IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リクイッド エックス プリンティッド メタルズ インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】力センサ制御式伝導加熱素子
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/12 20060101AFI20230323BHJP
   B41M 1/30 20060101ALI20230323BHJP
   B41M 3/00 20060101ALI20230323BHJP
   B41M 3/06 20060101ALI20230323BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230323BHJP
   H05K 1/16 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
H05K3/12 630Z
B41M1/30 Z
B41M3/00 Z
B41M3/06 J
B41M1/30 D
B41J2/01 125
H05K1/16 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022546501
(86)(22)【出願日】2021-02-01
(85)【翻訳文提出日】2022-09-28
(86)【国際出願番号】 US2021016080
(87)【国際公開番号】W WO2021155370
(87)【国際公開日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】62/967,858
(32)【優先日】2020-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/967,883
(32)【優先日】2020-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/968,007
(32)【優先日】2020-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】520307078
【氏名又は名称】リクイッド エックス プリンティッド メタルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【弁理士】
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】グウェンゴ チェンゲット
(72)【発明者】
【氏名】スウィッシャー ロバート
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー オリン
(72)【発明者】
【氏名】ベイブ ウイリアム
(72)【発明者】
【氏名】ヴァジー ベス
(72)【発明者】
【氏名】ペトラック クリスティアナ
(72)【発明者】
【氏名】ベイブ グレゴリー
【テーマコード(参考)】
2C056
2H113
4E351
5E343
【Fターム(参考)】
2C056EC13
2C056EC29
2C056EC36
2C056FB05
2C056HA46
2H113AA01
2H113AA03
2H113AA06
2H113BA00
2H113BA01
2H113BA03
2H113BB06
2H113BB08
2H113BB18
2H113BB19
2H113BB22
2H113BC12
2H113CA17
2H113DA03
2H113DA25
2H113DA43
2H113DA57
2H113DA63
2H113EA02
2H113EA06
2H113EA09
2H113EA19
2H113FA23
4E351AA02
4E351AA04
4E351AA16
4E351BB31
4E351CC11
4E351DD04
4E351DD05
4E351DD06
4E351DD20
4E351DD29
4E351GG20
5E343AA16
5E343AA33
5E343BB23
5E343BB24
5E343BB25
5E343BB49
5E343BB58
5E343BB72
5E343DD02
5E343ER32
5E343GG20
(57)【要約】
フレキシブル基板上に抵抗加熱器及び力感知素子を形成する方法と、車両内の座席加熱器のような力応答性伝導加熱器を提供するためにこれらの要素を含むデバイスとを本明細書に説明する。本方法は、印刷工程の前及び/又は中に30℃から90℃まで加熱されるフレキシブル基板上に導電性インクを印刷する段階と、基板を硬化させてその上に導電パターンを生成する段階とを含む。導電性インクは、一般的に、少なくとも1つの金属錯体及び溶媒から調合された無粒子金属錯体組成物と、任意的に導電性充填剤材料とを含む。
【選択図】 図34
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷されたフレキシブル電子素子を形成する方法であって、
少なくとも1つのパターンを形成するために前記フレキシブル基板上に導電性インクを堆積させる段階と、
少なくとも1つの導電パターンを形成するために前記少なくとも1つのパターン内の前記導電性インクを硬化させる段階と、
任意的に、保護誘電体コーティングを用いて前記導電パターンの少なくとも一部分を被覆する段階と、
を備え、
前記電子素子は、力センサ、抵抗加熱器、又は力センサ制御式抵抗加熱器の少なくとも一部分を形成する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記導電性インクを堆積させる段階は、40℃から80℃のような30℃から90℃の温度まで加熱される前記フレキシブル基板上にインクジェット印刷する段階によるものであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記導電性インクを堆積させる段階は、2又は3以上の層を印刷する段階を備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記導電パターンは、0.2mm未満のインク滲み及び5Ω/□未満の抵抗のような0.5mm未満のインク滲み及び10Ω/□未満の抵抗を示すことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記導電パターンを形成するために前記導電性インクを硬化させる段階は、20分未満の時間にわたって200℃よりも低い温度で加熱する段階、2-20パルスのパルス光への露出、赤外線への露出、又はそのいずれかの組合せによるものであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記フレキシブル基板は、酸素プラズマ、コロナ、保護コーティング、又はその組合せを用いて前処理されたテキスタイルであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記フレキシブル基板は、ポリエステル、ポリアミド、スパンデックス、ナイロン、Evolon(登録商標)、エラスタン、綿、セルロース、絹、木材、羊毛、革、又はそれらの配合物の繊維を備える編み、織り、又は不織の織物を備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記導電性インクは、
少なくとも1つの金属錯体であって、
少なくとも1つの金属、
前記金属に対するシグマドナーであり、かつ前記金属錯体を加熱する時に揮発する少なくとも1つの第1のリガンド、及び
前記第1のリガンドとは異なり、かつ前記金属錯体を加熱する時に揮発する少なくとも1つの第2のリガンド、
を備える前記少なくとも1つの金属錯体と、
溶媒と、
を備える無粒子金属錯体組成物、
を備え、
前記金属錯体は、前記溶媒内で少なくとも250mg/mlの25℃で測定された溶解度を有し、
前記少なくとも1つの金属、前記少なくとも1つの第1のリガンド、及び前記少なくとも1つの第2のリガンドは、前記導電性インク内に化学量論量で提供される、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記導電性インクは、前記導電パターンを形成するために硬化した後に前記フレキシブル基板上にナノ粒子を形成することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記導電性インクは、少なくとも1つの導電性充填剤材料を更に備え、
前記少なくとも1つの金属錯体及び前記少なくとも1つの導電性充填剤材料は、50:50から99:1の金属錯体対導電性充填剤材料の比で前記導電性インクに提供される、
ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記導電性インクの前記溶媒は、有機溶媒を備えることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記導電性インクの前記溶媒は、1又は2以上の極性プロトン性溶媒を備え、
前記1又は2以上の極性プロトン性溶媒は、水、アルコール、及びアミンのうちの1又は2以上を備える、
ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記導電性インクの前記溶媒は、アルコール又はアミン、グリコール、導電性充填剤可溶化剤、及び水を備えることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記導電性充填剤可溶化剤は、N-メチル-2-ピロリドンを備えることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの導電性充填剤材料は、導電性ポリマー、金属酸化物、又はカーボンベースの材料のうちの1又は2以上を備えることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記導電性ポリマーは、ポリピロール(PPy)、ポリ[3,4-エチレンジオキシチオフェン](PEDOT)、ポリアセチレン、ポリチオフェン(PT)、ポリフェニレン、ポリアニリン(PANI)、又はポリフェニレンエチレンのうちの1又は2以上を備えることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記カーボンベースの材料は、グラフェン、カーボンブラック、グラファイト、又はカーボンナノチューブのうちの1又は2以上を備えることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記導電性インクは、
50:50から99:1の金属錯体対導電性充填剤材料の比で提供された10-40重量%の前記導電性充填剤材料及び前記金属錯体、
2-10重量%のアルコール又はアミン、
2-15重量%のグリコール、
10-25重量%の導電性充填剤可溶化剤、及び
40-70重量%の水、
を備える、
ことを特徴とする請求項12から請求項17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記導電性インクは、結合剤、界面活性剤、分散剤、及び染料のうちの1又は2以上から選択された0.1%から5%の添加剤を更に備えることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項20】
フレキシブル抵抗加熱器であって、
電流を伝達して熱を発生させるように構成された少なくとも1つの導電パターンがその上に印刷されたフレキシブル基板、
を備え、
前記少なくとも1つの導電パターンは、前記フレキシブル基板上に導電性インクを用いて印刷され、かつ90%よりも多い金属を備え、
前記フレキシブル基板は、フレキシブルテキスタイル又はポリマーフィルムである、
ことを特徴とする抵抗加熱器。
【請求項21】
前記導電性インクを用いて印刷された少なくとも1つのバスを更に備え、
前記少なくとも1つのバスは、前記少なくとも1つの導電パターンに電気的に接続され、かつ加熱器コントローラ及び電源への接続を提供するように構成される、
ことを特徴とする請求項20に記載の抵抗加熱器。
【請求項22】
前記フレキシブル基板は、ポリエステル、ポリアミド、スパンデックス、ナイロン、Evolon(登録商標)、エラスタン、綿、セルロース、絹、木材、羊毛、革、又はそれらの配合物の繊維を備える編み、織り、又は不織の織物を備え、
前記ポリマーフィルムは、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、又はポリアミドイミドのフィルムを備える、
ことを特徴とする請求項20に記載の抵抗加熱器。
【請求項23】
前記少なくとも1つの導電パターンは、5-15ボルト電気システムに接続された時に、1-30オームの抵抗率を有するように、-40℃から60℃で10-400ワット/平方メートルを発生するように、少なくとも400ワット/平方メートルの電力密度を伝達するように、及び/又は約0.1℃/秒から約1℃/秒の速度で熱くなるように構成されることを特徴とする請求項20から請求項22のいずれか1項に記載の抵抗加熱器。
【請求項24】
前記導電性インクは、
少なくとも1つの金属錯体であって、
少なくとも1つの金属、
前記金属に対するシグマドナーであり、かつ前記金属錯体を加熱する時に揮発する少なくとも1つの第1のリガンド、及び
前記第1のリガンドとは異なり、かつ前記金属錯体を加熱する時に揮発する少なくとも1つの第2のリガンド、
を備える前記少なくとも1つの金属錯体と、
溶媒と、
を備える無粒子金属錯体組成物、
を備え、
前記金属錯体は、前記溶媒内で少なくとも250mg/mlの25℃で測定された溶解度を有し、
前記少なくとも1つの金属、前記少なくとも1つの第1のリガンド、及び前記少なくとも1つの第2のリガンドは、前記導電性インクに化学量論量で提供され、
前記導電性インクは、前記導電パターンを形成するために硬化した後に前記フレキシブル基板上にナノ粒子を形成する、
ことを特徴とする請求項20に記載の抵抗加熱器。
【請求項25】
前記導電性インクは、少なくとも1つの導電性充填剤材料を更に備え、
前記少なくとも1つの金属錯体及び前記少なくとも1つの導電性充填剤材料は、50:50から99:1の金属錯体対導電性充填剤材料の比で前記導電性インクに提供される、
ことを特徴とする請求項24に記載の抵抗加熱器。
【請求項26】
前記導電性インクの前記溶媒は、アルコール又はアミン、グリコール、導電性充填剤可溶化剤、及び水を備えることを特徴とする請求項25に記載の抵抗加熱器。
【請求項27】
前記導電性充填剤可溶化剤は、N-メチル-2-ピロリドンを備えることを特徴とする請求項26に記載の抵抗加熱器。
【請求項28】
前記少なくとも1つの導電性充填剤材料は、導電性ポリマー、金属酸化物、又はカーボンベースの材料のうちの1又は2以上を備えることを特徴とする請求項25に記載の抵抗加熱器。
【請求項29】
前記導電性ポリマーは、ポリピロール(PPy)、ポリ[3,4-エチレンジオキシチオフェン](PEDOT)、ポリアセチレン、ポリチオフェン(PT)、ポリフェニレン、ポリアニリン(PANI)、又はポリフェニレンエチレンのうちの1又は2以上を備え、
前記カーボンベースの材料は、グラフェン、カーボンブラック、グラファイト、又はカーボンナノチューブのうちの1又は2以上を備える、
ことを特徴とする請求項28に記載の抵抗加熱器。
【請求項30】
前記導電性インクは、
50:50から99:1の金属錯体対導電性充填剤材料の比で提供された10-40重量%の前記導電性充填剤材料及び前記金属錯体、
2-10重量%のアルコール又はアミン、
2-15重量%のグリコール、
10-25重量%の導電性充填剤可溶化剤、及び
40-70重量%の水、
を備える、
ことを特徴とする請求項28又は請求項29に記載の抵抗加熱器。
【請求項31】
フレキシブル力センサであって、
導電性インクを用いて第1のフレキシブル基板上に印刷された少なくとも1つの電極を備える電極層と、
分離距離を有する間隙によって前記電極層から分離された第2のフレキシブル基板上の導電層と、
を備え、
前記フレキシブル力センサが、該力センサの長手方向の延びに対して垂直な方向の前記電極層及び導電層の圧縮時に電気信号を開始するように構成される、
ことを特徴とする力センサ。
【請求項32】
前記少なくとも1つの電極、送受信機、及びコントローラに接続された制御回路を更に備え、
前記制御回路は、前記電気信号を前記送受信機に伝達するようにかつ登録された力又は抵抗変化を前記コントローラに通信するように構成される、
ことを特徴とする請求項31に記載の力センサ。
【請求項33】
前記電極層は、前記フレキシブル基板の第1の側に印刷された少なくとも2つの電極を備えることを特徴とする請求項31に記載の力センサ。
【請求項34】
前記導電層は、第2のフレキシブル基板の第1の側に導電ストリップを備え、
前記導電層の前記導電ストリップは、前記電極層の前記少なくとも2つの電極に面している、
ことを特徴とする請求項33に記載の力センサ。
【請求項35】
前記間隙は、メッシュ織物、前記基板層のうちの1つに対するエンボス加工、前記電極の領域に開口部を備えるポリマーフィルムのような材料フレーム、ドット又はビーズ、又はそのいずれかの組合せによって維持されることを特徴とする請求項31に記載の力センサ。
【請求項36】
前記分離距離は、少なくとも20ミクロン、又は少なくとも40ミクロン、又は少なくとも60ミクロン、又は少なくとも100ミクロンのような少なくとも10ミクロンであることを特徴とする請求項31に記載の力センサ。
【請求項37】
前記電極層及び前記導電層は、前記第1及び第2の電極を備える領域の外側でホットメルト結合フィルム、感圧結合フィルム、感圧接着剤によって又は縫製によって結合されることを特徴とする請求項31に記載の力センサ。
【請求項38】
前記導電性インクは、
少なくとも1つの金属錯体であって、
少なくとも1つの金属、
前記金属に対するシグマドナーであり、かつ前記金属錯体を加熱する時に揮発する少なくとも1つの第1のリガンド、及び
前記第1のリガンドとは異なり、かつ前記金属錯体を加熱する時に揮発する少なくとも1つの第2のリガンド、
を備える前記少なくとも1つの金属錯体と、
溶媒と、
を備える無粒子金属錯体組成物、
を備え、
前記金属錯体は、前記溶媒内で少なくとも250mg/mlの25℃で測定された溶解度を有し、
前記少なくとも1つの金属、前記少なくとも1つの第1のリガンド、及び前記少なくとも1つの第2のリガンドは、前記導電性インクに化学量論量で提供される、
ことを特徴とする請求項31に記載の力センサ。
【請求項39】
前記導電性インクは、前記導電パターンを形成するために硬化した後に前記フレキシブル基板上にナノ粒子を形成することを特徴とする請求項38に記載の力センサ。
【請求項40】
前記導電ストリップは、無粒子金属錯体組成物を備える導電性インク、抵抗性カーボンベースのインク、導電性塗料、酸化インジウムスズ(ITO)、又はその組合せを用いて印刷され、又はポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)、カーボンナノチューブベースの薄膜(CNT)、カーボン装荷熱可塑性ポリマー、カーボン装荷シリコーン、カーボン装荷ポリマー箔、ベロスタット、又はそのいずれかの組合せのうちのいずれかを備えることができることを特徴とする請求項34に記載の力センサ。
【請求項41】
前記抵抗性カーボンは、高抵抗性又は低抵抗性のうちの一方であることを特徴とする請求項40に記載の力センサ。
【請求項42】
前記フレキシブル基板及び前記第2のフレキシブル基板は、ポリエステル、ポリアミド、スパンデックス、ナイロン、Evolon(登録商標)、エラスタン、綿、セルロース、絹、木材、羊毛、革、又はそれらの配合物から構成される群から個々に選択されることを特徴とする請求項34に記載の力センサ。
【請求項43】
前記導電性インクは、前記フレキシブル基板の繊維を共形的に被覆することを特徴とする請求項42に記載の力センサ。
【請求項44】
力センサ制御式抵抗加熱器であって、
電流を伝達して熱を発生させるように構成された少なくとも1つの導電パターンが第1の導電性インクを用いてその上に印刷された第1のフレキシブル基板、及び
前記導電性インクを用いて印刷された少なくとも1つのバスであって、前記少なくとも1つの導電パターンに電気的に接続され、かつ電源への接続を提供するように構成された前記少なくとも1つのバス、
を備える抵抗加熱器と、
第2の導電性インクを用いて少なくとも1つの電極が第2のフレキシブル基板上に印刷された電極層、及び導電層を備える力センサであって、前記電極層及び前記導電層が、分離距離を有する間隙によって分離され、前記フレキシブル力センサが、該力センサの長手方向の延びに対して垂直な方向の前記電極層及び前記導電層の圧縮時に電気信号を開始するように構成される、前記力センサと、
前記力センサの前記少なくとも1つの電極に接続され、かつ該力センサからの前記電気信号をコントローラに伝達するように構成された制御回路と、
を備え、
前記コントローラデバイスは、前記力センサからの前記電気信号に少なくとも部分的に基づいて前記電源から前記抵抗加熱器への電力の供給を制御するために加熱器コントローラと通信するように構成される、
ことを特徴とする力センサ制御式抵抗加熱器。
【請求項45】
前記抵抗加熱器の前記少なくとも1つの導電パターンの少なくとも一部分が、保護誘電体コーティングを用いてオーバーコートされることを特徴とする請求項44に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項46】
5-15ボルト電気システムに接続された時に、前記抵抗加熱器の前記少なくとも1つの導電パターンは、1-30オームの抵抗率を有するように、-40℃から60℃で10-400ワット/平方メートルを発生するように、約0.1℃/秒から約1℃/秒の速度で熱くなるように、及び/又は少なくとも400ワット/平方メートルの電力密度を伝達するように構成されることを特徴とする請求項44に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項47】
前記力センサの前記電極層は、前記第2のフレキシブル基板の第1の側に印刷された少なくとも2つの電極を備えることを特徴とする請求項44に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項48】
前記力センサの前記導電層は、第3のフレキシブル基板の第1の側に導電ストリップを備え、
前記導電層の前記導電ストリップは、前記電極層の前記少なくとも2つの電極に面している、
ことを特徴とする請求項47に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項49】
前記力センサの前記導電ストリップは、前記第1又は第2の導電性インク、抵抗性カーボンベースのインク、導電性塗料、酸化インジウムスズ(ITO)、又はその組合せを用いて印刷され、又はポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)、カーボンナノチューブベースの薄膜(CNT)、カーボン装荷熱可塑性ポリマー、カーボン装荷シリコーン、カーボン装荷ポリマー箔、ベロスタット、又はそのいずれかの組合せのうちのいずれかを備えることができることを特徴とする請求項48に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項50】
前記抵抗性カーボンは、高抵抗性又は低抵抗性のうちの一方であることを特徴とする請求項49に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項51】
前記間隙は、メッシュ織物、前記基板層のうちの1つに対するエンボス加工、前記電極の領域に開口部を備えるポリマーフィルムのような材料フレーム、ドット又はビーズ、又はそのいずれかの組合せによって維持されることを特徴とする請求項44に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項52】
前記分離距離は、少なくとも20ミクロン、又は少なくとも40ミクロン、又は少なくとも60ミクロン、又は少なくとも100ミクロンのような少なくとも10ミクロンであることを特徴とする請求項44に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項53】
前記第1及び第2のフレキシブル基板は、ポリエステル、ポリアミド、スパンデックス、ナイロン、Evolon(登録商標)、エラスタン、綿、セルロース、絹、木材、羊毛、革、又はそれらの配合物から構成される群から個々に選択されることを特徴とする請求項44に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項54】
前記第1及び第2の導電性インクは、前記フレキシブル基板の繊維を共形的に被覆することを特徴とする請求項53に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項55】
前記第1及び第2の導電性インクは、
少なくとも1つの金属錯体であって、
少なくとも1つの金属、
前記金属に対するシグマドナーであり、かつ前記金属錯体を加熱する時に揮発する少なくとも1つの第1のリガンド、及び
前記第1のリガンドとは異なり、かつ前記金属錯体を加熱する時に揮発する少なくとも1つの第2のリガンド、
を備える前記少なくとも1つの金属錯体と、
溶媒と、
を備える無粒子金属錯体組成物、
を備え、
前記金属錯体は、前記溶媒内で少なくとも250mg/mlの25℃で測定された溶解度を有し、
前記少なくとも1つの金属、前記少なくとも1つの第1のリガンド、及び前記少なくとも1つの第2のリガンドは、前記導電性インクに化学量論量で提供される、
ことを特徴とする請求項44に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項56】
前記第1及び第2の導電性インクは、堆積前は無粒子であり、かつ導電金属を形成するために硬化した後にナノ粒子を形成することを特徴とする請求項44に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項57】
前記第2の導電性インクは、少なくとも1つの導電性充填剤材料を更に備え、
前記少なくとも1つの金属錯体及び前記少なくとも1つの導電性充填剤材料は、50:50から99:1の金属錯体対導電性充填剤材料の比で前記導電性インクに提供される、
ことを特徴とする請求項55に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項58】
前記第1の導電性インクの前記溶媒は、1又は2以上の極性プロトン性溶媒を備え、
前記1又は2以上の極性プロトン性溶媒は、水、アルコール、及びアミンのうちの1又は2以上を備える、
ことを特徴とする請求項55に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項59】
前記第2の導電性インクの前記溶媒は、アルコール又はアミン、グリコール、導電性充填剤可溶化剤、及び水を備えることを特徴とする請求項57に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項60】
前記導電性充填剤可溶化剤は、N-メチル-2-ピロリドンを備えることを特徴とする請求項59に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項61】
前記少なくとも1つの導電性充填剤材料は、導電性ポリマー、金属酸化物、又はカーボンベースの材料のうちの1又は2以上を備えることを特徴とする請求項57に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項62】
前記導電性ポリマーは、ポリピロール(PPy)、ポリ[3,4-エチレンジオキシチオフェン](PEDOT)、ポリアセチレン、ポリチオフェン(PT)、ポリフェニレン、ポリアニリン(PANI)、又はポリフェニレンエチレンのうちの1又は2以上を備え、
前記カーボンベースの材料は、グラフェン、カーボンブラック、グラファイト、又はカーボンナノチューブのうちの1又は2以上を備える、
ことを特徴とする請求項61に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項63】
前記第2の導電性インクは、
50:50から99:1の金属錯体対導電性充填剤材料の比で提供された10-40重量%の前記導電性充填剤材料及び前記金属錯体、
2-10重量%のアルコール又はアミン、
2-15重量%のグリコール、
10-25重量%の導電性充填剤可溶化剤、及び
40-70重量%の水、
を備える、
ことを特徴とする請求項61又は請求項62に記載のセンサ制御式加熱器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
本出願は、全てが2020年1月30日出願で先願の「織物ベースの力センサ」という名称の米国仮特許出願第62/967、858号、「フレキシブル伝導加熱素子」という名称の米国仮特許出願第62/967、883号、及び「力センサ制御式伝導加熱素子」という名称の米国仮特許出願第62/968、007号の「35 U.S.C.§119(e)」の下での利益を主張するものであり、各々の内容全体は、本明細書に組み込まれている。
【0002】
この開示は、一般的に、導電性インクと、導電性インクをフレキシブル基板上に印刷する方法と、導電パターンが印刷されたフレキシブル基板と、加熱素子、力センサ、及びこれらの素子を組み合わせてセンサ制御式伝導加熱素子を提供するデバイスのようなフレキシブルプリント電子機器とに関する。
【背景技術】
【0003】
プリント電子機器は、広範な製品の中への複合的電子機能の統合を提供する世界で最も急速に成長している技術の1つである。適切なインクは、これらのプリント電子機器の製造に対して不可欠であり、導電性インクは、様々な電極のための最も重要な材料であると考えられている。一般的には、導電金属ナノ粒子から構成される導電性インクは、一連の印刷システム及び技術を使用して基板を印刷又は被覆するのに使用され、望ましい形状を有する金属トレース又はワイヤを形成するための乾燥又は焼結段階がそれに続く。これらのインクは、ガラスのような基板上に導電経路を設けるための従来方法に伴う困難の一部に対するソリューションを提供するが、それらは、インクを硬化させるのに使用される高温焼結温度で溶融又は変形する場合があるテキスタイルに一般的に適しておらず、及び/又はそれらがテキスタイルの曲げ又は延伸時に導電性の低下を頻繁に示すのでフレキシブル基板に適さない。
【0004】
それにも関わらず、電子テキスタイル又は「e-テキスタイル」のようなフレキシブル電子機器における現在の関心は、広範な電子素子の開発に至っている。例えば、米国特許出願公開第2018/0132310号明細書は、テキスタイルの織物内への金属ナノワイヤの包含によって形成された伝導加熱素子を説明しており、米国特許第7、132、630号明細書は、印加電圧を用いた抵抗加熱を提供するためにテキスタイル内への導電性ポリアニリン繊維の包含を説明している。欧州特許出願公開第0302590号明細書は、ピロール又はアニリン化合物の水溶液を織物に付加することによって形成された導電性織物を説明しており、その結果、布織物内のピロール又はアニリンの重合が抵抗加熱器を提供する。
【0005】
力抵抗センサも従来技術に説明されているが、一般的に剛性かつ非延伸性であり、e-テキスタイルに特に関連のある限界である。そのような素子は、ユーザの歩行、圧力分布、及び/又は回内に関するデータを発生させるために靴の靴底又は中底に含まれている。例えば、靴の中敷上に使用するためのピエゾ抵抗圧力センサを説明している米国特許第6、155、120号明細書及び第6、516、545号明細書を参照されたい。センサは、メッシュ織物の上層及び下層を導電性カーボンブラック粒子材料で含浸し、その間にピエゾ抵抗性材料を置くことによって形成される。電気抵抗性カーボンインクの第1の面と導電性銀インクの第2の面との間を延びる位置合わせされた導電粒子の縦列としての絶縁導電経路を開示している米国特許第5、408、873号明細書も参照されたい。
【0006】
米国特許第6、543、299号明細書、米国特許第8、161、826号明細書、及び米国特許第8、661、915号明細書に開示されているようなよりフレキシブルな力センサは、ピエゾ抵抗性材料で覆われた導電性ワイヤコアの横列及び縦列から形成された圧力変換器アレイを含み、米国特許第10、180、721号明細書は、圧縮性ポリマー基板上に導電ストランドの電極を用いて形成した織物ベースの力センサを説明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開2018/0132310号明細書
【特許文献2】米国特許第7、132、630号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0302590号明細書
【特許文献4】米国特許第6、155、120号明細書
【特許文献5】米国特許第6、516、545号明細書
【特許文献6】米国特許第5、408、873号明細書
【特許文献7】米国特許第6、543、299号明細書
【特許文献8】米国特許第8、161、826号明細書
【特許文献9】米国特許第8、661、915号明細書
【特許文献10】米国特許第10、180、721号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2019/0249026号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2020/0369061号明細書
【特許文献13】米国特許出願公開第2011/0111138号明細書
【特許文献14】米国特許出願公開第2013/0236656号明細書
【特許文献15】米国特許出願公開第2020/0369061号明細書
【特許文献16】米国特許第9、487、669号明細書
【特許文献17】米国特許第9、920、212号明細書
【特許文献18】米国特許第10、738、211号明細書
【特許文献19】米国特許出願公開第2020/0283653号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらのソリューションのある一定のものは、フレキシブル抵抗加熱器及び力センサを提供するが、各々は、織られてフレキシブル基板内に導電素子を形成する材料の導電ストランドの使用、又はフレキシブル基板が曲げ及び延伸のような法線応力を受ける時に性能が落ちる導電性インクの使用を説明している。従って、テキスタイルと一体化したフレキシブル電子素子を提供するインク及び方法を開発する必要性が当業技術に依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に説明するのは、導電性インクと、それらのインクをテキスタイルのようなフレキシブル基板上に印刷してフレキシブルプリント電子機器を形成する方法とである。従って、本発明の開示は、導電性インクと、それらのインクをフレキシブル基板上に印刷して導電パターンを形成する方法と、それらの導電パターンを備えるセンサ、電極、トレース、アンテナ、及び加熱素子などのようなフレキシブルプリント電子機器とに関する。
【0010】
導電性インクは、少なくとも1つの金属錯体と溶媒とを備えるほぼ無粒子の溶液である。導電性インクは、導電性充填剤材料のような追加の成分を備える場合がある。堆積時に、導電性インクは、基板、特にテキスタイル基板の繊維を共形的に被覆する。硬化後に、導電性インクは、金属ナノ粒子を備える連続導電コーティングを形成する。
【0011】
無粒子金属錯体組成物の少なくとも1つの金属錯体は、一般的に、少なくとも1つの金属、少なくとも1つの第1のリガンド、及び少なくとも1つの第2のリガンドを備える。例示的金属は、銀、金、白金、及び銅を含む。例示的な第1のリガンドは、アミン及び硫黄含有化合物を含み、例示的な第2のリガンドは、カルボン酸、ジカルボン酸、及びトリカルボン酸を含む。
【0012】
導電性充填剤材料は、導電性ポリマー、金属酸化物、又はカーボンベースの材料のうちの1又は2以上を備えることができる。例示的導電性充填剤材料は、少なくともカーボンブラック、グラファイト、ポリピロール(PPy)、ポリ[3,4-エチレンジオキシチオフェン](PEDOT)、ポリアセチレン、ポリチオフェン(PT)、グラフェン、ポリフェニレン、カーボンナノチューブ(CNT)、ポリアニリン(PANI)、及びポリフェニレンエチレンを含む。導電性充填剤が導電性インクに含められる時に、少なくとも1つの金属錯体と少なくとも1つの導電性充填剤は、50:50から99:1の金属錯体対導電性充填剤材料の比で与えることができる。
【0013】
溶媒は、炭化水素溶媒である場合がある。これに代えて、溶媒は、少なくとも水、アルコール、アミン、アミノアルコール、ポリオール、及びその組合せを備える群から選択された少なくとも2つの極性プロトン性溶媒のような1又は2以上の極性プロトン性溶媒を備える場合があり、かつ炭化水素溶媒を実質的に含まない場合がある。
【0014】
金属錯体は、少なくとも50mg/ml、又は少なくとも250mg/ml、又は少なくとも500mg/ml、又は少なくとも1,000mg/ml、又は少なくとも1,500mg/ml、又は少なくとも2,000mg/mlの溶媒内25℃での溶解度を有することができる。
【0015】
導電性インクを印刷する方法は、一般的に、導電性インクをフレキシブル基板上に堆積させる段階と、基板を硬化させてその上に導電パターンを生成する段階とを備える。フレキシブル基板を硬化させる段階は、基板を熱及び/又は光に露出することによって達成することができる。例えば、基板は、250℃よりも低い、又は200℃よりも低い、又は150℃よりも低い温度のような熱への露出によって硬化させることができる。これに代えて又はこれに加えて、硬化させる段階は、2から20パルスの光への露出によるようなテキスタイル基板を照射する段階、例えば、フォトニック硬化段階を含むことができ、又は赤外線照射への露出を含む場合がある。
【0016】
硬化した状態で、基板上の導電パターンは、5Ω/□、2Ω/□、1Ω/□ほども低い又は更に低いシート抵抗を有することができる。基板上の導電パターンは、少なくとも5,000S/m、又は少なくとも10,000S/m、又は少なくとも50,000S/m、又は少なくとも100,000S/m、又は少なくとも1,000,000Sm、又は少なくとも10,000,000S/m、又は更に2x107S/mのような少なくとも1,000S/mの導電率を有することができる。
【0017】
基板は、堆積工程の前及び/又は中の30℃から60℃又は40℃から90℃のような堆積工程の前及び/又は中に30℃から90℃の温度まで加熱することができる。
【0018】
基板上への堆積は、フレキソ印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、回転ふるい処理印刷、空圧エアロゾルジェット印刷、超音波エアロゾルジェット印刷、押出印刷、スロットダイ印刷、マイクロ分散、直接描画印刷、インクジェット印刷、又は組合せを通じたものとすることができる。導電性インクが無粒子に留まる時に、それは、0.2mm未満又は更に0.1mm未満のような0.5mm未満のインク滲みを示す印刷パターンを生成するようにインクジェット印刷を通じて印刷することができる。
【0019】
印刷パターンは、導電性インクの少なくとも2層、又は少なくとも4層、又は少なくとも6層又はそれよりも多いような導電性インクの1又は2以上の層を含むことができる。
【0020】
フレキシブル基板は、ポリマー、有機及び合成繊維、プラスチック、革、金属、セラミック、ガラス、シリコン、半導体を含むことができ、他の固体を使用することができる。有機及び無機基板を使用することができる。基板は、有機又は合成繊維によって形成されて編まれた、織られた、又は不織のテキスタイル又は織物のようなテキスタイルとすることができる。そのようなテキスタイル基板の例示的繊維は、有機材料(例えば、綿、セルロース、絹、木材、羊毛繊維、革)に加えて、少なくともポリエステル、ポリアミド、ナイロン、Evolon(登録商標)、エラスタン、及び他の合成材料を含む。基板は、Kapton(登録商標)のようなポリイミド(PI)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエーテルスルホン(PES)フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)フィルム、及びポリアミド(PA)及びポリアミドイミド(PAI)フィルムのようなフレキシブルポリマーとすることができる。
【0021】
本発明に開示するインク及びそれらのインクを印刷する方法は、導電パターンがフレキシブル基板上に印刷されることを可能にし、すなわち、電子素子を組み込むことができる製品の範囲を大きく広げる。例えば、本発明の開示は、フレキシブル基板上に設けられる力センサ及び抵抗加熱器と、座席クッション及び/又は座席ベース内でのような抵抗加熱器の力起動式制御とを提供する。
【0022】
従って、本発明の開示はまた、電流を搬送して熱を発生させるように構成された少なくとも1つの導電パターンが印刷されたフレキシブル基板を備える抵抗加熱器に関する。抵抗加熱器は、少なくとも1つの導電パターンに接続されて加熱器コントローラ及び電源への電気接続を提供するように構成された少なくとも1つのトレース又はバスを更に備えることができる。少なくとも1つのトレース又はバスは、本発明に開示する導電性インク及び方法を使用して印刷することができ、又は配線された構成要素及び/又は接点を含むことができる。導電パターン及び/又は印刷バスの少なくとも一部分は、保護誘電体コーティングを用いてオーバーコートすることができる。
【0023】
自動車電気システムのような5-15ボルト電気システムに接続された時に、抵抗加熱器は、約0.1℃/秒から約1℃/秒の速度で熱くなる場合があり、1-30オームの抵抗率を有するように構成される場合があり、-40℃から60℃で10-400ワット/平方メートルを発生させることができ、及び/又は少なくとも400ワット/平方メートルの電力密度を伝達するように構成することができる。
【0024】
本発明の開示はまた、フレキシブル基板上に直接に印刷することができるフレキシブル力感応抵抗器又は力センサに関する。力感知デバイスは、一般的に、分離距離を有する間隙によって少なくとも1つの導電層から分離された少なくとも1つの電極層を備える。少なくとも1つの電極層は、本明細書に開示する導電性インクのうちのいずれかを使用して印刷された少なくとも1つの電極を備えることができる。少なくとも1つの電極層は、導電性インクを使用してフレキシブル基板上に印刷された第1及び第2の電極を備えることができ、第1及び第2の電極は、互いに平行に又は交互嵌合的に配置することができる。少なくとも1つの導電層は、本発明に開示する導電性インク、抵抗性カーボンベースのインク、導電性塗料、酸化インジウムスズ(ITO)、又はその組合せを用いて印刷することができ、又はポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)、カーボンナノチューブベースの薄膜(CNT)、カーボン装荷熱可塑性ポリマー、カーボン装荷シリコーン、カーボン装荷ポリマー箔、ベロスタット、又はそのいずれかの組合せのうちのいずれかを備えることができる。
【0025】
又は、その2つの組合せである。個々のセンサの力感度範囲は、印刷された導電層間の分離距離、様々な層の導電率、及び/又はセンサに組み込まれた導電層の数によって制御することができる。
【0026】
フレキシブルセンサの様々なフレキシブル基板は、少なくとも1つの電極が分離距離を有する間隙によって少なくとも1つの導電層に面し、かつそこから分離されるように位置決めすることができる。力が力センサに印加されると、少なくとも1つの電極と導電層がより近い近接状態にもたらされ、すなわち、分離距離と力センサの電気抵抗率を低減し、力センサに印加された力を示す電気信号を発生させる。
【0027】
力センサは、制御回路、送受信機、及びコントローラを更に備えることができ、制御回路は、電気信号を送受信機に伝達して登録された力又は抵抗変化をコントローラに通信するように構成される。
【0028】
コントローラデバイスは、接続されたデバイスに給電して移動を開始する、照明する、及び加熱することのような特定のアクションを制御するために、登録された力を外部の接続可能な機械と通信することができる。例えば、本発明の開示による力センサ及び抵抗加熱器は、力センサ制御式抵抗加熱器を提供するために接続することができる。
【0029】
従って、本発明の開示はまた、抵抗加熱器のセンサ制御のためのデバイスに関する。そのようなデバイスは、一般的に、抵抗加熱器を含む少なくとも1つの加熱層と、力センサを含む少なくとも1つの感知素子と、デバイスに電力を中継して感知素子の少なくとも1つの力センサを通じてデバイスとの接触を感知するように構成された電子素子とを備えることができる。感知コントローラは、感知素子から電気信号を受信し、かつ電気信号に応答して抵抗加熱器に制御信号を送信するように構成することができる。このようにして、感知素子上の個々の力は、加熱素子にフィードバックを提供し、加熱素子の微調整された制御を提供してバッテリ使用の節約又はユーザに対する快適制御の改善を可能にすることができる。例えば、仮にユーザが手動で加熱素子をオンにしたが、座席に位置決めされていない場合に、加熱器はオフにされる場合があり、又は力センサのうちの少なくとも1つによって感知されるような座席の背部分ともはや接触しないようにユーザが仮に座席内で移動した場合に、座席の背部分での加熱器はオフにされるか又はより高い又は低い電力を提供する場合がある。
【0030】
本明細書の実施形態の態様、特徴、利益、及び利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、及び付随する図面に関して明らかであろう。以下の図では、類似の数字は、様々な図での類似の特徴を表している。本発明に開示する実施形態の図を示すこれらの図面での特徴及び構成要素は、他に明記しない限り、必ずしも縮尺通りに描かれていないことに注意されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1A】導電スレッドを組み込むことによるような導電材料をテキスタイルに組み込むための従来技術の方法を示す図である。
図1B】導電スレッドを組み込むことによるような導電材料をテキスタイルに組み込むための従来技術の方法を示す図である。
図1C】導電スレッドを組み込むことによるような導電材料をテキスタイルに組み込むための従来技術の方法を示す図である。
図2】絶縁又は保護層間に導電トレースを組み込むための従来技術の方法を示す図である。
図3A】Evolon(登録商標)上に印刷されたナノ粒子銀インクの単層の走査型電子顕微鏡写真(SEM)画像の2つの異なる拡大図であり、不織テキスタイル上に印刷された従来技術のナノ粒子インクの態様を示す図である。
図3B】Evolon(登録商標)上に印刷されたナノ粒子銀インクの単層の走査型電子顕微鏡写真(SEM)画像の2つの異なる拡大図であり、不織テキスタイル上に印刷された従来技術のナノ粒子インクの態様を示す図である。
図3C】繊維が緑色に着色されてナノ粒子銀インクを赤色に示す同じテキスタイルの断面視野SEM画像であり、不織テキスタイル上に印刷された従来技術のナノ粒子インクの態様を示す図である。
図3D図3Cに示すテキスタイル全体を通してナノ粒子銀インクの分布を示す(すなわち、ナノ粒子銀インクだけを示す)不織テキスタイル上に印刷された従来技術のナノ粒子インクの態様を示す図である。
図3E】Evolon(登録商標)又は改質Evolon(登録商標)上に印刷されたナノ粒子インクの2から5層に対する抵抗読取値を示す不織テキスタイル上に印刷された従来技術のナノ粒子インクの態様を示す図である。
図4A】従来技術のナノ粒子インクによるテキスタイル繊維のコーティングを示す概略図である。
図4B】本発明の開示の無粒子インクによるテキスタイル繊維の共形コーティングを示す概略図である。
図5】異なる量の歪み(すなわち、テキスタイルの延伸)の下で従来技術の導電材料を用いてスクリーン印刷された編みテキスタイルを示す図である。
図6】本発明の開示の方法に有用なインクジェットプリンタ環境を示す図である。
図7A】本発明の開示の導電性インクをその一部分上に共形被覆させた(左側は被覆、右側は未被覆)織りテキスタイルを示す図である。
図7B】テキスタイルの被覆部分のSEM画像(倍率150x)の図である。
図7C】テキスタイルの被覆部分のSEM画像(倍率800x)の図である。
図8A】本発明の開示の導電性インクを印刷したテキスタイルの断面視野SEM画像を示す図である(70,000xでの斜視図)。
図8B】本発明の開示の導電性インクを印刷したテキスタイルの断面視野SEM画像を示す図である(70,000xでの側面図)。
図8C】導電トレースがナノ粒子を含むことを示す高倍率(250,000x)でのSEM画像を示す図である。
図9】本発明の開示の例示的金属錯体(D2O中のエチレンジアミノ銀(I)イソ酪酸エステル)のプロトン核磁気共鳴(1H-NMR)走査と本発明の開示の導電性インクの例示的金属錯体の構造(右上)とを示す図である。
図10】本発明の開示の溶媒に溶解させた金属錯体(極性プロトン性溶媒に及びD2Oに溶解させたエチレンジアミノ銀(I)イソ酪酸エステル)の無粒子溶液を備える例示的導電性インクのプロトン核磁気共鳴(1H-NMR)走査を示す図である。
図11】本発明の開示のある一定の態様によるインク及び方法を使用するテキスタイル上の導電トレースに対する複数の洗浄サイクルの後の抵抗(オーム)のグラフを示す図である。
図12】本発明の開示のある一定の態様によるインク及び方法を使用するテキスタイル上の導電トレースに対する歪みの増大(延伸)に伴う抵抗変化のグラフを示す図である。
図13】本発明の開示のある一定の態様によるインク及び方法を使用するテキスタイル上の導電トレースに対する曲げサイクルの増加に伴う抵抗変化のグラフを示す図である。
図14】本発明の開示のある一定の態様によるインク及び方法を使用して印刷されたe-テキスタイル近接センサの写真を示す図である。
図15】付番ブロックが抵抗測定のための試験場所である本発明の開示のある一定の態様による例示的5-トレース加熱器素子の概略図である。
図16A】読取値が図15に示す場所で取られてデータが場所36の1.0に対して正規化された本発明の開示のある一定の態様によって形成された5-トレース加熱器からの抵抗測定値のグラフを示す図である。
図16B図16Aに示すデータの期待値(図16Aの点線)からの偏差を示す図である。
図17A】本発明の開示のある一定の態様によって形成された5-トレース加熱器の直列回路を示す図である。
図17B】本発明の開示のある一定の態様によって形成された5-トレース加熱器の並列回路を示す図である。
図18A】本発明の開示のある一定の態様によって形成された5-トレース加熱器に対する電力増加に伴う温度増加の線形性を明らかにするグラフを示す図である。
図18B】本発明の開示のある一定の態様によって形成された5-トレース加熱器に対する経時的な抵抗ドリフトの欠如を明らかにするグラフを示す図である。
図18C】本発明の開示のある一定の態様によって形成された5-トレース加熱器に対する温度にわたる抵抗ドリフトの欠如を明らかにするグラフを示す図である。
図19A】本発明の開示のある一定の態様による力センサの断面の概略図である。
図19B図19Aに構成されたような力センサのセンサ素子上に作用される法線力の関数としての電気抵抗を示すグラフである。
図20A】本発明の開示の力センサの断面の概略図である。
図20B】低抵抗率カーボンインクを用いて印刷された図20Aに構成されたような力センサのセンサ素子上に作用される法線力の関数としての電気抵抗を示すグラフである。
図20C】高抵抗率カーボンインクを用いて印刷された図20Aに構成されたような力センサのセンサ素子上に作用される法線力の関数としての電気抵抗を示すグラフである。
図21】本発明の開示の力センサの断面の概略図である。
図22】本発明の開示の力センサの断面の概略図である。
図23A】本発明の開示の力センサの断面の概略図である。
図23B図23Aに構成されたような力センサのセンサ素子上に作用される法線力の関数としての電気抵抗を示すグラフである。
図24A】力センサの電極層と導電層間の間隙を維持するメッシュ又はネット織物を示す本発明の開示の力センサの断面の概略図である。
図24B】電極層と導電層間の間隙を維持するためのスペーサフレームを示す本発明の開示の力センサの電極層の上面図である。
図25A】本発明の開示の力感知デバイスの電極1及び2の写真である。
図25B】電極層の上に導電層を含む本発明の開示の力感知デバイスの電極1及び2の写真である。
図26A】本発明の開示の力センサの断面の概略図である。
図26B図26Aに構成されたような力センサのセンサ素子上に作用される法線力の関数としての電気抵抗を示すグラフである。
図27A】本発明の開示の力センサの断面の概略図である。
図27B図27Aに構成されたような力センサのセンサ素子上に作用される法線力の関数としての電気抵抗を示すグラフである。
図28】本発明の開示の力センサ制御式伝導加熱を提供するための統合力センサ及び加熱素子を有する自動車座席の概略図である。
図29A】座席ボルスターの移動を提供するための力センサが印刷された座席ボルスター材料の外側の図を示す図28に示す自動車座席の例示的機能を示す図である。
図29B】座席ボルスターの移動を提供するための力センサが印刷された座席ボルスター材料の内側の図を示す図28に示す自動車座席の例示的機能を示す図である。
図29C】ヘッドレスト上のその移動を提供するためのセンサの例示的位置を示す図28に示す自動車座席の例示的機能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下の説明では、本発明の開示は、導電性インク、テキスタイル及びフレキシブル基板上にこれらのインクを印刷する方法、テキスタイルのようなフレキシブル基板上に印刷された導電トレース、及びこれらの導電トレースを備える電子デバイス(例えば、e-テキスタイル)に関連付けられた様々な代替実施形態及び実施の関連で列挙する。以下の説明では多くの例示的実施形態を開示するが、本特許出願の範囲は、開示する実施形態に限定されるのではなく、開示する実施形態の組合せと共に開示する実施形態の修正も包含する。
【0033】
定義及び略語
【0034】
本明細書に開示する導電性インク、それらのインクを使用して印刷されたトレース、及び印刷された電子素子及びデバイスの様々な態様は、結合され、取り付けられ、及び/又は接合された構成要素を説明することによって例示することができる。本明細書に使用する場合に、「結合された」、「取り付けられた」、及び/又は「接合された」という用語は、交換可能に使用されて2つの構成要素間の直接接続、又は該当する場合に介在する又は中間にある構成要素を通じた相互の間接接続のいずれかを示している。対照的に、1つの構成要素が別の構成要素に「直接に結合された」、「直接に取り付けられた」、及び/又は「直接に接合された」と言及する場合に、当該実施例では介在要素が示されない。
【0035】
本明細書に開示する導電性インク、トレース、プリント電子素子及びデバイス、及び方法の様々な態様は、1又は2以上の例示的実施を参照して説明して図示すことができる。本明細書に使用する場合に、用語「例示的」は、「例、事例、又は例示として役立つ」ことを意味し、かつ本明細書に開示するデバイス、システム、又は方法の他の変形よりも好ましい又は有利であると必ずしも解釈すべきではない。「任意的な」又は「任意的に」は、それに続いて説明する事象又は状況が生じるとは限らないこと、及びその説明にその事象が生じる事例と生じない事例とを含むことを意味する。更に、本明細書に使用する「備える」という単語は、「含むがこれに限定されない」ことを意味する。
【0036】
本明細書では、「下側」又は「下部」及び「上側」又は「上部」のような相対語を使用して図面に示す1つの要素の別の要素に対する関係を説明することができる。相対語は、図面に描いた向きに加えて、本明細書に開示する要素及び/又はデバイスの異なる向きを包含することを意図することは理解されるであろう。例示的に、図面に示す力センサの態様をひっくり返した場合に、他の要素の「下部」側にあるとして説明した要素は、関連する図面に示すように他の要素の「上部」側に向けられることになる。従って、用語「下部」は、図面の特定の向きに応じて「下部」と「上部」の両方の向きを包含することができる。
【0037】
本明細書及び特許請求の範囲に使用する場合に、単数形「a」、「an」、及び「the」は、関連上明らかに他を意味しない限り、複数形への言及を含むことに同じく注意しなければならない。例えば、「a」テキスタイル、「a」上側層、「a」金属、「a」インク、及び「the」金属錯体に言及しているにも関わらず、これらの構成要素のいずれか及び/又は本明細書に説明するあらゆる他の構成要素の1又は2以上を使用することができる。
【0038】
更に、いずれかの作動例における以外に又は別途示される場合に、例えば、本明細書及び特許請求の範囲に使用される原材料の量を表す全ての数値は、全ての事例で用語「約」によって修飾されるものと理解されるものとする。従って、他に示されない限り、以下の明細書及び特許請求の範囲で明らかにされる数値パラメータは、本発明の開示によって得られる望ましい特性に応じて変化する可能性がある近似値である。各数値パラメータは、最低でも特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、少なくとも、報告される有効桁数を考慮して通常の丸め技術を適用することによって解釈しなければならない。
【0039】
本発明の広い範囲を明らかにする数値範囲及びパラメータが近似値であるにも関わらず、具体的な例で明らかにされる数値は、可能な限り正確に報告される。しかし、いずれの数値も、それぞれの検査測定に見られる標準的な変動から必然的に生じる特定の誤差を本質的に含む。
【0040】
本明細書に使用する「実質的に含まない」とは、微量の成分だけを含むことを意味すると理解される。「微量」とは、かろうじて検出可能であり、対象になる組成物、工程、又は次に形成される物品の機能特性に利点を与えない成分の量的なレベルである。例えば、微量は、本明細書に開示する無粒子インク調合物のあらゆる構成要素の1.0重量%、0.5重量%、0.1重量%、0.05重量%、又は更に0.01重量%を含むとすることができる。本明細書に使用する「全く含まない」とは、成分が完全に含まれないことを意味すると理解される。
【0041】
フレキシブル基板及びテキスタイル基板という用語は、本明細書を通して交換可能に使用され、特に別段の指示がない限り、織り又は不織、有機又は合成の基板を意味すると理解される。更に、繊維に言及する場合に、それは、特に別段の指示がない限り、織り又は不織のフレキシブル基板の一部とすることができる。
【0042】
別段に定めない限り、本明細書に使用する全ての技術用語及び科学用語は、当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。
【0043】
発明の態様
【0044】
本発明の開示で提供する発明は、新規な導電性インクと、これらの導電性インクをテキスタイル及び他のフレキシブル基板上に印刷して導電トレースを形成する方法とを含む。これらの導電トレースをパターン形成してフレキシブル電子素子を形成することができ、例えば、テキスタイル上に印刷された時に、導電トレースは、e-テキスタイルの一部又は全てを形成することができる。フレキシブル電子素子は、少なくともフィットネス及び健康管理のためのウェアラブルセンサ、産業用途に使用するガスセンサ及びフィルタ、医療用途に使用する抗菌包帯、フレキシブルエネルギ貯蔵デバイス、フレキシブル力センサ、加熱素子、バッテリ、及び通信デバイスを含む様々な用途での使用を見出すものである。好ましい用途では、本発明の開示の導電性インク及び方法によって形成されるフレキシブル電子素子は、力感応抵抗器、すなわち、力センサと、銀ベースのテキスタイル加熱素子のようなフレキシブル抵抗加熱器と、力センサ制御式加熱素子のようなその組合せとを含む。
【0045】
ここで開示する導電トレースの新規で独特な態様は、それらが、溶媒に溶解させた化学量論的金属錯体の無粒子組成物を備える導電性インクを使用して形成されるということである。それは、幅が狭く、正確に堆積可能なトレースの印刷を提供する。織り又は不織テキスタイル基板上に印刷された時に、これらの導電性インクは、フレキシブル基板の繊維を共形的に被覆し、そのような基板に加わる標準的な歪み及び力、例えば、曲げ、延伸、撚り、洗浄、摩耗などによる劣化に耐性がある。従って、本発明の開示に従って形成された導電性インク及び電子素子は、従来技術に開示されたものを超える劇的改善を提供する。
【0046】
例えば、e-テキスタイルのようなある一定の従来技術の導電トレースは、図1Aから1Cに示すようなテキスタイルを形成するのに使用される糸の一部として導電素子を含んでいる。すなわち、導電金属スレッドを標準的な有機、ポリマー、又は合成のスレッドと織り合わせて導電性糸を形成し、導電素子を有するテキスタイルを生成する。図1Aは金属巻付け糸を示し、図1Bは金属充填糸を示し、図1Cは金属糸(すなわち、完全に金属スレッド又はワイヤによって形成された糸)を示している。これらのテキスタイルは、粗い及び/又は多孔性である傾向があり、導電材料(一般的に金属)の費用に起因して高価になる可能性がある。これらのコストは、糸を使用してテキスタイルに特定の導電パターンを生成することによって低減することができるが、これは、一般的に、容易に変更することができない製造工程の修正を必要とする。
【0047】
これに代えて、図2に示すように、導電パターンをフレキシブル基板上に組み込み、次にテキスタイルに接着してフレキシブル電子機器は形成されている。これらのパターンは、延伸可能及び/又は洗浄可能でない場合があり、パターンの付加は、追加の手動及び/又は製造工程を必要とする可能性がある。
【0048】
導電パターンを形成するために、直接印刷方法が使用されている。この方法は、容易に拡張可能であり、既存のテキスタイル製造工程に容易に統合され、導電素子及び従って電子素子をテキスタイル内に設けるために高い処理機能の高度に自動化された手段を提供することになる。しかし、従来技術の導電性インクは、良好な結果を示さないことが多い。例えば、ナノ粒子インクを使用するインクジェット印刷は、ノズルの目詰まり、及びテキスタイル面との相互作用過少、例えば、溜まり、又はテキスタイル面との相互作用過多、例えば、毛管効果による広がりのいずれかに起因して困難であることが判明している。図3A及び3Bに示すように、例えば、Evolon(登録商標)のような不織テキスタイル上に印刷されたナノ粒子インクは、溜まりを形成して導電パターンを形成するのに必要な程度まで繊維を被覆することができない場合がある。図3C及び3Dに示す6層のインクのような複数の層を付加した後でも、走査型電子顕微鏡写真画像は、インクが溜まりを形成して島になり、未被覆領域で分離されることを示している。例えば、図3C及び3Dは、Evolon(登録商標)不織繊維(緑色)が非連続的に上部に(図3C)及び毛管拡散によりテキスタイルの厚み全体を通して(図3D)インク(赤いドット)を含むことを示している。
【0049】
図3Eに示すように、これらのナノ粒子インクは、連続パターンを形成することができないので、極めて高い抵抗を示す(すなわち、導電トレースを形成することができない)。更に、ナノ粒子インクのコーティング層を追加しても、これらの印刷パターンの抵抗は減少しない。面抵抗を下げるテキスタイルの修正は、例えば、最大2桁まで可能であるが、それでも導電パターンは形成されない(図3Eの右側)。図3C及び3Dで緑色の背景上にある赤いドットは、ほとんど銀同士の融合又は接続性のないクラスター化した銀粒子を表しており、従って、銀ナノ粒子フィルムの導電性が悪い(図4A参照)。導電性の劣化は、織物のようなほとんどのテキスタイル基板に関する低い温度限界で更に悪化し、この限界により、ナノ粒子インクの硬化に必要であることの多い高温で銀粒子を系統的に融合させることが不可能になる。
【0050】
更に、ナノ粒子インクを使用してテキスタイル上に形成されたパターンは、一般的に、テキスタイルの使用中(例えば、複数の着用及び/又は洗浄サイクル)に乏しい可撓性を示す。図5に示すように、スクリーン印刷された織りテキスタイルの延伸などによる歪みは、導電パターンの破損に至り、経時的にパターンを非導電性にする。実際に、テキスタイルに関する僅か10%の歪みは、印刷パターンでの破損の観察可能な増大と導電性の喪失とをもたらす場合がある。
【0051】
本明細書に開示する独創的工程は、溶媒に溶解させた金属錯体の無粒子組成物を備える導電性インクを使用してテキスタイル上にパターンを直接印刷することにより、これらの困難の多くを回避し、従って、多種の応力及び歪みを通して一体性を維持するプリントフレキシブル電子機器を生成するための高度に拡張可能で自動化された方法を提供する。本方法は、一般的に、直接印刷工程を使用してテキスタイル基板上に導電性インクを堆積させ、次にこれを硬化させてその上に導電パターンを生成する段階を含む。従って、導電パターンは、既存の製造工程に容易に統合され、更に重要なことに容易に拡張可能であり、高度に自動化することができる方法により、テキスタイルのようなフレキシブル基板上に形成することができる。更に、本明細書に開示する方法は、導電トレースの導電率及び寿命の大幅な改善を可能にするフレキシブル基板のテキスタイル繊維上への導電性インクの共形コーティングを提供する(図4B)。本明細書に使用する場合に、用語「共形」は、テキスタイル、繊維、又は基板の少なくとも面を覆い、面の輪郭に従うコーティングを意味すると見なすものとする。
【0052】
導電性インク
【0053】
本発明の開示の導電性インクは、少なくとも1つの溶媒に溶解させた少なくとも1つの金属錯体を有する無粒子金属錯体組成物を備える。そのような導電性インクは、米国特許出願公開第2019/0249026号明細書及び第2020/0369061号明細書に説明されている。
【0054】
金属錯体は、単核、二核、三核、及び四核以上とすることができる。例えば、金属錯体は、少なくとも1つの金属と、少なくとも1つの第1のリガンドと、少なくとも1つの第2のリガンドとを備える中性金属錯体とすることができる。金属錯体は、米国特許出願公開第2011/0111138号明細書、第2013/0236656号明細書、及び第2020/0369061号明細書に説明されているようなものとすることができる。金属錯体は、少なくとも1つの第1の金属を有する第1の金属錯体と少なくとも1つの第2の金属を有する第2の金属錯体とを備えることができる。金属錯体は、米国特許第9、487、669号明細書、第9、920、212号明細書、及び第10、738、211号明細書に説明されているようなものとすることができる。
【0055】
例えば、金属、金属塩、又は金属酸化物を第2のリガンドと反応させるなどして最初に金属(M)と第2のリガンド(L2)の間の錯体を形成することにより、中性金属錯体を形成することができる。次に、金属-第2リガンド錯体を第1のリガンド(L1)の過剰分と反応させ、中性金属錯体を形成することができる。第1のリガンドと金属-第2リガンド錯体との化学量論的反応比は、例えば、少なくとも13:1、又は少なくとも15:1、又は少なくとも20:1のような少なくとも10:1とすることができる。このように調合すると、反応混合物は、実質的に又は完全に粒子を含まないままであり、完了まで進行して第1及び第2のリガンドと金属との化学量論量を有する金属錯体を形成する。
【0056】
過剰で未反応の第1のリガンドを除去して化学量論量の金属、第1のリガンド、及び第2のリガンドを有する(すなわち、非リガンドの第1のリガンドを含まない)金属錯体を提供することができる。例えば、過剰で未反応の第1のリガンドは、錯体の真空蒸発によって除去することができ、かつ適切な溶媒を使用する1又は2以上の洗浄段階を含んで化学量論量の金属、第1のリガンド、及び第2のリガンドを有する最終乾燥粉末を得ることができる。銀金属錯体の場合に、この粉末は典型的には白色である。
【0057】
得られた精製金属錯体は、ナノ粒子及びマイクロ粒子を含む粒子を実質的に又は完全に含まず(無粒子であり)、様々な溶媒に高度に可溶性である。これは、金属、第1のリガンド、及び第2のリガンドの化学量論量を含まない及び/又は残留する非リガンドの第1のリガンドを備える場合がある及び従って一般的にナノ粒子及び/又はマイクロ粒子のような粒子を含む従来技術の錯体とは大きく異なるものである(実施例の追加説明を参照されたい)。これらの従来技術のナノ粒子インクを特定のテキスタイル上に印刷する段階は、図3Aから3Dに示す走査型電子顕微鏡画像及び図4Aの概略図に観察されるように、多くの場合に、テキスタイルに浸透するのではなく、むしろテキスタイルの上部に溜まり、従って、導電トレースを形成しないことを示している(図3E参照)。本発明の開示の導電性インクは、テキスタイル基板の繊維を共形的に被覆することができ(図4B参照)、高導電トレースを形成する。
【0058】
導電性インクは、任意的に、少なくとも1つの導電性充填剤材料を更に備えることができる。例示的充填剤材料は、少なくとも導電性ポリマー、金属酸化物、及びカーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン、及びグラファイトのようなカーボンベースの材料を含む。導電性充填剤材料は、市販の導電性ポリマー又はカーボンベースの材料から優先的に選択することができる。可能な導電性充填剤材料は、カーボンブラック、グラファイト、ポリピロール(PPy)、ポリ[3,4-エチレンジオキシチオフェン](PEDOT)、ポリアセチレン、ポリチオフェン(PT)、グラフェン、ポリフェニレン、CNT、ポリアニリン(PANI)、及びポリフェニレンエチレンを含む。
【0059】
テキスタイルに付加されてきた様々な種類の導電性ポリマーの中でも、PANI、PT、PPyは、高い導電性と簡単な加工を提供する。特にPPyとPANIは、環境条件下での優れた安定性、良好な導電性、織物のようなフレキシブル基板上への加工作業の容易さ、簡単な合成方法、及び耐腐食性を提供する。ある一定のポリマー充填剤を本発明の開示の導電性インクに使用する時の一般的な懸念は、貧弱な機械的特性である。しかし、それらの事例では、熱可塑性挙動、急速な溶媒蒸発、広範な材料との良好な適合性、優れた加工性及び良好な機械的特性を特徴とするニトロセルロースのようなポリマー添加剤及び結合剤を組み込むことにより、そのような懸念を軽減することができる。従って、導電性充填剤を備える導電性インクは、任意的に追加の結合剤材料を備えることができる。
【0060】
導電性インクは、未反応の第1のリガンドと少なくとも1つの導電性充填剤及びいずれかの追加の結合剤材料のようなあらゆる任意的な成分とを含まない少なくとも1つの精製金属錯体を炭化水素溶媒システムのような有機溶媒システムに溶解することによって調合することができる。
【0061】
導電性インクは、未反応の第1のリガンドと少なくとも1つの導電性充填剤及びいずれかの追加の結合剤材料のようなあらゆる任意的な成分とを含まない少なくとも1つの精製金属錯体を少なくとも2つの極性プロトン性溶媒のような少なくとも1つの極性プロトン性溶媒内に溶解させることによって調合することができる。一般的に、極性プロトン性溶媒は、高い極性と高い誘電率を有することができる。極性プロトン性溶媒は、例えば、酸素又は窒素に結合した少なくとも1つの水素原子を備えることができる。極性プロトン性溶媒は、例えば、少なくとも1つの酸性水素を備えることができる。極性プロトン性溶媒は、例えば、少なくとも1つの非共有電子対を備えることができる。極性プロトン性溶媒は、例えば、水素結合を示すことができる。
【0062】
炭化水素溶媒は、基板と適合しない及び/又は一部の状況では推奨することができない場合があるので、極性プロトン性溶媒は、ある一定の基板上に導電性インクを堆積させるのに特に有用である場合がある。更に、極性プロトン性溶媒は、より環境に優しいインク溶液を提供することができる。
【0063】
極性プロトン性溶媒の例としては、水、直鎖又は分岐アルコール、アミン、アミノアルコール、及びグリコールを含むヒドロキシル末端ポリオールが挙げられる。同じく極性プロトン性溶媒は、例えば、エチレングリコール及び高級グリコール、並びにアルコールとすることができる。極性プロトン性溶媒の特定例は、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、酢酸、蟻酸、及びアンモニアを含む。
【0064】
極性プロトン性溶媒は、例えば、少なくとも1つのアミン溶媒を含むことができる。アミン溶媒は、例えば、約200g/mol又はそれ未満、又は約100g/mol又はそれ未満の分子量を有することができる。アミン溶媒は、例えば、少なくとも1つの単座アミン、少なくとも1つの二座アミン、及び/又は少なくとも1つの多座アミンとすることができる。アミン溶媒は、例えば、少なくとも1つの一級アミン又は少なくとも1つの二級アミンとすることができる。一実施形態では、アミン溶媒は、少なくとも1つの一級又は二級アミンに結合した少なくとも1つのアルキル基を備えることができる。アミン溶媒は、直鎖又は分岐アルキル基で接続された少なくとも2つの一級又は二級アミン基を備えることができる。アミン溶媒は、少なくとも1つの二級アミンで接続された少なくとも2つの直鎖又は分岐アルキル基を備えることができる。アミン溶媒の利点は、例えば、溶媒内の金属錯体の溶解度改善、従って可能な濃度の増大、並びに金属錯体の分解温度の低下を含む。
【0065】
溶媒は、例えば、少なくとも1つのアルコール、少なくとも1つのアミン、及び界面活性剤のような2又は3以上の極性プロトン性溶媒を有する混合溶媒システムとすることができる。例えば、混合溶媒システムは、少なくとも1つのアルキルアルコールと、少なくとも1つのジオールと、少なくとも1つのアミンと、少なくとも1つのチオラルキルジオールと、シリル界面活性剤のような少なくとも1つの界面活性剤とを備えることができ、この場合に、少なくとも1つのアルキルアルコール、少なくとも1つのジオール、及び少なくとも1つのチオラルキルジオールは同じでない。混合溶媒システムの例示的アルキルアルコールは、少なくともメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、2-メチル-1-ブタノール及び2-メチル-2-ブタノールのような1-6炭素原子を備えることができる。混合溶媒システムの例示的ジオールは、少なくともエチレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-ブタンジオールを含む。混合溶媒システムの例示的アミンは、少なくとも水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、及びジエチルエチレンジアミンを含む。混合溶媒システムの例示的チオアルキジロールは、少なくともチオジグリコール、1,4-ジチアン-2,5-ジオール、及び3,6-ジアチアクタン-1,8-ジオールを含む。
【0066】
例示的混合溶媒システムは、インク組成物の総重量を基準にして15から25重量%の少なくとも1つのアルキルアルコール;10から15重量%の少なくとも1つのジオール;1から3重量%未満の少なくとも1つのアミン、1から5重量%の少なくとも1つのチオアルキジール、及び0.1重量%未満の界面活性剤(例えば、0.001から0.1重量%)を備えることができる。そのような混合溶媒システムは、金錯体のようなある一定の金属錯体に対して好ましい場合があり、この溶媒システムは、その錯体がインク組成物の総重量を基準にして5から50重量%、例えば、5から25重量%、又は5から15重量%で含まれるものとすることができる。
【0067】
導電性インクは、少なくとも1つの極性プロトン溶媒と、少なくとも1つの金属錯体(例えば、カルボン酸アミン銀)と、導電性充填剤及びいずれかの結合剤のような任意的な成分のいずれかとを機械的に混合することによって調製することができる。
【0068】
含められる時に、導電性充填剤は、無粒子銀前駆体のような無粒子金属錯体と様々な重量比で混ぜ合わせることができる。例示的重量比は、60:40の金属錯体:導電性充填剤、又は70:30の金属錯体:導電性充填剤、又は80:20の金属錯体:導電性充填剤、又は90:10の金属錯体:導電性充填剤、又は更に99:1の金属錯体:導電性充填剤、及び中間的な他の比のような50:50の金属錯体:導電性充填剤を含む。
【0069】
示したように、導電性インクは、少なくとも1つの導電性ポリマーを備えることができる。特定の態様により、インクは、ポリピロール(PPy)とポリアニリン(PANI)との混合物を備えることができる。相互貫通PANI/PPyネットワークの形成は、導電性ポリマーフィルムの一体性を高める時に決定的な役割を果たし、印刷中にフィルムの良好な共形性を提供する。
【0070】
ある一定の導電性有機ポリマーは、硬化したナノ粒子をポリマー母材に埋め込むことができる金属ナノ粒子の優れたホストであることは公知である。従来からPANI又はPPyで被覆したテキスタイルは、PEDOT、PPy、又はPANIのような別の導電性ポリマーによる第2のコーティングのための基板として使用されている。この場合に、そのような事前被覆テキスタイルは、低い温度硬化が可能な銀印刷に対するシード面として使用することができる。実際に、PPy支援式銀金属化は、ナノメートル及びマイクロメートルの範囲で様々な形状及び大きさの銀粒子を発生させることができる。硬化した銀の粒径を調節することに加えて、銀印刷されたテキスタイルを硬化させるのに使用される低い温度は、導電性充填剤又はシード層を分解しない場合がある。
【0071】
本発明者は、PPyがカルボン酸アミン銀を金属銀に還元する潜在機能を認識し、この潜在機能を無粒子銀インクの低い温度硬化への新しい道筋として使用する。従って、導電性インクに導電性充填剤を混ぜ合わせることにより、機械的、熱的、電気的、及び他の加工特性の改善を通してそのようなインクを使用して印刷されたフレキシブル電子素子の性能を改善することができる。この配合手法では、シート間及びロール間加工が可能になることにより、生成コストを最小にし、工程の拡張及び商業化を容易にすることができる。
【0072】
本発明の開示による例示的導電性インクは、上述の比率のいずれかで金属錯体と混合された少なくとも1つの導電性充填剤材料を10から40重量%、アルコール又はアミンを2から10重量%、グリコールを2から15重量%、導電性充填剤可溶化剤を10から25重量%、及び水を40から70重量%備えることができる。例示的充填剤可溶化剤は、少なくともN-メチル-2-ピロリドンを含む。
【0073】
テキスタイルコーティングの均質性を高めるために、必要に応じて、複数の印刷サイクルを1から20回繰り返すことができる。印刷されたテキスタイルを印刷間に硬化又は乾燥させてテキスタイルの飽和を回避することができる。被覆されたテキスタイルの抵抗は、膜厚及び印刷されたテキスタイルに基づいて最適には0.01-500Ω/□、例えば、0.01-300Ω/□、又は更に0.01-100Ω/□の範囲にある。
【0074】
水素結合溶媒の粘性は、炭化水素のような非水素結合溶媒よりも本質的に大きい。更に、上昇した溶媒の沸点(エネルギ的により大きい分子間力に起因する)と極性インクの性質とにより、それらは、より緩やかに制御された乾燥時間、表面張力、及び面濡れ性のために厳密に炭化水素又は芳香族炭化水素送出システムよりも高品質の薄膜及び構造の形成に対する高機能かつ競合するシステムになる。従って、混合溶媒システムは、本発明の開示の導電性インクに対して優れた付加性、溶解性、及び性能を提供することができる。
【0075】
本発明の開示の導電性インクは、より低い分子量を有し、粘度調節剤として機能することができるポリアクリル酸のようなヒドロゲル及び/又はポリマーを含むように調合することができる。例えば、この組成物は、4重量%まで、又は3重量%まで、又は2重量%まで、又は1重量%まで、又は0.5重量%まで、又は0.1重量%まで、又は0.05重量%までのような5重量%までのヒドロゲル及び/又はポリマーを備えることができる。組成物は、0.01重量%から4重量%、又は0.01重量%から3重量%、又は0.01重量%から2重量%、又は0.01重量%から1重量%のような0.01重量%から5重量%のヒドロゲル及び/又はポリマーを備えることができる。ポリマーは、当業技術で公知のように、例えば、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリフェニレン、ポリピレン、ポリピロール、ポリチオフェンのうちのいずれかのような導電性ポリマーとすることができる。
【0076】
本明細書に説明する金属錯体は、25℃での少なくとも1つの極性プロトン性溶媒への溶解度が、少なくとも50mg/ml、又は少なくとも100mg/ml、又は少なくとも150mg/ml、又は少なくとも200mg/ml、又は少なくとも250mg/ml、又は少なくとも300mg/ml、又は少なくとも400mg/ml、又は少なくとも500mg/ml、又は少なくとも1,000mg/ml、又は少なくとも1,500mg/ml、又は更に少なくとも2、000mg/mlであるとすることができる。
【0077】
本明細書に開示する導電性インク内の有機溶媒の量は、例えば、30重量%未満、20重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、3重量%未満、1重量%未満、0.1重量%未満、又は0.01重量%未満とすることができる。導電性インク調合物は、実質的に又は全く有機溶媒を含まないとすることができる。
【0078】
25℃で測定したインク調合物の粘性は、例えば、約800cps又はそれ未満、約500cps又はそれ未満、約250cps又はそれ未満、又は約100cps又はそれ未満とすることができる。ある一定の他の態様により、25℃で測定したインク調合物の粘性は、例えば、約50cps又はそれ未満、40cps又はそれ未満、30cps又はそれ未満、25cps又はそれ未満、20cps又はそれ未満、又は更に10cps又はそれ未満とすることができる。更に他の態様により、インク調合物は、約2cpsから約20cps、又は約2cpsから約15cps、又は約2cpsから約10cpsの粘性を有する。
【0079】
25℃で測定したインク調合物の粘性は、例えば、約1,500cps又はそれよりも高い、約2,500cps又はそれよりも高い、又は約5,000cps又はそれよりも高い、又は更に約10,000cps又はそれよりも高いような約800cps又はそれよりも高いとすることができる。
【0080】
導電性インクは、1.5g/mlから0.1g/ml、又は1g/mlから0.1g/ml、又は2g/mlから0.4g/ml、又は1.5g/mlから0.4g/mlのような3g/mlから0.1g/mlのインク密度に調合することができる。導電性インクは、7から12の範囲のpHに調合することができる。導電性インクは、少なくとも5cP又は少なくとも10cPのような少なくとも2cPの粘性に調合することができる。
【0081】
有機又は極性プロトン性溶媒システムのいずれかでの導電性インク調合物の分析は、インク溶液中の金属、及び第1及び第2のリガンドの量が化学量論的であることを示している(実施例参照)。
【0082】
導電性インク調合物は、粒子、マイクロ粒子及びナノ粒子、及び金属マイクロ粒子及び金属ナノ粒子のような金属粒子を実質的に又は全く含まないとすることができる。特に、金属錯体を有する導電性インク調合物は、堆積又は印刷の前及び堆積又は印刷中にナノ粒子及び/又は金属ナノ粒子を実質的に又は全く含まないとすることができる。導電性インクは、堆積後であるが金属に還元される前(例えば、硬化前)にナノ粒子及び/又は金属ナノ粒子を備える粒子を実質的に又は全く含まないとすることができる。例えば、ナノ粒子のレベルは、1重量%未満、0.1重量%未満、又は0.01重量%未満、又は0.001重量%未満とすることができる。金属ナノ粒子のレベルは、1重量%未満、0.1重量%未満、又は0.01重量%未満、又は0.001重量%未満とすることができる。例えば、SEM及びTEM、UV-Visを含む分光法、動的光散乱、プラズモン共鳴などを含む当業技術で公知の方法を使用して粒子の組成を検査することができる。ナノ粒子は、例えば、1nmから500nm、又は1nmから100nmの直径を有することができる。マイクロ粒子は、例えば、0.5μmから500μm、又は1μmから100μmの直径を有することができる。
【0083】
硬化時に、インクは、基板、例えば、フレキシブル基板上に連続的な導電トレースを形成し、硬化中に原位置で形成された金属ナノ粒子を備えることができる(図8Aから8B参照)。金属ナノ粒子は、5-100nm、又は10-50nm、又は更に20-40nmのような1-500nmの直径を有することができる(図8C参照)。
【0084】
金属錯体
【0085】
金属錯体は、導電線の形成に有用な金属、特に半導体及び電子産業に使用される金属を備えることができる。例示的金属は、少なくとも銀、金、銅、白金、ルテニウム、ニッケル、コバルト、パラジウム、亜鉛、鉄、スズ、インジウム、及びそれらの合金を含む。金属錯体は、単一金属中心又は2つの金属中心を備えることができる。
【0086】
例えば、金属錯体は、少なくとも1つの金属、少なくとも1つの第1のリガンド、及び少なくとも1つの第2のリガンドを有する中性金属錯体とすることができる。第1のリガンドは、加熱した時に固体生成物を形成することなく揮発するようになっている。例えば、第1のリガンドは、例えば、250℃又はそれよりも低い、又は200℃又はそれよりも低い、又は150℃又はそれよりも低い温度で加熱する時に揮発することができる。酸素の存在下又は不在下で加熱を行うことができる。第1のリガンドは、金属に対する還元体とすることができる。第1のリガンドは、アニオンでもカチオンでもないという中性状態にあるものとすることができる。
【0087】
第1のリガンドは、単座リガンド、又は例えば二座リガンド又は三座リガンドを備える多座リガンドとすることができる。第1のリガンドは、テトラヒドロチオフェンのようなチオエーテル、ホスフィン、又はアミン化合物とすることができる。ある一定の例では、第1のリガンドは、式R1-S-R2を有するチオエーテルのようなチオエーテルとすることができ、ここで、R1及びR2は、C1-C3アルキルとは独立して選択することができ、又は硫黄と共に飽和複素環化合物を形成することができる。例示的チオエーテルは、少なくとも硫化ジメチル、硫化ジエチル、硫化ジプロピル、硫化ジイソプロピル、硫化エチルメチル、及びテトラヒドロチオフェンを含む。ある一定の例では、第1のリガンドは、少なくとも2つの一級アミン基を有するアミン化合物を備えることができる。一級アミンは、アルコールよりも強い還元剤であり、極性プロトン性溶媒と共に均質な溶液を形成することができる。更に、第1のリガンドは、2つの一級アミン末端基を含んで二級アミン基を含まない、又は1つの一級アミン末端基と1つの二級アミン末端基とを含むとすることができる。この後者の例では、二級アミン末端基を直鎖アルカンに、又はヒドロキシ又はアルコキシのような極性基に置換することができる。更に別の例では、第1のリガンドは、2つの一級アミン末端基と1つの二級アミン基とを備えることができる。第1のリガンドは、アルキルアミンを含むアミンとすることができる。アルキル基は、直鎖状、分枝状、又は環状とすることができる。架橋アルキレンを使用して、複数の窒素を接続し合わせることができる。アミンでは、炭素原子の数は、例えば、15又はそれ未満、又は10又はそれ未満、又は5又はそれ未満とすることができる。
【0088】
第1のリガンドの分子量は、例えば、約1,000g/mol又はそれ未満、又は約500g/mol又はそれ未満、又は約250g/mol又はそれ未満とすることができる。
【0089】
ある一定の例では、第1のリガンドは、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、ジアミノシクロヘキサン、又はジエチルエチレンジアミンである。
【0090】
第2のリガンドは、第1のリガンドとは異なっており、これも、金属錯体を加熱する時に揮発することができる。例えば、第2のリガンドは、揮発性の小有機分子と同様に二酸化カーボンを放出することができる。第2のリガンドは、加熱した時に固体生成物を形成することなく揮発するようになっている。第2のリガンドは、例えば、250℃又はそれよりも低い、又は200℃又はそれよりも低い、又は150℃又はそれよりも低い温度で加熱する時に揮発することができる。酸素の存在下又は不在下で加熱を行うことができる。第2のリガンドは、アニオン性とすることができる。第2のリガンドは、自己還元性とすることができる。
【0091】
第2のリガンドは、カルボン酸とすることができる。カルボン酸は、直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル基を備えることができる。一実施形態では、第2のリガンドは芳香族基を含まない。第2のリガンドは、-N(H)-C(O)-Rで表されるアミドとすることができ、ここでRは、炭素原子数10又はそれ未満、炭素原子数8又はそれ未満、炭素原子数6又はそれ未満、又は炭素原子数5又はそれ未満の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基である。同じく、第2のリガンドは、N-含有二座リガンドとすることができる。
【0092】
カルボン酸を含む第2のリガンドの分子量は、例えば、約1,000g/mol又はそれ未満、又は約500g/mol又はそれ未満、又は約250g/mol又はそれ未満、又は約150g/mol又はそれ未満とすることができる。
【0093】
特定の例では、第2のリガンドは、イソ酪酸エステル、シュウ酸、マロン酸、フマル酸、マレイン酸、ギ酸、グリコール酸、乳酸、クエン酸、又は酒石酸とすることができる。
【0094】
従って、金属錯体は、少なくとも1つの金属、少なくとも1つの第1のリガンド、及び少なくとも1つの第2のリガンドを備えることができ、金属は、銀、金、白金、又は銅とすることができる。例示的な第1のリガンドは、アミン及び硫黄含有化合物を含み、例示的な第2のリガンドは、カルボン酸、ジカルボン酸、及びトリカルボン酸を含む。例示的溶媒は、少なくとも水、アルコール、アミン、アミノアルコール、ポリオール、及びその組合せを備える群から選択された少なくとも2つの極性プロトン性溶媒のような1又は2以上の極性プロトン性溶媒を含む。
【0095】
ある一定の他の態様により、金属錯体は、少なくとも1つの第1の金属を有する少なくとも1つの第1の金属錯体、少なくとも1つの第2の金属を有する少なくとも1つの第2の金属錯体、少なくとも1つの第3の金属を有する少なくとも1つの第3の金属錯体などを備えることができ、ここで各金属錯体は、化学量論量の金属、及び第1及び第2のリガンドを備えることができる。例えば、金属錯体は、上記に詳述したように形成された(すなわち、金属、及び第1及び第2のリガンドの化学量論量を有する)2つの中性金属錯体を備えることができる。
【0096】
本発明の開示のある一定の他の態様により、金属錯体は、金属合金をもたらすように(例えば、テキスタイル基板では硬化後に)構成することができる。金属錯体は、第1の金属と、少なくとも1つの第1のリガンドと、第1のリガンドとは異なる少なくとも1つの第2のリガンドとを含む少なくとも1つの第1の金属錯体と;第2の金属と、少なくとも1つの第1のリガンドと、第1のリガンドとは異なる第2のリガンドとを含み、第1の金属錯体とは異なる少なくとも1つの第2の金属錯体と;少なくとも1つの溶媒とを備えることができる。(i)第1の金属錯体の量と第2の金属錯体の量の選択、(ii)第1及び第2の金属に対する第1のリガンドの選択と第2のリガンドの選択、及び(iii)溶媒の選択は、均質な組成物を与えるようになっている。
【0097】
更に他の態様により、金属錯体は、(I)又は(II)の酸化状態にある少なくとも1つの第1の金属、及び少なくとも1つの第1のリガンドがアミンであり、少なくとも1つの第2のリガンドがカルボン酸アニオンである少なくとも2つのリガンドを有する少なくとも1つの第1の金属錯体と;(I)又は(II)の酸化状態にある少なくとも1つの第2の金属、及び少なくとも1つの第1のリガンドが硫黄化合物であり、少なくとも1つの第2のリガンドが第1の金属錯体のカルボン酸アニオンである少なくとも2つのリガンドを備える中性錯体であり、第1の金属錯体とは異なる少なくとも1つの第2の金属錯体とを備えることができる。
【0098】
本発明の開示のある一定の他の態様により、金属錯体は、(I)又は(II)の酸化状態にある少なくとも1つの第1の金属、及び少なくとも1つの第1のリガンドがアミンであり、少なくとも1つの第2のリガンドがカルボキシル酸アニオンである少なくとも2つのリガンドを備える中性で非対称の錯体である少なくとも1つの第1の金属錯体と;(I)又は(II)の酸化状態にある少なくとも1つの第2の金属、及び少なくとも1つの第1のリガンドが硫黄化合物であり、少なくとも1つの第2のリガンドが第1の金属錯体のカルボキシル酸アニオンである少なくとも2つのリガンドを備える中性で非対称の錯体であり、第1の金属錯体とは異なる少なくとも1つの第2の金属錯体と;第1の金属の原子パーセントが、全金属含有量に対して約20%から約80%であり、第2の金属の原子パーセントが、約20%から約80%である少なくとも1つの有機溶媒とを備えることができる。
【0099】
これらの金属合金に使用する例示的金属は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、La、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、及びHgを含む。特に、銀、金、及び銅を含む貨幣金属を使用することができる。金、イリジウム、オスミウム、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、及び銀を含む貴金属を使用することができる。他の好ましい実施形態では、白金、ニッケル、コバルト、及びパラジウムを使用することができる。更に、鉛、鉄、スズ、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、亜鉛、及びアルミニウムを使用することができる。本発明の技術分野で公知の他の金属及び元素を使用することができる。
【0100】
第1の金属錯体は、銀、金、銅、白金、ニッケル、イリジウム、又はロジウムの錯体である。例えば、第1の金属錯体は、銀錯体とすることができる。第2の金属錯体は、銀、金、銅、白金、ニッケル、イリジウム、又はロジウムの錯体である。例えば、第2の金属錯体は、金錯体とすることができる。二元合金を形成する金属の二元組合せの例としては、少なくともAg-Au、Pt-Rh、Au-Cu、Zn-Cu、Pt-Cu、Ni-Al、Cu-Al、Pt-Ni、及びPt-Irが挙げられる。
【0101】
金属合金の金属錯体は、2又は3以上のリガンド又は2つだけのリガンドを備える複数のリガンドを備えることができる。例えば、互いに異なる第1のリガンドと第2のリガンドが存在することができる。第1のリガンドは、シグマ電子供与又は配位結合を提供することができる。第1のリガンドは、アニオンでもカチオンでもない中性状態にあるものとすることができる。第1のリガンドの例は、アミンと、酸素含有リガンドと、酸素化エーテルと環状チオエーテルを含むチオエーテルとを含む硫黄含有リガンドとを含む。非対称型又は対称型のアミンを使用することができる。アミンは、例えば、少なくとも2つの一級又は二級のアミン基を備えることができる。単座リガンドを使用することができる。多座又は複座のリガンドを使用することができる。アルキルアミノリガンドを使用することができる。
【0102】
第2のリガンドは、第1のリガンドとは異なるものとすることができ、金属錯体を加熱する時に揮発することができる。例えば、一部の実施形態では、プロペンのような揮発性小有機分子と同様に、二酸化カーボンを放出することができる。第2のリガンドは、アニオン電荷を担持して中性錯体を提供することができる最小数の原子を有するキレータとすることができる。第2のリガンドは、アニオン性とすることができる。例えば、第2のリガンドは、小アルキル基を有するカルボン酸を含むカルボン酸とすることができる。アルキル基の炭素原子数は、例えば、10又はそれ未満、又は8又はそれ未満、又は5又はそれ未満とすることができる。第2のリガンドの分子量は、例えば、約1,000g/mol又はそれ未満、又は約250g/mol又はそれ未満、又は約150g/mol又はそれ未満とすることができる。
【0103】
本発明の開示の金属錯体は、乾燥状態(粉末)の場合に又は少なくとも1つの溶媒内でインクとして調合される場合に(すなわち、金属錯体と少なくとも1つの溶媒とを含む無粒子組成物)、ナノ粒子及びマイクロ粒子を含む粒子を実質的に又は全く含まないとすることができる。
【0104】
直接印刷及び堆積方法
【0105】
例えば、ピペッティング、インクジェット印刷、リソグラフィ又はオフセット印刷、グラビア又はグラビアオフセット印刷、フレキソ印刷、マイクロ分散直描印刷、スクリーン印刷又は回転スクリーン工程印刷、オフセット印刷、ステンシル印刷、ドロップキャスト、スロットダイ、ロールツーロール、スタンピング、ロールコーティング、スプレーコーティング、フローコーティング、押出印刷、及びスプレー又は空圧又は超音波エアロゾルジェット印刷のようなエアロゾル送出を含む本発明の技術分野で公知の方法を使用して本発明の開示する導電性インクを堆積させることができる。インク調合物と基板は、堆積方法と適応させることができる。
【0106】
開示する導電性インクは、ピペッティング、ステンシル印刷、圧延、噴霧、又はインクジェット印刷のような直接印刷方法で堆積させることができる。ある一定の例では、インクジェット印刷を使用して導電性インクを堆積させる。
【0107】
開示する導電性インクをテキスタイルの面上に直接印刷することができる。
【0108】
ある一定のテキスタイル基板は、テキスタイルを事前洗浄し、任意的に酸素プラズマ、コロナ、及び/又は化学エッチング(例えば、酸性、苛性)で処理することのようなテキスタイルの前処理から利益を得ることができる。従って、本発明の開示の導電性インクは、酸素プラズマ、コロナ、及び/又は化学エッチングで前処理した後でテキスタイル基板上に印刷することができる。
【0109】
ある一定のテキスタイル基板は、コーティングを付加することによって利益を得ることができる。例えば、紙及び/又は綿布のようなセルロースベースの基板は、インクの滲みを低減し、その上に形成されるトレースの導電性を高めるためにコーティングを必要とする場合がある。すなわち、導電パターンを印刷する前に、セルロース又は綿ベースの基板をポリウレタンコーティングのような透明層で被覆することができる。
【0110】
開示する導電性インクの粘性は、堆積方法に適応させることができる。例えば、粘性は、インクジェット印刷に適応させることができる。25℃で測定したインク調合物の粘性は、例えば、約200cps又はそれ未満、又は約50cps又はそれ未満、又は更に約25cps又はそれ未満のような約500cps又はそれ未満とすることができる。25℃で測定したインク調合物の粘性は、例えば、少なくとも50cpsとすることができる。25℃で測定したインク調合物の粘性は、例えば、約25cps又はそれ未満のような約50cps又はそれ未満とすることができる。ある一定の他の態様により、25℃で測定したインク調合物の粘性は、例えば、約2cpsから約20cps、又は約2cpsから約10cpsとすることができる。インク調合物の粘性は、極性プロトン性溶媒の選択比(例えば、水とアミンとの比)によって調節することができる。
【0111】
これに代えて、開示する導電性インクの粘性は、例えば、結合剤、樹脂、又はインク調合物の粘性を濃くするか又は増大することができる他の添加剤又は固形物の添加などにより、15cps、又は20cps、又は更に25cpsを超えるように調合することができる。例えば、インク内の溶存固形物の濃度は、約2,000mg/ml、又は1,500mg/ml又はそれ未満、約1,000mg/ml又はそれ未満、約500mg/ml又はそれ未満、約250mg/ml又はそれ未満、約100mg/ml又はそれ未満、約50mg/ml又はそれ未満、又は約10mg/ml又はそれ未満に適応させることができる。
【0112】
開示する導電性インクの濡れ性を適応させるために、添加剤を備えることができる。例えば、界面活性剤、分散剤、着色剤(例えば、染料)、及び/又は結合剤のような添加剤を使用して1又は2以上のインク特性を必要に応じて制御することができる。例えば、親水性結合剤は、特定のテキスタイルを濡らす上で助けになり、従って、テキスタイル繊維を共形的に被覆する導電トレースを提供する(すなわち、導電トレースの導電性を改善する)上で助けになる可能性がある。例えば、導電性インク調合物は、8重量%まで、又は8重量%まで、又は4重量%まで、又は2重量%まで、又は1重量%まで、又は0.1重量%まで、又は0.05重量%までのような10重量%までの1又は2以上の添加剤を備えることができる。組成物は、0.01重量%から4重量%、又は0.01重量%から3重量%、又は0.01重量%から2重量%、又は0.01重量%から1重量%のような0.01重量%から5重量%で添加剤を備えることができる。
【0113】
本発明の開示の導電性インク調合物は、界面活性剤、分散剤、着色剤(例えば、染料)、及び/又は結合剤のような添加剤を実質的に又は全く含まない。
【0114】
ノズルを使用して前駆体を堆積させることができ、ノズルの直径は、例えば、200マイクロメートル未満、又は更に100マイクロメートル未満とすることができる。粒子がないことにより、ノズルの目詰まり防止に役立たせることができる。ノズルは、インクを液滴状に堆積させることができ、液滴サイズは、100マイクロメートル未満、又は50マイクロメートル未満、又は更に30マイクロメートル未満のような200マイクロメートル未満とすることができる。ノズルは、インクを液滴状に堆積させることができ、液滴の体積は、100ピコリットル(pl)未満、又は50pl未満、又は25pl未満、又は更に15pl未満とすることができる。液滴は、60滴/インチよりも高い、90滴/インチよりも高い、200滴/インチよりも高い、500滴/インチよりも高い、1,000滴/インチよりも高い、1,500滴/インチよりも高い、2,500滴/インチよりも高い、4,000滴/インチよりも高い、又は6,000滴/インチよりも高いなどの30滴/インチよりも高い密度で堆積させることができる。
【0115】
導電性インクは、標準的な室温及び圧力のような周囲条件下でテキスタイル基板上に印刷することができる。
【0116】
テキスタイル基板は、インクの堆積前及び/又は堆積中に加熱することができる。例えば、テキスタイル基板は、40℃から90℃の温度に加熱することができる。図6を参照すると、加熱されたプラテン12とノズルアセンブリ14とを含む例示的インクジェットプリンタ10を示している。使用時に、本発明の開示の導電性インクは、インクの液滴を堆積させることができるようにプリンタ10に装填することができる。プラテン12は、印刷中に30℃から60℃、又は40℃から90℃のような30℃から90℃の温度に加熱することができる。
【0117】
本明細書では液滴のサイズ及び密度、液滴の体積、及びノズルサイズについて特定の数を列挙するが、これらの値は、選択した印刷方法、選択したプリンタ(例えば、ノズル構成)、導電性インクの粘性、及び望ましいカバレージに応じて変わる可能性がある。
【0118】
従って、本発明の開示のある一定の方法により、堆積中に低い温度で加熱されるテキスタイルのような基板上に導電性インクを堆積させた後に、インク調合物内の金属錯体を金属構造に変換する硬化段階が続くことができ、硬化段階は、本明細書に詳述する硬化段階のいずれかによるものとすることができる。
【0119】
本発明の開示のある一定の他の方法により、周囲温度(及び圧力)のテキスタイルのような基板上に開示する導電性インクを堆積させた後に、インク調合物内の金属錯体を金属構造に変換する硬化段階が続くことができ、硬化段階は、本明細書に詳述する硬化段階のいずれかによるものとすることができる。
【0120】
印刷されたテキスタイル又は織物は、印刷間に硬化又は乾燥させて織物の飽和を回避することができる。被覆された織物の抵抗は、トレース寸法(例えば、厚み)、導電性インク組成物、及び印刷されたフレキシブル基板、例えば、織物に基づいて一般的に0.01-500Ω/□の範囲にある。
【0121】
例示的銀インク調合物は、水とアルコール及び/又はアミンのうちのいずれかとのような2又は3以上の極性プロトン性溶媒に溶解させた化学量論量の第1及び第2のリガンドを有する銀錯体を備えることができる。一般的に、そのようなインク溶液は、銀錯体を250mg/ml又はそれよりも多く、例えば、500mg/mlで含むように調合される。これらの溶液は透明である。導電性インクの堆積中にテキスタイルを加熱することにより、印刷領域外へのインクの滲みを低減することができる。例えば、本発明の開示のインク及び方法を使用して形成された導電トレースは、0.4mm未満、又は0.3mm未満、又は0.2mm未満、又は更に0.1mm未満のような0.5mm未満のインクの滲みを示すことができる。本明細書に使用する場合に、用語「インクの滲み」は、インク堆積精度の尺度を意味すると見なすことができ、インクが延びることができるトレースの定められた縁部(意図された境界)からの距離に関して言及される。
【0122】
本発明の開示の態様によるインク組成物の500mg/mlの例示的溶液は、25℃で約5から15cpsの粘性、約1.0から1.3g/mlの密度、少なくとも10から13のpH、約15から34dyn/cmの表面張力、及び約15から25重量%の銀含有量を有することができる。そのようなインクのインクジェット印刷は、プラテン12(図6)上で30℃から90℃に加熱されたテキスタイル基板に対して60から6000滴/インチで5から200マイクロメートルの液滴として、例えば、1270滴/インチで65マイクロメートルの液滴としてインクを堆積させる段階を備えることができる。次に、このテキスタイルを200℃よりも低い温度で30分未満の時間、例えば、140℃で2から20分にわたって又は140℃で10分にわたって硬化させることができる。これに代えて、30分未満の時間、例えば、2から20分にわたって又は10分にわたって赤外線に露出することにより、テキスタイルを硬化させることができる。本方法から得られる例示的線幅は約2mmとすることができ、0.2mm未満、又は更に0.1mm未満のような0.5mm未満のインクの滲みを示すことができる。更に、このパターンは、5Ω/□未満、又は1Ω/□/未満、又は0.1Ω/□から0.9Ω/□のような10Ω/□/未満の抵抗率を示す。
【0123】
本発明の開示の導電トレースは、10.Ω/□未満、又は8.0Ω/□未満、又は6.0Ω/□未満、又は4.0Ω/□未満、又は2.0Ω/□未満、又は0.1Ω/□から1.0Ω/□のような1.0Ω/□未満のシート抵抗値を有することができる。抵抗加熱器のような導電トレースのある一定の用途では、2.0Ω/ 又は10.0Ω/ を超えるなどの増大したシート抵抗から利益を得ることができる。
【0124】
本発明の開示の方法に使用することができる例示的システムは、Fujifilm Dimatix製DMP 2850及びDMP 2931を含む。このプリンタを使用する場合に、本発明の開示の導電性インクは、5から200マイクロメートルの液滴サイズ又は100pl未満の液滴体積を使用してプラテン上で予備加熱されたテキスタイルに60から6000滴/インチで印刷することができる。次に、テキスタイルをこのデバイスのプラテン上で140℃で10分にわたって又は10分にわたる赤外線への露出などで硬化させるか、又はオーブン又は他の領域に移動して硬化させることができ、そこで金属錯体内の金属が固体の導電金属に変わる。硬化は、本明細書に開示するあらゆる方法によるものとすることができる。
【0125】
本発明の開示のインク及び印刷方法によって達成可能な導電性に影響を与える重要因子は、インク化学とテキスタイルの面エネルギとの適合性、テキスタイルのサイズ及び構造(織り、不織)、O2プラズマなどによるテキスタイルの前処理、及び高分解能トレースを与える印刷中のテキスタイルの原位置加熱、及び低い温度硬化(200℃よりも低い;硬化に関する以下の節を参照)などの硬化方法を含む。従って、本発明の開示のインク及び方法は、インクの粒子がインクジェットデバイスのノズルを詰まらせる可能性があり、インクを使用して形成されたトレースが一般的に非導電性であり(すなわち、非常に高いシート抵抗を示す)、高い硬化温度を必要とするので多くのテキスタイルに適合しない図4Aから4Eに示す従来技術のインクを超える大きい利点を提供する。
【0126】
上記で詳述したように印刷された例示的テキスタイルを図7Aから7Cに示している。図7Aに示すのは、印刷されたセクション(左)と印刷されなかったセクション(右)とを有する織りテキスタイル基板のクローズアップ図であり、印刷は、加熱された基板上で本発明の開示の導電性インクを使用して行っている。図7B及び7Cは、SEM(倍率150x及び800x)で撮影された印刷済みテキスタイルの走査型電子顕微鏡画像(SEM)を示している。これらの画像は、印刷中の基板加熱が基板繊維のより良い「染色」をもたらすことを明らかにしている。すなわち、本発明の開示による無粒子インクは、加熱されたテキスタイル基板の外面をより良く貫通する(例えば、テキスタイルの繊維に浸み込む)ことができ、又はより完全に被覆することができ(例えば、テキスタイルの外面を包み込む又はその中に浸み込む;共形コーティング)、テキスタイル基板上の染料として機能して加熱された基板に形成されたパターンの導電性を改善する。粒子(ナノ粒子、フレークなど)を備える従来技術の導電性インクは、テキスタイルに貫通することができないと考えられ、かつ図4A及び4Bに示すようにテキスタイル基板の上に着座することが見出された。これは、従来技術のインクを標準的な摩滅及び引き裂きを通してテキスタイル基板上に作用する擦過及び他の力によって除去されやすくする状態に残す。すなわち、原位置熱硬化は、織物スレッドの周りのより良いコーティングを促進する(すなわち、共形コーティング;図4G参照)。
【0127】
本発明者は、原位置硬化を使用して本発明の開示による導電性インクを用いて印刷されたテキスタイル(編みテキスタイル、織りテキスタイル、及びEvolon(登録商標)のような不織テキスタイル)のシート抵抗値が、ほとんどのテキスタイル基板について実験室内硬化よりも改善されることを見出した。原位置硬化はシート抵抗を低減し、一部の事例では実験室内硬化した導電トレースから測定された値よりも数桁も低減し、インクの滲みを低減する。これらの結果は、検査された全ての印刷層数(導電トレースの層数)について一貫していた。従って、インクジェット印刷などによるインクの堆積中にテキスタイルの加熱を含む本発明の開示の方法は、トレース分解能の改善だけでなく、トレースの導電性の改善にも至る。
【0128】
更に、本発明の開示による導電性インクを用いて印刷された編みテキスタイル及び不織テキスタイル(Evolon(登録商標))のシート抵抗値は、酸素プラズマ又はコロナによる前処理によって改善された。従って、インクジェット印刷などによるインクの堆積前及び/又は堆積中にテキスタイルの加熱を含む本発明の開示の方法は、テキスタイルの前処理も含むことができ、未処理のテキスタイルを超えるトレース導電率の改善を提供することができる。
【0129】
フレキシブル基板
【0130】
広範な固体材料を本発明の開示の導電性インクの堆積(例えば、印刷)に役立たせることができる。有機及び無機の基板を使用することができる。ポリマー、有機繊維及び合成繊維、プラスチック、金属、木材、紙、革、セラミック、ガラス、シリコン、半導体、及び他の固形物のようなフレキシブル基板を使用することができる。
【0131】
フレキシブル基板は、フレキシブルポリマー又はポリマーフィルムとすることができる。例示的ポリマーフィルムは、Kapton(登録商標)のようなポリイミド(PI)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエーテルスルホン(PES)フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)フィルム、及びポリアミド(PA)及びポリアミドイミド(PAI)フィルムを含む。
【0132】
特定の例では、基板は、有機又は合成繊維によって形成された編み、織り、又は不織の織物のようなテキスタイルである。そのようなテキスタイル基板の例示的繊維は、有機材料(例えば、綿、セルロース、絹、木材、羊毛、革、スエード)に加えて、少なくともポリエステル、ポリアミド、スパンデックス、ポリエステル-スパンデックス、ナイロン、ナイロン-スパンデックス、Evolon(登録商標)、エラスタン、及び他の合成材料を含む。これらの材料のあらゆる混合も可能である。
【0133】
テキスタイルは、その上への導電性インクの堆積を改善し、シート抵抗を低減することができるO2プラズマ又はコロナのような反応ガスで前処理することができる。
【0134】
更に、本明細書に開示する導電性インクの堆積又は印刷の前に、テキスタイルを事前洗浄して乾燥させることができる。
【0135】
導電性インクの硬化
【0136】
本発明の開示の導電性インク調合物が周囲温度又は高温のいずれかでテキスタイル基板のような基板上に印刷された状態で、それらを硬化させて、導電パターンを形成することができる(すなわち、金属構造に変換される)。硬化させる段階は、印刷された基板を加熱する段階、及び/又は印刷された基板に放射線を照射する段階を備えることができる。ある一定の例では、印刷された基板は、60分未満、例えば、30分未満、又は15分未満の時間にわたって200℃又はそれよりも低い、例えば、150℃又はそれよりも低い、又は100℃又はそれよりも低い温度まで加熱することによって硬化させることができる。特定の例では、印刷された基板は、10分にわたって140℃まで加熱して又は赤外線に10分にわたって露出して1Ω/□未満の抵抗値を有する導電パターンを形成する。
【0137】
編みテキスタイル、織りテキスタイル、及び不織テキスタイルのシート抵抗値を検査したが、導電性インクの堆積中は基板を加熱した又はしなかった(すなわち、周囲温度でテキスタイルに印刷して硬化させた、又は高温でテキスタイルに印刷して硬化させた)。最も低いシート抵抗は、織りポリエステル上の導電トレースの場合に見出され、テキスタイルは印刷中に周囲温度又は高温であったが、編みテキスタイル及び不織テキスタイルの両方は、加熱された基板への印刷から利益を受けた。
【0138】
ある一定の例では、テキスタイル基板上の導電トレースは、これに加えて又はこれに代えて、フォトニック硬化などによるパルス光への露出で硬化させることができ、この場合に、パルス数は2から20の範囲である。これに加えて又はこれに代えて、硬化させる段階は、赤外線への露出などにより、テキスタイル基板上の導電トレースを照射する段階を備えることができる。
【0139】
本明細書に開示する溶媒システムでの金属錯体の高い溶解度により、高導電率/低抵抗を有する硬化した連続導電性フィルム又はトレースを提供する。例えば、本発明の開示による銀インクは、1Ω未満の抵抗を有するトレースを提供し、この場合に、トレースは、金属を少なくとも90%、例えば、少なくとも95%、又は96%、又は97%、又は98%、又は99%、又は更に99.5%と同程度含む。
【0140】
保護コーティング
【0141】
本明細書に開示する導電性インクを使用して形成された導電トレースは、誘電体コーティングのような保護コーティングで被覆することができる。例えば、トレースの全て又は一部は、水性誘電材料ポリマー溶液で被覆することができる。例示的ポリマー溶液は、少なくともアクリルポリマー及びポリウレタンポリマーを含む。
【0142】
塗装、噴霧、又は印刷(例えば、インクジェット印刷)により、保護コーティングを堆積させることができる。ポリマー溶液の粘性は、適切な溶媒及び溶媒混合物で希釈することにより、特定のテキスタイル及び堆積方法に対して調節することができる。そのようなコーティングは、熱処理、溶媒の蒸発、照射(例えば、UV処理)、又はそのいずれかの組合せによって硬化させることができる。例示的コーティングは、導電トレース上に印刷され、テキスタイルを30分又はそれ未満、例えば、20分又はそれ未満にわたって160℃又はそれよりも低い、例えば、150℃又はそれよりも低い温度まで加熱することによって硬化するアクリルベースのコーティングを含む。
【0143】
この組成物は、インクジェット、グラビア、フレキソ、又はスクリーン印刷技術で印刷することができ、その場合に、インクの粘性は特定の技術に対して調節され、例えば、25℃で測定した粘性は、インクジェット印刷では2から40cP、又はフレキソ印刷では100から400cP、又はグラビア印刷では50から300cPとすることができる。
【0144】
例示的保護誘電体コーティング組成物は、米国特許出願公開第2020/0283653号明細書に開示されており、これは、水性結合剤、250nm未満の粒子径を有する無機ナノ粒子、及び1又は2以上の極性プロトン性溶媒を含むものである。水性結合剤は、ポリビニルアルコール、ヒドロキシセルロース、ヒドロゲル、又はその組合せとすることができる。無機ナノ粒子は、SiO2ナノ粒子、Al23ナノ粒子、TiO2ナノ粒子、ZrO2ナノ粒子、ナノクレイ、又はその組合せとすることができる。無機ナノ粒子は、コロイド粒子とすることができる。無機ナノ粒子は、100nm未満、又は更に50nm未満の粒径を有することができる。従って、例示的保護誘電体コーティング組成物は、2から15重量%の水性結合剤、100nm未満の粒子径を有する1から5重量%のコロイド状シリカ、及び水性溶媒を備えることができ、この組成物は25℃で測定した粘性が2から400cPである。
【0145】
このコーティングは、250℃又はそれよりも低い温度への30分又はそれ未満にわたる露出のような熱、又はフォトニック硬化を通じて硬化させることができる。硬化の前に、誘電体コーティング組成物を乾燥させることができる。
【0146】
このコーティングは、図11に示すように、導電トレースの耐水洗性を改善することができ、導電トレースの耐擦過性も改善することができる(実施例の表5を参照)。
【0147】
トレースの接触点又はパッドのような接触領域の上に追加の導電コーティングを設けることができる。そのようなコーティングは、導電性ポリマーを備えることができ、印刷されたトレースとの導電性接触を提供すると同時に、トレースを擦過から及び/又は洗浄サイクル中に保護することができる。
【0148】
フレキシブル抵抗加熱器
【0149】
本発明の開示の導電性インク及びそれらのインクを印刷する方法は、極端な又は過酷な条件を含む様々な条件下で効率的に温かさを送出することができる抵抗加熱器のような電子素子をフレキシブル基板の上に形成するのに使用することができる。抵抗加熱器は、抵抗器に電流を流し、電気エネルギを熱エネルギに変換することによって作動する。本発明の開示は、本明細書に開示する導電性インクのいずれかを使用して少なくとも1つの導電パターンをその上に印刷させたフレキシブル基板を含むフレキシブル抵抗加熱器を提供し、導電パターンは、電流を伝達して熱を発生させるように構成される。
【0150】
抵抗加熱器は、導電トレースと同じ導電性インク、又は本明細書に開示する導電性インクの別のもので印刷された少なくとも1つのバスを更に備えることができ、その場合に、少なくとも1つのバスは、少なくとも1つの導電パターンに電気的に接続され、電源への接続を提供するように構成される。これに代えて、配線された構成要素又は接点としてバスを備えることができ、その場合に、そのような構成要素は表面装着することができる(例えば、導電性エポキシを用いて装着される)。
【0151】
導電パターン及び/又はバスは、保護コーティング、例えば、上記で説明したコーティングのいずれかでオーバーコートすることができる。例示的保護誘電体コーティング組成物は、米国特許出願公開第2020/0283653号明細書に開示されている。
【0152】
電力は、電源からバスに供給することができる。電源は、加熱器を駆動するのに必要な電圧及び電流を供給することができるバッテリパックとすることができる。例えば、4Aの電流機能を有する24VのDCバッテリを使用することができる。電源は、壁コンセントのような電気差込み口とすることができる。電源は、自動車の5から15Vの電気システムとすることができる。電源の電圧は、望ましい電圧を達成するために電圧を上下させるDC-DCコンバータなどを使用して導電トレース及びバスに供給される電圧より高く又は低くすることができる。
【0153】
電源は、加熱器コントローラ(例えば、マイクロコントローラ回路)によって制御されて例えば電力をオン又はオフにし、又はバス(及び導電パターン)への電力を調節することができる。場合により、加熱器コントローラは、別々の電源から又は例えば図35に示すように同じ電源から電力を引き出す。従って、電源は、加熱器コントローラを移動するのに必要な電圧及び電流を供給することができる。
【0154】
加熱器コントローラは、加熱器の機能を制御し、加熱器電源を制御し、安全モニタ(例えば、センサ、感知トレース)を提供し、電源のステータスのような抵抗加熱器の態様に関するステータス(例えば、電圧、温度のようなバッテリステータス;加熱器抵抗;加熱器の電流引き込み;導電性バスの電圧低下など)、及びユーザに対する加熱器のステータス(例えば、加熱器オン、加熱器レベル、加熱器温度)を提供する。例示的ユーザ提示ステータスは、図28に示す表示器30のような表示灯の点灯による電源オン/オフ及び電源レベルを備えることができ、これは、自動車座席に位置決めされた抵抗加熱器のステータスを表示するものである。
【0155】
抵抗加熱器は、バスを通して比較的大きい電流を流し、導電パターンに電流を送出することができる。導電パターン又はバスに亀裂又は裂け目のような障害が発生した場合に、パターン又はバスの残余を流れる電流は、ホットスポットを発現させる可能性がある。そのような危険な状態を軽減するために、抵抗加熱器に感知トレースを付加することができる。例えば、本明細書に開示する導電性インクのいずれかを使用して印刷された感知トレースは、バスのいずれか又は両方に又は導電パターンに沿う点で接続することができ、バスの電気特性を表す信号を生成するように構成することができる。感知トレースは、バスとの接続点での電圧を測定することができ、予め決められたレベルよりも大きい電圧降下は、損なわれた導電パターン又はバスを表すことになる。電圧降下は、例えば、マイクロコントローラを使用するアナログ-デジタル変換器、比較器のようないずれかの感知回路で測定することができる。バス又は導電パターンの一体性エラーを示す信号は、抵抗加熱器の作動を修正し、例えば、加熱器の電源を切ることができる。
【0156】
抵抗加熱器は、衣類に使用するウェアラブル加熱器又は加熱素子、又は自動車産業での抵抗加熱素子(例えば、座席加熱器、電気カーヒーター)などとして用途を見出すことができる。一例では、抵抗加熱器の少なくとも導電パターンは、自動車座席カバーの裏面のようなテキスタイルに直接印刷される。これに代えて、フレキシブル基板に抵抗加熱器を印刷することができ、例えば、座席カバーの材料の下又は座席材料と発泡クッション材料の両方の下に位置決めされたフレキシブルポリマーフィルムに導電パターンが印刷される。フレキシブルポリマー基板上に印刷する場合に、抵抗加熱器は、自動車座席材料の底面又は自動車座席のクッションの発泡層のような別のテキスタイルに積層、接着、又は結合することができる。
【0157】
例示的5-トレース加熱器を図15に示している。これらの加熱器は、それぞれ図17A及び17Bに示すように直列に又は並列に配置することができる。
【0158】
図15に付番ブロックで示すように、トレースに沿って様々な点で取得した抵抗読取値は、トレース長に関して直線的に変化することが見出されている(2つの5-トレース加熱器からの測定値については図16Aを参照されたい)。実際に、各点での計算及び測定抵抗値は、非常に近いことが判明した(すなわち、鰐口クリップによる接地接続と手動先端プローブとを使用して測定した抵抗;図16B参照)。類似の結果は、7-トレース加熱器でも観察された。印刷/工程関連の抵抗の変動を調べるために左から右及び右から左の抵抗測定が行われた。トレース長について正規化した場合に、5-トレース及び7-トレース加熱器からの測定抵抗は、予想される抵抗と顕著な相関を示している。
【0159】
本発明の開示の抵抗加熱器の利点は、フレキシブルがあって薄く、急速に熱くなる/冷えることである。抵抗加熱器に電流が供給された状態で、ほぼ直ちに加熱が開始される。上限温度は、印刷されたトレースに供給される全電圧に基づいて制限することができ、その場合に、上限設定値は、加熱速度にほとんど影響を与えないことが見出されている(すなわち、65℃への加熱と85℃への加熱は同じ速度で生じる)。
【0160】
温度は、平衡に達するまで電力と共に直線的に増加する(約2ワットの電力で100°F、図18A参照)。更に、本発明の開示のインク及び方法を使用して印刷された抵抗加熱器に対する抵抗は、時間(図18B)又は温度(図18C)に伴ってドリフトすることが観察されない。そのような結果は、トレース毎に一様に観察され、僅か3Ωの全体的な偏差を示すに過ぎない。
【0161】
従って、抵抗加熱器は、400ワット/平方メートルを超える電力密度を伝達するように構成することができる。例えば、本発明の開示の抵加熱器は、少なくとも600ワット/平方メートル、例えば、少なくとも800ワット/平方メートル、又は少なくとも1,000ワット/平方メートル、又は少なくとも1,500ワット/平方メートルの電力密度を伝達することができる可能性がある。これに代えて、抵抗加熱器は、400ワット/平方メートル未満、例えば、350ワット/平方メートル未満、又は300ワット/平方メートル未満、又は200ワット/平方メートル未満、又は更に100ワット/平方メートル未満の電力密度を伝達するように構成することができる。抵抗加熱器は、少なくとも10ワット/平方メートルの電力密度を伝達するように構成することができる。
【0162】
自動車の電気システムのような5から15Vの電気システムに接続された時に、少なくとも1つの導電パターンは、1から30オームの抵抗率を有し、及び/又は-40℃から60℃で10から1500ワット/平方メートルを発生させ、及び/又は少なくとも400ワット/平方メートルの電力密度、例えば、1500ワット/平方メートルまでを伝達する及び/又は約0.1℃/秒から約1℃/秒の速度で熱くなるように構成することができる。抵抗加熱器からの熱出力は、導電性インク内の金属又は合金、導電トレースの幅、導電トレースの厚み、トレースの抵抗、及びインク組成物中のあらゆる他の成分(例えば、他の導電性ポリマーなど)のような様々な設計因子に依存することになり、従って、特定の用途に合わせて調節することができる。更に、電源の選択、導電パターンの全体的なサイズ、及び基板材料の選択により、熱出力を調節することができる。基板として使用するテキスタイルに応じて、本明細書に開示する導電性インク及び方法によって形成される抵抗加熱器は、30℃から150℃の範囲の温度に到達することができる。
【0163】
銀ベースのテキスタイル抵抗加熱器の電気性能及び熱性能を改善する1つの手法は、カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン、グラファイト、金属酸化物、及び導電性ポリマーのような他の導電材料を充填剤として組み込むことである。そのような導電性充填剤材料と導電金属を混ぜ合わせることにより、平均的な導電性及び熱伝導性の特徴を有する導電性複合物が得られる。より重要なことは、この複合物が、フィルムの一体性、印刷時の共形織物コーティング、及び低い加熱器製造コストを示すと期待されることである。銀は最も導電性の高い金属であるので、銀ベースの複合物は、最大加熱器温度の観点で高い加熱器性能を有する低い電気抵抗を示すことができる。更に、そのような複合インクは、導電性ポリマーがあらゆる空隙又は亀裂を埋めるので、主として相互接続の改善により、素朴な銀フィルムで印刷されたデバイスと比べてより均一な熱分布を提供する可能性がある。
【0164】
従って、これらの追加の導電性充填剤材料の使用により、テキスタイル織物及びシートのような最終的な印刷基板の可撓性を維持するか又は更に改善することができ、無粒子銀インクとほぼ同じ方法で、テキスタイル基板での個々の繊維の共形コーティングを改善することができる。
【0165】
フレキシブル力センサ
【0166】
本発明の開示の導電性インク及びそれらのインクを印刷する方法を使用して、力感知素子を印刷することができる。従って、本発明の開示はまた、間隙距離によって少なくとも1つの導電層から分離された少なくとも1つの電極層を含む力感知デバイスに関する。少なくとも1つの電極層は、導電性インクを使用して第1のフレキシブル基板上に印刷された少なくとも1つの電極を備えることができる。少なくとも1つの電極層は、導電性インクを使用してフレキシブル基板上に交互嵌合的に印刷された第1及び第2の電極を備えることができる。少なくとも1つの導電層は、本明細書に開示する導電性インク、抵抗性カーボンベースのインク、導電性塗料、酸化インジウムスズ(ITO)、又はその組合せを用いて印刷された第2のフレキシブル基板上の導電トレース又は領域(本明細書では導電ストリップとも呼ぶ)を備えることができ、又はポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)、カーボンナノチューブベースのフィルム(CNT)、カーボン装荷熱可塑性ポリマー、カーボン装荷シリコーン、カーボン装荷ポリマー箔、ベロスタットのいずれか、又はその組合せを備えることができる。
【0167】
図19Aを参照すると、第1のフレキシブル基板102は、その上に印刷された第1及び第2の電極(それぞれ、106a及び106b)を備えることができる。更に、第1及び第2の基板(それぞれ、102及び108)は、第1の基板102上の第1及び第2の電極(106a,106b)が第2の基板108上の印刷された導電性領域110に直接に対向し、これら2つの基板層間に形成された間隙112によってそこから分離されてセンサのピエゾ抵抗特性を与えるように配置することができる。分離距離は、導電層と電極層の間の距離を埋めるテキスタイルで維持することができる。例示的テキスタイル材料は、メッシュ織物又はネット織物を含む(図24A参照)。
【0168】
分離又は間隙112はまた、印刷された電極及び導電性領域を閉じ込める領域の外側に基板層のうちの1つをエンボス加工することによって維持することができる。図24Bに示すような開放領域を縁取るスペーサ材料(フレーム107)によってこの分離を維持することができ、その場合に、開放領域は、電極(基板102上の106a,b)及び/又は導電領域の全て又は一部を含む。例示的スペーサ材料は、本明細書に開示するフレキシブルポリマーフィルムのいずれか又は結合剤を含む。この分離は、スペーサビーズ(109;図24C)のようなドットによって維持することができる。ドット又はスペーサビーズは、結合剤で定位置に保持することができ、定位置に溶融させることができ(すなわち、熱への短時間の露出)、電極層及び/又は導電領域のような圧力センサの層の1つに印刷することができる。様々な基板層間の分離、従って電極と導電性領域との距離を維持するために、本明細書に開示する方法及び材料のあらゆる組合せが可能であり、かつ本発明の範囲内である。要素の選択、及び要素の間隔及びサイズに関する特定の設計考慮点は、力センサのサイズに依存する可能性があり、すなわち、印刷された電極及び基板の選択、例えば、フレキシブル高い基板は、基板層間の好ましい分離距離を維持するための追加の分離要素から利益を得ることができる。
【0169】
様々な基板層間の分離、すなわち、間隙を使用して、電極と導電層間の「非接触」距離を維持することができるので、力センサを圧縮する(力センサの様々な層が接触するように圧縮する)ことにより、基板層が接触し、力センサの電気抵抗率が低下することになる。例示的分離距離は、少なくとも1ミクロン、例えば、少なくとも10ミクロン、又は少なくとも20ミクロン、又は少なくとも40ミクロン、又は少なくとも60ミクロン、又は少なくとも80ミクロン、又は少なくとも100ミクロン、又は更に少なくとも150ミクロンとすることができる。PETポリマーフィルムによって形成された分離フレームによって維持される例示的分離距離は、約180ミクロン(~0.18mm)である。
【0170】
印刷された導電性領域と第1及び第2の電極との各々は、本明細書に開示する導電性インクのうちのいずれかのような導電性インクを使用して印刷することができる。例えば、無粒子銀インクを使用して不織テキスタイル上に導電性領域と第1及び第2の電極とを印刷すると、抵抗は、印加された力の量に比例して低下する(図19B参照)。
【0171】
図25Aに示すように、少なくとも1つの電極層は、第1のフレキシブル基板102上に印刷された少なくとも2つの導電トレースを含み、それによって第1及び第2の電極(106a,106b)を形成することができ、導電トレースは、交互嵌合的に構成される。図25Bに示すのは、第1のフレキシブル基板102上の少なくとも1つの電極の上に位置決めされた第2のフレキシブル基板108上の導電層である。
【0172】
図20Aは、本発明の開示の力センサに対する別の構成を示している。第2のフレキシブル基板上の導電層は、導電性カーボンベースのインクを用いて印刷することができる。図20Bに示すように、導電層が低抵抗率カーボンインクを用いて印刷された時に、相応の信号を生成するのに必要な力は、図20Cに示すように、導電層が高抵抗率カーボンインクを用いて印刷された場合よりも遥かに低い。
【0173】
本発明の開示の態様による力感知デバイスの追加の構成は、導電層と第1及び第2の電極がフレキシブル基板の全厚を占める図21及び22に示している。すなわち、図19Aに基板厚みの一部だけを占めるように示している層104及び110は、図21及び22に示すように基板の全厚を占めることができる。
【0174】
図23Aに示すように、力感知デバイスは、2つの導電層(110a,110b)を備えることができ、ここでは、第1の導電層は、無粒子導電金属インクを用いて第2のフレキシブル基板上に印刷され、第2の導電層は、後でカーボンインクを使用して第3のフレキシブル基板114上に印刷される。この様々な層を配置して、図23Aに示すように、2つの分離領域又は間隙(例えば、メッシュ織物、フレーム、エンボス領域、ドットなどで与えられる分離のような図示の2つの間隙、112a,112b)を設けることができる。
【0175】
力感知デバイスは、テキスタイル上に印刷された導電層及び/又は電極層を含むことができ、その場合に、印刷された導電材料がテキスタイル基板の厚みの10パーセントから100パーセントの範囲を含む。力感知デバイスは、テキスタイル基板上に印刷された電極層を含むことができ、その場合に、印刷される電極が互いに等距離上に印刷される。
【0176】
図19A、20A、21、及び22に示すように、力感知デバイスは、2層の基板(例えば、織物)、すなわち、1つの導電層と1つの電極層を備えることができ、その場合に、導電層上の導電材料は、電極層上の印刷された電極に面している。図19A及び21に示すように、導電層と電極層は、共に無粒子導電金属インク(例えば、無粒子銀インク)で印刷することができる。図20A及び22から見ることができるように、導電層は、抵抗性カーボンインクを用いて印刷することができ、その場合に、電極層は、無粒子導電金属インクを用いて印刷することができる。これに代えて、力感知デバイスは、テキスタイルのような基板上に印刷された導電金属インクの2つの層と、1つの電極層とを備えることができ、その場合に、ピエゾ抵抗性カーボンインクを用いて印刷された導電層は、無粒子導電金属インクを用いて印刷された導電層と無粒子導電金属インクを用いて印刷された電極層の間に位置することができる(図23A参照)。
【0177】
図23Aに示すように構成された力センサは、45ポンドまでの力に遭遇した場合に、100から10,000Ωの範囲の電気抵抗を有することができる(図23B参照)。
【0178】
電極層及び導電層のような力センサの様々な層は、ホットメルト結合フィルム、感圧結合フィルム、感圧接着剤により、又は縫製により、第1及び第2の電極を含む領域の外側などに結合することができる。例えば、ホットメルト結合フィルム、感圧結合フィルム、又は感圧接着剤のいずれかを使用して、間隙の分離距離を維持するフレームを形成することができ、それらはまた、力センサの層を結合するように機能することができる。
【0179】
力が力センサに印加されると、少なくとも1つの電極と導電層がより接近するので、力センサの電気抵抗率が低下する。この電気抵抗率の変化を制御回路で伝えることができる。従って、本明細書に開示する力感知デバイスは、制御回路、通信デバイス(送受信機)、及びコントローラを更に備えることができ、その場合に、少なくとも1つの信号経路で少なくとも1つの印刷された電極を制御回路に接続することができる。
【0180】
従って、フレキシブル基板の圧縮は、電気信号、すなわち、抵抗の変化を引き起こし、この信号が、コントローラ(図33参照)と電気通信する送受信機に伝わる。制御回路は、コンピュータ、電話、タブレットのような外部の接続可能なデバイスで可読の力センサ測定値の出力のような送受信機と外部電子デバイス間の通信を支援するために有線又は無線の通信回路を有することができる。外部電子デバイスは、コンピュータ、携帯電話、ヘッド装着式デバイス、ディスプレイ、ゲームユニット、セットトップボックス、これらのデバイスのうちの2又は3以上を含むシステム、又は他の電子機器とすることができ、力感知デバイスから受信した信号を変換するソフトウエアを備えることができる。図32に示すように、力センサ及び送受信機は、自動車座席のような座席の一部とすることができる。
【0181】
力感知デバイスは、本明細書に示す基板のうちのいずれかのようなフレキシブル基板上に印刷することができる。例えば、フレキシブル基板は、編み、織り、又は不織の基板又はテキスタイルとすることができる。このテキスタイルは、ポリエステル、ポリアミド、スパンデックス、ナイロン、Evolon(登録商標)、エラスタン、綿、セルロース、絹、木材、リネン、羊毛、革、又はそれらの配合物で生成することができる。フレキシブル基板は、紙、羊皮紙、革、及びプラスチックのフィルム及び容器を備えることができる。
【0182】
従って、力感知デバイスは、少なくとも1つの導電トレースをその上に印刷させたテキスタイルを備えることができ、その場合に、少なくとも1つの導電トレースの少なくとも一部分は、保護誘電体コーティングでオーバーコートされる。少なくとも1つの導電パターンは、0.5mm未満のインクの滲み、及び10Ω/□未満の抵抗を呈することができる。無粒子導電トレースは、導電性インクの2又は3以上の層を含むことができる。
【0183】
導電層と電極層の各々は、フレキシブル基板の上に直接に印刷することができる。従って、電極層は、無粒子導電金属インクを使用してフレキシブル基板上に交互嵌合的に印刷された第1及び第2の電極を備えることができ、導電層は、導電性カーボンベースのインクを使用してフレキシブルポリマーフィルム(図26A)又はグラシン紙(図27A)に印刷することができる。これら後者の各実施例に対する例示的性能データは、それぞれ図26B及び27Bに示している。
【0184】
本発明の力センサの様々な例は、本明細書に開示する導電性インクのいずれか又はカーボンベースのインクを用いて印刷された1又は2以上の導電層を含むものとして説明するが、他の導電材料を使用することができ、かつ本発明の範囲内である。例えば、少なくとも1つの導電層は、本発明の開示の導電性インク、抵抗性カーボンベースのインク、導電性塗料、酸化インジウムスズ(ITO)、又はその組合せを用いて印刷することができ、又はポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)、カーボンナノチューブベースの薄膜(CNT)、カーボン装荷熱可塑性ポリマー、カーボン装荷シリコーン、カーボン装荷ポリマー箔、ベロスタットのいずれか又はそのいずれかの組合せを備えることができ、その場合に、材料の特定選択により、異なる力-抵抗応答を提供することができる。
【0185】
本明細書に開示する力センサは、フレキシブル基板の繊維を共形的に被覆する無粒子導電金属インクの使用を含み、それにより、本発明の開示の力センサに優れた可撓性を提供することができる。従って、これらのインクを用いて印刷された少なくとも1つの電極は、10Ω/□未満の抵抗を示すことができる。
【0186】
更に、無粒子導電金属インクを印刷するのに使用される方法により、0.6mm未満、例えば、0.5mm未満、又は0.4mm未満、又は0.3mm未満、又は更に0.2mm未満のインク滲みを有する導電トレースを提供する。従って、これらの力センサは、非常に小さくなるように設計することができ、広範なフレキシブル電子機器に位置決め可能とすることができる。
【0187】
本発明の開示の例示的用途として、力を測定又は制御するデバイス、衝撃を感知/測定するデバイス、血圧測定及び類似の診断、筋力の測定、座席又はベッドの占有者検出、電気スイッチ、ロボットフィードバック/制御、触覚感知/信号送信、触覚フィードバック、患者の呼吸のモニタ、ベッド/体圧(床ずれ防止)、包帯圧モニタ、足又はショーからの圧力のモニタ、又は力マッピングのためのセンサアレイを含む。
【0188】
例えば、フレキシブル力センサを自動車座席の座席カバーとして構成されるフレキシブル基板又はテキスタイル上に印刷することができる(図28参照)。従って、フレキシブル力センサ26は、人がその特定座席に座っているか否かを従って力センサの導電層及び電極層の圧縮によって感知することができ、それに応じて自動車のある一定のシステムを調節し、例えば、エアバッグシステムを有効化する、座席内加熱器を起動又は起動解除することなどを行うことができる。そのような信号は、制御回路28に沿って自動車座席内又は自動車内の他のシステムに送信することができる。一例では、力センサ26を座席の縁に位置決めすることができ(A内の分解組立図を参照)、センサにより、ユーザは座席ベース22及び/又は背部24の位置を調節することができる。例えば、自動車座席の側面にある力センサ33a及び33bの例示的位置を参照されたい。自動車座席のフレキシブルテキスタイルの裏面上に印刷された力センサ33a及び33bの導電トレースと接続回路とを示す図28のセクションBに示すセンサの分解組立図を図29Aに示している。更に示すのは、座席の望ましい動きを引き起こすこと(すなわち、座席ベースを上下又は前後に移動する、座席を前後に移動するなど)ができるように、そこに印加された力を送受信機及び/又はコントローラ(図32参照)に伝えることができる力センサ33a,bのための制御回路37である。
【0189】
フレキシブル力センサは、自動車座席に位置する時の搭乗者又は運転者の体重のような特定の重量又は力を検出するように設定することができる。例えば、人又は対象物がエアバッグの展開に関連付けられた必要重量の下にある時を検出し、それに応じて自動車システムを調節するようにセンサを較正することができる。複数のセンサを座席背部に使用して自動車座席にいる人の身長及び/又は体重を決定することができ、自動車のシステム、例えば、座席位置、ミラー位置などを自動的に事前調節することができる。センサの組合せを使用して、ある一定の個人(搭乗者又は運転者)の特徴を決定することができ、その個人に対応するように自動車のシステムを設定することができるので(搭乗者又は運転者の認識)、後に自動車へ乗り込むと、それらのシステムは、リセットしてその個人の好みに対応することができる。例えば、図31を参照されたい。
【0190】
力センサ制御式抵抗加熱器
【0191】
今日では、自動車両に対して着座区域加熱、背もたれ加熱、アームレスト加熱、ハンドル加熱、ギアシフトレバー加熱、又は他の内面区域加熱のための加熱器、追加の照明、及び座席区域、ヘッドレスト、更にハンドルに対する位置制御器のような快適性関連の機能構成要素を装備することは公知である。例えば、座席加熱器は、車室内の乗員の近くで車両に配置された電極素子を使用する。通常、これらの電極素子、例えば、座席加熱器マットは、座席面区域、座席背もたれ、アームレスト、及び/又はハンドル又はギアシフトレバーのような乗員と接触又は近接する乗員座席の座面内に配置される。乗員に電極素子が見えないようにするために、電極素子は、典型的にシートトリムの下、カバーの下、又は車両車室を定める他の面の下に配置される。
【0192】
これらの電子素子は、搭乗者の快適性を損なってはならず、すなわち、電極素子がトリム又はカバーの下にあることに搭乗者が気付けないことが重要である。更に、そのような電極素子は、可撓性が高く、特に車両座席の座面のような面に一体化される場合に、空気及び湿度に対して透過性が高いことも必要になる。
【0193】
本発明の開示のインク及びこれらのインクを印刷して通気性テキスタイルのようなフレキシブル基板上に直接に印刷された導電トレース及び従って電子素子を形成する方法は、ユーザから隠されたそのような素子を提供するのに必要な柔軟性及び製造容易性を提供する。これらのインクは、堆積して硬化する時に、織物の感触及び可撓性に影響を与えない。従って、本発明の開示は、上述の要件を満足する力センサ、抵抗加熱器、及びそのような要素の組合せを提供する。
【0194】
具体的にかつ図34に関連して、本発明の開示は、1又は2以上の抵抗加熱器に加えて力感応抵抗器を含むデバイスを提供する。これらの2つの構成要素を組み合わせて抵抗加熱器のセンサ制御のためのデバイスを提供することができ、このデバイスは、一般的に、本明細書に開示する抵抗加熱器のいずれかのような抵抗加熱器を含む少なくとも1つの加熱層と、本明細書に開示する力センサのいずれかのような力センサを含む少なくとも1つの感知素子と、抵抗加熱器へ電力を中継し、力センサとの接触を感知するように構成された電子素子とを含む。
【0195】
このデバイスは、更に、様々な感知素子から電気信号を受信し、これらの信号に応答して制御信号を抵抗加熱器に送信するように構成されたコントローラを備えることができる。このようにして、感知素子上の個々の力は、加熱器に対して加熱器の微調整された制御を提供することの可能なフィードバックを提供することができる。例えば、ユーザが手動で加熱器をオンにするが、座席に位置していない場合に、コントローラは、個々の力センサからの信号(又はその欠如)を記録し、加熱器コントローラとの通信などによって加熱器をオフにすることができる(図34参照)。力センサの少なくとも1つによって感知されるような座席の背部との接触がもはや行われないようにユーザが座席内でシフトした場合に、コントローラは、座席の背部にある加熱器をオフにすることができる。そのような制御により、バッテリの使用を節約するための手段を提供することができ、それは、モータがバッテリで動力を供給される電気自動車では特に関連する態様である。
【0196】
図28は、抵抗加熱器、照明、更に移動を可能にするモータのようなセンサ制御式応答要素を提供する要素の例示的一配置を示している。例えば、例示的自動車座席20は、力センサ制御式抵抗加熱器を備えることができる。抵抗加熱器は、一般的に、座席ベース22及び/又は座席背部24上のテキスタイルカバーのような第1のフレキシブル基板を含み、その上に第1の導電性インクを用いて印刷された少なくとも1つの導電パターンを有する。導電パターンは、電流を伝達して熱を発生させるように構成される。抵抗加熱器は、更に、第1の導電性インク、又は本明細書に開示する導電性インクの別のもので印刷された少なくとも1つのバスを更に備えることができ、その場合に、バスは少なくとも1つの導電パターンに電気的に接続され、電源への接続を提供するように構成される。
【0197】
様々な力センサ26から送られる信号に基づいて、抵抗加熱器を制御し、すなわち、電源をオンにする、オフにする、又は様々なレベルで給電することができる。本明細書で示したように、力センサ26は、一般的に、少なくとも1つの電極を第2の導電性インクで第2のフレキシブル基板上に印刷させ、分離距離を有する間隙で導電層から分離させた電極層を含み、その場合に、フレキシブル力センサは、力センサの長手方向の延びに対して垂直な方向に電極層及び導電層を圧縮した時に電気信号を開始するように構成される(少なくとも図19A、20A、21、22、23A、24、26A、27Aを参照されたい)。
【0198】
力センサは、更に、力センサの少なくとも1つの電極に接続され、力センサからの電気信号を通信デバイスに伝えるように構成された制御回路28を含む。通信デバイスは、座席の一部とすることができるので、本発明の開示のインク及び方法で印刷された導電トレースによって信号を伝えることができ、又は有線接続によって伝えることができる。これに代えて、有線又は無線の通信経路を通して、信号を座席外部の構成要素に伝達することができる。
【0199】
力センサ素子26からの信号、すなわち、センサ素子の様々な層が圧縮された場合のような力センサ素子での抵抗変化を示す電気信号に関する通信を行って、電源から抵抗加熱器への電力供給を制御することができる。例えば、力センサが自動車座席に着座した人を検出することができなかった場合に、自動車座席ベース及び/又は背部にある抵抗加熱器を非作動にする(例えば、オフにする)ことができる(図30の自動車座席ベースの力センサ26a及び制御回路28aを参照されたい)。力センサが自動車座席の背部に接触する人を検出することができなかった場合に、自動車座席背部にある抵抗加熱器を非作動にすることができる(図30の自動車座席ベースの力センサ26a及び制御回路28aを参照されたい)。外部温度が設定値を超える、例えば、80℃を超える場合に、人が自動車座席にいることを力センサが検出しても、自動車座席ベース及び/又は背部にある抵抗加熱器を非作動にすることができる(例えば、座席加熱器の偶発的な作動を回避する)。自動車座席ベース及び/又は背部の抵抗加熱器は、力センサが自動車座席内に人を検出し、外部温度が設定値未満(例えば、50℃よりも低い、又は32℃よりも低い)に下がると自動的に作動する(例えば、オンになるか又は強くなる)ことができる。同様に、自動車座席に関して上述したように、自動車座席内の力センサに由来するこれらの信号に基づいて、ハンドル又はギアシフトカバーの抵抗加熱器を起動又は起動解除することができる。
【0200】
抵抗加熱器は、自動車座席に着座した人の接触点の温度を検出するように構成された自動車座席内の1又は2以上のサーミスタのような追加のセンサに基づいて制御することができる。例えば、図31の自動車座席20のベース29a及び背部29bでの接触点を参照されたい。この場合に、座席に着座した人は、座席加熱器及び/又は加熱器の温度のような座席のシステムを起動することができる。例えば、上述の力センサ26に加えて、座席は、更に、座席及び/又は着座者の温度を検出して推定するサーミスタを備えることができる。力センサ及び/又はサーミスタからの情報は、コンソール42に送信する(43/44)ことができ、ユーザは、その情報に基づいて、特定の温度設定値の達成又は座席温度の上昇/下降のような特定のアクションを選択することができる。そのような構成は、自動車座席に置かれた重い物体の自動的な加熱を回避する(すなわち、人が着座していない場合に座席の自動加熱機構を作動させない)ために役立たせることができ、及び/又は座席に位置決めされた抵抗加熱器に追加の又はより少ない電力を供給することにより、座席の温度を上昇又は下降させることができる。これは、着座者が快適さを保つように温まった後で座席の温度を下げるために又はユーザが好む温度設定値(例えば、自動車のコンソール42で設定される)のような座席の特定設定値温度を維持するために有用とすることができる。
【0201】
図28に示すように、座席ベースの側部のような自動車座席に表示灯30を備えることができ、これらの表示灯は、加熱器の起動(例えば、少なくとも1つのライトの点灯により)と、温度レベル(例えば、それぞれの第1、第2、及び第3のライトの点灯によって高、中、低)とを示すことができる。
【0202】
更に、図30に示すように、複数の力センサ(26a,26b)を自動車座席のベース及び背部の中に位置決めすることにより、そこに着座する人の体重及び/又は身長に関するフィードバックを提供することができる。そのような情報をコントローラ(例えば、図31の42)に伝達することができ、それにより、検出された特徴に基づいて及び/又は特定個人(搭乗者又は運転者)の決定された特徴に基づいて、例えば、座席位置、ミラー位置のような自動車のシステムを自動的に調節することができる。
【0203】
追加のフレキシブル印刷電子素子
【0204】
本発明の開示は、本明細書に開示するインク及び/又は方法を使用して少なくとも1つの導電トレース又はパターンをその上に印刷させたテキスタイル(e-テキスタイル)のようなフレキシブル基板上に印刷される追加の電子素子又は構成要素にも向けられる。当該トレースは、電源又はバッテリのような電流に接続するための接触パッド又はコネクタで終端することができる。様々なハードウエア要素をトレース又はパターンの一部分に接続して電気デバイスを形成することができる。従って、e-テキスタイル上の導電パターンは、センサ(例えば、光、熱、湿度、ガス、圧力、加速度、歪み、力、及び近接)、導体、電極、回路、相互接続、ライト、アンテナ、抵抗加熱器、スイッチ、透明導電性素子、バッテリ、又はこれらのあらゆる組合せを提供することができるトレース又はパターンとして形成することができる。本発明の開示による近接センサを有する例示的e-テキスタイルを図14に示している。そのような近接センサ34は、例えば、図28のセクションBに示すような自動車に含まれるものとすることができる。例えば、近接センサの導電トレース(図29Cの35a,35b参照)は、自動車座席のヘッドレストのテキスタイル裏面に印刷することができ、人の手の動きのような動きを検出するように構成することができる。センサは、特定の動きの検出時にモータを起動又は起動解除するように、例えば、ヘッドレストを上昇又は下降させるモータを起動するように構成することができる(例えば、スワイプアップしてヘッドレストを上方に移動し、スワイプダウンしてヘッドレストを下方に移動する)。
【0205】
e-テキスタイルは、ウェアラブル電子デバイスに組み込むことができ、又はウェアラブル電子デバイスであるとすることができる。e-テキスタイルは、健康管理のための又は抗菌包帯として医療産業で及びガス感知又は濾過のためのスマート衣類又はデバイスとして産業環境でのような多くの異なる産業で広範な用途に対する使用方法を見出すことができる。e-テキスタイルは、フィットネスモニタリングのようなスマート衣料、衛生上の改善、又はフレキシブルエネルギ貯蔵デバイス(例えば、バッテリ、スーパーコンデンサ)での用途を見出すことができる。
【0206】
同じく図28に示すのは、ヘッドレストに含まれるライト(例えば、LEDライト36a,36b)である。そのようなライトは、本発明の開示のインク及び方法を使用して印刷された導電トレースによって電気的に接続されるものとすることができ、又は従来の有線接続を備えることができる。これらのライトは、図14に示して本明細書で上述したような近接センサにより、及び/又は本発明の開示のインク及び方法を使用して印刷された容量性タッチセンサにより、及び/又は自動車のコンソール42内にあるコントローラ(図31)からの通信によって制御することができる。
【0207】
別の例示的e-テキスタイルは、例えば、方向コンパス、1又は2以上のジャイロスコープ、1又は2以上の加速度計、圧力計、歪み計、温度計、及び光ファイバを備えることができる。e-テキスタイルに使用されたセンサを使用して、e-テキスタイルを着用するユーザのパラメータをモニタすることができ、そのようなパラメータは、心拍数、呼吸数、皮膚温度、及び体の位置及び動きを含むことができる。更に、e-テキスタイルを使用して関節角度、角速度、角加速度、及び可動域のようなユーザの全身バイオメカニクスを測定することができる。
【0208】
これらのe-テキスタイルは、従来技術のインク及び方法を使用して形成されたe-テキスタイルを大幅に超える着用性能、例えば、曲げ性、耐水洗性、耐歪み性などを有することが見出されている。例えば、織物基板上の導電パターンは、少なくとも50回の洗浄サイクル、例えば、少なくとも70回の洗浄サイクル、又は更に空気乾燥を伴う100回の洗浄サイクルに耐えることができる(図11及び実施例を参照)。例えば、本発明の開示のインク及び方法を使用して形成された導電トレースの抵抗は、50回の洗浄後に50%未満、又は50回の洗浄後に30%未満、又は50回の洗浄後に15%未満、又は100回の洗浄後に70%未満、又は100回の洗浄後に60%未満、又は100回の洗浄後に40%未満、又は100回の洗浄後に30%未満、又は100回の洗浄後に20%のような複数の洗浄サイクル後に僅かに増大するだけであるとすることができ、ここで、洗浄サイクルは、AATCC 61-2013(洗浄処理)に従うものとして予め決められる。図11に示すように、保護コーティングは、本明細書に開示するe-テキスタイルの耐水洗性を改善することができる。
【0209】
e-テキスタイルは、耐擦過性(標準的なASTM試験方法で500サイクルまで)とすることができ、耐汗性(耐湿性)とすることができる。
【0210】
e-テキスタイルは、耐歪み性とすることができる。例えば、編みe-テキスタイルは、接触損失なく50%まで又は100%まで延伸させることができ、一般的にテキスタイル基板の延伸に伴って導電性の僅かな増加を示す(図12及び実施例を参照)。
【0211】
e-テキスタイルは曲げ可能とすることができ、標準的なASTM試験方法を使用する10,000回までの曲げサイクル後に10%未満の導電率損失を示す(図13を参照されたい)。
【0212】
本発明の開示の特定の実施形態を詳細に説明したが、本発明の開示の教示全体に照らして様々な修正、代替、及び用途を展開することができることは当業者にによって認められるべきである。従って、開示した特定の配置、システム、装置、及び方法は、単に例示に過ぎず、本発明の開示の範囲に関して限定するものではない。
【0213】
実施例
導電性インクの生成
【0214】
カルボン酸第2リガンド(例えば、カルボン酸銀)を備える銀錯体を有する例示的導電性インクは、解析的に純粋な化合物をもたらして定量的収率で進行する反応で金属酸化物又は金属酢酸塩とカルボン酸とを反応させることによって形成することができる。
【0215】
例として酢酸銀をカルボン酸(イソ酪酸エステル及びシクロプロペート)と反応させた。2つの銀錯体の元素分析では、イソ酪酸エステルとシクロプロペートは、それぞれ、C,24.59;H,3.72、及びC,24.68;H,2.56であった。理論値は、イソ酪酸エステルとシクロプロペートが、それぞれ、C,24.64;H,3.62、及びC,24.90;H,2.61である。
【0216】
次に、金属-第2リガンド塩を第1のリガンドの過剰分と反応させて金属錯体を形成した。典型的な調製では、イソ酪酸エステル銀を上述のように調製し、テフロンコーティングの磁気撹拌棒が入った25mlのワンネック14/20丸底フラスコに入れた。これに13当量のエチレンジアミンを加えた(量は以下の表1に示す通り)。反応は攪拌を伴って室温で2時間進行し、濾過して粒子を除去し、未反応のエチレンジアミンを40℃の回転式蒸発法によって除去し、白色粉末を得た。追加の洗浄工程を備えることができる。次に、単離した金属錯体、すなわち、エチレンジアミン銀イソ酪酸エステル塩を極性プロトン性溶媒(水、プロピレングリコール、イソプロパノール)の混合物に少なくとも100mg/mlになるまで溶解させて透明な導電性インクを形成した(表2参照)。
【0217】
(表1)
【0218】
(表2)
【0219】
金属錯体の純度
【0220】
金属錯体の調製は、金属-第2リガンドとの第1リガンド反応物を過剰に必要とすることが見出されている(上表参照;金属錯体を生成するために13倍の過剰な第2のリガンドが使用される)。例示的に、ほとんどのカルボン酸銀(I)は、ほとんどの従来溶媒に不溶である。1:1の反応(1:1のイソ酪酸エステル銀:エチレンジアミン)では、極性プロトン性溶媒システムで調合した場合に、大量の不溶物、一部の事例では未反応のイソ酪酸エステル銀(I)を含む暗色の生成物が生じた。従って、1:1反応によって形成された金属錯体は、一部の事例では全反応物の生成物への完全な変換を容易にすることができず、基板上に連続的な導電膜を形成することができなかった。
【0221】
一方、1:6反応(1:6のイソ酪酸エステル銀:エチレンジアミン)では、反応の濾過溶液から自然に結晶が形成された。更に,金属錯体は、確かに極性プロトン性溶媒システムに溶解したが,過剰な未反応ジアミンの存在は、インク調合物の密度、粘性、及び表面張力にかなりの影響を与えることが判明した。インクとして調合された1:6生成物は、シートカバレージが悪く、極めて高いシート抵抗(>600,000Ω/□)を示している。
【0222】
精製して過剰の未反応アミン(第1のリガンド)を除去した、上表に列挙する1:13の反応生成物は、優れたシートカバレージを示し、1Ω/□未満のシート抵抗を示している。この精製物は、表2に示す極性プロトン性溶媒システムに溶解させた場合に、密度1.12g/ml、粘性8.55cps、表面張力22.9dyn/cmの値を示している。
【0223】
従って、本発明の開示の導電性インクを生成する時の重要な段階は、特に最終的な金属錯体を調合するのに使用される大幅な過剰な量の点から見て、未反応の第2のリガンドを除去することである。上記で詳述したように精製された場合に、生成物(収率99%)は無色である。しかし、未精製の生成物は暗色の傾向があり、これは、外気に露出されると典型的にジアミンが黒ずんでしまうことに関連する可能性が高い。一般的に、アミンは水分及び二酸化カーボンを吸収し、不安定なカルバミン酸を形成することになる。そのようなアミンの化学種別は、ジアミノ銀(I)カルボン酸塩を不安定にする可能性があり、多くの場合に、早期の銀の金属化、黒ずみ、及び粒子形成をもたらす。従って、ジアミノ銀(I)カルボン酸塩の安定性を容易にするために、特にゼロ粒子のジアミノ銀(I)カルボン酸塩組成物の同時調製を必要とする場合に、あらゆる残留アミンの除去が重要である。
【0224】
金属錯体中のリガンド及び金属の化学量論比
【0225】
金属錯体は、第1及び第2のリガンドと金属の化学量論量を含むことが見出されている。プロトンNMRを使用する構造解析は、D2Oに溶解させたエチレンジアミン銀イソ酪酸エステル塩粉末が、イソ酪酸エステル銀に配位したエチレンジアミンリガンドの化学量論量から構成されることを示している。D2O中の金属錯体に関する1H-NMRスペクトル(図9参照;Bruker製AV-360分光計での1H-NMR走査)は、予期される3つのプロトン-カーボン(CH)ピーク:1つは2つのエチレンジアミンCH2基(合計4プロトン)に対する、1つは単一イソ酪酸エステルCH基(1プロトン)に対する、かつ1つは2つのイソ酪酸エステルCH3基(合計6プロトン)に対するピークを示している。これらは、0.93ppmのイソ酪酸エステルCH3、2.25ppmのイソ酪酸エステルCH、及び2.81ppmのエチレンジアミンCH2として割り当てられた。3.978(エチレンジアミンCH2):0.928(イソ酪酸エステルCH):6.151(イソ酪酸エステルCH3)というプロトン整数比は、1(エチレンジアミン):1(イソ酪酸エステル銀)であり、すなわち、金属とエチレンジアミンリガンド及びイソ酪酸エステルリガンドの各々に関する化学量論量と一致する。
【0226】
金属錯体を2又は3以上の極性プロトン性溶媒に溶解させてインクを形成した場合に、第1及び第2のリガンドと金属との化学量論比が維持されることを確認するために、上述のような3つの極性プロトン性溶媒(水、プロピレングリコール、イソプロパノール)とD2Oとの混合物に溶解させた金属錯体に対して1H-NMR試験を更に行った。図10のスペクトルは、様々な極性プロトン性溶媒を用いて金属錯体(エチレンジアミン銀(I)イソ酪酸エステル)に対してよく分解されたピークを示し、それらは、0.93ppm(二重項,イソ酪酸エステルCH3)、2.25ppm(七重項,イソ酪酸エステルCH)、及び2.81ppm(一重項,エチレンジアミンCH2)として割り当てられる。
【0227】
NMR溶媒内(図9)の金属錯体と、金属錯体と2又は3以上の極性プロトン性溶媒とを含む組成物中(図10)の金属錯体とに関する化学シフト間の強い類似性は、金属錯体と極性プロトン性溶媒システムとの優れた適合性を示唆する。4.098(エチレンジアミンCH2):0.944(イソ酪酸エステルCH):6.446(イソ酪酸エステルCH3)というエチレンジアミン銀(I)イソ酪酸エステルのプロトン比は、4(エチレンジアミンCH2):1(イソ酪酸エステルCH):6(イソ酪酸エステルCH3)とよく一致し、これは、金属錯体を極性プロトン性溶媒担体に溶解させても配位環境に影響がないことを明らかにするものである。この結果は、更に、金属錯体を溶解させてインク組成物を形成しても、その化学組成が変化しない(化学量論組成が変化しないままである)ことを裏付けている。
【0228】
導電性インクの調合
【0229】
(表3)
【0230】
(表4)
【0231】
本発明の開示の導電性インクの調合に対する溶媒選択の柔軟性を明らかにするために、様々な極性プロトン性溶媒システムを試験した(以下の表3及び4を参照)。例えば、ジアミン銀(I)イソ酪酸エステル塩錯体を少なくとも2つの極性プロトン性溶媒を含む溶媒システムで調合した。極性プロトン性溶媒の異なる組合せを使用する代表的なインク調合と、極性プロトン性溶媒に調合した場合に当該インクが連続した高導電性フィルム(シート抵抗0.04から0.09Ω/□)を生成することを明らかにするデータとを表3及び4に示している。
【0232】
導電性インクの耐水洗性
【0233】
上記に開示したようなインクジェット印刷方法を使用して、本発明の開示の導電性インクを様々なテキスタイルに印刷し、導電トレースを形成した。トレースは、被覆されないままであるか又は透明なUV硬化性ポリウレタンコーティングで被覆した。これらのパターンに対するシート抵抗をAATCC 61-2013(洗浄処理)に従って検査した。図11に示すように、トレースに関する導電率の変化は、50回まで洗浄した後でもほとんど観察されなかった。被覆されたトレースが100回もの洗浄サイクル後に良好な導電性を示すのに対して、生の(未被覆)トレースは、70回程度の洗浄サイクル後に良好な導電性を示している。対照サンプルは、僅か5回の洗浄サイクルの後に完全に導電性を失った。
【0234】
AATCC 61-2013に準拠した様々なテキスタイルの分析では、8層の印刷インクを有する導電トレースは、100回の洗浄サイクル後に3Ω未満の抵抗増加を示している。トレースの上に耐擦過性コーティングを含む場合に、抵抗は、0.7Ω未満しか増加しなかった。
【0235】
耐歪み性
【0236】
本発明の開示によるインク及び方法を使用して織りテキスタイルが印刷され、耐歪み性の測定に掛けられた。図12に示すのは、様々な延伸量(0%から230%)の下での電気機械的延伸試験に対する結果である。従来技術の導電トレースの場合に、歪みがフィルムの亀裂を誘発し、導電性が低下する(図5参照)。本発明の開示によるインク及び方法を使用すると、トレースの導電性は、テキスタイルの破断点(すなわち、テキスタイルが2つに裂ける)まで増加した歪みでもほとんど影響を受けなかった。この普通でない挙動は、トレースの平均スポット温度(FLIRを使用して測定;データは示さず)の極僅かな増加によって明らかにされ、この場合に、スポット温度は、延伸した導電性織物を電子が流れる時に発生する熱の量と相関があり、温度が高いほど、より多くの熱が流れる電子によって発生する。
【0237】
図13に示すように、印刷されたトレースの曲げ性も試験され、本発明の開示のインク及び方法を使用して織りテキスタイル上に印刷された導電トレースの曲げに関して導電性の僅かな損失(<10%)が観察された(トレースの10,000回曲げ;ASTM D522-マンドレル曲げ試験に準拠して試験した)。不織テキスタイルは、1,300回の曲げ後に性能低下を示すが、これは、導電トレースではなく、テキスタイルの破壊作用であると考えられる。
【0238】
耐擦過性
【0239】
本発明の開示による導電性インクで織り基板が印刷され、耐擦過性コーティング(耐擦過性コーティングNSN 8030-00-164-4389)で被覆されるか又は未被覆のままとした。被覆後(対照)、10回、20回、及び30回の擦過後にいくつかのテキスタイルサンプルについてシート抵抗を測定した(表5参照)。
【0240】
(表5)
【0241】
本出願では、以下の態様を開示している。
【0242】
態様1:少なくとも1つの金属錯体と溶媒とを備える無粒子金属錯体組成物と、任意的に導電性充填剤材料とを備える導電性インク。
【0243】
態様2:少なくとも1つの金属錯体が、少なくとも1つの金属と、金属に対するシグマドナーであり、金属錯体を加熱する時に揮発する少なくとも1つの第1のリガンドと、第1のリガンドとは異なっており、金属錯体を加熱する時に揮発する少なくとも1つの第2のリガンドとを備え、少なくとも1つの金属、少なくとも1つの第1のリガンド、及び少なくとも1つの第2のリガンドが、導電性インク内に化学量論量で提供される態様1に記載のインク。
【0244】
態様3:少なくとも1つの金属、少なくとも1つの第1のリガンド、及び少なくとも1つの第2のリガンドが、導電性インク内に化学量論量で提供される態様1又は2に記載のインク。
【0245】
態様4:導電性インクが、硬化して導電金属を形成した後にナノ粒子を形成する先行態様のいずれか1つに記載のインク。
【0246】
態様5:溶媒が、炭化水素溶媒、又は炭化水素溶媒を実質的に含まない1又は2以上の極性プロトン性溶媒を備え、1又は2以上の極性プロトン性溶媒が、水、アルコール、及びアミンのうちの1又は2以上を備える先行態様のいずれか1つに記載のインク。
【0247】
態様6:少なくとも1つの金属錯体対導電性充填剤が、50:50の金属錯体:導電性充填剤、例えば、60:40の金属錯体:導電性充填剤、又は70:30の金属錯体:導電性充填剤、又は80:20の金属錯体:導電性充填剤、又は90:10の金属錯体:導電性充填剤、又は更に99:1の金属錯体:導電性充填剤という比で導電性インクに提供される先行態様のいずれか1つに記載のインク。
【0248】
態様7:溶媒が、アルコール又はアミン、グリコール、導電性充填剤可溶化剤、及び水を備える先行態様のいずれか1つに記載のインク。
【0249】
態様8:導電性充填剤可溶化剤が、N-メチル-2-ピロリドンを備える態様7に記載のインク。
【0250】
態様9:金属錯体が、少なくとも1つの溶媒内で少なくとも250mg/mlの25℃で測定した溶解度を有する先行態様のいずれか1つに記載のインク。
【0251】
態様10:導電性充填剤材料が、導電性ポリマー、金属酸化物、又はカーボンベースの材料のうちの1又は2以上を備える先行態様のいずれか1つに記載のインク。
【0252】
態様11:導電性ポリマーが、ポリピロール(PPy)、ポリ[3,4-エチレンジオキシチオフェン](PEDOT)、ポリアセチレン、ポリチオフェン(PT)、ポリアニリン(PANI)、又はポリフェニレンエチレンのうちの1又は2以上を備える態様10に記載のインク。
【0253】
態様12:カーボンベースの材料が、グラフェン、カーボンブラック、グラファイト、又はカーボンナノチューブのうちの1又は2以上を備える態様10に記載のインク。
【0254】
態様13:50:50から99:1という金属錯体対導電性充填剤の比で提供された導電性充填剤材料及び金属錯体を10から40重量%、アルコール又はアミンを2から10重量%、グリコールを2から15重量%、導電性充填剤可溶化剤を10から25重量%、及び水を40から70重量%備える先行態様のいずれか1つに記載のインク。
【0255】
態様14:結合剤、界面活性剤、分散剤、及び染料のうちの1又は2以上から選択された添加剤を0.1%から5%更に備える先行態様のいずれか1つに記載のインク。
【0256】
態様15:インクが、25cps又はそれ未満、例えば、20cps又はそれ未満の25℃で測定した粘性を有する先行態様のいずれか1つに記載のインク。
【0257】
態様16:態様1から15のいずれか1つに記載の導電性インクをフレキシブル基板上に堆積させて少なくとも1つのパターンを形成する段階と、少なくとも1つのパターン内の導電性インクを硬化させて少なくとも1つの導電パターンを形成する段階とを備える印刷されたフレキシブル電子素子又はデバイスを形成する方法。
【0258】
態様17:フレキシブル基板が、ポリエステル、ポリアミド、スパンデックス、ナイロン、Evolon(登録商標)、エラスタン、綿、セルロース、絹、木材、羊毛、革、又はそれらの配合物の繊維を備える編み、織り、又は不織の織物を備え、導電性インクが、テキスタイルの繊維を共形的に被覆する態様16に記載の方法。
【0259】
態様18:導電性インクの堆積工程の前に及び/又は最中に基板が約30℃から約90℃、例えば、約40℃から約80℃の温度まで加熱される態様16又は17に記載の方法。
【0260】
態様19:導電性インクを堆積させる段階が、2又は3以上の層を印刷する段階を備える態様16から18のいずれか1つに記載の方法。
【0261】
態様20:少なくとも1つの導電パターンが、インクジェット印刷で堆積され、0.5mm未満、例えば、0.2mm未満のインク滲みを示す態様16から19のいずれか1つに記載の方法。
【0262】
態様21:少なくとも1つの導電パターンが、10Ω/□未満、例えば、5.0Ω/□未満、又は2.0Ω/□未満、又は更に0.1Ω/□の抵抗を示す態様16から20のいずれか1つに記載の方法。
【0263】
態様22:硬化させる段階が、200℃よりも低い温度での20分間未満の加熱、2から20パルスのパルス光への露出、赤外線への露出、又はそのいずれかの組合せによる態様16から21のいずれか1つに記載の方法。
【0264】
態様23:テキスタイル基板が、酸素プラズマ、保護コーティング、又はその両方で前処理される態様16から22のいずれか1つに記載の方法。
【0265】
態様24:導電性インクを硬化させた後に、導電パターンの少なくとも一部分を保護誘電体コーティングで被覆する段階を更に備える態様16から23のいずれか1つに記載の方法。
【0266】
態様25:フレキシブル基板が、フレキシブル合成基板又は有機基板である態様16から24のいずれか1つに記載の方法。
【0267】
態様26:フレキシブル基板が、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリアミドイミドのフィルム、及びその組合せから構成される群から選択されたポリマーフィルムである態様16から25のいずれか1つに記載の方法。
【0268】
態様27:印刷されたフレキシブル電子素子又はデバイスが、センサ、電極、回路、相互接続、ライト、アンテナ、抵抗加熱器、スイッチ、バッテリ、又はそのいずれかの組合せとして機能する態様16から26のいずれか1つに記載の方法。
【0269】
態様28:フレキシブル抵抗加熱器が、その上に印刷されて電流を伝達して熱を発生させるように構成された少なくとも1つの導電パターンを有するフレキシブル基板を備え、導電パターンの少なくとも一部分が、任意的に保護誘電体コーティングでオーバーコートされる態様16から27の方法のいずれか1つによって生成されたフレキシブル抵抗加熱器。
【0270】
態様29:少なくとも1つの導電パターンが、態様1から15のいずれか1つに記載の導電性インクを用いて印刷され、導電パターンの少なくとも一部分が、任意的に保護誘電体コーティングでオーバーコートされる少なくとも1つの導電パターンがそこに印刷されて電流を伝達して熱を発生させるように構成されたフレキシブル基板を備えるフレキシブル抵抗加熱器。
【0271】
態様30:導電性インクを用いて印刷された少なくとも1つのバスを更に備え、少なくとも1つのバスが、少なくとも1つの導電パターンに電気的に接続されて電源への接続を提供するように構成される態様28又は29に記載の抵抗加熱器。
【0272】
態様31:フレキシブル基板が、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリアミドイミドのフィルム、及びその組合せから構成される群から選択されたポリマーフィルムであるか又はフレキシブル基板が、ポリエステル、ポリアミド、スパンデックス、ナイロン、Evolon(登録商標)、エラスタン、綿、セルロース、絹、木材、羊毛、革、又はそれらの配合物(例えば、シリコーン革)の繊維を備える編み、織り、又は不織の織物を備える態様26から28のいずれか1つに記載の抵抗加熱器。
【0273】
態様32:少なくとも1つの導電パターンが、5から15Vの電気システムに接続された時に1から30オームの抵抗率を有し、-40℃から60℃で10から400ワット/平方メートルを発生させ、約0.1℃/秒から約1℃/秒の速度で熱くなり、及び/又は少なくとも400ワット/平方メートルの電力密度を伝達するように構成される態様26から29のいずれか1つに記載の抵抗加熱器。
【0274】
態様33:力センサが、フレキシブル基板に第2の導電性インクを用いて印刷された少なくとも1つの電極を備える電極層と、導電層とを備え、電極層と導電層が、分離距離を有する間隙によって分離され、フレキシブル力センサが、力センサの長手方向の延びに対して垂直な方向に電極層及び導電層を圧縮した時に電気信号を開始する(分離距離が減少するので導電層と電極層が接触する)ように構成される態様16から27の方法のいずれか1つによって生成されたフレキシブル力センサ。
【0275】
態様34:電極層と導電層が、分離距離を有する間隙によって分離され、フレキシブル力センサが、力センサの長手方向の延びに対して垂直な方向に電極層及び導電層を圧縮した時に電気信号を開始する(分離距離が減少するので導電層と電極層が接触する)ように構成されるフレキシブル基板に態様1から15のいずれか1つに記載の導電性インクを用いて印刷された少なくとも1つの電極を備える電極層と、導電層とを備えるフレキシブル力センサ。
【0276】
態様35:少なくとも1つの電極にかつ通信デバイスに接続された制御回路を更に備え、制御回路が、電気信号を伝達するように構成される態様33又は34に記載の力センサ。
【0277】
態様36:電極層が、フレキシブル基板の第1の側に印刷された少なくとも2つの電極を備える態様33から35のいずれか1つに記載の力センサ。
【0278】
態様37:導電層が、第2のフレキシブル基板の第1の側に導電ストリップを備え、導電層の導電ストリップが、電極層の少なくとも2つの電極に面している態様36に記載の力センサ。
【0279】
態様38:電極層と導電層が、分離距離を有する間隙によって分離される態様33から37のいずれか1つに記載の力センサ。
【0280】
態様39:間隙が、メッシュ織物、基板層のうちの1つに対するエンボス加工、電極の領域に開口部を有するポリマーフィルムのような材料フレーム、ドット又はビーズ、又はそのいずれかの組合せによって維持される態様33から38のいずれか1つに記載の力センサ。
【0281】
態様40:電極層と導電層が、ホットメルト結合フィルム、感圧結合フィルム、感圧接着剤により、又は縫製により、間隙によって分離された領域の外側(すなわち、力センサの縁部)又は第1及び第2の電極を有する領域の外側などで結合される態様33から39のいずれか1つに記載の力センサ。
【0282】
態様41:導電ストリップが、態様1から15のいずれか1つに記載の導電性インク、抵抗性カーボンベースのインク、導電性塗料、酸化インジウムスズ(ITO)、又はその組合せを用いて印刷され、又は導電ストリップが、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)、カーボンナノチューブベースの薄膜(CNT)、カーボン装荷熱可塑性ポリマー、カーボン装荷シリコーン、カーボン装荷ポリマー箔、ベロスタットのいずれか又はそのいずれかの組合せを備える態様33から40のいずれか1つに記載の力センサ。
【0283】
態様42:抵抗性カーボンが、高抵抗性又は低抵抗性カーボンの一方である態様41に記載の力センサ。
【0284】
態様43:フレキシブル基板が、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリアミドイミドのフィルム、及びその組合せから構成される群から選択されたポリマーフィルムであるか、又はフレキシブル基板が、ポリエステル、ポリアミド、スパンデックス、ナイロン、Evolon(登録商標)、エラスタン、綿、セルロース、絹、木材、羊毛、革、又はそれらの配合物(例えば、シリコーン革)の繊維を備える編み、織り、又は不織の織物を備える態様33から42のいずれか1つに記載の力センサ。
【0285】
態様44:通信デバイスが、力センサからの電気信号に少なくとも部分的に基づいて電源から電気デバイスへの電力供給を制御するように構成される態様33から43のいずれか1つに記載の少なくとも1つのセンサと、電気デバイスと、力センサの少なくとも1つの電極に接続され、力センサから通信デバイスへ電気信号を伝達するように構成された制御回路とを備えるセンサ制御デバイス。
【0286】
態様45:電気デバイスが、モータ、抵抗加熱器、及びライトのうちの1又は2以上を備える態様44に記載のセンサ制御デバイス。
【0287】
態様46:態様1から15のいずれか1つに記載の第1の導電性インクでその上に印刷され、かつ電流を伝達して熱を発生させるように構成された少なくとも1つの導電パターンを有する第1のフレキシブル基板と、少なくとも1つの導電パターンに電気的に接続され、かつ電源への接続を提供するように構成された導電性インクを用いて印刷された少なくとも1つのバスとを備える抵抗加熱器と、電極層と導電層が、分離距離を有する間隙によって分離され、フレキシブル力センサが、力センサの長手方向の延びに対して垂直な方向に電極層及び導電層を圧縮した時に電気信号を開始する(分離距離が減少するので導電層と電極層が接触する)ように構成された態様1から15のいずれか1つに記載の導電性インクで少なくとも1つの電極が第2のフレキシブル基板上に印刷された電極層及び導電層を備える力センサと、力センサの少なくとも1つの電極に接続され、力センサからの電気信号を通信デバイスに伝達するように構成された制御回路28とを備え、通信デバイスが、力センサからの電気信号に少なくとも部分的に基づいて電源から抵抗加熱器への電力供給を制御するように構成される力センサ制御式抵抗加熱器。
【0288】
態様47:抵抗加熱器の少なくとも1つの導電パターンの少なくとも一部分が、保護誘電体コーティングでオーバーコートされる態様46に記載のセンサ制御式加熱器。
【0289】
態様48:5から15Vの電気システムに接続された時に、少なくとも1つの導電パターンが、1から30オームの抵抗率を有し、-40℃から60℃で10から400ワット/平方メートルを発生させ、約0.1℃/秒から約1℃/秒の速度で熱くなり、及び/又は少なくとも400ワット/平方メートルの電力密度を伝達するように構成される態様46又は47に記載のセンサ制御式加熱器。
【0290】
態様49:力センサの電極層が、第2のフレキシブル基板の第1の側に印刷された少なくとも2つの電極を備える態様46から48のいずれか1つに記載のセンサ制御式加熱器。
【0291】
態様50:力センサの導電層が、第3のフレキシブル基板の第1の側に導電ストリップを備え、導電層の導電ストリップが、電極層の少なくとも2つの電極に面している態様47から49のいずれか1つに記載のセンサ制御式加熱器。
【0292】
態様51:力センサの導電ストリップが、第1又は第2の導電性インク、抵抗性カーボンベースのインク、導電性塗料、酸化インジウムスズ(ITO)、又はその組合せを用いて印刷されるか、又はポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)、カーボンナノチューブベースの薄膜(CNT)、カーボン装荷熱可塑性ポリマー、カーボン装荷シリコーン、カーボン装荷ポリマー箔、ベロスタットのいずれか又はそのいずれかの組合せを備えることができる態様47から50のいずれか1つに記載のセンサ制御式加熱器。
【0293】
態様52:抵抗性カーボンが、高抵抗性又は低抵抗性の一方である態様51に記載のセンサ制御式加熱器。
【0294】
態様53:電極層と導電層が、分離距離を有する間隙によって分離される態様47から52のいずれか1つに記載のセンサ制御式加熱器。
【0295】
態様54:間隙が、メッシュ織物、基板層のうちの1つに対するエンボス加工、電極の領域に開口部を有するポリマーフィルムのような材料フレーム、ドット又はビーズ、又はそのいずれかの組合せによって維持される態様47から53のいずれか1つに記載のセンサ制御式加熱器。
【0296】
態様55:第1、第2、及び第3のフレキシブル基板が、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリアミドイミドのフィルム、及びその組合せから構成される群から個々に選択されるか、又は第1、第2、及び第3のフレキシブル基板が、ポリエステル、ポリアミド、スパンデックス、ナイロン、Evolon(登録商標)、エラスタン、綿、セルロース、絹、木材、羊毛、革、又はそれらの配合物(例えば、シリコーン革)の繊維を備える編み、織り、又は不織の織物から個々に選択される態様47から54のいずれか1つに記載のセンサ制御式加熱器。
【0297】
態様56:態様28から32のいずれか1つに記載の抵抗加熱器と、態様33から43のいずれか1つに記載の複数の力センサと、通信デバイス及びコントローラを備え、力センサの少なくとも1つの電極に接続されて力センサからの電気信号を通信デバイスに伝達するように構成された制御回路とを備え、通信デバイスが、コントローラと通信して抵抗加熱器の機能を調節するように構成されるセンサ制御式加熱器。
【0298】
態様57:コントローラが、力センサからの電気信号に少なくとも部分的に基づいて電源から抵抗加熱器への電力供給を制御するように構成される態様56に記載のセンサ制御式加熱器。
【0299】
態様58:調節機能が、抵抗加熱器への電力をオンにする、オフにする、又は抵抗加熱器に供給される電力を変化させるように調整する段階を含む態様56に記載のセンサ制御式加熱器。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A
図18B
図18C
図19A
図19B
図20A
図20B
図20C
図21
図22
図23A
図23B
図24
図25A
図25B
図26A
図26B
図27A
図27B
図28
図29A
図29B
図30
図31
図32
図33
図34
図35
【国際調査報告】