(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】制御装置及び方法
(51)【国際特許分類】
H03L 7/08 20060101AFI20230323BHJP
H03L 7/00 20060101ALI20230323BHJP
G06F 1/10 20060101ALI20230323BHJP
H05K 1/14 20060101ALN20230323BHJP
【FI】
H03L7/08 210
H03L7/08 220
H03L7/00 210
G06F1/10
H05K1/14 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547286
(86)(22)【出願日】2021-02-04
(85)【翻訳文提出日】2022-10-03
(86)【国際出願番号】 FI2021050077
(87)【国際公開番号】W WO2021156545
(87)【国際公開日】2021-08-12
(32)【優先日】2020-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519394241
【氏名又は名称】アイキューエム フィンランド オイ
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】サントス ヨルゲ
(72)【発明者】
【氏名】ラハテーンマキ パシ
【テーマコード(参考)】
5E344
5J106
【Fターム(参考)】
5E344AA15
5E344BB02
5E344BB06
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5E344EE06
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5J106HH01
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5J106KK06
5J106KK35
(57)【要約】
複数の位相コヒーレントな発振信号を提供する制御装置が開示される。この制御装置は、高周波基準クロック信号を提供する基準クロック信号装置と、それぞれが複数の位相コヒーレントな発振信号を提供する複数のチャネル160を含む複数のモジュール130とを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の位相コヒーレントな発振信号を提供する制御装置(100)であって、
-高周波基準クロック信号を提供する基準クロック入力装置と、
-各々が前記複数の位相コヒーレントな発振信号を提供する複数のチャネル(160)を含む複数のモジュール(130)と、
-前記高周波基準クロック信号を位相コヒーレントな方法で前記複数のモジュール(130)に分配する第1の分配装置(140)と、
-前記複数のモジュール(130)の各々内で、前記高周波基準クロック信号を位相コヒーレントな方法でそれぞれの前記モジュール(130)の複数のチャネル(160)に分配する第2の分配装置(150)と、
-前記複数のチャネル(160)の各々内で、前記複数の位相コヒーレントな発振信号のうちの1つを提供するために前記高周波基準クロック信号をアップコンバートするように構成された第1の位相ロックループ(162)と、
を含む、制御装置(100)。
【請求項2】
前記基準クロック入力装置は、
-初期基準クロック信号を提供する基準クロック信号入力部(110)と、
-前記基準クロック信号入力部(110)に結合され、前記高周波基準クロック信号を提供するために前記初期基準クロック信号をアップコンバートするように構成された初期位相ロックループ(120)と、
を含む、請求項1に記載の制御装置(100)。
【請求項3】
前記基準クロック入力装置は、マザーボード装置(104)を含み、前記複数のモジュール(130)の各々は、回路基板(132)を含む、請求項1又は2に記載の制御装置(100)。
【請求項4】
前記基準クロック入力装置は、マザーボード装置(104)を含み、前記複数のモジュール(130)は、前記マザーボード装置(104)にプラグ着脱可能に結合するように構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の制御装置(100)。
【請求項5】
前記複数のモジュール(130)の各々は、それぞれの前記モジュール(130)の複数のチャネル(160)の各々を無線周波数(rf)遮蔽する複数のシールド(190)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の制御装置(100)。
【請求項6】
前記初期基準クロック信号は、5~50MHzの周波数を有する、請求項2に従属する場合に請求項3~5のいずれか一項に記載の制御装置(100)。
【請求項7】
前記高周波基準クロック信号は、100~250MHzの周波数を有し、及び/又は、前記複数の位相コヒーレントな発振信号は、1~15GHzの周波数を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の制御装置(100)。
【請求項8】
前記複数の位相コヒーレントな発振信号のうちの少なくとも1つの振幅及び/又は周波数は、それぞれのチャネルのデジタル制御信号によって調整可能である、請求項1~7のいずれか一項に記載の制御装置(100)。
【請求項9】
前記複数の位相コヒーレントな発振信号の周波数及び/又は振幅の遠隔調整用の制御接続部を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の制御装置(100)。
【請求項10】
複数の位相コヒーレントな発振信号を提供する発振器装置(300)であって、請求項1~9のいずれか一項に記載の制御装置(100)と、高周波基準クロック信号を提供するために基準クロック信号を提供するように構成された基準クロック発振器(10)とを含む、発振器装置(300)。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載の制御装置(100)と、量子コンピューティングシステム(20)とを含む量子コンピューティング装置であって、前記制御装置(100)は、前記量子コンピューティングシステム(20)に結合されて、前記量子コンピューティングシステム(20)のための複数の位相コヒーレントな発振信号を提供する、量子コンピューティング装置。
【請求項12】
複数の位相コヒーレントな発振信号を提供する方法(200)であって、
-高周波基準クロック信号を受信するステップ(230)と、
-前記高周波基準クロック信号を位相コヒーレントな方法で複数のモジュールに分配するステップ(230)と、
-前記複数のモジュールの各々内で、前記高周波基準クロック信号を位相コヒーレントな方法でそれぞれの前記モジュールの複数のチャネルに分配するステップ(240)と、
-前記複数のチャネルの各々内で、前記複数の位相コヒーレントな発振信号のうちの1つを提供するために前記高周波基準クロック信号をアップコンバートするステップ(250)と、
を含む、方法。
【請求項13】
-初期基準クロック信号を受信するステップ(210)と、
-前記高周波基準クロック信号を提供するために前記初期基準クロック信号をアップコンバートするステップ(220)と、を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記初期基準クロック信号は、5~50MHzの周波数を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記高周波基準クロック信号は、100~250MHzの周波数を有し、及び/又は、前記複数の位相コヒーレントな発振信号は、1~15GHzの周波数を有する、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記複数の位相コヒーレントな発振信号のうちの少なくとも1つの振幅及び/又は周波数を、それぞれのチャネルのデジタル制御信号によって調整するステップを含む、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、位相コヒーレントな発振信号を提供することに関する。特に、位相コヒーレントな発振信号は、量子コンピューティングシステムへの入力として使用することができる。
【背景技術】
【0002】
位相コヒーレンスは、多くの最新の技術にとってますます重要になっている。例えば、量子ナノエレクトロニクス及び量子コンピューティングなどの技術には、高度な極低温冷却技術(advanced cryogenic cooling techniques)によってのみ実現できる極低温で動作する特別な回路の使用が含まれる。例えば、数GHz程度のマイクロ周波数の発振信号は、これらの回路への入力として使用することができる。したがって、このような信号を所望の周波数、振幅及び位相で生成することができる必要がある。
【0003】
特に、量子コンピューティングシステムなどの最新のシステムの特徴は、入力のために、位相情報が非常に予測可能でなければならないことである。いくつかの量子ビット(qubit)を提供する量子コンピューティングシステムの場合、量子重ね合わせ(quantum superposition)の位相自由度(phase degree of freedom)で保持される必要があるコヒーレンスは、量子ビットの内部のコヒーレンスだけでなく、相互に関連する量子ビットのコヒーレンスを含む。量子計算の実用化に必要な量子ビットの数の増加に伴い、システムは、システムのセットアップとオペレータによる使用を比較的簡単にするとともに、コスト及びスペースの両方で効果的な方法で拡張可能である必要がある。
【0004】
市場にはいくつかの位相コヒーレントなマイクロ波発振器があるが、これらの発振器は、コヒーレントチャネルの数が限られており、この数を簡単に拡大する方法がない。これらのオプションは、また大規模なシステムでは費用対効果が高くない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来技術の問題を回避するか又は少なくとも軽減するとともに、量子コンピューティングシステムなどの高度に位相コヒーレントなシステムへの入力として使用できる、位相コヒーレントな発振信号を提供する装置(arrangement)及び方法を開示することを目的とする。
【0006】
数十、数百、更に数千のチャネルなどの多数の信号チャネルで動作するように拡張可能なソリューションを提供することを別の目的とする。コヒーレントチャネルの数を費用対効果の高い方法で簡単に拡張することができるモジュラーソリューションを提供することを更なる目的とする。
【0007】
これら及び更なる有利な目的は、複数のチャネルに対して単一クロックソースを利用する装置によって達成することができる。
【0008】
本明細書において、1対の発振信号の「位相コヒーレンス(phase-coherence)」は、特にこの対の発振信号を提供する装置の構成から予測可能な2つの発振信号の位相関係を指してもよい。代替的に、この位相コヒーレンスは、決定論的な位相関係であると記載され得る。2つ以上の位相コヒーレントな発振信号は、同じ周波数を有する可能性があるが、異なる周波数を有する可能性もある。2つ以上の位相コヒーレントな発振信号は、同じ周波数を有する場合、一定の位相差、例えばゼロ位相差を有する可能性があるが、位相差が予測可能である限り、異なる一定の位相差を有する可能性もある。2つ以上の位相コヒーレントな発振信号は、異なる周波数を有する場合、位相差が位相コヒーレントな方法で時間的に変化するので、それらの位相関係も依然として予測することができる。2つの位相コヒーレントな発振信号間の周波数差に対応するオフセット周波数に対応する位相コヒーレンスは、量子コンピューティングアプリケーションにも有利に使用できる。
【0009】
本明細書において、「アップコンバージョン(upconversion)」及び「アップコンバート(upconvert)」などの表現は、信号の周波数を増加させること、又は第1の周波数を有する信号を利用して、第1の周波数よりも大きい第2の周波数を有する信号を提供することを指してもよい。上記過程は、アップコンバージョンの前後の信号の位相関係が決定論的であり、例えば、アップコンバージョンの前後の信号の位相差がゼロ又は一定であるように、位相コヒーレントな方法で達成され得る。本明細書で言及される任意のアップコンバージョンは、少なくとも2~5倍又はそれ以上、例えば10~20倍又はそれ以上の周波数の増加を含み得る。本明細書で言及される任意のアップコンバージョンは、周波数に対して1つ以上の整数乗算器(integer multiplier)を利用して実行されてもよい。また、除算器(divider)を使用してもよい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様によれば、複数の位相コヒーレントな発振信号を提供する制御装置が開示される。制御装置は、高周波基準クロック信号を提供する基準クロック入力装置を含む。高周波基準クロック信号は、基準クロック発振器から直接的又は間接的に提供することができる。制御装置は、各々が複数の位相コヒーレントな発振信号を提供する複数のチャネルを含む複数のモジュールを更に含む。制御装置は、高周波基準クロック信号を位相コヒーレントな方法で複数のモジュールに分配する第1の分配装置と、複数のモジュールの各々内で、高周波基準クロック信号を位相コヒーレントな方法で各モジュールの複数のチャネルに分配する第2の分配装置とを含む。制御装置は、複数のチャネルの各々内で、複数の位相コヒーレントな発振信号のうちの1つを提供するために高周波基準クロック信号をアップコンバートするように構成された第1の位相ロックループを含む。最後に、制御装置はまた、複数の出力伝送線の各々が複数のチャネルのうちの1つを受信システムに結合するように、量子コンピューティングシステムなどの受信システムに結合するための複数の出力伝送線を含んでもよい。
【0011】
第2の態様によれば、複数の位相コヒーレントな発振信号を提供する方法が開示される。この方法は、高周波基準クロック信号を受信し、高周波基準クロック信号を位相コヒーレントな方法で複数のモジュールに分配するステップを含む。基準クロック発振器は、高周波基準クロック信号を直接的又は間接的に提供するための基準クロック信号を提供するように構成されてもよい。この方法は、複数のモジュールの各々内で、高周波基準クロック信号を位相コヒーレントな方法でそれぞれのモジュールの複数のチャネルに分配するステップと、複数のチャネルの各々内で、複数の位相コヒーレントな発振信号のうちの1つを提供するために高周波基準クロック信号をアップコンバートするステップとを含む。最後に、この方法は、複数の位相コヒーレントな発振信号を出力するステップを含む。この方法は、複数の出力伝送線の各々が複数のチャネルのうちの1つを受信システムに結合するように、受信システムに結合するための複数の出力伝送線を介して、複数の位相コヒーレントな発振信号を量子コンピューティングシステムなどの受信システムに出力することができる。複数の位相コヒーレントな発振信号を提供するために、第1の態様の制御装置などの制御装置を使用することができる。
【0012】
両方の態様において、モジュールは、拡張性を提供することにより、効率的かつ位相コヒーレントな方法で制御装置のチャネルの総数を増やすことができる。この装置及び方法は、複数のチャネルの各々の位相ロックループが、高周波基準クロック信号などの単一の基準クロック信号に確定的に結合することを可能にする。高周波基準クロック信号は、基準クロック発振器から提供されてもよく、基準クロック発振器から直接的又は間接的に提供することができる初期基準クロック信号などの基準クロック信号に確定的に結合されてもよい。高周波基準クロック信号は、信号発生器用の専用クロックを利用するいくつかの従来のシステムと対照的に、複数の位相コヒーレントな発振信号を提供するために使用することができる。異なる周波数を有する位相コヒーレントな発振信号の場合でも、周波数差は、初期基準クロック信号などの単一の基準クロック信号によるものである。その結果、時間的に変化する任意の位相差を確定的に予測することができる。両方の態様において、高周波基準クロック信号は、超低位相雑音基準クロック信号(ultra-low phase-noise reference clock signal)として提供できる。これにより、位相雑音(phase-noise)が最小化した複数の位相コヒーレントな発振信号を提供することができる。特に、高周波基準クロック信号は、量子コンピューティングのための超低位相雑音基準クロック信号であってもよい。開示された制御装置及び方法は、更に、位相雑音が最小化した複数の位相コヒーレントな発振信号を量子コンピューティングのために提供することができる。両方の態様により、位相コヒーレントな発振信号が量子コンピューティングシステムへの入力として使用するのに適しているのに十分に高い位相コヒーレンスを提供することができる。
【0013】
一実施形態では、基準クロック入力装置は、初期基準クロック信号を提供する基準クロック信号入力部と、基準クロック信号入力部に結合され、高周波基準クロック信号を提供するために初期基準クロック信号をアップコンバートするように構成された初期位相ロックループとを含む。
【0014】
一実施形態では、方法は、初期基準クロック信号を受信するステップと、初期位相ロックループなどを利用して、高周波基準クロック信号を提供するために初期基準クロック信号をアップコンバートするステップとを含む。
【0015】
高周波基準クロック信号を提供するために初期基準クロック信号をアップコンバートすることにより、超低位相雑音も有し得る、非常に高品質の高周波基準クロック信号を提供することができる。この目的のために、高周波基準クロック信号の周波数よりも低い周波数を提供する基準クロック発振器を利用することができる。これにより、初期基準クロック信号を提供するルビジウム発振器などを含め、5~50MHzなどの低周波数、特に約10MHzで利用可能な非常に高品質のいくつかの基準クロック発振器を使用することができる。
【0016】
一実施形態では、基準クロック入力装置は、マザーボード装置を含み、複数のモジュールの各々は、第2の回路基板を含む。これにより、モジュールを回路基板上の個々のユニットとして装置に導入することができ、モジュールの数及び位置を効率的に制御することができる。初期位相ロックループをマザーボード装置に配置することができる。初期位相ロックループをマザーボード装置に配置することができる。
【0017】
一実施形態では、基準クロック信号装置は、マザーボード装置を含み、複数のモジュールは、マザーボード装置にプラグ着脱可能に結合するように構成される。これにより、モジュールの数を容易に増やすことができる。結合が解除可能であり得ることにより、モジュールの数を容易に減らすことができる。プラグ着脱可能な結合は、PCIエクスプレスコネクタなどのエッジコネクタによって構成されてもよい。コネクタの物理的構造は、PCIエクスプレスコネクタに対応する可能性があるが、データ転送プロトコル及び/又はピン割り当てはPCIエクスプレスインタフェースのものとは異なる可能性がある。初期位相ロックループをマザーボード装置に配置することができる。
【0018】
第1の分配装置は、高周波基準クロック信号をモジュールに分配することができ、一方、高周波基準クロック信号は、複数の位相コヒーレントな発振信号のいずれの周波数よりも小さい周波数を依然として有する。これは、結合がより小さい周波数、例えば数百MHz以下で行われるので、プラグ着脱可能な結合のためにエッジコネクタが使用される場合に特に有利である。
【0019】
一実施形態では、複数のモジュールの各々は、それぞれのモジュールの複数のチャネルの各々を無線周波数(rf)遮蔽する複数のシールドを含む。これにより、チャネルを環境からだけでなく相互にも遮蔽することができるため、効率的な方法でチャネル固有のrf遮蔽が可能になる。
【0020】
一実施形態では、初期基準クロック信号は、5~50MHzの周波数を有する。この周波数は、初期基準クロック信号の公称周波数に対応してもよい。周波数の精度は、高く、5e-11(+/-)又はそれ以上であってもよい。いくつかの実施形態では、位相コヒーレンスを維持するために、20ppm(+/-)又はそれ以上の周波数の精度を有利に使用できることが発見されている。このような精度は、例えば、ルビジウム発振器からの基準クロック信号を利用して初期基準クロック信号を提供する場合に使用できる。いくつかの実施形態では、周波数は、10MHzであってもよく、この周波数は、整数因子との互換性などにより、初期位相ロックループでのアップコンバージョンに特に利用可能であることが発見されている。この場合、精度も高く、5e-11(+/-)又はそれ以上であってもよく、位相コヒーレンスを維持するために、20ppm(+/-)又はそれ以上の精度を有利に使用することができる。本明細書において、周波数の「精度(accuracy)」は、初期基準クロック信号と高周波基準クロック信号との間の位相コヒーレンスを維持することができる公称周波数からの最大偏差を指してもよい。
【0021】
一実施形態では、高周波基準クロック信号は、100~250MHzの周波数を有する。この周波数は、高周波基準クロック信号の公称周波数に対応してもよい。最小周波数100MHzと最大周波数250MHzの両方が装置の互換性を著しく改善することが発見されている。周波数の精度は高くてもよく、いくつかの実施形態では、20ppm(+/-)又はそれ以上の周波数の精度が顕著な利点をもたらすことが発見されている。
【0022】
一実施形態では、複数の位相コヒーレントな発振信号は、1~15GHzの周波数を有する。この周波数は、位相コヒーレントな発振信号の公称周波数に対応してもよい。これらの周波数は、本開示による量子コンピューティングに特に効率的に使用できることが発見されている。
【0023】
一実施形態では、複数の位相コヒーレントな発振信号の少なくとも1つの振幅及び/又は周波数は、それぞれのチャネルのデジタル制御信号によって調整可能である。
【0024】
一実施形態では、制御装置は、複数の位相コヒーレントな発振信号の周波数及び/又は振幅の遠隔調整用の制御接続部を含む。制御接続部は、有線及び/又は無線接続部を含んでもよい。
【0025】
一実施形態では、方法は、複数の位相コヒーレントな発振信号の少なくとも1つの振幅及び/又は周波数を、それぞれのチャネルのデジタル制御信号によって調整するステップを含む。調整を遠隔で実行してもよい。
【0026】
複数の位相コヒーレントな発振信号に対する個々の調整可能性は、ソリューションの柔軟性を著しく改善する。
【0027】
第3の態様によれば、複数の位相コヒーレントな発振信号を提供する発振器装置が開示される。発振器装置は、第1の態様又はその実施形態のいずれかに記載の制御装置と、高周波基準クロック信号を提供するために基準クロック信号を提供するように構成された基準クロック発振器とを含む。基準クロック信号は、基準クロック入力装置に提供されてもよい。基準クロック信号は、高周波基準クロック信号として直接的に提供されてもよく、基準クロック入力装置によってアップコンバートされて高周波基準クロック信号を提供する初期基準クロック信号などとして間接的に提供されてもよい。
【0028】
一実施形態では、基準クロック発振器は、基準クロック信号を提供するために、20ppm(+/-)又はそれ以上の精度を有する。精度は、基準クロック信号の周波数に対して定義される。
【0029】
第4の態様において、量子コンピューティング装置は、第1の態様又はその実施形態のいずれかに記載の制御装置と、量子コンピューティングシステムとを含み、制御装置は、量子コンピューティングシステムに結合されて、量子コンピューティングシステムに複数の位相コヒーレントな発振信号を提供する。この装置はまた、高周波基準クロック信号を提供するために基準クロック入力装置に基準クロック信号を提供するように構成された基準クロック発振器を含んでもよい。
【0030】
上述した態様及び実施形態は、互いに任意の組み合わせで使用されてもよいことを理解されたい。いくつかの態様及び実施形態を組み合わせて、本発明の更なる実施形態を形成し得る。
【0031】
更なる理解を提供するために含まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、例を示し、説明と共に、本開示の原理を説明するのに役立つ。
【0032】
添付の図面において、同一の参照記号は、同等の又は少なくとも機能的に同等の部品を指定するために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、一例に係る第1の装置を概略的に示す。
【
図2】
図2は、一例に係る制御装置を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
添付の図面に関連して以下に提供される詳細な説明は、本例の説明として意図されており、本例を構築又は利用できる唯一の形態を表すことは意図されない。しかしながら、同一又は同等の機能及び構造は、異なる例によって達成することができる。
【0035】
図1は、一例に係る第1の装置1を示す。第1の装置1は、量子コンピューティング装置などの、位相コヒーレントな発振信号を提供及び/又は利用する装置である。第1の装置1は、少なくとも、複数の位相コヒーレントな発振信号を提供する制御装置100を含む。第1の装置1は、量子コンピューティングシステムなどの、複数の位相コヒーレントな発振信号のための受信システム20を更に含んでもよい。第1の装置1はまた、基準クロック発振器10を含んでもよい。基準クロック発振器10及び制御装置100は、例えば同じ支持体に解放可能又は解放不能に結合されてもよい。第1の装置1は、少なくとも基準クロック発振器10及び制御装置100を含む発振器装置300であってもよい。第1の装置1は、複数の位相コヒーレントな発振信号を受信システム20に提供するために、制御装置100を受信システム20に結合する結合装置30を含んでもよい。
【0036】
基準クロック発振器10は、初期基準クロック信号を提供するように構成される。基準クロック発振器10は、出力周波数の精度が高く、例えば20ppm(+/-)又はそれ以上であってもよい。基準クロック発振器10は、初期基準クロック信号を提供する水晶発振器を含んでもよい。いくつかの実施形態では、基準クロック発振器10は、初期基準クロック信号を提供するルビジウム発振器を含む。基準クロック発振器10は、制御装置100と統合されてもよく、外部基準クロック発振器であってもよい。一例として、FS725スタンフォード・リサーチ・システムズが、基準クロック発振器に使用されてもよい。基準クロック発振器10は、異なるオフセット周波数での低位相雑音を有してもよい。
【0037】
受信システム20は、量子コンピューティングシステムなどの、位相コヒーレントな発振信号を利用するシステムである。量子コンピューティングシステムは、複数の量子ビットを提供するために構成されてもよい。受信システム20は、極低温冷却(cryogenic cooling)を提供するクリオスタット(cryostat)を含むか又はこのようなクリオスタット内で動作する。
【0038】
結合装置30は、解除可能な結合などによって、制御装置100を受信システム20に結合する複数の伝送線を含んでもよい。結合装置30は、複数の位相コヒーレントな発振信号を変調する1つ以上のミキサー(図示せず)、例えば周波数ミキサーを更に含んでもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上のミキサーは、クリオスタット(cryostat)内に配置される。複数の位相コヒーレントな発振信号は、1つ以上の搬送波信号を含んでもよく、これにより搬送波信号を受信システム20の量子ビットの制御信号などの変調信号と混合することができる。
【0039】
図2は、一例に係る制御装置100を示す。制御装置100は、高周波基準クロック信号を提供する基準クロック入力装置102を含む。高周波基準クロック信号は、基準クロック発振器10から直接的又は間接的に提供されてもよい。この信号は、以上に開示されたように基準クロック発振器10から提供することができる。高周波基準クロック信号の周波数は、例えば50~1000MHzであってもよい。いくつかの実施形態では、周波数は、少なくとも100MHz及び/又は最大250MHzであってもよく、上限及び下限の両方が、単独又は組み合わせで、制御装置100の機能を改善することが発見されている。ここでの任意の周波数は、基準クロック発振器10の公称周波数に対応してもよい。
【0040】
基準クロック入力装置102は、初期基準クロック信号を入力する基準クロック信号入力部110を含んでもよい。これにより、基準クロック発振器10から高周波基準クロック信号を間接的に提供することができる。基準クロック発振器10は、初期基準クロック信号を提供するために利用されてもよい。また、基準クロック入力装置102は、100~250MHzの周波数などを有する高周波基準クロック信号を提供するために、基準クロック信号入力部110に結合された初期位相ロックループ120を含んでもよい。この目的のために、初期位相ロックループは、対応する周波数の発振器を含んでもよい。
【0041】
初期基準クロック信号の周波数は、例えば5~250MHzであってもよい。いくつかの実施形態では、周波数は、5~50MHzであってもよい。特に、10MHzの周波数は、拡張可能なアップコンバージョンに追加の利点をもたらすことが発見されている。周波数の精度は、20ppm(+/-)又はそれ以上であり得る。ここでの任意の周波数は、基準クロック発振器10の公称周波数に対応してもよい。
【0042】
いくつかの実施形態では、初期基準クロック信号は、初期位相ロックループ120に入力される場合、方形波(square-wave)信号であってもよい。基準クロック入力装置102は、例えば、基準クロック信号入力部110と初期位相ロックループ120との間に位置する、初期基準クロック信号の形状などの特性を調整する信号処理装置を含んでもよい。
【0043】
制御装置100は、各モジュールが複数の位相コヒーレントな発振信号を提供する複数のチャネル160を含む複数のモジュール130を含む。モジュール130の数に直接的な上限はない。その結果、モジュールの数は、4~10などのように比較的少なくてもよく、10~100以上などのように多くてもよい。同様に、複数のモジュール130の各々のチャネル160の数は、4~10などのように比較的少なくてもよく、10~100以上などのように多くてもよい。
【0044】
基準クロック入力装置102は、例えば初期位相ロックループ120及び/又は第1の分配装置140を支持し接続するマザーボード装置104を含んでもよい。マザーボード装置104は、マザーボードとして構成された1つ以上の回路基板を含むか又はこれらの回路基板によって形成されてもよい。初期位相ロックループ120は、マザーボード装置104上に配置することができる。同様に、基準クロック信号入力部110は、マザーボード装置104上に配置されて、例えば、基準クロック発振器10からの伝送線など、初期基準クロック信号の伝送接続のためのプラグ着脱可能な結合を提供してもよい。代替的に又は追加的に、複数のモジュール130の各々は、各モジュールを支持し接続する少なくとも1つの第2の回路基板132を含んでもよい。これにより、各モジュール130の構成要素は、1つの支持体として接合され得る1つ以上のモジュール固有の回路基板に配置されてもよい。これにより、モジュール130を互いに、そしてマザーボード装置104から効率的に分離することができる。本明細書で言及される任意の回路基板は、プリント回路基板(PCB)であってもよい。
【0045】
制御装置100は、高周波基準クロック信号を位相コヒーレントな方法で複数のモジュールに分配する第1の分配装置140を含む。第1の分配装置140は、例えば初期位相ロックループ120からモジュール130の各々への高周波基準クロック信号の信号経路を提供する配線を含んでもよい。2つ以上の信号経路は、それぞれのモジュール130に対して同じ位相を維持するために等しい長さであってもよい。しかしながら、位相コヒーレンスに対して、位相関係が決定論的である限り、位相を保存する必要がないため、信号経路は、異なる長さであってもよい。第1の分配装置140は、複数のモジュール130のためのプラグ着脱可能な結合部を含んでもよい。例えば、第1の分配装置140は、複数のモジュール130のための複数のプラグ/ソケット接続部142を含んでもよく、各プラグ/ソケット接続部は、挿入のために互いに適合する第1の端部及び第2の端部を含む。プラグ/ソケット接続部の第1の端部134、例えばプラグは、複数のモジュール130の各々に配置されてもよい。プラグ/ソケット接続部の第2の端部、例えばソケットは、基準クロック入力装置102、例えばそのマザーボード装置104上に配置されてもよい。プラグ/ソケット接続部は、PCIエクスプレスコネクタなどのエッジコネクタを含んでもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、高周波基準クロック信号は、モジュール130に提供される場合、方形波信号であってもよい。制御装置100は、高周波基準クロック信号の形状などの特性を調整する信号処理装置を含んでもよい。信号処理装置は、基準クロック入力装置102、例えばマザーボード装置104上に配置されてもよい。信号処理装置はまた、第1の分配装置140又はその前に位置してもよい。
【0047】
複数のモジュール130は各々、高周波基準クロック信号を位相コヒーレントな方法でそれぞれのモジュール130の複数のチャネル160に分配する第2の分配装置150を含む。第2の分配装置150は、第1の分配装置140からそれぞれのモジュール130の各チャネル160への高周波基準クロック信号の信号経路を提供する配線を含んでもよい。2つ以上の信号経路は、それぞれのチャネル160に対して同じ位相を維持するために等しい長さであってもよい。しかしながら、位相コヒーレンスに対して、位相関係が決定論的である限り、位相を保存する必要がないため、信号経路は、異なる長さであってもよい。第2の分配装置150はまた、バッファ増幅器などの、高速基準クロック信号を処理する1つ以上の信号処理装置152を含んでもよい。例えば、複数のモジュール130の各々のバッファ増幅器により、制御装置100に拡張可能なファンアウト(fan-out)を提供することができる。第2の分配装置150はまた、高周波基準クロック信号をローパスフィルタリングする1つ以上のローパスフィルタであってもよい。ローパスフィルタリングは、1GHz未満、例えば400~700MHzのフィルタリング周波数で実行されてもよい。いくつかの実施形態では、このようなフィルタリングは、それぞれのモジュール130の複数のチャネル160の各々に対して別々に実行される。モジュール130は、差動基準クロック発振器(differential reference clock generator)に対応する高周波基準クロック信号からのフィルタリングを可能にするために、複数のチャネル160の各々に対して2つのローパスフィルタ154を含んでもよい。複数のチャネル160の各々のローパスフィルタリングは、それぞれのチャネル160の第1の位相ロックループ162の入力に直接的に結合されてもよい。ローパスフィルタリングは、チャネル160の出力が他のチャネル160の第1の位相ロックループ162に漏れ戻ることを軽減するために使用されてもよく、これは、例えば1GHzを超えるいくつかの周波数でのチャネル160間のクロストークを弱めることができる。
【0048】
複数のチャネル160の各々は、複数の位相コヒーレントな発振信号のうちの1つを提供するために高周波基準クロック信号をアップコンバートするように構成された第1の位相ロックループ162を含む。一実施形態では、複数の位相コヒーレントな発振信号の各々は、量子コンピューティングに特に適し、例えば搬送波信号として使用されるように1~15GHzの周波数を有してもよい。複数のチャネル160の各々はまた、無線周波数増幅器などの、それぞれの位相コヒーレントな発振信号の振幅を増幅する増幅器164を含んでもよい。いくつかの実施形態では、増幅器164は、電圧制御増幅器である。いくつかの実施形態では、増幅器164による増幅は、演算増幅器に電圧を供給し、次に増幅器164に電力を供給するデジタルアナログ変換器によって制御することができる。増幅器164は、それぞれの第1の位相ロックループ162の出力に結合されてもよい。
【0049】
複数の位相コヒーレントな発振信号の振幅及び/又は周波数は、個別に、チャネル固有の方法で調整可能であってもよく、及び/又は、集合的に、例えば全てのチャネルに対して一度に調整可能であってもよい。この目的のために、モジュール130は、複数のチャネル160の各々に対して1つ以上の調整インタフェース180、182を含んでもよい。第1の調整インタフェース180、例えばシリアル・ペリフェラル・インタフェース(Serial Peripheral Interface)(SPI)が、位相コヒーレントな発振信号の周波数を調整するために提供されてもよい。調整を提供するために、第1の調整インタフェース180は、位相コヒーレントな発振信号を提供するチャネル160の第1の位相ロックループ162に結合されてもよい。第2の調整インタフェース182、例えば制御電圧入力部が、位相コヒーレントな発振信号の振幅を調整するために提供されてもよい。調整を提供するために、第2の調整インタフェース182は、位相コヒーレントな発振信号を提供するチャネル160の増幅器に結合されてもよい。いずれか又は両方の場合の調整は、デジタル制御信号を介して実行されてもよい。デジタル制御信号は、1つのチャネルなど、限られた数のチャネルのみの振幅及び/又は周波数が調整されるように、チャネル固有に提供されてもよい。
【0050】
制御装置100は、受信システム20に結合するための複数の伝送線170を含んでもよい。これは、複数の伝送線170の各々が複数のチャネル160のうちの1つを受信システム20に結合するように実行されてもよい。結合は、直接的であってもよく、例えば、ミキサーなどの1つ以上の信号処理装置を含む結合装置30を介して間接的であってもよい。複数の伝送線は、結合装置30の一部を形成してもよい。
【0051】
制御装置100は、複数の位相コヒーレントな発振信号を提供する複数のrf接続部を含んでもよく、全ての接続部は、インピーダンス整合されてもよい。制御装置100はまた、複数のモジュール130の各々の複数のチャネル160のためのrfシールドを含んでもよい。複数のモジュール130の各々は、rf遮蔽用の複数のシールド190を含んでもよい。rf遮蔽は、各モジュール130の複数のチャネル160の各々に対して別々に実行されてもよいため、これらのチャネルは互いに対してもシールドされる。各シールドは、例えば、それぞれのチャネル160のrf遮蔽用のカバーを含んでもよい。シールドは、rf遮蔽を提供するために、少なくとも部分的に金属製、例えば、少なくとも部分的に金属薄板製であってもよい。例えば、複数のシールド190は、それぞれのチャネル160のrf遮蔽用の複数の別個の遮蔽箱を含んでもよい。一実施形態では、複数のチャネル160の各々は、金属薄板を含むシールド190によってrf遮蔽のために別々に覆われる。
【0052】
複数の位相コヒーレントな発振信号を提供するために、制御装置100は、デマルチプレクサ(demultiplexer)、デジタルアナログ変換器及び電源供給ユニットなどの1つ以上の追加の装置及び/又は構成要素を含んでもよい。これらの装置及び/又は構成要素は、複数のモジュール130の一部として統合されてもよい。制御装置100は、マイクロコントローラなどの1つ以上のコントローラ192を含んでもよい。例えば、中央コントローラは、マザーボード装置104上に配置されてもよい。コントローラ192は、例えばチャネル固有の調整によって、位相コヒーレントな発振信号の周波数及び/又は振幅を調整するように構成されてもよい。この目的のために、コントローラ192は、1つ以上のデマルチプレクサに結合されてもよい。コントローラ192は、それぞれの位相コヒーレントな発振信号の周波数及び/又は振幅を調整するチャネル固有のデジタル制御信号を提供するために使用することができる。この目的のために、例えば、複数のモジュールの各々は、デマルチプレクサを含んでもよい。制御装置100は、コントローラ192を他の構成要素に結合する制御インタフェース194を含んでもよく、このインタフェース194はまた、複数のモジュール130の各々の複数のチャネル160の対応するSPIと結合するように配置される、シリアル・ペリフェラル・インタフェース(Serial Peripheral Interface)(SPI)を含んでもよい。インタフェース194は、第1の分配装置140を介して、例えばプラグ/ソケット接続部142を介して複数のモジュール130に結合されてもよい。
【0053】
以下、位相コヒーレントな発振信号の周波数及び/又は振幅を調整する更なる例が提供される。コントローラ192は、第2の分配装置150の信号処理装置152として提供されてもよいデマルチプレクサに結合されてもよい。コントローラ192は、チップセレクト(Chip Select)(CS)信号などの多重分離信号(demultiplexed signal)をデジタルアナログ変換器、又はSPIなどの制御インタフェース194に結合された第1の位相ロックループ162に送るアドレス、例えばnビットのアドレスを提供するために使用されてもよい。制御インタフェース194は、データ用の少なくとも1つの経路と、クロック値用の少なくとも1つの経路とを含んでもよく、これらの経路は、複数のデジタルアナログ変換器及び/又は第1の位相ロックループ162と直列に結合されてもよいが、多重分離信号によって示されるように、これらのうちの1つのみが一度に影響を受ける。デジタルアナログ変換器は、位相コヒーレントな発振信号の振幅を調整する増幅器164に入力電流などの十分な入力を提供できる演算増幅器などの前置増幅器に電圧を送るように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、位相コヒーレントな発振信号の振幅を調整する増幅器164による増幅は、デジタルアナログ変換器でプログラミングされ得る動作電圧に依存する。
【0054】
制御装置100はまた、複数の位相コヒーレントな発振信号の周波数及び/又は振幅の遠隔調整用の制御接続部を含んでもよい。制御接続部は、コントローラ192に結合されてもよい。制御接続部は、遠隔調整用の有線及び/又は無線接続部を含んでもよい。遠隔調整のために、制御接続部は、コンピュータなどのデータ処理装置に結合されるように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、制御接続部は、遠隔調整用のイーサネット(登録商標)及び/又はユニバーサルシリアルバス(Universal Serial Bus)(USB)接続部を含む。制御装置100はまた、例えば遠隔調整用の制御接続部を利用して、初期位相ロックループ120及び/又は第1の位相ロックループ162のいずれかの他のパラメータを調整するように構成されてもよい。
【0055】
複数のチャネルの各々の出力電力は、直流バイアスによって、例えば増幅器164を直流バイアスすることによって制御されてもよい。この目的のために、制御装置100は、1つ以上のデジタルアナログ回路、例えば16ビットのデジタルアナログ回路を含んでもよい。いくつかの実施形態では、複数のモジュール130の各々は、上記目的のために、各モジュール130の複数のチャネル160の各々に対して別個のデジタルアナログ回路を含む。
【0056】
異なるチャネル間の位相コヒーレンスは、制御装置100によって維持することができるが、制御装置100は、或る時点での絶対位相のチャネル固有の定義、例えば任意の2つの位相コヒーレントな発振信号間の位相差が或る時点でゼロであるという定義のために構成されてもよい。その後、位相コヒーレントな発振信号の位相は、物理法則に従って時間的に変化し、それに応じてそれらの値を予測することができる。
【0057】
図3は、一例に係る方法200を示す。方法200は、量子コンピューティングシステムなどに複数の位相コヒーレントな発振信号を提供するために使用することができる。
【0058】
一実施形態では、方法200は、初期基準クロック信号を受信するステップ210を含む。初期基準クロック信号は、例えば、本明細書に開示された例のいずれかに係る基準クロック発振器10を利用して生成されてもよい。次いで、この方法は、高周波基準クロック信号を提供するために初期基準クロック信号をアップコンバートするステップ220を含む。この目的のために、制御装置100、例えば本明細書に開示された例のいずれかに係る制御装置が、使用されてもよい。
【0059】
高周波信号が、直接的に提供されるか、又は前の実施形態で説明したようにアップコンバージョンを利用して間接的に提供されるか否かにかかわらず、方法200は、高周波基準クロック信号を受信し、高周波基準クロック信号を位相コヒーレントな方法で複数のモジュールに分配するステップ230を含む。次いで、ステップ240では、複数のモジュールの各々内で、高周波基準クロック信号を位相コヒーレントな方法でそれぞれのモジュールの複数のチャネルに分配し、ステップ250では、複数のチャネルの各々内で、複数の位相コヒーレントな発振信号のうちの1つを提供するために高周波基準クロック信号をアップコンバートする。その後、ステップ260では、位相コヒーレントな発振信号を量子コンピューティングシステムなどの受信システム30に出力してもよい。位相コヒーレントな発振信号を受信システム30に導入する前に、例えば周波数混合によりこれらの発振信号を変調信号などの別の信号と混合することによって処理してもよい。これらの目的のいずれか又は全てのために、制御装置100、例えば本明細書に開示された例のいずれかに係る制御装置が、使用されてもよい。1つ以上の位相コヒーレントな発振信号は、例えば量子コンピューティングシステム用の搬送波として利用されてもよい。
【0060】
アップコンバージョンのために、整数乗算器が使用されてもよい。これらの整数乗算器は、初期位相ロックループ120及び/又は第1の位相ロックループ162のいずれかによって利用されてもよい。これらの整数乗算器は、位相コヒーレントな発振信号の位相の安定性を向上させることが発見されている。また、除算器が使用されてもよいが、いくつかの実施形態では、複数の位相コヒーレント発振信号を提供する初期位相ロックループ120及び/又は第1の位相ロックループの各々でのアップコンバージョンは、除算器ではなく整数乗算器を利用して実行される。これにより、位相の安定性を向上させることができる。
【0061】
本明細書に開示された制御装置100及び/又は方法200はまた、レーダーシステム(radar system)、分光システム(spectroscopy system)又は電波天文学システム(radio astronomy system)などと併せて利用されてもよい。したがって、受信システム20は、そのようなシステムであるか、又はそのようなシステムを単独で又は組み合わせて含んでもよい。
【0062】
本明細書で説明される様々な機能は、異なる順序で、及び/又は、互いに同時に実行されてもよい。明示的に禁止しない限り、任意の例を別の例と組み合わせてもよい。
【0063】
主題は、構造的特徴及び/又は動作に特有の言語で記載されているが、添付の特許請求の範囲に定義される主題は、必ずしも上述した特定の特徴又は動作に限定されないことを理解されたい。むしろ、上述した特定の特徴及び動作は、請求項を実施する例として開示され、他の同等の特徴及び動作は、特許請求の範囲内にあることが意図されている。
【0064】
上述した利点及びメリットは、1つの実施形態に関連してもよく、いくつかの実施形態に関連してもよいことを理解されたい。実施形態は、記載された問題のいずれか又は全てを解決するもの、又は記載された利点及びメリットのいずれか又は全てを有するものに限定されない。更に、「1つ(an)」項目への参照は、1つ以上のその項目を指してもよいことを理解されたい。
【0065】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、特定された方法、ブロック又は要素を含むことを意味するが、そのようなブロック又は要素は、排他的リストを含まず、方法又は装置は追加のブロック又は要素を含んでもよい。
【0066】
「第1(first)」、「第2(second)」などの数値記述子は、この文脈では、単に類似した名前を持つ部品を区別する方法として使用される。数値記述子は、優先、製造又は任意の特定の構造における出現の順序など、任意の特定の順序を示すものとして解釈されるべきではない。
【0067】
「複数(plurality)」などの表現は、この文脈では、それによって参照されるエンティティが複数であること、つまりエンティティの数が2つ以上であることを示すために使用される。
【0068】
本発明は、特定のタイプの装置及び/又は方法と併せて説明されてきたが、本発明は特定のタイプの装置及び/又は方法に限定されないことを理解されたい。本発明は、多くの例、実施形態及び実装に関連して説明されてきたが、本発明は、そのように限定されず、特許請求の範囲内にある様々な変更及び同等の装置をカバーする。様々な例が、特定の程度の特殊性で、又は1つ以上の個々の実施形態を参照して以上に説明されたが、当業者は、本明細書の範囲から逸脱することなく、開示された例に対して多数の変更を実施することができる。また、技術の進歩に伴い、本発明の基本概念を様々な方法で実施することができることは、当業者には明らかである。したがって、本発明及びその実施形態は、上述した例に限定されず、その代わりに、特許請求の範囲内で変更することができる。
【国際調査報告】