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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】小分子を封入するナノ粒子
(51)【国際特許分類】
   C07K 4/04 20060101AFI20230323BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20230323BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20230323BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20230323BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20230323BHJP
   C12N 15/31 20060101ALN20230323BHJP
【FI】
C07K4/04
A61K9/51
A61K47/42
A61K47/20
A61K47/28
C12N15/31
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022548546
(86)(22)【出願日】2021-02-14
(85)【翻訳文提出日】2022-09-20
(86)【国際出願番号】 EP2021053571
(87)【国際公開番号】W WO2021160873
(87)【国際公開日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】20157250.0
(32)【優先日】2020-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506110634
【氏名又は名称】イーティーエイチ・チューリッヒ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒルヴァート、ドナルド
(72)【発明者】
【氏名】エドヴァルドソン、トーマス
【テーマコード(参考)】
4C076
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA65
4C076DD05F
4C076DD57F
4C076DD70F
4C076EE41H
4C076FF16
4C076FF43
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045CA11
4H045DA89
4H045EA20
4H045EA34
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、カーゴの細胞内送達のためのリポタンパク質ケージに関し、当該リポタンパク質ケージは、(i)配列番号1からなるアミノ酸配列Iを含む少なくとも1つのポリペプチドを含むタンパク質ケージであって、当該タンパク質ケージは、正に荷電した内部を有する、タンパク質ケージと、(ii)1つ又は複数の両親媒性物質を含む界面活性剤組成物であって、1つ又は複数の両親媒性物質は、組成物の正味電荷が負になるように選択され、当該界面活性剤組成物は、組み立てられたタンパク質ケージに封入される、界面活性剤組成物と、を含む。本発明は更に、本発明のリポタンパク質ケージと、1つ又は複数のカーゴ分子と、を含む複合体、及び本発明のリポタンパク質ケージを製造する方法であって、アミノ酸配列Iを含む少なくとも1つのポリペプチドから、好ましくはアミノ酸配列Iをそれぞれ含む24個のポリペプチドからタンパク質ケージを自己集合させる工程と、タンパク質ケージを分解することなく、本発明のアニオン性両親媒性物質をタンパク質ケージに封入する工程と、を含む、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーゴの細胞内送達のためのリポタンパク質ケージであって、該リポタンパク質ケージは、
(i)以下からなるアミノ酸配列Iを含む少なくとも1つのポリペプチドを含むタンパク質ケージであって、
MX13QAIGILELXSIAAGMELGDAMLKSAX14VX15LLVSKTISXGKFLLMLGGDIXAIX12AIX10TGTX11QAGXLLVDSLVLAX16IHPSVLPAIX17GX18NX19VX2021QAVGIVETXSVAACISAADX22AVX23GSX24VTLVRVHMAXGIGGKCYMVVAGDVSDVALAVTVASSSAGAYGXLVYASLIPX25PHX26AMWX27QMVX28GX29E(配列番号1)
ここで、X~X29のいずれかは互いに独立してアミノ酸であり、但し、X~Xの少なくとも3つは互いに独立して正に荷電したアミノ酸であり、配列番号1におけるX~X29で示された以外の位置における5つまでのアミノ酸は任意のアミノ酸によって交換されていてもよく、
当該タンパク質ケージは、正に荷電した内部を有する、上記タンパク質ケージと、
(ii)1つ又は複数の両親媒性物質を含む界面活性剤組成物であって、該1つ又は複数の両親媒性物質は、組成物の正味電荷が負になるように選択され、両親媒性物質の各々は、親水性基及び疎水性基を含み、該疎水性基は、C4~C30アルキル、C4~C30アルケニル、C4~C30アルキニル、C4~C30アルコキシ又はC5~C30シクロアルキルからなる群から選択される少なくとも1つの炭化水素部分を含み、
該界面活性剤組成物は組み立てられたタンパク質ケージに封入されている、上記界面活性剤組成物と、
を含む、上記カーゴの細胞内送達のためのリポタンパク質ケージ。
【請求項2】
~Xが互いに独立してアルギニン又はリシンである、請求項1に記載のリポタンパク質ケージ。
【請求項3】
~Xの少なくとも4つが正に荷電したアミノ酸であり、好ましくはX~Xの少なくとも5つが正に荷電したアミノ酸であり、より好ましくはX~Xのそれぞれが正に荷電したアミノ酸である、請求項1又は2に記載のリポタンパク質ケージ。
【請求項4】
がグリシン又はその保存的置換であり、
及びX12が、互いに独立して、グルタミン、アスパラギン又はその保存的置換であり、
10が、グルタマート、アスパルタート又はその保存的置換であり、
11が、セリン又はその保存的置換であり、
13、X17及びX19が、互いに独立して、セリン又はその保存的置換であり、
14、X16及びX24が、互いに独立して、アスパラギン、グルタミン又はその保存的置換であり、
15、X20、X26及びX28が、互いに独立して、アスパルタート、グルタマート又はその保存的置換であり、
18及びX29が、互いに独立して、ロイシン又はその保存的置換であり、X21、X22、X23、X25及びX27が、互いに独立して、アルギニン、リシン又はその保存的置換である、
請求項1~3のいずれか一項に記載のリポタンパク質ケージ。
【請求項5】
アミノ酸配列Iが、配列番号2~5、配列番号10~16、及び配列番号20~22からなる群から選択されるアミノ酸配列である、請求項1~4のいずれか一項に記載のリポタンパク質ケージ。
【請求項6】
界面活性剤組成物に含まれる化合物の20mol%が、少なくとも1つの単一負電荷を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のリポタンパク質ケージ。
【請求項7】
親水性基がアニオン性親水性基である、請求項1~6のいずれか一項に記載のリポタンパク質ケージ。
【請求項8】
アニオン性親水性基が、カルボキシラート、スルファート、スルホナート、ホスホナート、ボロナート、ホスファート及びアミノ酸部分からなる群から選択される、請求項7に記載のリポタンパク質ケージ。
【請求項9】
炭化水素部分が、C5~C30、好ましくはC8~C20、より好ましくはC10~18、更により好ましくはC12~C18、最も好ましくはC12、C14、C16、C17又はC18のそれぞれの分岐若しくは直鎖アルキル、分岐若しくは直鎖アルケニル又はシクロアルキルからなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載のリポタンパク質ケージ。
【請求項10】
アニオン性親水性基が、スルファート部分であり、炭化水素部分が直鎖アルキル、直鎖アルキルエーテル又はシクロアルキル残基であり、直鎖アルキル、直鎖アルキルエーテル又はシクロアルキル残基が、C5~C30、好ましくはC8~C20、より好ましくはC10~18、更により好ましくはC12~C18、最も好ましくはC12、C14、C16、C17又はC18である、請求項8又は9に記載のリポタンパク質ケージ。
【請求項11】
1つ又は複数の両親媒性物質の少なくとも1つが、ドデシルスルファートのアンモニウム塩、アルカリ塩又はアルカリ土類塩、好ましくはドデシル硫酸ナトリウムである、請求項1~10のいずれか一項に記載のリポタンパク質ケージ。
【請求項12】
1つ又は複数の両親媒性物質の少なくとも1つがアニオン性ステロイドであり、好ましくは、アニオン性ステロイドが硫酸コレステロールである、請求項1~11のいずれか一項に記載のリポタンパク質ケージ。
【請求項13】
請求項1~12に記載のリポタンパク質ケージと、1つ又は複数のカーゴ分子、好ましくは1000Da以下のサイズを有する該カーゴ分子と、を含む複合体。
【請求項14】
前記カーゴ分子が、リポタンパク質ケージを分解することなく、リポタンパク質ケージに封入されている、請求項13に記載の複合体。
【請求項15】
請求項1~12に記載のリポタンパク質ケージを製造する方法であって、
アミノ酸配列Iを含む少なくとも1つのポリペプチド、好ましくはアミノ酸配列Iをそれぞれ含む24個のポリペプチドからのタンパク質ケージを自己集合させる工程と、
タンパク質ケージを分解することなく、タンパク質ケージに請求項1に記載の界面活性剤組成物を封入する工程と、
を含む、請求項1~12に記載のリポタンパク質ケージを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ粒子の分野に関する。特に、本発明は、カーゴの細胞内送達のための、タンパク質ケージ及び界面活性剤組成物を含むリポタンパク質ケージに関する。
【背景技術】
【0002】
明確に定義されたナノ粒子は、生物システム内の分子の保護輸送によく適している可能性がある。
【0003】
タンパク質ケージは、ナノテクノロジー開発のための重要なプラットフォームとして最近登場した。天然に存在するタンパク質ケージの中で、ウイルスは最も効率的なナノマシンの1つであり、複雑な生物学的環境において成分の複製及び効率的な自己組織化を達成する。ウイルス粒子集合の最も基本的な工程をインビボで行うことができる人工システムは、アクイフェックス・エオリカス(Aquifex aeolicus)ルマジンシンターゼから形成されたパッチワークケージ、及びカチオン性ペプチドが付加された環状置換バリアントに基づいて設計されている。これらの2成分タンパク質容器は、インビボで自己組織化し、サイズ選択的に内因性RNA分子を捕捉する(Azuma et al.,Modular Protein Cages for Size-Selective RNA Packaging in Vivo,J.Am.Chem.Soc.2018,vol.140,566-569)。
【0004】
更なるアプローチでは、合成遺伝子を使用して、リン脂質及び両親媒性らせんタンパク質のクラスからナノ粒子リン脂質二重層ディスクを組み立てた。自己組織化プロセスは、洗剤の存在下でのリン脂質及びタンパク質の混合物から始まる。洗剤を除去すると、飽和又は不飽和リン脂質を含有する粒子が形成される(Bayburt et al.,Self-Assembly of Discoidal Phospholipid Bilayer Nanoparticles with Membrane Scaffold Proteins Nano Letters 2002,vol.2(8),pp.853-85)。
【0005】
デノボ設計タンパク質ケージの出現は、カーゴ輸送ビヒクルを作成するための代替戦略を提供する。設計された非機能性タンパク質ケージを、高い結合親和性でインビトロでオリゴヌクレオチドを封入することができる核酸送達ビヒクルに形質転換した(Edwardson et al.,Rational Engineering of a Designed Protein Cage for siRNA Delivery.J.Am.Chem.Soc.2018,vol.140,10439-10442)。
【0006】
しかし、タンパク質の区画は、それらが運ぶカーゴの種類が限られている。タンパク質及び核酸以外の分子の組込みは、自己組織化ルールの更なるセットの開発を必要とする。他の分子種の組込みによるタンパク質ケージの開発は、新しい分野への適用性を拡大する可能性を有し、その1つは、本発明を使用する場合の可能な限り小さい分子の輸送である。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、難水溶性分子カーゴを封入することができる多孔質リポタンパク質ケージ(本明細書ではリポタンパク質足場とも呼ばれる)を提供する。本発明のリポタンパク質ケージでは、疎水性区画化は、ケージを安定化し、特異的細孔を介してケージによって送達されるカーゴのための生体認識可能なバーコードとして作用する操作されたタンパク質と、ケージの疎水性内部を作り出す両親媒性物質とを組み合わせることによって達成される(図1a)。
【0008】
2層ホスト-ゲストアプローチでは、非常に正電荷内腔を有する設計されたタンパク質ケージを使用して、アニオン性界面活性剤分子をその内部腔内でその臨界凝集濃度より十分低い濃度でミセル凝集体に核形成する。静電引力は、高い有効濃度のために相分離してタンパク質ケージ内にミセル凝集体を形成するアニオン性界面活性剤の封入を促進する。次いで、この安定なタンパク質-界面活性剤複合体の非極性コアは、疎水性効果によって小分子を隔離することができる。
【0009】
タンパク質ケージは非常に安定であり、その内部腔内に脂質/ミセルコアを形成するための鋳型として作用し、これは以前の製剤化工程が必要ないことを意味する。したがって、両親媒性物質は、タンパク質の添加前に単独で安定な粒子を形成する必要はない。
【0010】
それらの独特の構造を通して、本発明の得られたリポタンパク質ケージは、タンパク質足場疎水性コアを通して小さな、好ましくは小さな疎水性分子を動員及び隔離することができる。本発明者らは、これらのリポタンパク質ケージが安定で単分散であり、血清タンパク質による隔離からそれらのカーゴを保護し、したがって難溶性蛍光プローブ及び細胞傷害性薬物の細胞取込みを増強することを示した。これらの知見は、タンパク質及び界面活性剤分子を使用した安定なタンパク質区画内の静電駆動型及び両親媒性自己組織化の有益な組合わせを実証している。
【0011】
疎水性効果の一般性のために、このシステムは、ホルモン、疎水性ペプチド、発光金属複合体、治療剤、及びビタミンなどを含むあらゆる種類の小さな、好ましくは疎水性分子を封入するために使用することができる。
【0012】
したがって、第1の態様において、本発明は、カーゴの細胞内送達のためのリポタンパク質ケージを提供し、当該リポタンパク質ケージは、
(i)以下からなるアミノ酸配列Iを含む少なくとも1つのポリペプチドを含むタンパク質ケージであって、
MX13QAIGILELXSIAAGMELGDAMLKSAX14VX15LLVSKTISXGKFLLMLGGDIXAIX12AIX10TGTX11QAGXLLVDSLVLAX16IHPSVLPAIX17GX18NX19VX2021QAVGIVETXSVAACISAADX22AVX23GSX24VTLVRVHMAXGIGGKCYMVVAGDVSDVALAVTVASSSAGAYGXLVYASLIPX25PHX26AMWX27QMVX28GX29E(配列番号1)
ここで、X~X29のいずれかは互いに独立してアミノ酸であり、但し、X~Xの少なくとも3つは互いに独立して正に荷電したアミノ酸(正電荷アミノ酸)であり、配列番号1におけるX~X29で示された以外の位置における5つまでのアミノ酸は任意のアミノ酸によって交換されていてもよく、
当該タンパク質ケージは、正に荷電した内部を有する、
アミノ酸配列Iを含む少なくとも1つのポリペプチドを含むタンパク質ケージと、
(ii)1つ又は複数の両親媒性物質を含む界面活性剤組成物であって、1つ又は複数の両親媒性物質は、組成物の正味電荷が負になるように選択され、当該1つ又は複数の両親媒性物質は親水性基及び疎水性基を含み、疎水性基は、C4~C30アルキル、C4~C30アルケニル、C4~C30アルキニル、C4~C30アルコキシ又はC5~C30シクロアルキルからなる群から選択される少なくとも1つの炭化水素部分を含み、
当該界面活性剤組成物は、組み立てられたタンパク質ケージに封入されている、1つ又は複数の両親媒性物質を含む界面活性剤組成物と、
を含む。
【0013】
更なる態様において、本発明は、本発明のリポタンパク質ケージと1つ又は複数のカーゴ分子とを含む複合体に関する。
【0014】
更なる態様では、本発明は、本発明のリポタンパク質ケージを製造するための方法であって、アミノ酸配列Iを含む少なくとも1つのポリペプチド、好ましくはアミノ酸配列Iをそれぞれ含む24個のポリペプチドからタンパク質ケージを自己集合させる工程と、タンパク質ケージを分解することなく、本発明の界面活性剤組成物をタンパク質ケージに封入する工程と、を含む方法に関する。
【0015】
更なる態様において、本発明は、本発明のリポタンパク質ケージを1つ又は複数のカーゴ分子と混合する工程を含み、当該カーゴは、リポタンパク質ケージを分解することなく本発明のリポタンパク質ケージに封入される、本発明の複合体の製造方法を提供する。
【0016】
更なる態様では、本発明は、細胞を本発明の複合体で処理する方法であって、当該細胞を本発明の複合体と接触させる工程を含む、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】リポタンパク質模倣ケージの自己集合のカートゥーン(cartoon)図である。
図1a】荷電リン脂質、タンパク質及び疎水性カーゴ分子を示す、高密度リポタンパク質(HDL)粒子の図である。
図1b】2倍(左)及び4倍(中央)の対称軸に沿って見たOPタンパク質ケージの表面表示、並びに正に荷電した内部のカートゥーン切断(右)の図である。
図1c】静電気引力によって駆動され、安定なタンパク質-界面活性剤複合体上に非極性コアを形成し、次いで疎水性効果によって非極性小分子を隔離することができる、正電荷多孔質タンパク質足場、封入されたアニオン性界面活性剤を有するリポタンパク質粒子のカートゥーン図である。
図2】キャプシド鋳型ミセル形成の図である。
図2a】ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)分子のタンパク質ケージ鋳型ミセル化のカートゥーン図である。
図2b】増加するモル当量のSDSの存在下でのOPケージのネイティブゲル電気泳動の図である。
図2c】800当量のSDSとのインキュベーション前後のOPケージのサイズ排除クロマトグラフィの図である。
図2d】空のOPケージの透過型電子顕微鏡写真であり、スケールバーは30nmである。
図2e】SDS(800当量)の存在下でのOPケージの透過型電子顕微鏡写真であり、スケールバーは30nmである。
図2f】ネイティブゲル電気泳動によって可視化されたAtto488標識ssDNAの封入の図である。SDS(-)とのプレインキュベーションなしで、OPケージはssDNAプローブを定量的に内在化する。SDS分子(+)の内部移行後、OPケージはもはやオリゴヌクレオチドプローブを封入することができない。
図2g】空のOPキャプシドの、クライオEMによって決定された、2-D投影、中央スライス、3-D再構築及び減算体積の図である。
図2h】SDSを含むOPキャプシドの、クライオEMによって決定された、2-D投影、中央スライス、3-D再構築及び減算体積の図である。
図2i】SDS:CSを含むOPキャプシドの、クライオEMによって決定された、2-D投影、中央スライス、3-D再構築及び減算体積の図である。界面活性剤からの更なる密度は、中央のスライス、及びOP:SDSから空のOPを差し引いて得られた密度でわかり得る(実線の表面、右列として示されている)。
図3】疎水性コア形成、カーゴ容量及び速度論を示す図である
図3a】PBS緩衝液を基準とした、OP、SDS及びOP:SDS複合体の存在下でのナイルレッドの定常状態蛍光発光スペクトルの図である。
図3b】SDSのモル当量の増加に伴うOPの存在下でのナイルレッドの定常状態蛍光発光スペクトルの図である。
図3c】620nmでのナイルレッドの正規化蛍光発光対OPケージに対するSDSのモル当量の図である。
図3d】OP:SDS複合体に添加したナイルレッドのモル当量に対する620nmでの正規化蛍光発光の図である。
図4】生物学的活性、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、硫酸コレステロール(CS)の測定の図である。
図4a】1キャプシド当たり5個のナイルレッド分子を有する、遊離ナイルレッド又はOP:SDS複合体にパッケージングされたナイルレッドのいずれかで処理したHeLa細胞のフローサイトメトリデータセット(右パネル)(n=3)の図である。
図4b】遊離分子としてナイルレッドで処理した(左パネル)又はOP:SDS複合体にパッケージングした(右パネル)HeLa細胞の共焦点蛍光顕微鏡写真である。ヘキスト33342(円形核形状)、ナイルレッド(核を取り囲む細胞質ゾル)、スケールバーは30μmである。
図4c】OP-S38CケージをAtto425で標識した、OP-S38C:SDS:CS:ナイルレッド複合体(1:600:200:5)で処理したHeLa細胞の共焦点蛍光顕微鏡写真である。ヘキスト33342(円形核形状、i)、ナイルレッド(ii)、Atto425(OP-S38C;iii)、ヘキスト33342、ナイルレッド及びAtto425のオーバーレイ(iv)、スケールバーは30μmである。
図4d】ナイルレッド(-)、又はOP:SDS:CS:ナイルレッドの比が1:600:200:5である、OP:SDS:CS複合体(+)にパッケージングされたナイルレッドで処理したHeLa細胞のフローサイトメトリ比較の図である。
図4e】2.5μMの遊離ラパチニブ(-)又はOP:SDS:CS複合体(+)に封入されたラパチニブで処理した後のHeLa細胞の生存率を示す図である。対照試料は、PBS緩衝液、TritonX-100(TX)及び封入薬物(OP)なしのOP:SDS:CS複合体である。
図4f】遊離ラパチニブ(黒色)、又はOP:SDS:CS複合体に封入されたラパチニブ(灰色)による処理後の細胞生存率の用量-応答比較の図である。
図5】OP:SDS複合体の更なる特性決定を示す図である。
図5a図2bに示されるネイティブゲルの反復の図であり、レーン1~11は、0~2000の範囲をカバーする、OPケージに添加された200当量のSDSの増分であり、レーン12は、完全に変性したタンパク質であり、65mMのSDSで処理することによって得られ、130,000当量に相当する。
図5b】空のOPケージ及びOP:SDS複合体の動的光散乱は、外径及び溶液中での凝集の無視できる変化を示す図である。
図5c】タンパク質についてクマシーブルーで染色し(左)、標識ssDNAプローブについてAtto488蛍光によって可視化した(右)ネイティブアガロースゲルの図である。レーン1-OP;レーン2-Atto488標識DNA;レーン2-DNA+OP、レーン3-DNA+予め形成されたOP:SDS複合体。空のOPケージはDNAを定量的に内在化することができるが、SDS充填ケージはDNAプローブを封入することができない。
図6】OP及びOP:SDS複合体の更なるTEM画像である。
図6a】OPの陰性染色透過型電子顕微鏡写真である。
図6b】OP:SDSの陰性染色透過型電子顕微鏡写真である。スケールバーは50nmである。
図7】空のOPキャプシドのクライオEMを示す図である。
図7a】硝子体氷中のOP粒子の代表的なクライオ電子顕微鏡写真である。
図7b】2D分類の3つの連続ラウンドからの最良のクラスである(22クラス、4,123粒子)。これらの粒子を、課された八面体対称性を有する3Dモデルに精密化した。
図7c】再構成を投影(c)として表す図である。
図7d】再構成を中心を通るスライス(d)として表す図である。
図7e】再構成を3D表示(e)として表す図である。
図7f】再構成を後処理後(f)として表す図である。
図7g】報告されているOP(PDB-ID:6FDB)の結晶構造とよく重なる3D再構成(g)の図である。
図8】OP:SDS複合体のクライオEMを示す図である。
図8a】硝子体氷中のOP:SDS粒子の代表的なクライオ電子顕微鏡写真である。
図8b】2D分類の3つの連続ラウンドからの最良のクラスである(13クラス、1,967粒子)。これらの粒子を、課された八面体対称性を有する3Dモデルに精密化した。
図8c】再構成を投影(c)として表す図である。
図8d】再構成を中心を通るスライス(d)として表す図である。
図8e】再構成を3D表示(e)として表す図である。
図8f】再構成を後処理後(f)として表す図である。
図8g】報告されているOP(PDB-ID:6FDB)の結晶構造とよく重なる3D再構成(g)の図である。
図9】代表的なフローサイトメトリデータセットである。
図9a】HeLa細胞のPBS緩衝液(ブランク)による処理に対する全ての試料ゲーティング及び得られたナイルレッド蛍光のヒストグラムである。
図9b】HeLa細胞のナイルレッド(500nM)による処理に対する全ての試料ゲーティング及び得られたナイルレッド蛍光のヒストグラムである。
図9c】HeLa細胞のOP:SDS:ナイルレッド(1:800:5、500nMナイルレッドにて)による処理に対する全ての試料ゲーティング及び得られたナイルレッド蛍光のヒストグラムである。PBS対照に基づく集団ゲーティングは、遊離色素で処理した場合、細胞の58%がナイルレッド陽性であるが、OP:SDS:ナイルレッドで処理すると、細胞のこの割合が90%に増加することを明らかにする。各試料複製物について、最低5,000個の細胞を分析した。
図10】更なる共焦点蛍光顕微鏡写真である。いずれの場合も、細胞を500nMナイルレッドに曝露した。界面活性剤が充填されたOPケージの場合、モル比は、OP:SDS:NR=1:800:5、OP:SDS:CS:NR=1:600:200:5、及びOP-S38C-A425:SDS:CS:NR=1:600:200:5である。Atto425標識OP-S38Cキャプシドは、キャプシド当たり平均1.9個の色素を有する。スケールバーは全て30μmである。n/aは、該当しないことを示す。
図11】OP:SDS:CS複合体の特性決定である。
図11a】OP及びOP:SDS:CS複合体のサイズ排除クロマトグラムである。21mLにおける負及び正のピークは、ランニング緩衝液中に存在しないDMSOの溶出に起因する。
図11b】空のOPケージ及びOP:SDS:CS複合体の動的光散乱は、外径又は溶液中での凝集の無視できる変化を示す。
図11c】タンパク質についてクマシーブルーで染色し(左)、標識ssDNAプローブについてAtto488蛍光によって可視化した(右)ネイティブアガロースゲルである。レーン1-Atto488標識DNAのみ;レーン2-OP;レーン3-DNA+OP、レーン4-DNA+予め形成されたOP:SDS:CS複合体。空のOPケージはDNAを定量的に内在化することができるが、SDS:CS充填ケージはDNAプローブを封入することができない。
図11d】緩衝液中及びOP:SDSケージ及びOP:SDS:CSケージの存在下でのナイルレッドの蛍光スペクトルである。ナイルレッド発光最大値の蛍光及び青色シフトの増加は、CSがタンパク質足場ミセル複合体に組み込まれていることを示している。
図11e】OP:SDS:CS複合体の陰性染色透過型電子顕微鏡写真である。スケールバーは50nmである。
図12】OP:SDS:CS複合体のクライオEMを示す図である。
図12a】硝子体氷中のOP:SDS:CS粒子の代表的なクライオ電子顕微鏡写真である。
図12b】2D分類の3つの連続ラウンドからの最良のクラスである(17クラス、3,359粒子)。これらの粒子を、課された八面体対称性を有する3Dモデルに精密化した。
図12c】再構成を投影(c)として表す図である。
図12d】再構成を中心を通るスライス(d)として表す図である。
図12e】再構成を3D表示(e)として表す図である。
図12f】再構成を後処理後(f)として表す図である。
図12g】報告されているOP(PDB-ID:6FDB)の結晶構造とよく重なる3D再構成(g)の図である。
図13】ラパチニブローディングの図である。
図13a】タンパク質(左)及びラパチニブ蛍光(右)についてクマシーブルーで可視化したOP:SDS:CS複合体のネイティブアガロースゲルである。レーン1-OP:SDS:CS(1:600:200);レーン2-OP:SDS:CS:ラパチニブ(1:600:200:10)。
図13b】OP:SDS:CS複合体の存在下では、ラパチニブ蛍光は有意に増加し、発光最大値は、非極性環境での封入と一致して、より低い波長にシフトすることを示す図である。
図13c】非透析対照と比較して24、48又は72時間ウシ血清アルブミン(BSA)含有培地に対して透析したラパチニブ装填OP:SDS:CS複合体の蛍光スペクトルである。
図13d】タンパク質(左)及びラパチニブ蛍光(右)についてクマシーブルーで可視化したOP:SDS:CS複合体及びBSAのネイティブアガロースゲルである。レーン1-OP:SDS:CS:ラパチニブ(1:600:200:10);レーン2-BSA:ラパチニブ(1:1);レーン3-OP:SDS:CS:ラパチニブ+BSA。これらのデータは、ラパチニブが等モル濃度のBSAとのインキュベーション後にOP:SDS:CS複合体によって安定に封入されることを明らかにし、図13cに示される蛍光実験からの結果を裏付けている。
図14】2つの化学修飾タンパク質ケージバリアントにおけるタンパク質ケージ-ミセル複合体の形成の図である。
図14a】OP-K93Cタンパク質ケージの透過型電子顕微鏡写真であり、スケールバーは100nmである。
図14b】OP-S38Cタンパク質ケージの透過型電子顕微鏡写真であり、スケールバーは100nmである。
図14c】PBS中のSDSを含む及び含まないOP-K93Cタンパク質ケージの存在下でのタンパク質共役Atto495及びナイルレッドの定常状態蛍光発光スペクトルである。いずれの場合も、試料は490nmで励起され、SDSの存在下でのみ、Atto495フルオロフォアとナイルレッドフルオロフォアとの間で観察されたフェルスター共鳴エネルギー移動(Forster resonance energy transfer:FRET)が、タンパク質-ミセル複合体における内在化と一致している。
図14d】PBS中のSDSを含む及び含まないOP-S38Cタンパク質ケージの存在下でのタンパク質共役Atto495及びナイルレッドの定常状態蛍光発光スペクトルである。S38C変異がタンパク質ケージの内腔表面上にあるため、SDSの内在化は、その位置で共役されたAtto495フルオロフォアの蛍光の変化を引き起こす。更に、OP-K93C:SDS中よりもOP-S38C:SDS複合体内のAtto495とナイルレッドとの間でより強いFRETが観察され、外面表示K93C位置と比較して、S38C位置のミセルコアへのより近い距離と一致する。各測定において、OPキャプシド(120nM)に対して、800当量のSDS及び4当量のナイルレッドを使用した。
図15】C末端ペプチドタグとのタンパク質ケージ-ミセル複合体の形成の図である。
図15a】C末端修飾を有するタンパク質ケージのサイズ排除クロマトグラムであり、約15mLの主要なピークは、ペプチド付属物の長さと一致するサイズ差を有する24merのケージに対応する。更なる小さなピークは、この精製工程中に除去される不純物である。
図15b】OP-ZEGFRタンパク質ケージの透過型電子顕微鏡写真であり、スケールバーは100nmである。
図15c】OP-SP94タンパク質ケージの透過型電子顕微鏡写真であり、スケールバーは100nmである。
図15d】OP-ZHER2タンパク質ケージの透過型電子顕微鏡写真であり、スケールバーは100nmである。
図15e】OP-96タンパク質ケージの透過型電子顕微鏡写真であり、スケールバーは100nmである。
図15f】120nMキャプシドの濃度で、1:800:5のモル比のキャプシド:SDS:ナイルレッドのタンパク質-ミセル複合体の存在下でのナイルレッドの定常状態蛍光スペクトルである。全てのタンパク質バリアントは、タンパク質-ミセル複合体の形成及び疎水性コア内へのナイルレッドの封入と一致して、ナイルレッド蛍光の増加及び発光最大値の青色シフトを引き起こす。元のOP:SDS複合体も比較のために含まれる。PBS緩衝液、SDS単独及びOP-ZHER2キャプシド単独の対照試料は、無視できる蛍光増加を示す。
図16】N末端修飾タンパク質とのタンパク質ケージ-ミセル複合体の形成である。
図16a】OP-93によって形成されたタンパク質ケージのサイズ排除クロマトグラムであり、14mLの主ピークは、OPとサイズが類似した24merのケージ構造の形成と一致する。更なる小さなピークは、この精製工程中に除去される不純物である。
図16b】120nMキャプシドの濃度で、1:800:5のモル比のキャプシド:SDS:ナイルレッドのタンパク質-ミセル複合体の存在下でのナイルレッドの定常状態蛍光スペクトルである。OP-93タンパク質バリアントは、タンパク質-ミセル複合体の形成及び疎水性コア内へのナイルレッドの封入と一致して、ナイルレッド蛍光の増加及び発光最大値の青色シフトを引き起こす。元のOP:SDS複合体も比較のために含まれる。PBS緩衝液、SDS単独及びOP-93キャプシド単独の対照試料は、無視できる蛍光増加を示す。
図17】界面活性剤組成物及び小分子カーゴの変更。
図17a】SDS:SDBS(1:1)の界面活性剤混合物を使用したタンパク質-ミセル複合体中の3つの異なる薬物分子の封入を示すネイティブアガロースゲル電気泳動であり、キャプシド当たり合計800当量の界面活性剤を含む。レーン1-OP、レーン2-OP:SDS:SDBS:クルクミン、レーン3-OP:SDS:SDBS:ラパチニブ、レーン4-OP:SDS:SDBS:ダウノルビシン。上部パネル及び下部パネルは、UV照射によって可視化された、又はタンパク質の可視化のためにクマシーブルーで染色された同じゲルレーンである。
図17b】遊離クルクミン(-)又はOP:SDS:SDBS複合体にパッケージングされたクルクミン(+)のいずれかで処理したHeLa細胞のフローサイトメトリデータセットである。Surf及びOPは、それぞれ界面活性剤混合物又は空のOPケージの存在下で同じ濃度のクルクミンで処理した細胞を指す。OP:SDS:SDBS:クルクミンの比は1:400:400:8である。エラーバーは、3回の測定の標準偏差を示す。
図17c】キャプシド当たり23当量のクルクミンを含む増加する濃度(0.7、1.4及び2.1uM)のOP:SDS:CS:クルクミン複合体を示すネイティブアガロースゲル電気泳動である。
図17d】遊離クルクミン(-)又はOP:SDS:CS複合体にパッケージングされたクルクミン(+)のいずれかで処理したHeLa細胞のフローサイトメトリデータセットである。PBSは、未処理細胞を指し、Surf及びOPは、それぞれ界面活性剤混合物又は空のOPケージの存在下で同じ濃度のクルクミンで処理した細胞を指す。ケージ当たり8当量のクルクミンを使用し、エラーバーは3回の測定の標準偏差を示す。
図17e】遊離ラウルダン(左)又はOP:Surf複合体(右)にパッケージングされたラウルダンで処理したHeLa細胞の共焦点顕微鏡法であり、フレームは184μmである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0019】
本明細書及び続く特許請求の範囲を通して、文脈上別段の要求がない限り、「含む(comprise)」又は「含む(include)」という単語、並びに「含む(comprises/includes)」及び「含む(comprising/including)」などの変形は、要素、記載された整数、ステップ又はそれらの群の包含を意味するが、他の要素、記載された整数、ステップ又はそれらの群の排除を意味しないと理解されるべきである。
【0020】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0021】
「約」又は「およそ」という用語は、数値に関連して使用される場合、示された数値よりも0~10%小さい下限を有し、示された数値よりも0~10%大きい上限を有する範囲内の数値を包含することを意味する。用語「約」又は「およそ」は、好ましくは±10%、より好ましくは±5%、更により好ましくは±3%又は最も好ましくは±0%(それぞれ所与の数値を参照する)を意味する。本発明の各実施形態では、「約」を削除することができる。本明細書に開示される値の全ての範囲は、範囲を定義する値を含む当該範囲内に入る任意及び全ての値を指し、含むべきである。
【0022】
第1の態様において、本発明は、カーゴの細胞内送達のためのリポタンパク質ケージに関し、当該リポタンパク質ケージは、
(i)以下からなるアミノ酸配列Iを含む少なくとも1つのポリペプチドを含むタンパク質ケージであって、
MX13QAIGILELXSIAAGMELGDAMLKSAX14VX15LLVSKTISXGKFLLMLGGDIXAIX12AIX10TGTX11QAGXLLVDSLVLAX16IHPSVLPAIX17GX18NX19VX2021QAVGIVETXSVAACISAADX22AVX23GSX24VTLVRVHMAXGIGGKCYMVVAGDVSDVALAVTVASSSAGAYGXLVYASLIPX25PHX26AMWX27QMVX28GX29E(配列番号1)
ここで、X~X29のいずれかは互いに独立してアミノ酸であり、但し、X~Xの少なくとも3つは互いに独立して正に荷電したアミノ酸であり、配列番号1におけるX~X29で示された以外の位置における5つまでのアミノ酸は任意のアミノ酸によって交換されていてもよく、
当該タンパク質ケージは、正に荷電した内部を有する、
アミノ酸配列Iを含む少なくとも1つのポリペプチドを含むタンパク質ケージと、
(ii)1つ又は複数の両親媒性物質を含む界面活性剤組成物であって、1つ又は複数の両親媒性物質は、組成物の正味電荷が負になるように選択され、
1つ又は複数の両親媒性物質は親水性基及び疎水性基を含み、疎水性基は、C4~C30アルキル、C4~C30アルケニル、C4~C30アルキニル、C4~C30アルコキシ又はC5~C30シクロアルキルからなる群から選択される少なくとも1つの炭化水素部分を含み、
当該界面活性剤組成物は、組み立てられたタンパク質ケージに封入されている、1つ又は複数の両親媒性物質を含む界面活性剤組成物と、
を含む。
【0023】
本明細書で使用される場合、タンパク質ケージ及びリポタンパク質ケージという用語は、ケージ様ナノ粒子に関する。本発明のタンパク質ケージ及びリポタンパク質ケージは、好ましくはナノメートルサイズ範囲(すなわち、約1nm~約1000nm)である。更に好ましい実施形態では、当該タンパク質又はリポタンパク質ケージは、最大約50nmの外径を有する。非常に好ましい実施形態では、当該リポタンパク質ケージは約13nmの外径を有する。
【0024】
本発明の当該ポリペプチドは、本発明の当該少なくとも1つのポリペプチドの自己集合によってタンパク質ケージを形成することができるように選択される。好ましい実施形態では、本発明のタンパク質ケージは、正確に24個の本発明のポリペプチドを含む(すなわち、当該少なくとも1つのポリペプチドは、本発明の正確に24個のポリペプチドとして定義される)。別の好ましい実施形態では、本発明のタンパク質ケージは、八面体形状(八面体点群対称性)を有する。本発明の好ましい実施形態では、タンパク質ケージは、複数のサブユニット、好ましくは8個のサブユニットの四次構造を有し、各サブユニットは本発明の3個のポリペプチドを含む。
【0025】
好ましい実施形態では、当該タンパク質ケージは、(i)外部タンパク質足場及び(ii)中央腔(本明細書では、腔、内部腔、内部又は内腔とも呼ばれる)を含む。好ましくは、当該外部足場は、当該中央腔を取り囲み、すなわち当該中央腔の周りに組み立てられる。
【0026】
本明細書で使用される「負に帯電した」又は「正電荷」という用語は、負又は正電荷基を有する分子を含み、好ましくはこれを指す。本明細書で使用される「アニオン」という用語は、負に帯電したイオンを指す。より好ましくは、当該アニオン又は負に帯電した分子は、中性又は生理学的pHで負に帯電した基を有する。
【0027】
本発明のタンパク質ケージは、正電荷腔を有する。好ましい実施形態では、タンパク質ケージは、腔表面上で正電荷である。当該正電荷は、複数の正に荷電したアミノ酸、好ましくはアルギニン又はリシンに由来する。したがって、本発明のタンパク質ケージは、負に帯電した分子を封入するための非常に強い親和性を有する。好ましい実施形態では、タンパク質ケージの当該腔は、約6.5nm~約8nm、好ましくは約8nmの直径を有する。
【0028】
好ましい実施形態では、当該タンパク質ケージは多孔質構造を有し、すなわち当該タンパク質ケージは細孔を含む。好ましくは、タンパク質ケージの外部足場は、当該タンパク質ケージの腔に接続された細孔を含む。細孔は、本明細書では、タンパク質ケージ又はタンパク質ケージの外部足場の開口部又はギャップとして定義される。
【0029】
好ましい実施形態では、当該タンパク質又はリポタンパク質ケージは6つの細孔を含む。好ましくは、当該外部足場は、タンパク質又はリポタンパク質ケージの腔に接続された6つの細孔を含む。別の好ましい実施形態では、当該細孔は、約3nm~約4nmの直径を有する。別の好ましい実施形態では、当該タンパク質又はリポタンパク質ケージは、3~4nmの直径を有する6つの細孔を含む。
【0030】
別の更に好ましい実施形態では、本発明のタンパク質ケージは、約3~4nmの直径を有する6つの細孔を含み、当該タンパク質ケージの内部腔は約8nmの直径を有し、当該タンパク質ケージの外径は約13nmである。
【0031】
リポタンパク質又は界面活性剤組成物のタンパク質ケージへのカーゴのローディング(又は封入)及びアンローディング(又は放出)は、タンパク質ケージの細孔を介して働き、界面活性剤組成物はカーゴのローディング及びアンローディングに影響を及ぼす。ローディング又は封入という用語は、リポタンパク質又はタンパク質ケージへのカーゴ、組成物又は両親媒性物質の任意の取込みに関する。アンローディング(又は放出)という用語は、部分的又は完全に、好ましくは完全に、カーゴの解放又は移動/交換に関する。
【0032】
本発明の当該界面活性剤組成物は、組み立てられたタンパク質ケージに、すなわちタンパク質ケージを分解することなく封入される。好ましい実施形態では、本発明の組み立てられたタンパク質ケージは、タンパク質ケージを分解することなく、界面活性剤組成物と共に充填可能である。本発明の好ましい実施形態では、静電引力が界面活性剤組成物の封入を駆動する。好ましくは、本発明のリポタンパク質ケージにおいて、当該界面活性剤組成物相は、リポタンパク質ケージ内のその高い有効濃度のために相分離する。好ましくは、当該界面活性剤組成物は、タンパク質ケージ内にミセル凝集体を形成することができる。
【0033】
より好ましくは、本発明による当該界面活性剤組成物は、タンパク質ケージ内に疎水性コアを生成する。好ましい実施形態では、本発明のリポタンパク質ケージは、リポタンパク質ケージを分解することなく、カーゴで充填可能及び充填不可能である。更に好ましくは、本発明の当該リポタンパク質ケージ、特に本発明の当該リポタンパク質ケージの当該非極性コアは、本発明のリポタンパク質ケージにローディングされたカーゴ分子を隔離することができる。好ましくは、当該カーゴは、非共有結合相互作用によってリポタンパク質ケージ内に封入される。当該非共有結合相互作用は、好ましくは疎水性相互作用(疎水性効果)である。好ましい実施形態では、本発明のリポタンパク質ケージは、カーゴを細胞内に送達することができる。好ましくは、当該カーゴは、リポタンパク質ケージを分解することなく細胞内に送達される。好ましい実施形態では、本発明のリポタンパク質ケージは、リポタンパク質ケージを分解することなく、カーゴを封入することができ、リポタンパク質ケージを分解することなく、当該封入されたカーゴを、好ましくは細胞内に放出することができる。これは、リポタンパク質ケージの多孔質構造に起因して可能である。更に好ましい実施形態では、本発明のリポタンパク質ケージは、リポタンパク質ケージを分解することなく、細胞外にカーゴを充填可能であり、当該カーゴから細胞内に充填不可能である。
【0034】
好ましい実施形態では、本発明のリポタンパク質ケージは、リポタンパク質ケージを分解することなく、細胞外にカーゴを封入し、当該封入されたカーゴで細胞に入り、当該封入されたカーゴを細胞内に放出することができる。好ましい実施形態では、本発明のリポタンパク質ケージは、各工程でリポタンパク質ケージを分解することなく、カーゴを封入し、当該封入されたカーゴで細胞に入り、当該封入されたカーゴを細胞、より好ましくは細胞の細胞質に放出することができる。別の好ましい実施形態では、本発明のリポタンパク質ケージは、各工程でリポタンパク質ケージを分解することなく、カーゴを封入し、当該封入されたカーゴで細胞に入り、封入された疎水性カーゴを細胞内に放出することができ、当該放出されたカーゴは、細胞の細胞質に逃げることができる。
【0035】
好ましくは、当該カーゴは疎水性カーゴ、より好ましくは非極性カーゴである。
【0036】
好ましくは、当該カーゴは小型カーゴである。小型カーゴは、1000Da以下のサイズであることが好ましい。好ましい実施形態では、1000Da以下のサイズは、当該カーゴが1000Da以下、好ましくは800Da以下、より好ましくは600Da以下、再びより好ましくは500Da以下、再びより好ましくは400Da以下、再びより好ましくは300Da以下、再びより好ましくは200Da以下、再びより好ましくは100Da以下のサイズを有することを意味する。
【0037】
別の実施形態では、当該カーゴは、1000Da以下のサイズを有する小さな疎水性カーゴ、更により好ましくは1000Da以下のサイズを有する小さな非極性カーゴである。
【0038】
好ましくは、当該カーゴは水性媒体中で低い溶解度を有する。好ましくは、当該小型カーゴは1000Da以下のサイズを有し、水性媒体への溶解度が低い。より好ましくは、低溶解度の当該カーゴは、生物薬剤学分類システム(Biopharmaceutics Classification System:BCS)のクラスII又はクラスIVに含まれる。更により好ましくは、当該低溶解度カーゴは、最高強度用量が37±1℃で1.0~7.5のpH範囲にわたって、より好ましくは1.0~6.8のpH範囲にわたって250mL以下の水性媒体に溶解する高溶解度カーゴよりも低い溶解度を有する。溶解度を決定するための好ましい方法は、USP溶解装置、振とうフラスコ法又は酸若しくは塩基滴定法である。
【0039】
好ましくは、当該カーゴは活性薬剤、好ましくは治療剤又は診断薬である。より好ましくは、当該カーゴは、ドキソルビシン又はパクリタキセルなどの化学療法剤、ビフォナゾール又はアムホテリシンBなどの抗真菌剤、インジナビル又はリトナビルなどの抗ウイルス剤、及び抗生物質からなる群から選択される。
【0040】
リポタンパク質の界面活性剤組成物は、組成物の正味電荷が負になるように選択された1つ又は複数の両親媒性物質を含む。組成物の正味電荷は、組成物に含まれる全ての化合物によって寄与される全電荷である。好ましくは、組成物の正味電荷は、生理学的pHで負である。
【0041】
例に従って構築されたタンパク質ケージの正電荷及びその中に封入された両親媒性物質の数に基づいて、本発明者らは、少なくとも1つの負電荷を有する界面活性剤組成物の化合物の少なくとも20mol%が、特に1000Da以下のサイズを有する小カーゴ分子、又は疎水性カーゴ分子、又はBCSのクラスII若しくはクラスIVに含まれる難水溶性カーゴ分子のためのカーゴ封入に十分な値であることを見出した。
【0042】
したがって、更なる好ましい実施形態では、界面活性剤組成物に含まれる化合物の少なくとも20mol%が少なくとも1つの負電荷を有する。更なる好ましい実施形態では、界面活性剤組成物に含まれる両親媒性物質の少なくとも20mol%が少なくとも1つの負電荷を有する。化合物が複数の負電荷、すなわちN個の負電荷の量を有する場合、20mol%の当該値をNで割ることができる。
【0043】
更に好ましい実施形態では、界面活性剤組成物に含まれる化合物又は両親媒性物質の、少なくとも20mol%、好ましくは少なくとも30mol%、より好ましくは少なくとも40mol%、更により好ましくは少なくとも50mol%、更により好ましくは少なくとも60mol%、更により好ましくは少なくとも70mol%、更により好ましくは少なくとも80mol%、更により好ましくは少なくとも90mol%、更により好ましくは少なくとも100mol%が少なくとも1つの負電荷を有する。
【0044】
両親媒性物質又は両親媒性化合物(本明細書では界面活性剤とも呼ばれる)は、本明細書では、少なくとも1つの疎水性基及び少なくとも1つの親水性基を含む有機化合物として定義される。好ましい実施形態において、当該両親媒性物質は、親水性「頭部」基及び疎水性「尾部」領域を含むジブロック化合物である。好ましい実施形態において、両親媒性物質は、少なくとも1つの疎水性基及び少なくとも1つの親水性基からなる。好ましい実施形態において、当該両親媒性物質は、親水性「頭部」基及び疎水性「尾部」領域を含み、これらから好ましくはなる、ジブロック化合物である。
【0045】
疎水性基は、少なくとも1つの炭化水素部分を含む。好ましい実施形態では、疎水性基は、少なくとも1つの炭化水素部分からなる。本明細書で使用される「炭化水素部分」という用語は、共有結合によって結合された水素及び炭素のみからなる化合物を包含する。この用語は、直鎖(非分岐)及び分岐炭化水素を含む開鎖(脂肪族)炭化水素、並びに飽和及びモノ及びポリ不飽和炭化水素を包含する。この用語はまた、1つ又は複数の環状又は芳香環を含有する炭化水素を包含する。
【0046】
少なくとも1つの炭化水素部分は、直鎖又は分岐C4~C30アルキル、C4~C30アルケニル、C4~C30アルキニル、C4~C30アルコキシ及びC5~C30シクロアルキルからなる群から選択される。好ましい実施形態では、当該炭化水素部分は、直鎖C4~C30アルキル、C4~C30アルケニル、C4~C30アルキニル、C4~C30アルコキシ及びC5-C30シクロアルキルからなる群から選択される。好ましい実施形態では、当該炭化水素部分は、C8~C20、好ましくはC10~18、より好ましくはC12~C18、最も好ましくはC12、C14、C16、C17又はC18の直鎖又は分岐の、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ又はシクロアルキルからなる群から選択される。好ましい実施形態では、当該炭化水素部分は、C8~C20、好ましくはC10~18、より好ましくはC12~C18、最も好ましくはC12、C14、C16、C17又はC18の直鎖アルキル、直鎖アルケニル又はシクロアルキルからなる群から選択される。好ましい実施形態では、当該炭化水素部分は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ及びシクロアルキル部分に加えてアリール部分を更に含む。
【0047】
好ましい実施形態では、当該炭化水素部分は、C5~C30、好ましくはC8~C20、より好ましくはC10~18、更により好ましくはC12~C18、最も好ましくはC12、C14、C16、C17又はC18の分岐又は直鎖アルキル、分岐又は直鎖アルケニル又はシクロアルキルからなる群から選択される。好ましい実施形態では、当該アニオン性部分はスルファート部分であり、当該炭化水素部分は直鎖アルキル、直鎖アルキルエーテル又はシクロアルキル残基であり、直鎖アルキル、直鎖アルキルエーテル又はシクロアルキル残基はC5~C30、好ましくはC8~C20、より好ましくはC10~18、更により好ましくはC12~C18、最も好ましくはC12、C14、C16、C17又はC18である。
【0048】
本明細書で使用される「アルキル」又は「アルキル残基」という用語は、炭素及び水素原子のみからなり、不飽和を含有せず、4~30個の炭素原子(例えば、C4~C30アルキル)を有し、単結合によって分子の残りに結合していてもよく、又は典型的には単結合によって分子の残りに結合している、直鎖又は分岐炭化水素鎖ラジカルを指す。本明細書に現れるときはいつでも、「4~30」などの数値範囲は、所与の範囲内の各整数を指す。例えば、「C4~C30」は、アルキル基が4個の炭素原子、5個の炭素原子、6個の炭素原子などからなり得、30個以下の炭素原子からなり得ることを意味するが、この定義はまた、数値範囲が具体的に指定されていない「アルキル」という用語の出現を網羅することを意図している。典型的なアルキル基としては、アルキルエーテル、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル(イソプロピルと交換可能に使用;本明細書ではiPr又はPriと交換可能に略される)、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、イソブチル、ターシャリーブチル(1,1-ジメチルエチル又はtert-ブチルと互換的に使用)、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、セプチル、オクチル、ノニル及びデシルが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で具体的に他の意味を示さない限り、アルキル基は、独立して、アルケニル、アルコキシ、カルボン酸基(-COOH)、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヒドロキシル、ホスファート基(-OP(O)(OH)O-)、ホスホナート基(-OP(O)O-)、ハロゲンで置換されていてもよいフェニル基(-C)、好ましくはヨウ素、又はカルボン酸基である1つ又は複数の置換基で置換されていてもよい。好ましくは、本明細書で使用される「アルキル」という用語は、本明細書で定義される非置換アルキルを指す。
【0049】
本明細書で使用される「アルケニル」又は「アルケニル残基」という用語は、炭素原子及び水素原子のみからなり、少なくとも1つの二重結合を含み、4から30個の炭素原子を有する直鎖又は分岐炭化水素鎖ラジカル基(すなわち、C4~C30アルケニル)を指し、これは単結合によって分子の残りに結合していてもよく、又は典型的には単結合によって分子の残りに結合している。本明細書に現れるときはいつでも、「4~30」などの数値範囲は、所与の範囲内の各整数を指し、例えば「C4~C30」は、アルケニル基が4個の炭素原子、5個の炭素原子などからなり得、30個以下の炭素原子を含み得ることを意味する。典型的なアルケニル基には、エテニル(すなわち、ビニル)、プロパ-1-エニル(すなわち、アリル)、ブタ-1-エニル、ペンタ-1-エニル及びペンタ-1,4-ジエニル、アルケニルエーテルが含まれるが、これらに限定されない。各二重結合は、(E)-又は(Z)-配置のいずれかであり得る。したがって、アルケニルは、適用可能であれば、その(E)-配置の当該二重結合、その(Z)-配置の当該二重結合及びそれらの混合物のいずれかを任意の比で含み得る。本明細書で具体的に他の意味を示さない限り、アルケニル基は、独立して、アルケニル、アルコキシ、カルボン酸基(-COOH)、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヒドロキシル、ホスファート基(-OP(O)(OH)O-)、ホスホナート基(-OP(O)O-)、ハロゲンで置換されていてもよいフェニル基(-C)、好ましくはヨウ素、又はカルボン酸基である1つ又は複数の置換基で置換されていてもよい。好ましくは、本明細書で使用される「アルケニル」という用語は、本明細書で定義される非置換アルケニルを指す。
【0050】
本明細書で使用される「アルキニル」又は「アルキニル残基」という用語は、炭素原子及び水素原子のみからなる、少なくとも1つの三重結合を含有し、2~10個の炭素原子を有する、直鎖又は分岐炭化水素鎖ラジカル基(すなわち、C4~C30アルキニル)を指す。本明細書に現れるときはいつでも、「4~30」などの数値範囲は、所与の範囲内の各整数を指し、例えば「C4~C30」は、アルキニル基が4個の炭素原子、5個の炭素原子などからなり得、30個以下の炭素原子を含み得ることを意味する。典型的なアルキニル基としては、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル及びヘキシニルが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で具体的に他の意味を示さない限り、アルキニル基は、独立して、アルケニル、カルボン酸基(-COOH)、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ホスファート基(-OP(O)(OH)O-)、ホスホナート基(-OP(O)O-)、ハロゲンで置換されていてもよいフェニル基(-C)、好ましくはヨウ素、又はカルボン酸基である1つ又は複数の置換基で置換されていてもよい。好ましくは、本明細書で使用される「アルキニル」という用語は、本明細書で定義される非置換アルキニルを指す。
【0051】
本明細書で使用される「アルコキシ」又は「アルコキシ残基」という用語は、酸素を介して親構造に結合した、4~30個の炭素原子の直鎖、分岐構成及びそれらの組合わせを含む-O-アルキル基を指す。例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、シクロプロピルオキシ及びシクロヘキシルオキシが挙げられるが、これらに限定されない。「アルコキシ」という用語は、アルキル成分が置換されているアルコキシ(すなわち、-O-(置換アルキル))を指す置換アルコキシを含む。本明細書で具体的に他の意味を示さない限り、アルコキシ基のアルキル基は、独立して、アルケニル、カルボン酸基(-COOH)、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ホスファート基(-OP(O)(OH)O-)、ホスホナート基(-OP(O)O-)、ハロゲンで置換されていてもよいフェニル基(-C6H4)、好ましくはヨウ素、又はカルボン酸基である1つ又は複数の置換基で置換されていてもよい。
【0052】
本明細書で使用される「アリール」又は「アリール残基」という用語は、炭素環式(例えば、フェニル、フルオレニル及びナフチル)である共役パイ電子システムを有する少なくとも1つの環を有する、6~10個の環原子を有する芳香族ラジカル(例えば、C6~C10芳香族又はC6~C10アリール)を指す。置換ベンゼン誘導体から形成され、環原子に自由原子価を有する二価ラジカルは、置換フェニレンラジカルと呼ばれる。自由原子価を有する炭素原子から1つの水素原子を除去することによって名称が「-イル(-yl)」で終わる一価の多環式炭化水素ラジカルから誘導される二価のラジカルは、対応する一価のラジカルの名称に「-イデン(-idene)」を付加することによって命名され、例えば、2つの結合点を有するナフチル基はナフチリデンと呼ばれる。この用語は、単環式又は縮合環多環式(すなわち、隣接する対の環原子を共有する環)基を含む。
【0053】
本明細書で使用される「シクロアルキル」又は「シクロアルキル残基」という用語は、炭素及び水素のみを含み、飽和又は部分的に不飽和であり得る単環式又は多環式ラジカルを指す。シクロアルキル基には、5~30個の環炭素原子を有する基(すなわち、C5-30シクロアルキル)が含まれる。本明細書に現れるときはいつでも、「5~30」などの数値範囲は、所与の範囲内の各整数を指し、例えば「C5-30シクロアルキル」は、シクロアルキル基が5個の炭素原子など、30個以下の炭素原子からなり得ることを意味する。シクロアルキル基の例示的な例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、ノルボルニルなどの部分が挙げられるが、これらに限定されない。「シクロアルキル」という用語はまた、直鎖又は分岐アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ又はアリールなどの更なる炭化水素部分を含む単環式又は多環式ラジカルに関する。最も好ましいシクロアルキルは、飽和C17多環式シクロアルキルである。
【0054】
本明細書で使用される「両親媒性物質」という用語は、好ましい実施形態では、リン脂質、スフィンゴ脂質、グリセロ脂質、サッカロ脂質、脂肪酸、脂肪酸エステル、ステロイド、ステロール、ステロイドエステル、ポリケチド、両親媒性ブロックコポリマー、ペプチド、ペプチド又はオリゴヌクレオチドを含む両親媒性物質、ペプチド核酸、カルボキシラート、スルファート、スルホナート、ボロナート、ホスホナート及びホスファートからなる群から選択される両親媒性化合物を含む。
【0055】
好ましい実施形態において、界面活性剤組成物は、異なる両親媒性物質の混合物を含む。
【0056】
好ましい実施形態では、当該両親媒性物質の親水性基はアニオン性親水性基であり、すなわち少なくとも1つのアニオンを含む。好ましくは、当該アニオン性親水性基は、当該両親媒性物質が負の分子正味電荷を有するようなものである(本明細書ではアニオン性両親媒性物質として言及される)。
【0057】
好ましい実施形態では、界面活性剤組成物は、少なくとも1つのアニオン性両親媒性物質、すなわち負の分子正味電荷を有する両親媒性物質を含む。別の好ましい実施形態では、界面活性剤組成物は、負の分子正味電荷を有する少なくとも1つのアニオン性両親媒性物質と、カチオン性、非荷電及び/又は双性イオン両親媒性物質と、を含む。好ましい実施形態では、界面活性剤組成物に含まれる全ての両親媒性物質がアニオン性両親媒性物質である。
【0058】
別の好ましい実施形態では、当該界面活性剤組成物はステロイドを含む。好ましくは、当該ステロイドはアニオン性ステロイドである。
【0059】
好ましくは、当該アニオン性両親媒性物質は、アニオン性部分と、正電荷対イオン、例えばアンモニウム、アルカリ又はアルカリ土類金属イオンと、を含む。より好ましくは、当該正電荷対イオンは、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又はアンモニウムイオンであり、更により好ましくはナトリウムイオンである。
【0060】
好ましい実施形態では、当該両親媒性物質の当該親水性基は、カルボキシラート、スルファート、スルホナート、ボロナート、ホスホナート、ホスファート、ペプチド、核酸、アミノ酸部分又はペプチド核酸からなる群から選択される。好ましい実施形態では、当該アニオン性両親媒性物質の当該親水性基は、カルボキシラート、スルファート、スルホナート、ボロナート、ホスホナート、ホスファート、ペプチド、核酸、アミノ酸部分又はペプチド核酸のアニオンからなる群から選択される。
【0061】
好ましい実施形態では、当該アミノ酸部分は、1つ又は2つの共有結合したアミノ酸を含み、好ましくはそれらからなる。好ましい実施形態では、当該ペプチド部分は、3つ以上のアミノ酸を含み、好ましくはそれらからなる。親水性基のアミノ酸又はペプチド部分の当該アミノ酸は、負に帯電したAsp及びGlu、又は正電荷Lys、His及びArg、好ましくは負に帯電したAsp及びGluなどの親水性アミノ酸を含む。
【0062】
好ましい実施形態では、当該核酸部分は、5~500塩基対、好ましくは5~300塩基対、より好ましくは5~200塩基対、又は再びより好ましくは5~100塩基対、再びより好ましくは5~50塩基対のサイズの、DNA、RNA、その類似体を含み、好ましくはそれらからなる。DNA又はRNAの類似体は、天然(ネイティブ)の核酸と構造的に類似しているが、核酸骨格(例えば、天然核酸中のホスファート)、核酸糖(例えば、天然DNAのデオキシリボース及び天然RNAのリボース)、及び核酸塩基(例えば、天然核酸中のアデノシン、シトシン、グアニン、チミジン又はプリン)の1つ又は複数において天然の核酸とは異なる(例えば、化学修飾を介して)。核酸類似体及び模倣体は、一般に、核酸塩基(例えば、修飾塩基)、糖(例えば、フッ素化糖又はデオキシ糖)、及び/又はホスホジエステル骨格(例えば、ペプチド又はチオエステル骨格)での天然核酸の修飾から生じる。核酸類似体及び模倣体は当業者に公知であり、例えば、ロック核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)及びモルホリノを含む。
【0063】
より好ましい実施形態では、当該親水性基は、カルボキシラート、スルファート、スルホナート、ボロナート、ホスホナート及びホスファート部分からなる群から選択される。またより好ましい実施形態では、当該親水性基は、カルボキシラート、スルファート、スルホナート及びホスファート部分からなる群から選択される。更により好ましくは、当該親水性基はスルファート又はホスファート部分である。更により好ましくは、当該親水性基はスルファート部分である。
【0064】
別の好ましい実施形態では、当該親水性基はアニオン性部分を含む。別の好ましい実施形態では、当該親水性基は、カルボキシラート、スルファート、スルホナート、ホスホナート、ボロナート、ホスファート及びアミノ酸部分からなる群から選択されるアニオン性部分を含む。別の好ましい実施形態では、当該親水性基は、カルボキシラート、スルファート、スルホナート、ホスホナート、ボロナート、ホスファート及びアミノ酸部分からなる群から選択されるアニオン性部分からなる。好ましくは、当該アニオン性部分はスルファートである。
【0065】
別の好ましい実施形態では、界面活性剤組成物に含まれる当該1つ又は複数の両親媒性物質の少なくとも1つは、(i)カルボキシラート、スルファート、スルホナート、ボロナート、ホスホナート、ホスファート部分及びアミノ酸からなる群から選択される親水性基、並びに(ii)直鎖又は分岐のC4~C30アルキル、C4~C30アルケニル、C4~C30アルキニル、C4~C30アルコキシ又はC5~C30シクロアルキルからなる群から選択される少なくとも1つの炭化水素部分を含む疎水性基からなる。
【0066】
本明細書で使用される「カルボキシ部分」又は「カルボキシラート部分」という用語は、好ましくはR-CO の基を指す。本明細書で使用される「スルファート部分」という用語は、R-SO の基を指す。本明細書で使用される「スルホナート部分」という用語は、好ましくはR-SO の基を指す。本明細書で使用される「ホスホナート部分」という用語は、好ましくはR-PO -R又はR-PO 2-の基を指す。本明細書で使用される「ホスホナート部分」という用語は、好ましくはR-PO -R、R-PO 2-の基を指す。本明細書で使用される「ボロナート部分」という用語は、好ましくはR-BO 2-の基を指す。
【0067】
別の好ましい実施形態では、当該両親媒性物質は、R-CO 、R-SO 、R-SO 、R-PO -R、R-PO 2-、R-PO -R,R-PO 2-、R-BO 2-の塩として定義され、式中、Rは、直鎖又は分岐のC4~C30アルキル、C4~C30アルケニル、C4~C30アルキニル、C4~C30アルコキシ又はC5~C30シクロアルキルからなる群から選択される炭化水素部分からなる。より好ましい実施形態では、当該両親媒性物質は、R-CO 、R-SO 、R-SO 、R-PO 、R-PO 2-、R-PO -R,R-PO 2-、R-BO 2-の塩として定義され、式中、Rは、直鎖のC4~C30アルキル、C4~C30アルケニル、C4~C30アルキニル、C4~C30アルコキシ又はC5~C30シクロアルキルからなる群から選択される炭化水素部分からなる。
【0068】
好ましい実施形態では、界面活性剤組成物に含まれる当該1つ又は複数の両親媒性物質の少なくとも1つの当該親水性基は、スルファート部分である。好ましい実施形態において、界面活性剤組成物に含まれる当該1つ又は複数の両親媒性物質の当該少なくとも1つは、スルファートの塩である。
【0069】
好ましい実施形態では、当該両親媒性物質の当該親水性基はスルファート部分を含み、疎水性基の炭化水素部分は、直鎖又は分岐のアルキル又はアルキルエーテル残基からなる群から選択され、アルキル又はアルキルエーテルは、C6~C30、好ましくはC8~C20、より好ましくはC10~18、更により好ましくはC12~C18、最も好ましくはC12、C14、C16又はC18あるいはそれらの混合物である。好ましい実施形態では、当該親水性基はスルファート部分を含み、当該炭化水素部分は、直鎖又は分岐のアルキル、アルキルエーテル又はアルケニル残基からなる群から選択され、ここで、アルキル又はアルキルエーテル残基は、C6~C30、好ましくはC8~C20、より好ましくはC10~18、更により好ましくはC12~C18、最も好ましくはC12、C14、C16又はC18あるいはそれらの混合物である。好ましい実施形態では、当該親水性基はスルファート部分からなり、当該炭化水素部分は、直鎖アルキル、アルキルエーテル又はアルケニル残基からなる群から選択され、ここで、直鎖アルキル又はアルキルエーテル残基は、C6~C30、好ましくはC8~C20、より好ましくはC10~18、更により好ましくはC12~C18、最も好ましくはC12、C14、C16又はC18あるいはそれらの混合物である。
【0070】
別の好ましい実施形態において、当該両親媒性物質は、第一級又は第二級アルキルスルファート(脂肪アルコール)又はアルキルエーテルスルファート(脂肪アルコールエーテル)の塩である。
【0071】
別の好ましい実施形態では、当該両親媒性物質は、第一級又は第二級アルキルスルファート(脂肪アルコール)又はアルキルエーテルスルファート(脂肪アルコールエーテル)の塩であり、当該スルファートは、スルファート部分(親水性基として)及び直鎖アルキル残基を含み、直鎖アルキル残基は、C6~C30、好ましくはC8~C20、より好ましくはC10~18、更により好ましくはC12~C18、最も好ましくはC12、C14、C16若しくはC18あるいはそれらの混合物である。別の好ましい実施形態において、当該両親媒性物質は、第一級又は第二級アルキルスルファート(脂肪アルコール)又はアルキルエーテルスルファート(脂肪アルコールエーテル)の塩であり、当該両親媒性物質の当該親水性基はスルファート部分からなり、当該炭化水素部分は直鎖アルキル残基であり、ここで、直鎖アルキル残基は、C6~C30、好ましくはC8~C20、より好ましくはC10~18、更により好ましくはC12~C18、最も好ましくはC12、C14、C16又はC18あるいはそれらの混合物である。脂肪アルコール及び脂肪アルコールエーテルは、合成であってもよく、又は天然脂肪に由来してもよい。第一級アルキルスルファート両親媒性物質は、本明細書において、炭素鎖の末端にスルファート部分を有する化合物として定義される。第二級アルキルスルファート両親媒性物質は、本明細書では、炭素鎖に沿ってランダムに分布したスルファート部分を有する化合物として定義される。
【0072】
好ましい実施形態では、界面活性剤組成物に含まれる当該1つ又は複数の両親媒性物質の少なくとも1つは、第一級又は第二級アルキルスルファート(スルファート部分(親水性部分として)及び直鎖アルキル残基を含む脂肪アルコール)の塩であり、直鎖アルキル残基は、C6~C30、好ましくはC8~C20、より好ましくはC10~18、更により好ましくはC12~C18、更により好ましくはC12、C14、C16又はC18あるいはこれらの混合物である。別の好ましい実施形態では、当該両親媒性物質は、スルファート部分及び直鎖アルキル残基を含む第一級アルキルスルファート(脂肪アルコール)の塩であり、ここで、直鎖アルキル残基は、C6~C30、好ましくはC8~C20、より好ましくはC10~18、更により好ましくはC12~C18、更により好ましくはC12、C14、C16又はC18あるいはそれらの混合物である。別の好ましい実施形態では、当該両親媒性物質が第一級アルキルスルファート(脂肪アルコール)の塩であり、当該スルファートがスルファート部分及び直鎖アルキル残基を含み、直鎖アルキル残基はC6~C20、好ましくはC8~C16、より好ましくはC10~12、更により好ましくはC12である。
【0073】
好ましい実施形態では、界面活性剤組成物に含まれる当該1つ又は複数の両親媒性物質の少なくとも1つは、第一級又は第二級アルキルスルファート(脂肪アルコール)の塩であり、当該スルファートは、スルファート部分(親水性部分として)及び直鎖アルキル残基を含み、直鎖アルキル残基は、C6~C30、好ましくはC8~C20、より好ましくはC10~18、更により好ましくはC12~C18、更により好ましくはC12、C14、C16又はC18であり、ステロイドの塩は、スルホナート、スルファート、カルボキシラート、ホスホナート、ボロナート、ホスファートエステル又はアミノ酸からなる群から選択されるアニオン性部分を含む。より好ましくは、当該ステロイドは、スルホナート、スルファート、カルボキシラート、ホスホナート、ボロナート又はホスファート部分、及びステロイド部分からなる群から選択されるアニオン性部分を含む。更により好ましくは、当該ステロイドは、スルホナート、スルファート、カルボキシラート、ホスホナート、又はホスファート部分からなる群から選択されるアニオン性部分と、ステロール、好ましくはコレステロール部分と、を含む。
【0074】
好ましくは、当該両親媒性物質は、式HC-(CH-CH-O-SO 又はHC-(CH-CH-(O-CHCH-O-SO のスルファートであり、式中、mは1~4の値であり、nは4~20、好ましくは6~20、より好ましくは8~18、更により好ましくは10~16、更により好ましくは10~14、更により好ましくは10~12、最も好ましくは10の値である。別の好ましい実施形態では、mは2又は3であり、nは4~20、好ましくは6~20、より好ましくは8~18、更により好ましくは10~16、更により好ましくは10~14、更により好ましくは10~12、最も好ましくは10の値である。別の好ましい実施形態では、mは2であり、nは4~20、好ましくは6~20、より好ましくは8~18、更により好ましくは10~16、更により好ましくは10~14、更により好ましくは10~12、最も好ましくは10の値である。
【0075】
好ましくは、当該両親媒性物質は、式HC-(CH-CH-O-SO のスルファートであり、式中、nは4~20、好ましくは6~20、より好ましくは8~18、更により好ましくは10~16、更により好ましくは10~14、更により好ましくは10~12、最も好ましくは10の値である。
【0076】
別の好ましい実施形態では、当該両親媒性物質は、式HC-(CH-CH-O-SO のスルファートであり、式中、nは4~20、好ましくは6~20、より好ましくは8~18、更により好ましくは10~16、更により好ましくは10~14、更により好ましくは10~12、最も好ましくは10の値であり、ステロイドの、ステロイドスルホナート、スルファート又はカルボキシラート、ホスホナート、ボロナート、ホスファートエステルである。より好ましくは、これらの両親媒性物質のための当該アニオン性ステロイドは、コレステロールの、スルホナート、スルファート、カルボキシラート、ホスホナート、ボロナート又はホスファートエステルである。
【0077】
別の好ましい実施形態において、当該両親媒性物質は、ラウリルスルファート、ラウレススルファート、パレススルファート、ミレススルファート、n-オクチルスルファート、8-ヘキサデシルスルファート、及びテトラデシルスルファートの塩からなる群から選択される。別の好ましい実施形態において、当該両親媒性物質は、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸アンモニウム、パレス硫酸ナトリウム、ミレス硫酸ナトリウム、n-オクチル硫酸ナトリウム、8-ヘキサデシル硫酸ナトリウム、及びテトラデシル硫酸ナトリウムからなる群から選択される。別の好ましい実施形態では、当該両親媒性物質がラウリルスルファート又はラウレススルファートの塩である。
【0078】
好ましくは、当該スルファートの塩は、アンモニウム、アルカリ又はアルカリ土類塩、より好ましくはナトリウム、カリウム、又はアンモニウム塩、更により好ましくはナトリウム塩から選択される。
【0079】
好ましい実施形態では、当該両親媒性物質は、ラウリル硫酸ナトリウム(ドデシル硫酸ナトリウム、SLS、又はSDS、本明細書では典型的にSDSと呼ばれる)、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウレス硫酸ナトリウム(ラウリルエーテル硫酸ナトリウム又はSLES)、ラウレス硫酸アンモニウム、パレス硫酸ナトリウム、ミレス硫酸ナトリウム、n-オクチル硫酸ナトリウム、8-ヘキサデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)及びテトラデシル硫酸ナトリウムからなる群から選択される。
【0080】
別の好ましい実施形態では、当該界面活性剤組成物は、スルホナート、スルファート、カルボキシラート、ホスホナート、ボロナート、及びホスファートエステルからなる群から選択されるアニオン性部分を含むステロイドと組み合わせた、SDS、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸カリウム、SLES、ラウレス硫酸アンモニウム、パレス硫酸ナトリウム、ミレス硫酸ナトリウム、n-オクチル硫酸ナトリウム、8-ヘキサデシル硫酸ナトリウム、及びテトラデシル硫酸ナトリウムからなる群から選択される両親媒性物質を含む。より好ましくは、当該ステロイドは、コレステロールのスルホナート、スルファート、カルボキシラート、ホスホナート、ボロナート又はホスファートエステルである。
【0081】
好ましい実施形態において、当該両親媒性物質は、ラウリルスルファート又はラウレススルファートのアンモニウム塩、アルカリ塩又はアルカリ土類塩である。より好ましい実施形態では、当該両親媒性物質は、ラウリルスルファート又はラウレススルファートのナトリウム塩、カリウム塩又はアンモニウム塩である。別の好ましい実施形態では、当該両親媒性物質がラウリルスルファート又はラウレススルファートのナトリウム塩である。
【0082】
好ましい実施形態において、当該両親媒性物質は、ラウリルスルファート(ドデシル硫酸ナトリウム、SLS又はSDS)のアンモニウム塩、アルカリ塩又はアルカリ土類塩である。より好ましい実施形態では、当該両親媒性物質はラウリルスルファートのナトリウム塩、カリウム塩又はアンモニウム塩である。最も好ましくは、当該両親媒性物質はラウリル硫酸ナトリウムである。
【0083】
好ましい実施形態では、界面活性剤組成物に含まれる当該1つ又は複数の両親媒性物質の少なくとも1つの当該親水性基は、スルホナート、ボロナート又はホスホナート部分である。好ましい実施形態では、界面活性剤組成物に含まれる当該1つ又は複数の両親媒性物質の当該少なくとも1つは、スルホナート、ボロナート又はホスホナートの塩である。
【0084】
好ましい実施形態では、界面活性剤組成物に含まれる当該1つ又は複数の両親媒性物質の少なくとも1つの当該親水性基は、スルホナート、ボロナート又はホスホナート部分であり、当該疎水性基の当該炭化水素部分は、アルキル、アルキル-ベンゼン、ベンゼン-アルキル、アルキル-エステル、アルケニル、アルキル-スクシネート、アルキル-アセタート及びアルキル-タウリドからなる群から選択され、ここで、アルキル又はアルケニルは直鎖又は分岐、好ましくは直鎖C6~C30である。界面活性剤組成物に含まれる当該1つ又は複数の両親媒性物質の少なくとも1つの当該親水性基は、スルホナート、ボロナート又はホスホナート部分であり、当該炭化水素部分は、アルキル、アルキル-ベンゼン、ベンゼン-アルキル、アルキルエステル、アルケニル、アルキル-スクシネート、アルキル-アセタート及びアルキル-タウリドからなる群から選択され、ここで、アルキル又はアルケニルは直鎖又は分岐、好ましくは直鎖C8~C20である。界面活性剤組成物に含まれる当該1つ又は複数の両親媒性物質の少なくとも1つの当該親水性基は、スルホナート、ボロナート又はホスホナート部分であり、当該炭化水素部分は、アルキル、アルキル-ベンゼン、ベンゼン-アルキル、アルキルエステル、アルケニル、アルキル-スクシネート、アルキル-アセタート及びアルキル-タウリドからなる群から選択され、ここで、アルキル又はアルケニルは直鎖又は分岐、好ましくは直鎖C10~18である。界面活性剤組成物に含まれる当該1つ又は複数の両親媒性物質の少なくとも1つの当該親水性基は、スルホナート、ボロナート、又はホスホナート部分であり、当該炭化水素部分は、アルキル、アルキル-ベンゼン、ベンゼン-アルキル、アルキルエステル、アルケニル、アルキル-スクシネート、アルキル-アセタート及びアルキル-タウリドからなる群から選択され、ここで、アルキル又はアルケニルは直鎖又は分岐、好ましくは直鎖C12~C18又はそれらの混合物である。界面活性剤組成物に含まれる当該1つ又は複数の両親媒性物質の少なくとも1つの当該親水性基は、スルホナート、ボロナート又はホスホナート部分であり、当該炭化水素部分は、アルキル、アルキル-ベンゼン、ベンゼン-アルキル、アルキルエステル、アルケニル、アルキル-スクシネート、アルキル-アセタート及びアルキル-タウリドからなる群から選択され、ここで、アルキル又はアルケニルは、直鎖又は分岐、好ましくは直鎖C12、C14、C16若しくはC18又はそれらの混合物である。界面活性剤組成物に含まれる当該1つ又は複数の両親媒性物質の少なくとも1つの当該親水性基は、スルホナート、ボロナート又はホスホナート部分であり、当該炭化水素部分は、アルキル、アルキル-ベンゼン、ベンゼン-アルキル、アルキルエステル、アルケニル、アルキル-スクシネート、アルキル-アセタート及びアルキル-タウリドからなる群から選択され、ここで、アルキル又はアルケニルは、直鎖又は分岐、好ましくは直鎖C12若しくはC14又はそれらの混合物である。
【0085】
好ましい実施形態では、界面活性剤組成物に含まれる当該1つ又は複数の両親媒性物質の少なくとも1つがスルホナートの塩であり、当該スルホナートは、第一級アルキルスルホナート、第二級アルキルスルホナート、スルホン化アルキルエステル、アルキルエステルスルホナート、アルファオレフィンスルホナート、アリールアルキルスルホナート、アルキルアリールスルホナート、アルキルベンゼンスルホナート(ABS)、ベンゼンアルキルスルホナート、アルキルスルホアセタート、アルキルスルホサクシネート、アルキルタウリド、スルホリピッド及びスルホグリコリピッドからなる群から選択される。別の好ましい実施形態では、当該両親媒性物質は、第一級アルキルスルホナート、第二級アルキルスルホナート、スルホン化アルキルエステル、アルキルエステルスルホナート、アリールアルキルスルホナート、アルキルアリールスルホナート、アルキルベンゼンスルホナート、ベンゼンアルキルスルホナート、アルキルスルホアセタート、アルキルスルホスクシネート、及びアルキルタウリドからなる群から選択されるスルホナートの塩である。より好ましい実施形態では、当該両親媒性物質は、第一級アルキルスルホナート、第二級アルキルスルホナート、スルホン化アルキルエステル、アルキルエステルスルホナート、アルファオレフィンスルホナート、アルキルベンゼンスルホナート、ベンゼンアルキルスルホナート、アルキルスルホアセタート、アルキルスルホスクシネート、及びアルキルタウリドからなる群から選択される。更により好ましい実施形態において、当該両親媒性物質は、第一級アルキルスルホナート又は第二級アルキルスルホナートの塩である。
【0086】
好ましい実施形態では、当該両親媒性物質は、直鎖又は分岐、好ましくは直鎖アルキル又はアルケニル残基を含むスルホナートの塩であり、当該スルホナートの塩は、第一級アルキルスルホナート、第二級アルキルスルホナート、スルホン化アルキルエステル、アルキルエステルスルホナート、アルファオレフィン(アルケニル)スルホナート、アルキルベンゼンスルホナート(ABS)、ベンゼンアルキルスルホナート、アルキルスルホアセタート、アルキルスルホサクシネート、及びアルキルタウリドからなる群から選択され、ここで、アルキル残基は、C6~C30、好ましくはC8~C20、より好ましくはC10~18、更により好ましくはC12~C18、最も好ましくはC12、C14、C16若しくはC18又はそれらの混合物である。別の好ましい実施形態では、当該両親媒性物質は、C6~C30、好ましくはC8~C20、より好ましくはC10~18、更により好ましくはC12~C18、最も好ましくはC12、C14、C16若しくはC18又はそれらの混合物の直鎖又は分岐アルキル残基を含む第一級又は第二級アルキルスルホナートの塩である。別の好ましい実施形態では、当該両親媒性物質は、C6~C30、好ましくはC8~C20、より好ましくはC10~18、更により好ましくはC12~C18、最も好ましくはC12、C14、C16若しくはC18又はそれらの混合物の直鎖アルキル残基を含む第一級アルキルスルホナート又は第二級アルキルスルホナートの塩である。
【0087】
好ましくは、スルファート、スルホナート、ボロナート又はホスホナートの当該塩は、アンモニウム塩、アルカリ塩又はアルカリ土類塩、より好ましくはナトリウム塩、カリウム塩又はアンモニウム塩、更により好ましくはナトリウム塩から選択される。
【0088】
好ましい実施形態では、界面活性剤組成物に含まれる当該1つ又は複数の両親媒性物質の少なくとも1つは、第一級若しくは第二級アルキルスルファートの塩、又は第一級若しくは第二級アルキルスルホナートの塩であり、当該アルキルスルファート又はアルキルスルホナートのアルキル残基は、直鎖C6~C30であるか、又は式HC-(CH-CH-(O-CHCH-O-SO (式中、mは1~4の値であり、nは4~20の値である)のスルファートの塩である。好ましくは、当該両親媒性物質は、第一級若しくは第二級アルキルスルファートの塩又は第一級若しくは第二級アルキルスルホナートの塩であり、当該アルキルスルファート又はアルキルスルホナートのアルキル残基は、直鎖C8-C20であるか、又は式HC-(CH-CH-(O-CHCH-O-SO (式中、mは1~4の値であり、nは6~18の値である)のスルファートの塩である。好ましくは、当該両親媒性物質は、第一級若しくは第二級アルキルスルファートの塩又は第一級若しくは第二級アルキルスルホナートの塩であり、当該アルキルスルファート又はアルキルスルホナートのアルキル残基は、直鎖C10~C18であるか、又は式HC-(CH-CH-(O-CHCH-O-SO (式中、mは2又は3の値であり、nは8~16の値である)のスルファートの塩である。好ましくは、当該両親媒性物質は、第一級若しくは第二級アルキルスルファートの塩又は第一級若しくは第二級アルキルスルホナートの塩であり、当該アルキルスルホナートのアルキルスルファート又はアルキル残基は直鎖C10~C16であるか、又は式HC-(CH-CH-(O-CHCH-O-SO (式中、mは2又は3の値であり、nは8~14の値である)のスルファートの塩である。好ましくは、当該両親媒性物質は、第一級若しくは第二級アルキルスルファートの塩又は第一級若しくは第二級アルキルスルホナートの塩であり、当該アルキルスルファート又はアルキルスルホナートのアルキル残基は、直鎖C10~C14であるか、又は式HC-(CH-CH-(O-CHCH-O-SO (式中、mは2又は3の値であり、nは8~12の値である)のスルファートの塩である。好ましくは、当該両親媒性物質は、第一級若しくは第二級アルキルスルファートの塩又は第一級若しくは第二級アルキルスルホナートの塩であり、当該アルキルスルファート又はアルキルスルホナートのアルキル残基は、直鎖C12であるか、又は式HC-(CH-CH-(O-CHCH-O-SO (式中、mは2又は3の値であり、nは10である)のスルファートの塩である。好ましくは、当該スルファート又はスルホナートの当該塩は、アンモニウム塩、アルカリ塩又はアルカリ土類塩、より好ましくはナトリウム塩、カリウム塩又はアンモニウム塩、更により好ましくはナトリウム塩から選択される。
【0089】
好ましい実施形態では、界面活性剤組成物に含まれる当該1つ又は複数の両親媒性物質の少なくとも1つの当該親水性基は、カルボキシル部分である。好ましい実施形態において、界面活性剤組成物に含まれる当該1つ又は複数の両親媒性物質の少なくとも1つは、カルボキシラートの塩である。
【0090】
好ましい実施形態では、当該親水性基はカルボキシ部分であり、当該疎水性基の当該炭化水素部分は、アルキル、アルキニル、アルケニル又は脂肪酸残基、好ましくは直鎖アルキル、アルケニル又は脂肪酸残基からなる群から選択される。好ましい実施形態では、当該親水性基はカルボキシ部分であり、当該疎水性基の当該炭化水素部分は、直鎖アルキル、アルキニル、アルケニル又は脂肪酸残基からなる群から選択され、アルキル又はアルケニル残基は、C6~C30、好ましくはC8~C20、より好ましくはC10~18、更により好ましくはC12~C18、最も好ましくはC12、C14、C16若しくはC18又はそれらの混合物である。
【0091】
好ましい実施形態では、当該親水性基はカルボキシ部分であり、当該疎水性基の当該炭化水素部分は直鎖アルキル残基であり、直鎖アルキル残基はC6~C30、好ましくはC8~C20、より好ましくはC10~18、更により好ましくはC12~C18、最も好ましくはC12、C14、C16若しくはC18又はそれらの混合物である。
【0092】
好ましい実施形態では、当該親水性基はカルボキシ部分であり、当該疎水性基の当該炭化水素部分は、アルキル、アルキニル、アルケニル又は脂肪酸、アルキルエステル、アルキルエーテル、アルキルポリグリコール又はアルキルサルコシナートから選択される直鎖又は分岐部分であり、アルキル又はアルケニルは、C6~C30、好ましくはC8~C20、より好ましくはC10~18、更により好ましくはC12~C18、最も好ましくはC12、C14、C16若しくはC18又はそれらの混合物である。好ましい実施形態では、当該親水性基はカルボキシ部分であり、当該疎水性基の当該炭化水素部分は直鎖アルキル残基であり、直鎖アルキル残基はC6~C30、好ましくはC8~C20、より好ましくはC10~18、更により好ましくはC12~C18、最も好ましくはC12、C14、C16若しくはC18又はそれらの混合物である。
【0093】
好ましい実施形態では、界面活性剤組成物に含まれる当該1つ又は複数の両親媒性物質の少なくとも1つは、第一級若しくは第二級アルキルスルファート、第一級若しくは第二級アルキルスルホナート、アルキルサルコシナート又はアルキルカルボキシラートからなる群から選択される両親媒性物質であり、当該第一級若しくは第二級アルキルスルファート、アルキルスルホナート、アルキルサルコシナート又はアルキルカルボキシラートのアルキル残基は、直鎖又は分岐、好ましくは直鎖C6~C30、又は式HC-(CH-CH-(O-CHCH-O-SO (式中、mは1~4の値であり、nは4~20の値である)のスルファートの塩である。より好ましくは、当該両親媒性物質は、第一級若しくは第二級アルキルスルファート、第一級若しくは第二級アルキルスルホナート、アルキルサルコシナート又はアルキルカルボキシラートからなる群から選択される塩であり、ここで、当該第一級若しくは第二級アルキルスルファート、アルキルスルホナート、アルキルサルコシナート又はアルキルカルボキシラートのアルキル残基は、直鎖又は分岐、好ましくは直鎖C8~C20、又は式HC-(CH-CH-(O-CHCH-O-SO (式中、mは2又は3であり、nは6~18の値である)のスルファートの塩である。より好ましくは、当該両親媒性物質は、第一級若しくは第二級アルキルスルファート、第一級若しくは第二級アルキルスルホナート、アルキルサルコシナート又はアルキルカルボキシラートからなる群から選択される塩であり、ここで、当該第一級若しくは第二級アルキルスルファート、アルキルスルホナート、アルキルサルコシナート又はアルキルカルボキシラートのアルキル残基は、直鎖又は分岐、好ましくは直鎖C10~C18、又は式HC-(CH-CH-(O-CHCH-O-SO (式中、mは2又は3であり、nは8~16の値である)のスルファートの塩である。より好ましくは、当該両親媒性物質は、第一級若しくは第二級アルキルスルファート、第一級若しくは第二級アルキルスルホナート、アルキルサルコシナート又はアルキルカルボキシラートからなる群から選択される塩であり、ここで、当該第一級若しくは第二級アルキルスルファート、アルキルスルホナート、アルキルサルコシナート又はアルキルカルボキシラートのアルキル残基は、直鎖又は分岐、好ましくは直鎖C12~C18、又は式HC-(CH-CH-(O-CHCH-O-SO (式中、mは2又は3であり、nは10~16の値である)のスルファートの塩である。より好ましくは、当該両親媒性物質は、第一級若しくは第二級アルキルスルファート、第一級若しくは第二級アルキルスルホナート、アルキルサルコシナート又はアルキルカルボキシラートからなる群から選択される塩であり、ここで、当該第一級若しくは第二級アルキルスルファート、アルキルスルホナート、アルキルサルコシナート又はアルキルカルボキシラートのアルキル残基は、直鎖又は分岐、好ましくは直鎖C12~C16、又は式HC-(CH-CH-(O-CHCH-O-SO (式中、mは2又は3であり、nは10~14の値である)のスルファートの塩である。
【0094】
好ましい実施形態では、界面活性剤組成物に含まれる当該1つ又は複数の両親媒性物質の少なくとも1つは両親媒性脂質である。本明細書で使用される「両親媒性脂質」という用語は、親水性部分と、油、脂肪(脂肪酸、グリセリドなど)、ステロール、ステロイド、及びこれらの化合物の誘導体形態から選択される炭化水素を含む疎水性部分と、の両方を含む両親媒性化合物を指す。適切な両親媒性脂質には、脂肪酸及びその誘導体、炭化水素及びその誘導体、並びにコレステロールなどのステロールに由来する部分が含まれる。好ましい実施形態において、当該両親媒性脂質は、リン脂質、スフィンゴ脂質、グリセロ脂質、及びサッカロ脂質からなる群から選択される。
【0095】
好ましい実施形態では、界面活性剤組成物に含まれる当該1つ又は複数の両親媒性物質の少なくとも1つの当該親水性基は、ホスファート部分である。好ましい実施形態において、界面活性剤組成物に含まれる当該1つ又は複数の両親媒性物質の少なくとも1つは、ホスファート塩である。
【0096】
好ましい実施形態では、当該親水性基はホスファート部分であり、当該疎水性基の当該炭化水素部分は、脂肪酸、脂肪酸エステル、アルキル、アルケニル、グリセリド部分からなる群から選択される。好ましくは、当該脂肪酸、脂肪酸エステル、アルキル又はアルケニルは直鎖である。好ましくは、当該疎水性基は、飽和脂肪酸、脂肪酸エステル、直鎖アルキル又は直鎖アルケニルからなる群から選択される。
【0097】
本明細書で使用される「脂肪酸」という用語は、カルボン酸基で終結する炭化水素鎖を指し、当該炭化水素鎖は、典型的に及び好ましくは、典型的には3~32個の炭素長のアルキル又はアルケニルのいずれかであり、したがって飽和又は不飽和であり、1つ又は複数、好ましくは1つのカルボン酸基(-COOH)、1つ又は複数、好ましくは1つのC1-32アルキル、1つ又は複数、好ましくは1つのホスファート基(HOP(O)(OH)O-)、1つ又は複数、好ましくは1つのホスホナート基(HOP(O)O-)、1つ又は複数、好ましくは1つのチオホスファート基(HOP(O)(SH)O-)、1つ又は複数、好ましくは1つのジチオホスファート基(HOP(S)(SH)O-)1つ又は複数、好ましくは1つのジホスファート基(HO-P(O)(OH)-O-P(O)(OH)-O-)、1つ又は複数、好ましくは1つのトリホスファート基(HO-P(O)(OH)-O-P(O)(OH)-O-P(O)(OH)-O-)、1つ又は複数のフェニル基(-C)、ハロゲンで置換された1つ又は複数のフェニル基、好ましくはヨウ素、又はカルボン酸基で置換されていてもよい。脂肪酸が1つ又は複数の二重結合を含み、したがって不飽和である場合、シス又はトランス幾何異性のいずれかの可能性がある。本明細書で使用される「脂肪酸部分」という用語は、本明細書で定義される脂肪酸に由来する部分を指し、当該脂肪酸の1つのカルボン酸基(-COOH)は、当該脂肪酸部分の-C(O)-基になり、-C(O)-基であり、この-C(O)-基は、直接又は本発明によるスペーサーを介して当該オリゴヌクレオチドに連結されている。「脂肪酸」という用語は、脂肪酸二酸を含み、これは本明細書で定義される脂肪酸を指すが、オメガ位に追加のカルボン酸基を有する。好ましい実施形態では、当該両親媒性物質は、ホスファート部分と、脂肪酸、脂肪酸エステル、アルキル又はアルケニルの少なくとも1つの直鎖又は分岐、好ましくは直鎖C6~C30鎖と、を含むホスファート塩である。更に好ましい実施形態では、当該両親媒性物質は、ホスファート部分と、脂肪酸、アルキル又はアルケニルの少なくとも1つのC8~C20鎖と、を含むホスファート塩である。更に好ましい実施形態では、当該両親媒性物質は、ホスファート部分と、脂肪酸、アルキル又はアルケニルの少なくとも1つのC10~C18鎖と、を含むホスファート塩である。更に好ましい実施形態では、当該両親媒性物質は、ホスファート部分と、脂肪酸、アルキル又はアルケニルの少なくとも1つのC12~C18鎖と、を含むホスファート塩である。更に好ましい実施形態では、当該両親媒性物質は、ホスファート部分と、脂肪酸、アルキル又はアルケニルの少なくとも1つのC12~C18鎖と、を含むホスファート塩である。更に好ましい実施形態では、当該両親媒性物質は、ホスファート部分と、脂肪酸、アルキル若しくはアルケニルの少なくとも1つのC12、C14、C16若しくはC18鎖又はそれらの混合物と、を含むホスファート塩である。好ましくは、当該アルキル又はアルケニルは直鎖である。より好ましくは、当該アルキル又はアルケニルは直鎖であり、当該脂肪酸は不飽和である。
【0098】
好ましい実施形態では、界面活性剤組成物に含まれる当該1つ又は複数の両親媒性物質の少なくとも1つは、モノアルキルホスファートエステル塩、ジアルキルホスファートエステル塩、モノアルケニルホスファートエステル塩、ジアルケニルホスファートエステル塩及びリン脂質からなる群から選択されるホスファート塩である。
【0099】
好ましい実施形態において、界面活性剤組成物に含まれる当該1つ又は複数の両親媒性物質の少なくとも1つは、リン脂質である。好ましくは、当該リン脂質は、少なくとも2つの疎水性脂肪酸部分、好ましくは正確に2つの脂肪酸部分、及び親水性ホスファート塩部分からなる。部分は、好ましくはグリセロール部分によって共有結合している。ホスファート部分は、好ましくは、コリン、エタノールアミン又はセリンなどの単純な有機分子で修飾される。
【0100】
好ましい実施形態では、界面活性剤組成物に含まれる当該1つ又は複数の両親媒性物質の少なくとも1つは、モノアルキルホスファートエステル塩、ジアルキルホスファートエステル塩、モノアルケニルホスファートエステル塩、ジアルケニルホスファートエステル塩及びリン脂質からなる群から選択されるホスファート塩であり、ホスファートエステル塩又はリン脂質の脂肪酸の当該アルキル又はアルケニルは、直鎖C6~C30、好ましくはC8~C20、より好ましくはC10~18、更により好ましくはC12~C18、最も好ましくはC12、C14、C16若しくはC18又はそれらの混合物である。
【0101】
好ましい実施形態では、界面活性剤組成物に含まれる当該1つ又は複数の両親媒性物質の少なくとも1つは、第一級若しくは第二級アルキルスルファート、第一級若しくは第二級アルキルスルホナート、アルキルホスホナート、アルキルボロナート、アルキルサルコシナート、アルキルカルボキシラート、モノアルキルホスファートエステル又はジアルキルホスファートエステルからなる群から選択される塩であり、当該アルキルスルファート、アルキルスルホナート、アルキルホスホナート、アルキルボロナート、アルキルサルコシナート又はアルキルカルボキシラート又はホスファートエステルのアルキル残基は、直鎖C6~C30であるか、又は式HC-(CH-CH-(O-CHCH-O-SO (式中、mは1~4の値であり、nは4~20の値である)のスルファートの塩である。より好ましくは、当該両親媒性物質は、第一級若しくは第二級アルキルスルファート、第一級若しくは第二級アルキルスルホナート、アルキルホスホナート、アルキルボロナート、アルキルサルコシナート又はアルキルカルボキシラート、モノアルキルホスファートエステル、又はジアルキルホスファートエステルからなる群から選択される塩であり、当該アルキルスルファート、アルキルスルホナート、アルキルホスホナート、アルキルボロナート、アルキルサルコシナート又はアルキルカルボキシラート又はホスファートエステルのアルキル残基は、直鎖C8~C30であるか、又は式HC-(CH-CH-(O-CHCH-O-SO (式中、mは2又は3であり、nは6~18の値である)のスルファートの塩である。より好ましくは、当該両親媒性物質は、第一級若しくは第二級アルキルスルファート、第一級若しくは第二級アルキルスルホナート、アルキルホスホナート、アルキルボロナート、アルキルサルコシナート又はアルキルカルボキシラート、モノアルキルホスファートエステル、又はジアルキルホスファートエステルからなる群から選択される塩であり、当該アルキルスルファート、アルキルスルホナート、アルキルホスホナート、アルキルボロナート、アルキルサルコシナート又はアルキルカルボキシラート又はホスファートエステルのアルキル残基は、直鎖C10~C18であるか、又は式HC-(CH-CH-(O-CHCH-O-SO (式中、mは2又は3であり、nは8~16の値である)のスルファートの塩である。より好ましくは、当該両親媒性物質は、第一級若しくは第二級アルキルスルファート、第一級若しくは第二級アルキルスルホナート、アルキルホスホナート、アルキルボロナート、アルキルサルコシナート又はアルキルカルボキシラート、モノアルキルホスファートエステル、又はジアルキルホスファートエステルからなる群から選択される塩であり、当該第一級若しくは第二級アルキルスルファート、アルキルスルホナート、アルキルホスホナート、アルキルボロナート、アルキルサルコシナート又はアルキルカルボキシラート又はホスファートエステルのアルキル残基は、直鎖C12~C18であるか、又は式HC-(CH-CH-(O-CHCH-O-SO (式中、mは2又は3であり、nは10~16の値である)のスルファートの塩である。より好ましくは、当該両親媒性物質は、第一級若しくは第二級アルキルスルファート、第一級若しくは第二級アルキルスルホナート、アルキルホスホナート、アルキルボロナート、アルキルサルコシナート又はアルキルカルボキシラート、モノアルキルホスファートエステル、又はジアルキルホスファートエステルからなる群から選択される塩であり、当該第一級若しくは第二級アルキルスルファート、アルキルスルホナート、アルキルホスホナート、アルキルボロナート、アルキルサルコシナート又はアルキルカルボキシラート又はホスファートエステルのアルキル残基は、直鎖C12~C16であるか、又は式HC-(CH-CH-(O-CHCH-O-SO (式中、mは2又は3であり、nは10~14の値である)のスルファートの塩である。
【0102】
好ましい実施形態では、総界面活性剤分子(すなわち、アニオン性両親媒性物質及び任意選択のアニオン性ステロイド)と組み立てられたタンパク質ケージに封入されたタンパク質ケージとのモル比は、最大約1000:1である。好ましい実施形態では、総界面活性剤分子とタンパク質ケージとのモル比は約800:1である。
【0103】
別の好ましい実施形態では、当該アニオン性両親媒性物質はドデシルスルファート、好ましくはドデシル硫酸ナトリウムの塩であり、集合したタンパク質ケージに封入されたドデシル硫酸分子とタンパク質ケージとのモル比は最大約1000:1である。好ましい実施形態では、当該アニオン性両親媒性物質はドデシルスルファート、好ましくはドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の塩であり、集合したタンパク質ケージに封入されたドデシル硫酸分子とタンパク質ケージとのモル比は最大約800:1である。これは、本発明のタンパク質ケージの四次構造への変化が約800当量のSDSの濃度では起こらず、1000当量を超えると、潜在的にSDS分子とタンパク質ケージとの外部会合に起因して、可動性が増加したバンドが生じたことを示すデータに基づいている。
【0104】
好ましい実施形態では、当該炭化水素部分は、脂肪酸、脂肪酸エステル、ステロイド、ステロール、ステロイドエステルからなる群から選択される。
【0105】
別の好ましい実施形態では、界面活性剤組成物に含まれる当該1つ又は複数の両親媒性物質は、両親媒性ステロイドを含む。別の好ましい実施形態では、界面活性剤組成物に含まれる当該1つ又は複数の両親媒性物質は、アニオン性両親媒性ステロイドを含む。別の好ましい実施形態では、界面活性剤組成物に含まれる当該1つ又は複数の両親媒性物質は、アニオン性両親媒性物質及びアニオン性ステロイドを含む。別の好ましい実施形態では、界面活性剤組成物に含まれる当該1つ又は複数の両親媒性物質は、アニオン性両親媒性物質及びアニオン性ステロイドを含み、当該アニオン性両親媒性物質及びアニオン性ステロイドの親水性基は、スルホナート、スルファート、カルボキシラート、ホスホナート、ボロナート、及びホスファート部分からなる群から選択される。より好ましくは、別の好ましい実施形態では、界面活性剤組成物に含まれる当該1つ又は複数の両親媒性物質は、アニオン性両親媒性物質及びアニオン性ステロイドを含み、当該アニオン性両親媒性物質及びアニオン性ステロイドの親水性基はスルファート部分である。
【0106】
本明細書で使用される「ステロイド」という用語は、好ましくはステロイド、ステロイドエステル及びステロールを含み、より好ましくはアニオン性はステロイド、ステロイドエステル及びステロールを含む。
【0107】
好ましくは、当該アニオン性ステロイドは、スルホナート、スルファート、カルボキシラート、ホスホナート、ボロナート、ホスファート、ホスファートエステル又は親水性アミノ酸を含むステロイドからなる群から選択される。より好ましくは、当該アニオン性ステロイドは、ステロイドスルホナート、ステロイドスルファート及びステロイドホスファートエステルからなる群から選択される。より好ましくは、当該アニオン性ステロイドは、スルホナート、スルファート、カルボキシラート、ホスホナート、ボロナート、ホスファートからなる群から選択されるアニオン性部分;及びエストラジオール、エストリオール、ジエチルスチルベストロール、デヒドロエピアンドロステロン、コレステロール、プレグネノロン、DHEA、アンドロステンジオール、アンドロステロン、エストロン、テストステロンからなる群から選択されるステロイド部分を含む。別の好ましい実施形態において、当該アニオン性ステロイドは、硫酸エストリオール、硫酸エストラジオール、二硫酸エストラジオール(EDS)、二硫酸ジエチルスチルベストロール、硫酸デヒドロエピアンドロステロン、硫酸コレステロール、硫酸プレグネノロン、硫酸DHEA、硫酸アンドロステンジオール、硫酸アンドロステロン、硫酸エストロン、硫酸エストラジオール、硫酸テストステロンからなる群から選択される。最も好ましくは、当該アニオン性ステロイドは硫酸コレステロール(CS)である。
【0108】
好ましい実施形態において、本発明の界面活性剤組成物の当該アニオン性両親媒性物質はドデシル硫酸ナトリウム(SDS)であり、当該アニオン性ステロイドは硫酸コレステロール((CS)である。
【0109】
好ましい実施形態では、当該界面活性剤組成物は、組み立てられたタンパク質ケージに封入されたアニオン性両親媒性物質及びアニオン性ステロイドを含み、界面活性剤組成物中のアニオン性両親媒性物質及びアニオン性ステロイドのモル比は、50%アニオン性両親媒性物質/50%アニオン性ステロイド~100%アニオン性両親媒性物質/0%アニオン性ステロイド、より好ましくは75%アニオン性両親媒性物質/25%アニオン性ステロイド~100%アニオン性両親媒性物質/0%アニオン性ステロイドである。好ましい実施形態では、当該アニオン性ステロイドは、大きな平面カーゴ分子の封入に使用され、好ましくは界面活性剤組成物は、モル比として示される、75%のアニオン性両親媒性物質及び25%のアニオン性ステロイドを含む。
【0110】
好ましい実施形態では、当該アニオン性両親媒性物質はSDSであり、当該アニオン性ステロイドはCSであり、SDSは、モル比として示される、CSに対して100%~50%、好ましくは100%~75%の界面活性剤組成物に含まれる。
【0111】
好ましい実施形態では、当該界面活性剤組成物はSDS及びCSを含む。好ましい実施形態では、当該界面活性剤組成物はSDS及びCSからなる。好ましい実施形態では、当該界面活性剤組成物はSDS及びCSを含み、当該SDS対CSの当該モル比は、4:1~2:1である。好ましい実施形態では、当該界面活性剤組成物はSDS及びCSからなり、当該SDS対CSの当該モル比は、4:1~2:1である。好ましい実施形態では、当該界面活性剤組成物はSDS及びCSを含み、当該SDS対CSの当該モル比は、3:1である。好ましい実施形態では、当該界面活性剤組成物はSDS及びCSを含み、当該SDS対CSの当該モル比は、3:1である。
【0112】
以下からなるアミノ酸配列Iを含む少なくとも1つのポリペプチドを含むタンパク質ケージであって、
MX13QAIGILELXSIAAGMELGDAMLKSAX14VX15LLVSKTISXGKFLLMLGGDIXAIX12AIX10TGTX11QAGXLLVDSLVLAX16IHPSVLPAIX17GX18NX19VX2021QAVGIVETXSVAACISAADX22AVX23GSX24VTLVRVHMAXGIGGKCYMVVAGDVSDVALAVTVASSSAGAYGXLVYASLIPX25PHX26AMWX27QMVX28GX29E(配列番号1)
ここで、X~X29のいずれかは互いに独立してアミノ酸であり、但し、X~Xの少なくとも3つは互いに独立して正に荷電したアミノ酸であり、配列番号1におけるX~X29で示された以外の位置における5つまでのアミノ酸は任意のアミノ酸によって交換されていてもよい。
【0113】
本明細書で使用される「ポリペプチド」という用語は、サイズ、長さ、二次及び三次構造、サブユニットの数又は翻訳後修飾に関係なく、アミノ酸の任意のペプチド結合連結ポリマーを指す。したがって、「ポリペプチド」という用語は、「ペプチド」、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、「アミノ酸配列」という用語を包含するものとして理解されるべきである。本発明によるポリペプチドは、開いた直鎖ペプチド鎖又は環状ペプチドであり得る。あるいは又は更に、本発明のペプチドは、脂質化、グリコシル化及びリン酸化などの少なくとも1つの化学修飾を含み得る。本明細書で理解されるペプチド、特に本発明のペプチドは、単離されているか、又は好ましくは化学合成、RNA翻訳及び/又は組換えプロセスによって産生され得る。
【0114】
本明細書で使用される「アミノ酸」という用語は、官能基アミン(-NH2)及びカルボン酸(-COOH)並びにその双性イオンを、典型的及び好ましくは各アミノ酸に特異的な側鎖と共に含む有機化合物を指す。「アミノ酸」という用語は、典型的には及び好ましくは、天然に存在するアミノ酸、例えばタンパク質形成性アミノ酸(RNA翻訳によって生成される)、非タンパク質形成性アミノ酸(他の代謝機構、例えば翻訳後修飾によって産生される)、標準又はカノニカルアミノ酸(遺伝暗号のコドンによって直接コードされる)及び非標準又は非カノニカルアミノ酸(遺伝暗号によって直接コードされない)を含む。天然に存在するアミノ酸には、タンパク質性アミノ酸及び非タンパク質性アミノ酸が含まれる。本明細書で使用される「アミノ酸」という用語は、化学的に合成された非天然アミノ酸も含む。更に、この用語は、アルファ-(α-)、ベータ-(β-)、ガンマ-(γ-)及びデルタ-(δ-)などのアミノ酸、並びに任意の比のそれらの混合物、並びに該当する場合、アミノ酸の任意の異性体形態、すなわちそのD-及びL-立体異性体(あるいは(R)及び(S)の命名法によって示される)、並びに任意の比、好ましくは1:1のラセミ比のそれらの混合物を包含する。本発明におけるアミノ酸は、典型的には、好ましくはL配置である。「D-立体異性体」、「L-立体異性体」、「D-アミノ酸」又は「L-アミノ酸」という用語は、アミノ酸のキラルアルファ炭素を指す。アミノ酸は、修飾及び/又は結合した化合物及び残基、例えばBoc、Fmoc又はその両方などのペプチド合成に使用される残基を含み得る。
【0115】
「X~X」及び「Xn-m」という用語は、配列番号1の特定のアミノ酸位置を示すために本明細書では互換的に使用される。
【0116】
配列番号1のX1-29で示されない位置の5個までのアミノ酸は、任意のアミノ酸で交換されていてもよい。本明細書で互換的に使用される「アミノ酸交換」又は「任意のアミノ酸によって交換される」という用語は、1つのアミノ酸の欠失又は1つ若しくは複数のアミノ酸による、より好ましくは1、2若しくは3つのアミノ酸による単一アミノ酸の置換(付加)による交換を含むか又は好ましくは指す。最も好ましくは、「アミノ酸交換」という用語は、単一アミノ酸の欠失又は単一アミノ酸の1、2若しくは3個のアミノ酸による置換を指す。好ましい実施形態では、当該アミノ酸交換は置換である。別の好ましい実施形態では、当該アミノ酸交換は保存的アミノ酸置換である。
【0117】
「保存的置換」という用語は、所与のアミノ酸を類似の生化学的特性を有する異なるアミノ酸に変化させるアミノ酸置換である。保存的置換としては、アミノ酸の荷電性、極性、芳香族、脂肪族又は疎水性の性質が維持される、アイソステリック(isosteric)置換及び置換を含み、好ましくはこれを指す。保存的置換は、本発明のポリペプチドが本発明のタンパク質ケージに自己集合する能力を維持する置換を指す。
【0118】
本明細書で使用される「正電荷」という用語は、正電荷基を有する分子を含み、好ましくはそれを指す。より好ましくは、当該正電荷分子は、中性又は生理学的pHで正電荷基を有する。
【0119】
本発明の好ましい実施形態では、配列番号1のX1-29で示されていない位置の場合、場合により最大4個のアミノ酸、より好ましくは最大3個のアミノ酸、更により好ましくは最大2個のアミノ酸、最も好ましくは1個のアミノ酸が任意のアミノ酸によって交換される。
【0120】
好ましい実施形態では、当該ポリペプチドは、約500アミノ酸以下、好ましくは約400アミノ酸以下、より好ましくは300アミノ酸以下、更により好ましくは250アミノ酸以下、更により好ましくは200アミノ酸以下、更により好ましくは188~230アミノ酸、最も好ましくは192アミノ酸の長さを有する。
【0121】
別の好ましい実施形態では、当該ポリペプチドは単離されたポリペプチドである。
【0122】
別の好ましい実施形態では、当該ポリペプチドは、配列番号1からなるアミノ酸配列からなる。別の好ましい実施形態では、当該ポリペプチドは、配列番号1からなるアミノ酸配列からなり、配列番号1のX1-29で示されない位置の最大5個のアミノ酸が任意のアミノ酸によって交換されていてもよい。
【0123】
別の好ましい実施形態において、X~Xの当該少なくとも3つの当該正に荷電したアミノ酸は、互いに独立して、アルギニン又はアルギニンの保存的置換である。別の好ましい実施形態では、当該X~Xの当該少なくとも3個の当該正に荷電したアミノ酸は、互いに独立して、アルギニン、5-メチル-アルギニン、ガンマ-ヒドロキシアルギニン、2-アミノ-4-グアニジノブトリリン酸(guanidinobutryric acid)、2-アミノ-3-グアニジノプロピオン酸、カナバニン、ホモアルギニン、リシン、ジアミノ酪酸、2,3-ジアミノプロパン酸、(2S)-2,8-ジアミノオクタン酸、オルニチン、チアリシン及びヒスチジンからなる群から選択される。
【0124】
別の好ましい実施形態では、X~Xの当該少なくとも3個の当該正に荷電したアミノ酸は、互いに独立して、アルギニン、5-メチル-アルギニン、ガンマ-ヒドロキシアルギニン、2-アミノ-4-グアニジノブトリリン酸(guanidinobutryric acid)、2-アミノ-3-グアニジノプロピオン酸、カナバニン、ホモアルギニン、リシン、ジアミノ酪酸、2,3-ジアミノプロパン酸、(2S)-2,8-ジアミノオクタン酸、オルニチン及びチアリシンからなる群から選択される。
【0125】
別のより好ましい実施形態では、X~Xの当該少なくとも3つの当該正に荷電したアミノ酸は、互いに独立して、ヒスチジン、アルギニン又はリシンである。別のより好ましい実施形態では、X~Xの当該少なくとも3つの当該正に荷電したアミノ酸は、互いに独立して、アルギニン又はリシンである。別のより好ましい実施形態では、当該X~Xの当該少なくとも3個の正に荷電したアミノ酸は、各アルギニンとは独立している。一実施形態では、当該正に荷電したアミノ酸X~Xの各々はアルギニンである。一実施形態では、当該正に荷電したアミノ酸X~Xはリシンである。
【0126】
は、システイン、その保存的置換又は正に荷電したアミノ酸である。
【0127】
好ましい実施形態では、システインの当該保存的置換は、メチオニン、ホモシステイン、セレノシステイン、セリン、ヒドロキシノルバリン、2-アミノ-5-ヒドロキシペンタン酸、アロ-トレオニン、3,3-ジヒドロキシ-アラニン、4-ヒドロキシ-L-イソロイシン、(2S,3R)-2-アミノ-3-ヒドロキシ-4-メチルペンタン酸、β-ヒドロキシロイシン、ホモセリン、3-ヒドロキシ-L-バリン、4,5-ジヒドロキシ-イソロイシン、6-ヒドロキシ-L-ノルロイシン、S-(2-ヒドロキシエチル)-L-システイン、ホスホセリン、4-ヒドロキシ-L-トレオニン、トレオニン、及びホスホトレオニンからなる群から選択される。好ましい実施形態では、システインの当該保存的置換は、ホモシステイン、セレノシステイン、セリン、ヒドロキシノルバリン、2-アミノ-5-ヒドロキシペンタン酸、アロ-トレオニン、3,3-ジヒドロキシ-アラニン、4-ヒドロキシ-L-イソロイシン、(2S,3R)-2-アミノ-3-ヒドロキシ-4-メチルペンタン酸、β-ヒドロキシロイシン、ホモセリン、3-ヒドロキシ-L-バリン、4,5-ジヒドロキシ-イソロイシン、6-ヒドロキシ-L-ノルロイシン、S-(2-ヒドロキシエチル)-L-システイン、ホスホセリン、4-ヒドロキシ-L-トレオニン、トレオニン、及びホスホトレオニンからなる群から選択される。より好ましくは、システインの当該保存的置換は、ホモシステイン、セレノシステイン、及びセリンからなる群から選択される。更により好ましくは、システインの当該保存的置換はホモシステイン又はセレノシステインである。
【0128】
別の好ましい実施形態では、Xは、ホモシステイン、セレノシステイン、システイン、アルギニン、5-メチル-アルギニン、ガンマ-ヒドロキシアルギニン、2-アミノ-4-グアニジノブトリリン酸(guanidinobutryric acid)、2-アミノ-3-グアニジノプロピオン酸、カナバニン、ホモアルギニン、リシン、ジアミノ酪酸、2,3-ジアミノプロパン酸、(2S)-2、8-ジアミノオクタン酸、オルニチン及びチアリシンからなる群から選択される。
【0129】
別の好ましい実施形態では、Xは、ホモシステイン、セレノシステイン、セリン、ヒドロキシノルバリン、2-アミノ-5-ヒドロキシペンタン酸、アロ-トレオニン、3,3-ジヒドロキシ-アラニン、4-ヒドロキシ-L-イソロイシン、(2S,3R)-2-アミノ-3-ヒドロキシ-4-メチルペンタン酸、β-ヒドロキシロイシン、ホモセリン、3-ヒドロキシ-L-バリン、4,5-ジヒドロキシ-イソロイシン、6-ヒドロキシ-L-ノルロイシン、S-(2-ヒドロキシエチル)-L-システイン、ホスホセリン、4-ヒドロキシ-L-トレオニン、トレオニン、及びホスホトレオニン、アルギニン、5-メチル-アルギニン、ガンマ-ヒドロキシアルギニン、2-アミノ-4-グアニジノブトリリン酸(guanidinobutryric acid)、2-アミノ-3-グアニジノプロピオン酸、カナバニン、ホモアルギニン、リシン、ジアミノ酪酸、2,3-ジアミノプロパン酸、(2S)-2,8-ジアミノオクタン酸、オルニチン及びチアリシンからなる群から選択される。別の好ましい実施形態では、当該Xは、アルギニン、リシン、セリン、ホモシステイン、又はシステインから選択される。別の更に好ましい実施形態では、当該Xはアルギニン、リシン、ホモシステイン、又はシステインから選択される。
【0130】
がシステイン又はシステインの保存的置換である場合、ジスルフィド形成(例えば、システアミン、1-(3-メルカプトプロピル)グアニジンなど)を介して正電荷基を本発明のポリペプチドに付加するために使用することができる。
【0131】
一実施形態では、当該X~Xの当該少なくとも3つは互いに独立してリシン又はアルギニンであり、当該Xはアルギニン、リシン、セリン、ホモシステイン又はシステインから選択される。
【0132】
配列番号1からなるアミノ酸配列Iにおいて、当該アミノ酸X~Xの少なくとも3つは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸である。好ましい実施形態では、少なくとも4個、より好ましくは少なくとも5個、更により好ましくは6個、すなわち当該アミノ酸X~Xの各々は互いに独立して正に荷電したアミノ酸である。
【0133】
好ましい実施形態では、少なくとも4個、好ましくは少なくとも5個、より好ましくは6個、すなわち当該アミノ酸X~Xの各々は互いに独立して正に荷電したアミノ酸であり、当該正に荷電したアミノ酸はアルギニン又はリシンである。好ましい実施形態では、少なくとも4個、好ましくは少なくとも5個、より好ましくは当該アミノ酸X~Xの各々は互いに独立して正に荷電したアミノ酸であり、当該正に荷電したアミノ酸はアルギニンである。好ましい実施形態では、少なくとも4個、好ましくは少なくとも5個、より好ましくは6個の当該アミノ酸X~Xの各々は互いに独立して正に荷電したアミノ酸であり、当該正に荷電したアミノ酸はリシンである。
【0134】
好ましい実施形態では、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X~Xである。別の好ましい実施形態では、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X1、、及びXである。別の好ましい実施形態では、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X1、、及びXである。別の好ましい実施形態では、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X1、、及びXである。
【0135】
別の好ましい実施形態では、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X2、、及びXである。別の好ましい実施形態では、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X2、、及びXである。別の好ましい実施形態では、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X2、、及びXである。
【0136】
別の好ましい実施形態では、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X3、、及びXである。別の好ましい実施形態では、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X3、、及びXである。別の好ましい実施形態では、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X3、、及びXである。
【0137】
別の好ましい実施形態では、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X4、、及びXである。別の好ましい実施形態では、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X4、、及びXである。別の好ましい実施形態では、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X4、、及びXである。
【0138】
別の好ましい実施形態では、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X5、、及びXである。別の好ましい実施形態では、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X5、、及びXである。別の好ましい実施形態では、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X5、、及びXである。
【0139】
別の好ましい実施形態では、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X1、、及びXである。別の好ましい実施形態では、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X1、、及びXである。別の好ましい実施形態では、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X2、、及びXである。別の好ましい実施形態では、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X1、、及びXである。
【0140】
別の好ましい実施形態では、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X1、、X、及びXである。別の好ましい実施形態では、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X1、、X、及びXである。別の好ましい実施形態では、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X1、、X、及びXである。別の好ましい実施形態では、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X2、、X、及びXである。別の好ましい実施形態では、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X2、、X、及びXである。別の好ましい実施形態では、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X~Xである。別の好ましい実施形態では、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X2、、X、及びXである。別の好ましい実施形態では、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X1、、X、及びXである。別の好ましい実施形態では、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X1、、X、及びXである。別の好ましい実施形態では、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X1、、X、及びXである。別の好ましい実施形態では、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X2、、X、及びXである。
【0141】
別の好ましい実施形態では、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X1-5である。別の好ましい実施形態では、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X1-4及びXである。別の好ましい実施形態では、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X1-3、X及びXである。別の好ましい実施形態では、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X1、、及びX4~Xである。別の好ましい実施形態では、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X、及びX3-6である。別の好ましい実施形態では、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X~Xである。
【0142】
別の好ましい実施形態では、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸である。
【0143】
より好ましくは、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X~X、又はX~X、又はX、X及びX、又はX1、、X及びX、又はX、X、X及びX、又はX及びX~X、又はX~X及びX、又はX~Xである。より好ましくは、当該少なくとも3つのX~Xは、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸であり、X~X、又はX~X、又はX、X及びX、又はX1、、X及びX、又はX、X、X及びX、又はX及びX~X、又はX~X及びX、又はX~Xである。
【0144】
好ましい実施形態では、X~Xは互いに独立してリシン又はアルギニンである。別の好ましい実施形態では、X、X及びXは互いに独立してリシン又はアルギニンである。別の好ましい実施形態では、X、X、X、及びXは互いに独立してリシン又はアルギニンである。別の好ましい実施形態では、X、X、X、及びXは互いに独立してリシン又はアルギニンである。別の好ましい実施形態において、X、及びX~Xは、互いに独立して、互いに独立して、リシン又はアルギニンである。別の好ましい実施形態では、X1-3、X、及びXは互いに独立してリシン又はアルギニンである。別の好ましい実施形態では、X1-5は互いに独立してリシン又はアルギニンである。別の好ましい実施形態では、X~Xは互いに独立してリシン又はアルギニンである。
【0145】
好ましい実施形態では、X~Xはそれぞれ独立してアルギニン又はリシンである。好ましい実施形態では、X~Xのそれぞれはアルギニンである。好ましい実施形態では、X~Xのそれぞれはリシンである。
【0146】
別の好ましい実施形態では、X~Xは互いに独立してリシン又はアルギニンであり、Xはアルギニン、リシン又はシステインから選択される。
【0147】
本発明者らは、位置X~X12のアミノ酸が、本発明のポリペプチドによる自己集合を介して形成されるタンパク質ケージの孔径を規定することを見出した。位置X~X12のアミノ酸が大きいほど細孔径を減少させたが、これらの位置のアミノ酸が小さいほど細孔径を増加させた。
【0148】
したがって、好ましい実施形態では、本発明のポリペプチド中の位置X~X12の当該アミノ酸は、界面活性剤組成物が分解することなく、タンパク質ケージにロードされ、タンパク質ケージから放出され、リポタンパク質ケージに/からカーゴされ得るように選択される。別の好ましい実施形態では、本発明のポリペプチドのX~X12の位置の当該アミノ酸は、分解することなく、カーゴをタンパク質ケージに細胞外にロードし、細胞内、好ましくは細胞の細胞質に放出することができるように選択される。
【0149】
好ましくは、当該カーゴは小型カーゴである。小型カーゴは、1000Da以下のサイズであることが好ましい。好ましい実施形態では、1000Da以下のサイズは、当該カーゴが1000Da以下、好ましくは800Da以下、より好ましくは600Da以下、再びより好ましくは500Da以下、再びより好ましくは400Da以下、再びより好ましくは300Da以下、再びより好ましくは200Da以下、再びより好ましくは100Da以下のサイズを有することを意味する。
【0150】
好ましくは、当該カーゴは疎水性カーゴ、より好ましくは非極性カーゴである。好ましくは、当該カーゴは水性媒体中で低い溶解度を有する。好ましくは、当該小型カーゴは1000Da以下のサイズを有し、水性媒体への溶解度が低い。より好ましくは、低溶解度の当該カーゴは、生物薬剤学分類システム(Biopharmaceutics Classification System:BCS)のクラスII又はクラスIVに含まれる。更により好ましくは、当該低可溶性カーゴは、最高強度用量が37±1℃で1.0~7.5、より好ましくは1.0~6.8のpH範囲にわたって250mL以下の水性媒体に可溶性である高可溶性カーゴとしてより低い溶解度を有する。
【0151】
好ましい実施形態では、当該Xはグリシン又はその保存的置換である。好ましくは、グリシンの当該保存的置換は、アラニン、ロイシン、バリン、tert-ロイシン、ホモロイシン、イソロイシン、アロイソロイシン2-アミノ酪酸、ジエチルアラニン、ノルロイシン、及びノルバリンからなる群から選択される。より好ましくは、グリシンの当該保存的置換は、アラニン、ロイシン、バリン、tert-ロイシン、ホモロイシン、イソロイシン、アロイソロイシン2-アミノ酪酸、ジエチルアラニン、ノルロイシン、及びノルバリンからなる群から選択される。更に好ましい実施形態では、当該Xは、グリシン、アラニン、ロイシン、及びバリンからなる群から選択される。好ましい実施形態では、当該Xはグリシンである。
【0152】
別の好ましい実施形態では、当該X及びX12は、互いに独立して、グルタミン又はその保存的置換である。好ましくは、グルタミンの当該保存的置換は、アスパラギン、β-ヒドロキシアスパラギン、3-メチル-L-グルタミン、(2S,4S)-2,5-ジアミノ-4-ヒドロキシ-5-オキソペンタン酸、及びn-メチル-アスパラギンからなる群から選択される。別の好ましい実施形態では、当該X及びX12は互いに独立してグルタミン又はアスパラギンである。
【0153】
別の好ましい実施形態では、当該X及びX12は両方ともグルタミンである。別の好ましい実施形態では、当該X及びX12は両方ともアスパラギンである。別の好ましい実施形態では、当該X又はX12はグルタミンである。別の好ましい実施形態では、当該Xはグルタミンである。別の好ましい実施形態では、当該X12はグルタミンである。
【0154】
別の好ましい実施形態では、当該X10はグルタマート又はその保存的置換である。好ましくは、グルタマートの当該保存的置換は、グルタマート、アスパルタート、(2S,4R)-4-メチルグルタマート、(3S)-3-メチル-L-グルタミン酸、(3R)-3-メチル-L-グルタミン酸、5-O-メチル-グルタミン酸、4-ヒドロキシ-グルタミン酸、6-カルボキシリシン、β-ヒドロキシアスパラギン酸、2-アミノ-プロパン二酸、3,3-ジメチルアスパラギン酸、2-アミノアジピン酸及び3-メチル-アスパラギン酸からなる群から選択される。更に好ましい実施形態では、当該X10はグルタマート又はアスパルタートである。別の更に好ましい実施形態では、当該X10はグルタマートである。
【0155】
別の好ましい実施形態では、当該X11は、セリン又はその保存的置換からなる群から選択される。好ましいセリンの当該保存的置換は、システイン、メチオニン、ホモシステイン、セレノシステイン、ヒドロキシノルバリン、2-アミノ-5-ヒドロキシペンタン酸、アロ-トレオニン、3,3-ジヒドロキシ-アラニン、4-ヒドロキシ-L-イソロイシン、(2S,3R)-2-アミノ-3-ヒドロキシ-4-メチルペンタン酸、β-ヒドロキシロイシン、ホモセリン、3-ヒドロキシ-L-バリン、4,5-ジヒドロキシ-イソロイシン、6-ヒドロキシ-L-ノルロイシン、S-(2-ヒドロキシエチル)-L-システイン、ホスホセリン、4-ヒドロキシ-L-トレオニン、トレオニン、及びホスホトレオニンからなる群から選択される。より好ましいセリンの当該保存的置換は、システイン、ホモシステイン、セレノシステイン、ヒドロキシノルバリン、2-アミノ-5-ヒドロキシペンタン酸、アロ-トレオニン、3,3-ジヒドロキシ-アラニン、4-ヒドロキシ-L-イソロイシン、(2S,3R)-2-アミノ-3-ヒドロキシ-4-メチルペンタン酸、β-ヒドロキシロイシン、ホモセリン、3-ヒドロキシ-L-バリン、4,5-ジヒドロキシ-イソロイシン、6-ヒドロキシ-L-ノルロイシン、S-(2-ヒドロキシエチル)-L-システイン、ホスホセリン、4-ヒドロキシ-L-トレオニン、トレオニン、及びホスホトレオニンからなる群から選択される。更により好ましいセリンの当該保存的置換は、ヒドロキシノルバリン、2-アミノ-5-ヒドロキシペンタン酸、アロ-トレオニン、3,3-ジヒドロキシ-アラニン、4-ヒドロキシ-L-イソロイシン、(2S,3R)-2-アミノ-3-ヒドロキシ-4-メチルペンタン酸、β-ヒドロキシロイシン、ホモセリン、3-ヒドロキシ-L-バリン、4,5-ジヒドロキシ-イソロイシン、6-ヒドロキシ-L-ノルロイシン、S-(2-ヒドロキシエチル)-L-システイン、ホスホセリン、4-ヒドロキシ-L-トレオニン、トレオニン、及びホスホトレオニンからなる群から選択される。更により好ましくは、セリンの当該保存的置換は、ホモセリン、トレオニン、4-ヒドロキシ-L-トレオニン、6-ヒドロキシ-L-ノルロイシン、4,5-ジヒドロキシ-イソロイシン、3-ヒドロキシ-L-バリン、ヒドロキシノルバリン、2-アミノ-5-ヒドロキシペンタン酸、アロ-トレオニン、3,3-ジヒドロキシ-アラニン、4-ヒドロキシ-L-イソロイシン、(2S,3R)-2-アミノ-3-ヒドロキシ-4-メチルペンタン酸、β-ヒドロキシロイシン、及びアロ-トレオニンからなる群から選択される。
【0156】
更に好ましい実施形態では、当該X11は、セリン、ホモセリン、及びトレオニンからなる群から選択される。別の更に好ましい実施形態では、当該X11はセリンである。
【0157】
好ましい実施形態では、当該Xは、グリシン、アラニン、ロイシン、バリン、tert-ロイシン、ホモロイシン、イソロイシン、アロイソロイシン2-アミノ酪酸、ジエチルアラニン、ノルロイシン、及びノルバリンからなる群から選択され、X及びX12は互いに独立して、グルタミン、アスパラギン、β-ヒドロキシアスパラギン、3-メチル-L-グルタミン、(2S,4S)-2,5-ジアミノ-4-ヒドロキシ-5-オキソペンタン酸及びn-メチル-アスパラギンからなる群から選択され、X10は、グルタマート、アスパルタート(2S,4R)-4-メチルグルタマート、(3S)-3-メチル-L-グルタミン酸、(3R)-3-メチル-L-グルタミン酸、5-O-メチル-グルタミン酸、4-ヒドロキシ-グルタミン酸、6-カルボキシリシン、β-ヒドロキシアスパラギン酸、2-アミノ-プロパン二酸、3,3-ジメチルアスパラギン酸、2-アミノアジピン酸及び3-メチル-アスパラギン酸からなる群から選択され、X11は、セリン、ホモセリン、トレオニン、4-ヒドロキシ-L-トレオニン、6-ヒドロキシ-L-ノルロイシン、4,5-ジヒドロキシ-イソロイシン、3-ヒドロキシ-L-バリン、ヒドロキシノルバリン、2-アミノ-5-ヒドロキシペンタン酸、アロ-トレオニン、3,3-ジヒドロキシ-アラニン、4-ヒドロキシ-L-イソロイシン、(2S,3R)-2-アミノ-3-ヒドロキシ-4-メチルペンタン酸、β-ヒドロキシロイシン、及びアロ-トレオニンからなる群から選択される。
【0158】
更に好ましい実施形態では、当該Xは、グリシン、アラニン、ロイシン、及びバリンからなる群から選択され、X及びX12は、互いに独立して、グルタミン又はアスパラギンであり、X10はグルタマート又はアスパルタートであり、X11は、セリン、トレオニン、及びホモセリンからなる群から選択される。
【0159】
更に好ましい実施形態では、当該Xはグリシンであり、X及びX12はグルタミンであり、X10はグルタマートであり、X11はセリンである。
【0160】
好ましい実施形態では、X、X、X10、X11及びX12の各々は、グリシン、アラニン、ロイシン、バリン、tert-ロイシン、ホモロイシン、イソロイシン、アロイソロイシン2-アミノ酪酸、ジエチルアラニン、ノルロイシン、ノルバリン、グルタミン、アスパラギン、β-ヒドロキシアスパラギン、3-メチル-L-グルタミン、(2S,4S)-2、5-ジアミノ-4-ヒドロキシ-5-オキソペンタン酸、n-メチル-アスパラギン、グルタマート、アスパルタート(2S,4R)-4-メチルグルタマート、(3S)-3-メチル-L-グルタミン酸、(3R)-3-メチル-L-グルタミン酸、5-O-メチル-グルタミン酸、4-ヒドロキシ-グルタミン酸、6-カルボキシリシン、β-ヒドロキシアスパラギン酸、2-アミノ-プロパン二酸、3,3-ジメチルアスパラギン酸、2-アミノアジピン酸、3-メチル-アスパラギン酸、セリン、ホモセリン、トレオニン、4-ヒドロキシ-L-トレオニン、6-ヒドロキシ-L-ノルロイシン、4,5-ジヒドロキシ-イソロイシン、3-ヒドロキシ-L-バリン、ヒドロキシノルバリン、2-アミノ-5-ヒドロキシペンタン酸、アロ-トレオニン、3,3-ジヒドロキシ-アラニン、4-ヒドロキシ-L-イソロイシン、(2S,3R)-2-アミノ-3-ヒドロキシ-4-メチルペンタン酸、β-ヒドロキシロイシン、及びアロ-トレオニンからなる群から独立して選択される。
【0161】
更に好ましい実施形態では、X、X、X10、X11及びX12の各々は、グリシン、アラニン、ロイシン、バリン、グルタマート、アスパルタート、グルタミン、アスパラギン、セリン、トレオニン及びホモセリンからなる群から独立して選択される。
【0162】
更に好ましい実施形態では、X、X、X10、X11及びX12の各々は、セリン、グリシン、グルタミン及びグルタマートからなる群から独立して選択される。
【0163】
好ましい実施形態では、配列Iにおいて、X1-6はリシン又はアルギニンであり、Xはアルギニン、リシン又はシステインから選択され、X、X、X10、X11及びX12の各々は、グリシン、アラニン、ロイシン、バリン、tert-ロイシン、ホモロイシン、イソロイシン、アロイソロイシン2-アミノ酪酸、ジエチルアラニン、ノルロイシン、ノルバリン、グルタミン、アスパラギン、β-ヒドロキシアスパラギン、3-メチル-L-グルタミン、(2S,4S)-2、5-ジアミノ-4-ヒドロキシ-5-オキソペンタン酸、n-メチル-アスパラギン、グルタマート、アスパルタート(2S,4R)-4-メチルグルタマート、(3S)-3-メチル-L-グルタミン酸、(3R)-3-メチル-L-グルタミン酸、5-O-メチル-グルタミン酸、4-ヒドロキシ-グルタミン酸、6-カルボキシリシン、β-ヒドロキシアスパラギン酸、2-アミノ-プロパン二酸、3,3-ジメチルアスパラギン酸、2-アミノアジピン酸、3-メチル-アスパラギン酸、セリン、ホモセリン、トレオニン、4-ヒドロキシ-L-トレオニン、6-ヒドロキシ-L-ノルロイシン、4,5-ジヒドロキシ-イソロイシン、3-ヒドロキシ-L-バリン、ヒドロキシノルバリン、2-アミノ-5-ヒドロキシペンタン酸、アロ-トレオニン、3,3-ジヒドロキシ-アラニン、4-ヒドロキシ-L-イソロイシン、(2S,3R)-2-アミノ-3-ヒドロキシ-4-メチルペンタン酸、β-ヒドロキシロイシン、及びアロ-トレオニンからなる群から独立して選択される。好ましい実施形態では、好ましくはアミノ酸配列IのC末端であり、配列Iにおいて、X1-6はリシン又はアルギニンであり、Xはアルギニン、リシン又はシステインから選択され、X、X、X10、X11及びX12の各々は、グリシン、アラニン、ロイシン、バリン、tert-ロイシン、ホモロイシン、イソロイシン、アロイソロイシン2-アミノ酪酸、ジエチルアラニン、ノルロイシン、ノルバリン、グルタミン、アスパラギン、β-ヒドロキシアスパラギン、3-メチル-L-グルタミン、(2S,4S)-2、5-ジアミノ-4-ヒドロキシ-5-オキソペンタン酸、n-メチル-アスパラギン、グルタマート、アスパルタート(2S,4R)-4-メチルグルタマート、(3S)-3-メチル-L-グルタミン酸、(3R)-3-メチル-L-グルタミン酸、5-O-メチル-グルタミン酸、4-ヒドロキシ-グルタミン酸、6-カルボキシリシン、β-ヒドロキシアスパラギン酸、2-アミノ-プロパン二酸、3,3-ジメチルアスパラギン酸、2-アミノアジピン酸、3-メチル-アスパラギン酸、セリン、ホモセリン、トレオニン、4-ヒドロキシ-L-トレオニン、6-ヒドロキシ-L-ノルロイシン、4,5-ジヒドロキシ-イソロイシン、3-ヒドロキシ-L-バリン、ヒドロキシノルバリン、2-アミノ-5-ヒドロキシペンタン酸、アロ-トレオニン、3,3-ジヒドロキシ-アラニン、4-ヒドロキシ-L-イソロイシン、(2S,3R)-2-アミノ-3-ヒドロキシ-4-メチルペンタン酸、β-ヒドロキシロイシン、及びアロ-トレオニンからなる群から独立して選択される。
【0164】
別の好ましい実施形態では、X1-6の少なくとも3つは互いに独立してリシン又はアルギニンであり、Xはアルギニン、リシン又はシステインから選択され、Xはグリシン、アラニン、ロイシン、及びバリンからなる群から選択され、X及びX12は、互いに独立して、グルタミン又はアスパラギンであり、X10はグルタマート又はアスパルタートであり、X11は、セリン、トレオニン、及びホモセリンからなる群から選択される。別の好ましい実施形態では、X1-6の少なくとも3つが互いに独立してリシン又はアルギニンであり、Xはグリシンであり、X及びX12は互いに独立してグルタミンであり、X10はグルタマートであり、X11はセリンである。別の好ましい実施形態では、X1-6はリシン又はアルギニンであり、Xはアルギニン、リシン又はシステインから選択され、Xはグリシンであり、X及びX12は互いに独立してグルタミンであり、X10はグルタマートであり、X11はセリンである。別の好ましい実施形態では、X1-6はリシン又はアルギニンであり、Xはアルギニン、リシン又はシステインから選択され、Xはグリシンであり、X及びX12は互いに独立してグルタミンであり、X10はグルタマートであり、X11はセリンである。
【0165】
一実施形態では、当該X1-6の少なくとも3つは互いに独立してリシン又はアルギニンであり、当該Xはアルギニン、リシン又はシステインから選択され、Xはグリシンであり、X及びX12は互いに独立してグルタミンであり、X10はグルタマートであり、X11はセリンである。
【0166】
別の好ましい実施形態では、X~Xは互いに独立してリシン又はアルギニンであり、Xはアルギニン、リシン又はシステインから選択され、Xはグリシンであり、X及びX12は互いに独立してグルタミンであり、X10はグルタマートであり、X11はセリン及び当該ポリペプチドである。
【0167】
好ましい実施形態では、配列Iにおいて、X1-6はリシン又はアルギニンであり、Xはアルギニン、リシン又はシステインから選択され、Xはグリシンであり、X及びX12は互いに独立してグルタミンであり、X10はグルタマートであり、X11はセリンである。好ましい実施形態では、配列Iにおいて、X1~6はリシン又はアルギニンであり、X7はアルギニン、リシン又はシステインから選択され、X8はグリシンであり、X9及びX12は互いに独立してグルタミンであり、X10はグルタマートであり、X11はセリンであり、当該タンパク質ケージ又は本発明の当該ポリペプチドを含む本発明の当該複合体はエンドソームエスケープが可能である。
【0168】
本発明のポリペプチドが自己集合によってタンパク質ケージを形成する場合、アミノ酸X13~X29はタンパク質ケージの外部表面に露出しており、したがって、ケージ様タンパク質ケージに自己集合する能力を依然として維持しながら変異に耐える傾向が最も高い。
【0169】
したがって、好ましい実施形態では、タンパク質ケージの外部表面に露出したアミノ酸X13~X29は、任意のアミノ酸である。
【0170】
好ましい実施形態において、X13、X17及びX19は、互いに独立して、セリン又はその保存的置換である。好ましいセリンの当該保存的置換は、システイン、メチオニン、ホモシステイン、セレノシステイン、ヒドロキシノルバリン、2-アミノ-5-ヒドロキシペンタン酸、アロ-トレオニン、3,3-ジヒドロキシ-アラニン、4-ヒドロキシ-L-イソロイシン、(2S,3R)-2-アミノ-3-ヒドロキシ-4-メチルペンタン酸、β-ヒドロキシロイシン、ホモセリン、3-ヒドロキシ-L-バリン、4,5-ジヒドロキシ-イソロイシン、6-ヒドロキシ-L-ノルロイシン、S-(2-ヒドロキシエチル)-L-システイン、ホスホセリン、4-ヒドロキシ-L-トレオニン、トレオニン、及びホスホトレオニンからなる群から選択される。より好ましいセリンの当該保存的置換は、システイン、ホモシステイン、セレノシステイン、ヒドロキシノルバリン、2-アミノ-5-ヒドロキシペンタン酸、アロ-トレオニン、3,3-ジヒドロキシ-アラニン、4-ヒドロキシ-L-イソロイシン、(2S,3R)-2-アミノ-3-ヒドロキシ-4-メチルペンタン酸、β-ヒドロキシロイシン、ホモセリン、3-ヒドロキシ-L-バリン、4,5-ジヒドロキシ-イソロイシン、6-ヒドロキシ-L-ノルロイシン、S-(2-ヒドロキシエチル)-L-システイン、ホスホセリン、4-ヒドロキシ-L-トレオニン、トレオニン、及びホスホトレオニンからなる群から選択される。更により好ましいセリンの当該保存的置換は、ヒドロキシノルバリン、2-アミノ-5-ヒドロキシペンタン酸、アロ-トレオニン、3,3-ジヒドロキシ-アラニン、4-ヒドロキシ-L-イソロイシン、(2S,3R)-2-アミノ-3-ヒドロキシ-4-メチルペンタン酸、β-ヒドロキシロイシン、ホモセリン、3-ヒドロキシ-L-バリン、4,5-ジヒドロキシ-イソロイシン、6-ヒドロキシ-L-ノルロイシン、S-(2-ヒドロキシエチル)-L-システイン、ホスホセリン、4-ヒドロキシ-L-トレオニン、トレオニン、及びホスホトレオニンからなる群から選択される。更により好ましくは、セリンの当該保存的置換は、ホモセリン、トレオニン、4-ヒドロキシ-L-トレオニン、6-ヒドロキシ-L-ノルロイシン、4,5-ジヒドロキシ-イソロイシン、3-ヒドロキシ-L-バリン、ヒドロキシノルバリン、2-アミノ-5-ヒドロキシペンタン酸、アロ-トレオニン、3,3-ジヒドロキシ-アラニン、4-ヒドロキシ-L-イソロイシン、(2S,3R)-2-アミノ-3-ヒドロキシ-4-メチルペンタン酸、β-ヒドロキシロイシン、及びアロ-トレオニンからなる群から選択される。
【0171】
別の好ましい実施形態において、X13、X17及びX19は、互いに独立して、セリン、ホモセリン、及びトレオニンからなる群から選択される。別の好ましい実施形態では、X13、X17及びX19は互いに独立してセリンである。
【0172】
別の好ましい実施形態において、X14、X16及びX24は、互いに独立して、アスパラギン又はその保存的置換である。好ましくは、アスパラギンの当該保存的置換は、グルタミン、β-ヒドロキシアスパラギン、3-メチル-L-グルタミン、(2S,4S)-2,5-ジアミノ-4-ヒドロキシ-5-オキソペンタン酸、及びn-メチル-アスパラギンからなる群から選択される。
【0173】
別の好ましい実施形態において、X14、X16及びX24は互いに独立してアスパラギンである。別の好ましい実施形態において、X14、X16及びX24は互いに独立してアスパラギン又はグルタミンである。
【0174】
別の好ましい実施形態において、X15、X20、X26及びX28は、互いに独立して、アスパルタート、グルタマート又はその保存的置換である。好ましくは、アスパルタート又はグルタマートの当該保存的置換は、(2S,4R)-4-メチルグルタマート、(3S)-3-メチル-L-グルタミン酸、(3R)-3-メチル-L-グルタミン酸、5-O-メチル-グルタミン酸、4-ヒドロキシ-グルタミン酸、6-カルボキシリシン、β-ヒドロキシアスパラギン酸、2-アミノ-プロパン二酸、3,3-ジメチルアスパラギン酸、2-アミノアジピン酸及び3-メチル-アスパラギン酸からなる群から選択される。
【0175】
別の好ましい実施形態において、X15及びX20は互いに独立してアスパルタートである。別の好ましい実施形態において、X26及びX28は互いに独立してグルタマートである。
【0176】
別の好ましい実施形態において、X15、X20、X26及びX28は、互いに独立して、アスパルタート又はグルタマートである。別の好ましい実施形態では、X15、X20、X26及びX28は、互いに独立して、グルタマート、アスパルタート、2S,4R-4-メチルグルタマート、(3S)-3-メチル-L-グルタミン酸、(3R)-3-メチル-L-グルタミン酸、5-O-メチル-グルタミン酸、4-ヒドロキシ-グルタミン酸、6-カルボキシリシン、β-ヒドロキシアスパラギン酸、2-アミノ-プロパン二酸、3,3-ジメチルアスパラギン酸、2-アミノアジピン酸及び3-メチル-アスパラギン酸からなる群から選択される。
【0177】
別の好ましい実施形態において、X18及びX29は、互いに独立して、ロイシン又はその保存的置換である。好ましくは、ロイシンの当該保存的置換は、グリシン、アラニン、バリン、tert-ロイシン、ホモロイシン、イソロイシン、アロイソロイシン2-アミノ酪酸、ジエチルアラニン、ノルロイシン、及びノルバリンからなる群から選択される。
【0178】
別の好ましい実施形態では、X18及びX29は互いに独立してロイシンである。好ましい実施形態では、当該X18及びX29は互いに独立して、グリシン、アラニン、ロイシン、及びバリンからなる群から選択される。好ましい実施形態では、当該X18及びX29は、互いに独立して、グリシン、アラニン、ロイシン、バリン、tert-ロイシン、ホモロイシン、イソロイシン、アロイソロイシン2-アミノ酪酸、ジエチルアラニン、ノルロイシン、及びノルバリンからなる群から選択される。
【0179】
別の好ましい実施形態において、X21、X22、X23、X25及びX27は、互いに独立して、正に荷電したアミノ酸である。
【0180】
別の好ましい実施形態では、X21、X22、X23、X25及びX27は、互いに独立して、アルギニン、リシン又はその保存的置換である。好ましくは、アルギニン又はロイシンの当該保存的置換は、ヒスチジン、5-メチル-アルギニン、ガンマ-ヒドロキシアルギニン、2-アミノ-4-グアニジノブトリリン酸(guanidinobutryric acid)、2-アミノ-3-グアニジノプロピオン酸、カナバニン、ホモアルギニン、ジアミノ酪酸、2,3-ジアミノプロパン酸、(2S)-2、8-ジアミノオクタン酸、オルニチン及びチアリシンからなる群から選択される。より好ましくは、アルギニン又はロイシンの当該保存的置換は、5-メチル-アルギニン、ガンマ-ヒドロキシアルギニン、2-アミノ-4-グアニジノブトリリン酸(guanidinobutryric acid)、2-アミノ-3-グアニジノプロピオン酸、カナバニン、ホモアルギニン、ジアミノ酪酸、2,3-ジアミノプロパン酸、(2S)-2、8-ジアミノオクタン酸、オルニチン及びチアリシンからなる群から選択される。
【0181】
別の好ましい実施形態において、X21、X22、X23、X25及びX27は、互いに独立して、ヒスチジン、アルギニン又はリシンである。別の好ましい実施形態において、X21、X22、X23、X25及びX27は、互いに独立して、アルギニン又はリシンである。別の好ましい実施形態において、X21、X22、X23、X25及びX27は、互いに独立して、アルギニンである。別の好ましい実施形態において、X21、X22、X23、X25及びX27は、互いに独立して、リシンである。
【0182】
別の好ましい実施形態において、X21、X22、X25及びX27は、互いに独立して、アルギニンである。別の好ましい実施形態では、X23はリシンである。別の好ましい実施形態では、X21、X22、X23、X25及びX27は、互いに独立に、アルギニン、5-メチル-アルギニン、ガンマ-ヒドロキシアルギニン、2-アミノ-4-グアニジノブトリリン酸(guanidinobutryric acid)、2-アミノ-3-グアニジノプロピオン酸、カナバニン、ホモアルギニン、リシン、ジアミノ酪酸、2,3-ジアミノプロパン酸、(2S)-2,8-ジアミノオクタン酸、オルニチン、チアリシン及びヒスチジンからなる群から選択される。
【0183】
別の好ましい実施形態において、X13、X17及びX19は互いに独立してセリンであり、X14、X16及びX24は互いに独立してアスパラギンであり、X15及びX20は互いに独立してアスパルタートであり、X18及びX29は互いに独立してロイシンであり、X26及びX28は互いに独立してグルタマートであり、X21、X22、X25及びX27は互いに独立して、アルギニンであり、X23はリシンである。
【0184】
別の好ましい実施形態において、X13、X17及びX19は、互いに独立して、セリン、ホモセリン、及びトレオニンからなる群から選択され、X14、X16及びX24は、互いに独立して、アスパラギン又はグルタミンであり、X15、X20、X26及びX28は、互いに独立して、アスパルタート又はグルタマートであり、当該X18及びX29は、互いに独立して、グリシン、アラニン、ロイシン、及びバリンからなる群から選択される、X21、X22、X23、X25及びX27は、互いに独立して、アルギニン又はリシンである。
【0185】
別の好ましい実施形態において、X13、X17及びX19は、互いに独立して、セリン、ホモセリン、トレオニン、4-ヒドロキシ-L-トレオニン、6-ヒドロキシ-L-ノルロイシン、4,5-ジヒドロキシ-イソロイシン、3-ヒドロキシ-L-バリン、ヒドロキシノルバリン、2-アミノ-5-ヒドロキシペンタン酸、アロ-トレオニン、3,3-ジヒドロキシ-アラニン、4-ヒドロキシ-L-イソロイシン、(2S,3R)-2-アミノ-3-ヒドロキシ-4-メチルペンタン酸、β-ヒドロキシロイシン、及びアロ-トレオニンからなる群から選択され、
14、X16及びX24は互いに独立して、グルタミン、アスパラギン、β-ヒドロキシアスパラギン、3-メチル-L-グルタミン、(2S,4S)-2,5-ジアミノ-4-ヒドロキシ-5-オキソペンタン酸、及びn-メチル-アスパラギンからなる群から選択され、
15、X20、X26及びX28は、互いに独立して、グルタマート、アスパルタート、(2S,4R-4)-メチルグルタマート、(3S)-3-メチル-L-グルタミン酸、(3R)-3-メチル-L-グルタミン酸、5-O-メチル-グルタミン酸、4-ヒドロキシ-グルタミン酸、6-カルボキシリシン、β-ヒドロキシアスパラギン酸、2-アミノ-プロパン二酸、3,3-ジメチルアスパラギン酸、2-アミノアジピン酸及び3-メチル-アスパラギン酸からなる群から選択され、
18及びX29は、互いに独立して、グリシン、アラニン、ロイシン、バリン、tert-ロイシン、ホモロイシン、イソロイシン、アロイソロイシン2-アミノ酪酸、ジエチルアラニン、ノルロイシン、及びノルバリンからなる群から選択され、
21、X22、X23、X25及びX27は、互いに独立に、アルギニン、5-メチル-アルギニン、ガンマ-ヒドロキシアルギニン、2-アミノ-4-グアニジノブトリリン酸(guanidinobutryric acid)、2-アミノ-3-グアニジノプロピオン酸、カナバニン、ホモアルギニン、リシン、ジアミノ酪酸、2,3-ジアミノプロパン酸、(2S)-2,8-ジアミノオクタン酸、オルニチン、チアリシン及びヒスチジンからなる群から選択される。
【0186】
別の好ましい実施形態では、Xはグリシン又はその保存的置換であり、好ましくはグリシンの当該保存的置換は、アラニン、ロイシン、バリン、tert-ロイシン、ホモロイシン、イソロイシン、アロイソロイシン2-アミノ酪酸、ジエチルアラニン、ノルロイシン、及びノルバリンからなる群から選択され、
及びX12は、互いに独立して、グルタミン又はその保存的置換であり、好ましくは、グルタミンの当該保存的置換は、アスパラギン、β-ヒドロキシアスパラギン、3-メチル-L-グルタミン、(2S,4S)-2,5-ジアミノ-4-ヒドロキシ-5-オキソペンタン酸、及びn-メチル-アスパラギンからなる群から選択され、
10は、グルタマート又はその保存的置換であり、好ましくは、グルタマートの当該保存的置換は、アスパルタート(2S,4R)-4-メチルグルタマート、(3S)-3-メチル-L-グルタミン酸、(3R)-3-メチル-L-グルタミン酸、5-O-メチル-グルタミン酸、4-ヒドロキシ-グルタミン酸、6-カルボキシリシン、β-ヒドロキシアスパラギン酸、2-アミノ-プロパン二酸、3,3-ジメチルアスパラギン酸、2-アミノアジピン酸及び3-メチル-アスパラギン酸からなる群から選択され、
11はセリン又はその保存的置換であり、好ましくは、セリンの当該保存的置換は、ホモセリン、トレオニン、4-ヒドロキシ-L-トレオニン、6-ヒドロキシ-L-ノルロイシン、4,5-ジヒドロキシ-イソロイシン、3-ヒドロキシ-L-バリン、ヒドロキシノルバリン、2-アミノ-5-ヒドロキシペンタン酸、アロ-トレオニン、3,3-ジヒドロキシ-アラニン、4-ヒドロキシ-L-イソロイシン、(2S,3R)-2-アミノ-3-ヒドロキシ-4-メチルペンタン酸、β-ヒドロキシロイシン、及びアロ-トレオニンからなる群から選択され、より好ましくは、Xはグリシンであり、X及びX12は互いに独立してグルタミン又はアスパラギンであり、X10はグルタマート又はアスパルタートであり、X11はセリンである。
【0187】
別の好ましい実施形態では、X13、X17、及びX19は互いに独立してセリン又はその保存的置換であり、好ましくはセリンの当該保存的置換は、ホモセリン、トレオニン、4-ヒドロキシ-L-トレオニン、6-ヒドロキシ-L-ノルロイシン、4,5-ジヒドロキシ-イソロイシン、3-ヒドロキシ-L-バリン、ヒドロキシノルバリン、2-アミノ-5-ヒドロキシペンタン酸、アロ-トレオニン、3,3-ジヒドロキシ-アラニン、4-ヒドロキシ-L-イソロイシン、(2S,3R)-2-アミノ-3-ヒドロキシ-4-メチルペンタン酸、β-ヒドロキシロイシン、及びアロ-トレオニンからなる群から選択され、
14、X16、及びX24は、互いに独立して、アスパラギン、グルタミン又はその保存的置換であり、好ましくは、アスパラギン又はグルタミンの当該保存的置換は、β-ヒドロキシアスパラギン、3-メチル-L-グルタミン、(2S,4S)-2,5-ジアミノ-4-ヒドロキシ-5-オキソペンタン酸、及びn-メチル-アスパラギンからなる群から選択され、
15、X20、X26及びX28は、互いに独立して、アスパルタート、グルタマート又はそれらの保存的置換であり、好ましくは、アスパルタート又はグルタマートの当該保存的置換は、(2S,4R)-4-メチルグルタマート、(3S)-3-メチル-L-グルタミン酸、(3R)-3-メチル-L-グルタミン酸、5-O-メチル-グルタミン酸、4-ヒドロキシ-グルタミン酸、6-カルボキシリシン、β-ヒドロキシアスパラギン酸、2-アミノ-プロパン二酸、3,3-ジメチルアスパラギン酸、2-アミノアジピン酸及び3-メチル-アスパラギン酸からなる群から選択され、
18及びX29は、互いに独立して、ロイシン又はその保存的置換であり、好ましくは、ロイシンの当該保存的置換は、グリシン、アラニン、バリン、tert-ロイシン、ホモロイシン、イソロイシン、アロイソロイシン2-アミノ酪酸、ジエチルアラニン、ノルロイシン、及びノルバリンからなる群から選択され、
21、X22、X23、X25及びX27は、互いに独立して、アルギニン、リシン又はその保存的置換であり、好ましくは、アルギニン又はロイシンの当該保存的置換は、ヒスチジン、5-メチル-アルギニン、ガンマ-ヒドロキシアルギニン、2-アミノ-4-グアニジノブトリリン酸(guanidinobutryric acid)、2-アミノ-3-グアニジノプロピオン酸、カナバニン、ホモアルギニン、ジアミノ酪酸、2,3-ジアミノプロパン酸、(2S)-2,8-ジアミノオクタン酸、オルニチン及びチアリシンからなる群から選択される。
【0188】
好ましい実施形態では、X8はグリシン又はその保存的置換であり、X9及びX12は、互いに独立して、グルタミン、アスパラギン又はその保存的置換であり、X10は、グルタマート、アスパルタート又はその保存的置換であり、X11は、セリン又はその保存的置換であり、X13、X17及びX19は、互いに独立して、セリン又はその保存的置換であり、X14、X16及びX24は、互いに独立して、アスパラギン、グルタミン又はその保存的置換であり、X15、X20、X26及びX28は、互いに独立して、アスパルタート、グルタマート又はその保存的置換であり、X18及びX29は、互いに独立して、ロイシン又はその保存的置換であり、X21、X22、X23、X25及びX27は、互いに独立して、アルギニン、リシン又はその保存的置換である。
【0189】
別の好ましい実施形態では、X~Xの当該少なくとも3個の当該正に荷電したアミノ酸は、互いに独立して、アルギニン、5-メチル-アルギニン、ガンマ-ヒドロキシアルギニン、2-アミノ-4-グアニジノ酪酸、2-アミノ-3-グアニジノプロピオン酸、カナバニン、ホモアルギニン、リシン、ジアミノ酪酸、2,3-ジアミノプロパン酸、(2S)-2,8-ジアミノオクタン酸、オルニチン及びチアリシンからなる群から選択され、
は、システイン、その保存的置換又は正に荷電したアミノ酸であり、好ましくは、Xは、ホモシステイン、システイン、セレノシステイン、アルギニン、5-メチル-アルギニン、ガンマ-ヒドロキシアルギニン、2-アミノ-4-グアニジノ酪酸、2-アミノ-3-グアニジノプロピオン酸、カナバニン、ホモアルギニン、リシン、ジアミノ酪酸、2,3-ジアミノプロパン酸、(2S)-2,8-ジアミノオクタン酸、オルニチン、チアリシン及びセリンからなる群から選択され、
は、グリシン又はその保存的置換であり、アラニン、ロイシン、バリン、tert-ロイシン、ホモロイシン、イソロイシン、アロイソロイシン2-アミノ酪酸、ジエチルアラニン、ノルロイシン及びノルバリンからなる群から選択され、
及びX12は、互いに独立して、グルタミン又はその保存的置換であり、アスパラギン、β-ヒドロキシアスパラギン、3-メチル-L-グルタミン、(2S,4S)-2,5-ジアミノ-4-ヒドロキシ-5-オキソペンタン酸、及びn-メチル-アスパラギンからなる群から選択され、
10は、グルタマート又はその保存的置換であり、アスパルタート(2S,4R)-4-メチルグルタマート、(3S)-3-メチル-L-グルタミン酸、(3R)-3-メチル-L-グルタミン酸、5-O-メチル-グルタミン酸、4-ヒドロキシ-グルタミン酸、6-カルボキシリシン、β-ヒドロキシアスパラギン酸、2-アミノ-プロパン二酸、3,3-ジメチルアスパラギン酸、2-アミノアジピン酸及び3-メチル-アスパラギン酸からなる群から選択され、
11は、セリン又はその当該保存的置換であり、ホモセリン、トレオニン、4-ヒドロキシ-L-トレオニン、6-ヒドロキシ-L-ノルロイシン、4,5-ジヒドロキシ-イソロイシン、3-ヒドロキシ-L-バリン、ヒドロキシノルバリン、2-アミノ-5-ヒドロキシペンタン酸、アロ-トレオニン、3,3-ジヒドロキシ-アラニン、4-ヒドロキシ-L-イソロイシン、(2S,3R)-2-アミノ-3-ヒドロキシ-4-メチルペンタン酸、β-ヒドロキシロイシン、及びアロ-トレオニンからなる群から選択され、
13、X17及びX19は、互いに独立して、セリン、ホモセリン、トレオニン、4-ヒドロキシ-L-トレオニン、6-ヒドロキシ-L-ノルロイシン、4,5-ジヒドロキシ-イソロイシン、3-ヒドロキシ-L-バリン、ヒドロキシノルバリン、2-アミノ-5-ヒドロキシペンタン酸、アロ-トレオニン、3,3-ジヒドロキシ-アラニン、4-ヒドロキシ-L-イソロイシン、(2S,3R)-2-アミノ-3-ヒドロキシ-4-メチルペンタン酸、β-ヒドロキシロイシン、及びアロ-トレオニンからなる群から選択され、
14、X16及びX24は互いに独立して、グルタミン、アスパラギン、β-ヒドロキシアスパラギン、3-メチル-L-グルタミン、(2S,4S)-2,5-ジアミノ-4-ヒドロキシ-5-オキソペンタン酸、及びn-メチル-アスパラギンからなる群から選択され、
15、X20、X26及びX28は、互いに独立して、グルタマート、アスパルタート、(2S,4R-4)-メチルグルタマート、(3S)-3-メチル-L-グルタミン酸、(3R)-3-メチル-L-グルタミン酸、5-O-メチル-グルタミン酸、4-ヒドロキシ-グルタミン酸、6-カルボキシリシン、β-ヒドロキシアスパラギン酸、2-アミノ-プロパン二酸、3,3-ジメチルアスパラギン酸、2-アミノアジピン酸及び3-メチル-アスパラギン酸からなる群から選択され、
18及びX29は、互いに独立して、グリシン、アラニン、ロイシン、バリン、tert-ロイシン、ホモロイシン、イソロイシン、アロイソロイシン2-アミノ酪酸、ジエチルアラニン、ノルロイシン、及びノルバリンからなる群から選択され、
21、X22、X23、X25及びX27は、互いに独立に、アルギニン、5-メチル-アルギニン、ガンマ-ヒドロキシアルギニン、2-アミノ-4-グアニジノブトリリン酸(guanidinobutryric acid)、2-アミノ-3-グアニジノプロピオン酸、カナバニン、ホモアルギニン、リシン、ジアミノ酪酸、2,3-ジアミノプロパン酸、(2S)-2,8-ジアミノオクタン酸、オルニチン、チアリシン及びヒスチジンからなる群から選択される。
【0190】
別の好ましい実施形態では、X~Xの当該少なくとも3つの当該正に荷電したアミノ酸は、互いに独立して、アルギニン又はリシンであり、Xは、ホモシステイン、システイン、アルギニン、及びリシンからなる群から選択され、Xは、グリシン、アラニン、ロイシン、及びバリンからなる群から選択され、X及びX12は、互いに独立して、グルタミン又はアスパラギンであり、X10は、グルタマート又はアスパルタートであり、X11、X13、X17及びX19は、互いに独立して、セリン、トレオニン、及びホモセリンからなる群から選択され、X14、X16及びX24は、互いに独立して、アスパラギン又はグルタミンであり、X15、X20、X26及びX28は、互いに独立して、アスパルタート又はグルタマートであり、X18及びX29は、互いに独立して、ロイシン、グリシン、アラニン、及びバリンからなる群から選択され、X21、X22、X23、X25及びX27は、互いに独立して、アルギニン又はリシンである。
【0191】
別の好ましい実施形態では、X~Xの当該少なくとも3の当該正に荷電したアミノ酸は、互いに独立してアルギニン又はリシンであり、Xは、ホモシステイン、システイン、アルギニン、及びリシンからなる群から選択され、Xはグリシンであり、X及びX12は、互いに独立してグルタミン又はアスパラギンであり、X10はグルタマート又はアスパルタートであり、X11はセリンであり、X13、X17、及びX19は、互いに独立してセリンであり、X14、X16、及びX24は、互いに独立してアスパラギンであり、X15、X20、X26及びX28は、互いに独立してアスパルタート又はグルタマートであり、X18及びX29は、互いに独立してロイシンであり、X21、X22、X23、X25及びX27は、互いに独立してアルギニン又はリシンである。
【0192】
別の好ましい実施形態では、X1-6の少なくとも3つは互いに独立してリシン又はアルギニンであり、Xはアルギニン、リシン又はシステインから選択され、Xはグリシン、アラニン、ロイシン、及びバリンからなる群から選択され、X及びX12は、互いに独立して、グルタミン又はアスパラギンであり、X10はグルタマート又はアスパルタートであり、X11は、セリン、トレオニン、及びホモセリンからなる群から選択され、X18及びX29は互いに独立してロイシンであり、X15及びX20は互いに独立してアスパルタートであり、X26及びX28は互いに独立してグルタマートであり、X14、X16、及びX24は互いに独立してアスパラギンであり、X13、X17及びX19は互いに独立してセリンであり、X21、X22、X25及びX27は互いに独立して、アルギニンであり、X23はリシンである。
【0193】
別の好ましい実施形態では、X1-6の少なくとも3つは互いに独立してリシン又はアルギニンであり、Xはアルギニン、リシン又はシステインから選択され、Xはグリシン、アラニン、ロイシン、及びバリンからなる群から選択され、X及びX12は、互いに独立して、グルタマート又はアスパルタートであり、X10はグルタマート又はアスパルタートであり、X11は、セリン、トレオニン、及びホモセリンからなる群から選択され、X13、X17及びX19は、互いに独立して、セリン、ホモセリン、及びトレオニンからなる群より選択され、X14、X16及びX24は、互いに独立して、アスパラギン又はグルタミンであり、X15、X20、X26及びX28は、互いに独立して、アスパルタート又はグルタマートであり、当該X18及びX29は、互いに独立して、グリシン、アラニン、ロイシン、及びバリンからなる群から選択され、X21、X22、X23、X25及びX27は、互いに独立して、アルギニン又はリシンである。
【0194】
別の好ましい実施形態では、X1-6は互いに独立してリシン又はアルギニンであり、Xはアルギニン、リシン又はシステインから選択され、Xはグリシン、アラニン、ロイシン、及びバリンからなる群から選択され、X及びX12は、互いに独立して、グルタマート又はアスパルタートであり、X10はグルタマート又はアスパルタートであり、X11は、セリン、トレオニン、及びホモセリンからなる群から選択され、X13、X17及びX19は、互いに独立して、セリン、ホモセリン、及びトレオニンからなる群より選択され、X14、X16及びX24は、互いに独立して、アスパラギン又はグルタミンであり、X15、X20、X26及びX28は、互いに独立して、アスパルタート又はグルタマートであり、当該X18及びX29は、互いに独立して、グリシン、アラニン、ロイシン、及びバリンからなる群から選択され、X21、X22、X23、X25及びX27は、互いに独立して、アルギニン又はリシンである。
【0195】
別の好ましい実施形態では、X1-6は互いに独立してリシン又はアルギニンであり、Xはアルギニン、リシン又はシステインから選択され、Xはグリシン、アラニン、ロイシン、及びバリンからなる群から選択され、X及びX12は、互いに独立して、グルタミン又はアスパラギンであり、X10はグルタマート又はアスパルタートであり、X11は、セリン、トレオニン、及びホモセリンからなる群から選択され、X13、X17及びX19は互いに独立してセリンであり、X14、X16及びX24は互いに独立してアスパラギンであり、X15及びX20は互いに独立してアスパルタートであり、X18及びX29は互いに独立してロイシンであり、X26及びX28は互いに独立してグルタマートであり、X21、X22、X25及びX27は互いに独立して、アルギニンであり、X23はリシンである。
【0196】
好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは、配列番号2~16及び20~27からなる群から選択される配列である。好ましい実施形態では、本発明の当該ポリペプチドは、配列番号2~16及び20~27からなる群から選択される配列からなる。
【0197】
好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは、配列番号2~5及び配列番号10~16からなる群から選択される配列である。好ましい実施形態では、本発明の当該ポリペプチドは、配列番号2~5及び配列番号10~16からなる群から選択される配列からなる。
【0198】
好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは、配列番号2~5及び配列番号10~16及び22からなる群から選択される配列である。好ましい実施形態では、本発明の当該ポリペプチドは、配列番号2~5、配列番号10~16、及び配列番号20~22からなる群から選択される配列からなる。
【0199】
好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは、配列番号2~5及び配列番号10~16、20及び21からなる群から選択される配列である。好ましい実施形態では、本発明の当該ポリペプチドは、配列番号2~5及び配列番号10~16、20及び21からなる群から選択される配列からなる。好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは、配列番号2~5及び配列番号10~16及び22からなる群から選択される配列である。好ましい実施形態では、本発明の当該ポリペプチドは、配列番号2~5及び配列番号10~16、20、21及び22からなる群から選択される配列からなる。
【0200】
好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは配列番号2である。好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは配列番号3である。別の好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは配列番号4である。別の好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは配列番号5である。別の好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは配列番号10である。別の好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは配列番号11である。別の好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは配列番号12である。別の好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは配列番号13である。好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは配列番号14である。別の好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは配列番号15である。別の好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは配列番号16である。別の好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは配列番号20である。別の好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは配列番号21である。別の好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは配列番号22である。
【0201】
好ましい実施形態では、本発明の当該ポリペプチドは、配列番号2からなる群から選択される配列からなる。別の好ましい実施形態では、本発明の当該ポリペプチドは、配列番号3からなる群から選択される配列からなる。別の好ましい実施形態では、本発明の当該ポリペプチドは、配列番号4からなる群から選択される配列からなる。別の好ましい実施形態では、本発明の当該ポリペプチドは、配列番号5からなる群から選択される配列からなる。別の好ましい実施形態では、本発明の当該ポリペプチドは、配列番号10からなる群から選択される配列からなる。別の好ましい実施形態では、本発明の当該ポリペプチドは、配列番号11からなる群から選択される配列からなる。別の好ましい実施形態では、本発明の当該ポリペプチドは、配列番号12からなる群から選択される配列からなる。別の好ましい実施形態では、本発明の当該ポリペプチドは、配列番号13からなる群から選択される配列からなる。別の好ましい実施形態では、本発明の当該ポリペプチドは、配列番号14からなる群から選択される配列からなる。別の好ましい実施形態では、本発明の当該ポリペプチドは、配列番号15からなる群から選択される配列からなる。別の好ましい実施形態では、本発明の当該ポリペプチドは、配列番号16からなる群から選択される配列からなる。別の好ましい実施形態では、本発明の当該ポリペプチドは、配列番号20からなる群から選択される配列からなる。別の好ましい実施形態では、本発明の当該ポリペプチドは、配列番号21からなる群から選択される配列からなる。別の好ましい実施形態では、本発明の当該ポリペプチドは、配列番号22からなる群から選択される配列からなる。好ましい実施形態では、本発明の当該ポリペプチドは、配列番号3からなる群から選択される配列からなり、本発明の当該ポリペプチドは、3個以上の連続するヒスチジンからなるヒスチジンタグ(Hisタグ)を含み、当該Hisタグは、アミノ酸配列IのC末端又はN末端、好ましくはC末端に結合している。
【0202】
好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは、配列番号2~16及び20~27からなる群から選択される配列であり、当該界面活性剤組成物は、SDS及びCSを含み、好ましくはSDS及びCSからなり、当該SDS対CSの当該モル比は、4:1~2:1であり、好ましくは当該SDS対CSの当該モル比は3:1である。
【0203】
好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは、配列番号2~5及び配列番号10~16からなる群から選択される配列であり、当該界面活性剤組成物は、SDS及びCSを含み、好ましくはSDS及びCSからなり、当該SDS対CSの当該モル比は、4:1~2:1であり、好ましくは当該SDS対CSの当該モル比は3:1である。
【0204】
好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは、配列番号2~5及び配列番号10~16及び22からなる群から選択される配列であり、当該界面活性剤組成物は、SDS及びCSを含み、好ましくはSDS及びCSからなり、当該SDS対CSの当該モル比は、4:1~2:1であり、好ましくは当該SDS対CSの当該モル比は3:1である。
【0205】
好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは、配列番号2~5及び配列番号10~16、20及び21からなる群から選択される配列であり、当該界面活性剤組成物は、SDS及びCSを含み、好ましくはSDS及びCSからなり、当該SDS対CSの当該モル比は、4:1~2:1であり、好ましくは当該SDS対CSの当該モル比は3:1である。
【0206】
好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは、配列番号2~5及び配列番号10~16及び22からなる群から選択される配列であり、当該界面活性剤組成物は、SDS及びCSを含み、好ましくはSDS及びCSからなり、当該SDS対CSの当該モル比は、4:1~2:1であり、好ましくは当該SDS対CSの当該モル比は3:1である。
【0207】
好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは配列番号2であり、当該界面活性剤組成物は、SDS及びCSを含み、好ましくはSDS及びCSからなり、当該SDS対CSの当該モル比は、4:1~2:1であり、好ましくは当該SDS対CSの当該モル比は3:1である。好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは配列番号3であり、当該界面活性剤組成物は、SDS及びCSを含み、好ましくはSDS及びCSからなり、当該SDS対CSの当該モル比は、4:1~2:1であり、好ましくは当該SDS対CSの当該モル比は3:1である。別の好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは配列番号4であり、当該界面活性剤組成物は、SDS及びCSを含み、好ましくはSDS及びCSからなり、当該SDS対CSの当該モル比は、4:1~2:1であり、好ましくは当該SDS対CSの当該モル比は3:1である。別の好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは配列番号5であり、当該界面活性剤組成物は、SDS及びCSを含み、好ましくはSDS及びCSからなり、当該SDS対CSの当該モル比は、4:1~2:1であり、好ましくは当該SDS対CSの当該モル比は3:1である。別の好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは配列番号10であり、当該界面活性剤組成物は、SDS及びCSを含み、好ましくはSDS及びCSからなり、当該SDS対CSの当該モル比は、4:1~2:1であり、好ましくは当該SDS対CSの当該モル比は3:1である。別の好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは配列番号11であり、当該界面活性剤組成物は、SDS及びCSを含み、好ましくはSDS及びCSからなり、当該SDS対CSの当該モル比は、4:1~2:1であり、好ましくは当該SDS対CSの当該モル比は3:1である。別の好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは配列番号12であり、当該界面活性剤組成物は、SDS及びCSを含み、好ましくはSDS及びCSからなり、当該SDS対CSの当該モル比は、4:1~2:1であり、好ましくは当該SDS対CSの当該モル比は3:1である。別の好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは配列番号13であり、当該界面活性剤組成物は、SDS及びCSを含み、好ましくはSDS及びCSからなり、当該SDS対CSの当該モル比は、4:1~2:1であり、好ましくは当該SDS対CSの当該モル比は3:1である。好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは配列番号14であり、当該界面活性剤組成物は、SDS及びCSを含み、好ましくはSDS及びCSからなり、当該SDS対CSの当該モル比は、4:1~2:1であり、好ましくは当該SDS対CSの当該モル比は3:1である。別の好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは配列番号15であり、当該界面活性剤組成物は、SDS及びCSを含み、好ましくはSDS及びCSからなり、当該SDS対CSの当該モル比は、4:1~2:1であり、好ましくは当該SDS対CSの当該モル比は3:1である。別の好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは配列番号16であり、当該界面活性剤組成物は、SDS及びCSを含み、好ましくはSDS及びCSからなり、当該SDS対CSの当該モル比は、4:1~2:1であり、好ましくは当該SDS対CSの当該モル比は3:1である。別の好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは配列番号20であり、当該界面活性剤組成物は、SDS及びCSを含み、好ましくはSDS及びCSからなり、当該SDS対CSの当該モル比は、4:1~2:1であり、好ましくは当該SDS対CSの当該モル比は3:1である。別の好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは配列番号21であり、当該界面活性剤組成物は、SDS及びCSを含み、好ましくはSDS及びCSからなり、当該SDS対CSの当該モル比は、4:1~2:1であり、好ましくは当該SDS対CSの当該モル比は3:1である。別の好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは配列番号22であり、当該界面活性剤組成物は、SDS及びCSを含み、好ましくはSDS及びCSからなり、当該SDS対CSの当該モル比は、4:1~2:1であり、好ましくは当該SDS対CSの当該モル比は3:1である。
【0208】
好ましい実施形態では、本発明の当該ポリペプチドは、タグ、すなわちペプチド又は非ペプチドタグ、好ましくはペプチドタグ(すなわち、機能性アミノ酸配列)を含む。好ましい実施形態では、当該タグは、本発明のポリペプチドのC末端又はN末端に位置する。好ましい実施形態では、当該タグは非ペプチドタグ、好ましくはポリエチレングリコール(PEG)である。好ましくは、当該PEGは、アミノ酸セリン又はシステインを介して当該アミノ酸配列Iにカップリングされる。本発明のポリペプチドにカップリングされたPEGは、安定性を増加させ、免疫原性を低下させる。
【0209】
好ましい実施形態では、本発明の当該ポリペプチドは、タグ、好ましくはペプチドタグを含み、当該タグは、当該ポリペプチド、好ましくは当該アミノ酸配列IのC又はN末端、好ましくはC末端に位置し、当該タグは、好ましくは当該ポリペプチド、好ましくは当該アミノ酸配列Iの当該C又はN末端に融合されている。
【0210】
好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは、配列番号2から16及び配列番号20から27からなる群から選択される配列であり、本発明の当該ポリペプチドはタグ、好ましくはペプチドタグを含み、当該タグは、当該ポリペプチド、好ましくは当該アミノ酸配列IのC又はN末端、好ましくはC末端に位置し、当該タグは、当該ポリペプチド、好ましくは当該アミノ酸配列Iの当該C又はN末端に好ましくは融合している。
【0211】
好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは、配列番号2~5及び配列番号10~16からなる群から選択される配列であり、本発明の当該ポリペプチドはタグ、好ましくはペプチドタグを含み、当該タグは、当該ポリペプチド、好ましくは当該アミノ酸配列IのC又はN末端、好ましくはC末端に位置し、当該タグは、当該ポリペプチド、好ましくは当該アミノ酸配列Iの当該C又はN末端に好ましくは融合している。
【0212】
好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは、配列番号2~5及び配列番号10~16及び配列番号20~22からなる群から選択される配列であり、本発明の当該ポリペプチドはタグ、好ましくはペプチドタグを含み、当該タグは、当該ポリペプチド、好ましくは当該アミノ酸配列IのC又はN末端、好ましくはC末端に位置し、当該タグは、当該ポリペプチド、好ましくは当該アミノ酸配列Iの当該C又はN末端に好ましくは融合している。
【0213】
好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは、配列番号2~16及び配列番号20~27からなる群から選択される配列であり、当該界面活性剤組成物は、SDS及びCSを含み、好ましくはSDS及びCSからなり、当該SDS対CSの当該モル比は4:1又は2:1であり、好ましくは当該SDS対CSの当該モル比は3:1であり、本発明の当該ポリペプチドはタグ、好ましくはペプチドタグを含み、当該タグは当該ポリペプチド、好ましくは当該アミノ酸配列IのC又はN末端、好ましくはC末端に位置し、当該タグは当該ポリペプチド、好ましくは当該アミノ酸配列Iの当該C又はN末端に好ましくは融合している。
【0214】
好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは、配列番号2~5及び配列番号10~16からなる群から選択される配列であり、当該界面活性剤組成物は、SDS及びCSを含み、好ましくはSDS及びCSからなり、当該SDS対CSの当該モル比は4:1又は2:1であり、好ましくは当該SDS対CSの当該モル比は3:1であり、本発明の当該ポリペプチドはタグ、好ましくはペプチドタグを含み、当該タグは当該ポリペプチド、好ましくは当該アミノ酸配列IのC又はN末端、好ましくはC末端に位置し、当該タグは当該ポリペプチド、好ましくは当該アミノ酸配列Iの当該C又はN末端に好ましくは融合している。
【0215】
好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは、配列番号2~5及び配列番号10~16及び配列番号20~22からなる群から選択される配列であり、当該界面活性剤組成物は、SDS及びCSを含み、好ましくはSDS及びCSからなり、当該SDS対CSの当該モル比は4:1又は2:1であり、好ましくは当該SDS対CSの当該モル比は3:1であり、本発明の当該ポリペプチドはタグ、好ましくはペプチドタグを含み、当該タグは当該ポリペプチド、好ましくは当該アミノ酸配列IのC又はN末端、好ましくはC末端に、好ましくはC末端に位置し、当該タグは当該ポリペプチド、好ましくは当該アミノ酸配列Iの当該C又はN末端に好ましくは融合している。
【0216】
別の好ましい実施形態では、当該タグは、ポリヒスチジン(Hisタグ、すなわち、連続的に連結された2つ以上のヒスチジンからなるアミノ酸配列)、分解タグ、ターゲティングタグ、細胞透過タグ、及びエンドソームエスケープタグからなる群から選択される。好ましい実施形態では、本発明のポリペプチドに含まれる当該追加のタグは、光切断性結合などの放出可能な結合を介して、又は可逆的カップリングを介して結合される。
【0217】
当該標的化タグは、好ましくはがん標的に結合し、すなわち、当該標的化タグはがん標的化タグである。当該がん標的は、特定の腫瘍細胞及び腫瘍抗原の内/上での発現レベルが増加した受容体を含む。
【0218】
好ましい実施形態では、当該標的化タグは、ペプチドリガンド、ペプチド模倣体、アフィボディ、抗体結合ドメイン又は抗体である。当該標的化タグは、好ましくは葉酸である。
【0219】
好ましい実施形態では、当該Hisタグ、好ましくは当該His6タグは、ハロゲン化ヒスチジン、好ましくはフッ素化ヒスチジンを含む。好ましい実施形態では、当該Hisタグはフルオロフォアを含む。好ましい実施形態では、本発明の当該ポリペプチドはフルオロフォアを含む。
【0220】
好ましい実施形態では、本発明の当該ポリペプチドは分解タグを含む。好ましくは、当該分解タグは哺乳動物細胞において機能的である。好ましい実施形態では、当該分解タグは、オルニチンデカルボキシラーゼ(cODC)、好ましくは配列番号17のC末端配列、又は少なくとも2つの連続して連結されたユビキチンを含む、若しくはそれらからなる(ポリ)ユビキチンである。別の好ましい実施形態では、当該分解タグは、配列番号17(EFPPEVEEQDDGTLPMSCAQESGMDRHPAACASARINV)のcODCからなる。別の好ましい実施形態では、当該分解タグは、少なくとも2つの連続的に連結されたユビキチンを含む。より好ましくは、当該分解タグは、少なくとも2つの連続的に連結されたユビキチンからなる。
【0221】
好ましい実施形態では、本発明の当該ポリペプチドは、ポリヒスチジン(Hisタグ)を含む。好ましい実施形態では、当該ポリヒスチジンは、2つ以上のヒスチジンを含むアミノ酸配列である。別の好ましい実施形態では、当該ポリヒスチジンは、2つ以上の連続的に連結されたヒスチジンを含むアミノ酸配列である。別の好ましい実施形態では、当該ポリヒスチジンは、3つ以上の連続的に連結されたヒスチジンを含むアミノ酸配列である。別の好ましい実施形態では、当該ポリヒスチジンは、3~9の連続的に連結されたヒスチジンを含むアミノ酸配列である。好ましい実施形態では、当該Hisタグは、アミノ酸配列IのC末端又はN末端、好ましくはC末端に結合している。
【0222】
更なる実施形態では、本発明のポリペプチドは、エンドソームのエスケープペプチド又は細胞透過性ペプチド(CPP)を含む。エンドソームエスケープペプチドは、例えば、二量体化ジスルフィド結合TAT又はチオール基である。本明細書で使用される「細胞透過性ペプチド」又はCPPという用語は、細胞内へのカーゴの送達のために原形質膜を透過する能力を有するペプチドの群を指す。好ましくは、本発明のポリペプチドに使用される当該CPPは、親水性又はカチオン性ペプチドである。別の実施形態では、当該CPPは、両親媒性、アニオン性又は疎水性ペプチドから選択される。1,600個を超えるCPPのデータベースがAgrawal et al.によって記載されている。(Agrawal P,Bhalla S,Usmani SS,Singh S,CHaudhary K,Raghava GPS,et al.CPPsite 2.0:a repository of experimentally validated cell-penetrating peptides.Nucl Acids Res.2016,44:D1098-D103)。
【0223】
好ましい実施形態では、本発明のポリペプチドに含まれる当該追加のタグは、光切断性結合などの放出可能な結合を介して、又は可逆的カップリングを介して結合される。
【0224】
好ましい実施形態では、本発明の当該ポリペプチドは、配列番号2~27からなる群から選択されるアミノ酸配列Iを含み、当該リポタンパク質ケージは、当該リポタンパク質ケージを分解することなく、カーゴをローディング及びアンローディングすることが可能である。
【0225】
好ましい実施形態では、本発明の当該ポリペプチドは、配列番号2~5、10~16及び18~22からなる群から選択されるアミノ酸配列Iを含み、当該リポタンパク質ケージは、当該リポタンパク質ケージを分解することなく、カーゴをローディング及びアンローディングすることが可能である。
【0226】
好ましい実施形態では、本発明の当該ポリペプチドは、配列番号2~5、10~16、18又は19からなる群から選択されるアミノ酸配列Iを含み、当該リポタンパク質ケージは、当該リポタンパク質ケージを分解することなく、カーゴをローディング及びアンローディングすることが可能である。
【0227】
好ましい実施形態では、本発明のポリペプチドは、産生後に遺伝子的に(ペプチドの直接融合のために)又は化学的に修飾される。
【0228】
好ましい実施形態では、本発明の当該リポタンパク質ケージは、組成物、好ましくは薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に含まれる。
【0229】
更なる態様において、本発明は、本発明のリポタンパク質ケージと1つ又は複数のカーゴ分子とを含む複合体に関する。
【0230】
好ましくは、当該カーゴは疎水性カーゴ、より好ましくは非極性カーゴである。好ましくは、当該カーゴは小型カーゴである。小型カーゴは、1000Da以下のサイズであることが好ましい。
【0231】
好ましい実施形態では、1000Da以下のサイズは、当該カーゴが1000Da以下、好ましくは800Da以下、より好ましくは600Da以下、再びより好ましくは500Da以下、再びより好ましくは400Da以下、再びより好ましくは300Da以下、再びより好ましくは200Da以下、再びより好ましくは100Da以下のサイズを有することを意味する。別の実施形態では、当該カーゴは、1000Da以下のサイズを有する小さな疎水性カーゴ、更により好ましくは1000Da以下のサイズを有する小さな非極性カーゴである。好ましくは、当該カーゴは水性媒体中で低い溶解度を有する。好ましくは、当該小型カーゴは1000Da以下のサイズを有し、水性媒体への溶解度が低い。より好ましくは、低溶解度の当該カーゴは、生物薬剤学分類システム(Biopharmaceutics Classification System:BCS)のクラスII又はクラスIVに含まれる。更により好ましくは、当該低可溶性カーゴは、最高強度用量が37±1℃で1.0~7.5、より好ましくは1.0~6.8のpH範囲にわたって250mL以下の水性媒体に可溶性である高可溶性カーゴよりも低い溶解度を有する。溶解度を決定するための好ましい方法は、USP溶解装置、振とうフラスコ法又は酸若しくは塩基滴定法である。
【0232】
好ましくは、当該カーゴは活性薬剤、好ましくは治療的及び/又は診断的に活性な薬剤である。好ましい実施形態では、当該カーゴは、蛍光剤などの造影剤である。より好ましくは、当該カーゴは、化学療法剤、ビフォナゾール又はアムホテリシンBなどの抗真菌剤、インジナビル又はリトナビルなどの抗ウイルス剤、及び抗生物質からなる群から選択される。好ましくは、当該カーゴは、生物薬剤学分類システム(Biopharmaceutics Classification System:BCS)のクラスII又はクラスIVに含まれる。好ましくは、当該化学療法剤は、ドキソルビシン、パクリタキセル、ダサチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、カンプトテシン、ダウノルビシン、ブパルリシブ、アムサクリン、ビフォナゾール、グリベンクラミド、ビカルタミド、セレコキシブ、フェノフィブラート、及びダナゾールからなる群から選択される小分子カーゴ分子である。
【0233】
本発明の複合体による細胞の処理は、リポタンパク質ケージを分解することなく、複合体の細胞内送達及びそのカーゴの処理細胞の細胞質ゾルへの放出をもたらす。したがって、好ましい実施形態では、本発明の当該複合体は、本発明のリポタンパク質ケージ及び1つ又は複数のカーゴ分子を含み、当該カーゴ分子は、リポタンパク質ケージを分解することなくリポタンパク質ケージに封入される。更に好ましい実施形態では、本発明の当該複合体は、本発明のリポタンパク質ケージ及び1つ又は複数のカーゴ分子を含み、当該カーゴ分子は、リポタンパク質ケージを分解することなく、細胞外でリポタンパク質ケージに封入され、当該リポタンパク質ケージは、リポタンパク質ケージを分解することなく当該カーゴを細胞内に放出することができる。更に好ましい実施形態では、本発明の当該複合体は、本発明のリポタンパク質ケージ及び1つ又は複数のカーゴ分子を含み、当該カーゴ分子は、リポタンパク質ケージを分解することなく細胞外でリポタンパク質ケージに封入され、当該リポタンパク質ケージは、細胞によって取り込まれ、リポタンパク質ケージを分解することなく、当該封入されたカーゴ分子を細胞内に、好ましくは当該細胞の細胞質ゾルに放出することができる。
【0234】
本発明のリポタンパク質ケージへのカーゴの封入は、競合するホスト分子又は環境の存在下で可逆的であるが、本発明のリポタンパク質ケージ及び複合体は安定であり、細胞外で分解されない。したがって、更に好ましい実施形態では、本発明のリポタンパク質ケージは、リポタンパク質ケージを分解することなく、カーゴ分子を可逆的に封入及び放出することができる。カーゴの放出は、界面活性剤組成物がカーゴに結合することができるよりも強くカーゴに結合することができるタンパク質、又はカーゴが優先的に分配される脂質二重層によって引き起こされる。
【0235】
更なる態様において、本発明は、本発明のリポタンパク質ケージを製造するための方法であって、
少なくとも1つのポリペプチド、好ましくは24個のペプチドからのタンパク質ケージを自己集合する工程であって、当該ポリペプチドが、以下からなるアミノ酸配列Iを含み、
MX13QAIGILELXSIAAGMELGDAMLKSAX14VX15LLVSKTISXGKFLLMLGGDIXAIX12AIX10TGTX11QAGXLLVDSLVLAX16IHPSVLPAIX17GX18NX19VX2021QAVGIVETXSVAACISAADX22AVX23GSX24VTLVRVHMAXGIGGKCYMVVAGDVSDVALAVTVASSSAGAYGXLVYASLIPX25PHX26AMWX27QMVX28GX29E(配列番号1)、ここで、X~X29のいずれかは互いに独立してアミノ酸であり、但し、X~Xの少なくとも3つは互いに独立して正に荷電したアミノ酸であり、配列番号1におけるX~X29で示された以外の位置における5つまでのアミノ酸は任意のアミノ酸によって交換されていてもよい、工程と、タンパク質ケージを分解することなく、本発明の界面活性剤組成物をタンパク質ケージに封入する工程と、を含む、方法を提供する。
【0236】
好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは、配列番号2~5及び配列番号10~16、及び20~22からなる群から選択されるアミノ酸配列である。好ましい実施形態では、当該アミノ酸配列Iは、配列番号2~5及び配列番号10~16、20及び21からなる群から選択されるアミノ酸配列である。好ましい実施形態では、当該少なくとも1つのポリペプチドは、24個のポリペプチドとして定義される。
【0237】
好ましい実施形態では、本発明のリポタンパク質ケージを製造する方法は、好ましくは組換え発現(例えば細菌細胞において、好ましくは大腸菌細胞において)によって、本発明のポリペプチドを産生する更なる工程を含む。発現すると、本発明のポリペプチドは、単離することができる明確に定義されたタンパク質ケージに自己集合する。
【0238】
更なる態様において、本発明は、本発明のリポタンパク質ケージを1つ又は複数のカーゴ分子と混合する工程を含み、当該カーゴは、リポタンパク質ケージを分解することなく本発明のリポタンパク質ケージに封入される、本発明の複合体の製造方法を提供する。
【0239】
更なる態様では、本発明は、細胞を本発明の複合体で処理する方法であって、当該細胞を本発明の複合体と接触させる工程を含む、方法を提供する。好ましくは、細胞を処理するための当該方法はインビトロ方法である。好ましい実施形態では、当該細胞は真核細胞である。より好ましくは、当該細胞は動物細胞であり、更により好ましくは哺乳動物細胞である。
【表1-1】

【表1-2】

【表1-3】

【表1-4】

【表2】
【実施例
【0240】
例1-材料及び方法
材料。全ての化学物質は、更に精製することなく供給されたまま使用した。イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)をFluorochem(UK)から購入した。リゾチームは、PanReac Axon Lab AG(Switzerland)から購入した。Hisタグタンパク質単離のために、Qiagen(Germany)製のNi-NTA Agaroseを使用した。DNase IはRoche(Switzerland)製であり、RNase AはMerck(Germany)製であった。GelRedはBiotium,Inc.(USA)から購入した。ドデシル硫酸ナトリウム及び硫酸コレステロールは、Sigma-Aldrich(Merck,Germany)から購入した。
【0241】
器具の使用。タンパク質の定量を、ThermoFisher Scientific Inc.(USA)製のNanoDrop 2000c分光光度計を使用して行った。全てのサイズ排除クロマトグラフィは、Bio-Rad Laboratories,Inc.(USA)製のNGC(商標)Medium-Pressure Chromatography Systemで行った。アガロースゲル電気泳動(AGE)を、Bio-Rad Laboratories,Inc.(USA)製のMini-Sub(登録商標)cell GTで行った。ゲル画像を、Canon(Japan)製のEOS 1100Dを使用して撮影した。透過型電子顕微鏡(TEM)画像は、FEI(USA)製のMorgagni268で得た。蛍光定量は、Photon Technology International(USA)製のQuantaMaster(商標)50蛍光光度計で行った。共焦点蛍光顕微鏡画像を、Leica(Germany)製のSP8-AOBSで得た。フローサイトメトリを、BD Biosciences(USA)製のLSRFortessaで行った。
【0242】
タンパク質産生。タンパク質を大腸菌株BL21-Gold(DE3)で発現させた。細胞を、硫酸カナマイシン(86μM)を含有するLB培地中でOD600が0.6~0.8に達するまで37℃で成長させ、IPTG(0.1mM)を用いてタンパク質の過剰発現を誘導した。25℃で約18時間培養した後、4℃で15分間の遠心分離(5,000×g)によって細胞を回収した。細胞ペレットを精製するまで-20℃で保存した。OPケージを大腸菌細胞ペレットから単離し、以前に報告されたようにNi親和性及びサイズ排除クロマトグラフィによって精製した(Edwardson et al.,2018,op.cit.)。
【0243】
OP:SDS及びOP:SDS:CS複合体の調製。タンパク質ケージ-ミセル複合体は、精製された空のOPケージ及びアニオン性界面活性剤の水溶液から直接形成された。別段の指定がない限り、全実験において、総界面活性剤分子対OPケージのモル比は800:1である。使用した緩衝液はPBS(9.5mMのNaHPO、1.4mMのKHPO、136mMのNaCl、2.7mMのKCl、pH7.4)及びTSEC(25mMのTris-HCl、200mMのNaCl、5mMのEDTA、pH7.4)であった。複合体を形成するために、適切な体積の濃縮SDS溶液(PBS中1~100mM)又はCS溶液(8~16mM、DMSO)を最初にPBS緩衝液で1mM未満の濃度に希釈してタンパク質変性を回避した。次いで、必要な体積のOP溶液(2~20μMキャプシド、PBS又はTSEC緩衝液)を添加し、混合物を室温で1時間インキュベートして、完全な複合体形成を可能にした。小分子封入のために、アセトン又はDMSO中の蛍光プローブ/薬物の濃縮溶液を、予め形成されたOP:SDS:CS複合体に添加し、室温で更に15分間インキュベートした。いずれの場合も、有機溶媒の全画分を10%v/v未満に維持した。
【0244】
ネイティブアガロースゲル電気泳動。全てのネイティブゲル電気泳動を、トリス-酢酸-EDTA緩衝液(40mMのTris-HCl、19mMの酢酸、1mMのEDTA、pH8.3)中2%(w/v)アガロースゲルを使用して行った。UV透過照明による蛍光分子の可視化後、タンパク質の可視化のためにゲルをクマシーブルーで染色した。典型的な実験では、ローディングのために、約100pmolのキャプシド(モノマーに対して)を10μLの緩衝液中にレーンごとに更に2μLの70%(v/v)グリセロール水溶液をローディングした。
【0245】
サイズ排除クロマトグラフィ。分析SECは、Superose6 Increase10/300 GLカラム(GE Healthcare,USA)で行った。試料は800μLの10~50μMタンパク質モノマーであり、移動相は0.75×TSEC緩衝液であった。280nmにおける吸光度によってピークを検出した。
【0246】
動的光散乱。タンパク質及び界面活性剤の0.22μm濾過溶液から調製した試料を使用して、25℃でZetasizer Nano(Malvern Instruments,UK)でDLS測定を行った。試料濃度は、30~100μMのタンパク質モノマーであった。
【0247】
透過型電子顕微鏡法。以前に報告されたように陰性染色透過型電子顕微鏡法(TEM)を行った(Beck,T.,Tetter,S.,Kunzle,M.&Hilvert,D.Construction of Matryoshka-Type Structures from Supercharged Protein Nanocages.Angew.Chem.Int.Ed.54,937-940(2015))。全てのTEM実験について、試料はPBS緩衝液中2~4μMのOPモノマーであった。
【0248】
ナイルレッド蛍光。典型的な蛍光定量実験のために、PBS緩衝液中の800μLの試料を使用した。界面活性剤ローディング速度論のために、適切な量のNaClをPBS緩衝液に溶解することによってイオン強度を調整した。アセトン:水(1:1v/v)中のナイルレッドの貯蔵液、又は50~500μMの濃度のDMSOを使用した。全ての実験について励起波長を535nmに設定した。
【0249】
有効濃度計算。OP内腔の容積(255、528Å)は、半径39.4Åの球として推定された。この半径は、UCSF Chimeraソフトウェア(Pettersen,E.F.et al.UCSF Chimera-a visualization system for exploratory research and analysis.J.Comput.Chem.25,1605-1612(2004))を使用して、報告された結晶構造(Edwardson et al.,2018,op.cit.)から内腔に露出した残基間の距離を平均することによって決定される。SDSの有効濃度は、内腔容積当たりのSDSのモル数として単純に推定した。予想されるSDS分子の数は、最初に、SDSミセル半径(17.5Å)及び凝集数(n=64)の報告された平均値から、ミセル中の個々のSDS分子が占める体積を決定することによって推定した。ミセル凝集体に充填された単一SDS分子の平均体積でOP腔体積を割ると、OPケージ当たり729分子の推定値が得られ、これは体積推定値及び実験結果の誤差の範囲内であり、800分子に近い。
【0250】
細胞培養。HeLa細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)、2mMのL-グルタミン、2mMのGlutaMAX及び1μg/mLゲンタマイシンで補充した、ダルベッコ改変イーグル培地(高グルコース)で維持した。細胞を37℃で5%CO2中で培養し、典型的には3日ごとに1:4の比で分割した。7~20の継代数のみを全ての実験に使用した。
【0251】
フローサイトメトリ。HeLa細胞を、500μLの培養培地中の24ウェルプレートにウェル当たり30,000細胞の密度で播種し、37℃及び5%CO2で24時間回復させて60~80%のコンフルエントに達した。OPタンパク質溶液及び界面活性剤溶液の両方を0.22μm膜による濾過によって滅菌し、ストックを滅菌PBS中で調製した。1:1のEtOH:HO中のナイルレッド溶液(50μM)を滅菌せずに使用した。OPキャプシドミセル複合体を上記のように調製した。各ウェルについて、PBS中の20μLの試料を200μLの培養培地に添加して、200nMの最終濃度を得た。細胞を37℃、5%CO2中で16~20時間インキュベートした後、PBSで洗浄し、トリプシン処理した(0.05%Trypsin-EDTA(Thermo Fisher Scientific、USA)、37℃で4分)。細胞を冷培養培地に回収し、冷PBSで2回洗浄した後、フローサイトメトリ緩衝液(5%FBSを含むPBS)に再懸濁した。全てのゲーティングを用いた代表的なフローサイトメトリ分析を図9に示す。
【0252】
OPケージの蛍光標識。フルオロフォア共役のための特異的なハンドルを提供するために、「QuikChange」(Agilent)部位特異的変異誘発によってOPタンパク質の残基38に単一のセリンからシステインへの変異を導入した。この内腔に存在する残基は、細胞取込みプロファイルを乱し得るOPケージの外面との干渉を回避するために選択した。分子クローニングの成功は、タンパク質発現に使用されるpET29b(+)_OPS38Cプラスミドのサンガーシーケンシング(Microsynth AG,Switzerland)によって確認され、タンパク質は以前に報告されたように産生された。19 Atto425-マレイミド(Sigma-Aldrich)によるOPケージの標識化は、TSEC緩衝液中の精製タンパク質を色素溶液(10mM、DMSO)と単に混合し、暗所で室温にて一晩インキュベートすることによって行った。反応を停止させるために、2当量(w.r.t.マレイミド)のβ-メルカプトエタノールを添加し、30分のインキュベーション後、タンパク質をPDミニトラップG-10カラム(GE Healthcare,USA)を使用して精製した。標識効率を、UV-Vis吸光度測定並びにAtto425及びOPタンパク質のε280及びε439値から決定した。図4cに示す実験では、OPキャプシド当たり1.9色素の平均標識を有する試料を使用した。
【0253】
共焦点顕微鏡法。細胞を、ibidi GmbH(Germany)製のibiTreat表面を有するμスライド8ウェルチャンバーオーバースリップに、1ウェル当たり15~20,000細胞の密度で播種した。細胞を200μLの培養培地中で37℃及び5%CO2で24時間インキュベートした後、試料を添加した。滅菌試料をPBS中で調製し、各ウェルについて10μLの試料溶液を100μLの培養培地に添加して、所望の最終濃度のタンパク質及びフルオロフォアを得た。細胞を試料と共に37℃、5%COで24時間インキュベートした後、PBSで洗浄し、100μLのヘキスト33342溶液(PBS中5μg/mL)で37℃、10~15分間核染色した。次いで、細胞をPBSで2回洗浄し、10%FBSを含有するPBS中、37℃で顕微鏡観察を行った。
【0254】
細胞生存率アッセイ。製造業者の指示に従って、SigmaのWST-8-based Cell Counting Kit-8を使用して細胞傷害性を評価した。HeLa細胞を、100μLの培養培地中の96ウェルプレートにウェル当たり5,000細胞の密度で播種し、37℃及び5%CO2で24時間回復させた。タンパク質、界面活性剤及び薬物試料を滅菌PBS中で段階希釈することによって調製した。総体積25μLの試料を各ウェルに添加して、図4e、4fに示す最終濃度を得た。陰性対照として、10μLのPBS中10%TritonX-100をウェル当たり使用した。陽性対照はPBSのみであった。細胞を37℃で5%CO2中で24時間インキュベートした後、10μLのCKK-8試薬を各ウェルに添加した。次いで、プレートを37℃及び5%COで2~4時間インキュベートした後、450nmで吸光度を測定した。細胞を含まない培養培地中のCKK-8の吸光度をバックグラウンド減算に使用し、試料を未処理細胞に対して正規化して、図4e、4fに示す値を得た。試料を、異なるタンパク質バッチの生物学的複製物を用いて6連で測定した。
【0255】
例2-集合リポタンパク質ケージの調製及び分析
リポタンパク質模倣ケージの自己集合本発明による例示的なリポタンパク質ケージを調製するために、人工集合体OPを、正に荷電した内部腔を有する小さな多孔質キャプシドであるタンパク質足場として選択した(Edwardson et al.,2018,op.cit.)。大腸菌での発現後、OPタンパク質を、その6つの面のそれぞれに約3.5nmの細孔を有する24個のモノマーを含む完全な八面体アセンブリとして単離する(図1b)。ケージの外径は約13nmであり、球状内部腔の直径は約8nmである。これらの寸法は、内腔の小さなミセル凝集体の足場に適していると想定された。
【0256】
正電荷OPケージから出発して、負に帯電した両親媒性物質を封入し、次いでこれを相分離させ、タンパク質ケージ内に疎水性コアを作製した。次いで、得られたタンパク質足場脂質液滴は、小分子を隔離することができる疎水性区画として作用する。
【0257】
ケージ鋳型ミセル形成。ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)は、その水溶解度及びスルファート頭部基とOPキャプシドの内面上の多くのアルギニン残基との間の好ましい水素結合形成の可能性のために、アニオン性界面活性剤(図2a)として選択した。SDSは典型的にはタンパク質変性剤として使用されるため、本発明者らは、タンパク質コアとの疎水性相互作用がタンパク質構造の破壊をもたらす経路を支配するのではなく、OPケージの電荷及び形状相補性を利用して足場ミセルの形成を促進することができるかどうかに興味を持った。そのようなものとして、OPを、ケージ当たり最大2000分子の増加するモル当量のSDSに供し、ネイティブゲル電気泳動(図2b)によって分析した。データは、タンパク質ケージ当たり約800当量のSDSまでOP四級構造に変化がないことを示しているが、1000当量を超えると、潜在的にケージ構造の破壊又は変性に起因して、可動性の増加したバンドが生じた。
【0258】
SDSに対する耐性をよりよく理解するために、生物物理学的技術(図5及び6)の組合わせを通して、ケージ当たり800当量のSDSの存在下でOPを更に調べた。サイズ排除クロマトグラフィ及び透過型電子顕微鏡法(図2c、2d、2e)によって例示されるように、有効SDS濃度(内腔容積で約5.2M)がタンパク質を変性させるために典型的に使用される濃度(mM範囲)よりも桁違いに高かったとしても、タンパク質ケージ構造に対する識別可能な変化はなかった。
【0259】
想定されるようにSDS分子がOPケージの内部腔内に引き込まれたかどうかを決定するために、蛍光標識オリゴヌクレオチドプローブを使用した。SDS分子が意図されたスルファート-グアニジニウム相互作用を介して内腔内に局在化した場合、他の潜在的な負に帯電したゲストは侵入を阻止されると予想された。この閉塞は、封入の推進力である高い正電荷の打消し、及び入口細孔の閉塞の両方に起因する。オリゴヌクレオチドはOPケージによって高親和性で急速に内在化されるため(Edwardson et al.,2018,op.cit.)、この仮説を試験するための理想的なプローブを提供した。Atto488標識21nt DNAを空のOPケージ又はSDSとプレインキュベートしたもののいずれかに添加し、ネイティブゲル電気泳動によって複合体を分析した(図2f)。空のOPケージはプローブを定量的に封入するが、OP:SDS複合体はDNA鎖を封入することができず、これは内腔を占めるSDS分子と一致する。
【0260】
クライオ電子顕微鏡法は、タンパク質ケージ構造及び内在化ゲストの存在の両方を直接プローブする手段を提供する。このように、本発明者らは、空のOPケージ及び界面活性剤(SDS)充填OPケージの両方を分析した(図2g-j、7及び8)。200kV顕微鏡で画像化された粒子を2Dで複数回分類し、最良のクラスを最終的に使用して、単一クラスの三次元モデルを精製した。第1に、SDSの存在下ではタンパク質構造の変化はごくわずかであることに留意されたい(図2g、2時間)。第2に、OPとOP:SDS複合体とを比較すると、内在化界面活性剤に対応する電子密度差が示され、明確なタンパク質足場ミセルコアの形成が明らかになる(図2j)。OP:SDS複合体の構造忠実度は、十分に定義されたタンパク質構造が非タンパク質成分の自己集合のための鋳型として作用する可能性を実証し、ハイブリッド集合体を作製するための代替手段を提供する。
【0261】
疎水性コア形成、カーゴ容量及び速度論。OP鋳型ミセルの内部構造のより深い理解を得るために、本発明者らはソルバトクロミック色素ナイルレッドを使用した。この小分子フルオロフォアは、水性媒体中ではほぼ非発光性であるが、非極性環境では蛍光を示す(Greenspan,P.,Mayer,E.P.&Fowler,S.D.Nile red:a selective fluorescent stain for intracellular lipid droplets.J.Cell Biol.1985,vol.100,pp.965-973)。OPケージがSDS分子を疎水性コアを有するミセル様凝集体にシャペロンしたかどうかを識別するために、システムの各成分の存在下でナイルレッド蛍光を測定した。
【0262】
臨界ミセル濃度(PBS緩衝液中4~5mM)未満で(De Paula,R.,da Hora Machado,A.E.&de Miranda,J.A.3-Benzoxazol-2-yl-7-(N,N-diethylamino)-chromen-2-one as a fluorescence probe for the investigation of micellar microenvironments.J.Photochem.Photobiol.A:Chem.2004,vol.165,pp.109-114)、SDSは、ナイルレッドの500nM水溶液の蛍光に対する効果はごくわずかであった(図3a)。同様に、OPケージは蛍光プローブの発光を増強しなかった。しかし、OP及びSDS(800当量)の両方の存在下では、ナイルレッド蛍光の大きな増加が観察された。このシグナルの増加は、発光最大値のブルーシフトを伴い、非極性環境内でのプローブの局在化を示した(Greenspan et al.,1985,op.cit.)。
【0263】
ナイルレッドの適合性及び有用性が確立されたため、本発明者らは、キャプシド当たりのSDS分子の最適数及び封入され得るナイルレッドゲストの数を決定するために更なる実験を行った。
【0264】
SDS含有量を増加させたOP:SDS複合体の存在下での2当量のナイルレッドの蛍光モニタリングは、ケージ当たり約800個の界面活性剤分子でプラトーを明らかにした(図3b、3c)。この数は、OP腔の体積容量(約256nm)及びミセル中のSDS分子が占める平均体積(方法セクション)から計算された約730の値に適合する。この確証は、分子がそれらの典型的な扁平楕円体ミセル形態といくらかの構造的類似性をもって配置されていることを示唆している(Hammouda,B.Temperature Effect on the Nanostructure of SDS Micelles in Water.J Res Natl Inst Stand Technol 2013,vol.118,pp.151-167)。
【0265】
カーゴ担持がタンパク質-ミセル複合体の重要な特徴であるため、本発明者らはまた、ケージ当たりに収容され得るナイルレッド分子の数を決定するために蛍光滴定を使用した。1当量のナイルレッドをOP:SDS複合体の溶液に段階的に添加し、各添加について蛍光スペクトルを測定した(図3d)。ケージ当たり1~5分子のナイルレッドの間で、蛍光発光の対数的増加が各等価物で観察される。5~20分子のナイルレッドから、蛍光の安定した減少が観察され、20を超えると、蛍光の安定した増加が観察される。本発明者らは、これらの3つの異なる段階を、i)ナイルレッド封入、ii)自己消光、及びiii)過剰な遊離色素のためと考える。第1段階では、各ナイルレッド分子の添加は、色素間の自己消光に起因する発光減少の増加を与え、このプロセスは、フルオロフォアの高い有効モル濃度(30~130mM)に起因して第2段階で優位になり始める。第3段階では、当量当たりの発光増加は、バルク媒体中のナイルレッドについて観察されたものに非常に近く、レッドシフトに関連し、水性環境での局在化を示唆している。これらのデータから、約20分子で有機溶媒中のナイルレッドの溶解限界(<5mM)をはるかに超える有効濃度(約130mM)に対応するOP:SDS複合体の明確なローディング能力が存在すると結論付けることができる。
【0266】
生物学的活性の測定。OPアセンブリは、哺乳動物細胞の細胞質ゾルに低干渉RNAを送達し、効率的な遺伝子ノックダウンを誘導することができる。したがって、本発明者らは、OPケージを含有するミセルが難溶性化合物の細胞取込みを改善することができるかどうかに興味を持った。ヒトがん細胞(HeLa)を、ナイルレッド又は遊離フルオロフォア自体を担持するOP:SDS複合体で処理した。フローサイトメトリ(図4a)による分析は、OP:SDS複合体が小分子フルオロフォアの細胞取込みを増強することを示した。この所見は、共焦点蛍光顕微鏡法(図4b)を用いて確認され、これにより、ナイルレッドが細胞全体に分布していることも明らかになった。その大部分がエンドソームに局在するOPケージの報告された細胞内輸送に基づいて(Edwardson et al.,2018,op.cit.)、この結果は、ナイルレッドのカーゴが細胞取込み後にケージからエスケープすることができることを示唆している。この仮説を試験するために、Atto425標識OPケージ(図4c)を使用して同じ実験を行ったところ、大部分のOPケージが分解のためにエンドリソソームシステムを介して輸送されている間に、小分子カーゴが放出され、細胞質ゾルにエスケープすることが確認された。
【0267】
生物活性小分子の封入、輸送及び細胞内放出を試験するために、本発明者らは、二重チロシンキナーゼ阻害剤であるラパチニブをモデル化合物として選択する(Moy,B.&Goss,P.E.Lapatinib:Current Status and Future Directions in Breast Cancer.The Oncologist 2006,vol.11,pp.1047-1057)。600Da未満の好ましいサイズを有する更に好ましい適切なカーゴ分子を以下の表3に列挙する。ラパチニブは、固形腫瘍の治療法として使用されており、その低い溶解度及び血清タンパク質結合のためにナノ粒子媒介送達から利益を得ることが示されている(Bonde,G.V.et al.Lapatinib nano-delivery systems:a promising future for breast cancer treatment.Expert Opin.Drug.Deliv.2018,vol.15,pp.495-507)。封入の熱力学的コストを低減し、より安定な複合体の形成を促進するために、本発明者らは、界面活性剤組成物を内因性ステロイド、硫酸コレステロール(CS)で修飾して、より大きな平面のゲスト分子のローディングを促進した。本発明者らは、75%SDS及び25%CSの界面活性剤組成物がOPケージによって良好に耐容され(図11及び12)、ラパチニブの安定したローディングを可能にすることを見出した(図13a、b)。更に、ナイルレッドで処理した細胞又はOP:SDS:CS複合体に封入されたナイルレッドのフローサイトメトリは、OP:SDS複合体と比較して、2倍から5倍の細胞内送達の更に大きな増強を明らかにした(図4d)。この結果は、CSの添加によって提供される封入複合体の安定性の増加に起因する可能性があり、この戦略の固有のモジュール性及び異なるカーゴ分子の所望の物理的特性を得るために界面活性剤組成物を調整する可能性を強調する。
【表3】
【0268】
OP:SDS:CS複合体がそれらのラパチニブカーゴをいかに安定に保持しているかを決定するために、それらを10%ウシ胎児血清を含有する培地に対して透析した。72時間後、蛍光分光法はOP:SDS:CS試料中のラパチニブ含有量を示し、対照試料の範囲内のシグナルを明らかにした(図13c)。ラパチニブは血清アルブミンによって隔離されることが知られているので、このデータは、OP:SDS:CS複合体がこのゲスト分子に対して高い親和性を示すことを確認する。
【0269】
最後に、本発明者らは、OP:SDS:CS複合体がヒトがん細胞におけるラパチニブの有効な細胞毒性を増加させる能力をアッセイした。細胞を、遊離ラパチニブ又はOP:SDS:CSケージにパッケージングされたラパチニブのいずれかで処理し、18時間のインキュベーション後に細胞生存率をモニタリングした(図4e)。2.5μMの濃度では、ラパチニブは細胞生存率に対してごくわずかな効果を有した。しかし、OPケージでのパッケージングは効力に顕著な効果を有し、細胞の60%を死滅させた。重要なことに、OPケージを含有する界面活性剤自体はごくわずかな毒性を示し、有効性の増加がラパチニブのその細胞内標的への送達によるものであることが確認された。遊離及び封入薬物(図4f)の用量-応答比較は、特異的な標的化又は取込み増強リガンドの添加なしに、OP:SDS:CS複合体によって提供される効力の3倍の増加を明らかにする。薬物分子を可溶化することに加えて、OP-界面活性剤複合体内への封入は、同様に細胞の取込みを減少させ得る、培地中に存在する血清タンパク質による隔離を防止する。
【0270】
例3-フルオロフォア共役表面システイン残基を有する集合リポタンパク質ケージの調製及び分析。
化学的に共役したフルオロフォアとナイルレッドとの間のエネルギー移動。リポタンパク質ケージ形成及びシステイン含有タンパク質との小分子カーゴローディングの適合性及びそれらの化学的共役を実証するために、本発明者らは、それぞれ外表面又は内表面のいずれかに表示される、モノマー当たり単一のシステイン変異を含有する2つのタンパク質バリアントOP-K93C(配列番号4)及びOP-S38C(配列番号22)による複合体形成を試験した。これらのタンパク質は、透過型電子顕微鏡法(図14a、b)によって示されるように、OP(配列番号2)と同じケージ構造を形成する。製造業者が推奨するプロトコルを使用して、精製タンパク質をシステイン反応性Atto495-マレイミドフルオロフォアで部位特異的に標識した。SDSを用いたリポタンパク質ケージ形成を、プローブとしてナイルレッドを使用した蛍光定量によってモニタリングした(図14c)。ナイルレッド(535nm)の励起波長とAtto495(Emax=527nm)の蛍光発光の重複のため、ナイルレッドがリポタンパク質ケージ複合体に封入されている場合、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)が予想される。実際、この効果は、OP-K93C及びOP-S38Cの両方で観察され、SDS含有リポタンパク質ケージの形成と一致している。更に、FRET効率の顕著な差は、ナイルレッドに近いタンパク質ケージの内側、又はミセルコアから更に離れた外側表面のいずれかにおけるAtto495の位置と一致する。これらのデータは、OPタンパク質の化学的に共役されたシステイン変異体を使用して、それらの機能を保持するリポタンパク質ケージを形成することができることを実証している。更に、OP-S38Cと異なる界面活性剤組成物(75%SDS及び25%CS)との適合性及び細胞へのその効率的な送達も実証された(図4c,10)。
【0271】
例4-C末端ペプチドタグを有する集合リポタンパク質ケージの調製及び分析。
C末端付属物を有するリポタンパク質ケージの形成。タンパク質のC末端への分解タグ、標的化タグ、細胞透過タグ、及びエンドソームエスケープタグなどのペプチドの付着は、この封入システムの機能性を調整することを可能にする。リポタンパク質ケージ形成とこのタイプのタンパク質修飾との適合性を実証するために、本発明者らは、遺伝子融合によって作製された異なるC末端ペプチドタグを有する4つのタンパク質変異体を試験した。試験した4つのタンパク質は、OP-96(配列番号24)、OP-ZHER2(配列番号25)、OP-ZEGFR(配列番号26)、及びOP-SP 94(配列番号27)であった。サイズ排除クロマトグラフィ(図15a)及び透過型電子顕微鏡法(15b~e)によって実証されるように、これらの4つのバリアントのそれぞれはタンパク質ケージ構造を形成した。SDSを用いたリポタンパク質ケージ形成を、プローブとしてナイルレッドを使用して蛍光定量によって調べた(図16f)。タンパク質ケージ及びSDSの存在下での蛍光増強及び発光波長のブルーシフトは、リポタンパク質ケージ形成及び小分子カーゴ、ナイルレッドの封入と一致する。
【0272】
例5-N末端ペプチドタグを有する集合リポタンパク質ケージの調製及び分析。
N末端付属物を有するリポタンパク質ケージの形成。タンパク質のC末端に加えて、分解タグ、標的化タグ、細胞透過タグ、及びエンドソームエスケープタグなどのペプチドをタンパク質のN末端に付着させることにより、この封入システムの機能性を調整することも可能になる。リポタンパク質ケージ形成とこのタイプのタンパク質修飾との適合性を実証するために、本発明者らは、遺伝子融合を介して作製されたN末端ペプチドタグを有するタンパク質バリアント、OP-93(配列番号23)を試験した。サイズ排除クロマトグラフィ(図16a)によって実証されているように、このタンパク質はタンパク質ケージ構造も形成した。SDSを用いたリポタンパク質ケージ形成を、プローブとしてナイルレッドを使用して蛍光定量によって調べた(図16b)。タンパク質ケージ及びSDSの存在下での蛍光増強及び発光波長のブルーシフトは、リポタンパク質ケージ形成及び小分子カーゴ、ナイルレッドの封入と一致する。
【0273】
例6-代替的な界面活性剤組成物を用いた集合リポタンパク質ケージの調製及び分析。
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムによるリポタンパク質ケージの形成。タンパク質ケージは非常に安定であり、その内部腔に脂質/ミセルコアを形成するための鋳型として作用し、これは以前の界面活性剤製剤化工程が必要ないことを意味する。したがって、両親媒性物質は、タンパク質の添加前に単独で安定な粒子を形成する必要がなく、混合物が十分な負電荷を有する限り、様々な異なる両親媒性物質の使用を可能にする。異なる界面活性剤に対するシステムの一般性を更に実証するために、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)をSDSとの1:1混合物として使用して、OPタンパク質(配列番号2)を有するリポタンパク質ケージを形成した。ネイティブアガロースゲル分析により、3つの異なるタイプの小分子カーゴ(図17a)を封入することができる安定なリポタンパク質複合体の形成が明らかになった。更に、OP:SDS:SDBS:クルクミン(1:400:400:8)複合体で処理したHeLa細胞のフローサイトメトリ分析は、遊離薬物と比較して細胞取込みの8倍の増加を示した(図17b)。脂質組成を変化させることにより、異なるカーゴ分子の封入特性を調整するための容易な手段が提供されるので、これらのデータは、リポタンパク質ケージ技術のモジュール性を強調している。
【0274】
例7-代替小分子カーゴを有する集合リポタンパク質ケージの調製及び分析。
代替的な小分子カーゴを有するリポタンパク質ケージの形成。疎水性効果を利用して、2層封入概念を代替カーゴに一般化できることを更に実証するために、本発明者らは、5つの異なる小分子:ナイルレッド、ラパチニブ、ダウノルビシン、クルクミン及びラウルダンの封入を試験した。これらの分子は、多様な分子構造並びに特有の生物学的及び光物理学的特性を有する。それにもかかわらず、これらの分子のそれぞれを封入し、細胞に効率的に送達することができた。クルクミン、ラパチニブ及びダウノルビシンの存在下でのOP:SDS:SDBS(1:400:400)タンパク質ケージのネイティブアガロースゲル分析は、リポタンパク質ケージ内へのこれらの生物活性化合物の封入を明らかにする(図17a)。小分子の封入効率は、クルクミン(図17c)、ナイルレッド(図4、11)及びラパチニブ(図13)に対するOP:SDS:CS(1:600:200)の使用に見られるように、界面活性剤組成を変えることによって改善することができた。重要なことに、封入効率の改善はまた、これらの化合物の細胞送達の増加を導いた。例えば、OP:SDS:CSを使用すると、OP:SDS(1:800)ケージと比較して、ナイルレッド(図4d)の細胞取込みの2.5倍の増加が観察された。クルクミンの場合、OP:SDS:CS(1:600:200)リポタンパク質ケージは、それらのOP:SDS:SDBS(1:400:400)対応物と比較して細胞送達の2倍の増加を提供した(図17a、17d)。蛍光プローブラウルダンの場合、OP:SDS(1:800)リポタンパク質ケージでのパッケージングは、共焦点蛍光顕微鏡法(図17e)によって観察されるように、遊離分子と比較して細胞取込みの顕著な増加を提供した。
【配列表フリーテキスト】
【0275】
配列表1 <223>合成配列
配列表1 <223>任意のアミノ酸
配列表1 <223>位置11、39、66、103、130、及び163のXアミノ酸の少なくとも3つは互いに独立して正に荷電したアミノ酸である。
配列表2~27 <223>合成配列
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【配列表】
2023513290000001.app
【国際調査報告】