(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】新規のLILRB2抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230323BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230323BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20230323BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230323BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230323BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230323BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230323BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230323BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230323BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20230323BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230323BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230323BHJP
A61K 35/15 20150101ALI20230323BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230323BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230323BHJP
A61K 47/69 20170101ALI20230323BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230323BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230323BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230323BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230323BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230323BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20230323BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20230323BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230323BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230323BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230323BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230323BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230323BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230323BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230323BHJP
A61P 5/14 20060101ALI20230323BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20230323BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230323BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230323BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230323BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20230323BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20230323BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20230323BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230323BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230323BHJP
A61P 33/06 20060101ALI20230323BHJP
A61P 33/02 20060101ALI20230323BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20230323BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20230323BHJP
A61P 33/12 20060101ALI20230323BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20230323BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230323BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230323BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/62 Z
C12N15/12
C12N1/19
C12N1/15
C12N1/21
C12N5/10
C07K19/00
C07K14/705
C07K16/28
A61K39/395 N
A61K35/15
A61K35/17
A61K47/68
A61K47/69
A61K45/00
A61K39/395 L
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/06
A61P19/02
A61P17/06
A61P1/00
A61P1/04
A61P21/00
A61P37/02
A61P29/00 101
A61P3/10
A61P17/00
A61P27/02
A61P5/14
A61P7/06
A61P1/16
A61P9/10 101
A61P25/00
A61P21/04
A61P7/04
A61P17/14
A61P9/00
A61P13/12
A61P33/06
A61P33/02
A61P11/02
A61P11/06
A61P33/12
A61P25/08
A61P31/04
A61P43/00 121
G01N33/574 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547675
(86)(22)【出願日】2021-01-28
(85)【翻訳文提出日】2022-09-21
(86)【国際出願番号】 US2021015362
(87)【国際公開番号】W WO2021158413
(87)【国際公開日】2021-08-12
(32)【優先日】2020-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】508152917
【氏名又は名称】ザ ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ テキサス システム
(71)【出願人】
【識別番号】521105709
【氏名又は名称】イミューン-オンコ セラビューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】アン ジチャン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ニンヤン
(72)【発明者】
【氏名】ク ジチャン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン チェンチェン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ シャオエ
(72)【発明者】
【氏名】チェン ヘユ
(72)【発明者】
【氏名】シエ ジンジン
(72)【発明者】
【氏名】コスタ マリア ホセ
(72)【発明者】
【氏名】ソン アン
(72)【発明者】
【氏名】リャオ エックス. シャーリーン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA19
4C076AA65
4C076AA95
4C076BB11
4C076BB13
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4C076CC11
4C076CC14
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4C076CC16
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4C076CC27
4C076CC29
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4C076EE59
4C084AA19
4C084MA02
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4C084NA14
4C084ZA021
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4C084ZC75
4C085AA14
4C085AA16
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4C085BB43
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG04
4C087AA01
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4C087BB37
4C087BB65
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4C087NA05
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4C087ZA06
4C087ZA33
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4C087ZA59
4C087ZA66
4C087ZA68
4C087ZA75
4C087ZA81
4C087ZA89
4C087ZA92
4C087ZA94
4C087ZA96
4C087ZB05
4C087ZB08
4C087ZB13
4C087ZB15
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZB35
4C087ZB38
4C087ZB39
4C087ZC06
4C087ZC08
4C087ZC35
4C087ZC75
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA72
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書において、LILRB2に結合する抗体、ならびにがんおよび自己免疫疾患の検出および治療における当該抗体の使用が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表2に記載されるクローンCDR配列対を含む重鎖(HC)可変領域(VH)および軽鎖(LC)可変領域(VL);ならびにHC-CDRおよび/またはLC-CDRの1つまたは複数が1つ、2つ、または3つのアミノ酸の置換、付加、欠失、またはこれらの組合せを有するそのバリアントを含む、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
前記単離されたモノクローナル抗体が、マウス抗体、齧歯動物抗体、ウサギ抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体である、請求項1記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
前記抗原結合断片が、組換えScFv(単鎖可変断片)抗体、Fab断片、F(ab')2断片、またはFv断片である、請求項1記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
前記単離されたモノクローナル抗体がヒト抗体である、請求項1記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
前記VHおよびVL鎖が、それぞれ付録IIおよびIVのクローン配列対と少なくとも90%または95%同一のアミノ酸配列を有する、請求項1記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
前記VHおよびVL鎖が、それぞれ付録IおよびIIIのクローン配列対と少なくとも80%または90%同一の核酸配列によりコードされる、請求項1記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
前記VHおよびVL鎖が、それぞれ付録IIおよびIVのクローン配列対と同一のアミノ酸配列を有する、請求項5記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
前記VHおよびVL鎖が、それぞれ付録IおよびIIIのクローン配列対と同一の核酸配列によりコードされる、請求項5記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
前記単離されたモノクローナル抗体がヒト化抗体である、請求項1~8のいずれか一項記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項10】
前記抗体がキメラ抗体である、請求項1記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項11】
LILRB2の活性化を誘導する、請求項1記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項12】
LILRB2の活性化を抑制する、請求項1記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項13】
同じエピトープについて、請求項1~12のいずれか一項記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片と競合する、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項記載の単離されたモノクローナル抗体をコードする、単離された核酸。
【請求項16】
請求項15記載の単離された核酸を含む、ベクター。
【請求項17】
請求項16記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項18】
哺乳動物細胞である、請求項17記載の宿主細胞。
【請求項19】
CHO細胞である、請求項17記載の宿主細胞。
【請求項20】
請求項1~13のいずれか一項記載の単離されたモノクローナル抗体をコードおよび/または産生する、ハイブリドーマまたは操作された細胞。
【請求項21】
抗体を製造する方法であって、該抗体を発現するのに好適な条件下で請求項17記載の宿主細胞を培養する工程、および該抗体を回収する工程を含む、方法。
【請求項22】
請求項1~13のいずれか一項記載の抗原結合断片を含む、キメラ抗原受容体(CAR)タンパク質。
【請求項23】
請求項22記載のCARタンパク質をコードする、単離された核酸。
【請求項24】
請求項23記載の単離された核酸を含む、ベクター。
【請求項25】
請求項23記載の単離された核酸を含む、操作された細胞。
【請求項26】
T細胞、NK細胞、またはマクロファージである、請求項25記載の操作された細胞。
【請求項27】
対象においてがんを治療するかまたはがんの影響を改善する方法であって、該対象に治療有効量の請求項1~13のいずれか一項記載の抗体もしくはその抗原結合断片または請求項25もしくは26記載の操作された細胞を投与する工程を含む、方法。
【請求項28】
前記対象における腫瘍負荷を低減または根絶する、請求項27記載の方法。
【請求項29】
腫瘍細胞の数を減少させ、かつ/または腫瘍成長速度を遅らせる、請求項27記載の方法。
【請求項30】
腫瘍サイズを縮小させる、請求項27記載の方法。
【請求項31】
腫瘍転移を低減または予防する、請求項27記載の方法。
【請求項32】
前記対象において腫瘍を根絶する、請求項27記載の方法。
【請求項33】
前記がんが固形がんである、請求項27記載の方法。
【請求項34】
前記固形がんが、副腎がん、胆管がん、骨がん、脳のがん、乳がん、子宮頸がん、絨毛がん、結腸がん、結腸直腸がん、食道がん、眼がん、胃がん、膠芽腫、頭頸部がん、腎臓がん、肝臓がん、肺がん、中皮腫、黒色腫、メルケル細胞がん、鼻咽頭がん、神経芽腫、口腔がん、卵巣がん、膵臓がん、陰茎がん、松果体腫、前立腺がん、腎細胞がん、網膜芽腫、肉腫、皮膚がん、精巣がん、胸腺がん、甲状腺がん、子宮がん、および膣がんからなる群より選択される、請求項33記載の方法。
【請求項35】
単球、マクロファージ、樹状細胞、好中球、および他の骨髄細胞、骨髄由来抑制細胞、ならびに腫瘍関連マクロファージを標的とする、請求項27記載の方法。
【請求項36】
前記がんが血液悪性腫瘍である、請求項27記載の方法。
【請求項37】
前記血液悪性腫瘍が、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、B細胞白血病、慢性リンパ芽球性白血病(CLL)、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、慢性骨髄性白血病(CML)、プレB細胞性急性リンパ球性白血病(プレB ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、節外性NK/T細胞リンパ腫、有毛細胞白血病、重鎖病、HHV8関連原発性滲出性リンパ腫、形質芽球性リンパ腫、原発性CNSリンパ腫、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、T細胞/組織球豊富型B細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、多発性骨髄腫(MM)、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性腫瘍、および真性多血症からなる群より選択される、請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記抗体またはその抗原結合断片が、静脈内、動脈内、腫瘍内、または皮下に投与される、請求項27記載の方法。
【請求項39】
トポイソメラーゼ阻害剤、アントラサイクリントポイソメラーゼ阻害剤、アントラサイクリン、ダウノルビシン、ヌクレオシド代謝阻害剤、シタラビン、低メチル化剤、低用量シタラビン(LDAC)、ダウノルビシンとシタラビンとの組合せ、注射用のダウノルビシンおよびシタラビンリポソーム、ヴィキセオス(登録商標)、アザシチジン、ビダーザ(登録商標)、デシタビン、オールトランス-レチノイン酸(ATRA)、ヒ素、三酸化ヒ素、ヒスタミン二塩酸塩、セプレン(登録商標)、インターロイキン-2、アルデスロイキン、プロロイキン(登録商標)、ゲムツズマブオゾガマイシン、マイロターグ(登録商標)、FLT-3阻害剤、ミドスタウリン、ライダプト(登録商標)、クロファラビン、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、デシタビン、IDH1阻害剤、イボシデニブ、チブソボ(登録商標)、IDH2阻害剤、エナシデニブ、イディファ(登録商標)、スムーズンド(SMO)阻害剤、グラスデギブ、アルギナーゼ阻害剤、IDO阻害剤、エパカドスタット、BCL-2阻害剤、ベネトクラクス、ベネクレクスタ(登録商標)、白金錯体誘導体、オキサリプラチン、キナーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、PI3キナーゼ阻害剤、BTK阻害剤、イブルチニブ、イムブルビカ(登録商標)、アカラブルチニブ、カルクエンス(登録商標)、ザヌブルチニブ、PD-1抗体、PD-L1抗体、CTLA-4抗体、LAG3抗体、ICOS抗体、TIGIT抗体、TIM3抗体、CD40抗体、4-1BB抗体、CD47抗体、SIRP1α抗体または融合タンパク質、CD70抗体、およびCLL1抗体、CD123抗体、E-セレクチンのアンタゴニスト、腫瘍抗原に結合する抗体、T細胞表面マーカーに結合する抗体、骨髄細胞またはNK細胞表面マーカーに結合する抗体、アルキル化剤、ニトロソウレア剤、代謝拮抗物質、抗腫瘍性抗生物質、植物に由来するアルカロイド、ホルモン療法薬、ホルモンアンタゴニスト、アロマターゼ阻害剤、ならびにP糖タンパク質阻害剤からなる群より選択される1つまたは複数の薬物を前記対象に投与する工程をさらに含む、請求項27記載の方法。
【請求項40】
前記単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が、それに連結された抗腫瘍薬物をさらに含む、請求項27~39のいずれか一項記載の方法。
【請求項41】
前記抗腫瘍薬物が、光分解性リンカーを介して前記抗体に連結されている、請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記抗腫瘍薬物が、酵素切断性リンカーを介して前記抗体に連結されている、請求項40記載の方法。
【請求項43】
前記抗腫瘍薬物が、毒素、放射性同位体、サイトカイン、または酵素である、請求項40記載の方法。
【請求項44】
試料中または対象中のがん細胞またはがん幹細胞を検出する方法であって、
(a)対象または対象由来の試料を、請求項1~11のいずれか一項記載の抗体またはその抗原結合断片と接触させる工程、および
(b)該対象または該試料中のがん細胞またはがん幹細胞への該抗体の結合を検出する工程
を含む、方法。
【請求項45】
前記試料が、体液または生検材料である、請求項44記載の方法。
【請求項46】
前記試料が、血液、骨髄、痰、涙液、唾液、粘液、血清、尿または糞便である、請求項44記載の方法。
【請求項47】
検出が、免疫組織化学、フローサイトメトリー、イムノアッセイ(ELISA、RIAなどを含む)またはウエスタンブロットを含む、請求項44記載の方法。
【請求項48】
工程(a)および(b)の2回目を行い、1回目と比較した検出レベルの変化を決定することをさらに含む、請求項44記載の方法。
【請求項49】
前記単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が標識をさらに含む、請求項44記載の方法。
【請求項50】
前記標識が、ペプチドタグ、酵素、磁性粒子、発色団、蛍光分子、化学発光分子、または色素である、請求項49記載の方法。
【請求項51】
前記単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が、リポソームまたはナノ粒子にコンジュゲートしている、請求項27~50のいずれか一項記載の方法。
【請求項52】
対象において自己免疫疾患を治療するかまたは自己免疫疾患の影響を改善する方法であって、該対象に治療有効量の請求項1~13のいずれか一項記載の抗体もしくはその抗原結合断片または請求項25もしくは26記載の操作された細胞を投与する工程を含む、方法。
【請求項53】
単球、マクロファージ、樹状細胞、および好中球、ならびに他の骨髄細胞を標的とする、請求項52記載の方法。
【請求項54】
前記抗体またはその抗原結合断片が、静脈内、動脈内、腫瘍内、または皮下に投与される、請求項52記載の方法。
【請求項55】
ステロイドまたはNSAIDからなる群より選択される1つまたは複数の薬物を前記対象に投与する工程をさらに含む、請求項52記載の方法。
【請求項56】
前記自己免疫疾患が、ギラン-バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、腸炎性関節炎、反応性関節炎、未分化脊椎関節症、若年性脊椎関節症、ベーチェット病、付着部炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、線維筋痛症、慢性疲労症候群、全身炎症性疾患と関連する疼痛状態、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、若年発症糖尿病(I型糖尿病としても公知)、ウェゲナー肉芽腫症、多発性筋炎、皮膚筋炎、封入体筋炎、多発性内分泌不全症、シュミット症候群、自己免疫性ぶどう膜炎、アジソン病、グレーブス病、橋本甲状腺炎、自己免疫性甲状腺疾患、悪性貧血、胃萎縮、慢性肝炎、ルポイド肝炎、アテローム性動脈硬化症、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、副甲状腺機能低下症、ドレスラー症候群、重症筋無力症、イートン-ランバート症候群、自己免疫性血小板減少症、特発性血小板減少性紫斑病、溶血性貧血、尋常性天疱瘡、天疱瘡、疱疹状皮膚炎、脱毛症、強皮症、進行性全身性硬化症、CREST症候群(石灰沈着症、レイノー現象、食道運動障害、強指症、および毛細血管拡張症)、成人発症糖尿病(II型糖尿病としても公知)、混合性結合組織疾患、結節性多発性動脈炎、全身性壊死性血管炎、糸球体腎炎、アトピー性皮膚炎、アトピー性鼻炎、グッドパスチャー症候群、シャガス病、サルコイドーシス、リウマチ熱、喘息、抗リン脂質抗体症候群、多形紅斑、クッシング症候群、自己免疫性慢性活動性肝炎、アレルギー性疾患、アレルギー性脳脊髄炎、輸血反応、癩病、マラリア、リーシュマニア症、トリパノソーマ症、高安動脈炎、リウマチ性多発性筋痛症、側頭動脈炎、住血吸虫症、巨細胞性動脈炎、湿疹、リンパ腫様肉芽腫症、川崎病、眼内炎、乾癬、胎児赤芽球症、好酸球性筋膜炎、シュルマン症候群、フェルティ症候群、フックス毛様体炎、IgA腎症、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、移植片対宿主病、移植拒絶、野兎病、周期性発熱症候群、化膿性関節炎、家族性地中海熱、TNF受容体関連周期性症候群(TRAPS)、マックル-ウェルズ症候群、または高IgD症候群である、請求項52記載の方法。
【請求項57】
対象においてT細胞活性化を増強する方法であって、該対象に請求項1~13のいずれか一項記載の抗体もしくはその抗原結合断片または請求項25もしくは26記載の操作された細胞を投与する工程を含む、方法。
【請求項58】
対象においてM2aマクロファージ表現型をモジュレートする方法であって、該対象に請求項1~13のいずれか一項記載の抗体もしくはその抗原結合断片または請求項25もしくは26記載の操作された細胞を投与する工程を含む、方法。
【請求項59】
LILRB2に結合し、かつ:
(a)LILRAにも別のLILRBにも結合しないか;または
(b)LILRB2ドメイン1もしくは4に結合するか;または
(c)LILRB2を活性化させるかもしくはアンタゴナイズするか;または
(d)単球の炎症能を増強するか;または
(e)T細胞活性化を増強するか;または
(f)M2aマクロファージ表現型をモジュレートするか;または
(g)骨髄由来抑制細胞機能を予防するか;または
(h)インビボで白血病細胞遊走および/もしくは浸潤を阻害する、
モノクローナル抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2020年2月5日に出願された米国仮出願第62/970,496号の優先権の恩典を主張し、該仮出願の全内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表
2021年1月27日に作成された213KB(Microsoft Windowsでの測定)の「UTFHP0359WO_ST25」という名称のファイルに含有される配列表が電子的提出により本明細書と共に提出され、該配列表は参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
背景
1. 分野
本開示は、概して、薬剤、腫瘍学、免疫学、および免疫腫瘍学の分野に関する。より具体的には、本開示は、LILRBに結合し、白血病および固形腫瘍を含むがんを治療することができる抗体に関する。
【0004】
2. 関連技術の説明
現行の免疫チェックポイント遮断戦略は、ある特定の種類の固形がんの治療において成功している。しかしながら、ほとんどのがん患者は現行のチェックポイント遮断に応答しないか、または治療後に再発する。追加的に、チェックポイント遮断単剤療法は、多発性骨髄腫および白血病を含むほとんどの血液悪性腫瘍に対して成功していない。
【0005】
腫瘍微小環境(TME)は、腫瘍に対する免疫応答の調節において不可欠な役割を果たすと考えられている。腫瘍微小環境を構成する複雑な因子および成分の中で、骨髄由来抑制細胞(MDSC)、腫瘍関連マクロファージ(TAM)および細胞外マトリックスの全てが、腫瘍に対する免疫応答の抑制において不可欠な役割を果たす。
【0006】
最近、抑制性白血球免疫グロブリン様受容体(inhibitory leukocyte immunoglobulin-like receptor;LILRB)および関連する免疫受容体チロシンベース抑制モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based inhibitory motif;ITIM)含有受容体LAIR1は、様々な造血および固形がん細胞ならびに免疫抑制性腫瘍微小環境において腫瘍促進機能を有することが示された。ITIM含有受容体は、広範囲の免疫細胞上に発現し、ホスファターゼSHP-1、SHP-2、またはSHIPの動員によりシグナルを伝達して免疫細胞活性化の負の調節に繋がる。CTLA-4およびPD-1に類似して、LILRBは免疫チェックポイント因子と考えられる。
【0007】
LILRB2は、インビトロおよびインビボでの骨髄細胞表現型の鍵となる調節因子として同定されており、様々なリガンドによるその活性化は骨髄細胞の炎症促進活性を抑制する。抑制性/抗炎症性表現型を有する骨髄細胞は、固形腫瘍微小環境においてT細胞の活性化、増殖、および細胞傷害活性を下方調節できるので、骨髄豊富型固形腫瘍におけるLILRB2の治療的遮断は、T細胞チェックポイント阻害剤に対して不応答性/再発性の疾患を示す患者において抗腫瘍免疫応答を再活性化させるかまたは増強する潜在能力を有する。
【0008】
LILRBは、腫瘍免疫回避を促す多数の免疫細胞種の活性を阻害し得る。LILRB2は、2または4つの細胞外免疫グロブリンドメイン、膜貫通ドメイン、および2~4つの細胞質免疫受容体チロシンベース抑制モチーフ(ITIM)を含有するLIR受容体のサブファミリーBクラスに属する。該受容体は骨髄細胞上に発現し;HLAクラスI分子、ANGPTL、ミエリン阻害因子(Nogo66、MAG、およびOMgpを含む)、ならびにβ-アミロイドを含む複数の種類のリガンドに結合して、免疫応答の刺激を阻害する負のシグナルを伝達する。それは、炎症応答および細胞傷害性を制御して、免疫応答を集中させかつ自己反応性を制限することを助けると考えられている。異なるアイソフォームをコードする複数の転写バリアントがこの遺伝子について見出されている。
【0009】
反対に、LILRBファミリーの受容体をアゴナイズすることにより、自己免疫性疾患または炎症性疾患において見出される免疫応答または炎症を抑制できる可能性がある。
【発明の概要】
【0010】
概要
したがって、一局面において、本開示は、LILRB2に特異的に結合する単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を提供する。ある特定の態様において、抗体または抗原結合断片は、LILRB2に結合しているときにLILRB2の活性化をモジュレートする。ある特定の態様において、抗体または抗原結合断片は、LILRB2に結合しているときにLILRB2を活性化させる。ある特定の態様において、抗体または抗原結合断片は、LILRB2に結合しているときにLILRB2の活性化を抑制する。ある特定の態様において、抗体または抗原結合断片は、LILRB2に結合しているときにMHCおよび他のリガンドのLILRB2への結合を特異的に遮断する。
【0011】
一局面において、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、表2に記載されるクローンCDR配列対を含む重鎖(HC)可変領域(VH)および軽鎖(LC)可変領域(VL);ならびにLC-CDRの1つまたは複数が1つ、2つ、または3つのアミノ酸の置換、付加、欠失、またはこれらの組合せを有するそのバリアントを含む。単離されたモノクローナル抗体が、マウス抗体、齧歯動物抗体、ウサギ抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体である、請求項1記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、それぞれ付録IIおよびIVのクローン配列対と少なくとも90%または95%同一のアミノ酸配列を有するVHおよびVL鎖を有してもよい。単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、それぞれ付録IおよびIIIのクローン配列対と少なくとも80%または90%同一の核酸配列によりコードされるVHおよびVL鎖を有してもよい。単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、それぞれ付録IIおよびIVのクローン配列対と同一のアミノ酸配列を有するVHおよびVL鎖を有してもよい。単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、それぞれ付録IおよびIIIのクローン配列対と同一の核酸配列によりコードされるVHおよびVL鎖を有してもよい。
【0012】
バリアントは、HC-CDRまたはLC-CDRの1つまたは複数が1つ、2つ、または3つのアミノ酸の置換、付加、欠失、またはこれらの組合せを有するものであってもよい。ある特定の態様において、各CDRは、CDRのKabatの定義、Chothiaの定義、Kabatの定義とChothiaの定義との組合せ、AbMの定義、またはcontactの定義にしたがって定義される。
【0013】
別の局面において、本開示は、同じエピトープについて、表2からのクローン重鎖・軽鎖CDR配列対を有する抗体と競合する、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を提供する。ある特定の態様において、抗体または抗原結合断片が結合するエピトープは、ヒトLILRB2のD1ドメインとD2ドメインの間のリンカー領域内に位置する。
【0014】
ある特定の態様において、本明細書に記載されている単離されたモノクローナル抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体である。ある特定の態様において、本明細書に記載されている単離されたモノクローナル抗体は、IgG1型、IgG2型、IgG3型、またはIgG4型である。ある特定の態様において、本明細書に記載されている抗原結合断片は、組換えScFv(単鎖可変断片)抗体、Fab断片、F(ab')2断片、またはFv断片である。
【0015】
別の局面において、本明細書において提供される単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物が提供される。
【0016】
別の局面において、本明細書において提供される単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片をコードする単離された核酸が提供される。
【0017】
別の局面において、本明細書において提供される単離された核酸を含むベクターが提供される。
【0018】
別の局面において、本明細書において提供されるベクターを含む宿主細胞が提供される。宿主細胞は哺乳動物細胞であってもよい。宿主細胞はCHO細胞であってもよい。
【0019】
別の局面において、本明細書において提供される単離されたモノクローナル抗体をコードまたは産生するハイブリドーマが提供される。
【0020】
別の局面において、抗体を製造する方法が提供される。当該方法は、抗体を発現するのに好適な条件下で本明細書において提供される宿主細胞を培養する工程、および抗体を回収する工程を含んでもよい。
【0021】
別の局面において、本明細書において提供される抗原結合断片を含むキメラ抗原受容体(CAR)タンパク質が提供される。
【0022】
別の局面において、本明細書において提供されるCARタンパク質をコードする単離された核酸が提供される。
【0023】
別の局面において、本明細書において提供される単離された核酸を含む操作された細胞が提供される。ある特定の態様において、細胞は、T細胞、NK細胞、または骨髄細胞である。
【0024】
別の場合において、対象においてがんを治療するかまたはがんの影響を改善する方法であって、対象に治療有効量の本明細書において定義される抗体またはその抗原結合断片を投与する工程を含む、方法が提供される。
【0025】
当該方法は、対象において腫瘍負荷を低減させるかもしくは根絶してもよく、かつ/または腫瘍成長速度を遅らせてもよく、腫瘍細胞の数を減少させてもよく、腫瘍サイズを縮小させてもよく、腫瘍浸潤を低減させてもよく、腫瘍転移を低減させてもよく、対象において腫瘍を根絶してもよい。がんは固形腫瘍または血液悪性腫瘍であってもよい。
【0026】
ある特定の態様において、がんは、副腎がん、胆管がん、骨がん、脳のがん、乳がん、子宮頸がん、絨毛がん、結腸がん、結腸直腸がん、食道がん、眼がん、胃がん、膠芽腫、頭頸部がん、腎臓がん、肝臓がん、肺がん、中皮腫、黒色腫、メルケル細胞がん、鼻咽頭がん、神経芽腫、口腔がん、卵巣がん、膵臓がん、陰茎がん、松果体腫、前立腺がん、腎細胞がん、網膜芽腫、肉腫、皮膚がん、精巣がん、胸腺がん、甲状腺がん、子宮がん、および膣がんを含む固形腫瘍である。
【0027】
いくつかの態様において、がんは、転移性、再発性または薬物抵抗性のがんである。
【0028】
いくつかの態様において、がんは、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、B細胞白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)、慢性リンパ芽球性白血病(CLL)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、慢性骨髄性白血病(CML)、プレB細胞性急性リンパ球性白血病(プレB ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、節外性NK/T細胞リンパ腫、有毛細胞白血病、HHV8関連原発性滲出性リンパ腫、形質芽球性リンパ腫、原発性CNSリンパ腫、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、T細胞/組織球豊富型B細胞リンパ腫、重鎖病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、多発性骨髄腫(MM)、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性腫瘍、および真性多血症を含む血液悪性腫瘍である。
【0029】
抗体またはその抗原結合断片は、静脈内、動脈内、腫瘍内または皮下に投与されてもよい。
【0030】
ある特定の態様において、方法は、トポイソメラーゼ阻害剤、アントラサイクリントポイソメラーゼ阻害剤、アントラサイクリン、ダウノルビシン、ヌクレオシド代謝阻害剤、シタラビン、低メチル化剤、低用量シタラビン(LDAC)、ダウノルビシンとシタラビンとの組合せ、注射用のダウノルビシンおよびシタラビンリポソーム、ヴィキセオス(登録商標)、アザシチジン、ビダーザ(登録商標)、デシタビン、オールトランス-レチノイン酸(ATRA)、ヒ素、三酸化ヒ素、ヒスタミン二塩酸塩、セプレン(登録商標)、インターロイキン-2、アルデスロイキン、プロロイキン(登録商標)、ゲムツズマブオゾガマイシン、マイロターグ(登録商標)、FLT-3阻害剤、ミドスタウリン、ライダプト(登録商標)、クロファラビン、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、デシタビン、IDH1阻害剤、イボシデニブ、チブソボ(登録商標)、IDH2阻害剤、エナシデニブ、イディファ(登録商標)、スムーズンド(SMO)阻害剤、グラスデギブ、アルギナーゼ阻害剤、IDO阻害剤、エパカドスタット、BCL-2阻害剤(BCL-2 inihbitor)、ベネトクラクス、ベネクレクスタ(登録商標)、白金錯体誘導体、オキサリプラチン、キナーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、PI3キナーゼ阻害剤、BTK阻害剤、イブルチニブ、イムブルビカ(登録商標)、アカラブルチニブ、カルクエンス(登録商標)、ザヌブルチニブ、PD-1抗体、PD-L1抗体、CTLA-4抗体、LAG3抗体、ICOS抗体、TIGIT抗体、TIM3抗体、CD40抗体、4-1BB抗体、CD47抗体、SIRP1α抗体または融合タンパク質、CD70抗体、およびCLL1抗体、CD123抗体、E-セレクチンのアンタゴニスト、腫瘍抗原に結合する抗体、T細胞表面マーカーに結合する抗体、骨髄細胞またはNK細胞表面マーカーに結合する抗体、アルキル化剤、ニトロソウレア剤、代謝拮抗物質、抗腫瘍性抗生物質、植物に由来するアルカロイド、ホルモン療法薬、ホルモンアンタゴニスト、アロマターゼ阻害剤、ならびにP糖タンパク質阻害剤からなる群より選択される1つまたは複数の薬物を対象に投与する工程からなる群より選択される1つまたは複数の薬物を対象に投与する工程をさらに含んでもよい。
【0031】
単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、それに連結された抗腫瘍薬物を含んでもよい。抗腫瘍薬物は、光分解性リンカーを介して抗体に連結されてもよい。抗腫瘍薬物は、酵素切断性リンカーを介して抗体に連結されてもよい。抗腫瘍薬物は、毒素、放射性同位体、サイトカインまたは酵素であってもよい。
【0032】
別の態様において、(a)対象または対象由来の試料を本明細書において定義される抗体またはその抗原結合断片と接触させる工程、および(b)対象または試料中のがん細胞またはがん幹細胞への抗体の結合を検出する工程を含む、試料中または対象中のがん細胞またはがん幹細胞を検出する方法が提供される。試料は、体液または生検材料、または血液、骨髄、痰、涙液、唾液、粘液、血清、尿または糞便であってもよい。検出は、免疫組織化学、フローサイトメトリー、イムノアッセイ(ELISA、RIAなどを含む)またはウエスタンブロットを含んでもよい。方法は、工程(a)および(b)の2回目を行い、1回目と比較した検出レベルの変化を決定する工程をさらに含んでもよい。単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、標識(例えば、ペプチドタグ、酵素、磁性粒子、発色団、蛍光分子、化学発光分子、または色素)をさらに含んでもよい。単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、リポソームまたはナノ粒子にコンジュゲートしていてもよい。
【0033】
さらに追加の局面において、対象において自己免疫疾患を治療するかまたは自己免疫疾患の影響を改善する方法であって、対象に治療有効量の本明細書において定義される抗体またはその抗原結合断片を投与する工程を含む、方法が提供される。抗体またはその抗原結合断片は、静脈内、動脈内、腫瘍内または皮下に投与されてもよい。方法は、ステロイドまたはNSAIDからなる群より選択される1つまたは複数の薬物を対象に投与する工程をさらに含んでもよい。自己免疫疾患は、ギラン-バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、腸炎性関節炎、反応性関節炎、未分化脊椎関節症、若年性脊椎関節症、ベーチェット病、付着部炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、線維筋痛症、慢性疲労症候群、全身炎症性疾患と関連する疼痛状態、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、若年発症糖尿病(I型糖尿病としても公知)、ウェゲナー肉芽腫症、多発性筋炎、皮膚筋炎、封入体筋炎、多発性内分泌不全症、シュミット症候群、自己免疫性ぶどう膜炎、アジソン病、グレーブス病、橋本甲状腺炎、自己免疫性甲状腺疾患、悪性貧血、胃萎縮、慢性肝炎、ルポイド肝炎、アテローム性動脈硬化症、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、副甲状腺機能低下症、ドレスラー症候群、重症筋無力症、イートン-ランバート症候群、自己免疫性血小板減少症、特発性血小板減少性紫斑病、溶血性貧血、尋常性天疱瘡、天疱瘡、疱疹状皮膚炎、脱毛症、強皮症、進行性全身性硬化症、CREST症候群(石灰沈着症、レイノー現象、食道運動障害、強指症、および毛細血管拡張症)、成人発症糖尿病(II型糖尿病としても公知)、混合性結合組織疾患、結節性多発性動脈炎、全身性壊死性血管炎、糸球体腎炎、アトピー性皮膚炎、アトピー性鼻炎、グッドパスチャー症候群、シャガス病、サルコイドーシス、リウマチ熱、喘息、抗リン脂質抗体症候群、多形紅斑、クッシング症候群、自己免疫性慢性活動性肝炎、アレルギー性疾患、アレルギー性脳脊髄炎、輸血反応、癩病、マラリア、リーシュマニア症、トリパノソーマ症、高安動脈炎、リウマチ性多発性筋痛症、側頭動脈炎、住血吸虫症、巨細胞性動脈炎、湿疹、リンパ腫様肉芽腫症、川崎病、眼内炎、乾癬、胎児赤芽球症、好酸球性筋膜炎、シュルマン症候群、フェルティ症候群、フックス毛様体炎、IgA腎症、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、移植片対宿主病、移植拒絶、野兎病、周期性発熱症候群、化膿性関節炎、家族性地中海熱、TNF受容体関連周期性症候群(TRAPS)、マックル-ウェルズ症候群、または高IgD症候群であってもよい。
【0034】
また、LILRB2に結合し、かつ(a)LILRAにも別のLILRBにも結合しない;(b)LILRB2ドメイン1もしくは4に結合する;(c)LILRB2を活性化させるかもしくはアンタゴナイズする;(d)単球の炎症能を増強する;(e)骨髄由来抑制細胞機能を予防する;かつ/または(f)インビボで白血病細胞遊走および/もしくは浸潤を阻害するモノクローナル抗体も提供される。
【0035】
特許請求の範囲および/または本明細書において「含む」という用語と組み合わせて使用された場合の「a」または「an」という語の使用は、「1つ」を意味することがあるが、それはまた、「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」および「1つまたは1つより多い」の意味にも合致する。「約」という語は、記載された数のプラスまたはマイナス5%を意味する。
【0036】
本明細書に記載されている任意の方法または組成物は、本明細書に記載されている任意の他の方法または組成物に関して実施されてもよいことが企図されている。本開示の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。しかしながら、詳細な説明および特定の例は、本発明の特定の態様を示すが、それは説明のためにのみ与えられることが理解されるべきであり、本開示の精神および範囲内で様々な変更および改良がこの詳細な説明から当業者に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
以下の図面は本明細書の一部分を形成し、本発明のある特定の局面をさらに実証するために含められる。本明細書に提示される特定の態様の詳細な説明と組み合わせてこれらの図面の1つまたは複数を参照することにより、本発明はより良好に理解されるであろう。
【0038】
【
図1A】
図1A~C。LILRB2に対する特異的なモノクローナル抗体のスクリーニング。(
図1A)モノクローナル抗体はLILRB2レポーター細胞に結合することを示す代表的なフローサイトメトリープロファイル。LILRB2レポーター細胞におけるフローサイトメーターを使用してモノクローナル抗体の結合をスクリーニングした。結合した抗体をアロフィコシアニン(APC)標識ヤギ抗ヒトIgG二次抗体で検出した。
【
図1B】(
図1B)LILRB2レポーター細胞に対するモノクローナル抗体の結合能力の定量化。B2-7、B2-15、B2-16、B2-17、B2-19、B2-8、B2-24、B2-25、B2-10、B2-12およびB2-18はLILRB2レポーター細胞に高度に結合する。
【
図1C-1】(
図1C)LILRA、LILRBおよびLAIR1レポーター細胞に対するモノクローナル抗体B2-7、B2-15、B2-16、B2-17、B2-19、B2-8、B2-24、B2-25、B2-10、B2-12、およびB2-18の結合能力の定量化。
【
図2】
図2A~B。抗体B2-8、B2-24、B2-10、B2-10およびB2-15はLILRB2レポーター細胞のGFPシグナル伝達を増加させる。(
図2A)可溶性抗体とインキュベートされたLILRB2レポーター細胞のGFPシグナル伝達。(
図2B)K562と組み合わせて可溶性抗体とインキュベートされたLILRB2レポーター細胞のGFPシグナル伝達。
【
図3A】
図3A~C。抗体B2-7、B-15、B2-16、B2-17およびB2-19は、コーティングされたANGPTL2により活性化されるLILRB2レポーター細胞のGFPシグナル伝達を遮断する。(
図3A)代表的なフローサイトメトリープロファイルにより、コーティングされたANGPTL2はLILRB2レポーター細胞におけるGFP発現を刺激することが示された。
【
図3B】(
図3B)代表的なフローサイトメトリープロファイルにより、B2-7、B-15、B2-16、B2-17およびB2-19は、コーティングされたANGPTL2により活性化されるLILRB2レポーター細胞におけるGFP発現を有効に遮断することが示された。
【
図3C】(
図3C)コーティングされたANGPTL2により誘導されるGFP発現に対するB2-7、B-15、B2-16、B2-17およびB2-19の用量依存的な阻害能力。B2-19、B2-16、B2-7、B2-15およびB2-17の遮断効力(IC
50)は、それぞれ48.54ng/ml、131.4ng/ml、221.1ng/ml、341.3ng/mlおよび405.1ng/mlであった。
【
図4A】
図4A~C。抗体B2-7、B-15、B2-16、B2-17およびB2-19は、コーティングされたSEMA4Aにより活性化されるLILRB2レポーター細胞のGFPシグナル伝達を遮断する。(
図4A)代表的なフローサイトメトリープロファイルにより、コーティングされたSEMA4AはLILRB2レポーター細胞におけるGFP発現を刺激することが示された。
【
図4B】(
図4B)代表的なフローサイトメトリープロファイルにより、B2-7、B-15、B2-16、B2-17およびB2-19は、コーティングされたSEMA4Aにより活性化されるLILRB2レポーター細胞におけるGFP発現を有効に遮断することが示された。
【
図4C】(
図4C)コーティングされたSEMA4Aにより誘導されるGFP発現に対するB2-7、B-15、B2-16、B2-17およびB2-19の用量依存的な阻害。B2-19、B2-16、B2-7、B2-15およびB2-17の遮断効力(IC
50)は、それぞれ167.1ng/ml、449ng/ml、701ng/ml、1001ng/mlおよび1034ng/mlであった。
【
図5】
図5A~C。抗体B2-7、B-15、B2-16、B2-17およびB2-19は、K562細胞上に過剰発現するHLA-Gにより活性化されるLILRB2レポーター細胞のGFPシグナル伝達を遮断する。(
図5A)代表的なフローサイトメトリープロファイルにより、K562細胞上に過剰発現するHLA-GはLILRB2レポーター細胞におけるGFP発現を刺激することが示された。(
図5B)代表的なフローサイトメトリープロファイルにより、B2-7、B-15、B2-16、B2-17およびB2-19は、K562細胞上に過剰発現するHLA-Gにより活性化されるLILRB2レポーター細胞におけるGFP発現を有効に遮断することが示された。(
図5C)
図5Bに示されるGFPパーセンテージの定量化。
【
図6A】
図6A~C。初代ヒト単球におけるLPS応答に対するLILRB2抗体の効果。(
図6A~B)代表的なフローサイトメトリープロファイルにより、CD33+単球にゲーティングされた細胞の表面CD86および細胞内TNFα染色が示された。PBMCを抗LILRB2抗体(10ng/ml)と48時間培養し、続いてブレフェルジンAの存在下で6時間のLPS刺激(50ng/ml)を行った。
【
図6C】(
図6C)変化倍率の定量化は、抗LILRB2処理試料におけるCD86およびTNFαの平均蛍光強度(MFI)の、
図6A~Bに示されるIgG処理試料におけるそれらの各々のMFIに対する比により定義した。MFI値は、CD33+単球にゲーティングされた細胞を表す。
【
図7A】
図7A~J。アンタゴニストLILRB2 mAbはC1498-LILRB2腫瘍保有モデルにおいて白血病細胞の発生を阻害する。(
図7A)マウスC1498親細胞およびヒトLILRB2レトロウイルス形質導入C1498細胞上のヒトLILRB2発現。
【
図7B】(
図7B)LILRB2は白血病保有マウスの死を促進する。LILRB2過剰発現または対照C1498細胞をi.v.注射(1×10
6細胞/マウス)されたヒト化NSGマウスのカプラン-マイヤー生存曲線。
【
図7C】(
図7C~D)LILRB2過剰発現または対照C1498細胞をi.v.注射(1×10
6細胞/マウス)されたC57BL/6からの骨髄(BM)、末梢血(PB)、肝臓(LV)および脾臓(SP)における代表的なフローサイトメトリープロットおよび白血病細胞浸潤の要約。
【
図7E】(
図7E)LILRB2過剰発現または対照C1498細胞をi.v.注射(1×10
6細胞/マウス)されたC57BL/6マウスのカプラン-マイヤー生存曲線。
【
図7F】(
図7F~G)LILRB2過剰発現または対照C1498細胞をi.v.注射(1×10
6細胞/マウス)されたC57BL/6からの末梢血(PB)における代表的なフローサイトメトリープロットおよび骨髄細胞浸潤の要約。
【
図7H】(
図7H~I)白血病細胞移植後のLALAPG変異型抗LILRB2抗体またはIgG対照の処置を用いたC56BL/6マウスからの末梢血(PB)における代表的なフローサイトメトリープロットおよび白血病細胞浸潤の要約。LILRB2過剰発現C1498細胞(1×10
6細胞/マウス)をC57BL/6マウスに注射し、続いてLALAPG Fc変異型抗LILRB2抗体またはLALAPG Fc変異型IgGを用いて処置した。末梢血(PB)からの白血病細胞(GFP+)のパーセンテージを移植の20日後にフローサイトメトリーにより決定した。
【
図7J】(
図7J)白血病細胞移植後の示されている時点にLALAPG変異型抗LILRB2抗体またはLALAPG Fc変異型IgG対照を用いて処置されたC56BL/6マウスからの末梢血(PB)における骨髄細胞浸潤の要約。
【
図8A】
図8A~F。アンタゴニストLILRB2 mAbはMLL-AF9白血病モデルにおいて白血病細胞の発生を阻害する。(
図8A)LILRB2(LILRB2)または対照(対照)白血病細胞を形質導入されたPIRB-KO MLL-AF9白血病細胞上のLILRB2の発現。
【
図8B】(
図8B~C)LILRB2(LILRB2)または対照PirB-KO MLL-AF9(対照)白血病細胞を形質導入されたPirB-KO MLL-AF9白血病細胞を移植されたC56BL/6マウスからの末梢血(PB)における代表的なフローサイトメトリープロットおよび白血病細胞浸潤の要約。
【
図8D】(
図8D)LILRB2過剰発現または対照PirB-KO MLL-AF9細胞を移植された白血病マウスのカプラン-マイヤー生存曲線。
【
図8E】(
図8E~F)PirB-KO LILRB2白血病細胞を移植され、続いてLALAPG変異型抗LILRB2抗体またはIgG対照で処置されたC56BL/6マウスからの末梢血(PB)における代表的なフローサイトメトリープロットおよび白血病細胞浸潤の要約。
【
図9】
図9A~G。抗LILRB2抗体はAML細胞の遊走および浸潤を阻害する。(
図9A)商用のフィコエリトリン(PE)-抗LILRB2抗体を使用してTHP-1細胞上のLILRB2発現を確認した。(
図9B)白血病移植後にLALAPG Fc変異型抗LILRB2抗体またはLALAPG Fc変異型IgG対照を用いて処置されたNSGマウスにおける白血病細胞の短期(20h)浸潤。THP-1細胞(1×10
7細胞/マウス)をNSGマウスに注射し、続いて直ちにLALAPG変異型IgG対照または抗LILRB2抗体を用いて処置した。移植の20時間後に骨髄(BM)、肝臓(LV)、および脾臓(SP)からの白血病細胞(GFP+)の数をフローサイトメトリーにより決定し、末梢血(PB)中の数に対して正規化した。(
図9C)THP-1注射後にLALAPG変異型抗LILRB2抗体またはIgG対照を用いて処置されたNSGマウスにおける移植後21日目における示されている臓器、例えば肝臓(LV)、骨髄(BM)、脾臓(SP)および末梢血(PB)中の白血病細胞(GFP+)のパーセンテージ。(
図9D)
図9Bに示される各マウスの体重を、THP-1細胞注射後の示されている日に測定した。(
図9E)THP-1移植の28日後の、IgGまたはLALAPG Fc変異を含有する抗LILRB2抗体で処置されたNSGマウスからの肝臓のサイズの比較。(
図9F)各々の個々のマウスの体重に対して正規化された
図9Eに示される肝臓重量の定量化。(
図9G)THP-1移植後にLALAPG Fc変異型IgG対照または抗LILRB2抗体を用いて処置されたNSGマウスの生存曲線。
【
図10】
図10A~E。アンタゴニストLILRB2 mAbは、患者由来異種移植片(PDX)モデルにおいて白血病細胞の発生を阻害する。(
図10A)AML M5患者からの初代白血病細胞上のLILRB2発現パターン。(
図10B)カプラン-マイアーログランク検定によるTCGAデータベース(https://xena.ucsc.edu)におけるLILRB2 mRNAレベルとAML-M5を有する患者(n=132、遺伝子発現に基づいて2群に分けた)の全生存期間との相関の分析。(
図10C)初代AML-M5白血病試料を移植され、抗LILRB2抗体または対照IgGを用いて処置されたNSGマウスの末梢血(PB)、骨髄(BM)、脾臓(SP)、および肝臓(LV)におけるヒトCD45
+CD33
+白血病細胞の浸潤。(
図10D)LALAPG変異型抗LILRB2抗体またはIgG対照の存在下で培養された初代AML-M5白血病細胞の代表的な明視野顕微鏡画像。抗LILRB2で処理された細胞は、より接着性の分化形態を示した。(
図10E)LALAPG変異型抗LILRB2抗体またはIgG対照の存在下で培養された初代AML-M5白血病細胞上のCD68の細胞内発現。
【
図11】
図11A~G。アンタゴニストLILRB2 mAbは、インビトロで骨髄由来抑制細胞(MDSC)のT細胞抑制機能を予防することができる。(
図11A)1つの代表的なヒストグラムにより、アンタゴニストLILRB2 mAbはCD8
+T細胞に対するMDSCの抑制機能を減弱することが示された。HLD-DR
bright細胞を枯渇させ、次にautoMACSを使用してCD14
+細胞を濃縮することにより、固形腫瘍を有する患者のPBMCからMDSCを単離した。細胞増殖をモニターするためにCSFEで予備染色されていた同じドナーからのT細胞とMDSCを共培養した(E:T=1)。10μg/mLのLALAPG変異型IgG、B2-7、またはB2-19を細胞培養物に加えた。CFSEシグナルの低減された強度により示される増殖性T細胞のパーセンテージを処理の5日後にフローサイトメトリーにより決定した。(
図11B)T細胞に対するMDSCの阻害機能に対する抗LILRB2 mAbの効果の定量化。CFSEシグナルの低減された強度により示される増殖性T細胞(左パネル:CD8
+T細胞、右パネルCD4
+T細胞)のパーセンテージを処理の5~7日後にフローサイトメトリーにより決定した。(
図11C)抗LILRB2 mAbは、T細胞培養物の上清中のIFN-γ分泌物を測定することによりアクセスされる、T細胞に対するMDSCの阻害機能を減弱した。(
図11D)抗LILRB2 mAbは、MDSC上のM2マクロファージマーカーの発現を減少させたと同時に、M1マクロファージマーカーの発現を増加させた。固形腫瘍を有する患者の末梢血から単離されたMDSCを10μg/mLの抗LILRB2抗体と7日間培養した。CD163、CD206およびCD86の発現をフローサイトメトリーにより分析した。(
図11E)抗LILRB2 mAbは、健常ドナーからの単球由来マクロファージ上のM2マーカーの発現を減少させたと同時に、M1マーカーの発現を増加させた。健常ドナーの末梢血から単離された単球を10μg/mLの抗LILRB2抗体と7日間培養およびインキュベートした。CD163、CD206およびCD86の発現をフローサイトメトリーにより分析した。(
図11F)抗LILRB2 mAbは、卵巣がんを有する患者からの腹水中の腫瘍関連マクロファージ/単球の細胞表面上のM2マーカーの発現を減少させたと同時に、M1マーカーの発現を増加させた。CD14
+細胞をautoMACSにより腹水から単離し、IgG4 Fcを有する抗LILRB2 mAbと7日間培養した。CD163、CD206およびCD86をフローサイトメトリーにより分析した。(
図11G)抗LILRB2 mAbは、固形腫瘍を有する4~5人の患者からのMDSCから分泌されるM1マクロファージサイトカインおよびケモカインを増加させた。
【
図12A】
図12A~B。ポジティブファージの抗体配列解析。(
図12A)重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)の系統樹。
【
図12B】(
図12B)24のポジティブファージのLILRB2に対するELISA結合。
【
図13】
図13A~B。LILRB2に対するELISA結合EC
50。(
図13A)LILRB2抗体のELISA結合曲線。(
図13B)LILRB2抗体の算出されたEC
50値。
【
図14A-1】
図14A~D。LILRB2抗体の結合特異性。(
図14A)LILRファミリーの他のメンバーの抗原に対するLILRB2抗体のELISA結合。
【
図15】LILRB2抗体のエピトープビニング。エピトープビニングをOctet RED 96 Systemにおいてサンドイッチフォーマットで行った。各抗体をプロテインAバイオセンサー上に第1の抗体としてロードした。非関連IgGでのバイオセンサーのブロッキング後に、LILRB2抗原を次に捕捉し、バイオセンサーを残りの他の抗体(第2の抗体)とさらにインキュベートした。「+」は、第1の抗体は第2の抗体のシグナルを遮断したことを示す。同じビンに属する抗体を異なる色で強調した。
【
図16】
図16A~D。抗体によるLILRB2上の結合ドメイン。(
図16A)Fc融合を伴う異なる切断型ECDタンパク質を示す模式図。(
図16B)精製された融合タンパク質のSDS-PAGE。(
図16C)異なる切断型タンパク質への抗体のELISA結合。(
図16D)抗体結合ドメインの要約。
【
図17-1】
図17A~F。D1およびD4上の鍵となる残基のマッピング。(
図17A~B)LILRB2およびLILRB1の(
図17A(SEQ ID NOS:593~595))D1および(
図17B(SEQ ID NOS:596~597))D4ドメインのアライメント。LILRB2とLILRB1との間で異なり、露出され、ループ領域中に位置する領域をボックスで囲っている。(
図17C~D)(
図17C(SEQ ID NOS:598~605))D1および(
図17D(SEQ ID NOS:606~613))D4ドメイン上の変異の配列。
【
図17-2】(
図17E~F)ELISAに基づく(
図17E)D1および(
図17F)D4ドメインの変異体に対する抗体の結合喪失。野生型B2-ECDと比べた各変異体との結合のパーセントを積み重ね棒グラフとしてプロットした。
【
図18】遮断抗体の親和性。抗体をプロテインAバイオセンサー上に捕捉させた。センサーを段階希釈されたLILRB2溶液中に300秒間浸漬して会合させ、次にキネティック緩衝液中に600秒間浸漬して解離させた。会合および解離曲線を青色の実線で示し、2つのフェーズを赤色の点線により分割している。
【
図19】
図19A~B。HEK293細胞において組換え製造されたヒトおよび非ヒト霊長動物(カニクイザル;cynomolgus monkey、cyno)LILRB2に対する抗体のELISA結合測定。(
図19A)ヒトLILRB2に対するELISA結合。(
図19B)カニクイザルLILRB2に対するELISA結合。マウスIgG2aのFcとのヒトLILRB2またはNHP-LILRB2の細胞外ドメイン(ECD)の融合タンパク質を使用してELISAプレートをコーティングし、グラフに示されているように異なる濃度で抗体をタイトレーションした。
【
図20】
図20A~B。フローサイトメトリーによるモノクローナル抗体による細胞表面LILRB2結合の測定。(
図20A)LILRB2レポーター細胞に対するモノクローナル抗体の結合能力の定量化。アロフィコシアニン(APC)ヤギ抗ヒトIgG二次抗体で標識されたLILRB2レポーター細胞におけるフローサイトメーターを使用してモノクローナル抗体をスクリーニングした。(
図20B)HCB2-5およびHCB2-10モノクローナル抗体はLILRB2レポーター細胞に高度に結合し、HCB2-2はLILRB2レポーター細胞に僅かに結合することを示す代表的なフローサイトメトリープロファイル。NC:非標識のレポーター細胞。ISO:APCにコンジュゲートしている二次Ab(抗ヒトFc特異的)のみとのレポーター細胞のインキュベート(ISO)。数はAPCまたはAF647の平均蛍光強度(MFI)を示す。
【
図21-1】細胞表面上に発現したカニクイザルLILRB2に結合するLILRB2抗体の検出。N末端FLAGタグを有する全長カニクイザルLILRB2を安定的に発現するHEK293細胞を使用してフローサイトメトリーにより抗体結合を検出した。黒線として示されるアイソタイプヒトIgG1を対照として使用し、ピンク色の実線ピークは、細胞表面上のカニクイザルLILRB2に対するLILRB2抗体の結合を示す。マウス抗Flagモノクローナル抗体をフローサイトメトリーによる検出のために使用した。
【
図22】固定化されたLILRB2抗体によるGFPレポーターシグナル伝達の関与の決定。NC、陰性対照およびアイソタイプ対照用のIgG。
【
図23】
図23A~B。K562細胞の存在下または非存在下でのLILRB2レポーター細胞におけるGFPシグナル伝達への可溶性抗体の関与の判定。(
図23A)可溶性抗体とインキュベートされたLILRB2レポーター細胞のGFPシグナル伝達。(
図23B)K562と組み合わせて可溶性抗体とインキュベートされたLILRB2レポーター細胞のGFPシグナル伝達。
【
図24】
図24A~B。LILRB2モノクローナル抗体によるLILRB2の特異的結合。(
図24A)陽性対照mAb(POS)のみがLILRAレポーター細胞(RC)に結合し、LILRB2 mAbはそうではないことを示す代表的なフローサイトメトリープロファイル。(
図24B)LILRB2 mAbはLILRB2発現レポーター細胞に結合するが、LILRBおよびLAIR1を発現するレポーター細胞には結合しないことを示す代表的なフローサイトメトリープロファイル。陽性対照mAb(POS)の結合は各受容体の発現レベルを実証する。アロフィコシアニン(APC)標識ヤギ抗ヒトIgG Fc特異的二次抗体を使用してLILRA、LILRBまたはLAIR1発現レポーター細胞におけるフローサイトメトリーを使用してLILRB2モノクローナル抗体の結合を検出した。Non:非染色レポーター細胞。NEG:二次Abのみとインキュベートされた細胞。POS:各々のLILまたはLAIR-1受容体に対するAPCまたはAF647にコンジュゲートしている商用の抗体とインキュベートされた細胞。数はAPCまたはAF647の平均蛍光強度(MFI)を示す。
【
図25】
図25A~B。K562細胞上に過剰発現するHLA-Gにより活性化されるLILRB2レポーター細胞のGFPシグナル伝達においてアッセイされたLILRB2抗体の遮断活性。(
図25A)代表的なフローサイトメトリープロファイルにより、K562細胞上に過剰発現するHLA-GはLILRB2レポーター細胞のGFP誘導を刺激することが示された。(
図25B)代表的なフローサイトメトリープロファイルにより、HCB2-5およびHCB2-10は、HLA-G過剰発現K562細胞により活性化されるLILRB2レポーター細胞のGFPシグナル伝達を有効に遮断することが示された。IgG、アイソタイプ対照。
【
図26】
図26A~C。コーティングされたANGPTL2により活性化されるLILRB2レポーター細胞のGFPシグナル伝達においてアッセイされたLILRB2抗体の遮断活性。(
図26A)代表的なフローサイトメトリープロファイルにより、HCB2-5およびHCB2-10は、コーティングされたANGPTL2により活性化されるLILRB2レポーター細胞のGFPシグナル伝達を有効に遮断することが示された。(
図26B)
図26Aに示されるGFPパーセンテージの定量化。(
図26C)コーティングされたANGPTL2により誘導されるGFPシグナル伝達に対するHCB2-5およびHCB2-10の用量依存的な阻害能力。
【
図27】
図27A~C。コーティングされたSEMA4Aにより活性化されるLILRB2レポーター細胞のGFPシグナル伝達においてアッセイされたHCB2-5およびHCB2-10の遮断活性。(
図27A)代表的なフローサイトメトリープロファイルにより、HCB2-5およびHCB2-10は、コーティングされたSEMA4Aにより活性化されるLILRB2レポーター細胞のGFPシグナル伝達を有効に遮断することが示された。(
図27B)
図27Aに示されるGFPパーセンテージの定量化。(
図27C)コーティングされたSEMA4Aにより誘導されるGFPシグナル伝達に対するHCB2-5およびHCB2-10の用量依存的な阻害能力。
【
図29】細胞表面上にLILRファミリータンパク質のエクトドメインを発現するレポーター細胞株上のLILRB2抗体の結合。結合した抗体を、AF647にコンジュゲートしている抗ヒトFc特異的二次抗体(第2のAb)で検出した。AF647またはAPCに直接的にコンジュゲートしている商業的に入手可能な抗体(Ctl+Ab)を使用して各LILRの発現を確認した。全てのインキュベーションは4℃で30分間行った。示したデータは、フローサイトメーターにおける試料取得後の平均蛍光強度である。
【
図30】健常ドナーから収穫されたヒト全血からの白血球上のLILRB2抗体の結合。LILRB2抗体をAF647と直接的にコンジュゲートさせた。文献(Hensley et al.,J Vis Exp 2012;67:4302)において入手可能なプロトコールにしたがって、100マイクロリットルの全血を細胞表面マーカー用の抗体およびLILRB2抗体とインキュベートした。示したデータは、フローサイトメーター(BD FACS Celesta)における試料取得後の、LILRB2抗体が省略された染色試料のバックグラウンド蛍光を引いた平均化された幾何平均蛍光強度±平均の標準誤差(s.e.m.、N=2ドナー)である。
【
図31】全長ヒトLILRB2を安定的に発現するHEK293上のLILRB2抗体の結合。5万個の細胞を100μLの最終体積中のLILRB2抗体の希釈系列(40~0.0006μg/mL)とインキュベートした。結合した抗体を、AF647にコンジュゲートしている抗ヒトFc特異的二次抗体で検出した。全てのインキュベーションは4℃で30分間行った。示したデータは、フローサイトメーター(BD FACS Celesta)における試料取得(二連)後の、二次抗体のみとインキュベートされた試料のバックグラウンド蛍光を引いた平均化された幾何平均蛍光強度±平均の標準誤差(s.e.m.)である。
【
図32】健常ドナーからのヒトPBMCから単離されたCD14
+CD16
-単球上のLILRB2抗体の結合。5万個の細胞を100μLの最終体積中のAF647に直接的にコンジュゲートしているLILRB2抗体の希釈系列(40~0.0006μg/mL)と4℃で30分間インキュベートした。示したデータは、1人のドナーからのフローサイトメーター(BD FACS Celesta)において取得された二連の試料からの蛍光強度の平均化された幾何平均であり、異なるドナーから単離された細胞を用いた2つの実験の代表である。
【
図33】競合LILRB2抗体の希釈系列(40~0.0098μg/mL)の存在下での全長LILRB2を安定的に発現するHEK293細胞上のHLA-G-His(5μg/mL)結合の阻害。結合したHLA-Gを、APCに直接的にコンジュゲートしている抗His抗体を使用してフローサイトメトリーにより検出した。全てのインキュベーションは4℃で30分間行った。示したデータは、フローサイトメーター(BD FACS Celesta)において取得された二連の試料からの蛍光強度の平均化された幾何平均±平均の標準誤差(s.e.m.)である。
【
図34】競合LILRB2抗体の希釈系列(40~0.0098μg/mL)の存在下でのHEK293_LILRB2細胞上のSEMA4A-hFc-AF647(5μg/mL)結合の阻害。インキュベーションは4℃で30分間行った。示したデータは、フローサイトメーター(BD FACS Celesta)において取得された二連の試料からの蛍光強度の平均化された幾何平均±平均の標準誤差(s.e.m.)である。
【
図35】50ng/mLのLPSで刺激されたPBMCにより分泌されたTNF-αのレベルに対するLILRB2遮断抗体の効果。示したデータは2人のドナーからのものであり、6人のドナーから(計N=6ドナーから)の代表である。健常ドナーから単離されたPBMCをLPS(Sigma-Aldrich)および様々な濃度の抗体と3日間インキュベート(二連)した。Human Cytokine Premixed Magnetic Luminex Performance Assayを使用して培養培地上清中のサイトカインを測定した。
【
図36】50ng/mLのLPSで刺激されたPBMCにより分泌されたIFN-γのレベルに対するLILRB2遮断抗体の効果。示したデータは2人のドナーからのものであり、5人のドナーから(計N=6ドナーから)の代表である。健常ドナーから単離されたPBMCをLPS(Sigma-Aldrich)および様々な濃度の抗体と3日間インキュベート(二連)した。Human Cytokine Premixed Magnetic Luminex Performance Assayを使用して培養培地上清中のサイトカインを測定した。
【
図37】(計N=3ドナーからの)50ng/mLのLPSで刺激されたPBMCにより分泌されたIL-12p40のレベルに対するLILRB2遮断抗体(40μg/mL)の効果。健常ドナーから単離されたPBMCをLPS(Sigma-Aldrich)および40μg/mLのB2-19抗体と3日間インキュベート(二連)した。ヒトIL-12 ELISAアッセイ(BD Biosciences)を使用して培養培地上清中のIL-12p40濃度を測定した。
【
図38】10ng/mLの抗CD3活性化抗体HIT3aで刺激されたPBMCにより分泌されたIFN-γのレベルに対するLILRB2遮断抗体の効果。示したデータは2人のドナーからのものであり、6人のドナーから(計N=6ドナーから)の代表である。健常ドナーから単離されたPBMCをHIT3a(Biolegend)および様々な濃度の抗体と3日間インキュベート(二連)した。Human Cytokine Premixed Magnetic Luminex Performance Assayを使用して培養培地上清中のサイトカインを測定した。
【
図39】10ng/mLの抗CD3活性化抗体HIT3aで刺激されたPBMCにより分泌されたTNF-αのレベルに対するLILRB2遮断抗体の効果。示したデータは2人のドナーからのものであり、6人のドナーから(計N=6ドナーから)の代表である。健常ドナーから単離されたPBMCをHIT3a(Biolegend)および様々な濃度の抗体と3日間インキュベート(二連)した。Human Cytokine Premixed Magnetic Luminex Performance Assayを使用して培養培地上清中のサイトカインを測定した。
【
図40】10ng/mLの抗CD3活性化抗体HIT3aで刺激されたPBMCにより分泌されたGM-CSFのレベルに対するLILRB2遮断抗体の効果。示したデータは2人のドナーからのものであり、6人のドナーから(計N=6ドナーから)の代表である。健常ドナーから単離されたPBMCをHIT3a(Biolegend)および様々な濃度の抗体と3日間インキュベート(二連)した。Human Cytokine Premixed Magnetic Luminex Performance Assayを使用して培養培地上清中のサイトカインを測定した。
【
図41】10ng/mLの抗CD3活性化抗体HIT3aで刺激されたPBMCにより分泌されたIL-1αのレベルに対するLILRB2遮断抗体の効果。示したデータは2人のドナーからのものであり、6人のドナーから(計N=6ドナーから)の代表である。健常ドナーから単離されたPBMCをHIT3a(Biolegend)および様々な濃度の抗体と3日間インキュベート(二連)した。Human Cytokine Premixed Magnetic Luminex Performance Assayを使用して培養培地上清中のサイトカインを測定した。
【
図42】10ng/mLの抗CD3活性化抗体HIT3aで刺激されたPBMCにより分泌されたIL-1βのレベルに対するLILRB2遮断抗体の効果。示したデータは2人のドナーからのものであり、6人のドナーから(計N=6ドナーから)の代表である。健常ドナーから単離されたPBMCをHIT3a(Biolegend)および様々な濃度の抗体と3日間インキュベート(二連)した。Human Cytokine Premixed Magnetic Luminex Performance Assayを使用して培養培地上清中のサイトカインを測定した。
【
図43】10ng/mLの抗CD3活性化抗体HIT3aで刺激されたPBMCにより分泌されたIL-6のレベルに対するLILRB2遮断抗体の効果。示したデータは2人のドナーからのものであり、5人のドナーから(計N=6ドナーから)の代表である。健常ドナーから単離されたPBMCをHIT3a(Biolegend)および様々な濃度の抗体と3日間インキュベート(二連)した。Human Cytokine Premixed Magnetic Luminex Performance Assayを使用して培養培地上清中のサイトカインを測定した。
【
図44】10ng/mLの抗CD3活性化抗体HIT3aで刺激されたPBMCにより分泌されたCXCL2のレベルに対するLILRB2遮断抗体の効果。示したデータは2人のドナーからのものであり、6人のドナーから(計N=6ドナーから)の代表である。健常ドナーから単離されたPBMCをHIT3a(Biolegend)および様々な濃度の抗体と3日間インキュベート(二連)した。Human Cytokine Premixed Magnetic Luminex Performance Assayを使用して培養培地上清中のサイトカインを測定した。
【
図45】単球由来マクロファージ細胞表面マーカーに対する10μg/mLのB2-19抗体の効果。健常ドナーからのヒトPBMCから単離されたCD14
+CD16
-単球を100ng/mLのヒトCSF-1の存在下で6日間マクロファージに分化させ、続いて100ng/mLのヒトCSF-1、20ng/mLのヒトIL-4およびB2-19抗体またはアイソタイプ対照と24時間インキュベートした。細胞を剥離し、標準的なプロトコールを使用してフローサイトメトリー分析(FACS Celesta)のために染色した。示したデータは、アイソタイプ対照で処理された細胞に対するB2-19で処理された細胞についての幾何平均蛍光強度(MFI)の変化倍率である。
【
図46】CD8
+T細胞上のCD25の細胞表面発現に対する40μg/mLのB2-19抗体の効果。健常ドナーから単離されたPBMCを10ng/mLのHIT3a(Biolegend)および40μg/mLのB2-19抗体と3日間インキュベートした。CD8
+T細胞を、標準的なプロトコールを使用してフローサイトメトリー分析(FACS Celesta)により細胞表面CD25発現について分析した。示したデータは、アイソタイプ対照で処理された細胞に対するB2-19で処理された細胞についての幾何平均蛍光強度(MFI)における変化のパーセントである。
【
図47】B2-19抗体は、IL-10で2日間処理(寛容原性DCを誘導するため)された未熟なDCにおいてサイトカインおよびケモカインの産生を増強する。各線は異なるドナーからの結果を表す。
【
図48】いくつかの細胞表面マーカーの発現における変化により立証されるように、B2-19抗体は、LPSで処理されたDCの炎症促進性表現型を増強した。各線は異なるドナーからの結果を表す。
【
図49】B2-19抗体は、C57BL/6J野生型マウスにおいて5mg/kgで投薬されたヒトIgG4の予想される薬物動態プロファイル(CLおよび半減期)を示す。
【
図50】
図50A~B。(
図50A)B2-19抗体単剤療法は、SK-MEL-5黒色腫細胞株を異種移植したヒト化NSG-SGM3マウスにおいて腫瘍成長速度を低減させる。(
図50B)B2-19抗体単剤療法は、SK-MEL-5黒色腫細胞株を異種移植したヒト化NSG-SGM3マウスにおいて腫瘍成長阻害を引き起こす。
【
図51】代表的なフローサイトメトリープロファイルにより、コーティングされたヒトANGPTL2(hANGPLT2)およびマウスAngptl2(mAngptl2)は、LILRB2レポーター細胞におけるGFP発現を刺激し、B2-19は、コーティングされたhANGPLT2およびmAngptl2により活性化されるLILRB2レポーター細胞におけるGFP発現を有効に遮断することが示された。
【
図52】代表的なフローサイトメトリープロファイルにより、コーティングされたヒトCD1d(hCD1d)およびマウスCD1d(mCD1d)は、LILRB2レポーター細胞におけるGFP発現を刺激し、B2-19は、コーティングされたhCD1dおよびmCD1dにより活性化されるLILRB2レポーター細胞におけるGFP発現を有効に遮断することが示された。
【発明を実施するための形態】
【0039】
例示的な態様の説明
LILRB2は先天免疫および適応免疫の両方の調節において不可欠な役割を果たすことを本発明者らは決定した。LILRB2は、いくつかの種類の免疫細胞、例えば通常の単球、樹状細胞、顆粒球、および骨髄由来抑制細胞(MDSC)上に発現する。本発明者らは、がんおよび自己免疫疾患の治療のために使用することができる、LILRB2タンパク質を認識する一群の新規のモノクローナル抗体を単離した。この一群の抗LILRB2抗体内には、LILRB2シグナル伝達のアンタゴニストおよびアゴニストの例がある。
【0040】
本開示の以下の説明は、単に本開示の様々な態様を説明することを意図している。そのため、議論される特定の改良は本開示の範囲を限定するものと解されてはならない。本開示の範囲から離れることなく様々な均等、変更、および改良を行ってもよいことは当業者に明らかであり、そのような同等の態様は本発明に包含されることが理解される。刊行物、特許および特許出願を含む本明細書において引用されている全ての参照文献は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。
【0041】
I. 定義
以上の概要および以下の詳細な説明の両方は例示的および説明的なものに過ぎず、特許請求の範囲の発明を限定するものではないことが理解されるべきである。本出願において、単数形の使用は、そうでないことが具体的に記載されていない限り、複数形を包含する。本出願において、「または」の使用は、そうでないことが記載されていない限り、「および/または」を意味する。さらには、「含む」(including)の他に、「含む」(includes)および「含まれる」(included)などの他の形態の用語の使用は、限定的なものではない。また、「構成要素」または「成分」などの用語は、そうでないことが具体的に記載されていない限り、1つのユニットを含む構成要素および成分ならびに1つより多くのサブユニットを含む構成要素および成分の両方を包含する。また、「部分」(portion)という用語の使用は、部分(moiety)の一部または部分(moiety)全体を含むことができる。
【0042】
本明細書において、単数形「a」、「an」および「the」は、そうではないことを文脈が明記していない限り、複数への言及を含む。
【0043】
量、時間的期間などの測定可能な値を指すときに本明細書において使用される「約」という用語は、特定された値から±10%までのバリエーションを包含することを、意図している。別のことが示されていない限り、本明細書および特許請求の範囲において使用される成分の量、分子量などの特性、反応条件などを表す全ての数は、全ての場合に「約」という用語により修飾されているものと理解されるべきである。したがって、そうでないことが示されていない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載されている数値的パラメーターは、開示される主題により得ようとする所望の特性に応じて変化し得るおおよそのものである。少なくとも、そして特許請求の範囲への均等論の適用を制限しようとするものではなく、各数値パラメーターは、少なくとも、報告された有効数字の数に照らしておよび通常の丸めの技術を適用することにより解されるべきである。発明の広範な範囲を記載する数値範囲およびパラメーターはおおよそのものであるが、特定の例に記載されている数値は可能な限り精密に報告されている。しかしながら、任意の数値は、それらの各々の試験測定に見られる標準偏差の結果として必然的にもたらされるいくらかの誤差を本質的に含有する。
【0044】
「抗体」という用語は、任意のアイソタイプのインタクトな免疫グロブリン、または標的抗原への特異的結合についてインタクトな抗体と競合できるその断片を指し、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、および二重特異性抗体を含む。「抗体」は、抗原結合タンパク質の一種である。インタクトな抗体は、一般に、少なくとも2つの全長重鎖および2つの全長軽鎖を含むが、いくつかの例では、重鎖のみを含むことができるラクダ科動物において天然に存在する抗体など、より少ない鎖を含むことができる。抗体は、単一の供給源のみに由来してもよいし、または「キメラ」であってもよい、すなわち、以下にさらに記載されているように、抗体の異なる部分が2つの異なる抗体に由来してもよい。抗原結合タンパク質、抗体、または結合断片は、ハイブリドーマにおいて、組換えDNA技術により、またはインタクトな抗体の酵素もしくは化学分解により製造することができる。別のことが示されていない限り、「抗体」という用語は、2つの全長重鎖および2つの全長軽鎖を含む抗体に加えて、その誘導体、バリアント、断片、およびムテインを含み、これらの例は以下に記載されている。さらには、明示的に除外されていない限り、抗体は、それぞれ、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、ミニボディ、ドメイン抗体、合成抗体(本明細書において「抗体模倣物」と称されることがある)、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体融合物(本明細書において「抗体コンジュゲート」と称されることがある)、およびこれらの断片を含む。いくつかの態様において、当該用語はまた、ペプチボディを包含する。
【0045】
天然の抗体構造単位は、典型的には、四量体を含む。それぞれのそのような四量体は、典型的には、2つの同一のポリペプチド鎖の対から構成され、各対は1つの全長「軽」鎖(ある特定の態様において、約25kDa)および1つの全長「重」鎖(ある特定の態様において、約50~70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、典型的には、約100~110個またはそれより多くのアミノ酸からなる可変領域を含み、これは典型的に抗原認識に関与する。各鎖のカルボキシ末端部分は、典型的には、エフェクター機能に関与できる定常領域を画定する。ヒト軽鎖は、典型的には、κおよびλ軽鎖として分類される。重鎖は、典型的には、μ、δ、γ、α、またはεとして分類され、それぞれ、IgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEとして抗体のアイソタイプを画定する。IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含むがこれらに限定されないいくつかのサブクラスを有する。IgMは、IgM1およびIgM2を含むがこれらに限定されないサブクラスを有する。IgAは同様に、IgA1およびIgA2を含むがこれらに限定されないサブクラスにさらに分割される。全長軽鎖および重鎖内で、可変領域と定常領域は、典型的には約12個またはそれより多くのアミノ酸からなる「J」領域により連結され、重鎖は、約10個のさらなるアミノ酸からなる「D」領域も含む。例えば、Fundamental Immunology, Ch.7(Paul, W., ed., 2nd ed. Raven Press, N.Y.(1989))を参照されたい(参照によりその全体が全ての目的のために組み入れられる)。各軽鎖/重鎖可変領域対は、典型的には、抗原結合部位を形成する。
【0046】
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、典型的には、重鎖におけるアミノ末端のおおよそ120~130アミノ酸および軽鎖におけるアミノ末端の約100~110アミノ酸を含む、抗体の軽鎖および/または重鎖の一部分を指す。ある特定の態様において、異なる抗体の可変領域は、同じ種の抗体の間でさえもアミノ酸配列が大幅に異なる。抗体の可変領域は、典型的には、特定の抗体のその標的についての特異性を決定する。
【0047】
可変領域は、典型的には、比較的保存されたフレームワーク領域(FR)が、相補性決定領域またはCDRとも呼ばれる3つの超可変領域により連結された、同じ一般構造を呈する。各ペアの2つの鎖のCDRは、典型的には、フレームワーク領域により位置合わせされ、特定のエピトープへの結合を可能とすることができる。軽鎖および重鎖可変領域の両方は、N末端からC末端に向かって、典型的には、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4のドメインを含む。各ドメインへのアミノ酸の割当ては、典型的には、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health, Bethesda, Md.(1987 and 1991))、Chothia&Lesk, J. Mol. Biol, 196:901-917(1987)またはChothia et al, Nature, 342:878-883(1989)の定義にしたがって為される。
【0048】
ある特定の態様において、抗体重鎖は、抗体軽鎖の非存在下で抗原に結合する。ある特定の態様において、抗体軽鎖は、抗体重鎖の非存在下で抗原に結合する。ある特定の態様において、抗体の結合領域は、抗体軽鎖の非存在下で抗原に結合する。ある特定の態様において、抗体の結合領域は、抗体重鎖の非存在下で抗原に結合する。ある特定の態様において、個々の可変領域は、他の可変領域の非存在下で抗原に特異的に結合する。
【0049】
ある特定の態様において、CDRの確定的記述および抗体の結合部位を構成する残基の同定は、抗体の構造の解明および/または抗体-リガンド複合体の構造の解明により達成される。ある特定の態様において、それは、当業者に公知の様々な技術のいずれか、例えばX線結晶構造解析法により達成することができる。ある特定の態様において、様々な解析方法を用いてCDR領域を同定するかまたは概ね決定することができる。そのような方法の例としては、Kabatの定義、Chothiaの定義、AbMの定義、およびcontactの定義が挙げられるがこれらに限定されない。
【0050】
Kabatの定義は、抗体における残基をナンバリングするための標準であり、典型的にはCDR領域を同定するために使用される。例えば、Johnson&Wu, Nucleic Acids Res., 28:214-8(2000)を参照されたい。Chothiaの定義はKabatの定義と類似するが、Chothiaの定義は、ある特定の構造的ループ領域の位置を考慮に入れる。例えば、Chothia et al, J. Mol. Biol, 196:901-17(1986); Chothia et al., Nature, 342:877-83(1989)を参照されたい。AbMの定義は、抗体構造をモデル化するOxford Molecular Groupにより製造された統合された一連のコンピュータープログラムを使用する。例えば、Martin et al, Proc Natl Acad Sci(USA), 86:9268-9272(1989); 「AbM(商標), A Computer Program for Modeling Variable Regions of Antibodies,」Oxford, UK; Oxford Molecular, Ltd.を参照されたい。AbMの定義は、Samudrala et al,「Ab Initio Protein Structure Prediction Using a Combined Hierarchical Approach,」in PROTEINS, Structure, Function and Genetics Suppl, 3:194-198(1999)に記載されているように、ナレッジデータベースとアブイニシオ法との組合せを使用して一次配列から抗体の三次構造をモデル化する。contactの定義は、利用可能な複合体結晶構造の解析に基づく。例えば、MacCallum et al, J. Mol. Biol, 5:732-45(1996)を参照されたい。
【0051】
慣習により、重鎖におけるCDR領域は典型的にはH1、H2、およびH3と称され、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に順次ナンバリングされる。軽鎖におけるCDR領域は典型的にはL1、L2、およびL3と称され、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に順次ナンバリングされる。
【0052】
「軽鎖」という用語は、全長軽鎖、および結合特異性を付与するのに充分な可変領域配列を有するその断片を含む。全長軽鎖は、可変領域ドメインVLと、定常領域ドメインCLとを含む。軽鎖の可変領域ドメインは、ポリペプチドのアミノ末端にある。軽鎖は、κ鎖およびλ鎖を含む。
【0053】
「重鎖」という用語は、全長重鎖、および結合特異性を付与するのに充分な可変領域配列を有するその断片を含む。全長重鎖は、可変領域ドメインVHと、3つの定常領域ドメインCH1、CH2、およびCH3とを含む。VHドメインはポリペプチドのアミノ末端にあり、CHドメインはカルボキシル末端にあり、CH3がポリペプチドのカルボキシ末端に最も近い。重鎖は、IgG(IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4サブタイプを含む)、IgA(IgA1およびIgA2サブタイプを含む)、IgM、およびIgEを含むいずれのアイソタイプであってもよい。
【0054】
二重特異性抗体または二機能性抗体は、典型的には、2つの異なる重鎖/軽鎖対および2つの異なる結合部位を有する人工ハイブリッド抗体である。二重特異性抗体は、ハイブリドーマの融合またはFab'断片の連結が挙げられるがこれらに限定されない様々な方法により製造されることができる。例えば、Songsivilai et al, Clin. Exp. Immunol, 79:315-321(1990); Kostelny et al., J. Immunol, 148:1547-1553(1992)を参照されたい。
【0055】
「抗原」という用語は、適応免疫応答を誘導できる物質を指す。具体的には、抗原は、適応免疫応答の受容体の標的として働く物質である。典型的には、抗原は、それ自体では身体中の免疫応答を誘導できない抗原特異的受容体に結合する分子である。抗原は、通常、タンパク質および多糖であり、頻度はより低いが脂質のこともある。好適な抗原としては、細菌(外膜、カプセル、細胞壁、鞭毛、線毛(fimbrai)、および毒素)、ウイルス、ならびに他の微生物の一部分が非限定的に挙げられる。抗原としては、腫瘍抗原、例えば、腫瘍における変異により生成される抗原も挙げられる。本明細書において使用される場合、抗原としては、免疫原およびハプテンも挙げられる
【0056】
本明細書において使用される「抗原結合タンパク質」(「ABP」)は、特定の標的抗原に結合する任意のタンパク質を意味する。本願において、当該特定の標的は、LILRBタンパク質またはその断片である。「抗原結合タンパク質」としては、抗体およびその抗原結合断片が非限定的に挙げられる。ペプチボディは抗原結合タンパク質の別の例である。
【0057】
本明細書において使用される「抗原結合断片」という用語は、抗原に特異的に結合できるタンパク質の一部分を指す。ある特定の態様において、抗原結合断片は、抗原に結合するがインタクトな天然抗体構造を含まない1つもしくは複数のCDRを含む抗体または任意の他の抗体断片に由来する。特定の態様において、抗原結合断片は、抗体に由来せず、受容体に由来する。抗原結合断片の例としては、ダイアボディ、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv断片、ジスルフィド安定化Fv断片(dsFv)、(dsFv)2、二重特異性dsFv(dsFv-dsFv')、ジスルフィド安定化ダイアボディ(dsダイアボディ)、一本鎖抗体分子(scFv)、scFv二量体(二価ダイアボディ)、多重特異性抗体、単一ドメイン抗体(sdAb)、ラクダ科動物抗体またはナノボディ、ドメイン抗体、および二価ドメイン抗体が非限定的に挙げられる。ある特定の態様において、抗原結合断片は、親抗体が結合するのと同じ抗原に結合することができる。ある特定の態様において、抗原結合断片は、1つまたは複数の異なるヒト抗体に由来するフレームワーク領域にグラフトされた、特定のヒト抗体に由来する1つまたは複数のCDRを含んでもよい。特定の態様において、抗原結合断片は、受容体に由来し、1つまたは複数の変異を含有する。特定の態様において、抗原結合断片は、当該抗原結合断片が由来する受容体の天然のリガンドには結合しない。
【0058】
「Fab断片」は、1つの軽鎖ならびに1つの重鎖のCH1および可変領域を含む。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成することができない。
【0059】
「Fab'断片」は、1つの軽鎖ならびにVHドメインおよびCH1ドメインを含有し、かつCH1ドメインとCH2ドメインとの間の領域も含有する1つの重鎖の部分を含み、それにより2つのFab'断片の2つの重鎖の間に鎖間ジスルフィド結合を形成してF(ab')2分子を形成することができる。
【0060】
「F(ab')2断片」は、2つの軽鎖ならびにCH1ドメインとCH2ドメインとの間の定常領域の部分を含有する2つの重鎖を含有し、それにより鎖間ジスルフィド結合が2つの重鎖の間に形成されている。F(ab')2断片は、したがって、2つの重鎖間のジスルフィド結合により一緒に保持された2つのFab'断片から構成される。
【0061】
「Fc」領域は、抗体のCH1およびCH2ドメインを含む2つの重鎖断片を含む。2つの重鎖断片は、2つ以上のジスルフィド結合およびCH3ドメインの疎水性相互作用により一緒に保持される。
【0062】
「Fv領域」は、重鎖および軽鎖の両方の可変領域を含むが、定常領域を欠いている。
【0063】
「一本鎖抗体」は、重鎖および軽鎖可変領域がフレキシブルリンカーにより接続されて単一のポリペプチド鎖を形成し、それが抗原結合領域を形成する、Fv分子である。一本鎖抗体は、国際特許出願公開WO88/01649および米国特許第4,946,778号および同第5,260,203号にて詳細に議論されており、これらの開示は参照により組み入れられる。
【0064】
「ドメイン抗体」は、重鎖の可変領域または軽鎖の可変領域のみを含有する免疫学的に機能的な免疫グロブリン断片である。いくつかの例では、2つ以上のVH領域がペプチドリンカーにより共有結合的に連結されて、二価ドメイン抗体を作出する。二価ドメイン抗体の2つのVH領域は、同じまたは異なる抗原を標的とすることができる。
【0065】
「二価抗原結合タンパク質」または「二価抗体」は、2つの抗原結合部位を含む。いくつかの例では、2つの結合部位は同じ抗原特異性を有する。二価抗原結合タンパク質および二価抗体は二重特異性であることができる。以下を参照されたい。「多重特異性」または「多機能性」抗体以外の二価抗体は、ある特定の態様において、典型的には、同一の結合部位のそれぞれを有するものと理解される。
【0066】
「多重特異性抗原結合タンパク質」または「多重特異性抗体」は、1つより多くの抗原またはエピトープを標的とするものである。
【0067】
「二重特異性(bispecific)」、「二重特異性(dual-specific)」または「二機能性」の抗原結合タンパク質または抗体は、それぞれが2つの異なる抗原結合部位を有するハイブリッド抗原結合タンパク質または抗体である。二重特異性抗原結合タンパク質および抗体は、多重特異性抗原結合タンパク質抗体の一種であり、ハイブリドーマの融合またはFab'断片の連結が挙げられるがこれらに限定されない様々な方法により製造されることができる。例えば、Songsivilai and Lachmann, 1990, Clin. Exp. Immunol.79:315-321; Kostelny et al, 1992, J. Immunol.148:1547-1553を参照されたい。二重特異性抗原結合タンパク質または抗体の2つの結合部位は、同じまたは異なるタンパク質標的上に存在できる2つの異なるエピトープに結合する。
【0068】
「結合親和性」は、一般に、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との非共有結合性相互作用の総計の強度を指す。別のことが示されていない限り、本明細書において使用される場合、「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば、抗体および抗原)間の1:1の相互作用を反映した内在性の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYについての親和性は、一般に、解離定数(Kd)により表すことができる。親和性は、本明細書に記載されている方法などの、当技術分野において公知の一般的な方法により測定することができる。低親和性抗体は、一般に、抗原にゆっくり結合し、かつ容易に解離する傾向がある一方、高親和性抗体は、一般に、より速く抗原に結合し、かつより長く結合したままとなる傾向がある。結合親和性を測定する様々な方法が当技術分野において公知であり、それらのいずれも本発明の目的のために使用することができる。結合親和性を測定するための特定の説明的および例示的な態様は以下に記載されている。
【0069】
特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド上のエピトープに「特異的に結合する」または「特異的な」抗体は、あらゆる他のポリペプチドまたはポリペプチドエピトープに実質的に結合することなく、その特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド上のエピトープに結合する抗体である。例えば、本発明のLILRB2特異的抗体はLILRB2に特異的である。いくつかの態様において、LILRB2に結合する抗体は、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(例えば10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。本明細書において使用される解離定数Kdは、表面プラズモン共鳴法、マイクロスケール熱泳動法、HPLC-MS法およびフローサイトメトリー(例えばFACS)法を含むがこれらに限定されない当技術分野において公知の任意の従来の方法を使用して決定され得る、会合速度に対する解離速度の比(koff/kon)を指す。ある特定の態様において、Kd値は、フローサイトメトリーを使用することにより適切に決定され得る。
【0070】
同じエピトープについて競合する抗原結合タンパク質(例えば、抗体またはその抗原結合断片)の文脈において使用される場合の「競合する」という用語は、試験されている抗原結合タンパク質(例えば、抗体またはその抗原結合断片)が共通の抗原(例えば、LILRBまたはその断片)への参照抗原結合タンパク質(例えば、リガンドまたは参照抗体)の特異的結合を防止または阻害する(例えば、低減させる)アッセイにより決定される抗原結合タンパク質間の競合を意味する。ある抗原結合タンパク質が別の抗原結合タンパク質と競合するかどうかを決定するために多種類の競合結合アッセイを使用することができ、例えば、固相直接または間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接または間接酵素免疫測定法(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(例えば、Stahli et al., 1983, Methods in Enzymology 9:242-253を参照); 固相直接ビオチン-アビジンEIA(例えば、Kirkland et al., 1986, J. Immunol.137:3614-3619を参照)固相直接標識アッセイ、固相直接標識サンドイッチアッセイ(例えば、Harlow and Lane, 1988, Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Pressを参照); 1~125個の標識を使用する固相直接標識RIA(例えば、Morel et al, 1988, Molec. Immunol.25:7-15を参照); 固相直接ビオチン-アビジンEIA(例えば、Cheung, et al, 1990, Virology 176:546-552を参照); および直接標識RIA(Moldenhauer et al, 1990, Scand. J. Immunol.32:77-82)がある。典型的には、そのようなアッセイは、これらの非標識試験抗原結合タンパク質と標識参照抗原結合タンパク質のいずれかを有する、固体表面または細胞に結合した精製抗原の使用を伴う。競合阻害は、試験抗原結合タンパク質の存在下で固体表面または細胞に結合した標識の量を決定することにより測定される。通常、試験抗原結合タンパク質は過剰に存在する。競合アッセイにより同定される抗原結合タンパク質(競合抗原結合タンパク質)としては、参照抗原結合タンパク質と同じエピトープに結合する抗原結合タンパク質および立体障害が起こるように参照抗原結合タンパク質が結合するエピトープの充分に近位にある隣接するエピトープに結合する抗原結合タンパク質が挙げられる。競合結合を決定する方法に関する追加の詳細は、本明細書において実施例にて提供される。通常、競合抗原結合タンパク質が過剰に存在する場合、それは共通の抗原への参照抗原結合タンパク質の特異的結合を少なくとも40~45%、45~50%、50~55%、55~60%、60~65%、65~70%、70~75%、または75%以上阻害する(例えば、低減させる)。いくつかの例では、結合は、少なくとも80~85%、85~90%、90~95%、95~97%、または97%以上阻害される。
【0071】
本明細書において使用される「エピトープ」という用語は、抗体が結合する抗原上の原子またはアミノ酸の特定の群を指す。エピトープは、リニアエピトープまたはコンホメーショナルエピトープのいずれであってもよい。リニアエピトープは、抗原のアミノ酸の連続的な配列により形成され、それらの一次構造に基づいて抗体と相互作用する。他方、コンホメーショナルエピトープは、抗原のアミノ酸配列の不連続部分から構成され、抗原の3D構造に基づいて抗体と相互作用する。一般に、エピトープは約5または6アミノ酸の長さである。2つの抗体は、抗原について競合結合を呈する場合、抗原内の同じエピトープに結合し得る。
【0072】
「細胞」は、本明細書において使用される場合、原核性または真核性であることができる。原核細胞としては、例えば、細菌が挙げられる。真核細胞としては、例えば、真菌、植物細胞、および動物細胞が挙げられる。動物細胞(例えば、哺乳動物細胞またはヒト細胞)の種類としては、例えば、循環/免疫系または臓器からの細胞、例えば、B細胞、T細胞(細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、制御性T細胞、Tヘルパー細胞)、ナチュラルキラー細胞、顆粒球(例えば、好塩基性顆粒球、好酸性顆粒球、好中性顆粒球および過分葉好中球)、単球またはマクロファージ、赤血球細胞(例えば、網状赤血球)、肥満細胞、栓球または巨核球、および樹状細胞; 内分泌系または臓器からの細胞、例えば、甲状腺細胞(例えば、甲状腺上皮細胞、濾胞傍細胞)、副甲状腺細胞(例えば、副甲状腺主細胞、好酸性細胞)、副腎細胞(例えば、クロム親和性細胞)、および松果体細胞(例えば、松果体細胞); 神経系または臓器からの細胞、例えば、グリア芽細胞(例えば、星状膠細胞およびオリゴデンドロサイト)、小膠細胞、巨大細胞性神経分泌細胞、星状細胞、ベッチャー細胞、および下垂体細胞(例えば、性腺刺激ホルモン産生細胞、副腎皮質刺激ホルモン産生細胞、甲状腺刺激ホルモン産生細胞、成長ホルモン産生細胞、およびプロラクチン産生細胞); 呼吸器系または臓器からの細胞、例えば、肺胞上皮細胞(I型肺胞上皮細胞およびII型肺胞上皮細胞)、クララ細胞、杯細胞、および肺胞マクロファージ; 循環系または臓器からの細胞(例えば、心筋細胞および周細胞); 消化器系または臓器からの細胞、例えば、胃主細胞、壁細胞、杯細胞、パネート細胞、G細胞、D細胞、ECL細胞、I細胞、K細胞、S細胞、腸内分泌細胞、腸クロム親和性細胞、APUD細胞、および肝臓細胞(liver cell)(例えば、肝細胞(hepatocyte)およびクッパー細胞); 外皮系または臓器からの細胞、例えば、骨細胞(bone cell)(例えば、骨芽細胞、骨細胞(osteocyte)、および破骨細胞)、歯細胞(例えば、セメント芽細胞、およびエナメル芽細胞)、軟骨細胞(cartilage cell)(例えば、軟骨芽細胞および軟骨細胞(chondrocyte))、皮膚/毛細胞(例えば、トリコサイト、ケラチノサイト、およびメラノサイト(母斑細胞)、筋肉細胞(例えば、筋細胞)、脂肪細胞、線維芽細胞、および腱細胞; 泌尿器系または臓器からの細胞(例えば、足細胞、糸球体傍細胞、糸球体内メサンギウム細胞、糸球体外メサンギウム細胞、腎臓近位尿細管刷子縁細胞、および緻密斑細胞); ならびに生殖系または臓器からの細胞(例えば、精子、セルトリ細胞、ライディッヒ細胞、卵子、卵母細胞)が挙げられる。細胞は、正常な健常細胞、または疾患もしくは健常でない細胞(例えば、がん細胞)であることができる。細胞としては、哺乳動物接合体または幹細胞がさらに挙げられ、該幹細胞としては、胚性幹細胞、胎性幹細胞、人工多能性幹細胞、および成体幹細胞が挙げられる。幹細胞は、未分化状態を維持しながら細胞分裂の周期を経て、専門家された細胞種に分化することができる細胞である。幹細胞は、万能性幹細胞、多能性幹細胞、複能性(multipotent)幹細胞、少能性(oligopotent)幹細胞および単能性幹細胞であることができ、これらのいずれも、体細胞から誘導され得る。幹細胞としてはまた、がん幹細胞を挙げることができる。哺乳動物細胞は、齧歯動物細胞、例えば、マウス、ラット、ハムスター細胞であることができる。哺乳動物細胞は、ウサギ目細胞、例えば、ウサギ細胞であることができる。哺乳動物細胞はまた、霊長動物細胞、例えば、ヒト細胞であることができる。
【0073】
「キメラ抗原受容体」または「CAR」という用語は、本明細書において使用される場合、免疫細胞、例えば、T細胞またはNK細胞を活性化させるドメインまたはシグナル伝達、例えば、T細胞シグナル伝達またはT細胞活性化ドメインに連結された抗体の抗原結合ドメイン(例えば、単鎖可変断片(scFv))を含有する人工的に構築されたハイブリッドタンパク質またはポリペプチドを指す(例えば、Kershaw et al.、上掲、Eshhar et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90(2):720-724(1993)、およびSadelain et al., Curr. Opin. Immunol. 21(2):215-223(2009)を参照)。CARは、モノクローナル抗体の抗原結合特性の利点を活かして、非MHC拘束方式で免疫細胞の特異性および反応性を選択された標的に向け直すことができる。非MHC拘束抗原認識は、CARを発現する免疫細胞に、抗原プロセシングとは独立しているため腫瘍回避の主要な機構をバイパスして、抗原を認識する能力を賦与する。追加的に、T細胞において発現する場合、CARは、有利には、内因性のT細胞受容体(TCR)α鎖およびβ鎖と二量体化しない。
【0074】
本明細書において使用される場合、指定された成分に関して「本質的に含まない」は、指定された成分のいずれも意図的に組成物に配合されていないことおよび/または夾雑物としてもしくは微量においてのみ存在することを意味するために本明細書において使用される。組成物の任意の意図されない夾雑の結果としてもたらされる指定された成分の総量は、したがって、0.05%より十分に低い、好ましくは0.01%未満である。指定された成分のいかなる量も標準的な分析方法を用いて検出できない組成物が最も好ましい。
【0075】
「宿主細胞」という用語は、核酸配列で形質転換され、または形質転換されることができ、それにより対象となる遺伝子を発現する、細胞を意味する。当該用語は、対象となる遺伝子が存在する限り、形態または遺伝的構成が元の親細胞と同一であるか否かによらず、親細胞の子孫を含む。
【0076】
「同一性」という用語は、配列をアライメントして比較することにより決定される、2つ以上のポリペプチド分子または2つ以上の核酸分子の配列間の関係性を指す。「同一性パーセント」は、比較されている分子におけるアミノ酸間またはヌクレオチド間の同一の残基のパーセントを意味し、比較されている分子のうちの最小のもののサイズに基づいて算出される。これらの算出のために、アライメント中のギャップ(それがある場合)は、好ましくは、特定の数学モデルまたはコンピュータープログラム(すなわち、「アルゴリズム」)により対処される。アライメントされた核酸またはポリペプチドの同一性を算出するために使用できる方法としては、Computational Molecular Biology,(Lesk, A. M., ed.), 1988, New York:Oxford University Press; Biocomputing Informatics and Genome Projects,(Smith, D. W., ed.), 1993, New York:Academic Press; Computer Analysis of Sequence Data, Part I,(Griffin, A. M., and Griffin, H. G, eds.), 1994, New Jersey:Humana Press; von Heinje, G, 1987, Sequence Analysis in Molecular Biology, New York:Academic Press; Sequence Analysis Primer, (Gribskov, M. and Devereux, J., eds.), 1991, New York:M. Stockton Press; and Carillo et al, 1988, SIAM J. Applied Math.48:1073に記載されている方法が挙げられる。
【0077】
同一性パーセントの算出において、比較される配列は、典型的には、配列間の最大のマッチを与えるようにアライメントされる。同一性パーセントを決定するために使用できるコンピュータープログラムの一例は、GAPを含むGCGプログラムパッケージである(Devereux et al, 1984, Nucl. Acid Res.12:387; Genetics Computer Group, University of Wisconsin, Madison, Wis.)。コンピューターアルゴリズムGAPは、配列同一性パーセントを決定すべき2つのポリペプチドまたはポリヌクレオチドをアライメントするために使用される。配列は、それらの各々のアミノ酸またはヌクレオチドの最適なマッチのためにアライメントされる(アルゴリズムにより決定される、「マッチしたスパン」)。ギャップ開始ペナルティ(平均対角の3倍として算出され、「平均対角」は使用されている比較マトリックスの対角の平均であり、「対角」は、特定の比較マトリックスにより各完璧なアミノ酸マッチに割り当てられるスコアまたは数である)およびギャップ伸張ペナルティ(通常、ギャップ開始ペナルティの1/10倍)の他に、比較マトリックス、例えばPAM 250またはBLOSUM 62がアルゴリズムと組み合わせて使用される。ある特定の態様において、標準比較マトリックス(PAM 250比較マトリックスについてDayhoff et al, 1978, Atlas of Protein Sequence and Structure 5:345-352; BLOSUM 62比較マトリックスについてHenikoff et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89:10915-10919を参照)もアルゴリズムにより使用される。
【0078】
GAPプログラムを使用するポリペプチドまたはヌクレオチド配列の同一性パーセントの決定に用いることができるパラメーターの例は、Needleman et al, 1970, J. Mol. Biol.48:443-453に見出すことができる。
【0079】
2つのアミノ酸配列をアライメントするためのある特定のアライメントスキームは、2つの配列の短い領域のみのマッチングをもたらすことがあり、この小さいアライメントされた領域は、2つの全長配列間に有意な関係性がない場合であっても非常に高い配列同一性を有することがある。したがって、選択されたアライメント方法(GAPプログラム)は、標的ポリペプチドの少なくとも50または他の数の連続するアミノ酸にわたるアライメントをもたらすよう、そのように所望される場合に調整することができる。
【0080】
「連結」という用語は、本明細書において使用される場合、分子内相互作用、例えば、共有結合、金属結合、および/もしくはイオン結合、または分子間相互作用、例えば、水素結合もしくは非共有結合を介した会合を指す。
【0081】
白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー2(LILRB2)は、ヒトにおいてLILRB2遺伝子によりコードされるタンパク質である。この遺伝子は、染色体領域19q13.4における遺伝子クラスター中に見出される白血球免疫グロブリン様受容体(LIR)ファミリーのメンバーである。コードされるタンパク質は、2つまたは4つの細胞外免疫グロブリンドメイン、膜貫通ドメイン、および2~4つの細胞質免疫受容体チロシンベース抑制モチーフ(ITIM)を含有するLIR受容体のサブファミリーBクラスに属する。この受容体は骨髄系細胞上に発現し;HLAクラスI分子、ANGPTL、ミエリン阻害物質(例えば、Nogo66、MAG、OMgp)、およびβアミロイドを含む複数のタイプのリガンドに結合し;免疫応答の刺激を阻害する負のシグナルを伝達する。それは、炎症応答および細胞傷害性を制御して、免疫応答を集中させかつ自己反応性を制限することを助けると考えられている。
【0082】
「機能的に連結されている」という用語は、そのように記載された成分がそれらの通常の機能を行うように構成された構成要素の並びを指す。したがって、ポリペプチドに機能的に連結された所与のシグナルペプチドは、細胞からのポリペプチドの分泌を指示する。プロモーターの場合、コーディング配列に機能的に連結されたプロモーターは、コーディング配列の発現を指示する。プロモーターまたは他の制御エレメントは、それらがその発現を指示するように機能する限り、コーディング配列と連続する必要はない。例えば、プロモーター配列とコーディング配列との間に介在性の翻訳されないが転写される配列が存在してもよく、プロモーター配列はそれでもなお、コーディング配列に「機能的に連結され」ていると考えることができる。
【0083】
特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、選択肢のみを指すことが明示的に示されているか、または選択肢が互いに排他的である場合を除いて、「および/または」を意味するために使用され、但し、本開示は、選択肢のみおよび「および/または」を指す定義をサポートする。本明細書において使用される場合、「別の」は、少なくとも第2のもの、またはさらなるものを意味し得る。
【0084】
「ポリヌクレオチド」または「核酸」という用語は、一本鎖および二本鎖の両方のヌクレオチドポリマーを含む。ポリヌクレオチドを構成するヌクレオチドは、リボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオシドまたはいずれかの種類のヌクレオチドの修飾形態であってもよい。前記修飾としては、塩基修飾、例えばブロモウリジンおよびイノシン誘導体、リボース修飾、例えば2', 3'-ジデオキシリボース、およびヌクレオチド間連結修飾、例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホロアニラデートおよびホスホロアミデートが挙げられる。
【0085】
「ポリペプチド」または「タンパク質」という用語は、天然タンパク質、すなわち、天然に存在する非組換え細胞により産生されるタンパク質のアミノ酸配列を有する高分子を意味し、またはそれは遺伝子操作されたもしくは組換え細胞により産生され、かつ天然タンパク質のアミノ酸配列を有する分子、または天然配列の1つもしくは複数のアミノ酸の欠失、付加、および/もしくは置換を有する分子を含む。該用語はまた、1つまたは複数のアミノ酸が、対応する天然に存在するアミノ酸およびポリマーの化学的なアナログである、アミノ酸ポリマーを含む。「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、具体的には、LILRB抗原結合タンパク質、抗体、または抗原結合タンパク質の1つもしくは複数のアミノ酸の欠失、付加、および/もしくは置換を有する配列を包含する。「ポリペプチド断片」という用語は、全長天然タンパク質と比較してアミノ末端の欠失、カルボキシル末端の欠失、および/または内部の欠失を有するポリペプチドを指す。そのような断片はまた、天然タンパク質と比較して改変されたアミノ酸を含有することができる。ある特定の態様において、断片は約5~500アミノ酸の長さである。例えば、断片は、少なくとも5、6、8、10、14、20、50、70、100、110、150、200、250、300、350、400、または450アミノ酸の長さであってもよい。有用なポリペプチド断片としては、結合ドメインなどの、抗体の免疫学的に機能的な断片が挙げられる。LILRB結合抗体の場合、有用な断片としては、CDR領域、重鎖および/または軽鎖の可変ドメイン、2つのCDRを含む抗体鎖またはその可変領域のみの部分などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0086】
本発明において有用な薬学的に許容される担体は従来のものである。Remington’s Pharmaceutical Sciences, by E. W. Martin, Mack Publishing Co., Easton, PA, 15th Edition(1975)には、本明細書において開示される融合タンパク質の薬学的送達のために好適な組成物および製剤が記載されている。一般に、担体の性質は、用いられる特定の投与方式に依存する。例えば、非経口製剤は、通常、薬学的および生理学的に許容される液体、例えば、水、生理食塩水、平衡塩溶液、水性デキストロースまたはグリセロールなどをビヒクルとして含む注射液を含む。固体組成物(例えば、粉末、丸剤、錠剤、またはカプセル形態)について、従来の非毒性固体担体は、例えば、薬学的グレードのマンニトール、ラクトース、デンプンまたはステアリン酸マグネシウムを含むことができる。生物学的に中性の担体に加えて、投与される薬学的組成物は、微量の非毒性助剤物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、防腐剤、およびpH緩衝剤など、例えば酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレートを含有することができる。
【0087】
本明細書において使用される場合、「対象」という用語は、ヒトまたは任意の非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマまたは霊長類動物)を指す。ヒトには、出生前および出生後の形態が含まれる。多くの態様において、対象は人間である。対象は患者であってもよく、患者は、疾患の診断または治療のために医療提供者に現れたヒトを指す。「対象」という用語は、「個体」または「患者」と交換可能に本明細書において使用される。対象は、疾患または障害に罹患しているまたは感受性であり得るが、疾患または障害の症状を示していてもよいし、示していなくてもよい。
【0088】
「治療有効量」または「有効投与量」という用語は、本明細書において使用される場合、疾患または病態を治療するために有効な、薬物の投与量または濃度を指す。例えば、がんを治療するための本明細書に開示されるモノクローナル抗体またはその抗原結合断片の使用に関して、治療有効量は、腫瘍体積を低減すること、腫瘍の全体もしくは部分を根絶すること、腫瘍成長もしくは他の臓器へのがん細胞浸潤を阻害するかもしくは遅らせること、がん性状態を媒介する細胞の成長もしくは増殖を阻害すること、腫瘍細胞の転移を阻害するかもしくは遅らせること、腫瘍もしくはがん性状態と関連する任意の症状もしくはマーカーを改善すること、腫瘍もしくはがん性状態の発症を予防するかもしくは遅延させること、またはそれらのうちのいくつかの組合せが可能な、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片の投与量または濃度である。
【0089】
本明細書において使用される病態を「治療すること」またはその「治療」には、病態を予防もしくは軽減すること、病態の発症もしくはその発症速度を遅くすること、病態を発症するリスクを低減させること、病態に関連する症状の発症を予防するもしくは遅延させること、病態に関連する症状を低減するもしくは終了させること、病態の完全もしくは部分的な退縮をもたらすこと、病態を治癒すること、またはこれらのいくつかの組合せが含まれる。
【0090】
本明細書において使用される場合、「ベクター」は、宿主細胞中に導入され、それにより形質転換された宿主細胞を生じさせる核酸分子を指す。ベクターは、宿主細胞中でその複製を可能とする核酸配列、例えば複製起点を含んでもよい。ベクターはまた、当技術分野において公知の1つまたは複数の治療遺伝子および/または選択マーカー遺伝子および他の遺伝因子を含んでもよい。ベクターは、細胞に形質導入し、細胞を形質転換させまたは細胞に感染し、それにより細胞にとって天然のもの以外の核酸および/またはタンパク質を細胞に発現させることができる。ベクターは、細胞内に核酸が入ることの達成を補助する材料、例えば、ウイルス粒子、リポソーム、タンパク質コーティングなどを含んでもよい。
【0091】
II. LILRB2関連疾患
LILRB2は、骨髄細胞表現型の鍵となる調節因子として同定されている。LILRB2の活性化は骨髄細胞の炎症促進活性を抑制する。抑制性/抗炎症性の表現型を有する骨髄細胞は、T細胞の活性化、増殖および細胞傷害活性を下方調節できるが、LILRB2のモジュレーションは、がん、自己免疫疾患、および炎症性疾患を含む病態および障害における治療的使用において潜在能力を有する。
【0092】
過剰増殖性疾患は、細胞が制御不能に増殖し始めることを引き起こす任意の疾患に関連付けることができるが、その原型的な例はがんである。
【0093】
がんの例は、固形腫瘍および血液悪性腫瘍に一般にカテゴライズされ得る。固形腫瘍としては、副腎がん、胆管がん、骨がん、脳のがん(例えば、星状細胞腫、脳幹神経膠腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、血管芽腫、髄芽腫、髄膜腫、乏突起膠腫、脊髄軸腫瘍)、乳がん(聴神経腫、基底乳がん、腺管がんおよび小葉性乳がんを含む)、子宮頸がん、絨毛がん、結腸がん、結腸直腸がん、食道がん、眼がん、胃がん、膠芽腫、頭頸部がん、腎臓がん(ウィルムス腫瘍を含む)、肝臓がん(肝細胞がん(HCC)を含む)、肺がん(気管支原性がん、非小細胞肺がん(扁平/非扁平)、細気管支肺胞細胞肺がん、乳頭腺がんを含む)、中皮腫、黒色腫、メルケル細胞がん、鼻咽頭がん、神経芽腫、口腔がん、卵巣がん、膵臓がん、陰茎がん、松果体腫、前立腺がん、腎細胞がん、網膜芽腫、肉腫(軟骨肉腫、ユーイング肉腫、線維肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、粘液肉腫、骨原性肉腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫を含む)、皮膚がん(基底細胞がん、皮脂腺がん、扁平細胞がんを含む)、精巣がん(精上皮腫を含む)、胸腺がん、甲状腺がん(例えば、甲状腺髄様がん、甲状腺乳頭がん)、子宮がん、ならびに膣がんが挙げられるがこれらに限定されない。
【0094】
血液悪性腫瘍としては、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)、重鎖病、白血病(急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)(急性前骨髄性白血病(APL)またはM3 AML、急性骨髄単球性白血病またはM4 AML、急性単球性白血病またはM5 AMLを含むがこれらに限定されない)、B細胞白血病、慢性リンパ芽球性白血病(CLL)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、慢性骨髄性白血病(CML)、プレB細胞性急性リンパ球性白血病(プレB ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、節外性NK/T細胞リンパ腫、有毛細胞白血病、HHV8関連原発性滲出性リンパ腫、形質芽球性リンパ腫、原発性CNSリンパ腫、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、T細胞/組織球豊富型B細胞リンパ腫を含むがこれらに限定されない)、リンパ腫(ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症を含むがこれらに限定されない)、多発性骨髄腫(MM)、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性腫瘍、および真性多血症が挙げられるがこれらに限定されない。
【0095】
免疫療法は、長期持続性の抗腫瘍効果を達成する大きい見込みを有する。免疫チェックポイントPD-1およびCTLA-4遮断療法は、一部の種類のがんの治療において成功しているが他のものについてはそうではない。これらの免疫療法は、T細胞上の阻害分子を標的として、腫瘍微小環境(TME)内の機能不全T細胞を再活性化させる。単球性細胞を含めて、免疫細胞の他の集団がT細胞よりいっそう多くの数でTME中に存在する。実際に、単球由来マクロファージは、腫瘍組織中の最も豊富に存在する免疫細胞集団である。これらの先天的な細胞は、腫瘍細胞を殺傷する能力およびT細胞をプライムしまたは再活性化させる能力を有するが、それらはTMEにおいて機能不全となり、MDSCおよび腫瘍関連マクロファージ(TAM)となり、これらの細胞は、腫瘍発生をサポートし、免疫サーベイランスおよび攻撃を抑制する。単球性MDSC(M-MDSC)および多形核MDSC(PMN-MDSC)を含めて、MDSCは、最終分化しない未熟な骨髄細胞の不均質集団である。TAMは、TME中の混合されたマクロファージ集団である。それらは抗炎症性であり、予後不良と相関している。表現型の可塑性にもかかわらず、MDSCおよびTAMはそれらの免疫抑制機能により定義される。これらの免疫抑制性単球性細胞のトラフィッキングを除去、初期化、または遮断することは、魅力的な抗がん治療戦略となりつつある。
【0096】
LILRB2は、TME中のMDSCおよびTAM上に発現する。骨髄リッチ固形腫瘍におけるLILRB2の治療的遮断は、T細胞チェックポイント阻害剤に対して非応答性/再発性の疾患を有する患者において抗腫瘍免疫応答を再活性化させまたは増強する潜在能力を有する。
【0097】
骨髄細胞上のLILRB2発現は、自己免疫および炎症性疾患に関与するシステムを調節し得る。LILRB2の治療的な活性化またはアゴナイズは、自己免疫または炎症性疾患を治療する潜在能力を有する。
【0098】
自己免疫または炎症性疾患としては、獲得免疫不全症候群(AIDS、これは自己免疫成分を伴うウイルス性疾患である)、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫アジソン病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患(AIED)、自己免疫性リンパ増殖性症候群(ALPS)、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、ベーチェット病、心筋症、セリアックスプルー-疱疹状皮膚炎;慢性疲労免疫不全症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIPD)、瘢痕性類天疱瘡、寒冷凝集素病、crest症候群、クローン病、デゴス病、若年性皮膚筋炎、円板状ループス、本態性混合クリオグロブリン血症、線維筋痛症-線維筋炎、グレーブス病、ギラン-バレー症候群、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎症、インスリン依存性糖尿病、若年性慢性関節炎(スチル病)、若年性関節リウマチ、メニエール病、混合性結合組織疾患、多発性硬化症、重症筋無力症、悪性貧血(pemacious anemia)、結節性多発性動脈炎、多発軟骨炎、多腺症候群、リウマチ性多発性筋痛症、多発性筋炎および皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性硬変、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、全身性強皮症、進行性全身性硬化症(PSS)、全身性硬化症(SS)、シェーグレン症候群、スティッフマン症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎、コーン病、腸粘膜炎症、大腸炎と関連する消耗性疾患、ぶどう膜炎、白斑およびウェゲナー肉芽腫症、アルツハイマー病、喘息、アトピー性アレルギー、アレルギー、アテローム性動脈硬化症、気管支喘息、湿疹、糸球体腎炎、移植片対宿主病、溶血性貧血、変形性関節症、敗血症、卒中、組織および臓器の移植、血管炎、糖尿病網膜症、人工呼吸器誘導性肺傷害、ウイルス感染症、ならびに自己免疫糖尿病などが挙げられるがこれらに限定されない。炎症性障害としては、例えば、慢性および急性炎症性障害が挙げられる。
【0099】
III. モノクローナル抗体およびその製造
本明細書において記載されるモノクローナル抗体を標準的な方法を使用して調製した後、スクリーニング、特徴付けおよび機能評価を行うことができる。可変領域をシークエンシングした後、ヒト発現ベクターにサブクローニングしてキメラ抗体遺伝子を製造することができ、その後にそれは発現および精製される。これらのキメラ抗体を抗原結合、シグナル伝達の遮断、異種移植実験において試験することができる。本明細書に記載されるモノクローナル抗体はまた、ファージディスプレイ法を使用して調製することができ、その場合、ファージディスプレイ化ヒトscFvの大きいライブラリーが標的タンパク質に対してパニングされる。標的タンパク質に特異的に結合するように選択されたヒトscFvをシークエンシングし、次にヒト発現ベクターにサブクローニングして所望のヒト抗体を製造することができる。
【0100】
A. 一般的方法
LILRB2に結合するモノクローナル抗体はいくつかの用途を有することが理解されるであろう。用途としては、がんの検出および診断において使用するための診断キットの製造の他に、がん療法が挙げられる。これらの文脈において、そのような抗体を診断または治療剤と連結してもよく、それらを捕捉剤または競合アッセイにおける競合物として使用してもよく、または追加の剤をそれに結合させることなくそれらを個々に使用してもよい。抗体は、以下にさらに議論されるように、変異しまたは改変されてもよい。抗体を調製するためおよび特徴付けるための方法は当技術分野において周知である(例えば、Antibodies:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988; U.S. Patent 4,196,265を参照)。
【0101】
モノクローナル抗体(MAb)を生成する古典的な方法は、一般に、ポリクローナル抗体を調製する方法と同じ道筋に沿って始まる。これらの両方の方法の最初の工程は適切な宿主の免疫化である。当技術分野において周知の通り、免疫化のための所与の組成物は、その免疫原性が様々であり得る。したがって、多くの場合、宿主免疫系を増強することが必要であり、これはペプチドまたはポリペプチド免疫原をキャリアに連結させることにより達成され得る。例示的かつ好ましいキャリアは、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)およびウシ血清アルブミン(BSA)である。オボアルブミン、マウス血清アルブミン、またはウサギ血清アルブミンなどの他のアルブミンもまたキャリアとして使用することができる。キャリアタンパク質にポリペプチドをコンジュゲートさせるための手段は当技術分野において周知であり、グルタルアルデヒド、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、カルボジイミド、およびビスジアゾ化ベンジジンが挙げられる。これも当技術分野において周知の通り、アジュバントとして公知の免疫応答の非特異的刺激因子の使用により特定の免疫原組成物の免疫原性を増強させることができる。例示的かつ好ましいアジュバントとしては、完全フロイントアジュバント(殺傷した結核菌(Mycobacterium tuberculosis)を含有する免疫応答の非特異的刺激因子)、不完全フロイントアジュバント、および水酸化アルミニウムアジュバントが挙げられる。
【0102】
ポリクローナル抗体の製造において使用される免疫原組成物の量は、免疫原の性質の他に、免疫化のために使用される動物に応じて異なる。免疫原を投与するために様々な経路を使用することができる(皮下、筋肉内、皮内、静脈内、および腹腔内)。ポリクローナル抗体の産生は、免疫化後の様々な時点に免疫化動物の血液をサンプリングすることによりモニタリングすることができる。第2のブースター注射を与えてもよい。増強およびタイトレーションのプロセスは、好適な力価が達成されるまで繰り返される。所望のレベルの免疫原性が得られた場合、免疫化された動物を出血させて血清を単離および貯蔵することができ、かつ/または動物を使用してMAbを生成することができる。
【0103】
免疫化後に、抗体を産生する潜在能力を有する体細胞、具体的にはBリンパ球(B細胞)が、MAb生成プロトコールにおいて使用するために選択される。これらの細胞は、生検を行った脾臓もしくはリンパ節、または循環血液から得ることができる。次に、免疫化動物からの抗体産生Bリンパ球を不死骨髄腫細胞、一般に、免疫化された動物と同じ種の細胞またはヒトもしくはヒト/マウスキメラ細胞と融合させる。ハイブリドーマ製造融合手順において使用するために適した骨髄腫細胞株は、好ましくは、非抗体産生性であり、高い融合効率を有し、かつ所望の融合細胞(ハイブリドーマ)のみの増殖をサポートするある特定の選択培地中で増殖できなくさせる酵素欠損を有する。当業者に公知のように、数多くの骨髄腫細胞のいずれも使用することができる(Goding, pp.65-66, 1986; Campbell, pp.75-83, 1984)。
【0104】
抗体産生脾臓またはリンパ節細胞と骨髄腫細胞とのハイブリッドを生成する方法は、通常、体細胞を骨髄腫細胞と2:1の割合で混合することを含むが、割合は、細胞膜の融合を促進する1つまたは複数の(化学的または電気的)剤の存在下でそれぞれ約20:1~約1:1で変化し得る。センダイウイルス(Sendai virus)を使用する融合方法がKohler and Milstein(1975; 1976)に記載されており、ポリエチレングリコール(PEG)、例えば37%(v/v)のPEGを使用する融合方法がGefter et al.(1977)に記載されている。電気的に誘導される融合方法の使用も適切である(Goding, pp.71-74, 1986)。融合手順は、通常、約1×10-6~1×10-8の低い頻度で生存可能なハイブリッドを生じさせる。しかしながら、生存可能な融合されたハイブリッドは、選択培地中での培養により親の非融合細胞(特に、通常無期限に分裂し続ける非融合骨髄腫細胞)から分化するため、これは問題とならない。選択培地は、一般に、組織培養培地中でのヌクレオチドのデノボ合成を遮断する作用物質を含有する培地である。例示的かつ好ましい剤は、アミノプテリン、メトトレキサート、およびアザセリンである。アミノプテリンおよびメトトレキサートはプリンおよびピリミジンの両方のデノボ合成を遮断する一方、アザセリンはプリンの合成のみを遮断する。アミノプテリンまたはメトトレキサートが使用される場合、ヌクレオチドの供給源としてヒポキサンチンおよびチミジンが培地に添加される(HAT培地)。アザセリンが使用される場合、培地にヒポキサンチンが添加される。B細胞供給源がエプスタインバーウイルス(EBV)形質転換ヒトB細胞株である場合、骨髄腫に融合されなかったEBV形質転換株を取り除くためにウアバインが加えられる。
【0105】
好ましい選択培地は、HATまたはウアバインを含むHATである。ヌクレオチドサルベージ経路を作動することができる細胞のみがHAT培地中で生存することができる。骨髄腫細胞は、サルベージ経路の鍵となる酵素、例えばヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)を欠損し、生存することができない。B細胞はこの経路を作動することができるが、培養物中で限られた寿命を有し、一般に約2週間以内に死亡する。したがって、選択培地中で生存できる細胞のみが骨髄腫およびB細胞から形成されるハイブリッドである。今回の場合のように、融合のために使用されるB細胞の供給源がEBV形質転換B細胞の株である場合、EBV形質転換B細胞は薬物殺傷に感受性であるのでウアバインもハイブリッドの薬物選択のために使用される一方、使用される骨髄腫パートナーはウアバイン抵抗性であるように選択される。
【0106】
培養によりハイブリドーマの集団がもたらされ、そこから特定のハイブリドーマが選択される。典型的には、ハイブリドーマの選択は、マイクロタイタープレートにおいて単一クローンとなるように希釈された細胞を培養した後、個々のクローンの上清(約2~3週間後)を所望の反応性について試験することにより行われる。アッセイは、ラジオイムノアッセイ、酵素イムノアッセイ、細胞傷害性アッセイ、プラークアッセイドット免疫結合アッセイなど、感度が高く、簡便かつ迅速なものであるべきである。次に、選択されたハイブリドーマを連続希釈するか、またはフローサイトメトリー選別により単一細胞を選別し、クローニングして個々の抗体産生細胞株とした後、クローンを無期限に増殖させてmAbを提供することができる。細胞株は、2つの基本的な方法でMAbの製造のために活用することができる。ハイブリドーマの試料を動物(例えば、マウス)に(多くの場合、腹膜腔に)注射することができる。任意で、注射の前に炭化水素、特にプリスタン(テトラメチルペンダデカン)などの油で動物をプライミングする。ヒトハイブリドーマがこの方法で使用される場合、腫瘍拒絶を予防するために、SCIDマウスなどの免疫不全マウスに注射することが最適である。注射された動物は、融合した細胞ハイブリッドにより産生される特定のモノクローナル抗体を分泌する腫瘍を発生させる。次に、血清または腹水液などの動物の体液を採取して、高濃度でMAbを提供することができる。個々の細胞株をインビトロで培養することもでき、MAbが天然に培養培地中に分泌され、そこからMAbを高濃度で容易に得ることができる。あるいは、ヒトハイブリドーマ細胞株をインビトロで使用して細胞上清中に免疫グロブリンを産生させることができる。高純度のヒトモノクローナル免疫グロブリンを回収する能力を最適化するために、無血清培地中の増殖に細胞株を適合させることができる。
【0107】
いずれかの手段により産生されたMAbを、必要であれば、濾過、遠心分離および様々なクロマトグラフィー法、例えばFPLCまたはアフィニティークロマトグラフィーを使用してさらに精製してもよい。本開示のモノクローナル抗体の断片は、酵素、例えばペプシンまたはパパインでの消化を含む方法により、および/または化学還元によるジスルフィド結合の分解により、精製されたモノクローナル抗体から得ることができる。あるいは、本開示に包含されるモノクローナル抗体断片は、自動ペプチド合成装置を使用して合成することができる。
【0108】
分子クローニングアプローチを使用してモノクローナル抗体を生成してもよいことも企図されている。このために、RNAをハイブリドーマ株から単離し、抗体遺伝子をRT-PCRにより得、免疫グロブリン発現ベクターにクローニングすることができる。あるいは、コンビナトリアル免疫グロブリンファージミドライブラリーを細胞株から単離されたRNAから調製し、適切な抗体を発現するファージミドをウイルス抗原を使用するパニングにより選択する。従来のハイブリドーマ技術に対するこのアプローチの利点は、単一ラウンドで約104倍多くの抗体を製造およびスクリーニングできること、およびH鎖とL鎖の組合せにより新たな特異性が生成され、それが適切な抗体を発見する可能性をさらに増加させることである。
【0109】
最近、mAbを生成する追加の方法、例えばscFvファージディスプレイが開発されている(CM Hammers and JR Stanley,Antibody phage display:technique and applications,J Invest Dermatol(2014)134:e17を参照)。一般に、標的タンパク質、例えば、ヒトLILRB2に結合する一群のヒトmAbは、大きい多様性のヒトscFvファージディスプレイ化抗体ライブラリーをパニングすることにより生成される。
【0110】
ヒトscFvファージディスプレイ化抗体ライブラリーを生成するために、RNAが、選択された細胞供給源、例えば、末梢血単核細胞から抽出される。RNAは次に、cDNAに逆転写され、cDNAは、コードされる抗体のVHおよびVL鎖のPCRのために使用される。異なるVHおよびVL鎖領域遺伝子ファミリーに特異的なプライマーの定義されたセットは、特定の個体における全ての抗体特異性を反映して、所与の免疫グロブリンレパートリー内の全ての転写される再構成された可変領域の増幅を可能とする。
【0111】
抗体レパートリーを表すVHおよびVL PCR生成物は、M13バクテリオファージに元々由来した大腸菌(E.coli)の糸状バクテリオファージのpIIIマイナーカプシドタンパク質に融合したscFvとしてVHおよびVLを発現するように操作されたファージディスプレイベクターにライゲートされる。これはファージのライブラリーを生成し、ファージの各々は、その表面上にscFvを発現し、内部に各々のヌクレオチド配列を有するベクターを宿す。
【0112】
ライブラリーは次に、バイオパニングと呼ばれる技術によりその発現した表面scFvを通じて標的抗原に結合するファージについてスクリーニングされる。短く述べれば、標的タンパク質は、ファージライブラリーとのインキュベーションのために固相にコーティングされる。洗浄および溶出後に、抗原濃縮されたファージは回収され、ファージパニングの次のラウンドのために使用される。少なくとも3ラウンドのファージパニング後に、単一の細菌コロニーがファージELISAおよび他の機能的/遺伝学的分析のために摘取される。
【0113】
陽性ヒットがscFv領域についてシークエンシングされ、全体ヒトIgG重鎖および軽鎖構築物に変換され、それは、上記に開示される方法を使用して関心対象のmAbを生成するために使用される。例えば、IgG発現プラスミドは、トランスフェクション試薬PEIを使用してExpi293細胞に共トランスフェクトされる。7日の発現後に、上清が収穫され、抗体は、プロテインA樹脂を使用してアフィニティークロマトグラフィーにより精製される。
【0114】
それぞれが参照することにより本明細書に組み入れられ、本開示において有用な抗体の製造を教示する、他の米国特許としては、コンビナトリアルアプローチを使用するキメラ抗体の製造を記載する米国特許第5,565,332号;組換え免疫グロブリン調製物を記載する米国特許第4,816,567号;および抗体-治療剤コンジュゲートを記載する米国特許第4,867,973号が挙げられる。
【0115】
B. 本開示の抗体
1. LILRB2に対する抗体
本開示による抗体またはその抗原結合断片は、第1の例では、それらの結合特異性、この場合はLILRB2についての結合特異性により定義することができる。当業者は、当業者に周知の技術を使用して所与の抗体の結合特異性/親和性を評価することにより、そのような抗体が本願の請求項の範囲内に入るかどうかを決定することができる。
【0116】
一局面において、LILRB2に特異的に結合する抗体および抗原結合断片が提供される。いくつかの態様において、LILRB2に結合しているときに、そのような抗体はLILRB2の活性化をモジュレ-トする。ある特定の態様において、抗体または抗原結合断片は、LILRB2に結合しているときにLILRB2を活性化させる。ある特定の態様において、抗体または抗原結合断片は、LILRB2に結合しているときにLILRB2の活性化を抑制する。ある特定の態様において、抗体または抗原結合断片は、LILRB2に結合しているときに、LILRB2とその結合パートナーとの相互作用に特異的に干渉し、それを特異的に遮断しまたは低減させることができる。ある特定の態様において、本明細書において提供される抗体または抗原結合断片は、MDSCおよび他の固形腫瘍浸潤性骨髄細胞、例えば腫瘍関連マクロファージ(TAM)および寛容原性樹状細胞(DC)の免疫抑制活性を阻害する能力を有する。ある特定の態様において、本明細書において提供される抗体または抗原結合断片は、ヒトLILRB2に特異的または選択的に結合する。
【0117】
いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片は、ヒトLILRB2に特異的に結合しかつ/またはヒトLILRB2のHLA-G、ANGPTL、SEMA4Aへの結合を(例えば、実施例に開示されるようなアッセイにより)少なくとも約20%~40%、40~60%、60~80%、80~85%、またはより高く実質的に阻害する。いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片は、10-6、10-7、10-8、10-9、10-10、10-11、10-12、10-13Mより低いKd(より緊密な結合)を有する。いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片は、10uM未満、10uM~1uM、1000nM~100nM、100nM~10nM、10nM~1nM、1000pM~500pM、500pM~200pM、200pM未満、200pM~150pM、200pM~100pM、100pM~10pM、10pM~1pMの、LILRB2へのHLA-G、ANGPTL、SEMA4Aの結合の遮断についてのIC50を有する。
【0118】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体または抗原結合断片は、表2に示されるクローンCDR対を有する。
【0119】
ある特定の態様において、抗体は、追加の「フレームワーク」領域を含むそれらの可変配列により定義されてもよい。抗体は、付録IおよびIIIからのクローン重鎖・軽鎖アミノ酸配列対により特徴付けられる。さらには、抗体配列は、特にCDRの外側の領域において、これらの配列から変更されてもよい。例えば、アミノ酸は、所与のパーセンテージ、例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の相同性で上記のものから変更されてもよく、またはアミノ酸は、保存的置換(下記に議論される)を許容することにより上記のものから変更されてもよい。以上のそれぞれは付録IおよびIIIのアミノ酸配列に適用される。別の態様において、本開示の抗体誘導体は、最大で0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれより多くの保存的または非保存的アミノ酸置換を有するが、それでもなお所望の結合および機能的特性を呈するVLおよびVHドメインを含む。
【0120】
本開示の抗体はIgGとして生成されたが、定常領域を改変してそれらの機能を変化させることが有用なことがある。抗体の定常領域は、典型的には、宿主組織または因子への抗体の結合を媒介し、該因子としては、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体システムの第1の成分(Clq)が挙げられる。したがって、「抗体」という用語は、IgA型、IgG型、IgE型、IgD型、IgM型(およびこれらのサブタイプ)のインタクトな免疫グロブリンを含み、免疫グロブリンの軽鎖はκ型またはλ型であってもよい。軽鎖および重鎖内で、可変領域および定常領域は、約12またはそれより多くのアミノ酸の35の「J」領域により連結され、重鎖はまた、約10個のさらなるアミノ酸の「D」領域を含む。一般に、Fundamental Immunology Ch.7(Paul, W., ed., 2nd ed. Raven Press, N.Y.(1989)を参照されたい。
【0121】
本開示は、本明細書において開示される抗体をコードする核酸にハイブリダイズする核酸をさらに含む。一般に、核酸は、本明細書において開示される抗体をコードする核酸、そしてまたLILRB2に特異的に結合する能力を維持する抗体をコードする核酸に中または高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする。一本鎖形態の第1の核酸分子が温度および溶液イオン強度の適切な条件下で第2の核酸分子にアニールできる時に、第1の核酸分子は第2の核酸分子に「ハイブリダイズ可能」である(Sambrook et al., MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 3rd ed., Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Y. 2001を参照)。温度およびイオン強度の条件は、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」を決定する。典型的な中ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件は、40%のホルムアミド、5×または6×のSSCおよび0.1%のSDS、42℃である。高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件は、50%のホルムアミド、5×または6×のSSC(0.15MのNaClおよび0.015Mのクエン酸Na)、42℃、または任意でより高い温度(例えば、57℃、59℃、60℃、62℃、63℃、65℃、または68℃)である。ハイブリダイゼーションは2つの核酸が相補的配列を含有することを必要とするが、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに応じて、塩基間のミスマッチが可能である。核酸にハイブリダイズするための適切なストリンジェンシーは、核酸の長さおよび相補性の程度、当技術分野において周知の変数に依存する。2つのヌクレオチド配列間の類似性または相同性の程度が大きくなればなるほど、核酸がハイブリダイズし得るストリンジェンシーはより高くなる。100ヌクレオチドより大きい長さのハイブリッドについて、融解温度を算出するための式が導出されている(前記のSambrook et al.を参照)。より短い核酸、例えばオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションについて、ミスマッチの位置がより重要となり、オリゴヌクレオチドの長さがその特異性を決定する(前記のSambrook et al.を参照)。
【0122】
2. 例示的なエピトープおよび競合する抗原結合タンパク質
別の局面において、本開示は、抗LILRB2抗体が結合するエピトープを提供する。
いくつかの態様において、本明細書に記載されている抗体が結合するエピトープは有用である。ある特定の態様において、本明細書において提供されるエピトープは、LILRB2に結合する抗体または抗原結合タンパク質を単離するために利用することができる。ある特定の態様において、本明細書において提供されるエピトープは、LILRB2に結合する抗体または抗原結合タンパク質を生成するために利用することができる。ある特定の態様において、エピトープまたは本明細書において提供されるエピトープを含む配列は、LILRB2に結合する抗体または抗原結合タンパク質を生成するために免疫原として利用することができる。ある特定の態様において、本明細書に記載されているエピトープまたは本明細書に記載されているエピトープを含む配列は、LILRB2の生物学的活性に干渉するために利用することができる。
【0123】
いくつかの態様において、エピトープのいずれかに結合する抗体またはその抗原結合断片は特に有用である。いくつかの態様において、本明細書において提供されるエピトープは、抗体が結合している時にLILRB2の生物学的活性をモジュレートする。いくつかの態様において、本明細書において提供されるエピトープは、抗体が結合している時にLILRB2を活性化させる。いくつかの態様において、本明細書において提供されるエピトープは、抗体が結合している時にLILRB2の活性化を抑制する。いくつかの態様において、本明細書において提供されるエピトープは、抗体が結合している時にLILRB2とその結合パートナーとの相互作用を遮断する。
【0124】
いくつかの態様において、抗体と接触するまたは抗体が覆い隠す残基を含有するドメイン/領域は、LILRB2中の特定の残基を変異させることおよび変異されたLILRB2タンパク質に抗体が結合できるかどうかを判定することにより同定することができる。多数の個々の変異を作製することにより、結合に直接的な役割を果たす残基または変異が抗体と抗原との結合に影響できるように抗体に充分に近接する残基を同定することができる。これらのアミノ酸の知識から、抗原結合タンパク質と接触するまたは抗体により覆われる残基を含有する抗原のドメインまたは領域を解明することができる。そのようなドメインは、抗原結合タンパク質の結合エピトープを含むことができる。
【0125】
別の局面において、本開示は、LILRB2への特異的結合について、本明細書に記載されているエピトープに結合する例示される抗体または抗原結合断片の1つと競合する抗原結合タンパク質を提供する。そのような抗原結合タンパク質はまた、本明細書において例示される抗体または抗原結合断片の1つと同じエピトープ、またはオーバーラップエピトープに結合することができる。例示される抗体と競合するまたは同じエピトープに結合する抗原結合タンパク質は、類似の機能的特性を示すことが予想される。例示される抗体としては、表1に含まれる重鎖および軽鎖の可変領域およびCDR、付録IおよびIIに示される重鎖および軽鎖、ならびに付録IIおよびIVに示される重鎖および軽鎖のコード領域を有するものなど、上に記される抗体が挙げられる。
【0126】
C. 抗体配列の操作
様々な態様において、発現の向上、交差反応性の向上、またはオフターゲット結合の減少などの様々な理由のために、同定された抗体の配列を操作することを選択することができる。以下は、抗体操作のための関連技術の一般的議論である。
【0127】
ハイブリドーマを培養した後、細胞を溶解し、トータルRNAを抽出することができる。ランダムな六量体をRTで使用してRNAのcDNAコピーを生成させた後、全てのヒト可変遺伝子配列を増幅することが期待されるPCRプライマーのマルチプレックス混合物を使用してPCRを行うことができる。PCR生成物をpGEM-T Easyベクターにクローニングした後、標準的なベクタープライマーを使用する自動化されたDNAシークエンシングによりシークエンシングすることができる。ハイブリドーマ上清から回収され、Protein Gカラムを使用してFPLCにより精製された抗体を使用して結合および中和のアッセイを行うことができる。クローニングベクターからの重鎖および軽鎖Fv DNAをIgGプラスミドベクターにサブクローニングすることにより組換え全長IgG抗体を生成させ、293 Freestyle細胞またはCHO細胞にトランスフェクトし、抗体を293細胞またはCHO細胞の上清から回収および精製することができる。
【0128】
最終cGMP製造方法と同じ宿主細胞および細胞培養方法において製造された抗体の迅速な利用可能性は、方法開発プログラムの期間を低減させる潜在能力を有する。Lonzaは、CHO細胞において小量(50gまで)の抗体を迅速に製造するための、CDACF培地中で生育されたプールされたトランスフェクタントを使用する一般的方法を開発した。真の一過性システムよりは若干遅いが、利点として、より高い生成物濃度ならびに産生細胞株と同じ宿主およびプロセスの使用が挙げられる。流加モードで稼働した使い捨てバイオリアクター:使い捨てバッグバイオリアクター培養(作動体積5L)における、モデル抗体を発現するGS-CHOプールの増殖および生産性の例では、トランスフェクション9週間以内に回収抗体濃度2g/Lが達成された。
【0129】
抗体分子は、例えば、mAbのタンパク質分解切断により製造される断片(F(ab')、F(ab')2など)、または、例えば組換え手段を介して製造可能な一本鎖免疫グロブリンを含む。そのような抗体誘導体は一価である。一態様において、そのような断片は、互いに組み合わせることができ、または他の抗体断片もしくは受容体リガンドと組み合わせて「キメラ」結合分子を形成させることができる。顕著なことに、そのようなキメラ分子は、同じ分子の異なるエピトープに結合できる置換基を含有してもよい。
【0130】
1. 抗原結合の改変
関連する態様において、抗体は、開示される抗体の誘導体、例えば、開示される抗体中のCDR配列と同一のCDR配列を含む抗体(例えば、キメラ抗体、またはCDRグラフト抗体)である。あるいは、抗体分子中への保存的変化の導入などの改変を行うことが望まれる場合がある。そのような変更の実施において、アミノ酸のハイドロパシー指数が考慮されうる。タンパク質への相互作用性生物学的機能の付与におけるハイドロパシーアミノ酸指数の重要性は、当技術分野において一般に理解されている(Kyte and Doolittle, 1982)。アミノ酸の相対的なハイドロパシーの特徴は、結果として得られるタンパク質の二次構造に寄与し、そしてそれがタンパク質と他の分子(例えば、酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原など)の相互作用を規定することが認められている。
【0131】
同様のアミノ酸の置換は親水性に基づいて効果的に行うことができることも当技術分野において理解されている。参照することにより本明細書に組み入れられる米国特許第4,554,101号には、隣接するアミノ酸の親水性により支配されるタンパク質の最大の局所的な平均の親水性はタンパク質の生物学的特性と互いに関連することが述べられている。米国特許第4,554,101号に詳述されるように、以下の親水性の値がアミノ酸残基に割り当てられている:塩基性アミノ酸:アルギニン(+3.0)、リシン(+3.0)、およびヒスチジン(-0.5); 酸性アミノ酸:アスパラギン酸(+3.0±1)、グルタミン酸(+3.0±1)、アスパラギン(+0.2)、およびグルタミン(+0.2); 親水性非イオン性アミノ酸:セリン(+0.3)、アスパラギン(+0.2)、グルタミン(+0.2)、およびスレオニン(-0.4)、硫黄含有アミノ酸:システイン(-1.0)およびメチオニン(-1.3); 疎水性非芳香族アミノ酸:バリン(-1.5)、ロイシン(-1.8)、イソロイシン(-1.8)、プロリン(-0.5±1)、アラニン(-0.5)、およびグリシン(0); 疎水性芳香族アミノ酸:トリプトファン(-3.4)、フェニルアラニン(-2.5)、およびチロシン(-2.3)。
【0132】
アミノ酸は、類似の親水性を有する別のアミノ酸を置換して、生物学的または免疫学的に改変されたタンパク質を生じさせることができることが理解されている。そのような変更では、親水性の値が±2以内のアミノ酸の置換が好ましく、±1以内のものが特に好ましく、±0.5以内のものが特によりいっそう好ましい。
【0133】
上記に概要を述べたように、アミノ酸置換は、一般に、アミノ酸側鎖置換基の相対的な類似性、例えば、疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づく。様々な以上の特徴を考慮に入れた例示的な置換は当業者に周知であり、以下が挙げられる:アルギニンおよびリシン; グルタミン酸およびアスパラギン酸; セリンおよびスレオニン; グルタミンおよびアスパラギン; およびバリン、ロイシンおよびイソロイシン。
【0134】
本開示はまた、アイソタイプ改変を企図している。異なるアイソタイプを有するようにFc領域を改変することにより、異なる機能を達成することができる。例えば、IgG1への変更は抗体依存性細胞傷害を増強することができ、クラスAへの切換えは組織分布を向上させることができ、クラスMへの切換えは結合価を向上させることができる。
【0135】
改変された抗体は当業者に公知の任意の技術により調製することができ、該技術としては、標準的な分子生物学技術を通じた発現、またはポリペプチドの化学合成が挙げられる。組換え発現の方法はこの文献中の他の箇所で取り扱われる。
【0136】
2. Fc領域の改変
本明細書において開示される抗体は、Fc領域内に改変を含むようにも操作することができ、これは典型的には、抗体の1つまたは複数の機能的特性、例えば、血清半減期、補体結合、Fc受容体結合、および/またはエフェクター機能(例えば、抗原依存性の細胞傷害)を変化させるためのものである。さらには、本明細書において開示される抗体は、これもまた抗体の1つまたは複数の機能的特性を変化させるために、化学的に修飾することができ(例えば、1つまたは複数の化学的部分を抗体に結合させることができる)、またはそのグリコシル化を変化させるように修飾することができる。これらの態様のそれぞれは以下にさらに詳細に記載されている。Fc領域中の残基のナンバリングは、KabatのEUインデックスのものである。本明細書において開示される抗体はまた、変化したエフェクター機能を提供するように改変された(または遮断された)Fc領域を有する抗体を含む。例えば、米国特許第5,624,821号; WO2003/086310; WO2005/120571; WO2006/0057702を参照されたい。そのような改変を使用して、免疫系の様々な反応を増強させまたは抑制することができ、診断および療法において有益な効果を有し得る。Fc領域の変更としては、アミノ酸変化(置換、欠失および挿入)、グリコシル化または脱グリコシル化、および複数のFcの付加が挙げられる。Fcの変更はまた、治療的抗体において抗体の半減期を変化させることができ、これはより少ない頻度の投薬、したがって簡便性の増加および材料の使用の減少を可能とする。この変異は、ヒンジ領域中の重鎖ジスルフィド架橋間の不均質性を無くすることが報告されている。
【0137】
一態様において、CH1のヒンジ領域は、ヒンジ領域中のシステイン残基の数が増加または減少するように改変される。このアプローチは米国特許第5,677,425号にさらに記載されている。CH1のヒンジ領域中のシステイン残基の数を変更することにより、例えば、軽鎖および重鎖のアセンブリーが促進されて、抗体の安定性が向上または低下する。別の態様において、抗体は、その生物学的半減期を増加させるように改変される。様々なアプローチが可能である。例えば、米国特許第6,277,375号に記載されているように、以下の変異の1つまたは複数を導入することができる:T252L、T254S、T256F。あるいは、生物学的半減期を増加させるために、米国特許第5,869,046号および同第6,121,022号に記載されているように、抗体をCH1またはCL領域内で変化させて、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループからのサルベージ受容体結合エピトープを含有させることができる。さらに他の態様において、Fc領域は、抗体のエフェクター機能を変化させるために、異なるアミノ酸残基で少なくとも1つのアミノ酸残基を置換することにより変更される。例えば、抗体がエフェクターリガンドについて変化した親和性を有するが親抗体の抗原結合能力を保持するように、アミノ酸残基234、235、236、237、297、318、320および322から選択される1つまたは複数のアミノ酸を異なるアミノ酸残基で置換することができる。親和性を変更させるエフェクターリガンドは、例えば、Fc受容体または補体のC1成分であり得る。このアプローチは、米国特許第5,624,821号および同第5,648,260号にさらに詳細に記載されている。
【0138】
別の例では、アミノ酸位置231および239内の1つまたは複数のアミノ酸残基が変更されて、それにより抗体の補体結合能力が変更される。このアプローチは、PCT公開WO94/29351にさらに記載されている。さらに別の例では、Fc領域は、以下の位置:238、239、243、248、249、252、254、255、256、258、264、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、301、303、305、307、309、312、315、320、322、324、326、327、329、330、331、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、434、435、437、438または439の1つまたは複数のアミノ酸を改変することにより、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介する抗体の能力を増強もしくは低減させるためおよび/またはFcγ受容体についての抗体の親和性を向上もしくは低下させるために改変される。このアプローチは、PCT公開WO00/42072にさらに記載されている。さらに、FcγRI、FcγRII、FcγRIIIおよびFcRnについてのヒトIgG1上の結合部位がマッピングされており、また向上した結合性を有するバリアントが記載されている。位置256、290、298、333、334および339における特定の変異は、FcγRIIIに対する結合を向上させることが示された。さらに、以下の組合せの変異体は、FcγRIII結合を向上させることが示された:T256A/S298A、S298A/E333A、S298A/K224AおよびS298A/E333A/K334A。
【0139】
一態様において、Fc領域は、残基243および264を改変することにより、エフェクター機能を媒介する抗体の能力を低減させかつ/または抗炎症特性を増加させるように改変される。一態様において、抗体のFc領域は、位置243および264における残基をアラニンに変更することにより改変される。一態様において、Fc領域は、残基243、264、267および328を改変することにより、エフェクター機能を媒介する抗体の能力を低減させかつ/または抗炎症特性を増強させるように改変される。
【0140】
一態様において、Fc領域は、残基243、235、および329をアラニンまたはグリシンに改変する(L243A-L235A-P329G)ことにより、エフェクター機能を媒介する抗体の能力を消失させるように改変される。
【0141】
さらに別の態様において、抗体は特定のグリコシル化パターンを含む。例えば、非グリコシル化された抗体を調製することができる(すなわち、抗体はグリコシル化を欠いている)。抗体のグリコシル化パターンを変化させて、例えば、抗原についての抗体の親和性またはアビディティを増加させることができる。そのような改変は、例えば、抗体配列内のグリコシル化部位の1つまたは複数を変化させることにより達成することができる。例えば、可変領域フレームワークグリコシル化部位の1つまたは複数の除去をもたらし、それによりその部位におけるグリコシル化を取り除く1つまたは複数のアミノ酸置換を行うことができる。そのようなグリコシル化は、抗原についての抗体の親和性またはアビディティを増加させ得る。例えば、米国特許第5,714,350号および同第6,350,861号を参照されたい。
【0142】
グリコシル化パターンが低フコシル化または非フコシル化されたグリカンを含む抗体も調製することができ、低フコシル化された抗体または非フコシル化された抗体は、グリカン上のフコシル残基の量が低減されている。抗体はまた、増加した量の二分岐GlcNac構造を有するグリカンを含んでもよい。そのような変化したグリコシル化パターンは、抗体のADCC能力を増加させることが実証されている。そのような改変は、例えば、特定のグリコシル化パターンを有する糖タンパク質を産生するようにグリコシル化経路が遺伝子操作された宿主細胞中で抗体を発現させることにより達成することができる。これらの細胞は当技術分野において記載されており、本発明の組換え抗体を発現し、それにより変化したグリコシル化を有する抗体を製造するための宿主細胞として使用することができる。例えば、細胞株Ms704、Ms705、およびMs709はフコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8(α(1,6)-フコシルトランスフェラーゼ)を欠いており、それによりMs704、Ms705、およびMs709細胞株中で発現した抗体は、糖鎖上にフコースを欠いている。Ms704、Ms705、およびMs709 FUT8-/-細胞株は、2つの置換ベクターを使用するCHO/DG44細胞におけるFUT8遺伝子の標的破壊により作出された(米国特許出願公開第20040110704号を参照されたい。別の例として、EP1176195には、フコシルトランスフェラーゼをコードする機能的に破壊されたFUT8遺伝子を有する細胞株であって、そのような細胞株中で発現した抗体が、α-1,6結合関連酵素を低減させまたは取り除くことにより低フコシル化を呈する細胞株が記載されている。EP1176195にはまた、抗体のFc領域に結合するN-アセチルグルコサミンにフコースを加える酵素活性が低いまたは該酵素活性を有しない細胞株、例えばラット骨髄腫細胞株YB2/0(ATCC CRL 1662)が記載されている。PCT公開WO03/035835には、バリアントCHO細胞株、Lec13細胞が記載されており、これはAsn(297)連結糖鎖にフコースを結合させる能力が低減されており、その宿主細胞において発現する抗体の低フコシル化ももたらす。改変されたグリコシル化プロファイルを有する抗体はまた、PCT公開WO06/089231に記載されているように、ニワトリ卵において製造することができる。あるいは、改変されたグリコシル化プロファイルを有する抗体は、植物細胞、例えばアオウキクサ属(Lemna)植物細胞中で製造することができる(米国特許第7,632,983号)。植物系における抗体の製造方法は、米国特許第6,998,267号および同第7,388,081号に開示されている。PCT公開WO99/54342には、糖タンパク質修飾性グリコシルトランスフェラーゼ(例えば、β(1,4)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現するように操作された細胞株が記載されており、操作された細胞株中で発現した抗体は、増加した二分岐GlcNac構造を呈し、抗体のADCC活性の増加をもたらす。
【0143】
あるいは、フコシダーゼ酵素を使用して抗体のフコース残基を切り離すことができ、例えば、フコシダーゼα-L-フコシダーゼは抗体からフコシル残基を除去する。本明細書において開示される抗体は、哺乳動物様またはヒト様グリコシル化パターンを有する糖タンパク質を産生するように遺伝子操作された下等真核生物宿主細胞、特に真菌宿主細胞、例えば酵母および糸状真菌中で製造された抗体をさらに含む。現在使用されている哺乳動物細胞株に対するこれらの遺伝子改変された宿主細胞の特定の利点は、細胞中で産生される糖タンパク質のグリコシル化プロファイルを制御する能力であり、それにより特定のN-グリカン構造が支配的である糖タンパク質の組成物を製造することができる(例えば、米国特許第7,029,872号および同第7,449,308号を参照)。これらの遺伝子改変された宿主細胞は、支配的に特定のN-グリカン構造を有する抗体を製造するために使用されている。
【0144】
加えて、真菌、例えば酵母または糸状真菌は、フコシル化糖タンパク質を産生する能力を欠いているので、そのような細胞中で産生された抗体は、フコシル化糖タンパク質を産生するための酵素経路を含むように細胞がさらに改変されない限り、フコースを欠く(例えば、PCT公開WO2008112092を参照)。特定の態様において、本明細書において開示される抗体は、下等真核宿主細胞中で製造され、フコシル化および非フコシル化ハイブリッドおよび複合体N-グリカンを含む抗体をさらに含み、該N-グリカンとしては、二分岐および多アンテナ(multiantennary)種が挙げられ、GlcNAc(1-4)Man3GlcNAc2; Gal(1-4)GlcNAc(1-4)Man3GlcNAc2; NANA(1-4)Gal(1-4)GlcNAc(1-4)Man3GlcNAc2などのN-グリカンが挙げられるがこれらに限定されない。特定の態様において、本明細書において提供される抗体組成物は、GlcNAcMan5GlcNAc2; GalGlcNAcMan5GlcNAc2; およびNANAGalGlcNAcMan5GlcNAc2からなる群より選択される少なくとも1つのハイブリッドN-グリカンを有する抗体を含んでもよい。特定の局面において、ハイブリッドN-グリカンは、組成物中の支配的なN-グリカン種である。さらなる局面において、ハイブリッドN-グリカンは、組成物中のハイブリッドN-グリカンの約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%を構成する特定のN-グリカン種である。
【0145】
特定の態様において、本明細書において提供される抗体組成物は、GlcNAcMan3GlcNAc2; GalGlcNAcMan3GlcNAc2; NANAGalGlcN AcMan3 GlcNAc2; GlcNAc2Man3GlcNAc2; GalGlcNAc2Man3GlcNAc2; Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2; NANAGal2GlcNAc2Man3GlcNAc2; およびNANA2Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2からなる群より選択される少なくとも1つの複合体N-グリカンを有する抗体を含む。特定の局面において、複合体N-グリカンは、組成物中の支配的なN-グリカン種である。さらなる局面において、複合体N-グリカンは、組成物中の複合体N-グリカンの約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%を構成する特定のN-グリカン種である。特定の態様において、N-グリカンはフコシル化されている。一般に、フコースは、N-グリカンの還元末端においてGlcNAcとα1,3連結しており、N-グリカンの還元末端においてGlcNAcとα1,6連結しており、N-グリカンの非還元末端においてGalとα1,2連結しており、N-グリカンの非還元末端においてGlcNacとα1,3連結しており、またはN-グリカンの非還元末端においてGlcNAcとα1,4連結している。
【0146】
したがって、上記糖タンパク質組成物の特定の局面において、グリコフォームは、α1,3連結またはα1,6連結フコースであって、Man5GlcNAc2(Fuc)、GlcNAcMan5GlcNAc2(Fuc)、Man3GlcNAc2(Fuc)、GlcNAcMan3GlcNAc2(Fuc)、GlcNAc2Man3GlcNAc2(Fuc)、GalGlcNAc2Man3GlcNAc2(Fuc)、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2(Fuc)、NANAGal2GlcNAc2Man3GlcNAc2(Fuc)、およびNANA2Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2(Fuc)からなる群より選択されるグリコフォームを生じさせ; α1,3連結またはα1,4連結フコースであって、GlcNAc(Fuc)Man5GlcNAc2、GlcNAc(Fuc)Man3GlcNAc2、GlcNAc2(Fuc1-2)Man3GlcNAc2、GalGlcNAc2(Fuc1-2)Man3GlcNAc2、Gal2GlcNAc2(Fuc1-2)Man3GlcNAc2、NANAGal2GlcNAc2(Fuc1-2)Man3GlcNAc2、およびNANA2Gal2GlcNAc2(Fuc1-2)Man3GlcNAc2からなる群より選択されるグリコフォームを生じさせ; またはα1,2連結フコースであって、Gal(Fuc)GlcNAc2Man3GlcNAc2、Gal2(Fuc1-2)GlcNAc2Man3GlcNAc2、NANAGal2(Fuc1-2)GlcNAc2Man3GlcNAc2、およびNANA2Gal2(Fuc1-2)GlcNAc2Man3GlcNAc2からなる群より選択されるグリコフォームを生じさせる。
【0147】
さらなる局面において、抗体は高マンノースN-グリカンを含み、これには、Man8GlcNAc2、Man7GlcNAc2、Man6GlcNAc2、Man5GlcNAc2、Man4GlcNAc2、またはMan3GlcNAc2 N-グリカン構造からなるN-グリカンが含まれるがこれらに限定されない。上記のさらなる局面において、複合体N-グリカンは、フコシル化および非フコシル化された二分岐および多アンテナの種をさらに含む。本明細書において使用される場合、「N-グリカン」および「グリコフォーム」という用語は交換可能に使用され、N連結オリゴサッカリド、例えば、ポリペプチドのアスパラギン残基へのアスパラギン-Nアセチルグルコサミン連結により結合したものを指す。N連結糖タンパク質は、タンパク質中のアスパラギン残基のアミド窒素に連結したN-アセチルグルコサミン残基を含有する。
【0148】
D. 一本鎖抗体
単鎖可変断片(scFv)は、短い(通常、セリン、グリシン)リンカーと共に連結した免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の可変領域の融合物である。このキメラ分子は、定常領域の除去およびリンカーペプチドの導入にもかかわらず、元々の免疫グロブリンの特異性を保持する。この改変は、通常、変化されないまま特異性を残す。これらの分子は歴史的に、単一のペプチドとして抗原結合ドメインを発現することが高度に簡便であるファージディスプレイを促進するために作出された。あるいは、scFvは、ハイブリドーマに由来するサブクローニングされた重鎖および軽鎖から直接的に作出することができる。単鎖可変断片は、完全抗体分子中に見出され、したがって抗体を精製するために使用される一般的な結合部位(例えば、タンパク質A/G)である定常Fc領域を欠いている。プロテインLはκ軽鎖の可変領域と相互作用するので、これらの断片は、多くの場合、プロテインLを使用して精製/固定化することができる。
【0149】
フレキシブルリンカーは、一般に、ヘリックスおよびターン促進性アミノ酸残基、例えば、アラニン、セリンおよびグリシンから構成される。しかしながら、他の残基もまた機能することができる。Tang et al.(1996)は、タンパク質リンカーライブラリーから一本鎖抗体(scFv)用に特化したリンカーを迅速に選択する手段としてファージディスプレイを使用した。重鎖および軽鎖可変ドメイン用の遺伝子が可変組成物の18アミノ酸ポリペプチドをコードするセグメントにより連結されたランダムリンカーライブラリーが構築された。scFvレパートリー(約5×106個の異なるメンバー)が糸状ファージ上に提示され、ハプテンでの親和性選択に供された。選択されたバリアントの集団は結合活性の有意な増加を呈したが、かなりの配列多様性を保持した。1054種の個々のバリアントのスクリーニングは、可溶性形態で効率的に製造された触媒活性scFvをその後にもたらした。配列解析により、選択されたテザーの唯一の共通の特徴としてVHのC末端の後のリンカーの2残基における保存されたプロリンおよび他の位置における多数のアルギニンおよびプロリンが明らかになった。
【0150】
本開示の組換え抗体はまた、受容体の二量体化または多量体化を可能とする配列または部分を伴ってもよい。そのような配列としては、J鎖との組合せで多量体の形成を可能とする、IgAに由来する配列が挙げられる。別の多量体化ドメインはGal4二量体化ドメインである。他の態様において、鎖は、2つの抗体の組合せを可能とする剤、例えばビオチン/アビジンで修飾されてもよい。
【0151】
別の態様において、一本鎖抗体は、非ペプチドリンカーまたは化学ユニットを使用して受容体の軽鎖および重鎖を連結することにより作出することができる。一般に、軽鎖および重鎖は別個の細胞において製造され、精製され、その後に適切な方法で連結されて一緒にされる(すなわち、適切な化学的架橋を介して重鎖のN末端が軽鎖のC末端に取り付けられる)。
【0152】
2つの異なる分子の官能基を結び付ける分子架橋を形成させるために架橋試薬、例えば、安定化剤および凝固剤が使用される。しかしながら、同じアナログの二量体もしくは多量体または異なるアナログから構成されるヘテロマー複合体を作出できることが企図されている。工程毎の方法で2つの異なる化合物を連結させるために、望ましくないホモポリマー形成を取り除くヘテロ二機能性架橋剤を使用することができる。
【0153】
例示的なヘテロ二機能性架橋剤は2つの反応性基を含有し、1つは第一級アミン基(例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド)と反応し、他方はチオール基(例えば、ピリジルジスルフィド、マレイミド、ハロゲンなど)と反応する。第一級アミン反応性基を通じて、架橋剤は1つのタンパク質(例えば、選択された抗体または断片)のリシン残基と反応してもよく、チオール反応性基を通じて、第1のタンパク質に既に結び付けられた架橋剤は、他のタンパク質(例えば、選択的な剤)のシステイン残基(遊離スルフヒドリル基)と反応する。
【0154】
血液中で合理的な安定性を有する架橋剤が用いられることが好ましい。ターゲティング剤と治療/予防剤とをコンジュゲートさせるための使用に成功することができる多種類のジスルフィド結合含有リンカーが公知である。立体障害を受けるジスルフィド結合を含有するリンカーはインビボでより大きな安定性を与えて、作用部位に達する前のターゲティングペプチドの放出を防ぐことがある。したがって、これらのリンカーは連結剤の一群である。
【0155】
別の架橋試薬はSMPTであり、これは隣接するベンゼン環およびメチル基により「立体障害を受ける」ジスルフィド結合を含有する二機能性架橋剤である。ジスルフィド結合の立体障害は、組織および血液中に存在し得るグルタチオンなどのチオレートアニオンによる攻撃から結合を保護する機能を果たし、それにより、結合した剤の標的部位への送達の前のコンジュゲートの脱連結の防止を助けると考えられる。
【0156】
多くの他の公知の架橋試薬と同様に、SMPT架橋試薬は、システインのSHまたは第一級アミン(例えば、リシンのイプシロンアミノ基)などの官能基を架橋する能力を与える。別の可能な種類の架橋剤としては、切断性ジスルフィド結合を含有するヘテロ二機能性の光反応性フェニルアジド、例えばスルホスクシンイミジル-2-(p-アジドサリチルアミド)エチル-1,3’-ジチオプロピオネートが挙げられる。N-ヒドロキシ-スクシンイミジル基は第一級アミノ基と反応し、フェニルアジドは(光分解により)任意のアミノ酸残基と非選択的に反応する。
【0157】
障害を受ける架橋剤に加えて、障害を受けないリンカーも本発明にしたがって用いることができる。保護されたジスルフィドを含有または生成するとは考えられない他の有用な架橋剤としては、SATA、SPDP、および2-イミノチオランが挙げられる(Wawrzynczak&Thorpe, 1987)。そのような架橋剤の使用は当技術分野においてよく理解されている。別の実施形態は、フレキシブルリンカーの使用を伴う。
【0158】
米国特許第4,680,338号には、アミン含有ポリマーおよび/またはタンパク質とのリガンドのコンジュゲートを製造するため、特に、キレーター、薬物、酵素、検出可能な標識などとの抗体コンジュゲートを形成させるために有用な二機能性リンカーが記載されている。米国特許第5,141,648号および同第5,563,250号には、様々な穏やかな条件下で切断可能な不安定な結合を含有する切断性コンジュゲートが開示されている。このリンカーは、対象となる剤がリンカーに直接的に結合されて、切断が活性剤の放出をもたらし得る点で特に有用である。特定の使用としては、遊離アミノまたは遊離スルフヒドリル基をタンパク質、例えば抗体、または薬物に付加することが挙げられる。
【0159】
米国特許第5,856,456号は、融合タンパク質、例えば一本鎖抗体を調製するためのポリペプチド構成要素の接続に使用するためのペプチドリンカーを提供する。リンカーは最大約50アミノ酸の長さであり、荷電アミノ酸(好ましくはアルギニンまたはリシン)の後にプロリンの少なくとも1つの存在を含有し、かつより大きな安定性および低減された凝集により特徴付けられる。米国特許第5,880,270号には、様々な免疫診断および分離技術において有用なアミノオキシ含有リンカーが開示されている。
【0160】
E. 精製
ある特定の態様において、本開示の抗体は精製されてもよい。「精製された」という用語は、本明細書において使用される場合、他の成分から単離可能な組成物であって、タンパク質がその天然に得られ得る状態と比べて任意の程度まで精製された組成物を指すことが意図される。したがって、精製されたタンパク質はまた、それが天然に存在し得る環境から解放されたタンパク質を指す。「実質的に精製された」という用語が使用される場合、この指定は、タンパク質またはペプチドが組成物の主成分を形成し、例えば、組成物中のタンパク質の約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、またはそれより多くを構成する組成物を指す。
【0161】
タンパク質精製技術は当業者に周知である。これらの技術は、1つのレベルでは、ポリペプチドおよび非ポリペプチド画分への細胞環境の粗分別を伴う。他のタンパク質からポリペプチドを分離したら、クロマトグラフィーおよび電気泳動技術を使用して対象となるポリペプチドをさらに精製し、部分的または完全な精製(または均一までの精製)を達成することができる。純粋なペプチドの調製に特に適した分析方法は、イオン交換クロマトグラフィー、排除クロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動である。タンパク質精製のための他の方法としては、硫酸アンモニウム、PEG、抗体など、または熱変性による沈殿の後の遠心分離; ゲル濾過、逆相、ヒドロキシルアパタイトおよびアフィニティークロマトグラフィー; ならびにそのような技術および他の技術の組合せが挙げられる。
【0162】
本開示の抗体の精製において、原核または真核発現系においてポリペプチドを発現させ、変性条件を使用してタンパク質を抽出することが望ましい場合がある。ポリペプチドは、ポリペプチドのタグ付き部分に結合する親和性カラムを使用して他の細胞成分から精製することができる。当技術分野において一般に公知のように、様々な精製工程を実行する順序は変更してもよく、またはある特定の工程を省略してもよく、それでもなお実質的に精製されたタンパク質またはペプチドの調製のための好適な方法をもたらすと考えられる。
【0163】
一般的に、完全抗体は、抗体のFc部分に結合する剤(すなわち、プロテインA)を利用して分画される。あるいは、抗原を使用して適切な抗体を同時に精製および選択してもよい。そのような方法は、多くの場合、カラム、フィルターまたはビーズなどの支持体に結合した選択剤を利用する。抗体を支持体に結合させ、汚染物を除去し(例としては例えば、洗浄除去し)、条件(塩、熱など)を適用することにより抗体を放出させる。
【0164】
タンパク質またはペプチドの精製の程度を定量化する様々な方法は本開示に照らして当業者に公知であろう。これらには、例えば、活性画分の比活性を決定すること、またはSDS/PAGE解析により画分内のポリペプチドの量を評価することが含まれる。画分の純度を評価する別の方法は、画分の比活性を算出し、それを初期抽出物の比活性と比較し、したがって純度の程度を算出することである。活性の量を表すために使用される実際の単位は、当然、精製にしたがって選択された特定のアッセイ技術、および発現したタンパク質またはペプチドが検出可能な活性を呈するか否かに依存する。
【0165】
ポリペプチドの泳動は、異なる条件のSDS/PAGEを用いることで、時に著しく、変化し得ることが公知である(Capaldi et al., 1977)。したがって、異なる電気泳動条件下で、精製または部分精製された発現産物の見かけの分子量は変化し得ることが理解されるであろう。
【0166】
V. がんの治療
A. 製剤および投与
本開示は、抗LILRB2抗体およびそれを生成するための抗原を含む薬学的組成物を提供する。当該組成物は、予防または治療有効量の抗体またはその断片、および薬学的に許容される担体を含む。特定の態様において、「薬学的に許容される」という用語は、動物、より具体的にはヒトにおいて使用するために連邦もしくは州政府の規制機関により承認され、または米国薬局方もしくは他の一般に認識される薬局方に列記されることを意味する。「担体」という用語は、治療剤がそれと共に投与される希釈剤、賦形剤、またはビヒクルを指す。そのような薬学的担体は、無菌の液体、例えば水および油であってもよく、石油、動物、野菜または合成起源のもの、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などが挙げられる。水は、薬学的組成物が静脈内に投与される場合の特定の担体である。食塩水溶液および水性デキストロースおよびグリセロール溶液もまた液体担体、特に注射溶液用の液体担体として用いることができる。他の好適な薬学的賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。
【0167】
所望の場合、組成物は、微量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤も含有することができる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルション、錠剤、丸剤、カプセル、粉末、持続放出製剤などの形態をとることができる。経口製剤は、標準的な担体、例えば、薬学的グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどを含むことができる。好適な薬学的剤の例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。そのような組成物は、患者への適切な投与のための形態を提供するように好適な量の担体と共に、好ましくは精製された形態の、予防または治療有効量の抗体またはその断片を含有する。製剤は投与方式に適するべきであり、投与方式は、経口、静脈内、動脈内、頬内、鼻腔内、噴霧、気管支吸入、または機械的換気による送達であり得る。
【0168】
本明細書に記載されている本開示の抗体は、非経口投与のために配合することができ、例えば、皮内、静脈内、動脈内、筋肉内、皮下、腫瘍内または腹腔内経路を介した注射のために配合することができる。抗体は、代替的に、粘膜に直接的に局所経路により、例えば、点鼻、吸入、またはネブライザーにより投与されてもよい。薬学的に許容される塩としては、酸の塩および無機酸、例えば塩酸もしくはリン酸、または有機酸、例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などと形成された塩が挙げられる。遊離カルボキシル基と形成された塩はまた、無機塩基、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化第二鉄、および有機塩基、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来してもよい。
【0169】
人為的獲得受動免疫として公知である抗体の受動的移入は、概して、静脈注射の使用を伴う。抗体の形態は、静脈内(IVIG)または筋肉内(IG)の使用のためのプールされたヒト免疫グロブリンとして、免疫化されたまたは疾患から回復しているドナーからの高力価ヒトIVIGまたはIGとして、およびモノクローナル抗体(MAb)としての、ヒトまたは動物の血漿または血清であり得る。そのような免疫は、概して、短期間しか続かず、過敏反応、および血清病、特に非ヒト起源のガンマグロブリンからの血清病の潜在的なリスクもある。しかしながら、受動免疫は即時の保護を提供する。抗体は、注射のために好適な、すなわち無菌の注射針を通過可能な担体中に配合される。
【0170】
概して、本開示の組成物の成分は、例えば、気密密封容器、例えば、活性剤の量を示すアンプルまたはサシェ中に、例えば、凍結乾燥粉末または無水濃縮物として別々にまたは単位投与剤形中に一緒に混合されて供給される。組成物が注入により投与される場合、無菌の薬学的グレードの水または食塩水を含有する注入ボトルを用いて分配することができる。組成物が注射により投与される場合、成分が投与の前に混合され得るように注射用の滅菌水または食塩水のアンプルを提供することができる。
【0171】
本開示の組成物は、中性または塩の形態として配合することができる。薬学的に許容される塩としては、アニオン、例えば、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するアニオンと形成された塩、およびカチオン、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するカチオンと形成された塩が挙げられる。
【0172】
B. 細胞療法
別の局面において、本開示は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する免疫細胞を提供する。一部の態様において、CARは、本明細書において提供される抗原結合断片を含む。一態様において、CARタンパク質は、N末端からC末端へと、リーダーペプチド、抗LILRB2重鎖可変ドメイン、リンカードメイン、抗LILRB2軽鎖可変ドメイン、ヒトIgG1-CH2-CH3ドメイン、スペーサー領域、CD28膜貫通ドメイン、4-1BB細胞内共刺激シグナル伝達およびCD3ζ細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含む。
【0173】
また、有効量の本開示の免疫細胞を投与する工程を含む、免疫療法の方法も提供される。一態様において、医学的疾患または障害は、免疫応答を誘発する免疫細胞集団の移植により治療される。本開示のある特定の態様において、がんまたは感染症は、免疫応答を誘発する免疫細胞集団の移植により治療される。個体に有効量の抗原特異的な細胞療法を投与する工程を含む、個体においてがんを治療するかまたはその進行を遅延させる方法が本明細書において提供される。
【0174】
免疫細胞は、T細胞(例えば、制御性T細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞、もしくはγδT細胞)、NK細胞、インバリアントNK細胞、NKT細胞、またはマクロファージであってもよい。免疫細胞を製造および操作する方法の他に、養子細胞療法のために該細胞を使用および投与する方法もまた本明細書において提供され、養子細胞療法の場合、細胞は自己または同種であってもよい。そのため、免疫細胞は、がん細胞のターゲティングなどの免疫療法として使用されてもよい。
【0175】
免疫細胞は、対象、特にヒト対象から単離されてもよい。免疫細胞は、健常ヒト対象、健常ボランティア、または健常ドナーから得ることができる。免疫細胞は、目的の対象、例えば、特定の疾患もしくは病態を有することが疑われる対象、特定の疾患もしくは病態に対する素因を有することが疑われる対象、または特定の疾患もしくは病態に対する療法を受けている対象から得ることができる。免疫細胞は、それらが対象において存在する任意の位置から収集することができ、該位置としては、血液、臍帯血、脾臓、胸腺、リンパ節、および骨髄が挙げられるがそれに限定されない。単離された免疫細胞は直接的に使用されてもよく、または、凍結などにより、ある期間にわたり貯蔵することができる。
【0176】
免疫細胞は、それらが存在する任意の組織から濃縮/精製されてもよく、該組織としては、血液(血液バンクまたは臍帯血バンクにより収集された血液を含む)、脾臓、骨髄、外科的処置の間に除去および/または露出された組織、ならびに生検手順を介して得られた組織が挙げられるがそれに限定されない。免疫細胞が濃縮、単離、および/または精製される由来となる組織/臓器は、生存対象および非生存対象の両方から単離されてもよく、非生存対象は臓器ドナーである。特定の態様において、免疫細胞は、血液、例えば、末梢血または臍帯血から単離される。一部の局面において、臍帯血から単離された免疫細胞は、CD4またはCD8陽性T細胞抑制により測定されるものなどの、増強した免疫調節能力を有する。特定の局面において、免疫細胞は、増強した免疫調節能力のために、プールされた血液、特にプールされた臍帯血から単離される。プールされた血液は、2つ以上の供給源、例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、またはより多くの供給源(例えば、ドナー対象)からのものであってもよい。
【0177】
免疫細胞の集団は、療法を必要とするか、または低減した免疫細胞活性と関連する疾患を患っている対象から得ることができる。そのため、細胞は、療法を必要とする対象にとって自己である。代替的に、免疫細胞の集団は、ドナー、好ましくは組織適合性のマッチしたドナーから得ることができる。免疫細胞集団は、末梢血、臍帯血、骨髄、脾臓、または免疫細胞が対象もしくはドナー中で存在する任意の他の臓器/組織から回収することができる。免疫細胞は、対象および/またはドナーのプール、例えば、プールされた臍帯血から単離することができる。
【0178】
免疫細胞の集団が対象とは別個のドナーから得られる場合、ドナーは好ましくは同種であり、但し、得られる細胞は、対象に導入することができるという点で対象適合性である。同種ドナー細胞は、ヒト白血球抗原(HLA)適合性であってもよく、またはそうでなくてもよい。対象適合性とするために、同種細胞は、免疫原性を低減するように処理され得る。
【0179】
免疫細胞は、操作されたTCRおよび/またはキメラ抗原受容体(CAR)などの抗原受容体を発現するように遺伝子操作され得る。例えば、宿主細胞(例えば、自己または同種T細胞)は、がん抗原に対する抗原特異性を有するT細胞受容体(TCR)を発現するように改変される。特定の態様において、NK細胞は、TCRを発現するように操作される。NK細胞は、CARを発現するようにさらに操作されてもよい。異なる抗原に対するものなどの複数のCARおよび/またはTCRは、T細胞またはNK細胞などの単一の細胞種に加えられてもよい。
【0180】
改変の好適な方法は、当該技術分野において公知である。例えば、Sambrook et al.、上掲;およびAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates and John Wiley&Sons, NY, 1994を参照。例えば、細胞は、Heemskerk et al.(2008)およびJohnson et al.(2009)に記載の形質導入技術を使用してがん抗原に対する抗原特異性を有するT細胞受容体(TCR)を発現するように形質導入されてもよい。
【0181】
いくつかの態様において、細胞は、1つまたは複数の抗原受容体をコードする遺伝子操作を介して導入された1つまたは複数の核酸、およびそのような核酸の遺伝子操作された生成物を含む。一部の態様において、核酸は、異種、すなわち、細胞または細胞から得られる試料中に通常存在せず、例えば、例えば操作されている細胞において、および/またはそのような細胞が由来する生物において通常見出されない、別の生物または細胞から得られるものである。一部の態様において、核酸は、天然に見出されない(例えば、キメラの)核酸などの、天然に存在しないものである。
【0182】
C. 併用療法
追加の抗がん療法と組み合わせて本開示の抗体を使用する併用治療を提供することも望ましいことがある。これらの療法は、1つまたは複数の疾患パラメーターの低減を達成するのに効果的な合わせた量で提供される。この方法は、例えば、両方の剤を含む単一の組成物または薬理学的製剤を使用して、または1つの組成物が抗体を含みかつ他の組成物が他の剤を含む2つの別個の組成物または製剤と細胞/対象を同時に接触させることにより、細胞/対象を両方の剤/療法と同時に接触させることを伴い得る。
【0183】
あるいは、抗体は、数分から数週に及ぶ間隔で他の治療に先立ってもよく、またはその後であってもよい。一般に、各送達の時点の間に長い期間が過ぎないようにして、療法が細胞/対象に対して有利に組合せ効果をなおも発揮できることを確実にする。そのような例では、細胞を両方のモダリティーと互いに約12~24時間以内、互いに約6~12時間以内、または約12時間のみの遅延時間で接触させることが企図される。しかしながら、いくつかの状況では、治療の期間を大幅に延長させて、各投与の間に数10日間(例えば、2、3、4、5、6、または7)から数週間(例えば、1、2、3、4、5、6、7、または8)が過ぎるようにすることが望ましいことがある。
【0184】
抗LILRB2抗体または他の治療法のいずれかを複数回投与することが所望されることも考えられる。以下に例示されるように、抗体を「A」とし、他の療法を「B」とする様々な組合せを用いることができる。
【0185】
他の組合せが企図されている。細胞を殺傷し、細胞増殖を阻害し、転移を阻害し、血管新生を阻害し、またはそれ以外に腫瘍細胞の悪性表現型を後退させもしくは低減させるために、本発明の方法および組成物を使用して、標的細胞または部位を抗体および少なくとも1つの他の療法と接触させることができる。これらの療法は、がん細胞を殺傷するかまたはその増殖を阻害するのに効果的な合わせた量で提供される。この方法は、細胞/部位/対象を剤/療法と同時に接触させることを伴ってもよい。
【0186】
本開示の抗体との併用療法のために企図されている特定の剤としては、化学療法剤および造血幹細胞移植が挙げられる。化学療法剤には、シタラビン(ara-C)およびアントラサイクリン(最も多くの場合、ダウノルビシン)、高用量シタラビン単独、誘導化学療法、通常アントラサイクリンに加えてオールトランスレチノイン酸(ATRA)、地固め療法の完了後のヒスタミンジヒドロクロリド(セプレン)およびインターロイキン2(プロロイキン)、高用量化学療法の候補ではない再発性AMLを有する60歳を超える年齢の患者のためのゲムツズマブオゾガマイシン(マイロターグ)、クロファラビンの他に、標的療法、例えば、キナーゼ阻害剤、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、デシタビン、およびMDR1(多剤耐性タンパク質)の阻害剤、または三酸化ヒ素もしくは再発性急性前骨髄球性白血病(APL)が含まれ得る。
【0187】
ある特定の態様において、併用療法のための剤は、トポイソメラーゼ阻害剤、アントラサイクリントポイソメラーゼ阻害剤、アントラサイクリン、ダウノルビシン、ヌクレオシド代謝阻害剤、シタラビン、低メチル化剤、低用量シタラビン(LDAC)、ダウノルビシンとシタラビンとの組合せ、注射用のダウノルビシンおよびシタラビンリポソーム、ヴィキセオス(登録商標)、アザシチジン、ビダーザ(登録商標)、デシタビン、オールトランスレチノイン酸(ATRA)、ヒ素、三酸化ヒ素、ヒスタミン二塩酸塩、セプレン(登録商標)、インターロイキン-2、アルデスロイキン、プロロイキン(登録商標)、ゲムツズマブオゾガマイシン、マイロターグ(登録商標)、FLT-3阻害剤、ミドスタウリン、ライダプト(登録商標)、クロファラビン、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、デシタビン、IDH1阻害剤、イボシデニブ、チブソボ(登録商標)、IDH2阻害剤、エナシデニブ、イディファ(Idhifa)(登録商標)、スムーズンド(SMO)阻害剤、グラスデギブ、アルギナーゼ阻害剤、IDO阻害剤、エパカドスタット、BCL-2阻害剤(BCL-2 inihbitor)、ベネトクラクス、ベネクレクスタ(登録商標)、白金錯体誘導体、オキサリプラチン、キナーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、PI3キナーゼ阻害剤、BTK阻害剤、イブルチニブ、イムブルビカ(登録商標)、アカラブルチニブ、カルクエンス(登録商標)、ザヌブルチニブ、PD-1抗体、PD-L1抗体、CTLA-4抗体、LAG3抗体、ICOS抗体、TIGIT抗体、TIM3抗体、CD40抗体、4-1BB抗体、CD47抗体、SIRP1α抗体または融合タンパク質、CD70抗体、CLL1抗体、CD123抗体、E-セレクチンのアンタゴニスト、腫瘍抗原に結合する抗体、T細胞表面マーカーに結合する抗体、骨髄細胞またはNK細胞表面マーカーに結合する抗体、アルキル化剤、ニトロソウレア剤、代謝拮抗物質、抗腫瘍性抗生物質、植物に由来するアルカロイド、ホルモン療法薬、ホルモンアンタゴニスト、アロマターゼ阻害剤、ならびにP糖タンパク質阻害剤からなる群より選択される1つまたは複数の薬物である。
【0188】
VI. 抗体コンジュゲート
本開示の抗体は、少なくとも1つの剤と連結させて抗体コンジュゲートを形成させることができる。診断または治療剤としての抗体分子の有効性を増加させるために、少なくとも1つの所望の分子または部分を連結させまたは共有結合させまたは複合体化させることが慣例として為されている。そのような分子または部分は、少なくとも1つのエフェクターまたはレポーター分子であってもよいがこれらに限定されない。エフェクター分子は、所望の活性、例えば細胞傷害活性を有する分子を含む。抗体に取り付けられたエフェクター分子の非限定的な例としては、毒素、抗腫瘍剤、治療酵素、放射性核種、抗ウイルス剤、キレート剤、サイトカイン、成長因子、およびオリゴまたはポリヌクレオチドが挙げられる。対照的に、レポーター分子は、アッセイを使用して検出され得る任意の部分として定義される。抗体にコンジュゲートされたレポーター分子の非限定的な例としては、酵素、放射性標識、ハプテン、蛍光標識、リン光性分子、化学発光分子、発色団、光親和性分子、有色粒子またはリガンド、例えばビオチンが挙げられる。
【0189】
抗体-薬物コンジュゲートが、がん治療法の開発に対するブレークスルーアプローチとして登場した。抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、細胞殺傷性薬物に共有結合的に連結されたモノクローナル抗体(MAb)を含む。このアプローチは、抗原標的に対するMAbの高い特異性を高度に強力な細胞傷害性薬物と組み合わせており、濃縮されたレベルの抗原を有する腫瘍細胞にペイロード(薬物)を送達する「武装化」(armed)MAbを結果としてもたらす。薬物の標的指向性送達はまた、正常組織におけるその曝露を最小化して、毒性の低減および治療指数の向上を結果としてもたらす。FDAによる2011年のアドセトリス(登録商標)(ブレンツキシマブベドチン)および2013年のカドサイラ(登録商標)(トラスツズマブエムタンシンまたはT-DM1)という2つのADC薬物の承認により該アプローチは検証された。がん治療のための臨床試験の様々なステージにある30種より多くのADC薬物候補が現在存在する(Leal et al., 2014)。抗体操作およびリンカー-ペイロード最適化がより成熟するにつれて、新たなADCの発見および開発は、このアプローチに好適な新たな標的の同定および検証ならびに標的指向性MAbの生成にますます依存するようになっている。ADC標的についての2つの基準は、腫瘍細胞における上方調節された/高いレベルの発現および堅牢な内部移行である。
【0190】
抗体コンジュゲートはまた、診断剤としての使用のために好ましい。抗体診断は、一般に、2つのクラス内に入り、すなわち、インビトロ診断、例えば様々なイムノアッセイにおいて使用するためのもの、および一般に「抗体指向性イメージング」(antibody-directed imaging)として公知の、インビボ診断プロトコールにおいて使用するためのものである。多くの適切なイメージング剤が当技術分野において公知であり、抗体へのそれらの取付け方法についても同様である(例えば、米国特許第5,021,236号、同第4,938,948号、および同第4,472,509号を参照)。使用されるイメージング部分は、常磁性イオン、放射活性同位体、蛍光色素、NMRで検出可能な物質、およびX線イメージング剤であり得る。
【0191】
常磁性イオンの場合、例として、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)および/またはエルビウム(III)などのイオンが挙げられ、ガドリニウムが特に好ましい。X線イメージングなどの他の文脈で有用なイオンとしては、ランタン(III)、金(III)、鉛(II)、および特にビスマス(III)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0192】
治療および/または診断への応用のための放射活性同位体の場合、アスタチン211、14炭素、51クロム、36塩素、57コバルト、58コバルト、銅67、152Eu、ガリウム67、3水素、ヨウ素123、ヨウ素125、ヨウ素131、インジウム111、59鉄、32リン、レニウム186、レニウム188、75セレニウム、35硫黄、テクニシウム99mおよび/またはイットリウム90が挙げられる。125Iは、多くの場合、ある特定の態様における使用のために好ましく、テクニシウム99mおよび/またはインジウム111もまた、多くの場合、低いエネルギーおよび長距離検出のための好適性により好ましい。放射性標識された本開示のモノクローナル抗体は、当技術分野における周知の方法にしたがって製造することができる。例えば、モノクローナル抗体は、ヨウ化ナトリウムおよび/またはカリウムならびに化学的酸化剤、例えば次亜塩素酸ナトリウム、または酵素酸化剤、例えばラクトペルオキシダーゼと接触させることによりヨウ素化することができる。本開示によるモノクローナル抗体は、リガンド交換法により、例えば、過テクネチウム酸(pertechnate)を第一スズ溶液で還元し、還元したテクネチウムをSephadexカラムにキレートさせ、かつこのカラムに抗体を適用することにより、テクネチウム99mで標識されてもよい。あるいは、例えば、過テクネチウム酸、還元剤、例えばSNCl2、緩衝溶液、例えばフタル酸ナトリウム-カリウム溶液、および抗体をインキュベートすることにより、直接的な標識化技術を使用してもよい。金属イオンとして存在する放射性同位体を抗体に結合させるために多くの場合に使用される中間体官能基は、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)またはエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)である。
【0193】
コンジュゲートとして使用するために企図されている蛍光標識としては、Alexa 350、Alexa 430、AMCA、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665、BODIPY-FL、BODIPY-R6G、BODIPY-TMR、BODIPY-TRX、Cascade Blue、Cy3、Cy5,6-FAM、フルオレセインイソチオシアネート、HEX、6-JOE、Oregon Green 488、Oregon Green 500、Oregon Green 514、Pacific Blue、REG、Rhodamine Green、Rhodamine Red、Renographin、ROX、TAMRA、TET、テトラメチルローダミン、および/またはTexas Redが挙げられる。
【0194】
本開示において企図されている別の種類の抗体コンジュゲートは、主にインビトロでの使用のために意図されるものであり、その場合、抗体は、二次結合リガンドおよび/または発色基質との接触により有色生成物を生成する酵素(酵素タグ)に連結されている。好適な酵素の例としては、ウレアーゼ、アルカリホスファターゼ、(ホースラディッシュ)水素ペルオキシダーゼまたはグルコースオキシダーゼが挙げられる。好ましい二次結合リガンドは、ビオチンならびにアビジンおよびストレプトアビジン化合物である。そのような標識の使用は当業者に周知であり、例えば、米国特許第3,817,837号、同第3,850,752号、同第3,939,350号、同第3,996,345号、同第4,277,437号、同第4,275,149号および同第4,366,241号に記載されている。
【0195】
抗体への分子の部位特異的取付けのさらに別の公知の方法は、ハプテンベースの親和性標識との抗体の反応を含む。本質的に、ハプテンベースの親和性標識は抗原結合部位中のアミノ酸と反応し、それによりこの部位を破壊しかつ特定の抗原反応を遮断する。しかしながら、これは抗体コンジュゲートによる抗原結合の損失をもたらすので、有利でないことがある。
【0196】
アジド基を含有する分子もまた、低強度紫外光により生成される反応性ニトレン中間体を通じてタンパク質への共有結合を形成するために使用されてもよい(Potter and Haley, 1983)。特に、プリンヌクレオチドの2-および8-アジドアナログは、粗細胞抽出物中のヌクレオチド結合タンパク質を同定するための部位指向性光プローブ(site-directed photoprobe)として使用されている(Owens&Haley, 1987; Atherton et al, 1985)。2-および8-アジドヌクレオチドは、精製されたタンパク質のヌクレオチド結合ドメインをマッピングするためにも使用されており(Khatoon et al, 1989; King et al, 1989; Dholakia et al, 1989)、抗体結合剤として使用することができる。
【0197】
抗体のそのコンジュゲート部分への取付けまたはコンジュゲートのためのいくつかの方法が当技術分野において公知である。いくつかの取付け方法は、例えば、抗体に取り付けられた有機キレート剤、例えば、ジエチレントリアミンペンタ酢酸無水物(DTPA); エチレントリアミンテトラ酢酸; N-クロロ-p-トルエンスルホンアミド; および/またはテトラクロロ-3α-6α-ジフェニルグリコウリル(diphenylglycouril)-3を用いる金属キレート錯体の使用を伴う(米国特許第4,472,509号および同第4,938,948号)。モノクローナル抗体はまた、カップリング剤、例えばグルタルアルデヒドまたは過ヨウ素酸塩の存在下で酵素と反応させてもよい。フルオレセインマーカーとのコンジュゲートは、これらのカップリング剤の存在下でまたはイソチオシアネートとの反応により調製される。米国特許第4,938,948号では、モノクローナル抗体を使用して乳房腫瘍のイメージングが達成されており、検出可能なイメージング部分は、リンカー、例えばメチル-p-ヒドロキシベンズイミデートまたはN-スクシンイミジル-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを使用して抗体に結合されている。
【0198】
他の態様において、抗体の組合せ部位を変化させない反応条件を使用して免疫グロブリンのFc領域中にスルフヒドリル基を選択的に導入することによる免疫グロブリンの誘導体化が企図される。この方法論にしたがって製造される抗体コンジュゲートは、向上した寿命、特異性および感度を呈することが開示されている(米国特許第5,196,066号; 参照することにより本明細書に組み入れられる)。レポーターまたはエフェクター分子がFc領域中の炭化水素残基にコンジュゲートされるエフェクターまたはレポーター分子の部位特異的取付けもまた文献に開示されている(O’Shannessy et al, 1987)。このアプローチは、現在臨床評価されている診断的および治療的に有望な抗体を製造することが報告されている。
【0199】
VII. 免疫検出法
またさらなる態様において、本開示は、LILRB関連がんを結合し、精製し、除去し、定量化しおよびそれ以外に一般に検出するための免疫検出法に関する。そのような方法は伝統的な意味で応用することができるが、別の使用は、ワクチンおよび他のウイルスストックの品質管理およびモニタリングであり、それらにおいては、本開示による抗体をウイルス中のH1抗原の量または完全性(すなわち、長期安定性)を評価するために使用することができる。あるいは、適切な/所望の反応性プロファイルについて様々な抗体をスクリーニングするために方法を使用してもよい。
【0200】
少数を挙げると、いくつかの免疫検出法としては、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、イムノラジオメトリックアッセイ、フルオロイムノアッセイ、化学発光アッセイ、生物発光アッセイ、およびウエスタンブロットが挙げられる。特に、LILRBの検出および定量のための競合アッセイも提供される。様々な有用な免疫検出法の工程が、例えば、Doolittle and Ben-Zeev(1999)、Gulbis and Galand(1993)、De Jager et al.(1993)、およびNakamura et al.(1987)などの科学文献に記載されている。一般に、免疫結合法は、LILRB関連がんを含有することが疑われる試料を得ること、および、場合により、免疫複合体の形成を可能とするのに効果的な条件下で、本開示による第1の抗体と試料を接触させることを含む。
【0201】
これらの方法は、試料からのLILRBまたはLILRB関連がん細胞を検出または精製する方法を含む。抗体は、好ましくは、固体支持体、例えば、カラムマトリックスの形態の固体支持体に連結され、かつ、LILRB関連がん細胞を含有することが疑われる試料は、固定化された抗体に適用される。望ましくない成分はカラムから洗浄されて、固定化された抗体に免疫複合体化したLILRB発現細胞を残し、次に該複合体は、カラムから生物または抗原を除去することにより回収される。
【0202】
免疫結合法はまた、試料中のLILRB関連がん細胞または関連成分を検出しかつその量を定量化するためならびに結合処理の間に形成された任意の免疫複合体の検出および定量化のための方法を含む。ここでは、LILRB関連がん細胞を含有することが疑われる試料を得、かつ試料をLILRBまたはその成分に結合する抗体と接触させた後、特定の条件下で形成された免疫複合体を検出しかつその量を定量化する。抗原検出に関して、分析される生体試料は、LILRB関連がんを含有することが疑われる任意の試料、例えば、組織切片もしくは検体、ホモジナイズされた組織抽出物、血液および血清などの体液、または糞便もしくは尿などの分泌物であってもよい。
【0203】
免疫複合体(一次免疫複合体)の形成を可能とするのに効果的な条件下かつそのために充分な期間にわたり選択された生体試料を抗体と接触させることは、一般に、単純に抗体組成物を試料に加え、かつ抗体が免疫複合体を形成する、すなわちLILRBに結合するために充分な長さの期間にわたって混合物をインキュベートすることである。この時間の後、試料-抗体組成物、例えば、組織切片、ELISAプレート、ドットブロットまたはウエスタンブロットは、一般に、あらゆる非特異的に結合した抗体種を除去するために洗浄され、一次免疫複合体内に特異的に結合した抗体のみが検出されることを可能とする。
【0204】
一般に、免疫複合体形成の検出は当技術分野において周知であり、多数のアプローチの適用を通じて達成され得る。これらの方法は、一般に、標識またはマーカー、例えば、放射性タグ、蛍光タグ、生物学的タグ、および酵素タグのいずれかの検出に基づく。そのような標識の使用に関する特許としては、米国特許第3,817,837号、同第3,850,752号、同第3,939,350号、同第3,996,345号、同第4,277,437号、同第4,275,149号および同第4,366,241号が挙げられる。当然、当技術分野において公知のように、二次結合リガンド、例えば、二次抗体および/またはビオチン/アビジンリガンド結合の構成の使用を通じて追加の利点が見出され得る。
【0205】
検出に用いられる抗体は、検出可能な標識にそれ自体が連結されてもよく、その場合、単純にこの標識を検出することにより、組成物中の一次免疫複合体の量を決定することが可能となる。あるいは、一次免疫複合体内に結合した第1の抗体は、該抗体に結合親和性を有する第2の結合リガンドにより検出されてもよい。これらの場合、第2の結合リガンドは、検出可能な標識に連結されてもよい。第2の結合リガンドは多くの場合、それ自体が抗体であり、その場合それは「二次」抗体と称されることがある。二次免疫複合体の形成を可能とするのに効果的な条件下かつそのために充分な期間にわたり、一次免疫複合体を、標識された二次結合リガンド、または抗体と接触させる。次に、二次免疫複合体は、一般に、あらゆる非特異的に結合した標識された二次抗体またはリガンドを除去するために洗浄された後、二次免疫複合体中に残った標識が検出される。
【0206】
さらなる方法は、2工程アプローチによる一次免疫複合体の検出を含む。上記のように、二次免疫複合体を形成するために、該抗体に結合親和性を有する抗体などの第2の結合リガンドが使用される。洗浄後、これもまた免疫複合体(三次免疫複合体)の形成を可能とするのに効果的な条件下かつそのために充分な期間にわたり、第2の抗体と結合親和性を有する第3の結合リガンドまたは抗体と二次免疫複合体を接触させる。第3のリガンドまたは抗体は検出可能な標識に連結され、そのように形成される三次免疫複合体の検出を可能とする。この系は、これが所望される場合、シグナル増幅を提供し得る。
【0207】
免疫検出の1つの方法は2つの異なる抗体を使用する。標的抗原を検出するために第1のビオチン化抗体が使用され、次に複合体化したビオチンに結合したビオチンを検出するために第2の抗体が使用される。その方法では、試験される試料は最初に、第1の工程の抗体を含有する溶液中でインキュベートされる。標的抗原が存在する場合、抗体の一部は抗原に結合してビオチン化抗体/抗原複合体を形成する。次に、ストレプトアビジン(またはアビジン)、ビオチン化DNA、および/または相補的ビオチン化DNAの連続溶液中でのインキュベーションにより抗体/抗原複合体を増幅させ、各工程では抗体/抗原複合体に追加のビオチン部位が付加される。好適なレベルの増幅が達成されるまで増幅工程を繰り返し、それが達成された時点で、ビオチンに対する第2の工程の抗体を含有する溶液中で試料がインキュベートされる。この第2の工程の抗体は、例えば、色原体基質を使用する組織酵素学により抗体/抗原複合体の存在を検出するために使用できる酵素により標識される。好適に増幅されると、巨視的に可視的なコンジュゲートを産生することができる。
【0208】
免疫検出の別の公知の方法は、イムノPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)の方法論を利用する。PCR法は、ビオチン化DNAとのインキュベーションまでCantorの方法に類似するが、複数ラウンドのストレプトアビジンおよびビオチン化DNAのインキュベーションを使用する代わりに、抗体を解放させる低pHまたは高塩の緩衝液でDNA/ビオチン/ストレプトアビジン/抗体複合体が洗浄される。次に、結果として得られる洗浄溶液を使用して、適切な対照と共に好適なプライマーを用いるPCR反応が実行される。少なくとも理論上は、単一の抗原分子を検出するために、PCRの非常に大きい増幅能力および特異性を利用することができる。
【0209】
1. ELISA
最も単純かつ直接的な意味において、イムノアッセイは結合アッセイである。ある特定の好ましいイムノアッセイは、当技術分野において公知の様々な種類の酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)およびラジオイムノアッセイ(RIA)である。組織切片を使用する免疫組織化学検出もまた特に有用である。しかしながら、検出はそのような技術に限定されないこと、およびウエスタンブロッティング、ドットブロッティング、FACS分析などもまた使用されてもよいことが容易に理解されるであろう。
【0210】
1つの例示的なELISAでは、本開示の抗体は、タンパク質親和性を呈する選択された表面、例えば、ポリスチレンマイクロタイタープレート中のウェルに固定化される。次に、LILRB関連がん細胞を含有することが疑われる試験組成物がウェルに加えられる。結合および非特異的に結合した免疫複合体を除去するための洗浄後に、結合した抗原を検出することができる。検出は、検出可能な標識に連結された別の抗LILRB抗体を加えることにより達成することができる。この種類のELISAは単純な「サンドイッチELISA」である。検出はまた、第2の抗LILRB2抗体を加えた後、第2の抗体に結合親和性を有する、検出可能な標識に連結された第3の抗体を加えることにより達成されてもよい。
【0211】
別の例示的なELISAでは、LILRB2関連がん細胞を含有することが疑われる試料をウェル表面に固定化させた後、本開示の抗LILRB2抗体と接触させる。結合および非特異的に結合した免疫複合体を除去するための洗浄の後に、結合した抗LILRB2抗体が検出される。最初の抗LILRB2抗体が検出可能な標識に連結されている場合、免疫複合体は直接的に検出されてもよい。ここでもまた、免疫複合体は、第1の抗LILRB2抗体に結合親和性を有する第2の抗体(第2の抗体は検出可能な標識に連結されている)を使用して検出されてもよい。
【0212】
用いられるフォーマットにかかわらず、ELISAは、ある特定の特徴、例えば、コーティング、インキュベーションおよび結合、非特異的に結合した種を除去するための洗浄、および結合した免疫複合体の検出を共通して有する。これらを以下に記載する。
【0213】
抗原または抗体のいずれかでのプレートのコーティングでは、一般に、終夜または特定された時間にわたり、プレートのウェルを抗原または抗体の溶液とインキュベートする。次に、プレートのウェルを洗浄して、不完全に吸着した材料を除去する。次に、試験抗血清に関して抗原として中性である非特異的タンパク質でウェルのあらゆる残っている利用可能な表面を「コーティング」する。これらには、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼインまたは粉乳の溶液が含まれる。コーティングにより、固定化表面上の非特異的な吸着部位のブロッキングが可能となり、したがって表面上への抗血清の非特異的結合により引き起こされるバックグラウンドが低減される。
【0214】
ELISAにおいて、直接的な手順よりもむしろ、二次または三次検出を使用することが恐らくより慣例的である。したがって、ウェルにタンパク質または抗体を結合させ、非反応性材料でコーティングしてバックグラウンドを低減させ、洗浄して未結合の材料を除去した後、免疫複合体(抗原/抗体)形成を可能とするのに効果的な条件下で、試験される生体試料を固定化表面に接触させる。次に、免疫複合体の検出は、標識された二次結合リガンドまたは抗体、および標識された三次抗体または第3の結合リガンドと組み合わせた二次結合リガンドまたは抗体を必要とする。
【0215】
「免疫複合体(抗原/抗体)形成を可能とするのに効果的な条件下」は、条件が、好ましくは、抗原および/または抗体を溶液、例えば、BSA、ウシガンマグロブリン(BGG)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)/Tweenで希釈することを含むことを意味する。これらの加えられる剤はまた、非特異的なバックグラウンドの低減を補助する傾向がある。
【0216】
「好適な」条件はまた、インキュベーションが、効果的な結合を可能とするために充分な温度または期間行われることを意味する。インキュベーション工程は、典型的には、約1から2時間から4時間程度、好ましくは25℃~27℃程度の温度で行われ、または約4℃程度で終夜行われてもよい。
【0217】
ELISAにおける全てのインキュベーション工程後、接触させた表面を洗浄して、複合体化していない材料を除去する。好ましい洗浄手順は、PBS/Tween、またはホウ酸緩衝液などの溶液での洗浄を含む。試験試料と元々結合した材料との特異的免疫複合体の形成、およびその後の洗浄後、微量の免疫複合体の存在さえも決定することができる。
【0218】
検出手段を提供するために、第2または第3の抗体は、検出を可能とするための会合した標識を有する。好ましくは、これは、適切な発色基質とインキュベートすると呈色を生成する酵素である。したがって、例えば、さらなる免疫複合体形成の発生に有利に働く期間および条件下(例えば、PBS-TweenなどのPBS含有溶液中、室温で2時間のインキュベーション)でウレアーゼ、グルコースオキシダーゼ、アルカリホスファターゼまたは水素ペルオキシダーゼコンジュゲート抗体と第1および第2の免疫複合体を接触させまたはインキュベートすることが望まれる。
【0219】
標識された抗体とのインキュベーションと、それに続く未結合の材料を除去するための洗浄の後、例えば、発色基質、例えば、尿素、またはブロモクレゾールパープル、または2,2’-アジノ-ジ-(3-エチル-ベンズチアゾリン-6-スルホン酸(ABTS)、または酵素標識としてペルオキシダーゼの場合はH2O2とのインキュベーションにより標識の量が定量化される。次に、例えば可視スペクトル分光光度計を使用して、発色の程度を測定することにより定量化が達成される。
【0220】
2. ウエスタンブロット
ウエスタンブロット(あるいはタンパク質イムノブロット)は、組織ホモジネートまたは抽出物の所与の試料中の特定のタンパク質を検出するために使用される分析技術である。それは、ポリペプチドの長さにより(変性条件)またはタンパク質の3D構造(天然/非変性条件)により天然または変性タンパク質を分離するためにゲル電気泳動を使用する。次に、タンパク質を膜(典型的にニトロセルロースまたはPVDF)に転写し、標的タンパク質に特異的な抗体を使用してプロービング(検出)する。
【0221】
試料は、全組織からまたは細胞培養物から採ることができる。ほとんどの場合、ブレンダーを使用して(大きい試料体積の場合)、ホモジナイザーを使用して(小さい体積)、または超音波処理により、固体組織を最初に機械的に壊す。上記の機械的方法の1つにより細胞を破砕してもよい。しかしながら、細菌、ウイルスまたは環境試料がタンパク質の供給源であり得、ウエスタンブロッティングは細胞研究のみに制限されないことが注意されるべきである。細胞の溶解を促しかつタンパク質を可溶化するために、組み合わせた界面活性剤、塩、および洗浄剤を用いてもよい。それ自体の酵素による試料の消化を防止するために、プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤が多くの場合に加えられる。組織調製は多くの場合、タンパク質の変性を回避するために低温で行われる。
【0222】
ゲル電気泳動を使用して試料のタンパク質を分離する。タンパク質の分離は、等電点(pi)、分子量、電荷、またはこれらの因子の組合せにより為され得る。分離の性質は、試料の処理およびゲルの性質に依存する。これは、タンパク質を決定するために非常に有用な方法である。単一の試料から二次元にタンパク質を広げる二次元(2-D)ゲルを使用することもできる。タンパク質は、第1の次元において等電点(中性の総電荷となるpH)にしたがって、および第2の次元において分子量にしたがって分離される。
【0223】
タンパク質を抗体検出のためにアクセス可能なものとするために、それらをゲル内からニトロセルロースまたはポリビニリデンジフルオリド(PVDF)で作られた膜上に移動させる。膜をゲルの上に置き、積み重ねた濾紙をその上に置く。積み重ねた全体を緩衝溶液に入れると、緩衝溶液は毛管作用により紙の上方向に移動し、それと共にタンパク質を運ぶ。タンパク質を転写する別の方法はエレクトロブロッティングと呼ばれ、電流を使用してタンパク質をゲルからPVDFまたはニトロセルロース膜中に引き寄せる。タンパク質は、ゲル内での編成を維持しながらゲル内から膜上に移動する。このブロッティング処理の結果として、タンパク質は検出のために薄い表面層上に露出される(下記を参照)。非特異的タンパク質結合特性(すなわち、全てのタンパク質に等しく結合する)のために両方の種類の膜が選択される。タンパク質の結合は、疎水性相互作用の他に、膜とタンパク質との電荷相互作用に基づく。ニトロセルロース膜はPVDFよりも安価であるがはるかにもろく、プロービングの繰返しに良好に耐えることができない。ゲルから膜へのタンパク質の転写の均一性および全体的な有効性は、クマシーブリリアントブルーまたはポンソーS色素で膜を染色することによりチェックすることができる。タンパク質が転写されたら、標識された一次抗体を使用して、または未標識の一次抗体の後に一次抗体のFc領域に結合する標識されたプロテインAまたは二次標識抗体を使用する間接的検出を使用してタンパク質が検出される。
【0224】
3. 免疫組織化学
本開示の抗体はまた、免疫組織化学(IHC)による研究のために調製された新鮮凍結組織ブロックおよび/またはホルマリン固定、パラフィン包埋組織ブロックのいずれとも組み合わせて使用することができる。これらの粒子検体から組織ブロックを調製する方法は、様々な予後因子の先行するIHC研究において使用されて成功しており、当業者に周知である(Brown et al, 1990; Abbondanzo et al, 1990; Allred et al, 1990)。
【0225】
簡潔に述べれば、凍結切片は、小さいプラスチックカプセル中の50ngの凍結「粉砕」組織を室温でリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で再水和させ、遠心分離によって粒子をペレット化し、それらを粘性の包埋媒体(OCT)中に再懸濁し、カプセルを倒立させかつ/もしくは遠心分離によって再度ペレット化し、-70℃のイソペンタン中でスナップ冷却し、プラスチックカプセルを切断しかつ/もしくは凍結した円筒状の組織を取り出し、クライオスタットミクロトームチャック上に円筒状の組織を固定し、かつ/またはカプセルから25~50個の連続切片を切り出すことによって調製することができる。あるいは、凍結組織試料全体を連続切片の切り出しのために使用してもよい。
【0226】
永久切片は、50mgの試料をプラスチック微量遠心チューブ中で再水和させ、ペレット化し、10%のホルマリン中で再懸濁して4時間固定化し、洗浄/ペレット化し、温めた2.5%の寒天中に再懸濁し、ペレット化し、氷冷水で冷却して寒天を固化させ、組織/寒天ブロックをチューブから取り出し、ブロックをパラフィンで浸潤させかつ/もしくは包埋し、かつ/または最大50個の連続永久切片を切り出すことを伴う類似の方法によって調製することができる。ここでもまた、組織試料全体を置換してもよい。
【0227】
4. 免疫検出キット
またさらなる態様において、本開示は、上記される免疫検出法と共に使用するための免疫検出キットに関する。抗体はLILRB関連がん細胞を検出するために使用することができるため、抗体をキット中に含めることができる。したがって、免疫検出キットは、好適な容器手段中に、LILRBに結合する第1の抗体、および任意で免疫検出試薬を含む。
【0228】
ある特定の態様において、抗体は、固体支持体、例えば、カラムマトリックスおよび/またはマイクロタイタープレートのウェルに予め結合させてもよい。キットの免疫検出試薬は、所与の抗体に会合または連結された検出可能な標識などの様々な形態のいずれか1つとすることができる。二次結合リガンドに会合または連結された検出可能な標識も企図されている。例示的な二次リガンドは、第1の抗体に結合親和性を有する二次抗体である。
【0229】
本発明のキットにおいて使用するためのさらなる好適な免疫検出試薬は、第1の抗体に結合親和性を有する第2の抗体と共に、第2の抗体に結合親和性を有する第3の抗体(第3の抗体は検出可能な標識に連結されている)を含む、2成分試薬を含む。上記の通り、多数の例示的な標識が当技術分野において公知であり、全てのそのような標識を本開示と関連して用いることができる。
【0230】
キットは、検出アッセイのための標準曲線の作成に使用することができるように、標識化されていても未標識でもよい、LILRBの好適に分注された組成物をさらに含んでもよい。キットは、抗体-標識コンジュゲートを、完全にコンジュゲートされた形態か、中間体の形態か、またはキットの使用者によってコンジュゲートされる別々の部分として、含有してもよい。キットの構成要素は、水性媒体中または凍結乾燥形態のいずれかにパッケージ化することができる。
【0231】
キットの容器手段は、一般に、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジまたは他の容器手段を含み、その中に抗体を入れるか、または好ましくは適切に分注することができる。本開示のキットはまた、典型的には、抗体、抗原、および任意の他の試薬容器を、市販用に厳重に密閉して含有するための手段を含む。そのような容器としては、射出成形またはブロー成形されたプラスチック容器を挙げることができ、所望のバイアルをその中に保持する。
【0232】
5. フローサイトメトリーおよびFACS
本開示の抗体はまた、フローサイトメトリーまたはFACSにおいて使用されてもよい。フローサイトメトリーは、細胞計数、細胞選別、バイオマーカー検出およびタンパク質操作を含む、多くの検出アッセイにおいて用いられるレーザーまたはインピーダンスベースの技術である。該技術では、細胞を流体のストリームに懸濁し、それらを電子的検出装置に通過させることで、1秒当たり数千までの粒子の物理的および化学的特徴の同時の多パラメータ分析が可能となる。フローサイトメトリーは、診断障害(diagnosis disorders)、殊に血液がんにおいて日常的に使用されるが、基礎研究、臨床プラクティスおよび臨床試験において多くの他の応用を有する。
【0233】
蛍光活性化細胞選別(FACS)は、特殊化された種類のサイトメトリーである。それは、各細胞の特定の光散乱および蛍光特徴に基づいて、1つの時点に1つの細胞で、生物学的細胞の不均質な混合物を2つ以上の容器に選別する方法を提供する。一般に、該技術は、液体の狭い急速に流れるストリームの中心において連行された細胞懸濁液を伴う。流れは、細胞の直径に比べて細胞間の大きい分離があるように構成される。振動機構により、細胞のストリームは個々の小滴に分断される。ストリームが小滴に分断される直前に、流れは蛍光測定ステーションを通過し、そこで各細胞の蛍光が測定される。電気的荷電リングが、ストリームが小滴に分断される正にその点に置かれる。電荷が、蛍光強度が測定される直前においてリングベース(ring based)に置かれており、小滴がストリームから壊れる(breaks form)際に反対電荷が小滴上に捕捉される。荷電した小滴は次に、静電偏向システムを通って落下し、該システムは、小滴をそれらの電荷に基づいて容器に分流させる。
【0234】
フローサイトメトリーまたはFACSにおいて使用されるある特定の態様において、本開示の抗体は、フルオロフォアを用いて標識され、次に目的の細胞に結合させられ、それがフローサイトメーターにおいて分析され、またはFACS機械により選別される。
【実施例】
【0235】
VIII. 実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい態様を実証するために含めたものである。以下の実施例に開示される技術は、本発明の実施において良好に機能することが本発明者らにより発見された技術を提示するものであり、したがってその実施のための好ましい様式を構成すると考えることができることが当業者により理解されるべきである。しかしながら、開示される特定の態様において多くの変更を行うことができ、それでもなお本発明の精神および範囲から離れることなく同様または類似の結果を得ることができることを当業者は本開示に照らして理解するべきである。
【0236】
実施例1
LILRB2に対する特異的なモノクローナル抗体のスクリーニング。本発明者らは、安定なレポーター細胞システムを用いて、LILRB2に対する選択されたモノクローナル抗体の結合能力を検出した。このキメラ受容体レポーターシステムにおいて、LILRB2の細胞外ドメイン(ECD)は、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフを含有するアダプタータンパク質DAP12と会合するPILRbの膜貫通/細胞内ドメインと融合している。27種のモノクローナル抗体をスクリーニングした。LILRB2レポーター細胞を、選択されたモノクローナル抗体と共にインキュベートし、次に(APC)ヤギ抗ヒトIgG二次抗体で標識した。フローサイトメーター分析により、95%より多くのLILRB2レポーター細胞がクローンB2-7、B2-15、B2-16、B2-17、B2-18、B2-19で標識されたことが実証された。より低いパーセンテージのLILRB2レポーター細胞は、クローンB2-8、B2-10、B2-12、B2-24、B2-25で標識された。他のクローンは、LILRB2レポーター細胞に対する結合能力を有しなかった(
図1A~B)。LILRAおよびLILRBのメンバーは高い配列相同性を呈するので、本発明者らは、LILRBAおよびLILRBに対するB2-7、B2-15、B2-16、B2-17、B2-18、B2-19、B2-8、B2-10、B2-12、B2-24およびB2-25の潜在的な交差反応性を検出した。本発明者らは、各受容体の細胞外ドメイン(ECD)を安定的に形質導入されたLILRBAおよびLILRBレポーターを生成した。フローサイトメトリー分析により、B2-7、B2-15、B2-16、B2-17、B2-18、B2-19、B2-8、B2-24、B2-25は、LILRAおよびLILRB2を除く他のLILRBと交差反応しないことが示された。B2-10、B2-12およびB2-18は、LILRA1に非特異的に結合した(
図1Cおよび
図29)。したがって、これらは、LILRB2に対する特異的なモノクローナル抗体として同定された8つの抗体であった。本発明者らは、追加的に、B2-7、B2-15、B2-16、B2-17およびB2-19はヒト末梢血の試料中の骨髄細胞にのみ結合することを実証し(
図30)、それにより、内因性LILRB2を発現する細胞における結合がさらに確認された。B2-7、B2-15、B2-16、B2-17およびB2-19は、全長LILRB2を安定的に発現するHEK293細胞(HEK293_LILRB2)(
図31)および初代単球(
図32)に用量依存的に結合することも本発明者らは確認した。結合EC
50値は、HEK293_LILRB2において0.101~0.277μg/mL(
図31)、初代単球において0.056から>10μg/mLまでの範囲内である(
図32)。
【0237】
LILRB2に対するアンタゴニスト抗体およびアゴニスト抗体の候補のスクリーニング。典型的には、受容体遮断抗体は、リガンド結合部位を標的とし、リガンドと競合し、かつ/または受容体のそのリガンドとの相互作用を遮断する。LILRB2リガンドとしては、アンジオポエチン様タンパク質(ANGPTL)、セマフォリン4A(SEMA4A)、TIM-3、CD-1分子、アミロイド-β(Aβ)オリゴマー、古典的ヒト白血球抗原(HLA)クラスI分子(HLA-A、HLA-B、HLA-C)ならびに非古典的HLA-クラスI分子(HLA-E、HLA-F、HLA-G、およびHLA-H)が挙げられる。LILRB2レポーターシステムは、LILRB2に対するアンタゴニスト抗体の候補をスクリーニングするための強力なツールを提供した。キメラ受容体がLILRB2のECDへのリガンド結合により活性化したときに、ZAP70またはSykキナーゼはアダプターDAP12の免疫受容体チロシンベース活性化モチーフに動員され、NFATを活性化させて、NFAT応答性プロモーターにより駆動されるGFP発現を促進する。GFPシグナル伝達を有意に低減させた抗体をアンタゴニスト抗体の候補と考えた。
【0238】
コーティングされたANGPTL2(
図3A~C;
図51)およびSEMA4A(
図4A~C)により刺激されるLILRB2レポーター細胞の活性化を遮断するLILRB2 mAbの機能を試験した。その結果により、B2-7、B2-15、B2-16、B2-17、およびB2-19は、コーティングされたリガンドによるLILRB2レポーター細胞の活性化を用量依存的に予防できることが示された。B2-19抗体はまた、コーティングされたCD1dにより刺激されるLILRB2レポーター細胞の活性化を遮断することができた(
図52)。LILRB2レポーター細胞を、HLA-Gを過剰発現させたK562細胞とも共培養し、次にLILRB2 mAbで処理した。その結果により、これらのLILRB2 mAbは、K562細胞上のHLA-Gにより刺激されるLILRB2レポーター細胞の活性化を遮断することも示された(
図5A~C)。LILRB2抗体はまた、全長LILRB2を発現するHEK293細胞に対するHLA-GおよびSEMA4Aの結合を用量依存的に遮断することも示された(それぞれ
図33および
図34)。B2-7、B2-15、B2-16、B2-17、およびB2-19はアンタゴニストLILRB2 mAbであることをこれらのデータは証明した。
【0239】
対照的に、いくつかのLILRB2 mAb(B2-8、B2-24、B2-25、B2-10、B2-12およびB2-18)は、細胞培養培地に加えられた場合(
図2A)、またはK562と共培養された場合(
図2B)に、LILRB2レポーター細胞を活性化させることができ、これらのLILRB2 mAbはアゴニスト抗体であることを実証している。
【0240】
初代ヒト単球におけるLPS応答に対する抗LILRB2抗体の効果。LILRB2は、造血幹細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞、一部の個体において好塩基球、脱落膜マクロファージ、肥満細胞前駆細胞、内皮細胞および破骨細胞上に発現するがリンパ系細胞上には発現しない。LILRB2は、免疫阻害受容体として分類され、免疫応答の下方調節と関連する。スクリーニングされた抗LILRB2抗体の機能を決定するために、末梢血単核細胞(PBMC)ベースの機能アッセイを実行して、スクリーニングされた抗体が単球活性化を増幅または阻害できるかどうかを評価した。B2-7、B2-15、B2-16、B2-17およびB2-19は、LPSの存在下でCD86およびTNFαレベルを増強することができた。B2-8、B2-24およびB2-25は、LPS刺激でCD86レベルに対する阻害を示したが、TNFαレベルには効果を有しないようであった(
図6A~C)。B2-7、B2-16およびB2-19は、LPSで刺激されたPBMCからのIFN-γ(
図35)およびTNF-α(
図36)分泌を増強することができた。B2-19はまた、LPSで刺激されたPBMCからのIL-12p40の分泌を増強することができた(
図37)。本発明者らは、LPS刺激に応答して単球の炎症潜在能力を増強するB2-7、B2-15、B2-16、B2-17およびB2-19 LILRB2特異的抗体を同定した。これらの全ての抗体は機能的なアンタゴニスト抗体である。B2-8、B2-24およびB2-25は、LILRB2に対する有効な抗体の候補である。
【0241】
抗CD3活性化抗体により刺激されたPBMCに対する抗LILRB2抗体の効果。本発明者らは、活性化抗CD3抗体によるT細胞活性化に対するLILRB2遮断の間接的な効果を評価した。B2-7およびB2-19抗体は、IFN-γ(
図38)、TNF-α(
図39)、GM-CSF(
図40)、IL-1α(
図41)、IL-1β(
図42)、IL-6(
図43)およびCXCL2(
図44)の分泌を増強することができた。B2-19はまた、CD8
+T細胞上のCD25の細胞表面発現を増強することができた(
図46)。本発明者らは、T細胞活性化を増強するB2-7およびB2-19 LILRB2特異的抗体を同定した。
【0242】
単球由来M2aマクロファージに対する抗LILRB2抗体の効果。本発明者らは、インビトロでのM2aマクロファージの表現型に対するB2-19の効果を評価した。数人のドナーの単球から分化させたM2aマクロファージにおいて、B2-19は、CD64、CD163およびCD14の発現を減少させた(
図45)。本発明者らは、M2aマクロファージの表現型をモジュレートする能力を有するLILRB2特異的抗体としてB2-19を同定した。
【0243】
抗LILRB2抗体はC1498-LILRB2腫瘍保有モデルにおいて白血病細胞の発生を阻害する。本発明者らは、LILRB2遮断がC1498白血病モデルにおいて腫瘍進行を阻害できるかどうかを評価した。ヒトLILRB2を過剰発現するC1498亜株(C1498-LILRB2)をレトロウイルス形質導入により生成した。LILRB2はC1498-LILRB2上に安定的に発現する(
図7A)。LILRB2は白血病の発症を促進することができた。過剰発現したLILRB2はNSGマウスにおいて白血病の発症を促進した(
図7B)。LILRB2過剰発現は、より不良な白血病浸潤(
図7C~D)、生存曲線(
図7E)および筋様細胞浸潤(
図7G)を有する。さらには、Fc変異を含有するB2-7およびB2-19のLALAPGバリアントを生成して、補体結合および固定の他に、マウスIgG2aおよびヒトIgG1の両方におけるFc-γ依存性抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)を排除した。LALAPG変異体アンタゴニスト抗体での処理は、骨髄性白血病の成長を有意に抑制した((
図7H~J)。
【0244】
抗LILRB2抗体はMLL-AF9モデルにおいて白血病細胞の発生を阻害する。本発明者らは、LILRB2遮断がMLL-AF9白血病モデルにおいて腫瘍進行を阻害できるかどうかを評価した。ヒトLILRB2を過剰発現するPirB-KO MLL-AF9白血病亜株(LILRB2)をレトロウイルス形質導入およびマウス移植により生成した。LILRB2の発現をPirB-KO MLL-AF9 LILRB2または対照白血病細胞上に検出することができた(
図8A)。このMLL-AF9モデルにおいて、LILRB2過剰発現は、より不良な白血病浸潤(
図8B~C)、生存曲線(
図8D)を有する。さらには、LALAPG変異体アンタゴニスト抗体での処理は、白血病浸潤を有意に抑制した(
図8E~F)。
【0245】
LILRB2遮断はAML細胞の遊走および浸潤を阻害する。LILRB2は、がん生物学においても様々な役割を果たす。LILRB2の発現をTHP-1、ヒト白血病細胞株上に検出することができた(
図9A)。本発明者らは、ヒト化マウス異種移植モデルを使用して、白血病におけるLILRB2の機能を試験した。LILRB2の遮断は、造血臓器への白血病細胞のホーミングおよび生着を低減させて(
図9B~C)、体重喪失の遅延(
図9D)、肝臓への骨髄性白血病細胞のより深刻でない浸潤(
図9E~F)、異種移植マウスの生存の長期化を結果としてもたらした。以上を合わせて、LILRB2の遮断は白血病遊走および浸潤を低減させた。
【0246】
アンタゴニストLILRB2 mAbは、患者由来異種移植片(PDX)モデルにおいて白血病細胞の発生を阻害する。フローサイトメトリー分析は、原発性単球性AML(M5)の一部の症例において発現したLILRB2のものを示した(
図10A)。TCGAデータベースにおいて、LILRB2 mRNAレベルはAML患者の生存と負に相関した(
図10B)。PDXモデルにおいて、LALAPG変異体アンタゴニスト抗体B2-7およびB2-19は白血病浸潤を有意に抑制した(
図10C)。インビトロ培養系において、LALAPG変異体アンタゴニスト抗体はAML-M5白血病細胞の分化を促進した(
図10D~E)。
【0247】
アンタゴニストLILRB2 mAbは、インビトロで骨髄由来抑制細胞(MDSC)のT細胞抑制機能を予防すること、およびがん由来腹水からのCD14
+細胞を炎症促進性表現型に極性化することができる。MDSCのT細胞抑制機能におけるアンタゴニストLILRB2抗体の機能をインビトロで試験した。同じ腫瘍患者からのMDSCおよびT細胞のペアを共培養し、アンタゴニストLILRB2抗体で処理した。B2-7およびB2-19抗体の処理は、恐らくは免疫抑制性骨髄細胞を炎症促進性骨髄細胞に変換することにより、MDSCにより誘導されるT細胞増殖の阻害を有意に減弱した(
図11A~Eおよび
図11G)。B2-7、B2-15、B2-16、B2-17およびB2-19はまた、がん由来腹水から単離された初代CD14
+細胞において抗炎症性マーカーCD163およびCD206を減少させ、炎症促進性マーカーCD86を増加させることができた(
図11F)。
【0248】
実施例2
LILRB2抗体の生成および特徴付け。ファージディスプレイ化ヒト抗体scFvライブラリーをパニングすることによりLILRB2抗体を生成した。LILRB2-His抗原を3ラウンドのパニングのために固相上にコーティングした。ファージパニングの各ラウンドにおいて、LILRB1-His抗原を除外選択のために使用した。ファージパニング後に、単一の細菌コロニーをファージELISA試験のために摘取した。ファージELSIA中の陽性のものをシークエンシングし、それらのscFv領域について分析した。
図12Aに示されるように、24個の独特の抗体配列が得られた。scFvを提示するファージは、ファージELISAにおいてLILRB2抗原への結合を示した(
図12B)。これらの24個のscFvを次に、さらなる分析のために全体ヒトIgG1に変換した。
【0249】
LILRB2抗体のELISA結合EC
50。これらの24個の抗体のELISA結合EC
50を間接的なELISAにより測定した。簡潔に述べれば、ELISAプレートをLILRB2-His抗原でコーティングした。段階希釈された抗体を、抗原コーティングされたプレートとインキュベートした。インキュベーション後に、HRPとコンジュゲートしたヤギ抗ヒトFc二次抗体をプレートとインキュベートした。TMB基質を顕色および450nmでの吸光度の測定のために加えた。
図13A~Bに示されるように、これらの抗体は用量依存的にLILRB2に結合し(
図13A)、それらのEC
50値は0.355~46.49nMの範囲内である(
図13B)。
【0250】
LILRB2抗体の結合特異性。LILRファミリーの他のメンバーのための抗原とのELISA結合活性を決定することによりLILRB2抗体の結合特異性を評価した。
図14Aに示されるように、24個の抗体のうち、21個はLILRB2に対する非常に特異的な結合を示し、3つの抗体(B2-10、-12、-18)はLILRA1に対する弱い交差結合を示した。LILRB2およびLILRA1抗原を用いるこれらの3つの抗体のさらなるタイトレーションは、LILRB2に対するこれらの3つの抗体の結合能力は、LILRA1に対するものよりもはるかに強力(>100倍)であることを示した(
図14B)。
【0251】
LILRB2抗体のエピトープビニング。OctetRED96システム上でサンドイッチフォーマットにより22個の抗体についてエピトープビニングを行った。各抗体を残りの抗体と交差ビニングして、それらは互いと競合できるかどうかを決定した。
図15に示されるように、これらの抗体は3つのビンに分けることができる。各ビンにおいて、抗体はLILRB2結合について互いと競合する。ビン1およびビン2の抗体は、それらの遮断プロファイルについてオーバーラップを示した。
【0252】
LILRB2抗体のドメインマッピング。LILRB2は、4つのIg様ドメイン(D1、D2、D3およびD4)ならびに膜近傍ドメイン(JM)を有する。LILRB2抗体の結合ドメインを決定するために、LILRB2の全長細胞外ドメイン(ECD)または切断型ECDを組換えタンパク質発現のためにマウスIgG2aのFc断片に融合させた(
図16A~B)。これらのドメインタンパク質に対するLILRB2抗体の結合能力を次に決定した。D1ドメインの欠失は、抗体B2-7、-15、-16、-17および-19への結合の喪失を結果としてもたらしたが、他の抗体に対してはそうではなく、これらの抗体はLILRB2のD1ドメインに結合することを示した(
図16C)。同様に、他の抗体の結合ドメインを決定し、要約した(
図16D)。
【0253】
抗体結合のための鍵となる残基。抗体結合のための鍵となる残基を微細にマッピングするために、一連の変異B2-ECDタンパク質を製造して抗体結合を判定した。ほとんどの抗体はD1またはD4ドメインに結合するので、本発明者らは、D1またはD4ドメイン上にのみ変異を設計し、変異は、2つの基準:1)LILRB2とLILRB1との間で異なる残基;(2)露出しており、柔軟なループ領域に位置する残基に基づいた。
図17A~Cに示されるように、LILRB2のD1ドメイン上の4つの領域を、LILRB1上の対応する配列に変異させた。同様に、LILRB2のD4ドメイン上の4つの領域も変異させた(
図17B~D)。4つのD1変異体を使用して、D1ドメインに結合する5つの抗体(B2-7、-15、-16、-17および-19)との結合を試験し、D4領域に結合する抗体B2-18を対照として使用した。
図17Eに示されるように、D1M4変異体およびD1M2変異体は、抗体B2-7、-15および-17による結合を完全に消失させ、当該2つの領域はこれらの抗体の結合活性にとって鍵となることを示し;D1M4は完全に、D1M2は部分的に、抗体B2-16および-19による結合を消失させ、M4領域は2つの抗体の結合活性にとって鍵となることを示した。対照として、これらの変異体のいずれも抗体B2-18による結合を消失させなかった。類似した方法により、D4ドメイン上の他の抗体の結合活性にとっての鍵となる領域を決定した(
図17F)。
【0254】
遮断抗体の親和性測定。5つの遮断抗体の親和性をOctet RED 96システム上で測定した。
図18および表1に示されるように、親和性は1.87~35.9nMの範囲内である。
【0255】
実施例3
外見的に健常なドナーのPBMCから単離された古典的な単球を、50ng/mLのGM-CSFおよび35ng/mLのIL-4を使用して6日間、未熟なDCに分化させた。6日目に、DCを40ng/mLのIL-10(寛容原性刺激として)および10μg/mLのB2-19またはそのアイソタイプ対照で処理した。48時間後に、Luminexアッセイ(R&D Systems)を使用して、培養培地上清中のサイトカインおよびケモカインのレベルを測定した。B2-19は、炎症促進性サイトカインIL-6ならびに単球(CCL2)および好中球(CXCL8)を動員することが公知のケモカインの増強された産生のトリガーとなった(
図47)。
【0256】
外見的に健常なドナーから調製されたPBMCから単離された古典的な単球を、50ng/mLのGM-CSFおよび35ng/mLのIL-4を使用して6日間、未熟なDCに分化させた。6日目に、DCを100ng/mLのLPS(成熟刺激として)および10μg/mLのB2-19またはそのアイソタイプ対照で処理した。48時間後に、いくつかの細胞表面マーカーの発現レベルをフローサイトメトリーにより測定した。B2-19は、CD83(DC成熟マーカー)、CD86(共刺激分子)、HLA-DR(抗原提示)の発現を増加させた。他方、B2-19は、阻害受容体LILRB4およびCD209の発現レベルを低下させた。以上を合わせて、B2-19はLPS刺激されたDCにおいて炎症促進性表現型をさらに促進することをこれらのデータは示す(
図48)。
【0257】
B2-19の薬物動態を野生型マウス(LILRB2発現なし)において評価した。9匹のC57BL/6Jマウスに単回の5mg/kgのB2-19の静脈内用量を与え、交互の時点における血液採取のために3つの群に無作為化した。血清を血液試料から調製し、ELISAを使用してB2-19濃度を決定した。血清中の抗体をプレートコーティングされた抗原(LILRB2-ECD、R&D Systems)により捕捉し、HRPとコンジュゲートしたヤギ抗ヒトIgG Fc抗体(Jackson ImmunoResearch)およびTMB基質を使用して検出した。結果は、B2-19抗体が、5mg/kgで投薬されたC57BL/6J野生型マウスにおいてヒトIgG4の予想される薬物動態プロファイル(CLおよび半減期)を与えることを示している。これらの結果は、ELISAフォーマットは活性の抗体を測定するので、(マウスにおける)B2-19インビボ曝露はその結合活性を低減しないことを実証している。
【0258】
SK-MEL-5黒色腫細胞株を異種移植したヒト化NSG-SGM3マウスにおいてB2-19抗体の抗腫瘍効力を評価した。個々のドナーの臍帯血から単離された1×10
5個のCD34
+造血細胞を用いてNSG-SGM3マウス(The Jackson Laboratory、ストック番号013062)をヒト化した。ヒト化の6週後に、マウスの皮下に1×10
6個のSK-MEL-5細胞を移植した。平均腫瘍サイズが70~80mm
3に達したときに(腫瘍移植の29日後)、以下の基準:血液中のヒトCD45
+CD14
+細胞の%、腫瘍体積およびドナー(処置コホート当たり各CD34
+ドナーから2匹のマウス)に基づいて、マウスを群当たり6匹のマウスで2つの処置群に無作為化した。静脈内に20mg/kgのB2-19またはそのアイソタイプ対照を3日毎に3用量にわたり用いてマウスを処置した。そのアイソタイプ対照と比較して、B2-19単剤療法は、腫瘍成長速度を低下させ、腫瘍サイズにおける29%の低減を引き起こした(
図50A~B)。これらのデータは、B2-19抗体単剤療法は固形腫瘍のマウスモデルにおいて抗腫瘍効力を示すことを実証している。
【0259】
【0260】
【0261】
【0262】
【0263】
【0264】
【0265】
(表7)LILRB2抗体軽鎖(LC)のアミノ酸配列
【0266】
本出願に開示および権利主張される全ての方法は、本開示に照らして過度の実験なしに製造および実施することができる。本発明の組成物および方法を好ましい態様に関して記載したが、本発明の概念、精神、および範囲から離れることなく、本明細書に記載の方法に対しておよび方法の工程または工程の並びにおいてバリエーションが適用されてもよいことは当業者に明らかである。より具体的には、同じまたは類似の結果を達成しながら、本明細書に記載の剤を、化学的および生理学的に関連するある特定の剤と置き換え得ることが明らかである。当業者に明らかな全てのそのような類似の置換物および改変は、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の精神、範囲、および概念に含まれると考えられる。
【0267】
参考文献
以下の参考文献は、本明細書に記載されているものに対して例示的な手順または他の詳細な補足を提供する程度まで、参照により本明細書に具体的に組み入れられる。
【配列表】
【国際調査報告】