(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】車両用の電子システムへの粘性の媒体の侵入を検知する方法
(51)【国際特許分類】
B60W 50/04 20060101AFI20230323BHJP
B60T 8/88 20060101ALI20230323BHJP
B60T 17/22 20060101ALI20230323BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20230323BHJP
H05K 10/00 20060101ALI20230323BHJP
H05K 7/00 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
B60W50/04
B60T8/88
B60T17/22 Z
B60W50/14
H05K10/00
H05K7/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547084
(86)(22)【出願日】2021-02-04
(85)【翻訳文提出日】2022-08-01
(86)【国際出願番号】 EP2021052617
(87)【国際公開番号】W WO2021156341
(87)【国際公開日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】102020201555.4
(32)【優先日】2020-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522306664
【氏名又は名称】ツェットエフ・オートモーティヴ・ジャーマニー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー・インゴ
【テーマコード(参考)】
3D049
3D241
3D246
4E352
【Fターム(参考)】
3D049BB02
3D049HH48
3D049HH52
3D049PP02
3D049RR11
3D241BB72
3D241CC08
3D241CC17
3D246GA01
3D246HA38A
3D246KA15
3D246MA07
3D246MA37
4E352AA02
4E352BB02
4E352GG04
4E352GG11
(57)【要約】
【課題】電子システムへの粘性の媒体の侵入を検知する方法を構成する。
【解決手段】車両用の電子システム10への粘性の媒体18の侵入を検知する方法であって、電子システム10が、回路基板15を用いた電気信号の処理及び/又は伝送に関して、冗長部を含んでおり、冗長部には、第1の伝達経路1と、該第1の伝達経路1に並列な第2の伝達経路2とが設けられており、電子システム10への粘性の媒体18の侵入時に、第2の導電体11;12;21;22によって伝達される電気信号Uが電気信号Uvへ変化し、当該電気信号Uvが、第1の伝達経路1の電気信号Uと比較され、電気信号Uが変化した電気信号Uvに対して差がある場合に、警告メッセージWが生成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の電子システム(10)への粘性の媒体(18)の侵入を検知する方法であって、電子システム(10)が、少なくとも1つのハウジング(40)、回路基板(15)及び接続範囲(45)を含み、ハウジング(40)が電子システム(10)をほぼ密に包囲し、電子システム(10)における回路基板(15)を用いた電気信号の処理及び/又は伝送に関して、冗長部が設けられており、冗長部には、少なくとも1つの第1の伝達経路(1)と、該第1の伝達経路に対して動作的に並列な第2の伝達経路(2)とが設けられており、各伝達経路(1;2)が、それぞれ少なくとも1つの第1の導電体(11;21)と、第2の導電体(12;22)とで構成されており、これら導電体(11,12;21;22)がそれぞれ互いに対して電気的に絶縁して構成されており、第1の伝達経路(1)及び第2の伝達経路(2)が同一の電気信号(U)を伝送する、前記方法において、
第2の伝達経路(2)には1つの範囲(30)が設けられており、該範囲(30)では、第1の導電体(21)及びこれに関連する第2の導電体(22)が絶縁されておらず、その結果、電子システム(10)への粘性の媒体(18)の侵入時に、第2の導電体(11;12;21;22)によって伝達される電気信号(U)が電気信号(Uv)へ変化し、第2の伝達経路(2)の変化した電気信号(Uv)が、第1の伝達経路(1)の電気信号(U)と比較され、電気信号(U)が変化した電気信号(Uv)に対して差がある場合に、警告メッセージ(W)が生成されることを特徴とする方法。
【請求項2】
第1の伝達経路(1)が、第2の伝達経路(2)に対して平行ずれして、及び/又は角度ずれして配置されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
電子システム(10)へ侵入する粘性の媒体(18)がまずは第2の伝達経路(2)の範囲(30)へ到達するように範囲(30)が配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
第2の伝達経路(2)の第1及び第2の導電体(21,22)が、範囲(30)において移行箇所(31)を有していることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
狭窄箇所(31)が、第1及び第2の導電体(21,22)によって形成されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
狭窄箇所(31)が、第1のテストポイント(25)及び第2のテストポイント(26)で形成され、第1のテストポイント(25)が第1の導電体(21)に導電的に接続されており、第2のテストポイント(26)が第2の導電体(22)に導電的に接続されていることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
導電体(11,12;21,22)が、ハウジング(40)内及び/又は接続範囲(45)に位置する、回路基板(15)における導電路及び/又は電気ケーブル及び/又はプラグ接触部であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
電子システム(10)を別の電気システム及び/又は別の電子システム(50)に接続するために、接続範囲(45)が少なくとも1つの導電的性の接続部(47)を含むことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
導電性の接続部(47)が、導電性のケーブルとして、又はプラグ接続部として構成されていることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
冗長部には少なくとも1つの第3の伝達経路(3)が設けられ、第3の伝達経路には少なくとも1つの第1及び第2の導電体(31,32)が設けられ、第3の伝達経路が第1の伝達経路(1)と第2の伝達経路(2)の間に設けられていることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
第3の伝達経路(3)が第2の伝達経路(2)と同様に構成されており、電子システム(10)への粘性の媒体(18)の侵入時に、以下の事項:
a)電子システム(10)へ粘性の媒体(18)が更に侵入すると、第3の伝達経路(3)において、電気信号(U)が範囲(30’)において粘性の媒体(18)によって電気信号(Uv)へ変化する、
b)第1の伝達経路(1)における電気信号(U)と比較する、
c)(U)≠(Uv’)であれば、追加的な警告信号(W’)が生成される
が設定されていることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
粘性の媒体(18)が、水及び/又は油及び/又はエマルジョン及び/又は潤滑剤及び/又は洗浄剤及び/又は酸及び/又は油圧液であることを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
別の電気システム/別の電子システム(50)が、操舵部又はホイールブレーキ又はレーダシステム又はライダシステム又は車両の動作について安全性に関連したシステムであることを特徴とする請求項8~12のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の電子システムへの粘性の媒体の侵入を検知する方法及びその構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ここで、電子システムは、電気信号を伝達し、及び/又は処理するために設けられている。このとき、電気信号を伝達するために、少なくとも1つの冗長部が設けられている。このことは、電気信号のための少なくとも2つの伝達経路が存在することを意味している。このような冗長的なシステムは、電子システムにおいて公知である。
【0003】
例えば、湿気又は他の粘性の媒体が電子システムへ至ると、冗長性がある場合でも電子システムの故障に至ることがある。乗用車又は商用車のような車両の操舵部、ブレーキ、レーダ設備又はライダ設備のような安全性に関連する部材と電子システムが接続されていれば、事故につながってしまうことがあり得る。車両が部分的に自動的に、又は完全に自動的に走行する場合についても、上述の電子システムの故障は、事故及び人身傷害につながってしまうことがあり得る。
【0004】
有利には、湿気又は他の粘性の媒体の侵入によって電子システムの故障に至る前に、電子システムの完全な故障による損傷を回避するよう適時に予防措置を講じることができるように、湿気又は他の粘性の媒体の侵入に至ったことを検知すべきである。
【0005】
このとき、電子システムへの湿気又は他の粘性の媒体の侵入の検知が既存の部材によって、すなわち追加的なセンサなしに行うことができることが目指されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、電子システムへの粘性の媒体の侵入を検知する方法を構成することであり、当該方法は、できる限り既存の部材を基礎とし、電子システムは、粘性の媒体の検知後、少なくとも所定の期間にわたって確実に機能する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
当該課題は、車両用の電子システムへの粘性の媒体の侵入を検知する方法によって解決され、電子システムが、少なくとも1つのハウジング、回路基板及び接続範囲を含み、ハウジングが電子システムをほぼ密に包囲し、電子システムにおける回路基板を用いた電気信号の処理及び/又は伝送に関して、冗長部が設けられており、冗長部には、少なくとも1つの第1の伝達経路と、該第1の伝達経路に対して動作的に並列な第2の伝達経路とが設けられており、各伝達経路が、それぞれ少なくとも1つの第1の導電体と、第2の導電体とで構成されており、これら導電体がそれぞれ互いに対して電気的に絶縁して構成されており、第1の伝達経路及び第2の伝達経路が同一の電気信号(U)を伝送し、第2の伝達経路には1つの範囲が設けられており、該範囲では、第1の導電体及びこれに関連する第2の導電体が絶縁されておらず、その結果、電子システムへの粘性の媒体の侵入時に、第2の導電体によって伝達される電気信号(U)が電気信号(Uv)へ変化し、第2の伝達経路の変化した電気信号(Uv)が、第1の伝達経路の電気信号(U)と比較され、電気信号(U)が変化した電気信号(Uv)に対して差がある場合に、警告メッセージ(W)が生成される。
【0008】
このとき、上述の電子システムは、保護のために、主に、例えば外部の影響から保護するために合成樹脂又は金属から成るハウジングによって包囲されている。しかし、電子システムを他の部材に接続するために、ハウジングには、特に、例えばプラグ接続部又はケーブル出口のような少なくとも1つの接続範囲が配置されている。当該接続範囲は、ハウジングへのインターフェースとなっている。当該インターフェースは、特に、湿気又は他の粘性の媒体がハウジングへ、ひいては電子システムへ侵入することがないように構成されている。しかし、インターフェースが密でなくなり、湿気又は他の粘性の媒体の侵入に至ることがあり得る。この場合には、侵入する湿気又は他の粘性の媒体が、まずは、第1及び第2の導電体が絶縁して構成されていないとともに共に移行箇所を形成している第2の伝達経路の範囲へ到達するように、上述の第2の伝達経路が第1の伝達経路に対して位置決めされている。侵入する湿気又は他の粘性の媒体は、第1の導電体と第2の導電体の間で短絡を生じさせるため、伝達されるべき電気信号Uは、第2の伝達経路において変化した信号Uvへ変化する。そして、変化した信号Uvは、冗長的な第1の伝達経路の電気信号Uと比較される。両電気信号が異なっていれば、上述した警告信号が生成され、当該警告信号は、例えば車両の運転者に、当該運転者が緊急に作業場(修理工場)を訪れるべきであるという警告として表示されることが可能である。完全に自動的に走行する車両では、当該警告信号は、車両が安全な状態へ、又は緊急に停止状態へもたらされるようにも用いられることが可能である。このとき、警告信号の結果は、単に例示的なものであり、最終的なものではない。
【0009】
さらに、第1の伝達経路が第2の伝達経路に対して平行ずれして、及び/又は角度ずれして配置されているように構成されることが可能である。このとき、常に、湿気又は粘性の媒体の侵入時に、まずは、第1及び第2の導電体が絶縁して構成されていないとともに共に移行箇所を形成している第2の伝達経路の範囲が接触するように、第1の伝達経路に対する第2の伝達経路のずれが選択されている。ここで、さらに、侵入する湿気又は粘性の媒体が例えばしぶき状に、又は液滴状に、又は上昇するようにハウジングへ、ひいては電子システムへ侵入し得るか、又は侵入するかどうかを考慮することも可能である。
【0010】
このとき、上述したように、湿気又は粘性の媒体による電子的な信号変化を例えば短絡によって加速するために、第2の伝達経路の第1及び第2の導電体は、範囲において移行箇所を有することが可能である。
【0011】
このとき、移行箇所は、第1及び第2の導電体によって形成されることが可能である。このとき、これは、回路基板にあらかじめ設けられることが可能である。
【0012】
また、移行箇所が、第1のテストポイント及び第2のテストポイントで形成されることもでき、第1のテストポイントが第1の導電体に導電的に接続されており、第2のテストポイントが第2の導電体に導電的に接続されている。このとき、例えば電気回路を測定することができるように、このようなテストポイントは、既に回路基板に設けられている。
【0013】
このとき、導電体が、ハウジング内及び/又は接続範囲に位置する、回路基板における導電路及び/又は電気ケーブル及び/又はプラグ接触部であることが有利であり得る。
【0014】
電子システムを別の電気システム及び/又は別の電子システムに接続するために、接続範囲が少なくとも1つの導電性の接続部を含むことも可能である。ここで、別の電気システム/別の電子システムは、例えば操舵部又はブレーキ又はレーダ設備又はライダ設備であり得る。
【0015】
導電性の接続部は、導電性のケーブルとして、又はプラグ接続部として構成されることも可能である。
【0016】
冗長部には少なくとも1つの第3の伝達経路が設けられ、第3の伝達経路には少なくとも1つの第1及び第2の導電体が設けられ、第3の伝達経路が第1の伝達経路と第2の伝達経路の間に設けられていることも有利であり得る。
【0017】
ここで、第3の伝達経路が第2の伝達経路と同様に構成されることができ、電子システムへの粘性の媒体の侵入時に、以下の事項:
a)電子システムへ粘性の媒体が更に侵入すると、第3の伝達経路において、電気信号(U)が範囲において粘性の媒体によって電気信号(Uv)へ変化する、
b)第1の伝達経路における電気信号(U)と比較する、
c)(U)≠(Uv’)であれば、追加的な警告信号(W’)が生成される
が設定されている。
【0018】
ここで、粘性の媒体は、水及び/又は油及び/又はエマルジョン及び/又は潤滑剤及び/又は洗浄剤及び/又は酸及び/又は油圧液であり得る。
【0019】
このとき、上述したように、別の電気システム/別の電子システムは、操舵部又はホイールブレーキ又はレーダシステム又はライダシステム又は車両の動作について安全性に関連したシステムであり得る。
【0020】
以下に、図面に基づいて本発明を例示的に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】電子システムへの粘性の媒体の侵入を検知する方法での本発明による構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1には、電子システム10が示されており、電子システム10は、ハウジング40によって包囲されている。このとき、ハウジング40は、特に、例えば湿気又は他の外部の影響から電子システムを保護するために用いられる。ここで、ハウジング40には、接続範囲45が設けられている。電子システム10は、当該接続範囲45を用いて、例えば、同様に接続部47を用いて接続され得る別の電気システムあるいは電子システム50に接続されることが可能である。これは、例えば、ハウジング40に位置する公知のプラグ接続部であってよい。このとき、ハウジング40には、少なくとも1つの回路基板15が配置されている。ここで、回路基板15には、電子信号を処理し伝送するために、少なくとも1つの第1の伝達経路1と、第2の伝達経路2とが設けられている。このとき、各伝達経路は、少なくとも、第1の導電体11,21及び第2の導電体12,22として構成されている。ここで、第1の伝達経路1及び第2の伝達経路2は、それぞれ1つの同一の電気信号Uを伝送あるいは伝達することに言及しておく。このとき、それぞれ他の伝達経路は、冗長的な伝達経路として用いられる。 ここで、さらに、導電体11,12,21,22は、互いに対して絶縁されて構成されている。ここで、絶縁は、全ての公知の実施形態で行われることができ、例えば、必ずしも絶縁層が設けられる必要はないことに言及しておく。例えば、導電体が互いに離間されることも十分である。このとき、さらに、第2の伝達経路2には範囲30が設けられており、当該範囲30では、導電体21,22は、絶縁部を備えていないとともに、ここでは好ましくは更に移行箇所33を備えている。ここで、移行箇所33は、両導電体21,22が範囲30の外部よりも互いにより近傍で互いに対して離間されているように構成されている。このとき、さらに、第2の伝達経路2は、粘性の媒体がハウジング40に侵入し得る場合のために、粘性の媒体がハウジング40内の別の電気的あるいは電子的な部材へ到達し得る前に粘性の媒体をまずは第2の伝達経路2の範囲30へもたらすようにハウジング40内に配置されていることに言及しておく。ここで、
図1の上述の実施形態では、例えば、接続範囲45は、粘性の媒体のための潜在的な侵入箇所であり得る。このとき、粘性の媒体は、ほぼあらゆる種類の液体であり得るか、又は例えば水及び/又は油及び/又は排出物及び/又は潤滑剤及び/又は洗浄剤及び/又は酸及び/又は油圧液であり得る。ここで、上述のこれら粘性の媒体は、単に例示であることに言及しておく。さらに、ここで、車両における電子システムの配置によっては、電子システムが水しぶきにさらされることがあることに言及しておく。
【0023】
以下では、電子システムへの粘性の媒体の侵入を検知する方法を詳細に説明する。上述のように、第1の伝達経路1及び第2の伝達経路2は、電子信号あるいは電気信号についての冗長的な伝達経路として設けられている。これは、第1の伝達経路1を介しても、また第2の伝達経路2を介しても同一の電気信号/電子信号が伝送されることを意味する。ここで、電気信号は、第1の伝達経路1を介しても、また第2の伝達経路2を介しても伝達される。例えば接続範囲45の範囲で粘性の媒体がハウジング40へ侵入する場合には、侵入する粘性の媒体18は、まず、第2の伝達経路2の範囲30に到達する。粘性の媒体が、範囲30において、ここでは互いに対してわずかに離間されている絶縁されていない導電体21,22へ至ると、粘性の媒体18は、移行箇所33において、第1の導電体21と第2の導電体22の間で短絡を生じさせる。このとき、電気信号Uは、信号Uとして更に伝達されず、電気信号Uは、短絡によって、変化した電気信号Uvへ変化する。その際、第1の伝達経路1は、引きつづき電気信号Uを無変化の形態で伝達し、第1の伝達経路の終部では引きつづき信号Uが存在する。両伝達経路1,2の終部では、伝達された信号の比較が行われる。第1の伝達経路1の終部では電気信号Uが伝達され、第2の伝達経路2の終部では電気信号Uvが伝達されるため、ここでは第2の伝達経路2である冗長的な伝達経路において電気的な信号変化が生じていることが検知される。電気信号Uが変化した電気信号Uvと同一でなければ、警告信号Wが生成される。電子システムへの粘性の媒体の侵入を検知する当該方法によって、粘性の媒体が侵入することを既存の構成要素によって検知することが可能である。電子システムへの粘性の媒体の侵入時に生成される警告信号は、車両の運転者あるいは車両自体において、湿気が例えば安全性に関連する部材へ侵入し、ここで作業場での滞在が必要となるという警告をメモリするために用いられることが可能である。しかし、このとき、冗長的な経路によって、依然として電子システムの機能が引きつづき保証されていることが重要である。電子システム10はここでは電気式の操舵部又は例えば車両用の電気式のブレーキシステムに接続されていることが可能であり、当該方法によって、電子システムの故障に至る前に早期に電子システムへの粘性の媒体の侵入を検知することが可能であることに万全を期すために言及しておく。したがって、ここでは安全性に関連するシステムの故障の可能性があることを運転者あるいはシステムに表示することが可能である。
【0024】
ここで、
図2、
図3及び
図4には、本発明に関連する、粘性の媒体の検知がなされる移行箇所33の実施形態が示されている。ここで、
図2には、
図1において既に示され、説明されたように、移行箇所33を有する範囲30が示されている。ここで、第1及び第2の導電体21,22がここでは範囲30において、特に移行箇所33において絶縁されておらず、その結果、外部から侵入する粘性の媒体が導電体と接触し得ることに再度言及しておく。粘性の媒体18が存在しない場合に伝達経路を確実に保証することができるように、第1及び第2の導電体は、範囲30においても互いに対して接触しないようになっている。しかし、粘性の媒体の迅速な検知を保証することができるように、第1及び第2の導電体21,22は、範囲30においてできる限り近傍に互いに対して離間している。既に上述したように、粘性の媒体が移行範囲33に至ると、粘性の媒体18により、第1の導電体21と第2の導電体22の間に電気的な接続が形成され、したがって、伝達されるべき電気信号Uが電気信号Uvへ変化することとなる。
【0025】
図3には、第1の導電体21と第2の導電体22の間の範囲30の移行箇所33についての別の一実施例が示されている。ここで、範囲30には、両導電体21,22についてそれぞれいわゆるテストポイント25,26が設けられている。例えば電気回路をチェックするために、当該テストポイント25,26は、回路基板において知られている。しかし、このとき、ここでも、当該テストポイント25,26は、移行箇所33を設けるために共に利用されることが可能である。
図2及び
図1において説明されるように、粘性の媒体18が移行箇所33に至ると、粘性の媒体18は、第1のテストポイント25と第2のテストポイント26の間の電気的な接続を形成する。ここでも、伝達されるべき信号Uは、変化した信号Uvに変化する。
【0026】
図4には、電子システムへの粘性の媒体の侵入を検知する別の一実施例が示されている。ここで、両導電体21,22は、それぞれ測定先端部27,28に接続されている。このとき、測定先端部は、電子システム10への粘性の媒体の侵入時にまずは粘性の媒体と接触するように向き調整されている。測定先端部27,28が粘性の媒体18と接触すると、同様に、伝達されるべき信号Uが変化した電気信号Uvへ変化する。
【0027】
図5には、
図1において説明したように、電子システムへの粘性の媒体の侵入を検知する方法及び構造が示されているが、ここでは、1つの電気信号Uに対して3つの冗長的な伝達経路が存在するように構成されている。このとき、
図1と比較して、第3の冗長的な伝達経路3が設けられており、当該第3の伝達経路は、冗長的な伝達経路2と同様に構成されている。ここで、第3の冗長的な伝達経路は、ハウジング40あるいは電子システム10への粘性の媒体の侵入時にまずは第2の伝達経路2の範囲30に到達するように配置されている。上述したように、範囲30における移行箇所33での粘性の媒体18の接触時には、電気信号Uが変化した信号Uvへ変化する。第1の伝達経路1を介した電気信号Uの伝達との上述の比較によって、伝達信号UがUvと同一出ない場合には、警告信号Wの生成がなされる。上述のように、警告信号Wは、電子システムに粘性の媒体が侵入していることを示すものである。粘性の媒体18が更に電子システム10へ侵入すると、第3の伝達経路3の配置によって、第3の伝達経路3の範囲30’への粘性の媒体の到達時に、同様に、第3の伝達経路3の第1の導電体31と第2の導電体32の間に短絡が生成される。このとき、第3の伝達経路3における電気信号Uの伝達は、短絡によって、移行箇所33’において変化した電気信号Uv’へ変化する。その後、同様に、第1の伝達経路1の電気信号Uと第3の伝達経路3の電気信号Uv’の間の比較が行われる。UとUv’が同一でない場合には、別の警告信号W’が生成される。このとき、あるいは当該配置及び当該方法により、警告信号の重み付けを行うことが可能である。例えば、警告信号Wのみが存在する場合には、粘性の媒体18が電気システム10へ侵入していることが認識され、ここでは、例えば作業場を訪れることが助言されていることが推奨されている。警告信号W’がなされると、このことは、粘性の媒体18が更に電子システム10へ侵入していることを示しており、例えば作業場を訪れるか、又は車両をより安全な状態あるいは停止状態へもたらすことが緊急に推奨されている。当然、ここで、当該冗長性を任意に高めることが可能であることに留意すべきであり、
図1及び
図5において説明されるような二重あるいは三重の形態での冗長性を実用的に考慮することができることに留意すべきである。全体として、ここで、本発明は、電子システムへの粘性の媒体の侵入を現存の構成要素によって検出することを目標とし、冗長性は、電気システムの機能が更に保証されるように寄与するものであることに留意すべきである。
【符号の説明】
【0028】
1 第1の伝達経路
2 第2の伝達経路
10 電子システム
11 第1の導電体
12 第2の導電体
15 回路基板
18 粘性の媒体
21 第1の導電体
22 第2の導電体
25 第1のテストポイント
26 第2のテストポイント
27 測定先端部
28 測定先端部
30 範囲
30’ 範囲
31 第1の導電体
32 第2の導電体
33 移行箇所
33’ 移行箇所
40 ハウジング
45 接続範囲
47 接続部
50 電気システム/電子システム
U 電気信号
Uv 変化した信号
Uv’ 変化した信号
W 警告信号
W’ 警告信号
【国際調査報告】