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特表2023-513096ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法及びその製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法及びその製品
(51)【国際特許分類】
   C21D 8/12 20060101AFI20230323BHJP
   C21D 9/46 20060101ALI20230323BHJP
   C23C 22/00 20060101ALI20230323BHJP
   H01F 1/147 20060101ALI20230323BHJP
   C22C 38/00 20060101ALN20230323BHJP
   C22C 38/60 20060101ALN20230323BHJP
【FI】
C21D8/12 B
C21D9/46 501B
C23C22/00 A
H01F1/147 183
C22C38/00 303U
C22C38/60
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022546669
(86)(22)【出願日】2021-11-09
(85)【翻訳文提出日】2022-07-29
(86)【国際出願番号】 CN2021129607
(87)【国際公開番号】W WO2022127447
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】202011495799.8
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522304095
【氏名又は名称】首鋼智新遷安電磁材料有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHOUGANG ZHIXIN QIAN’AN ELECTROMAGNETIC MATERIAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 025 Zhao’an Street, West Industrial Zone, Qian’an Tangshan, Hebei 064400, China
(71)【出願人】
【識別番号】522304109
【氏名又は名称】北京首鋼股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING SHOUGANG CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 99, Shijingshan Road, Shijingshan District Beijing 100040, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】王 現輝
(72)【発明者】
【氏名】高 倩
(72)【発明者】
【氏名】孫 茂林
(72)【発明者】
【氏名】▲ぐん▼ 堅
(72)【発明者】
【氏名】肖 輝明
(72)【発明者】
【氏名】劉 兆月
(72)【発明者】
【氏名】滕 仁昊
(72)【発明者】
【氏名】趙 松山
(72)【発明者】
【氏名】胡 志遠
(72)【発明者】
【氏名】斉 杰斌
(72)【発明者】
【氏名】游 学昌
(72)【発明者】
【氏名】李 瑞鳳
(72)【発明者】
【氏名】宋 東何
(72)【発明者】
【氏名】王 愛星
【テーマコード(参考)】
4K026
4K033
5E041
【Fターム(参考)】
4K026AA03
4K026AA22
4K026BA08
4K026BB05
4K026CA16
4K026CA18
4K026DA02
4K033AA02
4K033BA00
4K033CA01
4K033CA02
4K033CA03
4K033CA07
4K033CA09
4K033DA02
4K033EA02
4K033FA01
4K033FA12
4K033HA01
4K033JA04
4K033LA01
4K033MA00
4K033NA00
4K033NA03
4K033PA10
4K033PA11
4K033RA04
4K033RA09
4K033RA10
4K033SA02
4K033SA03
4K033TA02
4K033TA03
4K033TA08
4K033UA01
5E041AA02
5E041BC01
5E041BD10
(57)【要約】
本開示は、ケイ素鋼の製造の技術分野に属し、具体的には、ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法及びその製品に関する。前記脱炭焼鈍において、鋼帯の表面の酸化皮膜の厚さは1.5~2.5μmであり、前記酸化皮膜中のSi元素とFe元素の原子重量比は、Si/(Si+Fe)≧0.76を満たし、前記高温焼鈍において、冷却段階は、温度1200~500℃で、カバーが付いたままで冷却を行うことであって、保護ガスは窒素ガスと水素ガスとを含む混合ガスであり、前記混合ガス中の水素ガスの体積百分率が3%を超えることと、温度500~200℃で、カバーが付いたままで冷却を行うことであって、保護ガスは窒素ガスであることと、温度<200℃で、インナーカバーを取り外して空気冷却を行うこととを順次含む。本開示に係る実施形態のガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、鋼帯の脱炭焼鈍段階での酸化皮膜の厚さ及び高温焼鈍の冷却段階など複数のプロセスを制御することにより、表面の平滑化に優れ、表面の均質化に優れ、材料化率が高く、磁気特性が良好なガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼が得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製錬、連続鋳造、ビレット加熱、熱間圧延、正規化、冷間圧延、脱炭焼鈍、窒化、バリア剤塗布、高温焼鈍、熱間引抜き・平坦化、及びコーティングを含むガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法であって、
前記脱炭焼鈍において、鋼帯の表面の酸化皮膜の厚さは1.5~2.5μmであり、前記酸化皮膜中のSi元素とFe元素の原子重量比は、Si/(Si+Fe)≧0.76を満たし、
前記高温焼鈍において、冷却段階は、
温度1200~500℃で、カバーが付いたままで冷却を行うことであって、保護ガスは窒素ガスと水素ガスとを含む混合ガスであり、前記混合ガス中の水素ガスの体積百分率が3%を超えることと、
温度500~200℃で、カバーが付いたままで冷却を行うことであって、保護ガスは窒素ガスであることと、
温度<200℃で、インナーカバーを取り外して空気冷却を行うこととを順次含む、底部層の無い結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法。
【請求項2】
前記バリア剤塗布において、バリア剤は、成分A、成分B、成分C、及び成分Dを含み、
前記成分AはMgOであり、又は前記成分AはMgOとAlを含む混合物であり、
前記成分BはNaCl、KCl、MgCl、ZnCl、BaCl、SrCl、MnCl、CaCl、BiOCl、SbOCl、Bi(NO、Cu(NO、NaNO、NONHから選ばれる1種又は2種以上であり、
前記成分Cは融点が820℃以下の低融点化合物であり、
前記成分DはCaO又はCa(OH)である、請求項1に記載の底部層の無い結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法。
【請求項3】
前記MgOとAlを含む混合物中、前記Alの質量百分率が60%以下であり、粒度10μm以上の顆粒の体積百分率が30~60%である、請求項2に記載の底部層の無い結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法。
【請求項4】
前記MgOのクエン酸活性が200~2000Sであり、
前記Alの比表面積が15~50m/gである、請求項2に記載の底部層の無い結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法。
【請求項5】
前記融点820℃以下の低融点化合物は酸化ホウ素、炭酸ナトリウム、ホウ砂、酸化アンチモンから選ばれる1種又は2種以上である、請求項1又は2に記載の底部層の無い結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法。
【請求項6】
前記バリア剤中、前記成分A、前記成分B、前記成分C、及び前記成分Dの質量比は100:(0.5~6):(0.6~3):(0.6~5.3)である、請求項1又は2に記載の底部層の無い結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法。
【請求項7】
質量百分率換算で、前記バリア剤はNHClをさらに含み、
前記バリア剤中、前記成分Aと前記NHClとの質量比は100:(1~2.1)である、請求項5に記載の底部層の無い結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法。
【請求項8】
前記熱間引抜き・平坦化及びコーティングにおいて、
水による洗浄と、
質量濃度が1%~10%の硫酸と質量濃度が1%~5%の硝酸との混合溶液による温度50~80℃の酸洗と、
Feイオン性錯化剤の質量濃度が0.5%~5%の、水とFeイオン性錯化剤を含む混合物による洗浄と、
水による洗浄とを順次含む4段洗浄プロセスが使用される、請求項1に記載の底部層の無い結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法。
【請求項9】
前記脱炭焼鈍において、露点は38~58℃であり、加熱温度は800~850℃である、請求項1に記載の底部層の無い結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の地層無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法によって得られるガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本願は、2020年12月17日に提出された、出願の番号が202011495799.8、名称が「ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法及びその製品」の中国特許出願の優先権を主張しており、その全内容は引用によりここに組み込まれている。
【0002】
本開示はケイ素鋼製造の技術分野に属し、具体的には、ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼(Glass-less grain-oriented silicon steel)の製造方法及びその製品に関する。
【背景技術】
【0003】
従来の結晶粒配向したケイ素鋼の製造プロセスでは、鋼帯の冷間圧延後に脱炭焼鈍処理を行い、鋼帯の表面に酸化皮膜(主にSiOとFeSiOからなる)を形成した後、窒化処理を行う必要がある。窒化において、N元素が酸化皮膜を介して鋼帯の表面に浸透する。その後、この鋼帯の表面にMgOバリア剤層を塗布する。鋼帯が高温焼鈍段階に入ると、その表面に形成された酸化皮膜がMgOと反応してケイ酸マグネシウム下地層が生成される。このケイ酸マグネシウム下地層は、鋼帯の表面の層間抵抗を増加させ、表面張力を与えて鋼帯の磁気特性を向上させる役割を果たす。しかし、この下地層は、従来の結晶粒配向したケイ素鋼の打ち抜き性が悪い原因となる。また、この下地層が鋼帯の表面で生成する酸化物が磁区移動を阻害し、鉄損を悪化させる。
【0004】
現在、ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼は結晶粒配向したケイ素鋼の発展の重要な方向であり、結晶粒配向したケイ素鋼の優れた導磁性と無結晶粒配向したケイ素鋼の優れた加工性を併せ持ち、高エネルギー効率のモータ、発電機の製造分野で応用が期待できる。また、ガラス無しケイ素鋼の表面を平滑化することにより、結晶粒配向したケイ素鋼の磁気特性をさらに向上させることができる。
【0005】
しかし、現在、ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の主な問題は以下のとおりである。(1)ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の表面の平滑化が困難である。(2)ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼には磁気特性が不安定な欠陥が生じやすい。(3)ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の生産プロセスでは、大きな鋼コイルの生産温度や雰囲気の違いのため、鋼帯表面と磁気特性を均質化することが困難である。(4)ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼は、材料化率が低い。
【0006】
そのため、ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の表面の平滑化と均質化の問題を解決するために、ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法の開発が急務となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の問題を鑑み、本開示は、ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法及びその製品を提供する。本開示に係るいくつかの実施形態のガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、鋼帯の脱炭焼鈍段階での酸化皮膜の厚さ及び高温焼鈍の冷却段階など複数のプロセスを制御することにより、表面の平滑化に優れ、表面の均質化に優れ、材料化率が高く、磁気特性が良好なガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼が得られる。
【0008】
本開示では、上記の目的を達成させる技術案は以下のとおりである。
【0009】
本開示の一態様では、
製錬、連続鋳造、ビレット加熱、熱間圧延、正規化、冷間圧延、脱炭焼鈍、窒化、バリア剤塗布、高温焼鈍、熱間引抜き・平坦化、及びコーティングを含むガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法であって、
前記脱炭焼鈍において、鋼帯の表面の酸化皮膜の厚さは1.5~2.5μmであり、前記酸化皮膜中のSi元素とFe元素の原子重量比は、Si/(Si+Fe)≧0.76を満たし、
前記高温焼鈍において、冷却段階は、
温度1200~500℃で、カバーが付いたままで冷却を行うことであって、保護ガスは窒素ガスと水素ガスとを含む混合ガスであり、前記混合ガス中の水素ガスの体積百分率が3%を超えることと、
温度500~200℃で、カバーが付いたままで冷却を行うことであって、保護ガスは窒素ガスであることと、
温度<200℃で、インナーカバーを取り外して空気冷却を行うこととを順次含む、ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法を提供する。
【0010】
本開示のいくつかの実施態様によれば、本開示の前記ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、前記ビレット加熱において、前記加熱温度は1150℃である。
【0011】
本開示のいくつかの実施態様によれば、本開示の前記ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、前記鋼帯の表面の酸化皮膜の厚さが1.5~2.5μmであることは、前記鋼帯の表面の酸化皮膜の厚さが1.9~2.3μmであることを含む。
【0012】
本開示のいくつかの実施態様によれば、本開示の前記ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、前記バリア剤塗布において、前記バリア剤は、成分A、成分B、成分C、及び成分Dを含み、
前記成分AはMgOであり、又は前記成分AはMgOとAlを含む混合物であり、
前記成分BはNaCl、KCl、MgCl、ZnCl、BaCl、SrCl、MnCl、CaCl、BiOCl、SbOCl、Bi(NO、Cu(NO、NaNO、NONHから選ばれる1種又は2種以上であり、
前記成分Cは融点が820℃以下の低融点化合物であり、
前記成分DはCaO又はCa(OH)である。
【0013】
本開示のいくつかの実施態様によれば、本開示の前記ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、前記MgOとAlを含む混合物中、前記Alの質量百分率は60%以下であり、粒度10μm以上の顆粒の体積百分率は30~60%である。
【0014】
本開示のいくつかの実施態様によれば、本開示の前記ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、前記MgOとAlを含む混合物中、前記MgOと前記Alとの質量比は90:5である。
【0015】
本開示のいくつかの実施態様によれば、本開示の前記ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、前記MgOのクエン酸活性は200~2000Sであり、前記Alの比表面積は15~50m/gである。
【0016】
本開示のいくつかの実施態様によれば、本開示の前記ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、前記融点が820℃以下の低融点化合物は酸化ホウ素、炭酸ナトリウム、ホウ砂、酸化アンチモンから選ばれる1種又は2種以上である。
【0017】
本開示のいくつかの実施態様によれば、本開示の前記ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、前記融点が820℃以下の低融点化合物は酸化ホウ素又は酸化アンチモンである。
【0018】
本開示のいくつかの実施態様によれば、本開示の前記ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、前記バリア剤中、前記成分A、前記成分B、前記成分C、及び前記成分Dの質量比は100:(0.5~6):(0.6~3):(0.6~5.3)である。
【0019】
本開示のいくつかの実施態様によれば、本開示の前記ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、質量百分率換算で、前記バリア剤はNHClをさらに含み、
前記バリア剤中、前記成分Aと前記NHClとの質量比は100:(1~2.1)である。
【0020】
本開示のいくつかの実施態様によれば、本開示の前記ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、前記バリア剤は、成分A、成分B、成分C、成分D、及びNHClを含み、
前記バリア剤中、前記成分A、前記成分B、前記成分C、前記成分D、及びNHClの質量比は100:3:2:5:1.9である。
【0021】
本開示のいくつかの実施態様によれば、本開示の前記ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、前記成分AはMgOとAlを含む混合物であり、
前記成分BはMgClであり、
前記成分Cは酸化アンチモンであり、
前記成分DはCa(OH)である。
【0022】
本開示のいくつかの実施態様によれば、本開示の前記ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、前記熱間引抜き・平坦化において、
水による洗浄と、
質量濃度が1%~10%の硫酸と質量濃度が1%~5%の硝酸との混合溶液による温度50~80℃の酸洗と、
Feイオン性錯化剤の質量濃度が0.5%~5%の、水とFeイオン性錯化剤を含む混合物による洗浄と、
水による洗浄とを順次含む4段洗浄プロセスが使用される。
【0023】
本開示のいくつかの実施態様によれば、本開示の前記ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、前記脱炭焼鈍において、露点は38~58℃であり、加熱温度は800~850℃である。
【0024】
本開示のいくつかの実施態様によれば、本開示の前記ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、前記Feイオン性錯化剤はクエン酸アンモニウムであってもよい。この技術案では、前記クエン酸アンモニウムは鋼帯表面に残存するFeイオンの酸化をさらに防止し、良好な表面を確保する。
【0025】
本開示のいくつかの実施態様によれば、本開示の前記ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、質量百分率換算で、前記ビレットは、C 0.05~0.09%、Si 2.9~4.6%、Mn 0.05~0.20%、S 0.005~0.020%、Als 0.0225~0.0325%、N 0.0045~0.0145%、Sn 0.01~0.30%、Sb 0.002~0.15%、Cr 0.01~0.5%、Cu 0.01~0.8%を含み、残りはFe及び不可避的な不純物元素である。
【0026】
本開示のいくつかの実施態様によれば、本開示の前記ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、質量百分率換算で、前記ビレットは、C 0.06~0.07%、Si 3.2~3.5%、Mn 0.16~0.17%、S 0.015~0.019%、Als 0.028~0.030%、N 0.012~0.013%、Sn 0.10~0.20%、Sb 0.09~0.11%、Cr 0.3~0.4%、Cu 0.1~0.3%を含み、残りはFe及び不可避的な不純物元素である。
【0027】
本開示の別の態様では、本開示の前記ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法によって得られるガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼をさらに提供する。
【0028】
本開示のいくつかの実施態様によれば、本開示の前記ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法によって得られたガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼では、厚さは0.18mm、0.20mm、0.23mm、0.27mm、0.30mm、0.35mmであってもよい。
【発明の効果】
【0029】
本開示の前記1つ又は複数の技術実施形態は、少なくとも下記技術的効果又は利点がある。
【0030】
(1)本開示で提供されるガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、鋼帯の脱炭焼鈍段階での酸化皮膜の厚さ及び高温焼鈍の冷却段階のプロセスを制御することによって、表面の平滑性に優れ、表面がうまく均質化しており、材料化率が高く、磁気特性に優れるガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼が得られる。
【0031】
(2)本開示で提供されるガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、開示の目的に対して、最適化平衡試験を通じて、前記バリア剤の特定成分及びこれらの含有量を決定し、一連の特定のプロセスパラメータと組み合わせることにより、得られたガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の表面を、形態が均一であり、光沢があり、しかも酸化物の残留量が少なく、明らかなガス状痕が認められず、摩擦係数が小さいものとする。
【0032】
(3)本開示で提供されるガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、鋼帯の脱炭焼鈍段階での酸化皮膜の厚さ及び高温焼鈍の冷却段階プロセスを制御し、熱間引抜き・平坦化プロセスを最適化し、4段洗浄プロセスを利用することによって、ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の表面の均一性が劣り、平滑性が悪く、材料化率が低く、磁気特性が劣化するなどの欠陥をよく解決し、表面が均一であり、平滑度に優れ、磁気特性が良好であるガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼が得られ、歩留まりは90%以上に達する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、特定の実施形態及び実施例を参照して、本開示を詳しく説明し、これによって、本開示の利点及びさまざまな効果は明らかになる。当業者にとって明らかなように、これらの特定の実施形態及び実施例は本開示を説明するものであり、本開示を限定するものではない。
【0034】
明細書を通じて、特に断らない限り、本明細書に使用される用語は本分野で通常使用されている定義として理解すべきである。したがって、特に断らない限り、本明細書で使用される全ての技術的用語及び科学的用語は、本開示の当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。矛盾が存在する場合、本明細書は優先される。
【0035】
特に断らない限り、本開示で使用される各種の原材、試薬、器具や装置などは、全て市販品として入手可能なもの又は従来の方法によって製造され得るものである。
【0036】
本開示のいくつかの実施例で提供される技術案では、上記の技術的課題を解決するために、総体的な考え方は次のとおりである。
【0037】
本開示の一態様では、
製錬、連続鋳造、ビレット加熱、熱間圧延、正規化、冷間圧延、脱炭焼鈍、窒化、バリア剤塗布、高温焼鈍、熱間引抜き・平坦化、及びコーティングを含むガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法であって、
前記脱炭焼鈍において、鋼帯の表面の酸化皮膜の厚さは1.5~2.5μmであり、前記酸化皮膜中のSi元素とFe元素の原子重量比は、Si/(Si+Fe)≧0.76を満たし、
前記高温焼鈍において、冷却段階は、
温度1200~500℃で、カバーが付いたままで冷却を行うことであって、保護ガスは窒素ガスと水素ガスとを含む混合ガスであってもよく、前記混合ガス中の水素ガスの体積百分率が3%を超えることと、
温度500~200℃で、カバーが付いたままで冷却を行うことであって、保護ガスは窒素ガスであってもよいことと、
温度200℃未満で、インナーカバーを取り外して空気冷却を行うこととを順次含む、ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法を提供する。
【0038】
本開示のいくつかの実施形態のガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、鋼帯の脱炭焼鈍段階での酸化皮膜の厚さを制御することによって、活性の低い緻密な酸化皮膜を取得することで、マグネシウム-アルミニウムスピネルの生成を抑え、酸化皮膜中の大量の鉄系酸化物から還元される鉄元素が鋼帯の表面に付着して最終製品の表面を粗いものとすることを回避する。さらに、鋼帯の高温焼鈍冷却段階でのプロセスパラメータを制御することによって、表面がうまく平滑化、均質化されており、材料化率が高く、磁気特性に優れるガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼が得られる。
【0039】
本開示のいくつかの実施例によれば、本開示の前記ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、前記ビレット加熱において、前記加熱温度は1150℃であってもよい。
【0040】
本開示のいくつかの実施形態のガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法によれば、発明者らはビレットの加熱温度について大量の研究を行い、最終的には、最適な加熱温度を1150℃とし、これにより、製造されたガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の材料化率が高くなる。
【0041】
本開示のいくつかの実施例によれば、本開示の前記ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、前記鋼帯の表面の酸化皮膜の厚さが1.5~2.5μmであることは、前記鋼帯の表面の酸化皮膜の厚さが1.9~2.3μmであることを含む。
【0042】
本開示のいくつかの実施形態のガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法によれば、発明者らはまた、鋼帯の表面の酸化皮膜の厚さの好ましい形態(酸化皮膜の厚さは1.9~2.3μm)について大量の研究を行い、これにより、最終製品の表面品質を大幅に向上させる。
【0043】
本開示のいくつかの実施例によれば、本開示の前記ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、前記バリア剤塗布において、前記バリア剤は、成分A、成分B、成分C、及び成分Dを含んでもよく、
前記成分AはMgOであってもよく、又は、前記成分AはMgOとAlを含む混合物であってもよく、
前記成分Bは、NaCl、KCl、MgCl、ZnCl、BaCl、SrCl、MnCl、CaCl、BiOCl、SbOCl、Bi(NO、Cu(NO、NaNO、NONHから選ばれる1種又は2種以上であってもよく、
前記成分Cは融点が820℃以下の低融点化合物であってもよく、
前記成分DはCaO又はCa(OH)であってもよい。
【0044】
本開示のいくつかの実施形態のガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法によれば、発明者らは、大量の最適化平衡試験を通じて、前記バリア剤の特定成分及びこれらの含有量を決定し、一連の特定のプロセスパラメータと組み合わせることにより、得られたガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の表面を、形態が均一であり、光沢があり、しかもアンチモン酸化物の残留量が少なく、明らかなガス状痕が認められず、摩擦係数が小さいものとする。
【0045】
本開示のいくつかの実施例によれば、本開示の前記ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、前記MgOとAlを含む混合物中、前記MgOと前記Alとの質量比は90:5であってもよい。
【0046】
本開示のいくつかの実施形態のガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法によれば、発明者らは、大量の最適化平衡試験を通じて、前記MgOとAlとを含む混合物中、前記MgOと前記Alとの質量比を90:5とし、これにより、鋼帯表面の平滑性及び均一性をさらに向上させる。
【0047】
本開示のいくつかの実施例によれば、本開示の前記ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、前記MgOのクエン酸活性は200~2000Sであり、
前記バリア剤中、粒度10μm以上の顆粒の体積百分率は30~60%であり、
前記Alの比表面積は15~50m/gである。
【0048】
本発明者らは、大量の研究を行った結果、上記の技術案は本開示の目的を達成させるに加えて、MgOの反応活性をより確実に制御し、MgOと酸化皮膜との反応が速すぎて鋼帯表面の均一性の低下を回避できる。さらに、CaO又はCa(OH)も添加され、これにより、前記バリア剤のスラリーの付着性が向上し、塗布むらによる表面品質の不均一さの欠陥を回避する。いくつかの実施形態では、本開示は、バリア剤中の顆粒の粒度をさらに限定することにより、水和速度を減少させるとともに、高温焼鈍層間の通気性を高め、ガスの放出むらによる鋼帯表面のガス状痕の欠陥を防止する。
【0049】
本開示のいくつかの実施例によれば、本開示の前記ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、前記融点820℃以下の低融点化合物は、酸化ホウ素、炭酸ナトリウム、ホウ砂、酸化アンチモンから選ばれる1種又は2種以上であってもよい。
【0050】
本開示のいくつかの実施例によれば、本開示の前記ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、前記融点820℃以下の低融点化合物は酸化ホウ素又は酸化アンチモンであってもよい。
【0051】
発明者らによれば、高温焼鈍においてMgOと酸化皮膜SiOとが反応してMgSiO下地層を生成することが固相反応であることを考慮して、融点820℃以下の低融点化合物が高温焼鈍中に液相を発生させ、物質移動プロセスを促進して下地層の形成速度を速め、多孔性を向上させ、後続のプロセスにおける除去がより容易である。また、融点820℃以下の低融点化合物は鋼帯の表面の均一性を向上させ、鋼帯表面での抑制剤の分解に対して一定の制御作用があり、これにより、鋼帯の磁気特性の安定化に有利である。
【0052】
本開示のいくつかの実施例によれば、本開示の前記ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、前記バリア剤中、前記成分A、前記成分B、前記成分C、及び前記成分Dの質量比は、100:(0.5~6):(0.6~3):(0.6~5.3)であってもよい。
【0053】
本開示のいくつかの実施形態のガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、開示の目的に対して、発明者らは、前記バリア剤の特定成分及びこれらの含有量を最適化させ、ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の表面平滑化、磁気特性の均質化を大幅に促進し、ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の磁気特性をより安定化させる。
【0054】
本開示のいくつかの実施例によれば、本開示の前記ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、質量百分率換算で、前記バリア剤はNHClをさらに含んでもよく、
前記バリア剤中、前記成分Aと前記NHClとの質量比は100:(1~2.1)であってもよい。
【0055】
発明者らは、大量の研究を通じて、NHClが高温で分解するとNHガスを放出し、鋼帯の表面で窒化されたSiの分解をある程度抑制できることを考慮して、抑制剤の分解が速すぎて鋼帯の磁気特性の不安定性をもたらすことを回避する効果を達成させる。
【0056】
本開示のいくつかの実施例によれば、本開示の前記ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、前記バリア剤は、成分A、成分B、成分C、成分D、及びNHClを含んでもよく、
前記バリア剤中、前記成分A、前記成分B、前記成分C、前記成分D、及びNHClの質量比は100:3:2:5:1.9であってもよい。
【0057】
発明者らは、前記バリア剤の特定成分の含有量の割合をさらに最適化させることで、ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の材料化率を顕著に向上させる上に、表面の平滑性、表面の均質性、磁気特性を大幅に向上させる。
【0058】
本開示のいくつかの実施例によれば、本開示の前記ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、前記成分Aは、MgOとAlとを含む混合物であってもよく、
前記成分BはMgClであってもよく、
前記成分Cは酸化アンチモンであってもよく、
前記成分DはCa(OH)であってもよい。
【0059】
本開示では、特定のバリア剤成分が使用されることにより、本開示の技術的効果を達成させるのに有利であり、最終製品は、均一であり、光沢があり、酸化物残存量が0.03g/m以下であり、明らかなガス状痕が認められず、摩擦係数が0.25未満である。
【0060】
本開示のいくつかの実施例によれば、本開示の前記ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、前記熱間引抜き・平坦化において、
水による洗浄と、
質量濃度が1%~10%の硫酸と質量濃度が1%~5%の硝酸との混合溶液による温度50~80℃の酸洗と、
Feイオン性錯化剤の質量濃度が0.5%~5%の、水とFeイオン性錯化剤を含む混合物による洗浄と、
水による洗浄とを順次含む4段洗浄プロセスが使用される。
【0061】
本開示のいくつかの実施形態のガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法によれば、前記熱間引抜き・平坦化において、4段洗浄プロセスが使用されており、所定量の硝酸を添加することで高温焼鈍冷却段階で残留される鉄や鉄酸化物を除去するとともに、鋼帯表面の粗さを低下させ、平滑な表面を得ることにより有利である。さらに、洗浄プロセスにおいて水とFeイオン性錯化剤とを含む混合物を用いてリンスを行うことにより、酸洗後の鋼帯表面に残留された鉄イオンの除去により有利であり、洗浄段階が終了した後に鋼帯の表面に鉄イオンが残存することにより二次酸化が発生して鋼帯の表面が黄化するような欠陥を回避する。
【0062】
本開示のいくつかの実施例によれば、本開示の前記ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、前記脱炭焼鈍において、露点は38~58℃であってもよく、加熱温度は800~850℃であってもよい。
【0063】
本開示では、本開示の目的をよりよく達成させるために、脱炭焼鈍における露点及び加熱温度が制御され、これにより、脱炭効果が確保されながら本開示の前記酸化皮膜の所望の厚さが確保され、さらに、表面が緻密なSiO層が得られ、これにより、高温焼鈍におけるケイ酸マグネシウムの生成反応速度の均一性が制御され得る。
【0064】
本開示のいくつかの実施例によれば、本開示の前記ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、質量百分率換算で、前記ビレットは、C 0.05~0.09%、Si 2.9~4.6%、Mn 0.05~0.20%、S 0.005~0.020%、Als 0.0225~0.0325%、N 0.0045~0.0145%、Sn 0.01~0.30%、Sb 0.002~0.15%、Cr 0.01~0.5%、Cu 0.01~0.8%を含んでもよく、残りはFe及び不可避的な不純物元素であってもよい。
【0065】
本開示のいくつかの実施例によれば、本開示の前記ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、質量百分率換算で、前記ビレットは、C 0.06~0.07%、Si 3.2~3.5%、Mn 0.16~0.17%、S 0.015~0.019%、Als 0.028~0.030%、N 0.012~0.013%、Sn 0.10~0.20%、Sb 0.09~0.11%、Cr 0.3~0.4%、Cu 0.1~0.3%を含んでもよく、残りはFe及び不可避的な不純物元素である。
【0066】
発明者らは、本開示の技術的効果をよりよく達成させるために、ビレットの化学元素及びこれらの含有量を決定して最適化し、これにより、表面がより均一であり、光沢度がより優れ、摩擦係数がより低く、歩留まりがより高く、磁気特性により優れたガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼が得られる。
【0067】
以下、実施例、比較例及び実験のデータを参照して本出願の前記ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法を詳しく説明する。
実施例
【0068】
本実施例では、8個の試験群が使用される。試験群1~8では、本開示のいくつかの実施例のガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法は、製錬、連続鋳造、ビレット加熱、熱間圧延、正規化、冷間圧延、脱炭焼鈍、窒化、バリア剤塗布、高温焼鈍、熱間引抜き・平坦化、及びコーティングを含んでもよい。
【0069】
いくつかの実施形態では、製錬、連続鋳造により得られたビレットを加熱して保温した後、熱間圧延により熱間圧延板とし、次に、正規化、20本のローラによる冷間圧延により冷間圧延板とし、この冷間圧延板について脱炭焼鈍、窒化、バリア剤塗布、乾燥を行った後に、高温焼鈍、熱間引抜き・平坦化及びコーティングを行って完成品を得る。いくつかの実施形態では、
ビレット加熱段階において、前記加熱温度は1150℃であってもよく、
脱炭焼鈍段階において、鋼帯の表面の酸化皮膜の厚さは1.5~2.5μmであってもよく、前記酸化皮膜中、Si元素とFe元素との原子重量比は、Si/(Si+Fe)≧0.76を満たし、前記脱炭焼鈍において、露点は38~58℃であってもよく、加熱温度は800~850℃であってもよく、
バリア剤塗布段階において、前記バリア剤は、成分A、成分B、成分C、成分D、及びNHClを含んでもよい。
【0070】
いくつかの実施形態では、前記成分AはMgOであってもよく、又は、前記成分AはMgOとAlを含む混合物であってもよく、前記MgOとAlとを含む混合物中、前記Alの質量百分率は60%以下であり、粒度10μm以上の顆粒の体積百分率は30~60%であってもよく、前記MgOのクエン酸活性は200~2000Sであってもよく、前記Alの比表面積は15~50m/gであってもよく、
前記成分Bは、NaCl、KCl、MgCl、ZnCl、BaCl、SrCl、MnCl、CaCl、BiOCl、SbOCl、Bi(NO、Cu(NO、NaNO、NONHから選ばれる1種又は2種以上であってもよく、
前記成分Cは融点820℃以下の低融点化合物であってもよく、前記融点820℃以下の低融点化合物は、酸化ホウ素、炭酸ナトリウム、ホウ砂、酸化アンチモンから選ばれる1種又は2種以上であってもよく、
前記成分DはCaO又はCa(OH)であってもよく、
前記バリア剤中、前記成分A、前記成分B、前記成分C及び前記成分Dの質量比は100:(0.5~6):(0.6~3):(0.6~5.3):(1~2.1)であってもよく、
前記バリア剤はさらにNHClを含んでもよく、前記成分Aと前記NHClとの質量比は100:(1~2.1)であってもよい。
【0071】
高温焼鈍段階では、
冷却段階は、以下のことを順次含んでもよい。
(1)温度1200~500℃で、カバーが付いたままで冷却を行い、保護ガスは窒素ガスと水素ガスとを含む混合ガスであってもよく、前記混合ガス中の水素ガスの体積百分率が3%を超える。
(2)温度500~200℃で、カバーが付いたままで冷却を行い、保護ガスは窒素ガスであってもよい。
(3)温度<200℃で、インナーカバーを取り外して空気冷却を行う。
【0072】
熱間引抜き・平坦化段階では、
4段洗浄プロセスが使用され、このプロセスは以下のことを順次含んでもよい。
(1)水による洗浄、
(2)質量濃度が1%~10%の硫酸と質量濃度が1%~5%の硝酸戸を含む混合溶液による、温度50~80℃の酸洗、
(3)クエン酸アンモニウムの質量濃度が0.5%~5%であってもよい、水とクエン酸アンモニウムとを含む混合物による洗浄、
(4)水による洗浄。
【0073】
いくつかの実施形態では、質量百分率換算で、前記ビレットは、C 0.05~0.09%、Si 2.9~4.6%、Mn 0.05~0.20%、S 0.005~0.020%、Als 0.0225~0.0325%、N 0.0045~0.0145%、Sn 0.01~0.30%、Sb 0.002~0.15%、Cr 0.01~0.5%、Cu 0.01~0.8%を含んでもよく、残りはFe及び不可避的な不純物元素であってもよい。
【0074】
本実施例では、8個の試験群の具体的なプロセスパラメータは表1及び表2に示される。
ここで、質量百分率換算で、前記ビレットに含まれる化学成分は表3に示される。
【比較例】
【0075】
本比較例では、8個の比較群が使用され、比較群1~8では、本開示の実施例の8個の試験群の関連ステップを用いて結晶粒配向したケイ素鋼を製造し、ただし、酸化皮膜の厚さ、使用されるバリア剤、及び熱間引抜き・平坦化の有無、高温焼鈍の冷却段階のプロセスが異なる。
【0076】
上記の実施例及び比較例で製造された結晶粒配向したケイ素鋼についてそれぞれ性能試験を行い、その比較結果を表6に示す。
【0077】
注:1級:均一性や光沢性が極めて優れており、酸化物残存量が0.03g/m以下であり、明らかなガス状痕が認められず、摩擦係数が0.25未満である。2級:均一性や光沢性が比較的優れており、酸化物残存量が0.05g/m以下であり、縁部の局所に僅かなガス状痕が認められ、摩擦係数が0.35未満である。3級:比較的均一であり、局所にガス状痕が認められ、光沢が不十分であり、酸化物残存量が0.07g/m以下であり、摩擦係数が0.45を超える。4級:非常に不均一であり、光沢が不十分であり、明らかなガス状痕が認められ、酸化物残存量が0.1g/mを超え、摩擦係数が0.5を超える。
【0078】
本開示の上記の実施例と比較例とを比較したところ、本開示のいくつかの実施形態に係るガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の製造方法では、酸化皮膜の厚さを制御し、特定のバリア剤、特定の熱間引抜き・平坦化及び高温焼鈍の冷却段階プロセスを採用することによって、表面の均一性が悪く、平滑性が劣り、材料化率が低く、磁気特性が劣化するなどのガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の欠陥を解決し、表面が均一であり、平滑性に優れ、磁気特性が良好であり、酸化物残存量が少なく、明らかなガス状痕が認められておらず、摩擦係数が小さいガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼が得られ、表6に示すように、歩留まりは90%以上である。
【0079】
なお、「含む」、「包含」という用語又はこれらの任意の変形は、非排他的な包含をカバーすることを意図しており、このため、一連の要素を含むプロセス、方法、物品又は機器は、当該要素だけではなく、明示的にリストされていない他の要素、又はこのようなプロセス、方法、物品又は機器に固有の要素を含んでもよい。
【0080】
本開示の好適な実施例を説明したが、当業者であれば、基本的な新規的な概念を把握したら、これらの実施例に対してさらなる変更や修正を加えることができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、好適な実施例及び本開示の範囲内の全ての変更や修正を含むことを意図している。
【0081】
もちろん、当業者は、本開示の主旨及び範囲を逸脱することなく本開示についてさまざまな変動や変形を行うことができる。このため、本開示のこのような修正や変形が本開示の特許請求の範囲及びその同等技術の範囲に属すれば、本開示はこれらの変更や変形も含むことを意図している。
【手続補正書】
【提出日】2022-07-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0003
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0003】
従来の結晶粒配向したケイ素鋼の製造プロセスでは、鋼帯の冷間圧延後に脱炭焼鈍処理を行い、鋼帯の表面に酸化皮膜(主にSiOとFeSiOからなる)を形成した後、窒化処理を行う必要がある。窒化において、N元素が酸化皮膜を介して鋼帯の表面に浸透する。その後、この鋼帯の表面にMgOバリア剤層を塗布する。鋼帯が高温焼鈍段階に入ると、その表面に形成された酸化皮膜がMgOと反応してケイ酸マグネシウム下地層が生成され、このケイ酸マグネシウム下地層はガラスフィルムとも呼ばれる。このガラスフィルムは、鋼帯の表面の層間抵抗を増加させ、表面張力を与えて鋼帯の磁気特性を向上させる役割を果たす。しかし、このガラスフィルムは、従来の結晶粒配向したケイ素鋼の打ち抜き性が悪い原因となる。また、このガラスフィルムが鋼帯の表面で生成する酸化物が磁区移動を阻害し、鉄損を悪化させる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
しかし、現在、ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の主な問題は以下のとおりである。(1)ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の表面の平滑化が困難である。(2)ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼には磁気特性が不安定な欠陥が生じやすい。(3)ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼の生産プロセスでは、大きな鋼コイルの生産温度や雰囲気の違いのため、鋼帯表面と磁気特性を均質化することが困難である。以上のことにより、ガラス無し結晶粒配向したケイ素鋼は、材料化率が低い。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0070
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0070】
いくつかの実施形態では、前記成分AはMgOであってもよく、又は、前記成分AはMgOとAlを含む混合物であってもよく、前記MgOとAlとを含む混合物中、前記Alの質量百分率は60%以下であり、粒度10μm以上の顆粒の体積百分率は30~60%であってもよく、前記MgOのクエン酸活性は200~2000Sであってもよく、前記Alの比表面積は15~50m/gであってもよく、
前記成分Bは、NaCl、KCl、MgCl、ZnCl、BaCl、SrCl、MnCl、CaCl、BiOCl、SbOCl、Bi(NO、Cu(NO、NaNO、NONHから選ばれる1種又は2種以上であってもよく、
前記成分Cは融点820℃以下の低融点化合物であってもよく、前記融点820℃以下の低融点化合物は、酸化ホウ素、炭酸ナトリウム、ホウ砂、酸化アンチモンから選ばれる1種又は2種以上であってもよく、
前記成分DはCaO又はCa(OH)であってもよく、
前記バリア剤中、前記成分A、前記成分B、前記成分C及び前記成分Dの質量比は100:(0.5~6):(0.6~3):(0.6~5.3)あってもよく、
前記バリア剤はさらにNHClを含んでもよく、前記成分Aと前記NHClとの質量比は100:(1~2.1)であってもよい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0074
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0074】
本実施例では、8個の試験群の具体的なプロセスパラメータは表1及び表2に示される。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0075
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0075】
本比較例では、8個の比較群が使用され、比較群1~8では、本開示の実施例の8個の試験群の関連ステップを用いて結晶粒配向したケイ素鋼を製造し、ただし、酸化皮膜の厚さ、使用されるバリア剤、及び熱間引抜き・平坦化の有無、高温焼鈍の冷却段階のプロセスが異なる。
【国際調査報告】