(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】抗CD19キメラ抗原受容体を標的とする抗イディオタイプ抗体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230323BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230323BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230323BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230323BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230323BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230323BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230323BHJP
C07K 16/42 20060101ALI20230323BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230323BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20230323BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20230323BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20230323BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20230323BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C07K16/42
G01N33/53 N
C07K19/00
C07K14/705
C12N5/0783
C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022548521
(86)(22)【出願日】2021-02-10
(85)【翻訳文提出日】2022-09-13
(86)【国際出願番号】 IB2021051100
(87)【国際公開番号】W WO2021161197
(87)【国際公開日】2021-08-19
(32)【優先日】2020-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518370079
【氏名又は名称】クリスパー セラピューティクス アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】ラリット クマール
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA02
4B064CA05
4B064CA06
4B064CA08
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA13
4B064DA14
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
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4B065AA72X
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4B065AA90Y
4B065AB01
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4B065BA02
4B065CA25
4B065CA46
4H045AA20
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA50
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
抗CD19抗体FMC63の一本鎖可変フラグメント(scFv)、例えばキメラ抗原受容体(CAR)の一部として細胞表面上で発現されているscFvに結合可能な高親和性抗体。本願で同様に提供されるのは、そのような抗scFv抗体を製造する方法及び例えば細胞外ドメインとしてscFvを含む抗CD19 CARを発現するT細胞を検出するために、本願で開示される抗体を使用する方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列からなる一本鎖可変フラグメント(scFv)に結合する単離抗体であって、前記scFvの、抗体29E4B5と同じエピトープに結合するか、又は前記ScFvへの結合に関して抗体29E4B5と競合する、単離抗体。
【請求項2】
細胞表面上で発現された前記scFvに結合する、請求項1に記載の単離抗体。
【請求項3】
抗体29E4B5と同じ重鎖相補性決定領域及び同じ軽鎖相補性決定領域を含む、請求項1又は2に記載の単離抗体。
【請求項4】
抗体29E4B5と同じV
H及び同じV
Lを含む、請求項3に記載の単離抗体。
【請求項5】
完全長抗体又はその抗原結合フラグメントである、請求項1~4のいずれか一項に記載の単離抗体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体を共同でコードする核酸又は核酸のセット。
【請求項7】
ベクター又はベクターのセットである、請求項6に記載の核酸又は核酸のセット。
【請求項8】
前記ベクターは、発現ベクターである、請求項7に記載の核酸又は核酸のセット。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか一項に記載の核酸又は核酸のセットを含む宿主細胞。
【請求項10】
哺乳類細胞である、請求項9に記載の宿主細胞。
【請求項11】
サンプル中における、配列番号1のアミノ酸配列からなる一本鎖可変フラグメント(scFv)を検出又は定量する方法であって、
(i)請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体を、前記scFvを含有する疑いがあるサンプルと接触させることと、
(ii)前記scFvへの前記抗体の結合を検出することと
を含む、方法。
【請求項12】
前記抗体は、検出可能な標識に共役されている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記scFvは、細胞表面上で発現されている抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)の細胞外ドメインである、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記サンプルは、複数のT細胞を含み、前記T細胞は、前記抗CD19 CARを発現するように遺伝子操作されている、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記複数のT細胞は、1つ又は複数のドナーから得られたT細胞から調製される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記サンプルは、前記抗CD19 CARを発現するように遺伝子操作されている複数のT細胞を製造するプロセスから得られる、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記サンプルは、前記抗CD19 CARを発現するように遺伝子操作されている複数のT細胞を投与された対象から得られた生体サンプルである、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項18】
前記サンプルは、血液サンプルである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記対象は、ヒト癌患者である、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記ヒト癌患者は、再発性又は難治性のB細胞悪性腫瘍を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記再発性又は難治性のB細胞悪性腫瘍は、非ホジキンリンパ腫又はB細胞リンパ腫である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記複数のT細胞は、破壊されたTRAC遺伝子、破壊されたβ2M遺伝子又は両方を含む、請求項14~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
配列番号1のアミノ酸配列からなる一本鎖可変フラグメント(scFv)に結合する抗体を製造する方法であって、
(i)前記scFvに結合する前記抗体の発現を可能にする条件下において、請求項9又は10に記載の宿主細胞を培養することと;
(ii)そのようにして製造された前記抗体を細胞培養物から回収することと
を含む、方法。
【請求項24】
(iii)工程(ii)後に前記抗体を精製することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年2月11日に出願された米国仮特許出願第62/972,750号明細書の出願日の利益を主張するものであり、この特許出願の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法は、癌処置において有望な治療効果を示している。典型的には、CAR-T細胞は、患者の免疫細胞(自己)又はヒトドナーからの免疫細胞(同種異系)のいずれかの遺伝子操作により生成される。高品質の臨床用CAR-T細胞の生成は、この技術を幅広く適用するための必要条件である。従って、CARを発現するT細胞を検出するためのツールの開発は、非常に興味深い。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示は、マウス抗ヒトCD19抗体FMC63の一本鎖可変フラグメント(scFv)(配列番号1)、特に細胞表面で発現されているscFvに対する高い結合親和性及び特異性を有する抗体29E4B5の開発に少なくとも部分的に基づく。例えば、本明細書で開示される抗体29E4B5(別名29E4B5-1)は、細胞外ドメインとして配列番号1のscFvを有する抗CD19キメラ受容体(抗CD19 CAR)を発現するT細胞に対する高い結合親和性及び特異性を示した。抗体29E4B5は、抗CD19 CAR T細胞に結合可能な参照抗体(rec_mab3)と比較して、同じ抗CD19 CAR T細胞に対して優れた結合親和性も示した。
【0004】
従って、本開示は、一部の態様において、配列番号1のアミノ酸配列からなる一本鎖可変フラグメント(scFv)に結合する単離抗体(抗scFv抗体)を提供する。場合により、この抗scFv抗体は、scFvの、抗体29E4B5と同じエピトープに結合するか、又はscFvへの結合に関して抗体29E4B5と競合する。一部の実施形態では、この単離抗体は、例えば、キメラ抗原受容体の細胞外ドメインとして細胞表面上で発現されているscFvに結合する。
【0005】
一部の実施形態では、本単離抗体は、例示的な抗体29E4B5と同じ重鎖相補性決定領域及び同じ軽鎖相補性決定領域を含む。例えば、この単離抗体は、抗体29E4B5と同じVH及び同じVLを含み得る。
【0006】
本明細書で開示される抗scFv抗体のいずれも完全長抗体であり得る。代わりに、この抗scFv抗体は、抗原結合フラグメントであり得る。
【0007】
加えて、本開示は、本明細書で説明される抗scFv抗体のいずれかを共同でコードする核酸又は核酸のセット(2つの個々の核酸分子)を特徴とする。一部の実施形態では、この核酸又は核酸のセットは、ベクター又はベクターのセット、例えば発現ベクターである。
【0008】
同様に本明細書で提供されるのは、本明細書で開示される抗scFv抗体のいずれかをコードする核酸又は核酸のセットを含む宿主細胞である。一部の実施形態では、この宿主細胞は、哺乳類細胞である。
【0009】
他の態様では、本開示は、配列番号1のアミノ酸配列からなる一本鎖可変フラグメント(scFv)を検出又は定量する方法を特徴とする。そのような方法は、(i)本明細書で開示される抗scFv抗体(例えば、例示的な抗体29E4B5と同じ重鎖CDR及び軽鎖CDR又は同じVH鎖及びVL鎖を有する抗体)を、配列番号1のscFvを含有する疑いがあるサンプルと接触させることと、(ii)このscFvへのこの抗体の結合を検出することとを含み得る。一部の実施形態では、このscFvは、細胞表面上で発現されている抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)の細胞外ドメインである。一部の実施形態では、この抗scFv抗体は、検出可能な標識に共役され得る。
【0010】
一部の実施形態では、本サンプルは、細胞外ドメインとして配列番号1のscFvを含む抗CD19 CARを発現するように遺伝子操作されている複数のT細胞を含み得る。一部の実施形態では、複数のT細胞は、破壊されたTRAC遺伝子、破壊されたβ2M遺伝子又は両方をさらに含み得る。一部の例では、複数のT細胞は、1つ又は複数のドナーから得られたT細胞から調製される。
【0011】
場合により、本サンプルは、抗CD19 CARを発現するように遺伝子操作されている複数のT細胞を製造するための製造プロセスに由来する。
【0012】
一部の例では、本サンプルは、複数のT細胞を投与された対象から得られた生体サンプルであり、これらのT細胞は、抗CD19 CARを発現するように遺伝子操作されている。一部の実施形態では、このサンプルは、血液サンプルである。この対象は、ヒト癌患者、例えば再発性又は難治性のB細胞悪性腫瘍を有するヒト癌患者であり得る。例示的なB細胞悪性腫瘍として、非ホジキンリンパ腫又はB細胞リンパ腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
さらに、本開示は、本明細書で開示される抗scFv抗体のいずれかを製造する方法を提供する。この方法は、(i)scFvに結合する抗体の発現を可能にする条件下において、抗scFv抗体をコードする1つ又は複数の核酸を含む、本明細書で説明される宿主細胞のいずれかを培養することと;(ii)そのようにして製造された抗体を細胞培養物から回収することとを含み得る。一部の実施形態では、この方法は、(iii)工程(ii)後に抗体を精製することをさらに含み得る。
【0014】
本発明の1つ又は複数の実施形態の詳細を下記の説明に記載する。本発明の他の特徴又は利点は、下記の図面及びいくつかの実施形態の詳細な説明から明らかになり、且つ添付の特許請求の範囲からも明らかになるであろう。
【0015】
下記の図面は、本明細書の一部を形成し、且つ本明細書に示されている特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせてこの図面を参照することにより、より良好に理解され得る本開示の特定の態様をさらに示すために含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A-1B】SDA-PAGE(
図1A)及びウエスタンブロット分析(
図1B)で分析した組換えFMC63-ScFvタンパク質を示す写真である。レーンM
1:タンパク質マーカー(Takara Bio USA,Mountain View,CA,カタログ番号3452)。レーンM
2:タンパク質マーカー(GenScript Biotech,Piscataway,NJ,カタログ番号M00521)。レーン1:還元条件。レーン2:非還元条件。レーンP:陽性コントロールとしてのヒトIgG1、カッパ(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO,カタログ番号I5154)。一次抗体:マウス抗His mAb(GenScript Biotech,Piscataway,NJ,カタログ番号A00186)。
【
図2】抗体クローン29E4B5が、抗CD19 CAR T細胞(抗FMC63-scFvを含むCARを発現するCAR T細胞)に特異的に結合するが、抗BCMA CAR T細胞又は抗CD70 CAR T細胞に特異的に結合しないことを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で提供されるのは、(マウス抗ヒトCD19抗体FMC63に由来する)配列番号1のアミノ酸配列を有する一本鎖可変フラグメント(scFv)に結合可能な抗体、例えば抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)の細胞外ドメインとして細胞表面上で発現されているscFvに結合可能な抗体である。従って、本明細書で開示される抗体は、サンプル、例えば抗CD19 CAR-T細胞を製造するための製造プロセスから得られたサンプル又は抗CD19 CAR-T細胞を投与された患者から得られたサンプル中における、そのような抗CD19 CARを発現する細胞(例えば、T細胞)の存在を検出するために使用され得る。
【0018】
I.抗CD19一本鎖可変フラグメント(scFv)に結合する抗体
本開示は、配列番号1(下記に記載する)のアミノ酸配列を有する一本鎖可変フラグメント(scFv)に結合する抗体(例えば、抗体29E4B5)であって、マウス抗ヒトCD19抗体FMC63に由来する重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体を提供する。従って、本明細書で提供される抗体は、抗scFv抗体又は抗イディオタイプ(抗ID)抗体と称され得る。一部の実施形態では、本明細書で開示される抗体は、細胞表面上で発現されているscFvに結合可能である。具体例では、本明細書で開示される抗体は、細胞外ドメインとして配列番号1のscFvを含む、細胞表面上で発現されている抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)に結合する。リンカーフラグメントを太字で示す。
scFv抗原のアミノ酸配列(配列番号1):
【0019】
【0020】
抗体(複数の形態で互換的に使用される)は、免疫グロブリン分子であって、この免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して、本願における配列番号1のscFv等の標的に特異的に結合可能な免疫グロブリン分子である。本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、インタクトな(即ち完全長の)ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体だけでなく、その抗原結合フラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv)、一本鎖可変フラグメント(scFv)、抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、ダイアボディ、単一ドメイン抗体(例えば、ナノボディ)、単一ドメイン抗体(例えば、VHのみの抗体)、多重特異性抗体(例えば、二重特性抗体)並びに要求される特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の改変された配置(例えば、抗体のグリコシル化バリアント、抗体のアミノ酸配列バリアント及び共有結合的に改変された抗体)も包含する。抗体は、本明細書で開示される場合、IgD、IgE、IgG、IgA若しくはIgM(又はこれらのサブクラス)等の任意のクラスの抗体を含み、この抗体は、いずれかの特定のクラスのものである必要はない。重鎖の定常ドメインの抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、各種クラスに割り当てられ得る。免疫グロブリンには、下記の5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2にさらに分類され得る。免疫グロブリンの各種クラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ及びミューと呼ばれる。免疫グロブリンの各種クラスのサブユニット構造及び三次元配置は、公知である。
【0021】
典型的な抗体分子は、抗原結合に通常関与する重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む。VH領域及びVL領域は、「フレームワーク領域」(「FR」)として既知である、より保存されている領域が散在している超可変領域(「相補性決定領域」(「CDR」)としても既知である)にさらに細分化され得る。各VH及びVLは、典型的には、下記の順でアミノ末端からカルボキシ末端に整列された3つのCDR及び4つのFRで構成されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。フレームワーク領域及びCDRの範囲は、当技術分野で既知の方法論を使用して、例えばKabat定義、Chothia定義、AbM定義及び/又はcontact定義(これらの全ては、当技術分野で公知である)により正確に同定され得る。例えば、Kabat,E.A.,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242、Chothia et al.,(1989)Nature 342:877;Chothia,C.et al.(1987)J.Mol.Biol.196:901-917、Al-lazikani et al(1997)J.Molec.Biol.273:927-948;及びAlmagro,J.Mol.Recognit.17:132-143(2004)を参照されたい。hgmp.mrc.ac.uk及びbioinf.org.uk/absも参照されたい。
【0022】
本明細書で説明される抗scFv抗体は、それぞれ可変ドメイン及び定常ドメインを含む2本の重鎖及び2本の軽鎖を含む完全長抗体であり得る。代わりに、本明細書で説明される抗scFv抗体は、完全長抗体の抗原結合フラグメントであり得る。完全長抗体の「抗原結合フラグメント」という用語に包含される結合フラグメントの例として、下記が挙げられる:(i)VLドメイン、VHドメイン、CLドメイン及びCH1ドメインからなる1価のフラグメントであるFabフラグメント;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2つのFabフラグメントを含む2価のフラグメントであるF(ab’)2フラグメント;(iii)VHドメイン及びCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一アームのVLドメイン及びVHドメインからなるFvフラグメント、(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al.,(1989)Nature 341:544-546);及び(vi)機能性を保持している単離された相補性決定領域(CDR)。さらに、Fvフラグメントの2つのドメインVL及びVHは、別個の遺伝子によりコードされているが、これらは、これらを、VL領域及びVH領域が対となって一本鎖Fv(scFV)として既知の1価の分子を形成している単一のタンパク質鎖にすることが可能な合成リンカーにより、組換え法を使用して連結され得る。例えば、Bird et al.(1988)Science 242:423-426;及びHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883を参照されたい。
【0023】
本明細書で説明される抗scFv抗体は、好適な起源(例えば、マウス、ラット又はヒト)のものであり得る。そのような抗体は、天然には存在せず、即ち人間の行為(例えば、所望の抗原若しくはそのフラグメントで動物を免疫化するか、又は抗体ライブラリから単離される)がなければ動物中で産生されないであろう。本明細書で説明される抗scFv抗体のいずれも(例えば、抗体29E4B5)モノクローナル又はポリクローナルのいずれかであり得る。「モノクローナル抗体」は、同種の抗体集団を指し、「ポリクローナル抗体」は、異種の抗体集団を指す。これらの2つの用語は、抗体の供給源又は抗体の製造方法を限定するものではない。
【0024】
一部の実施形態では、本明細書で説明される抗scFv抗体は、ヒト抗体であり、このヒト抗体は、ヒト抗体ライブラリから単離され得るか、又はトランスジェニックマウス中で生成され得る。例えば、完全ヒト抗体を、特定のヒト免疫グロブリンタンパク質を発現するように操作されている市販のマウスを使用することにより得ることができる。より望ましい(例えば、完全ヒト抗体)又はより強い免疫反応を生じるように設計されているトランスジェニックマウスも、ヒト化抗体又はヒト抗体の生成に使用され得る。そのような技術の例は、Amgen,Inc.(Fremont,Calif.)のXenomouse(商標)並びにMedarex,Inc.(Princeton,N.J.)のHuMAb-Mouse(商標)及びTC Mouse(商標)である。別の代替では、抗体をファージディスプレイ又は酵母技術により組換えで製造し得る。例えば、米国特許第5,565,332号明細書;同第5,580,717号明細書;同第5,733,743号明細書;及び同第6,265,150号明細書;並びにWinter et al.,(1994)Annu.Rev.Immunol.12:433-455を参照されたい。代わりに、抗体ライブラリ提示技術(例えば、当技術分野で既知のファージ、酵母ディスプレイ、哺乳類細胞ディスプレイ又はmRNAディスプレイ技術)を使用して、非免疫化ドナー由来の免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーからインビトロでヒト抗体及び抗体フラグメントを製造し得る。
【0025】
他の実施形態では、本明細書で説明される抗scFv抗体は、ヒト化抗体又はキメラ抗体であり得る。ヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含む特定のキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はこれらの抗原結合性フラグメントである非ヒト(例えば、マウス)抗体の形態を指す。一般に、ヒト化抗体は、レシピエントのCDR由来の残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(例えば、マウス、ラット又はウサギ)(ドナー抗体)のCDR由来の残基に置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合により、ヒト免疫グロブリンの1つ又は複数のFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基に置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDR又はフレームワーク配列にも見出されないが、抗体性能をさらに洗練させ、且つ最適化するために含まれる残基を含み得る。場合により、ヒト化抗体は、全て又は実質的に全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、且つ全て又は実質的に全てのFR領域がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである少なくとも1つ(典型的には2つ)の可変ドメインを実質的に全て含み得る。ヒト化抗体は、最適には、免疫グロブリン定常領域又はドメイン(Fc)(典型的にはヒト免疫グロブリンのもの)の少なくとも一部も含むことになる。抗体は、国際公開第99/58572号パンフレットで説明されているように改変されているFc領域を有し得る。ヒト化抗体の他の形態は、元の抗体由来の1つ又は複数のCDRに「由来する」1つ又は複数のCDRとも呼ばれる、元の抗体に関して改変されている1つ又は複数のCDR(1、2、3、4、5又は6つ)を有する。ヒト化抗体は、親和性成熟も伴い得る。ヒト化抗体を構築する方法も当技術分野で公知である。例えば、Queen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:10029-10033(1989)を参照されたい。
【0026】
一部の実施形態では、本明細書で説明される抗scFv抗体は、キメラ抗体であり得る。キメラ抗体は、第1の種に由来する可変領域又は可変領域の一部と、第2の種に由来する定常領域とを有する抗体を指す。典型的には、このキメラ抗体において、軽鎖及び重鎖の両方の可変領域は、哺乳類(例えば、マウス、ウサギ及びラット等の非ヒト哺乳類)の1つの種に由来する抗体の可変領域を模倣するが、定常部分は、ヒト等の別の哺乳類に由来する抗体中の配列と相同である。一部の実施形態では、可変領域及び/又は定常領域においてアミノ酸改変がなされ得る。「キメラ抗体」を製造するために開発された技術は、当技術分野で公知である。例えば、Morrison et al.(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81,6851;Neuberger et al.(1984)Nature 312,604;及びTakeda et al.(1984)Nature 314:452を参照されたい。
【0027】
一部の実施形態では、本明細書で説明される抗scFv抗体は、対応する標的抗原(即ち配列番号1の抗CD19 scFv若しくはそれを含むキメラ抗原受容体等のポリペプチド)又はそのエピトープに特異的に結合する。抗原又はエピトープに「特異的に結合する」抗体は、当技術分野で十分に理解されている用語である。分子は、代替の標的と比べて特定の標的抗原と頻繁に、迅速に、長い持続時間で、高い活性で且つ/又は高い親和性で反応する場合、「特異的な結合」を示すと言われる。抗体は、他の物質への結合と比べて高い親和性で、活性で、迅速に且つ/又は長い持続時間で結合する場合、標的抗原又はエピトープに「特異的に結合する」。例えば、抗原又はその抗原エピトープに特異的に(又は優先的に)結合する抗体は、他の抗原又は同じ抗原中の他のエピトープへの結合と比べて高い親和性で、活性で、迅速に且つ/又は長い持続時間でこの標的抗原に結合する抗体である。これは、例えば、第1の標的抗原に特異的に結合する抗体が、第2の標的抗原に特異的又は優先的に結合し得るか又はし得ないというこの定義によっても理解される。従って、「特異的な結合」又は「優先的な結合」は、必ずしも排他的結合を(含み得るが)必要とするものではない。一部の例では、標的抗原又はそのエピトープに「特異的に結合する」抗体は、他の抗原又は同じ抗原中の他のエピトープに結合し得ない(即ち従来の方法ではベースライン結合活性のみが検出され得る)。
【0028】
一部の実施形態では、本明細書で説明される抗scFv抗体(例えば、抗体29E4B5)は、標的抗原(即ち配列番号1の抗CD19 scFv若しくはそれを含むキメラ抗原受容体等のポリペプチド)又はその抗原エピトープに対して好適な結合親和性を有する。本明細書で使用される場合、「結合親和性」は、見かけ上の会合定数又はKAを指す。KAは、解離定数(KD)の逆数である。本明細書で説明される抗体は、結合親和性(KD)が、抗体FMC63由来のscFvに対して少なく100mM、10mM、1mM、0.1mM、100μM、10μM、1μM、0.1μM、100nM、10nM、1nM、0.1nM又はより低い値であり得る。結合親和性の上昇は、KDの低下に対応する。第2の抗原と比較した第1の抗原に対する抗体の高い親和性結合は、第2の抗原への結合に関するKA(又は数値KD)と比べて第1の抗原への結合に関する高いKA(又は小さい数値KD)により示され得る。そのような場合、抗体は、第2の抗原(例えば、第2の構造の第1のタンパク質若しくはその模倣物又は第2のタンパク質)と比較して第1の抗原(例えば、第1の構造の同じ第1のタンパク質又はその模倣物)に対する特異性を有する。結合親和性(例えば、特異性又は他の比較)の差違は、少なくとも1.5、2、3、4、5、10、15、20、37.5、50、70、80、90、100、500、1000、10,000又は105倍であり得る。一部の実施形態では、本明細書で開示される抗体をいずれも、標的抗原又はその抗原エピトープに対する抗体の結合親和性を高めるためにさらに親和性成熟され得る。
【0029】
結合親和性(又は結合特異性)を平衡透析、平衡結合、ゲルろ過、ELISA、表面プラズモン共鳴又は分光法(例えば、蛍光アッセイを使用する分光法)等の様々な方法により決定し得る。結合親和性を評価するための例示的な条件は、HBS-P緩衝液(10mMのHEPES pH7.4、150mMのNaCl、0.005%(v/v)のSurfactant P20)中である。これらの技術を使用して、標的タンパク質濃度の関数として、結合した結合タンパク質の濃度を測定し得る。結合した結合タンパク質の濃度(「結合」)は、一般には、下記の式により遊離標的タンパク質(「遊離」)の濃度に関連付けられる。
[結合]=[遊離]/(Kd+[遊離])
【0030】
KAの正確な決定を行うことは、必ずしも必要ではなく、なぜなら、KAに比例する親和性の定量的測定値(例えば、ELISA分析又はFACS分析等の方法を使用して決定される)を得るのみで十分な場合があるからである。そのため、定量的測定値を、親和性の定性的測定値を得るか、又は例えばインビトロアッセイ若しくはインビボアッセイ等の機能的アッセイにおける活性により親和性の推測を得るために、より高い親和性が例えば2倍高いかどうかを決定する等の比較に使用し得る。
【0031】
例示的な抗体29E4B5の構造情報(重鎖及び軽鎖の可変ドメイン)を下記に記載する。重鎖のCDR及び軽鎖のCDR(Kabatアプローチにより決定される;例えば、Kabat,E.A.,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242,imgt.org/IMGTindex/V-QUEST.php及びncbi.nlm.nih.gov/igblast/)を太字で特定する。下記の表7も参照されたい。
【0032】
【0033】
一部の実施形態では、本明細書で説明される抗scFv抗体は、配列番号1中の、例示的な抗体29E4B5と同じエピトープに結合するか、又はscFv抗原(配列番号1)への結合に関してこの例示的な抗体と競合する。「エピトープ」は、本明細書で使用される場合、抗体が認識して結合する標的抗原上の部位を指す。この部位は、全体がアミノ酸成分で構成され得るか、全体がタンパク質のアミノ酸の化学的改変で構成され得るか(例えば、グリコシル部分)、又はこれらの組み合わせで構成され得る。重複するエピトープは、少なくとも1つの共通のアミノ酸残基を含む。エピトープは、典型的には、長さが6~15個のアミノ酸である直線状であり得る。代わりに、エピトープは、立体構造であり得る。抗体が結合するエピトープは、通常の技術、例えばエピトープマッピング法(例えば、下記の説明を参照されたい)により決定され得る。本明細書で説明される例示的な抗体と同じエピトープに結合する抗体は、この例示的な抗体と正確に同じエピトープ又は実質的に重複するエピトープ(例えば、3個未満の非重複アミノ酸残基、2個未満の非重複アミノ酸残基又は1個のみの非重複アミノ酸残基)に結合し得る。2種の抗体が同種抗原への結合に関して互いに競合するかどうかは、当技術分野で公知の競合アッセイにより決定され得る。
【0034】
一部の例では、本明細書で開示される抗scFv抗体は、例示的な抗体29E4B5と同じVH及び/又はVLのCDRを含む。同じVH及び/又はVLのCDRを有する2種の抗体とは、これらのCDRが、同じアプローチ(例えば、当技術分野で既知のKabatアプローチ、Chothiaアプローチ、AbMアプローチ、Contactアプローチ又はIMGTアプローチ。例えば、bioinf.org.uk/abs/を参照されたい)により決定した場合に同一であることを意味する。そのような抗体は、本明細書で説明される例示的な抗体と比較して同じVH、同じVL又は両方を有し得る。述べた様々なアプローチにより決定された、例示的な抗体29E4B5の重鎖及び軽鎖のCDRを下記の表7に示す。
【0035】
同様に本開示の範囲に入るのは、例示的な抗体29E4B5の機能的バリアントである。そのような機能的バリアントは、構造及び機能の両方がこの例示的な抗体に実質的に類似している。機能的バリアントは、この例示的な抗体と実質的に類似のVH及びVLのCDRを含む。例えば、この機能的バリアントは、抗体の全CDR領域中に最大で8個(例えば、8、7、6、5、4、3、2又は1個)のみのアミノ酸残基の変異を含み得、且つ実質的に類似の親和性で(例えば、同じ順序でKD値を有する)配列番号1中の同じエピトープに結合する。場合により、この機能的バリアントは、この例示的な抗体と同じ重鎖CDR3及び任意選択的にこの例示的な抗体と同じ軽鎖CDR3を有し得る。代わりに又は加えて、この機能的バリアントは、この例示的な抗体と同じ重鎖CDR2を有し得る。そのような抗体は、この例示的な抗体のVHと比較して、重鎖CDR1中にのみCDRアミノ酸残基の変異を有するVHフラグメントを含み得る。一部の例では、この抗体は、この例示的な抗体と同じVL CDR3及び任意選択的に同じVL CDR1又はVL CDR2を有するVLをさらに含み得る。
【0036】
場合により、アミノ酸残基の変異(例えば、抗体29E4B5の重鎖及び軽鎖のCDRの1つ又は複数におけるアミノ酸残基の変異)は、保存的アミノ酸残基置換であり得る。本明細書で使用される場合、「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸置換がなされるタンパク質の相対的な電荷又はサイズの特徴を変更しないアミノ酸置換を指す。バリアントは、そのような方法をまとめた参考文献(例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,J.Sambrook,et al.,eds.,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,1989又はCurrent Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubel,et al.,eds.,John Wiley&Sons、Inc.,New York)で見出されるような当業者に既知のポリペプチド配列の改変方法に従って調製され得る。アミノ酸の保存的置換として、下記の群内のアミノ酸の中でなされる置換が挙げられる:(a)M、I、L、V;(b)F、Y、W;(c)K、R、H;(d)A、G;(e)S、T;(f)Q、N;及び(g)E、D。
【0037】
一部の実施形態では、本明細書で開示される抗scFv抗体は、例示的な抗体29E4B5のVHCDRと比較して、個々に又は集合的に、少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%又は98%)同一である重鎖CDRを含み得る。代わりに又は加えて、本明細書で開示される抗scFv抗体は、例示的な抗体29E4B5のVLCDRと比較して、個々に又は集合的に、少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%又は98%)同一である軽鎖CDRを含み得る。本明細書で使用される場合、「個々に」は、抗体の1つのCDRが、例示的な抗体の対応するCDRに対して、示された配列同一性を共有することを意味する。「集合的に」は、組み合わされた抗体の3つのVH又はVLCDRが、組み合わされた例示的な抗体の対応する3つのVH又はVLCDRに対して、示された配列同一性を共有することを意味する。
【0038】
2つのアミノ酸配列の「パーセント同一性」は、Karlin and Altschul Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-77,1993にあるとおりに改変されたKarlin and Altschul Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-68,1990のアルゴリズムを用いて決定される。そのようなアルゴリズムは、Altschul,et al.J.Mol.Biol.215:403-10,1990のNBLAST及びXBLASTプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。BLASTタンパク質検索をXBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3で実施して、目的のタンパク質分子と相同のアミノ酸配列を得ることができる。2つの配列間にギャップが存在する場合、Gapped BLASTを、Altschul et al.,Nucleic Acids Res.25(17):3389-3402(1997)に記載されるとおりに利用し得る。BLAST及びGapped BLASTプログラムを利用する場合、各プログラム(例えば、XBLAST及びNBLAST)のデフォルトパラメータを使用し得る。
【0039】
一部の実施形態では、本明細書で説明される抗scFv抗体のいずれかの重鎖は、重鎖定常領域(CH)又はその一部(例えば、CH1、CH2、CH3若しくはこれらの組み合わせ)をさらに含み得る。重鎖定常領域は、任意の好適な起源(例えば、ヒト、マウス、ラット又はウサギ)のものであり得る。代わりに又は加えて、この抗体の軽鎖は、当技術分野で既知の任意の軽鎖定常領域(CL)であり得るCLをさらに含み得る。一部の例では、このCLは、カッパ軽鎖である。他の例では、このCLは、ラムダ軽鎖である。抗体の重鎖及び軽鎖の定常領域は、当技術分野で公知であり、例えばIMGTデータベース(www.imgt.org)又はwww.vbase2.org/vbstat.phpで提供されるものであり、これらの両方は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0040】
II.抗一本鎖可変フラグメント(scFv)抗体の調製
本明細書で説明される抗scFv抗体(例えば、抗体29E4B5)は、当技術分野で既知の任意の方法により製造され得る。例えば、Harlow and Lane,(1998)Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New Yorkを参照されたい。
【0041】
一部の実施形態では、本抗scFv抗体は、従来のハイブリドーマ技術により製造され得る。配列番号1の完全長抗CD19 scFv抗原又はそのフラグメント(任意選択的に、KLH等の担体タンパク質に共役されている)を使用して宿主動物を免疫化して、この抗原に結合する抗体を生成し得る。宿主動物の免疫化の経路及びスケジュールは、一般に、本明細書でさらに説明するように、抗体の刺激及び産生のための確立された従来の技術に従う。マウス抗体、ヒト化抗体及びヒト抗体の産生のための一般的な技術は、当技術分野で既知であり、且つ本明細書で説明される。ヒト等の任意の哺乳類対象又はそれに由来する抗体産生細胞を操作して、ヒトハイブリドーマ細胞株等の哺乳類の産生の基礎として機能させ得ることが企図される。典型的には、宿主動物に、本明細書で説明されるようなある量の免疫源を腹腔内、筋肉内、経口、皮下、足底内及び/又は皮内で接種する。
【0042】
ハイブリドーマは、Kohler,B.and Milstein,C.(1975)Nature 256:495-497の一般的な体細胞ハイブリダイゼーション技術又はBuck,D.W.,et al.,In Vitro,18:377-381(1982)により改変されているような技術を使用して、リンパ球及び不死化骨髄腫細胞から調製され得る。利用可能な骨髄腫株(例えば、限定されないが、X63-Ag8.653及びSalk Institute,Cell Distribution Center,San Diego,Calif.,USAからのもの)をハイブリダイゼーションで使用し得る。一般には、この技術は、ポリエチレングリコール等の融合剤を使用するか又は当業者に公知の電気的手段による骨髄腫細胞とリンパ球細胞との融合を含む。この融合後、細胞を融合培地から分離し、ヒポキサンチン-アミノプテリン-チミジン(HAT)培地等の選択増殖培地で増殖させて、ハイブリダイズしていない親細胞を排除する。血清が補充されているか又は補充されていない、本明細書で説明される培地のいずれかを、モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマの培養に使用し得る。細胞融合技術の別の代替として、EBV不死化B細胞を使用して、本発明の抗scFvモノクローナル抗体を産生させ得る。ハイブリドーマを必要に応じて増殖させてサブクローニングし、上清を従来の免疫アッセイ手順(例えば、ラジオイムノアッセイ、酵素免疫アッセイ又は蛍光免疫アッセイ)により抗免疫原活性に関してアッセイする。
【0043】
抗体の供給源として使用され得るハイブリドーマは、配列番号1に結合可能なモノクローナル抗体を産生する親ハイブリドーマの子孫細胞である全ての誘導体を包含する。そのような抗体を産生するハイブリドーマを、既知の手順を使用して、インビトロ又はインビボで増殖させ得る。このモノクローナル抗体は、必要に応じて、従来の免疫グロブリン精製手順(例えば、硫酸アンモニウム沈殿、ゲル電気泳動、透析、クロマトグラフィー及び限外ろ過)により、培養培地又は体液から単離され得る。望ましくない活性が存在する場合、例えば免疫源を固相に付着させた吸着剤上で調製物を流し、この免疫源から所望の抗体を溶出させるか又は放出させることにより、除去し得る。標的抗原又は免疫化する種において免疫原性であるタンパク質(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン又は二官能性薬剤若しくは誘導体化剤を使用するダイズトリプシン阻害剤、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介した共役)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リシン残基を介している)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl又はR1N=C=NR(式中、R及びR1は、異なるアルキル基である)に共役されている標的アミノ酸配列を含むフラグメントによる宿主動物の免疫化により、抗体(例えば、モノクローナル抗体)の集団を得ることができる。
【0044】
必要に応じて、目的の(例えば、ハイブリドーマ細胞株により産生されている)抗体(モノクローナル又はポリクローナル)を配列決定し得、次いでポリヌクレオチド配列を発現又は増殖のためにベクターにクローニングし得る。目的の抗体をコードする配列は、宿主細胞中においてベクター中で保持され得、次いでこの宿主細胞を将来の使用のために増殖させて凍結し得る。代替では、このポリヌクレオチド配列を、例えば抗体をヒト化させるか又は抗体の親和性(親和性成熟)若しくは他の特性を改善するための遺伝子操作に使用し得る。例えば、抗体が非ヒト供給源由来であり、且つヒトでの臨床試験及び処置で使用される場合、免疫反応を回避するために、定常領域をヒト定常領域により類似するように操作し得る。代わりに又は加えて、標的抗原に対する親和性及び/又は特異性を高めるために抗体配列を遺伝子操作することが望ましい場合がある。1つ又は複数のポリヌクレオチド変化を抗体に対して行い得、標的抗原に対するこの抗体の結合特異性が依然として維持されることは、当業者に明らかであろう。
【0045】
インタクトな抗体(完全長抗体)の抗原結合フラグメントは、通常の方法により調製され得る。例えば、F(ab’)2フラグメントは、抗体分子及びF(ab’)2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することにより生成され得るFabフラグメントのペプシン消化により製造され得る。
【0046】
遺伝子操作された抗体(例えば、ヒト化抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体及び二重特異性抗体)は、例えば、従来の組換え技術により製造され得る。一例では、標的抗原に特異的なモノクローナル抗体をコードするDNAを、従来の手順を使用して(例えば、このモノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)、容易に単離して配列決定し得る。ハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好ましい供給源として機能する。単離すると、このDNAを1つ又は複数の発現ベクターに組み入れ、次いでこの発現ベクターを宿主細胞(例えば、大腸菌(E.coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又は他に免疫グロブリンタンパク質を産生しない骨髄腫細胞)にトランスフェクトして、この組換え宿主細胞中でモノクローナル抗体を合成させ得る。例えば、PCT公開国際公開第87/04462号パンフレットを参照されたい。次いで、このDNAを、例えば相同なマウス配列の代わりにヒト重鎖及び軽鎖の定常ドメインのコード配列を置換することにより改変し得る(Morrison et al.,(1984)Proc.Nat.Acad.Sci.81:6851)か、又は免疫グロブリンコード配列に、非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全て又は一部を共有結合的に連結することにより改変し得る。このようにして、標的抗原の結合特異性を有する遺伝子操作された抗体(例えば、「キメラ」又は「ハイブリッド」抗体)を調製し得る。
【0047】
当技術分野で既知であり且つ本明細書で説明される方法に従って得られた抗体は、当技術分野で公知の方法を使用してキャラクタライズされ得る。例えば、1つの方法は、抗原が結合するエピトープを同定すること(即ち「エピトープマッピング」)である。例えば、Harlow and Lane,Using Antibodies,a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1999の第11章で説明されているように、タンパク質上のエピトープの位置をマッピングしてキャラクタライズするための多くの方法が当技術分野で既知であり、抗体-抗原複合体の結晶構造の解明、競合アッセイ、遺伝子フラグメント発現アッセイ及び合成ペプチドに基づくアッセイが挙げられる。追加の例では、エピトープマッピングを使用して、抗体が結合する配列を決定し得る。このエピトープは、直鎖エピトープであり得るか(即ちアミノ酸の単一ストレッチに含まれ得るか)、又は必ずしも単一ストレッチ(一次構造直鎖配列)に含まれ得ないアミノ酸の3次元相互作用により形成された立体構造エピトープであり得る。様々な長さ(例えば、少なくとも4~6個のアミノ酸の長さ)のペプチドを単離し得るか又は(例えば、組換えにより)合成し得、且つ抗体との結合アッセイに使用し得る。別の例では、抗体が結合するエピトープを、標的抗原配列に由来する重複ペプチドを使用し、且つこの抗体による結合を決定することにより、系統的なスクリーニングで決定し得る。遺伝子フラグメント発現アッセイによれば、標的抗原をコードするオープンリーディングフレームを無作為に又は特定の遺伝子構築によりフラグメント化し、発現された抗原のフラグメントと、試験する抗体との反応性を決定する。この遺伝子フラグメントを例えばPCRにより製造し、次いで放射性アミノ酸の存在下においてインビトロでタンパク質に転写して翻訳し得る。次いで、放射性標識された抗原フラグメントへの抗体の結合を免疫沈降及びゲル電気泳動により決定する。特定のエピトープを、ファージ粒子の表面上で提示されているランダムペプチド配列の大きいライブラリ(ファージライブラリ)を使用することによっても同定し得る。代わりに、重複ペプチドフラグメントの定義されたライブラリを単純な結合アッセイにおいて試験抗体への結合に関して試験し得る。追加の例では、抗原結合ドメインの変異誘発、ドメインスワッピング実験及びアラニンスキャニング変異誘発を実施して、エピトープ結合に必要な、十分な且つ/又は必須の残基を同定し得る。例えば、標的抗原の変異体を使用して、ドメインスワッピング実験を実施し得、この変異体では、一本鎖可変フラグメント(scFv)タンパク質の様々なフラグメントは、密接に関連しているが、抗原的に異なるタンパク質からの配列に置き換えられている(スワップされている)。この変異体scFvポリペプチドへの抗体の結合をアッセイすることにより、抗体結合に対する特定の抗原フラグメントの重要性を評価し得る。
【0048】
代わりに、競合アッセイを、同じ抗原に結合することが知られている他の抗体を使用して実施して、ある抗体が他の抗体と同じエピトープに結合するかどうかを決定し得る。競合アッセイは、当業者に公知である。
【0049】
一部の実施形態では、本明細書で開示される抗scFv抗体は、下記で例示する従来の組換え技術を使用して製造され得る。
【0050】
本明細書で説明される抗体の重鎖及び軽鎖をコードする核酸を1つの発現ベクターにクローニングし得、各ヌクレオチド配列は、好適なプロモーターに作動可能に連結されている。一例では、重鎖及び軽鎖をコードするヌクレオチド配列のそれぞれは、異なるプロモーターに作動可能に連結されている。代わりに、重鎖及び軽鎖をコードするヌクレオチド配列は、単一のプロモーターに作動可能に連結され得、その結果、重鎖及び軽鎖の両方がこの同じプロモーターから発現される。必要に応じて、重鎖コード配列と軽鎖コード配列との間に内部リボソーム侵入部位(IRES)を挿入し得る。
【0051】
一部の例では、本抗体の2本の鎖をコードするヌクレオチド配列を2つのベクターにクローニングし、これらを同じ又は異なる細胞に導入し得る。これらの2本の鎖が異なる細胞中で発現される場合、これらのそれぞれを、それらを発現する宿主細胞から単離し得、単離された重鎖及び軽鎖を、抗体の形成を可能にする好適な条件下で混合してインキュベートし得る。
【0052】
一般に、抗体の1本又は全ての鎖をコードする核酸配列は、当技術分野で既知の方法を使用して、好適なプロモーターに作動可能に連結させて、好適な発現プロモーターにクローニングすることができる。例えば、ヌクレオチド配列及びベクターを好適な条件下で制限酵素と接触させて、各分子上において、互いに対を形成してリガーゼにより互いに連結され得る相補的な末端を作製し得る。代わりに、遺伝子の末端に合成核酸リンカーをライゲートさせ得る。この合成リンカーは、ベクター中の特定の制限部位に対応する核酸配列を含む。発現ベクター/プロモーターの選択は、抗体の製造で使用される宿主細胞のタイプに依存するであろう。
【0053】
本明細書で説明される抗体の発現に様々なプロモーターを使用し得、このプロモーターとして下記が挙げられるが、これらに限定されない:サイトメガロウイルス(CMV)中間初期プロモーター、ウイルスLTR、例えばラウス肉腫ウイルスLTR、HIV-LTR、HTLV-1 LTR、サルウイルス40(SV40)初期プロモーター、大腸菌(E.coli)lac UV5プロモーター及び単純ヘルペスtkウイルスプロモーター。
【0054】
制御可能なプロモーターも使用し得る。そのような制御可能なプロモーターとして、下記が挙げられる:lacオペレーター担持哺乳類細胞プロモーターからの転写を制御するための転写調節因子として大腸菌(E.coli)からのlacリプレッサーを使用するもの(Brown,M.et al.,Cell,49:603-612(1987))、テトラサイクリンリプレッサー(tetR)を使用するもの(Gossen,M.,and Bujard,H.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5547-5551(1992);Yao,F.et al.,Human Gene Therapy,9:1939-1950(1998);Shockelt,P.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92:6522-6526(1995))。他のシステムとして、FK506二量体、エストラジオールを使用するVP16若しくはp65、RU486、ジフェノールムリスレロン(diphenol murislerone)又はラパマイシンが挙げられる。誘導可能なシステムは、Invitrogen、Clontech及びAriadから入手可能である。
【0055】
オペロンと共にリプレッサーを含む制御可能なプロモーターを使用し得る。一実施形態では、大腸菌(E.coli)由来のlacリプレッサーは、lacオペレーター担持哺乳類細胞プロモーターからの転写を制御するために転写調節因子として機能し得(M.Brown et al.,Cell,49:603-612(1987));Gossen and Bujard(1992);(M.Gossen et al.,Natl.Acad.Sci.USA,89:5547-5551(1992))、テトラサイクリンリプレッサー(tetR)を転写活性化因子(VP16)と組み合わせて、tetR-哺乳類細胞転写活性化因子融合タンパク質tTA(tetR-VP16)を作製し、ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)主要最初期プロモーター由来のtetO担持最小プロモーターと組み合わせて、哺乳動物細胞中での遺伝子発現を制御するためのtetR-tetオペレーターシステムを作製した。一実施形態では、テトラサイクリン誘導性スイッチが使用される。テトラサイクリンオペレーターがCMVIEプロモーターのTATAエレメントの下流に適切に配置された場合、terR-哺乳類細胞転写因子融合誘導体よりもむしろテトラサイクリンリプレッサー(tetR)が単独で、哺乳類細胞中での遺伝子発現を制御するための極力なトランスモジュレーターとして機能し得る(Yao et al.,Human Gene Therapy,10(11):1811-1818,1999)。このテトラサイクリン誘導性スイッチの1つの特定の利点は、その制御可能な効果を達成するために、場合により細胞に対して毒性の可能性があるテトラサイクリンリプレッサー-哺乳類細胞トランス活性化因子又はリプレッサー融合タンパク質の使用を必要としないことである(Gossen et al.,Natl.Acad.Sci.USA,89:5547-5551(1992);Shockett et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92:6522-6526(1995))。
【0056】
加えて、ベクターは、例えば、下記の一部又は全てを含み得る:選択可能なマーカー遺伝子、例えば哺乳類細胞中での安定した又は一過性のトランスフェクタントを選択するためのネオマイシン遺伝子;高レベルの転写のための、ヒトCMVの最初期遺伝子由来のエンハンサー/プロモーター配列;mRNAの安定性のための、SV40由来の転写終結シグナル及びRNAプロセシングシグナル;SV40ポリオーマ複製起点及び適切なエピソーム複製のためのColE1;内部リボソーム結合部位(IRES)、多用途の多重クローニング部位;並びにセンスRNA及びアンチセンスRNAのインビトロでの転写のためのT7 RNAプロモーター及びSP6 RNAプロモーター。導入遺伝子を含むベクターの製造に好適なベクター及び方法は、当技術分野で公知であり、且つ利用可能である。
【0057】
本明細書で説明される方法を実行するのに有用なポリアデニル化シグナルの例として、下記が挙げられるが、これらに限定されない:ヒトコラーゲンIポリアデニル化シグナル、ヒトコラーゲンIIポリアデニル化シグナル及びSV40ポリアデニル化シグナル。
【0058】
本抗体のいずれかをコードする核酸を含む1つ又は複数のベクター(例えば、発現ベクター)は、この抗体の産生に好適な宿主細胞に導入され得る。この宿主細胞は、この抗体又はその任意のポリペプチド鎖の発現に好適な条件下で培養され得る。そのような抗体又はそのポリペプチド鎖を、従来の方法(例えば、親和性精製)を介して、培養された細胞により(例えば、この細胞又は培養物上清から)回収し得る。必要に応じて、この抗体のポリペプチド鎖を、この抗体の産生を可能にするのに好適な期間にわたり好適な条件下でインキュベートし得る。
【0059】
一部の実施形態では、本明細書で説明される抗体を調製する方法は、本明細書で説明される抗体の重鎖及び軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターを含む。この組換え発現ベクターを従来の方法(例えば、リン酸カルシウム媒介トランスフェクション)により好適な宿主細胞(例えば、dhfr-CHO細胞)中に導入し得る。陽性形質転換体宿主細胞を選択して、この抗体を形成する2種のポリペプチド鎖の発現を可能にする好適な条件下で培養し、この抗体を細胞又は培養培地から回収し得る。必要に応じて、この宿主細胞から回収した2種の鎖を、この抗体の形成を可能にする好適な条件下でインキュベートし得る。
【0060】
一例では、2種の組換え発現ベクターが提供され、一方は、本明細書で説明される抗体(例えば、抗体29E4B5)の重鎖をコードし、他方は、本明細書で説明される抗体(例えば、抗体29E4B5)の軽鎖をコードしている。これらの2種の組換え発現ベクターの両方を従来の方法(例えば、リン酸カルシウム媒介トランスフェクション)により好適な宿主細胞(例えば、dhfr-CHO細胞)に導入し得る。代わりに、これらの発現ベクターのそれぞれを好適な宿主細胞に導入し得る。陽性形質転換体を選択して、この抗体のポリペプチド鎖の発現を可能にする好適な条件下で培養し得る。これらの2種の発現ベクターを同じ宿主細胞に導入した場合、この宿主細胞中で産生された抗体をこの宿主細胞又は培養培地から回収し得る。必要に応じて、この宿主細胞又は培養培地からポリペプチド鎖を回収し、次いで抗体の形成を可能にする好適な条件下でインキュベートし得る。これらの2種の発現ベクターを異なる宿主細胞に導入した場、これらのそれぞれを対応する宿主細胞又は対応する培養培地から回収し得る。次いで、2種のポリペプチド鎖を抗体の形成に好適な条件下でインキュベートし得る。
【0061】
標準的な分子生物学的技術を使用して、組換え発現ベクターを調製し、宿主細胞をトランスフェクトし、形質転換体を選択し、宿主細胞を培養し、培養培地から抗体を回収する。例えば、いくつかの抗体をプロテインA又はプロテインG共役マトリックスによる親和性クロマトグラフィーにより単離し得る。
【0062】
本明細書で説明される抗scFv抗体(例えば、抗体29E4B5)の重鎖、軽鎖又は両方をコードする核酸、それを含むベクター(例えば、発現ベクター)及びこのベクターを含む宿主細胞のいずれも本開示の範囲内である。
【0063】
他の実施形態では、本明細書で説明される抗scFv抗体は、一本鎖抗体フラグメント(scFv)であり得る。重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列と、軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列とを連結することにより、組換え技術により一本鎖抗体を調製し得る。好ましくは、これらの2つの可変領域間に柔軟なリンカーが組み込まれている。代わりに、一本鎖抗体の製造に関して説明されている技術(米国特許第4,946,778号明細書及び同第4,704,692号明細書)を適合して、配列番号1の一本鎖可変フラグメント(scFv)に特異的なファージ又は酵母scFvライブラリ及びscFvクローンを生成し得、通常の手順に従ってこのライブラから同定し得る。陽性クローンをさらなるスクリーニングに供して、配列番号1のscFvに結合するものを同定し得る。
【0064】
III.抗一本鎖可変フラグメント(scFv)抗体の適用
本開示は、本明細書で説明される抗scFv抗体のいずれか(例えば、抗体29E4B5)を使用して、サンプル中における、(CD19に特異的な)配列番号1のアミノ酸配列からなる一本鎖可変フラグメント(scFv)を検出又は定量する方法も提供する。本明細書で開示される方法を実施するために、この抗scFv抗体のいずれかを、本明細書で開示される標的抗原-配列番号1の抗CD19 scFv又はそれを含むCAR構築物等のポリペプチドを含有する疑いがあるサンプルと接触させ得る。一般に、「接触させること」又は「接触」という用語は、本明細書で開示される抗scFv抗体と、ある場合にはサンプル中の標的抗原との間の複合体の形成に十分で好適な条件下での好適な期間にわたる、標的抗原を含有する疑いがあるサンプルと、この抗scFv抗体との曝露を指す。一部の実施形態では、接触させることを、支持膜の表面を横切ってサンプルを移動させる毛細管現象により実施する。ある場合には、そのようにして形成された抗体-抗原複合体を通常のアプローチにより決定し得る。インキュベーション後のそのような抗体-抗原複合体の検出は、サンプル中における標的抗原の存在を示す。必要に応じて、抗体-抗原複合体の量を定量し得、この量は、サンプル中における標的抗原のレベルを示す。
【0065】
一部の実施形態では、サンプル中における、本明細書で開示される標的抗原(即ち配列番号1の抗CD19 scFv又はそれを含むポリペプチド)を、免疫アッセイを介して、本明細書で開示される抗scFv抗体のいずれかを使用して検出又は定量し得る。免疫アッセイの例として下記が挙げられるが、これらに限定されない:免疫ブロッティングアッセイ(例えば、ウエスタンブロット)、免疫組織化学分析、フローサイトメトリーアッセイ、免疫蛍光アッセイ(IF)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)(例えば、サンドイッチELISA)、ラジオイムノアッセイ、電気化学発光ベース検出アッセイ、磁気免疫アッセイ、側方流動アッセイ及び関連技術。サンプル中における標的抗原を検出するための追加の好適な免疫アッセイは、当業者に明らかであろう。
【0066】
一部の実施形態では、本明細書で説明される抗scFv抗体(例えば、抗体29E4B5と同じ重鎖及び軽鎖のCDRを含むか又は同じVH及び同じVLを含む抗体)を、検出可能なシグナルを直接的又は間接的に放出可能な任意の薬剤であり得る検出可能な標識に共役させ得る。そのような検出可能なシグナルの存在又はこのシグナルの強度は、サンプル中における標的抗原の存在又は量を示す。代わりに、本明細書で開示される方法では、抗scFv抗体に特異的か又は標的抗原に特異的な二次抗体を使用し得る。例えば、本方法で使用される抗scFv抗体が完全長抗体である場合、この二次抗体は、抗scFv抗体の定常領域に結合し得る。他の場合、この二次抗体は、抗scFv抗体の結合エピトープと異なる標的抗原のエピトープに結合し得る。本明細書で開示される二次抗体のいずれも、検出可能な標識に共役され得る。
【0067】
本明細書で説明されるアッセイ方法では、当技術分野で既知の任意の好適な検出可能な標識を使用し得る。一部の実施形態では、検出可能な標識は、検出可能なシグナルを直接放出する標識であり得る。例として、蛍光標識又は色素が挙げられる。蛍光標識は、光励起時に再発光し得る蛍光化合物であるフルオロフォアを含む。蛍光標識の例として下記が挙げられるが、これらに限定されない:キサンテン誘導体(例えば、フルオレセイン、ローダミン、オレゴングリーン、エオシン及びテキサスレッド)、シアニン誘導体(例えば、シアニン、インドカルボシアニン、オキサカルボシアニン、チアカルボシアニン及びメロシアニン)、スクアライン誘導体及び環置換スクアライン(例えば、Seta色素及びSquare色素)、スクアラインロタキサン誘導体、例えばSeTau色素、ナフタレン誘導体(例えば、ダンシル誘導体及びプロダン誘導体)、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体(例えば、ピリジルオキサゾール、ニトロベンゾオキサジアゾール及びベンゾオキサジアゾール)、アントラセン誘導体(例えば、アントラキノン、例えばDRAQ5、DRAQ7及びCyTRAK Orange)、ピレン誘導体、例えばカスケードブルー、オキサジン誘導体(例えば、Nileレッド、Nileブルー、クレシルバイオレット及びオキサジン170)、アクリジン誘導体(例えば、プロフラビン、アクリジンオレンジ及びアクリジンイエロー)、アリールメチン誘導体(例えば、オーラミン、クリスタルバイオレット及びマラカイトグリーン)並びにテトラピロール誘導体(例えば、ポルフィン、フタロシアニン及びビリルビン)。色素は、この色素の色の原因となる発色団を含む分子であり得る。一部の例では、検出可能な標識は、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE)、ビオチン、アロフィコシアニン(APC)又はAlexa Fluor(登録商標)488であり得る。
【0068】
一部の実施形態では、検出可能な標識は、例えば、試薬の、検出可能なシグナルを直接放出する生成物への変換により、検出可能なシグナルを間接的に放出する分子であり得る。一部の例では、そのような検出可能な標識は、無色基質から着色生成物を生成可能な酵素(例えば、β-ガラクトシダーゼ、HRP又はAP)であり得る。
【0069】
本明細書で開示される抗scFv抗体のいずれかを使用して、配列番号1の抗CD19 scFvを含むキメラ抗原受容体を発現するように遺伝子操作されている細胞(例えば、T細胞等の免疫細胞)を検出及び/又は定量し得る。本明細書で使用される場合、キメラ抗原受容体(CAR)は、望ましくない細胞(例えば、癌細胞等の疾患細胞)により発現されている抗原を認識して結合するように操作されている人工の免疫細胞受容体を指す。CARポリペプチドを発現するT細胞は、CAR T細胞と呼ばれる。一般に、CARは、標的抗原(例えば、抗体の一本鎖可変フラグメント(scFv)又は別の抗体フラグメント)を認識する細胞外ドメインと、T細胞受容体(TCR)複合体(例えば、CD3ζ)のシグナル伝達ドメインを含む細胞内ドメインと、ほとんどの場合に共刺激ドメインとを含む融合ポリペプチドである(Enblad et al.,Human Gene Therapy.2015;26(8):498-505)。CAR構築物は、細胞外ドメインと細胞内ドメインとの間にヒンジ及び膜貫通ドメインをさらに含み得、且つ表面に発現するためにN末端にシグナルペプチドを含み得る。
【0070】
本明細書で開示される抗scFv抗体のいずれかにより検出される抗CD19 CARは、この抗CD19 CARが細胞表面上で発現された場合に細胞外ドメインであり得る配列番号1の抗CD19 scFvを含む。配列番号1の抗CD19 scFvに加えて、本明細書で開示される抗CD19 CARは、細胞内ドメイン(例えば、CD3ζのシグナル伝達ドメイン)及び任意選択的に1つ又は複数の共刺激ドメイン(例えば、CD28又は4-1BBの共刺激ドメイン)を含み得る。場合により、そのような抗CD19 CARは、膜貫通ドメイン(例えば、CD8αの膜貫通ドメイン)をさらに含み得る。任意選択的に、抗CD19 CARは、最大300個のアミノ酸(例えば、10~100個のアミノ酸又は5~20個のアミン酸)を含み得るヒンジドメインをさらに含み得る。一部の実施形態では、このヒンジドメインは、CD8ヒンジドメインであり得る。他のヒンジドメインを使用し得る。
【0071】
配列番号1の抗CD19 scFvを含む抗CD19 CARの例を国際公開第2019/097305A2号パンフレット中に見出し得、この関連する開示は、本明細書で言及されている目的及び主題のために参照により本明細書に組み込まれる。特定の例では、抗CD19 CARは、配列番号7のアミノ酸配列(下記の表6に記載されている)を含み得る。
【0072】
一部の実施形態では、本明細書で開示される抗scFv抗体のいずれかを使用して、細胞外ドメインとして配列番号1を含む抗CD19 CARを発現するT細胞を製造するための製造プロセス(例えば、CTX110細胞を製造するための製造プロセス)中、そのような抗CD19 CAR T細胞を測定し得る。例えば、2019年11月13日に出願された米国仮特許出願第62/934,991号明細書を参照されたい(この関連する開示は、本明細書で言及されている目的及び主題のために参照により本明細書に組み込まれる)。CTX110細胞は、配列番号7のアミノ酸配列を含む抗CD19 CARを発現し、且つ破壊された内在性TRAC及びβ2M遺伝子を有する遺伝子操作T細胞の集団である。
【0073】
場合により、配列番号1の抗CD19 scFvを含む抗CD19 CARを発現する遺伝子改変T細胞(例えば、CTX110細胞)を製造するための製造プロセスは、ヒトドナーから得ることができるT細胞を富化させて活性化させることと、そのようにして活性化されたT細胞に遺伝子改変を導入して、少なくとも一部が抗CD19 CAR及び他の所望の遺伝子編集を発現するT細胞を生成することと、そのようにして生成された遺伝子改変T細胞の集団からTCRαβ発現T細胞を枯渇させることと、得られた抗CD19 CAR発現T細胞を回収することとを含み得る。例えば、2019年11月13日に出願された米国仮特許出願第62/934,991号明細書を参照されたい(この関連する開示は、本明細書で言及されている目的及び主題のために参照により本明細書に組み込まれる)。
【0074】
所望の抗CD19 CARを発現するT細胞を製造するためのそのような製造プロセスをモニタリングするために、この製造プロセスの任意の段階中に(例えば、配列番号1のscFvを含む抗CD19 CARをコードする核酸をT細胞に導入する前若しくは後又は両方で)1つ又は複数のサンプルを得ることができ、このサンプル中における抗CD19 CAR発現T細胞の量を、本明細書で説明される方法に従って測定し得る。例えば、本明細書で開示される蛍光色素共役抗scFv抗体を、細胞表面で発現された抗CD19 CARへのこの抗scFv抗体の結合を可能にする好適な期間にわたり、好適な条件下において、1つ又は複数のサンプルと共にインキュベートし得る。次いで、抗CD19 CARを発現するT細胞のレベルの存在を通常の方法(例えば、蛍光標識細胞分取(FACS))により決定し得る。
【0075】
例えば、T細胞を、このT細胞を遺伝子改変するための成分と共にインキュベートした(所望の抗CD19 CARをコードする核酸をこの細胞に導入することを含む)後、得られたT細胞を含むサンプルを得ることができ、本明細書で開示される抗scFv抗体を使用して、この抗CD19 CARを発現する、サンプル中におけるT細胞の一部を検出又は定量し得る。代わりに又は加えて、遺伝子操作後及び/又は得られた遺伝子操作T細胞の回収後のインビトロでの増殖工程のいずれかの後の、TCRαβT細胞を除去するための枯渇工程後、遺伝子改変T細胞を含む1つ又は複数のサンプルを得ることができる。このサンプル中における抗CD10 CAR発現T細胞の量を、本明細書で開示される抗scFv抗体を使用して決定し得る。
【0076】
一部の例では、凍結保存後且つ患者への投与前に、本明細書で開示される抗CD19 CARを発現するように遺伝子操作されているT細胞の集団からサンプルを得ることができる。サンプル中における抗CD19 CAR発現T細胞(CAR+T細胞)の量を、本明細書で開示される抗scFv抗体を使用して測定して、十分な量の抗CD19 CAR発現T細胞が患者に投与されていることを確認し得る。
【0077】
一部の実施形態では、本明細書で開示される抗scFv抗体のいずれかを、配列番号1の抗CD19 scFvを含む抗CD19 CARを発現するT細胞(例えば、CTX110細胞)を、処置が必要な対象に投与した後、そのようなCAR-T細胞の臨床評価(例えば、この抗CD19 CAR-T細胞のインビボでの薬物動態的(PK)挙動及び/又は薬力学的(PD)挙動の評価)に使用し得る。
【0078】
例えば、抗CD19 CARを発現するように遺伝子操作されているT細胞(例えば、CTX110細胞)を投与した患者から、この投与後の1つ又は複数の時点で1つ又は複数の生体サンプルを得ることができる。この1つ又は複数の生体サンプル中におけるCAR+T細胞のレベルを、従来の方法(例えば、FACS)により、本明細書で開示される抗scFv抗体のいずれかにより測定し得る。例えば、投与後の様々な時点において、そのようなCAR+T細胞レベルを使用して、このヒト患者における抗CD19 CAR-T細胞のPK及び/又はPD特徴を分析し得る。そのようなCAR+細胞レベルを使用して、このヒト患者における潜在的な処置効果も評価し得る。
【0079】
本明細書で使用される場合、「生体サンプル」は、対象からの組織(例えば、血液、血漿又はタンパク質)を含む組成物を指す。生体サンプルは、対象から採取された未処理の初期サンプルであり得るか、又はその後の処理されたサンプル(例えば、部分的に精製若しくは保存された形態)であり得る。一部の実施形態では、複数(例えば、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ又はより多く)の生体サンプルを、例えば抗CD19 CARを発現するT細胞を投与されているヒト患者中におけるそのようなT細胞のレベルを評価するために、経時的に又は特定の時間間隔で対象から採取し得る。
【0080】
「患者」、「対象」又は「個体」という用語は、互換的に使用され得、本明細書で説明される分析を必要とする対象を指す。一部の実施形態では、対象は、抗CD19 CARを発現するように遺伝子操作されている複数のT細胞を投与されているヒト患者である。一部の実施形態では、このヒト患者は、例えば、再発性又は難治性のB細胞悪性腫瘍(例えば、非ホジキンリンパ腫又はB細胞リンパ腫)を有する癌患者である。
【0081】
IV.配列番号1の抗CD19 scFv及びそれを含む抗CD19 CARを検出するためのキット
本開示は、サンプル(例えば、抗CD19 CAR-T細胞を製造するための製造プロセスから得られるサンプル又は抗CD19 CAR-T細胞を投与された患者から得られるサンプル)中における、配列番号1のアミノ酸配列からなる一本鎖可変フラグメント(scFv)の検出又は定量での使用のためのキットも提供する。そのようなキットは、抗scFv抗体(例えば、抗体29E4B5等の本明細書で説明されるもののいずれか)が入っている1つ又は複数の容器を含み得る。
【0082】
一部の実施形態では、このキットは、本明細書で説明される方法のいずれかによる使用のための指示書を含み得る。この含まれる指示書は、本明細書で説明されるようなサンプル中におけるscFvの検出又は定量の説明を含み得る。本発明のキットに入っている指示書は、典型的には、ラベル又はパッケージ挿入物(例えば、このキットに含まれる紙シート)に記載されている指示書であるが、機械による読み取り可能な指示書(例えば、磁気若しくは光記録ディスクに記載されている指示書又はこのキットに記載されたインターネットアドレスを通じて入手可能な指示書)も許容される。
【0083】
本発明のキットは、好適な包装内にある。好適な包装として、バイアル、ボトル、ジャー、柔軟な包装(例えば、密封されたMylar又はプラスチックバッグ)等が挙げられるが、これらに限定されない。このキットは、本明細書で説明される抗scFv抗体の1つ又は複数のアリコートを含み得る。
【0084】
キットは、緩衝剤及び解説情報等の追加の構成要素を任意選択的に提供し得る。通常、このキットは、容器と、容器上の又は容器に付随したラベル又は添付文書とを含む。一部の実施形態では、本発明は、上記で説明されているキットの内容物を含む製品を提供する。
【0085】
一般的技術
本開示の実施では、別段の指摘がない限り、当技術分野の技術の範囲内にある分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学及び免疫学の従来技術が用いられる。そうした技術は、例えば、下記の文献で詳細に説明されている:Molecular Cloning:A Laboratory Manual,second edition(Sambrook,et al.,1989)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.1984);Methods in Molecular Biology,Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis,ed.,1989)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts,1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,and D.G.Newell,eds.1993-8)J.Wiley and Sons;Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.):Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos,eds.,1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel,et al.eds.1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullis,et al.,eds.1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coligan et al.,eds.,1991);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons,1999);Immunobiology(C.A.Janeway and P.Travers,1997);Antibodies(P.Finch,1997);Antibodies:a practice approach(D.Catty.,ed.,IRL Press,1988-1989);Monoclonal antibodies:a practical approach(P.Shepherd and C.Dean,eds.,Oxford University Press,2000);Using antibodies:a laboratory manual(E.Harlow and D.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999);The Antibodies(M.Zanetti and J.D.Capra,eds.Harwood Academic Publishers,1995);DNA Cloning:A practical Approach,Volumes I and II(D.N.Glover ed.1985);Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hames&S.J.Higgins eds.1985);Transcription and Translation(B.D.Hames&S.J.Higgins,eds.(1984;Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.(1986;Immobilized Cells and Enzymes(lRL Press,(1986;and B.Perbal,A practical Guide To Molecular Cloning(1984);F.M.Ausubel et al.(eds.)。
【0086】
当業者であれば、さらなる詳述なしに、上記の説明に基づいて本発明を最大限に利用し得ると考えられる。従って、下記の特定の実施形態は、単なる例示として解釈すべきであり、決して本開示の残りの部分を限定するものではない。本明細書で引用される全ての刊行物は、本明細書で言及されている目的及び主題のために参照により組み込まれる。
【実施例】
【0087】
説明される本発明がより十分に理解され得るようにするために、下記に実施例を記載する。本願で説明される実施例は、本明細書で提供される方法及び組成物を説明するために提供されるものであり、いかなる意味でもこれらの範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0088】
実施例1.抗原の発現及び精製
この実施例は、マウス抗ヒトCD19モノクローナル抗体のHis-タグ付き一本鎖可変フラグメント(FMC63-scFv)の発現及び精製を報告しており、後にこのフラグメントを使用して、実施例2で説明するFMC63-scFvに対する抗体を生成した。
【0089】
FMC63-scFvタンパク質は、N末端からC末端に、N末端での人工シグナルペプチド、配列番号1のアミノ酸配列からなる抗CD19 scFvフラグメント及びC末端でのHis-タグを含む。このFMC63-scFvタンパク質のアミノ酸配列及び対応する核酸配列をそれぞれ配列番号4及び配列番号5に示す。人工シグナルペプチドに対応する配列に下線を引き、His-タグ配列を太字で示す。
【0090】
【0091】
FMC63-scFvに対応するDNA配列(配列番号5)をpcDNA3.4ベクターにサブクローニングし、得られたFMC63-scFv DNA発現構築物をExpi293F細胞にトランスフェクトした。Expi293F細胞1リットルを血清フリーExpi293FTM発現培地(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA、カタログ番号A1435101)中の懸濁液で培養して、組換えFMC63-scFvタンパク質を一過性に発現させた。細胞培養物上清をろ過し、HisTrap(登録商標)FF Crudeカラム(GE Healthcare,Chicago,IL、カタログ番号17-5286-01)にロードした。発現した組換えFMC63-scFvタンパク質を精製し、緩衝液をPBS(pH7.2)に交換した。
【0092】
組換えFMC63-scFvタンパク質を還元条件下(
図1A~1B中において1と表示されている)及び非還元条件下(
図1A~1B中において2と表示されている)でSDS-PAGE及びウエスタンブロットにより分析した。この組換えFMC63-scFvタンパク質の推定上の分子量(MW)及び純度は、それぞれ約27kDa及び95%であった。Bradfordタンパク質アッセイに基づいて、この組換えFMC63-scFvタンパク質の推定上の濃度及び収量は、それぞれ0.41mg/ml及び11.67mgであった。質量分析を使用して、精製された組換えFMC63-scFvタンパク質の実験による平均MWを決定した。理論上の平均MW及び実験による平均MWは、それぞれ27324.4Da及び27320.2Daであった。MALDI-TOF質量分析を使用して、発現した組換えFMC63-scFvタンパク質のアミノ酸配列を立証した。
【0093】
実施例2.抗FMC63-scFv抗体の生成
マウスの免疫化及び血清抗体価の決定を、本明細書で説明されるように実施した。5匹のBALB/cマウス及び5匹のC57BL/6マウスを使用して、抗FMC63-scFv抗体を生成した。表2に示すスケジュールでの、適切なアジュバントで調製したFMC63-scFvタンパク質の腹腔内注射により、マウスを免疫化した。
【0094】
各ブースト後、血液サンプルから血清を分離し、抗体価を間接ELISAにより決定した。コーティング抗原は、下記であった:
A:組換えFMC63-scFvタンパク質;
B:TGSTSGSGKPGSGEGSTKG(FMC63-scFvリンカーペプチド)(配列番号6);
C:不適切なHis-タグ付きタンパク質;及び
D:全ヒトIgG。
【0095】
コーティング抗原を1μg/ml及び100μl/ウェルにおいてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.4で調製した。二次抗体は、Peroxidase-AffiniPure Goat Anti-Mouse IgG,Fcγフラグメント特異性(Jackson ImmunoResearch,West Grove,PA、カタログ番号115-035-071)であった。3回目の免疫化後、各マウスからの血清サンプルをフローサイトメトリーによっても評価した。
【0096】
3回目の免疫化後、マウス#B274を選択して細胞融合を行ったが、陽性クローンは、得られなかった。4回目の免疫化後、マウス#B279を選択し、標準的なハイブリドーマプロトコルを使用して細胞融合を行った。培養物上清を、上述した4種の抗原の同じセットを使用するELISAスクリーニングに供した。2回目の融合から、合計6個のELISA陽性ウェル(クローン)を同定した。表3。
【0097】
【0098】
【0099】
1回目のサブクローニング後、4つのELISA陽性クローン(17G2、29E4、33C9及び45G2)を表す28個のELISA陽性サブクローンを得た。表4。
【0100】
【0101】
28個のELISA陽性サブクローンの培養物上清をまた、配列番号1の抗CD19 scFvを含む抗CD19 CARを発現するCAR T細胞(抗CD19 CAR T細胞)への結合に関して、フローサイトメトリーによっても評価した。この抗CD19 CAR(配列番号7)のアミノ酸配列を表6に示し、且つ国際公開第2019/097305号パンフレットで説明されており、この関連の開示は、本明細書で言及されている目的及び主題のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0102】
サブクローンの培養物上清を一次抗体として使用した。3つの異なる希釈でのコントロール抗FMC63-scFv抗体を陽性コントロールとして使用した。陰性培養物上清(CS)を陰性コントロールとして使用した。蛍光標識されたヤギ抗マウスIgG(Jackson ImmunoResearch,West Grove,PA、カタログ番号115-605-008)を二次抗体として使用した。
【0103】
フローサイトメトリーにより試験した28個のサブクローンのうち、29E4クローンから産生されたものは、抗CD19 CAR+T細胞への優れた結合を示した。3つの異なる希釈及び3つのサブクローン(29E4A2、29E4B2及び29E4B5)の培養物上清での参照抗FMC63-scFv抗体(rec_mab3)の一連の代表的なフローサイトメトリープロファイルの結果を表5に示す。
【0104】
【0105】
サブクローン29E4B5の上清からの抗FMC63-scFv抗体をマイクロスケールで精製し、配列番号7の抗CD19 CARを発現するCAR T細胞(抗CD19 CAR T細胞)への結合に関してフローサイトメトリーにより分析した。抗BCMA scFVを含む抗BCMA CARを発現するCAR T細胞(抗BCMA CAR T細胞)又は抗CD70 scFVを含む抗CD70 CARを発現するCAR T細胞(抗CD70 CAR T細胞)を陰性コントロールとして使用した。抗FMC63-scFv抗体を様々な希釈で分析した。
【0106】
抗BCMA CARの配列(配列番号8)及び抗CD70 CARの配列(配列番号9)は、表6に示されており、且つ国際公開第2019/097305号明細書及び同第2019215500号明細書で説明されており、この関連の開示は、本明細書で言及されている目的及び主題のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0107】
【0108】
図2に示すように、サブクローン29E4B5からの抗FMC63-scFv抗体は、抗CD19 CARを発現するCAR T細胞に特異的に結合した。サブクローン29E4B5からの抗FMC63-scFv抗体と、抗BCMA CAR又は抗CD70 CARを発現するCAR T細胞との間において、認識可能な結合を観察しなかった。
図2。
【0109】
マウス抗FMC63-scFvモノクローナ抗体29E4B5の可変領域を配列決定した。TRIZOL(登録商標)Reagent(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA、カタログ番号15596-026)を使用して、ハイブリドーマ細胞から全RNAを単離した。テンプレートとしての全RNAと、アイソタイプ特異的抗センスプライマー又はユニバーサルプライマーとを使用する逆転写により、cDNAを生成した。The PrimeScript(商標)1stStrand cDNA合成キット(Takara Bio USA,Mountain View,CA、カタログ番号6215A)を製造業者の技術マニュアルに従って使用した。重鎖及び軽鎖の配列を、cDNA末端の迅速増幅(RACE)(GenScript Biotech,Piscataway,NJ)を使用して増幅させた。増幅させた抗体フラグメントをサブクローニングした。PCRを使用して、挿入サイズが正確なクローンを特定した。重鎖可変(VH)ドメイン及び軽鎖可変(VL)ドメインの配列に下記のオンラインツールを使用して注釈を付けた:National Center for Biotechnology Information(NCBI)Nucleotide BLAST(登録商標)、IMGT/V Quest及びNCBI IgBLAST(登録商標)。29E4B5抗体のアイソタイプは、IgG1、κであると決定した。
【0110】
マウス抗FMC63-scFvモノクローナ抗体29E4B5の重鎖可変(VH)ドメイン及び軽鎖可変(VL)ドメインの配列を表7に示す。
【0111】
【0112】
まとめると、本明細書で説明される結果は、マウス抗FMC63-scFvモノクローナル抗体29E4B5の生成を含む、マウス抗ヒトCD19抗体(FMC63)のscFvに対する抗体の生成を示す。
【0113】
実施例3.大規模な抗体製造。
2種の異なる方法を使用して、29E4B5抗体を大規模に調製した。
【0114】
第1の(ネイティブな)方法では、ハイブリドーマ細胞(29E4B5)を10日にわたり、ローラーボトル中において低IgG培養培地で培養した。上清を回収し、プロテインA精製を行って、精製された抗体を得た。この精製された抗体を、ELISAを使用して、FMC63-scFvタンパク質及び抗CD19 CAR T細胞に結合する能力に関して分析した(表8)。組換えFMC63-scFvタンパク質に対するモノクローナル抗体29E4B5の力価を1:512,000と推定した(表8)。29E4B5抗体は、FMC63-scFvリンカーペプチド、His-タグ付きタンパク質又は全ヒトIgGに対して最小の交差活性を示した。
【0115】
【0116】
第2の(組換え)方法では、29E4B5抗体のVH及びVLの配列を有するプラスミドを生成し、HEK293 6E細胞に一過性にトランスフェクトした。トランスフェクトしたHEK293 6E細胞の上清を組換え29E4B5抗体の大規模精製に使用した。
【0117】
第1又は第2の方法を使用して製造された29E4B5抗体を、フローサイトメトリーを使用して、抗CD19 CAR T細胞に結合する能力に関して参照抗FMC63-scFv抗体(rec_mab3)と比較した。両方の方法により、rec_mab3と比べて抗CD19細胞に対する親和性が高い29E4B5抗体が製造され、1:6,400希釈でも高いCAR陽性率が示された(表9)。
【0118】
【0119】
参照抗FMC63-scFv抗体(rec_mab3)のVH及びVLのアミノ酸配列を表10に示す。
【0120】
【0121】
まとめると、これらの結果は、フローサイトメトリーアッセイにおいて、マウスモノクローナル抗体(29E4B5)は、参照抗体(rec_mab3)と比べて高い親和性で、FMC63-scFvを含むCARを発現するT細胞(抗CD19 CAR T細胞)に結合することを示す。
【0122】
実施例4 PBMCと混合した抗CD19 CAR発現細胞の測定
抗CD19 CARを発現する遺伝子操作T細胞を0.0%、0.1%、1%、10%、25%、50%及び100%の希釈でPBMCと混合した。この遺伝子操作T細胞は、約50%のCAR発現を示しており、そのため、PBMCと混合した場合のCAR+T細胞の予想される%は、0.0%、0.05%、0.5%、5%、12.5%、25%及び50%である。この混合細胞集団中におけるCAR+細胞の実際の割合を、1:200の希釈で例示的な抗CD19 CAR抗イディオタイプ抗体29E4B5-1を使用する技術的に2重のフローサイトメトリーを使用して評価した。
【0123】
表11に示すように、フローにより測定したCAR+細胞の観察した割合は、PBMCと混合した場合に抗CD19 CAR発現T細胞の予想される割合と高い相関があり、これは、抗CD19 CAR抗イディオタイプ抗体により、PBMCと混合した場合にCAR+細胞の検出及び定量が可能となることを示唆する。この抗イディオタイプ抗体は、より高い希釈(例えば、1%)であっても、PMBC中における抗CD19 CAR発現細胞を効果的に検出して定量する。これらの結果は、本明細書で開示される抗CD19 CARイディオタイプ抗体を使用して血液サンプル中における抗CD19 CAR発現細胞のレベルを測定し得ることを示す。
【0124】
【0125】
他の実施形態
本明細書で開示される特徴の全てを任意の組み合わせで組み合わせ得る。本明細書で開示される各特徴を同じ、均等な又は同様の目的に役立つ代替的な特徴に置き換え得る。そのため、別途明示的に定めた場合を除き、開示される各特徴は、一般的な一連の均等な又は同様の特徴の単なる一例である。
【0126】
上記の説明から、当業者は、本発明の本質的な特性を容易に把握し得、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明を各種の用途及び条件に適合させるために本発明の種々の変更形態及び修正形態をなし得る。そのため、他の実施形態も本請求項の範囲に含まれるものとする。
【0127】
均等物
本明細書でいくつかの本発明の実施形態を説明及び図示しているが、当業者であれば、本明細書で説明される機能を実施し、且つ/又は結果及び/又は1つ若しくは複数の利点を得るための様々な他の手段及び/又は構造を容易に想定するものであり、そうした変形形態及び/又は修正形態のそれぞれは、本明細書で説明される本発明の実施形態の範囲内にあるものと見なされる。より一般には、当業者であれば、本明細書で説明される全てのパラメーター、寸法、材料及び構成は、例示的であることを意図しており、実際のパラメーター、寸法、材料及び/又は構成は、本発明の教示が使用される特定の用途に依存することを容易に理解するであろう。当業者は、本明細書で説明される特定の本発明の実施形態に対する多くの均等物を、日常の実験のみを使用して認識するか又は確認可能である。従って、上述の実施形態は、単に例として提示されており、且つ添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内において、本発明の実施形態は、具体的に説明及び特許請求される以外の別の方法で実践され得ることを理解されたい。本開示の本発明の実施形態は、本明細書で説明される各個別の特徴、システム、物品、材料、キット及び/又は方法を対象とする。加えて、2つ以上のそうした特徴、システム、物品、材料、キット及び/又は方法の任意の組み合わせは、そうした特徴、システム、物品、材料、キット及び/又は方法が相互に矛盾しない場合、本開示の本発明の範囲内に含まれる。
【0128】
全ての定義は、本明細書中で定義されて使用される場合、辞書の定義、参照により組み込まれる文献中の定義及び/又は定義される用語の普通の意味よりも優先されるものと理解すべきである。
【0129】
本明細書で開示される全ての参考文献、特許及び特許出願は、それぞれ引用されている主題に関して参照により組み込まれており、場合により文献の全体を包含する場合がある。
【0130】
不定冠詞「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、反対に明確に示されない限り、「少なくとも1つ」を意味するものと理解されるべきである。
【0131】
「及び/又は」という表現は、本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、そのよう結合される要素、即ち一部の場合に接続的に提示され、他の場合に離接的に提示される要素の「いずれか又は両方」を意味するものと理解されるべきである。「及び/又は」と共に列挙される複数の要素は、同じようにされるべきであり、即ちそのように結合される要素の「1つ又は複数」と解釈されるべきである。「及び/又は」の節により具体的に特定される要素以外に、具体的に特定された要素に関連するか又は関連しないに関わらず、他の要素が任意選択的に提示され得る。そのため、非限定的な例として、「A及び/又はB」への言及は、「含む」等のオープンエンド用語と共に使用される場合、例えば一実施形態ではAのみ(任意選択的にB以外の要素を含む)を指し得、別の実施形態ではBのみ(任意選択的にA以外の要素を含む)を指し得、さらに別の実施形態ではA及びBの両方(任意選択的に他の要素を含む)を指し得る。
【0132】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「又は」は、上記で定義されている「及び/又は」と同じ意味を有するものと理解されるべきである。例えば、リスト中の項目を分離する場合、「又は」又は「及び/又は」は、包括的であり、即ち要素のリストの少なくとも1つを含むが、2つ以上の数及び任意選択的に追加的な列挙されていない項目も含むものと解釈されるべきである。「~の1つのみ」若しくは「~の厳密に1つ」又は特許請求の範囲で使用される場合には「~からなる」等、反対を明らかに示す用語のみが、多数の要素又は要素のリストの厳密に1つの要素の包含を指す。一般に、「又は」という用語は、本明細書で使用される場合、「いずれか」、「~の1つ」、「~の1つのみ」又は「~の正確に1つ」等の排他的な用語の前に置かれた場合、排他的代替物を示すに過ぎない(即ち「一方又は他方、ただし両方ではない」)ものと解釈されるべきである。「~から本質的になる」は、特許請求の範囲で使用される場合、特許法の分野で使用されるような通常の意味を有するものとする。
【0133】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、1つ又は複数の要素の列挙に関する「少なくとも1つ」という語句は、要素の列挙内の要素の任意の1つ又は複数から選択される少なくとも1つの要素であるが、要素の列挙内に具体的に列挙されたあらゆる要素の少なくとも1つを必ずしも含まず、且つ要素の列挙内の要素の任意の組み合わせを必ずしも除外しないことを意味するものと理解すべきである。この定義により、具体的に特定されるそれらの要素に関係するか否かに関わらず、「少なくとも1つ」という語句が意味する要素の列挙内に具体的に特定される要素以外の要素が任意選択的に存在し得ることも可能になる。そのため、非限定的な例として、「A及びBの少なくとも1つ」(換言すると「A又はBの少なくとも1つ」、換言すると「A及び/又はBの少なくとも1つ」は、一実施形態では、任意選択的に2つ以上のAを含み、且つBが存在しない(及び任意選択的にB以外の要素を含む)少なくとも1つを指し得、別の実施形態では、任意選択的に2つ以上のBを含み、且つAが存在しない(及び任意選択的にA以外の要素を含む)少なくとも1つを指し得、さらに別の実施形態では、任意選択的に2つ以上のAを含む少なくとも1つ、且つ任意選択的に2つ以上のBを含む少なくとも1つ(及び任意選択的に他の要素を含む)を指す等であり得る。
【0134】
同様に、反対に明確に示されない限り、2つ以上の工程又は行為を含む、本明細書で特許請求される任意の方法において、この方法の工程又は行為の順序は、必ずしもこの方法の工程又は行為が列挙される順序に限定されないことも理解されるべきである。
【配列表】
【国際調査報告】