(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】タンパク質合成を増強するためのCRISPR-Cas13による標的RNA翻訳
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20230323BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20230323BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230323BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20230323BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230323BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230323BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20230323BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20230323BHJP
C07K 14/195 20060101ALN20230323BHJP
C07K 14/005 20060101ALN20230323BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
A61K38/16
A61P43/00 107
A61P9/04
A61K48/00
C07K19/00 ZNA
C12N15/09 110
C12P21/02 C
C07K14/195
C07K14/005
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022548030
(86)(22)【出願日】2021-02-05
(85)【翻訳文提出日】2022-08-24
(86)【国際出願番号】 US2021016907
(87)【国際公開番号】W WO2021158982
(87)【国際公開日】2021-08-12
(32)【優先日】2020-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508144129
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ロチェスター
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス マシュー アンダーソン
【テーマコード(参考)】
4B064
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA01
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA41
4C084CA53
4C084DC50
4C084NA14
4C084ZA361
4C084ZB221
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA41
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、タンパク質の合成を増強するためのタンパク質、核酸、系、及び方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)CRISPR関連(Cas)タンパク質と、
b)翻訳開始因子(TIF)タンパク質と、
を含む融合タンパク質。
【請求項2】
前記Casタンパク質が、触媒活性を失った(catalytically dead)Cas13(dCas13)である、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記dCas13が、配列番号47~48から選択される配列またはそのバリアントを含む、請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記TIFタンパク質が、真核生物開始因子(EIF)タンパク質、ウイルスタンパク質、または細菌翻訳開始因子(BTIF)タンパク質である、請求項1~3のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記TIFタンパク質が、EIFタンパク質である、請求項4に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記EIFタンパク質が、EIF4G、EIF4E、EIF1、EIF1AX、及びそれらの断片またはバリアントからなる群から選択される、請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記EIFタンパク質が、EIF4Gのリボソームリクルートコア断片である、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記EIFタンパク質が、配列番号59~70から選択されるアミノ酸配列またはそのバリアントもしくは断片を含む、請求項4~7のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
前記TIFタンパク質が、VPg及びヌクレオカプシドからなる群から選択されるウイルスタンパク質である、請求項4に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
前記ウイルスタンパク質が、配列番号71~75から選択されるアミノ酸配列またはそのバリアントもしくは断片を含む、請求項9に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
前記TIFタンパク質が、細菌IF1及び細菌IF3からなる群から選択されるBTIFタンパク質である、請求項4に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
前記BTIFが、配列番号76~77から選択されるアミノ酸配列またはそのバリアントもしくは断片を含む、請求項11に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
前記融合タンパク質が、核外移行シグナル(NES)を更に含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
前記NESが、配列番号57~58から選択されるアミノ酸配列またはそのバリアントを含む、請求項13に記載の融合タンパク質。
【請求項15】
前記融合タンパク質が、配列番号78のアミノ酸配列またはそのバリアントを含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の融合タンパク質をコードする核酸分子。
【請求項17】
前記核酸分子が、配列番号95の核酸配列またはそのバリアントを含む、請求項16に記載の核酸分子。
【請求項18】
対象におけるタンパク質の合成を増強する方法であって、請求項1~15のいずれか1項に記載の融合タンパク質または請求項16もしくは請求項17に記載の核酸分子、及びmRNA転写物の標的RNA配列に相補的な配列を含むCRISPRガイドRNA(crRNA)を前記対象に投与することを含み、前記mRNA転写物が前記タンパク質に翻訳される、方法。
【請求項19】
インビトロでの方法またはインビボでの方法のいずれかである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
対象におけるタンパク質発現もしくは合成の減少またはタンパク質低発現もしくは低合成に関連する疾患または障害を処置する方法であって、請求項1~15のいずれか1項に記載の融合タンパク質または請求項16もしくは請求項17に記載の核酸分子、及びmRNA転写物の標的RNA配列に相補的な配列を含むCRISPRガイドRNA(crRNA)を前記対象に投与することを含み、前記mRNA転写物が前記タンパク質に翻訳される、前記方法。
【請求項21】
前記疾患または障害が心不全であり、前記crRNAがSERCA2 mRNAに相補的な配列を含む、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年2月7日に出願された米国仮出願第62/971,353号の優先権を主張し、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
メッセンジャーRNA(mRNA)のタンパク質への翻訳は、高度に保存された真核生物開始因子(eIF)の大きなファミリーにより組織化されており、これらは、開始コドンに翻訳開始前複合体をリクルートし、安定化するのに役立つ。この複合体のリクルートは、タンパク質翻訳における律速段階であり、従って、タンパク質合成、ウイルス酵素の調節のための主要な標的であり、一般に疾患において調節不全になっている。従って、当該技術分野において、タンパク質合成を増強する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0003】
一態様では、本開示は、CRISPR関連(Cas)タンパク質及び翻訳開始因子(TIF)タンパク質を含む融合タンパク質を提供する。一実施形態では、Casタンパク質は、触媒活性を失った(catalytically dead)Cas13(dCas13)である。一実施形態では、dCas13は、配列番号47~48から選択される配列またはそのバリアントを含む。
【0004】
一実施形態では、TIFタンパク質は、真核生物開始因子(EIF)、ウイルスタンパク質、または細菌翻訳開始因子(BTIF)である。一実施形態では、TIFタンパク質は、EIFタンパク質である。一実施形態では、EIFタンパク質は、EIF4G、EIF4E、EIF1、EIF1AX、及びそれらの断片またはバリアントからなる群から選択される。一実施形態では、EIFタンパク質は、EIF4Gのリボソームリクルートコア断片である。一実施形態では、EIFタンパク質は、配列番号59~70から選択されるアミノ酸配列またはそのバリアントもしくは断片を含む。
【0005】
一実施形態では、TIFタンパク質は、VPg及びヌクレオカプシドからなる群から選択されるウイルスタンパク質である。一実施形態では、ウイルスタンパク質は、配列番号71~75から選択されるアミノ酸配列またはそのバリアントもしくは断片を含む。一実施形態では、TIFタンパク質は、細菌IF1及び細菌IF3からなる群から選択されるBTIFタンパク質である。一実施形態では、BTIFは、配列番号76~77から選択されるアミノ酸配列またはそのバリアントもしくは断片を含む。
【0006】
一実施形態では、融合タンパク質は、核外移行シグナル(NES)を更に含む。一実施形態では、NESは、配列番号57~58から選択されるアミノ酸配列またはそのバリアントを含む。一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号78のアミノ酸配列またはそのバリアントを含む。
【0007】
一実施形態では、本開示は、本開示の融合タンパク質をコードする核酸分子を提供する。一実施形態では、核酸分子は、配列番号95の核酸配列またはそのバリアントを含む。
【0008】
一実施形態では、本開示は、対象におけるタンパク質の合成を増強する方法を提供する。一実施形態では、本方法は、本開示の融合タンパク質または本開示の核酸分子を対象に投与することを含む。一実施形態では、本方法は、mRNA転写物内の標的RNA配列に相補的な配列を含むCRISPRガイドRNA(crRNA)を投与することを含み、ここで、当該mRNA転写物はタンパク質に翻訳される。一実施形態では、本方法は、インビトロまたはインビボでの方法である。
【0009】
一実施形態では、本開示は、対象におけるタンパク質発現もしくは合成の減少またはタンパク質低発現もしくは低合成に関連する疾患または障害を処置する方法を提供する。一実施形態では、本方法は、本開示の融合タンパク質または本開示の核酸分子を対象に投与することを含む。一実施形態では、本方法は、mRNA転写物内の標的RNA配列に相補的な配列を含むCRISPRガイドRNA(crRNA)を投与することを含み、ここで、当該mRNA転写物はタンパク質に翻訳される。一実施形態では、疾患または障害は、心不全であり、crRNAは、SERCA2 mRNAに相補的な配列を含む。
【0010】
本開示の種々の実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と共に読まれる場合に、更によく理解される。本開示を例示するために、例示的実施形態を図面に示す。しかしながら、本発明は、図面に示される実施形態の厳密な構成及び手段に限定されないことを理解すべきである。
【0011】
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】足場EIF4Gタンパク質及び他のeiFとの相互作用を媒介するドメインの図を示す。EIF4Gの中央コアは、リボソームリクルートコア(RRC)として特徴付けられており、これは、係留実験においてmRNAへの40Sのリクルートを媒介するのに十分である。4E:eiF4E、3:eiF3、4A:eiF4A。
【
図1B】40Sリボソーム及びEIF3をリクルートする、EIF4G、EIF4E、EIF4Aから構成される翻訳開始複合体の概略図を示す。
【
図1C】mRNAを翻訳の標的とするためのdPspCas13bのEIF4G‘rrc’との融合物を示す図を示す。
【
図1D】N末端3xFLAG及び核外移行シグナル(NES)を含有するdPspCas13b-EIF4Grrc発現ベクターの図を示す。F:3xFLAG。
【
図1E】sfGFPオープンリーディングフレーム及び3’UTR内のルシフェラーゼのオープンリーディングフレームを含有するsfGFP-Lucレポーターの図を示す。
【
図1F】sfGFP-Lucレポーターの形質移入が弱いsfGFP発現をもたらすことを実証する実験結果を示す。synthescriptR(dPspCas13bのEIF4Grrcとの融合物)のレポーターmRNAへの標的化は、非標的化crRNAと比較して、sfGFP蛍光の有意な増強をもたらした。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一態様では、本開示は、タンパク質合成の増強を可能にする新規の融合タンパク質の開発に基づく。本明細書においてsynthescriptRと称されるこの融合タンパク質は、Casタンパク質及び翻訳開始因子(TIF)を含む。例えば、一実施形態では、融合タンパク質は、Casタンパク質及び真核生物開始因子(EIF)を含む。融合タンパク質は、任意に核外移行シグナル(NES)、タンパク質発現タグ、またはリンカー配列のうちの1つ以上を更に含む。Cas13における変異は、触媒活性を失った(catalytically dead)酵素(dCas)をもたらすが、RNA結合親和性を維持する。従って、dCas13とEIFタンパク質の融合は、標的mRNAのタンパク質合成の増強を可能にする。synthescriptRは、基礎研究及び治療用途の両方に有用な遺伝子発現の非ゲノム的操作を可能にする。
【0014】
従って、一実施形態では、本開示は、対象におけるタンパク質の合成を増強するための組成物及び方法を提供する。一実施形態では、本開示は、CRISPR関連(Cas)タンパク質及び真核生物開始因子(EIF)タンパク質を含む融合タンパク質を提供する。一実施形態では、融合タンパク質は、核局在化シグナルを更に含む。一実施形態では、融合タンパク質は、リンカーを更に含む。一実施形態では、リンカーは、Casタンパク質及びEIFタンパク質を連結する。一実施形態では、融合タンパク質は、タグを含む。
【0015】
定義
特に定義しない限り、本明細書において使用される技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者により一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
【0016】
一般に、本明細書において使用される命名法ならびに細胞培養、分子遺伝学、有機化学、ならびに核酸化学及びハイブリダイゼーションにおける実験手順は、当該技術分野において周知であり、一般的に用いられるものである。
【0017】
標準的な技術が核酸及びペプチド合成に使用される。これらの技術及び手順は、一般に、当該技術分野における従来の方法及び本明細書全体にわたって提供される種々の一般的な参考文献(例えば、Sambrook and Russell,2012,Molecular Cloning,A Laboratory Approach,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY、及びAusubel et al.,2012,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,NY)に従って実行される。
【0018】
本明細書において使用される命名法ならびに以下に記載される分析化学及び有機合成において使用される実験手順は、当該技術分野において周知であり、一般的に用いられるものである。標準的技術またはその改変形態が、化学合成及び化学分析に使用される。
【0019】
冠詞「a」及び「an」は、冠詞の文法的対象のうちの1つまたは2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために本明細書において使用される。一例として、「元素(an element)」は、1個の元素または2個以上の元素を意味する。
【0020】
量、持続時間などの測定可能な値に言及する場合に本明細書において使用される「約」は、指定の値から±20%、±10%、±5%、±1%、または±0.1%の変動を、かかる変動が本開示の方法を実行するのに適切である場合に、包含することを意図する。
【0021】
「疾患」は、動物の健康の状態であって、当該動物が恒常性を維持することができず、疾患が改善されない場合は当該動物の健康が悪化し続ける、当該状態である。
【0022】
対照的に、動物における「障害」は、健康の状態であって、当該動物が恒常性を維持することができるが、当該動物の健康状態が、当該障害が存在しない場合よりも良好でない、当該状態である。障害は、処置されないまま放置されると、必ずしも動物の健康状態の更なる悪化を引き起こすわけではない。
【0023】
疾患もしくは障害の徴候もしくは症状の重症度、このような徴候もしくは症状を患者が経験する頻度、またはその両方が低減される場合、当該疾患または障害は「軽減」される。
【0024】
「コードする」とは、遺伝子、cDNA、またはmRNAなどのポリヌクレオチドにおける特定のヌクレオチド配列の固有特性であって、生物学的プロセスにおいて、既定のヌクレオチド配列(すなわち、rRNA、tRNA、及びmRNA)または既定のアミノ酸配列のいずれか、及びそれらによりもたらされる生物学的性質を有する他のポリマー及び高分子の合成のための鋳型として機能する固有特性を指す。従って、遺伝子は、その遺伝子に対応するmRNAの転写及び翻訳が、細胞または他の生物学的系においてタンパク質を生じさせる場合、タンパク質をコードする。ヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通常、配列表に示されるコード鎖、及び遺伝子またはcDNAの転写のための鋳型として使用される非コード鎖の両方が、その遺伝子またはcDNAのタンパク質または他の産物をコードすると称され得る。
【0025】
用語「患者」、「対象」、「個体」などは、本明細書において互換的に使用され、インビトロであるかインビボであるかにかかわらず、本明細書に記載される方法に適した任意の動物または細胞を指す。一実施形態では、対象としては、脊椎動物及び無脊椎動物が挙げられる。無脊椎動物としては、限定されるものではないが、Drosophila melanogaster及びCaenorhabditis elegansが挙げられる。脊椎動物としては、限定されるものではないが、霊長類、げっ歯類、飼育動物、または狩猟動物が挙げられる。霊長類としては、限定されるものではないが、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、及びマカク(例えば、アカゲザル)が挙げられる。齧歯類としては、限定されるものではないが、マウス、ラット、マーモット、フェレット、ウサギ、及びハムスターが挙げられる。飼育動物及び狩猟動物としては、限定されるものではないが、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、ネコ科の種(例えば、イエネコ)、イヌ科の種(例えば、イヌ、キツネ、オオカミ)、鳥類の種(例えば、ニワトリ、エミュー、ダチョウ)、及び魚類(例えば、ゼブラフィッシュ、マス、ナマズ、及びサケ)が挙げられる。幾つかの実施形態では、対象は、哺乳動物、例えば、霊長類、例えば、ヒトである。ある種の非限定的な実施形態では、患者、対象、または個体は、ヒトである。
【0026】
遺伝子の「コード領域」は、当該遺伝子のコード鎖のヌクレオチド残基及び当該遺伝子の非コード鎖のヌクレオチドからなり、これらは、当該遺伝子の転写により生成されるmRNA分子のコード領域にそれぞれ相同または相補的である。
【0027】
またmRNA分子の「コード領域」は、当該mRNA分子の翻訳中に転移RNA分子のアンチコドン領域とマッチするか、または終止コドンをコードする、当該mRNA分子のヌクレオチド残基からなる。従って、コード領域は、mRNA分子によりコードされる成熟タンパク質に存在しないアミノ酸残基(例えば、タンパク質輸送シグナル配列のアミノ酸残基)のコドンを含むヌクレオチド残基を含み得る。
【0028】
核酸に言及するために本明細書において使用される「相補的」とは、2本の核酸鎖の領域間、または同じ核酸鎖の2つの領域間の配列相補性という広い概念を指す。第1の核酸領域のアデニン残基は、当該第1の領域に対して逆平行である第2の核酸領域の残基と、この残基がチミンまたはウラシルである場合に特異的な水素結合を形成(「塩基対形成」)できることが知られている。同様に、第1の核酸鎖のシトシン残基は、当該第1の鎖に対して逆平行である第2の核酸鎖の残基と、この残基がグアニンである場合に塩基対形成できることが知られている。2つの領域が逆平行に配置されるときに、第1の領域の少なくとも1つのヌクレオチド残基が第2の領域の残基と塩基対形成できる場合、核酸の当該第1の領域は、同一のまたは異なる核酸の当該第2の領域に相補的である。一実施形態では、第1の領域は第1の部分を含み、第2の領域は第2の部分を含み、よって、当該第1及び第2の部分が逆平行に配置される場合、当該第1の部分のヌクレオチド残基の少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%が、当該第2の部分のヌクレオチド残基と塩基対形成できる。一実施形態では、第1の部分の全てのヌクレオチド残基が、第2の部分のヌクレオチド残基と塩基対形成できる。
【0029】
本明細書で使用する場合、用語「発現」は、特定のヌクレオチド配列の、そのプロモーターにより促進される転写及び/または翻訳として定義される。
【0030】
本明細書で使用する場合、用語「発現ベクター」は、転写されることができる遺伝子産物の少なくとも一部をコードする核酸配列を含有するベクターを指す。場合によっては、次いで、RNA分子は、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドに翻訳される。他の場合、例えば、アンチセンス分子、siRNA、リボザイムなどの生成では、これらの配列は翻訳されない。発現ベクターは、種々の制御配列を含有し得、制御配列とは、特定の宿主生物における作動的に連結されたコード配列の転写及びおそらく翻訳に必要な核酸配列を指す。転写及び翻訳を制御する制御配列に加えて、ベクター及び発現ベクターは、他の機能を果たす核酸配列も含有し得る。
【0031】
用語「相同性」は、相補性の程度を指す。部分的な相同性または完全な相同性(すなわち、同一性)が存在し得る。相同性は、多くの場合、配列解析ソフトウェア(例えば、Genetics Computer Group.University of Wisconsin Biotechnology Center.1710 University Avenue.Madison,Wis.53705のSequence Analysis Software Package)を使用して測定される。かかるソフトウェアは、種々の置換、欠失、挿入、及び他の改変に相同性の程度を割り当てることによって、類似配列を比べる。保存的置換としては、通常、以下の群内での置換が挙げられる:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;リジン、アルギニン;及びフェニルアラニン、チロシン。
【0032】
「単離された」は、天然状態から変化したか、または取り出されたことを意味する。例えば、生きている動物において通常の状況で天然に存在する核酸またはペプチドは「単離され」ていないが、その天然の状況の共存する物質から部分的または完全に分離された同じ核酸またはペプチドは「単離され」ている。単離された核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在し得るか、または例えば、宿主細胞などの非天然環境に存在し得る。
【0033】
用語「単離された」は、「単離されたオリゴヌクレオチド」または「単離されたポリヌクレオチド」のように、核酸に関して使用される場合、その供給源中で通常会合している少なくとも1つの夾雑物から同定され、分離されている核酸配列を指す。従って、単離された核酸は、それが自然界において見出される形態または環境とは異なる形態または環境で存在する。対照的に、単離されていない核酸(例えば、DNA及びRNA)は、それらが自然界に存在する状態で見出される。例えば、所与のDNA配列(例えば、遺伝子)は、宿主細胞染色体上で隣接する遺伝子の近傍に見出され、RNA配列(例えば、特定のタンパク質をコードする特定のmRNA配列)は、多数のタンパク質をコードする多数の他のmRNAとの混合物として細胞中に見出される。しかしながら、単離された核酸は、一例として、その核酸を通常発現する細胞におけるかかる核酸を含み、ここで、当該核酸は、天然細胞での染色体上の位置とは異なる染色体上の位置にあるか、またはそうでなければ自然界において見出される核酸配列とは異なる核酸配列と隣接している。単離された核酸またはオリゴヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖の形態で存在し得る。単離された核酸またはオリゴヌクレオチドがタンパク質を発現させるために利用される場合、当該オリゴヌクレオチドは、最低限でもセンス鎖またはコード鎖を含有する(すなわち、当該オリゴヌクレオチドは一本鎖でもよい)が、センス鎖及びアンチセンス鎖の両方を含有してもよい(すなわち、当該オリゴヌクレオチドは二本鎖でもよい)。
【0034】
用語「単離された」は、「単離されたタンパク質」または「単離されたポリペプチド」のように、ポリペプチドに関して使用される場合、その供給源中で通常会合している少なくとも1つの夾雑物から同定され、分離されているポリペプチドを指す。従って、単離されたポリペプチドは、それが自然界において見出される形態または環境とは異なる形態または環境で存在する。対照的に、単離されていないポリペプチド(例えば、タンパク質及び酵素)は、それらが自然界に存在する状態で見出される。
【0035】
「核酸」とは、デオキシリボヌクレオシドから構成されているか、またはリボヌクレオシドから構成されているかにかかわらず、かつホスホジエステル結合から構成されているか、または修飾された結合、例えば、ホスホトリエステル、ホスホロアミデート、シロキサン、カーボネート、カルボキシメチルエステル、アセトアミデート、カルバメート、チオエーテル、架橋ホスホロアミデート、架橋メチレンホスホネート、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、ホスホロジチオエート、架橋ホスホロチオエート、もしくはスルホン結合、及びかかる結合の組み合わせから構成されているかにかかわらず、任意の核酸を意味する。また核酸という用語は、生物学的に存在する5つの塩基(アデニン、グアニン、チミン、シトシン、及びウラシル)以外の塩基から構成される核酸も具体的に包含する。用語「核酸」は、通常、大きなポリヌクレオチドを指す。
【0036】
ポリヌクレオチド配列を表現するための従来の表記法が本明細書において使用される。すなわち、一本鎖ポリヌクレオチド配列の左端は、5’末端であり、二本鎖ポリヌクレオチド配列の左側方向は、5’方向と称される。
【0037】
新生RNA転写物へのヌクレオチドの5’から3’への付加の方向は、転写方向と称される。mRNAと同じ配列を有するDNA鎖は、「コード鎖」と称され、DNA上の基準点に対して5’側に存在するDNA鎖の配列は、「上流配列」と称され、DNA上の基準点に対して3’側にあるDNA鎖の配列は、「下流配列」と称される。
【0038】
「発現カセット」とは、コード配列の転写及び任意により翻訳に必要なプロモーター/調節配列に作動可能に連結されたコード配列を含む核酸分子を意味する。
【0039】
本明細書で使用する場合、用語「作動可能に連結された」は、所与の遺伝子の転写及び/または所望のタンパク質分子の合成を誘導することができる核酸分子が生成されるような様式での核酸配列の連結を指す。またこの用語は、機能的な(例えば、酵素的に活性な、結合パートナーに結合することができる、阻害することができる、など)タンパク質またはポリペプチドが生成されるような様式でのアミノ酸をコードする配列の連結も指す。
【0040】
本明細書で使用する場合、用語「プロモーター/調節配列」は、プロモーター/調節配列に作動可能に連結された遺伝子産物の発現に必要とされる核酸配列を意味する。一部の例では、この配列は、コアプロモーター配列であり得、他の例では、この配列は、遺伝子産物の発現に必要とされるエンハンサー配列及び他の調節エレメントも含み得る。プロモーター/調節配列は、例えば、遺伝子産物を誘導可能な様式で発現させるものであり得る。
【0041】
「誘導性」プロモーターは、遺伝子産物をコードまたは規定するポリヌクレオチドと作動可能に連結される場合に、実質的にプロモーターに対応する誘導因子が存在する場合にのみ遺伝子産物を生じさせるヌクレオチド配列である。
【0042】
「構成的」プロモーターは、遺伝子産物をコードまたは規定するポリヌクレオチドと作動可能に連結される場合に、細胞のほとんどまたは全ての生理学的条件下で当該細胞において遺伝子産物を生じさせるヌクレオチド配列である。
【0043】
本明細書で使用する場合、用語「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチドの鎖として定義される。更に、核酸はヌクレオチドのポリマーである。従って、本明細書で使用する場合、核酸及びポリヌクレオチドは互換的である。当業者は、核酸が、単量体である「ヌクレオチド」に加水分解され得るポリヌクレオチドであるという一般的な知識を有する。単量体であるヌクレオチドは、ヌクレオシドに加水分解され得る。本明細書で使用する場合、ポリヌクレオチドとしては、限定されるものではないが、通常のクローニング技術及びPCRなどを使用した組換え手段、すなわち、組換えライブラリーまたは細胞ゲノムからの核酸配列のクローニングが含まれる、当該技術分野における利用可能な任意の手段、ならびに合成手段により得られる全ての核酸配列が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
本開示の文脈において、一般的に存在する核酸塩基の以下の略号が使用される。「A」はアデノシンを指し、「C」はシトシンを指し、「G」はグアノシンを指し、「T」はチミジンを指し、「U」はウリジンを指す。
【0045】
本明細書で使用する場合、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」は、互換的に使用され、ペプチド結合により共有結合されたアミノ酸残基から構成される化合物を指す。タンパク質またはペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含有しなければならず、タンパク質またはペプチドの配列を構成し得るアミノ酸の最大数に制限は設けられていない。ポリペプチドとしては、ペプチド結合により互いに連結された2つ以上のアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質が挙げられる。本明細書で使用する場合、この用語は、当該技術分野において一般的に例えばペプチド、オリゴペプチド、及びオリゴマーとも称される短い鎖と、当該技術分野において一般にタンパク質と称され、多数の種類が存在するより長い鎖との両方を指す。「ポリペプチド」としては、例えば、とりわけ、生物学的に活性な断片、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドのバリアント、修飾されたポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質が挙げられる。ポリペプチドとしては、天然ペプチド、組換えペプチド、合成ペプチド、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0046】
本明細書で使用する場合、用語「RNA」は、リボ核酸と定義される。
【0047】
「組換えポリヌクレオチド」とは、自然には互いに連結されない配列を有するポリヌクレオチドを指す。増幅または構築された組換えポリヌクレオチドは、好適なベクターに含まれ得、当該ベクターは、好適な宿主細胞を形質転換するために使用され得る。
【0048】
組換えポリヌクレオチドは、非コード機能(例えば、プロモーター、複製起点、リボソーム結合部位など)も果たし得る。
【0049】
本明細書で使用する場合、用語「組換えポリペプチド」は、組換えDNA法を使用することにより生成されるポリペプチドと定義される。
【0050】
「バリアント」は、この用語が本明細書で使用される場合、それぞれ参照核酸配列または参照ペプチド配列と配列が異なるが、参照分子の基本的な生物学的性質を保持する、核酸配列またはペプチド配列である。核酸バリアントの配列の変化は、参照核酸によりコードされるペプチドのアミノ酸配列を変化させなくてもよく、アミノ酸置換、付加、欠失、融合、及び短縮化をもたらしてもよい。ペプチドバリアントの配列の変化は、通常、限定的または保存的であるため、参照ペプチド及びバリアントの配列は、全体的に極めて類似しており、多くの領域では同一である。バリアント及び参照ペプチドは、任意の組み合わせでの1つ以上の置換、付加、欠失によりアミノ酸配列が異なり得る。核酸またはペプチドのバリアントは、アレルバリアントなどの天然に存在するものであり得るか、または天然に存在することが公知でないバリアントであり得る。核酸及びペプチドの非天然バリアントは、変異誘発技術または直接合成により作製され得る。
【0051】
「ベクター」は、単離された核酸を含み、当該単離された核酸を細胞の内部に送達するために使用され得る物質の組成物である。限定されるものではないが、直鎖状ポリヌクレオチド、イオン性または両親媒性化合物と会合したポリヌクレオチド、プラスミド、及びウイルスが含まれる、多数のベクターが当該技術分野において公知である。従って、用語「ベクター」は、自律的に複製するプラスミドまたはウイルスを包含する。またこの用語は、細胞への核酸の導入を容易にする非プラスミド及び非ウイルスの化合物、例えば、ポリリジン化合物、リポソームなどを包含するようにも解釈されるべきである。ウイルスベクターの例としては、限定されるものではないが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどが挙げられる。
【0052】
範囲:本開示の全体を通して、本開示の種々の態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は、単に便宜及び簡潔さのためのものであり、本開示の範囲に対する融通性のない制限として解釈されるべきではないことを理解すべきである。従って、範囲の記載は、その範囲内の全ての可能な部分範囲及び個々の数値を具体的に開示していると見なされるべきである。例えば、1~6などの範囲の記載は、部分範囲、例えば、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6など、ならびにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、及び6を具体的に開示していると見なされるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0053】
融合タンパク質
一態様では、本開示は、編集タンパク質と翻訳開始因子(TIF)タンパク質の新規の融合物の開発に基づく。一実施形態では、融合タンパク質は、mRNAに対して切断及び結合することができ、mRNAに40Sリボソームをリクルートすることができる。一実施形態では、融合タンパク質は、任意に核外移行シグナル(NES)、タンパク質検出及び/または精製タグ、またはリンカー配列のうちの1つ以上を更に含む。
【0054】
一実施形態では、編集タンパク質としては、限定されるものではないが、CRISPR関連(Cas)タンパク質、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)タンパク質、及びRNA結合ドメインを有するタンパク質が挙げられる。一実施形態では、編集タンパク質は、Casタンパク質である。
【0055】
Casタンパク質の非限定的な例としては、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csxl、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、SpCas9、StCas9、NmCas9、SaCas9、CjCas9、CjCas9、AsCpf1、LbCpf1、FnCpf1、VRER SpCas9、VQR SpCas9、xCas9 3.7、それらのホモログ、それらのオーソログ、またはそれらの改変型が挙げられる。幾つかの実施形態では、Casタンパク質は、DNAまたはRNA切断活性を有する。幾つかの実施形態では、Casタンパク質は、標的配列の位置、例えば、標的配列内及び/または標的配列の相補体内の位置での核酸分子の一方または両方の鎖の切断を誘導する。一部の実施形態では、Casタンパク質は、標的配列の最初または最後のヌクレオチドから約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約15、約20、約25、約50、約100、約200、約500塩基対、またはそれ以上の範囲内で一方または両方の鎖の切断を誘導する。一実施形態では、Casタンパク質は、Cas9、Cas13、またはCpf1である。一実施形態では、Casタンパク質は、触媒活性を欠く(dCas)。
【0056】
一実施形態では、Casタンパク質は、Cas13である。一実施形態では、Casタンパク質は、PspCas13b、PspCas13bの短縮型、AdmCas13d、AspCas13b、AspCas13c、BmaCas13a、BzoCas13b、CamCas13a、CcaCas13b、Cga2Cas13a、CgaCas13a、EbaCas13a、EreCas13a、EsCas13d、FbrCas13b、FnbCas13c、FndCas13c、FnfCas13c、FnsCas13c、FpeCas13c、FulCas13c、HheCas13a、LbfCas13a、LbmCas13a、LbnCas13a、LbuCas13a、LseCas13a、LshCas13a、LspCas13a、Lwa2cas13a、LwaCas13a、LweCas13a、PauCas13b、PbuCas13b、PgiCas13b、PguCas13b、Pin2Cas13b、Pin3Cas13b、PinCas13b、Pprcas13a、PsaCas13b、PsmCas13b、RaCas13d、RanCas13b、RcdCas13a、RcrCas13a、RcsCas13a、RfxCas13d、UrCas13d、dPspCas13b、PspCas13b_A133H、PspCas13b_A1058H、dPspCas13bの短縮型、dAdmCas13d、dAspCas13b、dAspCas13c、dBmaCas13a、dBzoCas13b、dCamCas13a、dCcaCas13b、dCga2Cas13a、dCgaCas13a、dEbaCas13a、dEreCas13a、dEsCas13d、dFbrCas13b、dFnbCas13c、dFndCas13c、dFnfCas13c、dFnsCas13c、dFpeCas13c、dFulCas13c、dHheCas13a、dLbfCas13a、dLbmCas13a、dLbnCas13a、dLbuCas13a、dLseCas13a、dLshCas13a、dLspCas13a、dLwa2cas13a、dLwaCas13a、dLweCas13a、dPauCas13b、dPbuCas13b、dPgiCas13b、dPguCas13b、dPin2Cas13b、dPin3Cas13b、dPinCas13b、dPprCas13a、dPsaCas13b、dPsmCas13b、dRaCas13d、dRanCas13b、dRcdCas13a、dRcrCas13a、dRcsCas13a、dRfxCas13d、dUrCas13d、またはそれらのバリアントである。追加のCasタンパク質が当該技術分野において公知である(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Konermann et al.,Cell,2018,173:665-676 e14,Yan et al.,Mol Cell,2018,7:327-339 e5;Cox,D.B.T.,et al.,Science,2017,358:1019-1027;Abudayyeh et al.,Nature,2017,550:280-284,Gootenberg et al.,Science,2017,356:438-442;及びEast-Seletsky et al.,Mol Cell,2017,66:373-383 e3)。
【0057】
一実施形態では、Casタンパク質は、配列番号1~48のうちの1つと少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一な配列を含む。一実施形態では、Casタンパク質は、配列番号1~48のうちの1つと少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一な配列を含む。一実施形態では、Casタンパク質は、配列番号1~46のうちの1つのバリアントの配列を含み、ここで、当該バリアントは、当該Casタンパク質を触媒的に不活性化する。一実施形態では、Casタンパク質は、1つ以上の挿入、欠失、または置換を有する配列番号1~46のうちの1つの配列を含み、ここで、当該1つ以上の挿入、欠失、または置換は、Casタンパク質を触媒的に不活性化する。一実施形態では、Casタンパク質は、配列番号1~48のうちの1つの配列を含む。一実施形態では、Casタンパク質は、配列番号47~48のうちの1つの配列を含む。
【0058】
一実施形態では、Casタンパク質は、PspCas13bである。一実施形態では、Casタンパク質は、触媒活性を失った(catalytically dead)PspCas13b(dPspCas13b)である。一実施形態では、Casタンパク質は、配列番号1、47、または48と少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含む。一実施形態では、Casタンパク質は、配列番号1、47、または48のアミノ酸配列を含む。
【0059】
一実施形態では、TIFタンパク質は、真核生物開始因子(EIF)、ウイルス起源の翻訳調節タンパク質、または細菌翻訳開始因子(BTIF)である。一実施形態では、TIFは、配列番号59~77のうちの1つと少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一な配列を含む。
【0060】
一実施形態では、TIFはEIFである。一実施形態では、EIFタンパク質は、eIF2、eIF3、eIF1、eIF1A、eIF1AX、eIF4E、eIF4A、eIF4G、eIF4G1、eIF4F、eIF4B、eIF4H、eIF5、eIF5B、eIF2B、DHX29、Ded1p、eIF6、p97、もしくはPABPタンパク質、またはそれらの断片である。一実施形態では、EIFタンパク質は、EIF4Fタンパク質またはその断片である。一実施形態では、EIF4タンパク質は、EIF4A、EIF4E、もしくはEIF4G、またはそれらの断片である。一実施形態では、EIF4タンパク質は、EIF4Gまたはその断片である。一実施形態では、EIF4タンパク質は、EIF4G断片である。一実施形態では、EIF4G断片は、リボソームリクルートコアとして作用するのに十分である。
【0061】
一実施形態では、EIFタンパク質は、配列番号59~77のうちの1つと少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一な配列を含む。一実施形態では、EIFタンパク質は、配列番号59~77のうちの1つの配列を含む。
【0062】
一実施形態では、EIFタンパク質は、配列番号65~77の1つと少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一な配列の断片を含む。一実施形態では、EIFタンパク質は、配列番号65~77のうちの1つの断片を含む。一実施形態では、断片は、全長EIFタンパク質の長さの少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、少なくとも30%、少なくとも31%、少なくとも32%、少なくとも33%、少なくとも34%、少なくとも35%、少なくとも36%、少なくとも37%、少なくとも38%、少なくとも39%、少なくとも40%、少なくとも41%、少なくとも42%、少なくとも43%、少なくとも44%、少なくとも45%、少なくとも46%、少なくとも47%、少なくとも48%、少なくとも49%、または少なくとも50%を含む。一実施形態では、断片は、全長EIFタンパク質の長さの約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、または約50%を含む。
【0063】
一実施形態では、EIFタンパク質の断片は、配列番号59~63のうちの1つと少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一な配列を含む。一実施形態では、EIFタンパク質の断片は、配列番号59~63のうちの1つの配列を含む。
【0064】
一実施形態では、TIFは、ウイルスタンパク質である。一実施形態では、ウイルスタンパク質は、ウイルス起源の翻訳調節タンパク質である。一実施形態では、ウイルスタンパク質は、ウイルスタンパク質の合成を増加させる。一実施形態では、ウイルスタンパク質は、VPgタンパク質またはヌクレオカプシドタンパク質である。
【0065】
一実施形態では、ウイルスタンパク質は、配列番号71~75のうちの1つと少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一な配列を含む。一実施形態では、ウイルスタンパク質は、配列番号71~75のうちの1つの配列を含む。
【0066】
一実施形態では、TIFは、細菌翻訳開始因子(BTIF)である。一実施形態では、BTIFは、細菌IF1または細菌IF3タンパク質である。一実施形態では、BTIFは、E.ColiのBTIFである。一実施形態では、BTIFは、配列番号76~77のうちの1つと少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一な配列を含む。一実施形態では、BTIFは、配列番号76~77のうちの1つの配列を含む。
【0067】
一実施形態では、融合タンパク質は、核外移行シグナル(NES)を含む。一実施形態では、NESは、Casタンパク質のN末端に結合している。一実施形態では、NESは、配列番号57または58と少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一なアミノ酸配列を含む。一実施形態では、NESは、配列番号57または58のアミノ酸配列を含む。
【0068】
一実施形態では、融合タンパク質は、精製及び/または検出タグを含む。一実施形態では、タグは、融合タンパク質のN末端に存在する。一実施形態では、精製及び/または検出タグは、配列番号56と少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一なアミノ酸配列を含む。一実施形態では、精製及び/または検出タグは、配列番号56のアミノ酸配列を含む。
【0069】
一実施形態では、融合タンパク質は、リンカーを含む。一実施形態では、リンカーは、Casタンパク質及びTIFタンパク質を連結する。一実施形態では、リンカーは、Casタンパク質のC末端及びTIFタンパク質のN末端に連結される。一実施形態では、リンカーは、配列番号49~55のうちの1つと少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一な配列を含む。一実施形態では、リンカーは、配列番号49~55のうちの1つの配列を含む。
【0070】
一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号78と70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一なアミノ酸配列を含む。一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号78のアミノ酸配列を含む。
【0071】
本開示の融合タンパク質は、化学的方法を使用して作製され得る。例えば、融合タンパク質は、固相法(Roberge J Y et al(1995)Science 269:202-204)により合成され得、樹脂から切断され得、分取高速液体クロマトグラフィーにより精製され得る。自動合成は、例えば、製造者より提供される使用説明書に従って、ABI 431A Peptide Synthesizer(Perkin Elmer)を使用して達成され得る。
【0072】
本開示は、本明細書において開示される融合タンパク質との実質的な相同性を有する任意の形態の融合タンパク質も含むように解釈されるべきである。一実施形態では、「実質的に相同」である融合タンパク質は、本明細書に開示される融合タンパク質のアミノ酸配列と約50%相同、約70%相同、約80%相同、約90%相同、約95%相同、または約99%相同である。
【0073】
代替的に、融合タンパク質は、組換え手段により、またはより長いポリペプチドからの切断により作製され得る。融合タンパク質の組成は、アミノ酸分析または配列決定により確認され得る。
【0074】
本開示による融合タンパク質のバリアントは、(i)アミノ酸残基のうちの1つ以上が保存的もしくは非保存的アミノ酸残基で置換されており、かかる置換されたアミノ酸残基が遺伝暗号によりコードされるものであっても、そうでなくてもよいバリアント、(ii)1つ以上の修飾アミノ酸残基、例えば、置換基の結合により修飾されている残基が存在するバリアント、(iii)ペプチドが本開示の融合タンパク質の選択的スプライシングバリアントであるバリアント、(iv)ペプチドの断片、及び/または(v)融合タンパク質が別のペプチド、例えば、リーダー配列もしくは分泌配列、または精製に用いられる配列(例えば、Hisタグ)もしくは検出に用いられる配列(例えば、Sv5エピトープタグ)に融合されているバリアントであり得る。断片としては、元の配列のタンパク質分解性切断(複数部位タンパク質分解が含まれる)により生成されるペプチドが挙げられる。バリアントは、翻訳後修飾または化学修飾され得る。かかるバリアントは、本明細書の教示により当業者の範囲内であるとみなされる。
【0075】
当該技術分野において公知のように、2つの融合タンパク質間の「類似性」は、一方のポリペプチドのアミノ酸配列及びその保存的アミノ酸置換を、もう一方のポリペプチドの配列と比較することにより決定される。バリアントは、元の配列とは異なるペプチド配列を含むと定義される。一実施形態では、バリアントは、関心対象のセグメント当たり40%未満の残基が元の配列と異なるか、関心対象のセグメント当たり25%未満の残基が元の配列と異なるか、関心対象のセグメント当たり10%未満の残基が異なるか、または関心対象のセグメント当たりごく少数の残基が元のタンパク質配列とは異なり、同時に、元の配列の機能及び/または幹細胞の骨芽細胞系への分化を刺激する能力を維持するほど元の配列と十分に相同である。本開示は、元のアミノ酸配列と少なくとも60%、65%、70%、72%、74%、76%、78%、80%、90%、または95%類似するか、または同一であるアミノ酸配列を含む。2つのペプチド間の同一性の程度は、当業者に広く公知であるコンピュータアルゴリズム及び方法を使用して決定される。2つのアミノ酸配列間の同一性は、BLASTPアルゴリズム[BLAST Manual,Altschul,S.,et al.,NCBI NLM NIH Bethesda,Md.20894,Altschul,S.,et al.,J.Mol.Biol.215:403-410(1990)]を使用することにより決定され得る。
【0076】
本開示の融合タンパク質は、翻訳後修飾され得る。例えば、本開示の範囲内にある翻訳後修飾としては、シグナルペプチド切断、グリコシル化、アセチル化、イソプレニル化、タンパク質分解、ミリストイル化、タンパク質フォールディング、及びタンパク質分解プロセシングなどが挙げられる。一部の修飾またはプロセシング事象は、追加の生物学的機構の導入を必要とする。例えば、シグナルペプチド切断及びコアグリコシル化などのプロセシング事象は、イヌミクロソーム膜またはXenopus属の卵抽出物(米国特許第6,103,489号)を標準的な翻訳反応に加えることにより検査される。
【0077】
本開示の融合タンパク質は、翻訳後修飾により、または翻訳中に非天然アミノ酸を導入することにより形成される非天然アミノ酸を含み得る。タンパク質翻訳中に非天然アミノ酸を導入するための種々の手法が利用可能である。
【0078】
本開示の融合タンパク質は、Reedijk et al.(The EMBO Journal 11(4):1365,1992)に記載される方法などの従来の方法を使用してリン酸化され得る。
【0079】
本開示の融合タンパク質の環状誘導体も本開示の一部である。環化は、融合タンパク質が他の分子との会合のために有利な立体構造をとることを可能にし得る。環化は、当該技術分野において公知の技術を使用して達成され得る。例えば、遊離スルフヒドリル基を有する適切に間隔をあけた2つの構成要素の間でジスルフィド結合が形成され得るか、または一方の構成要素のアミノ基と別の構成要素のカルボキシル基との間でアミド結合が形成され得る。環化は、Ulysse,L.,et al.,J.Am.Chem.Soc.1995,117,8466-8467に記載されるようにアゾベンゼン含有アミノ酸を使用して達成されてもよい。結合を形成する構成要素は、アミノ酸の側鎖、非アミノ酸構成要素、またはこれら2つの組み合わせであり得る。本開示の一実施形態では、環状ペプチドは、適切な位置にβターンを含み得る。βターンは、アミノ酸Pro-Glyを適切な位置に付加することにより本開示のペプチドに導入され得る。
【0080】
上記のようなペプチド結合による連結を含有する環状ペプチドよりも柔軟である環状融合タンパク質を作製することが望ましい場合がある。より柔軟なペプチドは、ペプチドの左右の位置にシステインを導入し、2つのシステインの間でジスルフィド架橋を形成させることにより調製され得る。2つのシステインは、βシート及びターンを変形させないように配置される。このペプチドは、ジスルフィド結合の長さ、及びβシート部分の水素結合の数がより少ないことの結果としてより柔軟である。環状ペプチドの相対的な柔軟性は、分子動力学シミュレーションにより決定され得る。
【0081】
また本開示は、Cas13及びTIFタンパク質を含む融合タンパク質を含むタンパク質であって、当該融合タンパク質それ自体が、標的タンパク質及び/またはキメラタンパク質を所望の細胞成分または細胞種もしくは組織に誘導することができる標的化ドメインに融合されているか、または組み込まれている、当該タンパク質に関する。キメラタンパク質は、追加のアミノ酸配列またはドメインも含有し得る。キメラタンパク質は、種々の構成要素が異なる供給源由来であり、従って、自然界では一緒に見出されない(すなわち、異種である)という点で組換えである。
【0082】
一実施形態では、標的化ドメインは、膜貫通ドメイン、膜結合ドメイン、または例えば、小胞もしくは核と会合するようにタンパク質を誘導する配列であり得る。一実施形態では、標的化ドメインは、ペプチドを特定の細胞種または組織に標的化することができる。例えば、標的化ドメインは、細胞表面リガンド、または標的組織の細胞表面抗原に対する抗体であり得る。標的化ドメインは、本開示のペプチドを細胞成分に標的化し得る。
【0083】
本開示のペプチドは、従来技術により合成され得る。例えば、ペプチドまたはキメラタンパク質は、固相ペプチド合成を使用した化学合成により合成され得る。これらの方法は、固相合成法または液相合成法のいずれかを用いる(例えば、固相合成法について、J.M.Stewart,and J.D.Young,Solid Phase Peptide Synthesis,2nd Ed.,Pierce Chemical Co.,Rockford Ill.(1984)及びG.Barany and R.B.Merrifield,The Peptides:Analysis Synthesis,Biology editors E.Gross and J.Meienhofer Vol.2 Academic Press,New York,1980,pp.3-254、ならびに古典的な溶液合成について、M Bodansky,Principles of Peptide Synthesis,Springer-Verlag,Berlin 1984、及びE.Gross and J.Meienhofer,Eds.,The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology,suprs,Vol 1を参照のこと)。一例として、本開示のペプチドは、N-フルオレニルメトキシ-カルボニル-O-ベンジル-L-ホスホトレオニン誘導体としてホスホトレオニンを直接組み込む、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)固相化学法を使用して合成され得る。
【0084】
他の分子とコンジュゲートされた本開示のペプチドまたはキメラタンパク質を含むN末端またはC末端融合タンパク質は、当該ペプチドまたはキメラタンパク質のN末端またはC末端と、所望の生物学的機能を有する選択されたタンパク質または選択マーカーの配列とを組換え技術により融合させることにより調製され得る。得られた融合タンパク質は、本明細書に記載される選択されたタンパク質またはマーカータンパク質に融合された融合タンパク質を含有する。融合タンパク質を調製するために使用され得るタンパク質の例としては、免疫グロブリン、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、ヘマグルチニン(HA)、及び短縮型mycが挙げられる。
【0085】
本開示のペプチドは、生物学的発現系を使用して開発され得る。これらの系の使用により、ランダムペプチド配列の大型ライブラリーの生成、及び特定のタンパク質に結合するペプチド配列についてのこれらのライブラリーのスクリーニングが可能となる。ライブラリーは、ランダムペプチド配列をコードする合成DNAを適切な発現ベクターにクローニングすることにより作製され得る(Christian et al 1992,J.Mol.Biol.227:711;Devlin et al,1990 Science 249:404;Cwirla et al 1990,Proc.Natl.Acad,Sci.USA,87:6378を参照のこと)。ライブラリーは、重複ペプチドの同時合成によっても構築され得る(米国特許第4,708,871号を参照のこと)。
【0086】
本開示のペプチド及びキメラタンパク質は、無機酸、例えば、塩酸、硫酸、臭化水素酸、リン酸など、または有機酸、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、サリチル酸、ベンゼンスルホン酸、及びトルエンスルホン酸と反応させることにより医薬品塩に変換され得る。
【0087】
核酸
一態様では、本開示は、編集タンパク質及びTIFタンパク質を含む融合タンパク質をコードする新規の核酸の開発に基づく。一実施形態では、核酸は、mRNAに対して切断及び結合し、mRNAに40Sリボソームをリクルートすることができる融合タンパク質をコードする。
【0088】
一実施形態では、核酸分子は、編集タンパク質をコードする核酸配列;及びTIFタンパク質をコードする核酸配列を含む。一実施形態では、核酸分子は、核外移行シグナル(NES)をコードする核酸配列を含む。一実施形態では、核酸分子は、リンカーをコードする核酸配列を含む。一実施形態では、核酸分子は、検出及び/または精製タグをコードする核酸配列を含む。
【0089】
一実施形態では、編集タンパク質としては、限定されるものではないが、CRISPR関連(Cas)タンパク質、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)タンパク質、及びRNA結合ドメインを有するタンパク質が挙げられる。一実施形態では、編集タンパク質は、Casタンパク質である。
【0090】
一実施形態では、核酸分子は、本明細書に記載されるCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。Casタンパク質の非限定的な例としては、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csxl、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、SpCas9、StCas9、NmCas9、SaCas9、CjCas9、CjCas9、AsCpf1、LbCpf1、FnCpf1、VRER SpCas9、VQR SpCas9、xCas9 3.7、それらのホモログ、それらのオーソログ、またはそれらの改変型が挙げられる。幾つかの実施形態では、Casタンパク質は、DNAまたはRNA切断活性を有する。幾つかの実施形態では、Casタンパク質は、標的配列の位置、例えば、標的配列内及び/または標的配列の相補体内の位置での核酸分子の一方または両方の鎖の切断を誘導する。一部の実施形態では、Casタンパク質は、標的配列の最初または最後のヌクレオチドから約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約15、約20、約25、約50、約100、約200、約500塩基対、またはそれ以上の範囲内で一方または両方の鎖の切断を誘導する。一実施形態では、Casタンパク質は、Cas9、Cas13、またはCpf1である。一実施形態では、Casタンパク質は、触媒活性を欠く(dCas)。
【0091】
一実施形態では、Casタンパク質は、Cas13である。一実施形態では、Casタンパク質は、PspCas13b、PspCas13bの短縮型、AdmCas13d、AspCas13b、AspCas13c、BmaCas13a、BzoCas13b、CamCas13a、CcaCas13b、Cga2Cas13a、CgaCas13a、EbaCas13a、EreCas13a、EsCas13d、FbrCas13b、FnbCas13c、FndCas13c、FnfCas13c、FnsCas13c、FpeCas13c、FulCas13c、HheCas13a、LbfCas13a、LbmCas13a、LbnCas13a、LbuCas13a、LseCas13a、LshCas13a、LspCas13a、Lwa2cas13a、LwaCas13a、LweCas13a、PauCas13b、PbuCas13b、PgiCas13b、PguCas13b、Pin2Cas13b、Pin3Cas13b、PinCas13b、Pprcas13a、PsaCas13b、PsmCas13b、RaCas13d、RanCas13b、RcdCas13a、RcrCas13a、RcsCas13a、RfxCas13d、UrCas13d、dPspCas13b、PspCas13b_A133H、PspCas13b_A1058H、dPspCas13bの短縮型、dAdmCas13d、dAspCas13b、dAspCas13c、dBmaCas13a、dBzoCas13b、dCamCas13a、dCcaCas13b、dCga2Cas13a、dCgaCas13a、dEbaCas13a、dEreCas13a、dEsCas13d、dFbrCas13b、dFnbCas13c、dFndCas13c、dFnfCas13c、dFnsCas13c、dFpeCas13c、dFulCas13c、dHheCas13a、dLbfCas13a、dLbmCas13a、dLbnCas13a、dLbuCas13a、dLseCas13a、dLshCas13a、dLspCas13a、dLwa2cas13a、dLwaCas13a、dLweCas13a、dPauCas13b、dPbuCas13b、dPgiCas13b、dPguCas13b、dPin2Cas13b、dPin3Cas13b、dPinCas13b、dPprCas13a、dPsaCas13b、dPsmCas13b、dRaCas13d、dRanCas13b、dRcdCas13a、dRcrCas13a、dRcsCas13a、dRfxCas13d、dUrCas13d、またはそれらのバリアントである。追加のCasタンパク質が当該技術分野において公知である(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Konermann et al.,Cell,2018,173:665-676 e14,Yan et al.,Mol Cell,2018,7:327-339 e5;Cox,D.B.T.,et al.,Science,2017,358:1019-1027;Abudayyeh et al.,Nature,2017,550:280-284,Gootenberg et al.,Science,2017,356:438-442;及びEast-Seletsky et al.,Mol Cell,2017,66:373-383 e3)。
【0092】
一実施形態では、核酸分子は、配列番号1~48のうちの1つと少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一なアミノ酸配列を含むCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、核酸分子は、配列番号1~48のうちの1つと少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一なアミノ酸配列を含むCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、核酸分子は、配列番号1~46のうちの1つのバリアントのアミノ酸配列を含むCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、当該バリアントは、当該Casタンパク質を触媒的に不活性化する。一実施形態では、核酸分子は、1つ以上の挿入、欠失、または置換を有する配列番号1~46のうちの1つのアミノ酸配列を含むCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、当該1つ以上の挿入、欠失、または置換は、Casタンパク質を触媒的に不活性化する。一実施形態では、核酸分子は、配列番号1~48のうちの1つのアミノ酸配列を含むCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、核酸分子は、配列番号47~48のうちの1つのアミノ酸配列を含むCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0093】
一実施形態では、核酸分子は、PspCas13bタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、核酸分子は、触媒活性を失った(catalytically dead)PspCas13b(dPspCas13b)をコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、核酸分子は、配列番号1、47、または48と少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含むPspCas13bタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、核酸分子は、配列番号1、47、または48のアミノ酸配列を含むPspCas13bタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0094】
一実施形態では、Casタンパク質をコードする核酸配列は、配列番号79~82のうちの1つと少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一な核酸配列を含む。一実施形態では、Casタンパク質をコードする核酸配列は、配列番号79~82のうちの1つの核酸配列を含む。
【0095】
一実施形態では、dCasタンパク質をコードする核酸配列は、配列番号81~82のうちの1つと少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一な核酸配列を含む。一実施形態では、Casタンパク質をコードする核酸配列は、配列番号81~82のうちの1つの核酸配列を含む。
【0096】
一実施形態では、核酸分子は、本明細書に記載されるTIFタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、TIFタンパク質は、真核生物開始因子(EIF)、ウイルス起源の翻訳調節タンパク質、または細菌翻訳開始因子(BTIF)である。一実施形態では、核酸分子は、配列番号59~77のうちの1つと少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一な配列を含むTIFタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、核酸分子は、配列番号59~77のうちの1つの配列を含むTIFタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0097】
一実施形態では、核酸分子は、EIFタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、核酸分子は、配列番号59~70のうちの1つと少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一なアミノ酸配列を含むEIFタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、核酸分子は、配列番号59~70のうちの1つのアミノ酸配列を含むEIFタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0098】
一実施形態では、核酸分子は、EIFタンパク質の断片をコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、当該断片は、配列番号65~77のうちの1つと少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一な配列の断片である。一実施形態では、核酸分子は、EIFタンパク質の断片をコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、当該断片は、配列番号65~77のうちの1つの断片である。
【0099】
一実施形態では、核酸分子は、EIFタンパク質の断片をコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、当該断片は、配列番号59~63のうちの1つと少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一な配列を含む。一実施形態では、核酸分子は、EIFタンパク質の断片をコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、当該断片は、配列番号59~63のうちの1つの配列を含む。
【0100】
一実施形態では、EIFタンパク質をコードする核酸配列は、配列番号87~89のうちの1つと少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一な核酸配列を含む。一実施形態では、EIFタンパク質をコードする核酸配列は、配列番号87~89のうちの1つの核酸配列を含む。
【0101】
一実施形態では、核酸分子は、ウイルスタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、核酸分子は、配列番号71~75のうちの1つと少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一なアミノ酸配列を含むウイルスタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、核酸分子は、配列番号71~75のうちの1つのアミノ酸配列を含むウイルスタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0102】
一実施形態では、ウイルスタンパク質をコードする核酸配列は、配列番号90~94のうちの1つと少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一な核酸配列を含む。一実施形態では、ウイルスタンパク質をコードする核酸配列は、配列番号90~94のうちの1つの核酸配列を含む。
【0103】
一実施形態では、核酸分子は、BTIFタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、核酸分子は、配列番号76~77のうちの1つと少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一なアミノ酸配列を含むウイルスタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、核酸分子は、配列番号76~77のうちの1つのアミノ酸配列を含むBTIFタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0104】
一実施形態では、核酸分子は、核外移行シグナル(NES)をコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、核酸分子は、配列番号57~58のうちの1つと少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一なアミノ酸配列を含むNESをコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、核酸分子は、配列番号57~58のうちの1つのアミノ酸配列を含むNESタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0105】
一実施形態では、NESをコードするヌクレオチド配列は、配列番号85~86のうちの1つと少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一な配列を含む。一実施形態では、NESをコードするヌクレオチド配列は、配列番号85~86のうちの1つの配列を含む。
【0106】
一実施形態では、核酸分子は、精製及び/または検出タグをコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、核酸分子は、配列番号56と少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一なアミノ酸配列を含む精製及び/または検出タグをコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、核酸分子は、配列番号56のアミノ酸配列を含む精製及び/または検出タグをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0107】
一実施形態では、タグをコードするヌクレオチド配列は、配列番号84と少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一な配列を含む。一実施形態では、タグをコードするヌクレオチド配列は、配列番号84の配列を含む。
【0108】
一実施形態では、核酸分子は、リンカーをコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、核酸分子は、配列番号49~55のうちの1つと少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一なアミノ酸配列を含むリンカーをコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、核酸分子は、配列番号49~55のうちの1つのアミノ酸配列を含むリンカーをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0109】
一実施形態では、リンカーをコードするヌクレオチド配列は、配列番号83と少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一な配列を含む。一実施形態では、リンカーをコードするヌクレオチド配列は、配列番号83の配列を含む。
【0110】
一実施形態では、核酸分子は、配列番号78と少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一なアミノ酸配列を含む融合タンパク質をコードする核酸配列を含む。一実施形態では、核酸分子は、配列番号78のアミノ酸配列を含む融合タンパク質をコードする核酸配列を含む。
【0111】
一実施形態では、核酸分子は、配列番号95と少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一な核酸配列を含む。一実施形態では、核酸分子は、配列番号95の核酸配列を含む。
【0112】
融合タンパク質をコードする単離核酸配列は、当該技術分野において公知の多数の組換え方法のうちのいずれかを使用して、例えば、標準的な技術を使用して、遺伝子を発現する細胞由来のライブラリーのスクリーニングによって、遺伝子を含むことが公知のベクターから遺伝子を取り出すことによって、または遺伝子を含有する細胞及び組織から直接単離することによって、得られ得る。代替的に、関心対象の遺伝子は、クローニングではなく合成により生成され得る。
【0113】
単離核酸は、限定されるものではないが、DNA及びRNAが含まれる、任意の種類の核酸を含み得る。例えば、一実施形態では、組成物は、本開示の融合タンパク質をコードする、例えば、単離cDNA分子が含まれる、単離DNA分子を含む。一実施形態では、組成物は、本開示の融合タンパク質またはその機能断片をコードする単離RNA分子を含む。
【0114】
本開示の核酸分子は、血清中または細胞培養用の増殖培地中での安定性を改善するために修飾され得る。修飾は、本開示の核酸分子の安定性、機能性、及び/または特異性を増強し、免疫賦活作用を最小限にするために付加され得る。例えば、安定性を増強するために、3’残基が分解に対して安定化され得る。例えば、それらがプリンヌクレオチド、特にアデノシンまたはグアノシンヌクレオチドからなるようにそれらが選択され得る。代替的に、修飾された類似体によるピリミジンヌクレオチドの置換、例えば、2’-デオキシチミジンによるウリジンの置換が許容され、分子の機能に影響を及ぼさない。
【0115】
本開示の一実施形態では、核酸分子は、少なくとも1つの修飾ヌクレオチド類似体を含有し得る。例えば、末端は、修飾ヌクレオチド類似体を組み込むことによって安定化され得る。
【0116】
ヌクレオチド類似体の非限定的な例としては、糖及び/または骨格が修飾されたリボヌクレオチドが挙げられる(すなわち、リン酸-糖骨格への修飾が挙げられる)。例えば、天然RNAのホスホジエステル結合は、窒素または硫黄ヘテロ原子のうちの少なくとも1つを含むように修飾され得る。例示的な骨格が修飾されたリボヌクレオチドでは、隣接するリボヌクレオチドに結合しているリン酸エステル基が、修飾基、例えば、ホスホロチオエート基で置き換えられている。例示的な糖が修飾されたリボヌクレオチドでは、2’OH基が、H、OR、R、ハロ、SH、SR、NH2、NHR、NR2、またはONから選択される基で置き換えられており、ここで、Rは、C1~C6アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、ハロは、F、Cl、Br、またはIである。
【0117】
修飾の他の例は、核酸塩基が修飾されたリボヌクレオチド、すなわち、天然に存在する核酸塩基の代わりに少なくとも1つの非天然核酸塩基を含有するリボヌクレオチドである。アデノシンデアミナーゼの活性を阻害するように塩基が修飾され得る。例示的な修飾核酸塩基としては、限定されるものではないが、5位で修飾されたウリジン及び/またはシチジン、例えば、5-(2-アミノ)プロピルウリジン、5-ブロモウリジン;8位で修飾されたアデノシン及び/またはグアノシン、例えば、8-ブロモグアノシン;デアザヌクレオチド、例えば、7-デアザ-アデノシン;O-アルキル化ヌクレオチド及びN-アルキル化ヌクレオチド、例えば、N6-メチルアデノシンが挙げられ、好適である。上記の修飾が組み合わされ得ることに留意されたい。
【0118】
場合によっては、核酸分子は、以下の化学修飾のうちの少なくとも1つを含む:1つ以上のヌクレオチドの2’-H、2’-O-メチル、または2’-OH修飾。ある種の実施形態では、本開示の核酸分子は、ヌクレアーゼに対する増強された耐性を有し得る。ヌクレアーゼ耐性の増加のために、核酸分子は、例えば、2’-修飾されたリボース単位及び/またはホスホロチオエート結合を含み得る。例えば、2’ヒドロキシル基(OH)が、多数の異なる「オキシ」または「デオキシ」置換基で修飾され得るか、または置き換えられ得る。ヌクレアーゼ耐性の増加のために、本開示の核酸分子は、2’-O-メチル、2’-フッ素、2’-O-メトキシエチル、2’-O-アミノプロピル、2’-アミノ、及び/またはホスホロチオエート結合を含み得る。ロックド核酸(LNA)、エチレン核酸(ENA)、例えば、2’-4’-エチレン架橋核酸を含有させること、及び特定の核酸塩基修飾、例えば、2-アミノ-A修飾、2-チオ(例えば、2-チオ-U)修飾、G-クランプ修飾も標的に対する結合親和性を増加させ得る。
【0119】
一実施形態では、核酸分子は、2’-修飾されたヌクレオチド、例えば、2’-デオキシ、2’-デオキシ-2’-フルオロ、2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル(2’-O-MOE)、2’-O-アミノプロピル(2’-O-AP)、2’-O-ジメチルアミノエチル(2’-O-DMAOE)、2’-O-ジメチルアミノプロピル(2’-O-DMAP)、2’-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’-O-DMAEOE)、または2’-O-N-メチルアセトアミド(2’-O-NMA)を含む。一実施形態では、核酸分子は、少なくとも1つの2’-O-メチル修飾されたヌクレオチドを含み、幾つかの実施形態では、核酸分子のヌクレオチドの全てが、2’-O-メチル修飾を含む。
【0120】
ある種の実施形態では、本開示の核酸分子は、以下の特性のうちの1つ以上を有する。
【0121】
本明細書に述べる核酸薬剤は、他の点では未修飾のRNA及びDNA、ならびに例えば、有効性を改善するために修飾されたRNA及びDNA、ならびにヌクレオシド代用物のポリマーを含む。未修飾RNAとは、核酸の構成要素、すなわち糖、塩基、及びリン酸部分が、天然に存在するものまたは人体に天然に存在するものと同じであるか、または本質的に同じである分子を指す。当該技術分野において、稀であるか、または通常と異なるが天然に存在するRNAは、修飾RNAとみなされている。例えば、Limbach et al.(Nucleic Acids Res.,1994,22:2183-2196)を参照のこと。しばしば修飾RNAと称されるかかる稀であるか、または通常と異なるRNAは、典型的には、転写後修飾の結果であり、本明細書で使用する場合、未修飾RNAという用語の範囲内である。本明細書で使用する場合、修飾RNAとは、核酸の構成要素、すなわち糖、塩基、及びリン酸部分のうちの1つ以上が、天然に存在するものと異なるか、または人体に存在するものと異なる分子を指す。それらは「修飾RNA」と称されるが、修飾に起因して、厳密に言えばRNAではない分子も当然ながら含む。ヌクレオシド代用物とは、ハイブリダイゼーションがリボースリン酸骨格で見られるものと実質的に類似するように、塩基が正しい空間関係で提示されることを可能にする非リボースリン酸構造、例えば、リボースリン酸骨格の非荷電模倣物でリボースリン酸骨格が置き換えられている分子である。
【0122】
本開示の核酸の修飾は、リン酸基、糖基、骨格、N末端、C末端、または核酸塩基のうちの1つ以上に存在し得る。
【0123】
本開示は、本開示の単離核酸が挿入されているベクターも含む。当該技術分野には、本開示において有用である好適なベクターが豊富に存在する。
【0124】
簡潔に要約すると、本開示の融合タンパク質をコードする天然または合成核酸の発現は、典型的には、本開示の融合タンパク質またはその一部をコードする核酸をプロモーターに作動可能に連結し、構築物を発現ベクターに組み込むことにより達成される。使用されるベクターは、真核細胞における複製及び任意により組込みに好適である。典型的なベクターは、転写及び翻訳ターミネーター、開始配列、ならびに所望の核酸配列の発現の調節に有用なプロモーターを含有する。
【0125】
本開示のベクターは、標準的な遺伝子送達プロトコールを使用した核酸免疫法及び遺伝子治療にも使用され得る。遺伝子送達のための方法は、当該技術分野において公知である。例えば、米国特許第5,399,346号、同第5,580,859号、同第5,589,466号(参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと。別の実施形態では、本開示は、遺伝子治療ベクターを提供する。
【0126】
本開示の単離核酸は、多数の種類のベクターにクローニングされ得る。例えば、核酸は、限定されるものではないが、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルス、及びコスミドが含まれるベクターにクローニングされ得る。特に関心対象となるベクターとしては、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター、及び配列決定ベクターが挙げられる。
【0127】
更にベクターは、ウイルスベクターの形態で細胞に提供され得る。ウイルスベクター技術は、当該技術分野において周知であり、例えば、Sambrook et al.(2012,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York)、ならびに他のウイルス学及び分子生物学のマニュアルに記載されている。ベクターとして有用なウイルスとしては、限定されるものではないが、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、及びレンチウイルスが挙げられる。一般に、好適なベクターは、少なくとも1種の生物において機能する複製開始点、プロモーター配列、有用な制限エンドヌクレアーゼ部位、及び1つ以上の選択マーカーを含有する(例えば、WO01/96584;WO01/29058;及び米国特許第6,326,193号)。
【0128】
送達系
一態様では、本開示は、レンチウイルスパッケージング及び送達系の開発に関する。レンチウイルス粒子は、ウイルス酵素をタンパク質として送達する。この様式では、レンチウイルス酵素が短命であるため、細胞の生涯にわたる長期的発現に起因するオフターゲット編集の可能性が制限される。編集構成要素または従来のCRISPR-Cas編集構成要素をタンパク質としてレンチウイルス粒子に組み込むことは、必要とされるそれらの活性が短期間のみ必要とされることを考慮すると、有利である。従って、一実施形態では、本開示は、レンチウイルス送達系、ならびにレンチウイルス送達系を使用した本開示の組成物を送達する方法、遺伝物質を編集する方法、及び核酸送達の方法を提供する。
【0129】
一実施形態では、送達系は、(1)パッケージングプラスミド、(2)導入プラスミド、及び(3)エンベローププラスミドを含む。一実施形態では、送達系は、(1)パッケージングプラスミド、(2)エンベローププラスミド、及び(3)VPRプラスミドを含む。
【0130】
一実施形態では、パッケージングプラスミドは、gag-polポリプロテインをコードする核酸配列を含む。一実施形態では、gag-polポリプロテインは、触媒活性を失った(catalytically dead)インテグラーゼを含む。一実施形態では、gag-polポリプロテインは、D116N及びD64Vから選択される変異を含む。一実施形態では、導入プラスミドは、CRISPRガイドRNA(crRNA)配列及び本開示の融合タンパク質をコードする核酸配列を含む。
【0131】
一実施形態では、エンベローププラスミドは、エンベロープタンパク質をコードする核酸配列を含む。一実施形態では、エンベローププラスミドは、HIVエンベロープタンパク質をコードする核酸配列を含む。一実施形態では、エンベローププラスミドは、水疱性口炎ウイルスgタンパク質(VSV-g)エンベロープタンパク質をコードする核酸配列を含む。一実施形態では、エンベロープタンパク質は、所望の細胞種に基づいて選択され得る。
【0132】
一実施形態では、VPRプラスミドは、VPR及び本開示の融合タンパク質を含む融合タンパク質をコードする核酸配列を含む。一実施形態では、VPRプラスミドは、VPR及び本開示の融合タンパク質を含む融合タンパク質をコードする核酸配列を含む。一実施形態では、VPR融合タンパク質は、VPRと本開示の融合タンパク質との間にプロテアーゼ切断部位を含む。一実施形態では、VPRプラスミドは、crRNA配列をコードする配列を更に含む。
【0133】
一実施形態では、パッケージングプラスミド、導入プラスミド、エンベローププラスミド、及びVPRプラスミドが細胞に導入される。一実施形態では、細胞は、gag-polタンパク質をコードする核酸配列を転写し、翻訳して、gag-polポリプロテインを生成する。一実施形態では、細胞は、エンベロープタンパク質をコードする核酸配列を転写し、翻訳して、エンベロープタンパク質を生成する。一実施形態では、細胞は、融合タンパク質を転写し、翻訳して、VPR-融合タンパク質を生成する。一実施形態では、細胞は、融合タンパク質を転写し、翻訳して、VPR-融合タンパク質を生成する。一実施形態では、細胞は、ガイドRNAをコードする核酸配列を転写する。一実施形態では、転写された導入プラスミド及びgag-polタンパク質が、レンチウイルスベクターにパッケージングされる。一実施形態では、レンチウイルスベクターは、細胞培地から収集される。一実施形態では、ウイルス粒子は、標的細胞を形質導入し、ここで、転写されたcrRNA及び融合タンパク質が切断され、翻訳され、これにより、融合タンパク質及びcrRNAが生成され、crRNAは、Casタンパク質に結合し、これをcrRNA配列に実質的に相補的な配列を有するRNAに誘導する。
【0134】
一実施形態では、gag-polタンパク質、エンベロープポリプロテイン、及びcrRNAに結合しているVPR-融合タンパク質がウイルス粒子にパッケージングされる。一実施形態では、ウイルス粒子は、細胞培地から収集される。一実施形態では、VPRは、ウイルス粒子内でプロテアーゼ部位により融合タンパク質から切断されて、本開示のCas-TIF融合タンパク質をもたらす。一実施形態では、ウイルス粒子は、標的細胞を形質導入し、ここで、ガイドRNAは、RNAの標的領域に結合し、これにより、Cas-TIF融合タンパク質を標的化する。
【0135】
更に多数の追加のウイルスベースの系が、哺乳動物細胞への遺伝子導入のために開発されてきた。例えば、レトロウイルスは、遺伝子送達システムに便利なプラットフォームを提供する。選択された遺伝子は、当該技術分野において公知の技術を使用してベクターに挿入され得、レトロウイルス粒子にパッケージングされ得る。次いで、組換えウイルスが単離され得、インビボまたはエクスビボのいずれかで対象の細胞に送達され得る。多数のレトロウイルス系が当該技術分野において公知である。幾つかの実施形態では、アデノウイルスベクターが使用される。多数のアデノウイルスベクターが当該技術分野において公知である。一実施形態では、レンチウイルスベクターが使用される。
【0136】
例えば、レンチウイルスなどのレトロウイルスに由来するベクターは、それらが導入遺伝子の長期の安定した組込み及び娘細胞におけるその伝播を可能にするため、長期の遺伝子導入を達成するのに好適なツールである。レンチウイルスベクターは、マウス白血病ウイルスなどの腫瘍レトロウイルスに由来するベクターと比較して、肝実質細胞などの非増殖細胞に形質導入することができるという点で更なる利点を有する。それらは、免疫原性が低いという更なる利点も有する。
【0137】
一実施形態では、組成物は、アデノ随伴ウイルス(AAV)に由来するベクターを含む。用語「AAVベクター」は、限定されるものではないが、AAV-1、AAV-2、AAV-3、AAV-4、AAV-5、AAV-6、AAV-7、AAV-8、及びAAV-9が含まれる、アデノ随伴ウイルス血清型に由来するベクターを意味する。AAVベクターは、種々の障害の処置のための強力な遺伝子送達ツールとなっている。AAVベクターは、病原性がないこと、最小限の免疫原性、及び安定的かつ効率的に分裂終了細胞に形質導入する能力が含まれる、AAVベクターを遺伝子治療に理想的に適したものにする幾つかの特徴を有する。AAVベクター内に含まれる特定の遺伝子の発現は、AAV血清型、プロモーター、及び送達方法の適切な組み合わせを選択することにより、1つ以上の種類の細胞に特異的に標的化され得る。
【0138】
AAVベクターは、AAV野生型遺伝子のうちの1つ以上、好ましくは、rep及び/またはcap遺伝子の全体または一部の欠失を有し得るが、機能的な隣接するITR配列を保持し得る。高度な相同性にもかかわらず、異なる血清型は異なる組織に対する指向性を有する。AAV1の受容体は知られていないが、AAV1は、AAV2よりも効率的に骨格筋及び心筋に形質導入することが公知である。ほとんどの研究が、AAV2 ITRに挟まれたベクターDNAが代替の血清型のカプシドにパッケージングされている偽型ベクターを用いて行われてきたため、生物学的相違がゲノムではなくカプシドに関連することは明らかである。最近の証拠は、AAV1カプシドにパッケージングされたDNA発現カセットが、心筋細胞の形質導入において、AAV2カプシドにパッケージングされたものよりも少なくとも1log10効率的であることを示している。一実施形態では、ウイルス送達系は、アデノ随伴ウイルス送達系である。アデノ随伴ウイルスは、血清型1(AAV1)、血清型2(AAV2)、血清型3(AAV3)、血清型4(AAV4)、血清型5(AAV5)、血清型6(AAV6)、血清型7(AAV7)、血清型8(AAV8)、または血清型9(AAV9)のものであり得る。
【0139】
ベクターへのアセンブリに望ましいAAV断片としては、vp1、vp2、vp3、及び超可変領域が含まれるcapタンパク質、rep78、rep68、rep52、及びrep40が含まれるrepタンパク質、ならびにこれらのタンパク質をコードする配列が挙げられる。これらの断片は、種々のベクター系及び宿主細胞で容易に利用され得る。かかる断片は、単独で、他のAAV血清型の配列もしくは断片と組み合わせて、または他のAAVもしくは非AAVウイルス配列由来のエレメントと組み合わせて使用され得る。本明細書で使用する場合、人工AAV血清型としては、限定されるものではないが、非天然カプシドタンパク質を有するAAVが挙げられる。かかる人工カプシドは、選択されたAAV配列(例えば、vp1カプシドタンパク質の断片)を、選択された異なるAAV血清型、同じAAV血清型の非隣接部分、非AAVウイルス源、または非ウイルス源から得られ得る異種配列と組み合わせて使用して、任意の好適な技術により生成され得る。人工AAV血清型は、限定されるものではないが、キメラAAVカプシド、組換えAAVカプシド、または「ヒト化」AAVカプシドであり得る。従って、1種以上のタンパク質の発現に好適な例示的なAAVまたは人工AAVとしては、とりわけ、AAV2/8(米国特許第7,282,199号を参照のこと)、AAV2/5(National Institutes of Healthから入手可能)、AAV2/9(国際特許公開第WO2005/033321号)、AAV2/6(米国特許第6,156,303号)、及びAAVrh8(国際特許公開第WO2003/042397号)が挙げられる。
【0140】
ある種の実施形態では、ベクターは、本開示により生成されたプラスミドベクターでトランスフェクトされた細胞、または本開示により生成されたウイルスに感染した細胞における導入遺伝子の転写、翻訳、及び/または発現を可能にする様式で導入遺伝子に作動可能に連結された従来の制御エレメントも含む。本明細書で使用する場合、「作動可能に連結された」配列には、関心対象の遺伝子と隣接する発現制御配列、及び関心対象の遺伝子を制御するようにトランスでまたは一定距離を置いて作用する発現制御配列の両方が含まれる。発現制御配列としては、適切な転写開始配列、転写終結配列、プロモーター配列、及びエンハンサー配列;スプライシングシグナル及びポリアデニル化(ポリA)シグナルなどの効率的なRNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を増強する配列(すなわち、コザックコンセンサス配列);タンパク質安定性を増強する配列;ならびに必要に応じて、コードされる生成物の分泌を増強する配列が挙げられる。天然プロモーター、構成的プロモーター、誘導性プロモーター、及び/または組織特異的プロモーターが含まれる、多数の発現制御配列が当該技術分野において公知であり、利用され得る。
【0141】
追加のプロモーターエレメント、例えば、エンハンサーは、転写開始の頻度を調節する。典型的には、これらは開始部位の30~110bp上流の領域に存在するが、近年、多数のプロモーターが、開始部位の下流にも機能的エレメントを含むことが示されている。しばしば、プロモーターエレメント間の間隔には柔軟性があり、その結果、エレメントが互いに対して逆位になったり移動したりしてもプロモーター機能は保持される。チミジンキナーゼ(tk)プロモーターでは、活性の減衰を起こすことなく、プロモーターエレメント間の間隔が50bpまで隔てられ得る。プロモーターによっては、個々のエレメントが協調的に、または独立して、転写を活性化することができるように見える。
【0142】
好適なプロモーターの1つの例は、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター配列である。このプロモーター配列は、機能的に連結された任意のポリヌクレオチド配列の高レベルの発現を作動させることができる強力な構成的プロモーター配列である。好適なプロモーターの別の例は、伸長成長因子-1α(EF-1α)である。しかしながら、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳癌ウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全症ウイルス(HIV)末端反復配列(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン・バーウイルス最初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ならびに限定されるものではないが、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、及びクレアチンキナーゼプロモーターなどのヒト遺伝子プロモーターが含まれるが、これらに限定されない、他の構成的プロモーター配列も使用され得る。更に本開示は、構成的プロモーターの使用に限定されるべきではない。誘導性プロモーターも本開示の一部として意図される。誘導性プロモーターの使用は、機能的に連結されているポリヌクレオチド配列の発現を、かかる発現が所望される場合にはオンにすることができ、または発現が所望されない場合には発現をオフにすることができる分子スイッチを提供する。誘導性プロモーターの例としては、限定されるものではないが、メタロチオネインプロモーター、糖質コルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター、及びテトラサイクリンプロモーターが挙げられる。
【0143】
ベクター上に見出されるエンハンサー配列も、ベクターに含まれる遺伝子の発現を調節する。典型的には、エンハンサーは、タンパク質因子と結合して、遺伝子の転写を増強する。エンハンサーは、それが調節する遺伝子の上流または下流に存在し得る。エンハンサーはまた、特定の細胞種または組織種における転写を増強するように組織特異的であり得る。一実施形態では、本開示のベクターは、ベクター内に存在する遺伝子の転写を促進するための1つ以上のエンハンサーを含む。
【0144】
本開示の融合タンパク質の発現を評価するために、細胞に導入される発現ベクターは、ウイルスベクターによってトランスフェクトまたは感染させようとする細胞集団からの発現細胞の同定及び選択を容易にするための選択マーカー遺伝子もしくはレポーター遺伝子のいずれか、またはその両方も含有し得る。他の態様では、選択マーカーは、別個のDNA断片に保有され得、同時トランスフェクションの手順に使用され得る。選択マーカー遺伝子及びレポーター遺伝子の両方が、宿主細胞における発現を可能にするための適切な調節配列と隣接していてもよい。有用な選択マーカーとしては、例えば、neoなどの抗生物質耐性遺伝子が挙げられる。
【0145】
レポーター遺伝子は、遺伝子導入された可能性のある細胞を同定するため、及び調節配列の機能を評価するために使用される。一般に、レポーター遺伝子は、レシピエント生物または組織に存在しないか、またはそれらによって発現されない遺伝子であり、幾つかの容易に検出可能な特性、例えば、酵素活性によってその発現が明らかとなるポリペプチドをコードする遺伝子である。レポーター遺伝子の発現は、DNAがレシピエント細胞に導入された後の好適な時点で試験される。好適なレポーター遺伝子としては、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌型アルカリホスファターゼをコードする遺伝子、または緑色蛍光タンパク質遺伝子が挙げられ得る(例えば、Ui-Tei et al.,2000 FEBS Letters 479:79-82)。好適な発現系は周知であり、既知の技法を使用して調製され得るか、または商業的に入手され得る。一般に、レポーター遺伝子の最も高い発現レベルを示す最小限の5’隣接領域を有する構築物が、プロモーターとして同定される。かかるプロモーター領域は、レポーター遺伝子に連結され得、プロモーターにより駆動される転写を調節する能力について作用物質を評価するために使用され得る。
【0146】
遺伝子を細胞に導入し、発現させる方法は、当該技術分野において公知である。発現ベクターに関連して、ベクターは、当該技術分野における任意の方法によって、宿主細胞、例えば、哺乳動物細胞、細菌細胞、酵母細胞、または昆虫細胞に容易に導入され得る。例えば、発現ベクターは、物理的、化学的、または生物学的手段によって宿主細胞に導入され得る。
【0147】
宿主細胞にポリヌクレオチドを導入するための物理的方法としては、リン酸カルシウム沈殿法、リポフェクション、微粒子銃法、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどが挙げられる。ベクター及び/または外来性核酸を含む細胞を作製するための方法は、当該技術分野において周知である。例えば、Sambrook et al.(2012,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York)を参照のこと。ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための例示的な方法は、リン酸カルシウムトランスフェクションである。
【0148】
関心対象のポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための生物学的方法としては、DNA及びRNAベクターの使用が挙げられる。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、哺乳動物、例えば、ヒト細胞に遺伝子を挿入するための最も広く使用されている方法となっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI型、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルスなどに由来し得る。例えば、米国特許第5,350,674号及び第5,585,362号を参照のこと。
【0149】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための化学的手段としては、コロイド分散系、例えば、高分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ、ならびに水中油型エマルション、ミセル、混合ミセル、及びリポソームが含まれる脂質ベースの系が挙げられる。インビトロ及びインビボで送達媒体として使用するための例示的なコロイド系は、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。
【0150】
非ウイルス送達系が利用される場合には、例示的な送達媒体は、リポソームである。宿主細胞への核酸の(インビトロ、エクスビボ、またはインビボ)導入のための脂質製剤の使用が意図される。別の態様では、核酸は脂質と会合していてもよい。脂質と会合した核酸は、リポソームの水性内部に封入され得るか、リポソームの脂質二重層内に分散され得るか、リポソーム及びオリゴヌクレオチドの両方と会合している連結分子を介してリポソームに付着され得るか、リポソーム内に封じ込められ得るか、リポソームと複合体化され得るか、脂質を含有する溶液中に分散され得るか、脂質と混合され得るか、脂質と組み合わされ得るか、懸濁物として脂質に含有され得るか、ミセル中に含有され得るか、もしくはこれと複合体化され得るか、または別様に脂質と会合し得る。脂質、脂質/DNA、または脂質/発現ベクターが会合した組成物は、溶液中でのいかなる特定の構造にも限定されない。例えば、それらは二重層構造中に、ミセルとして、または「崩壊した」構造として存在し得る。またそれらは単純に溶液中に散在していてもよく、おそらくサイズまたは形状が均一でない凝集物を形成している。脂質とは、天然に存在する脂質または合成脂質であり得る脂肪性物質のことである。例えば、脂質としては、細胞質中に天然に存在する脂肪小滴、ならびに長鎖脂肪族炭化水素及びそれらの誘導体を含む化合物のクラス、例えば、脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、及びアルデヒドが挙げられる。
【0151】
使用に好適な脂質は、民間の供給元から入手され得る。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」)は、Sigma,St.Louis,Mo.から入手され得、ジセチルホスファート(「DCP」)は、K&K Laboratories(Plainview,N.Y.)から入手され得、コレステロール(「Choi」)は、Calbiochem-Behringから入手され得、ジミリスチルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)及び他の脂質は、Avanti Polar Lipids,Inc.(Birmingham,AL)から入手され得る。クロロホルムまたはクロロホルム/メタノール中の脂質の貯蔵溶液は、約-20℃で保存され得る。クロロホルムは、メタノールよりも容易に蒸発するため、唯一の溶媒として使用される。「リポソーム」とは、閉じた脂質二重層または凝集物の生成によって形成される、種々の単層及び多重層の脂質媒体を包含する総称である。リポソームは、リン脂質二重層膜及び内部の水性媒質を有する小胞構造を有することを特徴とし得る。多重膜リポソームは、水性媒質によって隔てられた複数の脂質層を有する。それらはリン脂質を過剰量の水性溶液中に懸濁させると自発的に形成される。脂質成分は自己再配列を起こし、その後に閉鎖構造の形成が起こり、水及び溶解溶質を脂質二重層の間に封じ込める(Ghosh et al.,1991 Glycobiology 5:505-10)。しかしながら、溶液中で通常の小胞構造とは異なる構造を有する組成物も包含される。例えば、脂質は、ミセル構造をとり得るか、または単に脂質分子の不均一な凝集物として存在し得る。また、リポフェクタミン-核酸複合体も意図される。
【0152】
外来性核酸を宿主細胞に導入するために使用される方法に関係なく、種々のアッセイが宿主細胞における組換えDNA配列の存在を確認するために実施され得る。かかるアッセイとしては、例えば、当業者に周知の「分子生物学的」アッセイ、例えば、サザンブロッティング及びノーザンブロッティング、RT-PCR、及びPCR;「生化学的」アッセイ、例えば、免疫学的手段(ELISA及びウェスタンブロット)による、または本開示の範囲内に含まれる作用物質を同定するための本明細書に記載されるアッセイによる、特定のペプチドの存在または非存在の検出が挙げられる。
【0153】
系
一態様では、本開示は、対象におけるタンパク質の合成を増強するための系を提供する。一実施形態では、系は、1種以上のベクターに、融合タンパク質をコードする核酸配列であって、当該融合タンパク質がCRISPR関連(Cas)タンパク質及び翻訳開始因子(TIF)を含む、当該核酸配列;ならびにCRISPR-Cas系のCRISPRガイドRNA(crRNA)をコードする核酸配列を含む。一実施形態では、CRISPR-Cas系のcrRNAは、タンパク質のmRNA転写物の標的mRNA配列に実質的にハイブリダイズする。一実施形態では、融合タンパク質をコードする核酸配列及びCRISPR-Cas系のcrRNAをコードする核酸配列は、同じベクターに存在する。一実施形態では、融合タンパク質をコードする核酸配列及びCRISPR-Cas系のcrRNAをコードする核酸配列は、異なるベクターに存在する。
【0154】
一実施形態では、融合タンパク質をコードする核酸配列は、(1)配列番号47~48のうちの1つと少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一なアミノ酸配列をコードする核酸配列;及び(2)配列番号59~77のうちの1つと少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一なアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。一実施形態では、融合タンパク質をコードする核酸配列は、(1)配列番号47~48のうちの1つのアミノ酸配列をコードする核酸配列;(2)配列番号59~77のうちの1つのアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。一実施形態では、融合タンパク質をコードする核酸配列は、配列番号78のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。
【0155】
一実施形態では、融合タンパク質をコードする核酸配列は、(1)配列番号79~82のうちの1つと少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一な核酸配列;及び(2)配列番号87~94のうちの1つと少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一な核酸配列を含む。一実施形態では、融合タンパク質をコードする核酸配列は、(1)配列番号79~82のうちの1つの核酸配列;(2)配列番号87~94のうちの1つの核酸配列を含む。一実施形態では、融合タンパク質をコードする核酸配列は、配列番号95の核酸配列を含む。
【0156】
組成物及び製剤
一態様では、本開示は、対象におけるタンパク質の合成を増強するための組成物を提供する。一実施形態では、組成物は、融合タンパク質を含み、ここで、当該融合タンパク質は、CRISPR関連(Cas)タンパク質及び翻訳開始因子(TIF)を含む。例えば、一実施形態では、組成物は、融合タンパク質を含み、ここで、当該融合タンパク質は、Casタンパク質及び真核生物開始因子(EIF)タンパク質、Casタンパク質及びウイルスタンパク質、またはCasタンパク質及び細菌翻訳開始因子(BTIF)を含む。一実施形態では、組成物は、CRISPR-Cas系のCRISPRガイドRNA(crRNA)を含む。一実施形態では、CRISPR-Cas系のcrRNAは、mRNA転写物の標的mRNA配列に実質的にハイブリダイズする。
【0157】
一実施形態では、組成物は、(1)配列番号47~48のうちの1つと少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一なアミノ酸配列;及び(2)配列番号59~77のうちの1つと少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一なアミノ酸配列を含む融合タンパク質を含む。一実施形態では、組成物は、(1)配列番号47~48のうちの1つのアミノ酸;及び(2)配列番号59~77のうちの1つのアミノ酸を含む融合タンパク質を含む。一実施形態では、組成物は、配列番号78と少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一なアミノ酸配列を含む融合タンパク質を含む。一実施形態では、組成物は、配列番号78のアミノ酸配列を含む融合タンパク質を含む。
【0158】
本開示は、本開示の方法を実施するための本開示の医薬組成物の使用も包含する。このような医薬組成物は、対象への投与に好適な形態の本開示の少なくとも1種の調節(例えば、阻害または活性化)組成物もしくはその塩からなってもよく、または医薬組成物は、本開示の少なくとも1種の調節(例えば、阻害または活性化)組成物もしくはその塩、及び1種以上の薬学的に許容される担体、1種以上の追加の成分、またはこれらの幾つかの組み合わせを含んでもよい。本開示の化合物は、当該技術分野において周知のように、生理学的に許容される塩の形態で、例えば、生理学的に許容されるカチオンまたはアニオンとの組み合わせで医薬組成物中に存在し得る。
【0159】
一実施形態では、本開示の方法を実施するのに有用な医薬組成物は、1ng/kg/日~100mg/kg/日の用量を送達するように投与され得る。別の実施形態では、本開示を実施するのに有用な医薬組成物は、1ng/kg/日~500mg/kg/日の用量を送達するように投与され得る。
【0160】
本開示の医薬組成物中の活性成分、薬学的に許容される担体、及び任意の追加の成分の相対量は、処置される対象の個性、サイズ、及び状態に応じて、ならびに更に組成物が投与される経路に応じて異なるであろう。一例として、組成物は、0.1%~100%(w/w)の活性成分を含み得る。
【0161】
本開示の方法において有用である医薬組成物は、経口、直腸、膣内、非経口、局所、肺内、鼻腔内、口腔内、点眼、または別の投与経路用に好適に開発され得る。本開示の方法に有用な組成物は、哺乳動物の皮膚または任意の他の組織に直接投与され得る。他の意図される製剤としては、リポソーム製剤、活性成分を含有する再封入赤血球、及び免疫学に基づく製剤が挙げられる。投与経路(複数可)は、当業者には容易に明白であり、処置される疾患の種類及び重症度、処置される動物対象またはヒト対象の種類及び年齢などが含まれる、いくつもの要因に依存するであろう。
【0162】
本明細書に記載される医薬組成物の製剤は、薬理学の分野において公知の、または今後開発される任意の方法により調製され得る。一般に、かかる調製方法は、活性成分を担体または1種以上の他の補助的成分と混合し、次いで、必要とされるか、または望ましい場合、製品を所望の単回または複数回投与単位に成形または包装するステップを含む。
【0163】
本明細書で使用する場合、「単位用量」は、所定量の活性成分を含む個別の量の医薬組成物である。活性成分の量は、一般に、対象に投与されるであろう活性成分の投与量、またはこのような投与量の好都合な分数、例えば、このような投与量の2分の1もしくは3分の1に等しい。単位剤形は、1日1回用量用、または1日複数回用量用(例えば、1日当たり約1~4回以上)のうちの1つであり得る。1日複数回用量が使用される場合、単位剤形は、各用量について同じであっても異なってもよい。
【0164】
一実施形態では、本開示の組成物は、1種以上の薬学的に許容される賦形剤または担体を使用して製剤化される。一実施形態では、本開示の医薬組成物は、治療上有効量の本開示の化合物またはコンジュゲート及び薬学的に許容される担体を含む。有用である薬学的に許容される担体としては、限定されるものではないが、グリセロール、水、生理食塩水、エタノール、及び他の薬学的に許容される塩溶液、例えば、リン酸塩及び有機酸の塩が挙げられる。これら及び他の薬学的に許容される担体の例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(1991,Mack Publication Co.,New Jersey)に記載されている。
【0165】
担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物、及び植物油を含有する溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングを使用することによって、分散体の場合に必要な粒子サイズを維持することによって、及び界面活性剤を使用することによって維持され得る。微生物の活動の防止は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどにより達成され得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウム、または多価アルコール、例えば、マンニトール及びソルビトールが組成物に含まれる。注射可能な組成物の吸収の延長は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンを組成物に入れることにより引き起こされ得る。一実施形態では、薬学的に許容される担体は、DMSOのみではない。
【0166】
製剤は、従来の賦形剤、すなわち、経口、膣内、非経口、経鼻、静脈内、皮下、経腸、または当業者に公知の任意の他の好適な投与様式に好適な薬学的に許容される有機または無機担体物質との混合物で用いられ得る。医薬製剤は滅菌され得、必要に応じて、補助剤、例えば、滑沢剤、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧緩衝剤に影響を与えるための塩、着色剤、矯味剤、及び/または芳香剤などと混合され得る。それらは、所望の場合、他の活性薬剤、例えば、他の鎮痛剤と組み合わされてもよい。
【0167】
本明細書で使用する場合、「追加の成分」としては、限定されるものではないが、以下のうちの1つ以上が挙げられる:賦形剤;表面活性剤;分散剤;不活性希釈剤;造粒剤及び崩壊剤;結合剤;滑沢剤;甘味剤;香味剤;着色剤;防腐剤;ゼラチンなどの生理学的に分解性の組成物;水性ビヒクル及び溶媒;油性ビヒクル及び溶媒;懸濁剤;分散剤または湿潤剤;乳化剤、粘滑剤;緩衝剤;塩;増粘剤;充填剤;乳化剤;抗酸化剤;抗生物質;抗真菌剤;安定化剤;ならびに薬学的に許容されるポリマー材料または疎水性材料。本開示の医薬組成物に含まれ得る他の「追加の成分」は、当該技術分野において公知であり、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Genaro,ed.(1985,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,PA)に記載されている。
【0168】
本開示の組成物は、組成物の総重量に対して約0.005%~2.0%の防腐剤を含み得る。防腐剤は、環境中の夾雑物に曝露される場合に腐敗を防止するために使用される。本開示に従って有用な防腐剤の例としては、限定されるものではないが、ベンジルアルコール、ソルビン酸、パラベン、イミド尿素、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるものが挙げられる。例示的な防腐剤は、約0.5%~2.0%のベンジルアルコール及び0.05%~0.5%のソルビン酸の組み合わせである。
【0169】
一実施形態では、組成物は、化合物の分解を阻害する抗酸化剤及びキレート剤を含む。一部の化合物での例示的な抗酸化剤は、組成物の総重量に対して約0.01%~0.3%の範囲のBHT、BHA、α-トコフェロール、及びアスコルビン酸、ならびに0.03重量%~0.1重量%の範囲のBHTである。一実施形態では、キレート剤は、組成物の総重量に基づいて0.01重量%~0.5重量%の量で存在する。例示的なキレート剤としては、約0.01%~0.20%の重量範囲のエデト酸塩(例えば、エデト酸二ナトリウム)及びクエン酸が挙げられる。幾つかの実施形態では、キレート剤は、組成物の総重量に対して0.02重量%~0.10重量%の範囲である。キレート剤は、製剤の貯蔵寿命に有害であり得る組成物中の金属イオンをキレートするのに有用である。BHT及びエデト酸二ナトリウムは、それぞれ、一部の化合物での例示的な抗酸化剤及びキレート剤であるが、当業者に公知であろう他の好適かつ同等な抗酸化剤及びキレート剤がそれらの代用とされ得る。
【0170】
液体懸濁液は、水性または油性ビヒクル中の活性成分の懸濁を達成するための従来の方法を使用して調製され得る。水性ビヒクルとしては、例えば、水、及び等張食塩水が挙げられる。油性ビヒクルとしては、例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、植物油、例えば、落花生油、オリーブ油、ゴマ油、またはヤシ油、分画された植物油、及び流動パラフィンなどの鉱油が挙げられる。液体懸濁液は、限定されるものではないが、懸濁剤、分散剤または湿潤剤、乳化剤、粘滑剤、防腐剤、緩衝剤、塩、香味剤、着色剤、及び甘味剤が含まれる、1種以上の追加の成分を更に含み得る。油性懸濁液は、増粘剤を更に含み得る。既知の懸濁剤としては、限定されるものではないが、ソルビトールシロップ、硬化食用脂、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、アラビアゴム、及びセルロース誘導体、例えば、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。既知の分散剤または湿潤剤としては、限定されるものではないが、レシチンなどの天然に存在するリン脂質、アルキレンオキシドの、脂肪酸、長鎖脂肪族アルコール、脂肪酸及びヘキシトールに由来する部分エステル、または脂肪酸及びヘキシトール無水物に由来する部分エステルとの縮合物(例えば、それぞれ、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ヘプタデカエチレンオキシセタノール、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、及びポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)が挙げられる。既知の乳化剤としては、限定されるものではないが、レシチン及びアカシアが挙げられる。既知の防腐剤としては、限定されるものではないが、パラヒドロキシ安息香酸メチル、パラヒドロキシ安息香酸エチル、またはパラヒドロキシ安息香酸n-プロピル、アスコルビン酸、及びソルビン酸が挙げられる。既知の甘味剤としては、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、スクロース、及びサッカリンが挙げられる。油性懸濁液での既知の増粘剤としては、例えば、蜜蝋、固形パラフィン、及びセチルアルコールが挙げられる。
【0171】
水性または油性溶媒中の活性成分の液体溶液は、液体懸濁液と実質的に同じ方法で調製され得、主要な相違点は、活性成分が溶媒中に縣濁されるのではなく溶解されることである。本明細書で使用する場合、「油性」液体は、炭素を含む液体分子を含み、水よりも低い極性を示すものである。本開示の医薬組成物の液体溶液は、液体懸濁液に関して記載される成分の各々を含んでいてもよいが、必ずしも懸濁剤が活性成分の溶媒中への溶解を補助するわけではないことが理解されよう。水性溶媒としては、例えば、水及び等張食塩水が挙げられる。油性溶媒としては、例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、植物油、例えば、落花生油、オリーブ油、ゴマ油、またはヤシ油、分画された植物油、及び流動パラフィンなどの鉱油が挙げられる。
【0172】
本開示の医薬調製物の粉末製剤及び顆粒製剤は、既知の方法を使用して調製され得る。かかる製剤は、対象に直接投与され得るか、例えば、錠剤を形成するため、カプセルを充填するため、または水性もしくは油性ビヒクルをそれに添加することによって水性もしくは油性懸濁液もしくは溶液を調製するために使用され得る。これらの製剤の各々は、分散剤または湿潤剤、懸濁剤、及び防腐剤のうちの1つ以上を更に含み得る。追加の賦形剤、例えば、充填剤及び甘味料、香味料、または着色剤などもこれらの製剤中に含まれ得る。
【0173】
また本開示の医薬組成物は、水中油型エマルションまたは油中水型エマルションの形態で調製、包装、または販売されてもよい。油相は、オリーブ油もしくは落花生油などの植物油、流動パラフィンなどの鉱油、またはこれらの組み合わせであり得る。かかる組成物は、1種以上の乳化剤、例えば、天然に存在するガム、例えば、アラビアゴムまたはトラガカントゴム、天然に存在するホスファチド、例えば、ダイズまたはレシチンホスファチド、脂肪酸及びヘキシトール無水物の組み合わせに由来するエステルまたは部分エステル、例えば、ソルビタンモノオレエート、ならびにかかる部分エステルのエチレンオキシドとの縮合物、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートを更に含み得る。これらのエマルションは、例えば、甘味剤または香味剤が含まれる、追加の成分も含有し得る。
【0174】
材料を化学組成物で含浸またはコーティングするための方法は、当該技術分野において公知であり、限定されるものではないが、化学組成物を表面上に堆積または結合させる方法、材料の合成(すなわち、生理学的に分解性の材料などを用いた合成)中に化学組成物を当該材料の構造に組み込む方法、及び水性または油性の溶液または懸濁液を吸収材料に吸収させ、その後に乾燥を行うか、または乾燥を行わない方法が挙げられる。
【0175】
投与計画は、有効量を構成するものに影響を及ぼし得る。治療製剤は、疾患の診断前または後のいずれかで対象に投与され得る。更に、幾つかの分割された用量及び時差用量が連日もしくは逐次的に投与され得るか、または用量が継続的に注入され得るか、もしくはボーラス注射であり得る。更に、治療製剤の投与量は、治療または予防状況の緊急性が示される場合、相応じて増加または減少され得る。
【0176】
哺乳動物、例えば、ヒトが含まれる、対象への本開示の組成物の投与は、公知の手順を使用して、疾患を予防または処置するのに有効な投与量及び期間で実施され得る。治療効果を達成するのに必要な治療用組成物の有効量は、用いられる特定の組成物の活性;投与時間;組成物の排出速度;処置期間;組成物と組み合わせて使用される他の薬物、組成物、または材料;疾患または障害の状態、処置される対象の年齢、性別、体重、病態、健康状態、及び既往歴、ならびに医療分野において周知の同様の要因などの要因に応じて異なり得る。投与計画は、最適な治療応答を得られるように調整され得る。例えば、幾つかの分割用量が連日投与され得るか、または用量が、治療状況の緊急性が示される場合に、相応じて低減され得る。本開示の治療用組成物の有効な用量範囲の非限定的な例は、1日当たり約1~5,000mg/体重kgである。当業者は、関連する要因を研究し、過度な実験をすることなく、治療用組成物の有効量に関して決定を下すことができるであろう。
【0177】
組成物は、毎日数回の頻度で対象に投与され得るか、またはより低い頻度で、例えば、1日1回、週1回、2週間に1回、月1回、または更に低い頻度で、例えば、数ヶ月毎に1回もしくは更には年1回以下で投与され得る。投与される1日当たりの組成物の量が、非限定的な例では、連日、1日おき、2日毎、3日毎、4日毎、または5日毎に投与され得ることが理解されよう。例えば、1日おきの投与では、5mg/日の用量が月曜日に開始され得、第1の後続の5mg/日の用量が水曜日に投与され、第2の後続の5mg/日の用量が金曜日に投与され、以下同様に続く。投与頻度は、当業者には容易に明らかであり、いくつもの要因、例えば、限定されるものではないが、処置される疾患の種類及び重症度、動物の種類及び年齢などに依存するであろう。
【0178】
本開示の医薬組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、特定の対象、組成物、及び投与様式について、当該対象に有毒とならずに望ましい治療応答を達成するのに有効な活性成分の量を得られるように異なってもよい。
【0179】
当該技術分野において通常の技量を有する医師、例えば、医者または獣医は、必要とされる医薬組成物の有効量を容易に決定し、処方し得る。例えば、医師または獣医師は、医薬組成物に用いられる本開示の組成物の用量を、所望の治療効果を達成するために必要とされるレベルよりも低いレベルで開始し得、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させ得る。
【0180】
特定の実施形態では、投与の容易さ及び投与量の均一性のために、組成物を単位剤形で製剤化することが特に有利である。本明細書で使用する場合、単位剤形は、処置される対象のための単位投与量として好適な物理的に分離した単位を指し、各単位が、必要とされる賦形薬と共同して所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の治療用組成物を含有する。本開示の単位剤形は、(a)治療用組成物に固有の特徴及び達成されるべき特定の治療効果、ならびに(b)対象における疾患を処置するためのこのような治療用組成物を調合/製剤化する技術に固有の制限事項によって決定され、それらに直接的に依存する。
【0181】
一実施形態では、本開示の組成物は、1日当たり1~5回以上の範囲の投与量で対象に投与される。別の実施形態では、本開示の組成物は、限定されるものではないが、毎日1回、2日に1回、3日に1回~週1回、及び2週間に1回が含まれる、投与量の範囲で対象に投与される。本開示の種々の組み合わせの組成物の投与頻度が、限定されるものではないが、年齢、処置されるべき疾患または障害、性別、全体的な健康状態、及び他の要因が含まれる、多数の要因に応じて対象毎に異なるであろうことは、当業者には容易に明白であろう。従って、本開示は、いずれの特定の投与計画にも限定されるように解釈されるべきでなく、任意の対象に投与されるべき正確な投与量及び組成物は、対象に関する全ての他の要因を考慮に入れて担当医師により決定されるであろう。
【0182】
投与用の本開示の組成物は、約1mg~約10,000mg、約20mg~約9,500mg、約40mg~約9,000mg、約75mg~約8,500mg、約150mg~約7,500mg、約200mg~約7,000mg、約3050mg~約6,000mg、約500mg~約5,000mg、約750mg~約4,000mg、約1mg~約3,000mg、約10mg~約2,500mg、約20mg~約2,000mg、約25mg~約1,500mg、約50mg~約1,000mg、約75mg~約900mg、約100mg~約800mg、約250mg~約750mg、約300mg~約600mg、約400mg~約500mgの範囲、及びそれらの間のあらゆる増分の全体または一部であり得る。
【0183】
一実施形態では、本開示は、単独でまたは第2の医薬品との組み合わせでの治療上有効量の本開示の組成物を収容する容器、及び組成物を使用して、対象における疾患の1つ以上の症状を処置、予防、または低減するための使用説明書を含む、包装された医薬組成物を対象とする。
【0184】
用語「容器」には、医薬組成物を収容するための任意の入れ物が含まれる。例えば、一実施形態では、容器は、医薬組成物を収容する包装である。他の実施形態では、容器は、医薬組成物を収容する包装ではなく、すなわち、容器は、包装された医薬組成物または包装されていない医薬組成物及び医薬組成物の使用説明書を収容する箱またはバイアルなどの入れ物である。更に、包装技術は、当該技術分野において周知である。医薬組成物の使用説明書が医薬組成物を収容する包装に含まれてもよく、従って、使用説明書は、包装された製品との強い機能的関係を形成することを理解すべきである。しかしながら、使用説明書は、組成物の意図される機能、例えば、対象における疾患の処置もしくは予防、またはイメージング剤もしくは診断用薬の対象への送達を果たす組成物の能力に関する情報を含み得ることを理解すべきである。
【0185】
本開示の組成物のいずれかの投与経路としては、経口、経鼻、非経口、舌下、経皮、経粘膜(例えば、舌下、舌、(経)口腔、及び鼻腔(内))、膀胱内、十二指腸内、胃内、直腸、腹腔内、皮下、筋肉内、皮内、動脈内、静脈内、または投与が挙げられる。
【0186】
好適な組成物及び剤形としては、例えば、錠剤、カプセル、カプレット、丸剤、ジェルカプセル、トローチ、分散剤、懸濁液、溶液、シロップ剤、顆粒、ビーズ、経皮パッチ、ゲル、粉末、ペレット、マグマ、舐剤、クリーム、ペースト、硬膏剤、ローション、ディスク、座剤、経鼻または経口投与用の液体スプレー、吸入用の乾燥粉末またはエアロゾル化製剤、膀胱内投与用の組成物及び製剤などが挙げられる。本開示において有用であろう製剤及び組成物は、本明細書に記載される特定の製剤及び組成物に限定されないことを理解すべきである。
【0187】
タンパク質の合成を増強する方法
一態様では、本開示は、対象におけるタンパク質の合成を増強する方法を提供する。一実施形態では、本方法は、(1)Casタンパク質及びTIFタンパク質を含む本開示の融合タンパク質をコードする核酸分子、またはCasタンパク質及びTIFタンパク質を含む本開示の融合タンパク質、及び(2)タンパク質に翻訳されるmRNA転写物の標的mRNA配列に相補的な標的化ヌクレオチド配列を含むCRISPRガイドRNA(crRNA)をコードする核酸分子またはタンパク質に翻訳されるmRNA転写物の標的mRNA配列に相補的な標的化ヌクレオチド配列を含むガイド核酸分子を対象に投与することを含む。
【0188】
一実施形態では、対象は、細胞である。一実施形態では、対象は、哺乳動物である。例えば、一実施形態では、対象は、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウサギ、ブタ、ラット、またはマウスである。一実施形態では、対象は、非哺乳動物対象である。例えば、一実施形態では、対象は、ゼブラフィッシュ、ショウジョウバエ、またはカイチュウである。
【0189】
一実施形態では、タンパク質合成は、インビトロで増強される。一実施形態では、タンパク質合成は、インビボで増強される。
【0190】
一実施形態では、本方法は、2種以上のタンパク質をコードするmRNAの翻訳を調節する。例えば、一実施形態では、本方法は、(1)Casタンパク質及びTIFタンパク質を含む本開示の融合タンパク質をコードする核酸分子、またはCasタンパク質及びTIFタンパク質を含む本開示の融合タンパク質、及び(2)タンパク質に翻訳されるmRNA転写物の標的mRNA配列に相補的な標的化ヌクレオチド配列を含むcrRNAを対象に投与することを含む。一実施形態では、標的mRNAは、酵素経路、シグナル伝達経路、転写ネットワークのタンパク質をコードし、これにより、経路またはネットワークにおける他のタンパク質の翻訳を調節する。
【0191】
一実施形態では、本開示は、真核細胞における組換えタンパク質の合成を増加させる方法を提供する。一実施形態では、本方法は、医薬品製造のための真核細胞におけるタンパク質合成の増加を可能にする。一実施形態では、本方法は、(1)Casタンパク質及びTIFタンパク質を含む本開示の融合タンパク質をコードする核酸分子、またはCasタンパク質及びTIFタンパク質を含む本開示の融合タンパク質、及び(2)mRNAであって、タンパク質に翻訳される、当該mRNAの標的領域に相補的な標的化ヌクレオチド配列を含むcrRNAを細胞に投与することを含む。一実施形態では、細胞は、組換えタンパク質を生成する改変された細胞である。
【0192】
処置方法
本開示は、対象における疾患または障害を処置する方法、それらの症状を低減する方法、及び/またはそれらを発症するリスクを低減する方法を提供する。例えば、一実施形態では、本開示の方法は、哺乳動物における疾患または障害を処置し、それらの症状を低減し、及び/またはそれらを発症するリスクを低減する。一実施形態では、本開示の方法は、植物における疾患または障害を処置し、それらの症状を低減し、及び/またはそれらを発症するリスクを低減する。一実施形態では、本開示の方法は、酵母菌における疾患または障害を処置し、それらの症状を低減し、及び/またはそれらを発症するリスクを低減する。
【0193】
一態様では、本開示は、タンパク質発現もしくは合成の減少またはタンパク質低発現もしくは低合成に関連する疾患または障害を処置する方法を提供する。一実施形態では、本方法は、(1)Casタンパク質及びTIFタンパク質を含む本開示の融合タンパク質をコードする核酸分子、またはCasタンパク質及びTIFタンパク質を含む本開示の融合タンパク質、及び(2)mRNAであって、タンパク質に翻訳される、当該mRNAの標的領域に相補的な標的化ヌクレオチド配列を含むCRISPRガイドRNA(crRNA)を対象に投与することを含む。
【0194】
一実施形態では、本開示は、心不全を処置する方法または予防処置する方法を提供する。一実施形態では、本方法は、(1)Casタンパク質及びTIFタンパク質を含む本開示の融合タンパク質をコードする核酸分子、またはCasタンパク質及びTIFタンパク質を含む本開示の融合タンパク質、及び(2)SERCA2 mRNAの標的領域に相補的なcrRNA分子を対象に投与することであって、当該SERCA2 mRNAの翻訳が増加し、これにより、SERCA2タンパク質の量を増加させる、当該投与することを含む。
【0195】
一実施形態では、本方法は、ハプロ不全性疾患を処置する方法または予防処置する方法である。例えば、一実施形態では、本方法は、(1)Casタンパク質及びTIFタンパク質を含む本開示の融合タンパク質をコードする核酸分子、またはCasタンパク質及びTIFタンパク質を含む本開示の融合タンパク質、及び(2)ハプロ不全性疾患に関連するmRNAの標的領域に相補的なcrRNA分子を対象に投与することであって、当該mRNAの翻訳が増加し、これにより、関連するタンパク質の量を増加させる、当該投与することを含む。例えば、一実施形態では、ハプロ不全性疾患としては、限定されるものではないが、1q21.1欠失症候群、骨髄異形成症候群(MDS)の5q-症候群、22q11.2欠失症候群、チャージ症候群、鎖骨頭蓋骨形成不全症、エーラス・ダンロス症候群、グレイグ症候群、プログラニュリンの変異により引き起こされる前頭側頭型認知症、GLUT1欠損症(デビボ病)、A20ハプロ不全症、ソニックヘッジホッグ遺伝子のハプロ不全により引き起こされる全前脳症、ホルト・オーラム症候群、マルファン症候群、フェラン・マクダーミド症候群、多指症、及びドラベ症候群が挙げられる。
【0196】
一実施形態では、対象は、細胞である。一実施形態では、細胞は、原核細胞または真核細胞である。一実施形態では、細胞は、真核細胞である。一実施形態では、細胞は、植物、動物、または真菌細胞である。一実施形態では、細胞は、植物細胞である。一実施形態では、細胞は、動物細胞である。一実施形態では、細胞は、酵母細胞である。
【0197】
一実施形態では、本方法は、(1)Casタンパク質及びTIFタンパク質を含む本開示の融合タンパク質をコードする核酸分子、ならびに(2)2種以上のcrRNA分子を対象に投与することを含み、ここで、各crRNA分子は、別個のmRNAの領域に相補的である。一実施形態では、別個のmRNAは関連する。例えば、一実施形態では、mRNAは、経路のタンパク質をコードし、これにより、経路において必要とされる全ての酵素の翻訳を増強する。一実施形態では、本方法は、限定されるものではないが、心血管疾患、肥満、がん、糖尿病、喘息、てんかんが含まれる、複雑な疾患経路を処置する。一実施形態では、本方法は、医薬化合物、生物燃料、または生物学的製剤を生成する。
【0198】
一実施形態では、対象は、哺乳動物である。例えば、一実施形態では、対象は、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウサギ、ブタ、ラット、またはマウスである。一実施形態では、対象は、非哺乳動物対象である。例えば、一実施形態では、対象は、ゼブラフィッシュ、ショウジョウバエ、またはカイチュウである。
【0199】
アミノ酸配列及び核酸配列
表2は、アミノ酸配列及び核酸配列の概要を提供する。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【実施例】
【0200】
本開示は、以下の実施例を参照することにより更に詳述される。これらの実施例は、説明のみを目的として提供され、特に明記しない限り、限定することを意図しない。従って、本開示は、以下の実施例に限定されるものと決して解釈されるべきではなく、むしろ、本明細書において提供される教示の結果として明らかとなる、あらゆる変形形態を包含すると解釈されるべきである。
【0201】
当業者は、更なる説明なしに上記の説明及び以下の実例を使用して、本開示を作製及び利用することができ、特許請求される方法を実施することができると考えられる。従って、以下の実施例は、本開示の特定の実施形態を具体的に示すものであり、本開示のその他を如何様にも限定するものと解釈されるべきではない。
【0202】
実施例1:タンパク質合成を増強するためのCRISPR-Cas13による標的RNA翻訳
本明細書において示されるデータは、標的mRNAへの前開始複合体のリクルートを誘発して、タンパク質合成を増強するためのRNA結合CRISPR-Cas13の使用を実証する。本明細書においてsynthescriptRと称されるこのアプローチは、ヒト患者に治療適用するための、または医薬品製造のために真核細胞におけるタンパク質の生成を増強するためのタンパク質合成を増強する能力を有する。
【0203】
転写後にmRNAは細胞質に輸出され、ここで、それらは、EIF4A、EIF4E、及びEIF4Gから構成されるEIF4F複合体により最初に結合される。大きなEIF4Gタンパク質は、足場として機能し、これは5’CAPに40Sリボソームをリクルートし、翻訳を開始するために必要とされる。以前の報告で、この足場の中央断片がリボソームリクルートコア(RRC)として作用するのに十分であるとして同定され、係留実験において、mRNAに40Sリボソームをリクルートするのに十分であるとして同定された。CRISPR-Cas13を使用して、mRNAが翻訳の標的となって、タンパク質合成を増強し得るかどうかを決定するために、dPspCas13bと、EIF4GのRRCが含まれる幾つかのeiFとの融合物を作製した。superfolder GFPのオープンリーディングフレームを含有するmRNAレポーターが標的とされた。更にこのmRNAレポーターは、3’UTRにルシフェラーゼの3’オープンリーディングフレームを含有する。ルシフェラーゼオープンリーディングフレームを含有するこの大きな3’UTRは、通常、細胞におけるsfGFPの低発現をもたらす。細胞ベースのアッセイにおいて、synthescriptRは、sfGFP-Luc mRNAに特異的なcrRNAにより誘導される場合に、sfGFP-Luc転写物の翻訳の増強をもたらしたが、非標的化crRNAでは翻訳の増強をもたさなかった(
図1)。更に、eiFであるEIF4E(CAP結合タンパク質)またはEIF3DとのdPspCas13b融合物は、翻訳の増強を示さなかった。従って、synthescriptRは、crRNAsにより標的とされたmRNAの翻訳を特異的に増強する能力を有する。このアプローチは、治療に有益なタンパク質、例えば、心不全における心収縮性を回復させるためのSERCA2のインビボでの翻訳を増強するのに有用であり得る。加えて、このアプローチは、細菌に存在しないタンパク質修飾を起こし得る真核細胞におけるタンパク質の生成を増加させるために使用され得る。
【配列表】
【国際調査報告】