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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】種子コーティング添加剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/00 20060101AFI20230323BHJP
   A01P 21/00 20060101ALI20230323BHJP
   A01N 65/20 20090101ALI20230323BHJP
   A01N 65/38 20090101ALI20230323BHJP
   A01N 65/44 20090101ALI20230323BHJP
   A01C 1/06 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
A01N25/00 102
A01P21/00
A01N65/20
A01N65/38
A01N65/44
A01C1/06 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022548746
(86)(22)【出願日】2021-02-15
(85)【翻訳文提出日】2022-08-24
(86)【国際出願番号】 EP2021053666
(87)【国際公開番号】W WO2021160886
(87)【国際公開日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】2002061.6
(32)【優先日】2020-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506352278
【氏名又は名称】クローダ インターナショナル パブリック リミティド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】バリー ジョハネス ホフ
(72)【発明者】
【氏名】マルタ エディタ ドブロウォルスカ
【テーマコード(参考)】
2B051
4H011
【Fターム(参考)】
2B051AB01
2B051BA15
2B051BB04
2B051BB05
2B051BB14
4H011AB03
4H011BB22
4H011DA07
(57)【要約】
植物の種子をコーティングするための種子コーティング組成物。コーティング組成物は、ポリマーバインダー及び/又は樹脂と、加水分解タンパク質とを含む。種子コーティング組成物は、場合により、農薬活性剤及び/又は栄養素を含み、組成物は、種子の物理的性質、特に干ばつ又は劣悪な水条件、及び/又は高塩分条件に抵抗する種子の能力を改善するために使用される。製剤を作製する方法、及び種子又は球根を種子コーティング製剤で処理する方法もまた、提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーバインダー及び/又は樹脂と、加水分解タンパク質とを含む種子コーティング組成物。
【請求項2】
存在する前記加水分解タンパク質が、動物性または植物性源のいずれかに由来する、もしくは発酵により誘導される、請求項1に記載の組成物。好適なタンパク質の例としては、コラーゲン、エラスチン、ケラチン、カゼイン、小麦タンパク質、小麦デンプン、ジャガイモタンパク質、大豆タンパク質及び/又は絹タンパク質が挙げられる。小麦タンパク質及び/又はジャガイモタンパク質が特に好ましく、とりわけ小麦タンパク質である。
【請求項3】
前記加水分解タンパク質が、タンパク質を加水分解することから形成されるアミノ酸鎖を含む、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の組成物。
【請求項4】
前記加水分解タンパク質が、酵素の加水分解により産生された加水分解小麦タンパク質である、請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記加水分解タンパク質の分子量(重量平均)が、50Da~50,000Daの範囲である、請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記加水分解タンパク質がアミノ酸を平均2~15個の範囲で含む、請求項1~5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記加水分解タンパク質中の遊離アミノ酸の量が、60重量%未満である、請求項1~6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリマーバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール共重合体、ポリウレタン、セルロース(エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びヒドロキシメチルプロピルセルロースを含む)、ポリビニルピロリドン、デキストリン、マルトデキストリン、デンプン、多糖、油脂(fat)、油脂(oil)、タンパク質、アラビアガム、セラック、塩化ビニリデン、塩化ビニリデン共重合体、リグノスルホン酸カルシウム、ポリアクリレート、アクリル共重合体、ポリアクリル酸ビニル、ゼイン、カゼイン、ゼラチン、キトサン、プルラン、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、アクリルアミドポリマー、アクリルアミド共重合体、ポリヒドロキシエチルアクリレート、メチルアクリルアミドポリマー、ポリ(Nビニルアセトアミド)、アルギン酸ナトリウム、ポリクロロプレン、及びシロップから成る群から選択される、請求項1~7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
ポリマーバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖(デンプンを除く)、タンパク質、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、及びポリアクリレートから成る群から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリマーバインダーが、1,000~40,000の範囲で分子量(重量平均)を有する、請求項1~9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記ポリマーバインダーが、アクリル酸とメタクリル酸アルキル又はスチレンとの、分子量が20,000未満、及びTgが30℃を超える共重合体である、請求項1~10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記樹脂が、ロジン樹脂又はロジンエステルである、請求項1~11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
ポリマーバインダー及び/又は樹脂を含む水性組成物プレブレンドと、加水分解タンパク質プレブレンドとを組み合わせるステップを含む、種子コーティング組成物の形成方法。
【請求項14】
ポリマーバインダー及び/又は樹脂と、加水分解タンパク質とを含む種子コーティング組成物を、種子に塗布するステップを含む、種子コーティング方法。
【請求項15】
ポリマーバインダー及び/又は樹脂と、加水分解タンパク質とを含むコーティングを有する種子。
【請求項16】
前記種子が、トウモロコシ、ヒマワリ、小麦、レタス、及びタマネギから成る群から選択される、請求項15に記載のコーティング種子。
【請求項17】
前記組成物でコーティングされた種子の干ばつおよび塩分耐性を増加させるための、ポリマーバインダー及び/又は樹脂と、加水分解タンパク質とを含む種子コーティング組成物の使用。
【請求項18】
前記組成物でコーティングされた種子から形成された植物の干ばつおよび塩分耐性を増加させるための、ポリマーバインダー及び/又は樹脂と、加水分解タンパク質とを含む種子コーティング組成物の使用。
【請求項19】
第1の成分がポリマーバインダー及び/又は樹脂であり、かつ第2の成分が加水分解タンパク質であることを含む、種子コーティングを形成するために組み合わせるのに好適な、請求項1~12のいずれかに記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種子およびそこから発芽する植物の乾燥耐性および塩分耐性を維持および改善するために、種子をコーティングすることにおいて使用するための、種子コーティング組成物、コーティング組成物を形成して種子上にコーティングする方法、ならびにコーティングされた種子に関する。
【背景技術】
【0002】
植物の種子は、例えば、取り扱い中の損傷から種子を保護するために、及び/又は取り扱い特性を改善するために、播種前にコーティングされることが多い。種子は、発芽時に種子および苗に有用な物質(活性成分)、例えば、植物栄養素、成長刺激剤、及び植物保護製品を供給するためにコーティングされることが多い。典型的な種子コーティング方法には、フィルムコーティング、ペレット化、及び包餡が含まれる。
【0003】
本発明は、種子コーティング組成物を提供することを意図しており、前記組成物は、前記製剤でコーティングされた種子およびコーティングされた種子から形成された植物に対して所望の干ばつ耐性および塩分耐性を提供する。
【0004】
本発明の第一の態様によれば、ポリマーバインダー及び/又は樹脂と、加水分解タンパク質とを含む種子コーティング組成物が提供される。
【0005】
本発明の第二の態様によれば、ポリマーバインダー及び/又は樹脂を含む水性組成物プレブレンドと、加水分解タンパク質プレブレンドとを組み合わせるステップを含む種子コーティング組成物の形成方法が提供される。
【0006】
本発明の第三の態様によれば、ポリマーバインダー及び/又は樹脂と、加水分解タンパク質とを含む種子コーティング組成物を、種子に塗布するステップを含む種子コーティング方法が提供される。
【0007】
本発明の第四の態様によれば、ポリマーバインダー及び/又は樹脂と、加水分解タンパク質とを含むコーティングを有する種子が提供される。
【0008】
本発明の第五の態様によれば、前記組成物でコーティングされた種子の干ばつ及び塩分耐性を増大するための、ポリマーバインダー及び/又は樹脂と、加水分解タンパク質とを含む種子コーティング組成物の使用が提供される。
【0009】
本発明の第六の態様によれば、前記組成物でコーティングされた種子から形成された植物の干ばつおよび塩分耐性を増大させるための、ポリマーバインダー及び/又は樹脂と、加水分解タンパク質とを含む種子コーティング組成物の使用が提供される。
【0010】
本発明の第七の態様によれば、第一の態様に従って種子コーティング組成物を形成するために組み合わせるのに適した、ポリマーバインダー及び/又は樹脂である第一の成分、及び加水分解タンパク質である第二の成分を含む二成分系が提供される。
【0011】
本発明の種子コーティング組成物は、種子の物理的性質、特に干ばつ又は劣悪な水条件及び/又は高塩分条件に抵抗するための種子の能力を改善するために使用され得る。有利な特性は、組成物でコーティングしている種子、及びコーティングされた種子から形成される植物に対して存在することが見出される。
【0012】
本明細書で使用される「例えば(for example)」、「例えば(for instance)」、「例えば・・・など(such us)」、または「を含む」という用語は、より一般的な主題をさらに明確にする例を導入することを意味する。特に明記しない限り、これらの例は、本開示で説明される出願を理解するための補助としてのみ提供されて、いかなる様式においても限定することを意図するものではない。
【0013】
本出願において使用される「種子」という用語は、特に、保護被覆によって囲まれた胚を含む、裸子植物および被子植物の成熟した胚珠を指すことを意味する。特に、この用語は、作物の種子、野菜の種子、および穀物の核を網羅している。保護被覆は、種皮(テスタ)を含み得る。いくつかの種子は、種皮の周囲に果皮(pericarp)または果実の皮(fruit coat)を含む。本出願において使用される「種皮」という用語は、頴果又は痩果を含むことを意味する。「種子」という用語は、ペレット種子、真性種子、植物苗木、台木、再生可能および植物形成組織、ならびに塊茎または球根を含む、農業において植物を生産するために植え得るものすべてを含む。
【0014】
本出願において使用される「コーティング」という用語は、種子の表面に物質を、例えば種子の周りに物質の層として塗布することを指すことを意味する。コーティングは、フィルムコーティング、ペレット化、および包餡、または当技術分野で知られているこれらの技術の組み合わせを含む。コーティングは、好ましくは、種子の表面積の90%以上のような種子の実質的に全面にわたって塗布され、層を形成する。しかしながら、コーティングは、完全または部分的、例えば種子の表面積の20%以上、または50%以上であってもよい。
【0015】
本出願において使用される「種子コーティング組成物」という用語は、種子のコーティングに使用されるための組成物を指すことを意味する。
【0016】
本出願において使用される「干ばつストレス」という用語は、植物が生息する環境に影響を与える非生物因子の結果として生じるストレス、特に干ばつおよび浸透圧ストレスを指すことを意味する。「塩分ストレス」という用語は、同様に、周囲の土壌および環境における高レベルの塩のために、植物に生じるストレスに関連し得る。植物の「耐性」とは、代謝、成長、生産性及び/又は生存率の実質的な変化を受けることなく、前記ストレスに耐える植物の能力を指す。
【0017】
前記種子は、植物の種子、例えば農作物又は畑作物の種子、野菜の種子、ハーブの種子、野生の花の種子、観賞植物の種子、草の種子、木の種子、又は低木の種子である。
【0018】
好ましくは、前記植物の種子は、農作物の種子である。種子は、単子葉類または双子葉類の種類であり得る。適している種子は、大豆、綿、トウモロコシ(corn)、落花生、トウモロコシ(maize)、小麦、大麦、オート麦、ライ麦、マスタード、油糧種子菜種(又はキャノーラ)ヒマワリ、テンサイ、ベニバナ、キビ、チコリ、アマニ(flax)、そば、タバコ、麻の種、アルファルファ、シグナルグラス、クローバー、モロコシ、ひよこ豆、豆、エンドウ豆、ベッチ、米、サトウキビ、グアユール、又はアマニ(linseed)の種子を含む。適している植物の例としては、アスパラガス、チャイブ、セロリ、ネギ、ニンニク、ビートの根、ほうれん草、ビート、カーリーケール、カリフラワー、ブロッコリースプラウト、サボイキャベツ、白キャベツ、赤キャベツ、コールラビ、白菜、カブ、エンダイブ、チコリ、スイカ、メロン、キュウリ、ガーキン、マロウ、パセリ、フェンネル、エンドウ豆、豆、大根、ブラックサルシファイ、ナス、スイートコーン、ポップコーン、ニンジン、タマネギ、トマト、コショウ、レタス、スナップ豆、ウリ科植物、ラッキョウ、ブロッコリー、アブラナ、及び芽キャベツが挙げられる。
【0019】
好ましくは、前記植物の種子は、トウモロコシ、ヒマワリ、小麦、レタス、及びタマネギから成る群から選択されて、好ましくはトウモロコシである。
【0020】
好ましくは、前記植物の種子は、発芽可能である。場合により種子は、殻を取り除かれてもよい(いわゆる殻付き種子又は脱皮種子)。
【0021】
「加水分解タンパク質」という用語は、ポリペプチド、ペプチド、アミノ酸及び/又はペプトンを含むように、本明細書において使用される。ポリペプチド、ペプチド及びアミノ酸は、例えば、天然タンパク質の酸、アルカリ及び/又は酵素加水分解によって産生され得る。酵素加水分解タンパク質が好ましい。一実施形態において、特に酵素加水分解によって産生される、加水分解小麦タンパク質が好ましい。加水分解蛋白質成分にはデンプンが含まれていてもよく、例えば加水分解小麦タンパク質は小麦デンプンを含んでもよい。
【0022】
前記加水分解タンパク質は、個々のアミノ酸から、又は加水分解されたタンパク質に由来する、より長いペプチド鎖内に含まれるアミノ酸から形成され得る。好ましくは、加水分解タンパク質は、タンパク質を加水分解することから形成されるアミノ酸鎖であってもよい。
【0023】
本発明に用いられる種子処理組成物中に存在する加水分解タンパク質は、動物性又は植物性源のいずれに由来するものであってもよく、又は発酵により誘導されてもよい。好適なタンパク質の例としては、コラーゲン、エラスチン、ケラチン、カゼイン、小麦タンパク質、小麦デンプン、ジャガイモタンパク質、大豆タンパク質及び/又は絹タンパク質が挙げられる。小麦タンパク質及び/又はジャガイモタンパク質が特に好ましく、とりわけ小麦タンパク質である。
【0024】
加水分解タンパク質はまた、例えば、タンパク質が官能基、例えばシラン、第四級アンモニウム化合物及び/又は酸塩化物と共有結合的に反応している場合、化学修飾され得る。
【0025】
用語「タンパク質」は、天然(または化学的に未修飾)及び加水分解タンパク質の両方を含むように本明細書で使用されて、当然いわゆるタンパク質、及びポリペプチド、ペプチド、アミノ酸、及び/又はペプトンを適切に含み、後者はすべて加水分解タンパク質として分類することができる。例えば、天然タンパク質の酸、アルカリ、及び/又は酵素加水分解によって生成され得る、加水分解タンパク質が好ましく、特にポリペプチド及びペプチドが好ましい。酸による加水分解タンパク質が好ましい。一実施形態において、特に酸による加水分解により産生される、加水分解ケラチンタンパク質が好ましい。
【0026】
化学的に修飾されたタンパク質及び/又は加水分解タンパク質もまた、例えば、タンパク質が官能基、例えばシラン、第四級アンモニウム化合物および/または酸塩化物と共有結合的に反応した場合にも採用され得る。
【0027】
タンパク質成分は、アミノ酸と短いタンパク質鎖、小さなペプチドとの混合物であることが理解される。
【0028】
タンパク質成分出発物質(加水分解前)の分子量(重量平均)は、例えば100~500,000ダルトンの範囲などの、広い範囲にわたって変化し得る。分子量平均は、種子コーティング組成物中の化合物を含むアミノ酸の全範囲にわたる値の測定であると理解される。
【0029】
加水分解タンパク質の分子量(重量平均分子量)は、広い範囲、例えば50Da~50,000Daの範囲、好ましくは100Da~5,000Da、より好ましくは150Da~1,500Daの範囲にわたって変化し得る。一実施形態において、加水分解タンパク質は、500Da~2,500Da、好ましくは1,000Da~2,000Da、特には1,250Da~1,750Da、例えば約1,500Daの範囲の平均分子量を有し得る。さらなる実施形態において、加水分解タンパク質は、50Da~250Daの範囲、好ましくは100Da~200Da、特には約150Daの範囲の平均分子量を有し得る。
【0030】
一実施形態において、個々の加水分解タンパク質セグメントは、平均して1.5~200、好ましくは5~100、より好ましくは8~50、特には10~25個のアミノ酸の範囲で含み得る。 さらなる実施形態において、個々の加水分解タンパク質セグメントは、平均して1~10個、好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個、特に1~2個のアミノ酸の範囲で含み得る。
【0031】
実施される加水分解は、加水分解タンパク質の所望の分子量および鎖長を達成するために必要な程度である。加水分解の程度は、温度、pH、使用する酵素の濃度及び種類、並びに所要時間を変えることによって変化させることができる。
【0032】
望ましくない物質を除去するために、加水分解タンパク質を濾過及び処理してもよい。
【0033】
一度の加水分解で、タンパク質又はポリペプチドは、平均して2~15、好ましくは4~12、より好ましくは6~10個のアミノ酸の範囲を含む。
【0034】
加水分解されたタンパク質成分は水中で溶液を形成可能であることが好ましい。
【0035】
加水分解タンパク質中の遊離アミノ酸の量が60重量%未満であるところが好ましい。より好ましくは55重量%未満である。遊離アミノ酸は溶解度が低いため、その量は低いレベルであることが望ましいことを理解されたい。
【0036】
1種以上のポリマーバインダーが、本発明の種子コーティング組成物中に存在する。少なくとも1種のポリマーバインダーは、好ましくは有機ポリマーバインダーであり、より好ましくは合成ポリマーバインダーである。前記ポリマーバインダーは、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール共重合体、ポリウレタン、セルロース(エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びヒドロキシメチルプロピルセルロースを含む)、ポリビニルピロリドン、デキストリン、マルトデキストリン、デンプン、多糖、油脂(fat)、油脂(oil)、タンパク質、アラビアガム、セラック、塩化ビニリデン、塩化ビニリデン共重合体、リグノスルホン酸カルシウム、ポリアクリレート、アクリル共重合体、ポリアクリル酸ビニル、ゼイン、カゼイン、ゼラチン、キトサン、プルラン、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、アクリルアミドポリマー、アクリルアミド共重合体、ポリヒドロキシエチルアクリレート、メチルアクリルアミドポリマー、ポリ(Nビニルアセトアミド)、アルギン酸ナトリウム、ポリクロロプレン、及びシロップから成る群から選択され得る。これらのバインダーは、単独で、又は2種、もしくは3種、もしくはそれ以上を組み合わせて使用され得る。
【0037】
好ましいバインダーは、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖(デンプン以外)、タンパク質、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、およびポリアクリレートからなる群から選択され得る。
【0038】
本明細書で好適に用いられるバインダーは、分子量(重量平均分子量)が1,000~40,000の範囲であり、好ましくは5,000~20,000、より好ましくは9,000~11,000、特には9,500~10,500、及びとりわけ9,800~10,200である。
【0039】
好ましいポリマーバインダーは、アクリル酸とメタクリル酸アルキル又はスチレンとの、分子量が20,000未満、及びTgが30℃を超える共重合体である。
【0040】
ポリマーバインダーの酸塩基モノマーとしては、カルボン酸モノマー、スルホン酸モノマー、及びホスホン酸誘導体などの酸を含む、広範なモノマーの群から選択され得る。モノマーの選択により、中和された形態の場合および疎水性モノマーと共重合された場合にポリマーが水溶性になることが可能になる。
【0041】
ポリマーバインダーは、カルボン酸対疎水性(hydrophobe)の重量比が10~90:90~10、好ましくは12~50:88~50、より好ましくは15~40:85~60、最も好ましくは20~30:80~70である。
【0042】
ポリマーバインダーの酸塩基モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、(メタ)アクリル酸の硫酸誘導体、AMPS等のスルホン酸モノマー、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルホスホン酸等のホスホン酸誘導体、又はこれらの混合物から選択され得る。好ましくは、アクリル酸、又はメタクリル酸である。より好ましくは、モノマーはメタクリル酸である。
【0043】
代替の実施形態において、ポリマーバインダーは、ポリビニルアルコール(PVA)のホモポリマーであってもよく、そして前記ホモポリマーは、70%以上で加水分解されてもよい。
【0044】
疎水性モノマーは、ビニルモノマー又はビニル芳香族モノマーであってもよい。あるいは、ビニル芳香族モノマーは、メチルメタクリレートなどの他の好適なモノマー、又は他の好適な代替物によって置き換えられてもよい。
【0045】
好適なビニル芳香族モノマーは、好ましくは8~20個の炭素原子、最も好ましくは8~14個の炭素原子を含み得る。ビニル芳香族モノマーの例としては、置換スチレンを含むスチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、3-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、t-ブチルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ドデシルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレン、α-メチルスチレン、およびハロゲン化スチレンが挙げられる。
【0046】
ビニル芳香族モノマーは、スチレンそれ自体、又は置換スチレン、特にヒドロカルビル、望ましくはアルキルで置換されたスチレンであってもよく、望ましく、前記置換スチレン中の置換基は、α-メチルスチレンおよびビニルトルエンなどのスチレンのビニル基又は芳香環上に存在する。
【0047】
スチレン系モノマーとしては、強酸、特にスルホン酸置換基を含むスチレン系モノマーを挙げることができる。このような強酸変性モノマーが存在する場合、通常、1~30モル%、より好ましくは2~20モル%、望ましくは5~15モル%のスチレン系モノマーを共重合体中に形成する。
【0048】
好ましくは、ビニル芳香族モノマーはスチレン、α-メチルスチレン、又はこれらの組み合わせである。
【0049】
ビニル芳香族モノマーがスチレンと置換スチレンとの混合物である場合、モノマー混合物は、80~95重量%のスチレンおよび5~20重量%の置換スチレンの範囲で含み得る。
【0050】
好ましくは、ポリマーバインダーはスチレン系(メタ)アクリル酸共重合体であってもよい。共重合体中の繰り返し単位は、モノマー成分の残基として適宜考慮される。
【0051】
本発明で用いられる、水分散性スチレン(メタ)アクリル系共重合体において、(メタ)アクリル酸モノマー残基対スチレン系モノマー残基のモル比は、通常、20:1~1:5、より好ましくは10:1~1:2、特には3:1~1:1である。
【0052】
一般的にそれに対応して、重量基準のモノマー残基の割合は、典型的には、(メタ)アクリル酸モノマーの93重量%~10重量%、より典型的には87重量%~25重量%、特には67重量%~40重量%、及びスチレンモノマーの7重量%~90重量%、より典型的には13重量%~75重量%、特には33重量%~60重量%である。
【0053】
(メタ)アクリル酸モノマーは、(メタ)アクリル酸の誘導体であるモノマーをさらに含み得る。(メタ)アクリル酸の誘導体は、強酸、とりわけ硫酸又はスルホン酸基(又はそれらの塩)を含む強酸を含み得る。前記モノマーの例としては、アクリルアミドメチルプロピルスルホネート(AMPS)および(メタ)アクリル酸イセチオン酸塩が挙げられる。
【0054】
このような強酸変性モノマーが存在する場合、通常、1~30モル%、より一般的には通常2~20モル%、及び望ましくは5~15モル%のアクリル酸モノマーを共重合体中に形成する。
【0055】
その他のモノマー、例としては酸性モノマー、例えばイタコン酸又はマレイン酸、もしくは無水物;メタリルスルホン酸(または塩)などの強酸性モノマー;又は非酸性アクリルモノマー、例えばメチルメタクリレート、ブチルメタクリレートもしくはブチルアクリレートなどのアルキルエステル、特にC1~C6アルキルエステル、又はヒドロキシエチルメタクリレート、もしくはヒドロキシプロピルメタクリレートなどのヒドロキシアルキルエステル、特にC1~C6ヒドロキシアルキルエステルであり得るアクリル酸エステル;又は酢酸ビニルなどのビニルモノマーが含まれ得る。その他のモノマーの重量割合は、典型的には、約30重量%以下であり、通常は約20重量%以下であり、より通常には約10重量%以下である。
【0056】
ポリマーは、単一のスチレンアクリル酸共重合体、または2種以上のそのような共重合体を含むブレンドであってもよい。特に、高分子分散剤中に強酸残基が含まれる場合、分散剤は、強酸残基を含む共重合体と、そのような残基を含まない共重合体とのブレンドとすることができる。前記ブレンドにおいて、そのような共重合体の比率は、重量基準で1:10~10:1、より典型的には5:1~1:5であることが一般に望ましい。特に、強酸残基を含む共重合体の割合は、ポリマーの重量基準で少なくとも25%、より通常には少なくとも40%であることが望ましい。
【0057】
高分子分散剤に強酸性置換基を有するモノマーを含有させることにより、固体粒状農薬活性成分等の製剤中の固体成分の分散性の向上を提供することができる。
【0058】
ポリマーは、遊離酸又は塩として用いられ得る。実際には、製剤中に存在する形態は、製剤の酸性度によって決定される。望ましくは、製剤は中性に近く、酸性基の大部分が塩として存在する。任意の前記塩中のカチオンは、アルカリ金属、特にナトリウム及び/又はカリウム、アンモニウム、又はエタノールアミンなどのアルカノールアミンを含むアミン、特にトリエタノールアミンであり得る。特には、ナトリウム又はカリウム塩形態の安定化剤ポリマーが好ましい。
【0059】
少なくとも80%ナトリウムとの中和が好ましく、好ましくは90%、最も好ましくは95%ナトリウムとの中和が好ましい。
【0060】
本発明の製剤に使用されるポリマーは、完全にスチレン(メタ)アクリル共重合体であってもよく、上記の従来の分散剤、例えばナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、リグノスルホン酸塩、無水マレイン酸共重合体、及び縮合フェノールスルホン酸、並びにそれらの塩などの、他の分散剤材料を含んでもよい。このような組み合わせで使用される場合、スチレン(メタ)アクリル共重合体と前記従来の分散剤との重量比は、通常、それぞれ16~2:1であり、より典型的には12~4:1、特には10~6:1である。
【0061】
高分子バインダー中に存在するアクリル酸系モノマーの量は、10重量%~70重量%の範囲であってよい。好ましくは、20重量%~60重量%である。より好ましくは、25重量%~50重量%である。最も好ましくは、30重量%~40重量%である。
【0062】
ポリマーバインダー中に存在するビニル芳香族モノマーの量は、90重量%~30重量%の範囲であってよい。好ましくは、80重量%~40重量%である。より好ましくは、75重量%~50重量%である。最も好ましくは、70重量%~60重量%である。
【0063】
ポリマーバインダーのpHは、5~10の範囲であってもよい。より好ましくは、6~9の範囲である。さらに好ましくは、7~9の範囲である。最も好ましくは、7.5~8.5の範囲である。
【0064】
ポリマーバインダーは、構成モノマーのフリーラジカル重合開始剤、例えば過酸化物又は酸化還元開始剤の使用、特に溶液重合によって、場合によりポリマーの分子量を制御するように作用するアルキルメルカプタンなどの連鎖移動剤と共に作成され得る。適切な方法は、例えば欧州特許第0697422号に記載されている。
【0065】
ポリマーバインダーはまた、親水性溶媒混合物、例えばIPA/水混合物中で溶媒交換法によって作製されてもよく、開始剤と共にモノマー供給物を添加し、モノマーが反応して、蒸留及び中和される。
【0066】
本明細書に記載されるポリマーバインダーの分子量(重量平均)は、当技術分野で周知の技術、例えば光散乱、サイズ排除HPLC、又は質量分析によって決定され得、好ましくは質量分析によって決定され得る。
【0067】
本発明に記載の「樹脂」とは、少なくとも2つのロジン酸又はロジン酸誘導体ユニットが少なくとも2つのエステル結合によって連結された任意の分子である、ロジン樹脂またはロジンエステルであることが好ましい。少なくとも2つのヒドロキシル基を有する任意の分子は、少なくとも2つのロジン酸ユニット間のエステル結合を提供するために使用され得る。一般的で非限定的な例としては、グリセロールエステル、ペンタエリスリトールエステル、及び(トリエチレン)グリコールエステルが挙げられる。
【0068】
本発明に記載の「ロジン酸」とは、種々のロジン酸分子の混合物を含むことを理解される。容易に入手でき、天然に発生するこの種の混合物には、トール油ロジン、ガムロジン、又は木材ロジンが非限定的に含まれる。これらの天然混合物は、アビエチンタイプ及び/又はピマールタイプのロジン酸、例えば、アビエチン酸、パラストリン酸、ネオアビエチン酸、レボピマル酸、ピマール酸、イソピマール酸、又はデヒドロアビエチン酸などを、様々な量で含み得る。1つのカルボン酸官能基を有するロジン酸に加えて、2つ以上のカルボン酸官能基を有するロジン酸も、本発明の意味においてロジン酸とみなされる。
【0069】
本発明に記載の「ロジン酸誘導体」とは、ロジン酸骨格を有する分子が以下の少なくとも1つの方法で修飾された任意の分子である。一実施形態において、少なくとも1つの二重結合は水素化される(hydrogenation)。別の実施形態において、ロジン及び骨格の環の少なくとも1つは、芳香環が生じるように脱水素される(dehydrogenation)。さらに別の実施形態において、ロジン酸骨格の共役二重結合への付加物、特にディールス・アルダー型反応における無水マレイン酸の付加が含まれる。得られた付加物は、本発明に記載のロジン酸誘導体の一種とみなされる。
【0070】
本発明に記載の「樹脂分散剤」とは、ロジン樹脂実体の分散剤であり、溶媒は一般に水または水溶液である。しかしながら、水と非水性溶媒、特に有機溶媒との混合物も、発泡特性または他の分散特性に悪影響を及ぼさない限り、好適であり得る。水と他の水溶性溶媒との混合物もまた、同様に使用することができる。
【0071】
好適には、樹脂分散体に従来使用されている任意のロジン樹脂または任意のロジン樹脂材料が、本発明に記載の使用に適している。例えば、適切な種類の樹脂には、ロジンエステル、ロジン樹脂、ペンタエリスリトール、グリセロール、ロジンのトリエチレングリコールエステル、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0072】
好適なロジン系樹脂としては、非限定的に、天然及び修飾ロジンのエステル、並びにそれらの水素化誘導体が挙げられる。上述の樹脂の2種以上の混合物は、いくつかの実施形態において好適に使用され得る。
【0073】
好適には、その他の実施形態において、ロジンは非修飾または修飾ロジンであり得る。ロジンを修飾する多くの異なる方法が存在する。例えば、ロジンはエステル化され得る。いくつかの実施形態において、ロジンは、グリセロール、ペンタエリスリトール、又はロジン酸のトリエチレングリコールエステルである。好適には、その他の実施形態において、複数のヒドロキシル基を含有する任意の低分子量化合物を、ロジンエステルを製造するために使用し得る。
【0074】
本発明の水性樹脂分散剤に適したロジン樹脂としては、ロジン酸及びロジン誘導体が挙げられる。ロジン酸は、木材、ガム、又はトール油ロジンから製造される。木材ロジンは木の切り株から収穫される。ガムロジンは、中国やブラジルなどの地域の樹液から収集される。トール油ロジンはクラフト紙工程の副産物である。ロジン酸異性体の分布は、これらの供給源それぞれの中で変化する。ロジン酸は、部分的または完全に水素化もしくは不均化され得る。
【0075】
ロジン誘導体は、ロジン酸から二量体化または重合化され得る。ロジン誘導体には、ロジン酸と単官能又は多官能アルコールとの反応生成物であるロジンエステルも含まれる。ロジンエステルを合成するのに適した芳香族及び脂肪族アルコールとしては、非限定的に、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリエチレングリコール及びメタノールが挙げられる。ロジン誘導体は、フェノール、マレイン酸、フマル酸または他の適切な極性化合物で修飾され得る。ロジン酸は、部分的または完全に水素化もしくは不均化され得る。
【0076】
ロジン樹脂は、約10℃~約150℃の範囲の環球軟化点によって特徴付けられ、300~10,000g/molの分子量を有し得る。より好ましくは、樹脂は約10℃~約100℃の軟化点の範囲であり、300~3,000g/molの分子量を有する。
【0077】
本発明に適したロジン系樹脂分散液は、樹脂を20~80%含有するロジン系樹脂の水性分散液からなり、好ましくは30~70%の樹脂、及びより好ましくは40~60%の樹脂を含む。
【0078】
種子コーティング組成物は、ポリマーバインダー及び/又は樹脂、並びに既に組み合わされた加水分解タンパク質との結合系として提供され得ることが理解される。代替の実施形態において、別々の成分を含む2成分系を提供することができ、これらはエンドユーザによって組み合わされて種子コーティング組成物を形成することができる。前記代替の実施形態において、第1の成分がポリマーバインダー及び/又は樹脂であり、かつ第2の成分が加水分解タンパク質であることを含む2成分の系が提供され得る。この2成分系は、第1の態様に従って種子コーティング組成物を形成するために組み合わせるのに適している。
【0079】
種子コーティング組成物はまた、所望のその他の成分を含み得る。これらの成分は、以下を含むものから選択され得る:
・希釈剤、吸収剤又は担体、例えばカーボンブラック;タルク;珪藻土;カオリン;アルミニウム、カルシウム、又はマグネシウムステアリン酸;トリポリリン酸ナトリウム;四ホウ酸ナトリウム;硫酸ナトリウム;ナトリウム、アルミニウム、及び混合ナトリウム-アルミニウムケイ酸塩;及び安息香酸ナトリウム、
・アルコールエトキシレート及びアルコールエトキシレート/プロポキシレート湿潤剤などの湿潤剤;
・スルホン化ナフタレンホルムアルデヒド縮合物及びアクリル共重合体、例えばポリアクリル骨格上にキャップされたポリエチレングリコール側鎖を有する櫛型共重合体などの分散剤;
・アルコールエトキシレート、ABAブロック共重合体、又はヒマシ油エトキシレートなどの乳化剤;
・典型的に製剤の0.005重量%~10重量%の量の消泡剤、例えばポリシロキサン消泡剤;
・ワックス、例えば天然ワックス、鉱物ワックス及び合成ワックス又はこれらの組み合わせ。好ましくは、前記ワックスは、ポリエチレンワックス、カルナウバワックス、パラフィンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、モンタンワックス、セレシンワックス、オゾセライト、ピートワックス、フィッシャートロプシュワックス、アミドワックス、エチレンアクリル酸ワックス、ポリオレフィンワックス、エチレンビスステアラミドワックス、ミツロウ、ラノリンワックス、サトウキビワックス、パームワックス、及び植物ワックスからなる群より選択される;
・市販の水溶性または混和性ガム、例えばキサンタンガム、及び/又はセルロース類、例えばカルボキシ-メチル、エチルもしくはプロピルセルロースなどの粘度調整剤;及び/又は
・典型的に製剤の0.01重量%~1重量%の量での、防腐剤及び/又は有機酸などの抗菌剤、もしくはそれらのエステル又は塩、例えばパルミチン酸アスコルビルなどのアスコルビン酸、ソルビン酸カリウムなどのソルビン酸、安息香酸などの安息香類、及びメチル並びにプロピル 4-ヒドロキシ安息香酸、プロピオン酸ナトリウムなどのプロピオン酸、2-フェニルフェネートナトリウムなどのフェノール;1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン;またはそれ自体、もしくはパラホルムアルデヒドとしてのホルムアルデヒド;または無機材料、例えば硫酸及びその塩。
【0080】
本発明の種子コーティング組成物はまた、界面活性剤、例えば湿潤剤、分散剤、及び/又は乳化剤を含み得る。界面活性剤は、プレブレンド及び種子コーティング組成物中のワックス及び/又は顔料粒子の混合/乳化/分散を助け得る。好適な界面活性剤には、イオン性及び非イオン性生成物が含まれ、有機変性ポリアクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリウレタン、リン酸エステル、星形ポリマー、及び/又は変性ポリエーテルの溶液が含まれる。
【0081】
本発明の種子コーティング組成物は、さらなる成分、例えば溶媒、増粘剤、消泡剤、防腐剤、及び滑剤から1つ以上選択される成分を含み得る。
【0082】
好適な増粘剤としては、寒天、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン、キチン、フコイダン、ガティ、アラビアガム、カラヤ、ラミナラン、ローカストビーンガム、ペクチン、アルギン酸塩、グアーガム、キサンタンガム、ダイユータンガム、トラガント、ベントナイト粘土、HEUR(疎水変性、エトキシル化ウレタン)増粘剤、HASE(疎水変性、アルカリ膨潤性エマルジョン)増粘剤およびポリアクリレートが挙げられる。ガムは、一般に、その低コスト、入手可能性、及び得られるコーティング膜の物理的特性を増強する優れた能力のために好ましい。
【0083】
好適な消泡剤の例には、ポリエチレングリコール、グリセリン、鉱物油消泡剤、シリコーン消泡剤、及び非シリコーン消泡剤(例えばポリエーテル、ポリアクリレート)、ジメチルポリシロキサン(シリコーン油)、アリールアルキル変性ポリシロキサン、ヒュームドシリカを含むポリエーテルシロキサン共重合体が含まれる。消泡剤は、種子コーティング組成物の全重量に基づいて少なくとも1重量ppm、または0.1~0.3重量%の量で種子コーティング組成物のいくつかの実施形態において存在し得る。
【0084】
種子コーティング組成物は、さらに、水以外の1種以上の溶媒を含んでもよい。溶媒は、アルコール、及び炭化水素からなる群から選択され得る。また、溶媒の混合物も使用され得る。溶媒は20℃、1気圧で液体であることが好ましい。好適な溶媒の例には、グリコール及びそれらのエステル及びエーテル、特にエチレン及びプロピレングリコール並びにそれらのエステル及びエーテル、例えば、C1 C6アルキル基及び/又は芳香族基を有するエステル及びエーテル、例えば、モノエーテル及びジアルキルエーテルを含む、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ベンジル及びフェニルエーテル、及びこれらのエーテルのエステル、例えば酢酸塩、並びにエチレン及びプロピレングリコールエステル、例えば脂肪酸;ポリエチレングリコール(PEG)及びポリプロピレングリコール並びにそれらのエステル、特に脂肪酸を伴う;ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、ポリエチレングリコール;N メチルピロリドン、グリセリン、エタノール、プロパノール及びブタノールなどの10個までの炭素原子を有するアルキルアルコールが挙げられる。溶媒の他の例としては、ジプロピレングリコールメチルエーテル及びプロピレングリコールメチルエーテルが挙げられる。重要な溶媒はエチレングリコールである。さらなる例には、プロピレン四量体および合成エステル油、例えば乳酸エステル、特に乳酸エチル及び安息香酸エステル、例えばイソ-プロピル又は2-エチルヘキシルベンゾエートが挙げられる。キシレンなどの芳香族炭化水素、脂肪族及びパラフィン系溶媒並びに植物油も溶媒として使用することができる。芳香族系溶媒はあまり好ましくない。
【0085】
種子コーティング組成物はまた、界面活性剤または凍結防止剤などの可塑化効果を有する成分を含んでもよい。一般的な界面活性剤には両親媒性有機化合物が含まれ、通常、分枝状、直鎖状または芳香族炭化水素、フッ化炭素又はシロキサン鎖を尾部及び親水性基として含む。いくつかの界面活性剤のタイプには、非イオン性、アニオン性、カチオン性及び両性界面活性剤、並びに有機シリコーン及び有機フッ素界面活性剤が挙げられる。界面活性剤のいくつかの例としては、ポリオキシエチレングリコール及びポリオキシプロピレンエーテル並びにエステル、特にアルキル、アリール及びアルキルアリールエーテル、並びに硫酸塩、リン酸塩およびスルホン酸化合物などのエーテル、グルコシド(アルキル)エーテル、グリセロールエステル、例えばアルキルおよび脂肪酸エステル、ソルビタン(アルキル)エステル、アセチレン化合物、コカミド化合物、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールのブロック共重合体が挙げられる。さらなる界面活性剤の例としては、アルキルアミン塩及びアルキル4級アンモニウム塩、例えばベタイン型界面活性剤、アミノ酸型界面活性剤;多面体アルコール、脂肪酸エステル、特にC12C18脂肪酸、例えばポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、及びスクロース、多価アルコールアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、並びにプロポキシル化及びエトキシル化化合物、例えば脂肪アルコールエトキシレート、ポリエチキシル化牛脂アミンおよびアルキルフェノールエトキシレートが挙げられる。陰イオン性界面活性剤のいくつかの例としては、カルボン酸、カルボン酸共重合体、硫酸塩、スルホン酸化合物およびリン酸塩、例えばリグニンスルホン酸塩および(直鎖状)アルキルアリールスルホン酸塩が挙げられる。
【0086】
凍結防止剤は、例えば:エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、およびグリセリンを含み、好ましいグリコールはエチレングリコールおよびプロピレングリコールである。
【0087】
本発明の種子コーティング組成物はまた、種子上にコーティングされたときに美的効果を提供する機能を備える1つ以上の任意の顔料を含み得る。顔料は、好ましくは無機材料であり、例えば、当技術分野で知られている効果顔料及び/又は着色顔料であり得る。
【0088】
好適な効果顔料としては、異なる粒径の真珠光沢顔料が含まれる。効果顔料は、粒径60μm以下、又は粒径15μm以下のものが使用され得る。効果顔料の粒径は、好ましくは200μm以下であり、より好ましくは100μm以下である。通常、効果顔料の粒径は1μm以上である。別の効果顔料は、アルミニウムであり得る。効果顔料は、種子に魅力的な美容外観を与えるために使用され得る。
【0089】
着色顔料の例としては、ピグメントレッド112(CAS番号6535-46-2)、ピグメントレッド2(CAS番号6041-94-7)、ピグメントレッド48:2(CAS番号7023-61-2)、ピグメントブルー15:3(CAS番号147-14-8)、ピグメントグリーン36(CAS番号14302-13-7)、ピグメントグリーン7(CAS番号1328-53-6)、ピグメントイエロー74(CAS番号6358-31-2)、ピグメントオレンジ5(CAS番号3468-63-1)、ピグメントバイオレット23(CAS番号6358-30-1)、ピグメントブラック7(CAS番号97793 37 8)、及びピグメントホワイト6(CAS番号98084-96-9)が挙げられる。着色顔料の粒径は、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは50μm以下である。通常、着色顔料の粒径は25μm以上である。
【0090】
アントラキノン、トリフェニルメタン、フタロシアニン、それらの誘導体、及びジアゾニウム塩などの染料を、着色顔料に加えて、または着色顔料の代替として用いてもよい。
【0091】
種子コーティング組成物中の顔料の量は、存在する場合、組成物の全重量に基づいて0.1~15重量%の範囲が適当であり、好ましくは1.0~8.0%、より好ましくは2.0~5.0%、特に2.5~3.5重量%、及びとりわけ2.8~3.2重量%である。
【0092】
殺生物剤は、種子コーティング組成物のいくつかの実施形態に、例えば保存剤として、種子コーティング組成物の貯蔵寿命を延長するために、保存されるときなど、種子に塗布される前に含めることができる。好適な殺生物剤の例としては、MIT(2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン;CAS番号2682 20-4)、BIT(1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン;CAS番号2632-33-5)、CIT(5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン)、ブロノポール(2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール)及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0093】
種子コーティング組成物は、1つ以上の生体活性成分(植物増強剤、特に植物保護製品(PPPsとも呼ばれる)を含む)を含み得る。好適な活性成分、特に植物増強剤の例は、殺菌剤(fungicidal agents)、殺菌剤(bactericidal agent)、殺ダニ剤(insecticidal agents)、殺線虫剤、軟体動物駆除剤、生物学的製剤、殺ダニ剤(acaricides)又は殺ダニ剤(miticides)、害虫駆除剤、及び殺生物剤である。さらに許容される活性成分としては、消毒剤、微生物、げっ歯類キラー、除草剤(除草剤)、誘引剤、(鳥類)忌避剤、植物成長調節剤(例えば、ジベレリン酸、オーキシンまたはサイトカイニン)、栄養素(例えば硝酸カリウム、硫酸マグネシウム、鉄キレート)、植物ホルモン、ミネラル、植物抽出物、発芽刺激剤、フェロモン、生物学的製剤などが含まれる。
【0094】
適用される活性成分の量は、当然のことながら、活性成分の種類及び使用される種子の種類に強く依存する。しかしながら、通常、1つ以上の活性成分の量は、種子のkg当たり0.001~200gの範囲である。当業者は、使用される活性成分及び種子の種類に応じて活性成分の適切な量を決定することができる。当業者は、技術データシート及び/又は以下の推奨事項を使用することなどにより、活性成分供給者(BASF、バイエル、シンジェンタ、デュポンなど)のアドバイスに従うのが一般的である。
【0095】
典型的な殺菌剤(fungicidal agents)としては、キャプタン(Nトリクロロメチル)チオ4シクロヘキサン-1,2-ジカルボキシイミド)、チラムテトラメチルチオペルオキシ二炭酸ジアミド(プロシードTMとして市販されている)、メタラキシル(メチルN(2,6-ジメチルフェニル)-N(メトキシアセチル)d,l-アラニネート)、フルジオキソニル(4(2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-4-イル)-1Hピロール-3-カルボニトリル;MaximTM XLとしてメフォノキサムとのブレンドで市販されている)、ジフェノコナゾール(DividendTM 3FSとして市販されている)、カルベンダジムイプロジオン(RovralTMとして市販されている)、イプコナゾール(AristaからRanconaとして市販されている、以前はAgriphar又はChemturaとして市販されている)、メフォノキサム(ApronTM XLとして市販されている)、テブコナゾール、カルボキシン、チアベンダゾール、アゾキシストロビン、プロクロラズ、プロチオコナゾール(BayerからRedigoとして市販されている)、セダキサン(SyngentaからVibranceとして市販されている)、シモキサニル(1(2シアノ-2-メトキシイミノアセチル)3-エチル尿素)、フルジオキソニル、メタラキシルの混合物、SyngentaからWakilとして市販されている、シモキサニル、及びフルジオキソニル、並びにオキサジキシル(N(2,6-ジメチルフェニル)-2-メトキシ-N (2-オキソ3-オキサゾリジニル)アセトアミド)が挙げられる。
【0096】
典型的な殺菌剤(bactericidal agent)としては、ストレプトマイシン、ペニシリン、テトラサイクリン、アンピシリン、およびオキソリン酸が挙げられる。
【0097】
典型的な殺ダニ剤(insecticidal agents)としては、ピレスロイド、有機リン酸塩、カラモイルオキシム、ピラゾール類、アミジン類、ハロゲン化炭化水素類、ネオニコチノイド類、カルバメート類及びそれらの誘導体が挙げられる。殺虫剤の特に好適なクラスには、有機リン酸塩、フェニルピラゾール及びピレスロイドが含まれる。好ましい殺虫剤は、テルブフォス、クロルピリホス、フィプロニル、クロルエトキシホス、テフルトリン、カルボフラン、イミダクロプリド、及びテブピリムフォスとして知られているものである。市販の殺ダニ剤としては、イミダクロプリド(GauchoTMとして市販されている)、クロチアニジン(BayerからPonchoTMとして市販されている)、チアメトキサム(SyngentaからCruiserTMとして市販されている)、チアクロプリド(BayerからSonidoとして市販されている)、サイパーメトリン(ChemturaからLangisTMとして市販されている)、メチオカルブ(BayerからMesurolとして市販されている)、フィプロニル(BASFからRegentTMとして市販されている)、クロラントラニリプロール(リナキシピルとしても知られる、5-ブロモ-N-[4-クロロ-2-メチル-6(メチルカルバモイル)フェニル]-2-(3-クロロピリジン-2-イル)ピラゾール-3カルボキサミド、DuPontからCoragenTMとして市販されている)、及びシアントラニリプロール(シアジピルとしても知られる、3ブロモ-1-(3-クロロ-2-ピリジル)-4'シアノ-2'-メチル-6'(メチルカルバモイル)ピラゾール-5-カルボキサニリド)が挙げられる。
【0098】
市販の殺線虫剤としては、アバメクチン(SyngentaからAvictaTMとして市販されている)チオジカルブ(BayerからAerisTMとして市販されている)が挙げられる。
【0099】
典型的な軟体動物駆除剤としては、メトアルデヒド(LonzaからMetaTMとして市販されている)又はニクロサミド(BayerからBayluscideTMとして市販されている)、チャジピルおよびリナキシピル(DuPontから入手可能)が挙げられる。
【0100】
好適な生物学的製剤の例としては、植物を保護し、及び/又はそれらの健康及び/又は生産能力を高めるための種子処理材料として同定されている桿菌、トリコデルマ、根粒菌(窒素固定用)などが挙げられる。
【0101】
これらのリストは網羅的ではなく、新しい活性成分が継続的に開発され、種子コーティング組成物に組み込まれ得る。
【0102】
栄養素は、農薬活性剤に加えて、またはそれに代わるものとして存在してもよい。このような製剤において、栄養素は典型的には乾燥形態である。
【0103】
前記栄養素は、固体栄養素であることが好ましい。本発明において、固体栄養素は、融点が20℃以上(標準圧力)である物質を意味するものとして理解されたい。固体栄養素はまた、不溶性栄養成分、すなわち水への溶解度が添加後に濃縮物中に有意な固形分が存在するようなものである栄養成分を含む。
【0104】
栄養素は、植物の成長を促進又は改善するために望ましいもしくは必要な化学元素及び化合物を指す。好適な栄養素は、一般に、主要栄養素又は微量栄養素として記載されている。 本発明に記載の濃縮物中で使用するために好適な栄養素は、全て栄養化合物である。
【0105】
微量栄養素は、典型的には微量金属または微量元素を指し、低用量で適用されることが多い。好適な微量栄養素としては、亜鉛、ホウ素、塩素、銅、鉄、モリブデン、およびマンガンから選択される微量元素が挙げられる。微量栄養素は、可溶性形態であってもよいし、不溶性固体として含まれていてもよく、塩またはキレート化されていてもよい。
【0106】
主要栄養素は、典型的には、窒素、リン、およびカリウムを含むものを指し、硫酸アンモニウムなどの肥料、および水調整剤を含む。好適な主要栄養素としては、肥料及びその他の窒素、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウム、硫黄含有化合物、並びに水調整剤が挙げられる。
【0107】
好適な肥料には、窒素、リン、カリウムまたは硫黄などの栄養素を提供する無機肥料が含まれる。肥料は比較的低濃度で、又はより濃縮された溶液として希釈製剤に含まれてもよく、これは非常に高いレベルで、固体肥料並びに溶液を含み得る。
【0108】
栄養素の包含は特定の栄養素に依存し、微量栄養素は通常より低い濃度で含まれる一方、主要栄養素は通常より高い濃度で含まれることが想定される。
【0109】
生体刺激剤は、代謝または生理学的プロセス、例えば、呼吸、光合成、核酸の取り込み、イオンの取り込み、栄養素送達、又はそれらの組み合わせを増強し得る。生体刺激剤の非限定的な例としては、海藻抽出物(例えば、アスコフィルムノドスム)、フミン酸(例えば、フミン酸カリウム)、フルボ酸、ミオイノシトール、グリシン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0110】
加水分解タンパク質は、0.5~25重量%の範囲の濃度で種子コーティング組成物中に好適に存在し、好ましくは2~18重量%、より好ましくは5~15重量%、特に8~12重量%である。
【0111】
コーティング組成物中のポリマーバインダーは、5~40%の量で好適に存在し、好ましくは8~30%の範囲であり、最も好ましくは存在するポリマーバインダーの総重量に基づいて10~25重量%の範囲にあるポリビニルピロリドンである。
【0112】
一実施形態において、コーティング組成物は、(i) 60~98重量%、好ましくは70~95重量%、より好ましくは80~92重量%、特に87~91重量%、及びとりわけ88~90重量%のポリビニルピロリドン、および(ii) 2~40重量%、好ましくは5~30重量%、より好ましくは8~20重量%、特に9~13重量%、及びとりわけ10~12重量%のポリビニルピロリドン以外のポリマーバインダーを好適に含み;両者は、コーティング組成物中のポリマーバインダーの総重量に基づく。
【0113】
種子コーティング組成物中のポリマーバインダーの量は、組成物の全重量に基づいて3~40重量%の範囲が好適であり、好ましくは6~25重量%、より好ましくは8~12重量%、特に9.4~9.9重量%、及びとりわけ9.6~9.7重量%である。
【0114】
一実施形態において、加水分解タンパク質製剤又はプレブレンド、及び水性バインダー組成物プレブレンドは、別々に形成されて、共に混合されて、本発明の種子コーティング組成物を形成する。水性組成物プレブレンドは、好ましくは、本明細書で定義されるポリマーバインダーを含む。水性組成物プレブレンドはまた、本明細書で定義される顔料、および本明細書で定義される他の任意の種子コーティング組成物成分のいずれかを含んでもよい。水性組成物プレブレンドはまた、1つ以上の本明細書に記載の生体活性材料を含んでもよい。
【0115】
代替の実施形態において、組成物は、すべての成分が添加される「ワンポット」法で作製され得る。
【0116】
コーティングは、フィルムコーティング、ペレット化、および包餡、または当技術分野で知られているこれらの技術の組み合わせを含む。本発明は、前記コーティングタイプの全て、好ましくはフィルムコーティングに適用されることが想定される。
【0117】
本発明の種子コーティング組成物は、従来の方式に従って種子に適用することができる。
【0118】
種子は、プライミングされている、またはプライミングされていないものであってもよい(発芽率を改善するための処理、例えばオスモプライミング、ヒドロプライミング、マトリックスプライミングを施されたもの)。
【0119】
一実施形態において、種子は、本発明の種子コーティング組成物を塗布する前に人工層、例えばポリマーなどのバインダーを含むプライマー層を備えていない。したがって、種子コーティング組成物は、天然の種子の外表面上に直接塗布することが好ましい。しかしながら、種子表面が種子コーティング組成物を塗布する前に表面処理を受けている可能性がある。
【0120】
好ましくは、種子コーティング組成物は、液体組成物及び/又はエマルジョン及び/又は分散液及び/又はラテックス組成物として塗布されて、その後固化(硬化及び/又は乾燥を含む)して種子コーティングを形成する。本出願で使用される「液体コーティング組成物」という用語は、懸濁液、エマルジョン、及び/又は分散液の形態のコーティング組成物、好ましくは分散液を含むことを意図する。
【0121】
従来のコーティング手段は、種子をコーティングするために採用され得る。種々のコーティング機械が当業者に利用可能である。いくつかの周知の技術には、ドラムコーター、流動床技術、ロータリーコーター(統合された乾燥の有無にかかわらず)、及び噴出床の使用が含まれる。好適には、種子コーティング組成物は、ロータリーコーター、ロータリードライコーター、パンコーター又は連続トリーターによって種子に塗布される。
【0122】
種子が覆われている場合、種子コーティング組成物中の水の量は、組成物の全重量に基づいて、好適には30%未満、好ましくは25%未満、より好ましくは20%未満、特に14.0~17.0%の範囲、及びとりわけ15.0~16.0重量%である。
【0123】
種子がフィルムコーティングされる代替実施形態において、種子コーティング組成物中の水の量は、組成物の全重量に基づいて20重量%~80重量%の範囲が好適であり、好ましくは30%~70重量%の範囲であり、より好ましくは40重量%~60重量%の範囲である。
【0124】
種子コーティング組成物は、例えば、種子コーティング組成物のフィルムコーティング、スプレー、浸漬、またはブラッシングにより塗布され得る。任意選択で、25℃~50℃の温度、例えば5℃~35℃、より頻繁には15℃~30℃、例えば18℃~25℃などの室温で適用される。好ましくは、種子コーティング組成物は、フィルムコーティングによって種子に適用される。フィルムコーティングは、典型的には、種子がコーティング装置を通って落下または流動している間に、液体コーティング組成物を種子上にスプレーすることにより、好適に塗布することができる。好ましくは、この方法は、種子コーティング組成物をフィルムコーティング組成物の形態で塗布する種子のフィルムコーティングを含む。
【0125】
好ましくは、この方法は、種子コーティング組成物を塗布してフィルムまたは種子コーティング層を形成することを含む。
【0126】
種子コーティングは、典型的には、種子の表面に、強固に付着した、水分透過性のコーティングを形成することを含む。このプロセスは、典型的には、植え付け前に液体種子コーティング組成物を種子に塗布することを含む。
【0127】
追加のフィルムコート層は、場合により、前記コーティングの上に適用されてもよく、本発明の層は、追加の利点を提供するために、化粧品、被覆、活性成分、栄養素、及びより速い乾燥、種子の供給、耐久性などの工程の改善を非限定的に含む。
【0128】
本明細書に記載される特徴の全ては、上記態様のいずれかと、任意の組み合わせで組み合わせることができる。
【実施例
【0129】
本発明がより容易に理解され得るために、例として以下の説明を参照する。
【0130】
記載されているすべての試験および物理的特性は、本明細書に別段の記載がない限り、または参照された試験方法および手順に別段の記載がない限り、大気圧および室温(すなわち25℃)で決定されたことを理解されたい。
【0131】
以下の試験方法を用いて、干ばつ性添加剤の性能を決定した。
【0132】
紙の水分ストレス試験
【0133】
加水分解タンパク質産物の評価は、種々の発芽試験方法を用いて行った。発芽試験は、水の密度を、PEG(ポリエチレングリコール)によって操作した紙の水分ストレス試験で行った。
【0134】
水分利用能の低下という非生物的ストレス因子を試験するために、紙の水分ストレス試験を対象物に対して実施した。水分ストレス試験は、ポリエチレングリコール(PEG)を介して制御された水分ストレスを用いて発芽試験を行うことからなる。PEGの溶液と組み合わせた照明は、植物の発育に負の影響を及ぼす。すべてのPEG試験は、植物を直接光から遮蔽するために発芽容器の上に白い紙シートを載せた9時間の長い光と15時間の暗サイクルを有するフィトトロンで行われた。光なしで発芽すると、伸長した植物をもたらす。
【0135】
表1に示すような評価方法を用いて、植物の発育を分類した。この分類は発芽後の葉の発育を示すために使用され、Aクラスは良好な発育を表し、Dは不十分な発育を表す。
【0136】
【表1】
【0137】
ヒマワリ対象の評価は、根長測定により行った。
【0138】
土壌中の水分ストレス試験
【0139】
対象ごとに3つの播種が行われて、トレイは60ccの鉢植え土で満たされ、25個の小麦の種が蒔かれ、30ccの鉢植え土で覆われた。水100ccの散水は播種後に行った。灌漑は、対象に応じて、3、7、14日ごとに行われた。トウモロコシ水分ストレス試験と比較して、植物の発育の違いは、長さ測定または緑色チップ数では表現できなかった。
【0140】
小麦植物の発育ステージの同定が開発されて表2に示されており、ステージ2は良好な発育及びしたがって良好な耐湿ストレス性を示し、ステージ0は発育不良及びしたがって低い耐湿ストレス性を示している。
【0141】
【表2】
【0142】
土壌中の水分と塩分濃度ストレス試験
【0143】
塩分濃度試験は小麦対象で行われた。熱勾配テーブルを、5,000ccの鉢植え土(栄養豊富な)で満たした。ブロックあたり、対象あたり100gを播種した。各ブロックは熱勾配テーブルの1/3を網羅し、15~35℃の全温度範囲を網羅した。苗床を1,000ccの鉢植え土で覆った。
【0144】
熱勾配は、温度の勾配と相関する速度で水分を蒸発させた。これにより、干ばつの勾配が全体的に作成された。最初の2週間で、全てのテーブルに5リットルの0.01 M NaCl溶液を2回散水した後、5リットルの0.4 M NaCl溶液(海水は0.6 M NaCl)を5週間毎週散水した。評価は目視により行った。
【0145】
試験は、ヒマワリ、トウモロコシ、小麦、レタスおよびタマネギからの種子について実施された。これらの種子は、エンドウ豆、ジャガイモ、大豆、綿または小麦の有機物から合成または誘導される加水分解タンパク質産物で濃縮されたフィルムコートでコーティングされた。水分ストレス試験の種類は作物ごとに異なる。
【0146】
材料
【0147】
加水分解タンパク質がトウモロコシ、ヒマワリおよび小麦に及ぼす影響を評価した。この作物の選択により、異なる種子および植物種類の広い代表を考慮に入れた。
【0148】
試験対象および添加剤に使用される加水分解タンパク質の由来を以下に列挙する。
【0149】
試験に用いた加水分解タンパク質産物:
添加剤1(A1)― 加水分解小麦タンパク質
添加剤2(A2)― 加水分解エンドウ豆タンパク質
添加剤3(A3)― 加水分解ジャガイモタンパク質
添加剤4(A4)― 加水分解大豆たんぱく質
添加剤5(A5)― 加水分解綿タンパク質
【0150】
種子への加水分解タンパク質の塗布は、作物ごとに異なるフィルムコートを介して行われた。混合中に加水分解されたタンパク質を市販のフィルムコートに添加し、加水分解タンパク質のうち10%からなるフィルムコート「組成物」を生じ、以後の参照ではこの組成物をフィルムコートと呼ぶ。種子に塗布する前に、フィルムコートを水で希釈し、フィルムコート/水比50/50を作物ごとにわずかに変化させた。
【0151】
干ばつ耐性の結果
【0152】
表3において、総胚芽数は、フィルムコート又は加水分解タンパク質の添加の影響を受けない。子葉鞘からの緑色チップの割合は、加水分解タンパク質の添加によって正の影響を受ける。これは、1.024の密度で誘発される水分ストレス下で、種子がフィルムコートに組み込まれた加水分解タンパク質でコーティングされている場合、苗木/植物の発育に悪影響が少ないことを示している。
【0153】
【表3】
【0154】
水分密度1.024での、播種後14日目のトウモロコシの植物ステージ評価は、表1を用いて分類した。
【0155】
ヒマワリ種子についても一般的な発芽性能における耐干ばつ性において同様の結果が見られ、及び表4に示した。
【0156】
【表4】
【0157】
播種後14日目の紙上でのヒマワリ種子発芽の植物ステージ評価は、水分密度1.008であった。
【0158】
土壌中での小麦の水分ストレス試験
【0159】
土壌中での規制された干ばつストレス試験を小麦に対して実施した。表2に提示したステージを、表5に示すような結果を説明するために使用した。初期の結果は、主に一般的な植物発育において使用される加水分解タンパク質ごとに異なる反応を示した。
【0160】
表5に提示された結果は、灌漑の間隔が植物の発育に影響を与えることを示している。全体的な発芽は、すべての対象が同じ量の開始するための水を受け取ったため、干ばつの影響を受けない。未処理の小麦対象は、植物の発育において一貫しているようであり、フィルムコーティングされた対照物と比較して、水分の欠乏(すなわち、灌漑が不十分な場合)に対する負の反応が少ないか、またはまったくないことを実証する。
【0161】
【表5】
【0162】
塩分耐性
【0163】
結果は、上述の方法を経て得られた。表6に、生理食塩水条件下で使用可能な小麦植物の割合を示す。
【0164】
【表6】
【0165】
鉢植え土壌上での小麦植物評価は、0.4M NaClで灌漑した。
【0166】
表6の結果は、本発明のコーティングに対する塩分耐性における非常に明確及び有意な改善を示す。
【0167】
成長と植物発育に対する正の効果は、すべての加水分解タンパク質でコーティングされたトウモロコシの水分ストレス試験において見られ得、すべての加水分解タンパク質でコーティングされた小麦の水分調節植物タイプ試験、および熱勾配テーブル上の植物タイプ試験で同様の正の効果を示す。一般に、乾燥ストレス下では、若い植物の発育において、乾燥耐性添加剤が及ぼす正の効果が見られ、それにより乾燥ストレス耐性の改善が実証される。
【0168】
本発明は上記実施形態の詳細に限定されるものではなく、例として説明されるのみであることを理解されたい。任意の変化が許容される。
【国際調査報告】