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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】炭酸塩促進性高速カルボキシル化
(51)【国際特許分類】
   C07D 307/68 20060101AFI20230323BHJP
【FI】
C07D307/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547038
(86)(22)【出願日】2021-02-05
(85)【翻訳文提出日】2022-09-30
(86)【国際出願番号】 US2021016772
(87)【国際公開番号】W WO2021158890
(87)【国際公開日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】62/970,969
(32)【優先日】2020-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カナン・マシュー・ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】バネルジー・アーニンディータ
(72)【発明者】
【氏名】フランクホーサー・エイミー・デラノ
(57)【要約】
フラン-2,5-ジカルボキシレート(FDCA2-)を合成するための方法が提供される。無機塩基塩の形態の無機塩基と共にフラン-2-カルボキシレートを準備し、フラン-2-カルボキシレートおよび無機塩基塩は混合物を形成する。CO2ガスを混合物に提供する。混合物を、混合物が少なくとも部分的に溶融する温度に加熱し、混合物の加熱は、MxFDCA固体の合成を引き起こし、MxFDCAは、フラン-2,5-ジカルボキシレート(FDCA2-)ならびに陽イオンM+および/またはM2+を含む塩を表し、式中xは1以上2以下の数値である。フラン-2-カルボキシレートを含む混合物を機械的に撹拌し、機械的撹拌は、MxFDCA固体を粉砕する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラン-2,5-ジカルボキシレート(FDCA2-)を合成するための方法であって、
フラン-2-カルボキシレートを準備することと;
無機塩基塩の形態の無機塩基を準備することであって、前記フラン-2-カルボキシレートおよび前記無機塩基塩は混合物を形成する、無機塩基の準備と;
CO2ガスを前記混合物に提供することと;
前記混合物を、前記混合物が少なくとも部分的に溶融する温度に加熱することであって、前記混合物の加熱は、MxFDCA固体の合成を引き起こし、MxFDCAは、フラン-2,5-ジカルボキシレート(FDCA2-)ならびに陽イオンM+またはM2+を含む塩を表し、式中xは1以上2以下の数値である、前記混合物の加熱と;
フラン-2-カルボキシレートを含む前記混合物を機械的に撹拌することであって、前記機械的撹拌は、MxFDCA固体を粉砕する、前記混合物の機械的撹拌と、
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記無機塩基塩はCO3 2-塩である、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、
陽イオンM+は、アルカリ陽イオンであり、陽イオンM2+はアルカリ土類陽イオンである、方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法であって、
+は、Cs+陽イオンである、方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法であって、
前記機械的撹拌は、インペラーを使用して実施され、前記インペラーの回転速度および前記インペラーの幾何学的形状は、前記インペラーによるMxFDCA固体の粉砕を可能にする、方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法であって、
前記機械的撹拌は、MxFDCA固体を粉砕するために1つまたは複数のスクリューが使用される押出機で実施される、方法。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法であって、
前記機械的撹拌は、ボールミルで実施される、方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法であって、
前記混合物を撹拌するために反応器にCO2を流動させる、方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法であって、
前記混合物は、触媒を実質的に含まない、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、
前記混合物は、亜鉛化合物、カドミウム化合物、水銀化合物、および鉄化合物を実質的に含まない、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、
前記混合物の加熱は、金属含有触媒を実質的に含まない、方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、
前記無機塩基塩およびCO2ガスはCO3 2-塩を形成する、方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法であって、
前記フラン-2-カルボキシレートの準備は、フラン-2-カルボキシレートの溶液を準備することであり、前記無機塩基の準備は、前記無機塩基の溶液を準備することであり、前記混合物は、溶媒を有する溶液であり、前記溶液の前記溶媒を除去することをさらに含む、方法。
【請求項14】
フラン-2,5-ジカルボキシレート(FDCA2-)を合成するための方法であって、
フラン-2-カルボキシレートを準備することと;
無機塩基塩の形態の無機塩基を準備することであって、前記フラン-2-カルボキシレートおよび前記無機塩基塩は混合物を形成する、無機塩基の準備と;
CO2ガスを前記混合物に提供することと;
前記混合物を、前記混合物が少なくとも部分的に溶融する温度に加熱することであって、前記混合物の加熱は、MxFDCA固体の合成を引き起こし、MxFDCAは、フラン-2,5-ジカルボキシレート(FDCA2-)ならびに陽イオンM+またはM2+を含む塩を表し、式中xは1以上2以下の数値である、前記混合物の加熱と;
前記混合物を冷却して前記混合物を固化させ、固体混合物を形成することと;
前記固体混合物の粒子サイズを低減させることと;
CO2ガスを提供しながら前記混合物を再加熱して、前記混合物を部分的に溶融させることと、
を含む方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、
前記混合物を冷却して前記混合物を固化することにより、前記固体混合物のサイズが低減される、方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法であって、
前記無機塩基塩はCO3 2-塩である、方法。
【請求項17】
請求項14~16のいずれか一項に記載の方法であって、
+は、アルカリ陽イオンまたはアルカリ陽イオンの混合物である、方法。
【請求項18】
請求項14~16のいずれか一項に記載の方法であって、
+は、Cs+陽イオンである、方法。
【請求項19】
請求項14~18のいずれか一項に記載の方法であって、
前記混合物の加熱は、触媒を実質的に含まない、方法。
【請求項20】
請求項14~18のいずれか一項に記載の方法であって、
前記混合物の加熱は、亜鉛化合物、カドミウム化合物、水銀化合物、および鉄化合物を実質的に含まない、方法。
【請求項21】
請求項14~18のいずれか一項に記載の方法であって、
前記混合物の加熱は、金属含有触媒を実質的に含まない、方法。
【請求項22】
請求項14の方法であって、
前記無機塩基およびCO2ガスはCO3 2-塩を形成する、方法。
【請求項23】
請求項14に記載の方法であって、
前記フラン-2-カルボキシレートの準備は、フラン-2-カルボキシレートの溶液を準備することであり、前記無機塩基の準備は、前記無機塩基の溶液を準備することであり、前記混合物は、溶媒を有する溶液であり、前記溶液の前記溶媒を除去することをさらに含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府の権利
本発明は、米国エネルギー省と交わされた契約DE-AR0000961に基づき連邦政府の支援を受けてなされたものである。連邦政府は、本発明に対してある特定の権利を有する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条に基づき、2020年2月6日に出願された、Kananらによる「PROCESS DESIGN FOR CARBONATE-PROMOTED CARBOXYLATION AT HIGH RATES」と題する米国特許仮出願第62/970,969号の優先権を主張するものである。この文献は、参照によりあらゆる目的のために組み込まれる。
【0003】
本開示は、CO2ならびにフラン-2-カルボン酸および/またはフラン-2-カルボキシレートからの、フラン-2,5-ジカルボキシレート(FDCA2-)およびフラン-2,5-ジカルボン酸(FDCA)の合成に関する。
【発明の概要】
【0004】
本開示によると、フラン-2,5-ジカルボキシレート(FDCA2-)を合成するための方法が提供される。無機塩基塩の形態の無機塩基と共にフラン-2-カルボキシレートを準備し、フラン-2-カルボキシレートおよび無機塩基塩は混合物を形成する。CO2ガスを混合物に提供する。混合物を、混合物が少なくとも部分的に溶融する温度に加熱し、混合物の加熱は、MxFDCA固体の合成を引き起こし、MxFDCAは、フラン-2,5-ジカルボキシレート(FDCA2-)ならびに陽イオンM+および/またはM2+を含む塩を表し、式中xは1以上2以下の数値である。フラン-2-カルボキシレートを含む混合物を機械的に撹拌し、機械的撹拌は、MxFDCA固体を粉砕する。
【0005】
別の態様では、フラン-2,5-ジカルボキシレート(FDCA2-)を合成するための方法が提供される。無機塩基塩の形態の無機塩基と共にフラン-2-カルボキシレートを準備し、フラン-2-カルボキシレートおよび無機塩基塩は混合物を形成する。CO2ガスを混合物に提供する。混合物を、混合物が少なくとも部分的に溶融する温度に加熱し、混合物の加熱は、MxFDCA固体の合成を引き起こし、MxFDCAは、フラン-2,5-ジカルボキシレート(FDCA2-)ならびに陽イオンM+および/またはM2+を含む塩を表し、式中xは1以上2以下の数値である。混合物を冷却して混合物を固化させ、固体混合物を形成する。固体混合物の粒子サイズを低減させる。CO2ガスを提供しながら混合物を再加熱して、混合物を部分的に溶融させる。
【0006】
本発明ならびにその目的および特徴は、図面を参照すると、以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲からより容易に明らかになるであろう。
【0007】
本開示は、添付の図面にある図において限定ではなく例として示されており、図において同様の参照番号は同様の要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】フラン-2,5-ジカルボン酸セシウムを形成するための、フラン-2-カルボン酸セシウム、炭酸セシウム、およびCO2の反応を示す化学式である。
【0009】
図1B図1Aの反応の相組成を変換率の関数として模式的に図示したものである。
【0010】
図2】一実施形態の高レベルフローチャートである。
【0011】
図3A】フラン-2-カルボキシレートのC-Hカルボキシル化を実施するために使用される反応器の概略図である。
【0012】
図3B】実施例1に記載されている反応の熱電対の温度プロファイルである。
【0013】
図3C】実施例1における反応の生成物の粗1H NMRである。
【0014】
図4】別の実施形態で使用してよい別の反応器の概略図である。
【0015】
図5】コントローラを提供するために使用してよいコンピュータシステムを示す高レベルブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
フラン-2,5-ジカルボン酸(FDCA)は、応用の幅が広く優れた性能のポリマーおよび化学物質を製造するために使用することができるバイオベース分子である。特に、FDCAから作られるポリエステルは、一般的に使用されているポリエステルであり、年間数メガトン規模で生産されている汎用ポリマーであるポリエチレンテレフタレート(PET)と比較して、優れたガス障壁特性、熱特性、および機械的特性を有するため(Burgessら、Macromolecules,47巻、1383~1391頁(2014年))、大きな商業的関心を集めている。グルコースまたはフルクトースから開始してFDCAを合成するための幾つかのプロセスが開発されている。こうした供給原料は、食品成分業界から広く入手可能であるが、グルコースまたはフルクトースからのFDCAの生産は、3つの基質酸化を含む困難な酸化ステップ、複雑な再利用ループを必要とし副産物に結び付く有機溶媒の使用、およびポリマー応用におけるその使用を損なうモノアルデヒド不純物からFDCAを分離するための手間のかかる精製を含む、少なからぬ技術的困難に直面する。加えて、大量に使用される化学物質の供給原料として食品成分を使用することは、農業の環境フットプリントのため、および有害な土地利用変化を助長する可能性があるため、持続可能性の観点から望ましくない。
【0017】
グルコースまたはフルクトースから開始されるプロセスの代替法として、i)フルフラールを、フラン-2-カルボン酸/フラン-2-カルボキシレートへと酸化すること;ii)参照によりあらゆる目的のために組み込まれる、Kananらの「CARBONATE-PROMOTED CARBOXYLATION REACTIONS FOR THE SYNTHESIS OF VALUABLE ORGANIC COMPOUNDS」と題する米国特許第10,160,740号明細書に記載されているように、フラン-2-カルボキシレートを炭酸塩促進性C-Hカルボキシル化して、フラン-2,5-ジカルボキシレートを生産すること;iii)フラン-2,5-ジカルボキシレートをプロトン化してFDCAを生産することを含むプロセスにより、フルフラールおよびCO2からFDCAを生産することができる。この手法には、i)基質の酸化を1回しか必要としないこと(フルフラールからフラン-2-カルボン酸/フラン-2-カルボキシレートへの);ii)問題となるモノアルデヒド不純物の形成が回避されること;iii)有機溶媒を使用する必要がないこと;iv)供給原料フルフラールは、参照によりあらゆる目的のために組み込まれる、Langeら、ChemSusChem 5巻、150~166頁(2012年)に記載のように、何十年にもわたって大規模にリグノセルロース(非食用バイオマス)から産業的に生産されていること、を含む、少なからぬ利点を有する。
【0018】
本明細書に記載のフラン-2-カルボキシレートの炭酸塩促進性C-Hカルボキシル化は、フラン-2-カルボン酸、フラン-2-カルボキシレート、またはそれらの誘導体からフラン-2,5-ジカルボキシレートを生産するための他の方法よりも大きな利点を有する。フラン-2-カルボン酸は、以前は、非プロトン性有機溶媒中で2当量のリチウムジイソプロピルアミド(LDA)と、続いてCO2と反応させることによりフラン-2,5-ジカルボキシレートに変換されている。これはThiyagarajanらのRSC Adv.3巻、15678~15686頁(2013年)に記載されており、この文献は、参照によりあらゆる目的のために組み込まれる。LDAは、自然発火性であり、エネルギー集約的であり、大量プラスチック用のどのモノマーよりも非常に高価である。
【0019】
光酸化還元触媒を塩基としてのCs2CO3と共に使用して、フラン-2-カルボン酸メチルをカルボキシル化して、5-(メトキシカルボニル)フラン-2-カルボキシレートを形成するための方法が、Schmalzbauerら、Chem、6巻、2658~2672頁(2020年)に記載されている。この文献は、参照によりあらゆる目的のために組み込まれる。この反応は、穏やかな条件下で進行するが、i)合成に複数ステップを必要とする高負荷量(20mol%)の有機光触媒を必要とすること;ii)3当量のCs2CO3が使用されること;iii)強力な光を長い反応時間にわたって当てる必要があることを含む、少なからぬ制限を有する。
【0020】
ヘンケル反応としても知られている不均化反応を使用して、芳香族モノカルボキシレートをジカルボキシレートへと変換するための方法も記載されている。Van Haverenらは、米国特許第9,284,290号明細書において、Cd、Zn、またはFeベース触媒の存在下で、フラン-2-カルボキシレート塩を加熱することにより、フラン-2,5-ジカルボキシレートおよびフラン-2,4-ジカルボキシレートの混合物を生産するための方法を記載している。この文献は、参照によりあらゆる目的のために組み込まれる。同様に、Brownscombeらは、米国特許第6,479,699号明細書および第6,452,045号明細書において、不均化触媒を用いてアレーンモノカルボキシレートを加熱することによりアレーンモノカルボキシレートをアレーンジカルボキシレートへと変換するためのヘンケル反応の使用を記載している。これら文献は、参照によりあらゆる目的のために組み込まれる。こうした方法は、以下の理由で、フラン-2,5-ジカルボキシレートの合成に有用ではない:i)CO3 2-促進性C-Hカルボキシル化の最大収率が100%であるのとは対照的に、不均化反応は最大収率が50%に制限されるため;ii)触媒の使用は、触媒の除去および再利用を必要とするため、プロセス化学が複雑になるため;iii)触媒は、一般的には、毒性の高いCdに基づいているため;iv)複数のフランジカルボキシレート異性体の形成は、大きな精製上の課題をもたらすため。
【0021】
本明細書は、フラン-2-カルボキシレートのCO3 2-促進性C-Hカルボキシル化が、中間温度において、アルカリ陽イオン(Cs+またはK+など)を含む部分的に溶融した塩混合物中にて無溶媒および無触媒条件下で効率的に進行することを示す。こうした反応媒体では、(CO3 2-)は、フラン-2-カルボキシレートの非常に弱酸性のC-H結合を脱プロトン化し、CO2と反応してフラン-2,5-ジカルボキシレートを形成する炭素中心求核剤を生成する。
【0022】
フラン-2-カルボキシレートの炭酸塩促進性C-Hカルボキシル化は、高温で進行し、触媒も溶媒も必要としない。所望のフラン-2,5-ジカルボキシレート生成物を高収率で生産する条件は、以前に、Banerjeeら、Nature 531巻、215~219頁(2016年)およびDickら、Green Chem.19巻、2966~2972頁(2017年)に記載されており、これら文献は、参照によりあらゆる目的のために組み込まれるが、反応時間は、大量生産または商業的応用には非現実的である。本明細書における種々の実施形態では、フラン-2-カルボキシレートの炭酸塩促進性C-Hカルボキシル化で高収率を達成するために必要な反応時間が低減される。
【0023】
反応時間の低減に結び付く特徴の説明は、Frankhouser,A.D.、Kanan M.W.「Phase behavior that enables solvent-free carbonate-promoted furoate carboxylation」J.Chem.Phys.Lett.11巻、7544~7551頁(2020年)に詳細に記載されている、C-Hカルボキシル化反応の一実施形態の相特性をまず説明することにより、より良好に理解される。この文献は、参照によりあらゆる目的のために組み込まれる。フラン-2,5-ジカルボキシレートを形成するためのフラン-2-カルボキシレートのカルボキシル化は、以下の式に従って進行する:
MFA+(1/2)M2CO3+(1/2)CO2->M2FDCA+(1/2)H2
式中、MFAは、M+およびFA-で構成される塩を表し、M+は、アルカリ陽イオンまたはアルカリ陽イオンの混合物を表し、FA-は、フラン-2-カルボキシレート陰イオンを表し、M2CO3は、M+および炭酸塩陰イオンであるCO3 2-で構成される塩を表し、M2FDCAは、M+およびFDCA2-で構成される塩を表し、FDCA2-は、フラン-2,5-ジカルボキシレート陰イオンを表す。反応は、過剰なM2CO3を用いて実施することができるが、上記の化学量論的関係性により、完全な変換に必要な最小量が規定される(つまり、モル当量の観点では、M2CO3:MFA≧0.5)。CO2は、静圧または流動ガスとして提供してよい。CO2が流動で提供される場合、副産物として生成されるH2Oは系から取り除かれる。一部の実施形態では、1つのみのアルカリ陽イオン(M+)が使用される。他の実施形態では、1つよりも多くのアルカリ陽イオンを使用してよい。他の実施形態では、他のカルボキシレートのアルカリ塩(例えば、ギ酸アルカリまたは酢酸アルカリ)、または二価および三価陽イオンを含む非アルカリ陽イオンを含む他の塩などの追加の塩を含む、追加の成分を添加してよい。また、CO2と共に追加のガスを提供してよい。
【0024】
好ましい実施形態では、M+はCs+であり、追加の塩は使用されない。図1Aには、Cs2CO3およびCO2によるフラン-2-カルボン酸セシウムのカルボキシル化の式が、化学構造の図示と共に示されている。図1Bには、この反応の相組成の出現を変換率の関数として模式的に図示したものが示されている。位相挙動を、下記でさらに説明する。開始材料の塩(CsFAおよびCs2CO3)は両方とも室温で固体であり、反応は、この状態からは進行しないだろう。こうした2つの塩の混合物を、256℃のその共融温度(Te)よりも高い温度に加熱すると、CsFAおよび少量のCs2CO3で構成される溶融共晶の形成がもたらされる。(CsFA/Cs2CO3系の256℃の共融温度は、試料温度を慎重に制御し正確に測定する示差走査熱量測定により測定されている。)Cs2CO3の大部分は、この初期段階ではその固体状態のままである。したがって、反応混合物は、初期には、3つの相:溶融共晶(CsFAおよびCs2CO3)、固体(Cs2CO3)、および気体(CO2)で構成されている。共晶溶融が生じると、混合物のCO2ガスへの曝露は、上記に示されている反応に従って、Cs2FDCA生成物の形成をもたらすことになる。この反応は、Cs2CO3およびCsFAの消費をもたらす。溶融物中のCs2CO3が消費されている間は、固体Cs2CO3相との平衡状態が保たれる。このように、Cs2FDCA生成は、固体Cs2CO3相の消費ももたらす。変換率が低い時は、生成されたCs2FDCAは溶融相に完全に溶解したままであり、混合物は、3つの相:溶融共晶(CsFA、Cs2CO3、およびCs2FDCA)、固体(Cs2CO3)、および気体(CO2およびH2O)で構成され続ける。変換率が約5%よりも大きくなると、Cs2FDCAは、溶融物を飽和させる。この時点以降に生成される追加のCs2FDCAは、追加の固相として沈殿することになる。したがって、残りの反応では、混合物は、4つの相:溶融共晶(CsFA、Cs2CO3、およびCs2FDCA)、固体Cs2CO3、固体Cs2FDCA、および気体(CO2およびH2O)で構成される。両固体成分は、溶融相の構成成分と平衡状態を保ったままである。変換率が増加すると、溶融相および固体Cs2CO3の減少がもたらされ、固体Cs2FDCAが蓄積する。
【0025】
反応が進行すると共に、固体Cs2FDCA相は、混合物の益々大きな部分を占めるようになる。なんらかの形態の撹拌がなければ、固体Cs2FDCAの領域は、継続的に大きさが増加することになり、最終的には減少する溶融領域を包み込み、2つの主要な様式で物質移動が制限される。第1に、溶融領域と固体Cs2CO3との間の接触が減少すると、溶融相へのCs2CO3の移動が制限される。第2に、CO2ガスの溶融相への移動(逆に言えば、H2Oからの移動)が抑制される。
【0026】
実際には、温度および反応器設計などのプロセス仕様に応じて、こうした物質移動の制限は、i)反応動力学の緩徐(つまり、低変換率で反応が「失速」し、反応時間が長くなる)、またはii)分解の増加(つまり、FDCA2-を生成するための所望の経路に必要な反応成分の非存在下では出発物質が望ましくない経路を介して反応することによる、所望の生成物の収率の減少)に結び付く可能性がある。
【0027】
種々の実施形態では、撹拌が固体生成物を粉砕する役目を果たす場合、反応混合物の撹拌を使用して、上記に記載の状況を回避し、短期間で高収率のカルボキシル化反応を達成することができる。固体Cs2FDCAは、反応が進行すると共に依然として蓄積することになるが、固体Cs2FDCA領域を粉砕する撹拌により、反応が生じる溶融相と、反応の進行に必要な固相反応物および気相反応物との間の適切な接触を確保することができる。撹拌のモードは、i)反応混合物の固相成分、溶融相成分、および気相成分間の高度な接触を維持すること、およびii)相組成が時間と共に変化する(つまり、変換率の関数として、固体が多くなり、溶融物が少なくなる)反応混合物に対してこの接触を維持することができなければならない。
【0028】
共晶混合物の特性はその成分に特有であるため、この反応の出発材料の組成の変化は、その相挙動に影響を及ぼし、したがって反応が進行し得るか否かおよび進行する場合はどのような条件下で進行するのかの両方に影響を与えることになる。Cs+以外のM+の使用は、塩混合物の相挙動に影響を及ぼす。単一のアルカリ陽イオンを使用する場合、Cs+塩のみが、フラン-2-カルボキシレートを急速に分解することなく溶融相に接近することができる実施可能な温度操作窓を提供する。しかしながら、少なくとも少量のセシウム塩が存在する限り、複数のアルカリ陽イオンを有するフロ酸塩/炭酸塩混合物で共晶溶融(およびしたがってカルボキシル化)を観察することができる。
【0029】
追加の成分を混合物に添加して、その相挙動を改変することができる。理想的には、こうした成分は、より低い温度でフロ酸塩/炭酸塩の共晶溶融を誘導しつつ、反応条件下で不活性であり熱的に安定したままであることにより、より大きな温度操作窓を作出することになる。一例として、イソ酪酸カリウム塩を、フロ酸カリウムおよび炭酸カリウム(つまり、KFAおよびK2CO3)の混合物に添加して、共晶溶融を誘導し、カルボキシル化反応を可能にすることができるが、KFA/K2CO3混合物は、イソ酪酸塩の非存在下では共晶融解を呈さないため、反応性がない。
【0030】
こうした組成変化が混合物の相挙動に対して有することになる効果のため、温度および滞留時間などのプロセス仕様を、所与の混合組成に関して最適化する必要がある。しかしながら、CsFAおよびCs2CO3のみから開始される実施形態でなされた一般的な観察(例えば、固体成分および溶融成分が両方とも存在すること、変換率の関数として混合物の相組成が変化すること)は、依然として当てはまることになる。これは、このプロセス洞察が、1つの特定の組成に限定されないことを意味する。
【0031】
示差走査熱量測定などの熱分析技法により測定される相転移の温度は、こうした分析技法では慎重に制御され正確に測定される試料温度に対応することに留意することが重要である。しかしながら、反応について測定される温度は、反応器内または反応器外部の熱電対または温度計の配置、および反応条件下で形成される熱勾配に依存する。こうした要因は無視できない可能性がある。したがって、反応器に適用された熱電対または温度計により測定される反応の温度は、反応混合物と熱電対または温度計との間に勾配が存在する場合、熱分析技法により測定される反応混合物の部分的溶融を達成するために必要な温度よりも低いかまたは高いように見えてもよい。
【0032】
図2は、理解を容易にするための、一実施形態の高レベルフローチャートである。種々の実施形態は、より多くのまたはより少ないステップを有してよく、ステップは、異なる順序でまたは同時に実施してよい。陽イオンM+および/またはM2+と共にフラン-2-カルボキシレートを含む塩を準備する(ステップ204)。フラン-2-カルボキシレートを含む塩は、溶液および/または固体として準備してよい。陽イオンM+またはM2+と共にCO3 2-を含む塩を準備する(ステップ208)。CO3 2-を含む塩は、溶液および/または固体として準備してよい。フラン-2-カルボキシレートを含む塩およびCO3 2-を含む塩は混合物を形成する。一部の実施形態では、CO3 2-を含む塩は、フラン-2-カルボキシレートを含む塩を準備する前にまたは準備と同時に準備してよい。フラン-2-カルボキシレートを含む塩および/またはCO3 2-を含む塩が溶液として準備される場合は、溶媒を除去して固体を形成する。フラン-2-カルボキシレートの溶液をCO3 2-の溶液と混合してよく、次いで溶媒を除去して混合物を形成させる。CO2ガスを混合物に提供する(ステップ212)。CO2ガスは、混合物を圧力下でCO2ガスに曝露することにより提供してよい。混合物を、混合物が少なくとも部分的に溶融する温度に加熱し、混合物の加熱は、MxFDCA固体の合成(ステップ216)を引き起こし、MxFDCAは、フラン-2,5-ジカルボキシレート(FDCA2-)ならびに陽イオンM+および/またはM2+を含む塩を表し、式中xは1以上2以下の数値である。フラン-2-カルボキシレートを含む混合物を機械的に撹拌し、機械的撹拌は、MxFDCA固体を粉砕する。
【0033】
xFDCAの合成に使用される反応および混合物は、触媒を実質的に含まない。詳細には、反応は、金属ベース触媒を実質的に含まない。より詳細には、反応は、例えば、そうした金属のハロゲン化物、酸化物、炭酸塩、カルボキシレート、または硫酸塩の形態の亜鉛化合物、カドミウム化合物、水銀化合物、および鉄化合物を含む、ヘンケル反応(不均化)に一般的に使用される金属触媒を実質的に含まない。そのような触媒を実質的に含まない混合物を使用して反応を行うことの利点は、得られた材料をさらに処理して、触媒を再利用および/または除去する必要がないことである。多くの触媒は有毒金属を含んでいるため、触媒を実質的に含まない反応を行うことの別の利点は、生成物が有毒金属で汚染されないことである。加えて、種々の実施形態は、触媒を必要とせずにより高い収率を提供する。種々の実施形態は、生成物が実質的に金属を含まないように、金属を実質的に含まないプロセスおよび/または反応を提供する。
【0034】
生成物の高収率を維持しつつ反応速度を向上させるために、固体MxFDCA生成物を粉砕することができる機械的攪拌を施す必要があることは、図1Bに概略的にまとめられている、その独特な相挙動から生じるフラン-2-カルボキシレートのカルボキシル化の予想外の特徴である。固相反応物および気相反応物が関与する反応は、参照によりあらゆる目的のために組み込まれる、Werther,Joachim.「Fluidized Bed Reactors」in Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry(2000年)に記載のように、固体反応物が気相反応物中で流動化される流動床反応器で一般的に実施される。対照的に、フラン-2-カルボキシレートのカルボキシル化は、溶融成分が粒子の凝集を引き起こすため、非気体反応物の流動化を妨げる溶融相で進行する。典型的には高温である溶融媒体においては十分な物質移動が存在するため、溶融相で進行する反応は、撹拌せずにまたは単純なかき混ぜを用いて実施することができることが多い。対照的に、変換率が増加すると共に溶融相の割合が減少し、固体MxFDCA生成物の蓄積が、溶融相の反応物と気体CO2との間に障壁を課すため、フラン-2-カルボキシレートのカルボキシル化の高反応速度を可能にするためには、単純なかき混ぜでは不十分である。予想外なことに、固体MxFDCA生成物を粉砕することにより、カルボキシル化反応は、1時間未満に80%よりも高い収率でフラン-2,5-ジカルボキシレート生成物が生成されることを実験により見出した。このような短い反応時間でのこのような高収率は予想外であった。このようなプロセスは、スループットを増加させ、時間およびエネルギーのコストを低減させる。
【実施例
【0035】
実施例1:
実験を実施した実施形態の特定の例では、フラン-2-カルボン酸セシウム(CsFA)および0.55当量の炭酸セシウム(Cs2CO3)で構成される塩混合物を、フラン-2-カルボン酸および1.05当量のCs2CO3を水中にて一緒にし、150℃のホットプレートで乾燥するまで蒸発させることにより調製した。得られた塩を150℃の真空オーブンで一晩乾燥させ、使用するまで密閉容器で保管した。図3Aは、実施形態で使用してよい反応器300の概略図である。この実施形態では、反応器300は、ウォールスクレーパ308に取り付けられたアンカースターラ304を備えたParr反応器である。ウォールスクレーパ308は、反応器300のチャンバ壁312に隣接している。この実施形態では、アンカースターラ304は、反応器カバー316を貫通している。この実施形態では、CO2ガスを提供するために、入口ポート320および出口ポート322が反応器カバー316に形成されている。熱電対324を、反応器300内部に配置する。CsFAおよび0.55当量のCs2CO3で構成されている塩混合物100gを反応器300に配置し、反応器をCO2でパージした。この例では、ヒータ328により、熱電対が252℃の温度に達するまで反応器を加熱しつつ、同時にCO2を275psigにて毎分5.5標準リットル(slpm)で流動させ、ウォールスクレーパ308を備えたアンカースターラ304を150rpmで回転させた。反応器にCO2を提供するラインを350℃に加熱して、ガス流動が反応混合物を冷却しないことを保証した。熱電対が252℃になってから60分後に、ヒータ328をオフにした。熱電対の温度プロファイルは図3Bに示されている。冷却後、反応器を開け、固形分をH2Oに溶解することにより取り出した。溶液のアリコートを乾燥させ、1H NMR(D2O)により内部標準を用いて分析したところ、フラン-2,5-ジカルボン酸セシウム(Cs2FDCA)が82.4g(収率83%)であり、残留CsFAが5.1g(5%)であることが示された(図3C)。物質収支は、炭素質分解生成物で構成されていた。
【0036】
実施例2:
100gの代わりに200gの開始塩混合物を用いたこと以外は実施例1と同じ条件下で反応を実施した。生成物の定量的1H NMR分析により、Cs2FDCAは158.8g(収率80%)であり、残留CsFAは18g(9%)だったことが示された。
【0037】
実施例3:
熱電対が251℃を示す温度に反応器を60分間ではなく40分間維持したこと以外は実施例1と同じ条件下で反応を実施した。生成物の定量的1H NMR分析により、Cs2FDCAは77.5g(収率78%)であり、残留CsFAは11.8g(12%)だったことが示された。
【0038】
本明細書および特許請求の範囲において、カルボキシレートの塩は、脱プロトン化されたカルボン酸(カルボキシレートとも呼ばれる)を有する有機化合物である陰イオン、およびアルカリ陽イオン、アルカリ土類陽イオン、または他の金属陽イオンである陽イオンで構成される塩である。
【0039】
実際の実施形態
CO3 2-を含む塩を準備する代わりに、CO2に曝露されるとCO2と反応して実質的にCO3 2-を含む塩を形成することになる、水酸化物(OH-)または酸化物(O2-)を含む塩などの無機塩基塩を準備してもよいことは、当業者であれば明らかであろう。加えて、CO3 2-がカルボキシル化反応を促進する条件は、アルカリ陽イオン、アルカリ土類陽イオン、または他の陽イオンとの塩として準備される、リン酸塩(PO4 3-)またはホウ酸塩(B(OH)4 -)などの、CO3 2-以外の他の無機塩基の使用も可能にするだろう。一般に、CO3 2-塩は、他の塩基よりも安価で腐食性が低い傾向があり、CO3 2-塩は、カルボキシル化反応で消費され、唯一の副産物として水が生成されるため、CO3 2-の使用が好ましい。
【0040】
本明細書および特許請求の範囲では、元素またはイオンまたは分子の量が比較される場合、別様の指定がない限り、元素またはイオンまたは分子のモル数が比較されている。
【0041】
種々の実施形態では、フラン-2,5-ジカルボキシレート(FDCA2-)を合成するための方法が提供される。フラン-2-カルボキシレートを準備する。一部の実施形態では、フラン-2-カルボキシレートを、フラン-2-カルボキシレートを含む塩として準備する。他の実施形態では、フラン-2-カルボン酸を、CO3 2-またはOH-などの別の塩基を含む塩と組み合わせて混合物を形成し、それによりフラン-2-カルボン酸をフラン-2-カルボキシレートを含む塩へと変換する。フラン-2-カルボキシレートを含む塩を、CO3 2-を含む塩と組み合わせて、混合物を形成する。混合物を、混合物が少なくとも部分的に溶融する温度に加熱し、混合物の加熱は、フラン-2,5-ジカルボキシレート(FDCA2-)を含む塩の合成を引き起こす。FDCA2-を含む塩は、本明細書ではFDCA2-塩と呼ばれる。一部の実施形態では、FDCA2-塩はM2FDCAであり、式中M+は一価陽イオンである。他の実施形態では、FDCA2-塩はMFDCAであり、式中M2+は二価陽イオンである。他の実施形態では、FDCA2-塩は、M+およびM2+陽イオンの混合物を含む。反応中、FDCA2-塩を含む固体が形成される。フラン-2-カルボキシレートを含む反応混合物を機械的に撹拌し、機械的撹拌は、FDCA2-塩を含む固体を粉砕する役目を果たす。一部の実施形態では、フラン-2-カルボキシレートは、M+陽イオンとの塩の一部として準備される。また、CO3 2-塩は、M+陽イオンと共に準備される。一部の実施形態では、M+陽イオンはアルカリ陽イオンである。一部の実施形態では、M+陽イオンは、Cs+またはK+のいずれかである。
【0042】
種々の実施形態では、FDCA2-塩を含む固体を粉砕するのに十分な混合物の機械的撹拌は、種々の装置により提供されてよい。例えば、機械的撹拌は、インペラー、1つまたは複数のスクリュー、スクレーパ、またはボールミルなどの撹拌器により提供される。インペラーによる機械的撹拌の場合、インペラーに加えられるトルクは、インペラーのブレードの幾何学的形状および回転速度を考慮して、FDCA2-塩を含む固体の粉砕に十分でなければならない。スクリューによる機械的撹拌の場合、反応は、押出機で連続的に実施してよく、スクリューを使用して反応混合物を反応器から押し出し、固体成分を連続的に粉砕する。一部の実施形態では、機械的撹拌は、FDCA2-塩を含む固体を粉砕するのに十分なエネルギーを有する超音波などの音波により提供される。
【0043】
図4は、別の実施形態で使用してよい反応器400の概略図である。この実施形態では、反応器チャンバ404は、2つのスクリュー408を収容する。この実施形態では、フラン-2-カルボキシレートおよびCO3 2-塩は、単一供給源416から提供される。単一供給源416を使用することにより、フラン-2-カルボキシレートおよびCO3 2-塩を、反応器チャンバ404に加える前に適切な比率に十分に混合することが可能になる。適切な比率での十分な混合は、フラン-2-カルボキシレートの水溶液をCO3 2-塩の水溶液と適切な比率で混合し、次いで得られた溶液を乾燥させて固体を準備することにより実施してよい。モータ428は、2つのスクリュー408が反応器チャンバ404の入口側から反応器チャンバ404を通って反応器チャンバ404の出口側へと混合物を引き込むように、2つのスクリュー408を駆動する。この実施形態では、2つのスクリュー408は、第1の領域432および第2の領域436を有し、2つのスクリュー408のねじ山は、第1の領域432および第2の領域436を通って混合物をよりゆっくりと移動させるようにより狭いピッチを有する。この実施形態では、第1の領域432および第2の領域436には、CO2ガスがCO2ガス供給源440から提供される。反応器チャンバ404の第1の部分を加熱するために、第1のヒータ444が設けられている。反応器チャンバ404の第2の部分を加熱するために、第2のヒータ448が設けられている。2つのスクリュー408は、混合物が、反応器チャンバ404の入口側から、CO2ガスが提供される第1の領域432を通って、混合物が加熱されて溶融混合物を提供しMxFDCA固体が合成される第1のヒータ444を通過し、次いでより多くのCO2ガスが提供される第2の領域436を通過し、次いで第1のヒータ444よりも低い温度を提供する第2のヒータ448を通過するように混合物を移動させ、その結果、混合物が反応器チャンバ404の出口側に提供された時には、溶融混合物は固化している。次いで、固体フラン-2,5-ジカルボキシレートは、コレクタ452へと提供される。この実施形態では、フラン-2-カルボキシレートおよびCO3 2-塩を、COガスと共に反応器チャンバ404に連続的に加えながら、フラン-2,5-ジカルボキシレートを連続的に抽出することができる。
【0044】
コントローラ460は、フラン-2-カルボキシレートおよびCO3 2-供給源416、モータ428、CO2ガス供給源、第1のヒータ444、および第2のヒータ448に接続されていてよい。コントローラ460は、フラン-2-カルボキシレートおよびCO3 2-塩の混合物を準備するための、2つのスクリュー408を駆動するための、CO2ガスを提供するための、ならびに反応器チャンバ404を第1のヒータ444および第2ヒータ448で加熱するためのコンピュータ可読コードを有するコンピュータ可読媒体を有していてよい。コントローラ460は、連続処理を可能にしてよい。コントローラ460は、CO2の適正圧力、第1のヒータ444および第2のヒータ448の適正温度、ならびに2つのスクリュー408の適正速度を提供するためのコンピュータ可読コードを有してよい。
【0045】
種々の実施形態では、CO3 2-のフラン-2-カルボキシレートに対する比率の範囲(つまり、CO3 2-のモル数対フラン-2-カルボキシレートのモル数)は、1:4~2:1である。提供されている範囲はすべて両端値を含む。より好ましくは、CO3 2-のフラン-2-カルボキシレートに対する比率の範囲は、1:2~1:1である。一部の実施形態では、CO2圧力の範囲は、0.1bar~60barである。他の実施形態では、CO2圧力の範囲は、1bar~60barである。他の実施形態では、CO2圧力の範囲は、5bar~60barである。一部の実施形態では、温度は150℃~450℃の範囲である。他の実施形態では、温度は200℃~350℃の範囲である。他の実施形態では、温度は225℃~300℃の範囲である。
【0046】
図5は、コントローラ460を提供するために使用してよいコンピュータシステム500を示す高レベルブロックダイヤグラムである。コンピュータシステムは、集積回路、プリント回路基板、および小型携帯端末からコンピュータに及ぶ多数の物理的形態を有してよい。コンピュータシステム500は、1つまたは複数のプロセッサ502を含み、電子表示装置504、メインメモリ506(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM))、データ記憶装置508(例えば、ハードディスクドライブ)、リムーバブル記憶装置510(例えば、光ディスクドライブ)、ユーザインターフェースデバイス512(例えば、キーボード、タッチスクリーン、キーパッド、マウス、または他のポインティングデバイスなど)、および通信インターフェース514(例えば、無線ネットワークインターフェース)を含むことができる。通信インターフェース514により、リンクを介してコンピュータシステム500と外部装置との間でソフトウェアおよびデータを転送することが可能になる。また、システムは、上述のデバイス/モジュールが接続される通信インフラストラクチャ516(例えば、通信バス、クロスオーバーバー(cross-over bar)、またはネットワーク)を含んでいてよい。
【0047】
通信インターフェース514を介して転送される情報は、電子信号、電磁気信号、光信号、または信号を搬送する通信リンクを介して通信インターフェース514により受信可能な他の信号などの信号の形態であってよく、ワイヤ、ケーブル、光ファイバ、電話回線、携帯電話リンク、無線周波数リンク、および/または他の通信チャンネルを使用して実装してよい。このような通信インターフェースでは、1つまたは複数のプロセッサ502は、上記に記載の方法ステップを実施する過程で、ネットワークから情報を受信してよく、またはネットワークに情報を出力してよいことが企図される。さらに、本発明の方法実施形態は、プロセッサ上のみで実行してよく、または処理の一部を共有するリモートプロセッサと連携してインターネットなどのネットワーク上で実行してよい。
【0048】
「非一時的コンピュータ可読媒体」という用語は、一般に、メインメモリ、二次メモリ、リムーバブル記憶装置、ならびにハードディスク、フラッシュメモリ、ディスクドライブメモリ、CD-ROM、および他の形態の永続的メモリなどの記憶装置などの媒体を指すために使用され、搬送波または信号などの一時的な対象物を包含すると解釈されるべきではない。コンピュータコードの例としては、コンパイラにより生成されるものなどのマシンコード、およびインタプリタを使用してコンピュータにより実行されるより高レベルコードを含むファイルが挙げられる。また、コンピュータ可読媒体は、搬送波に埋め込まれ、プロセッサにより実行可能な一連の命令を表すコンピュータデータ信号により送信されるコンピュータコードであっても差し支えない。
【0049】
他の実施形態では、混合物が部分的に溶融している間、機械的撹拌を提供してFDCA2-塩を含む固体を粉砕する代わりに、混合物を冷却して固体を形成させる。次いで、機械的撹拌を提供して、固体混合物の粒子サイズを粉砕する。次いで、混合物を加熱して、混合物を少なくとも部分的に溶融させる。加熱、次いで冷却、および次いで機械的撹拌を数サイクル繰り返してよい。
【0050】
本発明は、幾つかの好ましい実施形態に関して説明されているが、本発明の範囲内に入る変更、並び替え、改変、および種々の代用均等物が存在する。また、本発明の方法および装置を実装するための多数の代替法が存在することにも留意されたい。したがって、以下の添付されている特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨および範囲内に入るすべての変更、並び替え、改変、および種々の代用均等物を含むと解釈されることが意図されている。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
【国際調査報告】