(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】ポリアミドをベースとする組成物の処理方法
(51)【国際特許分類】
C08J 11/18 20060101AFI20230323BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20230323BHJP
C08J 11/26 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
C08J11/18 ZAB
C08J3/20 CFG
C08J11/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022548439
(86)(22)【出願日】2021-02-09
(85)【翻訳文提出日】2022-09-30
(86)【国際出願番号】 FR2021050233
(87)【国際公開番号】W WO2021160963
(87)【国際公開日】2021-08-19
(32)【優先日】2020-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブリフォー,ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】フラ,ジャン-ジャック
【テーマコード(参考)】
4F070
4F401
【Fターム(参考)】
4F070AA54
4F070AB26
4F070AC12
4F070AC40
4F070AC42
4F070AC46
4F070AE16
4F070FA01
4F070FC05
4F401AA24
4F401AD20
4F401BA13
4F401BB11
4F401CA75
4F401CA91
4F401CB18
4F401EA46
4F401EA64
4F401EA65
(57)【要約】
本発明は、再利用されることが意図されるポリアミドをベースとする組成物の処理方法に関する。より詳細には、本発明は、3D印刷における対象物の製造中の未変換ポリアミドをベースとする組成物、典型的には粉末を処理する方法に関する。本発明は、リサイクル組成物の使用にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リサイクルされることが意図されるポリアミド(PA)をベースとする組成物(C1)の処理のための方法であって、以下の連続する段階、すなわち、
(i)ポリアミド(PA)をベースとする組成物(C1)、ポリアミド鎖切断剤、及び任意に1種以上の充填剤及び/又は添加剤を含む混合物を供給する段階、
(ii)溶融状態の前記混合物を混練する段階であって、それにより目標固有粘度を有する組成物(C2)が得られる段階、
(iii)組成物(C2)の回収段階
を含む方法。
【請求項2】
前記組成物(C1)が、ポリアミドをベースとする粉末であり、好ましくは焼結による3D印刷プロセスの結果変換されなかったものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物(C1)が、1.50以上の固有粘度を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
回収された組成物(C2)の固有粘度が、前記組成物(C1)の粘度に対して少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%低下する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記鎖切断剤が、水、カルボン酸、アミノ酸及び/又はそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記鎖切断剤が、モノカルボン酸、ジカルボン酸から選択されるカルボン酸、モノカルボン酸又はジカルボン酸の金属塩であり、好ましくはアジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、及び/又はそれらの混合物から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記段階(i)が、前記組成物(C1)の重量に対して、0.1重量%~2重量%、好ましくは0.2重量%~1.8重量%、例えば0.2重量%~1.0重量%、0.2重量%~0.8重量%のカルボン酸を供給される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記鎖切断剤が、アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、及び/又はそれらの混合物から選択されるアミノ酸である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
段階(i)が、前記組成物(C1)の重量に対して、0.1重量%~10重量%、好ましくは0.2%重量~8重量%、例えば、1重量%~7重量%のアミノ酸を供給される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ポリアミド(PA)の融点に対して少なくとも5℃高い、好ましくは少なくとも10℃高い、かつ330℃未満の温度が混練段階(ii)で適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
バッチプロセスである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
連続プロセスである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
段階(ii)における前記混合物の滞留時間が、10分以下、好ましくは5分未満又は3分未満である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリアミド(PA)が、ホモポリアミド、コポリアミド、ポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを有するコポリマー、及びそれらの混合物から選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリアミド(PA)が、以下のモノマー、すなわち、46、4T、54、59、510、512、513、514、516、518、536、6、64、66、69、610、612、613、614、616、618、636、6T、9、104、109、1010、1012、1013、1014、1016、1018、1036、10T、11、12、124、129、1210、1212、1213,1214、1216、1218、1236、12T、MXD6、MXD10、MXD12、MXD14、及びそれらのブレンドの少なくとも1種を含むポリアミド及びコポリアミドから選択される少なくとも1種のポリアミド又は1つのポリアミドブロックを含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ポリアミドをベースとするリサイクル組成物であって、請求項1~15の一項に記載の方法により得ることができ、1.50以下、好ましくは1.40以下、1.30以下、1.25以下、1.20以下、1.15以下、1.10以下、1.05以下、又は1.00以下の固有粘度を有する、組成物。
【請求項17】
変換プロセスにおける、好ましくは顆粒の形態の、請求項16に記載のリサイクル組成物の使用。
【請求項18】
請求項17に記載の変換プロセスにより得られた製造物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リサイクルを目的とするポリアミドをベースとする組成物の処理方法に関する。より詳細には、本発明は、3D印刷における対象物の製造中に変換されないポリアミドをベースとする組成物、典型的には粉末の処理方法に関する。本発明はまた、その後の工業的変換におけるリサイクル組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドは大量に生産され、長年化学産業の様々な分野で広く使用されてきた。しかし、工業的変換方法で使用されるポリアミドの一部、実際には、多量のポリアミドでさえ、最終製品に変換されることはなく、それらはその物理的及び/又は化学的特性の変化のために、その後の変換方法の原料としてそのまま再利用することはできない。これは、経済的な見地からも環境的な見地からも、廃棄物という大問題を生み出す。
【0003】
本発明の意味において、用語「変換方法」は、例えば、押出、成形、典型的には射出成形、又はまた3D印刷によって、最終製品へのポリアミドをベースとする組成物の任意のタイプの工業的変換を意味すると理解される。
【0004】
特に、この廃棄物の問題は、例えば、層毎の粉末の添加又は凝集による大量の部品の製造のための任意の方法のような、製造出発材料としてのポリアミドをベースとする粉末を使用する3D印刷の分野において一般的に観察される。溶融(以下、「焼結」)による粉末の凝集は、例えばレーザー光線(レーザー焼結)、赤外線、紫外線照射、又は三次元の対象物を製造するために粉末層を層毎に溶融することを可能にする電磁放射線の任意の発生源のような放射線によってもたらされる。また、吸収剤を使用する選択的焼結方法、特に「高速焼結」(HSS)及び「マルチジェット融合」(MJF)の名称で知られている技術を挙げることができる。これらの技術では、3D対象物を構成する各層について制御された方法で溶融されるポリアミドをベースとする粉末を用いて、層毎に対象物の3D製造が実施され、層上に吸収剤を(例えば「インクジェット方法」の液体インクなどにより)堆積させ、その後該層を電磁放射線(赤外線など)にさらし、その吸収剤を含む区域を溶融させる。
【0005】
レーザー焼結のような上記の焼結方法には、一般に1.50未満の溶液中の固有粘度に反映されることができる、好ましくは十分に低い固体状態の粉末の分子量を有するポリアミドをベースとする粉末の使用が、粒の溶融がエネルギーを過剰に必要としないために、及び粒間合体が放射線の通過中に十分であり、最小限の多孔度及び良好な機械的特性を有する対象物を得るために有利である。
【0006】
上記タイプの焼結方法で使用されるポリアミドをベースとする粉末は、一般に全粉末の重量に対して90%を超え、実際には95%を超えることすらあるポリアミドを含む。製造方法中に、この粉末の大部分が使用されないことが観察されてきた。例えば、レーザー焼結では、粉末の約85%がレーザーの目標とされない。周囲の粉末、すなわち、放射線の影響を受けない粉末は、その結晶化温度Tc超に数時間留まり、これはポリアミドをベースとする粉末の分子量の増加、ひいては固有の粘度をもたらす可能性がある。結果として、粉末粒間の合体は、この粉末を利用する3D構築にその後再利用することがより困難になる。
【0007】
結果として、印刷終了時に放射線の影響を受けなかった出発粉末は、多くの場合より高い分子量、すなわち1.50を超える、ほとんどの場合1.70~2.0程度の固有粘度を有することがある。その結果、これらの粉末は3D印刷技術によって機械的強度の部品を十分に生産することがもはやできない。これらの粉末は、少なくとも部分的には、印刷中に温度変動を受けなかった「新鮮な」粉末の充填で交換するために廃棄しなければならない。
【0008】
変換されないポリアミドをベースとする組成物の固有粘度のこの増加は、ポリアミドの機械的変換のための他の方法においても観察でき、これは、出発材料としてポリアミド(その固有粘度は低くなければならない、すなわち、一般に1.50未満でなければならない)をベースとする組成物を必要とする別の工業用途におけると同様にそれらの再利用を妨げる。そのようなものとして、パイプ又はシートの押出による変換方法、チューブの押出-ブロー成形、射出成形、及び上記の3D印刷プロセスを挙げることができる。
【0009】
したがって、高い固有粘度を有するポリアミド、特に既に製造に使用されたが、製造方法中に最終製品に変換されなかったポリアミドをベースとするこれらの組成物を再利用できることが継続的に必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、このように、一般に変換方法後に高い固有粘度を有するポリアミドをベースとする組成物を処理するための方法を提供し、その結果、それらを所望の工業用途で出発材料として再利用できるようにすることである。
【0011】
より詳細には、本発明の目的は、例えば、射出成形、押出、又は3D印刷プロセスにおいて、工業的変換のための出発材料として再利用するために、3D印刷プロセス、好ましくは焼結による3D印刷プロセスの結果、未使用のポリアミドをべースとする粉末を処理するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様によれば、本発明の主題は、リサイクルされることを意図するポリアミド(PA)をベースとする組成物(C1)の処理のための方法であって、以下の連続する段階を含む。
(i) ポリアミド(PA)をベースとする組成物(C1)、ポリアミド鎖切断剤、及び任意に1種以上の充填剤及び/又は添加剤を含む混合物を供給する段階、
(ii) 溶融状態の該混合物を混練する段階であって、それにより目標固有粘度を有する組成物(C2)が得られる段階、
(iii) 組成物(C2)の回収段階。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明との関連において、組成物(C1)は、ポリアミド、例えば粉末、顆粒、フィラメント、樹脂、繊維、フィルム、パイプ及び/又はそれらの混合物をベースとする任意のタイプの工業用組成物であり得る。
【0014】
本発明の意味において、用語「ポリアミドをベースとする組成物」は、ポリアミドマトリックスを有する組成物を意味すると理解され、これは、一般に、全組成物の体積比で40%を超えるポリアミドを含む。
【0015】
特に有利な実施形態によれば、リサイクルされることが意図されるポリアミドをベースとする組成物(C1)は、ポリアミドをベースとする粉末であり、好ましくは、焼結による3D印刷のプロセスの結果変換されなかったものである。
【0016】
組成物(C1)がポリアミドをベースとする粉末である場合には、それは一般に、全組成物の重量比で50%を超え、実際にはさらに60%を超えるポリアミドを含む。
【0017】
本発明のポリアミド(PA)は、ホモポリアミド、コポリアミド、ポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを有するコポリマー、又はそれらのブレンドから選択することができる。また、それは1種以上のポリアミド及び少なくとも1種の他のポリマーのブレンドであり得る。混合物は、粉末を乾式混合するか、又は顆粒の形態の混合物を粉砕することにより得ることができる。後者の場合、ポリアミドは好ましくはマトリックスを形成し、他のポリマー(複数可)は分散相を形成する。
【0018】
一般に、出発組成物(C1)は、1.50以上、好ましくは1.60以上の固有粘度を有する。
【0019】
有利には、組成物(C1)は変換方法の結果残る非変換材料である。
【0020】
組成物(C2)の「目標」固有粘度は1.50以下であり、好ましくは1.40以下、1.30以下、1.25以下、1.20以下、1.15以下、1.10以下、1.05以下、又は1.00以下である。
【0021】
組成物(C2)の固有粘度は、典型的には0.80以上である。
【0022】
例えば、組成物(C2)の固有粘度は、0.80~1.50の間、好ましくは0.90~1.40の間、0.90~1.30の間、0.90~1.20の間(限界値を含む)であり得る。
【0023】
回収された(又は「リサイクルされた」)組成物(C2)の固有粘度は、典型的には、出発組成物(C1)の粘度に対して少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%低下する。
【0024】
1つの実施形態によれば、回収された組成物(C2)の固有粘度は、出発組成物(C1)の粘度に対して0.30、好ましくは0.50低下する。
【0025】
回収された組成物(C2)は、典型的には顆粒の形態である。
【0026】
本発明のポリアミド鎖切断剤は、リサイクルされることが意図される組成物中に存在するポリアミドと反応することができ、該組成物の固有粘度を低下させることができる化学物質である。
【0027】
本発明者らは、鎖切断剤を使用することによって、ポリアミドの鎖を「切断」することが可能になり、したがって、ポリアミドの固有粘度、及びポリアミドをベースとする組成物の固有粘度を低下させることが可能になることを見出した。
【0028】
したがって、本発明は、後続の変換方法で使用することができる組成物を回収するために、ポリアミドをベースとする組成物の固有粘度を低下させるための特定の鎖切断剤の使用を提供する。
【0029】
1つの実施形態によれば、鎖切断剤は、水、カルボン酸、アミノ酸及び/又はそれらの混合物から選択される。
【0030】
1つの実施形態によれば、鎖切断剤は、固体の形態(例えば、粉末又は顆粒)又は液体の形態(例えば、溶融されている又は水溶液の形態)である。
【0031】
1つの実施形態によると、鎖切断剤はカルボン酸である。カルボン酸は、モノカルボン酸、ジカルボン酸又はモノカルボン酸若しくはジカルボン酸の金属塩から選択できる。好ましくは、カルボン酸は、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸及び/又はそれらの混合物から選択される。
【0032】
優先的な実施形態によれば、カルボン酸はアジピン酸である。
【0033】
1つの実施形態によれば、段階(i)は、組成物(C1)の重量に対して、0.1重量%~2重量%、好ましくは0.2重量%~1.8重量%、例えば0.2重量%~1.0重量%、0.2重量%~0.8重量%のカルボン酸が供給される。
【0034】
鎖切断剤として使用されるカルボン酸は、組成物中に微量の形態で、一般に0.1%未満で存在する重合モノマーの残留物として組成物(C1)中に存在し得るものと区別されるべきである。
【0035】
1つの実施形態によると、鎖切断剤はアミノ酸である。アミノ酸は、アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸及び/又はそれらの混合物から選択することができる。
【0036】
これは特に有利な実施形態を構成する。驚くべきことに、本発明の方法におけるアミノ酸の使用が、リサイクルされることが意図されるポリアミドをベースとする組成物の固有の粘度を迅速に(すなわち、一般に10分未満で)低下させることを可能に、したがって、変換方法における出発材料としてのそれらの再利用を可能にすることが観察されたからである。
【0037】
また、この固有粘度の低下は可逆的である、すなわち、その固有粘度は、その後の使用の間に再び上昇する可能性があるということが観察された。この特性は、その実施中に出発材料の固有粘度の増加を必要とする方法である、3D印刷におけるポリアミドの再適用には特に価値がある。
【0038】
1つの実施形態によれば、リサイクル組成物(C1)中のポリアミド(PA)のモノマー単位に対応するアミノ酸が選択される。例えば、11-アミノウンデカン酸は、ポリアミド11をリサイクルする方法において選択することができる。あるいは、例えば、12-アミノドデカン酸は、ポリアミド12をリサイクルする方法において選択することができる。
【0039】
1つの実施形態によると、アミノ酸は11-アミノウンデカン酸である。
【0040】
1つの実施形態によると、アミノ酸は12-アミノドデカン酸である。
【0041】
1つの実施形態によれば、段階(i)は、組成物(C1)の重量に対して、0.1重量%~10重量%、好ましくは0.2重量%~8重量%、例えば1重量%~7重量%のアミノ酸が供給される。
【0042】
鎖切断剤として使用されるアミノ酸は、組成物中に微量の形態、一般に0.1%未満で存在する重合モノマーの残留物として組成物(C1)中に存在し得るものと区別されるべきである。
【0043】
1つの実施形態によると、鎖切断剤は水である。
【0044】
1つの実施形態によれば、段階(i)は、組成物(C1)の重量に対して、0.05重量%~10重量%、好ましくは0.1重量%~8重量%、例えば0.5重量%~7重量%の水が供給される。
【0045】
変換方法の結果回収される組成物のための目標とされる固有粘度は、特に使用される鎖切断剤の量を調整することによって容易に達成され得る。典型的には、前記方法の間に、到達した最終固有粘度が高すぎる場合、鎖切断剤の量は、目標固有粘度が得られるまで、出発組成物の量を変化させることなく、10%(相対値で)ずつ増加させることができる。逆に、最終粘度が低すぎると、目標とする固有粘度が得られるまで、出発組成物の量を変えずに、鎖切断剤の量を10%(相対値で)ずつ減らすことができる。
【0046】
1つの実施形態によれば、本発明の方法の段階(i)において、1種以上の充填剤及び/又は添加剤を導入することができる。これらの充填剤及び/又は添加剤により、その最終使用に従ってポリアミドの特性を改善すること、及び/又は機械的特性(例えば、ヤング率、破断点伸び、衝撃強度)を改善すること、又は色などの審美的特性も改善することが可能になる。
【0047】
1つの実施形態によれば、充填剤及び/又は添加剤は、リサイクルされることが意図されるポリアミド(PA)をベースとする組成物(C1)に既に存在してもよく、又は回収段階(iii)後に組成物(C2)に加えてもよい。
【0048】
溶融状態の化合物の密接な混合を可能にするために、混練段階(ii)において適用される条件を選択する。
【0049】
1つの実施形態によれば、ポリアミド(PA)の融点に対して、少なくとも5℃、好ましくは少なくとも10℃高い温度が混練段階(ii)に適用される。本発明によるポリアミドをベースとする組成物の熱分解を避けるために、この温度は一般に330℃未満に保つべきである。
【0050】
本発明の関連において、組成物(C1)は、1種以上のポリアミドを含むことができる。組成物(C1)がポリアミドを含む場合、適用される温度は、ポリアミドの融点に対して、少なくとも5℃高い、好ましくは少なくとも10℃高い。組成物(C1)が数種のポリアミドを含む場合、適用される温度は、ポリアミドの最高融点に対して、少なくとも5℃高い、好ましくは少なくとも10℃高い。
【0051】
1つの実施形態によると、段階(ii)で適用される温度は、200℃より高く、330℃未満、好ましくは220℃より高く、320℃未満、例えば220℃~310℃の間、又は例えば230℃~300℃の間である。
【0052】
回収の段階(iii)は、当業者に既知の方法で行うことができる。
【0053】
典型的には、回収の段階は、押出段階、水含有冷却液を用いて溶融状態の組成物を冷却する段階、顆粒の形態で組成物を切断する段階、及び冷却液及び冷却された組成物の分離の段階からなる。
【0054】
切断段階は、冷却段階の間、又は冷却段階の後、分離段階の前又は分離段階の後に行うことができる。
【0055】
本発明の方法は、バッチ式方法であり得る。
【0056】
本発明の方法は、好ましくは連続方法であり得る。
【0057】
固有粘度が1.50未満、例えば1.40未満を有する組成物を回収するために、段階(ii)における混合物の滞留時間は、典型的には10分以下であり、特に5分未満、又は3分未満であり、実際にはさらに短い。
【0058】
したがって、本発明の方法は、ポリアミドをベースとする組成物のリサイクルを、簡単かつ非常に効果的な方法で行うことを可能にし、リサイクルされることが意図される組成物は10分未満、実際には5分未満又は3分未満、実際にはさらに短い時間処理され、出発材料として再利用され得るポリアミドをベースとする組成物を回収することができる。
【0059】
本発明は、このようにして、ポリアミドをベースとする組成物、特に粉末を用いた3D印刷プロセス(例えば、焼結による3D印刷プロセス)の結果変換されなかったもののような粉末形態におけるそのような組成物をリサイクルするための、簡単で効果的な解決策を提供する。
【0060】
別の態様によると、本発明の主題は、本発明の方法の実施のための装置である。1つの実施形態によれば、本発明の方法は、当業者に既知の「反応性」押出機(外部加熱付き)によって行われる。好ましくは、この方法は、共回転で回転する2つの搬送スクリューを備える押出機で実施される。
【0061】
別の態様によると、本発明の主題は、ポリアミドをベースとするリサイクル組成物であり、これは本発明の方法によって得ることができ、一般に1.50以下、好ましくは1.40以下、1.30以下、1.25以下、1.20以下、1.15以下、1.10以下、1.05以下、又は1.00以下の固有粘度を有する。
【0062】
変換方法の結果リサイクル組成物は、顆粒の形態、粉末、フィラメント、樹脂、繊維、フィルム又はパイプの形態、好ましくは顆粒の形態を取ることができる。
【0063】
本発明の利点の1つは、本発明による方法の結果リサイクル組成物が、直接使用可能及び/又は当業者に知られた技術で容易に変換できることである。
【0064】
別の態様によれば、本発明は、変換方法における、好ましくは顆粒の形態のポリアミドをベースとするリサイクル組成物の使用に関する。
【0065】
別の態様によれば、本発明は、出発材料として、好ましくは顆粒の形態のポリアミドをベースとするリサイクル組成物を使用することによる変換方法に関する。
【0066】
本発明はまた、上記で定義されたポリアミドをベースとするリサイクル組成物を使用することによる変換方法に従って製造された物品に関する。
【0067】
例として、本発明による方法の結果回収された組成物は、コーティング、塗料、耐食性組成物、紙用添加剤、電気泳動ゲル、多層複合材料、包装産業、玩具、繊維産業、自動車産業及び/又は電子機器産業において使用することができる。
【0068】
本発明はまた、3D印刷プロセス、好ましくは焼結による3D印刷プロセスにおける、本発明の方法に従って得られるポリアミドをベースとするリサイクル組成物の使用に関する。
【0069】
1つの実施形態によると、3D印刷プロセスは粉末を用いる方法である。
【0070】
あるいは、3D印刷プロセスは、粉末を用いるもの以外の、他のタイプの3D印刷プロセスであり得る。例えば、フィラメントを用いる、FDM(融合堆積モデリング)、又はFFF(融合フィラメント作製)のような技術を挙げることができる。
【0071】
本発明はまた、上記の3D印刷プロセスによって得られた製造物品に関する。
【0072】
この製造された品目は、特に自動車、船舶、航空、航空宇宙もしくは医療(義肢、聴覚系、細胞組織など)分野、設計分野における、電子機器のためのハウジング、電話通信、ホームオートメーション、コンピューティング、照明、スポーツ又は工業用器具のための試作品、モデル及び部品から選択することができる。
【0073】
これから本発明についてより詳細に説明する。
【0074】
<定義>
「固有粘度」
ポリアミドをベースとする組成物の溶液中の固有粘度は、溶媒が硫酸ではなくm-クレゾールである点、濃度が0.5重量%である点、及び温度が20℃である点を変更して、規格ISO307:2007に従って測定することが好ましい。
【0075】
ポリアミド
ポリアミドを定義するために使用される命名法は、規格ISO1874-1:1992「Plastics-Poliamide(PA) moulding and etrusion materials-Part 1:Designation」、特に3頁(表1及び2)に記載されており、当業者には周知である。
【0076】
本発明のリサイクルされることが意図されるポリアミドをベースとする組成物(C1)は、粉末、顆粒、フィラメント、樹脂、繊維、フィルム又はパイプなどの任意の工業用途における全ての形態で提供することができる。
【0077】
組成物(C1)は好ましくは1.50以上、好ましくは1.60以上の固有粘度を有する。
【0078】
ポリアミドは脂肪族、半芳香族及び環状脂肪族であり得る。
【0079】
ポリアミドは、ホモポリアミド、コポリアミド、ポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを有するコポリマー、及びそれらの混合物から選択することができる。
【0080】
また、それはポリアミドと少なくとも1種の他のポリマーとのブレンドであってもよく、ポリアミドはマトリックスを形成し、他のポリマー(複数可)は分散相を形成する。
【0081】
本発明の意味において、「ポリアミド」という用語は、以下の縮合生成物を意味すると理解される。
- アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、11-アミノウンデカン酸及び12-アミノドデカン酸などの1種以上のアミノ酸モノマー、又はカプロラクタム、エナントラクタム及びラウリルラクタムなどの1種以上のラクタムモノマー、
- ヘキサメチレンジアミン、デカンジアミン、ドデカメチレンジアミン、メタ-キシリレンジアミン、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン及びトリメチルヘキサメチレンジアミンなどのジアミンモノマーと、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸及びテトラデカン二酸などの二酸との1種以上の塩又は混合物。
【0082】
ポリアミドはコポリアミドであり得る。少なくとも2種の異なるモノマー、例えば少なくとも2種の異なるα,ω-アミノカルボン酸、もしくは2種の異なるラクタム、又はラクタムと異なる炭素数のα,ω-アミノカルボン酸との縮合から生じるコポリアミドを挙げることができる。また、少なくとも1種のα,ω-アミノカルボン酸(又は1種のラクタム)、少なくとも1種のジアミン及び少なくとも1種のジカルボン酸の縮合に起因するコポリアミドも挙げることができる。また、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸と先行するもの以外の脂肪族ジアミン及び先行するもの以外の脂肪族二酸から選択される少なくとも1種の他のモノマーとの縮合に起因するコポリアミドも挙げることができる。
【0083】
ポリアミドの本説明では、「モノマー」という用語は「反復単位」という意味でとらえるべきである。特別な場合は、ポリアミドの反復単位がジアミン及び二酸の組み合わせからなる場合である。それはモノマーに相当する等モル量の「XY」対とも言われるジアミンと二酸の組合せ、すなわち「ジアミン-二酸」対であると考えられる。これは、個々には、二酸又はジアミンは単なる構造単位であり、それだけではポリマーを形成するには不十分であるという事実によって説明される。
【0084】
ジアミンXの例として、6~12個の原子を有する脂肪族ジアミンを挙げることができ、ジアミンXがアリール及び/又は飽和環式であることも可能である。例として、ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、テトラメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、1,5-ジアミノヘキサン、2,2,4-トリメチル-1,6-ジアミノヘキサン、ポリオールジアミン、イソホロンジアミン(IPD)、メチルペンタメチレンジアミン(MPMD)、ビス(アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)、メタ-キシリレンジアミン、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン及びトリメチレンヘキサメチレンジアミンを挙げることができる。
【0085】
二酸(又はジカルボン酸)Yの例として、4~18個の炭素原子を有する酸を挙げることができる。例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、スベリン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、イソフタル酸、ブタン二酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、5-スルホイソフタル酸又は二量化脂肪酸(これらの二量化脂肪酸は少なくとも98%の二量体含有率を有し、好ましくは水素化される)のナトリウム又はリチウム塩が挙げられる。
【0086】
ラクタム又はアミノ酸モノマーは「Z」タイプであると言われる。
【0087】
ラクタムの例として、主環上に3~12個の炭素原子を有し、かつ置換され得るものを挙げることができる。例えば、β,β-ジメチルプロピオラクタム、α,α-ジメチルプロピオラクタム、アミロラクタム、カプロラクタム、カプリルラクタム、エナントラクタム、2-ピロリドン及びラウリラクタムを挙げることができる。
【0088】
アミノ酸の例として、アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、11-アミノウンデカン酸、n-ヘプチル-11-アミノウンデカン酸及び12-アミノドデカン酸のようなα,ω-アミノ酸を挙げることができる。
【0089】
1つの実施形態によれば、本発明によるポリアミド(PA)は、以下ノモノマー、すなわち、46、4T、54、59、510、512、513、514、516、518、536、6、64、66、69、610、612、613、614、616、618、636、6T、9、104、109、1010、1012、1013、1014、1016、1018、1036、10T、11、12、124、129、1210、1212、1213,1214、1216、1218、1236、12T、MXD6、MXD10、MXD12、MXD14、及びそれらのブレンドの少なくとも1種を含むポリアミド及びコポリアミドから選択される少なくとも1種のポリアミド又は1つのポリアミドブロックを含む。
【0090】
好ましくは、ポリアミド(PA)は、以下のXY又はZモノマー、すなわち、59、510、512、514、6、69、610、612、614、109、1010、1012、1014、10T、11、12、129、1210、1212、1214、12T、MXD6、MXD10、MXD12、MXD14、及びそれらのブレンドの少なくとも1種を含むポリアミド及びコポリアミドから選択される、特にPA11、PA12、PA1010、PA6、PA612及びそれらのブレンドから選択される少なくとも1種のポリアミドを含む。
【0091】
コポリアミドの例として、PA6/12、PA6/66、PA6/12/66、PA6/69/11/12、PA6/66/11/12、PA69/12又はPA11/10Tを挙げることができる。
【0092】
ポリアミドの一部をポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを有するコポリマーで置換すること、すなわち、先行するポリアミドの少なくとも1種及びポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを有する少なくとも1種のコポリマーを使用することは、本発明の範囲から逸脱しないであろう。
【0093】
ポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを有するコポリマーは、例えば、特に、反応性末端を有するポリアミドブロックと、以下のような反応性末端を有するポリエーテルブロックとの共重合に起因する。
1) ジアミン鎖末端を有するポリアミドブロックとジカルボキシル鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロック、
2) ジカルボキシル鎖末端を有するポリアミドブロックとポリエーテルジオールとして知られるα,ω-ジヒドロキシル化脂肪族ポリオキシアルキレンブロックのシアノエチル化及び水素化により得られるジアミン鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロック、
3) ジカルボキシル鎖末端を有するポリアミドブロックとポリエーテルジオールであり、得られた生成物は、この特定の場合、ポリエーテルエステルアミドである。これらのコポリマーは有利に使用される。
【0094】
ジカルボキシル鎖末端を有するポリアミドブロックは、例えば、連鎖制限ジカルボン酸の存在下でのアミノ酸、ラクタム又はジカルボン酸及びジアミンの縮合に由来する。これらのアミノ酸、ラクタム、二酸及びジアミンは上記のものである。
【0095】
ポリエーテルは、例えば、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)であり得る。後者はポリテトラヒドロフラン(PTHF)としても知られている。
【0096】
ポリアミドブロックの数-平均モル質量は300~15000の間であり、好ましくは600~5000g/molの間である。ポリエーテルブロックのモル質量は100~6000の間であり、好ましくは200~3000g/molの間である。
【0097】
ポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを有するポリマーは、一般にポリエーテルとポリアミドブロックの前駆体との同時反応によって調製される。
【0098】
例えば、ポリエーテルジオール、ラクタム(又はα,ω-アミノ酸)及び連鎖制限二酸は、少量の水の存在下で反応させることができる。本質的に非常に多様な長さのポリエーテルブロック及びポリアミドブロックだけでなく、ランダムに反応し、ポリマー鎖に沿ってランダムに分布している種々の反応物質も有するポリマーが得られる。
【0099】
ポリエーテルジオールブロックは、そのまま使用されるか、カルボキシル末端を有するポリアミドブロックと共重縮合させるか、又はポリエーテルジアミンに変換し、カルボキシル末端を有するポリアミドブロックと縮合させるためにアミノ化されるかのいずれかである。また、それらはランダムに分布した単位を有するポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを有するポリマーを製造するために、ポリアミド前駆体及び連鎖制限剤と混合することができる。
【0100】
ポリアミドの量に対するポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを有するコポリマーの量の比率は、有利には1/99~15/85重量の間である。
【0101】
ポリアミドと少なくとも1種の他のポリマーとのブレンドに関しては、それはポリアミドマトリックスを有するブレンドの形態で提供され、他のポリマー(複数可)は分散相を形成する。この他のポリマーの例として、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、PPO(ポリフェニレンオキシドの略)、PPS(ポリフェニレンスルフィドの略)又はエラストマーが挙げられる。
【0102】
ポリアミドは、少なくとも1種のポリマーとのブレンドとしてであるか否かにかかわらず、充填剤、顔料、抗酸化剤及びUV安定剤を含むことができる。
【0103】
有利には、リサイクルされることが意図されるポリアミドをベースとする組成物(C1)は、粉末又は顆粒のような分割された形態である。
【0104】
1つの実施形態によれば、ポリアミドをベースとする組成物(C1)は、3D印刷、特に焼結方法における3D印刷を目的とするポリアミドベースの粉末である。好ましくは、ポリアミドは加水分解重縮合の結果生じる。加水分解重縮合は高温の水によって誘導される。例えば、ラクタムの加水分解重縮合は、ラクタムを水で開環させた後、重合するために圧力下で加熱することからなる。
【0105】
任意に、加水分解方法において、リン酸などの触媒を使用することもできる。
【0106】
<充填剤及び添加剤>
リサイクルされることが意図される組成物(C1)は、充填剤を含むことができる。好ましくは、これらの充填剤は、粉末又は顆粒の形態である。これらの充填剤は、前記方法の結果回収した組成物に機械的特性(例えば、弾性率、破断点伸び、衝撃強度)を与えるために、本発明による処理方法前に組成物(C1)中に既に存在していてもよいし、又は本発明による処理方法中に添加してもよい。粉末充填剤の例として、炭酸塩含有無機充填剤、特に炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト又はカルサイト、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、ドロマイト、アルミナ水和物、ウォラストナイト、モンモリロナイト、ゼオライト、パーライト、ナノクレイ若しくはカーボンナノチューブなどのナノフィラー(ナノメートル程度の充填剤)、ガラス繊維又は炭素繊維を挙げることができる。
【0107】
リサイクルされることが意図される組成物(C1)は添加剤も含むことができる。添加剤の例として、流動剤(例えば、シリカ)、色素、着色用顔料、TiO2、赤外吸収用顔料、防火添加剤、抗酸化剤、光安定剤、UV安定剤、可塑剤、衝撃改質剤、帯電防止剤、難燃剤及びそれらの混合物を挙げることができる。好ましくは、これらの添加剤は、粉末又は顆粒の形態であり得る。
【0108】
<方法>
本発明の方法を実施するための装置として、当業者に知られている溶融プラスチックの配合、混練又は押出のための任意の装置を使用することができる。
【0109】
例として、内部ミキサー、オープンミル、一軸式又は逆回転若しくは共回転二軸式押出機、連続共混練機又は撹拌反応器を挙げることができる。混練装置は、例えば、巻取りシングルスクリューと組み合わせた共混練機、ギアポンプと組み合わせた共回転ツインスクリュー、押出機に接続された反応器など、上記の装置又はそれらの組み合わせの1つであり得る。押出装置は一般に、ポリマーの溶融領域、存在する実体間のブレンド及び反応領域、及び揮発性化合物を除去するための減圧/換気領域を識別するように構成される。これらの異なる領域には、装置のスクリューの構成、制限領域の使用、又は装置の結合によって材料形態を与えることができる。この装置は、さらに、好ましくは連続的である濾過システム、及びポリアミドのレオロジーに適切なストランド又は水中粒状化システムを備えていてもよい。
【0110】
例として、Werner 30又はCoperion ZSK30押出機を挙げることができる。あるいは、モーター、混練チャンバー、溶融状態の材料の混練を確実にするために異なる速度で反対方向に回転する2つのロータ、熱電対、及びデータ取得からなる、Brabender又はPlastograph W50EHT混練機などの任意の適切な混練機を使用することができる。
【0111】
好ましくは、本発明による方法の混練段階(ii)は、多数の利点を示す、かみ合い共回転二軸押出機で行う。例えば、かみ合い共回転二軸押出機は、連続的かつ短い滞留時間で方法を行うことを可能にする。さらに、生成物は熱酸化を受けにくく、特に黄変を起こしにくい。
【0112】
回収の段階(iii)は、一般に、押出段階、水含有冷却液を用いて溶融状態の組成物を冷却する段階、顆粒の形態の組成物を切断する段階、冷却液及び冷却された組成物を分離する段階からなる。
【0113】
押出段階は、従来の方法、特にダイにより行うことができる。一般に、ダイは、混合物を収容する反応器の出口、又はポンプを用いて溶融組成物を供給された伝達ラインの出口、又は大気圧よりも高い圧力を発生し得る混練装置、一般には押出機の出口に置かれる。ダイの出口では、明細書の後半で説明するように、材料は一般的に、棒若しくは帯に、又は、例えば、水中ペレット化の場合には、顆粒の形態で直接得られる。
【0114】
冷却段階は、押出後に得られた材料を、水含有冷却液と接触させて冷却する段階にある。水含有冷却液は、例えば、エタノール、イソプロパノール又はブタノールのようなアルコールを含み得る。冷却液は水のみを含むことが好ましい。
【0115】
このような段階に適した冷却装置は当業者に知られており、例えば、ダイプレートの装置の近傍に位置する水噴霧装置、又は、押し出された材料が導入されるダイプレートの装置の近傍に位置する、又はそれに接触する水の浴若しくは流れである。
【0116】
切断段階は、当業者に知られた適切な装置、例えば、歯を有するフライス盤システム、又はナイフ及びナイフブロックを含むシステムにおいて実施することができる。この装置は、一般に、フライス盤又はナイフブロックを駆動するためのモーターを備える。切断装置は通常回転式である。
【0117】
1つの実施形態によれば、切断段階は、冷却段階及び冷却液の分離段階の後に実施される。この場合、冷却液、一般に水は、組成物の棒又は帯から分離され、次いで、棒又は帯は「乾式」切断される。分離は、例えば、棒又は帯を同伴装置により浴から離すことによって行うことができる。冷却液は、重力を用いるか、又はスクリーン若しくは棒若しくはストリップがその上を動く任意の他の透かし細工のある装置を介して液体を吸い取ることによって取り除くことができる。これらの装置は当業者に知られている。
【0118】
1つの実施形態によれば、切断及び冷却段階は同時に開始する。この実施形態によれば、これらの2つの段階は、有利には、ダイの出口直後に配置された切断装置を用いて行われる。このような造粒装置は当業者に知られている。それは、ポリマーが押し出されるダイプレートに面する少なくとも1つの切断装置、及び冷却装置を備える。切断装置は一般に、ナイフ、ナイフブロック、及びナイフブロックを駆動するためのモーターを備える。ナイフブロックは通常回転式である。冷却装置は、ダイプレートの装置の近傍に位置する冷却液の噴霧又は循環のための装置からなることができる。これは、当業者に知られている「ペレット化」造粒装置の場合である。切断装置及びダイプレートは冷却液で満たされたチャンバー内に配置することもできる。この場合、それは「水中ペレット化」造粒装置である。冷却液で満たされたこのチャンバーでは、冷却液は一般に循環しており、それは、切断装置で形成された組成物の顆粒を冷却し、分離段階が行われる分離器に向けて輸送する。分離は、冷却液及び顆粒を分離する遠心機を用いて、又は、例えば、サイクロン装置を用いて行うことができる。
【0119】
本発明の方法は、顆粒、薄片又は粗い粉末の形態で組成物(C2)を得るために、粉砕段階が続くことができる。1つの実施形態によれば、本発明による方法は、顆粒、薄片又は粗い粉末の形態の組成物を得るために組成物(C2)が粉砕される粉砕段階を含む。
【0120】
粉砕段階は、ピンミル、ハンマーミル、又は回転ミルで行うことができる。
【0121】
この方法は、さらにふるい分け段階を含むことができる。ふるい分けはふるい上で行うことができる。
【0122】
あるいは、粉砕後、方法は、所望の粒径プロファイルを得るための選択段階を含むことができる。典型的には、粉末は選択ホイールによって分散され、分級空気によって輸送され得る。空気中に混入した塵埃は、支持ホイールにより搬送され、第1の出口により排出される。粗い製品は分級ホイールではねつけられ、第2の出口に運ばれる。セレクタは、並列に動作する複数の連続したホイールを備えることができる。
【0123】
具体的な実施形態によれば、組成物(C2)は、5~200μmの範囲の体積-中央径(D50)を有する粉末、好ましくは10~150μmの範囲のD50を有する粉末の形態を得るために、粉砕、ふるい分け及び/又は選択される。これらの粉末は、粉末を用いる3D印刷プロセス(例えば、焼結による3D印刷)において出発材料として使用することができる。
【0124】
以下の実施例を用いて本発明を非限定的な方法でさらに説明する。
【実施例】
【0125】
各試料について、0.05%の水分含有量まで乾燥させた、固有粘度1.94のPA11粉末を含む表1に挙げた出発材料を、窒素でフラッシングしながら260℃まで予熱したDSMブランドのMicro15マイクロコンパウンダーに導入する。スクリューの速度は100rpmであり、試験の持続時間に対応する3分間この押出機を再循環モードにする。試験を通して、垂直抗力(NF)を測定することによって、材料の溶融粘度の推定モニタリングを行うことができる。この垂直抗力は、固有粘度及び溶融粘度が増加するにつれて増加する。選択された間隔で試料を採取し、その固有粘度を評価する(表1)。
【0126】
【0127】
添加剤(例1)がないと、PA11粉末を溶融することができない。固有粘度が高すぎるため、スクリューを動作に設定するために必要な力が高すぎ、機械の損傷を防ぐためにスクリューが自動的にロックされる。
【0128】
PA11粉末(実施例2~4)に水を加えると、溶融が可能となり、垂直抗力が減少することが観察される。この現象は固有粘度の低下を伴う。少なくとも、固有粘度が1.20未満のPAは容易に達成される。
【0129】
アミノカルボン酸(実施例5及び6)を添加すると、垂直抗力及び固有粘度の低下が観察される。少なくとも、固有粘度が1.1未満のPA11は容易に達成され、11-アミノウンデカン酸の含有量を調整すれば1.0未満でも容易に達成される。
【0130】
カルボン酸を加えると(実施例7)、1.10以下の固有粘度が容易に得られ、垂直抗力及び固有粘度の低下が観測される。
【0131】
このように、1.50未満の固有粘度は、鎖切断剤を用いることにより容易に達成できる。
【0132】
この試験を10分間の期間、同じ条件下で実施した。その結果を測定した(表2)。表1に見られるように、3分後に粘度が低下し、その後実施例2~6で粘度が上昇し、実施例7では粘度が着実に低下する。
【0133】
【0134】
上記の実施例は、使用される鎖切断剤及びその量を調整し、反応時間を制御することによって、所望の固有粘度を容易に達成することができることを示す。典型的には、その後の粘度の上昇が所望される場合、アミノ酸タイプの鎖切断剤を選択することができる。
【国際調査報告】