(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】EP4受容体アンタゴニストの多形体、その調製方法および用途
(51)【国際特許分類】
C07D 495/04 20060101AFI20230323BHJP
A61K 31/381 20060101ALI20230323BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20230323BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230323BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230323BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230323BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230323BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
C07D495/04 101
C07D495/04 CSP
A61K31/381
A61P25/04
A61P29/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/08
A61P19/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547850
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(85)【翻訳文提出日】2022-10-05
(86)【国際出願番号】 CN2021074485
(87)【国際公開番号】W WO2021155766
(87)【国際公開日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】202010080620.6
(32)【優先日】2020-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520186015
【氏名又は名称】シャンハイ ユーヤオ バイオテック リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI YUYAO BIOTECH LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 1001,Building 1,No.58,Tanzhu Road,Minhang District,Shanghai 201100,China
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ハンクン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ジュンジー
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ミンヤオ
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,ウェンボー
(72)【発明者】
【氏名】ペン,シーホン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,フアン
(72)【発明者】
【氏名】リュー,ジアン
【テーマコード(参考)】
4C071
4C086
【Fターム(参考)】
4C071AA01
4C071BB01
4C071CC11
4C071CC21
4C071DD13
4C071EE13
4C071FF17
4C071GG02
4C071HH28
4C071JJ01
4C071LL01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CA05
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA03
4C086ZA08
4C086ZA96
4C086ZB11
4C086ZB13
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC42
(57)【要約】
本発明は、EP4受容体アンタゴニストの多形体、その調製方法および用途を提供し、具体的には、EP4受容体アンタゴニストである(S)-4-(1-(2-(4-フルオロベンジル)-4,7-ジヒドロ-5H-チエノ[2,3-c]ピラン-3-カルボキサミド)エチル)安息香酸の多形体、その調製方法および用途に関する。式Iの化合物の非晶質物と比較して、本発明の多形体は、より高い安定性およびより優れた加工性を有し、成薬に非常に適する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物の多形であって、
【化1】
前記多形は、多形I、多形II、多形III、多形IV、多形Vおよび多形VIからなる群から選択されることを特徴とする、前記多形。
【請求項2】
前記多形IのX線粉末回折パターンは、4.234±0.2°、8.505±0.2°、8.96±0.2°、11.177±0.2°、12.892±0.2°、18.05±0.2°、23.333±0.2°の2θ値で特徴的なピークを有することを特徴とする、
請求項1に記載の多形。
【請求項3】
前記多形Iは、以下からなる群から選択される一つまたは複数の特徴を有し、
1)前記多形IのX線粉末回折パターンは、基本的に
図6の曲線1に示されたとおりであり、
2)前記多形IのTGAスペクトルは、基本的に
図8のTGA曲線に示されたとおりであり、
3)前記多形IのDSCスペクトルは、基本的に
図8のDSC曲線に示されたとおりであり、
4)前記多形IのDVSスペクトルは、基本的に
図9に示されたとおりであり、および/または
5)前記多形Iの偏光顕微鏡解析パターンは、基本的に
図7に示されたとおりであることを特徴とする、
請求項2に記載の多形。
【請求項4】
前記多形IIのX線粉末回折パターンは、4.018±0.2°、8.722±0.2°、9.382±0.2°、11.539±0.2°、17.732±0.2°、18.038±0.2°、19.13±0.2°の2θ値で特徴的なピークを有することを特徴とする、
請求項1に記載の多形。
【請求項5】
前記多形IIは、以下からなる群から選択される一つまたは複数の特徴を有し、
1)前記多形IIのX線粉末回折パターンは、基本的に
図11の曲線2に示されたとおりであり、
2)前記多形IIのTGAスペクトルは、基本的に
図13のTGA曲線に示されたとおりであり、
3)前記多形IIのDSCスペクトルは、基本的に
図13のDSC曲線に示されたとおりであり、および/または
4)前記多形IIの偏光顕微鏡解析パターンは、基本的に
図12に示されたとおりであることを特徴とする、
請求項4に記載の多形。
【請求項6】
前記多形IIIのX線粉末回折パターンは、3.888±0.2°、4.247±0.2°、7.269±0.2°、10.954±0.2°、18.343±0.2°、19.009±0.2°、22.04±0.2°の2θ値で特徴的なピークを有することを特徴とする、
請求項1に記載の多形。
【請求項7】
前記多形IVのX線粉末回折パターンは、8.529±0.2°、9.177±0.2°、9.696±0.2°、11.324±0.2°、17.556±0.2°、17.824±0.2°、28.107±0.2°の2θ値で特徴的なピークを有することを特徴とする、
請求項1に記載の多形。
【請求項8】
前記多形IVは、以下からなる群から選択される一つまたは複数の特徴を有し、
1)前記多形IVにおいて、水と化合物Iとのモル比は、1:0.95~1.05、より好ましくは1:1であり、
2)前記多形IVのX線粉末回折パターンは、基本的に
図21に示されたとおりであり、
3)前記多形IVのTGAスペクトルは、基本的に
図22のTGA曲線に示されたとおりであり、および/または
4)前記多形IVのDSCスペクトルは、基本的に
図22のDSC曲線に示されたとおりであることを特徴とする、
請求項1に記載の多形。
【請求項9】
前記多形VのX線粉末回折パターンは、7.335±0.2°、8.304±0.2°、11.01±0.2°、14.733±0.2°、15.132±0.2°、19.142±0.2°、22.2±0.2°の2θ値で特徴的なピークを有することを特徴とする、
請求項1に記載の多形。
【請求項10】
前記多形VIのX線粉末回折パターンは、8.839±0.2°、11.326±0.2°、16.638±0.2°、17.474±0.2°、17.827±0.2°、18.799±0.2°、21.306±0.2°の2θ値で特徴的なピークを有することを特徴とする、
請求項1に記載の多形。
【請求項11】
請求項1に記載の多形の調製方法であって、
前記多形Iの調製方法は、第1の溶媒における式Iの化合物の混合液を提供し、前記混合液をスラリー化、攪拌または揮発させることにより、前記結晶形Iを得る段階を含み、ここで、
前記第1の溶媒は、メタノール、イソプロパノール、イソブタノール、2-ブタノン、アセトニトリル、メチルt-ブチルエーテル、水、アクリル酸エチル、アセトン、酢酸イソプロピル、ジクロロメタン、n-ヘプタン、1,4-ジオキサン、酢酸ブチル、4-メチル-2-ペンタノン、トルエン、2-ブタノン、シクロヘキサン、THFと水との混合溶液、またはその組み合わせからなる群から選択され、好ましくはメタノールまたはアセトンであることを特徴とする、前記調製方法。
【請求項12】
医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、
(a)式Iの化合物の多形を含む有効成分、および
(b)薬学的に許容される担体
を含み、
ここで、前記多形は、多形I、多形II、多形III、多形IV、多形V、多形VI、またはその組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、前記医薬組成物。
【請求項13】
請求項1のいずれか1種に記載の式Iの化合物の多形またはそれを含む医薬組成物の使用であって、
薬物または製剤の調製のために用いられ、前記薬物または製剤はEP4受容体活性が介在する疾患を予防および/または治療するために用いられることを特徴とする、前記使用。
【請求項14】
前記EP4受容体活性が介在する疾患は、肝臓がん、肺がん、前立腺がん、皮膚がん、結腸がん、膵臓がん、乳がん、白血病、リンパ腫、卵巣がん、胃がん、膀胱がん、腎臓がん、口腔がん、黒色腫、食道がん、リンパ腫、子宮頸がん等の悪性腫瘍、アレルギー、炎症、骨疾患、急性または慢性疼痛、またはその組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、
請求項13に記載の使用。
【請求項15】
EP4受容体活性が介在する疾患を予防および/または治療するための方法であって、
前記方法は、必要とする対象に治療有効量の少なくとも1種の請求項1に記載の式Iの化合物の多形またはそれを含む医薬組成物を投与する段階を含むことを特徴とする、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品化学の分野に関し、具体的には、EP4受容体アンタゴニストである(S)-4-(1-(2-(4-フルオロベンジル)-4,7-ジヒドロ-5H-チエノ[2,3-c]ピラン-3-カルボキサミド)エチル)安息香酸の多形体、その調製方法および用途に関する。
【背景技術】
【0002】
(S)-4-(1-(2-(4-フルオロベンジル)-4,7-ジヒドロ-5H-チエノ[2,3-c]ピラン-3-カルボキサミド)エチル)安息香酸(式Iの化合物)は、高活性かつ高選択性のプロスタダランジンE
2受容体EP4アンタゴニストである。当該EP4受容体アンタゴニストは、正常細胞および腫瘍細胞に対して阻害活性を有さないが、EP4受容体活性、特にEP4受容体アゴニスト活性が介在する疾患および病症の治療または緩和に有用であり、代謝がより安定し、親水性が良好で、基本的に成薬の要件を満たす。前記疾患は、肝臓がん、肺がん、前立腺がん、皮膚がん、結腸がん、膵臓がん、乳がん、白血病、リンパ腫、卵巣がん、胃がん、膀胱がん、腎臓がん、口腔がん、黒色腫、食道がん、リンパ腫、子宮頸がん等の悪性腫瘍、アレルギー、炎症、骨疾患、急性または慢性疼痛である。構造式は、次のとおりである。
【化1】
【0003】
当該化合物の調製方法は、出願番号PCT/CN2018/117235の国際出願に記載されたが、化合物の結晶形の状況は言及されず、(S)-4-(1-(2-(4-フルオロベンジル)-4,7-ジヒドロ-5H-チエノ[2,3-c]ピラン-3-カルボキサミド)エチル)安息香酸の結晶形を報告した文献は他にない。薬物の多形は、薬物の物理化学的特性、薬物動態学的特性、製剤の品質、インビボおよびインビトロでの薬理学的特性、ならびにプロセスにとって非常に重要であり、薬物の結晶形が異なるため、物理的および科学的特性の違いが、薬物の溶解度、安定性、薬物放出速度、安全性、インビボバイオアベイラビリティおよび良好な有効性に影響を与え、また、異なる結晶形の表面自由エネルギーの違いは、薬物の粒子の大きさ、均一性、分布の均一性、物理的安定性に影響を与える。
【0004】
従って、当技術分野では、より安定で成薬により適した式Iの化合物の多形体を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、(S)-4-(1-(2-(4-フルオロベンジル)-4,7-ジヒドロ-5H-チエノ[2,3-c]ピラン-3-カルボキサミド)エチル)安息香酸の多形体、その調製方法および用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、式Iの化合物の多形を提供し、ここで、前記多形は、多形I、多形II、多形III、多形IV、多形Vおよび多形VIからなる群から選択される。
【化2】
【0007】
別の好ましい例において、前記多形IのX線粉末回折パターンは、4.234±0.2°、8.505±0.2°、8.96±0.2°、11.177±0.2°、12.892±0.2°、18.05±0.2°、23.333±0.2°の2θ値で特徴的なピークを有する。
【0008】
別の好ましい例において、前記多形IのX線粉末回折パターンは、10.05±0.2°、16.438±0.2°、17.093±0.2°、19.229±0.2°、20.259±0.2°、21.544±0.2°、25.613±0.2°、26.051±0.2°からなる群から選択される一つまたは複数の2θ値で特徴的なピークをさらに有する。
【0009】
別の好ましい例において、前記多形IのX線粉末回折パターンは、18.851±0.2°、19.406±0.2°、22±0.2°、22.543±0.2°、24.285±0.2°、26.774±0.2°、27.331±0.2°、28.441±0.2°、29.04±0.2°、29.529±0.2°、30.185±0.2°、33.196±0.2°、34.049±0.2°、34.714±0.2°、36.109±0.2°、37.076±0.2°、38.936±0.2°からなる群から選択される一つまたは複数の2θ値で特徴的なピークをさらに有する。
【0010】
別の好ましい例において、前記多形Iは、以下からなる群から選択される一つまたは複数の特徴を有し、
a)前記多形Iは、無水で無溶媒の結晶形であり、
b)前記多形IのTGAスペクトルは、室温から230℃まで約0.1~1%、好ましくは、0.2~0.5%の重量を損失し、
c)前記多形IのDSCスペクトルは、ショルダーを有する吸熱ピークを有し、前記吸熱ピークの初期温度は、251.55±3℃(好ましくは±2℃または±1℃)であり、ショルダーのピーク温度は、241.67±3℃(好ましくは±2℃または±1℃)であり、および/または
d)前記結晶形Iは、DVSスペクトルにおいて80%RH下で<2%の吸湿を有する。
【0011】
別の好ましい例において、前記多形Iは、以下からなる群から選択される一つまたは複数の特徴を有し、
1)前記多形IのX線粉末回折パターンは、基本的に
図6の曲線1に示されたとおりであり、
2)前記多形IのTGAスペクトルは、基本的に
図8のTGA曲線に示されたとおりであり、
3)前記多形IのDSCスペクトルは、基本的に
図8のDSC曲線に示されたとおりであり、
4)前記多形IのDVSスペクトルは、基本的に
図9に示されたとおりであり、および/または
5)前記多形Iの偏光顕微鏡解析パターンは、基本的に
図7に示されたとおりである。
【0012】
別の好ましい例において、前記多形IIのX線粉末回折パターンは、4.018±0.2°、8.722±0.2°、9.382±0.2°、11.539±0.2°、17.732±0.2°、18.038±0.2°、19.13±0.2°の2θ値で特徴的なピークを有する。
【0013】
別の好ましい例において、前記多形IIのX線粉末回折パターンは、8.153±0.2°、9.882±0.2°、12.333±0.2°、19.91±0.2°、20.747±0.2°、23.638±0.2°、26.164±0.2°、28.341±0.2°からなる群から選択される一つまたは複数の2θ値で特徴的なピークをさらに有する。
【0014】
別の好ましい例において、前記多形IIは、以下からなる群から選択される一つまたは複数の特徴を有し、
a)前記多形IIは、無水で無溶媒の結晶形であり、
b)前記多形IIのTGAスペクトルは、室温から200℃まで約0.01~0.1%の重量を損失し、および/または
c)前記多形IIのDSCスペクトルは、吸熱ピークおよび発熱ピークを有し、吸熱ピークの初期温度は、252.39±3℃(好ましくは±2℃または±1℃)であり、発熱ピークの初期温度は、151.75±3℃(好ましくは±2℃または±1℃)である。
【0015】
別の好ましい例において、前記多形IIは、以下からなる群から選択される一つまたは複数の特徴を有し、
1)前記多形IIのX線粉末回折パターンは、基本的に
図11の曲線2に示されたとおりであり、
2)前記多形IIのTGAスペクトルは、基本的に
図13のTGA曲線に示されたとおりであり、
3)前記多形IIのDSCスペクトルは、基本的に
図13のDSC曲線に示されたとおりであり、および/または
4)前記多形IIの偏光顕微鏡解析パターンは、基本的に
図12に示されたとおりである。
【0016】
別の好ましい例において、前記多形IIIのX線粉末回折パターンは、3.888±0.2°、4.247±0.2°、7.269±0.2°、10.954±0.2°、18.343±0.2°、19.009±0.2°、22.04±0.2°の2θ値で特徴的なピークを有する。
【0017】
別の好ましい例において、前記多形IIIのX線粉末回折パターンは、8.251±0.2°、8.589±0.2°、10.352±0.2°、11.248±0.2°、17.248±0.2°、17.855±0.2°、18.068±0.2°、19.605±0.2°からなる群から選択される一つまたは複数の2θ値で特徴的なピークをさらに有する。
【0018】
別の好ましい例において、前記多形IIIは、以下からなる群から選択される一つまたは複数の特徴を有し、
a)前記多形IIIは、化合物IのEtOH溶媒和物であり、
b)前記多形IIIのTGAスペクトルは、室温から200℃まで約3.0~3.5%の重量を損失し、
c)前記多形IIIの偏光顕微鏡解析パターンは、針状結晶を示し、および/または
d)前記多形IIIのDSCスペクトルは、初期温度がそれぞれ105.64±3℃(好ましくは±2℃または±1℃)および254±3℃(好ましくは±2℃または±1℃)である吸熱ピークを有する。
【0019】
別の好ましい例において、前記多形IIは、以下からなる群から選択される一つまたは複数の特徴を有し、
1)前記多形IIIにおいて、EtOHと化合物Iとのモル比は、1:0.25~0.35、好ましくは10:3であり、
2)前記多形IIIのX線粉末回折パターンは、基本的に
図15の曲線3に示されたとおりであり、
3)前記多形IIIのTGAスペクトルは、基本的に
図17のTGA曲線に示されたとおりであり、および/または
4)前記多形IIIのDSCスペクトルは、基本的に
図17のDSC曲線に示されたとおりである。
【0020】
別の好ましい例において、前記多形IIIのDSCスペクトルは、211.79±3℃(好ましくは±2℃または±1℃)の吸熱ピークをさらに有する。
別の好ましい例において、前記多形IIIの偏光顕微鏡解析パターンは、基本的に
図16に示されたとおりである。
【0021】
別の好ましい例において、前記多形IVのX線粉末回折パターンは、8.529±0.2°、9.177±0.2°、9.696±0.2°、11.324±0.2°、17.556±0.2°、17.824±0.2°、28.107±0.2°の2θ値で特徴的なピークを有する。
別の好ましい例において、前記多形IVのX線粉末回折パターンは、5.518±0.2°、7.903±0.2°、12.152±0.2°、17.338±0.2°、18.085±0.2°、18.909±0.2°、20.547±0.2°、25.955±0.2°からなる群から選択される一つまたは複数の2θ値で特徴的なピークをさらに有する。
【0022】
別の好ましい例において、前記多形IVは、以下からなる群から選択される一つまたは複数の特徴を有し、
a)前記多形IVは、化合物Iの水和物であり、および/または
b)前記多形IVのTGAスペクトルは、室温から200℃まで約4.6~5.0%の重量を損失する。
【0023】
別の好ましい例において、前記多形IVは、以下からなる群から選択される一つまたは複数の特徴を有し、
1)前記多形IVにおいて、水と化合物Iとのモル比は、1:0.95~1.05、より好ましくは1:1であり、
2)前記多形IVのX線粉末回折パターンは、基本的に
図21に示されたとおりであり、
3)前記多形IVのTGAスペクトルは、基本的に
図22のTGA曲線に示されたとおりであり、および/または
4)前記多形IVのDSCスペクトルは、基本的に
図22のDSC曲線に示されたとおりである。
別の好ましい例において、前記多形IVのDSCスペクトルにはより広いふた2の吸熱ピークと一つの発熱ピークがある。
【0024】
別の好ましい例において、前記多形VのX線粉末回折パターンは、7.335±0.2°、8.304±0.2°、11.01±0.2°、14.733±0.2°、15.132±0.2°、19.142±0.2°、22.2±0.2°の2θ値で特徴的なピークを有する。
【0025】
別の好ましい例において、前記多形VのX線粉末回折パターンは、4.248±0.2°、7.712±0.2°、8.643±0.2°、11.272±0.2°、16.712±0.2°、18.402±0.2°、30.318±0.2°、30.621±0.2°からなる群から選択される一つまたは複数の2θ値で特徴的なピークをさらに有する。
【0026】
別の好ましい例において、前記多形Vは、以下からなる群から選択される一つまたは複数の特徴を有し、
a)前記多形Vは、化合物IのEtOH溶媒和物であり、
b)前記多形VのTGAスペクトルは、180℃の前に約8.5~8.9%の重量を損失し、および/または
【0027】
c)前記多形VのDSCスペクトルは、三つの吸熱ピークを有し、初期温度は、それぞれ59.19±3℃(好ましくは±2℃または±1℃)、103.16±3℃(好ましくは±2℃または±1℃)および237.82±3℃(好ましくは±2℃または±1℃)である。
【0028】
別の好ましい例において、前記多形Vは、以下からなる群から選択される一つまたは複数の特徴を有し、
1)前記多形Vにおいて、EtOHと化合物Iとのモル比は、1:0.45~0.55、好ましくは2:1であり、
2)前記多形VのX線粉末回折パターンは、基本的に
図23の曲線5に示されたとおりであり、
3)前記多形VのTGAスペクトルは、基本的に
図24のTGA曲線に示されたとおりであり、および/または
4)前記多形VのDSCスペクトルは、基本的に
図24のDSC曲線に示されたとおりである。
【0029】
別の好ましい例において、前記多形VIのX線粉末回折パターンは、8.839±0.2°、11.326±0.2°、16.638±0.2°、17.474±0.2°、17.827±0.2°、18.799±0.2°、21.306±0.2°の2θ値で特徴的なピークを有する。
【0030】
別の好ましい例において、前記多形VIのX線粉末回折パターンは、9.918±0.2°、10.772±0.2°、12.948±0.2°、17.11±0.2°、19.215±0.2°、21.608±0.2°、22.86±0.2°、26.908±0.2°からなる群から選択される一つまたは複数の2θ値で特徴的なピークをさらに有する。
【0031】
別の好ましい例において、前記多形VIは、以下からなる群から選択される一つまたは複数の特徴を有し、
a)前記多形VIは、化合物IのDMF溶媒和物であり、
b)前記多形VIのTGAスペクトルは、室温から200℃まで約1.4~1.6%の重量を損失し、
c)前記多形VIのDSCスペクトルは、初期温度が251.8±3℃(好ましくは±2℃または±1℃)である吸熱ピークを有し、さらに初期温度が214.14±3℃(好ましくは±2℃または±1℃)である発熱ピークも有し、
d)前記多形VIの偏光顕微鏡解析パターンは、小粒子結晶を示し、および/または
e)前記多形VIのDSCスペクトルは、初期温度がそれぞれ91~94℃および179~181℃である吸熱ピークも有する。
【0032】
別の好ましい例において、前記多形VIは、以下からなる群から選択される一つまたは複数の特徴を有し、
1)前記多形VIにおいて、DMFと化合物Iとのモル比は、1:0.09~0.11、より好ましくは、1:0.1であり、
2)前記多形VIのX線粉末回折パターンは、基本的に
図27の曲線6に示されたとおりであり、
3)前記多形VIのTGAスペクトルは、基本的に
図29のTGA曲線に示されたとおりであり、および/または
4)前記多形VIのDSCスペクトルは、基本的に
図29のDSC曲線に示されたとおりである。
【0033】
本発明の第2の態様は、医薬組成物を提供し、前記医薬組成物は、
(a)式Iの化合物の多形を含む有効成分と、
(b)薬学的に許容される担体とを含み、
ここで、前記多形は、多形I、多形II、多形III、多形IV、多形V、多形VI、またはその組み合わせからなる群から選択される。
別の好ましい例において、前記有効成分において、多形Iは、50~100wt%、好ましくは、70~99.5wt%、より好ましくは、80~99wt%である。
別の好ましい例において、前記有効成分において、多形IIは、50~100wt%、好ましくは、70~99.5wt%、より好ましくは、80~99wt%である。
【0034】
本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様に記載の式Iの化合物の多形または本発明の第2の態様に記載の医薬組成物の用途を提供し、薬物または製剤の調製のために使用され、前記薬物または製剤EP4受容体活性が介在する疾患を予防および/または治療するために使用される。
【0035】
別の好ましい例において、前記EP4受容体活性が介在する疾患は、肝臓がん、肺がん、前立腺がん、皮膚がん、結腸がん、膵臓がん、乳がん、白血病、リンパ腫、卵巣がん、胃がん、膀胱がん、腎臓がん、口腔がん、黒色腫、食道がん、リンパ腫、子宮頸がん等の悪性腫瘍、アレルギー、炎症、骨疾患、急性または慢性疼痛、またはその組み合わせからなる群から選択される。
【0036】
本発明の第4の態様は、式Iの化合物の前記多形Iの調製方法を提供し、第1の溶媒における式Iの化合物の混合液を提供し、前記混合液をスラリー化、攪拌または揮発させることにより、前記結晶形Iを得る段階を含み、ここで、
【0037】
前記第1の溶媒は、メタノール、イソプロパノール、イソブタノール、2-ブタノン、アセトニトリル、メチルt-ブチルエーテル、水、アクリル酸エチル、アセトン、酢酸イソプロピル、ジクロロメタン、n-ヘプタン、1,4-ジオキサン、酢酸ブチル、4-メチル-2-ペンタノン、トルエン、2-ブタノン、シクロヘキサン、THFと水との混合溶液、またはその組み合わせからなる群から選択され、好ましくはメタノールまたはアセトンである。
【0038】
別の好ましい例において、前記第1の溶媒がTHFと水との混合溶液である場合、前記混合溶液において、THFの体積比率は、40%未満、好ましくは、30%未満、より好ましくは、25%未満、最も好ましくは、20%である。
【0039】
別の好ましい例において、前記多形Iの調製方法は、以下からなる群から選択される一つまたは複数の特徴を有し、
i)前記原料と第1の溶媒との質量体積比(g/mL)は、1:3~50、好ましくは1:5~40、好ましくは、1:8~35であり、
ii)前記原料は、式Iの化合物の非晶質物、結晶形、またはその組み合わせからなる群から選択され、
iii)前記スラリー化または攪拌の時間は、0.5~24時間、好ましくは、1~12時間、より好ましくは、2~6時間であり、および/または
iv)前記スラリー化、攪拌または揮発の温度は、0~100℃、好ましくは、10~80℃、より好ましくは、15~70℃、最も好ましくは、20~65℃である。
【0040】
本発明の第5の態様は、式Iの化合物の前記多形IIの調製方法を提供し、エタノールにおける式Iの化合物の混濁液を提供し、4~40℃下で前記混濁液を攪拌し、分離して、前記多形IIを得る段階を含む。
【0041】
別の好ましい例において、前記多形IIの調製方法において、前記攪拌は、以下の一つまたは複数の特徴を有し、
1)前記攪拌の時間は、6時間~5日、好ましくは、12時間~4日、より好ましくは、1~4日、最も好ましくは、2~4日であり、および/または
2)別の好ましい例において、前記攪拌の温度は、10~30℃、より好ましくは、25±5℃である。
別の好ましい例において、式Iの化合物の前記多形IIの調製方法は、エタノールにおける式Iの化合物の飽和溶液を提供し、冷却および結晶化し、分離して、前記多形IIを得る段階を含む。
別の好ましい例において、前記飽和溶液は、40~80℃、好ましくは45~60℃の熱飽和溶液である。
別の好ましい例において、前記冷却および結晶化は、自然条件下で室温に冷却することである。
【0042】
本発明の第6の態様は、式Iの化合物の前記多形IIIの調製方法を提供し、エタノールにおける式Iの化合物の混濁液を提供し、45~65℃下で前記混濁液を攪拌またはスラリー化し、分離して前記多形IIIを得る段階を含む。
【0043】
別の好ましい例において、前記多形IIIの調製方法は、以下からなる群から選択される一つまたは複数の特徴を有し、
i)前記攪拌の温度は、50~60℃、好ましくは、50~55℃であり、および/または
ii)前記攪拌の時間は、0.5~3日、好ましくは、1~2日である。
【0044】
本発明の第7の態様は、式Iの化合物の前記多形IVの調製方法を提供し、メタノールにおける式Iの化合物の混合液を提供し、室温下で前記混合液を揮発することにより、前記結晶形IVを得る段階を含む。
【0045】
別の好ましい例において、式Iの化合物の前記多形IVの調製方法は、メタノールにおける式Iの化合物の混合液を提供し、前記混合液に水を加えた後に室温環境下で揮発させることにより、前記結晶形IVを得る段階を含む。
【0046】
別の好ましい例において、前記混合液において、式Iの化合物の濃度は、8~20mg/mLである。
別の好ましい例において、前記混合液は、固体形態の化合物Iを含まず、好ましくは、前記混合液は、式Iの化合物の飽和溶液である。
【0047】
本発明の第8の態様は、式Iの化合物の前記多形Vの調製方法を提供し、エタノールにおける式Iの化合物の混合液を提供し、室温下で前記混合液から溶媒を揮発させることにより、前記結晶形Vを得る段階を含む。
【0048】
別の好ましい例において、式Iの化合物の前記多形Vの調製方法は、エタノールにおける式Iの化合物の混合液を提供し、前記混合物にメタノールを加えた後に室温下で溶媒を揮発させることにより、前記結晶形Vを得る段階を含む。
【0049】
別の好ましい例において、メタノールとエタノールとの比例は、1:0.5~10、好ましくは、1:0.5~5である。
別の好ましい例において、前記混合液は、固体形態の化合物Iを含まず、好ましくは、前記混合液は、式Iの化合物の飽和溶液である。
【0050】
本発明の第9の態様は、式Iの化合物の前記多形VIの調製方法を提供し、DMFとH2Oとで構成された混合溶媒における式Iの化合物の混濁液を提供し、得られた混濁液を攪拌し、分離して前記結晶形VIを得る段階を含む。
【0051】
別の好ましい例において、前記多形VIの調製方法は、以下からなる群から選択される一つまたは複数の特徴を有し、
i)前記DMFとH2Oとの混合溶媒において、DMFとH2Oとの体積比は、1:0.5~2、好ましくは、1:0.8~1.2、より好ましくは、1:1であり、
ii)前記攪拌の温度は、40~80℃、好ましくは、50~70℃、より好ましくは、60~70℃であり、
iii)前記攪拌の時間は、1~5日、好ましくは、2~4日である。
【0052】
本発明の第10の態様は、EP4受容体活性が介在する疾患を予防および/または治療するための方法を提供し、前記方法は、必要とする対象に治療有効量の少なくとも1種の本発明の第1の態様に記載の式Iの化合物の多形または本発明の第2の態様に記載の医薬組成物を投与する段階を含む。
【0053】
別の好ましい例において、前記対象は、哺乳動物である。
別の好ましい例において、前記対象は、ヒト、マウス、ネコおよびイヌからなる群から選択される。
【発明の効果】
【0054】
本発明の範囲内で、本発明の上記の各技術的特徴と以下(例えば、実施例)に具体的に説明される各技術的特徴との間を、互いに組み合わせることにより、新しいまたは好ましい技術的解決策を構成することができることに理解されたい。スペースに限りがあるため、ここでは繰り返さない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図2】初期原料の偏光顕微鏡解析スペクトルである。
【
図3】初期原料のTGA-DSCスペクトルである。
【
図4】初期原料を190℃に加熱して得られたサンプルの偏光顕微鏡解析スペクトルである。
【
図5】初期原料を190℃に加熱して得られたサンプルのTGA-DSCスペクトルである。
【
図8】多形Iの熱重量分析-示差走査熱量分析(TGA-DSC)スペクトルである。
【
図10】室温下で懸濁し、攪拌し、調製して得られたサンプルのX線粉末回折スペクトルである。
【
図11】多形IIのX線粉末回折スペクトルである。
【
図12】多形IIの偏光顕微鏡解析スペクトルである。
【
図13】多形IIのTGA-DSCスペクトルである。
【
図14】50℃下で懸濁し、攪拌して調製されたサンプルのX線粉末回折スペクトルである。
【
図15】多形IIIのX線粉末回折スペクトルである。
【
図16】多形IIIの偏光顕微鏡解析スペクトルである。
【
図17】多形IIIのTGA-DSCスペクトルである。
【
図18】冷却および結晶化して得られたサンプルのX線粉末回折スペクトルである。
【
図19】貧溶媒沈殿によって得られたサンプルのX線粉末回折スペクトルである。
【
図20】揮発法によって得られたサンプルのX線粉末回折スペクトルである。
【
図21】多形IVのX線粉末回折スペクトルである。
【
図22】多形IVのTGA-DSCスペクトルである。
【
図24】多形VのTGA-DSCスペクトルである。
【
図25】65℃下で1日間懸濁および攪拌して得られたサンプルのX線粉末回折スペクトルである。
【
図26】65℃下で結晶転換を3日間懸濁して得られたサンプルのX線粉末回折スペクトルである。
【
図27】多形VIのX線粉末回折スペクトルである。
【
図28】多形VIの偏光顕微鏡解析スペクトルである。
【
図29】多形VIのTGA-DSCスペクトルである。
【
図31】DSC熱処理X線粉末回折スペクトルである。
【
図32】25℃/92.5%RH環境下で9日間の多形IのX線粉末回折スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明者らは、広範囲かつ綿密な研究の後、多数のスクリーニングおよび試験を通じて、初めてEP4受容体アンタゴニストである(S)-4-(1-(2-(4-フルオロベンジル)-4,7-ジヒドロ-5H-チエノ[2,3-c]ピラン-3-カルボキサミド)エチル)安息香酸の多形体を取得した。驚くべきことに、本発明の多形体は、優れた安定性を有し、薬物の処理および保管にとってより有利する。これに基づいて、本発明を完成させた。
【0057】
用語
特に定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0058】
本明細書に使用されるように、具体的に記載された値に関連して使用される場合、「約」という用語は、当該値が記載された値から1%以下しか変化しない可能性があることを指す。例えば、本明細書に使用されるように、「約100」という表現は、99から101までの間のすべての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4等)を含む。
【0059】
本明細書に使用されるように、「含有」または「包括(含む)」という用語は、開放式、半閉鎖式および閉鎖式であり得る。言い換えれば、前記用語も、「基本的にからなる」、または「からなる」を含む。
【0060】
本明細書に使用されるように、「多形」、「多形体」、「結晶形」という用語は、交換可能に使用され、結晶形形態で存在する物質を指す。
本明細書に使用されるように、「室温」という用語は、温度が4~40℃、好ましくは、25±5℃であることを指す。
【0061】
本明細書に使用されるように、「n個またはn個以上」という用語は、nおよびnより大きい任意の正の整数(例えば、n、n+1、….)を含むことを指し、ここで、上限Nupは、当該グループ内のすべての値の数である。例えば、「1個または1個以上」は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10…上限Nupのそれぞれの正の整数だけでなく、「2個または2個以上」、「3個または3個以上」、「4個または4個以上」、「5個または5個以上」、「6個または6個以上」、「7個または7個以上」、「8個または8個以上」、「9個または9個以上」、「10個または10個以上」等の範囲をさらに含む。
【0062】
有効成分
本明細書に使用されるように、「有効成分」または「有効成分」という用語は、(S)-4-(1-(2-(4-フルオロベンジル)-4,7-ジヒドロ-5H-チエノ[2,3-c]ピラン-3-カルボキサミド)エチル)安息香酸(式Iの化合物)、特に本発明の多形体形態で存在する式Iの化合物、例えば、多形I、II、III、IV、V、VI、またはその組み合わせを指す。
好ましくは、前記有効成分において、多形Iは、50~100wt%、好ましくは、70~99.5wt%、より好ましくは、80~99wt%である。
【0063】
多形体
本発明においては、(S)-4-(1-(2-(4-フルオロベンジル)-4,7-ジヒドロ-5H-チエノ[2,3-c]ピラン-3-カルボキサミド)エチル)安息香酸は、多形I、II、III、IV、V、VIで存在することが実験により見出された。前記6種の多形において、多形Iおよび多形IIは、無水結晶形であり、多形III、多形Vおよび多形VIは、溶媒結晶形であり、多形IVは、水和物である。
【0064】
多形I
前記多形IのX線粉末回折パターンは、4.234±0.2°、8.505±0.2°、8.96±0.2°、11.177±0.2°、12.892±0.2°、18.05±0.2°、23.333±0.2°の2θ値で特徴的なピークを有する。
【0065】
別の好ましい例において、前記多形IのX線粉末回折パターンは、10.05±0.2°、16.438±0.2°、17.093±0.2°、19.229±0.2°、20.259±0.2°、21.544±0.2°、25.613±0.2°、26.051±0.2°からなる群から選択される一つまたは複数の2θ値で特徴的なピークをさらに有する。
【0066】
別の好ましい例において、前記多形IのX線粉末回折パターンは、18.851±0.2°、19.406±0.2°、22±0.2°、22.543±0.2°、24.285±0.2°、26.774±0.2°、27.331±0.2°、28.441±0.2°、29.04±0.2°、29.529±0.2°、30.185±0.2°、33.196±0.2°、34.049±0.2°、34.714±0.2°、36.109±0.2°、37.076±0.2°、38.936±0.2°からなる群から選択される一つまたは複数の2θ値で特徴的なピークをさらに有する。
【0067】
多形Iは、下記の方法によって調製されることができる。
第1の溶媒における式Iの化合物の混合液を提供し、前記混合液をスラリー化、攪拌または揮発させることにより、前記結晶形Iを得、ここで、
【0068】
前記第1の溶媒は、メタノール、イソプロパノール、イソブタノール、2-ブタノン、アセトニトリル、メチルt-ブチルエーテル、水、アクリル酸エチル、アセトン、酢酸イソプロピル、ジクロロメタン、n-ヘプタン、1,4-ジオキサン、酢酸ブチル、4-メチル-2-ペンタノン、トルエン、2-ブタノン、シクロヘキサン、THFと水との混合溶液、またはその組み合わせからなる群から選択され、好ましくはメタノールまたはアセトンである。
【0069】
別の好ましい例において、前記第1の溶媒がTHFと水との混合溶液である場合、前記混合溶液において、THFの体積比率は、40%未満、好ましくは、30%未満、より好ましくは、25%未満、最も好ましくは、20%である。
【0070】
別の好ましい例において、前記多形Iの調製方法は、以下からなる群から選択される一つまたは複数の特徴を有し、
i)前記原料と第1の溶媒との質量体積比(g/mL)は、1:3~50、好ましくは1:5~40、好ましくは、1:8~35であり、
ii)前記原料は、式Iの化合物の非晶質物、結晶形、またはその組み合わせからなる群から選択され、
iii)前記スラリー化または攪拌の時間は、0.5~24時間、好ましくは、1~12時間、より好ましくは、2~6時間であり、および/または
iv)前記スラリー化、攪拌または揮発の温度は、0~100℃、好ましくは、10~80℃、より好ましくは、15~70℃、最も好ましくは、20~65℃である。
【0071】
DSC熱処理ならびに多形Iおよび結晶転換実験によって、多形Iが安定結晶形であることを示す。
【0072】
多形II
別の好ましい例において、前記多形IIのX線粉末回折パターンは、4.018±0.2°、8.722±0.2°、9.382±0.2°、11.539±0.2°、17.732±0.2°、18.038±0.2°、19.13±0.2°の2θ値で特徴的なピークを有する。
【0073】
別の好ましい例において、前記多形IIのX線粉末回折パターンは、8.153±0.2°、9.882±0.2°、12.333±0.2°、19.91±0.2°、20.747±0.2°、23.638±0.2°、26.164±0.2°、28.341±0.2°からなる群から選択される一つまたは複数の2θ値で特徴的なピークをさらに有する。
【0074】
多形IIの調製方法は、エタノールにおける式Iの化合物の混濁液を提供し、4~40℃下で前記混濁液を攪拌し、分離して、前記多形IIを得る段階を含む。
【0075】
別の好ましい例において、前記多形IIの調製方法において、前記攪拌は、以下の一つまたは複数の特徴を有し、
1)前記攪拌の時間は、6時間~5日、好ましくは、12時間~4日、より好ましくは、1~4日、最も好ましくは、2~4日であり、および/または
2)別の好ましい例において、前記攪拌の温度は、10~30℃、より好ましくは、25±5℃である。
式Iの化合物の前記多形IIの別の調製方法は、エタノールにおける式Iの化合物の飽和溶液を提供し、冷却および結晶化し、分離して、前記多形IIを得る段階を含む。
別の好ましい例において、前記飽和溶液は、40~80℃、好ましくは45~60℃の熱飽和溶液である。
別の好ましい例において、前記冷却および結晶化は、自然条件下で室温に冷却することである。
【0076】
多形III
別の好ましい例において、前記多形IIIのX線粉末回折パターンは、3.888±0.2°、4.247±0.2°、7.269±0.2°、10.954±0.2°、18.343±0.2°、19.009±0.2°、22.04±0.2°の2θ値で特徴的なピークを有する。
【0077】
別の好ましい例において、前記多形IIIのX線粉末回折パターンは、8.251±0.2°、8.589±0.2°、10.352±0.2°、11.248±0.2°、17.248±0.2°、17.855±0.2°、18.068±0.2°、19.605±0.2°からなる群から選択される一つまたは複数の2θ値で特徴的なピークをさらに有する。
【0078】
前記多形IIIは、化合物IのEtOH溶媒和物であり、好ましくは、前記多形IIIにおいて、EtOHと化合物Iとのモル比は、1:0.25~0.35、好ましくは10:3である。
前記多形IIIの調製方法は、エタノールにおける式Iの化合物の混濁液を提供し、45~65℃下で前記混濁液を攪拌またはスラリー化し、分離して前記多形IIIを得る段階を含む。
【0079】
別の好ましい例において、前記多形IIIの調製方法は、以下からなる群から選択される一つまたは複数の特徴を有し、
i)前記攪拌の温度は、50~60℃、好ましくは、50~55℃であり、および/または
ii)前記攪拌の時間は、0.5~3日、好ましくは、1~2日である。
【0080】
多形IV
別の好ましい例において、前記多形IVのX線粉末回折パターンは、8.529±0.2°、9.177±0.2°、9.696±0.2°、11.324±0.2°、17.556±0.2°、17.824±0.2°、28.107±0.2°の2θ値で特徴的なピークを有する。
【0081】
別の好ましい例において、別の好ましい例において、前記多形IVのX線粉末回折パターンは、5.518±0.2°、7.903±0.2°、12.152±0.2°、17.338±0.2°、18.085±0.2°、18.909±0.2°、20.547±0.2°、25.955±0.2°からなる群から選択される一つまたは複数の2θ値で特徴的なピークをさらに有する。
【0082】
前記多形IVは、化合物Iの水和物であり、好ましくは、前記多形IVにおいて、水と化合物Iとのモル比は、1:0.95~1.05、より好ましくは1:1である。
前記多形IVの調製方法は、メタノールにおける式Iの化合物の混合液を提供し、室温下で前記混合液を揮発することにより、前記結晶形IVを得る段階を含む。
【0083】
別の好ましい例において、式Iの化合物の前記多形IVの調製方法は、メタノールにおける式Iの化合物の混合液を提供し、前記混合液に水を加えた後に室温環境下で揮発させることにより、前記結晶形IVを得る段階を含む。
別の好ましい例において、前記混合液において、式Iの化合物の濃度は、8~20mg/mLである。
別の好ましい例において、前記混合液は、固体形態の化合物Iを含まず、好ましくは、前記混合液は、式Iの化合物の飽和溶液である。
【0084】
多形V
別の好ましい例において、前記多形VのX線粉末回折パターンは、7.335±0.2°、8.304±0.2°、11.01±0.2°、14.733±0.2°、15.132±0.2°、19.142±0.2°、22.2±0.2°の2θ値で特徴的なピークを有する。
【0085】
別の好ましい例において、別の好ましい例において、前記多形VのX線粉末回折パターンは、4.248±0.2°、7.712±0.2°、8.643±0.2°、11.272±0.2°、16.712±0.2°、18.402±0.2°、30.318±0.2°、30.621±0.2°からなる群から選択される一つまたは複数の2θ値で特徴的なピークをさらに有する。
【0086】
前記多形Vは、化合物IのEtOH溶媒和物であり、好ましくは、前記多形Vにおいて、EtOHと化合物Iとのモル比は、1:0.45~0.55、好ましくは2:1である。
前記多形Vの調製方法は、エタノールにおける式Iの化合物の混合液を提供し、室温下で前記混合液から溶媒を揮発させることにより、前記結晶形Vを得る段階を含む。
【0087】
別の式Iの化合物の前記多形Vの別の調製方法は、エタノールにおける式Iの化合物の混合液を提供し、前記混合物にメタノールを加えた後に室温下で溶媒を揮発させることにより、前記結晶形Vを得る段階を含む。
別の好ましい例において、メタノールとエタノールとの比例は、1:0.5~10、好ましくは、1:0.5~5である。
別の好ましい例において、前記混合液は、固体形態の化合物Iを含まず、好ましくは、前記混合液は、式Iの化合物の飽和溶液である。
【0088】
多形VI
別の好ましい例において、前記多形VIのX線粉末回折パターンは、8.839±0.2°、11.326±0.2°、16.638±0.2°、17.474±0.2°、17.827±0.2°、18.799±0.2°、21.306±0.2°の2θ値で特徴的なピークを有する。
【0089】
別の好ましい例において、別の好ましい例において、前記多形VIのX線粉末回折パターンは、9.918±0.2°、10.772±0.2°、12.948±0.2°、17.11±0.2°、19.215±0.2°、21.608±0.2°、22.86±0.2°、26.908±0.2°からなる群から選択される一つまたは複数の2θ値で特徴的なピークをさらに有する。
【0090】
前記多形VIは、化合物IのDMF溶媒和物であり、好ましくは、前記多形VIにおいて、DMFと化合物Iとのモル比は、1:0.09~0.11、より好ましくは、1:0.1である。前記多形VIの調製方法は、DMFとH2Oとで構成された混合溶媒における式Iの化合物の混濁液を提供し、得られた混濁液を攪拌し、分離して前記結晶形VIを得る段階を含む。
【0091】
別の好ましい例において、前記多形VIの調製方法は、以下からなる群から選択される一つまたは複数の特徴を有し、
i)前記DMFとH2Oとの混合溶媒において、DMFとH2Oとの体積比は、1:0.5~2、好ましくは、1:0.8~1.2、より好ましくは、1:1であり、
ii)前記攪拌の温度は、40~80℃、好ましくは、50~70℃、より好ましくは、60~70℃であり、
iii)前記攪拌の時間は、1~5日、好ましくは、2~4日である。
【0092】
医薬組成物および投与方法
本発明の多形体は、高活性かつ高選択性のプロスタダランジンE2受容体EP4アンタゴニストである。従って、本発明の多形体および本発明の多形体を主な有効成分として含む医薬組成物は、EP4受容体活性が介在する疾患および病症の治療、予防および緩和に使用されることができる。先行技術によれば、本発明に記載の多形体は、肝臓がん、肺がん、前立腺がん、皮膚がん、結腸がん、膵臓がん、乳がん、白血病、リンパ腫、卵巣がん、胃がん、膀胱がん、腎臓がん、口腔がん、黒色腫、食道がん、リンパ腫、子宮頸がん等の悪性腫瘍、アレルギー、炎症、骨疾患、急性または慢性疼痛、またはその組み合わせ等の疾患(これらに限定されない)の治療に使用されることができる。
【0093】
本発明の医薬組成物は、安全かつ有効量範囲の本発明の多形体および薬学的に許容される賦形剤または担体を含む。
ここで、「安全かつ有効量」とは、深刻な副作用を引き起こさずに状態を大幅に改善するのに十分な化合物(または多形体)の量を指す。通常、医薬組成物は、1~2000mgの本発明の多形体/剤、より好ましくは、10~200mgの本発明の多形体/剤を含む。好ましくは、前記「1剤」は、一つのカプセルまたは錠剤である。
【0094】
「薬学的に許容される担体」とは、ヒトへの使用に適し、十分な純度および十分に低い毒性を有していなければならない、一つまたは複数の適合性固体または液体の充填剤またはゲル物質を指す。「適合性」とは、組成物の各成分が、本発明の有効成分およびそれらの間で、有効成分の効力を顕著に低下させることなく、互いにブレンドすることができることを指す。薬学的に許容される担体の一部の例としては、セルロースおよびその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースナトリウム、酢酸セルロース等)、ゼラチン、タルク、固体潤滑剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム)、硫酸カルシウム、植物油(例えば、大豆油、ごま油、落花生油、オリーブ油等)、ポリオール(例えば、プロピレングリコール、グリセリン、マンニトール、ソルビトール等)、乳化剤(例えば、トゥイーンR)、湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、着色剤、香味剤、安定剤、抗酸化剤、防腐剤、パイロジェンフリー水等を含む。
【0095】
本発明の多形体または医薬組成物の登用方法は、特に限定されず、代表的な投与方法は、経口、腫瘍内、直腸、非経口(静脈内、筋肉内または皮下)、および局所投与を含む(これらに限定されない)。
【0096】
経口投与用の固形剤形は、カプセル剤、錠剤、丸剤、粉末剤および顆粒剤を含む。これらの固形剤形において、有効成分は、例えば、クエン酸ナトリウム(sodium citrate)またはリン酸二カルシウム(dicalcium phosphate)等の少なくとも一つの従来の不活性賦形剤(または担体)と混合されるか、または(a)微結晶性セルロース、テンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸等の充填剤または相溶化剤、(b)ヒドロキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよびアラビアゴム等の結合剤、(c)グリセリン等の保湿剤、(d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモテンプンジャガイモデンプンまたはタピオカテンプンタピオカデンプン、アルギン酸、特定の複合ケイ酸塩、炭酸ナトリウム、クロスポビドン、架橋ビカルボキシメチルセルロースナトリウム等の崩壊剤、(e)パラフィン等のリターダー、(f)第四級アミン化合物等の吸収促進剤、(g)セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセリル等の湿潤剤、(h)カオリン等の吸着剤、ならびに(i)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム等の潤滑剤、またはその混合物等の成分と混合される。カプセル剤、錠剤および丸剤において、剤形は、緩衝剤も含むことができる。
【0097】
錠剤、シュガーピル、カプセル剤、丸剤および顆粒剤等の固形剤形は、腸溶性コーティングおよび当技術分野で公知の他の材料等の、コーティングおよびシェル材料を用いて調製することができる。それらは、乳白剤を含むことができ、また、このような組成物の有効成分の放出は、消化管の特定の部分で遅延的な方式で放出することができる。使用可能な埋め込み成分の例としては、高分子物質およびワックスである。必要に応じて、有効成分は、一つまたは複数の上記賦形剤とマイクロカプセルを形成することができる。
【0098】
経口投与用の液体剤形は、薬学的に許容される乳濁液、溶液、懸濁液、シロップまたはチンキ剤を含む。有効成分に加えて、液体剤形は、水または他の溶媒等の当技術分野で従来から使用される不活性希釈剤、および例えば、エタノール、イソプロパノール、炭酸エチル、酢酸エチル、プロピレングリコール、1,3―ブタンジオール、ジメチルホルムアミドおよび油、特に綿実油、落花生油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、蓖麻子油およびごま油またはこれらの物質の混合物等の可溶化剤および乳化剤を含むことができる。
【0099】
これらの不活性希釈剤に加えて、組成物は、例えば、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味剤、香味剤和香料等の補助剤も含むことができる。
有効成分に加えて、懸濁液は、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよび脱水ソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメトキシドおよび寒天またはこれらの物質の混合物等の懸濁剤を含むことができる。
【0100】
非経口注射用の組成物は、生理学的に許容される滅菌含水または無水溶液、分散液、懸濁液または乳濁液、および滅菌注射可能な溶液または分散液に再構成するための滅菌粉末を含むことができる。適切な水性および非水性担体、希釈剤、溶媒または賦形剤は、水、エタノール、ポリオールおよびその適切な混合物を含む。
局所投与に使用される本発明の多形体の剤形は、軟膏剤、粉末剤、パッチ剤、スプレー剤および吸入剤を含む。有効成分は、無菌条件下で、生理学的に許容される担体および任意の防腐剤、緩衝剤、または必要に応じて必要となる可能性のある推進剤と一緒に混合される。
【0101】
本発明の多形体は、単独で、または他の薬学的に許容される化合物と併用して投与することができる。
医薬組成物が使用される場合、安全かつ流行量の本発明の多形体が、治療を必要とする哺乳動物(例えば、ヒト)に適用され、ここで、投与時の投与量は、考慮される有効用量であり、体重60kgの人の場合、一日量は、通常1~2000mg、好ましくは、10~500mgである。もちろん、具体的な投与量は、投与経路、患者の健康状況等の要因も考慮に入れる必要があり、これらは、すべて熟練した医師のスキルの範囲内である。
【0102】
本発明の主な利点は、次のとおりである。
1.本発明は、2種の無水結晶形(多形Iおよび多形II)、3種の溶媒和物(多形III、多形Vおよび多形VI)ならびに1種の水和物(多形IV)を含み、かつ前記多形が非晶質よりも安定性が高く(熱安定性、吸湿安定性)、加工が容易で、成薬により適合する、化合物Iの6種の単一多形およびその調製方法を初めて提供する。
【0103】
2.多形IおよびIIは、無溶媒結晶形であり、TGAおよびDSCの結果から、多形IおよびIIは、先行技術における白色固体よりも安定性が高く、多形IおよびIIは、凝集がなく、分散が容易で、製剤プロセスに適合することが分かる。
3.本発明の多形Iは、化合物Iの熱力学的に安定な結晶形であり、その高い熱安定性、高い湿度安定性、高い純度および良好な溶解性は、工業生産において顕著な利点を有する。
【0104】
以下、本発明は、具体的実施例と併せてさらに説明される。これらの実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。以下の実施例において、具体的条件を示さない実験方法は、通常従来の条件または製造業者によって提案された条件に従う。特に明記されない限り、パーセンテージと部数とは、重量パーセンテージと重量部数とで計算される。本発明の実施例で使用される原料または機器は、特に明記しない限り、すべて市販されている。
【0105】
分析方法および機器
1H NMR分析
固体サンプルの構造およびサンプルに含まれる溶媒は、1H NMRによって確認される。1H NMR分析に使用される機器は、B-ACS 120オートサンプラーシステムを装備したBruker Advance 300である。
【0106】
X線粉末回折(XRPD)
実験から得られた固体サンプルをD8 advance粉末X線回折分析装置(Bruker)で分析する。当該機器は、LynxEye検出器を装備され、放射線の種類は、Cu Kα(λ=1.54184A)である。サンプルの2θスキャン角度は、3°~40°であり、スキャンステップは、0.02°である。サンプルを測定する場合の電球電圧および電球電流は、それぞれ40KVおよび40mAである。
【0107】
偏光顕微鏡解析(PLM)
PLM分析に使用される機器モデルは、ECLIPSE LV100POL偏光顕微鏡(Nikon、日本)である。
【0108】
熱重量分析(TGA)
熱重量分析装置のモデルは、TGA Q500(TA、米国)である。サンプルは、並行化された開口アルミニウム製サンプル皿に置かれ、質量は、TGAオーブンで自動的に計量される。サンプルは、10℃/minの速度で最終温度に加熱される。
【0109】
示差走査熱量分析(DSC)
示差走査熱量分析の機器モデルは、DSC Q200(TA、米国)である。サンプルを正確に計量した後にDSC穿刺サンプル皿に入れ、サンプルの正確な質量を記録する。サンプルは、10℃/minの昇温速度で最終温度に加熱される。
【0110】
動的水蒸気吸着(DVS)法
動的水分吸脱着分析に使用される機器モデルは、IGA Sorp(Hidentity Isochema)である。サンプルは、勾配モードで測定され、試験の相対湿度範囲は、0%~90%であり、各勾配の湿度増分は、10%である。具体的なパラメーターは、次のとおりである。
サンプル温度:25℃
温度安定化:0.1℃/min
流速:250mL/min
スキャン:2
モデル:F1
最小時間:30min
最大時間:120min
待機上限:98%
開始:吸着スキャン
吸着湿度(%):0、10、20、30、40、50、60、70、80、90、
脱着湿度(%):80、70、60、50、40、30、20、10、0。
【0111】
実施例1
非晶質化合物Iの調製
出願番号PCT/CN2018/117235の国際出願公開の実施例1~14と同じ方法で(S)-4-(1-(2-(4-フルオロベンジル)-4,7-ジヒドロ-5H-チエノ[2,3-c]ピラン-3-カルボキサミド)エチル)安息香酸を調製し、シリカゲル(200~300メッシュ)クロマトグラフィーカラムによって精製された後、飽和Na2CO3溶液をくわえてpH=12に調節し、生成物を水相に溶解させ、抽出および分離して水層を得、次いで水相に2mol/Lの塩酸を加えてpH=3に調節し、生成物を析出し、吸引ろ過してフィルターケーキを得、真空乾燥炉に移し、温度を55℃に制御し、真空で少なくとも16時間乾燥させて、純度>99%である白色固体の化合物I(遊離酸形態)を得る。
【0112】
上記の白色固体に対して、XRPD、PLM、TGAおよびDSC特徴付ける。
結果は、
図1~3に示されたとおりである。XRPD曲線(
図1-初期原料曲線)およびPLMから、得られた白色固体は、基本的に非晶質であり、凝集現象が存在し、製剤中に分散にくいことが分かる。
【0113】
TGA(
図2)の結果は、前記白色固体が室温から高温までの加熱中に2段階の重量損失があり(120℃の前の重量損失2.94%および120~245℃の間の重量損失2.59%)、DSCには複数の熱イベントがあり、150℃以下では深刻な発熱および吸熱イベントが発生する。
その後の実施例において、前記白色固体を多形を調製するための原料(初期原料と呼ばれる)として使用する。
【0114】
化合物Iの結晶形スクリーニング
実施例2
化合物Iの初期原料を軽く圧延した後に、XRPD特徴付ける。
XRPD結果は、
図1に示されたとおりであり、対応するXRPD曲線によると、圧延によって結晶化が非常に低い物質しか得られないことが分かる。
【0115】
化合物Iの初期原料を190℃に加熱し、XRPD、PLM、TGAおよびDSC特徴付ける。
結果は、
図1、4~5に示されたとおりである。
図1の対応するXRPD曲線から、結晶性の高い化合物Iは、加熱によっても得られないことが分かる。
【0116】
実施例3
化合物Iの初期原料をアセトン中で4時間スラリー化し、ろ過し、かつ得られた固体に対してXRPD、PLM、TGA、DSCおよびDVS特徴付ける。
XRPD結果は、
図6に示されたとおりであり、結晶化度の高い多形物が得られ、多形Iと名付けられる。
【0117】
前記アセトンで調製された多形IのX線粉末回折スペクトルは、
図6の曲線1に示されたとおりであり、ピーク表は、表1に示されたとおりであり、PLM、TGA、DSCおよびDVSスペクトルは、
図7~9に示されたとおりである。
【0118】
TGA結果は、多形Iが230℃の前に約0.34%の重量を損失し(
図8)、DSCには、ショルダーを有する吸熱ピークがあり、初期温度は、251.55℃であり、ピーク値は、253.96であり、ショルダーピーク温度は、241.7℃であることを示す(
図8)。DVSは、多形Iが80%RH下で吸湿<2%であり(
図9)、吸湿の前後で、サンプルの多形は、変化しない。
【0119】
【0120】
実施例4
室温下での懸濁および攪拌によるスクリーニング
様々な溶媒において、室温下で懸濁および攪拌して、合計20個のサンプルを調製し、結果は、表2および
図10に示されたとおりであり、ここで、溶媒体積比は、初期原料と溶媒との質量体積比(g/mL)を表し、以下同様である。
【0121】
【0122】
図10から、本実験のほとんどの結晶形は、多形Iであることが分かるが、EtOHが溶媒である場合に得られた多形は、多形Iとは異なり(
図11)、多形IIと命名される。
多形IIに対して、PLM、TGAおよびDSC特徴付ける(
図12~13)。
【0123】
PLM(
図11)結果は、多形IIの結晶粒子がより小さく、分散性が良好であることを示す。
TGA(
図12)は、多形IIが200℃の前に約0.045%の重量損失しかないことを示し、多形IIが無水結晶形であることを示し、
1H NMRスペクトルは、サンプルにEtOH残留物がないことを示す。
【0124】
DSC(
図12)には一つの吸熱ピークおよび一つの発熱ピークがあり、初期温度は、それぞれ252.39℃(結晶形Iの融点)および151.75℃である。
さらに、多形IIを200℃に加熱した後にXRPD特徴付け、結果は、
図11に示されたとおりであり、多形IIは、200℃に加熱した後に多形Iに変換されることが分かる。
多形IIのX線粉末回折スペクトルのピーク表は、表3に示されたとおりである。
【0125】
【0126】
実施例5
50℃下での懸濁および攪拌によるスクリーニング
一定量の化合物Iサンプルに表4に示されるような様々な溶媒を加えて混濁液を調製する。混濁液を50℃下で攪拌してスラリー化する。ろ過し、かつ得られた固体に対してXRPD特徴付ける。
50℃下で懸濁および攪拌して、合計11個のサンプルを調製し(表4)、ほとんどのサンプルは、多形I(
図14)であり、EtOHが溶媒である場合にのみ新しい結晶形を得、多形IIIと命名される(
図15)。
【0127】
【0128】
多形IIIに対して、XRPD、PLM、TGAおよびDSC特徴付ける(
図15-17)。
PLM(
図16)結果は、多形IIIが針状結晶であることを示す。
TGA(
図17)は、多形IIIが200℃の前に約3.236%の重量損失があるため、多形IIIがEtOHの溶媒和物(~0.3mol)であることを示し、
1H NMRは、サンプルに3.1%のEtOH残留物があることを示す。
【0129】
DSC(
図17)スペクトルは、三つの初期温度(onset)がそれぞれ105.64℃、211.79および254℃である吸熱ピークを有する。
図15から、多形IIIは、240℃に加熱した後に多形Iに変換されることが分かる。DSC中の初期温度が211.8℃である発熱ピークは、結晶転換ピークである可能性がある。
多形IIIのX線粉末回折スペクトルのピーク表は、表5に示されたとおりである。
【0130】
【0131】
実施例6
冷却および結晶化法によるスクリーニング
化合物Iの初期原料を50℃下で攪拌しながら溶媒に溶解させ、次いで、溶液をろ過し(溶解されない固体を分離して、化合物Iの飽和溶液を得る)、室温にゆっくりと冷却する。得られた固体サンプルをろ過した後にXRPD測定を行う。
【0132】
当該実験は、合計5個のサンプルを調製し(表6)、EtOHで冷却および結晶化して多形IIを得ることを除いて、他のサンプルは、すべて多形Iである(
図18)。
【0133】
【表6】
注:*は、室温に冷却した場合に固体サンプルがより少ない、バイアルを開いたまま1時間揮発した後にサンプルの収集および特徴付けを行うことを表す。
【0134】
実施例7
貧溶媒沈殿法に依るスクリーニング
室温条件下で、適切な量の化合物Iのサンプルを一定の体積のTHF、MeOH、アセトンおよび2-ブタノンに溶解させ、ろ過してろ液を調製する。次いで,室温下で攪拌しながら、異なる比率の貧溶媒を徐々に加える。得られた固体をろ過した後にXRPD試験を行う。
貧溶媒沈殿法により合計17個の実験(表7)を行い、合計8個のサンプルを得、すべて多形Iである(
図19)。
【0135】
【表7】
注:/は、固体サンプルがないか、またはサンプルが少なすぎてXRPD特徴付けることはできないことを表す。
【0136】
実施例8
揮発法によるスクリーニング
単一溶媒揮発:適切な量の化合物Iの初期原料を、それぞれ表8の1~6に示される溶媒に溶解させて、濃度が8~20mg/mLである溶液を調製する。得られた溶液をろ過し、ろ液を室温下で揮発させ、得られた固体をXRPD特徴付ける。
二成分溶媒揮発:適切な量の化合物Iの初期原料を、それぞれ表8の7~25に示される溶媒に溶解させて、濃度が10mg/mLである溶液を調製する。ろ過し、得られたろ液をそれぞれ溶媒-2と混合し、次いで室温環境下で揮発させる。合計19個の溶媒系を使用して、二成分溶媒の揮発実験を行い、得られた固体をXRPD特徴付ける。
【表8】
*
1H NMRは、サンプルに分解があることを示し、これらのスペクトルは、命名されない。THFは、サンプルの揮発中で分解される可能性がある。
【0137】
結果は、表8に示されたとおりであり、揮発法により、合計25個のサンプルが得られ、XRPDスペクトルは、
図20に示されたとおりである。
THF、MeOH-THF、THF-水、MeOH、MeOH-水およびMeOH-EtOHで揮発させて得られたサンプルのXRPDスペクトル(
図20)は、上記の既知の多形のスペクトルとは異なる。
【0138】
1H NMRは、THF、MeOH-THFおよびTHF-waterにおけるサンプルの分解があることを示し、THFが揮発中で分解される可能性があるため、これらのスペクトルは、命名されない。
MeOHおよびMeOH-水中で揮発させて得られたサンプルの結晶形は同じであり、多形IVと命名され、MeOH-DCM中で揮発させて得られたサンプルは、多形IVおよび多形Iの混合物である。
【0139】
多形IVに対して、XRPD、TGAおよびDSC特徴付ける(
図21-22)。
TGAスペクトル(
図22)は、多形IVが200℃の前に~4.83%の重量損失があることを示す。
1H NMRは、サンプル中に有機溶媒が残留されていないことを示す。多形IVは、水和物(~1molの水)であり得る。
【0140】
DSCスペクトル(
図22)は、二つのより広い吸熱ピークおよび一つの発熱ピークを有する。当該結晶形は、200℃に加熱した後に多形Iに変換される。
番号1の実験で得られた多形IVのX線粉末回折スペクトルは、
図21に示されたとおりであり、ピーク表は、表9に示されたとおりである。
【0141】
【0142】
EtOHおよびMeOH-EtOHで揮発させて得られたサンプルは、新しい結晶形であり、多形Vと命名される。
多形Vに対して、XRPD、TGAおよびDSC特徴付ける。
TGAスペクトル(
図24)は、サンプルが200℃の前に8.64%の重量損失を有することを示し、
1H NMRは、サンプルに5.2%EtOH(~0.5mol)および0.51%MeOHが残留していることを示し、多形Vは、混合溶媒の溶媒和物であり得る。
【0143】
DSCスペクトル(
図24)は、三つの吸熱ピークを有し、初期温度は、それぞれ59.19℃、103.16℃および237.82℃である。
図23から、多形Vは、200℃に加熱した後に多形Iに変換されることが分かる。
番号7の実験で得られた多形VのX線粉末回折スペクトルは、
図23に示されたとおりであり、ピーク表は、表10に示されたとおりである。
【0144】
【0145】
実施例9
65℃下での懸濁および攪拌によるスクリーニング
多形Iの融解ピークにショルダーがあるため、より高い融点の結晶形が存在する可能性があると疑われる。この結晶形を得るために、化合物Iの65℃下での懸濁および攪拌実験を行う。
一定の化合物Iのサンプルを秤量し、表11に示される溶媒を加えて混濁液を調製する。得られた混濁液を65℃下で3日間攪拌する。得られた固体サンプルをろ過および収集した後に、XRPD特徴付ける。
【0146】
【0147】
当該実験は、合計7個のサンプルを調製し(表11)、XRPDによると、DMF/水で得られたサンプルの除いて(
図23~24)、他のサンプルは、すべて多形Iであることを示す。DMF/水で得られた結晶形を多形VIと命名する。
DMF/H
2O中で65℃下で多形VIを繰り返し調製し、それに対して、PLM、XRPD、TGAおよびDSC特徴付ける(
図27~28)。
【0148】
PLM(
図28)は、多形VIが小粒子結晶であることを示す。
TGAスペクトル(
図29)は、サンプルが200℃の前に1.47%の重量損失を有することを示し、
1H NMRは、サンプルに1.47%のDMF残留物があることを示し、従って、多形VIは、DMFの溶媒和物(~0.1mol)である。
【0149】
DSCスペクトル(
図29)は、三つの吸熱ピークを有し、初期温度は、それぞれ92.93℃、180.48℃および251.80℃であり、さらに、初期温度が215.17℃である発熱ピークを有する。当該結晶形は、約236℃に加熱した後に多形Iに変換される(
図27)。
多形VIのX線粉末回折スペクトルは、
図27に示されたとおりであり、ピーク表は、表12に示されたとおりである。
【0150】
【0151】
実施例10
DSC熱処理法によるスクリーニング
DSC加熱-冷却-加熱サイクルにより、より高い融点の結晶形見出すことを企図する。
式Iの化合物の多形IをDSCにより室温から260℃に10℃/minで加熱し、次いで260℃から-30℃に-5℃/minで冷却し、最後に-30℃から300℃に10℃/minで加熱し、DSCスペクトルは、
図30に示されたとおりである。
【0152】
冷却プロセスにおいて、明らかな発熱ピークが存在し、当該発熱ピークの初期温度は、206.8℃であり、これは、結晶形の変換によって引き起こされるはずである。DSC処理プロセスにおいて、三つの異なる位置に対してXRPD特徴付ける。
図31に示されたとおりであり、結果は、1、2、3一の場合、サンプルの結晶形は、すべて多形Iであることを示す。
【0153】
実施例11
多形Iおよび多形IIの結晶転換実験
それぞれ室温および50℃条件下で多形Iおよび多形IIに対して、懸濁結晶転換実験を実施する(表13)。得られた固体をXRPD特徴付ける。
1日攪拌した後、すべてのサンプルは、すべて多形Iに変換される。これは、多形Iが熱力学的に安定な結晶形であることを示す。
【0154】
【0155】
実施例12
25℃/92.5%RHでの多形Iの安定性測定
多形Iは、25℃/92.5%相対湿度(RH)環境下で9日間置かれる。結果は、
図32に示されたとおりであり、XRPDは、多形Iが高湿環境下でその結晶形を長期間維持できることを示す。これは、多形Iが高湿環境下で良好な安定性を有することを示す。
【0156】
実施例13.医薬組成物
化合物Iの多形I:20g
テンプン:140g
微結晶セルロース:60g
従来の方法に従って、正気の物質を均一に混合した後、普通のゼラチンカプセルに入れて、1000個のカプセル得る。
【0157】
要約すると、本発明は、式Iの化合物の多形I~VIを提供する。多形形態の化合物Iは、高純度、高安定性、および良好な溶解性という特徴を有し、調製プロセスは、簡単で安定しており、工業生産において顕著な利点を有する。ここで、多形Iおよび多形IIは、無水および無溶媒の結晶形である。特に多形Iは、熱力学的に安定な結晶形であり、特性が安定し、凝集がなく、分散が容易であり、製剤プロセスに特に適合する。
【0158】
本発明で言及されたすべての文書は、あたかも各文書が個別に参照として引用されたかのように、本出願における参照として引用される。さらに、本発明の上記の教示内容を読んだ後、当業者は本発明に様々な変更または修正を加えることができ、これらの同等の形態も、本出願の添付の請求範囲によって定義される範囲に含まれる。
【国際調査報告】