(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】無結紮式軟組織インプラントシステム及び関連方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/04 20060101AFI20230323BHJP
A61B 17/56 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
A61B17/04
A61B17/56
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022546520
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(85)【翻訳文提出日】2022-09-26
(86)【国際出願番号】 US2021015709
(87)【国際公開番号】W WO2021155148
(87)【国際公開日】2021-08-05
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521358121
【氏名又は名称】パラゴン28・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PARAGON 28, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】ハートソン,カイル ジェイムズ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160BB30
4C160LL30
4C160LL59
(57)【要約】
骨及び/又は組織部分を接合するための、無結紮縫合に基づくインプラントシステム及び関連方法が開示される。本インプラントシステムは、内部空洞を画定する環状側壁、第1の縦方向端部、及び第2の縦方向端部を含む可撓性アンカーチューブを備える。本インプラントシステムは、アンカーチューブの側壁を複数回貫通して延在し、当該側壁から延在する自由ループ部を形成する縫合糸をさらに備える。本インプラントシステムは、縫合糸のループ部の一部を通って延在し、自身の並進運動によって、縫合糸の第1及び第2の先端部に、ループ部を通って平行移動させるように構成された少なくとも1つの縫合糸通し部をさらに備える。縫合糸は、当該縫合糸の第1及び第2の先端部が引張されたときに、当該縫合糸がアンカーチューブを通って摺動できるようにする配列に沿って延在する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空洞を画定する環状側壁、第1の縦方向端部及び第2の縦方向端部を含む可撓性アンカーチューブと、
前記アンカーチューブの前記側壁を複数回貫通して延在し、前記側壁から延在する自由ループ部を形成する縫合糸と、
前記縫合糸の前記ループ部の一部を通って延在し、自身の並進運動によって、前記縫合糸の第1及び第2の先端部に、前記ループ部を通って平行移動させるように構成された少なくとも1つの縫合糸通し部と、を備え、
前記縫合糸は、前記縫合糸の前記第1及び第2の先端部が引張されたときに、前記縫合糸が前記アンカーチューブを通って摺動できるようにする配列に沿って延在する、
骨及び/又は組織接合インプラントシステム。
【請求項2】
前記縫合糸の前記第1の先端部は、前記縫合糸の第1の端部から始まって、前記アンカーチューブの外面から前記アンカーチューブの前記第1の縦方向端部に対して近位にある前記アンカーチューブの前記側壁の第1の部分を通って前記第1の内部空洞内へと延在し、前記内部空洞の一部を通って縦方向に、前記アンカーチューブの前記第2の縦方向端部に向かって延在し、前記第1の縦方向端部に対して遠位にある前記側壁の第2の部分を通って、前記内部空洞から前記アンカーチューブの前記外面まで延在する、請求項1に記載のインプラントシステム。
【請求項3】
前記縫合糸の前記第2の先端部は、前記縫合糸の第2の端部から始まって、前記アンカーチューブの外面から前記アンカーチューブの前記第2の縦方向端部に対して近位にある前記側壁の第3の部分を通って前記内部空洞内へと延在し、前記内部空洞の一部を通って縦方向に、前記第1の縦方向端部に向かって延在し、前記第2の縦方向端部に対して遠位にある前記側壁の第4の部分を通って、前記内部空洞から前記アンカーチューブの前記外面まで延在する、請求項2に記載のインプラントシステム。
【請求項4】
前記縫合糸の第1の中間部は、前記アンカーチューブの前記側壁の前記第2の部分を通って延在する前記第1の先端部から延在し、前記縫合糸の第2の中間部は、前記アンカーチューブの前記側壁の前記第4の部分を通って延在する前記第2の先端部から延在し、また、前記縫合糸の前記第1及び第2の中間部は前記ループ部を形成する、請求項3に記載のインプラントシステム。
【請求項5】
前記縫合糸の前記第1及び第2の中間部は、前記縫合糸の連続した部分である、請求項4に記載のインプラントシステム。
【請求項6】
前記縫合糸の前記第1及び第2の先端部が引張されると、前記アンカーチューブは中立構成から変形構成へと変形する、請求項1から5のいずれか一項に記載のインプラントシステム。
【請求項7】
前記変形構成にあっては、前記アンカーチューブは湾曲形状を画定する、請求項6に記載のインプラントシステム。
【請求項8】
前記凹形状はU字形状又はV字形状を含む、請求項7に記載のインプラントシステム。
【請求項9】
前記アンカーチューブは前記変形構成において、前記アンカーチューブの縦方向長さに沿って前記アンカーチューブ自体の上で変形するか、又は折り重なる、請求項6に記載のインプラントシステム。
【請求項10】
前記アンカーチューブは前記中立構成において、第1の最大横方向幅及び第1の最大縦方向長さを画定し、また前記変形構成において、前記第1の最大横方向幅よりも広い第2の最大横方向幅、及び前記第1の最大縦方向長さよりも短い第2の最大縦方向長さを画定する、請求項6に記載のインプラントシステム。
【請求項11】
前記アンカーチューブは前記中立構成において、縦方向に長尺状になっている、請求項1から10のいずれか一項に記載のインプラントシステム。
【請求項12】
前記アンカーチューブは前記中立構成において円筒形状になっている、請求項11に記載のインプラントシステム。
【請求項13】
前記アンカーチューブは生体適合性材料から形成されている、請求項1から12のいずれか一項に記載のインプラントシステム。
【請求項14】
前記縫合糸は生体適合性材料から形成されている、請求項1から13のいずれか一項に記載のインプラントシステム。
【請求項15】
前記少なくとも1本の縫合糸はマルチフィラメント縫合糸を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載のインプラントシステム。
【請求項16】
前記縫合糸は編組縫合糸である、請求項15に記載のインプラントシステム。
【請求項17】
前記縫合糸は非中空である、請求項1から16のいずれか一項に記載のインプラントシステム。
【請求項18】
少なくとも1つの挿入装置をさらに備える、請求項1から17のいずれか一項に記載のインプラントシステム。
【請求項19】
前記縫合糸の前記第1及び第2の先端部は、前記少なくとも1つの挿入装置に結合される、請求項18に記載のインプラントシステム。
【請求項20】
前記少なくとも1つの挿入装置は、前記縫合糸の前記第1の先端部に結合された第1の挿入装置と、前記縫合糸の前記第2の先端部に結合された第2の挿入装置とを含む、請求項18に記載のインプラントシステム。
【請求項21】
前記少なくとも1つの挿入装置は、少なくとも1本の針を備える、請求項18から20のいずれか一項に記載のインプラントシステム。
【請求項22】
前記少なくとも1本の針は少なくとも1本の非直線針を含む、請求項21に記載のインプラントシステム。
【請求項23】
前記アンカー部材は可撓性である、請求項1から22のいずれか一項に記載のインプラントシステム。
【請求項24】
前記アンカー部材は中空の編組縫合糸から形成されている、請求項1から23のいずれか一項に記載のインプラントシステム。
【請求項25】
前記少なくとも1つの縫合糸通し部は、第1の縫合糸通し部及び第2の縫合糸通し部を含む、請求項1から24のいずれか一項に記載のインプラントシステム。
【請求項26】
前記第1の縫合糸通し部は前記縫合糸の前記ループ部の第1の部分を通って延在し、前記第2の縫合糸通し部は、前記縫合糸の前記ループ部の第2の部分を通って延在する、請求項25に記載のインプラントシステム。
【請求項27】
前記第1の縫合糸通し部及び前記第2の縫合糸通し部は、前記縫合糸の前記ループ部の共通部分を通って延在する、請求項25に記載のインプラントシステム。
【請求項28】
前記第1の縫合糸通し部は前記縫合糸の前記ループ部を第1の方向に沿って通過し、前記第2の縫合糸通し部は前記縫合糸の前記ループ部を、前記第1の方向に略対向する第2の方向に沿って通過する、請求項25から27のいずれか一項に記載のインプラントシステム。
【請求項29】
前記少なくとも1つの縫合糸通し部は露出ループを含む、請求項1から28のいずれか一項に記載のインプラントシステム。
【請求項30】
前記縫合糸の前記第1及び第2の先端部が、前記縫合糸通し部によって、第1の方向に沿って前記ループ部を通って平行移動させられ、前記第1及び第2の先端部が引張されると、前記ループ部は、前記第1及び第2の先端部に対して、前記第1及び第2の先端部が前記第1の方向に対向する第2の方向に沿って前記ループ部を通過して平行移動するのを防止するのに十分な張力を印加する、請求項1から29のいずれか一項に記載のインプラントシステム。
【請求項31】
内部空洞を画定する環状側壁、第1の解剖学的構造内の第1の縦方向端部及び第2の縦方向端部を含む可撓性アンカーチューブを埋入するステップと、
縫合糸の前記第1及び第2の先端部の一部に、第2の解剖学的構造の一部を通過させて埋入するステップであって、前記縫合糸は、前記側壁から延在する自由ループ部を形成し、前記縫合糸は、前記縫合糸の前記第1及び第2の先端部が引張されたときに、前記縫合糸が前記アンカーチューブを通って摺動できるようにする配列に沿って延在する、ステップと、
前記縫合糸の前記第1及び第2の先端部の一部に、前記ループ部の固定部分を通って延在する少なくとも1つの縫合糸通し部の少なくとも1つのループを通過させるステップと、
前記少なくとも1つの縫合糸通し部を介して、前記縫合糸の前記第1及び第2の先端部の一部に、前記ループ部の前記固定部分を通過させるステップと、
前記縫合糸の前記第1及び第2の先端部を引張して前記ループ部の長さを短縮し、前記アンカーチューブを変形構成へと変形させ、次いで前記第1及び第2の解剖学的構造を接近させるステップと、を含み、
前記ループ部の固定部分は、前記引張後に前記固定部分内の前記第1及び第2の先端部の位置を固定する、
第1及び第2の解剖学的構造を接合する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年1月31日に出願された、「無結紮式軟組織インプラントシステム及び関連方法」と題する米国仮特許出願第62/968,765号の優先権の利益を主張するものであり、その開示内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は概して、軟組織及び/又は骨を修復するためのインプラント及び方法に関する。より詳細には、これに限定はされないが、本開示は、軟組織を軟組織に、軟組織を骨に、かつ骨を骨に接合するための無結紮式インプラント、システム、アセンブリ、及び関連方法に関する。
【背景技術】
【0003】
哺乳動物体(例えば、人体である)の組織及び/又は骨は、当該組織及び/又は骨の一部の接合が解剖学的かつ/又は生理学的に好適又は望ましいものとなり得るように分解されるか、あるいは区画化又は分離され得る。
【0004】
例えば、ヒトの足部は、中足指節関節(metatarsophalangeal joint:MTP関節)の下の足底に底側板を含む。底側板は、中足骨及び対応する基節骨を結合している厚い靭帯(線維軟骨からなる)構造である。底側板が断裂したり、別の形で損なわれたりすることがある。いくつかの例では、底側板自体の組織が、対応する中足骨と基節骨との間の当該組織の長さに沿って減弱するか、断裂するか、若しくは分節化し得る。あるいは底側板は、対応する1つ又は複数の中足骨又は基節骨から裂離するか、若しくは分離する可能性がある。
【0005】
別の例として、ヒトの手部は掌側板を含む。掌側板は、底側板と相似の構造である。手部の各中手指節関節(metacarpophalangeal joint:MCP関節)及び各指節間関節には、掌側板が繋がっている。底側板と同様に、掌側板も断裂することがある。
【0006】
組織自体又は1本又は複数の骨に靭帯が付着するなどして、哺乳動物体における他の多くの靭帯が断裂する場合がある。同様に、哺乳動物体の1本又は複数の骨が損傷するか、あるいは分節化し得る。典型的な組織及び骨修復の選択肢には、断裂部又は損傷部を縫合/再接近させたり、あるいは組織及び骨を再接着させたりすることで、治癒を誘起することが含まれる。そのような修復を行う現行のシステムは大型であり、複雑であり、かつ/又は組織及び/又は骨に複数のかつ/又は比較的大きな貫通孔の形成を要する傾向がある。
【0007】
したがって、底側板(及び掌側板)の修復、並びに哺乳動物(例えば、ヒトである)体の足部、手部及び他の部位の他の組織及び/又は骨の接合を行うための、小型で扱いやすく、かつ使い勝手の良いインプラント、システム、アセンブリ及び方法が必要とされている。接合された組織及び/又は骨区画に対する複数のかつ/又は比較的大きな貫通孔の形成を要しない、組織及び/又は骨の修復/接合インプラント、システム、アセンブリ及び方法も必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、軟組織を軟組織に、軟組織を骨に、かつ骨を骨に接合するなど、組織及び/又は骨区画若しくは骨部分を接合するための装置及び方法に関する。軟組織を軟組織に、軟組織を骨に、かつ骨を骨に接合するためのインプラント、システム、アセンブリ及び方法は、断裂した底側板(及び/又は掌側板)を修復するために使用されてもよい。また一方で、本インプラント、システム、アセンブリ及び方法を同様に使用して、哺乳動物体(例えば、人体である)の足部、手部又は他の部位の他のあらゆる組織及び/又は骨区画若しくは骨部分が修復/接合されてもよい。
【0009】
一態様では、本開示は、可撓性アンカーチューブと、縫合糸と、少なくとも1つの縫合糸通し部とを備える骨及び/又は組織接合インプラントシステムを提供する。可撓性アンカーチューブは、内部空洞を画定する環状側壁、第1の縦方向端部、及び第2の縦方向端部を含む。縫合糸は、アンカーチューブの側壁を複数回貫通して延在し、当該側壁から延在する自由ループ部を形成する。少なくとも1つの縫合糸通し部は、縫合糸のループ部の一部を通って延在し、自身の並進運動によって、縫合糸の第1及び第2の先端部に、ループ部を通って平行移動させるように構成されている。縫合糸は、当該縫合糸の第1及び第2の先端部が引張されたときに、当該縫合糸がアンカーチューブを通って摺動できるようにする配列に沿って延在する。
【0010】
いくつかの実施形態では、縫合糸の第1の先端部は、当該縫合糸の第1の端部から始まって、アンカーチューブの外面から第1の縦方向端部に対して近位にあるアンカーチューブの側壁の第1の部分を通って第1の内部空洞内へと延在し、内部空洞の一部を通って縦方向に、アンカーチューブの第2の縦方向端部に向かって延在し、第1の縦方向端部に対して遠位にある側壁の第2の部分を通って、内部空洞からアンカーチューブの外面まで延在する。いくつかの実施形態では、縫合糸の第2の先端部は、当該縫合糸の第2の端部から始まって、アンカーチューブの外面から第2の縦方向端部に対して近位にある側壁の第3の部分を通って内部空洞内へと延在し、内部空洞の一部を通って縦方向に、第1の縦方向端部に向かって延在し、第2の縦方向端部に対して遠位にある側壁の第4の部分を通って、内部空洞からアンカーチューブの外面まで延在する。いくつかのそのような実施形態では、縫合糸の第1の中間部は、アンカーチューブの側壁の第2の部分を通って延在する第1の先端部から延在し、縫合糸の第2の中間部は、アンカーチューブの側壁の第4の部分を通って延在する第2の先端部から延在し、また、縫合糸の第1及び第2の中間部はループ部を形成する。いくつかのそのような実施形態では、縫合糸の第1及び第2の中間部は、当該縫合糸の連続した部分である。
【0011】
いくつかの実施形態では、縫合糸の第1及び第2の先端部が引張されると、アンカーチューブは中立構成から変形構成へと変形する。いくつかのそのような実施形態では、変形構成にあっては、アンカーチューブは湾曲形状を画定する。いくつかのそのような実施形態では、凹形状はU字形状又はV字形状を含む。他のいくつかのそのような実施形態では、アンカーチューブは変形構成において、アンカーチューブの縦方向長さに沿ってアンカーチューブ自体の上で変形するか、又は折り重なる。他のいくつかのそのような実施形態では、アンカーチューブは中立構成において、第1の最大横方向幅及び第1の最大縦方向長さを画定し、また変形構成において、第1の最大横方向幅よりも広い第2の最大横方向幅、及び第1の最大縦方向長さよりも短い第2の最大縦方向長さを画定する。
【0012】
いくつかの実施形態では、アンカーチューブは中立構成において、縦方向に長尺状になっている。いくつかの実施形態では、アンカーチューブは中立構成において円筒形状になっている。
【0013】
いくつかの実施形態では、アンカーチューブは生体適合性材料から形成されている。いくつかの実施形態では、縫合糸は生体適合性材料から形成されている。
【0014】
いくつかの実施形態では、少なくとも1本の縫合糸はマルチフィラメント縫合糸を含む。いくつかのそのような実施形態では、縫合糸は編組縫合糸である。
【0015】
いくつかの実施形態では、縫合糸は非中空である。いくつかの実施形態では、本システムは、少なくとも1つの挿入装置をさらに備える。いくつかのそのような実施形態では、縫合糸の第1及び第2の先端部は、少なくとも1つの挿入装置に結合される。いくつかのそのような実施形態では、少なくとも1つの挿入装置は、縫合糸の第1の先端部に結合された第1の挿入装置と、縫合糸の第2の先端部に結合された第2の挿入装置とを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの挿入装置は、少なくとも1本の針を備える。いくつかのそのような実施形態では、少なくとも1本の針は少なくとも1本の非直線針を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、アンカー部材は可撓性である。いくつかの実施形態では、アンカー部材は中空の編組縫合糸から形成されている。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの縫合糸通し部は、第1の縫合糸通し部及び第2の縫合糸通し部を含む。
【0018】
いくつかのそのような実施形態では、第1の縫合糸通し部は縫合糸のループ部の第1の部分を通って延在し、第2の縫合糸通し部は、縫合糸のループ部の第2の部分を通って延在する。いくつかのそのような実施形態では、第1の縫合糸通し部及び第2の縫合糸通し部は、縫合糸のループ部の共通部分を通って延在する。いくつかの実施形態では、第1の縫合糸通し部は縫合糸のループ部を第1の方向に沿って通過し、第2の縫合糸通し部は縫合糸のループ部を、第1の方向に略対向する第2の方向に沿って通過する。
【0019】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの縫合糸通し部は露出ループを含む。いくつかの実施形態では、縫合糸の第1及び第2の先端部が、縫合糸通し部によって、第1の方向に沿ってループ部を通って平行移動させられ、第1及び第2の先端部が引張されると、ループ部は、第1及び第2の先端部に対して、第1及び第2の先端部が第1の方向に対向する第2の方向に沿ってループ部を通過して平行移動するのを防止するのに十分な張力を印加する。
【0020】
別の態様では、第1及び第2の解剖学的構造を接合する方法が提供される。本方法は、内部空洞を画定する環状側壁、第1の解剖学的構造内の第1の縦方向端部及び第2の縦方向端部を備える可撓性アンカーチューブを埋入するステップを含む。本方法は、縫合糸の第1及び第2の先端部の一部に、第2の解剖学的構造の一部を通過させて埋入するステップをさらに含み、当該縫合糸は、側壁から延在する自由ループ部を形成し、当該縫合糸は、当該縫合糸の第1及び第2の先端部が引張されたときに、当該縫合糸がアンカーチューブを通って摺動できるようにする配列に沿って延在する。本方法は、縫合糸の第1及び第2の先端部の一部に、ループ部の固定部分を通って延在する少なくとも1つの縫合糸通し部の少なくとも1つのループを通過させるステップをさらに含む。本方法は、少なくとも1つの縫合糸通し部を介して、縫合糸の第1及び第2の先端部の一部にループ部の固定部分を通過させるステップをさらに含む。本方法は、縫合糸の第1及び第2の先端部を引張してループ部の長さを短縮し、アンカーチューブを変形構成へと変形させ、次いで第1及び第2の解剖学的構造を接近させるステップをさらに含む。ループ部の固定部分は、引張後に固定部分内の第1及び第2の先端部の位置を固定する。
【0021】
本開示によって提供される本発明のこれら及び他の目的、特徴並びに利点は、添付の図面と併せて、本発明のさまざまな態様を以下に詳細に説明していることから明らかになるであろう。
【0022】
添付の図面は本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成し、本発明の実施形態を示し、かつ本明細書の詳細な説明と共に、本発明の原理を説明する役割を果たしている。業界の標準的な慣行に従って、さまざまな特徴が縮尺通りに描画されてもされなくてもよいことが強調される。実際、さまざまな特徴の寸法は、説明を明確にするために任意に増減されてもよい。図面は、本開示の発明の実施形態を例示するためのものにすぎず、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本開示による、組織及び/又は骨接合インプラントシステムの上面図である。
【
図2】本開示による、
図1のインプラントシステムのアンカーチューブ及び対応縫合部の側断面図である。
【
図3】本開示による、
図1のインプラントシステムの上面斜視図である。
【
図4】本開示による、
図1のインプラントシステムの底面斜視図である。
【
図5A】本発明の一態様による、変形状態にあり、骨の内面に対して牽引され、かつ組織を通って延在する、
図1のインプラントシステムのアンカーチューブを示す側断面図である。
【
図5B】本発明の一態様による、変形状態にあり、かつ重なり合う縫合部が骨の外側に接触した状態で、
図5Aの骨及び組織を互いに固定する、
図1のインプラントシステムのアンカーチューブを示す側断面図である。
【
図5C】本発明の一態様による、変形状態にあり、かつ重なり合う縫合部がアンカーチューブに接触した状態で、
図5Aの骨及び組織を互いに固定する、
図1のインプラントシステムのアンカーチューブを示す側断面図である。
【
図6】本発明の一態様による、組織を修復する
図1の一対のインプラントシステムを示す上面図である。
【
図7】本発明の一態様による、骨を貫通して埋入された
図6のインプラントシステムを示す上面図である。
【
図8】本発明の一態様による、挿入器具にアンカーチューブが装填された状態の、
図7のインプラントシステムを示す側断面図である。
【
図9】本発明の一態様による、アンカーチューブが骨に埋入された状態の、
図8のインプラントシステムを示す側断面図である。
【
図10】本発明の一態様による、アンカーチューブが骨に埋入され、なおかつ縫合糸の先端部が組織を貫通して埋入された状態の、
図9のインプラントシステムを示す側断面図である。
【
図11】本発明の一態様による、アンカーが骨に埋入され、縫合糸の先端部が組織を貫通して埋入され、なおかつ縫合糸の先端部が縫合糸のループ部を通過した状態の、
図10のインプラントシステムを示す側断面図である。
【
図12】骨及び組織を互いに固定する、
図11のインプラントシステムを示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明を実施するための形態及び以下の特許請求の範囲において、「近位」「遠位」「前方」又は「底側」「後方」又は「背側」「内側」「外側」「上側」及び「下側」という用語は、自然骨の相対配置又は参照の方向を示す用語に従って、骨又はインプラントの特定の部分若しくは特定の一部分を示すためのそれらの標準的用法によって定義されている。例えば、「近位」は、胴体に最も接近した装置又はインプラントの部分を意味し、「遠位」は、胴体から最も離隔した装置又はインプラントの部分を示す。方向を示す用語に関して、「前方」は身体の前側に向かう方向であり、「後方」は身体の後側に向かう方向を意味し、「内側」は身体の正中線に向かう方向を意味し、「外側」は身体の両側に向かう方向又は身体の正中線から離隔する方向であり、「上側」は別の物体又は構造の上方を意味し、「下側」は、別の物体又は構造の下方を意味する。さらに、とりわけ足部に関して、「背側」という用語は足部の頂部を指し、「底側」という用語は足部の底部を指す。
【0025】
同様に、本明細書では、解剖学的構造又は解剖学的表面を参照して、位置又は方向を使用してもよい。例えば、本インプラント、装置、器具及び方法は、足部の骨で使用することを基準に本明細書に記載されているため、足部、足首部及び下腿部の骨を使用して、インプラント、装置、器具及び方法の表面、位置、方向又は向きが記載されてもよい。さらに、本明細書に開示されるインプラント、装置、器具及び方法、並びにそれらの態様、構成要素、及び特徴などについては、簡潔にするために身体の片側を対象に述べられている。しかしながら、人体は対称線(正中線である)に対して比較的対称的又は鏡像的であるため、本明細書に記載かつ/又は図示されたインプラント、装置、器具及び方法、並びにその態様、構成要素、及び特徴などが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、同一又は類似の目的で身体の別の側での使用又は対応付けのために変更、変動、修正、再構成あるいは改変され得ることが、本明細書によって明確に企図されている。例えば、右足部に関して本明細書で述べられているインプラント、装置、器具及び方法、並びにそれらの態様、構成要素、及び特徴などは、それらが左足部でも同様に機能するように勝手反対になってもよい。さらに、本明細書に開示されるインプラント、装置、器具及び方法、並びにそれらの態様、構成要素、及び特徴などは、簡潔にするために足部を対象に述べられているが、本インプラント、装置、器具及び方法が、身体において同様の構造を有する他の骨でも使用されてもよいことを理解されたい。
【0026】
概して言えば、軟組織を軟組織に、軟組織を骨に、かつ骨を骨に接合するためのインプラント、システム、アセンブリ及び方法が本明細書に開示される。本インプラント、システム、アセンブリ及び方法は、中足指節関節(MTP関節)の断裂した底側板を修復するために使用されてもよい。本インプラント、システム、アセンブリ及び方法は、底側板修復に関連して本開示で例示され、かつ述べられ得るが、本インプラント、システム、アセンブリ及び方法は、任意の軟組織を任意の軟組織に、任意の軟組織を任意の骨に、又は任意の骨を任意の骨に接合するために、過度の実験なしに同様に使用されてもよく、かつ適合されてもよい。例えば、本インプラント、システム、アセンブリ及び方法を同様に使用して、断裂した掌側板などであるが、これに限定されない哺乳動物(例えば、ヒトである)体の足部又は他の部位の他の任意の組織及び/又は骨区画若しくは骨部分が修復/接合されてもよい。
【0027】
本開示の軟組織を軟組織に、軟組織を骨に、かつ骨を骨に接合するためのインプラント、システム、アセンブリ及び関連方法は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2018年12月5日に出願され、「Implant System and Methods of Use」と題する米国仮特許出願第62/775,591号、2019年8月6日に出願され、「Soft Tissue Implant Systems,Instruments and Related Method」 と題する米国仮特許出願第62/883,429号、及び/又は2019年12月5日に出願され、「Soft Tissue Implant Systems,Instruments and Related Methods」と題する国際PCT出願第PCT/US2019/064741号に開示されているインプラント、システム、アセンブリ及び関連方法の少なくとも1つの特徴又は態様を含むように、同様であってもよい。同様に、本開示の軟組織を軟組織に、軟組織を骨に、かつ骨を骨に接合するためのインプラント、システム、アセンブリ及び関連方法は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2019年8月6日に出願され、「Soft Tissue Implant Systems,Instruments and Related Method」と題する米国仮特許出願第62/883,429号、及び/又は、2019年12月5日に出願され、「Soft Tissue Implant Systems,Instruments and Related Methods」と題する国際PCT出願第PCT/US2019/064741号に開示されている1つ又は複数の器具(例えば、1つ又は複数の挿入器具及び/又は埋入器具である)を含んでもよい。
【0028】
図面を参照すると、いくつかの図の全体を通じて、同様の参照番号を使用して同様又は類似の構成要素が示されており、とりわけ
図1から
図12を参照すると、本開示による軟組織を軟組織に、軟組織を骨に、又は骨を骨に接合するためのインプラントシステム10の典型的な実施形態が示されている。
図1から
図5Cに示すように、インプラントシステム10は、第1の生体適合性折畳み式アンカーチューブ14(本明細書では「引張アンカー14」とも呼ばれる)と、アンカーチューブ14の側壁16を複数回通過する生体適合性縫合糸12(本明細書では、「引張ストランド12」とも呼ばれる)とを備えてもよい。
【0029】
図1から
図5Cに示すように、第1の生体適合性折畳み式アンカーチューブ14は、縦方向に沿って長尺状になっていてもよい。いくつかの実施形態では、アンカーチューブ14は5mm~35mmの範囲内であるか、又は8mm~17mm~の範囲内であるか、又は10mm~15mmの範囲内である縦方向長さを画定してもよい。例示の典型的な実施形態では、アンカーチューブ14は約2分の1インチの縦方向長さを画定している。アンカーチューブ14は、縫合糸12よりも相対的に大きな寸法にされてもよい。例えば、アンカーチューブ14の幅又は直径は、縫合糸12の幅又は直径よりも大きくてもよい。
【0030】
アンカーチューブ14は、
図1に示すように、内部空洞18を画定する環状側壁16と、第1及び第2の縦方向端部17A、17Bとから形成されてもよい。よって、アンカーチューブ14は中空であってもよい。縫合糸12が内部空洞18を通過できるように、内部空洞18の寸法は縫合糸12よりも大きくてもよい。アンカーチューブ14の縦方向端部17A、17Bの一方又は両方で内部空洞18が開口するか、又は到達可能となるように、内部空洞18がアンカーチューブ14を貫通して延在してもよい。いくつかの実施形態では、
図1に示すように、アンカーチューブ14の縦方向端部17A、17Bの両方で内部空洞18が開口するか、又は到達可能となるように、内部空洞18がアンカーチューブ14を完全に貫通して延在してもよい。いくつかの代替実施形態(図示せず)では、アンカーチューブ14の縦方向端部17A、17Bのうちの一方のみで内部空洞18が開口するか、又は到達可能となるように、内部空洞18がアンカーチューブ14を部分的にのみ通って延在してもよい。よってそのような実施形態では、アンカーチューブ14(及び内部空洞18)の縦方向端部17A、17Bのうちの一方は、端壁、プラグ、ヒートシール又は他の任意の構成を介して閉鎖されてもよい(これに対して、アンカーチューブ14のもう一方の縦方向端部は、内部空洞18に開口してもよい)。他のいくつかの代替実施形態(図示せず)では、アンカーチューブ14(及び内部空洞18)の縦方向端部17A、17Bの両方が閉鎖されてもよい。このようにして、内部空洞18は、アンカーチューブ14内で密封又は閉鎖されてもよい。
【0031】
アンカーチューブ14は可撓性であってもよいし、折畳み可能であってもよいし、変形可能であってもよいし、屈曲可能であってもよいし、伸縮可能であってもよいし、あるいは全体形状が再配置可能であってもよい。例えば、
図1から
図4に示すような自然状態、中立状態、又は非変形状態では、アンカーチューブ14は縦方向に沿って略直線状又は一直線状に延在してもよい。よって、アンカーチューブ14は、
図1から
図4に示すように、その自然状態においては略円筒形状であってもよい。いくつかの実施形態では、
図1から
図4に示す自然状態では、アンカーチューブ14は縦方向に沿って略直線状又は一直線状に延在するか、あるいはわずかに湾曲した形状又は弓形の形状を含んでもよい。よって、アンカーチューブ14は、
図1から
図4に示すように、その自然状態においては略円筒形状であってもよいし、又はわずかに湾曲していてもよい。自然状態では、アンカーチューブ14は、第1の最大横方向幅と第1の最大縦方向長さとを画定している。以下でさらに説明するように、アンカーチューブ14は、縫合糸12を引張することによって、第1の最大横方向幅よりも広い第2の最大横方向幅と、第1の最大縦方向長さよりも短い第2の最大縦方向長さとをアンカーチューブ14が画定する変形形状、変形構成、又は変形状態へと変形してもよい。
【0032】
アンカーチューブ14の少なくとも側壁16は、内部空洞18が横方向に沿って少なくとも部分的に折り畳まれるように、自然状態から内側方向に変形してもよい。アンカーチューブ14は(例えば、少なくともその側壁16は)は、中立状態の略直線状又は円筒形状から「隆起」形状へとアンカーチューブ14が湾曲し、屈曲し、押し込まれ、あるいは再配置されるようにさらに変形してもよい。
図5Aから
図7に示すように、縫合糸12は、側壁16の側面又は一部を複数回貫通して延在してもよく、これにより、アンカーチューブ14が凹状/凸状(側壁16を貫通して延在する縫合糸12を含む、側壁16の一部に応じて)、弓形形状、折畳み形状、「C」字形状又は「U」字形状かつ/又は「V」字形状に形成されてもよい。例えば、
図5Aから
図7に示すように、アンカーチューブ14がしっかりと弓形形状(例えば、比較的小さな半径によって画定される)又はU字形状をとるように、縫合糸12が側壁16の側面又は一部を折り畳んでもよいし、押し込んでもよいし、又は引き込んでもよい。
【0033】
アンカーチューブ14は(例えば、側壁16は)、中実又は多孔質であってもよい。例えば、アンカーチューブ14は(例えば、側壁16は)、固体材料を使用して成形されてもよい。別の実施例として、アンカーチューブ14は(例えば、側壁16は)、1本又は複数の糸、繊維又はフィラメントから織られてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、アンカーチューブ14は編組状又は織り状のフィラメント、糸又は縫合糸から形成されている。そのような一実施形態では、アンカーチューブ14は中空の編組縫合糸から形成されている。いくつかの実施形態では、アンカーチューブ14は(例えば、側壁16は)、1つ又は複数の機械加工、付加かつ/又は押出成形プロセスによって形成されてもよい。アンカーチューブ14は(例えば、側壁16は)一体構造であってもよく、あるいは複数の部材又は部分(及び/又は材料)から形成されてもよい。アンカーチューブ14は(例えば、側壁16は)、1つ又は複数の任意の生体適合性材料から形成又は作製されてもよい。例えば、アンカーチューブ14は(例えば、側壁16は)、ポリエステル、ポリエチレン(例えば、超高分子量ポリエチレンである)、ポリプロピレン、ナイロン(例えば、ポリアミドである)、絹、ポリグリコール酸(PGA)、ポリジオキサノン(PDO)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)、ステンレス鋼、又はそれらの組合せから作製若しくは形成されてもよい。一実施例では、アンカーチューブ14はポリエステルから形成されている。
【0034】
上述したように、生体適合性縫合糸12は、アンカーチューブ14の側壁16の側面又は一部を複数回通過する。縫合糸12は、任意の可撓性の生体適合性糸、繊維、フィラメント又は同様の部材であってもよい。縫合糸12は、モノフィラメント縫合糸又はマルチフィラメント縫合糸(例えば、マルチフィラメント編組体である)であってもよい。例えば、縫合糸12は、同一又は異なる材料から形成された2本のフィラメントを共に編組したものであってもよい。縫合糸12は、任意の非吸収性の生体適合性材料などの任意の生体適合性材料から作製又は形成されてもよい。いくつかのそのような実施形態では、縫合糸12はポリプロピレン、ポリエチレン(例えば、超高分子量ポリエチレンである)、ナイロン(例えば、ポリアミドである)、ポリエステル、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリジオキサノン(PDO)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)、絹、ステンレス鋼、又はそれらの組合せから作製若しくは形成されてもよい。例えば、縫合糸12は、ポリエチレン(例えば、超高分子量ポリエチレンである)フィラメントとポリエステルフィラメントとを共に編組したものであってもよい。一実施例では、縫合糸12はポリエチレンから形成されている。
【0035】
縫合糸12は、内部の縦方向に延在する空洞又は開放空間の非中空、中実、連続的、又は他の様態の空隙であってもよい。例えば、縫合糸12の断面は、当該断面全体にわたって絡み合っているか、編組されているか、又は織り込まれている複数のフィラメントから構成されてもよい。よって、縫合糸12は非中空であってもよい。
【0036】
縫合糸12は任意の断面形状であってもよい。縫合糸12は、任意の長さ及び/又は断面幅若しくは断面直径などの任意の寸法であってもよい。いくつかの実施形態では、縫合糸12は少なくとも45cmの長さであってもよく、例えば10cm~100cmの範囲内であってもよいし、又は40cm~90cmの範囲内であるとより好ましい。縫合糸12は、少なくとも寸法(号数)6‐0の米国薬局方(United States Pharmacopeia:USP)指定の非吸収性縫合糸であってもよく、例えば寸法(号数)6‐0~5のUSP指定の非吸収性縫合糸であってもよいし、又は4‐0~1のUSP指定の非吸収性縫合糸であってもよい。いくつかの実施形態では、縫合糸12は少なくとも60cmの長さで少なくとも寸法(号数)0のUSP指定の非吸収性縫合糸であってもよいし、又は少なくとも45cmの長さで少なくとも寸法(号数)2‐0のUSP指定の非吸収性縫合糸であってもよい。
【0037】
上述したように、インプラントシステム10の縫合糸12は、縫合糸12がアンカーチューブ14を通って自由に摺動できるようにする配列で構成又は配置されている。アンカーチューブ14を通って延在する縫合糸12の長さが短くなるにつれて、アンカーチューブ14から延在する縫合糸12の第1及び第2の端部又は先端部20、30に印加される張力によって縫合糸12がアンカーチューブ14を通って摺動するようにし、次いでアンカーチューブ14及び縫合糸12の第1及び第2の先端部20、30に結合された解剖学的構造が同時に引き寄せられるように、インプラントシステム10が構成されている。
【0038】
図1に示すように、縫合糸12の第1及び第2の先端部20、30はそれぞれ、アンカーチューブ14の側壁16を通って延在してもよい。縫合糸12の第1の先端部20は、縫合糸12の自由端からアンカーチューブ14の側壁16を通って内部空洞18内へと延在する第1の縫合糸先端区画22を含んでもよい。
図1に示すように、縫合糸12の第1の先端部20の第1の縫合糸先端区画22は、アンカーチューブ14の第1の縦方向端部17Aに対して近位にある側壁16の第1の部分又は側面を通って延在してもよい。内部空洞18の内側では、縫合糸12の第1の先端部20の第1の内側部分24が、
図1に示すように、第1の縫合糸先端区画22から始まり、内部空洞18内で縦方向に、アンカーチューブ14の第2の縦方向端部17B(第1の縦方向端部17Aに対向している)に向かって延在してもよい。第1の先端部20の第1の内側部分24は、アンカーチューブ14の第1の縦方向端部17Aに対して遠位にある(かつ第2の縦方向端部17Bに対して近位にある)、側壁16の第1の部分又は側面を通って延在してもよい。一代替実施形態(図示せず)では、縫合糸12の第1の先端部20の第1の内側部分24は、第1の縫合糸先端区画22から始まり、内部空洞18内で縦方向に、アンカーチューブ14の第1の縦方向端部17A(第2の縦方向端部17Bに対向している)に向かって延在してもよい。よって、第1の先端部20の第1の内側部分24は、アンカーチューブ14の第2の縦方向端部17Bに対して近位にある(かつ第1の縦方向端部17Aに対して近位にある)、側壁16の第1の部分又は側面を通って延在してもよい。
【0039】
図1から
図5Cに示すように、縫合糸12の中間部は、側壁16の2つの部分から、かつそれらの間に延在し、ループ部29を形成してもよい。アンカーチューブ14が縫合糸12の長さに沿って摺動し、またループ部29が短縮されるように、第1及び第2の先端部20、30に印加される張力によって、アンカーチューブ14が縫合糸12に沿って摺動自在となるよう調整されてもよい。これにより、縫合糸12のループ部の長さと、アンカーチューブ14の側壁16から延在する第1及び第2の先端部20、30の長さとが調整され得る。このようにして、第1のアンカーチューブ14と第1及び第2の先端部20、30とが、骨及び/又は組織の区画若しくは部分に埋入され得、次いで第1及び第2の先端部20、30が引張されてループ部29が短縮され、アンカーチューブ14が変形し、かつ当該区画又は当該部分が接合/修復されて同時に引き寄せられる。以下でさらに説明するように、縫合糸12及びアンカーチューブ14のそのような構成、ひいては骨及び/又は組織の区画若しくは部分は、縫合糸12の第1及び第2の先端部20、30に縫合糸12のループ部29の一部を通過させることによって維持又は固定されてもよい。第1及び第2の先端部20、30が引張されることによってシステム/構造体10が引き締まると、ループ部29も引き締まり、これによって第1及び第2の先端部20、30がループ部29を通って/ループ部29から摺り出るのが防止され得る。このように、システム/構造体10は自動ロック式/固定式であってもよく、また、システム/構造体10と骨及び/又は組織の区画若しくは部分の構成とをロック又は固定するための結紮や外部機構を一切必要としない。
【0040】
図1から
図4に示すように、縫合糸12の第2の先端部30は、縫合糸12の自由端からアンカーチューブ14の側壁16を通って内部空洞18内へと延在する第2の縫合糸先端区画32を含んでもよい。
図1に示すように、縫合糸12の第2の先端部30の第2の縫合糸先端区画32は、アンカーチューブ14の第2の縦方向端部17Bに対して近位にある側壁16の第1の部分又は側面を通って延在してもよい。アンカーチューブ14の内部空洞18の内側では、縫合糸12の第2の先端部30の第2の内側部分34が、
図1に示すように、第2の縫合糸先端区画32から始まり、内部空洞18内で縦方向に、アンカーチューブ14の第1の縦方向端部17A(第2の縦方向端部17Bに対向している)に向かって延在してもよい。第2の先端部30の第2の内側部分34は、アンカーチューブ14の第1の縦方向端部17Aに対して遠位にある(かつ第2の縦方向端部17Bに対して近位にある)、側壁16の第1の部分又は側面を通って延在してもよい。一代替実施形態(図示せず)では、縫合糸12の第2の先端部30の第2の内側部分34は、第2の縫合糸先端区画32から始まり、内部空洞18内で縦方向に、アンカーチューブ14の第2の縦方向端部17B(第1の縦方向端部17Aに対向している)に向かって延在してもよい。よって、第2の先端部30の第2の内側部分34は、アンカーチューブ14の第2の縦方向端部17Bに対して遠位にある(かつ第1の縦方向端部17Aに対して近位にある)、側壁16の第1の部分又は側面を通って延在してもよい。
【0041】
図1から
図4に示すように、縫合糸12の第1の中間部26は、縫合糸12の第1の内側部分24及びアンカーチューブ14の側壁16から延在し、縫合糸12の第2の中間部36は、縫合糸12の第2の内側部分34及びアンカーチューブ14の側壁16から延在する。第1の中間部26と第2の中間部36とが協働して、アンカーチューブ14の外側に位置する(即ち、内部空洞18の外側に位置する)露出ループ部29を形成する。よって、ループ部29は、アンカーチューブ14の側壁16における外面の第1の部分から延在し、アンカチューン14の縦方向長さに沿って離隔しているアンカーチューブ14の側壁16における外面の第2の部分を通って戻る、縫合糸12の中間部を含んでもよい。
【0042】
図1から
図5Aに示すように、システム/構造体10は、縫合糸12のループ部29の一部を通って延在し、少なくとも一方の自身がループ部29を並進することにより、縫合糸12の第1及び第2の先端部20、32それぞれの第1及び第2の先端区画22、32にループ部29を通って平行移動させるように構成された、少なくとも1つの縫合糸通し部50A、50Bをさらに備える。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの縫合糸通し部50A、50Bは、
図1から
図5Aに示すように、露出テール部分と、第1及び第2の先端部20、32の第1及び第2の先端区画22、32が通過させられ得る露出ループ又はフックとを含んでもよい。
図1から
図5Aに示すように、少なくとも1つの縫合糸通し部50A、50Bのテール部分とループ部分とがループ部29における縫合糸12の外表面/外面の異なる側面又は部分から延出するように、少なくとも1つの縫合糸通し部50A、50Bがループ部29を通過してもよく、これにより、第1及び第2の先端部20、32の第1及び第2の先端区画22、32が、少なくとも1つの縫合糸通し部50A、50Bのループ部分を通過させられてもよく、また、少なくとも1つの縫合糸通し部50A、50Bのテール部分は、
図5B及び
図5Cに示すように、ループ部29のそれぞれの部分を通じて(即ち、ループ部29における縫合糸12の一部を通じて)、第1及び第2の先端区画22、32を平行移動させる/牽引するように牽引(引張)されてもよい。
【0043】
図5B及び
図5Cに示すように、第1及び第2の先端部20、32の第1及び第2の先端区画22、32がループ部29の1つ又は複数の部分を通って平行移動させられ/牽引され、縫合糸が引張されると(第1及び第2の先端部20、32が引張されることによって)、ループ部29が短縮され、第1及び第2の先端区画22、32がループ部29を通ってひとりでに平行移動するか、又は後退するのを防止するのに十分な摩擦力及び/又は押込み力を第1及び第2の先端区画22、32に対して生じさせるように、縫合糸12が構成されている。よって、以下でさらに説明するように、また
図5B及び
図5Cに示すように、システム/構造体10の構成、ひいてはアンカーチューブ14と縫合糸12の第1及び第2の先端区画22、32とによって結合された解剖学的構造(例えば、1つ又は複数の骨及び/若しくは1つ又は複数の組織である)を固定するために、縫合糸12の第1及び第2の先端部20、32を外部固定機構によって結紮又は固定させる必要がなくなるということから、システム/構造体10を自動固定式又は自動ロック式とすることができる。
【0044】
図1から
図5Aに示すように、システム/構造体10の図示の典型的な実施形態は、第1の縫合糸通し部50A及び第2の縫合糸通し部50Bを備える。いくつかのそのような実施形態では、第1の縫合糸通し部50Aは縫合糸12のループ部29の第1の部分を通って延在し、第2の縫合糸通し部50Bは、第1の部分とは異なる縫合糸12のループ部29の第2の部分を通って延在する。他のいくつかの実施形態では、第1の縫合糸通し部50A及び第2の縫合糸通し部50Bは、
図1から
図5Cに示すように、縫合糸12のループ部29の共通部分を通って延在する。いくつかの実施形態では、第1の縫合糸通し部50A及び/又は第2の縫合糸通し部50Bは、ループ部29の縫合糸12を通って横方向に直接延在する。他のいくつかの実施形態では、第1の縫合糸通し部50A及び/又は第2の縫合糸通し部50Bは、ループ部29の縫合糸12の縦方向部分を通って延在してもよい。いくつかの実施形態では、縫合糸12は、(上述したように)フィラメントの編組を含んでもよく、第1の縫合糸通し部50A及び第2の縫合糸通し部50Bは、編組フィラメントの一部を通って延在してもよい。
【0045】
図1から
図5Aに示すように、第1の縫合糸通し部50Aは、自身のループ又はフック部分がループ部29の第1の側に位置するように、第1の方向に沿って縫合糸12のループ部29を通って延在してもよく、また第2の縫合糸通し部50Bは、自身のループ又はフック部分がループ部29の第1の側とは異なるループ部29の第2の側に位置するように、第1の方向とは異なる第2の方向(例えば、第1の方向に略対向する)に沿ってループ部29を通って延在してもよい。
【0046】
インプラントの埋入を容易にするために、縫合糸12の第1及び第2の先端区画22、32は、針(例えば、湾曲又は歪曲した針である)又は他の挿入装置(図示せず)に結合若しくは装着されてもよい(例えば、縛られるか、加締められるか、あるいは取り外し可能に又は固定的に結合される)。よって、挿入装置を使用して、第1及び第2の先端部20、32の第1及び第2の先端区画22、32の少なくとも一部に、解剖学的構造を通過させるか、又は平行移動させるようにしてもよい。いくつかの実施形態では、縫合糸12の第1の部分20の第1の先端区画22は、第1の挿入装置(例えば、第1の針である)に結合され、縫合糸12の第2の部分30の第2の先端区画32は、第2の挿入装置(例えば、第2の針である)に結合される。
【0047】
いくつかの実施形態(図示せず)では、インプラント10は埋入縫合糸又はシャトル縫合糸を含んでもよい。いくつかの実施形態では、埋入縫合糸は、縫合糸12と同一又は類似のものであってもよい。埋入縫合糸は、アンカーチューブ14を通って延在してもよいし、あるいはアンカーチューブ14に結合されてもよいし、またアンカーチューブを埋入するために使用されてもよい。
【0048】
図5Aから
図5Cに示すように、アンカーチューブ14が第1の解剖学的構造62A内又はこれを通って配置されるように、インプラント10が埋入されてもよい。いくつかの実施形態では、第1の解剖学的構造62Aは、第1の骨及び/又は組織の部分又は区画であってもよい。例えば、
図5Aから
図5Cに示すように、アンカーチューブ14が骨62Aの内側皮質面64(又は骨62Aの外面である)に隣接して、又はその上に配置されるように、アンカーチューブ14が骨62Aの開口部66へと貫通していてもよい。そのような構成では、縫合糸12の第1及び第2の先端区画22、32及びループ部29(即ち、第1及び第2の中間部26、36である)は、
図5Aに示すように、最初に第1の解剖学的構造62Aの開口部66を通って延在してもよい。
【0049】
図5Aから
図5Cに示すように、第1及び第2の先端部20、32の第1及び第2の先端区画22、32はそれぞれ、第2の解剖学的構造62Bを少なくとも1回(即ち、1回又は複数回)通過させられてもよい。いくつかの実施形態では、第2の解剖学的構造62Bは、第2の骨及び/又は組織の部分若しくは区画であってもよい。例えば、
図5Aから
図5Cに示すように、第2の解剖学的構造62Bは、腱などの組織を含んでもよい。いくつかのそのような実施形態では、第2の解剖学的構造62Bは底側板を含んでもよく、また第1の解剖学的構造62Aは中足骨を含んでもよい。上記で説明したように、第1及び第2の先端部20、32の第1及び第2の先端区画22、32は、1つ又は複数の挿入装置(例えば、1本又は複数の針)に結合されてもよく、当該1つ又は複数の挿入装置を使用して、第1及び第2の先端区画22、32に、解剖学的構造62Bを通って平行移動させるようにしてもよい。
【0050】
第2の解剖学的構造62Bを通って延在した後、縫合糸12の第1及び第2の先端部20、32の第1及び第2の先端区画22、32は、それぞれ第1及び第2の縫合糸通し部50A、50Bの露出ループ部分を通過させられてもよく(
図5Aを参照されたい)、また、
図5B及び
図5Cに示すように、第1及び第2の先端区画22、32がループ部29の1つ又は複数のそれぞれの部分を通って延在するように、第1及び第2の縫合糸通し部50A、50Bがループ部29を通って並進している。次いで、
図5Bに示すように、ループ部29が収縮/短縮され、アンカーチューブ14が変形状態/構成へと再構成/変更され、かつ第1及び第2の解剖学的構造62A、62Bが互いに接近するか又は互いに向かって同時に引き寄せられる(即ち、システム/構造体10が引張されて、接近する)ように、縫合糸12の第1及び第2の先端部20、32を引張して、アンカーチューブ14並びに第1及び第2の解剖学的構造62A、62Bを通して縫合糸12を摺動させることができる。上述したように、縫合糸12がループ部分20を通って、ひいてはアンカーチューブ14並びに第1及び第2の解剖学的構造62A、62Bを通って後退することで、第1及び第2の解剖学的構造62A、62Bが互いから離隔して平行移動できるようになるのを防止するように、ループ部29の縫合糸12が第1及び第2の先端区画22、32をしっかりと把持又は保持するように作用することができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、
図5Bに示すように、第1の解剖学的構造62Aの開口部66及び/又はループ部29の1つ又は複数の部分を通過する第1及び第2の先端区画22、32の構成において、システム/構造体10が引張されて接近したときに、ループ部29の端部が、自身を通過する第1及び第2の先端区画22、32と共に第1の解剖学的構造62Aの外面に位置する/接触するようにしてもよい。しかしながら、他のいくつかの実施形態では、
図5Cに示すように、第1の解剖学的構造62Aの開口部66及び/又はループ部29の1つ又は複数の部分を通過する第1及び第2の先端区画22、32の構成において、システム/構造体10が引張されて接近したときに、ループ部29の端部が、自身を通過する第1及び第2の先端区画22、32と共にアンカーチューブ14の外面に位置する/接触するようにしてもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、
図6に示すように、複数のシステム/構造体10A、10Bを使用して、第1及び第2の解剖学的構造62A、62Bを互いに固定して(また、場合によっては同時に引き寄せる)もよい。例えば、
図6に示すように、複数のシステム/構造体10A、10B(又は単一のシステム/構造体)を使用して、例えば2つの底側板区画などの第1及び第2の組織(例えば、靭帯である)区画62A、62Bを互いに固定して(また、場合によっては同時に引き寄せる)もよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、
図7に示すように、アンカーチューブ14が第1の解剖学的構造62Aの外面上に配置されており、また縫合糸12の第1及び第2の先端部20、32の第1及び第2の先端区画22、32が第1の解剖学的構造62Aを通って延在している状態で、1つ又は複数のシステム/構造体10を使用して、第1の解剖学的構造62A及び第2の解剖学的構造(図示せず)を固定して(また、場合によっては同時に引き寄せる)もよい。例えば、
図7に示すように、アンカーチューブ14が骨62Aの外面上に配置されており、また縫合糸12の第1及び第2の先端区画22、32が骨62Aを通って延在している状態で、システム/構造体10を使用して、骨/骨区画62Aを別の骨/組織区画と共に固定して(また、場合によっては同時に引き寄せる)もよい。
【0054】
システム/構造体10を使用して、組織62B(例えば、底側板である)(当該組織は組織区画であってもよい)を骨62A(例えば、中足骨又は指骨である)(当該骨は骨区画であってもよい)に結合する典型的な方法が、
図8から
図12に示されている。
【0055】
図8に示すように、アンカーチューブ14は、挿入器具70の挿入先端部72に装填されてもよい。挿入器具70は、縫合糸12の張力などによって、挿入先端部72上にアンカーチューブ14を保持又は固定するように構成されてもよい。
図8に示すように、挿入先端部72は分岐した自由端と、分岐した自由端の基部から異なる(例えば、対向する)側面に沿って近位に延在する、一対の溝とを含んでもよい。
図8に示すように、アンカーチューブ14の中間部が分岐した自由端の基部上の、その尖叉又はアームの間に延在し、またアンカーの先端部が溝内かつ溝に沿って延在した状態で、分岐した自由端と少なくとも1つの溝とが、アンカーチューブ14を保持又はこれと嵌合するように構成されている。挿入器具70は比較的硬くてもよく、よって
図9に示すように、挿入先端部72に保持されたアンカーチューブ14を骨62Aの孔部66に挿入し、かつこれを通過させるために使用されてもよい。
【0056】
図9にも示すように、骨62Aの開口部は骨62Aの一部のみを貫通してもよく、またアンカーチューブ14は、例えば骨62Aの皮質の内面などの、骨62Aの内面64上に/隣接して配置されてもよい。他の実施形態では、アンカーチューブ14は骨62A内に配置されなくてもよいが、その一方で骨62Aを通過させられ、かつ骨62Aの外面に隣接して配置されてもよい(
図7を参照されたい)。いくつかの実施形態では、アンカーチューブ14は骨62A内に(即ち、開口部66内に)配置されてもよいが、その一方で骨62Aの内面64上に/隣接して配置されなくてもよい。
【0057】
アンカーチューブ14が骨62A上に/骨62A内に配置されると、
図9に示すように、縫合糸12のループ部29と第1及び第2の先端部20、32の第1及び第2の先端区画22、32とが、開口部66を通って延在し、かつ露出してもよい。
図10に示すように、第1及び第2の先端部20、32の第1及び第2の先端区画22、32は、その後組織62Bを少なくとも1回通過させられてもよい。
図8に示すように、第1及び第2の先端区画22、32は、組織62Bの異なる部分を通過させられてもよく、かつ/又は組織62Bを複数回通過させられてもよい。上述したように、第1及び第2の先端区画22、32は、組織62B(図示せず)に第1及び第2の先端区画22、32を通すために使用され得る、挿入針に結合されてもよい。
【0058】
第1及び第2の先端部20、32の第1及び第2の先端区画22、32が組織62Bを通過させられた後、第1及び第2の先端区画22、32は、それぞれ第1及び第2の縫合糸通し部50A、50Bのループ又はフック部分を通過させられてもよく、次いで第1及び第2の縫合糸通し部50A、50Bは、
図11に示すように、ループ部29の1つ又は複数のそれぞれの部分を牽引又は通過して、ループ部29の縫合糸12の第1及び第2の先端区画22、32を通過/平行移動させる。なお、第1及び第2の先端区画22、32は、ループ部29の縫合糸12を通過/平行移動させられる前に挿入装置から切り離されてもよい。
【0059】
図12に示すように、第1及び第2の先端区画22、32がループ部29の縫合糸12の1つ又は複数の部分を通過/平行移動させられた後、
図12に示すように、ループ部29が収縮/短縮され、アンカーチューブ14が変形状態/構成へと変形し、かつ骨62A及び組織62Bが互いに接近するか又は互いに向かって同時に引き寄せられる(即ち、システム/構造体10が引張されて、接近する)ように、縫合糸12の第1及び第2の先端部20、32(例えば、第1及び第2の先端区画22、32のループ部29を越えて延在する部分である)を引張して(例えば、分岐(例えば、対向)方向に沿って引張するか、又は互いから引き離す)、アンカーチューブ14並びに組織62B(また、場合によっては骨62Aを)を通して縫合糸12を摺動させることができる。上述したように、縫合糸12がループ部分20を通って、ひいてはアンカーチューブ14並びに組織62Bを(また、場合によっては骨62Aを)通って後退することで、骨62A及び組織62Bが互いから離隔して平行移動できるようになるのを防止するように、ループ部29の縫合糸12が第1及び第2の先端区画22、32をしっかりと把持又は保持するように作用することができる。このようにして、
図12に示すように、システム/構造体10の配置/構成、ひいては骨62A及び組織62Bの接近構成を固定するために、縫合糸12の第1及び第2の先端区画22、32を結紮又は固定させる必要がなくなる。
【0060】
上述したように、縫合糸12の第1及び第2の先端部20、32を引張すると、
図5Aから
図7及び
図12に示すように、アンカーチューブ14が(上述したように)凹状/凸状又は折畳み配置若しくは形状へと牽引され/変形する。アンカーチューブ14が凹状/凸状又は折畳み配置若しくは形状に変形することは、アンカーチューブ14が骨62Aの開口部66を通過するのを防止する助けとなる。張力縫合糸12の先端部/ストランド22を分岐方向に牽引するか、又は引張することにより、アンカーチューブ14が骨62Aの表面64にさらにしっかりと密着し、また骨62A及び組織62Bが互いに向かって(また、場合によっては同時に)引き寄せられる。次いで、ループ部29は、
図12に示すように、ループ部29における縫合糸12の第1及び第2の先端部20、32の位置を自動的に又は自然にロックすることで、システム/構造体10をロック又は固定し、これにより、骨62A及び組織62Bの位置関係を固定又は定着させる。
【0061】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈で別途明確に指示しない限り、複数形も含むものとする。用語「備える(comprise)」(また「備える(comprises)」及び「備えている(comprising)」などのあらゆる形態の「備える」も)、「有する(have)」(また「有する(has)」及び「有している(having)」などのあらゆる形態の「有する」も)、「含む(include)」(また「含む(includes)」及び「含んでいる(including)」などのあらゆる形態の「含む」も)、及び「包含する(contain)」(また「包含する(contains)」及び「包含している(containing)などのあらゆる形態も)が、オープンエンドの連結動詞であることがさらに理解されるであろう。その結果、1つ又は複数のステップ若しくは要素を「備える(comprises)」、「有する(has)」、「含む(includes)」、又は「包含する(contains)」方法あるいは装置は、それらの1つ又は複数のステップ若しくは要素を所有するが、それらの1つ又は複数のステップ若しくは要素のみを所有することに限定されるものではない。同様に、1つ又は複数の特徴を「備える(comprises)」、「有する(has)」、「含む(includes)」、又は「包含する(contains)」方法のステップあるいは装置の要素は、それらの1つ又は複数の特徴を所有するが、それらの1つ又は複数の特徴のみを所有することに限定されるものではない。さらに、特定の方法で構成される装置又は構造は、少なくともその方法で構成されるが、その一方で列挙されていない方法でも構成されてもよい。
【0062】
本発明は、好ましい実施形態を参照して説明されてきた。本明細書に記載のアーキテクチャ及び動作の実施形態が、同一の一般的特徴、特性、及び一般的なシステム動作を提供するための複数の実施可能な構成の典型例であることが理解されるであろう。前述の詳細な説明を読解して理解すれば、修正形態や改変形態を他者が想到するであろう。本発明が、すべてのそのような修正形態及び改変形態を含むものと解釈されることが意図されている。
【国際調査報告】