(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】筋萎縮性側索硬化症(ALS)を治療するためのMIRNA-485阻害剤の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20230323BHJP
A61P 21/02 20060101ALI20230323BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230323BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20230323BHJP
A61K 31/712 20060101ALI20230323BHJP
A61K 31/7125 20060101ALI20230323BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20230323BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20230323BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20230323BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20230323BHJP
A61K 47/58 20170101ALI20230323BHJP
A61K 47/56 20170101ALI20230323BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20230323BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20230323BHJP
C12N 15/861 20060101ALN20230323BHJP
C12N 15/864 20060101ALN20230323BHJP
C12N 15/867 20060101ALN20230323BHJP
C12N 15/86 20060101ALN20230323BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P21/02
A61K48/00
A61K31/711
A61K31/712
A61K31/7125
A61K9/127
A61K9/10
A61K47/46
A61K47/42
A61K47/58
A61K47/56
A61K47/54
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/861 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
C12N15/86 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547888
(86)(22)【出願日】2021-02-06
(85)【翻訳文提出日】2022-10-04
(86)【国際出願番号】 IB2021050975
(87)【国際公開番号】W WO2021156832
(87)【国際公開日】2021-08-12
(32)【優先日】2020-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521564467
【氏名又は名称】バイオーケストラ カンパニー, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リュ, ジン-ヒョブ
(72)【発明者】
【氏名】コ, ハン ソク
(72)【発明者】
【氏名】キム, デ フン
(72)【発明者】
【氏名】ミン, ヒュン ス
(72)【発明者】
【氏名】リム, ユ ナ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA16
4C076AA19
4C076AA95
4C076CC09
4C076CC44
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4C084ZA94
4C086AA01
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4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086NA14
4C086ZA94
(57)【要約】
本開示は、SIRT1タンパク質またはSIRT1遺伝子の発現、PGC-1αタンパク質及び/またはPGC-1α遺伝子の発現、CD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子の発現、NRG1タンパク質及び/またはNRG1遺伝子の発現、STMN2タンパク質及び/またはSTMN2遺伝子の発現、及び/またはNRXN1タンパク質及び/またはNRXN1遺伝子の発現のレベルの減少に関連した筋萎縮性側索硬化症(ALS)を治療するためのmiRNA阻害剤の使用を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療を必要とする対象において前記ALSを治療する方法であって、miR-485を阻害する化合物(miRNA阻害剤)を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記miRNA阻害剤が前記対象におけるSIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子のレベルを増加させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象が、SIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子のレベルの減少に関連したALSを有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記miRNA阻害剤が、オートファジーを誘導し、及び/または炎症を治療または予防する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記miRNA阻害剤が、前記対象におけるCD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子のレベルを増加させる、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記対象が、CD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子のレベルの減少に関連したALSを有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記miRNA阻害剤が、前記対象のPGC-1αタンパク質及び/またはPGC-1α遺伝子のレベルを増加させる、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記対象が、PGC-1αタンパク質及び/またはPGC-1α遺伝子のレベルの減少に関連したALSを有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記miRNA阻害剤が、前記対象のNRG1タンパク質及び/またはNRG1遺伝子のレベルを増加させる、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記対象が、NRG1タンパク質及び/またはNRG1遺伝子のレベルの減少に関連したALSを有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記miRNA阻害剤が、前記対象のSTMN2タンパク質及び/またはSTMN2遺伝子のレベルを増加させる、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記対象が、STMN2タンパク質及び/またはSTMN2遺伝子のレベルの減少に関連したALSを有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記miRNA阻害剤が、前記対象のNRXN1タンパク質及び/またはNRXN1遺伝子のレベルを増加させる、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記対象が、NRXN1タンパク質及び/またはNRXN1遺伝子のレベルの減少に関連したALSを有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記miRNA阻害剤が神経発生を誘導する、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
神経発生を誘導することが、神経幹細胞及び/または前駆細胞の増殖、分化、遊走、及び/または生存率の増加を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
神経発生を誘導することが、神経幹細胞及び/または前駆細胞の数の増加を含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
神経発生を誘導することが、軸索、樹状突起、及び/またはシナプスの発生の増加を含む、請求項15~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記miRNA阻害剤が食作用を誘導する、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
SIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子の異常なレベルに関連した筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療を必要とする対象において前記ALSを治療する方法であって、miR-485を阻害する化合物(miRNA阻害剤)を前記対象に投与することを含み、前記miRNA阻害剤が前記SIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子のレベルを増加させる、前記方法。
【請求項21】
CD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子の異常なレベルに関連した筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療を必要とする対象において前記ALSを治療する方法であって、miR-485を阻害する化合物(miRNA阻害剤)を前記対象に投与することを含み、前記miRNA阻害剤が前記CD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子のレベルを増加させる、前記方法。
【請求項22】
PGC-1αタンパク質及び/またはPGC-1α遺伝子の異常なレベルに関連した筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療を必要とする対象において前記ALSを治療する方法であって、miR-485を阻害する化合物(miRNA阻害剤)を前記対象に投与することを含み、前記miRNA阻害剤が前記PGC-1αタンパク質及び/またはPGC-1α遺伝子のレベルを増加させる、前記方法。
【請求項23】
NRG1タンパク質及び/またはNRG1遺伝子の異常なレベルに関連した筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療を必要とする対象において前記ALSを治療する方法であって、miR-485を阻害する化合物(miRNA阻害剤)を前記対象に投与することを含み、前記miRNA阻害剤が前記NRG1タンパク質及び/またはNRG1遺伝子のレベルを増加させる、前記方法。
【請求項24】
STMN2タンパク質及び/またはSTMN2遺伝子の異常なレベルに関連した筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療を必要とする対象において前記ALSを治療する方法であって、miR-485を阻害する化合物(miRNA阻害剤)を前記対象に投与することを含み、前記miRNA阻害剤が前記STMN2タンパク質及び/またはSTMN2遺伝子のレベルを増加させる、前記方法。
【請求項25】
NRXN1タンパク質及び/またはNRXN1遺伝子の異常なレベルに関連した筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療を必要とする対象において前記ALSを治療する方法であって、miR-485を阻害する化合物(miRNA阻害剤)を前記対象に投与することを含み、前記miRNA阻害剤が前記NRXN1タンパク質及び/またはNRXN1遺伝子のレベルを増加させる、前記方法。
【請求項26】
前記miRNA阻害剤がmiR-485-3pを阻害する、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記miR-485-3pが、5’-gucauacacggcucuccucucu-3’(配列番号1)を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記miRNA阻害剤が、5’-UGUAUGA-3’(配列番号2)を含むヌクレオチド配列を含み、前記miRNA阻害剤が約6~約30ヌクレオチドの長さである、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記miRNA阻害剤が、SIRT1、PGC1-α、CD36、NRG1、STMN2、及び/またはNRXN1遺伝子の転写、及び/またはSIRT1、PGC1-α、CD36、NRG1、STMN2、及び/またはNRXN1タンパク質の発現を増加させる、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記miRNA阻害剤が、前記ヌクレオチド配列の前記5’末端に少なくとも1個のヌクレオチド、少なくとも2個のヌクレオチド、少なくとも3個のヌクレオチド、少なくとも4個のヌクレオチド、少なくとも5個のヌクレオチド、少なくとも6個のヌクレオチド、少なくとも7個のヌクレオチド、少なくとも8個のヌクレオチド、少なくとも9個のヌクレオチド、少なくとも10個のヌクレオチド、少なくとも11個のヌクレオチド、少なくとも12個のヌクレオチド、少なくとも13個のヌクレオチド、少なくとも14個のヌクレオチド、少なくとも15個のヌクレオチド、少なくとも16個のヌクレオチド、少なくとも17個のヌクレオチド、少なくとも18個のヌクレオチド、少なくとも19個のヌクレオチド、または少なくとも20個のヌクレオチドを含む、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記miRNA阻害剤が、前記ヌクレオチド配列の前記3’末端に少なくとも1個のヌクレオチド、少なくとも2個のヌクレオチド、少なくとも3個のヌクレオチド、少なくとも4個のヌクレオチド、少なくとも5個のヌクレオチド、少なくとも6個のヌクレオチド、少なくとも7個のヌクレオチド、少なくとも8個のヌクレオチド、少なくとも9個のヌクレオチド、少なくとも10個のヌクレオチド、少なくとも11個のヌクレオチド、少なくとも12個のヌクレオチド、少なくとも13個のヌクレオチド、少なくとも14個のヌクレオチド、少なくとも15個のヌクレオチド、少なくとも16個のヌクレオチド、少なくとも17個のヌクレオチド、少なくとも18個のヌクレオチド、少なくとも19個のヌクレオチド、または少なくとも20個のヌクレオチドを含む、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記miRNA阻害剤が、5’-UGUAUGA-3’(配列番号2)、5’-GUGUAUGA-3’(配列番号3)、5’-CGUGUAUGA-3’(配列番号4)、5’-CCGUGUAUGA-3’(配列番号5)、5’-GCCGUGUAUGA-3’(配列番号6)、5’-AGCCGUGUAUGA-3’(配列番号7)、5’-GAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号8)、5’-AGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号9)、5’-GAGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号10)、5’-GGAGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号11)、5’-AGGAGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号12)、5’-GAGGAGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号13)、5’-AGAGGAGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号14)、5’-GAGAGGAGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号15)、5’-UGUAUGAC-3’(配列番号16)、5’-GUGUAUGAC-3’(配列番号17)、5’-CGUGUAUGAC-3’(配列番号18)、5’-CCGUGUAUGAC-3’(配列番号19)、5’-GCCGUGUAUGAC-3’(配列番号20)、5’-AGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号21)、5’-GAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号22)、5’-AGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号23)、5’-GAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号24)、5’-GGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号25)、5’-AGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号26)、5’-GAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号27)、5’-AGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号28)、5’-GAGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号29)、及び5’-AGAGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号30)からなる群から選択される配列を有する、請求項1~26及び29~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記miRNA阻害剤が、5’-TGTATGA-3’(配列番号62)、5’-GTGTATGA-3’(配列番号63)、5’-CGTGTATGA-3’(配列番号64)、5’-CCGTGTATGA-3’(配列番号65)、5’-GCCGTGTATGA-3’(配列番号66)、5’-AGCCGTGTATGA-3’(配列番号67)、5’-GAGCCGTGTATGA-3’(配列番号68)、5’-AGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号69)、5’-GAGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号70)、5’-GGAGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号71)、5’-AGGAGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号72)、5’-GAGGAGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号73)、5’-AGAGGAGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号74)、5’-GAGAGGAGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号75)、5’-TGTATGAC-3’(配列番号76)、5’-GTGTATGAC-3’(配列番号77)、5’-CGTGTATGAC-3’(配列番号78)、5’-CCGTGTATGAC-3’(配列番号79)、5’-GCCGTGTATGAC-3’(配列番号80)、5’-AGCCGTGTATGAC-3’(配列番号81)、5’-GAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号82)、5’-AGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号83)、5’-GAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号84)、5’-GGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号85)、5’-AGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号86)、5’-GAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号87)、5’-AGAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号88)、5’-GAGAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号89)、及び5’-AGAGAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号90)からなる群から選択される配列を有する、請求項1~26及び請求項29~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記miRNA阻害剤の配列が、5’-AGAGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号30)または5’-AGAGAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号90)と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%の配列同一性を有する、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記miRNA阻害剤が、5’-AGAGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号30)または5’-AGAGAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号90)と少なくとも90%の類似性を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記miRNA阻害剤が、1個の置換または2個の置換を有するヌクレオチド配列5’-AGAGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号30)または5’-AGAGAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号90)を含む、請求項1~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記miRNA阻害剤が、ヌクレオチド配列5’-AGAGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号30)または5’-AGAGAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号90)を含む、請求項1~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記miRNA阻害剤が、ヌクレオチド配列5’-AGAGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号30)を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記miR阻害剤が、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む、請求項1~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記少なくとも1つの修飾ヌクレオチドが、ロックド核酸(LNA)、アンロックド核酸(UNA)、アラビノ核酸(ABA)、架橋核酸(BNA)、及び/またはペプチド核酸(PNA)である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記miRNA阻害剤が骨格修飾を含む、請求項1~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記骨格修飾が、ホスホロジアミダイトモルホリノオリゴマー(PMO)及び/またはホスホロチオエート(PS)修飾である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記miRNA阻害剤が、送達剤中で送達される、請求項1~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記送達剤が、ミセル、エクソソーム、脂質ナノ粒子、細胞外小胞、または合成小胞である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記miRNA阻害剤がウイルスベクターによって送達される、請求項1~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記ウイルスベクターが、AAV、アデノウイルス、レトロウイルス、またはレンチウイルスである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記ウイルスベクターが、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、またはこれらの任意の組み合わせの血清型を有するAAVである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記miRNA阻害剤が、送達剤によって送達される、請求項1~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記送達剤が、リピドイド、リポソーム、リポプレックス、脂質ナノ粒子、ポリマー化合物、ペプチド、タンパク質、細胞、ナノ粒子模倣体、ナノチューブ、またはコンジュゲートを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記送達剤が、
[WP]-L1-[CC]-L2-[AM](式I)
または
[WP]-L1-[AM]-L2-[CC](式II)
(式中、
WPは、水溶性バイオポリマー部分であり、
CCは、正に帯電したキャリア部分であり、
AMは、アジュバント部分であり、
L1及びL2は、独立して、任意選択のリンカーである)を有するカチオン性キャリアユニットを含み、
前記カチオン性キャリアユニットは、約1:1のイオン比で核酸と混合される場合にミセルを形成する、請求項48または49に記載の方法。
【請求項51】
前記miRNA阻害剤が、イオン結合を介して前記カチオン性キャリアユニットと相互作用する、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記水溶性ポリマーが、ポリ(アルキレングリコール)、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリグリセロール、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン(「POZ」)、ポリ(N-アクリロイルモルホリン)、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項50または51に記載の方法。
【請求項53】
前記水溶性ポリマーが、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリグリセロール、またはポリ(プロピレングリコール)(「PPG」)を含む、請求項50~52に記載の方法。
【請求項54】
前記水溶性ポリマーが、下式:
【化13】
(式中、nは、1~1000である)を有する、請求項50~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記nが、少なくとも約110、少なくとも約111、少なくとも約112、少なくとも約113、少なくとも約114、少なくとも約115、少なくとも約116、少なくとも約117、少なくとも約118、少なくとも約119、少なくとも約120、少なくとも約121、少なくとも約122、少なくとも約123、少なくとも約124、少なくとも約125、少なくとも約126、少なくとも約127、少なくとも約128、少なくとも約129、少なくとも約130、少なくとも約131、少なくとも約132、少なくとも約133、少なくとも約134、少なくとも約135、少なくとも約136、少なくとも約137、少なくとも約138、少なくとも約139、少なくとも約140、または少なくとも約141である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記nが、約80~約90、約90~約100、約100~約110、約110~約120、約120~約130、約140~約150、約150~約160である、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
前記水溶性ポリマーが、直鎖状、分枝鎖状、または樹枝状である、請求項50~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記カチオン性キャリア部分が、1つ以上の塩基性アミノ酸を含む、請求項50~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記カチオン性キャリア部分が、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、少なくとも24個、少なくとも25個、少なくとも26個、少なくとも27個、少なくとも28個、少なくとも29個、少なくとも30個、少なくとも31個、少なくとも32個、少なくとも33個、少なくとも34個、少なくとも35個、少なくとも36個、少なくとも37個、少なくとも38個、少なくとも39個、少なくとも40個、少なくとも41個、少なくとも42個、少なくとも43個、少なくとも44個、少なくとも45個、少なくとも46個、少なくとも47個、少なくとも48個、少なくとも49個、または少なくとも50個の塩基性アミノ酸を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記カチオン性キャリア部分が、約30個~約50個の塩基性アミノ酸を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記塩基性アミノ酸が、アルギニン、リシン、ヒスチジン、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項59または60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記カチオン性キャリア部分が、約40個のリシンモノマーを含む、請求項50~61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記アジュバント部分が、免疫反応、炎症反応、及び/または組織微小環境を調節することができる、請求項50~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記アジュバント部分が、イミダゾール誘導体、アミノ酸、ビタミン、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項50~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
前記アジュバント部分が、下式:
【化14】
(式中、G1及びG2のそれぞれは、H、芳香環、もしくは1~10アルキルであるか、またはG1とG2はともに芳香環を形成し、nは1~10である)を有する、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記アジュバント部分がニトロイミダゾールを含む、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
前記アジュバント部分が、メトロニダゾール、チニダゾール、ニモラゾール、ジメトリダゾール、プレトマニド、オルニダゾール、メガゾール、アザニダゾール、ベンズニダゾール、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項64に記載の方法。
【請求項68】
前記アジュバント部分が、アミノ酸を含む、請求項50~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
前記アジュバント部分が、下式:
【化15】
(式中、Arは
【化16】
であり、Z1及びZ2のそれぞれは、HまたはOHである)を有する、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記アジュバント部分が、ビタミンを含む、請求項50~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
前記ビタミンが、環式環または環式ヘテロ原子環及びカルボキシル基またはヒドロキシル基を含む、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記ビタミンが、下式:
【化17】
(式中、Y1及びY2のそれぞれは、C、N、O、またはSであり、nは1または2である)を有する、請求項70または71に記載の方法。
【請求項73】
前記ビタミンが、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD2、ビタミンD3、ビタミンE、ビタミンM、ビタミンH、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項70~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
前記ビタミンが、ビタミンB3である、請求項70~73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
前記アジュバント部分が、少なくとも約2個、少なくとも約3個、少なくとも約4個、少なくとも約5個、少なくとも約6個、少なくとも約7個、少なくとも約8個、少なくとも約9個、少なくとも約10個、少なくとも約11個、少なくとも約12個、少なくとも約13個、少なくとも約14個、少なくとも約15個、少なくとも約16個、少なくとも約17個、少なくとも約18個、少なくとも約19個、または少なくとも約20個のビタミンB3を含む、請求項70~74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
前記アジュバント部分が、約10個のビタミンB3を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項77】
約120個~約130個のPEGユニットを有する水溶性バイオポリマー部分と、約30個~約40個のリシンを有するポリリシンを含むカチオン性キャリア部分と、約5個~約10個のビタミンB3を有するアジュバント部分と、を含む、請求項70~76のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記送達剤が、前記miRNA阻害剤と結合されることでミセルを形成する、請求項70~77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
前記結合が、共有結合、非共有結合、またはイオン結合である、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記ミセル中の前記カチオン性キャリアユニットと前記miRNA阻害剤とが、前記カチオン性キャリアユニットの正電荷と前記miRNA阻害剤の負電荷とのイオン比が約1:1となるように溶液中で混合される、請求項78または79に記載の方法。
【請求項81】
前記カチオン性キャリアユニットが、酵素分解から前記miRNA阻害剤を保護することができる、請求項78~80のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
前記ALSが、孤発性ALS、家族性ALS、またはその両方を含む、請求項1~81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
前記miRNA阻害剤がALSの発症を遅延させる、請求項1~82のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
前記miRNA阻害剤が、前記対象の筋力を改善する、請求項1~83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
前記送達剤が、ミセルである、請求項48に記載の方法。
【請求項86】
前記ミセルが、(i)約100個~約200個のPEGユニット、(ii)それぞれがアミン基を有する約30個~約40個のリシン、(iii)それぞれがチオール基を有する約15個~約20個のリシン、及び(iv)それぞれがビタミンB3に結合された約30個~約40個のリシンを含む、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記ミセルが、(i)約120個~約130個のPEGユニット、(ii)それぞれがアミン基を有する約32個のリシン、(iii)それぞれがチオール基を有する約16個のリシン、及び(iv)それぞれがビタミンB3に結合された約32個のリシンを含む、請求項85に記載の方法。
【請求項88】
前記PEGユニットに治療部分がさらに結合されている、請求項86または87に記載の方法。
【請求項89】
前記標的化部分が、LAT1標的化リガンドである、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記標的化部分が、フェニルアラニンである、請求項89に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本PCT出願は、2020年2月7日に出願された米国特許仮出願第62/971,771号、2020年3月13日に出願された同第62/989,487号、及び2020年7月1日に出願された同第63/047,147号の優先権の利益を主張するものであり、各出願の全体を本明細書に参照によって援用するものである。
【0002】
EFS-WEBを介して電子的に提出された配列表の参照
本出願とともにASCIIテキストファイル(ファイル名:4366_021PC03_Seqlisting_ST25.txt、サイズ:264,015バイト、作成日:2021年2月5日)の形で提出される、電子的に提出される配列表の全体を、参照によって本明細書に援用する。
【0003】
本開示は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を治療するためのmiR-485阻害剤(例えば、少なくとも1つのmiR-485結合部位を含むヌクレオチド分子をコードするポリヌクレオチド)の使用を提供するものである。
【背景技術】
【0004】
サーチュイン1(NAD依存性脱アセチル化酵素サーチュイン1としても知られる)は、ヒトではSIRT1遺伝子によってコードされている酵素である。サーチュイン1は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)依存性ヒストン脱アセチル化酵素のファミリーに属し、様々な基質を脱アセチル化することができる(Rahman,S., et al.,Cell Communication and Signaling 9:11(2011))。したがって、サーチュイン1は、遺伝子発現、代謝、及び加齢をはじめとする広範な生理学的機能に役割を担っているものとして述べられてきた。さらに、異常なサーチュイン活性は、特定のヒトの病、例えばタンパク疾患と関連付けられている(例えば、ALSなどの神経変性疾患)。
【0005】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動ニューロン疾患(MND)またはルー・ゲーリック病としても知られ、脳及び脊髄の神経細胞(特に随意筋運動を制御するもの)を冒す進行性の神経変性疾患である。症状としては、筋肉の硬直、筋肉の攣縮、筋肉量の減少による徐々に進む衰弱、ならびに歩行、手の使用、会話、嚥下、及び呼吸能力の最終的な喪失を挙げることができる。近年の集団ベースの研究によって、全世界で10万人当たり4.1~8.4人がALSに罹患していることが示されている。さらに、診断後のALS患者の平均余命は約3~5年である。ALSの正確な原因は不明であり、現在のところ、治療法は存在していない。現在利用可能な治療法(例えば、人工呼吸器、栄養管、物理的及び言語療法)はあくまで対症的なものに過ぎない。したがって、ALSの治療に対する新規でより効果的なアプローチが極めて望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本明細書では、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療を必要とする対象のALSを治療する方法であって、miR-485を阻害する化合物(miRNA阻害剤)を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0007】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、対象におけるSIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子のレベルを増加させる。いくつかの態様では、対象は、SIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子のレベルの減少に関連したALSを有する。
【0008】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、オートファジーを誘導し、及び/または炎症を治療もしくは予防する。
【0009】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、対象におけるCD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子のレベルを増加させる。いくつかの態様では、対象は、CD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子のレベルの減少に関連したALSを有する。
【0010】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、対象におけるPGC-1αタンパク質及び/またはPGC-1α遺伝子のレベルを増加させる。いくつかの態様では、対象は、PGC-1αタンパク質及び/またはPGC-1α遺伝子のレベルの減少に関連したALSを有する。
【0011】
いくつかの態様では、上記の方法で使用することができるmiR-485阻害剤は、神経発生を誘導する。特定の態様では、神経発生を誘導することは、神経幹細胞及び/または前駆細胞の増殖、分化、遊走、及び/または生存率の増加を含む。いくつかの態様では、神経発生を誘導することは、神経幹細胞及び/または前駆細胞の数の増加を含む。いくつかの態様では、神経発生を誘導することは、軸索、樹状突起、及び/またはシナプス発生の増加を含む。特定の態様では、miR-485阻害剤は、食作用を誘導する。
【0012】
本明細書では、SIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子の異常なレベルに関連した疾患または状態の治療を必要とする対象において上記の疾患または状態を治療する方法であって、miR-485を阻害する化合物(miRNA阻害剤)を対象に投与することを含み、miRNA阻害剤がSIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子のレベルを増加させる、方法も提供される。本明細書では、CD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子の異常なレベルに関連した疾患または状態の治療を必要とする対象において上記の疾患または状態を治療する方法であって、miR-485を阻害する化合物(miRNA阻害剤)を対象に投与することを含み、miRNA阻害剤がCD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子のレベルを増加させる、方法も提供される。本明細書では、PGC-1αタンパク質及び/またはPGC-1α遺伝子の異常なレベルに関連した疾患または状態の治療を必要とする対象において上記の疾患または状態を治療する方法であって、miR-485を阻害する化合物(miRNA阻害剤)を対象に投与することを含み、miRNA阻害剤がPGC-1αタンパク質及び/またはPGC-1α遺伝子のレベルを増加させる、方法も提供される。
【0013】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、miR485-3pを阻害する。いくつかの態様では、miR485-3pは、5’-GUCAUACACGGCUCUCCUCUCU-3’(配列番号1)を含む。いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、5’-UGUAUGA-3’(配列番号2)を含むヌクレオチド配列を含み、miRNA阻害剤は約6~約30ヌクレオチドの長さである。
【0014】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、SIRT1遺伝子の転写及び/またはSIRT1タンパク質の発現を増加させる。
【0015】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、ヌクレオチド配列の5’末端に少なくとも1個のヌクレオチド、少なくとも2個のヌクレオチド、少なくとも3個のヌクレオチド、少なくとも4個のヌクレオチド、少なくとも5個のヌクレオチド、少なくとも6個のヌクレオチド、少なくとも7個のヌクレオチド、少なくとも8個のヌクレオチド、少なくとも9個のヌクレオチド、少なくとも10個のヌクレオチド、少なくとも11個のヌクレオチド、少なくとも12個のヌクレオチド、少なくとも13個のヌクレオチド、少なくとも14個のヌクレオチド、少なくとも15個のヌクレオチド、少なくとも16個のヌクレオチド、少なくとも17個のヌクレオチド、少なくとも18個のヌクレオチド、少なくとも19個のヌクレオチド、または少なくとも20個のヌクレオチドを含む。いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、ヌクレオチド配列の3’末端に少なくとも1個のヌクレオチド、少なくとも2個のヌクレオチド、少なくとも3個のヌクレオチド、少なくとも4個のヌクレオチド、少なくとも5個のヌクレオチド、少なくとも6個のヌクレオチド、少なくとも7個のヌクレオチド、少なくとも8個のヌクレオチド、少なくとも9個のヌクレオチド、少なくとも10個のヌクレオチド、少なくとも11個のヌクレオチド、少なくとも12個のヌクレオチド、少なくとも13個のヌクレオチド、少なくとも14個のヌクレオチド、少なくとも15個のヌクレオチド、少なくとも16個のヌクレオチド、少なくとも17個のヌクレオチド、少なくとも18個のヌクレオチド、少なくとも19個のヌクレオチド、または少なくとも20個のヌクレオチドを含む。
【0016】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、5’-UGUAUGA-3’(配列番号2)、5’-GUGUAUGA-3’(配列番号3)、5’-CGUGUAUGA-3’(配列番号4)、5’-CCGUGUAUGA-3’(配列番号5)、5’-GCCGUGUAUGA-3’(配列番号6)、5’-AGCCGUGUAUGA-3’(配列番号7)、5’-GAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号8)、5’-AGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号9)、5’-GAGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号10)、5’-GGAGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号11)、5’-AGGAGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号12)、5’-GAGGAGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号13)、5’-AGAGGAGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号14)、及び5’-GAGAGGAGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号15)、5’-UGUAUGAC-3’(配列番号16)、5’-GUGUAUGAC-3’(配列番号17)、5’-CGUGUAUGAC-3’(配列番号18)、5’-CCGUGUAUGAC-3’(配列番号19)、5’-GCCGUGUAUGAC-3’(配列番号20)、5’-AGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号21)、5’-GAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号22)、5’-AGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号23)、5’-GAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号24)、5’-GGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号25)、5’-AGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号26)、5’-GAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号27)、5’-AGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号28)、5’-GAGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号29)、及び5’-AGAGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号30)からなる群から選択される配列を有する。
【0017】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、5’-TGTATGA-3’(配列番号62)、5’-GTGTATGA-3’(配列番号63)、5’-CGTGTATGA-3’(配列番号64)、5’-CCGTGTATGA-3’(配列番号65)、5’-GCCGTGTATGA-3’(配列番号66)、5’-AGCCGTGTATGA-3’(配列番号67)、5’-GAGCCGTGTATGA-3’(配列番号68)、5’-AGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号69)、5’-GAGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号70)、5’-GGAGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号71)、5’-AGGAGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号72)、5’-GAGGAGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号73)、5’-AGAGGAGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号74)、5’-GAGAGGAGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号75)、5’-TGTATGAC-3’(配列番号76)、5’-GTGTATGAC-3’(配列番号77)、5’-CGTGTATGAC-3’(配列番号78)、5’-CCGTGTATGAC-3’(配列番号79)、5’-GCCGTGTATGAC-3’(配列番号80)、5’-AGCCGTGTATGAC-3’(配列番号81)、5’-GAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号82)、5’-AGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号83)、5’-GAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号84)、5’-GGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号85)、5’-AGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号86)、5’-GAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号87)、5’-AGAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号88)、5’-GAGAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号89)、及び5’-AGAGAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号90)からなる群から選択される配列を有する。
【0018】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤の配列は、5’-AGAGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号30)または5’-AGAGAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号90)と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%の配列同一性を有する。特定の態様では、miRNA阻害剤は、5’-AGAGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号30)または5’-AGAGAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号90)と少なくとも90%の類似性を有する。いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、1個の置換または2個の置換を有するヌクレオチド配列5’-AGAGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号30)または5’-AGAGAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号90)を含む。いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、ヌクレオチド配列5’-AGAGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号30)または5’-AGAGAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号90)を含む。いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、ヌクレオチド配列5’-AGAGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号30)を含む。
【0019】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む。いくつかの態様では、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドは、ロックド核酸(LNA)、アンロックド核酸(UNA)、アラビノ核酸(ABA)、架橋核酸(BNA)、及び/またはペプチド核酸(PNA)である。
【0020】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、骨格修飾を含む。特定の態様では、骨格修飾は、ホスホロジアミダイトモルホリノオリゴマー(PMO)及び/またはホスホロチオエート(PS)修飾である。
【0021】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、送達剤中で送達される。特定の態様では、送達剤は、ミセル、エクソソーム、脂質ナノ粒子、細胞外小胞、または合成小胞である。
【0022】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤はウイルスベクターによって送達される。特定の態様では、ウイルスベクターは、AAV、アデノウイルス、レトロウイルス、またはレンチウイルスである。いくつかの態様では、ウイルスベクターは、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、またはこれらの任意の組み合わせの血清型を有するAAVである。
【0023】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤は送達剤によって送達される。特定の態様では、送達剤は、リピドイド、リポソーム、リポプレックス、脂質ナノ粒子、ポリマー化合物、ペプチド、タンパク質、細胞、ナノ粒子模倣体、ナノチューブ、またはコンジュゲートを含む。
【0024】
いくつかの態様では、送達剤は、下式:
[WP]-L1-[CC]-L2-[AM](式I)
または
[WP]-L1-[AM]-L2-[CC](式II)
(式中、
WPは、水溶性バイオポリマー部分であり、
CCは、正に帯電したキャリア部分であり、
AMは、アジュバント部分であり、
L1及びL2は、独立して、任意選択のリンカーである)を有するカチオン性キャリアユニットを含み、
カチオン性キャリアユニットは、約1:1のイオン比で核酸と混合される場合にミセルを形成する。
【0025】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、イオン結合を介してカチオン性キャリアユニットと相互作用する。いくつかの態様では、水溶性ポリマーは、ポリ(アルキレングリコール)、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリグリセロール、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン(「POZ」)、ポリ(N-アクリロイルモルホリン)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。他の態様では、水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリグリセロール、またはポリ(プロピレングリコール)(「PPG」)を含む。
【0026】
いくつかの態様では、水溶性ポリマーは、下式:
【0027】
【0028】
いくつかの態様では、nは、1~1000である。特定の態様では、nは、少なくとも約110、少なくとも約111、少なくとも約112、少なくとも約113、少なくとも約114、少なくとも約115、少なくとも約116、少なくとも約117、少なくとも約118、少なくとも約119、少なくとも約120、少なくとも約121、少なくとも約122、少なくとも約123、少なくとも約124、少なくとも約125、少なくとも約126、少なくとも約127、少なくとも約128、少なくとも約129、少なくとも約130、少なくとも約131、少なくとも約132、少なくとも約133、少なくとも約134、少なくとも約135、少なくとも約136、少なくとも約137、少なくとも約138、少なくとも約139、少なくとも約140、または少なくとも約141である。さらなる態様では、nは、約80~約90、約90~約100、約100~約110、約110~約120、約120~約130、約140~約150、または約150~約160である。
【0029】
いくつかの態様では、水溶性ポリマーは、直鎖状、分枝鎖状、または樹枝状である。
【0030】
いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、1つ以上の塩基性アミノ酸を含む。特定の態様では、カチオン性キャリア部分は、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、少なくとも24個、少なくとも25個、少なくとも26個、少なくとも27個、少なくとも28個、少なくとも29個、少なくとも30個、少なくとも31個、少なくとも32個、少なくとも33個、少なくとも34個、少なくとも35個、少なくとも36個、少なくとも37個、少なくとも38個、少なくとも39個、少なくとも40個、少なくとも41個、少なくとも42個、少なくとも43個、少なくとも44個、少なくとも45個、少なくとも46個、少なくとも47個、少なくとも48個、少なくとも49個、または少なくとも50個の塩基性アミノ酸を含む。特定の態様では、カチオン性キャリア部分は、約30個~約50個の塩基性アミノ酸を含む。
【0031】
いくつかの態様では、塩基性アミノ酸は、アルギニン、リシン、ヒスチジン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、約40個のリシンモノマーを含む。
【0032】
いくつかの態様では、アジュバント部分は、免疫反応、炎症反応、及び/または組織微小環境を調節することができる。特定の態様では、アジュバント部分は、イミダゾール誘導体、アミノ酸、ビタミン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0033】
いくつかの態様では、アジュバント部分は、下式:
【0034】
【0035】
(式中、G1及びG2のそれぞれは、H、芳香環、もしくは1~10アルキルであるか、またはG1とG2はともに芳香環を形成し、nは1~10である)を有する。
【0036】
いくつかの態様では、アジュバント部分は、ニトロイミダゾールを含む。特定の態様では、アジュバント部分は、メトロニダゾール、チニダゾール、ニモラゾール、ジメトリダゾール、プレトマニド、オルニダゾール、メガゾール、アザニダゾール、ベンズニダゾール、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0037】
いくつかの態様では、アジュバント部分は、アミノ酸を含む。
【0038】
いくつかの態様では、アジュバント部分は、下式:
【0039】
【0040】
【0041】
Z1及びZ2のそれぞれは、HまたはOHである)を有する。
【0042】
いくつかの態様では、アジュバント部分は、ビタミンを含む。特定の態様では、ビタミンは、環式環または環式ヘテロ原子環及びカルボキシル基またはヒドロキシル基を含む。
【0043】
いくつかの態様では、ビタミンは、下式:
【0044】
【0045】
(式中、Y1及びY2のそれぞれは、C、N、O、またはSであり、nは1または2である)を有する。
【0046】
いくつかの態様では、ビタミンは、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD2、ビタミンD3、ビタミンE、ビタミンM、ビタミンH、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。例えば、ビタミンは、ビタミンB3であってよい。
【0047】
いくつかの態様では、アジュバント部分は、少なくとも約2個、少なくとも約3個、少なくとも約4個、少なくとも約5個、少なくとも約6個、少なくとも約7個、少なくとも約8個、少なくとも約9個、少なくとも約10個、少なくとも約11個、少なくとも約12個、少なくとも約13個、少なくとも約14個、少なくとも約15個、少なくとも約16個、少なくとも約17個、少なくとも約18個、少なくとも約19個、または少なくとも約20個のビタミンB3を含む。特定の態様では、アジュバント部分は、約10個のビタミンB3を含む。
【0048】
いくつかの態様では、送達剤は、約120個~約130個のPEGユニットを有する水溶性バイオポリマー部分と、約30個~約40個のリシンを有するポリリシンを含むカチオン性キャリア部分と、約5個~約10個のビタミンB3を有するアジュバント部分と、を含む。
【0049】
いくつかの態様では、送達剤は、miRNA阻害剤と結合されることでミセルを形成する。例えば、結合は、共有結合、非共有結合、またはイオン結合であってよい。
【0050】
いくつかの態様では、ミセル中のカチオン性キャリアユニットとmiRNA阻害剤とは、カチオン性キャリアユニットの正電荷とmiRNA阻害剤の負電荷とのイオン比が約1:1となるように溶液中で混合される。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、酵素分解からmiRNA阻害剤を保護することができる。
【0051】
いくつかの態様では、本開示によって治療することが可能なALSは、孤発性ALS、家族性ALS、またはその両方を含む。いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、ALSの発症を遅延する。いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、対象の筋力を改善する。
【0052】
いくつかの態様では、送達剤はミセルである。いくつかの態様では、ミセルは、(i)約100個~約200個のPEGユニット、(ii)それぞれがアミン基を有する約30個~約40個のリシン、(iii)それぞれがチオール基を有する約15個~約20個のリシン、及び(iv)それぞれがビタミンB3に結合された約30個~約40個のリシンを含む。いくつかの態様では、ミセルは、(i)約120個~約130個のPEGユニット、(ii)それぞれがアミン基を有する約32個のリシン、(iii)それぞれがチオール基を有する約16個のリシン、及び(iv)それぞれがビタミンB3に結合された約32個のリシンを含む。
【0053】
いくつかの態様では、PEGユニットに標的化部分がさらに結合されている。いくつかの態様では、標的化部分が、LAT1標的化リガンドである。いくつかの態様では、標的化部分が、フェニルアラニンである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】本開示のキャリアユニットの例示的な構造を示す。提示される例は、アニオン性ペイロード、例えば、遺伝子を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドなどの核酸、例えば、miRNA(antimir)と静電的に相互作用することができるカチオン性キャリア部分を含む。いくつかの態様では、AMは、WPとCCとの間に配置することができる。CC及びAMコンポーネントは、簡単に直線的配置で描かれている。しかしながら、本明細書に記載されるように、いくつかの態様では、CC及びAMは、スキャフォールドの形で配置することができる。
【0055】
【
図2】野生型(WT)及びALS(SOD1-G93A)マウスのPGC-1αタンパク質及び/またはIL-1βタンパク質の発現の比較を示す。Aは、脊髄組織(腰部)におけるPGC-1α及び/またはIL-1βの発現を示す。Bは、骨格筋におけるPGC-1αタンパク質の発現を示す。
【0056】
【
図3A】miR-485阻害剤「(1)」またはPBS「(2)」で処理したALSマウスにおける疾患発症及び生存率の比較を示す。miR-485阻害剤で処理した後に疾患発症を示さないマウスの割合(%)を示す。
【
図3B】miR-485阻害剤「(1)」またはPBS「(2)」で処理したALSマウスにおける疾患発症及び生存率の比較を示す。miR-485阻害剤で処理したマウスで疾患発症が生じた平均日数を示す。
【
図3C】miR-485阻害剤「(1)」またはPBS「(2)」で処理したALSマウスにおける疾患発症及び生存率の比較を示す。生存曲線の比較を示す。
【0057】
【
図4】ハングワイヤ試験で測定したmiR-485阻害剤「(1)」またはPBS「(2)」で処理したALSマウスの筋力の比較を示す。筋力は、動物が落下するまで、ハングワイヤ上に留まることができた時間の長さ(落下までの潜時)で示される。
【0058】
【
図5】(A)及び(B)はそれぞれ、miR-485阻害剤の投与が雄及び雌のラットの体重に目立った影響を及ぼさないことを示す。図に示されるように、雄及び雌のラットに、miR-485阻害剤の以下の用量、すなわち、(i)0mg/kg(G1)、(ii)3.75mg/kg(G2)、(iii)7.5mg/kg(G3)、及び(iv)15mg/kg(G4)のうちの1つを投与した。miR-485阻害剤の投与の0、3、7、及び14日後に体重を測定した。
【0059】
【
図6】(A)及び(B)はそれぞれ、miR-485阻害剤の投与が雄及び雌のラットの死亡率に影響を及ぼさないことを示す。図に示されるように、雄及び雌のラットに、miR-485阻害剤の以下の用量、すなわち、(i)0mg/kg(G1)、(ii)3.75mg/kg(G2)、(iii)7.5mg/kg(G3)、及び(iv)15mg/kg(G4)のうちの1つを投与した。miR-485阻害剤の投与後、0~14日目まで動物の死亡率を毎日測定した。
【0060】
【
図7A】雄ラットに投与した場合に、miR-485阻害剤の投与が持続する臨床的副作用を有さないことを示す。図に示されるように、雄ラットに、miR-485阻害剤の以下の用量、すなわち、(i)0mg/kg(G1)、(ii)3.75mg/kg(G2)、(iii)7.5mg/kg(G3)、及び(iv)15mg/kg(G4)のうちの1つを投与した。測定した副作用には以下が含まれた。(i)NOA(目立った異常なし)、(ii)鬱血(尾)、(iii)浮腫(顔)、(iv)浮腫(前肢)、及び(v)浮腫(後肢)。miR-485阻害剤の投与の0時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間、6時間、1日、3日、5日、8日、11日、及び14日後に副作用を測定した。
【
図7B】雌ラットに投与した場合に、miR-485阻害剤の投与が持続する臨床的副作用を有さないことを示す。図に示されるように、雌ラットに、miR-485阻害剤の以下の用量、すなわち、(i)0mg/kg(G1)、(ii)3.75mg/kg(G2)、(iii)7.5mg/kg(G3)、及び(iv)15mg/kg(G4)のうちの1つを投与した。測定した副作用には以下が含まれた。(i)NOA(目立った異常なし)、(ii)鬱血(尾)、(iii)浮腫(顔)、(iv)浮腫(前肢)、及び(v)浮腫(後肢)。miR-485阻害剤の投与の0時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間、6時間、1日、3日、5日、8日、11日、及び14日後に副作用を測定した。
【0061】
【
図8】(A)及び(B)はそれぞれ、miR-485阻害剤の投与が雄及び雌のラットにおいて目立った病理学的異常を有さないことを示す。図に示されるように、雄及び雌のラットに、miR-485阻害剤の以下の用量、すなわち、(i)0mg/kg(G1)、(ii)3.75mg/kg(G2)、(iii)7.5mg/kg(G3)、及び(iv)15mg/kg(G4)のうちの1つを投与した。
【0062】
【
図9A】ALSマウスモデルにおける静脈内投与後のmiR-485阻害剤の治療効果を示す。実験計画の概略図を示す。
【
図9B】ALSマウスモデルにおける静脈内投与後のmiR-485阻害剤の治療効果を示す。コントロール動物と比較した、miR-485阻害剤で処理したマウスにおける疾患発症の比較を示す。
【
図9C】ALSマウスモデルにおける静脈内投与後のmiR-485阻害剤の治療効果を示す。異なる時点(生後107、114、119、121、及び123日)でPBS(「1」)またはmiR-485阻害剤(「2」)で処理したALSマウスのロータロッド潜時(動物がロータロッドトレッドミルから落下するまでに要した時間)の比較を示す。
【
図9D】ALSマウスモデルにおける静脈内投与後のmiR-485阻害剤の治療効果を示す。異なる時点(生後107、114、119、121、及び123日)でPBS(「1」)またはmiR-485阻害剤(「2」)で処理したALSマウスにおいて、ワイヤケージから動物が落下するまでの潜時の比較を示す。
【
図9E】ALSマウスモデルにおける静脈内投与後のmiR-485阻害剤の治療効果を示す。PBS(「1」)またはmiR-485阻害剤(「2」)で処理したALSマウスにおいて、足を滑らせた回数の比較を示す。足滑りのデータは生後110日目に測定した。
【
図9F】ALSマウスモデルにおける静脈内投与後のmiR-485阻害剤の治療効果を示す。PBS(「1」)またはmiR-485阻害剤(「2」)で処理したALSマウスにおいて、ビームの全長を横断するのに要した時間の比較を示す。ビーム横断時間は、5つの異なる時点(生後107、114、119、121、及び123日)で測定した。
【
図9G】ALSマウスモデルにおける静脈内投与後のmiR-485阻害剤の治療効果を示す。miR-485阻害剤(四角)またはPBS(丸)で処理したALSマウスの平均体重を時間の関数として示す。
【
図9H】ALSマウスモデルにおける静脈内投与後のmiR-485阻害剤の治療効果を示す。異なる処理群における動物の体重損失をピーク体重の割合(%)として比較したものを示す。
【
図9I】ALSマウスモデルにおける静脈内投与後のmiR-485阻害剤の治療効果を示す。miR-485阻害剤(四角)またはPBS(丸)で処理したALS動物の生存曲線を示す。
【0063】
【
図10A】野生型SOD1コンストラクトまたはG93A変異を有するSOD1(SOD1G93A)コンストラクトのいずれかをトランスフェクトしたNCS-34細胞に対するmiR-485阻害剤の効果を示す。SOD1の凝集に対するmiR-485阻害剤の効果を示すウエスタンブロット分析を示す。
【
図10B】野生型SOD1コンストラクトまたはG93A変異を有するSOD1(SOD1G93A)コンストラクトのいずれかをトランスフェクトしたNCS-34細胞に対するmiR-485阻害剤の効果を示す。最初の3列(左から右に)は、野生型SOD1をトランスフェクトし、(i)PBSコントロール(上の行)、(ii)50nMのmiR-485阻害剤(中央の行)、または(iii)100nMのmiR-485阻害剤(下の行)で処理したNCS-34細胞の結果を示す。最後の3列(左から右に)はSOD1G93Aコンストラクトをトランスフェクトし、(i)PBSコントロール(上の行)、(ii)50nMのmiR-485阻害剤(中央の行)、または(iii)100nMのmiR-485阻害剤(下の行)で処理したNCS-34細胞の結果を示す。第1行と第4行はGFP単独の発現を示す。第2行と第4行はGFPのLC3B単独の発現を示す。第3行と第6行はGFPのGFPとLC3Bの発現の重なりを示す。白い矢印は、SOD1G93Aをトランスフェクトし、miR-485阻害剤で処理したNCS-34細胞におけるSOD1G93Aの凝集を示す。
【
図10C】野生型SOD1コンストラクトまたはG93A変異を有するSOD1(SOD1G93A)コンストラクトのいずれかをトランスフェクトしたNCS-34細胞に対するmiR-485阻害剤の効果を示す。SIRT1及びPGC-1αタンパク質の発現に対するmiR-485阻害剤の効果のウエスタンブロット分析を示す。
【
図10D】野生型SOD1コンストラクトまたはG93A変異を有するSOD1(SOD1G93A)コンストラクトのいずれかをトランスフェクトしたNCS-34細胞に対するmiR-485阻害剤の効果を示す。切断型カスパーゼ-3タンパク質の発現に対する効果のウエスタンブロット分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本開示は、少なくとも1つのmiR-485結合部位を含み、タンパク質をコードしていないヌクレオチド分子をコードするヌクレオチド配列を含む、miR-485阻害剤の使用に関する。いくつかの態様では、miRNA結合部位(複数可)は、内因性SIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子を阻害するか、及び/またはその発現レベルを減少させる内因性のmiR-485に結合することができる。いくつかの態様では、内因性miR-485のmiRNA結合部位(複数可)に対する結合は、内因性のCD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子を阻害するか、及び/またはその発現レベルを減少させることができる。同様に、いくつかの態様では、内因性miR-485のmiRNA結合部位(複数可)に対する結合は、内因性PGC-1αを阻害するか、及び/またはその発現レベルを減少させることができる。いくつかの態様では、内因性miR-485のmiRNA結合部位(複数可)に対する結合は、内因性のNRG1タンパク質及び/またはNRG1遺伝子を阻害するか、及び/またはその発現レベルを減少させることができる。いくつかの態様では、内因性miR-485のmiRNA結合部位(複数可)に対する結合は、内因性のSTMN2タンパク質及び/またはSTMN2遺伝子を阻害するか、及び/またはその発現レベルを減少させることができる。いくつかの態様では、内因性miR-485のmiRNA結合部位(複数可)に対する結合は、内因性のNRXN1タンパク質及び/またはNRXN1遺伝子を阻害するか、及び/またはその発現レベルを減少させることができる。したがって、いくつかの態様では、本開示は、SIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子のレベルを増加させる必要のある対象においてSIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子のレベルを増加させる方法であって、miR-485阻害剤を対象に投与することを含む方法に関する。さらなる態様では、対象におけるSIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子のレベルを増加させることは、SIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子のレベルの減少に関連した疾患または状態の治療に有用となり得る。いくつかの態様では、本開示は、CD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子のレベルを増加させる必要のある対象においてCD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子のレベルを増加させる方法であって、miR-485阻害剤を対象に投与することを含む方法に関する。さらなる態様では、対象におけるCD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子のレベルを増加させることは、CD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子のレベルの減少に関連した疾患または状態の治療に有用となり得る。いくつかの態様では、本開示は、PGC-1αタンパク質及び/またはPGC-1α遺伝子のレベルを増加させる必要のある対象においてPGC-1αタンパク質及び/またはPGC-1α遺伝子のレベルを増加させる方法であって、miR-485阻害剤を対象に投与することを含む方法に関する。さらなる態様では、対象におけるPGC-1αタンパク質及び/またはPGC-1α遺伝子のレベルを増加させることは、PGC-1αタンパク質及び/またはPGC-1α遺伝子のレベルの減少に関連した疾患または状態の治療に有用となり得る。いくつかの態様では、本開示は、NRG1タンパク質及び/またはNRG1遺伝子のレベルを増加させる必要のある対象においてNRG1タンパク質及び/またはNRG1遺伝子のレベルを増加させる方法であって、miR-485阻害剤を対象に投与することを含む方法に関する。さらなる態様では、対象におけるNRG1タンパク質及び/またはNRG1遺伝子のレベルを増加させることは、NRG1タンパク質及び/またはNRG1遺伝子のレベルの減少に関連した疾患または状態の治療に有用となり得る。いくつかの態様では、本開示は、STMN2タンパク質及び/またはSTMN2遺伝子のレベルを増加させる必要のある対象においてSTMN2タンパク質及び/またはSTMN2遺伝子のレベルを増加させる方法であって、miR-485阻害剤を対象に投与することを含む方法に関する。さらなる態様では、対象におけるSTMN2タンパク質及び/またはSTMN2遺伝子のレベルを増加させることは、STMN2タンパク質及び/またはSTMN2遺伝子のレベルの減少に関連した疾患または状態の治療に有用となり得る。いくつかの態様では、本開示は、NRXN1タンパク質及び/またはNRXN1遺伝子のレベルを増加させる必要のある対象においてNRXN1タンパク質及び/またはNRXN1遺伝子のレベルを増加させる方法であって、miR-485阻害剤を対象に投与することを含む方法に関する。さらなる態様では、対象におけるNRXN1タンパク質及び/またはNRXN1遺伝子のレベルを増加させることは、NRXN1タンパク質及び/またはNRXN1遺伝子のレベルの減少に関連した疾患または状態の治療に有用となり得る。本明細書に開示されるように、本開示によって治療することが可能な疾患または状態として、筋萎縮性側索硬化症(ALS)がある。
【0065】
記載される特定の組成物またはプロセスステップは無論のこと異なり得ることから、本開示をより詳細に記載するのに先立って、本開示は特定の組成物またはプロセスステップに限定されない点を理解されたい。本開示を読むことで当業者にとって明らかとなるように、本明細書に記載及び例示される個々の態様の各々は、本開示の範囲または趣旨から逸脱することなく、他のいくつかの態様のいずれかの特徴から容易に分離するかまたはそれらの特徴と組み合わせることができる個別の構成要素及び特徴を有する。記載されるいずれの方法も、記載される事象の順序で、または論理的に可能な他の任意の順序で実施することが可能である。
【0066】
本明細書に示される見出しは本開示の様々な態様を限定するものではなく、本開示の態様は、本明細書の全体を参照することによって定義され得るものである。本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものであるので、本明細書で使用される用語は、あくまで特定の態様を説明することを目的としたものであって、限定することを目的としたものではない点も理解されるべきである。
【0067】
I.用語
本開示をより容易に理解できるように、特定の用語を最初に定義する。本出願で使用する場合、本明細書に別段明記されない限り、以下の用語のそれぞれは、下記に記載する意味を有するものとする。追加の定義は、本出願の全体を通じて記載される。
【0068】
「a」または「an」なる用語で示される実体は、その実体の1つ以上を指し、例えば、「a nucleotide sequence(ヌクレオチド配列)」は、1つ以上のヌクレオチド配列を表すものとして理解される点に留意されたい。したがって、「a」(または「an」)、ならびに「one or more(1つ以上の)」、及び「at least one(少なくとも1つの)」は、本明細書では互換的に用いられる場合がある。各請求項は、あらゆる任意選択的な要素を除外するように起草される場合もある点にも留意されたい。したがって、この記載は、請求項の要素の記載との関連において「~だけの」、「~のみ」などといった除外的な語の使用に対する、または否定による限定の使用に対する先行詞としての役割を有するものとする。
【0069】
さらに、「及び/または」は、本明細書において使用される場合、2つの指定された特徴または構成要素の各々の、他方を伴うか、または伴わない具体的な開示とみなされるものである。したがって、本明細書で「A及び/またはB」などの語句で使用される「及び/または」という用語は、「A及びB」、「AまたはB」、「A」(単独)、及び「B」(単独)を含むことが意図される。同様に、「A、B、及び/またはC」などの語句で使用される「及び/または」という用語は、以下の態様、すなわち、A、B、及びC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);ならびにC(単独)の各々を包含することが意図される。
【0070】
本明細書において「comprising(含む)」なる文言で態様が説明されている場合は常に、「consisting of(からなる)」及び/または「consisting essentially of(から本質的になる)」なる用語で記載される他の類似の態様も提供される点を理解されたい。
【0071】
別段の定義がなされないかぎり、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が関連する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有するものとする。例えば、The Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,2nd ed.,2002,CRC Press、The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.,1999,Academic Press、及びThe Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Pressは、本開示で使用される用語の多くについての一般的な辞書を当業者に与えるものである。
【0072】
単位、接頭辞、及び記号は、それらの国際単位系(SI)で承認された形式で示される。数値範囲は、その範囲を規定する数値を含むものとする。数値の範囲が記載されている場合、その範囲の記載された上限と下限との間にあるそれぞれの介在する整数値、及びそのそれぞれの分数もまた、そのような値の間のそれぞれの部分範囲とともに具体的に開示される点は理解されるべきである。任意の範囲の上限値及び下限値は独立してその範囲に含まれる場合も、その範囲から除外される場合もあるが、どちらかの限界値が含まれるか、どちらの限界値も含まれないか、または両方の限界値が含まれるそれぞれの範囲もまた、本開示に包含される。したがって、本明細書に記載される範囲は、記載される端点を含む、その範囲内のすべての値の簡略的な表記であるものとして理解される。例えば、1~10の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10からなる群からの任意の数、数の組み合わせ、または部分範囲を含むものとして理解される。
【0073】
値が明示的に記載されている場合、記載されている値とほぼ同じ数または量である値もまた、本開示の範囲内に含まれる点を理解されたい。ある組み合わせが開示される場合、その組み合わせの要素の部分的な組み合わせのそれぞれも具体的に開示され、本開示の範囲内に含まれる。逆に、異なる要素または要素群が個別に開示される場合、それらの組み合わせも開示される。ある開示の任意の要素が複数の選択肢を有するものとして開示される場合、各選択肢が単独で、または他の選択肢との任意の組み合わせとして除外されるその開示の例もまた、本明細書に開示される。つまり、ある開示の複数の要素がそのような除外を有することができ、そのような除外を有する要素のすべての組み合わせが本明細書に開示される。
【0074】
ヌクレオチドは、それらの広く認められている1文字の略号で呼称する。特に断らない限り、ヌクレオチド配列は5’から3’の方向に左から右に記載する。本明細書においてヌクレオチドは、IUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される一般的に公知のヌクレオチドの1文字記号により表記される。したがって、「a」はアデニンを表し、「c」はシトシンを表し、「g」はグアニンを表し、「t」はチミンを表し、「u」はウラシルを表す。
【0075】
アミノ酸配列はアミノ末端からカルボキシ末端の方向に左から右に記載する。本明細書においてアミノ酸は、IUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される、一般的に公知のアミノ酸の3文字記号または1文字記号により表記される。
【0076】
「約」という用語は、本明細書では、およそ、大体、おおよそ、またはその範囲内の意味で使用される。「約」なる用語が数値範囲とともに使用される場合、記載される数値よりも上及び下の境界値を広げることによって、その範囲を修飾する。一般に、「約」という用語は、例えば、上または下に10パーセント(より高いまたはより低い)の変動で、明示される値の上及び下に数値を修正することができる。
【0077】
本明細書で使用する場合、「アデノ随伴ウイルス」(AAV)なる用語には、これらに限定されるものではないが、AAVタイプ1、AAVタイプ2、AAVタイプ3(タイプ3A及び3Bを含む)、AAVタイプ4、AAVタイプ5、AAVタイプ6、AAVタイプ7、AAVタイプ8、AAVタイプ9、AAVタイプ10、AAVタイプ11、AAVタイプ12、AAVタイプ13、AAVrh.74、ヘビAAV、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヒツジAAV、ヤギAAV、エビAAV、Gao et al.(J.Virol.78:6381(2004))及びMoris et al.(Virol.33:375(2004))に開示されるAAV血清型及び系統群、ならびに現在知られているかもしくは今後発見される他の任意のAAVが含まれる(例えば、FIELDS et al.VIROLOGY,volume 2,chapter 69(4th ed.,Lippincott-Raven Publishers)を参照)。いくつかの態様では、「AAV」には、既知のAAVの誘導体が含まれる。いくつかの態様では、「AAV」には、改変された、または人工AAVが含まれる。
【0078】
「投与」、「投与すること」なる用語、及びその文法的変化形は、本開示のmiRNA阻害剤などの組成物を、薬学的に許容される経路により対象に導入することを指す。本開示のmiRNA阻害剤を含むミセルなどの組成物の対象への導入は、腫瘍内、経口、肺、鼻腔内、非経口(静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、もしくは皮下)、直腸、リンパ内、髄腔内、眼周または局所を含む任意の好適な経路によるものである。投与は、自己投与及び他者による投与を含む。適当な投与経路によって、組成物または薬剤はその目的とする機能を実行することができる。例えば、適当な経路が静脈内である場合、組成物は、組成物または薬剤を対象の静脈内に導入することによって投与される。
【0079】
本明細書で使用する場合、「~に関連した」という用語は、2つ以上の実体または性質間の密接な関係性のことを指す。例えば、本開示によって治療することが可能な疾患または状態を記述するために用いられる場合(例えば、SIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子の異常なレベルに関連した疾患または状態)、「~に関連した」という用語は、対象がタンパク質及び/または遺伝子の異常な発現を示す場合に対象がその疾患または状態を罹患している可能性が高いことを指す。いくつかの態様では、タンパク質及び/または遺伝子の異常な発現は、疾患または状態を引き起こす。いくつかの態様では、異常な発現は疾患または状態を必ずしも引き起こさないが相関している。対象が、疾患または状態に関連したタンパク質及び/または遺伝子の異常な発現を示すかどうかを判定するために使用することができる適当な方法の非限定的な例を、本開示の他の箇所に示す。
【0080】
本明細書で使用する場合、関心対象の1つ以上の値に適用される「ほぼ」という用語は、明示される参照値と同程度である値を指す。ある特定の態様では、「ほぼ」という用語は、特に明記しない限り、または他のことが文脈から明らかでない限り、明示される参照値の両方向に(数を超えるか、またはそれ未満の)10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ以下の範囲内の値の範囲を指す(かかる数がとり得る値の100%を超える場合を除く)。
【0081】
本明細書で使用する場合、「保存された」という用語は、比較されている2つ以上の配列の同じ位置において不変に見出されるものである、それぞれポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列のヌクレオチドまたはアミノ酸残基を指す。相対的に保存されているヌクレオチドまたはアミノ酸は、配列の他の部分で出現するヌクレオチドまたはアミノ酸と比べてより関連する配列の間で保存されているものである。
【0082】
いくつかの態様では、2つ以上の配列は、それらが互いに100%同一である場合、「完全に保存されている」または「同一である」と言われる。いくつかの態様では、2つ以上の配列は、それらが互いに少なくとも70%同一であるか、少なくとも80%同一であるか、少なくとも90%同一であるか、または少なくとも95%同一である場合、「高度に保存されている」と言われる。いくつかの態様において、2つ以上の配列は、互いに約70%同一である、約80%同一である、約90%同一である、約95%、約98%、または約99%同一である場合、「高度に保存された」と言われる。いくつかの態様では、2つ以上の配列は、それらが互いに少なくとも30%同一であるか、少なくとも40%同一であるか、少なくとも50%同一であるか、少なくとも60%同一であるか、少なくとも70%同一であるか、少なくとも80%同一であるか、少なくとも90%同一であるか、または少なくとも95%同一である場合、「保存されている」と言われる。いくつかの態様では、2つ以上の配列は、それらが互いに約30%同一であるか、約40%同一であるか、約50%同一であるか、約60%同一であるか、約70%同一であるか、約80%同一であるか、約90%同一であるか、約95%同一であるか、約98%同一であるか、または約99%同一である場合、「保存されている」と言われる。配列の保存は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの全長に適用することができ、または部分、領域、もしくはそれらの特徴に適用することができる。
【0083】
本明細書で使用する場合、「由来する」という用語は、特定の分子もしくは生物または情報(例えば、アミノ酸または核酸の配列)を使用して、特定の分子もしくは生物から単離されるか、製造される構成要素を指す。例えば、第2の核酸配列に由来する核酸配列は、第2の核酸配列のヌクレオチド配列と同一であるか、または実質的に類似するヌクレオチド配列を含み得る。ヌクレオチドまたはポリペプチドの場合、派生した種は、例えば、自然に生じる変異誘発、人為的定方向突然変異誘発、または人為的ランダム変異誘発により得られ得る。ヌクレオチドまたはポリペプチドを派生させるために使用される変異誘発は、意図的に定方向、もしくは意図的にランダムであるか、または各々の組み合わせである。最初のものに由来する異なるヌクレオチドまたはポリペプチドを作製するためのヌクレオチドまたはポリペプチドの変異誘発は、ランダム事象(例えば、ポリメラーゼの不忠実さにより引き起こされる)であり得、派生したヌクレオチドまたはポリペプチドの同定は、例えば、本明細書において述べられる適切なスクリーニング法によりなされ得る。一部の態様では、第2のヌクレオチドまたはアミノ酸配列に由来するヌクレオチドまたはアミノ酸配列は、それぞれ第2のヌクレオチドまたはアミノ酸配列に対する少なくとも約50%、少なくとも約51%、少なくとも約52%、少なくとも約53%、少なくとも約54%、少なくとも約55%、少なくとも約56%、少なくとも約57%、少なくとも約58%、少なくとも約59%、少なくとも約60%、少なくとも約61%、少なくとも約62%、少なくとも約63%、少なくとも約64%、少なくとも約65%、少なくとも約66%、少なくとも約67%、少なくとも約68%、少なくとも約69%、少なくとも約70%、少なくとも約71%、少なくとも約72%、少なくとも約73%、少なくとも約74%、少なくとも約75%、少なくとも約76%、少なくとも約77%、少なくとも約78%、少なくとも約79%、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有し、ここで、第1のヌクレオチドまたはアミノ酸配列は、第2のヌクレオチドまたはアミノ酸配列の生物活性を保持する。
【0084】
本明細書で使用する場合、「コーディング領域」または「コーディング配列」とは、アミノ酸に翻訳可能なコドンからなるポリヌクレオチドの部分である。「終止コドン」(TAG、TGA、またはTAA)は通常はアミノ酸に翻訳されないがコーディング領域の一部とみなすことができる。ただし、すべてのフランキング配列、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、イントロンなどはコーディング領域の一部ではない。コーディング領域の境界は、得られるポリペプチドのアミノ末端をコードする5’末端の開始コドンと、得られるポリペプチドのカルボキシ末端をコードする3’末端の翻訳終止コドンとによって一般的に決定される。
【0085】
「相補的」及び「相補性」という用語は、ワトソン・クリック型塩基対形成則により互いに関連する2つ以上のオリゴマー(すなわち、それぞれが核酸塩基配列を含む)、またはオリゴマーと標的遺伝子との間を指す。例えば、核酸塩基配列「T-G-A(5’→3’)」は、核酸塩基配列「A-C-T(3’→5’)」に相補的である。相補性は「部分的」であってよく、その場合、所与の核酸塩基配列の核酸塩基のすべてより少ないものが塩基対形成則に従って他の核酸塩基配列と一致している。例えば、いくつかの態様では、所与の核酸塩基配列と他の核酸塩基配列との間の相補性は、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%であり得る。したがって、特定の態様では、「相補性」という用語は、標的核酸配列(例えば、miR-485の核酸配列)との少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の一致または相補性を指す。または例のような、「完璧な」または「完全な」(100%)相補性が、所与の核酸塩基配列と他の核酸塩基配列との間に存在し得る。いくつかの態様では、核酸塩基配列間の相補性の程度は、配列間のハイブリダイゼーションの効率及び強度に顕著な影響を与える。
【0086】
「下流」という用語は、参照ヌクレオチド配列の3’側に存在するヌクレオチド配列を指す。ある特定の態様では、下流ヌクレオチド配列は、転写開始点に続く配列に関する。例えば、遺伝子の翻訳開始コドンは、転写開始部位の下流に存在する。
【0087】
「賦形剤」及び「キャリア」という用語は、互換的に使用され、化合物、例えば本開示のmiRNA阻害剤の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性物質を指す。
【0088】
本明細書で使用する場合、「発現」という用語は、ポリヌクレオチドが遺伝子産物、例えばRNAまたはポリペプチドを生成するプロセスを指す。発現には、マイクロRNA結合部位、小分子ヘアピンRNA(shRNA)、小分子干渉RNA(siRNA)、または他の任意のRNA産物へのポリヌクレオチドの転写が限定されることなく含まれる。発現には、メッセンジャーRNA(mRNA)へのポリヌクレオチドの転写、及びmRNAのポリペプチドへの翻訳が限定されることなく含まれる。発現によって、「遺伝子産物」が生成される。本明細書で使用する場合、遺伝子産物は、例えば遺伝子の転写によって生成されるRNAなどの核酸であってよい。本明細書で使用する場合、遺伝子産物は、核酸、遺伝子の転写によって生成されるRNAもしくはmiRNA、または転写産物から翻訳されたポリペプチドであってよい。本明細書に記載される遺伝子産物には、例えばポリアデニル化またはスプライシングなどの転写後修飾を有する核酸、または、例えばリン酸化、メチル化、グリコシル化、脂質の付加、他のタンパク質サブユニットとの会合、またはタンパク質分解開裂などの翻訳後修飾を有するポリペプチドがさらに含まれる。
【0089】
本明細書で使用する場合、「相同性」という用語は、ポリマー分子間の、例えば核酸分子間の全体的関連性を指す。一般に、「相同性」という用語は、2つの分子の進化的関係を意味する。したがって、相同な2つの分子は、共通の進化的祖先を有する。本開示との関連で、相同性という用語は、同一性及び類似性の両方を包含する。
【0090】
いくつかの態様では、ポリマー分子は、分子における少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%のモノマーが同一(厳密に同じモノマー)であるか、または類似する(保存的置換)場合、互いに「相同である」とみなされる。「相同である」という用語は、必然的に少なくとも2つの配列(ポリヌクレオチド配列)間の比較を指す。
【0091】
本開示との関連で、置換(それらがアミノ酸置換と称される場合でも)は、核酸レベルで行われ、すなわち、アミノ酸残基を代替アミノ酸残基で置換することは、第1のアミノ酸をコードするコドンを第2のアミノ酸をコードするコドンで置換することによって行われる。
【0092】
本明細書で使用する場合、「同一性」という用語は、ポリマー分子間の、例えば、ポリヌクレオチド分子間の全体的なモノマー保存性を指す。いかなる追加の修飾語もない「同一である」という用語、例えば、「ポリヌクレオチドAはポリヌクレオチドBと同一である」は、ポリヌクレオチド配列同士が100%同一(100%の配列同一性)であることを意味する。例えば、「70%同一である」と2つの配列を表現することは、例えば、「70%配列同一性」を有するとそれらを表現することに等しい。
【0093】
2つのポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列の同一率(%)の計算は、例えば、最適な比較のために2つの配列をアラインメントすることにより実行され得る(例えば、最適なアラインメントのために第1及び第2のポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列の一方または両方にギャップが導入され得、同一でない配列が比較のために無視され得る)。ある特定の態様において、比較目的のためにアライメントされた配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%である。次いで、対応するアミノ酸位のアミノ酸、またはポリヌクレオチドの場合は塩基が比較される。
【0094】
第1の配列におけるある位置が第2の配列における対応する位置と同じアミノ酸またはヌクレオチドにより占められる場合、分子はその位置で同一である。2つの配列間の同一率(%)は、2つの配列の最適なアラインメントのために導入される必要があるギャップの数及び各ギャップの長さを考慮した、配列により共有される同一の位置の数の関数である。配列の比較及び2つの配列間の同一率(%)の決定は、数学アルゴリズムを使用して達成され得る。
【0095】
異なる配列同士(例えば、ポリヌクレオチド配列)をアラインするために使用することができる適当なソフトウェアプログラムは様々なソースから入手可能である。配列同一率(%)を決定するための適当なプログラムの1つに、米国政府のNational Center for Biotechnology Information BLASTウェブサイト(blast.ncbi.nlm.nih.gov)から入手可能なBLASTパッケージプログラムの一部であるbl2seqがある。Bl2seqは、BLASTNまたはBLASTPアルゴリズムのいずれかを使用して、2個の配列間の比較を行う。BLASTNが核酸配列を比較するために使用されるのに対して、BLASTPはアミノ酸配列を比較するために使用される。他の適当なプログラムとしては、例えば、バイオインフォマティクスプログラムパッケージEMBOSSの一部であり、European Bioinformatics Institute(EBI)よりworldwideweb.ebi.ac.uk/Tools/psaにおいてやはり入手可能なNeedle、Stretcher、Water、またはMatcherがある。
【0096】
配列アライメントは、当該技術分野において公知の方法、例えば、MAFFT、Clustal(ClustalW、Clustal X、またはClustal Omega)、MUSCLEなどを使用して実施され得る。
【0097】
ポリヌクレオチドまたはポリペプチド参照配列と整列する単一のポリヌクレオチドまたはポリペプチド標的配列内の異なる領域は、それぞれ、それら自体の配列同一率(%)を有することができる。配列同一率(%)は、10分の1の位に四捨五入される点に留意されたい。たとえば、80.11、80.12、80.13、及び80.14は、80.1に切り捨てられ、80.15、80.16、80.17、80.18、及び80.19は80.2に切り上げられる。また、長さの値は常に整数である点に留意されたい。
【0098】
ある特定の態様では、同一性パーセンテージ(%ID)または第1のアミノ酸配列(または核酸配列)の第2のアミノ酸配列(または核酸配列)に対する同一性パーセンテージ(%ID)は、%ID=100×(Y/Z)として計算され、式中、Yは、第1及び第2の配列のアラインメント(目視検査または特定の配列アライメントプログラムによりアラインメントされる)において完全な一致と評価されたアミノ酸残基(または核酸塩基)の数であり、Zは、第2の配列における残基の総数である。第1の配列の長さが第2の配列を超える場合、第1の配列の第2の配列に対する同一率(%)は、第2の配列の第1の配列に対する同一率(%)より高くなるであろう。
【0099】
当業者であれば、配列同一率(%)を計算するための配列アラインメントの生成が、一次配列データによってのみ行われるバイナリー配列間比較に限定されない点は理解されよう。配列アライメントは、配列データを異種の供給源由来のデータ、例えば、構造データ(例えば、タンパク質結晶構造)、機能データ(例えば、変異の位置)、または系統学的データと統合することにより生成され得ることも理解されよう。異種データを統合してマルチプル配列アラインメントを生成する適当なプログラムとしてworldwideweb.tcoffee.orgで入手できるか、あるいは例えばEBIからも入手できるT-Coffeeがある。配列同一率(%)を計算するために使用される最終的なアラインメントは、自動または手動のいずれかで管理され得ることも理解されよう。
【0100】
本明細書で使用する場合、「単離された」、「精製された」、「抽出された」という用語、及びそれらの文法的変化形は、互換的に使用され、1つ以上の精製プロセスを受けた本開示の所望の組成物、例えば、本開示のmiRNA阻害剤の調製状態を指す。いくつかの態様では、本明細書で使用する場合、単離または精製は、夾雑物を含有する試料から本開示の組成物、例えば本開示のmiRNA阻害剤を取り出す、(例えば、画分を)部分的に取り出すプロセスである。
【0101】
いくつかの態様では、単離された組成物は、検出可能な望ましくない活性を有さないか、または代替的に、望ましくない活性のレベルもしくは量が許容可能なレベルまたは量以下である。他の態様では、単離された組成物は、許容可能な量及び/または濃度及び/または活性以上の量及び/または濃度の本開示の所望の組成物を有する。他の態様では、単離された組成物は、組成物が取得される出発物質と比較して濃縮される。この濃縮は、出発物質と比較して少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約99.9%、少なくとも約99.99%、少なくとも約99.999%、少なくとも約99.9999%、または99.9999%超であり得る。
【0102】
いくつかの態様では、単離された調製物は、残留する生物学的産物を実質的に含まない。いくつかの態様では、単離された調製物は、任意の混入している生物学的物質を100%、少なくとも約99%、少なくとも約98%、少なくとも約97%、少なくとも約96%、少なくとも約95%、少なくとも約94%、少なくとも約93%、少なくとも約92%、少なくとも約91%、または少なくとも約90%含まない。残留する生物学的産物は、非生物物質(化学物質を含む)または不要な核酸、タンパク質、脂質、もしくは代謝産物を含み得る。
【0103】
本明細書で使用する場合、「連結された」という用語は、共有結合または非共有結合によりそれぞれ第2のアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列に結合された、第1のアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列を指す。第1のアミノ酸またはポリヌクレオチド配列は、第2のアミノ酸またはポリヌクレオチド配列に直接的に結合もしくは並列され得るか、または代替的に介在配列が第1の配列から第2の配列までに共有結合により加わり得る。「連結された」という用語は、第1のポリヌクレオチド配列の第2のポリヌクレオチド配列への5’末端または3’末端での融合を意味するだけでなく、第2のポリヌクレオチド配列(または第1のポリヌクレオチド配列)における任意の2つのヌクレオチドへの第1のポリヌクレオチド配列(またはそれぞれ第2のポリヌクレオチド配列)全体の挿入も含む。第1のポリヌクレオチド配列は、ホスホジエステル結合またはリンカーにより第2のポリヌクレオチド配列に連結され得る。リンカーは、例えば、ポリヌクレオチドであり得る。
【0104】
本明細書で使用する場合、「miRNA阻害剤」とは、miRNAの発現、機能、及び/または活性を減少させるか、変化させるか、及び/または調節することができる化合物を指す。miRNA阻害剤は、標的miRNA核酸配列と少なくとも部分的に相補的であるポリヌクレオチド配列であってよく、それにより、miRNA阻害剤は標的miRNA配列とハイブリダイズする。例えば、本開示のmiR-485阻害剤は、標的miR-485核酸配列と少なくとも部分的に相補的であるヌクレオチド分子をコードしたヌクレオチド配列を含み、それにより、miR-485阻害剤はmiR-485配列とハイブリダイズする。さらなる態様では、miR-485配列に対するmiR-485のハイブリダイゼーションは、miR-485の発現、機能、及び/または活性を減少させるか、変化させるか、及び/または調節する(例えば、ハイブリダイゼーションによって、SIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子の発現の増大がもたらされる)。
【0105】
「miRNA」、「miR」、及び「マイクロRNA」という用語は、互換的に使用され、RNAによる遺伝子調節に関与する真核生物において見出されるマイクロRNA分子を指す。この用語は、前駆体からプロセシングされた一本鎖RNA分子を指すために使用される。いくつかの態様では、「アンチセンスオリゴマー」という用語は、本開示のマイクロRNA分子を記述するために使用することもできる。本開示に関連するmiRNAの名称及びそれらの配列は、本明細書において提供される。マイクロRNAは、不完全な塩基対形成により標的mRNAを認識及びそれに結合し、標的mRNAの不安定化または翻訳阻害をもたらし、これにより、標的遺伝子発現を下方調節する。逆に、miRNA結合部位を含む分子(一般にmiRNAのシード領域に相補的な配列を含む分子)によるmiRNAの標的化は、miRNAにより誘発される翻訳阻害を低減または阻害し得、標的遺伝子の上方調節をもたらす。
【0106】
「ミスマッチ」または「複数のミスマッチ」という用語は、オリゴマー核酸塩基配列(例えば、miR-485阻害剤)における塩基対形成則に従って標的核酸配列(例えば、miR-485阻害剤)と一致しない1つ以上の核酸塩基(連続しているまたは離れているにかかわらず)を指す。多くの場合、完全な相補性が所望されるが、いくつかの態様では、標的核酸配列に対する1つ以上(好ましくは6つ、5つ、4つ、3つ、2つ、または1つ)のミスマッチが生じ得る。オリゴマー内の任意の位置でのバリエーションが含まれる。ある特定の態様では、本開示のアンチセンスオリゴマー(例えば、miR-485阻害剤)は、末端近くでの核酸塩基配列のバリエーション、内部でのバリエーションを含み、存在する場合、通常、5’及び/または3’末端の約6、5、4、3、2、または1サブユニット以内に存在する。いくつかの態様では、1つ、2つ、または3つの核酸塩基が除去されてもよく、依然としてオンターゲットの結合を与えることができる。
【0107】
本明細書で使用する場合、「調節する」、「修飾する」という用語、及びそれらの文法的変化形は、一般に、特定の濃度、レベル、発現、機能、または行動に適用される場合、例えば、アンタゴニストまたはアゴニストとして作用するために、特定の濃度、レベル、発現、機能、または行動を増加または減少させること、例えば、直接または間接的に、促進すること/刺激すること/上方調節することまたはそれらに干渉すること/それらを阻害すること/それらを下方調節することにより変化させる能力を指す。場合によっては、修飾因子は、ある特定の濃度、レベル、活性、または機能を、コントロールと比較して、または一般に予想される活性の平均レベルと比較して、もしくは活性のコントロールレベルと比較して増加及び/または減少させ得る。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiRNA阻害剤、例えばmiR-485阻害剤は、miR-485の発現、機能及び/または活性を調節する(例えば減少させる、変化させる、または失わせる)ことができ、それにより、SIRT1タンパク質もしくは遺伝子の発現及び/または活性を調節することができる。
【0108】
「核酸」、「核酸分子」、「ヌクレオチド配列」、「ポリヌクレオチド」、及びそれらの文法的変化形は、互換的に使用され、一本鎖形態または二重螺旋のいずれかでのリン酸エステルポリマー形態のリボヌクレオシド(アデノシン、グアノシン、ウリジン、またはシチジン;「RNA分子」)もしくはデオキシリボヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジン、またはデオキシシチジン;「DNA分子」)、またはそれらの任意のホスホエステルアナログ、例えば、ホスホロチオネート及びチオエステルを指す。一本鎖核酸配列は、一本鎖DNA(ssDNA)または一本鎖RNA(ssRNA)を指す。二本鎖DNA-DNA、DNA-RNA、及びRNA-RNA螺旋が可能である。核酸分子及び特にDNAまたはRNA分子という用語は、分子の一次及び二次構造のみを指し、任意の特定の三次形態に限定されない。したがって、この用語は、とりわけ線形または環状DNA分子(例えば、制限フラグメント)、プラスミド、スーパーコイルDNA、及び染色体に見出される二本鎖DNAを含む。特定の二本鎖DNA分子の構造について述べる際、配列は、DNAの非転写鎖(すなわち、mRNAに相同な配列を有する鎖)に沿った5’~3’方向での配列のみを提供する通常の慣例に従って本明細書に記載され得る。「組換えDNA分子」は、分子生物学的操作を受けたDNA分子である。DNAとしては、限定されるものではないが、cDNA、ゲノムDNA、プラスミドDNA、合成DNA、及び半合成DNAが挙げられる。本開示の「核酸組成物」は、本明細書に記載されるような1つ以上の核酸を含む。
【0109】
「薬学的に許容されるキャリア」、「薬学的に許容される賦形剤」という用語、及びそれらの文法的変化形は、ヒトを含む動物に使用するための米国連邦政府の規制機関により承認されたか、または米国薬局方に列挙される薬剤のいずれか、ならびに対象への組成物の投与を禁止する程度まで望ましくない生理作用の発生を引き起こさず、投与される化合物の生物活性及び特性を抑制しない任意のキャリアまたは希釈剤を包含する。医薬組成物を調製するのに有用であり、一般に安全で、非毒性であり、望ましい賦形剤及び担体が含まれる。
【0110】
本明細書で使用する場合、「医薬組成物」という用語は、1種以上の他の化学成分、例えば、薬学的に許容されるキャリア及び賦形剤と混合もしくは混ぜ合わされたか、またはそれらの中に懸濁された、例えば、本開示のmiRNA阻害剤などの本明細書に記載される化合物のうちの1種以上を指す。医薬組成物の1つの目的は、本開示のmiRNA阻害剤を含む製剤の対象への投与を促進することである。
【0111】
本明細書で使用する場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、それらのアナログ、またはそれらの混合物が挙げられるヌクレオチドの任意の長さのポリマーを指す。
【0112】
いくつかの態様では、この用語は分子の一次構造を指す。したがって、この用語は、三本鎖、二本鎖、及び一本鎖デオキシリボ核酸(「DNA」)、ならびに三本鎖、二本鎖、及び一本鎖リボ核酸(「RNA」)を含む。この用語は、例えば、アルキル化及び/またはキャッピングにより修飾されたポリヌクレオチド及び未修飾形態のポリヌクレオチドも含む。
【0113】
いくつかの態様では、「ポリヌクレオチド」という用語は、ポリデオキシリボヌクレオチド(2-デオキシ-D-リボースを含有する)、スプライシングされたまたはスプライシングされていないにかかわらず、tRNA、rRNA、shRNA、siRNA、miRNA及びmRNAを含む、ポリリボヌクレオチド(D-リボースを含有する)、プリンまたはピリミジン塩基のN-またはC-配糖体である任意の他の種類のポリヌクレオチド、ならびに非ヌクレオチド骨格を含有する他のポリマー、例えば、ポリアミド(例えば、ペプチド核酸「PNA」)及びポリモルホリノポリマー、ならびにDNA及びRNAにおいて見出されるような塩基対形成及び塩基スタッキングを可能にする配置で核酸塩基を含有することを条件とする他の配列特異的合成核酸ポリマーを含む。
【0114】
本開示のいくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドなどのオリゴヌクレオチドであってよい。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドは、RNAである。いくつかの態様では、RNAは、合成RNAである。いくつかの態様では、合成RNAは、少なくとも1つの非天然核酸塩基を含む。いくつかの態様では、ある特定の種類のすべての核酸塩基が、非天然核酸塩基と置き換えられている(例えば、本明細書において開示されるポリヌクレオチドにおけるすべてのウリジンが、非天然核酸塩基、例えば、5-メトキシウリジンと置き換えられ得る)。
【0115】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、例えばSIRT1遺伝子によりコードされた、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指して本明細書において互換的に使用される。ポリマーは、修飾アミノ酸を含み得る。これらの用語は、自然に修飾された、または、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または標識成分との結合など、他の任意の操作もしくは改変などの介入により修飾されたアミノ酸ポリマーも包含される。例えば、1つ以上のアミノ酸アナログ(例えば、ホモシステイン、オルニチン、p-アセチルフェニルアラニン、D-アミノ酸、及びクレアチンなどの非天然アミノ酸が挙げられる)、及び当該技術分野において公知の他の修飾を含有するポリペプチドも定義の範囲内に含まれる。本明細書で使用する場合、「ポリペプチド」という用語は、任意のサイズ、構造、または機能のタンパク質、ポリペプチド、及びペプチドを指す。
【0116】
ポリペプチドとしては、遺伝子産物、天然に存在するポリペプチド、合成ポリペプチド、上述のもののホモログ、オーソログ、パラログ、フラグメント及び他の等価物、バリアント、ならびにアナログが挙げられる。
【0117】
ポリペプチドは、単一のポリペプチドであり得るか、またはダイマー、トリマー、もしくはテトラマーなどの多分子複合体であり得る。それらは、一本鎖または多連鎖ポリペプチドも含み得る。最も一般的に、ジスルフィド結合は、多鎖ポリペプチドに見られる。ポリペプチドという用語は、1つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学的アナログであるようなアミノ酸ポリマーにも適用され得る。いくつかの態様では、「ペプチド」は、アミノ酸約50個以下の長さ、例えば、アミノ酸約5個、約10個、約15個、約20個、約25個、約30個、約35個、約40個、約45個、または約50個の長さであり得る。
【0118】
本明細書で使用する場合、「予防する」、「予防すること」という用語、及びそれらの変化形は、疾患、障害、及び/または状態の発症を部分的または完全に遅延させること;特定の疾患、障害、及び/または状態の1つ以上の症状、特徴、または臨床徴候の発症を部分的または完全に遅延させること;特定の疾患、障害、及び/または状態の1つ以上の症状、特徴、または徴候の発症を部分的または完全に遅延させること;特定の疾患、障害、及び/または状態の進行を部分的または完全に遅延させること;及び/または疾患、障害、及び/または状態に関連する病理を生じるリスクを減少させることを指す。いくつかの態様では、転帰の予防は、予防的治療によって実現される。
【0119】
本明細書で使用する場合、「プロモーター」及び「プロモーター配列」という用語は互換可能であり、コーディング配列または機能性RNAの発現を制御することができるDNA配列を指す。一般的に、コーディング配列は、プロモーター配列の3’側に位置する。プロモーターは、天然遺伝子にその全体が由来してもよく、または自然界にみられる異なるプロモーターに由来する異なるエレメントで構成されてもよく、またはさらには、合成DNAセグメントを含んでもよい。異なるプロモーターは、異なる組織または細胞タイプにおいて、または発生の異なる段階において、または異なる環境的もしくは生理学的条件に応じて、遺伝子の発現を誘導することができる点は、当業者には理解されよう。ほとんどの細胞タイプでほとんどの時間に遺伝子を発現させるプロモーターは一般的に「構成的プロモーター」と呼ばれる。特定の細胞タイプにおいて遺伝子を発現させるプロモーターは、一般的に「細胞特異的プロモーター」または「組織特異的プロモーター」と呼ばれる。発生または細胞分化の特定の段階で遺伝子を発現させるプロモーターは、一般的に「発生特異的プロモーター」または「細胞分化特異的プロモーター」と呼ばれる。プロモーターを誘導する薬剤、生物学的分子、化学物質、リガンド、光などによる細胞の曝露または処理後に誘導されて遺伝子を発現させるプロモーターは、一般的に「誘導性プロモーター」または「調節可能なプロモーター」と呼ばれる。多くの場合で調節配列の正確な境界は完全には定義されていないことから、異なる長さのDNAフラグメントが同じプロモーター活性を有し得る点もさらに認識されよう。
【0120】
プロモーター配列の境界はその3’末端では転写開始部位であり、バックグラウンドよりも高い検出可能なレベルで転写を開始するのに必要な最小の数の塩基またはエレメントを含むように上流(5’方向)に延びている。プロモーター配列内には、転写開始部位(例えばヌクレアーゼS1によるマッピングによって簡便に定義される)ばかりでなく、RNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)も見出される。いくつかの態様では、本開示とともに使用することができるプロモーターには、組織特異的プロモーターが含まれる。
【0121】
本明細書で使用する場合、「予防」とは、疾患もしくは状態の発症を予防するために、または疾患もしくは状態に関連する症状を予防または遅延させるために使用される治療的行動または行動方針を指す。
【0122】
本明細書で使用する場合、「予防法」は、健康を維持し、疾患または状態の発症を予防するために、または疾患もしくは状態に関連する症状を予防もしくは遅延させるために取られる手段を指す。
【0123】
本明細書で使用する場合、「遺伝子調節領域」または「調節領域」という用語は、コーディング領域の上流(5’側のノンコーディング配列)、その内部、またはその下流(3’側のノンコーディング配列)に位置して、転写、RNAプロセシング、または関連するコーディング領域の翻訳に影響を及ぼすヌクレオチド配列を指す。調節領域には、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位、またはステムループ構造が含まれ得る。コーディング領域が真核細胞内での発現のためのものである場合、ポリアデニル化シグナル及び転写終結配列がコーディング配列の3’側に通常は配置される。
【0124】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤(例えば、1つ以上のmiR-485結合部位を含むRNAをコードしたポリヌクレオチド)は、1つ以上のコーディング領域と機能的に関連付けられたプロモーター及び/または他の発現(例えば、転写)制御エレメントを含むことができる。機能的関連付けにおいて、遺伝子産物のコーディング領域は、1つ以上の調節領域と、その遺伝子産物の発現が調節領域(複数可)の影響または制御下に置かれるようにして関連付けられる。例えば、コーディング領域とプロモーターとは、プロモーター機能の誘導が、そのコーディング領域によってコードされたmRNAの転写をもたらし、かつプロモーターとコーディング領域との連結の性質が、プロモーターが遺伝子産物の発現を誘導する能力を妨げず、またはDNA鋳型が転写される能力も妨げない場合に、「機能的に関連付けられている」。プロモーター以外の他の発現制御エレメント、例えば、エンハンサー、オペレーター、リプレッサー、及び転写終結シグナルを、遺伝子産物の発現を誘導するようにコーディング領域と機能的に関連付けることもできる。
【0125】
本明細書で使用する場合、「類似性」という用語は、ポリマー分子間の、例えば、ポリヌクレオチド分子(例えばmiRNA分子)間の全体的関連性を指す。ポリマー分子同士の互いに対する類似率(%)の計算は、類似率(%)の計算が当該技術分野で理解されるところの保存的置換を考慮している点を除いて、同一率(%)の計算と同様にして行うことができる。類似率(%)は、用いられる比較尺度、すなわち、核酸同士が、例えばそれらの進化的な近さ、電荷、体積、柔軟性、極性、疎水性、芳香族性、等電点、抗原性、またはそれらの組み合わせのどれにしたがって比較されるかによって左右されることが理解される。
【0126】
「対象」、「患者」、「個体」、及び「宿主」なる用語、及びそれらの変化形は、本明細書において互換的に使用され、限定されるものではないが、ヒト、家庭用動物(例えば、イヌ、ネコなど)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマなど)、及び実験動物(例えば、サル、ラット、マウス、ウサギ、モルモットなど)が挙げられる、診断、処置、または治療が所望される任意の哺乳動物対象、特にヒトを指す。本明細書に記載される方法は、ヒトの治療及び獣医学的用途の両方に適用可能である。
【0127】
本明細書で使用する場合、「その必要がある対象」という表現は、例えば、SIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子の発現レベルを増加させるためなど、本開示のmiRNA阻害剤(例えば、miR-485阻害剤)の投与から恩恵を受ける哺乳動物対象などの対象を含む。
【0128】
本明細書で使用する場合、「治療有効量」という用語は、所望の治療効果、薬理学的、及び/または生理学的効果をもたらす必要がある対象において所望の治療効果、薬理学的、及び/または生理学的効果をもたらすのに十分な、本開示のmiRNA阻害剤を含む試薬または医薬化合物の量である。治療上有効量は、予防が治療とみなされ得る場合、「予防上有効量」であり得る。
【0129】
本明細書で使用する場合、「処置する」、「処置」、または「処置すること」という用語は、例えば、疾患または状態の重症度の低減、疾患経過の期間の低減、疾患または状態(例えば、糖尿病)に関連する1つ以上の症状の改善または除去、疾患または状態を必ずしも治療しない、疾患または状態を有する対象に対する有益な効果の提供を指す。この用語には、疾患もしくは状態またはその症状の予防または防止も含まれる。
【0130】
「上流」という用語は、参照ヌクレオチド配列の5’側に位置するヌクレオチド配列を指す。
【0131】
「ベクター」とは、宿主細胞内に核酸をクローニング及び/または導入するための任意の担体を指す。ベクターは、結合されたセグメントの複製をもたらすように別の核酸セグメントを結合させることができるレプリコンとすることができる。「レプリコン」とは、インビボで自律的な複製ユニットとして機能する(すなわち、それ自身の制御下で複製することができる)任意の遺伝子エレメント(例えば、プラスミド、ファージ、コスミド、染色体、ウイルス)のことを指す。「ベクター」という用語には、細胞に核酸をインビトロ、エクスビボ、またはインビボで導入するためのウイルス性及び非ウイルス性の担体が含まれる。例えば、プラスミド、改変真核生物ウイルス、または改変細菌ウイルスを含む数多くのベクターが当該技術分野で知られており、使用されている。適当なベクターへのポリヌクレオチドの挿入は、適当なポリヌクレオチドフラグメントを、相補的な粘着末端を有する選択されたベクターにライゲートすることによって行うことができる。
【0132】
ベクターは、ベクターを取り込んだ細胞の選択または特定を可能とする選択マーカーまたはレポーターをコードするように操作することができる。選択マーカーまたはレポーターの発現によって、ベクターに含まれる他のコーディング領域を取り込んで発現する宿主細胞を特定し、及び/または選択することが可能となる。当該技術分野において知られ、使用されている選択マーカーの例としては、アンピシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ヒグロマイシン、ビアラホス除草剤、スルホンアミドなどに対する耐性を与える遺伝子、ならびに表現型マーカーとして用いられる遺伝子、すなわち、アントシアン調節遺伝子、イソペンテニル基転移酵素遺伝子などが挙げられる。当該技術分野において知られ、使用されているレポーターの例としては、ルシフェラーゼ(Luc)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、β-グルクロニダーゼ(Gus)などが挙げられる。選択マーカーはレポーターとみなすこともできる。
【0133】
II.使用方法
いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤は、1つ以上の遺伝子の発現及び/または活性を調節することにより、治療効果(例えば、ALSなどの神経変性疾患に罹患した対象における)を発揮することができる。本明細書に記載されるように、いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、SIRT1、CD36、PGC1、NRXN1、STMN2、NRG1、またはこれらの組み合わせから選択される遺伝子の発現及び/または活性を調節することができる。いずれか1つの理論によって束縛されるものではないが、このような調節によって、miR-485阻害剤は、これらに限定されるものではないが、タンパク質の恒常性(例えば、SIRT1)、ミトコンドリアに関連するもの(例えば、PGC1α)、神経炎症(例えば、CD36及びSIRT1)、神経発生/シナプス形成(例えば、SIRT1、PGC1α、STMN2、NRG1、及びNRXN1)を含む多くの生物学的プロセスに影響を及ぼし得る。
【0134】
SIRT1の調節
いくつかの態様では、本開示は、SIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子の発現を増加させる必要のある対象においてSIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子の発現を増加させる方法であって、miR-485活性を阻害する化合物(すなわち、miR-485阻害剤)を対象に投与することを含む方法を提供する。特定の態様では、miR-485活性を阻害することは、対象におけるSIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子の発現を増加させる。
【0135】
サーチュイン1(SIRT1)は、NAD依存性脱アセチル化酵素サーチュイン1としても知られ、ヒトではSIRT1遺伝子によってコードされているタンパク質である。SIRT1遺伝子はヒトの第10番染色体上に位置している(GenBankアクセッション番号NC_000010.11のヌクレオチド67,884,656~67,918,390(+鎖の方向))。SIRT1遺伝子及びそのコードされたタンパク質の同義語が知られており、「調節タンパク質SIR2ホモログ1」、「サイレント接合型情報調節因子2ホモログ1(silent mating-type information regulation2 homolog1)」、「SIR2」、「SIR2様タンパク質1」、「SIR2L1」、「SIR2α」、「1型サーチュイン」、「hSIRT1」、または「hSIR2」が挙げられる。
【0136】
ヒトSIRT1タンパク質には、選択的スプライシングから生じる少なくとも2種類の既知のアイソフォームがある。SIRT1アイソフォーム1(UniProt識別番号:Q96EB6-1)は747個のアミノ酸からなり、カノニカル配列として選択されている(配列番号31)。SIRT1アイソフォーム2(「Δエクソン8」としても知られる(UniProt識別番号:Q96EB6-2)は、561個のアミノ酸からなり、以下の点でカノニカル配列と異なる:454~639:欠失(配列番号32)。下記表1に、2つのSIRT1アイソフォームの配列を示す。
【表1】
【0137】
本明細書で使用する場合、「SIRT1」なる用語は、細胞によって天然に発現されるSIRT1のあらゆるバリアントまたはアイソフォームを含む。したがって、いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤はSIRT1アイソフォーム1の発現を増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤はSIRT1アイソフォーム2の発現を増加させることができる。さらなる態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤はSIRT1アイソフォーム1及びアイソフォーム2の発現を増加させることができる。特に断らない限り、本明細書では、アイソフォーム1及びアイソフォーム2の両方を併せて「SIRT1」と呼ぶ。
【0138】
いくつかの態様において、本開示のmiR-485阻害剤は、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対応する対象におけるSIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子の発現)と比較してSIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子の発現を少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、または少なくとも約300%増加させる。
【0139】
いずれか1つの理論に束縛されるものではないが、いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、miR-485、例えばmiR-485-3pの発現及び/または活性を低下させることにより、SIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子の発現を増加させる。いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤は、miR-485-3pの発現及び/または活性を低下させることができる。
【0140】
いくつかの態様において、本開示のmiR-485阻害剤は、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対応する対象におけるmiR-485-3pの発現)と比較してmiR-485-3pの発現及び/または活性を少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約100%減少させる。特定の態様において、本開示のmiR-485阻害剤は、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対応する対象におけるmiR-485-5pの発現)と比較してmiR-485-5pの発現及び/または活性を少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約100%減少させる。さらなる態様において、本開示のmiR-485阻害剤は、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対応する対象におけるmiR-485-3p及びmiR-485-5pの発現)と比較してmiR-485-3p及びmiR-485-5pの両方の発現及び/または活性を少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約100%減少させる。いくつかの態様では、miR-485-3p及び/またはmiR-485-5pの発現は、miR-485阻害剤の投与後に完全に阻害される。
【0141】
本明細書に記載されるように、本開示のmiR-485阻害剤は、対象に投与された場合にSIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子の発現を増加させることができる。したがって、いくつかの態様では、本開示は、SIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子の異常な(例えば、低下した)レベルに関連した疾患または状態の治療を必要とする対象において、SIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子の異常なレベルに関連した疾患または状態を治療する方法を提供する。いくつかの態様では、SIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子の異常な(例えば、低下した)レベルに関連した疾患または状態は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)である。特定の態様において、方法は、miR-485の活性を阻害する化合物(例えば、miR-485阻害剤)を対象に投与することを含み、miR-485阻害剤はSIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子のレベルを増加させる。
【0142】
CD36の調節
本明細書に記載されるように、本出願人は、ヒトCD36の3’UTRがmiR-485-3pの標的部位を含み、miR-485-3pの結合がCD36の発現を減少させ得ることを特定した(例えば、実施例7及び8を参照)。したがって、いくつかの態様では、本開示は、CD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子の発現を増加させる必要のある対象においてCD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子の発現を増加させる方法であって、miR-485活性を阻害する化合物(すなわち、miR-485阻害剤)を対象に投与することを含む方法を提供する。特定の態様では、miR-485活性を阻害することは、対象におけるCD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子の発現を増加させる。
【0143】
クラスター決定因子36(CD36)は、血小板糖タンパク質4としても知られ、ヒトではCD36遺伝子によってコードされているタンパク質である。CD36遺伝子は第7番染色体上に位置している(GenBankアクセッション番号NC_000007.14のヌクレオチド80,602,656~80,679,277(+鎖の方向))。CD36遺伝子及びそのコードされたタンパク質の同義語が知られており、「血小板糖タンパク質IV」、「脂肪酸転移酵素」、「スカベンジャー受容体クラスBメンバー3」、「糖タンパク質88」、「糖タンパク質IIIb」、「糖タンパク質IV」、「トロンボスポンジン受容体」、「GPIIIB」、「PAS IV」、「GP3B」、「GPIV」、「FAT」、「GP4」、「BDPLT10」、「SCARB3」、「CHDS7」、「PASIV」、または「PAS-4」が挙げられる。
【0144】
ヒトCD36タンパク質には、選択的スプライシングから生じる少なくとも4種類の既知のアイソフォームがある。CD36アイソフォーム1(UniProt識別番号:P16671-1)は472個のアミノ酸からなり、カノニカル配列として選択されている(配列番号36)。CD36アイソフォーム2(「ex8-del」としても知られる(UniProt識別番号:P16671-2)は、288個のアミノ酸からなり、以下の点でカノニカル配列と異なる:274~288:SIYAVFESDVNLKGI→ETCVHFTSSFSVCKS、及び289~472:欠失(配列番号37)。CD36アイソフォーム3(「ex6-7-del」としても知られる(UniProt識別番号:P16671-3)は、433個のアミノ酸からなり、以下の点でカノニカル配列と異なる:234~272:欠失(配列番号38)。CD36アイソフォーム4(「ex4-del」としても知られる(UniProt識別番号:P16671-4)は、412個のアミノ酸からなり、以下の点でカノニカル配列と異なる:144~203:欠失(配列番号39)。下記表2に、4つのCD36アイソフォームの配列を示す。
【表2】
【0145】
本明細書で使用する場合、「CD36」なる用語は、細胞によって天然に発現されるCD36のあらゆるバリアントまたはアイソフォームを含む。したがって、いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤はCD36アイソフォーム1の発現を増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤はCD36アイソフォーム2の発現を増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤はCD36アイソフォーム3の発現を増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤はCD36アイソフォーム4の発現を増加させることができる。さらなる態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤はCD36のアイソフォーム1とアイソフォーム2、及び/またはアイソフォーム3とアイソフォーム4、及び/またはアイソフォーム1とアイソフォーム4、及び/またはアイソフォーム2とアイソフォーム3の両方の発現を増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤はすべてのCD36アイソフォームの発現を増加させることができる。特に断らない限り、アイソフォーム1、アイソフォーム2、アイソフォーム3、及びアイソフォーム4を本明細書ではまとめて「CD36」と呼ぶ。
【0146】
いくつかの態様において、本開示のmiR-485阻害剤は、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対応する対象におけるCD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子の発現)と比較してCD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子の発現を少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、または少なくとも約300%増加させる。
【0147】
いずれか1つの理論に束縛されるものではないが、いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、miR-485の発現及び/または活性を低下させることにより、CD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子の発現を増加させる。miR-485-3p及びmiR-485-5pの2つの成熟型が知られている。本明細書で開示されるように、いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤は、miR-485-3pの発現及び/または活性を低下させることができる。いくつかの態様では、miR-485阻害剤は、miR-485-5pの発現及び/または活性を低下させることができる。さらなる態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、miR-485-3p及びmiR-485-5pの両方の発現及び/または活性を低下させることができる。
【0148】
本明細書に記載されるように、本開示のmiR-485阻害剤は、対象に投与された場合にCD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子の発現を増加させることができる。したがって、いくつかの態様では、本開示は、CD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子の異常な(例えば、低下した)レベルに関連した疾患または状態の治療を必要とする対象において、そのような疾患または状態を治療する方法を提供する。いくつかの態様では、CD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子の異常な(例えば、低下した)レベルに関連した疾患または状態は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)である。特定の態様において、方法は、miR-485の活性を阻害する化合物(例えば、miR-485阻害剤)を対象に投与することを含み、miR-485阻害剤はCD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子のレベルを増加させる。
【0149】
PGC1の調節
本明細書に提供される開示は、本開示のmiR-485阻害剤が、例えば、本明細書に開示される疾患または障害を罹患した対象におけるPGC-1αの発現をさらに調節することができることを実証する(例えば、実施例3を参照)。したがって、いくつかの態様では、本開示は、PGC-1αタンパク質及び/またはPGC-1α遺伝子の発現を増加させる必要のある対象においてPGC-1αタンパク質及び/またはPGC-1α遺伝子の発現を増加させる方法であって、miR-485活性を阻害する化合物(すなわち、miR-485阻害剤)を対象に投与することを含む方法を提供する。特定の態様では、miR-485活性を阻害することは、対象におけるPGC-1αタンパク質及び/またはPGC-1α遺伝子の発現を増加させる。
【0150】
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマコアクチベーター1-アルファ(PGC1-α)は、PPARGコアクチベーター1アルファまたはリガンド作用モジュレーター6としても知られ、ヒトではPPARGC1A遺伝子によってコードされているタンパク質である。PGC-1α遺伝子はヒトの第4番染色体上に位置している(GenBankアクセッション番号NC_000004.12のヌクレオチド23,792,021~24,472,905(+鎖の方向))。PGC-1α遺伝子及びそのコードされたタンパク質の同義語が知られており、「PPARGC1A」、「LEM6」、「PGC1」、「PGC1A」、「PGC-1v」、「PPARGC1」、「PGC1α」、または「PGC-1(α)」が挙げられる。
【0151】
ヒトPGC-1αタンパク質には、選択的スプライシングから生じる少なくとも9種類の既知のアイソフォームがある。PGC-1αアイソフォーム1(UniProt識別番号:Q9UBK2-1)は798個のアミノ酸からなり、カノニカル配列として選択されている(配列番号40)。PGC-1αアイソフォーム2(「アイソフォームNT-7a」としても知られる(UniProt識別番号:Q9UBK2-2)は、271個のアミノ酸からなり、以下の点でカノニカル配列と異なる:269~271:DPK→LFL;272~798:欠失(配列番号41)。PGC-1αアイソフォーム3(「アイソフォームB5」としても知られる(UniProt識別番号:Q9UBK2-3)は、803個のアミノ酸からなり、以下の点でカノニカル配列と異なる:1~18:MAWDMCNQDSESVWSDIE→MDETSPRLEEDWKKVLQREAGWQ(配列番号42)。PGC-1αアイソフォーム4(「アイソフォームB4」としても知られる(UniProt識別番号:Q9UBK2-4)は、786個のアミノ酸からなり、以下の点でカノニカル配列と異なる:1~18:MAWDMCNQDSESVWSDIE→MDEGYF(配列番号43)。PGC-1αアイソフォーム5(「アイソフォームB4-8a」としても知られる(UniProt識別番号:Q9UBK2-5)は、289個のアミノ酸からなり、以下の点でカノニカル配列と異なる:1~18:MAWDMCNQDSESVWSDIE→MDEGYF、294~301:LTPPTTPP→VKTNLISK、302~798:欠失(配列番号44)。PGC-1αアイソフォーム6(「アイソフォームB5-NT」としても知られる(UniProt識別番号:Q9UBK2-6)は、276個のアミノ酸からなり、以下の点でカノニカル配列と異なる:1~18:MAWDMCNQDSESVWSDIE→MDETSPRLEEDWKKVLQREAGWQ、269-271:DPK→LFL、272-798:欠失(配列番号45)。PGC-1αアイソフォーム7(「B4-3ext」としても知られる(UniProt識別番号:Q9UBK2-7)は、138個のアミノ酸からなり、以下の点でカノニカル配列と異なる:1~18:MAWDMCNQDSESVWSDIE→MDEGYF、144~150:LKKLLLA→VRTLPTV、151~798:欠失(配列番号46)。PGC-1αアイソフォーム8(「アイソフォーム8a」としても知られる(UniProt識別番号:Q9UBK2-8)は、301個のアミノ酸からなり、以下の点でカノニカル配列と異なる:294~301:LTPPTTPP→VKTNLISK、302~798:欠失(配列番号47)。PGC-1αアイソフォーム9(「アイソフォーム9」としても知られる(UniProt識別番号:Q9UBK2-9)は、671個のアミノ酸からなり、以下の点でカノニカル配列と異なる:1~127:欠失(配列番号48)。下記表3に、9つのPGC-1αアイソフォームの配列を示す。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【0152】
本明細書で使用する場合、「PGC-1α」なる用語は、細胞によって天然に発現されるPGC-1αのあらゆるバリアントまたはアイソフォームを含む。したがって、いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、PGC-1αアイソフォーム1の発現を増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、PGC-1αアイソフォーム2の発現を増加させることができる。したがって、いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、PGC-1αアイソフォーム1の発現を増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、PGC-1αアイソフォーム2の発現を増加させることができる。したがって、いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、PGC-1αアイソフォーム3の発現を増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、PGC-1αアイソフォーム4の発現を増加させることができる。したがって、いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、PGC-1αアイソフォーム5の発現を増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、PGC-1αアイソフォーム6の発現を増加させることができる。したがって、いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、PGC-1αアイソフォーム7の発現を増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、PGC-1αアイソフォーム8の発現を増加させることができる。したがって、いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、PGC-1αアイソフォーム9の発現を増加させることができる。さらなる態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、PGC-1αアイソフォーム1、アイソフォーム2、アイソフォーム3、アイソフォーム4、アイソフォーム5、アイソフォーム6、アイソフォーム7、アイソフォーム8、及びアイソフォーム9の発現を増加させることができる。特に断らない限り、本明細書では、アイソフォーム1及びアイソフォーム2の両方を併せて「PGC-1α」と呼ぶ。
【0153】
いくつかの態様において、本開示のmiR-485阻害剤は、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対応する対象におけるPGC-1αタンパク質及び/またはPGC-1α遺伝子の発現)と比較してPGC-1αタンパク質及び/またはPGC-1α遺伝子の発現を少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、または少なくとも約300%増加させる。
【0154】
いずれか1つの理論に束縛されるものではないが、いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、miR-485の発現及び/または活性を低下させることにより、PGC-1αタンパク質及び/またはPGC-1α遺伝子の発現を増加させる。miR-485-3p及びmiR-485-5pの2つの成熟型のmiR-485が知られている。いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤は、miR-485-3pの発現及び/または活性を低下させることができる。いくつかの態様では、miR-485阻害剤は、miR-485-5pの発現及び/または活性を低下させることができる。さらなる態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、miR-485-3p及びmiR-485-5pの両方の発現及び/または活性を低下させることができる。
【0155】
本明細書に記載されるように、本開示のmiR-485阻害剤は、対象に投与された場合にPGC-1αタンパク質及び/またはPGC-1α遺伝子の発現を増加させることができる。したがって、いくつかの態様では、本開示は、PGC-1αタンパク質及び/またはPGC-1α遺伝子の異常な(例えば、低下した)レベルに関連した疾患または状態の治療を必要とする対象において、そのような疾患または状態を治療する方法を提供する。いくつかの態様では、PGC-1αタンパク質及び/またはPGC-1α遺伝子の異常な(例えば、低下した)レベルに関連した疾患または状態は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)である。特定の態様において、方法は、miR-485の活性を阻害する化合物(例えば、miR-485阻害剤)を対象に投与することを含み、miR-485阻害剤はPGC-1αタンパク質及び/またはPGC-1α遺伝子のレベルを増加させる。
【0156】
NRG1の調節
本明細書に提供される開示は、本開示のmiR-485阻害剤が、例えば、本明細書に開示される疾患または障害(例えば、ALS)を罹患した対象におけるNRG1の発現をさらに調節することができることを実証する。したがって、いくつかの態様では、本開示は、NRG1タンパク質及び/またはNRG1遺伝子の発現を増加させる必要のある対象においてNRG1タンパク質及び/またはNRG1遺伝子の発現を増加させる方法であって、miR-485活性を阻害する化合物(すなわち、miR-485阻害剤)を対象に投与することを含む方法を提供する。特定の態様では、miR-485活性を阻害することは、対象におけるNRG1タンパク質及び/またはNRG1遺伝子の発現を増加させる。
【0157】
ニューレグリン1は、ヒトではNRG1遺伝子によってコードされる細胞接着分子である。NRG1は、受容体のEGFRファミリーに作用するニューレグリンファミリーの4つのタンパク質のうちの1つである。NRG1遺伝子はヒトの第8番染色体上に位置している(GenBankアクセッション番号NC_000008.11のヌクレオチド31,639,245~32,774,046)。NRG1遺伝子及びそのコードされたタンパク質の同義語が知られており、「GGF」、「HGL」、「HRG」、「NDF」、「ARIA」、「GGF2」、「HRG1」、「HRGA」、「SMDF」、「MST131」、「MSTP131」、及び「NRG1-IT2」が挙げられる。
【0158】
ヒトNRG1タンパク質には、選択的スプライシングから生じる少なくとも11種類の既知のアイソフォームがある。NRG1アイソフォーム1(「α」としても知られる)(UniProt識別番号:Q02297-1)はアミノ酸640個の長さであり、カノニカル配列として選択されている(配列番号91)。NRG1アイソフォーム2(「α1A」としても知られる)(UniProt識別番号:Q02297-2)は、アミノ酸648個の長さであり、以下の点でカノニカル配列と異なる:234~234:K→KHLGIEFIE(配列番号92)。NRG1アイソフォーム3(「α2B」としても知られる)(UniProt識別番号:Q02297-3)は、アミノ酸462個の長さであり、以下の点でカノニカル配列と異なる:(i)424-462:YVSAMTTPAR...SPPVSSMTVS→HNLIAELRRN...SSIPHLGFIL、及び(ii)463-640:欠失(配列番号93)。NRG1アイソフォーム4(「α3」としても知られる)(UniProt識別番号:Q02297-4)は、247個のアミノ酸からなり、以下の点でカノニカル配列と異なる:(i)234~247:KAEELYQKRVLTIT→SAQMSLLVIAAKTT、及び(ii)248~260:欠失(配列番号94)。NRG1アイソフォーム6(「β1」及び「β1A」としても知られる)(UniProt識別番号:Q02297-6)は、アミノ酸645個の長さであり、以下の点でカノニカル配列と異なる:213~234:QPGFTGARCTENVPMKVQNQEK→PNEFTGDRCQNYVMASFYKHLGIEFME(配列番号95)。NRG1アイソフォーム7(「β2」としても知られる(UniProt識別番号:Q02297-7)は、647個のアミノ酸からなり、以下の点でカノニカル配列と異なる:213~233:QPGFTGARCTENVPMKVQNQE→PNEFTGDRCQNYVMASFY(配列番号96)。NRG1アイソフォーム8(「β3」及び「GGFHFB1」としても知られる)(UniProt識別番号:Q02297-8)は、241個のアミノ酸からなり、以下の点でカノニカル配列と異なる:213~241:QPGFTGARCTENVPMKVQNQEKAEELYQK→PNEFTGDRCQNYVMASFYSTSTPFLSLPE、及び(ii)242~640:欠失(配列番号97)。NRG1アイソフォーム9(「GGF2」及び「GGFHPP2」としても知られる)(UniProt識別番号:Q02297-9)は、422個のアミノ酸からなり、以下の点でカノニカル配列と異なる:(i)1~33:MSERKEGRGKGKGKKKERGSGKKPESAAGSQSP→MRWRRAPRRS...EVSRVLCKRC、(2)134~168:EIITGMPASTEGAYVSSESPIRISVSTEGANTSSS→A、(3)213~241:QPGFTGARCTENVPMKVQNQEKAEELYQK→PNEFTGDRCQNYVMASFYSTSTPFLSLPE、及び(iv)242~640:欠失(配列番号98X)。NRG1アイソフォーム10(「SMDF」としても知られる)(UniProt識別番号:Q02297-10)は、296個のアミノ酸からなり、以下の点でカノニカル配列と異なる:(i)1~166:欠失、(ii)167~167:S→MEIYSPDMSE...ETNLQTAPKL、(iii)213~241:QPGFTGARCTENVPMKVQNQEKAEELYQK→PNEFTGDRCQNYVMASFYSTSTPFLSLPE、及び(iv)242-640:欠失(配列番号99)。NRG1アイソフォーム11(「タイプIV-β1a」としても知られる)(UniProt識別番号:Q02297-11)は、アミノ酸590個の長さであり、以下の点でカノニカル配列と異なる:(i)1~21:欠失、(ii)22~33:KKPESAAGSQSP→MGKGRAGRVGTT、(iii)134~168:EIITGMPASTEGAYVSSESPIRISVSTEGANTSSS→A、及び(iv)213~234:QPGFTGARCTENVPMKVQNQEK→PNEFTGDRCQNYVMASFYKHLGIEFME(配列番号100)。NRG1アイソフォーム12(UniProt識別番号:Q02297-12)は、420個のアミノ酸からなり、以下の点でカノニカル配列と異なる:(i)213~233:QPGFTGARCTENVPMKVQNQE→PNEFTGDRCQNYVMASFY、及び(ii)424~640:欠失(配列番号101)。
【0159】
下記表4に、既知のアイソフォームを含むNRG1タンパク質のアミノ酸配列を示す。
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【0160】
本明細書で使用する場合、「NRG1」なる用語は、細胞によって天然に発現されるNRG1のあらゆるバリアントまたはアイソフォームを含む。したがって、いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤はNRG1アイソフォーム1(すなわち、カノニカル配列)の発現を増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤はNRG1アイソフォーム2の発現を増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤はNRG1アイソフォーム3の発現を増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤はNRG1アイソフォーム4の発現を増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤はNRG1アイソフォーム6の発現を増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤はNRG1アイソフォーム7の発現を増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤はNRG1アイソフォーム8の発現を増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤はNRG1アイソフォーム9の発現を増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤はNRG1アイソフォーム10の発現を増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤はNRG1アイソフォーム11の発現を増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤はNRG1アイソフォーム12の発現を増加させることができる。さらなる態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、NRG1アイソフォーム1、NRG1アイソフォーム2、NRG1アイソフォーム3、NRG1アイソフォーム4、NRG1アイソフォーム6、NRG1アイソフォーム7、NRG1アイソフォーム8、NRG1アイソフォーム9、NRG1アイソフォーム10、NRG1アイソフォーム11、及びNRG1アイソフォーム12の発現を増加させることができる。特に断らない限り、本明細書では、上記に述べたNRG1のアイソフォームをまとめて「NRG1」と呼ぶ。
【0161】
いくつかの態様において、本開示のmiR-485阻害剤は、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対応する対象におけるNRG1タンパク質及び/またはNRG1遺伝子の発現)と比較してNRG1タンパク質及び/またはNRG1遺伝子の発現を少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、または少なくとも約300%増加させる。
【0162】
いずれか1つの理論に束縛されるものではないが、いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、miR-485、例えばmiR-485-3pの発現及び/または活性を低下させることにより、NRG1タンパク質及び/またはNRG1遺伝子の発現を増加させる。
【0163】
本明細書に記載されるように、本開示のmiR-485阻害剤は、対象に投与された場合にNRG1タンパク質及び/またはNRG1遺伝子の発現を増加させることができる。したがって、いくつかの態様では、本開示は、NRG1タンパク質及び/またはNRG1遺伝子の異常な(例えば、低下した)レベルに関連した疾患または状態の治療を必要とする対象において、そのような疾患または状態を治療する方法を提供する。いくつかの態様では、NRG1タンパク質及び/またはNRG1遺伝子の異常な(例えば、低下した)レベルに関連した疾患または状態は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)である。特定の態様において、方法は、miR-485の活性を阻害する化合物(例えば、miR-485阻害剤)を対象に投与することを含み、miR-485阻害剤はNRG1タンパク質及び/またはNRG1遺伝子のレベルを増加させる。
【0164】
STMN2の調節
本明細書に提供される開示は、本開示のmiR-485阻害剤が、例えば、本明細書に開示される疾患または障害(例えば、ALS)を罹患した対象におけるSTMN2の発現をさらに調節することができることを実証する。したがって、いくつかの態様では、本開示は、STMN2タンパク質及び/またはSTMN2遺伝子の発現を増加させる必要のある対象においてSTMN2タンパク質及び/またはSTMN2遺伝子の発現を増加させる方法であって、miR-485活性を阻害する化合物(すなわち、miR-485阻害剤)を対象に投与することを含む方法を提供する。特定の態様では、miR-485活性を阻害することは、対象におけるSTMN2タンパク質及び/またはSTMN2遺伝子の発現を増加させる。
【0165】
スタスミン-2は、リンタンパク質のスタスミンファミリーのメンバーであり、ヒトではSTMN2遺伝子によってコードされている。スタスミンタンパク質は、微小管ダイナミクス及びシグナル伝達において機能している。コードされたタンパク質は、神経細胞の成長における調節的な役割を担っており、骨形成にも関与していると考えられている。STMN2遺伝子はヒトの第8番染色体上に位置している(NC_000008.11のヌクレオチド79,611,117~79,666,162)。STMN2遺伝子及びそのコードされたタンパク質の同義語が知られており、「SCG10」及び「SCGN10」が挙げられる。
【0166】
ヒトSTMN2タンパク質には、選択的スプライシングから生じる少なくとも2種類の既知のアイソフォームがある。STMN2アイソフォーム1(UniProt識別番号:Q93045-1)はアミノ酸179個の長さであり、カノニカル配列として選択されている(配列番号102)。STMN2アイソフォーム2(UniProt識別番号:Q93045-2)は、アミノ酸187個の長さであり、以下の点でカノニカル配列と異なる:161~179:ERHAAEVRRNKELQVELSG→LVKFISSELKESIESQFLELQREGEKQ(配列番号103)。
【0167】
下記表5に、STMN2タンパク質のアミノ酸配列を示す。
【表5】
【0168】
本明細書で使用する場合、「STMN2」なる用語は、細胞によって天然に発現されるSTMN2のあらゆるバリアントまたはアイソフォームを含む。したがって、いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤はSTMN2アイソフォーム1(すなわち、カノニカル配列)の発現を増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤はSTMN2アイソフォーム2の発現を増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤はSTMN2アイソフォーム1及びSTMN2アイソフォーム2の発現を増加させることができる。特に断らない限り、本明細書では、上記に述べたSTMN2のアイソフォームをまとめて「STMN2」と呼ぶ。
【0169】
いくつかの態様において、本開示のmiR-485阻害剤は、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対応する対象におけるSTMN2タンパク質及び/またはSTMN2遺伝子の発現)と比較してSTMN2タンパク質及び/またはSTMN2遺伝子の発現を少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、または少なくとも約300%増加させる。
【0170】
いずれか1つの理論に束縛されるものではないが、いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、miR-485、例えばmiR-485-3pの発現及び/または活性を低下させることにより、STMN2タンパク質及び/またはSTMN2遺伝子の発現を増加させる。
【0171】
本明細書に記載されるように、本開示のmiR-485阻害剤は、対象に投与された場合にSTMN2タンパク質及び/またはSTMN2遺伝子の発現を増加させることができる。したがって、いくつかの態様では、本開示は、STMN2タンパク質及び/またはSTMN2遺伝子の異常な(例えば、低下した)レベルに関連した疾患または状態の治療を必要とする対象において、そのような疾患または状態を治療する方法を提供する。いくつかの態様では、STMN2タンパク質及び/またはSTMN2遺伝子の異常な(例えば、低下した)レベルに関連した疾患または状態は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)である。特定の態様において、方法は、miR-485の活性を阻害する化合物(例えば、miR-485阻害剤)を対象に投与することを含み、miR-485阻害剤はSTMN2タンパク質及び/またはSTMN2遺伝子のレベルを増加させる。
【0172】
NRXN1の調節
本明細書に提供される開示は、本開示のmiR-485阻害剤が、例えば、本明細書に開示される疾患または障害(例えば、ALSを参照)を罹患した対象におけるNRXN1の発現をさらに調節することができることを実証する。したがって、いくつかの態様では、本開示は、NRXN1タンパク質及び/またはNRXN1遺伝子の発現を増加させる必要のある対象においてNRXN1タンパク質及び/またはNRXN1遺伝子の発現を増加させる方法であって、miR-485活性を阻害する化合物(すなわち、miR-485阻害剤)を対象に投与することを含む方法を提供する。特定の態様では、miR-485活性を阻害することは、対象におけるNRXN1タンパク質及び/またはNRXN1遺伝子の発現を増加させる。
【0173】
ニューレキシン1は、タンパク質のニューレキシンファミリーのメンバーであり、ヒトではNRXN1遺伝子によってコードされている。ニューレキシンは、脊椎動物の神経系で細胞接着分子及び受容体として機能するタンパク質のファミリーである。ニューレキシンは、神経伝達物質が適切に放出されるように、カルシウムチャネルと小胞のエクソサイトーシスとのカップリング機構を介した伝達に関与している。NRXN1遺伝子はヒトの第2番染色体上に位置している(NC_000002.12のヌクレオチド49,918,503~51,032,536)。NRXN1遺伝子及びそのコードされたタンパク質の同義語が知られており、「ニューレキシン1α」、「ニューレキシン1β」、「PTHSL2」、「SCZD17」、及び「Hs.22998」が挙げられる。
【0174】
ヒトNRXN1タンパク質には、NRXN1-α及びNRXN1-βという、選択的プロモーターの使用から生じる2つの主要なアイソフォームがある。
【0175】
NRXN1-αタンパク質では、選択的スプライシングから生じる少なくとも4つの既知のアイソフォームが存在する。NRXN1アイソフォーム1a(UniProt識別番号:Q9ULB1-1)は、アミノ酸1477個の長さであり、カノニカル配列として選択されている(配列番号104)。NRXN1アイソフォーム2a(UniProt識別番号:Q9ULB1-2)は、1496個のアミノ酸からなり、以下の点でカノニカル配列と異なる:(i)379~386:欠失、(ii)1239~1239:A→AGNNDNERLAIARQRIPYRLGRVVDEWLLDK、及び(iii)1373~1375:欠失(配列番号105)。NRXN1アイソフォーム3a(UniProt識別番号:Q9ULB1-3)は、アミノ酸1,547個の長さであり、以下の点でカノニカル配列と異なる:(i)258~258:→EIKFGLQCVLPVLLHDNDQGKYCCINTAKPLTEK、(ii)386~386:M→MVNKLHCS、及び(iii)1239~1239:A→AGNNDNERLAIARQRIPYRLGRVVDEWLLDK(配列番号106)。NRXN1アイソフォーム4(UniProt識別番号:Q9ULB1-4)は、アミノ酸139個の長さであり、以下の点でカノニカル配列と異なる:(i)1~1335:欠失、(ii)1336~1344:GKPPTKEPI→MDMRWHCEN、及び(iii)1373~1375:欠失(配列番号107)。
【0176】
NRXN1-βタンパク質では、選択的スプライシングから生じる少なくとも2つの既知のアイソフォームが存在する。NRXN1アイソフォーム1b(UniProt識別番号:P58400-2)は、アミノ酸472個の長さであり、カノニカル配列として選択されている(配列番号108)。NRXN1アイソフォーム3b(UniProt識別番号:P58400-1)は、442個のアミノ酸からなり、以下の点でカノニカル配列と異なる:205~234:欠失(配列番号109)。
【0177】
下記表6及び7に、NRXN1タンパク質のアミノ酸配列を示す。
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【表6-4】
【表7】
【0178】
本明細書で使用する場合、「NRXN1」なる用語は、細胞によって天然に発現されるNRXN1のあらゆるバリアントまたはアイソフォームを含む。したがって、いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、NRXN1アイソフォーム1aの発現を増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、NRXN1アイソフォーム2aの発現を増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、NRXN1アイソフォーム3aの発現を増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、NRXN1アイソフォーム4aの発現を増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、NRXN1アイソフォーム1bの発現を増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、NRXN1アイソフォーム3bの発現を増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、NRXN1アイソフォーム1a、NRXN1アイソフォーム2a、NRXN1アイソフォーム3a、NRXN1アイソフォーム4a、NRXN1アイソフォーム1b、NRXN1アイソフォーム3bの発現を増加させることができる。特に断らない限り、本明細書では、上記に述べたNRXN1のアイソフォームをまとめて「NRXN1」と呼ぶ。
【0179】
いくつかの態様において、本開示のmiR-485阻害剤は、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対応する対象におけるNRXN1タンパク質及び/またはNRXN1遺伝子の発現)と比較してNRXN1タンパク質及び/またはNRXN1遺伝子の発現を少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、または少なくとも約300%増加させる。
【0180】
いずれか1つの理論に束縛されるものではないが、いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、miR-485、例えばmiR-485-3pの発現及び/または活性を低下させることにより、NRXN1タンパク質及び/またはNRXN1遺伝子の発現を増加させる。
【0181】
本明細書に記載されるように、本開示のmiR-485阻害剤は、対象に投与された場合にNRXN1タンパク質及び/またはNRXN1遺伝子の発現を増加させることができる。したがって、いくつかの態様では、本開示は、NRXN1タンパク質及び/またはNRXN1遺伝子の異常な(例えば、低下した)レベルに関連した疾患または状態の治療を必要とする対象において、そのような疾患または状態を治療する方法を提供する。いくつかの態様では、NRXN1タンパク質及び/またはNRXN1遺伝子の異常な(例えば、低下した)レベルに関連した疾患または状態は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)である。特定の態様において、方法は、miR-485の活性を阻害する化合物(例えば、miR-485阻害剤)を対象に投与することを含み、miR-485阻害剤はNRXN1タンパク質及び/またはNRXN1遺伝子のレベルを増加させる。
【0182】
本開示から明らかとなるように、SIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子の異常な(例えば、例えば低下した)レベルに関連したあらゆる疾患または状態を本開示によって治療することができる。いくつかの態様では、本開示は、CD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子の異常な(例えば、低下した)レベルに関連した疾患または状態の治療に有用となりうる。いくつかの態様では、本開示は、PGC-1αタンパク質及び/またはPGC-1α遺伝子の異常な(例えば、低下した)レベルに関連した疾患または障害を治療するために使用することもできる。いくつかの態様では、本開示は、NRG1タンパク質及び/またはNRG1遺伝子の異常な(例えば、低下した)レベルに関連した疾患または障害を治療するために使用することもできる。いくつかの態様では、本開示は、STMN2タンパク質及び/またはSTMN2遺伝子の異常な(例えば、低下した)レベルに関連した疾患または障害を治療するために使用することもできる。いくつかの態様では、本開示は、NRXN1タンパク質及び/またはNRXN1遺伝子の異常な(例えば、低下した)レベルに関連した疾患または障害を治療するために使用することもできる。
【0183】
いくつかの態様では、そのようなタンパク質及び/または遺伝子の異常な(例えば、低下した)レベルに関連した疾患または状態は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)である。いくつかの態様では、そのようなタンパク質及び/または遺伝子の異常な(例えば、低下した)レベルに関連した疾患または状態は、以下、すなわち、アルツハイマー病、パーキンソン病、自閉症スペクトラム障害、精神遅滞、てんかん発作、脳卒中、脊髄損傷、またはこれらの任意の組み合わせから選択される疾患または状態ではない。
【0184】
いくつかの態様では、本開示によって治療することが可能なALSは、孤発性ALS、家族性ALS、またはその両方を含む。本明細書で使用する場合、「孤発性」ALSという用語は、ALS発症の家族歴と関連のないALSを指す。ALS診断のおよそ約90%以上が孤発性ALSである。本明細書で使用する場合、「家族性」ALSという用語は、家族内で複数の発症があり、疾患の遺伝的要素を示唆するALSを指す。いくつかの態様では、本開示によって治療することが可能なALSは、原発性側索硬化症(PLS)である。PLSは、腕及び脚の上位運動ニューロンを冒し得る。しかしながら、顕性のPLSを有する人の75%超が、症状の発症の4年以内に下位運動ニューロン徴候を示し、これはその時点までPLEの確定診断を下すことができないことを意味する。PLSは、進行が遅く、機能低下が比較的少なく、呼吸能力に影響せず、体重減少がそれほど深刻ではないことから、古典型ALSよりも良好な予後を有する。いくつかの態様では、ALSは、進行性筋萎縮症(PMA)を含む。PMAは、腕及び脚の下位運動ニューロンを冒し得る。PMAは、古典型ALSよりも平均して長い生存期間に関連しているものの、時間とともに他の脊髄領域へと進行し、最終的には呼吸不全及び死亡につながる。PMAの後期に上位運動ニューロン徴候が発現する場合があるが、その場合、診断は古典的ALSに変更される場合がある。
【0185】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤を投与することは、SIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子の異常な(例えば、低下した)レベルに関連する疾患または状態の1つ以上の症状を改善することができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤を投与することは、CD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子の異常な(例えば、低下した)レベルに関連する疾患または状態の1つ以上の症状を改善することができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤を投与することは、PGC-1αタンパク質及び/またはPGC-1α遺伝子の異常な(例えば、低下した)レベルに関連する疾患または状態の1つ以上の症状を改善することができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤を投与することは、NRG1タンパク質及び/またはNRG1遺伝子の異常な(例えば、低下した)レベルに関連する疾患または状態の1つ以上の症状を改善することができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤を投与することは、STMN2タンパク質及び/またはSTMN2遺伝子の異常な(例えば、低下した)レベルに関連する疾患または状態の1つ以上の症状を改善することができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤を投与することは、NRXN1タンパク質及び/またはNRXN1遺伝子の異常な(例えば、低下した)レベルに関連する疾患または状態の1つ以上の症状を改善することができる。そのような症状の非限定的な例を以下に記載する。
【0186】
本明細書に記載されるように、SIRT1、CD36、PGC1-α、NRG1、STMN2、及び/またはNRXN1の異常な発現に関連した疾患または障害として、筋萎縮性側索硬化症(ALS)がある。したがって、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、ALSに関連した1つ以上の症状を改善することができる。症状の非限定的な例としては、歩行または通常の日常活動を行うことの困難;つまずき及び転倒;四肢の虚弱;不明瞭な発語;嚥下障害;筋痙攣及び攣縮;不相応な号泣、笑い、または欠伸;認知症;認知能力及び行動変化;ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0187】
いくつかの態様では、対象にmiR-485阻害剤を投与することは、対象(例えば、ALSに罹患した)の1つ以上の四肢の物理的強さを増加させることができる。例えば、いくつかの態様では、対象が長時間にわたって物体(例えば、ハングワイヤまたはポール)につかまる能力が、参照(例えば、投与前の対象の対応する値)と比較して増加する。いくつかの態様では、対象が物体(例えば、ハングワイヤまたはポール)につかまることができる時間の長さは、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対象)と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、または少なくとも約300%以上、増加する。
【0188】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤を対象に投与することは、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対応する個人における疾患発症)と比較して疾患の発症を遅延させることができる。いくつかの態様では、ALSの疾患の発症は、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対象)と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、または少なくとも約300%以上、遅延される。いくつかの態様では、ALSの疾患の発症は、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対象)と比較して、少なくとも約10日、少なくとも約20日、少なくとも約30日、少なくとも約40日、少なくとも約50日、少なくとも約60日、少なくとも約70日、少なくとも約80日、少なくとも約90日、少なくとも約100日、少なくとも約150日、少なくとも約200日、少なくとも約250日、少なくとも約1年、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年、または少なくとも約5年以上、遅延される。
【0189】
いくつかの態様では、対象にmiR-485阻害剤を投与することは、対象(例えば、ALSに罹患している)における1つ以上の認知機能症状を、参照(例えば、投与前の対象における認知機能症状)と比較して改善する。
【0190】
いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤を投与することは、対象(例えば、つまずき、手で物を持つのが難しい、不明瞭な発話、嚥下障害、筋痙攣、姿勢悪化、頭をもちあげているのが難しい、筋硬直、またはこれらの任意の組み合わせ)におけるALSの1つ以上の症状の発症、または発症のリスクを、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対象)と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%低下させる。
【0191】
いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤を投与することは、対象(例えば、ALSに罹患している)におけるスカベンジャー細胞(例えば、グリア細胞)の食作用活性を(例えば、CD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子の発現を増加させることにより)、参照(例えば、投与前の対象における食作用活性)と比較して増加させる。いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤を投与することは、対象(例えば、ALSに罹患している)における神経細胞の樹状突起スパイン密度を、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対象)と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、または約300%以上、増加させる。
【0192】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤を投与することは、対象(例えば、ALSに罹患している)における神経発生を(例えば、CD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子の発現を増加させることにより)、参照(例えば、投与前の対象における神経発生)と比較して増加させる。本明細書で使用する場合、「神経発生」という用語は、神経細胞が形成されるプロセスを指す。神経発生は、神経幹細胞及び前駆細胞の増殖、これらの細胞の新たな神経細胞タイプへの分化、ならびに新しい細胞の遊走及び生存を包含する。この用語は、主として出生前及び周産期の発生の正常な発生中に生じる神経発生、ならびに疾患、傷害、または治療介入後に生じる細胞再生を含むものとする。成人の神経発生は、「神経」または「神経系」発生とも呼ばれる。いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤を投与することは、対象(例えば、ALSに罹患している)における神経発生を、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対象)と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、または約300%以上、増加させる。
【0193】
いくつかの態様では、神経発生を増加及び/または誘導することは、神経幹細胞及び/または前駆細胞の増殖、分化、遊走、及び/または生存率の増加をともなう。したがって、いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤を投与することは、対象の神経幹細胞及び/または前駆細胞の増殖を増加させることができる。特定の態様では、神経幹細胞及び/または前駆細胞の増殖は、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対象)と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、または少なくとも約300%以上、増加する。いくつかの態様では、神経幹細胞及び/または前駆細胞の生存率は、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対象)と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、または少なくとも約300%以上、増加する。
【0194】
いくつかの態様では、神経発生を増加及び/または誘導することは、神経幹細胞及び/または前駆細胞の数の増加をともなう。いくつかの態様では、神経幹細胞及び/または前駆細胞の数は、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対象)と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、または少なくとも約300%以上、増加する。
【0195】
いくつかの態様では、神経発生を増加及び/または誘導することは、軸索、樹状突起、及び/またはシナプス発生の増加をともなう。特定の態様では、軸索、樹状突起、及び/またはシナプス発生は、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対象)と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、または少なくとも約300%以上、増加する。
【0196】
いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤を投与することは、対象(例えば、ALSに罹患している)における神経炎症を(例えば、SIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子の発現を増加させることにより)、参照(例えば、投与前の対象における神経炎症)と比較して減少させる。特定の態様では、miR-485阻害剤を投与することは、対象(例えば、ALSに罹患している)における神経炎症を、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対象)と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%減少させる。いくつかの態様では、神経炎症の減少は、グリア細胞が産生する炎症性メディエーターの量が減少することを含む。したがって、特定の態様では、miR-485阻害剤を対象(例えば、ALSに罹患している)に投与することは、グリア細胞が産生する炎症性メディエーターの量を、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対象)と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%減少させる。いくつかの態様では、グリア細胞が産生する炎症性メディエーターは、TNF-αを含む。いくつかの態様では、炎症性メディエーターは、IL-1βを含む。いくつかの態様では、グリア細胞が産生する炎症性メディエーターは、TNF-α及びIL-1βの両方を含む。
【0197】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤を投与することは、対象(例えば、ALSに罹患している)におけるオートファジーを(例えば、SIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子の発現を増加させることにより)増加させる。本明細書で使用する場合、「オートファジー」という用語は、細胞ストレス応答ならびに細胞恒常性を維持するために長寿命タンパク質、タンパク質凝集体、及び損傷したオルガネラの分解を担う生存経路のことを指す。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤を対象(例えば、ALSに罹患している)に投与することは、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対象)と比較してオートファジーを、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、または少なくとも約300%以上、増加させる。
【0198】
当該技術分野では周知であり、本明細書に記載されているように、ALS患者は特定の運動及び/または非運動症状を呈する。例えば、ALSに関連した運動症状の非限定的な例としては、筋力低下(例えば、脚の虚弱、ペンまたはカップを持つことが難しい、頭より高く腕を上げることが難しい、手または指で細かい運動動作を行う際のぎこちなさ、呼吸困難)、筋萎縮、筋攣縮(すなわち、筋肉の短時間の自然な制御不能な痙攣)、痙縮(すなわち、緊張及び強ばりにつながる、筋肉の長時間の制御不能な収縮)、構音障害(すなわち、口及び顔の筋肉を動かせないことによる遅い、不明瞭な発語)、嚥下障害(すなわち、飲み込むことができない)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。ALSに関連する非運動症状の例としては、認知機能障害、情動調節障害(PBA)(すなわち、社会的場面で不相応にみえる笑いまたは号泣の不随意かつ制御不能なエピソード)が挙げられる。
【0199】
いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤を投与することは、対象(例えば、ALSに罹患している)における1つ以上の運動症状を、参照(例えば、投与前の対象における対応する運動症状)と比較して改善する。いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤を投与することは、対象(例えば、ALSに罹患している)における1つ以上の運動症状を、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対象)と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、または少なくとも約300%以上、改善する。
【0200】
いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤を投与することは、対象(例えば、ALSに罹患している)における1つ以上の非運動症状を、参照(例えば、投与前の対象における対応する非運動症状)と比較して改善する。特定の態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤を投与することは、対象(例えば、ALSに罹患している)における1つ以上の非運動症状を、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対象)と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、または少なくとも約300%以上、改善する。
【0201】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、当該技術分野では周知の任意の適当な経路で投与することができる。特定の態様では、miR-485阻害剤は、補足的投与、筋肉内投与、皮下投与、点眼、静脈内投与、腹腔内投与、皮内投与、眼窩内投与、脳内投与、頭蓋内投与、脳室内投与、脊髄内投与、心室内投与、髄腔内投与、大槽内投与、嚢内投与、腫瘍内投与、またはそれらの任意の組み合わせで投与される。特定の態様では、miR-485阻害剤は、脳室内(ICV)投与される。特定の態様では、miR-485阻害剤は、静脈内投与される。
【0202】
いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤は、1つ以上のさらなる治療薬と併用することができる。いくつかの態様では、さらなる治療薬とmiR-485阻害剤とは同時に投与される。特定の態様において、さらなる治療薬とmiR-485阻害剤とは順次投与される。
【0203】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は副作用を生じない。特定の態様では、本開示のmiR-485阻害剤は、対象に投与される際に体重に悪影響を及ぼさない。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、対象に投与される際に死亡率の増加をもたらさず、病理学的異常も引き起こさない。
【0204】
III.本開示で有用なmiR-485阻害剤
本開示では、miR-485活性を阻害することができる化合物を開示する(miR-485阻害剤)。いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤は、少なくとも1つのmiR-485結合部位を含むヌクレオチド分子をコードするヌクレオチド配列を含んでおり、ヌクレオチド分子はタンパク質をコードしていない。本明細書に記載されるように、いくつかの態様では、miR-485結合部位は、標的miRNA核酸配列(すなわち、miR-485)と少なくとも部分的に相補的であるため、miR-485阻害剤はmiR-485の核酸配列とハイブリダイズする。
【0205】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR阻害剤のmiR-485結合部位は、miR-485の核酸配列と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有する。特定の態様では、miR-485結合部位は、miR-485の核酸配列と完全に相補的である。
【0206】
miR-485のヘアピン前駆体はmiR-485-5p及びmiR-485-3pの両方を生成することができる。本開示との関連で、「miR-485」は、特に断らない限り、miR-485-5p及びmiR-485-3pの両方を包含する。ヒト成熟miR-485-3pは、配列5’-GUCAUACACGGCUCUCCUCUCU-3’(配列番号1;miRBaseアクセッション番号MIMAT0002176)を有する。miR-485-3pの5’-UCAUACA-3’(配列番号49)の5’末端配列はシード配列である。ヒト成熟miR-485-5pは、配列5’-AGAGGCUGGCCGUGAUGAAUUC-3’(配列番号33;miRBaseアクセッション番号MIMAT0002175)を有する。miR-485-5pの5’-GAGGCUG-3’(配列番号50)の5’末端配列はシード配列である。
【0207】
当業者には明らかであるが、ヒト成熟miR-485-3pは、他の種のものと相当の配列類似性を有している。例えば、マウス成熟miR-485-3pは、ヒト成熟miR-485-3pと、5’末端及び3’末端のそれぞれで1個のアミノ酸が異なっている(すなわち、5’末端に余分な「A」があり、3’末端の「C」がない)。マウス成熟miR-485-3pは以下の配列を有する:
【化6】
(配列番号34;miRBaseアクセッション番号MIMAT0003129;下線部はヒト成熟miR-485-3pとの重複部分に相当する)。マウス成熟miR-485-5pの配列はヒトの配列と同一である:5’-agaggcuggccgugaugaauuc-3’(配列番号33;miRBaseアクセッション番号MIMAT0003128)。このような配列の類似性のため、いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤は、1つ以上の種のmiR-485-3p及び/またはmiR-485-5pに結合することができる。特定の態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、ヒト及びマウスのmiR-485-3p及び/またはmiR-485-5pに結合することができる。
【0208】
いくつかの態様では、miR-485結合部位は、miR-485-3pの配列(またはその部分配列)と相補的(例えば、完全に相補的)な一本鎖のポリヌクレオチド配列である。いくつかの態様では、miR-485-3pの部分配列は、シード配列を含む。したがって、特定の態様では、miR-485結合部位は、配列番号49に記載される核酸配列と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列相補性を有する。特定の態様では、miR-485結合部位は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のミスマッチを除いてmiR-485-3pと相補的である。さらなる態様では、miR-485結合部位は、配列番号1に記載される核酸配列と完全に相補的である。
【0209】
いくつかの態様では、miR-485結合部位は、miR-485-5pの配列(またはその部分配列)と相補的(例えば、完全に相補的)な一本鎖のポリヌクレオチド配列である。いくつかの態様では、miR-485-5pの部分配列は、シード配列を含む。特定の態様では、miR-485結合部位は、配列番号50に記載される核酸配列と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列相補性を有する。特定の態様では、miR-485結合部位は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のミスマッチを除いてmiR-485-5pと相補的である。さらなる態様では、miR-485結合部位は、配列番号35に記載される核酸配列と完全に相補的である。
【0210】
miRNAのシード領域は、標的mRNAと緊密な二重鎖を形成する。多くのmiRNAは、標的mRNAの3’非翻訳領域(UTR)と不完全に塩基対合し、miRNAの5’近位の「シード」領域が対合特異性の大部分を与える。いずれの理論にも束縛されるものではないが、最初の9個のmiRNAヌクレオチド(シード配列を含む)がより高い特異性を与えるのに対して、この領域の3’側のmiRNAヌクレオチドはより低い配列特異性を与え、それにより、より高度のミスマッチした塩基対合を許容し、2~7位が最も重要であると考えられる。したがって、本開示の特定の態様では、miR-485結合部位は、miR-485のシード配列の全長にわたって完全に相補的(すなわち、100%の相補性)な配列を含む。
【0211】
本開示との関連で使用することができるmiRNA配列及びmiRNA結合配列としては、これらに限定されるものではないが、本明細書に示される配列表の配列の全部または一部、ならびにmiRNA前駆体配列、またはこれらのmiRNAのうちの1つ以上のものの相補体が挙げられる。その配列が、示されるmiRNAの成熟配列またはその相補的配列と少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約71%、少なくとも約72%、少なくとも約73%、少なくとも約74%、少なくとも約75%、少なくとも約76%、少なくとも約77%、少なくとも約78%、少なくとも約79%、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるようなmiRNAまたはその相補的配列を含めるために名前による特定のmiRNAまたはmiRNA結合部位を含む本開示のあらゆる態様も想到される。
【0212】
特定の態様では、本開示のmiRNA結合配列は、改変された配列がmiR-485に依然として特異的に結合できる限り、本明細書で提供される配列表に示される配列の5’末端、3’末端、または5’末端及び3’末端の両方にさらなるヌクレオチドを含んでもよい。いくつかの態様では、本開示のmiRNA結合配列は、改変された配列がmiR-485に依然として特異的に結合できる限り、提供される配列表に示される配列に対して、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれ以上のヌクレオチドにおいて異なり得る。
【0213】
miRNA結合分子またはmiRNAに関して本明細書に記載されるあらゆる方法及び組成物は、合成miRNA結合分子に関して実施することができる点も具体的に想到される。本開示のRNA配列に関連した開示は、対応するDNA配列に等しく適用できる点も理解されよう。
【0214】
いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤は、ヌクレオチド配列の5’末端に少なくとも1個のヌクレオチド、少なくとも2個のヌクレオチド、少なくとも3個のヌクレオチド、少なくとも4個のヌクレオチド、少なくとも5個のヌクレオチド、少なくとも6個のヌクレオチド、少なくとも7個のヌクレオチド、少なくとも8個のヌクレオチド、少なくとも9個のヌクレオチド、少なくとも10個のヌクレオチド、少なくとも11個のヌクレオチド、少なくとも12個のヌクレオチド、少なくとも13個のヌクレオチド、少なくとも14個のヌクレオチド、少なくとも15個のヌクレオチド、少なくとも16個のヌクレオチド、少なくとも17個のヌクレオチド、少なくとも18個のヌクレオチド、少なくとも19個のヌクレオチド、または少なくとも20個のヌクレオチドを含む。いくつかの態様では、miR-485阻害剤は、ヌクレオチド配列の3’末端に少なくとも1個のヌクレオチド、少なくとも2個のヌクレオチド、少なくとも3個のヌクレオチド、少なくとも4個のヌクレオチド、少なくとも5個のヌクレオチド、少なくとも6個のヌクレオチド、少なくとも7個のヌクレオチド、少なくとも8個のヌクレオチド、少なくとも9個のヌクレオチド、少なくとも10個のヌクレオチド、少なくとも11個のヌクレオチド、少なくとも12個のヌクレオチド、少なくとも13個のヌクレオチド、少なくとも14個のヌクレオチド、少なくとも15個のヌクレオチド、少なくとも16個のヌクレオチド、少なくとも17個のヌクレオチド、少なくとも18個のヌクレオチド、少なくとも19個のヌクレオチド、または少なくとも20個のヌクレオチドを含む。
【0215】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、約6~約30ヌクレオチドの長さである。特定の態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、7ヌクレオチドの長さである。さらなる態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、8ヌクレオチドの長さである。いくつかの態様では、miR-485阻害剤は、9ヌクレオチドの長さである。いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤は、10ヌクレオチドの長さである。特定の態様では、miR-485阻害剤は、11ヌクレオチドの長さである。さらなる態様では、miR-485阻害剤は、12ヌクレオチドの長さである。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、13ヌクレオチドの長さである。特定の態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、14ヌクレオチドの長さである。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、15ヌクレオチドの長さである。さらなる態様では、miR-485阻害剤は、16ヌクレオチドの長さである。特定の態様では、本開示のmiR-485阻害剤は、17ヌクレオチドの長さである。いくつかの態様では、miR-485阻害剤は、18ヌクレオチドの長さである。いくつかの態様では、miR-485阻害剤は、19ヌクレオチドの長さである。特定の態様では、miR-485阻害剤は、20ヌクレオチドの長さである。さらなる態様では、本開示のmiR-485阻害剤は、21ヌクレオチドの長さである。いくつかの態様では、miR-485阻害剤は、22ヌクレオチドの長さである。
【0216】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、配列番号2~30から選択される配列と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるヌクレオチド配列を含む。特定の態様では、miR-485阻害剤は、配列番号2~30からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチド配列は1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のミスマッチを場合により含んでもよい。
【0217】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、5’-UGUAUGA-3’(配列番号2)、5’-GUGUAUGA-3’(配列番号3)、5’-CGUGUAUGA-3’(配列番号4)、5’-CCGUGUAUGA-3’(配列番号5)、5’-GCCGUGUAUGA-3’(配列番号6)、5’-AGCCGUGUAUGA-3’(配列番号7)、5’-GAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号8)、5’-AGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号9)、5’-GAGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号10)、5’-GGAGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号11)、5’-AGGAGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号12)、5’-GAGGAGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号13)、5’-AGAGGAGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号14)、または5’-GAGAGGAGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号15)を含む。
【0218】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、5’-UGUAUGAC-3’(配列番号16)、5’-GUGUAUGAC-3’(配列番号17)、5’-CGUGUAUGAC-3’(配列番号18)、5’-CCGUGUAUGAC-3’(配列番号19)、5’-GCCGUGUAUGAC-3’(配列番号20)、5’-AGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号21)、5’-GAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号22)、5’-AGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号23)、5’-GAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号24)、5’-GGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号25)、5’-AGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号26)、5’-GAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号27)、5’-AGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号28)、5’-GAGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号29)、または5’-AGAGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号30)を有する。
【0219】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、5’-TGTATGA-3’(配列番号62)、5’-GTGTATGA-3’(配列番号63)、5’-CGTGTATGA-3’(配列番号64)、5’-CCGTGTATGA-3’(配列番号65)、5’-GCCGTGTATGA-3’(配列番号66)、5’-AGCCGTGTATGA-3’(配列番号67)、5’-GAGCCGTGTATGA-3’(配列番号68)、5’-AGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号69)、5’-GAGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号70)、5’-GGAGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号71)、5’-AGGAGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号72)、5’-GAGGAGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号73)、5’-AGAGGAGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号74)、5’-GAGAGGAGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号75)、5’-TGTATGAC-3’(配列番号76)、5’-GTGTATGAC-3’(配列番号77)、5’-CGTGTATGAC-3’(配列番号78)、5’-CCGTGTATGAC-3’(配列番号79)、5’-GCCGTGTATGAC-3’(配列番号80)、5’-AGCCGTGTATGAC-3’(配列番号81)、5’-GAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号82)、5’-AGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号83)、5’-GAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号84)、5’-GGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号85)、5’-AGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号86)、5’-GAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号87)、5’-AGAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号88)、5’-GAGAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号89)、及び5’-AGAGAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号90)からなる群から選択される配列を有する。
【0220】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiRNA阻害剤(すなわち、miR-485阻害剤)は、5’-AGAGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号30)または5’-AGAGAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号90)と少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%同一であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、5’-AGAGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号30)または5’-AGAGAGGAGAGCCGTGTATGAC -3’(配列番号90)と少なくとも90%の類似性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、1個の置換または2個の置換を有するヌクレオチド配列5’-AGAGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号30)または5’-AGAGAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号90)を含む。特定の態様では、miRNA阻害剤は、ヌクレオチド配列5’-AGAGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号30)または5’-AGAGAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号90)を含む。特定の態様では、miRNA阻害剤は、ヌクレオチド配列5’-AGAGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号30)を含む。
【0221】
いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤は、本明細書に開示される配列、例えば、配列番号2~30のいずれか1つと、N末端に少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、または少なくとも5個のさらなる核酸、C末端に少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、または少なくとも5個のさらなる核酸、またはその両方と、を含む。いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤は、本明細書に開示される配列、例えば、配列番号2~30のいずれか1つと、N末端に1個のさらなる核酸及び/またはC末端に1個のさらなる核酸と、を含む。いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤は、本明細書に開示される配列、例えば、配列番号2~30のいずれか1つと、N末端に1個または2個のさらなる核酸及び/またはC末端に1個または2個のさらなる核酸と、を含む。いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤は、本明細書に開示される配列、例えば、配列番号2~30のいずれか1つと、N末端に1~3個のさらなる核酸及び/またはC末端に1~3個のさらなる核酸と、を含む。いくつかの態様では、miR-485阻害剤は、5’-GAGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号29)を含む。
【0222】
いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤は、1個のmiR-485結合部位を含む。さらなる態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、少なくとも2個のmiR-485結合部位を含む。特定の態様では、miR-485阻害剤は、3個のmiR-485結合部位を含む。いくつかの態様では、miR-485阻害剤は、4個のmiR-485結合部位を含む。いくつかの態様では、miR-485阻害剤は、5個のmiR-485結合部位を含む。特定の態様では、miR-485阻害剤は、6個以上のmiR-485結合部位を含む。いくつかの態様では、すべてのmiR-485結合部位は同じである。いくつかの態様では、すべてのmiR-485結合部位は異なる。いくつかの態様では、少なくとも1つのmiR-485結合部位が異なる。いくつかの態様では、すべてのmiR-485結合部位は、miR-485-3p結合部位である。他の態様では、すべてのmiR-485結合部位は、miR-485-5p結合部位である。さらなる態様では、miR-485阻害剤は、少なくとも1つのmiR-485-3p結合部位と、少なくとも1つのmiR-485-5p結合部位とを含む。
【0223】
III.a.化学修飾されたポリヌクレオチド
いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、少なくとも1つの化学修飾されたヌクレオシド及び/またはヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを含む。本開示のポリヌクレオチドが化学修飾されている場合、ポリヌクレオチドは、「修飾ポリヌクレオチド」と呼ぶことができる。
【0224】
「ヌクレオシド」は、糖分子(例えば、ペントースまたはリボース)またはその誘導体を、有機塩基(例えば、プリンまたはピリミジン)またはその誘導体(本明細書において「核酸塩基」とも称される)とともに含有する化合物を指す。「ヌクレオチド」は、リン酸基を含むヌクレオシドを指す。修飾されたヌクレオチドは、1つ以上の修飾された非天然ヌクレオシドを含むように、任意の有用な方法により、例えば、化学的に、酵素的に、または組換えにより合成され得る。
【0225】
ポリヌクレオチドは、連結されたヌクレオシドの領域または複数の領域を含み得る。かかる領域は、可変的な骨格結合を有し得る。連結は、標準的なホスホジエステル結合であり得、その場合、ポリヌクレオチドはヌクレオチドの領域を含む。
【0226】
本明細書において開示される修飾されたポリヌクレオチドは、様々な異なる修飾を含み得る。いくつかの態様では、修飾されたポリヌクレオチドは、1種、2種、またはそれ以上(任意選択的に異なる)のヌクレオシドまたはヌクレオチド修飾を含有する。いくつかの態様では、修飾されたポリヌクレオチドは、1つ以上の所望の特性、例えば、未修飾ポリヌクレオチドと比較して改善された熱または化学安定性、低減された免疫原性、低減された分解、標的マイクロRNAに対する結合の増加、他のマイクロRNAまたは他の分子に対する低減された非特異的結合を示し得る。
【0227】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド(例えば、miR-485阻害剤)は、化学修飾されている。本明細書で使用する場合、ポリヌクレオチドに関して、「化学修飾」または必要に応じて「化学修飾された」という用語は、アデノシン(A)、グアノシン(G)、ウリジン(U)、チミジン(T)、またはシチジン(C)リボヌクレオシドまたはデオキシリボヌクレオシドに対する、限定されるものではないが、それらの核酸塩基、糖、骨格、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられるそれらの位置、パターン、パーセント、または集団のうちの1つ以上における修飾を指す。
【0228】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド(例えば、miR-485阻害剤)は、同じヌクレオシド種類のすべてもしくはいずれかの均一な化学修飾、または同じヌクレオシド種類のすべてもしくはいずれかにおける同じ出発修飾の漸減滴定(downward titration)によって生成される修飾の群、またはランダムな組み込みを伴うことを除いて同じヌクレオシド種類のすべてもしくはいずれかの測定されたパーセントの化学修飾を有し得る。さらなる態様では、本開示のポリヌクレオチド(例えば、miR-485阻害剤)は、ポリヌクレオチド全体にわたって同じヌクレオシド種類のうちの2つ、3つ、または4つの均一な化学修飾を有し得る(例えば、すべてのウリジン及びすべてのシトシンなどが、同じように修飾される)。
【0229】
修飾されたヌクレオチドの塩基対形成は、標準的なアデニン-チミン、アデニン-ウラシル、またはグアニン-シトシン塩基対だけでなく、ヌクレオチド及び/または非標準的もしくは修飾塩基を含む修飾ヌクレオチドの間で形成される塩基対も包含し、ここで、水素結合ドナー及び水素結合アクセプターの配置が、非標準的塩基と標準的塩基との間、または2つの相補的な非標準的塩基構造間の水素結合を可能にする。かかる非標準的塩基対形成の1つの例は、修飾された核酸塩基イノシンとアデニン、シトシン、またはウラシルとの間の塩基対形成である。塩基/糖またはリンカーの任意の組み合わせが、本開示のポリヌクレオチドに組み込まれ得る。
【0230】
当業者は、特に注記される場合を除き、本出願に記載されるポリヌクレオチド配列は、代表的なDNA配列において「T」を列挙するが、配列がRNAを表す場合、「T」は「U」と置換されることを理解するであろう。例えば、本開示のTDは、RNAとして、DNAとして、またはRNA及びDNAユニットの両方を含むハイブリッド分子として投与され得る。
【0231】
いくつかの態様では、ポリヌクレオチド(例えば、miR-485阻害剤)は、少なくとも2つ(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、8つ、10、11、12、13、14、15、16、17、18、18、20以上)の修飾された核酸塩基の組み合わせを含む。
【0232】
いくつかの態様では、ポリヌクレオチドにおける核酸塩基、糖、骨格結合、またはそれらの任意の組み合わせは、少なくとも約5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%修飾される。
【0233】
(i)塩基修飾
特定の態様では、化学修飾は、本開示(例えば、miR-485阻害剤)のポリヌクレオチド内の核酸塩基に存在する。いくつかの態様では、少なくとも1つの化学修飾ヌクレオシドは、修飾されたウリジン(例えば、シュードウリジン(ψ)、2-チオウリジン(s2U)、1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)、1-エチル-シュードウリジン(e1ψ)、または5-メトキシ-ウリジン(mo5U))、修飾されたシトシン(例えば、5-メチル-シチジン(m5C))、修飾されたアデノシン(例えば、1-メチル-アデノシン(m1A)、N6-メチル-アデノシン(m6A)、または2-メチルアデニン(m2A))、修飾されたグアノシン(例えば、7-メチル-グアノシン(m7G)または1-メチル-グアノシン(m1G))、またはそれらの組み合わせである。
【0234】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド(例えば、miR-485阻害剤)は、特定の修飾について均一に修飾される(例えば、完全に修飾される、配列全体にわたって修飾される)。例えば、ポリヌクレオチドは、同じ種類の塩基修飾、例えば、5-メチル-シチジン(m5C)により均一に修飾され得、これは、ポリヌクレオチド配列におけるすべてのシトシン残基が、5-メチル-シチジン(m5C)と置き換えられることを意味する。同様に、ポリヌクレオチドは、配列に存在する任意の種類のヌクレオシド残基について、修飾されたヌクレオシド、例えば、上記に記載されるもののいずれかとの置換により均一に修飾され得る。
【0235】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド(例えば、miR-485阻害剤)は、少なくとも2つ(例えば、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上)の修飾された核酸塩基の組み合わせを含む。いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド(例えば、miR-485阻害剤)における1種類の核酸塩基の少なくとも約5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%が、修飾された核酸塩基である。
【0236】
(ii)骨格修飾
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド(すなわちmiR-485阻害剤)は、ヌクレオシド間に任意の有用な結合を含むことができる。本開示の組成物において有用な、骨格修飾を含むそのような結合としては、これらに限定されるものではないが、以下のものが挙げられる:3’-アルキレンホスホネート、3’-アミノホスホロアミダート、アルケン含有骨格、アミノアルキルホスホロアミダート、アミノアルキルホスホトリエステル、ボラノホスフェート、-CH
2-O-N(CH
3)-CH
2-、-CH
2-N(CH
3)-N(CH
3)-CH
2-、-CH
2-NH-CH
2-、キラルホスホネート、キラルホスホロチオネート、ホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格、メチレン(メチルイミノ)、メチレンホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格、メチレンイミノ及びメチレンヒドラジノ骨格、モルホリノ結合、-N(CH
3)-CH
2-CH
2-、ヘテロ原子ヌクレオシド間結合を有するオリゴヌクレオシド、ホスフィナート、ホスホロアミダート、ホスホロジチオエート、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合、ホスホロチオネート、ホスホトリエステル、PNA、シロキサン骨格、スルファメート骨格、スルフィド、スルホキシド、及びスルホン骨格、スルホネート及びスルホンアミド骨格、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、ならびにチオノホスホロアミダート。
【化7】
【0237】
いくつかの態様では、上記に開示される骨格結合の存在は、本開示のポリヌクレオチド(例えば、miR-485阻害剤)の安定性及び分解に対する耐性を増加させる。
【0238】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド(例えば、miR-485阻害剤)における少なくとも約5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%の骨格結合が修飾される(例えば、それらのすべてがホスホロチオエートである)。
【0239】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド(すなわち、miR-485阻害剤)に含めることができる骨格修飾は、ホスホロジアミダイトモルホリノオリゴマー(PMO)及び/またはホスホロチオエート(PS)修飾を含む。
【0240】
(iii)糖修飾
本開示のポリヌクレオチド(例えば、miR-485阻害剤)に組み込まれ得る修飾されたヌクレオシド及びヌクレオチドは、核酸の糖に対して修飾され得る。いくつかの態様では、糖修飾は、miR-485核酸配列に対するmiR-485阻害剤の結合の親和性を増加させる。LNAまたは2’-置換糖などの親和性改善ヌクレオチド類似体をmiR-485阻害剤に組み込むことによって、miR-485阻害剤の長さ及び/またはサイズを小さくすることができる。
【0241】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド(すなわち、miR-485阻害剤)における少なくとも約5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のヌクレオチドが糖修飾(例えば、LNA)を含有する。
【0242】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチドにおける1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22ヌクレオチドユニットが糖修飾される(例えば、LNA)。
【0243】
一般に、RNAは、酸素を有する五員環である糖基リボースを含む。非限定的な例示的修飾ヌクレオチドとしては、リボースにおける酸素の(例えば、S、Se、またはアルキレン、例えば、メチレンまたはエチレンとの)置換;二重結合の付加(例えば、リボースのシクロペンテニルまたはシクロヘキセニルとの置換);リボースの環縮小(例えば、シクロブタンまたはオキセタンの四員環の形成);リボースの環拡大(例えば、追加の炭素またはヘテロ原子を有し、6または七員環の形成、例えば、アンヒドロヘキシトール、アルトリトール、マンニトール、シクロヘキサニル、シクロヘキセニル、及びホスホロアミダート骨格も有するモルホリノ);多環式形態(例えば、トリシクロ);及び「アンロックド」形態、例えば、グリコール核酸(GNA)(例えば、R-GNAまたはS-GNA、ここで、リボースは、ホスホジエステル結合に結合されたグリコールユニットと置き換えられる)、トレオース核酸(TNA、ここで、リボースは、α-L-トレオフラノシル-(3’→2’)と置き換えられる)、及びペプチド核酸(PNA、ここで、2-アミノ-エチル-グリシン結合が、リボース及びホスホジエステル骨格と置き換わる)が挙げられる。糖基は、リボースにおける対応する炭素と反対の立体化学配置を有する1つ以上の炭素も含有し得る。したがって、ポリヌクレオチド分子は、糖として、例えば、アラビノースを含有するヌクレオチドを含み得る。
【0244】
リボースの2’ヒドロキシ基(OH)は、いくつかの異なる置換基で修飾または置換され得る。2’-位での例示的な置換としては、限定されるものではないが、H、ハロ、任意選択的に置換されたC1~6アルキル;任意選択的に置換されたC1~6アルコキシ;任意選択的に置換されたC6~10アリールオキシ;任意選択的に置換されたC3~8シクロアルキル;任意選択的に置換されたC3~8シクロアルコキシ;任意選択的に置換されたC6~10アリールオキシ;任意選択的に置換されたC6~10アリール-C1~6アルコキシ、任意選択的に置換されたC1~12(ヘテロシクリル)オキシ;糖(例えば、リボース、ペントース、または本明細書に記載されるいずれか);ポリエチレングリコール(PEG)、-O(CH2CH2O)nCH2CH2OR(ここで、Rは、Hまたは任意選択的に置換されたアルキルであり、nは、0~20(例えば、0~4、0~8、0~10、0~16、1~4、1~8、1~10、1~16、1~20、2~4、2~8、2~10、2~16、2~20、4~8、4~10、4~16、及び4~20)の整数である);「ロックド」核酸(LNA)(2’-ヒドロキシが、C1~6アルキレンまたはC1~6ヘテロアルキレン架橋により、同じリボース糖の4’-炭素に連結されており、ここで、例示的な架橋としては、メチレン、プロピレン、エーテル、アミノ架橋、アミノアルキル、アミノアルコキシ、アミノ、及びアミノ酸が挙げられる)が挙げられる。
【0245】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド(すなわち、miR-485阻害剤)に存在するヌクレオチド類似体は、例えば、2’-O-アルキル-RNAユニット、2’-OMe-RNAユニット、2’-O-アルキル-SNA、2’-アミノ-DNAユニット、2’-フルオロ-DNAユニット、LNAユニット、アラビノ核酸(ANA)ユニット、2’-フルオロ-ANAユニット、HNAユニット、INA(インターカレーティング核酸)ユニット、2’MOEユニット、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、LNAは、例えば、オキシLNA(例えば、β-D-オキシ-LNAまたはα-L-オキシ-LNA)、アミノLNA(例えば、β-D-アミノ-LNAまたはα-L-アミノ-LNA)、チオLNA(例えば、β-D-チオ-LNAまたはα-L-チオ-LNA)、ENA(例えば、β-D-ENAまたはα-L-ENA)、またはそれらの任意の組み合わせである。さらなる態様では、本開示のポリヌクレオチド(すなわちmiR-485阻害剤)に含めることができるヌクレオチド類似体は、ロックド核酸(LNA)、アンロックド核酸(UNA)、アラビノ核酸(ABA)、架橋核酸(BNA)、及び/またはペプチド核酸(PNA)を含む。
【0246】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド(すなわち、miR-485阻害剤)は、修飾されたRNAヌクレオチド類似体(例えば、LNA)及びDNAユニットの両方を含み得る。いくつかの態様では、miRNA阻害剤はギャップマーである。例えば、米国特許第8,404,649号、同第8,580,756号、同第8,163,708号、同第9,034,837号(これらのすべてが参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと。いくつかの態様では、miRNA阻害剤はマイクロマーである。米国特許公開第US20180201928号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0247】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド(少なくとも、miR-485阻害剤)は、エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼによる速やかな分解を防止するための修飾を含むことができる。修飾としては、これらに限定されるものではないが、例えば、(a)末端修飾、例えば、5’末端修飾(リン酸化、脱リン酸化、共役化、反転結合など)、3’末端修飾(共役化、DNAヌクレオチド、反転結合など)、(b)塩基修飾、例えば、修飾塩基、安定化塩基、不安定化塩基、または広範なパートナーのレパートリーと塩基対合する塩基、または共役化塩基による置換、(c)糖修飾(例えば、2’位または4’位における)または糖の置換、ならびに(d)ホスホジエステル結合の修飾または置換を含む、ヌクレオシド間結合の修飾が挙げられる。
【0248】
IV.ベクター及び送達システム
いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤は、例えば、SIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子の異常な(例えば、低下した)レベルに関連した疾患または条件に罹患した対象に、当該技術分野では周知のあらゆる関連する送達システムを用いて投与することができる。特定の態様では、送達システムはベクターである。したがって、いくつかの態様では、本開示は、本開示のmiR-485阻害剤を含むベクターを提供する。
【0249】
いくつかの態様では、ベクターは、ウイルスベクターである。いくつかの態様では、ウイルスベクターは、アデノウイルスベクターまたはアデノ随伴ウイルスベクターである。いくつかの態様では、ウイルスベクターは、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、またはこれらの任意の組み合わせの血清型を有するAAVである。いくつかの態様では、アデノウイルスベクターは、第3世代アデノウイルスベクターである。ADEASY(商標)は、アデノウイルスベクターコンストラクトを作製するうえで圧倒的に最も一般的な方法である。このシステムは、シャトル(または導入)ベクター及びアデノウイルスベクターの2つのタイプのプラスミドで構成される。目的の導入遺伝子をシャトルベクターにクローニングし、検証し、制限酵素PmeIで直鎖化する。次いで、このコンストラクトを、PADEASY(商標)を含むBJ5183E.coli細胞であるADEASIER-1細胞に形質転換する。PADEASY(商標)は、ウイルス産生に必要なアデノウイルス遺伝子を含んだ約33Kbのアデノウイルスプラスミドである。シャトルベクターとアデノウイルスプラスミドとは、アデノウイルスプラスミド内への導入遺伝子の相同組み換えを促進する一致した左右のホモロジーアームを有している。標準的なBJ5183に、スーパーコイルを形成したPADEASY(商標)とシャトルベクターを同時形質転換することもできるが、この方法は非組換えアデノウイルスプラスミドの高いバックグラウンドを生じる。次いで、組換えアデノウイルスプラスミドをサイズ及び適当な制限消化パターンについて検証し、導入遺伝子がアデノウイルスプラスミドに挿入され、他のパターンの組み換えが生じていないことを確認する。検証が済んだなら、組換えプラスミドをPacIで直鎖化してITRで挟まれた直鎖状dsDNAコンストラクトを作製する。293または911細胞に直鎖化したコンストラクトをトランスフェクトすると、ウイルスをおよそ7~10日後に回収することができる。この方法以外にも、本明細書に開示される方法を実施するために、本願が出願された時点で当該技術分野において周知のアデノウイルスベクターコンストラクトを作製するための方法を用いることができる。
【0250】
いくつかの態様では、ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクター(例えば第3または第4世代のレンチウイルスベクター)である。レンチウイルスベクターは、1つの細胞株に3つの別々のプラスミド発現システムをトランスフェクトする一過性トランスフェクションシステムで通常は作製される。これらには、導入ベクタープラスミド(HIVプロウイルスの部分)、パッケージングプラスミドまたはコンストラクト、及び異なるウイルスの異種エンベロープ遺伝子(env)を含むプラスミドが含まれる。ベクターの3つのプラスミドコンポーネントをパッケージング細胞に入れた後、これをHIVシェル内に挿入する。ベクターのウイルス部分は挿入配列を含んでいるため、ウイルスは細胞系内で複製することはできない。現在の第3世代レンチウイルスベクターは、9つのHIV-1タンパク質のうちの3つのみ(Gag、Pol、Rev)をコードしており、これらは組換えによる複製能を有するウイルスの生成を防止するために別々のプラスミドから発現させられる。第4世代レンチウイルスベクターでは、レトロウイルスゲノムはさらに減らされている(例えば、TAKARA(登録商標)LENTI-X(商標)第4世代パッケージングシステムを参照)。
【0251】
当該技術分野では周知の任意のAAVベクターを本明細書に開示される方法で使用することができる。AAVベクターは既知のベクターを含んでよく、それらのバリアント、フラグメント、または融合体を含んでよい。いくつかの態様では、AAVベクターは、AAVタイプ1(AAV1)、AAV2、AAV3A、AVV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AVV9、AVV10、AVV11、AVV12、AVV13、AAVrh.74、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヤギAVV、霊長類AAV、非霊長類AAV、ウシAAV、エビAVV、ヘビAVV、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0252】
いくつかの態様では、AAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3A、AVV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AVV9、AVV10、AVV11、AVV12、AVV13、AAVrh.74、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヤギAVV、霊長類AAV、非霊長類AAV、ヒツジAAV、エビAVV、ヘビAVV、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されたAAVベクターから誘導される。
【0253】
いくつかの態様では、AAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3A、AVV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AVV9、AVV10、AVV11、AVV12、AVV13、AAVrh.74、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヤギAVV、霊長類AAV、非霊長類AAV、ヒツジAAV、エビAVV、ヘビAVV、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも2つのAAVベクターから誘導されるキメラベクターである。
【0254】
特定の態様では、AAVベクターは、当該技術分野では周知の少なくとも2つの異なるAAVベクターの領域を含む。
【0255】
いくつかの態様では、AAVベクターは、第1のAAV(例えば、AAV1、AAV2、AAV3A、AVV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AVV9、AVV10、AVV11、AVV12、AVV13、AAVrh.74、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヤギAVV、霊長類AAV、非霊長類AAV、ヒツジAAV、エビAVV、ヘビAVV、またはこれらの任意の組み合わせ)に由来する末端逆位配列と、第2のAAV(例えば、AAV1、AAV2、AAV3A、AVV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AVV9、AVV10、AVV11、AVV12、AVV13、AAVrh.74、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヤギAVV、霊長類AAV、非霊長類AAV、ヒツジAAV、エビAVV、ヘビAVV、またはこれらの任意の組み合わせ)に由来する第2の末端逆位配列と、を含む。
【0256】
いくつかの態様では、AAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3A、AVV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AVV9、AVV10、AVV11、AVV12、AVV13、AAVrh.74、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヤギAVV、霊長類AAV、非霊長類AAV、ヒツジAAV、エビAVV、ヘビAVV、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されたAAVベクターの部分を含む。いくつかの態様では、AAVベクターは、AAV2を含む。
【0257】
いくつかの態様では、AAVベクターは、スプライスアクセプター部位を含む。いくつかの態様では、AAVベクターは、プロモーターを含む。当該技術分野では周知の任意のプロモーターを本開示のAAVベクターで使用することができる。いくつかの実施態様では、プロモーターはRNA Pol IIIプロモーターである。いくつかの態様では、RNA Pol IIIプロモーターは、U6プロモーター、H1プロモーター、7SKプロモーター、5Sプロモーター、アデノウイルス2(Ad2)VAIプロモーター、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの態様では、プロモーターは、サイトメガロウイルス前初期遺伝子(CMV)プロモーター、EF1aプロモーター、Sv40プロモーター、PGK1プロモーター、Ubcプロモーター、ヒトβアクチンプロモーター、CAGプロモーター、TREプロモーター、UASプロモーター、Ac5プロモーター、ポリヘドリンプロモーター、CaMKIIaプロモーター、GAL1プロモーター、GAL10プロモーター、TEFプロモーター、GDSプロモーター、ADH1プロモーター、CaMV35Sプロモーター、またはUbiプロモーターである。特定の態様では、プロモーターは、U6プロモーターを含む。
【0258】
いくつかの態様では、AAVベクターは、構成的に活性なプロモーター(構成的プロモーター)を含む。いくつかの態様では、構成的プロモーターは、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、アデノシンデアミナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、βアクチンプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)、サルウイルス(例えば、SV40)、パピローマウイルス、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ラウス肉腫ウイルス、レトロウイルス末端反復配列(LTR)、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)、及び単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーターからなる群から選択される。
【0259】
いくつかの態様では、プロモーターは、誘導性プロモーターである。いくつかの態様では、誘導性プロモーターは、組織特異的プロモーターである。特定の態様では、組織特異的プロモーターは、神経細胞、グリア細胞、または神経細胞及びグリア細胞の両方において、AAVベクターのコーディング領域の転写を誘導する。
【0260】
いくつかの態様では、AAVベクターは、1つ以上のエンハンサーを含む。いくつかの態様では、1つ以上のエンハンサーはAAV内に単独で、または本明細書に開示されるプロモーターとともに存在する。いくつかの態様では、AAVベクターは、3’UTRのポリ(A)テール配列を含む。いくつかの態様では、3’UTRのポリ(A)テール配列は、bGHポリ(A)、アクチンポリ(A)、ヘモグロビンポリ(A)、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの態様では、3’UTRのポリ(A)テール配列はbGHポリ(A)を含む。
【0261】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、送達剤とともに投与される。使用することができる送達剤の非限定的な例としては、リピドイド、リポソーム、リポプレックス、脂質ナノ粒子、ポリマー化合物、ペプチド、タンパク質、細胞、ナノ粒子模倣体、ナノチューブ、ミセル、またはコンジュゲートが挙げられる。
【0262】
したがって、いくつかの態様では、本開示は、本開示のmiRNA阻害剤(すなわちmiR-485阻害剤)と、送達剤と、を含む組成物も提供する。いくつかの態様では、送達剤は、下式:
[WP]-L1-[CC]-L2-[AM](式I)
または
[WP]-L1-[AM]-L2-[CC](式II)
(式中、
WPは、水溶性バイオポリマー部分であり、
CCは、正に帯電したキャリア部分であり、
AMは、アジュバント部分であり、
L1及びL2は、独立して、任意選択のリンカーである)を有するカチオン性キャリアユニットを含み、
カチオン性キャリアユニットは、約1:1のイオン比で核酸と混合される場合にミセルを形成する。
【0263】
いくつかの態様では、本開示のmiRNA阻害剤(すなわち、miR-485阻害剤)を含む組成物は、イオン結合を介してカチオン性キャリアユニットと相互作用する。
【0264】
いくつかの態様では、水溶性ポリマーは、ポリ(アルキレングリコール)、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリグリセロール、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン(「POZ」)、ポリ(N-アクリロイルモルホリン)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリグリセロール、またはポリ(プロピレングリコール)(「PPG」)を含む。いくつかの態様では、水溶性ポリマーは、下式:
【化8】
(式中、nは、1~1000である)を有する。
【0265】
いくつかの態様では、nは、少なくとも約110、少なくとも約111、少なくとも約112、少なくとも約113、少なくとも約114、少なくとも約115、少なくとも約116、少なくとも約117、少なくとも約118、少なくとも約119、少なくとも約120、少なくとも約121、少なくとも約122、少なくとも約123、少なくとも約124、少なくとも約125、少なくとも約126、少なくとも約127、少なくとも約128、少なくとも約129、少なくとも約130、少なくとも約131、少なくとも約132、少なくとも約133、少なくとも約134、少なくとも約135、少なくとも約136、少なくとも約137、少なくとも約138、少なくとも約139、少なくとも約140、または少なくとも約141である。いくつかの態様では、nは、約80~約90、約90~約100、約100~約110、約110~約120、約120~約130、約140~約150、または約150~約160である。
【0266】
いくつかの態様では、水溶性ポリマーは、直鎖状、分枝鎖状、または樹枝状である。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、1つ以上の塩基性アミノ酸を含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7、少なくとも8つ、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、少なくとも30、少なくとも31、少なくとも32、少なくとも33、少なくとも34、少なくとも35、少なくとも36、少なくとも37、少なくとも38、少なくとも39、少なくとも40、少なくとも41、少なくとも42、少なくとも43、少なくとも44、少なくとも45、少なくとも46、少なくとも47、少なくとも48、少なくとも49、または少なくとも50の塩基性アミノ酸を含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、約30~約50の塩基性アミノ酸を含む。いくつかの態様では、塩基性アミノ酸は、アルギニン、リシン、ヒスチジン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、約40個のリシンモノマーを含む。
【0267】
いくつかの態様では、アジュバント部分は、免疫反応、炎症反応、及び/または組織微小環境を調節することができる。いくつかの態様では、アジュバント部分は、イミダゾール誘導体、アミノ酸、ビタミン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、アジュバント部分は、下式:
【化9】
(式中、G1及びG2のそれぞれは、H、芳香環、もしくは1~10アルキルであるか、またはG1とG2はともに芳香環を形成し、nは1~10である)を有する。
【0268】
いくつかの態様では、アジュバント部分は、ニトロイミダゾールを含む。いくつかの態様では、アジュバント部分は、メトロニダゾール、チニダゾール、ニモラゾール、ジメトリダゾール、プレトマニド、オルニダゾール、メガゾール、アザニダゾール、ベンズニダゾール、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、アジュバント部分は、アミノ酸を含む。
【0269】
いくつかの態様では、アジュバント部分は、下式:
【化10】
(式中、Arは、
【化11】
であり、
Z1及びZ2のそれぞれは、HまたはOHである)を有する。
【0270】
いくつかの態様では、アジュバント部分は、ビタミンを含む。いくつかの態様では、ビタミンは、環式環または環式ヘテロ原子環及びカルボキシル基またはヒドロキシル基を含む。いくつかの態様では、ビタミンは、下式:
【化12】
(式中、Y1及びY2のそれぞれは、C、N、O、またはSであり、nは1または2である)を有する。
【0271】
いくつかの態様では、ビタミンは、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD2、ビタミンD3、ビタミンE、ビタミンM、ビタミンH、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの態様では、ビタミンは、ビタミンB3である。
【0272】
いくつかの態様では、アジュバント部分は、少なくとも約2個、少なくとも約3個、少なくとも約4個、少なくとも約5個、少なくとも約6個、少なくとも約7個、少なくとも約8個、少なくとも約9個、少なくとも約10個、少なくとも約11個、少なくとも約12個、少なくとも約13個、少なくとも約14個、少なくとも約15個、少なくとも約16個、少なくとも約17個、少なくとも約18個、少なくとも約19個、または少なくとも約20個のビタミンB3を含む。いくつかの態様では、アジュバント部分は、約10個のビタミンB3を含む。
【0273】
いくつかの態様では、組成物は、約120個~約130個のPEGユニットを有する水溶性バイオポリマー部分と、約30個~約40個のリシンを有するポリリシンを含むカチオン性キャリア部分と、約5個~約10個のビタミンB3を有するアジュバント部分と、を含む。
【0274】
いくつかの態様では、組成物は、(i)約100個~約200個のPEGユニットを有する水溶性バイオポリマー部分と、(ii)アミン基を有する約30個~約40個のリシン(例えば、約32個のリシン)と、(iii)それぞれがチオール基を有する約15個~20個のリシン(例えば、それぞれがチオール基を有する約16個のリシン)と、(iv)ビタミンB3に融合された約30個~40個のリシン(例えば、それぞれがビタミンB3に融合された約32個のリシン)と、を含む。いくつかの態様では、組成物は、水溶性ポリマーに結合された標的化部分、例えばLAT1標的化リガンド、例えばフェニルアラニンをさらに含む。いくつかの態様では、組成物中のチオール基は、ジスルフィド結合を形成する。
【0275】
いくつかの態様では、組成物は、(1)(i)約100個~約200個のPEGユニットと、(ii)アミン基を有する約30個~約40個のリシン(例えば、約32個のリシン)と、(iii)それぞれがチオール基を有する約15個~20個のリシン(例えば、それぞれがチオール基を有する約16個のリシン)と、(iv)ビタミンB3に融合された約30個~40個のリシン(例えば、それぞれがビタミンB3に融合された約32個のリシン)と、を有するミセルと、(2)miR485阻害剤(例えば、配列番号30)と、を含み、miR485阻害剤はミセル内に封入される。いくつかの態様では、組成物は、PEGユニットに結合された標的化部分、例えばLAT1標的化リガンド、例えばフェニルアラニンをさらに含む。いくつかの態様では、ミセル中のチオール基は、ジスルフィド結合を形成する。
【0276】
本開示は、本開示のmiRNA阻害剤(すなわちmiR-485阻害剤、例えば配列番号30)を含むミセルであって、miRNA阻害剤と送達剤とが互いに結合した、ミセルも提供する。
【0277】
いくつかの態様では、結合は、共有結合、非共有結合、またはイオン結合である。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットのカチオン性キャリア部分の正電荷は、溶液中で本明細書に開示されるmiR-485阻害剤と混合される際にミセルを形成するのに十分であり、溶液中のカチオン性キャリアユニットのカチオン性キャリア部分の正電荷とmiR-485阻害剤(または阻害剤を含むベクター)の負電荷の全体的イオン比は、約1:1である。
【0278】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、酵素分解から本開示のmiRNA阻害剤(すなわち、miR-485阻害剤)を保護することができる(本明細書に参照によりその全体を援用する、2020年12月30日に公開されたPCT公開第WO2020/261227号を参照)。
【0279】
V.医薬組成物
いくつかの態様では、本開示は、対象に投与するのに適した本明細書に開示されるmiR-485阻害剤(例えば、miR-485阻害剤を含むポリヌクレオチドまたはベクター)を含む医薬組成物も提供する。医薬組成物は、一般的に、本明細書に記載されるmiR-485阻害剤(例えば、ポリヌクレオチドまたはベクター)と、薬学的に許容される賦形剤またはキャリアとを、対象への投与に適した形態で含む。薬学的に許容される賦形剤またはキャリアは、投与される特定の組成物、及び組成物を投与するために使用される特定の方法により部分的に決定される。
【0280】
したがって、本開示のmiR-485阻害剤を含む医薬組成物の多種多様な適当な製剤が存在する(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.18th ed.(1990)を参照)。医薬組成物は一般に、無菌状態で、米国食品医薬品局の適正製造基準(GMP)規制のすべてに完全に準拠したものとして製剤化される。
【0281】
VI.キット
本開示は、本開示のmiRNA阻害剤(例えば、本明細書に開示されるポリヌクレオチド、ベクター、または医薬組成物)と、必要に応じて使用説明書、例えば本明細書に開示される方法に従った使用説明書と、を含むキットまたは製品も提供する。いくつかの態様では、キットまたは製品は、miR-485阻害剤(例えば、本開示のベクター、例えばAAVベクター、ポリヌクレオチド、または医薬組成物)を1つ以上の容器に含む。いくつかの態様では、キットまたは製品は、miR-485阻害剤(例えば、本開示のベクター、例えばAAVベクター、ポリヌクレオチド、または医薬組成物)と、パンフレットと、を含む。本明細書に開示されるmiR-485阻害剤(例えば、本開示のベクター、ポリヌクレオチド、及び医薬組成物、またはこれらの組み合わせ)は、当該技術分野では周知の確立されたキット形式の1つに容易に組み込むことができる点は当業者には容易に認識されよう。
【0282】
以下の実施例は、例示のために示すものであって、限定のために示すものではない。
【実施例】
【0283】
実施例1:miR-485阻害剤の調製
(a)アルキン修飾チロシンの合成:本開示のミセルをBBBのLAT1輸送体に誘導するためのカチオン性キャリアユニットの組織特異的標的化部分(TM、
図1を参照)の合成のための中間体として、アルキン修飾されたチロシンを調製した。
【0284】
アセトニトリル(4.0ml)中、N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-チロシンメチルエステル(Boc-Tyr-OMe)(0.5g,1.69mmol)及びK2CO3(1.5当量,2.54mmol)の混合物を、臭化プロパルギル(1.2当量,2.03mmol)に滴下した。反応混合物を60℃で一晩加熱した。反応後、反応混合物を、水:酢酸エチル(EA)を使用して抽出した。次いで、有機層を、ブライン溶液を使用して洗浄した。粗製物を、フラッシュカラム(ヘキサン中、10%EA)により精製した。次に、得られた生成物を、1,4-ジオキサン(1.0ml)及び6.0MのHCl(1.0ml)中に溶解した。反応混合物を100℃で一晩加熱した。次に、ジオキサンを除去し、EAにより抽出した。水性NaOH(0.5M)溶液をpH値が7になるまで混合物に加えた。反応物質をエバポレーターで濃縮し、12,000rpmで0℃で遠心分離した。沈殿物を脱イオン水で洗浄して凍結乾燥した。
【0285】
(b)ポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(L-リシン)(PEG-PLL)の合成:この合成ステップにより、本開示のカチオン性キャリアユニットの水溶性バイオポリマー(WP)及びカチオン性キャリア(CC)を調製した(
図1を参照)。
【0286】
ポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(L-リシン)を、モノメトキシPEG(MeO-PEG)を高分子開始剤として用いてLys(TFA)-NCAの開環重合により合成した。要約すると、MeO-PEG(600mg、0.12mmol)及びLys(TFA)-NCA(2574mg、9.6mmol)を、1Mのチオ尿素を含有するDMF及びDMF(またはNMP)中に別々に溶解した。Lys(TFA)-NCA溶液を、マイクロシリンジによりMeO-PEG溶液に滴下し、反応混合物を37℃で4日間撹拌した。反応ボトルをアルゴン及び真空によりパージした。すべての反応をアルゴン雰囲気下で行った。反応後、混合物を過剰量のジエチルエーテル中で沈殿させた。沈殿物をメタノールに再溶解し、冷ジエチルエーテル中で再び沈殿させた。次いで、沈殿物を濾過し、減圧下で乾燥後に白色粉末を得た。PEG-PLL(TFA)のTFA基の脱保護を行うため、次のステップを行った。
【0287】
MeO-PEG-PLL(TFA)(500mg)をメタノール(60mL)に溶解し、1NのNaOH(6mL)をポリマー溶液に撹拌下で滴下した。混合物を撹拌しながら37℃で1日維持した。反応混合物を10mMのHEPESに対して4回及び蒸留水に対して透析した。凍結乾燥後にPEG-PLLの白色粉末を得た。
【0288】
(b)アジド-ポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(L-リシン)(N
3-PEG-PLL)の合成:この合成ステップにより、本開示のカチオン性キャリアユニットの水溶性バイオポリマー(WP)及びカチオン性キャリア(CC)を調製した(
図1を参照)。
【0289】
アジド-ポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(L-リシン)を、アジド-PEG(N3-PEG)を用いてLys(TFA)-NCAの開環重合により合成した。要約すると、N3-PEG(300mg,0.06mmol)及びLys(TFA)-NCA(1287mg,4.8mmol)を、1Mのチオ尿素を含んだDMF及びDMF(またはNMP)に別々に溶解した。Lys(TFA)-NCA溶液を、マイクロシリンジによりN3-PEG溶液に滴下し、反応混合物を37℃で4日間撹拌した。反応ボトルをアルゴン及び真空によりパージした。すべての反応をアルゴン雰囲気下で行った。反応後、混合物を過剰量のジエチルエーテル中で沈殿させた。沈殿物をメタノールに再溶解し、冷ジエチルエーテル中で再び沈殿させた。次いで、沈殿物を濾過し、減圧下で乾燥後に白色粉末を得た。PEG-PLL(TFA)のTFA基の脱保護を行うため、次のステップを行った。
【0290】
N3-PEG-PLL(500mg)をメタノール(60mL)に溶解し、1NのNaOH(6mL)を撹拌しながらポリマー溶液に滴下した。混合物を撹拌しながら37℃で1日維持した。反応混合物を10mMのHEPESに対して4回及び蒸留水に対して透析した。凍結乾燥後にN3-PEG-PLLの白色粉末を得た。
【0291】
(c)(メトキシまたは)アジド-ポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(L-リシン/ニコチンアミド/メルカプトプロパンアミド)(N
3-PEG-PLL(Nic/SH))の合成:このステップでは、組織特異的アジュバント部分(AM、
図1を参照)を本開示のカチオン性キャリアユニットのWP-CCコンポーネントに結合させた。カチオン性キャリアユニットに使用した組織特異的アジュバント部分(AM)は、ニコチンアミド(ビタミンB3)とした。このステップにより、
図1に示されるカチオン性キャリアユニットのWP-CC-AMコンポーネントが得られる。
【0292】
アジド-ポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(L-リシン/ニコチンアミド/メルカプトプロパンアミド)(N3-PEG-PLL(Nic/SH))を、EDC/NHSの存在下でN3-PEG-PLL及びニコチン酸の化学修飾により合成した。N3-PEG-PLL(372mg,25.8μmol)及びニコチン酸(556.7mg,PEG-PLLのNH2に対して1.02当量)を、脱イオン水及びメタノール(1:1)の混合物に別々に溶解した。EDC・HCl(556.7mg,N3-PEG-PLLのNH2に対して1.5当量)をニコチン酸溶液に加え、NHS(334.2mg,PEG-PLLのNH2に対して1.5当量)を混合物に段階的に加えた。
【0293】
反応混合物をN3-PEG-PLL溶液に加えた。反応混合物を撹拌しながら37℃で16時間維持した。16時間後、3,3’-ジチオジプロピオン酸(36.8mg,0.1当量)をメタノールに溶解し、EDC・HCl(40.3mg,0.15当量)、及びNHS(24.2mg,0.15当量)を脱イオン水にそれぞれ溶解した。次いで、NHS及びEDC・HClを、3,3’-ジチオジプロピオン酸溶液に順次加えた。粗製のN3-PEG-PLL(Nic)溶液を加えた後、混合液を37℃で4時間撹拌した。
【0294】
精製を行うため、混合物をメタノールに対して2時間透析し、DL-ジチオトレイトール(DTT,40.6mg,0.15当量)を加えた後、30分間活性化した。
【0295】
DTTを除去するため、混合物を、メタノール、脱イオン水中50%のメタノール、脱イオン水に対して順次透析した。
【0296】
d)フェニルアラニン-ポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(L-リシン/ニコチンアミド/メルカプトプロパンアミド)(Phe-PEG-PLL(Nic/SH))の合成:このステップでは、組織特異的標的化部分(TM)を上記のステップで合成したWP-CC-AMコンポーネントに結合させた。TMコンポーネント(フェニルアラニン)は、ステップ(a)で調製した中間体とステップ(c)の生成物との反応によって調製した。
【0297】
血管内の脳の内皮組織を標的化するため、LAT1を標的とするアミノ酸としてフェニルアラニンを、銅触媒の存在下でのN3-PEG-PLL(Nic/SH)とアルキン修飾されたチロシンとの間のクリック反応により導入した。要約すると、N3-PEG-PLL(Nic/SH)(130mg,6.5μmol)及びアルキン修飾されたフェニルアラニン(5.7mg,4.0当量)を脱イオン水(または50mMのリン酸ナトリウム緩衝液)に溶解した。次いで、CuSO4・H2O(0.4mg,25mol%)及びTris(3-ヒドロキシプロピルトリアゾリルメチル)アミン(THPTA,3.4mg,1.2当量)を脱イオン水に溶解し、N3-PEG-PLL(Nic/SH)溶液を加えた。次いで、アスコルビン酸ナトリウム(3.2mg,2.5当量)を混合液に加えた。反応混合物を、室温で16時間撹拌しながら維持した。反応後、混合物を透析膜(MWCO=7,000)に移し、脱イオン水に対して1日間透析した。最終生成物を凍結乾燥後に得た。
【0298】
(e)ポリイオン複合体(PIC)ミセル製剤-上記に記載したようにして本開示のカチオン性キャリアユニットを調製した後、ミセルを作製した。本実施例に記載されるミセルは、アンチセンスオリゴヌクレオチドペイロードと組み合わされたカチオン性キャリアユニットからなるものである。
【0299】
MeO-PEG-PLL(Nic)またはPhe-PEG-PLL(Nic)とmiRNAを混合することによりナノサイズのPICミセルを調製した。PEG-PLL(Nic)を、0.5mg/mLの濃度でHEPES緩衝液(10mM)に溶解した。次いで、RNAse非含有水中のmiRNA溶液(22.5μM)を、miRNA阻害剤(配列番号2~30)(例えば、AGAGAGGAGAGCCGUGUAUGAC;配列番号30)とポリマーとの比が2:1(v/v)となるようにポリマー溶液と混合した。
【0300】
ポリマーと抗miRNAとの混合比は、ミセル形成条件、すなわち、ポリマー(本開示のキャリア)中のアミンと抗miRNA(ペイロード)中のリン酸との比を最適化することにより決定した。ポリマー(キャリア)と抗miRNA(ペイロード)との混合物を、マルチボルテックスにより3000rpmで90秒間はげしく混合し、室温で30分間維持して、ミセルを安定化した。
【0301】
使用に先立ち、ミセル(10μMの抗miRNA濃度)を4℃で保存した。MeO-ミセルまたはPhe-ミセルを同じ方法を用いて調製し、ミセル調製時に両方のポリマーを混合することにより異なる量のPhe(25%~75%)を含有するミセルも調製した。
【0302】
実施例2:ALSにおけるIL-1β及びPGC-1αの発現の分析
本明細書に開示されるmiR-485阻害剤がALSを治療することができるかどうかの評価を開始するに当たり、確立されたALS動物モデル(すなわち、SOD1-ALSマウス)を用いた。ALSマウスを作製するため、雌SOD1G93A変異体トランスジェニックマウス(バックグラウンドB6/SJL)をJackson Laboratoryより購入し、WTB6/SJLと交配した。SOD1G93A変異体マウスの遺伝子型は、The Jackson Laboratoryによって提供される標準的なPCR条件に従ってテールDNAのPCR分析によって確認した。ケージ当たり4~5匹の遺伝子型の混ざり合ったマウスを、12時間の明/12時間の暗のサイクルで食餌と水を自由摂取させて飼育した。すべての動物の飼育手順は、実験動物の飼育及び使用についてのKonyang Universityのガイドラインに従って行った。
【0303】
簡単に述べると、ALSマウス及び野生型動物の脊髄(腰部)及び骨格筋からの組織試料を単離した。次いで、ウエスタンブロットを使用してIL-1β及びPGC-1αの発現を測定した。
図2A及び2Bに示されるように、脊髄では、既知の炎症メディエーターであるIL-1βの発現の顕著な増加が認められた。骨格筋では、ALSマウスが発現したPGC-1αの発現レベルは野生型動物と比較してより低かった。
【0304】
これらの結果は、ALSが遺伝子発現の特定の差に関連しており、これを本開示のmiR-485阻害剤を用いて標的化できる可能性を示している。
【0305】
実施例3:疾患の発症に対するmiR-485阻害剤の分析
上記の仮説の評価を開始するに当たり、ALSマウスをICV注射によるmiR-485阻害剤の2回の投与(合計用量=3μg/マウス)で処理した。コントロールALSマウスにはPBS、ALSの進行を遅らせることが以前に確認されているアンチセンスオリゴヌクレオチドをICV注射により2回投与した。その後、ALSの発症を評価した。マウスを約2週間の間に6回評価した。症状のないマウスを0点とした。後肢に震えがみられるマウスを1点とした。マウスの尾を持ってぶら下げた際に固く麻痺した後肢を示すマウスを2点とした。転倒または歩行困難を示すマウスを3点とした。後肢を引きずり、立つことができないマウスを4点とした。マウスを仰向けに置いたときに姿勢を直せないマウスを5点とした。マウスの評価スコアが4点未満だった場合にマウスを疾患発症を呈しているものとみなした。
【0306】
図3A及び3Bに示されるように、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤で処理した動物は、PBSで処理したコントロール動物と比較して有意に遅い疾患発症を示した。コントロール動物における平均疾患発症は約90日であった。miR-485処理動物では、疾患発症はおよそ1ヶ月遅れた。(すなわち約120日)さらに、miR-485阻害剤で処理した動物は、コントロール動物と比較して高い生存率を示した(
図3Cを参照)。
【0307】
実施例4:筋力に対するmiR-485阻害剤の分析
miR-485阻害剤がALSに関連した他の症状も改善できるかどうかを調べるため、実施例3のマウスにハングワイヤ試験を行って筋力を測定した。
図4に示されるように、miR-485阻害剤で処理した動物は、測定したすべての時間で、PBSで処理した動物と比較して落下までの潜時の大幅な増加を示した。
【0308】
まとめると、上記の結果は、miR-485阻害剤が、疾患発症を遅らせるだけでなく、ALSに関連した1つ以上の症状(例えば、筋力低下)も改善し得ることによってALS患者で治療効果を有し得ることを示している。さらに、上記のデータは、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、当該分野における他の薬剤と比較して大幅に低い用量で大幅に高い治療効果を奏することを示している。
【0309】
実施例5:静脈内投与後のmiR-485阻害剤の治療効果の分析
miR-485阻害剤の治療効果をさらに評価するため、ALSマウス(実施例2を参照)に、生後約2ヶ月(すなわち66日目)から開始してPBSまたはmiR-485阻害剤(1用量当たり2.5mg/kg)を静脈内投与した(
図9Aを参照)。各マウスに1回/週の投与間隔で合計4回の投与を行った(生後66、73、80、及び87日目)。その後、生後約100~125日に、体重、及びさらに下記に述べるようにロータロッド、ハングワイヤ、及びバランスビーム試験を用いて運動機能を評価した。一部の動物はさらに屠殺して、ウエスタンブロット及び/または免疫組織化学分析を用いて腰部脊髄における各種のタンパク質(例えば、ChAT1、Iba1、PGC1、SIRT1、GFAP、TNF、及びIL-1)の発現を評価した。
【0310】
神経学的スコア試験を用いて疾患発症を評価した。神経学的スコア試験の評価は以下のように行った。正常(運動機能障害の徴候なし)が4匹、マウスの尾を持ってぶら下げたときに後肢に震えがみられたのが3匹、歩行異常が認められたものが2匹、少なくとも一方の後肢を引きずったものが1匹、動物を仰臥位に置いた場合に30秒で起き上がれなかったものは0匹であった。神経学的スコアが3点以下の状態が2週間連続して生じた場合、疾患発症として評価した。
【0311】
ロータロッド:マウスを、ロータロッド装置(ロッド径3cm)で、10rpmの固定速度で600秒間、1日1回、3日間連続で訓練した。ロッド上での成績を300秒間で4~40rpmの一定の加速割合で評価した。60分間隔で2回の連続した試行を行った。
【0312】
ハングワイヤ試験:運動協調性のワイヤハング試験で、マウスを厚さ2mm、長さ55cmのピンと張った金属製ワイヤ上で試験した。その中にマウスが落下するように、長さ60cmの黒いポリスチレン製ボックスからなる特製のハング装置を作製した。マウスがぶら下げられてからワイヤから落下するまでの潜時を、各マウスで3回の試行における最長のぶら下がり時間を測定して記録した。
【0313】
バランスビーム試験:マウスを幅0.5cm、長さ1mのバランスビーム装置に乗せた。バランスビームは、走路の端に暗い休息箱を有する高さ50cmの透明なプレキシグラス製構造として構成されたものを用いた。マウスを午前中、3回、ビーム上で訓練し、試行間で少なくとも15分間の休憩時間を与えた。マウスを暗い休息箱の中に少なくとも10秒間置いた後、ホームケージに戻した。その後、午後にマウスを訓練セッションの少なくとも2時間後に再試験した。試験セッションにおいてマウスの成績を記録した。試験は3回の試行で構成し、試行間に少なくとも10分間の休憩時間を置いた。足を滑らせた合計回数を3回の試験のうちの最後の試験についてマニュアルで計算した。
【0314】
図9Bに示されるように、コントロール動物と比較して、miR-485阻害剤で処理したALSマウスでは、疾患発症の遅れが認められた(約21日)。さらに、コントロール動物と比較して、miR-485阻害剤で処理したALSマウスは、体重低下の減少(
図9G及び9Hを参照)及び生存率の増加(
図9Iを参照)も示した。さらに、
図9C~9Fに示されるように、miR-485阻害剤で処理したALSマウスは、運動機能の改善も示した。例えば、miR-485阻害剤の投与後、ALSマウスは、落下までの潜時の増加(ロータロッド及びハングワイヤ試験の両方で。
図9C及び9Dを参照)、足を滑らせた回数の減少(ビームバランス試験。
図9Eを参照)、及びビーム横断時間の減少(ビームバランス試験。
図9Fを参照)を示した。
【0315】
上記の結果は、例えば、運動機能の改善、体重低下の減少、疾患発症の遅延、及び生存率の増加をもたらす、ALSの治療における本開示のmiR-485阻害剤の有効性をさらに示すものである。
【0316】
実施例6:miR-485阻害剤の安全性プロファイルの分析
miR-485阻害剤のインビボ投与が何らかの有害作用をもたらし得るかどうかを評価するため、単一用量毒性試験を行った。要約すると、miR-485阻害剤を、以下の用量、すなわち、(i)0mg/kg(G1)、(ii)3.75mg/kg(G2)、(iii)7.5mg/kg(G3)、及び(iv)15mg/kg(G4)のうちの1つで雄及び雌のラットに投与した。次いで、体重、死亡率、臨床的徴候、及び病理学の異常を移動後の異なる時点の動物で観察した。
【0317】
図5A及び
図5Bに示されるように、miR-485阻害剤の投与(試験したすべての用量で)は雄及び雌のラットの両方で体重になんらの異常な影響も及ぼさないようであった。同様に、死亡率及び病理学的異常は処理動物のいずれでも観察されなかった(
図6A、6B、8A、及び8Bを参照)。可能性のある臨床的に関連した副作用(例えば、NOA、鬱血(尾)、及び浮腫(顔、前肢、または後肢))に関して、そのような影響はすべての処理動物で投与1日後までに消失した(
図7A及び
図7Bを参照)。
【0318】
上記の結果は、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、ALSの治療において治療効果を有するだけでなく、インビボで投与した場合にも安全であることを示している。
【0319】
実施例7:SOD1活性に対するmiR-485阻害剤の効果の分析
SOD1(銅・亜鉛スーパーオキシドディスムターゼ酵素としても知られる)は、細胞(例えば、神経細胞)を酸化ストレスから守るうえで重要な役割を果たしている。SOD1の変異(例えば、G93A)がALSに関与していることが示されている。したがって、本明細書に開示されるmiRNA阻害剤がALSを治療する潜在的な機構をより深く理解するため、NCS-34細胞(運動神経細胞を増加させたマウス胎児脊髄細胞とマウス神経芽腫との融合により作製されたハイブリッド細胞株)に、GFPでタグ付けした野生型SOD1(SOD1WT)及びG93A変異を有するSOD1(SOD1G93A)コンストラクトをトランスフェクトした。次いで、トランスフェクトした細胞を異なる濃度(0、50、100、または300nM)のmiR-485阻害剤で処理した。ウエスタンブロット及び免疫蛍光分析を用いてトランスフェクトした細胞のさまざまなSOD1関連活性(SOD1の凝集、SIRT1及びPGC-1αの発現、及びアポトーシス)を評価した。ウエスタンブロットによる評価を行うため、トランスフェクションの48時間後に全細胞抽出物をTrisバッファー(pH7.5)中、2%SDS中で調製した。次いで、SOD1種の非変性界面活性剤中への不溶性を評価した。免疫蛍光分析による評価を行うため、トランスフェクションに先立って、NCS-34細胞をカバーグラス上に播いて一晩増殖させた。次いで、トランスフェクションの48時間後に細胞をPBSで洗浄し、メタノールで10分間、室温で固定し、モイストチャンバー内で、室温で10分間、PBS中、0.1%TritonX-100で透過処理した。使用した抗体及び濃度は、マウスGFP(Santacruz)、1:100;ウサギ抗LC3B(Cell Signaling Technology)である。共焦点顕微鏡(Leica 524 DMi8)を使用して画像を取得した。
【0320】
図10Aに示されるように、トランスフェクトしたNCS-34細胞のmiR-485阻害剤処理によって、ウエスタンブロットによって評価されるように変異体SOD1の凝集の濃度依存的な減少がもたらされた。変異体SOD1の凝集を減少させるmiR-485阻害剤のこのような効果は、免疫蛍光分析によっても確認された(
図10Bを参照)。図に示されるように、SOD1G93Aの凝集によって形成される封入体の数の顕著な減少が認められた。さらに、miR-485阻害剤処理細胞では、SOD1G93Aは、LC3Bの発現としばしば共局在化していた(
図10Bの白い矢印を参照)。LC3Bは、MAP1A及びMAP1B微小管結合タンパク質のサブユニットであり、オートファゴソームの膜構造に中心的な役割を果たしている。LC3BとSOD1G93Aとの共局在化は、細胞質のSOD1の一部がオートファジー・エンドリソソーム系によって分解され得ることを示している。さらに、SIRT1及びPGC-1αのタンパク質発現は、miR-485阻害剤で処理した、SOD1G93AをトランスフェクトしたNCS-34細胞でいずれも増加していた(
図10Cを参照)。miR-485阻害剤による処理は、野生型SOD1をトランスフェクトしたNCS-34細胞におけるSIRT1及びPGC-1αタンパク質の発現には顕著な影響はないようであった。最後に、miR-485阻害剤による処理は、SOD1G93Aコンストラクトをトランスフェクトし、miR-485阻害剤で処理したNCS-34細胞における切断型カスパーゼ-3の発現の減少によって示されるように、SOD1G93Aにより誘導されるアポトーシスも減少させた。
【0321】
いずれか1つの理論によって束縛されるものではないが、上記に示される結果をまとめると、本明細書で提供されるmiR-485阻害剤は、SOD1G93Aにより誘発される神経細胞の損傷を抑制することによってALSを治療できることを示すものである。
【0322】
特許請求の範囲を解釈するうえで、「発明の概要」及び「要約」のセクションではなく、「発明の詳細な説明」のセクションを用いることが意図されている点は認識されるべきである。発明の概要及び要約セクションは、本発明者(複数可)により意図される1つ以上であるが、すべてではない本開示の例示的態様を示し得、したがって、本開示及び添付の特許請求の範囲を如何様にも限定することを意図しない。
【0323】
本開示は、特定の機能及びそれらの関係の実施を示す機能的構成単位を用いて上記された。これらの機能的要素の境界は、説明の便宜上、本明細書では任意に定義されている。特定の機能及びそれらの関係性が適切に実施されている限り、代替的な境界を定義することもできる。
【0324】
具体的な態様の上記の具体的な説明は本開示の一般的な性質を余すところなく示しているため、他者は、当業者の技能の範囲内の知識を適用することで、不要な実験を行うことなく、本開示の一般的概念から逸脱せずに、かかる具体的な態様を容易に改変し、及び/またはさまざまな用途に適合させることができる。したがって、そのような適合及び改変は、本明細書に示される教示及び助言に基づき、開示される態様の均等物の意味及び範囲内に包含されるものとする。本明細書における語句または用語は、説明を目的としたものであって、限定を目的とするものではなく、本明細書における語句または用語は本明細書の教示及び助言を考慮することで当業者によって理解されるはずである。
【0325】
本開示の幅及び範囲は、上記に記載した例示的な態様のいずれによっても限定されるべきでなく、下記の請求項及びそれらの均等物のみにしたがって定義されるべきものである。
【0326】
本出願全体を通じて引用され得るすべての引用参考文献(参考文献、特許、特許出願、及びウェブサイトを含む)の内容の全体を、あらゆる目的で、参照によって本明細書に明示的に援用し、また、それらに引用される文献も同様に援用する。
【配列表】
【国際調査報告】