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特表2023-513309高度に構造化されたアルキル分岐を有するアルキル置換ヒドロキシル芳香族化合物
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  • 特表-高度に構造化されたアルキル分岐を有するアルキル置換ヒドロキシル芳香族化合物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】高度に構造化されたアルキル分岐を有するアルキル置換ヒドロキシル芳香族化合物
(51)【国際特許分類】
   C07C 39/06 20060101AFI20230323BHJP
   C07C 37/14 20060101ALI20230323BHJP
   C10M 129/10 20060101ALI20230323BHJP
   C10M 129/91 20060101ALI20230323BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20230323BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20230323BHJP
【FI】
C07C39/06 CSP
C07C37/14
C10M129/10
C10M129/91
C10N30:00 Z
C10N40:25
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022548626
(86)(22)【出願日】2021-02-11
(85)【翻訳文提出日】2022-08-10
(86)【国際出願番号】 IB2021051102
(87)【国際公開番号】W WO2021161199
(87)【国際公開日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】62/976,406
(32)【優先日】2020-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/977,526
(32)【優先日】2020-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598037547
【氏名又は名称】シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギッブス、アンドリュー アール.
(72)【発明者】
【氏名】ホムメルトフト、スベン イーヴァル
【テーマコード(参考)】
4H006
4H104
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB60
4H006AC21
4H006BD70
4H006FC52
4H006FE13
4H104BA02A
4H104BA07A
4H104BA08A
4H104BB05C
4H104BC03C
4H104CA04A
4H104DA02A
4H104DA06A
4H104LA20
4H104PA41
(57)【要約】
本開示はヒドロキシ芳香族生成物を提供する。アルキルヒドロキシ芳香族化合物であって、式(I)によって示される構造を有し、式中、Rはヒドロキシ芳香族基であり、Xは水素またはメチル基であり、そして式中、nは1以上である、前記ヒドロキシ芳香族生成物。
【化1】

【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシ芳香族生成物であって:
以下によって示される構造を有するアルキルヒドロキシ芳香族化合物
【化1】

を含み、式中、Rはヒドロキシ芳香族基であり、Xは水素またはメチル基であり、そして式中、nは1以上である、前記ヒドロキシ芳香族生成物。
【請求項2】
Rがフェノール基、ヒドロキシベンジル基、カテコール基、レゾルシノール基、ヒドロキノン基、ピロガロール基、クレゾール基、ナフトール基、ヒドロキシ安息香酸基またはそれらの塩である、請求項1に記載のヒドロキシ芳香族生成物。
【請求項3】
nが20以下である、請求項1に記載のヒドロキシ芳香族生成物。
【請求項4】
nが2から6の間である、請求項1に記載のヒドロキシ芳香族生成物。
【請求項5】
少なくとも50モル%のアルキルヒドロキシ芳香族化合物が、45%以上のNMR分岐指数を有するアルキル基を有する、請求項1に記載のヒドロキシ芳香族生成物。
【請求項6】
アルキルヒドロキシ芳香族化合物のアルキル基の少なくとも50モル%が、メチル炭素対メチレン炭素の比が約0.85を超えるアルキル基を有する、請求項1に記載のヒドロキシ芳香族生成物。
【請求項7】
アルキルヒドロキシ芳香族化合物の少なくとも50モル%が、メチル炭素対メチレン炭素及びメチン炭素の比が約0.29を超えるアルキル基を有する、請求項1に記載のヒドロキシ芳香族生成物。
【請求項8】
アルキルヒドロキシ芳香族化合物の少なくとも50モル%が、0.15を超えるクロロホルム中で測定した場合の10~50ppmの共鳴における複合飽和脂肪族炭素共鳴に対してクロロホルムで測定した場合、44~49PPM範囲のメチル分岐周囲メチレン炭素共鳴という比を有するアルキル基を有する、請求項1に記載のヒドロキシ芳香族生成物。
【請求項9】
潤滑油組成物であって、
基油;と
請求項1に記載のヒドロキシ芳香族生成物とを含む、前記潤滑油組成物。
【請求項10】
アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物であって、以下:
ヒドロキシ芳香族化合物を、ビニリデン二重結合で終結するプロピレンオリゴマーを含むビニリデンに富むプロピレンオリゴマーを含むアルキル化剤でアルキル化することであって、前記プロピレンオリゴマーが、前記原料中の前記オレフィンの少なくとも50モル%がプロピレンであり、前記プロピレンオリゴマーの少なくとも50モル%が前記ビニリデン二重結合を有する、オレフィンを含むプロピレンに富む原料のオリゴマー化によって調製されること、含むプロセスによって形成される、前記アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物。
【請求項11】
前記ヒドロキシ芳香族化合物がフェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロール、クレゾール、ナフトール、またはヒドロキシ安息香酸である、請求項10に記載のアルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物。
【請求項12】
前記原料中の前記オレフィンの少なくとも80モル%がプロピレンである、請求項10に記載のアルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物。
【請求項13】
前記プロピレンに富む原料が流体接触分解によって調製され、プロパン及びプロピレンを事前に分離することなくオリゴマー化される、請求項10に記載のアルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物。
【請求項14】
前記プロピレンオリゴマーの少なくとも70モル%がビニリデン二重結合を有する、請求項10に記載のアルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物。
【請求項15】
プロピレンオリゴマーの少なくとも80モル%がビニリデン二重結合を有する、請求項10に記載のアルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物。
【請求項16】
前記プロピレンオリゴマーが約9から約50の範囲の平均炭素数を有する、請求項10に記載のアルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物。
【請求項17】
前記アルキルヒドロキシ芳香族化合物のアルキル基の少なくとも50モル%が45%以上のNMR分岐指数を有する、請求項10に記載のアルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物。
【請求項18】
前記アルキルヒドロキシ芳香族化合物のアルキル基の少なくとも50モル%が、メチル炭素対メチレン炭素の比が約0.85を超える、請求項10に記載のアルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物。
【請求項19】
前記アルキルヒドロキシ芳香族化合物のアルキル基の少なくとも50モル%が、メチル炭素対メチレン炭素及びメチン炭素の比が約0.29を超える、請求項10に記載のアルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物。
【請求項20】
前記組成物の少なくとも50モル%が少なくとも5個の炭素を有するアルキル基を有する、請求項10に記載のアルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物。
【請求項21】
前記アルキルヒドロキシ芳香族化合物のアルキル基の少なくとも50モル%が、0.15を超えるクロロホルムで測定した場合の10~50ppmの共鳴における複合飽和脂肪族炭素共鳴に対してクロロホルムで測定した場合、44~49PPM範囲のメチル分岐周囲メチレン炭素共鳴という比を有する、請求項10に記載のアルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物。
【請求項22】
潤滑油組成物であって、
基油;と
硫化アルキルフェノール由来の洗浄剤であって、前記アルキルフェノールが、ビニリデン二重結合で終結するプロピレンオリゴマーを含むビニリデンに富むプロピレンオリゴマーを含むアルキル化剤を用いたアルキル化によって製造され、前記プロピレンオリゴマーは、オレフィンを含むプロピレンに富む原料をオリゴマー化することによって調製され、この原料中のオレフィンの少なくとも50モル%がプロピレンであり、このプロピレンオリゴマーの少なくとも50モル%がビニリデン二重結合を有する、前記洗浄剤と、を含む、前記潤滑油組成物。
【請求項23】
前記原料中のオレフィンの少なくとも70モル%がプロピレンである、請求項22に記載の潤滑油組成物。
【請求項24】
前記プロピレンに富む原料が、約10/1~約1/10の範囲のオレフィン対アルカンのモル比を有する、請求項22に記載の潤滑油組成物。
【請求項25】
前記プロピレンに富む原料が、プロパンとプロピレンとを分離することなく接触分解プロセスで生成されるとおり、プロピレンとプロパンの比率が5%以内で、接触分解または熱分解プロセスから分離される、請求項22に記載の潤滑油組成物。
【請求項26】
前記プロピレンに富んだ原料中のオレフィンの少なくとも80モル%がプロピレンである、請求22に記載の潤滑油組成物。
【請求項27】
前記プロピレンオリゴマーの少なくとも70モル%がビニリデン二重結合を有する、請求項22に記載の潤滑油組成物。
【請求項28】
前記プロピレンオリゴマーの少なくとも80モル%がビニリデン二重結合を有する、請求項22に記載の潤滑油組成物。
【請求項29】
前記プロピレンオリゴマーが約9~約50の範囲の平均炭素数を有する、請求項22に記載の潤滑油組成物。
【請求項30】
ヒドロキシ芳香族化合物をアルキル化する方法であって:
シングルサイト触媒の存在下でプロピレンモノマーをオリゴマー化して、ビニリデン二重結合で終端するプロピレンオリゴマーを含むビニリデンに富んだプロピレンオリゴマーを形成することであって、前記プロピレンオリゴマーは、オレフィンを含むプロピレン豊富な原料をオリゴマー化することによって調製され、原料中のオレフィンの少なくとも50モル%はプロピレンであり、前記プロピレンオリゴマーの少なくとも50モル%は前記ビニリデン二重結合を有することと;
前記ヒドロキシ芳香族化合物を前記ビニリデンに富むプロピレンオリゴマーでアルキル化することと、を含む、前記方法。
【請求項31】
前記シングルサイト触媒がメタロセンである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記メタロセンが一般式(RCp)MXを有し、Cpがシクロペンタジエニル基であり、RCpが置換されたシクロペンタジエニル基であり、Rがアルキル基または水素であり、MがTi、ZrまたはHfであり、かつXはCl、Br、I、H、Me、またはEtである、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記プロピレンオリゴマーが、前記原料中の前記オレフィンの少なくとも80モル%がプロピレンである、オレフィンを含むプロピレンに富む原料をオリゴマー化することによって調製される、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記プロピレンオリゴマーの少なくとも80モル%が前記ビニリデン二重結合を有する、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記ヒドロキシ芳香族化合物が、フェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロール、クレゾール、ヒドロキシ安息香酸またはそれらの塩である、請求項30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、市販のアルキル置換ヒドロキシ芳香族製品に関する。より具体的には、本開示は、高度に構造化されたアルキル基を有するアルキル置換ヒドロキシ芳香族添加剤及びそれを含む潤滑油組成物を調製するための組成物及び方法を記載する。
【背景技術】
【0002】
アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物(例えば、アルキルフェノール)は、洗浄剤、乳化剤、農薬、香料、熱可塑性エラストマー、酸化防止剤、及び界面活性剤を含む多くの市販製品を調製するために使用され得る。例えば、アルキルフェノールを使用して、潤滑油の洗浄剤として有用な硫化アルキル置換フェネート化合物を合成し得る。1つの問題は、環境に対するアルキルフェノールの潜在的な毒性である。テトラプロペニルフェノール(TPP)などの特定のアルキルフェノールは、現在、生殖毒性に分類されている。潤滑油業界では、洗浄剤合成中に未硫化のアルキル置換フェネート副産物としてTPPが残留することが懸念される。
【0003】
TPPに固有の別の問題は、プロピレンオリゴマーによるフェノールのアルキル化を含むその合成に関連している。従来の合成では、フェノール分子は、高度にカオス的な非線形構造と高度に置換された内部二重結合(例えば、三置換及び四置換)を有するプロピレンテトラマー(プロピレン四量体)に富むプロピレンオリゴマーでアルキル化される。プロピレンテトラマーの密集した構造が、アルキル化反応の進行に数日を要し、プロピレンテトラマーが大過剰になる主な理由の1つである可能性がある。
【0004】
これらの進行中の問題に対処するための努力において、代替のオレフィンが、プロピレンテトラマーの潜在的な代替物として特定されてきた。特に、構造的に異性化された線状アルファオレフィンは、市販のアルキルフェノール洗浄剤の製造に使用されてきた。ただし、異性化ステップにより、線状アルファオレフィンのコストがすでに高くなり、内部オレフィンの活性が低下する。さらに、異性化された線状アルファオレフィンから作られたアルキルフェノール製品は、おそらく不十分なメチル分岐に起因して、実験室の試験では機能が比較的不十分である場合が多い。
【0005】
他の労力は、アルキルフェノール洗浄剤の供給源としてポリイソブチレンベースのオレフィンを利用することに焦点を合わせてきた。オレフィンフィードとしてポリイソブチレン(PIB)を使用することの大きな欠点は、特殊なアルキル化触媒作用でアルキル化技術を変更する必要があることである。
【発明の概要】
【0006】
一態様では、以下を含むヒドロキシ芳香族生成物が提供される:
以下に示される構造を有するアルキルヒドロキシ芳香族化合物
【化1】

であって、式中、Rはヒドロキシ芳香族基で あり、Xは水素またはメチル基であり、そして式中、nは1以上であるアルキルヒドロキシ芳香族化合物。
【0007】
別の態様では、以下を含むプロセスによって形成されるアルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物が提供される:ヒドロキシ芳香族化合物を、ビニリデン二重結合で終結するプロピレンオリゴマーを含むビニリデンに富むプロピレンオリゴマーを含むアルキル化剤でアルキル化することであって、このプロピレンオリゴマーが、原料中のオレフィンの少なくとも50モル%がプロピレンであり、プロピレンオリゴマーの少なくとも50モル%がビニリデン二重結合を有する、オレフィンを含むプロピレンに富む原料のオリゴマー化によって調製されること。
【0008】
さらに別の態様では、以下を含む潤滑油組成物が提供される:基油;及び硫化アルキルフェノールを含む洗浄剤であって、前記アルキルフェノールが、ビニリデン二重結合で終結するプロピレンオリゴマーを含むビニリデンに富むプロピレンオリゴマーを含むアルキル化剤を用いたアルキル化によって製造され、このプロピレンオリゴマーは、オレフィンを含むプロピレンに富む原料をオリゴマー化することによって調製され、この原料中のオレフィンの少なくとも50モル%がプロピレンであり、このプロピレンオリゴマーの少なくとも50モル%がビニリデン二重結合を有する洗浄剤。
【0009】
さらに別の態様では、ヒドロキシ芳香族化合物をアルキル化する方法が提供され、この方法は、以下:シングルサイト触媒の存在下でプロピレンモノマーをオリゴマー化して、ビニリデン二重結合で終結するプロピレンオリゴマーを含むビニリデンに富むプロピレンオリゴマーを形成することであって、ここでプロピレンオリゴマーは、原料中のオレフィンの少なくとも50モル%がプロピレンであり、プロピレンオリゴマーの少なくとも50モル%がビニリデン二重結合を有する、オレフィンを含むプロピレンに富む原料をオリゴマー化すること;及びヒドロキシ芳香族化合物をビニリデンに富むプロピレンオリゴマーでアルキル化することによって調製される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例で説明されたグラフを示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
「オレフィン」という用語は、芳香族環または環系の一部ではない、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する炭化水素を指す。「オレフィン」という用語は、特に明記しない限り、芳香族環または環系の一部ではない、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する脂肪族及び芳香族、環状及び非環式、ならびに/または線状及び分岐化合物を含む。炭素-炭素二重結合が1つだけ、2つだけ、3つだけなどのオレフィンは、オレフィンの名前の中で「モノ」、「ジ」、「トリ」などの用語を使用することで識別され得る。オレフィンは、炭素-炭素二重結合(複数可)の位置によってさらに識別され得る。文脈に応じて、「オレフィン」という用語は、「オレフィンオリゴマー」を指しても、または「オレフィンモノマー」を指してもよい。
【0012】
「オレフィンオリゴマー」とは、「オレフィンモノマー」のオリゴマー化から作製されたオリゴマーである。例えば、「プロピレンオリゴマー」は、名目上プロピレンモノマーのオリゴマー化から作られる。プロピレンオリゴマーの例としては、プロピレンテトラマー及びプロピレンペンタマーが挙げられる。「プロピレンテトラマー」とは、名目上4つのプロピレンモノマーのオリゴマー化から生じるオレフィンオリゴマー生成物である。これらの用語はまた、ホモオリゴマー、コオリゴマー、オリゴマーの塩、オリゴマーの誘導体などを説明するために一般的に使用され得る。
【0013】
オリゴマー化プロセスの未精製生成物は、典型的には、炭素数の分布を有する分岐オレフィンオリゴマーの混合物を含む。モノマーのオリゴマー化から生じる未精製のオリゴマー生成物を蒸留して、オレフィンオリゴマー生成物を好ましい炭素範囲までさらに単離または精製してもよい。
【0014】
「アルキル」または関連する用語は、直鎖状、分岐状、環状であっても、または環状、直鎖状及び/もしくは分岐状の組み合わせであってもよい、飽和炭化水素基を指す。
【0015】
「ビニリデンに富むプロピレンオリゴマー」とは、ビニリデン部分が優勢であるプロピレンベースのオリゴマーを指す。ビニリデン部分を有するオレフィンオリゴマーは、末端二重結合の内部末端でgem二置換されている。従来の方法で調製されたプロピレンオリゴマーは、通常、三置換または四置換の内部二重結合を有する分子が豊富である。
【0016】
本明細書で使用される場合、「置換された」という用語は、水素基が、アルキル基、芳香族基、ヘテロ原子、またはヘテロ原子含有基で置き換えられていることを意味する。
【0017】
要素の組み合わせ、サブセット、グループなど(例えば、組成物中の構成要素の組み合わせ、または方法におけるステップの組み合わせ)が開示されるとき、これらの要素の種々の個々のかつ集団的な組み合わせ及び配置の各々の特定の参照が、明示的に開示され得なくとも、各々が具体的に意図されて、本明細書に開示されることが理解される。
【0018】
本発明は、高度に構造化されたアルキル基を有するアルキル置換ヒドロキシ芳香族生成物に関連する組成物及び方法を提供する。より具体的には、本発明は、アルキル置換ヒドロキシ芳香族生成物を合成するために使用され得るビニリデンに富むプロピレンオリゴマーの合成を記載し、これは、次に、広範囲の市販製品の製造に有用である。
【0019】
ビニリデンに富むプロピレンオリゴマーは、シングルサイト触媒を使用して調製され得る。これにより、本発明の高ビニリデン含量のオリゴマーは、アルキル化反応においてより反応性が高くなり、アルキルフェノール生成物のより効率的な合成が可能になる。
【0020】
高いビニリデン含有量は、従来のプロピレンテトラマーオリゴマーに比べて多くの利点を提供し得る。例えば、ビニリデンに富むプロピレンオリゴマーを用いたフェノールのアルキル化は、フェノールに対するオレフィンの比率を下げることで効率的に達成され得る。他の利点としては、より低い反応温度、より低いバッチサイクル時間、より高い変換率、及びより高いパラアルキルフェノール含有量が含まれ得る。
【0021】
ビニリデンに富むプロピレンオリゴマー
本発明のビニリデンに富むプロピレンオリゴマーは、長い線状骨格及び規則的に間隔を置いたメチル基を有する鎖を特徴とする高度に秩序化された構造を特徴とする。
【0022】
本発明のビニリデンに富むプロピレンオリゴマーは、約9~約50の範囲の平均炭素数を有する。いくつかの実施形態では、平均炭素数は、9~42、9~39、9~36、または12~32の範囲である。
【0023】
ビニリデンオリゴマーは、ビニリデンオレフィンのジェミナル分岐から始まる鎖内の1つおきの炭素に分岐を有する長い直鎖末端オレフィンである。末端のオレフィン炭素から番号が付けられている場合、その分岐はオリゴマー鎖の最後の3つの炭素(未分岐である場合も、または他の方法で分子の残りの部分の通常の分岐から逸脱している場合もある)を除いて、鎖内のあらゆる偶数の炭素上にある(すなわち、炭素2、4、6などの分岐)。2,4ジメチル1-ヘプテン(三量体)、2,4,6トリメチル1-ノネン(四量体)、及び2,4,6,8テトラメチル1-ウンデセン(五量体)は、本発明のビニリデンオリゴマーの例である。
【0024】
いくつかの実施形態では、ビニリデンに富むプロピレンオリゴマーは、オリゴマー化の生成物であり、オリゴマーの少なくとも50モル%がビニリデン部分を有する。いくつかの実施形態では、少なくとも60モル%、70モル%、80モル%、90モル%、または95モル%のオリゴマーがビニリデン部分を有する。オリゴマー化の副産物には、ビニリデン部分を有さないオリゴマーが含まれる場合がある。これらのオリゴマーは、三置換、四置換、ビニル、及び二置換(シスまたはトランス)などの二重結合に他の部分/配置を有し得る。
【0025】
プロピレンはオリゴマー化反応における主要なオレフィンモノマーであるが、供給源は、異なる数の炭素原子を有するオレフィン、または主に単一の数の炭素原子を有するオレフィンの混合物を有してもよい。オレフィンは、少なくとも50重量%、少なくとも55重量%、少なくとも60重量%、少なくとも65重量%、少なくとも70重量%、少なくとも75重量%、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%のプロピレンを含み得る。モノマーはさらに、アルカンまたは芳香族化合物などの1つ以上の非オレフィン性炭化水素との混合物中でオリゴマー化反応に導入され得る。
【0026】
一実施形態では、プロピレンモノマーは、分解操作から供給され、オリゴマー化反応の前にプロパンからプロピレンを分離することなく使用される。このような分解操作は、流動接触分解などの接触分解、または蒸気分解もしくはコークス化などの熱分解であってもよい。一実施形態では、分解操作は、プロパン脱水素化を含んでもよい。
【0027】
ビニリデンに富むプロピレンオリゴマーの合成は、任意の公知のオリゴマー化方法を介して進行し得る。オレフィンオリゴマーまたはポリオレフィンの合成は、一般に関連技術において公知である。特に、シングルサイト触媒を介したポリオレフィンの合成は、高度に定義された微細構造、立体規則性(tacticity)、立体規則性(stereoregularity)などを備えたポリマーを提供することが公知である。
【0028】
本発明のビニリデンに富むプロピレンオリゴマーは、側鎖の長さ及び/または分岐を制御し得る適合性のあるシングルサイト触媒(複数可)を使用することによって調製してもよい。シングルサイト触媒は一般に、メタロセン触媒及び非メタロセン触媒という2つのグループに分類される。
【0029】
メタロセンは、典型的にはジルコニウム、チタン、ハフニウム、IVA、VA、及びVIA族の遷移金属、ランタニド金属などを含む、周知の複雑な有機金属分子である。金属は通常、錯体の中心またはその近くに位置し、シクロペンタジエニルアニオンなどの2つの環状アルキルアニオンに配位する。メタロセンのより詳細な考察は、米国特許第6511568号に見出され得、これは参照により本明細書に組み込まれる。他の適切なメタロセンには、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8536391号に記載されているansa-メタロセン及びメタロセン及びメタロセン触媒系が含まれる。
【0030】
一実施形態では、メタロセンは式
(RCp)MX2を有し、
式中、Cpはシクロペンタジエニル基であり、RCpは置換されたシクロペンタジエニル基であり、Rはアルキル基または水素であり、MはTi、ZrまたはHfであり、XはCl、Br、I、H、Me、またはEtである。
【0031】
非メタロセンシングルサイト触媒は、通常、遷移金属触媒である。遷移金属触媒は、参照により本明細書に組み込まれるWO9827124、WO9830612、WO9623010、欧州特許第0816387号に記載されている。非メタロセンシングルサイト触媒の具体例としては、Ni、Pdジイミン触媒系、Feピリジン-ジイミン触媒系、8-キノリノールTi触媒系、アゼチジンチタン触媒系、キレートジアミン触媒系などが挙げられる。
【0032】
オリゴマー生成物は、プロピレンオリゴマーである(すなわち、オレフィンオリゴマーの繰り返し単位は、実質的に全てのプロピレン単位であり得る)。例えば、オリゴマーの繰り返し単位は、少なくとも約90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも98モル%、または少なくとも99モル%のプロピレン単位を含んでもよい。
【0033】
オリゴマー生成物は、二量体、三量体、及び/またはより高次のオリゴマーを含んでもよい。いくつかの実施形態では、オリゴマー生成物は、(i)少なくとも75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、または95重量%の二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体、九量体、及び/または十量体;(ii)少なくとも50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、80重量%、85重量%、または90重量%の三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体、九量体、及び/または十量体;(iii)少なくとも75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、または95重量%の二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、及び/または七量体;(iv)少なくとも50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、80重量%、85重量%、または90重量%の三量体、四量体、五量体、六量体、及び/または七量体;(v)少なくとも30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、または60重量%の二量体、三量体、四量体、及び/または五量体;(vi)少なくとも25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、または50重量%の三量体、四量体、及び/または五量体;(vii)少なくとも25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、または60重量%の二量体、三量体、及び/または四量体;(viii)少なくとも20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、または50重量%の三量体及び/または四量体;あるいは(ix)それらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0034】
追加または代替の実施形態では、オリゴマー生成物は、合計で少なくとも35重量%、45重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、または65重量%の三量体、四量体及び五量体;代替的または追加的に、最大合計100重量%、95重量%、90重量%、または85重量%の三量体、四量体、及び五量体を含み得る。いくつかの実施形態では、オレフィンオリゴマーは、合計で35重量%~100重量%、40重量%~95重量%、45重量%~90重量%、40重量%~85重量%、50重量%~90重量%、または50重量%~85重量%の三量体、四量体及び五量体を含み得る。
【0035】
オリゴマー生成物は、40重量%、30重量%、25重量%、20重量%、18重量%、16重量%、14重量%、12重量%、または10重量%未満の二量体を含み得る。追加的または代替的に、オリゴマー生成物は、30重量%未満、25重量%、20重量%、15重量%、10重量%、8重量%、6重量%、5重量%、4重量%、3重量%、または2重量%のオリゴマー(7つ以上のモノマー単位を含む)を含み得る。
【0036】
いくつかの態様では、オリゴマー生成物は、少なくとも50重量%、60重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、または95重量%のC12~C70(例えば、C12~C40、C12~C30、C12~C20、C14~C70、C14~C40、C14~C30、C14~C20、C16~C70、C16~C40、16~C30、C16~C24、C20~C70、C20~C40、C20~C30、またはC20~C24)オリゴマーを含み得る。いくつかの態様では、オリゴマー生成物は、30重量%未満、25重量%、20重量%、15重量%、10重量%、8重量%、6重量%、5重量%、4重量%、3重量%、または2重量%の>C70オリゴマーを含み得る。本明細書に開示されるオリゴマー(複数可)の重量%は、オリゴマー生成物の総重量に基づく。
【0037】
オリゴマー生成物は、150~10,000g/モルの範囲の数平均分子量(M)を有し得る。例えば、オリゴマー生成物のMは、少なくとも150、250、325、400、500、600、650、700、または750g/モルであり得る。追加的または代替的に、最大Mは、10,000、7500、6000、5000、4000、3000、2500、または2000g/モルであり得る。一般に、オリゴマー生成物のMは、本明細書に開示される任意の最小Mから本明細書に開示される任意の最大Mまでの範囲にあり得る。
【0038】
ヘテロ原子官能化オリゴマー
用途に応じて、オレフィンオリゴマーは、ヘテロ原子含有基を、触媒の有無にかかわらず、オレフィンオリゴマーと反応させることによって官能化してもよい。これらの反応としては、ヒドロキシル化、ヒドロシル化、オゾン分解、ヒドロホルミル化、ヒドロアミド化、スルホン化、ハロゲン化、ヒドロハロゲン化、ヒドロホウ素化、エポキシ化、極性ジエンとのディールス・アルダー反応、極性芳香族化合物(例えば、ヒドロキシ芳香族化合物)とのフリーデル・クラフツ反応、及びフリーラジカル発生剤などの活性化因子(例えば、過酸化物)でのマレイン酸処理が挙げられる。
【0039】
例示的なヘテロ原子含有基には、アルコール、アミン、アルデヒド、ヒドロキシ芳香族化合物、スルホン酸塩、酸及び無水物が含まれる。
【0040】
得られるヘテロ原子官能化オリゴマー中の官能基の数は、鎖あたり0.60~1.2の官能基の範囲にあり得る(例えば、1つの鎖あたり0.75~1.1の官能基)。1つの鎖あたりの官能基の数は、任意の従来の方法(例えば、H NMR分光法)によって決定され得る。
【0041】
高度に構造化されたアルキル分岐を有するアルキル置換ヒドロキシル芳香族化合物
本明細書に記載のオレフィンオリゴマーを使用して、ヒドロキシ芳香族化合物をアルキル化して、アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物を形成してもよい。アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物は、さまざまな商業的用途の前駆体または最終生成物として有用である。
【0042】
アルキルヒドロキシ芳香族化合物は、以下
【化2】

によって示される構造を有し得、式中、Rはヒドロキシ芳香族基であり、Xは水素またはメチル基であり、かつ式中、nは1以上である。いくつかの実施形態では、nは20以下である。いくつかの実施形態では、nは2~6の間である。
【0043】
アルキル化され得る有用なヒドロキシ芳香族化合物としては、1~4、好ましくは1~3個のヒドロキシル基を有する単核モノヒドロキシ及びポリヒドロキシ芳香族炭化水素が挙げられる。適切なヒドロキシ芳香族化合物(または基)としては、フェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロール、クレゾール、ナフトール、ヒドロキシ安息香酸など、ならびにそれらの混合物及びそれらの塩(例えば、フェネート)が挙げられる。
【0044】
ヒドロキシ芳香族化合物のオレフィンオリゴマーによるアルキル化は、一般に、アルキル化触媒の存在下で実施される。有用なアルキル化触媒としては、ルイス酸、固体酸、トリフルオロメタンスルホン酸、及び酸性モレキュラーシーブ触媒が挙げられる。適切なルイス酸としては、三塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素及び三フッ化ホウ素錯体(例えば、三フッ化ホウ素エーテラート、三フッ化ホウ素-フェノール及び三フッ化ホウ素-リン酸)が挙げられる。適切な固体酸としては、スルホン化酸性イオン交換樹脂タイプの触媒、例えば、AMBERLYST(登録商標)-36(Dow Chemical Company)、粘土触媒(例えば、CelaClear F-24X Engineered Clays Corp)またはゼオライト材料が挙げられる。
【0045】
アルキル化の反応条件は、使用する触媒の種類に依存し、アルキルヒドロキシ芳香族生成物への高い変換をもたらす任意の適切な一連の反応条件を使用してもよい。通常、アルキル化反応の反応温度は、15℃~200℃の範囲(例えば、85℃から135℃)である。反応圧力は一般に大気圧であるが、より高い圧力を使用しても、またはより低い圧力を使用してもよい。アルキル化プロセスは、バッチ式、連続式、または半連続式で実施され得る。ヒドロキシ芳香族化合物とオレフィンオリゴマーとのモル比は、10:1~0.5:1の範囲(例えば、5:1~3:1)であり得る。
【0046】
アルキル化反応は、ニートで、またはヒドロキシ芳香族化合物とオレフィン混合物との反応に対して不活性である溶媒の存在下で実施してもよい。
【0047】
反応が完了すると、従来の技術を使用して、所望のアルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物を単離してもよい。
【0048】
アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物のアルキル基は、典型的には、ヒドロキシル基に対して、主にオルト及びパラ位でヒドロキシ芳香族化合物に結合している。アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物は、1~99%のオルト異性体及び99~1%のパラ異性体(例えば、5~70%のオルト異性体及び95~30%のパラ異性体)を含んでもよい。
【0049】
アルキルフェノールの金属塩(すなわち、フェネート)は、有用なクラスの洗浄剤である。これらの洗浄剤は、アルカリ土類金属の水酸化物または酸化物(例えば、CaO、Ca(OH)、BaO、Ba(OH)、MgO、Mg(OH))をアルキルフェノールまたは硫化アルキルフェノールと反応させることによって製造してもよい。非硫化アルキルフェノールを使用する場合、硫化生成物は、当技術分野で周知の方法によって得てもよい。これらの方法は、アルキルフェノールと硫化剤(例えば、元素硫黄、二塩化硫黄などの硫黄ハロゲン化物)の混合物を加熱すること、次に硫化アルキルフェノールをアルカリ土類金属塩基と反応させることを含む。
【0050】
アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の金属塩も洗浄剤として有用である。アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸は、典型的には、例えば、コルベ・シュミット法による、アルキル置換フェノキシドのカルボキシル化によって調製される。
【0051】
適切な金属の非限定的な例としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び遷移金属が挙げられる。例としては、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Co、Mn、Zr、Ba、及びBが挙げられる。
【0052】
多くの洗浄剤組成物は過塩基性であり、過剰の金属化合物(例えば、金属炭酸塩、水酸化物または酸化物)を酸性ガス(例えば、二酸化炭素)と反応させることによって達成される大量の金属塩基を含んでいる。有用な洗浄剤は、中性、やや過塩基、または高度に過塩基であり得る。過塩基化(overbasing)のプロセスは、当業者に公知である。
【0053】
洗浄剤の塩基度は、総塩基数(TBN)として表してもよい。総塩基数とは、過塩基化材料の全ての塩基性を中和するために必要な酸の量である。TBNは、ASTM D2896または同等の手順を使用して測定され得る。洗浄剤は、低TBN(すなわち、50mg KOH/g未満のTBN)、中程度のTBN(すなわち、50~150mg KOH/gのTBN)、または高TBN(すなわち、150mgKOH/g、例えば150~500mg KOH/g以上を超えるTBN)を有し得る。
【0054】
官能化オリゴマー及び/または誘導体化オリゴマーは、分散剤、粘度指数向上剤、または多機能粘度指数向上剤として作用し得る潤滑油添加剤としての用途を有する。
【0055】
本明細書に記載のオレフィンオリゴマー及びそれらの製品を、他の添加剤(例えば、洗浄剤、分散剤、酸化防止剤、摩耗防止剤、摩擦調整剤、防錆剤、粘度調整剤、流動点降下剤、発泡防止剤など)と組み合わせて、潤滑油添加剤パッケージ、潤滑油などを含む多くの用途の組成物を形成してもよい。
【0056】
これらの添加剤を含む組成物は、通常、それらの通常の付随機能を提供するのに効果的な量で基油にブレンドされる。このような添加剤の典型的な量を以下の表1に示す。以下の表の重量、及び本明細書に記載されている他の量は、有効成分(すなわち、成分の非希釈部分)の量に向けられている。以下に示す重量パーセント(重量%)は、潤滑油組成物の総重量に基づいている。

【表1】
【0057】
潤滑油
本開示のオレフィンオリゴマーは、燃焼機関における望ましくない発火事象を防止または低減するための潤滑油中の添加剤として(例えば、分散剤、洗浄剤などとして)有用であり得る。このように使用される場合、添加物は、通常、潤滑油組成物の総重量に基づいて、0.001~10重量%(0.01~5重量%、0.2~4重量%、0.5~3重量%、1~2重量%などが挙げられるが、これらに限定されない)の範囲の濃度で潤滑油組成物中に存在する。他の水酸化物ドナーが潤滑油組成物中に存在する場合、添加物をより少量で使用してもよい。
【0058】
基油として使用される油を、所望の最終用途及び完成油中の添加剤に応じて選択またはブレンドして、所望のグレードのエンジンオイル、例えば、0W、0W-8、0W-16、0W-20、0W-30、0W-40、0W-50、0W-60、5W、5W-20、5W-30、5W-40、5W-50、5W-60、10W、10W-20、10W-30、10W-40、10W-50、15W、15W-20、15W-30、または15W-40という米国自動車技術者協会(SAE)粘度グレードを有する潤滑油組成物を得る。
【0059】
潤滑粘度の油(「ベースストック」または「基油」と呼ばれることもある)は、潤滑剤の一次液体成分であり、ここに添加剤及び可能性としては他の油をブレンドして、例えば、最終的な潤滑剤(または潤滑剤組成物)を生成する。濃縮物を作製するため、及びそこから潤滑油組成物を作製するために有用な基油は、天然(植物性、動物性、または鉱物性)及び合成潤滑油ならびにそれらの混合物から選択されてもよい。
【0060】
本開示におけるベースストック及び基油の定義は、American Petroleum Institute(API)Publication 1509 Annex E(「API Base Oil Interchangeability Guidelines for Passenger Car Motor Oils and Diesel Engine Oils,」December 2016)に見出されるものと同じである。グループIのベースストックは、表E-1に定める試験方法を使用して、90%未満の飽和の硫黄及び/または0.03%を超える硫黄を含有し、80以上120未満の粘度指数を有する。グループIIのベースストックは、表E-1に定める試験方法を使用して、90%以上飽和の硫黄及び0.03%以下の硫黄を含有し、80以上120未満の粘度指数を有する。グループIIIのベースストックは、表E-1に定める試験方法を使用して、90%以上の飽和硫黄及び0.03%以下の硫黄を含有し、120以上の粘度指数を有する。グループIVベースストックは、ポリアルファオレフィン(PAO)である。グループVのベースストックは、グループI、グループII、グループIII、またはグループIVに含まれない他の全てのベースストックを含む。
【0061】
天然油としては、動物油、植物油(例えば、ヒマシ油及びラード油)、ならびに鉱油が挙げられる。好ましい熱酸化安定性を有する動物油及び植物油を使用してもよい。天然油のうち、鉱油が好ましい。鉱油は、それらの原油源に関して、例えば、パラフィン系、ナフテン系、または混合パラフィン系-ナフテン系であるかどうかに関して、大きく異なる。石炭または頁岩由来の油も有用である。天然油はまた、それらの生成及び精製に使用される方法、例えば、それらの蒸留範囲、ならびにそれらが直留であるか、分解であるか、水素精製されているか、または抽出された溶媒であるかによっても異なる。
【0062】
合成油としては、炭化水素油が挙げられる。炭化水素油としては、重合及び相互重合したオレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー、エチレン-オレフィンコポリマー及びエチレン-アルファオレフィンコポリマー)などの油が挙げられる。合成炭化水素油には、ポリアルファオレフィン(PAO)油ベースストックが一般的に使用される。例として、C~C14オレフィン、例えば、C、C10、C12、C14オレフィン、またはそれらの混合物に由来するPAOを利用してもよい。
【0063】
基油として使用するための他の有用な流体としては、高性能特性を提供するために、好ましくは触媒的に処理された、または合成された非従来型もしくは従来と異なったベースストックが挙げられる。
【0064】
非従来型または従来と異なったベースストック/基油としては、1つ以上のガスツーリキッド(GTL)材料に由来するベースストック(複数可)の混合物、ならびに天然ワックスまたはワックス状供給物に由来する異性化/イソ脱ロウ化ベースストック(複数可)、鉱物及び/または非鉱物油ワックス状原料ストック、例えば、スラックワックス、天然ワックス、ならびにろう様ストック、例えば、ガスオイル、ワックス状燃料ハイドロクラッカーボトム、ワックス状ラフィネート、水素化分解生成物、熱分解物(crackate)、または他の鉱物、鉱油、さらには非石油由来ワックス状材料、例えば、石炭液化またはシェールオイルから受け取ったワックス状材料、ならびにそのようなベースストックの混合物のうちの1つ以上が挙げられる。
【0065】
本開示の潤滑油組成物で使用するための基油は、APIのグループI、グループII、グループIII、グループIV及びグループVの油、ならびにそれらの混合物、好ましくはAPIのグループII、グループIII、グループIV及びグループVの油、ならびにそれらの混合物、より好ましくは、それらの卓越した揮発性、安定性、粘度測定及び清浄度特徴に起因して、グループIII~グループVの基油に対応する種々の油のいずれかである。
【0066】
典型的には、基油は、2.5~20mm/秒(例えば、3~12mm/秒、4~10mm/秒、または4.5~8mm/秒)の範囲で100℃での運動粘度(ASTM D445)を有する。
【0067】
本発明の潤滑油組成物はまた、補助機能を付与するための従来の潤滑剤添加剤を含有して、これらの添加剤が分散または溶解される、完成した潤滑油組成物を得てもよい。例えば、潤滑油組成物は、抗酸化剤、無灰分散剤、消耗防止剤、金属洗浄剤などの洗浄剤、防錆剤、脱臭剤、解乳化剤、摩擦改質剤、金属非活性化剤、流動点降下剤、粘度改質剤、消泡剤、共溶媒、パッケージ適合剤、腐食抑制剤、染料、極圧剤など、及びそれらの混合物とブレンドしてもよい。種々の添加剤が公知であり、市販されている。これらの添加剤、またはそれらの類似化合物は、通常のブレンド手順によって、本発明の潤滑油組成物の調製に使用してもよい。
【0068】
前述の添加剤の各々は、使用されるとき、機能的に有効な量で使用され、潤滑剤に所望の特性を付与する。したがって、例えば、添加剤が無灰分散剤である場合、この無灰分散剤の機能的に有効な量は、潤滑剤に所望の分散特徴を付与するのに十分な量である。一般に、これらの添加剤の各々の濃度は、使用される場合、別段の指定がない限り、約0.001~約20重量%、例えば、約0.01~約10重量%の範囲であってもよい。
【実施例
【0069】
図1及び図2は、本明細書に記載の実施例で使用されるプロピレンオリゴマーの特徴を要約している。プロピレンオリゴマーには、従来のプロピレンテトラマー及びビニリデンに富むプロピレンオリゴマーの5つの蒸留生成物が含まれる。蒸留生成物は、沸騰温度(図1)及び炭素数(図2)が異なる。
【0070】
プロピレンオリゴマーは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2008/0171672A1号に記載されている方法に従って試験及び分析された。このH NMRベースの方法では、試料の特性を明らかにし、1分子あたりの平均分岐数、1つの鎖あたりの脂肪族及びオレフィン分岐の数を計算した。
【0071】
図1によれば、蒸留生成物は、高いビニリデン含有量及び非常に低い三置換及び四置換オレフィンを有することが示される。図2によれば、高いビニリデン含有量を維持しながら、蒸留生成物が望ましいレベルの分岐を有することが示されている。
【0072】
アルキルフェノール試料
NMR分光法を使用して、さまざまなプロピレンテトラマー試料でアルキル化されたアルキルフェノール組成物の分岐レベルを調べた。アルキルフェノールNMRデータは、以下の表2(プロトンNMR積分)にまとめられている。全てのNMRデータは、溶媒としてクロロホルムを使用して取得した。
【0073】
比較例Aは、従来の方法によりオリゴマー化されたプロピレンテトラマーでアルキル化されたアルキルフェノールである。比較例Bは、異性化アルファオレフィンでアルキル化されたアルキルフェノールである。実施例1は、本発明のビニリデンに富むプロピレンオリゴマーでアルキル化されたアルキルフェノールである。
【0074】
本発明のプロピレンオリゴマーによるフェノールのアルキル化によって調製されるアルキルフェノールの重要な特性は、アルキル側鎖における規則性及び高濃度のメチル分岐である。アルキル鎖の末端及び芳香族単位が結合している炭素は別として、アルキル基は、交互の-CH2-基及び-CH(R)-基からなり、ここで、Rは、アルキル化剤がプロピレンオリゴマーであるとき、メチルである。アルキルフェノール生成物の望ましい特性のいくつかに関与している可能性が高いアルキル基のこの構造は、H及び13C NMR分光法の組み合わせによって、他のアルキルフェノール生成物と区別することを可能にする製品の特徴を提供する。
【0075】
交互のCH及びCH(Me)基は、本発明によるアルキルフェノールのアルキル側鎖に、分子内の全ての脂肪族水素共鳴の結合された積分に対するメチル水素共鳴の積分の比率として定義される、より高いNMR分岐指数によって示されるとおり、他のアルキルフェノールの側鎖に見られるよりも高い濃度のメチル基を与える。本発明によるアルキルフェノールは、45%を超えるNMR分岐指数を有する。言い換えれば、メチル共鳴の積分は、アルキル側鎖のプロトンの全ての共鳴について結合された積分の45%以上を構成する。より具体的には、本発明による生成物のNMR分岐指数は、45~60%の範囲にある。
【0076】
アルキル基の高濃度のメチル基は際立った特徴であるが、別の同様に重要な違いは、それぞれがメチル置換基-CH(Me)-CH-CH(Me)-を保有する2つの炭素の間に配置された高濃度の-CH2-基(メチレン基)である。13C NMRスペクトルでは、これらのメチレン共鳴の共鳴は44~49ppmの範囲にあり、脂肪族炭素の他の13共鳴よりもさらにダウンフィールドである。本発明によるアルキルフェノールの場合、44~49ppmの範囲の共鳴は、脂肪族炭素の10~50ppmの範囲の全ての共鳴の10%または15%以上を構成する。

【表2】
【0077】
NMR分岐指数はNMRデータから計算され得る。表3は、分岐と炭素数の情報をまとめたものである。N脂肪族Hは、NCH3、NCH2、及びNCHの合計である。示されているように、実施例1は最高のNMR分岐指数を有する。
【表3】
【0078】
異なるアルキル基を有するアルキルフェノールを比較する炭素NMRの結果(表4)を得た。NMR試料には、従来の四量体を含むアルキルフェノール、異性化オリゴマー、及びビニリデンに富むプロピレンオリゴマーが含まれる。データは、0.05M濃度の緩和剤であるアセチルアセトナートクロム、Cr(acac)を使用して、2秒のリサイクル遅延を伴う400 MHz機器(100.6MHz 13C周波数)で収集した。
【表4】
【0079】
本書に記載されている全ての文書は、このテキストと矛盾しない範囲で任意の優先文書及び/または試験手順を含め、参照により本書に組み込まれる。前述の一般的な説明及び特定の実施形態から明らかなように、本開示の形態が例示及び説明されているが、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修正を行ってもよい。したがって、本開示がそれによって限定されることを意図するものではない。
【0080】
簡潔にするために、特定の範囲のみが本明細書で明示的に開示されている。ただし、任意の下限からの範囲を任意の上限と組み合わせて、明示的に記載されていない範囲を列挙し得、同様に、任意の下限からの範囲を他の任意の下限と組み合わせて、明示的に記載されていない範囲を列挙し得、同様に、任意の上限からの範囲を他の任意の上限と組み合わせて、明示的に記載されていない範囲を列挙してもよい。さらに、範囲内には、明示的に記載されていなくても、エンドポイント間の全てのポイントまたは個々の値が含まれる。したがって、あらゆるポイントまたは個々の値を、任意の他のポイントもしくは個々の値または任意の他の下限もしくは上限と組み合わせた独自の下限もしくは上限として機能して、明示的に記載されていない範囲を列挙する場合がある。
【0081】
同様に、「含む」という用語は、「含む」という用語と同義であると見なされる。同様に、構成要素、要素または要素のグループの前に「含む」という移行句が付いている場合は常に、「本質的にからなる」、「からなる」、「からなる群より選択される」または「である」という移行句を、構成要素、要素、または要素の言及の前に有する同じ構成要素または要素のグループも想定され、その逆も同様であることが理解される。
【0082】
本明細書で使用される「ある、1つの(a:不定冠詞)」及び「この、その(the:定冠詞)」という用語は、単数形だけでなく複数形も包含すると理解される。
【0083】
上記ではさまざまな用語が定義されている。請求項で使用される用語が上記で定義されていない限り、少なくとも1つの印刷物または発行された特許に反映されているように、その用語を考慮した最も広い定義を当業者に与える必要がある。さらに、この出願で引用された全ての特許、試験手順、及びその他の文書は、そのような開示がこの出願と矛盾しない範囲で、及びそのような組み込みが許可されている全ての権限について、参照により完全に組み込まれる。
【0084】
本開示の前述の説明は、本開示を例示及び説明する。さらに、本開示は、好ましい実施形態のみを示し、説明するが、上記のように、本開示は、他の様々な組み合わせ、修正、及び環境で使用することが可能であり、本明細書で表現される概念の範囲内で変化または改変されてもよく、上記の教示及び/または関連技術の技能もしくは知識に見合ったものであることが理解されるべきである。上記は本開示の実施形態に向けられているが、本開示の他の及びさらなる実施形態は、その基本的な範囲から逸脱することなく考案され得、その範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。
【0085】
本明細書の上記に記載される実施形態はさらに、それを実施することが公知の最良のモードを説明し、当技術分野の他の当業者がそのような、または他の実施形態において、特定の用途または使用によって必要とされる様々な修正を加えて本開示を利用できるようにすることをさらに意図している。したがって、この説明は、本明細書に開示される形式に限定することを意図するものではない。また、添付の特許請求の範囲は、代替の実施形態を含むと解釈されることが意図される。
図1
【国際調査報告】