマーが、20:80~95:5(ニロチニブ:ポリマー)のw/w比で非晶質固体分散体中に存在する、前記医薬組成物。
【請求項2】
1種以上のポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
1種以上のポリマーが、7~11%のアセチル置換及び10~14%のスクシニル置換を特徴とするヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
1種以上のポリマーが、本質的にヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートからなる、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
1種以上のポリマーが、pH依存的な溶解性を示す、メタクリル酸及びアクリル酸エチルのコポリマーを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
1種以上のポリマーが、メタクリル酸及びアクリル酸エチルのコポリマーを含み、前記コポリマーが、pH5以下の水性媒体に不溶であり、pH5.5以上の水性媒体に可溶である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
1種以上のポリマーが、pH依存的な溶解性を示す、メタクリル酸及びアクリル酸エチルのコポリマーから本質的になる、請求項5又は6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
1種以上のポリマーが、pH依存的な溶解性を示すポリマーから本質的になる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
非晶質固体分散体が、ブチル化ヒドロキシトルエンを含む1種以上の抗酸化剤を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
非晶質固体分散体が、非晶質固体分散体の0.001質量%~2質量%の量で存在する1種以上の抗酸化剤を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
非晶質固体分散体が、ニロチニブ及び1種以上のポリマーから本質的になる、請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
ニロチニブ及び1種以上のポリマーが、40:60~70:30(ニロチニブ:ポリマー)のw/w比で非晶質固体分散体中に存在する、請求項1~11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
ニロチニブ及び1種以上のポリマーが、50:50(ニロチニブ:ポリマー)のw/w比で非晶質固体分散体中に存在する、請求項1~11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
非晶質固体分散体と1種以上の医薬上許容される添加剤とを含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
医薬組成物が、経口投与に適した固体剤形である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
医薬組成物が、経口投与に適した固体剤形として存在し、25~100mgのニロチニブを含む、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項17】
増殖性障害を治療することを必要とする患者における増殖性障害を治療する方法であって、請求項1~16のいずれか1項に記載の医薬組成物を患者に投与する工程を含み、
医薬組成物が、食物消費に関係なく投与される、前記方法。
【請求項18】
増殖性障害を治療することを必要とする患者における増殖性障害を治療する方法であって、請求項1~16のいずれか1項に記載の医薬組成物を患者に投与する工程を含み、
医薬組成物が、患者が絶食状態か又は摂食状態かに関係なく投与される、前記方法。
【請求項19】
増殖性障害が、がんである、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
増殖性障害が、フィラデルフィア染色体陽性慢性骨髄性白血病である、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項21】
増殖性障害が、以前のチロシンキナーゼ阻害剤治療に抵抗性又は不耐性のある、慢性期のフィラデルフィア染色体陽性慢性骨髄性白血病である、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項22】
ニロチニブを患者に安全に送達することを必要とする患者に、ニロチニブを安全に送達する方法であって、
(a)治療上有効量の請求項1~16のいずれか1項に記載の医薬組成物を患者に投与する工程と、
(b) 食事を患者に与える工程とを含み、
工程(a)及び工程(b)が、互いに2時間未満以内に発生する、前記方法。
【請求項23】
対象が絶食状態か又は摂食状態かに関係なく、治療上妥当な曝露量のニロチニブを前記対象に送達する方法であって、請求項1~16のいずれか1項に記載の医薬組成物を患者に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項24】
摂食状態における対象への医薬組成物の投与が、絶食状態における対象への医薬組成物の投与により得られるニロチニブの血漿Cmaxの30%以内の、ニロチニブの血漿Cmaxをもたらす、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
摂食状態における対象への医薬組成物の投与が、絶食状態における対象への医薬組成物の投与により得られるニロチニブの血漿AUCの30%以内の、ニロチニブの血漿AUCをもたらす、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
摂食状態における対象への医薬組成物の投与が、医薬組成物の2倍量~4倍量のニロチニブを有するニロチニブ結晶即時放出性製剤の絶食状態における投与により得られるニロチニブの血漿Cmaxの25%以内の、ニロチニブの血漿Cmaxをもたらす、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
摂食状態における対象への医薬組成物の投与が、医薬組成物の2倍量~4倍量のニロチニブを有するニロチニブ結晶即時放出性製剤の絶食状態における投与により得られたニロチニブの血漿AUCの25%以内の、ニロチニブの血漿AUCをもたらす、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
ユーザーに販売するためのキットであって、請求項1~16のいずれか1項に記載の医薬組成物と添付文書とを含み、
添付文書が、医薬組成物を食物と一緒に投与することができることをユーザーに知らせる、前記キット。
【請求項29】
ユーザーに販売するためのキットであって、請求項1~16のいずれか1項に記載の医薬組成物と添付文書とを含み、
添付文書が、食物の有無にかかわらず医薬組成物を投与することができることをユーザーに知らせる、前記キット。
【請求項30】
ユーザーに販売するためのキットであって、請求項1~16のいずれか1項に記載の医薬組成物と添付文書とを含み、
添付文書が、医薬組成物が食物と一緒に投与すべきではないとの警告を含まない、前記キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国仮出願第62/968,749(2020年1月31日に出願された)の利益を主張するものであり、該仮出願のすべての内容は、参照として本明細書に含まれる。
【背景技術】
【0002】
プロテインキナーゼ阻害剤(PKI)は、がんを含む細胞増殖の様々な障害を治療することに使用する可能性について研究されている。治療としてのPKIについての可能性は、シグナル伝達に関与する細胞経路を含む多くの細胞経路を調節する際に果たすことが知られているプロテインキナーゼの役割に基づく。プロテインキナーゼの調節不全は、多くのがんの発生及び進展に関係しており、これは、プロテインキナーゼの制御不能な過剰発現又は上向き調節により引き起こされるがんなどの障害又は疾患の治療として、PKIが有用であるかもしれないことを示唆する。
このようなPKIの1つは、現在、タシグナのブランド名で、経口投与用の即時放出性製剤として販売されているニロチニブのである。タシグナは、(a)慢性期のフィラデルフィア染色体(Philadelphia chromosome)陽性慢性骨髄性白血病(Ph+CML)と新たに診断された成人患者及び1歳以上の小児患者の治療;(b)イマチニブを含む以前の治療に抵抗性又は不耐性を有する、慢性期及び移行期のPh+CMLの成人患者の治療;並びに(c)以前のチロシンキナーゼ阻害剤治療に抵抗性又は不耐性を有する、慢性期のPh+CMLの1歳以上の小児患者の治療に適応されている。
【0003】
現在、タシグナの経口投薬は、食事の影響を伴う。実際、タシグナに関する処方情報には、「服用の2時間前から及び服用から1時間後に食事を避ける」との記述を含む枠組み警告が含まれている。該処方情報によると、「タシグナは、食事、及び/又は強力なCYP3A4阻害薬、及び/又はQTを延長する可能性があるのが知られている医薬品と一緒に不適切に服用する場合、QT間隔の著しい延長が発生するおそれがある。したがって、食事との併用を避けなければならない…」。このQT間隔への影響は、タシグナが食事と一緒に服用するときに発生し得る、曝露量(exposure)(曲線下面積又はAUCとして表される)、及び/又は最高血漿中濃度(Cmax)の増加に起因する可能性がある。例えば、高脂肪の食事から30分後に400mgタシグナを単回投与すると、絶食条件下で得られるAUC及びCmaxのレベルと比較して、AUC及びCmaxは、それぞれ82%及び112%を増加する。このような血清レベルの増加はまた、悪心、下痢症、発疹、頭痛、筋肉と関節の痛み、疲労、嘔吐、及び発熱などの一般的な副作用のみならず、血球数の減少、心臓又は脳への血流の減少、膵臓炎、肝臓障害、及び出血性障害などのより重篤な副作用の有病率を悪化又は増加するおそれがある。
タシグナに関する現在の処方情報は、1日2回、空腹時にタシグナを服用し、服用の2時間前から及び服用から1時間後に食事を避けるよう、患者に指示している。食事なしで(1回の投与につき3時間の期間)、1日2回タシグナを服用する必要性は、患者にとってはかなりの負担となる。さらに、タシグナによって発生するおそれのある副作用に照らすと、推奨投与量を十分に順守しないとは、患者をひどく害するおそれがある。
【0004】
加えて、ニロチニブの溶解性は、pHの上昇とともに著しく低下し、したがって、タシグナを胃酸減少剤と一緒に投与する場合、ニロチニブの吸収は、損なわれる可能性がある。処方情報によると、タシグナと一般的な胃酸減少剤との併用は制限されている。例えば、タシグナに関する処方情報には、「タシグナと[プロトンポンプ阻害薬]との併用を避ける」と明記されている。処方情報にはさらに、「[プロトンポンプ阻害薬]との併用は、単独でのタシグナと比較して、ニロチニブの濃度を低下させ…タシグナの効能を低下するおそれがある」ため、「プロトンポンプ阻害薬の代替物として、短時間作用型制酸薬又はH2ブロッカーを使用する」ことが示唆されている。タシグナと胃酸減少との安全な併用のために、処方情報には、以下の指示が提供されている:「PPIの代替物として、タシグナの投与のおおよそ10時間前に若しくはタシグナの投与のおおよそ2時間後にH2ブロッカーを使用するか、又はタシグナの投与のおおよそ2時間前に若しくはタシグナの投与のおおよそ2時間後に制酸薬を使用する」。タシグナで治療している間に、患者がどのように消化不良又は過剰な胃液酸性度を対処できるかに関する制限は、特にどのくらいの頻度でかかる症状が患者集団内に発生するかに照らすと、面倒である。さらに、タシグナで治療している間に、胃酸減少剤を服用することに関する処方情報の警告を十分に順守しないとは、患者を害するおそれがある。
したがって、有害な副作用、特にタシグナへの食事の影響と関連しているものを経験するリスクを最小限に抑えると同時に、ニロチニブの全部のベネフィットを患者に受け入れるための手段、及びニロチニブと胃酸減少剤との併用をこのように制限する必要がないニロチニブ治療に関する技術分野において、ニーズが残っている。
【発明の概要】
【0005】
本開示のある態様は、ニロチニブを含む非晶質固体分散体(「ASD」)に関する。ASDは、ニロチニブと1種以上のポリマーとを含む。いくつかの実施形態において、ASDは、ニロチニブとpH依存的な溶解性を示す1種以上のポリマーとを含む。
別の実施形態において、本開示は、ASDを含む医薬組成物を提供する。
さらに、本開示の別の態様は、プロテインキナーゼ活性の阻害に応答する疾患、例えば、増殖性障害を治療する方法に関する。いくつかの実施形態において、方法は、本開示のASD又は医薬組成物を患者に投与する工程を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、食物消費に関係なく投与される。いくつかの実施形態において、組成物は、患者が絶食状態か又は摂食状態かに関係なく投与される。
【0006】
別の実施形態において、本開示は、ニロチニブを患者に安全に送達することを必要とする患者に、ニロチニブを安全に送達する方法を提供し、該方法は、(a)治療上有効量の本開示の医薬組成物を患者投与する工程と、(b)食事を患者に与える工程とを含み、工程(a)及び(b)は、互いに2時間未満以内に発生する。
他の実施形態において、本開示は、ユーザーに販売するためのキットを提供する。キットは、本開示の医薬組成物と添付文書とを含む。ある実施形態において、添付文書は、医薬組成物を食物と一緒に投与することができることをユーザーに知らせる。別の実施形態において、添付文書は、食物の有無にかかわらず医薬組成物を投与することができることをユーザーに知らせる。別の実施形態において、添付文書は、医薬組成物を食物と一緒に投与すべきではないとの警告を含まない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施例4に記載されているように、(a)ペンタガストリン前処理の後(pH1~2)に、タシグナ懸濁剤を投与した絶食状態における雄性ビーグル犬(区間A1)、又は(b)リン酸緩衝液前処理の後(pH~2.5)に、タシグナカプセルを投与した絶食状態における雄性ビーグル犬(区間B1)についての薬物動態プロファイルを示す。
図2図2は、実施例4に記載されているように、(a)リン酸緩衝液前処理の後(pH~2.5)に、タシグナカプセルを投与した絶食状態における雄性ビーグル犬(区間B1)、及び(b)タシグナ懸濁剤を投与した摂食状態における雄性ビーグル犬(区間A3)についての薬物動態プロファイルを示す。
図3図3は、実施例4に記載されているように、(a)リン酸緩衝液前処理の後(pH~2.5)に、タシグナカプセルを投与した絶食状態における雄性ビーグル犬(区間B1)、(b)リン酸緩衝液前処理の後(pH~2.5)に、ASDカプセル剤(ニロチニブとHPMC-AS)を投与した絶食状態における雄性ビーグル犬(区間B2);(c)リン酸緩衝液前処理の後(pH~2.5)に、ASD懸濁剤(ニロチニブとHPMC-AS)を投与した絶食状態における雄性ビーグル犬(区間B3)、及び(d)リン酸緩衝液前処理の後(pH~2.5)に、ASD錠剤(ニロチニブとHPMC-AS)を投与された絶食状態における雄性ビーグル犬(区間B4)についての薬物動態プロファイルを示す。
図4図4は、実施例4に記載されているように、(a)リン酸緩衝液前処理の後(pH~2.5)に、タシグナカプセルを投与した絶食状態における雄性ビーグル犬(区間B1)、(b)リン酸緩衝液前処理の後(pH~2.5)に、ソルプラス(SOLUPLUS)を含むASD懸濁剤(ニロチニブとオイドラギットL100-55)を投与した絶食状態における雄性ビーグル犬(区間C1)、(c)リン酸緩衝液前処理の後(pH~2.5)に、ソルプラスを含むASD懸濁剤(ニロチニブとHPMC-AS)を投与した絶食状態における雄性ビーグル犬(区間C2)、及び(d)リン酸緩衝液前処理の後(pH~2.5)に、ASD懸濁剤(ニロチニブとHPMC-AS)を投与した絶食状態における雄性ビーグル犬(区間C3)についての薬物動態プロファイルを示す。
図5図5は、実施例5に記載されているように、(a)200mgタシグナIRカプセルを経口投与した絶食状態における健康なヒト対象、(b)50mg組成物1(ニロチニブ及びHPMC-ASのASD)を経口投与した絶食状態における健康なヒト対象、並びに(c)50mg組成物2(ソルプラスを含む、ニロチニブ及びHPMC-ASのASD)を経口投与した絶食状態における健康なヒト対象についての薬物動態プロファイルを示す。
図6図6は、実施例5に記載されているように、(a)200mgタシグナIRカプセルを経口投与した絶食状態における健康なヒト対象、(b)50mg組成物1(ニロチニブ及びHPMC-ASのASD)を経口投与した絶食状態における健康なヒト対象、並びに(c)50mg組成物1(ニロチニブ及びHPMC-ASのASD)を経口投与した摂食状態における健康なヒト対象についての薬物動態プロファイルを示す。
図7図7は、実施例5に記載されているように、(a)200mgタシグナIRカプセルを経口投与した絶食状態における健康なヒト対象、(b)65mg組成物2(ソルプラスを含む、ニロチニブ及びHPMC-ASのASD)を経口投与した絶食状態における健康なヒト対象、並びに(c)65mg組成物2(ソルプラスを含む、ニロチニブ及びHPMC-ASのASD)を経口投与した摂食状態における健康なヒト対象についての薬物動態プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示は、ニロチニブASD、ニロチニブASDの医薬組成物、及びニロチニブASD又は医薬組成物を投与する工程を含む使用方法に関する。本開示のニロチニブASD及び医薬組成物は、タシグナなどの従来のニロチニブ結晶の即時放出性製剤を超える特別な利点を提供することができる。例えば、本明細書に記載されているように、タシグナに関する処方情報には、服用の2時間前及び服用から1時間後に食事を避けることが警告されている。これに対して、本開示のあるASD及び医薬組成物は、食物消費に関係なく投与することができる。
さらに、本開示のあるASD及び医薬組成物は、医薬組成物により投与されるニロチニブの投与量が、タシグナを使用する場合に通常投与されるニロチニブの投与量の何分の一かであっても、タシグナの薬物動態プロファイルと同様の薬物動態プロファイルを予想外に提供する。したがって、本開示は、タシグナの投与量より低い投与量で投与できるが、匹敵する治療効果を与えると予想される医薬組成物を提供する。
別の利点として、本開示の医薬組成物により、タシグナについて観察されたばらつきと比較して、対象間及び/又は対象内のばらつきを低減できる。
したがって、本開示のASD及び医薬組成物は、現在入手可能な即時放出性製品と比較して、ニロチニブのより安全で、同様に効果的な発現を提供することができる。
【0009】
ニロチニブ
ニロチニブは、以下の構造を有するキナーゼ阻害剤である。
【化1】
ニロチニブの化学名は、4-メチル-N-[3-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル]-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-ベンズアミドである。分子式は、C282237Oであり、529g/mol(ニロチニブ塩基、無水物)の分子量に相当する。
ニロチニブは、タシグナのブランド名で、ニロチニブ一塩酸塩一水和物を含む即時放出性製剤として販売されている。タシグナ中のニロチニブ一塩酸塩一水和物は、結晶形であると考えられている。現在入手可能なタシグナカプセル(新薬承認申請22-068で米国において販売されている)は、50mg、150mg、又は200mgニロチニブ塩基の無水物(それぞれ55mg、166mg、及び221mgニロチニブ一塩酸塩一水和物に相当)を含むと表示されている。本明細書において使用されているように、「タシグナIRカプセル」は、商業的に入手可能なタシグナの即時放出性カプセル剤を指す。
バイオ医薬品分類システム(「BCS」)によると、ニロチニブ一塩酸塩一水和物は、クラスIVの化合物(低/中等度水溶性かつ低透過性)として分類されている。ニロチニブの溶解性を高めることを意図する形態でのニロチニブの調製により、そのバイオアベイラビリティを増大させることができる。溶解性を高める1つのアプローチは、非晶質固体分散体を製造することである。
【0010】
ニロチニブの非晶質固体分散体
本開示のある態様は、ニロチニブと1種以上のポリマーとを含む非晶質固体分散体(「ASD」)に関する。医薬上好適な非晶質固体分散体は、一般的には、ポリマーなどの薬理学上不活性な担体中に分散されている、ニロチニブなどの医薬上の有効成分を含む。医薬上好適な非晶質固体分散体の1つの狙いは、医薬上の有効成分のバイオアベイラビリティを改善することである。この改善は、例えば、表面積の増大、湿潤性又は分散性の改善、溶解速度の増大、又は他のファクターによって起こり得る。
一般的には、医薬上の有効成分が、ポリマー中に分散し、本技術分野において「ガラス溶体(glass solution)」と称されているものを形成するのが好ましい。しかしながら、他の形の分散体、例えば、「固溶体」又は「ガラス懸濁液(glass suspension)」と称されるものも好適であり得る。非晶質固体分散体が所望の特性及び性能を提供できるのであれば、固体分散体の正確な特徴付けは重要ではない。
本開示のASDにおいて、ニロチニブは、遊離塩基又は塩酸塩などの塩であってもよい。いくつかの実施形態において、ニロチニブは、遊離塩基であり、無水物である。かかる形のニロチニブとニロチニブを調製するプロセスは、例えば、WO2004/005281、及びWO2007/015871に開示されている。以下の非晶質固体分散体及び医薬組成物の記載、並びに請求の範囲において、「ニロチニブ」へのあらゆる言及は、特に明記されていない限り、好適な代替物として、ニロチニブの遊離塩基、ニロチニブの塩、ニロチニブ無水物(又はその塩)、ニロチニブ水和物又はニロチニブ溶媒和物、及びニロチニブの塩の水和物又は溶媒和物を広く指す。
【0011】
薬理学上不活性でなければならない1種以上のポリマーは、ASDに構造及び安定性を提供するのに適しているべきである。「薬理学上不活性」は、関連する生体系(例えば、胃腸管)に導入したとき、薬理反応又は有害反応を開始しない材料を意味する。
いくつかの実施形態において、ASDは、ニロチニブと1種以上のポリマーとを含む。ある実施形態において、ASDは、ニロチニブ及び1種以上のポリマーからなる。ある別の実施形態において、ASDは、ニロチニブ及び1種以上のポリマーから本質的になる。
本開示のASDに使用できるポリマーとしては、以下に記載されているものを挙げることができるが、これらに限定されない。用語「ポリマー」としては、有機ホモポリマー、コポリマー(例えば、ブロックポリマー、グラフトポリマー、ランダムポリマー、及びターポリマー等)、並びにこれらの混合物(blends)及び修飾が挙げられるが、これらに限定されない。用語「コポリマー」は、2種以上の異なるモノマー単位又はセグメントを含むポリマーを指し、ターポリマー、テトラポリマー等を含む。好適なポリマーに関する情報、及び該ポリマーについての商業的な供給元は、Sheskey PJ(ed.) Handbook of Pharmaceutical 賦形剤, 9th Ed.. London: Pharmaceutical Press; 2020(ISBN 0857113755)に見つけることができ、或いは、同じ書名の最新版を参照することができる。
【0012】
本開示のASDに使用できるポリマーとしては、イオン化可能なポリマー若しくはイオン化できないポリマー、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。
いくつかの実施形態において、1種以上のポリマーは、イオン化できないポリマーであってもよい。ある実施形態において、ASDは、ニロチニブ及び1種以上のイオン化できないポリマーからなる。ある別の実施形態において、ASDは、ニロチニブ及び1種以上のイオン化できないポリマーから本質的になる。
いくつかの実施形態において、1種以上のポリマーは、イオン化可能なポリマーであってもよい。ある実施形態において、ASDは、ニロチニブ及び1種以上のイオン化可能なポリマーからなる。ある別の実施形態において、ASDは、ニロチニブ及び1種以上のイオン化可能なポリマーから本質的になる。
さらに別の実施形態において、イオン化可能なポリマーとイオン化できないポリマーとの組み合わせを使用し得る。ある実施形態において、ASDは、ニロチニブ、及び1種以上のイオン化できないポリマーと1種以上のイオン化可能なポリマーとの組み合わせからなる。ある別の実施形態において、ASDは、ニロチニブ、及び1種以上のイオン化できないポリマーと1種以上のイオン化可能なポリマーとの組み合わせから本質的になる。
【0013】
本開示のASDに使用できるポリマーとしては、pH依存的な溶解性を示すポリマー、一般的にpH非感受性のポリマー、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。
いくつかの実施形態において、1種以上のポリマーは、pH依存的な溶解性を示してもよい。ある実施形態において、ASDは、ニロチニブ及びpH依存的な溶解性を示す1種以上のポリマーからなる。ある別の実施形態において、ASDは、ニロチニブ及びpH依存的な溶解性を示す1種以上のポリマーから本質的になる。
他の実施形態において、1種以上のポリマーは、一般的にはpH非感受性であってもよい。ある実施形態において、ASDは、ニロチニブ及び一般的にpH非感受性の1種以上のポリマーからなる。ある別の実施形態において、ASDは、ニロチニブ及び一般的にpH非感受性の1種以上のポリマーから本質的になる。
さらに別の実施形態において、ポリマーの組み合わせは、pH依存的な溶解性を示す1種以上のポリマーと、一般的にpH非感受性の1種以上のポリマーとを含み得る。ある実施形態において、ASDは、ニロチニブ、及びpH依存的な溶解性を示す1種以上のポリマーと一般的にpH非感受性の1種以上のポリマーとの組み合わせからなる。ある別の実施形態において、ASDは、ニロチニブ、及びpH依存的な溶解性を示す1種以上のポリマーと一般的にpH非感受性の1種以上のポリマーとの組み合わせから本質的になる。
【0014】
イオン化できないポリマー。好適なイオン化できないポリマーとしては、多糖及び多糖誘導体(セルロースエーテル及びイオン化できないセルロースエステルを含む);N-ビニルピロリドン及び/若しくは酢酸ビニルのポリマー又はコポリマー;エチレンオキシドのポリマー;乳酸及び/若しくはグリコール酸のホモポリマー又はコポリマー;無水マレイン酸コポリマー;ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー;及びポロクサマーを挙げることができる。
好適なイオン化できない多糖及び多糖誘導体としては、セルロースエーテル及びイオン化できないセルロースエステルを挙げることができる。好適なセルロースエーテルの例としては、メチルセルロース(「MC」;例えば、メトセルA15 LV、メトセルA4M)、エチルセルロース(「EC」;例えば、エトセル(ETHOCEL))、ヒプロメロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロース(「HPMC」;例えば、メトセルE3、メトセルE5、メトセルE6、メトセルE15、AFFINISOL HPMC HME)、ヒドロキシエチルセルロース(「HEC」;例えば、ナトロゾル250Pharm(NATROSOL 250 Pharm))、及びヒドロキシプロピルセルロース(「HPC」;例えば、HPC EF、HPC LF、HPC JF、HPC L、クリューセル(KLUCEL))が挙げられる。
イオン化できないセルロースエステルの適切であり得る例としては、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、及び酢酸酪酸セルロースが挙げられる。
【0015】
N-ビニルピロリドン及び/若しくは酢酸ビニルの好適なポリマー又はコポリマーの例としては、ポリビニルピロリドン(「PVP」;例えば、PVP K25、PVP K90、VIVAPHARM PVP)、クロスポビドン又は架橋したポリビニルピロリドン(例えば、コリドンCL(KOLLIDON CL)、VIVAPHARM PVPP)、コポビドン又はビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(「PVP/VA」;例えば、コリドンVA 64、VIVAPHARM PVP/VA 64)、及びポリビニルアルコール(「PVA」;例えば、VIVAPHARM PVA)が挙げられる。
エチレンオキシドの好適なポリマーの例としては、ポリエチレングリコール(「PEG」”;例えば、コリソルブPEG8000(KOLLISOLV PEG 8000))、及びポリ(エチレンオキシド)(「PEO」;例えば、ポリオックス(POLYOX))が挙げられる。
乳酸及び/若しくはグリコール酸の好適なホモポリマー又はコポリマーの例としては、ポリラクチド又はポリ(乳酸)(「PLA」)、ポリグリコリド又はポリ(グリコール酸)(「PGA」)、及びポリ(乳酸-co-グリコール酸)(「PLGA」)が挙げられる。
ポリ(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸)(「PVM/MA」)などのイオン化できない無水マレイン酸コポリマーも好適であり得る。イオン化できないポロクサマー(例えば、プルロニック(PLURONIC)、コリフォール(KOLLIPHOR))も好適であり得る。
ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー(例えば、ソルプラス(SOLUPLUS))も好適なイオン化できないポリマーであり得る。
【0016】
イオン化可能なポリマー。好適なイオン化可能なポリマーは、「アニオン性」ポリマー又は「カチオン性」ポリマーと考えられ得る。アニオン性ポリマー及びカチオン性ポリマーは、多くの場合、pH依存的な溶解性を示す。
アニオン性ポリマーは、多くの場合、カルボキシレート(アセテートなど)、フタレート、スクシネート、又はアクリレート官能性を含む。アニオン性ポリマーは、一般的には、低いpHで不溶であり、pHが高くなるとより溶けやすくなる。好適なアニオン性ポリマーとしては、例えば、アニオン性多糖及び多糖誘導体(イオン化可能なセルロースエステルなど)、メタクリル酸及び/又はアクリル酸アルキルコポリマー、並びに誘導体化した酢酸ビニルポリマーを挙げることができる。
【0017】
適切であり得るイオン化可能な多糖の例は、キサンタンガムである。好適なイオン化可能なセルロースエステルの例としては、カルボキシメチルセルロース(「CMC」;カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ヒプロメロースアセテートスクシネート、又はヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(「HPMC-AS」;例えば、AFFINISOL HPMC-AS、AQUASOLVE、AQOAT)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(「HPMC-P」;例えば、HP-50、HP-55)、及びセルロースアセテートフタレート(「CAP」;例えば、EASTMAN C-A-P)を挙げることができる。
メタクリル酸及び/又はメタクリル酸アルキルの好適なコポリマーとしては、メタクリル酸/メタクリル酸メチルコポリマー(例えば、オイドラギットL100)及びメタクリル酸/アクリル酸エチルコポリマー(例えば、オイドラギットL100-55、コリコートMAE(KOLLICOAT MAE))を挙げることができる。
適切であり得る誘導体化した酢酸ビニルポリマーの例は、ポリビニルアセテートフタレート(PVA-P;PHTHALAVIN)である。
【0018】
カチオン性ポリマーは、多くの場合、アミン官能性を含む。カチオン性ポリマーは、一般的には、低いpHで可溶であり、より高いpHで溶けにくくなる。好適なカチオン性ポリマーとしては、例えば、カチオン性多糖及び多糖誘導体、並びにメタクリル酸及び/又はアクリル酸アルキルのアミン官能化コポリマーを挙げることができる。
適切であり得るカチオン性多糖の例は、キトサンである。
好適なメタクリル酸及び/又はアクリル酸アルキルのアミン官能化コポリマーとしては、例えば、メタクリル酸ジメチルアミノエチル/メタクリル酸ブチル/メタクリル酸メチルコポリマー(例えば、オイドラギットE100)、及びポリ(アクリル酸エチル-co-メタクリル酸メチル-co-メタクリル酸トリメチルアンモニオエチルクロリドなどのメタクリル酸アミノアルキルコポリマー(例えば、オイドラギットRL100、オイドラギットRL PO、オイドラギットRS PO)が挙げられる。
いくつかの実施形態において、1種以上のポリマーはpH依存的な溶解性を特徴とするポリマーを含む。いくつかの実施形態において、1種以上のポリマーは、pH依存的な溶解性を特徴とするアニオン性ポリマーを含む。いくつかの実施形態において、1種以上のポリマーは、pH依存的な溶解性を特徴とする1種以上のアニオン性ポリマーから本質的になる。いくつかの実施形態において、1種以上のポリマーは、pH依存的な溶解性を特徴とする1種以上のアニオン性ポリマーからなる。
【0019】
HPMC-AS及びオイドラギットL100-55は、pH依存的な溶解性を示す好適なアニオン性ポリマーの例であるが、pH依存的な溶解性を示す他のポリマーも使用し得る。
ある実施形態において、1種以上のポリマーは、HPMC-ASを含む。ある実施形態において、ポリマーは、HPMC-ASからなる。ある実施形態において、ポリマーは、HPMC-ASから本質的になる。
様々なグレードのHPMC-ASが利用可能であり、各HPMC-ASは、pH依存的な水溶性を示す。概して、HPMC-ASは、pH4以下の水性媒体の水性媒体に殆ど溶解しないが、pH7以上の水性媒体にほぼ溶解する。HPMC-ASは、通常の胃液に不溶であるが、小腸上部のより高いpH環境では膨張し、溶解する。HPMC-ASのグレードは、アセチル/スクシニル置換基の相対的比率によって区別される。低グレードのHPMC-ASは、5~9%のアセチル置換基と14~18%のスクシニル置換基とを含み、中等グレードのHPMC-ASは、7~11%のアセチル置換基と10~14%のスクシニル置換基を含み、高グレードのHPMC-ASは、10~14%のアセチル置換基と4~8%のスクシニル置換基とを含む。本開示の実施において、あらゆるグレードのHPMC-ASは好適であり得、又は2種以上のグレードの混合物もまた好適であり得る。ある実施形態において、中等グレードのHPMC-ASは、特に好適であり得る。
【0020】
ある実施形態において、ASDは、ニロチニブ及びHPMC-ASからなる。ある実施形態において、ASDは、ニロチニブ及びHPMC-ASから本質的になる。ある実施形態において、ASDは、無水のニロチニブ遊離塩基及びHPMC-ASからなる。ある実施形態において、ASDは、無水のニロチニブ遊離塩基及びHPMC-ASから本質的になる。ある実施形態において、ASDは、ニロチニブ及び中等グレードのHPMC-ASからなる。ある実施形態において、ASDは、ニロチニ及び中等グレードのHPMC-ASから本質的になる。ある実施形態において、ASDは、無水のニロチニブ遊離塩基及び中等グレードのHPMC-ASからなる。ある実施形態において、ASDは、無水のニロチニブ遊離塩基及び中等グレードのHPMC-ASから本質的になる。
いくつかの実施形態において、1種以上のポリマーは、メタクリル酸及び/又はメタクリル酸アルキルのコポリマーを含む。いくつかの実施形態において、1種以上のポリマーは、メタクリル酸/メタクリル酸メチルコポリマー(例えば、オイドラギットL100)又はメタクリル酸/アクリル酸エチルコポリマー(例えば、オイドラギットL100-55)を含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、1種以上のポリマーは、メタクリル酸/アクリル酸エチルコポリマーを含む。ある実施形態において、ポリマーは、メタクリル酸/アクリル酸エチルコポリマーからなる。ある実施形態において、ポリマーは、メタクリル酸/アクリル酸エチルコポリマーから本質的になる。
いくつかの実施形態において、ASDは、ニロチニブとメタクリル酸/アクリル酸エチルコポリマーとを含む。ある実施形態において、ASDは、ニロチニブ、及びメタクリル酸/アクリル酸エチルコポリマーからなる。ある別の実施形態において、ASDは、ニロチニブ、及びメタクリル酸/アクリル酸エチルコポリマーから本質的になる。ある実施形態において、ASDは、無水のニロチニブ遊離塩基と、メタクリル酸/アクリル酸エチルコポリマーとを含む。ある実施形態において、ASDは、無水のニロチニブ遊離塩基、及びメタクリル酸/アクリル酸エチルコポリマーからなる。ある実施形態において、ASDは、無水のニロチニブ遊離塩基、及びメタクリル酸/アクリル酸エチルコポリマーから本質的になる。
上記のいずれかにおいて、メタクリル酸/アクリル酸エチルコポリマーは、例えば、オイドラギットL100-55であり得る。オイドラギットL100-55は、pH依存的な水溶性を示すアニオン性コポリマーである。概して、オイドラギットL100-55は、pH5以下の水性媒体に殆ど不溶であるが、pH5.5以上の水性媒体にほぼ可溶である。
【0022】
ASDのいくつかの実施形態において、1種以上のポリマーは、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー(例えば、ソルプラス)を含まない。いくつかの実施形態において、ASDは、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフトコポリマーを実質的に欠く。いくつかの実施形態において、ASDは、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフトコポリマーを本質的に欠く。いくつかの実施形態において、ASDは、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフトコポリマーを欠く。さらに別の実施形態において、ASDは、ニロチニブと1種以上のポリマーとを含み、ただし、該1種以上のポリマーは、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフトコポリマーではない。
ASDのいくつかの実施形態において、1種以上のポリマーは、ポロクサマーを含まない。いくつかの実施形態において、ASDは、ポロクサマーを実質的に欠く。いくつかの実施形態において、ASDは、ポロクサマーを本質的に欠く。いくつかの実施形態において、ASDは、ポロクサマーを欠く。さらに他の実施形態において、ASDは、ニロチニブと1種以上のポリマーとを含み、ただし、該1種以上のポリマーは、ポロクサマーではない。
【0023】
ASDのいくつかの実施形態において、1種以上のポリマーは、フタレート官能性を含むアニオン性ポリマーを含まない。いくつかの実施形態において、ASDは、フタレート官能性を含むアニオン性ポリマーを実質的に欠く。いくつかの実施形態において、ASDは、フタレート官能性を含むアニオン性ポリマーを本質的に欠く。いくつかの実施形態において、ASDは、フタレート官能性を含むアニオン性ポリマーを欠く。さらに他の実施形態において、ASDは、ニロチニブと1種以上のポリマーとを含み、ただし、該1種以上のポリマーは、フタレート官能性を含むアニオン性ポリマーではない。
ASDのいくつかの実施形態において、1種以上のポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートを含まない。いくつかの実施形態において、ASDは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートを実質的に欠く。いくつかの実施形態において、ASDは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートを本質的に欠く。いくつかの実施形態において、ASDは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートを欠く。さらに他の実施形態において、ASDは、ニロチニブと1種以上のポリマーとを含み、ただし、該1種以上のポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートではない。
【0024】
ASDのいくつかの実施形態において、1種以上のポリマーは、ポリビニルアセテートフタレートを含まない。いくつかの実施形態において、ASDは、ポリビニルアセテートフタレートを実質的に欠く。いくつかの実施形態において、ASDは、ポリビニルアセテートフタレートを本質的に欠く。いくつかの実施形態において、ASDは、ポリビニルアセテートフタレートを欠く。さらに他の実施形態において、ASDは、ニロチニブと1種以上のポリマーとを含み、ただし、該1種以上のポリマーは、ポリビニルアセテートフタレートではない。
ASDのいくつかの実施形態において、1種以上のポリマーは、N-ビニルピロリドンのポリマー又はコポリマーを含まない。いくつかの実施形態において、ASDは、N-ビニルピロリドンのポリマー又はコポリマーを実質的に欠く。いくつかの実施形態において、ASDは、N-ビニルピロリドンのポリマー又はコポリマーを本質的に欠く。いくつかの実施形態において、ASDは、N-ビニルピロリドンのポリマー又はコポリマーを欠く。さらに他の実施形態において、ASDは、ニロチニブと1種以上のポリマーとを含み、ただし、該1種以上のポリマーは、N-ビニルピロリドンのポリマー又はコポリマーではない。上記において、N-ビニルピロリドンのポリマー又はコポリマーは、ポリビニルピロリドン、クロスポビドン又は架橋したポリビニルピロリドン、コポビドン又はビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマーであり得る。
【0025】
本明細書において使用されているように、句「実質的に欠く」は、記載された成分がASDの10質量%以下を表すことを意味する。句「本質的に欠く」は、記載された成分がASDの5質量%以下を表すことを意味する。用語「欠く」は、記載された成分がASDの2質量%以下を表すことを意味する。
本開示に記載のASDにおいて、1種以上のポリマーの量と比較して、ニロチニブの量を変えてもよい。例えば、ニロチニブ及び1種以上のポリマーは、20:80~95:5のw/w比(ニロチニブ:ポリマー)で存在し得る。ある実施形態において、ニロチニブ及び1種以上のポリマーは、25:75~90:10、又は30:70~85:15、又は35:65~80:20のw/w比で存在し得る。いくつかの実施形態において、ニロチニブ及び1種以上のポリマーは、40:60~70:30のw/w比で存在し得る。特定の実施形態において、w/w比は、20:80、25:75、30:70、35:65、40:60、45:55、50:50、55:45、60:40、65:35、70:30、75:25、80:20、85:15、90:10、又は95:5である。
【0026】
いくつかの実施形態において、ASDは、ニロチニブ及び1種以上のポリマーからなる。いくつかの実施形態において、ASDは、ニロチニブ及び1種以上のポリマーから本質的になる。他の実施形態において、本開示のASDは、1種以上の他の医薬上許容される機能性成分、例えば、1種以上の抗酸化剤、湿潤剤、又は可溶化剤をさらに含み得る。
本明細書において使用されているように、句「医薬上許容される」は、関連する生体系に導入されたとき、成分が薬理学的応答又は有害反応を開始しないことを意味する。単なる非限定的な例として、アメリカ食品医薬品局の「一般的に安全と認められている」(「GRAS」)リストにおいて見い出される物質、又はアメリカ食品医薬品局の不有効成分データベースにおけるガイドラインに従って使用される物質は、医薬上許容されると考えられるであろう。同様に、欧州医薬品庁などの同等の規制機関により維持されている対応するデータベース又はリストにおける物質も医薬上許容されると考えられるであろう。一般的には、本開示の医薬組成物において、得られた組成物における許容できないレベルの物理的又は化学的不安定性を引き起こさない成分のみを使用するのが望ましい。
【0027】
本開示のASDに使用され得る抗酸化剤の例としては、アセチルシステイン、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(「BHA」)、ブチル化ヒドロキシトルエン(「BHT」)、モノチオグリセロール、硝酸カリウム、アスコルビン酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ビタミンE若しくはその誘導体、没食子酸プロピル、エチレンジアミン四酢酸(「EDTA」)(例えば、エデト酸二ナトリウム)、ジエチレントリアミン五酢酸(「DTPA」)、トリグリコラメートビスマスナトリウム、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。抗酸化剤はまた、アミノ酸、例えば、メチオニン、ヒスチジン、システイン、並びにアルギニン、リジン、アスパラギン酸、及びグルタミン酸などの荷電側鎖を持つアミノ酸を含んでもよい。アミノ酸がその遊離塩基の形又は塩の形で存在する限り、特定のアミノ酸(例えば、メチオニン、ヒスチジン、アルギニン、リジン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、トレオニン、及びこれらの組み合わせ)のいずれかの立体異性体(例えば、l-、d-、若しくはこれらの組み合わせ)、又はこれらの立体異性体の組み合わせは存在し得る。
【0028】
いくつかの実施形態において、1種以上の抗酸化剤は、BHTを含む。いくつかの実施形態において、1種以上の抗酸化剤は、BHTからなる。
1種以上の抗酸化剤は、0.001質量%~2.0質量%、又は0.01質量%~1.5質量%、又は0.05質量%~1.0質量%、又は0.1質量%~0.5質量%、又は0.3質量%~0.4質量%の量でASDに存在し得る。ASD中の1種以上の抗酸化剤の量の例としては、0.001質量%、又は0.003質量%、又は0.005質量%、又は0.008質量%、又は0.01質量%、又は0.015質量%、又は0.02質量%、又は0.025質量%、又は0.03質量%、又は0.035質量%、又は0.04質量%、又は0.05質量%、又は0.075質量%、又は0.1質量%、又は0.2質量%、又は0.3質量%、又は0.4質量%、又は0.5質量%、又は0.75質量%、又は1.0質量%、又は1.5質量%、又は2.0質量%が挙げられる。
医薬上許容される様々な湿潤剤を含んでもよい。湿潤剤の非限定的な例として、ポロクサマー407(例えば、プルロニックF-127)又はポロクサマー188(例えば、プルロニックF-68)などのポロクサマーは、適切であり得る。他の既知の医薬上許容される湿潤剤を好適に使用し得る。湿潤剤は、0.5質量%~10質量%、又は1質量%~8質量%、又は2質量%~6質量%の量でASDに含まれ得る。
【0029】
医薬上許容される様々な可溶化剤を含んでもよい。好適な可溶化剤の非限定的例としては、ビタミンE TPGS(D-α-トコフェロールポリエチレングリコールスクシネート)、SLS(ラウリル硫酸ナトリウム)、及びドクサートナトリウムが挙げられる。他の既知の医薬上許容される可溶化剤を好適に使用し得る。可溶化剤は、0.1質量%~10質量%、又は0.25質量%~5質量%、又は0.5~1質量%の量でASDに含まれ得る。
いくつかの実施形態において、ASDは、ニロチニブと、1種以上のポリマーと、1種以上の抗酸化剤とを含む。ある実施形態において、ASDは、ニロチニブ、1種以上のポリマー、及び1種以上の抗酸化剤から本質的になる。ある実施形態において、ASDは、ニロチニブ、1種以上のポリマー、及び1種以上の抗酸化剤からなる。
【0030】
いくつかの実施形態において、ASDは、ニロチニブと、HPMC-ASと、BHTとを含む。ある実施形態において、ASDは、ニロチニブ、HPMC-AS、及びBHTから本質的になる。ある実施形態において、ASDは、ニロチニブ、HPMC-AS、及びBHTからなる。いくつかの実施形態において、ASDは、ニロチニブと、中等グレードのHPMC-ASと、BHTとを含む。ある実施形態において、ASDは、ニロチニブ、中等グレードのHPMC-AS、及びBHTから本質的になる。ある実施形態において、ASDは、ニロチニブ、中等グレードのHPMC-AS、及びBHTからなる。
特定の実施形態において、ASDは、50:50の比のニロチニブ及びHPMC-AS、並びにASDの0.1~0.5質量%レベルのBHTから本質的になる。特定の実施形態において、ASDは、50:50の比のニロチニブ及びHPMC-AS、並びにASDの0.1~0.5質量%レベルのBHTからなる。
【0031】
いくつかの実施形態において、ASDは、ニロチニブと、メタクリル酸/アクリル酸エチルコポリマー(オイドラギットL100-55など)と、BHTとを含む。ある実施形態において、ASDは、ニロチニブ、メタクリル酸/アクリル酸エチルコポリマー、及びBHTから本質的になる。ある実施形態において、ASDは、ニロチニブ、メタクリル酸/アクリル酸エチルコポリマー、及びBHTからなる。
特定の実施形態において、ASDは、ニロチニブ、メタクリル酸/アクリル酸エチルコポリマー(オイドラギットL100-55など)、及びASDの0.1~0.5質量%レベルのBHTから本質的になる。特定の実施形態において、ASDは、ニロチニブ、メタクリル酸/アクリル酸エチルコポリマー、及びASDの0.1~0.5質量%レベルのBHTからなる。
【0032】
本開示のASD中のニロチニブの薬物負荷は、適切には、20%~95%、又は25%~90%、又は30%~80%、又は35%~70%、又は40%~60%、又は45%~55%の範囲であり得る。本明細書において使用されているように、句「薬物負荷」は、ASDの全固形物質量に対する、ASD中のニロチニブの比(質量%)を指す。例として、ニロチニブ及びポリマーからなるASDについて、1:1であるw/w比のニロチニブ:ポリマーは、50%薬物負荷を表し;1:2であるw/w比のニロチニブ:ポリマーは、33.3%薬物負荷を表す等であろう。特定の実施形態におけるASD中のニロチニブの薬物負荷の例としては、40%、又は45%、又は50%、又は55%、又は60%、又は65%、又は70%、又は75%、又は80%、又は85%、又は90%が挙げられる。
ニロチニブASDは、粒子の形であってもよい。いくつかの実施形態において、粒子は、界面活性剤を含まない。他の実施形態において、粒子は、湿潤剤を含まない。他の実施形態において、粒子は、可溶化剤を含まない。他の実施形態において、粒子は、界面活性剤も可溶化剤も含まない。他の実施形態において、粒子は、界面活性剤、湿潤剤、及び可溶化剤を欠く。他の実施形態において、粒子は、ポリマー及びニロチニブからなり、更なる機能性成分を含まない。
【0033】
本開示のASDの粒子は、一般的には、スフェロイドの形状を含み得る。従来の光散乱又はレーザ回折技術により測定されているように、粒子径は、一般的には約0.05μm~約100μmの範囲であり得る。粒子分布のメジアン(D50又はDv0.5)は、0.2μm~60μm、又は0.5μm~50μm、又は0.5μm~40μmの範囲であり得る。
いくつかの実施形態において、粒子分布のメジアンは、1μm~40μm、又は2μm~25μm、又は3μm~20μmの範囲であり得る。単なる例として、このような粒子分布は、噴霧乾燥の既知の方法により達成することができる。
いくつかの実施形態において、粒子分布のメジアン径は、0.1μm~10μm、又は0.2μm~5μm、又は0.5μm~2μmであり得る。単なる例として、このような粒子分布は、以下に更に検討するエレクトロスプレーを含む方法により達成することができる。
【0034】
本開示のニロチニブASDは、異なる測定により評価できる、望ましいレベルの物理的及び/又は化学的安定性を示し得る。安定性は、一般的には、薬学において通常知られている従来の分析技術を使用して評価する。
物理的及び化学的安定性は、一般的には、制御された上昇した環境条件(「加速条件」)下で、指定期間の保存後に評価される。保存条件は、25℃/60%相対湿度(「RH」)、又は25℃/保護あり、又は30℃/65%RH、又は40℃/75%RH、又は40℃/保護あり、又は50℃/80%RHの1つ以上であり得る(この文脈において使用されているように、「保護あり」は、保存期間において、試料をホイルポーチで密封し、制御されたチャンバーに置くことを意味する)。期間は、1週間、又は2週間、又は4週間、又は1か月、又は2か月、又は3か月、又は4か月、又は6か月、又は9か月、又は12か月、又は15か月、又は18か月、又は21か月、又は24か月、又はこれらの期間の間のいずれかの期間の1つ以上であり得る。
【0035】
ニロチニブASDは、加速条件下での指定期間の保存後に高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)により測定された、特定の定量(assay)値又は全関連物質(例えば、不純物)の特定のレベルを有することにより安定性を示し得る。定量値は、一般的には、分析物(例えば、ニロチニブ)の予想量に対する、分析物の検出量の%として示され、100%であれば好ましい結果であり、100%から大きく乖離する場合は好ましくない。全関連物質は、一般的には、検出された物質の全量(すなわち、分析物+不純物)に対する%として示され、0%に近い場合は好ましく、0%から大きく乖離する場合は好ましくない。
いくつかの実施形態において、ニロチニブASDは、少なくとも90%、又は少なくとも93%、又は少なくとも95%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%の、HPLCにより測定される定量を有し得る。いくつかの実施形態において、ニロチニブASDは、3%以下、2.5%以下、2%以下、又は1.5%以下、又は1%以下、又は0.9%以下、又は0.8%以下、又は0.7%以下、又は0.6%以下、又は0.5%の、HPLCにより測定される全関連物質のレベルを有し得る。
【0036】
いくつかの実施形態において、ニロチニブASDは、25℃/60%RHで1か月、若しくは2か月、若しくは3か月、若しくは6か月、若しくは9か月、若しくは12か月の保存後に、又は40℃/75%RHで1か月、若しくは2か月、若しくは3か月、若しくは6か月の保存後に、少なくとも90%、又は少なくとも93%、又は少なくとも95%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%の、HPLCにより測定される定量を有し得る。
いくつかの実施形態において、ニロチニブASDは、25℃/60%RHで1か月、若しくは2か月、若しくは3か月、若しくは6か月、若しくは9か月、若しくは12か月の保存後に、又は40℃/75%RHで1か月、又は2か月、又は3か月、又は6か月の保存後に、2%以下、又は1.5%以下、又は1%以下、又は0.9%以下、又は0.8%以下、又は0.7%以下、又は0.6%以下、又は0.5%以下の、HPLCにより測定される全関連物質のレベルを有し得る。
【0037】
安定性はまた、異なる保存条件下でニロチニブASDのガラス転移温度の経時的変化を評価することにより評価し得る。ガラス転移温度は、従来技術を使用する変調DSC(「mDSC」)により評価することができる。いくつかの実施形態において、ASDは、単一のガラス転移を特徴とし、該転移は、DSC又はmDSCにより、25℃~200℃、より好適には40℃~150℃の範囲に観察される。他の実施形態において、ASDは、1つより多い転移を特徴とし、該転移は、DSC又はmDSCにより、25℃~200℃、より好適には40℃~150℃の範囲に観察される。
いくつかの実施形態において、mDSCにより測定されるガラス転移温度は、25℃/60%RHで1か月、又は2か月、又は3か月、又は6か月、又は9か月、又は12か月の保存後に、5℃超、若しくは4℃超、又は3℃以上、若しくは2℃以上、変化しない。いくつかの実施形態において、mDSCにより測定されるガラス転移温度は、40℃/75%RHで1か月、又は2か月、又は3か月、又は6か月の保存後に、6℃超、若しくは5℃超、若しくは4℃超、若しくは3℃超、若しくは2℃超、又は1℃以上、変化しない。
【0038】
さらに、安定性は、異なる保存条件下でのニロチニブASDの結晶度の経時的変化を評価すること、例えば、好適な従来のX線回折(「XRD」)技術(本技術分野において、粉末XRD又はPXRDとしても知られている)により評価し得る。本開示の実施において、ニロチニブASDは、非晶質のままであるか、又は本質的に非晶質のままであるのが好ましい(しかし、必須ではない)。いくつかの実施形態において、「非晶質」は、本技術分野における既知の方法、例えば、XRDを使用することにより決定される、検出できる結晶度を有しない、と定義され得る。XRDを使用して非晶性(amorphicity)を決定する例は、実施例1に示されている。
いくつかの実施形態において、「非晶質」は、XRDによって測定される、5%以下、又は4%以下、又は3%以下、又は2%以下、又は1%以下の結晶度%を有すると定義され得る。いくつかの実施形態において、「本質的に非晶質」は、XRDによって測定される、8%以下、又は7%以下、又は6%以下の結晶度%を有すると定義され得る。
本開示のASDは、調製後に速やかに(すなわち、t=0において)分析すると、非晶質であり得るか、又は本質的に非晶質であり得る。これらの目的のため、句「調製後に速やかに」は、調製後の数日以内にASDを分析し、並びに調製後及び分析前に、ASDを周囲温度及び湿度において、保護条件下で保存することを意味する。
【0039】
ASDは、様々な保存条件(例えば、25℃/60%RH、25℃/保護あり、40℃/75%RH、40℃/保護あり、50℃/80%RH等)下で、少なくとも1週間の期間、又は少なくとも2週間の期間、又は少なくとも3週間の期間、又は少なくとも4週間若しくは1か月の期間、又は少なくとも2か月の期間、又は少なくとも3か月の期間、又は少なくとも4か月の期間、又は少なくとも5か月の期間、又は少なくとも6か月の期間、又は少なくとも9か月の期間、又は少なくとも12か月若しくは1年の期間の保存後に、非晶質であり得るか、又は本質的に非晶質であり得る。いくつかの実施形態において、本開示のASDは、高温多湿(例えば、40℃/75%RH)の条件下で、少なくとも1か月の期間、又は少なくとも2か月の期間、又は少なくとも3か月の期間、又は少なくとも6か月の期間、非晶質であり得るか、又は本質的に非晶質であり得る。
【0040】
本開示のニロチニブASDは、例えば、標準的なカールフィッシャー電量滴定法を使用することによる、含水量を特徴とすることができる。いくつかの実施形態において、ニロチニブASDは、3%以下、又は2.5%以下、又は2%以下、又は1.5%以下、又は1%以下の、カールフィッシャー電量滴定法により評価される含水量を含み得る。
いくつかの実施形態において、ニロチニブASDは、25℃/60%RHで1か月、又は2か月、又は3か月、又は6か月、又は9か月、又は12か月の保存後に、5%以下、又は4.5%以下、又は4%以下、又は3.5%以下、又は3%以下、又は2.5%以下、又は2%以下の、カールフィッシャー電量滴定法により評価される含水量を含み得る。いくつかの実施形態において、ニロチニブASDは、40℃/75%RHで1か月、又は2か月、又は3か月、又は6か月、又は9か月、又は12か月の保存後に、8%以下、又は7%以下、又は6%以下、又は5%以下、又は4.5%以下、又は4%以下、又は3.5%以下、又は3%以下、又は2.5%以下、又は2%以下の、カールフィッシャー電量滴定法により評価される含水量を含み得る。
【0041】
非晶質固体分散体を製造する方法
本開示のニロチニブASDは、本技術分野における既知の様々な方法により調製し得る。好適な方法は、一般的には、ニロチニブと、1種以上のポリマーと、存在する場合、1種以上の他の機能性成分(抗酸化剤、湿潤剤、又は可溶化剤など)とを混合し、溶解し、又は調合して、様々な成分を統合する工程を含む。様々な方法の実施において、ニロチニブを、ニロチニブ遊離塩基、ニロチニブの塩、又はニロチニブの溶媒和物若しくは水和物として導入し得る。
好適な方法は、本技術分野において一般的に知られており、混練、共粉砕、溶融、溶融押出、溶融凝集、滴下等を含む。統合工程の後、材料を、乾燥、粉砕又は破砕、篩過等により更に加工することができる。
ある方法の実施において、ニロチニブ及び1種以上のポリマー(存在する場合、他の機能性成分も)を1種以上の溶媒と混合又は溶解し得、液体原料(liquid feedstock)を提供する。好適な溶媒としては、水;エタノール、メタノール、プロパノール又はイソプロパノールなどのアルコール;エチルエーテル又はメチルtert―ブチルエーテルなどのエーテル;アセトニトリル;テトラヒドロフラン又はメチルテトラヒドロフラン;酢酸メチル又は酢酸エチルなどのアセテート;アセトン又は2-ブタノン(メチルエチルケトン若しくは「MEK」)などのケトン;トルエン;ギ酸エチル;1,4-ジオキサン;ジメチルスルホキシド;N-メチル2-ピロリドン;クロロホルム又はジクロロメタンなどの揮発性ハロゲン化溶媒;及びこれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。これらの内容物は、本技術分野における既知の方法により混合し又は溶解し得る。例えば、内容物を、手作業で混合し得るか、又は混合装置により連続的に、周期的に混合し得るか、若しくはこれらの組み合わせで混合し得る。混合装置の例としては、マグネチックスターラー、振とう機、パドルミキサー、ホモジナイザー、及びこれらの任意の組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0042】
ニロチニブ及び1種以上のポリマー(存在する場合、他の機能性成分も)を混合した後、液体原料を、例えば、溶媒蒸発、凍結乾燥、沈殿又は共沈殿、噴霧乾燥、エレクトロスプレー、超臨界流体抽出等により、非晶質固体分散体に形成し得る。かかる方法は、本技術分野において知られており、一般的に理解されているものである。
本開示のある実施形態において、液体原料を、エレクトロスプレーにより非晶質固体分散体に形成し得る。電気流体力学霧化(electrohydrodynamic atomization)とも呼ばれるエレクトロスプレーは、好適な液体原料からミクロン又はサブミクロンスケールの非晶質固体分散体粒子を生成することに使用されている。
ある好適なエレクトロスプレー技術において、ノズルと基板との間に印加された電位の存在下で、液体原料を1つ以上のノズルを通して、基板に向かって放出する。液体原料は、印加された電位による電気剪断応力を受ける。剪断応力が液体原料の表面張力に打ち勝つと、液滴が、ノズルの先端から放出される。
液滴の環状噴流がノズルの先端から放出されるように条件を制御する。液滴は、電荷を帯び互いに反発することで、液滴の凝集を妨げ、及び自己分散を促進する。印加された電場の結果として、帯電液滴は、基板に向かって加速する。
【0043】
短い飛行経路の間に、溶媒は、帯電液滴から「蒸発分離(flashes off)」をする。この急速な蒸発により、帯電液滴の大きさは縮小するが、その電荷密度は増加する状況を作り出す。臨界点において、液滴は、さらに小さい液滴に分裂する。最後に、微細な液滴の本質的に単分散している集団を生成する。液滴の大きさは、サブミクロンから数マイクロンまでの範囲であり得る。
帯電液滴からの溶媒の本質的に完全な蒸発により、液体原料から、不揮発性成分の比較的均一な粒子の形成をもたらす。蒸発プロセスは、不揮発性成分の結晶化を許容しない時間の尺度で起こる。加えて、極めて速い溶媒蒸発に伴う蒸発冷却は、粒子を非晶質状態に保つ急冷効果に寄与する。さらに、非晶質粒子が残留溶媒を殆ど含まないように、エレクトロスプレー条件を選択することができ、システムを設定することもできる。
【0044】
本開示のいくつかの実施形態において、エレクトロスプレー技術及び/又は装置を使用し、液体原料をASDに形成し得る。好適な方法及び設備は、例えば、米国特許第6,746,869号、米国特許第6,764,720号、米国特許第7,279,322号、米国特許第7,498,063号、米国特許第7,951,428号、米国特許第7,972,661号、米国特許第8,992,603号、米国特許第9,040,816号、米国特許第9,050,611号、米国特許第9,108,217号、米国特許第9,642,694号、米国特許第10,562,048号、米国特許公開第2014-0158787号、米国特許公開第2015-0190253号、米国特許公開第2016-0038968号、米国特許公開第2016-0175881号、米国特許公開第2016-0235677号、米国特許公開第2019-0193109号、及び米国特許公開第2020-0179963号に記載されている。
上述したように、エレクトロスプレー技術を使用することにより、ニロチニブASDの粒子分布のメジアン径は、0.1μm~10μm、又は0.2μm~5μm、又は0.5μm~2μmであり得る。非晶質粒子中のニロチニブは、一般的には、溶媒和されていないと考えられることに更に留意されたい。ニロチニブの溶媒和物又は水和物の形態を使用して液体原料を調製している場合であったとしても、該溶媒和物又は水和物は、他の溶媒と一緒に蒸発分離すると理解され、エレクトロスプレーされた非晶質粒子は、非溶媒和物のニロチニブ(無水ニロチニブなど)を含む。
【0045】
いくつかの実施形態において、エレクトロスプレー技術は、室温で行い得る。ある実施形態において、加熱した空気を使用しない。他の実施形態において、エレクトロスプレープロセス中に、液体原料を高温で保持する。
いくつかの実施形態において、1つ以上のキャピラリーノズルを使用し、エレクトロスプレー技術を行い得る。ある実施形態において、エレクトロスプレー技術は、運動エネルギーに依存するノズルなどの空気圧ノズル(pneumatic nozzles);圧力ノズル;回転ノズル;又は遠心力エネルギーに依存するノズル;又は音響エネルギーに依存するノズルなどの超音波ノズルを使用しない。いくつかの実施形態において、エレクトロスプレー技術により、85%を超える、又は90%を超える、又は95%を超える、又は98%を超える収率をもたらす。
他の実施形態において、噴霧乾燥により、液体原料をASDに形成し得る。概して、噴霧乾燥は、高温乾燥気体内で液体原料を非常に小さい液滴へ霧化することを含む。原料をノズル又は他の霧化装置により送り込むか又は推進し、乾燥チャンバー内で液滴を形成する。乾燥チャンバー内で、液滴を加熱した乾燥気体(通常、流動空気又は窒素)の環境に曝し、液滴の急速乾燥(flash drying)を引き起こす(溶媒の蒸発除去により)結果、固体粒子を生成する。一般的には、乾燥チャンバーの取出口において乾燥した粒子を回収する。
【0046】
噴霧乾燥の様々な装置及び方法を使用し、本開示のASDを形成し得る。本開示の実施において、噴霧乾燥により得られたASDの粒子分布のメジアンは、1μm~40μm、又は2μm~25μm、又は3μm~20μmであり得る。
いくつかの実施形態において、ASDを形成するためのプロセスでは、第2乾燥工程、すなわち、粒子を生成した後の乾燥工程の必要がない。他の実施形態において、第2乾燥工程を使用することで、殆ど又はすべての残留溶媒を更に除去する。第2乾燥工程は、溶剤の除去を可能にするがニロチニブの再結晶をもたらさない適切な条件下で行うことができる。例えば、第2乾燥工程は、ガラス転移温度未満で行うことができる。第2乾燥工程はまた、減圧下で行うことができる。高温と減圧との組み合わせも、第2乾燥工程に使用することができる。
【0047】
医薬組成物
本開示の態様は、ニロチニブASDを含む医薬組成物に関する。本開示の医薬組成物は、経口投与に適している剤形であり得る。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、顆粒剤の形であり得、又は錠剤、スプリンクル(sprinkles)、若しくはペレットなどの別の経口剤形を形成する中間工程として、顆粒として調製し得る。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、カプセル剤、錠剤、スプリンクル、又はペレットなどの経口投与用の固体剤形であり得る。医薬組成物はまた、水性又は非水系の懸濁剤又は溶液の形であり得る。既知の賦形剤と既知の調製方法を使用し、このような組成物を調製し得る。
組成物は、本開示のニロチニブASDと、1種以上の医薬上許容される賦形剤とを含み得、該1種以上の医薬上許容される賦形剤は、例えば、1種以上の可溶化剤、1種以上の緩衝化剤、1種以上のpH調整剤、1種以上の界面活性剤、1種以上の抗酸化剤、及び/又は1種以上の担体である。固体経口剤形の形の医薬組成物はまた、例えば、1種以上の充填剤、1種以上の結合剤、1種以上の滑沢剤、1種以上の崩壊剤、及び/又は他の従来の賦形剤、例えば1種以上の流動化剤を含み得る。
好適な賦形剤に関する情報、及び該賦形剤についての商業的な供給元は、Sheskey PJ(ed.) Handbook of Pharmaceutical 賦形剤, 9th Ed.. London: Pharmaceutical Press; 2020(ISBN 0857113755)に見つけることができ、或いは、同じ書名の最新版を参照することができる。
【0048】
本開示の医薬組成物は、当該技術分野における既知の方法を使用して調製し得る。例えば、ニロチニブASDと1種以上の医薬上許容される添加剤とを、単純な混合により混合し得るか、又は混合装置により連続的に、周期的に混合し得るか、若しくはこれらの組み合わせで混合し得る。混合装置の例としては、マグネチックスターラー、振とう機、パドルミキサー、ホモジナイザー、及びこれらの任意の組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。
本開示の医薬組成物に使用できる可溶化剤としては、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマー(ソルプラス)、d-α-トコフェロール酸ポリエチレングリコール(PEG)1000スクシネート(TPGS)、PEG-40水添ヒマシ油(クレモフォールRH40)、PEG-35ヒマシ油(クレモフォールEL)、ステアリン酸PEG-40(MYRJ 540)、ハードファット(hard fat)(ゲルシア(GELUCIRE)33/01など)、ポリオキシルグリセリド(ゲルシア44/14など)、ステアロイルポリオキシルグリセリド(ゲルシア50/13など)、PEG-8カプリル酸/カプリン酸グリセリド(ラブラソール(LABRASOL)など)、及びポロクサマー(プルロニック、コリフォールなど)が挙げられるが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、ニロチニブASDと1種以上の医薬上許容される賦形剤とを含むことができる。ただし、該医薬上許容される賦形剤は、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニルーポリエチレングリコールグラフトコポリマー(例えば、ソルプラス)を含まない。
【0049】
本開示の医薬組成物に使用できる緩衝化剤としては、トリエチルアミン、メグルミン、ジエタノールアミン、酢酸アンモニウム、アルギニン、リジン、ヒスチジン、リン酸緩衝液(例えば、三塩基性リン酸ナトリウム(sodium phosphate tribasic)、二塩基性リン酸ナトリウム(sodium phosphate dibasic)、一塩基性リン酸ナトリウム(sodium phosphate monobasic)、又はo-リン酸)、重炭酸ナトリウム、ブリトン-ロビンソン緩衝液(Britton-Robinson buffer)、トリス緩衝液(トリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン含有)、HEPES緩衝液(N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸含有)、酢酸塩、クエン酸緩衝液(例えば、クエン酸、クエン酸無水物、クエン酸一塩基(citrate monobasic)、クエン酸二塩基(citrate dibasic)、クエン酸三塩基(citrate tribasic)、クエン酸塩)、アスコルビン酸塩、グリシン、グルタミン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、ギ酸塩、硫酸塩、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
さらに、本開示の医薬組成物に使用できるpH調整剤は、医薬上許容される酸又は塩基を含む。例えば、酸としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸等のような1種以上の無機酸;又は酢酸、コハク酸、酒石酸、アスコルビン酸、クエン酸、グルタミン酸、安息香酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等のような1種以上の有機酸を挙げることができるが、これらに限定されない。塩基は、1種以上の無機塩基又は有機塩基であってもよく、アルカリ炭酸塩、アルカリ重炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、又はアミンが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、無機塩基又は有機塩基は、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化ナトリウム等のようなアルカリ性水酸化物;炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム等のようなアルカリ炭酸塩;又は重炭酸ナトリウム等のようなアルカリ重炭酸塩であってもよい。有機塩基はまた、酢酸ナトリウムであってもよい。
【0050】
本開示の医薬組成物に使用できる界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ドクサートナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、スルホン酸ジオクチルナトリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン水添ヒマシ油(例えば、ポリオキシエチレン水添ヒマシ油10、50、又は60)、モノステアリン酸グリセロール、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート40、60、65、又は80)、ショ糖脂肪酸エステル、メチルセルロース、ポリアルコール及びエトキシル化ポリアルコール、チオール(例えば、メルカプタン)及び誘導体、ポロクサマー、ポリエチレングリコール-脂肪酸エステル(例えば、コリフォールRH40、コリフォールEL)、レシチン、並びにこれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0051】
本開示の医薬組成物に使用できる抗酸化剤としては、アセチルシステイン、パルミチン酸アスコルビル、BHA、BHT、モノチオグリセロール、硝酸カリウム、アスコルビン酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ビタミンE若しくはその誘導体、没食子酸プロピル、EDTA(例えば、エデト酸二ナトリウム)、DTPA、トリグリコラメートビスマスナトリウム、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。抗酸化剤はまた、アミノ酸、例えば、メチオニン、ヒスチジン、システイン、並びにアルギニン、リジン、アスパラギン酸、及びグルタミン酸などの荷電側鎖を持つアミノ酸を含んでもよい。アミノ酸がその遊離塩基の形又は塩の形で存在する限り、特定のアミノ酸(例えば、メチオニン、ヒスチジン、アルギニン、リジン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、トレオニン、及びこれらの組み合わせ)のいずれかの立体異性体(例えば、l-、d-、若しくはこれらの組み合わせ)、又はこれらの立体異性体の組み合わせは存在し得る。
本開示の医薬組成物に使用できる担体としては、水、塩溶液(例えば、リンガー液等)、アルコール、オイル、ゼラチン、及びラクトース、アミロース又はデンプンなどの炭水化物、脂肪酸エステル、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、並びに上記のいずれかを含む混合物又は溶液が挙げられるが、これらに限定されない。担体を緩衝化剤と組み合わせて使用し得る。
【0052】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、pH5~9、又は6~8の担体を含み得る。ある実施形態において、該組成物は、中性pHを有する担体を含み得る。ある実施形態において、担体のpHは、生理的pH又はそれに近いpHであり得る。
いくつかの実施形態において、本開示の医薬組成物は、他の好適な医薬品添加物、例えば、等張化剤(tonicity-adjusting agent)、防腐剤、乳化剤、甘味料、香味料、懸濁剤、増粘剤、着色料、粘度調整剤、安定剤、及び浸透圧調整剤を含んでもよい。
固体形態の医薬組成物は、例えば、1種以上の充填剤、1種以上の結合剤、1種以上の滑沢剤、1種以上の崩壊剤、及び/又は他の従来の賦形剤、例えば1種以上の流動化剤を含んでもよい。
好適な充填剤としては、アカシア、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸カルシウム二水和物、圧縮糖(compressible sugar)、二塩基性リン酸カルシウム無水物(例えば、フジカリン(FUJICALIN)、エンコンプレス(EMCOMPRESS))、二塩基性リン酸カルシウム二水和物、三塩基性リン酸カルシウム、一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、ラクトース一水和物、ラクトース無水物、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、二酸化ケイ素、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マルトデキストリン、マンニトール、メチルセルロース、微結晶セルロース(例えば、アビセル(AVICEL)PH-101、アビセルPH-102)、粉末セルロース、デンプン、ソルビトール、デキストロース、デキストレート(dextrate)、デキストリン、スクロース、キシリトール、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0053】
好適な結合剤としては、例えば、様々なセルロース及び架橋したポリビニルピロリドン、微結晶セルロース(例えば、アビセルPH-101、アビセルPH-102、アビセルPH-105)、又はケイ化微結晶セルロース(例えば、プロソルブSMCC(PROSOLV SMCC))が挙げられる。
加工中の加工設備との摩擦及び加工設備への付着を低減するために、1種以上の滑沢剤を含んでもよい。好適な滑沢剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、ステアリルアルコール、モノステアリン酸グリセリル、ステアリルフマル酸ナトリウム、タルク、ベヘン酸グリセリル、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられるが、これらに限定されない。滑沢剤を含む場合、1種以上の滑沢剤は、一般的には、医薬組成物の0.1質量%~5質量%の範囲で存在する。いくつかの実施形態において、1種以上の滑沢剤は、一般的には、医薬組成物の0.25%~2質量%の範囲で存在する。ある実施形態において、滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウムである。
【0054】
本開示の実施における好適な崩壊剤としては、天然デンプン、改質デンプン又はアルファ化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポリビニルポリピロリドン、及びこれらの混合物が挙げられる。
更なる加工(例えば、錠剤圧縮など)の前に、流動化剤を使用し、粉末又は顆粒の混合物の流動性を改善する。本開示の組成物に使用できる好適な流動化剤としては、コロイドシリカ(例えば、アエロジル(AEROSIL)などの疎水性コロイドシリカ)、シリカゲル、沈降シリカ等が挙げられるが、これらに限定されない。流動化剤を含む場合、1種以上の流動化剤は、一般的には、医薬組成物の0.1質量%~5質量%の範囲で存在する。いくつかの実施形態において、1種以上の流動化剤は、一般的には、医薬組成物の0.25質量%~2質量%の範囲で存在する。
【0055】
いくつの場合において、単一の賦形剤が、複数の機能を提供する可能性がある。例えば、微結晶セルロース(存在する場合)は、充填剤及び結合剤の両方として機能することができる。或いは、かかる多機能性賦形剤は、他の機能性賦形剤と組み合わせて使用することができる(例えば、微結晶セルロースは、他の充填剤及び/又は他の結合剤と一緒に使用し得る)。
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、顆粒剤の形であってもよく、又は錠剤若しくはペレットなどの別の経口剤形を形成する中間工程として、又はカプセル剤用の充填物としての顆粒として調製し得る。いくつかの実施形態において、顆粒剤は、1種以上の上述した医薬上許容される賦形剤を含み得る。ある実施形態において、顆粒剤は、該顆粒剤の50質量%~70質量%の量のASDと;該顆粒剤の20質量%~40質量%の量の1種以上の充填剤と;該顆粒剤の1質量%~15質量%の量の1種以上の崩壊剤と;該顆粒剤の0.2質量%~5質量%の量の1種以上の滑沢剤とを含み得る。特定の実施形態において、顆粒剤は、表1に示されている成分を含み得る。
【0056】
表1.本開示の特定の実施形態に従う例示的な顆粒剤製剤の成分
【表1】
【0057】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、錠剤の形である。ある実施形態において、錠剤は、該錠剤の20質量%~40質量%の量のASDと;該錠剤の40質量%~70質量%の量の1種以上の充填剤(マンニトール及び/又は微結晶セルロースなど)と;該錠剤の5質量%~15質量%の量の1種以上の崩壊剤(クロスカルメロースナトリウムなど)と;該錠剤の0.5質量%~5質量%の量の1種以上の滑沢剤及び/又は流動化剤(疎水性コロイドシリカ及び/又はステアリン酸マグネシウムなど)と;該錠剤の1質量%~10質量%の量の1種以上の結合剤(クロスポビドンなど)を含み得る。
【0058】
錠剤の形での本開示の医薬組成物は、本技術分野における既知の方法を使用して調製し得る。例えば、手により、若しくはバッグブレンドにより、又は好適な装置を使用することにより、ニロチニブASDと1種以上の医薬上許容される添加剤とをブレンドし、錠剤化ブレンドを提供し得る。好適なブレンド装置の例としては、タンブラー混合機、V型混合機、音響混合機、パドルミキサー、スクリューミキサー等を挙げることができるが、これらに限定されない。
次に、例えば、手動式打錠機又は従来の機械式打錠機を使用し、好適な錠剤化ブレンドを100~1000mgの重さの錠剤に圧縮し得る。性能を損なうことなく、錠剤の所望の機械的特性を得るために、圧縮力を選択する。
いくつかの実施形態において、錠剤化ブレンドを形成する中間工程として、顆粒を形成することが望ましい場合がある。顆粒は、顆粒化されていない材料と比べて、典型的には、改善した流動性、取扱性、混合性、及び圧縮性を有する。顆粒は、湿式造粒及び乾式造粒を含む本技術分野における既知のプロセスにより、ASD粒子から調製し得る。いくつかの実施形態において、顆粒成分を乾式混合することにより、顆粒ブレンドを形成し、続いて典型的には材料のリボンを形成するローラー圧縮機を使用し、顆粒ブレンドを緻密にする。次に、粉砕によりリボンの大きさを小さくして、顆粒剤を形成する。
【0059】
選択された溶媒及びプロセスがASDの性質を変えないことを条件として、湿式造粒技術を使用して顆粒剤を形成することもできる。上述したように、好適な賦形剤を含ませることにより、改善した湿潤性、崩壊性、分散性及び溶解性を得ることができる。
顆粒ブレンド(それにより得られた顆粒も)は、錠剤の成分の一部又は全部を含むことができる。いくつかの実施形態において、顆粒は、上述した1種以上の医薬上許容される賦形剤を含み得る。上述したように、造粒後、顆粒を錠剤化ブレンドに含ませ、錠剤に圧縮することができる。
本開示の医薬組成物は、ある適切な期間、加えて場合により加速条件下で、望ましいレベルの物理的及び/又は化学的安定性を示し得る。医薬組成物の安定性は、様々な手段により評価することができる。例えば、医薬組成物は、加速条件下で指定期間保存後に測定された、特定の定量値又は全関連物質(例えば、不純物)の特定のレベルを有することにより、化学的安定性を示すことができる。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、指定条件下で保存後にXRDを使用して評価されるように、非晶質であり得る(すなわち、結晶性は検出されない)。
【0060】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、指定条件下で保存後にXRDを使用して評価されるように、実質的に非晶質であり得る。保存条件は、25℃/60%RH、又は30℃/65%RH、又は40℃/75%RHの1種以上であり得る。期間は、1週間、又は2週間、又は1か月、又は2か月、又は3か月、又は4か月、又は6か月、又は9か月、又は12か月、又は15か月、又は18か月、又は21か月、又は24か月、又はこれらの間のいずれかの期間の1種以上であり得る。
いくつかの実施形態において、本開示の医薬組成物は、以下に更に記載されているように、「胃酸非感受性組成物」である。いくつかの実施形態において、本開示の医薬組成物は、以下に更に記載されているように、本開示の医薬組成物は、「食物非感受性組成物」である。いくつかの実施形態において、本開示の医薬組成物は、以下に更に記載されているように、「ばらつきが改善した組成物」である。
【0061】
増殖性障害の治療
本開示の態様は、本開示のニロチニブASD又は該ASDを含む医薬組成物の使用に関する。本開示のこのような実施形態の実施において、ニロチニブASD又は医薬組成物を対象又は患者に好適に投与し得る。
いくつかの実施形態において、ニロチニブASD又は医薬組成物を対象に投与する。本開示の方法における対象は、哺乳類であってもよく、ヒト、サル、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、及びネズミが挙げられるが、これらに限定されない。ある実施形態において、対象は、ヒトである。本明細書において使用されているように、句「健康なヒト対象」は、一般的に健康であり、医薬上の有効成分(例えば、ニロチニブ)が一般的に治療に使用される疾患又は状態の治療を受けていないヒトを意味する。薬物動態評価のための好適な健康なヒト対象の選択は、臨床試験デザイン分野の当業者の専門知識内である。
他の実施形態において、医薬組成物をヒト患者に投与する。ヒト患者は、成人又は小児年齢、例えば、17歳未満であり得る。ある実施形態において、ヒト患者の年齢は、1歳以上である。本明細書において使用されているように、「患者」は、医薬上の有効成分(例えば、ニロチニブ)が一般的に治療に使用される疾患又は状態の治療を受けている対象、特に、ヒトである。
【0062】
本開示の態様は、増殖性障害を治療するための、本開示のニロチニブASD又は本開示の医薬組成物の使用に関する。いくつかの実施形態は、増殖性障害を治療する方法に関し、該方法は、増殖性障害の治療が必要な患者に、本開示のニロチニブASD又は本開示の医薬組成物を投与する工程を含む。いくつかの実施形態は、増殖性障害の治療が必要な患者における増殖性障害を治療するための、本開示のニロチニブASD又は医薬組成物の使用に関し、該使用は、ニロチニブASD又は医薬組成物を患者に投与することを含む。いくつかの実施形態は、増殖性障害の治療が必要な患者における増殖性障害の治療における使用のための本開示のニロチニブASD又は医薬組成物に関し、該使用は、ニロチニブASD又は医薬組成物を患者に投与することを含む。いくつかの実施形態は、増殖性障害を治療するための医薬品の製造における、本開示のニロチニブASD又は医薬組成物の使用に関する。
ある態様において、本開示は、増殖性障害の治療が必要な患者における増殖性障害を治療する方法に関し、該方法は、治療上有効量の本開示のニロチニブASD又は本開示の医薬組成物を患者に投与する工程を含む。
【0063】
増殖性障害は、がんであり得る。このような増殖性障害の例としては、白血病、例えば、急性リンパ球性白血病(又は急性リンパ芽球性白血病)、急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia、acute myelogenous leukemia)、慢性リンパ球性白血病(又は慢性リンパ芽球性白血病)、慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia、chronic myelogenous leukemia);加齢黄斑変性及び糖尿病網膜症、肛門がん及び口腔がん、血管肉腫、基底細胞がん及び扁平上皮細胞がん、膀胱がん、脳がん、神経膠腫、乳がん、中枢神経系のがん、子宮頸がん(cervical, cervix uteri cancer)、絨毛がん、結腸がん、消化管間質腫瘍、子宮体がん、食道がん、ユーイング肉腫、眼又は目のがん(eye or ocular cancer)、頭頸部がん、血管内皮腫、血管腫及びリンパ脈管新生、カポジ肉腫、喉頭がん、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、口腔/咽頭がん、多発性骨髄腫;心肥大、神経芽腫、神経線維腫症、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、直腸がん、腎臓がん、横紋筋肉腫、皮膚メラノーマ、小細胞肺がん、胃がん、精巣がん、咽頭がん、結節性硬化症、及びウィルムス腫瘍を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0064】
ある実施形態において、増殖性障害は、慢性期のフィラデルフィア染色体陽性(「Ph+」)慢性骨髄性白血病(「CML」)であり得る。ある実施形態において、増殖性障害は、移行期のPh+CMLであり得る。ある実施形態において、増殖性障害は、以前のチロシンキナーゼ阻害剤治療に抵抗性又は不耐性を有するPh+CMLであり得る。ある実施形態において、増殖性障害は、イマチニブを含む以前の治療に抵抗性又は不耐性を有する、慢性期又は移行期のPh+CMLであり得る。
ニロチニブは、パーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、小脳性運動失調症、及び他の非増殖性障害を治療するために使用することについて更に検討されている。本明細書に開示されている組成物、治療計画、キット、及び他の実施形態は、このような非増殖性状態の治療に好適に使用され得る。
本開示の方法及び使用において、本開示の医薬組成物の治療上有効量は、他のファクターの中でも、投与経路、患者の年齢と大きさ、及び治療している増殖性障害に基づくであろう。本明細書において使用されているように、用語「治療上有効量」は、臨床医が求めている生物学的又は医学的反応を引き出すと予想される量を意味する。
【0065】
いくつかの実施形態において、治療上有効量は、50mg/m2~250mg/m2のニロチニブ、又は50mg/m2~150mg/m2のニロチニブ、又は60~120mg/m2のニロチニブであり得る。他の実施形態において、治療上有効量は、固定用量であり得る。例えば、固定用量は、1日当たり20mg~400mg、又は30mg~300mg、又は40mg~200mgのニロチニブであってもよい。ある実施形態において、固定用量は、50mg、又は55mg、又は60mg、又は65mg、又は70mg、又は75mg、又は80mg、又は85mg、又は90mg、又は95mg、又は100mg、又は110mg、又は120mg、又は125mg、又は130mg、又は140mg、又は150mg、又は160mg、又は170mg、又は175mg、又は180mg、又は190mg、又は200mg、又は210mg、又は220mg、又は225mg、又は230mg、又は240mg、又は250mg、又は260mg、又は270mg、又は275mg、又は280mg、又は290mg、又は300mgのニロチニブであってもよい。
治療計画に応じて、1日に投与されるニロチニブの量は、ラベルのガイドライン又は医師の推奨に基づいて、1日2回投与で投与してもよく、又は1回で全部投与してもよい(1日1回投与)。いくつかの実施形態において、投与は、おおよそ12時間の間隔で、1日2回である。
【0066】
以下に更に記載されているように、本開示の医薬組成物は、様々な投与条件下で、増強された、又はそうでなければ望ましいバイオアベイラビリティを提供し得る。用語「バイオアベイラビリティ」は、有効成分が、医薬組成物から吸収され、作用部位において利用できるようになる速度及び程度を指す。経口投与される医薬品の場合、バイオアベイラビリティは、一般的には、医薬組成物の投与後の有効成分(又は好適な代替物、例えば、代謝物)の存在について、対象の血漿を経時的にモニターし、薬物動態プロファイルを評価することにより、評価する。
薬物動態プロファイルより、ある関連する薬物動態パラメーターを確立することができる。このような薬物動態パラメーターとしては、例えば、Cmax、Tmax、及び/又はAUCを挙げることができる。Cmaxは、観察可能な期間にわたって観察された最高血漿中濃度を示す。Tmaxは、最高血漿中濃度が観察された時点を示す。
【0067】
AUCは、濃度-時間曲線について、数字で表した曲線下面積(「AUC」)を示し、AUC0-tと表される(或いは、AUCtと表される)、特定の時間間隔0-tについて評価することができる。AUC0-tは、一般的には、t=0から「t」時間までの期間の濃度-時間曲線の数値積分により得られる(例えば、AUC0-24h又はAUC24hは、t=0からt=24時間までの期間の積分を示す)。AUC0-last(或いは、AUClastと表される)は、t=0から、観察される期間において試料を採取した最後の時点までの積分を示す。AUC0-inf(或いは、AUCinfと表される)は、通常使用される薬物動態統計モデリング技術を使用して得られたデータの外挿によって決定される、t=0からt=「無限大」までの積分を示す。
典型的には、血漿濃度のデータは、分析のために対数変換される。殆どの薬物動態解析について、分析のために、多くの対象についてのデータをプールする。データをプールすると、従来の薬物動態統計の分析及び方法に従って、関連する薬物動態パラメーターを集団幾何平均として表すことができる。
本開示のASD又は医薬組成物の投与は、薬物動態プロファイルにより、又は定められた投与条件下で、対象若しくは患者への特定投与量のASD又は医薬組成物の投与により得られる、観察されるか又は算出される薬物動態パラメーターにより特徴付けられる。単なる例として(以下にも更に記載されているように)、絶食状態又は絶食条件下での本開示のASD又は医薬組成物の投与は、投与により得られる薬物動態プロファイルにより、又は観察される薬物動態パラメーターにより特徴付けられる。
【0068】
食事と一緒に投与する方法
本開示の態様は、増殖性障害の治療を必要とする患者における増殖性障害を治療する方法に関し、該方法は、治療上有効量の本開示の医薬組成物を食事の影響を受けていない患者に投与する工程を含む。
別の実施形態において、本開示は、増殖性障害の治療を必要とする患者における増殖性障害を治療する方法に関し、該方法は、食物消費に関係なく、治療上有効量の本開示の医薬組成物を患者に投与する工程を含む。
別の実施形態において、本開示は、増殖性障害の治療を必要とする患者における増殖性障害を治療する方法に関し、該方法は、患者が絶食状態か又は摂食状態かに関係なく、治療上有効量の本開示の医薬組成物を患者に投与する工程を含む。
【0069】
さらに別の態様において、本開示は、ニロチニブを患者に安全に送達することを必要とする患者に、ニロチニブを安全に送達する方法に関し、該方法は、工程(a)治療上有効量の本開示の医薬組成物を患者に投与することと、工程(b)食事を患者に与えることを含む。いくつかの実施形態において、工程(b)は、工程(a)の前に発生する。他の実施形態において、工程(a)は、工程(b)の前に発生する。いくつかの実施形態において、工程(a)及び工程(b)は、互いに2時間未満以内に発生する。いくつかの実施形態において、工程(a)及び工程(b)は、互いに90分間以内に発生する。いくつかの実施形態において、工程(a)及び工程(b)は、互いに1時間以内に発生する。いくつかの実施形態において、工程(a)及び工程(b)は、互いに30分間以内に発生する。いくつかの実施形態において、工程(a)及び工程(b)は、互いに15分間以内に発生する。
いくつかの実施形態において、工程(b)は、工程(a)の後から1時間未満に発生する。いくつかの実施形態において、工程(b)は、工程(a)の後から30分間未満に発生する。いくつかの実施形態において、工程(b)は、工程(a)の後から15分間未満に発生する。
いくつかの実施形態において、工程(a)は、工程(b)の後から2時間未満に発生する。いくつかの実施形態において、工程(a)は、工程(b)の後から90分間未満に発生する。いくつかの実施形態において、工程(a)は、工程(b)の後から1時間未満に発生する。いくつかの実施形態において、工程(a)は、工程(b)の後から30分間未満に発生する。いくつかの実施形態において、工程(a)は、工程(b)の後から15分間未満に発生する。
【0070】
いくつかの実施形態において、「食事」は、消費されたら、患者又は対象に少なくとも200カロリーを提供するあらゆる固形食である。他の実施形態において、食事は、消費されたら、患者又は対象に少なくとも400カロリーを提供するあらゆる固形食である。さらに他の実施形態において、食事は、消費されたら、患者又は対象に少なくとも600カロリーを提供するあらゆる固形食である。いくつかの実施形態において、食事は、以下に記載の高脂肪の試験食事である。他の実施形態において、食事は、以下に記載の低脂肪の試験食事である。
別の実施形態において、本開示は、食事の影響に関係なく、治療上有効量のニロチニブを患者に送達する方法に関し、該方法は、治療上有効量の本開示の医薬組成物を患者に投与する工程を含む。
更なる態様において、本開示は、食物消費に関係なく、治療上有効量のニロチニブを患者に送達する方法に関し、該方法は、治療上有効量の本開示の医薬組成物を患者に投与する工程を含む。
別の実施形態において、本開示は、患者が絶食状態か又は摂食状態かに関係なく、治療上有効量のニロチニブを患者に送達する方法に関し、該方法は、治療上有効量の本開示の医薬組成物を患者に投与する工程を含む。
【0071】
一般的に解釈されているように、「食事の影響」は、食物の、薬物の溶解、吸収、分布、代謝及び排泄との相互作用のすべての態様を広範に指す。食事の影響の意味は、バイオアベイラビリティ、発病率、治療効果の持続時間、並びに副作用の発生率及び重篤度の変化を含む。食事の影響の大きさは、一般的には、食事の摂取の直後に医薬品を投与したときに最も大きい。食事の影響を受ける医薬品の例はタシグナであり、上述したように、タシグナは、高脂肪の食事から30分後に経口服用すると、絶食条件下で得られるAUC及びCmaxのレベルと比較して、それぞれ82%及び112%のAUC及びCmax増加を引き起こし得る。
実際には、食事の影響は、一般的には、絶食状態における対象への医薬品の投与後に観察される標準的な薬物動態パラメーターを測定し、摂食状態における同じ対象への投与後に観察される同じ測定と対比することにより評価する。関連する薬物動態パラメーターは、AUC、Cmax、及び/又はTmaxを含むことができる。AUCは、特定の時間間隔(例えば、AUC0-12h又はAUC0-24hなど)について評価するか、又はAUC0-last又はAUC0-infとして評価することができる。典型的には、分析のために、多くの対象についてのデータをプールする。
【0072】
食事の影響の研究に関する更なる情報については、「Guidance for Industry: Food-Effect Bioavailability and Fed Bioequivalence Studies」(医薬品評価研究センター(CDER)、食品医薬品局(FDA)、2002年12月)を参照されたい。そのすべての内容は、参照として本明細書に含まれる。「Guidance for Industry: Assessing the Effects of Food on Drugs in INDs and NDAs - Clinical Pharmacology Considerations (Draft Guidance)」(CDER、FDA、2019年2月)も参照されたく、そのすべての内容は、参照として本明細書に含まれる。
本開示の方法に関して使用されているように、句「食事の影響」は、活性物質又はその製剤(例えば、固体分散体又は医薬組成物)を、食物と一緒にヒト対象に経口投与するか、又は摂食状態におけるヒト対象に経口投与する場合、前記活性物質に関する1種以上のAUC、Cmax、及び/又はTmaxについて、同じ製剤を絶食状態における同じ対象に投与する場合の同じパラメーターに関する測定値と比較した相対的な差異を指す。食事の影響Fは、F=(Y摂食-Y絶食)/Y絶食と計算され、Y摂食及びY絶食は、それぞれ摂食状態及び絶食状態におけるAUC、Cmax又はTmax測定値である。
句「正の食事の影響」は、絶食状態において医薬品を経口投与した場合よりも、摂食状態において該医薬品を経口投与した場合のほうが、AUC及び/又はCmaxが高くなる食事の影響を指す。句「負の食事の影響」は、絶食状態において医薬品を経口投与した場合よりも、摂食状態において該医薬品を経口投与した場合のほうが、AUC及び/又はCmaxが低くなる食事の影響を指す。
【0073】
食事の影響の評価において、従来の薬物動態統計の分析及び方法を使用し、絶食及び摂食研究により得られたデータを処理する。必要に応じて、絶食及び摂食研究は、単回投与の研究又は定常状態の研究であってもよい。適切な数の対象からのプールされたデータを使用し、対数変換されたデータに基づく、摂食における投与と絶食における投与との間の集団幾何平均の比についての90%信頼区間(「CI」)が、AUC0-inf(適切な場合、又はAUC0-t)及びCmaxについての同等性の限界の80%~125%に入る場合、食事の影響がないことを示す。一方、対数変換されたデータに基づく、摂食における投与と絶食における投与との間の集団幾何平均の比についての90%CIが、AUC0-inf(適切な場合、又はAUC0-t)又はCmaxについての同等性の限界の80%~125%に入らない場合、食事の影響がないことは立証されない。
【0074】
本開示の方法において、「食事の影響を受けていない」は、本開示のASD又は医薬組成物を食物と一緒に経口投与するか、又は摂食状態において経口投与する場合の、ニロチニブについてのAUC(例えば、AUC0-24h、AUC0-last又はAUC0-infであり得る)及び/又はCmaxに関して、絶食状態において同じASD又は医薬組成物を投与する場合の同じパラメーターについての測定値と比較して、相対的な差異が実質的に大きいこと、例えば、20%未満、又は15%未満、又は10%未満を意味する。(本明細書において使用されているように、%として示される相対的な差異について、記載されている各範囲は、該相対的な差異の絶対値に関するものであり、すなわち、「20%未満」は、相対的な差異Fが-20%<F<+20%の範囲に入ることを意味する。)
本開示の方法において、「食物消費に関係なく」は、本開示のASD又は医薬組成物を食物と一緒に対象又は患者に投与するか否か、又は患者又は対象が摂食状態か若しくは絶食状態かについて、考慮する必要がないことを意味する。投与は、患者又は対象が摂食状態か又は絶食状態かにかかわらず、治療上適切な曝露を提供すると予想され、安全ではない過剰な曝露をもたらすとは予想されない。
【0075】
本明細書において使用されている「治療上適切な曝露」は、所望の治療効果を生じると予想される対象の血漿におけるAUC0-t(例えば、AUC0-24h)及び/又はCmaxを提供する曝露を意味する。同様の治療効果を決定する1つの方法は、AUC0-t又はCmaxが、適切な強度(製品のラベルを参照して決定)の従来のニロチニブの即時放出性組成物を、そのラベルの指示に従って同じ対象に投与した場合と比較して、80%~125%の生物学的同等性基準内にあるかどうかである。
本明細書において使用されているように、句「従来のニロチニブの即時放出性組成物」は、一般的には結晶形態の、ニロチニブ一塩酸塩一水和物を含む商業的に入手可能な組成物を指す。従来のニロチニブの即時放出性組成物は、カプセル剤形であり得る。ある好適な従来のニロチニブの即時放出性組成物は、タシグナIRカプセル(新薬承認申請22-068で米国において販売されている)である。タシグナは、即時放出性カプセル製剤に含まれるニロチニブ一塩酸塩一水和物結晶と理解されている。
本明細書において使用されているように、句「食物と一緒に」は、対象が食物を摂取した30分後から1時間後までの、該対象への投与を指す。本明細書において使用されているように、句「摂食状態における投与」(又は「摂食条件下での投与」も同義)は、対象が食事の摂取を開始した30分後から食事を完全に摂取した1時間後までの、該対象への投与を指す。同様に、「摂食状態」又は「摂食条件」は、対象が食事の摂取を開始した30分後から食事を完全に摂取した1時間後までの条件を指す。
【0076】
いくつかの実施形態において、食事は、「高脂肪の試験食」(又は代わりに、「高脂肪食」)であり、これは、上で参照したFDAの産業用ガイダンス(Guidance for Industry)(2002年12月)に従う、タンパク質由来のおおよそ150カロリー、炭水化物由来の250カロリー、及び脂肪由来の500~600カロリーを含む、高脂肪かつ高カロリー(おおよそ800~1000カロリー)の食事である。他の実施形態において、食事は、「低脂肪の試験食」であり、これは、上で参照したFDAの産業用ガイダンスのドラフト(Draft Guidance for Industry)(2019年2月)に従う、おおよそ11~14グラムの脂肪、及び脂肪由来のおおよそ25%カロリー(残りはタンパク質由来と炭水化物由来)を含む、低カロリー(おおよそ400~500カロリー)の食事である。
本明細書に使用されているように、句「絶食状態における投与」(「絶食条件下での投与」も同義)は、対象の前回の食事から、少なくとも2時間後、より好適には少なくとも4時間後、又はより好適には少なくとも8時間後の該対象への投与を指す。好ましくは、絶食状態における投与又は絶食条件下における投与は、少なくとも10時間の一晩絶食に続く。同様に、「絶食状態」又は「絶食条件」は、本明細書において使用されているように、対象が、少なくとも2時間、より好適には少なくとも4時間、若しくはより好適には少なくとも8時間、食事を摂取していない条件;又は少なくとも10時間の一晩絶食に続く対象の条件を指す。さらに、絶食状態における投与又は絶食条件下での投与は、投与後に少なくとも1時間、より好適には少なくとも2時間、より好適には少なくとも4時間の継続的な絶食を必要とする場合もある。
【0077】
ある実施形態において、ASD又は医薬組成物は、対象が絶食状態か否かに関係なく投与される。ある実施形態において、ASD又は医薬組成物は、対象が摂食状態か否かに関係なく投与される。ある実施形態において、ASD又は医薬組成物は、対象が絶食状態か又は摂食状態かに関係なく投与される。ある実施形態において、ASD又は医薬組成物は、食事の影響に関係なく投与される。ある実施形態において、ASD又は医薬組成物は、食物と一緒に投与される。
いくつかの実施形態は、対象が絶食状態か否かに関係なく、ニロチニブを対象に送達する方法に関し、該方法は、本開示のASD又は医薬組成物を対象に投与する工程を含む。
いくつかの実施形態は、対象が摂食状態か否かに関係なく、ニロチニブを対象に送達する方法に関し、該方法は、本開示のASD又は医薬組成物を対象に投与する工程を含む。
いくつかの実施形態は、対象が絶食状態か摂食状態かに関係なく、ニロチニブを対象に送達する方法に関し、該方法は、本開示のASD又は医薬組成物を対象に投与する工程を含む。
【0078】
本開示のASD又は医薬組成物の投与は、ある投与量でのASD又は医薬組成物の絶食状態又は摂食状態における対象への投与により得られる、薬物動態プロファイルにより、又は算出される薬物動態パラメーター(Cmax及び/又はAUC0-tなど、例えば、AUC0-24h、AUC0-last又はAUC0-infであり得る)により、特徴付けられる。
例えば、いくつかの実施形態において、ニロチニブの投与量40mg~80mgで本開示のASD又は医薬組成物を、絶食状態における健康なヒト対象へ投与することにより、501ng/mL~621ng/mLのニロチニブの血漿Cmax;3790ng・h/mL~4820ng・h/mLのニロチニブの血漿AUC0-12h;5590ng・h/mL~7340ng・h/mLのニロチニブの血漿AUC0-24h;7610ng・h/mL~10600ng・h/mLのニロチニブの血漿AUC0-last;及び/又は7760ng・h/mL~11000ng・h/mLのニロチニブの血漿AUC0-infをもたらすことができる。
いくつかの実施形態において、ニロチニブの投与量40mg~80mgで本開示のASD又は医薬組成物を、摂食状態にける健康なヒト対象へ投与することにより、456ng/mL~525ng/mLのニロチニブの血漿Cmax;3770ng・h/mL~4320ng・h/mLのニロチニブの血漿AUC0-12h;6310ng・h/mL~7130ng・h/mLのニロチニブの血漿AUC0-24h;9490ng・h/mL~11000ng・h/mLのニロチニブの血漿AUC0-last;及び/又は9840ng・h/mL~11300ng・h/mLのニロチニブの血漿AUC0-infをもたらすことができる。
【0079】
本開示のASD又は医薬組成物の投与はまた、摂食状態における対象へのASD又は医薬組成物の投与により得られる薬物動態プロファイルが、絶食状態における対象へのASD又は医薬組成物投与により得られる薬物動態プロファイルとどのように比較するかにより特徴付けることができる。例として、いくつかの実施形態について、絶食状態における対象及び絶食状態における対象への本開示のASD又は医薬組成物の投与は、50%未満、又は40%未満、又は35%未満、又は30%未満、又は25%未満、又は20%未満、又は15%未満、又は10%未満、又は5%の、摂食状態と絶食状態との間のニロチニブの血漿曝露における相対的な差異をもたらすことができる。曝露は、例えば、AUC0-12h、AUC0-24h、AUC0-last、又はAUC0-infと表され得る。曝露は、個々の対象又は代わりに適切な数の対象(n>1)に対して決定することができる。データがプールされた多くの対象を比較する場合、曝露は、従来の薬物動態統計の分析及び方法に従って、集団幾何平均として表され得る。
【0080】
ある実施形態において、摂食状態における対象への本開示のASD又は医薬組成物の投与は、絶食状態における対象への該医薬組成物の投与によって得ることができるニロチニブの血漿AUC0-12hよりも、低いニロチニブの血漿AUC0-12hをもたらすことができる。ある実施形態において、摂食状態における対象への本開示のASD又は医薬組成物の投与は、絶食状態における対象への該医薬組成物の投与によって得ることができるニロチニブの血漿AUC0-12hの25%以内、又は20%以内のニロチニブの血漿AUC0-12hをもたらすことができる。血漿AUC0-12hは、個々の対象についてのものでも、多くの対象からの幾何平均でもよい。
ある実施形態において、摂食状態における対象への本開示のASD又は医薬組成物の投与は、絶食状態における対象への該医薬組成物の投与によって得ることができるニロチニブの血漿AUC0-24hよりも、低いニロチニブの血漿AUC0-24hをもたらすことができる。ある実施形態において、摂食状態における対象への本開示のASD又は医薬組成物の投与は、絶食状態における対象への該医薬組成物の投与によって得ることができるニロチニブの血漿AUC0-24hの50%以内、又は40%以内、又は35%以内、又は30%以内、又は25%以内、又は20%以内、又は15%以内、又は10%以内のニロチニブの血漿AUC0-24hをもたらすことができる。血漿AUC0-24hは、個々の対象についてのものでも、多くの対象からの幾何平均でもよい。
【0081】
ある実施形態において、摂食状態における対象への本開示のASD又は医薬組成物の投与は、絶食状態における対象への該医薬組成物の投与によって得ることができるニロチニブの血漿AUC0-lastよりも、低いニロチニブの血漿AUC0-lastをもたらすことができる。ある実施形態において、摂食状態における対象への本開示のASD又は医薬組成物の投与は、絶食状態における対象への該医薬組成物の投与によって得ることができるニロチニブの血漿AUC0-lastの、50%以内、又は40%以内、又は35%以内、又は30%以内、又は25%以内、又は20%以内、又は15%以内、又は10%以内のニロチニブの血漿AUC0-lastをもたらすことができる。血漿AUC0-lastは、個々の対象についてのものでも、多くの対象からの幾何平均でもよい。
ある実施形態において、摂食状態における対象への本開示のASD又は医薬組成物の投与は、絶食状態における対象への該医薬組成物の投与によって得ることができるニロチニブの血漿AUC0-infよりも、低いニロチニブの血漿AUC0-infをもたらすことができる。ある実施形態において、摂食状態における対象への本開示のASD又は医薬組成物の投与は、絶食状態における対象への該医薬組成物の投与によって得ることができるニロチニブの血漿AUC0-infの、50%以内、又は40%以内、又は35%以内、又は30%以内、又は25%以内、又は20%以内、又は15%以内、又は10%以内のニロチニブの血漿AUC0-infをもたらすことができる。血漿AUC0-infは、個々の対象についてのものでも、多くの対象からの幾何平均でもよい。
【0082】
いくつかの実施形態について、摂食状態における対象及び絶食状態における対象への本開示のASD又は医薬組成物の投与は、50%未満、又は30%未満、又は25%未満、又は20%未満、又は15%未満、又は10%未満、又は5%未満の、摂食状態と絶食状態との間のニロチニブの血漿Cmaxにおける相対的な差異をもたらすことができる。ある実施形態において、摂食状態における対象への本開示のASD又は医薬組成物の投与は、絶食状態における対象への本開示のASD又は医薬組成物の投与によって得ることができるニロチニブのCmaxよりも、低いニロチニブの血漿Cmaxをもたらすことができる。Cmaxは、個々の対象又は代わりに適切な数の対象(n>1)に対して決定することができる。データがプールされた多くの対象を比較する場合、Cmaxは、従来の薬物動態統計の分析及び方法に従って、集団幾何平均として表され得る。
さらに他の実施形態において、摂食状態における対象へのASD又は医薬組成物の投与は、絶食状態における対象への医薬組成物の投与により得られるニロチニブの曝露と同様の曝露を提供する。曝露は、例えば、AUC0-12h、AUC0-24h、AUC0-last、又はAUC0-infと表され得、曝露は、個々の対象についてのものでも、多くの対象からの幾何平均でもよい。
【0083】
いくつかの実施形態において、摂食状態における対象へのASD又は医薬組成物の投与は、絶食状態における対象へのASD又は医薬組成物の投与により得られるニロチニブの血漿Cmaxと同様のニロチニブの血漿Cmaxを提供する。血漿Cmaxは、個々の対象についてのものでも、多くの対象からの幾何平均でもよい。
本明細書に使用されているように、この文脈において、「同様の」曝露は、25%未満、又は20%未満、又は15%未満、又は10%未満、又は5%未満の、摂食状態と絶食状態との間のニロチニブの血漿曝露における相対的な差異を意味し;「同様の」Cmaxは、同様に、25%未満、又は20%未満、又は15%未満、又は10%未満、又は5%未満の、摂食状態と絶食状態との間のニロチニブの血漿Cmaxにおける相対的な差異を意味する(記載されている各%は、絶対値と理解される。すなわち、「20%未満」は、相対的な差異Fが-20%<F<+20%の範囲に入ることを意味する)。
いくつかの実施形態において、本開示の医薬組成物は、絶食状態における健康なヒト対象への40mg~80mgの投与量のニロチニブの投与により得られる501ng/mL~621ng/mLのニロチニブの血漿Cmaxを提供することができ、摂食状態における健康なヒト対象への40mg~80mgの投与量のニロチニブの投与により得られる456ng/mL~525ng/mLのニロチニブの血漿Cmaxを提供することができる。
【0084】
いくつかの実施形態において、本開示の医薬組成物は、絶食状態における健康なヒト対象への40mg~80mgの投与量のニロチニブの投与により得られる3790ng・h/mL~4820ng・h/mLのニロチニブの血漿AUC0-12hを提供することができ、摂食状態における健康なヒト対象への40mg~80mgの投与量のニロチニブの投与により得られる3770ng・h/mL~4320ng・h/mLのニロチニブの血漿AUC0-12hを提供することができる。
いくつかの実施形態において、本開示の医薬組成物は、絶食状態における健康なヒト対象への40mg~80mgの投与量のニロチニブの投与により得られる5590ng・h/mL~7340ng・h/mLのニロチニブの血漿AUC0-24hを提供ことができ、摂食状態における健康なヒト対象への40mg~80mgの投与量のニロチニブの投与により得られる6310ng・h/mL~7130ng・h/mLのニロチニブの血漿AUC0-24hを提供することができる。
いくつかの実施形態において、本開示の医薬組成物は、絶食状態における健康なヒト対象への40mg~80mgの投与量のニロチニブの投与により得られる7610ng・h/mL~10600ng・h/mLのニロチニブの血漿AUC0-lastを提供ことができ、摂食状態における健康なヒト対象への40mg~80mgの投与量のニロチニブの投与により得られる9490ng・h/mL~11000ng・h/mLのニロチニブの血漿AUC0-lastを提供することができる。
【0085】
いくつかの実施形態において、本開示の医薬組成物は、絶食状態における健康なヒト対象への40mg~80mgの投与量のニロチニブの投与により得られる7760ng・h/mL~11000ng・h/mLのニロチニブの血漿AUC0-infを提供ことができ、摂食状態における健康なヒト対象への40mg~80mgの投与量のニロチニブの投与により得られる9840ng・h/mL~11300ng・h/mLのニロチニブの血漿AUC0-infを提供することができる。
本明細書において使用されているように、句「食物非感受性組成物」は、患者又は対象の摂食又は絶食状態に関係なく投与することができる本開示の医薬組成物を示す。食物非感受性組成物は、患者又は対象が最近食事を摂取したか、患者又は対象が医薬組成物の投与の直後に食事を摂取するか、又は患者又は対象が投与の時点において絶食状態で、かつ投与後のしばらくの間に絶食状態のままであったか、にかかわらず、患者又は対象に治療上適切な曝露を提供する。
【0086】
減少した投与量で投与する方法
加えて、本開示のASD又は医薬組成物の投与は、ASD又は医薬組成物の投与により得られる薬物動態プロファイルが、従来のニロチニブの即時放出性組成物の投与により得られる薬物動態プロファイルと比較する方法によって特徴付けることができる。
例えば、いくつかの実施形態において、本開示のASD又は医薬組成物の投与は、従来のニロチニブの即時放出性製剤を経口投与することにより得られる薬物動態プロファイルに匹敵するが、何分の一かの投与量で投与される薬物動態プロファイルをもたらすことができる。この比較について、タシグナが絶食状態においてのみ投与されるべきであるため、投与は、絶食状態において行われなければならない。
従来のニロチニブの即時放出性組成物を投与する場合の必要な投与量と比較して、何分の一かの投与量で投与することができる本開示の実施形態について、本発明の製剤は、対応する従来のニロチニブの即時放出性組成物よりも本質的に安全であると推論することができる。必要な投与量を減少しつつ、患者に有効曝露を提供することにより、過剰な曝露のリスクを低減する。ニロチニブへの過剰な曝露は、現在、タシグナのラベル上の「ブラックボックス警告」の対象となる、上記で検討したQT延長のリスクと関連する。過剰な曝露のリスクは、ニロチニブで治療される患者集団の全体に影響を与える。これを踏まえて、QT延長が、タシグナ患者の300人におおよそ1人に突然心臓死を引き起こすことが報告されているため、減少した投与量は、患者集団における突然死のリスクを本質的に低減させる。
【0087】
過剰な曝露の全般的なリスクを減少することに加えて、本開示の製剤は、望ましくなく高いCmaxと関連するリスクを制限し得る。QT延長などのあるリスクについて、Cmaxは、実際に関連性がより高い薬物動態パラメーターであり得る。絶食状態と摂食状態との間などのCmaxのかなりの増加は、非常に望ましくなく、安全ではないおそれもある。いくつかの実施形態において、本開示の製剤により、望ましくなく高いCmaxを経験し得る患者の可能性を減少又は排除する。
それぞれの薬物動態プロファイルに関して、「匹敵する」とは、対象への本開示のASD又は医薬組成物の投与が、ニロチニブ結晶の即時放出性製剤を、そのラベルの指示に従って投与した同じ対象への投与と比較して、80%~125%の生物学的同等性基準内である、対象の血漿におけるAUC0-t(例えば、AUC0-24h又はAUC0-inf)又はCmaxを提供し得ることを意味する。
本明細書において使用されているように、「何分の一かの投与量」は、本開示のASD又は医薬組成物中のニロチニブの用量が、ニロチニブ結晶の即時放出性製剤のラベルの指示投与量(labeled dosage)と比較して、80%減、又は75%減、又は70%減、又は65%減、又は60%減、又は55%減、又は50%減、又は45%減、又は40%減、又は35%減、又は30%減、又は25%減、又は20%減であり得ることを意味することができる。
【0088】
単なる例として、おおよそ50mgのニロチニブ遊離塩基を含む本開示の医薬組成物は、200mgのニロチニブを含むと表示されているニロチニブ結晶の即時放出性製剤(例えば、200mgタシグナIRカプセル)を経口投与することにより得られる薬物動態プロファイルに匹敵する薬物動態プロファイルを提供し得る。この例において、本発明の医薬組成物中のニロチニブの用量は、ニロチニブ結晶の即時放出性製剤の投与量よりも75%少ない。
いくつかの実施形態において、本開示のASD又は医薬組成物中のニロチニブの用量は、ニロチニブ結晶の即時放出性製剤のラベルの指示投与量と比較して、80%減、又は75%減、又は70%減、又は65%減、又は60%減、又は55%減、又は50%減である。
【0089】
いくつかの実施形態について、絶食状態における対象への本開示のASD又は医薬組成物の投与は、絶食状態における対象へのニロチニブ結晶の即時放出性製剤の投与によって得ることができるニロチニブの血漿曝露の、何分の一かの投与量で、20%以内、又は15%以内、又は10%以内のニロチニブの血漿曝露をもたらすことができる。ある実施形態において、絶食状態における対象への本開示のASD又は医薬組成物の投与は、絶食状態における対象へのニロチニブ結晶の即時放出性製剤の投与によって得ることができるニロチニブの血漿曝露よりも、何分の一かの投与量で、多いニロチニブの血漿曝露をもたらすことができる。曝露は、例えば、AUC0-12h、AUC0-24h、AUC0-last、又はAUC0-infとして表され得る。曝露は、個々の対象についてのものでも、多くの対象からの幾何平均でもよい。
いくつかの実施形態について、絶食状態における対象への本開示のASD又は医薬組成物の投与は、絶食状態における対象へのニロチニブ結晶の即時放出性製剤の投与によって得ることができるニロチニブの血漿Cmaxの20%以内、又は15%以内、又は10%以内のニロチニブの血漿Cmaxを何分の一かの投与量でもたらすことができる。ある実施形態において、絶食状態における対象への本開示のASD又は医薬組成物の投与は、絶食状態における対象へのニロチニブ結晶の即時放出性製剤の投与によって得ることができるニロチニブの血漿Cmaxよりも、多いニロチニブの血漿Cmaxを何分の一かの投与量でもたらすことができる。Cmaxは、個々の対象についてのものでも、多くの対象からの幾何平均でもよい。
【0090】
いくつの実施形態の実施において、ニロチニブ結晶の即時放出性製剤の投与量は、本開示の医薬組成物に含まれるニロチニブの用量の倍数である。いくつかの実施形態において、ニロチニブ結晶の即時放出性製剤は、本開示の医薬組成物の少なくとも2倍量、少なくとも3倍量、少なくとも4倍量、又は少なくとも5倍量のニロチニブを含み得る。いくつかの実施形態において、ニロチニブ結晶の即時放出性製剤は、本開示の医薬組成物の2倍量~5倍量のニロチニブを含み得る。いくつかの実施形態において、ニロチニブ結晶の即時放出性製剤は、本開示の医薬組成物の2倍量~4倍量のニロチニブを含み得る。
いくつかの実施形態において、絶食状態における対象への本開示のASD又は医薬組成物の投与は、ASD又は医薬組成物の4倍量、又は3倍量、又は2倍量のニロチニブを有するニロチニブ結晶の即時放出性製剤の投与によって得ることができるニロチニブの血漿AUC0-12hよりも、大きなニロチニブの血漿AUC0-12hをもたらすことができる。血漿AUC0-12hは、個々の対象についてのものでも、多くの対象からの幾何平均でもよい。
いくつかの実施形態において、絶食状態における対象への本開示のASD又は医薬組成物の投与は、ASD又は医薬組成物の4倍量、又は3倍量、又は2倍量のニロチニブを有するニロチニブ結晶の即時放出性製剤の投与によって得ることができるニロチニブの血漿AUC0-12hの、20%以内、又は15%以内のニロチニブの血漿AUC0-12hをもたらすことができる。血漿AUC0-12hは、個々の対象についてのものでも、多くの対象からの幾何平均でもよい。
【0091】
いくつかの実施形態において、絶食状態における対象への本開示のASD又は医薬組成物の投与は、ASD又は医薬組成物の4倍量、又は3倍量、又は2倍量のニロチニブを有するニロチニブ結晶の即時放出性製剤の投与によって得ることができるニロチニブの血漿AUC0-24hよりも、大きなニロチニブの血漿AUC0-24hをもたらすことができる。血漿AUC0-24hは、個々の対象についてのものでも、多くの対象からの幾何平均でもよい。
いくつかの実施形態において、絶食状態における対象への本開示のASD又は医薬組成物の投与は、ASD又は医薬組成物の4倍量、又は3倍量、又は2倍量のニロチニブを有するニロチニブ結晶の即時放出性製剤の投与によって得ることができるニロチニブの血漿AUC0-24hの、20%以内、又は15%以内のニロチニブの血漿AUC0-24hをもたらすことができる。血漿AUC0-24hは、個々の対象についてのものでも、多くの対象からの幾何平均でもよい。
いくつかの実施形態において、絶食状態における対象への本開示のASD又は医薬組成物の投与は、ASD又は医薬組成物の4倍量、又は3倍量、又は2倍量のニロチニブを有するニロチニブ結晶の即時放出性製剤の投与によって得ることができるニロチニブの血漿AUC0-lastの、20%以内、又は15%以内のニロチニブの血漿AUC0-lastをもたらすことができる。血漿AUC0-lastは、個々の対象についてのものでも、多くの対象からの幾何平均でもよい。
【0092】
いくつかの実施形態において、絶食状態における対象への本開示のASD又は医薬組成物の投与は、ASD又は医薬組成物の4倍量、又は3倍量、又は2倍量のニロチニブを有するニロチニブ結晶の即時放出性製剤の投与によって得ることができるニロチニブの血漿AUC0-infの、25%以内、又は20%以内のニロチニブの血漿AUC0-infをもたらすことができる。血漿AUC0-infは、個々の対象についてのものでも、多くの対象からの幾何平均でもよい。
いくつかの実施形態において、絶食状態における対象への本開示のASD又は医薬組成物の投与は、ASD又は医薬組成物の4倍量、又は3倍量、又は2倍量のニロチニブを有するニロチニブ結晶の即時放出性製剤の投与によって得ることができるニロチニブの血漿Cmaxよりも、多いニロチニブの血漿Cmaxをもたらすことができる。血漿Cmaxは、個々の対象についてのものでも、多くの対象からの幾何平均でもよい。
いくつかの実施形態において、絶食状態における対象への本開示のASD又は医薬組成物の投与は、ASD又は医薬組成物の4倍量、又は3倍量、又は2倍量のニロチニブを有するニロチニブ結晶の即時放出性製剤の投与によって得ることができるニロチニブの血漿Cmaxの、25%以内、又は20%以内のニロチニブの血漿Cmaxをもたらすことができる。血漿Cmaxは、個々の対象についてのものでも、多くの対象からの幾何平均でもよい。
【0093】
さらに他の実施形態において、絶食状態における対象への本開示のASD又は医薬組成物の投与は、何分の一かの投与量で、ニロチニブ結晶の即時放出性製剤の投与により得られる曝露と同様のニロチニブの曝露を提供する。曝露は、例えば、AUC0-12h、AUC0-24h、AUC0-last、又はAUC0-infとして表され得る。曝露は、個々の対象についてのものでも、多くの対象からの幾何平均でもよい。
さらに他の実施形態において、絶食状態における対象への本開示のASD又は医薬組成物の投与は、何分の一かの投与量で、ニロチニブ結晶の即時放出性製剤の投与により得られるニロチニブの血漿Cmaxと同様のニロチニブの血漿Cmaxを提供する。血漿Cmaxは、個々の対象についてのものでも、多くの対象からの幾何平均でもよい。
さらに他の実施形態において、摂食状態における対象への本開示のASD又は医薬組成物の投与は、何分の一かの投与量で、絶食状態における対象へのニロチニブ結晶の即時放出性製剤の投与により得られる曝露と同様のニロチニブの曝露を提供する。曝露は、例えば、AUC0-12h、AUC0-24h、AUC0-last、又はAUC0-infとして表され得る。曝露は、個々の対象についてのものでも、多くの対象からの幾何平均でもよい。
【0094】
さらに他の実施形態において、摂食状態における対象への本開示のASD又は医薬組成物の投与は、何分の一かの投与量で、絶食状態における対象へのニロチニブ結晶の即時放出性製剤の投与により得られたニロチニブの血漿Cmaxと同様のニロチニブの血漿Cmaxを提供する。血漿Cmaxは、個々の対象についてのものでも、多くの対象からの幾何平均でもよい。
本明細書に使用されているように、この文脈において、「同様の」曝露は、25%未満、又は20%未満、又は15%未満、又は10%未満、又は5%未満の、医薬組成物の投与とニロチニブ結晶の即時放出性製剤の投与との間の血漿曝露における相対的な差異を意味し;「同様のCmax」は、25%未満、又は20%未満、又は15%未満、又は10%未満、又は5%未満の、医薬組成物の投与とニロチニブ結晶の即時放出性製剤の投与との間のニロチニブの血漿Cmaxにおける相対的な差異を意味する(記載されている各%は、絶対値と理解される。すなわち、「20%未満」は、相対的な差異Fが-20%<F<+20%の範囲に入ることを意味する)。
【0095】
参照組成物に対する有効な生物学的同等性
別の実施形態において、本開示は、絶食状態における健康なヒト対象に投与する場合、適切な参照組成物と効果的に生物学的同等であるが、参照組成物と比較して、有効成分のモル投与量がより少ない医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態において、参照組成物は、ニロチニブ一塩酸塩一水和物を含む従来のニロチニブの即時放出性組成物である。いくつかの実施形態において、参照組成物は、タシグナIRカプセルである。
生物学的同等性の研究に関して、FDAは、「Guidance for Industry: Bioequivalence Studies with Pharmacokinetic Endpoints for Drugs Submitted Under an ANDA(ガイドライン草案)」(CDER、FDA、2013年12月)を公開しており、そのすべての内容は、参照として本明細書に含まれる。生物学的同等性を決定するための統計方法に関して、FDAは、「Guidance for Industry: Statistical Approaches to Establishing Bioequivalence」(CDER、FDA、2001年1月)を公開しており、そのすべての内容は、参照として本明細書に含まれる。
FDAのガイドラインによると、医薬品(「被験組成物」)は、被験組成物からの原薬(すなわち、有効成分)の吸収の速度及び程度が、同様の実験条件下で、参照組成物を使用して投与する場合の原薬の吸収の速度及び程度と有意な差を示さない場合、参照医薬品(「参照組成物」)と生物学的同等である。ニロチニブを含む、経口で生物学的に利用可能な多くの原薬について、生物学的同等性を評価するための好ましい方法は、被験組成物及び参照組成物を経口投与した時に、達成される薬物動態プロファイルを評価することによる。
【0096】
生物学的同等性の評価は、薬物動態エンドポイント、例えば、吸収の速度及び程度をそれぞれ反映するCmax及びAUCにしばしば依拠する。概して、適切な数の対象からのプールされたデータを使用し、対数変換されたデータに基づく、被験組成物と参照組成物との間の集団幾何平均の比についての90%信頼区間(「CI」)が、AUC0-inf(適切な場合、又はAUC0-t)及びCmaxの両方についての同等性の限界の80%~125%に入った場合、被験組成物と参照組成物との生物学的同等性を確立する。一方、対数変換されたデータに基づく、被験組成物と参照組成物との間の集団幾何平均の比についての90%CIが、AUC0-inf(適切な場合、又はAUC0-t)又はCmaxについての同等性の限界の80%~125%に入らない場合、生物学的同等性を確立しない。
上記で検討したように、薬物動態プロファイルは、目的の医薬組成物の投与後の有効成分(又は好適な代替物、例えば、代謝物)の存在について、対象の血漿を経時的にモニターすることにより評価する。ニロチニブ塩酸塩一水和物組成物に関するFDAガイドライン草案によると、目的の血漿分析物は、ニロチニブである。ニロチニブはまた、本開示の医薬組成物についての適切な血漿分析物である。
参照組成物、被験組成物、及び原薬の性質に応じて、必須の表示は、単回投与又は複数回投与の研究を必要とする場合がある。ニロチニブ塩酸塩一水和物の経口カプセル剤(200mg)に関連する生物学的同等性の研究に関する最新のFDAガイダンス文書(ガイドライン草案、2014年7月)には、絶食条件下で、単回投与で、2方向(two-way)クロスオーバー研究が推奨されている。
【0097】
FDAのガイドラインによると、被験組成物は、参照組成物と同じモル投与量の有効成分を投与する場合にのみ生物学的同等であり得る。しかしながら、上記で検討したように、本開示のASD又は医薬組成物の投与は、従来のニロチニブの即時放出性製剤を経口投与することにより得られる薬物動態プロファイルに匹敵する薬物動態プロファイルを何分の一かの投与量でもたらすことができる。このような実施形態について、より適切な比較は、被験組成物を、選択された参照組成物の対応するモル投与量の何分の一かで投与する場合の相対的な生物学的同等性を評価することである。本明細書において使用されているように、句「有効に生物学的同等である」及び「有効な生物学的同等性」を使用し、被験組成物及び参照組成物が、異なるモル投与量で、記載されている生物学的同等性基準を満たす状況を指す。
ある実施形態において、本開示は、経口投与剤形で100mgニロチニブを含む医薬組成物を提供する。ここで、絶食状態における健康なヒト対象に該経口投与剤形を投与したとき、200mgニロチニブ一塩酸塩一水和物を含む従来のニロチニブの即時放出性組成物である、参照組成物の投与後に達成されるAUC0-inf及びCmaxと比較して、80%~125%の生物学的同等性基準内のAUC0-inf及びCmaxを達成する。
別の実施形態において、本開示は、ニロチニブと1種以上のポリマーとを含む非晶質固体分散体を含む医薬組成物を提供する。該組成物は、100mgニロチニブを含む経口投与剤形であり、絶食状態における健康なヒト対象に経口投与剤形を投与したとき、200mgニロチニブ一塩酸塩一水和物を含む従来のニロチニブの即時放出性組成物である、参照組成物の投与後に達成されるAUC0-inf及びCmaxと比較して、80%~125%の生物学的同等性基準内のAUC0-inf及びCmaxを達成する。
【0098】
別の実施形態において、本開示は、経口投与剤形で100mgニロチニブを含む医薬組成物を提供し、医薬組成物は、絶食条件下で、200mgニロチニブ一塩酸塩一水和物を含む従来のニロチニブの即時放出性組成物である参照組成物と有効に生物学的同等であり、有効な生物学的同等性は、(a)80%~125%のAUCについての90%信頼区間、及び(b)80%~125%のCmaxについての90%信頼区間により確立される。
別の実施形態において、本開示は、絶食状態における健康なヒト対象に適切な参照組成物を投与した場合と比較して、絶食状態又は摂食状態における健康なヒト対象に、参照組成物と比較して、より少ないモル投与量で有効成分を投与した場合において、1以上の生物学的同等性基準を満たす医薬組成物を提供する。
上述した実施形態のいずれかにおいて、AUCは、必要に応じて、例えば、AUC0-24h、AUC0-last、又はAUC0-infであり得る。
いくつかの実施形態において、参照組成物は、ニロチニブ一塩酸塩一水和物を含む従来のニロチニブの即時放出性組成物である。いくつかの実施形態において、参照組成物は、ニロチニブ一塩酸塩一水和物結晶を含む。いくつかの実施形態において、参照組成物は、カプセル剤形である。いくつかの実施形態において、参照組成物は、タシグナIRカプセルである。
【0099】
胃酸減少剤と併用する方法
本開示の他の実施形態は、本開示のニロチニブASD及び医薬組成物と胃酸減少剤との使用に関する。
ある態様において、本開示は、ニロチニブを胃酸減少剤と一緒に送達する必要がある患者に、ニロチニブを胃酸減少剤と一緒に送達する方法に関し、該方法は、患者に(a)治療上有効量の本開示の医薬組成物、及び(b)治療上有効量の胃酸減少剤を共に投与する工程を含む。
別の実施形態において、本開示は、増殖性障害を有し、かつ、胃酸の過剰産生に起因する状態又は胃酸によって悪化している状態を患っている患者を治療する方法に関し、該方法は、患者に(a)治療上有効量の本開示の医薬組成物、及び(b)治療上有効量の胃酸減少剤を共に投与する工程を含む。
さらに別の態様において、本開示は、患者が胃酸減少剤を同時に投与されているか否かに関係なく、治療上有効量のニロチニブを患者に送達する方法に関し、該方法は、治療上有効量の本開示の医薬組成物を患者に投与する工程を含む。
本明細書における「胃酸減少剤」は、対象の胃内の酸の量を著しく減少するように作用するあらゆる薬剤を指す。酸減少は、酸分泌の抑止若しくは阻害に起因し、又は胃酸の中和によることができる。胃酸減少剤の例としては、プロトンポンプ阻害薬、ヒスタミン-2受容体拮抗薬(又はH2拮抗薬)、及び制酸薬が挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
プロトンポンプ阻害薬は、胃酸を分泌する上皮細胞である胃壁細胞の水素/カリウムアデノシントリホスファターゼ酵素(すなわち、胃プロトンポンプ)を阻害することにより、胃酸の産生を減少させる。プロトンポンプ阻害薬の例としては、ラベプラゾール、エソメプラゾール、ランソプラゾール、オメプラゾール、パントプラゾール、及びデクスランソプラゾールが挙げられるが、これらに限定されない。
2拮抗薬は、ヒスタミンが胃壁細胞のH2受容体に結合するのを阻害することにより、胃壁細胞による正常な酸分泌及び食事により刺激される酸分泌の両方を抑える。H2拮抗薬の例としては、ファモチジン、シメチジン、ニザチジン、及びラニチジンが挙げられるが、これらに限定されない。
制酸薬は、胃酸を化学的に中和するアルカリイオンを含む。制酸薬の例としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、クエン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、及び三ケイ酸マグネシウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
胃酸減少剤に関する技術分野において知られている服薬情報に従って、又は医師の指示に従って、胃酸減少剤を投与し得る。「治療上有効量」の胃酸減少剤は、胃酸減少剤に関する技術分野において知られている服薬情報に記載されている量、又は医師の指示に従う量であり得る。「標準投与量」は、製品のラベルの指示に従う投与量である。特に、標準投与量は、店頭で入手可能な胃酸減少剤(すなわち、医師の指示なしで)、例えば、ほとんどの制酸薬、いくつかのH2拮抗薬、及びいくつかのプロトンポンプ阻害薬に適している。
本明細書において使用されているように、胃酸の過剰産生に起因する状態又は胃酸によって悪化している状態は、対象の胃内の酸の量又は酸度を減少することにより治療することができるあらゆる状態であってもよい。このような状態の例としては、ディスペプシア(すなわち、消化不良)、胃食道逆流症、十二指腸潰瘍又は胃潰瘍、びらん性食道炎、ストレス性胃炎、バレット食道、及びガストリノーマが挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
本明細書において使用されているように、「併用、共に投与(co-administration)」(又は「併用される、共に投与される」)は、1種の治療剤の投与が、もう1種の治療剤の吸収又は効能に影響を及ぼす可能性があるか否かについて、考慮しなければならないような、適切な期間内(例えば、1日、又は12時間、又は8時間、又は6時間など)の2種以上の治療剤の投与を指す。このような投与は、2種以上の状態を同時に治療するために行われ得、例えば、単なる例として、患者は、治療剤としてニロチニブで、本明細書に記載の増殖性障害を治療する必要があると同時に、胃酸減少剤(例えば、プロトンポンプ阻害薬)などの第2の治療剤で、酸逆流又は潰瘍などの別の状態の治療も受けることができる。両治療剤が少なくとも1日1回で投薬されるため、該両治療剤は「併用され、共に投与され」、一方の治療剤の投与が他方の治療剤の投与の吸収が効能に影響を与えるかどうかを考慮する必要がある。
本開示の文脈において、句「併用(共に投与)することができる」は、ニロチニブの曝露の有害な減少なしに、2種(又はそれ以上)の目的の治療剤を併用することができることを意味する。「有害な減少なしに」は、実現される曝露が、胃酸減少剤を併用しない場合に実現される曝露に匹敵することを示す。実現される曝露のあらゆる差異は、実質的ではなく、及び/又は治療的に重要ではない。これに対して、曝露の有害な減少が実現される場合、併用は避けるべきである。「有害な減少」は、実現される曝露の実質的かつ重要な減少を意味する。例として、実現される曝露が、治療量以下の曝露として認識されるレベル以下である場合、併用は、曝露の有害な減少をもたらすであろう。
【0103】
本明細書において使用されているように、句「胃酸非感受性組成物」は、患者又は対象の胃のpHに関係なく投与することができる本開示の医薬組成物を示す。胃酸非感受性組成物は、胃のpH値の範囲にわたって、患者又は対象へ治療上適切な曝露を提供する。したがって、胃酸非感受性組成物は、患者又は対象が胃酸減少剤を服用したか否か、又は患者が、胃のpHの上昇を引き起こす状態を有するか否か(以下に更に記載されているように)に関係なく、投与することができる。
本開示の実施形態は、本開示のニロチニブASD又は医薬組成物の直前に、本開示のニロチニブASD又は医薬組成物と同時に、又は本開示のニロチニブASD又は医薬組成物の直後に、胃酸減少剤を投与することに関する。本明細書において使用されている用語「直前」は、本開示の医薬組成物の投与前の10時間以内、又は8時間以内、又は6時間以内、又は5時間以内、又は4時間以内、又は3時間以内、又は2時間以内、又は1時間以内、又は45分以内に、又は30分以内に、又は15分以内に、胃酸減少剤を対象に投与することを意味し得る。本明細書において使用されている用語「同時(concurrently)」又は「併用して(concomitantly)」は、該医薬組成物の投与の30分以内に、又は20分以内に、又は15分以内に、又は10分以内に、又は5分以内に、又は4分以内に、又は3分以内に、又は2分以内に、又は1分以内に、又は同時に(simultaneously)、胃酸減少剤を対象に投与することを意味し得る本明細書において使用されている用語「直後」は、該医薬組成物の投与後の6時間以内に、又は5時間以内に、又は4時間以内に、又は3時間以内に、又は2時間以内に、又は1時間以内に、又は45分以内に、又は30分以内に、又は15分以内に、胃酸減少剤を対象に投与することを意味する。
【0104】
いくつかの実施形態において、胃酸減少剤を同時に、直前に、若しくは直後に投与した対象への本開示のASD又は医薬組成物の投与は、胃酸減少剤を同時に、直前に、若しくは直後に投与しなかった対象へのASD又は医薬組成物の投与により得られるニロチニブの薬物動態プロファイルと同様の薬物動態プロファイルを示す。ある実施形態において、胃酸減少剤を同時に、直前に、若しくは直後に投与した対象へのASD又は医薬組成物の単回投与は、胃酸減少剤を同時に、直前に、若しくは直後に投与しなかった対象へのASD又は医薬組成物の投与により得られるニロチニブのAUCの50%以内、又は40%以内、又は30%以内のニロチニブのAUCをもたらす。ある実施形態において、AUCは、AUC0-24hである。他の実施形態において、AUCは、AUC0-infである。
本開示の態様は、さらに本開示の医薬組成物及び胃酸減少剤の投与を含む治療計画に関する。このような治療計画は、増殖性障害の治療を必要とする患者における増殖性障害を治療するためのものであるか、又は増殖性障害及び胃酸の過剰産生に起因する状態若しくは胃酸によって悪化している状態の治療を必要とする患者における増殖性障害及び胃酸の過剰産生に起因する状態若しくは胃酸によって悪化している状態を治療するためのものであり得る。
【0105】
いくつかの実施形態において、治療計画は、(a)治療上有効量のプロトンポンプ阻害薬を含む第1用量を患者に投与する工程と;(b)第1用量後の2時間以内に、本開示の医薬組成物を含む第2用量を患者に投与する工程とを含み得る。ある実施形態において、治療計画は、(a)治療上有効量のプロトンポンプ阻害薬を含む第1用量を患者に投与する工程と;(b)本開示の医薬組成物を含む第2用量を患者に同時に投与する工程とを含み得る。
いくつかの実施形態において、治療計画は、(a)治療上有効量のH2拮抗薬を含む第1用量を患者に投与する工程と;(b)第1用量後の10時間以内に、本開示の医薬組成物を含む第2用量を患者に投与する工程とを含み得る。いくつかの実施形態において、治療計画は、(a)治療上有効量の本開示の医薬組成物を含む第1用量を患者に投与する工程と;(b)第1用量後の2時間以内に、治療上有効量のH2拮抗薬を含む第2用量を患者に投与する工程とを含み得る。
いくつかの実施形態において、治療計画は、(a)治療上有効量の制酸薬を含む第1用量を患者に投与する工程と;(b)第1用量後の2時間以内に、本開示の医薬組成物を含む第2用量を患者に投与する工程とを含み得る。いくつかの実施形態において、治療計画は、(a)本開示の医薬組成物を含む第1用量を患者に投与する工程と;(b)第1用量後の2時間以内に治療上有効量の制酸薬を含む第2用量を患者に投与する工程とを含み得る。
【0106】
胃のpHが上昇している患者を治療する方法
本開示の医薬組成物は、胃のpHが上昇している対象又は患者に好適に投与し得る。
本開示のある態様は、胃のpHが上昇している対象又は患者にニロチニブを送達するための、本開示のニロチニブASD又は医薬組成物の使用に関する。いくつかの実施形態は、胃のpHが上昇している対象にニロチニブを送達する方法に関し、該方法は、本開示のASD又は医薬組成物を対象又は患者に投与する工程を含む。いくつかの実施形態は、胃のpHが上昇している対象又は患者にニロチニブを送達するための、本開示のニロチニブASD又は医薬組成物の使用に関し、該使用は、ASD又は医薬組成物を対象又は患者に投与することを含む。いくつかの実施形態は、胃のpHが上昇している対象又は患者にニロチニブを送達するのに使用するための本開示のニロチニブASD又は医薬組成物に関し、該使用は、ASD又は医薬組成物を対象又は患者に投与することを含む。いくつかの実施形態は、胃のpHが上昇している対象又は患者にニロチニブを送達するための医薬品の製造における本開示のニロチニブASD又は医薬組成物の使用に関し、該送達は、ASD又は医薬組成物を対象又は患者に投与することを含む。
【0107】
本明細書において使用されているように、「胃のpH」は、対象又は患者の胃の内部pHを指す。絶食条件下で測定された胃のpHが3.5を超えるか、又は4を超えるか、又は5を超える場合、胃のpHは、「上昇している」と考えることができる。胃のpHは、標準法を使用して評価することができ、又は胃のpHが上昇していることは、例えば、胃酸減少剤による治療、若しくは測定可能な上昇している胃のpHを通常引き起こす特定された状態の既知の効果から推測することができる。
本開示の実施において、対象又は患者の胃のpHは、異なる原因により上昇し得、異なる原因としては、胃酸減少剤を該対象又は患者に投与したこと、又は該対象又は患者が、胃のpHの上昇を引き起こす状態を有し得ることが挙げられるが、これらに限定されない。胃のpHの上昇は、例えば、低酸症若しくは無酸症、又はヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)菌による感染症などの状態によって生じる可能性がある。
本明細書において使用されているように、胃のpHに関し、句「慢性的に上昇している」は、対象又は患者が、持続的又は反復的に、胃のpHの上昇を経験することを意味する。慢性的に上昇している胃のpHは、例えば、低酸症若しくは無酸症、又はヘリコバクター・ピロリ菌による感染症などの状態によって生じる可能性がある。
【0108】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、患者の胃のpHが上昇している状態(慢性的に上昇している状態を含む)を特定する工程を含み得る。このような工程は、胃のpHが上昇していることの根本原因を診断する工程を含み得る。患者の低酸症若しくは無酸症を診断する方法、又はヘリコバクター・ピロリ菌の感染症を検査するための方法は、医療現場において知られている。低酸症又は無酸症は、例えば、異なる条件下で胃酸のレベルを測定することにより診断することができる。ヘリコバクター・ピロリ菌の感染症は、例えば、適切な血液検査、便検査、呼気検査、又は内視鏡(scope)検査により診断することができる。
いくつかの実施形態において、ニロチニブASD又は医薬組成物は、胃のpHに関係なく、対象又は患者に投与し得る。したがって、対象又は患者の胃のpHが正常であるか否か(すなわち、3.5未満、一般的には1.5~3の範囲内の胃のpH)、又は本明細書に記載のように対象又は患者の胃のpHが上昇しているか否かにかかわらず、ニロチニブASD又は医薬組成物を対象又は患者に投与し得る。これは、例えば、対象又は患者の胃のpHが、胃酸減少剤の不規則若しくは一時的な使用によって変動する場合、又は対象若しくは患者が低酸症を有する場合(該対象若しくは患者が、最近食事を摂取したか否かなどのファクターに応じて変動し得る胃のpHをもたらす)に有益である。
【0109】
いくつかの実施形態において、胃のpHが上昇している対象又は患者への本開示のASD又は医薬組成物の投与は、胃のpHが正常である対象又は患者への該ASD又は医薬組成物の投与により得られるニロチニブについての薬物動態プロファイルと同様の薬物動態プロファイルを示す。ある実施形態において、胃のpHが上昇している対象又は患者へのASD又は医薬組成物の単回投与は、胃のpHが正常である対象又は患者への該ASD又は医薬組成物の単回投与により得られるニロチニブのAUC0-t及び/又はCmaxの50%以内、又は40%以内、又は30%以内のニロチニブのAUC0-t(例えば、AUC0-24h、AUC0-last若しくはAUC0-inf)及び/又はCmaxをもたらす。ある実施形態において、AUC0-tは、AUC0-24hである。他の実施形態において、AUC0-tは、AUC0-infである。
ある実施形態において、胃のpHが上昇している対象又は患者における本開示のASD又は医薬組成物の投与は、胃のpHが正常である対象又は患者に投薬した従来のニロチニブの即時放出性組成物の投与と比較して、80%~125%の生物学的同等性基準内の対象又は患者の血漿におけるAUC0-t(例えば、AUC0-24h、AUC0-last又はAUC0-inf)及びCmaxを提供し得る。ある実施形態において、AUC0-tは、AUC0-24hである。他の実施形態において、AUC0-tは、AUC0-infである。
【0110】
本開示の実施において、ASD又は医薬組成物の投与は、標準的な即時放出性組成物と比較して、増強された曝露を提供することができる。いくつかの実施形態において、胃のpHが上昇している対象又は患者への本開示のASD又は医薬組成物の単回投与は、胃のpHが上昇している対象又は患者への従来のニロチニブの即時放出性組成物(例えば、タシグナ)の単回投与と比較して、より大きなAUC及び/又はCmaxを示す(各場合において、同一のモル量又は「表示量(label claim)」のニロチニブを投与することに理解されたい)。ある実施形態において、AUCは、AUC0-24hである。他の実施形態において、AUCは、AUC0-infである。ある実施形態において、胃のpHが上昇している対象又は患者へのASD又は医薬組成物の単回投与は、胃のpHが上昇している対象又は患者への従来のニロチニブの即時放出性組成物の投与により得られるニロチニブのAUC0-t及び/又はCmaxよりも少なくとも80%超、若しくは少なくとも100%超、若しくは少なくとも150%超、若しくは少なくとも200%超の、ニロチニブのAUC0-t及び/又はCmaxをもたらす。ある実施形態において、AUCは、AUC0-24hである。他の実施形態において、AUCは、AUC0-infである。
【0111】
さらに、本開示のある態様は、対象の胃のpHに関係なくニロチニブを対象に送達するための、本開示のニロチニブASD又は医薬組成物の使用に関する。いくつかの実施形態は、対象の胃のpHに関係なくニロチニブを対象に送達する方法に関し、該方法は、本開示のASD又は医薬組成物を対象に投与する工程を含む。いくつかの実施形態は、対象の胃のpHに関係なくニロチニブを対象に送達するための、本開示のニロチニブASD又は医薬組成物の使用に関し、該使用は、ASD又は医薬組成物を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態は、対象の胃のpHに関係なくニロチニブを対象に送達するのに使用するための本開示のニロチニブASD又は医薬組成物に関し、該使用は、ASD又は医薬組成物を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態は、対象の胃のpHに関係なくニロチニブを対象に送達するための医薬品の製造における本開示のニロチニブASD又は医薬組成物の使用に関し、該送達は、ASD又は医薬組成物を対象に投与することを含む。かかる実施形態によれば、対象の胃のpHが正常であるか否か、又は本明細書に記載のように対象の胃のpHが上昇しているか否かにかかわらず、ニロチニブASD又は医薬組成物を対象に投与し得る。
【0112】
ばらつきが改善した医薬組成物
本開示の医薬組成物は、いくつかの実施形態において、ばらつきがより少ないin vivo薬物動態性能を提供し得る。
本明細書において使用されているように、句「ばらつきが改善した組成物」は、従来のニロチニブの即時放出性製剤(例えば、タシグナ)を適切な1組の健康なヒト対象に投与した場合において観察される変動係数と比較して、同様の条件下で投与した場合において、1以上の薬物動態パラメーターに関してより低い変動係数を示す本開示の組成物を指す。この評価について、標準的な実務及び関連するFDAガイドラインに従って、研究が、生物学的同等性を示すのに十分な力を持つように、健康なヒト対象の組には、適切な数の対象が含まれるべきである。
【0113】
いくつかの実施形態において、ばらつきが改善した組成物は、標準的な市販のニロチニブの即時放出性組成物(例えば、タシグナ)を同様の条件下で投与した場合において観察される変動係数よりも30%低い、25%低い、20%低い、15%低い、10%低い、又は5%低い、少なくとも1つの薬物動態パラメーターに関する変動係数を提供する。薬物動態パラメーターは、Cmax、AUClast及びAUC0-infのいずれかであり得る。いくつかの実施形態において、ばらつきが改善した組成物は、Cmax、並びにAUClast及びAUC0-infの少なくとも1つに関する改善を提供する。他の実施形態において、ばらつきが改善した組成物は、Cmax、AUClast及びAUC0-infのすべてに関する改善を提供する。
特に、本開示の組成物は、絶食状態にある健康なヒト対象に投与した場合において、薬物動態パラメーターについて、より低い変動係数を提供することができることが観察された。実施例5(表24)に示されているように、被験組成物は、かかる条件下で、Cmax、AUClast及びAUC0-infに関するより低い変動係数を示した。被験組成物について観察されたCVは、該参照組成物と比較して、Cmaxについて少なくとも30%低かった。
【0114】
医薬組成物と添付文書とを含むキット
いくつかの実施形態において、本開示は、上述した本開示の態様のいずれかの医薬組成物と添付文書とを含むキットを提供する。本明細書において使用されているように、「キット」は、販売の取引単位であり、固定回数の用量の医薬組成物を含み得る。単なる例として、キットは、1以上の固定強度の投与単位の30日分の供給を提供し得、30投与単位、60投与単位、90投与単位、120投与単位、又は医師の指示に基づく他の適切な数量を含む。別の例として、キットは、投与単位の90日分の供給を提供し得る。
本明細書において使用されているように、「添付文書」は、医薬組成物の使用に関する情報、安全性情報、及び規制当局が要求する他の情報を提供する文書を意味するいくつかの実施形態において、添付文書は、物理的な印刷文書であり得る。或いは、添付文書は、例えば、最新の処方情報を提供するアメリカ国立衛生研究所の国立医薬品図書館のDaily Medサービス(https://dailymed.nlm.nih.gov/dailymed/index.cfmを参照されたい)を介して、ユーザーが電子的に利用できるようにすることができる。
【0115】
いくつかの実施形態において、添付文書は、医薬組成物を食物と一緒に投与することができることをキットのユーザーに知らせる。いくつかの実施形態において、添付文書は、食物の有無にかかわらず医薬組成物を投与することができることをキットのユーザーに知らせる。いくつかの実施形態において、添付文書は、医薬組成物を食物と一緒に投与すべきではないとの警告を含まない。
いくつかの実施形態において、添付文書は、医薬組成物と胃酸減少剤とを併用できることをキットのユーザーに知らせる。いくつかの実施形態において、添付文書は、医薬組成物をH2拮抗薬又はプロトンポンプ阻害薬と併用すべきではないとの警告を含まない。
いくつかの実施形態において、添付文書は、プロトンポンプ阻害薬と医薬組成物とを併用できることをキットのユーザーに知らせる。いくつかの実施形態において、添付文書は、プロトンポンプ阻害薬と医薬組成物との併用を避けるべきであるとの警告を含まない。
いくつかの実施形態において、添付文書は、H2拮抗薬と医薬組成物とを併用できることをキットのユーザーに知らせる。いくつかの実施形態において、添付文書は、医薬組成物の投与のおおよそ10時間前又はおおよそ2時間後にH2拮抗薬を使用することをユーザーに知らせない。いくつかの実施形態において、添付文書は、医薬組成物の投与前のおおよそ10時間以内に又は投与後のおおよそ2時間以内にH2拮抗薬を使用することができることをユーザーに知らせる。
【0116】
いくつかの実施形態において、添付文書は、制酸薬と医薬組成物とを併用できることをキットのユーザーに知らせる。いくつかの実施形態において、添付文書は、医薬組成物の投与のおおよそ2時間前又はおおよそ2時間後に制酸薬を使用することをユーザーに知らせない。いくつかの実施形態において、添付文書は、医薬組成物の投与前のおおよそ2時間以内又は投与後のおおよそ2時間以内に制酸薬を使用することができることをユーザーに知らせる。
いくつかの実施形態において、添付文書は、胃のpHが慢性的に上昇しているユーザーに医薬組成物を好適に投与できることをキットのユーザーに知らせる。いくつかの実施形態において、添付文書は、医薬組成物を、無酸症若しくは低酸症と診断された患者、又は無酸症若しくは低酸症に苦しんでいる患者に好適に投与できることをキットのユーザーに知らせる。いくつかの実施形態において、添付文書は、医薬組成物を、ヘリコバクター・ピロリ感染症と診断された患者、又はヘリコバクター・ピロリ感染症に苦しんでいる患者に好適に投与できることをキットのユーザーに知らせる。
以下の実施例により、本開示を更に説明し、及び/又は示し、かかる実施例は、説明/表示の目的だけのために提供され、いかなる方法でも本開示を限定することを意図するものではない。
【0117】
本開示の実施形態は以下を含む。
実施形態ASD1は、ニロチニブと1種以上のポリマーとを含む非晶質固体分散体である。
実施形態ASD2は、ニロチニブと1種以上のポリマーとを含む非晶質固体分散体であり、ニロチニブ及び1種以上のポリマーは、20:80~95:5(ニロチニブ:ポリマー)のw/w比で非晶質固体分散体中に存在する。実施形態ASD3は、ニロチニブと1種以上のポリマーとを含む非晶質固体分散体であり、ニロチニブ及び1種以上のポリマーは、40:60~70:30(ニロチニブ:ポリマー)のw/w比で非晶質固体分散体中に存在する。実施形態ASD4は、ニロチニブと1種以上のポリマーとを含む非晶質固体分散体であり、ニロチニブ及び1種以上のポリマーは、50:50(ニロチニブ:ポリマー)のw/w比で非晶質固体分散体中に存在する。
実施形態ASD5は、実施形態ASD1~ASD4のいずれかに記載の非晶質固体分散体であり、1種以上のポリマーは、pH依存的な溶解性を示す。
【0118】
実施形態ASD6は、実施形態ASD1~ASD5のいずれかに記載の非晶質固体分散体であり、1種以上のポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートを含む。実施形態ASD7は、実施形態ASD6に記載の非晶質固体分散体であり、1種以上のポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートから本質的になる。実施形態ASD8は、実施形態ASD6~ASD7のいずれかに記載の非晶質固体分散体であり、1種以上のポリマーは、7~11%のアセチル置換及び10~14%のスクシニル置換を特徴とするヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートを含む。
実施形態ASD9は、実施形態ASD1~ASD5のいずれかに記載の非晶質固体分散体であり、1種以上のポリマーは、メタクリル酸及びアクリル酸エチルのコポリマーを含む。実施形態ASD10は、実施形態ASD9に記載の非晶質固体分散体であり、1種以上のポリマーは、メタクリル酸及びアクリル酸エチルのコポリマーから本質的になる。実施形態ASD11は、実施形態ASD9~ASD10のいずれかに記載の非晶質固体分散体であり、1種以上のポリマーは、メタクリル酸及びアクリル酸エチルのコポリマーを含み、pH5以下の水性媒体に不溶であり、pH5.5以上の水性媒体に可溶である。
【0119】
実施形態ASD12は、実施形態ASD1~ASD11のいずれかに記載の非晶質固体分散体であり、非晶質固体分散体は、ニロチニブ及び1種以上のポリマーから本質的になる。
実施形態ASD13は、実施形態ASD1~ASD12のいずれかに記載の非晶質固体分散体であり、非晶質固体分散体は、1種以上の抗酸化剤を含む。実施形態ASD14は、実施形態ASD1~ASD13のいずれかに記載の非晶質固体分散体であり、非晶質固体分散体は、非晶質固体分散体の0.001質量%~2質量%の量で存在する1種以上の抗酸化剤を含む。実施形態ASD15は、実施形態ASD1~ASD14のいずれかに記載の非晶質固体分散体であり、非晶質固体分散体の0.05質量%~0.5質量%の量で存在する1種以上の抗酸化剤を含む。実施形態ASD16は、実施形態ASD1~ASD15のいずれかに記載の非晶質固体分散体であり、非晶質固体分散体は、ブチル化ヒドロキシトルエンから選択される1種以上の抗酸化剤を含む。
【0120】
実施形態ASD17は、実施形態ASD1~ASD16のいずれかに記載の非晶質固体分散体であり、非晶質固体分散体は、エレクトロスプレーを含むプロセスにより製造される。実施形態ASD18は、実施形態ASD1~ASD16のいずれかに記載の非晶質固体分散体であり、非晶質固体分散体は、エレクトロスプレーされた非晶質固体分散体である。
実施形態ASD19は、実施形態ASD1~ASD16のいずれかに記載の非晶質固体分散体であり、非晶質固体分散体は、噴霧乾燥を含むプロセスにより製造される。実施形態ASD20は、実施形態ASD1~ASD16のいずれかに記載の非晶質固体分散体であり、非晶質固体分散体は、噴霧乾燥された非晶質固体分散体である。
実施形態ASD21は、実施形態ASD1~ASD20のいずれかに記載の非晶質固体分散体であり、非晶質固体分散体は、40℃/75%相対湿度で6か月保存後に、粉末X線回折により決定されるように、非晶質のままであるか、又は本質的に非晶質のままである。実施形態ASD22は、実施形態ASD1~ASD20のいずれかに記載の非晶質固体分散体であり、非晶質固体分散体は、25℃/60%相対湿度で6か月保存後に、粉末X線回折により決定されるように、非晶質のままであるか、又は本質的に非晶質のままである。
【0121】
実施形態ASD23は、実施形態ASD1~ASD20のいずれかに記載の非晶質固体分散体であり、非晶質固体分散体は、25℃/60%RHで12か月保存後に、4%以下の、カールフィッシャー電量滴定により測定される含水量を含む。実施形態ASD24は、実施形態ASD1~ASD20のいずれかに記載の非晶質固体分散体であり、40℃/75%RHで6か月保存後に、4%以下の、カールフィッシャー電量滴定により測定される含水量を含む。
実施形態ASD25は、実施形態ASD1~ASD20のいずれかに記載の非晶質固体分散体であり、非晶質固体分散体は、25℃/60%相対湿度で12か月保存後に、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定される、少なくとも90%の定量レベルを特徴とする。実施形態ASD26は、実施形態ASD1~ASD20のいずれかに記載の非晶質固体分散体であり、40℃/75%相対湿度で6か月保存後の非晶質固体分散体の定量レベルは、少なくとも90%である。
【0122】
実施形態ASD27は、実施形態ASD1~ASD20のいずれかに記載の非晶質固体分散体であり、非晶質固体分散体は、25℃/60%RHで12か月保存後に、1%以下の、HPLCにより測定される全関連物質を含む。実施形態ASD28は、実施形態ASD1~ASD20のいずれかに記載の非晶質固体分散体であり、非晶質固体分散体は、40℃/75%RHで6か月保存後に、1%以下の、HPLCにより測定される全関連物質を含む。
実施形態ASD29は、実施形態ASD1~ASD20のいずれかに記載の非晶質固体分散体であり、非晶質固体分散体は、25℃/60%RHで12か月保存後に、5℃超変化しない、変調示差走査熱量測定により測定されるガラス転移温度を含む。実施形態ASD30は、実施形態ASD1~ASD20のいずれかに記載の非晶質固体分散体であり、非晶質固体分散体は、40℃/75%RHで6か月保存後に、5℃超変化しない、変調示差走査熱量測定により測定されるガラス転移温度を含む。
【0123】
実施形態PC1は、実施形態ASD1~ASD30のいずれかに記載の非晶質固体分散体を含む医薬組成物である。
実施形態PC2は、実施形態ASD1~ASD30のいずれかに記載の非晶質固体分散体と、1種以上の医薬上許容される添加剤とを含む医薬組成物である。実施形態PC3は、実施形態PC2の医薬組成物であり、1種以上の医薬上許容される添加剤が、1種以上の可溶化剤、1種以上の緩衝化剤、1種以上のpH調整剤、1種以上の界面活性剤、1種以上の抗酸化剤、1種以上の担体、又はこれらの組み合わせを含む。実施形態PC4は、実施形態PC2の医薬組成物であり、1種以上の医薬上許容される添加剤が、1種以上の充填剤、1種以上の結合剤、1種以上の滑沢剤、1種以上の崩壊剤、1種以上の流動化剤、又はこれらの組み合わせを含む。実施形態PC5は、実施形態PC4の医薬組成物であり、医薬組成物が、経口投与に適している固体剤形である。実施形態PC6は、実施形態PC4の医薬組成物であり、医薬組成物は、経口投与に適している固体剤形として存在し、25~100mgニロチニブを含む。
【0124】
実施形態PC7は、実施形態PC6の医薬組成物であり、経口投与剤形を、絶食状態における健康なヒト対象に投与すると、200mgニロチニブ一塩酸塩一水和物を含む従来のニロチニブの即時放出性組成物である参照組成物の投与後に達成されるAUC0-inf及びCmaxと比較して、80%~125%の生物学的同等性基準内のAUC0-inf及びCmaxを達成する。
実施形態PC8は、実施形態PC6の医薬組成物であり、医薬組成物は、絶食条件下で、200mgニロチニブ一塩酸塩一水和物を含む従来のニロチニブの即時放出性組成物である参照組成物と有効に生物学的同等であり、有効な生物学的同等性は、(a)80%~125%のAUCについての90%信頼区間、及び(b)80%~125%のCmaxについての90%信頼区間により確立される。
実施形態PC9は、実施形態PC1~PC8の医薬組成物であり、医薬組成物は、食物非感受性組成物である。
実施形態PC10は、実施形態PC1~PC9の医薬組成物であり、医薬組成物は、胃酸非感受性組成物である。
実施形態PC11は、実施形態PC1~PC10の医薬組成物であり、医薬組成物は、ばらつきが改善した組成物である。
【0125】
実施形態MT1は、増殖性障害の治療を必要とする患者における増殖性障害を治療する方法であり、該方法は、実施形態PC1~PC11のいずれかに記載の医薬組成物を患者に投与する工程を含む。
実施形態MT2は、増殖性障害の治療を必要とする患者における増殖性障害を治療する方法であり、該方法は、実施形態PC1~PC11のいずれかに記載の医薬組成物を患者に投与する工程を含み、医薬組成物は、食物消費に関係なく投与される。実施形態MT3は、増殖性障害の治療を必要とする患者における増殖性障害を治療する方法であり、該方法は、実施形態PC1~PC11のいずれかに記載の医薬組成物を患者に投与する工程を含み、医薬組成物は、患者が絶食状態か又は摂食状態かに関係なく投与される。実施形態MT4は、増殖性障害の治療を必要とする患者における増殖性障害を治療する方法であり、該方法は、食事の影響を受けずに、実施形態PC1~PC11のいずれかに記載の医薬組成物を患者に投与する工程を含む。
実施形態MT5は、ニロチニブを患者に安全に送達することを必要とする患者に、ニロチニブを安全に送達する方法であり、該方法は、(a)実施形態PC1~PC11のいずれかに記載の治療上有効量の医薬組成物を患者に投与するする工程と、(b)食事を患者に与える工程とを含み、工程(a)及び工程(b)は、互いに2時間未満以内に発生する。
【0126】
実施形態MT6は、食物消費に関係なく、治療上有効量のニロチニブを患者に送達する方法であり、該方法は、実施形態PC1~PC11のいずれかに記載の医薬組成物を患者に投与する工程を含む。実施形態MT7は、患者が絶食状態か又は摂食状態かに関係なく、治療上有効量のニロチニブを患者に送達する方法であり、該方法は、実施形態PC1~PC11のいずれかに記載の医薬組成物を患者に投与する工程を含む。
実施形態MT8は、実施形態MT1~MT7のいずれかに記載の方法であり、摂食状態における患者への医薬組成物の投与は、絶食状態における患者への医薬組成物の投与により得られるニロチニブの血漿Cmaxよりも、低いニロチニブの血漿Cmaxをもたらす。実施形態MT9は、実施形態MT1~MT7のいずれかに記載の方法であり、摂食状態における患者への医薬組成物の投与は、絶食状態における患者への医薬組成物の投与により得られるニロチニブの血漿Cmaxの30%以内の、ニロチニブの血漿Cmaxをもたらす。
【0127】
実施形態MT10は、実施形態MT1~MT9のいずれかに記載の方法であり、摂食状態における患者への医薬組成物の投与は、絶食状態における患者への医薬組成物の投与により得られるニロチニブの血漿AUCよりも、低いニロチニブの血漿AUCをもたらす。実施形態MT11は、実施形態MT1~MT9のいずれかに記載の方法であり、摂食状態における患者への医薬組成物の投与は、絶食状態における患者への医薬組成物の投与により得られるニロチニブの血漿AUCの30%以内の、ニロチニブの血漿AUCをもたらす。実施形態MT12は、実施形態MT1~MT9のいずれかに記載の方法であり、摂食状態における患者への医薬組成物の投与は、絶食状態における患者への医薬組成物の投与により得られるニロチニブの血漿AUCの15%以内の、ニロチニブの血漿AUCをもたらす。実施形態MT13は、実施形態MT10~MT12のいずれかに記載の方法であり、AUCは、AUC0-12hである。実施形態MT14は、実施形態MT10~MT12のいずれかに記載の方法であり、AUCは、AUC0-24hである。実施形態MT15は、実施形態MT10~MT12のいずれかに記載の方法であり、AUCは、AUC0-lastである。実施形態MT16は、実施形態MT10~MT12のいずれかに記載の方法であり、AUCは、AUC0-infである。
【0128】
実施形態MT17は、実施形態MT1~MT7のいずれかに記載の方法であり、絶食状態における患者への医薬組成物の投与は、該医薬組成物の2倍量~4倍量のニロチニブを有するニロチニブ結晶の即時放出性製剤の投与により得られるニロチニブの血漿Cmaxよりも、大きなニロチニブの血漿Cmaxをもたらす。実施形態MT18は、実施形態MT1~MT7のいずれかに記載の方法であり、摂食状態における患者への医薬組成物の投与は、該医薬組成物の2倍量~4倍量のニロチニブを有するニロチニブ結晶の即時放出性製剤の投与により得られるニロチニブの血漿Cmaxの25%以内の、ニロチニブの血漿Cmaxをもたらす。
実施形態MT19は、実施形態MT1~MT7のいずれかに記載の方法であり、絶食状態における患者への医薬組成物の投与は、該医薬組成物の2倍量~4倍量のニロチニブを有するニロチニブ結晶の即時放出性製剤の投与により得られるニロチニブの血漿AUCよりも、大きなニロチニブの血漿AUCをもたらす。実施形態MT20は、実施形態MT1~MT7のいずれかに記載の方法であり、摂食状態における患者への医薬組成物の投与は、該医薬組成物の2倍量~4倍量のニロチニブを有するニロチニブ結晶の即時放出性製剤の投与により得られるニロチニブの血漿AUCの25%以内の、ニロチニブの血漿AUCをもたらす。実施形態MT21は、実施形態MT1~MT7のいずれかに記載の方法であり、摂食状態における患者への医薬組成物の投与は、該医薬組成物の2倍量~4倍量のニロチニブを有するニロチニブ結晶の即時放出性製剤の投与により得られるニロチニブの血漿AUCの20%以内の、ニロチニブの血漿AUCをもたらす。実施形態MT22は、実施形態MT19~MT21のいずれかに記載の方法であり、AUCは、AUC0-12hである。実施形態MT23は、実施形態MT19~MT21のいずれかに記載の方法であり、AUCは、AUC0-24hである。実施形態MT24は、実施形態MT19~MT21のいずれかに記載の方法であり、AUCは、AUC0-lastである。実施形態MT25は、実施形態MT19~MT21のいずれかに記載の方法であり、AUCは、AUC0-infである。
【0129】
実施形態MT26は、増殖性障害の治療を必要とする患者における増殖性障害を治療する方法であり、該方法は、患者がプロトンポンプ阻害薬を併用しているかに関係なく、実施形態PC1~PC11のいずれかに記載の医薬組成物を患者に投与する工程を含む。実施形態MT27は、プロトンポンプ阻害薬を併用している患者に治療上有効量のニロチニブを送達する方法であり、該方法は、(a)実施形態PC1~PC11のいずれかに記載の医薬組成物と、(b)プロトンポンプ阻害薬とを患者に投与するする工程を含む。
実施形態MT28は、実施形態MT1~MT27のいずれかに記載の方法であり、増殖性障害は、がんである。実施形態MT29は、実施形態MT1~MT27のいずれかに記載の方法であり、増殖性障害は、フィラデルフィア染色体陽性慢性骨髄性白血病である。実施形態MT30は、実施形態MT1~MT27のいずれかに記載の方法であり、増殖性障害は、以前のチロシンキナーゼ阻害剤治療に抵抗性又は不耐性のある、慢性期のフィラデルフィア染色体陽性慢性骨髄性白血病である。
【0130】
実施形態MS1は、対象が絶食状態か又は摂食状態かに関係なく、治療上適切な曝露のニロチニブを対象に送達する方法であり、該方法は、実施形態PC1~PC11のいずれかに記載の医薬組成物を対象に投与する工程を含む。
実施形態MS2は、実施形態MS1に記載の方法であり、摂食状態における対象への医薬組成物の投与は、絶食状態における対象への医薬組成物の投与により得られるニロチニブの血漿Cmaxよりも、低いニロチニブの血漿Cmaxをもたらす。実施形態MS3は、実施形態MS1に記載の方法であり、摂食状態における対象への医薬組成物の投与は、絶食状態における対象への医薬組成物の投与により得られるニロチニブの血漿Cmaxの30%以内の、ニロチニブの血漿Cmaxをもたらす。
実施形態MS4は、実施形態MS1に記載の方法であり、摂食状態における対象への医薬組成物の投与は、絶食状態における対象への医薬組成物の投与により得られるニロチニブの血漿AUCよりも、低いニロチニブの血漿AUCをもたらす。実施形態MS5は、実施形態MS1に記載の方法であり、摂食状態における対象への医薬組成物の投与は、絶食状態における対象への医薬組成物の投与により得られるニロチニブの血漿AUCの30%以内の、ニロチニブの血漿AUCをもたらす。実施形態MS6は、実施形態MS1に記載の方法であり、摂食状態における対象への医薬組成物の投与は、絶食状態における対象への医薬組成物の投与により得られるニロチニブの血漿AUCの15%以内の、ニロチニブの血漿AUCをもたらす。実施形態MS7は、実施形態MS4~MS6のいずれかに記載の方法であり、AUCは、AUC0-12hである。実施形態MS8は、実施形態MS4~MS6のいずれかに記載の方法であり、AUCは、AUC0-24hである。実施形態MS9は、実施形態MS4~MS6のいずれかに記載の方法であり、AUCは、AUC0-lastである。実施形態MS10は、実施形態MS4~MS6のいずれかに記載の方法であり、AUCは、AUC0-infである。
【0131】
実施形態MS11は、実施形態MS1に記載の方法であり、絶食状態における対象への医薬組成物の投与は、医薬組成物の2倍量~4倍量のニロチニブを有するニロチニブ結晶の即時放出性製剤の投与により得られるニロチニブの血漿Cmaxよりも、大きなニロチニブの血漿Cmaxをもたらす。実施形態MS12は、実施形態MS1に記載の方法であり、摂食状態における対象への医薬組成物の投与は、医薬組成物の2倍量~4倍量のニロチニブを有するニロチニブ結晶の即時放出性製剤の絶食状態における投与により得られるニロチニブの血漿Cmaxの25%以内の、ニロチニブの血漿Cmaxをもたらす。
実施形態MS13は、実施形態MS1に記載の方法であり、絶食状態における対象への医薬組成物の投与は、医薬組成物の2倍量~4倍量のニロチニブを有するニロチニブ結晶の即時放出性製剤の投与により得られるニロチニブの血漿AUCよりも、大きなニロチニブの血漿AUCをもたらす。実施形態MS14は、実施形態MS1に記載の方法であり、摂食状態における対象への医薬組成物の投与は、医薬組成物の2倍量~4倍量のニロチニブを有するニロチニブ結晶の即時放出性製剤の絶食状態における投与により得られるニロチニブの血漿AUCの25%以内の、ニロチニブの血漿AUCをもたらす。実施形態MS15は、実施形態MS1に記載の方法であり、摂食状態における対象への医薬組成物の投与は、医薬組成物の2倍量~4倍量のニロチニブを有するニロチニブ結晶の即時放出性製剤の絶食状態における投与により得られるニロチニブの血漿AUCの20%以内の、ニロチニブの血漿AUCをもたらす。実施形態MS16は、実施形態MS13~MS15のいずれかに記載の方法であり、AUCは、AUC0-12hである。実施形態MS17は、実施形態MS13~MS15のいずれかに記載の方法であり、AUCは、AUC0-24hである。実施形態MS18は、実施形態MS13~MS15のいずれかに記載の方法であり、AUCは、AUC0-lastである。実施形態MS19は、実施形態MS13~MS15のいずれかに記載の方法であり、AUCは、AUC0-infである。
【0132】
実施形態TR1は、増殖性障害の治療を必要とする患者における増殖性障害を治療するための治療計画であり、該計画は、(a)プロトンポンプ阻害薬を含む第1用量を患者に投与する工程と、(b)第1用量の12時間以内に、実施形態PC1~PC11のいずれかに記載の医薬組成物を含む第2用量を患者に投与する工程とを含む。
実施形態TR2は、増殖性障害及び胃酸の過剰産生に起因する状態又は胃酸によって悪化している状態の治療を必要とする患者における、増殖性障害及び胃酸の過剰産生に起因する状態又は胃酸によって悪化している状態を治療するための治療計画であり、該計画は、(a)治療上有効量のプロトンポンプ阻害薬を含む第1用量を患者に投与する工程と、(b)第1用量後の12時間以内に、実施形態PC1~PC11のいずれかに記載の医薬組成物を含む第2用量を患者に投与する工程とを含む。
実施形態TR3は、実施形態TR1~TR2のいずれかに記載の治療計画であり、第1用量は、標準投与量の、ラベプラゾール、エソメプラゾール、ランソプラゾール、オメプラゾール、パントプラゾール、デクスランソプラゾール、及びこれらの組み合わせから選択されるプロトンポンプ阻害薬を含む。実施形態TR4は、実施形態TR1~TR2のいずれかに記載の治療計画であり、第1用量は、標準投与量のオメプラゾールを含む。
【0133】
実施形態TR5は、実施形態TR1~TR4のいずれかに記載の治療計画であり、工程(a)は、工程(b)の前に発生する。実施形態TR6は、実施形態TR1~TR4のいずれかに記載の治療計画であり、工程(b)は、工程(a)の前に発生する。実施形態TR7は、実施形態TR1~TR6のいずれかに記載の治療計画であり、第2用量は、第1用量の8時間以内に投与される。実施形態TR8は、実施形態TR1~TR6のいずれかに記載の治療計画であり、第2用量は、第1用量の6時間以内に投与される。実施形態TR9は、実施形態TR1~TR6のいずれかに記載の治療計画であり、第2用量は、第1用量の4時間以内に投与される。実施形態TR10は、実施形態TR1~TR6のいずれかに記載の治療計画であり、第2用量は、第1用量の2時間以内に投与される。実施形態TR11は、実施形態TR1~TR6のいずれかに記載の治療計画であり、第1用量と第2用量は同時に投与される。
【0134】
実施形態TR12は、増殖性障害の治療を必要とする患者における増殖性障害を治療するための治療計画であり、該計画は、(a)H2拮抗薬を含む第1用量を患者に投与する工程と、(b)第1用量後の10時間以内に、実施形態PC1~PC11のいずれかに記載の医薬組成物を含む第2用量を患者に投与する工程とを含む。実施形態TR13は、増殖性障害及び胃酸の過剰産生に起因する状態又は胃酸によって悪化している状態の治療を必要とする患者における、増殖性障害及び胃酸の過剰産生に起因する状態又は胃酸によって悪化している状態を治療するための治療計画であり、該計画は、(a)治療上有効量のH2拮抗薬を含む第1用量を患者に投与する工程と、(b)第1用量後の10時間以内に、実施形態PC1~PC11のいずれかに記載の医薬組成物を含む第2用量を患者に投与する工程とを含む。実施形態TR14は、実施形態TR12~TR13のいずれかに記載の治療計画であり、第2用量は、第1用量の8時間以内に投与される。実施形態TR15は、実施形態TR12~TR13のいずれかに記載の治療計画であり、第2用量は、第1用量の6時間以内に投与される。実施形態TR16は、実施形態TR12~TR13のいずれかに記載の治療計画であり、第2用量は、第1用量の4時間以内に投与される。実施形態TR17は、実施形態TR12~TR13のいずれかに記載の治療計画であり、第2用量は、第1用量の2時間以内に投与される。実施形態TR18は、実施形態TR12~TR13のいずれかに記載の治療計画であり、第1用量と第2用量は同時に投与される。
【0135】
実施形態TR19は、増殖性障害の治療を必要とする患者における増殖性障害を治療するための治療計画であり、該計画は、(a)実施形態PC1~PC11のいずれかに記載の医薬組成物を含む第1用量を患者に投与する工程と、(b)第1用量後の2時間以内に、H2拮抗薬を含む第2用量を患者に投与する工程とを含む。実施形態TR20は、増殖性障害及び胃酸の過剰産生に起因する状態又は胃酸によって悪化している状態の治療を必要とする患者における、増殖性障害及び胃酸の過剰産生に起因する状態又は胃酸によって悪化している状態を治療するための治療計画であり、該計画は、(a)実施形態PC1~PC11のいずれかに記載の医薬組成物を含む第1用量を患者に投与する工程と、(b)第1用量後の2時間以内に、治療上有効量のH2拮抗薬を含む第2用量を患者に投与する工程とを含む。実施形態TR21は、実施形態TR19~TR20のいずれかに記載の治療計画であり、第1用量と第2用量は同時に投与される。実施形態TR22は、実施形態TR12~TR21のいずれかに記載の治療計画であり、H2拮抗薬は、ファモチジン、シメチジン、ニザチジン、ラニチジン、及びこれらの組み合わせから選択される。実施形態TR23は、実施形態TR12~TR21のいずれかに記載の治療計画であり、H2拮抗薬は、ファモチジンである。
【0136】
実施形態TR24は、増殖性障害の治療を必要とする患者における増殖性障害を治療するための治療計画であり、該計画は、(a)制酸薬を含む第1用量を患者に投与する工程と、(b)第1用量の2時間以内に、実施形態PC1~PC11のいずれかに記載の医薬組成物を含む第2用量を患者に投与する工程とを含む。実施形態TR25は、増殖性障害及び胃酸の過剰産生に起因する状態又は胃酸によって悪化している状態の治療を必要とする患者における、増殖性障害及び胃酸の過剰産生に起因する状態又は胃酸によって悪化している状態を治療するための治療計画であり、該計画は、(a)実施形態PC1~PC11のいずれかに記載の医薬組成物を含む第1用量を患者に投与する工程と、(b)第1用量の2時間以内に、治療上有効量の制酸薬を含む第2用量を患者に投与する工程とを含む。実施形態TR26は、実施形態TR24~TR25のいずれかに記載の治療計画であり、第1用量と第2用量は同時に投与される。実施形態TR27は、実施形態TR24~TR26のいずれかに記載の治療計画であり、制酸薬は、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0137】
実施形態TR28は、実施形態TR1~TR27のいずれかに記載の治療計画であり、増殖性障害は、がんである。実施形態TR29は、実施形態TR1~TR27のいずれかに記載の治療計画であり、増殖性障害は、フィラデルフィア染色体陽性慢性骨髄性白血病である。実施形態TR30は、実施形態TR1~TR27のいずれかに記載の治療計画であり、増殖性障害は、以前のチロシンキナーゼ阻害剤治療に抵抗性又は不耐性のある、慢性期のフィラデルフィア染色体陽性慢性骨髄性白血病である。
実施形態TR31は、実施形態TR1~TR30のいずれかに記載の治療計画であり、医薬組成物の投与は、治療上適切な曝露のニロチニブを患者に提供する。
【0138】
実施形態KT1は、ユーザーに販売するためのキットであり、該キットは、実施形態PC1~PC11のいずれかに記載の医薬組成物と添付文書とを含み、添付文書は、医薬組成物を食物と一緒に投与することができることをユーザーに知らせる。実施形態KT2は、ユーザーに販売するためのキットであり、該キットは、実施形態PC1~PC11のいずれかに記載の医薬組成物と添付文書とを含み、添付文書は、食物の有無にかかわらず医薬組成物を投与することができることをユーザーに知らせる。実施形態KT3は、ユーザーに販売するためのキットであり、該キットは、実施形態PC1~PC11のいずれかに記載の医薬組成物と添付文書とを含み、添付文書は、医薬組成物を食物と一緒に投与すべきではないとの警告を含まない。
実施形態KT4は、ユーザーに販売するためのキットであり、該キットは、実施形態PC1~PC11のいずれかに記載の医薬組成物と添付文書とを含み、添付文書は、プロトンポンプ阻害薬と医薬組成物とを併用できることをユーザーに知らせる。実施形態KT5は、ユーザーに販売するためのキットであり、該キットは、実施形態PC1~PC11のいずれかに記載の医薬組成物と添付文書とを含み、添付文書は、プロトンポンプ阻害薬と医薬組成物との併用を避けるべきであるとの警告を含まない。
【0139】
実施形態KT6は、ユーザーに販売するためのキットであり、該キットは、実施形態PC1~PC11のいずれかに記載の医薬組成物と添付文書とを含み、添付文書は、H2拮抗薬と医薬組成物とを併用できることをユーザーに知らせる。実施形態KT7は、ユーザーに販売するためのキットであり、該キットは、実施形態PC1~PC11のいずれかに記載の医薬組成物と添付文書とを含み、添付文書は、医薬組成物の投与のおおよそ10時間前又はおおよそ2時間後にH2拮抗薬を使用することをキットのユーザーに知らせない。実施形態KT8は、ユーザーに販売するためのキットであり、該キットは、実施形態PC1~PC11のいずれかに記載の医薬組成物と添付文書とを含み、添付文書は、医薬組成物の投与前のおおよそ10時間以内に又は投与後のおおよそ2時間以内にH2拮抗薬を使用することができることをキットのユーザーに知らせる。
実施形態KT9は、ユーザーに販売するためのキットであり、該キットは、実施形態PC1~PC11のいずれかに記載の医薬組成物と添付文書とを含み、添付文書は、制酸薬と医薬組成物とを併用できることをユーザーに知らせる。実施形態KT10は、ユーザーに販売するためのキットであり、該キットは、実施形態PC1~PC11のいずれかに記載の医薬組成物と添付文書とを含み、添付文書は、医薬組成物の投与のおおよそ2時間前又はおおよそ2時間後に制酸薬を使用することをキットのユーザーに知らせない。実施形態KT11は、ユーザーに販売するためのキットであり、該キットは、実施形態PC1~PC11のいずれかに記載の医薬組成物と添付文書とを含み、添付文書は、医薬組成物の投与前のおおよそ2時間以内又は投与後のおおよそ2時間以内に制酸薬を使用することができることをキットのユーザーに知らせる。
【0140】
実施形態KT12は、ユーザーに販売するためのキットであり、該キットは、実施形態PC1~PC11のいずれかに記載の医薬組成物と添付文書とを含み、添付文書は、ユーザーの胃のpHが慢性的に上昇している場合でも、医薬組成物を好適に投与することができることをユーザーに知らせる。実施形態KT13は、ユーザーに販売するためのキットであり、該キットは、実施形態PC1~PC11のいずれかに記載の医薬組成物と添付文書とを含み、ユーザーが無酸症若しくは低酸症と診断された場合、又はユーザーが無酸症若しくは低酸症に苦しんでいる場合でも、医薬組成物を好適に投与することができることをユーザーに知らせる。実施形態KT14は、ユーザーに販売するためのキットであり、該キットは、実施形態PC1~PC11のいずれかに記載の医薬組成物と添付文書とを含み、ユーザーがヘリコバクター・ピロリ感染症と診断された場合、又はユーザーがヘリコバクター・ピロリ感染症に苦しんでいる場合でも、医薬組成物を好適に投与することができることをユーザーに知らせる。
【実施例
【0141】
実施例1.ニロチニブASDの調製及び苛酷な条件下での安定性
本開示の実施形態に従って、ニロチニブASDを調製した。次に、苛酷な加速条件下でのニロチニブASDの化学的及び物理的安定性を評価するための研究を行った。
表2に示されている比で、オイドラギットL100-55又はHPMC-ASをポリマーとして用いて、ニロチニブASDを調製した。各組成物を調製するために、適量のポリマー及びニロチニブをテトラヒドロフラン及びメタノールの50:50(v/v)溶媒混合物に溶解させ、液体原料を提供した(抗酸化剤として少量のBHTで、テトラヒドロフランを安定させた。したがって、この実施例において調製したASDは、ニロチニブ及びポリマーとともに、少量の未定量のBHTを含んだ)。
【0142】
表2.実施例1についてのニロチニブASDの組成
【表2】
【0143】
Nanocopoeia ES機ENS-Pを使用し、得られた原料を20mg/mLの全固形物濃度でスプレーした。各スプレーの運転について、抽出装置電圧(extractor voltage)及び流量などのスプレープロセスのパラメーターを調整し、許容されるスプレープルーム(plume)を得た。
エレクトロスプレーのプロセスの後、各ASD(当時、粉末の形態で)に対して第2乾燥工程を行い、残留溶媒及び水分のレベルを減らした。第2乾燥について、ASD粉末を適切な容器に入れ、80℃まで加熱したオーブン(Lindberg Blue M、モデルV01218A)に入れた。真空(-20”~28”Hg)下で、粉末を6時間乾燥した。
安定性研究を支持するのに十分なASD材料を提供するために、複数のスプレーのサブバッチ(sub-batches)を必要とした組成物について、Resodyn LabRam II音響ミキサーを使用し、サブバッチから得られた材料を一緒にしてひとつのブレンドとした。サブバッチをひとつの容器に入れ、40Gに設定した力で2分間ブレンドした。
得られたASDを、50℃/80%RHの激しい条件下で、開放した皿に安定状態(stability)で置いた。非晶性(XRD)、含水量(カールフィッシャー)、ガラス転移温度(DSC)、及び定量/関連物質(HPLC)について、ASD粉末をt=0、1週間、2週間、及び4週間において評価した。
【0144】
非晶性
XRDにより、ASDについて非晶性(すなわち、結晶度の欠如)を評価した。リガクMiniFlex600を使用したX線回折により、回折パターンを得た。X線源は、ロングアノードのCu Kαであった。少量のASD粉末を、0.1mmくぼみ(indent)を有するリガクゼロ-バックグラウンド試料保持器(Rigaku zero-background sample holder)に置くことにより、試料を用意した。次に、ガラススライドを使用し、粉末をしっかりと詰め、試料の表面が試料保持器の縁と同じ高さになるようにした。装置の詳細及び測定条件を表3に明記する。
表3.リガクMiniFlex装置及び測定条件
【表3】
【0145】
スプレー後(t=0)及び安定後の非晶性について、ASDを評価した。結晶のピークの存在について、各XRDの走査を評価し、結果を表4に示す。
表4.実施例1のASDについてのASD非晶性のデータのまとめ
【表4】
【0146】
表4に示されているように、エレクトロスプレーのプロセス後に、各ASDは非晶質であった。50℃/80%RHで1週間安定させた後、より低い薬物負荷(50:50及び60:40のニロチニブ:オイドラギットL100-55;50:50、60:40及び70:30のニロチニブ:HPMC-AS)を有するASDは非晶質のままであったが、より高い薬物負荷を有するASDは、XRDの走査で結晶化の兆候を示し始めていた。最も低い薬物負荷(50:50及び60:40のニロチニブ:オイドラギットL100-55;50:50のニロチニブ:HPMC-AS)を有するASD製剤のみが、第2週において非晶質であり、4週間の研究全体をとおして非晶質のままであった。他のASDはすべて、第2週までに結晶のピークの存在を示した。これらの多くのASDについて、しばらくした後に結晶性が観察されたとの事実にもかかわらず、苛酷な加速保存条件(現実世界の保存条件を反映していない)のため、この結果は、有望であると考えられた。
【0147】
含水量
ストロンボリ(Stromboli)オーブンサンプラーを備えるメトラー・トレドC30Sカールフィッシャーを使用して、カールフィッシャー電量滴定法により、含水量を決定した。おおよそ40~50mgのASD粉末を秤量してガラス製ストロンボリ試料バイアルに入れ、バイアルを直ちに密封した。次に、バイアルを装置上に置き、窒素キャリアガスを使用して分析を行った。装置の詳細及び測定条件を表5に明記する。
表5.カールフィッシャー装置及び測定条件
【表5】
【0148】
表6に示されているように、8つASDのすべてについて、初期の水分レベルは非常に一致した。同様に、すべてのASDは、高湿度に1週間曝された後に含水量の急増を示し、横ばいになり、本研究の残りの期間においてほぼ一定(3.5%~5%)のままであった。データ中の多少のばらつきにもかかわらず、オイドラギットL100-55又はHPMC-ASを含むASDは、多少の吸湿性を示した。
表6.実施例1のASDについてのASD含水量(KF)のデータのまとめ
【表6】
【0149】
ガラス転移温度
変調示差走査熱量測定(mDSC)を、RCS90冷蔵冷却システム(RCS90 refrigerated cooling system)を備えるTAインスツルメントモデルQ200で実行し、ガラス転移温度を分析した。一般的には、約5~10mgのASD粉末をTA Tzero低質量アルミニウム製皿に載せ、Tzero蓋で密封した。装置の詳細及び測定条件を表7に提供する。結果を表8に提供する。
表7.TA Q200 DSC装置及び測定条件
【表7】
【0150】
表8.実施例1のASDについて観察されたガラス転移温度(DSC)のデータ(Tg)のまとめ
【表8】
1 60℃付近で観測された可能性のある第2のTg
ND=検出せず
【0151】
表8における結果から分かるように、オイドラギットL100-55を含むASDは、薬物負荷の増加に伴い、Tg値が減少した。4つの薬物負荷のレベルのすべてについて、安定性に関するTgの変化は本質的になかった。
HPMC-ASを含むASDの場合、Tg値は、4つの薬物負荷のレベルにわたって同様であった。60:40のASDは、最初の2週間において安定なTgを有したが、4週間においてTgが検出されなかった。70:30のASDも、最初の2週間において安定なTgを有したが、60℃の付近に第2のTgを示す可能性のある弱い熱事象が観察された。これは、試料が安定状態であった一方で、相分離を経験していた可能性を示唆している。80:20のASD試料の安定性に関して、Tgの検出はできなかった。かかる試料について測定可能なTgの欠如は、安定性試験中の加速条件下に置かれたHPMC-ASのASDにおいて、何らかのタイプの物理的な変化が発生した可能性があることを示唆している。
【0152】
定量/関連物質
アジレントPoroshell C18 3.0mm×150mm×2.7μmカラムを使ったアジレント1200HPLCを使用し、定量及び関連物質(例えば、不純物)を決定した。おおよそ50mgのASD粉末を正確に秤量して50mLメスフラスコに入れることにより、各ASDの試料溶液を調製した。最初は、ASD粉末をフラスコ内のおおよそ40mLのメタノールに溶解させ、続いてASD粉末が完全に溶解するまで、フラスコをボルテックスし、超音波処理をした。次に、メタノールで試料フラスコの容積に合わせ、よく混ぜた。次に、この試料溶液を希釈液(50:50のアセトニトリル(ACN):0.1%リン酸の水溶液)で10倍希釈した。試料中の分析物(ニロチニブ)の最終濃度は、おおよそ0.05mg/mLとなった。装置の詳細及び測定条件を表9に明記する一方で、勾配プロファイルを表10に示す。
【0153】
表9.HPLC装置及び測定条件
【表9】
TEA=トリエチルアミン
AA=酢酸
【0154】
表10.HPLC装置の勾配プロファイル
【表10】
【0155】
定量の結果を表11に提供する。オイドラギットL100-55を含むASDについての定量値(96.2%~98.4%)及びHPMC-ASを含むASDについての定量値(96.5%~97.9%)は、供給されたままの原薬について観察された相対的に高い全関連物質のレベル(~2%)、及び測定されたASD試料の初期含水量(~1%)を考慮すると、予想どおりであった。一般的には、ASDはすべて、安定性に関して経時的な定量の減少を示した。HPMC-ASを含むASDに関するこの減少は、オイドラギットL100-55を含むASDと比較して、より顕著であった。表6に関して、含水量の増加は、測定された効力の損失の一部の原因である可能性があり、なぜなら安定性に関するASDは、1週間後に4%~5%の水を含んでいることが判明し、含水量についての定量の測定も補正されなかったためである。ニロチニブのピークは、十分に豊富であり、各試料についての不純物%を決定することができた。
【0156】
表11.実施例1のASDについての定量(HPLC)のデータのまとめ
【表11】
n/a-該当データなし
【0157】
関連物質の結果を表12に示す。全時点において、8つのASDのすべてについて、関連物質のレベルが同様であった。このデータに基づくと、エレクトロスプレーのプロセスにより、関連物質のレベルを増加されるようには見えず、すべてのASDは、高いレベルの熱及び湿度に曝されたにもかかわらず、安定性に関する加速条件下で化学的に安定であったように見えた。
表12.実施例1のASDについての全関連物質(HPLC)のデータのまとめ
【表12】
【0158】
実施例2.加速保存条件下でのニロチニブASDの安定性
異なる加速保存条件下で、本開示の実施形態のニロチニブASDの安定性を評価するための研究を行った。
溶媒混合物が60:40(v/v)の比のテトラヒドロフラン及びメタノールであったことを除き、実施例1に記載のASDと同様にASDを調製した(抗酸化剤として少量のBHTで、テトラヒドロフランを安定させた。したがって、この実施例において調製されたASDは、ニロチニブ及びポリマーとともに、少量の未定量のBHTを含んだ)。等量のニロチニブ及びHPMC-ASを溶媒混合物に溶解させ、液体原料を調製し、エレクトロスプレーを行ってASD粉末を提供した。
得られたASD粉末は、50:50(w/w)の比のニロチニブ及びHPMC-ASを含んだ。得られたASD粉末を、25℃/60%RHで24か月、又は40℃/75%RHで6か月、加速条件下で保存した。非晶性(XRD)、含水量(カールフィッシャー)、ガラス転移温度(DSC)、及び定量/関連物質(HPLC)について、ASD粉末を、各保存条件について、t=0、1か月、2か月、3か月、及び6か月において評価した。25℃/60%RHで保存した試料を、24か月までのもっと後の時点においてさらに評価した。
【0159】
非晶性
上記の実施例1と同様に非晶性を評価した。2組の保存条件について、ASDは、安定性研究の全体をとおして非晶質のままであった。
含水量
試料のサイズがおおよそ50~100mgのASD粉末であったことを除き、実施例1と同様に、カールフィッシャー電量滴定により含水量を測定した。
表13に示されているように、含水量は、安定性時点にわたって実質的に一致したままであり、ASDについて、不利な吸湿性は観察されなかった。
【0160】
表13.実施例2のASDについての含水量(KF)のデータのまとめ
【表13】
【0161】
ガラス転移温度
実施例1と同様に、加速条件下で保存したASDのガラス転移温度(Tg)を評価した。結果を表14に提供する。
表14.実施例2のASDについてのガラス転移(mDSC)のデータ(Tg)のまとめ
【表14】
結果は、各保存条件について、ASDのガラス転移温度は、概ね経時的に変化せず、ASDが物理的に安定であったことを示している。
【0162】
定量/関連物質
アジレントPoroshell HPH-C18 3.0mm×150mm×2.7μmカラムを使ったHPLCにより、ASDの定量及び関連物質(例えば、不純物)を評価した。おおよそ10mgに相当するASD粉末を正確に秤量して100mLメスフラスコに入れることにより、試料溶液を調製した。ASD粉末をおおよそ90mLのメタノール(MeOH):水(80:20)に溶解させた。次に、80:20のMeOH:水で試料フラスコの容積に合わせ、ASD粉末が完全に溶解するまでよく混ぜた。試料中の分析物(ニロチニブ)の最終濃度は、おおよそ0.1mg/mLである。装置の詳細及び測定条件を表15に明記する一方で、勾配プロファイルを表16に示す。
【0163】
表15.HPLC装置及び測定条件
【表15】
【0164】
表16.HPLC装置及び測定条件
【表16】
【0165】
スプレー後(t=0)及び各保存条件下での指定された安定性時点におけるASDについて、定量値を決定した。各保存条件についてのASDの測定された定量値を表17に示す。報告された定量値は、含水量で補正されていない。
表17.実施例2のASDについての定量(HPLC)のデータのまとめ
【表17】
【0166】
各保存条件下でのASDについての全関連物質の測定値を表18に示す。
表18.実施例2のASDについての全関連物質(HPLC)のデータのまとめ
【表18】
表17及び18に示されているように、ASDは、経時的にあまり変化しなかった、適度に高い定量値及び適度に低い関連物質の値を示した。これは、ASDが化学的に安定であったことを示している。
【0167】
実施例3.ニロチニブASD懸濁剤製剤の安定性
懸濁剤の形での本開示の実施形態の2つの医薬組成物の安定性を評価するための研究を行った。「組成物1」及び「組成物2」と表示されている、該2つの医薬組成物の成分を表19に示す。
表19.実施例3についての医薬組成物の成分
【表19】
【0168】
ASD粉末は、ニロチニブ遊離塩基(ASDの49.78質量%)、HPMC-AS(49.78%)、及びBHT(0.44%)を含んだ(調製したままのASDの分析により、BHTの量を定量した)。ASD粉末を、0.5mMクエン酸緩衝液中の0.5%メチルセルロースに混入して懸濁剤を形成することにより、組成物1を調製した。ブレンドになるまでASD及びソルプラス(北アメリカBASF製、商業的に入手可能)を混ぜて、続いて0.5mMクエン酸緩衝液中の0.5%メチルセルロースに混入して懸濁剤を形成することにより、組成物2を調製した。両組成物について、ニロチニブの公称濃度は、12.5mg/mLであった。
本研究をとおして、各組成物を、標準的な室温及び湿度において、実験台上の密閉容器内に保存した。上記の実施例2に記載のように、HPLCにより、各医薬組成物の定量を4時間の期間にわたって評価した。各医薬組成物について、測定された定量値を表20に提供する。
【0169】
表20.実施例3の組成物についての24時間の期間にわたる懸濁剤の定量のデータのまとめ
【表20】
上記の実施例1に記載のように、XRDにより、各医薬組成物の非晶性を、T=0、2、及び4において評価した。両医薬組成物は、ソルプラスの存否にかかわらず、本安定性研究の全体をとおして非晶質のままであった。
【0170】
実施例4.イヌのin vivo研究
従来のニロチニブの即時放出性製剤、例えば、タシグナIRカプセルを投与することにより得られたin vivoの曝露と比較して、本開示の医薬組成物(懸濁剤、カプセル剤、及び錠剤として調製)を使用して得られたin vivoの曝露に与える胃のpH及び食物の影響を調べるために、ビーグル犬において研究を行った。
選択された条件について、前処理を本研究に組み入れ、投与前にイヌの胃のpHを調整した。公開されたプロトコールに基づいて、イヌのペンタガストリン前処理によって、pHを1~2の範囲に制御する一方で、リン酸緩衝液前処理により、pHは2~3に達するであろう。
研究デサインを表21に提供する。区間A1とA3について、0.5mMクエン酸緩衝液(pH4)中の0.5%メチルセルロースを含むビヒクル中で、タシグナIRカプセルのデカンテーションした内容物を使用し、10mg/mLのニロチニブ濃度の懸濁剤(「タシグナ懸濁剤」)を調製した。区間B1について、タシグナIRカプセルから粉末形態でデカンテーションした内容物の量を秤量して5mg/kgの投与量を正確に提供し、続いて該秤量した粉末を、投与用の従来のゼラチンカプセルに充填した(「タシグナカプセル」)。
【0171】
区間B2、B3、B4、C2、及びC3は、50:50(w/w)のニロチニブ:HPMC-AS比のニロチニブ及びHPMC-ASを含むASD(上記の実施例2のように調製)を、以下のように調製した適切な医薬組成物に使用した。区間B2について、ASDを適切な賦形剤と混ぜ、スラッグ(slugging)により顆粒(15%のニロチニブの薬物負荷)に調製し、続いて適量の顆粒を投与用の従来のゼラチンカプセルに充填した(「ASDカプセル剤」)。区間B3とC3について、実施例3の組成物1(表19)に従って、ASD懸濁剤を調製した。区間B4について、顆粒(区間B2に関する)を従来の賦形剤と一緒にし、打錠機を使用して手動でスラッグ錠剤(7.7%のニロチニブの薬物負荷)に圧縮した(「ASD錠剤」)。区間C2について、実施例3の組成物2(表19)に従って、ソルプラスを含むASD懸濁剤を調製した。
区間C1について、ニロチニブASDが50:50(w/w)のニロチニブ:オイドラギットL100-55比のニロチニブ及びオイドラギットL100-55を含んだことを除き、実施例3の組成物2(表19)に従って、ASD懸濁剤を調製した。メタノール:THFの溶媒混合物(1:1 v/v)からエレクトロスプレーすることにより、この懸濁剤を調製した。
【0172】
表21.実施例4についてのイヌのin vivo研究デサイン
【表21】
【0173】
用量投与前にすべてのイヌを最低10時間絶食させた。動物には自由に水を摂取させた。各研究区間は、10匹のイヌを有した。本研究は、本研究の各区間の間の1週間の休薬期間後に同じイヌが各用量を受ける、クロスオーバー研究デザインを採用した。
絶食区間について、投与の最低12時間前から動物への食事を差し控えた。加えて、投与の2時間前に水を除いた。
摂食の研究区間A3について、投与前の5日間、動物を高脂肪食に順応させた。動物を一晩(最低10時間)絶食させ、続いてマクドナルドのベーコンエッグマックマフィンからなるピューレの事前に秤量した部分(~50グラム)を摂食させた。動物に食物を30分間消費させ、その後、あらゆる残っている食物を取り除き、被験物質(test articles)を投与した。
投与の4時間後、通常のイヌの固形飼料を動物に提供した。全研究区間について、投与の直後に水を提供した。
研究区間A1において、投与のおおよそ30分前に、各イヌにペンタガストリン(6μg/kg)の筋肉注射を受けさせ、絶食動物の胃のpHが酸性であること(pH1~2)を確実にした。
【0174】
リン酸緩衝液前処理を組み入れた研究区間について、投与前に、チューブによる胃管栄養法(gavage)によって、各イヌに25mLの100mMリン酸緩衝液(pH2.5)を受けさせた。投与後、各イヌに、洗い流し(flush)として10mLの緩衝液をさらに受けさせた。
各研究区間について、t=0において、5mg/kgニロチニブを送達するために、すべてのイヌに適切な研究製品の適切な経口投与量を受けさせた。投与の30分後、1時間後、1.5時間後、2時間後、3時間後、4時間後、6時間後、8時間後、12時間後、18時間後、及び24時間後に血液試料を採取した。
血漿濃度の時間経過から薬物動態パラメーターを算出した。Phoenix WinNonlin(v7.0)ソフトウェアを使用したノンコンパートメントモデル(non-compartmental model)によるAbsorption Systemsによって、薬物動態の分析を行った。データから、投与後のCmax及び最高血漿中薬物濃度到達時間(Tmax)を観察した。線形台形公式(linear trapezoidal rule)を使用し、定量化できるデータの最終時点まで算出し、無限大に外挿することで、AUCを算出した。終末消失相(terminal elimination phase)の0.693/傾きから、血漿半減期(t1/2)を算出した。モーメント曲線下面積(AUMC)をAUCで割ることにより、平均滞留時間(MRT)を算出した。定量限界(0.5ng/mL)未満である試料はすべて、薬物動態データ解析についてゼロとして扱った。
表22は、プールされたデータから算出された重要な薬物動態パラメーターを提供し、図1~4は、本研究の選ばれた区間の間の比較を示す。
【0175】
表22.実施例4のイヌのin vivo研究からの重要な薬物動態パラメーター
【表22】
*平均(SD)
【0176】
図1に示されているように、タシグナカプセル-絶食の曝露(区間B1)は、ペンタガストリンによる前処理の後のタシグナIR懸濁剤-絶食の曝露(区間A1)と比較して、劇的に減少した。かかる結果は、ペンタガストリン前処理は、胃のpHを低下させることにより、イヌの胃内のニロチニブの溶解性を増大させ、絶食状態における曝露を高めたことを示している。かかる結果はまた、100mMリン酸緩衝液(pH2.5)前処理は、絶食条件下でタシグナカプセルをより識別しやすいイヌの胃の状態を作り出すのに有効であったことを示している。
図2は、タシグナカプセル-絶食の曝露(区間B1)と、タシグナIR懸濁剤-摂食の曝露(区間A3)とを比較したものである。かかる結果は、リン酸緩衝液前処理を使用する本研究のプロトコールにより、従来の即時放出性のニロチニブについて、ヒトにおいて観察された既知の大きな正の食事の影響をイヌのモデルでうまく示すのを可能にする条件を作り出すことに成功したことを示している。かかる結果の統計分析は、絶食状態の投与後に対して、摂食状態の投与後に、Cmax(p値:<0.0001)及びAUC(p値:<0.0019)が、有意に向上したことを示している。
【0177】
図3は、pH~2.5の絶食条件下における、3つのニロチニブASD組成物(ASDカプセル剤-区間B2;ASD懸濁剤(HPMC-AS)-区間B3;ASD錠剤-区間B4)についての薬物動態プロファイルを、タシグナカプセル(区間B1)の薬物動態プロファイルとともに示す。絶食条件下で、3つのASD組成物はすべて、タシグナカプセルと比較して、曝露が増加した。ASD錠剤及びASDカプセル剤は、タシグナカプセルと比較して、Cmax及びAUCが増加したが、ASD懸濁剤(HPMC-AS)は、Cmax及びAUCの両方が有意に増加した。
図4は、pH~2.5の絶食条件下で投与された、3つのニロチニブASD懸濁剤組成物(ソルプラスを含む、ニロチニブ及びオイドラギットL100-55のASD懸濁剤-区間C1;ソルプラスを含む、ニロチニブ及びHPMC-ASのASD懸濁剤-区間C2;ニロチニブ及びHPMC-ASのASD懸濁剤-区間C3)についての薬物動態プロファイルを、タシグナカプセル(区間B1)の薬物動態プロファイルとともに示す。絶食条件下で、3つのASD懸濁剤組成物はすべて、タシグナカプセルと比較して、曝露が増加した。ソルプラスを含まないASD懸濁剤は、タシグナカプセルと比較して、Cmax及びAUCが増加したが、ソルプラスを含む2つの懸濁剤製剤は、Cmax及びAUCの両方が有意に増加した。
これらの結果は、本開示のニロチニブASDを使用して、絶食状態におけるニロチニブ曝露を増加させることができ、タシグナカプセルと比較して、より低い送達量及び食事の影響のプロファイルの改善を容易にする可能性があることを示している。
【0178】
実施例5.ヒトのin vivo研究
従来の商業的に入手可能な200mgタシグナIRカプセルの投与後に観察される薬物動態と比較して、実施例3の組成物1及び2の投与後に観察される薬物動態を評価し、及び医薬組成物の投与後に観察される薬物動態に対する食事の影響を評価するために、ヒト被験者において研究を行った。
表23に記載の計画に従って、健康な被験者(n=26)に、タシグナIRカプセル(200mg)、又は適切な量の実施例3の組成物1若しくは組成物2を経口投与した。本研究は、各被験者が、本研究の各期間中、各計画に参加するクロスオーバー研究デザインを採用した(タシグナIRカプセルは、製品のラベルに従い、摂食条件下で投与できないことに留意されたい)。
【0179】
表23.実施例5についてのヒトのin vivo投与計画
【表23】
【0180】
被験者は、投与の28日前までに、本研究に含めるためにスクリーニングした。各研究期間は、同じデサインに従った。被験者は、研究製品の投与日(1日目)の前日の朝に、臨床ユニットに入院し、該臨床ユニットにおいて適格性が審査及び確認された。最低10時間の一晩絶食の後、各期間の1日目の朝に被験者に投与し、該被験者に、投与後のおおよそ4時間の絶食を続けさせた。摂食計画では、高脂肪の朝食の開始から30分後に、被験者に投与した。経口投与の後、以下の時点で血漿試料を採取し、ニロチニブの血漿濃度を評価した:0(投与前)、0.5時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、8時間、10時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間、及び72時間。投与後の最初の48時間、被験者をその場に残らせ、投与後の72時間目に、薬物動態の血漿試料及び安全性評価のために、被験者を臨床ユニットに戻らせた。各研究期間の間に最低7日の休薬があった。
被験者が、絶食状態において、タシグナIRカプセルと、被験組成物1及び2の少なくとも1種とを受けた場合、かつ、投与後72時間までの薬物動態及び安全性のデータが得られた場合、該被験者は、薬物動態評価について評価可能と判断された。被験者が、摂食状態及び絶食状態の両方において被験組成物1及び2の少なくとも1種を(すなわち、両状態において、同じ組成物)、同じ投与量のレベルで受けた場合、かつ、投与後72時間までの薬物動態及び安全性データが得られた場合、該被験者は、食事の影響の評価について評価可能であると判断された。
【0181】
評価可能な被験者(n=24~26)についてプールされたデータを使用し、重要な薬物動態パラメーターを算出した。表24は、重要な薬物動態パラメーターの幾何平均を提供し、表25は、各計画の投与後の被験者における、投与量が調整されなかった相対的なバイオアベイラビリティ(Frel)の幾何平均を示す。計画A~Cの比較(図5を参照されたい)は、タシグナIRカプセル(計画A)が200mgのニロチニブを含み、組成物1(計画B)及び組成物2(計画C)が50mgのニロチニブしか含まなかったにもかかわらず、組成物1及び組成物2は、200mgタシグナIRカプセルのAUC及びCmaxと同等以上のAUC及びCmaxの値を示したことを示している。加えて、ソルプラスを含まなかった組成物1(計画B)は、組成物2(計画C)よりも高いAUC及びCmaxの値を示した。
計画BとDの間の比較(図6を参照されたい)は、絶食条件下での投与に対して、摂食条件下でのニロチニブ医薬組成物の投与は、ニロチニブの血漿濃度のレベルの明らかな上昇をもたらさなかったことを示している。これは、計画D(摂食条件下で投与された50mgの組成物1)により得られた濃度のレベル及び重要な薬物動態パラメーターが、計画B(絶食条件下で投与された50mgの組成物1)により得られたものと比べて、有意に向上しなかったためである(図6、表24及び25を参照されたい)。
計画EとFの比較(図7を参照されたい)において、同様の結果が明らかである。これは、計画F(摂食条件下で投与された65mgの組成物1)により得られたニロチニブの血漿濃度のレベル及び重要な薬物動態パラメーターが、計画E(摂食条件下で投与された65mgの組成物2)により得られたニロチニブの血漿濃度のレベル及び重要な薬物動態パラメーターの同等以下であったためである(表24及び25を参照されたい)。これらの結果は、本技術分野において知られている、従来の商業的に入手可能なニロチニブの即時放出性組成物(例えば、タシグナIRカプセル)と関連している食事の影響に照らして驚くべきことである。
【0182】
表24.タシグナIRカプセル及び選ばれた本開示の実施形態のニロチニブASD組成物の経口投与後の、健康なボランティアにおけるニロチニブの重要な薬物動態パラメーターの幾何平均(変動係数、又はCV%)
【表24】
【0183】
表25.本開示のニロチニブASD組成物の経口投与後の、健康なボランティアにおけるニロチニブの投与量が調整されなかった相対的なバイオアベイラビリティ(Frel)の幾何平均(CV%)
【表25】
* * * * *
【0184】
前述の記載は、明確な理解だけのために与えられ、かかる記載から不要な限定を理解すべきではない。本開示に対する様々な修正及び変更は、本開示の範囲と精神から乖離することなく、当業者にとって明らかになるであろう。本開示は、本明細書に記載の例示的な実施形態と実施例によって不当に限定されることを意図するものではなく、かかる実施例と実施形態は、単に例として表されるものであることを理解されたい。
本明細書を通じて、「ある実施形態(one embodiment、an embodiment、certain embodiments)」、又は「いくつかの実施形態」等への言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴(feature)、構成(configuration)、組成、又は特性(characteristic)が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通じて様々な箇所におけるこのような句の出現は、必ずしも本開示の同一の実施形態に言及しているわけではない。さらに、該特定の特徴、構成、組成、又は特性を、1以上の実施形態における任意の好適な方法で組み合わせ得る。
本明細書を通じてて、成分又は材料を含むと記載されている組成物である場合、他に記載がない限り、該組成物はまた、記載されている成分又は材料の任意の組み合わせから本質的になるか、又は記載されている成分又は材料の任意の組み合わせからなることができることを意図する。同様に、特定の工程を含むと記載されている方法である場合、他に記載がない限り、該方法はまた、記載されている工程の任意の組み合わせから本質的になるか、又は記載されている工程の任意の組み合わせからなることができることを意図する。
【0185】
本明細書に開示の方法の実施、及び該方法の個々の工程は、手動で、及び/又は電子機器の助けを借りて、若しくは電子機器による自動化で行うことができる。特定の実施形態を参照してプロセスについて説明してきたが、当業者は、該方法と関連している行為を行う別の方法を行うことができることを容易に理解するであろう。他に記載がない限り、例えば、該方法の範囲又は精神から乖離することなく、様々な工程の順番を変更し得る。加えて、個々の工程をいくつか組み合わせたり、省略したり、又は追加の工程に更に細分したりすることができる。
用語「含む(comprises)」、並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」などの変形語は、明細書の記載及び請求項に現われる場合、限定的な意味を有しない。このような用語は、記載されたの工程若しくは要素、又は記載された工程若しくは要素の群を含むことを示唆するが、他の工程若しくは要素、又は他の工程若しくは要素の群の除外を示唆しないと理解されるであろう。
【0186】
「からなる」(consists of、consisting of)は、句「からなる」の前のあらゆるものを含み、それに限定されることを意味する。したがって、句「からなる」は、示されている要素が必要又は必須であり、かつ、他の要素が存在する場合はないことを示す。「から本質的になる」(consists essentially of、consisting essentially of)は、その句の前に示されているあらゆる要素を含み、その示されている要素について本開示において明記されている活性若しくは作用を妨げない他の要素、又は該活性若しくは作用に寄与しない他の要素に限定されることを意味する。したがって、句「から本質的になる」は、示されている要素が必要又は必須であるが、他の要素は任意であり、その示されている要素の活性若しくは作用に実質的な影響を及ぼすか否かに応じて存在し得るか又は存在しないことを示す。
単語「好ましい」及び「好ましくは」は、特定の状況下で、あるベネフィットを与え得る本開示の実施形態を指す。しかしながら、同一又は他の状況下で、他の実施形態も好ましい場合がある。さらに、1以上の好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が役に立たないことを示唆するものではないし、本開示の範囲から他の実施形態を除外することを意図するものでもない。
【0187】
本願において、「1(a、an)」及び「該、前記(the)」などの用語は、単数の実体のみを指すことを意図するものではなく、説明のために使用できる具体例の一般的なクラスも含む。用語「1」、及び「該、前記」は、用語「少なくとも1(少なくともone)」と交換可能に使用されている。句「少なくとも1」及び「少なくとも1を含む」の前後にリストがある場合には、該リストにおける項目のいずれか1つ、及び該リストにおける2以上の項目の任意の組み合わせを指す。
本明細書において使用されているように、用語「又は、若しくは、或いは(or)」は、文脈において他に明確な規定がない限り、一般的には、「及び/又は」を含む該用語の通常の意味で使用されている。用語「及び/又は」は、示されている要素の1つ若しくは全部、又は示されている要素の任意の2以上の組み合わせを意味する(例えば、苦痛を予防及び/又は治療することは、苦痛を予防すること、苦痛を治療すること、又は苦痛を治療し、かつ予防することを意味する)。
【0188】
また、本明細書において、すべての数は、用語「約」、好ましくは用語「正確に」により修飾されると想定されている。測定量に関して本明細書において使用されているように、用語「約」は、測定を行い、測定の目的及び使用する測定装置の精度に見合うレベルの注意を払う当業者が予想する測定量の変動を指す。本明細書において、ある数「まで」(例えば、50まで)は、その数(例えば、50)を含む。また、本明細書において、端点による数値範囲の記載は、該範囲内に包含されるすべての数及び端点(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5等を含む)、並びにあらゆる部分的な範囲(例えば、1~5は、1~4、1~3、2~4等を含む)を含む。
【0189】
本明細書において引用されている特許、特許公報、及び刊行物の完全な開示は、それぞれが個別に含まれているかのように、それらの全体が参照として本明細書に含まれる。本開示と、参照として本開示に含まれるあらゆる文書との間に矛盾又は不一致がある限りでは、本開示の記載を優先する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】