(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】マイクロメートルスケールの発光ダイオード
(51)【国際特許分類】
H01L 33/08 20100101AFI20230323BHJP
H01L 33/32 20100101ALI20230323BHJP
【FI】
H01L33/08
H01L33/32 ZNM
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547895
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(85)【翻訳文提出日】2022-10-04
(86)【国際出願番号】 US2021018559
(87)【国際公開番号】W WO2021168098
(87)【国際公開日】2021-08-26
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511000957
【氏名又は名称】ザ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ミシガン
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF MICHIGAN
(71)【出願人】
【識別番号】522312034
【氏名又は名称】エヌエス ナノテック, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NS NANOTECH, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】リウ, シァンヘ
(72)【発明者】
【氏名】ウー, ユアンペン
(72)【発明者】
【氏名】マルホトラ, ヤクシタ
(72)【発明者】
【氏名】サン, イー
(72)【発明者】
【氏名】コー-サリヴァン, セス
(72)【発明者】
【氏名】スティーブンソン, マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ミ, ゼティアン
【テーマコード(参考)】
5F241
【Fターム(参考)】
5F241AA03
5F241AA09
5F241AA42
5F241CA05
5F241CA08
5F241CA40
5F241CA57
5F241CA66
5F241CA74
5F241CA88
5F241CB22
5F241CB36
(57)【要約】
【課題】高効率、高色品質、及び、高度に安定した動作を伴ってマイクロメートルスケールの発光ダイオードを実現するためのナノワイヤを提供する。
【解決手段】本発明のナノワイヤは、第1の半導体領域と、第2の半導体領域と、それらの間に配置されてそれらの半導体領域に結合されるヘテロ構造を備える。ナノワイヤが光の自然放出をするように動作可能であり、ナノワイヤが、自然放出を修正するフォトニックバンドギャップとして動作する二次元光キャビティを有する。ナノワイヤ発光ダイオード(LED)が、従来のLEDと比べて大幅に減少した電流密度で且つ非常に狭い線幅を伴って光の自然放出をするように動作可能である。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の半導体領域と、
第2の半導体領域と、
前記第1の半導体領域と前記第2の半導体領域との間に配置されてこれらの半導体領域に結合されるヘテロ構造と、
を備えるナノワイヤであって、
前記ナノワイヤが光の自然放出をするように動作可能であり、前記ナノワイヤが、前記自然放出を修正するフォトニックバンドギャップとして動作する二次元光キャビティを有する、ナノワイヤ。
【請求項2】
1平方センチメートル当たり10キロアンペア(10kA/cm
2)よりも少なくとも1桁小さい電流密度で動作可能である、請求項1に記載のナノワイヤ。
【請求項3】
前記電流密度が0.2kA/cm
2以下程度である、請求項2に記載のナノワイヤ。
【請求項4】
前記第1の半導体領域がnドープ窒化ガリウムを含み、前記第2の半導体領域がpドープ窒化ガリウムを含む、請求項1に記載のナノワイヤ。
【請求項5】
前記ヘテロ構造が、窒化アルミニウムガリウム及び窒化インジウムガリウムを含む量子ディスクを備える、請求項1に記載のナノワイヤ。
【請求項6】
前記ヘテロ構造が複数のシェル層及び複数のコア層を備え、前記複数のコア層が前記複数のシェル層と交互配置される、請求項1に記載のナノワイヤ。
【請求項7】
前記ナノワイヤが六角形の横断面を有する、請求項1に記載のナノワイヤ。
【請求項8】
前記第1の半導体領域、前記第2の半導体領域、及び、前記ヘテロ構造が、n
+窒化ガリウム(n
+-GaN)層、複数の垂直に整列されたインジウムGaN/アルミニウムGaN(InGaN/AlGaN)量子ドット、p
+-AlGaNクラッド層、P
++-GaN/n
++-GaNトンネル接合、n-GaN層、及び、n
++-GaNコンタクト層を備える、請求項1に記載のナノワイヤ。
【請求項9】
前記n
+-GaN層が約450ナノメートル(nm)の厚さを有し、前記p
+-AlGaNクラッド層が約60nmの厚さを有し、前記n-GaN層が約60nmの厚さを有する、請求項8に記載のナノワイヤ。
【請求項10】
約4ナノメートル以下の線幅を有するエレクトロルミネセンススペクトルを特徴とする、請求項1に記載のナノワイヤ。
【請求項11】
温度に伴って変化しないピーク発光波長を特徴とする、請求項1に記載のナノワイヤ。
【請求項12】
電流密度に伴って変化しないピーク発光波長を特徴とする、請求項1に記載のナノワイヤ。
【請求項13】
520~560ナノメートルの範囲の波長を有する光の自然放出をするように動作可能である、請求項1に記載のナノワイヤ。
【請求項14】
基板と、
前記基板に結合されるとともに、複数のナノワイヤを備えるナノワイヤアレイを備える面発光発光ダイオード(LED)を備えるデバイスであって、
前記複数のナノワイヤの各ナノワイヤが、前記基板に直交する波数ベクトルを生成するように動作可能であり、前記各ナノワイヤのエレクトロルミネセンススペクトルが約4ナノメートル(nm)以下の線幅を有する、デバイス。
【請求項15】
前記ナノワイヤが、1平方センチメートル当たり10キロアンペアよりも少なくとも1桁小さい電流密度で520~560nmの範囲の波長を有する誘導放出光を放出するように動作可能である、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記複数のナノワイヤの各ナノワイヤが、n
+窒化ガリウム(n
+-GaN)層、複数の垂直に整列されたインジウムGaN/アルミニウムGaN(InGaN/AlGaN)量子ドット、p
+-AlGaNクラッド層、P
++-GaN/n
++-GaNトンネル接合、n-GaN層、及び、n
++-GaNコンタクト層を備える、請求項14に記載のデバイス。
【請求項17】
前記量子ドットにおけるインジウムドーピングの量に伴って変化しないピーク発光波長を特徴とする、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
前記複数のナノワイヤの各ナノワイヤが六角形の横断面を有し、前記複数のナノワイヤが前記アレイ内で三角格子状に配置される、請求項14に記載のデバイス。
【請求項19】
前記三角格子が、298nmの横方向サイズ及び280~300nmの格子定数を有し、前記複数のナノワイヤの各ナノワイヤが100nmと前記格子定数との間の範囲の直径を有する、請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
温度に伴って変化しないピーク発光波長を特徴とする、請求項14に記載のデバイス。
【請求項21】
電流密度に伴って変化しないピーク発光波長を特徴とする、請求項14に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【米国関連出願】
【0001】
[0001]この出願は、参照によってその全体が本願に組み入れられる2020年2月18日に出願された「Micrometer Scale InGaN Green Light Emitting Diodes with Ultra-Stable Operation」と題するXianhe Liuらによる米国特許仮出願第62/978,168号に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
[0002]ほんの数例を挙げると、仮想/混合/拡張現実、超高解像度モバイルディスプレイ、並びに、生物医学的センシング及びイメージングを含め、マイクロメートルスケール程度のサイズを伴う高効率で高輝度の発光ダイオード(LED)が、広範囲の用途において非常に望まれている。この関連で、窒化ガリウム(GaN)系のマイクロLEDの開発が過去10年間で大きな関心を集めてきた。しかしながら、今日まで、従来の有機材料又は無機材料を使用してマイクロメートルスケールで高効率のLEDを実現することは依然として困難であった。
【0003】
[0003]GaN系の大面積青色量子井戸LEDは、高効率の発光を示すことができるが、効率は、トップダウンエッチングによって誘導される不十分なp型伝導及び表面再結合によって大幅に制限されてきたデバイスサイズの縮小に伴って大幅に低下する。更に、緑色発光を実現するために、量子井戸活性領域に比較的高いインジウム(In)組成が必要とされ、これにより、欠陥及び転位の形成が増大するとともに、相分離が増大し、その結果、発光が弱く広範囲になり、したがって、デバイスの効率及び色品質が低下する。
【0004】
[0004]また、InGaN系の量子井戸LEDの性能は、歪誘起分極場に起因する、特に緑色スペクトルにおける、量子閉じ込めシュタルク効果の影響を激しく受け、それにより、電流の増大に伴って発光波長の著しいシフトなどの不安定な動作がもたらされる。一方、有機LEDは、サイズの減少に伴って安定性が低下し、輝度が低くなるとともに、効率が大幅に低下する。
【発明の概要】
【0005】
[0005]大幅に低減された電流密度で及び非常に狭い線幅を伴って光の自然放出をするように動作可能なマイクロメートルスケールのナノワイヤ発光ダイオード(LED)が開示される。実施形態において、各ナノワイヤは、この自然放出をもたらす又は修正する(影響を与える又は変更する、例えば、増強する又は増幅する)フォトニックバンドギャップとして動作する二次元光キャビティを有する(したがって、弱い光キャビティと称されてもよい)。実施形態では、電流密度が1平方センチメートル当たり10キロアンペア(10kA/cm2)よりも少なくとも1桁小さく、スペクトル線幅が約4ナノメートルであるように測定される。
【0006】
[0006]したがって、本発明に係る実施形態は、マイクロメートルスケールで高効率のLEDを達成し、安定した動作及び高い色品質をもたらすとともに、欠陥及び転位が殆どない。
【0007】
[0007]本発明の様々な実施形態のこれら及び他の目的及び利点は、様々な図面に示される実施形態の以下の詳細な説明を読んだ後、当業者によって認識され得る。
【0008】
[0008]本明細書に組み込まれて本明細書の一部を形成するとともに、同様の数字が同様の要素を示す添付の図面は、本開示の実施形態を示し、詳細な説明と共に、本開示の原理を説明するのに役立つ。図面は必ずしも原寸に比例しているとは限らない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】本発明に係る実施形態におけるナノワイヤアレイの平面図又は断面図である。
【
図1B】本発明に係る実施形態におけるナノワイヤアレイの一例におけるエネルギーバンド図である。
【
図2A】本発明に係る実施形態におけるナノワイヤ発光ダイオード(LED)構造を示す図である。
【
図2B】本発明に係る実施形態におけるナノワイヤアレイを示す図である。
【
図2C】本発明に係る実施形態におけるナノワイヤアレイにおけるフォトルミネセンススペクトルの一例を示す図である。
【
図3A】本発明に係る実施形態におけるマイクロスケールLEDデバイスの一例を示す図である。
【
図3B】本発明に係る実施形態におけるマイクロスケールLEDデバイスの一例の電流-電圧特性を示す図である。
【
図4A】本発明に係る実施形態における、様々な注入電流の下で測定されたナノワイヤLEDのエレクトロルミネセンス(EL)スペクトルを示す図である。
【
図4B】本発明に係る実施形態における、相対的な外部量子効率対注入電流密度を示す図である。
【
図5A】本発明に係る実施形態における、ナノワイヤLEDの発光特性の一例を示す図である。
【
図5B】本発明に係る実施形態における、ナノワイヤLEDのELスペクトルの半値全幅の変動の一例を示す図である。
【
図6】本発明に係る実施形態における、ナノワイヤLEDのEL強度の角度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0021]ここで、本開示の様々な実施形態を詳細に参照するが、その例が添付図面に示される。これらの実施形態に関連して説明されるが、それらが開示をこれらの実施形態に限定することを意図するものでないことが理解され得る。反対に、本開示は、添付の特許請求の範囲によって規定される本開示の思想内及び範囲内に含まれ得る、代替物、変更物、及び、均等物を網羅することを意図している。更に、本開示の以下の詳細な説明では、本開示の完全な理解を与えるために、多くの特定の詳細が記載される。しかしながら、本開示をこれらの具体的な詳細を伴うことなく実施できることが理解され得る。他の事例では、周知の方法、手順、構成要素、及び、回路が、本開示の態様を不必要に不明瞭にしないように、詳細には説明されていない。
【0011】
[0022]図は必ずしも原寸に比例して描かれているわけではなく、また、描写されたデバイス及び構造の一部のみ、並びに、それらの構造を形成する様々な層が示される。説明及び図示を簡単にするために、1つ又は2つのデバイス又は構造のみが説明される場合があるが、実際には1つ又は2つを超えるデバイス又は構造が存在又は形成され得る。また、特定の要素、構成要素、及び、層が論じられるが、本発明に係る実施形態は、それらの要素、構成要素、及び、層に限定されない。例えば、説明したものに加えて、他の要素、構成要素、層などが存在してもよい。
【0012】
[0023]以下の詳細な説明の幾つかの部分は、本明細書に開示されるようなデバイスを製造するための工程の手順及び他の表示に関して提示される。これらの説明及び表示は、デバイス製造の当業者が自分の研究の内容を他の当業者に最も効果的に伝えるために使用する手段である。本願において、手順、動作などは、所望の結果につながる首尾一貫した一連のステップ又は命令であると考えられる。別々のブロックとして記述された工程は、同じプロセスステップで(つまり、同じ時間間隔で、前のプロセスステップの後に、及び、次のプロセスステップの前に)組み合わされて実行されてもよい。また、工程は、それらが以下で説明される順序とは異なる順序で実行されてもよい。更に、製造プロセス及びステップは、本明細書で論じられるプロセス及びステップと共に実行されてもよく、すなわち、本明細書に示されて説明されるステップの前、ステップ間、及び/又は、ステップの後に、幾つかのプロセスステップが存在してもよい。重要なことに、本発明に係る実施形態は、これらの他の(おそらく従来の)プロセス及びステップと関連して、それらを著しく乱すことなく実施され得る。一般的に言えば、本発明に係る実施形態は、周辺のプロセス及びステップに大きな影響を与えることなく、従来のプロセスの一部を置き換えることができる。
【0013】
[0024]開示された発明に係る実施形態は、III族窒化物ナノワイヤにより、高効率、高色品質、及び、高度に安定した動作を伴ってマイクロメートルスケールの発光ダイオード(LED又はマイクロLED又はナノワイヤLED)を実現する。そのようなナノ構造は、効率的な表面歪み緩和に起因して欠陥や転位が殆ど無い。
【0014】
[0025]開示されたナノワイヤLEDは、デバイス製造プロセスを大幅に簡素化することができる垂直p-i-n形態(層がpドープ領域とnドープ領域との間に挟まれる)を採用する。発光波長は、ナノワイヤ構造に埋め込まれた量子ドットにおけるインジウム組成を変えることにより、特に緑色スペクトルを含むほぼ全ての可視光スペクトルにわたって調整され得る。
【0015】
[0026]ナノスケール及びマイクロスケールLEDの効率に関する主な制限要因である表面再結合は、本明細書に開示されるデバイス活性領域でコアシェル構造を採用することによって大幅に抑制され得る。重要なことに、開示されたナノワイヤ構造は、InGaNナノワイヤフォトニック結晶でスケーラブルなバンドエッジモードを採用することにより、ウルツ鉱インジウムガリウム窒化物(InGaN)構造で一般的に見られるVarshni及び量子閉じ込めシュタルク効果が存在しない状態で、非常に安定した効率的なフォトルミネセンス発光をもたらす。
【0016】
[0027]本明細書では、フォトニックバンド構造のガンマ(Γ)点で動作するように設計されるフォトニックナノワイヤトンネル接合面発光LEDが開示される。実施形態において、デバイス活性領域は、約3平方マイクロメートル(μm2)の面積サイズを有する。実施形態において、エレクトロルミネセンス(EL)スペクトルは、約4ナノメートル(nm)の非常に狭い線幅を示し、この線幅は、同じ波長範囲で動作する従来のInGaN量子井戸(ディスク又はドット)のそれよりもほぼ5~10倍小さい。
【0017】
[0028]重要なことに、開示されたデバイスは、(誘導放出とは対照的に)非常に安定した自然放出を示す。電流密度の増大に伴う発光ピークの変動は事実上なく、これは量子閉じ込めシュタルク効果がないことを示唆する。実施形態において、外部量子効率(EQE)は、電流の増大に伴って急激な上昇を示すとともに、約5アンペア/平方センチメートル(A/cm2)で最大に達する。室温で200A/cm2を超える注入電流密度で、比較的小さい(約30%)効率の低下が測定された。そのような小型で超安定性のLEDは、ニアアイディスプレイ用途に良く適している。
【0018】
[0029]開示されたフォトニックナノワイヤLEDの光学設計が最初に説明される。
図1Aは、本発明に係る実施形態におけるナノワイヤアレイ102の平面図又は断面図を示す。ナノワイヤアレイ102は、ナノワイヤ104によって例示される多数のナノ結晶又はナノワイヤを含む(各ナノワイヤがナノ結晶であり、ナノ結晶のアレイがナノワイヤのアレイを含むため、これらの用語は本明細書では互換的に使用され得る)。各ナノワイヤ104は六角形であり、つまり、それらはそれぞれ六角形の横断面を有する。アレイ102は、ナノワイヤの複数の列を含み、各列は複数のナノワイヤを含む。
【0019】
[0030]図示の実施形態において、ナノワイヤアレイ102は、六角形格子としても知られている三角格子を成して配置される。ナノワイヤ104の横方向のサイズ及び格子定数(ピッチ)はそれぞれd及びaとして示される。一実施形態では、dが298nmに等しく、aが280nmに等しい。ナノワイヤ104のそれぞれの直径は、約100nmから格子定数の寸法まで変化し得る。アレイ102内のナノワイヤ104のサイズ、間隔、及び、表面形態は正確に制御される。ナノワイヤ104は、均一な長さ、滑らかな側壁、及び、高い(深さ対幅)アスペクト比を示す。効率的な歪み緩和に起因して、ナノワイヤ104のナノ構造には欠陥及び転位がない。
【0020】
[0031]
図1Bは、本発明に係る実施形態におけるナノワイヤアレイの一例に関して二次元(2D)有限要素法を使用して計算されたエネルギーバンド図を示す。この例において、ナノワイヤアレイは、298nmに等しいd、及び、280nmに等しいaを有する。
【0021】
[0032]この開示に係る実施形態において、InGaNフォトニックナノワイヤLEDは、面内波数ベクトルがゼロである第4バンドフォトニックバンド構造(図で120とラベル付けされた曲線)のΓ点で動作するように設計される。そのため、全体的な波数ベクトルは、フォトニックナノワイヤアレイの垂直方向(アレイが位置される基板の平面に直交する方向)に沿っており、これにより、直接表面放出がもたらされる。更に、群速度はΓ点で大幅に低下されるため、光学場と活性媒体との相互作用時間が長くなる。したがって、対応する波長での強い共鳴を実現でき、それにより、スペクトル線幅を大幅に削減できる。
【0022】
[0033]実施形態では、第4バンドのΓ点の正規化された周波数が約0.504a/λ(ここで、aは格子定数であり、λは波長である)であり、これは、280nmに等しい格子定数を伴う約555nmの波長に対応する。発光は、半導体活性媒体自体によってではなく、フォトニックナノワイヤの光学共鳴によって大きく支配されるため、そのようなLEDの発光は、非常に安定しており、温度や注入電流に伴って比較的変化しないと予期される。更に、そのようなLEDのピーク発光波長は、量子井戸におけるIII族(例えば、In)ドーピングの変化に伴って局所的に変化せず、それにより、有機金属化学蒸着(MOCVD)又は分子線エピタキシ(MBE)プロセスなどのエピタキシャル成長の製造プロセスで起こり得る変動などのウエハ/アレイの全体にわたるドーピングの小さな変動にかかわらず一定のピーク波長で光を放出するLEDウエハ(例えば、モノリシックデバイス)がもたらされる。更に、これらの特徴は、LEDウエハの製造にコストを追加してLEDウエハの価値を低下させる高価な後処理工程であるLED波長ビニングの必要性を更に排除できる。
【0023】
[0034]実施形態では、選択領域エピタキシ(SAE)の技法を使用して、InGaNフォトニックナノワイヤLED構造を成長させた。一実施形態では、高周波プラズマ支援窒素源を備えたMBEシステムを使用して、サファイア基板上のn+-GaNテンプレート上で成長を行なった。
【0024】
[0035]一般的に言えば、ナノワイヤ104は、第1の半導体領域、第2の半導体領域、及び、第1の半導体領域と第2の半導体領域との間に配置されてこれらの領域に結合されるヘテロ構造を含み、第1の半導体領域がnドープGaNを含み、第2の半導体領域がpドープGaNを含む。
【0025】
[0036]
図2Aは、本発明に係る実施形態におけるナノワイヤLED構造200を示す。LED構造200は、
図1Aのナノワイヤ104の構造を表す。
【0026】
[0037]実施形態において、各ナノワイヤ200(104)の光キャビティは、z軸ではなくx軸及びy軸に沿っているが、自然光放出はz軸に沿っている(x軸及びy軸はデバイス基板の平面に平行であり、また、z軸はその平面に対して垂直である)。したがって、光キャビティはx方向及びy方向にあるが、自然光放出は、異なる方向、すなわち、ナノワイヤの縦軸に沿ったz方向にある。開示されたx軸及びy軸光キャビティ形態は、本明細書では、二次元(2D)光キャビティと呼ばれる。対照的に、典型的な光キャビティ(レーザ用)はz軸(デバイス基板に対して垂直)にのみ沿っており、光の誘導放出は、その同じ軸に沿っているため、1次元(1D)光キャビティとして知られている。
【0027】
[0038]開示されたナノワイヤアレイによって与えられるキャビティ効果は、今しがた説明したようにより指向性のある放出を達成するために、及び、より狭いスペクトル線幅を達成するために使用される。スペクトル線幅は約4nmであるように測定され、この線幅は、その波長範囲で従来のInGaN量子井戸LEDのそれよりもほぼ5~10倍小さい。
【0028】
[0039]開示された2D光キャビティは、キャビティ内で自然放出が増強(又は増幅)されるが、誘導放出が達成されないため、弱いキャビティと呼ばれることがある(強い光キャビティでは、誘導放出を達成できる)。ナノワイヤの設計パラメータ(例えば、直径及び格子定数)は、ナノワイヤアレイのフォトニックバンドエッジに近いが正確にはそうではない状態で動作するように選択される。この状態付近で動作することにより、弱いキャビティ効果が達成される。弱いキャビティにおける動作ウィンドウが強いキャビティの動作ウィンドウと比べて比較的大きいことに留意することは重要である。本明細書で使用される「フォトニックバンドエッジに近いが(正確には)そうではない動作」又は「自然放出を修正する(又は影響を与える又は変更する)フォトニックバンドギャップとしての動作」などは、「自然放出の増強又は増幅をもたらすが誘導放出をもたらさないフォトニックバンドギャップとしての動作」も意味する。より具体的には、例えばInGaNの場合、自然放出は、一般に、緑色の波長範囲で非常に広いスペクトル(例えば、30~50nmの範囲の半値全幅(FWHM))を示し、また、多くの場合、放出方向がランダムであるが、本明細書に開示される実施形態に従って達成される2Dフォトニック結晶効果により、前述のように、線幅がかなり狭く且つ放出がより指向性を持つように自然放出が修正される。
【0029】
[0040]
図2Aの実施形態において、LED構造200は、n
+--GaN層202、幾つか(例えば、6つ)の垂直に整列されたInGaN/AlGaN量子ドット又はディスク(QD)204、p
+-(Al)GaNクラッド層206、P
++-GaN/n
++-GaNトンネル接合208、n-GaN層210、及び、n
++-GaNコンタクト層212を含む。一実施形態において、n
+-GaN層202の厚さは約450nmであり、p
+-(Al)GaNクラッド層206の厚さは約60nmであり、n-GaN層210の厚さは約60nmである。一実施形態では、n型ドーパントがシリコン(Si)であり、p型ドーパントがマグネシウム(Mg)である。
【0030】
[0041]実施形態において、量子ドット活性領域204(InGaN/AlGaN量子ドット又はディスクのセット)は、InGAN及びAlGaNの交互層又はインターリーブ層を含む。例えば、InGaNの層(コア層と呼ばれることがある)は、AlGaNの層(シェル又はバリア層と呼ばれることがある)と隣り合っており、このパターンが量子ドット活性領域で繰り返される。量子ドット活性領域204の成長中に、GaNバリアの代わりにAlGaNバリアを使用すると、活性領域を取り囲むAlリッチAlGaNシェル構造の形成が促進され、それにより、表面再結合を大幅に低減することができる。一実施形態では、平均Al組成が約5パーセントである。
【0031】
[0042]SAE成長プロセスの前に、非常に規則的なナノワイヤアレイの形成を容易にするために、基板が開口でパターン化される。より具体的には、薄い(約10nm)チタン(Ti)層が、GaNオンサファイア基板(
図3Aの基板302)上に成長マスクとして堆積される。電子ビームリソグラフィ及び反応性イオンエッチング技術を使用して、Tiマスク上の開口のパターンを画定することができる。ナノワイヤは開口にのみ形成され、この場合、Tiマスク層上ではエピタキシが起こらない。
【0032】
[0043]結果として得られたナノワイヤアレイ250が
図2Bに示される。ナノワイヤアレイ250は、位置及び寸法の両方において非常に高い均一性を示す。ナノワイヤ間の間隔と格子定数とを慎重に制御することで、可視光スペクトルの選択された色スペクトルで強い共鳴が起こる。
図2Bの実施形態では、スケールバー252の長さが500nmを表す。特に興味深いのは、
図2Cに示されるように、280nmの格子定数及び約20nmの間隔を伴うInGaNフォトニックナノワイヤアレイのフォトルミネセンス(PL)から緑色のスペクトルが観察される。
【0033】
[0044]SAEによって成長されるフォトニックナノワイヤアレイを使用してマイクロスケールLEDも製造される。マイクロスケールLED300の実施形態が
図3Aに示される。
【0034】
[0045]マイクロスケールLED300を製造するためのプロセスの実施形態は以下の通りである。二酸化シリコン(SiO2)層304(例えば、厚さ300nm)が、表面パッシベーション及び分離のために、プラズマ強化化学気相堆積によって堆積される。フォトリソグラフィ及び湿式化学エッチングを実行して、電流注入のためのデバイス活性領域を画定するSiO2層304に開口を形成する。金属スタック(例えば、Tiの5nm層と金(Au)の5nm層)を電子ビーム蒸着によって堆積させて、接触パッド306を形成する。その後、透明な導電酸化物層308(例えば、180nmインジウムスズ酸化物(ITO)層)がスパッタリングによって堆積される。金属スタック(例えば、Tiの5nm層とAuの5nm層)も堆積されて、nコンタクト金属310が形成される。その後、アニーリングが実行されてもよい(例えば、窒素雰囲気環境下において400℃で1分間にわたって)。次いで、電気的プロービング及び測定を容易にするために、電子ビーム蒸着によって金属層が堆積されて接触パッド312が形成される。
【0035】
[0046]マイクロスケールLED300の電流-電圧(I-V)特性が
図3Bに示される。マイクロスケールLED300は、約4ボルトのターンオン電圧を有し、逆バイアス漏洩が無視できるほど小さい。電流密度は、I-V特性を何ら損なうことなく、約7ボルトで100A/cm
2に容易に達することができる。ドーピングと製造プロセスとを最適化することにより、電気的性能を更に向上させることができる。
【0036】
[0047]開示されたInGaNフォトニックナノワイヤLEDの一例の出力特性は、緑色スペクトルに関して測定された。ELスペクトルは、1平方センチメートル当たり10キロアンペア(10kA/cm
2)よりも少なくとも1桁小さい0.5A/cm
2~200A/cm
2以上まで変動する電流密度に関して測定された。測定結果が
図4Aに示される。その例において、発光スペクトルは、約548nmで顕著なピーク発光を示す。
【0037】
[0048]スペクトル線幅は、約4nmであるように測定され、この線幅は、その波長範囲における従来のInGaN量子井戸LEDのそれよりもほぼ5~10倍小さい。更に、発光ピークは、電流の増大に伴う顕著なシフト又は広がりを示さない。そのような明確な発光特性は、この波長範囲における任意の従来の平面InGaN量子井戸LEDでは測定されていない。
【0038】
[0049]積分EL強度を電流密度で割ったものとして定義される相対EQEが
図4Bに示される。相対EQEは、注入電流密度に伴って急激な増大を示し、約5A/cm
2で最大値に達する。注入電流に伴うEQEの急激な上昇は、非常に小さいShockley-Read-Hall再結合係数を示唆し、これは、開示されたナノワイヤにおける欠陥形成の大幅な減少と、コアシェルドットインナノワイヤ活性領域の使用による非放射表面再結合の抑制とに起因する。効率の低下は中程度であり、この場合、200A/cm
2を超える電流密度でEQEが約30%しか低下しない。そのような中程度の効率低下は、ほぼ欠陥のないInGaNナノワイヤでオージェ再結合係数が小さいことも示唆する。
【0039】
[0050]開示されたInGaNフォトニックナノワイヤLEDの発光特性の一例が、
図5Aに緑色光の波長に関して示される。この例では、注入電流密度が0.5A/cm
2から211A/cm
2に増大しても、ピーク位置は約548nmで非常に安定している。重要なことに、スペクトル線幅は注入電流に伴ってほぼ変化しない。
【0040】
[0051]ELスペクトルのFWHMの変動は、例えば、
図5Bに緑色光に関して示される。能動的な冷却を伴うことなく室温で注入電流密度が0.5A/cm
2から211A/cm
2に増大しても、FWHMの範囲は3nm~約3.7nmにすぎない。比較のために、緑色の波長範囲の従来のInGaN量子井戸発光体は、量子閉じ込めシュタルク効果の影響を激しく受け、それにより、バンドフィリング効果に起因する大きなスペクトルの広がりを伴う、電流の増大による発光の大幅な青方偏移を示す。
【0041】
[0052]開示されたInGaNフォトニックナノワイヤLEDの並外れた安定性は、InGaNドットインナノワイヤ構造の歪み分布の減少に起因し、更に重要なことには、発光特性をほぼ支配するとともにフォトニックナノワイヤの形状によってのみ決定されるフォトニックバンド構造のΓ点での強い共鳴に起因する。MBEによって成長される開示されたInGaNフォトニックナノワイヤは、過酷な動作条件下でも非常に安定している。能動的な冷却を使用せずに動作できるそのような超安定小型LEDは、ニアアイディスプレイ用途に非常に役立つ。
【0042】
[0053]発光の遠視野角分布は、回転ステージに取り付けられたファイバでEL発光を収集することによって研究された。その研究では、ファイバとLEDとの間の距離が1インチであった。各発光/収集角度でのEL強度は、543nm~553nmのスペクトル範囲にわたって積分することによって計算された。
図6は、この例におけるEL強度の角度分布を示す。発光が主に垂直方向に沿って分布し、発散角が約10度であることが分かる。そのような光学系を必要としない指向性が高い発光は、本明細書に開示されるInGaNフォトニックナノワイヤ構造のΓ点での表面発光モードに直接関連しており、それにより、次世代の超高解像度ディスプレイデバイス及びシステムの設計を大幅に簡素化でき、そのコストを削減することができる。
【0043】
[0054]結論として、本発明に係る実施形態は、InGaNフォトニックナノワイヤを利用する、特にマイクロスケール緑色LEDを含むがこれに限定されないマイクロスケールLEDを提供する。フォトニックバンド構造の固有の共鳴特性を利用することにより、そのようなマイクロスケールデバイスは、従来のInGaN量子井戸LEDのスペクトル線幅よりも5~10倍狭いスペクトル線幅、この波長範囲の量子井戸デバイスで一般的に見られる量子閉じ込めシュタルク効果がない超安定動作、及び、指向性が高い発光を含めて、明確な発光特性を示すことができる。更に、マイクロメートルサイズのLEDは、高い注入電流の下で小さな効率低下を示す。本明細書に開示される実施形態は、次世代ディスプレイのための及び新興の仮想/混合/拡張現実デバイス及びシステムにおける用途のための高効率で高輝度の発光体を達成する新たなアプローチを提供する。
【0044】
[0055]主題は、構造的特徴及び/又は方法論的行為に特有の言葉で説明されてきたが、本開示で規定される主題は、上記の特定の特徴又は行為に必ずしも限定されないことが理解されるべきである。むしろ、上記の特定の機能及び動作は、本開示を実装する例示的な形態として開示される。
【0045】
[0056]このように、本発明に係る実施形態が記載される。本開示を特定の実施形態で説明してきたが、本発明はそのような実施形態によって限定されると解釈されるべきではなく、以下の特許請求の範囲に従って解釈されるべきである。
【国際調査報告】