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特表2023-513337一体型エンジン排気騒音マフラーを備えた衝突エネルギー吸収装置
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  • 特表-一体型エンジン排気騒音マフラーを備えた衝突エネルギー吸収装置 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】一体型エンジン排気騒音マフラーを備えた衝突エネルギー吸収装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 1/02 20060101AFI20230323BHJP
   B60K 13/04 20060101ALI20230323BHJP
   F01N 13/16 20100101ALI20230323BHJP
   F01N 13/00 20100101ALI20230323BHJP
   F01N 13/18 20100101ALI20230323BHJP
   B60R 19/48 20060101ALI20230323BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20230323BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20230323BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230323BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20230323BHJP
   B62D 21/15 20060101ALN20230323BHJP
【FI】
F01N1/02 E
B60K13/04 A
B60K13/04 C
F01N13/16
F01N13/00 Z
F01N13/18
B60R19/48 L
B33Y30/00
B33Y80/00
B33Y10/00
G10K11/16 100
B62D21/15 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022548747
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(85)【翻訳文提出日】2022-10-05
(86)【国際出願番号】 US2021018628
(87)【国際公開番号】W WO2021168152
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】62/978,232
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/178,048
(32)【優先日】2021-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516093851
【氏名又は名称】ダイバージェント テクノロジーズ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Divergent Technologies, Inc.
【住所又は居所原語表記】19601 Hamilton Avenue,Los Angeles,California 90502 USA
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】マルティネス アントニオ ベルネルド
(72)【発明者】
【氏名】チョ ヨン-ベ
(72)【発明者】
【氏名】バックネル ジョン ラッセル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァシル マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ボルトン マイケル
【テーマコード(参考)】
3D038
3D203
3G004
5D061
【Fターム(参考)】
3D038BA01
3D038BA14
3D038BA16
3D038BB01
3D038BC02
3D038BC08
3D038BC12
3D038BC15
3D038BC20
3D038BC24
3D203AA02
3D203CA40
3G004AA01
3G004CA01
3G004DA13
3G004FA04
3G004GA00
5D061EE31
(57)【要約】
多機能騒音抑制及びクラッシュ構造が開示される。本開示の一態様では、多機能構造は、本体と、入口パイプと、出口パイプと、共振器セルを画定し、前記入口パイプから前記出口パイプへ共振器セルを通過する排気騒音を抑制するように構成された前記本体内の複数の壁とを含む。前記構造は、車両の後方にあるクラッシュレールの間、及び、エンジンとバンパーとの間に配置されてもよい。前記壁は、予測された衝突方向にほぼ整列するか、又はその近くに位置してもよく、衝突時に制御された方法で潰れる可能性がある。様々な実施形態では、前記構造は、3D印刷されて、多種多様な幾何学的トポロジーの構築を可能にし、質量を最小化する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用多機能装置であって、
共振器セルのアレイを画定する複数の壁を有する本体を含むマフラーを備え、前記共振器セルは、排気騒音を抑制するために入口パイプと出口パイプとの間に配置され、
前記壁は、衝突イベント時に制御可能に変形するように構成される、車両用多機能装置。
【請求項2】
前記マフラーは、インコネル又はチタンを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記マフラーは、少なくとも800℃の温度で制御可能に変形するように構成された材料を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記マフラーは、3D印刷される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記マフラーは、前記マフラーが3D印刷された後に前記本体の中空部分内からルース粉末を除去することを可能にする複数の粉末孔を含む、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記本体の外表面を取り囲み、エアギャップによって前記外表面から分離された、共に印刷された放射シールドを更に含む、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記放射シールドは、前記本体に適合するように成形され、前記マフラー内の排気ガスによる熱放射の流出を減少させるように構成された、壁を含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記車両の後方衝突経路に配置されるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記本体の横軸は、2つのクラッシュレールの間に配向され、後方の車両バンパーに隣接するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記本体の縦軸は、エンジンと前記後方の車両バンパーとの間に配置されるように更に構成される、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記本体に結合され、前記マフラーを、前記後方バンパーの近くの2つのクラッシュレールの間に懸架するように構成された、サスペンション構造を更に含む、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記サスペンション構造は、前記マフラーを前記車両のシャーシから分離するように更に構成される、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記壁の少なくとも一部は、後方衝突イベントの方向軸に整列するように構成され、制御された前記変形がエネルギー吸収を増加させることを可能にする、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記壁は、予測された衝突イベントの方向に平行な方向から0°~45°(度)の角度内で整列する、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記衝突イベントの方向に対して非垂直の方向コンポーネントを有する前記本体の領域は、前記衝突イベント時に制御可能に変形するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記本体の領域は、後壁及び側垂直壁を含む、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記入口パイプ又は前記出口パイプの少なくとも一方の部分は、前記衝突イベント時に変形することによってエネルギーを吸収するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記壁及び前記共振器セルは、(i)衝突イベント時のエネルギー吸収及び(ii)車両騒音抑制を最大化するように配向およびサイズ設定される、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
車両用多機能騒音抑制及びエネルギー吸収構造であって、
マフラーを備え、前記マフラーは、本体と、入口パイプと、出口パイプと、共振器セルのアレイを画定する前記本体内の複数の内壁と、を含み、
前記内壁は、衝突時に変形することによってエネルギーを吸収するように構成される、車両用多機能騒音抑制及びエネルギー吸収構造。
【請求項20】
前記共振器セルは、前記入口パイプと前記出口パイプとの間に配置され、排気ガスがそれらの間を流れることを可能にする、請求項19に記載の構造。
【請求項21】
前記本体は、前記車両のクラッシュレールの間に縦方向に配置され、衝突時に前記クラッシュレールにより吸収されたエネルギーを減少させるように構成される、請求項19に記載の構造。
【請求項22】
前記本体は、外部表面を定めるように配置された複数の外壁を含む、請求項19に記載の構造。
【請求項23】
前記外壁のうちの1つ以上は、衝突時に制御可能に変形するように構成される、請求項22に記載の構造。
【請求項24】
前記入口パイプ及び出口パイプの少なくとも部分は、衝突時に制御可能に変形するように構成される、請求項22に記載の構造。
【請求項25】
前記本体に結合され、後方衝突の平面内で前記後方バンパーとエンジンとの間に前記マフラーを懸架できるように構成された、サスペンション構造を更に含む、請求項22に記載の構造。
【請求項26】
前記マフラーは、少なくとも1000℃の温度である間に、衝突時にエネルギーを吸収するように構成された材料を含む、請求項19に記載の構造。
【請求項27】
前記マフラーは、3D印刷される、請求項19に記載の構造。
【請求項28】
前記マフラーは、前記マフラーが3D印刷された後にルース粉末を除去することを可能にするように構成された複数の粉末孔を含む、請求項27に記載の構造。
【請求項29】
前記本体の外表面上に共に印刷された放射シールドを更に含み、前記放射シールドと前記本体の外表面との間にエアギャップを形成する、請求項27に記載の構造。
【請求項30】
前記内壁の少なくとも一部は、予測された衝突方向に整列するように構成される、請求項19に記載の構造。
【請求項31】
前記内壁は、予測された衝突軸に対して45°(度)以下の角度をなすように構成される、請求項19に記載の構造。
【請求項32】
二重機能マフラーであって、
ハウジングと、
入口パイプと、
出口パイプと、
共振器セルを定める複数の内壁と、を含み、
前記内壁は、衝突イベント時に変形するように構成される、二重機能マフラー。
【請求項33】
前記ハウジングの横軸は、後方のクラッシュレールの間に配置され、前記マフラーが前記クラッシュレールによって吸収されたエネルギーを減少させ、衝突イベント時に車両の乗客キャビンを保護することを可能にするように構成される、請求項32に記載のマフラー。
【請求項34】
前記内壁は、前記ハウジングの水平方向及び前記ハウジングの垂直方向に沿って配置され、前記共振器セルの少なくも一部分を形成し、
水平に配置された前記内壁は、前記ハウジングの後表面から前記ハウジングの上表面に向かって移動するとき、より密集した壁及びより小さな共振器セルが前記上表面の近くに存在するように、徐々に互いにより近い間隔で配置される、請求項32に記載のマフラー。
【請求項35】
前記ハウジングの上表面は、後表面よりも衝突イベントの方向により近く整列するように構成される、請求項34に記載のマフラー。
【請求項36】
前記入口パイプと、前記出口パイプと、前記ハウジングと、のうちの1つ以上は、衝突イベント時に制御可能に変形するように構成される、請求項34に記載のマフラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年2月18日に出願された、名称が「IMPACT ENERGY ABSORBER WITH INTEGRATED ENGINE EXHAUST NOISE MUFFLER」である米国仮特許出願第62/978,232号、及び、2021年2月17日に出願された、名称が「IMPACT ENERGY ABSORBER WITH INTEGRATED ENGINE EXHAUST NOISE MUFFLER」である米国特許出願第17/178,048号の利益及び優先権を主張し、それらの内容全体は、本明細書に完全に記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、付加製造システムに関し、より具体的には、車両における多機能マフラー及びクラッシュ構造に関する。
【背景技術】
【0003】
車両メーカーにとって、燃料経済性と性能に関連する基準により、車両の質量を可能な限り最小化することが望まれることが多い。多くの車両タイプでは、質量又はサイズを最小化することは、一般的なものであろうと、特定のコンポーネントに関するものであろうと、固有の利点がある。これらの技術は、コンポーネントの配置又は乗客キャビンに利用可能な全体的なスペース全体を最大化するなど、他の利点を提供することもできる。当然のことながら、車両の質量を最小化し、コンポーネントのスペースを最適化する新しい方法を見つけることは、現在進行中の工学的課題である。これらの目的は、他の製造要件が現実的な問題として、又は必然的に車両のフォームファクタを増加させることにより、質量を増加させる可能性があるため、部分的に残っている可能性がある。例えば、安全規制により、衝突時に変形することによってエネルギーを吸収するクラッシュ構造を組み込んだクランプルゾーンを車両に設けることが求められる場合がある。クラッシュ構造は、車両のサイズ及び質量を増加させる。他の周知の基本的な車両コンポーネントと合わせて、車両の質量及びサイズは、可能であれば、結果として得られる車両の質量をわずかにでも減少させることができれば、メーカーにとって大きな価値となるような形で最終的に積み重なる可能性がある。
【0004】
本開示は、当該技術分野におけるこれらの欠点及び他の欠点に対処する。
【発明の概要】
【0005】
以下、1つ以上の態様の基本的な理解を提供するために、そのような態様の簡略化された概要を示す。この概要は、全ての考慮された態様の広範な概要ではなく、全ての態様の主要又は重要な要素を特定することも、任意又は全ての態様の範囲を詳述することも意図しない。その唯一の目的は、後に示されるより詳細な説明への前置きとして、1つ以上の態様のいくつかの概念を簡略化された形態で示すことである。
【0006】
本開示は、マフラーとしてエンジン騒音を抑制し、クラッシュ構造として衝突に応答して制御可能に変形する、車両用多機能装置に関する。多数の他の利点の中で、多機能装置は、車両の質量及びサイズを減少させながら、キャビン内の乗客を衝突から保護し、日常の車両操作で発生する排気騒音の音量を低減するのを助ける。多機能装置は、自動車の異なる領域に配置されてもよいが、様々な実施形態では、装置は、予想される後方衝突の平面内で後方バンパーとエンジンとの間に装置を配置することを可能にするマウントを含む。
【0007】
本開示の一態様では、車両用多機能装置は、マフラーを含む。マフラーは、共振器セルのアレイを画定する複数の壁を有する本体を含む。共振器セルは、入口パイプと出口パイプとの間に配置され、排気騒音を抑制する。壁は、衝突イベント時に制御可能に変形するように構成される。
【0008】
本開示の他の態様では、車両用多機能騒音抑制及びエネルギー吸収構造は、マフラーを含む。マフラーは、本体と、入口パイプと、出口パイプと、共振器セルのアレイを画定する本体内の複数の内壁とを含む。内壁は、衝突時に変形することによってエネルギーを吸収するように構成される。
【0009】
本開示の更に他の態様では、二重機能マフラーは、ハウジングと、入口パイプと、出口パイプと、共振器セルを定める複数の内壁とを含み、内壁は、衝突イベント時に変形するように構成される。
【0010】
前述及び関連する目的を達成するために、1つ以上の態様は、以下に完全に説明され、特に特許請求の範囲で指摘される特徴を含む。以下の説明及び添付の図面は、1つ以上の態様の特定の例示的な特徴を詳細に示す。しかしながら、これらの特徴は、様々な態様の原理が使用され得る様々な方法のほんの一部を示しており、この説明は、そのようなの態様及びそれらの等価物を全て含むことを意図する。
【0011】
多機能騒音抑制及びクラッシュ構造の様々な態様は、添付の図面において、限定ではなく、例として、詳細な説明に示される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】騒音抑制及び衝突エネルギー吸収のための多機能装置の例示的な配置を示す車両の側面図である。
図1B】多機能装置の例示的な配置を示す車両の上面図である。
図1C】車両の後方におけるコンポーネントの配置を示す上面図である。
図1D】衝突イベント後の車両の後方のコンポーネントの配置を示す上面図である。
図2】排気騒音抑制及びエネルギー吸収のための多機能装置の正面斜視図である。
図3】クラッシュレールに隣接する多機能装置の側面斜視図である。
図4】入口排気パイプの周りの共振器ボリュームをより詳細に示す、多機能装置の断面図である。
図5】入口パイプの内部と、共振器セルを画定する内壁とを示す、多機能装置の後面断面図である。
図6】エネルギー吸収のための傾斜した共振器壁を示す、多機能装置の上面断面図である。
図7図7Aおよび図7Bは、それぞれ、衝突イベントの前と後のクラッシュレールの一部分に隣接する多機能装置の側面斜視図である。
図8図8Aおよび図8Bは、それぞれ、後方衝突イベントの前と後のクラッシュレール部分に隣接する多機能装置の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付の図面に関連して以下に記載される詳細な説明は、本明細書に開示される概念の様々な例示的な実施形態の説明を提供することを意図しており、本開示が実施され得る唯一の実施形態を表すことを意図するものではない。本開示で使用される「例示的な」及び「例」という用語は、「例、実例、又は例示として役立つ」ことを意味し、他の可能な構成を排除し、又は本開示で示される他の実施形態よりも好ましい又は有利であると解釈されるべきではない。詳細な説明は、当業者に概念の範囲を完全に伝える徹底的かつ完全な開示を提供する目的で、特定の詳細を含む。しかしながら、本開示は、これらの特定の詳細なしに実施されてもよい。いくつかの実例では、本開示を通じて示される様々な概念を曖昧にすることを避けるために、周知の構造及びコンポーネントは、ブロック図の形態で示されてもよく、完全に省略されてもよい。
【0014】
本開示の原理は、様々な実施形態では、三次元(3D)印刷され得る構造を含む。本開示は、この目的のために、溶融堆積モデリング(FDM)、デジタルライトプロセッシング(DLP)、ステレオリソグラフィー/マスクステレオリソグラフィー(SLA、MSLA)、粉末床溶融結合(PBF)プリンタ(選択的レーザー焼結(SLS)、直接金属レーザー焼結(DMLS)、選択的レーザー溶融(SLM)、電子ビーム溶融(EBM)を含む)、バインダージェッティング、マテリアルジェッティング(MJ)、ドロップオンデマンド(DOD)などを含むが、これらに限定されない様々な3D印刷技術に適用されてもよい。本開示の目的のために、「車両」は、全てのタイプの自動車(例えば、セダン、スポーツカー、レースカー、スポーツユーティリティビークル、コンバーチブルミニバン、ステーションワゴン、バン、ハイブリッドカー、及び利用可能なあらゆるタイプの民生用又は商業用自動車)を含むように広く解釈され、ピックアップトラック、大型トラック、商用トラック、及び一般にあらゆるタイプの民生用又は商業用輸送構造も含まれる。車両には、電車、バス、ミニバス、地下鉄、及び他のそのような輸送機関などの全ての公共輸送機関も含まれる。
【0015】
本開示は、車両用多機能装置に関する。
【0016】
多機能装置は、エンジン騒音を抑制することによって車両用マフラー機能を実行すると共に、予測された衝突方向に整列し、衝突イベントに応答して制御可能に変形することによってクラッシュ構造として機能することができる。従来のマフラーは、衝突時に制御可能に変形するように設計されておらず、ましてクラッシュイベントにおいて乗客の保護を支援するためのものではない。従来のマフラーが衝突時に乗客キャビンのエリアに与える影響は、マフラーが衝突軸内に配置されていたとしても、従来のマフラーを設計する際には考慮されていないクラッシュ構造を決定する詳細な設計上の考慮事項を考えると、せいぜい予測不可能である。マフラーの影響は、マフラーが衝突軸内に配置されている場合、乗客に有害である可能性さえある。
【0017】
したがって、自動車の従来のマフラーが通常、排気マニホールドの一部として車両の底部に向かって、予測された典型的なクラッシュ又は衝突イベントの平面よりも下に配置されることは、驚くべきことではない。したがって、これらの従来の構造は、衝突による乗客キャビンのエネルギー吸収特性に影響を与える可能性が低い。更に、通常の運転では、排気ガスがマフラーを通過するため、マフラーの温度が上昇する。その結果、マフラーは、機械的特性が低下し、クラッシュイベント時の性能が弱くなる。これらの理由から、マフラーは、従来、排気騒音を抑制するという専用の機能を果たすために追いやられており、衝突の可能性のあるゾーンに別のクラッシュ構造が存在する。
【0018】
典型的なマフラーは、選択的に配置されたチューブ、チャネル、及びチューブとチャネルとの間に配置されたホールのアレイと、1つ以上の入口パイプと、1つ以上の出口パイプとで構成される。入口パイプは、エンジンからの排気ガスを、自動車のエンジンシリンダ内のガソリンの爆発から生じる音波と共に、マフラーに取り込む。マフラーは、選択的にサイズ設定されて配置された共振器セルを使用する。共振器セルは、予め設計された共振音の周波数に関連付けられており、排気中の音波の特定の共振周波数を減衰させる。一部のマフラーは、音波を受信し、結合し、相殺するエコーチャンバーとして共振器セルを使用することがある。マフラー内の多数の共振器は、排気騒音に関連する様々な異なる共振周波数を減衰できることを意味する。減衰量、即ち、デシベル単位での騒音抑制量は、マフラー内のチャンバーの数に比例する。騒音のピッチを決定する減衰の周波数は、チャンバーの数ではなく、これらのチャンバーのサイズに基づいている。適切な範囲の共振器の数とサイズを選択することにより、マフラーは、大きなエンジン騒音を消すことができる。
【0019】
マフラーとは対照的に、クランプルゾーン又はクランチゾーンとも呼ばれるクラッシュ構造は、エネルギーの矛先が乗客キャビンに伝達されて車両の乗客が重傷するか又は死亡することを防止するために、衝突イベント時の急激なエネルギーの爆発を吸収するために使用される構造上の安全機構である。クラッシュ構造は、例えば、後方衝突に応答して、制御可能に変形する壁を有するように設計することができる。クラッシュ構造は、計画又は法的な命令によって、車両の様々な箇所に配置されることがある。計画的に配置されたクラッシュ構造は、この制御された変形を使用して乗客が減速する時間を効果的に増加させ(例えば、「クラッシュパルス」又は乗客の急激な減速を減少させる)、乗客エリアにかかる最大の力を効果的に減少させることができる。クラッシュ構造は、車両の乗客を保護するために、潰れることによって損傷を受けるように意図的に設計される。クラッシュ構造は、ボックスタイプ又は長方形の構造、ならびにレールベースの構造を含んでもよい。
【0020】
マフラーがクラッシュ構造として使用されていないのとほぼ同じように、従来のクラッシュ構造は、排気騒音抑制のために使用されておらず、その機能もなく、後者は、示されるように、望ましくない車両騒音を抑制するために排気ガスの経路内に配置された特別設計の共振器セルを典型的に使用するものである。現在の車両は、これらの2つの目的のために、異なる領域に配置された別々のコンポーネントを使用しており、これらの両方は、車両コンポーネントの全体的なスペース及び利用可能性を考慮する際に、考慮されなければならない。
【0021】
一般に、複数の無関係な機能を実行する自動車部品を製造する際の別の過去の障害は、そのような複合設計が複雑であり、機械加工、鋳造、又は押出のような従来の製造技術を使用して実際的に実現できないことである。例えば、クラッシュ構造とマフラーの両方は、それらの所望の目的を達成するために特別に設計された構造を有する。機械加工及び同様の技術を使用して、これらの2つの機能を実行できるような高度な幾何学的ハイブリッド構造を作成することは、困難又は不可能である。このような試みられた設計を悪化させる要因は、最終的な結果が、騒音抑制のために排気ガスを適切に受けて排除するために車両内で正しい方向に配向されること、及び、マフラーが高温である間に発生する高エネルギーの衝突のため制御可能に変形する材料も含むことを確保しなければならないことである。例えば、マフラーに使用されている現在の材料は、従来のマフラーが潰れるように設計されていないため、周囲温度では制御可能に変形しない可能性があり、ましてマフラーの動作温度が非常に高い状態では制御可能に変形しない可能性がある。
【0022】
本開示の一態様では、多機能装置は、排気騒音の抑制に使用できると共に、衝突イベント時に制御可能に変形するように構成されたクラッシュ構造として使用できる本体を含む。従来のクラッシュ構造とは異なり、使用される材料は、軽量化でき、後述するように、多機能装置が衝突平面に正確に配向される場合、隣接するクラッシュレールも同様に、小型化及び軽量化できる。マフラーとクラッシュ構造の組み合わせにより、車両内のコンポーネントの数を減少させ、その結果、車両内の利用可能なスペースを増加させながら、車両の質量を減少させることができる。
【0023】
そのような構造を製造する際の潜在的な課題に対処して必要な幾何学的精度を含むように、いくつかの実施形態では、多機能装置は、三次元(3D)印刷されてもよい。構造のコンピュータ支援設計(CAD)モデルは、マフラー及びその付随する共振器セルの詳細を実現すると共に、クラッシュ構造の機能性を特徴付ける制御可能な変形の正確なエネルギー吸収特性を達成するために必要な構造を収容するように、慎重に設計することができる。このモデルは、3D印刷する前にシミュレーションを行い、設計を洗練させることができる。多機能装置の3D印刷の性質は、多機能装置が低いか又は高い動作温度にあるときに制御可能に変形する材料を使用してもよい。
【0024】
付加製造(AM)としても知られる3D印刷は、機械加工などの従来の製造プロセスに頼って作成することが困難又は不可能な一部の形状を含む、幾何学的に複雑な形状の構造(ビルドピースと呼ばれる)を作成することができる。AM部品は、有利には、部品が目標用途のために特別に調整された特性を有することを可能にする材料を使用して、多様な幾何形状及び組成で印刷することができる。ここでは、壁は、適切な特性を有する共振器セルを形成するように設計されるだけでなく、クラッシュ構造として必要なときに制御された方法で潰れるように設計することができる。
【0025】
前述のように、従来のマフラーは、主要な衝突軸から離れて配置されるため、車両の全体的な衝突プロファイルに対する影響がたとえあるとしても、わずかである。対照的に、本明細書に記載の多機能装置は、それが予測された衝突の平面内の車両の後方に独自かつ直接的に配置されることを可能にするマウントを備えてもよい。いくつかの例では、多機能装置は、車両の横方向(左右方向)において2つのクラッシュレールの間に配置され得る一方で、車両の縦方向(前後方向)においてエンジンと後方バンパーとの間にも配置され得る。いくつかの実施形態では、介在するコンポーネントがあってもよい。多機能装置は、衝突からエネルギーを吸収するように配置される場合、クラッシュレールのサイズ及び質量の必要性を有利に減少させることができる。これは、多機能装置が、衝突イベントが発生した場合に、クラッシュレールと衝突を共有することができるからである。
【0026】
図1Aは、騒音抑制及び衝突エネルギー吸収のための多機能装置104の例示的な配置を示す車両100Aの側面図である。側面図は、クラッシュレール又はフレームレールとしても知られるクラッシュレール102を、見る人に近い平面内の車両の一側に示す。いくつかの実施形態では、装置104は、代わりに、クラッシュレールの端部と後方バンパー108との間に配置されてもよい。ここで、多機能装置104は、車両100Aの後方部分に配向され、隣接するフレームレール102と共に、衝突によるエネルギーを吸収するように構成される。同時に、本明細書で説明するように、装置104は、近くのエンジンからの排気を受け、その出口の1つから排気を排出する前に、大きなエンジン周波数を抑えるように構成される。
【0027】
図1Bは、多機能装置104の例示的な配置を示す車両100Bの上面図である。上面図は、追加の詳細を示す。様々な実施形態では、エンジン114は、一端の乗客キャビン124と他端の後方バンパー領域130との間に車両100Bの縦軸Xに沿ってエンジンマウント123を介して取り付けられる。縦軸Xに沿って、エンジン114と後方バンパー領域130との間に多機能装置104がある。クラッシュレール102は、多機能装置104の各側で縦軸Xに沿って延びてもよい。クラッシュレール102は、車両100Bのシャーシ110に結合される。エンジン114もシャーシ110の両側に沿って横軸Yの方向に取り付けられる。多機能装置104は、エンジンからエンジン排気を受け、車両100Bの後方で排気を排出するように配向される。多機能装置104は、後方衝突の平面内にあるように更に配向される。
【0028】
図1Cは、車両の後方におけるコンポーネントの配置を示す上面図である。
【0029】
この実施形態では、後方バンパー125は、横軸Yの方向にほぼ沿って延びるように示される。前述のように、クラッシュレール102は、縦軸Xに沿って車両の各横側に延びており、シャーシ部分116に結合される。多機能装置104は、後方バンパー125とエンジン114との間に示される。様々な実施形態では、多機能装置104は、装置104の側面の取付具を使用して、その横側に沿って取り付けられてもよい。示されるような他の実施形態では、多機能装置104は、オーバーヘッドサスペンションマウント123を含んでもよい。オーバーヘッドサスペンションマウントは、多機能装置104が横方向Yにクラッシュレール102の間に車両内に懸架されるように配置されるように、車両100Cの上部後方領域内のロッド又は他の固定構造に結合するために使用されてもよい。多機能装置104は、入口パイプ142及び出口パイプ144も含む。入口パイプ142は、エンジンからの排気パイプに結合される。複数の入口パイプが使用されてもよい。この実施形態では、出口パイプ144は、エンジンからの排気ガスを車両の後方に向かって運び出す。様々な実施形態では、入口パイプ142又は出口パイプ144は、多機能装置104、エンジン114及び排気システムの設計に応じて、1対多又は多対1の方式で排気ガスを運ぶマニホールドを含んでもよい。
【0030】
図1A~1Cから明らかなように、これらの実施形態では、多機能装置104は、一方の側の後方バンパー125と、他方の側のエンジン114及び更に下にある乗客キャビンとの間の後方衝突の平面に配置される。いくつかの実施形態では、多機能装置104は、後方バンパーに密接に隣接してもよく、更に接触してもよい。いくつかの実施形態では、多機能装置104は、横方向にクラッシュレール102の間、縦方向にエンジン114と後方バンパー125との間に懸架され、空間的に効果的に分離されてもよい。この空間的分離は、有利には、排気の放射及び熱エネルギーを車両の低温コンポーネントから遠ざけ、熱暴露によるコンポーネントの損傷の可能性を最小化する。この配置は、本質的に例示的なものであり、異なる実施形態では、多機能装置は、車両の他の衝突ゾーン又はクランプルゾーンに配置されてもよい。図1A~1Cに示される実施形態は、多くの管轄区域において、規制法が多機能装置104によって示される領域にエネルギー吸収構造の存在を要求するという点で有益である。更に、多機能装置104は、クラッシュレールと組み合わせて使用して、乗客キャビン124(図1B)への衝突によるエネルギーの伝達を減少させることができる。
【0031】
装置が加熱されると、高温の排気ガスによって引き起こされる熱膨張により、装置が拡張して、サイズが数ミリメートル増大することがあるため、多機能装置を分離することも重要であり得る。いくつかの実施形態では、増大は、数ミリメートルであり得る。インコネル及び他の特定の金属合金は、装置を3D印刷するための良好な候補材料である。例えば、インコネルは、1000°Cの温度に耐えることができる。
【0032】
図1Cは、後方バンパー125が車両のシャーシ116に結合された2つのクラッシュレールによって支持されることも示す。通常の車両運転中、多機能装置104は、マフラーとして機能し、エンジン114から入口パイプ(排気経路は、明確にするために、省略される)を介して排気ガスを受け、内壁によって画定された共振器セルを使用してエンジン騒音を抑制及び/又は相殺し、パイプ144を介して排気を排出することを可能にし、パイプ144は、排気を車両外に導くために、マニホールド又は他の排気システムに結合されてもよい。
【0033】
多機能装置104は、材料特性が排気ガスの高温を含む車両の動作温度に耐えるのに十分であり、かつ制御可能に変形しようとする1つ以上の材料で構成される。したがって、様々な実施形態では、多機能装置の材料は、インコネル、チタン、又は他の材料で構成される。インコネル又は同様の金属合金を使用することは、有利には、装置104がマフラーとして適切に機能し、後方衝突の場合に正確に潰れ(crumple)、その間ずっと、比較的低い質量を維持することを可能にする。ほとんどのクラッシュ試験は、車両がその動作温度(マフラーで約800℃)にあるときではなく、エンジンが冷えているときに実行されることに注目すべきである。多機能装置104は、装置104が高温の排気ガスを受ける間に、車両がまだ比較的低温にあるか、又は既に完全な動作温度にあるかに関係なく、発生する高エネルギー衝突時に制御可能に変形するように製造することができる。
【0034】
様々な実施形態では、多機能装置104は、例えば粉末床溶融結合(PBF)を使用することにより、3D印刷される。印刷材料は、インコネル、他のニッケル合金、チタン、又は同様の材料であるように選択されてもよい。望ましい特徴としては、適度に低い質量、高い温度耐性、及び広い動作温度範囲にわたって制御された変形を受けることを可能にする柔軟性が挙げられる。例えば、インコネルは、一般に、1000°C以上の範囲で機能する。
【0035】
多機能装置104のCADモデリング中、その内部構造(後述)を含む多機能装置104は、様々な実施形態では、2つの大域的最適値、即ち、衝突エネルギー及び排気エネルギーが最適化される。したがって、1つ以上の最適化アルゴリズムは、装置104のCADモデルと共に使用して、これらの2つの基準を最適化することができる。
【0036】
引き続き図1Cを参照すると、一実施形態では、多機能装置104は、装置104の近くの任意の剛性構造によって車両に取り付けられてもよい。この構造は、一実施形態では、異なる機能を実行してもよく、多機能装置104に安全に接続されて装置を定位置に維持するために使用されてもよい。例えば、オーバーヘッドサスペンションマウント123は、高い耐熱性を有する鋼又は合金ベースのサスペンションロッド134に結合されてもよい。サスペンションロッド134は、次に、図1Cでサスペンションベース132として参照される、上述した剛性構造に結合されてもよい。サスペンションベース132は、サスペンションロッド134に接続されて安全な接続を形成することができる任意の剛性体であり得る。サスペンションベース132は、シャーシ116から装置104を分離することが望ましい場合、シャーシ116の一部である必要はない。他の実施形態では、多機能装置104のマウントは、代わりに側面に配置され(図2、3を参照)、これらの実施形態の側面マウントはそれぞれ、より安全な取付プラットフォームを実現するために、両側でサスペンションベース132又は他の構造に接続され得る。要するに、装置104を効果的に固定及び取り付けてその適切な配向に確実に懸架するように、任意の数の実施形態を使用することができる。
【0037】
図1Dは、衝突イベント後の車両の後方部分100Dにおけるコンポーネントの配置を示す上面図である。後方バンパー125が、後方衝突などによって十分な量だけ偏向されると、多機能装置104及びクラッシュレール102は、上記で定義したように、縦方向に変形する。様々な構成では、多機能装置は、クラッシュレール102をより薄く、より短くすることができるように、インコネルのような十分に強い材料から作ることができる。これにより、車両全体の質量が有利に減少する。多機能装置が車両の後方に配置される実施形態では、装置は、衝突の負荷が異なるコンポーネントに分散され得るように、クラッシュレール102を補助することができる。例えば、様々な実施形態では、多機能装置104は、衝突エネルギーの60~75%を吸収できるように設計することができ、クラッシュレール102はそれぞれ、残りの25~40%の約半分を吸収するだけでよい。したがって、多機能装置104は、クラッシュレール102の長さ及び幅を縮小することを可能にすることによって、車両に追加の利点を与えることができる。これにより、更に、車両全体の質量の減少を可能にする。
【0038】
図示の実施形態では多機能装置104が最適に配置される他の理由は、一般に、エンジン114及びそれが結合されるトランスミッション(図示せず)が一般に硬すぎてクラッシュ構造として機能しないからである。したがって、エンジン及びトランスミッションは、衝突時に適切に変形又はクラッシュしない。この理由から、エンジン114が単純に後方バンパー125の前に配置されることは、強い衝突により、エンジンが乗客キャビンに向かって投射物として機能する可能性があるため、望ましくない。代わりに、多機能装置104を後方バンパー125とエンジン114との間に配置することにより、「クランプルゾーン」をエンジン及びトランスミッションの縦方向の後ろにすることができる。そして、多機能装置104は、エネルギー衝突の矛先を受けることから、エンジン、更に重要なことには、乗客キャビンを保護するように構成することができる。
【0039】
図2は、排気騒音抑制及びエネルギー吸収のための多機能装置200の正面斜視図である。装置200の表面上の「横軸Y」の指定によって明らかにされるように、装置200の長辺は、装置200が(図1A~1Dのように)後方バンパー125とエンジン114との間に「挟まれる」ように配置されてもよい。上述のように、多機能装置200は、装置200が排気経路に合理的に接続されることのみを条件として、クランプルゾーン要件がある別の位置など、他の実施形態では車両内の異なる位置及び方向に配置されるように構成されてもよい。多機能装置200が3D印刷される場合、装置200の3D印刷により、機械加工又は押出成形のような、より従来の減法製造技術に関連する高価で手間のかかる制限なしに、構造の周囲及び内部に複雑な幾何形状を追加することが可能である。
【0040】
更に、様々な実施形態では、多機能装置は、複数の粉末除去孔202を含む。粉末除去孔202は、元の多機能装置200と共に3D印刷されたものであり得る。3D印刷の後、粉末床溶融結合を含むような様々なタイプの印刷では、装置200の中空チャンバー内にルース粉末が残る可能性が高い。粉末除去孔202は、メーカーが多機能装置200の内部からルース粉末を(吸引するか又は他の方法で)除去することを可能にするように構成される。残留粉末を含む可能性がある装置200の各チャンバーに対して、1つ以上の粉末除去孔202を利用可能にすることができる。この残留粉末が真空吸引されるか、又は他の方法で除去された後、粉末除去孔202は、適切な接着剤又は他の手段を介して溶接閉鎖されるか、又は他の方法で密封され得る。
【0041】
引き続き図2を参照すると、多機能装置200は、多機能装置200の大部分を取り囲む外側ハウジング210を含んでもよい。ハウジング210は、多機能装置200を保護し、多機能装置200内に排気熱及び騒音を封じ込めるのを助けるために、より厚く作られてもよく、追加の壁(以下を参照)を含んでもよい。装置200は、一般に、車両の前方に向かって面してもよい前壁219を含む。装置200の垂直方向の位置は、後方衝突による最大力の予測された方向又は識別された平面に部分的に依存してもよい。前壁219は、エンジンに面してもよい。
【0042】
多機能装置200は、装置200が実際にクラッシュレールに接触する必要はないが、クラッシュレール軸271に沿って整列することができる端部258を更に含む。これらの実施形態に示すように、各端部258は、凹部262を含むことができ、その中に取付機構204を組み込んで、車両内の安定した構造に装置200を取り付けることができる。したがって、サスペンションマウントが多機能装置200の上部に配置された図1Cの実施形態の参照とは異なり、これらの実施形態における取付機構204は、装置200を定位置に十分に固定するために、追加的又は代替的に端部258に含まれ得る。上述のように、いくつかの実施形態では、多機能装置200をシャーシから少なくとも部分的に分離することにより、衝突から受けた力の全てがシャーシに伝達されることを防止することが望ましい。したがって、様々な実施形態では、装置は、シャーシから独立する可能性がある固定具、ロッド、又は他の構造に取り付けられてもよい。
【0043】
引き続き図2を参照すると、前壁219は、装置200がエンジンの後方部分に隣接している状態で、車両の前方296に向かって面してもよい。従来のマフラーのように、エンジンでの排気出口を入口パイプ208に確実に結合するために、排気パイプ又はマニホールド(図示せず)が使用されてもよい。いくつかの実施形態では、排気パイプは、入口パイプ208に溶接されてもよい。他の実施形態では、高温に耐えるように設計された接着剤は、パイプを接続するために使用されてもよい。更に他の実施形態では、任意の数のタイプの機械的ファスナー(ネジ、ナット、ボルトなど)は、接続を実現するために使用されてもよい。
【0044】
車両の後方298に向かって、多機能装置200の「屋根状」の上方部分227上の入口パイプ208を補完する2つの出口パイプ206を見ることができる。入口パイプ208がその対応するコンポーネントに固定されるのと同じ方法で、追加の排気パイプのセット(図示せず)は、出口パイプ206に固定することができる。この実施形態では、有利には、車両の後方に面する出口パイプ206は、車両の後部から残留の騒音抑制排気を容易に導くことができる。
【0045】
トラック、列車、及び大型輸送車両などの他の実施形態は、全て本明細書の教示の精神及び範囲から逸脱することなく、上記とは異なる、これらの大型車両に最適な多機能装置の配置技術を使用することができる。
【0046】
引き続き図2を参照すると、上方部分227は、装置200の内壁の延長部であり得る補強リブ266を示すことができる。
【0047】
一般に、装置200がクラッシュ構造として有用であるためには、クラッシュに応答して制御された方法で潰れ、受けられた運動エネルギーを吸収するように設計された構造を含むべきである。エネルギーの吸収を成功させるためには、衝突を与える構造は、衝突の方向に沿った力と距離の積である「仕事」をクラッシュ構造に与えることが可能でなければならない。これらの理由から、装置200の前壁219のような衝突(例えば、後方向きの衝突)の方向に垂直に延びる構造は、前壁219が縦方向の衝突方向190(図1C)に垂直になるように配置されることで、前壁が、受けた力が貫通するための距離を提供しないため、クラッシュの際に利点があったとしてもほとんどない。したがって、運動量は、単に方向190に前進し続ける。しかしながら、同じ理由から、多機能装置200(図2)の外端部258、後部285、及び上方部分227は、これらの外部構造のそれぞれが後方衝突の方向190に沿った方向コンポーネントを有するため、後方衝突イベントに応答する全体的な制御された変形に積極的に寄与するように構成することができることも事実である。したがって、それらは全て、衝突から様々な量の運動エネルギーを吸収し、乗客キャビンに向かって前進する運動量を効果的に減少させることができる。しかしながら、以下に説明するように、多機能装置200の内部領域は、後方衝突に応答するほとんどの保護を提供するように設計される。
【0048】
完全を期すために、クラッシュの方向は、統計的に確信をもって予測することができるが、それは全ての事例において確実に知られているわけではないことに留意されたい。例えば、衝突の実際の方向が常に直接的に後方からとは限らないため、多機能装置の様々な部分が提供できる保護のレベルは、状況によって異なる。例えば、車両の側面(横)の衝突により、上方部分227と同様に垂直に構成された前壁219が潰れるため、エネルギーを吸収する可能性があり、その場合、前壁219及び上方部分227が重要であることを意味するが、同じ場合、端部258及び他の部分は、側面衝突を抑えるのにほとんど役に立たない。しかしながら、車両の前面及び側面からの衝突を含む異なる方向からの衝突に対応するように設計された車両には、(エアバッグ、シートベルトなどの他の安全対策と共に)乗客保護のために、追加の又は異なるクランプルゾーンが存在することが多い。
【0049】
図3は、クラッシュレールに隣接する多機能装置300の側面斜視図である。図示の概念を不当に不明瞭にすることを避けるために、この図では、クラッシュレール360のうちの1つの部分のみが見えるようになっていることを理解されたい。第2のクラッシュレール方向370は、装置300の他方の側に示される。多機能装置300は、先の実施形態と同様に、入口パイプ308及び一対の出口パイプ306を含むことができるが、この構成は例示的なものであり、入口パイプ又は出口パイプの異なる数及び位置が可能である。この実施形態では、各端部358は、複数の接続機構367を含む。接続機構367は、多機能装置300を懸架するか、又は衝突平面内に、例えば、後方バンパーに隣接して多機能装置300の位置を固定するために使用されてもよい。入口パイプ308はまた、車両の前方396に向かって面することにより、エンジンの排気を入口に直接的に導くことができる。出口パイプ306は、上方部分327の反対側の表面上にあり、車両の後方398を向いていてもよい。示された実施形態はまた、ハウジング310の表面上に斜めに間隔をあけた線を含む。斜めに間隔をあけた線は、リブ334であってもよい。リブ334は、いくつかの実施形態では、エネルギー吸収及び騒音抑制の両方の目的のために使用される内壁の延長に対応してもよい。他の実施形態では、リブ334は、単にハウジング310の補強層の一部であってもよい。
【0050】
図4は、入口排気パイプ408の周りの共振器ボリューム410を示す、多機能装置400の断面図である。図4は、例えば、共振器セル410及び二重壁熱シールド407を明らかにするために除去された外壁の一部分を示す。様々な実施形態では、二重壁熱シールド407の外壁は、内壁の外表面上に延びて、適合するように構成され、エアギャップによってのみオフセットされる。二重壁熱シールド407は、熱放射シールドとして機能し、高い排気温度から外部コンポーネントを保護するのを助ける。様々な実施形態では、2つの外壁の間にエアギャップが含まれてもよい。エアギャップは、断熱材として機能してもよい。装置全体を過剰な熱放射から保護するために、エアギャップを有する二重壁熱シールド407は、多機能装置400の表面のほとんど又は全ての周りに延びていてもよい。二重壁熱シールドは、熱放射から他のコンポーネントを分離することができる。この保護は、接着剤によって接続されたコンポーネントを使用する車両において特に重要である場合がある。これらの場合には、低温構造を、多機能装置400からの熱によって熱応力がかかることから保護することが重要であり、この熱は、近くの接着剤を軟化させる傾向もあり得る。様々な実施形態では、エアギャップは、過剰な熱を除去するために、排気出口の近くで排気されてもよい。例えば、様々な実施形態では、エアギャップは、空気を受け、熱放射を運び去るために、それ自体の入力ポート及び出力ポートを含んでもよい。図4は、構造の両側に沿って配置された複数の共振器壁404も示す。この実施形態における垂直に整列した共振器壁404は、後方衝突の方向に正確に整列しておらず、むしろ、衝突方向から約45°で整列している。完全な整列からの逸脱は、共振器壁404が衝突に応答して潰れること、及び、正確な共振器セル410を確立することの二重の要件に基づく工学的選択であってもよい。即ち、共振器壁404は、二重の機能を有することができる。第1の機能は、異なる方法で配向された他の共振器壁404と共に、共振器ボリューム410を画定することである。共振器ボリューム410は、本明細書では共振器セルとも呼ばれる。共振器セル410は、音波がセル410に入る際に特定の周波数を減衰させるようにサイズ設定され、成形される。共振器セル410はまた、特定の周波数の音波を受信し、結合し、相殺するように構成されてもよい。共振器壁404の第2の機能は、衝突の結果として制御可能に変形することである。共振器壁404は、水平方向にも垂直方向にも多数配置される。
【0051】
例えば、図4の左側に示すように、装置本体400から突出する水平及び垂直の共振器壁404は、エンジン騒音の異なる共振周波数を減衰させるために異なるサイズ及び形状であってもよい共振器セル410も形成する。様々な実施形態では、内部共振器壁404の全てではないにしてもほとんどが、衝突軸に沿って少なくともいくつかの方向コンポーネントを有するため、必要に応じてクラッシュ構造の一部として使用される。入口排気エアは、排気ガスが対応する共振器セル410に入ることを可能にする入口パイプ404の部分における孔であり得る1つ以上の入口開口459によって、異なる共振器セル410に入ることができる。その結果、共振器セルは、エンジン騒音を減衰させる。図4の断面図を示すために除去されたハウジングの外壁又は部分はまた、露出する共振器壁と交差して、装置400の表面に隣接する追加の共振器セル410を形成することができる。即ち、内壁404は、外壁407に接続されて、表面の近くに追加のセル410を形成することができる。セルを通って流れる減衰された排気は、出口パイプ406を介して装置400の外に導かれる。
【0052】
図4では、装置400の水平及び垂直の共振器壁404のそれぞれは、予測された後方衝突軸に整列する方向コンポーネントを有することが分かる。例えば、右側の共振器壁404は、わずかに傾斜しているが、衝突軸に整列する。その結果、共振器壁404のそれぞれは、衝突イベントが発生したときに所望の特性で制御可能に潰れるように、所望の厚さを含む特徴で慎重に設計することができる。CADモデリング及び適切な最適化ソフトウェアを、3D印刷の精度と共に使用して、共振器壁404は、排気騒音を消音するための共振器セル410、及び、クラッシュ構造の必要な潰れ特性を組み込むための共振器セル410の両方を提供するようにモデル化することができる。更に、入口パイプ408及び出口パイプ406、ならびに二重壁熱シールド407の部分は、衝突軸と少なくとも部分的に整列する特定の方向コンポーネントを有する。したがって、いくつかの実施形態では、パイプ408、406及び熱シールド407の外壁は、CADプロセス中にモデル化され、クラッシュ構造の全体的な効果に寄与することができる。
【0053】
図5は、共振器ボリュームを画定する内壁を示す多機能装置の前面の断面図である。図5は、入口パイプ508の内側部分が見えるように入口パイプ508の一部分に沿って前面側で上から下に垂直に切断された多機能装置500の一部分として見ることができ、入口パイプ508の外側部分は、装置500の上方部分527の近くにある。図示された視点では、入口パイプ508の上方リップ527は、図面の平面の下で内側に湾曲しているため、入口パイプ508の外表面ではなく内表面が露出している。また、この図では、共振器壁504の集中密度は、装置500の後部部分585から始まり、上方部分527まで垂直に移動して増加することが示される。即ち、共振器壁504は、装置500の底部から頂部に向かうにつれて、徐々に互いに接近する。二重壁熱シールド507の断面も、多機能装置500の外周に見られる。入口パイプ508からの排気ガスが異なる共振器セル510を通って流れ、最終的に出口パイプ506から流出することを可能にする多数の開口が示される。
【0054】
図4を参照して説明したように、共振器壁504は、所望の周波数を減衰させるための共振器ボリューム又はセル510を画定するように慎重に設計することができる。更に、本実施形態における水平に配置された共振器壁504は、後方衝突の平行方向に密接に整列する。504aのようないくつかの垂直共振器壁は、内側に角度が付けられているため、衝突の方向から最大約45°傾斜しているように見える。
【0055】
様々な実施形態では、水平に配置された共振器壁504のより密集した部分(即ち、より密集した水平壁504が上方部分527に垂直に接近する)が予測された衝突軸に直接整列するが、衝突軸にも整列する、後部部分585に接近する密集しない共振器壁504が共振器壁504のより密集した部分よりも予測された方向から更にオフセットされるように、多機能装置500は、予測された衝突軸に垂直に配置される。そのようにして、最も密集した共振器壁504は、後方衝突軸に最も密接に整列することにより、クラッシュ構造は、最も密集した壁504がクラッシュエネルギーをより効果的に吸収するために使用できるため、正確に予測された衝突イベントにおいてより効果的である。
【0056】
1つの装置500、例えば多機能装置における機能の組み合わせは、両方の構造の必要性を有利に除去し、さもなければ車両に存在することになる質量を除去する。
【0057】
図6は、多機能装置600の上面断面図である。図6は、共振器壁604を露出させるために上方部分が除去された装置の上部を示す。この実施形態では、共振器壁604は、衝突の方向から最大約45°傾斜してもよい。多機能装置が3D印刷される実施形態では、共振器壁604は、3D印刷される際に、任意の支持構造も必要としないように配向されてもよい。これは、多機能装置を設計している際に、3D印刷ベクトル(即ち、印刷ベッドに対する部品の配向を表すベクトル)を考慮することによって達成され得る。入口パイプ608及び出口パイプ606の切断部分が見える。二重壁熱シールド607も、装置600の周囲を取り囲むように示される。二重壁熱シールド607は、外部コンポーネントへの有害な熱流を防止するように機能することができるが、二重壁熱シールド607は、ガスが共振器セルを通って移動するときに排気からの騒音を減衰させるのにも有用であり得る。粉末除去孔602は、メーカーが印刷ジョブの直後にルース粉末粒子を除去することを可能にする。
【0058】
図7A~7Bはそれぞれ、衝突イベントの前と後のクラッシュレールの一部分に隣接する多機能装置の側面斜視図である。図7Aは、クラッシュレール706Aの一部分にほぼ整列する装置700Aを示す。明確にするために、この実施形態における他の詳細、例えば、装置の取付及び排気システムの残りの部分は、明確にするために省略される。
【0059】
後方衝突イベントの後、装置700Bは、制御可能に変形するために、クラッシュレール706Bと共に設けられる。衝突の重大度は、変形量に比例する可能性がある。乗客キャビン、更に、エンジン及びトランスミッションは、装置700B及びクラッシュレール部分706Bに吸収されたかなりの量の衝突力を逃した可能性が高い。
【0060】
図8A~8Bはそれぞれ、後方衝突イベントの前と後のクラッシュレール部分に隣接する多機能装置の上面図である。この実施形態では、多機能装置800Aは後方衝突を受けるように配置されるが、他の実施形態(例えば、前方の車両クラッシュ構造)も可能である。前述の実施形態と同様に、衝突負荷方向850は、装置800Aの右側にあるように示される。図8A~8Bは、図7A~7Bと同様の図を示すが、今回は上面から見た図である。後方衝突の場合、装置800Aは、示されるように一対のクラッシュレールにほぼ整列し、ここでも例示目的で、1つのクラッシュレール806Aの一部分のみが示される。衝突イベントの後、装置800Bは、クラッシュレール806Bと同様に変形し、図7A~7Bのものと同様の損傷量及び一連の結果を有する。
【0061】
前述の説明は、いかなる当業者も本明細書で説明する様々な態様を実践することを可能にするために提供される。本開示を通じて示されたこれらの例示的な実施形態に対する様々な修正は、当業者には容易に明らかであろう。したがって、特許請求の範囲は、本開示を通じて示される例示的な実施形態に限定されることを意図するものではなく、言語による特許請求の範囲と一致する完全な範囲が与えられるべきである。当業者に知られているか又は後に知られることになる、本開示を通じて説明される例示的な実施形態の要素の全ての構造的及び機能的等価物は、特許請求の範囲に含まれることが意図される。更に、本明細書で開示されるいかなる内容も、そのような開示が特許請求の範囲で明確に記載されているかどうかにかかわらず、公共用に供することは意図されていない。請求項のいかなる要素も、その要素が「のための手段(means for)」という語句を用いて明示的に記載されていない限り、又は方法の請求項の場合には「のためのステップ(step for)」という語句を用いて記載されていない限り、米国特許法35 U.S.C. §112(f)又は該当する管轄区域の類似の法律の規定に基づいて解釈されるべきではない。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】