(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】抗ラブドウイルス抗体を検出するのに有用なポリペプチド
(51)【国際特許分類】
C12N 15/40 20060101AFI20230323BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230323BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20230323BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20230323BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20230323BHJP
C07K 14/145 20060101ALI20230323BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230323BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230323BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230323BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230323BHJP
C12N 5/16 20060101ALI20230323BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20230323BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20230323BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
C12N15/40 ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/86 Z
C12M1/00 A
C12M1/34 B
C07K14/145
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N5/16
C12N7/01
C12P21/02 C
G01N33/53 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547253
(86)(22)【出願日】2021-02-05
(85)【翻訳文提出日】2022-08-03
(86)【国際出願番号】 US2021016756
(87)【国際公開番号】W WO2021158878
(87)【国際公開日】2021-08-12
(32)【優先日】2020-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】505258715
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム フェトメディカ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Boehringer Ingelheim Vetmedica GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100111501
【氏名又は名称】滝澤 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】アンストロム デヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ヴォーン エリック マーティン
(72)【発明者】
【氏名】アイヤー アルン ヴイ
(72)【発明者】
【氏名】ルーフ マイケル ビー
【テーマコード(参考)】
4B029
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB13
4B029BB17
4B029CC03
4B029FA01
4B064AG32
4B064CA10
4B064CA12
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA13
4B065AA90X
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA46
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA53
4H045DA86
4H045EA50
(57)【要約】
本発明は、分析アッセイに有用な、特に、個体から得られた生物学的サンプル中のラブドウイルスに特異的な抗体の存在を決定するのに有用な、組換えにより構築されたタンパク質に関する。より具体的には、本発明は、ラブドウイルス糖タンパク質のエクトドメインと、前記エクトドメインに連結された異種多量体形成ドメインとを含む、ポリペプチドに関する。1つの例において、式x-y-zの融合タンパク質が提供される(式中、xはフューリン切断部位を含まなくてもよいようなエクトドメインからなるか、またはそれを含み、yはリンカー部位であり、zは免疫グロブリン配列、コイルドコイル配列、ストレプトアビジン配列、フィブリチン配列、およびアビジン配列からなる群から選択されてもよい異種多量体形成ドメインである)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- ラブドウイルス糖タンパク質のエクトドメインと、
- 前記エクトドメインに連結された異種多量体形成ドメインと
を含む、ポリペプチド。
【請求項2】
前記異種多量体形成ドメインが、リンカー部分を介して前記エクトドメインに連結されているか、または、
前記異種多量体形成ドメインが、前記異種多量体形成ドメインのN末端アミノ酸残基と前記エクトドメインのC末端アミノ酸残基との間のペプチド結合を介して、前記エクトドメインに連結されている、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
式x-y-z(式中、
xが、ラブドウイルス糖タンパク質のエクトドメインからなるか、または前記エクトドメインを含み、
yが、リンカー部分であり、
zが、異種多量体形成ドメインである)の融合タンパク質である、ポリペプチド、特に、請求項1または2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
エクトドメインがフューリン切断部位を含まず、
前記フューリン切断部位が、好ましくは、以下の(a)、(b)、および(c):
(a)RXKR(配列番号20)およびRXRR(配列番号21)からなる群から選択されるアミノ酸配列、
(b)RX
1KRX
2(配列番号22)およびRX
1RRX
2(配列番号23)(式中、
X
1は、任意のアミノ酸残基であり得、
X
2は、
- リジン残基以外、または
- バリン残基、ロイシン残基、イソロイシン残基、およびトリプトファン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基以外、
の任意のアミノ酸残基であり得る)
からなる群から選択されるアミノ酸配列、
(c)RX
1KRX
2X
3(配列番号24)およびRX
1RRX
2X
3(配列番号25)(式中、
X
1は、任意のアミノ酸残基であり得、
X
2は、
- リジン残基以外、または
- バリン残基、ロイシン残基、イソロイシン残基、およびトリプトファン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基以外
の任意のアミノ酸残基であり得、
X
3は、リジン残基以外の任意のアミノ酸残基であり得る)からなる群から選択されるアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列である、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項5】
エクトドメインが、
(i)アミノ酸306位における置換、アミノ酸303位における置換、アミノ酸305位における置換、アミノ酸307位における置換、およびアミノ酸308位における置換からなる群から選択される1つまたは複数の変異を有し、
かつ、
(ii)アミノ酸333位における置換、アミノ酸330位における置換、アミノ酸332位における置換、アミノ酸334位における置換、およびアミノ酸335位における置換からなる群から選択される1つまたは複数の変異を有する、
SF-ラブドウイルス糖タンパク質のエクトドメインであり、
アミノ酸位の番号付けが、野生型SF-ラブドウイルス糖タンパク質のアミノ酸配列を参照し、
および/または前記エクトドメインが、
- アミノ酸306位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸303位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸305位における塩基性アミノ酸残基の残基以外のアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸307位における、リジン残基、ロイシン残基、イソロイシン残基、バリン残基、およびトリプトファン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸308位におけるリジン残基
を有し、
かつ、
- アミノ酸333位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸330位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸332位における塩基性アミノ酸残基の残基以外のアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸334位における、リジン残基、ロイシン残基、イソロイシン残基、バリン残基、およびトリプトファン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸335位におけるリジン残基
を有する、
SF-ラブドウイルス糖タンパク質のエクトドメインであり、
アミノ酸位の番号付けが、野生型SF-ラブドウイルス糖タンパク質のアミノ酸配列を参照する、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項6】
野生型SF-ラブドウイルス糖タンパク質のアミノ酸配列が、配列番号16のアミノ酸配列からなるか、または配列番号16のアミノ酸配列である、請求項5に記載のポリペプチド。
【請求項7】
エクトドメインが、配列番号1、配列番号2、および配列番号3からなる群から選択される配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、またはさらにより好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または前記アミノ酸配列からなる、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項8】
エクトドメインが、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、またはさらにより好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または前記アミノ酸配列からなり、
前記エクトドメインが、
- アミノ酸285位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸282位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸286位における、リジン残基、ロイシン残基、イソロイシン残基、バリン残基、およびトリプトファン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸287位におけるリジン残基
を有し、
かつ、
- アミノ酸312位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸309位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸313位における、リジン残基、ロイシン残基、イソロイシン残基、バリン残基、およびトリプトファン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸314位におけるリジン残基
を有し、
アミノ酸位の番号付けが、配列番号1のアミノ酸配列を参照する、請求項1~7のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項9】
異種多量体形成ドメインが、免疫グロブリン配列、コイルドコイル配列、ストレプトアビジン配列、フィブリチン配列、およびアビジン配列からなる群から選択され、
異種多量体形成ドメインが、好ましくは、IgG Fcドメインを含むか、または前記ドメインからなる、請求項1~8のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項10】
異種多量体形成ドメインが、配列番号5、配列番号6、配列番号7、および配列番号8からなる群から選択される配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、または特に100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または前記アミノ酸配列からなる、請求項1~9のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項11】
リンカー部分が、1~50個のアミノ酸残基の長さであるアミノ酸配列であり、
および/または前記リンカー部分が、配列番号9、配列番号10、および配列番号11からなる群から選択される配列と少なくとも66%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、もしくは特に100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、もしくはそれからなる、請求項2~10のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項12】
ポリペプチドが、配列番号12、配列番号13、および配列番号14からなる群から選択される配列を含むタンパク質である、請求項1~11のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、配列番号17、配列番号18、および配列番号19からなる群から選択される配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、または特に100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含んでもよい、前記ポリヌクレオチド。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むプラスミド、好ましくは発現ベクター。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むプラスミド、好ましくは発現ベクターを含む細胞、
または
請求項1~12のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むバキュロウイルスに感染した細胞、好ましくは昆虫細胞。
【請求項16】
請求項1~12のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むバキュロウイルス。
【請求項17】
固体支持体に固定化された請求項1~12のいずれか1項に記載のポリペプチドを含むキット。
【請求項18】
請求項1~12のいずれか1項に記載のポリペプチドを産生させる方法であって、
- 細胞に、前記ポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチドを含むプラスミド、好ましくは発現ベクターをトランスフェクトするステップであって、前記プラスミドが、好ましくは、請求項14に記載のプラスミドである、前記ステップ、
または
- 細胞、好ましくは昆虫細胞に、前記ポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチドを含有するバキュロウイルスを感染させるステップであって、前記バキュロウイルスが、好ましくは、請求項16に記載のバキュロウイルスである、前記ステップ
を含む、前記方法。
【請求項19】
個体から得られた生物学的サンプルにおいて、ラブドウイルスに特異的な抗体の存在または不在を決定する方法であって、
a.生物学的サンプルを、固体支持体に固定化された捕捉試薬と接触させるステップであって、前記捕捉試薬が、請求項1~12のいずれか1項に記載のポリペプチドである、前記ステップと、
b.前記捕捉試薬に結合した前記抗体の存在または不在を決定するステップと
を含む、方法。
【請求項20】
個体から得られた生物学的サンプルにおいてラブドウイルスに特異的な抗体の存在または不在を決定するための方法における、請求項1~12のいずれか1項に記載のポリペプチドの使用であって、前記方法が、好ましくは、請求項19に記載の方法である、前記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析アッセイに有用な、特に、個体から得られた生物学的サンプル中のラブドウイルス(rhabodvirus)に特異的な抗体の存在を決定するために有用な組換え構築物タンパク質に関する。
【背景技術】
【0002】
ラブドウイルスは、ラブドウイルス科(Rhabdoviridae)に属する膜エンベロープ型マイナス鎖RNAウイルスである。ラブドウイルスビリオンは、ウイルスが産生された細胞に由来する外膜と、非セグメント型ゲノムRNAおよびN(ヌクレオキャプシド)タンパク質を含む内部リボ核タンパク質とを含む。ラブドウイルス糖タンパク質(G)は、膜にまたがり、ウイルス粒子の表面上にスパイクを形成する。ラブドウイルスの糖タンパク質は、ウイルス進入の際の受容体結合および膜融合の両方に関するその機能に起因して、ウイルスの伝播に必須であることが知られている。ウイルスマトリックス(M)タンパク質分子は、ウイルスエンベロープの内側にあり、膜とヌクレオキャプシドコアとの間の層を形成する。非構造タンパク質としては、L(大型)およびP(リンタンパク質)タンパク質が挙げられ、これらは、ウイルストランスクリプターゼ-レプリカーゼ複合体を形成する。
ラブドウイルスは、自然界に広く分布しており、脊椎動物、無脊椎動物、および植物に感染する。プロトタイプのラブドウイルスは、狂犬病ウイルス(RV)および水疱性口内炎ウイルス(VSV)であり、これらが、このウイルス科の中でもっとも研究されていると考えられる。2014年に、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)(Sf)細胞に感染することができ、したがって、Sf-ラブドウイルス(SfRV)と称される新規なラブドウイルスの発見が報告された(Ma et al. J Virol. 88(12): 6576-6585)。WO2015051255A1において、PCRアッセイを用いたこのウイルスの検出が説明されている。
【0003】
実際には、ELISAなどの固相アッセイに関して、ある特定の量の抗原を固体支持体に固定化する必要があり、アッセイ1回当たりの費用を低減させ、非経済的な廃棄物を減らすために、細胞培養物において可能な限り高い収率で産生することができる抗原が所望される。
したがって、ラブドウイルスに特異的な抗体を検出するための固相アッセイの産生に関して、細胞培養物において可能な限り高い収率で産生され、同時に、アッセイが行われる際に前記抗体に十分に結合するのに必要な抗原性を保持するポリペプチドが必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
上述の技術的課題に対する解決は、特許請求の範囲において特徴付けられている説明および実施形態によって達成される。
したがって、本発明はその異なる態様において、特許請求の範囲に従って実装される。
本発明は、好ましくはアミノ酸306位および333位における置換を有するSfRV糖タンパク質のエクトドメインのC末端をIgG Fcドメインに融合することにより、野生型配列を有するそれぞれのエクトドメインの発現と比較した場合に、血清サンプルにおいてSfRVに特異的な抗体を検出するのに有用な抗原の有意により高いモル収率での発現が可能となったという驚くべき発見に基づく。次いで、この有益な作用はまた、野生型配列を使用した同等の試験の作製と比較して、タンパク質発現について同じ費用で顕著により多い数のELISA試験を作製することも可能にした。
したがって、第1の態様において本発明は、
ラブドウイルス糖タンパク質のエクトドメインと、
前記エクトドメインに連結された異種多量体形成ドメインと
を含む、ポリペプチドに関する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本明細書において以降、「本発明のポリペプチド」とも称される前記ポリペプチドは、好ましくは、個体から得られた生物学的サンプルにおいてラブドウイルスに特異的な抗体の存在を決定するためのものである。
本明細書において使用される場合、「エクトドメイン」という用語は、ウイルスエンベロープの外表面上に位置するタンパク質の部分を包含することを意図する。例えば、ラブドウイルス糖タンパク質のエクトドメインは、ウイルス外空間に延びるラブドウイルス糖タンパク質の部分である。より具体的には、ラブドウイルス糖タンパク質のエクトドメインは、膜貫通ヘリックスおよび細胞質ドメインが除去されているラブドウイルス糖タンパク質である。さらにより好ましくは、ラブドウイルス糖タンパク質のエクトドメインは、膜貫通ヘリックス、細胞質ドメイン、およびN末端シグナル伝達ペプチドが除去された、ラブドウイルス糖タンパク質である。
【0006】
本発明との関連において使用される場合、「多量体形成ドメイン」という用語は、特に、1つまたは複数のさらなる多量体形成ドメインに特異的に結合するかまたはそれと会合して、例えば、多量体を形成することができるアミノ酸配列に関する。1つの例において、多量体形成ドメインは、同じアミノ酸配列を有する1つの他の多量体形成ドメインに結合するか、またはそれぞれそれとホモ会合してホモ二量体を形成することができるアミノ酸配列である。多量体形成ドメインは、会合する多量体形成ドメイン間にジスルフィド結合が形成され得るように、1つまたは複数のシステイン残基を含み得る。
本発明との関連において「異種多量体形成ドメイン」は、特に、本明細書において言及されるように、ラブドウイルス糖タンパク質が由来するラブドウイルス以外の実体に由来する多量体形成ドメインに関する。例えば、異種多量体形成ドメインは、ラブドウイルス以外のウイルスのゲムによって、または好ましくは、真核生物細胞もしくは原核生物細胞、特に、哺乳動物細胞のゲノムによってコードされる多量体形成ドメインである。
【0007】
好ましくは、多量体形成ドメインは、リンカー部分を介して前記エクトドメインに連結されている。
リンカー部分は、本発明との関連において本明細書に記載されるように、好ましくは、ペプチドリンカーである。
「ペプチドリンカー」という用語は、本明細書において使用される場合、1つまたは複数のアミノ酸残基を含むペプチドを指す。より具体的には、「ペプチドリンカー」という用語は、本明細書において使用される場合、2つの可変ドメイン、例えば、エクトドメインと多量体形成ドメインを接続することができるペプチドを指し、その長さは接続しようとする可変ドメインの種類に依存する。
特に好ましい態様において、多量体形成ドメインはリンカー部分を介して前記エクトドメインに連結されており、ここで、
- 多量体形成ドメインは、リンカー部分のN末端アミノ酸残基とエクトドメインのC末端アミノ酸残基との間のペプチド結合を介してリンカー部分に連結されており、
- リンカー部分は、多量体形成ドメインのN末端アミノ酸残基とリンカー部分のC末端アミノ酸残基との間のペプチド結合を介して多量体形成ドメインに連結されている。
【0008】
また、多量体形成ドメインが、多量体形成ドメインのN末端アミノ酸残基とエクトドメインのC末端アミノ酸残基との間のペプチド結合を介してエクトドメインに連結されていることも好ましい場合がある。
別の好ましい態様において、本発明は、式x-y-zの融合タンパク質であるポリペプチド、具体的には、上述のポリペプチドが提供される
(式中、
xはラブドウイルス糖タンパク質のエクトドメインからなるか、またはそれを含み、
yはリンカー部分であり、
zは異種多量体形成ドメインである)。
式x-y-zは、特に、前記エクトドメインのC末端アミノ酸残基が、好ましくは前記リンカー部分のN末端アミノ酸残基とのペプチド結合を介して、前記リンカー部分に連結されていること、および前記多量体形成ドメインのN末端アミノ酸残基が、好ましくは前記リンカー部分のC末端アミノ酸残基とのペプチド結合を介して、前記リンカー部分に連結されていることを理解されたい。
もっとも好ましくは、本発明との関連において本明細書に言及されるエクトドメインはフューリン切断部位を含まない。「フューリン切断部位を含まない」とは、特に、エクトドメインのアミノ酸配列に存在するフューリン切断性部位がないことを意味する。
【0009】
フューリン切断部位は、本明細書において言及される場合、特に、以下の(a)、(b)、および(c):
(a)RXKR(配列番号20)およびRXRR(配列番号21)(式中、Xは任意のアミノ酸残基であり得る)からなる群から選択されるアミノ酸配列、
(b)RX1KRX2(配列番号22)およびRX1RRX2(配列番号23)(式中、
X1は任意のアミノ酸残基であり得、
X2は、
-リジン残基以外、または
-バリン残基、ロイシン残基、イソロイシン残基、およびトリプトファン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基以外
の任意のアミノ酸残基であり得る)からなる群から選択されるアミノ酸配列、
(c)RX1KRX2X3(配列番号24)およびRX1RRX2X3(配列番号25)(式中、
X1は、任意のアミノ酸残基であり得、
X2は、
- リジン残基以外、または
- バリン残基、ロイシン残基、イソロイシン残基、およびトリプトファン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基以外
の任意のアミノ酸残基であり得、
X3は、リジン残基以外の任意のアミノ酸残基であり得る)からなる群から選択されるアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列である。
【0010】
「任意のアミノ酸残基」という用語は、本明細書に記載される場合、特に「遺伝的にコードされる任意のアミノ酸残基」と等価であることが理解される。
リジン残基以外のアミノ酸残基は、本明細書において言及される場合、特に、天然に存在するアミノ酸残基、好ましくは遺伝的にコードされる、アミノ酸残基である。
「遺伝的にコードされるアミノ酸残基」という用語は、本発明との関連において記載される場合、特に、アラニン残基(A)、アスパラギン酸残基(D)、アスパラギン残基(N)、システイン残基(C)、グルタミン残基(Q)、グルタミン酸残基(E)、フェニルアラニン残基(F)、グリシン残基(G)、ヒスチジン残基(H)、イソロイシン残基(I)、リジン残基(K)、ロイシン残基(L)、メチオニン残基(M)、プロリン残基(P)、アルギニン残基(R)、セリン残基(S)、スレオニン残基(T)、バリン残基(V)、トリプトファン残基(W)、およびチロシン残基(Y)からなる群から選択されるアミノ酸残基(括弧内は一文字コード)を指す。
【0011】
したがって、例えば、「リジン残基以外の任意のアミノ酸残基であり得る」という表現は、本明細書において言及される場合、特に、「アラニン残基、アスパラギン酸残基、アスパラギン残基、システイン残基、グルタミン残基、グルタミン酸残基、フェニルアラニン残基、グリシン残基、ヒスチジン残基、イソロイシン残基、ロイシン残基、メチオニン残基、プロリン残基、アルギニン残基、セリン残基、スレオニン残基、バリン残基、トリプトファン残基、およびチロシン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基」と等価であることが理解される。
もっとも好ましくは、ラブドウイルス糖タンパク質は、本発明との関連において言及される場合、S.フルギペルダ・ラブドウイルス(S.frugiperda rhabdovirus)(SF-ラブドウイルス)糖タンパク質である。
好ましい態様において、本明細書に記載されるエクトドメインは、
(i)アミノ酸306位における置換、アミノ酸303位における置換、アミノ酸305位における置換、アミノ酸307位における置換、およびアミノ酸308位における置換からなる群から選択される1つまたは複数の変異を有し、
かつ
(ii)アミノ酸333位における置換、アミノ酸330位における置換、アミノ酸332位における置換、アミノ酸334位における置換、およびアミノ酸335位における置換からなる群から選択される1つまたは複数の変異を有する、
SF-ラブドウイルス糖タンパク質のエクトドメインであり、
アミノ酸位の番号付けは、野生型SF-ラブドウイルス糖タンパク質のアミノ酸配列を参照する。
【0012】
本明細書において、「変異」という用語は、アミノ酸配列における任意の変更(遺伝的にコードされるアミノ酸残基との置換およびその挿入、ならびに欠失)を包含する。「アミノ酸位における置換」という用語は、本明細書において言及される場合、特に、タンパク質のアミノ酸配列の特定の位置におけるアミノ酸残基の変更を指す。
好ましくは、本明細書において言及されるエクトドメインは、本明細書に記載される変異またはアミノ酸残基のうちの1つまたは複数を有するSF-ラブドウイルス糖タンパク質のエクトドメインであり、エクトドメインのN末端アミノ酸残基は、好ましくは、野生型SF-ラブドウイルス糖タンパク質のアミノ酸1~22位のうちのいずれか1つ、もっとも好ましくはアミノ酸22位、21位、または1位に対応する。
さらに好ましい態様によると、本明細書に記載されるエクトドメインは、529~550個のアミノ酸残基の長さであるアミノ酸配列を含むか、または前記アミノ酸配列からなる。
特に好ましい態様において、前記エクトドメインは、アミノ酸306位における置換およびアミノ酸333位における置換を有するSF-ラブドウイルス糖タンパク質のエクトドメインであり、アミノ酸位の番号付けは、野生型SF-ラブドウイルス糖タンパク質のアミノ酸配列を参照する。
【0013】
好ましくは、本発明との関連において本明細書に記載されるエクトドメインは、
- アミノ酸306位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基、および
- アミノ酸333位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基
を有するSF-ラブドウイルス糖タンパク質のエクトドメインであり、
アミノ酸位の番号付けは、野生型SF-ラブドウイルス糖タンパク質のアミノ酸配列を参照する。
【0014】
特に好ましい態様において、本明細書に記載されるエクトドメインは、配列番号4の配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、または具体的には少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または前記アミノ酸配列からなるSF-ラブドウイルス糖タンパク質のエクトドメインである。
【0015】
本明細書において言及されるエクトドメインは、好ましくは、配列番号4の配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、または特に少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または前記アミノ酸配列からなり、
- アミノ酸306位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基、および
- アミノ酸333位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基
を有するSF-ラブドウイルス糖タンパク質のエクトドメインであり、
アミノ酸位の番号付けは、野生型SF-ラブドウイルス糖タンパク質のアミノ酸配列を参照する。
【0016】
「アミノ酸位の番号付けは、野生型SF-ラブドウイルス糖タンパク質のアミノ酸配列を参照する」という用語は、アミノ酸位の番号付けが、完全長野生型SF-ラブドウイルス糖タンパク質のアミノ酸配列を参照することを意味する。したがって、本明細書において言及されるこのアミノ酸位の番号付けは、特に(N末端)アミノ酸1位におけるメチオニン残基を含む、610個のアミノ酸残基を有する野生型SF-ラブドウイルス糖タンパク質を参照する。したがって、この番号付けは、本発明との関連において使用される場合、特に、配列番号16に記載される野生型SF-ラブドウイルス糖タンパク質の配列に関する。換言すると、この文脈において、それぞれ、アミノ酸306位への参照がなされる場合、配列番号16のアミノ酸306位に対応するアミノ酸残基を意味するか、またはアミノ酸333位への参照がなされる場合、配列番号16のアミノ酸333位に対応するアミノ酸残基を意味する。しかしながら、これは、このような様式で本明細書に記載されるエクトドメインが、配列番号16のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有することを意味するものではない。これは、対応するアミノ酸が配列内の位置に配置されており、その位置が、野生型SF-ラブドウイルス糖タンパク質の配列の明示的に言及された位置に該当することを述べているにすぎない。例えば、アミノ酸306位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基を有し、アミノ酸333位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基を有するSF-ラブドウイルス糖タンパク質のエクトドメインに言及し、アミノ酸位の番号付けが野生型SF-ラブドウイルス糖タンパク質のアミノ酸配列を参照する場合、1つの例において、これは、アミノ酸306位および333位における置換を含む(すなわち、配列番号16に対応する配列のアミノ酸306位および333位におけるアルギニン残基が、それぞれ、アルギニン残基以外のアミノ酸残基によって置換されている)、配列番号16の野生型SF-ラブドウイルス糖タンパク質に由来するエクトドメインに関する。
【0017】
例として、配列番号1のエクトドメイン(すなわち、アミノ酸306位および333位のそれぞれにおける置換(すなわち、アルギニン残基の代わりにグルタミン残基)を有する、配列番号16に記載される糖タンパク質のエクトドメイン(N末端シグナル伝達ペプチドを有さない))の配列の285位および312位は、配列番号16に記載される野生型SF-ラブドウイルス糖タンパク質のアミノ酸配列のアミノ酸306位および333位に対応する。
本明細書において使用される場合、「シグナル伝達ペプチド」という用語は「シグナル伝達ドメイン」という用語と等価であることも理解されたい。
【0018】
さらに好ましい態様によれば、エクトドメインは、本明細書において記載される場合、
- アミノ酸306位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸303位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸305位における塩基性アミノ酸残基以外のアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸307位における、リジン残基、ロイシン残基、イソロイシン残基、バリン残基、およびトリプトファン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸308位におけるリジン残基
を有し、かつ、
- アミノ酸333位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸330位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸332位における塩基性アミノ酸残基の残基以外のアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸334位における、リジン残基、ロイシン残基、イソロイシン残基、バリン残基、およびトリプトファン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸335位におけるリジン残基
を有するSF-ラブドウイルス糖タンパク質のエクトドメインであり、
アミノ酸位の番号付けは、野生型SF-ラブドウイルス糖タンパク質のアミノ酸配列を参照する。
【0019】
本明細書において言及される場合、「塩基性アミノ酸残基」という用語は、特に、アルギニン残基、リジン残基、およびヒスチジン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基に関する。
したがって、本明細書に記載される場合、「塩基性アミノ酸残基以外のアミノ酸残基」とは、特に、
- アルギニン残基以外、
- リジン残基以外、または
- ヒスチジン残基以外
のアミノ酸残基に関する。
好ましくは、前記エクトドメインは、
- アミノ酸306位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基、および
- アミノ酸333位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基
を有するSF-ラブドウイルス糖タンパク質のエクトドメインであり、
アミノ酸位の番号付けは、野生型SF-ラブドウイルス糖タンパク質のアミノ酸配列を参照する。
【0020】
野生型SF-ラブドウイルス糖タンパク質は、本明細書において言及される場合、好ましくは、配列番号16のアミノ酸配列からなるか、または配列番号16のアミノ酸配列である。これに関して、「(その)アミノ酸配列からなる」という表現は、「(その)アミノ酸配列である」という表現と等価であることが理解される。
したがって、野生型SF-ラブドウイルス糖タンパク質のアミノ酸配列は、本明細書において言及される場合、好ましくは、配列番号16の野生型SF-ラブドウイルス糖タンパク質のアミノ酸配列である。
さらに、本発明によると、エクトドメインが、アミノ酸306位および333位のそれぞれにおいてアルギニン残基以外のアミノ酸残基を有するSF-ラブドウイルス糖タンパク質のエクトドメインであれば、特に好ましく、ここで、アミノ酸位の番号付けは、野生型SF-ラブドウイルス糖タンパク質のアミノ酸配列を参照し、前記エクトドメインは、配列番号1、配列番号2、および配列番号3からなる群から選択される配列と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる。
【0021】
本明細書において言及される場合、アルギニン残基以外のアミノ酸残基は、特に、天然に存在するアミノ酸残基、好ましくは遺伝的にコードされるアミノ酸残基である。
別の好ましい態様によると、本明細書において言及されるエクトドメインは、
- アミノ酸306位における、極性であるが非荷電の側鎖を有するアミノ酸残基、疎水性側鎖を有するアミノ酸残基、およびグリシン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基、
および/またはアミノ酸303位における、極性であるが非荷電の側鎖を有するアミノ酸残基、疎水性側鎖を有するアミノ酸残基、およびグリシン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基、
ならびに
- アミノ酸333位における、極性であるが非荷電の側鎖を有するアミノ酸残基、疎水性側鎖を有するアミノ酸残基、およびグリシン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基、
および/またはアミノ酸330位における、極性であるが非荷電の側鎖を有するアミノ酸残基、疎水性側鎖を有するアミノ酸残基、およびグリシン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基
を有するSF-ラブドウイルス糖タンパク質のエクトドメインであり、
アミノ酸位の番号付けは、野生型SF-ラブドウイルス糖タンパク質のアミノ酸配列を参照する。
【0022】
極性であるが非荷電の側鎖を有するアミノ酸残基は、本発明との関連において本明細書に言及される場合、好ましくは、セリン残基、スレオニン残基、チロシン残基、アスパラギン残基、およびグルタミン残基からなる群から選択される。
疎水性側鎖を有するアミノ酸残基は、本明細書に記載される場合、好ましくは、アラニン残基、バリン残基、ロイシン残基、メチオニン残基、イソロイシン残基、フェニルアラニン残基、およびトリプトファン残基からなる群から選択される。
より具体的な好ましい態様によると、本明細書において言及されるエクトドメインは、
- アミノ酸306位における、グルタミン残基およびアスパラギン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基、および/またはアミノ酸303位における、グルタミン残基およびアスパラギン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基を有し、
かつ、
- アミノ酸333位における、グルタミン残基およびアスパラギン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基、および/またはアミノ酸330位における、グルタミン残基およびアスパラギン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基を有する、
SF-ラブドウイルス糖タンパク質のエクトドメインであり、
アミノ酸位の番号付けは、野生型SF-ラブドウイルス糖タンパク質のアミノ酸配列を参照する。
【0023】
さらにより具体的には、本発明との関係では、
- アミノ酸306位における、グルタミン残基およびアスパラギン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基、ならびに
- アミノ酸333位における、グルタミン残基およびアスパラギン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基
を有する、SF-ラブドウイルス糖タンパク質のエクトドメインであるエクトドメイン、が好ましく、
アミノ酸位の番号付けは、野生型SF-ラブドウイルス糖タンパク質のアミノ酸配列を参照する。
別の好ましい態様において、エクトドメインは、配列番号1、配列番号2、および配列番号3からなる群から選択される配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、または具体的には100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または前記アミノ酸配列からなる。
【0024】
したがって、1つの例において、本発明との関連において本明細書に記載されるエクトドメインは、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または前記アミノ酸配列からなり、
- アミノ酸285位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸282位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸286位における、リジン残基、ロイシン残基、イソロイシン残基、バリン残基、およびトリプトファン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸287位におけるリジン残基
を有し、
かつ、
- アミノ酸312位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸309位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸313位における、リジン残基、ロイシン残基、イソロイシン残基、バリン残基、およびトリプトファン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基、および/または
-アミノ酸314位におけるリジン残基
を有する、エクトドメインであり、
アミノ酸位の番号付けは、配列番号1のアミノ酸配列を参照する。
【0025】
具体的には、前記エクトドメインは、好ましくは、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、またはさらにより好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または前記アミノ酸配列からなり、
- アミノ酸285位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基、および
- アミノ酸312位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基
を有し、
アミノ酸位の番号付けは、配列番号1のアミノ酸配列を参照する。
【0026】
より具体的には、前記エクトドメインは、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、またはさらにより好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または前記アミノ酸配列からなり、
- アミノ酸285位における、極性であるが非荷電の側鎖を有するアミノ酸残基、疎水性側鎖を有するアミノ酸残基、およびグリシン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基、
および/またはアミノ酸282位における、極性であるが非荷電の側鎖を有するアミノ酸残基、疎水性側鎖を有するアミノ酸残基、およびグリシン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基、
を有し、
かつ、
- アミノ酸312位における、極性であるが非荷電の側鎖を有するアミノ酸残基、疎水性側鎖を有するアミノ酸残基、およびグリシン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基、
および/またはアミノ酸309位における、極性であるが非荷電の側鎖を有するアミノ酸残基、疎水性側鎖を有するアミノ酸残基、およびグリシン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基
を有し、
アミノ酸位の番号付けは、配列番号1のアミノ酸配列を参照する。
【0027】
さらにより具体的には、前記エクトドメインは、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または前記アミノ酸配列からなり、
- アミノ酸285位における、グルタミン残基およびアスパラギン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基、および/またはアミノ酸282位における、グルタミン残基およびアスパラギン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基、ならびに
- アミノ酸312位における、グルタミン残基およびアスパラギン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基、および/またはアミノ酸309位における、グルタミン残基およびアスパラギン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基
を有し、
アミノ酸位の番号付けは、配列番号1のアミノ酸配列を参照する。
【0028】
「アミノ酸位の番号付けは、配列番号1のアミノ酸配列を参照する」という用語は、アミノ酸位の番号付けが、配列番号1の全配列のアミノ酸配列を参照することを意味する。したがって、本明細書において言及されるこのアミノ酸位の番号付けは、(N末端)アミノ酸1位におけるアスパラギン残基を含む、529個のアミノ酸残基を有する配列を参照する。換言すると、この文脈において、アミノ酸285位への参照がなされる場合、配列番号1のアミノ酸285に対応するアミノ酸残基を意味するか、またはアミノ酸312位への参照がなされる場合、配列番号1のアミノ酸312に対応するアミノ酸残基を意味する。しかしながら、これは、このような様式で本明細書に記載されるエクトドメインが配列番号1のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有することを意味するものではない。これは、対応するアミノ酸が配列内の位置に配置されており、その位置が、配列番号1の配列の明示的に言及された位置に該当することを述べているにすぎない。
【0029】
「少なくとも90%」という用語に関して、本発明との関連において言及される場合、前記用語は、好ましくは、「少なくとも91%」、より好ましくは、「少なくとも92%」、さらにより好ましくは、「少なくとも93%」、または特に、「少なくとも94%」に関することが理解される。
「少なくとも95%」という用語に関して、本発明との関連において言及される場合、前記用語は、好ましくは、「少なくとも96%」、より好ましくは、「少なくとも97%」、さらにより好ましくは、「少なくとも98%」、または特に、「少なくとも99%」に関することが理解される。
「100%の配列同一性を有する」という用語は、本明細書において使用される場合、「同一である」という用語と等価であることが理解される。
【0030】
配列同一性パーセントは、当該技術分野において認識された意味を有し、2つのポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列間の同一性を決定するための方法がいくつか存在する。例えば、Lesk, Ed., Computational Molecular Biology, Oxford University Press, New York, (1988)、Smith, Ed., Biocomputing: Informatics And Genome Projects, Academic Press, New York, (1993)、Griffin & Griffin, Eds., Computer Analysis Of Sequence Data, Part I, Humana Press, New Jersey, (1994)、von Heinje, Sequence Analysis In Molecular Biology, Academic Press, (1987)、およびGribskov & Devereux, Eds., Sequence Analysis Primer, M Stockton Press, New York, (1991)を参照されたい。ポリヌクレオチドまたはポリペプチドをアライメントするための方法は、GCGプログラムパッケージ(Devereux et al., Nuc. Acids Res. 12:387 (1984))、BLASTP、BLASTN、FASTA(Atschul et al., J. Molec. Biol. 215:403 (1990))、およびSmithおよびWaterman(Adv. App. Math., 2:482-489 (1981))の局所相同性アルゴリズムを使用するBestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package、Unix用バージョン8、Genetics Computer Group、University Research Park、575 Science Drive、Madison、Wis. 53711)を含む、コンピュータプログラムで編集されている。例えば、FASTAアルゴリズムを用いるコンピュータプログラムALIGNを、ギャップオープンペナルティー-12およびギャップ伸長ペナルティー-2でアフィンギャップ検索を用いて使用することができる。本発明の目的に関して、ヌクレオチド配列は、DNASTAR Inc.によるMegAlignソフトウェアバージョン11.1.0(59)、419におけるClustal W法をプログラムにおけるデフォルトの多重アライメントパラメーターセット(ギャップペナルティー=15.0、ギャップ長ペナルティー=6.66、相違配列遅延(delay divergent sequence)(%)=30%、DNAトランジション加重=0.50、およびDNA加重行列=IUB)で使用して、アライメントされ、それぞれ、タンパク質/アミノ酸配列は、DNASTAR Inc.によるMegAlignソフトウェアバージョン11.1.0(59)、419におけるClustal W法をプログラムにおけるデフォルトの多重アライメントパラメーターセット(Gonnetシリーズタンパク質加重行列、ギャップペナルティー=10.0、ギャップ長ペナルティー=0.2、および相違配列遅延(%)=30%)で使用してアライメントされる。
【0031】
本明細書において使用される場合、「配列番号Xの配列と(の)配列同一性」という用語は、それぞれ、「配列番号Xの長さにわたる配列番号Xの配列と(の)配列同一性」という用語または「配列番号Xの全長にわたる配列番号Xの配列との配列同一性」と等価であることが、具体的に理解される。この文脈において、「X」は、「配列番号X」が本明細書において言及される配列番号のうちのいずれかを表すように、1~25から選択される任意の整数である。
さらに好ましい態様によると、本明細書に記載されるエクトドメインは、529個、530個、または550個のアミノ酸残基の長さであるアミノ酸配列を含むか、または前記アミノ酸配列からなる。
より具体的には、本明細書において言及されるエクトドメインは、配列番号1、配列番号2、および配列番号3からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、または前記アミノ酸配列からなる。
本明細書に記載される異種多量体形成ドメインは、好ましくは、免疫グロブリン配列、コイルドコイル配列、ストレプトアビジン配列、フィブリチン配列、およびアビジン配列からなる群から選択される。
【0032】
より好ましくは、異種多量体形成ドメインは、免疫グロブリン定常領域ドメイン、ロイシンジッパードメイン、および大腸菌ウイルスT4フィブリチン配列からなる群から選択される。
さらにより好ましくは、異種多量体形成ドメインは二量体化ドメインであり、好ましくは、IgG Fcドメインおよびロイシンジッパードメインからなる群から選択される。
特に、異種多量体形成ドメインが、IgG Fcドメインを含むか、または前記ドメインからなる場合が好ましい。
【0033】
本発明のポリペプチドが、個体から得られた生物学的サンプルにおいてラブドウイルスに特異的な抗体の存在を決定するためのものである場合、免疫グロブリン定常領域ドメインまたはIgG Fcドメインのアミノ酸配列は、それぞれ、本明細書において言及される場合、好ましくは前記個体の生物学的科以外の生物学的科の生物を起源とする。例えば、本発明のポリペプチドが、ブタから得られた生物学的サンプル中のラブドウイルスに特異的な抗体の存在を決定するためのものである場合、免疫グロブリン定常領域ドメインまたはIgG Fcドメインのアミノ酸配列は、それぞれ、好ましくは、イノシシ科(Suidae)以外の生物学的科の生物を起源とする。したがって、例えば、前記生物学的サンプルがブタから得られた場合、免疫グロブリン定常領域ドメインまたはIgG Fcドメインは、それぞれ、好ましくは、ウシ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ヒト、またはモルモット起源のものである。
【0034】
より具体的には、異種多量体形成ドメインは、好ましくは、モルモットIgG Fcドメインを含むか、または前記ドメインからなる。
さらに好ましい態様において、異種多量体形成ドメインは、配列番号5、配列番号6、配列番号7、および配列番号8からなる群から選択される配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、または具体的には100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または前記アミノ酸配列からなる。
本明細書において言及されるリンカー部分、またはペプチドリンカーは、それぞれ、好ましくは、1~50個のアミノ酸残基の長さである、特に、3~20個のアミノ酸残基の長さである、アミノ酸配列である。
好ましい態様によると、リンカー部分は、配列番号9、配列番号10、および配列番号11からなる群から選択される配列と少なくとも66%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、または特に、100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または前記アミノ酸配列からなる。
【0035】
特に好ましい態様において、本発明のポリペプチドは、配列番号12、配列番号13、および配列番号14からなる群から選択される配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または前記アミノ酸配列からなるタンパク質である。
好ましくは、本発明のポリペプチドは、配列番号12、配列番号13、および配列番号14からなる群から選択される配列を含むタンパク質である。
「(ある)配列からなるタンパク質」という用語は、本明細書において使用される場合、特に、ポリペプチドが発現される細胞によって影響を受ける、配列の任意の共翻訳修飾物および/または翻訳後修飾物にも関することが、さらに理解される。したがって、「(ある)配列からなるタンパク質」という用語は、本明細書に記載される場合、ポリペプチドが発現される細胞によって生じる1つまたは複数の改変、特に、好ましくは、グリコシル化、リン酸化、およびアセチル化からなる群から選択される、タンパク質生合成および/またはタンパク質プロセシングにおいて生じるアミノ酸残基の改変を有する配列も目的とする。
【0036】
本発明の特に好ましい態様によると、バキュロウイルス発現系において、本発明のポリペプチドの収率は、配列番号15のポリペプチドの収率と比較して、好ましくは、少なくとも2倍、より好ましくは、少なくとも3倍、さらにより好ましくは、少なくとも5倍、なおもより好ましくは、少なくとも8倍高い。
【0037】
したがって、本発明のポリペプチドは、好ましくは、組換えタンパク質、特に、組換えバキュロウイルス発現タンパク質である。
「組換えタンパク質」という用語は、本明細書において使用される場合、特に、一般に、発現されるタンパク質をコードするDNAが好適な発現ベクターに挿入され、次にこれを使用して宿主細胞を形質転換させる、またはウイルスベクターの場合には細胞に感染させて異種タンパク質を産生させる、組換えDNA技法によって産生されるタンパク質を指す。したがって、「組換えタンパク質」という用語は、本明細書において使用される場合、特に、組換えDNA分子から発現されるタンパク質分子を指す。「組換えDNA分子」は、本明細書において使用される場合、分子生物学的技法を用いて一緒に結合されたDNAのセグメントから構成される、DNA分子を指す。組換えタンパク質の産生に好適な系としては、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス)、原核生物系(例えば、大腸菌(Escherichia coli))、酵母(例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccaromyces cerevisiae)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris))、哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣、HEK293)、植物(例えば、ベニバナ)、鳥類細胞、両生類細胞、魚類細胞、および無細胞系(例えば、ウサギ網状赤血球ライセート)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
「収率」という用語は、本明細書において言及される場合、特に「モル収率」であることが理解される。
別の態様によると、本発明は、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも提供し、前記ポリヌクレオチドは、本明細書において以降、「本発明によるポリヌクレオチド」とも称される。
好ましくは、本発明によるポリヌクレオチドは、配列番号17、配列番号18、および配列番号19からなる群から選択される配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、または特に100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0039】
本明細書に記載されるポリヌクレオチドの産生は、当業者の技能の範囲内であり、とりわけ、Sambrook et al., 2001, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY、Amusable, et al., 2003, Current Protocols In Molecular Biology, Greene Publishing Associates & Wiley Interscience, NY、Innis et al. (eds), 1995, PCR Strategies, Academic Press, Inc., San Diego、およびErlich (ed), 1994, PCR Technology, Oxford University Press, New Yorkに記載されている組換え技法に従って行うことができ、これらの文献は参照により本明細書に組み込まれる。
なおもさらなる態様において、本発明は、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0040】
「ベクター」および「本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクター」は、本発明の目的に関して、好適な発現ベクター、好ましくはバキュロウイルス発現ベクターを指し、これを使用して宿主細胞にトランスフェクトするか、またはバキュロウイルス発現ベクターの場合にはベクターを感染させて、DNAによってコードされるタンパク質またはポリペプチドを産生させる。発現のためのベクターならびにベクター(または組換え体)を作製および/または使用するための方法は、とりわけ、米国特許第4,603,112号、同第4,769,330号、同第5,174,993号、同第5,505,941号、同第5,338,683号、同第5,494,807号、同第4,722,848号、同第5,942,235号、同第5,364,773号、同第5,762,938号、同第5,770,212号、同第5,942,235号、同第382,425号、PCT公開WO94/16716、WO96/39491、WO95/30018、Paoletti, “Applications of pox virus vectors to vaccination: An update,” PNAS USA 93: 11349-11353, October 1996; Moss, “Genetically engineered poxviruses for recombinant gene expression, vaccination, and safety,” PNAS USA 93: 11341-11348, October 1996、Smithらの米国特許第4,745,05号(組換えバキュロウイルス)、Richardson, C. D. (Editor), Methods in Molecular Biology 39, “Baculovirus Expression Protocols” (1995 Humana Press Inc.)、Smith et al., “Production of Human Beta Interferon in Insect Cells Infected with a Baculovirus Expression Vector”, Molecular and Cellular Biology, December, 1983, Vol. 3, No. 12, p. 2156-2165、Pennock et al., “Strong and Regulated Expression of Escherichia coli B-Galactosidase in Infect Cells with a Baculovirus vector, ” Molecular and Cellular Biology March 1984, Vol. 4, No. 3, p. 406、EPA0 370 573、1986年10月16日に出願された米国出願第920,197号、欧州特許公開第265785号、米国特許第4,769,331号(組換えヘルペスウイルス)、Roizman, “The function of herpes simplex virus genes: A primer for genetic engineering of novel vectors,” PNAS USA 93:11307-11312, October 1996、Andreansky et al., “The application of genetically engineered herpes simplex viruses to the treatment of experimental brain tumors,” PNAS USA 93: 11313-11318, October 1996、Robertson et al., “Epstein-Barr virus vectors for gene delivery to B lymphocytes”, PNAS USA 93: 11334-11340, October 1996、Frolov et al., “Alphavirus-based expression vectors: Strategies and applications,” PNAS USA 93: 11371-11377, October 1996、Kitson et al., J. Virol. 65, 3068-3075, 1991、米国特許第5,591,439号、同第5,552,143号、WO98/00166、いずれも1996年7月3日に出願され、許可された米国出願シリアル番号08/675,556および同08/675,566(組換えアデノウイルス)、Grunhaus et al., 1992, “Adenovirus as cloning vectors,” Seminars in Virology (Vol. 3) p. 237-52, 1993、Ballay et al. EMBO Journal, vol. 4, p. 3861-65, Graham, Tibtech 8, 85-87, April, 1990、Prevec et al., J. Gen Virol. 70, 42434、PCT WO91/11525、Felgner et al. (1994), J. Biol. Chem. 269, 2550-2561, Science, 259: 1745-49, 1993、ならびにMcClements et al., “Immunization with DNA vaccines encoding glycoprotein D or glycoprotein B, alone or in combination, induces protective immunity in animal models of herpes simplex virus-2 disease”, PNAS USA 93: 11414-11420, October 1996、ならびに米国特許第5,591,639号、同第5,589,466号、および同第5,580,859号、ならびにWO90/11092、WO93/19183、WO94/21797、WO95/11307、WO95/20660、Tang et al., Nature, and Furth et al., Analytical Biochemistry, relating to DNA expression vectorsに開示されている方法によってまたはそれらと同様に作製または実施することができる。WO98/33510、Ju et al., Diabetologia, 41: 736-739, 1998(レンチウイルス発現系)、Sanfordらの米国特許第4,945,050号、Fischbachet al.(イントラセル)、WO90/01543、Robinson et al., Seminars in Immunology vol. 9, pp. 271-283 (1997)(DNAベクター系)、Szokaらの米国特許第4,394,448号(DNAを生細胞に挿入する方法)、McCormickらの米国特許第5,677,178号(細胞変性ウイルスの使用)、および米国特許第5,928,913号(遺伝子送達のためのベクター)、ならびに本明細書において引用されている他の文書も参照されたい。
【0041】
好ましいウイルスベクターとしては、特に、産生細胞が昆虫細胞であることを条件として、バキュロウイルス、特に、BaculoGold(BD Biosciences Pharmingen、San Diego、CA)が挙げられる。バキュロウイルス発現系が好ましいが、当業者であれば、上述のものを含む他の発現系も、本発明の目的、すなわち組換えタンパク質の発現に関して機能するであろうことを理解する。
【0042】
したがって、本発明はまた、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むバキュロウイルスを提供し、このバキュロウイルスは本明細書において以降、「本発明によるバキュロウイルス」とも称される。
【0043】
さらに、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドが本発明によって提供される。前記プラスミドは、本明細書において以降、「本発明によるプラスミド」とも称され、好ましくは発現ベクターである。
【0044】
本発明は、さらに、
本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むプラスミド、特に、発現ベクターを含む細胞、
または
本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むバキュロウイルスに感染した細胞、を提供し、この細胞は本明細書において以降「本発明による細胞」とも称される。
別の特定の態様において、本発明によるプラスミド、本発明による細胞、または本発明によるバキュロウイルスは、それぞれ、配列番号17、配列番号18、および配列番号19からなる群から選択される配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、または特に、100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含む。
さらに別の態様において、本発明は、固体支持体に固定化された本発明のポリペプチドを含むキットを提供する。
【0045】
本明細書において使用される場合、「固定化された」という用語は、特に、本発明のポリペプチドが、例えば、可逆的または不可逆的結合、共有結合的または非共有結合的結合などを含む、任意の様式または任意の方法で表面(例えば、固体支持体)に結合され得ることを意味する。
「固体支持体」という用語は、本明細書において言及される場合、非流体の材料を指し、これには、ポリマー、金属(常磁性、強磁性粒子)、ガラス、およびセラミックなどの材料から作製されるチップ、容器、および粒子(マイクロ粒子およびビーズを含む);ゲル物質、例えば、シリカ、アルミナ、およびポリマーゲル;ポリマー、金属、ガラス、および/またはセラミックから作製され得る、キャピラリー;ゼオライトおよび他の多孔質物質;電極;マイクロタイタープレート;固体ストリップ;およびキュベット、チューブ、または他の分光計サンプル容器が含まれる。アッセイの固体支持体構成要素は、「固体支持体」がその表面上に少なくとも1つの部分を含み、それが直接的または間接的のいずれかで捕捉試薬と相互作用することが意図されるという点で、アッセイが接触し得る不活性固体表面とは区別される。固体支持体は、固定構成要素、例えば、チューブ、ストリップ、キュベット、もしくはマイクロタイタープレートであり得るか、または非固定構成要素、例えば、ビーズおよびマイクロ粒子であってもよい。マイクロ粒子はまた、均質アッセイ形式の固体支持体としても使用することができる。タンパク質および他の物質の非共有結合的または共有結合的の両方の結合を可能にする様々なマイクロ粒子が使用され得る。そのような粒子としては、ポリマー粒子、例えば、ポリスチレンおよびポリ(メチルメタクリレート)、金粒子、例えば、金ナノ粒子および金コロイド、ならびにセラミック粒子、例えば、シリカ、ガラス、および金属酸化物粒子が挙げられる。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Martin, C.R., et al., Analytical Chemistry-News & Features 70 (1998) 322A-327Aを参照されたい。
【0046】
「チップ」は、固体の非多孔質材料、例えば、金属、ガラス、またはプラスチックである。これらの材料は、全体的にまたはある特定の領域がコーティングされていてもよい。材料の表面上に、可視的または座標でのいずれかで、任意のスポットアレイが存在する。それぞれのスポットには、材料の表面に対するリンカーまたはスペーサー有りまたは無しで、所定のポリペプチドが固定化され得る。本明細書において言及されているすべての文献は、前述および後述のいずれも参照により本明細書に組み込まれる。
本発明のさらに別の態様において、本発明のポリペプチドを産生させる方法であって、
- 細胞に、本発明のポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチドを含むプラスミド、好ましくは発現ベクターをトランスフェクトするステップ、
または
- 細胞、好ましくは昆虫細胞に、本発明のポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチドを含むバキュロウイルスを感染させるステップ
を含む、前記方法が提供される。
【0047】
本発明のポリペプチドを産生させる方法の特定の態様において、前記プラスミドは、本発明によるプラスミド、特に上述のものである。
本発明のポリペプチドを産生させる方法の別の特定の態様において、前記バキュロウイルスは、本発明によるバキュロウイルス、特に上述のものである。
本発明は、個体から得られた生物学的サンプルにおいて、ラブドウイルスに特異的な抗体の存在または不在を決定する方法であって、
a.生物学的サンプルを、固体支持体に固定化された捕捉試薬と接触させるステップであって、捕捉試薬が、本発明のポリペプチドである、前記ステップと、
b.前記捕捉試薬に結合した前記抗体の存在または不在を決定するステップと
を含む、前記方法をさらに提供する。
【0048】
好ましくは、個体から得られた生物学的サンプルにおいて、ラブドウイルスに特異的な抗体の存在または不在を決定する前記方法は、
c.生物学的サンプルを、固定化された捕捉試薬から分離するステップと、
d.固定化された捕捉試薬-抗体複合体を、試薬-抗体複合体の抗体に結合する検出可能な薬剤と接触させるステップと、
e.検出可能な薬剤の検出手段を使用して捕捉試薬に結合した抗体のレベルを決定するステップであって、好ましくは、捕捉試薬に結合した抗体のレベルを決定するための標準曲線との比較をさらに含む、ステップと
をさらに含む。
【0049】
試薬-抗体複合体の抗体に結合する前記検出可能な薬剤は、好ましくは、検出可能な抗体、より好ましくは、標識化された二次抗体である。
「生物学的サンプル」という用語は、本明細書において使用される場合、個体から(例えば、ブタまたは鳥から)得られた任意のサンプルを指し、これには、限定することなく、細胞を含有する体液、末梢血、血漿または血清、唾液、組織ホモジネート、肺および他の器官の吸引液、ならびに洗浄液および浣腸液、ならびにヒトまたは動物対象から得ることができる任意の他の供給源が挙げられる。動物に関して、「生物学的サンプル」の例としては、その動物に存在していれば、血液、細胞、糞便、下痢、乳、粘液、痰、膿、唾液、精液、汗、涙、尿、涙、眼液、腟分泌物、および嘔吐物が挙げられる。
生物学的サンプルは、本明細書において言及される場合、好ましくは、哺乳動物または鳥類、好ましくは、ブタもしくはニワトリ(chicken)(ニワトリ(Gallus domesticus))から単離されている、ならびに/または、特に、全血、血漿、血清、尿、および口腔液からなる群から選択される。本明細書において、「血清(serum)」という用語は、「血清(blood serum)」と等価であることを意味する。
【0050】
本明細書において使用される場合、「口腔液」という用語は、特に、個別または組合せで、口腔内において見出される1種または複数の流体を指す。これらには、唾液および粘膜滲出液が含まれるが、これらに限定されない。口腔液が、いくつかの供給源(例えば、耳下腺、顎下腺、舌下腺、付属腺、歯肉粘膜、および頬粘膜)に由来する流体の組合せを含み得、「口腔液」という用語が、これらの供給源のそれぞれに由来する流体を、個別または組合せで含むことが、特に理解される。「唾液」という用語は、典型的には口の中、特に咀嚼後の口の中に見出される口腔液の組合せを指す。「粘膜滲出液」という用語は、本明細書において使用される場合、口腔粘膜間質から口腔内への血清成分の受動的拡散によって産生される流体を指す。粘膜滲出液は、唾液の1つの成分を形成することが多い。
【0051】
好ましくは、本明細書に記載される抗体はポリクローナル抗体である。
「ラブドウイルスに特異的な抗体」という用語は、特に、「ラブドウイルスの抗原に特異的な抗体」と等価であり、前記抗原は、好ましくは、ラブドウイルス糖タンパク質である。
ラブドウイルス糖タンパク質は、本発明との関連において、もっとも好ましくは、配列番号16に記載されるSF-ラブドウイルス糖タンパク質である。
本明細書において使用される場合、「抗原」という用語は、特に、免疫応答を誘起することができる任意の分子、部分、または実体を指す。免疫応答には、細胞性および/または体液性免疫応答が含まれる。
【0052】
本明細書において使用される場合、所定の抗原「に特異的な抗体」という用語は、特に、例えば、約105M-1以上、106M-1以上、107M-1以上、108M-1以上、109M-1以上、1010M-1以上、1011M-1以上、1012M-1以上、または1013M-1以上の親和性またはKa(すなわち、特定の結合相互作用の平衡結合定数、単位1/M)で、抗原に結合する抗体、好ましくは、ポリクローナル抗体を指す。あるいは、結合親和性は、単位M(例えば、10-5M~10-13M)での特定の結合相互作用の平衡解離定数(Kd)として定義されてもよい。抗体の結合親和性は、当業者に周知の技法を使用して容易に決定することができる(例えば、Scatchard et al. (1949) Ann. N.Y. Acad. Sci. 51:660、米国特許第5,283,173号、同第5,468,614号、BIACORE(登録商標)分析、または等価物を参照されたい)。
固定化された捕捉試薬は、本明細書に記載される場合、好ましくは、マイクロタイタープレート、特に、ELISAリーダーによって読み取ることができるマイクロタイタープレートにコーティングされている。
【0053】
「昆虫細胞」は、本明細書において使用される場合、昆虫種に由来する細胞または細胞培養物を意味する。本発明に関して、スポドプテラ・フルギペルダおよびイラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)の種に由来する昆虫細胞が特に着目される。
スポドプテラ・フルギペルダ(Sf)細胞は、好ましくは、Sf9細胞およびSf+細胞からなる群から選択される。それぞれ、昆虫細胞は、本明細書において言及される場合、好ましくは、スポドプテラ・フルギペルダ(Sf)細胞であり、好ましくは、Sf9細胞およびSf+細胞からなる群から選択される。
本発明はさらに、個体から得られた生物学的サンプルにおいてラブドウイルスに特異的な抗体の存在または不在を決定するための方法における本発明のポリペプチドの使用に関し、前記方法は、好ましくは、上述のそれぞれの方法である。
また、本発明は、個体が、培養昆虫細胞における発現系によって産生された組換えタンパク質を含む免疫原性組成物を受容しているかどうかを決定するための方法における本発明のポリペプチドの使用に関し、前記方法は、好ましくは、上述のそれぞれの方法である。
【実施例】
【0054】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図するにすぎない。それらは、決して特許請求の範囲を制限するものではない。
(実施例1)
Sfラブドウイルス糖タンパク質(SFRVG)バキュロウイルス発現構築物
まず、SFRVGの膜貫通ヘリックスおよび細胞質ドメインを除去することによって、SFRVGエクトドメインを作製した。野生型および変異体SFRVエクトを免疫グロブリンG結晶化可能フラグメント(IgG Fc)タンパク質に融合するために、さらなる改変を行った。
【0055】
SfRV糖タンパク質エクトドメイン(SFRVGecto)をクローニングし、バキュロウイルス移入プラスミドに挿入し、SFRVGectoを発現する組換えバキュロウイルスを作製した。連続的に反復して組換えバキュロウイルスを作製し、完全長SFRVGectoを発現することができる組換えバキュロウイルスを得、続いて、これを高モル量で回収することができた。
【0056】
SFRVGにおけるフューリン切断部位の発見
二次構造予測プログラムJpred(http://www.compbio.dundee.ac.uk/jpred/)およびPSIPRED(http://bioinf.cs.ucl.ac.uk/psipred/)を使用して、SFRVG(配列番号16)のコイルド領域の位置を特定し、一方で、そのような領域はタンパク質分解切断に対してより感受性であると想定されるため、Globplot(http://globplot.embl.de/)を使用して、予測される障害領域を見出した。これらのプログラムにより、およそでアミノ酸285~305を含む障害領域とオーバーラップする、およそでアミノ酸285~335(未成熟タンパク質による番号付け)を含む大きなコイルド領域が予測された。この領域の考察により、アミノ酸303~306に配列RERRを有する高度に荷電した領域が特定され、これは、フューリンプロテアーゼ部位であり、推定切断部位は最後のアルギニンの後である。次いで、プロタンパク質変換酵素認識部位の予測プログラムProP(http://www.cbs.dtu.dk/services/ProP/、Duckert, 2004)を使用して、フューリン部位を確認した。この位置は、高い信頼性でフューリン部位であることが予測されただけでなく、配列RHKRを有するアミノ酸330~333の大きなコイルド領域内の第2の部位もまた、フューリンによって切断可能であると予測された。
【0057】
SFRVGフューリン部位の除去
部位特異的変異導入を行って、フューリン部位をSFRVGから除去した。次いで、SFRVGectoに対して、R306Q、R333Q、およびR306Q/R333Qの3つの異なる変異を導入し、これらを、次いで、SFRVGectoを発現する能力に関して評価した。この目的で使用したSFRVGecto配列は、天然のシグナル伝達ペプチドを含むSFRVGの最初の550個のアミノ酸を含み、TEVプロテアーゼ部位に融合し(C末端)それに6xHisタグが続いている。
【0058】
点変異体を、次のように生成した:SFRVGエクトドメインを含む最初の550個のアミノ酸を、PCR増幅し、ゲル精製し、TOPOクローニングした。PCRによるコロニースクリーニングおよびDNAシーケンシングによって、インサートの検証を行った後、R306QおよびR333Q点変異を、QuikChange Lightning Site Directed Mutagenesisキット(Agilent、カタログ番号000628596)を使用して個別に行った。インサートをDNAシーケンシングによって検証し、TOPO-SFRVGecto-R306Qを鋳型として使用してR306Q/R333Q二重変異体を作製し、続いて、DNAシーケンシングによって検証した。3つすべてのTOPO-SFRVGecto変異体は、EcoRI/PstI消化し、ゲル精製したが、一方でpVL1393は、EcoRI/PstI消化し、脱リン酸し、ゲル精製した。T4 DNAリガーゼを使用して、ライゲーションを行った。pVL1393へのインサートを、PCRによるコロニースクリーニングおよびDNAシーケンシングによって検証した。バキュロウイルスを、Sf9細胞にFlashBAC ULTRA(FBU)をコトランスフェクトすることによって生成した。抗バキュロウイルスエンベロープgp64精製クローンAcV1(eBiosciences、カタログ番号14-6991-83)または抗His(C末端、Invitrogen、カタログ番号46-0693)一次抗体を1:100で使用し、FITCコンジュゲートヤギ抗マウス(JIR、カタログ番号115-095-003)二次抗体をこれも1:100希釈で使用して、IFAを行った。pVL1393-SFRVGecto-R306Q、-R333Q、または-R306Q/R333QプラスミドをトランスフェクトしたSf9細胞は、6xHisおよびバキュロウイルスgp64タンパク質の両方に関して陽性であった。
【0059】
FBU/pVL1393-SFRVGecto-R306Q、-R333Q、および-R306Q/R333Qバキュロウイルスを、Sf9細胞のT25フラスコで6日間拡張させ、P2バキュロウイルスを滴定した。P3拡張およびタンパク質発現実験を、100mLのSf+細胞を500mLのスピナーフラスコに0.1MOIで接種することによって行った。使用済み培地および細胞のサンプルを3~5DPI(感染後の日数)で採取し、残りの培養物は5DPIで採取した。細胞ペレットを1% Triton X-100を含有する緩衝液中に溶解し、サンプルを20,000gで20分間遠心分離した。得られたサンプルをSDS-PAGEで泳動し、ニトロセルロースに移し、ウエスタンブロットにより、1:500希釈の抗His(C末端、Invitrogen、カタログ番号46-0693)一次抗体および1:1000希釈のHRPコンジュゲートヤギ抗マウス(JIR、カタログ番号115-035-146)二次抗体でプローブした。
【0060】
ブタ免疫グロブリンG 2a結晶化可能フラグメント(IgG Fc)へのSFRVGエクトドメインの融合
SFRVGの発現を補助し、タンパク質精製の手段を提供するために、SFRVGecto-R306Q/R333Qを、ブタIgG 2a Fcドメイン(配列番号6の配列を有する前記IgG Fcドメイン)に融合した。同時に、融合タンパク質という構成において2つのフューリン部位の除去が必要とされるかを決定するために、インタクトなフューリン部位を有するSFRVGecto(SFRVGecto-WT)もIgGに融合した。2つのタンパク質コーディング配列のアセンブリおよびpVL1393バキュロウイルス移入プラスミドへの挿入は、簡単に述べると次の通りである:SFRVGectoおよびIgG Fcを増幅させるためのプライマーを受容し、SFRVGecto-WT、SFRVG-R306Q/R333Q、およびIgG FcをPCRによって増幅し、ゲル精製し、OEPCRを行って融合タンパク質インサートを生成した。OEPCR産物をゲル精製し、TOPOクローニングし、インサートをPCRによるコロニースクリーニングおよびDNAシーケンシングによって検証した。SFRVGecto-WT-IgG2aおよびSFRVGecto-R306Q/R333Q-IgG2aインサートを含有するTOPOクローンは、EcoRI/PstI消化し、ゲル精製したが、一方で、pVL1393はEcoRI/PstI消化し、脱リン酸化し、ゲル精製した。T4 DNAリガーゼを使用して、ライゲーションを行い、インサートをPCRによるコロニースクリーニングおよびDNAシーケンシングによって確認した。
【0061】
FlashBAC ULTRA(FBU)を用いて、Sf9細胞に、pVL1393-SFRVGecto-R306Q/R333Q-IgG2aまたはpVL1393-SFRVGecto-WT-IgG2aをコトランスフェクトすることによって、バキュロウイルスを生成した。抗バキュロウイルスエンベロープgp64精製クローンAcV1(eBiosciences、カタログ番号14-6991-83)一次抗体を1:100で使用し、FITCコンジュゲートヤギ抗マウス(JIR、カタログ番号115-095-003)二次抗体をこれも1:00希釈で使用してIFAを行った。いずれのpVL1393プラスミドをトランスフェクトしたSf9細胞も、バキュロウイルスgp64タンパク質に関して陽性であった。FBU/pVL1393-SFRVGecto-R306Q/R333Q-IgG2aおよびFBU/pVL1393-SFRVGecto-WT-IgG2aの両方のバキュロウイルスを、Sf9細胞のT25フラスコで6日間拡張させ、P2バキュロウイルスを滴定した。
【0062】
P3拡張およびタンパク質発現実験を、100mLのSf+細胞を500mLのスピナーフラスコにいずれかのバキュロウイルスとともに0.1MOIで接種することによって行った。使用済み培地および細胞のサンプルを3および4DPIで採取し、残りの培養物は4DPIで採取した。細胞ペレットを、1% Triton X-100を含有する緩衝液中に溶解し、サンプルを20,000gで20分間遠心分離した。
得られたサンプルをSDS-PAGEに泳動し、ニトロセルロースに移し、ウエスタンブロットにより、1:1000希釈のHRPコンジュゲートヤギ抗ブタ(JIR、カタログ番号115-035-003)抗体でプローブした。
上述のSDS Pageおよびウエスタンブロット分析を含む実験により、(i)SFRVGエクトドメインをブタ免疫グロブリンG 2a結晶化可能フラグメント(IgG Fc)に融合すること、または(ii)置換(R306QまたはR333Q)のうちの1つを有するSFRVGエクトドメインが、それぞれ、それぞれの未改変SFRVGエクトドメインの発現と比較して、この発現系において有意により高いモル収率をもたらしたことが確認された。
さらに、SFRVGエクトドメイン内のR306QおよびR333Qの両方の置換の組合せにより、これらの置換(R306QまたはR333Q)のうちの一方しか有さないSFRVGエクトドメインの発現と比較して、有意により高いモル収率が得られたことが見出された。
【0063】
最後に、さらには、驚くべきことに、IgG2aに融合した両方の置換R306Q/R333Qを有するSFRVエクトドメイン(pVL1393-SFRVGecto-R306Q/R333Q-IgG2a)の発現により、
- IgG2aに融合したそれぞれのSFRVG野生型エクトドメイン(pVL1393-SFRVGecto-WT-IgG2a)、または
- 両方の置換R306QおよびR333Qを有するSFRVGエクトドメイン(pVL1393-SFRVGecto-R306Q/R333Q)
の発現と比較してはるかに高い収率(少なくとも8倍)が判明したことが見出されたため、上述の改変の組合せが相乗作用をもたらしたことが見出された。
はるかに高い収率をもたらしたそれぞれの相乗作用はまた、モルモットIgG Fcドメインを含む対応する組合せ、すなわち、配列番号1の配列を含む融合タンパク質についても観察された。さらに、前記配列番号1の配列は、リンカーを介してモルモットIgG Fcドメイン、例えば、配列番号5の配列に連結することができる。したがって、特に、はるかに高い収率をもたらしたそれぞれの相乗作用は、配列番号1の配列およびペプチドリンカーを介して前記配列番号1の配列に連結された配列番号5の配列を含む、配列番号12の配列を有する融合タンパク質について観察された。
【0064】
(実施例2)
ELISAを利用して、異なる液体サンプルにおける抗ラブドウイルス抗体の存在を評価する。
この目的で、抗原として、上記で言及された式x-y-zの融合タンパク質(式中、xは検出しようとする抗体がそれに対して特異的であるラブドウイルスの糖タンパク質のエクトドメインであり、yはペプチドリンカーであり、zはIgG Fcドメインである)をELISAプレートに固定化する。例えば、配列番号12の配列を含む融合タンパク質を固定化する。
【0065】
本発明と関連して使用されるELISA法は、以下のプロトコールとして記載される。
1.プレートまたはストリップを、5~500ng/ウェルの抗原でコーティングする(異なる結合能力、材料(ポリスチレンなど)、形式(ストリップ/96ウェルプレート)などを有するプレートを含む)。結合させるために、2~8℃で一晩インキュベートする。
2.プレートを洗浄し、PBS中2~10%の無脂肪乳およびBSA/非関連血清を含む0.5~10%の追加のタンパク質を含有するブロッキング緩衝液でブロッキングする。
3.ブロッキングステップの後に、プレートをプレート洗浄器で洗浄し、プレートをペーパータオルの束で軽く叩いて残っている洗浄液を除去する。
4.試験血清を1:100で希釈し、1ウェルごとに100μLの希釈した試験血清を添加する。1:100で希釈した100μLの陰性対照血清(および必要に応じて陽性対照血清)を、対照ウェルに添加する。
5.プレートの側面を軽く叩いて振盪し、混合する。プレート/ストリップを封止し、37℃(98.6°F)で1時間インキュベートする。
6.プレートをプレート洗浄器で洗浄し、プレートをペーパータオルの束に軽く叩いて残っている洗浄液を除去する。
7.100μLの事前希釈した(1:1000~1:100000の希釈)HRPコンジュゲート(例えば、HRPにコンジュゲートした抗ブタIgG(全分子))を、それぞれのウェルに添加する。プレートを封止し、37℃で1時間インキュベートする。
8.プレートをプレート洗浄器で洗浄し、プレートをペーパータオルの束に軽く叩いて残っている洗浄液を除去する。
9.100μLの基質溶液を、それぞれのウェルに添加する。室温で10分間インキュベートする。最初のウェルを充填したときに、タイマーを開始させる。
10.50μLの停止溶液をそれぞれのウェルに添加し、側面を軽く叩いて穏やかに混合することによって反応を停止させる。
11.OD値の変動を防止するために、停止溶液の添加から15分以内に450nmにおけるODを測定する。
【0066】
ELISAの結果は、検出しようとする抗ラブドウイルス抗体を含有するサンプル(例えば、0.5を上回るS/P比を示す前記サンプル)と、陰性対照(すなわち、そのような抗体を含有しない、およそ0のS/P比を示す対応するサンプル)との間で、明らかな差を示す。
結論として、抗ラブドウイルス抗体を検出するための本発明のポリペプチドの使用により、抗ラブドウイルス抗体を含むサンプルを、そのような抗体を含まないサンプルと容易に区別することが可能となる。
【0067】
配列表において:
配列番号1は、アミノ酸306位および333位のそれぞれにおける置換(すなわち、アルギニン残基の代わりにグルタミン残基)を有する、配列番号16に記載される糖タンパク質のエクトドメインの配列(N末端シグナル伝達ペプチドを有さない)に対応し、配列番号16の前記アミノ酸位は、配列番号1の配列の285位および312位に対応し、
配列番号2は、セリン残基(配列番号16のアミノ酸21位におけるセリン残基に対応する)によってN末端が伸長された配列番号1の配列に対応し、
配列番号3は、配列番号16のN末端側の21個のアミノ酸残基によって伸長された(すなわち、N末端シグナル伝達ペプチドを含む)配列番号1 N末端の配列に対応し、
配列番号4は、アミノ酸306位および333位のそれぞれにおける置換(すなわち、アルギニン残基の代わりにグルタミン残基)を有する、配列番号16に記載される糖タンパク質の配列に対応し、
配列番号5は、モルモットIgG Fcドメインの配列に対応し、
配列番号6は、ブタIgG Fcドメインの配列に対応し、
配列番号7は、GCN4ロイシンジッパードメインの配列に対応し、
配列番号8は、大腸菌ウイルスT4フィブリチン配列に対応し、
配列番号9は、リンカー部分の配列に対応し、
配列番号10は、リンカー部分の配列に対応し、
配列番号11は、リンカー部分の配列に対応し、
配列番号12は、本発明のポリペプチドの配列に対応し、
配列番号13は、本発明のポリペプチドの配列に対応し、
配列番号14は、本発明のポリペプチドの配列に対応し、
配列番号15は、配列番号16に記載される野生型糖タンパク質のエクトドメインの配列に対応し、
配列番号16は、野生型Sf-ラブドウイルス糖タンパク質の配列に対応し、
配列番号17は、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの配列に対応し、
配列番号18は、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの配列に対応し、
配列番号19は、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの配列に対応し、
配列番号20は、フューリン切断部位の配列に対応し、
配列番号21は、フューリン切断部位の配列に対応し、
配列番号22は、フューリン切断部位の配列に対応し、
配列番号23は、フューリン切断部位の配列に対応し、
配列番号24は、フューリン切断部位の配列に対応し、
配列番号25は、フューリン切断部位の配列に対応する。
【0068】
以下の項目もまた、本明細書において開示される。
1.- ラブドウイルス糖タンパク質のエクトドメインと、
- 前記エクトドメインに連結された異種多量体形成ドメインと
を含む、ポリペプチド。
2.前記異種多量体形成ドメインが、リンカー部分を介して前記エクトドメインに連結されているか、
または前記異種多量体形成ドメインが、前記異種多量体形成ドメインのN末端アミノ酸残基と前記エクトドメインのC末端アミノ酸残基との間のペプチド結合を介して、前記エクトドメインに連結されている、項目1に記載のポリペプチド。
3.式x-y-zの融合タンパク質であるポリペプチド、特に、項目1または2に記載のポリペプチド(式中、
xはラブドウイルス糖タンパク質のエクトドメインからなるか、または前記エクトドメインを含み、
yはリンカー部分であり、
zは異種多量体形成ドメインである)。
4.前記エクトドメインがフューリン切断部位を含まない、項目1~3のいずれか1つに記載のポリペプチド。
【0069】
5.前記フューリン切断部位が、以下の(a)、(b)、および(c):
(a)RXKR(配列番号20)およびRXRR(配列番号21)からなる群から選択されるアミノ酸配列、
(b)RX1KRX2(配列番号22)およびRX1RRX2(配列番号23)(式中、
X1は、任意のアミノ酸残基であり得、
X2は、
- リジン残基以外、または
- バリン残基、ロイシン残基、イソロイシン残基、およびトリプトファン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基以外
の任意のアミノ酸残基であり得る)からなる群から選択されるアミノ酸配列、
(c)RX1KRX2X3(配列番号24)およびRX1RRX2X3(配列番号25)(式中、
X1は、任意のアミノ酸残基であり得、
X2は、
- リジン残基以外、または
- バリン残基、ロイシン残基、イソロイシン残基、およびトリプトファン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基以外
の任意のアミノ酸残基であり得、
X3は、リジン残基以外の任意のアミノ酸残基であり得る)からなる群から選択されるアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列である、項目4に記載のポリペプチド。
【0070】
6.前記ラブドウイルス糖タンパク質がS.フルギペルダ・ラブドウイルス(SF-ラブドウイルス)糖タンパク質である、項目1~5のいずれか1つに記載のポリペプチド。
7.前記エクトドメインが、
(i)アミノ酸306位における置換、アミノ酸303位における置換、アミノ酸305位における置換、アミノ酸307位における置換、およびアミノ酸308位における置換、からなる群から選択される1つまたは複数の変異を有し、
かつ、
(ii)アミノ酸333位における置換、アミノ酸330位における置換、アミノ酸332位における置換、アミノ酸334位における置換、およびアミノ酸335位における置換、からなる群から選択される1つまたは複数の変異を有する、
SF-ラブドウイルス糖タンパク質のエクトドメインであり、
アミノ酸位の番号付けが、野生型SF-ラブドウイルス糖タンパク質のアミノ酸配列を参照する、項目1~6のいずれか1つに記載のポリペプチド。
8.前記エクトドメインが、配列番号4の配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、または特に少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または前記アミノ酸配列からなるSF-ラブドウイルス糖タンパク質のエクトドメインである、項目1~7のいずれか1つに記載のポリペプチド。
【0071】
9.前記エクトドメインが、
- アミノ酸306位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸303位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸305位における塩基性アミノ酸残基の残基以外のアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸307位における、リジン残基、ロイシン残基、イソロイシン残基、バリン残基、およびトリプトファン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸308位におけるリジン残基
を有し、
かつ、
- アミノ酸333位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸330位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸332位における塩基性アミノ酸残基の残基以外のアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸334位における、リジン残基、ロイシン残基、イソロイシン残基、バリン残基、およびトリプトファン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸335位におけるリジン残基
を有するSF-ラブドウイルス糖タンパク質のエクトドメインであり、
アミノ酸位の番号付けが、野生型SF-ラブドウイルス糖タンパク質のアミノ酸配列を参照する、項目1~8のいずれか1つに記載のポリペプチド。
【0072】
10.前記エクトドメインが、
- アミノ酸306位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基、および
- アミノ酸333位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基
を有するSF-ラブドウイルス糖タンパク質のエクトドメインであり、
アミノ酸位の番号付けが、野生型SF-ラブドウイルス糖タンパク質のアミノ酸配列を参照する、項目1~9のいずれか1つに記載のポリペプチド。
11.前記エクトドメインが、配列番号4の配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、または特に少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または前記アミノ酸配列からなり、
- アミノ酸306位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基、および
- アミノ酸333位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基
を有するSF-ラブドウイルス糖タンパク質のエクトドメインであり、
アミノ酸位の番号付けが、野生型SF-ラブドウイルス糖タンパク質のアミノ酸配列を参照する、項目1~10のいずれか1つに記載のポリペプチド。
【0073】
12.アルギニン残基以外のアミノ酸残基が、天然に存在するアミノ酸残基、好ましくは、遺伝的にコードされるアミノ酸残基である、項目9~11のいずれか1つに記載のポリペプチド。
13.エクトドメインのN末端アミノ酸残基が、野生型SF-ラブドウイルス糖タンパク質のアミノ酸配列のアミノ酸1~22位のうちのいずれか1つに対応する、項目6~12のいずれか1つに記載のポリペプチド。
14.エクトドメインのN末端アミノ酸残基が、野生型SF-ラブドウイルス糖タンパク質のアミノ酸配列のアミノ酸22位、21位、または1位のうちのいずれか1つに対応する、項目6~13のいずれか1つに記載のポリペプチド。
【0074】
15.エクトドメインが、
- アミノ酸306位における、極性であるが非荷電の側鎖を有するアミノ酸残基、疎水性側鎖を有するアミノ酸残基、およびグリシン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基、
および/またはアミノ酸303位における、極性であるが非荷電の側鎖を有するアミノ酸残基、疎水性側鎖を有するアミノ酸残基、およびグリシン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基を有し、
かつ、
- アミノ酸333位における、極性であるが非荷電の側鎖を有するアミノ酸残基、疎水性側鎖を有するアミノ酸残基、およびグリシン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基、
および/またはアミノ酸330位における、極性であるが非荷電の側鎖を有するアミノ酸残基、疎水性側鎖を有するアミノ酸残基、およびグリシン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基
を有するSF-ラブドウイルス糖タンパク質のエクトドメインであり、
アミノ酸位の番号付けが、野生型SF-ラブドウイルス糖タンパク質のアミノ酸配列を参照する、項目1~14のいずれか1つに記載のポリペプチド。
16.極性であるが非荷電の側鎖を有する前記アミノ酸残基が、セリン残基、スレオニン残基、チロシン残基、アスパラギン残基、およびグルタミン残基からなる群から選択される、および/または疎水性側鎖を有する前記アミノ酸残基が、アラニン残基、バリン残基、ロイシン残基、メチオニン残基、イソロイシン残基、フェニルアラニン残基、およびトリプトファン残基からなる群から選択される、項目15に記載のポリペプチド。
【0075】
17.エクトドメインが、
- アミノ酸306位における、グルタミン残基およびアスパラギン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基、および/またはアミノ酸303位における、グルタミン残基およびアスパラギン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基
ならびに
- アミノ酸333位における、グルタミン残基およびアスパラギン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基、および/またはアミノ酸330位における、グルタミン残基およびアスパラギン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基
を有するSF-ラブドウイルス糖タンパク質のエクトドメインであり、
アミノ酸位の番号付けが、野生型SF-ラブドウイルス糖タンパク質のアミノ酸配列を参照する、項目1~16のいずれか1つに記載のポリペプチド。
18.野生型SF-ラブドウイルス糖タンパク質の前記アミノ酸配列が、配列番号16のアミノ酸配列からなるか、または配列番号16のアミノ酸配列である、項目7~17のいずれか1つに記載のポリペプチド。
19.エクトドメインが、配列番号1、配列番号2、および配列番号3からなる群から選択される配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、またはさらにより好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むか、または前記配列からなる、項目1~18のいずれか1つに記載のポリペプチド。
【0076】
20.エクトドメインが、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、またはさらにより好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または前記アミノ酸配列からなり、
前記エクトドメインが、
- アミノ酸285位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸282位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸286位における、リジン残基、ロイシン残基、イソロイシン残基、バリン残基、およびトリプトファン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸287位におけるリジン残基
を有し、
かつ
- アミノ酸312位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸309位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸313位における、リジン残基、ロイシン残基、イソロイシン残基、バリン残基、およびトリプトファン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基、および/または
- アミノ酸314位におけるリジン残基
を有し、
アミノ酸位の番号付けが、配列番号1のアミノ酸配列を参照する、項目1~19のいずれか1つに記載のポリペプチド。
【0077】
21.エクトドメインが、
- アミノ酸285位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基、および
- アミノ酸312位におけるアルギニン残基以外のアミノ酸残基
を有し、
アミノ酸位の番号付けが、配列番号1のアミノ酸配列を参照する、項目20に記載のポリペプチド。
22.アルギニン残基以外のアミノ酸残基が、天然に存在するアミノ酸残基、好ましくは、遺伝的にコードされるアミノ酸残基である、
および/または塩基性アミノ酸残基以外の前記アミノ酸残基が、天然に存在するアミノ酸残基、好ましくは、遺伝的にコードされるアミノ酸残基である、項目9~21のいずれか1つに記載のポリペプチド。
【0078】
23.エクトドメインが、
- アミノ酸285位における、極性であるが非荷電の側鎖を有するアミノ酸残基、疎水性側鎖を有するアミノ酸残基、およびグリシン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基、
および/またはアミノ酸282位における、極性であるが非荷電の側鎖を有するアミノ酸残基、疎水性側鎖を有するアミノ酸残基、およびグリシン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基、を有し、
かつ、
- アミノ酸312位における、極性であるが非荷電の側鎖を有するアミノ酸残基、疎水性側鎖を有するアミノ酸残基、およびグリシン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基、
および/またはアミノ酸309位における、極性であるが非荷電の側鎖を有するアミノ酸残基、疎水性側鎖を有するアミノ酸残基、およびグリシン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基
を有し、
アミノ酸位の番号付けが、配列番号1のアミノ酸配列を参照する、項目20~22のいずれか1つに記載のポリペプチド。
【0079】
24.極性であるが非荷電の側鎖を有するアミノ酸残基が、セリン残基、スレオニン残基、チロシン残基、アスパラギン残基、およびグルタミン残基からなる群から選択され、疎水性側鎖を有するアミノ酸残基が、アラニン残基、バリン残基、ロイシン残基、メチオニン残基、イソロイシン残基、フェニルアラニン残基、およびトリプトファン残基からなる群から選択される、項目23に記載のポリペプチド。
【0080】
25.エクトドメインが、
- アミノ酸285位における、グルタミン残基およびアスパラギン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基、および/またはアミノ酸282位における、グルタミン残基およびアスパラギン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基、を有し、
かつ
- アミノ酸312位における、グルタミン残基およびアスパラギン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基、および/またはアミノ酸309位における、グルタミン残基およびアスパラギン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基、を有し、
アミノ酸位の番号付けが、配列番号1のアミノ酸配列を参照する、項目20~24のいずれか1つに記載のポリペプチド。
【0081】
26.エクトドメインが、529~550個のアミノ酸残基の長さであるアミノ酸配列を含むか、または前記アミノ酸配列からなる、項目1~25のいずれか1つに記載のポリペプチド。
27.エクトドメインが、529個、530個、または550個のアミノ酸残基の長さであるアミノ酸配列を含むか、または前記アミノ酸配列からなる、項目1~26のいずれか1つに記載のポリペプチド。
28.エクトドメインが、配列番号1~配列番号3のうちのいずれか1つの配列を有する、項目1~27のいずれか1つに記載のポリペプチド。
29.異種多量体形成ドメインが、免疫グロブリン配列、コイルドコイル配列、ストレプトアビジン配列、フィブリチン配列、およびアビジン配列からなる群から選択される、項目1~28のいずれか1つに記載のポリペプチド。
30.異種多量体形成ドメインが、免疫グロブリン定常領域ドメイン、ロイシンジッパードメイン、および大腸菌ウイルスT4フィブリチン配列からなる群から選択される、項目1~29のいずれか1つに記載のポリペプチド。
31.異種多量体形成ドメインが二量体形成ドメインであり、好ましくは、IgG Fcドメインおよびロイシンジッパードメインからなる群から選択される、項目1~30のいずれか1つに記載のポリペプチド。
【0082】
32.異種多量体形成ドメインが、IgG Fcドメインを含むか、または前記ドメインからなる、項目1~31のいずれか1つに記載のポリペプチド。
33.異種多量体形成ドメインが、モルモットIgG Fcドメインを含むか、または前記ドメインからなる、項目1~32のいずれか1つに記載のポリペプチド。
34.異種多量体形成ドメインが、配列番号5、配列番号6、配列番号7、および配列番号8からなる群から選択される配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、または特に100%のリンカー部分が、配列番号9、配列番号10、および配列番号11からなる群から選択される配列と少なくとも66%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、または特に100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または前記アミノ酸配列からなる、項目1~33のいずれか1つに記載のポリペプチド。
35.前記リンカー部分が、1~50個のアミノ酸残基の長さであるアミノ酸配列である、項目2~34のいずれか1つに記載のポリペプチド。
36.前記リンカー部分が、3~20個のアミノ酸残基の長さであるアミノ酸配列である、項目2~35のいずれか1つに記載のポリペプチド。
37.前記リンカー部分が、配列番号9、配列番号10、および配列番号11からなる群から選択される配列と少なくとも66%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、または具体的には100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる、項目2~36のいずれか1つに記載のポリペプチド。
38.配列番号12、配列番号13、および配列番号14からなる群から選択される配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたは前記アミノ酸配列からなる、タンパク質である、項目1~37のいずれか1つに記載のポリペプチド。
39.配列番号12、配列番号13、および配列番号14からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むタンパク質である、項目1~38のいずれか1つに記載のポリペプチド。
【0083】
40.バキュロウイルス発現系において、前記ポリペプチドの収率が、好ましくは、配列番号15のポリペプチドの収率と比較して、少なくとも2倍、より好ましくは、少なくとも3倍、さらにより好ましくは、少なくとも5倍、なおもより好ましくは、少なくとも8倍高い、項目1~39のいずれか1つに記載のポリペプチド。
41.組換えタンパク質、好ましくは組換えバキュロウイルス発現タンパク質である、項目1~40のいずれか1つに記載のポリペプチド。
42.項目1~41のいずれか1つに記載のポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
43.配列番号17、配列番号18、および配列番号19からなる群から選択される配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、または特に100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、項目42に記載のポリヌクレオチド。
44.項目1~41のいずれか1つに記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むプラスミド、好ましくは発現ベクター。
【0084】
45.項目1~41のいずれか1つに記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むプラスミド、好ましくは発現ベクターを含む細胞。
46.項目1~41のいずれか1つに記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むバキュロウイルス。
47.項目1~41のいずれか1つに記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むバキュロウイルスに感染した細胞、好ましくは昆虫細胞。
48.前記ポリヌクレオチドが、配列番号17、配列番号18、および配列番号19からなる群から選択される配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、または特に100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、項目44に記載のプラスミド、項目45に記載の細胞、項目46に記載のバキュロウイルス、または項目47に記載の細胞。
49.固体支持体に固定化された項目1~41のいずれか1つに記載のポリペプチドを含むキット。
【0085】
50.項目1~41のいずれか1つに記載のポリペプチドを産生させる方法であって、
- 細胞に、前記ポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチドを含むプラスミド、好ましくは発現ベクターをトランスフェクトするステップ、
または
- 細胞、好ましくは昆虫細胞に、前記ポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチドを含むバキュロウイルスを感染させるステップ
を含む、前記方法。
51.プラスミドが項目44または48に記載のプラスミドである、項目50に記載の方法。
52.バキュロウイルスが項目46または48に記載のバキュロウイルスである、項目50に記載の方法。
【0086】
53.個体から得られた生物学的サンプルにおいて、ラブドウイルスに特異的な抗体の存在または不在を決定する方法であって、
a.生物学的サンプルを、固体支持体に固定化された捕捉試薬と接触させるステップであって、捕捉試薬が、項目1~41のいずれか1つに記載のポリペプチドである、前記ステップと、
b.前記捕捉試薬に結合した前記抗体の存在または不在を決定するステップと
を含む、前記方法。
54.c.生物学的サンプルを、固定化された捕捉試薬から分離するステップと、
d.固定化された捕捉試薬-抗体複合体を、試薬-抗体複合体の抗体に結合する検出可能な薬剤と接触させるステップと、
e.検出可能な薬剤の検出手段を使用して、捕捉試薬に結合した抗体のレベルを決定するステップであって、決定ステップ(e)が、好ましくは、捕捉試薬に結合した抗体のレベルを決定するための標準曲線との比較をさらに含む、ステップと
をさらに含む、項目53に記載の方法。
55.個体から得られた生物学的サンプルにおいてラブドウイルスに特異的な抗体の存在または不在を決定するための方法における、項目1~41のいずれか1つに記載のポリペプチドの使用であって、前記方法が、好ましくは、項目53または54に記載の方法である、前記使用。
【配列表】
【国際調査報告】