IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ モデルナ セラピューティクス インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】呼吸器系ウイルス免疫化組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/40 20060101AFI20230323BHJP
   C12N 15/88 20060101ALI20230323BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20230323BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230323BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20230323BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20230323BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20230323BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20230323BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230323BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230323BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20230323BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230323BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230323BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
C12N15/40 ZNA
C12N15/88 Z
A61K31/7105
A61K48/00
A61K9/51
A61K47/28
A61K47/44
A61K47/24
A61P11/00
A61K47/34
A61K39/12
A61K47/18
A61K47/10
A61P31/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022546537
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(85)【翻訳文提出日】2022-07-29
(86)【国際出願番号】 US2021015840
(87)【国際公開番号】W WO2021155243
(87)【国際公開日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】62/967,888
(32)【優先日】2020-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】513084469
【氏名又は名称】モデルナティエックス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ModernaTX,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100195796
【弁理士】
【氏名又は名称】塩尻 一尋
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーン・ショー
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム・スチュアート-ジョーンズ
(72)【発明者】
【氏名】エリザベス・ナラヤナン
(72)【発明者】
【氏名】ヴラディミール・プレスニャク
(72)【発明者】
【氏名】サイダ・マーグーブ・エルバシル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA65
4C076AA95
4C076CC15
4C076CC35
4C076DD50
4C076DD63
4C076DD70
4C076EE23
4C076FF70
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZA59
4C084ZB33
4C085AA03
4C085BB23
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB33
(57)【要約】
本開示は、呼吸器系ウイルスリボ核酸(RNA)ワクチン、ならびにこのワクチンを使用する方法及びこのワクチンを含む組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞質テールを欠き、野生型hRSV F糖タンパク質と少なくとも90%の同一性を有するhRSV F糖タンパク質バリアントの安定化された融合前形態をコードするヒト呼吸器合胞体ウイルス(hRSV)リボ核酸(RNA)を含む組成物。
【請求項2】
前記細胞質テールが、hRSV F糖タンパク質バリアントのC末端20~30、20~25、15~30、15~25、15~20、10~30、10~25、10~20、10~15、5~30、5~25、5~20、または5~15アミノ酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記細胞質テールが、hRSV F糖タンパク質バリアントのC末端の25アミノ酸、20アミノ酸、15アミノ酸、または10アミノ酸を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記細胞質テールが、hRSV F糖タンパク質バリアントの以下のC末端アミノ酸:
CKARSTPVTLSKDQLSGINNIAFSN(配列番号25);TPVTLSKDQLSGINNIAFSN(配列番号26);SKDQLSGINNIAFSN(配列番号27);またはSGINNIAFSN(配列番号28)
を備える、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記hRSV F糖タンパク質バリアントが、野生型hRSV F糖タンパク質と比較して、以下の修飾:P102X置換、リンカー分子によるアミノ酸104~144の置換、A149X置換、S155X置換、S190X置換、V207X置換、S290X置換、L373X置換、I379X置換、M447X置換、及びY458X置換からなる群より選択される修飾を含み、Xは任意のアミノ酸である、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記hRSV F糖タンパク質バリアントが、野生型hRSV F糖タンパク質と比較して、以下の修飾:P102A置換、リンカー分子によるアミノ酸104~144の置換、A149C置換、S155C置換、S190F置換、V207L置換、S290C置換、L373R置換、I379V置換、M447V置換、及びY458C置換からなる群より選択される修飾を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記hRSV F糖タンパク質バリアントが、野生型hRSV F糖タンパク質と比較して、以下の修飾:P102A置換、リンカー分子によるアミノ酸104~144の置換、A149C置換、S155C置換、S190F置換、V207L置換、S290C置換、L373R置換、I379V置換、M447V置換、及びY458C置換を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記野生型hRSV F糖タンパク質が、配列番号1の配列を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記hRSV F糖タンパク質バリアントが、配列番号8の配列に対して少なくとも95%または少なくとも98%の同一性を有する配列を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記hRSV F糖タンパク質バリアントが、配列番号8の配列を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記hRSV RNAが、配列番号7の配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の同一性を有する配列を含むオープンリーディングフレーム(ORF)を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記hRSV RNAが、配列番号7の配列を含むORFを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記hRSV RNAが、配列番号2の配列を含む5’非翻訳領域(UTR)を含む、請求項11または12に記載の組成物。
【請求項14】
前記hRSV RNAが、配列番号4の配列を含む3’UTRを含む、請求項11~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記hRSV RNAが、配列番号15の配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の同一性を有する配列を含む、請求項11~14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記hRSV RNAが、配列番号15の配列を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記hRSV RNAが7mG(5’)ppp(5’)NlmpNpキャップをさらに含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
前記hRSV RNAが、ポリ(A)テールをさらに含み、任意選択で前記ポリ(A)テールが50~150ヌクレオチドの長さを有する、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記hRSV RNAが化学修飾を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記hRSV RNAが完全に修飾されている、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記化学修飾が1-メチルシュードウリジンである、請求項19または請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
25μg~200μgの前記hRSV RNAを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
PEG修飾脂質、非カチオン性脂質、ステロール、イオン化可能なカチオン性脂質、またはそれらの任意の組み合わせを含む脂質の混合物をさらに含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
前記脂質の混合物が、0.5~15モル%のPEG修飾脂質;5~25モル%の非カチオン性脂質;25~55モル%のステロール;及び20~60モル%のイオン化可能なカチオン性脂質を含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記脂質の混合物が、1~5モル%のPEG修飾脂質;10~20モル%の非カチオン性脂質;35~45モル%のステロール;及び40~50モル%のイオン化可能なカチオン性脂質を含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記PEG修飾脂質が、1,2ジミリストイル-sn-グリセロール、メトキシポリエチレングリコール(PEG2000 DMG)であり、前記非カチオン性脂質が1,2ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)であり、前記ステロールがコレステロールであり、前記イオン化可能なカチオン性脂質が化合物1の構造:
【化1】
を有する、請求項24または請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記脂質の混合物が脂質ナノ粒子を形成する、請求項23~26のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
前記hRSV RNAが前記脂質ナノ粒子中に製剤化されている、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
in vitroで哺乳動物細胞に前記組成物を送達してから少なくとも24時間後に、対照レベルよりも少なくとも5倍高いレベルで、融合前形態のhRSV F糖タンパク質の細胞表面発現をもたらす、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項30】
in vitroで哺乳動物細胞に前記組成物を送達してから少なくとも48時間後に、対照レベルよりも少なくとも50倍高いレベルで、安定化された融合前形態のhRSV F糖タンパク質の細胞表面発現をもたらす、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
対象において、hRSVに対する中和抗体応答を誘導するのに有効な量の、請求項1~30のいずれか1項に記載の組成物を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項32】
前記対象が免疫無防備状態である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記対象が肺疾患を有する、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
前記対象が5歳以下である、請求項31~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記対象が65歳以上である、請求項31~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記対象に少なくとも2用量の前記組成物を投与することを含む、請求項31~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記hRSV F糖タンパク質バリアントが、安定化された融合前高次構造に折り畳まれる、請求項31~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
投与後少なくとも24時間で、前記hRSV F糖タンパク質バリアントが、対照と比較して少なくとも5倍高いレベルで前記対象において発現される、請求項31~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
投与後少なくとも48時間で、前記RSV F糖タンパク質バリアントが、対照と比較して少なくとも50倍高いレベルで前記対象において発現される、請求項31~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記RSV F糖タンパク質バリアントが、対照と比較して、前記対象において少なくとも24時間長く発現される、請求項31~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
対照と比較して少なくとも5倍低い前記組成物の用量を使用して、中和抗体応答が前記対象において誘導される、請求項31~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記対照が、ベースライン、野生型RSV F糖タンパク質をコードするRSV RNAの投与、または細胞質テールを有するRSV F糖タンパク質の安定化された融合前形態をコードするRSV RNAの投与である、請求項31~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
配列番号7の配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の同一性を有する配列を含むオープンリーディングフレームを含むメッセンジャーリボ核酸(mRNA)。
【請求項44】
配列番号15の配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の同一性を有する配列を含むメッセンジャーリボ核酸(mRNA)。
【請求項45】
前記mRNAが、細胞質テールを欠くヒト呼吸器合胞体ウイルス(hRSV)リボ核F糖タンパク質バリアントの安定化された融合前形態をコードし、ここで、前記RSV F糖タンパク質バリアントが、全長の野生型RSV F糖タンパク質と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の同一性を有する、請求項43または44に記載のmRNA。
【請求項46】
前記オープンリーディングフレームが配列番号7の配列を含む、請求項43~45のいずれか1項に記載のmRNA。
【請求項47】
前記mRNAが、配列番号15の配列を含む、請求項43~46のいずれか1項に記載のmRNA。
【請求項48】
脂質ナノ粒子中に製剤化される、請求項43~47のいずれか1項に記載のmRNA。
【請求項49】
前記脂質ナノ粒子が、0.5~15%のPEG修飾脂質;5~25%の非カチオン性脂質;25~55%のステロール;及び20~60%のイオン化可能なカチオン性脂質を含む、請求項43~48のいずれか1項に記載のmRNA。
【請求項50】
前記脂質ナノ粒子が、1~5モル%のPEG修飾脂質;10~20モル%の非カチオン性脂質;35~45モル%のステロール;及び40~50モル%のイオン化可能なカチオン性脂質を含む、請求項49に記載のmRNA。
【請求項51】
前記PEG修飾脂質が1,2ジミリストイル-sn-グリセロール、メトキシポリエチレングリコール(PEG2000 DMG)であり、前記非カチオン性脂質が1,2ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)であり、前記ステロールがコレステロールであり、前記イオン化可能なカチオン性脂質が化合物1の構造:
【化2】
を有する、請求項43~50のいずれか1項に記載のmRNA。
【請求項52】
細胞質テールを欠くRSV F糖タンパク質バリアントの安定化された融合前形態をコードするヒト呼吸器合胞体ウイルス(hRSV)リボ核酸(RNA)であって、ここでRSV F糖タンパク質バリアントが、全長野生型RSV F糖タンパク質に対して少なくとも85%の同一性を有する、RNAと;
hMPV F糖タンパク質をコードするヒトメタニューモウイルス(hMPV)RNAと;
hPIV3 F糖タンパク質をコードするヒトパラインフルエンザウイルス3(hPIV3)RNAと、
を含む組成物。
【請求項53】
前記細胞質テールがhRSV F糖タンパク質バリアントのC末端20~30、20~25、15~30、15~25、15~20、10~30、10~25、10~20、10~15、5~30、5~25、5~20、または5~15アミノ酸を含む、請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
前記細胞質テールが、hRSV F糖タンパク質バリアントのC末端の25アミノ酸、20アミノ酸、15アミノ酸、または10アミノ酸を含む、請求項53に記載の組成物。
【請求項55】
前記細胞質テールが、hRSV F糖タンパク質バリアントの以下のC末端アミノ酸:
CKARSTPVTLSKDQLSGINNIAFSN(配列番号25);TPVTLSKDQLSGINNIAFSN(配列番号26);SKDQLSGINNIAFSN(配列番号27);またはSGINNIAFSN(配列番号28)
を含む、請求項54に記載の組成物。
【請求項56】
前記hRSV F糖タンパク質バリアントが、前記野生型hRSV F糖タンパク質と比較して、以下の修飾:P102X置換、リンカー分子によるアミノ酸104~144の置換、A149X置換、S155X置換、S190X置換、V207X置換、S290X置換、L373X置換、I379X置換、M447X置換、及びY458X置換、からなる群より選択される修飾をさらに含み、Xが任意のアミノである、請求項52~55のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項57】
前記hRSV F糖タンパク質バリアントが、前記野生型hRSV F糖タンパク質と比較して、以下の修飾:P102A置換、リンカー分子によるアミノ酸104~144の置換、A149C置換、S155C置換、S190F置換、V207L置換、S290C置換、L373R置換、I379V置換、M447V置換、及びY458C置換からなる群より選択される修飾をさらに含む、請求項56に記載の組成物。
【請求項58】
前記hRSV F糖タンパク質バリアントが、前記野生型hRSV F糖タンパク質と比較して、以下の修飾:P102A置換、リンカー分子によるアミノ酸104~144の置換、A149C置換、S155C置換、S190F置換、V207L置換、S290C置換、L373R置換、I379V置換、M447V置換、及びY458C置換をさらに含む、請求項57に記載の組成物。
【請求項59】
前記野生型hRSV F糖タンパク質が、配列番号1の配列を含む、請求項52~58のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項60】
前記hRSV F糖タンパク質バリアントが、配列番号8の配列に対して少なくとも95%または少なくとも98%の同一性を有する配列を含む、請求項52~59のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項61】
前記hRSV F糖タンパク質バリアントが、配列番号8の配列を含む、請求項60に記載の組成物。
【請求項62】
前記hRSV RNAが、配列番号7の配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の同一性を有する配列を含むオープンリーディングフレーム(ORF)を含む、請求項52~61のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項63】
前記hRSV RNAが、配列番号7の配列を含むORFを含む、請求項62に記載の組成物。
【請求項64】
前記hRSV RNAが、配列番号2の配列を含む5’非翻訳領域(UTR)を含む、請求項62または63に記載の組成物。
【請求項65】
前記hRSV RNAが、配列番号4の配列を含む3’UTRを含む、請求項62~64のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項66】
前記hRSV RNAが、配列番号15の配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の同一性を有する配列を含む、請求項62~65のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項67】
前記hRSV RNAが、配列番号15の配列を含む、請求項66に記載の組成物。
【請求項68】
前記hMPV F糖タンパク質が、配列番号11の配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の同一性を有する配列を含む、請求項52~67のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項69】
hMPV F糖タンパク質が、配列番号11の配列を含む、請求項68に記載の組成物。
【請求項70】
前記hMPV RNAが、配列番号10の配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の同一性を有する配列を含むORFを含む、請求項52~69のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項71】
前記hMPV RNAが、配列番号10の配列を含むORFを含む、請求項70に記載の組成物。
【請求項72】
前記hMPV RNAが、配列番号2の配列を含む5’UTRを含む、請求項70または71に記載の組成物。
【請求項73】
前記hMPV RNAが、配列番号4の配列を含む3’UTRを含む、請求項70~72のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項74】
前記hMPV RNAが、配列番号16の配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の同一性を有する配列を含む、請求項70~73のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項75】
前記hMPV RNAが、配列番号16の配列を含む、請求項74に記載の組成物。
【請求項76】
前記hPIV3 F糖タンパク質が、配列番号14の配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の同一性を有する配列を含む、請求項52~75のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項77】
前記hPIV3 F糖タンパク質が、配列番号14の配列を含む、請求項76に記載の組成物。
【請求項78】
前記hPIV3 RNAが、配列番号13の配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の同一性を有する配列を含むORFを含む、請求項52~77のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項79】
前記hPIV3 RNAが、配列番号13の配列を含むORFを含む、請求項78に記載の組成物。
【請求項80】
前記hPIV3 RNAが、配列番号2の配列を含む5’UTRを含む、請求項78または79に記載の組成物。
【請求項81】
前記hPIV3 RNAが、配列番号4の配列を含む3’UTRを含む、請求項78~80のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項82】
前記hPIV3 RNAが、配列番号17の配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の同一性を有する配列を含む、請求項78~81のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項83】
前記hPIV3 RNAが、配列番号17の配列を含む、請求項82に記載の組成物。
【請求項84】
前記hRSV RNA、前記hMPV RNA、及び/または前記hPIV3 RNAが、7mG(5’)ppp(5’)NlmpNpキャップをさらに含む、請求項52~83のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項85】
前記hRSV RNA、前記hMPV RNA、及び/または前記hPIV3 RNAがポリ(A)テールをさらに含み、任意選択で前記ポリ(A)テールが50~150ヌクレオチドの長さを有する、請求項52~84のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項86】
前記hRSV RNA、前記hMPV RNA、及び/または前記hPIV3 RNAが化学修飾を含む、請求項52~83のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項87】
前記hRSV RNA、前記hMPV RNA、及び/または前記hPIV3 RNAが完全に修飾されている、請求項86に記載の組成物。
【請求項88】
前記化学修飾が1-メチルシュードウリジンである、請求項86または請求項87に記載の組成物。
【請求項89】
25μg~200μgの前記hRSV RNA、前記hMPV RNA、及び/または前記hPIV3 RNAを含む、請求項52~88のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項90】
PEG修飾脂質、非カチオン性脂質、ステロール、イオン化可能なカチオン性脂質、またはそれらの任意の組み合わせを含む脂質の混合物をさらに含む、請求項52~89のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項91】
前記脂質の混合物が、0.5~15%のPEG修飾脂質;5~25%の非カチオン性脂質;25~55%のステロール;及び20~60%のイオン化可能なカチオン性脂質を含む、請求項90に記載の組成物。
【請求項92】
前記脂質ナノ粒子が、1~5モル%のPEG修飾脂質;10~20モル%の非カチオン性脂質;35~45モル%のステロール;及び40~50モル%のイオン化可能なカチオン性脂質を含む、請求項91に記載の組成物。
【請求項93】
前記PEG修飾脂質が1,2ジミリストイル-sn-グリセロール、メトキシポリエチレングリコール(PEG2000 DMG)であり、前記非カチオン性脂質が1,2ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)であり、前記ステロールがコレステロールであり、前記イオン化可能なカチオン性脂質が化合物1の構造:
【化3】
を有する、請求項91または請求項92に記載の組成物。
【請求項94】
前記脂質の混合物が脂質ナノ粒子を形成する、請求項90~93のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項95】
前記hRSV RNA、前記hMPV RNA、及び前記hPIV3 RNAが脂質ナノ粒子中に製剤化されている、請求項94に記載の組成物。
【請求項96】
対象において、hRSV、hMPV、及び/またはhPIV3に対する中和抗体応答を誘導するのに有効な量の、請求項52~95のいずれか1項に記載の組成物を対象に投与することを含む方法。
【請求項97】
前記対象が免疫無防備状態である、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記対象が肺疾患を有する、請求項96または97に記載の方法。
【請求項99】
前記対象が5歳以下である、請求項96~98のいずれか1項に記載の方法。
【請求項100】
前記対象が65歳以上である、請求項96~98のいずれか1項に記載の方法。
【請求項101】
前記対象に少なくとも2用量の前記組成物を投与することを含む、請求項96~100のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国特許法第119条(e)の定めにより、2020年1月30日に提出された米国仮出願第62/967,888号の提出日の利益を主張しており、当該仮出願は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
呼吸器疾患とは、高等生物でガス交換を可能にする臓器及び組織に影響を与える病的状態を含む医学用語であり、上気道、気管、気管支、細気管支、肺胞、胸膜及び胸膜腔、ならびに呼吸に関する神経及び筋肉の状態を含む。呼吸器疾患は、風邪などの軽度で自己制限的なものから、細菌性肺炎、肺塞栓症、急性喘息、及び肺癌などの生命を脅かすものまでにおよぶ。呼吸器疾患は、世界中で一般的であり、かつ疾病及び死亡の重大な原因である。米国では、毎年約10億件の「風邪」が発生している。呼吸器状態は、子供の入院の最も高頻度の理由の1つである。
【0003】
ヒト呼吸器合胞体ウイルス(hRSV)は、Pneumovirinae属のネガティブセンスの一本鎖リボ核酸(RNA)ウイルスである。このウイルスは、主に表面G糖タンパク質の違いに起因する、A群及びB群として知られる少なくとも2つの抗原性サブグループに存在する。2つのhRSV表面糖タンパク質(G及びF)は、呼吸器上皮の細胞との付着及び細胞への付着を媒介する。F表面糖タンパク質は、隣接する細胞の合着を媒介する。これにより、合胞体細胞が形成される。hRSVは細気管支炎の最も一般的な原因である。ほとんどの感染した成人は、うっ血、軽度の発熱、及び喘鳴などの軽度の風邪のような症状を発症する。乳児及び小さな子供は、細気管支炎及び肺炎などのより重篤な症状に苦しむ場合がある。この疾患は、呼吸分泌物との接触を介してヒトの間で伝染し得る。
【0004】
ヒトメタニューモウイルス(hMPV)は、Pneumovirinae属、Paramyxoviridae科のネガティブセンスの一本鎖RNAウイルスであり、トリメタニューモウイルス(AMPV)サブグループCと密接に関連している。これは、培養細胞で増殖する未知のウイルスを同定するためのRAP-PCR(RNA任意プライムPCR)技術を使用することによりオランダで2001年に初めて単離された。hMPVは、幼児のウイルス性下気道疾患(LRI)の重要な原因として、hRSVに次ぐものである。hMPVの季節的疫学は、hRSVのそれと類似しているように見えるが、感染と疾患の発生率はかなり低いようである。
【0005】
パラインフルエンザウイルス3型(PIV3)もまた、hMPVと同様に、Pneumovirinae属、Paramyxoviridae科のネガティブセンス、一本鎖センスRNAウイルスであり、乳児期及び幼児期の遍在する急性呼吸器感染症の主な原因である。その発生率は生後4~12か月でピークに達し、ウイルスは入院の3~10%、主に細気管支炎と肺炎の原因となる。PIV3は致命的である可能性があり、場合によっては、熱性発作などの神経疾患に関連している。また、罹患率の重大な原因である気道のリモデリングを引き起こす可能性もある。世界の発展途上地域では、乳児及び幼児は、一次PIV3ウイルス感染または細菌感染などの二次的結果のいずれかにより、死亡のリスクが最も高くなる。ヒトパラインフルエンザウイルス(hPIV)1、2、及び3型(それぞれ、hPIV1、hPIV2、及びhPIV3)も、hMPVと同様に、幼児のウイルスLRIの重要な原因としてhRSVに次ぐものである。
【0006】
hMPV、hPIV3、及びhRSVに関連する継続的な健康問題は国際的に懸念されており、これらのウイルスに対する効果的かつ安全なワクチン候補を開発することの重要性が強調されている。
【発明の概要】
【0007】
本明細書で提供されるのは、いくつかの実施形態では、ヒト呼吸器合胞体ウイルス(hRSV)抗原、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)抗原、及び/またはヒトパラインフルエンザウイルス3(hPIV3)抗原などの呼吸ウイルス抗原に対する強力な中和抗体応答を誘発し得る高度に免疫原性の抗原をコードするRNAを含む免疫化組成物(例えば、RNAワクチン及び他の免疫原性組成物)である。驚くべきことに、本明細書で提供されるデータでは、細胞質テールを欠く、hRSV F糖タンパク質の安定化された融合前形態をコードするhRSV RNAを含む免疫化組成物が、動物に投与された場合、対照組成物よりも約5倍低い用量においてさえ、hRSV F糖タンパク質に対する高度な中和抗体応答を誘導するということが示されている。
【0008】
本開示のいくつかの態様は、細胞質テールを欠いており、かつ野生型hRSV F糖タンパク質に対して少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)の同一性を有する、hRSV F糖タンパク質バリアントの安定化された融合前形態をコードするヒト呼吸器合胞体ウイルス(hRSV)リボ核酸(RNA)を含む組成物(例えば、免疫化組成物、免疫原性組成物、及び/またはワクチン組成物)を提供する。
【0009】
本開示の他の態様は、細胞質テールを欠くRSV F糖タンパク質バリアントの安定化された融合前形態をコードするヒト呼吸器合胞体ウイルス(hRSV)リボ核酸(RNA)を提供し、ここで、RSV F糖タンパク質バリアントは、全長の野生型RSV F糖タンパク質;hMPV F糖タンパク質をコードするヒトメタニューモウイルス(hMPV)RNA;及びhPIV3 F糖タンパク質をコードするヒトパラインフルエンザウイルス3(hPIV3)RNAに対して、少なくとも85%の同一性を有する。
【0010】
本開示のさらに他の態様は、配列番号7の配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する配列を含むオープンリーディングフレームを含むメッセンジャーリボ核酸(mRNA)を提供する。本開示のさらなる態様は、配列番号15の配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する配列を含むメッセンジャーリボ核酸(mRNA)を提供する。いくつかの実施形態では、mRNAは、細胞質テールを欠くヒト呼吸器合胞体ウイルス(hRSV)リボ核F糖タンパク質バリアントの安定化融合前形態をコードし、ここで、このRSV F糖タンパク質バリアントは、全長の野生型RSV F糖タンパク質に対して、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、このオープンリーディングフレームは、配列番号7の配列を含む。いくつかの実施形態では、mRNAは、脂質ナノ粒子中に製剤化される。
【0011】
いくつかの実施形態では、細胞質テールは、hRSV F糖タンパク質バリアントのC末端20~30、20~25、15~30、15~25、15~20、10~30、10~25、10~20、10~15、5~30、5~25、5~20、または5~15アミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、細胞質テールは、hRSV F糖タンパク質バリアントのC末端の25アミノ酸、20アミノ酸、15アミノ酸、または10アミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、細胞質テールは、hRSV F糖タンパク質バリアントの以下のC末端アミノ酸を含む:
CKARSTPVTLSKDQLSGINNIAFSN(配列番号25);TPVTLSKDQLSGINNIAFSN(配列番号26);SKDQLSGINNIAFSN(配列番号27);またはSGINNIAFSN(配列番号28)。
【0012】
いくつかの実施形態では、hRSV F糖タンパク質バリアントは、野生型hRSV F糖タンパク質と比較して、P102X置換、リンカー分子によるアミノ酸104~144の置換、A149X置換、S155X置換、S190X置換、V207X置換、S290X置換、L373X置換、I379X置換、M447X置換、及びY458X置換からなる群より選択される修飾をさらに含み、ここで、Xは任意のアミノ酸である。
【0013】
いくつかの実施形態では、hRSV F糖タンパク質バリアントは、野生型hRSV F糖タンパク質と比較して、P102A置換、リンカー分子によるアミノ酸104~144の置換、A149C置換、S155C置換、S190F置換、V207L置換、S290C置換、L373R置換、I379V置換、M447V置換、及びY458C置換からなる群より選択される修飾をさらに含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、hRSV F糖タンパク質バリアントは、野生型hRSV F糖タンパク質と比較して、以下の修飾をさらに含む:P102A置換、リンカー分子によるアミノ酸104~144の置換、A149C置換、S155C置換、S190F置換、V207L置換、S290C置換、L373R置換、I379V置換、M447V置換、及びY458C置換。
【0015】
いくつかの実施形態では、野生型hRSV F糖タンパク質は、配列番号1の配列を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、hRSV F糖タンパク質バリアントは、配列番号8の配列に対して少なくとも95%または少なくとも98%の同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、hRSV F糖タンパク質バリアントは、配列番号8の配列を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、hRSV RNAは、配列番号7の配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の同一性を有する配列を含むオープンリーディングフレーム(ORF)を含む。いくつかの実施形態では、hRSV RNAは、配列番号7の配列を含むORFを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、hRSV RNAは、配列番号2の配列を含む5’非翻訳領域(UTR)を含む。いくつかの実施形態では、hRSV RNAは、配列番号4の配列を含む3’UTRを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、hRSV RNAは、配列番号15の配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、hRSV RNAは、配列番号15の配列を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、hMPV F糖タンパク質は、配列番号11の配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、hMPV F糖タンパク質は、配列番号11の配列を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、hMPV RNAは、配列番号10の配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する配列を含むORFを含む。いくつかの実施形態では、hMPV RNAは、配列番号10の配列を含むORFを含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、hMPV RNAは、配列番号2の配列を含む5’UTRを含む。いくつかの実施形態では、hMPV RNAは、配列番号4の配列を含む3’UTRを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、hMPV RNAは、配列番号16の配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、hMPV RNAは、配列番号16の配列を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、hPIV3 F糖タンパク質は、配列番号14の配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、hPIV3 F糖タンパク質は、配列番号14の配列を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、hPIV3 RNAは、配列番号13の配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する配列を含むORFを含む。いくつかの実施形態では、hPIV3 RNAは、配列番号13の配列を含むORFを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、hPIV3 RNAは、配列番号2の配列を含む5’UTRを含む。いくつかの実施形態では、hPIV3 RNAは、配列番号4の配列を含む3’UTRを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、hPIV3 RNAは、配列番号17の配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、hPIV3 RNAは、配列番号17の配列を含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、hRSV RNA、hMPV RNA、及び/またはhPIV3 RNAは、7mG(5’)ppp(5’)NlmpNpキャップをさらに含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、hRSV RNA、hMPV RNA、及び/またはhPIV3 RNAは、ポリ(A)テール(任意選択で50から150ヌクレオチドの長さを有する)をさらに含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、hRSV RNA、hMPV RNA、及び/またはhPIV3 RNAは、化学修飾を含む。いくつかの実施形態では、化学修飾は、1-メチルシュードウリジンである。
【0031】
いくつかの実施形態では、組成物は、25μg~200μgのhRSV RNA、hMPV RNA、及び/またはhPIV3 RNAを含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、組成物は、PEG修飾脂質、非カチオン性脂質、ステロール、イオン化可能なカチオン性脂質、またはそれらの任意の組み合わせを含む脂質の混合物をさらに含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、脂質の混合物は、0.5~15%のPEG修飾脂質;5~25%の非カチオン性脂質;25~55%のステロール;及び20~60%のイオン化可能なカチオン性脂質を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、PEG修飾脂質は、1,2ジミリストイル-sn-グリセロール、メトキシポリエチレングリコール(PEG2000 DMG)であり、非カチオン性脂質は、1,2ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)であり、ステロールはコレステロールであり;かつイオン化可能なカチオン性脂質は、化合物1の構造:
【化1】
を有する。
【0035】
いくつかの実施形態では、脂質の混合物は、脂質ナノ粒子を形成する。
【0036】
いくつかの実施形態では、hRSV RNA、hMPV RNA、及びhPIV3 RNAは、脂質ナノ粒子中に製剤化される。
【0037】
本開示のいくつかの態様は、対象において、hRSV、hMPV、及び/またはhPIV3に対する中和抗体応答を誘導するのに有効な量で、先行請求項のいずれか1つの組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0038】
いくつかの実施形態では、対象は免疫無防備状態である。いくつかの実施形態では、対象は肺疾患を有する。
【0039】
いくつかの実施形態では、対象は5歳以下である。他の実施形態では、対象は65歳以上である。
【0040】
いくつかの実施形態では、方法は、対象に少なくとも2用量の組成物を投与することを含む。
【0041】
国際出願番号第PCT/US2016/058327号(公開番号第WO2017/07062号)及び国際出願番号第PCT/US2017/065408号(公開番号第WO2018/107088号)の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】RSV F糖タンパク質バリアント(mRNA-1345によってコードされる)及び野生型RSV F糖タンパク質の概略図を示す。
図2A】2つの時点でのHEK293T細胞において異なる特徴を有するmRNAのin vitroスクリーニングを示す。フローサイトメトリー分析には、融合前の形態のRSV F糖タンパク質に特異的なモノクローナル抗体であるAM14を使用した。トップリードは、トランスフェクションの24時間後及び48時間後に示されている。特徴1は最適化された5’UTRを指し、特徴2は野生型RSV F糖タンパク質のF1領域内の6つのアミノ酸点変異を指す(図1)。
図2B】2つの時点でのHEK293T細胞において異なる特徴を有するmRNAのin vitroスクリーニングを示している。フローサイトメトリー分析には、融合前の形態のRSV F糖タンパク質に特異的なモノクローナル抗体であるAM14を使用した。特徴1は最適化された5’UTRを指し、特徴2は野生型RSV F糖タンパク質のF1領域内の6つのアミノ酸点変異を指す(図1)。図2Bは、候補構築物の3つの異なる用量後の発現レベルを示している。「dCT」は、細胞質テールが短縮されているRSV F糖タンパク質をコードするmRNAを表す。
図3A】マウスにおける、異なる特徴を有するmRNAのin vivoスクリーニングを示す。mRNAの2回の投与に続いて、融合後の形態のRSV Fタンパク質レベルを測定した。
図3B】マウスにおける、異なる特徴を有するmRNAのin vivoスクリーニングを示す。mRNAの2回の投与に続いて、RSV-A中和力価を測定した。
図4A】細胞質テールが短縮されているRSV F糖タンパク質をコードするコドン最適化mRNAを使用した、融合前形態のRSV F糖タンパク質のin vitro発現レベルを示す。図は、3つの異なる時点での結果を示している。AM14及びD25は、2つの融合前RSV F糖タンパク質特異的抗体である。モタビズマブは、融合前と融合後の両方のRSV F糖タンパク質を検出する。
図4B】細胞質テールが短縮されているRSV F糖タンパク質をコードするコドン最適化mRNAを使用した、融合前形態のRSV F糖タンパク質のin vitro発現レベルを示す。図は、両方の特徴(コドン最適化及び細胞質テール短縮)の組み合わせを、各特徴を個別に有するmRNAと比較する。AM14及びD25は、2つの融合前RSV F糖タンパク質特異的抗体である。モタビズマブは、融合前と融合後の両方のRSV F糖タンパク質を検出する。
図5A】HEK293T細胞において、細胞質テールが短縮されたRSV F糖タンパク質をコードするコドン最適化mRNAを使用した、融合前形態のRSV F糖タンパク質のin vitro発現レベルを示す。
図5B】THP-1細胞(図5B)において、細胞質テールが短縮されたRSV F糖タンパク質をコードするコドン最適化mRNAを使用した、融合前形態のRSV F糖タンパク質のin vitro発現レベルを示す。
図6A】細胞質テールが短縮されているRSV F糖タンパク質の融合前形態をコードするコドン最適化mRNAのin vivoデータを示す。mRNAの投与に起因する融合後の形態のRSV F糖タンパク質IgG力価レベルを、1回目の投与後(図6A)及び2回目の投与後(図6B)について示す。
図6B】細胞質テールが短縮されているRSV F糖タンパク質の融合前形態をコードするコドン最適化mRNAのin vivoデータを示す。mRNAの投与に起因する融合後の形態のRSV F糖タンパク質IgG力価レベルを、1回目の投与後(図6A)及び2回目の投与後(図6B)について示す。
図7】示されたmRNA(対照(代替RSV F糖タンパク質をコードするmRNA)、RSV Fバリアント、またはmRNAなし)との24時間(左)及び48時間(右)のインキュベーション後の融合前形態のRSV F糖タンパク質陽性CD14+単球の頻度を示す2つのグラフを示す。
図8】示されているmRNA及び濃度(対照(代替のRSV F糖タンパク質をコードするmRNA)、コドン最適化RSV F糖タンパク質mRNA、細胞質テールが短縮されているRSV F糖タンパク質をコードするmRNA、組み合わせRSV F糖タンパク質(細胞質テール短縮でコドン最適化)をコードするmRNA、またはmRNAなし)との24時間(左)及び48時間(右)のインキュベーション後のRSV F糖タンパク質陽性CD14+単球の融合前形態の頻度を示すグラフである。
図9】顕微鏡実験後の細胞あたりの平均強度(平均)を示すグラフである。HeLa細胞を、200ngの示されたmRNA(対照(RSV F糖タンパク質をコードする代替mRNA)、RSV F糖タンパク質をコードするコドン最適化mRNA、細胞質テールが短縮されたRSV F糖タンパク質をコードするmRNA、組み合わせRSV F糖タンパク質をコードするmRNA(細胞質テール短縮でコドン最適化)、またはmRNAなし)とともに24時間または48時間インキュベートし、平均強度を測定した。
図10】ワクチン接種後56日目のRSV抗体力価を示す。Aは、RSV中和力価を示し、Bは、RSV融合前Fタンパク質IgG力価を示している。アスタリスク(*)が付いている群は、示された組成物を1回だけ投与された群である。「Lot100」とは、1:100のホルマリン不活化RSV群(FI-RSV)を指す。
図11】RSVチャレンジ後の肺ウイルス量(A)及び鼻ウイルス量(B)を示す(実施例4を参照)。アスタリスク(*)が付いている群は、示された組成物を1回だけ投与された群である。「Lot100」とは、1:100のホルマリン不活化RSV群(FI-RSV)を指す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本開示は、呼吸器系ウイルス抗原に対する強力な中和抗体を誘発する免疫化組成物(例えば、RNAワクチン)を提供する。本明細書における「呼吸器系ウイルス抗原」という用語は、本開示のRNAによってコードされる、hRSV抗原(例えば、hRSV F糖タンパク質)、hMPV抗原(例えば、hMPV F糖タンパク質)、hPIV3抗原(例えば、hPIV3 F糖タンパク質)、及びそれらの任意の組み合わせ(例えば、hRSV及びhMPV、hRSV及びhPIV3、hMPV及びhPIV3、またはhRSV、hMPV、及びhPIV3)を包含する。「RNA」及び「RNA構築物」という用語は、本明細書では交換可能に使用され得ることを理解されたい。
【0044】
いくつかの実施形態では、免疫化組成物は、融合前形態のhRSV F糖タンパク質をコードするRNA(例えば、メッセンジャーRNA(mRNA))を含む。他の実施形態では、免疫化組成物は、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)F糖タンパク質をコードするRNA(例えば、mRNA)をさらに含む。さらに他の実施形態では、免疫化組成物は、ヒトパラインフルエンザウイルス3(hPIV3)F糖タンパク質をコードするRNA(例えば、mRNA)をさらに含む。さらに他の実施形態では、免疫化組成物は、hRSV F糖タンパク質の融合前形態をコードするRNA(例えば、mRNA)、hMPV F糖タンパク質をコードするRNA(例えば、mRNA)、及びhPIV3 F糖タンパク質をコードするRNA(例えば、mRNA)を含む。いくつかの実施形態では、hRSV F糖タンパク質、hMPV F糖タンパク質、及びhPIV3 F糖タンパク質の融合前形態は、同じ(単一の)RNAによってコードされ、一方、他の実施形態では、それらは、複数のRNA(1つは融合前hRSV Fをコードし、1つはhMPV Fをコードし、1つはhPIV3 Fをコードする)によって独立してコードされる。いくつかの実施形態では、1つのRNA(例えば、5’UTR、ORF、3’UTR、及びポリ(A)テールを有する)は、融合前hRSV F糖タンパク質をコードし、別のRNAは、hMPV F糖タンパク質及びhPIV3 F糖タンパク質の両方をコードする。
【0045】
hRSVのエンベロープには、F、G、及びSHの3つの表面糖タンパク質が含まれている。G及びFタンパク質は、防御抗原であり、中和抗体の標的である。しかし、Fタンパク質は、hRSVの系統及びタイプ(A及びB)全体で、より保存されている。hRSV Fタンパク質は、hRSV-AとhRSV-Bの抗原性サブグループの間を含む、臨床分離株間でよく保存されているI型融合糖タンパク質である。Fタンパク質は、融合前と融合後のより安定した状態の間を移行し、それによって標的細胞への侵入を促進する。hRSV F糖タンパク質は、最初はF0前駆体タンパク質として合成される。hRSV F0は、三量体に折りたたまれ、F1及びF2サブユニットを含む成熟した融合前タンパク質へのフーリン切断によって活性化される(Bolt,et al.,Virus Res.,68:25,2000)。中和モノクローナル抗体の標的は、Fタンパク質の融合後の高次構造に存在するが、中和Ab応答は、主にhRSVに自然感染した人々のFタンパク質の融合前の高次構造を標的とする(Magro M et al.,Proc Natl Acad Sci USA 2012;109(8):3089-94;Ngwuta JO et al.,Sci Transl Med 2015;7(309):309ra162)。これと一致して、融合前の高次構造で安定化されたhRSV Fタンパク質は、融合後の高次構造で安定化されたhRSV Fタンパク質で観察されたものよりも、動物モデルでより大きな中和免疫応答を生じる(McLellan et al.,Science、342:592-598,2013)。したがって、安定化された融合前のhRSV Fタンパク質は、hRSVワクチンに含めるための優れた候補である。
【0046】
本明細書で使用されるように、不安定な高エネルギー状態で存在する、安定化された融合前RSV Fタンパク質は、タンパク質の融合後高次構造への移行を防ぐための変異(例えば、安定化変異)を含むタンパク質である。例えば、いくつかの実施形態では、安定化された融合前RSV Fタンパク質は、プロリン残基(例えば、S215P置換)及び/またはイソロイシン(例えば、N67I置換)置換を含む。例として、安定化された融合前RSV Fタンパク質であるDS-Cav1バリアントには、追加のジスルフィド結合(S155C/S290C)と2つの空洞充填変異(S190F/V207L)が含まれている。別の安定化された融合前RSV Fタンパク質はPR-DMであり、これは1つのプロリン置換(S215P)及びFサブユニットの1つの変異(N67I)を含む。
【0047】
本明細書に記載されているhRSV RNAワクチンは、いくつかの点で現在のワクチンよりも優れている。例えば、本明細書で使用される脂質ナノ粒子(LNP)送達系は、文献に記載されているプロタミンベースのアプローチを含む、他の製剤と比較して、RNAワクチンの有効性を高める。このLNP送達系を使用すると、治療結果(産生中和抗体力価など)を得るために追加のアジュバントを必要とせずに、化学修飾RNAワクチンまたは非修飾RNAワクチンの効果的な送達が可能になる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるhRSV RNAワクチンは、筋肉内(IM)または皮内(ID)投与された場合、従来のワクチンよりも少なくとも10倍、20倍、40倍、50倍、100倍、500倍、または1,000倍優れている。これらの結果は、他のクラスの脂質ベースの製剤で使用されるRNA用量と比較して、有意に低い用量のRNA(例えば、mRNA)が投与された場合でも達成され得る。
【0048】
さらに、免疫原性応答を生成するのに十分なRNAを細胞に送達するためにウイルス複製経路に依存する自己複製RNAワクチンとは異なり、本開示の組成物は、強力な免疫応答をもたらすのに十分なタンパク質を生成するのにウイルス複製を必要としない。したがって、本開示の組成物は、自己複製RNAを含まず、かつウイルス複製に必要な構成要素も含まない。
【0049】
本明細書で提供されるRNAは、特定のウイルス株(例えば、hRSV、hMPV、及び/またはhPIV3)によって制限されない。mRNAの基になるウイルスの株は、任意のウイルスの株であってもよい。
【0050】
本開示の免疫化組成物(例えば、RNAワクチン)は、天然に存在するものではないことを理解されたい。すなわち、本明細書で提供される呼吸器系ウイルス抗原をコードするRNAポリヌクレオチドは、自然界では存在しない。本明細書に記載のRNAポリヌクレオチドは、それらが自然界に存在するので、ウイルスタンパク質及びウイルス脂質から単離されることも理解されるべきである。したがって、本明細書で提供されるように、脂質ナノ粒子中に製剤化されたRNAを含む免疫化組成物は、例えば、ウイルスを除外する(すなわち、この組成物は、ウイルスではなく、ウイルスを含むこともない)。
【0051】
抗原
抗原とは、免疫応答を誘導し得る(例えば、免疫系に抗原に対する抗体を産生させる)タンパク質である。本明細書において、「抗原」という用語の使用は、特に明記されていない限り、免疫原性タンパク質及び免疫原性フラグメント((少なくとも1つの)呼吸器系ウイルス、例えば、hRSV、またはhRSV、hMPV及びhPIV3)に対する免疫応答を誘発する(または誘発し得る)免疫原性フラグメント)を包含する。「タンパク質」という用語はペプチドを含み、「抗原」という用語は抗原性フラグメントを含むことを理解されたい。
【0052】
本開示の組成物の呼吸器系ウイルス抗原及びこの呼吸器系ウイルス抗原をコードするRNAの例示的な配列を表1に示す。
【0053】
いくつかの実施形態では、組成物は、配列番号8の配列を含むhRSV F糖タンパク質の融合前形態をコードするRNAを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、配列番号11の配列を含む、hMPV F糖タンパク質の融合前形態をコードするRNAを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、配列番号14の配列を含む、hPIV3 F糖タンパク質の融合前形態をコードするRNAを含む。
【0054】
本明細書に記載のRNAによってコードされる抗原は、いずれもシグナル配列を含む場合も含まない場合もあることを理解されたい。
【0055】
核酸
本開示の組成物は、呼吸器系ウイルス抗原をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を有する(少なくとも1つの)RNAを含む。いくつかの実施形態では、RNAはメッセンジャーRNA(mRNA)である。いくつかの実施形態では、RNA(例えば、mRNA)は、5’UTR、3’UTR、ポリ(A)テール及び/または5’キャップ類似体をさらに含む。
【0056】
本開示のhMPV/hPIV3 mRNAワクチンは、任意の5’非翻訳領域(UTR)及び/または任意の3’UTRを含み得ることも理解されるべきである。例示的なUTR配列は、配列表に示されている(例えば、配列番号2~5)。ただし、他のUTR配列を使用してもよいし、本書に記載されているUTR配列のいずれかと交換してもよい。本明細書で提供されるRNAポリヌクレオチドからUTRを省略してもよい。
【0057】
核酸は、ヌクレオチド(ヌクレオチド単量体)のポリマーを含む。したがって、核酸はポリヌクレオチドとも呼ばれる。核酸は、例えば、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、トレオース核酸(TNA)、グリコール核酸(GNA)、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA、例としては、β-D-リボ構成を有するLNA、α-L-リボ構成を有するα-LNA(LNAのジアステレオマー)、2’-アミノ官能化を有する2’-アミノ-LNA、及び2’-アミノ官能化を有する2’-アミノ-α-LNA)、エチレン核酸(ENA)、シクロヘキセニル核酸(CeNA)、ならびに/または、これらのキメラ及び/もしくは組合せであってもよく、これらを含んでもよい。
【0058】
メッセンジャーRNA(mRNA)は、(少なくとも1つの)タンパク質(天然に存在するか、天然に存在しないか、または修飾されたアミノ酸のポリマー)をコードする任意のRNAであり、in vitro、in vivo、in situ、またはex vivoにおいてコードされたタンパク質を生成するために翻訳され得る。当業者は、特に断りのない限り、本出願に記載の核酸配列は、代表的なDNA配列において「T」を記載し得るが、配列がRNA(例えば、mRNA)を表す場合、「T」は、「U」で置き換えられると理解される。したがって、本明細書の特定の配列識別番号によって開示及び識別される任意のDNAはまた、DNA配列の各「T」が「U」で置換されている、DNAに相補的な対応するRNA(例えば、mRNA)配列も開示する。
【0059】
オープンリーディングフレーム(ORF)は、開始コドン(例えば、メチオニン(ATGまたはAUG))で始まり、停止コドン(例えば、TAA、TAGもしくはTGA、またはUAA、UAG、もしくはUGA)で終わるDNAまたはRNAの連続ストレッチである。ORFは通常、タンパク質をコードする。本明細書に開示される配列は、追加のエレメント、例えば、5’及び3’UTRをさらに含み得るが、これらのエレメントは、ORFとは異なり、本開示のRNAポリヌクレオチドに必ずしも存在する必要はないことが理解される。
【0060】
バリアント
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、呼吸器系ウイルス抗原バリアントをコードするRNAを含む。抗原バリアントまたは他のポリペプチドバリアントは、野生型、ネイティブ、または参照配列とはアミノ酸配列が異なる分子を指す。抗原/ポリペプチドバリアントは、ネイティブ配列または参照配列と比較して、アミノ酸配列内の特定の位置に置換、欠失、及び/または挿入を有し得る。通常、バリアントは、野生型、ネイティブ、または参照配列に対し少なくとも50%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、バリアントは、野生型、ネイティブ、または参照配列と少なくとも80%または少なくとも90%の同一性を共有する。
【0061】
本開示の核酸によってコードされるバリアント抗原/ポリペプチドは、多数の望ましい特性、例えば、その免疫原性を強化する、その発現を強化する、及び/または対象におけるその安定性もしくはPK/PD特性を改善する特性のいずれかを付与するアミノ酸変化を含んでもよい。バリアント抗原/ポリペプチドは、慣用的な変異誘発技法を用いて作製し、適宜アッセイして、所望の特性を有するか否かを評価し得る。発現レベル及び免疫原性を決定するためのアッセイは、当該技術分野で周知であり、例示的なそのようなアッセイは実施例のセクションに記載されている。同様に、タンパク質バリアントのPK/PD特性も、当該技術分野で認識されている技法を用いて(例えば、ワクチン接種した対象内の抗原の発現を経時的に評価することにより、及び/または誘導された免疫応答の持続性を確認することにより)測定し得る。バリアント核酸によってコードされるタンパク質(複数可)の安定性は、熱安定性もしくは尿素変性時の安定性を分析することによって測定してもよく、またはin silico予測を用いて測定してもよい。このような実験及びin silico評価のための方法は、当該技術分野で公知である。
【0062】
いくつかの実施形態では、組成物は、本明細書で提供する配列のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む(例えば、配列表及び表1を参照)RNAもしくはRNA ORFを含むか、または本明細書で提供される配列のいずれか1つのヌクレオチド配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0063】
「同一性」という用語は、2つ以上のポリペプチド(例えば、抗原)またはポリヌクレオチド(核酸)の配列間の関係であって、これらの配列を比較することにより決定される関係を指す。また、同一性とは、配列間のまたは配列内の配列関連性の程度であって、2つ以上のアミノ酸残基または核酸残基の鎖間のマッチ数により決定される配列関連性の程度を指す。同一性は、特定の数学的モデルまたはコンピュータープログラム(例えば、「アルゴリズム」)によって対処される、ギャップアラインメント(もしあれば)を有する2つ以上の配列の小さい方の間の完全な一致の割合を測定する。関連する抗原または核酸の同一性は、既知の方法によって容易に計算され得る。ポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列に適用される「同一性パーセント(%)」とは、候補アミノ酸または核酸の配列内で、第2の配列のアミノ酸配列または核酸配列内の残基と同一である残基(アミノ酸残基または核酸残基)のパーセンテージであって、その配列をアラインメントし、必要に応じてギャップを導入して最大の同一性パーセントを達成した後のパーセンテージとして定義される。アラインメントのための方法及びコンピュータープログラムは、当該技術分野では周知されている。同一性は、同一性パーセントの計算に依存するが、この計算に導入されるギャップ及びペナルティーのために値が異なる場合があることが理解されている。概して、特定のポリヌクレオチドまたはポリペプチド(例えば、抗原)のバリアントは、本明細書に記載され当業者に公知である配列アラインメントプログラム及びパラメーターによる定量において、その特定の参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに対し、少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%ただし100%未満の配列同一性を有する。このようなアラインメント用のツールとしては、BLASTスイート(Stephen F.Altschul,et al(1997),“Gapped BLAST and PSI-BLAST:a new generation of protein database search programs”,Nucleic Acids Res.25:3389-3402)のツールが挙げられる。別のよく知られたローカルアラインメント技法は、Smith-Waterman アルゴリズム(Smith,T.F.&Waterman,M.S.(1981)“Identification of common molecular subsequences.”J.Mol.Biol.147:195-197)に基づく。動的プログラミングに基づく一般的なグローバルアラインメント技法は、Needleman-Wunschアルゴリズム(Needleman,S.B.&Wunsch,C.D.(1970)“A general method applicable to the search for similarities in the amino acid sequences of two proteins.” J.Mol.Biol.48:443-453)である。より最近では、Fast Optimal Global Sequence Alignment Algorithm(FOGSAA)が開発されており、これは、Needleman-Wunschアルゴリズムを含めた他の最適グローバルアラインメント法よりも速く、ヌクレオチド及びタンパク質配列を網羅的にアラインメントするとされている。
【0064】
そのため、参照配列、とりわけ本明細書で開示するポリペプチド(例えば、抗原)配列に関する置換、挿入、及び/または付加、欠失、及び共有結合修飾を含むペプチドまたはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、本開示の範囲内に含まれる。例えば、配列タグまたはアミノ酸(例えば、1つ以上のリジン)をペプチド配列に(例えば、そのN末端またはC末端に)付加してもよい。配列タグは、ペプチドの検出、精製、または局在化に使用し得る。リジンを使用して、ペプチド溶解性を増大してもよいし、またはビオチン化を可能にしてもよい。代替的に、ペプチドまたはタンパク質のアミノ酸配列のカルボキシ及びアミノ末端領域に位置するアミノ酸残基を任意選択で欠失させて、短縮配列をもたらしてもよい。ある特定のアミノ酸(例えば、C末端またはN末端残基)は、代替的に、配列の用途に応じて欠失させてもよい(例えば、溶解性である、より大きな配列の一部としてのまたは固体支持体に結合した配列の発現)。いくつかの実施形態では、シグナル配列、終止配列、膜貫通ドメイン、リンカー、多量体化ドメイン(例えば、フォールドオン領域)などのための(またはこれらをコードする)配列は、同じまたは類似の機能を達成する代替的な配列で置き換えてもよい。いくつかの実施形態では、タンパク質のコア内の空洞は、例えば、より大きなアミノ酸を導入することにより、充填して安定性を改善してもよい。他の実施形態では、埋没した(buried)水素結合ネットワークは、安定性を改善するために疎水性残基で置き換えてもよい。また他の実施形態では、グリコシル化部位を除去し、適切な残基で置き換えてもよい。このような配列は、当業者には容易に識別可能である。また、本明細書で提供する配列のいくつかは、例えば、RNA(例えば、mRNA)ワクチンの調製で使用する前に、欠失させ得る配列タグまたは末端ペプチド配列を(例えば、N末端またはC末端に)含むことも理解されたい。
【0065】
当業者には認識されるように、タンパク質フラグメント、機能タンパク質ドメイン、及び相同タンパク質も、目的の呼吸器系ウイルス抗原の範囲内であると考えられる。例えば、本明細書では、参照タンパク質の任意のタンパク質フラグメント(参照抗原配列より少なくとも1アミノ酸残基短いがそれ以外は同一であるポリペプチド配列を意味する)であって、免疫原性であり、呼吸器系ウイルスに対する防御免疫応答を付与することを条件とする、タンパク質フラグメントを提供する。参照タンパク質と同一であるが短縮されているバリアントに加えて、いくつかの実施形態では、抗原は、本明細書で提供または言及するいずれかの配列に対し2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の変異を含む。抗原/抗原ポリペプチドの長さは、約4、6、または8アミノ酸から全長タンパク質までの範囲をとり得る。
【0066】
hRSV抗原バリアント
いくつかの実施形態では、組成物は、細胞質テールを欠くhRSV F糖タンパク質バリアントの安定化された融合前形態をコードするRNAを含む。いくつかの実施形態では、細胞質テールは、hRSV F糖タンパク質バリアントのC末端20~30、20~25、15~30、15~25、15~20、10~30、10~25、10~20、10~15、5~30、5~25、5~20、または5~15アミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、細胞質テールは、hRSV F糖タンパク質のC末端25アミノ酸(例えば、CKARSTPVTLSKDQLSGINNIAFSN(配列番号25))を含む。いくつかの実施形態では、細胞質テールは、hRSV F糖タンパク質のC末端20アミノ酸(例えば、TPVTLSKDQLSGINNIAFSN(配列番号26))を含む。いくつかの実施形態では、細胞質テールは、hRSV F糖タンパク質のC末端15アミノ酸(例えば、SKDQLSGINNIAFSN(配列番号27))を含む。いくつかの実施形態では、細胞質テールは、hRSV F糖タンパク質のC末端10アミノ酸(例えば、SGINNIAFSN(配列番号28))を含む。
【0067】
いくつかの実施形態では、組成物は、細胞質テールを欠くhRSV F糖タンパク質バリアントの安定化された融合前形態をコードするRNAを含み、ここで、RSV F糖タンパク質バリアントは、野生型hRSV F糖タンパク質(例えば、配列番号1の配列を含む野生型hRSV F糖タンパク質)または細胞質テールを欠く野生型hRSV F糖タンパク質と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、組成物は、細胞質テールを欠くhRSV F糖タンパク質バリアントの安定化された融合前形態をコードするRNAを含み、ここで、RSV F糖タンパク質バリアントは、配列番号8の配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、組成物は、配列番号8の配列を含むhRSV F糖タンパク質バリアントの安定化された融合前形態をコードするRNAを含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、組成物は、細胞質テールを欠くhRSV F糖タンパク質バリアントの安定化された融合前形態をコードするRNAを含み、ここで、RNAは、配列番号7の配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性を有するORF配列を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、細胞質テールを欠くhRSV F糖タンパク質バリアントの安定化された融合前形態をコードするRNAを含み、ここで、RNAは、配列番号15の配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性を有する配列を含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、細胞質テールを欠くhRSV F糖タンパク質バリアントは、野生型hRSV F糖タンパク質(例えば、配列番号1)と比較して、以下:P102X置換、リンカー分子によるアミノ酸104~144の置換、A149X置換、S155X置換、S190X置換、V207X置換、S290X置換、L373X置換、I379X置換、M447X置換、及びY458X置換からなる群より選択される修飾をさらに含み、Xは任意のアミノ酸である(例えば、A、R、N、D、C、E、Q、G、H、I、L、K、M、F、P、S、T、W、Y、またはV)。
【0070】
いくつかの実施形態では、細胞質テールを欠くhRSV F糖タンパク質バリアントは、野生型hRSV F糖タンパク質と比較して、以下からなる群より選択される修飾をさらに含む:P102A置換、リンカー分子によるアミノ酸104~144の置換、A149C置換、S155C置換、S190F置換、V207L置換、S290C置換、L373R置換、I379V置換、M447V置換、及びY458C置換。いくつかの実施形態では、細胞質テールを欠くhRSV F糖タンパク質バリアントは、P102A置換をさらに含む。いくつかの実施形態では、細胞質テールを欠くhRSV F糖タンパク質バリアントは、リンカー分子によるアミノ酸104~144の置換をさらに含む。いくつかの実施形態では、細胞質テールを欠くhRSV F糖タンパク質バリアントは、A149C置換をさらに含む。いくつかの実施形態では、細胞質テールを欠くhRSV F糖タンパク質バリアントは、S155C置換をさらに含む。いくつかの実施形態では、細胞質テールを欠くhRSV F糖タンパク質バリアントは、S190F置換をさらに含む。いくつかの実施形態では、細胞質テールを欠くhRSV F糖タンパク質バリアントは、V207L置換をさらに含む。いくつかの実施形態では、細胞質テールを欠くhRSV F糖タンパク質バリアントは、S290C置換をさらに含む。いくつかの実施形態では、細胞質テールを欠くhRSV F糖タンパク質バリアントは、L373R置換をさらに含む。いくつかの実施形態では、細胞質テールを欠くhRSV F糖タンパク質バリアントは、I379V置換をさらに含む。いくつかの実施形態では、細胞質テールを欠くhRSV F糖タンパク質バリアントは、M447V置換をさらに含む。いくつかの実施形態では、細胞質テールを欠くhRSV F糖タンパク質バリアントは、Y458C置換をさらに含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、細胞質テールを欠くhRSV F糖タンパク質バリアントは、野生型hRSV F糖タンパク質と比較して、以下の修飾をさらに含む:P102A置換、リンカー分子によるアミノ酸104~144の置換、A149C置換、S155C置換、S190F置換、V207L置換、S290C置換、L373R置換、I379V置換、M447V置換、及びY458C置換。
【0072】
hMPV抗原バリアント
いくつかの実施形態では、組成物は、野生型hMPV F糖タンパク質に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性を有するhMPV F糖タンパク質バリアントをコードするRNAを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、配列番号11の配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性を有する、hMPV F糖タンパク質バリアントをコードするRNAを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、配列番号11の配列を含むhMPV F糖タンパク質バリアントをコードするRNAを含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、組成物は、hMPV F糖タンパク質バリアントをコードするRNAを含み、このRNAは、配列番号10の配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性を有するORF配列を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、hMPV F糖タンパク質バリアントをコードするRNAを含み、ここで、RNAは、配列番号16の配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性を有する配列を含む。
【0074】
hPIV3抗原バリアント
いくつかの実施形態では、組成物は、野生型hPIV3 F糖タンパク質に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性を有するhPIV3 F糖タンパク質バリアントをコードするRNAを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、配列番号14の配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性を有する、hPIV3 F糖タンパク質バリアントをコードするRNAを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、配列番号14の配列を含むhPIV3 F糖タンパク質バリアントをコードするRNAを含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、組成物は、hPIV3 F糖タンパク質バリアントをコードするRNAを含み、このRNAは、配列番号13の配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性を有するORF配列を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、hPIV3 F糖タンパク質バリアントをコードするRNAを含み、ここで、このRNAは配列番号17の配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性を有する配列を含む。
【0076】
安定化エレメント
天然の真核mRNA分子は、他の構造的特徴(例えば、5’-キャップ構造または3’-ポリ(A)テール)に加えて、安定化エレメント(限定されるものではないが、その5’末端(5’UTR)及び/またはその3’末端(3’UTR)の非翻訳領域(UTR)を含む)を含み得る。5’UTRと3’UTRはいずれも、典型的にはゲノムDNAから転写され、未成熟mRNAのエレメントである。成熟mRNAに特有の構造的特徴、例えば、5’-キャップ及び3’-ポリ(A)テールは、通常はmRNAのプロセシング中、転写された(未成熟)mRNAに付加される。
【0077】
いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも1つの修飾を有する少なくとも1つの抗原ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有するRNAポリヌクレオチド、少なくとも1つの5’末端キャップを含み、脂質ナノ粒子内で製剤化される。ポリヌクレオチドの5’-キャップは、以下の化学RNAキャップアナログ:3’-O-Me-m7G(5’)ppp(5’)G[ARCAキャップ];G(5’)ppp(5’)A;G(5’)ppp(5’)G;m7G(5’)ppp(5’)A;m7G(5’)ppp(5’)Gを用いてin vitro転写反応中に同時に完了させて、製造業者のプロトコルに従って5’-グアノシンキャップ構造を生成してもよい(New England BioLabs,Ipswich,MA)。修飾RNAの5’-キャッピングは、ワクシニアウイルスキャッピング酵素を用いて転写後に完了させて、「キャップ0」構造:m7G(5’)ppp(5’)Gを生成し得る(New England BioLabs,Ipswich,MA)。キャップ1構造は、ワクシニアウイルスキャッピング酵素及び2’-Oメチルトランスフェラーゼの両方を用いて生成して、m7G(5’)ppp(5’)G-2’-O-メチルを生成してもよい。キャップ2構造は、キャップ1構造から、次に2’-Oメチルトランスフェラーゼを用いて5’末端から3番目のヌクレオチドを2’-Oメチル化することにより、生成し得る。キャップ3構造は、キャップ2構造から、次に2’-Oメチルトランスフェラーゼを用いて5’末端から4番目のヌクレオチドを2’-Oメチル化することにより、生成し得る。酵素は、組換え供給源に由来し得る。
【0078】
3’-ポリ(A)テールは、典型的には、転写されたmRNAの3’末端に付加されるアデニンヌクレオチドのストレッチである。これは、場合によっては最大約400個のアデニンヌクレオチドを含み得る。いくつかの実施形態では、3’-ポリ(A)テールの長さは、個々のmRNAの安定性に関して必須のエレメントであり得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、組成物は安定化エレメントを含む。安定化エレメントは、例えば、ヒストンステムループを含み得る。32kDaのタンパク質であるステムループ結合タンパク質(SLBP)が特定されている。これは、核及び細胞質の両方におけるヒストンメッセージの3’末端にあるヒストンステムループと関連している。その発現レベルは細胞周期によって調節され、S期にピークに達し、このときヒストンmRNAレベルも上昇する。このタンパク質は、U7 snRNPによるヒストンプレmRNAの効率的な3’末端プロセシングに必須であることが示されている。SLBPはプロセシング後も引き続きステムループと会合し、次いで、細胞質中での成熟ヒストンmRNAからヒストンタンパク質への翻訳を促進する。SLBPのRNA結合ドメインは、後生動物及び原生動物の全体にわたり保存されており、ヒストンのステムループとの結合は、ループの構造に依存する。最小結合部位は、ステムループに対し少なくとも3つのヌクレオチド5’及び2つのヌクレオチド3’を含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、RNA(例えば、mRNA)は、コード領域と、少なくとも1つのヒストンステムループと、任意選択でポリ(A)配列またはポリアデニル化シグナルとを含む。ポリ(A)配列またはポリアデニル化シグナルは、概して、コードされたタンパク質の発現レベルを強化するはずである。コードされたタンパク質は、いくつかの実施形態では、ヒストンタンパク質、レポータータンパク質(例えば、ルシフェラーゼ、GFP、EGFP、β-ガラクトシダーゼ、EGFP)でもなく、またはマーカーもしくは選択タンパク質(例えば、アルファ-グロビン、ガラクトキナーゼ、及びキサンチン:グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(GPT))でもない。
【0081】
いくつかの実施形態では、RNA(例えば、mRNA)は、ポリ(A)配列またはポリアデニル化シグナルと少なくとも1つのヒストンステムループとの組合せであって、いずれも本来は代替的機構に相当するが、相乗的に作用して、個々のエレメントのいずれかで観察されるレベルを上回ってタンパク質発現を増大させる組み合わせを含む。ポリ(A)と少なくとも1つのヒストンステムループとの組合せによる相乗効果は、エレメントの順序にも、ポリ(A)配列の長さにも依存しない。
【0082】
いくつかの実施形態では、RNA(例えば、mRNA)は、ヒストン下流エレメント(HDE)を含まない。「ヒストン下流エレメント(HDE)」は、天然に存在するステムループの3’にある約15~20ヌクレオチドのプリンリッチなポリヌクレオチドのストレッチを含み、これはヒストンプレmRNAから成熟ヒストンmRNAへのプロセシングに関与するU7 snRNAの結合部位に相当する。いくつかの実施形態では、この核酸はイントロンを含まない。
【0083】
RNA(例えば、mRNA)は、エンハンサー及び/またはプロモーター配列を含んでも含まなくてもよく、これらは、修飾されても修飾されなくてもよく、活性化されても活性化されなくてもよい。いくつかの実施形態では、ヒストンステムループは、概してヒストン遺伝子に由来し、短い配列からなるスペーサーによって隔てられた2つの隣接する部分的または全体的に逆相補的な配列の分子内塩基対を含み、これがこの構造のループを形成する。不対ループ領域は、典型的には、ステムループエレメントのいずれとも塩基対形成することができない。これは、多くのRNA二次構造の重要な構成要素であるので、RNAに存在する場合が多いが、一本鎖DNAにも存在し得る。ステムループ構造の安定性は、概して、長さ、ミスマッチまたはバルジの数、及び対となる領域の塩基組成に依存する。いくつかの実施形態では、ゆらぎ塩基対(非ワトソン・クリック塩基対)が結果的に生じ得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのヒストンステムループ配列は、15~45ヌクレオチドの長さを含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、RNA(例えば、mRNA)は、1つ以上のAUリッチの配列が除去されている。これらの配列(AURESと称されることがある)は、3’UTRに見られる不安定化配列である。AURESはRNAワクチンから除去されてもよい。あるいは、AURESはRNAワクチン中に残存していてもよい。
【0085】
シグナルペプチド
いくつかの実施形態では、組成物は、呼吸器系ウイルス抗原と融合したシグナルペプチドをコードするORFを有するRNA(例えば、mRNA)を含む。シグナルペプチドは、タンパク質のN末端側の15~60アミノ酸を含み、典型的には、分泌経路上の膜を横断した転位に必要であるので、真核生物及び原核生物の両方でほとんどのタンパク質が分泌経路に侵入するのを普遍的に制御している。真核生物においては、新生前駆体タンパク質(プレタンパク質)のシグナルペプチドが、リボソームを粗面小胞体(ER)膜に誘導し、プロセシングのために、成長ペプチド鎖の膜横断輸送を開始する。ERプロセシングにより成熟タンパク質が生成され、シグナルペプチドは、典型的には、宿主細胞のER常駐シグナルペプチダーゼにより、前駆体タンパク質から切断されるか、または切断されないまま保たれ、膜アンカーとして機能する。また、シグナルペプチドは、タンパク質を細胞膜に標的化するのも促進し得る。
【0086】
シグナルペプチドは15~60アミノ酸の長さであってもよい。例えば、シグナルペプチドの長さは、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、または60アミノ酸長であってもよい。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドの長さは、20~60、25~60、30~60、35~60、40~60、45~60、50~60、55~60、15~55、20~55、25~55、30~55、35~55、40~55、45~55、50~55、15~50、20~50、25~50、30~50、35~50、40~50、45~50、15~45、20~45、25~45、30~45、35~45、40~45、15~40、20~40、25~40、30~40、35~40、15~35、20~35、25~35、30~35、15~30、20~30、25~30、15~25、20~25、または15~20アミノ酸長である。
【0087】
異種遺伝子由来のシグナルペプチド(事実上呼吸器系ウイルス抗原以外の遺伝子の発現を調節する)が当該技術分野で公知であり、これを所望の特性について試験し、次いで本開示の核酸に組み込んでもよい。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、以下の配列のうちの1つを含んでもよい:
MDSKGSSQKGSRLLLLLVVSNLLLPQGVVG(配列番号18)、MDWTWILFLVAAATRVHS(配列番号19);METPAQLLFLLLLWLPDTTG(配列番号20);MLGSNSGQRVVFTILLLLVAPAYS(配列番号21);MKCLLYLAFLFIGVNCA(配列番号22);MWLVSLAIVTACAGA(配列番号23)。
【0088】
融合タンパク質
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、抗原性融合タンパク質をコードするRNA(例えば、mRNA)を含む。したがって、コードされた抗原または複数の抗原は、一緒に結合された2つ以上のタンパク質(例えば、タンパク質及び/またはタンパク質フラグメント)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、RNAは、hPIV3 F糖タンパク質に融合されたhMPV F糖タンパク質をコードする。あるいは、タンパク質抗原が融合しているタンパク質は、それ自体に対する強力な免疫応答を促進するのではなく、呼吸器系ウイルス抗原に対する強力な免疫応答を促進する。抗原性融合タンパク質は、いくつかの実施形態では、各々の元のタンパク質由来の機能特性を保持している。
【0089】
足場部分
本明細書で提供されるRNA(例えば、mRNA)ワクチンは、いくつかの実施形態では、足場部分に連結された呼吸器系ウイルス抗原を含む融合タンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、そのような足場部分は、本開示の核酸によってコードされる抗原に所望の特性を付与する。例えば、足場タンパク質は、例えば、抗原の構造を変更すること、抗原の取り込み及びプロセシングを変更すること、及び/または抗原を結合パートナーに結合させることによって、抗原の免疫原性を改善し得る。
【0090】
いくつかの実施形態では、足場部分とは、高度に対称で、安定で、構造的に組織化され、直径が10~150nmであり、免疫系の様々な細胞との最適な相互作用に非常に適したサイズ範囲であるタンパク質ナノ粒子に自己集合し得るタンパク質である。いくつかの実施形態では、ウイルスタンパク質またはウイルス様粒子を使用して、安定したナノ粒子構造を形成し得る。そのようなウイルスタンパク質の例は、当該技術分野で公知である。例えば、いくつかの実施形態では、足場部分は、B型肝炎表面抗原(HBsAg)である。HBsAgは、平均直径が約22nmの球状粒子を形成し、核酸を欠いているため非感染性である(Lopez-Sagaseta,J.et al.Computational and Structural Biotechnology Journal 14(2016)58-68)。いくつかの実施形態では、足場部分は、B型肝炎コア抗原(HBcAg)であり、HBVに感染したヒト肝臓から得られるウイルスコアに類似した、直径24~31nmの粒子に自己集合する。自己組織化で生成されたHBcAgは、180または240のプロトマーに対応する、直径300Å及び360Åの異なるサイズのナノ粒子の2つのクラスに自己集合される。いくつかの実施形態では、呼吸器系ウイルス抗原は、呼吸器系ウイルス抗原を提示するナノ粒子の自己集合を容易にするために、HBsAGまたはHBcAGに融合される。
【0091】
いくつかの実施形態では、細菌タンパク質プラットフォームを使用してもよい。これらの自己組織化タンパク質の非限定的な例としては、フェリチン、ルマジン、及びエンカプスリンが挙げられる。
【0092】
フェリチンは、その主な機能が細胞内鉄貯蔵であるタンパク質である。フェリチンは24個のサブユニットで構成されており、それぞれが4つのアルファヘリックスバンドルで構成されており、八面体対称の4次構造に自己集合する(Cho K.J.et al.J Mol Biol.2009;390:83-98)。フェリチンのいくつかの高解像度構造が決定されており、ヘリコバクターピロリフェリチンは、24個の同一のプロトマーでできているのに対し、動物には、単独で集合するか、または異なる比率で組み合わせて24個のサブユニットの粒子になり得るフェリチンの軽鎖及び重鎖がある(Granier T.et al.J Biol Inorg Chem.2003;8:105-111;Lawson D.M.et al.Nature.1991;349:541-544)。フェリチンは、ロバストな熱的及び化学的安定性を備えたナノ粒子に自己集合する。したがって、フェリチンナノ粒子は、抗原を運び、露出するのに非常に適している。
【0093】
ルマジンシンターゼ(LS)は、抗原提示用のナノ粒子プラットフォームとしても適している。リボフラビンの生合成における最後から2番目の触媒ステップに関与するLSは、古細菌、細菌、真菌、植物、及び真正細菌など、広範な生物に存在する酵素である(Weber S.E.Flavins and Flavoproteins.Methods and Protocols,Series:Methods in Molecular Biology.2014)。LSモノマーは、150アミノ酸の長さで、ベータシートとその側面に隣接するタンデムアルファヘリックスとで構成されている。LSについては、ホモペンタマーから直径150Åのカプシドを形成する12ペンタマーの対称アセンブリまで、その形態の多様性を示す、多数の異なる4次構造が報告されている。100を超えるサブユニットのLSケージでさえも報告されている(Zhang X.et al.J Mol Biol.2006;362:753-770)。
【0094】
好熱菌Thermotoga maritimaから単離された新規タンパク質ケージナノ粒子であるエンカプスリンはまた、自己集合ナノ粒子の表面に抗原を提示するためのプラットフォームとしても使用され得る。エンカプスリンは、内径と外径がそれぞれ20nmと24nmの薄い正二十面体のT=1対称ケージ構造を有する同一の31kDaモノマーの60コピーから組み立てられる(Sutter M.et al.Nat Struct Mol Biol.2008,15:939-947)。T.maritimaにおけるエンカプスリンの正確な機能はまだ明確に理解されていないが、その結晶構造は、最近解明され、その機能は、酸化ストレス応答に関与している、DyP(色素脱色ペルオキシダーゼ)及びFlp(フェリチン様タンパク質)などのタンパク質をカプセル化する細胞区画として仮定された(Rahmanpour R.et al.FEBSJ.2013,280:2097-2104)。
【0095】
リンカー及び切断可能なペプチド
いくつかの実施形態では、本開示のmRNAは、本明細書において融合タンパク質と呼ばれる2つ以上のポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、mRNAは、融合タンパク質の少なくとも1つまたはそれぞれのドメインの間に位置するリンカーをさらにコードする。リンカーは、例えば、切断可能なリンカーであっても、またはプロテアーゼ感受性リンカーであってもよい。いくつかの実施形態では、リンカーは、F2Aリンカー、P2Aリンカー、T2Aリンカー、E2Aリンカー、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。2Aペプチドと呼ばれるこの自己切断ペプチドリンカーのファミリーは、当該技術分野で説明されている(例えば、Kim,J.H.et al.(2011)PLoS ONE 6:e18556を参照)。いくつかの実施形態では、リンカーはF2Aリンカーである。いくつかの実施形態では、リンカーはGGGSリンカーである。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、以下の構造:ドメイン-リンカー-ドメイン-リンカー-ドメインを有する、介在するリンカーを有する3つのドメインを含む。
【0096】
当該技術分野で公知の切断可能なリンカーを、本開示に関連して使用してもよい。例示的なそのようなリンカーとしては、F2Aリンカー、T2Aリンカー、P2Aリンカー、E2Aリンカーが挙げられる(例えば、WO2017127750を参照)。当業者は、他の当該技術分野で認識されているリンカーが、本開示のRNA(例えば、本開示の核酸によってコードされるもの)での使用に適し得ることを理解するであろう。当業者は同様に、他のポリシストロン性RNA(例えば、同じ分子内で別々に2つ以上の抗原/ポリペプチドをコードするmRNA)が、本明細書で提供される使用に適し得ることを理解するであろう。
【0097】
配列最適化
いくつかの実施形態では、本開示の抗原をコードするORFは、コドン最適化されている。コドン最適化の方法は、当該技術分野で公知である。例えば、本明細書で提供する配列のいずれか1つ以上のORFがコドン最適化されてもよい。いくつかの実施形態では、コドン最適化を用いて、標的及び宿主生物におけるコドン頻度を一致させて、適切な折り畳みを確保するか;GC含量にバイアスをかけてmRNAの安定性を増加するか、もしくは二次構造を低減するか;遺伝子構成もしくは発現を損ない得るタンデムリピートコドンもしくは塩基の連続を最小にするか;転写及び翻訳制御領域をカスタマイズし:タンパク質輸送配列を挿入もしくは除去するか;コードされるタンパク質内の翻訳後修飾部位(例えば、グリコシル化部位)を除去/付加するか;タンパク質ドメインを付加、除去、もしくはシャッフルするか;制限酵素認識部位を挿入もしくは欠失させるか;リボソーム結合部位及びmRNA分解部位を修飾するか;翻訳速度を調節してタンパク質の様々なドメインが適切に折り畳まれるようにするか;またはポリヌクレオチド内の問題のある二次構造を低減もしくは取り除いてもよい。コドン最適化ツール、アルゴリズム、及びサービスは、当該技術分野で公知であり、非限定的な例としては、GeneArt(Life Technologies)、DNA2.0(Menlo Park CA)のサービス、及び/または独自方法が挙げられる。いくつかの実施形態では、このオープンリーディングフレーム(ORF)配列は、最適化アルゴリズムを用いて最適化される。
【0098】
いくつかの実施形態では、コドン最適化配列は、天然または野生型の配列ORF(例えば、呼吸器系ウイルス抗原をコードする天然または野生型のmRNA配列)に対し95%未満の配列同一性を共有する。いくつかの実施形態では、コドン最適化配列は、天然に存在するかまたは野生型の配列(例えば、呼吸器系ウイルス抗原をコードする天然または野生型のmRNA配列)に対し90%未満の配列同一性を共有する。いくつかの実施形態では、コドン最適化配列は、天然または野生型の配列(例えば、呼吸器系ウイルス抗原をコードする天然または野生型のmRNA配列)に対し85%未満の配列同一性を共有する。いくつかの実施形態では、コドン最適化配列は、天然または野生型の配列(例えば、呼吸器系ウイルス抗原をコードする天然または野生型のmRNA配列)に対し80%未満の配列同一性を共有する。いくつかの実施形態では、コドン最適化配列は、天然または野生型の配列(例えば、呼吸器系ウイルス抗原をコードする天然または野生型のmRNA配列)に対し75%未満の配列同一性を共有する。
【0099】
いくつかの実施形態では、コドン最適化配列は、天然または野生型の配列(例えば、呼吸器系ウイルス抗原をコードする天然または野生型のmRNA配列)に対し65%~85%(例えば、約67%~約85%または約67%~約80%)の配列同一性を共有する。いくつかの実施形態では、コドン最適化配列は、天然または野生型の配列(例えば、呼吸器系ウイルス抗原をコードする天然または野生型のmRNA配列)に対し65%~75%または約80%の配列同一性を共有する。
【0100】
いくつかの実施形態では、コドン最適化配列は、非コドン最適化配列によってコードされる呼吸器系ウイルス抗原と免疫原性が同じか、またはそれよりも免疫原性が高い(例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも100%、または少なくとも200%以上高い)抗原をコードする。
【0101】
修飾mRNAは、哺乳動物宿主細胞にトランスフェクションされた場合、12~18時間、または18時間超、例えば、24、36、48、60、72時間、または72時間超の安定性を有し、哺乳類宿主細胞による発現が可能である。
【0102】
いくつかの実施形態では、コドン最適化RNAは、G/Cレベルが強化されたRNAであり得る。核酸分子(例えば、mRNA)のG/C含量は、RNAの安定性に影響を及ぼし得る。グアニン(G)及び/またはシトシン(C)残基の量が増加したRNAは、大量のアデニン(A)及びチミン(T)またはウラシル(U)ヌクレオチドを含むRNAより機能的に安定している場合がある。例として、WO02/098443は、翻訳領域内の配列修飾によって安定化されたmRNAを含む医薬組成物を開示している。遺伝子コードの縮退に起因して、この修飾は、既存のコドンを、得られるアミノ酸を変更することなく、より高いRNA安定性を促進するコドンに置き換えることによって機能する。このアプローチは、RNAのコード領域に限定される。
【0103】
化学修飾されていないヌクレオチド
いくつかの実施形態では、RNA(例えば、mRNA)は、化学的に修飾されておらず、アデノシン、グアノシン、シトシン、及びウリジンからなる標準的なリボヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、本開示のヌクレオチド及びヌクレオシドは、標準的なヌクレオシド残基、例えば、転写RNA内に存在する残基(例えば、A、G、C、またはU)を含む。いくつかの実施形態では、本開示のヌクレオチド及びヌクレオシドは、標準的なデオキシリボヌクレオシド、例えば、DNA内に存在するデオキシリボヌクレオシド(例えば、dA、dG、dC、またはdT))を含む。
【0104】
化学修飾
本開示の組成物は、いくつかの実施形態では、呼吸器系ウイルス抗原をコードするオープンリーディングフレームを有するRNAを含み、当該核酸は、標準的(非修飾)であっても当該技術分野で知られているように修飾されてもよいヌクレオチド及び/またはヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態では、本開示のヌクレオチド及びヌクレオシドは、修飾ヌクレオチドまたはヌクレオシドを含む。このような修飾ヌクレオチド及びヌクレオシドは、天然に存在する修飾ヌクレオチド及びヌクレオシドであってもよく、または天然には存在しない修飾ヌクレオチド及びヌクレオシドであってもよい。このような修飾としては、当該技術分野で認識されているヌクレオチド及び/またはヌクレオシドの糖、骨格、または核酸塩基部分での修飾が挙げられ得る。
【0105】
いくつかの実施形態では、本開示の天然に存在する修飾ヌクレオチドまたはヌクレオチドは、当該技術分野で一般に知られているかまたは認識されているものである。そのような天然に存在する修飾ヌクレオチド及びヌクレオチドの非限定的な例は、とりわけ、広く認識されているMODOMICSデータベースに見出すことができる。
【0106】
いくつかの実施形態では、本開示の非天然の修飾ヌクレオチドまたはヌクレオシドは、当該技術分野で一般的に公知であるか、または認識されているものである。このような天然には存在しない修飾ヌクレオチド及びヌクレオシドの非限定的な例は、とりわけ、公開された米国特許出願番号PCT/US2012/058519、PCT/US2013/075177、PCT/US2014/058897、PCT/US2014/058891、PCT/US2014/070413、PCT/US2015/36773、PCT/US2015/36759、PCT/US2015/36771、またはPCT/IB2017/051367(これらの全てが参照により本明細書に援用される)に見出すことができる。
【0107】
したがって、本開示の核酸(例えば、DNA核酸及びRNA核酸、例えば、mRNA核酸)は、標準的なヌクレオチド及びヌクレオシド、天然に存在するヌクレオチド及びヌクレオシド、天然には存在しないヌクレオチド及びヌクレオシド、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0108】
本開示の核酸(例えば、DNA核酸及びmRNA核酸などのRNA核酸)は、いくつかの実施形態では、様々な(2つ以上の)異なるタイプの標準ならびに/または修飾ヌクレオチド及びヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態では、核酸の特定の領域は、1つ、2つ、またはそれ以上の(任意選択で異なる)タイプの標準的及び/または修飾ヌクレオチド及びヌクレオシドを含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、細胞または生物に導入された修飾RNA核酸(例えば、修飾mRNA核酸)は、標準ヌクレオチド及びヌクレオシドを含む非修飾核酸と比較して、それぞれ、細胞または生物における分解の減少を示す。
【0110】
いくつかの実施形態では、細胞または生物体に導入された修飾RNA核酸(例えば、修飾mRNA核酸)は、標準ヌクレオチド及びヌクレオシドを含む非修飾核酸に比べて、それぞれ細胞または生物体において免疫原性の低減を呈し得る(例えば、生得的応答の低減)。
【0111】
いくつかの実施形態では、核酸(例えば、mRNA核酸などのRNA核酸)は、核酸の合成中または合成後に導入されて、所望の機能または特性を達成する非天然の修飾ヌクレオチドを含む。修飾は、ヌクレオチド間結合、プリンもしくはピリミジン塩基、または糖に存在し得る。修飾は、化学合成により導入されてもよく、または鎖の末端もしくは鎖の他の箇所にあるポリメラーゼ酵素により、導入されてもよい。核酸の任意の領域を化学的に修飾してもよい。
【0112】
本開示は、核酸(例えば、RNA核酸(例えば、mRNA核酸))の修飾ヌクレオシド及びヌクレオチドを提供する。「ヌクレオシド」とは、糖分子(例えば、ペントースもしくはリボース)またはその誘導体を、有機塩基(例えば、プリンもしくはピリミジン)またはその誘導体(本明細書では「核酸塩基」とも呼ばれる)と組み合わせて含む化合物を指す。「ヌクレオチド」とは、リン酸基を含むヌクレオシドを指す。修飾ヌクレオチドは、任意の有用な方法によって(例えば、化学的に、酵素的に、または組換え的に)合成して、1つ以上の修飾または非天然ヌクレオシドを含めてもよい。核酸は、連結されたヌクレオシドの領域(複数可)を含んでもよい。かかる領域は、可変骨格結合を有し得る。この結合は、標準的なホスホジエステル結合であり得、この場合、この核酸はヌクレオチドの領域を含む。
【0113】
修飾ヌクレオチド塩基対合は、標準的アデノシン-チミン、アデノシン-ウラシル、またはグアノシン-シトシン塩基対だけでなく、非標準的または修飾塩基を含むヌクレオチド及び/または修飾ヌクレオチド間で形成される塩基対も包含し、このとき、水素結合供与体及び水素結合受容体の配置により、例えば、少なくとも1つの化学的修飾を有する核酸内で、非標準的塩基と標準的塩基との間、または2つの相補的な非標準的塩基構造間の水素結合が可能となる。このような非標準的塩基対合の一例は、修飾ヌクレオチドイノシンとアデニン、シトシン、またはウラシルとの間の塩基対合である。塩基/糖またはリンカーの任意の組合せを本開示のポリヌクレオチドに組み込んでもよい。
【0114】
いくつかの実施形態では、核酸(例えば、mRNA核酸などのRNA核酸)中の修飾された核酸塩基は、1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)、1-エチル-シュードウリジン(e1ψ)、5-メトキシ-ウリジン(mo5U)、5-メチル-シチジン(m5C)、及び/またはシュードウリジン(ψ)を含む。いくつかの実施形態では、核酸(例えば、mRNA核酸などのRNA核酸)中の修飾された核酸塩基は、5-メトキシメチルウリジン、5-メチルチオウリジン、1-メトキシメチルシュードウリジン、5-メチルシチジン及び/または5-メトキシシチジンを含む。いくつかの実施形態では、ポリリボヌクレオチドは、前述の任意の修飾核酸塩基(限定されるものではないが、化学修飾を含む)のうちの少なくとも2つ(例えば、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上)の組合せを含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、本開示のmRNAは、核酸の1つ以上または全てのウリジン位置に1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)置換を含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、本開示のmRNAは、核酸の1つ以上または全てのウリジン位置に1-メチルシュードウリジン(m1ψ)置換、及び核酸の1つ以上または全てのシチジン位置に5-メチルシチジン置換を含む。
【0117】
いくつかの実施形態では、本開示のmRNAは、核酸の1つ以上または全てのウリジン位置にシュードウリジン(ψ)置換を含む。
【0118】
いくつかの実施形態では、本開示のmRNAは、核酸の1つ以上または全てのウリジン位置にシュードウリジン(ψ)置換、及び核酸の1つ以上または全てのシチジン位置に5-メチルシチジン置換を含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、本開示のmRNAは、核酸の1つ以上または全てのウリジン位置にウリジンを含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、mRNAは、特定の修飾について一様に修飾される(例えば、完全に修飾される、配列全体にわたり修飾される)。例えば、核酸は1-メチル-シュードウリジンで一様に修飾されてもよく、これは、mRNA配列内の全てのウリジン残基が1-メチル-シュードウリジンで置き換えられることを意味する。同様に、核酸は、修飾残基(例えば、上記の残基)で置き換えることにより、配列内に存在する任意のタイプのヌクレオシド残基について一様に修飾されてもよい。
【0121】
本開示の核酸は、分子の全長に沿って部分的に修飾されても、または完全に修飾されてもよい。例えば、本開示の核酸内、またはその所定の配列領域内(例えば、ポリ(A)テールを含むまたは除くmRNA内)で、1つ以上または全てまたは所与のタイプのヌクレオチド(例えば、プリンもしくはピリミジン、またはA、G、U、Cのいずれか1つ以上もしくは全て)が一様に修飾されてもよい。いくつかの実施形態では、本開示の核酸(またはその配列領域)内の全てのヌクレオチドXが、修飾ヌクレオチドであり、Xは、ヌクレオチドA、G、U、Cのいずれか1つであってもよく、または以下の組合せA+G、A+U、A+C、G+U、G+C、U+C、A+G+U、A+G+C、G+U+C、もしくはA+G+Cのいずれか1つであってもよい。
【0122】
核酸は、約1%~約100%の修飾ヌクレオチド(全体的なヌクレオチド含量に関して、または1つ以上のタイプのヌクレオチド(すなわち、A、G、U、もしくはCのいずれか1つ以上)に関して)、または任意の範囲のパーセンテージ(例えば、1%~20%、1%~25%、1%~50%、1%~60%、1%~70%、1%~80%、1%~90%、1%~95%、10%~20%、10%~25%、10%~50%、10%~60%、10%~70%、10%~80%、10%~90%、10%~95%、10%~100%、20%~25%、20%~50%、20%~60%、20%~70%、20%~80%、20%~90%、20%~95%、20%~100%、50%~60%、50%~70%、50%~80%、50%~90%、50%~95%、50%~100%、70%~80%、70%~90%、70%~95%、70%~100%、80%~90%、80%~95%、80%~100%、90%~95%、90%~100%、及び95%~100%)を含み得る。任意の残りのパーセンテージが、非修飾A、G、U、またはCの存在によって説明されることが理解されよう。
【0123】
mRNAは、1%以上100%までの修飾ヌクレオチド、または任意の範囲のパーセンテージ(例えば、少なくとも5%の修飾ヌクレオチド、少なくとも10%の修飾ヌクレオチド、少なくとも25%の修飾ヌクレオチド、少なくとも50%の修飾ヌクレオチド、少なくとも80%の修飾ヌクレオチド、もしくは少なくとも90%の修飾ヌクレオチド)を含み得る。例えば、核酸は、修飾ピリミジン(例えば、修飾ウラシルまたはシトシン)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、核酸内のウラシルの少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%が、修飾ウラシル(例えば、5-置換ウラシル)で置き換えられる。修飾ウラシルは、単一の固有の構造を有する化合物で置き換えられてもよいし、または異なる構造(例えば、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の固有の構造)を有する複数の化合物で置き換えられてもよい。いくつかの実施形態では、核酸内のシトシンの少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%が、修飾シトシン(例えば、5-置換シトシン)で置き換えられる。修飾シトシンは、単一の固有の構造を有する化合物で置き換えられてもよいし、または異なる構造(例えば、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の固有の構造)を有する複数の化合物で置き換えられてもよい。
【0124】
非翻訳領域(UTR)
本開示のmRNAは、非翻訳領域として作用または機能する1つ以上の領域または部分を含み得る。mRNAが少なくとも1つの目的抗原をコードするように設計されている場合、核酸はこれらの非翻訳領域(UTR)のうちの1つ以上を含み得る。核酸の野生型非翻訳領域は、転写されるが翻訳はされない。mRNAでは、5’UTRは転写開始点で開始し、開始コドンまで続くが、開始コドンは含まない。一方、3’UTRは終止コドンの直後から開始して転写終結シグナルまで続く。UTRが核酸分子の安定性及び翻訳に関して調節的役割を担っていることについてのエビデンスが増えている。UTRの調節機能は、特に分子の安定性を高めるために、本開示のポリヌクレオチドに組み込むことができる。また、転写産物が望ましくない臓器部位に誤って向けられた場合に備え、転写産物の下方調節の制御を確保するための特定の機能も組み込むことができる。様々な5’UTR及び3’UTR配列が公知であり、当該技術分野で利用可能である。
【0125】
5’UTRは、開始コドン(リボソームによって翻訳されるmRNA転写産物の最初のコドン)からすぐ上流(5’)にあるmRNAの領域である。5’UTRはタンパク質をコードしない(ノンコーディングである)。天然5’UTRは、翻訳開始で役割を果たす機能を有する。それらは、リボソームが多くの遺伝子の翻訳を開始するプロセスに関与することが一般的に知られているKozak配列のようなシグネチャーを有する。Kozak配列は、コンセンサスCCR(A/G)CCAUGG(配列番号29)を有し、Rは開始コドン(AUG)の3塩基上流のプリン(アデニンまたはグアニン)であり、この後に別の「G」が続く。5’UTRはまた、伸長因子の結合に関与する二次構造を形成することも知られている。
【0126】
本開示のいくつかの実施形態では、5’UTRは、異種UTRであり、すなわち、異なるORFに関連する自然界で見出されるUTRである。別の実施形態では、5’UTRは合成UTRであり、すなわち、自然界には存在しない。合成UTRとしては、その特性を改善する(例えば、遺伝子発現を増大する)ために変異させたUTR、及び完全に合成のUTRが挙げられる。例示的な5’UTRとしては、Xenopusまたはヒト由来のa-グロビンまたはb-グロビン(米国特許第8278063号、同第9012219号)、ヒトシトクロムb-245 aポリペプチド、及びヒドロキシステロイド(17b)デヒドロゲナーゼ、及びタバコエッチウイルス(米国特許第8278063号、同第9012219号)が挙げられる。CMV早初期1(IE1)遺伝子(米国特許出願公開第20140206753号、WO2013/185069)、配列GGGAUCCUACC(配列番号30)(WO2014144196)も使用してもよい。別の実施形態では、TOP遺伝子の5’UTRは、5’TOPモチーフ(オリゴピリミジントラクト)が欠如したTOP遺伝子の5’UTRであり(例えば、WO/2015101414、WO/2015101415、WO/2015/062738、WO2015024667、WO2015024667;リボソームタンパク質ラージ32(L32)遺伝子に由来する5’UTRエレメント(WO/2015101414、WO2015101415、WO/2015/062738)、ヒドロキシステロイド(17-β)デヒドロゲナーゼ4遺伝子(HSD17B4)の5’UTRに由来する5’UTRエレメント(WO2015024667)、またはATP5A1の5’UTRに由来する5’UTRエレメント(WO2015024667)が使用され得る。いくつかの実施形態では、5’UTRの代わりに内部リボソーム進入部位(IRES)を使用する。
【0127】
いくつかの実施形態では、本開示の5’UTRは、配列番号3及び配列番号4から選択される配列を含む。
【0128】
3’UTRは、終止コドン(翻訳終了をシグナル伝達するmRNA転写産物のコドン)のすぐ下流(3’)にあるmRNAの領域である。3’UTRはタンパク質をコードしない(ノンコーディングである)。天然または野生型の3’UTRには、アデノシン及びウリジンのストレッチが埋め込まれていることが知られている。これらのAUリッチシグネチャーは、高い回転率を有する遺伝子内で特に広く見られる。配列の特徴及び機能的特性に基づいて、AUリッチエレメント(ARE)は3つのクラスに分類することができ(Chen et al,1995)、クラスI AREは、Uリッチ領域内にAUUUAモチーフのいくつかの分散コピーを含む。C-Myc及びMyoDはクラスI AREを含む。クラスII AREは、2つ以上の重複するUUAUUUA(U/A)(U/A)(配列番号31)九量体を有する。このタイプのAREを含む分子としては、GM-CSF及びTNF-aが挙げられる。クラスIII AREはそれほど十分には定義されていない。これらのUリッチ領域は、AUUUAモチーフを含まない。c-Jun及びMyogeninはこのクラスで十分に研究されている2つの例である。AREに結合するほとんどのタンパク質はメッセンジャーを不安定にすることが公知であり、一方ELAVファミリーのメンバー、とりわけHuRはmRNAの安定性を増大させることが実証されている。HuRは、3つ全てのクラスのAREに結合する。HuR特異的結合部位を核酸分子の3’UTRに組み込むと、HuR結合が生じ、これによって、in vivoでのメッセージが安定する。
【0129】
3’UTR AUリッチエレメント(ARE)の導入、除去、または修飾を使用して、本開示の核酸(例えば、RNA)の安定性を調節してもよい。特定の核酸を操作する場合、AREの1つ以上のコピーを導入して、本開示の核酸の安定性を低下させ、それによって翻訳を抑制し、得られるタンパク質の産生を減少し得る。同様に、AREを特定して除去または変異させることで、細胞内の安定性を増大し、これによって、結果として得られるタンパク質の翻訳及び産生を増大し得る。トランスフェクション実験は、本開示の核酸を使用して、関連する細胞株で実施し得、タンパク質産生は、トランスフェクション後の様々な時点でアッセイされ得る。例えば、細胞にさまざまなAREエンジニアリング分子をトランスフェクトし、ELISAキットを関連タンパク質に使用して、トランスフェクションの6時間後、12時間後、24時間後、48時間後、及び7日後に生成されたタンパク質をアッセイしてもよい。
【0130】
3’UTRは、異種であっても合成であってもよい。3’UTRについては、グロビンUTR(Xenopus β-グロビンUTR及びヒトβ-グロビンUTRを含む)が当該技術分野で公知である(米国特許第8278063号、同第9012219号、米国特許出願公開第20110086907号)。2つの連続したヒトβグロビン3’UTRをヘッドトゥーテールでクローニングすることにより、いくつかの細胞タイプでの安定性が強化された修飾βグロビンをコードする核酸(例えば、mRNA)が開発されており、当該技術分野で周知である(米国特許出願公開第2012/0195936号、WO2014/071963)。さらに、a2-グロビン、a1-グロビン、UTR及びこれらの変異体も当該技術分野で公知である(WO2015101415、WO2015024667)。非特許文献においてmRNAで説明されている他の3’UTRとしては、CYBA(Ferizi et al.,2015)及びアルブミン(Thess et al.,2015)が挙げられる。他の例示的な3’UTRとしては、ウシまたはヒト成長ホルモン(野生型または修飾)(WO2013/185069、米国特許出願公開第20140206753号、WO2014152774)、ウサギβグロビン及びB型肝炎ウイルス(HBV)のUTRが挙げられ、αグロビン3’UTR及びウイルスVEEV 3’UTR配列も当該技術分野で公知である。いくつかの実施形態では、配列UUUGAAUU(WO2014144196)が使用される。いくつかの実施形態では、ヒト及びマウスリボソームタンパク質の3’UTRが使用される。他の例としては、rps9 3’UTR(WO2015101414)、FIG4(WO2015101415)、及びヒトアルブミン7(WO2015101415)が挙げられる。
【0131】
いくつかの実施形態では、本開示の3’UTRは、配列番号5及び配列番号6から選択される配列を含む。
【0132】
当業者であれば、異種または合成の5’UTRが、任意の所望の3’UTR配列と共に使用され得ることを理解するであろう。例えば、異種5’UTRを、合成3’UTRと、異種3”UTRと共に使用してもよい。
【0133】
非UTR配列はまた、核酸内の領域またはサブ領域として使用されてもよい。例えば、イントロンまたはイントロン配列の一部を本開示の核酸の領域に組み込んでもよい。イントロン配列を組み込むと、タンパク質の産生と核酸の発現レベルを増大し得る。
【0134】
特徴の組合せを隣接する領域に含めてもよく、他の特徴の中に含めてもよい。例えば、ORFには、強力なKozak翻訳開始シグナルを含み得る5’UTR及び/またはポリAテールを鋳型的に付加するためのオリゴ(dT)配列を含み得る3’UTRが隣接し得る。5’UTRは、同じ及び/または異なる遺伝子からの第1のポリヌクレオチドフラグメント及び第2のポリヌクレオチドフラグメントを含み得る(例えば、参照によりその全体が本明細書に援用される、米国特許出願公開第20100293625号及びPCT/US2014/069155に記載の5’UTR)。
【0135】
任意の遺伝子由来の任意のUTRが核酸の領域に組み込まれ得ることを理解されたい。さらに、任意の公知の遺伝子の複数の野生型UTRを利用してもよい。野生型領域のバリアントではない人工UTRを提供することも本開示の範囲内である。これらのUTRまたはその一部は、それらが選択された転写産物と同じ方向に配置してもよく、または方向もしくは位置を変更してもよい。したがって、5’または3’UTRは、反転、短縮、延長されても、または1つ以上の他の5’UTRまたは3’UTRで作成されてもよい。本明細書で使用される場合、UTR配列に関連する「変更された」という用語は、UTRが参照配列に関連して何らかの方法で変更されたことを意味する。例えば、3’UTRまたは5’UTRは、上記のように配向もしくは位置の変化によって野生型またはネイティブUTRと比較して変化されてもよいし、または追加のヌクレオチドの包含、ヌクレオチドの欠失、ヌクレオチドの交換または転位によって変化されてもよい。「変更された」UTR(3’または5’)を生成するこれらの変更のいずれかは、バリアントUTRを含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、5’UTRまたは3’UTRなどの二重、三重または四重UTRを使用してもよい。本明細書で使用される場合、「二重」UTRとは、同じUTRの2つのコピーが直列または実質的に直列のいずれかでコードされているUTRである。例えば、二重ベータグロビン3’UTRは、米国特許公開第20100129877号に記載されているように使用してもよく、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0137】
パターン化されたUTRを有することもまた、本開示の範囲内である。本明細書で使用される場合「パターン化UTR」とは、ABABABまたはAABBAABBAABBまたはABCABCABCまたはそのバリアントが1回、2回、または3回を超えて繰り返されるような繰り返しパターンまたは交互のパターンを反映するUTRである。これらのパターンでは、各文字A、B、またはCは、ヌクレオチドレベルで異なるUTRを表す。
【0138】
いくつかの実施形態では、隣接する領域は、そのタンパク質が共通の機能、構造、特徴、または特性を共有する転写物のファミリーから選択される。例えば、目的のポリペプチドは、特定の細胞、組織、または発生中のある時点で発現されるタンパク質のファミリーに属し得る。任意のこれらの遺伝子由来のUTRを、同じまたは異なるタンパク質ファミリーの任意の他のUTRと交換して、新しいポリヌクレオチドを作成してもよい。本明細書で使用される場合、「タンパク質のファミリー」とは、少なくとも1つの機能、構造、特徴、局在化、起源、または発現パターンを共有する2つ以上の目的のポリペプチドのグループを指すために最も広い意味で使用される。
【0139】
非翻訳領域には、翻訳エンハンサーエレメント(TEE)も含まれてもよい。非限定的な例として、TEEとしては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願第20090226470号に記載されているTEE、及び当該技術分野で公知のTEEを含み得る。
【0140】
RNAのin vitro転写
本明細書に記載のポリヌクレオチドをコードするcDNAは、in vitro転写(IVT)システムを用いて転写され得る。RNAのin vitro転写は当該技術分野で公知であり、国際公開第WO/2014/152027号(その全体が参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【0141】
いくつかの実施形態では、RNA転写産物は、RNA転写産物を生成するためのin vitro転写反応で、増幅されていない直鎖化されたDNA鋳型を用いて生成される。いくつかの実施形態では、鋳型DNAは単離されたDNAである。いくつかの実施形態では、鋳型DNAはcDNAである。いくつかの実施形態では、cDNAは、RNAポリヌクレオチド、例えば、限定されるものではないが、呼吸器系ウイルスのmRNAの逆転写によって形成される。いくつかの実施形態では、細胞、例えば、細菌細胞、例えば、E.coli、例えば、DH-1細胞に、プラスミドDNA鋳型を用いてトランスフェクションする。いくつかの実施形態では、トランスフェクトされた細胞を、プラスミドDNAを複製するために培養し、次いで単離及び精製する。いくつかの実施形態では、DNA鋳型は、RNAポリメラーゼプロモーター、例えば、目的遺伝子の5’側に位置し、目的遺伝子に作用可能に連結されているT7プロモーターを含む。
【0142】
いくつかの実施形態では、in vitro転写鋳型は、5’非翻訳(UTR)領域をコードし、オープンリーディングフレームを含み、3’UTR及びポリ(A)テールをコードする。in vitro転写鋳型の特定の核酸配列組成及び長さは、鋳型によってコードされるmRNAに依存する。
【0143】
「5’非翻訳領域」(UTR)とは、ポリペプチドをコードしない開始コドン(すなわち、リボソームによって翻訳されるmRNA転写産物の最初のコドン)からすぐ上流(すなわち5’)にあるmRNAの領域を指す。RNA転写産物が生成されている場合、5’UTRはプロモーター配列を含んでもよい。このようなプロモーター配列は、当該技術分野で公知である。本開示のワクチンにはこのようなプロモーター配列が存在しないことを理解されたい。
【0144】
「3’非翻訳領域」(UTR)とは、ポリペプチドをコードしない終止コドン(すなわち、翻訳終了をシグナル伝達するmRNA転写産物のコドン)のからすぐ下流(すなわち3’)にあるmRNAの領域を指す。
【0145】
「オープンリーディングフレーム」とは、開始コドン(例えば、メチオニン(ATG))で始まり、終止コドン(例えば、TAA、TAG、もしくはTGA)で終わるDNAの連続的なストレッチであり、ポリペプチドをコードする。
【0146】
「ポリ(A)テール」とは、複数の連続したアデノシン一リン酸を含む3’UTRの下流、例えば、すぐ下流(すなわち、3’)にあるmRNAの領域である。ポリ(A)テールは、10~300個のアデノシン一リン酸を含み得る。例えば、ポリ(A)テールは、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、または300個のアデノシン一リン酸を含み得る。いくつかの実施形態では、ポリ(A)テールは、50~250個のアデノシン一リン酸を含む。関連する生物学的環境(例えば、細胞内、in vivo)において、ポリ(A)テールは、(例えば、細胞質での)酵素分解からmRNAを保護し、転写終結、及び/または核からのmRNAの輸送及び翻訳で補助するように機能する。
【0147】
いくつかの実施形態では、核酸は200~3000ヌクレオチドを含む。例えば、核酸は、200~500、200~1000、200~1500、200~3000、500~1000、500~1500、500~2000、500~3000、1000~1500、1000~2000、1000~3000、1500~3000、または2000~3000ヌクレオチドを含み得る。
【0148】
in vitroの転写系は、典型的には、転写緩衝液、ヌクレオチド三リン酸(NTP)、RNase阻害剤、及びポリメラーゼを含む。
【0149】
NTPは、社内で製造されてもよく、供給業者から選択されてもよく、または本明細書に記載されるように合成されてもよい。NTPは、限定するものではないが、天然及び非天然(改変)NTPを含む、本明細書に記載されているものから選択されてもよい。
【0150】
本開示の方法では、多数のRNAポリメラーゼまたはバリアントを使用してもよい。ポリメラーゼは、ファージRNAポリメラーゼ、例えば、T7 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼ、SP6 RNAポリメラーゼ及び/または変異型ポリメラーゼ、例えば、限定するものではないが、化学的に修飾された核酸及び/またはヌクレオチドを含む修飾された核酸及び/または修飾ヌクレオチドを組み込むことができるポリメラーゼから選択され得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態は、DNaseの使用を除外している。
【0151】
いくつかの実施形態では、RNA転写産物は、酵素キャッピングを介しキャッピングされる。いくつかの実施形態では、RNAは、5’末端キャップ、例えば、7mG(5’)ppp(5’)NlmpNpを含む。
【0152】
化学合成
固相化学合成。本開示の核酸は、固相技術を使用して全体的または部分的に製造してもよい。核酸の固相化学合成は、分子が固体支持体に固定化され、反応物溶液中で段階的に合成される自動化された方法である。固相合成は、核酸配列への化学修飾の部位特異的導入に役立つ。
【0153】
液相化学合成。モノマービルディングブロックの連続添加による本開示の核酸の合成は、液相で実施され得る。
【0154】
合成法の組み合わせ。上記で考察した合成方法には、それぞれ独自の利点及び制限がある。これらの方法を組み合わせて制限を克服する試みが行われてきた。このような組み合わせ方法もまた本開示の範囲内である。固相または液相の化学合成を酵素的ライゲーションと組み合わせて使用すると、化学合成だけでは得られない長鎖核酸が効率的に生成される。
【0155】
核酸領域またはサブ領域のライゲーション
リガーゼによる核酸のアセンブリもまた使用され得る。DNAまたはRNAリガーゼは、ホスホジエステル結合の形成を通じて、ポリヌクレオチド鎖の5’及び3’末端の分子間ライゲーションを促進する。キメラポリヌクレオチドなどの核酸及び/または環状核酸は、1つ以上の領域またはサブ領域のライゲーションによって調製され得る。DNAフラグメントは、リガーゼ触媒反応によって結合され、さまざまな機能を有する組換えDNAを作成し得る。一方は5’ホスホリル基を有し、もう一方は遊離3’ヒドロキシル基を有する、2つのオリゴデオキシヌクレオチドがDNAリガーゼの基質として機能する。
【0156】
精製
本明細書に記載の核酸の精製には、限定するものではないが、核酸のクリーンアップ、品質保証及び品質管理が含まれ得る。クリーンアップは、当該技術分野で公知の方法、例えば、限定するものではないが、AGENCOURT(登録商標)ビーズ(Beckman Coulter Genomics,Danvers,MA)、poly-Tビーズ、LNA(商標)オリゴTキャプチャープローブ(EXIQON(登録商標)Inc,Vedbaek,Denmark)またはHPLCベースの精製方法、例えば、限定するものではないが、強陰イオン交換HPLC、弱陰イオン交換HPLC、逆相HPLC(RP-HPLC)、及び疎水性相互作用HPLC(HIC-HPLC)などで実施され得る。「精製された核酸」などの核酸に関して使用される場合の「精製された」という用語は、少なくとも1つの汚染物質から分離されたものを指す。「汚染物質、混入物」とは、別の物質を不適合、不純、または劣悪にする任意の物質である。したがって、精製された核酸(例えば、DNA及びRNA)は、それが自然界に見られるものとは異なる形態もしくは設定で、またはそれを処理もしくは精製方法に供する前に存在していたものとは異なる形態もしくは設定で存在する。
【0157】
品質保証及び/または品質管理チェックは、限定するものではないが、ゲル電気泳動、UV吸光度、または分析用HPLCなどの方法を使用して実施され得る。
【0158】
いくつかの実施形態では、核酸は、逆転写酵素-PCRを含むがこれに限定されない方法によって配列決定され得る。
【0159】
定量化
いくつかの実施形態では、本開示の核酸は、エクソソームにおいて、または1つ以上の体液に由来する場合に定量化され得る。体液には、末梢血、血清、血漿、腹水、尿、脳脊髄液(CSF)、痰、唾液、骨髄、滑膜液、痰性体液、羊膜液、耳垢、母乳、気管支肺胞洗浄液、精液、前立腺液、カウパー液または尿道球腺液、汗、糞便、髪、涙、嚢胞液、胸膜及び腹水、心膜液、リンパ液、粥状液、乳び、胆汁、間質液、月経、膿汁、皮脂、嘔吐物、膣分泌物、粘膜分泌物、便水、膵液、副鼻腔からの洗浄液、気管支肺吸引液、胚盤葉腔液、及び臍帯血が挙げられる。あるいは、エクソソームは、肺、心臓、膵臓、胃、腸、膀胱、腎臓、卵巣、精巣、皮膚、結腸、乳房、前立腺、脳、食道、肝臓、及び胎盤からなる群より選択される器官から回収され得る。
【0160】
アッセイは、抗原特異的プローブ、サイトメトリー、qRT-PCR、リアルタイムPCR、PCR、フローサイトメトリー、電気泳動、質量分析、またはそれらの組み合わせを使用して実行してもよく、一方、エクソソームは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)法などの免疫組織化学的方法を使用して単離され得る。エクソソームは、サイズ排除クロマトグラフィー、密度勾配遠心分離、分画遠心分離、ナノメンブレン限外濾過、免疫吸着捕捉、アフィニティー精製、マイクロ流体分離、またはそれらの組み合わせによっても単離され得る。
【0161】
これらの方法により、研究者は、残っているかまたは送達された核酸のレベルをリアルタイムでモニターする能力が得られる。本開示の核酸は、いくつかの実施形態では、構造的または化学的修飾に起因して内因性形態とは異なるので、これが可能である。
【0162】
いくつかの実施形態では、核酸は、限定するものではないが、紫外可視分光法(UV/Vis)などの方法を使用して定量化され得る。UV/Vis分光計の非限定的な例は、NANODROP(登録商標)分光計(ThermoFisher,Waltham,MA)である。定量化された核酸を分析して、核酸が適切なサイズであるか否かを決定し、核酸の分解が起こっていないことを確認してもよい。核酸の分解は、限定するものではないが、アガロースゲル電気泳動、HPLCベースの精製方法、例えば、限定するものではないが、強陰イオン交換HPLC、弱陰イオン交換HPLC、逆相HPLC(RP- HPLC)、及び疎水性相互作用HPLC(HIC-HPLC)、液体クロマトグラフィー-質量分析(LCMS)、キャピラリー電気泳動(CE)及びキャピラリーゲル電気泳動(CGE)などの方法によって確認され得る。
【0163】
脂質ナノ粒子(LNP)
いくつかの実施形態では、本開示のRNA(例えば、mRNA)は、脂質ナノ粒子(LNP)中に製剤化される。脂質ナノ粒子は、典型的には、イオン化可能なカチオン性脂質、非カチオン性脂質、ステロール、及びPEG脂質構成要素を、目的の核酸カーゴと共に含む。本開示の脂質ナノ粒子は、当該技術分野で一般的に公知である構成要素、組成物、及び方法(例えば、全てその全体が参照により本明細書に援用される、PCT/US2016/052352;PCT/US2016/068300;PCT/US2017/037551;PCT/US2015/027400;PCT/US2016/047406;PCT/US2016000129;PCT/US2016/014280;PCT/US2016/014280;PCT/US2017/038426;PCT/US2014/027077;PCT/US2014/055394;PCT/US2016/52117;PCT/US2012/069610;PCT/US2017/027492;PCT/US2016/059575及びPCT/US2016/069491を参照)を用いて生成され得る。
【0164】
本開示のワクチンは、通常は、脂質ナノ粒子内に製剤化される。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、少なくとも1つのイオン化可能なカチオン性脂質、少なくとも1つの非カチオン性脂質、少なくとも1つのステロール、及び/または少なくとも1つのポリエチレングリコール(PEG)修飾脂質を含む。
【0165】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、20~60mol%のイオン化可能なカチオン性脂質を含む。例えば、脂質ナノ粒子は、20~50mol%、20~40mol%、20~30mol%、30~60mol%、30~50mol%、30~40mol%、40~60mol%、40~50mol%、または50~60mol%のイオン化可能なカチオン性脂質を含み得る。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、20mol%、30mol%、40mol%、50mol%、または60mol%のイオン化可能なカチオン性脂質を含む。
【0166】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、5~25mol%の非カチオン性脂質を含む。例えば、脂質ナノ粒子は、5~20mol%、5~15mol%、5~10mol%、10~25mol%、10~20mol%、10~25mol%、15~25mol%、15~20mol%、または20~25mol%の非カチオン性脂質を含み得る。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、5mol%、10mol%、15mol%、20mol%、または25mol%の非カチオン性脂質を含む。
【0167】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、25~55mol%のステロールを含む。例えば、脂質ナノ粒子は、25~50mol%、25~45mol%、25~40mol%、25~35mol%、25~30mol%、30~55mol%、30~50mol%、30~45mol%、30~40mol%、30~35mol%、35~55mol%、35~50mol%、35~45mol%、35~40mol%、40~55mol%、40~50mol%、40~45mol%、45~55mol%、45~50mol%、または50~55mol%のステロールを含み得る。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、25mol%、30mol%、35mol%、40mol%、45mol%、50mol%、または55mol%のステロールを含む。
【0168】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、0.5~15mol%のPEG修飾脂質を含む。例えば、脂質ナノ粒子は、0.5~10mol%、0.5~5mol%、1~15mol%、1~10mol%、1~5mol%、2~15mol%、2~10mol%、2~5mol%、5~15mol%、5~10mol%、または10~15mol%を含んでもよい。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、0.5mol%、1mol%、2mol%、3mol%、4mol%、5mol%、6mol%、7mol%、8mol%、9mol%、10mol%、11mol%、12mol%、13mol%、14mol%、または15mol%のPEG修飾脂質を含む。
【0169】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、20~60mol%のイオン化可能なカチオン性脂質、5~25mol%の非カチオン性脂質、25~55mol%のステロール、及び0.5~15mol%のPEG修飾脂質を含む。
【0170】
いくつかの実施形態では、本開示のイオン化可能なカチオン性脂質は、式(I)の化合物:
【化2】
またはその塩もしくは異性体を有し、式中、
は、C5-30アルキル、C5-20アルケニル、-R*YR”、-YR”、及び-R”M’R’からなる群より選択され、
及びRは、独立して、H、C1-14アルキル、C2-14アルケニル、-R*YR”、-Y-R”、及び-R*OR”からなる群より選択されるか、またはR及びRは、それらが結合している原子と一緒になって、複素環もしくは炭素環を形成し、
は、C3-6炭素環、-(CHQ、-(CHCHQR、-CHQR、-CQ(R)、及び非置換C1-6アルキルからなる群より選択され、ここで、Qは、炭素環、複素環、-OR、-O(CHN(R)、-C(O)OR、-OC(O)R、-CX、-CXH、-CXH、-CN、-N(R)、-C(O)N(R)、-N(R)C(O)R、-N(R)S(O)R、-N(R)C(O)N(R)、-N(R)C(S)N(R)、-N(R)R、-O(CHOR、-N(R)C(=NR)N(R)、-N(R)C(=CHR)N(R)、-OC(O)N(R)、-N(R)C(O)OR、-N(OR)C(O)R、-N(OR)S(O)R、-N(OR)C(O)OR、-N(OR)C(O)N(R)、-N(OR)C(S)N(R)、-N(OR)C(=NR)N(R)、-N(OR)C(=CHR)N(R)、-C(=NR)N(R)、-C(=NR)R、-C(O)N(R)OR、及び-C(R)N(R)C(O)ORから選択され、各nは、独立して、1、2、3、4、及び5から選択され、
各Rは、独立して、C1-3アルキル、C2-3アルケニル、及びHからなる群より選択され、
各Rは、独立して、C1-3アルキル、C2-3アルケニル、及びHからなる群より選択され、
M及びM’は、独立して、-C(O)O-、-OC(O)-、-C(O)N(R’)-、
-N(R’)C(O)-、-C(O)-、-C(S)-、-C(S)S-、-SC(S)-、-CH(OH)-、-P(O)(OR’)O-、-S(O)-、-S-S-、アリール基、及びヘテロアリール基から選択され、
は、C1-3アルキル、C2-3アルケニル、及びHからなる群より選択され、
は、C3-6炭素環及び複素環からなる群より選択され、
は、H、CN、NO、C1-6アルキル、-OR、-S(O)R、
-S(O)N(R)、C2-6アルケニル、C3-6炭素環及び複素環からなる群より選択され、
各Rは、独立して、C1-3アルキル、C2-3アルケニル、及びHからなる群より選択され、
各R’は、独立して、C1-18アルキル、C2-18アルケニル、-R*YR”、-YR”、及びHからなる群より選択され、
各R”は、独立して、C3-14アルキル及びC3-14アルケニルからなる群より選択され、
各R*は、独立して、C1-12アルキル及び
2-12アルケニルからなる群より選択され、
各Yは、独立して、C3-6炭素環であり、
各Xは、独立して、F、Cl、Br、及びIからなる群より選択され、
mは、5、6、7、8、9、10、11、12、及び13から選択される。
【0171】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物のサブセットとしては、Rが-(CHQ、-(CHCHQR、-CHQR、または-CQ(R)であるならば(i)nが1、2、3、4、もしくは5の場合、Qは-N(R)ではないか、または、(ii)nが1もしくは2の場合、Qは5、6、もしくは7員のヘテロシクロアルキルではない、化合物が挙げられる。
【0172】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物の別のサブセットとしては、
が、C5-30アルキル、C5-20アルケニル、-R*YR”、-YR”、及び-R”M’R’からなる群より選択され、
及びRが、独立して、H、C1~14アルキル、C2~14アルケニル、-R*YR”、-YR”、及び-R*OR”からなる群より選択されるか、またはR及びRが、それらが結合される原子と一緒になって、複素環もしくは炭素環を形成し、
が、C3~6炭素環、-(CHQ、-(CHCHQR、-CHQR、-CQ(R)、及び非置換C1-6アルキルからなる群より選択され、ここでQは、C3~6炭素環、N、O、及びSから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する5~14員のヘテロアリール、-OR、-O(CHN(R)、-C(O)OR、-OC(O)R、-CX、-CXH、-CXH、-CN、-C(O)N(R)、-N(R)C(O)R、-N(R)S(O)R、-N(R)C(O)N(R)、-N(R)C(S)N(R)、-CRN(R)C(O)OR、-N(R)R、--O(CHOR、-N(R)C(=NR)N(R)、-N(R)C(=CHR)N(R)、-OC(O)N(R)、-N(R)C(O)OR、-N(OR)C(O)R、-N(OR)S(O)R、-N(OR)C(O)OR,-N(OR)C(O)N(R)、-N(OR)C(S)N(R)、-N(OR)C(=NR)N(R)、-N(OR)C(=CHR)N(R)、-C(=NR)N(R)、-C(=NR)R、-C(O)N(R)OR、ならびにN、O、及びSから選択される1つ以上のヘテロ原子を有し、オキソ(=O)、OH、アミノ、モノアルキルアミノもしくはジアルキルアミノ及びC1-3アルキルから選択される1つ以上の置換基で置換される5~14員のヘテロシクロアルキルから選択され、各nは、独立して、1、2、3、4、及び5から選択され、
各Rが、独立して、C1-3アルキル、C2-3アルケニル、及びHからなる群より選択され、
各Rが、独立して、C1-3アルキル、C2-3アルケニル、及びHからなる群より選択され、
M及びM’が独立して 、-C(O)O-、-OC(O)-、-C(O)N(R’)-、-N(R’)C(O)-、-C(O)-、-C(S)-、-C(S)S-、-SC(S)-、-CH(OH)-、-P(O)(OR’)O-、-S(O)-、-S-S-、アリール基、及びヘテロアリール基から選択され、
が、C1-3アルキル、C2-3アルケニル、及びHからなる群より選択され、
が、C3-6炭素環及び複素環からなる群より選択され、
が、H、CN、NO、C1-6アルキル、-OR、-S(O)R、
-S(O)N(R)、C2-6アルケニル、C3-6炭素環及び複素環からなる群より選択され、
各Rが、独立して、C1-3アルキル、C2-3アルケニル、及びHからなる群より選択され、
各R’が、独立して、C1~18アルキル、C2~18アルケニル、-R*YR”、-YR”、及びHからなる群より選択され、
各R”が、独立して、C3-14アルキル及びC3-14アルケニルからなる群より選択され、
各R*が、独立して、C1-12アルキル、及びC2-12アルケニルからなる群より選択され、
各Yが、独立して、C3-6炭素環であり、
各Xが、独立して、F、Cl、Br、及びIからなる群より選択され、
mが、5、6、7、8、9、10、11、12、及び13から選択される、化合物、
またはそれらの塩もしくは異性体が挙げられる。
【0173】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物の別のサブセットとしては、
が、C5-30アルキル、C5-20アルケニル、-R*YR”、-YR”、及び-R”M’R’からなる群より選択され、
及びRが、独立して、H、C1~14アルキル、C2~14アルケニル、-R*YR”、-YR”、及び-R*OR”からなる群より選択されるか、またはR及びRが、それらが結合される原子と一緒になって、複素環もしくは炭素環を形成し、
が、C3-6炭素環、-(CHQ、-(CHCHQR、-CHQR、-CQ(R)、及び非置換C1-6アルキルからなる群より選択され、ここでQはC3-6炭素環、N、O、及びSから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する5~14員のヘテロアリール、-OR、-O(CHN(R)、-C(O)OR、-OC(O)R、-CX、-CXH、-CXH、-CN、-C(O)N(R)、-N(R)C(O)R、-N(R)S(O)R、-N(R)C(O)N(R)、-N(R)C(S)N(R)、-CRN(R)C(O)OR、-N(R)R、-O(CHOR、-N(R)C(=NR)N(R)、-N(R)C(=CHR)N(R)、-OC(O)N(R)、-N(R)C(O)OR、-N(OR)C(O)R、-N(OR)S(O)R、-N(OR)C(O)OR、-N(OR)C(O)N(R)、-N(OR)C(S)N(R)、-N(OR)C(=NR)N(R)、-N(OR)C(=CHR)N(R)、-C(=NR)R、-C(O)N(R)OR、及び-C(=NR)N(R)から選択され、及び各nが、1、2、3、4、及び5から独立して選択され、及びQが5~14員の複素環であり、(i)Rが-(CHQであり、nが1または2である場合、または(ii)Rが-(CHCHQRであり、nが1である場合、または(iii)Rが-CHQR及び-CQ(R)である場合、Qは5~14員のヘテロアリールまたは8~14員の複素環式アルキルであり、
各Rが、独立して、C1-3アルキル、C2-3アルケニル、及びHからなる群より選択され、
各Rが、独立して、C1-3アルキル、C2-3アルケニル、及びHからなる群より選択され、
M及びM’が独立して、-C(O)O-、-OC(O)-、-C(O)N(R’)-、-N(R’)C(O)-、-C(O)-、-C(S)-、-C(S)S-、-SC(S)-、-CH(OH)-、-P(O)(OR’)O-、-S(O)-、-S-S-、アリール基、及びヘテロアリール基から選択され、
が、C1-3アルキル、C2-3アルケニル、及びHからなる群より選択され、
が、C3-6炭素環及び複素環からなる群より選択され、
が、H、CN、NO、C1-6アルキル、-OR、-S(O)R、-S(O)N(R)、C2-6アルケニル、C3-6炭素環及び複素環からなる群より選択され、
各Rが、独立して、C1-3アルキル、C2-3アルケニル、及びHからなる群より選択され、
各R’が、独立して、C1~18アルキル、C2~18アルケニル、-R*YR”、-YR”、及びHからなる群より選択され、
各R”が、独立して、C3-14アルキル及びC3-14アルケニルからなる群より選択され、
各R*が、独立して、C1-12アルキル、及びC2-12アルケニルからなる群より選択され、
各Yが、独立して、C3-6炭素環であり、
各Xが、独立して、F、Cl、Br、及びIからなる群より選択され、
mが、5、6、7、8、9、10、11、12、及び13から選択される、化合物、
またはそれらの塩もしくは異性体が挙げられる。
【0174】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物の別のサブセットとしては、
が、C5-30アルキル、C5-20アルケニル、-R*YR”、-YR”、及び-R”M’R’からなる群より選択され、
及びRが、独立して、H、C1~14アルキル、C2~14アルケニル、-R*YR”、-YR”、及び-R*OR”からなる群より選択されるか、またはR及びRが、それらが結合される原子と一緒になって、複素環もしくは炭素環を形成し、
が、C3~6炭素環、-(CHQ、-(CHCHQR、-CHQR、-CQ(R)、及び非置換C1-6アルキルからなる群より選択され、ここでQは、C3~6炭素環、N、O、及びSから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する5~14員のヘテロアリール、-OR、-O(CHN(R)、-C(O)OR、-OC(O)R、-CX、-CXH、-CXH、-CN、-C(O)N(R)、-N(R)C(O)R、-N(R)S(O)R、-N(R)C(O)N(R)、-N(R)C(S)N(R)、-CRN(R)C(O)OR、-N(R)R、--O(CHOR、-N(R)C(=NR)N(R)、-N(R)C(=CHR)N(R)、-OC(O)N(R)、-N(R)C(O)OR、
-N(OR)C(O)R、-N(OR)S(O)R、-N(OR)C(O)OR,-N(OR)C(O)N(R)、-N(OR)C(S)N(R)、-N(OR)C(=NR)N(R)、-N(OR)C(=CHR)N(R)、-C(=NR)R、-C(O)N(R)OR、及び-C(=NR)N(R)から選択され、各nは、独立して、1、2、3、4、及び5から選択され、
各Rが、独立して、C1-3アルキル、C2-3アルケニル、及びHからなる群より選択され、
各Rが、独立して、C1-3アルキル、C2-3アルケニル、及びHからなる群より選択され、
M及びM’が独立して-C(O)O-、-OC(O)-、-C(O)N(R’)-、-N(R’)C(O)-、-C(O)-、-C(S)-、-C(S)S-、-SC(S)-、-CH(OH)-、-P(O)(OR’)O-、-S(O)-、-S-S-、アリール基、及びヘテロアリール基から選択され、
が、C1-3アルキル、C2-3アルケニル、及びHからなる群より選択され、
が、C3-6炭素環及び複素環からなる群より選択され、
が、H、CN、NO、C1-6アルキル、-OR、-S(O)R、
-S(O)N(R)、C2-6アルケニル、C3-6炭素環及び複素環からなる群より選択され、
各Rが、独立して、C1-3アルキル、C2-3アルケニル、及びHからなる群より選択され、
各R’が、独立して、C1~18アルキル、C2~18アルケニル、-R*YR”、-YR”、及びHからなる群より選択され、
各R”が、独立して、C3-14アルキル及びC3-14アルケニルから選択され、
各R*が、独立して、C1-12アルキル、及びC2-12アルケニルからなる群より選択され、
各Yが、独立して、C3-6炭素環であり、
各Xが、独立して、F、Cl、Br、及びIからなる群より選択され、
mが、5、6、7、8、9、10、11、12、及び13から選択される、化合物、またはそれらの塩もしくは異性体が挙げられる。
【0175】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物の別のサブセットとしては、
が、C5-30アルキル、C5-20アルケニル、-R*YR”、-YR”、及び-R”M’R’からなる群より選択され、
及びRが、独立して、H、C2-14アルキル、C2-14アルケニル、-R*YR”、-Y-R”、及び-R*OR”からなる群より選択されるか、またはR及びRは、それらが結合している原子と一緒になって、複素環もしくは炭素環を形成し、
が-(CHQまたは-(CHCHQRであり、ここでQは-N(R)であり、nは3、4、及び5から選択され、
各Rが、独立して、C1-3アルキル、C2-3アルケニル、及びHからなる群より選択され、
各Rが、独立して、C1-3アルキル、C2-3アルケニル、及びHからなる群より選択され、
M及びM’が独立して、-C(O)O-、-OC(O)-、-C(O)N(R’)-、-N(R’)C(O)-、-C(O)-、-C(S)-、-C(S)S-、-SC(S)-、-CH(OH)-、-P(O)(OR’)O-、-S(O)-、-S-S-、アリール基及びヘテロアリール基から選択され;
が、C1-3アルキル、C2-3アルケニル、及びHからなる群より選択され、
各Rが、独立して、C1-3アルキル、C2-3アルケニル、及びHからなる群より選択され、
各R’が、独立して、C1~18アルキル、C2~18アルケニル、-R*YR”、-YR”、及びHからなる群より選択され、
各R”が、独立して、C3-14アルキル及びC3-14アルケニルからなる群より選択され;
各R* が、独立して、C1~12アルキル及びC1~12アルケニルからなる群より選択され、
各Yが、独立して、C3-6炭素環であり、
各Xが、独立して、F、Cl、Br、及びIからなる群より選択され、かつ
mが、5、6、7、8、9、10、11、12、及び13から選択される、化合物、
またはそれらの塩もしくは異性体が挙げられる。
【0176】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物の別のサブセットとしては、
が、C5-30アルキル、C5-20アルケニル、-R*YR”、-YR”、及び-R”M’R’からなる群より選択され、
及びRが、独立して、C1-14アルキル、C2-14アルケニル、-R*YR”、-YR”、及び-R*OR”からなる群より選択されるか、またはR及びRは、それらが結合している原子と一緒になって、複素環もしくは炭素環を形成し、
が、-(CHQ、-(CHCHQR、-CHQR、及び-CQ(R)からなる群より選択され、式中、Q が-N(R)であり、nは、1、2、3、4、及び5から選択され、
各Rが、独立して、C1-3アルキル、C2-3アルケニル、及びHからなる群より選択され、
各Rが、独立して、C1-3アルキル、C2-3アルケニル、及びHからなる群より選択され、
M及びM’が独立して、-C(O)O-、-OC(O)-、-C(O)N(R’)-、-N(R’)C(O)-、-C(O)-、-C(S)-、-C(S)S-、-SC(S)-、-CH(OH)-、-P(O)(OR’)O-、-S(O)-、-S-S-、アリール基、及びヘテロアリール基から選択され、
が、C1-3アルキル、C2-3アルケニル、及びHからなる群より選択され、
各Rが、独立して、C1-3アルキル、C2-3アルケニル、及びHからなる群より選択され、
各R’が、独立して、C1~18アルキル、C2~18アルケニル、-R*YR”、-YR”、及びHからなる群より選択され、
各R”が、独立して、C3-14アルキル及びC3-14アルケニルからなる群より選択され、
各R*が、独立して、C1-12アルキル、及びC1-12アルケニルからなる群より選択され、
各Yが、独立して、C3-6炭素環であり、
各Xが、独立して、F、Cl、Br、及びIからなる群より選択され、かつ
mが、5、6、7、8、9、10、11、12、及び13から選択される、化合物、
またはそれらの塩もしくは異性体が挙げられる。
【0177】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物のサブセットとしては、式(IA):
【化3】
の化合物、またはその塩もしくは異性体が挙げられ、式中、Iは、1、2、3、4、及び5から選択され、mは、5、6、7、8、及び9から選択され、Mは、結合またはM’であり、Rは、非置換C1-3アルキル、または-(CHQであり、ここで、Qは、OH、-NHC(S)N(R)、-NHC(O)N(R)、-N(R)C(O)R、-N(R)S(O)R、-N(R)R、-NHC(=NR)N(R)、-NHC(=CHR)N(R)、-OC(O)N(R)、-N(R)C(O)OR、ヘテロアリールまたはヘテロシクロアルキルであり、M及びM’は、独立して、-C(O)O-、-OC(O)-、-C(O)N(R’)-、-P(O)(OR’)O-、-S-S-、アリール基、及びヘテロアリール基から選択され、R及びRは、独立して、H、C1-14アルキル、及びC2-14アルケニルからなる群より選択される。
【0178】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物のサブセットとしては、式(II):
【化4】
の化合物またはその塩もしくは異性体が挙げられ、式中Iは、1、2、3、4、及び5から選択され;Mは、結合またはM’であり;Rは、非置換C1-3アルキルであるか、または-(CHQであり、ここでnは、2、3、または4であり、かつQは、OH、-NHC(S)N(R)、-NHC(O)N(R)、-N(R)C(O)R、-N(R)S(O)R、-N(R)R、-NHC(=NR)N(R)、-NHC(=CHR)N(R)、-OC(O)N(R)、-N(R)C(O)OR、ヘテロアリールまたはヘテロシクロアルキルであり、M及びM’は、独立して、-C(O)O-、-OC(O)-、-C(O)N(R’)-、-P(O)(OR’)O-、-S-S-、アリール基、及びヘテロアリール基から選択され;かつR及びRは、独立して、H、C1-14アルキル、及びC2-14アルケニルからなる群より選択される。
【0179】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物のサブセットとしては、式(IIa)、(IIb)、(IIc)、または(IIe):
【化5】
またはその塩もしくは異性体が挙げられ、Rは、本明細書に記載の通りである。
【0180】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物のサブセットとしては、式(IId):
【化6】
の化合物、またはその塩もしくは異性体が挙げられ、式中、nは、2、3、または4であり、かつm、R’、R”、及びR~Rは、本明細書に記載のとおりである。例えば、R及びRの各々は、独立して、C5-14アルキル及びC5-14アルケニルからなる群より選択され得る。
【0181】
いくつかの実施形態では、本開示のイオン化可能カチオン性脂質は、以下の構造
【化7】
を有する化合物を含む。
【0182】
いくつかの実施形態では、本開示のイオン化可能なカチオン性脂質は、以下の構造
【化8】
を有する化合物を含む。
【0183】
いくつかの実施形態では、本開示の非カチオン性脂質は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジウンデカノイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DUPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:0ジエーテルPC)、1-オレオイル-2-コレステリルヘミスクシノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(OChemsPC)、1-ヘキサデシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(C16 Lyso PC)、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(ME16.0PE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセロール)ナトリウム塩(DOPG)、スフィンゴミエリン、及びこれらの混合物を含む。
【0184】
いくつかの実施形態では、本開示のPEG修飾脂質は、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾セラミド、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール、PEG修飾ジアルキルグリセロール、及びこれらの混合物を含む。いくつかの実施形態では、PEG修飾脂質は、DMG-PEG、PEG-c-DOMG(PEG-DOMGとも称される)、PEG-DSG、及び/またはPEG-DPGである。
【0185】
いくつかの実施形態では、本開示のステロールは、コレステロール、フェコステロール、シトステロール、エルゴステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、トマチジン、ウルソール酸、アルファ-トコフェロール、及びそれらの混合物を含む。
【0186】
いくつかの実施形態では、本開示のLNPは、化合物1のイオン化可能なカチオン性脂質を含み、このとき、非カチオン性脂質はDSPCであり、構造脂質はコレステロールであり、PEG脂質はDMG-PEGである。
【0187】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、45~55モルパーセントのイオン化可能なカチオン性脂質を含む。例えば、脂質ナノ粒子は、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、または55モルパーセントのイオン化可能なカチオン性脂質を含んでもよい。
【0188】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は5~15モルパーセントのDSPCを含む。例えば、脂質ナノ粒子は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15モルパーセントのDSPCを含んでもよい。
【0189】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、35~40モルパーセントのコレステロールを含む。例えば、脂質ナノ粒子は、35、36、37、38、39、または40モルパーセントのコレステロールを含んでもよい。
【0190】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、1~2モルパーセントのDMG-PEGを含む。例えば、脂質ナノ粒子は、1、1.5または2モルパーセントのDMG-PEGを含んでもよい。
【0191】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、50モルパーセントのイオン化可能なカチオン性脂質と、10モルパーセントのDSPCと、38.5モルパーセントのコレステロールと、1.5モルパーセントのDMG-PEGとを含む。
【0192】
いくつかの実施形態では、本開示のLNPは、約2:1~約30:1のN:P比を含む。
【0193】
いくつかの実施形態では、本開示のLNPは、約6:1のN:P比を含む。
【0194】
いくつかの実施形態では、本開示のLNPは、約3:1のN:P比を含む。
【0195】
いくつかの実施形態では、本開示のLNPが含むイオン化可能なカチオン性脂質構成要素、対RNAのwt/wt比は約10:1~約100:1である。
【0196】
いくつかの実施形態では、本開示のLNPが含むイオン化可能なカチオン性脂質構成要素、対RNAのwt/wt比は約20:1である。
【0197】
いくつかの実施形態では、本開示のLNPが含むイオン化可能なカチオン性脂質構成要素、対RNAのwt/wt比は約10:1である。
【0198】
いくつかの実施形態では、本開示のLNPの平均直径は約50nm~約150nmである。
【0199】
いくつかの実施形態では、本開示のLNPの平均直径は約70nm~約120nmである。
【0200】
多価ワクチン
本明細書で提供する組成物は、同じまたは異なる種の2つ以上の抗原をコードするRNAを含んでも、または複数のRNAを含んでもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、2つ以上の呼吸器系ウイルス抗原をコードする1つのRNAまたは複数のRNAを含む。いくつかの実施形態では、RNAは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、またはそれ以上の呼吸器系ウイルス抗原をコードし得る。
【0201】
いくつかの実施形態では、組成物は、hRSV F糖タンパク質をコードするRNA、hMPV F糖タンパク質をコードするRNA、及びhPIV3 F糖タンパク質抗原を含む。
【0202】
いくつかの実施形態では、抗原をコードする2つ以上の異なるRNA(例えば、mRNA)を、同じ脂質ナノ粒子内に製剤化してもよい。他の実施形態では、抗原をコードする2つ以上の異なるRNAが、別々の脂質ナノ粒子内に製剤化されてもよい(各RNAが単一の脂質ナノ粒子内に製剤化される)。脂質ナノ粒子は、次に、組み合わせて単一のワクチン組成物(例えば、複数の抗原をコードする複数のRNAを含むワクチン組成物)として投与されてもよく、または別々に投与されてもよい。
【0203】
併用ワクチン
本明細書で提供する組成物は、同じまたは異なるウイルス株の2つ以上の抗原をコードする1つのRNAまたは複数のRNAを含んでもよい。1つ以上のhRSV抗原(複数可)及び異なる生物(例えば、hMPV及び/またはhPIV3)の1つ以上の抗原(複数可)をコードするRNAを含む併用ワクチンも本明細書で提供される。したがって、本開示のワクチンは、同じ株/種の1つ以上の抗原、または異なる株/種の1つ以上の抗原、例えば、呼吸器系ウイルス感染のリスクが高い同じ地理的地域に見られる生物体、または呼吸器系ウイルスに曝露されたときに個人が曝露される可能性が高い生物体に対する免疫を誘導する抗原、を標的とする併用ワクチンであり得る。
【0204】
医薬製剤
本明細書では、例えば、ヒト及び他の哺乳動物における呼吸器系ウイルスの予防及び/または処置のための組成物(例えば、医薬組成物)、方法、キット、及び試薬を提供する。本明細書で提供される組成物は、治療剤または予防剤として使用され得る。これらは、呼吸器系ウイルス感染を予防及び/または処置するための医薬で使用され得る。
【0205】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のRNAを含む呼吸器系ウイルスワクチンは、対象(例えば、ヒト対象などの哺乳類対象)に投与してもよく、RNAポリヌクレオチドはin vivoで翻訳されて抗原ポリペプチド(抗原)が産生される。
【0206】
組成物(例えば、RNAを含む)の「有効量」は、少なくとも部分的には、標的組織、標的細胞タイプ、投与手段、RNAの物理的特性(例えば、長さ、ヌクレオチド組成、及び/または修飾ヌクレオシドの程度)、ワクチンの他の構成要素、ならびに他の決定因子、例えば、対象の年齢、体重、身長、性別、及び全体的健康状態に基づく。典型的には、組成物の有効量は、対象の細胞内での抗原産生の関数として、誘導または追加免疫された免疫応答を提供する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの化学修飾を有するRNAポリヌクレオチドを含む組成物の有効量は、同じ抗原またはペプチド抗原をコードする対応する非修飾ポリヌクレオチドを含む組成物よりも効率的である。抗原産生の増大は、細胞トランスフェクションの増大(RNAワクチンでトランスフェクトされた細胞のパーセンテージ)、ポリヌクレオチドからのタンパク質翻訳及び/または発現の増大、核酸分解の減少(例えば、修飾ポリヌクレオチドからのタンパク質翻訳の持続時間の増大によって示される)、または宿主細胞の抗原特異的免疫応答の変化によって実証され得る。
【0207】
「医薬組成物」という用語は、活性薬剤と、組成物をin vivoまたはex vivoでの診断または治療用途に特に適したものにする不活性または活性の担体との組合せを指す。「医薬的に許容される担体」は、対象に投与した後でもまたは投与した際にも、望ましくない生理学的作用を引き起こさない。医薬組成物中の担体は、有効成分に適合性であり、それを安定化させることが可能であるという意味においても「許容」されなければならない。1つ以上の可溶化剤を活性薬剤の送達のための医薬担体として利用してもよい。医薬的に許容される担体の例としては、限定されるものではないが、剤形として使用可能な組成物を達成するための生体適合性のビヒクル、アジュバント、添加剤、及び希釈剤が挙げられる。他の担体の例としては、コロイド状酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、及びラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。追加の好適な医薬用担体及び希釈剤、ならびにそれらを使用するための医薬的必需品については、Remington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。
【0208】
いくつかの実施形態では、本開示に従う組成物(ポリヌクレオチド及びそのコードされたポリペプチドを含む)は、呼吸器系ウイルス感染症の処置または予防のために使用され得る。ある組成物は、健康な個体または潜伏期間中の感染初期または症状発現後の活動性感染中に、積極的な免疫化スキームの一環として予防的に投与されても、または治療的に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、細胞、組織、または対象に提供されるRNAの量は、免疫予防に有効な量であり得る。
【0209】
組成物は、他の予防または治療化合物と共に投与され得てもよい。非限定的な例として、予防または治療化合物は、アジュバントであっても、または追加免疫(ブースター)であってもよい。本明細書で使用する場合、予防組成物(例えば、ワクチン)に言及する場合、「追加免疫(ブースター)」という用語は、予防(ワクチン)組成物の追加投与を指す。追加免疫(ブースター)(またはブースターワクチン)は、予防組成物を先に投与した後に投与されてもよい。予防組成物の最初の投与と追加免疫との間の投与時間は、限定するものではないが、1分、2分、3分、4分、5分、6分、7分、8分、9分、10分、15分、20分 35分、40分、45分、50分、55分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、1日、36時間、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、10日、2週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、1年、18ヶ月、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、10年、11年、12年、13年、14年、15年、16年、17年、18年、19年、20年、25年、30年、35年、40年、45年、50年、55年、60年、65年、70年、75年、80年、85年、90年、95年、または99年超であってもよい。例示的な実施形態では、予防的組成物の最初の投与と追加免疫との間の投与時間は、限定するものではないが、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、または1年であってもよい。
【0210】
いくつかの実施形態では、組成物は、当該技術分野で公知の不活化ワクチンの投与と同様に、筋肉内、経鼻、または皮内に投与され得る。
【0211】
組成物は、感染の有病率または満たされていない医療ニーズの程度もしくはレベルに応じて、様々な設定で利用され得る。非限定的な例として、RNAワクチンは、様々な感染性疾患を治療及び/または予防するために利用され得る。RNAワクチンは、市販のワクチンよりもはるかに大きな抗体力価、より良好な中和免疫をもたらし、より持続性のある免疫応答を生じるか、及び/またはより早期の応答をもたらすという点において優れた特性を有する。
【0212】
本明細書で提供されるのは、RNA及び/または任意選択で、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤と組み合わせた複合体を含む医薬組成物である。
【0213】
RNAは、単独で、または1つ以上の他の構成要素と組み合わせて、製剤化されても、または投与されてもよい。例えば、免疫化組成物は、限定するものではないが、アジュバントを含む他の構成要素を含んでもよい。
【0214】
いくつかの実施形態では、免疫化組成物はアジュバントを含まない(アジュバントフリーである)。
【0215】
RNAは、1つ以上の医薬的に許容される賦形剤と組み合わせて製剤化されてもまたは投与されてもよい。いくつかの実施形態では、ワクチン組成物は、例えば、治療活性物質、予防活性物質、または両方の組み合わせなどの少なくとも1つの追加の活性物質を含む。ワクチン組成物は、無菌、パイロジェンフリーであっても、または無菌かつパイロジェンフリーの両方であってもよい。医薬薬剤、例えば、ワクチン組成物の製剤化及び/または製造における全般的考慮事項は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy 21st ed.,Lippincott Williams & Wilkins,2005(参照によりその全体が本明細書に援用される)に見出され得る。
【0216】
いくつかの実施形態では、免疫化組成物は、ヒト、ヒトの患者または対象に投与される。本開示の目的において、「有効成分」という表現は、概して、RNAワクチンまたはそれに含まれるポリヌクレオチド、例えば、抗原をコードするRNAポリヌクレオチド(例えば、mRNAポリヌクレオチド)を指す。
【0217】
本明細書に記載のワクチン組成物の製剤は、薬理学の分野で公知であるかまたは今後開発される任意の方法によって、調製され得る。概して、このような調製方法は、活性成分(例えば、mRNAポリヌクレオチド)を、賦形剤及び/または1つ以上の補助成分と会合させるステップと、次いで必要に応じて及び/または所望により、生成物を所望の単回または多回用量単位に分割、成形、及び/またはパッケージングするステップとを含む。
【0218】
本開示に従う医薬組成物中の活性成分、医薬的に許容される賦形剤、及び/または任意のさらなる成分の相対量は、治療される対象の固有性、サイズ、及び/または状態に応じて、またさらにはその組成物が投与される経路に応じて変動する。例として、組成物は、0.1%~100%、例えば、0.5~50%、1~30%、5~80%、少なくとも80%(w/w)の活性成分を含み得る。
【0219】
いくつかの実施形態では、RNAは、(1)安定性を高めるために、(2)細胞トランスフェクションを増大するために、(3)(例えば、デポ剤からの)持続放出または遅延放出を可能にするために、(4)体内分布を変化させる(例えば、特定の組織もしくは細胞タイプに標的化する)ために、(5)コードされたタンパク質のin vivoでの翻訳を増大するために、及び/または(6)in vivoでのコードされたタンパク質(抗原)の放出プロファイルを変化させるために、1つ以上の賦形剤を用いて製剤化される。ありとあらゆる溶媒、分散媒体、希釈剤、または他の液体ビヒクルなどの従来の賦形剤に加えて、分散剤または懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、保存剤、賦形剤としては、限定されないが、リピドイド、リポソーム、脂質ナノ粒子、ポリマー、リポプレックス、コアシェルナノ粒子、ペプチド、タンパク質、RNAでトランスフェクトされた細胞(例えば、対象への移植用)、ヒアルロニダーゼ、ナノ粒子模倣物、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0220】
投薬/投与
本明細書では、ヒト及び他の哺乳類における呼吸器系ウイルス感染症の予防及び/または治療のための免疫化組成物(例えば、RNAワクチン)、方法、キット、及び試薬を提供する。免疫化組成物は、治療剤または予防薬剤として使用され得る。いくつかの実施形態では、免疫化組成物は、呼吸器系ウイルス感染からの予防的保護を提供するために使用される。いくつかの実施形態では、免疫化組成物は、呼吸器系ウイルス感染を処置するために使用される。いくつかの実施形態では、免疫化組成物は、免疫エフェクター細胞のプライミングで、例えば、末梢血単核球(PBMC)をex vivoで活性化し、次にこれを対象に注入(再注入)するために、使用される。
【0221】
対象は、任意の哺乳類(非ヒト霊長類及びヒトを含む)であってもよい。典型的には、対象とはヒト対象である。
【0222】
いくつかの実施形態では、免疫化組成物(例えば、RNAワクチン)は、抗原特異的免疫応答を誘導するのに有効な量で対象(例えば、ヒト対象などの哺乳類対象)に投与される。呼吸器系ウイルス抗原をコードするRNAがin vivoで発現及び翻訳されて抗原が産生され、次にこれが対象における免疫応答を刺激する。
【0223】
呼吸器系ウイルスからの予防的保護は、本開示の免疫化組成物(例えば、RNAワクチン)の投与後に達成され得る。免疫化組成物は1回、2回、3回、4回、またはそれ以上投与されてもよいが、ワクチンを1回投与するだけで十分な場合がある(任意選択で1回の追加免疫が続く)。望ましいものではないが、感染した個体にある免疫化組成物を投与して治療応答を達成することも可能である。用量設定を適宜調整する必要がある場合がある。
【0224】
呼吸器系ウイルス抗原(または多重抗原)に対する対象における免疫応答を誘発する方法を、本開示の態様で提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、呼吸器系ウイルス抗原(例えば、hRSV F糖タンパク質、hMPV F糖タンパク質、及び/またはhPIV3 F糖タンパク質)をコードするオープンリーディングフレームを有するRNA(例えば、mRNA)を含む免疫化組成物を対象に投与することを含み、それにより、対象において呼吸器系ウイルス抗原に特異的な免疫応答を誘導し、対象内の抗-抗原抗体力価は、ワクチン接種後、その抗原に対する従来のワクチンの予防有効用量をワクチン接種した対象における抗-抗原抗体力価よりも増大される。「抗-抗原抗体」とは、抗原に特異的に結合する血清抗体である。
【0225】
予防有効用量とは、臨床的に許容されるレベルでウイルス感染を予防する有効用量である。いくつかの実施形態では、有効用量とは、ワクチンの添付文書に列記されている用量である。本明細書で使用する場合、従来のワクチンとは、本開示のmRNAワクチン以外のワクチンを指す。例えば、従来のワクチンとしては、限定されるものではないが、微生物生ワクチン、微生物不活化ワクチン、サブユニットワクチン、タンパク質抗原ワクチン、DNAワクチン、ウイルス様粒子(VLP)ワクチンなどが挙げられる。例示的な実施形態では、従来のワクチンは、国の薬物規制機関(例えば、米国の食品医薬品局(FDA)または欧州医薬品庁(EMA))によって規制上の承認を達成し、及び/または登録されているワクチンである。
【0226】
いくつかの実施形態では、対象内の抗-抗原抗体力価は、ワクチン接種後、呼吸器系ウイルスに対する従来のワクチンの予防有効用量をワクチン接種した対象、またはワクチン未接種の対象における抗-抗原抗体力価よりも1log~10log増大している。いくつかの実施形態では、対象における抗-抗原抗体力価は、ワクチン接種後、呼吸器系ウイルスに対する従来のワクチンの予防有効用量をワクチン接種した対象またはワクチン未接種の対象における抗-抗原抗体力価よりも1log、2log、3log、4log、5log、または10log増大している。
【0227】
対象における呼吸器系ウイルスに対する免疫応答を誘発する方法は、本開示の他の態様で提供される。本方法は、呼吸器系ウイルス抗原をコードするオープンリーディングフレームを含むRNAポリヌクレオチドを含む免疫化組成物(例えば、RNAワクチン)を対象に投与することを含み、それにより、対象において呼吸器系ウイルスに特異的な免疫応答を誘導し、この対象での免疫応答は、この免疫化組成物に対し2倍~100倍の薬用量レベルで、呼吸器系ウイルスに対する従来のワクチンを接種した対象での免疫応答と同等である。
【0228】
いくつかの実施形態では、対象における免疫応答は、本開示の免疫化組成物に対し2倍の薬用量レベルで従来のワクチンを接種した対象における免疫応答と同等である。いくつかの実施形態では、対象における免疫応答は、本開示の免疫化組成物に対し3倍の薬用量レベルで従来のワクチンを接種した対象における免疫応答と同等である。いくつかの実施形態では、対象における免疫応答は、本開示の免疫化組成物に対し4倍、5倍、10倍、50倍、または100倍の薬用量レベルで従来のワクチンを接種した対象における免疫応答と同等である。いくつかの実施形態では、対象における免疫応答は、本開示の免疫化組成物に対し10倍~1000倍の薬用量レベルで従来のワクチンを接種した対象における免疫応答と同等である。いくつかの実施形態では、対象における免疫応答は、本開示の免疫化組成物に対し100倍~1000倍の薬用量レベルで従来のワクチンを接種した対象における免疫応答と同等である。
【0229】
他の実施形態では、免疫応答は、対象における[タンパク質]抗体力価を決定することによって評価される。他の実施形態では、免疫化された対象由来の血清または抗体の能力を、ウイルス取込みを中和する能力またはヒトBリンパ球の呼吸器系ウイルス形質転換を低減する能力に対して試験する。他の実施形態では、ロバストなT細胞応答(複数可)を促進する能力は、当該技術分野で認識されている技法を用いて測定される。
【0230】
本開示の他の態様は、呼吸器系ウイルス抗原をコードするオープンリーディングフレームを有するRNAを含む免疫化組成物(例えば、RNAワクチン)を対象に投与して、対象において呼吸器系ウイルス抗原に特異的な免疫応答を誘導することにより、対象において呼吸器系ウイルスに対する免疫応答を引き出す方法を提供し、この対象における免疫応答は、呼吸器系ウイルスに対する従来のワクチンの予防有効量を接種した対象において誘導される免疫応答よりも2日~10週間早く誘導される。いくつかの実施形態では、対象における免疫応答は、本開示の免疫化組成物に対し2倍~100倍の薬用量レベルで従来のワクチンの予防有効用量を接種した対象において誘導される。
【0231】
いくつかの実施形態では、対象における免疫応答は、従来のワクチンの予防有効用量でワクチン接種した対象において誘導される免疫応答よりも2日、3日、1週間、2週間、3週間、5週間、または10週間早く誘導される。
【0232】
また、本明細書では、第1の抗原をコードするオープンリーディングフレームを有するRNAを対象に投与することにより、呼吸器系ウイルスに対する対象における免疫応答を誘発する方法であって、RNAが安定化エレメントを含まず、アジュバントがワクチンと同時製剤化または同時投与されない、方法を提供する。
【0233】
免疫化組成物(例えば、RNAワクチン)は、治療的に有効な転帰をもたらす任意の経路で投与され得る。このような経路としては、限定されるものではないが、皮内、筋肉内、鼻腔内、及び/または皮下の投与が挙げられる。本開示は、RNAワクチンを投与することを、それを必要とする対象に行うことを含む方法を提供する。必要とされる正確な量は、対象の人種、年齢、及び概況、疾患の重症度、特定の組成物、その投与様式、その活性様式などに応じて対象ごとに異なる。RNAは、典型的には、投与しやすさ及び薬用量の均一性のために、単位剤形で製剤化される。ただし、RNAの1日合計使用量は妥当な医学的判断の範囲内で主治医によって決定され得ることが理解されよう。いかなる特定の患者に対する具体的な治療有効用量レベル、予防有効用量レベル、または適切なイメージング用量レベルも、治療する障害、障害の重症度、用いる具体的化合物の活性、用いる具体的組成物、患者の年齢、体重、全体の健康状態、性別、及び食事、用いる具体的化合物の投与時間、投与経路、及び排泄率、治療の期間、用いる具体的化合物と組み合わせでまたは同時に使用する薬物、ならびに医学分野で周知されている類似の因子を含めた様々な因子に依存する。
【0234】
本明細書で提供されるように、RNAの有効量は、例えば、単回投与または2回の10μg投与として投与される、20μg程度の低さであり得る。いくつかの実施形態では、有効量は、20μg~300μgまたは25μg~300μgの総用量である。例えば、有効量は、20μg、25μg、30μg、35μg、40μg、45μg、50μg、55μg、60μg、65μg、70μg、75μg、80μg、85μg、90μg、95μg、100μg、110μg、120μg、130μg、140μg、150μg、160μg、170μg、180μg、190μg、200μg、250μg、または300μgの総投与量であってもよい。いくつかの実施形態では、有効量は、25μg~300μgの総用量である。いくつかの実施形態では、有効量は、20μgの総用量である。いくつかの実施形態では、有効量は、25μgの総用量である。いくつかの実施形態では、有効量は、75μgの総用量である。いくつかの実施形態では、有効量は、150μgの総用量である。いくつかの実施形態では、有効量は、300μgの総用量である。
【0235】
本明細書に記載のRNAは、本明細書に記載の剤形、例えば、鼻腔内、気管内、または注射用(例えば、静脈内、眼内、硝子体内、筋肉内、皮内、心臓内、腹腔内、及び皮下)の剤形で製剤化され得る。
【0236】
ワクチン有効性
本開示のいくつかの態様は、免疫化組成物(例えば、RNAワクチン)の製剤であって、RNAが、対象において抗原特異的免疫応答(例えば、呼吸器系ウイルス抗原に特異的な抗体の産生)をもたらすのに有効な量で製剤化される、製剤を提供する。「有効量」とは、抗原特異的免疫応答をもたらすのに有効なRNAの用量である。また、本明細書では、対象内の抗原特異的免疫応答を誘導する方法も提供する。
【0237】
本明細書で使用する場合、本開示のワクチンまたはLNPに対する免疫応答とは、ワクチン中に存在する(1つ以上の)呼吸器系ウイルスタンパク質(複数可)に対する対象における液性及び/または細胞性免疫応答の発生である。本開示の目的において、「液性」免疫応答とは、抗体分子(例えば、分泌(IgA)またはIgG分子を含む)によって媒介される免疫応答を指し、一方、「細胞性」免疫応答とは、T-リンパ球(例えば、CD4+ヘルパー及び/またはCD8+T細胞(例えば、CTL)及び/または他の白血球)によって媒介される免疫応答を指す。細胞性免疫における1つの重要な態様は、細胞溶解性T細胞(CTL)による抗原特異的応答を含む。CTLは、主要組織適合複合体(MHC)によってコードされたタンパク質と共に提示され細胞表面に発現するペプチド抗原に対し特異性を有する。CTLは、細胞内微生物の破壊またはこのような微生物に感染した細胞の溶解を誘導及び促進する一助となる。細胞性免疫の別の態様は、ヘルパーT細胞による抗原特異的応答に関与する。ヘルパーT細胞は、ペプチド抗原をMHC分子と共にその表面に提示した細胞に対する非特異的エフェクター細胞の機能を刺激し、その活性に焦点を合わせる一助となるように作用する。細胞性免疫応答はまた、活性化T細胞及び/または他の白血球(CD4+及びCD8+T細胞由来のものを含む)によって産生されるサイトカイン、ケモカイン、及び他のこのような分子の産生も引き起こす。
【0238】
いくつかの実施形態では、抗原特異的免疫応答は、本明細書で提供する免疫化組成物を投与された対象において産生される抗呼吸器系ウイルス抗原抗体力価を測定することにより、特性評価される。抗体力価とは、対象内にある抗体、例えば、特定の抗原(例えば、抗hRSV F糖タンパク質)または抗原のエピトープに特異的な抗体の量の測定値である。抗体力価は、典型的には、陽性結果をもたらす最大希釈度の逆数として表される。例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)は、例えば、抗体力価を定量するための一般的なアッセイである。
【0239】
いくつかの実施形態では、抗体力価は、対象が感染症に罹ったか否かを評価するため、または免疫化が必要か否かを判断するために使用される。いくつかの実施形態では、抗体力価は、自己免疫応答の強さを定量するため、追加免疫が必要か否かを判断するため、以前のワクチンが有効だった否かを判断するため、及び最近または過去の感染を確認するために使用される。本開示によれば、抗体力価は、免疫化組成物(例えば、RNAワクチン)によって対象において誘導された免疫応答の強さを定量するために使用してもよい。
【0240】
いくつかの実施形態では、対象において産生される抗呼吸器系ウイルス抗原抗体力価は、対照よりも少なくとも1log増大される。例えば、対象において産生される抗呼吸器系ウイルス抗原抗体力価は、対照よりも少なくとも1.5、少なくとも2、少なくとも2.5、または少なくとも3log増大され得る。いくつかの実施形態では、対象において産生される抗呼吸器系ウイルス抗原抗体力価は、対照よりも1、1.5、2、2.5、または3log増大される。いくつかの実施形態では、対象において産生される抗呼吸器系ウイルス抗原抗体力価は、対照よりも1~3log増大される。例えば、対象に産生される抗呼吸器系ウイルス抗原抗体力価は、対照よりも1~1.5、1~2、1~2.5、1~3、1.5~2、1.5~2.5、1.5~3、2~2.5、2~3、または2.5~3log増大され得る。
【0241】
いくつかの実施形態では、対象において産生される抗呼吸器系ウイルス抗原抗体力価は、対照よりも少なくとも2倍増大される。例えば、対象において産生される抗呼吸器系ウイルス抗原抗体力価は、対照よりも少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、または少なくとも10倍増大され得る。いくつかの実施形態では、対象において産生される抗呼吸器系ウイルス抗原抗体力価は、対照よりも2、3、4、5、6、7、8、9、または10倍増大される。いくつかの実施形態では、対象において産生される抗呼吸器系ウイルス抗原抗体力価は、対照よりも2~10倍増大される。例えば、対象において産生される抗呼吸器系ウイルス抗原抗体力価は、対照よりも2~10、2~9、2~8、2~7、2~6、2~5、2~4、2~3、3~10、3~9、3~8、3~7、3~6、3~5、3~4、4~10、4~9、4~8、4~7、4~6、4~5、5~10、5~9、5~8、5~7、5~6、6~10、6~9、6~8、6~7、7~10、7~9、7~8、8~10、8~9、または9~10倍増大され得る。
【0242】
いくつかの実施形態では、抗原特異的免疫応答は、hRSV、hMPV、及び/またはhPIV3に対する血清中和抗体力価の幾何平均力価(GMT)の比(幾何平均比(GMR)と称される)として測定される。幾何平均力価(GMT)とは、全ての値を掛け合わせ、その数値のn乗根(nは利用可能なデータを有する対象数である)をとることによって算出される、対象の群における平均抗体力価である。
【0243】
いくつかの実施形態では対照は、免疫化組成物(例えば、RNAワクチン)を投与されていない対象において産生される抗呼吸器系ウイルス抗原抗体力価である。いくつかの実施形態では、対照は、組換えまたは精製されたタンパク質ワクチンを投与された対象において産生された抗呼吸器系ウイルス抗原抗体力価である。組換えタンパク質ワクチンは、通常、異種発現系(例えば、細菌または酵母)で産生されたか、または大量の病原性生物から精製されたタンパク質抗原を含む。
【0244】
いくつかの実施形態では、免疫化組成物(例えば、RNAワクチン)が有効となる能力は、マウスモデルで測定される。例えば、免疫化組成物を、マウスモデルに投与してもよく、マウスモデルを中和抗体力価の誘導について評価してもよい。また、ウイルスチャレンジ研究も、本開示のワクチンの効果を評価するために使用してもよい。例えば、免疫化組成物をマウスモデルに投与し、そのマウスモデルをウイルスでチャレンジし、そのマウスモデルを生存及び/または免疫応答(例えば、中和抗体応答、T細胞応答(例えば、サイトカイン応答))について評価してもよい。
【0245】
いくつかの実施形態では、免疫化組成物(例えば、RNAワクチン)の有効量は、組換えタンパク質ワクチンの標準治療用量と比較して低減された用量である。本明細書で使用する「標準治療」とは、医学的または心理学的な治療ガイドラインを指し、一般的であっても、特定的であってもよい。「標準治療」とは、科学的根拠に基づいた適切な治療及び所与の条件の治療に関与する医療従事者間の協力を規定する。それは、医師/臨床医がある特定のタイプの患者、疾患、及び臨床状況に対し従うべき診断及び治療のプロセスである。本明細書で使用する「標準治療用量」とは、医師/臨床医または他の医療専門家が、呼吸器系ウイルス感染、または関連する状態を治療または予防するための標準治療ガイドラインに従いながら、呼吸器系ウイルス感染、または関連する状態を治療または予防するために対象に投与する、組換えもしくは精製タンパク質ワクチン、または弱毒生もしくは不活化ワクチン、またはVLPワクチンの用量を指す。
【0246】
いくつかの実施形態では、有効量の免疫化組成物を投与された対象において産生される抗呼吸器系ウイルス抗原抗体力価は、組換えもしくは精製タンパク質ワクチン、または弱毒生もしくは不活化ワクチン、またはVLPワクチンの標準治療用量を投与された対照の対象において産生される抗呼吸器系ウイルス抗原抗体力価と同等である。
【0247】
ワクチン有効性は、標準的な解析を用いて評価され得る(例えば、Weinberg et al.,J Infect Dis.2010 Jun 1;201(11):1607-10を参照)。例えば、ワクチン有効性は、二重盲検ランダム化対照臨床試験で測定することができる。ワクチン有効性は、ワクチン非接種試験コホートの罹患率(ARU)とワクチン接種試験コホートの罹患率(ARV)との間の疾患罹患率(AR)の比例的減少として表してもよく、以下の式を用いてワクチン接種群の疾患の相対リスク(RR)から算出することができる。
有効性=(ARU-ARV)/ARU×100;及び
有効性=(1-RR)×100。
【0248】
同様に、ワクチン有効性は標準的解析を用いて評価され得る(例えば、Weinberg et al.,J Infect Dis.2010 Jun 1;201(11):1607-10を参照)。ワクチンの有効性とは、ワクチン(高いワクチン効果を有することが既に判明している場合もある)が集団の中でどのように疾患を低減するかを評価するものである。この尺度は、対照臨床試験ではなく自然のフィールド条件下で、ワクチン自体にとどまらず、ワクチン接種プログラムの利益及び有害作用の本質的なバランスを評価し得る。ワクチン有効性はワクチンの有効性(効力)に比例するが、集団内の標的群がどの程度免疫化しているか、及び「実世界」の転帰に影響を及ぼすワクチンとは無関係な要因(例えば、入院、外来受診、または費用)による影響も受ける。例えば、レトロスペクティブなケースコントロール解析を使用して、感染症例のセット及び適切な対照におけるワクチン接種率を比較してもよい。ワクチン有効性は、ワクチン接種したにもかかわらず感染症を発症したオッズ比(OR)の使用により、割合の差として表すことができる。
有効性=(1-OR)×100。
【0249】
いくつかの実施形態では、免疫化組成物(例えば、RNAワクチン)の有効性は、ワクチン未接種対照の対象に対し少なくとも60%である。例えば、免疫化組成物の有効性は、ワクチン未接種対照の対象に対し少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも95%、少なくとも98%、または100%であり得る。
【0250】
殺菌免疫。殺菌免疫とは、宿主への有効な病原体感染を防止する固有の免疫状態を指す。いくつかの実施形態では、本開示の免疫化組成物の有効量は、少なくとも1年間、対象における殺菌免疫をもたらすのに十分である。例えば、本開示の免疫化組成物の有効量は、少なくとも2年間、少なくとも3年間、少なくとも4年間、または少なくとも5年間、対象内の殺菌免疫をもたらすのに十分である。いくつかの実施形態では、本開示の免疫化組成物の有効量は、対照よりも少なくとも5倍低い用量で対象内の殺菌免疫をもたらすのに十分である。例えば、有効量は、対照よりも少なくとも10倍、15倍、または20倍低い用量でも対象における殺菌免疫をもたらすのに十分であり得る。
【0251】
検出可能な抗原。いくつかの実施形態では、本開示の免疫化組成物の有効量は、投与してから1~72時間後の対象の血清中の測定において、検出可能なレベルの呼吸器系ウイルス抗原を産生するのに十分である。
【0252】
力価。抗体力価とは、対象内の抗体、例えば、特定の抗原(例えば、抗呼吸器系ウイルス抗原)に特異的な抗体の量の測定値である。抗体力価は、典型的には、陽性結果をもたらす最大希釈度の逆数として表される。例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)は、抗体力価を定量するための一般的なアッセイである。
【0253】
いくつかの実施形態では、本開示の免疫化組成物の有効量は、投与してから1~72時間後の対象の血清中の測定において、呼吸器系ウイルス抗原に対する中和抗体によって産生される1,000~10,000の中和抗体力価を産生するのに十分である。いくつかの実施形態では、有効量は、投与してから1~72時間後の対象の血清中の測定において、呼吸器系ウイルス抗原に対する中和抗体によって産生される1,000~5,000の中和抗体力価を産生するのに十分である。いくつかの実施形態では、有効量は、投与してから1~72時間後の対象の血清中の測定において、呼吸器系ウイルス抗原に対する中和抗体によって産生される5,000~10,000の中和抗体力価を産生するのに十分である。
【0254】
いくつかの実施形態では、中和抗体力価は、少なくとも100NT50である。例えば、中和抗体力価は、少なくとも200、300、400、500、600、700、800、900、または1000NT50であり得る。いくつかの実施形態では、中和抗体力価は、少なくとも10,000NT50である。
【0255】
いくつかの実施形態では、中和抗体力価は、少なくとも100中和単位/ミリリットル(NU/mL)である。例えば、中和抗体力価は、少なくとも200、300、400、500、600、700、800、900、または1000NU/mLであり得る。いくつかの実施形態では、中和抗体力価は、少なくとも10,000NU/mLである。
【0256】
いくつかの実施形態では、対象において産生される抗呼吸器系ウイルス抗原抗体力価は、対照よりも少なくとも1log増大される。例えば、対象において産生される抗呼吸器系ウイルス抗原抗体力価は、対照よりも少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9または10log増大され得る。
【0257】
いくつかの実施形態では、対象において産生される抗呼吸器系ウイルス抗原抗体力価は、対照よりも少なくとも2倍増大される。例えば、対象において産生される抗呼吸器系ウイルス抗原抗体力価は、対照よりも少なくとも3、4、5、6、7、8、9、または10倍増大される。
【0258】
いくつかの実施形態では、n個の数の積のn乗根である幾何平均を、比例増殖を説明するために一般的に使用する。幾何平均は、いくつかの実施形態では、対象において産生される抗体力価を特性評価するために使用される。
【0259】
対照とは、例えば、ワクチン接種されていない対象、または弱毒化生ウイルスワクチン、不活化ウイルスワクチン、またはタンパク質サブユニットワクチンを投与された対象であってもよい。
【0260】
実施例
野生型hRSV F糖タンパク質に対する様々な特徴(修飾など)の影響を調べた。図1は、Fタンパク質をコードする野生型mRNAと本明細書に記載のRSV Fバリアントとの間の違いを示す概略図である。RSV Fバリアントは、細胞質テールの欠如に加えて、プロトマー間ジスルフィド安定化変異及び空洞充填変異を含む、コドン最適化された膜アンカー型の単鎖mRNAである。
【0261】
実施例1-mRNAスクリーニング:独立した特徴
細胞上のRSV F糖タンパク質の融合前の形態の増大は、動物において免疫原性を増大させることがわかっている。本実施例では、異なる特徴(例えば、異なるコドン最適化戦略、変異、特定の修飾、構造変化)、及び結果として生じる発現レベルへの影響を試験するために、様々なmRNAを設計した。
【0262】
HEK293T細胞を、様々な濃度の異なるmRNAでトランスフェクトした。細胞表面の融合前RSV F糖タンパク質は、融合前RSV F糖タンパク質に特異的な抗体(AM14)を使用したフローサイトメトリーによって24時間及び48時間後に検出された。図2Aに示される結果は、試験された2つの特徴、コドン最適化及び細胞質テール短縮(「dCT」)が、細胞表面融合前RSV F糖タンパク質の最大の増加をもたらしたことを実証している。例えば、48時間の群では、2つの特徴は20ngの濃度で対照(2つの特徴を含まないRSV F糖タンパク質をコードするmRNA)の15~31倍の増大を示した。この結果は、5ngという低い濃度でも見られた(図2B)。
【0263】
次に、コドン最適化されたmRNA及び細胞質テール短縮RSV F糖タンパク質をコードするmRNAをin vivoでスクリーニングした。8週齢のBALB/cマウス(1群あたりn=8)に、脂質ナノ粒子(例えば、0.5~15%のPEG修飾脂質;5~25%の非カチオン性脂質;25~55%のステロール;及び20~60%のイオン化可能なカチオン性脂質)中に製剤化された候補mRNAを筋肉内(IM)投与した。mRNAは、3週間間隔で投与し、各投与後に血清を収集した。F糖タンパク質に対する血清抗体価を、ELISAで測定した。2回の投与(投与2後、「PD2」)に続いて、融合後のF特異的IgG力価を測定した。コドン最適化されたmRNA及び細胞質テール短縮RSV F糖タンパク質をコードするmRNAは、それぞれ、対照(2つの特徴を含まないRSV F糖タンパク質をコードするmRNA)の2~3倍及び2~4倍高い力価を示した(図3A)。
【0264】
RSV中和力価も、マイクロ中和アッセイを使用して2回目の投与(PD2)後に測定した。個々のマウス血清は、以下の手順を使用してRSV-A(Long株)の中和について評価した。
1.全ての血清試料は、56℃に設定されたドライバスインキュベーターに30分間置くことにより、熱で不活性化した。次に、試料及び対照血清をウイルス希釈液(EMEM中の2%FBS)で1:3に希釈し、試料を二重でアッセイプレートに添加して段階希釈した。
2.RSV-Longのストックウイルスを冷凍庫から取り出し、37℃の水浴ですばやく解凍した。ウイルスはウイルス希釈液で2000pfu/mLに希釈した。
3.1列の細胞を除いて、希釈したウイルスを96ウェルプレートの各ウェルに添加した。
4.HEp-2細胞をトリプシン処理し、洗浄し、ウイルス希釈液に1.5×10細胞/mlで再懸濁し、100mLの懸濁細胞を96ウェルプレートの各ウェルに添加した。次に、プレートを37℃、5%CO2で72時間インキュベートした。
5.72時間のインキュベーション後、細胞をPBSで洗浄し、PBSに溶解した80%アセトンを使用して、16~24℃で10~20分間固定した。固定液を取り除き、プレートを風乾させた。
6.次に、プレートをPBS+0.05%Tweenで完全に洗浄した。検出モノクローナル抗体、143-F3-1B8及び34C9を、2.5に希釈し、次いで、プレートをPBS+0.05%で完全に洗浄し、次いで50プレートをPBS+0.を用いて96ウェルプレートのウェルにおいて完全に洗浄した。次にプレートを16~24℃の加湿チャンバー内でロッカー上で60~75分間インキュベートした。
7.インキュベーション後、プレートを完全に洗浄した。
8.ビオチン化ウマ抗マウスIgGを、アッセイ希釈液で1:200に希釈し、96ウェルプレートの各ウェルに添加した。プレートを上記のようにインキュベートし、洗浄した。
9.IRDye 800CWストレプトアビジン(1:1000最終希釈)、Sapphire 700(1:1000希釈)、及び5mM DRAQ5溶液(1:10,000希釈)のカクテルを、アッセイ希釈液で調製し、50mLのカクテルを、96ウェルプレートの各ウェルに添加した。プレートを上記のように暗所でインキュベートし、洗浄し、風乾させた。
10.次に、Aerius Imagerを使用してプレートを読み取った。次に、Graphpad Prismの4パラメーターカーブフィットを使用して血清中和力価を計算した。
【0265】
2投与後(PD2)に測定されたマウス免疫原性研究の血清中和抗体力価を図3Bに示す。コドン最適化mRNA及び細胞質テール短縮を有するRSV F糖タンパク質をコードするmRNAは、対照の1~3倍及び2~40倍の力価レベルを有し、中和抗体力価がロバストであることを示している。したがって、in vitro及びin vivoの両方で、2つのmRNAがRSV F糖タンパク質の発現及びRSV-A中和力価を増大し得ることができることが見出された。
【0266】
実施例2-mRNAスクリーニング:2つの特徴
コドン最適化及び細胞質テール短縮の両方がRSV Fタンパク質の発現及び結果として生じる免疫原性を改善することが示されたので、同じmRNAにおける両方の特徴の組み合わせを試験した(「RSV Fバリアント」)。in vitro実験では、HEK293T細胞に、試験した特徴の異なる組み合わせを有する20ngまたは200ngのmRNAをトランスフェクトした。各特徴を個別に含むmRNAもスクリーニングした。細胞表面の融合前RSV F糖タンパク質は、融合前RSV F糖タンパク質に特異的な抗体(AM14)を使用したフローサイトメトリーによって24時間及び48時間後に検出された。コドン最適化と細胞質テール短縮の組み合わせにより、対照(2つの特徴を含まないRSV F糖タンパク質をコードするmRNA)と比較してRSV F糖タンパク質の発現レベルが5~50倍高くなることが判明した。他の特徴では、単独で、または互いに組み合わせて、この選択した組み合わせが生成したレベルまでRSV F糖タンパク質を生成するものはなかった(データは示していない)。
【0267】
使用した対照のRSV Fによりコードされるタンパク質は以下の通り:Ctrl1は野生型RSV F糖タンパク質と比較してF1領域に4つのアミノ酸変異を含み(図1)、アミノ酸103と145の間の欠失を含まない。その結果、Ctrl1には野生型のフーリン切断部位が含まれ、細胞質ドメインを保持する。別の制御バリアントであるCtrl2は、図1に示すRSV Fバリアントから派生しているが、C末端の欠失もその他のRNAの最適化及び拡張も含まれていない。
【0268】
次に、RSV Fバリアントをさらにスクリーニングした。RSV F糖タンパク質のin vitro発現は、500ngのmRNA RSV Fバリアント、対照mRNA、またはmRNAなし(陰性対照)でトランスフェクトされたHEK293T細胞で測定した。次に、24、48、及び72時間後、RSV F糖タンパク質のレベルをフローサイトメトリーで測定した。以下の3つの異なる抗体を使用してRSV F糖タンパク質を測定した:AM14及びD25(RSV F糖タンパク質の融合前型に特異的な抗体)及びSYNAGIS(登録商標)/モタビズマブ(RSV F糖タンパク質の融合前及び融合後型に共通のエピトープを指向)。図4Aによって、RSV Fバリアントが、融合前高次構造で正しく折りたたまれたRSV F糖タンパク質をもたらし、また、対照と比較してより高くより長い発現レベルをもたらしたことが示されている。さらに、図5A及び5Bは、発現傾向がHEK293T細胞に限定されず、THP-1細胞(ヒト単球株)で実施された場合に維持されることを示している。
【0269】
さらなる実験では、フローサイトメトリーによって測定した、200ngのmRNA(RSV Fバリアント、細胞質テールが短縮されたRSV F糖タンパク質をコードするmRNA、RSV F糖タンパク質をコードするコドン最適化mRNA、Ctrl1及びCtrl2mRNA、またはmRNAなし)でのトランスフェクションの48時間後における、HEK293T細胞中のRSV F糖タンパク質のin vitro発現を比較した。RSV Fバリアントは、コドン最適化mRNA及び細胞質テール短縮を有するRSV Fタンパク質をコードするmRNAと比較して、少なくとも相加的である発現レベルを示した(図4B)。
【0270】
ヒト末梢血単核細胞(huPBMC)におけるRSV F糖タンパク質のin vitro発現を調べた。HuPBMCは、1×10細胞/ウェルの濃度で12ウェルプレートにプレートした。次に、1000ngのmRNA(RSV Fバリアントまたは2つの特徴を含まないRSV F糖タンパク質をコードするmRNAのいずれか)をウェルに添加し、プレートを24時間または48時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞をAM14-FITC(RSV Fタンパク質の融合前形態を標的とする)、D25-PE(RSV Fタンパク質の融合前形態を標的とする)、またはモタズビマブ-APC(RSV Fタンパク質の融合前及び融合後の形態に共通のエピトープを標的とする)で染色した。使用した抗体に関係なく、24時間の時点及び48時間の時点の両方で、対照mRNA及びトランスフェクトされなかった細胞に関して、より高いレベルのRSV Fタンパク質が観察された(図7)。
【0271】
ヒト肝細胞腫HeP3B(HeP3B)細胞におけるバリアントRSV F mRNAのin vitro発現を調べた。HeP3B細胞を、24ウェルプレートにプレートし、500ng、100ng、または20ngのmRNAをトランスフェクトした。プレートを24時間または48時間インキュベートした。インキュベーション後、RSV Fタンパク質の融合前の形態を標的として、細胞をAM14-FITCで染色した。RSV Fバリアント(コドン最適化及び細胞質テール短縮)とのインキュベーション後、個々の特徴を有するmRNA(例えば、コドン最適化mRNA及び細胞質テールが短縮されたRSV F糖タンパク質をコードするmRNA)に関して、より高いレベルのRSV Fタンパク質が観察された。対照mRNA(2つの特徴を含まないRSV F糖タンパク質をコードするmRNA)、及びトランスフェクトされなかった細胞(「mRNAなし」)は、特に48時間及び試験した最低用量でRSV Fバリアントよりも低い発現レベルを示した(図8)。顕微鏡実験では、HeLa細胞で発現傾向が一貫していることが判明した。HeLa細胞を96ウェルプレートにプレートして、200ngのmRNA(RSV Fバリアント、RSV F糖タンパク質をコードするコドン最適化mRNA、細胞質テールが短縮されたRSV F糖タンパク質をコードするmRNA、2つの特徴を含まない対照mRNA)またはmRNAを含まない(陰性対照として))をトランスフェクトした。そのプレートを24時間または48時間インキュベートした後、4%PFA/PBSで15分間固定し、PBSで2回洗浄した。次に、プレートの半分を0.5%Triton-Xで5分間透過処理し、次いで、PBSで2回洗浄した。次に、細胞を1%BSA/PBSで室温で30分間ブロックした。次に、一次抗体である抗RSV抗体(D25、Cambridge Bio)(1%BSA/PBSで1:100に希釈)を1時間適用した後、PBSで2回洗浄した。次に、プレートを1%BSAで10分間ブロックした。二次抗体を30分間適用し(BSA/PBSで1:2000に希釈)、次にプレートをPBSで2回洗浄した。次に、NucBlue Fixed及びCellMask Redを、30分間適用した後、PBSで2回洗浄した。次に、得られたプレートを、ALEXA488(商標)を使用してタンパク質発現について測定した。細胞質セグメンテーションに基づいて、1細胞あたりの平均蛍光強度を測定した。図9に示すように、RSV Fバリアント(細胞質テール短縮を伴うRSV F糖タンパク質をコードするコドン最適化mRNA)は、最も高いレベルのRSV Fタンパク質を産生した。対照とRSV Fバリアントとの間の差は約2倍であることが判明した。
【0272】
実施例3-in vivo免疫原性研究(マウス)
次に、RSV Fバリアント(細胞質テール短縮を伴うRSV F糖タンパク質をコードするコドン最適化mRNA)をin vivoで評価した。8週齢のBALB/cマウス(1群あたりn=8)を、脂質ナノ粒子(例えば、0.5~15%のPEG修飾脂質;5~25%の非カチオン性脂質;25~55%のステロール;及び20~60%のイオン化カチオン性脂質)中に製剤化したRSV Fバリアントまたは対照mRNAの筋肉内(IM)投与により免疫した。mRNAは3週間間隔で投与し、各免疫後に血清を収集した。F糖タンパク質に対する血清抗体価をELISAで測定した。1回目と2回目の投与に続いて、融合後のF特異的IgG力価を測定した。RSV Fバリアントは、低用量(200ng)で、対照(RSV F糖タンパク質をコードする代替mRNA)の少なくとも3~5倍の力価を有していた(図6A及び6B)。
【0273】
HRSV-A Virospotアッセイを実施して、血清試料中のHRSV特異的中和抗体を検出した。簡単に説明すると、56℃で30分間インキュベートすることにより、試料を不活性化した。続いて、試料の連続的な2倍希釈を、感染培地で1:8の希釈(1:16の試験での最初の血清希釈)から始めて、96ウェルプレートで3回繰り返して行った。次に、試料希釈液を一定量のHRSV-Aとともに37℃で1時間インキュベートした。次に、ウイルスと抗体の混合物を、HEp-2細胞培養単層とともにプレートに移した。37℃で1日間のインキュベーション期間の後、単層を固定して染色した。培養上清を除去し、単層をPBSで1回洗浄した後、50%/50%のメタノール/エタノールで固定した。固定後、HRSV-Aに対するマウスモノクローナル抗体、二次HRP標識抗マウス抗体、及びTrueBlueを使用してプレートを染色した。IMMUNOSPOT(登録商標)アナライザーを使用して染色プレートをスキャンし、Zielinska et al(Zielinska、Virology Journal 2005;2(84):1-5)によって記述された式を使用して50%プラーク減少力価を計算した:
X=(a-b)(e-c)/(c-d)+a
ここで:X=中和結果
a=50%減少ポイントを超える希釈のlog10
b=50%減少ポイントを下回る希釈のlog10
c=50%減少ポイントを超える平均SC(aに対応)
d=50%減少ポイントを下回る平均SC(bに対応)
e=平均ウイルス対照数の50%減少の値。
【0274】
実施例4-in vivo免疫原性研究(ラット)
次に、RSV Fバリアント(細胞質テール短縮を伴うRSV F糖タンパク質をコードするコドン最適化mRNA)をコットンラットでin vivoで評価した。この研究は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)コットンラットモデルにおけるmRNAワクチンの免疫原性、有効性、及び安全性を評価することを目的としており、チャレンジ後に検出可能なウイルス複製を可能にする次善の中和抗体力価を誘発するものを含む、ある範囲の用量レベルにまたがるワクチン増強呼吸器疾患(ERD)に対する可能性の評価を含む。
【0275】
RSV Fバリアントまたは対照mRNAを、脂質ナノ粒子(例えば、0.5~15%のPEG修飾脂質、5~25%の非カチオン性脂質、25~55%のステロール、及び20~60%のイオン化カチオン性脂質)中に製剤化した。脂質ナノ粒子の成分は、ヘプタデカン-9-イル8-((2-ヒドロキシエチル)(6-オキソ-6(ウンデシルオキシ)ヘキシル)アミノ)オクタノエート(化合物1);1,2-ジミリストイル-racn-グリセロール、メトキシポリエチレングリコール(PEG2000-DMG);1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC);及びコレステロールを含んだ。
【0276】
雌のコットンラット(6~8週齢)を10匹の動物の14の群、及び4匹の動物の対照群に分けた。ラットは、以下の表2に示すスケジュールに従って免疫した。群1~13は、動物1匹あたり100μL用量のmRNA-LNP組成物で筋肉内免疫した;群14は、動物1匹あたり10プラーク形成単位(PFU)で100μL用量のRSV/A2を鼻腔内に感染させた。表2に示すように、一部の群は2回免疫し(0日目と28日目)、他の群は0日目でのみ免疫した。56日目に、マウスに0.1mLの5.0log10RSV/A2の鼻腔内投与でチャレンジした。61日目に、動物を屠殺し、ウイルス滴定測定のために鼻組織を採取し、肺をまとめて採取して3分割した。左側のセクションはウイルス滴定用、舌側葉は定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)分析用、右側のセクションは膨らませて増強RSV疾患(ERD)と好酸球増加症の組織病理検査に使用した。
【表1】
【0277】
分析のために、RSV/A2の肺及び鼻のウイルス滴定を行った。肺及び鼻のホモジネートを遠心分離によって清澄化し、イーグル最小必須培地(EMEM)で希釈した。コンフルエントなHep-2細胞単層を、24ウェルプレート中で希釈ホモジネートで2回感染させた。5%COインキュベーター内で37℃で1時間インキュベートした後、ウェルに0.75%メチルセルロース培地をかぶせた。4日間のインキュベーション後、オーバーレイを取り除き、細胞を0.1%クリスタルバイオレットで1時間固定した後、すすぎ、風乾した。プラークを数え、ウイルス力価を組織1グラムあたりのプラーク形成単位として表した。ウイルス力価は、群内の全ての動物の幾何学的平均+標準誤差として計算された。
【0278】
HRSV-A Virospotアッセイを実行して、実施例3に記載されているように、血清試料中のHRSV特異的中和抗体を検出した。
【0279】
動物の血清中に存在する抗体価を決定するために、RSV-F酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を実施した。簡単に説明すると、96ウェルマイクロタイタープレートを1ug/mLの融合前RSV-Fタンパク質でコーティングした。4℃で一晩インキュベートした後、プレートをPBS/0.05%Tween-20で4回洗浄し、37℃で2時間ブロックした(SuperBlock-Pierce#37515)。洗浄後、コットンラット血清の段階希釈液を添加した(アッセイ希釈液はPBS+5%ヤギ血清)。プレートを37℃で2時間インキュベートし、洗浄し、HRP結合ニワトリ抗コットンラットIgG(ICL#CCOT-25P)をアッセイ希釈液で1:10,000に希釈して添加した。プレートを、37℃で1時間インキュベートした後、洗浄した。結合した抗体は、TMB基質(SeraCare#5120-0077)で検出された。TMB停止液(SeraCare#5150-0021)を添加して反応を停止し、OD450nmで吸光度を測定した。力価は、GraphPad Prismの4パラメーターロジスティックカーブフィットを使用して決定し、約OD450nm=1.0での希釈逆数として定義した。
【0280】
RSV抗体力価を、図11A及び図11Bに示す。RSV Fバリアント(コドン最適化及び短縮された細胞質テール)は、用量依存性RSV中和抗体(図10A)及びRSV融合前Fタンパク質特異的IgG結合抗体(図10B)を誘導することが見出された。さらに、チャレンジ後の肺(図11A)及び鼻(図11B)のウイルス量によって、RSV Fバリアントがコットンラットをチャレンジから保護したことが示された(特に、初回投与及び追加免疫投与でのより高い用量)。
【0281】
配列表
野性型RSV F糖タンパク質
MELLIHRSSAIFLTLAINTLYLTSSQNITEEFYQSTCSAVSRGYFSALRTGWYTSVITIELSNIKETKCNGTDTKVKLIKQELDKYKNAVTELQLLMQNTPAANNRARREAPQYMNYTINTTKNLNVSISKKRKRRFLGFLLGVGSAIASGIAVSKVLHLEGEVNKIKNALLSTNKAVVSLSNGVSVLTSKVLDLKNYINNQLLPIVNQQSCRISNIETVIEFQQKNSRLLEITREFSVNAGVTTPLSTYMLTNSELLSLINDMPITNDQKKLMSSNVQIVRQQSYSIMSIIKEEVLAYVVQLPIYGVIDTPCWKLHTSPLCTTNIKEGSNICLTRTDRGWYCDNAGSVSFFPQADTCKVQSNRVFCDTMNSLTLPSEVSLCNTDIFNSKYDCKIMTSKTDISSSVITSLGAIVSCYGKTKCTASNKNRGIIKTFSNGCDYVSNKGVDTVSVGNTLYYVNKLEGKNLYVKGEPIINYYDPLVFPSDEFDASISQVNEKINQSLAFIRRSDELLHNVNTGKSTTNIMITAIIIVIIVVLLSLIAIGLLLYCKAKNTPVTLSKDQLSGINNIAFSK (配列番号1)
【0282】
本明細書に記載の任意のmRNA配列が5’UTR及び/または3’UTRを含み得ることを理解されたい。UTR配列は、以下の配列から選択してもよいが、その他の既知のUTR配列を使用してもよい。また、本明細書に記載の任意のmRNAはさらに、ポリAテール及び/またはキャップ(例えば、7mG(5’)ppp(5’)NlmpNp)を含んでもよいことも理解のこと。さらに、本明細書に記載の多数のmRNA及びコードされた抗原配列がシグナルペプチド及び/またはペプチドタグ(例えば、C末端Hisタグ)を含むが、示されたシグナルペプチド及び/またはペプチドタグが、異なるシグナルペプチド及び/またはペプチドタグに置換されても、シグナルペプチド及び/またはペプチドタグが省略されてもよいことを理解されたい。
【0283】
本明細書に記載のmRNA配列のいずれかが、完全にまたは部分的に化学的に修飾されてもよい(例えば、N1-メチルシュードウリジンによって)ことがさらに理解されるべきである。以下の表1では、配列番号は、非修飾/N1-メチルシュードウリジンによって完全に修飾されたものとして示されている。
【0284】
5’UTR:GGGAAAUAAGAGAGAAAAGAAGAGUAAGAAGAAAUAUAAGAGCCACC(配列番号2;N1-メチルシュードウリジンで完全に修飾、配列番号33)
5’UTR:GGGAAAUAAGAGAGAAAAGAAGAGUAAGAAGAAAUAUAAGACCCCGGCGCCGCCACC(配列番号3;N1-メチルシュードウリジンで完全に修飾、配列番号40)
3’UTR:UGAUAAUAGGCUGGAGCCUCGGUGGCCAUGCUUCUUGCCCCUUGGGCCUCCCCCCAGCC CCUCCUCCCCUUCCUGCACCCGUACCCCCGUGGUCUUUGAAUAAAGUCUGAGUGGGCGGC(配列番号4;N1-メチルシュードウリジンで完全に修飾、配列番号35)
3’UTR:UGAUAAUAGGCUGGAGCCUCGGUGGCCUAGCUUCUUGCCCCUUGGGCCUCCCCCCAGCC CCUCCUCCCCUUCCUGCACCCGUACCCCCGUGGUCUUUGAAUAAAGUCUGAGUGGGCGGC(配列番号5;N1-メチルシュードウリジンで完全に修飾、配列番号41)
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【0285】
等価物
本明細書に開示される全ての参考文献、特許、及び特許出願は、各々が引用されている主題に関し、参照によって本明細書に援用され、場合によってはそれが文書全体を包含することもある。
【0286】
本明細書において、明細書中及び請求項中の「a」及び「an」という不定冠詞は、反対のことが明確に示されない限り、「少なくとも1つの」を意味するものと理解すべきである。また、明確に反対のことが示されない限り、本明細書で特許請求される2つ以上のステップまたは行為を含む任意の方法において、当該方法のステップまたは行為の順序は、必ずしも当該方法のステップまたは行為が記載されている順序に限定されるとは限らない。
【0287】
請求項及び上記明細書において、全ての移行句、例えば、「含む(comprising)」「含む(including)」「保有する」「有する」「含有する」「伴う」「保持する」「から構成される」などは非制限的であること、すなわち後に続くものを含むがそれに限定されないことを意味するものと理解されるべきである。「~からなる」「~から本質的になる」という移行句のみが、米国特許商標庁審査基準の2111.03節に記載のように、それぞれ制限的または半制限的な移行句であるものとする。
【0288】
数値の前にある「約」及び「実質的に」という用語は、記載された数値の±10%を意味する。
【0289】
値の範囲が示される場合、範囲の上端と下端とを含むそれらの間の各値は、本明細書において具体的に企図され記載されている。
【0290】
国際出願番号PCT/US2015/02740、PCT/US2016/043348、PCT/US2016/043332、PCT/US2016/058327、PCT/US2016/058324、PCT/US2016/058314、PCT/US2016/058310、PCT/US2016/058321、PCT/US2016/058297、PCT/US2016/058319、及びPCT/US2016/058314の全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
2023513073000001.app
【国際調査報告】